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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】キラル3-スルフィニル安息香酸類
(51)【国際特許分類】
   C07C 317/44 20060101AFI20240709BHJP
   C07D 271/113 20060101ALI20240709BHJP
   C07C 315/06 20060101ALI20240709BHJP
   C07B 57/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C07C317/44
C07D271/113 CSP
C07C315/06
C07B57/00 380
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500037
(86)(22)【出願日】2022-07-04
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 EP2022068443
(87)【国際公開番号】W WO2023280773
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】21184514.4
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】313006625
【氏名又は名称】バイエル・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】パゼノク,セルギイ
(72)【発明者】
【氏名】ハイルマン,アイケ・ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】シルマー,ハイコ
(72)【発明者】
【氏名】シファー,クラウス-ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ロヴィス,カイ
(72)【発明者】
【氏名】キク,ラウラ
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB84
4H006AC83
4H006AD33
4H006TA01
4H006TB61
(57)【要約】
本発明は、除草剤化合物製造のための前駆体としての、式(I-R)及び(I-S)で特定される絶対配置のキラル3-スルフィニル安息香酸に関するものである。式(I-R)及び(I-S)において、X、Z及びR′は、アルキル、シクロアルキル、ハロゲンアルキル及びハロゲンなどの基を表す。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I-R)及び(I-S)で与えられた個々の絶対配置のキラル3-スルフィニル安息香酸。
【化1】
[式中、置換基は下記のように定義され;
R′は(C-C)-アルキル、(C-C)-シクロアルキル、(C-C)-アルキル-O-(C-C)-アルキル又は(C-C)-シクロアルキル-(C-C)-アルキルであり、
Xはハロゲン、(C-C)-アルキル、ハロ-(C-C)-アルキル、(C-C)-シクロアルキル、OR、S(O)又は(C-C)-アルキル-ORであり、
Zは、ハロゲン、(C-C)-アルキル、ハロ-(C-C)-アルキル、(C-C)-シクロアルキル又はS(O)であり、
は、(C-C)-アルキル又は(C-C)-シクロアルキルであり、
は、(C-C)-アルキル又は(C-C)-シクロアルキルであり、
nは0、1又は2である。]
【請求項2】
XがF、Cl、Br、メチル、エチル、i-Pr、c-Pr、OMe、SMe、SEt、CHOMe又はCFであり、
R′が、メチル、エチル、c-Pr、CH-cPr、CHCHOMe、c-Pr、CH-cPr又はCHCHOMeであり、
Zが、F、Cl、Br、I、メチル、エチル、c-Pr、i-Pr、SMe、S(O)Me、S(O)Me、S(O)Et、CF、C又はCHFである、請求項1に記載の3-スルフィニル安息香酸。
【請求項3】
XがF、Cl、Br、メチル、エチル、c-Pr、OMe、SMe、SEt、CHOMe又はCFであり、
R′がMe、Et、c-Pr、CH-cPr又はCHCHOMeであり、
ZがCl、Br、メチル、エチル、c-Pr、i-Pr、S(O)Me、S(O)Et、CF、C又はCHFである、請求項1又は2に記載の3-スルフィニル安息香酸。
【請求項4】
XがCl又はメチルであり、
R′がメチル又はc-Prであり、
ZがCF又はCHFである、請求項1~3のいずれか1項に記載の3-スルフィニル安息香酸。
【請求項5】
少なくとも94%のエナンチオマー過剰(ee)を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の3-スルフィニル安息香酸。
【請求項6】
少なくとも99%のエナンチオマー過剰(ee)を有する、請求項5に記載の3-スルフィニル安息香酸。
【請求項7】
a)式(I-rac)のラセミ化合物を、一般式(II)のエナンチオマー的に純粋なアミンと反応させ、
b)前記二つの結晶化ジアステレオマー塩(III-dr)又は(III-ds)のうちの一方を濾過し、精製し、水及び酸を加えることで遊離させて、前記式(I-R)又は(I-S)の3-スルフィニル安息香酸を得て、
c)段階a)の母液から、水及び酸を加えることで他方のジアステレオマー塩を遊離させて、前記式(I-R)又は(I-S)の3-スルフィニル安息香酸を得て、
d)式(II)において,
がメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチルであり、
がヒドロキシメチル、フェニル、4-メチルフェニルである、請求項1~6のいずれか1項に記載の3-スルフィニル安息香酸の製造方法。
【化2】
【請求項8】
一般式(V)の2-アミノ-1,3,4-オキサジアゾールを本発明の一般式(I-S)の3-スルフィニル安息香酸と反応させることで式(I)で提供される絶対配置を有するN-(1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニルカルボキサミドを製造する方法であって、
【化3】
それを、
a)塩化チオニル、ホスゲン、ジホスゲン、塩化メシル、塩化トシル、POCl、PCl、塩化オキサリル及びC-C-アルキル-OC(O)Clからなる群からの活性化試薬(活性化剤)の存在下、及び
b)一般式(IV):
【化4】
の塩基の存在下
で行い、
及び
c)前記置換基が下記で定義の通りであり、すなわち
Rが水素、(C-C)-アルキル、(C-C)-シクロアルキル、メトキシメチル又はメトキシエチルであり、
R′が(C-C)-アルキル、(C-C)-シクロアルキル、(C-C)-アルキル-O-(C-C)-アルキル又は(C-C)-シクロアルキル-(C-C)-アルキルであり、
Xが、ハロゲン、(C-C)-アルキル、ハロ-(C-C)-アルキル、(C-C)-シクロアルキル、OR、S(O)又は(C-C)-アルキル-ORであり、
Zがハロゲン、(C-C)-アルキル、ハロ-(C-C)-アルキル、(C-C)-シクロアルキル又はS(O)であり、
が(C-C)-アルキル又は(C-C)-シクロアルキルであり、
が(C-C)-アルキル又は(C-C)-シクロアルキルであり、
がC-C12-アルキル又はフェニルであり、
nが0、1又は2である方法。
【請求項9】
一般式(V)の2-アミノ-1,3,4-オキサジアゾールを本発明の一般式(I-R)の3-スルフィニル安息香酸と反応させることで、式(I**)で提供される絶対配置を有するN-(1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニルカルボキサミドを製造する方法であって、
【化5】
それを、
a)塩化チオニル、ホスゲン、ジホスゲン、塩化メシル、塩化トシル、POCl、PCl、塩化オキサリル及びC-C-アルキル-OC(O)Clからなる群からの活性化試薬(活性化剤)の存在下、及び
b)一般式(IV):
【化6】
の塩基の存在下
で行い、
及び
c)前記置換基が下記で定義の通りであり、すなわち
Rが水素、(C-C)-アルキル、(C-C)-シクロアルキル、メトキシメチル又はメトキシエチルであり、
R′が(C-C)-アルキル、(C-C)-シクロアルキル、(C-C)-アルキル-O-(C-C)-アルキル又は(C-C)-シクロアルキル-(C-C)-アルキルであり、
Xがハロゲン、(C-C)-アルキル、ハロ-(C-C)-アルキル、(C-C)-シクロアルキル、OR、S(O)又は(C-C)-アルキル-ORであり、
Zがハロゲン、(C-C)-アルキル、ハロ-(C-C)-アルキル、(C-C)-シクロアルキル又はS(O)であり、
が(C-C)-アルキル又は(C-C)-シクロアルキルであり、
が(C-C)-アルキル又は(C-C)-シクロアルキルであり、
がC-C12-アルキル又はフェニルであり、
nが0、1又は2である方法。
【請求項10】
Rが水素又はメチルであり、
XがF、Cl、Br、メチル、エチル、i-Pr、c-Pr、OMe、SMe、SEt、CHOMe又はCFであり、
R′がメチル、エチル、c-Pr、CH-cPr、CHCHOMe、c-Pr、CH-cPr又はCHCHOMeであり、
ZがF、Cl、Br、I、メチル、エチル、c-Pr、i-Pr、SMe、S(O)Me、S(O)Me、S(O)Et、CF、C又はCHFである、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
Rが水素又はメチルであり,
XがF、Cl、Br、メチル、エチル、c-Pr、OMe、SMe、SEt、CHOMe又はCFであり、
R′がMe、Et、c-Pr、CH-cPr又はCHCHOMeであり、
ZがCl、Br、メチル、エチル、c-Pr、i-Pr、S(O)Me、S(O)Et、CF、C又はCHFである、請求項8~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
Rが水素又はメチルであり、
XがCl又はメチルであり、
R′がメチル又はc-Prであり、
ZがCF又はCHFである、請求項8~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記式(V)及び(I-S)又は(V)及び(I-R)の化合物を0.8~1.5のモル比で使用する、請求項8~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記活性化剤が、塩化チオニル、ホスゲン、ジホスゲン、塩化メシル、塩化トシル、POCl、PCl、塩化オキサリル及びC-C-アルキル-OC(O)Clからなる群から選択され、この活性化剤及び前記式(I-S)又は(I-R)の化合物を、1~2のモル比で使用する、請求項8~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記活性化剤が塩化チオニル、ホスゲン及びジホスゲンからなる群から選択される、請求項8~14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キラル3-スルフィニル安息香酸類、その使用、及びキラルN-(1,2,5-オキサジアゾール-3-イル)-、N-(1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)-、N-(テトラゾール-5-イル)-及びN-(トリアゾール-5-イル)フェニルカルボキサミドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
WO2021/078174A1には、除草活性なキラルN-(1,2,5-オキサジアゾール-3-イル)-、N-(1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)-、N-(テトラゾール-5-イル)-及びN-(トリアゾール-5-イル)フェニルカルボキサミドが開示されている。EP21162218にも同様に、除草活性なキラルN-(1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニルカルボキサミドが開示されている。それらに記載されている除草活性キラル化合物は、フェニル環の3位にキラルスルフィニル基を有する。これらの化合物は、複雑な方法で、N-(1,2,5-オキサジアゾール-3-イル)-、N-(1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)-、N-(テトラゾール-5-イル)-及びN-(トリアゾール-5-イル)フェニルカルボキサミドのエナンチオマー分離によって製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2021/078174A1
【特許文献2】EP21162218
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、先行技術から知られている欠点を克服することであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、式(I-R)及び(I-S)で与えられた個々の絶対配置のキラル3-スルフィニル安息香酸を提供する。
【化1】
式中、置換基は下記のように定義され;
R′は(C-C)-アルキル、(C-C)-シクロアルキル、(C-C)-アルキル-O-(C-C)-アルキル又は(C-C)-シクロアルキル-(C-C)-アルキルであり、
Xはハロゲン、(C-C)-アルキル、ハロ-(C-C)-アルキル、(C-C)-シクロアルキル、OR、S(O)又は(C-C)-アルキル-ORであり、
Zは、ハロゲン、(C-C)-アルキル、ハロ-(C-C)-アルキル、(C-C)-シクロアルキル又はS(O)であり、
は、(C-C)-アルキル又は(C-C)-シクロアルキルであり、
は、(C-C)-アルキル又は(C-C)-シクロアルキルであり、
nは0、1又は2である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の化合物は、カーン・インゴールド・プレローグ規則によれば、R’がフェニル環よりも低い優先順位を有するという条件で、S配置にある一般式(I-S)の化合物である。これは、例えば、R′がメチル又はシクロプロピルである一般式(I)の化合物に当てはまる。さらなる本発明の化合物は、カーン・インゴールド・プレローグ規則によれば、R′がフェニル環よりも高い優先順位を有するという条件でR配置にある一般式(I)の化合物である。これは、例えば、R′がメトキシメチルである一般式(I)の化合物に当てはまる。
【0007】
式(IR)及び(IS)及びそれに続くすべての式において、2個を超える炭素原子を有するアルキル基は、直鎖であっても分枝であってもよい。アルキル基は、例えば、メチル、エチル、n-プロピル又はイソプロピル、n-、イソ-、t-又は2-ブチル、ペンチル、ヘキシル、例えばn-ヘキシル、イソヘキシル及び1,3-ジメチルブチルである。シクロアルキルは、3~6個の炭素原子を有する炭素環式飽和環系であり、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルである。ハロゲン置換アルキルは、これらの基における水素原子の一部又は全てがハロゲン原子で置換されていてもよい直鎖又は分枝のアルキル基、例えばC-C-ハロアルキル、例えばクロロメチル、ブロモメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロフルオロメチル、ジクロロフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、1-クロロエチル、1-ブロモエチル、1-フルオロエチル、2-フルオロエチル、2,2-ジフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、2-クロロ-2-フルオロエチル、2-クロロ-2-ジフルオロエチル、2,2-ジクロロ-2-フルオロエチル、2,2,2-トリクロロエチル、ペンタフルオロエチル及び1,1,1-トリフルオロプロパ-2-イルを意味する。
【0008】
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を表す。
【0009】
基がラジカルによって多置換されている場合、これは、この基が、言及された基から選択される1以上の同一又は異なる基によって置換されていることを意味すると理解されるべきである。
【0010】
好ましいものは、
XがF、Cl、Br、メチル、エチル、i-Pr、c-Pr、OMe、SMe、SEt、CHOMe又はCFであり、
R′が、メチル、エチル、c-Pr、CH-cPr、CHCHOMe、c-Pr、CH-cPr又はCHCHOMeであり、
Zが、F、Cl、Br、I、メチル、エチル、c-Pr、i-Pr、SMe、S(O)Me、S(O)Me、S(O)Et、CF、C又はCHFである、一般式(I-R)及び(I-S)の化合物である。
【0011】
特に好ましいものは、
XがF、Cl、Br、メチル、エチル、c-Pr、OMe、SMe、SEt、CHOMe又はCFであり、
R′がMe、Et、c-Pr、CH-cPr又はCHCHOMeであり、
ZがCl、Br、メチル、エチル、c-Pr、i-Pr、S(O)Me、S(O)Et、CF、C又はCHFである、一般式(I-R)及び(I-S)の化合物である。
【0012】
非常に特に好ましいものは、
XがCl又はメチルであり、
R′がメチル又はc-Prであり、
ZがCF又はCHFである、一般式(I-R)及び(I-S)の化合物である。
【0013】
以下に特定するすべての式において、置換基及び記号は、異なる定義がない限り、式(IR)及び(IS)に記載のものと同じ意味を有する。OMeはO-メチルを意味し;SMeはS-メチルを意味し;SEtはS-エチルを意味し;CHOMeはCHO-メチルを意味し;i-Prはイソプロピルを意味し;c-Prはシクロプロピルを意味する。
【0014】
本発明の一般式(IR)及び(IS)の化合物は、例えば、それぞれのラセミ化合物(I-rac)から以下に記載する方法によって製造することができる。これらのプロセスも同様に、本発明の主題の一部を形成する。
【0015】
ラセミ化合物(I-rac)及びその製造は、基本的に、例えばWO2021/078174A1及びWO2012/126932A1から知られている。ラセミ化合物(I-rac)を、一般式(II)のエナンチオマー的に純粋なアミンと反応させる。適切な条件下で、二つの可能なジアステレオマー塩(III-dR)及び(III-dS)のうち一方のみが結晶化し、さらなる後処理のために分離することができる。他方のジアステレオマー塩は母液から単離することができる。
【化2】
メタノール、メタノール/水(1:1~10:1)、エタノール/水(1:1~10:1)、イソプロパノール、好ましくはイソプロパノール/水(範囲1:1~10:1)、アセトン/水(1:1~20:1)、酢酸エチル、THF、THF/水(3:1~20:1)又はトルエンを用いて、各種の好適な溶媒又は溶媒混合物中で結晶化を行うことができる。得られた塩の結晶は、既知の方法を使用する濾過によって母液から分離し、使用された溶媒又は溶媒混合物で洗浄し、減圧下で乾燥する。さらなる反応段階で、次いで、一般式(III-dR)又は(III-dS)の単離されたジアステレオマー化合物を、0℃~20℃の温度で、任意にメタノール、エタノール、イソプロパノール、THF、アセトンなどの有機溶媒の存在下に水と混合し、HCl又はHSOなどの強酸と混合してpH1~2とする。一般式(IR)又は(IS)のエナンチオマー的に純粋な化合物が沈殿し、濾過により母液から分離し、洗浄し、真空乾燥する。
【0016】
式(I-rac)の化合物及び式(II)のアミンは、代表的には等モル量で使用される。この段階は通常、室温で実行される。
【0017】
好適なキラルアミンは、多数の式(II)の市販アミンであり、例えば、
がメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチルであり、
がヒドロキシメチル、フェニル、4-メチルフェニルであるものである。
【0018】
例えば、下記の式(II)のアミンが非常に好適なものである。
(S)-(-)-α,4-ジメチルベンジルアミン(CAS番号27298-98-2)。
(R)-(-)-3-メチル-2-フェニルブチルアミン(CAS番号67152-35-6)。
(S)-(+)-2-アミノ-3-メチル-1-ブタノール(CAS番号2026-48-4)。
【0019】
好ましいものは、(S)-(-)-α,4-ジメチルベンジルアミン(CAS番号27298-98-2)である。
【0020】
本発明の式(I-R)及び(I-S)の3-スルフィニル安息香酸は、概して、少なくとも94%、多くの場合でさらに少なくとも99%のエナンチオマー過剰(ee)で上記プロセスで得られる。
【0021】
少なくとも94%のエナンチオマー過剰である式(I-R)及び(I-S)の3-スルフィニル安息香酸が好ましい。少なくとも99%のエナンチオマー過剰である式(I-R)及び(I-S)の3-スルフィニル安息香酸が特に好ましい。
【0022】
本発明の一般式(I-S)の3-スルフィニル安息香酸が、EP21162218に記載されている除草活性化合物の製造に特に良好に適したものである。
【0023】
従って本発明はさらに、一般式(III)の2-アミノ-1,3,4-オキサジアゾールを本発明の一般式(I-S)の3-スルフィニル安息香酸と反応させることで式(I)で提供される絶対配置を有するN-(1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニルカルボキサミドを製造する方法であって、
【化3】
それを、
a)塩化チオニル、ホスゲン、ジホスゲン、塩化メシル、塩化トシル、POCl、PCl、塩化オキサリル及びC-C-アルキル-OC(O)Clからなる群からの活性化試薬(活性化剤)の存在下、及び
b)一般式(IV):
【化4】
の塩基の存在下
で行い、
及び
c)前記置換基が下記で定義の通りであり、すなわち
Rが水素、(C-C)-アルキル、(C-C)-シクロアルキル、メトキシメチル又はメトキシエチルであり、
R′が(C-C)-アルキル、(C-C)-シクロアルキル、(C-C)-アルキル-O-(C-C)-アルキル又は(C-C)-シクロアルキル-(C-C)-アルキルであり、
Xが、ハロゲン、(C-C)-アルキル、ハロ-(C-C)-アルキル、(C-C)-シクロアルキル、OR、S(O)又は(C-C)-アルキル-ORであり、
Zがハロゲン、(C-C)-アルキル、ハロ-(C-C)-アルキル、(C-C)-シクロアルキル又はS(O)であり、
が(C-C)-アルキル又は(C-C)-シクロアルキルであり、
が(C-C)-アルキル又は(C-C)-シクロアルキルであり、
がC-C12-アルキル又はフェニルであり、
nが0、1又は2である方法を提供する。
【0024】
本発明の一般式(I-R)の3-スルフィニル安息香酸は、WO2021/078174A1に記載の除草活性化合物の製造に特に良好に適したものである。
【0025】
従って本発明は、さらに、一般式(V)の2-アミノ-1,3,4-オキサジアゾールを本発明の一般式(I-R)の3-スルフィニル安息香酸と反応させることで、式(I**)で提供される絶対配置を有するN-(1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニルカルボキサミドを製造する方法であって、
【化5】
それを、
a)塩化チオニル、ホスゲン、ジホスゲン、塩化メシル、塩化トシル、POCl、PCl、塩化オキサリル及びC-C-アルキル-OC(O)Clからなる群からの活性化試薬(活性化剤)の存在下、及び
b)一般式(IV):
【化6】
の塩基の存在下
で行い、
及び
c)前記置換基が下記で定義の通りであり、すなわち
Rが水素、(C-C)-アルキル、(C-C)-シクロアルキル、メトキシメチル又はメトキシエチルであり、
R′が(C-C)-アルキル、(C-C)-シクロアルキル、(C-C)-アルキル-O-(C-C)-アルキル又は(C-C)-シクロアルキル-(C-C)-アルキルであり、
Xがハロゲン、(C-C)-アルキル、ハロ-(C-C)-アルキル、(C-C)-シクロアルキル、OR、S(O)又は(C-C)-アルキル-ORであり、
Zがハロゲン、(C-C)-アルキル、ハロ-(C-C)-アルキル、(C-C)-シクロアルキル又はS(O)であり、
が(C-C)-アルキル又は(C-C)-シクロアルキルであり、
が(C-C)-アルキル又は(C-C)-シクロアルキルであり、
がC-C12-アルキル又はフェニルであり、
nが0、1又は2である方法を提供する。
【0026】
式(V)及び(I-S)の化合物から式(I)の化合物を、又は式(V)及び(I-R)の化合物から式(I**)の化合物を製造する上記の二つの方法において、基は好ましくは次の通りである。
Rは水素又はメチルであり、
XはF、Cl、Br、メチル、エチル、i-Pr、c-Pr、OMe、SMe、SEt、CHOMe又はCFであり、
R′はメチル、エチル、c-Pr、CH-cPr、CHCHOMe、c-Pr、CH-cPr又はCHCHOMeであり、
ZはF、Cl、Br、I、メチル、エチル、c-Pr、i-Pr、SMe、S(O)Me、S(O)Me、S(O)Et、CF、C又はCHFであり;
より好ましくは:
Rは水素又はメチルであり,
XはF、Cl、Br、メチル、エチル、c-Pr、OMe、SMe、SEt、CHOMe又はCFであり、
R′はMe、Et、c-Pr、CH-cPr又はCHCHOMeであり、
ZはCl、Br、メチル、エチル、c-Pr、i-Pr、S(O)Me、S(O)Et、CF、C又はCHFであり;
非常に特には、
Rは水素又はメチルであり、
XはCl又はメチルであり、
R′はメチル又はc-Prであり、
ZはCF又はCHFである。
【0027】
式(V)及び(I-S)の化合物から式(I)の化合物を、又は式(V)及び(I-R)の化合物から式(I**)の化合物を製造する上記の二つの方法において、式(V)及び(I-S)又は(V)及び(I-R)の化合物は代表的には、0.8~1.5のモル比で使用される。式(V)の化合物は好ましくは、式(I-S)又は(I-R)の化合物に対して10%過剰で使用される。
【0028】
活性化剤及び式(I-S)又は(I-R)の化合物は、代表的には0.5~3、好ましくは1~2、より好ましくは1.2~1.9のモル比で使用される。
【0029】
使用される活性化剤は、好ましくは塩化チオニル、ホスゲン又はジホスゲン、より好ましくは塩化チオニルである。
【0030】
式(IV)の塩基及び式(I-S)又は(I-R)の化合物は、代表的には0.5~10、好ましくは1~3、より好ましくは1~2.5のモル比で使用される。
【0031】
式(I)及び(I**)の化合物を製造する本発明の上記の二つの方法は、溶媒中で行われる。好適な溶媒は不活性有機溶媒であり、好ましくは脂肪族、脂環式又は芳香族炭化水素、例えば石油エーテル、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びデカリン;ハロゲン化炭化水素類、例えばクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン及びトリクロロエタン;エステル類、例えば酢酸エチル及び酢酸イソプロピル;エーテル類、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、メチルtert-アミルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン及びアニソール;ケトン類、例えばアセトン、ブタノン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン;ニトリル類、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル、n-又はイソブチロニトリル及びベンゾニトリル;アミド類、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルホルムアニリド、N-メチルピロリドン及びヘキサメチルホスホルアミド;ピリジン類、例えば2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2,3-ジメチルピリジン、2-メチル-5-エチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン、2,4-ジメチルピリジン、3,4-ジメチルピリジン及び2,4,6-トリメチルピリジンである。上記溶媒の混合物も好適である。
【0032】
使用される溶媒は、好ましくはテトラヒドロフラン、アセトニトリル、3-メチルピリジン又は2-メチル-5-エチルピリジンである。特に好ましいものは、3-メチルピリジンである。
【0033】
これらの方法は代表的には、-5℃~50℃、好ましくは0℃~25℃の温度範囲内で行われる。
【0034】
これらの方法は、代表的には、最初に入っている溶媒中の式(III)、(I-S)及び(IV)の化合物に、活性化剤を攪拌下で、ゆっくり滴下、又はホスゲンの場合には導入するような方式で行われる。反応の進行をHPLCによってモニタリングすることができる。その反応は通常、進行して10~20時間後に完了する。
【0035】
反応完了後、反応混合物を冷却し、通常は生成物が実質的に定量的に沈澱する。或いは、反応混合物を水又はイソプロパノールなどのアルコールのような極性溶媒で希釈することができる。式(I)又は(I**)の反応生成物が高純度で得られ、必要であればさらに精製することができる。20~35℃の温度で3~6時間かけて反応混合物に水を加えることが特に有利である。これにより、急速濾過可能な形で生成物が得られる。母液を水酸化ナトリウム溶液で処理した後、式(IV)の塩基を約95%程度まで回収することができる。
【実施例
【0036】
以下の実施例は本発明を説明するものである。
実施例1:2-クロロ-3-[(S)-メチルスルフィニル]-4-(トリフルオロメチル)安息香酸の製造
段階1:2-クロロ-3-[(S,R)-メチルスルフィニル]-4-(トリフルオロメチル)安息香酸の製造
攪拌された3リットルジャケット付きリアクターに、最初に氷酢酸1リットルを入れ、次に2-クロロ-3-メチルスルファニル-4-(トリフルオロメチル)安息香酸0.2kgを加える。濁った混合物を加熱して60℃とし、その温度で35%過酸化水素水溶液を130分以内で滴下し、内部温度70℃で21時間攪拌する。混合物を冷却して20℃とし、39%亜硫酸水素ナトリウム溶液100mLを滴下する。混合物をロータリーエバポレータで濃縮して残容量を約20%とする。残留物を水1リットルに取り、45%水酸化ナトリウム溶液(pH13~14)120mLでアルカリ性とする。次に、その水溶液をジクロロメタンで洗浄し、除去した水相を冷却して5℃とし、32%塩酸280mLで酸性とする。生成物が油状物として沈澱し、数分後に結晶化する。固体を吸引フィルターでの低温濾過によって濾過し、水で洗浄し、乾燥させる。ベージュ固体194gが得られる。
HPLC(HPO):logP=0.96;
質量分析:287.0(M+H)、328.1(M+H+CHCN)、573.0(2M+H)
1H NMR [DMSO-D6]: 14.2 (br s, 1H), 7.96-8.00 (m, 2H), 3.14 (s, 3H).
【0037】
段階2:2-クロロ-3-[(S,R)-メチルスルフィニル]-4-(トリフルオロメチル)安息香酸の製造
2-クロロ-3-[(S)-メチルスルフィニル]-4-(トリフルオロメチル)安息香酸[(1S)-1-(p-トリル)エチル]アンモニウム
不活性化及び攪拌されたジャケット付きリアクターで、ラセミ体2-クロロ-3-[(S,R)-メチルスルフィニル]-4-(トリフルオロメチル)安息香酸1.06kgをアセトン20リットルに溶かし、加熱して55℃とする。緩やかな還流下、(S)-(-)-α,4-ジメチルベンジルアミン519.4gを4時間以内で滴下し、得られた懸濁液を52℃で終夜攪拌する。混合物を徐々に冷却して6時間以内で20℃とする。懸濁液を吸引フィルターで濾過する。次に、フィルターケーキをアセトンで洗浄し、その後、減圧下に40℃で乾燥させる。これによって、無色結晶637gが残る。
HPLC(HPO):logP=0.50/1.00;
質量分析:119.0(アミン-M+H)、286.9(酸-M+H);キラルHPLC95.1%ee;
1H NMR [DMSO-D6]:8.23 (br s, 3H), 7.70-7.71 (m, 1H), 7.45-7.46 (m, 1H), 7.35-7.36 (m, 2H), 7.22-7.23 (m, 2H), 4.35 (q, 1H), 3.07 (s, 3H), 2.31 (s, 3H), 1.47 (d, 3H).
【0038】
段階3:2-クロロ-3-[(S)-メチルスルフィニル]-4-(トリフルオロメチル)安息香酸の製造
攪拌されたジャケット付きリアクターに最初に氷水4.9リットルに入れ、段階2からの塩636gをそこに懸濁させる。次に、濃塩酸溶液合計0.55リットルを滴下し、温度を0℃~5℃に維持する。懸濁液を徐々に昇温させて室温とし、攪拌を終夜続ける。次に、懸濁液を吸引フィルターで濾過する。フィルターケーキを蒸留水3リットルで洗浄し、次に減圧下に50℃で乾燥させる。これによって、無色結晶408.5gが残る。
HPLC(HPO):logP=1.00;
質量分析:286.9(M+H);キラルHPLC98.0%ee;
1H NMR [DMSO-D6]:14.2 (br s, 1H) 7.96-7.99 (m, 2H), 3.14 (s, 3H).
【0039】
実施例2:2-クロロ-N-(5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)-3-[((S)-メチルスルフィニル)]-4-(トリフルオロメチル)ベンズアミドの製造
2-クロロ-3-[(S)-メチルスルフィニル]-4-(トリフルオロメチル)安息香酸28.6g(0.1mol)、2-アミノ-5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール11g(0.11mol)及びN-メチルイミダゾール28.7g(0.35mol)をアセトニトリル200mLに溶かし、30分間攪拌する。冷却して5℃とした後、塩化チオニル18.9g(0.16mol)を、5℃~10℃に留まるように60分間かけて滴下する。その後、20℃でさらに15時間攪拌する。溶媒を減圧下に除去し、水を油状残留物に40℃で加える。生成物が沈澱し、濾過した後に、それを冷塩酸及び水で洗浄する。乾燥後、融点220℃の2-クロロ-N-(5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)-3-[((S)-メチルスルフィニル)]-4-(トリフルオロメチル)ベンズアミド33.7g(92%)を得る。
旋光度:(-)-69°(MeOH)。
【国際調査報告】