(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】LRRK2の野生型および変異体形態の分解剤ならびにその使用
(51)【国際特許分類】
C07D 401/14 20060101AFI20240709BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240709BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240709BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240709BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240709BHJP
A61P 31/06 20060101ALI20240709BHJP
A61P 31/08 20060101ALI20240709BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240709BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C07D401/14 CSP
A61P43/00 111
A61P25/16
A61P25/00
A61P1/04
A61P31/06
A61P31/08
A61P35/00
A61K31/506
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500185
(86)(22)【出願日】2022-07-07
(85)【翻訳文提出日】2024-03-05
(86)【国際出願番号】 US2022073517
(87)【国際公開番号】W WO2023283606
(87)【国際公開日】2023-01-12
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】507183952
【氏名又は名称】ダナ-ファーバー キャンサー インスティテュート,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100189131
【氏名又は名称】佐伯 拓郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182486
【氏名又は名称】中村 正展
(74)【代理人】
【識別番号】100147289
【氏名又は名称】佐伯 裕子
(72)【発明者】
【氏名】グレイ, ナサナエル エス.
(72)【発明者】
【氏名】ハッチャー, ジョン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC50
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA68
4C086ZB26
4C086ZB32
(57)【要約】
LRRK2の強力かつ選択的な分解剤である二官能性化合物ならびにその薬学的に許容される塩および立体異性体が開示される。また、それを含有する医薬組成物、ならびにLRRK2に関連する疾患および障害を治療するための化合物を作製および使用する方法も開示される。いくつかの実施形態では、前記疾患および障害は、神経変性障害、すなわちパーキンソン病(PD)、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病(CD)、らい病(ハンセン病)、結核、髄膜腫、乳がん、肺がん、甲状腺がんである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(Ia)または式(Ib)で表される構造を有する二官能性化合物:
【化1】
またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体であり、式中、-W-N-Y-は、-C=N-NH-または-N-N=CH-であり、Rは、MeO-、EtO-、i-PrO-、
【化2】
であり;ZはNまたはCHであり;qおよびrの各出現は独立して0または1であり前記標的化リガンドはロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)に結合し;前記デグロン(「デグロン」)はE3ユビキチンリガーゼに結合する部分を表し;前記リンカー(「リンカー」)は前記標的化リガンドと前記デグロンとの間の共有結合を提供する、二官能性化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項2】
前記デグロンがフォン・ヒッペル・リンダウ(VHL)腫瘍抑制因子に結合する、請求項1に記載の二官能性化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項3】
前記デグロンが、以下の構造:
【化3】
のいずれか1つによって表される、請求項2に記載の二官能性化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項4】
前記デグロンが、アポトーシスタンパク質(IAP)の阻害剤に結合する、請求項1に記載の二官能性化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項5】
前記デグロンが、以下の構造:
【化4】
のいずれか1つによって表される、請求項4に記載の二官能性化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項6】
前記デグロンがセレブロン(CRBN)に結合する、請求項1に記載の二官能性化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項7】
前記デグロンが、以下の構造:
【化5】
のいずれか1つによって表される、請求項6に記載の二官能性化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項8】
前記リンカーが、-O-、-S-、-N(R’)-、-C≡C-、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-OC(O)O-、-C(NOR’)-、-C(O)N(R’)-、-C(O)N(R’)C(O)-、-C(O)N(R’)C(O)N(R’)-、-N(R’)C(O)-、-N(R’)C(O)N(R’)-、-N(R’)C(O)O-、-OC(O)N(R’)-、-C(NR’)-、-N(R’)C(NR’)-、-C(NR’)N(R’)-、-N(R’)C(NR’)N(R’)-、-OB(Me)O-、-S(O)
2-、-OS(O)-、-S(O)O-、-S(O)-、-OS(O)
2-、-S(O)
2O-、-N(R’)S(O)
2-、-S(O)
2N(R’)-、-N(R’)S(O)-、-S(O)N(R’)-、-N(R’)S(O)
2N(R’)-、-N(R’)S(O)N(R’)-、C
3~C
12カルボシクレン、3~12員のヘテロシクレン、5~12員のヘテロアリーレンまたはそれらの任意の組合せの少なくとも1つによって中断されていてもよく、かつ/または(いずれかの末端または両方の末端で)そこで終結していてもよいアルキレン鎖を含み;R’が、HまたはC
1-C
6アルキルであり;中断基および一方または両方の末端基が、同じであっても異なっていてもよい、請求項1に記載の二官能性化合物または薬学的に許容できるその塩もしくは立体異性体。
【請求項9】
前記アルキレン鎖が、1~6個のアルキレン単位を含む、請求項8に記載の二官能性化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項10】
前記リンカーが、-S-、-N(R’)-、-C≡C-、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-OC(O)O-、-C(NOR’)-、-C(O)N(R’)-、-C(O)N(R’)C(O)-、-C(O)N(R’)C(O)N(R’)-、-N(R’)C(O)-、-N(R’)C(O)N(R’)-、-N(R’)C(O)O-、-OC(O)N(R’)-、-C(NR’)-、-N(R’)C(NR’)-、-C(NR’)N(R’)-、-N(R’)C(NR’)N(R’)-、-OB(Me)O-、-S(O)
2-、-OS(O)-、-S(O)O-、-S(O)-、-OS(O)
2-、-S(O)
2O-、-N(R’)S(O)
2-、-S(O)
2N(R’)-、-N(R’)S(O)-、-S(O)N(R’)-、-N(R’)S(O)
2N(R’)-、-N(R’)S(O)N(R’)-、C
3~12カルボシクレン、3~12員のヘテロシクレン、5~12員のヘテロアリーレンまたはそれらの任意の組合せの少なくとも1つで(いずれかの末端または両方の末端で)終結し得るポリエチレングリコール(PEG)鎖を含み;R’が、HまたはC
1~C
6アルキルであり;1つまたは両方の末端基が、同じであっても異なっていてもよい、請求項1に記載の二官能性化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項11】
前記ポリエチレングリコール鎖が、1~6個のPEG単位を含む、請求項10に記載の二官能性化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項12】
前記リンカーが、構造:
【化6】
によって表され、
ここで、oおよびpは独立して1、2、または3である、
請求項1に記載の二官能性化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項13】
前記リンカーが、-O-、-N(R’)-、-C≡C-、-C(O)-、4~8員のヘテロシクレン、C
3~C
8シクロアルキル、またはそれらの任意の組合せの少なくとも1つによって中断されていてもよく、かつ/または(いずれかもしくは両方の末端で)終結していてもよいC
1~C
3アルキレン鎖を含み;R’が、HまたはC
1~C
6アルキルであり;中断基および一方または両方の末端基が、同じであっても異なっていてもよい、請求項1に記載の二官能性化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは立体異性体。
【請求項14】
前記C
1~C
3アルキレン鎖が、-O-、-N(R’)-、-C≡C-、-C(O)-、またはそれらの任意の組合せの少なくとも1つで(いずれかまたは両方の末端で)終結し、R’がHまたはC
1~C
6アルキルである、請求項13に記載の二官能性化合物または薬学的に許容されるその塩もしくは立体異性体。
【請求項15】
前記リンカーが、構造:
【化7】
のいずれか1つによって表され、
ここで、nは、1、2、または3であり;Xは、-NH-、-O-または-C≡C-である、請求項14に記載の二官能性化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項16】
前記C
1~C
3アルキレン鎖が、-C(O)-、4~8員のヘテロシクレン、またはそれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つで(いずれかまたは両方の末端で)終結する、請求項13に記載の二官能性化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項17】
前記リンカーが、構造:
【化8】
によって表され、
ここで、n、o、およびpは、独立して、1、2、または3である、請求項16に記載の二官能性化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項18】
前記C
1~C
3アルキレン鎖が、-C≡C-、4~8員のヘテロシクレン、またはそれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つで(いずれかまたは両方の末端で)終結する、請求項13に記載の二官能性化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項19】
前記リンカーが、構造:
【化9】
によって表され、
ここで、n、o、およびpは、独立して、1、2、または3である、請求項18に記載の二官能性化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項20】
前記C
1~C
3アルキレン鎖が、少なくとも1つの4~8員のヘテロシクレンで(いずれかまたは両方の末端で)終結する、請求項13に記載の二官能性化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項21】
前記リンカーが、構造:
【化10】
のいずれか1つによって表され、
ここで、n、o、およびpの各出現は、独立して、1、2、または3であり、R
1は、-H、-OH、-NH
2、-SH、または-SeHである、請求項20に記載の二官能性化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項22】
前記C
1~C
3アルキレン鎖がC
3~C
8シクロアルキルによって中断されている、請求項13に記載の二官能性化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項23】
前記リンカーが、構造:
【化11】
によって表され、ここで、oおよびpは独立して1、2または3である、請求項22に記載の二官能性化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項24】
構造:
【化12】
【化13】
のいずれか1つによって表され、
ここで、n、o、およびpは、それぞれ独立して、1、2、または3であり;
Xは、-NH-、-O-またはアルキニルであり;
R
1は、-H、-OH、-NH
2、-SH、または-SeHである、請求項1に記載の二官能性化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項25】
構造:
【化14】
【化15】
のいずれか1つによって表され、
ここで、n、o、およびpは、それぞれ独立して、1、2、または3であり;
Xは、-NH-、-O-またはアルキニルであり;
R
1は、-H、-OH、-NH
2、-SH、または-SeHである、請求項1に記載の二官能性化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項26】
前記リンカーが、構造:
【化16】
のいずれか1つによって表される、請求項1に記載の二官能性化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項27】
【化17】
【化18】
【化19】
である、請求項1に記載の二官能性化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項28】
請求項1に記載の二官能性化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体の治療有効量と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項29】
固体の形態である、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
錠剤またはカプセル剤の形態である、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
液体の形態である、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項32】
LRRK2の異常な活性を特徴とする疾患または障害を治療する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の請求項1に記載の二官能性化合物または薬学的に許容されるその塩もしくは立体異性体を投与することを含む方法。
【請求項33】
前記疾患または障害が、神経変性疾患または障害である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記神経変性疾患または障害がパーキンソン病である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記疾患または障害が炎症性腸疾患(IBD)である、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記疾患または障害がクローン病(CD)である、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記疾患または障害が、らい病(ハンセン氏病)である、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
前記疾患または障害が結核である、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
前記疾患または障害が髄膜腫である、請求項32に記載の方法。
【請求項40】
前記疾患または障害ががんである、請求項32に記載の方法。
【請求項41】
前記がんが、乳がん、肺がんまたは甲状腺がんである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
細胞を、請求項1に記載の二官能性化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体の有効量と接触させることを含む、インビトロまたはインビボのいずれかで細胞中のLRRK2のレベルを低下させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)項に基づき、2021年7月8日に出願された米国仮特許出願第63/219,629号の優先権の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、XML形式で電子的に提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2022年6月30日に作成された前記XMLコピーは、52095-728001WO_ST26.xmlという名前であり、サイズは4.34KBバイトである。
【背景技術】
【0003】
パーキンソン病(PD)は、ドーパミン産生ニューロンの進行性喪失から生じる運動障害である。それは、世界で2番目に多い神経変性疾患であり、100万人を超える米国人が罹患している。毎年60,000人を超える患者が新たに診断されている(Gandhi et al., J.Neurosci.Res.87:1283-1295(2009);Dorsey et al.,Neurology 68:384-386(2007))。パーキンソン病に関連する症状には、運動障害、振戦、動作緩慢、不安定性、および他の運動関連障害が含まれる。また、認知機能不全、自律神経機能不全、および睡眠妨害などの非運動症状もある。これらの症状は、パーキンソン病に罹患している人々の生活の質を大きく低下させる。
【0004】
最近の遺伝学的研究は、全てのPD症例の少なくとも10%において、根底にある遺伝的原因を明らかにしており、これは、神経変性を改善し得る分子標的化治療剤の発見のための新たな機会を提供する(Daniels et al., Neurosignals 19:1-15(2011))。PDに関連する遺伝子に関する限り、ミスセンス突然変異G2019Sを有するロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)は、家族性および散発性PD症例の両方において頻繁に見出される。(Healy et al., Lancet Neurol.7:583-590(2008),Dachsel et al., Neurol.67:542-547(2010),Lee et al., Trends Pharmacol. Sci. 33(7):365-373(2012), Liu et al., Hum. Mol. Genet.20:3933-3942 (2011))。G2019S突然変異はキナーゼ活性を増加させ、これはニューロン死シグナル経路の活性化をもたらし得る(Greggio et al., ASN Neuro 1(1):e00002(2009),Kumar et al., Expert Rev. Mol. Med. 13:e20(2011))。12~16ヶ月齢のG2019S LRRK2トランスジェニックマウスは、黒質緻密部(substantia nigra pars compacta)(SNpc)ドーパミン作動性ニューロンの進行性変性および運動機能障害のパーキンソン病表現型を示し、この突然変異が疾患に機能的に関連し得ることを示唆した(Chen et al., Cell Death Differ.19(10):1623-33(2012))。
【0005】
LRRK2阻害剤の状態は、最近、再検討されており、野生型ならびにG2019SおよびA2016T突然変異に対する効力、脳透過性、ならびに薬物動態データの要約を提供しているが、報告された化合物は、前臨床試験を超えてまだ進んでいない。(Atashrazm and Dzamko Clin. Pharm.:Advances and Applications 8 177-189(2016))。別の最近の総説は、同様に、LRRK2阻害剤に関連するデータの概要を提供するが、肺および腎臓などの末梢組織における潜在的な望ましくない効果を指摘する最近の研究も注目される。(Taymans and Greggio, Current Neuropharm. 14, 214-225(2016))。
【0006】
選択的LRRK2分解剤は、既存のLRRK2阻害剤を超える以下のような利益をもたらす可能性がある:1)これらの分解剤が触媒作用様式で機能する(すなわち、単一の分解剤分子が複数の標的タンパク質の分解を誘導し得る)ことをデータが示唆しているため、分解剤の細胞内の有効濃度が従来のキナーゼアンタゴニストよりも有意に低いこと;2)分解剤がプロテアソームによるタンパク質の完全な排除をもたらすため、分解剤の薬力学的効果が、共有結合阻害剤について観察されるものと同様のタンパク質再合成速度によって決定されること;3)キナーゼ分解が、キナーゼの固有の「足場」機能によって付与されるチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)耐性に対処すること;および4)LRRK2の選択的分解剤に対するデノボ耐性突然変異は、より低い親和性の反応基(warhead)でさえ効率的な分解が達成され得ることを考慮すると、出現する可能性が低いこと(Churcher, I., J. Med. Chem. 61 (2), 444-452 (2018))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Gandhi et al., J.Neurosci.Res.87:1283-1295(2009)
【非特許文献2】Dorsey et al.,Neurology 68:384-386(2007)
【非特許文献3】Daniels et al., Neurosignals 19:1-15(2011)
【非特許文献4】Healy et al., Lancet Neurol.7:583-590(2008)
【非特許文献5】Dachsel et al., Neurol.67:542-547(2010)
【非特許文献6】Lee et al., Trends Pharmacol. Sci. 33(7):365-373(2012)
【非特許文献7】Liu et al., Hum. Mol. Genet.20:3933-3942 (2011)
【非特許文献8】Greggio et al., ASN Neuro 1(1):e00002(2009),Kumar et al., Expert Rev. Mol. Med. 13:e20(2011)
【非特許文献9】Chen et al., Cell Death Differ.19(10):1623-33(2012)
【非特許文献10】Atashrazm and Dzamko Clin. Pharm.:Advances and Applications 8 177-189(2016)
【非特許文献11】Taymans and Greggio, Current Neuropharm. 14, 214-225(2016)
【非特許文献12】Churcher, I., J. Med. Chem. 61 (2), 444-452 (2018)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の態様は、式(Ia)または式(Ib)によって表される構造:
【化1】
を有する二官能性化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体を対象とし、式中、-W-N-Y-は、-C=N-NH-または-N-N=CH-であり;Rは、MeO-、EtO-、i-PrO-、
【化2】
であり;ZはNまたはCHであり;qおよびrの各出現は独立して0または1であり;標的化リガンドはロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)に結合し;デグロン(「デグロン」)はE3ユビキチンリガーゼに結合する部分を表し;リンカー(「リンカー」)は標的化リガンドとデグロンとの間の共有結合をもたらす。
【0009】
本開示の別の態様は、治療有効量の式(Ia)もしくは式(Ib)の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を対象とする。
【0010】
本開示のさらなる態様は、LRRK2またはその変異体形態の異常な活性を特徴とするかまたはそれによって媒介される疾患または障害を治療する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の式(Ia)もしくは式(Ib)の二官能性化合物または薬学的に許容されるその塩もしくは立体異性体を投与することによる方法を対象とする。いくつかの実施形態では、疾患または障害は、野生型LRRK2の異常な活性によって特徴付けられるか、または媒介される。いくつかの実施形態では、疾患または障害は、G2019S変異体などのLRRK2変異体の異常な活性によって特徴付けられるか、または媒介される。
【0011】
いくつかの実施形態では、疾患または障害は神経変性障害である。いくつかの実施形態では、疾患または障害は、パーキンソン病(PD)である。いくつかの実施形態では、疾患または障害は、炎症性腸疾患(IBD)である。いくつかの実施形態では、疾患または障害は、クローン病(CD)である。いくつかの実施形態では、疾患または障害は、らい病(ハンセン氏病)である。いくつかの実施形態では、疾患または障害は結核である。いくつかの実施形態では、疾患または障害は髄膜腫である。いくつかの実施形態では、疾患または障害はがんである。いくつかの実施形態では、がんは、乳がん、肺がん、または甲状腺がんである。
【0012】
本開示のさらなる態様は、細胞を有効量の式(Ia)もしくは式(Ib)の二官能性化合物または薬学的に許容されるその塩もしくは立体異性体と接触させることを含む、インビトロまたはインビボのいずれかで細胞におけるLRRK2のレベルを低減する方法を対象とする。
【0013】
実施例において実証されるように、本開示の化合物は、LRRK2の強力かつ選択的な分解剤(degrader)である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、0~1000nMの範囲の濃度の示された化合物(1)、(2)、および(3)で処理された448T細胞の一組のイムノブロットである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本明細書の主題が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、反対のことが明記されない限り、以下の用語は、本開示の理解を容易にするために示される意味を有する。
【0016】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに他を指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「組成物(a composition)」への言及は、2つ以上のそのような組成物の混合物を含み、「阻害剤(an inhibitor)」への言及は、2つ以上のそのような阻害剤の混合物を含む。
【0017】
特に明記しない限り、用語「約」は、用語「約」によって修飾される特定の値の10%以内(例えば、5%、2%、または1%以内)を意味する。
【0018】
「含む(including)」、「含有する(containing)」、または「特徴とする(characterized by)」と同義である移行句「含む(comprising)」は、包括的またはオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素または方法ステップを除外しない。対照的に、移行句「からなる(consisting of)」は、特許請求の範囲に特定されていない任意の要素、ステップ、または成分を除外する。移行句「から本質的になる(consisting essentially of)」は、特許請求の範囲を、特許請求される開示の、特定の材料またはステップ「および基礎的および新規の特徴に実質的に影響を及ぼさないもの」に限定する。
【0019】
本開示の化合物に関して、以下の用語がそれらをさらに記載するために本明細書で使用される範囲で、以下の定義が適用される。
【0020】
本明細書で使用される場合、用語「アルキル」は、飽和直鎖または分枝鎖一価炭化水素ラジカルを指す。式(Ia)および式(Ib)の化合物中のいずれの特定の基についても他に定義されない限り、一実施形態では、アルキルラジカルはC1~C18基である。他の実施形態では、アルキルラジカルは、C1~C12、C1~C8、C1~C6、C1~C5、C1~C4またはC1~C3基である。アルキル基の例としては、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、i-プロピル、1-ブチル、2-メチル-1-プロピル、2-ブチル、2-メチル-2-プロピル、1-ペンチル、n-ペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、2-メチル-2-ブチル、3-メチル-2-ブチル、3-メチル-1-ブチル、2-メチル-1-ブチル、1-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3-メチル-3-ペンチル、2-メチル-3-ペンチル、2,3-ジメチル-2-ブチル、3,3-ジメチル-2-ブチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシルおよびドデシルが挙げられる。いくつかの実施形態では、アルキル基はC1~C3アルキル基である。いくつかの実施形態では、アルキル基は、C1~C2アルキル基、またはメチル基である。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「アルキレン」は、炭素および水素のみからなり、不飽和を含まず、1~12個の炭素原子を有する、分子の残りをラジカル基に連結する直鎖または分枝鎖の二価の炭化水素鎖を指し、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、n-ブチレンなどである。式(Ia)および式(Ib)の化合物中のいずれかの特定の基について他に定義されない限り、アルキレン鎖は、単結合を介して分子の残りに、および単結合を介してラジカル基に結合していてもよい。いくつかの実施形態では、アルキレン基は、1~8個の炭素原子を含有する(C1~C8アルキレン)。他の実施形態では、アルキレン基は、1~5個の炭素原子を含有する(C1~C5アルキレン)。他の実施形態では、アルキレン基は、1~4個の炭素原子を含有する(C1~C4アルキレン)。他の実施形態では、アルキレンは、1~3個の炭素原子を含有する(C1~C3アルキレン)。他の実施形態では、アルキレン基は、1~2個の炭素原子を含有する(C1~C2アルキレン)。他の実施形態では、アルキレン基は、1つの炭素の原子を含有する(C1アルキレン)。
【0022】
本明細書で使用される場合、用語「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖または分枝鎖の一価炭化水素ラジカルを指す。式(Ia)および式(Ib)の化合物中のいずれかの特定の基について他に定義されない限り、アルケニルは、「シス」および「トランス」配向、あるいは「E」および「Z」配向を有するラジカルを含む。一例において、アルケニルラジカルは、C2~C18基である。他の実施形態では、アルケニル基ラジカルは、C2~C12、C2~C10、C2~C8、C2~C6またはC2~C3基である。例としては、エテニルまたはビニル、プロプ-1-エニル、プロプ-2-エニル、2-メチルプロプ-1-エニル、ブト-1-エニル、ブト-2-エニル、ブト-3-エニル、ブタ-1,3-ジエニル、2-メチルブタ-1,3-ジエン、ヘキサ-1-エニル、ヘキサ-2-エニル、ヘキサ-3-エニル、ヘキサ-4-エニルおよびヘキサ-1,3-ジエニルが挙げられる。
【0023】
本明細書で使用される「アルコキシル」または「アルコキシ」という用語は、結合点である酸素ラジカルが結合している、上で定義されたアルキル基を指す。代表的なアルコキシル基には、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、tert-ブトキシなどが含まれる。「エーテル」は、酸素によって共有結合された2つのヒドロカルビル基である。したがって、アルキルをエーテルにするアルキルの置換基は、-O-アルキル、-O-アルケニル、および-O-アルキニルのうちの1つによって表すことができるようなアルコキシルであるか、またはアルコキシルに類似している。
【0024】
本明細書で使用される場合、「アルコキシレン」という用語は、一般式(-O-CnH2n-)(式中、nは整数(例えば、1、2、3、4、5、6、または7)を表し、直鎖および分岐鎖ラジカルの両方を含む)の飽和一価脂肪族ラジカルを指す。式(Ia)および式(Ib)の化合物中のいずれかの特定の基について他に定義されない限り、アルコキシレン鎖は、単結合を介して分子の残りに、および単結合を介してラジカル基に結合していてもよい。いくつかの実施形態では、アルコキシレン基は、1~3個の炭素原子を含む(-O-C1-C3アルコキシレン)。他の実施形態では、アルコキシレン基は、1~5個の炭素原子を含有する(-O-C1-C5アルコキシレン)。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「ハロゲン」(または「ハロ」または「ハロゲン化物」)は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「環状基」は、単独でまたはより大きな部分の一部として使用され、飽和、部分飽和または芳香族環系を含む任意の基、例えば、炭素環式(シクロアルキル、シクロアルケニル)、複素環式(ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル)、アリールおよびヘテロアリール基を広く指す。式(Ia)および式(Ib)の化合物中の任意の特定の基について他に定義されない限り、環状基は、1つまたは複数の(例えば、縮合)環系を有し得る。したがって、例えば、環状基は、1つ以上の炭素環式基、複素環式基、アリール基またはヘテロアリール基を含み得る。
【0027】
本明細書で使用される場合、「炭素環」(「カルボシクリル」ともいう)という用語は、単独でまたはより大きな部分の一部として使用され、炭素数3~20の飽和、部分的に不飽和、または芳香族の環系を含む基を指し、これは単独でまたはより大きな部分の一部である(例えば、アルク炭素環式(alkcarbocyclic)基)。式(Ia)および式(Ib)の化合物中のいずれかの特定の基について他に定義されない限り、カルボシクリルという用語は、単環式、二環式、三環式、縮合環式、架橋環式、およびスピロ環式、ならびにそれらの組合せを含む。一実施形態では、カルボシクリルは、3~15個の炭素原子(C3~C15)を含む。一実施形態では、カルボシクリルは、3~12個の炭素原子(C3~C12)を含む。別の実施形態では、カルボシクリルは、C3~C8、C3~C10またはC5~C10を含む。別の実施形態では、カルボシクリルは、単環として、C3~C8、C3~C6またはC5~C6を含む。いくつかの実施形態では、二環としてのカルボシクリルは、C7~C12を含む。別の実施形態では、カルボシクリルは、スピロ系として、C5~C12を含む。単環カルボシクリルの代表例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、1-シクロペント-1-エニル、1-シクロペント-2-エニル、1-シクロペント-3-エニル、シクロへキシル、ペルジュウテリオシクロヘキシル(perdeuteriocyclohexyl)、1-シクロへキス-1-エニル、1-シクロへキス-2-エニル、1-シクロへキス-3-エニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、フェニル、およびシクロドデシルが挙げられ;7~12個の環原子を有する二環カルボシクリルとしては、[4,3]、[4,4]、[4,5]、[5,5]、[5,6]または[6,6]環系、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、ナフタレン、およびビシクロ[3.2.2]ノナンが挙げられる。スピロカルボシクリルの代表例としては、スピロ[2.2]ペンタン、スピロ[2.3]ヘキサン、スピロ[2.4]ヘプタン、スピロ[2.5]オクタンおよびスピロ[4.5]デカンが挙げられる。カルボシクリルという用語は、本明細書で定義されるアリール環系を含む。カルボシクリルという用語はまた、シクロアルキル環(例えば、飽和または部分的に不飽和の単環式、二環式、またはスピロ環式炭素環)を含む。炭素環式基という用語はまた、1つまた複数(例えば、1、2または3個)の異なる環状基(例えば、アリールまたは複素環式環)に縮合した炭素環式環を含み、ここで、ラジカルまたは結合点は、炭素環式環上にある。
【0028】
したがって、炭素環式という用語は、本明細書で使用されるとき、式-Rc-カルボシクリル(式中、Rcはアルキレン鎖である)の基を指すカルボシクリルアルキル基も包含する。炭素環式という用語はまた、本明細書で使用されるとき、式-O-Rc-カルボシクリル(式中、Rcはアルキレン鎖である)の酸素原子を介して結合している基を指すカルボシクリルアルコキシ基を包含する。
【0029】
本明細書で使用される場合、単独でまたはより大きな部分の一部として使用される用語「アリール」(例えば、アルキル上の末端炭素の原子が結合点である「アラルキル」、例えば、ベンジル基)、酸素が結合点である「アラルコキシ」、または結合点がアリール上にある「アラルコキシアルキル」)は、縮合環を含む単環、二環または三環の炭素環系を含む基を指し、ここで、系中の少なくとも1つの環は芳香族である。式(Ia)および式(Ib)の化合物中の任意の特定の基について他に定義されない限り、いくつかの実施形態では、アラルコキシ基はベンゾキシ基である。用語「アリール」は、用語「アリール環」と互換的に使用され得る。一実施形態では、アリールは、6~18個の炭素原子を有する基を含む。別の実施形態では、アリールは、6~10個の炭素原子を有する基を含む。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、アントラシル、ビフェニル、フェナントレニル、ナフタセニル、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレニル、1H-インデニル、2,3-ジヒドロ-1H-インデニル、ナフチリジニルなどが挙げられ、これらは、本明細書に記載される1つ以上の置換基によって置換されていてもよく、または独立して置換されていてもよい。ある特定のアリールはフェニルである。いくつかの実施形態では、アリール基は、1つまたは複数(例えば、1、2または3つ)の異なる環状基(例えば、炭素環式環または複素環式環)に縮合したアリール環を含み、ここで、ラジカルまたは結合点は、アリール環上にある。異なって位置する二重結合を有することができる任意のアリール基の構造は、任意のおよび全てのそのような共鳴構造を包含すると考えられる。
【0030】
従って、アリールという用語は、上記に開示されたように、式-Rc-アリール(式中、Rcは、メチレンまたはエチレンなどのアルキレン鎖である)の基を指すアラルキル基(例えば、ベンジル)を包含する。いくつかの実施形態では、アラルキル基は、任意に置換されたベンジル基である。アリールという用語はまた、本明細書で使用される場合、式-O-Rc-アリール(式中、Rcは、メチレンまたはエチレンなどのアルキレン鎖である)の酸素原子を介して結合している基を指すアラルコキシ基を包含する。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「ヘテロシクリル」は、単独でまたはより大きな部分の一部として使用され、飽和、部分不飽和または芳香族環系を含有し、1個または複数(例えば、1、2、3または4個)の炭素原子がヘテロ原子(例えば、O、N、N(O)、S、S(O)またはS(O)2)で置き換えられている「カルボシクリル」を指す。式(Ia)および式(Ib)の化合物中の任意の特定の基について他に定義されない限り、用語ヘテロシクリルは、単環式、二環式、三環式、縮合環式、架橋環式、およびスピロ環式、ならびにそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリルは、3~15員のヘテロシクリル環系を指す。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリルは、3~12員のヘテロシクリル環系を指す。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリルは、3~12員の飽和ヘテロシクリル環系などの飽和環系を指す。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリルは、5~14員のヘテロアリール環系などのヘテロアリール環系を指す。ヘテロシクリルという用語はまた、3~8個の炭素および1個または複数(1、2、3または4個)のヘテロ原子を含有する飽和または部分不飽和の単環系、二環系またはスピロ環系であるC3~C8ヘテロシクロアルキルも含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、ヘテロシクリル基は、3~12個の環原子を含み、単環、二環、三環およびスピロ環系を含み、ここで、環原子は炭素であり、1~5個の環原子は、ヘテロ原子(例えば、窒素、硫黄または酸素)である。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリルは、窒素、硫黄または酸素から選択される1個または複数のヘテロ原子を有する3~7員の単環を含む。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリルは、窒素、硫黄または酸素から選択される1個または複数のヘテロ原子を有する4~6員の単環を含む。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリルは、3員単環を含む。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリルは、4員単環を含む。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリルは、5~6員の単環を含む。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリル基は、0~3個の二重結合を含む。前述の実施形態のいずれかにおいて、ヘテロシクリルは、1、2、3または4個のヘテロ原子を含む。任意の窒素または硫黄ヘテロ原子は、任意選択で酸化されていてもよく(例えば、NO、SO、SO2)、任意の窒素ヘテロ原子は、任意選択で四級化されていてもよい(例えば、[NR4]+Cl-、[NR4]+OH-)。ヘテロシクリルの代表例には、オキシラニル、アジリジニル、チイラニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、1,2-ジチエタニル、1,3-ジチエタニル、ピロリジニル、ジヒドロ-1H-ピロリル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、テトラヒドロチエニル、イミダゾリジニル、ピぺリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、1,1-ジオキソ-チオモルホリニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、ヘキサヒドロチオピラニル、ヘキサヒドロピリミジニル、オキサジナニル、チアジナニル、チオキサニル、ホモピペラジニル、ホモピぺリジニル、アゼパニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、オキサゼパニル、ジアゼパニル、1,4-ジアゼパニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、チアゼパニル、テトラヒドロチオピラニル、オキサゾリジニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、1,1-ジオキソイソチアゾリジノニル、オキサゾリジノニル、イミダゾリジノニル、4,5,6,7-テトラヒドロ[2H]インダゾリル、テトラヒドロベンゾイミダゾリル、4,5,6,7-テトラヒドベンゾ[d]イミダゾリル、1,6-ジヒドロイミダゾール[4,5-d]ピロロ[2,3-b]ピリジヂル、チアジニル、チオフェニル、オキサジニル、チアジアジニル(thiadiazinyl)、オキサジアジニル、ジチアジニル、ジオキサジニル、オキサチアジニル(oxathiazinyl)、チアトリアジニル、オキサトリアジニル、ジチアジアジニル、イミダゾリニル、ジヒドロピリミジル、テトラヒドロピリミジル、1-ピロリニル、2-ピロリニル、3-ピロリニル、インドリニル、チアピラニル、2H-ピラニル、4H-ピラニル、ジオキサニル、1,3-ジオキソラニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ジチアニル、ジチオラニル、ピリミジノニル、ピリミジノニル、ピリミジン-2,4-ジオニル、ピペラジノニル、ピペラジンジオニル、ピラゾリジニルイミダゾリニル(pyrazolidinylimidazolinyl)、3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタニル、6-アザビシクロ[3.1.1]ヘプタニル、3-アザビシクロ[3.1.1]ヘプタニル、3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル、アザビシクロ[2.2.2]ヘキサニル、2-アザビシクロ[3.2.1]オクタニル、8-アザビシクロ[3.2.1]オクタニル、2-アザビシクロ[2.2.2]オクタニル、8-アザビシクロ[2.2.2]オクタニル、7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、アザスピロ[3.5]ノナニル、アザスピロ[2.5]オクタニル、アザスピロ[4.5]デカニル、1-アザスピロ[4.5]デカン-2-オン、アザスピロ[5.5]ウンデカニル、テトラヒドロインドリル、オクタヒドロインドリル、テトラヒドロイソインドリル、テトラヒドロインダゾリル、1,1-ジオキソヘキサヒドロチオピラニルが含まれる。硫黄または酸素原子および1~3個の窒素原子を含有する5員ヘテロシクリルの例は、チアゾール-2-イルおよびチアゾール-2-イルN-オキシドを含むチアゾリル、1,3,4-チアジアゾール-5-イルおよび1,2,4-チアジアゾール-5-イルを含むチアジアゾリル、オキサゾリル、例えばオキサゾール-2-イル、ならびに1,3,4-オキサジアゾール-5-イルおよび1,2,4-オキサジアゾール-5-イルなどのオキサジアゾリルである。2~4個の窒素原子を含有する5員環ヘテロシクリルの例としては、イミダゾリル、例えばイミダゾール-2-イル;トリアゾリル、例えば1,3,4-トリアゾール-5-イル;1,2,3-トリアゾール-5-イル、1,2,4-トリアゾール-5-イル、およびテトラゾリル、例えば1H-テトラゾール-5-イルが挙げられる。ベンゾ縮合5員ヘテロシクリルの代表例は、ベンゾオキサゾール-2-イル、ベンゾチアゾール-2-イルおよびベンゾイミダゾール-2-イルである。6員ヘテロシクリルの例は、1~3個の窒素原子および任意選択で硫黄または酸素原子を含有し、例えば、ピリド-2-イル、ピリド-3-イルおよびピリド-4-イルなどのピリジル;ピリミド-2-イルおよびピリミド-4-イルなどのピリミジル;1,3,4-トリアジン-2-イルおよび1,3,5-トリアジン-4-イルなどのトリアジニル;ピリダジニル、特にピリダジン-3-イルおよびピラジニルである。ピリジンN-オキシドおよびピリダジンN-オキシド、ならびにピリジル、ピリミド-2-イル、ピリミド-4-イル、ピリダジニルおよび1,3,4-トリアジン-2-イル基は、ヘテロシクリル基のさらに他の例である。いくつかの実施形態では、複素環基は、1つまたは複数(例えば、1、2または3個)の異なる環状基(例えば、炭素環または複素環)に縮合した複素環を含み、ここで、ラジカルまたは結合点は、複素環上にあり、いくつかの実施形態では、結合点は、複素環中に含有されるヘテロ原子である。
【0033】
したがって、用語「複素環式」は、N-ヘテロシクリル基を包含し、これは、本明細書で使用される場合、少なくとも1個の窒素を含有するヘテロシクリル基を指し、ここで、ヘテロシクリル基の分子の残りへの結合点は、ヘテロシクリル基中の窒素原子を介する。N-ヘテロシクリル基の代表例としては、1-モルホリニル、1-ピペリジニル、1-ピペラジニル、1-ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニルおよびイミダゾリジニルが挙げられる。用語「ヘテロ環式」はまた、C-ヘテロシクリル基を包含し、これは、本明細書中で使用される場合、少なくとも1個のへテロ原子を含むヘテロシクリル基をいい、ここで、ヘテロシクリル基の残りの部分への結合点は、ヘテロシクリル基中の炭素の原子を介する。C-ヘテロシクリル基の代表例としては、2-モルホリニル、2-または3-または4-ピペリジニル、2-ピペラジニル、および2-または3-ピロリジニルが挙げられる。用語「複素環」はまた、上記で開示されたように、式-Rc-ヘテロシクリル(式中、Rcはアルキレン鎖である)の基を指すヘテロシクリルアルキル基を包含する。用語「複素環」はまた、本明細書で使用される場合、式-O-RC-ヘテロシクリル(式中、Rcはアルキレン鎖である)の酸素原子を介して結合しているラジカルを指す、ヘテロシクリルアルコキシ基を包含する。
【0034】
本明細書で使用される場合、単独でまたはより大きな部分(例えば、「ヘテロアリールアルキル」(「ヘテロアラルキル」ともいう)、または「ヘテロアリールアルコキシ」(「ヘテロアラルコキシ」ともいう)の一部として使用される用語「ヘテロアリール」は、5~14個の環原子を有する単環式、二環式または三環式の環系をいい、ここで、少なくとも1つの環は、芳香族であり、そして少なくとも1つのヘテロ原子を含む。一実施形態では、ヘテロアリールは、1個または複数の環原子が窒素、硫黄または酸素である5~6員の単環式芳香族基を含む。ヘテロアリール基の代表例には、チエニル、フリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、テトラゾリル、チアトリアゾリル、オキサトリアゾリル、ピリジル、ピリミジル、イミダゾピリジル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、テトラジニル、テトラゾロ[1,5-b]ピリダジニル、プリニル、デアザプリニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、1,3-チアゾール-2-イル、1,3,4-トリアゾール-5-イル、1,3-オキサゾール-2-イル、1,3,4-オキサジアゾール-5-イル、1,2,4-オキサジアゾール-5-イル、1,3,4-チアジアゾール-5-イル、1H-テトラゾール-5-イル、1,2,3-トリアゾール-5-イルおよびピリド-2-イルN-オキシドが含まれる。用語「ヘテロアリール」はまた、ヘテロアリールが1つまたは複数の環式(例えば、カルボシクリル、またはヘテロシクリル)環に縮合している基を含み、ここで、ラジカルまたは結合点は、ヘテロアリール環上にある。非限定的な例としては、インドリル、インドリジニル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾチオフェニル、メチレンジオキシフェニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾジオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、4H-キノリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニルおよびピリド[2,3-b]-1,4-オキサジン-3(4H)-オンが挙げられる。ヘテロアリール基は、単環式、二環式、三環式であってもよい。いくつかの実施形態では、ヘテロアリール基は、1つまたは複数(例えば、1、2または3つ)の異なる環状基(例えば、炭素環または複素環)に縮合したヘテロアリール環を含み、ここで、ラジカルまたは結合点は、ヘテロアリール環上にあり、いくつかの実施形態では、結合点は、複素環中に含有されるヘテロ原子である。異なって位置する二重結合を有することができる任意のヘテロアリール基の構造は、任意のおよび全てのそのような共鳴構造を包含すると考えられる。
【0035】
したがって、ヘテロアリールという用語は、N-ヘテロアリール基を包含し、本明細書で使用される場合、少なくとも1個の窒素を含有する上で定義されたヘテロアリール基を指し、分子の残りへのヘテロアリール基の結合点は、ヘテロアリール基中の窒素原子を介する。ヘテロアリールという用語は、本明細書で使用される場合、上で定義されたヘテロアリール基を指すC-ヘテロアリール基も包含し、ヘテロアリール基の残りの部分への結合点は、ヘテロアリール基中の炭素の原子を介する。ヘテロアリールという用語は、上に開示されているように、式-Rc-ヘテロアリール(式中、Rcは、上に定義されているようなアルキレン鎖である)の基を指すヘテロアリールアルキル基も包含する。用語ヘテロアリールはまた、ヘテロアラルコキシ(またはヘテロアリールアルコキシ)基を包含し、これは、本明細書で使用される場合、式-O-Rc-ヘテロアリールの酸素原子を介して結合している基を指し、ここで、Rcは、上で定義されているようなアルキレン基である。
【0036】
別段の記載がない限り、任意の特定の1つまたは複数の基についてさらに定義されない限り、本明細書に記載される基のいずれも、置換されていても置換されていなくてもよい。本明細書で使用される場合、「置換された」という用語は、そのような置換が置換された原子および置換基の許容される原子価に従い、置換が安定な化合物、すなわち、転位、環化、脱離などによる変換を自発的に受けない化合物をもたらすという暗黙の条件で、許容されるすべての置換基を広く指す。代表的な置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシル基、および任意の数の炭素原子、例えば、1~14個の炭素原子を含有する任意の他の有機基が挙げられ、これらは、直鎖、分岐、または環状構造形式で分類される酸素、硫黄、および窒素などの1つまたは複数(例えば、1、2、3、または4個)のヘテロ原子を含んでもよい。
【0037】
式(Ia)および式(Ib)の化合物中のいずれかの特定の基について他に開示されない限り、置換基の代表的な例としては、アルキル、置換アルキル(例えば、C1~C6、C1~C5、C1~C4、C1~C3、C1~C2、C1)、アルコキシ(例えば、C1~C6、C1~C5、C1~C4、C1~C3、C1~C2、C1)、置換アルコキシ(例えば、C1~C6、C1~C5、C1~C4、C1~C3、C1~C2、C1)、ハロアルキル(例えば、CF3)、アルケニル(例えば、C2~C6、C2~C5、C2~C4、C2~C3、C2)、置換アルケニル(例えば、C2~C6、C2~C5、C2~C4、C2~C3、C2)、アルキニル(例えば、C2~C6、C2~C5、C2~C4、C2~C3、C2)、置換アルキニル(例えば、C2~C6、C2~C5、C2~C4、C2~C3、C2)、環(例えば、C3~C12、C5~C6)、置換環(例えば、C3~C12、C5~C6)、炭素環(例えば、C3~C12、C5~C6)、置換炭素環(例えば、C3~C12、C5~C6)、複素環(例えば、C3~C12、C5~C6)、置換複素環(例えば、C3~C12、C5~C6)、アリール(例えば、ベンジルおよびフェニル)、置換アリール(例えば、置換ベンジルまたはフェニル)、ヘテロアリール(例えば、ピリジルまたはピリミジル)、置換ヘテロアリール(例えば、置換ピリジルまたはピリミジル)、アラルキル(例えば、ベンジル)、置換アラルキル(例えば、置換ベンジル)、ハロ、ヒドロキシル、アリールオキシ(例えば、C6~C12、C6)、置換アリールオキシ(例えば、C6~C12、C6)、アルキルチオ(例えば、C1~C6)、置換アルキルチオ(例えば、C1~C6)、アリールチオ(例えば、C6~C12、C6)、置換アリールチオ(例えば、C6~C12、C6)、シアノ、カルボニル、置換カルボニル、カルボキシル、置換カルボキシル、アミノ、置換アミノ、アミド、置換アミド、チオ、置換チオ、スルフィニル、置換スルフィニル、スルホニル、置換スルホニル、スルフィンアミド、置換スルフィンアミド、スルホンアミド、置換スルホンアミド、尿素、置換尿素、カルバメート、置換カルバメート、アミノ酸、およびペプチド基から選択される。
【0038】
用語「結合(binding)」は、標的化リガンドと標的化タンパク質(本開示ではLRRK2)との間の相互作用に関する場合、典型的には、標的化リガンドと細胞中に存在する他のタンパク質(他のLRRKアイソフォームを含む)との結合が少なくとも分解の観点から実質的に少なく機能的に重要でないという点で優先的である(本明細書では「選択的」とも呼ばれる)分子間相互作用を指す。用語「選択的」および「選択性」は、二官能性化合物が分子標的を識別する能力を指す。本明細書に記載される選択的LRRK2分解剤は、他のLRRKファミリーメンバー(例えば、LRRK1)および他のキナーゼのうちの1つまたは複数についてのDC50よりも少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10倍低いLRRK2活性についてのDC50(最大半量分解濃度)を有し得る。したがって、本開示の様々な二官能性化合物は、他のLRRKタンパク質に結合するが、類似のまたははるかに低い親和性であっても、それらはLRRK2の選択的分解を示す。
【0039】
用語「結合(binding)」は、デグロンとE3ユビキチンリガーゼとの間の相互作用に関する場合、典型的には、標的化リガンドとLRRK2との間の親和性に等しいかまたはそれを超える親和性レベルを示しても示さなくてもよいが、それでもなお、親和性が、標的化分解およびLRRK2の選択的分解へのリガーゼの動員を達成するのに十分である、分子間相互作用を指す。
【0040】
本開示の一態様は、式(Ia)または式(Ib)によって表される構造:
【化3】
を有する二官能性化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体を対象とし、式中、-W-N-Y-は、-C=N-NH-または-N-N=CH-であり;Rは、MeO-、EtO-、i-PrO-、
【化4】
であり;Zは、NまたはCHであり;qおよびrの各出現は、独立して、0または1であり;標的化リガンドは、ロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)に結合し、デグロン(「デグロン」)は、E3ユビキチンリガーゼに結合する部分を表し、リンカー(「リンカー」)は、標的化リガンドとデグロンとの間の共有結合を提供する。いくつかの実施形態では、qおよびr=0である。いくつかの実施形態では、qおよびr=1である。
【0041】
いくつかの実施形態では、デグロンは、フォン・ヒッペル・リンダウ(VHL)腫瘍抑制因子に結合する。いくつかの実施形態では、デグロンは、以下の構造:
【化5】
【化6】
のいずれか1つによって表される。
【0042】
VHLに結合し、本開示におけるデグロンとしての使用に適し得るさらに他のデグロンは、米国特許出願公開第2017/0121321 A1号に開示されている。
【0043】
いくつかの実施形態では、デグロンは、アポトーシスタンパク質(IAP)の阻害剤に結合する。いくつかの実施形態では、デグロンは、以下の構造:
【化7】
のいずれか1つによって表される。
【0044】
IAPに結合し、本開示におけるデグロンとしての使用に好適であり得るさらに他のデグロンは、国際特許出願公開WO2008/128171、WO2008/016893、WO2014/060768、WO2014/060767、およびWO2015/092420に開示されている。IAPは、ユビキチン-E3リガーゼとして機能することが当該分野で公知である。
【0045】
いくつかの実施形態では、デグロンはセレブロン(CRBN)に結合する。いくつかの実施形態では、デグロンは、以下の構造:
【化8】
のいずれか1つによって表される。
【0046】
セレブロンに結合し、本開示におけるデグロンとしての使用に好適であり得るさらに他のデグロンは、米国特許出願公開第2018/0015087号に記載されている(例えば、その中の式IAおよびIA’に包含されるイソインドリノンおよびイソインドリン-1,3-ジオンなどのインドリノン、ならびにその中の式IBおよびIB’に包含される架橋シクロアルキル化合物)。
【0047】
いくつかの実施形態では、リンカーは、標的化リガンドとデグロンとの間の共有結合を提供する。リンカーの構造は、標的リガンドまたはデグロンの活性を実質的に妨害しない限り、重要ではない。
【0048】
いくつかの実施形態では、リンカーは、構造:
【化9】
によって表され、ここで、oおよびpは独立して、1、2、または3である。
【0049】
いくつかの実施形態では、リンカーは、-O-、-S-、-N(R’)-、-C≡C-、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-OC(O)O-、-C(NOR’)-、-C(O)N(R’)-、-C(O)N(R’)C(O)-、-C(O)N(R’)C(O)N(R’)-、-N(R’)C(O)-、-N(R’)C(O)N(R’)-、-N(R’)C(O)O-、-OC(O)N(R’)-、-C(NR’)-、-N(R’)C(NR’)-、-C(NR’)N(R’)-、-N(R’)C(NR’)N(R’)-、-OB(Me)O-、-S(O)2-、-OS(O)-、-S(O)O-、-S(O)-、-OS(O)2-、-S(O)2O-、-N(R’)S(O)2-、-S(O)2N(R’)-、-N(R’)S(O)-、-S(O)N(R’)-、-N(R’)S(O)2N(R’)-、-N(R’)S(O)N(R’)-、C3~C12カルボシクレン、3~12員のヘテロシクレン、5~12員のヘテロアリーレンまたはそれらの任意の組合せの少なくとも1つによって中断され、かつ/または(いずれかの末端または両方の末端で)終結していてもよいアルキレン鎖を含み、ここで、R’は、HまたはC1~C6アルキルであり;中断基および1つまたは両方の末端基は、同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、アルキレン鎖は、1~6個のアルキレン単位を含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、リンカーは、-O-、-N(R’)-、-C≡C-、-C(O)-、4~8員のヘテロシクレン、C
3~C
8シクロアルキル、またはそれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つによって中断され得る、および/またはその中で(いずれかもしくは両方の末端で)終結し得るC
1~C
3アルキレン鎖を含み、ここで、R’は、HまたはC
1~C
6アルキルであり;中断基および1つまたは両方の末端基は、同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、C
1~C
3アルキレン鎖は、-O-、-N(R’)-、-C≡C-、-C(O)-、またはそれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つで(いずれかまたは両方の末端で)終結し、ここでR’は、HまたはC
1~C
6アルキルである。いくつかの実施形態では、リンカーは、構造:
【化10】
のいずれか1つによって表され、ここで、nは、1、2、または3であり;Xは、-NH-、-O-、または-C≡C-である。
【0051】
いくつかの実施形態では、C
1~C
3アルキレン鎖は、-C(O)-、4~8員のヘテロシクレン、またはそれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つで(いずれかまたは両方の末端で)終結する。いくつかの実施形態では、リンカーは、構造:
【化11】
によって表され、ここで、n、o、およびpは、独立して、1、2、または3である。
【0052】
いくつかの実施形態では、C
1~C
3アルキレン鎖は、-C≡C-、4~8員のヘテロシクレン、またはそれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つで(いずれかまたは両方の末端で)終結する。いくつかの実施形態では、リンカーは、構造:
【化12】
によって表され、ここで、n、o、およびpは、独立して、1、2、または3である。
【0053】
いくつかの実施形態では、C
1~C
3アルキレン鎖は、少なくとも1つの4~8員のヘテロシクレンで(いずれかまたは両方の末端で)終結する。いくつかの実施形態では、リンカーは、構造:
【化13】
のいずれか1つによって表され、ここで、n、o、およびpの各出現は、独立して、1、2、または3であり;R
1は、-H、-OH、-NH
2、-SH、または-SeHである。
【0054】
いくつかの実施形態では、C
1~C
3アルキレン鎖は、C
3~C
8シクロアルキルによって中断されている。いくつかの実施形態では、リンカーは、構造:
【化14】
によって表され、ここで、oおよびpは独立して1、2または3である。
【0055】
いくつかの実施形態では、リンカーは、-S-、-N(R’)-、-C≡C-、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-OC(O)O-、-C(NOR’)-、-C(O)N(R’)-、-C(O)N(R’)C(O)-、-C(O)N(R’)C(O)N(R’)-、-N(R’)C(O)-、-N(R’)C(O)N(R’)-、-N(R’)C(O)O-、-OC(O)N(R’)-、-C(NR’)-、-N(R’)C(NR’)-、-C(NR’)N(R’)-、-N(R’)C(NR’)N(R’)-、-OB(Me)O-、-S(O)2-、-OS(O)-、-S(O)O-、-S(O)-、-OS(O)2-、-S(O)2O-、-N(R’)S(O)2-、-S(O)2N(R’)-、-N(R’)S(O)-、-S(O)N(R’)-、-N(R’)S(O)2N(R’)-、-N(R’)S(O)N(R’)-、C3~12カルボシクレン、3~12員のヘテロシクレン、5~12員のヘテロアリーレンまたはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つで(いずれかの末端または両方の末端で)終結し得るポリエチレングリコール(PEG)鎖を含み、ここで、R’は、HまたはC1~C6アルキルであり;1つまたは両方の末端基は、同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、ポリエチレングリコール鎖は、1~6個のPEG単位を含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、二官能性化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体は、構造:
【化15】
のいずれか1つによって表され、ここで、n、o、およびpの各出現は、それぞれ独立して、1、2、または3であり;Xは、-NH-、-O-、またはアルキニルであり;R
1は、-H、-OH、-NH
2、-SH、または-SeHである。
【0057】
いくつかの実施形態では、二官能性化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体は、構造:
【化16】
のいずれか1つによって表され、ここで、n、o、およびpは、それぞれ独立して、1、2、または3であり;
Xは、-NH-、-O-またはアルキニルであり;
R
1は、-H、-OH、-NH
2、-SH、または-SeHである。
【0058】
いくつかの実施形態では、リンカーは、構造:
【化17】
のいずれか1つによって表される。
【0059】
いくつかの実施形態では、二官能性化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体は、式(Ia)および式(Ib)に示される標的化リガンドのいずれか1つ、リンカーL1~L15のいずれか1つ、ならびにデグロンD1~D12のいずれか1つを含有する。
【0060】
いくつかの実施形態では、式(Ia)もしくは式(Ib)の二官能性化合物、またはその薬学的に受容可能な塩もしくは立体異性体は、以下:
【化18】
【化19】
【化20】
である。
【0061】
本開示の二官能性化合物は、遊離酸もしくは遊離塩基、または薬学的に許容される塩の形態であってもよい。本明細書で使用される場合、塩の文脈における「薬学的に許容される」という用語は、化合物の生物学的活性または特性を抑止せず、比較的無毒性である化合物の塩を指し、すなわち、塩形態の化合物は、望ましくない生物学的効果(眩暈または胃の不調など)を引き起こすことなく、またはそれが含有される組成物の他の成分のいずれかと有害な様式で相互作用することなく、対象に投与され得る。用語「薬学的に許容される塩」は、本開示の二官能性化合物と適切な酸または塩基との反応によって得られる生成物を指す。本開示の二官能性化合物の薬学的に許容される塩の例としては、Li、Na、K、Ca、Mg、Fe、Cu、Al、ZnおよびMn塩などの適切な無機塩基から誘導されるものが挙げられる。薬学的に許容される非毒性酸付加塩の例は、無機酸と形成されるアミノ基の塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、4-メチルベンゼンスルホン酸塩またはp-トルエンスルホン酸塩などである。本開示の特定の化合物は、リシン、アルギニン、グアニジン、ジエタノールアミンまたはメトホルミンなどの様々な有機塩基と薬学的に許容される塩を形成することができる。適切な塩基塩には、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、または亜鉛塩が含まれる。
【0062】
本開示の二官能性化合物は、少なくとも1つのキラル中心を有し得、したがって、立体異性体の形態であり得、本明細書で使用される場合、空間におけるそれらの原子の配向のみが異なる個々の化合物の全ての異性体を包含する。立体異性体という用語は、鏡像異性体(化合物の(R-)または(S-)配置を含むエナンチオマー)、化合物の鏡像異性体の混合物(エナンチオマーの物理的混合物、およびラセミ体またはラセミ混合物)、化合物の幾何(シス/トランスまたはE/Z、R/S)異性体、および互いに鏡像ではない2つ以上のキラル中心を有する化合物の異性体(ジアステレオ異性体)を含む。化合物のキラル中心は、インビボでエピマー化を受け得る;従って、これらの化合物について、その(R-)形態での化合物の投与は、その(S-)形態での化合物の投与と等価であると考えられる。したがって、本開示の化合物は、個々の異性体の形態で、他の異性体を実質的に含まずに、または様々な異性体の混合物、例えば立体異性体のラセミ混合物の形態で作製および使用され得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、二官能性化合物は、同位体の天然存在度を超える量で、すなわち、濃縮された、原子の少なくとも1つの所望の同位体置換を有するという点で、同位体誘導体である。一実施形態では、化合物は、重水素または複数の重水素原子を含む。重水素、すなわち2Hなどのより重い同位体での置換は、より大きな代謝安定性、例えば、インビボ半減期の増加または必要投与量の減少から生じるある種の治療上の利点をもたらすことができ、したがって、いくつかの状況において有利であり得る。
【0064】
本開示の二官能性化合物は、異なる条件下での結晶化によって調製され得、化合物の多形の1つまたは組み合わせとして存在し得る。例えば、異なる多形体は、再結晶のための異なる溶媒または異なる溶媒混合物を使用して、異なる温度で結晶化を行うことによって、または結晶化の間の非常に速い冷却から非常に遅い冷却までの範囲の様々な冷却モードを使用することによって、同定および/または調製され得る。多形体はまた、化合物を加熱または溶融し、続いて徐々にまたは急速に冷却することによって得ることができる。多形体の存在は、固体プローブNMR分光法、IR分光法、示差走査熱量測定、粉末X線回折図および/または他の公知の技術によって決定され得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、二官能性化合物の共結晶を含む。本明細書で使用される「共結晶」という用語は、化学量論的多結晶を指す。本発明の化合物および共結晶形成剤を含む成分系であって、本発明の化合物および共結晶形成剤が非共有結合相互作用によって結合されている、成分系を含む。本明細書で使用される「共結晶形成剤」という用語は、本開示の化合物と分子間相互作用を形成し、それと共結晶化することができる化合物を指す。共結晶形成剤の代表例としては、安息香酸、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、trans-ケイ皮酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、グリコール酸、trans-2-ヘキサン酸、2-ヒドロキシカプロン酸、乳酸、ソルビン酸、酒石酸、フェルラ酸、スベリン酸、ピコリン酸、サリチル酸、マレイン酸、サッカリン、4,4’-ビピリジンp-アミノサリチル酸、ニコチンアミド、尿素、イソニコチンアミド、メチル-4-ヒドロキシ安息香酸、アジピン酸、テレフタル酸、レゾルシノール、ピロガロール、フロログルシノール、ヒドロキシキノール、イソニアジド、テオフィリン、アデニン、テオブロミン、フェナセチン、フェナゾン、エトフィリン、フェノバルビタールが挙げられる。
【0066】
合成方法
別の態様において、本開示は、式IaおよびIbの二官能性化合物、ならびにそれらの薬学的に許容される塩および立体異性体を作製するための方法を対象とする。概して、二官能性化合物ならびにそれらの薬学的に許容される塩および立体異性体は、化学的に関連する化合物の調製に適用可能であることが知られている任意のプロセスによって調製し得る。本開示の二官能性化合物は、本開示の化合物を調製し得る非限定的な方法を例示する様々な実施例に記載されている合成スキームと関連してよりよく理解されるであろう。
【0067】
医薬組成物
本開示の別の態様は、治療有効量の二官能性化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を対象とする。当該技術分野で知られている用語「薬学的に許容される担体」は、本開示の化合物を哺乳動物に投与するのに好適な薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクルを指す。好適な担体としては、例えば、液体(水性および非水性の両方、ならびにそれらの組み合わせ)、固体、カプセル化材料、気体、およびそれらの組み合わせ(例えば、半固体)、ならびに気体が挙げられ、これらは、化合物を、身体の1つの器官または部分から、身体の別の器官または部分に運搬または輸送するように機能する。担体は、製剤の他の成分に対して生理学的に不活性であり、かつ適合性であり、対象または患者に対して有害でないという意味で「許容される」。製剤のタイプに応じて、組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤も含み得る。
【0068】
概して、本開示の二官能性化合物ならびにそれらの薬学的に許容される塩および立体異性体は、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、封入および圧縮プロセスなどの従来の製薬実務に従って、所与のタイプの組成物に製剤化され得る(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (20th ed.), ed. A. R. Gennaro, Lippincott Williams & Wilkins, 2000およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technology, eds. J. Swarbrick and J. C. Boylan, 1988-1999, Marcel Dekker, New Yorkを参照されたい)。製剤のタイプは、経腸(例えば、経口、口腔、舌下および直腸)、非経口(例えば、皮下(s.c.)、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)および胸骨内注射または注入技術、眼内、動脈内、髄内、くも膜下腔内、脳室内、経皮、皮内、膣内、腹腔内、粘膜、鼻腔内、気管内注入、気管支注入および吸入)および局所(例えば、経皮)を含み得る投与の様式に依存する。一般に、最も適切な投与経路は、例えば、薬剤の性質(例えば、胃腸管の環境におけるその安定性)、および/または対象の状態(例えば、対象が経口投与に耐えることができるかどうか)を含む様々な要因に依存する。例えば、非経口(例えば、静脈内)投与はまた、化合物が、単回投与処置および/または急性状態の場合などに比較的迅速に投与され得るという点で有利であり得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、二官能性化合物は、経口または静脈内投与(例えば、全身静脈内注射)のために製剤化される。
【0070】
したがって、本開示の二官能性化合物は、固体組成物(例えば、粉末、錠剤、分散性顆粒、カプセル、カシェ剤、および坐剤)、液体組成物(例えば、化合物が溶解されている溶液、化合物の固体粒子が分散されている懸濁液、エマルジョン、ならびにリポソーム、ミセル、またはナノ粒子を含有する溶液、シロップおよびエリキシル剤);半固体組成物(例えば、ゲル、懸濁液およびクリーム);ならびにガス(例えば、エアロゾル組成物用の噴射剤)に製剤化され得る。化合物はまた、急速、中間、または持続放出のために製剤化されてもよい。
【0071】
経口投与用の固体剤形には、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、および顆粒剤が含まれる。このような固体剤形において、二官能性化合物は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの担体、およびa)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸などの充填剤または増量剤、b)例えば、メチルセルロース、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、およびアカシアなどの結合剤、c)グリセロールなどの湿潤剤、d)架橋ポリマー(例えば、架橋ポリビニルピロリドン(クロスポビドン)、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(クロスカルメロースナトリウム)、デンプングリコール酸ナトリウム、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム)などの崩壊剤、e)パラフィンなどの溶解遅延剤、f)第四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、g)例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤、h)カオリンおよびベントナイト粘土などの吸収剤、ならびにi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物などの潤滑剤などのさらなる担体または賦形剤と混合される。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、剤形は緩衝剤も含み得る。同様のタイプの固体組成物はまた、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用して、軟質および硬質充填ゼラチンカプセル中の充填剤として使用され得る。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤の固体剤形は、腸溶コーティングおよび他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製することができる。それらはさらに不透明化剤を含有してもよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、本開示の二官能性化合物は、硬質または軟質ゼラチンカプセル中に製剤化され得る。使用され得る代表的な賦形剤としては、アルファ化デンプン、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ステアリルフマル酸ナトリウム、ラクトース無水物、微結晶性セルロースおよびクロスカルメロースナトリウムが挙げられる。ゼラチンシェルは、ゼラチン、二酸化チタン、酸化鉄および着色剤を含み得る。
【0073】
経口投与用の液体剤形には、溶液、懸濁液、エマルジョン、マイクロエマルジョン、シロップおよびエリキシルが含まれる。化合物に加えて、液体剤形は、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物などの、当技術分野において一般に使用される水性または非水性担体(化合物の溶解度に応じて)を含有してもよい。経口組成物はまた、湿潤剤、懸濁化剤、着色剤、甘味剤、香味剤、および芳香剤などの賦形剤を含んでもよい。
【0074】
非経口投与のための注射可能な調製物は、滅菌水溶液または油性懸濁液を含み得る。それらは、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して、標準的な技術に従って製剤化され得る。無菌の注射可能な調製物はまた、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の無菌の注射可能な溶液、懸濁液またはエマルジョン、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液であってもよい。使用され得る許容されるビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル液、U.S.P.および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌固定油が、溶媒または懸濁媒体として従来から使用されている。この目的のために、合成のモノグシセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激性の不揮発性油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が、注射可能な調製物において使用される。注射可能な製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通して濾過することによって、または使用前に滅菌水もしくは他の滅菌注射可能媒体に溶解もしくは分散させることができる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって、滅菌することができる。化合物の効果は、その吸収を遅くすることによって延長され得、これは、水溶性の低い液体懸濁液または結晶性もしくは非晶質材料の使用によって達成され得る。非経口投与された製剤からの化合物の長期吸収はまた、化合物を油性ビヒクル中に懸濁することによって達成され得る。
【0075】
ある特定の実施形態では、本開示の二官能性化合物は、全身的な様式ではなく局所的な様式で、例えば、しばしばデポー調製物または徐放性製剤中で、臓器への直接的なコンジュゲートの注射を介して投与することができる。具体的な実施形態では、長時間作用型製剤は、移植(例えば、皮下または筋肉内)によって、または筋肉内注射によって投与される。注射用デポー形態は、生分解性ポリマー、例えば、ポリラクチド-ポリグリコリド、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)中に化合物のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって作製される。化合物の放出速度は、化合物対ポリマーの比および使用される特定のポリマーの性質を変化させることによって制御され得る。デポー注射可能製剤はまた、体組織と適合性であるリポソームまたはマイクロエマルジョン中に化合物を捕捉することによって調製される。さらに、他の実施形態では、化合物は、標的化薬物送達系、例えば、臓器特異的抗体でコーティングされたリポソームで送達される。このような実施形態では、リポソームは、器官に標的化され、器官によって選択的に取り込まれる。
【0076】
組成物は、口腔内または舌下投与用に製剤化することができ、その例としては、錠剤、ロゼンジ剤、およびゲル剤が挙げられる。
【0077】
本開示の二官能性化合物は、吸入による投与のために製剤化され得る。吸入による投与に適した種々の形態としては、エアロゾル、ミストまたは粉末が挙げられる。医薬組成物は、適切な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切なガス)を使用して、加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示の形態で送達され得る。いくつかの実施形態では、加圧エアロゾルの投薬単位は、計量された量を送達するための弁を提供することによって決定され得る。いくつかの実施形態では、例えば、吸入器または注入器で使用するためのゼラチンを含むカプセルおよびカートリッジは、化合物とラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末基剤との粉末混合物を含有して製剤化され得る。
【0078】
本開示の二官能性化合物は、局所投与用に製剤化されてもよく、本明細書で使用される局所投与は、製剤の表皮への開示による皮内投与を指す。これらのタイプの組成物は、典型的には、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液およびスプレーの形態である。
【0079】
局所適用のための二官能性化合物を製剤化するのに有用な担体の代表例としては、溶媒(例えば、アルコール、ポリアルコール、水)、クリーム、ローション、軟膏、油、硬膏剤、リポソーム、粉末、エマルジョン、マイクロエマルジョン、および緩衝溶液(例えば、低張または緩衝生理食塩水)が挙げられる。クリームは、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、パルミト-オレイン酸、セチル、またはオレイルアルコールなどの飽和または不飽和脂肪酸を用いて製剤化することができる。クリームはまた、ポリオキシ-40-ステアレートなどの非イオン性界面活性剤を含有してもよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、局所製剤はまた、賦形剤を含んでもよく、その例は、浸透促進剤である。これらの薬剤は、好ましくは、全身吸収をほとんどまたは全く伴わずに、角質層を通して表皮または真皮に薬理学的に活性な化合物を輸送することができる。多種多様な化合物が、皮膚を通る薬物の浸透速度を高めることにおけるそれらの有効性に関して評価されている。例えば、種々の皮膚浸透増強剤の使用および試験を概説しているPercutaneous Penetration Enhancers, Maibach H. I.およびSmith H. E. (eds.), CRC Press, Inc., Boca Raton, Fla. (1995)、ならびにBuyuktimkin et al., Chemical Means of Transdermal Drug Permeation Enhancement in Transdermal and Topical Drug Delivery Systems, Gosh T. K., Pfister W. R., Yum S. I. (Eds.), Interpharm Press Inc., Buffalo Grove, Ill. (1997)を参照のこと。浸透促進剤の代表的な例としては、トリグリセリド(例えば、大豆油)、アロエ組成物(例えば、アロエベラゲル)、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、オクチルフェニルポリエチレングリコール、オレイン酸、ポリエチレングリコール400、プロピレングリコール、N-デシルメチルスルホキシド、脂肪酸エステル(例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸メチル、モノオレイン酸グリセロール、およびモノオレイン酸プロピレングリコール)、およびN-メチルピロリドンが挙げられる。
【0081】
局所製剤ならびに他のタイプの製剤に(それらが適合する程度まで)含まれ得るさらに他の賦形剤の代表的な例としては、保存剤、抗酸化剤、保湿剤、皮膚軟化剤、緩衝剤、可溶化剤、皮膚保護剤、および界面活性剤が挙げられる。適切な保存剤には、アルコール、第四級アミン、有機酸、パラベン、およびフェノールが含まれる。適切な抗酸化剤としては、アスコルビン酸およびそのエステル、亜硫酸水素ナトリウム、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、トコフェロール、ならびにEDTAおよびクエン酸のようなキレート剤が挙げられる。適切な保湿剤には、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、尿素、およびプロピレングリコールが含まれる。適切な緩衝剤には、クエン酸、塩酸、および乳酸緩衝液が含まれる。適切な可溶化剤としては、第四級アンモニウムクロリド、シクロデキストリン、安息香酸ベンジル、レシチン、およびポリソルベートが挙げられる。適切な皮膚保護剤としては、ビタミンE油、アラトイン、ジメチコン、グリセリン、ワセリン、および酸化亜鉛が挙げられる。
【0082】
経皮製剤は、典型的には、化合物が、ポリマーまたは接着剤中に溶解および/または分散された親油性エマルジョンまたは緩衝水溶液中に製剤化されている経皮送達デバイスおよび経皮送達パッチを用いる。パッチは、医薬品の連続的、拍動性、またはオンデマンド送達のために構築され得る。化合物の経皮送達は、イオン導入パッチによって達成され得る。経皮パッチは、化合物の制御された送達を提供し得、ここで、吸収速度は、速度制御膜を使用することによって、またはポリマーマトリックスもしくはゲル内に化合物を捕捉することによって、遅くされる。吸収促進剤を使用して吸収を増加させることができ、その例としては、皮膚の通過を助ける吸収性の薬学的に許容される溶媒が挙げられる。
【0083】
眼科用製剤には、点眼薬が含まれる。
【0084】
直腸投与用の製剤には、浣腸剤、直腸ゲル剤、直腸フォーム剤、直腸エアロゾル剤、および停留浣腸剤が含まれ、これらは、ココアバターまたは他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤、ならびにポリビニルピロリドン、PEGなどの合成ポリマーを含有し得る。直腸または膣投与用の組成物は、化合物を、ココアバター、脂肪酸グリセリドの混合物、ポリエチレングリコール、坐剤ワックス、およびそれらの組み合わせなどの適切な非刺激性担体および賦形剤と混合することによって調製することができる坐剤として製剤化することもでき、それらはすべて、周囲温度では固体であるが、体温では液体であり、したがって、直腸または膣腔内で融解し、化合物を放出する。
【0085】
投与量
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、異常なLRRK2活性によって特徴付けられるかまたは媒介される疾患または障害に罹患している患者において所望の治療応答を生じさせるのに有効な、二官能性化合物または薬学的に許容されるその塩もしくは立体異性体の量を指す。したがって、「治療有効量」という用語は、投与された場合に、治療される疾患もしくは障害において前向きな変化(positive modification)を誘導するか、または疾患もしくは障害の発症もしくは進行を予防するか、もしくは対象において治療される疾患もしくは障害の症状の1つもしくは複数をある程度軽減するのに十分であるか、または罹患細胞の増殖を阻害するか、または罹患細胞におけるLRRK2の量を低減する、二官能性化合物または薬学的に許容されるその塩もしくは立体異性体の量を含む。
【0086】
二官能性化合物の1日の総投与量およびその用法は、標準的な医療の実施に従って、例えば、主治医が健全な医学的判断を用いて決定することができる。任意の特定の対象に対する具体的な治療有効用量は、以下を含む様々な要因に依存する:治療される疾患または障害およびその重症度(例えば、その現在の状態);用いられる化合物の活性;用いられる具体的な組成物;対象の年齢、体重、全般的な健康、性別および食事;用いられる化合物の投与時間、投与経路、および排出速度;治療期間;用いられる具体的な化合物と組み合わせてまたは同時に使用される薬物;ならびに医学分野で周知の同様の要因(例えば、Hardman et al., eds., Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics, 10th Edition, McGraw-Hill Press, 155-173, 2001を参照されたい)。
【0087】
本開示の二官能性化合物は、広い投与量範囲にわたって有効であり得る。いくつかの実施形態では、総1日投与量(例えば、成人のヒトの場合)は、約0.001~約1600mg、0.01~約1000mg、0.01~約500mg、約0.01~約100mg、約0.5~約100mg、1日あたり1~約100~400mg、1日あたり約1~約50mg、1日あたり約5~約40mg、さらに他の実施形態では、1日あたり約10~約30mgの範囲であり得る。個々の投与量は、化合物が1日あたりに投与される回数に応じて所望の投与量を含むように処方され得る。例として、カプセルは、約1~約200mgの化合物(例えば、1、2、2.5、3、4、5、10、15、20、25、50、100、150、および200mg)で製剤化され得る。いくつかの実施形態では、化合物は、1日当たり約0.01mg~約200mg/kg体重の範囲の用量で投与され得る。いくつかの実施形態では、1日あたり0.1~100、例えば、1~30mg/kgの用量を、1日あたり1回または複数回の投薬で投与することが有効であり得る。例として、経口投与に適した用量は、1日あたり1~30mg/kg体重の範囲であり得、静脈内投与に適した用量は、1日あたり1~10mg/kg体重の範囲であり得る。
【0088】
使用方法
いくつかの態様において、本開示は、LRRK2の異常な活性を特徴とする疾患または障害を治療する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の式(Ia)もしくは式(Ib)の二官能性化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは立体異性体を投与することを含む方法を対象とする。
【0089】
いくつかの態様において、本開示は、細胞を、有効量の式(Ia)もしくは式(Ib)の二官能性化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体と、それを必要とする対象に接触させることを含む、インビトロまたはインビボのいずれかで細胞中のLRRK2のレベルを低減する方法を対象とする。
【0090】
概して、本開示の二官能性化合物による治療に適し得る疾患または障害は、非病理学的状態と比較して異常な(機能的に異常な)LRRK2活性を伴う。「疾患(disease)」は、一般に、対象が恒常性を維持することができず、疾患が改善されない場合、対象の健康が悪化し続ける、対象の健康状態とみなされる。対照的に、対象における「障害(disorder)」は、対象が恒常性を維持することができるが、対象の健康状態が障害の非存在下である場合よりも好ましくない健康状態である。治療されないままであると、障害は、必ずしも対象の健康状態のさらなる低下を引き起こさない。いくつかの実施形態では、式(Ia)または式(Ib)の化合物は、細胞増殖性疾患および障害(例えば、がんまたは良性新生物)の処置において有用であり得る。本明細書で使用される場合、「細胞増殖性疾患または障害」という用語は、新生物、前がん状態、良性腫瘍、およびがんなどの非がん性状態を含む、調節解除されたもしくは異常な細胞増殖、またはその両方を特徴とする状態を指す。
【0091】
いくつかの態様において、疾患または障害は、野生型LRRK2の異常な活性によって特徴付けられるか、または媒介される。
【0092】
例示的な野生型LRRK2ポリペプチド配列は、参照により本明細書に組み込まれ、以下に記載される、NCBI受託番号NP_940980、バージョンNP_940980.4で提供される(配列番号1)
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【0093】
いくつかの実施形態では、疾患または障害は、LRRK2変異体の異常な活性によって特徴付けられるか、または媒介される。
【0094】
いくつかの態様において、LRRK2変異体は、野生型タンパク質に対しG2019S突然変異を有する。いくつかの態様において、LRRK2変異体は、野生型タンパク質に対しA2016T突然変異を有する。いくつかの態様において、LRRK2変異体は、野生型タンパク質に対しR1441G突然変異を有する。いくつかの態様において、LRRK2変異体は、野生型タンパク質に対しG2385R突然変異を有する。
【0095】
本明細書で使用される「対象」(または「患者」)という用語は、示された疾患または障害に罹患しやすいまたは罹患している動物界の全てのメンバーを含む。いくつかの実施形態では、対象は、哺乳動物、例えば、ヒトまたは非ヒト哺乳動物である。本方法はまた、イヌおよびネコなどのコンパニオンアニマル、ならびにウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどの家畜、ならびに他の飼い慣らされた動物および野生動物にも適用可能である。本開示による治療を「必要とする」対象は、特定の疾患または障害を「患っているかまたは患っている疑いがある」ことがあり、陽性と診断されたことがあり、またはそうでなければ、医療専門家が、対象が疾患または障害を患っていると診断または疑うことができるように、十分な数の危険因子または十分な数もしくは組み合わせの徴候もしくは症状を示すことがある。したがって、特定の疾患または障害に罹患している、および罹患している疑いのある対象は、必ずしも2つの異なる群ではない。
【0096】
いくつかの実施形態では、疾患または障害は、非がん性疾患または障害である。
【0097】
いくつかの実施形態では、疾患または障害は、神経変性疾患または障害である。
【0098】
本開示の化合物による処置に適し得る例示的な神経変性疾患または障害としては、パーキンソン病(PD)、プリオン疾患、ハンティングトン病、アルツハイマー病、多系統萎縮症、ピック病、進行性核上麻痺(PSP)、前頭側頭型痴呆(FTD)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、慢性外傷性脳症、好銀性顆粒病、もつれ優位痴呆、および原発性加齢性タウオパチー(PART)が挙げられる。
【0099】
いくつかの実施形態では、神経変性疾患はパーキンソン病(PD)である。
【0100】
本開示の化合物による処置に適し得る非がん性(例えば、細胞増殖性)疾患または障害の他の例示的なタイプとしては、炎症性疾患および炎症性状態、自己免疫疾患、心臓疾患、ウイルス性疾患、慢性および急性の腎臓疾患または腎臓傷害、代謝性疾患、ならびにアレルギー性疾患および遺伝性疾患が挙げられる。
【0101】
特定の非がん性疾患および障害の代表的な例としては、リウマチ性関節炎、円形脱毛症、リンパ球増殖性状態、自己免疫血液障害(例えば、溶血性貧血、再生不良性貧血、無汗性外胚葉性異形成症、純粋赤血球貧血および突発性血小板減少症)、胆嚢炎、末端肥大症、リウマチ様脊椎炎、骨関節炎、通風、強皮症、セプシス、敗血性ショック、涙のう炎、クリオピリン関連周期性症候群(CAPS)、内毒素ショック、子宮内膜炎、グラム陰性セプシス、乾性角結膜炎、毒素性ショック症候群、ぜん息、成人呼吸促進症候群、慢性閉塞性肺病、慢性肺炎、慢性移植拒絶、化膿性汗腺炎、炎症性腸疾患、クローン病、ベーチェット症候群、全身性エリテマトーデス、糸球体腎炎、多発性硬化症、若年性糖尿病、自己免疫性ぶどう膜炎、自己免疫性血管炎、甲状腺炎、アジソン病、扁平苔癬、虫垂炎、水疱性類天疱瘡、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、腫瘍随伴性天疱瘡、重症筋無力症、免疫グロブリンA腎症、橋本病、シェーグレン症候群、白斑、ウェゲナー肉芽腫症、肉芽腫性睾丸炎、自己免疫性卵巣炎、サルコイドーシス、リウマチ性心炎、強直性脊髄炎、グレーブス病、自己免疫性血小板減少性紫斑病、乾せん、乾せん性関節炎、湿疹、疱疹状皮膚炎、潰瘍性大腸炎、膵線維症、肝炎、肝線維症、CD14介在性敗血症、非CD14介在性敗血症、急性および慢性腎疾患、過敏性腸症候群、蓄膿症、再狭窄、子宮頸管炎、脳卒中および虚血性損傷、神経外傷、急性および慢性疼痛、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、慢性心不全、うっ血性心不全、急性冠症候群、悪液質、マラリア、らい病、リーシュマニア症、ライム病、ライター症候群、急性滑膜炎、筋変性、滑液嚢炎、腱炎、腱鞘炎、椎間板ヘルニア、椎間板破裂・脱出症候群、骨ペトロ症、鼻副鼻腔炎、血栓症、珪肺症、肺サルコーシス、骨粗鬆症などの骨吸収疾患、線維筋痛症、AIDSおよび帯状疱疹、単純ヘルペスIまたはII、インフルエンザウイルス、サイトメガロウイルスなどのその他のウイルス性疾患、I型およびII型糖尿病、肥満、インスリン抵抗性および糖尿病性網膜症、22q11.2欠失症候群、アンジェルマン症候群、カナヴァン病、セリアック病、シャルコー・マリー・トゥース病、色覚異常、Cri du chat症候群、ダウン症、嚢胞性繊維症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、血友病、Klinefleter症候群、神経線維腫症、フェニルケトン尿症、プラダー・ウィリー症候群、鎌状赤血球症、テイ・サックス病、ターナー症候群、尿素サイクル障害、サラセミア、耳炎、膵炎、耳下腺炎、心膜炎、腹膜炎、咽頭炎、胸膜炎、静脈炎、肺炎、ブドウ膜炎、多発性筋炎、直腸炎、間質性肺線維症、皮膚筋炎、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化、筋萎縮性側索硬化症、非社会性、静脈瘤、膣炎、うつ病、乳児突然死症候群、および非がん性髄膜腫が挙げられる。
【0102】
他の実施形態では、方法は、がんを有する対象を処置することを対象とする。一般に、本開示の化合物は、がん腫(原発性腫瘍および転移性腫瘍の両方を含む固形腫瘍)、肉腫、黒色腫、ならびに白血病、リンパ腫および多発性骨髄腫などの血液がん(リンパ球、骨髄および/またはリンパ節を含む血液に影響を及ぼすがん)の処置において有効であり得る。成人の腫瘍/がんおよび小児の腫瘍/がんが含まれる。がんは、血管が新生された、またはまだ実質的に血管が新生されていない、または血管が新生されていない腫瘍であり得る。
【0103】
がんの代表的な例としては、副腎皮質癌、AIDS関連のがん(例えば、カポジ肉腫およびAIDS関連のリンパ腫)、虫垂がん、小児がん(例えば、小児性小脳星状細胞腫、小児性大脳星細胞腫)、基底細胞癌、皮膚(非メラノーマ)がん、胆道がん、肝外胆管がん、肝内胆管がん、膀胱がん(例えば、膀胱がん(urinary bladder cancer))、脳腫瘍(例えば、神経膠腫および膠芽細胞腫(例えば、脳幹膠腫、妊娠性栄養膜腫瘍膠腫、小脳星状細胞腫、大脳星細胞腫/悪性膠腫、上衣腫、髄芽細胞腫、テント上原始神経外胚葉性(neuroectodeimal)腫瘍、視覚経路および視床下部膠腫)、乳がん、気管支腺腫/カルチノイド、カルチノイド腫瘍、神経系がん(例えば、中枢神経系がん、中枢神経系リンパ種)、子宮頸がん、慢性骨髄増殖性障害、結腸直腸がん(例えば、結腸がん、直腸がん)、真性多血症、リンパ腫瘍、菌状息肉腫、セザリー症候群、子宮内膜がん、食道がん、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管がん、眼がん、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、胆嚢がん、消化管がん(例.胃がん、小腸がん、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST))、胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、頭頸部がん、ホジキンリンパ腫、白血病、リンパ種、多発性骨髄腫、肝細胞がん、下咽頭がん、内眼メラノーマ、眼球がん、島細胞腫瘍(内分泌膵臓)腎がん(例えば、ウィルム腫瘍、明細胞腎細胞がん)、肝臓がん、肺がん(例えば、非小細胞肺がんおよび小細胞肺がん)、ワルデンシュトレーム巨細胞腫、黒色腫、眼内(眼)黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、原発不明転移性扁平上皮頸部がん、多発性内分泌腫瘍症(MEN)、骨髄異形成症候群、本態性血小板血症、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、上咽頭がん、神経芽細胞腫、口腔がん(例えば、口腔がん、口唇がん、口腔がん、舌がん、中咽頭がん、咽頭がん、喉頭がん)、卵巣がん(例えば、卵巣上皮がん、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍)、膵臓がん、膵島細胞がん、副鼻腔および鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、褐色細胞腫、松果体芽細胞腫、下垂体腫瘍、形質細胞新生物、胸膜肺芽腫、前立腺がん、網膜芽細胞腫横紋筋肉腫、唾液腺がん、子宮がん(例えば、子宮内膜子宮体がん、子宮肉腫、子宮体がん)、扁平上皮癌、精巣がん、胸腺腫、胸腺がん、甲状腺がん、腎盂・尿管およびその他の泌尿器の移行細胞がん、尿道がん、妊娠性絨毛腫瘍、膣がん外陰がんおよびがん性髄膜腫が挙げられる。
【0104】
本開示の化合物で治療可能であり得る肉腫としては、軟組織がんおよび骨がんの両方が挙げられ、その代表例としては、骨肉腫または骨原性肉腫(骨)(例えば、ユーイング肉腫)、軟骨肉腫(軟骨)、平滑筋肉腫(平滑筋)、横紋筋肉腫(骨格筋)、中皮肉腫または中皮腫(体腔の膜性内層)、線維肉腫(線維組織)、血管肉腫または血管内皮腫(血管)、脂肪肉腫(脂肪組織)、神経膠腫または星状細胞腫(脳に見られる神経原性結合組織)、粘液肉腫(原始胚性結合組織)および間葉性または混合中胚葉腫瘍(混合結合組織型)が挙げられる。
【0105】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、血液系、肝臓、脳、肺、結腸、膵臓、前立腺、卵巣、乳房、皮膚、および子宮内膜の細胞増殖性疾患または障害を有する対象の治療を伴う。
【0106】
本明細書で使用される場合、「血液系の細胞増殖性疾患または障害」は、リンパ腫、白血病、骨髄新生物、肥満細胞新生物、骨髄異形成、良性単クローン性ガンマグロブリン血症、真性赤血球増加症、慢性骨髄性白血病、原因不明骨髄様化生、および本態性血小板血症を含む。血液がんの代表的な例は、従って、多発性骨髄腫、リンパ腫(T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)およびALK+未分化大細胞型リンパ腫(例えば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(例えば、胚中心B細胞様びまん性大細胞型B細胞リンパ腫または活性化B細胞様びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)から選択されるB細胞非ホジキンリンパ腫)を含む)、バーキットリンパ腫/白血病、マントル細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫/ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、転移性膵臓腺がん、難治性B細胞非ホジキンリンパ腫、および再発性B細胞非ホジキンリンパ腫、小児リンパ腫、ならびにリンパ球および皮膚起源のリンパ腫(例えば、小リンパ球性リンパ腫)、白血病(小児白血病、ヘアリー細胞白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病(例えば、急性単球性白血病)、慢性リンパ性白血病、小リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、および肥満細胞白血病を含む)、骨髄新生物および肥満細胞新生物を含み得る。
【0107】
本明細書で使用される場合、「肝臓の細胞増殖性疾患または障害」は、肝臓に影響を及ぼす細胞増殖性障害の全ての形態を含む。肝臓の細胞増殖性障害としては、肝臓がん(例えば、肝細胞癌、肝内胆管癌および肝芽腫)、肝臓の前がんまたは前がん状態、肝臓の良性増殖または病変、および肝臓の悪性増殖または病変、ならびに肝臓以外の身体の組織および器官における転移性病変が挙げられ得る。肝臓の細胞増殖性障害は、肝臓の過形成、化生、および異形成を含み得る。
【0108】
本明細書で使用される場合、「脳の細胞増殖性疾患または障害」は、脳に影響を及ぼす細胞増殖性障害の全ての形態を含む。脳の細胞増殖性障害としては、脳がん(例えば、神経膠腫、膠芽細胞腫、髄膜腫、下垂体腺腫、前庭神経鞘腫、および原始神経外胚葉性腫瘍(髄芽腫))、脳の前がんまたは前がん性状態、脳の良性増殖または病変、および脳の悪性増殖または病変、ならびに脳以外の身体の組織および臓器における転移性病変が挙げられ得る。脳の細胞増殖性障害としては、脳の過形成、化生、および異形成が挙げられ得る。いくつかの実施形態では、脳腫瘍は神経膠腫または膠芽腫である。
【0109】
本明細書で使用される場合、「肺の細胞増殖性疾患または障害」は、肺細胞に影響を及ぼす細胞増殖性障害の全ての形態を含む。肺の細胞増殖性障害には、肺がん、肺の前がん状態および前がん性状態、肺の良性の成長または病変、肺の過形成、化生、および異形成、ならびに肺以外の体内の組織および臓器における転移性病変が含まれる。肺がんは、肺のがんの全ての形態、例えば、悪性肺新生物、上皮内癌、典型的なカルチノイド腫瘍、および非定型カルチノイド腫瘍を含む。肺がんには、小細胞肺がん(「SCLC」)、非小細胞肺がん(「NSCLC」)、扁平上皮癌、腺癌、小細胞癌、大細胞癌、扁平上皮癌、および中皮腫が含まれる。肺のがんは、「瘢痕癌」、細気管支肺胞上皮癌(bronchioveolar carcinoma)、巨細胞癌、紡錘細胞癌、および大細胞神経内分泌癌を含み得る。肺がんはまた、組織学的および超微細構造的な不均一性(例えば、混合細胞型)を有する肺新生物を含む。いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、非転移性または転移性肺がん(例えば、NSCLC、ALK陽性NSCLC、ROS1再構成を有するNSCLC、肺腺癌、および肺扁平上皮癌)を処置するために使用され得る。
【0110】
本明細書で使用される場合、「結腸の細胞増殖性疾患または障害」は、結腸細胞に影響を及ぼす細胞増殖性障害の全ての形態を含み、結腸がん、結腸の前がんまたは前がん状態、結腸の腺腫性ポリープおよび結腸の異時性病変を含む。結腸がんには、散発性および遺伝性結腸がん、悪性結腸新生物、上皮内癌、定型カルチノイド腫瘍、および非定型カルチノイド腫瘍、腺癌、扁平上皮癌、および扁平上皮細胞癌が含まれる。結腸がんは、遺伝性非ポリポーシス結腸直腸がん、家族性腺腫性ポリポーシス、MYH関連ポリポーシス、ガードナー症候群、ポイツ-ジェガース症候群、ターコット症候群および若年性ポリポーシスなどの遺伝性症候群と関連し得る。結腸の細胞増殖性障害はまた、結腸の過形成、化生、または異形成によって特徴付けられ得る。
【0111】
本明細書で使用される場合、「膵臓の細胞増殖性疾患または障害」は、膵臓細胞に影響を及ぼす細胞増殖性障害の全ての形態を含む。膵臓の細胞増殖性障害としては、膵臓がん、膵臓の前がんまたは前がん性状態、膵臓の過形成、膵臓の異形成、膵臓の良性の増殖または病変、および膵臓の悪性の増殖または病変、ならびに膵臓以外の体内の組織および臓器における転移性病変が挙げられ得る。膵臓がんは、管腺癌、腺扁平上皮癌、多形性巨細胞癌、粘液性腺癌、破骨細胞様巨細胞癌、粘液性嚢胞腺癌、腺房癌、未分類大細胞癌、小細胞癌、膵芽細胞腫、乳頭状腫瘍、粘液性嚢胞腺腫、乳頭状嚢胞腫瘍、および漿液性嚢胞腺腫、ならびに組織化学的および超微細構造的異質性(例えば、混合細胞種)を有する膵臓腫瘍を含む、膵臓がんの全ての形態を含む。
【0112】
本明細書で使用される場合、「前立腺の細胞増殖性疾患または障害」は、前立腺に影響を及ぼす細胞増殖性障害の全ての形態を含む。前立腺の細胞増殖性障害としては、前立腺がん、前立腺の前がんまたは前がん状態、前立腺の良性の増殖または病変、および前立腺の悪性の増殖または病変、ならびに前立腺以外の身体の組織および器官における転移性病変が挙げられ得る。前立腺の細胞増殖性障害は、前立腺の過形成、化生、および異形成を含み得る。
【0113】
本明細書で使用される場合、「卵巣の細胞増殖性疾患または障害」は、卵巣の細胞に影響を及ぼす細胞増殖性障害の全ての形態を含む。卵巣の細胞増殖性障害は、卵巣の前がんまたは前がん状態、卵巣の良性増殖または病変、卵巣がん、ならびに卵巣以外の体内の組織および臓器における転移性病変を含み得る。卵巣の細胞増殖性障害は、卵巣の過形成、化生、および異形成を含み得る。
【0114】
本明細書で使用される場合、「乳房の細胞増殖性疾患または障害」は、乳房細胞に影響を及ぼす細胞増殖性障害の全ての形態を含む。乳房の細胞増殖性障害としては、乳がん、乳房の前がんまたは前がん状態、乳房の良性増殖または病変、ならびに乳房以外の身体の組織および器官における転移性病変が挙げられ得る。乳房の細胞増殖性障害は、乳房の過形成、化生、および異形成を含み得る。
【0115】
本明細書で使用される場合、「皮膚の細胞増殖性疾患または障害」は、皮膚細胞に影響を及ぼす細胞増殖性障害の全ての形態を含む。皮膚の細胞増殖性障害は、皮膚の前がんまたは前がん状態、皮膚の良性増殖または病変、黒色腫、悪性黒色腫または皮膚の他の悪性増殖または病変、ならびに皮膚以外の体内の組織および器官における転移性病変を含み得る。皮膚の細胞増殖性障害は、皮膚の過形成、化生、および異形成を含み得る。
【0116】
本明細書で使用される場合、「子宮内膜の細胞増殖性疾患または障害」は、子宮内膜の細胞に影響を及ぼす細胞増殖性障害の全ての形態を含む。子宮内膜の細胞増殖性障害は、子宮内膜の前がんまたは前がん状態、子宮内膜の良性増殖または病変、子宮内膜がん、ならびに子宮内膜以外の体内の組織および臓器における転移性病変を含み得る。子宮内膜の細胞増殖性障害は、子宮内膜の過形成、化生、および異形成を含み得る。
【0117】
本開示の二官能性化合物ならびにそれらの薬学的に許容される塩および立体異性体は、患者、例えば、がん患者に、単独療法として、または併用療法によって投与してもよい。治療は、「フロント/ファーストライン」、すなわち、単独でまたは他の処置と組み合わせて、以前の抗がん処置レジメンを受けていない患者における最初の処置として;あるいは単独でまたは他の処置と組み合わせて、以前の抗がん処置レジメンを受けた患者における処置としての「セカンドライン」;あるいは単独でまたは他の処置と組み合わせて、「サードライン」、「フォースライン」などの処置であり得る。治療はまた、以前に不成功であったか、または部分的に成功したが、特定の処置に対して非応答性または不耐性になった処置を有していた患者に与えられ得る。治療はまた、アジュバント処置として、すなわち、現在検出可能な疾患を有さない患者におけるがんの再発を予防するために、または腫瘍の外科的除去後に、与えられ得る。したがって、いくつかの実施形態では、化合物は、化学療法、放射免疫療法、外科的療法、免疫療法、放射線療法、標的療法、またはそれらの任意の組み合わせ等の以前の療法を受けた患者に投与され得る。
【0118】
本開示の方法は、二官能性化合物またはその医薬組成物を患者に単回投与または複数回投与(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、10、15、20回またはそれ以上の投与)で投与することを必要とし得る。例えば、投与頻度は、1日1回から8週間に約1回までの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、投与頻度は、1、2、3、4、5、または6週間にわたって1日約1回の範囲であり、他の実施形態では、3週間(21日間)にわたる毎日の投与と、それに続く7日間の休薬期間とを含む少なくとも1つの28日サイクルを伴う。他の実施形態では、化合物は、2日半の間にわたって1日2回(BID)(合計5回の投与)、または2日の間にわたって1日1回(QD)(合計2回の投与)投与されてもよい。他の実施形態では、化合物は、5日間にわたって1日1回(QD)投与され得る。
【0119】
併用療法
本開示の二官能性化合物およびそれらの薬学的に許容される塩または立体異性体は、疾患および障害の処置において、少なくとも1つの他の活性薬剤、例えば、抗がん剤またはレジメンと組み合わせてまたは同時に使用され得る。この文脈における「組み合わせて」および「同時に」という用語は、薬剤が同時投与されることを意味し、これは、同じまたは別々の剤形によって、および同じまたは異なる投与様式によって、または連続的に、例えば、同じ処置レジメンの一部として、または連続的な処置レジメンによって、実質的に同時期の投与を含む。したがって、連続的に与えられる場合、第2の薬剤の投与の開始時に、2つの薬剤のうちの第1の薬剤は、いくつかの場合において、処置の部位において有効な濃度でなお検出可能である。順序および時間間隔は、それらが一緒に作用することができるように(例えば、それらが別の方法で投与された場合よりも増加した利益を提供するように相乗的に)決定され得る。例えば、薬剤は、同時に、または異なる時点で任意の順序で連続的に投与され得るが、同時に投与されない場合、それらは、相乗的な様式であり得る所望の治療効果を提供するように、十分に近い時間で投与され得る。したがって、これらの用語は、正確に同時に活性薬剤を投与することに限定されない。
【0120】
追加の、例えば、抗がんの、治療剤の投与量は、既知のまたは推奨される用量と同じであってもよく、またはそれよりもさらに低くてもよい。Hardman et al., eds., Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics, 10th ed., McGraw-Hill, New York, 2001; Physician’s Desk Reference 60th ed., 2006を参照のこと。
【0121】
いくつかの実施形態では、本開示の二官能性化合物および追加の抗がん治療剤は、5分未満の間隔、30分未満の間隔、1時間未満の間隔、約1時間の間隔、約1~約2時間の間隔、約2時間~約3時間の間隔、約3時間~約4時間の間隔、約4時間~約5時間の間隔、約5時間~約6時間の間隔、約6時間~約7時間の間隔、約7時間~約8時間の間隔、約8時間~約9時間の間隔、約9時間~約10時間の間隔、約10時間~約11時間の間隔、約11時間~約12時間の間隔、約12時間~18時間の間隔、18時間~24時間の間隔、24時間~36時間の間隔、36時間~48時間の間隔、48時間~52時間の間隔、52時間~60時間の間隔、60時間~72時間の間隔、72時間~84時間の間隔、84時間~96時間の間隔、または96時間~120時間の間隔で投与され得る。2つ以上の抗がん治療剤は、同じ患者の来院内に投与され得る。
【0122】
いくつかの実施形態では、本開示の二官能性化合物およびさらなる治療剤(例えば、抗がん治療剤)は、周期的に投与される。がん治療の文脈における例として、周期治療(cycling therapy)は、抗がん治療剤の一方または両方に対する耐性の発生を低減させるため、抗がん治療剤の一方または両方の副作用を回避または低減させるため、および/または治療の有効性を改善するために、ある期間の1つの抗がん治療剤の投与、続いてある期間の第2の抗がん治療剤の投与、そしてこの連続投与の反復、すなわちサイクルを含む。一例では、周期治療は、抗がん治療剤の1つに対する耐性の発生を低減するため、抗がん治療剤の1つの副作用を回避もしくは低減するため、および/または抗がん治療薬の有効性を改善するために、ある期間の第1の抗がん治療薬の投与、その後のある期間の第2の抗がん治療薬の投与、任意選択でその後のある期間の第3の抗がん治療薬の投与など、そしてこの連続投与の反復すなわちサイクルを含む。
【0123】
いくつかの実施形態では、本開示の二官能性化合物は、レボドパ、シネメット、サフィンアミド、ロピニロール、プラミペキソール、ロチゴチン、アマンタジン、アルタン、コゲンチン、エルデプリル、ゼラパー、およびアジレクト(例えば、パーキンソン病のため)のうちの1種類または複数種類と組み合わせて使用され得る。いくつかの実施形態では、本開示の二官能性化合物は、アリセプト、エクセロン、ラザダイン、ナメンダ、およびナマジリック(例えば、アルツハイマー病のため)のうちの1種類または複数種類と組み合わせて使用され得る。いくつかの実施形態では、本開示の二官能性化合物は、ゼナジン、ハルドール、クロルプロマジン、リスパダール、セロクエル、ケプラ、クロノピン、セレクサ、プロザック、エピトール、およびデパコン(例えば、ハンチントン病のため)のうちの1つ以上と組み合わせて使用され得る。いくつかの実施形態では、本開示の二官能性化合物は、トラゾドン、ゾロフト、ルボックス、ジプレキサ、およびセロクエル(例えば、ピック症候群のため)のうちの1つ以上と組み合わせて使用され得る。
【0124】
神経変性疾患および障害を治療することが知られており、二官能性化合物と併用することができる他の活性薬剤の代表例には、ドーパミン作動性治療薬(例えば、カルビドパ-レボドパ、プラミペキソール(ミラペックス)、ロピニロール(レキップ)およびロチゴチン(ニュープロ、パッチとして与えられる))が含まれる。PDおよび運動障害のためのアポモルフィンおよびモノアミンオキシダーゼB(MAO-B)阻害剤(例えば、セレギリン(エルデプリル、ゼラパー)、ラサギリン(アジレクト)およびサフィンアミド(Xadago))、認知障害のためのコリンエステラーゼ阻害剤(例えば、ベンズトロピン(コゲンチン)またはトリヘキシフェニジル)、痴呆症の行動および心理症状のための抗精神病薬、ならびに疾患の発症を遅延させることを目的とする薬剤、例えば、ALS、小脳性運動失調およびハンティングトン病のためのリルゾール、アルツハイマー症のための非ステロイド系抗炎症剤、ならびにパーキンソン症の神経保護のためのカフェインA2A受容体アンタゴニストおよびCERE-120(アデノ随伴ウイルス血清型2-ニュールツリン)。
【0125】
追加の抗がん剤および処置レジメンの代表的なタイプには、放射線療法、化学療法剤(例えば、有糸分裂阻害剤、血管新生阻害剤、抗ホルモン、オートファジー阻害剤、アルキル化剤、挿入抗生物質、増殖因子阻害剤、抗アンドロゲン、シグナル伝達経路阻害剤、抗微小管剤、白金配位錯体、HDAC阻害剤、プロテアソーム阻害剤、およびトポイソメラーゼ阻害剤)、免疫調節剤、治療用抗体(例えば、単一特異性および二重特異性抗体)、ならびにCAR-T療法が含まれる。
【0126】
二官能性化合物と組み合わせて使用され得る抗がん剤の例は、当該分野で公知である。
例えば、米国特許第9,101,622号(第5.2節)および米国特許第9,345,705 B2号(第12~18欄)を参照されたい。いくつかの実施形態では、本開示の二官能性化合物は、パクリタキセル(例えば、卵巣がん、乳がん、肺がん、カポジ肉腫、子宮頸がん、および膵臓がん)、トポテカン(例えば、卵巣がんおよび肺がん)、イリノテカン(例えば、結腸がん、および小細胞肺がん)、エトポシド(例えば、精巣がん、肺がん、リンパ腫、および非リンパ球性白血病)、ビンクリスチン(例えば、白血病)、ロイコボリン(例えば、結腸がん)、アルトレタミン(例えば、卵巣がん)、ダウノルビシン(例えば、急性骨髄白血病(AML)、急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、およびカポジ肉腫)、トラスツズマブ(例えば、乳がん、胃がん、および食道がん)、リツキシマブ(例えば、非ホジキンリンパ腫)、セツキシマブ(例えば、大腸がん、転移性非小細胞肺がん、および頭頸部がん)、ペルツズマブ(例えば、転移性HER2陽性乳がん)、アレムツズマブ(例えば、慢性リンパ球性白血病(CLL)、皮膚T細胞がん(CTCL)、およびT細胞リンパ腫)、パニツムマブ(例えば、結腸および直腸がん)、タモキシフェン(例えば、乳がん)、フルベストラント(例えば、乳がん)、レトロゾール(例えば、乳がん)、エキセメスタン(例えば、乳がん)、アザシチジン(例えば、骨髄異形成症候群)、マイトマイシンC(例えば、胃腸管がん、および乳がん)、ダクチノマイシン(例えば、ウィルムス腫瘍、横紋筋肉腫、ユーイング肉腫、栄養膜腫瘍、精巣がん、および卵巣がん)、エルロチニブ(例えば、非小細胞肺がんおよび膵臓がん)、ソラフェニブ(例えば、腎臓がんおよび肝臓がん)、テムシロリムス(例えば、腎臓がん)、ボルテゾミブ(例えば、多発性骨髄腫およびマントル細胞リンパ腫)、ペグアスパラガーゼ(例えば、急性リンパ芽球性白血病)、カボメティクス(例えば、肝細胞癌、甲状腺髄様がん、および腎細胞癌)、キイトルーダ(例えば、子宮頸がん、胃がん、肝細胞がん、ホジキンリンパ腫、メラノーマ、メルケル細胞癌、非小細胞肺がん、尿路上皮癌、および頭頸部扁平上皮癌)、ニボルマブ(例えば、結腸直腸がん、肝細胞癌、メラノーマ、非小細胞肺がん、腎細胞癌、小細胞肺がん、および尿路上皮癌)、およびレゴラフェニブ(例えば、結腸直腸がん、消化管間質腫瘍、および肝細胞癌)などの少なくとも1種類の他の抗がん剤と組み合わせて使用され得る。
【0127】
医薬キット
本組成物は、キットまたは医薬システムにアッセンブルされ得る。本開示のこの態様によるキットまたは医薬システムは、本開示の化合物またはその化合物および薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物を収容する1つまたは複数の容器、例えばバイアル、チューブ、アンプル、またはボトルなどをその中に密閉して有する搬器(carrier)またはパッケージ、例えば箱、カートン、チューブなど、を含み、化合物および担体は同じまたは別個の容器中に配置されてもよい。本開示のキットまたは医薬システムはまた、化合物および組成物を使用するための印刷された説明書を含み得る。
【実施例】
【0128】
本開示のこれらの態様および他の態様は、以下の実施例を考慮することでさらに理解されるであろう。実施例は、本開示のある特定の実施形態を例示することを意図しているが、特許請求の範囲によって定義されるようなその範囲を限定することを意図していない。
【0129】
一般的方法
【0130】
特に指示がない限り、試薬および溶媒は、商業的供給業者から受け取ったまま使用した。全ての反応は、Acquity UPLC(登録商標)BEH C18カラム(2.1×50mm、1.7μm粒径)を使用するWaters(登録商標)Acquity超高速液体クロマトグラフィ/質量分析(UPLC/MS)システムを使用してモニターした。UPLC方法A:溶媒勾配=0分で90%A、1.8分で5%A;方法B:溶媒勾配=0分で85%A、1.8分で1%A;溶媒A=H2O中の0.1%ギ酸;溶媒B=アセトニトリル中の0.1%ギ酸;流量:0.6mL/分。反応生成物の精製は、Teledyne ISCO RediSep(登録商標)順相シリカフラッシュカラムを備えたCombiFlash(登録商標)Rfを使用するフラッシュクロマトグラフィ;またはSunFire(商標)C18カラム(19×100mm、5μm粒径):溶媒勾配H2O中0%~99%アセトニトリル(添加剤として0.035%トリフルオロ酢酸(TFA));流量:20mL/分、またはSunFire(商標)C18カラム(30×250mm、5μm粒径):溶媒勾配H2O中0%~99%アセトニトリル(添加剤として0.035%TFA);流量:40mL/分を使用するWaters(登録商標)高速液体クロマトグラフィ(HPLC)システムによって実施した。全ての化合物の純度は95%超であり、Waters(登録商標)UPLCシステムで分析した。1H NMRおよび13C NMRスペクトルは、Bruker Avance III分光計(1Hについては500MHz、13Cについては125MHz)を用いて得た。化学シフトは、1H NMRについて重水素化メタノール(δ=3.31)またはジメチルスルホキシド(DMSO)(δ=2.50)に対して報告される。スペクトルはppm(δ)で与えられ、br=ブロード、s=シングレット、d=ダブレット、t=トリプレット、q=カルテット、m=マルチプレットとして与えられ、カップリング定数(J)はヘルツで報告される。
【0131】
実施例1:(1)の合成。
【化21】
2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-5-(3-((4-(6-(5-(1-メチルシクロプロポキシ)-1H-インダゾール-3-イル)ピリミジン-4-イル)ピペラジン-1-イル)メチル)アゼチジン-1-イル)イソインドリン-1,3-ジオン(1)。
【0132】
表題化合物を、以下の合成スキームに従って調製した。
【化22】
【0133】
国際出願公開第WO2020/081682号に見られる手順に従って調製した5-(1-メチルシクロプロポキシ)-3-(6-(ピペラジン-1-イル)ピリミジン-4-イル)-1-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-1H-インダゾール(20mg、0.042mmol)、および国際出願公開第WO2020/038415号に見られる手順に従って調製した(1-(2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-5-イル)アゼチジン-3-イル)メチル4-メチルベンゼンスルホネート(21mg、0.042mmol)のMeCN(5mL)溶液に、NaI(32mg、0.21mmol)およびK2CO3(12mg、0.08mmol)を加えた。反応混合物を100℃で2時間撹拌した。1-(2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-5-イル)アゼチジン-3-イル)メチル4-メチルベンゼンスルホネート(10mg、0.021mmol)を加え、混合物をさらに1時間撹拌した。混合物を室温に冷却し、H2Oでクエンチし、EtOAcで抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥し、濃縮して、褐色油状物を得、これをCH2Cl2(10mL)に溶解した。TFA(1mL)を加え、混合物を1時間撹拌した。溶媒を除去し、残渣をH2O中0~70%MeCNの勾配を使用する逆相HPLCにより精製して、所望の生成物を黄色固体として得た((11mg、収率39%)ESI m/z:676.43)。
【0134】
実施例2:(2)の合成。
【化23】
2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-4-(6-(4-(6-(5-(1-メチルシクロプロポキシ)-1H-インダゾール-3-イル)ピリミジン-4-イル)ピペラジン-1-イル)ヘキサ-1-イン-1-イル)イソインドリン-1,3-ジオン(2)。
【0135】
表題化合物を、以下の合成スキームに従って調製した。
【化24】
【0136】
表題化合物を、Su, S., et al., J. Med. Chem. 62 (16): 7575-7582, (2019)に従って調製した6-(2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)ヘキサ-5-イン-1-イル4-メチルベンゼンスルホネート(42mg、0.08mmol)を使用して、実施例1の手順を使用して調製して、黄色固体(18mg、収率33%)を得た。ESI m/z:687.62)。
【0137】
実施例3:(3)の合成。
【化25】
2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-5-(3-((4-(4-(6-(5-(1-メチルシクロプロポキシ)-1H-インダゾール-3-イル)ピリミジン-4-イル)ピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)メチル)アゼチジン-1-イル)イソインドリン-1,3-ジオン(3)
【0138】
2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-5-(3-((4-オキソピペリジン-1-イル)メチル)アゼチジン-1-イル)イソインドリン-1,3-ジオンの合成。
【0139】
表題化合物を、以下の合成スキームに従って調製した。
【化26】
【0140】
(1-(2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-5-イル)アゼチジン-3-イル)メチル4-メチルベンゼンスルホネート(200mg、0.41mmol)およびピペリジン-4-オン(56mg、0.41mmol)のMeCN(15mL)溶液に、NaI(12mg、0.02mmol)およびK2CO3(278mg、2.01mmol)を加えた。反応混合物を室温で2時間撹拌した。混合物を室温に冷却し、H2Oでクエンチし、EtOAcで抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濃縮して、褐色の油状物を得、これをさらに精製することなく使用した(ESI m/z:426.73)。
【0141】
2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-5-(3-((4-(4-(6-(5-(1-メチルシクロプロポキシ)-1H-インダゾール-3-イル)ピリミジン-4-イル)ピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)メチル)アゼチジン-1-イル)イソインドリン-1,3-ジオン(3)の合成。
【0142】
表題化合物を、以下の合成スキームに従って調製した。
【化27】
【0143】
5-(1-メチルシクロプロポキシ)-3-(6-(ピペラジン-1-イル)ピリミジン-4-イル)-1-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-1H-インダゾール(21mg、0.043mmol)のDCE(5mL)溶液に、2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-5-(3-((4-オキソピペリジン-1-イル)メチル)アゼチジン-1-イル)イソインドリン-1,3-ジオン(20mg、0.047mmol)、続いてNaBH(OAc)3(91mg、0.43mmol)およびAcOH(10滴)を加えた。混合物を50℃で8時間撹拌した。混合物を室温に冷却し、H2Oでクエンチし、EtOAcで抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥し、濃縮して褐色の油状物を得、これをCH2Cl2(10mL)に溶解した。TFA(1mL)を加え、混合物を1時間撹拌した。溶媒を除去し、残渣をH2O中0~70%MeCNの勾配を使用する逆相HPLCにより精製して、所望の生成物を黄色固体として得た((7mg、収率20%)。ESI m/z:759.52)。
【0144】
実施例4:(4)の合成。
【化28】
5-(1-(6-(4-((1-(2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-5-イル)アゼチジン-3-イル)メチル)ピペラジン-1-イル)ピリミジン-4-イル)-1H-インダゾール-6-イル)スピロ[2.3]ヘキサン-5-カルボニトリル(4)
【0145】
表題化合物を、以下の合成スキームに従って調製した。
【化29】
【0146】
WO2019074810に記載の方法に従って調製した5-(1-(6-クロロピリミジン-4-イル)-1H-インダゾール-6-イル)スピロ[2.3]ヘキサン-5-カルボニトリル(6.7mg、0.020mmol、1.0当量)、および2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-5-(3-(ピペラジン-1-イルメチル)アゼチジン-1-イル)イソインドリン-1,3-ジオン(8.2mg、0.020mmol、1.0当量)のNMP(0.2mL)溶液を130℃に加熱し、2時間撹拌した。周囲温度に冷却した後、反応混合物を分取HPLC(tR=27.9分)によって精製し、凍結乾燥して、所望の生成物を黄色固体(7.0mg、収率50%)として得た。LCMS C39H39N10O4(M+H)+711.45,tR=1.07分)。
【0147】
実施例5:(5)の合成
【化30】
5-(1-(6-(3-((4-(2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-5-イル)ピペラジン-1-イル)メチル)アゼチジン-1-イル)ピリミジン-4-イル)-1H-インダゾール-6-イル)スピロ[2.3]ヘキサン-5-カルボニトリル(5)
【0148】
表題化合物を、以下の合成スキームに従って調製した。
【化31】
【0149】
5-(1-(6-(3-(ピペラジン-1-イルメチル)アゼチジン-1-イル)ピリミジン-4-イル)-1H-インダゾール-6-イル)スピロ[2.3]ヘキサン-5-カルボニトリル(8.2mg、0.018mmol、1.0当量)および2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-5-フルオロイソインドリン-1,3-ジオン(5.0mg、0.020mmol、1.0当量)のNMP(0.2mL)溶液を130℃に加熱し、2時間撹拌した。周囲温度に冷却した後、反応混合物をHPLC(tR=27.1分)により精製して、凍結乾燥後に所望の生成物を褐色がかった固体として得た(2.0mg、収率15%)。LCMS C39H39N10O4(M+H)+711.34,tR=1.05分)。
【0150】
実施例6:(6)の合成
【化32】
5-(1-(6-(3-((4-(2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)ピペラジン-1-イル)メチル)アゼチジン-1-イル)ピリミジン-4-イル)-1H-インダゾール-6-イル)スピロ[2.3]ヘキサン-5-カルボニトリル(6)
【0151】
表題化合物を、以下の合成スキームに従って調製した。
【化33】
【0152】
5-(1-(6-(3-(ピペラジン-1-イルメチル)アゼチジン-1-イル)ピリミジン-4-イル)-1H-インダゾール-6-イル)スピロ[2.3]ヘキサン-5-カルボニトリル(8.2mg、0.018mmol、1.0当量)および2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-4-フルオロイソインドリン-1,3-ジオン(5.0mg、0.020mmol、1.0当量)のNMP(0.2mL)溶液を130℃に加熱し、2時間撹拌した。周囲温度に冷却した後、反応混合物をHPLC(tR=27.4分)により精製して、凍結乾燥後に所望の生成物を褐色がかった固体として得た(3.0mg、収率23%)。LCMS C39H39N10O4(M+H)+711.35,tR=1.04分)。
【0153】
実施例7:LRRK2の分解
【0154】
細胞株:マウス胚性線維芽細胞(MEF)WT、MEFにおけるLRRK2ホモ接合性ノックイン[R1441C;VPS35N(D620N);G2019S]。
【0155】
LRRK2分解剤の試験濃度:0nM;10nM;30nM;100nM;300nM;1000nM。
【0156】
実験時点:1時間;6時間;24時間および48時間。
【0157】
完全増殖培地:10%ウシ胎仔血清;1%pen/strep;1%Lグルタミン;1%MEM非必須アミノ酸溶液;1%ピルビン酸ナトリウムを補充したDMEM。
【0158】
市販の抗体および社内で精製した抗体のリスト:
【0159】
Antibodies, Inc.からのマウス抗LRRK2/ダルダーリン抗体(Cat.#75-253)。
【0160】
全LRRK2(UDD3)およびpS935-LRRK2(UDD2)に対するウサギモノクローナル抗体を、ダンディー大学で精製した(Dzamkoら、PLoS ONE 7、e39132 10.1371/journal.pone.0039132(2012)に記載のとおり)。
【0161】
ローディングコントロール:抗α-チューブリン(Cell Signaling Technology#5174);抗GAPDH(Santa Cruz Biotechnology Cat. #sc-32233)。
【0162】
(p)Rab10抗体:ウサギ抗Rab10(ホスホT73)抗体[MJF-R21](ab230261);マウスMJFF-全Rab10モノクローナル抗体は、nanoTools(nanoTools.de)によって作製した;ウサギ全Rab10は、Cell Signaling Technology(Rab10(D36C4)XP(登録商標)ウサギmAb#8127)からのものであった。
【0163】
処理:WT MEF、および変異体LRRK2(R1441C、VPS35NおよびG2019S)細胞を含有する細胞を、3mLの完全増殖培地/ウェルの最終体積で6ウェルプレート中に等しい密度でプレーティングした。分解剤をDMSO中で再構成し、細胞中1:1000、すなわち3μL/3mLで使用した。細胞が60%を超えるコンフルエントになると処理を開始し、最長の48時間の時点から開始し、24時間、6時間、最後に1時間が続いた。
【0164】
細胞溶解:培地を吸引し、プレートを氷上に置き、細胞をDPBSで洗浄した。50mM Tris-HCl、pH7.5、1%(v/v)Triton X-100、1mM EGTA、1mMオルトバナジン酸ナトリウム、50mM NaF、0.1%(v/v)2-メルカプトエタノール、10mM 2-グリセロホスフェート、5mMピロリン酸ナトリウム、0.1μg/mLミクロシスチン-LR(Enzo Life Sciences)、270mMスクロースおよび完全EDTA不含プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma-AldrichCat #11836170001)を含有する氷冷溶解緩衝液50マイクロリットルをウェルごとに添加した。溶解物を、4℃で15分間、20817g(14000rpm)で遠心分離し、上清を使用して、ブラッドフォードアッセイ(Pierce(商標)Coomassie(Bradford)Protein Assay Kit、Thermo Scientific Cat #23200)を使用してタンパク質濃度を決定し、ウエスタンブロット分析に用いた。
【0165】
ウエスタンブロット分析:細胞溶解物を4×SDS-PAGE試料緩衝液[50mM Tris-HCl、pH6.8、2%(w/v)SDS、10%(v/v)グリセロール、0.02%(w/v)ブロモフェノールブルーおよび1%(v/v)2-メルカプトエタノール]と混合して、最終総タンパク質濃度を1μg/μLとし、95℃で5分間加熱した。20マイクログラムの試料を、3μLのBIO-RADタンパク質マーカー(Precision Plus Protein(商標)All Blue Prestained Protein Standards#1610373kDa)と共にNuPAGE 4~12%Bis-Tris勾配ゲル(Life Technologies)にロードし、ゲルを、NuPAGE MOPS SDS泳動緩衝液(Life Technologies、Cat #NP0001-02)を用いて110Vで2時間30分、2連で泳動した。電気泳動後、分離したタンパク質をニトロセルロース膜(GE Healthcare、Amersham Protran 0.45μm NC)に90Vで90分間転写した。Fanら、Biochem. J. 475:23-44(2018)に以前に記載されたように、転写された膜をポンソーS染色で簡単に染色し、3つのストリップに分けた。簡単に説明すると、上部ストリップを膜の上部から75kDaまで切断し、中間ストリップ切断は75kDa~30kDaであり、底部ストリップ切断は30kDaから膜の底部までであった。膜ストリップを、TBS-T[20mM Tris-HCl、pH7.5、150mM NaClおよび0.1%(v/v)Tween 20]に溶解した5%(w/v)乾燥スキムミルクを用いて室温で1時間ブロックし、TBS-T中で10分間隔で4回洗浄し、そしてTBS-T中の5%BSA(ウシの血清アルブミン)で希釈した一次抗体とともに4℃で一晩インキュベートした。一次抗体は以下のように使用した:膜の1つからの上のストリップを、マウス抗LRRK2 C末端全抗体と組み合わせた1μg/mLのウサギ抗LRRK2 pS935 UDD2抗体と共にインキュベートし、一方、上の2番目のストリップを、100ng/mLの最終濃度の抗LRRK2 N末端全抗体(UDD3)と共にインキュベートし、中央のストリップを、50ng/mLの最終濃度のウサギ抗α-チューブリン(Cell Signaling Technology#5174)およびマウス抗GAPDH抗体(Santa Cruz Biotechnology#sC32233)と共にインキュベートした。下のストリップを、各抗体について0.5μg/mLの最終濃度でマウスMJFF-全Rab10モノクローナル抗体と、および1μg/mLの最終濃度で全Rab10(Rab10(D36C4)XP(登録商標)ウサギmAb#8127 Cell Signaling Technology)と多重化したウサギMJFF-pRAB10モノクローナル抗体でブロットした(Fan et al., supra.,Lis, et al., Biochem. J. 475:1-22(2018))。膜を前と同様に洗浄し、TBS-T中に希釈した(それぞれ1:30000および1:15000)抗ウサギおよび抗マウス近赤外蛍光IRDye抗体(LI-COR#925-68070、#925-32211)と共に室温で1時間インキュベートした。二次抗体中でのインキュベーション後、膜ストリップを洗浄し、LI-COR Odyssey CLxウエスタンブロットイメージングシステムを使用してシグナルを発生させた。
【0166】
図1は、0~1000nMの範囲の濃度の示された化合物1、2、および3で処理された448T細胞の一組のイムノブロットである。データは、1が、60%のD
maxおよび33nMのDC
50を有するLRRK2の強力な分解剤であることを示す。
【0167】
全ての特許公報および非特許文献、本開示が属する技術分野の当業者の技術レベルを示す。これらの刊行物はすべて、個々の刊行物が具体的かつ個別に参照により組み込まれると示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0168】
本明細書の開示は、特定の実施形態を参照して説明されているが、これらの実施形態は、本開示の原理および用途の単なる例示であることを理解されたい。したがって、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態に対して多数の修正を行うことができ、他の構成を考案することができることを理解されたい。
【配列表】
【国際調査報告】