(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】位相変換装置およびこれを含む通信装置
(51)【国際特許分類】
H01P 1/18 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
H01P1/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500368
(86)(22)【出願日】2022-07-07
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 KR2022009857
(87)【国際公開番号】W WO2023282665
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】10-2021-0089916
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0083480
(32)【優先日】2022-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508112782
【氏名又は名称】ケーエムダブリュ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スン ホヮン ソ
(72)【発明者】
【氏名】オ ソン チェ
(72)【発明者】
【氏名】ソン マン カン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン ソク ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン ウォン セオ
(72)【発明者】
【氏名】チャ クン カン
(57)【要約】
【課題】空間活用性を極大化させることができる位相変換装置を提供する。
【解決手段】位相変換装置は、ベースパネルと、前記ベースパネル上の一側または他側に積層固定され、上面に複数の回路パターンが印刷形成された固定基板と、前記固定基板の複数の回路パターンにそれぞれ接点となる移動ストリップ端子を含む複数の移動基板が備えられ、前記ベースパネル上で水平方向に所定距離前記複数の移動基板を往復ムービングさせて、前記移動基板の前記回路パターンに対する接点位置を変更させる位相変換スイッチング部とを含み、前記位相変換スイッチング部は、前記複数の移動基板を前記回路パターン側に常時弾性支持しながらムービングさせる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースパネルと、
前記ベースパネル上の一側または他側に積層固定され、上面に複数の回路パターンが印刷形成された固定基板と、
前記固定基板の複数の回路パターンにそれぞれ接点となる移動ストリップ端子を含む複数の移動基板が備えられ、前記ベースパネル上で水平方向に所定距離前記複数の移動基板を往復ムービングさせて、前記移動基板の前記回路パターンに対する接点位置を変更させる位相変換スイッチング部と、を含み、
前記位相変換スイッチング部は、前記複数の移動基板を前記回路パターン側に常時弾性支持しながらムービングさせる、位相変換装置。
【請求項2】
前記複数の回路パターンは、前記移動基板の接点位置の変更による伝送線路の長さが変化する形態で前記固定基板に印刷形成された、請求項1に記載の位相変換装置。
【請求項3】
前記複数の回路パターンは、1つの入力端から2個の出力端に分岐されるように形成され、
前記移動基板の移動ストリップ端子は、前記分岐された2個の出力端への伝送線路の長さを変化させる、請求項2に記載の位相変換装置。
【請求項4】
前記位相変換スイッチング部は、
端部に前記複数の移動基板がそれぞれ載設される複数の移動基板設置部と、
前記複数の移動基板設置部をモジュール単位で連結するモジュールロッドと、
前記モジュールロッドから前記往復ムービング方向に一直線延長される移動ロッドと、
前記移動ロッドを前記往復ムービング方向にムービングさせるムービング駆動部と、を含む、請求項1に記載の位相変換装置。
【請求項5】
前記固定基板は、前記ベースパネルの中間部位に位置した前記ムービング駆動部の前記往復ムービング方向の両側に一側固定基板および他側固定基板としてそれぞれ分散配置され、
前記複数の移動基板設置部および前記モジュールロッドは、それぞれ前記一側固定基板および他側固定基板側に隣接して備えられ、
前記移動ロッドは、前記ムービング駆動部から駆動力を受けて前記複数の移動基板設置部を同時に同じ方向にムービングさせる、請求項4に記載の位相変換装置。
【請求項6】
前記複数の移動基板設置部と前記移動基板との間には、前記移動基板を前記回路パターン側に弾性支持する弾性部材が介在した、請求項4に記載の位相変換装置。
【請求項7】
前記弾性部材は、板スプリングを含む、請求項6に記載の位相変換装置。
【請求項8】
前記ムービング駆動部は、
電気的に駆動される駆動モータと、
前記駆動モータから駆動力を受けて減速させる減速ギヤセットと、
前記移動ロッドに備えられかつ一側にラックギヤ歯が形成され、前記減速ギヤセットの1つのギヤと前記ラックギヤ歯とが噛合するように備えられたラックギヤ部と、を含む、請求項4に記載の位相変換装置。
【請求項9】
前記駆動モータは、一側または他側方向への回転制御が可能なステップモータで備えられた、請求項8に記載の位相変換装置。
【請求項10】
前記減速ギヤセットは、多様なギヤ比の組合せで相互噛合するように備えられた複数の平行ギヤ組合せ体としてギヤボックスの内部に備えられた、請求項8に記載の位相変換装置。
【請求項11】
前記減速ギヤセットは、前記駆動モータの回転軸に結合されたウォームギヤと噛合可能に備えられたウォームホイールギヤ歯を含むウォームホイールギヤを含む、請求項10に記載の位相変換装置。
【請求項12】
前記ベースパネルには、前記移動ロッドの離脱を防止し、前記往復ムービングを案内する少なくとも1つのガイドブラケットが設けられた、請求項4に記載の位相変換装置。
【請求項13】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の位相変換装置を含む通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相変換装置およびこれを含む通信装置(PHASE SHIFTER AND COMMUNICATION DEVICE INCLUDING THE SAME)に関し、固定基板の一面からの高さを最小化してアンテナ装置の空間活用性を改善し、全体的に軽量化された位相変換装置およびこれを含む通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナ装置は、水平方向にビームを形成することがカバレッジの面で最も効率的であるが、干渉や損失などの理由から、垂直方向にビーム角度を調整しなければならない時がたまにある。この場合、機械的ビームチルト方式または電気的ビームチルト方式により、アンテナ装置の垂直方向へのビーム角度を調整する。
【0003】
機械的ビームチルト方式は、アンテナ装置を直接下向き傾斜して設置することにより、ビーム角度を調整する方式である。単純な方式であるが、この方式は、作業者の現場訪問、作業中の電源遮断などの様々な理由によりやや煩わしいというデメリットがある。
【0004】
電気的ビームチルト方式は、マルチライン移相器(MLPS:Multi Line Phase Shifter)に基づく方式である。具体的には、電気的ビームチルト方式は、垂直に配列された複数の放射素子に互いに異なる位相を有する信号を給電してビーム角度を調整する。
【0005】
電気的ビームチルト方式を実現するために、アンテナ装置には位相変換装置が備えられる。位相変換装置は、入力信号を適切に遅延させて入力信号と出力信号との間に位相差が発生するようにする。この時、入力信号の遅延は、伝送線路の長さを変化させたり、伝送線路内の信号伝達速度を変化させることで実現できる。
【0006】
従来の位相変換装置である韓国特許公開第2010-0122005号(以下、「特許文献1」という)は、1つの入力ポートと複数の出力ポートとを備えた固定基板と、可変ストリップを備えた移動基板とを開示している。ただし、特許文献1は、位相変換装置の一方の面にのみ固定基板と移動基板とが備えられていて、空間効率性が低下するというデメリットがある。
【0007】
一方、最近は、移動通信システムの基地局や中継器として、多様な帯域をサービスできるマルチバンド周波数アンテナ装置が広く用いられている。マルチバンドアンテナ装置は、いくつかの帯域周波数の位相を個別的に調整する必要がある。したがって、アンテナ装置に備えられる位相変換装置の数量はより多くなり、そこで、位相変換装置は、より少量化および軽量化される必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の技術的課題を解決するためになされたものであって、小型化および軽量化された位相変換装置およびこれを含む通信装置を提供することを目的とする。
【0009】
これとともに、本発明は、移動ロッドを精密に往復水平ムービングさせるように減速ギヤセットが備えられるので、精密な位相差調整が可能であり、ベースパネル上に位相変換スイッチング部をスリムに配置可能なため、製品の空間活用性を極大化させることができる位相変換装置およびこれを含む通信装置を提供することを他の目的とする。
【0010】
本発明の技術的課題は以上に言及した課題に制限されず、言及されていない他の技術的課題は以下の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による位相変換装置の一実施例は、ベースパネルと、前記ベースパネル上の一側または他側に積層固定され、上面に複数の回路パターンが印刷形成された固定基板と、前記固定基板の複数の回路パターンにそれぞれ接点となる移動ストリップ端子を含む複数の移動基板が備えられ、前記ベースパネル上で水平方向に所定距離前記複数の移動基板を往復ムービングさせて、前記移動基板の前記回路パターンに対する接点位置を変更させる位相変換スイッチング部とを含み、前記位相変換スイッチング部は、前記複数の移動基板を前記回路パターン側に常時弾性支持しながらムービングさせる。
【0012】
ここで、前記複数の回路パターンは、前記移動基板の接点位置の変更による伝送線路の長さが変化する形態で前記固定基板に印刷形成される。
【0013】
また、前記複数の回路パターンは、1つの入力端から2個の出力端に分岐されるように形成され、前記移動基板の移動ストリップ端子は、前記分岐された2個の出力端への伝送線路の長さを変化させることができる。
【0014】
また、前記位相変換スイッチング部は、端部に前記複数の移動基板がそれぞれ載設される複数の移動基板設置部と、前記複数の移動基板設置部をモジュール単位で連結するモジュールロッドと、前記モジュールロッドから前記往復ムービング方向に一直線延長される移動ロッドと、前記移動ロッドを前記往復ムービング方向にムービングさせるムービング駆動部とを含むことができる。
【0015】
また、前記固定基板は、前記ベースパネルの中間部位に位置した前記ムービング駆動部の前記往復ムービング方向の両側に一側固定基板および他側固定基板としてそれぞれ分散配置され、前記複数の移動基板設置部および前記モジュールロッドは、それぞれ前記一側固定基板および他側固定基板側に隣接して備えられ、前記移動ロッドは、前記ムービング駆動部から同時に駆動力を受けて前記複数の移動基板設置部を同時に同じ方向にムービングさせることができる。
【0016】
また、前記複数の移動基板設置部と前記移動基板との間には、前記移動基板を前記回路パターン側に弾性支持する弾性部材が介在できる。
【0017】
また、前記弾性部材は、板スプリングを含むことができる。
【0018】
また、前記ムービング駆動部は、電気的に駆動される駆動モータと、前記駆動モータから駆動力を受けて減速させる減速ギヤセットと、前記移動ロッドに備えられかつ一側にラックギヤ歯が形成され、前記減速ギヤセットの1つのギヤと前記ラックギヤ歯とが噛合するように備えられたラックギヤ部とを含むことができる。
【0019】
また、前記駆動モータは、一側または他側方向への回転制御が可能なステップモータで備えられる。
【0020】
また、前記減速ギヤセットは、多様なギヤ比の組合せで相互噛合するように備えられた複数の平行ギヤ組合せ体としてギヤボックスの内部に備えられる。
【0021】
また、前記複数の平行ギヤ組合せ体のうちの1つは、前記駆動モータの回転軸に結合されたウォームギヤと噛合可能に備えられたウォームホイールギヤ歯を含むウォームホイールギヤで備えられる。
【0022】
また、前記ベースパネルには、前記移動ロッドの離脱を防止し、前記往復ムービングを案内する少なくとも1つのガイドブラケットが設けられる。
【0023】
本発明による通信装置の一実施例は、上述した位相変換装置を含むことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明による位相変換装置およびこれを含む通信装置によれば、次のような多様な効果を達成することができる。
【0025】
第一、移動ロッドを精密に往復水平ムービングさせるように減速ギヤセットが備えられるので、精密な位相差調整が可能な効果を創出することができる。
【0026】
第二、ベースパネル上に位相変換スイッチング部をスリムに配置可能なため、製品の空間活用性を極大化させることができる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明による位相変換装置の一実施例を示す斜視図である。
【
図5A】
図3のA-A線に沿った断面図とその部分拡大図である。
【
図5B】
図3のA-A線に沿った切開図とその部分拡大図である。
【
図6】
図1の構成のうち位相変換スイッチング部を示す斜視図である。
【
図7A】
図1の平面図であって、位相変換前後の回路パターンと移動基板との間の重畳長さの変化を可視的に示す平面図である。
【
図7B】
図1の平面図であって、位相変換前後の回路パターンと移動基板との間の重畳長さの変化を可視的に示す平面図である。
【
図8A】
図1の平面図であって、最大および最小に相当する位相変換前後の様子を示す平面図である。
【
図8B】
図1の平面図であって、最大および最小に相当する位相変換前後の様子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施例による位相変換装置を、添付した図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
各図面の構成要素に参照符号を付すにあたり、同一の構成要素については、たとえ他の図面上に表示されてもできるだけ同一の符号を有するようにしていることに留意しなければならない。また、本発明の実施例を説明するにあたり、かかる公知の構成または機能に関する具体的な説明が本発明の実施例に対する理解を妨げると判断された場合、その詳細な説明は省略する。
【0030】
本発明の実施例の構成要素を説明するにあたり、第1、第2、A、B、(a)、(b)などの用語を使用することができる。このような用語はその構成要素の本質や順番または手順などが限定されない。また、他に定義されない限り、技術的または科学的な用語を含む、ここで使用されるすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書に定義されているような用語は、関連技術の文脈上有する意味と一致する意味を有すると解釈されなければならず、本出願において明らかに定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味で解釈されない。
【0031】
【0032】
本発明の一実施例による位相変換装置1は、
図1~
図4に示すように、ベースパネル10と、ベースパネル10上の一側または他側に積層固定され、上面に複数の回路パターン30が印刷形成された固定基板20A、20Bと、固定基板20A、20Bの複数の回路パターン30にそれぞれ接点となる複数の移動基板40が備えられ、ベースパネル10上で水平方向に所定距離前記複数の移動基板40を往復ムービングさせて、移動基板40の回路パターン30に対する接点位置を変更させる位相変換スイッチング部100とを含む。
【0033】
図1~
図4を参照すれば、固定基板20A、20Bは、ベースパネル10の一面(図面上、上面)に固定される。ここで、固定基板20A、20Bは、ベースパネル10が略直方体形状で備えられたと仮定する場合、一側短辺側と他側短辺側にそれぞれ一対が離隔して配置される。
【0034】
固定基板20A、20Bは、通常の印刷回路基板で備えられ、一面(図面上、上面)には、エッチング、食刻などの方法で上述した複数の回路パターン30が印刷形成される。複数の回路パターン30はそれぞれ、複数の移動基板40の下面に形成された後述の移動ストリップ端子44の個数に対応する個数で固定基板20A、20Bに離隔して形成され、移動ストリップ端子44と電気的にカップリング(coupling)される材質からなる。
【0035】
ここで、複数の回路パターン30は、1つの固定基板20A、20B上に8対備えられ、上述した複数の移動基板40も8個が1つの固定基板20A、20B上でムービングされるように備えられる。そのため、1つのベースパネル10上に2個の固定基板20A、20Bが備えられた場合、複数の回路パターン30は計16個印刷形成され、複数の移動基板40も計16個備えられる。
【0036】
複数の回路パターン30は、少なくとも1つの入力ポート30Aおよび複数の出力ポート30B-1、30B-2に連結される。また、複数の回路パターン30は、少なくとも1つの入力ポート30Aを共有するか、または、複数の回路パターン30にそれぞれの入力ポート30Aが備えられる。
【0037】
固定基板20A、20Bの各回路パターン30は、それに対応する移動基板40の移動ストリップ端子44とカップリングされることにより、複数の伝送線路を形成することができる。
【0038】
入力ポート30Aを介して受信された信号は、各回路パターン30で実現された各伝送線路を介して各出力ポート30B-1、30B-2に伝達される。各出力ポート30B-1、30B-2に伝達された信号は、RFケーブルあるいはRFコネクタなどを介してそれぞれの通信装置の部品の1つであるアンテナ素子(図示せず)に送信される。
【0039】
移動基板40が固定基板20A、20Bの一面(上面)上で移動する場合、移動基板40の下面に備えられた移動ストリップ端子44も複数の回路パターン30に対して接地された状態で移動する。このように、複数の回路パターン30に対する移動基板40の移動ストリップ端子44の接点位置が変更されることで、これにより、各伝送線路の物理的な長さは縮小または拡張可能であり、これにより、各伝送線路を介して伝達される信号間の位相差は調整可能である。
【0040】
ベースパネル10は、高周波環境で低い損失率を有するテフロン(登録商標)(Teflon)材質からなる。しかし、必ずしもベースパネル10の材質がこれに限定されるものではなく、ベースパネル10は、その他の材質からなることも可能であろう。
【0041】
図5Aおよび
図5Bは、
図3のA-A線に沿った断面図(a)および切開図(b)とそれぞれの部分拡大図であり、
図6は、
図1の構成のうち位相変換スイッチング部を示す斜視図である。
【0042】
図1~
図4を参照すれば、位相変換スイッチング部100は、端部に複数の移動基板40がそれぞれ載設される複数の移動基板設置部110と、複数の移動基板設置部110をモジュール単位で連結するモジュールロッド120と、モジュールロッド120から往復ムービング方向に一直線延長される移動ロッド130と、移動ロッド130を往復ムービング方向にムービングさせるムービング駆動部150とを含むことができる。
【0043】
より詳しくは、
図2Aおよび
図2Bに示すように、複数の移動基板設置部110は、複数の回路パターン30それぞれに対応する位置に複数の移動基板40が設けられるように配置され、複数の移動基板設置部110それぞれの端部下面には、それぞれの移動基板40が一対の固定突起41を介在して嵌合される。
【0044】
この時、1対の固定突起41の上端部は、移動基板設置部110に貫通して形成された固定ホール111の直径よりも大きい突起部が設けられることにより、固定ホール111に締まり嵌め動作で移動基板40を移動基板設置部110に固定させかつ、固定突起41の長さが固定ホール111より大きく形成されることにより、上下方向に固定突起41の突起部が制限する限度で移動基板40が流動可能に設けられる。
【0045】
固定突起41の突起部は、固定ホール111の内部に嵌められる時、締まり嵌め力によって形状変形されるように、先端部に所定深さのスリット(図面符号不表記)が形成され、固定ホール111に対する嵌合時、固定突起41の突起部が形状変形されながら直径が縮小して円滑に固定ホール111に嵌められる。
【0046】
ここで、移動基板40の上面には、移動基板設置部110の下面に向かって膨らんで突出した板スプリングで備えられた弾性部材43が設けられ、弾性部材43の弾性支持力によって移動基板40は複数の回路パターン30が形成された固定基板20A、20B側に常時弾性支持されることにより、移動基板40の移動ストリップ端子44が持続的に固定基板20A、20Bの回路パターン30に密着できる。
【0047】
一方、
図2Aおよび
図2Bに示すように、複数の移動基板設置部110は、少なくとも2以上のモジュールロッド120によってモジュール毎に連結される。例えば、複数の移動基板設置部110は、1つの固定基板20A、20B側に計8個備えられた場合、それぞれ4個ずつの移動基板40がモジュール毎に設けられる2個で備えられ、1つのモジュールロッド120には2個の移動基板設置部110が同時に連結される。
【0048】
モジュールロッド120は、それぞれ2個の移動基板設置部110それぞれの3地点に分岐されて連結されるモジュール連結部121と、各モジュール連結部121を統合連結する統合連結部123とを含むことができる。統合連結部123は、その中心部に移動ロッド130が連結される。
【0049】
このような、移動基板40、移動基板設置部110およびモジュールロッド120は、一側固定基板20A、20B側と他側固定基板20A、20B側にそれぞれ1つのモジュール毎に設けられ、移動ロッド130の一端と他端が、それぞれモジュールロッド120の構成のうち統合連結部123の中心に連結される。そのため、移動ロッド130が上述した往復ムービング方向に移動する場合、一側固定基板20A、20B側と他側固定基板20A、20B側の移動基板40は、いずれも同じ方向にムービングされながら、上述した位相差を調整することができるのである。
【0050】
一方、モジュールロッド120には、少なくとも1つ以上のガイドスロット115が上下方向に切開形成される。ガイドスロット115は、上述した回路パターン30で移動基板40が接点位置を変更しかつ、伝送線路が最も短い位置から伝送線路が最も長い位置への変更を制限する長さに形成される。本発明の一実施例では、2個のモジュールロッド120にそれぞれ2個のガイドスロット115が離隔して備えられることに限定して説明する。しかし、必ずしもガイドスロット115が1つのモジュールロッド120に2個のみが形成される必要はなく、それ以上の個数で形成されることも可能である。
【0051】
少なくとも1つのガイドスロット115それぞれには、ベースパネル10に固定されるガイド棒117がそれぞれ設けられる。ガイド棒117は、ガイドスロット115を上下に貫通してベースパネル10にねじ固定されかつ、上端部はガイドスロット115の縁部位を支持できる程度の直径を有する皿頭形状で備えられる。
【0052】
したがって、ガイド棒117とガイドスロット115は、移動ロッド130の往復水平ムービングによってモジュールロッド120および移動基板設置部110が往復ムービングされることをガイドすると同時に、モジュールロッド120および移動基板設置部110がベースパネル10から離脱したり過度に浮き上がることを防止することができる。
【0053】
この場合、移動基板設置部110は、移動基板40との間に設けられた弾性部材43によって上側に弾性支持されて固定基板20A、20B側から不規則に流動する恐れがあるが、上述のように、皿頭形状のガイド棒117がガイドスロット115の縁部位に支持されることにより、移動基板設置部110、モジュールロッド120および移動ロッド130が安定的に水平を維持可能になる。
【0054】
ここで、ベースパネル10には、移動ロッド130の離脱を防止し、往復ムービングを案内する少なくとも1つのガイドブラケット140A、140Bが設けられる。ガイドブラケット140A、140Bは、移動ロッド130の両端部が貫通して備えられかつ、移動ロッド130の各端部に近接する部位を貫通支持するように1対で備えられる。
【0055】
より詳しくは、ガイドブラケット140A、140Bは、一側固定基板20A側に隣接する移動ロッド130の一端部側が貫設されるように備えられた一側ガイドブラケット140Aと、他側固定基板20B側に隣接する移動ロッド130の他端部側が貫設されるように備えられた他側ガイドブラケット140Bとを含むことができる。
【0056】
一側ガイドブラケット140Aと他側ガイドブラケット140Bは、ベースパネル10に対してねじ結合され、移動ロッド130が貫通して水平方向に移動ロッド130が往復ムービングすることを案内する役割をする。
【0057】
これとともに、一側ガイドブラケット140Aと他側ガイドブラケット140Bは、移動基板40との間に介在した弾性部材43によって移動基板設置部110を含むモジュールロッド120のすべてが一側固定基板20Aおよび他側固定基板20Bから過度に離隔することを防止できる機能を行うことができる。
【0058】
位相変換スイッチング部100は、
図6に示すように、移動ロッド130を前記往復ムービング方向に水平ムービングさせるムービング駆動部150をさらに含むことができる。
【0059】
ムービング駆動部150は、
図6に示すように、ギヤボックス151の内部に備えられ、電気的に駆動される駆動モータ153と、駆動モータ153から駆動力を受けて減速させる減速ギヤセット155~159と、移動ロッド130に備えられかつ一側にラックギヤ歯161が形成され、減速ギヤセット155~159のうちの1つのギヤ(ピニオンギヤ159)とラックギヤ歯161とが噛合するように備えられたラックギヤ部160とを含むことができる。
【0060】
駆動モータ153の回転軸153cは、移動ロッド130と平行にギヤボックス151の内部に配置され、駆動モータ153の回転軸153cにはウォームギヤ歯が形成されたウォームギヤ154が結合される。
【0061】
一方、減速ギヤセット155~159は、駆動モータ153の回転軸153cに結合されたウォームギヤ154のウォムギヤ歯と噛合するようにウォームホイールギヤ歯が備えられたウォームホイールギヤ155と、前記移動ロッド130に備えられたラックギヤ部160と噛合するピニオンギヤ159とを含むことができ、ウォームホイールギヤ155とピニオンギヤ159との間には、少なくとも3個の2段平行ギヤ組合せ体156~158が多様なギヤ比で噛合されて、駆動モータ153の駆動力を減速させて伝達するようにギヤ群セットで構成される。
【0062】
このように、減速ギヤセット155~159は、前記ウォームホイールギヤ155およびピニオンギヤ159を含む複数のギヤ比の組合せによって駆動モータ153の駆動力を適正な減速比で減速させることができるので、精密な移動ロッド130のムービング距離を制御することができ、移動ロッド130のムービング距離の制御を通じてより精密な位相差調整が可能になる。
【0063】
ここで、駆動モータ153は、一側または他側方向への回転制御が可能なステップモータで備えられることが好ましい。ステップモータで備えられた駆動モータ153の回転制御により位相差を調整する原理は、本発明の一実施例による位相変換装置1を含む通信装置を説明しながらより詳細に説明する。
【0064】
図7Aおよび
図7Bは、
図1の平面図であって、位相変換前後の回路パターンと移動基板との間の重畳長さの変化を可視的に示す平面図であり、
図8Aおよび
図8Bは、
図1の平面図であって、最大および最小に相当する位相変換前後の様子を示す平面図である。
【0065】
本発明の一実施例による位相変換装置1は、図示しないが、MIMO(Multiple Input Multiple Output)技術が反映されたアンテナ装置の構成のうち複数のアンテナサブアレイによる向上した利得(+3dB)のビームフォーミングの実現が可能に位相値を遷移させることが可能な通信装置に含まれる。
【0066】
MIMO技術は、複数のアンテナサブアレイを用いてデータ伝送容量を画期的に増やす技術であって、送信機ではそれぞれの送信アンテナを介して互いに異なるデータを伝送し、受信機では適切な信号処理により受信データを区分する空間多重化(Spatial multiplexing)手法である。したがって、送受信アンテナの個数を同時に増加させることにより、チャネル容量が増加してより多くのデータを伝送可能にする。例えば、アンテナ数を10個に増加させると、単一アンテナシステムに比べて同じ周波数帯域を用いて約10倍のチャネル容量を確保する。
【0067】
特に、アンテナ装置は、送信機および受信機機能を行うTRxモジュール(図示せず)を上下垂直方向および左右水平方向にV(Vertical)-H(Horizontal)配列させ、各TRxモジュールに対して電気的に連結された複数のアンテナ素子が配列される。ここで、各TRxモジュールあたりに構築されるチャネル容量は「RFチェーン」と再定義可能であり、複数のアンテナ素子がアンテナビームフォーミングのために配列されたアンテナ素子のグループ単位として「アンテナサブアレイ」と再定義可能である。
【0068】
V-方向にRFチェーンが複数個構築され、この時、アンテナサブアレイは、各RFチェーン毎に3個以上がV-方向に配列される。
【0069】
ここで、各RFチェーンは、1つの入力端から2個の出力端に分岐されるように伝送ラインを介して構築され、各出力端にはアンテナサブアレイがそれぞれ配列される。ただし、出力される位相差が線形的な位相値を実現するように別の追加アンテナサブアレイを構築することができるが、これに限定されるものではないことに注意しなければならない。
【0070】
特に、本発明の一実施例による位相変換装置1において、前記伝送ラインは、一側固定基板20Aおよび他側固定基板20B上に印刷された回路パターン30形態で実現され、入力端は給電信号の入力ポート30Aとして実現される一方、2個の出力端は給電信号の出力ポート30B-1、30B-2として実現され、移動基板40の移動ストリップ端子44によって伝送ラインの物理的な長さが変化しながら給電される構造を有することができる。
【0071】
このように、本発明の一実施例による位相変換装置1によって遷移された位相値で放射するアンテナサブアレイなどの放射ビームは、従来の各RFチェーンの入力端から2個の出力端に分岐されず、各RFチェーン毎にアンテナサブアレイを介してビームを放射する場合に比べて、+3dBの利得(gain)が向上するビームフォーミングの実現が可能である。
【0072】
以下、本発明の一実施例による位相変換装置1を用いた物理的な伝送線路の長さを変化させる過程を、添付した図面(特に、
図7A~
図8B)を参照して簡略に説明する。
【0073】
例えば、
図7Aに示すように、駆動モータ153が一側に回転する場合、移動ロッド130は、図面上右側に移動しながら複数の移動基板40が同時に右側に移動しながら接点位置が回路パターン30上で右側に変化して伝送線路の長さが長くなるように変更可能であり、その接点位置による位相差の調整が完了する。
【0074】
この時、移動基板40の移動ストリップ端子44と回路パターン30との重畳長さは、
図7Aの図面符号「O1、Overlap1」に相当し、O1の2倍に相当する長さを除いただけの移動ストリップ端子44の長さが、既存の伝送線路に寄与する増加分になる。
【0075】
また、
図7Bに示すように、駆動モータ153が他側に回転する場合、移動ロッド130は、図面上左側に移動しながら複数の移動基板40が同時に左側に移動しながら接点位置が回路パターン30上で左側に変化して伝送線路の長さが長くなるように変更可能であり、その接点位置による位相差の調整が完了する。
【0076】
この時、移動基板40の移動ストリップ端子44と回路パターン30との重畳長さは、
図7Bの「O2、Overlap2」に相当し、O2の2倍に相当する長さを除いただけの移動ストリップ端子44の長さが、既存の伝送線路に寄与する増加分になる。
【0077】
参照として、移動ロッド130は、上述したガイドスロット115内に備えられたガイド棒117によって往復ムービング距離が制限されるが、
図8Aおよび
図8Bに示すように、ガイド棒117がガイドスロット115内の中心(
図8Aおよび
図8Bの図面符号「T」参照)に位置したと仮定する場合、一側および他側にそれぞれ0.8mm移動する時、回路パターン30上で最も長い伝送線路および最も短い伝送線路を形成できるように設計可能である。
【0078】
本発明の一実施例による通信装置は、上述した位相変換装置1のすべての実施例を含んで構成される。例えば、先に説明したように、本発明の一実施例による位相変換装置1は、複数のアンテナサブアレイを介したビームフォーミングを実現するにあたり、物理的な伝送線路の長さを変化させることによってより効率的なビームフォーミングの実現を可能にする通信装置に含まれている一つの構成として機能することができる。
【0079】
このように、本発明の一実施例による位相変換装置1およびこれを含む通信装置は、ベースパネル10上で上部に多くの空間を占めることなく非常にスリムに配置され、往復水平ムービングされることにより、精密に位相差を調整することができ、製品の空間活用性を極大化させることができるという利点を提供する。
【0080】
以上、本発明の一実施例による移相変換装置およびこれを含む通信装置を、添付した図面を参照して詳細に説明した。しかし、本発明の実施例が必ずしも上述した一実施例によって限定されるものではなく、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者による多様な変形および均等な範囲での実施が可能であることは言うまでもない。そのため、本発明の真の権利範囲は後述する特許請求の範囲によって定められる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、小型化および軽量化が可能であり、移動ロッドを精密に往復水平ムービングさせるように減速ギヤセットが備えられるので、精密な位相差調整が可能であり、ベースパネル上に位相変換スイッチング部をスリムに配置可能なため、製品の空間活用性を極大化させることができる位相変換装置およびこれを含む通信装置を提供する。
【符号の説明】
【0082】
1:位相変換装置 10:ベースパネル
20A、20B:固定基板 30:回路パターン
40:移動基板 41:固定突起
43:弾性部材 100:位相変換スイッチング部
110:移動基板設置部 111:固定ホール
115:ガイドスロット 117:ガイド棒
120:モジュールロッド 121:モジュール連結部
123:統合連結部 130:移動ロッド
140A、140B:ガイドブラケット 150:ムービング駆動部
151:ギヤボックス 152:ボックスカバー
153:駆動モータ 153c:回転軸
154:ウォームギヤ 155~159:減速ギヤセット
155:ウォームホイールギヤ 158:平行ギヤ組合せ体
159:ピニオンギヤ 160:ラックギヤ部
【国際調査報告】