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特表2024-526307モータを制御するためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】モータを制御するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 21/22 20160101AFI20240709BHJP
【FI】
H02P21/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500202
(86)(22)【出願日】2022-07-07
(85)【翻訳文提出日】2024-03-04
(86)【国際出願番号】 US2022036417
(87)【国際公開番号】W WO2023283378
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】63/219,096
(32)【優先日】2021-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520456860
【氏名又は名称】タウ モーターズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】ペニントン ウォルター ウェズリー サード
(72)【発明者】
【氏名】スウィント イーサン バジェット
(72)【発明者】
【氏名】ダ コスタ アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ルビン マシュー ジェイ.
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505CC05
5H505DD06
5H505EE30
5H505EE41
5H505EE49
5H505GG04
5H505HB02
5H505JJ03
5H505JJ04
5H505KK06
5H505LL22
5H505LL24
5H505LL41
5H505LL43
(57)【要約】
モータを制御およびシミュレートするためのシステムおよび方法が提供される。電子モータコントローラは、現在モータ情報と、現在モータ情報およびモータの回転基準系に基づいてモータ制御パラメータセットとを決定する。回転基準フレームは、ステータD軸成分における意図出力応答と直接直交ゼロロータ(DQNR)基準系のロータ界磁(R)成分をデカップリングする独立した入力チャネルを有する。電子モータコントローラは、さらに、モータ制御パラメータセットに基づいてモータを制御する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを制御する方法であって、
電子モータコントローラを用いて、現在モータ情報を決定するステップと、
前記電子モータコントローラを用いて、前記現在モータ情報および前記モータの回転基準系に基づいてモータ制御パラメータセットを決定するステップであって、前記回転基準系は、ステータのD軸成分における意図出力応答および直接直交ゼロロータ(DQNR)基準系におけるロータ界磁成分(R)をデカップリングする独立の入力チャンネルを有するステップと、
前記電子モータコントローラにより、前記モータ制御パラメータセットに基づいて前記モータを制御するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記現在モータ情報を決定するステップは、
前記モータのロータに関するロータ位置角を決定するステップと、
前記電子モータコントローラにより、前記ロータのロータ界磁電流および前記モータのステータのそれぞれのコイルを通るステータ電流を含むモータ電流を決定するステップと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モータの前記回転基準系は、励磁インダクタンス軸(M軸)およびリーケージインダクタンス軸(K軸)を有するMK基準系である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記モータ制御パラメータセットを決定するステップは、前記電子モータコントローラにより、励磁インダクタンス電流(I)、リーケージインダクタンス電流(I)、直交電流(I)、およびヌル電流(Inull)に基づいて、前記ロータのロータ界磁電圧のためのロータ電圧制御と、前記ステータのそれぞれのコイルを通るステータ電圧のためのステータ電圧制御とを含む前記モータ制御パラメータセットにおける所望のモータ電圧を決定するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記MK基準系において、前記ステータおよび前記ロータの間のリーケージ電流は、ゼロと推定される、あるいは、ステータ対ロータ巻数比は、前記ステータおよび前記ロータの間の前記リーケージ電流をゼロに等しくなるように調整される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記モータの前記回転基準系は、加算モード軸(SM軸)および差分モード軸(DM軸)を有するSM/DM基準系である、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記モータ制御パラメータセットを決定するステップは、
前記電子モータコントローラにより、加算モード電流(ISM)、差分モード電流(IDM)、直交電流(I)、およびヌル電流(Inull)に基づいて、前記ロータのロータ界磁電圧のためのロータ電圧制御と、
前記ステータのそれぞれのコイルを通るステータ電圧のためのステータ電圧制御と、
を有し、前記モータ制御パラメータセットにおける所望のモータ電圧を決定するステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記モータ制御パラメータセットを決定するステップは、前記電子モータコントローラにより、前記現在モータ情報を前記モータ制御パラメータセットに対応付ける検索表にアクセスするステップであって、前記検索表は、モータ情報の入力セットから前記回転基準系への基準系変換に基づいて設定されるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記モータ制御パラメータセットを決定するステップは、
前記現在モータ情報を前記回転基準系に変換し、変換済み現在モータ情報を生成するステップと、
前記変換済み現在モータ情報に基づいて、前記回転基準系における制御軸のためのモータ制御を決定するステップと、
前記モータ制御を前記回転基準系より前記モータ制御パラメータセットに変換するステップと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記モータは、巻線界磁同期モータ、永久磁石同期モータ、あるいはハイブリッド永久磁石-巻線界磁同期モータである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
電子プロセッサを有する電子モータコントローラを含むモータシステムであって、
前記電子モータコントローラは、
現在モータ情報を決定し、
前記現在モータ情報と、ステータのD軸成分における意図出力応答および直接直交ヌルロータ(DQNR)基準系におけるロータ界磁成分(R)をデカップリングする独立の入力チャンネルを有するモータの回転基準系とに基づいてモータ制御パラメータセットを決定し、
前記モータ制御パラメータセットに基づいて前記モータを制御する少なくとも1つの信号を生成するように構成される、モータシステム。
【請求項12】
前記現在モータ情報を決定するために、前記電子モータコントローラは、
前記モータのロータに関するロータ位置角を決定し、
前記ロータのロータ界磁電流および前記モータのステータのそれぞれのコイルを通るステータ電流を含むモータ電流を決定するように構成される、請求項11に記載のモータシステム。
【請求項13】
前記モータの前記回転基準系は、励磁インダクタンス軸(M軸)およびリーケージインダクタンス軸(K軸)を有するMK基準系である、請求項12に記載のモータシステム。
【請求項14】
前記モータ制御パラメータセットを決定するために、前記電子モータコントローラは、励磁インダクタンス電流(I)、リーケージインダクタンス電流(I)、直交電流(I)、およびヌル電流(Inull)に基づいて、前記ロータのロータ界磁電圧のためのロータ電圧制御と、前記ステータのそれぞれのコイルを通るステータ電圧のためのステータ電圧制御とを含む前記モータ制御パラメータセットにおける所望のモータ電圧を決定するように構成される、請求項13に記載のモータシステム。
【請求項15】
前記MK基準系において、前記ステータおよび前記ロータの間のリーケージ電流は、ゼロと推定される、あるいは、ステータ対ロータ巻数比は、前記ステータおよび前記ロータの間の前記リーケージ電流をゼロに等しくなるように調整される、請求項13に記載のモータシステム。
【請求項16】
前記モータの前記回転基準系は、加算モード軸(SM軸)および差分モード軸(DM軸)を有するSM/DM基準系である、請求項12に記載のモータシステム。
【請求項17】
前記モータ制御パラメータセットを決定するために、前記電子モータコントローラは、加算モード電流(ISM)、差分モード電流(IDM)、直交電流(I)、およびヌル電流(Inull)に基づいて、前記ロータのロータ界磁電圧のためのロータ電圧制御と、前記ステータのそれぞれのコイルを通るステータ電圧のためのステータ電圧制御とを含む前記モータ制御パラメータセットにおける所望のモータ電圧を決定するように構成される、請求項16に記載のモータシステム。
【請求項18】
前記モータ制御パラメータセットを決定するために、前記電子モータコントローラは、記現在モータ情報を前記モータ制御パラメータセットに対応付ける検索表にアクセスするステップであって、前記検索表は、モータ情報の入力セットから前記回転基準系への基準系変換に基づいて設定されるように構成される、請求項11に記載のモータシステム。
【請求項19】
前記モータ制御パラメータセットを決定するために、前記電子モータコントローラは、
前記現在モータ情報を前記回転基準系に変換し、変換済み現在モータ情報を生成し、
前記変換済み現在モータ情報に基づいて、前記回転基準系における制御軸のためのモータ制御を決定し、
前記モータ制御を前記回転基準系より前記モータ制御パラメータセットに変換するように構成される、請求項11に記載のモータシステム。
【請求項20】
前記モータと、
前記モータおよび前記電子モータコントローラに結合されるモータ駆動回路であって、前記少なくとも1つの制御信号を受信し、かつ、前記モータを駆動するように構成されるモータ駆動回路と、をさらに含む、請求項11に記載のモータシステム。
【請求項21】
前記モータは、巻線界磁同期モータ、永久磁石同期モータ、あるいはハイブリッド永久磁石-巻線界磁同期モータである、請求項11に記載のモータシステム。
【請求項22】
モータをシミュレートする方法であって、
電子コントローラにより、少なくとも1つの初期モータ仕様を決定するステップと、
前記電子コントローラにより、少なくとも1つのモータ動作シミュレーションパラメータを決定するステップと、
前記電子コントローラにより、前記モータの回転基準系に基づいたモータ制御を用いて、前記少なくとも1つの初期モータ仕様および前記少なくとも1つのモータ動作シミュレーションパラメータに係るモータをシミュレートするステップであって、前記回転基準系は、ステータのD軸成分における意図出力応答および直接直交ゼロロータ(DQNR)基準系におけるロータ界磁成分(R)をデカップリングする独立の入力チャンネルを有するステップと、
前記モータの前記シミュレーションに基づいて、前記回転基準系におけるシミュレーション結果を生成するステップと、
を含む方法。
【請求項23】
前記モータの回転基準系に基づいたモータ制御を用いるステップは、
前記電子コントローラにより、現在モータ情報を決定するステップと、
前記電子コントローラにより、前記現在モータ情報および前記回転基準系の制御軸に基づいてモータ制御パラメータセットを決定するステップと、
前記電子コントローラにより、前記モータ制御パラメータセットに基づいて前記モータのための少なくとも1つの制御信号を生成するステップと、
を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記モータの前記回転基準系は、励磁インダクタンス軸(M軸)およびリーケージインダクタンス軸(K軸)を有するMK基準系である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記モータ制御パラメータセットを決定するステップは、前記電子コントローラにより、励磁インダクタンス電流(I)、リーケージインダクタンス電流(I)、直交電流(I)、およびヌル電流(Inull)に基づいて、前記ロータのロータ界磁電圧のためのロータ電圧制御と、前記ステータのそれぞれのコイルを通るステータ電圧のためのステータ電圧制御とを含む前記モータ制御パラメータセットにおける所望のモータ電圧を決定するステップを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記モータの前記回転基準系は、加算モード軸(SM軸)および差分モード軸(DM軸)を有するSM/DM基準系である、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記モータ制御パラメータセットを決定するステップは、
前記電子コントローラにより、加算モード電流(ISM)、差分モード電流(IDM)、直交電流(I)、およびヌル電流(Inull)に基づいて、前記ロータのロータ界磁電圧のためのロータ電圧制御と、
前記ステータのそれぞれのコイルを通るステータ電圧のためのステータ電圧制御と、
を有し、前記モータ制御パラメータセットにおける所望のモータ電圧を決定するステップを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記電子コントローラにより、少なくとも前記初期モータ仕様および前記モータ動作シミュレーションパラメータの一方の群から選択される値に対する修正値を有する修正モータパラメータを決定するステップと、
前記電子コントローラにより、前記モータの前記回転基準系に基づいたモータ制御を用いて、前記修正モータパラメータに係る前記モータをシミュレート
するステップと、
前記モータの前記シミュレーショに基づいて、前記回転基準系における更なるシミュレーション結果を生成するステップと、
をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記電子コントローラにより、前記シミュレーションの結果および前記更なるシミュレーションの結果に基づいて、前記モータに所望の効果を提供するモータパラメータを示すステップをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記モータは、巻線界磁同期モータ、永久磁石同期モータ、あるいはハイブリッド永久磁石-巻線界磁同期モータである、請求項22に記載の方法。
【請求項31】
電子プロセッサを有する電子コントローラを含むモータシステムであって、
前記電子コントローラは、
少なくとも1つの初期モータ仕様を決定し、
少なくとも1つのモータ動作シミュレーションパラメータを決定し、
前記モータの、ステータのD軸成分における意図出力応答および直接直交ゼロロータ(DQNR)基準系におけるロータ界磁成分(R)をデカップリングする独立の入力チャンネルを有する回転基準系に基づいたモータ制御を用いて、前記少なくとも1つの初期モータ仕様および前記少なくとも1つのモータ動作シミュレーションパラメータに係るモータをシミュレートし、
前記モータの前記シミュレーションに基づいて、前記回転基準系におけるシミュレーション結果を生成するように構成される、モータシステム。
【請求項32】
前記回転基準系に基づいたモータ制御を用いるために、
前記電子コントローラは、さらに、
現在モータ情報を決定し、
前記現在モータ情報および前記回転基準系の制御軸に基づいてモータ制御パラメータセットを決定し、
前記モータ制御パラメータセットに基づいて前記モータのための少なくとも1つの制御信号を生成するように構成される、請求項31に記載のモータシステム。
【請求項33】
前記モータの前記回転基準系は、励磁インダクタンス軸(M軸)およびリーケージインダクタンス軸(K軸)を有するMK基準系である、請求項32に記載のモータシステム。
【請求項34】
前記モータ制御パラメータセットを決定するために、前記電子コントローラは、さらに励磁インダクタンス電流(I)、リーケージインダクタンス電流(I)、直交電流(I)、およびヌル電流(Inull)に基づいて、前記ロータのロータ界磁電圧のためのロータ電圧制御と、前記ステータのそれぞれのコイルを通るステータ電圧のためのステータ電圧制御とを含む前記モータ制御パラメータセットにおける所望のモータ電圧を決定するように構成される、請求項33に記載のモータシステム。
【請求項35】
前記モータの前記回転基準系は、加算モード軸(SM軸)および差分モード軸(DM軸)を有するSM/DM基準系である、請求項32に記載のモータシステム。
【請求項36】
前記モータ制御パラメータセットを決定するために、前記電子コントローラは、さらに加算モード電流(ISM)、差分モード電流(IDM)、直交電流(I)、およびヌル電流(Inull)に基づいて、前記ロータのロータ界磁電圧のためのロータ電圧制御と、前記ステータのそれぞれのコイルを通るステータ電圧のためのステータ電圧制御とを行い、前記モータ制御パラメータセットにおける所望のモータ電圧を決定するように構成される、請求項35に記載のモータシステム。
【請求項37】
前記電子コントローラは、さらに、
少なくとも前記初期モータ仕様および前記モータ動作シミュレーションパラメータの一方の群から選択される値に対する修正値を有する修正モータパラメータを決定し、
前記モータの前記回転基準系に基づいたモータ制御を用いて、前記修正モータパラメータに係る前記モータをシミュレートし、
前記モータの前記シミュレーショに基づいて、前記回転基準系における更なるシミュレーション結果を生成するように構成される、請求項31に記載のモータシステム。
【請求項38】
前記電子コントローラは、さらに、前記シミュレーションの結果および前記更なるシミュレーションの結果に基づいて、前記モータに所望の効果を提供するモータパラメータを示すように構成される、請求項37に記載のモータシステム。
【請求項39】
前記モータは、巻線界磁同期モータ、永久磁石同期モータ、あるいはハイブリッド永久磁石-巻線界磁同期モータである、請求項31に記載のモータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年7月7日に出願された「System and Method for Controlling Wound Field Synchronous Motor」と題する米国仮出願第63/219,096号に対する優先権を主張し、その全内容を参照により本明細書に援用する。
【0002】
(連邦政府による資金提供を受けた研究に関する記載)
該当しない。
【背景技術】
【0003】
様々なタイプの電気モータが多くの産業や場面で生産され、使用されている。同期モータは、AC電源信号(例えば、ステータの各位相に対して1つの信号)によって駆動され、ロータの回転を引き起こすステータを有する交流(AC)モータである。より詳細には、ステータのステータ巻線内のAC電源信号は、ロータの回転を引き起こすためにロータの1つの磁界または複数の磁界と相互作用する磁界を生成する。ロータの回転は、一般に交流電源電流の周波数に同期する。ロータは永久磁石ロータでも巻線界磁ロータであってもよい。巻線界磁ロータの場合、電流がロータの1つまたは複数の界磁巻線に供給され、ロータの1つの磁界または複数の磁界を生成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
巻線界磁同期(WFS)モータを効率的に駆動するために、特定の時間および振幅でステータ巻線とロータ巻線とへの電流の印加を制御することは困難である。例えば、モータコントローラは、インバータを制御して、ロータの現在位置及びモータの他の特徴に基づいてモータの各位相に交流信号を供給することができる。回転ロータと相互作用するそれぞれのステータ巻線の磁界の物理特性は、モータの効率的な駆動をもたらすために作り出して解決することに挑戦である複雑な数学的問題につながる。
【0005】
いくつかのシステムでは、モータコントローラは、モータ制御を簡単化するために回転基準系を用いて動作する。例えば、モータの特性値(静止基準系内)は、クラークアンドパーク変換に基づく変換を使用して、測定されて、直接直交ゼロ(DQN)空間、またはDQN+ロータ(R)空間または基準系(DQNR、RDQNull、およびRDQΦ基準系とも呼ばれる)に変換されることができる。言い換えると、モータの特性値(例えば、ステータ電流、ロータ電流、及びロータ位置)は、D軸値、Q軸値、N軸(又はO軸)値、及びR(ロータ界磁)値に変換することができる。ステータが交流信号の周波数で回転する回転基準系を使用することによって、交流信号を直流信号(すなわち、D、Q、N、およびR値)として扱うことができ、制御信号を決定するための計算を単純化することができる。決定されたDQNおよびR値に基づいて、所望のDQNおよびR値を計算し、次いで、モータを制御するために、静止基準系内のステータ制御値およびロータ制御値に戻すように変換されることができる。
【0006】
永久磁石(PM)同期モータに対して、WFSモータのためのRDQN制御方式において、ロータは、PM同期とWFSモータの両方に存在する可能性がある(ステータ)D軸およびQ軸の間の結合状態に加えて、(ステータ)D軸およびR(ロータ界磁)の間の付加的なクロスカップリングを提供する。言い換えると、PM同期モータおよびWFSモータの両方に対して、D軸における変化がQ軸に影響を与え、Q軸における変化がD軸に影響を与える。しかし、WFSモータに対しては、D軸における変化がRに影響し、Rにおける変化がD軸に影響するという点では、付加的な制御の複雑性が存在する。D軸およびR成分の間のクロスカップリングは、少なくともいくつかの場合において、ステータとロータとの間の固有エアギャップより、無視できないほどのリーケージ電流と、意図されたものと異なる有効なロータ-ステータ巻数比率とをもたらす。これらのクロスカップリングは、複雑性を増し、WFSモータの高性能用途のためのモータおよびモータコントローラを設計するための課題を提示した。
【0007】
クロスカップリングは、ある次元の変化が別の次元の変化も誘導する場合に発生する。例えば、D軸電圧の変化はまた、ロータ界磁電流および磁束の変化を作り出す。同様に、ロータ界磁電圧の変化もステータD軸電流の変化を誘導する。クロスカップリングは、ある次元の変化が別の次元の1%を超える、10%を超える、または50%を超える変化を誘導するときに、存在するまたは認識可能であるとして記述されてもよい。クロスカップリングは、「タイト」又は「ルーズ」と説明することができ、この場合、誘導された変化が大きいほど、カップリングはタイトになる。クロスカップリングは、1つの次元の変化が、第2の次元における1~10%、10~20%の間、10%未満、または20%未満の誘導された変化が生じる場合に、ルーズと見なされてもよい。クロスカップリングは、1つの次元の変化が30~50%の間、50~90%の間、30%を超える、または50%を超える第2次元の誘導された変化が生じる場合に、タイトであるとみなされてもよい。2つの次元(または変数あるいは成分)は、1つの次元の変化が別の次元の誘導された変化が生じない場合、または0.5%または1%などのような閾値を上回る別の次元の誘導された変化が生じない場合に、デカップリングされたとみなされてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願明細書に記載される実施形態は、D軸成分における意図出力応答をロータ界磁(R)成分からデカップリングする独立の入力チャネルを有する回転基準系を使用または依存するモータコントローラに関する。例えば、いくつかの実施形態では、モータコントローラは、励磁インダクタンス軸(M軸)、リーケージインダクタンス軸(K軸)、直交軸(Q軸)、及びNull軸(N軸)を含むMK(回転)基準系に変換するためにMK変換を使用又は依存してもよい。加えて、いくつかの実施形態では、モータコントローラは、加算モード軸(SM軸)、差分モード軸(DM軸)、直交軸(Q軸)、およびNull軸(N軸)を含む、SM/DM(回転)基準系に変換するためのSM/DM変換を使用または依存してもよい。D軸成分の所望の出力応答をロータ磁場(R)成分からデカップリングすることにより、WFSモータシステムを対角化し、WFSモータの設計および/または制御を簡素化する。
【0009】
一実施形態では、巻線界磁同期モータを制御するための方法が提供される。この方法は、電子モータコントローラを用いて、現在モータ情報を決定するステップを含む。この方法は、さらに、前記電子モータコントローラを用いて、前記現在モータ情報および前記モータの回転基準系に基づいてモータ制御パラメータセットを決定するステップを含む。前記回転基準系は、ステータのD軸成分における意図出力応答および直接直交ゼロロータ(direct-quadrature-null-rotor,DQNR)基準系におけるロータ界磁成分(R)をデカップリングする独立の入力チャンネルを有する。この方法は、さらに、前記電子モータコントローラにより、前記モータ制御パラメータセットに基づいて前記モータを制御するステップを含む。
【0010】
別の事例では、モータシステムが提供される。このモータシステムは、電子プロセッサを有する電子モータコントローラを含む。電子モータコントローラは、現在モータ情報を決定し、前記現在モータ情報と、巻線界磁同期モータの回転基準系とに基づいてモータ制御パラメータセットを決定するように構成される。前記回転基準系は、ステータのD軸成分における意図出力応答および直接直交ゼロロータ(DQNR)基準系におけるロータ界磁成分(R)をデカップリングする独立の入力チャンネルを有する。電子モータコントローラは、さらに、前記モータ制御パラメータセットに基づいて前記モータを制御する少なくとも1つの信号を生成するように構成される。
【0011】
別の事例では、巻線界磁同期モータをシミュレートするための方法が提供される。前記方法は、電子コントローラにより、少なくとも1つの初期モータ仕様を決定するステップを含む。前記方法は、さらに、前記電子コントローラにより、少なくとも1つのモータ動作シミュレーションパラメータを決定するステップを含む。前記方法は、さらに、前記電子コントローラにより、前記モータの回転基準系に基づいたモータ制御を用いて、前記少なくとも1つの初期モータ仕様および前記少なくとも1つのモータ動作シミュレーションパラメータに係るモータをシミュレートするステップを含む。前記回転基準系は、ステータのD軸成分における意図出力応答および直接直交ゼロロータ(DQNR)基準系におけるロータ界磁成分(R)をデカップリングする独立の入力チャンネルを有する。前記方法は、さらに、前記モータの前記シミュレーションに基づいて、前記回転基準系におけるシミュレーション結果を生成するステップを含む。
【0012】
別の事例では、モータシステムが提供される。前記モータシステムは、電子プロセッサを有する電子モータコントローラを含む。前記電子モータコントローラは、少なくとも1つの初期モータ仕様を決定し、少なくとも1つのモータ動作シミュレーションパラメータを決定するように構成される。前記電子モータコントローラは、さらに、前記モータの回転基準系に基づいたモータ制御を用いて、前記少なくとも1つの初期モータ仕様および前記少なくとも1つのモータ動作シミュレーションパラメータに係る巻線界磁同期モータをシミュレートするように構成される。前記回転基準系は、ステータのD軸成分における意図出力応答および直接直交ゼロロータ(DQNR)基準系におけるロータ界磁成分(R)をデカップリングする独立の入力チャンネルを有する。前記電子モータコントローラは、さらに、前記モータの前記シミュレーションに基づいて、前記回転基準系におけるシミュレーション結果を生成するように構成される。
【0013】
本開示の前述の態様および他の態様および利点は、以下の説明から明らかになる。本明細書においては、その一部をなす添付図面も参照し、1つまたは複数の実施形態を図示している。これらの実施形態は、必ずしも発明の全範囲を示すものではないが、発明の範囲を解釈するために、特許請求の範囲および本明細書を参照している。以下の説明において、異なる図における同様の部分は、同様の符号を付与している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】いくつかの実施形態による巻線界磁同期モータ(WFS)のためのモータシステムの図である。
図2】いくつかの実施形態による図1のモータシステムのための制御図である。
図3】いくつかの実施形態によるステータの駆動回路およびロータの駆動回路を示す図である。
図4】いくつかの実施形態によるWFSモータを制御するためのプロセスを示す図である。
図5】いくつかの実施形態による、MK基準系に基づいてWFSモータを制御するプロセスを示す図である。
図6】いくつかの実施形態による、WFSモータを制御するためのレギュレータを示す図である。
図7】いくつかの実施形態による、SM/DM基準系に基づいてWFSモータを制御するプロセスを示す図である。
図8】いくつかの実施形態による、WFSモータを制御するための多入力多出力(multiple input multiple output,MIMO)コントローラを示す図である。
図9A】異なる基準系について、ロータ電流対ステータのD軸電流の図である。
図9B】異なる基準系について、ロータ電流対ステータのD軸電流の図である。
図9C】異なる基準系について、ロータ電流対ステータのD軸電流の図である。
図9D】異なる基準系について、ロータ電流対ステータのD軸電流の図である。
図9E】異なる基準系について、電流対磁束の図である。
図9F】異なる基準系について、電流対磁束の図である。
図10】いくつかの実施形態によるモータデザインシステムの図である。
図11】いくつかの実施形態による、WFSモータのデザインおよび/またはモデリングのためのシミュレーション結果を生成するプロセスを示す図である。
図12】いくつかの実施形態によるシミュレーションシステムを示す図である。
図13】いくつかの実施形態によるWFSモータの一部のエアギャップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1つ以上の実施形態が、以下の説明および添付の図面に記載され、かつ、図示されている。これらの実施形態は、本明細書に提供される具体的な細部に限定されず、種々の方法で修正され得る。さらに、本明細書に記載されていない他の実施形態が存在してもよい。また、多数の成分によって行われる機能は、単一の成分によって集約され、実行されてもよい。同様に、1つの成分によって実行されるとして本明細書で説明される機能は、分散された方法で多数の成分によって実行されてもよい。さらに、特定の機能を実行するものとして説明される成分もまた、本明細書に記載されていない追加の機能を実行することができる。たとえば、ある方法で「構成される」あるデバイスまたは構造は、少なくともその方法で構成されるが、リストされていない方法でも構成されることも可能である。
【0016】
本出願で使用される場合、「非一時的コンピュータ可読媒体」は、すべてのコンピュータ可読媒体を含むが、一時的な伝播信号からなるものではない。したがって、非一時的コンピュータ可読媒体は、例えば、ハードディスク、CD-ROM、光記憶デバイス、磁気記憶デバイス、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、レジスタメモリ、プロセッサキャッシュ、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0017】
さらに、本明細書で使用される表現および用語は、説明のためのものであり、限定と見なされるべきではない。例えば、本明細書における「備える(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」、「有する(having)」およびそれらの変形の使用は、その後に列挙される項目およびその同等物ならびに追加の項目を包含することを意味する。さらに、「接続された(connected)」および「結合された(coupled)」という用語は広く使用され、直接的および間接的な接続および結合の両方を包含し、物理的または電気的な接続または結合を指すことができる。さらに、2つ以上の項目と共に使用される段階「および/または」は、項目を個別におよび両方の項目を一緒にカバーすることを意図している。例えば、「aおよび/またはb」は、a、b、ならびにaおよびbの場合をカバーする。
【0018】
図1は、いくつかの実施形態による、巻線界磁同期モータシステム100を示す。WFSモータシステム100は、電源105と、モータ制御システム110と、巻線界磁同期モータ115とを含む。電源105は、モータ制御システム110に直流(DC)電力を供給する。ある実施形態では、電源105は、モータ制御システム110にDC電力を供給するDC電源120を含む。直流電源120は、例えば、1つまたは複数の電池、光起電性電池などである。いくつかの実施形態では、電源105は、商用グリッドまたは外部発電機であってもよいAC電源130から代替電流(AC)による電力を受け取るAC/DC整流器125を含む。これらの実施形態において、AC/DC整流器125は、モータ制御システム110にDC電力を出力する。ある実施形態では、AC電源130は、電源105の一部である(例えば、部位風力発電機または発電機のケースで)。ある実施形態では、電源105は、DC電源120とAC/DC整流器125の両方を含み、電源105からモータ制御システム110へのDC電力は、一方または両方の電源から供給される。
【0019】
モータ制御システム110は、DC電源105からモータ115への電力の印加を制御し、モータ115の回転を駆動するように構成される。より詳しくは、モータ制御システム110は、電子プロセッサ140及びメモリ145(まとめて、プロセッシング回路と称する)を備えるモータコントローラ135、モータ駆動回路150、モータセンサ155、及び入力/出力装置160を含む。一般的に、モータコントローラ135は、モータセンサ155から受信した信号に基づいてモータ115の特性をモニタリングし、これらの特性に基づいて、モータ駆動回路150に制御信号を供給し、DC電源105からモータ115への電力印加を制御することにより、モータ115の回転を駆動する。
【0020】
入力/出力装置160は、ディスプレイ、タッチスクリーン、タッチスクリーンディスプレイ、キーボード、マウス、プッシュボタン、ダイヤル、ペダル、マイクロフォン、スピーカ等のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態では、入力/出力装置160は、動作パラメータ、例えばモータ速度指令またはモータトルク指令を受信し、動作パラメータをモータコントローラ135に供給するように構成される。これに応じて、モータコントローラ135は、モータセンサ155からの信号と組み合わせて、動作パラメータを使用して、DC電源105からモータ115への電力の印加を制御し、モータ115の回転を駆動する。入力/出力装置160は、モータ制御システム110におけるその他構成要素の近くまたは遠隔に位置してもよく、1つまたは複数の中間通信ネットワークまたはインターフェースを介してその他の構成要素に接続されてもよい。
【0021】
モータセンサ155は、モータ115のロータの位置を決定するための電流センサ165、電圧センサ167、および位置センサ170を含む。いくつかの実施形態では、追加の、またはより少ないモータのセンサがモータセンサ155に含まれる。例えば、モータセンサ155はまた、1つ又は複数の振動センサ、温度センサなどを含むことができる。いくつかの実施形態では、モータ115の各ステータの位相及び/又は各ロータ位相について、電流及び/又は電圧センサが提供される。いくつかの例では、モータコントローラ135は、モータの特性値を直接的に感知するのではなく、第1モータ特性値(例えば、電流又は電圧)を推測する。したがって、一部の実施形態では、例えば、電流センサ165のうちの1つ以上は、モータシステム100に含まれない。例えば、モータコントローラ135は、(例えば、逆起電力(back emf)を検知することにより)ステータアセンブリ180上の電圧センサ167を介してロータ電流又はモータ構成の状態を決定するように構成することができる。別の実施形態では、モータコントローラ135は、センシング電圧および/または電流を探知することにより、増加インダクタンスのおよびその変化を推測し、それらを経時的に変化させるように構成される。
【0022】
いくつかの実施形態では、位置センサ170は、センサの近くを通過する回転中のロータの磁界をモータ115のロータ位置を示す指標として検知して出力するように構成されるホール効果センサである。いくつかの事例では、位置センサ170は、モータ115のロータの回転位置を示す出力を提供するロータリエンコーダ(例えば、光学式又は機械式)である。加えて、いくつかの実施形態では、モータコントローラ135は、単独の位置センサ170がモータセンサ155に含まれなくてもいいように、モータ115の電流および/または電圧に対するモニタリングを通じてロータ位置を導出する「センサレス」制御を実施する。モータコントローラ135は、逆起電力推定(例えば、ステータ巻線の電圧変化に基づく)、又は高周波信号注入もしくは摂動を通じて、ロータの位置又は回転速度を決定してもよい。例えば、モータコントローラ135は、摂動をモータアセンブリ190に注入して、モータアセンブリ190が意味のある時間にわたって定常状態で動作しないようにすることができる。このような信号は、例えば識別不能な位置、又はステータとロータとの間の力のエネルギー交換等の観測不能な状態を防止するために使用することができる。典型的には、例えばトルクリップルを生じるようなトルクの発生との相互作用を防止するために、モータアセンブリ190の基本周波数よりも少なくとも1~2倍、2~5倍、または5~10倍の高い周波数を有する摂動が選択される。
【0023】
メモリ145は、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、または他の非一時的コンピュータ可読媒体のうちの1つ以上を含む。電子プロセッサ140は、とりわけ、メモリ145からの命令およびデータを受信し、例えば、図4図5、および図7におけるプロセス400、500、および700のそれぞれを含む、本明細書に記載のモータコントローラ135の機能を実施するための命令を実行するように構成される。例えば、メモリ145は、とりわけ、モータ115のための制御技術を規定する制御ソフトウェアを含む。以下にさらに詳述するように、一般に、電子プロセッサ140は、制御ソフトウェアを実行することにより、モータ115の特性値をモニタリングし、動作パラメータ(例えば、モータ指令)を受信し、動作パラメータおよびモニタリングを通じて得られた特性値に従ってモータ駆動回路150を駆動するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されたモータコントローラ135の機能を実行するためにメモリ145からソフトウェアを実行する代わりに、またはそれに加えて、電子プロセッサ140は、これらの機能性いくつかまたはすべてを実行するために構成された1つ以上のハードウェア回路素子を含む。
【0024】
モータコントローラ135、電子プロセッサ140、およびメモリ145はそれぞれ、単一のユニットとして図示されているが、一部の実施形態では、これらの構成要素のうちの1つ以上が分散式構成要素である。例えば、ある実施形態では、電子プロセッサ140は、1つ以上のマイクロプロセッサ及び/又はハードウェアの回路要素を含んでいる。
【0025】
WFSモータ115はステータアセンブリ180およびロータアセンブリ185を含む。ステータアセンブリ180は、ステータコアと、ステータコア上の複数のステータ巻線とを含み、複数のステータ巻線は、ロータアセンブリ185を回転させる磁界を誘導する電流により選択的に駆動される。ステータコアは、例えば複数の積層体により形成された積層スタックであってもよい。積層スタックは、半径方向の内方(外側ステータの場合)又は半径方向の外方(内側ステータの場合)に延びる歯を有するほぼ環状のプロフィールを有してもよい。ステータ巻線は、歯の周りに巻回されてもよく、または、歯の間のスロットを埋める導体を含んでもよい。ロータアセンブリ185は、ロータコアと、1つ又は複数の界磁巻線とを含み、複数の界磁巻線は、ロータアセンブリ185を回転させるように、ステータアセンブリ180の磁界と相互作用する磁界を誘導する電流により選択的に駆動される。ロータコアは、例えば、複数の積層により形成された積層スタックであってもよい。積層スタックは、半径方向の内方(外側ロータの場合)又は半径方向の外方(内側ロータの場合)に延びる歯を有する略環状のプロフィールを有してもよい。ロータ巻線は、歯の周りに巻回されてもよく、または、歯の間のスロットを埋める導体を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ロータアセンブリ185は、永久磁石および界磁巻線(すなわち、ハイブリッド永久磁石-巻線界磁ロータ)の組合せを含む。
【0026】
本開示内で提供される実施例は、主に巻線界磁同期モータ(例えば、WFSモータ115)に関して説明されるが、一部の実施例では、使用されるモータは、非巻線界磁モータである。例えば、いくつかの実施形態では、WFSモータ115は、永久磁石同期モータのような非巻線界磁モータとして実装され、この非巻線界磁モータは、本明細書で説明するシステムおよび処理で使用される。
【0027】
また、よく知られているように、入力された電力から機械的な電力を出力する電気モータとして動作する電気機械も逆に動作し、入力された機械的な電力から電力を出力する発電機として動作することがある。したがって、記載の簡素化のため、本明細書に記載される電気機械は、一般に、モータ(例えば、WFSモータ115)と称されるが、電気モータおよび発電機の両方として動作し得る発電機およびデバイスも包含することを意味する。
【0028】
図2は、いくつかの実施形態によるある態様をさらに詳しく示されたシステム100のブロック図である。例えば、図2は、両方とも駆動回路150(図1参照)の一部である、ステータ駆動回路200とロータ駆動回路205とを示している。ステータ駆動回路200は、DC電源105からDCステータバス210上のDC電力と、モータコントローラ135からの制御信号とを受け取る。DCステータバス210は、ポジティブレッグ(正(+)VDC_statorバスレッグ)及びネガティブレッグ(負(-)VDC_statorバスレッグ)を有する。ステータ駆動回路200は、DC電源105から受け取った電力を、モータコントローラ135から受け取った制御信号に基づいてステータアセンブリ180のステータ巻線に選択的に印加する。
【0029】
ステータ駆動回路200は、例えば、ブリッジ構成で接続された複数の電力スイッチング素子を含む。電力スイッチング素子は、例えば、電界効果トランジスタ(FET)(例えば、金属-酸化物-半導体電界効果トランジスタ(MOSFET))、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)、または絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)等の半導体スイッチングデバイスである。ステータ駆動回路200は、ステータアセンブリ180の位相ごとの出力端子を有してもよい。例えば、三相を有するステータアセンブリ180の実施形態において、ステータ駆動回路200は、それぞれがステータアセンブリ180のそれぞれの位相の端子に接続された3つの出力端子を含むことができる。モータコントローラ135は、ステータ駆動回路200を制御して、各出力端子において正弦波駆動信号を生成して、ステータアセンブリ180の各位相をそれぞれの正弦波駆動信号で駆動することができる。
【0030】
図示の実施形態では、ステータ駆動回路200は、ステータアセンブリ180の三相A、B、Cのそれぞれに対応する3つのノードでステータアセンブリ180に接続されている。各位相は、位相に関連するノード(例えば、Aノード、Bノード、またはCノード)と共通ノード191との間に結合された1つまたは複数の巻線を含む。図2では、位相に関連付けられた各ノードと共通ノード191との間に1つの代表的な巻線が示されている。いくつかの実施形態では、ステータアセンブリ180は、追加の位相及び/又は巻線を含む。駆動回路200は、ステータアセンブリ180の各位相に対して交流駆動信号を供給するそれぞれの出力ノードを含むことができる。
【0031】
ロータ駆動回路205は、DC電源105から直流電力と、モータコントローラ135からの制御信号とを受け取る。より詳細には、ロータ駆動回路205は、DC電源105からDCロータバス215上の直流電力受け取る。DCロータバス215は、ポジティブレッグ(正(+)VDC_rotorバスレッグ)及びネガティブレッグ(負(-)VDC_rotorバスレッグ)を有している。DCステータバス210及びロータバス215は連結されているように図示される構成がいくつかの実施形態において共有することができるが、他の実施形態においては、DC電源105はそれぞれのバスへの独立した連結を含むことができる。例えば、独立した接続を用いて、各バスに異なるDC電圧レベルを供給することができる。例えば、ある実施形態では、DCステータバス210は、モータ115の動作中において、DCロータバス215の電圧レベル(例えば12Vまたは別のレベル)よりもかなり高い電圧レベル(例えば400Vまたは別のレベル)を有することができる。いくつかの実施形態では、DCロータバス215は、(例えば、DC電源105への直接的な導通接続がない)絶縁バスであってもよく、DC電源105は、無線リンク(例えば、誘導性リンクまたは容量性リンク)を介して、DCロータバス215に電力を供給する。
【0032】
ロータ駆動回路205は、(例えば、DCロータバス215から)DC電源105から受け取った電力を、モータコントローラ135から受け取った制御信号に基づいてロータアセンブリ185の1つまたは複数のロータ巻線に選択的に印加する。ロータ駆動回路205は、例えば、ブリッジ構成で接続された複数の電力スイッチング素子を含む。電力スイッチング素子は、例えば、電界効果トランジスタ(FET)(例えば、金属-酸化物-半導体電界効果トランジスタ(MOSFET))、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)、または絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)等の半導体スイッチングデバイスである。ロータ駆動回路205は、ロータアセンブリ185の独立制御可能な各巻線(又は巻線のセット)のための出力端子又は一対の出力端子を含むことができる。図示の実施形態では、ロータ駆動回路205は、2つのノードにおいてロータアセンブリ185に接続されており、2つのノード間に図示された代表的な巻線192を備えている。いくつかの実施形態では、ロータアセンブリ185は追加の位相及び/又は巻線を含む。ロータ駆動回路205は、ロータアセンブリ185の各位相に対して交流駆動信号を供給するそれぞれの出力ノード(または一対のノード)を含むことができる。
【0033】
ロータ駆動回路205は、静止している(すなわち、回転していない)電源105と、ロータアセンブリ185の1つまたは複数の回転する巻線との間の電力結合を提供する。従って、ロータ駆動回路205は、静止部及び回転部を含むことができる。例えば、ロータ駆動回路205は、固定部と回転部との間における導電接続を提供するスリップリングを含むことができる。このスリップリングは、回転部の一部としての1つ以上の導体と、静止部の一部としての1つ以上の導電ブラシとを含んでもよい。複数の導体のそれぞれは、ロータアセンブリ185のロータ軸又は別の一部に結合して、それと共に回転することができる。複数の導電性ブラシは、スリップリングの導体ごと少なくとも一つの導電性ブラシを含んでおり、スリップリングがロータアセンブリ185と共に回転するとき、スリップリングの関連する導体との電気接続を維持する。それぞれの導電性ブラシは、ロータ駆動回路205のそれぞれの出力ノードとして機能することができる。スリップリング上の導体は、ロータ巻線が提供されるノード(例えば、巻線192)として機能することができる。
【0034】
図2に図示されるように、モータコントローラ135は、電流センサ165及び位置センサ170のような、1つ又は複数のセンサからの出力信号を受信するための入力212を含むことができる。いくつかの実施形態では、モータコントローラ135は、ロータのロータ位置角(θ)、ロータアセンブリ185のロータ界磁電流(I)、ステータ界磁アセンブリ180のステータ界磁電流(I、I、I)、ロータ界磁電圧(V)、およびステータ界磁電圧(V、V、V)のうちの1つ以上のような、受信した出力信号に基づいてWFSモータ115の現在モータ情報を決定することができる。いくつかの実施形態では、モータコントローラ135は、電流の測定値と組み合わされるWFSモータ115の既知の特性値(例えば、巻線における既知の抵抗およびインダクタンス)に基づいて電圧を推測することに基づいて、または1つまたは複数の電圧センサ167(図1参照)からの出力に基づいて、電圧の測定値を決定する。追加のステータ位相(すなわち、3つよりも多い)及び/又は追加の独立した制御可能なロータ界磁が提供されるいくつかの実施形態では、モータコントローラ135は、さらにこれらの追加のステータ位相及び/又はロータ界磁のそれぞれのための電流及び/又は電圧を決定することができる。加えて、前述のように、いくつかの実施形態では、モータコントローラ135は、推定値(例えば、上記の「センサレス」位置検知の検討を参照)に基づいて、本モータの現在モータ情報の1つ以上の態様について、異なるセンサを用いて判断する。
【0035】
図3は、いくつかの実施形態によるステータ駆動回路300及びロータ駆動回路350を示している。ステータ駆動回路300は、図2に示すステータ駆動回路200の一例である。ロータ駆動回路350は、図2に示すロータ駆動回路205の一例である。ステータ駆動回路300は、インバータブリッジ構成の6つの電力スイッチング素子305a~fを含む。電力スイッチング素子305a~fのそれぞれは、有効化または無効化されるように、モータコントローラ135からのそれぞれの制御信号によって制御される。ステータ駆動回路300は、電力スイッチング素子305a,b、305c,d、および305e,fのそれぞれのペアにおける中間点に結合された3つの出力310を含む。それぞれの出力310は、ステータアセンブリ180のそれぞれの位相(例えば、図2に示すノードA、B、C)に結合することができる。ステータ駆動回路200は、電流又は電圧により制御されることができる。
【0036】
ロータ駆動回路350は、4つの電力スイッチング素子355a~dを含む。電力スイッチング素子355a~dのそれぞれは、有効化または無効化されるよう、モータコントローラ135からのそれぞれの制御信号によって制御される。ロータ駆動回路350は、2つの出力ノード360aおよび360bを含み、それらの間は、ロータ巻線192によって結合されている。
【0037】
いくつかの実施形態では、図3に例示されたもの以外の駆動回路がステータ駆動回路200、ロータ駆動回路205、またはその両方として使用される。例えば、ステータ駆動回路200は、より細かい制御を提供し、そして、例えばリップルを低減するために付加的なレベルを有するスイッチブリッジのような、異なったスイッチブリッジ構成を使用することができる。加えて、いくつかの実施形態では、ステータ駆動回路200は、電源として電圧源105を使用する電圧制御型回路ではなく、電流源を電源(例えば、電源105によって提供される)として使用する電流制御型回路であってもよい。同様に、ロータ駆動回路205は、付加的なレベルを有するスイッチブリッジを用いることができ、及び/又は電流源を有する電流制御型回路とすることができる。
【0038】
上述したように、本明細書に記載される実施形態によれば、R軸及びD軸と比較し、デカップリングされた出力応答を提供し、それにより、DQNR基準系内のロータ界磁(R)成分からステータD軸成分における意図出力応答をデカップリングするような、独立した入力チャネル(又は制御入力チャネル)を有する回転基準系を使用する又は依存するモータコントローラに関する。例えば、いくつかの実施形態では、モータコントローラ135は、励磁インダクタンス軸(M軸)、リーケージインダクタンス軸(K軸)、直交軸(Q軸)、およびNull軸(N軸)を含むMK(回転)基準系に変換するためのMK変換を使用するまたは依存することができる。言い換えれば、M軸は、モータの合計インダクタンスを制御し、ステータおよびモータのための等価回路における磁化電流を表し(例えば、変圧器模型)、K軸は、リーケージインダクタンスを制御し、変圧器の合計リーケージ電流を表すことができる。M軸、K軸、Q軸、およびN軸は、MK基準系における独立した入力チャネル(または独立した制御チャネル)とみなすことができる。MK基準系は、MKQ、MKQN、MKQNull、またはMKQO基準系とも呼ばれることがある。別の例として、いくつかの実施形態では、モータコントローラ135は、加算モード軸(SM軸)、差分モード軸(DM軸)、直交軸(Q軸)、およびNull軸(N軸)を含む、SM/DM(回転)基準系に変換するためのSM/DM変換を使用するまたは依存することができる。SM軸、DM軸、Q軸、N軸は、SM/DM 基準系の独立した入力チャネル(または独立した制御チャネル)とみなすことができる。SM/DM基準系は、SM/DM Q、SM/DM QN、SM/DM QNull、またはSM/DM QO基準系とも呼ばれることがある。
【0039】
MKおよびSM/DM基準系の両方とも、ステータD軸とも呼ばれるD軸と、ロータ制御またはロータD軸とも呼ばれるロータ界磁(R)との間の結合に着目して記述する。これらの基準系において、結合は、WSMモータ115のエアギャップ界磁エネルギーが、ロータ電流及び/又はステータD軸電流から独立に、又は同時に得られることを意味する。エアギャップ界磁エネルギーは、MK基準系ではM軸で表され、SM基準系ではSM軸で表される。各基準系の他の軸であるK軸およびDM軸は、各成分(ロータまたはステータ)のリーケージインダクタンスに蓄積されるエネルギーであり、エアギャップをわたって見られないロータおよびステータ側からのエネルギーを表す。
【0040】
MK基準系は、ロータ界磁(R)からD軸における意図出力応答をデカップリングし、コントローラは、MK基準系内のM軸およびK軸成分を調整することにより、DQNR基準系内のロータ界磁(R)成分にほとんどまたはまったく変化を生じさせずに、最終的にD軸成分を変化させる、あるいは、DQNR基準系内のD軸成分にほとんどまたはまったく変化を生じさせずに、最終的にロータ界磁(R)成分を変化させることができる。したがって、MK基準系は、D軸成分の意図出力応答をロータ界磁(R)成分からデカップリングする独立した入力チャネルを有する。その理由は、MK基準系を介して、コントローラ135は、(i)ロータ界磁(R)成分における意図されない変化を引き起こさない、またはわずかな意図されない変化(例えば、0.5%または1%のような閾値未満の変化)しか引き起こさないD軸成分の変化を制御し、あるいは、(ii)D軸成分における意図されない変化を引き起こさない、またはわずかな変化(例えば、0.5%または1%のような閾値未満の変化)しか引き起こさないロータ界磁(R)成分の変化を制御するように構成される。言い換えれば、モータシステム100は、RDQN基準系のR成分及びD成分と比較し、デカップリングされた入力/出力システムを提供し、かつ、D軸成分に対する意図出力応答をロータ界磁(R)成分からデカップリングするMK基準系を使用して対角化される、又は対角化に近づく。言い換えれば、MK基準系は、WFSモータ115のDQNR基準系内のD軸成分およびロータ界磁(R)成分を独立に、またはほぼ独立に制御するために、モータコントローラ135によって調整可能な成分(M軸およびK軸成分)を含む。デカップリングされた成分を有する対角化されたシステムは、WFSモータ115の設計及び/又は制御を簡素化することができる。さらに、いくつかの実施形態では、別の軸(例えば、D軸)の変化に基づいて、1つの軸(例えば、ロータ界磁(R)成分)の変化を引き起こすことが役立つ場合がある。これらの成分の結合により、このような変化が従来では制御不可能で予測不可能な副産物であったが、MK基準系を用いることにより、モータコントローラ135は、このような変化を制御することができる(または、上述のように、これらの変化を防止する)。
【0041】
SM/DM基準系は、ロータ界磁(R)からD軸における意図出力応答をデカップリングし、コントローラは、SM/DM基準系内のSM軸およびDM軸成分を調整することにより、DQNR基準系内のロータ界磁(R)成分にほとんどまたはまったく変化を生じさせずに、最終的にD軸成分を変化させる、あるいは、DQNR基準系内のD軸成分にほとんどまたはまったく変化を生じさせずに、最終的にロータ界磁(R)成分を変化させることができる。したがって、SM/DM基準系は、D軸成分の意図出力応答をロータ界磁(R)成分からデカップリングする独立した入力チャネルを有する。その理由は、MK基準系を介して、コントローラ135は、(i)ロータ界磁(R)成分における意図されない変化を引き起こさない、またはわずかな変化(例えば、1%、5%、10%、および20%のような閾値未満の変化)しか引き起こさないD軸成分の変化を制御し、あるいは、(ii)D軸成分における意図されない変化を引き起こさない、またはわずかな変化(例えば、1%、5%、10%、および20%のような閾値未満の変化)しか引き起こさないロータ界磁(R)成分の変化を制御するように構成される。SM/DM基準系を用いることにより、モータシステム100は、WFSモータ115の設計及び/又は制御を簡素化することができる。言い換えれば、SM/DM基準系は、WFSモータ115のDQNR基準系内のD軸成分およびロータ界磁(R)成分を独立に、またはほぼ独立に制御するために、モータコントローラ135によって調整可能な成分(SM軸およびDM軸成分)を含む。
【0042】
MK基準系およびSM/DM基準系は、ステータおよびロータのリーケージが等しい(または等しいと仮定される)場合、あるいは、WFSモータ115の見かけの巻数比を調整した後など、特定の場合では類似または同等の基準系となる可能性がある。しかし、巻数比、ステータリーケージ、ロータリーケージについて、基準系の自由度を用いてステータおよびロータの間の見かけの相当リーケージ比(apparent equal-leakage ratio)を仮定することにより、MK基準系は、リーケージ成分(K軸)を基準系のその他の成分から完全にデカップリングすることができる。いくつかの場合には、MK基準系は、ロータとステータのD軸との間の巻数比の付与に依存してもよい。
【0043】
SM/DMおよびMK基準系とは対照的に、RDQN基準系は、R軸とステータのD軸とのエネルギーを区別することはできない。つまり、RDQN基準系は、エネルギー源がWFSモータの共通軸(D軸)上のステータまたはロータから来ているかどうかを示すまたは説明することができない。SM/DMおよびMK基準系は、WFSモータ115のこのエネルギー流れについての洞察を提供し、WFSモータ115のロータおよびステータのそれぞれに対する特有の制御に変換する。
【0044】
図4は、巻線界磁同期モータを制御するプロセス400を示す図である。プロセス400は、モータシステム100によって実行されるものとして説明される。しかしながら、いくつかの実施形態では、プロセス400は別のモータシステムによって実施することができる。加えて、プロセス400のブロックは特定の順序で図示されているが、いくつかの実施形態において、1つ以上のブロックは、部分的にまたは全体的に並行して実行されてもよく、図4に図示されているのとは異なった順序で実行され、またはバイパスされてもよい。
【0045】
ブロック405において、モータコントローラ135は、現在モータ情報を決定する。例えば、上述したように、モータコントローラ135は、受信された出力信号に基づいて、WFSモータ115に関する現在モータ情報を決定することができる。これらの決定は、直接(例えば、電流センサからの電流または位置センサからの回転位置を決定する)に行われ、または推測(例えば、電流センサの出力およびモータ115のその他の既知の特性値に基づいて電圧を決定し、または感知された電流または電圧に基づいてロータの回転位置を決定する)で行われることができる。図2を参照して、現在モータ情報は、ロータのロータ位置角(θ)、ロータ回転速度(ω)、ロータアセンブリ185のロータ界磁電流(例えばI)、ステータ界磁アセンブリ180のステータ界磁電流(例えばI、I、I)、ロータ界磁電圧(例えばV)、及びステータ界磁電圧(例えばV、V、V)の1つまたは複数を含むことができる。より少ない又は追加のステータ位相(即ち、2つの位相又は3つよりも多い位相)及び/又は追加の独立で制御可能なロータ界磁が提供されるいくつの実施形態では、モータコントローラ135は、これらの追加のステータ位相及び/又はロータ界磁のそれぞれのための電流及び/又は電圧をさらに決定することができる。
【0046】
ブロック410において、モータコントローラ135は、現在モータ情報とモータの回転基準系とに基づいて設定されるモータ制御パラメータセットを決定する。ここで、回転基準系は、ステータD軸成分における意図出力応答と、直接直交ゼロロータ(DQNR)基準系におけるロータ界磁(R)成分とをデカップリングするための独立した入力チャネルを有する。例えば、回転基準系は、相互インダクタンス軸と呼ばれる場合もある励磁インダクタンス軸(M軸)、およびリーケージインダクタンス(K軸)を含むMK基準系であってもよい。いくつかの実施形態では、現在モータ情報およびMK基準系のM軸に基づいてモータ制御パラメータセットを決定するために、モータコントローラ135は、励磁インダクタンス電流(I)、リーケージインダクタンス電流(I)、および直交電流(I)に基づいて、モータ制御パラメータセットに関する所望のモータ電圧(V、V、V、V)を決定する。例えば、現在モータ情報によって示されるモータ制御パラメータセットに関するに対する所望のモータ電圧(V、V、V、V)を決定するために、モータコントローラ135は、(i)図5(以下でさらに説明する)のプロセス500を実装し、および/または(ii)ロータ位置角、ロータ界磁電流、およびステータ電流(例えば、θ、I、I、I、I)を所望のモータ電圧(例えば、V、V、V、V)にマッピングする検索表(lookup table)にアクセスすることができる。ここで、検索表は、例示のモータ電流および例示のロータ位置角の入力セットを合成励磁インダクタンス電流(I)、合成リーケージインダクタンス電流(I)、及び合成Q電流(I)を含む出力セットに変換するMK変換に基づいて埋められる。
【0047】
別の例として、回転基準系は、加算モード軸(SM軸)および差分モード軸(DM軸)を含むSM/DM基準系であってもよい。加算モード軸は、ステータD軸とRDQN基準系のR界磁成分との和を表し、差分モード軸は、巻数正規化ベース、すなわち、アンペアターン(amp-turns)および1巻回あたりの起電力(volts-per-turn)に関する、ステータD軸とRDQN基準系のR界磁成分との差分を表す。ロータおよびステータD軸上の巻数は、物理的な巻数または任意の値に基づいて選択することができる。MK変換は、SM/DM変換の特例であり、2つのコイルのリーケージインダクタンスが同じになるようにロータおよびステータD軸上の巻数が選択される。R成分は、ロータD軸成分として呼ばれることがある。SM/DM基準系において、加算モード電流(ISM)、加算モード電圧(VSM)、差分モード電流(IDM)、および差分モード電圧(VDM)が次の式のように定義される。
【数1】
【0048】
ロータD軸電流(IR_D)は、ロータのある位相の界磁巻線を通る電流の測定値であり得る(例えば、電流センサによって測定される、または他の方法で決定される)。ロータD軸電圧(VR_D)は、ロータのある位相の界磁巻線にかかる電圧の測定値であり得る(例えば、電圧センサによって測定される、または他の方法で決定される)。ステータD軸電流(IS_D)は、モータ電流(I、I、I)およびロータ角度(θ)を決定し、これらの値にDQN変換を適用することによって決定され得る。同様に、ステータD軸電圧(VS_D)は、モータ電圧(V、V、V)およびロータ角度(θ)を決定し、これらの値にDQN変換を適用することによって決定され得る。加算モード(SM)および差分モード(DM)は、それぞれDQNR基準系におけるコモンモード(common mode)および差分モードとも呼ばれることがある。
【0049】
いくつかの実施形態では、現在モータ情報およびSM/DM基準系のSM軸に基づいてモータ制御パラメータセットを決定するために、モータコントローラ135は、ロータ位置角およびモータ電流によって示される、加算モード電流(ISM)、差分モード電流(IDM)、および直交電流(I)に基づいて、V、V、V、Vを含むモータ制御パラメータセットに関する所望のモータ電圧を決定する。例えば、現在モータ情報によって示されるモータ制御パラメータセットに関する所望のモータ電圧(V、V、V、V)を決定するために、モータコントローラ135は、(i)図7(以下でさらに説明する)のプロセス700を実装し、および/または(ii)ロータ位置角、ロータ界磁電流、およびステータ電流(例えば、θ、I、I、I、I)を所望のモータ電圧(例えば、V、V、V、V)にマッピングする検索表にアクセスすることができる。ここで、検索表は、例示のモータ電流および例示のロータ位置角の入力セットを合成加算モード電流(ISM)、差分モード電流(IDM)、および直交電流(I)の出力セットに変換するSM/DM変換に基づいて埋められる。
【0050】
モータ制御パラメータセットは、例えば、ステータアセンブリ180の各位相(各ステータ位相)及びロータアセンブリ185における独立して制御可能な各界磁(各ロータ界磁)を制御するための制御パラメータのセットであり得る。例えば、モータ制御パラメータセットは、各ステータ位相に対して、及び独立して制御可能な各ロータ界磁について、所望の電圧及び/又は電流を含むことができる。上述のように、モータは、2つの固定ステータ位相、3つの固定ステータ位相、又はより多い固定ステータ位相を含むことができ、かつ、1つのロータ位相、2つのロータ位相、又はより多いロータ位相を含むことができる。モータコントローラ135は、ステータ駆動回路200及びロータ駆動回路205の各電力スイッチング素子について、各所望の電圧及び/又は電流をパルス幅変調(PWM)信号の各対応デューティサイクルにマッピングする(例えば、検索表を使用する)ことができる。いくつかの実施例では、各電力スイッチング素子について、これらの特定のデューティサイクルは、モータ制御パラメータセット、またはモータ制御パラメータセットの一部と見なされる。
【0051】
ブロック415において、モータコントローラ135は、モータ制御パラメータセットに基づいてモータを制御する。例えば、いくつかの実施形態では、ブロック415において、モータコントローラ135は、WFSモータ115を駆動するために、モータ制御パラメータセットに基づいて、制御信号を生成し、モータ駆動回路150に対して出力する。例えば、制御信号は、ステータ駆動回路200及びロータ駆動回路205のそれぞれの電力スイッチング要素によって受信し、ステータ駆動回路200及びロータ駆動回路205のそれぞれの電力スイッチング要素を制御し、特定の電力スイッチング要素を有効化または無効化し、あるいは、特定の電力スイッチング要素を特定のレートまたはデューティサイクルに切り替えることができる。いくつかの実施例では、モータ制御パラメータセットは、電力スイッチング素子ごとの制御信号に対するデューティサイクルを含む。他のいくつかの実施例では、ブロック415において、モータコントローラ135は、モータ制御パラメータセットを(例えば、検索表または数式を用いて)特定の制御信号に変換する。例えば、モータ制御パラメータセットは、ステータ駆動回路300のための6つの制御信号、および電力スイッチング素子305a~fのそれぞれに一つずつの制御信号に変換することができるV、V、Vに関する特定の値と、ロータ駆動回路350のための4つの制御信号に変換することができる、Vに関する1つの特定の値とを含むことができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、プロセス400は、巻線界磁同期モータ、永久磁石同期機械、ハイブリッド永久磁石-巻線界磁同期機械、または別の種類の機械として実装されるモータ115を用いて実行されることができる。したがって、プロセス400は、電気モータを制御するための処理、または同期モータを制御するための処理として言及されることができる。プロセス400によって制御されるモータ115が永久磁石同期機である実施形態では、存在する自由度は少なく、例えば、ロータ界磁が永久磁石によって大きく固定される。このように、永久磁石は、(磁束が能動的に変調され得るロータ巻線とは対照的に)M軸磁束に寄与する。即ち、M軸磁束は、ステータの相対的寄与と組み合わせて、エアギャップにおける界磁に対する磁石(または複数の磁石)の寄与によって表すことができる。この理解により、M軸及びK軸を制御するために、ステータを制御する(例えば、本明細書に記載の処理を使用する)ことができる。いくつかの実施形態では、磁束鎖交空間において、磁石の起磁力(MMF)は、以下にさらに記載される(例えば、それぞれ図5および7を参照する)ように、RDQNからMKQへの変換、およびRDQNからSM/DMへの変換におけるRを表すことができる。
【0053】
図5は、現在モータ情報とMK基準系のM軸に基づいてモータ制御パラメータセットを決定するプロセス500を示している。ある実施形態では、モータコントローラ135は、図4のブロック410を実行するプロセス500を実装する。プロセス500は、モータシステム100によって実行されるものとして説明される。しかしながら、いくつかの実施形態では、プロセス500は別のモータシステムによって実行されてもよい。加えて、プロセス500のブロックは特定の順序で図示されているが、いくつかの実施形態において、複数のブロックのうちの1つ以上は、部分的にまたは全体として並行して実行されてもよく、図5に図示されているのとは異なった順序で実行されてもよく、またはバイパスされてもよい。
【0054】
ブロック505において、モータコントローラ135は、現在モータ情報をMK基準系に変換する。例えば、いくつかの実施形態によるプロセス500では、現在モータ情報は、ロータ位置(θ)、ステータコイルの電流(I、I、I)、およびロータ界磁巻線の電流(I)を含むことができる。次に、モータコントローラ135は、MK変換を用いて、θ、I、I、I、およびIを励磁インダクタンス電流(I)、リーケージインダクタンス電流(I)、および直交電流(I)に変換することができる。例えば、A、B、C、D(静止)基準系から(回転)MKQN基準系へ変換するために適用されるMK変換は、下記の式のように定義されることができる。
【数2】
【0055】
例えば、I、I、I、およびINullを決定するのに、モータコントローラ135は、MK変換にI、I、I、およびIによる一次元電流マトリクスを乗算して、I,I、I、およびINullによるMK基準系内の一次元電流マトリクスを得ることができる。例えば、モータコントローラ135は、以下の式の演算を行ってもよい。
【数3】
【0056】
いくつかの実施形態では、以上で提供されたような直接変換ではなく、現在モータ情報は、最初にDQNR基準系に変換され、次にDQNR基準系からMK基準系に変換される。例えば、DQNR基準系からMKQN基準系へ変換するために適用されるMK変換は、下記の式によって定義される。
【数4】
【0057】
同様に、D軸及びR軸の値をM軸及びK軸の値に変換するには、以下の変換を用いることができる。
【数5】
【0058】
MK基準系は、M軸およびK軸の間の励磁インダクタンスがゼロであること、またはM軸およびK軸の間の励磁インダクタンスが、ステータ対ロータの巻数比を調整することによって強制的にゼロにすることができると推測してもよい。誘導結合2コイルシステム(inductively coupled two-coil system)では、巻数比は、R軸およびD軸要素内に蓄積されたリーケージエネルギーが等しく、M軸およびK軸エネルギーが独立(すなわち、クロスカプリングがない)になるように選択され得る。言い換えれば、1:1の巻数比(物理的)でD軸がロータの2倍のリーケージインダクタンスを有する場合、このモデルでR/Dリーケージインダクタンスは等しくなるように等エネルギー巻数比を見つけることができるが、実際の(物理的)巻数比は1:1にはならない。調整された(非物理的)巻数比は、検索表、事前に定義された利得係数、または動作中(on-the-fly)に調整できる利得を用いて見出し、選択することができる。ある場合には、調整された巻数比に基づくロータ値は、実際の(物理的)巻数比に基づくロータ値(R)と区別するために、R’と呼ばれることがあるが、この用語はここでの議論では使用しない。
【0059】
巻数比を調整して、このモデルまたはコントローラ内のR/Dリーケージインダクタンスを等しくするために、MK基準系に変換される前に静止基準系内の現在モータ情報の値を調整することができる。例えば、モータコントローラ135は、ロータRのリーケージインダクタンス及びD軸のリーケージインダクタンスを決定し、それらのインダクタンス値を検索表または数式を用いて、調整された巻数比を決定することができる。ロータR及びD軸のリーケージインダクタンスは、例えば、モータの定数値としてメモリに記憶され、又はモータコントローラ135の検索表によってマッピングされることにより、モータ電流を決定してもよい。あるいは、いくつかの実施例では、モータコントローラ135は、事前定義された調整された巻数比を使用することができる。次に、モータコントローラ135は、調整された巻数比によって、現在モータ情報の各状態変数の値(例えば、I、I、I、I)を調整し、MK基準系のためにR/Dリーケージインダクタンスを等しくさせることができる。
【0060】
この巻数比に基づく調整は、いくつかの方法で行うことができる。例えば、この調整は、ステータに反映されるロータの態様から行うことができ、ここで、ロータは巻数(n)だけ調整される。あるいは、この調整は、ロータに反映され、ステータのためにn巻で補正することができる。別の例では、巻数比の調節は、任意の値で修正または調節することができ、その後、モータコントローラ135は、その参考値で動作することができる。
【0061】
ブロック515に関して以下で示されるように、モータコントローラ135は、MK基準系から静止基準系に戻るように変換した後、決定された値に調整された巻数比を乗算することで得られる物理的巻数比に基づいて、さらに戻るように調整してもよい。
【0062】
また、現在モータ情報は、励磁インダクタンス設定点電流(IM_SP)、リーケージインダクタンス設定点電流(IK_SP)、及び直交設定点電流(IQ_SP)のような、MK基準系内のそれぞれの軸に対する設定点値を含むまたは示すことができる。これらの設定値は、図4のブロック405の一部として決定されてもよい。例えば、これらの設定点値(目標値とも呼ばれる)は、事前定義され、ブロック405の一部としてメモリ(例えば、メモリ145)から取得され得る。あるいは、これらの設定点値は、入力/出力装置160から受信したモータ速度指令またはモータトルク指令から決定することができる。すなわち、モータコントローラ135は、モータ速度指令またはモータトルク指令を受信して、関連性を定義する検索表または数式を用いて、指令を設定点値にマッピングすることができる。
【0063】
ブロック510において、モータコントローラ135は、MK基準系内における所望のMKモータ制御パラメータセットを生成する。所望のMKモータ制御パラメータセットは、例えば、励磁インダクタンス電圧(V)、リーケージインダクタンス電圧(V)、および直交電圧(V)のような、MK基準系の1つまたは複数の制御軸に対する所望の電圧を含む。モータコントローラ135は、設定点値(IM_SP、IK_SP、およびIQ_SP)とMK軸に関する決定された(実際の)電流値(I、I、I)との間のそれぞれの誤差に基づいて、所望のMKモータ制御パラメータセットを生成してもよい。例えば、IがIM_SPより小さい場合、モータコントローラ135は、所望のM軸電圧(V)を増やすことができる。言い換えると、少なくとも一部の実施形態では、モータコントローラ135は、MK軸(V、V、V)に関する電圧値を変化させることによって、MK軸(I、I、I)に関する電流値をほぼ目標値(IM_SP、IK_SP、およびIQ_SP)になるように調整するレギュレータを実装してもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、モータコントローラ135は、前述のレギュレータを実装するために、1つ以上の比例、積分、微分(PID)コントローラを実装または含む。このようなPIDコントローラの一例が、図6に提供され、以下にさらに説明される。
【0065】
ブロック515において、モータコントローラ135は、所望のMKモータ制御パラメータセットを、MK基準系からモータ制御パラメータセット(例えば、A、B、C、R、θ基準系)の静止基準系に戻すように変換する。例えば、モータコントローラ135は、MK基準系(V、V、V)の各軸に関する所望の電圧を、モータ制御パラメータセット(図4のブロック410およびブロック415で参照される)として機能し得るV、V、V、Vに変換してもよい。いくつかの実施形態では、モータコントローラ135は、下記の式のような逆MK変換を有するブロック515の変換を実施する。
【数6】
【0066】
例えば、V、V、V、Vを決定するために、モータコントローラは、V、V、V、Vの静止ABCR基準系内の一次元電圧マトリクスを得るように、V,V、V、VNullの一次元電圧マトリクスによって逆MK変換を乗算することができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、上記で提供された直接変換ではなく、所望のMKモータ制御パラメータセットは、最初にDQNR基準系に変換され、次に、DQNR基準系から静止基準系に変換される。例えば、MKQN基準系からDQNR基準系に変換するために適用されるMK変換は、下記の式によって定義されることができる。
【数7】
【0068】
巻数比を調整してこのモデル内のR/Dリーケージインダクタンスが等しくなる例では、所望のMKモータ制御パラメータセットが静止基準系に戻された後に、モータコントローラ135は、さらに、これらの値(例えば、V、V、V、V)に、調整した巻数比の逆数を掛けることにより、モータの物理的な巻数比を計算することができる。言い換えれば、以前の巻数比調整は、元に戻される又は反転されることができる。
【0069】
図5のプロセス500の記述は、MK基準系からの変換またはMK基準系への変換を含み、3つのステータ位相および1つのロータ位相を有するWFSモータに関して提供される。しかしながら、前述のように、本明細書に記載する実施形態は、異なった個数のステータ位相及び/又はロータ位相を有するモータにも同様に適用可能である。そのような実施形態には、MK基準系への変換およびMK基準系からの変換は、ここに記載される同様の原理を用いて、追加の位相を考慮するために更新することができる。
【0070】
加えて、いくつかの実施形態において、プロセス500は、巻線界磁同期モータ、永久磁石同期機械、ハイブリッド永久磁石-巻線界磁同期機械、または別の種類の同期機械として実装されるモータ115について実行されてもよい。永久磁石同期機械がプロセスの対象であるモータ115として提供される実施形態では、M軸磁束は、ステータの相対的寄与と組み合わされて、エアギャップにおける界磁に対する永久磁石の寄与によって表されることができる。したがって、いくつかの実施形態では、磁束鎖交空間において、マグネットの起磁力(MMF)は、RDQNからMKQへの変換におけるRを表すことができる。
【0071】
上述のように、図6は、K、M、およびQ軸間の利用可能な電圧を(この順番の優先順位で)優先し、図5のブロック510に記述されるレギュレーションを実現するPIDコントローラと、同様にブロック505およびブロック515に記述される変換を実行するための変換ブロックとを含む例示的なレギュレータ600(例えば、モータコントローラ135によって実装される)を提供する。いくつかの実施形態では、K軸、M軸、およびQ軸の間で利用可能な電圧を(この順番の優先順位で)優先する別の制御装置またはレギュレータが、ブロック510のレギュレーションを実行するために使用される。ブロック605から始まり、モータコントローラ135は、図4のブロック405に関して説明されるように、現在モータ情報(例えば、θ、I、I、I、およびI)を決定する。いくつかの実施形態では、ブロック607において、モータコントローラ135は、図5のブロック505に関して説明したように、このモデルにおけるR/Dリーケージインダクタンスが等しくなるように、MK基準系について巻数比を調整する。変換ブロック610において、モータコントローラ135は、図5のブロック505に関して説明したように、現在モータ情報をMK基準系に変換し、I、I、及びIを生成する。I、I、及びIのそれぞれは、K軸レギュレーションブロック620、M軸レギュレーションブロック630、及びQ軸レギュレーションブロック640のそれぞれに供給される。
【0072】
K軸レギュレーションブロック620は、K軸誤差判定ブロック622、K軸PIDコントローラ624、V最小/最大推定器626、およびVサチュレータ628を含む。M軸レギュレーションブロック630は、M軸誤差判定ブロック632、M軸PIDコントローラ634、V最小/最大推定器636、およびVサチュレータ638を含む。Q軸レギュレーションブロック640は、Q軸誤差判定ブロック642、Q軸PIDコントローラ644、V最小/最大推定器646、およびVサチュレータ648を含む。
【0073】
K軸誤差判定ブロック622は、IK_spおよび変換ブロック610からのIを受け取り、IとIK_spとの差異を示すK誤差値を出力する。K誤差値は、Vサチュレータ628に最初のV出力を提供するK軸PIDコントローラ624に供給される。Vサチュレータ628はまた、V最小および/または最大値をV最小/最大推定器626から受け取る。次に、Vサチュレータ628は、最初のV出力及びVの最小及び/又は最大値に基づいて所望のVを出力する。例えば、最初のVがVの最大値よりも大きい場合、Vサチュレータ628は、Vの最大値を出力し、最初のVがVの最小値よりも小さい場合、Vサチュレータ628は、Vの最小値を出力してもよい。最初のVがV最小値とV最大値の間にあるとき、Vサチュレータ628は、最初のVをVとして出力することができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、V最小/最大推定器626は、ロータバス電圧、ステータバス電圧、およびモータ115の巻数比に基づいて最小および/または最大値を決定することができる。例えば、図3に示すような駆動回路を用いて、下記の式を満たすと、
【数8】
ここで、
【数9】
下記の式を用いて、Vの最大値および最小値を定義することができる。
【数10】
ここで、kは利得係数、Nはステータ対ロータの巻数比、VS_maxは最大ステータバス電圧、VR_maxは最大ロータバス電圧、VR_minは最小ロータバス電圧である。一般的に、少なくともいくつかの実施形態では、物理的にロータ又はステータ上の巻数が増加すると(すなわち、物理的な巻数比が増加すると)、M軸の電圧制限がより厳しくなる。他の実施形態では、予め決定された電圧限界のような異なった電圧限界を選択することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、V最小/最大推定器626は、ステータバス電圧(V)およびロータ回転速度(ω)に基づいてV最小および/または最大値を決定することができる。
【0076】
いくつかの例では、Vサチュレータ628はまた、積分飽和現象を防止または制限するために、K軸PIDコントローラ624にアンチワインドアップ信号を出力する。例えば、アンチワインドアップ信号は、積分飽和現象が発生する可能性があるとき、K軸PIDコントローラ624の積分器を固定(clamping)させることができる。
【0077】
M軸誤差判定ブロック632は、IM_SPおよび変換ブロック610からのIを受け取り、IとIM_SPとの差異を示すM誤差値を出力する。M誤差値は、VMサチュレータ638に最初のV出力を提供するM軸PIDコントローラ634に供給される。Vサチュレータ638はまた、V最小値および/または最大値をV最小/最大推定器636から受け取る。次に、Vサチュレータ638は、最初のV出力及びVの最小値及び/又は最大値に基づいて所望のVを出力する。例えば、最初のVがVの最大値よりも大きい場合、Vサチュレータ638は、Vの最大値を出力し、最初のVがV最小値よりも小さい場合、Vサチュレータ638は、Vの最小値を出力することができる。また、最初のVがV最小値とV最大値の間にある場合、Vサチュレータ638は、最初のVをVとして出力してもよい。V最小/最大推定器636は、所望のV(Vレギュレーションブロック620によって提供される)、ロータバス電圧、ステータバス電圧、およびモータ115の巻数比に基づいて、最小および/または最大値を決定することができる。例えば、図3に示す駆動回路を用いて、下記の式を満たすと、
【数11】
ここで、
【数12】
次の式を用いて、Vの最大値および最小値を定義できる。
【数13】
ここで、VK_spはK軸電圧設定点であり、Nはステータ対ロータ巻数比であり、VR_maxは最大ロータバス電圧であり、VR_minは最小ロータバス電圧である。
【0078】
いくつかの実施形態では、V最小/最大推定器636は、ステータバス電圧(V)、ロータ回転速度(ω)、およびVに基づいてVの最小値および/または最大値を決定することができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、Vサチュレータ638はまた、積分飽和現象を防止または制限するために、M軸PIDコントローラ634にアンチワインドアップ信号を出力する。例えば、アンチワインドアップ信号は、積分飽和現象が発生する可能性があるとき、M軸PIDコントローラ634の積分器を固定(clamping)させることができる。
【0080】
Q軸誤差判定ブロック642は、IQ_SPおよび変換ブロック610からのIを受け取り、IとIQ_SPとの差異を示すQ誤差値を出力する。Q誤差値は、Vサチュレータ648に最初のV出力を提供するQ軸PIDコントローラ644に供給される。Vサチュレータ648はまた、V最小値および/または最大値をV最小/最大推定器646から受け取る。次に、Vサチュレータ648は、最初のV出力及びVの最小値及び/又は最大値に基づいて所望のVを出力する。例えば、最初のVがVの最大値よりも大きい場合、Vサチュレータ648は、Vの最大値を出力し、最初のVがV最小値よりも小さい場合、Vサチュレータ648は、Vの最小値を出力することができる。最初のVがVの最大値とVの最小値との間にあるとき、Vサチュレータ648は、最初のVをVとして出カすることができる。V最小/最大推定器646は、所望のV(Vレギュレーションブロック620によって提供される)、所望のV(Vレギュレーションブロック630によって提供される)、ロータバス電圧、ステータバス電圧、及びモータ115の巻数比に基づいて、最小値及び/又は最大値を決定することができる。例えば、図3に示すような駆動回路を用いて、下記の式を満たすと、
【数14】
次の式を用いて、Vの最大値および最小値を定義することができる
【数15】
ここで、
【数16】
【0081】
ここで、VMspは、M軸電圧設定点であり、VDspは、D軸電圧設定点であり、VKspは、K軸電圧設定点であってもよい。これらの電圧設定点は、電流設定点IK_sp、IM_sp、およびIQ_spと同様に、事前定義され、メモリから検索されるまたは入力/出力装置160から受信したモータ速度指令またはモータトルク指令から決定されてもよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、V最小/最大推定器646は、ステータバス電圧(V)、ロータ回転速度(ω)、V、およびVに基づいてV最小値および/または最大値を決定することができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、Vサチュレータ648はまた、積分飽和現象を防止または制限するために、Q軸PIDコントローラ644にアンチワインドアップ信号を出力する。例えば、アンチワインドアップ信号は、積分飽和現象が発生する可能性があるとき、Q軸PIDコントローラ644の積分器を固定(clamping)させることができる。
【0084】
図6を参照して説明すると、レギュレータ600においては、M軸制御よりもK軸制御が優先され、Q軸制御よりもM軸制御が優先される。従って、最初にK軸レギュレーションブロック620はVを提供し、次にM軸レギュレーションブロック630はV(Vに依存する)を提供し、次にQ軸レギュレーションブロック640はV(VおよびVに依存する)を提供する。この優先順位が選択されるのは、K軸上の変動がM軸上よりもはるかに速くなる可能性があり、K軸上における命令権限のロスにより、ステータおよびロータ上のシステムにおける過電流を引き起こす可能性がある。さらに、Q軸制御を最低の優先度に割り当てることが許容されることの理由は、例えば、(i)ステータ対ロータの巻数比が一般的に高く、(ii)V(およびVを逆MK変換で計算するために使用され得るV及びV)が比較的狭い範囲に制限され、そして(iii)Vに直交するVが比較的自由であり、1巻回あたりの起電力(volts-per-turn)について、R/D(又はM/K)軸よりも大きい制御権限により有利である。
【0085】
最小/最大推定器626、636、646によれば、許容範囲外になることなく、3つの軸(K、M、Q)の間で利用可能なステータバス電圧を優先的に割り当てることが可能になる。上述の例では、V最小/最大推定器626、V最小/最大推定器636、およびV最小/最大推定器646は、選択されたVがVの最小値および最大値に影響を与え、選択されたVおよびVがVの最小値および最大値に影響を与えるような、カスケード構成(cascaded arrangement)になっている。このカスケード配置は、K、M、及びQ制御軸の間で利用可能なステータバス電圧がより好ましく利用されることを可能にする。しかしながら、他の実施形態では、入力されるパラメータ(例えば、ステータバス電圧(Vs)、電流(例えば、I、I、及びI)、及び/又はロータ回転速度(ω))を受信し、V、V、及びVのための最大値及び最小値を決定する並列式(非カスケード式)の最小/最大推定器を設けることができる。並列式の最小/最大推定器は、検索表を使用する、または入力パラメータを使用してリアルタイム演算を実行し、出力のための最大値および最小値を生成することができる。並列式の最小/最大推定器は、依然として、Q軸に対してK軸およびM軸を優先し、M軸に対してK軸を優先することができる(例えば、より高い優先度を有する軸のために、より大きな電圧範囲またはより高い最大電圧値を提供することによって実現する)。並列式の最小/最大推定器はさらに、カスケード式推定器と同様に、それぞれのK、M、Q軸サチュレータ628、638、648に、最大値および最小値を提供することができる。
【0086】
変換ブロック650において、モータコントローラ135は、MK基準系(例えば、所望のV、V、およびV)から所望のMKモータ制御パラメータセットを、図5のブロック515に関して説明したように、静止基準系におけるモータ制御パラメータセット(例えば、A、B、C、R、θ基準系)に戻すように変換する。いくつかの実施形態では、ブロック652において、モータコントローラ135は、モータの物理的巻数比を考慮し、さらにこれらの値(例えば、V、V、V、V)を調整された巻数比で乗算することができる。ブロック605に戻って、モータコントローラ135は、次に、図4のブロック415に関して説明したような、ブロック652によって提供されたモータ制御パラメータセットを使用して、(例えば、ステータ駆動回路及びロータ駆動回路を介して)WFSモータ115を制御することができる。
【0087】
図6の各ブロックは、モータコントローラ135の1つ以上のハードウェア回路又はソフトウエアブロック(例えば、メモリ145に記憶され、電子プロセッサ140によって実行される)であってもよい。
【0088】
いくつかの実施形態では、レギュレータ600の1つ以上のブロックは、リアルタイム計算を実行する回路または処理要素ではなく、1つ以上の検索表で実装される。例えば、検索表は、ブロック610、620、630、640、650のうちの1つ以上を、個別にまたは組み合わせて置き換えることができる。例えば、ブロック610のいくつかの実施形態では、MK基準系内の変換値(例えば、I、I、I)をリアルタイムで計算するために、現在モータ情報にMK変換を適用することによる変換を実行するのではなく、現在モータ情報は、現在モータ情報に関する可能な値にマッピングされた変換値を有し、予めロードされた検索表に提供される。言い換えれば、現在モータ情報は、予め埋められた検索表を使用して、変換値にマッピングされる。検索表は、現在モータ情報に関する可能値の複数のセットを取り、それぞれのセットに対してMK変換を実施し、そして結果として得られる変換値を検索表に格納することによって、予め埋められることができる。検索表を収容するために、追加のメモリ空間を使用することができるが、MK変換を使用するリアルタイム計算に比べて、変換時間を短縮することができる。同様に、ブロック650のいくつかの実施形態では、所望のMKモータ制御パラメータセット(例えば、所望のV、V、V)に逆MK変換を適用し、リアルタイムでMK基準系から静止基準系への変換を実行するのではなく、所望のMKモータ制御パラメータセットは、所望のMKモータ制御パラメータセットの可能値にマッピングされた変換値(例えば、V、V、V、V)を予めロードされた検索表に提供される。同様に、レギュレーションブロック620、630、640のそれぞれは、複数の検索表で個別に置換されてもよく、または、それぞれのブロックの可能値を所望のMKモータ制御パラメータセット(例えば、所望のV、V、V)にマップする1つの検索表で全体的に置換されてもよい。
【0089】
図4のブロック410に関して述べたように、いくつかの実施形態では、モータコントローラ135は、ロータ位置角、ロータ界磁電流、およびステータ電流(例えば、θ、I、I、I、I)を所望のモータ電圧(例えば、V、V、V、V)にマッピングする検索表にアクセスすることができる。ここで、検索表は、例示の複数のモータ電流値および例示のロータ位置角による入力セットを、合成励磁インダクタンス電流(I)、合成リーケージインダクタンス電流(I)、および合成Q電流(I)による出力セットに変換するMK電流変換に基づいて埋められる。例えば、レギュレータ600は、現在モータ情報(例えば、θ、I、I、I、I)をモータ制御パラメータセット(例えば、静止基準系内のV、V、V、Vに)にマッピングする検索表に置き換えることができる。ここで、検索表は、レギュレータ600のようなMK変換に依存するレギュレータに、現在モータ情報の可能値の複数のセットを提供し、かつ、特定の結果セットを生成するための可能値のセットに対する関連付けを有する結果モータ制御パラメータセットを検索表に格納する。
【0090】
上記の実施形態では、検索表は、モータコントローラ135のメモリ145に格納されてもよく、又は電子プロセッサ140の単独のハードウェア(又は集積回路(IC))として実装されてもよい。いくつかの事例では、検索表は、メモリ145又は電子プロセッサ140のICにおける多入力多出力(MIMO)表である。
【0091】
従って、上に記載された通り、図4のブロック410は、回転基準系がMK基準系である場合で実施可能であり、かつ、例えば、モータコントローラ135は、図5の処理500を実施可能であり、あるいは、検索表にアクセス可能である。さらに、上述のように、図4のブロック410は、回転基準系がSM/DM基準系である場合に実施可能であり、かつ、例えば、モータコントローラ135は、図7のプロセス700を実施し、あるいは、検索表にアクセスする。
【0092】
図7に移ると、プロセス700は、現在モータ情報と、ステータのD軸成分における意図出力応答およびロータ(R)成分をデカップリングする独立の入力チャンネルを有するSM/DM基準系とに基づいて、モータ制御パラメータセットを決定する。いくつかの実施形態では、モータコントローラ135は、図4のブロック410を実現するプロセス700を実行する。プロセス700は、モータシステム100によって実行されるものとして説明される。しかしながら、いくつかの実施形態では、プロセス700は別のモータシステムによって実施することができる。加えて、プロセス700の各ブロックは特定の順序で図示されているが、いくつかの実施形態において、ブロックのうちの1つ以上は、部分的にまたは全体として並行して実行されてもよく、図7に図示されているのとは異なった順序で実行され、またはバイパスされてもよい。
【0093】
ブロック705において、モータコントローラ135は、現在モータ情報をSM/DM基準系に変換する。例えば、処理500のある実施形態では、現在モータ情報は、ロータ位置角(θ)、ステータコイルの電流(I、I、I)、およびロータ界磁巻線の電流(I)を含むことができる。次に、モータコントローラ135は、SM/DM変換を用いて、θ、I、I、I、Iを加算モード電流(ISM)、差分モード電流(IDM)、および直交電流(I)に変換することができる。
【0094】
例えば、静止ABCR基準系から(回転)SM/DM基準系へ(そしてより詳細には、SM、DM、Q、ヌル(Null)基準系へ)変換するために適用されるSM/DM変換は、下記の式で定義される。
【数17】
ここで、SM/DM基準系の場合、以下の式が満たされる。
【数18】
【0095】
例えば、ISM、IDM、I、INullを決定するために、モータコントローラ135は、ISM、IDM、I、INullのSM/DM基準系内の1次元電流行列を得るように、I、I、I、Iの1次元電流行列をSM/DM変換によって乗算することができる。例えば、モータコントローラ135は、以下の式に沿う演算を行ってもよい。
【数19】
【0096】
いくつかの実施形態では、上記で提供された直接変換ではなく、現在モータ情報は、最初にRDQN基準系に変換され、次に、RDQN基準系からSM/DM基準系に変換される。
【0097】
また、現在モータ情報は、加算モード設定点電流(ISM_SP)、差分モード設定点電流(IDM_SP)、直交設定点電流(IQ_SP)を含む、SM/DM基準系内の各軸の設定点値を含むまたは示すことができる。これらの設定点値は、図4のブロック405の一部として決定されてもよい。例えば、これらの設定点値(目標値とも呼ばれる)は、事前に定義され、ブロック405の一部としてメモリ(例えば、メモリ145)から取得されることができる。あるいは、これらの設定点値は、入力/出力装置160から受信したモータ速度指令またはモータトルク指令から決定することができる。すなわち、モータコントローラ135は、モータ速度指令またはモータトルク指令を受信し、関連性を規定する検索表または式を用いて、これらの指令を設定点値にマッピングすることができる。
【0098】
ブロック710において、モータコントローラ135は、SM/DM基準系内における所望のSM/DMモータ制御パラメータセットを生成する。所望のSM/DMモータ制御パラメータセットは、例えば、加算モード電圧(VSM)、差分モード電圧(VDM)、および直交電圧(V)を含む、SM/DM基準系の1つまたは複数の制御軸における所望の電圧を含む。モータコントローラ135は、設定点値(ISM_SP、IDM_SP、IQ_SP)と、SM/DM軸の決定された(実際)電流値(ISM、IDM、I)との間のそれぞれの誤差に基づいて、所望のSM/DMモータ制御パラメータセットを生成することができる。例えば、ISMがISM_SPよりも小さい場合、モータコントローラ135は、所望のSM軸電圧(VSM)を増加させることができる。言い換えれば、少なくともいくつかの実施形態において、モータコントローラ135は、SM/DM軸における電流値(ISM、IDM、I)を、SM/DM軸における電圧値(VSM、VDM、V)を変化させることによって、ほぼ設定点値(ISM_SP、IDM_SP、およびIQ_SP)になるように規制するレギュレータを実装してもよい。
【0099】
いくつかの実施形態では、モータコントローラ135は、前述の規制を実装するために、1つ以上の比例、積分、微分(PID)コントローラを実行または含む。例えば、図6のシステム600は、SM/DM基準系のために、M軸要素(例えば、IおよびIM_SP)をSM軸要素(例えば、ISMおよびISM_SP)に置き換え、K軸要素をDM軸要素に置き換え、そしてMK変換ブロック610および逆MK変換ブロック650をそれぞれSM/DM変換ブロックおよび逆SM/DM変換ブロックに置き換えることができる。したがって、これらの実施形態では、レギュレーションブロック620はSM軸レギュレーションブロックであり、レギュレーションブロック630はDM軸レギュレーションブロックであってもよい。
【0100】
ブロック715において、モータコントローラ135は、所望のSM/DMモータ制御パラメータセットを、SM/DM基準系からモータ制御パラメータセットの静止基準系に戻すように変換する。例えば、モータコントローラ135は、SM/DM基準系の各軸における所望の電圧(VSM、VDM、V)を、モータ制御パラメータセット(図4のブロック410および415で参照)として作用するV、V、V、およびVに変換することができる。いくつかの実施形態では、モータコントローラ135は、下記の式のように、逆SM/DM変換によってブロック715の変換を実行する。
【数20】
ここで、SM/DM基準系の場合、以下の式が満たされる。
【数21】
【0101】
例えば、V、V、V及びVを決定するために、モータコントローラ135は、V、V、V、及びVの静止ABCR基準系内の一次元電圧マトリクスを得るように、VSM、VDM、V、及びVNullの一次元電圧マトリクスを逆SM/DM変換で乗算してもよい。
【0102】
いくつかの実施形態では、上記で提供されたような直接変換ではなく、所望のSM/DMモータ制御パラメータセットは、最初にRDQN基準系に変換され、次に、RDQN基準系から静止基準系に変換される。
【0103】
図4のブロック410に述べたように、いくつかの実施形態では、モータコントローラ135は、ロータ位置角、ロータ界磁電流、およびステータ電流(例えば、θ、I、I、I、I)を所望のモータ電圧(例えば、V、V、V、V)にマッピングする検索表にアクセスすることができる。ここで、検索表は、静止基準系成分(例えば、θ、I、I、I、I)の入力セットをSM/DM成分(例えば、ISM、IDM、I)の出力セットに変換するSM/DM変換に基づいて埋められる。例えば、SM/DM成分を制御するためのリアルタイムレギュレータ(例えば、レギュレータ600に類似するが、SM/DM基準系のための構成)は、現在モータ情報(例えば、θ、I、I、I、I)をモータ制御パラメータセット(例えば、静止ステータ基準系内のV、V、V、V)にマッピングする検索表に置き換えることができる。ここで、検索表は、SM/DM変換に依存するレギュレータに現在モータ情報の可能値セットを提供し、かつ、特定の結果セットを生成するための可能値のセットに対する関連付けを有する結果モータ制御パラメータセットを検索表に格納する。
【0104】
上記の実施形態では、検索表は、モータコントローラ135のメモリ145に格納され、又は電子プロセッサ140の単独のハードウェア(又は集積回路(IC))として実装されてもよい。いくつかの事例では、検索表は、メモリ145又は電子プロセッサ140のICにおける多入力多出力(MIMO)表である。
【0105】
いくつかの実施形態では、MIMOコントローラ800は、モータコントローラ135の一部である、あるいはモータコントローラ135として動作し、MK基準系またはSM/DM基準系に基づいてモータ115を制御することができる。MIMOコントローラ800は、例えば、プロセス400の機能またはそのサブセットを実現するように設計され構成された、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit, ASIC)又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array, FPGA)であってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、MIMOコントローラ800は、MK基準系のためのレギュレータ600、あるいはSM/DM基準系のために変更されたものを組み込むことができる。いくつかの実施形態では、MIMOコントローラ800は、プロセス400又はそのサブセットを実施するために、上述のように、1つ又は複数の検索表を含むことができる。例えば、検索表は、MK変換および逆MK変換に基づいて、またはSM/DM変換および逆SM/DM変換に基づいて、現在モータ情報(例えば、ブロック405で決定される)をモータ制御セット(例えば、ブロック415で適用される)にマッピングするように予め埋めることができる。いくつかの実施形態では、MIMOコントローラ800は、(例えば、変換またはレギュレータ制御の)リアルタイム計算と(例えば、リアルタイムで計算されない残りの変換またはレギュレータ制御のための)検索表との組合せを含む。例えば、図6を参照して、いくつかの実施形態では、変換610及び変換650は、検索表によって実装されることができ、一方、レギュレータブロック620、630、640は、リアルタイム計算用の回路を含む。さらに、図6を引き続き参照することで、他の実施形態では、変換610および変換650は、リアルタイム計算により実装され、レギュレータブロック620、630、640は、検索表によって実装されてもよい。計算用の回路及び検索表の様々な他の組合せを使用して、他の実施形態におけるMIMOコントローラ800の機能を実装することが可能である。
【0106】
図示のように、MIMOコントローラ800は、現在モータ情報(ω、θ、I、I、I、及びI)を受け取り、モータ制御セット(V、V、V、V)を出力する。いくつかの実施形態において、MIMOコントローラ800によって出力されるモータ制御セットは、ステータ駆動回路200及びロータ駆動回路205を直接的に制御するためのPWM信号又は他の制御信号を含む。さらに他の実施形態では、現在モータ情報は、電流信号に加えてまたはその代わりに、静止基準系内に1つ以上の電圧信号を含んでもよい。加えて、いくつかの実施形態では、モータ制御セットの出力は、電圧信号に加えてまたはその代わりに、静止基準系内に1つ以上の電流信号を含んでもよい。いくつかの実施形態では、MIMOコントローラ800は、リストされたそれぞれの入力を示す明示的な値を受信するのではなく、他の入力からの1つまたは複数の入力の値を推測することができる(例えば、経時的な回転位置(θ)に基づく回転速度(ω)を推測する)。
【0107】
さらに、静止基準系からMK基準系またはSM/DM基準座標系へ、およびMK基準座標系またはSM/DM基準座標系から固定基準座標系への、上記で提供された特定の変換行列は、三相ステータおよび単相ロータを有するWFSモータに対して提供される。しかし、これは単なる具体的な例であり、いくつかの実施形態では、これらの概念及び変換は、2相ステータ、3相を超える位相を有するステータ、及び/又は同様の原理に基づく2相以上のロータを有するWFSモータに拡張され、適用される。このような実施形態では、追加の位相を考慮するために変換行列を更新する。例えば、以下の節では、上記に提供されたMK基準系およびSM/DM基準系に対する変換の基礎となる原理および計算の追加的説明を提供する。加えて、以下の図9A図9Fの記述に基づいて、六相ステータ及び四相ロータを有するモータについて、静止基準系からMK基準系へ変換するための例示的変換が提供される。
【0108】
プロセス700は、巻線界磁同期モータとして実装されたモータ115に実行されてもよいが、プロセス700は、永久磁石同期機械または永久磁石および巻線の両方によるロータを有するハイブリッド永久磁石-巻線界磁同期モータとして実装される他の形態のモータ115に実行されてもよい。プロセスの対象であるモータ115が永久磁石同期機械である実施形態では、鎖交磁束空間において、磁石の起磁力(MMF)は、RDQNからSM/DM変換におけるRを表すことができる。
【0109】
(ロータ/ステータD軸磁束鎖交のデカップリング)
WFSモータ115のようなWFSモータは、ロータ界磁内及びステータD軸の両方において、ロータの磁束鎖交(rotor flux linkage)と電流との間、並びにステータD軸の磁束鎖交と電流との間は、強い結合(coupling)を有することができる。一般に、磁束鎖交は、コイル(例えば、ロータまたはステータ巻線)を通る磁束に、磁束が通るコイルの巻数を乗算したものを意味する。この強いR-D結合により、合計で4つの成分(D、Q、N、R)を有するDQNR基準系において、2つの成分のSM/DMサブ系を作成することができる。
【0110】
R-D結合を分離して扱う場合、下記の式が提供される。ここで、λおよびλは、それぞれロータ界磁およびステータD軸に関する磁束鎖交を表し、LおよびLは、それぞれロータおよびステータD軸に関する自己インダクタンスを表し、LR,Dは、ロータおよびステータD軸の励磁インダクタンスを表す。
【数22】
【0111】
ロータ界磁およびステータD軸の自己インダクタンスは、励磁インダクタンスおよびリーケージインダクタンスにデカップリングできる。ここで、下記の式に示すように、ほとんどの場合、リーケージインダクタンス(LR,RおよびLD,D)は、関連する励磁インダクタンス(LR,D)よりはるかに小さい。
【数23】
【数24】
【数25】
【0112】
この結果、下記の行列になる。
【数26】
【0113】
2自由度系において、SM/DM変換マトリクスは下記の形式になることが可能である。
【数27】
この行列を用いて、RおよびステータD軸成分を次の式のように変換することができる。
【数28】
【0114】
一方、逆変換は、下記の式によって表すことができる。
【数29】
【0115】
逆変換は順方向変換に近似している。係数の大きさを維持する選択肢を用いることにより、2自由度に関するSM/DM変換マトリクスは、それ自身の逆行列である。より一般的には、自由度が3以上の場合、変換行列の転置は逆行列になる。ここで、下記の式のような一例を示す。
【数30】
【数31】
【数32】
【数33】
【数34】
【数35】
【0116】
上記の各式に照らして、新たなインダクタンス行列を下記の式のように定式化できる。
【数36】
【数37】
【数38】
【数39】
【0117】
ステータおよびロータの両方のリーケージインダクタンスはほぼ同じ大きさの小さな正数であるので、非対角項は対角項よりもはるかに小さく、クロスカプリングは、ほとんどないことを意味する。
【0118】
MK基準系は、ロータおよびステータのD軸リーケージインダクタンスがほぼ等しいシナリオから由来するので、行列が次の式のように単純化される。
【数40】
【0119】
加えて、MK基準系を使用するために、コントローラ(例えば、コントローラ135)は、例えば、上記の図6に説明されたように、非物理的巻数比を通じて、ロータおよびステータのD軸リーケージインダクタンスが等しくなるように、人工的に強制することができる。一方、独立したM軸およびK軸コントローラは、モータシステムにおける有意な外乱を排除することが可能である。さらに、2つの結合されたインダクタ(たとえば、密結合または高度結合インダクタ)を備えたモータシステムでは、巻数比および2つのリーケージインダクタンスの決定は、補償のために使用できる1つの自由度を有する。
【0120】
RDQ Null表示に関する拡張されたケース、次のサブ行列を代入することができる。
【数41】
【数42】
【0121】
WFSモータから近似すると、ロータおよびステータのQ軸またはNull軸の間における励磁インダクタンスが非常に小さい。同様に、Q軸およびNull軸を持つステータD軸励磁インダクタンスもかなり小さい。したがって、モータシステム100は、これらの項目をゼロに近似して、インダクタンス行列を簡素化することができる。例えば、RDQ Null空間行列は、次の式のようになり得る。
【数43】
この行列において、RDQ Null基準系は、R成分およびD成分の例外を除いて、ほぼデカップリングされたシステムを提供する。
【0122】
MK基準系では、次の行列に示すように、M軸鎖交磁束がK軸電流からデカップリングされ、K軸鎖交磁束がM軸電流からデカップリングされるように、行列は対角化されている。
【数44】
【0123】
図に示すように、MK基準系は、ステータおよびロータの磁界(従来はRD空間で見られる)を通じてモータシステムのデカップリングされた図、および制御を提供する。これは、機械の所望のデカップリングされた出力応答(例えば、インダクタンス、電流、磁束鎖交など、およびそれらに関連する制御)のための、独立した入力制御、または入力チャネルを提供する。
【0124】
このため、SM/DMおよびMK変換は、R軸およびD軸の成分間のクロスカプリング完全にまたは実質的に排除する。例えば、Rの変化量は、D軸において1%、5%、10%、または20%未満の変化を誘発する可能性があり、D軸の変化量は、Rにおける1%、5%、10%、または20%未満の変化を誘発する可能性がある。したがって、MK基準系およびSM/DM基準系は、D軸成分の意図出力応答およびDQNR基準系のロータ界磁(R)成分をデカップリングする独立入力チャネルを提供する。
【0125】
加えて、上述のMK変換は、ノルムされ(normed)、かつ、電力不変であり、状態変数(例えば、電圧および/または電流)の大きさは、変換全体にわたって維持されることを意味する。上述のSM/DM変換は、ノルムされていないので、状態変数の大きさは、変換全体を通して維持されない場合がある。
【0126】
図9A及び図9Bは、それぞれRDQN基準系及びSM/DM基準系内の値の例示的な分布を示している。これらにおいては、SM/DM基準系(及びMK基準系内において、同様に存在する)によって提供されるロータ及びステータD軸における意図出力応答のデカップリングを強調している。より詳細には、図9Aは、例示的なWFSモータをモニタリングすることにより、I(ロータ界磁電流)及びI(ステータD軸電流)のペアの異なるサンプルの分布を示すグラフ900を示す。図示のように、IおよびIは、これらのサンプルが多くの異なったモータシナリオで取得されているにもかかわらず、密結合され、かつ、領域905に集中している。したがって、モータコントローラは、実際のモータ状態が異なっていても、同様のIおよびIを生じるので、あるモータ状態を他のモータ状態と区別することができない場合がある。
【0127】
対照的に、図9Bは、同じようなサンプルの分布に関するグラフ925を示しているが、SM/DM基準空間におけるISMおよびIDMのペアを示す。図示のように、ISM及びIDMは、より広く分布されているので、ロータおよびステータD軸における出力応答は、デカップリングされて、モータコントローラまたは他のシステムは、異なるモータ状態のそれぞれをより簡単に区別することができる。これにより、より正確な計算(例えば、より高い数値精度、およびより良い補間能力)が可能になる。特定の実施形態では、例えば、(例えば、図5のプロセス500または図7のプロセス700を実装するために)検索表またはMIMO制御装置の文脈で使用されるとき、これは、より高い精度を提供するだけでなく、メモリに保持されるデータがより少なく(例えば、充分な計算のために検索表を構成するデータの大きさ)、および/またはより高速な動作時間を提供する。さらに、このような付加の解決策を有するMKおよびSM/DM基準空間において、コントローラおよびWFSモータの間の目立たない挙動が排除されるので、コントローラが有する制御の余裕を増加させることができる。
【0128】
図9C及び図9Dは、RDQN基準系及びSM/DM基準系における値の分布の他の例をそれぞれ示しており、SM/DM基準系によって提供されるロータ及びステータD軸における意図出力応答のデカップリングを強調している(また、MK基準系にも同様に存在する)。より詳細には、図9Cは、ロータ界磁電流(I)およびロータ磁束(ψ)ペアに関する異なるサンプルの分布を示すグラフ950を示し、ここで、ロータ磁束(ψ)がロータ磁束鎖交(λ)(すなわち、λ=ψ×N ロータの巻き数)に正比例する。同様に、グラフ955は、ステータD軸電流(I)及びステータD軸磁束(ψ)のペアに関する異なるサンプルの分布を示し、ここで、ステータD軸磁束(ψ)は、ステータD軸磁束鎖交磁束(λ)(すなわち、λ=ψ×N ロータの巻き数)に正比例する。図示のように、グラフ950のI及びψは、グラフ955のI及びψに密結合されている。更に、ロータ磁束(ψ)はロータ磁束鎖交(λ)に正比例し、ステータD軸磁束(ψ)はステータD軸磁束鎖交(λ)に正比例するので、拡張により、IおよびλもIおよびλに密結合されている。このため、グラフ950における線は、グラフ955における線に密に近似する。言い換えれば、あるグラフの1つの次元の変化は、他のグラフの1つの次元の変化にほぼ直接的に反映される。したがって、I/Iの状態が異なっていても(場合によっては大幅に異なっている)、λ/λについて類似の状態をもたらすので、モータコントローラは、いくつかのモータ状態を他のモータ状態と区別することができない場合がある。
【0129】
対照的に、図9Dは、グラフ950および955と同じサンプルの分布を示すグラフ960および965を示すが、SM/DM基準空間において、ISMおよびλSMのペア(グラフ960において)とIDMおよびλDMのペア(グラフ965において)を表現する。図示されるように、グラフ960内のプロット線は、グラフ965内のプロット線(グラフ960内の湾曲プロット線対グラフ965内の線形または区分的線形プロット線)とは異なる形状を有する。加えて、グラフ960内のプロット線は、グラフ965内のプロット線とは異なる応答パターンを有する(グラフ960内の集中プロット線対グラフ965内の間隔を開けたプロット線)。従って、これらのグラフは、ロータ及びステータのD軸における意図出力応答がデカップリングされるように、磁束鎖交値がより広く分布されていることを示し、モータコントローラ又は他のシステムは、互いに異なったモータ状態をより簡単に区別することができる。
【0130】
図9Eおよび図9Fは、同様に、RDQN基準系およびSM/DM基準系における数値の分布に関する別の例をそれぞれ示す。ここで、図9Fは、RDQN基準系内における数値のプロットを示し、ここで、x軸でステータD軸電流(I)を表し、y軸でQ軸電流(I)を表し、およびz軸でロータ磁束(ψ)を表している。図9Eは、SM/DM基準系内における数値のプロットを示し、x軸で差分モード電流(IDM)を表し、y軸でQ軸電流(I)を表し、およびz軸で加算モード磁束(ψSM)を表している。図9A~D同様、RDQN基準系における数値の分布を示す図9Eと比較して、ロータおよびステータD軸の意図出力応答のデカップリングを示す図9FのSM/DM基準系において、これらの数値はより広く分布されている。
【0131】
上述のように、MK基準系およびSM/DM基準系は、モータ制御のために使用されてもよい。加えて、基準系、特にSM/DM基準系は、モータデザインおよびシステムモデリングのために使用されてもよい。例えば、SM/DM基準系は、より対角化されたシステムとなるようにWFSモータ(例えばWFSモータ115)を設計する、あるいは、SM/DM基準系に図示または示されるメトリックの意味に基づいた目的機能を最大化または改善するようにモータをデザインまたは成形するために使用されてもよい。
【0132】
上述のように、MK変成器及びSM/DM変換はまた、本明細書で提供される三相ステータ及び単相ロータとは異なった個数のステータ及びロータ位相を有するモータに使用することができる。3つを超えるステータ位相及び/又は1つを超えるロータ位相を有するモータに対しては、該当モータは、n個のサブシステムを有するシステムとして定義することができ、ここで、それぞれのサブシステムは、RDQO基準系のような独立した回転基準系である。各サブシステムについて、R軸およびステータD軸がQ軸およびNull軸に直交するという近似により、以下の式を満たす。
【数45】
【0133】
さらに、N個のサブシステムにおける第n個のサブシステムに対するSM/DM変換マトリクスは、下記の式により定義される。
【数46】
ここで、αは1(インピーダンス不変)または1/√2(ノルム不変)のいずれかである。
【0134】
これらのサブ行列は、ロータの位相毎に追加された行および列を有するABC-to-DQO行列でつながることが可能である。例えば、下記の式のように、6相ステータ及び2相ロータを有するモータについて、静止基準系からRDQO基準系に変換するための変換が提供される。ここで、静止基準系は、A、B、C、A、B、およびCとして6つのステータ位相を表し、RおよびRとして2つのロータ位相を表す。RDQO基準系は、モータを本質的に2つの独立した回転機械またはモータとして表し、D0、Q0、N0、R0(第1機械)とD1、Q1、N1、およびR1(第2機械)との成分セットを有する2つのサブシステムとも呼ばれる。
【数47】
【0135】
次に、RDQO成分セットのそれぞれは、前述のようにMK基準系またはSM/DM基準系に変換することができる。例えば、6相ステータ、2相ロータの場合、インダクタンス行列は次の式のような形式になる。
【数48】
【0136】
次に、2つのRDQOサブシステムのSM/DM変換行列は次の式のようになる。
【数49】
ここで、αは1(インピーダンス不変、SM/DMの場合)または1/√2(ノルム不変、MKの場合)のいずれかである。
【0137】
RABCからSMDMQOへの変換は、下記の式に示す2つの変換の行列積であってもよい。
【数50】
【0138】
これらの変換の結果として、モータは、例えば、いくつかの例では2つのSM/DM基準系サブシステム(例えば、SM、DM、Q、OおよびSM、DM、Q、O)として表され、またいくつかの例では2つのMK基準系サブシステム(例えば、M、K、Q、OおよびM、K、Q、O)として表されることができる。
【0139】
図10は、ステータD軸成分の意図出力応答およびDQNR基準系におけるロータ成分をデカップリングする回転基準系を用いて、WFSモータ115のようなWFSモータをデザインおよび/またはモデリングするためのモータデザインシステム1000を例示する。システム1000は、電子プロセッサ1010およびメモリ1015を有するシミュレーションコントローラ1005を含む。シミュレーションコントローラ1005は、図11のプロセス1100に関して以下にさらに詳述されるように、入力/出力装置1020と通信して、モータ仕様およびシミュレーションパラメータを受信し、シミュレーション結果を送信する。
【0140】
メモリ1015は、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、またはシミュレーションソフトウェア1025およびモータ制御ソフトウェア1030を格納する他の一時的でないコンピュータ読取可能媒体のうちの1つ以上を含む。電子プロセッサ1010は、とりわけ、メモリ1015から命令およびデータを受信し、命令を実行することにより、例えば、図11のプロセス1100を含む、本明細書で説明されるシミュレーションコントローラ1005の機能を実行するように構成される。例えば、電子プロセッサ1010は、WFSモータをデザインおよびモデリングするためのシミュレーションソフトウェア1025を実行するように構成される。
【0141】
シミュレーションコントローラ1005、電子プロセッサ1010、およびメモリ1015は、それぞれ単一のユニットとして図示されているが、いくつかの実施形態において、これらの構成要素のうちの1つ以上は、分布式構成要素である。例えば、いくつかの実施形態では、電子プロセッサ1010は、1つ以上のマイクロプロセッサ及び/又はハードウェアの回路要素を含んでいる。さらに、分布式構成要素は、互いに遠隔的に位置することができ、例えば、ネットワーク(例えば、ローカルネットワーク、広域ネットワーク(例えば、インターネット)、または別のネットワーク)によって、互いの間の通信が可能になるように接続される。
【0142】
入力/出力装置1020は、ディスプレイ、タッチスクリーン、タッチスクリーンディスプレイ、キーボード、マウス、プッシュボタン、ダイヤル、ペダル、マイクロフォン、スピーカ等のうちの1つまたは複数を含み、ユーザからの入力を受信し、ユーザに出力を提供することができる。いくつかの実施形態では、入力/出力装置1020は、モータ仕様およびシミュレーションパラメータを受信し、これらの仕様およびパラメータをシミュレーションコントローラ1005に提供するように構成される。シミュレーションコントローラ1005は、WFSモータをデザインおよびモデリングするために、これらの仕様およびパラメータを使用するように構成される。シミュレーションコントローラ1005は、モータ仕様及びシミュレーションパラメータに基づいて、シミュレーション結果を出力するように構成される。入力/出力装置1020は、モータデザインシステム1000の他の構成要素の近くに設けられてもよく、または遠隔的な位置に設けられ、1以上の中間通信ネットワークまたはインターフェースを介して接続されてもよい。一部の実施形態では、入力/出力装置1020は、シミュレーションコントローラ1005と通信しているクライアント計算装置(例えば、デスクトップコンピュータまたはラップトップコンピュータ)に組み込まれる。
【0143】
図11は、ステータD軸成分の意図出力応答およびDQNR基準系におけるロータ界磁成分をデカップリングする回転基準系を用いて、WFSモータ115のようなWFSモータをデザインおよび/またはモデリングするためのシミュレーション結果を生成するプロセス1100を示している。プロセス1100は、モータデザインシステム1000によって実行されるものとして説明される。しかし、いくつかの実施形態では、プロセス1100は別のモータデザインシステムによって実現することができる。加えて、プロセス1100のブロックは特定の順序で図示されているが、いくつかの実施形態において、1つ以上のブロックは、部分的にまたは全体的に並行して実行されてもよく、図11に図示されているのとは異なった順序で実行されてもよく、またはバイパスされてもよい。
【0144】
ブロック1105において、シミュレーションコントローラ1005は、初期モータ仕様を決定する。初期モータ仕様は、ロータコア寸法(例えば、内側直径、外側直径、及び/又は長さ)と、ロータの歯の数、寸法、及び位置と、ロータの極の数および位置と、
ロータの永久磁石の数、寸法、位置、および界磁特性と、ロータの巻線またはコンダクターの数、寸法、位置、および伝導特性と、ステータコア寸法(例えば、内側直径、外側直径、及び/又は長さ)と、ステータの歯の数、寸法、及び位置と、ステータの極の数および位置と、ステータの積層の数および寸法と、ステータの巻線またはコンダクターの数、寸法、位置、および伝導特性と、バックアイアンの寸法および特性と、その他のモータの特性との1つ以上を示してもよい。いくつかの実施形態では、初期モータ仕様は、手動的データエントリー(例えば、英数字値の入力、ラジオボタン等の選択、その他グラフィカルユーザインターフェースを介する操作)および/または1つ以上のコンピュータ支援製図(CAD)によるファイルの形態で受け取ることができる。
【0145】
シミュレーションコントローラ1005は、例えば、入力/出力装置1020及び/又はメモリ1015から初期モータ仕様を受信することができる。いくつかの実例において、初期モータ仕様の1以上の仕様が、(例えば、入力/出力装置1020によって)シミュレーションコントローラ1005に直接示される、またはメモリ1015から直接得られる。いくつかの例では、シミュレーションコントローラ1005は、他のデータから、またはシミュレーションコントローラ1005によって受信されたまたは決定された、初期モータ仕様における他の仕様から、初期モータ仕様の1つ以上の仕様を導出することができる。
【0146】
ブロック1110において、シミュレーションコントローラ1005は、モータ動作シミュレーションパラメータを決定する。いくつかの実施形態では、モータ動作シミュレーションパラメータは、ロータバス電圧、ステータバス電圧、大気温度、モータ速度、モータトルク、ステータ電流の大きさ、ロータ電流の大きさ、および他のパラメータのうちの1つ以上を含む。このようなパラメータはそれぞれ、シミュレートされる単一の値または一連の値であってもよい。例えば、モータスピードパラメータは、モータがシミュレートされる速度指令値の範囲を含むことができる。同様に、モータトルクパラメータは、モータがシミュレートされるトルク指令値の範囲を含むことができる。シミュレーションコントローラ1005は、例えば、入力/出力装置1020及び/又はメモリ1015からモータ動作シミュレーションパラメータを受信することができる。
【0147】
ブロック1115において、シミュレーションコントローラ1005は、ステータD軸成分の意図出力応答およびDQNR基準系におけるロータ成分をデカップリングする独立の入力チャンネルを有する回転基準系に基づいた制御方式を用いて、WFSモータを定義する初期モータ仕様と、モータ動作シミュレーションパラメータとに基づいて、WFSモータをシミュレートする。WFSモータをシミュレートするために、シミュレーションコントローラ1005は、MK基準系またはSM/DM基準系を使用して、図4のプロセス400に従って制御をシミュレーションしてもよい。例えば、図12を参照すると、シミュレーションシステム1200が示され、これは、ブロック1115を実行するために、シミュレーションソフトウェア1025およびモータ制御ソフトウェア1030の実行を通してシミュレーションコントローラ1005によって生成されることができる。より詳細には、シミュレーションコントローラ1005は、モータ制御ソフトウェア1030を実行して、シミュレーションモータコントローラ1205を提供し、かつ、シミュレーションソフトウェア1025を実行して、シミュレーションWFSモータ1210を提供することができる。シミュレーションモータコントローラ1205は、図4のプロセス400を実行して、シミュレーションWFSモータ1210の制御をシミュレートすることができる。例えば、シミュレーションモータコントローラ1205は、図6のレギュレータ600の実装、図8のMIMOコントローラ800の実装、又は上述したMK基準系もしくはSM/DM基準系コントローラの別の態様であってもよい。
【0148】
シミュレーションモータコントローラ1205は、静止基準系内のシミュレーションWFSモータ1210からセンサデータを受信し、静止基準系内のシミュレーションWFSモータ1210に制御信号を提供することができる。シミュレーションWFSモータ1210は、モータを定義する初期モータ仕様を受け取り、あるいは、シミュレーションモータコントローラ1205から、静止基準系内のシミュレートされた制御信号を受け取ることができる。次に、シミュレーションWFSモータ1210は、それらの信号および初期モータ仕様に基づいてWFSモータの制御をシミュレートし、それに応じて、シミュレーションモータコントローラ1205に提供するための、静止基準系内で更新されたシミュレートされたセンサ信号を生成することができる。上述のように、シミュレーションWFSモータ1210は、シミュレーションソフトウェア1025の実行によって実装されてもよい。シミュレーションソフトウェア1025は、Ansys Maxwell(登録商標)、Altair Flux(登録商標)、FEMM、Jmag(登録商標)、Gmsh、または他の電磁要素解析ソフトウェアなどの公知のモータシミュレーションソフトウェアであってもよい。
【0149】
図5のプロセス500に関して記載されるような、MK基準系に基づいた制御を実装する場合、シミュレーションモータコントローラ1205は、モータ動作シミュレーションパラメータの一部として受信された速度指令またはトルク指令を、(例えば、速度指令またはトルク指令を設定点値にマッピングする検索表を使用して)M、K、およびQ軸に関する設定点値に変換することができる。さらに、シミュレーションモータコントローラ1205は、図6のレギュレータ600に関して説明したように、シミュレーションWFSモータのための受信されたシミュレートされたセンサデータを静止基準系からMK基準系へ変換し、MK基準系内にシミュレートされた制御信号を生成し、シミュレートされたWFSモータを制御するために、シミュレートされた制御信号を静止基準系に変換することができる。他の例では、シミュレーションコントローラ1005は、上述の図6のレギュレータ600以外の、MK基準系に基づいた制御技術を使用し(例えば、1つ以上の検索表を使用して)、制御をシミュレートしてもよい。
【0150】
SM/DM基準系に基づいた制御を実装する場合、図7のプロセス700に関して記載されるように、シミュレーションモータコントローラ1205は、モータ動作シミュレーションパラメータの一部として受信された速度指令またはトルク指令を、(例えば、速度指令またはトルク指令を設定点値にマッピングする検索表を使用する)SM、DM、およびQ軸に関する設定点値に変換することができる。さらに、シミュレーションモータコントローラ1205は、図8のMIMOコントローラ800に関して説明したように、シミュレーションWFSモータのための受信されたシミュレートされたセンサデータを静止基準系からSM/DM基準系へ変換し、SM/DM基準系内にシミュレートされた制御信号を生成し、シミュレーションWFSモータを制御するために、シミュレートされた制御信号を静止基準系に変換することができる。他の例では、シミュレーションコントローラ1005は、上述の図8のMIMOコントローラ800以外のSM/DM基準系に基づいた制御技術を使用して(例えば、SM/DM基準系に対応して変形された図6のレギュレータ600に類似するレギュレータを使用する)、制御をシミュレーションしてもよい。
【0151】
ブロック1120において、シミュレーションコントローラ1005は、MKまたはSM/DM基準系などのような、ステータD軸成分の意図出力応答およびDQNR基準系におけるロータ界磁成分をデカップリングする独立の入力チャンネルを有する回転基準系にシミュレーション結果を生成する。例えば、シミュレーション結果は、モータシミュレーション動作パラメータ、MKまたはSM/DM基準系内のシミュレートされた制御信号、MKまたはSM/DM基準系内のシミュレートされたセンサ信号、静止基準系内のシミュレートされた制御信号、および静止基準系内のシミュレートされた制御信号より1つ以上を含む時系列データを有する結果データセットを有してもよい。この結果データセットは、シミュレーションモータコントローラ1205による制御に基づいた、シミュレーションWFSモータ1210のシミュレーションの間に記録され、表または他のデータ収集形式として出力されてもよい。追加または代替として、シミュレーション結果は、この時系列データのサブセット、又はこの時系列データから導出された情報を提供することができる。この結果データセットは、メモリ1015に格納されてもよく、および/または入力/出力装置1020へ(例えば、電子ディスプレイ上の表示、さらなる装置への送信、または格納のために)出力されてもよい。
【0152】
図11のプロセス1100に関して記載されるように、ステータD軸成分内の意図出力応答、およびDQNR基準系(例えば、MKまたはSM/DM基準系)のロータ界磁成分をデカップリングする独立した入力チャネルを有する回転基準系を使用し、WFSモータをシミュレートすることによって、より効率的なシミュレーションを実行し、新たな洞察を提供し、および/またはシミュレーションを簡素化することができる。
【0153】
効率向上の第1の事例として、より分散された鎖交磁束マップが、MKまたはSM/DM基準系(例えば、図9A~9F参照)内に生成され得るので、WFSモータ1210は、より少ない動作パラメータでシミュレートされ、特定のモータデザインにとって有益である結果データセットを得ることができる。例えば、RDQ基準系を使用して同レベルの情報を得るためには、たとえそれができたとしても、WFSモータ1210は、劣った情報を生成するのに、追加の動作パラメータ(例えば、より細かい粒度で)でシミュレートされる必要がある。したがって、シミュレーション自体が、処理タイムや処理電力など、より少ない資源を使用する可能性がある。効率向上の第2的な事例として、WFSモータ1210は、より少ない動作パラメータでシミュレートすることが可能であるため、より小さな結果データセットが生成され、より少ないメモリ記憶領域を占有する可能性がある。
【0154】
さらに、モータデザインに関する新たな洞察が、プロセス1100を使用して提供されることができる。これは、以前では分析および調整が困難であった特定のモータ特性を改善または最適化するために、設計変更が可能になる。例えば、SM/DM基準系を使用して、磁極面の形状を設計し、所定の設計のためのリーケージ成分(例えば、DM軸またはK軸成分)を低減することができる。いくつかの事例では、SM/DM基準系は、WFSモータのアクティブ磁極について、ロータの磁極面からエアギャップまでの近傍を管理することにより、リーケージ成分を低減するための磁極面を実証することができる。例えば、図13を参照して、3つのステータ位相(A、B、C)を有するWFSモータ1300(WFSモータ115またはシミュレーションWFSモータ1210の一例であり得る)におけるリーケージを減少させるために、A相ステータ磁極(A相ステータ磁極の中心が極1310として識別される)をオーバーラップするロータ磁極面1305との間のエアギャップを最小化または減少させてもよい。一方、ロータ磁極面1305は、B相およびC相の極に位置合わせるロータ磁極面1305の端部1315でステータからステップバックするまたは広がる(エアギャップを増加させる)ことができる。プロセス1100によって生成される結果データセット、および特に、MKまたはSM/DM基準系内のシミュレートされたセンサ信号を見ることによって、デザインのリーケージ成分を容易に特定することができる。シミュレーションコントローラ1005は、様々な極形状についてプロセス1100を繰り返し実行して、モータについて所望のリーケージ成分を達成する特定の極形状を特定してもよい。例えば、繰り返しごとに、シミュレーションコントローラ1005について、初期モータ仕様を修正されたモータ仕様に置き換えて、さらなるモータデザイン(例えば、修正された磁極形状を有するデザイン)をシミュレーションし、分析してもよい。シミュレーションコントローラ1005は、それぞれのデザインについて、生成されたシミュレーション結果を比較し、最良または適切なリーケージ成分(例えば、最高のM軸インダクタンスまたは最低のK軸インダクタンス)を提供する設計を特定してもよい。シミュレーションコントローラ1005は、(例えば、入力/出力装置1020を介して)最良の又は適切なリーケージ成分を提供するデザインを示す出力をブロック1120の一部として生成することができる。
【0155】
別の例では、SM/DM基準系を使用して、巻線パターンを設計し、所定の設計について、リーケージ成分(例えば、DM軸またはK軸成分)を低減することができる。いくつかの事例では、SM/DM基準系は、例えば、ステータ上に巻線をオーバーラップすることによってリーケージ成分を低減する巻線パターンを実証することができる。例えば、巻線パターンは、SM/DM基準系を使用してモデリングされることにより、WFSモータが、別のモデリングされた巻線パターンと比較してより対角化されるため、より有利であると判断することができる。例えば、システム磁束をシフトするための、共用スロットを使用する巻線パターン、または二重層巻線は、SM/DM基準系内でモデリングされてもよい。プロセス1100によって生成された結果データセット、特に、MKまたはSM/DM基準系内のシミュレートされたセンサ信号を見ることによって、特定の巻線設計によるリーケージ成分の結果を容易に示すことができる。
【0156】
いくつかの実施形態では、プロセス1100は、様々な巻線設計に対して繰り返し実行されて、モータについて所望のリーケージ成分を達成する特定の巻線設計を特定してもよい。例えば、繰り返しごとに、シミュレーションコントローラ1005は、更新されたモータ仕様および/またはモータ動作シミュレーションパラメータで、WFSモータをシミュレートしてもよい。いくつかの例では、シミュレーションコントローラ1005は、それぞれの巻線設計について生成されたシミュレーション結果を比較し、最良または適切なリーケージ成分(例えば、最高のM軸インダクタンスまたは最低のK軸インダクタンス)を提供する設計を特定することができる。シミュレーションコントローラ1005は、(例えば、入力/出力装置1020を介して)最良または適切なリーケージ成分を提供する巻線設計を示す出力をブロック1120の一部として生成することができる。
【0157】
特定のWFSモータおよび潜在的用途に応じて、異なったデザイン基準を適用する場合がある。例えば、低漏洩磁束鎖交(DM)を有するモータをデザインすることにより、例えば、ステータからロータへの効率的なワイヤレス電力伝送の用途、またはより高速な電磁気的応答のために有利である。一般に、モータコントローラの分解能は、漏洩磁束鎖交(DM)が低下するにつれて増大するはずである。したがって、SM/DM基準系は、特定の用途に十分なモータデザインを達成するために、これらの特徴のバランスをとるのをアシストすることができる。
【0158】
一部の実施形態では、シミュレーションコントローラは、所望のモータパラメータが特定されるようにプロセス1100を繰り返す自動化設計プロセスを実装する。例えば、プロセス1100の繰り返しごとに、シミュレーションコントローラ1005は、以前のモータシミュレーションに使用された1つまたは複数の初期モータ仕様および/またはモータ動作シミュレーションパラメータについての修正値を含む、1つまたは複数の修正モータパラメータを決定してもよい。シミュレーションコントローラ1005は、繰り返しごとに、(例えば、修正されなかった以前のシミュレーションのモータ仕様および/またはモータ動作シミュレーションパラメータとともに)修正されたモータパラメータを使用してWFSモータをシミュレートしてもよい。シミュレーションより、シミュレーションコントローラ1005は、上記のように、回転基準系(例えば、MKまたはSM/DM基準系)内においてまたは回転基準系に基づいて、さらなるシミュレーション結果を生成してもよい。次いで、シミュレーションコントローラ1005は、繰り返し行ったシミュレーションのうちの1つ以上からのさらなるシミュレーション結果を分析して、モータに所望の影響(例えば、最大化、最小化、またはモータ特性の改善)を提供するモータパラメータ(例えば、繰り返し行ったシミュレーションのうちの1つからのモータ仕様および/またはモータ動作シミュレーションパラメータ)を特定してもよい。所望の効果は、リーケージ電流の最大化または最小化など、前述の効果の1つであり得る。次に、シミュレーションコントローラ1005は、所望の影響を提供するモータパラメータの指標を(例えば、モータパラメータを明示する、または該当モータパラメータを有する設計の繰り返しを特定することによって)出力してもよい。この指標は、入力/出力ユニット160(例えば、表示用、格納用、または送信用)に提供されてもよい。
【0159】
いくつかの実施形態では、シミュレーションコントローラは、プロセス1100が異なるモータ仕様および/またはモータ動作シミュレーションパラメータの一定範囲内について繰り返され、生成されたシミュレーション結果が分析され、特定の特性(例えば、モータの特定の特性の最大化、最小化、または改善)を提供するための設計(および関連するモータパラメータ)を実行する自動化デザインプロセスを実装する。例えば、プロセス1100の最初の実行後に、(ブロック1105の)モータ仕様および/または(ブロック1110の)モータ動作シミュレーションパラメータのうちの1つ以上が摂動されてもよい(例えば、増分または減分される)。WFSモータ1210は、更新された仕様および/またはパラメータを用いて再度シミュレートされてもよい(ブロック1115)。シミュレーションコントローラ1005は、シミュレーション結果を(ブロック1120の一部として)実行から分析し、所望の目標(例えば、M軸インダクタンスを最大化または増加させる、および/またはK軸インダクタンスを最小化または減少させる)に向かって、特定の変数または変数のセットを修正する方向にデザインプロセスを導くことができる。例えば、仕様またはパラメータの変化が、出力が所望の目標(例えば、M軸インダクタンスを増加させる)に向かって右側方向に移動するように変数が改善される場合、コントローラは、仕様またはパラメータをさらに変化させて(例えば、場合によって、それをさらに増加させる、またはそれをさらに減少させる)、シミュレーションを再実行することができる。変化が変数に悪影響を及ぼす(例えば、M軸インダクタンスを低下させる)場合、コントローラは、仕様またはパラメータを逆方向に変更し、シミュレーションを再実行することができる。
【0160】
この処理は、特定の変数又は変数のセットを改善する特定のモータ仕様又は動作パラメータの値を特定するために、繰り返し実行されてもよい。例えば、シミュレーションコントローラ1005は、シミュレーション結果のセットから、特定の変数または変数のセットを比較し、所望の目標に最も近くまたは最も充足する変数を特定することができる。例えば、シミュレーションコントローラ1005は、この分析の一部として、様々のシミュレーション方向からの変数を比較する、および/または変数を所定の閾値(例えば、最小の性能レベルまたは所望の性能レベルに関連付けられる)と比較してもよい。次いで、シミュレーションコントローラ1005は、特定された変数に関連付けられる特定の仕様および/または操作パラメータを特定し、(例えば、入力/出力装置1020に)示すことができる。
【0161】
さらに、シミュレーションコントローラ1005は、複数のモータデザインシミュレーションを実施するための、モータ仕様または動作パラメータのための境界条件(例えば、範囲)およびステップサイズを受信してもよい。シミュレーションコントローラ1005は、モータ仕様及び動作パラメータの範囲の各段階について各モータデザインをシミュレーションし、各シミュレーションについて生成されたシミュレーション結果を互いに対して分析することができる。シミュレーションコントローラ1005は、シミュレーション結果の設定から、特定の変数または変数のセットを比較し、所望の目標に最も近くまたは最も充足する変数を特定してもよい。例えば、シミュレーションコントローラ1005は、この分析の一部として、様々のシミュレーション方向からの変数を比較する、および/または変数を所定の閾値(例えば、最小の性能レベルまたは所望の性能レベルに関連付けられる)と比較してもよい。次いで、シミュレーションコントローラ1005は、特定された変数に関連付けられる特定の仕様および/または操作パラメータを特定し、(例えば、入力/出力装置1020に)示すことができる。
【0162】
いくつかの実施形態では、モータの複数シミュレーション(例えば、様々な仕様および/またはシミュレーションパラメータで)が発生すると、シミュレーションコントローラ1005は、これらのシミュレーションを並行に、部分的に並行に、または直列に実行してもよい。
【0163】
さらに、WFSモータをモデリングすることは、プロセス1100を使用することによって簡素化されることができる。例えば、SM/DM基準系は、WFSモータ上の複数の位相(例えば、3つまたは6つの位相の間で選択する)を選択するために使用されてもよい。位相を増加することにより、励磁成分またはリーケージ成分を管理するために、追加の精度のための追加制御軸が導入される。しかし、SM/DM基準系は、制御軸(例えば、各相毎に1つ)をSM/DM基準系のSM軸、DM軸、およびQ軸成分に変換することによって、これらの追加制御軸のモデリングを単純化することができる。
【0164】
更なる例では、SM/DM基準系を使用して、巻線の種類(例えば、硬質導電バーまたは集中巻線)および個々のスロットまたは歯の制御の種類を選択することができ、ここで、各スロットまたは歯の個別制御は、利用可能な設計オプションである。同様に、それぞれの追加の制御可能な巻線により、追加の制御軸が導入される。このため、励磁成分またはリーケージ成分を管理するための追加の精度が提供されるが、モータ制御およびモデリングが複雑になる。しかし、SM/DM基準系は、制御軸(例えば、各相毎に1つ)をSM/DM基準系のSM軸、DM軸、およびQ軸成分に変換することによって、これらの追加制御軸のモデリングを単純化することができる。
【0165】
プロセス1100のいくつかの実施形態では、D軸の意図出力応答およびロータ界磁成分(R)をデカップリングする回転基準系がブロック1120で使用されず、ブロック1115で使用され、またはブロック1115で使用されず、ブロック1120で使用される。例えば、いくつかの実施形態では、ブロック1115において、モータは、MKまたはSM/DM基準系に基づいた制御方式を使用することなく、標準的な制御技術(例えば、RDQN基準系内の技術)を使用して制御される。次に、ブロック1120において、結果データセットがMK基準系またはSM/DM基準系に生成される、またはMK基準系またはSM/DM基準系に翻訳される。これは、たとえモータがMK基準系またはSM/DM基準系を使用してシミュレートされなかったとしても、依然として貴重な洞察を提供することができる。さらに、いくつかの実施形態では、ブロック1115において、モータは、上述のように、MKまたはSM/DM基準系に基づいた制御方式で制御される。しかしながら、ブロック1120において、結果データセットは、静止基準系またはRDQN基準系のような、MKまたはSM/DM基準系以外の基準系内に生成される、または翻訳される。
【0166】
加えて、図11のプロセス1100は、シミュレーションWFSモータに関して説明されるが、いくつかの実施形態では、WFSモータ115のような物理的なWFSモータが、プロセス1100に従って制御され、結果データセットを生成してもよい。例えば、モータコントローラ135は、(例えば、入力/出力装置160からの)モータ命令と、(例えば、モータ駆動回路150への)静止基準系内の制御信号と、(例えば、モータセンサ155からの)静止基準系内のセンサ信号と、MK又はSM/DM基準系内の制御信号と、MK又はSM/DM基準系内のセンサ信号との1つ以上を含む時系列データを有する結果データセットを記録又は出力することができる。上述のように、MK基準系またはSM/DM基準系内の結果データセットは、例えば、RDQ基準系または静止基準系内では利用できないWFSモータ115の特性に対する新たな洞察を提供することができる。
【0167】
実施形態によっては、MKまたはSM/DMに基づいた制御を機械の状態空間モデリングにも使用する場合がある。例えば、シミュレーションコントローラ1005は、Mathworks(登録商標)社のMatlab(登録商標)/Simulink(登録商標)等の既知のシミュレーションソフトウェア(例えば、シミュレーションソフトウェア1025の一部として組み込まれる)を実行してもよい。シミュレーションコントローラ1005は、このシミュレーションソフトウェアを実行して、モータ115のようなWFSモータの状態空間モデリングを行ってもよい。例えば、シミュレーションコントローラ1005は、MK基準系またはSM/DM基準系内のWFSモータ115の状態空間モデルを受信してもよい。シミュレーションコントローラ1005は、次に、ブロック1110に関して上述したように、シミュレーション動作パラメータを受信してもよい。次に、シミュレーションコントローラ1005は、モデリングされたWFSモータの状態空間のシミュレーションを実行して、MK基準系またはSM/DM基準系におけるシミュレーション結果を生成してもよい。いくつかの例では、WFSモータ内のクロスカップリングは、他の基準系における関連する電磁気的回路のシミュレーションの成功を妨げることがある。例えば、他の基準系におけるWFSモータのクロスカプリングをシミュレートする場合、シミュレーションソフトは、システムの磁束を効果的に微分したり、補間したりすることができないように、数値計算的不安定性に関連する問題を作り出すことがある。しかし、MK空間またはSM/DM空間でモデリングすると、数値計算の安定性および状態変数を通して微分し補間する性能を維持し、シミュレーションを順調に完了させることができる。
【0168】
本開示は、1つまたは複数の実施形態を説明してきたが、明示的に述べられたものを除いて、多くの均等物、代替物、変形、および修正が可能であり、本出願の範囲内であることを理解されたい。
【0169】
(更なる例示)
例1は、モータを制御する方法、装置、および/またはモータを制御する方法をプロセッサが実行可能な指令を格納する非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記方法は、電子モータコントローラを用いて、現在モータ情報を決定するステップと、前記電子モータコントローラを用いて、前記現在モータ情報および前記モータの回転基準系に基づいてモータ制御パラメータセットを決定するステップであって、前記回転基準系は、ステータD軸成分の意図出力応答およびDQNR基準系におけるロータ界磁成分(R)をデカップリングする独立の入力チャンネルを有するステップと、前記電子モータコントローラにより、前記モータ制御パラメータセットに基づいて前記モータを制御するステップとを含む。
【0170】
例2は、例1によるモータを制御する方法、装置、および/またはモータを制御する方法をプロセッサが実行可能な指令を格納する非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記現在モータ情報を決定するステップは、前記モータのロータに関するロータ位置角を決定するステップと、前記電子モータコントローラにより、前記ロータのロータ界磁電流および前記モータのステータのそれぞれのコイルを通るステータ電流を含むモータ電流を決定するステップと、を含む。
【0171】
例3は、例1または例2によるモータを制御する方法、装置、および/またはモータを制御する方法をプロセッサが実行可能な指令を格納する非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記モータの前記回転基準系は、励磁インダクタンス軸(M軸)およびリーケージインダクタンス軸(K軸)を有するMK基準系である。
【0172】
例4は、例1から例3のいずれか1つの例によるモータを制御する方法、装置、および/またはモータを制御する方法をプロセッサが実行可能な指令を格納する非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記モータ制御パラメータセットを決定するステップは、前記電子モータコントローラにより、励磁インダクタンス電流(IM)、リーケージインダクタンス電流(IK)、直交電流(IQ)、およびヌル電流(Inull)に基づいて、前記ロータのロータ界磁電圧のためのロータ電圧制御と、前記ステータのそれぞれのコイルを通るステータ電圧のためのステータ電圧制御と、を有し、前記モータ制御パラメータセットにおける所望のモータ電圧を決定するステップを含む。
【0173】
例5は、例1から例4のいずれか1つの例によるモータを制御する方法、装置、および/またはモータを制御する方法をプロセッサが実行可能な指令を格納する非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記MK基準系において、前記ステータおよび前記ロータの間のリーケージ電流は、ゼロと推定される、あるいは、ステータ対ロータ巻数比は、前記ステータおよび前記ロータの間の前記リーケージ電流をゼロに等しくなるように調整される。
【0174】
例6は、例1または例2によるモータを制御する方法、装置、および/またはモータを制御する方法をプロセッサが実行可能な指令を格納する非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記モータの前記回転基準系は、加算モード軸(SM軸)および差分モード軸(DM軸)を有するSM/DM基準系である。
【0175】
例7は、例1、例2、および例6のいずれか1つの例によるモータを制御する方法、装置、および/またはモータを制御する方法をプロセッサが実行可能な指令を格納する非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記モータ制御パラメータセットを決定するステップは、前記電子モータコントローラにより、加算モード電流(ISM)、差分モード電流(IDM)、直交電流(I)、およびヌル電流(Inull)に基づいて、前記ロータのロータ界磁電圧のためのロータ電圧制御と、前記ステータのそれぞれのコイルを通るステータ電圧のためのステータ電圧制御と、を有し、前記モータ制御パラメータセットにおける所望のモータ電圧を決定するステップを含む。
【0176】
例8は、例1から例7のいずれか1つの例によるモータを制御する方法、装置、および/またはモータを制御する方法をプロセッサが実行可能な指令を格納する非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記モータ制御パラメータセットを決定するステップは、前記電子モータコントローラにより、前記現在モータ情報を前記モータ制御パラメータセットに対応付ける検索表にアクセスするステップであって、前記検索表は、モータ情報の入力セットから前記回転基準系への基準系変換に基づいて設定されるステップを含む。
【0177】
例9は、例1から例8のいずれか1つの例によるモータを制御する方法、装置、および/またはモータを制御する方法をプロセッサが実行可能な指令を格納する非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記モータ制御パラメータセットを決定するステップは、前記現在モータ情報を前記回転基準系に変換し、変換済み現在モータ情報を生成するステップと、前記変換済み現在モータ情報に基づいて、前記回転基準系における制御軸のためのモータ制御を決定するステップと、前記モータ制御を前記回転基準系より前記モータ制御パラメータセットに変換するステップと、を含む。
【0178】
例10は、例1から例8のいずれか1つの例によるモータを制御する方法、装置、および/またはモータを制御する方法をプロセッサが実行可能な指令を格納する非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記モータは、巻線界磁同期モータ、永久磁石同期モータ、あるいはハイブリッド永久磁石-巻線界磁同期モータである。
【0179】
例11は、モータをシミュレートする方法、装置、および/またはモータを制御する方法をプロセッサが実行可能な指令を格納する非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記方法は、電子コントローラにより、少なくとも1つの初期モータ仕様を決定するステップと、前記電子コントローラにより、少なくとも1つのモータ動作シミュレーションパラメータを決定するステップと、前記電子コントローラにより、前記モータの回転基準系に基づいたモータ制御を用いて、前記少なくとも1つの初期モータ仕様および前記少なくとも1つのモータ動作シミュレーションパラメータに係るモータをシミュレートするステップであって、前記回転基準系は、ステータD軸成分の意図出力応答およびDQNR基準系におけるロータ界磁成分(R)をデカップリングする独立の入力チャンネルを有するステップと、前記モータの前記シミュレーションに基づいて、前記回転基準系におけるシミュレーション結果を生成するステップと、を含む。
【0180】
例12は、例11によるモータをシミュレートする方法、装置、および/またはモータを制御する方法をプロセッサが実行可能な指令を格納する非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記モータの回転基準系に基づいたモータ制御を用いるステップは、前記電子コントローラにより、現在モータ情報を決定するステップと、前記電子コントローラにより、前記現在モータ情報および前記回転基準系の制御軸に基づいてモータ制御パラメータセットを決定するステップと、前記電子コントローラにより、前記モータ制御パラメータセットに基づいて前記モータのための少なくとも1つの制御信号を生成するステップと、を含む。
【0181】
例13は、例11または例12によるモータをシミュレートする方法、装置、および/またはモータを制御する方法をプロセッサが実行可能な指令を格納する非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記モータの前記回転基準系は、励磁インダクタンス軸(M軸)およびリーケージインダクタンス軸(K軸)を有するMK基準系である。
【0182】
例14は、例11から例13のいずれか1つの例によるモータをシミュレートする方法、装置、および/またはモータを制御する方法をプロセッサが実行可能な指令を格納する非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記モータ制御パラメータセットを決定するステップは、前記電子コントローラにより、励磁インダクタンス電流(I)、リーケージインダクタンス電流(I)、直交電流(I)、およびヌル電流(Inull)に基づいて、前記ロータのロータ界磁電圧のためのロータ電圧制御と、前記ステータのそれぞれのコイルを通るステータ電圧のためのステータ電圧制御とを有し、前記モータ制御パラメータセットにおける所望のモータ電圧を決定するステップを含む。
【0183】
例15は、例11または例12によるモータをシミュレートする方法、装置、および/またはモータを制御する方法をプロセッサが実行可能な指令を格納する非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記モータの前記回転基準系は、加算モード軸(SM軸)および差分モード軸(DM軸)を有するSM/DM基準系である。
【0184】
例16は、例11、例12、および例15のいずれか1つの例によるモータをシミュレートする方法、装置、および/またはモータを制御する方法をプロセッサが実行可能な指令を格納する非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記モータ制御パラメータセットを決定するステップは、前記電子コントローラにより、加算モード電流(ISM)、差分モード電流(IDM)、直交電流(I)、およびヌル電流(Inull)に基づいて、前記ロータのロータ界磁電圧のためのロータ電圧制御と、前記ステータのそれぞれのコイルを通るステータ電圧のためのステータ電圧制御とを有し、前記モータ制御パラメータセットにおける所望のモータ電圧を決定するステップを含む。
【0185】
例17は、例11から例16のいずれか1つの例によるモータをシミュレートする方法、装置、および/またはモータを制御する方法をプロセッサが実行可能な指令を格納する非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記方法は、前記電子コントローラにより、少なくとも前記初期モータ仕様および前記モータ動作シミュレーションパラメータの一方の群から選択される値に対する修正値を有する修正モータパラメータを決定するステップと、前記電子コントローラにより、前記モータの前記回転基準系に基づいたモータ制御を用いて、前記修正モータパラメータに係る前記モータをシミュレートするステップと、前記モータの前記シミュレーショに基づいて、前記回転基準系における更なるシミュレーション結果を生成するステップと、をさらに含む。
【0186】
例18は、例17によるモータをシミュレートする方法、装置、および/またはモータを制御する方法をプロセッサが実行可能な指令を格納する非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記電子コントローラにより、前記シミュレーションの結果および前記更なるシミュレーションの結果に基づいて、前記モータに所望の効果を提供するモータパラメータを示すステップをさらに含む。
【0187】
例19は、例11から例18のいずれか1つの例によるモータをシミュレートする方法、装置、および/またはモータを制御する方法をプロセッサが実行可能な指令を格納する非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記モータは、巻線界磁同期モータ、永久磁石同期モータ、あるいはハイブリッド永久磁石-巻線界磁同期モータである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】