(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】セマグルチドデポー系及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 38/26 20060101AFI20240709BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240709BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240709BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240709BHJP
A61K 9/113 20060101ALI20240709BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240709BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240709BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240709BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240709BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240709BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240709BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
A61K38/26
A61P3/10
A61P3/04
A61P25/16
A61K9/113
A61K47/34
A61K47/24
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023581040
(86)(22)【出願日】2022-07-04
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 IL2022050708
(87)【国際公開番号】W WO2023281495
(87)【国際公開日】2023-01-12
(32)【優先日】2021-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】511224254
【氏名又は名称】マピ ファーマ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ザッツ,ガリナ
(72)【発明者】
【氏名】ブライヒ キメルマン,ナダブ
(72)【発明者】
【氏名】ラブノフ,シャイ
(72)【発明者】
【氏名】マロム,エフド
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA18
4C076AA94
4C076BB11
4C076BB15
4C076BB32
4C076CC01
4C076CC16
4C076CC21
4C076DD01
4C076DD23
4C076DD38
4C076DD41
4C076DD63
4C076DD67
4C076EE06
4C076EE23
4C076EE24
4C076EE33
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4C076FF31
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4C076FF61
4C076GG05
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4C076GG42
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA19
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4C084BA42
4C084DB35
4C084MA02
4C084MA05
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4C084MA67
4C084NA12
4C084ZA161
4C084ZA162
4C084ZA701
4C084ZA702
4C084ZC351
4C084ZC352
(57)【要約】
本発明は、治療有効量のセマグルチド又はその薬学的に許容される塩を含む非経口医薬組成物を提供し、非経口医薬組成物は、デポー形態で製剤化され、低バースト放出及び継続的放出プロファイルを提供する。本発明は、2型糖尿病、肥満、及びパーキンソン病を治療するための非経口医薬組成物の使用の方法を更に提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥微粒子を含む、長時間作用型非経口医薬組成物であって、前記長時間作用型非経口医薬組成物が、4週間毎に1回~6ヶ月毎に1回の頻度でそれを必要とする対象における医学的に許容される場所に投与するために好適な長時間作用型デポー組成物であり、前記乾燥微粒子が、治療有効量のセマグルチド又はその薬学的に許容される塩を含む内部水相を含む、水中油中水型(w/o/w)二重エマルション液滴を乾燥させることによって形成される、乾燥微粒子と、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される生分解性担体を含む、水不混和性ポリマー相と、外部水相と、を含み、前記乾燥微粒子が、約5~約20μmの範囲内の粒径中央値を特徴とする、長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項2】
前記乾燥微粒子が、約7~約17μmの範囲内の粒径中央値を特徴とする、請求項1に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項3】
前記乾燥微粒子が、約10~約15μmの範囲内の粒径中央値を特徴とする、請求項2に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項4】
pH7.4のリン酸緩衝液中で24時間にわたって前記セマグルチド又はその薬学的に許容される塩の20%未満を放出するような物理的特性を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項5】
pH7.4のリン酸緩衝液中で14日にわたって前記セマグルチド又はその薬学的に許容される塩の80%未満を放出するような物理的特性を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項6】
pH7.4のリン酸緩衝液中で28日にわたって前記セマグルチド又はその薬学的に許容される塩の80%超を放出するような物理的特性を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項7】
単回投与後約4週間~約6ヶ月間、少なくとも約1nmol/mLのセマグルチドの平均ヒト定常状態血漿濃度(C
ss,avg)を提供するような物理的特性を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項8】
単回投与後約4週間~約6ヶ月間、約1nmol/mL~約5nmol/mLのセマグルチドの平均ヒト定常状態血漿濃度(C
ss,avg)を提供するような物理的特性を有する、請求項7に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項9】
セマグルチドが、前記組成物から連続的に放出される、請求項1~8のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項10】
前記生分解性担体が、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、ポリ(D,L-ラクチド)(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーである、請求項1~9のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項11】
前記生分解性担体が、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)である、請求項10に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項12】
前記PLGAが、20kDa未満の分子量を有する、請求項11に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項13】
前記PLGAが、約2~約18kDaの範囲内の分子量を有する、請求項12に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項14】
セマグルチド又はその薬学的に許容される塩の前記生分解性担体に対する比が、約1:2~約1:30(w/w)の範囲内である、請求項1~13のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項15】
セマグルチド又はその薬学的に許容される塩の前記生分解性担体に対する比が、約1:5~約1:20(w/w)の範囲内である、請求項14に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項16】
セマグルチド又はその薬学的に許容される塩の前記生分解性担体に対する比が、約1:5~約1:15(w/w)の範囲内である、請求項15に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項17】
約5%~約15%の範囲内の薬物負荷容量を有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項18】
前記水不混和性ポリマー相が、脂肪酸又はその誘導体を含む第1の界面活性剤を更に含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項19】
前記第1の界面活性剤が、レシチン、水素化レシチン、ステアリン酸、又はそれらの混合物若しくは組み合わせである、請求項18に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項20】
前記第1の界面活性剤が、90重量%超のホスファチジルコリン含有量を含む水素化レシチンを含む、請求項19に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項21】
セマグルチド又はその薬学的に許容される塩を唯一の活性成分として含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項22】
前記内部及び外部水相の各々が、独立して、第2の界面活性剤を更に含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項23】
前記第2の界面活性剤が、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリソルベート、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー、ポリエチレングリコール、及びセルロースエステルからなる群から選択される、請求項22に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項24】
前記内部及び外部水相の各々が、独立して、張度調整剤を更に含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項25】
前記張度調整剤が、塩化ナトリウムを含むイオン性張度調整剤、又は糖若しくは糖アルコールを含む非イオン性張度調整剤である、請求項24に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項26】
前記組成物が、約4週間~約3ヶ月の期間にわたって前記セマグルチド活性成分を放出する、請求項1~25のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項27】
前記組成物が、約4週間~約2ヶ月の期間にわたって前記セマグルチド活性成分を放出する、請求項26に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項28】
前記組成物が、約4週間~約6週間の期間にわたって前記セマグルチド活性成分を放出する、請求項27に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項29】
水中油中水型(w/o/w)二重乳化プロセスであって、
(i)水不混和性揮発性有機溶媒中の前記生分解性担体の溶液中にセマグルチド又はその薬学的に許容される塩の水性懸濁液又は溶液を分散させ、それによって、油中水型エマルションを取得するステップと、
(ii)連続外部水相中に前記油中水型エマルションを分散させて、水中油中水型(w/o/w)二重エマルション液滴を含む微粒子を形成するステップと、を含む、プロセスによって調製される、請求項1~28のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項30】
前記プロセスが、(iii)このように形成された前記微粒子を濾過又は遠心分離によって収集するステップを更に含む、請求項29に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項31】
前記プロセスが、(iv)収集された前記微粒子を洗浄するステップを更に含む、請求項30に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項32】
前記収集された微粒子を洗浄することが、二価カチオンを含む水溶液を用いて実施される、請求項31に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項33】
前記プロセスが、収集又は洗浄された前記微粒子を乾燥させるステップを更に含む、請求項30~32のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項34】
2型糖尿病の治療に使用するための、請求項1~33のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項35】
2型糖尿病を治療することが、単回投与後約4週間~約6ヶ月の期間にわたって対象における空腹時血糖値を少なくとも約5%低減することを含む、請求項34に記載の使用のための長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項36】
2型糖尿病を治療することが、単回投与後約4週間~約6ヶ月の期間にわたって対象における摂食時血糖値を少なくとも約5%低減することを含む、請求項34に記載の使用のための長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項37】
2型糖尿病を治療することが、単回投与後約4週間~約6ヶ月の期間にわたって対象におけるヘモグロビンA1c(HbA1c)レベルを少なくとも約0.5%低減することを含む、請求項34に記載の使用のための長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項38】
2型糖尿病を治療する方法であって、4週間毎に1回~6ヶ月毎に1回の頻度で、請求項1~33のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物を、治療を必要とする対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項39】
肥満の治療に使用するための、請求項1~33のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項40】
肥満を治療する方法であって、4週間毎に1回~6ヶ月毎に1回の頻度で、請求項1~33のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物を、治療を必要とする対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項41】
パーキンソン病の治療に使用するための、請求項1~33のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項42】
パーキンソン病を治療する方法であって、4週間毎に1回~6ヶ月毎に1回の頻度で、請求項1~33のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物を、治療を必要とする対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項43】
単回投与後約4週間~約6ヶ月間、少なくとも約1nmol/mLのセマグルチドの平均ヒト定常状態血漿濃度(C
ss,avg)を達成する方法であって、乾燥微粒子を含む、長時間作用型非経口医薬組成物であって、前記乾燥微粒子が、治療有効量のセマグルチド又はその薬学的に許容される塩を含む内部水相を含む、水中油中水型(w/o/w)二重エマルション液滴を乾燥させることによって形成される、乾燥微粒子と、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される生分解性担体を含む、水不混和性ポリマー相と、外部水相と、を含む、長時間作用型非経口医薬組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項44】
前記セマグルチドの平均ヒト定常状態血漿濃度(C
ss,avg)が、単回投与後約4週間~約6ヶ月間、約1nmol/mL~約5nmol/mLである、請求項43に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セマグルチドを含む非経口持続放出医薬組成物、並びに2型糖尿病、肥満、及びパーキンソン病の治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
II型糖尿病又は2型糖尿病(以前は、インスリン非依存性糖尿病(non-insulin-dependent diabetes mellitus、NIDDM)又は成人発症型糖尿病と呼ばれていた)は、インスリン抵抗性及び相対的インスリン欠乏に関連する高い血糖値を特徴とする障害である。これはしばしば、最初は運動の増加及び食事の修正によって管理されるが、典型的には、疾患が進行するにつれて薬剤が必要とされる。
【0003】
2型糖尿病の治療の進歩にもかかわらず、最適な血糖コントロールがしばしば達成されない。多くの抗糖尿病薬に関連する低血糖症及び体重増加は、集中治療の実施及び長期適用を妨げ得る。現在の治療は、インスリン可用性の増加(直接インスリン投与を通して、又はインスリン分泌を促進する薬剤を通してのいずれか)、インスリンに対する感受性の改善、胃腸管からの炭水化物の送達及び吸収の遅延、又は尿糖排出の増加に集中している。
【0004】
グルカゴン様ペプチド-1(glucagon-like peptide-1、GLP-1)は、食事後に腸細胞によって分泌される30個のアミノ酸残基の天然ペプチドである。それは、グルコース依存性インスリン放出を刺激し、食後グルカゴン分泌を抑制する。GLP-1は、主に、ジペプチジルペプチダーゼ酵素(DPP-4)による酵素分解に敏感であるため、その短い薬物動態半減期、すなわち、約2~5分の半減期に起因して、治療剤として投与されたときにあまり有効ではない。GLP-1の半減期を延長するために、化学修飾及びアミノ酸置換を含む代謝的に安定したGLP-1類似体が開発されている。
【0005】
セマグルチドは、週1回の投与に好適な放出プロファイルを提供する目的で、アルブミン結合の増加によって長期の循環ヒト半減期を有するように設計された。リラグルチド(ヒトGLP-1ペプチドの修飾アシル化バージョン)の配列を、2-アミノイソ酪酸(aminoisobutyric acid、Aib)基を用いて8位で誘導体化し、34位におけるアルギニン及び37位におけるグリシンを維持した。脂肪酸部分及び26位におけるLysへの結合化学は、アルブミン結合親和性の所望の増加を提供するための重要な特徴であった。リラグルチド中のLys26(γGlu-C16酸)を伸長Lys26(γGlu-2xOEG-C18酸)で置き換えることにより、ヒトGLP-1受容体において0.38nMの結合親和性及び6.2pMの機能的能力を有する、セマグルチド([Aib8,Lys26(γGlu-2xOEG-C18酸),Arg34]-hGLP-1-(7-37)-OH)を提供した。8位におけるAibアミノ酸残基の組み込みは、DPP-4酵素分解からの保護を介してセマグルチドを安定化し、アルブミン親和性の増加と組み合わせられると、血漿半減期は、ミニブタにおいて、IV投与後46.1時間まで延長され、SC投与後の平均滞留時間は63.6時間であった。db/dbマウスモデル(2型糖尿病の高血糖症、高インスリン血症肥満モデル)では、セマグルチドは、ED50<2nmol/kgで持続的な用量依存性有効性を生じた(Suzuki et al.,J.Med.Chem.,2020,13;63(3):905-927;doi:10.1021/acs.jmedchem.9b00835)。
【0006】
セマグルチドは、2型糖尿病を有する成人における血糖コントロールを改善するため、かつ2型糖尿病及び確立された心血管疾患を有する成人における主要な有害心血管事象のリスクを低減するために、食事及び運動の補助剤として適応される。近年、米国食品医薬品局(U.S.Food and Drug Administration、FDA)は、肥満又は過体重状態及び少なくとも1つの体重関連状態(例えば、高血圧、2型糖尿病、及び高コレステロール)を有する成人における慢性体重管理のためのセマグルチドの週1回注射の使用を承認した。
【0007】
Yu et al.(Adv.Drug Deli.Rev.,130,p.113-130)は、連続修飾、ペプチドへの脂肪酸の付着、ヒト血清アルブミンとの融合、モノクローナル抗体の断片結晶化可能(fragment crystallizable、Fc)領域との融合、持続薬物送達系、及びPEG化を含む、GLP-1受容体アゴニストに採用される様々な半減期延長方略、並びにこれらの方略が、薬物動態、薬力学、安全性、患者有用性、及び最終的にはGLP-1受容体アゴニスト製品の商業的成功に影響を及ぼす様式を記載している。Yu et al.は、Bydureon(登録商標)(エキセナチド)製剤中のPLGA微粒子の欠点のうちの1つが、それらがGLP-1受容体アゴニストを定常速度で送達できないことであることを開示している。
【0008】
国際公開第2020/210764号は、治療剤を含む治療領域と、生体吸収性ポリマー及びポリマーと混合された放出剤を含む制御領域と、を含む、デポーを記載している。放出剤は、デポーがインビボに配置されたときに溶解して、制御領域に拡散開口部を形成するように構成され得る。デポーは、インビボで治療部位に埋め込まれ、埋め込まれている間に、長期間にわたって治療部位で治療剤を放出するように構成され得る。
【0009】
国際公開第2018/136909号は、インライン再循環混合システムを介して活性成分の微粒子を生産するための方法を記載しており、インライン再循環混合システムは、ミキサーと、ミキサーに結合された導管と、を備える。
【0010】
米国特許出願公開第2020/0298196号は、改善した安全性及び貯蔵安定性を有する生分解性ミクロスフェアを生産するための方法、並びにそれを生産するための方法を記載している。
【0011】
国際公開第2020/028907号は、ポリマー粒子に封入されたか、又は組み込まれた、GLP-1、又はエクセナチド、リラグルチド、リキシセナチド、アルビグルチド、デュラグルチド、セマグルチド、若しくはタスポグルチドなどのその類似体を含む、組成物を記載している。
【0012】
国際公開第2021/020885号は、レボドパ誘発性ジスキネジアの治療又は予防のための医薬組成物を記載している。レボドパと組み合わせて投与されると、GLP-1受容体アゴニスト又はその制御放出製剤は、レボドパの長期投与によって引き起こされる重篤な副作用を減少させ、レボドパ誘発性の非自発性ジスキネジアを軽減する効果を示す。
【0013】
中国特許第110101846号は、低突然放出速度セマグルチドミクロスフェア及びその調製方法を記載している。調製剤は、ミクロスフェアの重量の1~20%である重量を有する活性成分セマグルチド、ミクロスフェアの重量の60~99%である重量を有する生体適合性ポリマー基質、及びミクロスフェアの重量の0~20%である重量を有する他の薬学的に許容される補助材料から調製される、長時間作用型注射液である。
【0014】
中国特許第113018277号は、注射用の持続放出調製剤及びその調製方法を記載している。調製方法は、水中油中水型(water-in-oil-in-water、W1/O/W2)二重エマルションに基づくタンパク質ポリペプチド医薬品の持続放出ミクロスフェアを調製するために使用される。
【0015】
米国特許出願公開第2019/0133952号は、以下のステップ:1)水溶性薬物及び生分解性かつ生体適合性の水難溶性ポリマーの固体分散体を調製するステップと、2)ステップ1)で調製された固体分散体を有機溶媒Cに溶解させて、固体分散エマルションを形成するステップであって、有機溶媒Cが、水溶性薬物を溶解させることが可能ではないが、水難溶性ポリマーを溶解させることが可能であり、水よりも低い沸点を有し、水に不溶性又は難溶性である有機溶媒である、ステップと、3)ステップ2)で取得された固体分散エマルションを界面活性剤含有水溶液中に添加して、均一なエマルションを形成するステップと、4)溶媒揮発又は溶媒抽出によってエマルション中の微粒子を凝固させ、微粒子を収集し、超純水で数回洗浄して、微粒子の表面に付着した界面活性剤を除去し、乾燥させて、持続放出微粒子を取得するステップと、を含むことを特徴とする、持続放出ミクロスフェアの調製方法を記載している。
【0016】
長期間にわたって活性成分の安全かつ効果的な放出を提供することができる、改良された長時間作用型セマグルチド製剤の満たされていない必要性が残っている。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、治療有効量のGLP-1受容体アゴニスト、特に、セマグルチド又はその薬学的に許容される塩を含む、非経口医薬組成物を提供し、非経口医薬組成物は、デポー形態で製剤化される。本発明は、2型糖尿病、肥満、及びパーキンソン病を治療する方法であって、治療を必要とする対象に本発明の非経口医薬組成物を投与することを含む、方法を更に提供する。
【0018】
本発明は、セマグルチド、並びに例えば、ポリラクチド、ポリグリコリド、及び/又はポリカプロラクトンを含む、生分解性担体のデポー製剤が、単回投与後少なくとも6週間、セマグルチド活性成分の長時間作用型治療有効血漿濃度を提供するという、驚くべき発見に部分的に基づく。本発明の製剤は、HbA1c及び血漿グルコースレベルを低減することに効果的であり、副作用の発生率の低減及び/又は副作用の重症度の低減とともに、セマグルチドの週1回の注射用剤形と同等であるか、又はそれより優れた治療有効性を提供する。他の持続放出薬物送達技術に由来する製剤と比較すると、本発明のセマグルチド持続放出製剤は、最小限のバースト、投与後の最小限の遅延時間、より少ない頻度の注射を用いた薬物放出の持続時間の増加、市販のセマグルチド即時放出製剤の投与によって取得される血漿レベルと実質的に同一である連続血漿レベル、並びに少ない注射量及び小さい粒径に起因する改善した局所組織耐性とともに、優れた放出動態を提供する。
【0019】
したがって、一態様では、本発明は、乾燥微粒子を含む、長時間作用型非経口医薬組成物であって、長時間作用型非経口医薬組成物が、4週間毎に1回~6ヶ月毎に1回の頻度でそれを必要とする対象における医学的に許容される場所に投与するために好適な長時間作用型デポー組成物であり、乾燥微粒子が、治療有効量のセマグルチド又はその薬学的に許容される塩を含む内部水相を含む、水中油中水型(water-in-oil-in-water、w/o/w)二重エマルション液滴を乾燥させることによって形成される、乾燥微粒子と、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される生分解性担体を含む、水不混和性ポリマー相と、外部水相と、を含み、乾燥微粒子が、指定範囲内の各値を含む、約5~約20μmの範囲内の粒径中央値を特徴とする、長時間作用型非経口医薬組成物を提供する。
【0020】
一実施形態では、乾燥微粒子は、指定範囲内の各値を含む、約7~約17μmの範囲内の粒径中央値を特徴とする。別の実施形態では、乾燥微粒子は、指定範囲内の各値を含む、約10~約15μmの範囲内の粒径中央値を特徴とする。
【0021】
いくつかの実施形態では、組成物は、投与後に、投与された用量の20%未満の24時間セマグルチドバースト放出を提供する。他の実施形態では、組成物は、pH7.4のリン酸緩衝液中で24時間にわたってセマグルチド又はその薬学的に許容される塩の20%未満を放出するような物理的特性を有する。その上更なる実施形態では、組成物は、pH7.4のリン酸緩衝液中で14日にわたってセマグルチド又はその薬学的に許容される塩の80%未満を放出するような物理的特性を有する。更に別の実施形態では、組成物は、pH7.4のリン酸緩衝液中で28日にわたってセマグルチド又はその薬学的に許容される塩の80%超を放出するような物理的特性を有する。
【0022】
様々な実施形態では、組成物は、単回投与後約4週間~約6ヶ月間、少なくとも約1nmol/mLのセマグルチドの平均ヒト定常状態血漿濃度(Css,avg)を提供するような物理的特性を有する。追加の実施形態では、組成物は、指定範囲内の各値を含む、単回投与後約4週間~約6ヶ月間、約1nmol/mL~約5nmol/mLのセマグルチドの平均ヒト定常状態血漿濃度(Css,avg)を提供するような物理的特性を有する。
【0023】
別の実施形態では、セマグルチドは、組成物から連続的に放出される。
【0024】
更に別の実施形態では、セマグルチドは、0、第1、第2、及び第3の放出順序、並びにそれらの任意の擬似順序から選択される制御放出順序で組成物から放出される。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0025】
特定の実施形態では、セマグルチドは、唯一の活性成分として医薬組成物中に存在する。
【0026】
様々な実施形態では、生分解性担体は、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(poly(D,L-lactide-co-glycolide)、PLGA)、ポリ(D,L-ラクチド)(poly(D,L-lactide)、PLA)、ポリグリコリド(polyglycolide、PGA)、ポリカプロラクトン(polycaprolactone、PCL)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される生分解性ポリマーである。各可能性は、別々の実施形態を表す。1つの現在好ましい実施形態では、生分解性担体は、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)である。別の現在好ましい実施形態では、生分解性担体は、ポリ(D,L-ラクチド)(PLA)である。更に別の現在好ましい実施形態では、生分解性担体は、ポリ(D,L-ラクチド)-ポリカプロラクトン(PLA-PCL)である。追加の現在好ましい実施形態では、生分解性担体は、ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)及びポリ(D,L-ラクチド)-ポリカプロラクトンの混合物(PLGA/PLA-PCL)である。
【0027】
ある特定の実施形態では、生分解性担体は、20kDa未満の分子量を有するポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)である。他の実施形態では、生分解性担体は、指定範囲内の各値を含む、約2~約18kDaの範囲の分子量を有するポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)である。
【0028】
追加の実施形態では、水不混和性ポリマー相は、脂肪酸又はその誘導体を含む、第1の界面活性剤を更に含む。特定の実施形態では、第1の界面活性剤は、レシチン、水素化レシチン、ステアリン酸、又はそれらの混合物若しくは組み合わせである。各可能性は、別々の実施形態を表す。具体的な実施形態では、第1の界面活性剤は、90重量%超のホスファチジルコリン含有量を含む水素化レシチンを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、内部及び外部水相の各々は、独立して、第2の界面活性剤を更に含む。特定の実施形態では、第2の界面活性剤は、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)、ポリソルベート、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー、ポリエチレングリコール、及びセルロースエステルからなる群から選択される。各可能性は、別々の実施形態を表す。現在好ましい実施形態では、第2の界面活性剤は、PVAである。別の現在好ましい実施形態では、第2の界面活性剤は、ポリエチレングリコールである。
【0030】
他の実施形態では、内部及び外水相の各々は、独立して、張度調整剤を更に含む。ある特定の実施形態では、張度調整剤は、塩化ナトリウムを含むイオン性張度調整剤である。更なる実施形態では、張度調整剤は、糖又は糖アルコールを含む非イオン性張度調整剤である。具体的実施形態では、糖は、スクロースである。
【0031】
いくつかの実施形態では、セマグルチド又はその薬学的に許容される塩の生分解性担体に対する比は、指定範囲内の比の全ての反復を含む、約1:2~約1:30(w/w)の範囲内である。他の実施形態では、セマグルチド又はその薬学的に許容される塩の生分解性担体に対する比は、指定範囲内の比の全ての反復を含む、約1:5~約1:20(w/w)の範囲内である。更に他の実施形態では、セマグルチド又はその薬学的に許容される塩の生分解性担体に対する比は、指定範囲内の比の全ての反復を含む、約1:5~約1:15(w/w)の範囲内である。
【0032】
様々な実施形態では、乾燥微粒子は、指定範囲内の各値を含む、約5%~約15%の範囲内のセマグルチド薬物負荷容量を特徴とする。他の実施形態では、乾燥微粒子は、指定範囲内の各値を含む、約5%~約12%の範囲内のセマグルチド薬物負荷容量を特徴とする。追加の実施形態では、乾燥微粒子は、指定範囲内の各値を含む、約5%~約10%の範囲内のセマグルチド薬物負荷容量を特徴とする。更なる実施形態では、乾燥微粒子は、指定範囲内の各値を含む、約7%~約9%の範囲内のセマグルチド薬物負荷容量を特徴とする。
【0033】
ある特定の実施形態では、本発明のデポー組成物は、水中油中水型(w/o/w)二重乳化プロセスであって、
(i)水不混和性揮発性有機溶媒中の生分解性担体の溶液中にセマグルチド又はその薬学的に許容される塩の水性懸濁液又は溶液を分散させ、それによって、油中水型エマルションを取得するステップと、
(ii)連続外部水相中に油中水型エマルションを分散させて、水中油中水型(w/o/w)二重エマルション液滴を含む微粒子を形成するステップと、を含む、プロセスによって調製される。
【0034】
別の態様では、本発明は、長時間作用型非経口医薬組成物であって、4週間毎に1回~6ヶ月毎に1回の頻度でそれを必要とする対象における医学的に許容される場所に投与するために好適なセマグルチド又は薬学的に許容される塩を含む、長時間作用型非経口医薬組成物を調製する方法を提供し、本方法は、
(i)水不混和性揮発性有機溶媒中の生分解性担体の溶液中にセマグルチド又はその薬学的に許容される塩の水性懸濁液又は溶液を分散させ、それによって、油中水型エマルションを取得するステップと、
(ii)連続外部水相中に油中水型エマルションを分散させて、水中油中水型(w/o/w)二重エマルション液滴を含む微粒子を形成するステップと、を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、本プロセスは、(iii)このように形成された微粒子を濾過又は遠心分離によって収集するステップを更に含む。他の実施形態では、本プロセスは、(iv)収集された微粒子を洗浄するステップを更に含む。一実施形態では、洗浄は、精製水、緩衝溶液、外部水相、又はそれらの混合物若しくは組み合わせを用いて実施される。各可能性は、別々の実施形態を表す。別の実施形態では、洗浄は、二価カチオンを含む水溶液を用いて実施される。更なる実施形態では、本プロセスは、収集又は洗浄された微粒子を乾燥させるステップを更に含む。一実施形態では、収集又は洗浄された微粒子を乾燥させることは、凍結乾燥によって実施される。
【0036】
いくつかの実施形態では、内部水相は、指定範囲内の各値を含む、約7~約9のpHを有する。他の実施形態では、内部水相は、指定範囲内の各値を含む、約7.5~約9.5のpHを有する。更に他の実施形態では、内部水相は、約7.8のpHを有する。様々な実施形態では、pHは、酸又は塩基によって調整される。各可能性は、別々の実施形態を表す。好ましくは、pHは、水酸化ナトリウムを使用して調整される。
【0037】
追加の実施形態では、本発明のデポー組成物は、固体微粒子、溶液、又は懸濁液の形態である。各可能性は、別々の実施形態を表す。現在好ましい実施形態では、組成物は、生理学的に許容される溶媒中に懸濁された固体微粒子を含む懸濁液の形態である。追加の実施形態では、懸濁液は、生理学的に許容される溶媒中で再構成された乾燥微粒子を含む。
【0038】
更なる実施形態では、組成物は、指定範囲内の各値を含む、約4週間毎に1回~約6ヶ月毎に1回の投薬スケジュールに好適である。他の実施形態では、組成物は、指定範囲内の各値を含む、約1ヶ月~約3ヶ月の期間にわたってセマグルチド有効成分を放出する。追加の実施形態では、組成物は、指定範囲内の各値を含む、約4週間~約6週間の期間にわたってセマグルチド有効成分を放出する。現在好ましい実施形態では、組成物は、指定範囲内の各値を含む、約1ヶ月~約2ヶ月の期間にわたってセマグルチド有効成分を放出する。
【0039】
他の実施形態では、組成物は、指定範囲内の各値を含む、約5mg~約100mgのセマグルチド用量で投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、筋肉内に投与される。更なる実施形態では、組成物は、皮下に投与される。
【0040】
本明細書で企図されるように、本発明の組成物は、糖尿病、特に、2型糖尿病に罹患した対象を治療することに有用である。
【0041】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、2型糖尿病を治療する方法であって、指定範囲内の各値を含む、4週間毎に1回~6ヶ月毎に1回の頻度で、本明細書に開示される非経口医薬組成物を、治療を必要とする対象に投与するステップを含む、方法を提供する。一実施形態では、当該治療は、当該対象における空腹時血糖値を少なくとも約5%、好ましくは少なくとも約10%、より好ましくは少なくとも約15%、最も好ましくは少なくとも約20%低減することを含む。各可能性は、別々の実施形態を表す。別の実施形態では、当該治療は、当該対象における摂食時血糖値を少なくとも約5%、好ましくは少なくとも約10%、より好ましくは少なくとも約15%、最も好ましくは少なくとも約20%低減することを含む。各可能性は、別々の実施形態を表す。更に別の実施形態では、当該治療は、当該対象におけるヘモグロビンA1c(hemoglobin A1c、HbA1c)レベルを少なくとも約0.5%、好ましくは少なくとも約1%、より好ましくは少なくとも約1.5%、最も好ましくは少なくとも約2%低減することを含む。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0042】
追加の実施形態によれば、本発明の組成物は、パーキンソン病に罹患した対象を治療することに有用である。したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、パーキンソン病を治療する方法であって、指定範囲内の各値を含む、4週間毎に1回~6ヶ月毎に1回の頻度で、本明細書に開示される非経口医薬組成物を、治療を必要とする対象に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0043】
更なる実施形態によれば、本発明の組成物は、肥満を治療することに有用である。したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、肥満を治療する方法であって、指定範囲内の各値を含む、4週間毎に1回~6ヶ月毎に1回の頻度で、本明細書に開示される非経口医薬組成物を、治療を必要とする対称に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0044】
更に別の態様によれば、本発明は、単回投与後約4週間~約6ヶ月間、少なくとも約1nmol/mLのセマグルチドの平均ヒト定常状態血漿濃度(Css,avg)を達成する方法を提供し、本方法は、乾燥微粒子を含む、長時間作用型非経口医薬組成物であって、乾燥微粒子が、治療有効量のセマグルチド又はその薬学的に許容される塩を含む内部水相を含む、水中油中水型(w/o/w)二重エマルション液滴を乾燥させることによって形成される、乾燥微粒子と、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される生分解性担体を含む、水不混和性ポリマー相と、外部水相と、を含む、長時間作用型非経口医薬組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む。様々な実施形態では、本発明は、指定範囲内の各値を含む、単回投与後約4週間~約6ヶ月間、約1nmol/mL~約5nmol/mLのセマグルチドの平均ヒト定常状態血漿濃度(Css,avg)を達成する方法を提供する。
【0045】
本発明の更なる実施形態及び適用可能性の全範囲は、以下に与えられる詳細な記述から明らかになるであろう。しかしながら、本発明の趣旨及び範囲内での様々な変更及び修正は、この詳細な記述から当業者に明らかになるであろうから、詳細な記述及び具体的な実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、単に例示として与えられているにすぎないことは理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図2】デポー製剤MPS-23(τ)、MPS-25(ν)、MPS-27M(Ψ)、及びMPS-34HL(×)からのセマグルチドのインビトロ放出を示す。矢印は、ブタ膵臓リパーゼ(porcine pancreas lipase、PPL)が添加された時点を示す。
【
図3】デポー製剤MPS-40(→)、MPS-41(λ)、MPS-43(+)、及びMPS-44(←)からのセマグルチドのインビトロ放出を示す。矢印は、ブタ膵臓リパーゼ(PPL)が添加された時点を示す。
【
図4A】
図4Aは、デポー製剤MPS-46からのセマグルチドのインビトロ放出を示し、
図4Bは、溶解試験中のMPS-46デポー製剤中のセマグルチド含有量%を示す。
【
図4B】
図4Aは、デポー製剤MPS-46からのセマグルチドのインビトロ放出を示し、
図4Bは、溶解試験中のMPS-46デポー製剤中のセマグルチド含有量%を示す。
【
図5】群1-ナイーブ対照(λ)、群2-ビヒクル対照(ν)、群3-毎日SCで0.06mg/kgのセマグルチド(Ψ)、群4-毎日SCで0.4mg/kgのセマグルチド(▼)、及び群5-セマグルチドデポー(τ)における自由摂食時血糖値を示す。データは、平均+SEM、ビヒクルに対して
*p<0.05として示される。一元配置分散分析、続いて、ダネットの検定。
【
図6】14日目及び28日目の空腹時血糖値を示す。データは、平均+SEM、ビヒクルに対して
*p<0.05として示される。一元配置分散分析、続いて、ダネットの検定。
【
図7】0日目及び28日目のdb/dbマウスにおけるHbA1cを示す。データは、平均+SEM、ビヒクルに対して
*p<0.05として示される。一元配置分散分析、続いて、ダネットの検定。
【
図8】群1-ナイーブ対照(λ)、群2-ビヒクル対照(ν)、群3-毎日SCで0.06mg/kgのセマグルチド(Ψ)、群4-毎日SCで0.4mg/kgのセマグルチド(▼)、及び群5-セマグルチドデポー(τ)におけるdb/dbマウスの体重を示す。
【
図9A】飼料摂取量を示す。
図9A:群1-ナイーブ対照(λ及び群2-ビヒクル対照(ν)、
図9B:群2-ビヒクル対照(ν)及び群3-毎日SCで0.06mg/kgのセマグルチド(Ψ)、
図9C:群2-ビヒクル対照(ν)及び群4-毎日SCで0.4mg/kgのセマグルチド(▼)、
図9D:群2-ビヒクル対照(ν及び群5-セマグルチドデポー(τ)。データは、平均+SEMとして示される。
【
図9B】飼料摂取量を示す。
図9A:群1-ナイーブ対照(λ及び群2-ビヒクル対照(ν)、
図9B:群2-ビヒクル対照(ν)及び群3-毎日SCで0.06mg/kgのセマグルチド(Ψ)、
図9C:群2-ビヒクル対照(ν)及び群4-毎日SCで0.4mg/kgのセマグルチド(▼)、
図9D:群2-ビヒクル対照(ν及び群5-セマグルチドデポー(τ)。データは、平均+SEMとして示される。
【
図9C】飼料摂取量を示す。
図9A:群1-ナイーブ対照(λ及び群2-ビヒクル対照(ν)、
図9B:群2-ビヒクル対照(ν)及び群3-毎日SCで0.06mg/kgのセマグルチド(Ψ)、
図9C:群2-ビヒクル対照(ν)及び群4-毎日SCで0.4mg/kgのセマグルチド(▼)、
図9D:群2-ビヒクル対照(ν及び群5-セマグルチドデポー(τ)。データは、平均+SEMとして示される。
【
図9D】飼料摂取量を示す。
図9A:群1-ナイーブ対照(λ及び群2-ビヒクル対照(ν)、
図9B:群2-ビヒクル対照(ν)及び群3-毎日SCで0.06mg/kgのセマグルチド(Ψ)、
図9C:群2-ビヒクル対照(ν)及び群4-毎日SCで0.4mg/kgのセマグルチド(▼)、
図9D:群2-ビヒクル対照(ν及び群5-セマグルチドデポー(τ)。データは、平均+SEMとして示される。
【
図10A】db/dbマウスにおけるセマグルチド血漿濃度を示す。
図10A:群3-毎日SCで0.06mg/kgのセマグルチド、
図10B:群4-毎日SCで0.4mg/kgのセマグルチド、
図10C:群5-セマグルチドデポー。データは、平均+SEMとして示される。
図10D:単回IM投与後のセマグルチドデポー(Ψ)対24時間毎に皮下に投与されたセマグルチド溶液(λ)。
【
図10B】db/dbマウスにおけるセマグルチド血漿濃度を示す。
図10A:群3-毎日SCで0.06mg/kgのセマグルチド、
図10B:群4-毎日SCで0.4mg/kgのセマグルチド、
図10C:群5-セマグルチドデポー。データは、平均+SEMとして示される。
図10D:単回IM投与後のセマグルチドデポー(Ψ)対24時間毎に皮下に投与されたセマグルチド溶液(λ)。
【
図10C】db/dbマウスにおけるセマグルチド血漿濃度を示す。
図10A:群3-毎日SCで0.06mg/kgのセマグルチド、
図10B:群4-毎日SCで0.4mg/kgのセマグルチド、
図10C:群5-セマグルチドデポー。データは、平均+SEMとして示される。
図10D:単回IM投与後のセマグルチドデポー(Ψ)対24時間毎に皮下に投与されたセマグルチド溶液(λ)。
【
図10D】db/dbマウスにおけるセマグルチド血漿濃度を示す。
図10A:群3-毎日SCで0.06mg/kgのセマグルチド、
図10B:群4-毎日SCで0.4mg/kgのセマグルチド、
図10C:群5-セマグルチドデポー。データは、平均+SEMとして示される。
図10D:単回IM投与後のセマグルチドデポー(Ψ)対24時間毎に皮下に投与されたセマグルチド溶液(λ)。
【
図11】ミニブタにおけるセマグルチド平均血漿濃度を示す。単回IM投与後のセマグルチドデポー(Ψ)対72時間毎に皮下に投与されたセマグルチド溶液(λ)。
【
図12】群1-ナイーブ対照(λ)、群2-ビヒクル対照(ν)、群3-毎日SCで0.02mg/kgのセマグルチド(Ψ)、群4-1日目に1回IMで2mg/kgのセマグルチドデポー(▼)、及び群5-1日目に1回SCで2mg/kgのセマグルチドデポー(τ)のdb/dbマウスにおける自由摂食時血糖値を示す。データは、平均+SEM、ビヒクルに対して
*p<0.05として示される。二元配置分散分析、続いて、ボンフェローニの多重比較検定。
【
図13】14日目、28日目、及び42日目のdb/dbマウスにおける空腹時血糖値を示す。データは、平均+SEM、ビヒクルに対して
*p<0.05として示される。一元配置分散分析、続いて、ダネットの検定。
【
図14】0日目、28日目及び42日目のdb/dbマウスにおけるHbA1cを示す。データは、平均+SEM、ビヒクルに対して
*p<0.05として示される。一元配置分散分析、続いて、ダネットの検定。
【
図15】群1-ナイーブ対照(λ)、群2-ビヒクル対照(ν)、群3-毎日SCで0.02mg/kgのセマグルチド(Ψ)、群4-1日目に1回IMで2mg/kgのセマグルチドデポー(▼)、及び群5-1日目に1回SCで2mg/kgのセマグルチドデポー(τ)のdb/dbマウスの体重を示す。データは、平均+SEM、ビヒクルに対して
*p<0.05として示される。二元配置分散分析、続いて、ボンフェローニの多重比較検定。
【
図16】群1-ナイーブ対照(λ)、群2-ビヒクル対照(ν)、群3-毎日SCで0.02mg/kgのセマグルチド(Ψ)、群4-1日目に1回IMで2mg/kgのセマグルチドデポー(▼)、及び群5-1日目に1回SCで2mg/kgのセマグルチドデポー(τ)のdb/dbマウスにおける試料摂取量を示す。データは、平均+SEM、ビヒクルに対して
*p<0.05として示される。二元配置分散分析、続いて、ボンフェローニの多重比較検定。
【
図17A】db/dbマウスにおけるセマグルチド血漿濃度を示す。
図17A:群3-毎日SCで0.02mg/kgのセマグルチド、
図17B:群5-1日目に1回SCで2mg/kgのセマグルチドデポー。データは、平均+SEMとして示される。
【
図17B】db/dbマウスにおけるセマグルチド血漿濃度を示す。
図17A:群3-毎日SCで0.02mg/kgのセマグルチド、
図17B:群5-1日目に1回SCで2mg/kgのセマグルチドデポー。データは、平均+SEMとして示される。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明は、週1回の組成物と同等であるか、又はそれより優れた治療有効性をもたらすが、4週間毎に1回~6ヶ月毎に1回の頻度で投与するために設計され、したがって、患者コンプライアンスの改善をもたらす、セマグルチド又はその薬学的に許容される塩の長時間作用型医薬調製剤を提供する。同じ又は優れた治療効果を提供することに加えて、本発明の医薬調製剤は、脂肪萎縮、脂肪肥大、局所アレルギー反応、膿瘍形成、及び瘢痕化を含む、セマグルチドの頻繁な注射に起因する、副作用(局所及び/又は全身性)を低減する。本発明は、有効成分の連続放出を提供し、それによって、投与直後の高濃度のセマグルチドの望ましくない放出又は投与後のセマグルチド放出の遅延を回避し、したがって、血糖コントロールの改善並びに投与後最初の48時間以内の低血糖症及び高血糖症の事象の予防をもたらす、低バースト放出セマグルチドデポー製剤を更に提供する。投与後最初の48時間以内のセマグルチドの低バースト放出はまた、しばしばセマグルチド投与に関連する、悪心及び嘔吐の有害事象を予防することに有利である。
【0048】
本明細書に開示される長時間作用型非経口組成物は、物理的安定性の改善及び容易な注射可能性に関連する、約5~約20μmの範囲内の小さい粒径中央値を特徴とする微粒子を含む。微粒子はまた、薬物負荷容量の改善も特徴とする。本明細書で提供される原理によれば、臨床範囲内の有効血漿濃度が、本発明の組成物の単回投与後少なくとも4週間、達成及び維持される。組成物は、生分解性であり、注射部位からの迅速な排出をもたらす。
【0049】
いくつかの態様及び実施形態によれば、本発明の医薬製剤及び投与量は、例えば、注射、移植、又は注入による非経口投与に好適な形態で便宜的に提供される。各可能性は、別々の実施形態を表す。本明細書で使用される場合の「非経口」という用語は、皮下(subcutaneous、SC)、静脈内(intravenous、IV)、筋肉内(intramuscular、IM)、皮内(intradermal、ID)、腹腔内(intraperitoneal、IP)、及び同等物から選択される投与経路を指す。各可能性は、別々の実施形態を表す。現在好ましい実施形態では、医薬組成物は、筋肉内(IM)経路を介して投与される。他の現在好ましい実施形態では、医薬組成物は、皮下に投与される。
【0050】
本発明の範囲内には、持続放出デポー製剤がある。本明細書で使用される場合の「持続」という用語は、治療有効量のセマグルチド又はその任意の薬学的に許容される塩の長期、長時間、又は延長放出を、対象の全般的体循環又は対象における局所作用部位に提供する、医薬組成物を指す。この用語は、対象において、治療有効量のセマグルチド又はその任意の薬学的に許容される塩への長期、長時間、又は延長曝露(薬物動態)、及びその(薬力学)作用の持続時間を提供する、医薬組成物を更に指し得る。特に、本発明の持続放出医薬組成物は、4週間毎に1回、1ヶ月毎に1回、1ヶ月半毎に1回、2ヶ月毎に1回、3ヶ月毎に1回、4ヶ月毎に1回、5ヶ月毎に1回、又は6ヶ月毎に1回の投薬レジメンを提供する。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0051】
必要とされる作用の持続時間に応じて、本発明の各デポー又は埋込型デバイスは、4週間、1ヶ月、1ヶ月半、2ヶ月、2ヶ月半、3ヶ月、3ヶ月半、4ヶ月、4ヶ月半、5ヶ月、5ヶ月半、及び6ヶ月からなる群から選択される期間にわたってセマグルチド又はその薬学的に許容される塩の放出をもたらすように設計される。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0052】
本発明のデポー系は、生分解性ミクロスフェア、非生分解性ミクロスフェア、任意の好適な幾何学的形状のインプラント、持効性放出ゲル、及び浸食性マトリックスからなる群から選択される形態を包含する。各可能性は、別々の実施形態を表す。ある特定の実施形態によれば、任意の好適な幾何学的形状のインプラントは、埋込型カプセル、埋込型ロッド、及び埋込型リングからなる群から選択される。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0053】
いくつかの実施形態によれば、非経口医薬組成物の好適な形態としては、微粒子を含有する注射用組成物が挙げられるが、これに限定されない。微粒子は、生分解性又は非生分解性ポリマーに封入されている治療有効量の活性成分を含む。各可能性は、別々の実施形態を表す。ある特定の実施形態では、微粒子は、指定範囲内の各値を含む、1グラムの微粒子当たり約30mg~約130mgの範囲の量でセマグルチドを含む。他の実施形態では、微粒子は、特定の範囲内の各値を含む、1グラムの微粒子当たり約50mg~約100mgの範囲の量でセマグルチドを含む。様々な実施形態では、微粒子は、水中油中水型(w/o/w)二重エマルション液滴を乾燥させることによって形成される。本発明の原理による二重エマルション液滴は、治療有効量のセマグルチド又はその薬学的に許容される塩を含む、内部水相と、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される生分解性担体を含む、水不混和性ポリマー相と、外部水相と、を含む。
【0054】
本発明の原理によれば、セマグルチドは、遊離塩基の形態又はその塩若しくはそれらの混合物の形態で組成物中に存在し得る。各可能性は、別々の実施形態を表す。塩の代表例としては、塩酸、臭化水素酸、及び同等物などの好適な無機酸を含む塩が挙げられるが、これらに限定されない。各可能性は、別々の実施形態を表す。塩の代表例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、酒石酸、アスコルビン酸、クエン酸、及び同等物などの有機酸を含む塩も挙げられるが、これらに限定されない。各可能性は、別々の実施形態を表す。塩の代表的な例としては、トリエタノールアミン、ジエチルアミン、メグルミン、アルギニン、アラニン、ロイシン、ジエチルエタノールアミン、オラミン、トリエチルアミン、トロメタミン、コリン、トリメチルアミン、タウリン、ベンズアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、メチルエタノールアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシル、チミン、キサンチン、ヒポキサンチン、及び同等物などの塩基を含む塩も挙げられるが、これらに限定されない。各可能性は、別々の実施形態を表す。更なる実施形態によれば、薬学的に許容される塩としては、硫酸塩、リン酸塩、スルファミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、及びキナ酸塩を含有するものなどの酸付加塩が挙げられる。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0055】
本発明の原理による塩は、例えば、塩が不溶性である溶媒若しくは媒体中で、又は後に真空中で除去される水などの溶媒中で、遊離酸若しくは遊離塩基形態を、それぞれ、1つ以上の当量の適切な塩基若しくは酸と反応させることによって、凍結乾燥によって、又は好適なイオン交換樹脂上で既存の塩のイオンを別のイオンと交換することによって、調製され得る。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0056】
様々な態様及び実施形態によれば、セマグルチド又はその塩は、唯一の活性成分として本明細書に開示される非経口組成物中に存在する。典型的には、セマグルチド又はセマグルチド塩は、治療有効量で本発明の非経口組成物中に存在する。本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、非経口組成物の投与後に以下の応答:2型糖尿病を有する患者におけるグルコース依存性インスリン放出の刺激及び/又は食後グルカゴン分泌の抑制を提供する、セマグルチド又はセマグルチド塩の量を包含することを意図している。いくつかの実施形態では、セマグルチド又はセマグルチド塩は、指定範囲内の各値を含む、約5mg~約100mgの用量で本明細書に開示される非経口組成物中に存在する。本発明の範囲内の典型的な用量としては、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、又は約100mgが挙げられるが、これらに限定されない。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0057】
内部水相は、本発明の原理によれば、界面活性剤及び/又は張度調整剤を更に含み得る。水相中の好適な界面活性剤としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリソルベート、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー、ポリエチレングリコール、及びセルロースエステルが挙げられるが、これらに限定されない。各可能性は、別々の実施形態を表す。現在好ましい実施形態は、PVA及び/又はPEGの使用を含む。好適な張度調整剤としては、イオン性張度調整剤及び非イオン性張度調整剤、例えば、塩化ナトリウム、糖(例えば、スクロース)、又は糖アルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール)が挙げられるが、これらに限定されない。各可能性は、別々の実施形態を表す。一実施形態では、内部水相は、セマグルチド又はその薬学的に許容される塩及び水から本質的になる。別の実施形態では、内部水相は、ポリエチレングリコール、ゼラチン、グリセリン、マンニトール、スクロース、トレハロース、ラクトース、グルコース、プロピレングリコール、ソルビトール、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、及びヒト血清タンパク質を欠いている。
【0058】
ある特定の実施形態では、剤形は、PLGAベースの注射用デポー系、非PLGAベースの注射用デポー系、及び注射用生分解性ゲル又は分散体などの生分解性注射用デポー系を含むが、これらに限定されない。各可能性は、別々の実施形態を表す。本明細書で使用される場合の「生分解性」という用語は、少なくとも部分的に、周辺組織液中で見出される物質との接触に起因して、又は細胞作用によって、経時的にその表面で浸食されるか、又は分解する成分を指す。いくつかの実施形態では、生分解性ポリマーは、指定範囲内の各値を含む、約1,000~約200,000ダルトンの平均分子量を有する。
【0059】
本発明の範囲内の好適な生分解性又は非生分解性デポー系としては、以下のポリマーのうちの少なくとも1つ:ポリ無水物、ポリ(セバシン酸)SA(poly(sebacic acid))、ポリ(リシノール酸)RA(poly(ricinoleic acid))、ポリ(フマル酸)、FA(poly(fumaric acid))、ポリ(脂肪酸二量体)、FAD(poly(fatty acid dimmer))、ポリ(テレフタル酸)、TA(poly(terephthalic acid))、ポリ(イソフタル酸)、IPA(poly(isophthalic acid))、ポリ(p-{カルボキシフェノキシ}メタン)、CPM(poly(p-{carboxyphenoxy}methane))、ポリ(p{カルボキシフェノキシ}プロパン)、CPP(poly(p-{carboxyphenoxy}propane))、ポリ(p-{カルボキシフェノキシ}ヘキサン)CPH(poly(p-{carboxyphenoxy}hexane))、ポリアミン、ポリウレタン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル{CHDM:シス/トランスシクロヘキシルジメタノール、HD:1,6-ヘキサンジオール、DETOU:(3,9-ジエチリデン-2,4,8,10-テトラオキサスピロウンデカン)}、ポリジオキサノン、ポリヒドロキシブチレート、ポリアルキレンオキサレート、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカーボネート、ポリオルトカーボネート、ポリシロキサン、ポリホスファゼン、コハク酸塩、ヒアルロン酸、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリヒドロキシバレレート、ポリアルキレンスクシネート、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン、合成セルロースエステル、ポリアクリル酸、ポリ酪酸、トリブロックコポリマー(PLGA-PEG-PLGA)、トリブロックコポリマー(PEG-PLGA-PEG)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(poly(N-isopropylacrylamide)、PNIPAAm)、ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(プロピレンオキシド)-ポリ(エチレンオキシド)トリブロックコポリマー(PEO-PPO-PEO)、ポリ吉草酸、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシアルキルセルロース、キチン、キトサン、ポリオルトエステル及びコポリマー、ターポリマー、コレステロール、レシチンなどの脂質、ポリ(グルタミン酸-コ-グルタミン酸エチル)及び同等物、又はそれらの混合物を含む系が挙げられるが、これらに限定されない。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0060】
本発明の範囲内の追加のデポー系としては、以下のポリマーのうちの少なくとも1つ:ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、ポリ(D,L-ラクチド)(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリヒドロキシブチレート、ポリオルトエステル、ポリアルカン無水物、ゼラチン、コラーゲン、酸化セルロース、ポリホスファゼン、及びそれらの任意の組み合わせを含む系が挙げられるが、これらに限定されない。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0061】
特に、生分解性ポリマーとしては、ポリラクチド、例えば、ポリ(D,L-ラクチド)、すなわち、PLAなどの乳酸ベースのポリマー、ポリグリコリド(PGA)、例えば、DurectからのLactel(登録商標)などのグリコール酸ベースのポリマー、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)、すなわち、PLGA、(BoehringerからのResomer(登録商標)RG-504、Resomer RG-502、Resomer(登録商標)RG-504H、Resomer(登録商標)RG-502H、Resomer(登録商標)RG-504S、Resomer(登録商標)RG-502S、DurectからのLactel(登録商標))、及びポリ(ε-カプロラクトン)、すなわち、PCL(DurectからのLactel(登録商標))などのポリカプロラクトンが挙げられるが、これらに限定されない。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0062】
現在好ましい生分解性ポリマーは、乳酸ベースのポリマー、より好ましくはポリラクチド、又はポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)、すなわち、PLGAである。別の現在好ましい生分解性ポリマーは、ポリカプロラクトン(PCL)である。更に別の現在好ましい生分解性ポリマーは、ポリ乳酸(PLA)である。更に現在好ましい生分解性ポリマーは、PLA-PCLである。追加の現在好ましい生分解性ポリマーは、PLA-PCLとのPLGAの混合物である。一実施形態では、PLGA対PLA-PCLの重量%比は、指定範囲内の比の全ての反復を含む、9:1~1:9の範囲内である。別の実施形態では、PLGA対PLA-PCLの重量%比は、指定範囲内の比の全ての反復を含む、9:1~7:3の範囲内である。更に別の実施形態では、PLGA対PLA-PCLの重量%比は、8:2である。典型的には、生分解性ポリマーは、指定範囲内の各値を含む、固体組成物(例えば、微粒子)の約10%~約98%w/wの量で存在する。しかしながら、生分解性ポリマーの量は、使用の持続時間及び同等物などのパラメータによって決定されることが理解される。
【0063】
いくつかの実施形態では、乳酸ベースのポリマーPLGAは、指定範囲内の比の全ての反復を含む、100:0~約0:100、好ましくは100:0~約10:90の範囲内の乳酸対グリコール酸のモノマー比を有する。一実施形態では、乳酸ベースのポリマーは、80:20の乳酸対グリコール酸のモノマー比を有する。別の実施形態では、乳酸ベースのポリマーは、75:25の乳酸対グリコール酸のモノマー比を有する。更に別の実施形態では、乳酸ベースのポリマーは、50:50の乳酸対グリコール酸のモノマー比を有する。様々な実施形態では、PLGAは、20kDa未満、例えば、指定範囲内の各値を含む、約2~約18kDaの分子量を有する。本明細書に開示されるデポー製剤で使用されるPLGAの典型的な分子量としては、約2kDa、約3kDa、約4kDa、約5kDa、約6kDa、約7kDa、約8kDa、約9kDa、約10kDa、約11kDa、約12kDa、約13kDa、約14kDa、約15kDa、約16kDa、約17kDa、約18kDa、約19kDa、及び最大20kDaが挙げられるが、これらに限定されない。各可能性は、別々の実施形態を表す。有利なことに、低分子量PLGAの使用は、注射部位からの生分解性ポリマーの迅速な排出を可能にし、それによって、局所副作用を最小限にする。
【0064】
ある特定の態様及び実施形態によれば、ポリマー相は、脂肪酸又はその誘導体であり得る界面活性剤を更に含む。油相に組み込むことができる好適な界面活性剤としては、レシチン、水素化レシチン、ステアリン酸、又はそれらの混合物若しくは組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。各可能性は、別々の実施形態を表す。本発明の範囲内には、天然又は合成レシチン界面活性剤がある。いくつかの実施形態では、油相は、リン脂質界面活性剤を含む。リン脂質は、レシチン中に見出されるリン含有脂質である。例示的なリン脂質としては、卵黄リン脂質、大豆リン脂質、水素化リン脂質、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、PEG化リン脂質、精製油、精製脂肪酸及び脂肪酸塩、カチオン性脂質、グリセロホスホコリン、並びにそれらの混合物又は組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。各可能性は、別々の実施形態を表す。天然リン脂質は、例えば、大豆、ヒマワリ、及び菜種(キャノーラ)に由来し得る。各可能性は、別々の実施形態を表す。油相中の現在好ましい界面活性剤は、90重量%超、例えば、指定範囲内の各値を含む、約91~約99重量%のホスファチジルコリン含有量を含む、水素化レシチンである。いずれの理論又は作用機序にも束縛されるものではないが、油相中の脂肪酸又はその誘導体を含む界面活性剤の存在は、均一な粒径分布、増強した薬物負荷容量の増強、並びに改善した安定性及び薬物動態特性を含む、改善した特性を微粒子に付与する。
【0065】
本発明の原理によれば、セマグルチド又はその薬学的に許容される塩の生分解性担体に対する比は、典型的には、指定範囲内の比の全ての反復を含む、約1:2~約1:30(w/w)の範囲内である。例示的な比としては、約1:2~約1:25、約1:2~約1:20、約1:2~約1:15、約1:2~約1:10、約1:2~約1:5、約1:5~約1:30、約1:5~約1:25、約1:5~約1:20、約1:5~約1:15、約1:5~約1:10、約1:10~約1:30、約1:10~約1:25、約1:10~約1:20、約1:10~約1:15、約1:15~約1:30、約1:15~約1:25、約1:15~約1:20、約1:20~約1:30、又は約1:25~約1:30(w/w)が挙げられるが、これらに限定されない。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0066】
本発明の微粒子は、微粒子中の高い量/負荷のセマグルチドを提供する。したがって、本発明の原理によれば、セマグルチド薬物負荷容量は、指定範囲内の各値を含む、約5%~約15%の範囲内である。本明細書で使用される場合の「薬物負荷容量」という用語は、乾燥微粒子内にカプセル化された薬物(すなわち、セマグルチド又はその薬学的に許容される塩)の重量パーセントを指す。典型的には、薬物負荷容量は、指定範囲内の各値を含む、約5%~約12%、約5%~約10%、又は約7%~約9%の範囲である。本発明の微粒子中の高い量/負荷のセマグルチドは、投与される最小注射量で製剤の高い効力をもたらすことが企図される。
【0067】
特定の理論に束縛されるものではないが、デポー製剤からのセマグルチドの放出は、2つの異なる機構のうちのいずれか1つによって起こり得ると考えられる。第1の機構は、生物学的活性剤の溶解によって、又は持続放出組成物の調製中にポリマー溶媒の除去によって生成される空隙によってなど、ポリマーマトリックス中に生成される水性充填チャネルを通した拡散による放出を含む。追加のチャネルが、細孔形成剤、例えば、酸化亜鉛を使用して形成され得る。第2の機構は、ポリマーの分解に起因する生物学的活性剤の放出を含む。分解速度は、その水和速度に影響を及ぼすポリマー特性を調整することによって制御することができる。これらの特性としては、例えば、ポリマーを含むラクチド対グリコリドの比、ラセミ混合物の代わりにモノマーのL-異性体の使用、及びポリマーの分子量が挙げられる。これらの特性は、ポリマーの水和速度を制御する、親水性及び結晶化度に影響を及ぼし得る。ポリマーの特性を変化させることによって、放出プロファイルを制御することができる。例えば、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)ポリマーのグリコリド含有量を増加させ、ポリマーの分子量を減少させることにより、ポリマーの加水分解を増強し、したがって、ポリマー浸食からの生物学的活性剤の放出の増加を提供することができる。
【0068】
様々な態様及び実施形態によれば、組成物からのセマグルチドの放出は、連続的に起こる。放出プロファイルは、0次放出プロファイル、一次放出プロファイル、二次放出プロファイル、三次放出プロファイル、又は既知の任意の擬似次数であり得る。各可能性は、別々の実施形態を表す。特定の態様及び実施形態によれば、組成物は、投与後に投与された用量の20%未満の24時間セマグルチド放出を提供する、低バースト放出を提供する。製剤からのセマグルチドの放出もまた、インビトロで決定することができる。いくつかの実施形態では、セマグルチドの20%未満が、pH7.4のリン酸緩衝液中で1日以内にデポー製剤から放出される。他の実施形態では、セマグルチドの80%未満が、pH7.4のリン酸緩衝液中で14日以内にデポー製剤から放出される。更なる実施形態では、セマグルチドの80%超が、pH7.4のリン酸緩衝液中で28日以内にデポー製剤から放出される。
【0069】
本発明の組成物は、単回投与後約4週間~約6ヶ月間、少なくとも約1nmol/mLのセマグルチドの平均ヒト定常状態血漿濃度(Css,avg)を達成する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、単回投与後約4週間~約6ヶ月間、約1nmol/mL~約5nmol/mLのセマグルチドの平均ヒト定常状態血漿濃度(Css,avg)を達成する。他の実施形態では、本発明の組成物は、単回投与後約4週間~約6ヶ月間、約1nmol/mL~約10nmol/mLのセマグルチドの平均ヒト定常状態血漿濃度(Css,avg)を達成する。
【0070】
更なる態様及び実施形態によれば、エマルション液滴は、外部水相を含む。現在好ましい実施形態では、外部水相は、内部水相について上記に詳述されるように、界面活性剤及び張度調整剤のうちの少なくとも1つを更に含む。
【0071】
本発明の原理によれば、水中油中水型(w/o/w)二重エマルション液滴は、後に乾燥させられて、乾燥微粒子を提供する。乾燥微粒子を、そのまま投与することができる。いくつかの態様及び実施形態によれば、乾燥微粒子は、不活性油、好適には、ゴマ油、落花生油、オリーブ油などの植物油、又は他の許容される担体中に懸濁される。各可能性は、別々の実施形態を表す。好ましくは、乾燥微粒子は、水性担体、例えば、指定範囲内の各値を含む、約3.0~約7.0、より好ましくは約4.0~約6.0、最も好ましくは約4.0~約5.0のpHにおける等張緩衝液中に懸濁される。これらの組成物は、従来の滅菌技術によって滅菌され得るか、又は滅菌濾過され得る。
【0072】
本明細書に開示される組成物は、pH緩衝剤などの生理学的条件に近づけるために必要とされる薬学的に許容される補助物質を更に含有し得る。好適な緩衝液としては、酢酸ナトリウム/酢酸緩衝液が挙げられるが、これらに限定されない。所望の等張性は、塩化ナトリウム、又はデキストロース、ホウ酸、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコール、ポリオール(例えば、マンニトール及びソルビトール)、若しくは他の無機あるいは有機溶質などの他の薬学的に受容可能な薬剤を使用して達成され得る。各可能性は、別々の実施形態を表す。塩化ナトリウムは、ナトリウムイオンを含有する緩衝液に特に好ましい。
【0073】
いくつかの実施形態によれば、担体又は賦形剤を使用して、本発明の投与量の投与を容易にすることもできる。担体及び賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ラクトースなどの様々な糖、又は様々なタイプのデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、ポリエチレングリコール、及び生理学的に適合する溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0074】
様々な実施形態によれば、剤形の溶液は、限定されないがメチルセルロースなどの増粘剤で増粘され得る。それらは、油中水型又は水中油型のいずれかの乳化形態で調製され得る。各可能性は、別々の実施形態を表す。例えば、アカシア粉末、非イオン性界面活性剤(Tweenなど)、又はイオン性界面活性剤(アルカリポリエーテルアルコールサルフェート若しくはスルホネート、例えば、Triton)を含む、多種多様な薬学的に許容される乳化剤のうちのいずれかが採用され得る。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0075】
追加の実施形態によれば、薬学的に許容される担体は、液体である。更なる実施形態によれば、液体は、水性溶媒又は非水性溶媒、エマルション、及び懸濁液からなる群から選択される。各可能性は、別々の実施形態を表す。他の実施形態によれば、液体は、生理食塩水、デキストロース溶液、及びグリセロール溶液からなる群から選択される水性溶媒である。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0076】
本発明の組成物は、共界面活性剤/可溶化剤、溶媒/共溶媒、水不混和性溶媒、水、水混和性溶媒、油性成分、親水性溶媒、乳化剤、防腐剤、抗酸化剤、消泡剤、安定剤、緩衝剤又はpH調整剤、浸透圧剤、細孔形成剤、浸透圧調整剤、及び同等物から選択されるがこれらに限定されない、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を更に含み得る。各可能性は、別々の実施形態を表す。好適な共界面活性剤又は可溶化剤としては、ポリエチレングリコール、「ポロキサマー」として知られているポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、モノラウリン酸デカグリセリル及びモノミリスチン酸デカグリセリルなどのポリグリセリン脂肪酸エステル、モノステアリン酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステル、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween)などのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、モノステアリン酸ポリオキシエチレンなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などのポリオキシエチレンヒマシ油及び硬化ヒマシ油、並びに同等物、又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。各可能性は、別々の実施形態を表す。好適な溶媒/共溶媒としては、アルコール、トリアセチン、ジメチルイソソルビド、グリコフロール、炭酸プロピレン、水、ジメチルアセトアミド、及び同等物、又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。各可能性は、別々の実施形態を表す。好適な消泡剤には、シリコンエマルション又はセスキオレイン酸ソルビタンが挙げられるが、これらに限定されない。各可能性は、別々の実施形態を表す。本発明の組成物中の成分の劣化を防止又は低減するための好適な安定剤としては、グリシン、α-トコフェロール若しくはアスコルベート、BHA、BHT、及び同等物、又はそれらの混合物などの抗酸化剤が挙げられるが、これらに限定されない。各可能性は、別々の実施形態を表す。好適な張度調整剤としては、マンニトール、塩化ナトリウム、及びグルコースが挙げられるが、これらに限定されない。各可能性は、別々の実施形態を表す。好適な緩衝剤としては、好適なカチオンを有する酢酸塩、リン酸塩、及びクエン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0077】
本発明の持続放出デポー系は、当技術分野で公知である任意の様式によって調製することができる。現在好ましいものは、セマグルチド又はその薬学的に許容される塩をコロイド送達系、例えば、生分解性微粒子に組み込むことであり、したがって、粒子のポリマー壁を通した拡散によって、かつ体内の水媒体又は生体液中のポリマー分解によって、放出遅延を可能にする。いくつかの実施形態では、生分解性微粒子は、いずれのコーティング層も欠いている。
【0078】
いくつかの実施形態によれば、本発明の持続放出微粒子は、「二重乳化」として知られているプロセスによって、注射用乾燥微粒子の形態で調製される。簡潔に述べると、任意選択的に界面活性剤(例えば、ポリビニルアルコール-PVA、ポリソルベート、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー、セルロースエステル、並びに同等物)及び/又は張度調整剤(例えば、スクラロース)を含む、セマグルチド又はその薬学的に許容される塩の濃縮水溶液又は懸濁液が調製される。水溶液のpHは、典型的には、指定範囲内の各値を含む、約7~約9、又は約7.5~約9.5の範囲に調整される。pHの調整は、任意の酸又は塩基、例えば、水酸化ナトリウムを使用して実施することができる。次いで、水性溶液又は懸濁液は、任意選択的に界面活性剤(例えば、脂肪酸又は水素化レシチンなどのその誘導体)を含む、水不混和性揮発性有機溶媒(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、水飽和DCM、及び同等物)中の生分解性又は非生分解性ポリマーの溶液中に分散される。次いで、このようにして取得された「油中水型」(w/o)エマルションは、典型的には界面活性剤(例えば、ポリビニルアルコール-PVA、ポリソルベート、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー、セルロースエステル、及び同等物)を含有し、任意選択的に張度調整剤(例えば、塩化ナトリウム)を更に含有する、連続外部水相中に分散されて、「水中油中水型(w/o/w)二重エマルション」液滴を形成する。有機溶媒の蒸発後、微粒子は、凝固し、濾過又は遠心分離によって収集される。「油相」及び「水不混和性相」という用語は、本明細書で互換的に使用され得る。収集された微粒子(microparticle、MP)は、界面活性剤及び遊離ペプチドの大部分を排除するために洗浄され(例えば、精製水、リン酸緩衝液などの緩衝液、外部水溶液、若しくはそれらの混合物で、又は二価カチオン、例えば、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、及び同等物、若しくはそれらの混合物を含む水溶液で)、再び遠心分離される。洗浄されたMPは、収集され、添加剤を伴わずに、又は抗凍結剤(マンニトール)の添加を伴って乾燥(例えば、凍結乾燥)させられて、それらの後続の再構成を容易にする。
【0079】
更なる実施形態によれば、「水中油中水型(w/o/w)二重エマルション」液滴の粒径は、印加される力の量、混合の速度、界面活性剤のタイプ及び濃度などを含むがこれらに限定されない、様々なパラメータによって制御することができる。凝固後、微粒子は、典型的には、指定範囲内の各値を含む、約1~約100μmの範囲の粒径を特徴とする。例えば、微粒子は、典型的には、約3~約50μm、約3~約40μm、又は約3~約30μmの範囲のサイズを有し、各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0080】
ある特定の態様及び実施形態によれば、微粒子は、指定範囲内の各値を含む、約5~約20μmの範囲内の粒径中央値を有する。本明細書で使用される場合の「中央値」又は「d50」という用語は、累積分布率が50%に達する粒径値を指す。言い換えれば、粒径中央値(median particle diameter又はmedian particle size)は、粒子集団の半分がこの値より小さい粒径を有し、粒子集団の半分がこの値より大きい粒径を有する、値を表す。典型的な微粒子径中央値としては、指定範囲内の各値を含む、約7~約17μmのd50を有する粒子、又は約10~約15μmのd50を有する粒子が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の微粒子の例示的な粒径中央値としては、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、約10μm、約11μm、約12μm、約13μm、約14μm、約15μm、約16μm、約17μm、約18μm、約19μm、及び約20μmが挙げられるが、これらに限定されない。各可能性は、別々の実施形態を表す。本明細書に開示される微粒子の小さい粒径は、同微粒子を含む懸濁液の物理的安定性の改善、並びに針の目詰まりを回避しながらより小さいゲージの針を使用することによって優れた注射可能性をもたらすことが企図される。
【0081】
使用方法
本発明は、網膜症、神経障害、腎症及び創傷治癒の遅延などの糖尿病の合併症を含む、糖尿病、特に、2型糖尿病、及び関連疾患、例えば、インスリン抵抗性(グルコース恒常性障害)、高血糖症、高インスリン血症、脂肪酸又はグリセロールの血中レベルの上昇、肥満、高トリグリセリド血症を含む高脂質血症、シンドロームX、アテローム性動脈硬化症、高血圧症、並びに心血管疾患及び事象、例えば、冠動脈心疾患、脳血管疾患、末梢動脈疾患、リウマチ性心疾患、先天性心疾患、深部静脈血栓症及び肺塞栓、非致死性心筋梗塞又は非致死性卒中、並びに高密度リポタンパク質レベルの進行又は発症を治療するか、又は遅延させる方法を提供する。本方法は、乾燥微粒子を含む、長時間作用型非経口医薬組成物であって、長時間作用型非経口医薬組成物が、4週間毎に1回~6ヶ月毎に1回の頻度でそれを必要とする対象における医学的に許容される場所に投与するために好適な長時間作用型デポー組成物であり、乾燥微粒子が、治療有効量のセマグルチド又はその薬学的に許容される塩を含む内部水相を含む、水中油中水型(w/o/w)二重エマルション液滴を乾燥させることによって形成される、乾燥微粒子と、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される生分解性担体を含む、水不混和性ポリマー相と、外部水相と、を含む、長時間作用型非経口医薬組成物を、それを必要とする対象における医学的に許容される場所に投与することを含む。
【0082】
2型糖尿病に関連して本明細書で使用される場合の「治療すること」という用語は、2型糖尿病に関連する短期及び長期症状並びに合併症、例えば、高血糖症、及び前述の合併症のうちのいずれか1つの抑制又は緩和を指す。様々な実施形態では、本明細書に開示される組成物は、空腹時血糖値を少なくとも約5%、好ましくは少なくとも約10%、より好ましくは少なくとも約15%、最も好ましくは少なくとも約20%低減する。他の実施形態では、本明細書に開示される組成物は、摂食時血糖値を少なくとも約5%、好ましくは少なくとも約10%、より好ましくは少なくとも約15%、最も好ましくは少なくとも約20%低減する。更なる実施形態では、本明細書に開示される組成物は、当該対象におけるヘモグロビンA1c(HbA1c)レベルを少なくとも約0.5%、好ましくは少なくとも約1%、より好ましくは少なくとも約1.5%、最も好ましくは少なくとも約2%低減する。空腹時血糖値、摂食時血糖値、及びヘモグロビンA1c(HbA1c)レベルの前述の低減は、単回投与後少なくとも約4週間~約6ヶ月間又はその間の任意の期間にわたって企図される。
【0083】
本発明の範囲内には、指定範囲内の各値を含む、約70~約400mg/dLの本発明の組成物の単回非経口投与後の空腹時血糖値がある。例えば、単回非経口投与後の空腹時血糖値としては、約70mg/dL、約75mg/dL、約80mg/dL、約85mg/dL、約90mg/dL、約95mg/dL、約100mg/dL、約110mg/dL、約120mg/dL、約130mg/dL、約140mg/dL、約150mg/dL、約160mg/dL、約170mg/dL、約180mg/dL、約190mg/dL、約200mg/dL、約210mg/dL、約220mg/dL、約230mg/dL、約240mg/dL、約250mg/dL、約260mg/dL、約270mg/dL、約280mg/dL、約290mg/dL、約300mg/dL、約310mg/dL、約320mg/dL、約330mg/dL、約340mg/dL、約350mg/dL、約360mg/dL、約370mg/dL、約380mg/dL、約390mg/dL、及び約400mg/dLが挙げられるが、これらに限定されない。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0084】
本発明の範囲内には、指定範囲内の各値を含む、約120~約650mg/dLの本発明の組成物の単回非経口投与後の摂食時血糖値がある。例えば、単回非経口投与後の摂食時血糖値としては、約120mg/dL、約130mg/dL、約140mg/dL、約150mg/dL、約160mg/dL、約170mg/dL、約180mg/dL、約190mg/dL、約200mg/dL、約210mg/dL、約220mg/dL、約230mg/dL、約240mg/dL、約250mg/dL、約260mg/dL、約270mg/dL、約280mg/dL、約290mg/dL、約300mg/dL、約310mg/dL、約320mg/dL、約330mg/dL、約340mg/dL、約350mg/dL、約360mg/dL、約370mg/dL、約380mg/dL、約390mg/dL、約400mg/dL、約410mg/dL、約420mg/dL、約430mg/dL、約440mg/dL、約450mg/dL、約460mg/dL、約470mg/dL、約480mg/dL、約490mg/dL、約500mg/dL、約510mg/dL、約520mg/dL、約530mg/dL、約540mg/dL、約550mg/dL、約560mg/dL、約570mg/dL、約580mg/dL、約590mg/dL、約600mg/dL、約610mg/dL、約620mg/dL、約630mg/dL、約640mg/dL、及び約650mg/dLが挙げられるが、これらに限定されない。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0085】
本発明の範囲内には、指定範囲内の各値を含む、約4%~約10.5%の本発明の組成物の単回非経口投与後のヘモグロビンA1c(HbA1c)レベルがある。例えば、単回非経口投与後のヘモグロビンA1c(HbA1c)レベルとしては、約4.0%、約4.1%、約4.2%、約4.3%、約4.4%、約4.5%、約4.6%、約4.7%、約4.8%、約4.9%、約5.0%、約5.1%、約5.2%、約5.3%、約5.4%、約5.5%、約5.6%、約5.7%、約5.8%、約5.9%、約6.0%、約6.1%、約6.2%、約6.3%、約6.4%、約6.5%、約6.6%、約6.7%、約6.8%、約6.9%、約7.0%、約7.1%、約7.2%、約7.3%、約7.4%、約7.5%、約7.6%、約7.7%、約7.8%、約7.9%、約8.0%、約8.1%、約8.2%、約8.3%、約8.4%、約8.5%、約8.6%、約8.7%、約8.8%、約8.9%、約9.0%、約9.1%、約9.2%、約9.3%、約9.4%、約9.5%、約9.6%、約9.7%、約9.8%、約9.9%、約10.0%、約10.1%、約10.2%、約10.3%、約10.4%、及び約10.5%が挙げられるが、これらに限定されない。各可能性は、別々の実施形態を表す。
【0086】
加えて、本発明は、肥満を治療する方法を提供し、本方法は、乾燥微粒子を含む、長時間作用型非経口医薬組成物であって、長時間作用型非経口医薬組成物が、4週間毎に1回~6ヶ月毎に1回の頻度でそれを必要とする対象における医学的に許容される場所に投与するために好適な長時間作用型デポー組成物であり、乾燥微粒子が、治療有効量のセマグルチド又はその薬学的に許容される塩を含む内部水相を含む、水中油中水型(w/o/w)二重エマルション液滴を乾燥させることによって形成される、乾燥微粒子と、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される生分解性担体を含む、水不混和性ポリマー相と、外部水相と、を含む、長時間作用型非経口医薬組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む。
【0087】
肥満に関連して本明細書で使用される場合の「治療すること」という用語は、体重増加を予防すること、体重減少を促進すること、過剰体重を低減すること、又は病的肥満を含む肥満、並びに肥満関連炎症、肥満関連胆嚢疾患、及び肥満誘発性睡眠時無呼吸を含むがこれらに限定されない、関連疾患及び健康状態を治療すること(例えば、食欲、摂食、食料摂取量、カロリー摂取量、及び/又はエネルギー消費の制御によって)を指す。
【0088】
加えて、本方法は、パーキンソン病を治療する方法を提供し、本方法は、乾燥微粒子を含む、長時間作用型非経口医薬組成物であって、長時間作用型非経口医薬組成物が、4週間毎に1回~6ヶ月毎に1回の頻度でそれを必要とする対象における医学的に許容される場所に投与するために好適な長時間作用型デポー組成物であり、乾燥微粒子が、治療有効量のセマグルチド又はその薬学的に許容される塩を含む内部水相を含む、水中油中水型(w/o/w)二重エマルション液滴を乾燥させることによって形成される、乾燥微粒子と、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される生分解性担体を含む、水不混和性ポリマー相と、外部水相と、を含む、長時間作用型非経口医薬組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む。
【0089】
本明細書で使用される場合、パーキンソン病に関する「治療すること」という用語は、例えば、運動機能の障害に関連するものを含む、パーキンソン病の少なくとも1つの有害作用又は症状の進行又は重症度を逆転させること、緩和すること、改善すること、阻害すること、減速すること及び/又は停止することを指す。
【0090】
投与されるセマグルチドの量は、選択された投与経路、年齢、体重、並びに患者の疾患及び症状の重症度を含む、様々なパラメータに従って、医師によって決定されることが理解される。治療有効性を提供するセマグルチドの必要な血漿濃度は、例えば、当技術分野で公知であるように、インビトロ及びインビボモデルから決定することができる。いくつかの具体的な例示的実施形態によれば、セマグルチドの定常状態平均血漿濃度は、指定範囲内の各値を含む、約0.001μg/ml~約100μg/mlである。他の実施形態によれば、セマグルチドの定常状態平均血漿濃度は、指定範囲内の各値を含む、約0.01μg/ml~約100μg/mlである。更なる実施形態によれば、セマグルチドの定常状態平均血漿濃度は、指定範囲内の各値を含む、約0.05μg/ml~約50μg/mlである。追加の実施形態によれば、セマグルチドの定常状態平均血漿濃度は、指定範囲内の各値を含む、約0.05μg/ml~約10μg/mlである。他の実施形態によれば、セマグルチドの定常状態平均血漿濃度は、指定範囲内の各値を含む、約0.1μg/ml~約1μg/mlである。一実施形態では、最小バースト放出後、セマグルチドの平均血漿濃度は、単回投与後少なくとも約4週間は実質的に一定である。
【0091】
更なる実施形態によれば、セマグルチドの平均血漿濃度は、指定範囲内の各値を含む、約1ng/ml~約100μg/mlである。他の実施形態によれば、セマグルチドの平均血漿濃度は、指定範囲内の各値を含む、約1ng/ml~約5,000ng/mlである。更に他の実施形態によれば、セマグルチドの平均血漿濃度は、指定範囲内の各値を含む、約1ng/ml~約1,000ng/mlである。追加の実施形態によれば、セマグルチドの平均血漿濃度は、指定範囲内の各値を含む、約1ng/ml~約500ng/mlである。特定の実施形態によれば、セマグルチドの平均血漿濃度は、指定範囲内の各値を含む、約1ng/m~約300ng/mlである。いくつかの実施形態によれば、セマグルチドの平均血漿濃度は、指定範囲内の各値を含む、約10ng/ml~約250ng/mlである。
【0092】
更なる実施形態によれば、本発明の組成物は、副作用の発生率の低減及び/又は副作用の重症度の低減とともに、セマグルチドの毎週の注射用剤形と同等であるか、又はそれより優れた治療有効性を提供する。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0093】
いくつかの実施形態によれば、本発明の非経口医薬デポー組成物を、それを必要とする対象にインビボで投与することができる。いくつかの実施形態では、デポー組成物が投与される「対象」は、哺乳動物、好ましくはヒトであるが、これに限定されない。
【0094】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、「約」という用語は、±10%を指す。
【0095】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確に別段に指示しない限り、複数の参照を包む。したがって、例えば、「生分解性担体(a biodegradable carrier)」への言及は、複数のそのような担体を含む。「及び」という用語若しくは「又は」という用語は、文脈が明確に別段に指示しない限り、「及び/又は」を含む意味で、一般的に採用されることに留意されたい。
【0096】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態をより完全に例示するために提示される。しかしながら、それらは決して本発明の広い範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に開示された原理の多くの変形例及び修正を容易に考案することができる。
【実施例】
【0097】
実施例1:PLGAベースの注射用セマグルチド微粒子の調製
以下の例示的な手順に従って、水/油/水(w1/o/w2)二重エマルション溶媒蒸発法を使用して、セマグルチドミクロスフェアを調製した。
【0098】
内部水相:水(350μl)と混合し、続いて、NaOHでpHを7.8に調整することによって、50mgのセマグルチドを水和した。
【0099】
有機相:しっかり閉鎖したボトル内で50mlのジクロロメタン(dichloromethane、DCM)及び5mlの水を混合することによって、塩化メチレンを室温において水で飽和させた。室温で30分後の相分離に続いて、水飽和DCMの底層を有機相の調製に使用した。PLGA(Resomer(登録商標)RG 502Hポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)50:50酸末端、MW7~17,000、又はResomer(登録商標)RG 502ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)50:50エステル末端MW7~17,000)を、水飽和DCMに溶解させた。
【0100】
外部水相:塩化ナトリウム及びPVAを50mLの水に溶解させて、0.25%PVA及び1.75%NaClの総濃度をもたらした。
【0101】
次いで、超音波圧子(20kHz、20~30秒、約50ワット、氷水浴)又はPolytron分散凝集体(12mm、20,000~30,000rpm、1分)を使用して、内部水相をPLGA含有有機相内に混合して、w/o内部エマルションを形成した。次いで、異なる温度で高せん断回転子・固定子ミキサー(Polytron分散凝集体(12mm、11,000rpm、40秒)又はCaframo A231ストレートミキサー(1,500rpm、2分))を使用して、内部w/oエマルションを外部水相と混合して、最終的なw/o/w二重エマルションを形成した。次いで、取得された二重エマルションを連続的に撹拌しながら開放容器内で保持し、DCMの蒸発及びペプチド含有微粒子(MP)の凝固を可能にした。凝固が完了すると、懸濁液を遠心分離し(3,000~5,000rpm)、沈殿物をリン酸緩衝液(pH7.4)で洗浄し、再び遠心分離し、水で洗浄し、少量の純水を使用して収集し、ペトリ皿上で乾燥させ、光から保護して、乾燥MPを取得した。MPを収集し、冷蔵庫内のしっかり閉鎖したバイアルの中に貯蔵した。
【0102】
異なるセマグルチドデポー製剤及びそれらの調製方法が、以下の表1A~1Iに詳述される。代表的な微粒子の顕微鏡画像が、
図1A~1Lに示される。
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
実施例2:インビトロ放出プロファイル
実施例1に従って調製されたデポー製剤のインビトロ放出プロファイルを測定した。放出媒体中のセマグルチドの不安定性に起因して、高いMP:放出媒体比で各時点に別々のチューブを使用して、微粒子からのセマグルチド放出を実施した。
【0113】
セマグルチドを装填した15mgのMPを、0.2%BSA及び0.05%アジ化ナトリウムを含有する3mlの0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)に入れた。シェーカー速度を、約100ストローク/分に設定した。放出実験を、3mlの緩衝液当たり15mgのMPの比で実行した。放出の3週間後、緩衝液を、200μg/mlのブタ膵臓リパーゼを付加的に含有する同じ培地と交換した。
【0114】
所定の時点でMPに残留したセマグルチドの量を評価することによって、放出速度を決定した。セマグルチドを微粒子から抽出し、遠心分離によって残留物から分離した。透明な上清を、分光光度計セル内に移し、一次導関数較正曲線に基づいて、2点(293~350nm)法のためのUV較正曲線を使用して、セマグルチド含有量について分析した。代替的に、試料をHPLCによって試験した。
【0115】
24時間放出後の上清におけるセマグルチドバーストの決定を、以下のように決定した:放出バイアルを、3,600rpmで12分間、遠心分離機に入れた。1.5mlの上清を、10,000rpmで8分間、2mlのエッペンドルフチューブ内に移した。1mlの上清を分光光度計セルに入れ、スペクトル較正曲線の一次導関数に基づいて、2点(293~350nm)法のためのUV較正曲線を使用して、セマグルチド含有量について分析した。
【0116】
いくつかの製剤の放出プロファイルが、
図2~3に示される。
図4Aは、MPS-46デポー製剤からのセマグルチドの放出プロファイルを示し、
図4Bは、放出中のMP中のセマグルチド含有量(%)を示す。結果が、表2に要約される。
【0117】
【0118】
実施例3:MPからのセマグルチドの放出に対する二価イオン及びブタ膵臓リパーゼの効果
セマグルチドを装填した微粒子を、二価イオン(Mg2+又はZn2+)で洗浄し、微粒子からのセマグルチドの放出を、実施例2に詳述されるように決定した。結果が、表3に要約される。
【0119】
【0120】
結果は、二価カチオンの溶液による洗浄が初期バーストを減少させることを示す。
【0121】
微粒子からのセマグルチドの放出に対するブタ膵臓リパーゼ(PPL)の効果を試験した。結果が、表4に要約される。MPのPPLとの相互作用は、異なる製剤が以下のようにPPLに対して異なる感受性を有することを実証した:Resomer(登録商標)502及び502Hの組み合わせが、PPL加水分解に対して低感受性であることが見出された(MPs-27及び41)一方で、Resomer(登録商標)502H単独から構成されたMPは、より速く分解した(MPs-34)。また、PPLの存在下での分解は、純粋なResomer(登録商標)502H MPについては酵素の濃度に依存しなかったが、ポリマーの混合物中の酵素濃度に敏感であり得る。
【0122】
【0123】
実施例4:糖尿病の動物モデルにおけるセマグルチド製剤の比較
この研究の目的は、遺伝的に糖尿病の雄db/dbマウスにおけるセマグルチドの様々な製剤の薬物動態及び薬力学的効果を試験することであった。
【0124】
【0125】
製剤調製:
・ SEMA-031120、25.3mg/kg:25.3mgのセマグルチドデポー製剤を1.0mlの注射用蒸留水に溶解させ、即時に使用した。
・ 原液A:10.0mgのセマグルチドAPIを25.0mlの注射用蒸留水に溶解させ、溶液(原液Aと称される)を1週間使用し、2~8℃で冷蔵庫内に貯蔵した。
・ S-API:0.06mg/kg用量:1.5mlの原液Aを10mlの容量フラスコに移し、0.06mg/mlの濃度まで水で希釈した。新鮮な溶液を毎週調製し、2~8℃で冷蔵庫内に貯蔵した。
・ S-API:0.4mg/kg用量:原液Aをそのまま使用した。上記に詳述されるように、溶液を毎週調製し、2~8℃で冷蔵庫内に貯蔵した。
【0126】
研究プロトコル:
・ Jackson Laboratoryからの雄db/dbマウス(10~12週齢)に、研究期間の全体を通してげっ歯類飼料を与えた。
・ 1日目に、グルコメーターを使用して、自由摂食時血糖値を記録し、動物計量天秤を使用して、体重を測定した。血液試料を、HbA1cレベルの測定のために収集した。
・ 血糖、体重、及びHbA1cレベルに基づいて、動物を上記に詳述される異なる治療群にグループ分けした。
・ 群2~4からの動物は、皮下経路(SC)によって28日間(用量体積:1ml/kg)、それぞれの治療で毎日治療された。
・ 群5からの動物は、筋内注射によって1日目にのみ(用量体積:1ml/kg)、セマグルチドデポー製剤で治療された。
・ 自由摂食時血糖値を、研究期間の全体を通して3日毎に、すなわち、1日目、3日目、6日目、9日目、12日目、15日目、18日目、21日目、24日目、及び27日目に記録した。試料を治療後3時間に収集した。
・ 14日目及び28日目に、血糖値を、一晩絶食した動物において監視した(約14~16時間)。
・ セマグルチドデポー製剤(群5):生物分析による試験化合物レベルの測定のための血漿試料を、1日目、7日目、14日目、21日目、28日目、35日目、42日目、49日目、及び56日目に収集した。
・ セマグルチド-API:生物分析によるセマグルチド-APIレベルの測定のための試料を、1日目、7日目、14日目、21日目、及び28日目に、治療後0時間(治療前)及び3時間に収集した。
・ 0日目及び28日目に、血液試料をHbA1cレベルの測定のために収集した。
・ 体重及び飼料摂取量を、治療期間の全体を通して毎日記録した。
・ 各時点で、約100μlの血液を、各動物の眼窩後方叢から、Li-ヘパリン(10IU/1mlの血液)を含む標識したチューブ内に採取した。チューブを、4~5回の手動反転によって混合した。血液試料を常に冷たい氷上で保持し、血漿を試料収集から30分以内に遠心分離によって分離した。血液試料を2~8℃において5,000rpmで5分間遠心分離することによって、血漿を分離した。血漿試料を生物分析まで-80℃で貯蔵した。
【0127】
結果:
db/dbマウスにおける自由摂食時血糖値に対する試験製剤の効果:
db/dbマウスは、正常マウスと比較して著しく高い血糖値を有していた。0.06及び0.4mg/kg/日用量におけるセマグルチドAPIは、ビヒクル対照と比較して、自由摂食時血糖値の著しい低減を誘発した。IMで1日目のみに1回の25mg/kgにおけるセマグルチドデポー(用量2mg/kg、APIベース)は、ビヒクル対照と比較して、自由摂食時血糖値の著しい低減を誘発した。
【0128】
【0129】
【0130】
db/dbマウスにおける空腹時血糖値に対する試験製剤の効果:
db/dbマウスは、正常マウスと比較して著しく高い空腹時血糖値を有していた。0.06及び0.4mg/kg/日用量におけるセマグルチドAPIは、ビヒクル対照と比較して、14日目及び28日目に空腹時血糖値の著しい低減を誘発した。IMで1日目のみに1回の25mg/kgにおけるセマグルチドデポー(用量2mg/kg、APIベース)は、ビヒクル対照と比較して、14日目及び28日目に空腹時血糖値の著しい低減を誘発した。結果が、
図6に示され、表6に要約される。
【0131】
【0132】
db/dbマウスにおけるHbA1cに対する試験製剤の効果:
db/dbマウスは、正常マウスと比較して著しく高いHbA1cレベルを有していた。0.06及び0.4mg/kg/日用量におけるセマグルチドAPIは、ビヒクル対照と比較して、28日目にHbA1cレベルの著しい低減を誘発した。IMで1日目のみに1回の25mg/kgにおけるセマグルチドデポー(用量2mg/kg、APIベース)は、ビヒクル対照と比較して、28日目にHbA1cレベルの著しい低減を誘発した。結果が、
図7に示され、表7に要約される。
【0133】
【0134】
db/dbマウスにおける体重に対する試験製剤の効果:
db/dbマウスは、正常マウスと比較して著しく高い体重を有していた。0.06及び0.4mg/kg/日用量におけるセマグルチドAPIは、ビヒクル対照と比較して、体重の著しい低減を誘発した。IMで1日目のみに1回の25mg/kgにおけるセマグルチドデポー(用量2mg/kg、APIベース)は、ビヒクル対照と比較して、体重の著しい低減を誘発した。結果が、
図8に示され、表8に要約される。
【0135】
【0136】
db/dbマウスにおける飼料摂取量に対する試験製剤の効果:
db/dbマウスは、正常マウスと比較して著しく高い飼料摂取量を有していた。0.06及び0.4mg/kg/日用量におけるセマグルチドAPIは、ビヒクル対照と比較して、1日試料摂取量の著しい低減を誘発した。IMで1日目のみに1回の25mg/kgにおけるセマグルチドデポー(用量2mg/kg、APIベース)は、ビヒクル対照と比較して、毎日の試料摂取量の著しい低減を誘発した。結果が、
図9A~9Dに示され、表9に要約される。
【0137】
【0138】
db/dbマウスにおけるセマグルチド製剤の血漿濃度:
1日目(0時間)の血漿濃度は、定量化限界未満、すなわち、<10.2であった。毎日投与された0.06mg/kg/日のSC用量におけるセマグルチドAPIは、注射後3時間に血漿レベルの増加を示した。毎日投与された0.06mg/kg/日のSC用量におけるセマグルチドAPIは、治療後24時間に約100~500ng/mlの血漿レベルを示した。毎日投与された0.4mg/kg/日のSC用量におけるセマグルチドAPIは、注射後3時間に血漿レベルの増加を示した。毎日投与された0.4mg/kg/日のSC用量におけるセマグルチドAPIは、治療後24時間に約500~4,500ng/mlの血漿レベルを示した。この血漿レベルの増加は、0.06~0.4mg/kgの1日用量で用量に比例した。
【0139】
IMで1日目のみに1回の25mg/kgにおけるセマグルチドデポー(用量2mg/kg、APIベース)は、1日目~35日目に血漿レベルの減少を示した。結果が、
図10A~10Dに示され、表10A~10Cに要約される。
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
したがって、本発明のデポー組成物は、単回投与後少なくとも35日間、セマグルチドの治療血漿濃度を維持する。
【0144】
実施例5:ミニブタにおけるセマグルチド製剤の薬物動態研究
この研究の目的は、雄ゲッティンゲンミニブタにおけるセマグルチドの様々な製剤の薬物動態効果を試験することであった。
【0145】
【0146】
研究プロトコル:
採血及び試料貯蔵
投与後0、6、12、24、48、72、84、144、156、216、228、288、300、360、480、600、720時間(30日目)、40日目、50日目、及び60日目(合計20時点/ミニブタ)に、群1(IM)のミニブタから、並びに投与後0、6、12、24、48、72時間(投与前)、84、144時間(投与前)、156、216時間(投与前)、228、288時間(投与前)、300、360時間(投与前)、480時間(投与前)、600時間(投与前)、及び720時間(30日目)(合計17時点/ミニブタ)に、群2(SC)のミニブタから、頸静脈を通して血液試料を収集した。各時点で、約2.0mlの血液を採取し、予め標識したK2EDTAでコーティングしたバキュテナー内に移し、抗凝固剤の血液との混合を容易にするためにチューブを反転させることによって穏やかに混合した。血液試料を、遠心分離までゲルパック上で保持した。収集された血液試料を4℃において4,000rpmで10分間遠心分離した。血漿を遠心分離後に分離した。全ての血漿試料を、予め標識した(動物ID番号、時点、研究番号、及び群)チューブ内に移し、分析まで-70±10℃で貯蔵した。血糖値を全ての採血時点について決定した。
【0147】
生物分析
血漿試料中のセマグルチドの定量化のために、目的に合った液体クロマトグラフィー質量分析(liquid chromatography mass spectrometry、LC-MS/MS)法を使用して、生体分析を実施した。直線性範囲は、1~204ng/mlであった。セマグルチドを、固相抽出技術を使用してミニブタ血漿試料から抽出し、陽イオン化モードでエレクトロスプレーイオン化(Electro Spray Ionization、ESI)及び多重反応モニタリング(multiple reaction monitoring、MRM)とともにLC-MS/MSを使用して定量化した。
【0148】
薬物動態分析
線形補間とともに線形台形法を使用する標準的な非コンパートメント分析(Phoenix(登録商標)ソフトウェア、バージョン8.3、Pharsight Corporation、Mountain View,California 94040/USA)を使用して、セマグルチドの血漿薬物動態パラメータを計算した。
【0149】
結果:
臨床徴候及び死亡率/罹患率は、治療群では観察されなかった。雄ゲッティンゲンミニブタにおけるセマグルチドの血漿薬物動態パラメータを、単回IM(10mg/動物)セマグルチドデポー投与及び反復SC(0.008mg/kg、28日目まで3日毎)セマグルチドAPI投与で治療された群について評価した。値は、平均±SD及びn=3ミニブタ/時点/群として表される。セマグルチドの平均±SD血漿濃度-時間プロファイルが、
図11に示され、表11に要約される。対応する薬物動態パラメータが、表12に要約される。
【0150】
【0151】
【表24】
*中央値(最小-最大)として表される
**%AUC
expの値>25%及びR
sq値<0.8
【0152】
群1(セマグルチドデポー:10mg/動物、単回IM注射)では、ピーク血漿濃度に達するまでの時間の中央値(Tmax)は、24時間であり、122±20.2時間の終末相半減期(T1/2)を有する303±129ng/mLのピーク血漿濃度(Cmax)が取得された。平均曝露、AUClast及びAUCinfは、それぞれ、54,400±19,200及び55,500±19,500ng*hr/mLであることが見出された。
【0153】
群2(セマグルチドAPI:0.008mg/kg、反復SC注射)では、平均ピーク血漿濃度に達するまでの時間(Tmax)は、24時間(12~48)であり、12.6±1.21ng/mLのピーク血漿濃度(Cmax)が取得された。平均曝露(AUClast)は、17,600±5,440ng*hr/mLであることが見出された。
【0154】
本研究は、本発明のある特定の実施形態によるデポーセマグルチド製剤の単回筋肉内投与が、投与後1ヶ月にわたって有効血漿濃度をもたらすことを示す。
【0155】
実施例6:糖尿病の動物モデルにおけるセマグルチド製剤の比較
この研究の目的は、糖尿病の動物モデル(db/dbマウス)におけるセマグルチドの様々な製剤の薬物動態及び薬力学的効果を試験することであった。
【0156】
治療群
動物:雄db/dbマウス、10~12週齢
1.ナイーブ対照、n=5
2.SCで毎日投与されるビヒクル(db/dbマウス)(用量-(ビヒクル)1ml/kg/日、42日間)、n=10
3.SCで毎日投与されるセマグルチドAPI(用量-0.02mg/kg/日、42日間)、n=10
4.IMで1回投与されるセマグルチドデポー(用量-2mg/kg、APIベース)、n=10
5.SCで1回投与されるセマグルチドデポー(用量-2mg/kg、APIベース)、n=10
【0157】
研究プロトコル
体重及び食料消費量を毎日監視した。自由摂食時血糖値を3日毎に測定した。空腹時血糖値を、14日目、28日目、及び42日目に測定した。糖化ヘモグロビン(HbA1c)レベルを、0日目、28日目、及び42日目に測定した。PK分析のために、試料を、1日目(治療後3時間)、7日目、14日目、21日目、28日目、及び35日目に収集し、分析まで-80℃で貯蔵した。
【0158】
結果:
自由摂食時血糖値に対するセマグルチド製剤の効果が、
図12に示される。db/dbマウスは、正常マウスと比較して著しく高い摂食時血糖値を有していた。0.02mg/kg/日用量におけるセマグルチドAPIは、ビヒクル対照と比較して、自由摂食時血糖値の著しい低減を誘発した。IMで1日目のみに1回のAPIベースのセマグルチドデポー用量2mg/kgは、ビヒクル対照と比較して、ある特定の時点で自由摂食時血糖値の著しい低減を誘発した。SCで1日目のみに1回のAPIベースのセマグルチドデポー用量2mg/kgは、ビヒクル対照と比較して、自由摂食時血糖値の著しい低減を誘発した。
【0159】
図13は、空腹時血糖値に対するセマグルチド製剤の効果を示す。db/dbマウスは、正常マウスと比較して著しく高い空腹時血糖値を有していた。0.02mg/kg/日用量におけるセマグルチドAPIは、ビヒクル対照と比較して、14日目、28日目、及び42日目に空腹時血糖値の著しい低減を誘発した。SCで1日目のみに1回のAPIベースのセマグルチドデポー用量2mg/kgは、ビヒクル対照と比較して、14日目及び28日目に空腹時血糖値の著しい低減を誘発した。
【0160】
図14は、HbA1cに対するセマグルチド製剤の効果を示す。db/dbマウスは、正常マウスと比較して著しく高いHbA1cを有していた。0.02mg/kg/日用量におけるセマグルチドAPIは、ビヒクル対照と比較して、28日目及び42日目にHbA1cレベルの著しい低減を誘発した。IMで1日目のみに1回のAPIベースのセマグルチドデポー用量2mg/kgは、ビヒクル対照と比較して、42日目にHbA1cレベルの著しい低減を誘発した。SCで1日目のみに1回のAPIベースのセマグルチドデポー用量2mg/kgは、ビヒクル対照と比較して、28日目及び42日目にHbA1cレベルの著しい低減を誘発した。
【0161】
図15及び16は、それぞれ、体重及び飼料摂取量に対するセマグルチド製剤の効果を示す。db/dbマウスは、正常マウスと比較して著しく高い体重を有していた。0.02mg/kg/日用量におけるセマグルチドAPIが、ビヒクル対照と比較して、体重の低減に向かった傾向を誘発した一方で、1日目のみにIM及びSCで投与された両方のデポー製剤は、ビヒクル対照と比較して、体重の著しい低減を誘発した(
図15)。全てのセマグルチド製剤は、ビヒクル対照と比較して、治療の第1週の間に1日の飼料摂取量の著しい低減を誘発した(
図16)。
【0162】
図17Aは、0.02mg/kg/日におけるセマグルチドAPIの毎日の投与後のセマグルチド血漿レベルを示し、
図17Bは、セマグルチドデポー製剤の単回SC投与後のセマグルチド血漿レベルを示す。即時放出製剤の毎日のSC投与が、注射後3時間に血漿レベルの増加を伴う変動を誘導した一方で、本発明のある特定の実施形態によるデポー製剤のSC投与は、1日目から35日目まで血漿レベルの減少を提供し、注射の28日後でさえも検出可能な血漿レベルを示した動物は少なかった。
【0163】
本発明を具体的に説明してきたが、当業者であれば、多くの変形例及び修正を行うことができることを理解するであろう。したがって、本発明は、特に説明された実施形態に限定されるものとして解釈されるものではなく、本発明の範囲及び概念は、以下の特許請求の範囲を参照することによって、より容易に理解されるであろう。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥微粒子を含む、長時間作用型非経口医薬組成物であって、前記長時間作用型非経口医薬組成物が、4週間毎に1回~6ヶ月毎に1回の頻度でそれを必要とする対象における医学的に許容される場所に投与するために好適な長時間作用型デポー組成物であり、前記乾燥微粒子が、治療有効量のセマグルチド又はその薬学的に許容される塩を含む内部水相を含む、水中油中水型(w/o/w)二重エマルション液滴を乾燥させることによって形成される、乾燥微粒子と、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される生分解性担体を含む、水不混和性ポリマー相と、外部水相と、を含み、前記乾燥微粒子が、約5~約20μmの範囲内の粒径中央値を特徴とし、セマグルチドが、前記組成物から連続的に放出され、前記組成物が、pH7.4のリン酸緩衝液中で24時間にわたって前記セマグルチド又はその薬学的に許容される塩の20%未満、及び28日にわたって前記セマグルチド又はその薬学的に許容される塩の80%超を放出する、長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項2】
前記乾燥微粒子が、約7~約17μmの範囲内の粒径中央値を特徴とする、請求項1に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項3】
前記乾燥微粒子が、約10~約15μmの範囲内の粒径中央値を特徴とする、請求項2に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項4】
pH7.4のリン酸緩衝液中で14日にわたって前記セマグルチド又はその薬学的に許容される塩の80%未満を放出するような物理的特性を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項5】
単回投与後約4週間~約6ヶ月間、少なくとも約1nmol/mLのセマグルチドの平均ヒト定常状態血漿濃度(C
ss,avg)を提供するような物理的特性を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項6】
単回投与後約4週間~約6ヶ月間、約1nmol/mL~約5nmol/mLのセマグルチドの平均ヒト定常状態血漿濃度(C
ss,avg)を提供するような物理的特性を有する、請求項5に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項7】
前記生分解性担体が、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、ポリ(D,L-ラクチド)(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーである、請求項1~6のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項8】
前記生分解性担体が、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)である、請求項7に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項9】
前記PLGAが、20kDa未満の分子量を有する、請求項8に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項10】
前記PLGAが、約2~約18kDaの範囲内の分子量を有する、請求項9に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項11】
セマグルチド又はその薬学的に許容される塩の前記生分解性担体に対する比が、約1:2~約1:30(w/w)の範囲内である、請求項1~10のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項12】
セマグルチド又はその薬学的に許容される塩の前記生分解性担体に対する比が、約1:5~約1:20(w/w)の範囲内である、請求項11に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項13】
セマグルチド又はその薬学的に許容される塩の前記生分解性担体に対する比が、約1:5~約1:15(w/w)の範囲内である、請求項12に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項14】
約5%~約15%の範囲内の薬物負荷容量を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項15】
前記水不混和性ポリマー相が、脂肪酸又はその誘導体を含む第1の界面活性剤を更に含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項16】
前記第1の界面活性剤が、レシチン、水素化レシチン、ステアリン酸、又はそれらの混合物若しくは組み合わせである、請求項15に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項17】
前記第1の界面活性剤が、90重量%超のホスファチジルコリン含有量を含む水素化レシチンを含む、請求項16に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項18】
セマグルチド又はその薬学的に許容される塩を唯一の活性成分として含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項19】
前記内部及び外部水相の各々が、独立して、第2の界面活性剤を更に含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項20】
前記第2の界面活性剤が、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリソルベート、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー、ポリエチレングリコール、及びセルロースエステルからなる群から選択される、請求項19に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項21】
前記内部及び外部水相の各々が、独立して、張度調整剤を更に含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項22】
前記張度調整剤が、塩化ナトリウムを含むイオン性張度調整剤、又は糖若しくは糖アルコールを含む非イオン性張度調整剤である、請求項21に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項23】
前記組成物が、約4週間~約3ヶ月の期間にわたって前記セマグルチド活性成分を放出する、請求項1~22のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項24】
前記組成物が、約4週間~約2ヶ月の期間にわたって前記セマグルチド活性成分を放出する、請求項23に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項25】
前記組成物が、約4週間~約6週間の期間にわたって前記セマグルチド活性成分を放出する、請求項24に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項26】
水中油中水型(w/o/w)二重乳化プロセスであって、
(i)水不混和性揮発性有機溶媒中の前記生分解性担体の溶液中にセマグルチド又はその薬学的に許容される塩の水性懸濁液又は溶液を分散させ、それによって、油中水型エマルションを取得するステップと、
(ii)連続外部水相中に前記油中水型エマルションを分散させて、水中油中水型(w/o/w)二重エマルション液滴を含む微粒子を形成するステップと、を含む、プロセスによって調製される、請求項1~25のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項27】
前記プロセスが、(iii)このように形成された前記微粒子を濾過又は遠心分離によって収集するステップを更に含む、請求項26に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項28】
前記プロセスが、(iv)収集された前記微粒子を洗浄するステップを更に含む、請求項27に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項29】
前記収集された微粒子を洗浄することが、二価カチオンを含む水溶液を用いて実施される、請求項28に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項30】
前記プロセスが、収集又は洗浄された前記微粒子を乾燥させるステップを更に含む、請求項27~29のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項31】
2型糖尿病の治療に使用するための、請求項1~30のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項32】
2型糖尿病を治療することが、単回投与後約4週間~約6ヶ月の期間にわたって対象における空腹時血糖値を少なくとも約5%低減することを含む、請求項31に記載の使用のための長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項33】
2型糖尿病を治療することが、単回投与後約4週間~約6ヶ月の期間にわたって対象における摂食時血糖値を少なくとも約5%低減することを含む、請求項31に記載の使用のための長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項34】
2型糖尿病を治療することが、単回投与後約4週間~約6ヶ月の期間にわたって対象におけるヘモグロビンA1c(HbA1c)レベルを少なくとも約0.5%低減することを含む、請求項31に記載の使用のための長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項35】
2型糖尿病を治療する方法であって、4週間毎に1回~6ヶ月毎に1回の頻度で、請求項1~30のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物を、治療を必要とする対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項36】
肥満の治療に使用するための、請求項1~30のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項37】
肥満を治療する方法であって、4週間毎に1回~6ヶ月毎に1回の頻度で、請求項1~30のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物を、治療を必要とする対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項38】
パーキンソン病の治療に使用するための、請求項1~30のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物。
【請求項39】
パーキンソン病を治療する方法であって、4週間毎に1回~6ヶ月毎に1回の頻度で、請求項1~30のいずれか一項に記載の長時間作用型非経口医薬組成物を、治療を必要とする対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項40】
単回投与後約4週間~約6ヶ月間、少なくとも約1nmol/mLのセマグルチドの平均ヒト定常状態血漿濃度(C
ss,avg)を達成する方法であって、乾燥微粒子を含む、長時間作用型非経口医薬組成物であって、前記乾燥微粒子が、治療有効量のセマグルチド又はその薬学的に許容される塩を含む内部水相を含む、水中油中水型(w/o/w)二重エマルション液滴を乾燥させることによって形成される、乾燥微粒子と、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される生分解性担体を含む、水不混和性ポリマー相と、外部水相と、を含む、長時間作用型非経口医薬組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項41】
前記セマグルチドの平均ヒト定常状態血漿濃度(C
ss,avg)が、単回投与後約4週間~約6ヶ月間、約1nmol/mL~約5nmol/mLである、請求項40に記載の方法。
【国際調査報告】