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特表2024-526308吸入器使用の検知及び分析用のデバイス及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】吸入器使用の検知及び分析用のデバイス及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61M 15/00 20060101AFI20240709BHJP
   A61M 11/00 20060101ALI20240709BHJP
   A61B 5/08 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
A61M11/00 D
A61B5/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500205
(86)(22)【出願日】2022-06-27
(85)【翻訳文提出日】2024-03-04
(86)【国際出願番号】 EP2022067611
(87)【国際公開番号】W WO2023280622
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】63/219,401
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
(71)【出願人】
【識別番号】391008951
【氏名又は名称】アストラゼネカ・アクチエボラーグ
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】セルビー,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ペトルス,アンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】コフート,パヴェル
(72)【発明者】
【氏名】ホーン,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】サヴォフ,スヴィレン
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038SS08
4C038SX02
(57)【要約】
吸入器使用の検知及び分析用のデバイス、方法及びシステム、特に、呼吸検知モジュール及び吸入器デバイスカウンタ。電子吸入器カウンタデバイスは、枢軸を提供する近位端とヘッドを提供する遠位端とを含むロッカアームと、ロッカアーム枢軸に結合された戻しばねと、カウントスイッチとを含み、第1の選択された程度の直線駆動運動に応答して、ロッカアームは、第1のロッカ運動を実施し、カウントスイッチをロッカヘッドと係合させるように配置されており、更なる直線駆動運動に応答して、ばねは係合され、オーバートラベルを容易にするように、ロッカアームが第2のロッカ運動を実施することを可能にする。吸入器の空気路に結合された吸入器呼吸検知モジュールは、吸入呼吸によって生じた、時間の関数としての吸入器空気路のパラメータの変化を示す信号を提供するように構成されたセンシング手段と、時間の関数としての吸入器空気路のパラメータの変化に基づいて呼吸の存在を決定するように構成されたコントローラとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧式定量噴霧吸入器、pMDIの直線駆動をカウントするための電子吸入器カウンタであって、
枢軸を提供する近位端と、ヘッドを提供する遠位端とを含むロッカアームと、
前記ロッカアーム枢軸に結合された戻しばねと、
カウントスイッチと、を含み、
第1の選択された程度の直線駆動運動に応答して、前記ロッカアームは、第1のロッカ運動を実施し、前記カウントスイッチを前記ロッカヘッドと係合させるように配置されており、更なる直線駆動運動に応答して、前記ロッカヘッドが前記カウントスイッチとの係合を維持するように、前記ばねは係合され、前記ロッカアームが第2のロッカ運動を実施することを可能にする、電子吸入器カウンタ。
【請求項2】
前記電子吸入器カウンタは、吸入器アクチュエータハウジング内に取り付けられた吸入器容器の端部に取り付けられるように構成されており、前記直線駆動運動は、前記アクチュエータハウジングに対するものであり、前記ロッカアームは、前記アクチュエータハウジングに結合されたアクチュエータ舌状部と係合するように構成されている、請求項1に記載の電子吸入器カウンタ。
【請求項3】
前記第1の選択された程度の直線駆動運動により、前記ロッカアームの第1の部分を前記アクチュエータ舌状部と係合させて、前記ロッカアームを第1の方向に揺動させ、前記ロッカヘッドを前記カウントスイッチと係合させ、前記第2の選択された程度の直線駆動運動により、前記ロッカアームの第2の部分に係合し、前記ロッカアームを第2の方向に揺動させ、前記ロッカヘッドと前記カウントスイッチとの係合を維持する、請求項2に記載の電子吸入器カウンタ。
【請求項4】
前記第1のロッカ運動は、前記枢軸を中心にした反時計回りの回転であり、前記第2のロッカ運動は、前記カウントスイッチを中心にした時計回りの回転である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電子吸入器カウンタ。
【請求項5】
前記第1の選択された程度の直線駆動運動は前記戻しばねを圧縮せず、前記第2の選択された程度の直線駆動運動は前記戻しばねを圧縮する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電子吸入器カウンタ。
【請求項6】
吸入器呼吸検知モジュールの少なくとも一部分は、前記吸入器アクチュエータハウジングの少なくとも一部分内に収まるように構成されている、請求項2に記載の電子吸入器カウンタ。
【請求項7】
前記吸入器デバイスは、前記電子吸入器カウンタを前記アクチュエータハウジングに対して押下することによって作動される、請求項2又は請求項5に記載の電子吸入器カウンタ。
【請求項8】
前記吸入器デバイスが作動されると、前記電子吸入器カウンタの少なくとも一部分が前記吸入器アクチュエータハウジング内に収まる、請求項6に記載の電子吸入器カウンタ。
【請求項9】
デジタルディスプレイを更に含み、前記ディスプレイは、前記吸入器デバイスの直線駆動のカウント数及び/又は前記吸入器デバイスの直線駆動の残数の少なくとも一方を表示するように構成されており、前記吸入器デバイスの前記直線駆動の残数は、前記吸入器デバイスの直線駆動の所定最大数から前記吸入器デバイスの前記直線駆動のカウント数を減じることによって計算される、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の電子吸入器カウンタ。
【請求項10】
吸入呼吸の開始及び/又は終了を検知するための吸入器呼吸検知モジュールであって、
前記呼吸検知モジュールは、前記吸入器の空気路に結合されており、
前記呼吸検知モジュールは、吸入息によって生じた、時間の関数としての前記吸入器空気路のパラメータの変化を示す信号を提供するように構成されたセンシング手段を含み、
前記呼吸検知モジュールは、時間の関数としての前記吸入器空気路のパラメータの変化に基づいて呼吸の存在を決定するように構成されたコントローラを含む、吸入器呼吸検知モジュール。
【請求項11】
前記コントローラは更に、時間の関数としての前記吸入器空気路のパラメータの変化に基づいて、呼吸の持続時間を決定するように構成されている、請求項10に記載の吸入器呼吸検知モジュール。
【請求項12】
前記コントローラは更に、
時間の関数としての前記吸入器空気路のパラメータの変化に基づいて、
(i)呼吸の開始及び/又は終了の信頼度、及び
(ii)推定流量
の少なくとも一方を決定するように構成されている、請求項10又は請求項11に記載の吸入器呼吸検知モジュール。
【請求項13】
前記吸入器呼吸検知モジュールの少なくとも一部分は、吸入器アクチュエータハウジングの少なくとも一部分内に収まるように構成されている、請求項10から請求項12のいずれか一項に記載の吸入器呼吸検知モジュール。
【請求項14】
前記吸入器デバイスは、前記呼吸検知モジュールを前記アクチュエータハウジングに対して押下することによって作動される、請求項10から請求項13のいずれか一項に記載の吸入器呼吸検知モジュール。
【請求項15】
前記吸入器デバイスが作動されると、前記呼吸検知モジュールの少なくとも一部分が前記吸入器アクチュエータハウジング内に収まる、請求項13に従属する請求項14に記載の吸入器呼吸検知モジュール。
【請求項16】
前記吸入器呼吸検知モジュールは、吸入器アクチュエータハウジング内に取り付けられた吸入器容器の端部に取り付けられるように構成されている、請求項10から請求項15のいずれか一項に記載の吸入器呼吸検知モジュール。
【請求項17】
前記センシング手段は、前記アクチュエータハウジングと前記容器との間の前記アクチュエータハウジングの一部分を通る空気流のパラメータの変化を検知するように構成されている、請求項16に記載の吸入器呼吸検知モジュール。
【請求項18】
前記センシング手段によって感知された前記空気流の性質を変化させるように構成された音響特徴部を更に含む、請求項17に記載の吸入器呼吸検知モジュール。
【請求項19】
前記音響特徴部は、使用者が呼吸を行ったときに前記空気流の一部が流れるように構成された狭窄部又は絞り部を含む、請求項18に記載の吸入器呼吸検知モジュール。
【請求項20】
前記音響特徴部は、前記吸入器呼吸検知モジュールと前記吸入器アクチュエータハウジングとの間に距離の狭窄部又は絞り部を含む、請求項19に記載の吸入器呼吸検知モジュール。
【請求項21】
前記センシング手段はマイクロホンを含む、請求項10から請求項20のいずれか一項に記載の吸入器呼吸検知モジュール。
【請求項22】
前記マイクロホンは前記音響特徴部に隣接する、請求項18に従属する請求項21に記載の吸入器呼吸検知モジュール。
【請求項23】
前記コントローラは、機械学習アルゴリズムでプログラムされており、前記アルゴリズムは、各周波数におけるパワーを異なる重み付けに関連付ける訓練パラメータを使用して訓練される、請求項10から請求項22のいずれか一項に記載の吸入器呼吸検知モジュール。
【請求項24】
前記コントローラは、パラメータの変化を示す信号を周波数ドメインに処理するように構成されている、請求項10から請求項23のいずれか一項に記載の吸入器呼吸検知モジュール。
【請求項25】
前記コントローラは、各周波数におけるパワーに重み付けを適用するように構成されている、請求項24に記載の吸入器呼吸検知モジュール。
【請求項26】
前記コントローラは、パラメータの変化を示す信号のケプストラムを決定するように構成されている、請求項10から請求項25のいずれか一項に記載の吸入器呼吸検知モジュール。
【請求項27】
前記コントローラは、流量推定値の推定値を決定する線形回帰並びに/又は記憶された訓練パラメータに基づいて呼吸の開始及び/若しくは終了を決定するロジスティック回帰を実施するように構成されている、請求項10から請求項26のいずれか一項に記載の吸入器呼吸検知モジュール。
【請求項28】
短距離無線通信インターフェースを更に含み、前記コントローラは、前記短距離無線通信インターフェースを介して、(i)呼吸の開始及び/又は終了の信頼度、及び/又は(ii)推定流量に関するデータをリモートデバイスに送信するように構成されている、請求項10から請求項27のいずれか一項に記載の吸入器呼吸検知モジュール。
【請求項29】
パラメータの変化を示す信号を提供するようにそれぞれが構成された複数のセンシング手段を含み、前記コントローラは、前記複数のセンシング手段からのパラメータの変化を示す信号の比較に基づいて、ノイズ除去を実施するように構成されている、請求項10から請求項28のいずれか一項に記載の吸入器呼吸検知モジュール。
【請求項30】
前記デバイスの振とうを検知するように構成された加速度計を更に含む、請求項10から請求項29のいずれか一項に記載の吸入器呼吸検知モジュール。
【請求項31】
請求項10から請求項30のいずれか一項に記載の吸入器呼吸検知モジュールとリモートデバイスとを含む吸入器呼吸検知及び分析システムであって、前記リモートデバイスは、前記吸入器呼吸検知モジュールからの呼吸持続時間及び呼吸流量データの少なくとも一方に基づいて、手法フィードバックを提供するように構成されている、吸入器呼吸検知及び分析システム。
【請求項32】
請求項10から請求項30のいずれか一項に記載の吸入器呼吸検知モジュールとリモートデバイスとを含む吸入器呼吸検知及び分析システムであって、前記リモートデバイスは、前記吸入器呼吸検知モジュールから集約されたデータに基づいて、手法フィードバックを提供するように構成されている、吸入器呼吸検知及び分析システム。
【請求項33】
請求項10から請求項32のいずれか一項に記載の吸入器呼吸検知モジュールと、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の電子吸入器カウンタと、を含む吸入器呼吸検知及び分析システム。
【請求項34】
吸入器容器を更に含み、前記吸入器呼吸検知モジュール及び電子吸入器カウンタは、前記容器に取り付けられている、請求項32に記載の呼吸検知及び分析システム。
【請求項35】
吸入器呼吸検知モジュールから信号を受け取り、前記信号は、呼吸の信頼度及び/又は呼吸の推定流量の少なくとも一方を含むデータを含み、
前記データの後処理を実施し、
前記呼吸の信頼度及び/又は予め決定された最適な使用範囲に対する呼吸の流量の少なくとも一方に基づいて、呼吸手法フィードバックを提供する
ように構成されている、吸入器手法フィードバックアプリ。
【請求項36】
データの前記後処理は、フィルタリングを含む、請求項35に記載の吸入器手法フィードバックアプリ。
【請求項37】
集約されたデータに基づいて、手法フィードバックを提供するように更に構成されている、請求項35又は請求項36に記載の吸入器手法フィードバックアプリ。
【請求項38】
前記吸入器呼吸検知モジュールから受け取られる前記信号は、少なくとも1回の呼吸のタイムスタンプデータを含み、前記吸入器手法フィードバックアプリは更に、
電子吸入器カウンタから信号を受け取り、前記信号は、前記吸入器の少なくとも1回の直線駆動のタイムスタンプデータを含むデータを含み、
呼吸の開始及び/又は終了に対する前記吸入器の作動のタイミングを決定し、
吸入器作動の前記タイミングに対する呼吸のタイミングに基づいて、使用者に呼吸手法フィードバックを提供するように構成されている、請求項35から請求項37のいずれか一項に記載の吸入器手法フィードバックアプリ。
【請求項39】
前記呼吸の前記タイミングが吸入器作動の前記タイミングに対して予め決定された時間範囲外であったかどうかの表示を前記使用者に提供するように更に構成されている、請求項38に記載の吸入器手法フィードバックアプリ。
【請求項40】
吸入器作動ハウジングと、
吸入器容器であって、前記容器の少なくとも一部分は、前記吸入器作動ハウジング内に取り付けられるように構成されている、吸入器容器と、
請求項10から請求項30のいずれか一項に記載の吸入器呼吸検知モジュール及び/又は請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の電子吸入器カウンタと、を含む吸入器システム。
【請求項41】
前記吸入器呼吸検知モジュール及び/又は電子吸入器カウンタは、前記容器に取り付けられている、請求項40に記載の吸入器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、吸入器使用の検知及び分析用のデバイス、方法及びシステム、特に、呼吸検知モジュール及び吸入器デバイスカウンタに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの種類の医薬品は、推進剤(propellant)又は乳剤での粒子の溶液又は懸濁液などの流体形態で提供され、患者による経口吸入用に適合されている。一例として、容器は、フルチカゾンプロピオン酸エステルなどの喘息薬を収容する可能性がある。
【0003】
患者に医薬品を送達するために、容器は、加圧式定量噴霧吸入器(pMDI:pressurized metered dose inhaler)システムとして一般に知られるシステムとして、アクチュエータとともに動作する。アクチュエータは、開放容器装填端部と開放マウスピースとを有するハウジングを含む。ノズル要素がハウジング内に配置されており、ノズルオリフィスと連通する弁ステム受入穴を含む。オリフィスは、マウスピースの方に向けられている。適切に計量された用量の医薬品を容器から受け取るために、患者は、弁ステムがノズル要素の受入穴に嵌合するまで、容器装填端部を通してアクチュエータに容器を取り付ける。容器がこのように取り付けられることで、容器の反対端は、典型的には、アクチュエータハウジングの外側にある程度延びる。その後、患者は、マウスピースを自身の口に入れ、露出した容器端部を下方に押す。この行為は、容器を弁ステムに対して下向きに変位させ、ひいては、弁を退座させる。弁の設計、ノズル要素の設計、及び容器の内部と周囲空気との間の設計により、正確に計量された霧化された医薬品の短い噴射が、それによって患者に送達される。
【0004】
そのような容器には、所定量の有効成分、すなわち医薬品が充填される。したがって、容器は、廃棄しなければならなくなる前に、名目上、所定数の医薬品用量を送達することができる。そのような吸入器デバイス内の残用量数を可視化するために、容器内に残る医薬品の量を表示するカウンタを備えることが好ましい。したがって、カウンタは、吸入器デバイス又は容器をいつ交換すべきかの表示を提供する。「現在の状態」の表示は、例えばまだ利用可能な実際の用量数を数字で示すことによる絶対的概念、又は例えば1つの色から別の色への色勾配による相対的概念のいずれかにおいて行うことができる。
【0005】
非特許文献1では、過大カウント(カウントは記録されるが用量は噴射されていない)と過少カウント(用量は噴射されたがカウントされていない)とを区別している。過少カウントは、最終的に、容器が空になっているときに吸入をなお利用可能であると使用者が考えることにつながる可能性があるために、より危険な故障モードである。FDAは、過大カウントは望ましくないものの、過少カウントは可能な限り回避すべきであると推奨している。
【0006】
特許文献1は、カウンタハウジングと、爪を有するロッカアームであって、ロッカアームは、ハウジングによって枢動自在に支持され、直線駆動運動に応答して、ロッカ運動を実施するように配置されているロッカアームと、ロッカアームをリセットするための戻しばねと、爪と係合可能であり、ロッカアームの動きを、ディスプレイ手段を前進させるアクスル機構の漸進的な回転運動に変換するラチェットホイールとを含み、アクスル機構は、ばね荷重式摩擦ブレーキ及びウォームギヤの形態の逆回転防止手段を更に含み、ディスプレイ手段は、ウォームギヤに係合する歯を備えた回転可能なインジケータ手段を含む、機械式吸入器カウンタを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2006/110080号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】The Food and Drug Administration(FDA),(2003)Guidance for Industry:Integration of Dose-Counting Mechanisms into MDI Drug Products
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様は、独立請求項に記載の通りであり、任意の特徴は従属請求項に記載される。本発明の態様は、互いに連係して提供される可能性があり、ある態様の特徴は別の態様に適用される可能性がある。
【0010】
本開示の態様は、吸入器によって吐出される用量をカウントすることに関する。電子カウンタ設計は、変位をベースとしたカウント原理を実装する。容器の使用寿命、周囲温度及び湿度、並びに加えられる力の向きを通して顕著な力の変動がしばしば見られるため、この手法は、力をベースとしたカウントに比べて本質的により信頼性が高い。使用中、電子吸入器カウンタは、容器ストロークの早期にカウントを登録し得る。これにより、吐出された用量の過少カウントの可能性を低下させることができる。この設計に用いられる動作原理の考えられる利点は、ばね入り枢軸がスイッチの作動後まで所定位置に留まることができるため、スイッチング点が明確に定義され、これにより、吐出された用量の過少カウントの可能性も低下させることができることである。また、利用可能な空間を有効利用することができ、幾何学的形状を最良の動作のために調整することができる。デジタルディスプレイはまた、表示される数字を、吸入器デバイスに嵌め込むことが必要な機械式吸入器カウンタ上の小さなサイズの数字に対して大きくすることを可能にする可能性があり、したがって、デジタルディスプレイの使用により、ディスプレイの可読性を高める可能性がある。
【0011】
本開示の態様はまた、吸入器の使用中の呼吸手法を検知及び分析することに関する。吸入速度は、薬剤の輸送に影響を及ぼす可能性があるため、患者が吸入器を使用する際に重要である。pMDIに関して、文献では一般に、低流量が、肺への薬剤のより良好な沈着を促進するので有益であると考えられている。
【0012】
呼吸検知ソリューションは、治療の有効性に影響を及ぼす可能性のある、用量が不適切に投与された場合に、使用者に警告を発することができるため有利な場合がある。更に、呼吸検知ソリューションは、使用者が自身の吸入器呼吸手法を向上させるためにフィードバックを受け取ることを可能にすることができ、これにより、将来の治療の有効性を向上させることができ、したがって、使用者の状態の管理を向上させることができる。使用者の吸入と用量の送達の良好な協調は、治療の有効性にとって重要であり、したがって、使用者の状態の有効な管理のために重要である。潜在的な誤用のモードとしては、送達/呼吸の誤ったタイミング、吸入していないこと、最適でない吸入フロープロファイル(すなわち、速すぎる又は遅すぎる)、及び吸入後に呼吸止めがないことが挙げられ得るがこれらに限定されない。
【0013】
呼吸検知ソリューションは、呼吸を30l/min(文献では、pMDIを通して正しく吸入するように訓練された使用者によって実際に達成される最低流量)の低い流量で正確に検知することによって有利となる場合がある。
【0014】
呼吸検知ソリューションは、吸入器デバイス内の既存の空気流路に影響を与えないことによって有利となる場合がある。これは、既存の吸入器との互換性を可能にし得る一方で、薬剤の吐出及び送達に影響したりこれを妨げたりすることはない。呼吸検知ソリューションはまた、呼吸検知のための電子機器及びセンサが、国際公開第2006/110080号パンフレットに開示されるような既存の機械式吸入器アダプタカウンタモジュール(ACM)のフットプリント内に収まり得るため、有利な場合がある。これにより、既存の吸入器及び吸入器カウンタシステムとの互換性を持たせることを可能にし得る。
【0015】
呼吸検知ソリューションはまた、衛生的な理由から吸入器デバイス全体が使い捨てであることが好ましいことから、呼吸検知のための電子機器及びセンサが大量であれば低コストになり得るため、有利な場合がある。
【0016】
第1の態様では、加圧式定量噴霧吸入器、pMDIの直線駆動をカウントするための電子吸入器カウンタであって、
枢軸を提供する近位端とヘッドを提供する遠位端とを含むロッカアームと、
ロッカアーム枢軸に結合された戻しばねと、
カウントスイッチと、
を含み、
第1の選択された程度(degree)の直線駆動運動に応答して、ロッカアームは、第1のロッカ運動を実施し、カウントスイッチをロッカヘッドと係合させるように配置されており、更なる直線駆動運動に応答して、ロッカヘッドがカウントスイッチとの係合を維持するように、ばねは係合され、ロッカアームが第2のロッカ運動を実施することを可能にする、
電子吸入器カウンタが提供される。
【0017】
いくつかの例では、第1の選択された程度の直線駆動運動により、ロッカアームの第1の部分をアクチュエータ舌状部と係合させて、ロッカアームを第1の方向に揺動させ、ロッカヘッドをカウントスイッチと係合させ、更なる直線駆動運動により、ロッカアームの第2の部分に係合し、ロッカアームを第2の方向に揺動させ、ロッカヘッドとカウントスイッチとの係合を維持する。
【0018】
いくつかの例では、第1のロッカ運動は、枢軸を中心にした反時計回りの回転であり、第2のロッカ運動は、カウントスイッチを中心にした時計回りの回転である。
【0019】
いくつかの例では、第1の選択された程度の直線駆動運動は戻しばねを圧縮せず、更なる直線駆動運動は戻しばねを圧縮する。いくつかの例では、これにより、ばね入り枢軸がスイッチの作動後まで所定の位置にとどまることを可能にしてもよく、したがって、明確に定義されたスイッチング点が設けられる。
【0020】
いくつかの例では、電子吸入器カウンタは、ばね保持器を更に含み、ばね保持器は、枢軸に結合されていないばねの端部を収容する。これにより、他の手法で可能なものよりも長いばねをデバイス内で使用することを可能にしてもよく、したがって、更なるオーバートラベルを可能にする。
【0021】
いくつかの例では、電子吸入器カウンタは、吸入器アクチュエータハウジング内に取り付けられた吸入器容器の端部に取り付けられるように構成されており、直線駆動運動は、アクチュエータハウジングに対するものであり、ロッカアームは、アクチュエータハウジングに結合されたアクチュエータ舌状部と係合するように構成されている。
【0022】
いくつかの例では、電子吸入器カウンタは、吸入器アクチュエータハウジングの少なくとも一部分内に収まるように構成されている。いくつかの例では、吸入器デバイスは、電子吸入器カウンタをアクチュエータハウジングに対して押下することによって作動される。いくつかの例では、吸入器デバイスは作動され、電子吸入器カウンタの少なくとも一部分が吸入器アクチュエータハウジング内に収まる。
【0023】
いくつかの例では、電子吸入器カウンタは、デジタルディスプレイを更に含む。ディスプレイは、電子吸入器カウンタによってカウントされた吸入器デバイスの直線駆動/吐出された用量の絶対数を表示するように構成されてもよい。ディスプレイは、吸入器デバイスの直線駆動/残用量の絶対数を表示するように構成されてもよい。ディスプレイは、吸入器デバイスの直線駆動/残用量の数の相対指標を表示するように更に構成されてもよい。いくつかの例では、ディスプレイは、吸入器デバイスの用量の残数の相対表示及び正確な表示の両方を提供してもよい。吸入器デバイスの直線駆動/残用量の数は、吸入器デバイスの直線駆動/用量の所定最大数から吸入器デバイスの直線駆動のカウントされた絶対数を減じることによって計算されてもよい。デジタルディスプレイは、表示される数字を、吸入器デバイスに嵌め込まれる機械式吸入器カウンタ上の小さなサイズの数字に対して大きくすることを可能にしてもよく、これにより、ディスプレイの可読性を高めてもよい。
【0024】
いくつかの例では、電子吸入器は、吸入器の直線駆動のタイムスタンプデータを記録するように更に構成されてもよい。いくつかの例では、吸入器の直線駆動のタイムスタンプデータは、用量カウントのタイムスタンプデータを含んでもよい。いくつかの例では、吸入器の直線駆動のタイムスタンプデータは、噴射点のタイムスタンプデータを含んでもよい。いくつかの例では、吸入器の直線駆動のタイムスタンプデータは、用量カウント及び噴射点の両方のタイムスタンプデータを含んでもよい。
【0025】
噴射点は、ある用量の薬剤を送達するために必要なアクチュエータ本体に対する吸入器容器の圧縮量によってトリガーされる一方で、用量カウントは、電子吸入器カウンタが1回の用量をカウントするために、すなわち、ロッカアームをカウントスイッチに係合させるために作用するのに必要なアクチュエータ本体に対する吸入器容器の圧縮量によってトリガーされるため、用量カウントは、吸入器の噴射点とは異なり得る。吸入器容器が実際には空である場合にその中に薬剤が残っていると使用者が考えるリスクのために、過少カウントは望ましくないため、用量カウント点は、噴射点よりも所定量少なくなるように設定されてもよく、それにより、カウントを伴わない噴射は事実上回避される。
【0026】
別の態様では、吸入呼吸の開始及び/又は終了を検知するための吸入器呼吸検知モジュールであって、
呼吸検知モジュールは、吸入器の空気路に結合されており、
呼吸検知モジュールは、吸入呼吸によって生じた、時間の関数としての吸入器空気路のパラメータの変化を示す信号を提供するように構成されたセンシング手段を含み、
呼吸検知モジュールは、時間の関数としての吸入器空気路のパラメータの変化に基づいて呼吸の存在を決定するように構成されたコントローラを含む、
吸入器呼吸検知モジュールが提供される。
【0027】
いくつかの例では、コントローラは更に、時間の関数としての吸入器空気路のパラメータの変化に基づいて、呼吸の持続時間を決定するように構成されてもよい。いくつかの例では、コントローラは更に、時間の関数としての吸入器空気路のパラメータの変化に基づいて、(i)呼吸の開始及び/又は終了の信頼度、又は(ii)推定流量のいずれかを決定するように構成されている。いくつかの例では、コントローラは更に、時間の関数としての吸入器空気路のパラメータの変化に基づいて、(i)呼吸の開始及び/又は終了の信頼度、及び(ii)推定流量の両方を決定するように構成されている。
【0028】
いくつかの例では、コントローラは更に、呼吸のタイムスタンプデータを記録するように構成されてもよい。いくつかの例では、呼吸のタイムスタンプデータは、呼吸の開始のタイムスタンプデータを含んでもよい。いくつかの例では、呼吸のタイムスタンプは、呼吸の終了のタイムスタンプデータを含んでもよい。いくつかの例では、呼吸のタイムスタンプデータは、呼吸の開始及び終了のタイムスタンプデータを含んでもよい。
【0029】
いくつかの例では、吸入器呼吸検知モジュールの少なくとも一部分は、吸入器アクチュエータハウジングの少なくとも一部分内に収まるように構成されている。いくつかの例では、吸入器デバイスは、呼吸検知モジュールをアクチュエータハウジングに対して押下することによって作動される。いくつかの例では、吸入器デバイスが作動されると、呼吸検知モジュールの少なくとも一部分が吸入器アクチュエータハウジング内に収まる。いくつかの例では、吸入器呼吸検知モジュールは、吸入器アクチュエータハウジング内に取り付けられた吸入器容器の端部に取り付けられるように構成されている。
【0030】
いくつかの例では、センシング手段は、アクチュエータハウジングと容器との間のアクチュエータハウジングの一部分を通る空気流のパラメータの変化を検知するように構成されている。
【0031】
いくつかの例では、センシング手段は、圧力センサを含んでもよい。いくつかの例では、一方のポートがデバイス内部の適切な位置に接続され、他方のポートが大気に開放された少なくとも1つの差圧センサが使用されてもよい。いくつかの例では、少なくとも1つの絶対圧センサが使用されてもよい。いくつかの例では、少なくとも1つの絶対圧センサは、小型基板実装型気圧センサであってもよい。いくつかの例では、一方が大気圧を測定し、他方がデバイス内部の圧力を測定する2つの絶対圧センサが使用されてもよい。いくつかの例では、デバイス内部の圧力を測定し、経時的な圧力の変化を追跡する単一の絶対センサが使用されてもよい。圧力センサを使用する1つの利点は、圧力損失読み取り値は、流量のより直接的な尺度を提供し、音響ノイズの影響を受けにくいことであり得る。少なくとも1つの絶対圧センサを使用する1つの利点は、それらが安価で小型であり、フォームファクタ及びコストの制約に対処することであり得る。差圧センサを使用する1つの利点は、それらが絶対圧センサよりも正確な場合があることである。
【0032】
いくつかの例では、センシング手段は、マイクロホンを含んでもよい。マイクロホンをセンサとして使用する1つの利点は、それらが安価で小型であり、フォームファクタ及びコストの制約に対処することであり得る。マイクロホンを使用する別の利点は、それらが、確実に密閉されたポートを必要としないことであり得る。マイクロホンを使用する別の利点は、同等のコスト及びサイズの圧力センサよりも低流量の検知がより正確なことであり得る。
【0033】
いくつかの例では、吸入器呼吸検知モジュールは、音響特徴部を更に含んでもよい。いくつかの例では、音響特徴部は、センシング手段によって感知された空気流の性質を変化させるように構成されてもよい。いくつかの例では、音響特徴部は、使用者が呼吸を行ったときに空気流の一部が流れるように構成され得る狭窄部又は絞り部を含んでもよい。いくつかの例では、音響特徴部は、吸入器呼吸検知モジュールと吸入器アクチュエータハウジングとの間に距離の狭窄部又は絞り部を含んでもよい。
【0034】
いくつかの例では、センシング手段は、音響特徴部に隣接するように配置されている。センシング手段がマイクロホンを含むいくつかの例では、マイクロホンは、空気が音響特徴部を流れる際に発生する音を検知するように構成されてもよい。いくつかの例では、音響特徴部は、「ジェットノイズ」又は口笛音を発生させるように構成された空気路に結合されたオリフィスを含んでもよい。いくつかの例では、音響特徴部は、マイクロホンによって記録された信号を増幅するために使用されてもよく、これにより、信号対雑音比を増大させてもよい。
【0035】
いくつかの例では、吸入器呼吸検知モジュールは、パラメータの変化を示す信号を提供するようにそれぞれが構成された複数のセンシング手段を含んでもよい。いくつかの例では、複数のセンシング手段は、少なくとも2つのマイクロホンを含む。いくつかの例では、コントローラは、複数のセンシング手段からのパラメータの変化を示す信号の比較に基づいて、ノイズ除去を実施するように構成されてもよい。これにより、騒々しい環境において呼吸検知精度が向上する可能性がある。
【0036】
いくつかの例では、コントローラは、機械学習アルゴリズムでプログラムされており、アルゴリズムは、訓練パラメータを使用して訓練される。いくつかの例では、訓練パラメータは、各周波数におけるパワーを異なる重み付けに関連付ける。機械学習アプローチを使用する利点は、特に異なるノイズ環境において、マイクロホンセンシング信号と流量との間の関連が向上することであり得る。これにより、異なるノイズ環境において流量及び呼吸決定の精度を向上させる可能性がある。
【0037】
いくつかの例では、コントローラは、パラメータの変化を示す信号を周波数ドメインに処理するように構成されている。いくつかの例では、コントローラは、各周波数におけるパワーに重み付けを適用するように構成されている。重み付けは、予めプログラムされていてもよく、様々な流量にわたる吸入サンプル及びノイズサンプルを含む広範なデータセットにわたって機械学習アルゴリズムを訓練することによって決定される。
【0038】
いくつかの例では、コントローラは、パラメータの変化を示す信号のケプストラムを決定するように構成されている。いくつかの例では、ケプストラムは、異なるスペクトル帯域の変化率に関する情報を含んでもよい。いくつかの例では、ケプストラムは、基底周波数及び高調波を抽出するのに有用である。
【0039】
いくつかの例では、コントローラは、例えば流量の推定値を決定するために、線形回帰を実施するように構成されている。いくつかの例では、コントローラは、例えば、記憶された訓練パラメータに基づいて呼吸の存在の信頼度を出力するために、ロジスティック回帰を実施するように構成されている。いくつかの例では、呼吸の存在の信頼度は、呼吸の開始及び/又は呼吸の終了に対して決定されてもよい。いくつかの例では、コントローラは、例えば流量推定値を決定するための線形回帰及び例えば呼吸の存在の信頼度を出力するためのロジスティック回帰の両方を実施するように構成されている。
【0040】
いくつかの例では、吸入器呼吸検知モジュールは、通信インターフェースを含む。いくつかの例では、吸入器呼吸検知モジュールは、短距離無線通信インターフェースを含む。いくつかの例では、コントローラは、短距離無線通信インターフェースを介して、(i)呼吸の開始及び/又は終了の信頼度、又は(ii)推定流量のいずれかを含むデータをリモートデバイスに送信するように構成されてもよい。いくつかの例では、コントローラは、短距離無線通信インターフェースを介して、(i)呼吸の開始及び/又は終了の信頼度、又は(ii)推定流量の両方を含むデータをリモートデバイスに送信するように構成されてもよい。いくつかの例では、短距離無線通信インターフェースは、Bluetooth(登録商標)通信を使用してもよい。他の例では、WiFi、近距離通信(NFC)、ZigBee、及び無線周波数識別(RFID)を含むがこれらに限定されない他の短距離無線通信インターフェースが使用されてもよい。
【0041】
いくつかの例では、吸入器呼吸検知モジュールは、加速度計を更に含んでもよい。いくつかの例では、加速度計は、デバイスの向きを検知するように構成されてもよい。いくつかの例では、加速度計は、デバイスの振とうを検知するように構成されてもよい。いくつかの例では、加速度計は、デバイスの向き及びデバイスの振とうの両方を検知するように構成されてもよい。いくつかの例では、吸入器呼吸検知モジュールは、吸入前の、例えば吸入の5秒前の振とうのデータを記録するように構成されてもよい。デバイスの振とうを記録することは、作動イベントの前にデバイスのプライミングに関するデータを提供するのに有利な場合がある。例えば、いくつかの例では、吸入器呼吸検知モジュールは、作動イベントの前に、プライミング/振とうの存在を検知するように構成されてもよい。いくつかの例では、吸入器呼吸検知モジュールは、プライミング/振とうの持続時間又は強度を記録するように構成されてもよい。
【0042】
別の態様では、吸入器呼吸検知モジュールと電子吸入器カウンタとを含む、吸入器呼吸検知及び分析システムが提供される。
【0043】
いくつかの例では、吸入器呼吸検知及び分析システムは、ハウジングを更に含み、吸入器呼吸検知モジュール及び電子吸入器カウンタの両方は、ハウジング内に配置されている。
【0044】
いくつかの例では、吸入器呼吸検知及び分析システムは、国際公開第2006/110080号パンフレットに開示されているものなどの既存の機械式吸入器カウンタのフットプリント内に収まるように構成されてもよい。
【0045】
いくつかの例では、吸入器呼吸検知及び分析システムは、吸入器容器に取り付けられるように構成されている。
【0046】
別の態様では、
吸入器呼吸検知モジュールから信号を受け取り、信号は、呼吸の信頼度及び/又は呼吸の推定流量の少なくとも一方を含むデータを含み、
データの後処理を実施し、
呼吸の信頼度及び/又は予め決定された最適な使用範囲に対する呼吸の流量の少なくとも一方に基づいて、呼吸手法フィードバックを提供するように構成されている、吸入器手法フィードバックアプリが提供される。
【0047】
いくつかの例では、アプリは、呼吸の信頼度を使用して呼吸持続時間を計算するように構成されている。例えば、アプリは、呼吸の開始及び終了の信頼度を使用して呼吸持続時間を計算するように構成されている。
【0048】
いくつかの例では、吸入器呼吸検知モジュールから吸入器手法フィードバックアプリによって受け取られる信号は、呼吸持続時間、呼吸のタイムスタンプデータ、及び/又は振とうのデータを更に含む。
【0049】
いくつかの例では、後処理手順は、アルゴリズムによって導かれたノイズの多い、不正確な、又は使い勝手の悪い知識を修正する手順を含んでもよい。いくつかの例では、データの後処理は、例えばガウスフィルタ又は形態学的フィルタを使用したフィルタリングを含む。いくつかの例では、フィルタリングは、データを平滑化する及び/又は外れ値の「ブリップ」を除去するために使用され得る。いくつかの例では、後処理は、様々なプルーニングルーチン、ルール品質処理、ルールフィルタリング、ルールの組み合わせ、モデルの組み合わせ、又は知識統合も含み得る。
【0050】
いくつかの例では、吸入器手法フィードバックアプリは、更に、電子吸入器カウンタから信号を受け取るように構成されてもよく、信号はデータを含む。いくつかの例では、データは、吸入器の少なくとも1回の直線駆動のタイムスタンプデータを含んでもよい。いくつかの例では、吸入器の少なくとも1回の直線駆動のタイムスタンプデータは、用量カウントのタイムスタンプデータを含んでもよい。いくつかの例では、吸入器の少なくとも1回の直線駆動のタイムスタンプデータは、噴射点のタイムスタンプデータを含んでもよい。いくつかの例では、吸入器の少なくとも1回の直線駆動のタイムスタンプデータは、用量カウント及び噴射点の両方のタイムスタンプデータを含んでもよい。
【0051】
いくつかの例では、吸入器手法フィードバックアプリは、更に、用量が特定の期間内、例えば1日に何回投与されたかの表示を使用者に提供するように構成されてもよい。いくつかの例では、吸入器手法フィードバックアプリは、更に、少なくとも1つの用量が何時に投与されたかに関する表示を使用者に提供するように構成されてもよい。これは、使用者の治療及び/又は状態の有効管理に重要な、使用者による自身の用量履歴の追跡に役立つ可能性がある。
【0052】
いくつかの例では、吸入器手法フィードバックアプリは、
吸入器呼吸検知モジュールから信号を受け取り、信号は、少なくとも1回の呼吸のタイムスタンプデータを含むデータを含み、
電子吸入器カウンタから信号を受け取り、信号は、吸入器の少なくとも1回の直線駆動のタイムスタンプデータを含むデータを含み、
少なくとも1回の呼吸のタイムスタンプデータと吸入器の少なくとも1回の直線駆動のタイムスタンプデータとを比較し、
吸入器作動のタイミングに対する呼吸のタイミングに基づいて、使用者に呼吸手法フィードバックを提供するように更に構成されてもよい。
【0053】
いくつかの例では、吸入器手法フィードバックアプリは、呼吸のタイミングが吸入器作動のタイミングに対して予め決定された時間範囲外であったかどうか、例えば、呼吸が吸入器作動に対して早すぎた又は遅すぎたかどうかの表示を使用者に提供するように更に構成されてもよい。
【0054】
いくつかの例では、吸入器手法フィードバックアプリは、集約されたデータ及び/又は長期使用パターンに基づいて、手法フィードバックを提供するように構成されてもよい。これは、吸入器誤用の潜在的な再発モード、例えば、送達/呼吸の誤ったタイミング、吸入していないこと、最適でない吸入フロープロファイル(すなわち、速すぎる又は遅すぎる)、及び/又は吸入後に呼吸止めがないことに使用者が対処するのに役立つ可能性がある。
【0055】
いくつかの例では、アプリは、呼吸が所定の時間、例えば2秒よりも長いかどうかを検知するように構成されていてもよい。いくつかの例では、アプリは、噴射後に呼吸が行われたかどうかを検知するように構成されてもよい。いくつかの例では、アプリは、呼吸流量が所定の流量、例えば100l/min未満に維持されているかどうかを検知するように構成されてもよい。いくつかの例では、アプリは、呼吸が作動に関連していないかどうかを検知することができてもよい。いくつかの例では、アプリは、呼吸止めが作動に関連していないかどうかを検知することができてもよい。
【0056】
いくつかの例では、アプリは、吸入器呼吸検知モジュールから振とうのデータを受け取るように構成されてもよい。いくつかの例では、アプリは、吸入器のプライミング/振とうが作動前に関連付けられていないかどうかを検知することができてもよい。いくつかの例では、アプリは、振とうの持続時間及び/又は強度が予め決定された範囲外であったかどうかを検知するように構成されてもよい。
【0057】
別の態様では、吸入器作動ハウジングと、吸入器容器と、電子吸入器カウンタとを含む吸入器システムが提供される。
【0058】
別の態様では、吸入器作動ハウジングと、吸入器容器と、吸入器呼吸検知モジュールとを含む吸入器システムが提供される。
【0059】
いくつかの例では、吸入器システムは、吸入器作動ハウジングと、吸入器容器と、電子吸入器カウンタと、吸入器呼吸検知モジュールとを含む。
【0060】
いくつかの例では、吸入器呼吸検知モジュール及び/又は電子吸入器カウンタは、吸入器容器に取り付けられている。いくつかの例では、吸入器呼吸検知モジュール及び電子吸入器カウンタは、呼吸検知及び分析システムハウジング内に配置されており、呼吸検知及び分析システムハウジングは、吸入器容器に取り付けられるように構成されている。
【0061】
いくつかの例では、吸入器呼吸検知モジュール及び/又は電子吸入器カウンタは、既存の機械式吸入器カウンタのフットプリント、例えば国際公開第2006/110080号パンフレットに開示されているもののフットプリント内に収まるように構成されている。いくつかの例では、呼吸検知及び分析システムハウジングは、既存の機械式吸入器カウンタのフットプリント、例えば国際公開第2006/110080号パンフレットに開示されているもののフットプリント内に収まるように構成されている。
【0062】
ここで、本開示の実施形態について、添付図面を参照して、単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】例示的な電子吸入器カウンタの断面図を示す。
図2】電子吸入器カウンタの使用方法の概略フロー図を示す。
図3A】使用中の電子吸入器カウンタの例示的な断面図を示す。
図3B】使用中の電子吸入器カウンタの例示的な断面図を示す。
図3C】使用中の電子吸入器カウンタの例示的な断面図を示す。
図4】電子吸入器カウンタを含む例示的な吸入器アセンブリの斜視図を示す。
図5】吸入器呼吸検知モジュールの概略図を示す。
図6A】ハウジング内に取り付けられた吸入器呼吸検知モジュールの例示的な断面図を示す。
図6B】ハウジング内に取り付けられた吸入器呼吸検知モジュールの例示的な断面図を示す。
図7】ハウジング内に取り付けられた吸入器呼吸検知モジュール内の音響特徴部及びマイクロホン位置の例示的な断面図を示す。
図8】吸入器呼吸検知モジュールによる信号処理の方法の概略フロー図を示す。
図9A】吸入器手法フィードバックアプリによる信号処理の方法及び解析の概略フロー図を示す。
図9B】吸入器手法フィードバックアプリによる信号処理の方法及び解析の概略フロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
電子吸入器カウンタ
図1は、加圧式定量噴霧吸入器(pMDI)の直線駆動をカウントするための例示的な電子吸入器カウンタ100を示す。電子吸入器カウンタ100は、ハウジング120を含む。ハウジング120は、その長手方向軸線が直線駆動の方向に対して平行であるように配置されている。
【0065】
図1の電子吸入器カウンタ100は、ハウジング120内に、ロッカアーム102を含み、ロッカアーム102は、枢軸104を提供する近位端110とヘッド114を提供する遠位端112とを含む。ロッカアーム102は、ロッカアーム102の近位端110と遠位端112との間に位置する剛性ロッカ部分116を更に含む増加した厚みの部分を含む。図示の例では、ロッカ部分116は、湾曲した中央部を含むドッグレッグ形状を有する。他の例では、ロッカ部分116は、中央枢軸を提供するための湾曲した中央部を含む他の形状又は幾何学的形状を有することができる。ロッカ部分116を含むロッカアーム102の増加した厚みの部分は、ロッカ部分116がロッカアーム102の本体から突出するように、ロッカアーム102の厚みが横断方向に対して平行に増加するように構成されている。ヘッド114は、ロッカアーム102の遠位端112からデバイス100の長手方向軸線に概ね平行に延びる。この例では、ヘッド114は、丸みを帯びたフィレット形状を有する。他の例では、ヘッド114は、異なる形状、例えば、凸状ドーム又は平坦面であってもよい。ヘッド114は、好ましくは大きい表面積を有し、増加した厚みのロッカアーム102の部分に配置されてもよい。ヘッド114は、カウントスイッチ106に接触するような大きさである。
【0066】
電子吸入器カウンタ100は、カウントスイッチ106を更に含む。カウントスイッチ106は、ロッカアームヘッド114の上方に配置されている。カウントスイッチ106は、プリント回路基板アセンブリ(PCBA)124の下面に結合されている。PCBAは、カウンタデバイス100の横断方向軸線に平行に配置されており、ハウジング120内でロッカアーム102の上方に配置されている。PCBA124は、ハウジング120の内部フットプリントに適合するような大きさであり得る。
【0067】
電子吸入器カウンタ100は、ばね108の圧縮軸が直線駆動の方向に対して平行であるようにカウンタデバイス100の長手方向軸線に平行に配置されている、予め圧縮された戻しばね108を更に含む。ばね108の一端は、ロッカアーム枢軸104に結合されている。この例では、ばね108の他端は、ばね保持器キャップ118によって保持されており、ばね108の一部分は、ばね保持器キャップの空洞内に収まっている。ばね保持器キャップ118は、カウンタデバイス100の長手方向軸線に平行であるように配置されている。ばね保持器キャップは、PCBA124を越えて延びてもよく、ハウジング120内に押し嵌めによって保持されてもよい。保持器キャップ118の利点は、カウンタデバイス100において、他の手法で可能な場合よりもより長いばねを使用することを可能にし、したがって、更なるオーバートラベル及び密着高さに達することなく必要な力を提供する能力を可能にすることであり得る。ばね保持器キャップ118を含まない他の例では、枢軸104に結合されていないばね108の端部は、PCBA124の下面に結合されてもよい、又はそうでなければ、ハウジング120に直接結合されてもよい。
【0068】
好ましい例では、PCBA124は、電池(図示せず)によって給電される。いくつかの例では、電池はコインセル電池である。いくつかの例では、電池は、PCBA124の上面、カウントボタン106とは反対側の面に結合されている。
【0069】
好ましい例では、PCBA124は更に、ディスプレイ(図示せず)に結合されている。この例では、ディスプレイはデジタルディスプレイである。いくつかの例では、デジタルディスプレイはLCD画面であってもよい。デジタルディスプレイは、カウンタデバイス100の頂面に配置されている。他の例では、ディスプレイ画面は、ハウジング上の他の位置、例えば側面に配置されてもよい。この例では、ディスプレイは、ハウジング120に結合されたベゼル122を使用して固定されている。
【0070】
好ましい例では、ハウジング120は、ロッカアーム102の下の、デジタルディスプレイの反対側のカウンタデバイス100の底面に開口部126を有する。開口部126は、カウンタデバイス100の横断方向軸線に平行に配置されている。開口部126は、ロッカアーム102のロッカ部分116を少なくとも露出させるように配置されている。
【0071】
第1の選択された程度の直線駆動運動に応答して、予め圧縮されたばね108が枢軸104を押さえ、ロッカアーム102は、カウントスイッチ106がロッカヘッド114と係合するまで第1のロッカ運動を実施するように構成される電子吸入器カウンタ100が配置されている。図示の例では、第1のロッカ運動は反時計回りの回転である。
【0072】
更なる直線駆動運動に応答して、ばね108は係合するように構成されており、これにより、枢軸104を変位させ、ロッカアーム102が第2のロッカ運動を実施することを可能にする。図示の例では、ばね108は圧縮され、枢軸104を垂直に変位させる。これにより、ロッカアーム102のロッカ部分116がロッカアーム102を時計回り方向に枢動させる。
【0073】
付勢力の除去に応答して、ばね108は、その元の構成に戻り、枢軸104を押し下げて、ロッカアーム102をその元の構成に戻すように構成されている。
【0074】
いくつかの例では、電子吸入器カウンタ100は、例えば以下図3でより詳細に示すように、吸入器アクチュエータハウジング内に取り付けられた吸入器容器の端部に取り付けられるように構成されており、直線駆動運動は、アクチュエータハウジングに対するものであり、ロッカアーム102は、アクチュエータハウジングに結合されたアクチュエータ舌状部と係合するように構成されている。いくつかの例では、ロッカ部分116を含むロッカアーム102の増加した厚みの部分は、アクチュエータ舌状部と係合するように構成されている。
【0075】
この例では、ロッカヘッド114は、第2のロッカ運動中、カウントスイッチ106との係合を維持する。
【0076】
この例では、第1のロッカ運動は、枢軸104における反時計回りの回転である。この例では、第2のロッカ運動は、ばね108の圧縮によって可能になる、カウントスイッチ106を中心にしたロッカアーム102の時計回りの回転である。
【0077】
ハウジング120の開口部126は、吸入器デバイスのアクチュエータ舌状部を受け入れるように構成されてもよい。いくつかの例では、吸入器カウンタの直線駆動により、開口部126を吸入器デバイスのアクチュエータ舌状部の上に前進させる。第1の選択された程度の直線駆動運動に応答して、ロッカアーム102の少なくともロッカ部分116はアクチュエータ舌状部に接触する。更なる直線駆動運動に応答して、ロッカアーム102の少なくともロッカ部分116は、アクチュエータ舌状部との接触を維持する。
【0078】
図1に示される例では、第1の選択された程度の直線駆動運動に応答して、ロッカアーム102のロッカ部分116は、吸入器デバイスのアクチュエータ舌状部に接触するように構成されており、これにより第1のロッカ運動を生じさせる。
【0079】
図1に示される例では、更なる直線駆動運動に応答して、ロッカアーム102のロッカ部分116は、第2のロッカ運動中、吸入器デバイスのアクチュエータ舌状部との接点で枢動するように構成されている。
【0080】
電子吸入器カウンタ100は、用量が容器から吐出されたときに確実に検知しなければならない。これは、使用者が容器を押下するために供給しなければならない力に顕著な追加のないように、例えば5N未満の追加で行われるべきである。機構は、デバイスが容器を完全に作動させることをスイッチング機構が停止しないように、顕著なオーバートラベルも可能にしなければならない。
【0081】
カウントを登録するために必要な力は、主にスイッチ106を起動するのに必要な力及びロッカアーム102の機械的利益によって駆動される。重要な要件は、第1のロッカ運動中、カウントスイッチ106との接触が行われるまでレバーアーム枢軸104が維持されることである。
【0082】
ロッキング部分116又はロッカアーム102と吸入器アクチュエータ本体のアクチュエータ舌状部との間の接触によって第1のロッカ運動が作動される例では、枢着部104は押さえられてもよい。これは、定義されたスイッチング点を設けることにより有利になり得る。しかしながら、デバイス100は、顕著なオーバートラベルも可能にしてもよく、したがって、枢軸104は、予め圧縮されたばね108によって押さえられる。ばね108は、顕著なオーバートラベルを可能にするために更に圧縮することができるが、第1の選択された程度の直線駆動運動に応答してカウントボタン106がカウントを登録するまで枢軸104が移動しないほど十分に硬くてもよい。
【0083】
図2は、電子吸入器カウンタ200、例えば図1又は図3Aから図3Cに記載されている電子吸入器カウンタの使用方法の概略フロー図を示す。工程202から開始し、第1の選択された程度の直線駆動運動が電子吸入器カウンタ100に加えられる。これにより、ロッカアーム102のロッカ部分116がアクチュエータ舌状部404に接触するまで、ロッカアーム102を吸入器アクチュエータ舌状部404に対して変位させる。図3Bに示される例では、工程204において、ロッカアーム102のロッカ部分116とアクチュエータ舌状部404との間の接触により、ロッカアーム102に第1のロッカ運動を実施させ、枢軸104は、予め圧縮されたばね108の力によって押さえられ、ロッカアームのロッカ部分116は、工程206においてロッカアーム102のヘッド114がカウントスイッチ106に係合するまでロッカアーム102を枢動させる。図3Bに示される例では、枢軸104は押さえられ、ロッカアーム102は、工程206においてロッカアーム102がカウントスイッチ106に係合するまで反時計回りの回転で枢動する。いくつかの例では、第1の程度の直線駆動のみが適用され、本方法は終了する。いくつかの例では、工程208において、電子吸入器カウンタ100に更なる直線駆動運動が加えられる。その後、工程210において、ばね108は係合する。図3Cに示される例では、ばね108は、圧縮することによって係合する。ばね108が係合することで、工程212において、ロッカアーム102に第2のロッカ運動を実施させる。いくつかの例では、第2のロッカ運動は、第1のロッカ運動と反対方向である。図3Cに示される例では、ばね108は圧縮し、枢軸104を持ち上げ、これにより、ロッカアーム102を、アクチュエータ舌状部404に接触したロッカ部分116の周りで時計回りの回転で枢動させる。図3Cに示される例では、工程214において、ロッカアーム102のヘッド114は、カウントスイッチ106との係合を維持する。いくつかの例では、ロッカアーム104のヘッド114は、更なる直線駆動中に、カウントスイッチ106から係合解除してもよい。
【0084】
図3Aは、作動イベントの前の例示的な電子吸入器カウンタの例示的な概略図を示す。図3Bは、作動イベント中のロッカアーム102の第1のロッカ運動204を示す。図3Cは、作動イベント中のばね108の係合210及びロッカアーム102の第2のロッカ運動212を示す。
【0085】
図3Aは、電子吸入器カウンタ100の一例を示す。電子吸入器カウンタ100は、4つの成形部品、すなわち、ユーザボタンを備えた2ショットハウジング120、透明窓を備えた2ショットベゼル122、ロッカアーム102、及びばね保持器キャップ118からなる。この例では、ハウジング120、ベゼル122、及びばね保持器キャップ118は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)製であるが、他の例では、他の材料を使用することができる。この例では、透明窓は、ポリカーボネート製であるが、他の例では、他の透明材料を使用することができる。この例では、ロッカアームは、アセタール製であるが、他の例では、他の材料を使用することができる。
【0086】
図3Aから図3Cに示される電子吸入器カウンタ100は、ばね108、電池128、及びPCBA124を更に含む。いくつかの例では、電子吸入器カウンタ100は、ソフトパッドを更に含む。図示の例では、電子吸入器カウンタ100は、ポロンフォーム製のソフトパッドを含むが、他の例では、他の材料を使用することができる。ソフトパッドは、直線駆動サイクル中に圧縮力から回路を保護するために、PCBA124に結合されてもよい。
【0087】
電子吸入器カウンタ100は、ハウジング120内に、ロッカアーム102を含み、ロッカアーム102は、枢軸104を提供する近位端110とヘッド114を提供する遠位端112とを含む。ロッカアーム102は、剛性ロッカ部分116を更に含む。図示の例では、ロッカ部分116はドッグレッグ形状を有する。他の例では、ロッカ部分116は、枢軸を設けるために他の湾曲した形状又は幾何学的形状を有することができる。
【0088】
カウントスイッチ106は、ロッカアームヘッド114の上方に配置されている。カウントスイッチ106は、プリント回路基板アセンブリ(PCBA)124の下面に結合されている。
【0089】
この例では、電池128は、コイン電池、例えばCR2032電池であるが、他の例では、他の電池又は電源を使用することができる。電池128は、PCBA124の上面に結合されている。この例では、特別仕様の電池クリップが使用されている。クリップは、例えばリフローはんだ付けによってPCBA124上に表面実装され、cクリップ(正端子)及び十字形のコンタクト(負端子)を構成する。この設計は、電子吸入器カウンタ100のフォームファクタを機械式吸入器カウンタ(例えば、国際公開第2006/110080号パンフレットに開示されているものなど)の封体部内に維持し、全体の高さを保つのに役立つ可能性がある。電池128は、ベゼル122及び電池上方の構成要素のスタックによって垂直方向に保持される。十字形のクリップは、2つのばね付きアームを含み、2つのばね付きアームは、曲がり、垂直方向に予想される移動範囲を通して十分な接触力を提供するように構成されている。表面実装されたcクリップは、電池128をPCBA124の平面に沿って拘束し、PCBA124にリフローはんだ付けされた4つの脚を有する。内側クリップ脚は、基板に電気接触し、任意の追加的な外側クリップ脚は、純粋に機械的な機能を果たす。
【0090】
戻しばね108は、圧縮軸が直線駆動の方向に対して平行であるように配置されている。ばね108の一端は、ロッカアーム枢軸104に結合されている。この例では、ばね108の他端は、ばね保持器キャップ118によって保持されている。
【0091】
保持器キャップ118の利点は、デバイスにおいて、他の手法で可能な場合よりもより長いばねを使用することを可能にし、したがって、更なるオーバートラベル及び密着高さに達することなく必要な力を提供する能力を可能にすることであり得る。ばね保持器キャップ118を含まない他の例では、枢軸104に結合されていないばね108の端部は、PCBA124の下面に結合されてもよい、又はそうでなければ、ハウジングに直接結合されてもよい。
【0092】
ばねを収容するばね保持器キャップ118は、ばねがPCBA124を越えて延びることを可能にするように配置されており、ばね108のために利用可能な空間を最大化するように構成されている。この例では、ばね保持器キャップ118は、ハウジング120に押し嵌めされている。他の例では、ばね保持器キャップは、他の手段によって保持されてもよい。保持器キャップが緩むことに対するフェイルセーフとして、ばね保持器キャップ118の移動は、その上方のPCBA124によって制限される。PCBA124の移動は、ひいては、ベゼル122から下方に突出した脚によって制限される。
【0093】
この例では、組み立て時にばねが絡まる可能性を低下させるために、中間に3つのデッドコイルを含むヘリカルコイルばね128が使用される。他の例では、他の数のデッドコイルがばね128内で使用されてもよい。電子吸入器カウンタ100が組み立てられると、ばね128は、電子吸入器カウンタ100内で利用可能な空間によって設定された高さまで予め圧縮される。この例では、ばね128は、10.9mmの高さまで予め圧縮される。
【0094】
図3に示される例では、デジタルディスプレイ機構は、カウンタハウジング120の頂面に設けられている。開示される実施形態では、ハウジングの頂面は、ベゼル122によって保持された、ハウジングを閉じる透明な成形窓として設けられている。いくつかの例では、カウンタ頂面は更に、直線駆動運動を作動させるための、すなわち容器カウンタアセンブリを押下するための作動面として利用される。カウンタ頂面は作動面として使用されるため、吸入器デバイスの作動中に圧縮力を受け、摩耗するので、剛性且つ耐摩耗性であるように構成されている。
【0095】
第1の選択された程度の直線駆動運動に応答して、ロッカアーム102は、第1のロッカ運動を実施し、カウントスイッチ106をロッカヘッド114と係合させるように構成されており、更なる直線駆動運動に応答して、ばね108は係合され、ロッカアーム102が第2のロッカ運動を実施することを可能にする電子吸入器カウンタ100が配置される。
【0096】
付勢力の除去に応答して、ばね108は、その元の構成に戻り、ロッカアーム102もその元の構成に戻すように構成されている。
【0097】
この例では、電子吸入器カウンタ100は、吸入器アクチュエータハウジング402内に取り付けられた吸入器容器(図示せず)の端部に取り付けられるように構成されており、直線駆動運動は、アクチュエータハウジング402に対するものであり、ロッカアーム102は、アクチュエータハウジング402に結合されたアクチュエータ舌状部404と係合するように構成されている。
【0098】
この例では、ロッカアーム102のロッカ部分116は、吸入器デバイスのアクチュエータ舌状部404と係合するように構成されている。この例では、アクチュエータ舌状部404は、カウンタハウジング120の開口部を通って突出し、ロッカアーム102に係合するように配置されている。
【0099】
いくつかの例では、図3Bに示すように、第1の選択された程度の直線駆動運動により、ロッカアーム102のロッキング部分116の第1の部分をアクチュエータ舌状部404と係合させ、ロッカアーム102を第1の方向に変位させ、ロッカヘッド114をカウントスイッチ106と係合させる。いくつかの例では、図3Cに示すように、第2の選択された程度の直線駆動運動により、ロッカアーム102のロッカ部分116の第2の部分をアクチュエータ舌状部404と係合させ、ロッカアーム102を第2の方向に揺動させる。
【0100】
図示の例では、容器に取り付けられたカウンタ100が使用者によってアクチュエータハウジング402に対する直線駆動運動により押下されると、容器バルブが2.07mm移動後に噴射点に達するが、これは、容器バルブ構成要素の公差に基づいて異なってもよい。使用中、電子吸入器カウンタ100は、容器ストローク/直線駆動サイクルの早期にカウントを登録する。図示の例では、カウント点と噴射点との間の目標間隔は0.78mmであり、公差解析から、カウント前の噴射の確率は8ppmとなる。
【0101】
他の例では、カウントと噴射の間隔及びそれに関する標準偏差は、連鎖を通じて積み重ねられる公差及びスマート組立プロセスに関連する不確実性に依存する。最大に寄与するのは、この場合、電子吸入器カウンタ100外のもの、例えば、容器及びアクチュエータ本体402を通る、電子吸入器カウンタ100に対するアクチュエータ舌状部404の位置の不確実性(標準偏差0.15mm)である。そこで主に寄与するのは、スマートアセンブリの高さ及びカウントのための容器ストロークに関連する不確実性である。
【0102】
カウント点を移動の早期に設定する際、電子吸入器カウンタ100は、容器のわずかな変位がカウントとして登録される不注意によるカウントから保護されなければならない。図示の例におけるカウントと噴射の間隔では、デバイスがほぼゼロの変位でカウントする可能性は極めて小さい(およそ10-13)と計算される。
【0103】
したがって、第1のロッカ運動が吸入器アクチュエータ本体402上のアクチュエータ舌状部404によって作動されると、枢着部104は押さえられなければならない。しかしながら、デバイス100は、顕著なオーバートラベルも可能にしなければならず、したがって、枢軸104は、予め圧縮されたばね108によって押さえられる。ばね108は、顕著なオーバートラベルを可能にするために更に圧縮することができるが、第1の選択された程度の直線駆動運動に応答してカウントボタンがカウントを登録するまで枢軸104が移動しないほど十分に硬い。
【0104】
この例では、第1の選択された程度の直線駆動運動中、スイッチング時に枢軸を押さえるための公称力は、0.77Nと計算されるが、最大1.27N(標準偏差5)であってもよい。したがって、いくつかの例では、ばねが予め圧縮されてから提供することができなければならない最小力の要件として1.27Nが設定される。
【0105】
ボタンの作動以外に、機構は、容器を噴射させるための使用者の力の要件を大幅に増加させない(5N未満の増加)一方で、オーバートラベルを支持する必要がある。この例では、ばねが提供する公称余力は、容器噴射時に3.13N、最大容器オーバートラベル時に5Nである。
【0106】
図4は、本発明による電子吸入器カウンタ100を含む吸入器デバイス400の概略例を示す。吸入器デバイスは、マウスピース(これを通して医薬品が使用者に送達される)を備えたアクチュエータ本体402と容器カウンタアセンブリとを含む。この例では、マウスピースは、衛生上の配慮から非使用時にマウスピースに取り付けられるように構成されたマウスピースカバー406によって覆われている。この例では、カウンタ100は、アクチュエータハウジング402内に配置された吸入器容器(図示せず)の端部に取り付けられている。カウンタ100は、組立プロセスにおいて吸入器容器に取り付けられてもよく、他の例では、カウンタ100の最外縁部からその内側基部までの、バルブとは反対側のキャニスタ端部、すなわちバルブステムとは反対側のキャニスタの部分に沿った多くの箇所の任意の1つにおいて吸入器容器に取り付けることができ、様々な位置の変化及び様々な長さのキャニスタ公差が与えられる。すなわち、カウンタは、キャニスタの基部上のどこにでも取り付けることができる。カウンタ100は更に、アクチュエータハウジング502の一部として配置され得る、又はアクチュエータハウジング502、例えばその前面若しくは裏面に着脱可能に取り付けられる。
【0107】
吸入器デバイス400は、容器カウンタアセンブリをアクチュエータハウジング402に対して押下することによって作動される。カウンタ100は、吸入器デバイス400の各作動をカウントし、ディスプレイ機構124を介して実際の状態を表示するように構成されている。
【0108】
図4に示される電子吸入器カウンタ100の例は、デジタルディスプレイ124を含む。この例では、ディスプレイ機構124は、カウンタハウジング120の頂面に設けられている。この例では、デジタルディスプレイ124は、吸入器デバイスの直線駆動/残用量の絶対数と吸入器デバイスの直線駆動/残用量の数の相対表示とを提供する。この例では、相対表示は、吸入器デバイスの残用量数に比例して目盛りの長さが減少する半環状バーとして提供される。この例では、ディスプレイ機構124は、ベゼル122上にディスプレイの静的部分を更に含む。この例では、吸入器デバイスの直線駆動/残用量の数の相対表示は、ディスプレイの静的部分と比較され得る。この例では、ディスプレイの静的部分は、半環状の目盛り付き領域である。いくつかの例では、目盛り付き領域の少なくとも一部分は、色分けされていてもよい。この例では、目盛り付き領域の2つの部分は、吸入器デバイスの直線駆動/残用量の相対数が少なくなっているとき(この例では黄色で示される)と極めて少ないとき(この例では赤色で示される)を示すように色分けされている。他の例では、目盛り付き領域は、他の色分けシステムを含んでもよい。他の例では、目盛り付き領域は、容器内に残る用量数の表示を含んでもよい。
【0109】
図4に示される100電子吸入器カウンタの例は、ハウジング120の外面に配置されたユーザボタン126を更に含む。いくつかの例では、ユーザボタン126は、デジタルディスプレイ124をオン/オフにするために使用されてもよい。いくつかの例では、ユーザボタン126は、デジタルディスプレイ124を「起動させる」ように構成されてもよい。いくつかの例では、非使用期間中に電池寿命を保つためにディスプレイ124がオフにされ得る又は「スリープ」モードに入ることができるため、これは、電子吸入器カウンタ100の電池寿命を延長するのに役立つ可能性がある。いくつかの例では、「スリープ」モードは、所定の非使用時間後に起動されてもよい。いくつかの例では、ユーザボタン126は、デジタルディスプレイ124上のディスプレイインターフェース間を切り替えるように構成されてもよい。例えば、ユーザボタン126は、使用者が残用量数を示すディスプレイと記録された直線駆動/用量の数を示すディスプレイとの間で切り替えることを可能にしてもよい。いくつかの例では、ユーザボタンは、デバイスのBluetoothペアリングを起動させるように構成されてもよい。いくつかの例では、ユーザボタンは、ある時間にわたって押下、すなわち長押しされたときにデバイスのBluetoothペアリングを起動させるように構成されてもよい。いくつかの例では、ユーザボタンは、押作動及び長押作動に応答して異なる機能を有するように構成されてもよい。
【0110】
吸入器呼吸検知モジュール
図5は、吸入呼吸の開始及び/又は終了を検知するための例示的な吸入器呼吸検知モジュール500を示す。呼吸検知モジュール500は、吸入器510の空気路512に結合されており、センシング手段502及びコントローラ504を含む。
【0111】
センシング手段502は、時間の関数としての吸入器空気路512のパラメータの変化を示す信号を提供するように構成されている。コントローラ504は、時間の関数としての吸入器空気路512のパラメータの変化を示す信号をセンシング手段502から受け取るように構成されている。
【0112】
使用中、吸入器の動作中に使用者によって行われた吸入呼吸は、吸入器空気路512のパラメータの変化を生じさせる。コントローラ504は、時間の関数としての吸入器空気路512のパラメータの変化に基づいて、呼吸の存在を決定するように構成されている。
【0113】
いくつかの例では、センシング手段502は、少なくとも1つの圧力センサを含んでもよい。吸入中、デバイス内部の圧力は外部よりも低くなるため、圧力差を測定することにより、流量を計算することができ、呼吸の存在が検知され得る。いくつかの例では、一方のポートがデバイス内部の適切な位置に接続され、他方のポートが大気に開放された少なくとも1つの差圧センサが使用されてもよい。いくつかの例では、少なくとも1つの絶対圧センサが使用されてもよい。いくつかの例では、少なくとも1つの絶対圧センサは、小型基板実装型気圧センサ、例えばMS5607気圧センサであってもよい。第1の構成では、一方が大気圧を測定し、他方がデバイス内部の圧力を測定する2つの絶対圧センサが使用されてもよい。第2の構成では、デバイス内部の圧力を測定し、経時的な圧力の変化を追跡する単一の絶対センサが使用されてもよい。第2の構成では、フォームファクタの関与が低減される可能性がある。しかしながら、第2の構成は、姿勢変化及び気圧変動など、呼吸以外の圧力の変化の補償を必要とする可能性がある。更に、全ての圧力センサ手法は、正しい測定位置まで密閉された経路を必要とする。
【0114】
いくつかの例では、センシング手段502は、少なくとも1つのマイクロホンを含んでもよい。いくつかの例では、少なくとも1つのマイクロホンは、デジタルマイクロホンであってもよい。いくつかの例では、少なくとも1つのマイクロホンは、プリアンプ回路とアナログデジタルコンバータ(ADC)とを更に含むアナログマイクロホンであってもよい。デジタルマイクロホンの利点は、プリアンプ回路とADCとを含むアナログマイクロホンに対する低減及びコストであり得る。マイクロホンは、空気が吸入器空気路に結合された音響特徴部を流れる際に発生する音を記録するために使用され得る。そこで、機械学習アルゴリズムを使用して、呼吸の存在を決定し(ロジスティック回帰)、流量を計算してもよい(線形回帰)。マイクロホンの使用により、圧力センサに関連するフォームファクタ及びコストの制約、並びに確実に密閉されたポートに関する要件を克服する可能性がある。しかしながら、圧力センサとは異なり、信号はノイズによる誤差が生じやすい可能性があり、流量のあまり直接的な尺度ではない。
【0115】
いくつかの例では、吸入器呼吸検知デバイスは、第2のマイクロホンを含んでもよい。第2のマイクロホンを使用し、吸入器空洞から遠く離れた周囲ノイズを記録することによって「ノイズ除去」機能を実現してもよい。これにより、騒々しい環境において呼吸検知精度が向上し得る。
【0116】
いくつかの例では、センシング手段502は、例えば、電磁的、光学的、機械的、及び/又は熱的方法によって流量を検知する他のセンシング手段を含んでもよい。最も正確な測定では、流量センサは、それを通して全ての流れが分流されること、並びに既存のpMDIデバイスの流路及び流れ抵抗の根本的な変化を必要とする。別の手法は、流れの一部を流量センサに通して流出させ、その読み取り値を全体的な流量に相関させるものである。しかしながら、これは、流量計及び主流路を通る相対的な流れ抵抗、並びに流出した空気の相対量に非常に敏感である。また、流量センサに対して及び流量センサから十分に密閉された経路を必要とする。
【0117】
pMDIに関して、文献では一般に、低流量が、肺への薬剤のより良好な沈着を促進するため有益であると考えられている。訓練されていない患者とpMDIを通して適切に(よりゆっくりと)吸入するように訓練された患者の両者を考慮に入れて、実際にpMDIを通した吸気流量に関する研究が行われた。結果は、使用者は様々な吸気流量を達成するが、全ての場合で流量が30l/minを上回ることを実証した。したがって、いくつかの例では、センシング手段は、30l/minの流量検知下限を検知するように構成されてもよい。
【0118】
いくつかの例では、吸入器呼吸検知モジュール500は、音響特徴部を更に含む。音響特徴部は、センシング手段によって感知された空気流の性質を変化させるように構成されてもよい。いくつかの例では、音響特徴部は、センシング手段によって記録された信号が増幅されるように空気流の性質を変化させるように構成されてもよい。これにより、低流量でのより正確な呼吸及び流量検知のために、ノイズに対する感受性を低減し、信号対雑音比を増大させることができる。
【0119】
いくつかの例では、音響特徴部は、使用者が呼吸を行ったときに空気流の一部が流れるように構成された狭窄部又は絞り部を含む。いくつかの例では、音響特徴部は、吸入器呼吸検知モジュールと吸入器アクチュエータハウジングとの間に距離の狭窄部又は絞り部を含む。
【0120】
マイクロホンによって記録された信号を増幅し、信号対雑音比を増大させるために、様々な笛声発生機構を文献から特定し、それらの性能を特徴付けるために試作及び試験を行った。全ての実装形態でベースラインよりもいくらかの改善が得られたが、最大の改善は、マイクロホンの近辺でジェットノイズを生じさせる小さなサイドオリフィスの導入によって得られた。低流量では、増加はおよそ3倍であり、より高流量では、10倍の増幅が達成される。したがって、いくつかの例では、音響特徴部は、マイクロホンで推測される音圧を増大させるように構成されたサイドオリフィスを含んでもよい。
【0121】
図6A及び図6Bは、吸入器呼吸検知モジュールが電子吸入器カウンタ600のハウジング612に取り付けられている例を示す。吸入器呼吸検知モジュールを電子吸入器カウンタハウジング612内に位置付けることによって、これにより、デバイスのフォームファクタを増加させないことによる利点を提供し得る。いくつかの例では、ハウジング612は、国際公開第2006/110080号パンフレットに開示されている元の機械式カウンタの空洞ハウジングと同じフットプリントを有する。
【0122】
マイクロホン606は、長手方向軸線に平行に配置された狭いチャネル602に結合されたポート614上に位置している。チャネル602は、吸入器の空気路にマイクロホン606を結合している。サイドオリフィス604が、マイクロホン606に近接して、チャネル602内に配置されている。サイドオリフィス604は、吸入器の空気路に結合されている。マイクロホン606は更に、コントローラを含むプリント回路基板アセンブリ(PCBA)608に結合されている。コイン電池610もまた、PCBA608の上側に結合されている。PCBA608及び電池610は、呼吸検知モジュール及び電子吸入器カウンタ600により兼用されるように構成されてもよい。
【0123】
サイドオリフィス604は、音響特徴部の一例であり、マイクロホンにおける音圧を増加し、したがって、マイクロホン信号を増幅するように構成されている。
【0124】
使用中、空気路からの流れはオリフィス604を通って入り、マイクロホン606の近傍で乱流ノイズ、例えばジェットノイズ又は口笛音を発生させる。その後、空気流は、チャネル602zに分流される。他の例では、音響特徴部は、空気流の一部が流れるように構成された任意の他の狭窄部又は絞り部を他の手法で含んでもよい。
【0125】
図7は、電子吸入器カウンタ600のハウジング612に取り付けられた図6の例示的な呼吸検知デバイスの詳細な断面図を示す。ハウジング612は、吸入器デバイスに取り付けられるように構成されてもよい。図示の例では、吸入器呼吸検知モジュールは、例えば図4に示すようにハウジング120によって、吸入器アクチュエータハウジング内に取り付けられた吸入器容器の端部に取り付けられるように構成されている。この断面図では、マイクロホン(図示せず)は、ハウジング本体612の小さなサイドオリフィス穴604を介して主空気路に結合されたポート614上に配置されている。この例では、サイドオリフィス604は、0.4mmの最小直径を有する。
【0126】
使用中、主空気路からの流れは、オリフィス604を通って入り、マイクロホンの近傍で乱流ノイズを発生させる可能性がある。その後、流れは、チャネル602に分流される。
【0127】
マイクロホン読み取り値と流量との相関は、圧力読み取り値ほど単純ではない。信号パワーと流量との間の関係は、経験的に得ることができ、信号処理は、対象の周波数の範囲に関して手動で最適化することができる。しかしながら、この関係は、異なるノイズ環境において変化する可能性があり、最適化には、各設定における同調を必要とする。
【0128】
いくつかの例では、マイクロホンからの信号が、予め訓練されたパラメータを使用し、コントローラによって処理される機械学習アプローチが実施されてもよい。機械学習アプローチを使用する利点は、特に異なるノイズ環境において、マイクロホンセンシング信号と流量との間の関係の決定が向上することであり得る。これにより、異なるノイズ環境において流量及び呼吸決定の精度を向上させる可能性がある。いくつかの例では、機械学習アルゴリズムが、様々な流量にわたる吸入サンプル及びノイズサンプルで訓練され得る。いくつかの例では、訓練パラメータは、各周波数におけるパワーを異なる重み付けに関連付ける。いくつかの例では、機械学習実装は、呼吸の存在の信頼度を出力するロジスティック回帰を実施する。いくつかの例では、機械学習実装は、流量の推定値を出力する線形回帰を実施する。いくつかの例では、機械学習実装は、ロジスティック回帰及び線形回帰の両方を実施する。いくつかの例では、出力データを使用して、呼吸が開始及び/又は終了すると検知することができる。
【0129】
いくつかの例では、機械学習実装によって生成された出力は、後処理、例えばフィルタリングが施される。いくつかの例では、データを平滑化するためにガウスフィルタを適用することができる、及び/又は外れ値の「ブリップ」を除去するために形態学的フィルタを適用することができる。いくつかの例では、全ての後処理及びフィルタリングは、リモートデバイス、例えばアプリ上で実施されてもよい。
【0130】
一例では、図8は、アルゴリズムによってデータがどのように処理され得るかの概要を提供する。デジタルマイクロホンは、512ビットのチャンク(0.032秒に相当)に分割された16kHzの音声データを出力する。このデータに、2つの変換、最初に、スペクトルを得るための高速フーリエ変換、次いで、ケプストラムを得るための、スペクトルの対数に対する逆フーリエ変換が行われる。ケプストラムは、異なるスペクトル帯域の変化率に関する情報を含み得、基底周波数及び高調波を抽出するのに有用なため、音声分析において一般的である。この例では、主成分分析を行い、上位44の支配的成分が抽出される。その後、0.128秒のデータを表す、4つの連続する512ビットのチャンクの音声入力にわたるこれらの成分の平均が取られる。次いで、5つのそのような平均が、更なる処理のために共にグループ化される(0.628秒のデータを含む)。5つの平均の各連続するグループは、前のグループと0.500秒のオーバラップを有する(すなわち、グループからグループまで0.128秒の又は1つの平均のずれがある)。
【0131】
図8に示される例を続けると、支配的成分を抽出するための主成分分析が各連続するグループに対して実行され、これに続いて、非線形積を計算するための操作が実行され得る。この非線形積は、アルゴリズムが、記憶された訓練パラメータに基づいて線形回帰(流量推定)及びロジスティック回帰(呼吸検知)を別々に実行する特徴セットを構成する。したがって、アルゴリズムは、連続するデータグループ間の時間のずれに相当する0.128秒毎に、流量の推定値及び呼吸の存在の信頼度の推定値を出力する。機械学習アルゴリズムによって出力された推定値は、接続されたリモートデバイス(例えば携帯電話)に転送されてもよく、そこで後処理(例えば、データを平滑化するためのデータのフィルタリング)を実行することができる。いくつかの例では、電子吸入器カウンタのPCBで実行される上記で概説した全ての工程並びにグループ化、平均化、及び主成分分析のコンディショニング工程は、コントローラ、例えばPCBマイクロコントローラの処理可能なサイズにデータを「圧縮する」ために必要な場合がある。
【0132】
いくつかの例では、吸入器呼吸検知モジュールは、加速度計を更に含んでもよい。いくつかの例では、加速度計は、デバイスの向きを検知するように構成されてもよい。いくつかの例では、加速度計は、デバイスの振とうを検知するように構成されてもよい。振とうは、予め決定された閾値の変化率よりも大きい加速度の変化によって定義されてもよい。いくつかの例では、吸入器呼吸検知モジュールは、吸入前の、例えば吸入の5秒前の振とうのデータを記録してもよい。デバイスの振とうを記録することは、作動イベントの前にデバイスのプライミングに関するデータを提供するのに有利な場合がある。例えば、いくつかの例では、吸入器呼吸検知モジュールは、作動イベントの前に、プライミング/振とうの存在を検知するように構成されてもよい。いくつかの例では、吸入器呼吸検知モジュールは、プライミング/振とうの持続時間又は強度を記録するように構成されてもよい。
【0133】
フィードバック
図9Aは、吸入器手法フィードバックアプリによる信号処理及び解析の方法900の概略フロー図を示す。最初に、工程902において、アプリは、吸入器呼吸検知モジュールから信号を受け取り、信号はデータを含む。データは、呼吸の信頼度及び/又は呼吸の推定流量の少なくとも一方を含み得る。
【0134】
工程904において、アプリは、データの後処理を実施する。この工程は、信号のフィルタリングを伴ってもよい。いくつかの例では、データの後処理は、例えばガウスフィルタ又は形態学的フィルタを使用したフィルタリングを含む。いくつかの例では、フィルタリングは、データを平滑化する及び/又は外れ値の「ブリップ」を除去するために使用され得る。いくつかの例では、後処理は、様々なプルーニングルーチン、ルール品質処理、ルールフィルタリング、ルールの組み合わせ、モデルの組み合わせ、又は知識統合も含み得る。
【0135】
いくつかの例では、吸入器呼吸検知モジュールから吸入器手法フィードバックアプリによって受け取られる信号は、他のデータ、例えば、呼吸持続時間、呼吸のタイムスタンプデータ、及び/又は振とうのデータを更に含む。
【0136】
工程906において、アプリは、呼吸の信頼度及び/又は予め決定された最適な使用範囲に対する呼吸の推定流量の少なくとも一方に基づいて、呼吸手法フィードバックを提供するように構成されている。
【0137】
いくつかの例では、アプリは、呼吸の信頼度を使用して呼吸持続時間を計算するように構成されている。例えば、アプリは、呼吸の開始及び終了の信頼度を使用して呼吸持続時間を計算するように構成されている。
【0138】
いくつかの例では、アプリは、呼吸が所定の時間、例えば2秒よりも長いかどうかを検知するように構成されていてもよい。いくつかの例では、アプリは、噴射後に呼吸が行われたかどうかを検知するように構成されてもよい。いくつかの例では、アプリは、呼吸流量が所定の流量、例えば100l/min未満に維持されているかどうかを検知するように構成されてもよい。いくつかの例では、アプリは、呼吸が作動に関連していないかどうかを検知することができてもよい。いくつかの例では、アプリは、呼吸止めが作動に関連していないかどうかを検知することができてもよい。
【0139】
いくつかの例では、吸入器手法フィードバックアプリは、集約されたデータ及び/又は長期使用パターンに基づいて、手法フィードバックを提供するように構成されてもよい。これは、吸入器誤用の潜在的な再発モード、例えば、送達/呼吸の誤ったタイミング、吸入していないこと、最適でない吸入フロープロファイル(すなわち、速すぎる又は遅すぎる)、及び/又は吸入後に呼吸止めがないことに使用者が対処するのに役立つ可能性がある。
【0140】
図9Bに示すように、いくつかの例では、吸入器手法フィードバックアプリは、更に、工程908において、電子吸入器カウンタからデータを受け取るように構成されてもよく、信号はデータを含む。いくつかの例では、データは、用量カウント及び用量カウントに関するタイムスタンプデータ並びに/又は噴射点及び噴射点に関するタイムスタンプデータの少なくとも一方を含んでもよい。いくつかの例では、システムは、吸入器の噴射点、例えばタイムスタンプデータに関する記録されたデータを使用して、呼吸の開始及び/又は終了に対する吸入のタイミングを決定してもよい。これは、送達/呼吸のタイミング、例えば、呼吸のタイミングが吸入器作動のタイミングに対して予め決定された時間範囲外であったかどうか、例えば、呼吸が吸入器作動に対して早すぎた又は遅すぎたかどうかに関するフィードバックを使用者に提供するために使用されてもよい。
【0141】
いくつかの例では、吸入器手法フィードバックアプリは、更に、特定の期間内、例えば1日に用量が何回投与されたかの表示を使用者に提供するように構成されてもよい。いくつかの例では、吸入器手法フィードバックアプリは、更に、少なくとも1つの用量が何時に投与されたかに関する表示を使用者に提供するように構成されてもよい。これは、使用者の治療及び/又は状態の有効管理に重要な、使用者による自身の用量履歴の追跡に役立つ可能性がある。
【0142】
いくつかの例では、吸入器手法フィードバックアプリは、更に、呼吸検知モジュールからデバイスの振とうのデータ及び/又は向きのデータを受け取るように構成されてもよい。いくつかの例では、システムは、吸入器の噴射点又は用量カウントに関する記録されたデータ、例えばタイムスタンプを使用して、振とう手法及び/又は振とうに対する吸入のタイミングを決定してもよい。これは、吸入前の振とう手法に関するフィードバックを使用者に提供するために使用されてもよい。
【0143】
いくつかの例では、システムは、各作動イベントの後にデータを受け取ってもよい。いくつかの例では、システムは、各作動イベントに関するデータをバッチダウンロード中に受け取ってもよい。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
【国際調査報告】