(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】二次電池の充電方法及び充電装置、コンピュータ記憶媒体、及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20240709BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20240709BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240709BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20240709BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240709BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H02J7/02 B
H02J7/04 F
H02J7/00 Y
H02J7/10 B
H02J7/00 B
H01M10/48 P
H01M10/44 P
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501554
(86)(22)【出願日】2021-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-01-11
(86)【国際出願番号】 CN2021132512
(87)【国際公開番号】W WO2023092301
(87)【国際公開日】2023-06-01
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】▲鄒▼▲啓▼凡
(72)【発明者】
【氏名】王▲細▼▲輝▼
(72)【発明者】
【氏名】▲許▼文竹
(72)【発明者】
【氏名】葛▲銷▼明
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA03
5G503CA08
5G503CA10
5G503CA12
5G503CB06
5G503CB11
5G503CC02
5G503DA07
5G503GD03
5G503GD06
5H030AA10
5H030AS08
5H030BB01
5H030BB21
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
本願は二次電池の充電方法及び充電装置、コンピュータ記憶媒体及び電子機器を開示し、前記充電方法は以下のステップを含む。電池管理ユニットは充電源に第一充電電力を含む第一充電情報を送信し、充電源は第一充電電力で二次電池に定電力充電を行い、電池状態パラメータが第一所定値に達すると、電池管理ユニットは充電源に複数のパルス放電情報を送信し、各パルス放電情報は放電電力及び放電時間を含み、充電源は複数のパルス放電情報における放電電力及び放電時間に基づいて、二次電池に複数回の定電力パルス放電を行う。二次電池の分極を改善し、二次電池のサイクル耐用年数を向上させ、同時に急速充電の時間ニーズを保証することができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の充電方法であって、
電池管理ユニット(Battery management System、BMS)は充電源に第一充電電力を含む第一充電情報を送信し、
前記充電源は前記第一充電電力に基づいて、前記二次電池に定電力充電を行うためのものであり、
電池状態パラメータが第一所定値に達する時、前記BMSは前記充電源に複数のパルス放電情報を送信し、各前記パルス放電情報は放電電力及び放電時間を含み、
前記充電源は前記複数のパルス放電情報における前記放電電力及び放電時間に基づいて、前記二次電池に複数回の定電力パルス放電を行う
ことを特徴とする二次電池の充電方法。
【請求項2】
前記電池状態パラメータは前記二次電池の充電状態(State of Charge、SOC)を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の二次電池の充電方法。
【請求項3】
前記第一所定値は、50%SOC以上である
ことを特徴とする請求項2に記載の二次電池の充電方法。
【請求項4】
前記電池状態パラメータが第一所定値に達する場合、前記BMSは前記充電源に第一放電電力及び第一放電時間を含む第一パルス放電情報を送信し、
前記充電源は前記第一パルス放電情報に基づいて前記二次電池に第一定電力パルス放電を行い、
前記第一放電時間が経過した後、前記BMSは前記充電源に第二放電電力及び第二放電時間を含む第二パルス放電情報を送信し、
前記充電源は前記第二パルス放電情報に基づいて前記二次電池に第二定電力パルス放電を行う
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の二次電池の充電方法。
【請求項5】
前記第一放電電力は前記第一充電電力より大きく、前記第二放電電力は前記第一充電電力より小さい
ことを特徴とする請求項4に記載の二次電池の充電方法。
【請求項6】
前記第一放電時間は1~20秒であり、
前記第二放電時間は1~20秒である
ことを特徴とする請求項4に記載の二次電池の充電方法。
【請求項7】
前記複数回の定電力パルス放電の後、前記充電源は前記BMSから送信された第二充電情報に基づいて、前記第一充電電力で前記二次電池に定電力充電を再び行い、
前記二次電池の電池状態パラメータが第二所定値に達する時、前記充電源は前記BMSから送信された前記複数のパルス放電情報に基づいて、前記二次電池に複数回の定電力パルス放電を再び行う
ことを特徴とする請求項1に記載の二次電池の充電方法。
【請求項8】
前記第二所定値はSOCが5%増加することである
ことを特徴とする請求項7に記載の二次電池の充電方法。
【請求項9】
前記充電源は前記BMSが複数回送信した前記第二充電情報及び前記複数のパルス放電情報に基づいて、前記二次電池の電圧が所定値に達するまで、前記定電力充電及び前記複数回の定電力パルス放電を繰り返す
ことを特徴とする請求項7に記載の二次電池の充電方法。
【請求項10】
二次電池の充電装置であって、
BMSから送信された充電情報に基づいて、第一充電電力で前記二次電池に定電力充電を行う充電ユニットと、
BMSから送信されたパルス放電情報に基づいて、前記二次電池に定電力パルス放電を行うパルス放電ユニットと、を含み、
ここで、電池状態パラメータが第一所定値に達する時、前記パルス放電ユニットはBMSから送信された複数のパルス放電情報に基づいて前記二次電池に複数回の定電力パルス放電を行う
ことを特徴とする二次電池の充電装置。
【請求項11】
前記パルス放電ユニットが前記複数回の定電力パルス放電を行った後、前記充電ユニットは前記第一充電電力で前記二次電池に定電力充電を再び行い、
前記二次電池の電池状態パラメータが第二所定値に達する時、前記パルス放電ユニットは前記複数回の定電力パルス放電を再び行う
ことを特徴とする請求項10に記載の二次電池の充電装置。
【請求項12】
前記パルス放電ユニットと前記充電ユニットは、前記二次電池の電圧が所定値に達するまで、前記複数回の定電力パルス放電と前記定電力充電を交互に行う
ことを特徴とする請求項11に記載の二次電池の充電装置。
【請求項13】
コンピュータ読取可能な記憶媒体であって、
前記コンピュータ読取可能な記憶媒体にコンピュータ実行可能な指令が記憶され、前記コンピュータ実行可能な指令がプロセッサにより実行される場合、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法を実行する
ことを特徴とするコンピュータ読取可能な記憶媒体。
【請求項14】
電子機器であって、
コンピュータ指令を記憶するメモリと、
前記コンピュータ指令を運行し、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法を実行するプロセッサと、を含む
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は電池の分野に関し、具体的には二次電池の充電方法及び充電装置、コンピュータ記憶媒体及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車はその高環境保護性、低騒音、低使用コストなどの利点のため、巨大な市場将来性を有しかつ省エネルギー排出削減を効果的に促進することができ、社会の発展及び進歩に役立ち、電池技術は電気自動車の核心技術である。
【0003】
リチウムイオン電池は充電過程において分極が発生し、分極の累積がリチウムイオン電池の耐用年数を短縮する。特に広く使用される急速充電技術は充電時間を大幅に短縮すると同時に、リチウムイオン電池の分極を増加させ、リチウムイオン電池の耐用年数の減衰を加速する。
【発明の概要】
【0004】
本願の実施例は二次電池の充電方法及び充電装置、コンピュータ記憶媒体及び電子機器を提供し、二次電池の分極を低減し、二次電池の耐用年数を向上させることができる。
【0005】
第一態様において、本願は二次電池の充電方法を提供し、以下のステップを含み、
電池管理ユニット(Battery management System、BMS)は充電源に第一充電電力を含む第一充電情報を送信し、
前記充電源は前記第一充電電力に基づいて、前記二次電池に定電力充電を行うためのものであり、
電池状態パラメータが第一所定値に達する場合、前記BMSは前記充電源に複数のパルス放電情報を送信し、各前記パルス放電情報は放電電力及び放電時間を含み、
前記充電源は前記複数のパルス放電情報における前記放電電力及び放電時間に基づいて、前記二次電池に複数回の定電力パルス放電を行う。
【0006】
本願の実施例の技術的解決手段において、充電源は二次電池に定電力充電を行い、二次電池の電池状態パラメータが第一所定値に達する時、充電源は二次電池に複数回の定電力パルス放電を行う。
【0007】
定電力充電を行うことにより充電源の出力電力を定格電力に達させ、充電効率を向上させ、容量浪費を回避し、急速充電を実現することができる。かつ、電池状態パラメータが第一所定値に達する時、複数回のパルス放電を行う。定電力充電過程に複数回のパルス定電力放電ステップを加えるため、二次電池の分極を減少させ、二次電池のサイクル耐用年数を改善することができる。
【0008】
いくつかの実施例において、前記電池状態パラメータは前記二次電池の充電状態(State of Charge、SOC)を含む。
【0009】
以上の実施例において、SOCの値に基づいて、二次電池に定電力パルス放電を開始するか否かを決定し、すなわち、SOCが第一所定値に達する時、充電源は二次電池に複数回の定電力パルス放電を行う。
【0010】
いくつかの実施例において、前記第一所定値は50%SOC以上である。
【0011】
充電状態SOCが50%以上に達する条件で二次電池に複数回の定電力パルス放電を行うと、二次電池の分極を効果的に低減することができ、充電時間を短縮し、急速充電を実現することもできる。
【0012】
いくつかの実施例において、前記電池状態パラメータが第一所定値に達する場合、前記BMSは前記充電源に第一放電電力及び第一放電時間を含む第一パルス放電情報を送信し、前記充電源は前記第一パルス放電情報に基づいて前記二次電池に第一定電力パルス放電を行い、前記第一放電時間が経過した後、前記BMSは前記充電源に第二放電電力及び第二放電時間を含む第二パルス放電情報を送信し、前記充電源は前記第二パルス放電情報に基づいて前記二次電池に第二定電力パルス放電を行う。
【0013】
以上の実施例において、充電源は二次電池に二回のパルス放電を行い、これは電池分極を改善することができるだけでなく、急速充電のニーズを満たすことができる。
【0014】
いくつかの実施例において、前記第一放電電力は前記第一充電電力よりも大きく、前記第二放電電力は前記第一充電電力よりも小さい。
【0015】
第一放電電力は第一充電電力より大きく、すなわち、第一定電力パルス放電は大電力放電である。定電力充電後に大電力放電を行うと分極を急速に低減することができる。第二放電電力は第一充電電力より小さく、すなわち、第二定電力パルス放電は小電力放電である。定電力充電後に小電力放電を行うと静置後の陽極電位を改善することができ、それにより分極を改善する。
【0016】
いくつかの実施例において、前記第一放電時間は1~20秒であり、前記第二放電時間は1~20秒である。
【0017】
パルス放電時間は好ましくは1~20秒であり、電池分極を改善することができるだけでなく、急速充電のニーズを満たすことができる。
【0018】
いくつかの実施例において、前記複数回のパルス定電力放電の後、前記充電源は前記BMSから送信された第二充電情報に基づいて、前記第一充電電力で前記二次電池に定電力充電を再び行い、前記二次電池の電池状態パラメータが第二所定値に達する時、前記充電源は前記BMSから送信された前記複数のパルス放電情報に基づいて、前記二次電池に複数回の定電力パルス放電を再び行う。
【0019】
充電源は二次電池に定電力充電及び複数回のパルス定電力放電を行った後、充電源は二次電池に定電力充電(二回目の定電力充電)を再び行い、電池状態パラメータが第二所定値に達した後、充電源は前記二次電池に複数回の定電力パルス放電を再び行う。二次電池に定電力充電及び複数回の定電力パルス放電を行った後、二回目の定電力充電、及び定電力パルス放電を再び行うことにより、二次電池が充電し続ける過程において、パルス放電により分極を低減し、二次電池のサイクル耐用年数を改善することができる。
【0020】
いくつかの実施例において、前記第二所定値はSOCが5%増加することである。
【0021】
充電源は二次電池に再び定電力充電を行い、SOCが5%増加するたびに、再びパルス放電を複数回実行し、それにより充電を継続する過程において、パルス放電により分極を改善する。
【0022】
いくつかの実施例において、前記充電源は前記BMSが複数回送信した前記第二充電情報及び前記複数のパルス放電情報に基づいて、前記二次電池の電圧が所定値に達するまで、前記定電力充電及び前記複数回のパルス定電力放電を繰り返す。
【0023】
定電力充電を繰り返すことにより、SOCを5%増加させ、その後に複数回のパルス放電を実行し、それにより分極を抑制する状態で定電力充電過程を継続し、二次電池のサイクル耐用年数を改善することができる。
【0024】
第二態様において、本願は二次電池の充電装置を提供し、BMSから送信された充電情報に基づいて、第一充電電力で前記二次電池に定電力充電を行う充電ユニットと、BMSから送信されたパルス放電情報に基づいて、前記二次電池に定電力パルス放電を行うパルス放電ユニットと、を含み、ここで、電池状態パラメータが第一所定値に達すると、前記パルス放電ユニットがBMSから送信された複数のパルス放電情報に基づいて前記二次電池に複数回の定電力パルス放電を行う。
【0025】
いくつかの実施例において、前記パルス放電ユニットが前記複数回のパルス放電を行った後、前記充電ユニットは前記第一充電電力で前記二次電池に定電力充電を再び行い、前記二次電池の電池状態パラメータが第二所定値に達する時、前記パルス放電ユニットは前記複数回の定電力パルス放電を再び行う。
【0026】
いくつかの実施例において、前記パルス放電ユニットと前記充電ユニットは前記二次電池の電圧が所定値に達するまで、前記複数回のパルス放電と前記定電力充電を交互に行う。
【0027】
第三態様において、本願はコンピュータ読取可能な記憶媒体を提供し、前記コンピュータ読取可能な記憶媒体にコンピュータ実行可能な指令が記憶され、前記コンピュータ実行可能な指令はプロセッサによって実行される場合、上記実施例における二次電池の充電方法を実行する。
【0028】
第四態様において、本願は電子機器を提供し、コンピュータ指令を記憶するメモリと、前記コンピュータ指令を運行し、上記実施例における二次電池の充電方法を実行するプロセッサと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
以下に図面を参照して本願の実施例の技術的解決手段を説明する。以下の図面は単に好ましい実施形態を示すためのものであり、本願を限定するものではない。また、全ての図面において、同じ部材を同じ図面符号で示す。
【0030】
図1は本願のいくつかの実施例の電気装置及び充電装置の概略図である。
図2は本願のいくつかの実施例の充電システムの概略図である。
図3は本願のいくつかの実施例の二次電池の充電方法のフローチャートである。
図4は本願のいくつかの実施例の電池充電方法の充電電力の波形図である。
図5は本願の二次電池の充電方法の一つの実施例のフローチャートである。
図6は本願の他の実施例の電池充電方法の充電電力の波形図である。
図7は本願の二次電池の充電方法の別の実施例のフローチャートである。
図8は定電力で充電した後に異なる放電電力でパルス放電を行う時に、陽極の瞬時電位を改善する実験結果である。
図9は定電力で充電した後に異なる放電時間でパルス放電を行う時に、陽極の瞬時電位を改善する実験結果である。
図10は定電力で充電した後、異なる放電電力でパルス放電を行い、次に電池121を静置した後に陽極電位を改善する実験結果である。
図11は定電力で充電した後、他の異なる放電電力でパルス放電を行い、次に電池121を静置した後に陽極電位を改善する実験結果である。
図12は本願の実施例及び一部の比較例の定電力サイクル曲線の実験結果である。
図13は本願の一部の比較例の定電力サイクル曲線の実験結果である。
図14は本願の充電装置20の構成図である。
図15は本願の電子機器の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に図面を参照して本願の技術的解決手段の実施例を詳細に説明する。以下の実施例は本願の技術的解決手段を明確に説明するためのものに過ぎず、これにより本願の保護範囲を限定するものではない。
【0032】
別途の定義がない限り、本明細書に使用される全ての技術及び科学用語は当業者に一般的に理解される意味と同じである。本明細書に使用される用語は具体的な実施例を説明するために用いられるだけであり、本願を限定するものではない。本願の明細書及び特許請求の範囲と上記図面の説明における用語「含む」及び「有する」とそれらの任意の変形は、非排他的な「含む」をカバーすることを意図する。
【0033】
本願の実施例の説明において、技術用語「第一」、「第二」等は異なる対象を区別するために用いられるだけであり、相対的な重要性を指示するか又は暗示するか、或いは指示された技術的特徴の数量、特定の順序又は主従関係を暗示的に示すと理解されるべきではない。
【0034】
明細書に記載された各実施例は互いに排他的ではなく、当業者は本発明の技術的思想及び技術常識に基づいて、各実施例を組み合わせることができる。
【0035】
本願の実施例の説明において、用語「及び/又は」は関連対象を説明する関連関係だけであり、三種類の関係が存在してもよいことを示し、例えばA及び/又はBは、Aが単独で存在し、同時にA及びBが存在し、Bが単独で存在するという三種類の状況を示す。また、本明細書における文字「/」は、一般的に前後関連対象が「又は」の関係であることを示す。
【0036】
本願の実施例の説明において、用語「複数」は二つ以上(二つを含む)を指し、「複数組」は二組以上(二組を含む)を指し、「複数枚」は二枚以上(二枚を含む)を指す。
【0037】
本願の実施例の説明において、別途の明確な規定及び限定がない限り、「取り付け」、「連接」、「接続」、「固定」などの用語を広義に理解すべきであり、例えば、固定接続であってもよく、取り外し可能な接続であってもよく、又は一体であってもよく、機械的な接続であってもよく、電気的な接続であってもよく、直接接続であってもよく、中間媒体を介して間接的に接続されてもよく、二つの素子内部の連通又は二つの素子の相互作用関係であってもよい。当業者にとって、具体的な状況に応じて上記用語の本願の実施例における具体的な意味を理解することができる。
【0038】
動力電池は電気装置に動力源を提供する電池であり、動力電池は様々な二次電池であってもよい。二次電池は充電電池又は蓄電池とも呼ばれ、電池が放電した後に充電の方式で活物質を活性化させて使用し続けることができる電池を指す。例えば、動力電池はリチウムイオン電池、リチウム金属電池、鉛蓄電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウム硫黄電池、リチウム空気電池又はナトリウムイオン電池等の二次電池であってもよく、本願の実施例において具体的に限定されない。電池規模から言えば、本願の実施例における動力電池はセル/電池セルであってもよく、電池モジュール又は電池パックであってもよく、本願の実施例において具体的に限定されない。電気装置は車両、船舶、航空機等であってもよく、本願の実施例はこれに限定されない。動力電池の電池管理システム(Battery management System、BMS)は動力電池の使用安全を保護する制御システムであり、充放電管理、高圧制御、電池保護、電池データ収集、電池状態評価などの機能を実施する。充電杭は、充電器、又は充電源とも呼ばれ、動力電池を充電する装置である。充電杭はBMSの充電ニーズに応じて充電電力を出力することにより、動力電池を充電することができる。例えば、充電杭はBMSから送信された充電電圧、充電電流、充電時間に応じて電圧及び電流を出力し、充電を行うことができる。
【0039】
充電過程において、一般的に充電杭による持続的な充電方式を採用して電池を充電する。電池を持続的に充電する時、充電電流が電池を流れることにより、電池電極の電位が平衡電極電位からずれ、すなわち、電極分極が発生する。電極分極は電池性能を低下させ、サイクル耐用年数を大幅に短縮し、電池の充電容量を低下させる。
【0040】
従来の技術において、一般的に使用される分極を減少させる充電方法は定電流定電圧の充電方式であり、すなわち定電流充電の後、定電圧充電過程を増加させ、小さい電流で充電し、分極を減少させる。該方法はリチウムイオン電池の充電過程に広く応用される。
【0041】
例えば、定電流定電圧充電において、定電流充電の後、終止電圧に近づく時に小電流の定電圧充電に変更する。具体的には例えば、800mA.h容量の電池であって、その終止充電の電圧は4.2Vである。該電池は800mA(充電率が1Cである)で定電流充電し、開始時に電池電圧は大きな勾配で上昇する。電池電圧が4.2Vに近い場合、4.2Vの定電圧充電に変更し、リチウム電池の電流が徐々に低下し、電圧の変化が大きくない。充電電流が1/10C(約80mA)に低下するまで、満充電に近いと考えられ、充電を終了することができる。
【0042】
もう一つの分極を低減する充電方法は定電流充電過程において負パルス電流を増加させることである。例えば、一定の充電電流で電池に長時間の充電を行い、静置を経て、さらに一定の放電電流で電池に短時間放電を行い、その後に定電流充電及び定電流放電を繰り返し、電池電圧が充電カットオフ電圧に達するまで停止する。該方式は電池分極の蓄積を効果的に減少させ、電池の発熱を低下させ、充電速度を向上させることができる。
【0043】
定電流定電圧充電又は定電流過程で負パルス電流を増加させる充電方法は分極を減少させることに有効であるが、充電器の出力電力が定格電力に達しないことをもたらし、容量の浪費をもたらし、充電杭の充電効率の向上に不利である。かつ、多くの場合に定電流定電圧の充電方法を使用することができず、例えば、電網の周波数変調、ピーク調整などである。
【0044】
定電力充電、即ち、充電杭は一定の定出力電力を維持して電池を充電し、高い充電効率を保証することができ、急速充電に役立ち、しかし、定電力充電は大きな電極分極を生成し、かつ定電圧充電又は定電流パルス放電を増加させることにより分極を減少させることができない。
【0045】
一方、電気自動車等の電気装置が徐々に日常生活に入ることに伴い、充電時間を短縮するニーズがますます高くなり、急速充電は電気自動車産業の普及発展に影響を与える重要な要因となり、現在、急速充電は既に動力電池の充電に広く応用される。急速充電技術は大電力、大電流を使用し、充電時間を大幅に短縮することができるが、大きな分極が発生するため、急速充電は電池の性能を低下させ、電池の耐用年数を短縮する。例えば、電圧プラトー及びエネルギー密度がより高い三元系材料体系に対して、使用過程の電圧スパン範囲が広く、電池の分極がより大きいため、急速充電時に電池の耐用年数に大きな影響を与える。
【0046】
本願の実施例は定電力充電で分極を効果的に低減し、急速充電を実現すると同時に、二次電池の耐用年数を向上することができる充電方法を提供する。
【0047】
図1は本願のいくつかの実施例の電気装置及び充電装置の概略図である。
【0048】
図1に示すように、電気装置10は電気自動車であり、それは純粋な電気自動車であってもよく、プラグイン可能なハイブリッド電気自動車であってもよい。電気自動車10の内部に電池121(
図2参照)が設置され、電気自動車10に電力を供給する。
【0049】
充電装置20は、電池121を充電し、電池121の放電を制御する装置である。本願の実施例における充電装置20は一般的な充電杭、スーパー充電杭、自動車から電網への送電(vector to grid、V2G)モードをサポートする充電杭、又は電池に充放電を行うことができる充放電装置/機器などであってもよく、本願の実施例は充電装置20の具体的なタイプ及び具体的な応用シーンを限定しない。
【0050】
図2は本願のいくつかの実施例の充電システムの概略図である。
【0051】
図2に示すように、充電システム100は充電装置20及び電池システム120を含み、例えば、電池システム120は電気自動車10に取り付けられる。
【0052】
例えば、電池システム120に少なくとも一つの電池パック(battery pack)があり、該電池パックを電池121と総称することができる。前記のように、本実施例において、電池121の具体的なタイプ及び規模はいずれも具体的に限定されない。
【0053】
該電池121を管理しメンテナンスし、電池に過充電及び過放電が発生することを防止し、電池の耐用年数を延長するために、電池システム120にさらに電池管理システム(battery management system、BMS)122が設置され、電池121の状態を監視するために用いられる。BMS122は電池121と統合して同じ装置に設置されてもよく、独立した装置として電池121の外に設置されてもよい。
【0054】
図2に示すように、充電装置20は電線130により電池121に接続され、通信線140によりBMS122に接続され、通信線140は充電装置20とBMS122との間の情報交換を行うために用いられる。例えば、通信線140はコントローラエリアネットワーク(control area network、CAN)通信バス、又はデイジーチェーン(daisy chain)通信バスであってもよい。
【0055】
充電装置20は通信線140によりBMS122と通信することができる以外、さらに無線ネットワークによりBMS122と通信することができる。本願実施例は、充電装置20とBMS122との通信タイプは特に限定されない。
【0056】
図3は本願のいくつかの実施例の二次電池充電方法のフローチャートである。
【0057】
図3に示す充電方法300は、
図1、
図2に示す充電装置20及び電池システム120に適用可能である。
【0058】
図3に示すように、本実施例の二次電池充電方法300は以下のステップを含む。
【0059】
ステップS301において、BMS122は通信線140により充電装置20に第一充電情報を送信する。第一充電情報は第一充電電力を含むがこれに限定されず、BMS122が充電装置20に送信した充電要求とすることができ、すなわち、BMS122は充電装置20が第一充電電力の定電力で電池121を充電するように要求する。
【0060】
ステップS302において、充電装置20は受信した第一充電情報に基づいて、第一充電電力で電池121に定電力充電を行う。
【0061】
ステップS303において、BMS122は電池121の状態パラメータを測定する。
【0062】
本実施例において、電池121の状態パラメータは電池温度、電池電圧、電池容量、電池121の充電状態(State of Charge、SOC)等であってもよく、該電池状態パラメータはBMS122により測定して取得される。
【0063】
ステップS304において、該状態パラメータが第一所定値に達すると、BMS122は充電装置20に複数のパルス放電情報を順に送信し、BMS122が充電装置20に送信した充電要求とする。例えば、各パルス放電情報は放電電力及び放電時間を含むがこれらに限定されない。
【0064】
ステップS305において、充電装置20は受信したパルス放電情報における放電電力及び放電時間に基づいて、電池121に複数回の定電力パルス放電を順に行う。
【0065】
前記のように、本実施例において、充電装置20は電池121に定電力充電を行い、電池121の電池状態パラメータが第一所定値に達する時、充電装置20は電池121に複数回の定電力パルス放電を行い、それにより電池分極を改善することができ、かつ急速充電を保証することができる。以下、本実施例の電池充電方法について具体的に説明する。
【0066】
図4は本願のいくつかの実施例の電池充電方法の充電電力の波形図である。
【0067】
図4において、横軸は時間であり、縦軸は充電電力であり、すなわち、充電装置20が電池121を充電する電力であり、正の充電電力は充電を示し、負の充電電力は放電を示す。そのうちの電力値mP、xP、yPなどは、
図5を参照して詳細に説明する。
【0068】
図4に示すように、0時間から時間T1まで、充電装置20は一定の電力mPで電池121を充電し、T1からT2まで、充電装置20は異なる電力xP、yP、…、異なる放電時間で、電池121に複数回のパルス放電を行う。T2からT3まで、充電装置20は再び電力mPで電池121を充電し、T3からT4まで、充電装置20は再び異なる電力、異なる放電時間で、電池121に複数回のパルス放電を行い、T4からT5まで、以上のステップを繰り返し、電池121が満充電されるか又はある充電状態まで充電されるまで停止する。
【0069】
すなわち、本実施例の電池充電方法は定電力充電、及び多段定電力パルス放電のステップを含む。
【0070】
以下、
図5を参照して
図4に示された定電力充電及び多段定電力パルス放電を詳細に説明する。
【0071】
図5は本願の二次電池充電方法の一つの実施例のフローチャートである。
【0072】
以下、Pで充電装置20の1時間の定格充電電力を示し、すなわち、1時間内に電池を満充電することに必要な充電電力であり、Pは単電池の放電電圧プラトーと電池容量との積である。
【0073】
図5に示すように、本実施例の二次電池充電方法500は以下のステップを含む。
【0074】
ステップS501において、BMS122は充電装置20に第一充電情報を送信し、BMS122が充電装置20に送信した充電要求とする。例えば、第一充電情報は定電力充電電力を含む。
【0075】
以下、第一充電情報に含まれる充電電力(第一充電電力)をmPに設定し、そのうちの係数mの値は電池121のセルの実際の充電能力に基づいて決定することができ、例えば、mPは電池にリチウム析出が発生しない最大充電電力であってもよい。一つの実施例として、例えば、m=2に設定することができる。
【0076】
ステップS502において、充電装置20は第一充電電力mPで電池121に定電力充電を行う。
【0077】
ステップS503において、BMS122は電池121の電池状態パラメータを測定し、電池状態パラメータが所定値に達するか否かを判断する。
【0078】
本実施例において、電池状態パラメータは好ましくは充電状態SOCである。充電状態SOCは電池121が現在有する電気量とその完全充電状態の電気量との比率であり、一般的にパーセントで示し、値の範囲は0~100%であり、0%SOCは電池121の放電が電圧下限に達することを示し、100%SOCは電池121が満充電であることを示す。
【0079】
すなわち、本ステップにおいて、BMS122は電池121の充電状態SOCを測定し、充電状態SOCが所定値kに達するか否かを判断する。
【0080】
ステップS504において、充電状態SOCが所定値kに達する場合、BMS122は充電装置20にパルス放電情報を送信し、該パルス放電情報は放電電力xP及び放電時間txを含む。係数xの数値および放電時間txは、分極を解消するニーズに応じて決定することができる。本実施例において、好ましくは放電時間txは1~30秒である。
【0081】
図5に示す充電過程において、充電過程の進行に伴い、充電状態SOCが増大する。発明者らは、定電力充電により、充電状態SOCが一定値に達した後に階段パルス放電を開始し、電池121の分極を効果的に低減することができることを発見する。
【0082】
ステップS505において、充電装置20は受信した放電電力xP及び放電時間txに基づいて、電池121に定電力パルス放電を行い、放電時間はtxである。
図4のT1からt1までのパルス放電電力波形を参照する。
【0083】
ステップS506において、BMS122は充電装置20にパルス放電情報を送信し、該パルス放電情報は放電電力yP及び放電時間tyを含む。係数yの数値および放電時間tyは、分極を解消するニーズに応じて決定することができる。本実施例において、好ましくは放電時間tyは1~30秒である。
【0084】
ステップS507において、充電装置20は受信した放電電力yP及び放電時間tyに基づいて、電池121に定電力パルス放電を行い、放電時間はtyである。
図4における時刻t1からt2までのパルス放電電力波形を参照する。
【0085】
ステップS508において、異なる放電電力、放電時間でステップS506、S507を繰り返し、複数回の異なる電力、異なる放電時間でのパルス放電を行う。
図4における時刻t2からT2までのパルス放電電力波形を参照する。
【0086】
ステップS509において、充電装置20は予め設定された充電方案に応じて所定のパルス放電を完了した後、BMS122は充電装置20に定電力充電情報を再び送信し、ここで第一充電電力mPを含む。
【0087】
ステップS510において、充電装置20は充電電力mPで電池121に定電力充電を再び行い、充電過程を継続する。
図4における時刻T2からT3までの定電力充電電力波形を参照する。
【0088】
ステップS511において、BMS122は電池121の充電状態SOCを測定し、充電状態SOCが所定値k2に達するか否かを判断する。
【0089】
ステップS512において、充電状態SOCが所定値k2に達する場合、BMS122は充電装置20にパルス放電情報を送信し、該パルス放電情報は放電電力及び放電時間を含む。
【0090】
ステップS513において、充電装置20は受信したパルス放電情報、すなわち放電電力及び放電時間に基づいて、電池121に定電力パルス放電を行い、所定の放電時間が経過した後、BMS122は充電装置20に別のパルス放電情報を送信し、所定のパルス放電ステップを完了するまで、充電装置20は異なる放電電力で電池121に定電力パルス放電を行う。
図4における時刻T3からT4までのパルス放電波形を参照する。
【0091】
ステップS514において、このようにステップS509~ステップS513を繰り返し、電池121が満充電されるか又は一定の充電状態に達するまで、電池121に定電力充電及び多段定電力パルス放電を継続的に行う。
図4におけるT4からT5までの波形を参照する。
【0092】
前記のように、定電力充電により、充電状態SOCの値が一定の値kに達した後に階段パルス放電を開始し、電池121の分極を効果的に低減することができる。
図8~
図11の実験結果によれば、k≧40%SOCである場合に分極を明らかに改善することができる。急速充電のニーズを考慮すると、後続のパルス放電の回数を短縮する必要があるため、本実施例において好ましくはk≧50%である。
【0093】
ステップS511、S512において、好ましくはk2の値は電池121の充電状態SOCが5%増加することである。すなわち、5%の電気量を充電するごとに、BMS122は充電装置20にパルス放電情報を送信する。
【0094】
前記のように、本実施例において、定電力充電過程において多段定電力パルス放電ステップを増加させることにより、電池121の分極を減少させ、電池121のサイクル耐用年数を改善することができ、かつ急速充電を保証することができる。
【0095】
以上の実施例ではパルス放電の回数を限定していない。
【0096】
急速充電を実現するために、パルス放電の回数が少ないほど、パルス放電の時間が短くなり、パルス放電ステップを設定することによる充電時間への影響を低減することができる。したがって、本願のいくつかの実施例において、定電力パルス放電の回数を二回に限定する。以下、詳細に説明する。
【0097】
図6は本願の他の実施例の電池充電方法の充電電力の波形図である。
【0098】
図6において、横軸は時間であり、縦軸は充電電力であり、すなわち、充電装置20が電池121を充電する電力であり、正の充電電力は充電を示し、負の充電電力は放電を示す。
【0099】
図6に示すように、0からT1までの区間において、充電装置20は一定の電力mPで電池121を充電し、T1からT2まで、充電装置20は電力xP、yPで電池121に二回のパルス放電を行う。T2からT3まで、充電装置20は再び電力mPで電池121を充電し、T3からT4まで、充電装置20は再び電池121に二回のパルス放電を行い、T4からT5まで、電池121が満充電されるか又は一定の充電状態に達するまで、以上のステップを繰り返す。
【0100】
すなわち、本実施例の電池充電方法は定電力充電ステップ、及び二回の定電力パルス放電ステップを含む。
【0101】
以下、
図7を参照して
図6に示された定電力充電及び二回の定電力パルス放電を詳細に説明する。
【0102】
図7は、本願の二次電池充電方法700の一つの実施例のフローチャートである。
【0103】
図7に示すように、本実施例の二次電池充電方法700は以下のステップを含む。
【0104】
ステップS701において、BMS122は充電装置20に第一充電電力mPを送信する。例えば、m=2に設定する。
【0105】
ステップS702において、充電装置20は第一充電電力mPで電池121に定電力充電を行う。
図6における0からT1までの定電力充電電力波形を参照する。
【0106】
ステップS703において、BMS122は電池121の充電状態SOCを測定し、充電状態SOCが、例えば、50%SOCに達するか否かを判断する。
【0107】
ステップS704において、充電状態SOCが50%に達する場合、BMS122は充電装置20にパルス放電情報を送信し、該パルス放電情報は放電電力xP及び放電時間txを含む。
【0108】
図7における充電過程において、充電過程の進行に伴い、充電状態SOCが増大する。前記のように、定電力充電により、充電状態SOCが一定値に達した後に階段パルス放電を開始し、電池121の分極を効果的に低減することができる。実験結果に基づいて、かつ急速充電の要求を考慮し、後続のパルス放電の回数をできるだけ短縮し、本実施例において好ましくはk≧50%である。
【0109】
放電電力xPおよび放電時間txは、分極を解消するニーズに応じて決定することができる。本実施例において、好ましくは放電電力xPは第一充電電力mPよりも大きい。実験によると、充電電力mPで電池121に定電力充電を行って50%SOCに達した後、さらに大きな放電電力xPで電池121に定電力パルス放電を行い、分極を迅速に解消することができる。また、実験によると、放電時間txを1~30秒の範囲内に設定すれば分極を改善することができ、急速充電のニーズを考慮すると、好ましくは放電時間txは1~20秒である。
【0110】
ステップS705において、充電装置20は受信した放電電力xP及び放電時間txに基づいて、電池121に定電力パルス放電を行い、放電時間はtxである。
図6におけるT1からt1までのパルス放電電力波形を参照する。
【0111】
ステップS706において、BMS122は充電装置20にパルス放電情報を送信し、該情報は放電電力yP及び放電時間tyを含む。係数yの数値および放電時間tyは、分極を解消するニーズに応じて決定することができる。本実施例において、好ましくは放電電力yPは第一充電電力mPよりも小さい。実験によると、充電電力mPで電池121に定電力充電を行って50%SOCに達した後、小さい放電電力yPで電池121に定電力パルス放電を行い、電池121を静置した後の分極を効果的に改善することができる。
【0112】
また、実験によると、放電時間tyを1~30秒の範囲内に設定すれば分極を改善することができ、急速充電のニーズを考慮すると、好ましくは放電時間tyが1~20秒である。
【0113】
ステップS707において、充電装置20は受信した放電電力yP及び放電時間tyに基づいて、電池121に定電力パルス放電を行い、放電時間はtyである。
図6における時刻t1からT2までのパルス放電電力波形を参照する。
【0114】
ステップS708において、充電装置20が放電電力yPで電池121に定電力パルス放電を行う放電時間がtyに達すると、BMS122は充電装置20に定電力充電情報を再び送信し、ここで第一充電電力mPを含む。
【0115】
ステップS709において、充電装置20は充電電力mPで電池121に定電力充電を再び行い、電池121の充電過程を継続する。
図6における時刻T2からT3までの定電力充電電力波形を参照する。
【0116】
ステップS710において、BMS122は電池121の充電状態SOCを測定し、充電状態SOCが所定値k2に達するか否かを判断する。
【0117】
ステップS711において、充電状態SOCが所定値k2に達する場合、BMS122は充電装置20にパルス放電情報を送信し、該パルス放電情報は放電電力xP及び放電時間txを含む。
【0118】
本実施例において、好ましくはk2の値は電池121の充電状態SOCが5%増加することである。すなわち、5%の電気量を充電するごとに、BMS122は充電装置20に放電電力xP及び放電時間txなどのパルス放電情報を送信する。
【0119】
ステップS712において、ステップS705~ステップS711を繰り返し、電池121が満充電されるか又はある電荷状態に充電されるまで、電池121に二回の定電力パルス放電及び定電力充電を継続的に行う。
図6における時刻T4からT5までの波形を参照する。
【0120】
前記のように、本実施例において、定電力充電過程に2段の階段定電力パルス放電ステップを加え、電池121の分極を減少させ、電池121のサイクル耐用年数を改善することができ、かつ急速充電を保証することができる。
【0121】
本願の充電方法が電池121の分極状況を改善する実験結果、実施例及び比較例を以下に説明する。
【0122】
以下の実験結果、実施例及び比較例に採用された電池体系は三元リチウム電池であり、三元系材料のニッケルコバルトマンガン酸リチウム(Li(NiCoMn)O2)を主な陰極材料として使用し、黒鉛を主な陽極材料とし、さらにセパレータ、市販電解液及びケースを加えて積層電池に組み立てられ、そのうちセパレータはポリエチレン材料であり、電解液はエチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びジエチルカーボネート(DEC)で1:1:1の体積比に応じて溶液に調製され、LiPF6を上記溶液に均一に溶解し、電解液を得て、LiPF6の濃度は1.2mol/Lである。温度が25℃である場合、該三元リチウム電池の満充電容量は130mAhであり、充電カットオフ電圧は4.25Vであり、電圧下限は2.8Vである。
【0123】
図8は本願の充電方法を適用して定電力充電を行った後に異なる放電電力でパルス放電を行う時に、陽極の瞬時電位を改善する実験結果である。
【0124】
図8に示す実験において、充電装置20は充電電力2P(すなわち、m=2)で電池121に定電力充電を行い、5%の電気量を充電するごとに、すなわち電池121のSOCが5%増加するごとに、充電を一時停止し、10~30分間静置した後、陽極の電位V1(以下に「基準電位」と呼ばれる)を測定し、次に充電装置20は放電電力Pz及び放電時間tzで電池121にパルス放電を行い、放電時間tzを経過した後、この時点の陽極の電位V2を測定し、さらに10~30分間静置した後、静置した後の陽極電位V3を測定する。その後にSOCが5%増加するまで、充電装置20は充電電力2Pで電池121に定電力充電を継続的に行い、10~30分間静置した後、基準電位V1を測定し、その後に充電装置20は放電電力Pz及び放電時間tzで電池121にパルス放電を再び行い、放電時間tzを経過した後にこの時点の陽極の電位V2を測定し、さらに10~30分間静置した後、静置後の電位V3を測定する。このように電池121が満充電されるまで繰り返し、これにより5%SOC~100%SOCの各SOC値に対応する陽極電位V1、V2、V3を得る。
【0125】
定電力充電後及びパルス放電後に静置ステップを設置し、分極の影響を徹底的に解消した後に後続の実験を行うことを保証することができるため、毎回の充放電実験は分極を解消した後に独立して行われ、相互に影響しない。
【0126】
このように測定されたV1は定電力充電かつ静置後の陽極電位であり、V2はパルス放電終了時の陽極電位であり、「陽極瞬時電位」と呼ばれる。V3はパルス放電終了かつ静置後の陽極電位であるため、「静置後の陽極電位」と呼ばれる。V3については、
図10、
図11を用いて説明する。
【0127】
陽極瞬時電位の改善パーセントRを以下のように定義する。
【0128】
R=(V2-V1)/V1×100% (1)
【0129】
Rはパルス放電による陽極の瞬時分極を解消する効果を示し、定電力充電直後のパルス放電ステップ(すなわち、第一放電ステップ)の分極に対する影響を反映することができる。
【0130】
放電電力Pzはそれぞれ値1P、2P、4Pを取り、放電時間tzはいずれも5秒であり、異なる放電電力での陽極瞬時電位改善の実験曲線を得る。
【0131】
異なる放電電力での実験結果を比較するために、異なる放電電力での電池121の初期状態は同じであるように保持すべきであり、したがって、電池121を充電し始める前に、電池121はいずれも満放電状態、すなわち、0%SOCの状態に放電し、これにより同じ初期状態を保持する。
【0132】
図8において、横軸は電池121の充電状態SOCであり、縦軸は陽極瞬時電位改善パーセントRであり、曲線S001、S002、S003はそれぞれ放電電力Pzが1P、2P、4Pであることに対応する。
【0133】
図8に示すように、充電装置20は電池121に定電力充電を行い、充電状態SOCが持続的に増加し、充電状態SOCが一定値に達すると、電池121に定電力パルス放電を行い始める。パルス放電開始値の充電状態SOCとして、陽極の瞬時分極を解消することに大きな影響を与える。曲線S001、S002、S003に示すように、異なる放電電力で、電荷状態≧40%SOCである場合、陽極電位の改善幅が明らかに増加し、すなわち、充電状態≧40%SOCである場合に電池121に定電力パルス放電を行い始め、分極を明らかに改善することができる。これは、陽極材料である黒鉛のリチウムインターカレーションプラトーに対応する。定電力充電過程において大きな分極を形成し、定電力充電後のパルス放電により分極を改善することができる。
【0134】
急速充電のニーズを考慮すると、パルス回数をできるだけ減少させる必要があるため、本願において好ましくは充電状態が50%SOCに達した後にパルス放電を開始し、すなわち、k≧50%であり、このように電池の急速充電を保証することができ、同時に電池の分極を改善することができる。
【0135】
図8に示すように、放電電力Pzが4Pである場合に陽極電位の改善が最大であり、放電電力Pzが1Pである場合に陽極電位の改善が最小であり、放電電力Pzが2Pである場合に陽極電位の改善が明らかである。これにより分かるように、定電力で充電した後、大きな放電電力でパルス放電を行い、陽極の瞬時電位を改善することに役立ち、分極を迅速に解消することに役立つ。
【0136】
本願において、好ましくは定電力充電の後に行われた第一ステップのパルス放電の放電電力xPは第一充電電力mPよりも大きい。一つの実施例として、m=2であり、この時、さらに好ましくは2≦x≦4である。
【0137】
図9は本願の充電方法を適用して定電力充電を行った後に異なる放電時間でパルス放電を行う時に、陽極の瞬時電位を改善する実験結果である。
【0138】
図9の実験方法及び実験データの取得方法は
図8と同じであり、すなわち、充電装置20は充電電力2Pで電池121に定電力充電を行い、5%の電気量を充電するごとに、すなわち電池121の充電状態SOCが5%増加するごとに、充電を一時停止し、10~30分間静置した後、陽極の電位V1(すなわち、基準電位)を測定し、次に充電装置20は放電電力2P及び放電時間tzで電池121にパルス放電を行い、放電時間tzを経過した後、この時点の陽極の電位V2を測定し、さらに10~30分間静置した後、静置した後の陽極電位V3を測定する。その後に充電状態SOCが5%増加するまで、充電装置20は充電電力2Pで電池121に定電力充電を継続的に行い、再び10~30分間静置した後、基準電位V1を測定し、その後に充電装置20は放電電力2P及び放電時間tzで電池121にパルス放電を再び行い、放電時間tzを経過した後にこの時点の陽極の電位V2を測定し、さらに10~30分間静置し、静置後の電位V3を測定する。このように電池121が満充電されるまで繰り返し、5%SOC~100%SOCの各SOC値に対応する陽極瞬時電位V1、V2、V3を得る。
【0139】
放電時間tzはそれぞれ5秒、10秒、20秒、30秒を取り、異なる放電時間での陽極瞬時電位改善の実験曲線を得る。
【0140】
同様に、異なる放電時間での実験結果を比較するために、電池121の初期状態を同じに保持すべきであり、したがって、電池121を充電し始める前に、電池121はいずれも満放電状態、すなわち、0%SOCの状態に放電し、これにより同じ初期状態を保持する。
【0141】
図9において、横軸は電池121の充電状態SOCであり、縦軸は上記式(1)で定義された陽極瞬時電位改善パーセントRであり、曲線S1、S2、S3、S4はそれぞれ放電時間tzが5秒、10秒、20秒、30秒であることに対応する。
【0142】
図9における曲線S1、S2、S3、S4に示すように、同じ放電電力、異なる放電時間で、充電状態≧40%SOCである場合、特に充電状態≧50%SOCである場合、陽極電位の改善幅が明らかに増加し始める。
【0143】
図9に示すように、放電時間が30秒である時に陽極電位の改善が最大であり、放電時間が5秒である時に陽極電位の改善が最小であり、放電時間が10秒、20秒である時に陽極電位の改善が明らかである。これにより分かるように、定電力で充電した後、長い放電時間でパルス放電を行い、陽極の瞬時電位を改善することに役立ち、分極を解消することに役立つ。したがって、本願において、好ましくは放電時間は1~30秒である。
【0144】
また、
図8と
図9を比較して分かるように、パルス時間が5sから30秒に増加することによる瞬時陽極電位の改善幅はパルス電力の増加による瞬時陽極電位の改善幅より小さい。したがって、パルス放電の電力を増加させ、より高い分極改善効果を得ることができる。急速充電のニーズを考慮すると、充電時間を短縮する必要があるため、さらに好ましくは放電時間が1~20秒である。
【0145】
図8、
図9は定電力充電を行った後にパルス放電を行って陽極瞬時電位を改善する実験結果であり、大電力パルス放電がパルス放電終了時点の陽極の瞬時電位V2を迅速かつ大幅に改善することができることを示す。
【0146】
実験によると、定電力で充電した後にパルス放電を行い、次に電池121を一定の時間静置した後、陽極電位が変化し、陽極電位の改善状況は
図8、
図9の実験結果と大きく異なる。
【0147】
図10は定電力で充電した後、異なる放電電力でパルス放電を行い、次に電池121を静置した後に陽極電位を改善する実験結果である。
【0148】
図10の実験方法及び実験データの取得方法は
図8と同じであり、すなわち、充電装置20は充電電力2Pで電池121に定電力充電を行い、5%の電気量を充電するごとに、すなわち電池121の充電状態SOCが5%増加するごとに、充電を一時停止し、10~30分間静置した後、陽極の電位V1(すなわち、基準電位)を測定し、次に充電装置20は放電電力Pz及び放電時間tzで電池121にパルス放電を行い、放電時間tzを経過した後、この時点の陽極の電位V2を測定し、さらに10~30分間静置し、静置した後の陽極電位V3を測定する。その後に充電状態SOCが5%増加するまで、充電装置20は再び充電電力2Pで電池121に定電力充電を行い、10~30分間静置した後、基準電位V1を測定し、その後に充電装置20は放電電力Pz及び放電時間tzでさらに電池121にパルス放電を行い、放電時間tzを経過した後にこの時点の陽極の電位V2を測定し、さらに10~30分間静置し、静置後の電位V3を測定する。このように電池121が満充電されるまで繰り返し、5%SOC~100%SOCの各SOC値に対応する陽極電位V1、V2、V3を得る。
【0149】
静置後の陽極電位の改善パーセントSを以下のように定義する。
【0150】
S=(V3-V1)/V1×100% (2)
【0151】
Sは電池121を静置した後にパルス放電の陽極分極に対する改善状況を示し、実際の使用状態で、パルス放電が陽極分極を解消する効果を反映する。
【0152】
図10において、放電電力Pzはそれぞれ1P、2P、4Pを用いてパルス放電を行い、放電時間tzはいずれも10秒であり、異なる放電電力で陽極を静置した後に電位を改善する実験曲線を得る。
【0153】
同様に、異なる放電電力での実験結果を比較するために、異なる放電電力での電池121の初期状態は同じであるように保持すべきであり、したがって、電池121を充電し始める前に、電池121はいずれも満放電状態、すなわち、0%SOCの状態まで放電し、これにより同じ初期状態を保持する。
【0154】
図10において、横軸は電池121の充電状態SOCであり、縦軸は静置後の陽極電位の改善パーセントSであり、曲線S008、S009、S010はそれぞれ放電電力Pzが1P、2P、4Pであることに対応する。
【0155】
図10における曲線S008、S009、S010に示すように、同一の放電電力に対して、異なる充電状態で、静置した後の陽極電位の改善状況が非常に異なり、Sが正数である場合に改善があることを示し、Sが負数である場合に改善がないことを示し、曲線S008、S009、S010はいずれも正値領域及び負値領域を有し、さらにピーク領域を有し、ある充電状態で、静置した後に陽極電位が改善され、ある充電状態で、静置した後に陽極電位が改善されず、特定の充電状態で、静置した後に陽極電位が大幅に改善される。
【0156】
具体的には、放電電力Pzが1Pである場合、充電状態が50%SOCである場合、静置した後に陽極電位の改善がピーク値に達し、約9%であり、充電状態が50%SOCより大きい場合、静置した後に陽極電位の改善が大幅に低下するが、依然として正であり、すなわち、依然として改善され、充電状態が50%SOCより小さい場合、静置した後に陽極電位の改善が迅速に大幅に低下し、負の値になり、すなわち、改善されない。
【0157】
放電電力Pzが2Pである場合、充電状態が約55%SOCである場合、静置した後に陽極電位の改善がピーク値に達し、約4.5%であり、充電状態が55%SOCより大きい場合、静置した後に陽極電位の改善が大幅に低下するが、基本的に正の値であり、すなわち、依然として改善され、充電状態が55%SOCより小さい場合、静置した後に陽極電位の改善が迅速に大幅に低下し、負の値になり、すなわち、改善されない。
【0158】
放電電力Pzが4Pである時、充電状態が約65%SOCである場合、静置した後に陽極電位の改善がピーク値に達し、約4%であり、充電状態が65%SOCより大きい場合、静置した後に陽極電位の改善が大幅に低下するが、基本的に正の値であり、すなわち、依然として改善され、充電状態が65%SOCより小さい場合、静置した後に陽極電位の改善が迅速に大幅に低下し、負の値になり、すなわち、改善されない。
【0159】
図10における曲線S008、S009、S010に示すように、異なる放電電力に対して、静置した後に陽極電位の改善状況が非常に異なり、放電電力Pzが1Pである場合に改善が最大であり、放電電力Pzが4Pである場合に改善が最小である。
【0160】
これにより分かるように、定電力充電、パルス放電の後、電池121を一定時間静置し、陽極電位が基準電位V1に戻り、したがって、
図8、
図9の実験結果に比べて、
図10における陽極電位の改善幅が大幅に低下し、かつ小電力でパルス放電を行う場合、静置後の陽極電位の改善幅が相対的に大きく、大電力でパルス放電を行う場合、静置後の陽極電位の改善幅が小さい。
【0161】
図11は
図10と同じであり、他の異なる放電電力でパルス放電を行う時に静置した後に陽極電位を改善する実験結果を示す。
【0162】
図11の実験条件、実験方法、測定方法は
図10と同じであり、以下で重複する説明を省略する。
【0163】
図11において、放電電力Pzはそれぞれ1P、0.8P、0.5Pを用いてパルス放電を行い、放電時間tzはいずれも10秒であり、曲線S011、S012、S013はそれぞれ放電電力1P、0.8P、0.5Pに対応する。
【0164】
図11における曲線S011、S012、S013に示すように、放電電力Pzが1P、0.8P、0.5Pであることに対して、充電状態が50%SOCである場合、静置した後に陽極電位の改善がピーク値に達し、それぞれ9%、11%、8%であり、充電状態が50%SOCより大きい場合、静置した後に陽極電位の改善が正値であり、すなわち、依然として改善され、充電状態が50%SOCより小さい場合、静置した後に陽極電位の改善が迅速に低下し、負値になり、すなわち、改善されない。すなわち、異なる放電電力1P、0.8P、0.5Pに対して、静置した後に陽極電位の改善幅は基本的に同じである。
【0165】
これにより、定電力で充電した後に小電力パルス放電を加え、静置した後に陽極電位を大幅に改善することができ、それにより分極を改善する。したがって、本願において、定電力充電後に小電力パルス放電ステップ(すなわち、第二パルス放電ステップ)を加え、
図6、
図7に示すように、好ましくは第二パルス放電の放電電力yPは第一充電電力mPよりも小さい。一つの実施例として、m=2であるため、さらに好ましくは0.5≦y≦1であり、かつ第二放電ステップのパルス放電時間は1~20秒である。
【0166】
図12は本願の実施例と一部比較例の定電力サイクル曲線の実験結果である。
【0167】
図13は本願の一部比較例の定電力サイクル曲線の実験結果である。
【0168】
電池のサイクル曲線は電池のサイクル耐用年数を反映する。本願の実施例において、定電力充電過程に複数回の定電力パルス放電過程を加え、電池の分極を減少させ、電池の定電力サイクル耐用年数を向上させることができ、同時に電池の急速充電時間に影響を与えないことを保証する。以下、実験結果について詳細に説明する。
【0169】
サイクル曲線を測定する実験において、まず
図7に示す充電方法に応じて電池121を満充電し、その後、以下のステップを行い、電池121のサイクル耐用年数を測定する。
【0170】
ステップS801において、電池121を3分間静置する。
【0171】
電池121を3分間静置し、前期の充電過程で生成された過電位の後続のステップ802の放電への影響を解消することができる。
【0172】
ステップS802において、電池121を使用電圧下限まで放電し、すなわち、負荷を電池121の回路に接続することにより、電池121を電池121の使用電圧下限2.8Vまで放電し、ここまで、一つの定電力充電サイクルを完了する。このサイクルにおいて電池121が放電した電気量を測定した。
【0173】
その後、
図7に示す充電方法に応じてさらに電池121を満充電し、さらにステップS801、S802を行い、次の定電力充電サイクルを完了し、かつ該サイクルにおいて電池121から放出された電気量を測定する。
【0174】
このように以上のステップを繰り返し、各定電力充電サイクルに放出された電気量を測定する。
【0175】
電池121が第一サイクルにおいて放出した電気量を100%とし、第Nサイクルにおいて放出した電気量と第一サイクルにおいて放出した電気量との比を第Nサイクルの「容量保持率」として定義する。
【0176】
図12において、横軸は定電力充電サイクル回数であり、縦軸は容量保持率である。
【0177】
図12において、曲線S101は実施例1の定電力サイクル曲線であり、曲線S102は実施例2の定電力サイクル曲線であり、曲線S103は実施例3の定電力サイクル曲線である。実施例1、実施例2、実施例3の充電方法は、具体的には以下の通りである。
実施例1
【0178】
1) 50%SOC状態になるまで、電力2Pで電池121に定電力充電を行い、
2)電力2Pで電池121にパルス放電を行い、放電時間は5秒であり、
3)電力1Pで電池121にパルス放電を行い、放電時間は5秒であり、
4)電力2Pで電池121に定電力充電を行い、5%SOCの電気量を増加させ、
5)電池121を満充電し、即ち、100%SOCに達するまで、ステップ2)~4)を繰り返し、
6)電池121を3分間静置し、
7)電池121を使用電圧下限まで放電し、定電力充電サイクルを完了し、このサイクルにおいて電池121から放出された電気量を測定し、
8)ステップ1)~7)を繰り返し、実施例1の各定電力充電サイクルから放出された電気量を測定し、各サイクルの容量保持率を計算する。
実施例2
【0179】
1) 50%SOC状態になるまで、電力2Pで電池121に定電力充電を行い、
2)電力2Pで電池121にパルス放電を行い、放電時間は5秒であり、
3)電力1Pで電池121にパルス放電を行い、放電時間は10秒であり、
4)電力2Pで電池121に定電力充電を行い、5%のSOC容量を増加させ、
5)電池121を満充電し、即ち、100%SOCに達するまで、ステップ2)~4)を繰り返し、
6)電池121を3分間静置し、
7)電池121を使用電圧下限まで放電し、一つの定電力充電サイクルを完了し、このサイクルにおいて電池121から放出された電気量を測定し、
8)ステップ1)~7)を繰り返し、実施例1の各定電力充電サイクルから放出された電気量を測定し、各サイクルの容量保持率を計算する。
実施例3
【0180】
1) 50%SOC状態になるまで、電力2Pで電池121に定電力充電を行い、
2)電力2Pで電池121にパルス放電を行い、放電時間は10秒であり、
3)電力1Pで電池121にパルス放電を行い、放電時間は10秒であり、
4)電力2Pで電池121に定電力充電を行い、5%のSOC容量を増加させ、
5)電池121を満充電し、即ち、100%SOCに達するまで、ステップ2)~4)を繰り返し、
6)電池121を3分間静置し、
7)電池121を使用電圧下限まで放電し、一つの定電力充電サイクルを完了し、このサイクルにおいて電池121から放出された電気量を測定し、
8)ステップ1)~7)を繰り返し、実施例1の各定電力充電サイクルから放出された電気量を測定し、各サイクルの容量保持率を計算する。
【0181】
比較として、
図12はさらに比較例1、2、6の充電方法の容量保持率の実験結果を示し、それぞれ
図12における曲線S201、S202、S206に対応する。
【0182】
図13は比較例1、2、3、4及び5の充電方法の容量保持率の実験結果を示し、それぞれ
図13における曲線S201、S202、S203、S204、S205に対応する。比較例1~6の充電方法は具体的には以下の通りである。
比較例1
【0183】
ステップS811において、満充電であり、すなわち100%SOC状態になるまで、電力2Pで電池121に定電力充電を行い、
ステップS812において、電池121を3分間静置し、
ステップS813において、電池121を使用電圧下限まで放電し、一つの定電力充電サイクルを完了し、このサイクルにおいて電池121から放出された電気量を測定し、
ステップS811、S812、S813を繰り返し、比較例1の各充電サイクルから放出された電気量を測定し、各サイクルの容量保持率を計算する。
比較例2
【0184】
ステップS821において、電力2Pで電池121に5%SOCの状態まで定電力充電を行い、
ステップS822において、電力2Pで電池121にパルス放電を行い、放電時間は10秒であり、
ステップS823において、電力2Pで電池121に定電力充電を行い、5%SOCの電気量を増加させ、
ステップS824において、電池121が満充電され、すなわち、100%SOCに達するまで、ステップS822、S823を繰り返し、
ステップS825において、電池121を3分間静置し、
ステップS826において、電池121を使用電圧下限まで放電し、一つの定電力充電サイクルを完了し、このサイクルにおいて電池121から放出された電気量を測定し、
ステップS821~S826を繰り返し、比較例2の各充電サイクルから放出された電気量を測定し、各サイクルの容量保持率を計算する。
比較例3
【0185】
ステップS831において、電力2Pで電池121に5%SOCまで定電力充電を行い、
ステップS832において、電力1Pで電池121にパルス放電を行い、放電時間が10秒であり、
ステップS833において、電力2Pで電池121に定電力充電を行い、5%SOCの電気量を増加させ、
ステップS834において、電池121が満充電され、すなわち、100%SOCに達するまで、ステップS832、S833を繰り返し、
ステップS835において、電池121を3分間静置し、
ステップS836において、電池121を使用電圧下限まで放電し、一つの充電サイクルを完了し、このサイクルにおいて電池121から放出された電気量を測定し、
ステップS831~S836を繰り返し、比較例3の各充電サイクルから放出された電気量を測定し、各サイクルの容量保持率を計算する。
比較例4
【0186】
ステップS841において、電力2Pで電池121に70%SOCまで定電力充電を行い、
ステップS842において、電力1Pで電池121にパルス放電を行い、放電時間が10秒であり、
ステップS843において、電力2Pで電池121に定電力充電を行い、5%SOCの電気量を増加させ、
ステップS844において、電池121が満充電され、すなわち、100%SOCに達するまで、ステップS842、S843を繰り返し、
ステップS845において、電池121を3分間静置し、
ステップS846において、電池121を使用電圧下限まで放電し、一つの定電力充電サイクルを完了し、このサイクルにおいて電池121から放出された電気量を測定し、
ステップS841~S846を繰り返し、比較例4の各充電サイクルから放出された電気量を測定し、各サイクルの容量保持率を計算する。
比較例5
【0187】
ステップS851において、電力2Pで電池121に90%SOCまで定電力充電を行い、
ステップS852において、電力1Pで電池121にパルス放電を行い、放電時間が10秒であり、
ステップS853において、電力2Pで電池121に定電力充電を行い、5%SOCの電気量を増加させ、
ステップS854において、電池121が満充電され、すなわち、100%SOCに達するまで、ステップS852、S853を繰り返し、
ステップS855において、電池121を3分間静置し、
ステップS856において、電池121を使用電圧下限まで放電し、一つの定電力充電サイクルを完了し、このサイクルにおいて電池121から放出された電気量を測定し、
ステップS851~S856を繰り返し、比較例5の各充電サイクルから放出された電気量を測定し、各サイクルの容量保持率を計算する。
比較例6
【0188】
ステップS861において、電力2Pで電池121に5%SOCまで定電力充電を行い、
ステップS862において、電力2Pで電池121にパルス放電を行い、放電時間は10秒であり、
ステップS863において、電力2Pで電池121に定電力充電を行い、5%SOCの電気量を増加させ、
ステップS864において、電池121が満充電され、すなわち、100%SOCに達するまで、ステップS862、S863を繰り返し、
ステップS865において、電池121を3分間静置し、
ステップS866において、電池121を使用電圧下限まで放電し、一つの定電力充電サイクルを完了し、このサイクルにおいて電池121から放出された電気量を測定し、
ステップS861~S866を繰り返し、比較例6の各充電サイクルから放出された電気量を測定し、各サイクルの容量保持率を計算する。
【0189】
図12及び
図13の実験結果を考察する。実施例1、2、3は
図7に示す本願の充電方法であり、すなわち、50%SOCまで定電力充電を行った後、一回の大電力パルス放電及び一回の小電力パルス放電を行い、放電時間は1~20秒の範囲内にある。比較例1~6はいずれも定電力充電の例であるが、本願の充電方法の要件を満たしておらず、パルス放電過程がない又は1ステップだけであるか、又は50%SOCからパルス放電を開始することがない。
図12に示すように、約400回の定電力充電サイクルにより、実施例1、2、3の容量保持率は比較例1、2、6より明らかに高く、サイクル性能の改善幅が大きい。
【0190】
実施例3のパルス放電時間は10秒であり、実施例1のパルス放電時間(5秒)よりも長く、実施例3の容量保持率は実施例1よりも高い。
【0191】
実施例2の大電力パルス放電ステップの放電時間は5秒であり、実施例1の大電力パルス放電ステップと同じであるが、実施例2の小電力パルスステップの放電時間は10秒であり、実施例1の小電力パルスステップの放電時間(5秒)よりも長く、実施例2の容量保持率も実施例1よりも高い。
【0192】
すなわち、放電時間を適当に延長し、サイクル性能をさらに改善することができる。
【0193】
定電力充電過程で生成された分極による電池容量の損失が大きく、第一ステップの大電力パルス放電により分極を瞬時に、迅速に相殺することができ、第二ステップの小電力パルス放電は静置後の陽極電位を改善することができ、それによりサイクル耐用年数の大幅な改善を実現する。
【0194】
比較例1は定電力充電ステップのみを有し、パルス放電ステップがなく、比較例1の容量保持率が最も低い。比較例1に比べて、比較例2~6は1ステップのパルス放電ステップを増加させ、したがって比較例2~6の容量保持率は比較例1に比べて一定の改善がある。比較例6におけるパルス放電ステップは大電力パルス放電ステップであり、比較例2~5におけるパルス放電ステップは小電力パルス放電ステップであり、比較例6の容量保持率は比較例2~5に比べてわずかに改善される。比較例2及び6のパルス放電の開始点は、5%SOCであった。比較例3~5のパルス放電の開始点はいずれも50%SOC以上であるが、比較例3及び5は1ステップの小電力パルス放電ステップのみを有し、比較例3~5の容量保持率はほぼ同じである。
【0195】
以上より、パルス放電の開始点のみを50%SOC以上に設定し、本願の充電方法のように2ステップ以上のパルス放電ステップを設定せず、容量保持率を明らかに改善しない。
【0196】
図13に示すように、比較例2~5において、2ステップ以上のパルス放電ステップを設置するため、50%SOCからパルス放電を開始しても、5%SOCからパルス放電を開始しても、比較例1に対して、サイクル耐用年数の改善はほぼ同じである。比較例4では70%からパルス放電を開始し、比較例5では90%からパルス放電を開始するが、サイクル耐用年数は比較例2、3、6に比べて低下する。
【0197】
【0198】
図14に示すように、充電装置20は充電ユニット2010及びパルス放電ユニット2020を含み、充電ユニット2010は電池管理ユニットBMS122から送信された充電情報に基づいて、充電電力mPで電池121に定電力充電を行い、パルス放電ユニット2020は電池管理ユニットBMS122から送信されたパルス放電情報に基づいて、電池121に定電力パルス放電を行う。充電装置20が電池121を充電する時、電池121の電池状態パラメータが所定値に達し、例えば、充電状態が50%SOC以上に達する時、パルス放電ユニット2020はBMS122から送信されたパルス放電情報に基づいて電池121に複数回の定電力パルス放電を行う。
【0199】
いくつかの実施例において、パルス放電ユニット2020が複数回のパルス放電を行った後、充電ユニット2010は充電電力mPで電池121に定電力充電を再び行い、電池121の電池状態パラメータが第二所定値に達する時、例えば、充電状態が5%SOC増加すると、パルス放電ユニット2020は再び定電力パルス放電を複数回行う。
【0200】
いくつかの実施例において、電池121が満充電されるか又は一定の充電状態に達するまで、パルス放電ユニット2020と充電ユニット2010は複数回のパルス放電及び定電力充電を交互に行う。
【0201】
本願はさらにコンピュータ読取可能な記憶媒体を提供し、コンピュータ読取可能な記憶媒体にコンピュータ実行可能な指令が記憶され、コンピュータ実行可能な指令がプロセッサによって実行される場合、本願の二次電池の充電方法を実行する。
【0202】
本願はさらに、本願の二次電池の充電方法を実行するための電子機器を提供する。
【0203】
【0204】
図15に示すように、電子機器3000はメモリ3010及びプロセッサ3020を含み、メモリ3010はコンピュータ指令を記憶し、プロセッサ3020はコンピュータ指令を実行し、本願の二次電池の充電方法を実行する。
【0205】
以上の各実施例は本願の技術的解決手段を説明するためのものに過ぎず、それを限定するものではない。前述の各実施例を参照して本願を詳細に説明したが、当業者であれば理解すべきことは以下のとおりである。それは依然として前述の各実施例に記載の技術的解決手段を修正するか、又はそのうちの一部又は全部の技術的特徴を同等置換することができる。これらの修正又は置換は、対応する技術的解決手段の本質を本願の各実施例の技術的解決手段の範囲から逸脱させるものではなく、それはいずれも本願の特許請求の範囲及び明細書の範囲に含まれるべきである。特に、構造衝突が存在しない限り、各実施例に言及された各技術的特徴はいずれも任意の方式で組み合わせることができる。本願は本明細書に開示された特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内にある全ての技術的解決手段を含む。
【国際調査報告】