(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】抗TNF抗体組成物を製造するための製造方法
(51)【国際特許分類】
C07K 16/24 20060101AFI20240709BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C07K16/24 ZNA
C12P21/02 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500536
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-02-28
(86)【国際出願番号】 IB2022056342
(87)【国際公開番号】W WO2023281463
(87)【国際公開日】2023-01-12
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【氏名又は名称】星川 亮
(72)【発明者】
【氏名】ドンロン,アン
(72)【発明者】
【氏名】ゴードン,ゲリー
(72)【発明者】
【氏名】ゴーチェ,チャールズ エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ヘイズ,ロナン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンストン,ロビン
(72)【発明者】
【氏名】スティーンボーデン,ウィレム
(72)【発明者】
【氏名】トゥーミー,デニス
【テーマコード(参考)】
4B064
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG26
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064CD01
4B064DA01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA53
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA21
(57)【要約】
本発明は、抗TNF抗体、例えば抗TNF抗体ゴリムマブを産生するための製造方法、及び当該抗体の特定の医薬組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗TNF抗体であって、(i)配列番号36の重鎖アミノ酸配列、及び(ii)配列番号37の軽鎖アミノ酸配列を含み、前記抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルが、≧82.0%~≦94.4%の総中性オリゴ糖種、≧5.6%~≦18.0%の総荷電オリゴ糖種、並びに≧25.6%~≦42.2%のG0F、≧31.2%~≦43.6%のG1F、及び≧5.6%~≦14.2%のG2Fの個々の中性オリゴ糖種を含み、前記抗TNF抗体が、前記抗TNF抗体の前記オリゴ糖プロファイルを制御する製造方法によって生成され、前記製造方法が、真核細胞を、≧10.0μg/リットル~≦35.0μg/リットルのMn
2+(マンガン)及び≧1.0μg/リットル~≦1.8μg/リットルのCu
2+(銅)からなる特定の微量金属濃度のマンガン及び銅を含有するように制御された化学的に規定された培地において培養することと、前記真核細胞において前記抗TNF抗体を発現させることとを含み、マンガン及び銅の前記濃度が、前記抗TNF抗体の前記オリゴ糖プロファイルを制御するのに有効である、抗TNF抗体。
【請求項2】
前記抗TNF抗体がバイオ後続品である、請求項1に記載の抗TNF抗体。
【請求項3】
(i)配列番号36の重鎖アミノ酸配列、及び(ii)配列番号37の軽鎖アミノ酸配列を含む抗TNF抗体を含む原薬(DS)又は製剤(DP)を製造するための製造方法であって、前記抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルが制御され、前記抗TNF抗体の前記オリゴ糖プロファイルが、≧82.0%~≦94.4%の総中性オリゴ糖種、≧5.6%~≦18.0%の総荷電オリゴ糖種、並びに≧25.6%~≦42.2%のG0F、≧31.2%~≦43.6%のG1F、及び≧5.6%~≦14.2%のG2Fの個々の中性オリゴ糖種を含み、前記抗TNF抗体が、真核細胞を、≧10.0μg/リットル~≦35.0μg/リットルのMn
2+(マンガン)及び≧1.0μg/リットル~≦1.8μg/リットルのCu
2+(銅)からなる特定の微量金属濃度のマンガン及び銅を含有するように制御された化学的に規定された培地中で培養することと、前記真核細胞において前記抗TNF抗体を発現させることとを含む製造方法によって製造され、マンガン及び銅の前記濃度が、前記抗TNF抗体の前記オリゴ糖プロファイルを制御するのに有効である、製造方法。
【請求項4】
前記化学的に規定された培地中のマンガン及び銅の前記濃度が、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)を使用して決定される、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記化学的に規定された培地中のマンガン及び銅の前記濃度が、前記化学的に規定された培地に、マンガン及び銅の1つ又は2つ以上の供給源を補充することによって制御され、マンガンの前記1つ又は2つ以上の供給源が、MnCl
2、MnSO
4、MnF
2及びMnI
2からなる群から選択され、銅の前記1つ又は2つ以上の供給源が、CuSO
4、CuCl
2及びCu(OAc)
2からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記オリゴ糖種が、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によって決定される、請求項3に記載の製造方法。
【請求項7】
前記真核細胞が、チャイニーズハムスター卵巣細胞(Chinese hamster vary cell)(CHO細胞)、ヒト網膜細胞(PER.C6細胞)、及びマウス骨髄腫細胞(NS0細胞及びSp2/0細胞)からなる群から選択される、請求項3に記載の製造方法。
【請求項8】
前記抗TNF抗体がバイオ後続品を含む、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
抗TNF抗体を含む組成物であって、(i)配列番号36の重鎖アミノ酸配列、及び(ii)配列番号37の軽鎖アミノ酸配列を含み、前記抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルが制御され、前記抗TNF抗体の前記オリゴ糖プロファイルが、≧82.0%~≦94.4%の総中性オリゴ糖種、≧5.6%~≦18.0%の総荷電オリゴ糖種、並びに≧25.6%~≦42.2%のG0F、≧31.2%~≦43.6%のG1F、及び≧5.6%~≦14.2%のG2Fの個々の中性オリゴ糖種を含み、前記抗TNF抗体が、真核細胞を、≧10.0μg/リットル~≦35.0μg/リットルのMn
2+(マンガン)及び≧1.0μg/リットル~≦1.8μg/リットルのCu
2+(銅)からなる特定の微量金属濃度のマンガン及び銅を含有するように制御された化学的に規定された培地において培養することと、前記真核細胞において前記抗TNF抗体を発現させることとを含む製造方法によって製造され、マンガン及び銅の前記濃度が、前記抗TNF抗体の前記オリゴ糖プロファイルを制御するのに有効である、組成物。
【請求項10】
前記化学的に規定された培地中のマンガン及び銅の前記濃度が、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)を使用して決定される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記化学的に規定された培地中のマンガン及び銅の前記濃度が、前記化学的に規定された培地にマンガン及び銅の1つ又は2つ以上の供給源を補充することによって制御され、マンガンの前記1つ又は2つ以上の供給源が、MnCl
2、MnSO
4、MnF
2及びMnI
2からなる群から選択され、銅の前記1つ又は2つ以上の供給源が、CuSO
4、CuCl
2及びCu(OAc)
2からなる群から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記オリゴ糖種が、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によって決定される、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
前記真核細胞が、チャイニーズハムスター卵巣細胞(Chinese hamster vary cell)(CHO細胞)、ヒト網膜細胞(PER.C6細胞)、及びマウス骨髄腫細胞(NS0細胞及びSp2/0細胞)からなる群から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
前記抗TNF抗体がバイオ後続品を含む、請求項9に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(電子的に提出された配列表の参照)
本出願は、ファイル名「JBI6004 SequenceListing.xml」及び2022年6月29日の作成日で、57kbのサイズを有するXML形式の配列表として電子的に提出された、配列表を含む。提出された配列表は、本明細書の一部であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、抗TNF抗体、例えば抗TNF抗体ゴリムマブを生成するための製造方法、及び当該抗体の特定の医薬組成物に関する。
【0003】
(発明の背景)
TNFαは、17kDのタンパク質サブユニットの可溶性ホモ三量体である。TNFの膜結合型の26kDの前駆体形態も存在する。
【0004】
単球又はマクロファージ以外の細胞もTNFαを産生する。例えば、ヒト非単球腫瘍細胞株はTNFα並びにCD4+及びCD8+末梢血Tリンパ球を産生し、いくつかの培養されたT及びB細胞株もTNFαを産生する。
【0005】
TNFαは、軟骨及び骨の分解、接着分子の誘導、血管内皮細胞で凝血促進活性を誘導する、好中球及びリンパ球の接着を増大させる、並びにマクロファージ、好中球及び血管内皮細胞からの血小板活性化因子の放出を刺激するなど、組織損傷をもたらす炎症誘発作用を引き起こす。
【0006】
TNFαは、感染、免疫障害、腫瘍性病態、自己免疫病態及び移植片対宿主病態に関連している。TNFαとがん及び感染性病態との関連は、宿主の異化状態に関連していることが多い。がん患者は、通常食欲不振に関連する体重減少に悩まされる。
【0007】
がん及びその他の疾患に関連する大幅な衰弱は、「悪液質」として知られる。悪液質は、悪性腫瘍の成長に応答する、進行性の体重減少、食欲不振、及び除脂肪体重の持続的衰えを含む。悪液質状態は、多くのがん罹患率及び死亡率の原因となる。TNFαが、がん、感染性病態及びその他の異化状態における悪液質に関与するという証拠がある。
【0008】
TNFαは、発熱、倦怠感、食欲不振、及び悪液質を含む、グラム陰性敗血症及び内毒素ショックにおいて中心的な役割を果たすと考えられている。内毒素は、単球/マクロファージ生成並びにTNFα及びその他のサイトカインの分泌を強く活性化する。TNFα及びその他の単球由来サイトカインは、内毒素に対する代謝及び神経ホルモン応答を媒介する。ヒトボランティアへの内毒素投与は、発熱、頻脈、増加した代謝速度、及びストレスホルモン放出など、インフルエンザのような症状を伴う急性疾病をもたらす。TNFαの循環が、グラム陰性敗血症に罹患した患者において増加する。
【0009】
したがって、TNFαは、炎症性疾患、自己免疫疾患、ウイルス、細菌及び寄生虫感染、悪性腫瘍、並びに/又は神経変性疾患に関連付けられており、関節リウマチ及びクローン病などの疾患における特定の生物学的治療に有用な標的である。炎症の抑制、並びに関節リウマチ及びクローン病における再発後の良好な再治療による有益な作用が、TNFαに対するモノクローナル抗体を用いた非盲検試験で報告されている。炎症の抑制による関節リウマチにおける有益な結果も無作為化二重盲検プラセボ対照試験で報告されている。
【0010】
TNFに対する中和抗血清又はmAbは、ヒト以外の哺乳動物において、実験的内毒素血症及び菌血症における致死的攻撃後の有害な生理学的変化を抑止し、死亡を阻止することが示されている。この作用は、例えば、げっ歯類致死率アッセイ及び霊長類病理モデル系において示されている。
【0011】
hTNFの推定受容体結合座位が開示されており、TNFのアミノ酸11~13、37~42、49~57及び155~157からなるTNFαの受容体結合座位が開示されている。
【0012】
非ヒト哺乳動物、キメラ、ポリクローナル(例えば、抗血清)、及び/又はモノクローナル抗体(Mab)並びに断片(例えば、タンパク質分解消化又はその融合タンパク質生成物)は、ある特定の疾患を処置する試みのために一部の事例において調査されている有力な治療薬である。しかしながら、かかる抗体又は断片は、ヒトに投与された場合、免疫応答を誘発する場合がある。かかる免疫応答は、血液循環からの抗体又は断片の免疫複合媒介クリアランスをもたらし、反復投与を、治療に適さないものとし得、それにより、患者に対する治療的利益が低減し、抗体又は断片の再投与が制限される。例えば、非ヒト部分を含む抗体又は断片の反復投与は、血清病及び/又はアナフィラキシをもたらし得る。これら及びその他の問題を回避するために、当該技術分野において周知のように、キメラ化及びヒト化を含む、かかる抗体及びその部分の免疫原性を低減するための多くのアプローチが取られてきた。しかしながら、これら及びその他のアプローチは尚も、多少の免疫原性、低親和性、低結合活性を有する、又は細胞培養、スケールアップ、生成及び/若しくは低収率における問題を伴う抗体又は断片をもたらし得る。したがって、かかる抗体又は断片は、治療用タンパク質としての製造又は使用に理想的にはあまり適していない可能性がある。
【0013】
したがって、TNFαによって媒介される疾患の治療用の治療薬として使用するための抗TNF抗体又はそのフラグメントが提供されることが求められている。
【0014】
(発明の概要)
簡単にするために、参照により本明細書に組み込まれる、本明細書に添付の独立及び従属請求項によって、全般的及び好ましい実施形態がそれぞれ定義される。他の好ましい実施形態、特性、及び利点は、添付の図面と併せて、以下の発明を実施するための形態から明らかになるであろう。
【0015】
ある特定の実施形態では、本発明は、抗TNF抗体であって、(i)配列番号36の重鎖アミノ酸配列、及び(ii)配列番号37の軽鎖アミノ酸配列を含み、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルが、≧82.0%~≦94.4%の総中性オリゴ糖種、≧5.6%~≦18.0%の総荷電オリゴ糖種、並びに≧25.6%~≦42.2%のG0F、≧31.2%~≦43.6%のG1F、及び≧5.6%~≦14.2%のG2Fの個々の中性オリゴ糖種を含み、抗TNF抗体が、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルを制御する製造方法によって生成され、製造方法が、真核細胞を、≧10.0μg/リットル~≦35.0μg/リットルのMn2+(マンガン)及び≧1.0μg/リットル~≦1.8μg/リットルのCu2+(銅)からなる特定の微量金属濃度のマンガン及び銅を含有するように制御された化学的に規定された培地において培養することと、抗TNF抗体を真核細胞において発現させることとを含む製造方法によって製造され、マンガン及び銅の濃度が、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルを制御するのに有効である、抗TNF抗体を提供する。
【0016】
ある特定の実施形態では、本発明は、抗TNF抗体であって、(i)配列番号36の重鎖アミノ酸配列、及び(ii)配列番号37の軽鎖アミノ酸配列を含み、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルが、≧82.0%~≦94.4%の総中性オリゴ糖種、≧5.6%~≦18.0%の総荷電オリゴ糖種、並びに≧25.6%~≦42.2%のG0F、≧31.2%~≦43.6%のG1F、及び≧5.6%~≦14.2%のG2Fの個々の中性オリゴ糖種を含み、抗TNF抗体が、バイオ後続品であり、抗TNF抗体が、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルを制御する製造方法によって生成され、製造方法が、真核細胞を、≧10.0μg/リットル~≦35.0μg/リットルのMn2+(マンガン)及び≧1.0μg/リットル~≦1.8μg/リットルのCu2+(銅)からなる特定の微量金属濃度のマンガン及び銅を含有するように制御された化学的に規定された培地において培養することと、抗TNF抗体を真核細胞において発現させることとを含む製造方法によって製造され、マンガン及び銅の濃度が、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルを制御するのに有効である、抗TNF抗体を提供する。
【0017】
特定の実施形態では、本発明は、(i)配列番号36の重鎖アミノ酸配列、及び(ii)配列番号37の軽鎖アミノ酸配列を含む抗TNF抗体を含む原薬(DS)又は製剤(DP)を製造するための製造方法であって、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルが制御され、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルが、≧82.0%~≦94.4%の総中性オリゴ糖種、≧5.6%~≦18.0%の総荷電オリゴ糖種、並びに≧25.6%~≦42.2%のG0F、≧31.2%~≦43.6%のG1F、及び≧5.6%~≦14.2%のG2Fの個々の中性オリゴ糖種を含み、真核細胞を、≧10.0μg/リットル~≦35.0μg/リットルのMn2+(マンガン)及び≧1.0μg/リットル~≦1.8μg/リットルのCu2+(銅)からなる特定の微量金属濃度のマンガン及び銅を含有するように制御された化学的に規定された培地において培養することと、抗TNF抗体を真核細胞において発現させることとを含む製造方法によって製造され、マンガン及び銅の濃度が、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルを制御するのに有効である、製造方法を提供する。
【0018】
特定の実施形態では、本発明は、(i)配列番号36の重鎖アミノ酸配列、及び(ii)配列番号37の軽鎖アミノ酸配列を含む抗TNF抗体を含む原薬(DS)又は製剤(DP)を製造するための製造方法であって、抗TNF抗体が、バイオ後続品であり、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルが制御され、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルが、≧82.0%~≦94.4%の総中性オリゴ糖種、≧5.6%~≦18.0%の総荷電オリゴ糖種、並びに≧25.6%~≦42.2%のG0F、≧31.2%~≦43.6%のG1F、及び≧5.6%~≦14.2%のG2Fの個々の中性オリゴ糖種を含み、真核細胞を、≧10.0μg/リットル~≦35.0μg/リットルのMn2+(マンガン)及び≧1.0μg/リットル~≦1.8μg/リットルのCu2+(銅)からなる特定の微量金属濃度のマンガン及び銅を含有するように制御された化学的に規定された培地において培養することと、抗TNF抗体を真核細胞において発現させることとを含む製造方法によって製造され、マンガン及び銅の濃度が、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルを制御するのに有効である、製造方法を提供する。
【0019】
特定の実施形態では、本発明は、(i)配列番号36の重鎖アミノ酸配列、及び(ii)配列番号37の軽鎖アミノ酸配列を含む抗TNF抗体を含む原薬(DS)又は製剤(DP)を製造するための製造方法であって、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルが制御され、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルが、≧82.0%~≦94.4%の総中性オリゴ糖種、≧5.6%~≦18.0%の総荷電オリゴ糖種、並びに≧25.6%~≦42.2%のG0F、≧31.2%~≦43.6%のG1F、及び≧5.6%~≦14.2%のG2Fの個々の中性オリゴ糖種を含み、真核細胞を、≧10.0μg/リットル~≦35.0μg/リットルのMn2+(マンガン)及び≧1.0μg/リットル~≦1.8μg/リットルのCu2+(銅)からなる特定の微量金属濃度のマンガン及び銅を含有するように制御された化学的に規定された培地において培養することと、抗TNF抗体を真核細胞において発現させることとを含む製造方法によって製造され、マンガン及び銅の濃度が、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルを制御するのに有効であり、化学的に規定された培地中のマンガン及び銅の濃度が、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)を使用して決定される、製造方法を提供する。
【0020】
特定の実施形態では、本発明は、(i)配列番号36の重鎖アミノ酸配列、及び(ii)配列番号37の軽鎖アミノ酸配列を含む抗TNF抗体を含む原薬(DS)又は製剤(DP)を製造するための製造方法であって、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルが制御され、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルが、≧82.0%~≦94.4%の総中性オリゴ糖種、≧5.6%~≦18.0%の総荷電オリゴ糖種、並びに≧25.6%~≦42.2%のG0F、≧31.2%~≦43.6%のG1F、及び≧5.6%~≦14.2%のG2Fの個々の中性オリゴ糖種を含み、真核細胞を、≧10.0μg/リットル~≦35.0μg/リットルのMn2+(マンガン)及び≧1.0μg/リットル~≦1.8μg/リットルのCu2+(銅)からなる特定の微量金属濃度のマンガン及び銅を含有するように制御された化学的に規定された培地において培養することと、抗TNF抗体を真核細胞において発現させることとを含む製造方法によって製造され、マンガン及び銅の濃度が、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルを制御するのに有効であり、化学的に規定された培地中のマンガン及び銅の濃度が、化学的に規定された培地にマンガン及び銅の1つ又は2つ以上の供給源を補充することによって制御され、マンガンの1つ又は2つ以上の供給源が、MnCl2、MnSO4、MnF2及びMnI2からなる群から選択され、銅の1つ又は2つ以上の供給源が、CuSO4、CuCl2及びCu(OAc)2からなる群から選択される、製造方法を提供する。
【0021】
特定の実施形態では、本発明は、(i)配列番号36の重鎖アミノ酸配列、及び(ii)配列番号37の軽鎖アミノ酸配列を含む抗TNF抗体を含む原薬(DS)又は製剤(DP)を製造するための製造方法であって、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルが制御され、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルが、≧82.0%~≦94.4%の総中性オリゴ糖種、≧5.6%~≦18.0%の総荷電オリゴ糖種、並びに≧25.6%~≦42.2%のG0F、≧31.2%~≦43.6%のG1F、及び≧5.6%~≦14.2%のG2Fの個々の中性オリゴ糖種を含み、真核細胞を、≧10.0μg/リットル~≦35.0μg/リットルのMn2+(マンガン)及び≧1.0μg/リットル~≦1.8μg/リットルのCu2+(銅)からなる特定の微量金属濃度のマンガン及び銅を含有するように制御された化学的に規定された培地において培養することと、抗TNF抗体を真核細胞において発現させることとを含む製造方法によって製造され、マンガン及び銅の濃度が、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルを制御するのに有効であり、オリゴ糖種は高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によって決定される、製造方法を提供する。
【0022】
特定の実施形態では、本発明は、(i)配列番号36の重鎖アミノ酸配列、及び(ii)配列番号37の軽鎖アミノ酸配列を含む抗TNF抗体を含む原薬(DS)又は製剤(DP)を製造するための製造方法であって、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルが制御され、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルが、≧82.0%~≦94.4%の総中性オリゴ糖種、≧5.6%~≦18.0%の総荷電オリゴ糖種、並びに≧25.6%~≦42.2%のG0F、≧31.2%~≦43.6%のG1F、及び≧5.6%~≦14.2%のG2Fの個々の中性オリゴ糖種を含み、真核細胞を、≧10.0μg/リットル~≦35.0μg/リットルのMn2+(マンガン)及び≧1.0μg/リットル~≦1.8μg/リットルのCu2+(銅)からなる特定の微量金属濃度のマンガン及び銅を含有するように制御された化学的に規定された培地において培養することと、抗TNF抗体を真核細胞において発現させることとを含む製造方法によって製造され、マンガン及び銅の濃度が、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルを制御するのに有効であり、真核細胞が、チャイニーズハムスター卵巣細胞(Chinese hamster vary cell)(CHO細胞)、ヒト網膜細胞(PER.C6細胞)、及びマウス骨髄腫細胞(NS0細胞及びSp2/0細胞)からなる群から選択される、製造方法を提供する。
【0023】
特定の実施形態では、本発明は、組成物であって、(i)配列番号36の重鎖アミノ酸配列、及び(ii)配列番号37の軽鎖アミノ酸配列を含む抗TNF抗体を含み、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルが制御され、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルが、≧82.0%~≦94.4%の総中性オリゴ糖種、≧5.6%~≦18.0%の総荷電オリゴ糖種、並びに≧25.6%~≦42.2%のG0F、≧31.2%~≦43.6%のG1F、及び≧5.6%~≦14.2%のG2Fの個々の中性オリゴ糖種を含み、抗TNF抗体が、真核細胞を、≧10.0μg/リットル~≦35.0μg/リットルのMn2+(マンガン)及び≧1.0μg/リットル~≦1.8μg/リットルのCu2+(銅)からなる特定の微量金属濃度のマンガン及び銅を含有するように制御された化学的に規定された培地において培養することと、抗TNF抗体を真核細胞において発現させることとを含む製造方法によって製造され、マンガン及び銅の濃度が抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルを制御するのに有効である、製造方法によって製造される、組成物を提供する。
【0024】
ある特定の実施形態では、本発明は、組成物であって、(i)配列番号36の重鎖アミノ酸配列、及び(ii)配列番号37の軽鎖アミノ酸配列を含む抗TNF抗体を含み、抗TNF抗体がバイオ後続品であり、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルが制御され、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルが、≧82.0%~≦94.4%の総中性オリゴ糖種、≧5.6%~≦18.0%の総荷電オリゴ糖種、並びに≧25.6%~≦42.2%のG0F、≧31.2%~≦43.6%のG1F、及び≧5.6%~≦14.2%のG2Fの個々の中性オリゴ糖種を含み、抗TNF抗体が、真核細胞を、≧10.0μg/リットル~≦35.0μg/リットルのMn2+(マンガン)及び≧1.0μg/リットル~≦1.8μg/リットルのCu2+(銅)からなる特定の微量金属濃度のマンガン及び銅を含有するように制御された化学的に規定された培地において培養することと、抗TNF抗体を真核細胞において発現させることとを含む製造方法によって製造され、マンガン及び銅の濃度が、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルを制御するのに有効である、製造方法によって製造される、組成物を提供する。
【0025】
特定の実施形態では、本発明は、組成物であって、(i)配列番号36の重鎖アミノ酸配列、及び(ii)配列番号37の軽鎖アミノ酸配列を含む抗TNF抗体を含み、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルが制御され、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルが、≧82.0%~≦94.4%の総中性オリゴ糖種、≧5.6%~≦18.0%の総荷電オリゴ糖種、並びに≧25.6%~≦42.2%のG0F、≧31.2%~≦43.6%のG1F、及び≧5.6%~≦14.2%のG2Fの個々の中性オリゴ糖種を含み、抗TNF抗体が、真核細胞を、≧10.0μg/リットル~≦35.0μg/リットルのMn2+(マンガン)及び≧1.0μg/L~≦1.8μg/LCu2+(銅)からなる特定の微量金属濃度のマンガン及び銅を含有するように制御された化学的に規定された培地において培養することと、抗TNF抗体を真核細胞において発現させることとを含む製造方法によって製造され、マンガン及び銅の濃度が、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルを制御するのに有効であり、マンガン及び銅の濃度が、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)を使用して決定される、製造方法によって製造される、組成物を提供する。
【0026】
特定の実施形態では、本発明は、組成物であって、(i)配列番号36の重鎖アミノ酸配列、及び(ii)配列番号37の軽鎖アミノ酸配列を含む抗TNF抗体を含み、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルが制御され、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルが、≧82.0%~≦94.4%の総中性オリゴ糖種、≧5.6%~≦18.0%の総荷電オリゴ糖種、並びに≧25.6%~≦42.2%のG0F、≧31.2%~≦43.6%のG1F、及び≧5.6%~≦14.2%のG2Fの個々の中性オリゴ糖種を含み、抗TNF抗体が、真核細胞を、≧10.0μg/リットル~≦35.0μg/リットルのMn2+(マンガン)及び≧1.0μg/L~≦1.8μg/LのCu2+(銅)からなる特定の微量金属濃度のマンガン及び銅を含有するように制御された化学的に規定された培地において培養することと、抗TNF抗体を真核細胞において発現させることとを含む製造方法によって製造され、マンガン及び銅の濃度が、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルを制御するのに有効であり、化学的に規定された培地中のマンガン及び銅の濃度が、化学的に規定された培地に1つ又は2つ以上のマンガン及び銅の供給源を補充することによって制御され、1つ又は2つ以上のマンガンの供給源が、MnCl2、MnSO4、MnF2及びMnI2からなる群から選択され、1つ又は2つ以上の銅の供給源が、CuSO4、CuCl2及びCu(OAc)2からなる群から選択される、組成物を提供する。
【0027】
ある特定の実施形態では、本発明は、(i)配列番号36の重鎖アミノ酸配列、及び(ii)配列番号37の軽鎖アミノ酸配列を含む抗TNF抗体を含む組成物であって、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルが制御され、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルが、≧82.0%~≦94.4%の総中性オリゴ糖種、≧5.6%~≦18.0%の総荷電オリゴ糖種、並びに≧25.6%~≦42.2%のG0F、≧31.2%~≦43.6%のG1F、及び≧5.6%~≦14.2%のG2Fの個々の中性オリゴ糖種を含み、抗TNF抗体が、真核細胞を、≧10.0μg/リットル~≦35.0μg/リットルのMn2+(マンガン)及び≧1.0μg/リットル~≦1.8μg/リットルのCu2+(銅)からなる特定の微量金属濃度のマンガン及び銅を含有するように制御された化学的に規定された培地において培養することと、抗TNF抗体を真核細胞において発現させることとを含む製造方法によって製造され、マンガン及び銅の濃度が、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルを制御するのに有効であり、オリゴ糖種が、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によって決定される、製造方法によって製造される、組成物を提供する。
【0028】
特定の実施形態では、本発明は、組成物であって、(i)配列番号36の重鎖アミノ酸配列、及び(ii)配列番号37の軽鎖アミノ酸配列を含む抗TNF抗体を含み、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルが制御され、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルが、≧82.0%~≦94.4%の総中性オリゴ糖種、≧5.6%~≦18.0%の総荷電オリゴ糖種、並びに≧25.6%~≦42.2%のG0F、≧31.2%~≦43.6%のG1F、及び≧5.6%~≦14.2%のG2Fの個々の中性オリゴ糖種を含み、抗TNF抗体が、真核細胞を、≧10.0μg/リットル~≦35.0μg/リットルのMn2+(マンガン)及び≧1.0μg/L~≦1.8μg/LのCu2+(銅)からなる特定の微量金属濃度のマンガン及び銅を含有するように制御された化学的に規定された培地において培養することと、抗TNF抗体を真核細胞において発現させることとを含む製造方法によって製造され、マンガン及び銅の濃度が、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルを制御するのに有効であり、真核細胞が、チャイニーズハムスター卵巣細胞(Chinese hamster vary cell)(CHO細胞)、ヒト網膜細胞(PER.C6細胞)、及びマウス骨髄腫細胞(NS0細胞及びSp2/0細胞)からなる群から選択される、製造方法によって製造される、組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】ハイブリドーマ細胞上清中のTNV mAbが組換えTNF受容体へのTNFα結合を阻害する能力のアッセイを示すグラフ表示を示す。既知量のTNV mAbを含有する様々な量のハイブリドーマ細胞上清を、固定濃度(5ng/mL)の125Iと標識されたTNFαと共にプレインキュベートした。混合物を、組換えTNF受容体/IgG融合タンパク質p55-sf2で予めコーティングされた96ウェルのOptiplateに移した。mAbの存在下でp55受容体に結合したTNFαの量は、未結合の材料を洗い流し、γ計数器を使用して計数した後に決定した。これらの実験において8つのTNV mAb試料を試験したが、簡潔化のため、DNA配列分析により、他のTNV mAbのうちの1つと同一であることを示したmAbのうちの3つは、ここに示されていない。各試料を二重に試験した。示される結果は、2つの独立した実験を代表する。
【
図2A】TNV mAb重鎖可変領域のDNA配列を示す。示される生殖系列遺伝子は、DP-46遺伝子である。「TNVs」は、示される配列がTNV14、TNV15、TNV148、及びTNV196の配列であることを示す。TNV配列の最初の3つのヌクレオチドは、翻訳開始Metコドンを定義する。TNV mAb遺伝子配列中の点線は、ヌクレオチドが生殖系列配列中のものと同じであることを示す。TNV配列の最初の19のヌクレオチド(下線付き)は、可変領域をPCR増幅するために使用されたオリゴヌクレオチドに対応する。成熟mAbで始まるアミノ酸翻訳(一文字表記)は、生殖系列遺伝子についてのみ示される。生殖系列アミノ酸翻訳における3つのCDRドメインは、太字で示され、下線付きである。TNV148(B)と標識された行は、示される配列がTNV148及びTNV148Bの両方に関することを示す。生殖系列DNA配列(CDR3)中のギャップは、その当時、知られていないか又は生殖系列遺伝子に存在しない配列に起因する。TNV mAb重鎖は、J6結合領域を使用する。
【
図2B】TNV mAb重鎖可変領域のDNA配列を示す。示される生殖系列遺伝子は、DP-46遺伝子である。「TNVs」は、示される配列がTNV14、TNV15、TNV148、及びTNV196の配列であることを示す。TNV配列の最初の3つのヌクレオチドは、翻訳開始Metコドンを定義する。TNV mAb遺伝子配列中の点線は、ヌクレオチドが生殖系列配列中のものと同じであることを示す。TNV配列の最初の19のヌクレオチド(下線付き)は、可変領域をPCR増幅するために使用されたオリゴヌクレオチドに対応する。成熟mAbで始まるアミノ酸翻訳(一文字表記)は、生殖系列遺伝子についてのみ示される。生殖系列アミノ酸翻訳における3つのCDRドメインは、太字で示され、下線付きである。TNV148(B)と標識された行は、示される配列がTNV148及びTNV148Bの両方に関することを示す。生殖系列DNA配列(CDR3)中のギャップは、その当時、知られていないか又は生殖系列遺伝子に存在しない配列に起因する。TNV mAb重鎖は、J6結合領域を使用する。
【
図3】TNV mAb軽鎖可変領域のDNA配列を示す。示される生殖系列遺伝子は、ヒトκ生殖系列可変領域遺伝子のVg/38Kファミリーの代表的なメンバーである。TNV mAb遺伝子配列中の点線は、ヌクレオチドが生殖系列配列中のものと同じであることを示す。TNV配列の最初の16のヌクレオチド(下線付き)は、可変領域をPCR増幅するために使用されたオリゴヌクレオチドに対応する。成熟mAbのアミノ酸翻訳(一文字表記)は、生殖系列遺伝子についてのみ示される。生殖系列アミノ酸翻訳における3つのCDRドメインは、太字で示され、下線付きである。TNV148(B)と標識された行は、示される配列がTNV148及びTNV148Bの両方に関することを示す。生殖系列DNA配列(CDR3)中のギャップは、知られていないか又は生殖系列遺伝子に存在しない配列のためである。TNV mAb軽鎖は、J3結合領域を使用する。
【
図4】TNV mAb重鎖可変領域の推定アミノ酸配列を示す。示されるアミノ酸配列(一文字表記)は、非クローン化PCR生成物及びクローン化PCR生成物の両方から決定されたDNA配列から推定された。分泌シグナル配列(シグナル)、フレームワーク(FW)及び相補性決定領域(CDR)ドメインに分割したアミノ配列が示される。DP-46生殖系列遺伝子のアミノ酸配列は、各ドメインの上の行に示されている。点線は、TNV mAbにおけるアミノ酸が生殖系列遺伝子と同一であることを示す。TNV148(B)は、示される配列がTNV148及びTNV148Bの両方に関することを示す。「TNV」は、異なる配列が示されない限り、示される配列が全てのTNV mAbに関することを示す。生殖系列配列(CDR3)中の破線は、配列が知られていないか又は生殖系列遺伝子に存在しないことを示す。
【
図5】TNV mAb軽鎖可変領域の推定アミノ酸配列を示す。示されるアミノ酸配列(一文字表記)は、非クローン化PCR生成物及びクローン化PCR生成物の両方から決定されたDNA配列から推定された。分泌シグナル配列(シグナル)、フレームワーク(FW)及び相補性決定領域(CDR)ドメインに分割したアミノ配列が示される。Vg/38K型軽鎖生殖系列遺伝子のアミノ酸配列は、各ドメインの上の行に示される。点線は、TNV mAbにおけるアミノ酸が生殖系列遺伝子と同一であることを示す。TNV148(B)は、示される配列がTNV148及びTNV148Bの両方に関することを示す。「All」は、示される配列がTNV14、TNV15、TNV148、TNV148B、及びTNV186に関することを示す。
【
図6】rTNV148B発現C466細胞を作製するために使用された重鎖及び軽鎖発現プラスミドの概略図を示す。p1783は重鎖プラスミドであり、p1776は軽鎖プラスミドである。rTNV148B可変及び定常領域コードドメインは、黒色のボックスで示される。J-Cイントロンの免疫グロブリンエンハンサは、灰色のボックスで示される。関連する制限部位が示される。Ab遺伝子の転写が時計方向に進むように配向されたプラスミドが示される。プラスミドp1783の長さは19.53kbであり、プラスミドp1776の長さは15.06kbである。両プラスミドの完全なヌクレオチド配列は既知である。p1783の可変領域コード配列は、BsiWI/BstBI制限断片を置き換えることにより、別の重鎖可変領域配列に容易に置き換えることができる。p1776の可変領域コード配列は、SalI/AflII制限断片を置き換えることにより、別の可変領域配列に置き換えることができる。
【
図7】5つのrTNV148B生成細胞株の成長曲線分析のグラフ表示を示す。30mLの容量中に1.0×10
5細胞/mLの生存細胞密度を有するように、T75フラスコ内のI5Q+MHX培地に細胞を播種することにより、0日目に培養を開始した。これらの試験に使用された細胞培養物は、トランスフェクション及びサブクローニングが行われるため、連続培養であった。その後、Tフラスコ内の細胞を充分に再懸濁し、0.3mlの培養物のアリコートを取り出した。成長曲線試験は、細胞計数が1.5×10
5細胞/mL未満に低下したときに終了した。アリコート中の生細胞数をトリパンブルー排除により決定し、残りのアリコートは後のmAb濃度決定のために保管された。ヒトIgGのELISAが、同じ時に全ての試料アリコートに対して行われた。
【
図8】様々なMHX選択物濃度の存在下での細胞成長速度の比較のグラフ表示を示す。細胞サブクローンC466A及びC466Bを、無MHX培地(IMDM、5%FBS、2mMグルタミン)に解凍し、更に2日間培養した。次いで、両細胞培養物を、MHX無し、0.2×MHX又は1×MHXのいずれかを含有した3つの培養に分割した。1日後、新しいT75フラスコに、1×10
5細胞/mLの開始密度で培養物を播種し、細胞を1週間、24時間間隔で計数した。最初の5日間の倍加時間は、SOP PD32.025の式を使用して計算し、バーの上に示す。
【
図9】2つのrTNV148B生成細胞株からの経時的なmAb生成の安定性のグラフ表示を示す。トランスフェクション及びサブクローニングを行った後、連続培養にあった細胞のサブクローンを使用して、24ウェル培養皿中での長期連続培養を開始した。MHX選択物を伴う又は伴わないI5Q培地中で細胞を培養した。細胞を、4~6日ごとに培養物を分けることにより連続して継代して、新たな生存培養物を維持し、同時に前の培養物を消耗させた。消耗した細胞上清のアリコートは、培養物が消耗した直後に回収し、mAb濃度が決定されるまで保管した。ヒトIgGのELISAが、同じ時に全ての試料アリコートに対して行われた。
【
図10】実施例4の対照と比較した、本発明の抗TNF抗体に応答した関節炎マウスモデルマウスTg197の体重変化を示す。およそ4週齢のTg197試験マウスを性別及び体重に基づき9つの処置群のうちの1つに割り当て、DulbeccoのPBS(D-PBS)、又は1mg/kg若しくは10mg/kgのいずれかの本発明の抗TNF抗体(TNV14、TNV148、又はTNV196)の単回腹腔内ボーラス投与で処置した。体重を投与前からの変化として分析したとき、10mg/kgのcA2で処置した動物は、試験を通してD-PBSで処置した動物よりも一貫して高い体重増加を示した。この体重増加は、3~7週目で有意であった。10mg/kgのTNV148で処置した動物も、試験の7週目に有意な体重増加を達成した。
【
図11A】実施例4に示す関節炎指数に基づく疾患重症度の進行を表す。10mg/kgのcA2処置群の関節炎指数は、3週目から始まり、残りの試験(7週目)を通して継続するD-PBS対照群よりも低かった。1mg/kgのTNV14で処置した動物及び1mg/kgのcA2で処置した動物は、D-PBS処置群と比較したとき、3週目以降のAIにおいて有意な減少を示すことができなかった。各々を類似の用量のその他のものと比較したとき(10mg/kgのTNV14、148及び196と比較した10mg/kgのcA2)、10mg/kgの処置群の間に有意差はなかった。1mg/kgの処置群を比較したとき、1mg/kgのTNV148は、1mg/kgのcA2よりも3、4及び7週目で有意に低いAIを示した。1mg/kgのTNV148も、1mg/kgのTNV14で処置した群よりも3及び4週目で有意に低かった。TNV196は試験の6週目までAIにおいて有意な減少を示したが(D-PBSで処置した群と比較したとき)、TNV148はこの試験の終了時に有意のままであった唯一の1mg/kg処置群であった。
【
図11B】実施例4に示す関節炎指数に基づく疾患重症度の進行を表す。10mg/kgのcA2処置群の関節炎指数は、3週目から始まり、残りの試験(7週目)を通して継続するD-PBS対照群よりも低かった。1mg/kgのTNV14で処置した動物及び1mg/kgのcA2で処置した動物は、D-PBS処置群と比較したとき、3週目以降のAIにおいて有意な減少を示すことができなかった。各々を類似の用量のその他のものと比較したとき(10mg/kgのTNV14、148及び196と比較した10mg/kgのcA2)、10mg/kgの処置群の間に有意差はなかった。1mg/kgの処置群を比較したとき、1mg/kgのTNV148は、1mg/kgのcA2よりも3、4及び7週目で有意に低いAIを示した。1mg/kgのTNV148も、1mg/kgのTNV14で処置した群よりも3及び4週目で有意に低かった。TNV196は試験の6週目までAIにおいて有意な減少を示したが(D-PBSで処置した群と比較したとき)、TNV148はこの試験の終了時に有意のままであった唯一の1mg/kg処置群であった。
【
図11C】実施例4に示す関節炎指数に基づく疾患重症度の進行を表す。10mg/kgのcA2処置群の関節炎指数は、3週目から始まり、残りの試験(7週目)を通して継続するD-PBS対照群よりも低かった。1mg/kgのTNV14で処置した動物及び1mg/kgのcA2で処置した動物は、D-PBS処置群と比較したとき、3週目以降のAIにおいて有意な減少を示すことができなかった。各々を類似の用量のその他のものと比較したとき(10mg/kgのTNV14、148及び196と比較した10mg/kgのcA2)、10mg/kgの処置群の間に有意差はなかった。1mg/kgの処置群を比較したとき、1mg/kgのTNV148は、1mg/kgのcA2よりも3、4及び7週目で有意に低いAIを示した。1mg/kgのTNV148も、1mg/kgのTNV14で処置した群よりも3及び4週目で有意に低かった。TNV196は試験の6週目までAIにおいて有意な減少を示したが(D-PBSで処置した群と比較したとき)、TNV148はこの試験の終了時に有意のままであった唯一の1mg/kg処置群であった。
【
図12】実施例5の対照と比較した、本発明の抗TNF抗体に応答した関節炎マウスモデルマウスTg197の体重変化を示す。およそ4週齢のTg197試験マウスを体重に基づき8つの処置群のうちの1つに割り当て、対照品(D-PBS)、又は3mg/kgの抗体(TNV14、TNV148)(0週目)の腹腔内ボーラス投与で処置した。注射は1、2、3、及び4週目に全ての動物において繰り返された。群1~6は、試験品の有効性に関して評価された。群7及び8の動物から得られた血清試料は、2、3及び4週目のTNV14又はTNV148の免疫応答誘導及び薬物動態クリアランスに関して評価された。
【
図13A】関節炎指数に基づく実施例5の疾患の重症度の進行を表すグラフである。10mg/kgのcA2で処置した群の関節炎指数は、2週目から始まり、残りの試験全体を通して(5週目)継続してD-PBS対照群よりも有意に低かった。1mg/kg又は3mg/kgのcA2で処置した動物及び3mg/kgのTNV14で処置した動物は、d-PBS対照群と比較したときに、試験を通して任意の時点でAIにおいて任意の有意な減少を達成することができなかった。3mg/kgのTNV148で処置した動物は、d-PBSで処置した群と比較したとき、3週目から始まり、5週目まで継続する有意な減少を示した。10mg/kgのcA2で処置した動物は、試験の4及び5週目でより低い用量の両cA2(1mg/kg及び3mg/kg)と比較したとき、AIにおいて有意な減少を示し、又3~5週目で、TNV14で処置した動物よりも有意に低かった。3mg/kgの処置群のいずれかの間に有意差はなかったようだが、3mg/kgのTNV14で処置した動物に関するAIは、ある時点で10mg/kgよりも有意に高く、一方TNV148で処置した動物は、10mg/kgのcA2で処置した動物と有意に異ならなかった。
【
図13B】関節炎指数に基づく実施例5の疾患の重症度の進行を表すグラフである。10mg/kgのcA2で処置した群の関節炎指数は、2週目から始まり、残りの試験全体を通して(5週目)継続してD-PBS対照群よりも有意に低かった。1mg/kg又は3mg/kgのcA2で処置した動物及び3mg/kgのTNV14で処置した動物は、d-PBS対照群と比較したときに、試験を通して任意の時点でAIにおいて任意の有意な減少を達成することができなかった。3mg/kgのTNV148で処置した動物は、d-PBSで処置した群と比較したとき、3週目から始まり、5週目まで継続する有意な減少を示した。10mg/kgのcA2で処置した動物は、試験の4及び5週目でより低い用量の両cA2(1mg/kg及び3mg/kg)と比較したとき、AIにおいて有意な減少を示し、又3~5週目で、TNV14で処置した動物よりも有意に低かった。3mg/kgの処置群のいずれかの間に有意差はなかったようだが、3mg/kgのTNV14で処置した動物に関するAIは、ある時点で10mg/kgよりも有意に高く、一方TNV148で処置した動物は、10mg/kgのcA2で処置した動物と有意に異ならなかった。
【
図13C】関節炎指数に基づく実施例5の疾患の重症度の進行を表すグラフである。10mg/kgのcA2で処置した群の関節炎指数は、2週目から始まり、残りの試験全体を通して(5週目)継続してD-PBS対照群よりも有意に低かった。1mg/kg又は3mg/kgのcA2で処置した動物及び3mg/kgのTNV14で処置した動物は、d-PBS対照群と比較したときに、試験を通して任意の時点でAIにおいて任意の有意な減少を達成することができなかった。3mg/kgのTNV148で処置した動物は、d-PBSで処置した群と比較したとき、3週目から始まり、5週目まで継続する有意な減少を示した。10mg/kgのcA2で処置した動物は、試験の4及び5週目でより低い用量の両cA2(1mg/kg及び3mg/kg)と比較したとき、AIにおいて有意な減少を示し、又3~5週目で、TNV14で処置した動物よりも有意に低かった。3mg/kgの処置群のいずれかの間に有意差はなかったようだが、3mg/kgのTNV14で処置した動物に関するAIは、ある時点で10mg/kgよりも有意に高く、一方TNV148で処置した動物は、10mg/kgのcA2で処置した動物と有意に異ならなかった。
【
図14】実施例6の対照と比較した、本発明の抗TNF抗体に応答した関節炎マウスモデルマウスTg197の体重変化を示す。およそ4週齢のTg197試験マウスを性別及び体重に基づき6つの処置群のうちの1つに割り当て、3mg/kg又は5mg/kgのいずれかの抗体(cA2又はTNV148)の単回腹腔内ボーラス投与で処置した。この試験は、D-PBS及び10mg/kgのcA2対照群を利用した。
【
図15】実施例6に示す関節炎指数に基づく疾患の重症度の進行を表す。全ての処置群が初期の時点で多少の保護作用を示し、5mg/kgのcA2及び5mg/kgのTNV148は、1~3週目にAIにおいて有意な減少を示し、全ての処置群が2週目で有意な減少を示した。試験の後期に、5mg/kgのcA2で処置した動物は多少の保護作用を示し、4、6及び7週目で有意に減少した。低用量(3mg/kg)のcA2及びTNV148は両方とも、6週目で有意な減少を示し、全ての処置群が7週目で有意な減少を示した。試験の終わりで(8週目)有意な減少を維持することができた処置群はなかった。任意の時点で処置群のいずれかの間(食塩水対照群は除く)に有意差はなかった。
【
図16】実施例7の対照と比較した、本発明の抗TNF抗体に応答した関節炎マウスモデルマウスTg197の体重変化を示す。TNV148(ハイブリドーマ細胞に由来する)及びrTNV148B(トランスフェクトした細胞に由来する)の単回腹腔内投与の有効性を比較するために。およそ4週齢のTg197試験マウスを性別及び体重に基づき9つの処置群のうちの1つに割り当て、DulbeccoのPBS(D-PBS)、又は1mg/kgの抗体(TNV148、rTNV148B)の単回腹腔内ボーラス投与で処置した。
【
図17】実施例7に示す関節炎指数に基づく疾患重症度の進行を表す。10mg/kgのcA2処置群の関節炎指数は、4週目から始まり、残りの試験(8週目)を通して継続するD-PBS対照群よりも低かった。TNV148で処置した群及び1mg/kgのcA2で処置した群は両方とも、4週目でAIにおける有意な減少を示した。以前の試験(P-099-017)は、TNV148が単回の1mg/kgの腹腔内ボーラス後の関節炎指数の減少にわずかにより効果的であることを示したが、この試験では、両バージョンのTNV抗体で処置した群からのAIがわずかに高いことを示した。1mg/kgのcA2で処置した群(6週目を除く)は、10mg/kgのcA2群と比較したとき、有意に増加せず、TNV148で処置した群は、7及び8週目で有意に高かったが、1mg/kgのcA2、1mg/kgのTNV148及び1mg/kgのTNV148Bの間には試験の任意の時点でAIにおいて有意差はなかった。
【
図18】ゴリムマブ製造方法の9段階の概要を示す。
【
図19】プロセス内管理及びプロセス監視試験を含む、前培養及び増殖工程のための段階1の製造方法のフロー図を示す。
【
図20】プロセス内管理及びプロセス監視試験を含む、段階2の製造方法の工程のフロー図を示す。
【
図21】蛍光検出を伴う順相アニオン交換HPLCを使用したゴリムマブ参照標準の代表的なHPLCクロマトグラフィーを示す。異なる種に関連するピークにはラベルが付けられる。
*は、ゴリムマブに関連しないシステムピークを示す。
【
図22】C、1、2、及び3と標識された4つの主要なピークと、Bと標識された1つの微小ピークを有する、ゴリムマブの代表的なcIEFエレクトロフェログラムプロファイルを示す。pI7.6及び9.5の内部標準にも標識される。cIEFピークと減少する負電荷/シアリル化度との間の一般的な関係を表すグラフも示されている。
【
図23】ゴリムマブの製造の段階2中の500リットル及び1000リットルのバイオリアクターにおける生存細胞濃度(VCD)についての細胞培養性能の偏差を示す。履歴平均を濃い黒色の実線で示し、平均からの±2標準偏差を破線で示し、逸脱した細胞培養物を薄い灰色の線で示す。黒色及び灰色の矢印は、それぞれ、履歴平均及び逸脱バイオリアクターの「ショルダーリング」点を示す。
【
図24】ゴリムマブの製造の段階2中の500リットル及び1000リットルのバイオリアクターにおける生存率%についての細胞培養性能の偏差を示す。履歴平均を濃い黒色の実線で示し、平均からの±2標準偏差を破線で示し、逸脱した細胞培養物を薄い灰色の線で示す。
【
図25】ゴリムマブIgGの主要なN-結合型オリゴ糖種のいくつかの概要を示す。グリコシル化成熟プロセスにおけるいくつかの酵素の役割及びいくつかの二価カチオン(例えば、補因子としてのMn
2+及びGalTIの阻害剤としてのCu
2+)の役割も示される(例えば、Biotechnol Bioeng.2007 Feb 15;96(3):538-49;Curr Drug Targets.2008 Apr;9(4):292-309;J Biochem Mol Biol.2002 May 31;35(3):330-6を参照のこと)。末端シアル酸を含む種(S1及びS2)は荷電種であり、末端シアル酸を含まない種(G0F、G1F、及びG2F)は中性種であるが、荷電種の生成は、GalT1酵素によって追加されたG1F及びG2Fのガラクトースの存在に依存することに注意されたい。
【
図26】異なるバッチについて時系列順に表示されたゴリムマブのAGT(変更前)、変更後AGT、及びSUP-AGT3バッチにおける総中性及び総荷電オリゴ糖種を示す。過去の変更前のAGTバッチについての平均%の合計を実線で示し、仕様上限及び下限を破線で示す。
【
図27-1】異なるバッチについて時系列順に表示されたゴリムマブのAGT(変更前)、変更後AGT、及びSUP-AGT3バッチにおける個々の中性オリゴ糖種G0F(A)、G1F(B)、及びG2F(C)についての合計の%を示す。過去の変更前のAGTバッチの平均%値を実線で示し、仕様の上限及び下限を破線で示す。
【
図27-2】異なるバッチについて時系列順に表示されたゴリムマブのAGT(変更前)、変更後AGT、及びSUP-AGT3バッチにおける個々の中性オリゴ糖種G0F(A)、G1F(B)、及びG2F(C)についての合計の%を示す。過去の変更前のAGTバッチの平均%値を実線で示し、仕様の上限及び下限を破線で示す。
【
図28】G0F及びゴリムマブの総中性のレベルに対する銅濃度増加の効果を示す。
【
図29】培地の異なるバッチのマンガンレベルを時系列順に示す。データは、使用される培地、例えば、変更前AGT、変更後AGT、及びSUP-AGT3に基づいて識別される。過去の変更前AGTバッチの平均値を実線で示し、仕様の上限及び下限を破線で示す。
【
図30】培地の異なるバッチのクロムレベルを時系列順に示す。データは、使用される培地、例えば、変更前AGT、変更後AGT、及びSUP-AGT3に基づいて識別される。
【
図31】培地の異なるバッチの銅レベルを時系列順に示す。データは、使用される培地、例えば、変更前AGT、変更後AGT、及びSUP-AGT3に基づいて識別される。過去の変更前AGTバッチの平均値を実線で示し、仕様の上限及び下限を破線で示す。変更後のAGT及びSUP-AGT3バッチの平均値も実線で示す。変更後AGTバッチの多くは、銅についてのアッセイについての検出の下限未満の値(<1μg/L)を有し、1μg/Lとしてグラフで単純に表されることに留意されたい。
【
図32】ゴリムマブの過去の変更前AGTバッチの平均(黒丸)及び変更後AGTバッチの平均(黒三角)と比較した、SUP-AGT3バッチの平均(灰色四角)についての細胞培養(段階2)生存細胞濃度(VCD)プロファイルを示す。過去の変更前AGTバッチについては、±3SDが破線として含まれる。
【
図33】ゴリムマブの過去の変更前AGTバッチの平均(黒丸)及び変更後AGTバッチの平均(黒三角)と比較した、SUP-AGT3バッチの平均(灰色四角)についての細胞培養(段階2)生存率(%)を示す。過去の変更前AGTバッチについては、±3SDが破線として含まれる。
【
図34】ゴリムマブの過去の変更前AGTバッチの平均(黒四角)及び変更後AGTバッチの平均(黒丸)と比較した、SUP-AGT3バッチの平均(灰色三角)についての細胞培養(段階2)平均累積IgGレベルを示す。過去の変更前AGTバッチについては、±3SDが破線として含まれる。
【0030】
(発明の記述)
本発明は、配列番号36を含む重鎖(HC)及び配列番号37を含む軽鎖(LC)を有する抗TNF抗体を含む組成物、及びかかる抗TNF抗体を生成するための製造プロセスを提供する。
【0031】
本明細書で使用するとき、「抗腫瘍壊死因子α抗体」、「抗TNF抗体」、「抗TNF抗体部分」若しくは「抗TNF抗体断片」、及び/又は「抗TNF抗体変異体」などは、本発明の抗体の中に組み込むことができる、重鎖若しくは軽鎖の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)若しくはそのリガンド結合部分、重鎖若しくは軽鎖可変領域、重鎖若しくは軽鎖定常領域、フレームワーク領域、又はこれらの任意の部分、あるいはTNF受容体又は結合タンパク質の少なくとも一つの部分などであるがこれらに限定されない免疫グロブリン分子の少なくとも一部分を含む分子を含む、任意のタンパク質又はペプチド含有分子を含む。かかる抗体は、任意選択的に、特定のリガンドに更に影響を及ぼし、これらに限定されないが、かかる抗体は、インビトロで、その場で、及び/又はインビボで、少なくとも1つのTNF活性若しくは結合、又はTNF受容体活性若しくは結合を調節、減少、増加、拮抗、作動、軽減、緩和、遮断、阻害、抑止、及び/又は干渉する。非限定的な例として、本発明の好適な抗TNF抗体、特定された部分又は変異体は、少なくとも1つのTNF又はその特定された部分、変異体若しくはドメインに結合することができる。好適な抗TNF抗体、特定された部分又は変異体は又、任意選択的に、RNA、DNA、若しくはタンパク質合成、TNF放出、TNF受容体シグナル伝達、膜TNF切断、TNF活性、TNF生成、及び/又は合成などであるがこれらに限定されない、TNF活性又は機能のうちの少なくとも1つに影響を及ぼすこともできる。「抗体」という用語は、更に、抗体、その消化断片、特定部分及び変異体を包含することを意図し、これには抗体模倣薬が挙げられ、あるいは抗体の構造及び/若しくは機能を模倣する抗体の部分若しくはその特定断片若しくは一部を含み、単鎖抗体及びその断片が挙げられる。機能断片としては、哺乳動物のTNFに結合する抗原結合断片が挙げられる。例えば、Fab(例えば、パパイン消化による)、Fab’(例えば、ペプシン消化及び部分的還元による)及びF(ab’)2(例えば、ペプシン消化による)、facb(例えば、プラスミン消化による)、pFc’(例えば、ペプシン又はプラスミン消化による)、Fd(例えば、ペプシン消化、部分的還元及び再集合による)、Fv又はscFv(例えば、分子生物学的技術による)断片が挙げられるがこれらに限定されない、TNF又はその部分に結合することができる抗体断片が、本発明に包含される(例えば、上記のColligan,Immunologyを参照のこと)。
【0032】
かかる断片は、当該技術分野において既知であるように、及び/又は本明細書に記載されるように、酵素切断、合成又は組換え技術により産生することができる。抗体は、天然の終止部位の上流に1つ又は2つ以上の終止コドンが導入された抗体遺伝子を使用して、様々な切断型でも産生され得る。例えば、F(ab’)2重鎖部分をコードする遺伝子の組合せは、重鎖のCH1ドメイン及び/又はヒンジ領域をコードするDNA配列を含むよう設計することができる。抗体の種々の部分を従来技術により化学的に結合することができ、又は遺伝子工学技術を使用して切れ目なく連続するタンパク質として調製することができる。
【0033】
本明細書で使用するとき、用語「ヒト抗体」は、実質的にタンパク質の全ての部分(例えば、CDR、フレームワーク、CL、CHドメイン(例えば、CH1、CH2、及びCH3)、ヒンジ(VL、VH))がヒトにおいて実質的に非免疫原性であり、有する配列の変化又は変異がごく軽微なものである抗体を指す。同様に、霊長類(サル、ヒヒ、チンパンジーなど)、げっ歯類(マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ハムスターなど)、及びその他の哺乳動物を指定された抗体は、かかる種、亜属、属、亜科、科に特異的な抗体を指す。更に、キメラ抗体は、上記の任意の組合せを含む。このような変化又は変異は、場合によりかつ好ましくは、修飾していない抗体に比べて、ヒト又はその他の種における免疫原性を保持するか、又は低減させる。したがって、ヒト抗体は、キメラ抗体又はヒト化抗体とは異なる。ヒト抗体は、機能的に再構成されたヒト免疫グロブリン(例えば、重鎖及び/又は軽鎖)遺伝子を発現することができる、ヒト以外の動物、又は原核若しくは真核細胞により産生され得ることが指摘される。更に、ヒト抗体が単鎖抗体である場合、天然のヒト抗体では見られないリンカペプチドを含むことができる。例えば、Fvは、重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域とを接続する2~約8個のグリシン又はその他のアミノ酸残基などのリンカペプチドを含むことができる。このようなリンカペプチドは、ヒト由来のものとみなされる。
【0034】
少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナル、好ましくはヒト又はヒト化抗体である、二重特異的(例えば、DuoBody(登録商標))、異種特異的、異種結合性、又は類似の抗体を使用してもよい。この場合では、結合特異性のうち一方は少なくとも1つのTNFタンパク質に対するものであり、他方は任意のその他の抗原に対するものである。二重特異的抗体の製造方法は、技術分野において既知である。従来、二重特異的抗体の組換え体生成は、2種の免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の共発現に基づくが、ここで2本の重鎖は異なる特異性を有する(Milstein and Cuello,Nature 305:537(1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の無作為な組合せのために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子の可能な混合物を産生し、これらのうち1種のみが正しい二重特異的構造を有する。通常、親和性クロマトグラフィー工程によって行われる正しい分子の精製は、生成物の収率が低くて手間がかかるため、二重特異性抗体の生成を促進するための異なる手法が開発されている。
【0035】
完全長二重特異性抗体は、例えば、インビトロでの無細胞環境において又は共発現を使用して、異なる特異性を有する2つの抗体半分子のヘテロ二量体形成に好都合になるように各半分子における重鎖CH3界面に置換を導入することによって、2つの一特異性二価抗体間でのFabアーム交換(又は半分子交換)を使用して生成され得る。Fabアーム交換反応は、ジスルフィド結合異性化反応及びCH3ドメインの解離-会合の結果である。親単一特異性抗体のヒンジ領域における重鎖ジスルフィド結合は減少する。親単一特異性抗体のうち1つの得られた遊離システインは、第2の親単一特異性抗体分子のシステイン残基と重鎖内ジスルフィド結合を形成し、同時に、親抗体のCH3ドメインは、解離-会合により解放及び再形成する。FabアームのCH3ドメインは、ホモ二量体化よりもヘテロ二量体化に有利となるように操作され得る。得られた生成物は、それぞれ異なるエピトープに結合することができる、2つのFabアーム又は半分子を有する二重特異性抗体である。
【0036】
本明細書で使用するとき、「ホモ二量体形成」は、同一のCH3アミノ酸配列を有する2本の重鎖の相互作用を意味する。本明細書で使用するとき、「ホモ二量体」は、同一のCH3アミノ酸配列を有する2本の重鎖を有する抗体を意味する。
【0037】
本明細書で使用するとき、「ヘテロ二量体形成」は、同一でないCH3アミノ酸配列を有する2本の重鎖の相互作用を意味する。本明細書で使用するとき、「ヘテロ二量体」は、同一でないCH3アミノ酸配列を有する2本の重鎖を有する抗体を意味する。
【0038】
「ノブインホール(knob-in-hole)」戦略(例えば、国際公開第2006/028936号を参照のこと)を使用して、完全長二重特異性抗体を生成することができる。簡潔に述べると、ヒトIgGにおけるCH3ドメインの界面を形成する選択されたアミノ酸は、ヘテロ二量体形成を促進するように、CH3ドメイン相互作用に影響を及ぼす位置において変異され得る。小さな側鎖を有するアミノ酸(ホール)が、第1の抗原に特異的に結合する抗体の重鎖内に導入され、大きな側鎖を有するアミノ酸(ノブ)が、第2の抗原に特異的に結合する抗体の重鎖内に導入される。2つの抗体の共発現後に、ヘテロ二量体が、「ホール」を有する重鎖と「ノブ」を有する重鎖との優先的な相互作用の結果として形成される。ノブ及びホールを形成する例示的なCH3置換の対は、T366Y/F405A、T366W/F405W、F405W/Y407A、T394W/Y407T、T394S/Y407A、T366W/T394S、F405W/T394S、及びT366W/T366S_L368A_Y407Vである(第1の重鎖の第1のCH3ドメインにおける修飾された位置/第2の重鎖の第2のCH3ドメインにおける修飾された位置として表す)。
【0039】
他の戦略、例えば、1つのCH3表面における正に荷電した残基及び第2のCH3表面における負に荷電した残基を置換することによる静電的相互作用を使用する重鎖ヘテロ二量体形成の促進が、米国特許出願公開第2010/0015133号、米国特許出願公開第2009/0182127号、米国特許出願公開第2010/028637号、又は米国特許出願公開第2011/0123532号に記載されるように使用されてもよい。他の戦略では、ヘテロ二量体形成は、米国特許出願公開第2012/0149876号又は同第2013/0195849号に記載されるように、次の置換:L351Y_F405A_Y407V/T394W、T366I_K392M_T394W/F405A_Y407V、T366L_K392M_T394W/F405A_Y407V、L351Y_Y407A/T366A_K409F、L351Y_Y407A/T366V_K409F、Y407A/T366A_K409F、又はT350V_L351Y_F405A_Y407V/T350V_T366L_K392L_T394W(第1の重鎖の第1のCH3ドメインにおける修飾された位置/第2の重鎖の第2のCH3ドメインにおける修飾された位置として表す)により促進することができる。
【0040】
上述された方法に加えて、二重特異性抗体は、国際公開第2011/131746号に記載される方法に従って、インビトロでの無細胞環境において、2つの単一特異的ホモ二量体抗体のCH3領域中に非対称な変異を導入し、ジスルフィド結合を異性化させる還元条件下において、2つの親単一特異性ホモ二量体抗体から二重特異性ヘテロ二量体抗体を形成することにより生成され得る。本方法において、第1の単一特異性二価抗体及び第2の単一特異性二価抗体は、ヘテロ二量体の安定性を促進するCH3ドメインにおいてある特定の置換を有するように改変されるが、これらの抗体は、ヒンジ領域におけるシステインがジスルフィド結合を異性化させるために十分な還元条件下において一緒にインキュベートされ、それにより、Fabアーム交換により二重特異性抗体が生成される。インキュベート条件は、最適には、非還元条件に戻され得る。使用され得る例示的な還元剤は、2-メルカプトエチルアミン(2-MEA)、ジチオスレイトール(DTT)、ジチオエリスリトール(DTE)、グルタチオン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、L-システイン、及びベータ-メルカプトエタノールであり、好ましくは、2-メルカプトエチルアミン、ジチオスレイトール、及びトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンからなる群から選択される還元剤である。例えば、少なくとも20℃の温度において、少なくとも25mMの2-MEAの存在下又は少なくとも0.5mMのジチオスレイトールの存在下で、pH5~8、例えば、pH7.0又はpH7.4において、少なくとも90分のインキュベートが使用されてもよい。
【0041】
本発明の方法及び組成物において有用である抗TNF抗体(TNF抗体とも称される)は、TNFへの高親和性結合、並びに任意選択的に及び好ましくは低毒性を有することを任意選択的に特徴とし得る。具体的には、可変領域、定常領域、及びフレームワークなどの個々の構成要素が、個々に及び/又は集合的に、任意選択でかつ好ましくは、低い免疫原性を有する、本発明の抗体、その特定の断片、又は変異体が本発明において有用である。本発明で使用することができる抗体は、任意選択で、症状の測定可能な緩和並びに低い及び/又は許容できる毒性で、長期間患者を処置する能力を特徴とする。低い若しくは許容できる免疫原性、及び/又は高い親和性、並びに他の好適な特性が、得られる治療結果に寄与することができる。「低い免疫原性」は、本明細書では、処置される患者の約75%未満、若しくは好ましくは約50%未満で有意にHAHA、HACA、若しくはHAMA応答が増加する、及び/又は、処置される患者において低い力価(二重抗原酵素免疫アッセイで測定したとき約300未満、好ましくは約100未満)が増加することとして定義される(Elliott et al.,Lancet 344:1125-1127(1994)、これは参照により全体が本明細書に組み込まれる)。
【0042】
有用性:本発明の単離核酸は、細胞、組織、器官又は動物(哺乳類及びヒトを含む)において測定し、又は作用して、免疫障害若しくは疾患、循環器障害若しくは疾患、感染性、悪性及び/若しくは神経性障害又は疾患のうちの少なくとも1つから選択されるがこれらに限定されない、少なくとも1つのTNF状態を診断、監視、調節、処置、緩和、発生を予防するのを助ける、又はその症状を低減するために使用され得る、少なくとも1つの抗TNF抗体又はその特定された変異体を生成するために使用され得る。
【0043】
かかる方法は、症状、作用、又は機序のかかる調節、処置、緩和、予防、若しくは低減を必要としている細胞、組織、器官、動物又は患者に、少なくとも1つの抗TNF抗体を含む有効量の組成物又は医薬組成物を投与することを含み得る。有効量は、本明細書に記載される、又は関連分野で知られている、既知の方法を使用して行い決定して、単回(例えば、ボーラス)、複数回、若しくは持続投与当たり約0.001~500mg/kgの量、又は単回、複数回、若しくは持続投与当たり0.01~5000μg/mLの血清濃度を達成する量、又はこの中の任意の有効範囲若しくは値を含み得る。引用文献。本明細書で引用する全ての刊行物又は特許は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、本発明の時点での最高水準を示し、かつ/又は本発明の説明及び使用可能性を提供する。刊行物は、電子形式若しくは印刷形式で記録されたものを全て含む任意のメディア形式で利用可能な、任意の科学刊行物若しくは特許公報又は任意の他の情報を指す。以下の文献は、参照により全体が本明細書に組み込まれる:Ausubel,et al.,ed.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.,NY,NY(1987-2001)、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor,NY(1989)、Harlow and Lane,antibodies,a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,NY(1989)、Colligan,et al.,eds.,Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,Inc.,NY(1994-2001)、Colligan et al.,Current Protocols in Protein Science,John Wiley & Sons,NY,NY,(1997-2001)。
【0044】
本発明の抗体:配列番号1、2及び3の重鎖可変CDR領域の全て、並びに/又は配列番号4、5及び6の軽鎖可変CDR領域の全てを含む、本発明の少なくとも1つの抗TNF抗体は、任意選択的に、当該技術分野において周知であるように、細胞株、混合細胞株、不死化細胞又は不死化細胞のクローン集団により産生され得る。例えば、Ausubelら編、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley & Sons,Inc.,NY、NY(1987~2001)、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor,NY(1989)、Harlow and Lane,antibodies,a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,NY(1989)、Colligan,et al.,eds.,Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,Inc.,NY(1994-2001)、Colligan et al.,Current Protocols in Protein Science,John Wiley & Sons,NY,NY,(1997-2001)を参照されたい。
【0045】
ヒトTNFタンパク質又はその断片に特異的なヒト抗体は、単離された及び/若しくはTNFタンパク質、又はそれらの一部分(合成ペプチドなどの合成分子を含む)などの適切な免疫原性抗原に対して生じ得る。その他の特異的な又は一般的な哺乳動物の抗体も又、同様に生じることができる。免疫原性をもつ抗原の調製及びモノクローナル抗体の生成は、任意の好適な技術を使用して行うことができる。
【0046】
1つのアプローチでは、ハイブリドーマは、適切な不死化細胞株(例えば、Sp2/0、Sp2/0-AG14、NSO、NS1、NS2、AE-1、L.5、>243、P3X63Ag8.653、Sp2 SA3、Sp2 MAI、Sp2 SS1、Sp2 SA5、U937、MLA 144、ACT IV、MOLT4、DA-1、JURKAT、WEHI、K-562、COS、RAJI、NIH 3T3、HL-60、MLA 144、NAMAIWA、NEURO 2Aなどであるがこれらに限定されない骨髄腫細胞株、又はヘテロミローマ(heteromylomas)、その融合産物、又はそれらに由来する任意の細胞若しくは融合細胞、又は当該技術分野において既知の任意の他の好適な細胞株を融合させることにより産生される。例えば、www.atcc.org、www.lifetech.com.などを参照のこと。単離若しくはクローニングされた脾臓、末梢血、リンパ、扁桃、又はその他の免疫細胞若しくはB細胞含有細胞などであるがこれらに限定されない抗体産生細胞、あるいは組換え若しくは内因性、ウイルス、細菌、藻類、原核生物、両生類、昆虫類、爬虫類、魚類、哺乳動物、げっ歯類、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ヒツジ、霊長類、真核生物、ゲノムDNA、cDNA、rDNA、ミトコンドリアDNA若しくはRNA、葉緑体DNA若しくはRNA、hnRNA、mRNA、tRNA、一本鎖、二本鎖若しくは三本鎖、ハイブリダイズなど、又はそれらの組合せのような、内因性若しくは異種の核酸のいずれかとして、重鎖若しくは軽鎖定常若しくは可変若しくはフレームワーク若しくはCDR配列を発現する任意のその他の細胞を有する。例えば、参照により全体が本明細書に組み込まれる、上記のAusubel、及び上記のColligan,Immunologyの第2章を参照されたい。
【0047】
抗体産生細胞は、目的の抗原で免疫されたヒト又は他の好適な動物の末梢血、又は好ましくは脾臓若しくはリンパ節から得ることもできる。任意のその他の好適な宿主細胞を使用して、本発明の抗体、特定の断片又はその変異体をコードする異種核酸若しくは内在核酸を発現させることもできる。融合細胞(ハイブリドーマ)又は組換え細胞は、選択的培養条件又はその他の好適な周知の方法を使用して単離し、限界希釈若しくは細胞選別又はその他の周知の方法によってクローニングすることができる。所望の特異性を有する抗体を産生する細胞は、好適なアッセイ(例えば、ELISA)によって選択することができる。
【0048】
ペプチド又はタンパク質ライブラリから組換え抗体を選択する方法が挙げられるがこれらに限定されない、必要とされる特異性を有する抗体を産生又は単離するのに好適なその他の方法を使用することができる(例えば、バクテリオファージ、リボソーム、オリゴヌクレオチド、RNA、cDNAなどのディスプレイライブラリであるがこれらに限定されるものではなく、例えば、Cambridge antibody Technologies,Cambridgeshire,UK、MorphoSys,Martinsreid/Planegg,DE、Biovation,Aberdeen,Scotland,UK、BioInvent,Lund,Sweden、Dyax Corp.,Enzon,Affymax/Biosite、Xoma,Berkeley,CA、Ixsys.から入手可能である)。例えば、欧州特許第368,684号、国際出願第GB91/01134号、国際出願第GB92/01755号、国際出願第GB92/002240号、国際出願第GB92/00883号、国際出願第GB93/00605号、米国特許出願第08/350260号(5/12/94)、国際出願第GB94/01422号、国際出願第GB94/02662号、国際出願第GB97/01835号、(CAT/MRC)、国際公開第90/14443号、国際公開第90/14424号、国際公開第90/14430号、国際出願第US94/1234号、国際公開第92/18619号、同第96/07754号(Scripps)、欧州特許第614 989号(MorphoSys)、国際公開第95/16027号(BioInvent)、国際公開第88/06630号、国際公開第90/3809号(Dyax)、米国特許第4,704,692号(Enzon)、国際出願第US91/02989号(Affymax)、国際公開第89/06283号、欧州特許第371998号、欧州特許第550400号、(Xoma)、欧州特許第229046号、国際出願第US91/07149号(Ixsys)、又は確率論的に生成されるペプチド若しくはタンパク質-米国特許第5723323号、同第5763192号、同第5814476号、同第5817483号、同第5824514号、同第5976862号、国際公開第86/05803号、欧州特許第590689号(Ixsys、現在はApplied Molecular Evolution(AME)、各々は、参照により全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたく、又は当該技術分野において既知であり、かつ/又は本明細書に記載される、ヒト抗体のレパートリを生成することができるトランスジェニック動物の免疫に依存する(例えば、SCIDマウス、Nguyenら、「Microbiol.Immunol.41:901-907(1997)、Sandhu et al.,Crit.Rev.Biotechnol.16:95-118(1996);Eren et al.,Immunol.93:154-161(1998)、各々が参照によりその全体が組み込まれる)。このような技術には、リボソームディスプレイ(Hanes et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94:4937-4942(May 1997)、Hanes et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:14130-14135(Nov.1998))、単一細胞抗体産生技術(例えば、選択リンパ球抗体方法(selected lymphocyte antibody method、「SLAM」)(米国特許第5,627,052号、Wen et al.,J.Immunol.17:887-892(1987)、Babcook et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:7843-7848(1996))、ゲルマイクロドロップレット及びフローサイトメトリー(Powell et al.,Biotechnol.8:333-337(1990);One Cell Systems,Cambridge,MA、Gray et al.,J.Imm.Meth.182:155-163(1995)、Kenny et al.,Bio/Technol.13:787-790(1995))、B細胞選択物(Steenbakkers et al.,Molec.Biol.Reports 19:125-134(1994)、Jonak et al.,Progress Biotech,Vol.5,In Vitro Immunization in Hybridoma Technology,Borrebaeck,ed.,Elsevier Science Publishers B.V.,Amsterdam,Netherlands(1988))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
ヒト以外の抗体又はヒト抗体を操作又はヒト化する方法も同様に使用でき、当該技術分野において周知である。一般に、ヒト化又は操作された抗体は、例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、又はその他の哺乳動物などであるがこれらに限定されない、非ヒトの供給源からの1つ又は2つ以上のアミノ酸残基を有する。これらのヒトアミノ酸残基は、しばしば「インポート」残基と呼ばれ、典型的には既知のヒト配列の「インポート」可変領域、定常領域又はその他のドメインから採取される。周知のヒトIg配列が、例えば以下に開示されており、これらは各々全体が参照により本明細書に組み込まれる:www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi、www.atcc.org/phage/hdb.html、www.sciquest.com/、www.abcam.com/、www.antibodyresource.com/onlinecomp.html、www.public.iastate.edu/~pedro/research_tools.html、www.mgen.uni-heidelberg.de/SD/IT/IT.html、www.whfreeman.com/immunology/CH05/kuby05.htm、www.library.thinkquest.org/12429/Immune/Antibody.html、www.hhmi.org/grants/lectures/1996/vlab/、www.path.cam.ac.uk/~mrc7/mikeimages.html、www.antibodyresource.com/、mcb.harvard.edu/BioLinks/Immunology.html.www.immunologylink.com/、pathbox.wustl.edu/~hcenter/index.html;www.biotech.ufl.edu/~hcl/、www.pebio.com/pa/340913/340913.html、www.nal.usda.gov/awic/pubs/antibody/、www.m.ehime-u.ac.jp/~yasuhito/Elisa.html、www.biodesign.com/table.asp、www.icnet.uk/axp/facs/davies/links.html、www.biotech.ufl.edu/~fccl/protocol.html、www.isac-net.org/sites_geo.html、aximt1.imt.uni-marburg.de/~rek/AEPStart.html、baserv.uci.kun.nl/~jraats/links1.html;www.recab.uni-hd.de/immuno.bme.nwu.edu/、www.mrc-cpe.cam.ac.uk/imt-doc/public/INTRO.html、www.ibt.unam.mx/vir/V_mice.html、imgt.cnusc.fr:8104/;www.biochem.ucl.ac.uk/~martin/abs/index.html、antibody.bath.ac.uk/;abgen.cvm.tamu.edu/lab/wwwabgen.html、www.unizh.ch/~honegger/AHOseminar/Slide01.html、www.cryst.bbk.ac.uk/~ubcg07s/、www.nimr.mrc.ac.uk/CC/ccaewg/ccaewg.htm、www.path.cam.ac.uk/~mrc7/humanisation/TAHHP.html、www.ibt.unam.mx/vir/structure/stat_aim.html、www.biosci.missouri.edu/smithgp/index.html、www.cryst.bioc.cam.ac.uk/~fmolina/Web-pages/Pept/spottech.html、www.jerini.de/fr_products.htm、www.patents.ibm.com/ibm.html.Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,U.S.Dept.Health(1983)である(各々は、参照により全体が本明細書に組み込まれる)。
【0050】
このようなインポートされた配列は、免疫原性を低減させるため、あるいは、当該技術分野において周知のように、結合、親和性、結合速度定数、解離速度定数、結合活性、特異性、半減期、又は任意のその他の好適な特性を低減、増強又は改変するために使用することができる。一般に、非ヒト若しくはヒトCDR配列の一部又は全ては、可変及び定常領域の非ヒト配列がヒト若しくは他のアミノ酸に置き換えられる間も維持される。抗体は又、任意選択的に、抗原に対する高い親和性及び他の好ましい生物学的特性を保持したままで、ヒト化され得る。この目的を達成するために、任意選択的に、ヒト化抗体を、親配列及びヒト化配列の三次元モデルを使用した、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析プロセスによって調製することが可能である。三次元の免疫グロブリンモデルが一般的に利用可能であり、当業者に周知である。選択された免疫グロブリン配列候補について確率の高い三次元立体構造を図示及び表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示を調べることにより、免疫グロブリン配列候補の機能において残基が示す可能性の高い働きの解析、すなわち免疫グロブリン候補の抗原結合能に影響する残基の解析が可能となる。このようにして、標的抗原に対する親和性の増大など、望ましい抗体特性が達成されるように、コンセンサス配列及びインポート配列から、FR残基を選択し組み合わせることができる。概して、CDR残基は、抗原結合に直接的にかつほとんど実質的に影響する。本発明の抗体のヒト化又は操作は、Winter(Jones et al.,Nature 321:522(1986)、Riechmann et al.,Nature 332:323(1988)、Verhoeyen et al.,Science 239:1534(1988))、Sims et al.,J.Immunol.151:2296(1993)、Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901(1987),Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:4285(1992)、Presta et al.,J.Immunol.151:2623(1993)、米国特許第5723323号、同第5976862号、同第5824514号、同第5817483号、同第5814476号、同第5763192号、同第5723323号、同第5,766886号、同第5714352号、同第6204023号、同第6180370号、同第5693762号、同第5530101号、同第5585089号、同第5225539号、同第4816567号、国際出願第US98/16280号、同第US96/18978号、同第US91/09630号、同第US91/05939号、同第US94/01234号、国際出願第GB89/01334号、同第GB91/01134号、同第GB92/01755号、国際公開第90/14443号、同第90/14424号、同第90/14430号、欧州特許第229246号(各々、参照によりその全体が明細書に組み込まれ、その中に引用される文献を含む)に記載されるものなどであるがこれらに限定されない、任意の周知の方法を使用して行うことができる。
【0051】
抗TNF抗体は、任意選択的に、本明細書に記載されかつ/又は当該技術分野において既知である、ヒト抗体のレパートリを生成することができるトランスジェニック動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、非ヒト霊長類など)の免疫により生成することもできる。ヒト抗TNF抗体を産生する細胞をかかる動物から単離し、本明細書に記載される方法などの好適な方法を使用して不死化してもよい。
【0052】
ヒト抗原に結合するヒト抗体のレパートリを産生することができるトランスジェニックマウスは、既知の方法(例えば、これらに限定されないが、各々全体が参照により本明細書に組み込まれる、Lonbergらに発行された米国特許第5,770,428号、同第5,569,825号、同第5,545,806号、同第5,625,126号、同第5,625,825号、同第5,633,425号、同第5,661,016号、及び同第5,789,650号、Jakobovitsらの国際公開第98/50433号、Jakobovitsらの国際公開第98/24893号、Lonbergらの国際公開第98/24884号、Lonbergらの国際公開第97/13852号、Lonbergらの国際公開第94/25585号、Kucherlapateらの国際公開第96/34096号、Kucherlapateらの欧州特許第0463151(B1)号、Kucherlapateらの欧州特許0710719(A1)号、Suraniらの米国特許第5,545,807号、Bruggemannらの国際公開第90/04036号、Bruggemannらの欧州特許第0438474(B1)号、Lonbergらの欧州特許第0814259(A2)号、Lonbergらの英国特許第2272440(A)号、Lonberg et al.Nature 368:856-859(1994),Taylor et al.,Int.Immunol.6(4)579-591(1994),Green et al,Nature Genetics 7:13-21(1994),Mendez et al.,Nature Genetics 15:146-156(1997),Taylor et al.,Nucleic Acids Research 20(23):6287-6295(1992),Tuaillon et al.,Proc Natl Acad Sci USA 90(8)3720-3724(1993)、Lonberg et al.,Int Rev Immunol 13(1):65-93(1995)、及びFishwald et al.,Nat Biotechnol 14(7):845-851(1996))によって生成することができる。概して、これらのマウスは、機能的に再構成された、又は機能的な再構成を受けることができる少なくとも1つのヒト免疫グロブリン遺伝子座に由来するDNAを含む、少なくとも1つの導入遺伝子を含む。このようなマウスの内因性免疫グロブリン遺伝子座を破壊又は欠失させて、マウスの、内因性遺伝子によりコードされている抗体の産生能を除去することができる。
【0053】
類似のタンパク質又は断片への特異的結合についての抗体のスクリーニングは、ペプチドディスプレイライブラリを使用して首尾よく達成することができる。この方法は、望ましい機能又は構造を持つ個々のメンバーについてペプチドの多数の試料採集をスクリーニングすることを伴う。ペプチドディスプレイライブラリの抗体スクリーニングは、当該技術分野において周知である。ディスプレイされたペプチド配列の長さは、3~5000個又はそれ以上のアミノ酸であり、頻繁には5~100個のアミノ酸長、多くは約8~25個のアミノ酸長であることができる。ペプチドライブラリを作成する直接化学合成法に加えて、いくつかの組換えDNA方法も記述されている。1つのタイプは、バクテリオファージ又は細胞の表面上でのペプチド配列のディスプレイを含む。各バクテリオファージ又は細胞は、特定のディスプレイされたペプチド配列をコードするヌクレオチド配列を含有する。このような方法は、国際出願第91/17271号、同第91/18980号、同第91/19818号、及び同第93/08278号に記載されている。ペプチドライブラリを作成するためのその他のシステムは、インビトロでの化学合成法及び組換え法の両方の態様を有する。国際出願第92/05258号、同第92/14843号、及び同第96/19256号を参照されたい。米国特許第5,658,754号及び同第5,643,768号も参照されたい。ペプチドディスプレイライブラリ、ベクタ、及びスクリーニングキットは、Invitrogen(Carlsbad,CA)及びCambridge antibody Technologies(Cambridgeshire,UK)のような供給元から市販されている。例えば、Enzonに譲渡された米国特許第4704692号、同第4939666号、同第4946778号、同第5260203号、同第5455030号、同第5518889号、同第5534621号、同第5656730号、同第5763733号、同第5767260号、同第5856456号、Dyaxに譲渡された米国特許第5223409号、同第5403484号、同第5571698号、同第5837500号、Affymaxに譲渡された米国特許第5427908号、同第5580717号、Cambridge antibody Technologiesに譲渡された米国特許第5885793号、Genentechに譲渡された米国特許第5750373号、Xomaに譲渡された米国特許第5618920号、同第5595898号、同第5576195号、同第5698435号、同第5693493号、同第5698417号、上記のColligan、上記のAusubel、又は上記のSambrookを参照されたい。上記特許及び刊行物の各々は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0054】
本発明の抗体は又、かかる抗体を乳中に産生するヤギ、ウシ、ウマ、ヒツジなどのトランスジェニック動物又は哺乳動物を提供するために、核酸をコードする少なくとも1つの抗TNF抗体を使用して調製することもできる。このような動物は、周知の方法を使用して準備することができる。例えば、これらに限定されないが、米国特許第5,827,690号、同第5,849,992号、同第4,873,316号、同第5,849,992号、同第5,994,616号、同第5,565,362号、同第5,304,489号などを参照されたい(それらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0055】
本発明の抗体は、植物部分又はそれから培養された細胞において、かかる抗体、特定された部分又は変異体を産生するトランスジェニック植物及び培養された植物細胞(例えば、タバコ及びトウモロコシであるが、これらに限定されない)を提供するために、少なくとも1つの抗TNF抗体コード核酸を使用して更に調製することができる。非限定的な例として、例えば、誘導プロモータを用い、組換えタンパク質を発現するトランスジェニックタバコ葉をうまく使用して、大量の組換えタンパク質が提供されてきた。例えば、Cramer et al.,Curr.Top.Microbol.Immunol.240:95~118(1999)及びその中で引用される文献を参照されたい。又、トランスジェニックトウモロコシは、その他の組換え系において生成されるタンパク質又は天然資源から精製されるタンパク質に等しい生物学的活性を有する哺乳動物タンパク質を、商業生成レベルで発現するために使用されてきた。例えば、Hood et al.,Adv.Exp.Med.Biol.」第464:127~147(1999)及びその中で引用される文献を参照のこと。抗体は、タバコ種子及びポテト塊茎を含む、一本鎖抗体(scFv)などの抗体断片を含むトランスジェニック植物種子からも大量に産生されてきた。例えば、Conradら、「Plant Mol.Biol.」38:101~109(1998)及びその中で引用される文献を参照のこと。したがって、本発明の抗体は、既知の方法により、トランスジェニック植物を使用して産生することもできる。例えば、Fischer et al.,Biotechnol.Appl.Biochem.30:99-108(Oct.,1999)、Ma et al.,Trends Biotechnol.13:522-7(1995)、Ma et al.,Plant Physiol.109:341-6(1995)、Whitelam et al.,Biochem.Soc.Trans.22:940-944(1994)、及びこれらの中で引用される文献も参照されたい。又、限定されないが、一般に抗体の植物発現についても参照のこと。上記文献の各々は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0056】
本発明の抗体は、広範囲にわたる親和性(KD)でヒトTNFに結合することができる。好ましい実施形態では、本発明の少なくとも1つのヒトmAbは、任意選択的にヒトTNFに高い親和性で結合することができる。例えば、ヒトmAbは、ヒトTNFを約10-7M以下、例えば0.1~9.9(又はその中の任意の範囲若しくは値)X10-7、10-8、10-9、10-10、10-11、10-12、10-13又はその中の任意の範囲若しくは値など(ただしこれらに限定されない)のKDで結合することができる。
【0057】
抗原に対する抗体の親和性又は結合活性は、任意の好適な方法を用いて実験により求めることができる。(例えば、Berzofsky,et al.,「Antibody-Antigen Interactions,」Fundamental Immunology,Paul,W.E.,Ed.,Raven Press:New York,NY(1984)、Kuby,Janis Immunology,W.H.Freeman and Company:New York,NY(1992)、及び本明細書に記載される方法を参照されたい)。特定の抗体抗原相互作用について測定される親和性は、異なる条件(例えば、塩濃度、pH)下で測定された場合に異なることができる。したがって、親和性及び他の抗原結合パラメータ(例えば、KD、Ka、Kd)の測定は、好ましくは、抗体及び抗原の標準化溶液、及び本明細書で記載される緩衝剤などの標準化緩衝剤を用いて行われる。
【0058】
核酸分子。配列番号1、2、3、4、5、6、7、8のうちの少なくとも1つの隣接アミノ酸の少なくとも70~100%をコードするヌクレオチド配列、特定された断片、変異体若しくはそれらのコンセンサス配列、又はこれらの配列のうちの少なくとも1つを含む寄託ベクタなどの本明細書に提供される情報を使用して、配列番号1、2及び3の重鎖可変CDR領域の全て並びに/又は配列番号4、5及び6の軽鎖可変CDR領域の全てを含む少なくとも1つの抗TNF抗体をコードする本発明の核酸分子は、本明細書に記載される又は当該技術分において既知の方法を使用して得ることができる。
【0059】
本発明の核酸分子は、mRNA、hnRNA、tRNA若しくは任意の他の形態のようなRNAの形態、又はクローニングにより得られる若しくは合成的に産生されるcDNA及びゲノムDNAが挙げられるがこれらに限定されないDNAの形態、又はこれらの任意の組合せであってもよい。DNAは、3本鎖、2本鎖若しくは1本鎖、又はこれらの任意の組合せであってもよい。DNA又はRNAの少なくとも1本の鎖の任意の部分は、センス鎖としても知られるコード鎖であってもよいし、又はアンチセンス鎖と呼ばれる、非コード鎖であってもよい。
【0060】
本発明の単離された核酸分子は、任意選択的に1つ又は2つ以上のイントロンを有するオープンリーディングフレーム(ORF)、例えば、これらに限定されないが、少なくとも1つの重鎖(例えば、配列番号1~3)若しくは軽鎖(例えば、配列番号4~6)のCDR1、CDR2、及び/又はCDR3のような、少なくとも1つのCDRの少なくとも1つの特定された部分を含む核酸分子、抗TNF抗体若しくは可変領域のコード配列(例えば、配列番号7、8)を含む核酸分子、並びに上述の核酸分子とは実質的に異なるが、遺伝子コードの縮重により、本明細書に記載されかつ/又は当該技術分野において既知である少なくとも1つの抗TNF抗体を尚もコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含み得る。当然のことながら、遺伝子コードは、技術分野において周知である。したがって、当業者には、本発明の特定の抗TNF抗体をコードする、かかる縮重核酸変異体を生成することは、日常的であろう。例えば、上記のAusubelらを参照されたい。このような核酸変異体は、本発明に含まれる。本発明の単離核酸分子の非限定的な例としては、それぞれ、HC CDR1、HC CDR2、HC CDR3、LC CDR1、LC CDR2、LC CDR3、のHC可変領域及びLC可変領域をコードする核酸の非限定的な例に対応する、配列番号10、11、12、13、14、15が挙げられる。
【0061】
本明細書に示されるように、抗TNF抗体をコードする核酸を含む本発明の核酸分子としてとしては、それ自体で抗体断片のアミノ酸配列をコードするもの、抗体の全長若しくは抗体の一部をコードする配列、抗体、断片若しくは部分のコード配列、並びに追加の配列、例えば、少なくとも1つのイントロンなど、前述の追加のコード配列を伴って、又は伴わずに、非コード5’及び3’配列、例えば、スプライシング及びポリアデニル化シグナル(例えば、mRNAのリボソーム結合及び安定性)を含む、転写、mRNAプロセシングにおいて役割を果たす転写された非翻訳配列を含むがこれに限定されない追加の非コード配列と共に、少なくとも1つのシグナルリーダ若しくは融合ペプチドのコード配列、追加のアミノ酸、例えば、追加の機能を提供するアミノ酸をコードする追加のコード配列を挙げることができるが、これらに限定されない。したがって、抗体をコードする配列はマーカ配列に融合させることができ、例えば、マーカ配列は、これを融合させた抗体断片又は部分を含む抗体の精製を促進するペプチドをコードする配列である。
【0062】
本明細書に記載されるポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチド。本発明は、本明細書で開示されるポリヌクレオチドに対して、選択的なハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする単離核酸を提供する。したがって、本実施形態のポリヌクレオチドは、かかるポリヌクレオチドを含む核酸を単離、検出、及び/又は定量するために使用することができる。例えば、本発明のポリヌクレオチドを使用して、寄託されたライブラリにおける部分長又は完全長クローンを同定、単離、又は増幅することができる。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、単離された、又はそうでなければヒト若しくは哺乳動物の核酸ライブラリのcDNAに相補的な、ゲノム配列又はcDNA配列である。
【0063】
好ましくは、cDNAライブラリは、完全長配列の少なくとも80%、好ましくは完全長配列の少なくとも85%又は90%、及びより好ましくは完全長配列の少なくとも95%を含む。このcDNAライブラリは、稀な配列の発現量を増大させるよう正規化することができる。相補配列に対する配列同一性が低い配列を使用する、低又は中ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件が典型的なものであるが、これに限定されない。同一性がより高い配列には、任意選択で、中及び高ストリンジェンシーの条件を使用することができる。低ストリンジェンシー条件は、約70%の配列同一性をもつ配列の選択的ハイブリダイゼーションを可能にし、オーソロガス又はパラロガス配列を特定同定するために利用できる。
【0064】
任意選択的に、本発明のポリヌクレオチドは、本明細書に記載されているポリヌクレオチドによってコード化される抗体の少なくとも一部をコードすることになる。本発明のポリヌクレオチドは、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドに対する選択的ハイブリダイゼーションのために利用可能な核酸配列を包含する。例えば、各々全体が参照により本明細書に組み込まれる、上記のAusubel、上記のColliganを参照されたい。
【0065】
核酸の構築。本発明の単離核酸は、当該技術分野にて周知のように、(a)組換え方法、(b)合成技術、(c)精製技術、又はこれらの組合せを使用して作製することができる。
【0066】
核酸には、本発明のポリヌクレオチドに加えて、都合よく配列を含ませることができる。例えば、1つ又は2つ以上のエンドヌクレアーゼ制限部位を含むマルチクローニングサイトを核酸に挿入して、ポリヌクレオチドの単離に役立てることができる。又、翻訳可能な配列を挿入して、本発明の翻訳されたポリヌクレオチドの単離に役立てることができる。例えば、ヘキサヒスチジンマーカー配列は、本発明のタンパク質を精製するのに便利な手段を提供する。本発明の核酸(コード配列を除く)は、任意選択的に、本発明のポリヌクレオチドのクローニング及び/又は発現のためのベクタ、アダプタ又はリンカである。
【0067】
かかるクローニング配列及び/又は発現配列に追加の配列を付加して、クローニング及び/又は発現におけるそれらの機能を最適化すること、ポリヌクレオチドの単離に役立てること、又は細胞へのポリヌクレオチドの導入を改善することができる。クローン化ベクタ、発現ベクタ、アダプタ、及びリンカの使用は、技術分野において周知である。(例えば、上記のAusubel、又は上記のSambrookを参照のこと)。
【0068】
核酸を構築するための組換え方法。RNA、cDNA、ゲノムDNA、又はこれらの任意の組合せのような本発明の単離核酸組成物は、当業者に既知の任意の数のクローニング手順を用いて生物源から得ることができる。いくつかの実施形態では、本発明のポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下で選択的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブが、cDNA又はゲノムDNAライブラリ内の望ましい配列の同定に使用される。RNAの単離、並びにcDNA及びゲノムライブラリの構築は、当業者には周知である。(例えば、上記のAusubel、又は上記のSambrookを参照のこと)。
【0069】
核酸のスクリーニング及び単離方法。本明細書で開示されているような、本発明のポリヌクレオチドの配列に基づいたプローブを用いて、cDNA又はゲノムライブラリをスクリーニングすることができる。プローブを使用して、ゲノムDNA又はcDNA配列にハイブリダイズさせて、同じ又は異なる生体の相同遺伝子を単離することができる。当業者であれば、アッセイに様々な度合のハイブリダイゼーションストリンジェンシーを用いることができ、ハイブリダイゼーション又は洗浄媒質のいずれかをストリンジェントなものにできることを理解する。ハイブリダイゼーション条件がストリンジェントになるほど、二重鎖の形成が生じる際のプローブと標的との間の相補性の度合が大きくなるはずである。ストリンジェンシーの程度は、温度、イオン強度、pH、及びホルムアミドのような部分的に変性する溶媒の存在、のうちの1つ又は2つ以上によって制御され得る。例えば、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、例えば、0%~50%の範囲内でのホルムアミド濃度の操作により反応溶液の極性を変えることにより首尾よく変更される。検出可能な結合に必要とされる相補性(配列同一性)の程度は、ハイブリダイゼーション媒質及び/又は洗浄媒質のストリンジェンシーによって異なる。相補性の程度は、最適には100%、又は70~100%、又はその中の任意の範囲若しくは値である。しかしながら、プローブ及びプライマ中の配列のわずかな違いは、ハイブリダイゼーション及び/又は洗浄媒質のストリンジェンシーを低減させることで埋め合わせることができることを理解すべきである。
【0070】
RNA又はDNAの増幅方法は技術分野において周知であり、本明細書で紹介する教示及び指針に基づいて、過度の実験無しに、本発明に従って使用可能である。
【0071】
DNA又はRNA増幅の既知の方法としては、ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction、PCR)及び関連する増幅プロセス(例えば、Mullisらの米国特許第4,683,195号、同第4,683,202号、同第4,800,159号、同第4,965,188号、Taborらの米国特許第4,795,699号及び同第4,921,794号、Innisの米国特許第5,142,033号、Wilsonらの米国特許第5,122,464号、Innisの米国特許第5,091,310号、Gyllenstenらの米国特許第5,066,584号、Gelfandらの米国特許第4,889,818号、Silverらの米国特許第4,994,370号、Biswasの米国特許第4,766,067号、Ringoldの米国特許第4,656,134号を参照されたい)、及び二本鎖DNA合成のためのテンプレートとして標的配列に対してアンチセンスRNAを使用するRNA介在増幅(Malekらの米国特許第5,130,238号、商標名NASBAを持つ)が挙げられるが、これらに限定されない(これらの文献の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる)。(例えば、上記のAusubel、又は上記のSambrookを参照されたい。)
【0072】
例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を用いて、ゲノムDNA又はcDNAライブラリから直接、本発明のポリヌクレオチド及び関連する遺伝子の配列を増幅することができる。PCR及び他のインビトロ増幅方法は又、例えば、発現すべきタンパク質をコードする核酸配列をクローニングすること、試料中の所望のmRNAの存在を検出するため、核酸の配列決定のため、又は他の目的のためのプローブとして用いる核酸を作製することに関し有用であり得る。インビトロでの増幅方法によって当業者を導くのに充分な技術の例は、上記のBerger、上記のSambrook、及び上記のAusubel、並びにMullisらの米国特許第4,683,202号(1987)、及びInnis,et al.,PCR Protocols A Guide to Methods and Applications,Eds.,Academic Press Inc.,San Diego,CA(1990)に見られる。ゲノムPCR増幅用の市販キットは技術分野において既知である。例えば、Advantage-GC Genomic PCR Kit(Clontech)を参照されたい。加えて、例えば、T4遺伝子32タンパク質(Boehringer Mannheim)を用いて、長いPCR産物の収率を改善することができる。
【0073】
核酸を構築するための合成方法。本発明の単離核酸は、既知の方法による直接化学合成によっても調製可能である(例えば、上記のAusubelらを参照)。化学合成は、概して、相補的配列とのハイブリダイゼーションによって、又は1本鎖をテンプレートとして使用するDNAポリメラーゼとの重合によって、2本鎖DNAに変換可能な1本鎖オリゴヌクレオチドを産生する。当業者であれば、DNAの化学合成は約100又はそれ以上の塩基の配列に限定され得るが、より長い配列は、より短い配列のライゲーションによって得ることができることを認識する。
【0074】
組換え発現カセット。本発明は、本発明の核酸を含む組換え発現カセットを更に提供する。本発明の核酸配列、例えば本発明の抗体をコードするcDNA又はゲノム配列を用いて、少なくとも1つの所望の宿主細胞に導入できる組換え発現カセットを構築することができる。組換え発現カセットは、典型的には、意図される宿主細胞においてポリヌクレオチドの転写を導く、転写開始調節配列に機能的に連結される、本発明のポリヌクレオチドを含む。異種及び非異種(すなわち、内因性)プロモータの両方を使用して、本発明の核酸の発現を導くことができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、プロモータ、エンハンサ、又は他の要素として機能する単離核酸を、本発明のポリヌクレオチドの発現を上方又は下方調節するために、本発明のポリヌクレオチドの非異種形の適切な位置(上流、下流、又はイントロン内)に導入することができる。例えば、変異、欠失、及び/又は置換により、インビボ又はインビトロで内因性プロモータを変化させることができる。
【0076】
ベクタ及び宿主細胞。本発明は、本発明の単離核酸分子を含むベクタ、組換えベクタで遺伝子操作された宿主細胞、及び当該技術分野において周知である組換え技術による少なくとも1つの抗TNF抗体の生成にも関する。例えば、各々参照により全体が本明細書に組み込まれる、上記のSambrookら、上記のAusubelらを参照されたい。
【0077】
ポリヌクレオチドは、任意選択で、宿主の増殖についての選択マーカを含有するベクタに結合することができる。概して、プラスミドベクタは、リン酸カルシウム沈殿物のような沈殿物内、又は荷電脂質との複合体内に導入される。ベクタがウイルスである場合は、適切なパッケージング細胞株を用いてインビトロでこれをパッケージングし、その後、宿主細胞内に形質導入することができる。
【0078】
DNA挿入物は、適切なプロモータに機能的に連結されるべきである。発現コンストラクトは、転写開始部位、転写終結部位、及び転写された領域内では翻訳のためのリボソーム結合部位を更に含む。構築物により発現される成熟した転写産物のコード部分は、好ましくは、最初に翻訳開始部位を含み、翻訳されるmRNAの最後に終止コドン(例えば、UAA、UGA又はUAG)が適切に位置することになる。哺乳動物又は真核生物の細胞の発現ではUAA及びUAGが好ましい。
【0079】
発現ベクタは、好ましくは少なくとも1つの選択マーカを含むが、これは任意選択である。かかるマーカは、例えば、真核細胞培養のためのメトトレキサート(MTX)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR、米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号、同第4,656,134号、同第4,956,288号、同第5,149,636号、同第5,179,017号、アンピシリン、ネオマイシン(G418)、マイコフェノール酸又はグルタミンシンセターゼ(GS)(米国特許第5,122,464号、同第5,770,359号、同第5,827,739号)抵抗性遺伝子、並びにE.coli及び他の細菌又は原核生物における培養のためのテトラサイクリン又はアンピシリン抵抗性遺伝子を含むが、これらに限定されない(上記特許は、参照により全体が本明細書に組み込まれる)。上記の宿主細胞に対して適切な培養培地及び条件は、技術分野において周知である。好適なベクタは、当業者にとって容易に明白となる。宿主細胞へのベクタコンストラクトの導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストランを介在させたトランスフェクション、カチオン性脂質を介在させたトランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、感染又は他の周知の方法により達成することができる。このような方法については、上記のSambrook、第1~4章及び第16~18章、上記のAusubel、第1、9、13、15、16章などの技術分野に記載されている。
【0080】
本発明の少なくとも1つの抗体は、融合タンパク質などの修飾された形態で発現され得、分泌シグナルだけでなく、追加の異種機能領域も含み得る。例えば、追加アミノ酸の領域、特に荷電アミノ酸を抗体のN末端に追加して、精製中又は後続の処理及び保存中に、宿主細胞における安定性及び持続性を改善することができる。又、ペプチド部分を本発明の抗体に追加して、精製を促進することもできる。抗体又は少なくとも1つのその断片の最終調製前に、このような領域を除去することができる。このような方法は、上記のSambrook、第17.29~17.42章及び第18.1~18.74章、上記のAusubel、第16、17、及び18章などの多くの標準的な実験室マニュアルに記載されている。
【0081】
当業者であれば、本発明のタンパク質をコードする核酸の発現に利用可能な多数の発現系について精通している。
【0082】
別の方法としては、本発明の核酸は、本発明の抗体をコードする内因性DNAを含む宿主細胞内で、(操作により)オン切換えすることにより、宿主細胞中で発現させることができる。このような方法は、米国特許第5,580,734号、同第5,641,670号、同第5,733,746号、及び同第5,733,761号に記載されているように、当該技術分野において周知であり、上記特許は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0083】
抗体、その特定の部分又は変異体の産生に有用な細胞培養物の一例は、哺乳動物細胞である。哺乳動物細胞系は、しばしば細胞からなる単層形態を取るが、哺乳動物細胞の懸濁液又はバイオリアクターも使用可能である。無傷なグリコシル化タンパク質を発現可能ないくつかの好適な宿主細胞株が当該技術分野において開発されており、これにはCOS-1(例えばATCC CRL 1650)、COS-7(例えばATCC CRL-1651)、HEK293、BHK21(例えばATCC CRL-10)、CHO(例えばATCC CRL1610)及びBSC-1(例えばATCC CRL-26)細胞株、Cos-7細胞、CHO細胞、hep G2細胞、P3X63Ag8.653、SP2/0-Ag14、293細胞、HeLa細胞などが挙げられ、これらは例えば、American Type Culture Collection(Manassas,Va)(www.atcc.org)から容易に入手できる。好適な宿主細胞には、骨髄腫及びリンパ腫細胞などのリンパ系起源の細胞が挙げられる。特に好ましい宿主細胞は、P3X63Ag8.653細胞(ATCC寄託番号CRL-1580)及びSP2/0-Ag14細胞(ATCC寄託番号CRL-1851)である。特に好ましい実施形態では、組換え細胞は、P3X63Ab8.653又はSP2/0-Ag14細胞である。
【0084】
これらの細胞の発現ベクタは、複製起点、プロモータ(例えば、後期又は初期SV40プロモータ、CMVプロモータ(米国特許第5,168,062号、同第5,385,839号)、HSV tkプロモータ、pgk(ホスホグリセレートキナーゼ)プロモータ、EF-1αプロモータ(米国特許第5,266,491号)、少なくとも1つのヒト免疫グロブリンプロモータ、エンハンサ、及び/又はリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位(例えば、SV40ラージT Agポリ付加部位)、並びに転写終結配列などのプロセシング情報部位などであるがこれらに限定されるものではない、発現制御配列のうちの1つ又は2つ以上を含むことができる。例えば、上記のAusubelら、上記のSambrookらを参照されたい。本発明の核酸又はタンパク質の生成に有用なその他の細胞は周知である、並びに/あるいは例えば、American Type Culture Collection Catalogue of Cell Lines and Hybridomas(www.atcc.org)又はその他の周知の供給源若しくは商業的供給源から入手可能である。
【0085】
真核宿主細胞が利用される場合、典型的には、ベクタ内にポリアデニル化又は転写終結配列が組み込まれる。終結配列の一例は、ウシ成長ホルモン遺伝子からのポリアデニル化配列である。転写の正確なスプライシングのための配列も、同様に含むことができる。スプライシング配列の一例は、SV40由来のVP1イントロンである(Sprague,et al.,J.Virol.45:773-781(1983))。加えて、当該技術分野において周知であるように、宿主細胞内の複製を制御するための遺伝子配列をベクタ内に組み込むことができる。
【0086】
抗体の精製。抗TNF抗体は、プロテインA精製、硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸抽出、アニオン又はカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー及びレクチンクロマトグラフィーが挙げられるがこれらに限定されない周知の方法により、組換え細胞培養物から回収し、精製することができる。高速液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography、「HPLC」)を精製に利用することもできる。例えば、各々参照により全体が本明細書に組み込まれる、Colligan,Current Protocols in Immunology又はCurrent Protocols in Protein Science,John Wiley & Sons,NY,NY(1997-2001)の、例えば、第1、4、6、8、9、10章を参照されたい。
【0087】
本発明の抗体には、天然に精製された生成物、化学合成手順の生成物、並びに例えば、酵母、高等植物、昆虫及び哺乳動物細胞を含む、真核宿主から組換え技法により産生された産物が含まれる。組換体産生手順に用いられる宿主に応じて、本発明の抗体は、グリコシル化されてもグリコシル化されなくてもよいが、グリコシル化されるのが好ましい。このような方法は、上記のSambrook、セクション17.37-17.42、上記のAusubel、第10、12、13、16、18、及び20章、上記のColligan,Protein Science、第12~14章などの多くの標準的な実験室マニュアルに記載されており、全て参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0088】
抗TNF抗体
本発明の単離された抗体であって、配列番号1、2及び3の重鎖可変CDR領域の全て並びに/又は配列番号4、5及び6の軽鎖可変CDR領域の全てを含む本発明の単離された抗体は、任意の好適なポリヌクレオチドによってコードされる本明細書で開示される抗体のアミノ酸配列、又は任意の単離又は調製された抗体を含む、単離された抗体。好ましくは、ヒト抗体又は抗原結合断片は、ヒトTNFに結合し、それにより、タンパク質の少なくとも1つの生物学的活性を部分的又は実質的に中和する。少なくとも1つのTNFタンパク質又は断片の少なくとも1つの生物学的活性を部分的に又は好ましくは実質的に中和する抗体又はその特定された部分若しくは変異体は、タンパク質又は断片に結合し、それによりTNFのTNF受容体への結合を通して、又は他のTNF依存性若しくは介在性機序を通して介在される活性を阻害することができる。本明細書で使用するとき、「中和抗体」という用語は、アッセイに応じて約20~120%、好ましくは少なくとも約10、20、30、40、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100%又はそれ以上、TNF依存性活性を阻害することができる抗体を指す。TNF依存性活性を阻害する抗TNF抗体の能力は、好ましくは、本明細書に記載され、かつ/又は当該技術分野において既知の、少なくとも1つの好適なTNFタンパク質又は受容体アッセイによって評価される。本発明のヒト抗体は、任意のクラス(IgG、IgA、IgM、IgE、IgDなど)又はアイソタイプのものであってもよく、κ又はλ軽鎖を含み得る。一実施形態では、ヒト抗体は、IgG重鎖又は規定された断片、例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のうちの少なくとも1つのアイソタイプを含む。このタイプの抗体は、本明細書に記載されかつ/又は当該技術分野において既知の、少なくとも1つのヒト軽鎖(例えば、IgG、IgA)及びIgM(例えば、γ1、γ2、γ3、γ4)導入遺伝子を含む、トランスジェニックマウス又は他のトランスジェニック非ヒト哺乳動物を用いることによって調製することができる。別の実施形態では、抗ヒトTNFヒト抗体は、IgG1重鎖及びIgG1軽鎖を含む。
【0089】
本明細書で使用するとき、「抗体」又は「複数の抗体」という用語は、2009年のバイオロジクス価格競争・イノベーション法(BPCI Act)並びに同様の世界的な法律及び規則で承認されたバイオシミラ抗体分子を含む。BPCI Actの下で、抗体は、臨床的に不活性な構成成分のわずかな違いにも関わらず、基準品と「非常に類似」しており、安全性、純度、効力の点で基準品と同等の臨床結果が得られると「予想される」ことをデータが示す場合、バイオシミラであることが実証され得る(Endocrine Practice:2018年2月、第24巻第2号第195~204頁)。これらのバイオシミラ抗体分子は、短縮された承認経路を提供し、それにより、出願人は、法的な承認を確保するために、イノベータの基準品の臨床データに依存している。臨床試験の成功に基づいてFDAに承認されたオリジナルのイノベータ基準抗体と比較して、バイオシミラ抗体分子は、本明細書では、「バイオ後続品」と呼ばれる。本明細書に提示されるように、SIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)は、臨床試験の成功に基づいてFDAに承認されたオリジナルのイノベータ参照抗TNF抗体である。ゴリムマブは、2009年から米国で販売されている。
【0090】
本発明の少なくとも1つの抗体は、少なくとも1つのTNFタンパク質、サブユニット、断片、部分、又はそれらの任意の組合せに特異的な少なくとも1つの特定のエピトープに結合する。この少なくとも1つのエピトープは、このタンパク質の少なくとも一部を含む少なくとも1つの抗体結合領域を含むことができ、このエピトープは、好ましくは、このタンパク質の少なくとも1つの細胞外部分、可溶性部分、親水性部分、外部部分、又は細胞質顆粒部分から構成されている。少なくとも1つの特定されたエピトープは、配列番号9の隣接アミノ酸の特定された部分全体に対する少なくとも1~3個のアミノ酸の少なくとも1つのアミノ酸配列の任意の組合せを含むことができる。
【0091】
一般に、本発明のヒト抗体又は抗原結合断片は、少なくとも1つのヒト相補性決定領域(CDR1、CDR2及びCDR3)又は少なくとも1つの重鎖可変領域の変異体、及び少なくとも1つのヒト相補性決定領域(CDR1、CDR2及びCDR3)又は少なくとも1つの軽鎖可変領域の変異体を含む抗原結合領域を含む。非限定的な例として、抗体又は抗原結合部分若しくは変異体は、配列番号3のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3及び/又は配列番号6のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3のうちの少なくとも1つを含み得る。特定の実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、対応するCDR1、2及び/又は3のアミノ酸配列(例えば、配列番号1、2及び/又は3)を有する少なくとも1つの重鎖CDR(すなわち、CDR1、CDR2及び/又はCDR3)の少なくとも一部を含む抗原結合領域を有することができる。別の特定の実施形態では、抗体又は抗原結合部分若しくは変異体は、対応するCDR1、2及び/又は3のアミノ酸配列(例えば、配列番号4、5、及び/又は6)を有する少なくとも1つの軽鎖CDR(すなわち、CDR1、CDR2及び/又はCDR3)の少なくとも一部を含む抗原結合領域を有することができる。好ましい実施形態では、抗体又は抗原結合断片の3つの重鎖CDR及び3つの軽鎖CDRは、本明細書に記載される、mAb TNV148、TNV14、TNV15、TNV196、TNV118、TNV32、及びTNV86のうちの少なくとも1つの対応するCDRのアミノ酸配列を有する。このような抗体は、組換えDNA技術に関する従来技術を使用して抗体をコードする(すなわち、1つ又は2つ以上の)核酸分子を調製して発現させることによって、又は任意のその他の好適な方法を使用することによって、従来技術を使用して抗体の種々の部分(例えば、CDR、フレームワーク)を一緒に化学的に結合させることにより調製できる。
【0092】
抗TNF抗体は、規定されたアミノ酸配列を有する重鎖又は軽鎖可変領域のうちの少なくとも1つを含むことができる。例えば、好ましい実施形態では、抗TNF抗体は、任意選択的に配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び/又は任意選択的に配列番号8のアミノ酸配列を有する少なくとも1つの軽鎖可変領域のうちの少なくとも1つを含む。ヒトTNFに結合し、規定された重鎖又は軽鎖可変領域を含む抗体は、好適な方法、例えば、当該技術分野において既知でありかつ/又は本明細書に記載される、ファージディスプレイ(Katsube,Y.ら、「Int J Mol.Med」1(5):863-868(1998))又はトランスジェニック動物を採用する方法など、好適な方法を使用して調製することができる。例えば、機能的に再配列されたヒト免疫グロブリン重鎖導入遺伝子と、機能的な再配列を受けることが可能なヒト免疫グロブリン軽鎖遺伝子座からのDNAを含む導入遺伝子と、を含むトランスジェニックマウスを、ヒトTNF又はその断片で免疫して抗体の生成を誘発することができる。所望する場合、抗体産生細胞を単離することができ、本明細書に記載されるように、かつ/又は技術分野において周知であるように、ハイブリドーマ又はその他の不死化させた抗体産生細胞を調製することができる。あるいは、抗体、特定の部分又は変異体は、好適な宿主細胞内で、コード核酸又はその一部分を使用して発現させることができる。
【0093】
本発明は又、本明細書に記載されるアミノ酸配列と実質的に同じである配列中のアミノ酸を含む抗体、抗原結合断片、免疫グロブリン鎖及びCDRに関する。好ましくは、かかる抗体又は抗原結合断片及びかかる鎖若しくはCDRを含む抗体は、高い親和性(例えば、KDが約10-9M以下)で、ヒトTNFに結合することができる。本明細書に記載されている配列と実質的に同じであるアミノ酸配列としては、保存的アミノ酸置換並びにアミノ酸欠失及び/又は挿入を含む配列が挙げられる。保存的アミノ酸置換は、第1のアミノ酸を、第1のアミノ酸のものに類似する化学的及び/又は物理的特性(例えば、電荷、構造、極性、疎水性/親水性)を有する第2のアミノ酸で置換することを指す。保存的置換は、1個のアミノ酸を、以下の群内の別のアミノ酸で置き換えることを含む:リジン(K)、アルギニン(R)及びヒスチジン(H);アスパラギン酸塩(D)及びグルタミン酸塩(E);アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、チロシン(Y)、K、R、H、D、及びE;アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、メチオニン(M)、システイン(C)、及びグリシン(G);F、W、及びY;C、S、及びT。
【0094】
アミノ酸コード。本発明の抗TNF抗体を構成するアミノ酸は、略されることが多い。アミノ酸表記は、その1文字コード、その3文字コード、名称、又は3つのヌクレオチドコドン(複数可)によりアミノ酸を表記することにより示すことができ、当該技術分野においてよく理解されている(Alberts,B.,et al.,Molecular Biology of The Cell,Third Ed.,Garland Publishing,Inc.,New York,1994を参照のこと)。
【0095】
【0096】
本発明の抗TNF抗体は、本明細書で特定されるように、自然変異又はヒトによる操作のいずれかによる、1つ又は2つ以上のアミノ酸の置換、欠失、又は付加を含み得る。
【0097】
当然のことながら、当業者が行い得るアミノ酸置換の数は、上述のものを含む数多くの要因に依存する。概して、任意の所与の抗TNF抗体、断片又は変異体についてのアミノ酸置換、挿入、又は欠失の数は、本明細書で特定されるように、40、30、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、例えば、1~30、又はこの中の任意の範囲若しくは値を超えない。
【0098】
機能上不可欠である本発明の抗TNF抗体内のアミノ酸は、部位特異的変異誘発又はアラニンスキャニング変異誘発などの、当該技術分野において既知の方法により特定することができる(例えば、上記のAusubel、第8,15章;Cunningham及びWells,Science 244:1081-1085(1989))。後者の手順では、分子内の残基ごとに単個のアラニンによる変異を導入する。次いで、結果として得られたミュータント分子は、例えば、少なくとも1つのTNF中和活性などがあるがこれに限定されない生物学的活性について試験される。抗体結合にとってきわめて重要である部位も、結晶化、核磁気共鳴又は光親和性標識などの構造分析によって特定することができる(Smithら、「J.Mol.Biol.」224:899~904(1992)及びde Vosら、「Science」255:306~312(1992))。
【0099】
本発明の抗TNF抗体は、配列番号1、2、3、4、5、6のうちの少なくとも1つの隣接アミノ酸のうちの1個~全てから選択された、少なくとも1つの部分、配列又は組合せを含むことができるが、これらに限定されない。
【0100】
抗TNF抗体は更に、任意選択的に、配列番号7、8のうちの少なくとも1つの、隣接アミノ酸の70~100%の少なくとも1つのポリペプチドを含み得る。
【0101】
一実施形態では、免疫グロブリン鎖又はその一部分(例えば、可変領域、CDR)のアミノ酸配列は、配列番号7、8のうちの少なくとも1つの対応する鎖のアミノ酸配列と、約70~100%の同一性(例えば、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、又はこの中の任意の範囲若しくは値)を有する。例えば、軽鎖可変領域のアミノ酸配列を、配列番号8の配列と比較することができ、又は重鎖CDR3のアミノ酸配列を配列番号7と比較することができる。好ましくは、70~100%のアミノ酸同一性(すなわち、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、又はこの中の任意の範囲若しくは値)は、当該技術分野において周知であるように、好適なコンピュータアルゴリズムを使用して決定される。
【0102】
例示的な重鎖及び軽鎖可変領域の配列は、配列番号7、8に示されている。本発明の抗体又はその特定された変異体は、本発明の抗体から任意の数の隣接アミノ酸残基を含み得、その数は、抗TNF抗体における隣接残基数の10~100%からなる整数の群から選択される。任意選択的に、隣接アミノ酸のこの部分配列は、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250又はそれ以上のアミノ酸長、又はその中の任意の範囲若しくは値である。更に、このような部分配列の数は、少なくとも2、3、4、又は5などの、1~20からなる群から選択される任意の整数であることができる。
【0103】
当業者が認識しているように、本発明には、本発明の少なくとも1つの生物学的活性抗体が含まれている。生物学的活性抗体は、天然(非合成)、内因性又は関連する及び既知の抗体のものの、少なくとも20%、30%又は40%、及び好ましくは少なくとも50%、60%又は70%、及び最も好ましくは少なくとも80%、90%又は95%~1000%の比活性を有する。酵素活性及び基質特異性のアッセイ及び定量化測定の方法は、当業者には周知である。
【0104】
別の態様では、本発明は、有機部分の共有結合により修飾される、本明細書に記載されるヒト抗体及び抗原結合断片に関する。かかる修飾は、改善された薬物動態特性(例えば、増大したインビボでの血清半減期)を有する抗体又は抗原結合断片を産生することができる。有機部分は、直鎖又は分枝鎖親水性ポリマー基、脂肪酸基、又は脂肪酸エステル基であることができる。特定の実施形態では、親水性ポリマー基は、分子量が約800~約120,000ダルトンであって、ポリアルカングリコール(例えば、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)、ポリプロピレングリコール(polypropylene glycol、PPG))、炭水化物ポリマー、アミノ酸ポリマー又はポリビニルピロリドンであり得、脂肪酸基又は脂肪酸エステル基は、約8~約40個の炭素原子を含むことができる。
【0105】
本発明の修飾された抗体及び抗原結合断片は、直接的又は間接的に抗体に共有結合される、1つ又は2つ以上の有機部分を含み得る。本発明の抗体又は抗原結合断片に結合される各有機部分は、独立して、親水性ポリマー基、脂肪酸基、又は脂肪酸エステル基であることができる。本明細書で使用する場合、「脂肪酸」という用語は、モノカルボン酸及びジカルボン酸を包含する。本明細書で使用する場合、「親水性ポリマー基」という用語は、オクタンよりも水に対する溶解度が高い有機ポリマーを意味する。例えば、ポリリシンは、オクタンよりも水に対する溶解度が高い。よって、ポリリシンの共有結合により修飾された抗体は、本発明に包含される。本発明の抗体を修飾するのに好適な親水性ポリマーは、直線状又は分岐状であることができ、例えば、ポリアルカングリコール(例えば、PEG、モノメトキシ-ポリエチレングリコール(monomethoxy-polyethylene glycol、mPEG)、PPGなど)、炭水化物(例えば、デキストラン、セルロース、オリゴ糖、多糖など)、親水性アミノ酸のポリマー(例えば、ポリリシン、ポリアルギニン、ポリアスパラギン酸など)、ポリアルカンオキシド(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなど)、及びポリビニルピロリドンを含む。好ましくは、本発明の抗体を修飾する親水性ポリマーは、個別の分子体として、約800~約150,000ダルトンの分子量を有する。例えば、PEG5000及びPEG20,000を使用することができ、下付き文字は、ポリマーの平均分子量(ダルトン)である。親水性ポリマー基は、1~約6個のアルキル基、脂肪酸基又は脂肪酸エステル基で置換することができる。脂肪酸又は脂肪酸エステル基で置換される親水性ポリマー類は、好適な方法を利用することによって調製することができる。例えば、アミン基を含むポリマーを、脂肪酸又は脂肪酸エステルのカルボン酸塩に連結させることができ、脂肪酸又は脂肪酸エステル上の活性化カルボン酸塩(例えば、N,N-カルボニルジイミダゾールで活性化されている)をポリマー上のヒドロキシル基に連結させることができる。
【0106】
本発明の抗体を修飾するために好適な脂肪酸及び脂肪酸エステルは、飽和されてもよいし、又は1つ若しくは2つ以上の不飽和単位を含有していてもよい。本発明の抗体を修飾するのに好適な脂肪酸としては、例えば、n-ドデカン酸塩(C12、ラウリン酸塩)、n-テトラデカン酸塩(C14、ミリスチン酸塩)、n-オクタデカン酸塩(C18、ステアリン酸塩)、n-エイコサン酸塩(C20、アラキジン酸塩)、n-ドコサン酸塩(C22、ベヘン酸)、n-トリアコンタン酸塩(C30)、n-テトラコンタン酸塩(C40)、シス-Δ9-オクタデカン酸塩(C18、オレイン酸塩)、全てのシス-Δ5,8,11,14-エイコサテトラエン酸塩(C20、アラキドン酸塩)、オクタンジオン酸、テトラデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、ドコサンジオン酸などが挙げられる。好適な脂肪酸エステルは、直鎖又は分枝鎖の低級アルキル基を含む、ジカルボン酸のモノエステルを含む。低級アルキル基は、1~約12個、好ましくは1~約6個の炭素原子を含み得る。
【0107】
修飾ヒト抗体及び抗原結合断片は、1つ又は2つ以上の修飾剤と反応させることなどによって、好適な方法を使用して調製することができる。本明細書で使用されるとき、「修飾剤」という用語は、活性化基を含む好適な有機基(例えば、親水性ポリマー、脂肪酸、脂肪酸エステル)を意味する。「活性化基」とは、適切な条件下で第2の化学基と反応し、これにより修飾剤と第2の化学基との間に共有結合を形成することのできる、化学部分又は官能基である。例えば、アミン反応性活性化基は、トシル酸塩、メシル酸塩、ハロ(クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード)などの求電子性基、N-ヒドロキシスクシニミジルエステル(NHS)などを含む。チオール類と反応可能な活性化基としては、例えば、マレイミド、ヨードアセチル、アクリロリル、ピリジルジスルフィド、5-チオール-2-ニトロ安息香酸チオール(TNB-チオール)などが挙げられる。アルデヒド官能基は、アミン又はヒドラジド含有分子と連結することができ、アジド基は、三価リン基と反応してホスホルアミデート又はホスホルイミド結合を形成することができる。分子中に活性化基を導入するための好適な方法は、当該技術分野において既知である(例えば、Hermanson,G.T.、Bioconjugate Techniques,Academic Press:San Diego,CA(1996)参照)。活性化基は、有機基(例えば、親水性ポリマー、脂肪酸、脂肪酸エステル)に直接的に、又はリンカ部分、例えば、二価のC1~C12基(ここで、1つ又は2つ以上の炭素原子は酸素、窒素、又は硫黄などのヘテロ原子で置換され得る)を介して、結合することができる。好適なリンカ部分としては、例えば、テトラエチレングリコール、-(CH2)3-、-NH-(CH2)6-NH-、-(CH2)2-NH-、及び-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH-NH-が挙げられる。リンカ部分を含む修飾剤は、例えば1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)の存在下で、モノ-Boc-アルキルジアミン(例えば、モノ-Boc-エチレンジアミン、モノ-Boc-ジアミノへキサン)を脂肪酸と反応させることにより、遊離アミンと脂肪酸カルボキシレートとの間のアミド結合を形成することによって産生可能である。Boc保護基を、トリフルオロ酢酸(TFA)処理により生成物から除去して、記載されているように別のカルボン酸塩に連結し得る一級アミンを露出させることができ、あるいは、これを無水マレイン酸と反応させ、結果として得られた生成物を環化させて脂肪酸の活性化マレイミド誘導体を生成することができる。(例えば、参照により教示の全体が本明細書に組み込まれる、Thompsonらの国際公開第92/16221号を参照のこと。)
【0108】
本発明の修飾された抗体は、ヒト抗体又は抗原結合断片を修飾剤と反応させることによって生成することができる。例えば、有機部分は、アミン反応性修飾剤、例えば、PEGのNHSエステルを利用して、部位特異的なものではない方法で抗体に結合させることができる。抗体又は抗原結合断片のジスルフィド結合(例えば、鎖内ジスルフィド結合)を還元することによって、修飾されたヒト抗体又は抗原結合断片を調製することもできる。このとき、還元された抗体又は抗原結合断片をチオール反応性修飾剤と反応させて、本発明の修飾された抗体を産生することが可能である。本発明の抗体の特定の部位に結合される有機部分を含む修飾されたヒト抗体及び抗原結合断片は、逆タンパク質分解(Fischら,Bioconjugate Chem.,3:147-153(1992)、Werlenら、Bioconjugate Chem.,5:411~417(1994)、Kumaranら、Protein Sci.6(10):2233-2241(1997)、Itohら,Bioorg.Chem.,24(1号):59~68(1996)、Capellasら,Biotechnol.Bioeng.,56(4):456~463(1997))、及びHermanson,G.T.,Bioconjugate Techniques,Academic Press:San Diego,CA(1996)に記載される方法などの好適な方法を使用して調製することができる。
【0109】
抗TNF抗体組成物に対する抗イディオタイプ抗体。モノクローナル又はキメラ抗TNF抗体に加えて、本発明は、本発明のかかる抗体に特異的な抗イディオタイプ(抗Id)抗体にも関する。抗Id抗体は、一般に別の抗体の抗原結合領域に関連する固有の決定基を認識する抗体である。抗Idは、Id抗体源と同じ種及び遺伝子型の動物(例えばマウス株)を、抗体又はそのCDR含有領域により免疫することによって調製することができる。免疫された動物は、免疫する抗体のイディオタイプ決定基を認識かつ応答し、抗Id抗体を産生する。抗Id抗体は、更に別の動物で免疫応答を誘導する「免疫原」としても使用され得、いわゆる抗-抗Id抗体を生成する。
【0110】
抗TNF抗体組成物。本発明は又、本明細書に記載され、かつ/又は当該技術分野において既知であるように、非自然発生組成物、混合物、又は形態で提供される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、又はそれ以上のその抗TNF抗体を含む、少なくとも1つの抗TNF抗体組成物も提供する。かかる組成物は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8の隣接アミノ酸の70~100%、又はその特定される断片、ドメイン若しくは変異体からなる群から選択される抗TNF抗体のアミノ酸配列の少なくとも1つ又は2つの完全長、C及び/若しくはN末端欠失変異体、ドメイン、断片、又はその特定される変異体を含む非自然発生組成物を含む。好ましい抗TNF抗体組成物は、配列番号1、2、3、4、5、6の70~100%の抗TNF抗体、又はその特定された断片、ドメイン若しくは変異体の、少なくとも1つのCDR又はLBR含有部分として少なくとも1つ又は2つの完全長、断片、ドメイン、又は変異体を含む。更に好ましい組成物は、配列番号1、2、3、4、5、6の70~100%、又は特定された断片、ドメイン若しくはその変異体のうちの少なくとも1つを40~99%含む。このような組成物の百分率は、当該技術分野において既知であるように、又は本明細書に記載されるように、重量、体積、濃度、容量モル濃度、あるいは液体若しくは乾燥溶液、混合物、懸濁液、エマルジョン、又はコロイドとしての重量モル濃度によるものである。
【0111】
本発明の抗TNF抗体組成物は、かかる調節、処置又は療法を必要としている細胞、組織、器官、動物又は患者に対する少なくとも1つの抗TNF抗体を含み、任意選択的に、少なくとも1つのTNF拮抗薬(例えば、TNF抗体若しくは断片、可溶性TNF受容体若しくは断片、それらの融合タンパク質、又は小分子TNF拮抗薬などであるが、これらに限定されない)、抗リウマチ薬(例えば、メトトレキサート、オーラノフィン、アウロチオグルコース、アザチオプリン、エタネルセプト、金チオリンゴ酸ナトリウム、硫酸ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、スルファサラジン)、筋弛緩剤、麻酔薬(narcotic)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、鎮痛剤、麻酔薬(anesthetic)、鎮静剤、局所麻酔薬、神経筋ブロッカ、抗菌剤(例えば、アミノグリコシド、抗真菌剤、駆虫薬、抗ウイルス剤、カルバペネム、セファロスポリン、フルオロキノロン、マクロライド、ペニシリン、スルホンアミド、テトラサイクリン、その他の抗菌剤)、抗乾癬剤、コルチコステロイド、アナボリックステロイド、糖尿病関連薬、ミネラル、栄養薬、甲状腺薬、ビタミン、カルシウム関連ホルモン、止瀉剤、鎮咳剤、制吐剤、抗潰瘍剤、緩下剤、抗凝固薬、エリスロポエチン(例えば、エポエチンα)、フィルグラスチム(例えばG-CSF、Neupogen)、サルグラモスチム(GM-CSF、Leukine)予防接種、免疫グロブリン、免疫抑制薬(例えば、バシリキシマブ、シクロスポリン、ダクリズマブ)、成長ホルモン、ホルモン補充薬、エストロゲン受容体調節薬、散瞳薬、毛様筋調節薬、アルキル化剤、抗代謝剤、有糸分裂阻害剤、放射性医薬品、抗うつ薬、抗躁病薬、抗精神病薬、抗不安薬、催眠薬、交感神経作動薬、刺激薬、ドネペジル、タクリン、喘息薬、β作動薬、吸入ステロイド、ロイコトリエン阻害薬、メチルキサンチン、クロモリン、エピネフリン又は類似薬、ドルナーゼα(Pulmozyme)、サイトカイン又はサイトカイン拮抗薬から選択される少なくとも1つを任意選択的に更に含む、好適かつ有効量の組成物又は医薬組成物のうち任意の少なくとも1つを更に含み得る。このようなサイトカインの非限定的な例としては、IL-1~IL-23のいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。好適な投与量は、技術分野において周知である。例えば、Wells et al.,eds.,Pharmacotherapy Handbook,2nd Edition,Appleton and Lange,Stamford,CT(2000)、PDR Pharmacopoeia,Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000,Deluxe Edition,Tarascon Publishing,Loma Linda,CA(2000)を参照されたい。
【0112】
このような抗がん剤又は抗感染薬は、本発明の少なくとも1つの抗体と関連、結合、同時処方、又は併用される毒素分子も含み得る。毒素は、病態細胞又は組織を選択的に死滅させるように、任意選択的に作用させることができる。病態細胞は、がん細胞又は他の細胞であり得る。このような毒素は、これらに限定するものではないが、例えば、リシン、ジフテリア毒素、ヘビ毒素、又は細菌毒素の少なくとも1つから選択される、毒素の少なくとも1つの機能的細胞傷害性ドメインを含む、精製若しくは組換え毒素又は毒素断片であり得る。毒素という用語は又、ヒト及び他の哺乳動物において、死に至り得る毒素性ショックを含む、任意の病態をもたらし得る任意の自然発生の、ミュータント、又は組換えの細菌又はウイルスによって産生される内毒素及び外毒素の両方を含む。かかる毒素としては、腸管毒素原性大腸菌(E.coli)熱不安定性エンテロトキシン(LT)、熱安定性エンテロトキシン(ST)、赤痢菌細胞毒素、アエロモナス属エンテロトキシン、毒素性ショック症候群毒素-1(TSST-1)、ブドウ球菌エンテロトキシンA(SEA)、B(SEB)、又はC(SEC)、連鎖球菌エンテロトキシンなどを挙げることができるが、これらに限定されない。かかる細菌としては、腸管毒素原性大腸菌(E.coli)(ETEC)、腸管出血性大腸菌(E.coli)(例えば血清型0157の株:H7)、ブドウ球菌(Staphylococcus)種(例えば、黄色ブドウ球菌、スタフィロコッカス-ピオゲネス(Staphylococcus aureus))、赤痢菌(Shigella)種(例えば、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、フレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)、ボイド赤痢菌(Shigella boydii)及びソンネ赤痢菌(Shigella sonnei))、サルモネラ(Salmonella)種(例えば、腸チフス菌、サルモネラコレラ-スイス、サルモネラエンテリティディス)、クロストリジウム種(例えば、クロストリジウム-パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)、クロストリジウム-ディフィシル(Clostridium dificile)、クロストリジウム-ボツリヌス(Clostridium botulinum))、カンピロバクタ(Camphlobacter)種(例えば、カンピロバクタ-ジュジュニ(Camphlobacter jejuni)、カンピロバクタ-フィータス(Camphlobacter fetus))、ヘリコバクタ(Heliocbacter)種(例えば、ヘリコバクタ-ピロリ(Heliocbacter pylori))、アエロモナス(Aeromonas)種(例えば、アエロモナス-ソブリア(Aeromonas sobria)、アエロモナス-ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)、アエロモナス-キャビエ(Aeromonas caviae))、プレシオモナス-シゲロイデス(Pleisomonas shigelloides)、腸炎エルシニア(Yersinia enterocolitica)、ビブリオ(Vibrio)種(例えば、コレラ菌(Vibrio cholerae)、ビブリオ-パラヘモリティカス(Vibrio parahemolyticus))、クレブシエラ(Klebsiella)種、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、及び連鎖球菌(Streptococci)の種の株が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Stein編、「INTERNAL MEDICINE」第3版第1~13頁、Little,Brown and Co.,Boston(1990)、Evansら編、「Bacterial Infections of Humans:Epidemiology and Control」第2版第239~254頁、Plenum Medical Book Co.、New York(1991)、Mandellら、「Principles and Practice of Infectious Diseases」第3版、Churchill Livingstone,New York(1990)、Berkowら編、「The Merck Manual」第16版、Merck and Co.,Rahway,N.J.(1992)、Woodら、「FEMS Microbiology Immunology」76:121~134(1991)、Marrackら、「Science」24:8705~711(1990)を参照のこと(これらの文献の内容は、参照により全体が本明細書に組み込まれる)。
【0113】
本発明の抗TNF抗体化合物、組成物又は混合物は更に、希釈剤、結合剤、安定剤、緩衝剤、塩、親油性溶媒、保存剤、アジュバントなどであるがこれらに限定されない、任意の好適な助剤のうちの少なくとも1つを含み得る。医薬的に許容される助剤が好ましい。かかる滅菌溶液を調製する方法及びその非限定例は、当該技術分野において周知であり、例えば、Gennaro,Ed.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,Mack Publishing Co.(Easton,PA)1990が挙げられるが、これに限定されない。当該技術分野において周知、又は本明細書に記載されるように、抗TNF抗体、断片、又は変異体組成物の投与方法、溶解度、及び/又は安定性に好適な薬学的に許容できる担体を、日常的に選択することができる。
【0114】
本組成物において有用な製薬学的添加物及び添加剤は、これらに限定されないが、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質及び炭水化物(例えば、単糖類、二糖、三糖、四糖、及びオリゴ糖を含む糖類、アルジトール、アルドン酸、エステル化糖などの誘導体化糖、並びに多糖類又は糖ポリマー)を含み、これらは、単独で又は組み合わせて存在してよく、単独で又は組み合わせて1~99.99重量%又は体積%含まれる。例示的なタンパク質添加物には、ヒト血清アルブミン(HSA)などの血清アルブミン、組換えヒトアルブミン(rHA)、ゼラチン、カゼインなどを含む。緩衝能においても機能し得る代表的なアミノ酸/抗体構成要素としては、アラニン、グリシン、アルギニン、ベタイン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、リシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパルテームなどが挙げられる。好ましいアミノ酸の1つはグリシンである。
【0115】
本発明に使用するのに好適な炭水化物添加物としては、例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、ソルボースなどの単糖類、ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオースなどの二糖類、ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプン類などの多糖類、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトールソルビトール(グルシトール)、ミオイノシトールなどのアルジトールが挙げられる。本発明で使用するのに好ましい炭水化物添加物は、マンニトール、トレハロース、及びラフィノースである。
【0116】
抗TNF抗体組成物は、緩衝剤又はpH調整剤も含み得、典型的には、緩衝剤は、有機酸又は塩基から調製される塩である。代表的な緩衝剤としては、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、炭酸、酒石酸、コハク酸、酢酸、又はフタル酸の塩などの有機酸塩、トリス、トロメタミン塩酸塩、又はリン酸緩衝剤が挙げられる。本組成物における使用に好ましい緩衝剤は、クエン酸塩などの有機酸塩である。
【0117】
加えて、本発明の抗TNF抗体組成物は、ポリビニルピロリドン、フィコール(ポリマー糖)、デキストレート(例えば、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなどのシクロデキストリン)、ポリエチレングリコール、着香剤、抗菌剤、甘味料、抗酸化剤、帯電防止剤、界面活性剤(例えば、「TWEEN20」及び「TWEEN80」などのポリソルベート)、脂質(例えば、リン脂質、脂肪酸)、ステロイド(例えば、コレステロール)、及びキレート剤(例えば、EDTA)などのポリマー添加物/添加剤を含み得る。
【0118】
本発明による抗TNF抗体、部分又は変異体組成物における使用に適したこれら及び追加の既知の製薬学的添加物及び/又は添加剤は、当該技術分野において既知であり、例えば、「Remington:The Science & Practice of Pharmacy」、19th ed.,Williams & Williams,(1995)、及び「Physician’s Desk Reference」、52nd ed,Medical Economics,Montvale,NJ(1998)に列挙されており、これらの開示は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。好ましい担体又は添加物材料は、炭水化物(例えば、単糖類及びアルジトール)及び緩衝剤(例えば、クエン酸)又はポリマー剤である。
【0119】
製剤。上述したとおり、本発明は、好ましくは、生理食塩水又は選択された塩を含むリン酸緩衝剤である安定した製剤、並びに保存剤を含有する保存溶液及び製剤、並びに薬学的に許容できる製剤中に少なくとも1つの抗TNF抗体を含む薬剤学的又は獣医学的用途に好適な多用途保存製剤を提供する。保存製剤は、水性希釈剤中に、少なくとも1つのフェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、硝酸フェニル水銀、フェノキシエタノール、ホルムアルデヒド、クロロブタノール、塩化マグネシウム(例えば、六水和物)、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、及びチメロサール、又はそれらの混合物からなる群から任意選択で選択される、少なくとも1つの既知の保存剤を含む。当該技術分野において既知であるように、0.001~5%、又は0.001、0.003、0.005、0.009、0.01、0.02、0.03、0.05、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4.、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.3、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、又はその中の任意の範囲若しくは値などであるがこれらに限定されない、その中の任意の範囲若しくは値の、任意の好適な濃度又は混合物が使用され得る。非限定的な実施例としては、保存剤無添加、0.1~2%のm-クレゾール(例えば、0.2、0.3.0.4、0.5、0.9、1.0%)、約0.1~3%のベンジルアルコール(例えば、0.5、0.9、1.1、1.5、1.9、2.0、2.5%)、0.001~0.5%のチメロサール(例えば、0.005、0.01)、0.001~2.0%のフェノール(例えば、0.05、0.25、0.28、0.5、0.9、1.0%)、0.0005~1.0%のアルキルパラベン(例えば、0.00075、0.0009、0.001、0.002、0.005、0.0075、0.009、0.01、0.02、0.05、0.075、0.09、0.1、0.2、0.3、0.5、0.75、0.9、1.0%)などが挙げられる。
【0120】
上述のとおり、本発明は、包装材と、任意選択的に水性希釈剤中に処方された緩衝剤及び/又は保存剤を伴う少なくとも1つの抗TNF抗体の溶液を含む少なくとも1つのバイアルと、を含む製品を提供し、この包装材は、かかる溶液を1、2、3、4、5、6、9、12、18、20、24、30、36、40、48、54、60、66、72時間以上にわたり保持することができることを記したラベルを含む。本発明は、包装材と、凍結乾燥された少なくとも1つの抗TNF抗体を含む第1のバイアルと、処方された緩衝剤又は保存剤の水性希釈剤を含む第2のバイアルと、を含む製品を更に含み、この包装材は、少なくとも1つの抗TNF抗体を水性希釈剤で再構成して、24時間以上にわたって保持することができる溶液を形成するように患者に指示するラベルを含む。
【0121】
本発明に従って使用される少なくとも1つの抗TNF抗体は、本明細書に記載されるか又は当該技術分野において既知の、哺乳類細胞又はトランスジェニック調製物から産生することを含む組換え手段により産生してもよいし、又は他の生物源から精製してもよい。
【0122】
本発明の製品中に含まれる、少なくとも1つの抗TNF抗体の範囲は、湿式/乾式系の場合、再構成時に約1.0μg/ml~約1000mg/mlの範囲の濃度が得られる量で含まれるが、これより低い濃度及び高い濃度でも作業可能であり、これらの濃度は意図される送達ビヒクルによって決まり、例えば溶液製剤では、経皮パッチ、肺、経粘膜、又は浸透圧性若しくはマイクロポンプ方法とは異なる。
【0123】
好ましくは、水性希釈剤は、任意選択で、医薬的に許容される保存剤を更に含む。好ましい保存剤には、フェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、及びチメロサール、又はそれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。製剤中で使用される保存剤の濃度は、抗菌効果を生み出すのに充分な濃度である。このような濃度は選択された保存剤によって異なり、当業者により容易に決定される。
【0124】
他の添加物、例えば、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、保存剤エンハンサは、任意選択的に及び好ましくは希釈剤に添加することができる。グリセリンなどの等張剤が、既知の濃度で概して使用される。好ましくは、生理学的に耐性の緩衝剤を添加して、改善されたpH制御を提供する。製剤は、約pH4~約pH10、及び好ましくは約pH5~約pH9の範囲、及び最も好ましくは約6.0~約8.0の範囲などの、広範囲のpH範囲を網羅とすることができる。好ましくは、本発明の製剤は、約6.8~約7.8のpHを有する。好適な緩衝剤には、リン酸塩緩衝剤を含み、最も好ましくは、リン酸ナトリウム、特にリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)を含む。
【0125】
他の添加剤、例えばTween20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、Tween40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、Tween80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)、Pluronic F68(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー)、及びPEG(ポリエチレングリコール)などの、薬学的に許容できる可溶化剤、又はポリソルベート20若しくは80又はポロキサマー184若しくは188、Pluronic(登録商標)ポリオールなどの非イオン性界面活性剤、その他のブロックコポリマー、並びにEDTA及びEGTAなどのキレート剤を製剤又は組成物に任意選択的に添加することで、凝集を低減させることができる。これらの添加物は、製剤を投与するためにポンプ又はプラスチック容器が使用される場合に特に有用である。医薬的に許容される界面活性剤の存在により、タンパク質が凝集する傾向が軽減される。
【0126】
本発明の製剤は、少なくとも1つの抗TNF抗体と、フェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、及びチメロサール又はこれらの混合物からなる群から選択される保存剤と、を水性希釈剤中で混合することを含むプロセスにより調製することができる。少なくとも1つの抗TNF抗体と保存剤との水性希釈剤中での混合は、従来の溶解及び混合手順を使用して実施される。好適な製剤を調製するために、例えば、緩衝溶液中の一定量の少なくとも1つの抗TNF抗体を、所望の濃度のタンパク質及び保存剤を提供するのに充分な量の緩衝溶液中で所望の保存剤と組み合わせる。本プロセスの変化形態は、当業者によって認識される。例えば、構成成分の添加順序、追加の添加剤の使用の有無、製剤調製時の温度及びpHは全て、使用する投与濃度及び投与手段に関して最適化することのできる因子である。
【0127】
特許請求される製剤は、透明な溶液として、又は水、保存剤及び/若しくは賦形剤、好ましくはリン酸塩緩衝剤及び/若しくは生理食塩水、並びに選択された塩を水性希釈剤中に含有する第2のバイアルで再構成される、凍結乾燥された少なくとも1つの抗TNF抗体のバイアルを含むデュアルバイアル(dual vial)として患者に提供することができる。単一溶液バイアル又は再構成を必要とするデュアルバイアルはいずれも複数回再利用することができ、単一又は複数の患者処置サイクルを満たすことができ、したがって、現在使用できるよりも便利な処置レジメンを提供することができる。
【0128】
特許請求される本製品は、即時から24時間以上の期間にわたる投与に有用である。したがって、本発明により特許請求される製品は、患者に大きな利益を提供する。本発明の製剤は、任意選択的に、約2~約40℃の温度で安全に保存することができ、タンパク質の生物学的活性を長期間保持することができ、したがって、包装ラベルで、溶液を6、12、18、24、36、48、72、又は96時間以上保持及び/又は使用し得ることを示すことができる。保存されている希釈剤を使用する場合には、このようなラベルは、最高1~12か月、半年、1年半、及び/又は2年までの使用を含むことができる。
【0129】
本発明の少なくとも1つの抗TNF抗体の溶液は、少なくとも1つの抗体を水性希釈剤中で混合することを含むプロセスにより調製することができる。混合は、従来の溶解及び混合手順を使用して実施される。好適な希釈剤を調製するために、例えば、水又は緩衝剤中の一定量の少なくとも1つの抗体を、所望の濃度のタンパク質、及び任意選択的に保存剤又は緩衝剤を提供するのに充分な量で組み合わせる。本プロセスの変化形態は、当業者によって認識される。例えば、構成成分の添加順序、追加の添加剤の使用の有無、製剤調製時の温度及びpHは全て、使用する投与濃度及び投与手段に関して最適化することのできる因子である。
【0130】
特許請求される製品は、透明な溶液として、又は水性希釈剤を含有する第2のバイアルで再構成される、凍結乾燥された少なくとも1つの抗TNF抗体のバイアルを含むデュアルバイアルとして、患者に提供することができる。単一溶液バイアル又は再構成を必要とするデュアルバイアルはいずれも複数回再利用することができ、単一又は複数の患者治療サイクルを満たすことができ、したがって、現在使用できるよりも便利な治療レジメンを提供する。
【0131】
特許請求される製品は、透明な溶液、又は水性希釈剤を含有する第2のバイアルで再構成される、凍結乾燥された少なくとも1つの抗TNF抗体のバイアルを含むデュアルバイアルを、薬局、診療所、又はその他のかかる機関及び施設に提供することによって、患者に対し間接的に提供することができる。この場合の透明溶液は最高1リットル又は更にはそれ以上の容量であってもよく、この大きな容器からより少量の少なくとも1つの抗体溶液を1回又は複数回取り出してより小さなバイアルに移し、かつ薬局又は診療所により顧客及び/又は患者に提供できる。
【0132】
これらの単一バイアルシステムを含む承認済みデバイスとしては、溶液を送達するためのこれらのペン型注射器デバイス、例えば、BD Pens、BD Autojector(登録商標)、Humaject(登録商標)、NovoPen(登録商標)、B-D(登録商標)Pen、AutoPen(登録商標)、及びOptiPen(登録商標)、GenotropinPen(登録商標)、Genotronorm Pen(登録商標)、Humatro Pen(登録商標)、Reco-Pen(登録商標)、Roferon Pen(登録商標)、Biojector(登録商標)、iject(登録商標)、J-tip Needle-Free Injector(登録商標)、Intraject(登録商標)、Medi-Ject(登録商標)が挙げられ、例えば、Becton Dickensen(Franklin Lakes、NJ、www.bectondickenson.com)、Disetronic(Burgdorf、Switzerland、www.disetronic.com、Bioject(Portland,Oregon(www.bioject.com)、National Medical Products,Weston Medical(Peterborough,UK,www.weston-medical.com)、Medi-Ject Corp(Minneapolis,MN,www.mediject.com)によって製造又は開発されている。デュアルバイアル系を含む承認済みデバイスとしては、HumatroPen(登録商標)などの、再構成した溶液を送達するためのカートリッジ内で凍結乾燥された薬物を再構成するためのペン型注射器システムが挙げられる。
【0133】
ここで特許請求される製品は、包装材を含む。包装材は、規制当局によって必要とされる情報に加えて、製品を使用することができる条件を提供する。本発明の包装材は、少なくとも1つの抗TNF抗体を水性希釈剤で再構成して溶液を形成し、2~24時間以上の期間にわたって、この溶液を湿式/乾式の2つのバイアル製品に使用する、という指示を患者に提供する。単一バイアルの溶液製品の場合、ラベルは、この溶液が2~24時間以上にわたって使用できることを示す。ここで特許請求される製品は、ヒト用医薬製品用途に有用である。
【0134】
本発明の製剤は、少なくとも1つの抗TNF抗体及び選択された緩衝剤、好ましくは生理食塩水又は選択された塩を含有するリン酸塩緩衝剤を混合することを含むプロセスにより調製することができる。少なくとも1つの抗体と緩衝剤との水性希釈剤中での混合は、従来の溶解及び混合手順を使用して実施される。好適な製剤を調製するために、例えば、水又は緩衝剤中の一定量の少なくとも1つの抗体を、所望の濃度のタンパク質及び緩衝剤を提供するのに充分な量の水中で所望の緩衝剤と組み合わせる。本プロセスの変化形態は、当業者によって認識される。例えば、構成成分の添加順序、追加の添加剤の使用の有無、製剤調製時の温度及びpHは全て、使用する投与濃度及び投与手段に関して最適化することのできる因子である。
【0135】
特許請求される安定又は保存製剤は、透明な溶液として、又は水性希釈剤中に保存剤若しくは緩衝剤及び添加物を含有する第2のバイアルで再構成される、凍結乾燥された少なくとも1つの抗TNF抗体のバイアルを含むデュアルバイアルとして、患者に提供することができる。単一溶液バイアル又は再構成を必要とするデュアルバイアルはいずれも複数回再利用することができ、単一又は複数の患者治療サイクルを満たすことができ、したがって、現在使用できるよりも便利な治療レジメンを提供する。
【0136】
本明細書に記載される安定若しくは保存製剤又は溶液のいずれかの少なくとも1つの抗TNF抗体は、当該技術分野において周知のように、SC若しくはIM注射、経皮、経肺、経粘膜、埋め込み、浸透圧ポンプ、カートリッジ、マイクロポンプ、又は当業者により理解されるその他の手段などの種々の送達方法を介して、本発明に従って患者に投与することができる。
【0137】
療法適用。本発明は、当該技術分野において既知である、又は本明細書に記載されるように、本発明の少なくとも1つの二重インテグリン抗体を使用して、細胞、組織、器官、動物又は患者における少なくとも1つのTNF関連疾患を調節又は処置するための方法も提供する。
【0138】
本発明は、肥満、免疫関連疾患、循環器疾患、感染症、悪性疾患又は神経学的疾患のうち少なくとも1つを含むがこれらに限定されない、細胞、組織、器官、動物又は患者における少なくとも1つのTNF関連疾患を調節又は処置するための方法も提供する。
【0139】
本発明は、関節リウマチ、若年性、全身性発症若年性関節リウマチ、強直性脊椎炎、強直性脊椎炎、胃潰瘍、血清反応陰性関節症、変形性関節炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、全身性エリテマトーデス、抗リン脂質症候群、虹彩毛様体炎/ブドウ膜炎/視神経炎、特発性肺線維症、全身性血管炎/ヴェグナー肉芽腫症、サルコイドーシス、精巣炎/精管切除修復術、アレルギー性/アトピー性疾患、喘息、アレルギー性鼻炎、皮膚炎、アレルギー性接触性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、過敏性肺炎、移植、器官移植拒絶反応、移植片対宿主病、全身性炎症反応症候群、敗血症症候群、グラム陽性菌敗血症、グラム陰性菌敗血症、培養陰性敗血症、真菌敗血症、好中球減少性発熱、尿性敗血症、髄膜炎菌血症、外傷/出血、熱傷、電離放射線曝露、急性膵炎、成人呼吸窮迫症候群、アルコール性肝炎、慢性炎症性病変、サルコイドーシス、クローン病変、鎌状赤血球貧血症、糖尿病、ネフローゼ、アトピー性疾患、過敏性反応、アレルギー性鼻炎、枯草熱、通年性鼻炎、結膜炎、子宮内膜症、喘息、じん麻疹、全身性アナフィラキシ、皮膚炎、悪性貧血、溶血性疾患、血小板減少症、任意の器官又は組織の移植片拒絶反応、腎移植拒絶反応、心臓移植拒絶反応、肝臓移植拒絶反応、膵臓移植拒絶反応、肺移植拒絶反応、骨髄移植(BMT)拒絶反応、皮膚同種移植拒絶反応、軟骨移植拒絶反応、骨移植片拒絶反応、小腸移植拒絶反応、胎児胸腺移植拒絶反応、副甲状腺移植拒絶反応、任意の器官又は組織の異種移植拒絶反応、同種移植拒絶反応、抗受容体過剰反応、グレーブス病、レイノー病、B型インスリン抵抗性糖尿病、喘息、重症筋無力症、抗体媒介性細胞障害、III型過敏症反応、全身性エリテマトーデス、POEMS症候群(多発性神経障害、臓器肥大、内分泌障害、単クローン性免疫グロブリン血症、及び皮膚症状症候群)、多発性神経障害、臓器肥大、内分泌障害、単クローン性免疫グロブリン血症、皮膚症状症候群、抗リン脂質症候群、天疱瘡、強皮症、混合性結合組織病、特発性アジソン病、真性糖尿病、慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、白斑、血管炎、MI後心臓切開術症候群、IV型過敏症、接触性皮膚炎、過敏性肺炎、同種移植拒絶反応、細胞内生物による肉芽腫、薬物過敏、代謝性/特発性ウィルソン病、ヘマクロマトーシス、α-1-アンチトリプシン欠乏症、糖尿病性網膜症、橋本甲状腺炎、骨粗鬆症、原発性胆汁性肝硬変、甲状腺炎、脳脊髄炎、悪液質、嚢胞性線維症、新生児慢性肺疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、家族性血食組織のリンパ組織球増多症、皮膚科学的状態、乾癬症、脱毛症、ネフローゼ症候群、腎炎、糸球体腎炎、急性腎不全、血液透析、尿毒症、毒性、子癇前症、okt3療法、抗cd3療法、サイトカイン療法、化学療法、放射線療法(例えば、無力症、貧血、悪液質などが挙げられるがこれらに限定されない)、慢性サリチル酸塩中毒などの少なくとも1つが挙げられるがそれらに限定されない、細胞、組織、器官、動物又は患者における少なくとも1つの免疫関連疾患を調節又は治療するための方法も提供する。例えば、「Merck Manual」第12版~第17版、Merck & Company、Rahway,NJ(1972、1977、1982、1987、1992、1999)、「Pharmacotherapy Handbook」Wellsら編、第2版、Appleton and Lange、Stamford,Conn.(1998、2000)を参照されたく、それぞれは参照することにより全体が組み込まれる。
【0140】
本発明は、心機能不全症候群(cardiac stun syndrome)、心筋梗塞、うっ血性心不全、卒中、虚血発作、出血、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、糖尿病性動脈硬化性疾患、高血圧、動脈性高血圧、腎血管性高血圧、失神、ショック、心血管系の梅毒、心不全、肺性心、原発性肺高血圧、不整脈、心房異所性拍動、心房粗動、心房細動(持続性又は発作性)、還流後症候群、心肺バイパス炎症応答、無秩序型又は多源性心房頻脈、規則的狭QRS頻脈(regular narrow QRS tachycardia)、固有不整脈(specific arrhythmias)、心室細動、ヒス束不整脈(His bundle arrhythmias)、房室ブロック、脚ブロック、心筋虚血性疾患、冠動脈疾病、狭心症、心筋梗塞、心筋症、拡張型うっ血性心筋症、拘束型心筋症、心臓弁膜症、心内膜炎、心膜疾患、心臓腫瘍、大動脈瘤及び末梢動脈瘤、大動脈切開、大動脈の炎症、腹部大動脈及びその分岐の閉塞、末梢血管障害、閉塞性動脈障害、末梢アテローム性動脈硬化症、閉塞性血栓性血管炎、機能性末梢動脈障害、レイノー現象及び疾患、先端チアノーゼ、紅痛症、静脈性疾患、静脈血栓症、静脈瘤、動静脈瘻、リンパ浮腫、脂肪性浮腫、不安定狭心症、再灌流傷害、ポンプ後症候群(post pump syndrome)、虚血再灌流傷害などのうちの少なくとも1つを含むがこれらに限定されない、細胞、組織、器官、動物又は患者における、少なくとも1つの循環器疾患を調節又は治療するための方法も提供する。かかる方法は、少なくとも1つの抗TNF抗体を含む有効量の組成物又は医薬組成物を、かかる調節、処置又は治療を必要としている細胞、組織、器官、動物又は患者に投与することを、任意選択的に含み得る。
【0141】
本発明は、急性又は慢性細菌感染、細菌、ウイルス及び真菌感染を含む急性及び慢性寄生又は感染プロセス、HIV感染/HIV神経障害、髄膜炎、肝炎(A、B又はCなど)、敗血症性関節炎、腹膜炎、肺炎、喉頭蓋炎、大腸菌0157:h7、溶血性尿毒症性症候群/塞栓性血小板減少性紫斑病、マラリア、デング出血熱、リーシュマニア症、ハンセン病、中毒性ショック症候群、連鎖球菌筋炎、ガス壊疽、結核菌、マイコバクテリウム-アビウム-イントラセルラーレ、ニューモシスティスカリニ肺炎、骨盤内炎症性疾患、精巣炎/精巣上体炎、レジオネラ、ライム病、a型インフルエンザ、エプスタイン-バーウイルス、ウイルス関連血球貪食症候群、ウイルス性脳炎/無菌性髄膜炎などのうちの少なくとも1つを含むがこれらに限定されない、細胞、組織、器官、動物又は患者において少なくとも1つの感染症を調節又は処置するための方法も提供する。
【0142】
本発明は、白血病、急性白血病、急性リンパ球性白血病(ALL)、B細胞、T細胞又はFAB ALL、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、有毛細胞白血病、骨髄異形成症候群(MDS)、リンパ腫、ホジキン病、悪性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、カポジ肉腫、直腸結腸がん、膵臓がん、鼻咽頭がん、悪性組織球増殖症、悪性の腫瘍随伴症候群/高カルシウム血症、固形腫瘍、腺がん、肉腫、悪性黒色腫、血管腫、転移性疾患、がん関連骨吸収、がん関連骨痛などのうちの少なくとも1つを含むがこれらに限定されない、細胞、組織、器官、動物又は患者における少なくとも1つの悪性疾患を調節又は処置するための方法も提供する。
【0143】
本発明は、神経変性疾患、多発性硬化症、片頭痛、エイズ痴呆症候群、脱髄疾患、例えば、多発性硬化症及び急性横断性脊髄炎、錐体外路及び小脳障害、例えば、皮質脊髄系の病変、大脳基底核の障害若しくは小脳障害、多動性運動障害、例えば、ハンチントン舞踏病及び老年性舞踏病、薬剤誘発性運動障害、例えば、CNSドーパミン受容体を遮断する薬物により誘発されるもの、運動低下性運動障害、例えば、パーキンソン病、進行性核上麻痺、小脳の構造病変、脊髄小脳変性症、例えば、脊髄性運動失調症、フリードライヒ失調症、小脳皮質変性症、多系統変性症(Mencel、Dejerine-Thomas,Shi-Drager及びMachado-Joseph)、全身性疾患(レフスム病、無βリポタンパク血症、運動失調症、毛細血管拡張症、及びミトコンドリア多系統障害)、脱髄性コア障害(demyelinating core disorder)、例えば、多発性硬化症、急性横断性脊髄炎及び運動単位の障害、例えば、神経性筋萎縮症(前角細胞変性症、例えば、筋萎縮性側索硬化症、乳児脊髄性筋萎縮症及び若年性脊髄性筋萎縮症)、アルツハイマー病、中年層のダウン症候群、びまん性レヴィー小体病、レヴィー小体型の老人性痴呆症、ウェルニッケコルサコフ症候群、慢性アルコール中毒、クロイツフェルト-ヤコブ病、亜急性硬化性全脳炎、ハレルフォルデン-スパッツ病、並びにボクサー認知症などのうちの少なくとも1つを含むがこれらに限定されない、細胞、組織、器官、動物又は患者における少なくとも1つの神経学的疾患を調節又は処置するための方法も提供する。かかる方法は、任意選択的に、少なくとも1つのTNF抗体又は特定された部分又は変異体を含む有効量の組成物又は医薬組成物を、このような調節、処置又は治療を必要としている細胞、組織、器官、動物又は患者に対し投与する工程を含むことができる。例えば、「Merck Manual」第16版、Merck&Company、Rahway,NJ(1992)を参照のこと。
【0144】
本発明のいずれの方法も、かかる調節、処置又は治療を必要としている細胞、組織、器官、動物又は患者に、少なくとも1つの抗TNF抗体を含む有効量の組成物又は医薬組成物を投与することを含み得る。かかる方法は、任意選択的に、かかる免疫疾患の治療のための同時投与又は併用療法を更に含み得、この少なくとも1つの抗TNF抗体、特定された部分又はその変異体の投与は、少なくとも1つのTNF拮抗薬(例えば、TNF抗体若しくは断片、可溶性TNF受容体若しくは断片、その融合タンパク質、又は低分子TNF拮抗薬などであるが、これらに限定されない)、抗リウマチ薬(例えば、メトトレキサート、オーラノフィン、アウロチオグルコース、アザチオプリン、エタネルセプト、金チオリンゴ酸ナトリウム、硫酸ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、スルファサラジン)、筋弛緩薬、麻薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、鎮痛薬、麻酔薬、鎮静薬、局所麻酔薬、神経筋ブロッカ、抗菌薬(例えば、アミノグリコシド、抗真菌薬、駆虫薬、抗ウイルス薬、カルバペナム、セファロスポリン、フルオロキノロン、マクロライド、ペニシリン、スルホンアミド、テトラサイクリン、他の抗菌薬)、抗乾癬剤、コルチコステロイド、アナボリックステロイド、糖尿病関連薬、ミネラル、栄養薬、甲状腺薬、ビタミン、カルシウム関連ホルモン、止瀉薬、鎮咳薬、制吐剤、抗潰瘍剤、緩下剤、抗凝固薬、エリスロポエチン(例えば、エポエチンα)、フィルグラスチム(例えば、G-CSF、Neupogen)、サルグラモスチム(GM-CSF、Leukine)、予防接種、免疫グロブリン、免疫抑制薬(例えば、バシリキシマブ、シクロスポリン、ダクリズマブ)、成長ホルモン、ホルモン補充薬、エストロゲン受容体調節薬、散瞳薬、毛様筋麻痺薬、アルキル化剤、抗代謝剤、有糸分裂阻害剤、放射性医薬品、抗うつ薬、抗躁病薬、抗精神病薬、抗不安薬、催眠薬、交感神経作動薬、刺激薬、ドネペジル、タクリン、喘息薬、β作動薬、吸入ステロイド、ロイコトリエン阻害剤、メチルキサンチン、クロモリン、エピネフリン若しくは類似体、ドルナーゼα(Pulmozyme)、サイトカイン若しくはサイトカイン拮抗薬から選択される少なくとも1つの前に、同時に、及び/又は後に投与することを更に含む。好適な投与量は、技術分野において周知である。例えば、Wells et al.,eds.,Pharmacotherapy Handbook,2nd Edition,Appleton and Lange,Stamford,CT(2000)、PDR Pharmacopoeia,Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000,Deluxe Edition,Tarascon Publishing,Loma Linda,CA(2000)を参照されたい。
【0145】
本発明の組成物、併用療法、同時投与、デバイス及び/又は方法(本発明の少なくとも1つの抗体、その特定された部分及びその変異体を更に含む)に好適なTNF拮抗薬は、抗TNF抗体、その抗原結合断片、及びTNFに特異的に結合する受容体分子、TNF合成、TNF放出若しくは標的細胞に対するその作用を阻止及び/又は阻害する化合物、例えば、サリドマイド、テニダプ、ホスホジエステラーゼ阻害剤(例えば、ペントキシフィリン及びロリプラム)、A2bアデノシン受容体作動薬及びA2bアデノシン受容体エンハンサ、TNF受容体シグナル伝達を阻止及び/又は阻害する化合物、例えば、マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼ阻害剤、膜TNF切断を遮断及び/又は阻害する化合物、例えば、メタロプロテイナーゼ阻害剤、TNF活性を遮断及び/又は阻害する化合物、例えば、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤(例えば、カプトプリル)、並びにTNF生成及び/又は合成を遮断及び/又は阻害する化合物、例えば、MAPキナーゼ阻害剤を含むが、これらに限定されない。
【0146】
本明細書で使用されるとき、「腫瘍壊死因子抗体」、「TNF抗体」、「TNFα抗体」又は「断片」などは、インビトロ、その場で、及び/又は好ましくはインビボで、TNFα活性を減少、遮断、阻害、抑止又は干渉する。例えば、本発明の好適なTNFヒト抗体は、TNFαに結合することができ、抗TNF抗体、その抗原結合断片、及びTNFαに特異的に結合する特定されたミュータント又はそのドメインを含む。好適なTNF抗体又は断片は、TNF RNA、DNA、若しくはタンパク質合成、TNF放出、TNF受容体シグナル伝達、膜TNF切断、TNF活性、TNF生成及び/又は合成を、減少、遮断、抑止、干渉、阻止及び/又は阻害することもできる。
【0147】
キメラ抗体cA2は、A2と呼ばれる高親和性中和マウス抗ヒトTNFαIgG1抗体の抗原結合可変領域及びヒトIgG1のκ免疫グロブリンの定常領域からなる。ヒトIgG1 Fc領域は、同種の抗体のエフェクタ機能を改善し、循環血清半減期を増加させ、抗体の免疫原性を減少させる。キメラ抗体cA2の結合活性及びエピトープの特異性は、マウス抗体A2の可変領域に由来する。特定の実施形態では、マウス抗体A2の可変領域をコードする核酸の好ましい供給源は、A2ハイブリドーマ細胞株である。
【0148】
キメラA2(cA2)は、天然及び組換えの両方のヒトTNFαの細胞傷害性作用を用量依存的に中和する。キメラ抗体cA2と組換えヒトTNFαとの結合アッセイから、キメラ抗体cA2の親和性定数は、1.04xl010M-1であると計算された。競合阻害によるモノクローナル抗体の特異性及び親和性を決定するための好ましい方法は、Harlowら、「antibodies:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor,New York(1988)、Colliganら編、「Current Protocols in Immunology」、Greene Publishing Assoc.and Wiley Interscience,New York(1992~2000)、Kozborら、「Immunol.Today」4:72~79(1983)、Ausubelら編、「Current Protocols in Molecular Biology」Wiley Interscience、New York(1987~2000)、及びMuller、「Meth.Enzymol.」92:589~601(1983)に見ることができ、これらの参照文献は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0149】
特定の実施形態では、マウスモノクローナル抗体A2は、c134Aと呼ばれる細胞株によって産生される。キメラ抗体cA2は、c168Aと呼ばれる細胞株によって産生される。
【0150】
本発明において使用することができるモノクローナル抗TNF抗体の更なる例は、当該技術分野において記載されている(例えば、米国特許第5,231,024号、Moller,A.ら、「Cytokine」2(3):162-169(1990)、米国出願第07/943,852号(1992年9月11日出願)、Rathjenら、国際公開第91/02078号(1991年2月21日公開)、Rubinら、EPO特許公開第0 218 868号(1987年4月22日公開)、Yoneら、EPO特許公開第0 288 088号(1988年10月26日)、Liangら、「Biochem.Biophys.Res.Comm.137:847-854(1986)、Meagerら、「Hybridoma」6:305~311(1987)、Fendlyら、「Hybridoma」6:359~369(1987)、Bringmanら、「Hybridoma」6:489~507(1987)及びHiraiら、「J.Immunol.Meth.96:57~62(1987)を参照のこと。これらの参照文献は、参照により全体が本明細書に組み込まれる)。
【0151】
TNF受容体分子。本発明に有用な好ましいTNF受容体分子は、TNFαに高い親和性で結合し(例えば、Feldmannら、国際公開第92/07076号(1992年4月30日公開)、Schallら、「Cell」61:361~370(1990)、及びLoetscherら、「Cell」61:351~359(1990)を参照のこと。これらの参照文献は、参照により全体が本明細書に組み込まれる)、任意選択的に低い免疫原性を有するものである。特に、55kDa(p55 TNF-R)及び75kDa(p75 TNF-R)のTNF細胞表面受容体は、本発明において有用である。受容体の細胞外ドメイン(ECD)又はその機能的部分を含むこれらの受容体の切断型(例えば、Corcoranら、「Eur.J.Biochem.」223:831~840(1994)を参照のこと)も本発明において有用である。ECDを含むTNF受容体の切断型は、尿及び血清中で、30kDa及び40kDaのTNFα阻害結合タンパク質として検出されている(Engelmann,H.ら、「J.Biol.Chem.」265:1531~1536(1990))。TNF受容体多量体分子及びTNF免疫受容体融合分子、並びにそれらの誘導体及び断片又は部分は、本発明の方法及び組成物において有用であるTNF受容体分子の更なる例である。本発明に使用することができるTNF受容体分子は、症状の良好乃至優れた緩和及び低毒性で患者を長期間処置する能力を特徴とする。低い免疫原性及び/又は高い親和性並びにその他の未定義の特性は、得られる治療結果に寄与し得る。
【0152】
本発明において有用なTNF受容体多量体分子は、ポリエチレングリコール(PEG)などの、1つ又は2つ以上のポリペプチドリンカ又はその他の非ペプチドリンカを介して連結された2つ以上のTNF受容体のECDの全て又は機能的部分を含む。多量体分子は、多量体分子の発現をもたらすための分泌タンパク質のシグナルペプチドを更に含むことができる。これらの多量体分子及びそれらの生成方法は、米国出願第08/437,533号(1995年5月9日出願)に記載されており、その内容は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0153】
本発明の方法及び組成物において有用なTNF免疫受容体融合分子は、1つ又は2つ以上の免疫グロブリン分子の少なくとも1つの部分及び1つ又は2つ以上のTNF受容体の全て又は機能的部分を含む。これらの免疫受容体融合分子は、単量体又はヘテロ若しくはホモ多量体として集合させることができる。免疫受容体融合分子は、一価であっても多価であってもよい。かかるTNF免疫受容体融合分子の例は、TNF受容体/IgG融合タンパク質である。TNF免疫受容体融合分子及びそれらの生成方法は、当該技術分野において記載されている(Lesslauerら、「Eur.J.Immunol.」21:2883-2886(1991)、Ashkenaziら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:10535-10539(1991)、Peppelら、「J.Exp.Med.174:1483-1489(1991)、Kollsら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」91:215~219(1994)、Butlerら、「Cytokine」6(6):616~623(1994);Bakerら、「Eur.J.Immunol.」24:2040~2048(1994)、Beutlerら、米国特許第5,447,851号及び米国出願第08/442,133号(1995年5月16日出願)、これらの参照文献の各々は、参照により全体が本明細書に組み込まれる)。免疫受容体融合分子の生成方法は、Caponら、米国特許第5,116,964号、Caponら、米国特許第5,225,538号及びCaponら、「Nature」337:525~531(1989)にも見ることができ、これらの参照文献は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0154】
TNF受容体分子の機能的等価物、誘導体、断片、又は領域は、本発明に使用することができるTNF受容体分子に機能的に類似するのに十分な大きさ及び配列のものである(例えば、TNFαに高い親和性で結合し、低い免疫原性を有する)、TNF受容体分子の部分、又はTNF受容体分子をコード化するTNF受容体分子配列の部分を指す。TNF受容体分子の機能的等価物は又、本発明に使用することができるTNF受容体分子に機能的に類似する(例えば、TNFαに高い親和性で結合し、低い免疫原性を有する)修飾されたTNF受容体分子も含む。例えば、TNF受容体分子の機能的等価物は「SILENT」コドン、又は1つ又は2つ以上のアミノ酸置換、欠失、若しくは付加(例えば、1個の酸性アミノ酸を別の酸性アミノ酸の代わりに用いるか、又は同じ若しくは異なる疎水性アミノ酸をコードする1つのコドンを、疎水性アミノ酸をコードする別のコドンの代わりに用いる)を含有し得る。Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」、Greene Publishing Assoc.and Wiley-Interscience,New York(1987~2000)を参照のこと。
【0155】
サイトカインは、いかなる既知のサイトカインも包含する。例えば、CopewithCytokines.comを参照されたい。サイトカイン拮抗薬としては、任意の抗体、断片若しくは模倣薬、任意の可溶性受容体、断片若しくは模倣薬、任意の低分子拮抗薬、又はそれらの任意の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0156】
療法による治療。本発明の任意の方法は、かかる調節、治療又は療法を必要としている細胞、組織、器官、動物又は患者に、少なくとも1つの抗TNF抗体を含む有効量の組成物又は医薬組成物を投与することを含む、TNF媒介障害を治療するための方法を含み得る。かかる方法は、任意選択的に、かかる免疫疾患の治療のための同時投与又は併用療法を更に含み得、この少なくとも1つの抗TNF抗体、特定された部分又はその変異体の投与は、少なくとも1つのTNF拮抗薬(例えば、TNF抗体若しくは断片、可溶性TNF受容体若しくは断片、その融合タンパク質、又は低分子TNF拮抗薬などであるが、これらに限定されない)、抗リウマチ薬(例えば、メトトレキサート、オーラノフィン、アウロチオグルコース、アザチオプリン、エタネルセプト、金チオリンゴ酸ナトリウム、硫酸ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、スルファサラジン)、筋弛緩薬、麻薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、鎮痛薬、麻酔薬、鎮静薬、局所麻酔薬、神経筋ブロッカ、抗菌薬(例えば、アミノグリコシド、抗真菌薬、駆虫薬、抗ウイルス薬、カルバペナム、セファロスポリン、フルオロキノロン、マクロライド、ペニシリン、スルホンアミド、テトラサイクリン、他の抗菌薬)、抗乾癬剤、コルチコステロイド、アナボリックステロイド、糖尿病関連薬、ミネラル、栄養薬、甲状腺薬、ビタミン、カルシウム関連ホルモン、止瀉薬、鎮咳薬、制吐剤、抗潰瘍剤、緩下剤、抗凝固薬、エリスロポエチン(例えば、エポエチンα)、フィルグラスチム(例えば、G-CSF、Neupogen)、サルグラモスチム(GM-CSF、Leukine)、予防接種、免疫グロブリン、免疫抑制薬(例えば、バシリキシマブ、シクロスポリン、ダクリズマブ)、成長ホルモン、ホルモン補充薬、エストロゲン受容体調節薬、散瞳薬、毛様筋麻痺薬、アルキル化剤、抗代謝剤、有糸分裂阻害剤、放射性医薬品、抗うつ薬、抗躁病薬、抗精神病薬、抗不安薬、催眠薬、交感神経作動薬、刺激薬、ドネペジル、タクリン、喘息薬、β作動薬、吸入ステロイド、ロイコトリエン阻害剤、メチルキサンチン、クロモリン、エピネフリン若しくは類似体、ドルナーゼα(Pulmozyme)、サイトカイン若しくはサイトカイン拮抗薬から選択される少なくとも1つの前に、同時に、及び/又は後に投与することを更に含む。
【0157】
典型的には、病態の処置は、組成物中に含有される比活性に応じ、平均して、合計、1回の投与当たり患者の体重1kg当たり少なくとも約0.01~500ミリグラムの範囲の少なくとも1つの抗TNF抗体、好ましくは、単回又は複数回投与当たり患者の体重1kg当たり少なくとも約0.1~100ミリグラムの範囲の抗体の、少なくとも1つの抗TNF抗体組成物の有効な量又は投与量を投与することにより達成される。あるいは、有効な血清濃度は、単回又は複数回投与当たり、0.1~5000μg/mLの血清濃度を含み得る。好適な投与量は、医療従事者には既知であり、当然のことながら、具体的な疾患状態、投与される組成物の比活性、及び処置を受けている具体的な患者に依存する。いくつかの場合では、望ましい治療量を達成するために、反復投与、すなわち特定の監視された用量又は計量された用量の反復個別投与を提供することが必要となる場合があり、この場合、個別投与は、所望の1日の投与量又は効果が得られるまで繰り返される。
【0158】
好ましい用量は、任意選択的に、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99及び/若しくは100~500mg/kg/投与、又はその任意の範囲、値若しくは分画を含むか、あるいは単回若しくは複数回投与当たり0.1、0.5、0.9、1.0、1.1、1.2、1.5、1.9、2.0、2.5、2.9、3.0、3.5、3.9、4.0、4.5、4.9、5.0、5.5、5.9、6.0、6.5、6.9、7.0、7.5、7.9、8.0、8.5、8.9、9.0、9.5、9.9、10、10.5、10.9、11、11.5、11.9、20、12.5、12.9、13.0、13.5、13.9、14.0、14.5、15、15.5、15.9、16、16.5、16.9、17、17.5、17.9、18、18.5、18.9、19、19.5、19.9、20、20.5、20.9、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、96、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500及び/若しくは5000μg/mLの血清濃度、又はその任意の範囲、値若しくは分画を得るように含み得る。
【0159】
あるいは、投与される用量は、特定の薬剤の薬力学的特徴並びにその投与方法及び経路、受容者の年齢、健康状態及び体重、症状の性質及び程度、同時治療の種類、処置頻度、並びに所望の作用などの周知の因子に応じて異なり得る。活性成分の投与量は、通常、体重1キログラム当たり約0.1~100ミリグラムであり得る。通常、投与当たり1キログラム当たり0.1~50、好ましくは0.1~10ミリグラム又は徐放性形態が、望ましい結果を得るために有効である。
【0160】
非限定的な例として、ヒト又は動物の処置は、単回、注入又は反復投与を使用して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39若しくは40日目のうちの少なくとも1日に、あるいは又は追加的に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51若しくは52週目のうちの少なくとも1週に、あるいは又は追加的に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20年目のうちの少なくとも1年に、又はこれらの任意の組合せで、1日当たり0.1~100mg/kg、例えば、0.5、0.9、1.0、1.1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、45、50、60、70、80、90、又は100mg/kgの、本発明の少なくとも1つの抗体の1回又は周期的な投与量として提供され得る。
【0161】
体内投与に好適な剤形(組成物)は、一般に、1単位又は容器当たり約0.1ミリグラム~約500ミリグラムの活性成分を含有する。これらの医薬組成物において、活性成分は、組成物の総重量に基づいて、通常、約0.5~99.999重量%の量で存在する。
【0162】
非経口投与には、抗体は、薬学的に許容できる非経口ビヒクルと合わせて、又は別途供給される、溶液、懸濁液、エマルジョン若しくは凍結乾燥粉末として、処方することができる。このような溶剤の実施例は、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、及び1~10%ヒト血清アルブミンである。リポソーム及び固定油などの非水性ビヒクルを使用することもできる。溶剤又は凍結乾燥粉末は、等張性及び化学安定性を維持する添加剤(例えば、等張性に関しては塩化ナトリウム、マンニトール、化学安定性に関しては緩衝剤及び保存剤)を含有することができる。製剤は、周知の又は好適な技術によって滅菌される。
【0163】
好適な医薬担体は、本分野での標準的参考書であるRemington’s Pharmaceutical Sciences,A.Osolの最新版に記載されている。
【0164】
代替的投与。製薬学的に有効な量の、本発明による少なくとも1つの抗TNF抗体を投与するために、本発明により、多くの既知の及び開発された投与方法を使用することができる。以下の記述では経肺投与が使用されているが、本発明に従って他の投与方式を使用して、好適な結果を得てもよい。
【0165】
本発明のTNF抗体は、担体中で、溶液、エマルジョン、コロイド若しくは懸濁液として、又は乾燥粉末として、吸入によるか、又は本明細書に記載される若しくは当該技術分野において既知である他の方法による投与に適した様々なデバイス及び方法のいずれかを使用して、送達することができる。
【0166】
非経口製剤及び投与。非経口投与用製剤は、一般的な添加物として滅菌水又は生理食塩水、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、植物に由来する油、水素化ナフタレンなどを含有し得る。注射用の水性又は油性懸濁液は、周知の方法に従って、適切な乳化剤又は加湿剤及び懸濁剤を使用することによって調製可能である。注射剤は、例えば、水溶液、無菌注射液、又は溶媒中懸濁液などの非毒性の非経口投与可能な希釈剤であってよい。使用可能な溶剤又は溶媒としては、水、リンゲル液、等張生理食塩水などが許容され、通常の溶媒又は懸濁溶媒としては、無菌の不揮発性油を使用することができる。これらの目的では、天然又は合成若しくは半合成の、脂肪油又は脂肪酸、天然又は合成若しくは半合成の、モノグリセリド又はジグリセリド又はトリグリセリドを含む、あらゆる種類の不揮発性油及び脂肪酸を使用することができる。非経口投与は技術分野において周知であり、従来の注射手段、米国特許第5,851,198号に記載されているようなガス加圧式無針注射デバイス、及び米国特許第5,839,446号に記載されているようなレーザ穿孔機デバイスが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらは参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0167】
代替的送達。本発明は更に、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、関節内、気管支内、腹内、包内、軟骨内、洞内、腔内、小脳内、脳室内、結腸内、頚管内、胃内、肝内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊髄内、滑液嚢内、胸郭内、子宮内、膀胱内、ボーラス、膣内、直腸、口腔内、舌下、鼻腔内、又は経皮手段による少なくとも1つの抗TNF抗体の投与に関する。少なくとも1つの抗TNF抗体組成物は、非経口(皮下、筋肉内又は静脈内)又は任意のその他の投与、特に、液体溶液若しくは懸濁液の形態で使用するために、特に、クリーム及び座薬などであるがこれらに限定されない半固体形態で、膣若しくは直腸の投与における使用のために、錠剤若しくはカプセルなどであるがこれらに限定されない形態で、口腔若しくは舌下投与用に、あるいは粉末、点鼻剤若しくはエアロゾル、又はある特定の薬剤などであるがこれらに限定されない形態で、鼻腔内に、あるいは皮膚構造を改変するか、又は経皮パッチ中の薬物濃度を増加させるかのいずれかのために、ジメチルスルホキシドなどの化学的促進剤を用いて(Jungingerら、In「Drug Permeation Enhancement」;Hsieh,D.S.(編)、59~90(Marcel Dekker,Inc.New York 1994、参照により全体が本明細書に組み込まれる)、又はタンパク質及びペプチドを含有する製剤の皮膚への適用を可能にする酸化剤を用いて(国際公開第98/53847号)、又はエレクトロポレーションなどの一過性の輸送経路を作り出すための、若しくはイオントフォレシスなどの皮膚を通して荷電薬物の移動度を増加させるための電界の適用、又は超音波導入などの超音波の適用(米国特許第4,309,989号及び同第4,767,402号)を用いて、ゲル、軟膏、ローション、懸濁液若しくはパッチ送達系などであるが、これらに限定されずに、経皮的に、調製することができる(上記の刊行物及び特許は、参照により全体が本明細書に組み込まれる)。
【0168】
経肺/鼻腔内投与。経肺投与のためには、好ましくは、少なくとも1つの抗TNF抗体組成物は、肺の下気道又は洞に達するのに有効な粒径で送達される。本発明により、少なくとも1つの抗TNF抗体は、吸入により治療薬を投与するための、当該技術分野において既知の様々な吸入又は鼻腔内デバイスのいずれかにより送達することができる。患者の洞腔又は肺胞内にエアロゾル化した製剤を被着させることができるこれらのデバイスとしては、定量吸入器、ネブライザ、乾燥粉末発生器、噴霧器などが挙げられる。抗体の経肺又は鼻腔内投与を目的とするのに適したその他のデバイスも、当該技術分野において既知である。かかるデバイスは全てエアロゾル中の抗体を分配するための投与に適した製剤を使用することができる。このようなエアロゾルは、溶液(水性及び非水性の両方)又は固体粒子のいずれかで構成されることができる。Ventolin(登録商標)定量吸入器のような定量吸入器は、典型的には噴射ガスを使用し、吸気時の作動を必要とする(例えば、国際公開第94/16970号、国際公開第98/35888号を参照のこと)。Turbuhaler(商標)(Astra)、Rotahaler(登録商標)(Glaxo)、Diskus(登録商標)(Glaxo)、Spiros(商標)吸入器(Dura)、Inhale Therapeuticsにより市販されているデバイス、及びSpinhaler(登録商標)粉末吸入器(Fisons)などの乾燥粉末吸入器は、混合粉末の呼気作動を使用する(米国特許第4668218号(Astra)、欧州特許第237507号(Astra)、国際公開第97/25086号(Glaxo)、国際公開第94/08552号(Dura)、米国特許第5458135号(Inhale)、国際公開第94/06498号(Fisons)、参照により全体が本明細書に組み込まれる)。AERx(商標)Aradigm、the Ultravent(登録商標)ネブライザ(Mallinckrodt)、及びAcorn II(登録商標)ネブライザ(Marquest Medical Products)(米国特許第5404871号Aradigm、国際公開第97/22376号)などのネブライザ、(以上の参考文献は参照により全体が本明細書に組み込まれる)は溶液からエアロゾルを発生させるのに対し、定量吸入器、乾燥粉末吸入器などは小粒子エアロゾルを発生させる。市販の吸入デバイスのこれらの具体例は、本発明の実施に適した特定のデバイスを代表するものとして意図されており、本発明の範囲を制限するものとして意図されているものではない。好ましくは、少なくとも1つの抗TNF抗体を含む組成物は、乾燥粉末吸入器又は噴霧器によって送達される。本発明の少なくとも1つの抗体を投与するための吸入デバイスには、複数の望ましい特徴が存在する。例えば、吸入デバイスによる送達は、有利に信頼性が高く、再現可能であり、かつ正確である。吸入デバイスは任意選択的に、うまく呼吸できるように、例えば、約10μm未満、好ましくは約1~5μmの小さな乾燥粒子を送達することができる。
【0169】
スプレーでのTNF抗体組成物の投与。TNF抗体組成物タンパク質を含むスプレーは、少なくとも1つの抗TNF抗体の懸濁液又は溶液に加圧下でノズルを通過させることにより生じさせることができる。ノズルの大きさ及び構成、適用される圧力並びに液体供給速度は、所望の出力及び粒径を達成するように選定することができる。例えば、キャピラリー又はノズルフィードと共に電界により電気スプレーを作製することができる。有利なことに、噴霧器により送達される少なくとも1つの抗TNF抗体組成物タンパク質の粒子は、約10μm未満、好ましくは約1μm~約5μm、最も好ましくは約2μm~約3μmの範囲の粒径を有する。
【0170】
噴霧器で使用するのに適した少なくとも1つの抗TNF抗体組成物タンパク質の製剤は、典型的には、水溶液中に、例えば、0.1、0.2.、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、45、50、60、70、80、90、又は100mg/mL若しくは100mg/gmであるがこれらに限定されない、1ml若しくは1mg/gmの溶液当たり約0.1mg~約100mg、又はその中の任意の範囲若しくは値の少なくとも1つの抗TNF抗体組成物タンパク質の濃度で抗体組成物タンパク質を含む。この製剤は、添加物、緩衝剤、等張剤、保存剤、界面活性剤、及び好ましくは亜鉛などの薬剤を含み得る。この製剤は、添加物、還元剤、バルクタンパク質又は炭水化物などの抗体組成物タンパク質を安定化させるための賦形剤又は薬剤も含み得る。抗体組成物タンパク質の処方において有用なバルクタンパク質には、アルブミン、プロタミンなどが挙げられる。抗体組成物タンパク質の処方において有用な典型的な炭水化物としては、ショ糖、マンニトール、乳糖、トレハロース、グルコースなどが挙げられる。抗体組成物タンパク質製剤は、エアロゾル形成時の溶液の霧化により引き起こされる抗体組成物タンパク質の表面誘発性の凝集を低減又は阻止することができる界面活性剤も含み得る。ポリオキシエチレン脂肪酸エステル及びアルコール、並びにポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルのような様々な従来の界面活性剤を使用することができる。量は一般に、製剤の0.001~14重量%の範囲にわたる。本発明の目的上とりわけ好ましい界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリソルベート80、ポリソルベート20などである。TNF抗体又は特定された部分若しくは変異体などのタンパク質の製剤には、当該技術分野において既知の更なる薬剤も又製剤中に含むことができる。
【0171】
ネブライザによるTNF抗体組成物の投与。抗体組成物タンパク質は、ジェットネブライザ又は超音波ネブライザなどのネブライザにより投与することができる。典型的には、ジェットネブライザでは、オリフィスを通して高速の空気ジェットを作り出すのに圧縮空気供給源を使用する。ガスがノズルを超えて膨脹する際に低圧領域が作り出され、それが液体リザーバに接続された毛細管を通して抗体組成物タンパク質の溶液を引き出す。毛細管からの液体流は、それが管を出る際に不安定な糸状体及び液滴に剪断されてエアロゾルを作り出す。ある範囲の構成、流速及びバッフル型を、所定のジェットネブライザからの所望の性能の特徴を達成するのに使用することができる。超音波ネブライザにおいては、高周波電気エネルギーを使用して、典型的には圧電変換器を使用して、振動性の機械的エネルギーを作り出す。このエネルギーが、直接又はカップリング液を通じてのいずれかで抗体組成物タンパク質の製剤に伝播されて、抗体組成物タンパク質を含むエアロゾルを作り出す。有利なことに、ネブライザにより送達される抗体組成物タンパク質の粒子は、約10μm未満、好ましくは約1μm~約5μm、最も好ましくは約2μm~約3μmの範囲の粒径を有する。
【0172】
ジェット又は超音波のいずれかのネブライザでの使用に適した少なくとも1つの抗TNF抗体の製剤は、典型的には、溶液1ml当たり約0.1mg~約100mgの少なくとも1つの抗TNF抗体タンパク質の濃度を含む。この製剤は、添加物、緩衝剤、等張剤、保存剤、界面活性剤、及び好ましくは亜鉛などの薬剤を含み得る。この製剤は、緩衝剤、還元剤、バルクタンパク質、又は炭水化物などの少なくとも1つの抗TNF抗体組成物タンパク質の安定化のための添加物又は薬剤も含み得る。少なくとも1つの抗TNF抗体組成物タンパク質の処方において有用なバルクタンパク質には、アルブミン、プロタミンなどが挙げられる。少なくとも1つの抗TNF抗体の処方において有用な典型的な炭水化物としては、ショ糖、マンニトール、乳糖、トレハロース、グルコースなどが挙げられる。少なくとも1つの抗TNF抗体製剤は、エアロゾル形成時に溶液の霧化により引き起こされる少なくとも1つの抗TNF抗体の表面誘発性の凝集を低減又は阻止し得る界面活性剤も含み得る。ポリオキシエチレン脂肪酸エステル及びアルコール、並びにポリオキシエチレンソルビタル脂肪酸エステルのような様々な従来の界面活性剤を使用することができる。量は、一般に製剤の0.001~4重量%の範囲である。本発明の目的上とりわけ好ましい界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリソルベート80、ポリソルベート20などである。抗体タンパク質などのタンパク質の製剤には、当該技術分野において既知の更なる薬剤も又製剤中に含むことができる。
【0173】
定量吸入器によるTNF抗体組成物の投与。定量吸入器(MDI)では、噴射剤、少なくとも1つの抗TNF抗体及び任意の添加物又はその他の添加剤が、液化圧縮ガスを含む混合物としてキャニスタ内に収容される。絞り弁の作動により、好ましくは、約10μm未満、好ましくは約1μm~約5μm、最も好ましくは約2μm~3μmの範囲のサイズの粒子を含有するエアロゾルとしての混合物が放出される。ジェット粉砕、噴霧乾燥、臨界点凝結などを含む、当業者に既知の様々な方法により産生された抗体組成物タンパク質の製剤を用いることにより、所望のエアロゾル粒径を得ることができる。好ましい定量吸入器としては、3M又はGlaxoにより製造されかつヒドロフルオロカーボン噴射剤を使用するものが挙げられる。
【0174】
定量吸入器デバイスで使用するための少なくとも1つの抗TNF抗体の製剤は、一般に、少なくとも1つの抗TNF抗体を、例えば、界面活性剤の助けを借りて噴射剤中に懸濁した非水性溶媒中の懸濁液として含有する微粉を含む。噴射剤は、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタノール及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン、HFA-134a(ヒドロフルオロアルカン-134a)、HFA-227(ヒドロフルオロアルカン-227)などが挙げられる、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、又は炭化水素のような本目的上使用される任意の従来の物質であることができる。好ましくは、噴射剤はヒドロフルオロカーボンである。界面活性剤は、少なくとも1つの抗TNF抗体を噴射剤中の懸濁液として安定化させる、活性薬剤を化学的分解に対して保護するなどのために選択することができる。好適な界面活性剤には、ソルビタントリオレエート、ダイズレシチン、オレイン酸などが挙げられる。場合によっては、エタノールなどの溶媒を使用する溶液エアロゾルが好ましい。タンパク質の製剤には、当該技術分野で既知の更なる薬剤を製剤中に含んでもよい。
【0175】
当業者は、本発明の方法が、本明細書に記載されないデバイスを介する少なくとも1つの抗TNF抗体組成物の経肺投与により達成され得ることを認識するであろう。
【0176】
経口製剤及び投与。経口のための製剤は、腸壁の浸透性を人工的に増加させるためのアジュバント(例えば、レゾルシノール、並びにポリオキシエチレンオレイルエーテル及びn-ヘキサデシルポリエチレンエーテルなどの非イオン性界面活性剤)の同時投与、並びに酵素的分解を阻害するための酵素阻害剤(例えば、膵トリプシン阻害剤、ジイソプロピルフルオロリン酸(DFF)及びトラシロール)の同時投与による。経口投与のための固体型剤形の活性成分化合物は、ショ糖、乳糖、セルロース、マンニトール、トレハロース、ラフィノース、マルチトール、デキストラン、デンプン、寒天、アルギン酸塩、キチン、キトサン、ペクチン、トラガカントガム、アラビアゴム、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、合成又は半合成ポリマー、及びグリセリドなどの、少なくとも1つの添加剤と混合することができる。これらの剤形は又、他の種類の添加剤、例えば、不活性希釈剤、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウムなど)、パラベン、保存剤(ソルビン酸、アスコルビン酸、α-トコフェロールなど)、抗酸化剤(システインなど)、崩壊剤、結合剤、増粘剤、緩衝剤、甘味剤、着香剤、香料などを含有し得る。
【0177】
錠剤及び丸剤は腸溶コーティング調製物に更に加工することができる。経口投与のための液体調製物には、医学的用途に許容できるエマルジョン、シロップ、エリキシル剤、懸濁剤及び溶液調製物が挙げられる。これらの調製物は、当該分野で通例に使用される不活性希釈剤、例えば水を含有することができる。リポソームはインスリン及びヘパリンの薬物送達系としても記述されている(米国特許第4,239,754号)。より最近では、混合アミノ酸の人工的ポリマーのミクロスフェア(プロテイノイド)が、医薬品を送達するために使用されている(米国特許第4,925,673号)。更に、米国特許第5,879,681号及び米国特許第5,5,871,753号に記載される担体化合物が、生物学的活性薬剤を経口で送達するのに使用されることは、当該技術分野において既知である。
【0178】
粘膜製剤及び投与。粘膜表面を通る吸収のため、少なくとも1つの抗TNF抗体を投与するための組成物及び方法は、複数のサブミクロン粒子と、粘膜付着性巨大分子と、生物活性ペプチドと、エマルジョン粒子の粘膜付着を達成することにより粘膜表面を通る吸収を促進する水性連続相と、を含む、エマルジョンを含む(米国特許第5,514,670号)。本発明のエマルジョンの適用に適する粘膜表面には、角膜、結膜、口腔内、舌下、鼻、膣、肺、胃、腸、及び直腸投与経路を挙げることができる。膣又は直腸投与のための製剤、例えば座薬は、添加物として、例えば、ポリアルキレングリコール、ワセリン、カカオバターなどを含有し得る。鼻内投与のための処方は固体であってよく、添加物として、例えば乳糖を含有することができ、又は水性若しくは油性溶液の点鼻薬であることができる。口腔内投与のために、添加物として、糖、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、αデンプン(pregelinatined starch)などが挙げられる(米国特許第5,849,695号)。
【0179】
経皮製剤及び投与。経皮投与のために、少なくとも1つの抗TNF抗体を、リポソーム若しくはポリマーナノ粒子、微小粒子、マイクロカプセル又はミクロスフェア(特に明示しない限り、集合的に微小粒子と称する)などの送達デバイス中にカプセル化する。ポリ乳酸、ポリグリコール酸及びそれらのコポリマーなどのポリヒドロキシ酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物及びポリホスファゼンなどの合成ポリマー、並びにコラーゲン、ポリアミノ酸、アルブミン及びその他のタンパク質などの天然ポリマー、アルギン酸塩及びその他の多糖類並びにそれらの組合せから作製される微小粒子を含む多くの好適なデバイスが既知である(米国特許第5,814,599号)。
【0180】
長時間投与及び製剤。本発明の化合物を、単回投与により、長期間にわたり、例えば、1週~1年間、対象に送達することが時折望ましい場合がある。様々な徐放、デポー又は埋め込み剤形を利用することができる。例えば、剤形は、体液において溶解度が低い化合物の薬学的に許容できる非毒性塩、例えば、(a)リン酸、硫酸、クエン酸、酒石酸、タンニン酸、パモ酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンモノ-又はジスルホン酸、ポリガラクツロン酸などの多塩基酸との酸付加塩、(b)亜鉛、カルシウム、ビスマス、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、銅、コバルト、ニッケル、カドミウムなどの多価金属カチオン、又は例えば、N,N’-ジベンジル-エチレンジアミン若しくはエチレンジアミンから形成された有機カチオンを有する塩、あるいは(c)(a)及び(b)の組合せ、例えば、タンニン酸亜鉛塩を含有し得る。加えて、本発明の化合物、又は好ましくは前述したものなどの比較的不溶性の塩を、注射に好適な、例えばゴマ油と共に、例えば、モノステアリン酸アルミニウムゲルなどのゲル中に処方することができる。とりわけ好ましい塩は、亜鉛塩、亜鉛タンニン酸塩、パモ酸塩などである。別の種類の注射用徐放デポー製剤は、例えば米国特許第3,773,919号に記載されるポリ乳酸/ポリグリコール酸ポリマーなどのゆっくりと分解する非毒性の非抗原性ポリマー中にカプセル化されるために分散された化合物又は塩を含有する。化合物、又は好ましくは上述したものなどの比較的不溶性の塩は、特に動物での使用のために、コレステロールマトリックスのシラスティックペレット中に処方することもできる。更なる徐放デポー又は埋め込み製剤、例えば、ガス又は液体リポソームは、文献(米国特許第5,770,222号、及び「Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems」,J.R.Robinson ed.,Marcel Dekker,Inc.,N.Y.,1978)で既知である。
【0181】
本発明を全般的に記述したことから、同様物は、具体的説明として提供されるが制限することを意図していない以下の実施例を参照することにより、より容易に理解されるであろう。
【0182】
実施例1:哺乳類細胞におけるTNF抗体のクローニング及び発現。
典型的な哺乳動物発現ベクタは、mRNAの転写の開始を媒介する少なくとも1つのプロモータ要素、抗体コード配列、並びに転写の終結及び転写物のポリアデニル化に必要なシグナルを含む。付加的な要素には、エンハンサ、コザック配列並びにRNAスプライシングのためのドナー及びアクセプタ部位に隣接している介在配列が含まれる。高効率の転写は、SV40からの初期及び後期プロモータ、レトロウイルス、例えば、RSV、HTLVI、HIVIからの長末端反復(LTRS)、及びサイトメガロウイルス(CMV)の初期プロモータで達成することができる。しかしながら、細胞要素を使用することもできる(例えば、ヒトアクチンプロモータ)。本発明の実施において使用するのに好適な発現ベクタとしては、例えば、pIRES1neo、pRetro-Off、pRetro-On、PLXSN若しくはpLNCX(Clonetech Labs,Palo Alto,CA)、pcDNA3.1(+/-)、pcDNA/Zeo(+/-)又はpcDNA3.1/Hygro(+/-)(Invitrogen)、PSVL及びPMSG(Pharmacia,Uppsala,Sweden)、pRSVcat(ATCC 37152)、pSV2dhfr(ATCC 37146)並びにpBC12MI(ATCC 67109)などのベクタが挙げられる。使用することができる哺乳動物の宿主細胞には、ヒトHela293、H9及びJurkat細胞、マウスNIH3T3及びC127細胞、Cos1、Cos7及びCV1、ウズラQC1-3細胞、マウスL細胞及びチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞が含まれる。
【0183】
あるいは、遺伝子を、染色体に組み込まれた遺伝子を含有する安定した細胞株において発現させることができる。dhfr、gpt、ネオマイシン、又はハイグロマイシンなどの選択マーカとの共トランスフェクションは、トランスフェクトされた細胞の特定及び単離を可能にする。
【0184】
トランスフェクトされた遺伝子は又、大量のコード化された抗体を発現するために増幅され得る。DHFR(ジヒドロ葉酸レダクターゼ)マーカは、目的の遺伝子の数百又は更には数千のコピーを有する細胞株を開発するのに有用である。別の有用な選択マーカは、酵素グルタミンシンターゼ(GS)である(Murphyら、「Biochem.J.」227:277~279(1991)、Bebbingtonら、「Bio/Technology」10:169~175(1992))。これらのマーカを使用して、哺乳動物細胞を選択的培地中で成長させ、最も高い耐性を有する細胞が選択される。これらの細胞株は、染色体に組み込まれた増幅遺伝子を含有する。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)及びNSO細胞が抗体の生成に使用されることが多い。
【0185】
発現ベクタpC1及びpC4は、ラウス肉腫ウイルスの強いプロモータ(LTR)(Cullenら、「Molec.Cell.Biol.」5:438~447(1985))に加え、CMVエンハンサ(Boshartら、「Cell」41:521~530(1985))の断片を含有する。例えば、制限酵素切断部位BamHI、XbaI及びAsp7l8を伴う複数のクローニング部位は、目的の遺伝子のクローニングを容易にする。ベクタは更に、ラットプレプロインスリン遺伝子の3’イントロン、ポリアデニル化及び終結シグナルを含有する。
【0186】
CHO細胞におけるクローニング及び発現。ベクタpC4は、TNF抗体の発現に使用される。プラスミドpC4は、プラスミドpSV2-dhfr(ATCC受託番号37146)の誘導体である。このプラスミドは、SV40初期プロモータの制御下でマウスDHFR遺伝子を含有する。これらのプラスミドでトランスフェクトされる、ジヒドロ葉酸活性を欠くチャイニーズハムスター卵巣細胞又はその他の細胞は、化学療法剤メトトレキサートを補充した選択的培地(例えば、α-MEM、Life Technologies,Gaithersburg,MD)中で細胞を成長させることによって選択することができる。メトトレキサート(MTX)に耐性の細胞におけるDHFR遺伝子の増幅は、充分に文書化されている(例えば、F.W.Altら、「J.Biol.Chem.」253:1357-1370(1978)、J.L.Hamlin及びC.Ma、「Biochem.et Biophys.Acta」1097:107~143(1990)、及びM.J.Page及びM.A.Sydenham、「Biotechnology」9:64~68(1991)を参照のこと)。増大したMTX濃度において成長した細胞は、DHFR遺伝子の増幅の結果として、標的酵素であるDHFRの過剰生成により、薬物に対する耐性を発達させる。第2の遺伝子がDHFR遺伝子に連結されている場合、通常、共増幅され、過剰発現される。このアプローチを使用して、増幅遺伝子の1,000を超えるコピーを有する細胞株を開発することができることが、当該技術分野において知られている。続いて、メトトレキサートを回収する際、宿主細胞の1つ又は2つ以上の染色体に組み込まれた増幅遺伝子を含有する細胞株が得られる。
【0187】
プラスミドpC4は、目的の遺伝子を発現するために、ラウス肉腫ウイルスの長末端反復(LTR)の強いプロモータ(Cullenら、「Molec.Cell.Biol.」5:438~447(1985))に加え、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)の即初期遺伝子のエンハンサ(Boshartら、「Cell」41:521~530(1985))から単離された断片を含有する。プロモータの下流は、遺伝子の組み込みを可能にするBamHI、XbaI及びAsp718制限酵素切断部位である。これらのクローニング部位の後に、プラスミドは、ラットプレプロインスリン遺伝子の3’イントロン及びポリアデニル化部位を含有する。他の高効率のプロモータ、例えば、ヒトβアクチンプロモータ、SV40初期若しくは後期プロモータ、又は他のレトロウイルス、例えばHIV及びHTLVIからの長末端反復も発現のために使用することができる。ClontechのTet-Off及びTet-On遺伝子発現系、並びに類似の系を使用して、哺乳類細胞において調節された方法で、TNFを発現させることができる(M.Gossen及びH.Bujard、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」89:5547~5551(1992))。mRNAのポリアデニル化のために、例えば、ヒト成長ホルモン又はグロビン遺伝子からの他のシグナルも使用することができる。染色体に組み込まれた目的の遺伝子を有する安定した細胞株は、gpt、G418又はハイグロマイシンなどの選択マーカとの共トランスフェクションの際に選択することもできる。最初に1つを超える選択マーカ、例えばG418、に加えてメトトレキサートを使用するのが有利である。
【0188】
このプラスミドpC4を制限酵素で消化した後に、当該技術分野において既知の手順により、子ウシ腸ホスファターゼを使用して脱リン酸化する。次に、ベクタは1%アガロースゲルから単離される。
【0189】
次に、単離された可変及び定常領域コードDNA及び脱リン酸化ベクタをT4 DNAリガーゼで連結する。次に、大腸菌HB101又はXL-1 Blue細胞を形質転換し、例えば、制限酵素分析を使用して、プラスミドpC4に挿入された断片を含有する細菌を特定する。
【0190】
トランスフェクションには、活性DHFR遺伝子が欠損しているチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞が使用される。5μgの発現プラスミドpC4は、リポフェクチンを使用して、0.5μgのプラスミドpSV2-neoで共トランスフェクトされる。プラスミドpSV2-neoは、優性の選択マーカである、G418を含む一群の抗生物質に対して耐性を付与する酵素をコードするTn5からのneo遺伝子を含有する。1μg/mLのG418で補充したαマイナスMEMに細胞を播種する。2日後、細胞をトリプシン処理し、ハイブリドーマクローニングプレート(Greiner,Germany)中の、10、25、又は50ng/mLのメトトレキサート+1μg/mLのG418で補充したαマイナスMEMに播種する。約10~14日後、単一クローンをトリプシン処理した後、異なる濃度のメトトレキサート(50nM、100nM、200nM、400nM、800nM)を使用して、6ウェルペトリ皿又は10mLフラスコに播種する。次に、最高濃度のメトトレキサートで成長させているクローンを、更に高い濃度のメトトレキサート(1mM、2mM、5mM、10mM、20mM)を含む新しい6ウェルプレートに移す。100~200mMの濃度で成長するクローンが得られるまで同じ手順を繰り返す。所望の遺伝子生成物の発現は、例えば、SDS-PAGE及びウエスタンブロットによって、又は逆相HPLC分析によって分析される。
【0191】
実施例2:トランスジェニックマウスを使用する、ヒトTNFと反応する高親和性ヒトIgGモノクローナル抗体の生成。
概要。ヒト重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子を含有するトランスジェニックマウスを使用して、1つ又は2つ以上のTNF媒介性疾患の処置のための、TNF作用を阻害するために治療的に使用することができる高親和性の完全ヒトモノクローナル抗体を生成する。重鎖及び軽鎖両方のヒト可変及び定常領域抗体導入遺伝子を含有する(CBA/JxC57/BL6/J)F2ハイブリッドマウスをヒト組換えTNFで免疫する(Taylorら、「Intl.Immunol.」6:579-591(1993)、Lonbergら、「Nature」368:856~859(1994)、Neuberger,M.、「Nature Biotech.」14:826(1996)、Fishwildら、「Nature Biotechnology」14:845~851(1996))。いくつかの融合物が完全ヒトTNF反応性IgGモノクローナル抗体の1つ又は2つ以上のパネルを生み出した。完全ヒト抗TNF抗体を更に特徴付けする。全てはIgG1κである。かかる抗体は、およそ1x109~9x1012の親和性定数を有することが分かっている。これらの完全ヒトモノクローナル抗体の予期せぬ高親和性により、それらはTNF関連疾患、病態、又は障害における治療用途のための好適な候補となる。
【0192】
略語。BSA-ウシ血清アルブミン、CO2-二酸化炭素、DMSO-ジメチルスルホキシド、EIA-酵素イムノアッセイ、FBS-ウシ胎児血清、H2O2-過酸化水素、HRP-西洋わさびペルオキシダーゼ、ID-皮内、Ig-免疫グロブリン、TNF-組織壊死因子α、IP-腹腔内、IV-静脈内、Mab又はmAb-モノクローナル抗体、OD-光学密度、OPD-oフェニレンジアミン二塩酸塩、PEG-ポリエチレングリコール、PSA-ペニシリン、ストレプトマイシン、アンホテリシン、RT-室温、SQ-皮下、v/v-単位容量当たりの容量、w/v-単位容量当たりの重量。
【0193】
材料及び方法
動物。ヒト抗体を発現し得るトランスジェニックマウスは、当該技術分野において既知であり、(例えば、GenPharm International,San Jose,CA、Abgenix,Freemont,CAなどから)市販されており、これはヒト免疫グロブリンを発現するが、マウスIgM又はIgκを発現しない。例えば、かかるトランスジェニックマウスは、V(D)J結合、重鎖クラススイッチ及び体細胞変異を受けてヒト配列免疫グロブリンのレパートリを生成する、ヒト配列導入遺伝子を含有する(Lonbergら、「Nature」368:856~859(1994))。軽鎖導入遺伝子は、例えば、部分的に、生殖系列ヒトVκ領域のほぼ半分を含む酵母人工染色体クローンに由来し得る。加えて、重鎖導入遺伝子は、ヒトμ及びヒトγ1の両方(Fishwildら、「Nature Biotechnology」14:845~851(1996))並びに/又はγ3定常領域をコードすることができる。適切な遺伝子型系統由来のマウスを免疫付与及び融合プロセスにおいて使用して、TNFに対する完全ヒトモノクローナル抗体を生成することができる。
【0194】
免疫付与。1つ又は2つ以上の免疫付与スケジュールは、抗TNFヒトハイブリドーマを生成するために使用することができる。以下の例示的な免疫付与プロトコルに従って、最初のいくつかの融合を行うことができるが、他の類似の既知のプロトコルを使用することもできる。数匹の14~20週齢の雌及び/又は外科的に去勢した雄のトランスジェニックマウスに対して、最終容量100~400μL(例えば、200)で等量のTITERMAX又は完全フロイントアジュバントで乳化した1~1000μgの組換えヒトTNFをIP又はIDに接種する。各マウスは、任意選択的に、2SQ部位の各々に100μLの生理学的生理食塩水中1~10μgを受けることもできる。その後、マウスは、1~7、5~12、10~18、17~25及び/又は21~34日後にIP(1~400μg)及びSQ(1~400μgx2)により等量のTITERMAX又は完全フロイントアジュバントで乳化したTNFで、免疫化され得る。抗凝固薬無しで12~25及び25~40日後に眼窩後方穿刺によりマウスを出血させることができる。次に、血液を室温で1時間凝固させ、血清を回収し、既知の方法によりTNF EIAアッセイを使用して滴定する。反復注射が力価の増加を生じなければ、融合を行う。その際、マウスに、100μLの生理学的生理食塩水に希釈した1~400μgのTNFの最終IVブースタ注射を与えることができる。3日後、マウスを頸椎脱臼により安楽死させ、脾臓を無菌的に除去し、100U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン及び0.25μg/mLのアンホテリシンB(PSA)を含有する、10mLの冷リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)中に浸漬することができる。PSA-PBSで脾臓を無菌灌流することにより、脾細胞を採取する。細胞を冷PSA-PBS中で1回洗浄し、トリパンブルー染料排除を使用して計数し、25mMヘペスを含有するRPMI 1640培地に再懸濁する。
【0195】
細胞融合。融合は、公知の方法に従って、例えば当技術分野で公知のように、1:1~1:10のマウス骨髄腫細胞対生存脾臓細胞の比で行うことができる。非限定的な例として、脾臓細胞及び骨髄腫細胞は一緒にペレット化することができる。次に、30秒かけてペレットを37℃でゆっくり1mLの50%(w/v)PEG/PBS溶液(PEG分子量1,450、Sigma)に再懸濁することができる。その後、1分かけて25mMヘペスを含有する10.5mLのRPMI 1640培地(37℃)をゆっくり添加することによって、融合を停止させることができる。融合細胞を5分間500~1500rpmで遠心分離する。その後、細胞をHAT培地(25mMヘペス、10%胎児クローンI血清(Hyclone)、1mMピルビン酸ナトリウム、4mM L-グルタミン、10μg/mLのゲンタマイシン、2.5%Origen培養サプリメント(Fisher)、10% 653調整RPMI1640/ヘペス培地、50μM 2-メルカプトエタノール、100μMヒポキサンチン、0.4μMアミノプテリン及び16μMチミジンを含有するRPMI 1640培地)に再懸濁した後、15の96ウェル平底組織培養プレートに200μL/ウェルで平板培養する。次に、7~10日間、5%CO2及び95%空気を含有する加湿した37℃のインキュベータにプレートを配置する。
【0196】
マウス血清におけるヒトIgG抗TNF抗体の検出。固相EIAを使用して、ヒトTNFに特異的なヒトIgG抗体についてマウス血清をスクリーニングすることができる。簡潔に、PBS中2μg/mLのTNFで一晩プレートをコーティングすることができる。0.02%(v/v)Tween20を含有する0.15M生理食塩水で洗浄した後、ウェルをPBS中1%(w/v)BSA、200μL/ウェルで、室温で1時間遮断することができる。プレートは、直ちに使用するか、又は後に使用するために-20℃で凍結する。マウス血清希釈物を、50μL/ウェルでTNFコーティングしたプレート上で、室温で1時間インキュベートする。プレートを洗浄した後、1%BSA-PBS中に1:30,000で希釈したFc特異的な50μL/ウェルのHRP標識ヤギ抗ヒトIgGにより、室温で1時間プローブした。プレートを再度洗浄することができ、100μL/ウェルのクエン酸塩-リン酸塩基質溶液(0.1Mクエン酸及び0.2Mリン酸ナトリウム、0.01% H2O2及び1mg/mL OPD)を15分かけて室温で添加する。次に、25μL/ウェルで反応停止溶液(4N硫酸)を添加し、自動プレート分光光度計により490nmでODを読み取る。
【0197】
ハイブリドーマ上清における完全ヒト免疫グロブリンの検出。好適なEIAを使用して、完全ヒト免疫グロブリンを分泌する成長陽性ハイブリドーマを検出することができる。簡潔に、96ウェルのポップアウトプレート(VWR、610744)を、4℃で一晩、炭酸ナトリウム緩衝剤中10μg/mLのヤギ抗ヒトIgG Fcでコーティングすることができる。プレートを洗浄し、37℃で1時間、1%BSA-PBSで遮断し、直ちに使用するか、又は-20℃で凍結する。未希釈ハイブリドーマ上清を、プレート上で、37℃で1時間インキュベートする。プレートを洗浄し、1%BSA-PBS中に1:10,000で希釈したHRP識ヤギ抗ヒトκにより、37℃で1時間プローブする。次に、上述のように、プレートを基質溶液と共にインキュベートする。
【0198】
完全ヒト抗TNF反応性の決定。上記のハイブリドーマは、好適なRIA又は他のアッセイを使用してTNFに対する反応性について同時にアッセイすることができる。例えば、上記のように、上清をヤギ抗ヒトIgG Fcプレート上でインキュベートし、洗浄した後、室温で1時間、ウェル当たり適切な計数で、放射線標識されたTNFでプローブする。ウェルをPBSで2回洗浄し、好適な計数器を使用して、結合した放射線標識されたTNFを定量化する。
【0199】
ヒトIgG1κ抗TNF分泌ハイブリドーマを細胞培養において拡張し、限定希釈により系列的にサブクローニングすることができる。結果として得られたクローン集団を拡張し、凍結培地(95%FBS、5%DMSO)中で凍結保存し、液体窒素中で保管する。
【0200】
アイソタイプ。抗体のアイソタイプの決定は、特定の滴定に対するマウス免疫血清をスクリーニングするために使用されたものと類似の形式のEIAを使用して達成することができる。上述のように96ウェルプレート上にTNFをコーティングすることができ、2μg/mLの精製された抗体を、室温で1時間、プレート上でインキュベートすることができる。プレートを洗浄し、1%BSA-PBS中に1:4000で希釈したHRP標識ヤギ抗ヒトIgG1又はHRP標識ヤギ抗ヒトIgG3で、室温で1時間プローブする。プレートを再度洗浄し、上述のように基質溶液と共にインキュベートする。
【0201】
ヒトTNFによるヒト抗ヒトTNF抗体の結合動力学。抗体の結合特徴は、例えば、TNF捕捉EIA及びBIAcore技術を使用して好適に評価することができる。精製されたヒトTNF抗体の段階的濃度は、上述のように、アッセイにおいて、2μg/mLのTNFでコーティングされたEIAプレートへの結合について評価することができる。その後、相対結合効率を示す片対数プロットとしてODを表すことができる。
【0202】
定量的結合定数は、例えば、以下のように、又は任意のその他の既知の好適な方法によって得ることができる。BIAcore CM-5(カルボキシメチル)チップをBIAcore 2000ユニットに配置する。HBS緩衝剤(0.01M HEPES、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005%v/v P20界面活性剤、pH7.4)を、安定したベースラインが得られるまで、5μl/分でチップのフローセル上に流す。200μLの水中15mgのEDC(N-エチル-N’-(3-ジメチル-アミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩)の溶液(100μL)を、200μLの水中2.3mgのNHS(N-ヒドロキシコハク酸イミド)の100μLの溶液に添加する。結果として得られた溶液の40μLをチップ上に注入する。6μLのヒトTNFの溶液(10mM酢酸ナトリウム中15μg/mL、pH4.8)をチップ上に注入し、約500RUの増加をもたらす。緩衝剤をTBS/Ca/Mg/BSA泳動緩衝剤(20mMトリス、0.15M塩化ナトリウム、2mM塩化カルシウム、2mM酢酸マグネシウム、0.5%トリトンX-100、25μg/mL BSA、pH7.4)に変更し、一晩チップ上に流してそれを平衡化し、全ての未反応のコハク酸エステルを加水分解又はキャップする。
【0203】
33.33、16.67、8.33、及び4.17nMで泳動緩衝剤中に抗体を溶解する。流量を30μL/分に調整し、器具の温度を25℃に調整する。1つはTNFが固定化され(試料)、2つ目は非誘導化フローセル(ブランク)である、2つのフローセルを動態実行に使用する。各抗体濃度を120μL、フローセル上に30μL/分で注入し(会合相)、続いて360秒間連続して緩衝剤を流す(解離相)。各30μLの2Mチオシアン酸グアニジンを2回順次注入することにより、チップの表面を再生する(組織壊死因子α/抗体複合体の解離)。
【0204】
データの分析は、当該技術分野において既知であるBIA評価3.0又はCLAMP2.0を使用して行われる。各抗体濃度について、ブランクセンソグラムを試料センソグラムから減ずる。解離(kd,sec-1)及び会合(ka,mol-1 sec-1)の両方についてグローバルフィットを行い、解離定数(KD,mol)を算出する(kd/ka)。抗体親和性が充分に高いため、捕捉された抗体のRUが>100である場合、抗体の追加希釈が実行される。
【0205】
結果と考察
抗ヒトTNFモノクローナル抗体の生成。いくつかの融合を行い、ヒトTNFに特異的な数十の抗体を生み出す各融合物を15のプレート(1440ウェル/融合物)に播種する。これらのうち、いくつかは、ヒト及びマウスIg鎖の組合せからなることが分かる。残りのハイブリドーマは、ヒト重鎖及び軽鎖のみからなる抗TNF抗体を分泌(secret)する。ヒトハイブリドーマの全てがIgG1κであることが予想される。
【0206】
ヒト抗ヒトTNF抗体の結合動力学。ELISA分析は、これらのハイブリドーマのほとんど又は全てからの精製された抗体が、濃度依存的にTNFに結合することを確認する。
図1~2は、これらの抗体の相対的結合効率の結果を示す。この場合、抗体のその同族抗原(エピトープ)に対する結合活性度を測定する。TNFを直接EIAプレートに結合すると、タンパク質の変性を引き起こし得、見かけ上の結合親和性は、未変性タンパク質への結合を反映することができないことに留意するべきである。50パーセントの結合が広範な濃度にわたって見られる。
【0207】
定量的結合定数はヒト抗体のBIAcore分析を使用して得られ、ヒトモノクローナル抗体のいくつかが1×10-9~7×10-12の範囲のKDを有して非常に高い親和性であることを明らかにする。
【0208】
結論。
いくつかの融合は、ヒトTNFで免疫化されるヒト可変及び定常領域抗体導入遺伝子を含有するハイブリッドマウスからの脾細胞を利用して行われる。IgG1κアイソタイプのいくつかの完全ヒトTNF反応性IgGモノクローナル抗体のセットを生成する。完全ヒト抗TNF抗体を更に特徴付けする。生成された抗体のうちのいくつかは、1×109~9×1012の親和性定数を有する。これらの完全ヒトモノクローナル抗体の予期せぬ高親和性により、それらはTNF依存疾患、病態又は関連状態における治療用途に好適なものとなる。
【0209】
実施例3:ヒトTNFαに反応性のヒトIgGモノクローナル抗体の生成。
概要。重鎖及び軽鎖両方のヒト可変及び定常領域抗体導入遺伝子を含有する(CBA/JxC57BL/6J)F2ハイブリッドマウス(1~4)を組換えヒトTNFαで免疫化した。GenTNVと命名された1つの融合が、固定化された組換えヒトTNFαに結合する完全ヒトIgG1κモノクローナル抗体を8つ生み出した。特定直後、8つの細胞株は、更に特徴付けするためにMolecular Biologyに譲渡された。これらMabは配列が完全にヒトであるため、それらはヒトにおけるcA2(Remicade)よりも免疫原性が低いと予想される。
【0210】
略語。BSA-ウシ血清アルブミン、CO2-二酸化炭素、DMSO-ジメチルスルホキシド、EIA-酵素イムノアッセイ、FBS-ウシ胎児血清、H2O2-過酸化水素、HC-重鎖、HRP-西洋わさびペルオキシダーゼ、ID-皮内、Ig-免疫グロブリン、TNF-組織壊死因子α、IP-腹腔内、IV-静脈内、Mab-モノクローナル抗体、OD-光学密度、OPD-oフェニレンジアミン二塩酸塩、PEG-ポリエチレングリコール、PSA-ペニシリン、ストレプトマイシン、アンホテリシン、RT-室温、SQ-皮下、TNFα-腫瘍壊死因子α、v/v-単位容量当たりの容量、w/v-単位容量当たりの重量。
【0211】
序論。ヒト重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子を含有するトランスジェニックマウスを利用して、組換えヒトTNFαに特異的な完全ヒトモノクローナル抗体を生成した。cA2(Remicade)は、血清半減期が増加し、免疫原性に関する副作用が減少する利益を有して、TNFα媒介性疾患に関与する炎症性プロセスを治療的に阻害するために使用されるため、これらの固有の抗体を使用することができると期待される。
【0212】
材料及び方法。
動物。ヒト免疫グロブリンを発現するが、マウスIgM又はIgκを発現しないトランスジェニックマウスは、GenPharm Internationalにより開発されてきた。これらのマウスは、V(D)J結合、重鎖クラススイッチ及び体細胞変異を受けて抗原特異的ヒト免疫グロブリン(1)のレパートリを生成する、機能性ヒト抗体導入遺伝子を含有する。軽鎖導入遺伝子は、部分的に、生殖系列ヒトVκ遺伝子座のほぼ半分を含む酵母人工染色体クローンに由来する。いくつかのVH遺伝子に加えて、重鎖(HC)導入遺伝子は、ヒトμ及びヒトγ1(2)、並びに/又はγ3定常領域の両方をコードする。本明細書に記載されるモノクローナル抗体を生成するための免疫付与及び融合プロセスにおいて、HCo12/KCo5遺伝子型系統由来のマウスを使用した。
【0213】
ヒトTNFαの精製。セファロース4B(Pharmacia)に連結されたTNFα受容体-Fc融合タンパク質(p55-sf2)(5)を充填したカラムを使用して、アフィニティクロマトグラフィーにより、ヒトTNFαを、C237A細胞からの組織培養上清から精製した。細胞上清を、その容量の9分の1の10xDulbeccoのPBS(D-PBS)と混合し、4mL/分で、4℃でカラムを通過させた。次に、PBSでカラムを洗浄し、0.1Mクエン酸ナトリウム、pH3.5でTNFαを溶出し、2MトリスHCl、pH8.5で中和した。精製されたTNFαは、10mMトリス、0.12M塩化ナトリウム、pH7.5に緩衝剤交換され、0.2umのシリンジフィルタを通して濾過された。
【0214】
免疫付与。およそ16週齢の雌のGenPharmマウスを、0、12及び28日目に等量のTitermaxアジュバントで乳化した合計100μgのTNFα(ロットJG102298又はJG102098)で、IP(200μL)及びID(尾の付け根にて100μL)により免疫化した。抗凝固薬無しで21及び35日目に眼窩後方穿刺によりマウスを出血させた。血液を室温で1時間凝固させ、血清を回収し、TNFα固相EIAアッセイを使用して滴定した。28日目の注射後、マウスを7週間休ませた後に、GenTNVと命名された融合を行った。その後、TNFαに対して1:160の特定のヒトIgG力価を有するマウスに、100μLの生理学的生理食塩水で希釈した50μgのTNFαの最終IVブースタ注射を与えた。3日後、マウスを頸椎脱臼により安楽死させ、脾臓を無菌的に除去し、100U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン、及び0.25μg/mLのアンホテリシンB(PSA)を含有する、10mLの冷リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)中に浸漬した。PSA-PBSで脾臓を無菌灌流することにより、脾細胞を採取した。細胞を冷PSA-PBS中で1回洗浄し、Coulter計数器を使用して計数し、25mMヘペスを含有するRPMI 1640培地に再懸濁した。
【0215】
細胞株。Cell Biology Services(CBS)グループは、97年5月14日に、Centocor’s Product Developmentグループから非分泌マウス骨髄腫融合パートナー653を受け取った。細胞株を、10%(v/v)FBS(Cell Culture Labs)、1mMピルビン酸ナトリウム、0.1mM NEAA、2mM L-グルタミン(全てJRH Biosciencesから)で補充したRPMI培地(JRH Biosciences)中で拡張し、95%FBS及び5%DMSO(Sigma)中で凍結保存した後、CBSの蒸気相液体窒素冷凍庫に保管した。細胞バンクは無菌であり(Quality Control Centocor,Malvern)、マイコプラズマ(Bionique Laboratories)がなかった。細胞は融合まで対数増殖期培養物内で維持された。融合前に、それらをPBS中で洗浄し、計数し、トリパンブルー染料排除により生存率を決定した(>95%)。
【0216】
ヒトTNFαは、組換え細胞株により産生され、C237Aと命名され、CentocorのMolecular Biologyで産生された。細胞株を、5%(v/v)FBS(Cell Culture Labs)、2mM L-グルタミン(全てJRH Biosciencesから)及び0.5:g/mLのマイコフェノール酸で補充したIMDM培地(JRH Biosciences)中で拡張し、95%FBS及び5%DMSO(Sigma)中で凍結保存した後、CBS(13)の蒸気相液体窒素冷凍庫に保管した。細胞バンクは無菌であり(Quality Control Centocor,Malvern)、マイコプラズマ(Bionique Laboratories)がなかった。
【0217】
細胞融合。細胞融合は、1:1の比率の653マウス骨髄腫細胞及びマウス生脾臓細胞を使用して行った。簡潔に、脾臓細胞及び骨髄腫細胞を一緒にペレット化した。30秒間かけてペレットを37℃でゆっくり1mLの50%(w/v)PEG/PBS溶液(PEG分子量1,450g/モル、Sigma)に再懸濁した。1分かけて10.5mLのRPMI培地(添加剤無し)(JRH)(37℃)をゆっくり添加することにより、融合を停止させた。融合細胞を5分間750rpmで遠心分離した。その後、細胞をHAT培地(10%ウシ胎児血清(JRH)、1mMピルビン酸ナトリウム、2mM L-グルタミン、10μg/mLのゲンタマイシン、2.5%Origen培養サプリメント(Fisher)、50μM 2-メルカプトエタノール、1% 653調整RPMI培地、100μMヒポキサンチン、0.4μMアミノプテリン及び16μMチミジンを含有するRPMI/HEPES培地)に再懸濁した後、5つの96ウェル平底組織培養プレートを200μL/ウェルで平板培養した。次に、7~10日間、5%CO2及び95%空気を含有する加湿した37℃のインキュベータにプレートを配置した。
【0218】
マウス血清におけるヒトIgG抗TNFα抗体の検出。固相EIAを使用して、ヒトTNFαに特異的なヒトIgG抗体についてマウス血清をスクリーニングした。簡潔に、PBS中1μg/mLのTNFαで一晩プレートをコーティングした。0.02%(v/v)Tween20を含有する0.15M生理食塩水で洗浄した後、ウェルをPBS中1%(w/v)BSA、200μL/ウェルで、室温で1時間遮断した。プレートは、直ちに使用するか、又は後に使用するために-20℃で凍結されるかのいずれかにした。マウス血清を、50μL/ウェルで、室温で1時間、2倍階段希釈法で、ヒトTNFαコーティングされたプレート上でインキュベートした。プレートを洗浄した後、1%BSA-PBS中に1:30,000で希釈したFc特異的(Accurate)な50μL/ウェルのHRP標識ヤギ抗ヒトIgGにより、室温で1時間プローブした。プレートを再度洗浄し、100μL/ウェルのクエン酸塩-リン酸塩基質溶液(0.1Mクエン酸及び0.2Mリン酸ナトリウム、0.01% H2O2及び1mg/mL OPD)を15分かけて室温で添加した。次いで、25μL/ウェルで反応停止溶液(4N硫酸)を添加し、自動プレート分光光度計を使用して490nmでODを読み取った。
【0219】
ハイブリドーマ上清における完全ヒト免疫グロブリンの検出。GenPharmマウスは、マウス及びヒト免疫グロブリン鎖の両方を生成することができるため、2つの別個のEIAアッセイを使用して、ヒト軽鎖及びヒト重鎖の両方の存在について成長陽性ハイブリドーマクローンを試験した。プレートを上述のようにコーティングし、未希釈のハイブリドーマ上清を37℃で1時間、プレート上でインキュベートした。プレートを洗浄し、37℃で1時間、1% BSA-HBSS中で1:10,000に希釈したHRP抱合ヤギ抗ヒトκ(Southern Biotech)抗体、又は1% BSA-HBSS中で1:30,000に希釈したHRP抱合ヤギ抗ヒトIgG Fc特異的抗体のいずれかでプローブした。次に、上述のように、プレートを基質溶液と共にインキュベートした。抗ヒトκ及び抗ヒトIgG Fc EIA形式の両方で陽性シグナルをもたらさなかったハイブリドーマクローンは廃棄された。
【0220】
アイソタイプ。抗体のアイソタイプの決定は、特定の力価に対するマウス免疫血清をスクリーニングするために使用されたものと類似の形式のEIAを使用して達成した。4ECで一晩、炭酸ナトリウム緩衝剤中10:g/mLのヤギ抗ヒトIgG(H+L)でEIAプレートをコーティングし、上述のように遮断した。24ウェル培養物からの希釈無しの上清を、室温で1時間、プレート上でインキュベートした。プレートを洗浄し、1%BSA-PBS中に1:4000で希釈したHRP標識ヤギ抗ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4(Binding Site)で、室温で1時間プローブした。プレートを再度洗浄し、上述のように基質溶液と共にインキュベートした。
【0221】
結果及び考察。完全ヒト抗ヒトTNFαモノクローナル抗体の生成。組換えヒトTNFαタンパク質で免疫化されたGenPharmマウスから、GenTNVと命名された融合を1回行った。この融合から、196の成長陽性ハイブリッドがスクリーニングされた。ヒトTNFαと反応性の完全ヒトIgG抗体を分泌した8つのハイブリドーマ細胞株を特定した。これらの8つの細胞株はそれぞれ、ヒトIgG1κアイソタイプの免疫グロブリンを分泌し、限界希釈により全てを2回サブクローニングして、安定した細胞株を得た(>90%均質)。細胞株名及びそれぞれのCコード表記を表1に列挙する。細胞株の各々は、液体窒素中に保管された12-バイアル研究細胞バンクにおいて凍結された。
【0222】
8つの細胞株の各々の24ウェル培養皿のウェルから回収した親細胞は、トランスフェクション及び更なる特徴付けのために、1999年2月18日にMolecular Biologyグループに引き渡された。
【0223】
【0224】
結論。
GenTNV融合は、Centocorで調製された組換えヒトTNFαで免疫化されたヒト可変及び定常領域抗体導入遺伝子を含有するハイブリッドマウスからの脾細胞を利用して行われた。IgG1κアイソタイプの8つの完全ヒトTNFα反応性IgGモノクローナル抗体を生成した。更なる特徴付け及び開発のために、親細胞株をMolecular Biologyグループに移した。これらの新しいヒト抗体のうちの1つは、Remicadeと比較して、免疫原性及びアレルギー型合併症が減少する利益の可能性を有して、抗炎症に有用であり得る。
【0225】
実施例4:ヒト抗TNFα抗体を発現する細胞株のクローニング及び調製。
概要。TNV表記の8つのヒトモノクローナル抗体(mAb)のパネルは、明らかに高結合活性で固定化されたヒトTNFαに結合することが認められた。8つのmAbのうちの7つは、組換えTNF受容体へのヒトTNFαの結合を効率的に遮断することを示した。7つのmAbをコードするDNAの配列分析は、全てのmAbがヒトV領域を有していることを確認した。DNA配列は、3対のmAbが互いに同一であり、そのため8つのmAbの元のパネルがTNV14、TNV15、TNV148、及びTNV196で表される4つの別個のmAbのみを含有していることも明らかにした。mAbの推定アミノ酸配列の分析及びインビトロTNFα中和データの結果に基づいて、mAb TNV148及びTNV14を更なる試験のために選択した。
【0226】
TNV148重鎖の位置75(フレームワーク3)のプロリン残基がデータベース検索中同じサブグループの他のヒト抗体のその位置に見られなかったため、それを既知の生殖系列フレームワークe配列と一致させるために、部位特異的DNA変異誘発を行って、その位置にセリン残基をコード化した。セリン修飾mAbはTNV148Bと表記された。TNV148B及びTNV14の重鎖及び軽鎖可変領域をコード化するPCR増幅DNAを、別のヒトmAb(12B75)の最近クローニングされた重鎖及び軽鎖遺伝子に基づいた(国際公開第02/12500号として公開された、「IL-12 Antibodies,Compositions,Methods and Uses」と題される、2000年10月7日出願の米国特許出願第60/236,827号、参照により全体が本明細書に組み込まれる)、新しく調製した発現ベクタ内にクローニングした。
【0227】
P3X63Ag8.653(653)細胞又はSp2/0-Ag14(Sp2/0)マウス骨髄腫細胞を、それぞれの重鎖及び軽鎖発現プラスミドでトランスフェクトし、高レベルの組換えTNV148B及びTNV14(rTNV148B及びrTNV14)mAbを生成する細胞株について2回のサブクローニングによりスクリーニングした。経時的なmAb産生の成長曲線及び安定性の評価は、653トランスフェクタントクローンC466D及びC466Cが使用済培養物において安定しておよそ125:g/mLのrTNV148B mAbを産生し、一方Sp2/0トランスフェクタント1.73-12-122(C467A)が使用済培養物において安定しておよそ25:g/mLのrTNV148B mAbを産生したことを示した。同様の分析が、Sp2/0トランスフェクタントクローンC476Aが使用済培養物において18:g/mLのrTNV14を産生したことを示した。
【0228】
序論。ヒトTNFα免疫化GenPharm/Medarexマウス(HCo12/KCo5遺伝子型)由来の8つのmAbのパネルは、ヒトTNFαに結合しかつ完全ヒトIgG1κアイソタイプを有することを前に示した。単純な結合アッセイを使用して、TNFαが組換えTNF受容体に結合するのを遮断する能力を評価することにより、本発明の例示的なmAbがTNFα中和活性を有する可能性があるかどうかを決定した。これらの結果、DNA配列結果、及びmAbのいくつかのインビトロ特徴付けに基づいて、更に特徴付けされるmAbとしてTNV148が選択された。
【0229】
TNV148 mAbをコードするDNA配列をクローニングし、好適な定常領域をコードする遺伝子発現ベクタ内に合うように修飾し、充分に特徴付けされた653及びSp2/0マウス骨髄腫細胞内に導入し、結果として得られたトランスフェクトされた細胞株を、元のハイブリドーマ細胞株の40倍のmAbを産生するサブクローンが特定されるまでスクリーニングした。
【0230】
材料及び方法。
試薬及び細胞。TRIZOL試薬はGibco BRLから購入した。プロテイナーゼKはSigma Chemical Companyから得た。逆転写酵素はLife Sciences,Inc.から得た。Taq DNAポリメラーゼはPerkin Elmer Cetus又はGibco BRLのいずれかから得た。制限酵素はNew England Biolabsから購入した。QIAquick PCR Purification KitはQiagenから得た。QuikChange Site-Directed Mutagenesis KitはStratageneから購入した。Wizardプラスミドミニプレップキット及びRNasinはPromegaからであった。OptiplatesはPackardから得た。125IodineはAmershamから購入した。カスタムオリゴヌクレオチドはKeystone/Biosource Internationalから購入した。この作業で使用したオリゴヌクレオチドの名称、識別番号、及び配列を表2に示す。
【0231】
表2.TNV mAb遺伝子をクローニング、操作又は配列決定するために使用されたオリゴヌクレオチド。
オリゴヌクレオチド5’14s及びHuH-J6によりコード化されるアミノ酸を配列の上に示す。「M」アミノ酸残基は翻訳開始コドンを表す。オリゴヌクレオチド5’14s及びHuH-J6の下線付き配列は、それぞれ、BsiWI及びBstBI制限部位を示す。HuH-J6の斜線はエクソン/イントロン境界に対応する。配列がマイナス鎖に対応するオリゴヌクレオチドは、3’-5’配向で書かれていることに留意する。
【0232】
【0233】
653マウス骨髄腫細胞の凍結バイアルを1つ得た。バイアルをその日に解凍し、Tフラスコ中のIMDM、5%FBS、及び2mMグルタミン(培地)中で拡張させた。これらの細胞は、本明細書に記載される抗TNF DNAで2~3週間後にトランスフェクトされるまで、連続培養において維持された。解凍した5日後に培養物のいくつかを採取し、遠心分離によりペレット化し、95%FBS、5%DMSOに再懸濁し、30のバイアルに等分し、凍結し、後に使用するために保管した。同様に、Sp2/0マウス骨髄腫細胞の凍結バイアルを1つ得た。バイアルを解凍し、上述のように新しい凍結物(freeze-down)を調製し、凍結バイアルをCBCの冷凍庫ボックスAA及びAB内で保管した。これらの細胞を解凍し、本明細書に記載される全てのSp2/0トランスフェクションに使用した。
【0234】
受容体へのTNFの結合の阻害のためのアッセイ。TNV mAbを含有するハイブリドーマ細胞上清を使用して、mAbが組換えTNF受容体融合タンパク質p55-sf2への125I標識TNFαの結合を遮断する能力についてアッセイした(Scallonら(1995)「Cytokine」7:759~770)。37℃で1時間インキュベートする際に、PBS中0.5:g/mLで50:Lのp55-sf2をOptiplatesに添加してウェルをコーティングした。PBS/0.1%BSAを希釈剤として使用して、8つのTNV細胞上清の系列希釈を、96ウェル丸底プレートにおいて調製した。抗IL-18 mAbを含有する細胞上清が陰性対照として含まれ、cA2(抗TNFキメラ抗体、Remicade、米国特許第5,770,198号、参照により全体が本明細書に組み込まれる)でスパイクされた同じ抗IL-18上清が陽性対照として含まれた。最終TNFα濃度が5ng/mLとなるように、125I標識TNFα(58:Ci/:g,D.Shealy)を100:Lの細胞上清に添加した。混合物を室温で1時間プレインキュベートした。コーティングされたOptiplatesを洗浄して未結合のp55-sf2を除去し、50:Lの125I-TNFα/細胞上清混合物をOptiplatesに移した。室温で2時間後、PBS-Tweenで3回、Optiplatesを洗浄した。100:LのMicroscint-20を添加し、TopCount γ計数器を使用して結合したcpmを決定した。
【0235】
V遺伝子の増幅及びDNA配列分析。RNAの調製のために、ハイブリドーマ細胞をPBSで1回洗浄した後にTRIZOL試薬を添加した。7×106~1.7×107の細胞を1mLのTRIZOLに再懸濁した。200μLのクロロホルムの添加後に管を激しく振った。試料を4℃で10分間遠心分離した。水相を新しいmicrofuge管に移し、等量のイソプロパノールを添加した。管を激しく振り、室温で10分間インキュベートした。次いで、試料を4℃で10分間遠心分離した。ペレットを1mlの70%エタノールで1回洗浄し、真空乾燥機で短時間乾燥させた。RNAペレットを40μLのDEPC処理水で再懸濁した。RNA調製物の品質は、1%アガロースゲル中で0.5μLを分画することによって決定された。RNAは使用するまで-80℃の冷凍庫に保存した。
【0236】
重鎖及び軽鎖のcDNAを調製するために、11.5μLの容量に3μLのRNA及び1μgのオリゴヌクレオチド119(重鎖)又はオリゴヌクレオチド117(軽鎖)のいずれか(表1を参照のこと)を含む混合物を調製した。混合物を水浴中、70℃で10分間インキュベートし、次に氷上で10分間冷却した。2.5μLの10×逆転写酵素緩衝剤、10μLの2.5mM dNTP、1μLの逆転写酵素(20単位)、及び0.4μLのリボヌクレアーゼ阻害剤RNasin(1単位)から構成される別個の混合物を調製した。13.5μLのこの混合物を、11.5μLの冷RNA/オリゴヌクレオチド混合物に添加し、反応物を42℃で40分間インキュベートした。次に、cDNA合成反応物を、使用するまで-20℃の冷凍庫に保存した。
【0237】
未精製の重鎖及び軽鎖のcDNAをテンプレートとして使用して、可変領域コード配列をPCR増幅した。重鎖DNAの増幅をプライムする能力について、5つのオリゴヌクレオチド対(366/354、367/354、368/354、369/354、及び370/354、表1)を同時に試験した。軽鎖DNAの増幅をプライムする能力について、2つのオリゴヌクレオチド対(362/208及び363/208)を同時に試験した。総容量50μLにおいて2単位のPLATINUM(商標)高忠実度(HIFI)Taq DNAポリメラーゼを使用して、PCR反応を行った。各反応物は、2μLのcDNA反応物、10ピコモルの各オリゴヌクレオチド、0.2mMのdNTP、5μLの10×HIFI緩衝剤、及び2mMの硫酸マグネシウムを含んでいた。サーマルサイクラプログラムは、95℃で5分間、続いて30サイクル(94℃で30秒間、62℃で30秒間、68℃で1.5分間)であった。次に、68℃で10分間の最終インキュベーションを行った。
【0238】
直接DNA配列決定のためのPCR生成物を調製するために、製造業者のプロトコルに従い、QIAquick(商標)PCR Purification Kitを使用してそれらを精製した。50μLの減菌水を使用してスピンカラムからDNAを溶出させた後、真空乾燥機を使用して10μLの容量まで乾燥させた。次に、総容量20μLの、1μLの精製されたPCR生成物、10μMオリゴヌクレオチドプライマ、4μLのBigDye Terminator(商標)ready reaction mix、及び14μLの減菌水でDNA配列決定反応物を設定した。オリゴヌクレオチド対367/354で作製された重鎖PCR生成物は、オリゴヌクレオチドプライマ159及び360を用いて配列決定された。オリゴヌクレオチド対363/208で作製された軽鎖PCR生成物は、オリゴヌクレオチド34及び163を用いて配列決定された。配列決定用のサーマルサイクラプログラムは、25サイクル(96℃で30秒間、50℃で15秒間、60℃で4分間)、続いて4℃で一晩であった。反応生成物は、ポリアクリルアミドゲルを介して分画され、ABI 377 DNAシーケンサを使用して検出された。
【0239】
アミノ酸を変更するための部位特異的変異誘発。TNV148 mAbにおいてPro75をセリン残基に置き換えるために、TNV148重鎖可変領域DNA配列の単一ヌクレオチドを変更した。相補的オリゴヌクレオチド399及び400(表1)を設計し、製造業者により説明されるように、QuikChange(商標)部位特異的変異誘発法を使用して、この変更を起こさせた。15%ポリアクリルアミドゲルにより2つのオリゴヌクレオチドを最初に分画し、主要バンドを精製した。10ng又は50ngのいずれかのTNV148重鎖プラスミドテンプレート(p1753)、5μLの10×反応緩衝剤、1μLのdNTPミックス、125ngのプライマ399、125ngのプライマ400、及び1μLのPfu DNAポリメラーゼを使用して、変異誘発反応物を調製した。減菌水を添加して総容量を50μLにした。次に、反応混合物を、95℃で30秒間インキュベートするようにプログラムされたサーマルサイクラでインキュベートし、次に、95℃で30秒間、55℃で1分間、64℃で1分間、68℃で7分間、続いて30℃で2分間(1サイクル)の一連のインキュベーションで14回サイクルした。これらの反応物は、変異原性オリゴヌクレオチドを、その他の点では同一の新しく合成されたプラスミドに組み込むように設計された。元のTNV148プラスミドを除去するために、元のメチル化プラスミドのみを切断する1μLのDpnIエンドヌクレアーゼを添加した後、試料を37℃で1時間インキュベートした。次に、1μLの反応物を使用して、標準的な熱ショック方法によりEpicurian Coli XL1-Blueスーパーコンピテント大腸菌(E.coli))を形質転換し、LB-アンピシリン寒天プレート上で平板培養した後に形質転換された細菌を特定した。製造業者により説明されるWizard(商標)キットを使用して、プラスミドミニプレップを調製した。Wizard(商標)カラムから試料を溶出した後、エタノールでプラスミドDNAを沈殿させてプラスミドDNAを更に精製し、その後20μLの減菌水に再懸濁した。次に、DNA配列分析を行って、所望の塩基変更を有するプラスミドクローンを特定し、他の塩基変更が不注意にTNV148コード配列内に導入されなかったことを確認した。セクション4.3に記載される同じパラメータを使用して、1μLのプラスミドを、3μLのBigDyeミックス、1μLのpUC19フォワードプライマ、及び10μLの減菌水で調製されたサイクル配列決定反応物に供した。
【0240】
12B75遺伝子からの発現ベクタの構築。いくつかの組換えDNA工程を行って、前にクローニングされた12B75コード重鎖及び軽鎖遺伝子のゲノムコピーから、それぞれ、新しいヒトIgG1発現ベクタ及び新しいヒトκ発現ベクタを調製した(これは、国際公開第02/12500号として公開された、「IL-12 Antibodies,Compositions,Methods and Uses」と題される、2000年10月7日出願の米国特許出願第60/236,827号に開示されており、その全体は参照により本明細書に組み込まれる)。最終ベクタは、任意の適切に設計されたPCR増幅可変領域で、既存の可変領域配列の簡単な一工程置換を可能にするように設計された。
【0241】
プラスミドp1560の12B75重鎖遺伝子を修飾するために、プロモータ及び可変領域を含有する6.85kbのBamHI/HindIII断片をp1560からpUC19に移してp1743を作製した。p1560と比較してサイズがより小さいこのプラスミドは、製造業者のプロトコルに従い、翻訳開始部位のすぐ上流に固有のBsiWIクローニング部位を導入するための、QuikChange(商標)変異誘発の使用(オリゴヌクレオチドBsiWI-1及びBsiWI-2を使用する)を可能にした。結果として得られたプラスミドはp1747と呼ばれた。BstBI部位を可変領域の3’端に導入するために、5’オリゴヌクレオチドプライマはSalI及びBstBI部位で設計された。このプライマをpUCリバースプライマと共に使用してp1747から2.75kbの断片を増幅した。次に、この断片を12B75可変領域の自然に生じるSalI部位及びHindIII部位にクローニングして戻し、それにより固有のBstB1部位を導入した。p1750と表記される結果として得られた中間ベクタは、BsiWI及びBstBI端を有する可変領域断片を受容することができた。定常領域も12B75遺伝子に由来する重鎖ベクタのバージョンを調製するために、p1750のBamHI-HindIIIインサートは、HindIII部位の下流にEcoRI部位を有するためにpBR322に移された。次に、結果として得られたプラスミドp1768を、HindIII及びEcoRIで消化し、p1560からpBCに大きなBamHI-BamHI断片をクローニングすることによって得られたサブクローンであるp1744からの5.7kbのHindIII EcoRI断片にライゲートした。次に、結果として得られたプラスミドp1784は、BsiWI及びBstBI端を有するTNV Ab cDNA断片のベクタとして使用された。追加の作業は、12B75遺伝子からのIgG1定常領域を含み、12B75重鎖J-Cイントロンをどの程度含有するかによって互いに異なる、発現ベクタp1788及びp1798を調製するために行われた。
【0242】
プラスミドp1558の12B75軽鎖遺伝子を修飾するために、12B75プロモータ及び可変領域を含有する5.7kbのSalI/AflII断片を、p1558からプラスミドL28のXhoI/AflII部位に移した。この新しいプラスミドp1745は、変異誘発工程のためのより小さなテンプレートを提供した。オリゴヌクレオチド(C340salI及びC340sal2)を使用して、QuikChange(商標)変異誘発により、可変領域の5’端に固有のSalI制限部位を導入した。結果として得られた中間ベクタp1746は、可変領域断片がクローニングされ得る固有のSalI及びAflII制限部位を有していた。p1746にクローニングされた任意の可変領域断片は、軽鎖遺伝子の3’半分と結合されることが好ましいであろう。この目的のために使用され得る12B75軽鎖遺伝子の3’半分からの制限断片を調製するために、オリゴヌクレオチドBAHN-1及びBAHN-2を互いにアニールして、制限部位BsiW1、AflII、HindII、及びNotIを含有し、KpnI及びSacI部位にライゲートされ得る端部を含有する二本鎖リンカを形成した。このリンカをpBCのKpnI部位とSacI部位との間にクローニングして、プラスミドp1757を得た。p1558をAflIIで消化した後、HindIIIで部分的に消化することにより生成された、12B75軽鎖定常領域を含有する7.1kbの断片を、p1757のAflII部位とHindII部位との間にクローニングしてp1762を得た。この新しいプラスミドは、プロモータ及び可変領域を含有するBsiWI/AflII断片が遺伝子の2つの半分を結合して移入できるBsiWI及びAflIIの固有の部位を含有していた。
【0243】
発現プラスミドのcDNAクローニング及びアセンブリ。DNA端部を更に埋めるために、全てのRT-PCR反応物(上記を参照のこと)をKlenow酵素で処理した。重鎖PCR断片を制限酵素BsiWI及びBstBIで消化した後、プラスミドL28(12B75系中間ベクタp1750は未だ調製されていなかったため、L28を使用した)のBsiWI部位とBstBI部位との間にクローニングした。クローニングされたインサートのDNA配列分析は、結果として得られたコンストラクトが正しく、PCR増幅中に誤差が導入されなかったことを示した。これらのL28プラスミドコンストラクト(TNV14、TNV15、TNV148、TNV148B、及びTNV196)に割り当てられた識別番号を表3に示す。
【0244】
TNV14、TNV148、及びTNV148B重鎖のBsiWI/BstBIインサートは、L28ベクタから新しく調製された中間ベクタp1750に移された。これらの中間プラスミドに割り当てられた識別番号を表2に示す。このクローニング工程及び後続の工程は、TNV15及びTNV196には行われなかった。次に、可変領域は、2つの異なるヒトIgG1発現ベクタ内に移された。制限酵素EcoRI及びHindIIIを使用して、可変領域を、Centocorの以前使用されたIgG1ベクタp104内に移した。Gm(f+)アロタイプのIgG1をコードする、結果として得られた発現プラスミドは、p1781(TNV14)、p1782(TNV148)、及びp1783(TNV148B)と表記された(表2を参照のこと)。可変領域は、12B75(GenPharm)遺伝子に由来するIgG1定常領域の上流にもクローニングされた。G1m(z)アロタイプのIgG1をコードするこれらの発現プラスミドも表3に列記される。
【0245】
【0246】
軽鎖PCR生成物を制限酵素SalI及びSacIIで消化した後、プラスミドpBCのSalI部位とSacII部位との間にクローニングした。1つのアミノ酸で異なる2つの異なる軽鎖バージョンは、p1748及びp1749と表記された(表2)。DNA配列分析により、これらのコンストラクトが正しい配列を有することが確認された。次に、p1748及びp1749のSalI/AflII断片を、中間ベクタp1746のSalI部位とAflII部位との間にクローニングして、それぞれp1755及びp1756を作製した。次に、軽鎖遺伝子のこれらの5’等分を、BsiWI/AflII断片をp1755及びp1756から新しく調製されたコンストラクトp1762に移すことにより遺伝子の3’等分に結合し、それぞれ最終発現プラスミドp1775及びp1776を作製した(表2)。
【0247】
細胞のトランスフェクション、スクリーニング及びサブクローニング。合計15のマウス骨髄腫細胞のトランスフェクションを様々なTNV発現プラスミドで行った(結果及び考察セクションの表3を参照のこと)。これらのトランスフェクションは、(1)宿主細胞がSp2/0又は653であるか、(2)重鎖定常領域がCentocorの以前のIgG1ベクタ又は12B75重鎖定常領域でコード化されたか、(3)mAbがTNV148B、TNV148、TNV14、又は新しいHC/LCの組合せであったか、(4)DNAが、線形化プラスミド又は精製されたAb遺伝子インサートであるかどうか、及び(5)重鎖遺伝子における完全なJ-Cイントロン配列が存在又は不在であるかどうかにより区別された。加えて、トランスフェクションのいくつかは、多数のクローンをスクリーニングすることができる可能性を増大させるために繰り返された。
【0248】
Sp2/0細胞及び653細胞は各々、前に記載された標準条件下で(Knight DMら(1993)「Molecular Immunology」30:1443~1453)、エレクトロポレーションにより重鎖及び軽鎖DNA(それぞれ8~12:g)の混合物でトランスフェクトされた。トランスフェクション番号1、2、3、及び16に関して、トランスフェクション前に制限酵素で消化することにより、適切な発現プラスミドが線形化された。例えば、SalI及びNotI制限酵素は、それぞれTNV148B重鎖プラスミドp1783及び軽鎖プラスミドp1776を線形化するために使用された。残りのトランスフェクションに関して、BamHIで重鎖プラスミドを、そしてBsiWI及びNotIで軽鎖プラスミドを消化することにより、mAb遺伝子のみを含有するDNAインサートをプラスミドベクタから分離した。次に、アガロースゲル電気泳動及びQiex精製樹脂により、mAb遺伝子インサートを精製した。精製された遺伝子インサートでトランスフェクトされた細胞は、選択マーカ源として、3~5:gのPstI線形化pSV2gptプラスミド(p13)で同時にトランスフェクトされた。エレクトロポレーション後に、96ウェル組織培養皿中のIMDM、15%FBS、2mMグルタミン中に細胞を播種し、5%CO2のインキュベータにおいて、37℃でインキュベートした。2日後、等量のIMDM、5%FBS、2mMグルタミン、2×MHX選択物(1×MHX=0.5:g/mLのマイコフェノール酸、2.5:g/mLのヒポキサンチン、50:g/mLのキサンチン)を添加し、コロニが形成される間、更に2~3週間プレートをインキュベートした。
【0249】
コロニを有するウェルから回収された細胞上清を、記載されるようにELISAによりヒトIgGについてアッセイした。簡潔に言うと、ポリクローナルヤギ抗ヒトIgG Fc断片でコーティングされた96ウェルEIAプレート内で、様々な希釈の細胞上清をインキュベートした後、アルカリホスファターゼ抱合ヤギ抗ヒトIgG(H+L)及び適切な色基質を使用して結合ヒトIgGを検出した。細胞上清において測定された同じ精製されたmAbを標準として使用した標準曲線は、上清中のヒトIgGの定量化を可能にするために各EIAプレートに含まれた。最もヒトIgGを生成しているように見えたそれらのコロニ中の細胞を、使用済培養物における更なる生成判断のために24ウェルプレート内に継代し、生成が最も高い親クローンを特定した。
【0250】
生成が最も高い親クローンをサブクローニングして、生成がより高いサブクローンを特定し、より均質な細胞株を調製した。96ウェル組織培養プレートに、IMDM、5%FBS、2mMグルタミン、1×MHXの、ウェル当たり1つの細胞又はウェル当たり4つの細胞を播種し、コロニが現れるまで、12~20日間、5%CO2インキュベータにおいて37℃でインキュベートした。ウェル当たり1つのコロニを含有するウェルから細胞上清を回収し、上述のようにELISAにより分析した。選択したコロニを24ウェルプレートに継代し、培養物を消耗させた後、それらの上清におけるヒトIgGレベルを定量化することにより、生成が最も高いサブクローンを特定した。このプロセスは、選択された初回のサブクローンを2回目のサブクローニングに供したときに繰り返された。2回目の最良のサブクローンを開発の細胞株として選択した。
【0251】
細胞サブクローンの特徴付け。2回目の最良のサブクローンを選択し、成長曲線を行って、mAbの生成レベル及び細胞成長特徴を評価した。T75フラスコに、30mLのIMDM、5%FBS、2mMグルタミン、及び1×MHX(又は無血清培地)中1×105細胞/mLで播種した。300μLのアリコートを24時間間隔で取り出し、生細胞密度を測定した。生細胞数が1×105細胞/mL未満になるまで分析を継続した。回収された細胞上清のアリコートは、存在する抗体の濃度についてアッセイされた。標準としてrTNV148B又はrTNV14 JG92399を使用して、ELISAアッセイを行った。ポリクローナルヤギ抗ヒトIgG FcでコーティングされたELISAプレート上で試料を1時間インキュベートし、結合mAbを、1:1000希釈のアルカリホスファターゼ抱合ヤギ抗ヒトIgG(H+L)で検出した。
【0252】
様々な量のMHX選択物の存在下での成長速度を比較する目的のため、2つの細胞株について異なる成長曲線分析も行われた。細胞株C466A及びC466Bを、無MHX培地(IMDM、5%FBS、2mMグルタミン)に解凍し、更に2日間培養した。その後、両細胞培養物を、MHX無し、0.2×MHX、又は1×MHX(1×MHX=0.5:g/mLのマイコフェノール酸、2.5:g/mLのヒポキサンチン、50:g/mLのキサンチン)のいずれかを含有する3つの培養物に分けた。1日後、新しいT75フラスコに、1×105細胞/mLの開始密度で培養物を播種し、細胞を1週間、24時間間隔で計数した。mAb生成のためのアリコートは回収されなかった。SOP PD32.025に提供される式を使用して、これらの試料についての倍加時間を算出した。
【0253】
経時的なmAb生成の安定性を評価するために、追加の試験が行われた。MHX選択物を有する、又は有しないのいずれかで、24ウェルプレート中のIMDM、5%FBS、2mMグルタミン中で培養物を成長させた。培養物がコンフルエントになったら、新しい培養物に分割し、その後、古い培養物は消耗させた。この時、上清のアリコートを取り、4℃で保存した。55~78日の期間にわたって、アリコートを取り出した。この期間の終了時に、上に概説するように、抗ヒトIgG Fc ELISAにより、存在する抗体の量について上清を試験した。
【0254】
結果及び考察。
組換え受容体へのTNF結合の阻害。
ハイブリドーマ細胞上清に含有される8つのTNV mAbが、受容体へのTNFα結合を阻害することができるかどうかを決定するために、簡単な結合アッセイが行われた。ヒトIgGの標準ELISA分析により、それぞれの細胞上清におけるTNV mAbの濃度を最初に決定した。次に、組換えp55TNF受容体/IgG融合タンパク質p55-sf2をEIAプレート上にコーティングし、様々な量のTNV mAbの存在下で、
125I標識TNFαをp55受容体に結合させた。
図1に示すように、8つのTNV mAbのうちの1つ(TNV122)を除く全てが、p55受容体へのTNFαの結合を効率的に遮断した。実際、TNV mAbは、陰性対照ハイブリドーマ上清にスパイクされたcA2陽性対照mAbよりもTNFα結合を阻害するのにより有効であるように見えた。これらの結果は、TNV mAbが細胞系アッセイ及びインビボでTNFαの生物活性を遮断する可能性が高く、したがって、追加の分析が必要であることを示すと解釈された。
【0255】
DNA配列の分析。
RNAがヒトmAbをコードすることの確認。
受容体結合アッセイにおいてTNFα遮断活性を示した7つのTNV mAb(TNV14、TNV15、TNV32、TNV86、TNV118、TNV148、及びTNV196)を特徴付ける際の最初の工程として、これらのmAbを産生する7つのハイブリドーマ細胞株から全RNAを単離した。次に、各RNA試料を使用して、各mAbの完全なシグナル配列、完全な可変領域配列、及び定常領域配列の一部を含むヒト抗体重鎖又は軽鎖cDNAを調製した。次に、これらのcDNA生成物をPCR反応で増幅させ、最初に断片をクローニングすることなくPCR増幅DNAを直接配列決定した。配列決定した重鎖cDNAは、マウスに存在する5つのヒト生殖系列遺伝子のうちの1つであるDP-46と>90%同一であった(
図2)。同様に、配列決定した軽鎖cDNAは、マウスに存在するヒト生殖系列遺伝子のうちの1つと100%又は98%のいずれかと同一であった(
図3)。これらの配列結果は、cDNAに転写され配列決定されたRNA分子がヒト抗体重鎖及びヒト抗体軽鎖をコード化したことを確認した。可変領域がシグナル配列コード配列の5’端にマッピングされるオリゴヌクレオチドを使用してPCR増幅されたため、シグナル配列の最初の数個のアミノ酸は元のTNV翻訳生成物の実際の配列ではない可能性があるが、組換えTNV mAbの実際の配列を表すことに留意するべきである。
【0256】
固有の中和mAb。
各mAbの重鎖及び軽鎖両方の可変領域全体のcDNA配列の分析は、TNV32がTNV15と同一であり、TNV118がTNV14と同一であり、TNV86がTNV148と同一であることを明らかにした。受容体結合アッセイの結果は、DNA配列分析と一致していた、すなわち、TNV86及びTNV148の両方が、TNF結合の遮断においてTNV118及びTNV14の両方よりもおよそ4倍良好であった。したがって、後続の作業は、4つの固有のTNV mAbである、TNV14、TNV15、TNV148、及びTNV196にのみ焦点を当てた。
【0257】
4つのmAbの関連性
DNA配列結果は、4つのTNV mAbの重鎖をコード化する遺伝子が全て互いに高度に相同であり、全てが同じ生殖系列遺伝子DP-46に由来するように見えることを明らかにした(
図2)。加えて、重鎖CDR3配列の各々が非常に類似し、同じ長さのものであること、及びそれらが全てJ6エクソンを使用することを理由に、それらは、単一のVDJ遺伝子再配列事象、続く各mAbを固有のものにする体細胞変化から生じたと思われた。DNA配列分析は、4つのmAbにおいて2つの別個の軽鎖遺伝子のみが存在したことを明らかにした(
図3)。TNV14及びTNV15における軽鎖可変領域コード配列は、互いに同一であり、ヒトκ鎖のVg/38Kファミリーの代表的な生殖系列配列と同一である。TNV148及びTNV196軽鎖コード配列は、互いに同一であるが、2つのヌクレオチド位置での生殖系列配列が異なる(
図3)。
【0258】
4つのmAbの推定アミノ酸配列は、実際のmAbの関連性を明らかにした。4つのmAbは、4つの別個の重鎖(
図4)を含有するが、別個の軽鎖は2つのみである(
図5)。TNV mAb配列と生殖系列配列との間の差異は、大半はCDRドメインに限定されていたが、mAb重鎖のうちの3つもフレームワーク領域において生殖系列配列とは異なっていた(
図4)。DP-46生殖系列コードAbフレームワーク領域と比較して、TNV14は同一であり、TNV15は1つのアミノ酸が異なり、TNV148は2つのアミノ酸が異なり、TNV196は3つのアミノ酸が異なっていた。
【0259】
cDNAのクローニング、部位特異的変異誘発、及び最終発現プラスミドのアセンブリ。cDNAのクローニング。PCR増幅可変領域のDNA配列に基づいて、クローニングされるコード配列を発現ベクタ内に適応させる目的のため、新しいオリゴヌクレオチドは別のPCR増幅を行うように命じられた。重鎖の場合、この2回目のPCRの生成物は制限酵素BsiWI及びBstBIで消化され、プラスミドベクタL28(表2に示されるプラスミド識別番号)にクローニングされた。軽鎖の場合、2回目のPCR生成物はSalI及びAflIIで消化され、プラスミドベクタpBCにクローニングされた。次に、個々のクローンを配列決定して、それらの配列が、異種の可能性のある分子集団の各位置での最も豊富なヌクレオチドを明らかにするPCR生成物の直接配列決定から得られた前回の配列と同一であることを確認した。
【0260】
TNV 148を変化させる部位特異的変異誘発。mAb TNV148及びTNV196は、TNFα生理活性の中和において、次に最良のmAb(TNV14)よりも4倍強力であることが一貫して観察された。しかしながら、上述のように、TNV148及びTNV196重鎖フレームワーク配列は、生殖系列フレームワーク配列とは異なる。TNV148重鎖配列と他のヒト抗体との比較は、多くの他のヒトmAbがフレームワーク1の位置28でIle残基を含有し(成熟配列のみ計数)、一方でフレームワーク3の位置75でのPro残基は、その位置では稀なアミノ酸であったことを示した。
【0261】
TNV196重鎖の類似の比較は、フレームワーク3で生殖系列配列とは異なる3つのアミノ酸がヒトmAbにおいて希であり得ることを示唆した。これらの差異は、ヒトに投与された場合、TNV148及びTNV196を免疫原性にする可能性があった。TNV148は、関心のアミノ酸残基を1個しか有しておらず、この残基はTNFα結合に重要ではないと考えられているため、部位特異的変異誘発技術を使用して、生殖系列Ser残基が位置75でPro残基の代わりにコード化されるように、TNV148重鎖コード配列(プラスミドp1753の)の単一のヌクレオチドを変更した。結果として得られたプラスミドはp1760と呼ばれた(表2を参照のこと)。結果として得られた遺伝子及びmAbは、それを元のTNV148遺伝子及びmAbと区別するためにTNV148Bと呼ばれた(
図5を参照のこと)。
【0262】
最終発現プラスミドのアセンブリ。ゲノム断片として前にクローニングされた12B75重鎖及び軽鎖遺伝子に基づいた新しい抗体発現ベクタを調製した。異なるTNV発現プラスミドが調製されたが(表2を参照のこと)、それぞれの場合において、5’フランキング配列、プロモータ、及びイントロンエンハンサは、それぞれの12B75遺伝子に由来した。軽鎖発現プラスミドに関して、完全なJ-Cイントロン、定常領域コード配列、及び3’フランキング配列も12B75の軽鎖遺伝子に由来した。最終生成細胞株(p1781及びp1783、以下を参照のこと)をもたらした重鎖発現プラスミドに関して、ヒトIgG1定常領域コード配列は、Centocorの前に使用された発現ベクタ(p104)に由来した。重要なことには、ここで報告される最終生成細胞株は、元のハイブリドーマ由来TNV mAb(G1m(z))とは異なるアロタイプ(Gm(f+))のTNV mAbを発現する。これは、GenPharmマウスに由来する12B75重鎖遺伝子はCH1ドメインのC末端部でArg残基をコードするが、CentocorのIgG1発現ベクタp104はその位置でLys残基をコードするためである。J-Cイントロン、完全定常領域コード配列、及び3’フラランキング配列が12B75重鎖遺伝子に由来する他の重鎖発現プラスミド(例えば、p1786及びp1788)が調製されたが、これらの遺伝子でトランスフェクトされた細胞株は、生成細胞株として選択されなかった。ベクタは、最終発現プラスミドをもたらす後のPCR増幅V領域の一工程クローニングを可能にするように慎重に設計された。
【0263】
PCR増幅可変領域cDNAは、L28又はpBCベクタから、プロモータ領域及びJ-Cイントロンの一部を提供する中間段階の12B75系ベクタに移された(プラスミド識別番号に関しては表2を参照のこと)。次に、抗体遺伝子の5’半分を含有する制限断片を、これらの中間段階のベクタから、それぞれの遺伝子の3’半分を提供する最終発現ベクタに移して、最終発現プラスミド(プラスミド識別番号に関しては表2を参照のこと)を形成した。
【0264】
細胞のトランスフェクション及びサブクローニング。発現プラスミドは、制限消化によって線形化されたか、又は各プラスミド中の抗体遺伝子インサートがプラスミド骨格鎖から精製されたかのいずれかであった。Sp2/0及び653マウス骨髄腫細胞は、エレクトロポレーションにより重鎖DNA及び軽鎖DNAでトランスフェクトされた。15の異なるトランスフェクションが行われ、そのほとんどはAbで規定されるように固有であり、遺伝子が線形化された全プラスミド又は精製された遺伝子インサート上にあるかどうかに関わらずAb遺伝子の特定の特徴であり、宿主細胞株であった(表4に要約される)。マイコフェノール酸に耐性のクローンからの細胞上清を、ヒトIgGの存在についてELISAによりアッセイし、精製されたrTNV148Bを参照標準曲線として使用して定量化した。
【0265】
産生が最も高いrTNV148B細胞株
rTNV148Bトランスフェクション2からの、産生が最高の653親株のうちの10(使用済24ウェル培養物において5~10:g/mLを産生)をサブクローニングして、産生がより高い細胞株についてスクリーニングし、より均質な細胞集団を調製した。親株2.320、2.320-17、及び2.320-20のサブクローンのうちの2つは、使用済24ウェル培養物においておよそ50:g/mLを産生し、これは、それらの親株に対して5倍の増加であった。サブクローニングした株2.320-17及び2.320-20の2回目のサブクローニングがもたらした。
【0266】
各mAbをコードする重鎖及び軽鎖プラスミドの識別番号を示す。精製されたmAb遺伝子インサートで行われたトランスフェクションの場合、gpt選択マーカの供給源としてプラスミドp13(pSV2gpt)が含まれた。重鎖定常領域は、Remicadeをコードするために使用された同じヒトIgG1発現ベクタ(「旧」)又は12B75(GenPharm/Medarex)重鎖遺伝子内に含有される定常領域(「新規」)のいずれかによりコード化された。H1/L2は、TNV14重鎖及びTNV148軽鎖で構成される「新規」mAbを指す。プラスミドp1783及びp1801は、それらの重鎖遺伝子がJ-Cイントロンをどの程度含有するかによってのみ異なる。細胞クローンの遺伝子名の最初の数字を定義するトランスフェクション番号は右側に示される。本明細書に記載されるrTNV148B生成細胞株C466(A、B、C、D)及びC467Aは、それぞれトランスフェクション番号2及び1に由来した。rTNV14生成細胞株C476Aはトランスフェクション番号3に由来した。
【0267】
【0268】
使用済の24ウェル培養上清でのELISAアッセイは、これらの2回目のサブクローンが全て98~124:g/mLを産生したことを示し、これは初回のサブクローンに対して少なくとも2倍の増加であった。これらの653細胞株に、表5に示されるように、Cコード表記を割り当てた。
【0269】
rTNV148Bトランスフェクション1からの生成が最高のSp2/0親株のうちの3つをサブクローニングした。親株1.73の2回のサブクローニングは、使用済24ウェル培養物において25:g/mLを産生したクローンの特定につながった。このSp2/0細胞株をC467Aと表記した(表5)。
【0270】
[15]産生が最も高いrTNV14細胞株
rTNV14トランスフェクション3からの生成が最高のSp2/0親株のうちの3つを1回サブクローニングした。サブクローン3.27-1は、産生が19:g/mLであり、使用済の24ウェル培養物において最も高い生産体であることが分かった。この細胞株をC476Aと表記した(表5)。
【0271】
【0272】
サブクローニングされた細胞株の特徴付け
細胞株の成長特徴をより慎重に特徴付けし、大規模でmAb生成レベルを決定するために、T75培養物を使用して成長曲線分析を行った。結果は、細胞株の4つのC466シリーズの各々が1.0×10
6~1.25×10
6細胞/mLのピーク細胞密度及び110~140:g/mLの最大mAb蓄積レベルに達したことを示した(
図7)。対照的に、生成が最高のSp2/0サブクローンC467Aは、2.0×10
6細胞/mLのピーク細胞密度及び25:g/mLの最大mAb蓄積レベルに達した(
図7)。成長曲線分析は、rTNV14-生成細胞株C476Aに対して行われなかった。
【0273】
更なる成長曲線分析を行って、異なる濃度のMHX選択物における成長速度を比較した。この比較は、MHXの不在下で培養されたC466細胞が、通常量のMHX(1×)で培養された同じ細胞よりも速く成長しているように思われる近年の観測によって促された。マイコフェノール酸などの化合物の細胞傷害性濃度は数桁の大きさ以上に測定される傾向にあるため、より低い濃度のMHXを使用することにより、mAb生成の安定性を犠牲にすることなく細胞の倍加時間を大幅に速くし得ることが可能であると考えられた。細胞株C466A及びC466Bは、MHX無し、0.2×MHX、又は1×MHXのいずれかで培養された。生細胞の計数は、7日間、24時間間隔で行われた。結果により、MHX濃度依存性細胞成長率が明らかになった(
図8)。細胞株C466Aは、1×MHXにおいて25.0時間の倍加時間を示したが、MHX無しではわずか20.7時間の倍加時間を示した。同様に、細胞株C466Bは、1×MHXにおいて32.4時間の倍加時間を示したが、MHX無しではわずか22.9時間の倍加時間を示した。重要なことには、0.2X MHXにおける両細胞株の倍加時間は、1X MHXよりもMHX無しで観測されたものとより類似していた(
図8)。この観測は、倍加時間が重要なパラメータであるバイオリアクターにおいて、増強された細胞性能がより少ないMHXを使用することにより実現され得る可能性を示す。しかしながら、安定性試験結果(以下を参照のこと)は、細胞株C466DがMHXの不在下でも少なくとも60日間、rTNV148Bを安定して生成することが可能であることを示唆するが、安定性試験は又、MHXの不在と比較して、細胞がMHXの存在下で培養されたとき、より高いmAb生成レベルも示した。
【0274】
およそ60日の期間にわたって様々な細胞株からのmAbの生成を評価するために、MHX選択物を含有する又は含有しない、いずれかの培養物で安定性試験を行った。細胞株の全てが高mAb生成を維持したわけではなかった。培養のちょうど2週間後、クローンC466Aの生成は試験開始時よりもおよそ45%少なかった。クローンC466Bからの生成も大幅に低下したように思われた。しかしながら、クローンC466C及びC466Dは、かなり安定した生成を維持し、C466Dは最も高い絶対生成レベルを示した(
図9)。
【0275】
結論
ヒトTNFαに対する8つのヒトmAbの初期パネルから、タンパク質配列及びTNF中和効力を含むいくつかの基準に基づいて、TNV148B並びにTNV14が好ましいものとして選ばれた。100:g/mL超のrTNV148B及び19:g/mL超のrTNV14を産生する細胞株を調製した。
【0276】
実施例5:単回ボーラス注射を使用した抗TNF抗体及び対照を使用した関節炎マウスの試験
およそ4週齢のTg197試験マウスを性別及び体重に基づき9つの処置群のうちの1つに割り当て、DulbeccoのPBS(D-PBS)、又は1mg/kg若しくは10mg/kgのいずれかの本発明の抗TNF抗体(TNV14、TNV148、又はTNV196)の単回腹腔内ボーラス投与で処置した。
【0277】
結果:体重を投与前からの変化として分析したとき、10mg/kgのcA2で処置した動物は、試験を通してD-PBSで処置した動物よりも一貫して高い体重増加を示した。この体重増加は、3~7週目で有意であった。10mg/kgのTNV148で処置した動物も、試験の7週目に有意な体重増加を達成した。(
図10を参照のこと)。
【0278】
図11A~Cは、関節炎指数に基づく疾患の重症度の進行を表す。10mg/kgのcA2処置群の関節炎指数は、3週目から始まり、残りの試験(7週目)を通して継続するD-PBS対照群よりも低かった。1mg/kgのTNV14で処置した動物及び1mg/kgのcA2で処置した動物は、D-PBS処置群と比較したとき、3週目以降のAIにおいて有意な減少を示すことができなかった。各々を類似の用量のその他のものと比較したとき(10mg/kgのTNV14、148及び196と比較した10mg/kgのcA2)、10mg/kgの処置群の間に有意差はなかった。1mg/kgの処置群を比較したとき、1mg/kgのTNV148は、1mg/kgのcA2よりも3、4及び7週目で有意に低いAIを示した。1mg/kgのTNV148も、1mg/kgのTNV14で処置した群よりも3及び4週目で有意に低かった。TNV196は試験の6週目までAIにおいて有意な減少を示したが(D-PBSで処置した群と比較したとき)、TNV148はこの試験の終了時に有意のままであった唯一の1mg/kg処置群であった。
【0279】
実施例6:複数ボーラス投与として抗TNF抗体及び対照を使用した関節炎マウスの試験
およそ4週齢のTg197試験マウスを体重に基づき8つの処置群のうちの1つに割り当て、対照品(D-PBS)、又は3mg/kgの抗体(TNV14、TNV148)(0週目)の腹腔内ボーラス投与で処置した。注射は1、2、3、及び4週目に全ての動物において繰り返された。群1~6は、試験品の有効性に関して評価された。群7及び8の動物から得られた血清試料は、2、3及び4週目のTNV14又はTNV148の免疫応答誘導及び薬物動態クリアランスに関して評価された。
【0280】
結果:体重を投与前からの変化として分析したとき、有意差は認められなかった。10mg/kgのcA2で処置した動物は、試験を通してD-PBSで処置した動物よりも一貫して高い体重増加を示した。(
図12を参照のこと)。
【0281】
図13A~Cは、関節炎指数に基づく疾患の重症度の進行を表す。10mg/kgのcA2で処置した群の関節炎指数は、2週目から始まり、残りの試験全体を通して(5週目)継続してD-PBS対照群よりも有意に低かった。1mg/kg又は3mg/kgのcA2で処置した動物及び3mg/kgのTNV14で処置した動物は、d-PBS対照群と比較したときに、試験を通して任意の時点でAIにおいて任意の有意な減少を達成することができなかった。3mg/kgのTNV148で処置した動物は、d-PBSで処置した群と比較したとき、3週目から始まり、5週目まで継続する有意な減少を示した。10mg/kgのcA2で処置した動物は、試験の4及び5週目でより低い用量の両cA2(1mg/kg及び3mg/kg)と比較したとき、AIにおいて有意な減少を示し、又3~5週目で、TNV14で処置した動物よりも有意に低かった。3mg/kgの処置群のいずれかの間に有意差はなかったようだが、3mg/kgのTNV14で処置した動物に関するAIは、ある時点で10mg/kgよりも有意に高く、一方TNV148で処置した動物は、10mg/kgのcA2で処置した動物と有意に異ならなかった。
【0282】
実施例7:単回腹腔内ボーラス投与として抗TNF抗体及び対照を使用した関節炎マウスの試験
およそ4週齢のTg197試験マウスを性別及び体重に基づき6つの処置群のうちの1つに割り当て、3mg/kg又は5mg/kgのいずれかの抗体(cA2又はTNV148)の単回腹腔内ボーラス投与で処置した。この試験は、D-PBS及び10mg/kgのcA2対照群を利用した。
【0283】
体重を投与前からの変化として分析したとき、全ての処置は似たような体重増加を達成した。3又は5mg/kgのTNV148又は5mg/kgのcA2のいずれかで処置した動物は、試験の早期(2及び3週目)に体重量が有意に増加した。TNV148で処置した動物のみが後の時点において有意な体重増加を維持した。3及び5mg/kgのTNV148で処置した動物はどちらも、7週目で有意を示し、3mg/kgのTNV148で処置した動物は注射の8週間後に尚も有意に上昇した。(
図14を参照のこと)。
【0284】
図15は、関節炎指数に基づく疾患の重症度の進行を表す。全ての処置群が初期の時点で多少の保護作用を示し、5mg/kgのcA2及び5mg/kgのTNV148は、1~3週目にAIにおいて有意な減少を示し、全ての処置群が2週目で有意な減少を示した。試験の後期に、5mg/kgのcA2で処置した動物は多少の保護作用を示し、4、6及び7週目で有意に減少した。低用量(3mg/kg)のcA2及びTNV148は両方とも、6週目で有意な減少を示し、全ての処置群が7週目で有意な減少を示した。試験の終わりで(8週目)有意な減少を維持することができた処置群はなかった。任意の時点で処置群のいずれかの間(食塩水対照群は除く)に有意差はなかった。
【0285】
実施例8:抗TNF抗体と修飾された抗TNF抗体との間の単回腹腔内ボーラス投与として抗TNF抗体及び対照を使用した関節炎マウスの試験
TNV148(ハイブリドーマ細胞に由来する)及びrTNV148B(トランスフェクトした細胞に由来する)の単回腹腔内投与の有効性を比較するために。およそ4週齢のTg197試験マウスを性別及び体重に基づき9つの処置群のうちの1つに割り当て、Dulbecco=S PBS(D-PBS)、又は1mg/kgの抗体(TNV148、rTNV148B)の単回腹腔内ボーラス投与で処置した。=
【0286】
体重を投与前からの変化として分析したとき、10mg/kgのcA2で処置した動物は、試験を通してD-PBSで処置した動物よりも一貫して高い体重増加を示した。この体重増加は、1週目及び3~8週目で有意であった。1mg/kgのTNV148で処置した動物も、試験の5、6及び8週目に有意な体重増加を達成した。(
図16を参照のこと)。
【0287】
図17は、関節炎指数に基づく疾患の重症度の進行を表す。10mg/kgのcA2処置群の関節炎指数は、4週目から始まり、残りの試験(8週目)を通して継続するD-PBS対照群よりも低かった。TNV148で処置した群及び1mg/kgのcA2で処置した群は両方とも、4週目でAIにおける有意な減少を示した。以前の試験(P-099-017)は、TNV148が単回の1mg/kgの腹腔内ボーラス後の関節炎指数の減少にわずかにより効果的であることを示したが、この試験では、両バージョンのTNV抗体で処置した群からのAIがわずかに高いことを示した。1mg/kgのcA2で処置した群(6週目を除く)は、10mg/kgのcA2群と比較したとき、有意に増加せず、TNV148で処置した群は、7及び8週目で有意に高かったが、1mg/kgのcA2、1mg/kgのTNV148及び1mg/kgのTNV148Bの間には試験の任意の時点でAIにおいて有意差はなかった。
【0288】
実施例9:SIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)の製造プロセス
ゴリムマブのバックグラウンド
抗TNFα剤を用いた治療は炎症性関節炎の治療に成功裏に使用されてきたが、初期の抗TNFα剤は安全性、投与計画、費用、及び/又は免疫原性に関して限界があった。いくつかの限界に対処するために、SIMPONI(登録商標)(ゴリムマブ)と表される完全ヒト抗抗TNFαmAbが開発された。ゴリムマブ(CNTO148及びrTNV148Bとしても既知である)は、免疫グロブリンG1(IgG1)重鎖アイソタイプ(G1m[z]アロタイプ)及びκ軽鎖アイソタイプを有する完全ヒトモノクローナル抗体である。ゴリムマブは、配列番号36を含む重鎖(HC)及び配列番号37を含む軽鎖(LC)を有する。ゴリムマブの分子量は、149,802~151,064ダルトンの範囲である。
【0289】
ゴリムマブは、高い親和性及び特異性を有し、ヒト腫瘍壊死因子α(TNFα)の可溶性の形態及び膜貫通型の生物活性形態の両方を有する高親和性の安定な複合体を形成し、この複合体は、TNFαの受容体への結合を防止し、TNFαの生理活性を中和する。他のTNFαスーパーファミリーリガンドに対する結合は観察されなかった。具体的には、ゴリムマブは、ヒトリンパ球に結合しない、又は中和しない。TNFαは、自己会合して生物活性ホモトリマーを形成し、タンパク質分解によって細胞表面から急速に放出される膜貫通タンパク質として、主として活性化された単球、マクロファージ及びT細胞により合成される。TNFαのp55又はp75 TNF受容体のいずれかへの結合により、受容体細胞質ドメインがクラスター化し、シグナル伝達が開始される。腫瘍壊死因子αは、様々な刺激に応答して産生され、続いて、カスパーゼ依存性アポトーシス経路並びに転写因子核内因子(NF)-κB及び活性化因子タンパク質-1(AP-1)の活性化による炎症応答を促進する、主要なセンチネルサイトカインとして特定された。腫瘍壊死因子αは又、胚中心での免疫細胞の組織化における役割を介して免疫応答を調節する。TNFαの発現の上昇は、リウマチ性関節炎(RA)などの慢性炎症性疾患、並びに乾癬性関節炎(PsA)及び強直性脊椎炎(AS)などの脊椎関節症に関連しており、これらの疾患に特徴的な関節性炎症及び構造的損傷の重要なメディエーターである。
【0290】
ゴリムマブを用いた臨床経験
強直性脊椎炎(AS)を対象としたゴリムマブ皮下(SC)投与のグローバル無作為化二重盲検プラセボ対照第3相試験(試験C0524T09)において、ゴリムマブは、強直性脊椎炎(AS)に罹患した被験者における徴候及び症状、身体機能、健康関連の生活の質(HRQOL)の改善に有効であることが実証された。更に、安全性分析では、SCゴリムマブは一般的に良好に忍容されることが示され、又他の抗TNFα剤で観察されたものと同様の安全性プロファイルを示された。
【0291】
SCゴリムマブの既知の安全性及び有効性を考慮すると、IVゴリムマブは、RA、PsA、及びASなどのリウマチ性疾患における他の抗TNFα剤と一致する許容可能な安全性プロファイルで有効であることが証明されると予想された。ゴリムマブの静脈内投与は、RA処置の承認の基礎となった第3相試験(CNTO148ART3001)で確定的に試験された。CNTO148ART3001試験は、同時メトトレキサート(MTX)療法にもかかわらず活動性RAを有する対象における、0週目、4週目、及びその後8週ごと(q8w)に30±10分にわたって注入されるゴリムマブ2mg/kgのIV投与の有効性及び安全性に関する、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設2群試験であった。MTXにもかかわらず活動性RAを有する対象は、0週目、4週目、及び8週ごとに24週まで2mg/kgでプラセボ注入又はゴリムマブのIV投与のいずれかを受けるように無作為化された。24週目に開始して、100週まで、全ての対象をIVゴリムマブで処置した。IVゴリムマブは、RAの徴候及び症状、身体機能、並びに健康関連の生活の質の改善、並びに構造的損傷の進行の抑制において実質的な利益を提供することが実証された。RAの処置において静脈内投与されたゴリムマブ(CNTO148ART3001)では、輸注反応の発生率は低く、ロバストな有効性及び許容される安全性プロファイルを示した。
【0292】
より最近では、活動性強直性脊椎炎(AS)及び活動性乾癬性関節炎(PsA)に罹患した被験者の治療において、静脈内(IV)ゴリムマブの有効性及び安全性を評価するための2つの第3相試験が設計された。現在入手可能なIV抗TNFα剤は免疫原性及び輸注反応に関して制限があり、IVゴリムマブの30±10分間の注入と比較してより長い注入時間(60~120分間)を有することから、被験者におけるIV投与経路が評価される。患者は又、SC剤と比較してより頻繁な投与よりもIVゴリムマブの維持投与計画を好むかもしれない。
【0293】
製造プロセスの概要
Simponi(ゴリムマブ)は、連続的な細胞の灌流培養、続いて精製を含む9段階のプロセスで製造される。製造プロセスの概要は、
図18に示される。
【0294】
本明細書で使用するとき、用語「培養」、「培養する」、「培養された」、及び「細胞培養物」は、細胞集団の生存及び/又は増殖に好適な条件下で培地中に懸濁される細胞集団を指す。技術分野には文脈から明らかであるように、本明細書で使用されるこれらの用語は又、細胞集団及び集団が懸濁される培地を含む組合せを指す。細胞培養物は、例えば、バッチ、フェドバッチ又は灌流細胞培養法などによって増殖させた細胞を含む。特定の実施形態では、細胞培養物は、哺乳動物細胞培養物である。
【0295】
本発明で使用するための細胞株は、チャイニーズハムスター卵巣細胞(Chinese hamster vary cell)(CHO細胞)、ヒト胚性腎細胞(HEK細胞)、ベビーハムスター腎細胞(BHK細胞、マウス骨髄腫細胞(例えば、NS0細胞及びSp2/0細胞)、及びヒト網膜細胞(例えば、PER.C6細胞)を含むがこれらに限定されない哺乳動物細胞株を含む。
【0296】
本明細書で使用するとき、「化学的に規定された培地(複数可)」という用語は、全ての成分の同一性及び濃度が既知である合成増殖培地を指す。合成培地、すなわち化学的に定義された培地は、細菌、酵母、動物、又は植物抽出物、動物血清又は血漿を含まないが、個々の植物又は動物由来の成分(例えば、タンパク質、ポリペプチドなど)を含んでも含まなくてもよい。化学的に定義された培地は、成長を支援するために必要なリン酸塩、硫酸塩などの無機塩を含んでもよい。炭素源が定義されており、通常、グルコース、ラクトース、ガラクトースなどの糖、又はグリセロール、乳酸、アセテートなどの他の化合物である。特定の化学的に定義された培地は又、バッファとしてリン酸塩を使用するが、クエン酸塩、トリエタノールアミンなどの他のバッファを使用してもよい。本明細書で使用するとき、化学的に規定された培地は、マイクロモル量以下の任意の金属イオンを含有する。市販の化学的に規定された培地の例としては、以下に限定されないが、ThermoFisherのCD Hybridoma Medium及びCD Hybridoma AGT(商標)Medium、様々なダルベッコ改変イーグル(DME)培地(Sigma-Aldrich Co;SAFC Bioscienses,Inc)、ハムの栄養混合液(Sigma-Aldrich Co;SAFC Bioscienses,Inc)、これらの組合せ等が挙げられる。化学的に規定された培地を調製する方法は、当該技術分野において既知であり、例えば、米国特許第6,171,825号及び同第6,936,441号、国際公開第2007/077217号、並びに米国特許出願公開第2008/0009040号及び同第2007/0212770号に既知である。
【0297】
本明細書で使用するとき、用語「バイオリアクター」は、細胞培養物の増殖に有用な任意の容器を指す。バイオリアクターは、細胞の培養に有用である限り、任意の大きさであってもよい。特定の実施形態では、このような細胞は哺乳動物細胞である。典型的には、バイオリアクターは、少なくとも1リットルであり、10、100、250、500、1,000、2,500、5,000、8,000、10,000、12,000リットル以上、又はこれらの間の任意の体積であってもよい。培養期間中、pH及び温度を含むがこれらに限定されないバイオリアクターの内部条件を任意に制御することができる。バイオリアクターは、ガラス、プラスチック、又は金属を含む、本発明の培養条件下で培地中に懸濁された哺乳動物細胞培養物を保持するのに好適な任意の材料から構成することができる。本明細書で使用するとき、用語「産生バイオリアクター」は、対象とするポリペプチド又は糖タンパク質の産生に使用される最終バイオリアクターを指す。産生バイオリアクターの体積は、典型的には少なくとも500リットルであり、1,000、2,500、5,000、8,000、10,000、12,000リットル以上、又はこれらの間の任意の体積であってもよい。当業者であれば、本発明を実施する際に使用するのに好適なバイオリアクターを選択することができるであろう。
【0298】
段階1及び2において、前培養、細胞増殖、及び細胞産生が行われる。段階1では、ゴリムマブのHC及びLC配列を発現しているトランスフェクトされたSp2/0細胞の単一のワーキングセルバンクバイアルから前培養を開始し、培養フラスコ、使い捨て培養バッグ、及び内部スピンフィルタを備えた50L灌流播種バイオリアクター又はオルタネーティング・タンジェンタル・フロー(alternating tangential flow)中空糸フィルタ(ATF)細胞保持システムを備えた200L灌流播種バイオリアクターのいずれかで細胞を増殖させる。500L又は1000Lの産生バイオリアクターの接種に必要な細胞密度及び体積が得られるまで細胞を培養する。段階2では、ATFシステムを使用して、500L又は1000Lの産生バイオリアクター内で細胞培養物を連続的に灌流する。細胞培養透過液(回収物)をATFシステムから回収し、細胞をバイオリアクターに戻し、培養物に新鮮培地を補充する。バイオリアクターから取り出したバイオマスを、ATFシステムから回収した回収物と組み合わせ、次いで、更なる処理のためにプールされた回収物を生成するために清澄化してもよい。
【0299】
細胞培養回収物からのゴリムマブの精製は、段階3~8において、親和性及びイオン交換クロマトグラフィー工程と、可能性のあるウイルス汚染を不活化又は除去する工程(溶媒/洗剤処理及びウイルス除去濾過)とを組み合わせて行われる。段階3では、回収及び/又はプールされた回収物を、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーを使用して清澄化及び精製する。得られた直接生成物捕獲(DPC)溶出液は、更なる処理まで凍結される。段階4で、解凍後、DPC溶出液を濾過し、プールし、その後、段階5でトリ-n-ブチルホスファート(TNBP)及びポリソルベート80(PS80)で処理して、存在する可能性があり脂質エンベロープを有する任意のウイルスを不活性化する。
【0300】
段階6では、陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて、TNBP及びPS80試薬並びに不純物をゴリムマブ生成物から除去する。ゴリムマブ生成物は、DNA、存在する可能性のあるウイルス、及び不純物を除去するために、段階7において陰イオン交換クロマトグラフィーを使用して更に精製される。段階8では、精製したゴリムマブ生成物を希釈し、ウイルス捕捉性フィルタを通して濾過する。
【0301】
ゴリムマブの最終調製は、段階9で行われる。限外濾過工程はゴリムマブ生成物を濃縮し、透析濾過工程により、製剤賦形剤が添加され、プロセス中のバッファ塩が除去される。PS 80を添加し、製剤化されたバルク(FB)として凍結保存するために、中間体をポリカーボネート容器に濾過する。
【0302】
製造方法における細胞培養の詳細な説明
段階1
前培養及び増殖
Simponi(ゴリムマブ)の生成における第1の段階は、ゴリムマブのHC及びLC配列を発現するトランスフェクトされたSp2/0細胞のWorking Cell Bank(WCB)バイアルからの前培養の開始並びに培養フラスコ、使い捨て培養バッグ、及び50又は200Lの播種用バイオリアクターにおける細胞培養物のその後の増殖である。500又は1000Lの産生用バイオリアクターへの接種に必要な細胞密度及び体積が得られるまで細胞を培養する。プロセス内管理とプロセス監視試験を含む前培養と増殖工程を示す段階1のフロー図を
図19に示す。
【0303】
製造手順
WCBからのクライオバイアルを解凍し、6mMのL-グルタミン、0.5mg/Lのミコフェノール酸、2.5mg/Lのヒポキサンチン、及び50mg/Lのキサンチンを補充した化学的に規定された培地(CD-A培地)で播種密度0.2~0.4×106個の生存細胞(VC)/mLに希釈する。解凍時の培養物生存率は≧50%なければならない。初期の継代は、温度とCO2が制御された加湿CO2インキュベータ内の培養フラスコで維持される。培養物を、0.6× 106 VC/mLの最小細胞密度が得られるまで2~3日間インキュベートする。
【0304】
スケールアップは、培養フラスコ及び使い捨て培養バッグ内で培養物を連続的に増殖させることによって達成される。各継代は、CD-A培地で希釈することにより、0.2~0.4×106 VC/mLの細胞密度で開始される。各増殖工程で、継代培養を、0.6×106 VC/mLの最小細胞密度が得られるまで2~3日間インキュベートする。使い捨て培養バッグで、≧0.8×106 VC/mL及び≧80%の培養物生存率で十分な培養量が達成されたら、培養物を50L又は200Lの播種バイオリアクターに接種してもよい。
【0305】
各前培養継代を、生存細胞密度(VSD)、培養物生存率、及び顕微鏡検査のためにサンプリングする。50又は200Lの播種バイオリアクターへの接種前に、前培養物をバイオバーデン測定のためにサンプリングする。前培養は、解凍後最大30日間維持され得る。微生物汚染が検出されるか、又は最大持続時間を超過した場合、前培養を終了する。播種用バイオリアクターへの接種時にバックアップ用の前培養が保持されてもよく、又は当該前培養は、新しいWCBバイアルを解凍して開始されてもよい。バックアップ用の前培養物は、上述のように増殖され、初代培養と同じプロセス内管理及び操作パラメータに供される。必要に応じて50又は200Lの播種用バイオリアクターに接種するために、バックアップ用の前培養物を維持し、使用することができる。
【0306】
前培養物が接種基準を満たす場合、使い捨て培養バッグの内容物を50又は200Lの播種用バイオリアクターに移し、≧0.3×106 VC/mLの播種密度を達成する。50又は200Lの播種用バイオリアクターに、CD-A培養培地を供給し、最大稼働量で灌流モードで操作する。培養物は、細胞増殖を支えるよう、pH、温度、及び溶存酸素濃度について制御される。50又は200Lの播種用バイオリアクターの培養物を、≧80%培養物生存率で≧2.0×106VC/mLの細胞密度が得られるまで増殖させる。50又は200L播種用バイオリアクターの培養物を、VCD、培養物生存率、及び顕微鏡検査のためのプロセスを通してサンプリングする。500又は1000Lの産生用バイオリアクターの接種前に、50又は200Lの播種用バイオリアクターをバイオバーデン測定のためにサンプリングする。50又は200Lの播種用バイオリアクターのVCDが≧2.0×106VC/mLに達し、500又は1000Lの産生用バイオリアクターの接種の準備ができていない場合、50Lの播種用バイオリアクターの接種後6日及び200Lの播種用バイオリアクターの接種後7日を最大培養期間として、灌流モードで培養を継続することができる。微生物汚染が検出されるか、又は最大持続時間を超過した場合、50又は200Lの播種用バイオリアクターの操作を終了する。
【0307】
段階2
バイオリアクター産生
製造プロセスにおける第2段階は、500L又は1000Lの産生用バイオリアクターにおける、細胞の灌流培養である。オルタネーティング・タンジェンタル・フロー(ATF)中空糸の細胞保持装置を介して細胞を保持しながら、産生用バイオリアクターから細胞培養物の透過液(permeate)(回収物)を回収し、培養物には新鮮な培地を補充する。500L又は1000Lの産生用バイオリアクタープロセスを示すフロー図を
図20に示す。
【0308】
製造手順
500L又は1000Lの産生用バイオリアクターの接種は、50又は200Lの播種用バイオリアクターの内容物を、6mMのL-グルタミン、0.5mg/Lのミコフェノール酸、2.5mg/Lのヒポキサンチン、及び50mg/Lのキサンチンを添加した既知組成培地(CDH-A培地)を含む500又は1000Lの産生用バイオリアクターに移すことによって行う。移される体積は、≧0.3×106生存細胞(VC)/mLの播種密度をもたらすのに十分でなければならない。培養物を34.0~38.0℃の温度、6.80~7.40のpH及び10~80%の溶存酸素濃度で維持する。生存細胞密度(VCD)、培養物生存率、バイオバーデン、及び免疫グロブリンG(IgG)濃度の測定のために、500又は1000Lの生産用プロセス全体を通してサンプリングを行う。
【0309】
接種後、培養物への培地の供給量は、最大供給量に達するまで、所定のスケジュールに従って増加される。最大供給量は、1日当たり0.80~1.50の反応器体積に制御される。バイオリアクターの最大稼働量に達したなら、ATF系を使用して灌流を開始して、透過液から細胞を分離する。ATFフィルタを通して透過液を連続的に回収する一方で、細胞培養をATF系とバイオリアクターとの間で循環させる。ATF透過液は、バイオプロセス容器(BPC)に回収される。
【0310】
VCDが≧8.5×106個VC/mLに達したとき、ただし500又は1000Lの産生用バイオリアクターの接種後15日目までに、バイオリアクターへの培地供給を、CD-Aから、6mMのL-グルタミン、0.5mg/Lのミコフェノール酸、2.5mg/Lのヒポキサンチン、50mg/Lのキサンチン、及び10mMの酢酸ナトリウムを補充した化学的に規定された培地(CD-B培地)に切り替える。バイオリアクター内の生存細胞の密度は、培養物から可変量でバイオマス流を除去することによって、少なくとも12.0×106個VC/mLの目標値に制御される。
【0311】
バイオリアクターから除去されたバイオマスは、廃棄されてもよく、又はATF透過液と共に組み合わせられて、濾過によって清澄化されてもよい。
【0312】
ATF透過液は、回収物流と表される。エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を回収物流に5~20mMの濃度まで添加する。回収物は、バイオリアクターから回収した後、バイオプロセス容器(BPC)にて、2~8℃の環境下で、最長21日間保存される。直接的な生成物の捕集前に、各回収物のBPCに対し、IgG濃度、エンドトキシン、及びバイオバーデンの測定のためにサンプリングする(段階3)。
【0313】
500又は1000Lの産生用バイオリアクターにおける細胞の灌流培養操作は、接種後最大60日間継続する。500又は1000Lの産生用バイオリアクターの稼働の最終日に、培養物をマイコプラズマ及び外来性ウイルスについての試験のためにサンプリングする。バイオリアクターのIgG濃度をモニタリングし、情報のみを報告する。
【0314】
製造管理戦略の導入
オリゴ糖プロファイルに関してゴリムマブの一貫した原薬(DS)及び製剤(DP)の特徴を維持するために、又、大規模商業製造の間に生存細胞密度(VCD)、生存率(%)、及び生産性を制御するために、製造制御戦略を開発した。ゴリムマブのグリコシル化は、製造プロセスの段階9でプロセス内管理として監視され、総中性オリゴ糖%、総荷電オリゴ糖%、及び個々の中性オリゴ糖種G0F、G1F、及びG2Fの%の平均の代わりに仕様上限及び下限を用いる。本明細書で使用するとき、「原薬」(「DS」と略される)及び「製剤」(「DP」と略される)という用語は、例えば臨床試験における市販薬として使用するための又は市販薬物として使用するための組成物を指す。DSは、病気の診断、治癒、緩和、治療、又は予防において薬理学的活性又は他の直接的な効果を提供すること、あるいは人体の構造又は機能に影響を与えることを目的とした有効成分である。製造ステップで製造される製剤化されたバルク(FB)は原薬(DS)である。DP(医薬品、薬、薬物、又は薬剤とも呼ばれる)は、病気の診断、治癒、緩和、治療、予防に使用される薬剤、又は人体の構造や機能に影響を与える薬剤である。DPは、患者への販売及び/又は投与のための医薬品として調製されたDSである。本明細書で使用するとき、「製造管理戦略」、「製造戦略」、「管理戦略」、及び「製造方法」という用語は、例えば臨床試験において、又は市販薬として、商業的使用のためのDS又はDPを生成するためのプロセスを指す。
【0315】
簡潔に言うと、製造管理戦略は、≧10.0μg/リットル~≦35.0μg/リットルのMn2+(マンガン)及び≧1.0μg/リットル~≦1.8μg/リットルのCu2+(銅)からなる特定の微量元素濃度を含有するように制御された化学的に規定された培地中で細胞を培養することによって、ゴリムマブのオリゴ糖プロファイルが制御されることを確実にする。本明細書中で使用される場合、「特定の」という用語は、マンガン及び銅の濃度が必要条件であり、化学的に規定された培地において上限及び下限内に正確に制御されなければならないことを明確かつ確実に特定することを指す。本明細書で使用するとき、「制御される」という用語は、例えば、培地の製造中にマンガン及び銅を含有する原材料を他の手段によって注意深く調節、試験及び検証すること、例えば、注意深く秤量及び/又は測定すること、誘導結合プラズマ質量分析(IPC-MS)又は他の方法を使用して化学的に規定された培地中のマンガン及び銅の最終濃度を測定すること、必要であれば、適切な量のマンガン及び銅を化学的に規定された培地に補充することによって濃度を調整することを指す。別の制御方法は、バッチのうちの1つ又は2つ以上が仕様外である場合に、指定された濃度を達成するために混合することができる化学的に規定された培地の2つ以上のバッチを特定することである。本発明の製造管理戦略を使用して製造されたゴリムマブDS又はDPは、抗TNF抗体を含み、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルは、≧82.0%~≦94.4%の総中性オリゴ糖種、≧5.6%~≦18.0%の総荷電オリゴ糖種、及び≧25.6%~≦42.2%のG0F、≧31.2%~≦43.6%のG1F、及び≧5.6%~≦14.2%のG2Fの個々の中性オリゴ糖種を含む。製造管理戦略は又、段階2のバイオリアクターにおける生存細胞密度(VCD)、生存率%、及び生産性が、過去の値と比較して維持されることを確実にする。好ましい方法において、マンガン及び銅濃度は、ICP-MSを使用して決定され、オリゴ糖プロファイルは、HPLC法を使用して決定される。
【0316】
対照戦略は、2つの異なる製造現場でのゴリムマブ産生バイオリアクター性能についてのVCD及び生存率%における非典型的な傾向を認識した後に開始された。影響を受けた産生バイオリアクターバッチは、より低いVCDでショルダーリングを示し(
図23)、過去の傾向と比較して、主に後期相の間に長期間にわたってより低い生存率%を示した(
図24)。加えて、影響を受けたゴリムマブバッチについてのオリゴ糖プロファイルは、過去の傾向と比較してシフトしたことが認識された。ゴリムマブの影響を受けたバッチでは、総中性及び総荷電オリゴ糖のレベルは、過去の平均よりもそれぞれ高い及び低い傾向にあったが、指定された限度内であった(
図26)。加えて、個々のオリゴ糖種の更なる評価(
図27)は、影響を受けたバッチの大部分が、末端ガラクトース含量の変更(例えば、アガラクト(G0F)並びに減少したモノガラクト(G1F)及びジガラクト(G2F)オリゴ糖種)を有し、同時にN-結合型オリゴ糖組成物中のシアル酸含量が減少する傾向があり、負に荷電したシアル化種の減少をもたらすことを実証した。
【0317】
厳密な調査の後、化学的に規定された培地の変更が、オリゴ糖プロファイルの変化及びVCD、生存率%のシフトの根本的原因であると結論付けられた。より具体的には、本調査により、驚くべきことに、オリゴ糖プロファイルのシフト並びにVCD及び生存率%のシフトの決定的な根本原因は、細胞培養培地成分のうちの1つ、FeCl3・6H20(塩化第二鉄)だけの変更であることが実証された。特に、塩化第二鉄中のより低い微量金属濃度のMn2+(マンガン)が、オリゴ糖プロファイルの変更の主な根本原因であり、塩化第二鉄中のより低い微量金属濃度のCu2+(銅)が、VCD、生存率%及び生産性のシフトの主な根本原因であることが決定された。又、銅がオリゴ糖プロファイルを決定する際に役割を果たすこと、及びオリゴ糖プロファイルが仕様内であることを確実にするためにマンガン及び銅濃度の両方を制御しなければならないことも決定された。
【0318】
塩化第二鉄の変更は、より高純度の鉄塩を生成することを意図して、塩化第二鉄を供給した供給業者による製造方法の変更のために導入されたものであり、調査により、この変更により、塩化第二鉄中に測定されない不純物として存在するマンガン、クロム及び銅のレベルがより低い微量レベルとなることが明らかになった。Mn2+(マンガン)及びCr3+(クロム)による培地の補充は、VCD及び生存率%のプロファイルを部分的に回復させたが、Cu2+(銅)補充は、VCD、生存率%及び生産性プロファイルを完全に回復させるために必要であった。当初は、Cr3+(クロム)のレベルも又、オリゴ糖プロファイル、VCD、及び/又は生存率%のシフトにおける主要な因子であり得ると推測されたが、その後の小規模研究では、マンガン濃度の変更がオリゴ糖プロファイルのシフトの主要な寄与因子であり、銅濃度も役割を果たすこと、並びに銅がVCD、生存率%、及び総生産性の関連する変化の主要な寄与因子であることが後に決定された。
【0319】
製造管理戦略は、化学的に規定された培地にMn2+(マンガン)及びCu2+(銅)を補充することによって、オリゴ糖プロファイル、VCD、生存率%、及び生産性プロファイルの変化に関連する問題を改善した。製造管理戦略は、商業規模で2段階で実施した。まず、化学的に規定された培地にマンガン及びクロムのみを補充して、本明細書においてSUP-AGTと称される培地を生成した。その後、SUP-AGTに、本明細書で変更前AGTと称される過去の商業規模の培地の分析に基づいて銅を補充し、多数の小規模研究では、特定の濃度のマンガン及び銅を用いて新しいSUP-AGT3培地を生成した。
【0320】
方法
生存細胞密度(VCD)と生存率を決定する方法
総細胞数/ml、生存細胞/ml(VCD)、及び%生存率は、典型的には、メーカー提供のプロトコル、ソフトウェア、及び試薬を使用し、Beckman CoulterVi-CELL-XR細胞生存率アナライザーで決定される。代替的には、CEDEX自動細胞カウントシステムも使用される。しかし、VCD及び%生存率を決定するための他の方法、例えば、血球計及びトリパンブルー排除を使用することは当業者によく知られることにも注意すべきである。
【0321】
オリゴ糖組成物を決定するための方法
ゴリムマブのオリゴ糖組成は、Chemstation/Chemstoreソフトウェアを備えるAgilent 1100/1200 Series HPLC Systemを使用するHPLC法を用いて決定される。グリカンの相対量を定量するために、まず、N-グリカナーゼ(PNGase F)を用いて、還元及び変性された試験物質からN-結合型オリゴ糖を切断する。放出されたグリカンは、アントラニル酸を使用して標識され、0.45μmナイロンフィルタを使用した濾過によって精製され、蛍光検出を備えた順相陰イオン交換HPLCによって分析される。HPLCクロマトグラムは、試料ル中に存在するN-結合型オリゴ糖を同定及びその相対量を定量するために使用することができるマップとして機能する。グリカンは、オリゴ糖標準との共溶出と、広範な特性評価からの過去の結果に従った保持時間によって同定される。ゴリムマブ参照標準の代表的なHPLCクロマトグラムを
図21に示す。
【0322】
各グリカンの量は、ピーク面積の積分によって定量され、全グリカンピーク面積の百分率(ピーク面積%)として表される。結果は、G0F、G1F、G2F、総中性グリカン及び総荷電グリカンについて報告される。他の中性グリカンは、G0F、G1F、及びG2Fに対応するピークを除く、17~35分間の全ての統合ピークの合計である。全中性グリカンは、G0F、G1F、G2F、及び他の中性グリカンの合計である。全荷電グリカンは、42~55分間で溶出する全てのモノシアリル化グリカンピークと78~90分間で溶出する全てのジシアリル化グリカンピークの合計である。
【0323】
オリゴ糖標準の混合物(G0F、G2F、G2F+N-アセチルノイラミン酸(NANA)、及びG2F+2NANA)を、標識反応の陽性対照として、ピーク同定の標準として、そして、系の適合性の尺度として、並行して分析する。Prozyme、G0F(カタログ番号GKC-004301)、G2F(カタログ番号GKC-024301)、SA1F(カタログ番号GKC-124301)、及びSA2F(カタログ番号GKC-224301)からの再構成オリゴ糖、又は同等のものを参照標準として使用される。方法のブランク陰性対照及び予め標識されたG0F標準も、系の適合性の目的で実行される。有効な結果を得るには、オリゴ糖マッピング手順の実行中に、次のシステム適合性とアッセイ(試験品)の許容基準が適用される。
【0324】
システム適合性基準:
・オリゴ糖標準のG0FピークとG2Fピークの間の分解能(USP)は3.0以上でなければならない。
・オリゴ糖標準のG0Fピークの理論プレート数(接線法)は5000以上でなければならない。
・ゴリムマブ参照標準の総グリカンピーク面積は、事前に標識されたG0Fの主要なグリカンピーク面積の1.5倍以上でなければならない。
・いずれかの参照標準グリカンのピークがスケール外の場合、参照標準はより少ない注入体積で再注入される
・ゴリムマブ参照標準のG0Fピークの保持時間は、オリゴ糖標準のG0F保持時間の0.4分間以内でなければならない。
【0325】
アッセイの許容基準:
・方法ブランクは、ゴリムマブにおいて割り当てられたオリゴ糖ピークと共溶出する検出可能なピークを有してはならない。
・各試験品の総グリカンピーク面積は、事前に標識されたG0F標準の主要なグリカンピーク面積の1.5倍以上でなければならない。
・いずれかの試料のグリカンピークがスケール外の場合、その試料は、事前に標識されたG0F、オリゴ糖標準、方法ブランク、及び通常体積の参照標準と共に、より少ない注入体積で再注入される。
・各試験品のG0Fピークの保持時間は、オリゴ糖標準のG0Fピークの保持時間の0.4分間以内でなければならない。
・アッセイが任意の許容基準を満たさない場合、アッセイは無効にされる
【0326】
誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)
誘導結合プラズマ質量分析(IPC-MS)を使用して、ゴリムマブの様々なバッチを生成するために使用される化学的に規定された培地中の微量金属濃度を十億分率(ppb、μg/リットル)で定量した。簡潔に言うと、この方法は、試料をNexION(登録商標)350X ICP-MS(PerkinElmer)などのICP-MS機器に注入する前に、炭素に富む供給源を消化して二酸化炭素及び水にする酸消化手順からなる。湿式化学消化は、様々な酸及び酸化剤を利用する。好ましい組み合わせには、硝酸(HNO3)、過酸化水素(H2O2)、及び塩酸(HCl)が含まれる。ICP-MS以外の分析方法、例えば、フレーム原子吸光分析(FLAA)、誘導結合プラズマ原子発光分析(ICP-AES)も使用することができる。分析手順、試料調製、及び機器による方法についての一般的な情報は、例えば、EPA method 3050B,「Acid Digestion of Sediments,Sludge,and Soils」,EPA December 1996;EPA memorandum,「use of Hydrochloric Acid(HCL)in digests for ICP-MS analysis」,EPA office for Solid Waste and Emergency Response,July 26,2003;及びUnited States Pharmacopeia(USP)chapter<233>,Elemental Impurities-Proceduresに見出すことができる。
【0327】
以下に示すのは、ICP-MSによって分析される化学的に規定された培地中の金属濃度を決定する際に使用するために開発されたカスタマイズされた消化方法である。本方法は、乾燥培地粉末又は水和培地試料(1gの試料=1mLの水和試料)に適合させることができる。
【0328】
消化方法
・約1gの乾燥試料(±0.5g、重量を0.001g単位まで記録)又は約1mLの溶液試料(±0.5mL、重量を0.001g単位まで記録)を消化容器に添加した(適用可能なスパイク溶液もこの時点で添加する)。
・5.0mLの50%v/vHNO3(硝酸)及び2.5mLの濃H2O2を試料に添加し、次いで、消化容器に、-H2O2をゆっくり添加して試料の泡立ちを避けながら、ポリプロピレン製時計皿で直ちに蓋をする
・試料を95℃(±5℃)で30分間加熱する
・試料を加熱解除し、放冷する
・2.5mLの濃HNO3を添加し、試料を95℃(±5℃)で30分間加熱する。HNO3による試料の酸化を示す褐色の煙霧が生じた場合、試料による褐色の煙霧が出なくなるまで、この工程を何度も繰り返す。褐色の煙霧は、HNO3による完全な酸化の指標である。
・試料を加熱解除し、放冷する
・2.5mLの濃HNO3及び5mLの濃HClを添加し、試料を95℃(±5℃)で2時間加熱する
・試料を加熱解除し、放冷する
・試料の総体積を脱イオン水(DIW)で50mLにし、次いで、試料の分析準備を整える
【0329】
*注記:
-95℃(±5℃)における加熱は全て、還流させながら、沸騰させることなく、試料にポリプロピレン製の時計皿で蓋をした状態で、予熱したホットブロック(例えば、Hotblock(登録商標))において行った。
-消化バイアルを5%/5% v/v HNO3/HCL中に一晩浸漬し、使用前にDIWで3回すすぐ。
-ポリプロピレン製の時計皿を5%/5% v/v HNO3/HCL中に一晩浸漬し、使用前にDIWで3回すすぐ。
-ピペッティングのためのプラスチックチップは、使用前に試薬で3回すすぐ。
-試料を、消化の2週間以内にICP-MSにより分析した。
-この方法は又、例えば、Vulcan Automated Digestion and Work-Up System(Questron Technologies Corp.)を使用して、自動化プロセスに適合させることもできる。
【0330】
試薬及び標準物質
・18.0MΩを超える金属を含まないことが試験された脱イオン水(DIW)
・NIST追跡可能な供給元からの微量金属スパイク標準
・HNO3、試薬グレード以上、金属について試験
・50%HNO3溶液-500mLのDIW及び500mLのHNO3をゆっくりと添加し、溶液を6ヶ月間維持することができる
・濃HCL、試薬グレード以上、金属について試験
・濃縮(30%v/v)H2O2
・全てのDIW、HNO3、及びHCLは、汚染がないことを確認するために定期的に試験される
【0331】
キャピラリー等電点電気泳動
キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)は、全体の電荷又は等電点(pI)に基づいてタンパク質を分離する。この方法は、ゴリムマブの電荷ベースのアイソフォームの分布を監視するために使用される。ゲルベースのIEF手順とは異なり、cIEFは存在する荷電種の定量的測定を提供する。更に、cIEFは、ゲルベースの方法と比較し、分解能、感度、及び再現性が向上する。cIEF手順では、Simponi(ゴリムマブ)の4~6の電荷ベースのアイソフォームがほぼベースラインの分解能で分離されるが、IEFゲル分析では、4~5種のみが部分的分解能で分離される。ゴリムマブの代表的なcIEFエレクトロフェログラムを
図22に示し、4つの主要なピークがC、1、2、及び3と標識され、1つの微小ピークがBと標識される。cIEFピークと負電荷/シアリル化度の減少との一般的な関係を表す図も示される。
【0332】
cIEFアッセイは、Alcottオートサンプラー(GP Instruments,Inc.)など、30℃以下の周囲環境で10.5℃以下の試料温度を維持できるオートサンプラーを備えた市販の画像化cIEFアナライザーで実行される。分析では、外壁ポリイミドコーティング無しの内壁コーティングシリカキャピラリを使用し、カラム全体の検出を可能にする。更に、希リン酸とメチルセルロースの陽極液、水酸化ナトリウムとメチルセルロースの陰極液、及び広範囲(pH3~10)と狭範囲(pH8~10.5)の両性電解質の定義された混合物が使用される。このアッセイでは、試験品と参照標準(RS)の両方をカルボキシペプチダーゼB(CPB)で前処理し、重鎖のC末端リジンを除去して複数のC末端変異体の存在によって生じる曖昧さを排除する。
【0333】
各分析の前に、オートサンプラーの温度設定点を4℃に設定し、オートサンプラーを少なくとも30分間予冷し、実験室の周囲室温を30℃以下に維持する。前処理された試験品とRS、試料バイアル、バイアルインサート、精製水を含むアッセイで使用される試薬、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)(キャピラリー内での集束を最適化する)を含有する親溶液、両性電解質、内部標準のpI 7.6及び9.5マーカ、並びにメチルセルロース(MC)は、試料調製を開始する前に少なくとも30分間氷上に保持される。試料は氷上で調製され、親溶液の添加時間が記録され、TEMEDへの露出が制御される。この添加後180分間以内にアッセイを完了する必要がある。システム適合性対照は1回注入され、試験品及びRSは以下の配列表(表6)に従って2回注入される:
【0334】
【0335】
シリンジポンプによって試料がキャピラリーに注入された後、電界(3kV)がキャピラリー全体に8分間印加され、pH勾配が形成され、ゴリムマブの電荷ベースのアイソフォームが等電点(pI)に従って分離される。キャピラリー内のタンパク質アイソフォームは、キャピラリー全体を280nmで画像化することによって検出され、データは、pI値とA280の関数としてエレクトロフェログラムの形式で表示される。pIの値は、機器ソフトウェアを使用して内部pI標準(pI 7.6及び9.5)と比較することによって割り当てられ、ピーク面積は標準データ取得ソフトウェアを使用してエレクトロフェログラムから決定される。LOQ以上の全てのピークの重複注入による平均pIと平均ピーク面積のパーセンテージ、参照標準と比較したΔpI値、並びにピークC、1、2、及び3の面積パーセントの合計が報告される。
【0336】
ゴリムマブcIEFアイソフォームの特性評価
ゴリムマブの参照cIEFプロファイルは、代表的なエレクトロフェログラムに示されるように、C、1、2、及び3と標識された4つの主要なピークと微小ピークBを含有する(
図22)。ゴリムマブの場合、cIEFプロファイルの変動の主な原因は、重鎖アスパラギン43(HC Asn43)の脱アミド化と異性化である。cIEFの塩基性ピーク3は、脱アミド化されないHC Asn43及び脱アミド化された重鎖イソアスパラギン酸43(HC isoAsp43)を表し、より酸性のピークは、脱アミド化されたHC Asp43及びシアリル化の程度を表す。様々なcIEFピークの予測される同一性を表7に示す。cIEFアッセイをゴリムマブの電荷不均一性の一般的なモニターとして使用し、異なるアッセイを脱アミド化をモニターするための一次アッセイとして使用する。
【0337】
【0338】
逸脱細胞培養プロファイル
細胞培養プロセスの段階2において、500リットル又は1,000リットルのバイオリアクターにおける生成持続期間は、連続60日である。制御された製造プロセスにおいて、バイオリアクターは、1mL当たり30万細胞以上の生存細胞密度(VCD)で接種され、次いで、VCDは、1mL当たり13~1400万細胞まで指数関数的に増加する。この時点で、指数関数的細胞増殖は停止し、その後、より低速の細胞成長が続く。指数関数的増殖からより低速の増殖への移行(
図23の矢印を参照のこと)は、本明細書では「ショルダーリング」と呼ばれる。上記のように、VCD及び培養生存率%は、それぞれ
図23及び
図24に示されるように、逸脱細胞培養バッチにおいてシフトする。
【0339】
VCDシフトを有するバイオリアクターでは、VCDショルダーリングはプロセスの初期に起こった:細胞は8~1300万細胞/mLまで指数関数的に増殖し、次いでプロセスの初期にショルダーリングを開始した。加えて、ほとんどのバイオリアクターにおいて、初期のショルダーリングの後に、VCDプロファイルにおける深いディップが続いた。結果として、1600万細胞/mLの標的VCDは、バイオリアクター産生サイクルの後期、約40~50日目の段階で到達した。プロセスの後期に標的細胞密度に到達した結果として、バイオマス除去は後期に開始し、したがって、培養生存率%は、典型的な過去のバッチよりも生産サイクルの終了時に低かった。したがって、シフトされたバイオリアクターにおける生存率は、バイオリアクタープロセスの終了時に約20~40%のままであった(
図24を参照のこと)。しかしながら、培養生存率%のシフトを示すバイオリアクターはいずれも、終了基準(3日間連続で8%未満の生存率)に達しなかった。
【0340】
加えて、逸脱細胞培養バッチにおけるVCD及び培養生存率%の変化は、産生されたIgGの累積量によって測定される生産性の低下をもたらした(
図34)。
【0341】
逸脱オリゴ糖プロファイル
ゴリムマブは、アスパラギン306の各重鎖の単一部位でN-グリコシル化される。これらのN-結合型オリゴ糖構造は、アスパラギン残基の第一級アミンを介してタンパク質に結合した二分岐オリゴ糖構造のグループのいずれでもかまわないが、ゴリムマブでは、主にガラクトースとシアル酸の不均一性を伴うビアンテンナルコアフコシル化種で構成される。個々のオリゴ糖種は、アシアロ、アガラクトコアフコシル化二分岐グリカンである「G0F」、アシアロ、モノガラクトコアフコシル化二分岐グリカンである「G1F」、及びアシアロ、ジガラクトコアフコシル化二分岐グリカンである「G2F」を含む。ゴリムマブのグリコシル化は、製造の段階9でプロセス内管理として監視され、総中性オリゴ糖、総荷電オリゴ糖、及び個々の中性オリゴ糖種G0F、G1F、及びG2Fの仕様が設定される。ゴリムマブIgGの主要なN-結合型オリゴ糖種のいくつかの概略図を
図25に示す。これらの酵素プロセスにおけるいくつかの二価カチオン(例えば、Mn
2+及びCu
2+)の役割を含む、グリコシル化成熟プロセスにおける酵素いくつかの役割も示される。
【0342】
培養性能変化の影響の調査中に、総中性及び荷電オリゴ糖の変化並びにゴリムマブ分子の個々のオリゴ糖のレベルを評価した。生クロマトグラム及び更なるデータ分析は、逸脱するバッチについての製剤化バルク(FB)が、総中性オリゴ糖及び総荷電オリゴ糖の%についての仕様内であったが、バッチの大部分は、それぞれ総中性オリゴ糖及び総荷電オリゴ糖についての過去の平均よりも明らかに上及び下であったことを示した(
図26)。更に、仕様外である個々の中性オリゴ糖のレベルに有意なシフトがあった。実際、FBの逸脱したバッチの大部分は、G0F、G1F及びG2F種について仕様外へのシフトを示した(
図27)。
【0343】
組換えモノクローナル抗体のオリゴ糖プロファイルの変化は抗体の生物学的機能に大きな影響を与え得るため、オリゴ糖プロファイルの変化の低減は重要である。例えば、生物学的研究では、Fc領域での様々なグリコフォームの分布が、抗体の有効性、安定性、及びエフェクタ機能に大きな影響を与え得ることが示されている(J.Biosci.Bioeng.2014 117(5):639-644;Bio-Process Int.2011,9(6):48-53;Nat.Rev.Immunol.2010,10(5):345-352)。特に、アフコシル化(J.Mol.Biol.368:767-779)及びガラクトシル化(Biotechnol.Prog.21:1644-1652)は、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)と補体依存性細胞傷害(CDC)で大きな役割を果たすことができ、これらは、抗体が免疫機能を介して標的細胞の死滅を仲介する2つの重要なメカニズムである。更に、高いマンノースレベルは、抗体のクリアランスを増加させることによって有効性に悪影響を与え得ることが示されており(Glycobiology.2011,21(7):949-959)、シアル酸含有量は抗炎症活性に影響を与え得る(Antibodies.2013 2(3):392-414)。オリゴ糖プロファイルの変化によるこれらの生物学的影響の結果として、規制当局は、一貫した安全で有効な製品のロット放出仕様を確実に順守するために、抗体のグリコシル化パターンを制御する必要がある。
【0344】
問題の特定
厳密かつ包括的な調査の後、化学的に規定された培地における変更が、オリゴ糖プロファイル、VCD、生存率%及び生産性におけるシフトの根本的原因であると結論付けられた。この化学的に規定された培地は、先進造粒技術(AGT)によって生成される粉末として得られ、本明細書では概してAGTと呼ばれる。より具体的には、根本原因調査は、AGT中の90を超える成分のうちの1つである、FeCl3×6H20(塩化第二鉄)の変更が、オリゴ糖プロファイル、VCD生存率%及び生産性のシフトの決定的な根本原因であることを実証した。塩化第二鉄の供給業者が、より高純度の鉄塩を生成するという上述の意図でその製造方法を変更したことが決定された。更に、調査により、この変更により、塩化第二鉄中に測定されない不純物として存在するマンガン、クロム及び銅のレベルがより低い微量レベルとなることが明らかになった。マンガン、クロム及び銅は、測定された成分としてAGT配合物に添加されるが、塩化第二鉄と偶発的に関連する量は考慮されなかった。したがって、これらの状況は、AGT中の全マンガン、クロム、及び銅レベルの低減をもたらした。
【0345】
補充されたAGT培地による改善
SUP-AGTの開発
予備的な小規模研究は、マンガン及びクロムを培地に補充することが、オリゴ糖プロファイルを過去の基準に向かってシフトさせ得ることを示した(データは示さず)。これらの予備的な小規模研究に基づいて、AGTにマンガン及びクロムを補充することによって、マンガン及びクロムの過去のレベルを回復させてゴリムマブの商業的バッチを製造するための変更を実施した。培地に補充するために使用されるマンガン及びクロム塩は、すでに既存の培地配合の一部であったが、より低い濃度で添加されたので、指定限界のMn2+(マンガン)及びクロムを含有する化学的に規定された培地を生成するために、より多くのマンガン及びクロム塩を培地に補充することが問題であった。
【0346】
マンガン及びクロムを補充したこのAGT培地は、本明細書ではSUP-AGTと称される。SUP-AGT培地粉末を大規模に生成し、続いて、500リットル及び1000リットルのバイオリアクター中の異なる製造現場で商業規模でゴリムマブを生成するために使用した。SUP-AGT培地を使用して生成されたゴリムマブのバッチの評価は、SUP-AGTがVCD、生存率%、及び生産性を完全に回復させなかったが、過去のオリゴ糖プロファイル、例えば、G0F、G1F、G2Fのレベルを回復させるのに有効であったことを示した(データは示さず)。
【0347】
G0F、G1F、G2Fのレベルに対する効果は、β-1,4ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalTI)活性、補因子Mn
2+、及びグリコシル化との確立された関係を示す現在の文献と一致する(
図25、及び例えば、Biotechnol Bioeng.2007 Feb 15;96(3):538-49及びCurr Drug Targets.2008 Apr;9(4):292-309を参照のこと)。GalTIは、トランスゴルジ膜に位置する膜結合酵素である。GalTIは、グリコシル化カスケード内で機能するため、補因子としてのMn
2+によって活性化される。このカスケードにおいて、GalTIは、コアオリゴ糖構造G0Fにガラクトース残基を付加する。反応生成物は、G0FのN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)末端に1つのガラクトース残基が付加された場合はG1Fであり、第2のガラクトース残基が付加された場合はG2Fである。SUP-AGTを使用した荷電オリゴ糖基の増加は、観察されたG0Fの低減並びにG1F及びG2Fの増加と一致し、後者の2つは、SA1及びSA2オリゴ糖の形成のための主な前駆体である。このシアリル化反応は、トランスゴルジにも位置する膜結合酵素であるβ-ガラクトシドα-2,6-シアリルトランスフェラーゼ(ST6GalII)(
図25)によって触媒される。Mn
2+は、G1F及びG2F形成の主な補因子のうちの1つであり、G1F及びG2F形成は、負に荷電したSA1及びSA2形成の主な前駆体であるので、Mn
2+の濃度の減少は、シアリル化及び荷電種の程度に対して付随的な効果を有し得る。この研究からの知見は、塩化第二鉄のより純粋な形態に関連する変更に起因するAGT中のMn
2+濃度の変更が、オリゴ糖性能の変化/傾向の根本的原因であったという仮説を支持する。
【0348】
SUP-AGT3の開発
ゴリムマブオリゴ糖プロファイルのシフトは、より高濃度のマンガン及びクロムを含有するSUP-AGT培地への変更を実施することによって首尾よく改善されたが、SUP-AGTへの変更は、VCD 生存率%及び生産性を過去の傾向の範囲内に完全に回復させなかった。調査中の分析は、低減されたCu2+(銅)レベルが、VCD及び生存率%におけるシフトの最も可能性の高い根本原因であることを示したので、SUP-AGT培地に銅を補充する効果を評価するために、縮小スケールの研究を設計した。
【0349】
銅を含有する微量元素溶液を使用して、0.3ppb(0.3μg/リットル)、0.75ppb(0.75μg/リットル)、及び1.5ppb(1.5μg/リットル)のレベルで添加された銅でスパイクされたSUP-AGTを用いた一連の小規模研究実験を支持した。銅を補充していない対照も含まれた。標準非補充AGT培地の目標銅濃度は0.83ppbであった。縮小スケール研究は、用量依存的効果を示し、銅濃度の増加は、VCD、生存率%、及び生産性の増加と関連した(データは示さず)。縮小スケール研究の結果も過去の標準と比較し、より高濃度の銅はVCD及び生存率(%)を改善する傾向があるが、0.3ug/リットルの銅によるSUP-AGTの補充は過去の平均に最も近い性能を示したことが決定された。
【0350】
オリゴ糖プロファイルに対する銅濃度の効果も小規模研究で評価し、これは、銅濃度が生成物グリコフォームプロファイルに対して有意な用量依存的効果を有し、濃度の増加がG0F及び総中性のレベルの増加(
図28)並びにG1F及びG2Fのレベルの低下と関連することを示した(データは示さず)。
図25に示されるように、銅は、β-1-4ガラクトシルトランスフェラーゼ活性に対して阻害効果を有し、したがって、グリコシル化に対して阻害効果を有し得ることが知られている(例えば、J Biochem Mol Biol.2002 May 31;35(3):330-6を参照のこと)。これは、濃度の増加に伴ってグリコシル化を増強し、G0F及び総中性のレベルの低下をもたらすことが実証されたマンガンの効果の反対であることに留意されたい。したがって、銅とマンガンの両方の濃度は、ゴリムマブのオリゴ糖プロファイルが維持されることを確実にする範囲内で制御する必要があるが、最適な細胞成長、生存率、及び生産性を支持するのに十分な銅でも制御する必要があると結論付けられた。
【0351】
更なる小規模研究及びマンガンと銅の両方の濃度を変更させる実験からの結果の重回帰分析を用いて、G0Fにおける変動及び総中性物における変動が、X変数としてマンガン及び銅を用いる回帰モデルによって説明され得ることが決定された。次いで、これらのデータを使用して、生成されたゴリムマブが仕様内のオリゴ糖プロファイルを有することを確実にし、又、VCD、生存率%、及び生産性が過去の基準内であることを確実にするマンガン及び銅の最適濃度を見出した。化学的に規定された培地についての最適微量金属濃度は、≧10.0μg/リットル~≦35.0μg/リットルのMn2+(マンガン)及び≧1.0μg/リットル~≦1.8μg/リットルのCu2+(銅)であると決定された。
【0352】
培地の補充についての分析が完了したので、新しいバージョンのAGT培地が製造業者によって開発された。以前のバージョンの培地と比較して、新しい培地の製造プロセスは、ポリアミン及びエタノールアミン構成物の添加の順序に関して最適化され、貯蔵寿命安定性を改善する所望の効果を有することが報告された。この新しい培地は、本明細書ではAGTバージョン3(AGT3)と呼ばれ、Thermo Fisher Inc.によって次世代の培地とみなされている。しかしながら、この新しい培地は、塩化第二鉄の供給源に関して同じ特性を有する。その結果、これには、微量金属であるMn2+(マンガン)及び銅(Cu2+)の濃度が低下するという同様の問題もある。したがって、SUP-AGT3は、特定かつ制御された濃度のMn2+(マンガン)及びCu2+(銅)を含有するように新しいAGT3培地を補充することによって作成した。
【0353】
マンガン及び銅のいくつかの異なる供給源を使用して、特定の限界を達成することができる。本発明での使用に適したマンガンの供給源としては、例えば、MnCl2、MnSO4、MnF2及びMnI2のうちの1つ又は2つ以上が挙げられる。本発明での使用に適した銅の供給源としては、例えば、CuSO4、CuCl2、及びCu(OAc)2のうちの1つ又は2つ以上が挙げられる。マンガン及び銅のこれらの供給源は、無水形態又は水和形態(例えば、二水和物、四水和物、又は五水和物形態)であり得る。マンガンの好ましい供給源としては、MnCl2(塩化マンガン)とMnSO4(硫酸マンガン)の組合せが挙げられる。好ましい銅の供給源は、CuSO4硫酸銅である。AGT3中のサプリメントとしてMnCl2、MnSO4、及びCuSO4を使用する利点は、これらの成分がすでに低濃度でAGT3製剤の一部であり、したがって、新しい成分又は異なる成分がSUP-AGT3製剤に添加されなかったことである。マンガン及び銅についての特定かつ制御された限界は、過去のデータ、及び多数の小規模研究に基づいて確立された。Mn2+(マンガン)については、特定かつ制御された制御された限界値は≧10.0μg/リットル~≦35.0μg/リットルであり、Cu2+(銅)については、限界値は≧1.0μg/リットル~≦1.8μg/リットルである。
【0354】
マンガン、クロム、及び銅レベルの評価
誘導結合プラズマ質量分析アッセイ(ICP-MS)を使用して、SUP-AGT3、塩化第二鉄の変更前の過去の「変更前」AGT培地、ゴリムマブの逸脱バッチの産生に使用した「変更後」AGT培地、及びSUP-AGTを含む培地の異なるバッチにおけるマンガン、クロム、及び銅レベルを評価した。培地の異なるバッチについてのマンガン、クロム、及び銅レベルについての微量金属濃度についてのデータを、それぞれ
図29、
図30、及び
図31に示す。培地の個々のバッチが、大規模でのゴリムマブの産生のために培地の1つ又は2つ以上の他のバッチと組み合わされることに留意されたい。これは、培地のバッチ間変動のいくらかを均質化する一般的な効果を有するが、濃度が制御されない場合、マンガン及び銅の仕様外であるより大きな変動を補正しない可能性がある。
【0355】
全てのSUP-AGT3バッチ中のマンガンの濃度は、全てのSUP-AGT3バッチに適用された≧10.0μg/L~≦35.0μg/LのMn
2+(マンガン)の特定かつ制御された限界内に十分にあり、過去の変更前AGTバッチの範囲内でもあった(
図29)。したがって、SUP-AGT3中のマンガン濃度は、十分に制御されており、過去の変更前AGTの範囲内であると結論付けられた。
【0356】
SUP-AGT3培地の2つの初期バッチを除いて、銅の濃度も又、≧1.0μg/L~≦1.8μg/LのCu
2+(銅)の特定かつ制御された限界内に十分にあった(
図31)。SUP-AGT3培地の2つの影響を受けたバッチについての仕様外の状況は、これらのバッチをSUP-AGT3培地の他の異なるバッチと混合して仕様内であるゴリムマブの製造に使用するための培地を得ることによって容易に改善された。したがって、SUP-AGT3の銅濃度は十分に制御されていると結論付けられた。仕様外であった過去の変更前AGT培地の2つのバッチは、ルーチンの問題として培地の他のバッチと組み合わされ、したがって、組み合わされたバッチも又、過去の変更前AGTを用いたゴリムマブの生成中に仕様内であったことに留意されたい。又、変更後AGTバッチの多くは、銅についてのアッセイの検出限界(1μg/L)未満の値を有し、これらの値は、
図31においてμg/Lとしてグラフで表されていることに留意されたい。
【0357】
SUP-AGT3を用いた商業的バッチ製造
SUP-AGT3を仕様したオリゴ糖プロファイル
微量金属分析についての陽性結果に基づいて、SUP-AGT3を、500リットル又は1000リットルのバイオリアクターを使用して、異なる生成施設でゴリムマブの商業的製造プロセスに導入した。段階1(前培養及びシードバイオリアクター)から段階2(生成ババイオリアクタープロセス)までの全ての細胞培養工程にこの培地を使用し、異なるバイオリアクターに対して生成されたDPCを使用して、3つの異なるバッチのゴリムマブを生成した。
図26及び
図27に示されるように(各図の最後の3つのデータ点)、SUP-AGT3を用いて生成されたゴリムマブは、≧82.0%~≦94.4%の総中性オリゴ糖種、≧5.6%~≦18.0%の総荷電オリゴ糖種、並びに≧25.6%~≦42.2%のG0F、≧31.2%~≦43.6%のG1F、及び≧5.6%~≦14.2%のG2Fの個々の中性オリゴ糖種を含む。
【0358】
段階2の細胞培養プロセスの性能及び生産性
SUP-AGT3バッチの生成産バイオリアクター性能を評価するために、異なるSUP-AGT3バイオリアクターバッチのVCD、生存率%、及び累積IgGレベルを、変更前AGTバッチの平均及び変更後AGTバッチの平均と比較した。データは、SUP-AGT3を用いた生成が、VCD及び生存率%を過去の平均近くまで回復させたことを示す(それぞれ、
図32及び
図33)。更に、SUP-AGT3によるゴリムマブの生成は、累積IgGによって測定される全体的な生成能を回復させた(
図34)。
【0359】
結論
したがって、上記に記載されているように、製造管理戦略は、オリゴ糖プロファイルに関してゴリムマブの一貫した原薬(DS)及び製剤(DP)特性を維持するために、又、大規模生産中の生存細胞密度(VCD)、生存率%、及び生産性を制御するために開発された。本発明の方法によって生成されるDS又はDPは、配列番号36を含む重鎖(HC)及び配列番号37を含む軽鎖(LC)を有する哺乳動物抗TNF抗体を含み、抗TNF抗体のオリゴ糖プロファイルは、≧82.0%~≦94.4%の総中性オリゴ糖種、≧5.6%~≦18.0%の総荷電オリゴ糖種、及び≧25.6%~≦42.2%のG0F、≧31.2%~≦43.6%のG1F、及び≧5.6%~≦14.2%のG2Fの個々の中性オリゴ糖種を含む。≧10.0μg/リットル~≦35.0μg/リットルのMn2+(マンガン)及び≧1.0μg/リットル~≦1.8μg/リットルのCu2+(銅)からなる微量金属濃度を含有するように特定かつ制御された化学的に規定された培地を使用することによって、DS及びDPのオリゴ糖プロファイルを制御する。更に、製造管理戦略は又、過去の基準と比較して、ゴリムマブ生成中の細胞の生存細胞濃度(VCD)、生存率%、及び生産性を維持する。HPLC法を使用して、ゴリムマブオリゴ糖プロファイルを決定し、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)を使用して、培地のマンガン及び銅の濃度を測定した。
【配列表】
【国際調査報告】