(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】脂肪酸抱合体を有するポルフィリンナノ小胞
(51)【国際特許分類】
A61K 9/51 20060101AFI20240709BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20240709BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240709BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240709BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240709BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240709BHJP
A61K 41/00 20200101ALI20240709BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240709BHJP
A61K 51/04 20060101ALI20240709BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20240709BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
A61K9/51
A61K47/28
A61K47/34
A61K47/24
A61K47/22
A61K47/18
A61K41/00
A61P35/00
A61K51/04 100
A61K49/00
A61K9/127
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501955
(86)(22)【出願日】2022-07-12
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 CA2022051087
(87)【国際公開番号】W WO2023283732
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】507148294
【氏名又は名称】ユニバーシティー ヘルス ネットワーク
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ガーン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ジュアン
(72)【発明者】
【氏名】ホー,ティファニー
(72)【発明者】
【氏名】ブー,ジアチュアン
(72)【発明者】
【氏名】ディング,リリ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA65
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC27
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4C084ZC781
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4C085KB46
4C085KB56
4C085KB60
4C085KB65
4C085KB74
4C085LL18
(57)【要約】
ポルフィリン-リン脂質抱合体およびキレート剤-脂肪酸抱合体を含む二層ナノ小胞であって、キレート剤-脂肪酸抱合体が、一本鎖脂肪酸に結合されたアミノポリカルボン酸を含み、ポルフィリン-リン脂質抱合体が、好ましくはsn-1またはsn-2位で1つのリン脂質の脂質側鎖に共有結合された1つのポルフィリン、ポルフィリン誘導体またはポルフィリン類似体を含む、二層ナノ小胞を本明細書において記載する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポルフィリン-リン脂質抱合体およびキレート剤-脂肪酸抱合体を含む二層ナノ小胞であって、前記キレート剤-脂肪酸抱合体が、一本鎖脂肪酸に結合されたアミノポリカルボン酸を含み、前記ポルフィリン-リン脂質抱合体が、好ましくはsn-1またはsn-2位で1つのリン脂質の脂質側鎖に共有結合された1つのポルフィリン、ポルフィリン誘導体またはポルフィリン類似体を含む、二層ナノ小胞。
【請求項2】
前記アミノポリカルボン酸が、グリシネート、IDA、NTA、EDTA、DTPA、EGTA、BAPTA、NOTA、DOTA、ニコチアナミン、EDDHA、またはEDDSである、請求項1に記載の二層ナノ小胞。
【請求項3】
前記アミノポリカルボン酸が、EDTAまたはDTPAである、請求項2に記載の二層ナノ小胞。
【請求項4】
前記一本鎖脂肪酸が、10~26個の炭素を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の二層ナノ小胞。
【請求項5】
前記一本鎖脂肪酸が、12~22個の炭素を含む、請求項4に記載の二層ナノ小胞。
【請求項6】
前記一本鎖脂肪酸が、14~18個の炭素を含む、請求項5に記載の二層ナノ小胞。
【請求項7】
前記一本鎖脂肪酸が16個の炭素を含む、請求項6に記載の二層ナノ小胞。
【請求項8】
前記一本鎖脂肪酸が、ヘキサデシルアミドである、請求項7に記載の二層ナノ小胞。
【請求項9】
前記キレート剤-脂肪酸抱合体が、EDTA-ヘキサデシルアミドまたはDTPA-ヘキサデシルアミドである、請求項1に記載の二層ナノ小胞。
【請求項10】
15%~60%のキレート剤-脂肪酸抱合体を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の二層ナノ小胞。
【請求項11】
25%~50%のキレート剤-脂肪酸抱合体を含む、請求項10に記載の二層ナノ小胞。
【請求項12】
30%~40%のキレート剤-脂肪酸抱合体を含む、請求項11に記載の二層ナノ小胞。
【請求項13】
約30%のキレート剤-脂肪酸抱合体を含む、請求項12に記載の二層ナノ小胞。
【請求項14】
1~60モル%のポルフィリン-リン脂質抱合体を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の二層ナノ小胞。
【請求項15】
20~40モル%のポルフィリン-リン脂質抱合体を含む、請求項14に記載の二層ナノ小胞。
【請求項16】
約27モル%のポルフィリン-リン脂質抱合体を含む、請求項1に記載の二層ナノ小胞。
【請求項17】
前記ポルフィリン-リン脂質抱合体中のポルフィリン、ポルフィリン誘導体またはポルフィリン類似体が、ヘマトポルフィリン、プロトポルフィリン、テトラフェニルポルフィリン、ピロフェオホルバイド、バクテリオクロロフィル、クロロフェルa、ベンゾポルフィリン誘導体、テトラヒドロキシフェニルクロリン、プルプリン、ベンゾクロリン、ナフトクロリン、ベルジン、ロジン、ケトクロリン、アザクロリン、バクテリオクロリン、トリポルフィリン、ベンゾバクテリオクロリン、拡張ポルフィリンおよびポルフィリン異性体からなる群から選択される、請求項1~16のいずれか一項に記載の二層ナノ小胞。
【請求項18】
前記拡張ポルフィリンが、テキサフィリン、サフィリンまたはヘキサフィリンであり、前記ポルフィリン異性体が、ポルフィセン、反転ポルフィリン、フタロシアニン、またはナフタロシアニンである、請求項17に記載の二層ナノ小胞。
【請求項19】
前記ポルフィリン-リン脂質抱合体中のリン脂質が、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリンまたはホスファチジルイノシトールを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の二層ナノ小胞。
【請求項20】
前記リン脂質が、12~22個の炭素のアシル側鎖を含む、請求項19に記載の二層ナノ小胞。
【請求項21】
前記ポルフィリン-リン脂質抱合体中のポルフィリンが、ピロフェオホルバイド-a酸である、請求項1~16のいずれか一項に記載の二層ナノ小胞。
【請求項22】
前記ポルフィリン-リン脂質抱合体中のポルフィリンが、バクテリオクロロフィル誘導体である、請求項1~16のいずれか一項に記載の二層ナノ小胞。
【請求項23】
前記ポルフィリン-リン脂質抱合体中のリン脂質が、1-パルミトイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリンまたは1-ステアロイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリンである、請求項1~19のいずれか一項に記載の二層ナノ小胞。
【請求項24】
前記ポルフィリン-リン脂質抱合体がpyro脂質である、請求項1~16のいずれか一項に記載の二層ナノ小胞。
【請求項25】
前記ポルフィリン-リン脂質抱合体が、オキシ-バクテリオクロロフィル-脂質、テキサフィリン-リン脂質抱合体またはアザ-ホウ素ジピロメテン(BODIPY)-リン脂質抱合体である、請求項1~16のいずれか一項に記載の二層ナノ小胞。
【請求項26】
前記ポルフィリンが、0~20個の炭素の炭素鎖リンカーによってリン脂質上のグリセロール基に結合されている、請求項1~23のいずれか一項に記載の二層ナノ小胞。
【請求項27】
PEG化乳化剤をさらに含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の二層ナノ小胞。
【請求項28】
前記PEG化乳化剤が、約1000~約5000の範囲の分子量を有する、請求項27に記載の二層ナノ小胞。
【請求項29】
前記PEG化乳化剤が、N-(メトキシポリエチレングリコール5000カルバモイル)-1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルエタノールアミン(MPEG5000-DPPE)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000(DMPE-PEG2000)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000(DSPE-PEG2000)、ポリオキシエチレン40ステアレート(PEG40S)およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項27に記載の二層ナノ小胞。
【請求項30】
PEGまたはPEG-脂質が、1~10モル%の量で存在する、請求項28~30のいずれか一項に記載の二層ナノ小胞。
【請求項31】
PEGまたはPEG-脂質が、2~7モル%の量で存在する、請求項28~30のいずれか一項に記載の二層ナノ小胞。
【請求項32】
コレステロールをさらに含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の二層ナノ小胞。
【請求項33】
前記二層ナノ小胞の残りの組成物が、コレステロールを実質的に含む、請求項32に記載の二層ナノ小胞。
【請求項34】
前記コレステロールが、1~60モル%の量で存在する、請求項32に記載の二層ナノ小胞。
【請求項35】
実質的に球形である、請求項1~34のいずれか一項に記載の二層ナノ小胞。
【請求項36】
直径が約70~120nmである、請求項1~35のいずれか一項に記載の二層ナノ小胞。
【請求項37】
直径が約90~100nmである、請求項36に記載の二層ナノ小胞。
【請求項38】
前記ポルフィリン-リン脂質抱合体が、その中にキレートされた金属、任意選択により金属の放射性同位体を含む、請求項1~37のいずれか一項に記載の二層ナノ小胞。
【請求項39】
緩衝液中の請求項1~38のいずれか一項に記載の二層ナノ小胞を含む組成物。
【請求項40】
対象の標的領域に光線力学療法を実施する方法であって、
a.請求項39に記載の組成物を生成するステップと、
b.前記組成物を前記対象に投与するステップと、
c.前記標的領域を、前記組成物を励起してラジカルおよび/または活性酸素種を作製する波長の光で照射するステップと
を含む、方法。
【請求項41】
対象の標的領域をイメージングする方法であって、
a.請求項39に記載の組成物を生成するステップと、
b.前記組成物を前記対象に投与するステップと、
c.前記標的領域で蛍光または光音響シグナルを測定および/または検出するステップと
を含む、方法。
【請求項42】
対象に放射性同位体を輸送する方法であって、
a.前記二層ナノ小胞がその中にキレートされた放射性同位体を有する、請求項39に記載の組成物を生成するステップと、
b.前記組成物を前記対象に投与するステップと
を含む、方法。
【請求項43】
光線力学療法を実施するための請求項39に記載の組成物の使用。
【請求項44】
イメージングを実施するための請求項39に記載の組成物の使用。
【請求項45】
対象に放射性同位体を輸送するための請求項39に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、2021年7月13日に出願された米国仮特許出願第63/221212号に対する優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、ポルフィリンおよび脂肪酸抱合体を含むナノ小胞ならびに前記ナノ小胞の使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
光線力学療法(PDT)は、非毒性光感作物質と適当な波長の光との組合せを要し、酸素の存在下、細胞死および組織破壊のための活性酸素種を発生させる。PDTは、その二重選択性、腫瘍組織中の光感作物質の優先的蓄積、および光感作物質の活性化を局所領域に限定する標的領域へ空間的に集光された光のために、癌治療として魅力的である。PDTはまた、その低侵襲性、皆無かそれに近い瘢痕化、および必要に応じて同じ標的部位を複数回処置できることから、従来の癌治療を上回る多くの利点を提供する1-3。ほとんどの光感作物質は、腫瘍部位におけるその蓄積が治療のためのdrug to light interval(DLI)を誘導し、延長されたDLIが細胞レベルの光感作物質(細胞-PDT)の最適分布に使用される臨床レベルで全身投与される4。
【0004】
ポルフィリンは、自然界に存在する遍在化合物であり、光合成(クロロフィル)および酸素運搬(ヘム)などの多数の生物学的過程に関与する。ポルフィリンは、メチン架橋によって、その安定性および光学特性をもたらす環状構造に相互連結されたテトラピロール大員環である。ポルフィリンおよびその誘導体は、肺、食道、胆管、膀胱、卵巣、および子宮頸癌の治療のための有効なPDT剤として臨床的に承認された5-9。しかしながら、臨床上で使用される多くのポルフィリン系光感作物質は、低い化学的純度、弱い組織透過性、水準以下の腫瘍蓄積、および体液中にそれを凝集させて暗毒性および延長された光感受性をもたらす過剰な親油性など、その用途を制限する様々な欠点を持つ10。
【0005】
ポルフィゾームは、よく特徴付けられ、生体適合性のある有機分子であり、in vivoで酵素的に生分解性のポルフィリン-脂質で構成される自己組織化されたリポソーム様の二層ナノ小胞(約100nmの直径)である。1000mg/kgの用量のポルフィリン-脂質の投与は、マウスにおいて最小限の急性毒性を導き出した11,12。ポルフィゾームは、ナノ構造中に密集された高密度ポルフィリン光感作物質(>80,000のポルフィリン/粒子)を含有し、結果として蛍光の「超高速」消光および一重項酸素の発生をもたらし11、それによって極めて高い効率で特定の波長の光を熱に効果的に変換することができ、有機ナノ粒子において前例のない理想的な光熱および光音響特性が得られる。ポルフィゾームのナノ構造が解離すると、遊離ポルフィリンの蛍光および光活動性が回復し、低いバックグラウンド蛍光のイメージングおよび活性化可能な光線力学療法を可能にする。加えて、放射性同位体(例えば、64Cu)または金属(例えば、マンガン)は、ポルフィリン環へロバストにキレート化することができ、それぞれ、ポジトロン断層撮影(PET)および磁気共鳴画像(MRI)を可能にする13-15。結果として、ポルフィゾームの単純だがすべてを包含する性質は、マルチモーダルイメージングおよび治療のためのナノメディシン設計における新規のパラダイムを表す。
【0006】
ポルフィゾームは、光反応性消光条件で大量のポルフィリンを輸送し、優先的に蓄積し、最終的に腫瘍中で活性化させ、活性化が蛍光の非消光(unquenching)によって追跡され得るため、選択的PDTに潜在的によく適している11。しかしながら、従来のポルフィゾームのPDT適用は、低速の細胞内取り込みおよび癌細胞中の無制御/予測不可の活性化によって制限され、標的部位内に局在する活性光感作物質の量に大きく依存する有効なPDTに最適なDLIを規定する上で課題が出てくる。したがって、有効なPDTのためにポルフィゾームの腫瘍への蓄積および活性化を制御して誘発させるために積極的な試みを見つける必要がある。例えば、本発明者らは、葉酸共役PSなどの活性標的を含むことが、3時間および24時間のインキュベーション後のKB細胞中のポルフィゾーム細胞内取り込みを有意に強化することができ、結果としてマウス腫瘍モデルにおいて有意に強化されたPDTが得られたことを報告した16。
【0007】
エチレンジアミン四酢酸(EDTA)は、1953年以来、重金属中毒の治療に臨床上承認されてきた17,18。また、二価金属カチオンのキレート化が外因性の作用因子に対するグラム陰性菌の細胞壁の膜透過性を高めるため、様々な抗菌研究においても調査されてきた19。加えて、EDTAは、角膜、鼻、および腸上皮を通る薬物、タンパク質、およびペプチドの透過を促進する吸収促進剤と考えられる20。これは、隣接する上皮細胞間の密着結合を一時的にゆるめることによって傍細胞透過性を改善するために使用されてきた20。近年、EDTAキレート化による療法も、心臓血管疾患、神経変性疾患、および癌の治療のために研究されている21-25。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様において、ポルフィリン-リン脂質抱合体およびキレート剤-脂肪酸抱合体を含む二層ナノ小胞であって、キレート剤-脂肪酸抱合体が、一本鎖脂肪酸に結合されたアミノポリカルボン酸を含み、ポルフィリン-リン脂質抱合体が、好ましくはsn-1またはsn-2位で1つのリン脂質の脂質側鎖に共有結合された1つのポルフィリン、ポルフィリン誘導体またはポルフィリン類似体を含む、二層ナノ小胞を提供する。
【0009】
一態様において、緩衝液中の本明細書に記載の二層ナノ小胞を含む組成物を提供する。
一態様において、対象の標的領域に光線力学療法を実施する方法であって、本明細書に記載の組成物を生成するステップと、組成物を対象に投与するステップと、標的領域を、組成物を励起してラジカルおよび/または活性酸素種を作製する波長の光で照射するステップとを含む、方法を提供する。
【0010】
一態様において、対象の標的領域をイメージングする方法であって、本明細書に記載の組成物を生成するステップと、組成物を対象に投与するステップと、標的領域で蛍光または光音響シグナルを測定および/または検出するステップとを含む、方法を提供する。
【0011】
一態様において、対象に放射性同位体を輸送する方法であって、二層ナノ小胞がその中にキレートされた放射性同位体を有する、本明細書に記載の組成物を生成するステップと、組成物を対象に投与するステップとを含む、方法を提供する。
【0012】
一態様において、光線力学療法を実施するための本明細書に記載の組成物の使用を提供する。
一態様において、イメージングを実施するための本明細書に記載の組成物の使用を提供する。
【0013】
一態様において、対象に放射性同位体を輸送するための本明細書に記載の組成物の使用を提供する。
本発明の好ましい実施形態のこれらの特徴および他の特徴は、添付の図面が参照される以下の発明を実施するための形態においてより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】EDTA-脂質ベースの新規ポルフィゾーム(eNPS)の概略図を示す。
【
図2】A)NPSの代表的なTEM画像、B)無傷のNPSの吸収対破壊したNPSの吸収、およびC)無傷のNPSの蛍光発生対破壊したNPSの蛍光発生を示す。
【
図3】A)蛍光顕微鏡画像およびB)細胞抽出後の定量的蛍光測定によって検出された、PSと比較したeNPS細胞内取り込みを示す。二元配置分散分析とボンフェローニ補正法を用いて有意差(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001)を決定した。
【
図4】蛍光顕微鏡イメージングの下のKB上皮細胞対正常線維芽細胞(NFB)によるeNPS取り込みを示す。
【
図5】A)DTPA-脂質W/O Gd
3+キレート化の化学構造およびそれらの対応するTEM画像、B)蛍光顕微鏡イメージング(スケールバー=20μm)によるdNPS、eNPSおよびPSの細胞内取り込みの比較、ならびにC)定量細胞取り込み分析を示す。二元配置分散分析とボンフェローニ補正法を用いて有意差(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.0001)を決定した。
【
図6】eNPSおよびdNPS取り込みへの金属キレート化の効果を示す。A)蛍光顕微鏡イメージングは、1mMのCa
2+またはMg
2+とのプレインキュベーションが、KB細胞中のeNPS媒介による迅速な取り込みに影響しなかったことを明らかにした。B)Gd
3+キレート化は、dNPS取り込みに影響しなかった(DPS対DPS(Gd))。二元配置分散分析とボンフェローニ補正法を用いて有意差(*p<0.05)を決定した。
【
図7】単一脂肪酸DTPA-脂質を様々な二重脂肪酸(double fatty acid)DTPA-脂質と置き換えることによるNPS取り込みへの脂質鎖の効果の調査を示す。A)様々なDTPA-脂質の化学構造およびこれらのDTPA-脂質によって形成された対応するNPSのTEM画像。B)dNPSと比較した細胞内取り込み。
【
図8】A)eNPS、LC-eNPS~PSの正規化された細胞取り込み、*p<0.05、**p<0.0001、二元配置分散分析、B)蛍光消光効率によって追跡した50vol%のFBS中のeNPS(n=3)、LC-eNPS(n=3)、およびPS(n=3)の血清安定性を示す。
【
図9】温度およびエネルギーに依存するKB細胞中のeNPSおよびdNPSの取り込みを示す。トランスフェリン(Tfn)、eNPS、およびdNPSとインキュベートしたKB細胞の蛍光顕微鏡画像:異なる温度で3時間、B)1時間、NaN3および2-DGと共インキュベート。スケールバー=20μm。
【
図10】A)MitoTrackerおよびB)LysoTrackerとの共インキュベーションによって共焦点顕微鏡の下、KB細胞上で調べたeNPSおよびdNPSの細胞内局在性を示す。
【
図11】種々の各時間分(3、6または24時間)の5μMのeNPS、PS、およびLC-eNPSとのインキュベーションならびにそれに続く種々の線量の光照射の受光後のKB細胞上でのin vitroのPDT評価を示す。処置により光の線量は変動した。細胞の生存率をアラマーブルーアッセイによって評価した。
【
図12】KB皮下マウスモデル上のeNPS対PSのin vivo蛍光イメージングを示す。
【
図13】NOVADAQ Pinpointシステムによるハムスター頬の発癌モデル上のeNPS対PSの蛍光イメージングを示す。A)時間依存蛍光画像、ならびにB)eNPSおよびPSの腫瘍における時間による腫瘍蛍光強度追跡プロフィール。
【
図14】EDTA-ヘキサデシルアミド(EDTA-脂質)の合成を示す。
【
図15】3時間、6時間および24時間のポストインキュベーションにおけるPS、eNPS2およびeNPS3(1μM)を含有するインキュベーション培地を除去した直後および3時間後および18時間後の細胞の蛍光イメージングを示す。結果は、ポストインキュベーションの際にシグナル強調は出現せず、eNPSが細胞内環境内で急速な活性化を経たことを示唆する。
【
図16】高濃度のEDTAの共インキュベーションがPSの取り込みを増加できることを示す。結果は、eNPS媒介輸送の強化(
図4)(5μMのeNPSは、7μM以下のEDTA-脂質を含有する)とは異なり、1mMの遊離EDTAは、PS取り込みに対して無視できるほどの効果しか示さなかった。
【
図17】蛍光イメージングのために1mol%のポルフィリン脂質をドープしたリポソーム製剤中にEDTA-脂質を混入させた場合、結果として得られた1%のpyro-eNPS(pyro濃度に基づいて1μM)は、
図4のEDTA-脂質の混入においてeNPSが行ったものと同様の急速な取り込みを示したことを示す。EDTA-脂質は、1mol%のポルフィリン脂質を含有するリポソーム製剤中にEDTA-脂質を混入させたとき、ナノ粒子の急速な取り込みを誘発させる上で同じ役割を果たす。
【
図18】変動するdrug-light-interval(DLI)におけるeNPS、LC-eNPS、およびPSのin vivoのPDT効力の比較を示す。eNPSおよびLC-eNPS(3時間のDLI)は両方とも、PSと比較して最大のin vivoのPDT効力を実証した。二元配置分散分析とテューキー事後検定を用いて、群間の有意差(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.0001)を決定した。
【
図19】注射後の様々な時点におけるeNPS、LC-eNPS、およびPSのin vivo蛍光活性化の比較を示す。eNPSおよびLC-eNPSの両方は、PSと比較して、すべての時点で最大のin vivo蛍光活性化を実証した。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の説明において、本発明の完全な理解が得られるように多数の具体的な詳細を記載する。しかしながら、本発明は、これらの具体的な詳細なしに実践することが可能であることを理解されたい。
【0016】
この研究では、本発明者らは、良好な血清安定性を維持しながら大きく改善されたポルフィゾーム細胞内取り込みを示した次世代ポルフィゾーム(NPS)を作製するためのポルフィリンナノ小胞の構築のための非毒性EDTA-ヘキサデシルアミド抱合体(EDTA-脂質)を設計した。NPSが、ポルフィゾーム中の全脂質含有量の最大50mol%のEDTA-脂質を含有するとき、24時間のインキュベーションで、癌細胞内在化において目覚ましい20倍の強化が達成され、連続して、5μMの濃度で、従来のポルフィゾーム(細胞生存率97%)と比較してPDT効力の劇的な強化(細胞生存率7%)がもたらされた。このNPSプラットフォームは、EDTA-脂質からジエチレントリアミン五酢酸-ヘキサデシルアミド抱合体(DTPA-脂質)まで拡張することもできる。結果として、異なる放射性同位体(例えば、99mTc)または金属イオン(例えば、ガドリニウム)は、DTPAにロバストにキレート化でき、ポルフィゾームの固有の金属キレート化特性を補完する。興味深いことに、EDTA-脂質またはDTPA-脂質によって強化されたポルフィゾームの細胞内輸送の主な機構は、典型的なEDTA強化された細胞膜透過性について予測すると思われるようなCa2+またはMg2+キレート化に依存しなかったことが発見された。この知見は、複数の証拠によって支持された:1)上皮細胞中のNPS媒介によって強化された取り込みと異なり、PSと濃度1mMのEDTAとの共インキュベーションは、ポルフィゾームの細胞間取り込みを強化しなかった;2)高濃度のCa2+およびMg2+とのプレインキュベーション後のEDTA-脂質ベースNPS(eNPS)は、eNPS強化された輸送を減少しなかった;3)DTPA-脂質含有NPS(dNPS)は、Gd3+キレート化の有無にかかわらず、両方ともeNPSと同様の強化された取り込みを示した。皮下KBマウスモデルおよび生体関連ハムスター頬の発癌の両方における蛍光イメージング研究は、腫瘍において、PSを上回るeNPSの急速でかつ強化された蓄積/活性化をさらに実証した。したがって、NPSプラットフォームは、癌のマルチモーダルイメージングおよび有効なPDTのためのポルフィゾームを進歩させるために、ポルフィゾームの乏しい細胞内蓄積の限界を克服する可能性を実証する。
【0017】
一態様において、ポルフィリン-リン脂質抱合体およびキレート剤-脂肪酸抱合体を含む二層ナノ小胞であって、キレート剤-脂肪酸抱合体が、一本鎖脂肪酸に結合されたアミノポリカルボン酸を含み、ポルフィリン-リン脂質抱合体が、好ましくはsn-1またはsn-2位で1つのリン脂質の脂質側鎖に共有結合された1つのポルフィリン、ポルフィリン誘導体またはポルフィリン類似体を含む、二層ナノ小胞を提供する。
【0018】
一部の実施形態では、アミノポリカルボン酸は、グリシネート、IDA、NTA、EDTA、DTPA、EGTA、BAPTA、NOTA、DOTA、ニコチアナミン、EDDHA、またはEDDSである。好ましくは、アミノポリカルボン酸は、EDTAまたはDTPAである。
【0019】
一部の実施形態では、一本鎖脂肪酸は、10~26個の炭素を含む。
一部の実施形態では、一本鎖脂肪酸は、12~22個の炭素を含む。好ましくは、一本鎖脂肪酸は、14~18個の炭素を含む。さらに好ましくは、一本鎖脂肪酸は、16個の炭素を含む。一実施形態において、一本鎖脂肪酸は、ヘキサデシルアミドである。
【0020】
一部の実施形態では、キレート剤-脂肪酸抱合体は、EDTA-ヘキサデシルアミドまたはDTPA-ヘキサデシルアミドである。
一部の実施形態では、二層ナノ小胞は、15%~60%のキレート剤-脂肪酸抱合体、好ましくは25%~50%のキレート剤-脂肪酸抱合体、さらに好ましくは30%~40%のキレート剤-脂肪酸抱合体、さらに好ましくは、約30%のキレート剤-脂肪酸抱合体を含む。
【0021】
一部の実施形態では、二層ナノ小胞は、1~60モル%のポルフィリン-リン脂質抱合体、好ましくは20~40モル%のポルフィリン-リン脂質抱合体、さらに好ましくは、約27モル%のポルフィリン-リン脂質抱合体を含む。
【0022】
一部の実施形態では、ポルフィリン-リン脂質抱合体中のポルフィリン、ポルフィリン誘導体またはポルフィリン類似体は、ヘマトポルフィリン、プロトポルフィリン、テトラフェニルポルフィリン、ピロフェオホルバイド、バクテリオクロロフィル、クロロフェルa、ベンゾポルフィリン誘導体、テトラヒドロキシフェニルクロリン、プルプリン、ベンゾクロリン、ナフトクロリン、ベルジン、ロジン、ケトクロリン、アザクロリン、バクテリオクロリン、トリポルフィリン、ベンゾバクテリオクロリン、拡張ポルフィリンおよびポルフィリン異性体からなる群から選択される。
【0023】
好ましくは、拡張ポルフィリンは、テキサフィリン、サフィリンまたはヘキサフィリンであり、ポルフィリン異性体は、ポルフィセン、反転ポルフィリン、フタロシアニン、またはナフタロシアニンである。
【0024】
一部の実施形態では、ポルフィリン-リン脂質抱合体中のリン脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリンまたはホスファチジルイノシトールを含む。好ましくは、リン脂質は、12~22個の炭素のアシル側鎖を含む。
【0025】
一部の実施形態では、ポルフィリン-リン脂質抱合体中のポルフィリンは、ピロフェオホルバイド-a酸である。
一部の実施形態では、ポルフィリン-リン脂質抱合体中のポルフィリンは、バクテリオクロロフィル誘導体である。
【0026】
一部の実施形態では、ポルフィリン-リン脂質抱合体中のリン脂質は、1-パルミトイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリンまたは1-ステアロイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリンである。
【0027】
一部の実施形態では、ポルフィリン-リン脂質抱合体は、pyro-脂質である。
一部の実施形態では、ポルフィリン-リン脂質抱合体は、オキシ-バクテリオクロロフィル-脂質、テキサフィリン-リン脂質抱合体またはアザ-ホウ素ジピロメテン(BODIPY)-リン脂質抱合体である。
【0028】
一部の実施形態では、ポルフィリンは、0~20個の炭素の炭素鎖リンカーによってリン脂質上のグリセロール基に結合されている。
一部の実施形態では、二層ナノ小胞は、PEG化乳化剤をさらに含む。好ましくは、PEG化乳化剤は、約1000~約5000の範囲の分子量を有する。さらに好ましくは、PEG化乳化剤は、N-(メトキシポリエチレングリコール5000カルバモイル)-1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルエタノールアミン(MPEG5000-DPPE)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000(DMPE-PEG2000)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000(DSPE-PEG2000)、ポリオキシエチレン40ステアレート(PEG40S)およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0029】
一部の実施形態では、PEGまたはPEG-脂質は、1~10モル%の量で存在する。好ましくは、PEGまたはPEG-脂質は、2~7モル%の量で存在する。
一部の実施形態では、二層ナノ小胞は、コレステロールをさらに含む。
【0030】
一部の実施形態では、二層ナノ小胞の残りの組成物は、コレステロールを実質的に含む。
一部の実施形態では、コレステロールは、1~60モル%の量で存在する。
【0031】
一部の実施形態では、二層ナノ小胞は、実質的に球形である。
一部の実施形態では、二層ナノ小胞は、直径が約70~120nmである。好ましくは、二層ナノ小胞は、直径が約90~100nmである。
【0032】
一部の実施形態では、ポルフィリン-リン脂質抱合体は、その中にキレートされた金属、任意選択により金属の放射性同位体を含む。
一態様において、緩衝液中の本明細書に記載の二層ナノ小胞を含む組成物を提供する。
【0033】
一態様において、対象の標的領域に光線力学療法を実施する方法であって、本明細書に記載の組成物を生成するステップと、組成物を対象に投与するステップと、標的領域を、組成物を励起してラジカルおよび/または活性酸素種を作製する波長の光で照射するステップとを含む、方法を提供する。
【0034】
一態様において、対象の標的領域をイメージングする方法であって、本明細書に記載の組成物を生成するステップと、組成物を対象に投与するステップと、標的領域で蛍光または光音響シグナルを測定および/または検出するステップとを含む、方法を提供する。
【0035】
一態様において、対象に放射性同位体を輸送する方法であって、二層ナノ小胞がその中にキレートされた放射性同位体を有する、本明細書に記載の組成物を生成するステップと、組成物を対象に投与するステップとを含む、方法を提供する。
【0036】
一態様において、光線力学療法を実施するための本明細書に記載の組成物の使用を提供する。
一態様において、イメージングを実施するための本明細書に記載の組成物の使用を提供する。
【0037】
一態様において、対象に放射性同位体を輸送するための本明細書に記載の組成物の使用を提供する。
本明細書で用いる場合、「薬学的に許容される担体」は、生理的に相溶性の任意のおよびすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗生物質および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを意味する。薬学的に許容される担体の例としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどのうちの1つ以上、およびこれらの組合せが挙げられる。多くの場合、組成物中に、等張剤、例えば、糖類、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。薬学的に許容される担体は、薬剤の貯蔵寿命または有効性を強化する、湿潤剤または乳化剤、防腐剤または緩衝剤などの少量の補助物質をさらに含んでもよい。
【0038】
本明細書で用いる場合、「治療上有効な量」は、望ましい治療結果を達成するために必要な用量および特定の期間で効果的な量を指す。薬剤の治療上有効な量は、個人の病状、年齢、性別、および体重、ならびに個人における望ましい応答を引き出す薬剤の能力などの因子に応じて変動し得る。治療上有効な量はまた、治療上有益な作用が薬剤の任意の毒性または有害作用を上回る量でもある。
【0039】
本発明の利点は、以下の実施例によってさらに例示される。本明細書に記載の実施例およびその具体的な詳細は、例示のみを目的として提供されるものであり、本発明の請求項を制限するものとは解釈すべきでない。
【実施例】
【0040】
方法および材料
材料および試薬
コレステロール、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[アミノ(ポリエチレングリコール)-2000](DSPE-PEG2000)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-ジエチレントリアミン五酢酸(16:0PE-DTPA)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-ジエチレントリアミン五酢酸(ガドリニウム塩)(16:0PE-DTPA(Gd))およびジエチレントリアミン五酢酸-ビス(ステアリルアミド)(ガドリニウム塩)(DTPA-BSA(Gd))は、Avanti Polar Lipids(USA)から購入した。他のすべての溶媒および試薬は、Sigma Aldrichから入手した。ポルフィリン-脂質は、先に公開された方法にしたがって合成した11。EDTA-ヘキサデシルアミド抱合体(EDTA-脂質)およびDTPA-ヘキサデシルアミド抱合体(DTPA-脂質)は合成した(支援情報を参照)。Hoechst 33258およびLIVE/DEAD(登録商標)生存率/細胞毒性キットは、Invitrogen Corporation(Carlsbad,CA,USA)から購入した。Mitotracker Green FMまたはLysotracker Red DND-99は、Invitrogen/Thermo Fisherから入手した。
【0041】
クロマトグラフィー精製を、フラッシュクロマトグラフィー(Biotage、IsoleraTM)を用いて実施した。UPLC-MSを、Waters 2695コントローラ、2996フォトダイオードアレイ検出器、およびWaters三連四重極(TQ)質量検出器を備えたWaters Acuity UPLC(C)Peptide BEH C18カラム(130Å、1.7μm、2.1mm×50mm)(Waters Canada、カナダ、Ontario)を使用して実施した。UPLC条件は、以下の通りだった:溶媒A)0.1% TFAおよびB)アセトニトリル;カラム温度:60℃;流量:0.6mL/min;5分で80%A+20%Bから0%A+100%Bへの勾配、2分間100%Bで維持、後続して1分間で80%A+20%Bに急変化で戻る。NMRスペクトルを、1D 1H NMR、2D COSY 1H NMR 400.18MHzを測定するBruker Ultrashield 400 Plus NMR分光計で記録した。すべての測定は、内部標準テトラメチルシラン(TMS)を基準とした。
【0042】
EDTA一無水物の合成
エチレンジアミン四酢酸二無水物(3.2g、0.0125mol)を添加し、後続して乾燥DMF(20mL)をAr下で添加し、80℃に加熱した。15分の攪拌後、水(0.225mL)をゆっくり添加し、反応混合物をAr下で1時間45分間還流させた。粗生成物を濾過し、DMFおよびエーテルで洗浄し、白色の固体(1.95g、61%)を得た。分子構造は、1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 12.32 (s, 2H, CO2H), 3.72 (s, 4H), 3.43 (s, 4H), 2.83 - 2.74 (m, 2H), 2.58 (t, J = 6.1 Hz, 2H)によって特定した。
【0043】
EDTA-ヘキサデシルアミド脂質(EDTA-脂質)
EDTA一無水物(1.42g、5.2mmol)およびヘキサデシルアミン(1.2g、5mmol)を乾燥DMF(60mL)中に溶解し、Ar下、100℃で10時間還流した。反応混合物を室温に冷却し、水中に注ぎ入れて沈殿させ、濾過した。粗生成物を水およびジエチルエーテルで洗浄し、白色の固体(1.25g、49%)を得た。分子構造は、
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.01 (s, 1H, NH), 3.42 (s, 4H), 3.36 (s, 2H), 3.18 (s, 2H), 3.05 (d, J = 7.0 Hz, 2H), 2.79 - 2.63 (m, 4H), 1.38 (s, 2H), 1.30 - 1.14 (m, 26H), 0.85 (t, J = 6.6 Hz, 3H)によって確認した。UPLC-MS(ESI):516m/z[M+H]+.tr=1.3min。
図14参照。
【0044】
NPS合成およびキャラクタリゼーション
NPSを、ポルフィゾームを配合するための先に報告されたプロトコルにしたがって合成した11。ポルフィリン-脂質(ピロフェオホルバイド-脂質)、コレステロール(Avanti Polar Lipids(Alabaster,AL))、ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-メトキシ(ポリエテングリコール)(PEG2000-DSPE、Avanti Polar Lipids)、およびEDTA/DTPA脂質からなる種々のモル比の脂質成分をよく混合し、クロロホルムに溶解した。脂質混合物を、窒素ガスの緩流下で乾燥し、さらに1時間真空下に置いた。次いで乾燥脂質膜をPBS緩衝剤(150mM、pH7.5)で再水和し(濃度3mg/mL)、氷結解凍プロセスを9回経て、ポリカーボネート膜(孔径=100nm)に通して10回押し出した。NPSの形態を決定するために、粒子を2%の酢酸ウラニル逆染色法で染色し、次いでHitachi H-7000電子顕微鏡(Hitachi High Technologies America,Inc.(Illinois,USA))で走査した。サイズおよび分布は、動的光散乱(ZS90 Nanosizer,Malvern Instruments)によって測定した。分光学的研究において、PLPを、無傷/消光試料としてのPBS中または破壊/非消光試料としての0.5%のTriton X-100を含有するPBS中のいずれかで希釈した。無傷および破壊NPSの吸収および蛍光スペクトルを、UV/Vis分光光度計Cary 50(Agilent,Mississauga,ON)およびFluoromax-4(Horiba Jobin Yvon,USA)(励起:420nm、発光:630~800nm、スリット幅:5nm)によってそれぞれ測定した。ポルフィリン蛍光消光効率を、以下の式を使用して算出した。
消光効率=(1-Fi/Fd)×100%
FiおよびFdは、無傷および対応する破壊NPSの蛍光強度を意味し、ポルフィリンの濃度は1μMである。
【0045】
細胞内取り込み評価
まず蛍光顕微鏡検査法を用いて、10%のFBSを有するRPMI-1640培地中で培養したKB細胞上の粒子の細胞内取り込みを追跡した。簡単に言えば、インキュベーションの24時間前に、5×104細胞/ウェルを8ウェルチャンバスライド中に播種した。細胞を、37℃で4時間、ポルフィリン濃度が1μMのNPSおよびPSとインキュベートし、PBSで3回すすぎ、次いで新鮮な培地中で再培養した。Olympus FV1000レーザー蛍光走査顕微鏡(Olympus(Tokyo,Japan))を使用して、時間(インキュベーション培地の除去の直後、3時間後および18時間後)ごとの細胞のポルフィリン蛍光変化を監視した。蛍光顕微鏡検査法は、KB上皮細胞対正常線維芽細胞(NFB)中のeNPS取り込みを検査するためにも使用した。
【0046】
NPS対PSの細胞取り込みをさらに比較するために、定量的な細胞取り込みの試験を実施した。インキュベーションの24時間前に、KB細胞を、106細胞/ウェルで、12ウェルプレート中に播種した。次いで細胞を、37℃で、異なる時間分、ポルフィリン濃度を変えた様々なNPSおよびPSとインキュベートした。PBSで3回すすいだ後、細胞をトリプシン処理し、懸濁液を4000rpmで5分間遠心分離した。次いで2.5×105細胞を含有する細胞ペレットを500μLの溶菌緩衝液(DMSO)中で再懸濁し、1時間インキュベートした。溶液を10,000rpmで10分間遠心分離し、Fluoromax-4蛍光光度計を使用したポルフィリン蛍光測定のために上清を集めて、細胞中のポルフィリン分子の取り込みを定量化した。
【0047】
血清安定性評価
様々なeNPS、LC-eNPSおよびPS(1μM)の血清安定性を、37℃での種々の時間分のPBS中50vol%のFBSとのインキュベーションと、CLARIOstarミクロ平板プレートリーダー(BMG LABTECH)(励起:410/8nm、発光:671/8nm、ゲイン=2500)を使用して試料の蛍光消光効率の変化を決定することによって評価した。
【0048】
NPSの細胞内取り込み経路の評価
種々の温度でのKB細胞中のeNPSおよびdNPSの取り込みを、蛍光顕微鏡を使用して評価した。eNPSおよびdNPSとの3時間の4、18、および37℃でのインキュベーションの後、細胞を画像化し、各温度条件における蛍光シグナルを比較して、eNPSおよびdNPSが能動的にまたは受動的に癌細胞に取り込まれたかを決定した。これらの取り込みは、アジ化ナトリウム(NaN3)および2-デオキシ-D-グルコース(2-DG)を使用することによって、アデノシン-三リン酸(ATP)枯渇細胞条件下でさらに評価した。蛍光顕微鏡法が後続するeNPSおよびdNPSとの1時間の共インキュベーションの30分前に、KB細胞をNaN3および2-DGとプレインキュベートした。正常およびATP枯渇細胞条件間の蛍光の変化を評価した。
【0049】
eNPSおよびdNPSの細胞内局在性を、共焦点顕微鏡下、KB細胞上で検査した。ミトコンドリアおよびリソソーム中のeNPSおよびdNPSの細胞内局在性は、ミトコンドリアトラッカーのMitotracker Green FMおよびリソソームトラッカーのLysotracker Red DND-99を用いた共局在化評価によって評価した。オルガネラトラッカーとのインキュベーションの前に、KB細胞をナノ粒子と24時間インキュベートした。これらのトラッカーに使用した濃度およびインキュベーション時間は、製造業者の勧告にしたがって最適化した。共焦点像の設定:ポルフィリンチャネル:励起:633nm/発光:670~740nm;Lysotrackerチャネル:励起:552/発光:573~620nm、およびMitotrackerチャネル(励起:488nm/発光:510~600nm)。
【0050】
In vitro PDTアッセイ
eNPS、LC-eNPS、およびPSのin vitroのPDT活性化を、処置後のKB細胞の生存率を測定することによって決定した。KB細胞を5μMのeNPS、LC-eNPS、およびPSと3、6、および24時間インキュベートし、その後、660nmの自家製LEDライトボックスを使用して光照射(660nm;放射照度:30mW/cm2;線量:5および10J/cm2)を行った。細胞の生存率を、蛍光測定に先立って細胞を50μg/mLのalamarblueと2時間インキュベートするalamarblueアッセイを使用して、光線処置後24時間で評価した。次いでCLARIOstarミクロ平板リーダーを使用して、540nmで励起し、590nmで発光を集めることによって、alamarblue蛍光を測定した。普通の培地中で培養した細胞を、未処置の対照として使用した。ポルフィゾームで処置したが暗所で培養した細胞を使用して、各配合物の暗毒性を評価した。全試料の細胞生存率を未処置の対照に対して正規化した。
【0051】
In vivo蛍光イメージング
すべての動物は、University Health Network(UHN)動物実験委員会、オンタリオ州のAnimal for Research Act、およびカナダ動物管理協会によって考案された方針による人道的ケアを受けた。すべての動物実験は、UHN動物実験委員会のプロトコルによって認可された。KB皮下マウスモデルおよびハムスター頬の発癌モデルを本実験全体にわたって使用した。
【0052】
KB異種移植モデルを開発するために、8週齢の雌の無胸腺ヌードマウスの右脇腹に、全身麻酔(酸素中イソフルラン)下、200μLのPBS培地中の2×106KBを皮下接種した。動物を、UHN Animal Resource Centreのオートクレーブマイクロアイソレーターケージ中、病原体非含有条件で維持した。腫瘍サイズが直径4.0~5.0mmの平均サイズに達したら、マウスを無作為に分類し(各郡n=3)、4mg/kgのポルフィリンの用量のPSおよびeNPSを静脈内注射した。In vivo全身イメージングを、575~605nm励起/645nmロングパスエミッションフィルター(long-pass emission filter)を用いたMaestroイメージングシステム(CRI、USA)を使用して、種々の時点で実施し、マウスを2%(v/v)イソフルランによって麻酔しながら腫瘍の蓄積および活性化を比較した。低蛍光飼料(Harlan Tekland(登録商標)、製品番号TD.97184)を、NPS投与の3日前に動物に与えた。
【0053】
ハムスター実験では、6~8週齢の雄のシリアンハムスター(Harian,Indianapolis,USA)を使用して、ヒトにおける口腔癌の臨床症状を模倣するモデルを開発した26。簡単に言えば、動物をイソフルランで麻酔しながら、DMSO中0.5%のDMBA(7,12-ジメチルベンズ(a)アントラセン)を非吸収性材料と共に両方の頬に適用した。適用前、キムワイプを口腔内に詰めて喉に伝い落ちるのを最小限にし、適用が完了した後で除去した。この手順を、16~20週間の間、週3回繰り返した。一般に、視認できる腫瘍は、DMBA適用から10週間後に観察され、最大5~10mmのサイズまで達し得る。PSおよびeNPSを、用量4mg/kgのポルフィリン濃度で、橈側皮静脈を介してハムスターに投与し、in vivo蛍光イメージングのためのレーザー励起波長665nmで前臨床蛍光内視鏡(PINPOINTイメージングシステム、Novadaq Technologies Inc.,Mississauga,ON,Canada)に供し、蛍光強度分析のためにリアルタイムビデオを記録した。
【0054】
統計分析
二元配置分散分析とボンフェローニ補正法を用いて、実験群間の統計的有意性を決定した。P値<0.05は有意とみなした。
【0055】
結果および考察
EDTA-脂質ベースの新規ポルフィゾーム(eNPS)の設計および合成
EDTA部分をポルフィゾームのナノ構造中に組み込むために、EDTA一無水物をヘキサデシルアミンと結合させてEDTA-モノC16脂質抱合体(EDTA-脂質)を得ることによって、両親媒性EDTA-脂質を設計し、合成した(
図14)。化学構造は、NMRおよびuPLC-MSによって特定した(支援情報の合成およびキャラクタリゼーションを参照)。
【0056】
次いでポルフィゾーム配合物中のEDTA-脂質の比率を変動させる(18mol%~50mol%)ことによって様々なeNPSを作製した。eNPSの概略図を
図1に示し、各配合物における成分の含有量を表1に列挙した。PSの略語は、従来のポルフィゾーム配合物を意味する。
【0057】
【0058】
eNPSは、ポルフィゾームと同様の構造および光特性を示した
ポルフィゾーム配合物へのEDTA-脂質(18~50mol%)の組み込みは、粒子形態(
図2AのTEM画像に示したリポソーム様のナノ小胞構造)、粒径(Z平均:90~100nm)および単分散性(PDI:0.14~0.18)(表2)において無視できる効果しかもたらさず、ポルフィゾーム配合物中のEDTA-脂質の相溶性を示した。加えて、eNPSは、PSと同様の吸収スペクトル(
図2B)および高度の蛍光自己消光(150倍超)(
図2Cおよび表2)を示し、無傷ポルフィゾームの光特性への影響が最小限であることを示した。
【0059】
【0060】
eNPSは、KB細胞中で急速でかつ強化された細胞内取り込みを示した
様々なeNPSおよびPSの細胞内取り込みを、イメージングに先立ってKB細胞を1μMの粒子と4時間インキュベートした、蛍光顕微鏡によって監視した。
図3Aに示すように、30mol%超のEDTA-脂質を含有するeNPS2およびeNPS3は、PSと比較したとき、KB細胞中で急速な取り込みおよび有意に強化された蛍光を示した。無傷eNPSで蛍光が高度に消光されるため、内在化後のeNPS解離/活性化に時間のかかる過程であるかを監視するために、インキュベーション後、細胞を新鮮な培地中で連続的に培養した。
図15に示すように、eNPS2およびeNPS3とのインキュベーション後の全細胞の蛍光シグナルは、ポストインキュベーション時間の増加(3時間、18時間)と共にゆっくり蛍光が消えていくことを示した一方、ポストインキュベーションに際してシグナルの強化は現れず、eNPSが細胞内環境内で急速な活性化を経ることを示唆する。
【0061】
eNPSは細胞内での急速な活性化を示したが、PSを上回るeNPS強化された取り込みを定量化するために、定量的細胞抽出法をさらに適用して、様々な粒子の時間依存性の細胞内取り込みプロフィールを決定した。この方法を用いて、内在化されたeNPSおよびPSをDMSO溶菌液中で完全に破壊し、それによって取り込み定量化のためのポルフィリン蛍光を消光しなかった。
図3Bに示すように、ナノ粒子中のEDTA-脂質の比率の増加によって取り込みが強化される明確な傾向が観察された。最大のEDTA-脂質含有量(50mol%)を有するeNPS3は、すべての時点で最大の取り込みを実証した(p<0.05)。濃度5μMで、PSと比較して2.1、5.5、33.7、26.1倍強化された取り込みが、3、6、18および24時間のインキュベーションでそれぞれ観察された。30mol%のEDTA-脂質を含有していたeNPS2も、さらに長時間のインキュベーションで有意に強化された輸送を示し、例えば、18時間および24時間の5μMの粒子とのインキュベーション後に、それぞれ12.3倍および11.3倍に強化された取り込み(p<0.05)を示した。本発明者らは、すべての後続する研究における強化された輸送の評価に最適なeNPS配合物としてeNPS3を選択した。
【0062】
eNPSは、上皮細胞中で選択的取り込みを誘発したが、線維芽細胞中では誘発しなかった
蛍光顕微鏡検査法を用いて、上皮細胞KB対正常ヒト線維芽細胞中のeNPSの取り込みを評価した。興味深いことに、eNPSは、上皮細胞中で粒子取り込みを有意に強化したが、線維芽細胞中では強化しなかった(
図4)。上皮細胞中のeNPS強化された輸送が、細胞膜の透過率を増加し得る二価カチオン(例えば、Ca
2+、Mg
2+)とのEDTA頭部基(5μMのeNPSは7μMのEDTA-脂質を含有する)の相互作用によって引き起こされるかを調べるために、高濃度の遊離EDTA(1000μM)を添加して普通のPS(5μM)と共インキュベートし、PS取り込みへの任意の効果を調べた。結果(
図16)は、1mMの遊離EDTAが、無視できる強化しかPS取り込みに与えなかったことを明らかにした。加えて、EDTA-脂質は、EDTA-脂質をリポソーム配合物に組み込んだとき、細胞中のリポソームの迅速な内在化を誘発する上で同じ役割を果たす(HSPC:EDTA-脂質:pyro脂質:コレステロール:DSPE-PEG2000=32:49:1:15:2(mol/mol))(
図17)。
【0063】
DTPA-脂質ベースの新規ポルフィゾーム(dNPS)
NPSプラットフォームが、EDTA-脂質の四酢酸頭部基を他の親水性頭部基と置き換えることによって構築できるかを調べるために、ジエチレントリアミン五酢酸-ヘキサデシルアミド(DTPA-脂質)をNPS構築のために合成した。結果として得られたdNPS(表3の配合成分の詳細および
図5AのTEM画像を参照)は、eNPSと同様に強化された輸送挙動を示した。
図5Bに示すように、50mol%のDTPA-脂質またはEDTA-脂質のいずれかを含有するdNPSおよびeNPSは、3時間および6時間の両方のインキュベーション時間で、蛍光顕微鏡イメージング下、PSと比較して同様に強化された蛍光シグナルを示し、EDTA-脂質頭部基へのカルボン酸基(DTPA中の5つの基対EDTA中の4つの基)の添加がそれらの取り込みに影響しなかったことが示唆される。定量的細胞内取り込み研究は、各時点(6、18、または24時間)におけるdNPSおよびeNPSの細胞内シグナル間の非有意差をさらに確定し(p>0.05)、2つのナノ粒子の細胞取り込みプロフィールが類似していたことが示唆された(
図5C)。同様に、eNPSおよびdNPSは両方とも、すべての時点において、PSと比較して有意に高い細胞内蓄積があった(p<0.05)。これらのデータはまとめて、NPSプラットフォーム中のEDTA-脂質の四酢酸基およびDTPA-脂質の五酢酸頭部基の両方が、大きく改善されたPS取り込みに関与することを示唆する。
【0064】
Ca
2+またはMg
2+とのEDTAキレート化が、強化されたPS取り込みにおいて役割を果たすかを調べるために、細胞のインキュベーション前に、eNPSを高濃度のCa
2+またはMg
2+で前処置した。
図6Aに示すように、Ca
2+/Mg
2+処置eNPSは、PSと比較したとき、未処置eNPSと同様に強化された取り込みを示した。加えて、Gdキレート化DTPA-脂質(
図5A)によって作製されたdNPS(Gd)は、金属非含有dNPSと同様の細胞内取り込みを示した(
図6B)。これらの結果は、
図16の1mMの遊離EDTAによって引き起こされたPS取り込みの強化がなかったという先の観察とまとめて、eNPS強化輸送の機構が、Ca
2+またはMg
2+とのEDTAキレート化に依存しないこと確定し、したがって作用機構がこれまで知られていないことを示唆する。
【0065】
【0066】
キレート剤-脂質の脂質鎖がNPS取り込みに与える効果の評価
キレート剤-脂質の脂質鎖がNPS取り込みに与える効果を調べるために、16:0PE-DTPA、16:0PE-DTPA(Gd)およびDTPA-BSA(Gd)(これらの化学構造を
図7Aに示す)を含めた様々な二重脂質鎖を有するDTPA-脂質をポルフィゾームに組み込み、DPS
16PE、DPS
16PE(Gd)およびDPS
BSA(Gd)を形成した。これらの配合物の成分およびキャラクタリゼーションを表3にまとめ、これらの代表的なTEM画像を
図7Aに示す。eNPSおよびdNPS(単一脂肪酸脂質鎖を含有する)は、dNPS
16PE、dNPS
16PE(Gd)およびdNPS
BSA(Gd)(二重脂肪酸脂質鎖を含有する)のバリエーションと比較して有意に高い取り込みを実証し(
図7B)、eNPSまたはdNPS中の単一脂肪酸脂質鎖が、NPSの最大取り込み/非消光をもたらすことを示した。
【0067】
コレステロールおよびPEG含有量がNPSの細胞取り込みおよび血清安定性に与える効果の特性評価
NPSの血清安定性および可能な血液循環時間をさらに増加するために、LC-eNPSと称する新規eNPS配合物を開発した。LC-eNPSは、NPSと同じ比率のポルフィリン-脂質:EDTA-脂質を含むが、コレステロール(30mol%)およびDSPE-PEG2000(5mol%)は含有量が増加した(表3)。5Mのナノ粒子との24時間のインキュベーション後、LC-eNPSは、PSより10倍強化された細胞内取り込みを維持したが、eNPSと比較したとき50%未満の細胞内取り込みを示した(
図8A)。無傷ポルフィゾーム中で蛍光が高度に消光するが、ポルフィゾームナノ構造が解離されたときは消光しないため、NPSの蛍光消光効率の変化を用いて粒子の安定性を追跡した。50vol%のFBSを含有するPBSとのインキュベーション後、LC-eNPSは、eNPSと比較して高い安定性があるように見え、すべての時点でより高い蛍光消光があり、24時間にわたって85%の消光を維持し(
図8B)、コレステロールおよびPEGの含有量の、それぞれ30%および5%への増加が、血清条件におけるeNPSの安定性を改善でき、細胞内取り込み効率が緩やかに減少することを示唆する。
【0068】
NPSの細胞内取り込みの機構の研究
次いで、in vitroでのNPSの一般的な取り込み機構(受動または能動)を、温度およびエネルギー変調試験によって検査した。蛍光顕微鏡検査法を用いて、それらの取り込みを監視した。種々の温度条件でのeNPSおよびdNPSとのKB細胞のインキュベーション後、18℃および4℃と比較して、より強い蛍光シグナルが37℃で観察され、eNPSおよびdNPSの急速な取り込みがほとんど能動プロセスを介したものだったことを示唆した(
図9A)。NaN
3および2-DGを使用してATP枯渇細胞条件を作ることによって、普通の培養条件と比較して細胞内にeNPSおよびdNPSの最小限の蛍光シグナルがあったことが観察された(
図9B)。これは、eNPSおよびdNPSが、主に能動的に細胞中へ輸送されることを示唆する。
【0069】
PDT機構に関するeNPSの洞察を得るために、eNPSおよびdNPSの細胞内局在性を、共焦点顕微鏡イメージング下、KB細胞上で検査した。eNPSおよびdNPSシグナルの点状パターンが明確に観察され、両方のナノ粒子が細胞質ゾル全体にわたって分散されなかったことを示唆する。ミトコンドリアおよびリソソームトラッカーを用いた共局在化によって、eNPSおよびdNPSは、Mitotracker Green FMまたはLysotracker Red DND-99のいずれかと共局在化したようには見えなかった(
図10)。さらに、小胞体、ゴルジ、およびエンドソームトラッカーなどの他のオルガネラトラッカーを用いた共局在化試験を検査する。
【0070】
In vitro PDTのためのNPSの評価
eNPS、LC-eNPS、およびPSのIn vivoのPDT活性化をKB細胞中で評価した。結果を
図11に示し、5μMのeNPS、PS、およびLC-eNPSが、24時間のインキュベーション後、細胞に最小限の暗毒性を有していたことを実証した。光線処置すると、eNPSは、他の群と比較したとき、すべての時点で、細胞の生存率において最大の減少を誘導し、最大のPDT効力を有していたことを示唆した。LC-eNPSはまた、細胞の生存率においてより大きな低下をもたらし、結果として生じる細胞死は、LC-eNPS粒子の濃度および光の線量に大いに対応していた。24時間の細胞のインキュベーション後、5μMのeNPSおよびLC-eNPSは両方とも、5または10J/cm
2の線量で>95%の細胞死滅を引き起こした。しかしながら、PS処置細胞は、すべての実験条件(すべての濃度、インキュベーション時間、および光の線量)で最小限の細胞毒性を示した。eNPS、LC-eNPS、およびPSのin vitroのPDT効力傾向は、それらの取り込み効率とよく相関していた(
図8A)。したがって、eNPSおよびLC-eNPSの強化輸送は、最終的に有効なPDTを誘発した。
【0071】
In vivoでのNPSによって強化された輸送および活性化の評価
NPSがin vivo腫瘍蓄積および活性化に与える影響を評価するために、等価用量のeNPSおよびPS(4mg/kg)を、KB皮下腫瘍を有するマウスに静脈内投与し、その後、Maestroシステム(CRI,USA)を使用して、24時間にわたって動物全員in vivo蛍光イメージングを行った。曝露時間200msで575~605nmの励起フィルターおよび645nmのロングパスエミッションフィルターを使用して画像を獲得した。
図12に示すように、eNPSは、注射してから30分後の腫瘍中の有意な蓄積および活性化を実証し、24時間安定したままだった(n=5)一方で、PSは、5時間以内の腫瘍中で無視できる蛍光シグナルしか示さず、24時間でさらに低いシグナルを示し、eNPSが、成功裏の腫瘍蛍光イメージングのための腫瘍中のポルフィゾームの蓄積および活性化を有意に強化したことを示す。
【0072】
次いで、本発明者らは、DMBAの反復処置によって生じ、ヒトの口腔癌の臨床症状を厳密に模倣する、より生物学的に関連したハムスター頬の発癌にNPS強化蛍光イメージングを適用した
26。eNPSおよびPSを静脈内注射した後、NOVADAQ Pinpointシステム(Mississauga,Ontario)を使用してin vivo蛍光イメージングを実施し、ハムスター頬の腫瘍におけるポルフィリンの蛍光を視覚化した。
図13Aに示すように、eNPSの注射後15分で腫瘍特異的な強い蛍光が検出され、3時間でピークが出現し、24時間安定したままだった一方、PS基は、すべての時点で、かなり弱い腫瘍シグナルを示した。種々の時点における腫瘍蛍光強度は、Pinpointシステムによって定量化され、
図13Bにプロフィール化した。すべての時点を通して、eNPS基(n=12)対PS基(n=2)の腫瘍中で強化された蛍光シグナルが観察されたことが明確であり、具体的には、初期の時点の3時間で4.4倍に強化されたシグナルを、また24時間で1.7倍の強化が観察された。これらのデータは、腫瘍中の、PSを上回るeNPSの迅速かつ強化された蓄積および活性化をさらに実証した。したがって、NPSプラットフォームは、癌のイメージングおよび有効なPDTのためのポルフィゾームを進歩させるために、PSの乏しい腫瘍蓄積の限界を克服する可能性を提供する。
【0073】
In vivo PDT
図18を参照して、最適なレーザー処置パラメータを決定するためのin vivoのPDT予備実験後、様々なdrug-light-intervalにおけるeNPS、LC-eNPS、およびPSのin vivoのPDT有効性の評価を実施した。皮下KB腫瘍を有する無胸腺ヌードマウスにeNPS、LC-eNPSまたはPS(10mg/kgのポルフィリン濃度)を静脈内注射した後、注射後1、3、および6時間で671nmのレーザー照射(50mW、115J/cm
2)を行った。処置後のマウスの生存率および腫瘍サイズの変化を最長で4週間監視することによってPDT有効性を評価した。すべてのPDT処置群の腫瘍サイズは、対照群の腫瘍サイズと比較して統計的に低いことが判明した。eNPSおよびLC-eNPS(3時間のDLI)の両方は、PSと比較して強化されたPDT有効性を実証した。3時間のDLIでのePSおよびLC-ePS PDT処置は、3時間のDLIでのPSの20%と比較して、有意に高い率の腫瘍の完全切除(それぞれ100%および80%)を示した。
【0074】
In vivo蛍光活性化
図19を参照して、腫瘍部位でPDTのために利用可能な、PSと比較した、非消光または「活性」eNPSおよびLC-eNPSの程度を評価するために、これらのナノ粒子の注射後の腫瘍蛍光活性化を監視した。皮下KB腫瘍を有する無胸腺ヌードマウスにeNPS、LC-eNPSまたはPS(10mg/kgのポルフィリン濃度)を静脈内注射した後、注射後1、3、および6時間で、in vivo腫瘍蛍光イメージングを行った。eNPSおよびLC-eNPSは両方とも、PSと比較して、すべての時点で最大のin vivo蛍光活性化を実証した。
【0075】
この研究では、ポルフィゾーム配合物中に一本鎖脂肪酸EDTA-脂質を導入することによって次世代ポルフィゾームプラットフォーム(NPS)を開発し、これは、有意に強化された細胞内腫瘍細胞蓄積を実証し、有効性PDTをもたらす。NPSの強化された腫瘍蓄積および活性化は、皮下マウス腫瘍モデルおよび生体関連ハムスター頬発癌モデルの両方においても有効とされてきた。本発明者らの知る限りでは、これは、EDTA-脂質をナノ粒子配合物に組み込んで、それらの生物学的および治療特性を改善するための最初の報告である。重要なことには、EDTA-脂質によるナノ粒子の強化された輸送は、先に知られていない機構を介したものであり、単一脂肪酸DTPA-脂質抱合体まで拡張できるが、他の二重脂肪酸DTPA-脂質までは拡張できない。それらの光線療法の可能性は別として、NPSは、その優先的な迅速の取り込みおよび活性化された蛍光の誘導に起因して、蛍光誘導手術の適用に対して大きな将来性を示す。EDTA-脂質/DTPA-脂質の追加の金属/放射性同位体キレート化の能力は、ポルフィゾームの固有の金属キレート特性を補完し、NPSに、マルチモーダルイメージングおよび放射線療法のための広範囲の放射性同位体を輸送させる。したがって、NPSプラットフォームは、癌のマルチモーダルイメージングおよび有効なPDTのためのポルフィゾームを進歩させるために、ポルフィゾームの乏しい細胞内蓄積の限界を克服する可能性を実証する。
【0076】
本発明の好ましい実施形態を本明細書に記載してきたが、当業者であれば、本発明の趣旨または添付の特許請求の範囲から逸脱することなく変更が可能であることを理解するであろう。以下の参考文献一覧を含めた本明細書で開示したすべての文書は、参照により組み込まれる。
【0077】
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