(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】より平滑なBiSb膜表面のために粒径を微細化するための新規なドーピングプロセス
(51)【国際特許分類】
H10N 50/10 20230101AFI20240709BHJP
H01L 29/82 20060101ALI20240709BHJP
H10B 61/00 20230101ALI20240709BHJP
G11B 5/72 20060101ALI20240709BHJP
G11B 5/82 20060101ALI20240709BHJP
G11B 5/39 20060101ALI20240709BHJP
G11B 5/02 20060101ALI20240709BHJP
G11B 5/31 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H10N50/10 M
H01L29/82 Z
H10N50/10 Z
H10B61/00
G11B5/72
G11B5/82
G11B5/39
G11B5/02 R
G11B5/31 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502065
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2024-01-15
(86)【国際出願番号】 US2022035654
(87)【国際公開番号】W WO2023121717
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504056130
【氏名又は名称】ウェスタン デジタル テクノロジーズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レ、クァン
(72)【発明者】
【氏名】ファン、チャンジー
(72)【発明者】
【氏名】ヨーク、ブライアン アール.
(72)【発明者】
【氏名】シモンズ、ランディ ジー.
(72)【発明者】
【氏名】リュー、シャオヨン
(72)【発明者】
【氏名】ホ、クオック サン
(72)【発明者】
【氏名】高野 公史
(72)【発明者】
【氏名】グリベリュク、マイケル エイ.
(72)【発明者】
【氏名】シュー、シャオユー
【テーマコード(参考)】
4M119
5D034
5F092
【Fターム(参考)】
4M119AA19
4M119BB01
4M119BB20
4M119CC05
4M119CC10
4M119DD08
4M119DD09
4M119JJ03
5D034BA02
5F092AA11
5F092AC12
5F092AC26
5F092BB16
5F092BB23
5F092BB33
5F092BB36
5F092BB43
5F092BB53
5F092BC03
5F092BC07
5F092BC22
5F092CA02
(57)【要約】
本開示は、概して、(012)方位を有するドープされたビスマスアンチモン(BiSbE)層を備えるスピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)デバイスに関する。デバイスは、磁気書き込みヘッド、読み取りヘッド、又はMRAMデバイスを含み得る。BiSbE層中のドーパントは、(012)方位を強化する。BiSbE層は、(012)方位を確実にするために、テクスチャリング層上に形成され得、アンチモンが、構造を通ってマイグレートして他の層を汚染しないことを確実にするために、マイグレーションバリアが、BiSbE層の上に形成され得る。バッファ層及びインターレイヤも、存在してもよい。バッファ層及びインターレイヤは各々、独立して、材料の単一層又は材料の多層であってもよい。バッファ層及びインターレイヤは、ドープされたBiSbE層内へのアンチモン(Sb)のマイグレーションを抑制し、ドープされたBiSbE層の均質性を向上させる一方で、ドープされたBiSbE層の(012)方位を更に促進する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピン軌道トルク(SOT)デバイスであって、
基板と、
前記基板の上に配設された、ドープされたビスマスアンチモン(BiSbE)層と、を備え、前記ドープされたBiSbE層が、(012)方位を有し、Eが、ドーパントであり、前記ドーパントが、前記ドープされたBiSbE層の約0.5原子パーセント~約5原子パーセントの量で存在する、SOTデバイス。
【請求項2】
前記SOTデバイスが、書き込みヘッドである、請求項1に記載のSOTデバイス。
【請求項3】
前記SOTデバイスが、読み取りヘッドである、請求項1に記載のSOTデバイス。
【請求項4】
前記SOTデバイスが、磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)デバイスである、請求項1に記載のSOTデバイス。
【請求項5】
前記ドープされたBiSbE層が、約0.7nm~約4nmの表面粗さを有する、請求項1に記載のSOTデバイス。
【請求項6】
前記ドーパントが、N
2、H
2、C
xH
y(式中、x及びyは数字である)、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載のSOTデバイス。
【請求項7】
前記基板と、前記ドープされたBiSbE層との間に配設されたシード層を更に備え、前記シード層が、アモルファス調整層及びテクスチャリング層を備える、請求項1に記載のSOTデバイス。
【請求項8】
前記ドープされたBiSbE層の上に配設されたインターレイヤを更に備え、前記インターレイヤが、マイグレーションバリア層及びテクスチャリング層を備える、請求項1に記載のSOTデバイス。
【請求項9】
前記ドープされたBiSbE層の上に配設されたスピントルク層(STL)を更に備える、請求項1に記載のSOTデバイス。
【請求項10】
基板と、
前記基板の上に配設された、ドープされたビスマスアンチモン(BiSbE)層であって、前記ドープされたBiSbE層が、(012)方位を有し、Eが、ドーパントである、ドープされたBiSbE層と、
前記ドープされたBiSbE層の上に配設されたインターレイヤと、
前記インターレイヤの上に配設された磁気トンネル接合(MTJ)スタックと、を備える、スピン軌道トルク(SOT)デバイス。
【請求項11】
前記インターレイヤが、少なくとも1つのテクスチャリング層及び少なくとも1つのマイグレーションバリア層を備え、前記少なくとも1つのマイグレーションバリア層が、前記ドープされたBiSbE層上に配設され、前記MTJスタックが、前記少なくとも1つのテクスチャリング層上に配設されている、請求項10に記載のSOTデバイス。
【請求項12】
前記基板上に配設されたシード層を更に備え、前記ドープされたBiSbE層が、前記シード層上に配設されている、請求項10に記載のSOTデバイス。
【請求項13】
前記シード層が、テクスチャfcc(111)層を備える、請求項12に記載のSOTデバイス。
【請求項14】
前記シード層が、約3.48Å~約3.71Åの格子定数を有する、請求項12に記載のSOTデバイス。
【請求項15】
前記基板が、主磁極である、請求項10に記載のSOTデバイス。
【請求項16】
前記基板が、磁気シールドである、請求項10に記載のSOTデバイス。
【請求項17】
前記MTJスタック上に配設されたキャッピング層を更に備える、請求項10に記載のSOTデバイス。
【請求項18】
前記ドーパントが、N
2、H
2、C
xH
y(式中、x及びyは数字である)、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される非反応物ドーパントガスから導出される、請求項10に記載のSOTデバイス。
【請求項19】
スピン軌道トルク(SOT)デバイスを形成する方法であって、
スパッタリングチャンバ内に基板を配設することであって、前記スパッタリングチャンバが、スパッタリングターゲットを含む、配設することと、
前記スパッタリングチャンバ内にスパッタリングガスを流すことであって、前記スパッタリングガスが、不活性ガス及び非反応性ドーパントガスを含む、流すことと、
前記スパッタリングターゲットにバイアスを印加することと、
ドープされたビスマスアンチモン(BiSbE)層を前記基板上に堆積させることであって、Eが、前記ドーパントガスからのドーパントであり、前記ドープされたBiSbE層が、(012)方位を有する、堆積させることと、を含む、方法。
【請求項20】
前記ドープされたBiSbE層の上に磁気トンネル接合(MTJ)構造を形成することと、
前記ドープされたBiSbE層の上にテクスチャリング層及びマイグレーションバリア層を形成することと、を更に含み、前記基板が、アモルファス調整層を備える、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ドープされたBiSbE層の上にスピントルク層(STL)を形成することと、
前記ドープされたBiSbE層の上にテクスチャリング層及びマイグレーションバリア層を形成することと、を更に含み、前記基板が、アモルファス調整層を備える、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記非反応性ドーパントガスが、N
2、H
2、C
xH
y(式中、x及びyは数字である)、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年12月22日に出願された米国仮特許出願第63/292,582号の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本開示の実施形態は、概して、トポロジカル絶縁体として使用するための、(012)方位を有するドープされたビスマスアンチモン(BiSbE)層に関し、式中、Eは、ドーパントである。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
(012)方位を有するBiSbは、巨大なスピンホール効果と高い導電率の両方を有する狭いギャップのトポロジカル絶縁体である。BiSbは、磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(magnetoresistive random access memory、MRAM)デバイス及びエネルギー支援磁気記録(energy-assisted magnetic recording、EAMR)書き込みヘッド用のスピンホール層などの様々なスピン軌道トルク(spin-orbit torque、SOT)用途において提案されている材料である。
【0004】
しかしながら、BiSb材料は、いくつかの障害のために、商業的なSOT用途には未だ採用されていない。例えば、BiSb材料は、低い融点、大きい粒径、膜粗さに起因する熱アニール時の著しいSbマイグレーションの問題、極大のスピンホール効果のための(012)方位維持の困難性を有し、一般に柔らかく、イオンミリングによって容易に損傷を受ける。
【0005】
したがって、膜の粗さを低減し、それによってSbマイグレーションの問題を低減する、より小さい粒径を有し、(012)方位を有するBiSb層を形成する、改善されたSOTデバイス及びプロセスが、必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、概して、(012)方位を有する、ドープされたビスマスアンチモン(BiSbE)層を備えるスピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(magnetic tunnel junction、MTJ)デバイスに関する。デバイスは、磁気書き込みヘッド、読み取りヘッド、又はMRAMデバイスを含み得る。BiSbE層中のドーパントは、(012)方位を強化する。BiSbE層は、(012)方位を確実にするために、テクスチャリング層上に形成され得、アンチモンが、構造を通ってマイグレートして他の層を汚染しないことを確実にするために、マイグレーションバリアが、BiSbE層の上に形成され得る。バッファ層及びインターレイヤ(interlayer)が、存在してもよい。バッファ層及びインターレイヤは各々、独立して、材料の単一層又は材料の多層であってもよい。バッファ層及びインターレイヤは各々、少なくとも1つ正方晶(001)材料、正方晶(110)材料、体心立方(body-centered cubic、bcc)(100)材料、面心立方(face-centered cubic、fcc)(100)材料、テクスチャbcc(100)材料、テクスチャfcc(100)材料、テクスチャ(100)材料、又はアモルファス金属材料を含む。バッファ層及びインターレイヤは、ドープされたBiSbE層内へのアンチモン(Sb)のマイグレーションを抑制し、ドープされたBiSbE層の均質性を向上させる一方で、ドープされたBiSbE層の(012)方位を更に促進する。
【0007】
別の実施形態では、スピン軌道トルク(SOT)デバイスは、基板と、基板の上に配設された、ドープされたビスマスアンチモン(BiSbE)層と、を備え、ドープされたBiSbE層は、(012)方位を有し、Eは、ドーパントであり、ドーパントは、ドープされたBiSbE層の約0.5原子パーセント~約5原子パーセントの量で存在する。
【0008】
別の実施形態では、スピン軌道トルク(SOT)デバイスは、基板と、基板の上に配設された、ドープされたビスマスアンチモン(BiSbE)層であって、ドープされたBiSbE層が、(012)方位を有し、Eが、ドーパントである、ドープされたビスマスアンチモン(BiSbE)層と、ドープされたBiSbE層の上に配設されたインターレイヤと、インターレイヤの上に配設された磁気トンネル接合(MTJ)スタックと、を備える。
【0009】
別の実施形態では、スピン軌道トルク(SOT)デバイスを形成する方法は、スパッタリングチャンバ内に基板を配設することであって、スパッタリングチャンバが、スパッタリングターゲットを含む、配設することと、スパッタリングガスをスパッタリングチャンバ内に流すことであって、スパッタリングガスが、不活性ガス及び非反応性ドーパントガスを含む、流すことと、スパッタリングターゲットにバイアスを印加することと、ドープされたビスマスアンチモン(BiSbE)層を基板上に堆積させることであって、Eが、ドーパントガスからのドーパントであり、ドープされたBiSbE層が、(012)方位を有する、堆積させることと、を含む。
【0010】
一実施形態では、スピン軌道トルク(SOT)デバイスを形成する方法は、スパッタリングチャンバ内に基板を配設することと、スパッタリングガスをチャンバ内に流すことであって、スパッタリングガスが、非反応性ドーパントガスを含む、流すことと、スパッタリングターゲットにバイアスを印加することと、基板上にビスマスアンチモン(BiSb)層を堆積させることであって、BiSb層が、非反応性ドーパントガスでドープされる、堆積させることと、を含む。
【0011】
別の実施形態では、スピン軌道トルク(SOT)デバイスは、基板と、基板上のビスマスアンチモンドーパント元素(BiSbE)層と、を備え、BiSbE層は、(012)方位を有し、BiSbE層は、ビスマスと、アンチモンと、非反応性元素と、を含み、非反応性ドーパント元素は、BiSbE層の約0.5原子%~約5原子%を構成する。
【0012】
更に別の実施形態では、スピン軌道トルク(SOT)デバイスを形成する方法は、スパッタチャンバ内に基板を配設することと、基板の上にシード層を堆積させることと、シード層の上にビスマスアンチモン(BiSb)層を堆積させることと、を含み、BiSb層を堆積させることは、Ar、Ne、Kr、Xe、又はそれらの組み合わせなどの不活性ガスを含むスパッタリングガスを供給することを含む。スパッタリングガスはまた、N2、H2、CxHy(式中、x及びyは数字である)、及びそれらの組み合わせなどの非反応性ドーパントガスを含むであろう。方法はまた、ドープされたBiSb層の上にインターレイヤを堆積させることを含む。
【0013】
更に別の実施形態では、上述の方法に従って、スピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)MRAMデバイスが、形成され得、SOT MTJデバイスは、基板と、基板上に形成されたバッファ層であって、バッファ層が、第1の中間層(intermediary layer)を備え、から第1の中間層が、正方晶テクスチャ(001)、(110)材料、テクスチャbcc若しくはB2(100)材料、テクスチャfcc(100)材料、テクスチャ(100)材料、又はアモルファス金属材料の群から選択される材料を含む、バッファ層と、バッファ層の上に上述の方法を用いて形成された、(012)方位を有するビスマスアンチモン(BiSb)層と、を含み、BiSb層は、第1のBi層を含む三層構造であって、BiSb層が、第1のBi層上に配設され、第2のBi層が、BiSb層上に配設されている、三層構造、を備え、バッファ層は、BiSb層内へのSbのマイグレーションを低減するように構成される。
【0014】
更に別の実施形態では、上述の方法に従って、スピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)MRAMデバイスが、形成され得、SOT MTJデバイスは、基板と、基板の上に形成されたバッファ層であって、バッファ層が、(100)方位を有するテクスチャ層と、テクスチャ層の上に配設されている第1の中間層と、を備え、第1の中間層が、正方晶(001)、正方晶(110)、テクスチャbcc若しくはB2(100)、テクスチャfcc(100)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される材料から構成される、バッファ層と、バッファ層の上に上述の方法を用いて形成されたビスマスアンチモン(BiSb)層であって、BiSb層が、(012)方位を有し、バッファ層は、BiSb層内へのSbの拡散を低減するように構成されている、BiSb層と、BiSb層の上に配設されたインターレイヤと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本開示の上記の特徴を詳細に理解することができるように、簡潔に上で要約した本開示のより具体的な説明は、実施形態を参照することによってなされ得、それらのいくつかが添付の図面に例示されている。しかしながら、添付の図面は、本開示の典型的な実施形態のみを例示し、したがって、その範囲を限定するものとみなされるべきではなく、本開示が他の同等に有効な実施形態を認め得ることに留意すべきである。
【
図1】SOT MTJデバイスを有する読み取り/書き込みヘッドを含む磁気媒体ドライブの特定の実施形態の概略図である。
【
図2】SOT MTJデバイスを有する読み取り/書き込みヘッドの特定の実施形態の部分断面側面図である。
【
図3A】SOTベースのMRAMデバイスを形成する、(012)方位を有するBiSbE層を有するSOTデバイスの特定の実施形態の概略断面図である。
【
図3B】磁気記録に使用されるSOTベースのエネルギー支援磁気記録(EAMR)書き込みヘッドの一部又は構成要素を形成する、(012)方位を有するBiSbE層を有するSOTデバイスの特定の実施形態の概略断面図である。
【
図3C】様々な実施形態による、
図3A及び
図3BのSOT MTJデバイスとともに使用され得るバッファ層及び/又はインターレイヤの例示的な多層構造を示す。
【
図3D】様々な実施形態による、
図3A及び
図3BのSOT MTJデバイスとともに使用され得るバッファ層及び/又はインターレイヤの例示的な多層構造を示す。
【
図3E】様々な実施形態による、
図3A及び
図3BのSOT MTJデバイスとともに使用され得るバッファ層及び/又はインターレイヤの例示的な多層構造を示す。
【
図3F】様々な実施形態による、
図3A及び
図3BのSOT MTJデバイスとともに使用され得るバッファ層及び/又はインターレイヤの例示的な多層構造を示す。
【
図3G】一実施形態による、
図3A及び
図3BのSOT MTJデバイスのBiSbE層であり得る、副層を備えるBiSbE層の概略断面図である。
【
図4】ドープされたBiSbE層を形成する方法を示すフローチャートである。
【
図5】グロー放電分光分析(Glow Discharge Spectrometry、GDS)の秒単位のスパッタ時間対BiSb及びBiSbE膜中の元素のGDS推定濃度を示す。
【
図6】BiSb層及びN
2でドープされたBiSbE層のBiSb方位の強度に対する2θXRDスキャンを示す。
【
図7】BiSbスタック及びN
2でドープされたBiSbEスタックのBiSb方位の強度の対数に対する2θXRDスキャンを示す。
【
図8A】BiSb層及びN
2でドープされたBiSbE層(BiSbN)のc/a比対温度を示す。
【
図8B】様々なアニール温度でのBiSbクーポン及びBiSbNクーポンの膜特性を含む表を示す。
【
図8C】様々なアニール温度でのBiSbクーポン及びBiSbNクーポンの膜特性を含む表を示す。
【
図9A】BiSb層を、N
2でドーされたBiSbE層と比較するRMS粗さチャートを示す。
【
図10A】
図1のドライブ又は他の好適な媒体ドライブの読み取り/書き込みヘッドなどのMAMR書き込みヘッドにおいて使用するためのSOTデバイスの概略断面図である。
【
図10B】
図10AのSOTデバイスを有するMAMR書き込みヘッドの一部分の特定の実施形態の概略MFS図である。
【
図10C】
図10AのSOTデバイスを有するMAMR書き込みヘッドの一部分の特定の実施形態の概略MFS図である。
【
図11】MRAMデバイスとして使用されるSOT MTJの概略断面図である。
【
図12A】様々な実施形態による、ピン止めされた、ドープされたBiSbEベースのセンサの概略的な媒体対向面(media facing surface、MFS)の図である。
【
図12B】様々な実施形態による、ピン止めされた、ドープされたBiSbEベースのセンサの概略的な媒体対向面(media facing surface、MFS)の図である。
【0016】
理解を容易にするために、図面に共通する同一の要素を示すために、可能な限り、同一の参照番号を使用している。一実施形態で開示される要素は、特に断ることなく、他の実施形態に有益に利用され得ることが企図される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本開示の実施形態を参照する。しかしながら、本開示は、具体的に説明される実施形態に限定されないことを理解されたい。その代わりに、以下の特徴及び要素の任意の組み合わせが、異なる実施形態に関連するか否かに関わらず、本開示を実施及び実践すると企図される。更に、本開示の実施形態は、他の可能な解決策に勝る、及び/又は先行技術に勝る利点を達成し得るが、特定の利点が所与の実施形態によって達成されるか否かは、本開示を限定するものではない。したがって、以下の態様、特徴、実施形態、及び利点は、単なる例示に過ぎず、請求項に明示的に記載されている場合を除いて、添付の特許請求の範囲の要素又は限定とみなされない。同様に、「本開示」への言及は、本明細書に開示される任意の発明の主題の一般化として解釈されるものではなく、請求項に明示的に記載されている場合を除いて、添付の特許請求の範囲の要素又は限定であるとみなされるべきではない。
【0018】
本開示の実施形態は、概して、(012)方位を有するビスマスアンチモン(BiSb)層の維持を促進するバッファ層に関する。アンチモン(Sb)は高反応性であり、バッファ層は、(012)方位におけるBiSbの成長を促進しながら、BiSb層と外部材料との間の化学的相互作用を低減する低反応性媒体を提供する。バッファ層の構成は、BiSb層内へのSbのマイグレーションを低減する。
【0019】
(012)方位を有するBiSb層は、大きなスピンホール角効果及び高い導電率を有する。(012)方位を有するBiSb層を使用して、スピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)デバイスを形成することができる。例えば、(012)方位を有するBiSb層は、磁気記録ヘッド内のスピン軌道トルクデバイス内のスピンホール層として、例えば、読み取りヘッド及び/又はマイクロ波支援磁気記録(microwave assisted magnetic recording、MAMR)書き込みヘッドの一部として使用され得る。別の例では、(012)方位を有するBiSb層は、磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)デバイスにおけるスピンホール電極層として使用され得る。SOT MTJデバイスは、垂直スタック構成又は面内スタック構成であり得る。SOT MTJデバイスは、例えば、読み取り及び/又は書き込みヘッド、MRAM、人工知能チップ、及び他の用途において利用され得る。(012)方位を有するBiSb層スタックは、SOT MTJデバイスにおいて、(001)方位を有するBiSb層よりも高いスピンホール角及び高い性能を有する。
【0020】
本開示の実施形態は、概して、トポロジカル絶縁体として使用するための、非反応性ガスでドープされた、(012)方位を有するビスマスアンチモン(BiSb)層に関する。一実施形態では、スピン軌道トルクデバイスは、基板と、基板の上のドープされたBiSbE層と、を備え、BiSbE層は、(012)方位を有し、BiSbE層は、ビスマスと、アンチモンと、ドーパントと、を含む。ドーパントは、N2、H2、CxHy(式中、x及びyは数字である)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。別の実施形態では、SOTデバイスを形成する方法は、スパッタリングチャンバ内で基板を堆積させることと、スパッタリングガスをチャンバ内に流すことであって、スパッタリングガスが、非反応性ガスを含む、流すことと、スパッタリングターゲットにバイアスを印加することと、基板上にビスマスアンチモン(BiSb)層を堆積させることと、を含む。
【0021】
図1は、SOT MTJデバイスを有する読み取り/書き込みヘッドを含むディスクドライブ100の特定の実施形態の概略図である。そのような磁気媒体ドライブは、単一のドライブであるか、又は複数のドライブを備え得る。説明のために、特定の実施形態による単一のディスクドライブ100が、示されている。図示の通り、少なくとも1つの回転可能な磁気ディスク112が、スピンドル114上に支持され、駆動モータ118によって回転される。各磁気ディスク112上の磁気記録は、磁気ディスク112上の同心データトラック(図示せず)の環状パターンなどの、データトラックの任意の好適なパターンの形態である。
【0022】
少なくとも1つのスライダ113が、磁気ディスク112の近傍に位置付けられ、各スライダ113は、SOTデバイスを含む1つ又は2つ以上の磁気ヘッドアセンブリ121を支持する。磁気ディスク112が回転すると、スライダ113は、磁気ヘッドアセンブリ121が、所望のデータが書き込まれる磁気ディスク112の異なるトラックにアクセスすることができるように、ディスク表面122の上方で半径方向において内外に移動する。各スライダ113は、サスペンション115によってアクチュエータアーム119に取り付けられる。サスペンション115は、スライダ113をディスク表面122に向かって付勢するわずかなばね力を提供する。各アクチュエータアーム119は、アクチュエータ手段127に取り付けられる。
図1に示されるようなアクチュエータ手段127は、ボイスコイルモータ(VCM)であり得る。VCMは、固定磁場内で移動可能なコイルを含み、コイル移動の方向及び速度は、制御ユニット129によって供給されるモータ電流信号によって制御される。
【0023】
ディスクドライブ100の動作中、磁気ディスク112の回転は、スライダ113とディスク表面122との間に空気軸受を生成し、これがスライダ113に上向きの力又は揚力を作用させる。したがって、空気軸受は、サスペンション115のわずかなばね力と相殺し、通常の動作中、スライダ113をディスク表面122から、小さい、実質的に一定の間隔だけ離して、ディスク表面122のわずかに上方で支持する。
【0024】
ディスクドライブ100の各種構成要素は、アクセス制御信号及び内部クロック信号などの、制御ユニット129によって生成された制御信号によって動作制御される。典型的には、制御ユニット129は、論理制御回路、記憶手段、及びマイクロプロセッサを備える。制御ユニット129は、ライン123のドライブモータ制御信号及びライン128のヘッド位置及びシーク制御信号など、様々なシステム動作を制御するための制御信号を生成する。ライン128上の制御信号は、スライダ113を磁気ディスク112上の所望のデータトラックに最適に移動させ、位置付けるための所望の電流プロファイルを提供する。書き込み及び読み取り信号は、記録チャネル125によって、磁気ヘッドアセンブリ121上の書き込み及び読み取りヘッドに、及び書き込み及び読み取りヘッドから通信される。
【0025】
典型的な磁気媒体ドライブについての上記説明、及び添付の
図1の図は、単に表示を目的としたものである。磁気媒体ドライブは、多数の媒体又はディスク及びアクチュエータを含み得、各アクチュエータは、いくつかのスライダを支持し得ることが、明らかであろう。
【0026】
本明細書で論じられる実施形態は、ハードディスクドライブ(hard disk drive、HDD)などのデータ記憶デバイス、並びにテープ埋込みドライブ(tape embedded drive、TED)などのテープドライブ、又はLTO(リニアテープオープン、Linear Tape Open)規格に準拠するものなどの挿入可能テープ媒体ドライブに適用可能であることを理解されたい。例示的なTEDが、2021年4月27日に発行され、本出願と同じ譲受人に譲渡された「Tape Embedded Drive」と題する米国特許第10,991,390号に記載されており、この特許は、参照により本明細書に組み込まれる。したがって、詳細な説明における、HDD又はテープドライブへの言及は、単に例示目的のものであり、明示的に特許請求されない限り、本開示を限定することを意図するものではない。例えば、HDDの実施形態におけるディスク媒体への言及は、例としてのみ提供され、テープドライブの実施形態におけるテープ媒体と置き換えることができる。更に、磁気記録デバイス又はデータ記憶デバイスに関する参照又は請求項は、HDD又はテープ駆動デバイスが明示的に特許請求されていない限り、HDD及びテープドライブの少なくとも両方を含むことが意図される。
【0027】
図2は、SOT MTJデバイスを有する読み取り/書き込みヘッド200の特定の実施形態の部分断面側面図である。読み取り/書き込みヘッド200は、磁気ディスク112に対向している。読み取り/書き込みヘッド200は、
図1に示す磁気ヘッドアセンブリ121に対応し得る。読み取り/書き込みヘッド200は、磁気ディスク112に対向するガスベアリング面などの媒体対向面(MFS)212と、書き込みヘッド210と、磁気読み取りヘッド211とを含む。
図2に示されるように、磁気媒体112は、矢印232によって示される方向に、書き込みヘッド210を通過して移動し、読み取り/書き込みヘッド200は、矢印234によって示される方向に移動する。
【0028】
いくつかの実施形態では、磁気読み取りヘッド211は、MRシールドS1とMRシールドS2との間に位置するMTJ感知素子204を含む磁気抵抗(magnetoresistive、MR)読み取りヘッドである。他の実施形態では、磁気読み取りヘッド211は、磁気トンネル接合(MTJ)読み取りヘッドであり、MRシールドS1とS2との間に位置付けられるMTJ感知要素204を含む。磁気ディスク112内の隣接する磁化領域の磁場は、記録ビットとしてMR(又はMTJ)感知要素204によって検出可能である。様々な実施形態のSOT MTJデバイスが、読み取りヘッド211に組み込まれ得る。
【0029】
差動SOTリーダの例が、「SOT Differential Reader and Method of Making Same」と題する米国特許、すなわち2020年7月1日に出願された米国特許第11,100,946号、及び「SOT Film Stack for differential Reader」と題する米国特許、すなわち2020年9月23日に出願された米国特許第11,094,338号に記載されており、これらの特許の各々は、本出願と同じ譲受人に譲渡され、参照により本明細書に組み込まれる。
【0030】
単一SOTリーダの例が、「Magnetic Sensor Using Spin Hall Effect」と題する米国特許、すなわち2017年11月29日に出願された米国特許第10,720,570号、及び「Magnetic Sensor Using Inverse Spin Hall Effect」と題する米国特許、すなわち2016年12月20日に出願された米国特許第9,947,347号に記載されており、これらの特許の各々は、本出願と同じ譲受人に譲渡され、参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
書き込みヘッドがMAMRベースの書き込みヘッドである実施形態では、MAMR書き込みヘッド210は、主磁極220と、リーディングシールド206と、トレーリングシールド240と、スピン軌道トルク(SOT)デバイス250と、主磁極220を励起するコイル218と、を含む。コイル218は、
図2に示される「らせん」構造の代わりに、主磁極220とトレーリングシールド240との間のバックコンタクトの周りに巻き付く「パンケーキ」構造を有してもよい。SOT素子250は、主磁極220とトレーリングシールド240との間のギャップ254に形成される。主磁極220は、トレーリングテーパ242及びリーディングテーパ244を含む。トレーリングテーパ242は、MFS212から引っ込んだ位置からMFS212まで延在する。リーディングテーパ244は、MFS212から引っ込んだ位置からMFS212まで延在する。トレーリングテーパ242及びリーディングテーパ244は、同一のテーパ度を有し得、テーパ度は、主磁極220の長手方向軸260に対して測定される。いくつかの実施形態では、主磁極220は、トレーリングテーパ242及びリーディングテーパ244を含まない。代わりに、主磁極220は、トレーリング側面(図示せず)及びリーディング側面(図示せず)を含み、トレーリング側及びリーディング側は、実質的に平行である。主磁極220は、FeCo合金などの磁性材料であり得る。リーディングシールド206及びトレーリングシールド240は、NiFe合金などの磁性材料であり得る。特定の実施形態では、トレーリングシールド240は、トレーリングシールドホットシード層241を含み得る。トレーリングシールドホットシード層241は、CoFeN又はFeXNなどの高モーメントスパッタ材料を含み得、式中、Xは、Rh、Al、Ta、Zr、Ni、Co、W、Hf、Re、及びTi、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態では、トレーリングシールド240は、トレーリングシールドホットシード層を含まない。
【0032】
図3Aは、SOTベースのデバイスを形成する、(012)の結晶方位を有するドープされたビスマスアンチモン(BiSbE)層304を有するSOT MTJデバイス300の特定の実施形態の概略断面図である。
【0033】
SOT MTJデバイス300は、基板311と、基板311の上のシード層又はバッファ層310と、基板の上のドープされたBiSbE層304と、ドープされたBiSbE層304の上のインターレイヤ320と、MTJ構造323であって、インターレイヤ320の上の自由垂直磁気異方性(perpendicular magnetic anisotropy、PMA)層324と、自由PMA層324の上の絶縁層325と、絶縁層325の上の基準PMA層327と、を備える、MTJ構造323と、基準PMA層327の上のキャップ層328と、を備える。
【0034】
一実施形態では、SOT MTJデバイス300のシード層又はバッファ層310は、基板層311の上のアモルファス調整層314と、アモルファス調整層314の上の成長B2又はbcc(100)テクスチャリング層316と、を備える。アモルファス調整層314は、Ni、Fe、Co、Zr、W、Ta、Hf、Ag、Pt、Pd、Si、Ge、Mn、Al、Ti、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される元素の1つ以上の合金から構成される。例示的な合金は、NiTa、NiFeTa、CoHf、CoFeHf、NiW、NiFeW、CoHfB、CoFeB、CoZrTa、NiFeB、CoB、FeB、及びそれらの合金の組み合わせからなる群から選択される合金を含む。bccテクスチャリング(100)層316は、B2 RuAl相、加熱された(温度100C~300C)CrX合金(式中、X=Ru、Mo、W、及びTi≦10原子%)、NiAl又はRhAlのような他のB2相材料、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される材料であってもよい。
【0035】
SOT MTJデバイス300のBiSbE層304は、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、及びドーパント元素(E)を含む。上部形態BiSbE層304、Ar、Ne、Kr、Xe、又はそれらの組み合わせなどの不活性ガスを含むスパッタリングガスが、N
2、H
2、C
xH
y(式中、x及びyは数字である)、及びそれらの組み合わせなどの非反応性ドーパントガスと同様に、提供される。SOT MTJデバイス300は、
図1のディスクドライブ100のMAMR書き込みヘッド、
図2の読み取り及び/若しくは書き込みヘッド200、又は他の好適な磁気媒体ドライブにおいて使用され得る。ドープされたBiSbE層は、SOTベースのMRAMデバイス又はSOTベースのEAMR読み取りヘッド若しくは書き込みヘッドなどのトポロジカル絶縁体として使用される。ドープされたBiSbE層は、複数のBiSbラメラ層と、1つ以上のドープされたラメラ層と、を含み得る。ドープされたBiSbE層は、(012)方位を有する。特定の実施形態では、ドープされたBiSbE層は、ドープされていないBiSb材料と比較して、より高いアニール温度、より強い(012)テクスチャ、より小さい粒径、及び/又はより小さい表面粗さを有する。
【0036】
SOT MTJデバイス300のインターレイヤ320は、上述のシード層又はバッファ層310と同様の構造を有し得る。追加的に、インターレイヤ320は、シード層又はバッファ層310に使用されるものと同様の材料を含み得る。インターレイヤ320は、fcc(100)テクスチャリング層326と、fcc(100)テクスチャリング層326上に配設されたテクスチャリング層318と、を含む。一実施形態では、fcc(100)テクスチャリング層326は、ドープされたBiSbE層304からのSbのマイグレーションを防止するためのマイグレーションバリアとして機能し得る。上述の(100)テクスチャリング層316、アモルファス調整層314、テクスチャリング層318、及びfcc(100)テクスチャリング層326は各々、約4.10Å~約4.70Åの範囲の格子定数を有する。(
図3Fに示す)。後述するように、インターレイヤ320は、代替的に、(001)正方晶層318(
図3E及び
図3Fに示す)を備えてもよい。
【0037】
SOT MTJデバイス300の自由PMA層324は、Co/Pt(すなわち、コバルト及び白金の二重層であり、「/」は、本明細書では二重層を示すために使用される)、Co/Pd、Co/Ni、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上のスタックを備える。代替的に、自由PMA層324は、CoFeB、FePt、他のPMA誘導層、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の層を備え得る。自由PMA層324の上に、MgO層などの絶縁層325が、形成される。
【0038】
SOT MTJデバイス300の基準PMA層327は、Co/Pt、Co/Pd、Co/Ni、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上のスタックを備える。代替的に、基準PMA層327は、CoFeB、FePt、他のPMA誘導層、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の層を備え得る。基準PMA層327は、1つ以上の合成反強磁性(synthetic antiferromagnetic、SAF)ピン止め構造を含み得る。基準PMA層327の磁気方位は、2時間以上にわたる約260℃以上のアニール温度で設定され得る。
【0039】
SOT MTJデバイス300のキャップ層328は、NiFe、SiN、TiN、Al2O3、SiO2、NiFeTa、NiTa、NiW、NiFeW、CoHf、CoFeHf、Pt、Co、Cu、Ni、NiCu、CoCu、Ru、Ta、Cr、Au、Rh、CoFe CoFeB、他の非磁性材料、他の磁性材料、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む。
【0040】
ドープされていないSOTデバイスが、上記と同じ方法で形成され得る(すなわち、層304が、ドーパントを有しないBiSbを含む)ことを理解されたい。
【0041】
BiSbE層304がスピン軌道材料電極である、メモリセルアレイの一部として、複数のSOT MTJデバイス300が一緒に構成され得ることを更に理解されたい。上部電極(図示せず)が、基準PMA層327の上に配設され得る。メモリセルの各々は、2端子デバイス又は3端子デバイスの一部であってもよい。スピン軌道材料電極及び上部電極は、ビット線、ワード線、読み出しワード線、書き込みワード線、及びそれらの組み合わせとして機能することができる。メモリセルアレイは、クロスポイントアレイ又は他のアーキテクチャとして実装されてもよい。
【0042】
図3Bは、磁気記録に使用されるSOTベースのEAMR(例えば、MAMR)書き込みヘッドの一部分又は構成要素を形成する、(012)結晶方位を有するドープされたBiSbE層304を有するSOT MTJデバイス302の特定の実施形態の概略断面図である。SOT MTJデバイス302のドープされたBiSbE層304は、SOT MTJデバイス300のドープされたBiSbE層304と同じである。SOT MTJデバイス302は、
図1のディスクドライブ100若しくは他の好適な磁気媒体ドライブの読み取り/書き込みヘッド、又は
図2の読み取り/書き込みヘッド200において使用され得る。
【0043】
SOT MTJデバイス302は、
図3AのSOT MTJデバイス300と同じであるが、ここでは、インターレイヤ320の上にSTL(スピントルク層、spin torque layer)323が、形成される。STL323は、CoFe、CoIr、NiFe、CoFeM(式中、Mは、B、Ta、Re、Irからなる群から選択される材料である)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される強磁性材料を含む。
【0044】
スピンホール層として作用するドープされたBiSbE層304を通る電荷電流が、ドープされたBiSbE層304内にスピン電流を発生させる。ドープされたBiSbE層304とSTL323とのスピン軌道結合が、ドープされたBiSbE層304からのスピン電流によって、STL323の磁化のスイッチング又は歳差運動を引き起こす。STL323の磁化のスイッチング又は歳差運動は、磁気記録に用いられる書き込みヘッドの主磁極から書き込み磁場への支援AC及び/又はDC磁場を生成し得る。SOTベースのEAMR素子は、スピン移行トルク(spin-transfer torque、STT)ベースのMAMR素子と比較して、複数倍大きい電力効率を有する。
【0045】
図3C~
図3Gは、様々な実施形態による、
図3AのSOT MTJデバイス300及び
図3BのSOT MTJデバイス302とともに使用され得るバッファ層310及び/又はインターレイヤ320の例示的な多層構造を示す。
【0046】
図3C~
図3Gの実施形態は、互いに組み合わせて使用され得、可能なバッファ層310及び/又はインターレイヤ320の排他的なリストではない。更に、
図3C~
図3Gの各々は、バッファ層310及びインターレイヤ320の両方を説明しているが、バッファ層310及びインターレイヤ320は、アモルファス調整層314、テクスチャリング層316、テクスチャリング層318、及びfcc(100)テクスチャリング層326(
図3C~
図3F参照)などの異なる構成又は異なる量の副層若しくは中間層(intermediate layer)を有してもよく、より良好な歪み緩和を可能にし、ドープされたBiSbE層304における(012)成長を強化又は促進する。特定の実施形態では、バッファ層310及び/又はインターレイヤ320は、物理蒸着(physical vapor deposition、PVD)、例えば、スパッタリング、分子線エピタキシ、イオンビーム堆積、他の好適なPVDプロセス、及びそれらの組み合わせによって堆積される。更に、バッファ層310は、結晶性又はアモルファス材料の単一層であってもよく、インターレイヤ320は、多層構造であってもよい。以下でより詳細に論じられるように、シード層若しくはバッファ層310又はインターレイヤ320は、約3.48オングストローム(angstrom、Å)~3.71Åの格子定数を有するテクスチャfcc(111)単一層又は多層fcc(111)スタック材料であってもよい。
【0047】
図3Cに関して、一実施形態では、シード層若しくはバッファ層310及び/又はインターレイヤ320は、第1の中間層330と、第1の中間層330上に配設されている第2の中間層332と、を備える。一実施形態では、第1の中間層330は金属アモルファス材料を含み、第2の中間層332は、正方晶(001)又は(110)材料を含む。別の実施形態では、第1の中間層330は、金属アモルファス材料を含み、第2の中間層332は、テクスチャbcc(100)又はB2材料を含む。
【0048】
図3Dに関して、一実施形態では、バッファ層310及び/又はインターレイヤ320は、第1の中間層330と、第1の中間層330上に配設された第2の中間層332と、第2の中間層332上に配設された第3の中間層334と、を備える。第1の中間層330は、金属アモルファス材料を含み、第2の中間層332は、テクスチャbcc(100)又はB2材料を含む。一実施形態では、第3の中間層334は、テクスチャbcc(100)又はB2材料を含む。別の実施形態では、第3の中間層334は、fcc(100)材料を含む。更に別の実施形態では、第3の中間層334は、正方晶(001)材料を含む。
【0049】
図3Eに関して、一実施形態では、バッファ層310及び/又はインターレイヤ320は、第1の中間層330と、第1の中間層330上に配設された第2の中間層332と、第2の中間層332上に配設された第3の中間層334と、第3の中間層334上に配設された第4の中間層336と、を備える。第1の中間層330は、金属アモルファス材料を含み、第2の中間層332は、テクスチャbcc(100)又はB2材料を含む。一実施形態では、第3の中間層334は、テクスチャbcc(100)又はB2材料を含み、第4の中間層336は、fcc(100)材料を含む。別の実施形態では、第3の中間層334は、テクスチャbcc(100)又はB2材料を含み、第4の中間層336は、正方晶(110)材料を含む。更に別の実施形態では、第3の中間層334は、テクスチャbcc(100)又はB2材料を含み、第4の中間層336は、正方晶(001)材料を含む。
【0050】
図3Fに関して、一実施形態では、バッファ層310及び/又はインターレイヤ320は、第1の中間層330であって、第1の中間層330が、金属アモルファス材料を含む、第1の中間層330と、テクスチャbcc(100)又はB2材料を含む第2の中間層332と、テクスチャbcc(100)又はB2材料を含む第3の中間層334と、正方晶(001)材料を含む第4の中間層336と、fcc(100)材料を含む第5の中間層338と、を備える。
【0051】
図3Fの第1の中間層330のアモルファス金属材料は、Ni、Fe、Co、Zr、W、Ta、Hf、Ag、Pt、Pd、Si、Ge、Mn、Al、Ti、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の元素を含んでもよい。追加的又は代替的に、第1の中間層330は、NiTa、NiFeTa、NiNb、NiW、NiFeW、NiFeHf、CoHfB、CoZrTa、CoFeB、NiFeB、CoB、FeB、及びそれらの合金の組み合わせからなる群から選択される1つ以上の化合物を含んでもよい。更に、アモルファス金属材料は、最近接(XRD)回折ピークを有し得、そのピークのd間隔は、約2.0Å~約2.2Åである。
【0052】
第2の中間層332及び第3の中間層334のテクスチャbcc(100)又はB2材料は、同様であっても異なっていてもよい。B2材料の場合、材料は、B2相RuAl単独、又はNiAl及びRhAlのような他のB2相との組み合わせ、150℃以上の温度のCr、又は加熱されたCrX合金(式中、X=Ru、Mo、W、又はTi≦10原子%、かつ100~300℃に加熱)からなる群から選択され得る。テクスチャbcc(100)材料の場合、材料は、V、Nb、Mo、W、Ta、WTi50、Cr、それらの合金の組み合わせ、及びTi、Al、Ge、Si、Ag、Cu、Mn、Pd、Pt、Ni、Co、Feからなる群から選択される1つ以上の追加元素を有するそれらの合金の組み合わせ、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。更に、テクスチャbcc(100)又はB2材料は、約2.88Å~3.31Åのa軸格子定数を有し得る。
【0053】
図3Fの第4の中間層336の正方晶(001)又は(110)材料は、約4.2Å~約4.7Åの範囲内のa軸及び約2.88Å~約3.15Åの範囲内のc軸を有し得る。正方晶(001)又は(110)材料は、SbO
2、TiO
2、IrO
2、RuO
2、CrO
2、VO
2、OsO
2、RhO
2、PdO
2、WVO
4、CrNbO
4、SnO
2、GeO
2、それらの複合材料、それらの合金、及びW、Nb、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の追加の元素を有するそれらの合金からなる群から選択され得る。
【0054】
図3Fの第5の中間層338のfcc(100)材料は、約4.10Å~約4.70Åの範囲内の格子定数を有し得る。fcc(100)材料は、Ag、Al、Au、FeO、CoO、ZrO、MgO、TiO、ScN、TiN、NbN、ZrN、HfN、TaN、ScC、TiC、NbC、ZrC、HfC、TaC、WC、及びそれらの組み合わせ、それらの合金、及びW、Al、Ag、W、Mo、Zr、Ti、Ge、Si、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の追加の元素を有するそれらの合金の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0055】
上述の特定の実施形態では、バッファ層310及び/若しくはインターレイヤ320は、物理蒸着(PVD)、例えば、スパッタリング、分子線エピタキシ、イオンビーム堆積、他の好適なPVDプロセス、又はそれらの組み合わせによって堆積される。
【0056】
図3Gは、一実施形態による、
図3A及び
図3BのSOT MTJデバイス300、302のドープされたBiSbE層304を置き換えることができる副層を備えるドープされていないBiSb層340の概略断面図である。
図3Gは、Bi層間にBiSb(又はドープされたBiSbE)層を挟むことの利点を示すものである。Bi層は、組成変調層として作用して、最終的に、ドープされていない形態又はドープされた形態のいずれかのBiSbについて、組成深さをより均一にする。堆積及び/又はアニーリングの後、Sbは、ドープされていないBiSb層又はドープされたBiSbE層の界面に移動する傾向を有する。ドープされていないBiSb層又はドープされたBiSbE層のいずれかの側の薄いBi層は、ドープされていないBiSb層又はドープされたBiSbE層からマイグレートし得る任意のSbを取り込むことができ、したがって、堆積中及び/又はアニーリング後に生じ得る巨大な組成勾配を低減することができる。薄いBi層は、ドープされていないBiSb若しくはドープされたBiSbE上に成長され得るか、又はドープされていないBiSb若しくはドープされたBiSbE層のためのシード層として使用され得、SOT MTJデバイス内の組成変調を改善しながら、依然として(012)成長を促進する。
【0057】
図3GのドープされていないBiSb層340は、Bi積層体304a、304cを備える。第1のBi副層304aは、バッファ層310上に配設される。BiSb副層304bは、第1のBi副層304a上に配設される。BiSb副層304bは、約10%~約20%の原子百分率でSbを含み得る。第2のBi副層304cは、BiSb副層304b上に配設される。いくつかの実施形態では、第1及び第2のBi副層304a、304cは各々、約10Å以下の厚さを有し、厚さ組成均一性を向上させるための組成変調副層として機能する。
【0058】
図3GのドープされていないBiSb層340は、(012)方位を有する。いくつかの実施形態では、ドープされていないBiSb層340は、Bi1-xSbx(式中、xは0<x<1である)を含む。特定の実施形態では、ドープされていないBiSb層340は、Bi1-xSbx(式中、xは0.05<x<0.2である)を含むか、又は約7%~約22%の原子パーセント含有量でアンチモンを含む。
【0059】
図4は、ドープされたBiSbE層を形成する方法400を示すフローチャートである。ドープされたBiSbE層は、
図3AのSOT MTJデバイス300におけるドープされたBiSbE層304、又は
図3BのSOT MTJデバイス302のドープされたBiSbE層304であり得る。SOT MTJデバイス300及び302は、
図1のディスク若しくは他の好適な磁気媒体ドライブの読み取り/書き込みヘッド、又は
図2の読み取り及び/又は書き込みヘッドにおいて、MRAMセルの一部として使用され得る。
【0060】
方法400の402において、基板が、スパッタリングチャンバ内に配設される。基板は、
図3A又は
図3Bの基板311であってもよい。方法400の404において、スパッタリングチャンバが、ベース圧力に達するまで排気される。方法400の406において、スパッタリングガスが、スパッタリングチャンバ内に送達される。ドープされたBiSbE層を形成するために、スパッタリングガスは、Ar、Ne、Kr、Xe、又はそれらの組み合わせなどの不活性ガスを含む。スパッタリングガスはまた、N
2、H
2、C
xH
y(式中、x及びyは数字である)、及びそれらの組み合わせなどの非反応性ドーパントガスを含むであろう。いくつかの実施形態では、スパッタリングガスは、1:1の不活性ガス対非反応性ドーパントガスの混合比を含む。他の実施形態では、スパッタリングガスは、1:2の不活性ガス対非反応性ドーパントガスの混合比を含む。
【0061】
方法400の408において、バイアスが、スパッタチャンバ内に配設されたスパッタリングターゲットに印加され、スパッタターゲットは、基板上に堆積される材料(例えば、BiSb)である。方法400の410において、ドープされたBiSbE層が、基板の上に堆積される。ドープされたBiSbE層は、非反応性ドーパントガスの元素を含有する。
【0062】
図5は、グロー放電分光分析(GDS)の秒単位のスパッタ時間対GDS推定濃度であり、GDS推定濃度は、ドープされていないBiSb膜及びドープされたBiSbE膜中の様々な元素のおよその原子%(at.%)である。ドープされていないBiSb膜及びN
2でドープされた、ドープされたBiSbE膜を、Sb、Bi、カーボン(C)、及びN
2の存在について測定した。N
2でドープされた、ドープされたBiSbE膜は、最大約4~5原子%のN
2の検出可能レベルを有した。しかしながら、ドープされていないBiSb膜は、膜中に検出可能なN
2を示さない。ドープされたBiSbE膜中に存在するN
2は、N
2が、膜の形成中に膜の粒径を小さくし、したがって、(012)成長を促進するので、望ましい。
【0063】
図6は、第1のドープされたBiSbE層610及びドープされていないBiSb層620の(012)ピークの強度の対数に対する2θXRDスキャンを示す。ドープされたBiSbE層は、窒素でドープされている。ドープされたBiSbE層610は、約100Åの厚さを有し、ドープされたBiSbE層610は、約1~4原子%のN
2でドープされる。ドープされていないBiSb層620は、約100Åの厚さを含んだ有する。
【0064】
ドープされたBiSbE層610のN2ドーピングにより、ドープされたBiSbE層610は、ドープされていないBiSb層620と比較してより平滑な膜テクスチャを有する。なぜなら、ドープされたBiSbE層610の形成中に、ドーパントガスが、ドープされたBiSbE層610内の結晶粒成長を中断させ、それにより、ドープされたBiSbE層610の結晶の粒径を減少させ、改善されたトポロジカル絶縁体(topological insulator、TI)性能のための平滑な表面をもたらす(すなわち、ドープされたBiSbE層610の粒径は、ドープされていないBiSb層620の粒径よりも小さい)からである。ドープされたBiSbE層610のより小さい粒径は、所望のピーク(012)及び(024)における増加した反射率、並びに所望されないピーク(104)、(110)、(202)、及び(116)における減少した反射率をもたらす。
【0065】
図7は、2つのスタック710及び720のBiSb方位の強度に対する2θXRDスキャンを示す。スタック710は、約60Åの厚さに形成されたNiTa-シリサイド層のシード層と、約100Åの厚さに形成されたドープされていないBiSb層と、約15Åの厚さに形成されたNiFe層と、約60Åの厚さに形成されたNiTaのインターレイヤと、約30Åの厚さに形成されたNiCrのキャップ層と、を備える。スタック720は、約60Åの厚さに形成されたNiTa-シリサイド層のシード層と、
図3A及び
図3BのBiSbE層304などの、約100Åの厚さに形成されたドープされたBiSbE層と、15Åの厚さに形成されたNiFe層と、約60Åの厚さに形成されたNiTaのインターレイヤと、約30Åの厚さに形成されたNiCrのキャップ層と、を備える。ドープされたBiSbE層のためのドーパントは、窒素である。スタック710及び720は、
図3A及び
図3BのMTJ、シード層、インターレイヤ構造ではなく、むしろ、ドープされていないBiSb層ではなくドープされたBiSbE層を使用する利点を示す単純なスタックであることに留意されたい。ドープされたBiSbE層は、複数のBiSbラメラ層及び複数のドーパントラメラ層を含む。ドーパントは、窒素であるように示されているが、水素などの他のドーパントが企図されることを理解されたい。
【0066】
図6と同様に、N
2などの非反応性ガスでBiSbE層をドープすることは、より小さい粒径をもたらす(すなわち、スタック720の粒径は、スタック710の粒径よりも小さい)ので、スタック720は、スタック610と比較して、より滑らかな膜テクスチャを有する。ドープされたスタック720のより小さい粒径は、所望のピーク(012)及び(024)における増加した反射率、及び所望されないピーク(003)、(104)、及び(006)における減少した反射率をもたらす。破線で示されるように、(012)ピークは、スタック710と比較して、スタック720について著しく高く、より顕著であり、スタック710とスタック720との間の唯一の違いが、スタック720内のドープされたBiSbE層である一方、スタック710は、ドープされていないBiSb層を有する。
【0067】
図8Aは、ドープされていないBiSb層及び
図3A及び
図3BのドープされたBiSbE層304などのN
2でドープされた、ドープされたBiSbE層の温度に対するc軸格子定数対a軸格子定数(c/a)比を示す。
図8Aに関して、ドープされていないBiSb層及びドープされたBiSbE層は、単に、上述のMTJ SOTの他の層を有しない層自体であることに留意されたい。完全な結晶のc/a比は一定値であるが、結晶格子の歪みが、c/a比を変化させる可能性がある。c/a比の変化が、結晶の格子を所望のシード層により適したものにし得る。したがって、c/a比を操作することによって、(012)方位を有するBiSb層のより平滑な膜成長を促進する格子が、達成され得る。
【0068】
図8Aに示されるように、ドープされていないBiSbサンプルの4つのクーポン及びN
2でドープされた、ドープされたBiSbEサンプルの4つのクーポンの8つのクーポンを、摂氏185度(℃)~250℃の様々な温度でアニールした。ドープされていないBiSbクーポンは、
図3AのSOT MTJデバイス300又は
図3BのSOT MTJデバイス302を備え得る。ドープされていないBiSbクーポンは、5sccmの流量のKrスパッタリングガスを用いて、チャンバ内で形成された。ドープされたBiSbEクーポンは、Kr及びN
2スパッタリングガスの混合物を用いて、チャンバ内で形成された。本実施形態のうちの1つの例は、1:2のKr:N
2のスパッタリングガス混合物(すなわち、Krの流量が5sccmであって、N
2の流量が10sccmであった)を用いて、チャンバ内で形成された。他の実施形態では、スパッタリング混合物は、Kr及びN
2の1:1混合物であってもよい(例えば、Krの流量が5sccmに等しく、非反応性ドーピングガスの流量が5sccmに等しい)。BiSbクーポンを、N
2ドープされたBiSbEクーポンと比較すると、N
2ドープされたBiSbE膜(BiSbN)は、ドープされていないBiSb膜と比較して、著しく低いc/a比を有することが分かり得る。c/a比及び追加の膜特性のより詳細な分析が、
図8B及び
図8Cにおいて以下で論じられる。
【0069】
図8Bは、
図8Aのデータ点、並びに追加の、特定のアニール温度でのドープされていないBiSb及びドープされたBiSbEの膜特性を含むチャートを示す。膜は、表面伝導状態の変化に最も敏感である100~130Åの厚さ範囲から選択された。ドープされていないBiSb膜であるクーポンS1-5、及びN
2ドープされたBiSbE膜であるクーポンS2-1を、185℃の温度で60分間アニールした。S1-5のc/a比は、2.703であり、S2-1のc/a比は、2.656であった。ドープされていないBiSb膜であるクーポンS1-6、及びN
2ドープされたBiSbE膜であるクーポンS2-5を、195℃の温度で60分間アニールした。S1-5のc/a比は、2.710であり、S2-1のc/a比は、2.652であった。ドープされていないBiSb膜であるクーポンS1-1、及びN
2ドープされたBiSbE膜であるクーポンS2-2を、225℃の温度で60分間アニールした。S1-5のc/a比は2.708であり、S2-1のc/a比は2.660であった。ドープされていないBiSb膜であるクーポンS1-3、及びN
2ドープされたBiSbE膜であるクーポンS2-3を、250℃の温度で75分間アニールした。S1-5のc/a比は2.710であり、S2-1のc/a比は2.674であった。したがって、
図8A及び
図8Bに示されるように、ドープされていないBiSbクーポン(S1-5、S1-6、S1-4、S1-3)と比較して、ドープされたBiSbEクーポン(S2-1、S2-5、S2-2、S2-3)では、c/a比が有意に減少した。例えば、N
2ドープされたBiSbEクーポンS2-1、S2-5、S2-2、及びS2-3は各々、2.7未満のc/a比を有した一方、ドープされていないBiSbクーポンS1-5、S1-6、S1-4、S1-3は各々、2.7を超えるc/a比を有した。
【0070】
図8Cは、ドープされていないBiSb膜をドープすることが、TI特性に悪影響を及ぼし、ドープされたBiSbE膜を熱的に不安定にするかどうかを決定するために、様々な温度でアニールする前後のドープされていないBiSb膜及びドープされたBiSbE膜の特性を含むチャートを示す。ドープされたBiSbE膜の熱的安定性を試験するために、ドープされていないBiSbサンプルの4つのクーポン(S13~S16)及びドープされたBiSbEサンプルの4つのクーポン(S21~25)の8つのクーポンを、様々な温度でのアニーリングの前後の抵抗の変化(Rs Delta/Mean)について分析した。ドープされていないBiSbクーポン(S13~S16)及びドープされたBiSbEクーポン(S21~25)の両方が、約-5%~+5%の抵抗の変化を経験したことが見出され、これは、通常の標準誤差範囲内である(すなわち、アニーリング後のサンプルにおいて、抵抗の数学的に有意な変化は見られなかった)。したがって、形成中にBiSbE膜をN
2でドープすることは、粒径を低減するのに、及び膜テクスチャを改善するのに有効である一方、熱的安定性も保持する。
【0071】
図9Aは、ドープされなかった、ドープされていないBiSb層を、
図3A及び
図3BのドープされたBiSbE層304などの、N
2でドープされた、ドープされたBiSbE層と比較する二乗平均平方根(root mean square、RMS)粗さチャートを示す。スロット7~11は各々、特定の厚さを有するドープされていないBiSb層を表す。スロット2~6は、750V/150mAのプロセス条件下で、5sccmのKr(Kr5)及び10sccmのN
2(N10)のスパッタリングガスを用いて形成された、ドープされたBiSbE層に対応する。スロット7~11は、750V/150mAの同様のプロセス条件下で、5sccmのKr(Kr5)のスパッタリングガスを用いて(すなわち、スパッタリングガスは、非反応性ドーパントガスを含有しなかった)形成された、ドープされていないBiSb層に対応する。
図9Bは、
図9AのRMS粗さチャートの粗さ要約表を示す。
【0072】
スロット2及び7に関して、スロット2及びスロット7は、両方とも、300秒(s)の堆積時間で形成されたが、約576オングストローム(Å)の厚さを有するスロット7は、約488Åの厚さを有するスロット2よりも厚い。これは、スロット7のドープされていないBiSb層が、約1.627オングストローム毎秒(angstrom per second、Å/s)の堆積速度を有したスロット2のドープされたBiSbE層と比較して、約1.92Å/sのより速い速度で堆積されたためである。追加的に、14.28のRMS粗さを有するスロット7は、3.92のRMS粗さを有するスロット2よりも粗い。
【0073】
スロット3及び8に関して、スロット3及びスロット8は、両方とも、240秒の堆積時間で形成されたが、481Åの厚さを有するスロット8は、404Åの厚さを有するスロット3よりも厚い。これは、スロット8のドープされていないBiSb層は、約1.683Å/sの堆積速度を有したスロット3のドープされたBiSbE層と比較して、約2.004Å/sのより速い速度で堆積されたためである。追加的に、13.33のRMS粗さを有するスロット8は、3.03のRMS粗さを有するスロット3よりも粗い。
【0074】
スロット4及び9に関して、スロット4及びスロット9は、両方とも、180秒の堆積時間で形成されたが、350Åの厚さを有するスロット9は、298Åの厚さを有するスロット4よりも厚い。これは、スロット9のドープされていないBiSb層は、約1.656Å/sの堆積速度を有したスロット4のドープされたBiSbE層と比較して、約1.944Å/sのより速い速度で堆積されたためである。追加的に、8.89のRMS粗さを有するスロット9は、2.24のRMS粗さを有するスロット4よりも粗い。
【0075】
スロット5及び10に関して、スロット5及びスロット10は、両方とも、120秒の堆積時間で形成されたが、236Åの厚さを有するスロット10は、198Åの厚さを有するスロット5よりも厚い。これは、スロット10のドープされていないBiSb層は、約1.650Å/sの堆積速度を有したスロット5のドープされたBiSbE層と比較して、約1.967Å/sのより速い速度で堆積されたためである。追加的に、5.31のRMS粗さを有するスロット10は、1.27のRMS粗さを有するスロット4よりも粗い。
【0076】
スロット6及び11に関して、スロット6及びスロット11は、両方とも、60秒の堆積時間で形成されたが、125Åの厚さを有するスロット11は、102Åの厚さを有するスロット6よりも厚い。これは、スロット11のドープされていないBiSb層は、約1.700Å/sの堆積速度を有したスロット6のドープされたBiSbE層と比較して、約2.083Å/sのより速い速度で堆積されたためである。追加的に、1.21のRMS粗さを有するスロット11は、0.78のRMS粗さを有するスロット6よりも粗い。
【0077】
したがって、N2ドーピングは、BiSb結晶粒の連続成長を中断させることによって膜厚及び粒径の両方を減少させて、より低いRMS粗さを有する、より遅く成長する膜をもたらし、それにより、BiSb層と周囲の層との間の界面品質を改善し、望ましくないアンチモンのマイグレーションを抑制することが、明確に示されている。
【0078】
図9Cは、様々なBiSb膜タイプ(すなわち、ドープされていないもの及びドープされたものの両方)の膜厚対導電率を示す。5つの異なるBiSb膜タイプの導電率(1/抵抗率(ρ)*1000)が、測定され、5つの異なるBiSb膜タイプの各々は、様々な厚さの5つのクーポンを有した。5つの異なるBiSb膜タイプの各々について、1つのクーポンは、300秒の堆積時間を有し、第2のクーポンは、240秒の堆積時間を有し、第3のクーポンは、180秒の堆積時間を有し、第4のクーポンは、120秒の堆積時間を有し、第5のクーポンは、60秒の堆積時間を有した。したがって、5つの異なるBiSb膜の各々の5つのクーポンの各々は、上述したように、堆積時間、アニーリング温度、V/mA、及び膜の形成中のドーパント元素の存在などのプロセス条件が、膜の厚さに影響を及ぼすため、様々な厚さを有した。
【0079】
「古いBiSbデータ」は、従来技術のドープされていないBiSb膜についての導電率対膜厚を示す。「101821BiSbデータKr」は、
図9A及び
図9Bのスロット6~11のドープされていないBiSbクーポンの導電率対膜厚を示す。「101821BiSbNデータKr」は、
図9A及び
図9Bのスロット1~5のN
2ドープされたBiSbEクーポンの導電率対膜厚を示す。ドープされたBiSbEクーポンは、TIに影響を与えることなくバルク導電率の増加を示す。
【0080】
図10Aは、例えば、
図1のドライブ100又は他の好適な磁気媒体ドライブの読み取り/書き込みヘッドの一部として使用可能な、MAMR書き込みヘッドで使用するためのSOTデバイス1000の概略断面図である。SOTデバイス1000は、
図3A及び
図3BのN
2ドープされたBiSbE層304及びシード層310など、基板311の上に形成されたシード層310の上に形成された、(012)方位を有するドープされたBiSbE層304を備える。BiSbE層304の上にスピントルク層(spin torque layer、STL)1097が、形成される。STL1097は、CoFe、CoIr、NiFe、及びCoFeX合金(式中、X=B、Ta、Re、又はIr)のうちの1つ以上の層などの強磁性材料を含む。
【0081】
特定の実施形態では、電流シャントブロック層1096が、BiSbE層304とSTL1097との間に配設される。電流シャントブロッキング層1096は、電流がBiSbE層304からSTL1097へ流れるのを低減するが、BiSbE層304とSTL1097とのスピン軌道結合を可能にする。特定の実施形態では、電流シャントブロッキング層1096は、BiSbE層304とSTL1097との間に、非磁性材料よりも大きなスピン軌道結合を提供する磁性材料を含む。特定の実施形態では、電流シャントブロッキング層1096は、FeCo、FeCoM、FeCoMO、FeCoMMeO、FeCoM/MeO多層スタック、FeCoMNiMnMgZnFeO、FeCoM/NiMnMgZnFeO多層スタック、それらの複数の層/スタック、又はそれらの組み合わせを備え、式中、Mは、B、Si、P、Al、Hf、Zr、Nb、Ti、Ta、Mo、Mg、Y、Cu、Cr、及びNiのうちの1つ以上であり、Meは、Si、Al、Hf、Zr、Nb、Ti、Ta、Mg、Y、又はCrのうちの1つ以上である。特定の実施形態では、電流シャントブロッキング層1096は、約10Å~約100Åの厚さに形成される。特定の態様では、100Åを超える厚さを有する電流シャントブロッキング層1096は、BiSbE層304とSTL1097とのスピン軌道結合を低減し得る。特定の態様では、10Å未満の厚さを有する電流シャントブロッキング層は、BiSbE層304からSTL1097への電流を十分に低減しない場合がある。
【0082】
特定の実施形態では、スペーサ層1098及びピン止め層1099などの追加の層が、STL1097の上に形成される。ピン止め層1099は、STL1097を部分的にピン止めすることができる。ピン止め層1099は、PtMn、NiMn、IrMn、IrMnCr、CrMnPt、FeMn、他の反強磁性材料、又はそれらの組み合わせの単一層又は複数層を備える。スペーサ層1098は、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、他の非磁性材料、又はそれらの組み合わせの単一層又は複数層を備える。
【0083】
図10B及び
図10Cは、
図10AのSOTデバイス1000を有するMAMR書き込みヘッド210の一部分の特定の実施形態の概略MFS図である。MAMR書き込みヘッド210は、
図2の書き込みヘッド、又は
図1のディスクドライブ100若しくはテープドライブなどの他の好適な磁気媒体ドライブ内の他の好適な書き込みヘッドであり得る。MAMR書き込みヘッド210は、トラック方向に、主磁極220及びトレーリングシールド240を含む。SOTデバイス1000は、主磁極とトレーリングシールド240との間のギャップに配設される。
【0084】
動作中、スピンホール層として機能するドープされたBiSbE層若しくは層スタック304を通る電荷電流が、ドープされたBiSbE層内にスピン電流を生成する。BiSbE層とSTL1097とのスピン軌道結合は、BiSbE層304からのスピン電流のスピン軌道結合により、STL1097の磁化のスイッチング又は歳差運動を引き起こす。STL1097の磁化のスイッチング又は歳差運動は、書き込み磁場に対する支援AC及び/又はDC磁場を生成し得る。SOTに基づくエネルギー支援書き込みヘッドは、スピン移行トルクに基づくMAMR書き込みヘッドと比較して、数倍大きい電力効率を有する。
図10Bに示されるように、STL1097の磁化方向の容易軸は、STL1097の形状異方性から、
図10Aのピン止め層1099から、及び/又はSTL1097に近接するハードバイアス要素から、MFSに垂直である。
図10Cに示されるように、STL1097の磁化方向の容易軸は、STL1097の形状異方性から、
図10Aのピン止め層1099から、及び/又はSTL1097に近接するハードバイアス要素から、MFSに平行である。
【0085】
図11は、MRAMデバイス1100として使用されるSOT MTJ1101の概略断面図である。MRAMデバイス1100は、基準層(reference layer、RL)1110と、RL1110の上のスペーサ層1120と、スペーサ層1120の上の記録層1130と、記録層1130の上に配設された電流シャントブロック層1140の上のシード層又はバッファ層310と、シード層又はバッファ層310の上のドープされたBiSbE層若しくは層スタック304と、を備える。ドープされたBiSbE層304及びシード層又はバッファ層310は、
図3A及び
図3BのドープされたBiSbE層304及びシード層310であり得る。
【0086】
RL1110は、CoFe、他の強磁性材料、及びそれらの組み合わせの単一層又は複数層を備える。スペーサ層1120は、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、他の誘電体材料、又はそれらの組み合わせの単一層又は複数層を備える。記録層1130は、CoFe、NiFe、他の強磁性材料、又はそれらの組み合わせの単一層又は複数層を備える。
【0087】
上述したように、特定の実施形態では、電流シャントブロック層1140は、シード層又はバッファ層310と、記録層1130との間に配設される。電流シャントブロッキング層1140は、電流が、ドープされたBiSbE層304から記録層1130へ流れるのを減少させるが、ドープされたBiSbE層304と記録層1130とのスピン軌道結合を可能にする。例えば、MRAMデバイスへの書き込みは、ドープされたBiSbE層と記録層1130とのスピン軌道結合によって可能になり得、それにより、ドープされたBiSbE層304からのスピン電流のスピン軌道結合による記録層1130の磁化のスイッチングが可能になる。特定の実施形態では、電流シャントブロッキング層1140は、ドープされたBiSbE層304と記録層1130との間に、非磁性材料よりも大きなスピン軌道結合を提供する磁性材料を含む。特定の実施形態では、電流シャントブロッキング層1140は、FeCoM、FeCoMO、FeCoMMeO、FeCoM/MeOスタック、FeCoMNiMnMgZnFeO、FeCoM/NiMnMgZnFeOスタック、それらの複数の層/スタック、又はそれらの組み合わせを含み、式中、Mは、B、Si、P、Al、Hf、Zr、Nb、Ti、Ta、Mo、Mg、Y、Cu、Cr、及びNiのうちの1つ以上であり、Meは、Si、Al、Hf、Zr、Nb、Ti、Ta、Mg、Y、又はCrである。
【0088】
図11のMRAMデバイス1100は、ピン止め層、ピン止め構造(例えば、合成反強磁性(SAF)ピン止め構造)、電極、ゲート、及び他の構造などの他の層を含み得る。シード層310の上に、(012)方位を有するドープされたBiSbE層304を使用して、
図11の構造以外の他のMRAMデバイスを形成して、SOT MTJ1101を形成することができる。
【0089】
図12A及び
図12Bは、様々な実施形態による、ピン止めされた、ドープされたBiSbEベースのセンサの概略的な媒体対向面(MFS)の図である。
図12Aは、第1のシールド1210aと、第1のシールド1210aに隣接及び接触して配設されたシード層1212と、シード層1212に隣接及び接触するドープされたBiSbE層1214と、ドープされたBiSbE層1214に隣接及び接触するインターレイヤ1216と、インターレイヤ1216に隣接及び接触するMTJ構造1218と、MTJ構造1218に隣接及び接触して配設されたキャッピング層1220と、キャッピング層1220に隣接及び接触して配設されている第2のシールド1210bと、を含む上部ピン止めセンサ1202を示す。センサ1202は、第1のバイアス1230a及び第2のバイアス1230bを更に備え、第1の絶縁層1215aが、第1のバイアス1230aをインターレイヤ1216、MTJ構造1218、及びキャッピング層1220から分離し、第2の絶縁層1215bが、第2のバイアス1230bをインターレイヤ1216、MTJ構造1218、及びキャッピング層1220から分離する。
【0090】
図12Bは、下部ピン止めセンサ1252を示す。センサ1252は、第1のシールド1210aと、第1のシールド1210aに隣接及び接触して配設されたシード層1212と、シード層1212に隣接及び接触して配設されたMTJ構造1218と、MTJ構造1218に隣接及び接触して配設された第1のインターレイヤ1216aと、第1のインターレイヤ1216aに隣接及び接触して配設された、ドープされたBiSbE層1214と、ドープされたBiSbE層1214に隣接及び接触して配設された第2のインターレイヤ1216bと、第2のインターレイヤ1216bに隣接及び接触して配設されたキャッピング層1220と、キャッピング層1220に隣接及び接触して配設された第2のシールド1210bと、を備える。
【0091】
BiSb層を非反応性ガスでドーピングすることによって、粒径が減少して、膜テクスチャが改善され、望ましくないアンチモンのマイグレーションが低減される。
【0092】
一実施形態では、スピン軌道トルク(SOT)デバイスを形成する方法は、スパッタリングチャンバ内に基板を配設することと、チャンバ内にスパッタリングガスを流すことであって、スパッタリングガスが、Krガス及び非反応性ドーパントガスを含む、流すことと、ターゲットにバイアスを印加することと、基板上にビスマスアンチモン(BiSb)層を堆積させることであって、BiSb層が、非反応性ドーパントガスでドープされる、堆積させることと、を含む。非反応性ドーパントガスでドープされたBiSb層は、約0.5原子%~約5原子%の非反応性ドーパントガスを含む。非反応性ドーパントガスでドープされたBiSb層は、約1.6オングストローム毎秒(Å/s)~約1.7Å/sの速度で堆積される。方法は、BiSb層上にインターレイヤを堆積させることを更に含み、インターレイヤは、正方晶(001)材料、正方晶(110)材料、体心立方(bcc)(100)材料、面心立方(fcc)(100)材料、テクスチャbcc(100)材料、テクスチャfcc(100)材料、テクスチャ(100)材料、共有結合した炭化物、酸化物、又は窒化物を含むアモルファス材料、アモルファス金属材料、及びそれらの層状組み合わせからなる群から選択される1つ以上の材料を含む。チャンバ内へのスパッタリングガスは、第1の体積流量のKrガスをチャンバ内に流すことと、第2の体積流量の非反応性ドーパントガスをチャンバ内に流すことと、を含む。非反応性ドーパントガスは、N2、H2、Ne、Xe、Kr、CxHy(式中、x及びyは数字である)、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される。第1の体積流量は、第2の体積流量に実質的に等しい。第1の体積流量は、第2の体積流量未満である。
【0093】
別の実施形態では、スピン軌道トルク(SOT)デバイスは、基板と、基板の上のビスマスアンチモンドーパント元素(BiSbE)層と、を備え、BiSbE層は、(012)方位を有し、BiSbE層は、ビスマスとアンチモンと、非反応性ドーパント元素とを含み、非反応性ドーパント元素は、BiSbE層の0.5原子%~約5原子%を構成する。BiSbE層は、約0.7ナノメートル(nanometer、nm)~約4nmの表面粗さを有する。BiSbE層は、2.7未満のc/a比を有する。BiSbE層は、約100オングストローム(Å)~約500Åの厚さを有する。BiSbE層は、約1.2 1/抵抗率*1000~約1.4 1/抵抗率*1000の導電率を有する。BiSbE層は、非反応性ドーパントガスでBiSbE層をドープすることによって堆積され、非反応性ドーパントガスは、Kr、N2、H2、Xe、Ne、CxHy(式中、x及びyは数字である)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。SOTデバイスは、BiSbE層上に配設された中間層を更に備え、中間層は、正方晶(001)材料、正方晶(110)材料、テクスチャB2(100)材料、テクスチャfcc(100)材料、テクスチャbcc(100)材料、アモルファス材料、及びそれらの層状組み合わせからなる群から選択される1つ以上の材料を含む。
【0094】
更に別の実施形態では、スピン軌道トルク(SOT)デバイスを形成する方法であって、スパッタチャンバ内に基板を配設することと、基板の上にシード層を堆積させることと、シード層の上にビスマスアンチモン(BiSb)層を堆積させることであって、BiSb層を堆積させることが、N2、H2、Ne、Xe、Kr、CxHy(式中、x及びyは数字である)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される非反応性ドーパントガスでBiSb層をドープすることを含む、堆積させることと、ドープされたBiSb層の上にインターレイヤを堆積させることと、を含む、方法。方法は、インターレイヤの上にスピントルク層(STL)を堆積させることを更に含み、STLは、CoFe、CoM、CoIr、NiFe、及びCoFeM、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される強磁性材料を含み、式中、Mは、B、Ta、Re、又はIrである。方法は、インターレイヤの上に自由垂直磁気異方性(PMA)層を堆積させることと、PMA層の上に絶縁層を堆積させることと、絶縁層の上に基準PMA層を堆積させることと、基準PMA層の上にキャップ層を堆積させることと、を更に含む。
【0095】
更に別の実施形態では、上述の方法に従って、スピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)MRAMデバイスが、形成され得、SOT MTJデバイスは、基板と、基板上に形成されたバッファ層であって、バッファ層が、第1の中間層を備え、第1の中間層が、正方晶テクスチャ(001)、(110)材料、テクスチャbcc若しくはB2(100)材料、テクスチャfcc(100)材料、及びテクスチャ(100)材料の群から選択される材料を含む、バッファ層と、バッファ層の上に上述の方法を用いて形成された、(012)方位を有するビスマスアンチモン(BiSb)層と、を備え、BiSb層は、第1のBi層であって、BiSb層が第1のBi層上に配設される、第1のBi層と、BiSb層上に第2のBi層を堆積させることと、を備え、バッファ層は、BiSb層内へのSbのマイグレーションを低減するように構成される。バッファ層は、第1の中間層の下に配設されたアモルファス層を更に含み、アモルファス層は、NiTa、NiFeTa、NiNb、NiW、NiFeW、NiFeHf、CoHfB、CoZrTa、CoFeB、NiFeB、CoB、FeB、及び合金の組み合わせからなる群から選択される材料を含み、合金の組み合わせは、Ni、Fe、Co、Zr、W、Ta、Hf、Ag、Pt、Pd、Si、Ge、Mn、Al、及びTiからなる群から選択される元素の組み合わせを含む。SOT MTJデバイスであって、バッファ層が、第2の中間層を更に備える、SOT MTJデバイス。第2の中間層は、テクスチャbcc(100)材料である。第2の中間層は、テクスチャfcc(100)材料である。SOT MTJデバイスは、BiSb層上に配設されたインターレイヤを更に備え、インターレイヤは、第1の中間層と同じ材料を含む。第1及び第2のBi層は各々、約0Å~約10Åの幅を有する。第1の中間層は、正方晶(001)又は(110)材料から構成され、正方晶(001)又は(110)材料は、約4.20Å~約4.75Åの範囲のa軸格子定数を有する。第1の中間層はfcc(100)材料から構成され、fcc(100)材料は、約4.10Å~約4.70Åの範囲の格子定数を有する。
【0096】
更に別の実施形態では、上述の方法に従って、スピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)MRAMデバイスが、形成され得、SOT MTJデバイスは、基板と、基板の上に形成されたバッファ層であって、バッファ層が、(100)方位を有するテクスチャ層と、テクスチャ層の上に配設された第1の中間層と、を備え、第1の中間層が、正方晶(001)、正方晶(110)、テクスチャbcc若しくはB2(100)、テクスチャfcc(100)、及びそれらの組み合わせのテクスチャ層からなる群から選択される材料から構成される、バッファ層と、バッファ層の上に上述の方法を用いて形成されたビスマスアンチモン(BiSb)層であって、BiSb層が、(012)方位を有し、バッファ層が、BiSb層内のSbの拡散を低減するように構成されている、BiSb層と、BiSb層の上に配設されたインターレイヤと、を備える。バッファ層は、NiTa、NiFeTa、NiNb、NiW、NiFeW、NiFeHf、CoHfB、CoZrTa、CoFeB、NiFeB、CoB、FeB、並びに合金の組み合わせからなる群から選択される材料を含むアモルファス層を更に備え、合金の組み合わせは、Ni、Fe、Co、Zr、W、Ta、Hf、Ag、Pt、Pd、Si、Ge、Mn、Al、及びTiからなる群から選択される元素の組み合わせを含む。アモルファス層は、基板の上に配設され、テクスチャ層は、アモルファス層上に配設され、第1の中間層は、テクスチャ層上に配設され、BiSb層は、第1の中間層上に配設される。バッファ層は、第2の中間層を更に備え、第2の中間層は、第1の中間層とは異なる立方晶構造を有する。インターレイヤは、正方晶(001)材料、正方晶(110)材料、テクスチャB2(100)材料、テクスチャfcc(100)材料、テクスチャbcc(100)材料、アモルファス材料、及びそれらの層状の組み合わせからなる群から選択される1つ以上の材料を含む。テクスチャ層は、RuAl、約100℃以上の温度のCr、及び加熱されたCrX合金からなる群から選択される材料を含み、式中、Xは、Ru、W、Mo、及びTiからなる群から選択される材料であり、Xは、100℃以上の温度に加熱される。第1の中間層は、正方晶(001)又は(110)材料を含み、正方晶(001)又は(110)材料は、RuO2を含む。
【0097】
別の実施形態では、スピン軌道トルク(SOT)デバイスは、基板と、基板の上に配設された、ドープされたビスマスアンチモン(BiSbE)層と、を備え、ドープされたBiSbE層は、(012)方位を有し、Eは、ドーパントであり、ドーパントは、ドープされたBiSbE層の約0.5原子パーセント~約5原子パーセントの量で存在する。SOTデバイスは、書き込みヘッドである。SOTデバイスは、読み取りヘッドである。SOTデバイスは、磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)デバイスである。ドープされたBiSbE層は、約0.7nm~約4nmの表面粗さを有する。ドーパントは、N2、H2、CxHy(式中、x及びyは数字である)、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される。ここで、SOTデバイスは、基板と、ドープされたBiSbE層との間に配設されたシード層を更に備え、シード層は、アモルファス調整層及びテクスチャリング層を備える。SOTデバイスは、ドープされたBiSbE層の上に配設されたインターレイヤを更に備え、インターレイヤは、マイグレーションバリア層及びテクスチャリング層を備える。SOTデバイスは、ドープされたBiSbE層の上に配設されたスピントルク層(STL)を更に備える。
【0098】
別の実施形態では、スピン軌道トルク(SOT)デバイスは、基板と、基板の上に配設された、ドープされたビスマスアンチモン(BiSbE)層であって、ドープされたBiSbE層が、(012)方位を有し、Eが、ドーパントである、ドープされたビスマスアンチモン(BiSbE)層と、ドープされたBiSbE層の上に配設されたインターレイヤと、インターレイヤの上に配設された磁気トンネル接合(MTJ)スタックと、を備える。インターレイヤは、少なくとも1つのテクスチャリング層及び少なくとも1つのマイグレーションバリア層を備え、少なくとも1つのマイグレーションバリア層は、ドープされたBiSbE層上に配設され、MTJスタックは、少なくとも1つのテクスチャリング層上に配設される。SOTデバイスは、基板上に配設されたシード層を更に備え、ドープされたBiSbE層は、シード層上に配設される。シード層は、テクスチャfcc(111)層を備える。シード層は、約3.48Å~約3.71Åの格子定数を有する。基板は、主磁極である。基板は、磁気シールドである。SOTデバイスは、MTJスタック上に配設されたキャッピング層を更に備える。
【0099】
別の実施形態では、スピン軌道トルク(SOT)デバイスを形成する方法は、スパッタリングチャンバ内に基板を配設することであって、スパッタリングチャンが、スパッタリングターゲットを含む、配設することと、スパッタリングガスをスパッタリングチャンバ内に流すことであって、スパッタリングガスが、不活性ガス及び非反応性ドーパントガスを含む、流すことと、スパッタリングターゲットにバイアスを印加することと、ドープされたビスマスアンチモン(BiSbE)層を基板の上に堆積させることであって、Eが、ドーパントガスからのドーパントであり、ドープされたBiSbE層が、(012)方位を有する、堆積させることと、を含む。方法は、ドープされたBiSbE層の上に磁気トンネル接合(MTJ)構造を形成することと、ドープされたBiSbE層の上にテクスチャリング層及びマイグレーションバリア層を形成することと、を更に含み、基板は、アモルファス調整層を備える。方法は、ドープされたBiSbE層の上にスピントルク層(STL)を形成することと、ドープされたBiSbE層の上にテクスチャリング層及びマイグレーションバリア層を形成することと、を更に含み、基板は、アモルファス調整層を備える。
【0100】
上記は本開示の実施形態を目的とするが、本開示の他の及び更なる実施形態が、その基本的範囲から逸脱することなく考案され得、その範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。
【国際調査報告】