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特表2024-526350非対称GPR84拮抗剤およびその使用
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  • 特表-非対称GPR84拮抗剤およびその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】非対称GPR84拮抗剤およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/6553 20060101AFI20240709BHJP
   A61K 31/661 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C07F9/6553
A61K31/661
A61P1/00
A61P29/00
A61P43/00 105
A61P19/02
A61P25/28
A61P25/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502064
(86)(22)【出願日】2022-07-13
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 CN2022105507
(87)【国際公開番号】W WO2023284794
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】202110801592.7
(32)【優先日】2021-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513299225
【氏名又は名称】上海 インスティテュート オブ マテリア メディカ、チャイニーズ アカデミー オブ サイエンシーズ
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI INSTITUTE OF MATERIA MEDICA, CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
【住所又は居所原語表記】555 Zuchongzhi Road, Zhangjiang, Pudong, Shanghai 201203 China
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナン,ファジュン
(72)【発明者】
【氏名】シエ,シン
(72)【発明者】
【氏名】リ,シャオシァン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,チン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,リンハイ
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ユーチェン
【テーマコード(参考)】
4C086
4H050
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086DA36
4C086DA37
4C086DA38
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA66
4C086ZA96
4C086ZB11
4C086ZB21
4C086ZC02
4H050AA01
4H050AA02
4H050AA03
4H050AB20
4H050AB21
4H050AB22
4H050AB26
4H050AB84
4H050AC40
(57)【要約】
非対称GPR84拮抗剤およびその使用で、当該GPR84拮抗剤の構造は式Iで表される。前記式I化合物は、GPR84の拮抗活性を有し、競合的にGPR84作動剤による受容体の活性化効果を抑制することができ、GPR84の高発現または過剰な興奮性に関連する多くの疾患、たとえば多発性硬化症、炎症性腸疾患、器官線維化、関節炎などの治療に有用である。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表される化合物、またはその鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体、またはその薬学的に許容される塩。
【化1】
(式において、YはOまたはSである。
ZはH、またはLi、Na、K、Ca、Mg、Cu、Fe、Zn、Al、Mnといった金属のイオン、またはNH、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、アミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、ヒスチジン、ヒドロキソコバラミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン、イミダゾールといった塩基の共役酸である。
はなし、O、S、-CH=CH-、CO、-C(=CH)-、置換または無置換のC~Cアルキレン基、-NH-、-N(C~Cアルキル基)-、C~Cシクロアルキル基またはC~Cヘテロシクロアルキル基で、前記置換とはC~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基、ハロゲン、ヒドロキシ基からなる群から選ばれる1個または複数個の置換基を有することである。
はなし、CHである。
環A、Bはそれぞれ独立にC~C10芳香環、C~C10シクロアルカン環、C~C10ヘテロシクロアルカン環、C~C10ヘテロ芳香環である。
n1、n2はそれぞれ独立に0、1、2、3または4である。R、Rはそれぞれ独立に-OH、-SH、-NH、F、Cl、Br、I、-C2r-L-C2s+1、-C2r-N(C2t+1)-C2s+1、置換または無置換のC~Cアルキル基で、上記置換とはハロゲン、ヒドロキシ基、アミノ基、-COOC~Cアルキル基、-COOHからなる群から選ばれる1個または複数個の置換基を有することである。
はそれぞれ独立にO、S、NHで、各rは独立に0、1、2、3、4、5または6で、各sは独立に0、1、2、3、4、5または6で、各tは独立に1、2、3、4、5、または6である。
、Lはそれぞれ独立にO、なし、-O(C~C10アルキレン基)-、-O(C~C10アルキレン基)NH-、-O(C~C10アルキレン基)O-、-CONH-、-OCO-、-NH-、-NHCOO-、-N(C~Cアルキル基)-、またはC~C10アルキレン基である。
はH、OH、NH、SH、-COOH、置換または無置換のC~C10アルキル基、置換または無置換のC~C10アルケニル基、置換または無置換のC~C10アルキニル基、置換または無置換の3-12員シクロアルカン環、置換または無置換のC~C14芳香環、置換または無置換のアミノ基、置換または無置換の4-10員ヘテロシクロアルカン環、置換または無置換の4-10員ヘテロ芳香環、コール酸、リトコール酸、デオキシコール酸、イソリトコール酸、イソデオキシコール酸、ゲノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、α-ムリコール酸、β-ムリコール酸、γ-ムリコール酸、ω-ムリコール酸で、上記置換とはアミノ基、C~C10アルキル基、ハロゲン、C~C10芳香環、C~Cアルコキシ基、3-12員シクロアルカン環、-O-C2p-O-C2q+1、ニトロ基、オキソ(=O)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、-C(O)OC~Cアルキル基、-O-C~C10芳香環からなる群から選ばれる1、2、3、4、5または6個の置換基を有することで、ここで、各pは独立に1、2、3、4、5または6で、各qは独立に1、2、3、4、5または6である。

【化2】
は独立に単結合または二重結合を表す。)
【請求項2】
一般式(I)で表される化合物、またはその鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体、またはその薬学的に許容される塩。
【化3】
(式において、YはOまたはSである。
ZはH、またはLi、Na、K、Ca、Mg、Cu、Fe、Zn、Al、Mnといった金属のイオン、またはNH、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、アミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、ヒスチジン、ヒドロキソコバラミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン、イミダゾールといった塩基の共役酸である。
はなし、O、S、-CH=CH-、CO、-C(=CH)-、置換または無置換のC~Cアルキレン基、-NH-、-N(C~Cアルキル基)-、C~Cシクロアルキル基またはC~Cヘテロシクロアルキル基で、前記置換とはC~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基、ハロゲン、ヒドロキシ基からなる群から選ばれる1個または複数個の置換基を有することである。
はなし、CHである。
環A、Bはそれぞれ独立にC~C10芳香環、C~C10シクロアルカン環、C~C10ヘテロシクロアルカン環、C~C10ヘテロ芳香環である。
n1、n2はそれぞれ独立に0、1、2、3または4である。R、Rはそれぞれ独立に-OH、-SH、-NH、F、Cl、Br、I、置換または無置換の-C2r-L-C2s+1、-C2r-N(C2t+1)-C2s+1、置換または無置換のC~Cアルキル基で、上記置換とはハロゲン、ヒドロキシ基、アミノ基、-COOC~Cアルキル基、-COOHからなる群から選ばれる1個または複数個の置換基を有することである。
はそれぞれ独立にO、S、NHで、各rは独立に0、1、2、3、4、5または6で、各sは独立に0、1、2、3、4、5または6で、各tは独立に1、2、3、4、5、または6である。
、Lはそれぞれ独立にO、なし、-O(C~C10アルキレン基)-、-O(C~C10アルキレン基)NH-、-O(C~C10アルキレン基)O-、-CONH-、-OCO-、-NH-、-NHCOO-、-N(C~Cアルキル基)-、またはC~C10アルキレン基である。
はH、OH、NH、SH、-COOH、置換または無置換のC~C10アルキル基、置換または無置換のC~C10アルケニル基、置換または無置換のC~C10アルキニル基、置換または無置換の3-12員シクロアルカン環、置換または無置換のC~C14芳香環、置換または無置換のアミノ基、置換または無置換の4-10員ヘテロシクロアルカン環、置換または無置換の4-10員ヘテロ芳香環、コール酸、リトコール酸、デオキシコール酸、イソリトコール酸、イソデオキシコール酸、ゲノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、α-ムリコール酸、β-ムリコール酸、γ-ムリコール酸、ω-ムリコール酸で、上記置換とはアミノ基、C~C10アルキル基、ハロゲン、C~C10芳香環、C~Cアルコキシ基、3-12員シクロアルカン環、-O-C2p-O-C2q+1、ニトロ基、オキソ(=O)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、-C(O)OC~Cアルキル基、-O-C~C10芳香環、-NH-(4-10員ヘテロ芳香環)、-NH-(4-10員ヘテロ芳香環)-CONHからなる群から選ばれる1、2、3、4、5または6個の置換基を有することで、ここで、各pは独立に1、2、3、4、5または6で、各qは独立に1、2、3、4、5または6である。

【化4】
は独立に単結合または二重結合を表す。)
【請求項3】
は独立になし、CH、O、S、-CO-、-NH-で、
は独立になし、CHである
ことを特徴とする請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
は置換または無置換のC1~C10アルキル基、置換または無置換のC~C10アルケニル基、置換または無置換のC~C10アルキニル基、置換または無置換の3-12員シクロアルカン環、置換または無置換のC~C14芳香環、置換または無置換のアミノ基、置換または無置換の4-10員ヘテロシクロアルカン環、置換または無置換の4-10員ヘテロ芳香環、コール酸、リトコール酸、デオキシコール酸、イソリトコール酸、イソデオキシコール酸、ゲノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、α-ムリコール酸、β-ムリコール酸、γ-ムリコール酸、ω-ムリコール酸で、上記置換とはアミノ基、C~C10アルキル基、ハロゲン、C~C10芳香環、C~Cアルコキシ基、3-12員シクロアルカン環、-O-C2p-O-C2q+1、ニトロ基、オキソ(=O)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、-COOC~Cアルキル基、-O-ベンゼン環からなる群から選ばれる1、2、3、4または5個の置換基を有することで、ここで、各pは独立に1、2または3で、各qは独立に1、2または3であることを特徴とする請求項1または2に記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物は以下の群から選ばれることを特徴とする請求項1または2に記載の化合物。
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【請求項6】
請求項1または2に記載の化合物の製造方法であって、前記化合物は式P1で表される構造を有し、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
【化10】
式S1化合物、式S2化合物および式S3化合物を原料とし、反応させて式P1で表される構造を有する化合物を得る。
(ただし、R、R、R、L、L、L、L、Y、n1、n2上記環Aは、環Bの定義は前記の通りである。
はOである。
各Xは独立にジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基である。
はシアノエチル基、アリル基、t-ブチル基、ベンジル基である。)
【請求項7】
請求項1または2に記載の化合物の製造方法であって、前記化合物は式P1で表される構造を有し、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
【化11】
式S1化合物、式S3化合物および式S4化合物を原料とし、反応させて式P1で表される構造を有する化合物を得る。
(ただし、R、R、R、L、L、L、L、Y、n1、n2、環A、Bの定義は前記の通りである。
はOまたはCHである。
各Xは独立にF、Cl、BrまたはIである。)
【請求項8】
請求項1または2に記載の化合物の製造方法であって、前記化合物は式P1で表される構造を有し、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
【化12】
式S1化合物および式S5化合物を原料とし、反応させて式P1で表される構造を有する化合物を得る。
(ただし、R、R、R、L、L、L、L、Y、n1、n2、環A、Bの定義は前記の通りである。
はOまたはCHである。
各Xは独立にF、Cl、BrまたはIである。)
【請求項9】
薬物組成物であって、以下のものを含むことを特徴とする組成物。
請求項1~5のいずれかに記載の一般式(I)で表される化合物、またはその鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体またはその薬学的に許容される塩;ならびに
薬学的に許容される担体。
【請求項10】
請求項1~5のいずれかに記載の化合物またはその鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体、またはその薬学的に許容される塩、あるいは請求項9に記載の薬物組成物の使用であって、以下のことに用いられることを特徴とする使用。
(i)GPR84拮抗剤の製造のための使用;
(ii)GPR84拮抗剤としての使用;
(iii)GPR84受容体の高発現または過剰な興奮性による関連疾患を治療する薬物の製造のための使用。
【請求項11】
前記疾患は多発性硬化症、炎症性腸疾患、線維化、神経変性疾患または関節炎であることを特徴とする請求項10に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、G蛋白質共役受容体84(G protein-coupled receptor 84、GPR84と略す)のリガンド分子に関する。本発明に係るリガンド分子は、GPR84の拮抗活性を有し、競合的にGPR84作動剤による受容体の活性化効果を抑制することができ、GPR84の高発現または過剰な興奮性に関連する多くの疾患、たとえば多発性硬化症、炎症性腸疾患、器官線維化、関節炎などの治療に有用である。
【背景技術】
【0002】
GPR84は2001年に発見されたGタンパク質共役受容体で、Gi経路と関連し、鎖長がC9-C14の中鎖脂肪酸(MCFAs)によって活性化され、GPR84が活性化すると、アデニル酸シクラーゼが抑制されることで、cAMPの生成が減少する。GPR84は、多くの組織または器官、たとえば、心臓、肺、腎臓、肝臓、骨髄、脂肪などにおいて発現され、特に末梢血における単核球、マクロファージや好中球、および中枢神経系における小膠細胞を含む、自然免疫系に関連する髄系細胞において幅広く発現される。生理条件において、GPR84は白血球および脂肪細胞における発現が低いが、急性炎症の刺激(たとえば、リポ多糖LPS、TNFα、または多くの疾患に関連する炎症反応)はGPR84の発現の顕著な上方調節を誘導することができる。GPR84の活性化はマクロファージの貪食作用を増強し、免疫細胞の走化作用を促進し、炎症促進サイトカイン(IL-12 p40)の分泌を増加することで、生体の炎症反応を拡大させる。一方、GPR84のノックアウトはマクロファージにおける炎症促進サイトカイン(IL-1、IL-6およびTNF)の分泌の減少、同時にT細胞におけるTh2サイトカイン(IL-4、IL-5、IL-13)の分泌の増加につながる。以上の研究により、GPR84の生体の代謝調節および免疫反応における炎症促進作用が実証され、後の研究では、GPR84は多くの炎症および代謝性疾患多発性硬化症(multiple sclerosis, MS,Glia 2007, 55, 790-800)、炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease,IBD,J. Med. Chem. 2020, 63, 13526-13545)、器官線維化(J. Clin. Med. 2020, 9, 4,Am. J. Pathol. 2018, 188, 1132-1148)、関節炎(Curr. Opin. Clin. Nutr. Metab. Care 2011, 14, 322-327)などの発生・発展の過程に関連することが開示された。そのため、GPR84は上記疾患の治療の潜在的な標的で、またGPR84拮抗剤はこれらの疾患の治療に有用であることが期待されている。
【0003】
今まで、GPR84拮抗剤は、ベルギーのGalapagos社およびカナダのLiminal社の特許だけが報告されている。Galapagos社の化合物はテトラヒドロイソキノピリミジノン(またはピリジノン)の構造母核を有し(WO2013092791、WO2014095798、WO2015197550、WO2016169911)、代表的な化合物GLPG1205は高活性のGPR84陰性アロステリック調節剤で(J. Med. Chem. 2020, 63, 13526-13545)、炎症性腸疾患の治療薬の候補としてII期臨床研究まで進んだが、その治療効果がプラセボ群と有意差がなかったため、試験が終了した。当該化合物は、特発性肺線維化の治療のため、二回目のII臨床評価が行われている。Liminal社のPBI-4050およびPBI-4547は非選択的GPR84拮抗剤で、構造がそれぞれ3-n-ペンチルフェニル酢酸ナトリウムおよび3,5-ジ-n-ペンチルフェニル酢酸ナトリウムで、いずれも脂肪残のアナログで、GPR84に対する拮抗活性がμmolオーダーで、同時に脂肪酸受容体GPR40およびGPR120のいずれにも作動活性がある。PBI-4050は特発性肺線維化の治療のための臨床II期試験が既に完了し、現在、Alstrom症の治療のII/III期臨床研究が行われている。PBI-4547は非アルコール性脂肪性肝炎の薬物の候補としてI期臨床研究が行われている。
【0004】
南発俊らにより、リン酸ジエステル構造を有する高活性GPR84拮抗剤が報告され(WO2018161831)、その中の二つのエステル基はいずれも三環構造で、代表的な化合物XYF573cはDSSによって誘導されたマウスの腸炎の症状に顕著な緩和作用があり、治療効果が同投与量のスルファサラジンよりも良い。また、組織分布の研究では、XYF573cは選択的に腸管に分布し(AUC0-8h = 24447.42 h*ng/mL、経口投与:5 mg/kg)、一方、末梢血における暴露量が低い(AUC0-8h = 666.53 h*ng/mL、経口投与:5 mg/kg)ことが示されたため、XYF573cは主に腸管の免疫細胞における上方調節したGPR84に作用することで、GPR84が仲介する炎症反応を抑制することによって腸炎を治療する効果を果たすが、その末梢血における分布から、部分的に末梢免疫細胞の移行を抑制することによって効果を果たすこともできることがわかる。このようなGPR84拮抗剤は腸管分布を標的とする特徴から、炎症性腸疾患の治療に適するが、劣る経口吸収のせいで器官線維化、多発性硬化症、関節炎などの疾患の治療における使用が制限される。
【0005】
化合物の経口吸収は油水分配係数(たとえば、CLogP、ALogP)と密接に関連し、良い薬らしさを持つ化合物はCLogPが5未満の必要があるが(Lipinskiのルールオブファイブ)、XYF573cはCLogPが6.419で、最適化の余地が大いにある。元のGPR84拮抗剤のリン酸ジエステル構造において、二つのエステル基のいずれも強親油性の三環構造で、このような対称の構造特徴は化合物の化学空間の拡大を制限し、化合物の薬らしさ(たとえば、CLogP、ALogPなど)の最適化の大きな障碍になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、新規なGPR84の拮抗剤およびその製造方法と使用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の側面では、一般式(I)で表される化合物、またはその鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【化1】
(式において、YはOまたはSである。
ZはH、またはLi、Na、K、Ca、Mg、Cu、Fe、Zn、Al、Mnといった金属のイオン、またはNH、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、アミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、ヒスチジン、ヒドロキソコバラミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン、イミダゾールといった塩基の共役酸である。
はなし、O、S、-CH=CH-、CO、-C(=CH)-、置換または無置換のC~Cアルキレン基、-NH-、-N(C~Cアルキル基)-、C~Cシクロアルキル基またはC~Cヘテロシクロアルキル基で、前記置換とはC~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基、ハロゲン、ヒドロキシ基からなる群から選ばれる1個または複数個の置換基を有することである。
はなし、CHである。
環A、Bはそれぞれ独立にC~C10芳香環、C~C10シクロアルカン環、C~C10ヘテロシクロアルカン環、C~C10ヘテロ芳香環である。
n1、n2はそれぞれ独立に0、1、2、3または4である。R、Rはそれぞれ独立に-OH、-SH、-NH、F、Cl、Br、I、置換または無置換の-C2r-L-C2s+1、-C2r-N(C2t+1)-C2s+1、置換または無置換のC~Cアルキル基で、上記置換とはハロゲン、ヒドロキシ基、アミノ基、-COOC~Cアルキル基、-COOHからなる群から選ばれる1個または複数個の置換基を有することである。
はそれぞれ独立にO、S、NHで、各rは独立に0、1、2、3、4、5または6で、各sは独立に0、1、2、3、4、5または6で、各tは独立に1、2、3、4、5、または6である。
、Lはそれぞれ独立にO、なし、-O(C~C10アルキレン基)-、-O(C~C10アルキレン基)NH-、-O(C~C10アルキレン基)O-、-CONH-、-OCO-、-NH-、-NHCOO-、-N(C~Cアルキル基)-、またはC~C10アルキレン基である。
はH、OH、NH、SH、-COOH、置換または無置換のC~C10アルキル基、置換または無置換のC~C10アルケニル基、置換または無置換のC~C10アルキニル基、置換または無置換の3-12員シクロアルカン環、置換または無置換のC~C14芳香環、置換または無置換のアミノ基、置換または無置換の4-10員ヘテロシクロアルカン環、置換または無置換の4-10員ヘテロ芳香環、コール酸、リトコール酸、デオキシコール酸、イソリトコール酸、イソデオキシコール酸、ゲノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、α-ムリコール酸、β-ムリコール酸、γ-ムリコール酸、ω-ムリコール酸で、上記置換とはアミノ基、C~C10アルキル基、ハロゲン、C~C10芳香環、C~Cアルコキシ基、3-12員シクロアルカン環、-O-C2p-O-C2q+1、ニトロ基、オキソ(=O)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、-C(O)OC~Cアルキル基、-O-C~C10芳香環、-NH-(4-10員ヘテロ芳香環)、-NH-(4-10員ヘテロ芳香環)-CONHからなる群から選ばれる1、2、3、4、5または6個の置換基を有することで、ここで、各pは独立に1、2、3、4、5または6で、各qは独立に1、2、3、4、5または6である。

【化2】
は独立に単結合または二重結合を表す。)
【0008】
もう一つの好適な例において、環A、Bはそれぞれ独立にベンゼン環、C~Cシクロアルカン環、C~Cヘテロシクロアルカン環、C~Cヘテロ芳香環である。
もう一つの好適な例において、環A、Bはそれぞれ独立にベンゼン環、チオフェン環、ピロール環、フラン環、シクロヘキサン環、シクロペンタン環またはシクロヘプタン環である。
【0009】
もう一つの好適な例において、Lは独立になし、CH、O、S、-CO-、-NH-で、Lは独立になし、CHである。
もう一つの好適な例において、n1は0、1または2で、RはF、Cl、Br、I、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、トリフルオロメトキシ基である。
【0010】
もう一つの好適な例において、n2は0、1または2で、RはF、Cl、Br、I、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、トリフルオロメトキシ基である。
もう一つの好適な例において、LはOまたはSである。
もう一つの好適な例において、LはO、なし、-NH-、-OCHNH-、-OCHCHNH-、-OCHCHCHNH-、-N(C~Cアルキル基)-、-CH-または-CHCH-である。
【0011】
本発明において、たとえば、-O(C~C10アルキレン基)-、-O(C~C10アルキレン基)NH-、-CONH-、-OCO-、-NHCOO-、-OCHNH-、-OCHCHNH-、-OCHCHCHNH-などの基の連結様態は特別な制限がなく、左から右へ、あるいは右から左へ、連結した原子または基、たとえば、C、P、Rと連結し、たとえば、P-L4-R3は、L4が-CONH-の時、P-CONH-R3またはR3-CONH-Pを表す。もう一つの好適な例において、L4の定義が上記基の場合、上記基の左端がPと、右端がRと連結している。
【0012】
もう一つの好適な例において、Rは置換または無置換のC1~C10アルキル基、置換または無置換のC~C10アルケニル基、置換または無置換のC~C10アルキニル基、置換または無置換の3-12員シクロアルカン環、置換または無置換のC~C14芳香環、置換または無置換のアミノ基、置換または無置換の4-10員ヘテロシクロアルカン環、置換または無置換の4-10員ヘテロ芳香環、コール酸、リトコール酸、デオキシコール酸、イソリトコール酸、イソデオキシコール酸、ゲノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、α-ムリコール酸、β-ムリコール酸、γ-ムリコール酸、ω-ムリコール酸で、上記置換とはアミノ基、C~C10アルキル基、ハロゲン、C~C10芳香環、C~Cアルコキシ基、3-12員シクロアルカン環、-O-C2p-O-C2q+1、ニトロ基、オキソ(=O)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、-COOC~Cアルキル基、-O-ベンゼン環からなる群から選ばれる1、2、3、4または5個の置換基を有することで、ここで、各pは独立に1、2または3で、各qは独立に1、2または3である。
【0013】
もう一つの好適な例において、前記薬学的に許容される塩は式Iで表される構造の化合物が無機塩基と反応してなる塩で、リチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、銅塩、第二鉄塩、第一鉄塩、亜鉛塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩、第二マンガン塩、第一マンガン塩から選ばれるもので、あるいは
【0014】
前記薬学的に許容される塩は式Iで表される構造の化合物が有機塩基系化合物と反応してなる塩で、前記有機塩基は、NH、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、ヒスチジン、ヒドロキソコバラミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン、イミダゾールからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記化合物は実施例で製造された化合物のいずれかである。
【0015】
本発明の第二の側面では、第一の側面に記載の化合物の製造方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
【化3】
【0016】
式S1化合物、式S2化合物および式S3化合物を原料とし、反応させて式P1で表される構造を有する化合物を得る。
(ただし、R、R、R、L、L、L、L、Y、n1、n2、環A、Bの定義は前記の通りである。
はOである。
各Xは独立にジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基である。
はシアノエチル基、アリル基、t-ブチル基、ベンジル基である。)
【0017】
本発明の第三の側面では、第一の側面に記載の化合物の製造方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
【化4】
【0018】
式S1化合物、式S3化合物および式S4化合物を原料とし、反応させて式P1で表される構造を有する化合物を得る。(ただし、R、R、R、L、L、L、L、Y、n1、n2、環A、Bの定義は前記の通りである。
はOまたはCHである。各Xは独立にF、Cl、BrまたはIである。)
【0019】
本発明の第四の側面では、第一の側面に記載の化合物の製造方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
【化5】
【0020】
式S1化合物および式S5化合物を原料とし、反応させて式P1で表される構造を有する化合物を得る。
(ただし、R、R、R、L、L、L、L、Y、n1、n2、環A、Bの定義は前記の通りである。
はOまたはCHである。
各Xは独立にF、Cl、BrまたはIである。)
【0021】
本発明の第五の側面では、以下のものを含む薬物組成物を提供する:
第一の側面に記載の一般式(I)で表される化合物、またはその鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体またはその薬学的に許容される塩、ならびに薬学的に許容される担体。
【0022】
本発明の第六の側面では、第一の側面に記載の化合物またはその鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体またはその薬学的に許容される塩あるいは第五の側面に記載の薬物組成物の使用であって、以下のような使用を提供する:
(i) GPR84拮抗剤の製造のための使用;
(ii) GPR84拮抗剤としての使用;
(iii)GPR84受容体の高発現または過剰な興奮性による関連疾患を治療する薬物の製造のための使用。
もう一つの好適な例において、前記疾患は多発性硬化症、炎症性腸疾患、線維化、神経変性疾患または関節炎である。
【0023】
本発明の第七の側面では、GPR84受容体の高発現または過剰な興奮性による関連疾患を治療する方法であって、必要な患者に本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与する工程を含む方法を提供する。
【0024】
別途に定義しない限り、本文に用いられるすべての専門用語と科学用語は、当業者に熟知される意味と同様である。また、記載の内容と類似あるいは同等の方法および材料は、いずれも本発明の方法に用いることができる。ここで記載の好ましい実施方法及び材料は例示のためだけである。
【0025】
もちろん、本発明の範囲内において、本発明の上記の各技術特徴および下記(たとえば実施例)の具体的に記述された各技術特徴は互いに組合せ、新しい、または好適な技術方案を構成できることが理解される。紙数に限りがあるため、ここで逐一説明しない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は化合物XYF573cとLSX472aのICRマウスにおける組織分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本願の発明者は、幅広く深く研究したところ、リン酸ジエステルの一方のエステル基が三環の断片で、もう一方のエステル基が多くの構造の種類の誘導体、たとえば、(シクロ)アルキル基または置換の(シクロ)アルキル基、アリール基または置換のアリール基、コール酸誘導体などになっている、新規な構造のGPR84拮抗剤を開発した。本願の化合物は、競合的にGPR84の作動剤による当該受容体の活性化を抑制することができ、GPR84受容体の高発現または過剰な興奮性による関連疾患を治療する薬物の製造に有用で、前記疾患は多発性硬化症、炎症性腸疾患、線維化、関節炎などを含む。また、このような非対称構造の改造は、元の対称のリン酸ジエステル系GPR84拮抗剤の構造の特徴を突破し、GPR84拮抗活性を維持したまま、化合物のGLogPを低下させることで、より良い経口吸収および臓器分布の特性があり、器官線維化、関節炎、多発性硬化症、および炎症性腸疾患などの疾患を治療する薬物の開発に有利である。これに基づき、本発明を完成させた。
【0028】
用語
本発明において、C~C10とは6~10個の炭素原子を有することで、C~Cとは3~6個の炭素原子を有することで、ほかも同じように表記する。
【0029】
本発明において、別途に説明しない限り、芳香環、シクロアルカン環、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基などの用語は当業者に熟知の意味と同様である。たとえば、アルキル基とは飽和の直鎖または分岐鎖の炭化水素基で、たとえば-CHまたは-CH(CHが挙げられる。アルキレン基とは飽和の炭化水素基から形態上で2つの1価の水素が離脱して残った部分で、メチレン基(-CH-)、エチレン基(-CHCH-)などを含むが、これらに限定されない。アルコキシ基とは-O-(アルキル基)で、-OCH、-OCHCHなどを含むが、これらに限定されない。シクロアルカン環、シクロアルキル基とは飽和の環状炭化水素基で、たとえばシクロへキシル基が挙げられる。ヘテロシクロアルキル基、ヘテロシクロアルカン環とは少なくとも1個(たとえば、1、2、3または45個)のヘテロ原子(N、OまたはSから選ばれる)を含む飽和の環状炭化水素基である。ヘテロ芳香環、ヘテロアリール基とは少なくとも1個(たとえば、1、2、3または4個)のヘテロ原子を含む飽和の芳香環である。
【0030】
別途に説明しない限り、本明細書に記載の芳香環、ヘテロ芳香環、シクロアルカン環、アルキル基、アルキレン基、アルコキシ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基などは置換のものと無置換のものの両方を含み、可能な置換基はC~C10アルキル基、C~C10アルケニル基、C-C10アルキニル基、C-C20シクロアルキル基、C-C20シクロアルケニル基、C-C20ヘテロシクロアルキル基、C-C20ヘテロシクロアルケニル基、C-C20アルコキシ基、アリール基、アリーロキシ基、ヘテロアリール基、ヘテロアリーロキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、ハロゲン、メルカプト基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基やカルボン酸エステル基などを含むが、これらに限定されない。
【0031】
GPR84拮抗剤
本発明によって提供されるGPR84拮抗剤は、前記で示される式Iの構造を有する化合物である。
また、本発明はその薬学的に許容される塩を提供するが、式I化合物と無機塩基または有機塩基系化合物が反応して得られる塩が含まれる。無機塩基から得られる塩は、アルミニウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、銅塩、第二鉄塩、第一鉄塩、リチウム塩、マグネシウム塩、第二マンガン塩、第一マンガン塩、カリウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩などを含むが、これらに限定されない。特に好ましくは、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩およびナトリウム塩である。薬学的に許容される有機無毒塩基から得られる塩では、前記塩基は第一級アミン、第二級アミンおよび第三級アミンの塩、自然に存在する置換アミンを含む置換のアミン、シクロアミンや塩基性イオン交換樹脂、たとえばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、アミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、ヒスチジン、ヒドロキソコバラミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン、イミダゾールなどを含むが、これらに限定されない。
【0032】
本発明の主な利点は以下の通りである。
発明者は、リン酸ジエステルの一方のエステル基が三環の断片で、もう一方のエステル基が多くの構造の種類の誘導体、たとえば、(シクロ)アルキル基または置換の(シクロ)アルキル基、アリール基または置換のアリール基、コール酸誘導体などになっている、新規な構造のGPR84拮抗剤を開発した。このような改造はGPR84拮抗剤の化学的空間の拡大に有益で、GLogPを低下させることで、より良い経口吸収および臓器分布の特性があるため、GPR84関連疾患の治療に有益である。
【0033】
上記のように、本発明によって提供される化合物は、好適にGPR84の拮抗活性を維持してまま、経口吸収がより良く、かつより特異的な標的組織分布の特性があるため、より良い開発の将来性がある。
【0034】
製造方法
式I化合物は、下記スキーム1~スキーム5のうちのいずれかによって実現することができる。
スキーム1:
【化6】
【0035】
第一工程の反応はジクロロメタンまたはアセトニトリルにおいて行われる。使用される活性化試薬は4,5-ジシアノイミダゾールまたはジイソプロピルアンモニウムテトラゾリドまたはN-メチルイミダゾールである。反応温度は20℃~60℃で、反応時間は約1~24 hである。反応完了後、飽和NaHCO、NaCO溶液で中和し、AcOEt、EtO、CHCl、CHClなどの溶媒で抽出し、濃縮物をカラムクロマトグラフィーによって精製する。第二工程の反応はジクロロメタンまたはN, N-ジメチルホルムアミドにおいて行われ、使用される活性化試薬はテトラゾールで、反応時間は約1~24 h、さらに酸化剤を入れて酸化し、使用される酸化剤はt-ブチルヒドロペルオキシドまたはm-クロロ過安息香酸で、反応時間は約0.3~2 hで、飽和NaSOでクエンチングし、AcOEt、EtO、CHCl、CHClなどの溶媒で抽出し、濃縮物をカラムクロマトグラフィーによって精製する。第三工程の反応はジクロロメタンにおいて行われ、保護基Xによって使用される条件は触媒水素化または塩基触媒で、触媒水素化に使用される触媒はPd/C或Pd(OH)/Cと常圧の水素ガスで、塩基触媒に使用される塩基はトリエチルアミンまたは1,8-ジアザビシクロウンデセン-7(DBU)で、反応時間は約0.3~1 hで、反応完了後、ろ過によって不溶物を除去し、希塩酸を入れて中和し、AcOEt、EtO、CHCl、CHClなどの溶媒で抽出し、濃縮物をカラムクロマトグラフィーにかけて目的の産物を得るが、得られる産物はNMRなどの手段によって確認する。
(ただし、R、R、R、L、L、L、L、Y、n1、n2、環A、Bの定義は前記の通りである。LはOで、各Xは独立にジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基で、Xはシアノエチル基、アリル基、t-ブチル基、ベンジル基である。)
【0036】
スキーム2:
【化7】
【0037】
反応はピリジンにおいて行われる。反応温度は60℃~100℃で、反応時間は約1~24 hである。反応完了後、室温に冷却し、S3を入れた後、60℃~100℃で1~24 h反応させ、反応完了後、水を入れてクエンチングし、AcOEt、EtO、CHCl、CHClなどの溶媒で抽出し、濃縮物をカラムクロマトグラフィーによって精製して目的の産物を得るが、得られる産物はNMRなどの手段によって確認する。(ただし、R、R、R、L、L、L、L、Y、n1、n2、環A、Bの定義は前記の通りである。LはO、S、NHまたはCHで、各Xは独立にF、Cl、BrまたはIである。)
【0038】
スキーム3:
【化8】
【0039】
反応はピリジンで行われる。反応温度は60℃~100℃である。反応時間は約1~24時間である。反応完了後、HOでクエンチングし、AcOEt、EtO、CHCl、CHClなどの溶媒で抽出し、飽和食塩水で洗浄し、乾燥した後、低温減圧で溶媒を除去し、濃縮物をカラムクロマトグラフィーにかけて目的産物を得るが、得られる産物はNMRなどの手段によって確認する。
(ただし、R、R、R、L、L、L、L、Y、n1、n2、環A、Bの定義は前記の通りである。LはOまたはCHで、各Xは独立にF、Cl、BrまたはIである。)
【0040】
スキーム4:
【化9】
【0041】
原料P1を酢酸エチルに溶解させ、塩基(Mの共役塩基、Mの水酸化物またはMの炭酸化合物)の水溶液を入れて2回洗浄し、水層を酢酸エチルで逆抽出し、酢酸エチル層を濃縮し、粗製品をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけて産物P2を得る。
【0042】
MはLi、Na、K、Ca、Mg、Cu、Fe、Zn、Al、Mnといった金属のカチオンイオン、またはNH、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、アミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、ヒスチジン、ヒドロキソコバラミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン、イミダゾールといった塩基の共役酸である。
(ただし、R、R、R、L、L、L、L、Y、n1、n2、環A、Bの定義は前記の通りである。
はOまたはCHである。)
【0043】
スキーム5:
【化10】
【0044】
反応はN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)において行われ、使用される活性化試薬は1-エチル-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)で、使用される塩基はトリエチルアミンまたはN,N-ジイソプロピルエチルアミンで、常温で、反応時間は約6~24 hで、反応完了後、低温減圧で溶媒を除去し、酢酸エチルで抽出し、水相を3回逆抽出し、飽和食塩水で洗浄し、有機相を濃縮した後、カラムクロマトグラフィーにかけて目的の産物を得るが、得られる産物はNMRなどの手段によって確認する。
【0045】
(ただし、R、R、R、R、L、L、L、Y、n1、n2、環A、Bの定義は前記の通りである。
は独立になし、-(CH-、-(CH-CH=CH-、-(CH -C≡C-、-(CO)-、-(CH-NH-、-(CH-O-で、各mは独立に0~10の整数である。
は置換または無置換のC~C10アルキル基、置換または無置換のC~C10芳香環、C~C10シクロアルカン環、C~C10ヘテロシクロアルカン環、C~C10ヘテロ芳香環、コール酸、リトコール酸、デオキシコール酸、イソリトコール酸、イソデオキシコール酸、ゲノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、α-ムリコール酸、β-ムリコール酸、γ-ムリコール酸、ω-ムリコール酸で、上記置換とはC~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基、ハロゲン、ヒドロキシ基からなる群から選ばれる1個または複数個の置換基を有することである。
はOまたはCHである。)
【0046】
用途
式I化合物は、GPR84の拮抗剤として、競合的にGPR84の作動剤による当該受容体の活性化を抑制することができ、GPR84の高発現または過剰な興奮性による関連疾患を治療する薬物の製造に有用で、前記疾患は多発性硬化症、炎症性腸疾患、器官線維化、関節炎などを含む。
【0047】
薬物組成物
本発明の薬物組成物は、治療有効量の式I化合物またはその薬学的に許容される塩と、1つまたは複数の薬用可能な担体とを含有する。
【0048】
「薬用可能な担体」、「薬学的に許容される担体」または「薬学的に使用可能な担体」とは、ヒトに適用でき、且つ十分な純度および充分に低い毒性を持たなければならない、1種または複数種の相溶性固体または液体フィラーまたはゲル物質をいう。「相溶性」とは、組成物における各成分が本発明の活性成分(式I化合物またはその薬学的に許容される塩)と、またその同士の間で配合することができ、活性成分の効果を顕著に低下させないことをいう。薬用可能な担体の部分の例の一部として、セルロースおよびその誘導体(たとえばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースナトリウム、セルロースアセテートなど)、ゼラチン、タルク、固体潤滑剤(たとえばステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム)、硫酸カルシウム、植物油(たとえば大豆油、ゴマ油、落花生油、オリーブオイルなど)、多価アルコール(たとえばプロピレングリコール、グリセリン、マンニトール、ソルビトールなど)、乳化剤(たとえばツインR)、湿潤剤(たとえばドデシル硫酸ナトリウム)、着色剤、調味剤、安定剤、酸化防止剤、防腐剤、発熱性物質除去蒸留水などがある。
【0049】
本発明の化合物および薬物組成物は様々な形態が可能で、たとえば、カプセル、錠剤、顆粒剤、溶液状、粉剤、散剤やシロップなどの形態で経口投与してもよく、あるいは注射剤の形態で非経口投与してもよく、本発明の化合物および薬物組成物は適当な固体または液体の担体に存在してもよく、適当な注射または点滴用の消毒器具に存在してもよい。上記製剤は、通常の製薬方法によって製造することができる。
【0050】
本発明の化合物および医薬品組成物は、ヒトおよび動物を含む哺乳動物の臨床使用に用いることが可能で、口、鼻または胃腸管などの経路で投与することができる。最も好ましい投与経路は、経口投与である。
【0051】
本発明で説明された上記特徴、あるいは実施例で説明された特徴は任意に組み合わせることができる。本願説明書で開示されたすべての特徴はいずれの組成物の様態とも併用することができ、説明書で開示された各特徴は、任意の相同、同等あるいは類似の目的の代替性特徴に置き換えることができる。そのため、特に説明しない限り、開示された特徴は同等あるいは類似の特徴の一般的な例にすぎない。
【0052】
以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いられるものだけで、本発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。下記実施例で具体的な条件が示されていない実験方法は、通常、、Sambrookら、「モレキュラー・クローニング:研究室マニュアル((ニューヨーク、コールド・スプリング・ハーバー研究所出版社、1989) に記載の条件など通常の条件、あるいはメーカーのお薦めの条件に従う。特に説明しない限り、百分率および部は重量百分率および重量部である。
【0053】
下記実施例において、NMRはBruker製のAVANCE III 400M装置によって測定され、NMR校正は、δ H 7.26 ppm(CDCl)、2.50 ppm(DMSO-d)、3.15 ppm(CDOD)である。試薬は主に上海化学試薬公司から提供された。TLC薄層クロマトグラフィーシリカゲルプレートは山東煙台会友シリカゲル開発有限公司によって生産され、型番はHSGF 254で、化合物の精製に使用された順相カラムクロマトグラフィーのシリカゲルは山東青島海洋化工社支社によって生産され、型番はzcx-11で、200~300メッシュである。
【0054】
実施例1
化合物LSX448の製造
【化11】
【0055】
中間体G1Mの合成。原料G1(200 mg, 0.78 mmol)、4,5-ジシアノイミダゾール(184 mg, 1.56 mmol)を乾燥したジクロロメタンに溶解させ、20℃でアルゴンガスの保護下においてそれにビス(ジイソプロピルアミノ)(2-シアノエトキシ)ホスフィン(0.495 ml, 1.56 mmol)を滴下し、20℃で5 h反応させた後、飽和NaHCOを入れてpHが7になるように調整し、濃縮し、ジクロロメタンで抽出し、水相を3回逆抽出した後、飽和食塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、ろ過し、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(PE:AcOEt = 15:1~10:1)にかけ、中間体G1M(280 mg,78%,無色液体)を得た。
【化12】
【0056】
化合物LSX448の合成。中間体G1Mを乾燥したジクロロメタンに溶解させ、テトラゾール(43 mg, 0.63 mmol)およびG2(0.097 ml, 0.63 mmol)を入れ、4 h反応させ、t-ブチルヒドロペルオキシド(70%水溶液)(0.094 ml, 0.63 mmol)を入れ、1 h反応させ、飽和亜硫酸ナトリウム溶液を入れて中和し、酢酸エチルで抽出し、水相を3回逆抽出した後、飽和食塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、ろ過し、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(PE:AcOEt = 10:1~2:1)にかけて中間体G1Nを得、それを乾燥したジクロロメタンに再溶解させ、1, 8-ジアザビシクロウンデセン-7(0.094 ml, 0.63 mmol)を入れ、30分間反応させ、1 mol/L HClを入れてpHが7になるように調整し、酢酸エチルで抽出し、水相を3回逆抽出した後、飽和食塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、ろ過し、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(DCM:MeOH = 15:1~10:1)にかけ、回転乾燥で溶媒を除去して目的の化合物LSX448(35 mg,10%,白色固体)を得た。H NMR (d-DMSO, 400 MHz): δ 7.46 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.31-7.20 (m, 6H), 7.08 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 3.87 (m, 2H), 3.83(s, 3H), 1.45(m, 2H), 1.24-1.14(m, 10H), 0.78(t, J = 7.6 Hz, 3H)。
【0057】
同様のの方法によって以下の化合物を合成した。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【0058】
実施例2
化合物LSX442の製造
【化13】
【0059】
原料G1(200 mg, 0.78 mmol)を乾燥したピリジン(5 mL)に溶解させ、アルゴンガスの保護下において再蒸留したPOCl(0.078 mL, 0.86 mmol)を滴下し、80℃で一晩反応させ、翌日、室温に冷却した後、反応系にG3(290 mg, 2.34 mmol)を滴下し、完了後、反応系を80℃に昇温させて6 h反応させた後、室温に戻して水を入れてクエンチングし、1 mol/L塩酸を入れてpHが7になるように調整し、酢酸エチルで抽出し、水相を3回逆抽出した後、飽和食塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、ろ過し、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(DCM:MeOH = 15:1~10:1)にかけ、回転乾燥で溶媒を除去した目的の化合物LSX442(40 mg,12%,白色固体)を得た。H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 7.46 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.29-7.04 (m, 9H), 6.78 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 3.83(s, 3H), 3.67(s, 3H)。
【0060】
同様のの方法によって以下の化合物を合成した。
【表2】
【0061】
実施例3
化合物LSX432の製造
【化14】
原料G1(200 mg, 0.78 mmol)を乾燥したピリジン(5 mL)に溶解させ、アルゴンガスの保護下においてG5(0.480 mL, 2.34 mmol)を滴下し、80℃で一晩反応させ、室温に戻して水を入れてクエンチングし、1 mol/L塩酸を入れてpHが7になるように調整し、酢酸エチルで抽出し、水相を3回逆抽出した後、飽和食塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、ろ過し、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(DCM:MeOH = 15:1~10:1)にかけ、回転乾燥で溶媒を除去した目的の化合物LSX432(120 mg,35%,白色固体)を得た。H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 7.43 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.39 - 7.10 (m, 6H), 7.05 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 3.83 (s, 3H), 1.49 - 1.35 (m, 4H), 1.30 - 1.03 (m, 10H), 0.89 - 0.79 (m, 3H).
【0062】
実施例4
化合物LSX419の製造
【化15】
中間体G1M(368 mg, 0.78 mmol)を乾燥したジクロロメタンに溶解させ、t-ブチルヒドロペルオキシド(70%水溶液)(0.094 ml, 0.63 mmol)を入れ、1 h反応させ、飽和亜硫酸ナトリウム溶液を入れて中和し、酢酸エチルで抽出し、水相を3回逆抽出した後、飽和食塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、ろ過し、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(PE:AcOEt = 10:1~2:1)にかけ、中間体G1Nを得て乾燥したジクロロメタンで溶解させ、1, 8-ジアザビシクロウンデセン-7(0.094 ml, 0.63 mmol)を入れ、30分間反応させ、1 mol/L HClを入れてpHが7になるように調整し、酢酸エチルで抽出し、水相を3回逆抽出した後、飽和食塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、ろ過し、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(DCM:MeOH = 15:1~10:1)にかけ、回転乾燥で溶媒を除去して目的の化合物LSX419(120 mg,18%,白色固体)を得た。H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 7.49 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.38 - 7.24 (m, 5H), 7.20 (dd, J = 7.2, 1.2 Hz, 1H), 7.13 (dd, J = 7.2, 1.2 Hz, 1H), 3.85 (s, 3H), 3.44 (dp, J = 20.0, 6.8 Hz, 2H), 1.15 (d, J = 6.8 Hz, 12H)。
【0063】
実施例5
化合物LSX784の製造
【化16】
【0064】
中間体G1M(920 mg, 0.78 mmol)を乾燥したジクロロメタンに溶解させ、テトラゾール(107 mg, 1.575 mmol)およびG6(0.242 ml, 1.575 mmol)を入れ、4 h反応させ、t-ブチルヒドロペルオキシド(70%水溶液)(0.235 ml, 1.575 mmol)を入れ、1 h反応させ、飽和亜硫酸ナトリウム溶液を入れて中和し、酢酸エチルで抽出し、水相を3回逆抽出した後、飽和食塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、ろ過し、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(PE:AcOEt = 10:1~2:1)にかけ、中間体を得て乾燥したジクロロメタンで溶解させ、1, 8-ジアザビシクロウンデセン-7(0.235 ml, 1.575 mmol)を入れ、30分間反応させ、1 mol/L HClを入れてpHが7になるように調整し、酢酸エチルで抽出し、水相を3回逆抽出した後、飽和食塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、ろ過し、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(DCM:MeOH = 15:1~10:1)にかけ、回転乾燥で溶媒を除去して中間体を得て塩化水素の酢酸エチル溶液で溶解させ、常温で2 h反応させた後、低温減圧で溶媒を除去し、真空乾燥した後、コール酸(122 mg, 0.298 mmol)、EDCI(86 mg, 0.448 mmol)、DMAP(109 mg, 0.892 mmol)を入れ、N, N-ジメチルホルムアミドおよびトリエチルアミンを溶媒とし、常温で2 d反応させた後、減圧で溶媒を除去し、濃縮後、シリカゲルクロマトグラフィー(DCM:MeOH:AcOH=10:1:0.1~5:1:0.1)にかけてLSX784(16 mg, 1.05%, 白色固体)を得た。H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 7.46 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.38 - 7.17 (m, 6H), 7.13 - 7.06 (m, 1H), 4.31 (d, J = 4.4 Hz, 1H), 4.16 - 4.06 (m, 1H), 4.00 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 3.94 - 3.80 (m, 5H), 3.80 - 3.74 (m, 1H), 3.67 - 3.55 (m, 1H), 3.09 (q, J = 6.8 Hz, 2H), 2.28 - 2.06 (m, 2H), 2.07 - 1.91 (m, 1H), 1.86 - 1.70 (m, 4H), 1.72 - 1.57 (m, 4H), 1.49 - 1.09 (m, 15H), 1.04 - 0.77 (m, 12H), 0.59 (s, 3H).
【0065】
実施例6
(1)実験目的
本発明の化合物のGPR84の拮抗活性テストを行った。
(2)材料の由来
ヒト由来のGPR84細胞系は、HEK293細胞系にGPR84およびGα16タンパク質をコードするプラスミドを形質導入して得られた。蛍光色素Fluo-4 AMはInvitrogen社から購入された。
【0066】
(3)テストの原理
細胞内において、Ca2+イオンは非常に重要なG蛋白質共役型受容体シグナル経路のセカンドメッセンジャーで、Gα16タンパク質と共役したGPR84が作動剤と結合すると、細胞内におけるCa2+イオンの濃度は顕著に増加する。Fluo-4はCa2+イオンに特異的な蛍光プローブで、Ca2+イオンと定量的に結合して蛍光を放出することができる。そのため、蛍光検出法によって、96ウェルまたは384ウェルの平底マイクロプレートにおいて化合物の作動活性または拮抗活性を検出する。
【0067】
GPR84拮抗剤の受容体に対する阻害効果の検出:GPR84細胞を蛍光色素Fluo-4でインキュベートした後、異なる濃度の拮抗化合物を入れて一定の時間インキュベートし、作動剤がGPR84と結合する部位(拮抗結合部位)を取らせ、さらに一定の濃度の作動剤(6-n-オクチルアミノウラシル、6-n-octylaminouracil、6-OAU)をいれ、拮抗化合物と結合部位を競合させ、同時に波長が485 nmの光源で励起させて波長525 nmで細胞内におけるカルシウムイオンの濃度変化による色素の蛍光強度の変化を検出し、GraphPad PRISMソフトによって化合物の半数阻害濃度(IC50)を算出した。
【0068】
(4)実験の過程
HBSSの調製:0.4 g/L KCl (5.4 mM)、0.12 g/L NaHPO12HO (0.3 mM)、0.06 g/L KHPO(0.4 mM)、0.35 g/L NaHCO (4.2 mM)、0.14 g/L CaCl(1.3 mM)、0.10 g/L MgCl6HO (0.5 mM)、0.05 g/L MgSO (0.6 mM)、8.0 g/L NaCl (137 mM)で、上記各成分を量って超純水で溶解させ、塩酸またはNaOH溶液でpHが7.4になるように調整し、ろ過し、4℃で1か月保存した。
【0069】
カルシウム流緩衝液の調製:まず、560 mM D-グルコース(100×)ストック水溶液、250 mM 1,2-ジフェニル-4-(2-フェニルスルフィニル)エチル-3,5-ピラゾリジンジオン(1000×)ストック液を調製した。さらに、100 mLのHBSSにBSA(0.5 g)、560 mMのD-グルコースストック液(1 mL)および250 mM 1,2-ジフェニル-4-(2-フェニルスルフィニル)エチル-3,5-ピラゾリジンジオンストック液(100 μL)を入れ、最終濃度がそれぞれ0.5% BSA、5.6 mM D-グルコース、250 μM 1,2-ジフェニル-4-(2-フェニルスルフィニル)エチル-3,5-ピラゾリジンジオンになるようにし、均一に混合し、使用直前に調製した。
【0070】
色素の調製:2 mM Fluo-4 AM(1000X,Invitrogen社から購入)のDMSO溶液(1 μL)と3% Cremophor EL(100X,SigmaAldrich社から購入)のPBS溶液(10 μL)を混合し、さらに1 mLのカルシウム流緩衝液を入れて均一に混合した。
【0071】
細胞を4×10 個/ウェルの密度で96ウェルプレートに接種し、24 h培養した後、培養液を捨て、各ウェルに40 μLのFluo-4 AM蛍光染色液を入れて37℃のインキュベーターにおいて40分間インキュベートした。色素を吸い取った後、50 μLの被験化合物を入れ、室温で10分間インキュベートした後、Flex Station IIIマイクロプレートリーダーで25 μLの6-OAU(希釈後の有効濃度が当該作動剤のEC80付近である)を入れて刺激し、そしてリアルタイムで細胞内カルシウムイオン流の変化によるFluo-4 AM色素蛍光強度の変化値を読み取った(励起波長485 nm,検出波長525 nm)。
【0072】
(5)実験結果
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0073】
IC50: * 1 - 10 μM;** 0.1 - 1 μM;*** < 0.1 μM
CLogP値は米CambridgeSoft社のChemBioDrawソフトウェア(バージョンUltra 12.0)によって算出された。計算に使用された構造はいずれも化合物の遊離酸の様態である。
ALogP値は米Schrodinger社のMaestroソフトウェア(バージョン11.2)によって算出された。すべての化合物はpH = 7の場合の電離状態で計算し、中では、化合物LSX431はホスファミドの窒素原子のプロトン化によってALogPとCLogPのデータが大きく異なる。
【0074】
(6)結果分析
表1の結果から、本発明の化合物は、IC50値がいずれも10 μM未満で、一部の化合物のIC50値が0.1 - 1 μMの間で、一部の化合物のIC50値が100 nM未満と低かったことがわかるが、本発明の化合物はGPR84拮抗剤として有用であることが示された。また、既存の化合物XYF573c(IC50 = 26.2 nM,CLogP = 6.419,ALogP = 6.80)と比較すると、中では、30の化合物のCLogPが5-6の間で、37の化合物のCLogPが<5で、47の化合物のALogPが5-6の間で、26の化合物のALogPが<5で、XYF573cのCLogPおよびALogPよりも明らかに低下した。
【0075】
実施例7
(1)実験目的
本発明の化合物XYF573cとLSX472aのICRマウスにおける組織分布実験を行い、これらの血漿、器官における分布と経口暴露量(AUC0-8h)を比較した。
(2)材料の由来
ICRマウスは上海市実験動物研究センターから購入された。
(3)テストの原理
LC-MSによって化合物のICRマウスの血漿および各器官における濃度を検出した。
【0076】
(4)実験の過程
マウスは実験期間内で12h以上禁食で、自由に飲水させ、投与から2h後、餌を提供した。
化合物XYF573cとLSX472aはいずれも経口投与で、投与量が5 mg/kgで、溶媒はDMSO/0.5% HPMC = 5/95, v/vで、N = 3であった。
【0077】
経口投与から0.5h、2hおよび8h後で、それぞれ約20 μLのマウス心臓血、門脈血漿または20 mgの肝臓、肺、および回腸の組織を清潔な遠心管に取り、200 μLのMeOH/ACN (50/50, v/v)を入れ、そしてボルテックスミキサーにおいて1分間回転させ、混合物を15000 rpmで5分間遠心して20 μLの上清液を取って20 μL ACN/水(1/1, v/v)と混合し、そしてLC-MSによって定量分析を行った。
AUC0-8hの数値は化合物の0.5h、2hおよび8hの濃度から台形法によって算出された。
【0078】
(5)実験結果
cLogPの低下は化合物の経口吸収に非常に重要である。本発明の化合物LSX472aはcLogPが5.51で、XYF573cよりも0.9低下したが、このような変化は、LSX472aの経口暴露量(Plasma AUC0-8h)がXYF573cよりも13倍向上したと表れた(図1および表1)。さらに、LSX472aは腸管(たとえば、回腸Ileum)における暴露量がXYF573cよりも明らかに増加した。そのため、本発明のGPR84拮抗剤の構造の開拓により、このような化合物の薬らしさが改善され、経口吸収が増加し、また化合物の標的組織分布の改善にも有利である。
【表4】
【0079】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、当業者が本発明を各種の変動や修正をすることができるが、それらの等価の形態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるはずである。
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-03-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表される化合物、またはその鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体、またはその薬学的に許容される塩。
【化1】
(式において、YはOまたはSである。
ZはH、またはLi、Na、K、Ca、Mg、Cu、Fe、Zn、Al、Mnといった金属のイオン、またはNH、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、アミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、ヒスチジン、ヒドロキソコバラミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン、イミダゾールといった塩基の共役酸である。
はなし、O、S、-CH=CH-、CO、-C(=CH)-、置換または無置換のC~Cアルキレン基、-NH-、-N(C~Cアルキル基)-、C~Cシクロアルキル基またはC~Cヘテロシクロアルキル基で、前記置換とはC~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基、ハロゲン、ヒドロキシ基からなる群から選ばれる1個または複数個の置換基を有することである。
はなし、CHである。
環A、Bはそれぞれ独立にC~C10芳香環、C~C10シクロアルカン環、C~C10ヘテロシクロアルカン環、C~C10ヘテロ芳香環である。
n1、n2はそれぞれ独立に0、1、2、3または4である。R、Rはそれぞれ独立に-OH、-SH、-NH、F、Cl、Br、I、-C2r-L-C2s+1、-C2r-N(C2t+1)-C2s+1、置換または無置換のC~Cアルキル基で、上記置換とはハロゲン、ヒドロキシ基、アミノ基、-COOC~Cアルキル基、-COOHからなる群から選ばれる1個または複数個の置換基を有することである。
はそれぞれ独立にO、S、NHで、各rは独立に0、1、2、3、4、5または6で、各sは独立に0、1、2、3、4、5または6で、各tは独立に1、2、3、4、5、または6である。
、Lはそれぞれ独立にO、なし、-O(C~C10アルキレン基)-、-O(C~C10アルキレン基)NH-、-O(C~C10アルキレン基)O-、-CONH-、-OCO-、-NH-、-NHCOO-、-N(C~Cアルキル基)-、またはC~C10アルキレン基である。
はH、OH、NH、SH、-COOH、置換または無置換のC~C10アルキル基、置換または無置換のC~C10アルケニル基、置換または無置換のC~C10アルキニル基、置換または無置換の3-12員シクロアルカン環、置換または無置換のC~C14芳香環、置換または無置換のアミノ基、置換または無置換の4-10員ヘテロシクロアルカン環、置換または無置換の4-10員ヘテロ芳香環、コール酸、リトコール酸、デオキシコール酸、イソリトコール酸、イソデオキシコール酸、ゲノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、α-ムリコール酸、β-ムリコール酸、γ-ムリコール酸、ω-ムリコール酸で、上記置換とはアミノ基、C~C10アルキル基、ハロゲン、C~C10芳香環、C~Cアルコキシ基、3-12員シクロアルカン環、-O-C2p-O-C2q+1、ニトロ基、オキソ(=O)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、-C(O)OC~Cアルキル基、-O-C~C10芳香環からなる群から選ばれる1、2、3、4、5または6個の置換基を有することで、ここで、各pは独立に1、2、3、4、5または6で、各qは独立に1、2、3、4、5または6である。

【化2】
は独立に単結合または二重結合を表す。)
【請求項2】
一般式(I)で表される化合物、またはその鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体、またはその薬学的に許容される塩。
【化3】
(式において、YはOまたはSである。
ZはH、またはLi、Na、K、Ca、Mg、Cu、Fe、Zn、Al、Mnといった金属のイオン、またはNH、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、アミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、ヒスチジン、ヒドロキソコバラミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン、イミダゾールといった塩基の共役酸である。
はなし、O、S、-CH=CH-、CO、-C(=CH)-、置換または無置換のC~Cアルキレン基、-NH-、-N(C~Cアルキル基)-、C~Cシクロアルキル基またはC~Cヘテロシクロアルキル基で、前記置換とはC~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基、ハロゲン、ヒドロキシ基からなる群から選ばれる1個または複数個の置換基を有することである。
はなし、CHである。
環A、Bはそれぞれ独立にC~C10芳香環、C~C10シクロアルカン環、C~C10ヘテロシクロアルカン環、C~C10ヘテロ芳香環である。
n1、n2はそれぞれ独立に0、1、2、3または4である。R、Rはそれぞれ独立に-OH、-SH、-NH、F、Cl、Br、I、置換または無置換の-C2r-L-C2s+1、-C2r-N(C2t+1)-C2s+1、置換または無置換のC~Cアルキル基で、上記置換とはハロゲン、ヒドロキシ基、アミノ基、-COOC~Cアルキル基、-COOHからなる群から選ばれる1個または複数個の置換基を有することである。
はそれぞれ独立にO、S、NHで、各rは独立に0、1、2、3、4、5または6で、各sは独立に0、1、2、3、4、5または6で、各tは独立に1、2、3、4、5、または6である。
、Lはそれぞれ独立にO、なし、-O(C~C10アルキレン基)-、-O(C~C10アルキレン基)NH-、-O(C~C10アルキレン基)O-、-CONH-、-OCO-、-NH-、-NHCOO-、-N(C~Cアルキル基)-、またはC~C10アルキレン基である。
はH、OH、NH、SH、-COOH、置換または無置換のC~C10アルキル基、置換または無置換のC~C10アルケニル基、置換または無置換のC~C10アルキニル基、置換または無置換の3-12員シクロアルカン環、置換または無置換のC~C14芳香環、置換または無置換のアミノ基、置換または無置換の4-10員ヘテロシクロアルカン環、置換または無置換の4-10員ヘテロ芳香環、コール酸、リトコール酸、デオキシコール酸、イソリトコール酸、イソデオキシコール酸、ゲノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、α-ムリコール酸、β-ムリコール酸、γ-ムリコール酸、ω-ムリコール酸で、上記置換とはアミノ基、C~C10アルキル基、ハロゲン、C~C10芳香環、C~Cアルコキシ基、3-12員シクロアルカン環、-O-C2p-O-C2q+1、ニトロ基、オキソ(=O)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、-C(O)OC~Cアルキル基、-O-C~C10芳香環、-NH-(4-10員ヘテロ芳香環)、-NH-(4-10員ヘテロ芳香環)-CONHからなる群から選ばれる1、2、3、4、5または6個の置換基を有することで、ここで、各pは独立に1、2、3、4、5または6で、各qは独立に1、2、3、4、5または6である。

【化4】
は独立に単結合または二重結合を表す。)
【請求項3】
は独立になし、CH、O、S、-CO-、-NH-で、
は独立になし、CHである
ことを特徴とする請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
は置換または無置換のC1~C10アルキル基、置換または無置換のC~C10アルケニル基、置換または無置換のC~C10アルキニル基、置換または無置換の3-12員シクロアルカン環、置換または無置換のC~C14芳香環、置換または無置換のアミノ基、置換または無置換の4-10員ヘテロシクロアルカン環、置換または無置換の4-10員ヘテロ芳香環、コール酸、リトコール酸、デオキシコール酸、イソリトコール酸、イソデオキシコール酸、ゲノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、α-ムリコール酸、β-ムリコール酸、γ-ムリコール酸、ω-ムリコール酸で、上記置換とはアミノ基、C~C10アルキル基、ハロゲン、C~C10芳香環、C~Cアルコキシ基、3-12員シクロアルカン環、-O-C2p-O-C2q+1、ニトロ基、オキソ(=O)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、-COOC~Cアルキル基、-O-ベンゼン環からなる群から選ばれる1、2、3、4または5個の置換基を有することで、ここで、各pは独立に1、2または3で、各qは独立に1、2または3であることを特徴とする請求項1または2に記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物は以下の群から選ばれることを特徴とする請求項1または2に記載の化合物。
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【請求項6】
請求項1または2に記載の化合物の製造方法であって、前記化合物は式P1で表される構造を有し、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
【化10】
式S1化合物、式S2化合物および式S3化合物を原料とし、反応させて式P1で表される構造を有する化合物を得る。
(ただし、R、R、R、L、L、L、L、Y、n1、n2上記環Aは、環Bの定義は前記の通りである。
はOである。
各Xは独立にジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基である。
はシアノエチル基、アリル基、t-ブチル基、ベンジル基である。)
【請求項7】
請求項1または2に記載の化合物の製造方法であって、前記化合物は式P1で表される構造を有し、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
【化11】
式S1化合物、式S3化合物および式S4化合物を原料とし、反応させて式P1で表される構造を有する化合物を得る。
(ただし、R、R、R、L、L、L、L、Y、n1、n2、環A、Bの定義は前記の通りである。
はOまたはCHである。
各Xは独立にF、Cl、BrまたはIである。)
【請求項8】
請求項1または2に記載の化合物の製造方法であって、前記化合物は式P1で表される構造を有し、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
【化12】
式S1化合物および式S5化合物を原料とし、反応させて式P1で表される構造を有する化合物を得る。
(ただし、R、R、R、L、L、L、L、Y、n1、n2、環A、Bの定義は前記の通りである。
はOまたはCHである。
各Xは独立にF、Cl、BrまたはIである。)
【請求項9】
薬物組成物であって、以下のものを含むことを特徴とする組成物。
請求項1または2に記載の一般式(I)で表される化合物、またはその鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体またはその薬学的に許容される塩;ならびに
薬学的に許容される担体。
【請求項10】
請求項1または2に記載の化合物またはその鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体、またはその薬学的に許容される塩の使用であって、以下のことに用いられることを特徴とする使用。
(i)GPR84拮抗剤の製造のための使用;
(ii)GPR84拮抗剤としての使用;
(iii)GPR84受容体の高発現または過剰な興奮性による関連疾患を治療する薬物の製造のための使用。
【請求項11】
前記疾患は多発性硬化症、炎症性腸疾患、線維化、神経変性疾患または関節炎であることを特徴とする請求項10に記載の使用。
【国際調査報告】