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特表2024-526349レーザーパルススペクトル拡張装置、レーザー光源装置、及びレーザーパルスを生成する方法
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  • 特表-レーザーパルススペクトル拡張装置、レーザー光源装置、及びレーザーパルスを生成する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】レーザーパルススペクトル拡張装置、レーザー光源装置、及びレーザーパルスを生成する方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/10 20060101AFI20240709BHJP
   G02F 1/35 20060101ALN20240709BHJP
【FI】
H01S3/10 Z
G02F1/35
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502048
(86)(22)【出願日】2022-07-06
(85)【翻訳文提出日】2024-03-14
(86)【国際出願番号】 EP2022068754
(87)【国際公開番号】W WO2023285241
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】21186050.7
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500296114
【氏名又は名称】ドイチェス エレクトロネン-シンクロトロン デシー
(71)【出願人】
【識別番号】509255749
【氏名又は名称】ジーエスアイ ヘルムホルツツェントゥルム フュア シュヴェリオーネンフォルシュング ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】GSI Helmholtzzentrum fur Schwerionenforschung GmbH
【住所又は居所原語表記】Planckstrasse 1 64291 Darmstadt GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(72)【発明者】
【氏名】ヘイル、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ラング、ティノ
(72)【発明者】
【氏名】ザイデル、マルクス
【テーマコード(参考)】
2K102
5F172
【Fターム(参考)】
2K102AA10
2K102BA18
2K102BB02
2K102BC01
2K102DB01
2K102DD00
2K102DD10
2K102EB02
2K102EB20
2K102EB30
5F172AE03
5F172AF06
5F172NN17
5F172NR12
5F172NR21
(57)【要約】
レーザーパルス(1A)のスペクトルを拡張するレーザーパルススペクトル拡張装置(100)は、複数のミラー素子を有するマルチパスセル装置(10)であって、複数のミラー素子は、マルチパスセル装置(10)の入力部から出力部まで延びるビーム経路(2)を提供するために配置され、ミラー素子は、凹状の湾曲を有する集束ミラー素子を含む、マルチパスセル装置(10)と、パルススペクトル拡張装置(20)を通るレーザーパルスのスペクトルを拡張するためにビーム経路(2)内に配置されている少なくとも1つの非線形光学媒質(21)を含む、パルススペクトル拡張装置(20)とを備え、ミラー素子は、パルススペクトル拡張装置(20)を通る、ビーム経路(2)の複数の通路を提供する構成を有し、ミラー素子は、平面に近い形状を有する折返しミラー素子を更に含み、折返しミラー素子(11、12)の曲率半径の絶対値は、10mより大きく、折返しミラー素子は、ビーム経路(2)の折返しコリメーション部(3)を隔てて広がっており、ビーム経路(2)は、コリメーション部(3)全体に沿ってある程度のコリメーションを、コリメーション部(3)における累積コリメーション部グイ位相パラメータGcolがπ/15<Gcol<π//2になるように有し、ミラー素子は、nを自然数とするとき、マルチパスセル装置(10)を通って半往復する毎の累積半往復グイ位相パラメータGhrtが、n*π//2とは異なるように配置される。さらに、レーザーパルススペクトル拡張装置(100)を使用する、レーザー光源装置及びレーザーパルス(1B)を生成する方法が説明される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザーパルス(1A)のスペクトルを拡張するように構成される、レーザーパルススペクトル拡張装置(100)であって、
-マルチパスセル装置(10)であって、前記マルチパスセル装置(10)の入力部から出力部まで延びるビーム経路(2)を提供するために配置された複数のミラー素子(11、12、15、16)を含み、前記ミラー素子は、凹状の湾曲を有する集束ミラー素子(15、16、17、18)を含む、マルチパスセル装置(10)と、
-パルススペクトル拡張装置(20)であって、前記パルススペクトル拡張装置(20)を通る前記レーザーパルスのスペクトルを拡張するために構成され、且つ前記ビーム経路(2)内に配置される、少なくとも1つの非線形光学媒質(21、22、23)を含み、前記ミラー素子(11、12、15、16)は、前記パルススペクトル拡張装置(20)を通る、前記ビーム経路(2)の複数の通路を提供する構成を有する、パルススペクトル拡張装置(20)と
を備え、
-前記ミラー素子は、平面に近い形状を有する折返しミラー素子(11、12)を更に含み、前記折返しミラー素子(11、12)の曲率半径の絶対値が10mよりも大きく、前記折返しミラー素子(11、12)は、前記ビーム経路(2)の折返しコリメーション部(3)を隔てて広がっており、前記ビーム経路(2)は、前記コリメーション部(3)全体に沿ってある程度のコリメーションを、前記コリメーション部(3)における累積コリメーション部グイ位相パラメータGcolがπ/15<Gcol<π/2になるように有し、
-前記ミラー素子(11、12、15、16)は、nを自然数とするとき、前記マルチパスセル装置(10)を通って半往復する毎の累積半往復グイ位相パラメータGhrtが、n*π/2とは異なるように配置される、
ことを特徴とする、レーザーパルススペクトル拡張装置(100)。
【請求項2】
-前記集束ミラー素子(15、16)は、前記ビーム経路(2)の集束部(4)を隔てて広がっており、前記集束部(4)は、前記ビーム経路(2)の少なくとも1つの焦点を含み、
-前記コリメーション部(3)と前記集束部(4)とは、互いに隣接して配置され、前記ビーム経路(2)が、前記折返しミラー素子(11、12)によって折り返され、前記コリメーション部(3)及び前記集束部(4)は、前記レーザーパルスが前記コリメーション部(3)を交互に通過するように配置され、前記レーザーパルスは、前記折返しミラー素子(11、12)と前記集束部(4)との間で複数回反射される、
請求項1に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項3】
-前記光ビーム経路(2)は、前記集束ミラーのうちの1つ(17)から、前記折返しコリメーション部(3)を経由して、前記集束ミラーのうちのもう1つ(18)までの第1の長さLを有し、該長さLは、前記集束部(4)を経由した前記集束ミラー(17、18)間の復路の第2の長さLとは異なっており、L≧Lである、
請求項2に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項4】
-前記集束ミラー素子(15、16)は、前記コリメーション部(3)の端部を反射して前記コリメーション部(3)へ戻すように配置され、
-前記ビーム経路(2)には、焦点がなく、
-前記マルチパスセル装置(10)は、前記累積半往復グイ位相パラメータGhrtを有し、π/15<Ghrt<π/2である、
請求項1に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項5】
-前記コリメーション部(3)に沿った前記光ビーム経路(2)は、複数回折り返される、
請求項1~4の一項に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項6】
-前記パルススペクトル拡張装置(20)は、前記コリメーション部(3)内に配置される、
請求項1~5の一項に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項7】
-前記パルススペクトル拡張装置(20)は、前記集束ミラー素子(15、16)のうちの少なくとも1つに近接して配置される、
請求項1~6の一項に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項8】
-前記パルススペクトル拡張装置(20)は、複数の非線形光学媒質(21、22、23)を含む、
請求項1~7の一項に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項9】
-前記パルススペクトル拡張装置(20)は、前記マルチパスセル装置(10)全体を満たすガス媒質(23)を含む、
請求項1~8の一項に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項10】
-前記折返しミラー素子(11、12)は、互いに距離を隔てて配置された2つの折返しミラー(13、14)の反射部によって提供される、
請求項1~9の一項に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項11】
-前記折返しミラー素子(11、12)は、前記折返しミラー(13、14)の重複部である、
請求項10に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項12】
-前記集束ミラー素子(15、16)は、互いに距離を隔てて配置された2つの集束ミラー(17、18)の反射部によって提供される、
請求項1~11の一項に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項13】
-前記集束ミラー素子(15、16)は、前記集束ミラー(17、18)の重複部である、
請求項12に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項14】
-前記折返しミラー素子(11、12)は、第1のグループの折返しミラー及び第2のグループの折返しミラーによって提供され、前記第1及び第2のグループの折返しミラーは、互いに距離を隔てて配置される、
請求項1~13の一項に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項15】
-前記集束ミラー素子(15、16)は、第1のグループの集束ミラー及び第2のグループの集束ミラーによって提供され、前記第1及び第2のグループの集束ミラーは、互いに距離を隔てて配置される、
請求項1~14の一項に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項16】
-前記折返しミラー素子(11、12)は、1行又は複数行のマルチパスパターン(5)を提供し、且つ/或いは前記集束ミラー素子(15、16)は、1行又は複数行のマルチパスパターン(6)を提供する、
請求項1~15の一項に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項17】
-前記折返しミラー素子(11、12)は、円形又は楕円形のマルチパスパターン(7)を提供する、
請求項1~16の一項に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項18】
-前記集束ミラー素子(15、16)は、円形又は楕円形のマルチパスパターン(8)を提供する、
請求項1~17の一項に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項19】
-前記折返しミラー素子(11、12)は、V構成で配置され、前記折返しミラー素子(11、12)の法線方向が、ゼロとは異なる傾斜角を有する、
請求項1~18の一項に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項20】
-前記非線形光学媒質(21、22)は、前記拡張レーザーパルス(1A)の全スペクトル範囲で透明である、少なくとも1つの透明板を含む、
請求項1~19の一項に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項21】
-前記ミラー素子(11、12、13、14)のうちの少なくとも1つは、チャープミラー素子である、
請求項1~20の一項に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項22】
-前記マルチパスセル装置(10)は、非線形媒質としてのガス(23)で満たされたチャンバ(30)内に配置される、
請求項1~21の一項に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項23】
レーザーパルスを生成するように構成される、レーザー光源装置(200)であって、
-一次レーザーパルスを生成するために配置されるレーザー光源(210)と、
-前記一次レーザーパルスを受光するため、且つスペクトルを拡張するために配置されている、請求項1~22の一項に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置(100)とを備える、
レーザー光源装置(200)。
【請求項24】
-前記レーザー光源のビームモードが、前記少なくとも1つの非線形光学媒質(21、22、23)のレンズ効果を考慮した非線形動作条件で、又は線形動作条件で、前記マルチパスセル装置(10)によって規定された光場モードと整合する、
請求項23に記載のレーザー光源装置。
【請求項25】
-スペクトル拡張レーザーパルスを受光するため、且つ時間的に圧縮するためのパルス圧縮装置(220)が配置される、
請求項23~24の一項に記載のレーザー光源装置。
【請求項26】
-レーザー光源(210)で、一次レーザーパルス(1A)を生成するステップと、
-請求項1~22の一項に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置(100)で、前記一次レーザーパルス(1A)をスペクトル拡張するステップと、
-スペクトル拡張レーザーパルス(1B)を出力するステップとを含む、
レーザーパルス(1B)を生成する方法。
【請求項27】
-前記レーザー光源(210)のビームモードを、前記マルチパスセル装置(10)によって規定された光場モードと整合させる、更に別のステップを含む、
請求項26に記載の方法。
【請求項28】
-パルス圧縮装置(220)で、前記スペクトル拡張レーザーパルス(1B)を時間的に圧縮する、更に別のステップを含む、
請求項26~27の一項に記載の方法。
【請求項29】
-前記マルチパスセル装置(10)で、前記スペクトル拡張レーザーパルスを時間的に圧縮する、更に別のステップを含む、
請求項26~28の一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザーパルスのスペクトルを拡張するためのレーザーパルススペクトル拡張装置に関する。さらに、本発明は、レーザーパルススペクトル拡張装置を備えるレーザー光源装置、及びレーザーパルススペクトル拡張装置が使用される、レーザーパルスを生成する方法に関する。本発明の用途は、例えばレーザー技術の分野、特に、高出力のレーザー装置及び光学系で使用可能である。
【背景技術】
【0002】
本明細書では、本発明の技術背景を説明する、以下の先行技術が参照される。
[1] T.Nagy et al.in「Adv.Physics」X 6,1845795(2020).
[2] J.Schulte et al.in「Opt.Lett.」41,4511(2016);
[3] L.Lavenu et al.in「Opt.Lett.」43,2252(2018);
[4] C.Grebing et al.in「Opt.Lett.」45,6250(2020);
[5] M.Kaumanns et al.in「Opt.Lett.」43,5877(2018);
[6] P.Balla et al.in「Opt.Lett.」45,2572(2020);
[7] J.Song et al.in Appl.Phys.B 127,50(2021);
[8] K.Fritsch et al.in「Opt.Lett.」43,4643(2018);
[9] J.Weitenberg et al.in「Opt.Express」25,20502(2017);
[10] M.Kaumanns et al.in「Opt.Lett.」46,929,(2021);
[11] E.A.Khazanov et al.in「Physics-Uspekhi」62,1096(2019);
[12] C.Heyl et al.in「Optica」3,75(2016);
[13] D.R.Herriott et al.in「J.Opt.Soc.Am.B」34,1340(2017);
[14] G.S.Engel et al.in「Opt.Lett.」32,704(2007);
[15] F.Guichard et al.in「Optics Letters」Vol.38,Issue 21,pp.4437-4440(2013);
[16] A.Klenke et al.in「Optics Letters」Vol.39,Issue 12,pp.3520-3522(2014);
[17] 米国特許第9847615号明細書(米国特許出願公開第2017/0125964号明細書);
[18] M.Stanfield et al.in「Opt.Express」29(6),9123(2021);
[19] M.Ueffing et al.in「Optics Letters」43,2070(2018)
【0003】
超短レーザーパルスは、時間及び周波数領域分光法並びに強度場物理から、外科手術及び溶接を含む日常生活用途まで、多くの分野で重要な役割を果たしている。超短パルスの生成及び増幅には、帯域幅制限によって課される、持続時間の制約がある。特にmJレジーム以上のパルスエネルギーをもたらす、最も一般的な超高速プラットフォームは、今日ではチタン:サファイア(Ti:Sa)及びイッテルビウム(Yb)に基づいたシステムであり、数十fs(Ti:Sa)から数百fs(Yb)までの持続時間で増幅されたパルスを提供する。この制限を克服する一般的な方法がレーザーパルス事後圧縮[1]であり、事後圧縮方法は、1つの半周期の持続時間によって規定された、基本的なパルス持続時間制限に近づく手段を提供する。知られている事後圧縮方法は、非線形スペクトル拡張、及びパルスの同時又は後発のいずれかの時間的な圧縮に依存する。
【0004】
様々なスペクトル拡張方法が一般に使用されており[1]、拡張方法は、単一又は複数のプレート内、フォトニック結晶ファイバ又は中空コアキャピラリ(HCC)内、フィラメント又はスラブ導波路の非線形伝搬を含む。近年、マルチパスセル(MPC)内での非線形スペクトル拡張に基づいた方法が導入された[2]。この方法は、高透過率[3、4]、高出力処理[4]高ビーム品質[3、5]、及び高圧縮比[5、6]をもたらし、その一方で、10ps[7]~数周期[6、8]の持続時間、及びμJ[9]~112mJ[10]のパルスエネルギーを含む多様なレーザーパルスパラメータに適用可能である。
【0005】
今のところ、主な課題は高パルスエネルギーに対する高性能な事後圧縮方法の適用である。特に、ジュール級のパルスエネルギーレジームへと進歩しつつある事後圧縮方法により、チャープパルス増幅[11]のピークパワー限界を克服する可能性がある、強度場物理への適用が可能になる可能性がある。HCC、MPC、又はフィラメントに基づいた方法などの手法は、原理上、非常に高いパルスエネルギーにスケーリングすることが可能な一方で[12]、必要な装置サイズが非実用的な大きさになる。一例として、従来のヘリオット型MPCでは、ミラーで生じる高強度は、ミラー上のビームスポットを大きくすることによって回避される。ビームスポットを大きくするには、レーザービームモードがMPCの固有モードに整合した状態を維持するために装置サイズの延長が必要になり、これには良好なスペクトル拡張性能を達成する利点がある。代替的なパルスエネルギースケーリング手法が薄膜に使用されており、ジュール級のパルスを使って試されている[11]。しかしながら、このような方法は、ファイバ及びMPCに基づいた方法と比較してビーム品質の低下に悩まされており、今のところ小さい圧縮係数にしか達していない。
【0006】
高パルスエネルギースペクトル拡張/圧縮の他の知られている方法は、空間的及び/又は時間的パルス多重化([15]、[16]を参照)、及び高次ビームモード[10]を使用している。これらの方法は、ミラーにおける強度が低下し、従ってパルスエネルギーを高めるが、用途に対して好ましくないことが多いパルス分割又はモード変更を必要とする。さらに、多重化方法は、特に多重化係数が大きいとシステムの複雑性が増す。
【0007】
レーザーパルスのスペクトルを拡張し、且つ非線形パルス圧縮をするためのマルチパスセル装置が[17]で説明されている。マルチパスセル装置は、排他的に集束したビーム経路で光共振器に広がる、曲面ミラーを備える。誘電体の臨界出力に満たないパルス出力の限界を克服するために、スペクトルを拡張するために提供される非線形位相は、非線形性のない集束ビーム経路の部分毎に分離された小さいステップに分割される。曲面ミラーは、マルチパスセル装置が、光共振器の安定性エッジに近い安定性範囲内で動作されるように構成される。この構成に必要なグイ位相パラメータにより、いわゆる4f結像、及び対応するビームサイズ変更のオプションは、[17]のマルチパスセル装置では除外される。[17]のマルチパスセル装置の集束ビーム経路は、折返しミラーによって折り返され得る。それでもなお、このマルチパスセル装置はまだ、[17]では20mJに達する場合がある、より高いパルスエネルギーにスケーリングするのに必要な、装置サイズの大型化の問題を抱えている。
【0008】
非実用的なほど大きい装置サイズを必要とすることなく、使用されているミラーの全部又は少なくとも一部でビームサイズを大きくすることが可能なマルチパススペクトル拡張装置が、[18、19]で説明されている。[17]とは対照的に、これらの方法は、必然的に、ゼロに近いグイ位相で完全にコリメートされたビーム経路部分を含む4f結像構成を使用しつつ、装置サイズを調節することなくビームサイズを変更することが可能である。エネルギースケーリングは、ミラー上のスポットサイズを調節することによって得られる。しかしながら、4f結像は、安定性範囲のエッジでの動作を必要とすると同時に、累積的なカーレンズ効果につながる結像条件をもたらし、光共振器内でビーム品質を損なう。[18、19]で説明されている装置は、小型の装置サイズでのエネルギースケーリングをサポートするが、大きい圧縮係数と良好なビーム品質とを同時にはサポートせず、従って大きい圧縮係数で動作しているときに、良好なビーム品質を提供しながら高エネルギーパルスを圧縮するのには適していない。
【0009】
要約すると、従来の事後圧縮方法では、例えば5mを下回る長さの実験室規模の装置サイズを使用しながら、マルチ100mJパルスなどの高エネルギーパルスを、10以上などの大きい圧縮比で処理できるものはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第9847615号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2017/0125964号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】T.Nagy et al.,Adv.Physics:X(2020),6,1845795
【非特許文献2】J.Schulte et al.,Opt.Lett.(2016),41,4511
【非特許文献3】L.Lavenu et al.,Opt.Lett.(2018),43,2252
【非特許文献4】C.Grebing et al.,Opt.Lett.(2020),45,6250
【非特許文献5】M.Kaumanns et al.,Opt.Lett.(2018),43,5877
【非特許文献6】P.Balla et al.,Opt.Lett.(2020),45,2572
【非特許文献7】J.Song et al.,Appl.Phys.B(2021),127,50
【非特許文献8】K.Fritsch et al.,Opt.Lett.(2018),43,4643
【非特許文献9】J.Weitenberg et al.,Opt.Express(2017),25,20502
【非特許文献10】M.Kaumanns et al.,Opt.Lett.(2021),46,929
【非特許文献11】E.A.Khazanov et al.,Physics-Uspekhi(2019),62,1096
【非特許文献12】C.Heyl et al.,Optica(2016),3,75
【非特許文献13】D.R.Herriott et al.,J.Opt.Soc.Am.B(2017),34,1340
【非特許文献14】G.S.Engel et al.,Opt.Lett.(2007),32,704
【非特許文献15】F.Guichard et al.,Optics Letters,vol.38,issue 21,2013,pp.4437-4440
【非特許文献16】A.Klenke et al.,Optics Letters,vol.39,issue 12,2014,pp.3520-3522
【非特許文献17】M.Stanfield et al.,Opt.Express,vol.29,issue 6,2021,pp.9123-9136
【非特許文献18】M.Ueffing et al.,Optics Letters(2018),43,2070
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、従来技術の欠点を回避する、レーザーパルスのスペクトルを拡張するための改良されたレーザーパルススペクトル拡張装置、改良されたレーザー光源装置、及び/又はレーザーパルスを生成する改良された方法を提供することである。特に、小型の構成、例えば数100mJ以上の増加したパルスエネルギー、且つ/又は大きい圧縮比でのレーザーパルス拡張が可能になり、特に、複雑な空間的及び時間的多重化方法を必要としない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、それぞれが独立クレームの特徴を含む、レーザーパルススペクトル拡張装置、レーザー光源装置、及び/又はレーザーパルスを生成する方法によって達成される。本発明の好ましい実施形態及び用途は、従属クレームから生じる。
【0014】
本発明の第1の一般的な態様によれば、上述の目的は、レーザーパルスのスペクトルを拡張するように構成される、レーザーパルススペクトル拡張装置によって達成される。レーザーパルススペクトル拡張装置は、マルチパスセル装置であって、マルチパスセル装置の入力部から出力部まで延びるビーム経路を提供するために配置された複数のミラー素子を含むマルチパスセル装置を備える。入力部及び出力部は、例えば、ミラー素子のうちの1つにある穴によって、又はビーム経路内に配置された追加のピックオフミラーによって提供されてもよい。ミラー素子は、凹状の湾曲を有する集束ミラー素子を含む。さらに、レーザーパルススペクトル拡張装置は、パルススペクトル拡張装置を通るレーザーパルスのスペクトルを拡張するように構成され、且つビーム経路内に配置される少なくとも1つの非線形光学媒質を含むパルススペクトル拡張装置を備え、ミラー素子は、パルススペクトル拡張装置を通るビーム経路の複数の通路を提供する構成を有する。
【0015】
本発明によれば、ミラー素子は、平面に近い形状を有する折返しミラー素子をさらに含み、折返しミラー素子は、ビーム経路の折返しコリメーション部に広がっており、ビーム経路は、コリメーション部全体に沿ってある程度のコリメーションを、コリメーション部における累積コリメーション部グイ位相パラメータGcolがπ/15<Gcol<π/2になるように有する。言い換えると、ミラー素子の構成、特に、折返しミラー素子の平面に近い形状は、ビーム経路がコリメーション部全体に沿ってほぼコリメートされるように選択される。したがって、マルチパスセル装置は、折返しコリメーション部で構成され、即ち折返しミラー素子は、マルチパスセル装置内のビーム経路の一部が平行に近い形状を有するように、配置且つ形成される。コリメーション部における累積グイ位相は、特に、長い伝搬距離によって決定され、これは、コリメーション部を折り返すことによって得られる。
【0016】
さらに、本発明によれば、ミラー素子は、nを自然数とするとき、マルチパスセル装置を通って半往復する毎の累積半往復グイ位相パラメータGhrtが、n*π/2とは異なるように配置される。累積半往復グイ位相パラメータGhrtは、例えば、コリメーション部の中央から、1つの集束ミラーを経由して集束部の中央まで、マルチパスセル装置を通って半往復する毎に計算されてもよい。
【0017】
コリメーション部において、マルチパスセル装置は、平行に近い(1つ又は複数の)光場モードの外形を有する。「ほぼコリメートされる」又は「平行に近い」という言葉は、理想的な平行ビーム経路形状から、即ちグイ位相パラメータG≒0のレーザーパルスのビーム経路からずれたビーム経路形状のことをいう。特に、コリメーション部全体に沿ったコリメーションの度合いは、理想的なコリメーションからずれており、結果、[18]又は[19]のような4f結像構成(安定性エッジでの動作と等価)が妨げられる。理想的な平行ビーム経路形状からのずれは、マルチパスセル装置内での結像から、及びマルチパスセル装置内でビーム経路を空間的に安定して折り返すように適合されている折返しミラー形状から生じる。コリメーション部は、上述した累積コリメーション部グイ位相パラメータGcolによって決定された、ビーム経路の弱い焦点を含む。したがって、折返しミラー素子は、平面に近い形状を有し、「平面に近い」という言葉は、平面反射面、又はマルチパスセル装置内でレーザーパルスが空間的に安定してマルチパス循環できるように曲率半径が選択されている、凹状若しくは凸状の反射面のことをいう。好ましくは、平面に近い折返しミラー素子の曲率半径の絶対値は、10mよりも大きい。
【0018】
半往復グイ位相パラメータGhrtをn*π/2とは異なる値に制限すること、及びより具体的にはGcol>π/15にすることにより、安定性エッジに近いところにおいて、マルチパスセル装置の動作を妨げ、大きい圧縮係数が目標とされた場合は、均質な空間的ビームプロファイルを形成することができなくなる。安定性エッジに非常に近いところでの動作は、非線形媒質が空間的ビームプロファイルの歪みを引き起こすことにより、カーレンズの累積的な影響が生じる。Gcol<π/2に制限することにより、折返しミラー上のビームスポットが小さくなって、ミラーが高パルスエネルギーで損傷するようなレジームでの動作を防止する。
【0019】
本発明の第2の一般的な態様によれば、上述の目的は、レーザーパルスを生成するように構成されるレーザー光源装置によって達成され、レーザー光源装置は、一次レーザーパルスを生成するために配置されるレーザー光源と、本発明の第1の一般的な態様又はその実施形態に係るレーザーパルススペクトル拡張装置とを備え、レーザーパルススペクトル拡張装置は、一次レーザーパルスを受光するため、且つスペクトルを拡張するために配置される。好ましくは、レーザー光源のビームモードは、特に、少なくとも1つの非線形媒質のレンズ効果を考慮した非線形動作条件、又は線形動作条件で、レーザーパルススペクトル拡張装置のマルチパスセル装置によって規定された光場モード、特に好ましくは固有モードと整合される。さらに、特に好ましくは、マルチパスセル装置自体は、スペクトル拡張レーザーパルスを時間的に圧縮するために配置され、且つ/又はマルチパスセル装置と接続されているパルス圧縮装置は、スペクトル拡張レーザーパルスを受光するため且つ時間的に圧縮するために配置される。
【0020】
本発明の第3の一般的な態様によれば、上述の目的は、レーザーパルスを生成する方法によって達成され、方法は、レーザー光源で一次レーザーパルスを生成するステップと、本発明の第1の一般的な態様又はその実施形態に係るレーザーパルススペクトル拡張装置で、一次レーザーパルスのスペクトルを拡張するステップとを含む。好ましくは、レーザー光源のビームモードは、レーザーパルススペクトル拡張装置のマルチパスセル装置によって規定された光場モードと整合される。特に好ましくは、レーザーパルスを生成するステップは、レーザーパルススペクトル拡張装置のマルチパスセル装置で、及び/又は別のパルス圧縮装置で、スペクトル拡張レーザーパルスを時間的に圧縮するステップを含む。
【0021】
本発明では、発明者は、モード整合したレーザーパルス循環を可能にする新しいマルチパスセル装置構成、即ち空間的レーザービームプロファイルを、マルチパスセル装置を通ってそれぞれ循環した後に反復する、マルチパスセル装置の安定性範囲内での新しい動作構成を見出した。好適には、好ましくは4つ(又はより多く)のミラー形状を使用して、マルチパスセル装置は、マルチパスセル装置の全てのミラー素子で、より大きいレーザービーム径が達成されるように配置される。折返しコリメーション部により、マルチパスセル装置を通って循環する毎に長い伝搬経路が得られ、従って、全ての折返しミラー素子において、大きいビームサイズ及び大きいレーザービームスポットサイズを有する構成が可能になり、従来技術で知られているMPCに基づいたスペクトル拡張の全ての利点を利用しながら、高パルスエネルギーを得ることが可能になる。従来技術とは対照的に、当該マルチパスセル装置は、持続時間がps又はfsレジームの、スポットサイズが>1J級のレーザーパルスをサポートするスペクトル拡張用途に適している。
【0022】
特に、[17]とは対照的に、平面に近い折返しミラーは、強いビーム経路焦点を含まず、従ってミラー上に大きいスポットサイズをもたらすことが可能である。また、本発明は、集束及び/又は折返しミラーにおける、特に小さくまとまって、特に相互に重なる、ビームスポットの幾何学的配置によって、ミラー素子毎に複数の大きいビームスポットをもたらすにもかかわらず、比較的小型のミラーサイズの使用を可能にする。さらに、マルチパスセル装置におけるコリメーション部の提供により、ビームを折り返す幾何学的配置の使用が可能になり、結果としてレーザーパルススペクトル拡張装置が、小さくまとまった構成になる。好適には、本発明で使用されるマルチパスセル装置は、従来のヘリオット型MPC又は大型コアキャピラリのように、装置の最大寸法を必ずしもパルスエネルギーに合わせてスケーリングする必要がないという特徴を有する。
【0023】
本発明は、マルチパスセル装置内に配置された少なくとも1つの非線形光学媒質を通る複数の通路を介した、レーザーパルスの反復性非線形スペクトル拡張に依存し、好ましくは、例えば標準的な時間的なパルス圧縮方法を使用した再圧縮が伴う且つ/又は後に続く。当該マルチパスセル装置は、マルチパスセル装置を形成している全てのミラーで十分に大きいレーザービーム径が達成されることを可能にし、従って、従来技術で最大パルスエネルギーを制限しているミラーの損傷を緩和する。さらに、発明者は、TW級のレーザーパルスの効率的な圧縮が期待できる、ジュール級のレーザーパルスへのアップスケーリングのオプションを概説しながらスケーリング手段を提供し、極端非線形工学及び高強度場物理に新しい視野をもたらす一方で、例えば[10]による従来技術のシステムと比較して、最大装置寸法が低減され得る。
【0024】
本発明の更に別の態様として、本発明によって使用される全てのマルチパスセル装置では、例えば[12]で述べられているような幾何学的なスケーリング関係を適用することによって容易にパルスエネルギーのスケーリングがされることが可能であり、当該スケーリングは特に、ガスで満たされたマルチパスセル装置について、装置長さL及びミラー曲率半径Rの、Eに対する線形スケーリング(即ちL~E及びR~E)、並びにガス密度ρ(即ちρ~1/E)の逆スケーリングを概説している。バルク非線形媒質を使用しているマルチパスセルの場合、同様のスケーリング手法が適用されてもよい。これにより、装置サイズを大きくして、更にエネルギーのアップスケーリングをすることが可能になる。また、遥かに小さい装置サイズに同じ装置構成を適用することによって、特に、mJ~μJのレジームの小さいパルスエネルギー用など、cmの範囲内の特徴的な寸法を有する非常に小型の事後圧縮装置が構成され得る。
【0025】
本発明の好ましい実施形態(以下では第1の実施形態)によれば、集束ミラー素子はビーム経路の集束部を隔てて広がっており、集束部は、ビーム経路の少なくとも1つの焦点を含む。さらに、第1の実施形態によれば、コリメーション部と集束部とは、互いに隣接して配置され、ビーム経路が折返しミラー素子によって折り返され、レーザーパルスは、コリメーション部及び集束部を交互に通過する。集束部は、好ましくはマルチパスセル装置のマルチパス部分を提供し、集束ミラー素子は、集束ミラーの各対の間でパス毎に1つの単一焦点でビーム経路を複数回、例えば5~10回以上反射するように配置される。好適には、集束部が提供されることによって、0<Ghrt<π/2又はπ/2<Ghrt<πの半往復グイ位相パラメータGhrtで、マルチパスセル装置の安定性範囲内でマルチパスセル装置構成を設定することが可能になり、半往復グイ位相パラメータGhrtは、マルチパスシステムを通って(コリメートされたビーム部の中央から集束ビーム部の中央まで)半往復する毎に計算される。したがって、マルチパスセル装置を通る1往復での累積グイ位相は、πの整数倍とは等しくならない。さらに別の利点として、コリメーション部と組み合わせた集束部は、折り返され、マルチパスセル装置の小さくまとまった構成をもたらす。
【0026】
本発明の第1の実施形態では、各ミラー素子における大きいスポットサイズは、レーザーパルスがコリメート部に沿って交互に進むマルチパスセル装置を使用することによって達成され、レーザーパルスは、折返しミラー素子と集束部との間で複数回反射される。ビーム経路は、集束部に密に集束され、コリメート部でコリメートされる(又はほぼコリメートされる。コリメート部は、長い経路長を可能にするために複数回折り返されてもよい。このようにして、好ましくはマルチパスセル装置の固有モードと整合されたビームは、全てのミラーにおいて大きいスポット径を含む。
【0027】
本発明の第1の実施形態の特に好ましい変形例によれば、光ビーム経路は、集束ミラーのうちの1つから、折返しコリメーション部を経由して、集束ミラーのうちのもう1つまでの第1の長さLを有し、長さLは、集束部(4)を経由した集束ミラー間の復路の第2の長さLとは異なっており、L≧Lである。発明者は、[19]から逸脱して、好適にはコリメーション部が長いほど、向上したビーム品質をもたらすことが可能なグイ位相パラメータ範囲内でマルチパスセルを動作できることを見出した。
【0028】
好適な例によれば、現実的な実験条件から導出された非線形パルス伝搬シミュレーションを使用して、発明者は、本発明の第1の実施形態に係る構成で、例えば長さ2mの小型の装置を使用して、1030nmで1psのパルスを120mJで圧縮して、<65fsにすることなどを数値的に実証した。
【0029】
本発明の別の代替的な好ましい実施形態(以下では第2の実施形態)によれば、集束ミラー素子は、コリメーション部の端部を反射してコリメーション部へ戻すように配置され、ビーム経路には焦点がなく(即ち密な焦点がない一方で、ビーム経路のほぼコリメートされた形状によってビームウエストが生じる場合がある)、マルチパスセルは、半往復循環グイ位相パラメータGhrtを有し、π/15<Ghrt<π/2であり、半往復グイ位相パラメータGhrtは、コリメーション部の中央から、集束ミラー素子のうちの1つを経由してコリメーション部の中央に戻る、マルチパスセル装置を通るパスの半分毎に計算される。特に好ましくは、非線形光学媒質がマルチパスセル装置内のガスであれば、マルチパスセルは、π/4<Ghrt<π/2の範囲内の半往復循環グイ位相パラメータGhrtで構成される。第2の実施形態では、半往復循環グイ位相パラメータGhrtは、累積コリメーション部グイ位相パラメータGcolと等しい。発明者は、マルチパスセル装置の安定性範囲の新しい部分が、第2の実施形態の上述の特徴と共に使用されてもよく、マルチパスセル装置は、そのビーム経路に沿った密な焦点なしで構成されることを見出した。レーザーを反射してコリメート部に戻す集束ミラーは、マルチパスセル装置を安定して動作させるのに十分である。
【0030】
好適には、第2の実施形態に係る構成を使用して、発明者は、例えば、長さ2mの小型の装置を使用して、1030nmで1psのパルスを120mJで圧縮して<35fsにすることなどを数値的に実証した。
【0031】
本発明の更に別の好ましい実施形態によれば、コリメーション部に沿った光ビーム経路は、特に好ましくは5回以上、例えば10回以上、又は100回以上折り返され得る。特に、上述した本発明の第1又は第2の実施形態で提供され得るコリメーション部の複数回の折返しは、マルチパスセル内でコリメーション部のビーム経路長を伸ばしつつ、マルチパスセルの小さくまとまった構成を維持する特別な利点を有する。
【0032】
パルススペクトル拡張装置の少なくとも1つの非線形光学媒質は、(例えば、ガラス製)誘電体板などの固体材料、又はマルチパスセル装置若しくはその部分内のガスなどの気体材料を含んでもよい。パルススペクトル拡張装置の様々な構成から生じる本発明の更に別の利点は、個別に、又はレーザーパルススペクトル拡張装置と組み合わせて実施されてもよい。第1の変形例によれば、パルススペクトル拡張装置、特に、その少なくとも1つの非線形光学媒質は、コリメーション部に配置されてもよい。したがって、少なくとも1つの非線形光学媒質には、コリメートされた、又はほぼコリメートされたビーム経路が通る。好適には、これにより少なくとも1つの非線形光学媒質内で大きいビーム径が可能になり、結果、少なくとも1つの非線形光学媒質のイオン化効果又は損傷が回避され得る。
【0033】
代替的又は付加的に、パルススペクトル拡張装置、特に、その少なくとも1つの非線形光学媒質は、集束ミラーのうちの少なくとも1つの近くに配置されてもよい。この配置は、パルス拡張パラメータを調節しつつも、少なくとも1つの非線形光学媒質のイオン化効果又は損傷を回避する利点を有する場合がある。
【0034】
さらに別の代替的又は付加的な変形例によれば、パルススペクトル拡張装置は、単一の非線形光学媒質又は複数の非線形光学媒質を備えてもよい。単一の非線形光学媒質は、レーザーパルススペクトル拡張装置の構成を簡素化し、パワー損失を最小化することに関して利点を有する。複数の非線形光学媒質を使用することは、マルチパスセル装置内で非線形光学性を分布させてレーザーパルスのスペクトル拡張を増加させる、即ち拡張パルスの拡大されたスペクトル範囲を得ることによる利点を有する。
【0035】
さらに別のオプションでは、パルススペクトル拡張装置は、マルチパスセル装置全体を満たすガス媒質を含んでもよい。この実施形態では、マルチパスセル装置内での非線形光学性の連続分布が好適な方法で得られ、レーザーパルスのスペクトル拡張が更に増加される。好ましくは、マルチパスセル装置は、非線形媒質としてのガス媒質で満たされたチャンバ内に配置される。好適には、チャンバは、マルチパスセル装置の周囲のガスを、大気圧未満又は以上であってもよい、所定の圧力で閉じ込めることを可能にする。ガス媒質は、少なくとも1つの固体の非線形光学媒質と組み合わされてもよい。
【0036】
本発明の更に別の好ましい実施形態によれば、集束ミラー素子は、2つの集束ミラーの反射部によって提供され、これらは互いに距離を隔てて配置される。従って、2つの集束ミラーが設けられ、それぞれが、凹状の反射面を有し、間にあるマルチパス構成における集束部を隔てて広がっており(本発明の第1の実施形態)、或いはコリメーション部の端部を反射してコリメーション部に戻す(本発明の第2の実施形態)。
【0037】
代替的又は付加的に、本発明の別の好ましい実施形態によれば、折返しミラー素子は、互いに距離を隔てて配置された2つの折返しミラーの反射部によって提供される。したがって、2つの折返しミラーが設けられ、それぞれが、平坦又は平坦に近い反射面を有し、間にあるマルチパス構成内のコリメート部を隔てて広がっている(本発明の第1及び第2の実施形態)。
【0038】
これらの実施形態では、レーザーパルススペクトル拡張装置は、例えば、ミラー素子を全て提供する大きい固体型ミラーを4つのみ含んでもよく、結果、マルチパスセル装置の機械的安定性が向上され得る。
【0039】
好ましくは、折返しミラー素子は、折返しミラーの重複部分であり、且つ/又は集束ミラー素子は、集束ミラーの重複部分である。好適には、相互に重なる配置により、マルチパスセル構成が更に小さくまとまる。
【0040】
あるいは、ミラー素子のそれぞれが、単一の集束ミラー又は単一の折返しミラーによって提供されてもよい。したがって、本発明のさらに別の実施形態では、集束ミラー素子は、第1のグループの集束ミラー及び第2のグループの集束ミラーによって提供され、第1及び第2のグループの集束ミラーは互いに距離を隔てて配置される。付加的又は代替的に、折返しミラー素子は、第1のグループの折返しミラー及び第2のグループの折返しミラーによって提供され、第1及び第2のグループの折返しミラーは、互いに距離を隔てて配置される。単一の集束及び/又は折返しミラーを使用することによって、他のミラーを変更することなく、特に、単一のミラーを調節する及び/又は交換する利点をもたらす。また、単一の集束及び/又は折返しミラーの使用は、非点収差によって引き起こされるビーム歪を最小化するために、集束ミラーにおけるビーム入射角を最小化して、柔軟性の向上をもたらす。
【0041】
さらに別の代替実施形態では、単一の集束及び/又は折返しミラーは、複数のミラー素子を含む大型の集束及び/又は折返しミラーと組み合わされてもよい。
【0042】
ミラー素子、即ち大きい集束及び/又は折返しミラー、又は単一の集束及び/又は折返しミラーは、好ましくは、誘電体及び/若しくは半導体表面又は金属表面又はこれらの組み合わせなどの反射多層膜を備え、任意選択で、マルチパスセル装置内で循環するレーザーパルスにチャープを適用するように構成される。
【0043】
好適には、複数のマルチパスセル装置の幾何学的配置が使用可能である。マルチパスセル装置の幾何学的配置の第1の変形例によれば、折返しミラー素子は、1行又は複数行のマルチパスパターンを提供してもよく、且つ/或いは集束ミラー素子は、1行又は複数行のマルチパスパターンを提供する(いわゆるマルチパスセル装置のボウタイ構成)。マルチパスセル装置の幾何学的配置の第2の変形例によれば、折返しミラー素子は、円形又は楕円形のマルチパスパターンを提供し、且つ/或いは集束ミラー素子は、円形又は楕円形のマルチパスパターンを提供する(いわゆるマルチパスセル装置の円柱構成)。円柱構成の場合、マルチパスセル装置は、円柱対称の構成を有する。対称軸に向かって折り返すことを可能にするために、折返しミラーは、わずかに湾曲される(凸面)ように設計され、円柱構成のコリメーション領域では、ビームは、あまりコリメートされない。
【0044】
ボウタイ構成は、折返しミラー素子及び集束ミラー素子の全てのミラー反射に対してビームサイズがほぼ一定に保たれ得るので、特別な利点を有する。したがって、大きいパルスエネルギーが使用され得る。その一方で、円柱構成は、マルチパスセル装置の回転対称に関する利点を有し、非点収差などのレーザービーム歪を最小化する。
【0045】
本発明の更に別の好適な実施形態によれば、折返しミラー素子は、V構成で配置され、折返しミラー素子の法線方向は、ゼロとは異なる傾斜角を有する。ミラー素子のV型配置は特別な利点を有し、例えば、V型配置において2つのミラー素子を使用することによって、V型配置における隣接する反射スポット同士の間の距離が、(結合/分離のために)コリメーション部の一側でより大きくなるが、コリメーション部の他側でより小さくなる(ビームを部分的に重ねることが可能になる)ので、小さくまとまった設計で多くのビーム畳み込みが可能になり得る。
【0046】
マルチパスセル装置自体は、レーザーパルスのスペクトルを拡張すると同時に、時間的な圧縮に適合されてもよい。この目的のために、ミラー素子のうちの少なくとも1つは、チャープミラー素子であることが好ましい。好適には、少なくとも1つのチャープミラー素子は、マルチパスセル装置のビーム経路に沿ったレーザーパルスの反射と、レーザーパルスへの周波数チャープの適合とに関する二重の機能を満たし、その時間的な圧縮を生じさせる。任意選択で、より長い波長で、マルチパスセル装置のビーム経路の中に分散する材料によって、時間的な圧縮が導入されてもよい。
【0047】
レーザーパルススペクトル拡張装置又はレーザー光源装置の更に別の好適な実施形態によれば、マルチパスセル装置の全長Lは、Eをレーザーパルスのパルスエネルギーとするとき、L<50m/J*E[J]であってもよい。全長Lは、縦軸(z軸)に沿ったマルチパスセル装置の伸長、例えば、マルチパスセル装置の端部ミラー同士の間の伸長である。好ましいが限定されない範囲として、レーザーパルスのパルスエネルギーは、例えば、1mJ~10Jの範囲内であってもよい。好適には、パルスエネルギーに依存する装置の長さの上限は、レーザーパルススペクトル拡張装置の小型化の尺度であり、従来のマルチパスセルでは達成されていない。
【0048】
レーザーパルススペクトル拡張装置の文脈で開示されている特徴及びその実施形態は、本発明のレーザー光源装置、及び/又はレーザーパルスを生成する方法の好ましい特徴及びその実施形態も表し、その逆もまた同様である。前述の態様、並びに発明の特徴及び好ましい特徴は、特に、レーザーパルススペクトル拡張装置の動作の構成及び方法、並びにレーザーパルススペクトル拡張装置との関連で説明される個別の光学構成要素の寸法及び構成に関して、レーザー光源装置及び/又はレーザーパルスを生成する方法にも適用される。上述した本発明の好ましい実施形態、変形例、及び特徴は、必要に応じて互いに組み合わせ可能である。
【0049】
本発明の更なる詳細及び利点が、概略的な添付の図面を参照しながら以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】従来のマルチパスセル装置の一例を示す(従来技術)。
図2】ボウタイ構成を有する、本発明に係るレーザーパルススペクトル拡張装置の第1の実施形態の特徴を示す。
図3】本発明によって使用されるマルチパスセル装置の特徴を示す安定性図を示す。
図4】本発明によって生成されるレーザーパルスの最大ピークパワー及びエネルギーの数値シミュレーションの結果を示す。
図5】円柱構成を有する、本発明に係るレーザーパルススペクトル拡張装置の第1の実施形態の特徴を示す。
図6】ボウタイ構成を有する、本発明に係るレーザーパルススペクトル拡張装置の第2の実施形態の特徴を示す。
図7】本発明に係るレーザー光源装置の実施形態の特徴を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明の好ましい実施形態の特徴は、マルチパスセル装置の複数のミラー素子が、大きいミラーの表面部分によって提供される実施形態を例示的に参照しながら、以下で説明される。レーザーパルススペクトル拡張装置は、それぞれがミラー素子のうちの1つを提供する単一のミラーに対応して構成されてもよいことが強調される。特に、マルチパスセル装置の構成が参照される。レーザーパルスを生成するレーザー光源、及び任意選択のパルス圧縮装置(図7を参照)の詳細は、従来技術で知られているものとして選択されてもよい。
【0052】
一例として、マルチパスセル装置の縦軸(z軸)は、マルチパスセル装置を支持しているキャリアプラットフォームの表面と平行に延び、ミラー素子の法線方向が、z軸に対して平行又はわずかに傾いて調節されており、キャリアプラットフォーム表面は、例えばカーテシアン系のx-z平面内で延び、マルチパスセル装置のコリメーション及び集束部の一群のミラー素子は、キャリアプラットフォーム表面に垂直なx-y平面内で延びている構成が参照される。本発明の実際の実施は、この空間的配向に制限されないことが強調される。さらに、特定の構成要素、構成、パラメータ、及びプロセスは、本発明の適用条件に応じて変更されてもよい。
【0053】
以下、全てのミラー表面でビームスポットサイズを大きくすること、及び装置サイズを小型に維持しながら高パルスエネルギーで動作することを可能にする、マルチパスセル装置の一般的なパルスエネルギーのスケーリング則、及びマルチパスセルの種類の実施形態が説明される。解析的分析は、数値シミュレーションによって支持される。特に、高効率MPCに基づいた高圧縮比でのパルス事後圧縮により、卓上型の装置を使用して数100mJのパルスエネルギー及びマルチTWピークパワーまで拡張できることを示している。
【0054】
まず、図1に示すように、従来のマルチパスセル装置が参照される。続いて、図2図6に示すように、本発明のマルチパスセル装置の設計を特に参照することによって、本発明のレーザーパルススペクトル拡張装置100の実施形態が説明される。レーザーパルススペクトル拡張装置100を備えるレーザー光源装置200の特徴は、図7を参照して説明される。
【0055】
図1は、距離Lで配置された、曲率半径Rの2つの同一の凹状の大型ミラー17’、18’、及びこれらの中央に複数の焦点(経路毎に1つの焦点)を有する、標準的なヘリオット型マルチパスセル装置10’(従来技術、[13]などを参照のこと)を示す。マルチパスセル装置10’は、非線形光学媒質23’としてのガスで満たされている。あるいは、マルチパスセル装置10’は、1つ以上の反射防止被覆溶融シリカ窓又はガラス板などの、非線形媒質で部分的に満たされていてもよい。マルチパスセル装置10’を通ってN往復した後の繰返しビーム経路2’を含む再入ビームパターンは、LとRの比Cについての以下の関係に従うことによって達成することができる([14]を参照)。
【数1】
ここでk=1、...、(N-1)は、可変の整数を示す。各往復に対して同様の非線形パルス伝搬特性を保証する、(複素ビームパラメータを規定するqを含む)q保存マルチパスセル装置を得るために、入力ビームは、2ミラー配置によって形成された、対応するキャビティのモードと同一である、マルチパスセルの固有モードとモード整合される必要がある。
【0056】
非線形スペクトル拡張では、マルチパスセル装置10’に、ガス23’又はガラス板などの非線形光学媒質が挿入される。非線形屈折率変化Δn=nIによって制御される自己位相変調によって決定される非線形パルス伝搬について考慮すると、nは、瞬時非線形屈折率、Iは、光パルス強度であり、パルスエネルギーは、ミラー損傷閾値、又はガスのイオン化につながる焦点強度が達成されるまで、nを減少させながら増加させることができる。パルスエネルギーを高めるために、非線形光学媒質23’としてガスを使用することは、固体と比較して、損傷に対する耐性、屈折率の小ささ、及びより高いピーク強度に対応する能力を含む利点がある。さらに、ガス圧pは、n~pを調整する簡単な方法を提供する。一方でバルク媒質は、より容易にMPC内の部分に局限され得る利点をもたらし、強度は、損傷又はイオン化を避けるのに十分な低さである。
【0057】
k=14、N=15、λ=1030nm、パルス幅t=1psの安定性エッジ近くで動作する、R=1mのマルチパスセル装置10’を例にとり、且つFth=500mJ/cmのミラー損傷閾値を考慮すると、24.5mJのエネルギー限界、及び対応する4.6*1013W/cmのピーク焦点強度が得られる。対応するMPC長は、L=R*C=1.978mになる。
【0058】
基本ガウスビームモードを使用した動作を可能にしながら、この限界を超えてパルスエネルギーを増加させるために、N、λ、及びRの複数の調整パラメータが特定されてもよい。Nが増加すると、Fだけでなく焦点強度Iも増加する。したがってフルエンスの限界が回避され得る一方で、焦点におけるイオン化効果が、ガスで満たされたマルチパスセル装置の最大パルスエネルギーを制限する。また、MPCの動作が安定性エッジ(C≒2)に非常に近いことにより、摂動に対する感度が増加することになる。また、安定性エッジにおけるMPCの結像特性は、C≒2(Ghrt=πと等価)が達成されたときの空間的ビームプロファイルの均質化を防止し、これは非線形MPCの最も有利な特性のうちの1つである。より長い波長に対するより大きいパルスエネルギーも達成され得る。
【0059】
従来のマルチパスセル装置10’の、実際に最も関連性のあるパルスエネルギー調整オプションは、装置サイズによってもたらされ、装置サイズと最大パルスエネルギーとの間で、まっすぐな線形スケーリング関係を示す。ガスで満たされたMPCでは、装置サイズ及びガス密度が、参考文献[11]に概説されている基本的な関係に従ってスケーリングされている場合は、このエネルギースケーリング方法は、レーザーパルスエネルギーに依存しないスペクトル拡張特性をもたらす、完全なスケール不変性に従っていることが示され得る。
【0060】
本発明には、図2図7に図示されているように、上述した限界を超えるパルスエネルギー・スケーリングオプションが導入されている。大きいモードサイズを有する長い共振器長に関する光共振器設計に適用される原理を使用して、発明者は、小型サイズの、折り返された長い経路長のマルチパスセル装置を見出した。以下で説明するように、折返しミラーが、大きいビームサイズの部分(コリメーション部)のみに配置された場合は、高パルスエネルギーがサポートされ得る。
【0061】
図2によると、図1の従来の2ミラーのマルチパスセル装置が4ミラーのマルチパスセル装置10に置き換えられ、例えば、ボウタイ構成で配置されている。図2Aは側面図を示し、図2B及び図2Cは、マルチパスセル装置10の第1の実施形態の別の変形例における2つの例示的な上面図を示す。ビーム経路2は、図2Aでは簡素化された構成で示され、即ちマルチパス装置のコリメート部内で、集束ミラー17と18との間で折り返されたビーム経路ではなく、直線ビーム経路(破線)で示している。
【0062】
より詳細には、図2のレーザーパルススペクトル拡張装置100は、一対の折返しミラー13、14、及び一対の集束ミラー17、18によって提供された、複数のミラー素子11、12、15、及び16を有するマルチパスセル装置10を含む。ミラー素子11、12、15、及び16は、折返しミラー13、14の穴などによって設けられた、2Aなどの入力部から2Bなどの出力部まで延びる、ビーム経路2を隔てて広がっている。図2のレーザーパルススペクトル拡張装置100は、本発明の第1の実施形態を表し、即ち(折返しミラー13、14によって設けられる)折返しミラー素子11、12が、ビーム経路2のコリメーション部3を隔てて広がっており、(集束ミラー17、18によって設けられる)集束ミラー素子15、16が、ビーム経路2の集束部4を隔てて広がっている。
【0063】
ミラー素子11、12、15、及び16は、折返しミラー13、14及び集束ミラー17、18の部分であり、(図2Dのミラー13及び17で形成されたビーム経路スポットによって、例示的なミラー素子11及び15で図示されているように)ここでビーム経路2が反射される。マルチパスセル装置10内で、ミラー13及び17の高さHBT及び長さLBTに沿った位置に応じて、ミラー素子11及び15は、折返しミラー13、14及び集束ミラー17、18の個別の部分であってもよく、或いは折返しミラー13、14及び集束ミラー17、18の重複部であってもよい。
【0064】
折返しミラー13、14は、V構成で配置されている平面に近いミラーを含み、即ち折返しミラー13、14は互いに平行ではなく、ミラー表面の法線方向に対して互いにずれて傾斜している。集束ミラー17、18は、同一の凹状の湾曲を有する。
【0065】
パルススペクトル拡張装置20は、例えば厚さ0.5mmのガラス製の誘電体板で形成された、非線形光学媒質21によって提供される。非線形光学媒質21は、誘電体板を通過する毎にレーザーパルスのスペクトルを拡張するために、コリメーション部3内に配置される。
【0066】
図2のマルチパスセル装置10では、光ビーム経路2が、集束ミラー17から折返しコリメーション部3を経由して集束ミラー18までの第1の長さLを有し、長さLは、集束ミラー18から集束部4を経由して集束ミラー17までの、復路の第2の長さLとは異なる(図2Cを参照)。例えば、図2BではL≒3L、及び図2CではL≒9Lである。図2のマルチパスセル装置10は、半往復グイ位相パラメータGhrt=π*4/9を有する。(Ghrtは、コリメーション部3の中央から、1つの集束ミラーを経由して、集束部4の中央までの経路毎に計算される)。
【0067】
以下、一般性を失うことなくL≧Lと仮定される。数1と同様に、半径Rの2つの同一の凹状ミラー17、18を有する、図2のマルチパスセル装置10における再入ビームパターンの解を記述する一般式は、数1と同様にC=L/R、C=L/Rと規定される以下の式より導出されてもよい。
【数2】
【0068】
実際の実施では、図2のマルチパスセル装置10は、例えば、折返しミラー13、14の寸法がLBT*HBT=10cm*10cm、集束ミラー17、18の寸法が5cm*10cm、集束ミラー17、18の曲率半径が1m、折返しミラー13、14が平面ミラー、コリメーション部3に沿ったパス数が9x9=81(システムを通って9循環、コリメート部に沿って9回折り返されたビーム経路)、集束部4に沿ったパス数が9、経路長L=9m、経路長L=1.0038mであるパラメータで構成され、N=9及びk=4に対応する。マルチパスセル装置10の全長Lは、(図1のように測定して)例えば、1mである。
【0069】
図3は、マルチパスセル装置10(図2)のボウタイ構成の安定性図を示す。L=Lの標準MPCパラメータ空間が、点線の対角線で示されている。キャビティモード(灰色の領域)が、Lが一定でRが異なる場合の5つの重要な例示的な構成で概略的(モードの可視性を良くするために縦寸法を拡大)に示されている(パネル(1)から(5))。
【0070】
数2の解、即ち関数C(C)が、k=1、2、...、5、6、7に対してN=15の例を用いて、図3に示されている(黒の実線)。数2は、さらに(N-1)の解を規定し、各解は2回現れる。したがって、k=1、2、...、N/2を考慮するのに十分である。図3の白色の領域は、安定性範囲の外側の領域を示している。
【0071】
数2は、L=Lの数1に収束し、即ち解C(C)の対角線C=C(L=Lと等価)との交点は、標準的な2ミラーのヘリオットセルを表す(図1)。
【0072】
コリメーション部3における、即ちLに沿ったコリメートされたビームは、本発明の重要な利点をもたらし、Lに沿ったビーム経路は、最大ミラーフルエンスを増加させずに複数回折り返されることができ、システム長はLによってのみ決定されるので、小型マルチパスセル装置の構造に広範囲の変形をもたらし、Cが大きい場合はL≒Rとなる。
【0073】
/Lの非対称性が大きい場合は、システムを小型に維持するために、Lに沿ったコリメーション部3が、好ましくは多数回折り返され、これは、損失が数百万分の1の水準で30fs以下のパルス持続時間をサポートする今日の多層膜ミラー技術を用いて容易に可能であり、したがって、100回以上折り返されたビーム経路であっても90%を上回るシステム透過率を可能にする。
【0074】
ミラー表面におけるビームスポットサイズがLと共に大きくなってフルエンスの減少が生じる一方で、Lと交差するより密な焦点における焦点ピーク強度は増加する。マルチパスセル装置10の密な焦点におけるイオン化は、残留ガス圧が低い状態で、閉鎖可能なチャンバ内部で動作することによって回避され得る。スペクトルを拡張するために、マルチパスセル装置10の別の部分内に非線形光学媒質が配置される(例えば、図2B図2Cを参照)。これは、Lに沿ってコリメーション部3等に配置された固体媒質21、及び/又は差動排気によって密な焦点の位置から分離されたガス媒質のどちらでもよい。
【0075】
図4は、レーザー波長1030、ミラーのフルエンス限界0.5J/cm、並びにk=7及びN=15の数2によって規定される幾何学的配置を前提とした集束部4の長さLの様々な例について、パラメータC=L/R、即ちコリメーション部3の長さを集束ミラー17、18の曲率半径で割った値に応じて、拡張され時間的に圧縮されたレーザーパルスの最大パルスエネルギー及びピークパワーの数値予測の結果を示す。ピークパワーは、完全な時間的ガウスパルス形状、及び65fsの圧縮されたパルス持続時間を前提として、簡素化して計算されたものである。図4に示す数値予測は、線形モード整合の手法を使用したマルチパスセル装置の動作を前提として得られたものである。動作レジームに応じて、最適性能のために非線形モード整合が必要とされる場合があり、ビームスポットサイズの変化により、表示されているパラメータとのずれが生じる。どちらの図も、本発明のレーザーパルススペクトル拡張装置100のエネルギースケーリング能力を示している。
【0076】
本発明は、図2に係るマルチパスセル装置10のボウタイ構成に限定されない。代替として、図5に示すように、本発明の第1の実施形態に円柱構成が使用されてもよい。
【0077】
図5Aのレーザーパルススペクトル拡張装置100のマルチパスセル装置10は、一対の平面又は平面に近い折返しミラー13、14、及び一対の環状の湾曲した集束ミラー17、18によって提供された、複数のミラー素子11、12、15、及び16を含む。集束ミラー17、18は、同一の凹状の湾曲を有する。ミラー素子11、12、15、及び16は、集束ミラー17、18の穴などによって設けられた、2Aなどの入力部から2Bなどの出力部まで延びるビーム経路2を隔てて広がっており、図5Bに示すようなスポットパターンを有する。ビーム経路2は、折返しミラー13、14を隔たせて広げているコリメーション部3、及び集束ミラー17、18を隔たせて広げている集束部4を含む。図5のマルチパスセル装置10は、グイ位相パラメータGhrt=π*8/15を有する。(Ghrtは、コリメーション部3の中央から、1つの集束ミラーを経由して集束部4の中央までの経路毎に計算される)。
【0078】
図2を参照して記載されているように、ミラー素子11、12、15、及び16は、折返しミラー13、14及び集束ミラー17、18の部分であり(図5Bのミラー13及び17上に形成されたビーム経路スポットによって図示されているように)、ここでビーム経路2が反射される。マルチパスセル装置10内の位置に応じて、ミラー素子11及び15は、折返しミラー13、14及び集束ミラー17、18の別々の部分であってもよく、又は折返しミラー13、14及び集束ミラー17、18の重複部分であってもよい。
【0079】
パルススペクトル拡張装置20の非線形光学媒質21は、誘電体板であり、例えば、厚さ0.5mmのガラス製であり、誘電体板を通過する毎にレーザーパルスのスペクトルを拡張するために、コリメーション部3内に配置される。
【0080】
実際の実施では、図5のマルチパスセル装置10は、例えば、折返しミラー13、14の直径が140mm、リング状の集束ミラー17、18の外径が200mm、リング状の集束ミラー17、18の内径が140mm、集束ミラー17、18の曲率半径が1m、折返しミラー13、14の曲率半径が-10m(弱凸ミラー)、コリメーション部3に沿ったパス数が105(7回折り返されるシステムを通って15循環)、集束部4に沿ったパス数が15、集束ミラー同士の間の距離が1.17m、折返しミラー同士の間の距離が1.25mであるパラメータで構成され、N=15に対応する。マルチパスセル装置10の全長Lは、例えば、1.17mである。
【0081】
図6は、本発明の第2の実施形態の特徴を示し、マルチパスセル装置10のビーム経路2には、密な焦点がない。マルチパスセル装置10は、一対の折返しミラー13、14を備え、それぞれが、マルチパスセル装置10のコリメーション部3を隔てて広がっている複数の折返しミラー素子11、12を含む。コリメーション部3は、パルススペクトル拡張装置20の非線形光学素子21を含む。さらに、マルチパスセル装置10は、コリメーション部3の端部を反射してコリメーション部3に戻すために配置された複数の集束ミラー素子15、16を含む、一対の集束ミラー17、18を備える。図6Aは、マルチパスセル装置10の側面図を示し、図6B及び図6Cは、L≒3L及びL≒9Lの(Lはコリメーション部の長さ、Lは集束ミラーの距離)、マルチパスセル装置10の上面図を示す。図6のマルチパスセル装置10は、半往復グイ位相パラメータGhrt=π*2/15を有する。(Ghrtは、コリメーション部3の中央から、1つの集束ミラーを経由してコリメーション部3の中央に戻るまでの経路の半分毎に計算される)。
【0082】
実際の実施では、図6のマルチパスセル装置10は、例えば、折返しミラー13、14の寸法が25cm*18cm、集束ミラー17、18の寸法が5cm*18cm、集束ミラー17、18の曲率半径が231m、折返しミラー13、14が平面ミラー、コリメーション部3に沿ったパス数が30*11(システムを通って15循環し、11回折り返されるコリメートされたビーム部を30回通過することになる)、2つの集束ミラー同士の間の折返し光路長が20mであるパラメータで構成され、k=2及びN=15に対応する。したがって、マルチパスセル装置10の全長Lは、例えば、20m/11=1.818mである。
【0083】
図6の実施形態は、図2図5の第1の実施形態で使用されているように、折り返すコリメートされたビーム経路を組み合わせて、小型の装置サイズを可能にしながら、大きいビームスポットサイズをもたらす。k/N→0の場合、図3のパネル(3)に示されているように、従来のMPCの両方のミラー同士の間のビームは、コリメートされた幾何学形状に近づく。
【0084】
例えば図1に係る、外側安定性エッジ(k/N≒1)の近くで動作する従来のMPCとは対照的に、本発明に従って使用されるマルチパスセル装置は、図2のマルチパスセル装置10のコリメーション部3と同様の折返しミラー13、14を用いて折り返され得るが、Emaxを制限することはない。このようにして、高パルスエネルギーをサポートする小型の装置が構成され得るが、非常に長い曲率半径を持つミラーが必要になる。
【0085】
一例として、F=0.5mJ/cm、N=15、λ=1030nm、R=231m、及び2つの集束ミラー同士の間の折返し光路長L=20mの場合、約120mJのパルスエネルギーがサポートされる。しかしながら、ビーム経路2の長さLに沿ってビーム経路が複数回折り返されてもよいので、装置サイズは、非常に小型にすることができる。
【0086】
さらに別の実際の実施では、図6のマルチパスセル装置は、例えば、折返しミラー13、14の寸法が6cm*4cm、集束ミラー17、18の寸法が1cm*4cm、集束ミラー17、18の曲率半径が11.5m、折返しミラー14、14が平面に近いミラー、コリメーション部3に沿ったパス数が30*11(システムを通って15循環し、11回折り返すコリメート部を30回通過することになる)、2つの集束ミラー同士の間の折返し光路長が1mであるパラメータでダウンスケーリングされた構成で更に構成されてもよく、k=2及びN=15に対応する。
【0087】
一例として、上述したパラメータセットの場合、即ちF=0.5mJ/cm、N=15、λ=1030nm、R=231m、及び2つの集束ミラー同士の間の折返し光路長L=1m(マルチパスセル装置10の全長Lと等価)の場合、約6mJのパルスエネルギーがサポートされる。しかしながら、装置サイズは、非常に小型にすることができ、ビーム伝搬領域の設置面積は、わずか約6*10cm、装置全体の合計設置面積は、わずか約10*16cmになる。
【0088】
図7は、レーザーパルスを生成するレーザー光源装置200の実施形態を概略的に示す。レーザー光源装置200は、拡張される一次レーザーパルス1を生成するための、ps又はサブpsイッテルビウム:YAGレーザーなどの、レーザー光源210を備える。レーザー光源210は、例えば、図2図5、又は図6に係る、閉じた排気可能なチャンバ30内に配置された、本発明に係るレーザーパルススペクトル拡張装置100に接続される。レーザーパルススペクトル拡張装置100は、ミラーのうちの1つにある穴のような入力部2Aを介してレーザーパルス1を受光し、マルチパスセル装置10内を循環するレーザーパルス1Aの、非線形光学媒質21との複数の非線形相互作用によって、スペクトル拡張を適用する。
【0089】
パルス圧縮装置220は、ミラーのうちのもう1つにある穴のような出力部2Bを介してスペクトル拡張レーザーパルス1Bを受光するため、且つスペクトル拡張レーザーパルス1Bを時間的に圧縮するために、マルチパスセル装置10の出力部2Bの下流に配置される。パルス圧縮は、従来技術で知られている方法、例えば、チャープミラーを使用した時間的パルス圧縮を用いて、パルス圧縮装置220で実施される。時間的パルス圧縮が必要とされない場合、又はレーザーパルススペクトル拡張装置100に時間的パルス圧縮が導入されている場合は、パルス圧縮装置220は、省略されてもよい。
【0090】
図7は、任意選択の制御装置230を更に示し、該装置は、センサ(図示せず)を介して、レーザーパルススペクトル拡張装置100又はパルス圧縮装置220の出力に接続される。制御装置230は、例えば、スペクトル拡張され任意選択で圧縮されたレーザーパルスの時間的、スペクトル的、振幅的特徴に応じて、マルチパスセル装置10のミラー素子のうちの少なくとも1つ(例えば、ミラーの位置)、及び/又はレーザー光源210を調節するために配置される。したがって、制御装置230を含む制御ループで、パルスパラメータは、最適化され得る。
【0091】
上述の説明、図面、及び特許請求の範囲で開示されている本発明の特徴は、個別に、且つ組み合わせ又は下位組み合わせにおいて、本発明をその異なる実施形態で実施するための意義を有し得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-06-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザーパルス(1A)のスペクトルを拡張するように構成される、レーザーパルススペクトル拡張装置(100)であって、
-マルチパスセル装置(10)であって、前記マルチパスセル装置(10)の入力部から出力部まで延びるビーム経路(2)を提供するために配置された複数のミラー素子(11、12、15、16)を含み、前記ミラー素子は、凹状の湾曲を有する集束ミラー素子(15、16、17、18)を含む、マルチパスセル装置(10)と、
-パルススペクトル拡張装置(20)であって、前記パルススペクトル拡張装置(20)を通る前記レーザーパルスのスペクトルを拡張するために構成され、且つ前記ビーム経路(2)内に配置される、少なくとも1つの非線形光学媒質(21、22、23)を含み、前記ミラー素子(11、12、15、16)は、前記パルススペクトル拡張装置(20)を通る、前記ビーム経路(2)の複数の通路を提供する構成を有する、パルススペクトル拡張装置(20)と
を備え、
-前記ミラー素子は、平面に近い形状を有する折返しミラー素子(11、12)を更に含み、前記折返しミラー素子(11、12)の曲率半径の絶対値が10mよりも大きく、前記折返しミラー素子(11、12)は、前記ビーム経路(2)の折返しコリメーション部(3)を隔てて広がっており、前記ビーム経路(2)は、前記コリメーション部(3)全体に沿ってある程度のコリメーションを、前記コリメーション部(3)における累積コリメーション部グイ位相パラメータGcolがπ/15<Gcol<π/2になるように有し、
-前記ミラー素子(11、12、15、16)は、nを自然数とするとき、前記マルチパスセル装置(10)を通って半往復する毎の累積半往復グイ位相パラメータGhrtが、n*π/2とは異なるように配置される、
ことを特徴とする、レーザーパルススペクトル拡張装置(100)。
【請求項2】
-前記集束ミラー素子(15、16)は、前記ビーム経路(2)の集束部(4)を隔てて広がっており、前記集束部(4)は、前記ビーム経路(2)の少なくとも1つの焦点を含み、
-前記コリメーション部(3)と前記集束部(4)とは、互いに隣接して配置され、前記ビーム経路(2)が、前記折返しミラー素子(11、12)によって折り返され、前記コリメーション部(3)及び前記集束部(4)は、前記レーザーパルスが前記コリメーション部(3)を交互に通過するように配置され、前記レーザーパルスは、前記折返しミラー素子(11、12)と前記集束部(4)との間で複数回反射される、
請求項1に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項3】
-前記光ビーム経路(2)は、前記集束ミラーのうちの1つ(17)から、前記折返しコリメーション部(3)を経由して、前記集束ミラーのうちのもう1つ(18)までの第1の長さLを有し、該長さLは、前記集束部(4)を経由した前記集束ミラー(17、18)間の復路の第2の長さLとは異なっており、L≧Lである、
請求項2に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項4】
-前記集束ミラー素子(15、16)は、前記コリメーション部(3)の端部を反射して前記コリメーション部(3)へ戻すように配置され、
-前記ビーム経路(2)には、焦点がなく、
-前記マルチパスセル装置(10)は、前記累積半往復グイ位相パラメータGhrtを有し、π/15<Ghrt<π/2である、
請求項1に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項5】
-前記コリメーション部(3)に沿った前記光ビーム経路(2)は、複数回折り返される、
請求項1~4の一項に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項6】
-前記パルススペクトル拡張装置(20)は、前記コリメーション部(3)内に配置される、
請求項1~4の一項に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項7】
-前記パルススペクトル拡張装置(20)は、前記集束ミラー素子(15、16)のうちの少なくとも1つに近接して配置される、
請求項1~4の一項に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項8】
-前記パルススペクトル拡張装置(20)は、複数の非線形光学媒質(21、22、23)を含む、
請求項1~4の一項に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項9】
-前記パルススペクトル拡張装置(20)は、前記マルチパスセル装置(10)全体を満たすガス媒質(23)を含む、
請求項1~4の一項に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項10】
-前記折返しミラー素子(11、12)は、互いに距離を隔てて配置された2つの折返しミラー(13、14)の反射部によって提供される、
請求項1~4の一項に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項11】
-前記折返しミラー素子(11、12)は、前記折返しミラー(13、14)の重複部である、
請求項10に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項12】
-前記集束ミラー素子(15、16)は、互いに距離を隔てて配置された2つの集束ミラー(17、18)の反射部によって提供される、
請求項1~4の一項に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項13】
-前記集束ミラー素子(15、16)は、前記集束ミラー(17、18)の重複部である、
請求項12に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項14】
-前記折返しミラー素子(11、12)は、第1のグループの折返しミラー及び第2のグループの折返しミラーによって提供され、前記第1及び第2のグループの折返しミラーは、互いに距離を隔てて配置される、
請求項1~4の一項に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項15】
-前記集束ミラー素子(15、16)は、第1のグループの集束ミラー及び第2のグループの集束ミラーによって提供され、前記第1及び第2のグループの集束ミラーは、互いに距離を隔てて配置される、
請求項1~4の一項に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項16】
-前記折返しミラー素子(11、12)は、1行又は複数行のマルチパスパターン(5)を提供し、且つ/或いは前記集束ミラー素子(15、16)は、1行又は複数行のマルチパスパターン(6)を提供する、
請求項1~4の一項に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項17】
-前記折返しミラー素子(11、12)は、円形又は楕円形のマルチパスパターン(7)を提供する、
請求項1~4の一項に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項18】
-前記集束ミラー素子(15、16)は、円形又は楕円形のマルチパスパターン(8)を提供する、
請求項1~4の一項に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項19】
-前記折返しミラー素子(11、12)は、V構成で配置され、前記折返しミラー素子(11、12)の法線方向が、ゼロとは異なる傾斜角を有する、
請求項1~4の一項に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項20】
-前記非線形光学媒質(21、22)は、前記拡張レーザーパルス(1A)の全スペクトル範囲で透明である、少なくとも1つの透明板を含む、
請求項1~4の一項に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項21】
-前記ミラー素子(11、12、13、14)のうちの少なくとも1つは、チャープミラー素子である、
請求項1~4の一項に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項22】
-前記マルチパスセル装置(10)は、非線形媒質としてのガス(23)で満たされたチャンバ(30)内に配置される、
請求項1~4の一項に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置。
【請求項23】
レーザーパルスを生成するように構成される、レーザー光源装置(200)であって、
-一次レーザーパルスを生成するために配置されるレーザー光源(210)と、
-前記一次レーザーパルスを受光するため、且つスペクトルを拡張するために配置されている、請求項1に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置(100)とを備える、
レーザー光源装置(200)。
【請求項24】
-前記レーザー光源のビームモードが、前記少なくとも1つの非線形光学媒質(21、22、23)のレンズ効果を考慮した非線形動作条件で、又は線形動作条件で、前記マルチパスセル装置(10)によって規定された光場モードと整合する、
請求項23に記載のレーザー光源装置。
【請求項25】
-スペクトル拡張レーザーパルスを受光するため、且つ時間的に圧縮するためのパルス圧縮装置(220)が配置される、
請求項23~24の一項に記載のレーザー光源装置。
【請求項26】
-レーザー光源(210)で、一次レーザーパルス(1A)を生成するステップと、
請求項1に記載のレーザーパルススペクトル拡張装置(100)で、前記一次レーザーパルス(1A)をスペクトル拡張するステップと、
-スペクトル拡張レーザーパルス(1B)を出力するステップとを含む、
レーザーパルス(1B)を生成する方法。
【請求項27】
-前記レーザー光源(210)のビームモードを、前記マルチパスセル装置(10)によって規定された光場モードと整合させる、更に別のステップを含む、
請求項26に記載の方法。
【請求項28】
-パルス圧縮装置(220)で、前記スペクトル拡張レーザーパルス(1B)を時間的に圧縮する、更に別のステップを含む、
請求項26~27の一項に記載の方法。
【請求項29】
-前記マルチパスセル装置(10)で、前記スペクトル拡張レーザーパルスを時間的に圧縮する、更に別のステップを含む、
請求項26~27の一項に記載の方法。
【国際調査報告】