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特表2024-526356R-スポンジンタンパク質の組換えバリアントおよびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】R-スポンジンタンパク質の組換えバリアントおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20240709BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20240709BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20240709BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240709BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240709BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240709BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240709BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240709BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240709BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240709BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240709BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240709BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALN20240709BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K14/47 ZNA
C07K16/00
C07K19/00
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12P21/02 C
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12Q1/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502451
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(85)【翻訳文提出日】2024-03-14
(86)【国際出願番号】 EP2022069925
(87)【国際公開番号】W WO2023285686
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】21305993.4
(32)【優先日】2021-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22305328.1
(32)【優先日】2022-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】524019243
【氏名又は名称】ディオジェンクス
(71)【出願人】
【識別番号】518095987
【氏名又は名称】アンスティチュート ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ レシェルシュ メディカル (アンセルム)
(71)【出願人】
【識別番号】513015441
【氏名又は名称】サントゥル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック - セーエヌエールエス
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE - CNRS
【住所又は居所原語表記】3,rue Michel Ange,F-75016 Paris 16,France
(71)【出願人】
【識別番号】520100435
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・コート・ダジュール
【氏名又は名称原語表記】Universite Cote d’Azur
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】コロンバ,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ボティ,パオロ
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA20
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ79
4B063QR48
4B063QR72
4B063QR77
4B063QS36
4B064AG01
4B064AG26
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA13
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA53
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、R-スポンジンタンパク質の組換えバリアント、および特に糖尿病の処置のための医薬品としてのその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のFU1ドメイン、FU2ドメイン、TSPドメインおよびBRドメインを含む、R-スポンジンタンパク質の組換えバリアント:
a.FU1は、配列番号5、9、13および17にそれぞれ示されるヒトRspo1、Rspo2、Rspo3またはRspo4のFU1ドメインのいずれかと少なくとも80%の同一性を有するドメインである、
b.FU2は、配列番号6、10、14、18にそれぞれ示されるヒトRspo1、Rspo2、Rspo3またはRspo4のFU2ドメインのいずれかと少なくとも80%の同一性を有するドメインである、
c.TSPは、配列番号7、11、15、19に示されるヒトRspo1、Rspo2、Rspo3、またはRspo4のTSPドメインのいずれかと少なくとも80%の同一性を有するドメインである、ならびに
d.BRは、配列番号8、12、16、20に示されるヒトRspo1、Rspo2、Rspo3、またはRspo4のBRドメインのいずれかと少なくとも80%の同一性を有するドメインである。
【請求項2】
少なくともH108KおよびN109Dのアミノ酸置換を有するRspo1のFU1ドメインならびにRspo1のFU2ドメインを含む;好ましくは配列番号66を含むか、または本質的に配列番号66からなる、請求項1に記載のスポンジンタンパク質の組換えバリアント。
【請求項3】
配列番号5のヒトRspo1のFU1ドメインおよび配列番号6のRspo1のFU2ドメインを対応させてそれぞれアライメントした場合に、FU1ドメインまたはFU2ドメインの各々において1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個を超えないアミノ酸置換を有する、請求項1または2に記載の組換えバリアント。
【請求項4】
Rspo1の21~33の領域内、またはRspo2、Rspo3、もしくはRspo4における同等領域内の、最初の10~14個のN末端アミノ酸の欠失、典型的にはRspo1の残基21~31の欠失を含む;好ましくは、配列番号24のタンパク質を含むか、または配列番号24のタンパク質からなる、請求項1~3のいずれか1項に記載の組換えバリアント。
【請求項5】
配列番号5のヒトRspo1のFU1ドメインにおけるR66のアミノ酸置換、または、ヒトRspo2、Rspo3、もしくはRspo4のFU1ドメイン配列における同等のアルギニン残基のアミノ酸置換を少なくとも含み、前記アミノ酸置換はZNRF3結合を減少または消失させる;典型的には、ZNRF3結合を減少または消失させる残基R66の単一アミノ酸置換、典型的にはR66Aを有する、配列番号5のRspo1のFU1ドメインを含む;例えば、配列番号23を含むか、または本質的に配列番号23からなる、請求項1~4のいずれか1項に記載の組換えバリアント。
【請求項6】
FU2とTSPドメインとの間にN-グリコシル化部位を含んでいない、例えば、Rspo1の残基N137、またはRspo2、Rspo3、もしくはRspo4の同等の残基において変異を含み、この部位でのN-グリコシル化を抑制する;好ましくは、配列番号22を含むか、または本質的に配列番号22からなる、請求項1~5のいずれか1項に記載の組換えバリアント。
【請求項7】
前記FU1ドメインは、配列番号9のRspo2のFU1ドメインと100%同一であり、前記FU2は、Rspo1、Rspo3、Rspo4、または、これらの機能的バリアントであって、LGR4に対する結合親和性を少なくとも同じに維持するアミノ酸置換を有するバリアントのFU2ドメインの中から選択される;好ましくは、配列番号9のRspo2のFU1ドメインおよび配列番号6のRspo1のFU2ドメイン、ならびに任意選択で、配列番号7のRspo1のTSPドメインおよび配列番号8のRspo1のBRドメインを含む;より好ましくは、配列番号25または配列番号26を含むか、または本質的に配列番号25または配列番号26からなる、請求項1~6のいずれか1項に記載の組換えバリアント。
【請求項8】
配列番号41のRspo1タンパク質と少なくとも同程度のレベルで以下の特性を1つ以上示す請求項1~7のいずれか1項に記載の組換えバリアント:
(i)Rspo1/LGR4結合親和性インビトロアッセイにて測定し、例えばSPRアッセイにより決定すると、参照の配列番号41のヒトRspo1と少なくとも同一の親和性でLGR4レセプターに結合する;
(ii)例えばインビトロのMin6β細胞増殖アッセイにて決定すると、参照の配列番号41のヒトRspo1と少なくとも同程度のレベルまで機能的β細胞の増殖を誘導する;および/または
(iii)例えばインビボのβ細胞増殖アッセイにて決定すると、参照の配列番号41のヒトRspo1と少なくとも同程度のレベルまで機能的β細胞の増殖を誘導する。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の組換えバリアントと、前記組換えバリアントに対して、直接、またはペプチドリンカーを介して間接的に融合したFc断片と、を含む;好ましくは、配列番号42、43、92または93を含むか、または本質的に配列番号42、43、92または93からなる、Fc融合タンパク質。
【請求項10】
特に糖尿病、より好ましくはI型またはII型糖尿病を処置するための薬剤として使用するための、請求項1~8のいずれか1項に記載の組換えバリアント、または請求項9に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか1項に記載の組換えバリアント、または請求項9に記載の融合タンパク質をコードする核酸。
【請求項12】
請求項11に記載の核酸を含むベクター。
【請求項13】
請求項11に記載の核酸を含む宿主細胞。
【請求項14】
(i)前記組換えバリアントまたは融合タンパク質の発現条件下で請求項13に記載の宿主細胞を培養する工程、(ii)前記組換えバリアントまたは融合タンパク質を回収する工程、(iii)任意選択で、前記組換えバリアントまたは融合タンパク質を精製する工程を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の組換えバリアントまたは請求項9に記載の融合タンパク質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本開示は、R-スポンジンタンパク質の組換えバリアント、および特に糖尿病の処置のための医薬品としてのその使用に関する。
【0002】
〔背景〕
過去数十年の間に、糖尿病は、世界人口のほぼ9%に影響を及ぼす、流行している規模(epidemic dimension)である最も広範囲に及ぶ代謝障害の1つとなっている(WHO、2016年)。2049年までに、糖尿病に罹患した人の数は、6億人に達すると予想される。糖尿病は高い血糖値を特徴とし、ほとんどの場合、膵臓が十分量のインスリンを分泌できないことに起因する。1型糖尿病(T1D)はインスリン産生β細胞の自己免疫介在性破壊によって引き起こされる一方、2型糖尿病(T2D)はインスリン作用に対する抵抗性および最終的なβ細胞不全/経時的損失に起因する。
【0003】
糖尿病の現在の処置では正常血糖を厳密に回復することができず、T1Dの場合には外因性インスリン注射による欠損インスリン分泌の代わりはむしろ症状緩和のように見えることさえある。したがって、新たに機能するβ細胞を膵臓に補充し、および/または、残りのβ細胞の健全な状態を維持することは、両方の状態の処置のための重要な戦略となる。しかしながら、現在まで、特に1型糖尿病に罹患しているヒト患者において、膵臓β細胞の損失を予防する、または増殖を誘導する利用可能な処置がない。
【0004】
Rspo1は、Rspo2、Rspo3およびRspo4も含む、システインリッチな分泌タンパク質のファミリーに属する。それらは、図1に示すように、4つの構造的および機能的に異なるドメインを含む共通の構造的構成を共有する。N末端において、シグナルペプチド配列はR-スポンジン(spondin)タンパク質の標準的な分泌経路への正しい進入を保証している。成熟分泌形態は、R-スポンジン特異的レセプターLGR(ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役レセプター)4~6との相互作用に重要な、2つのアミノ末端システインリッチフリン様リピート(FU1およびFU2)を含む(de Lau, W. B., Snel, B. & Clevers, H. C. Genome Biol 13, 242, doi:10.1186/gb-2012-13-3-242 (2012))。タンパク質の中央部にはトロンボスポンジン1型リピートドメイン(TSP1)が1つあり、細胞外マトリックスの特定成分との相互作用に関与し、カルボキシ末端塩基性アミノ酸リッチドメインが続いているが、その役割はまだ明らかになっていない。R-スポンジンタンパク質は細胞増殖(Kim, K. A. et al. Science 309, 1256-1259, doi:10.1126/science.1112521 (2005). Da Silva, F. et al. Dev Biol 441, 42-51, doi:10.1016/j.ydbio.2018.05.024 (2018))、細胞指定(Vidal, V. et al. Genes Dev 30, 1389-1394, doi: 10.1101/gad.277756.116 (2016))、および、性決定(Chassot, A. A. et al. Hum Mol Genet 17, 1264-1277, doi:10.1093/hmg/ddn016 (2008))等のプロセスにおいて重要な役割を発揮することが報告されている。そして、標準的なWNTシグナル伝達経路(WNT/β-カテニンまたはcWNT経路としても知られる)の中心的な調節因子として報告されている(Jin, Y. R. & Yoon, J. K. The R-spondin family of proteins: emerging regulators of WNT signaling. Int J Biochem Cell Biol 44, 2278-2287, doi:10.1016/j.biocel.2012.09.006 (2012))。
【0005】
膵臓の成熟および機能におけるcWNT経路の関与の可能性によって提起された大きな関心にもかかわらず(Scheibner et al 2019, Curr Opin Cell Biol. 61:48-55)、R-スポンジンタンパク質の役割および寄与は、この器官においてほとんど研究されていない。
【0006】
インビトロ分析はRspo1の存在下で、β細胞増殖および機能がMin6腫瘍由来細胞株において増加することを報告した(Wong, V. S., Yeung, A., Schultz, W. & Brubaker, P. L. R-spondin-1 is a novel beta-cell growth factor and insulin secretagogue. J Biol Chem 285, 21292-21302, doi:10.1074/jbc.M110.129874 (2010))。しかしながら、同じグループからのさらに最近の研究は、矛盾する記載を報告した:マウスにおけるRspo1欠損がβ細胞量(cell mass)の増加および血糖コントロールの増強と関連する(Wong, V. S., Oh, A. H., Chassot, A. A., Chaboissier, M. C. & Brubaker, P. L. Diabetologia 54, 1726-1734, doi:10.1007/s00125-011-2136-2 (2011)、および、Chahal et al 201, Pancreas Vol 43(1) pp 93-102)。
【0007】
後者の研究とは対照的に、PCT/EP2021/050289は、組換えRspo1タンパク質による処置が、糖尿病のマウスモデルにおいて、機能的膵臓β細胞のインビボの増殖を誘導し、耐糖能を改善し、グルコース刺激インスリン分泌(GSIS)を増加させることを報告している。さらに、ほぼ完全なβ細胞アブレーションを行い、Rspo1タンパク質投与によって残りのβ細胞が正常血糖を維持できる機能的なβ細胞量の増殖および再構築を誘導できることが示唆された。最後に、Rspo1はヒトのβ細胞増殖も誘導できることが示され、組換えRspo1タンパク質を用いたヒトの糖尿病の処置および予防のための新たな予想外の道が開かれた。
【0008】
レセプター結合および生物活性に重要なRSPO1残基は、例えば、Wang et Al. GENES & DEVELOPMENT 27:1339-1344, 2013; Xie et Al. EMBO reports VOL 14 | NO 12 | 2013; Xu et Al. THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY VOL. 290, NO. 4, pp. 2455-2465, January 23, 2015に報告されている。図1には、ZNRF3およびLGR4両方のレセプターにおける結合および活性の鍵となる残基が示されるとともに報告されている。
【0009】
Rspo1由来のタンパク質をさらに改良して、生物学的医薬品として使用するための開発可能な特性および薬理学的特性を最適化する必要性がまだある。
【0010】
したがって、本開示の目的は、例えば糖尿病の処置において薬剤として使用するためのR-スポンジンタンパク質の新規組換えバリアントを提供することである。
【0011】
〔詳細な説明〕
定義
本開示がより容易に理解され得るように、特定の用語を最初に定義する。詳細な説明の全体にわたって、追加の定義を示す。
【0012】
用語「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸および非天然アミノ酸(本明細書では「天然に存在しないアミノ酸」とも示す)、例えば、天然に存在するアミノ酸と同様に機能するアミノ酸アナログおよびアミノ酸模倣物を示す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝暗号によってコードされるアミノ酸、ならびに後に修飾されるアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、およびO-ホスホセリンである。アミノ酸アナログとは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造、例えば、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合しているα炭素、を有する化合物を示し、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムである。当該アナログは修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有することができるが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的な化学構造を保持する。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様に機能する化合物を示す。用語「アミノ酸」および「アミノ酸残基」は、全体を通して互換的に使用される。
【0013】
置換とは、天然に存在するアミノ酸を、別の天然に存在するアミノ酸または非天然アミノ酸で置換することを示す。例えば、合成ペプチドの化学合成の間、天然アミノ酸は、別の天然に存在するアミノ酸または非天然アミノ酸によって容易に置換されることができる。あるいは、コドンを別のアミノ酸残基をコードするコドンに変えるために、遺伝子コード配列を変異させることによって置換することもできる。変異したコード配列の発現によって得られるポリペプチドは、1つのアミノ酸置換(別の異なるアミノ酸で置換された1つのアミノ酸)を有する。
【0014】
本明細書で使用される場合、用語「タンパク質」は、1つ以上の直鎖(「ポリペプチド鎖」とも示す)に配置されたアミノ酸からできており、球状形態に折り畳まれた任意の有機化合物をいう。これには、タンパク質性物質または融合タンパク質が含まれる。当該ポリペプチド鎖中のアミノ酸は、隣接するアミノ酸残基のカルボキシル基とアミノ基との間のペプチド結合によって一緒に結合してもよい。用語「タンパク質」はペプチド、単鎖ポリペプチド、または主に2つ以上のアミノ酸鎖からなる任意の複合タンパク質をさらに含むが、これらに限定されない。それはさらに、糖タンパク質または他の公知の翻訳後修飾を含むが、これらに限定されない。それはさらに、天然タンパク質の公知の天然または人工の化学修飾、例えば、糖鎖エンジニアリング、ペグ化(pegylation)、ヘシル化(hesylation)、PAS化(PASylation)等、非天然アミノ酸の組込み、化学コンジュゲートまたは他の分子のためのアミノ酸修飾等を含むが、これらに限定されない。
【0015】
本明細書で使用される場合、用語「組換えタンパク質」は、対応するタンパク質を発現するために形質転換された宿主細胞から(例えば、トランスフェクトーマ等から)単離された融合タンパク質等の、組換え手段によって調製、発現、作製または単離されるタンパク質を含む。
【0016】
本明細書で使用される場合、用語「融合タンパク質」は、遺伝的融合によって、例えば別個のタンパク質の別個の機能的ドメインをコードする少なくとも2つの遺伝子断片の遺伝的融合によって、得られるかまたは得ることができる少なくとも1つのポリペプチド鎖を含む組換えタンパク質を示す。したがって、本開示のタンパク質融合物は後述のR-スポンジンまたはそのバリアントの少なくとも1つ、および少なくとも1つの他の部分を含む。当該他の部分は、後述のR-スポンジンポリペプチドまたはそのバリアント以外のポリペプチドである。特定の実施形態において、当該他の部分はまた、非タンパク質部分(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)部分、または他の化学部分もしくはコンジュゲート)であってもよい。好ましい実施形態において、第2の部分は抗体のFc領域であり得、したがって、このような融合タンパク質は「Fc融合タンパク質」と示す。
【0017】
本明細書で使用される場合、用語「Fc領域」は免疫グロブリン重鎖のC末端領域(天然配列Fc領域およびバリアントFc領域を含む)を定義するために使用され、好ましくは天然ヒトFc領域に対して5、10、15、または20以下のアミノ酸の挿入、欠失、または置換を含む。天然ヒトFc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgA、IgD、IgEまたはIgMアイソタイプのいずれでもあり得る。ヒトIgG重鎖Fc領域は一般に、IgG抗体のC226またはP230の位置からカルボキシル末端までのアミノ酸残基を含むものとして定義される。Fc領域における残基の番号付けは、KabatのEU番号付け(EU index)である。Fc領域のC末端リシン(残基K447)は例えば、Fc融合タンパク質の産生または精製の間に除去されてもよい。
【0018】
本明細書で使用される場合、2つの配列間のパーセント同一性は、ギャップの数および各ギャップの長さを考慮して、配列によって共有される同一の位置の数の関数であり(すなわち、%同一性=同一の位置の数/位置の総数×100)、ギャップの数および各ギャップの長さは2つの配列の最適なアラインメントのために導入される必要がある。配列の比較および2つの配列間のパーセント同一性の決定は後述の数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。
【0019】
2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、ニードルマンおよびブンシュのアルゴリズム(NEEDLEMANおよびWunsch)を使用して決定することができる。
【0020】
2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間のパーセント同一性は、例えば、EMBOSS Needle(ペアワイズアラインメント;www.ebi.ac.ukで利用可能、Rice et al 2000 Trends Genet 16 :276-277)等のアルゴリズムを使用して決定してもよい。例えば、EMBOSS Needleは、BLOSUM62マトリックス、10の「ギャップ開始ペナルティ(gap open penalty)」、0.5の「ギャップ伸長ペナルティ(gap extend
penalty)」、偽の「エンドギャップペナルティ(end gap penalty)」、10の「エンドギャップ開始ペナルティ(end gap open penalty)」、および0.5の「エンドギャップ伸長ペナルティ(end gap extend penalty)」とともに使用してもよい。一般に、「パーセント同一性」は、一致する位置の数を比較される位置の数で割って、100を掛けた関数である。例えば、10個の配列位置のうち6個が、アラインメント後の2つの比較される配列の間で同一である場合、同一性は60%である。%同一性は典型的には、分析が行われるクエリー配列の全長にわたって決定される。同じ一次アミノ酸配列または核酸配列を有する2つの分子は、任意の化学的および/または生物学的修飾にかかわらず同一である。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「対象」は、任意のヒトまたは非ヒト動物を含む。用語「非ヒト動物」は好ましくは哺乳動物(例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ等)を含む。
【0022】
本明細書中で使用される場合、用語「R-スポンジンタンパク質」は、対応するRspo1、Rspo2、Rspo3、Rspo4遺伝子それぞれによってコードされる天然のR-スポンジン1、R-スポンジン2、R-スポンジン3、またはR-スポンジン4タンパク質(本明細書中ではRspo1、Rspo2、Rspo3、Rspo4タンパク質とも称する)を指す。
【0023】
天然のR-スポンジンタンパク質は、典型的にはそのN末端からC末端まで、シグナルペプチド(SP)、2つのシステインリッチフリン様ドメイン(FU1およびFU2)、FU2ドメインとTSPドメインとの間のN-グリコシル化部位、トロンボスポンジン(TSP1)モチーフ(TSP)、ならびに塩基性アミノ酸リッチ(BR)ドメインを含み、潜在的なO-グリコシル化部位を含む。
【0024】
図1は、異なるドメインFU1、FU2、TSPおよびBRの概略とともに、Rspo1、Rspo2、Rspo3およびRspo4アミノ酸配列のアラインメントを提供する。本明細書を通して、Rspo1のアミノ酸位置、またはRspo2、Rspo3およびRspo4の「同等のアミノ酸位置」を言及する場合、「同等の」アミノ酸位置を特定するために図1のアラインメントを参照すべきである。同様に、Rspo2、Rspo3またはRspo4の「同等の(または対応する)」Rspo1のドメインは、図1のアラインメントを参照することで同定できる。ヒトRspo1、Rspo2、Rspo3およびRspo4の全長のアミノ酸配列(それらのシグナルペプチドを有する)は、それぞれ配列番号1~4に記載されている。ヒトRspo1のFU1、FU2、TSPおよびBRドメインのアミノ酸配列は、それぞれ配列番号5~8に記載されている。ヒトRspo2のFU1、FU2、TSPおよびBRドメインのアミノ酸配列は、それぞれ配列番号9~12に記載されている。ヒトRspo3のFU1、FU2、TSPおよびBRドメインのアミノ酸配列は、それぞれ配列番号13~16に記載されている。ヒトRspo4のFU1、FU2、TSPおよびBRドメインのアミノ酸配列は、それぞれ配列番号17~20に記載されている。
【0025】
本明細書で使用する場合、用語「キメラタンパク質」は、特定のタンパク質内の1つ以上のドメインの、同じファミリーのタンパク質の同等のドメインによる置換を含むタンパク質をいう。例えば、Rspo1のキメラタンパク質は、Rspo2の対応するFU1ドメインによりRspo1のFU1ドメインが置換され、天然Rspo1タンパク質と同一の他のドメイン(FU2、TSP、またはBRドメインなど)を含む。
【0026】
本明細書で使用する場合、用語「ハイブリッドドメイン」は、いくつかのアミノ酸残基が同じファミリーの別のメンバーの同等の残基に変異されたタンパク質のドメインを指す。例えば、R-スポンジンタンパク質のハイブリッドFU1ドメインは、1つ以上のアミノ酸残基をRspo2のFU1ドメインの同等の残基に置換するためになされた、いくつかの変異を有するRspo2のFU1ドメインに対応し得る。
【0027】
本開示のバリアント
本開示は、以下のFU1、FU2、TSPおよびBRドメインを含む、天然R-スポンジンタンパク質の組換えバリアントに関する。
・FU1は、配列番号5、9、13および17にそれぞれ示されるヒトRspo1、Rspo2、Rspo3またはRspo4のFU1ドメインのいずれかと少なくとも80%の同一性を有するドメインである、
・FU2は、配列番号6、10、14、18にそれぞれ示されるヒトRspo1、Rspo2、Rspo3またはRspo4のFU2ドメインのいずれかと少なくとも80%の同一性を有するドメインである、
・TSPは、配列番号7、11、15、19に示されるヒトRspo1、Rspo2、Rspo3、またはRspo4のTSPドメインのいずれかと少なくとも80%の同一性を有するドメインである、ならびに
・BRは、配列番号8、12、16、20に示されるヒトRspo1、Rspo2、Rspo3、またはRspo4のBRドメインのいずれかと少なくとも80%の同一性を有するドメインである。
【0028】
前記で定義した天然R-スポンジンタンパク質の組換えバリアントを、以下「本開示のバリアント」または「Rspo1バリアント」と称する。
【0029】
読みやすくするために、以下に記載する本開示のバリアントの配列は、常にシグナルペプチド配列なしで記載する。しかしながら、本明細書に開示される全てのバリアントは、N末端シグナルペプチド(SP)配列、特にRspo1、Rspo2、Rspo3またはRspo4の(SP)配列のうち1つ、典型的にはRspo1タンパク質のアミノ酸残基1~20を含んでいても含まなくてもよい。本開示のバリアントはまた、その正常なシグナル配列を欠失し、代わりに異なるシグナル配列を有することがある。シグナル配列の選択は、組換えタンパク質が生産される宿主細胞の種類に依存し、異なるシグナル配列が天然シグナル配列の代わりになり得る。さらに、本開示のバリアントは、例えば精製のために、そのC末端に追加のペプチド配列を含み得る。本明細書に開示される全てのバリアントはまた、6個のヒスチジン残基を含む配列番号90のポリヒスチジンタグのようなC末端タグを含み得る。
【0030】
前記バリアントの具体的な実施形態において、ドメインFU1、FU2、TSPおよびBRは、それぞれ、配列番号1のヒトRspo1ドメインのFU1、FU2、TSPおよびBRドメインと少なくとも80%の同一性を有する。
【0031】
具体的な実施形態において、TSPドメインおよびBRドメインは、それぞれ、対応するヒトRspo1のTSPドメインおよびBRドメインと100%の同一性を有し、FU1ドメインおよびFU2ドメインのアミノ酸配列は、対応するヒトRspo1のFU1およびFU2アミノ酸配列と少なくとも80%同一であり、その違いはアミノ酸置換によるものである。
【0032】
具体的な実施形態において、本開示のバリアントは、配列番号5のヒトRspo1のFU1ドメインおよび配列番号6のRspo1のFU2ドメインを対応させてそれぞれアライメントした場合に、FU1ドメインまたはFU2ドメインの各々において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個を超えないアミノ酸置換を有する。
【0033】
具体的な実施形態において、本開示のバリアントは、以下を含むキメラタンパク質である:
(i)配列番号9のRspo2のFU1において1、2、3、5、6、7、8、9、または10個を超えないアミノ酸置換を有するハイブリッドRspo2のFU1ドメイン、および
(ii)配列番号6と同一であるか、または配列番号6と比較してFU2ドメインに1、2、3、5、6、7、8、9、または10個を超えないアミノ酸置換を含むRspo1のFU2ドメイン。
【0034】
好ましくは、本明細書に記載された、本開示のバリアント、またはそれらの機能的同等物は、配列番号41のRspo1タンパク質に少なくとも類似するレベルで、以下の特性の1つ以上を示す:
(i)例えばインビトロのMin6β細胞増殖アッセイにて決定すると、参照の配列番号41のヒトRspo1と少なくとも同程度のレベルまで機能的β細胞の増殖を誘導する;および/または
(ii)例えばインビボのβ細胞増殖アッセイにて決定すると、参照の配列番号41のヒトRspo1と少なくとも同程度のレベルまで機能的β細胞の増殖を誘導する;
(iii)任意選択で、Rspo1/LGR4結合親和性インビトロアッセイにて測定し、例えばSPRまたはELISAアッセイにより決定すると、参照の配列番号41のヒトRspo1と少なくとも同一の親和性でLGR4レセプターに結合する;
(iv)任意選択で、Rspo1/ZNRF3結合親和性インビトロアッセイにて測定し、例えばSPRまたはELISAアッセイにより決定すると、参照の配列番号41のヒトRspo1と少なくとも同一の親和性でZNRF3レセプターに結合する、
(v)任意選択で、インビトロにて、例えばトップフラッシュアッセイ(Top Flash assay)で決定すると、Wnt/β-カテニン経路を増強する。
【0035】
本開示のバリアントは、特にヒトにおける糖尿病の処置、および/またはインビボもしくはインビトロでの膵臓β細胞の増殖を誘導するための医薬品として有利に使用することができる。
【0036】
A.N末端残基のアミノ酸欠失
本発明者らは、驚くべきことに、Rspo1タンパク質の残基21~31の欠失によって、配列番号41の天然Rspo1タンパク質と比較して、Min6増殖アッセイにおいてより活発なタンパク質となることを見出した。従って、具体的な実施形態において、本開示のバリアントは、Rspo1の領域21~33内、またはRspo2、Rspo3、もしくはRspo4における同等領域内の、最初の10~14個のN末端アミノ酸残基の欠失を含む。典型的には、本開示のバリアントは、Rspo1の領域21~33内の10~14個のN末端アミノ酸残基の欠失を有するRspo1タンパク質である。
【0037】
より具体的には、本開示のバリアントは、配列番号24のタンパク質を含むか、または配列番号24のタンパク質からなる。当該タンパク質は、Rspo1のアミノ酸残基21~31が欠失したヒトRspo1に対応する(実施例に開示されたバリアント#009を参照)。
【0038】
B.β細胞増殖を増大させるFU1ドメインのアミノ酸置換。
【0039】
Rspo1のFU1ドメインにおける変異R66Aは、ZNRF3に対するRspo1の結合を減少または消失させることがXieら(EMBO reports VOL 14 | NO 12 | 2013)に記載されている。
【0040】
本明細書で用いられるZNRF3は、E3ユビキチンタンパク質リガーゼを指し、Wntレセプター複合体の成分であるFrizzledおよびLRP6のユビキチン化ならびにそれに続く分解を仲介することによって、Wntシグナル伝達経路の負の調節因子として働く。Rスポンジンは、標準的および非標準的の両方のWntシグナル伝達経路に作用する。Rスポンジンタンパク質、特にRspo1はZNRF3と結合することが報告されており[、R-スポンジンのシグナル伝達活性に必要であると記載されている(Xie et Al. EMBO reports VOL 14 | NO 12 | 2013)。ZNRF3タンパク質は、Uniprotデータベースにおいて、アクセッション番号Q9ULT6およびNCBI Entrz Gene番号84133に記載されている。
【0041】
本発明者らは、Rspo1の変異R66Aは、Min6増殖アッセイにおいてRspo1の機能を消失させないだけでなく、その活性を驚くほど向上させることを見出した。
【0042】
具体的な実施形態において、有利には、本開示のバリアントは、配列番号5のヒトRspo1のFU1ドメイン中の残基R66、またはヒトRspo2、Rspo3、もしくはRspo4のFU1ドメイン配列の同等のアルギニン残基のZNRF3結合を減少または消失させるアミノ酸置換を少なくとも含む。
【0043】
任意のバリアントのZNFR3に対する結合親和性は、参照の配列番号41のヒトRspo1タンパク質のZNRF3に対する対応する結合親和性と比較され得る。ZNRF3に対する結合親和性を測定する方法は実施例に記載されており、例えば、以下の実施例に開示されているようなZNRF3結合アッセイが含まれる。本明細書で使用する場合、ZNRF3結合の減少は、結合親和性が、参照の配列番号41のRspo1で測定した対応する結合親和性よりも有意に低いこと、好ましくは少なくとも20%低いこと、より好ましくは少なくとも30%、40%、50%低いことを意味する。結合が検出可能なレベル以下であるか、非特異的結合タンパク質と同様である場合、結合は消失する。
【0044】
典型的には、本開示の前記バリアントは、ZNRF3結合を減少または消失させる残基R66の単一アミノ酸置換、典型的にはR66Aを有する、配列番号5のRspo1のFU1ドメインを含む。具体的な実施形態において、本開示の前記バリアントは、ZNRF3結合を減少または消失させる残基R66の単一アミノ酸置換、典型的にはR66Aを有する、配列番号5のRspo1のFU1ドメインを含み、前記FU2、TSPおよびBRドメインは、それぞれRspo1のFU2、TSPおよびBRドメインと95%、好ましくは100%同一である。
【0045】
例えば、本開示のバリアントは、配列番号23を含むか、または本質的に配列番号23からなる(以下の実施例に開示されるバリアント#008に対応する)。
【0046】
C.LGR4および/またはZNRF3に対する結合を増加させるためのFU1およびFU2ドメインのアミノ酸置換
本開示のバリアントは、配列番号41の天然Rspo1と比較して、LGR4および/またはZNRF3に対する結合親和性を高めるために、FU1および/またはFU2ドメインにおいてアミノ酸置換をさらに含み得る。
【0047】
任意のバリアントのLGR4および/またはZNFR3に対する結合親和性は、参照の配列番号41のヒトRspo1タンパク質のZNRF3またはLGR4に対する対応する結合親和性と比較され得る。ZNRF3またはLGR4に対する結合親和性を測定する方法は実施例に記載されており、例えば以下の実施例に開示されているようなZNRF3結合アッセイが含まれる。本明細書で使用する場合、ZNRF3またはLGR4結合の増加は、結合親和性が、参照の配列番号41のRspo1で測定した対応する結合親和性よりも有意に高いこと、好ましくは少なくとも10%高いこと、好ましくは少なくとも20%、30%、40%、50%高いことを意味する。
【0048】
LGR4および/またはZNRF3への結合親和性に関連するアミノ酸残基、および可能性のあるアミノ酸変異は、特にWang et Al. GENES & DEVELOPMENT 27:1339-1344, 2013; Xie et Al. EMBO reports VOL 14 | NO 12 | 2013; Xu et Al. THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY VOL. 290, NO. 4, pp. 2455-2465, January 23, 2015に記載されている。
【0049】
具体的な実施形態において、本開示の前記バリアントは、LGR4への結合親和性を増強させるために、Rspo1の位置H108、N109、E116、L118、P127、A128、S133、A136、G138、もしくはS143、またはRspo2、Rspo3、もしくはRspo4の対応する残基において、1つ以上のアミノ酸置換を含む。より具体的な実施形態において、本開示の前記バリアントは、Rspo1のFU2、またはRspo1、Rspo3もしくはRspo4(好ましくはRspo1)の対応する残基において、次のアミノ酸置換H108K、H108R、N109D、N109E、E116V;L118F;P127D;A128E;S133F;A136L;G138E;S143Vのうちの1つ以上を含む。より具体的には、本開示の前記バリアントは、配列番号66(実施例に記載のバリアント#049に対応する)、配列番号70(実施例に記載のバリアント#054に対応する)、配列番号72(実施例に記載のバリアント#056に対応する)、配列番号67(実施例に記載のバリアント#050に対応する)、配列番号28(実施例に記載のバリアント#051に対応する)、配列番号74(実施例に記載のバリアント#068に対応する)、または配列番号75(実施例に記載のバリアント#069に対応する)を含むか、または本質的に配列番号66、配列番号70、配列番号72、配列番号67、配列番号28、配列番号74、または配列番号75からなる。
【0050】
具体的な実施形態において、本開示の前記バリアントは、ZNRF3に対する結合親和性を高めるために、Rspo1の位置E45、L46、E49、V50、N51、K55、S57、I62、L63、D68、P77、F84、D85、N88、もしくはI95、またはRspo2、Rspo3もしくはRspo4の対応する残基において、1つ以上のアミノ酸置換を含む。特定の実施形態において、本開示の前記バリアントは、Rspo1のFU1、またはRspo1、Rspo3もしくはRspo4(好ましくはRspo1)の対応する残基において、次のアミノ酸置換L46S、E49K、V50D、K55R、S57Q、I62F、L63F、D68G、P77H、F84Y、D85Y、N88A、もしくはI95Aのうちの1つ以上を含む。より具体的な実施形態において、本開示の前記バリアントは、配列番号65(実施例に記載のバリアント#048に対応する)、配列番号67(実施例に記載のバリアント50に対応する)、配列番号68(実施例に記載のバリアント#052に対応する)、配列番号69(実施例に記載のバリアント#053に対応する)、配列番号71(実施例に記載のバリアント#055に対応する)、配列番号73(実施例に記載のバリアント#057に対応する)を含むか、または本質的に配列番号65、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号71、配列番号73からなる。
【0051】
特定の実施形態において、本開示のバリアントは、以下を含む:
(i)ZNRF3に対する結合親和性を増強させるための、Rspo1の位置E45、L46、E49、V50、N51、K55、S57、I62、L63、D68、P77、F84、D85、N88もしくはI95、またはRspo2、Rspo3もしくはRspo4の対応する残基における1つ以上のアミノ酸置換;例えば、Rspo1のFU1、またはRspo1、Rspo3もしくはRspo4の対応する残基、好ましくはRspo1の対応する残基における、次のアミノ酸置換:L46S、E49K、V50D、K55R、S57Q、I62F、L63F、D68G、P77H、F84Y、D85Y、N88A、またはI95Aの1つ以上、
(ii)LGR4に対する結合親和性を増強させるための、Rspo1の位置H108、N109、E116、L118、P127、A128、S133、A136、G138、もしくはS143、またはRspo2、Rspo3もしくはRspo4の対応する残基における1つ以上のアミノ酸置換;例えば、Rspo1のFU2、またはRspo1、Rspo3もしくはRspo4の対応する残基、好ましくはRspo1の対応する残基における、次のアミノ酸置換;H108K、H108R、N109D、N109E、E116V;L118F;P127D;A128E;S133F;A136L;G138E;S143Vの1つ以上。
【0052】
そのようなバリアントの例としては、バリアント#050(配列番号67)、バリアント#057(配列番号73)、およびバリアント#108~#112が挙げられる。
【0053】
D.N-グリコシル化部位のアミノ酸欠失または置換
また、有利には、例えばCHO細胞株またはヒト細胞株などの哺乳動物細胞株の真核生物発現系で産生された場合であっても、得られるバリアントがN-グリコシル化されないように、本開示のバリアントは、FU2ドメインのN-グリコシル化部位を除去するためのアミノ酸欠失または置換を含み得る。
【0054】
好ましくは、本開示の前記バリアントは、Rspo1の残基N137、またはRspo2、Rspo3、もしくはRspo4の同等の残基においてアミノ酸置換を含み、この部位でのN-グリコシル化を抑制する、例えば、前記バリアントは、アミノ酸置換N137QもしくはRspo1、またはRspo2、Rspo3もしくはRspo4における同等のアミノ酸置換を含む。具体的な実施形態において、本開示の前記バリアントは、配列番号22(以下の実施例のバリアント#005に対応する)、配列番号54(以下の実施例のバリアント#030に対応する)を含むか、または本質的に配列番号22、配列番号54からなる。
【0055】
E.キメラまたはハイブリッドR-スポンジンタンパク質
本開示のバリアントはまた、キメラR-スポンジンタンパク質を包含し、任意選択で、前記B~Dに記載されるような1つ以上の改変(欠失またはアミノ酸置換)をさらに含む。
【0056】
具体的な実施形態において、本開示のキメラバリアントは、配列番号9のRspo2のFU1ドメインと100%同一である前記FU1ドメインと、Rspo1のFU2ドメイン、Rspo3のFU2ドメイン、Rspo4のFU2ドメイン、または、(参照としての配列番号41のRspo1と比較して)LGR4に対し少なくとも同一の結合親和性を維持するアミノ酸置換を有する、これらの機能的バリアントの中から選択される前記FU2ドメインとを含む。好ましくは、前記FU2ドメインは、配列番号6のRspo1のFU2ドメインと100%同一である。
【0057】
したがって、具体的な実施形態において、前記バリアントは、Rspo2のFU1ドメインと、Rspo1、Rspo3、Rspo4、またはそれらの機能的同等物の他のドメインとを組み合わせたキメラタンパク質である。
【0058】
具体的な実施形態において、前記バリアントは、Rspo1のアミノ酸残基144~263からC末端領域(配列番号49)を少なくとも含むキメラタンパク質である。
【0059】
典型的には、そのようなキメラバリアントの一例は、配列番号9のRspo2のFU1ドメインおよび配列番号6のRspo1のFU2ドメイン、ならびに任意選択で配列番号7のRspo1のTSPドメインおよび配列番号8のRspo1のBRドメインを含むバリアントであり、好ましくは配列番号25のバリアント(実施例に開示されるバリアント#034に対応する)または配列番号26のバリアント(実施例に開示されるバリアント#035に対応する)である。
【0060】
このようなキメラバリアントの別の例は、Rspo1のFU1ドメインおよびRspo3のFU2ドメイン、ならびに任意選択で配列番号7のRspo1のTSPドメインおよび配列番号8のRspo1のBRドメインを含むバリアントであり、好ましくは配列番号50または51のバリアント(実施例に開示されたバリアント#026またはバリアント#027に対応する)である。
【0061】
このようなキメラバリアントの別の例は、Rspo3のFU1ドメインおよびRspo1のFU2ドメイン、ならびに任意選択で配列番号7のRspo1のTSPドメインおよび配列番号8のRspo1のBRドメインを含むバリアントであり、好ましくは配列番号52もしくは53(実施例に開示されたバリアント#028もしくはバリアント#029に対応する)、または配列番号54のバリアント(バリアント#030に対応し、N-グリコシル化を抑制するためのN137Q変異をさらに含む)。
【0062】
このようなキメラバリアントの別の例は、Rspo2のFU1およびFU2ドメイン、ならびに配列番号7のRspo1のTSPドメインおよび配列番号8のRspo1のBRドメインを含むバリアントであり、好ましくは配列番号55のバリアント(実施例に開示されたバリアント#031に対応する)である。
【0063】
このようなキメラバリアントの別の例は、Rspo2のFU2ドメインとRspo1由来のR-スポンジンタンパク質の残りの部分とを含むバリアントであり、好ましくは配列番号56のバリアント(実施例に開示されたバリアント#032に対応する)である。
【0064】
このようなキメラバリアントの別の例は、Rspo1のFU1ドメインおよびRspo2のFU2ドメイン、ならびに任意選択で配列番号7のRspo1のTSPドメインおよび配列番号8のRspo1のBRドメインを含むバリアントであり、好ましくは配列番号57のバリアント(実施例に開示されたバリアント#033に対応する)である。
【0065】
このようなキメラバリアントの別の例は、Rspo4のFU1ドメインおよびFU2ドメイン、ならびに配列番号7のRspo1のTSPドメインおよび配列番号8のRspo1のBRドメインを含むバリアントであり、好ましくは配列番号58のバリアント(実施例に開示されたバリアント#036に対応する)である。
【0066】
このようなキメラバリアントの別の例は、Rspo4のFU2ドメインとRspo1由来のR-スポンジンタンパク質の残りの部分とを含むバリアントであり、好ましくは配列番号59のバリアント(実施例に開示されたバリアント#037に対応する)である。
【0067】
このようなキメラバリアントの別の例は、Rspo1のFU1ドメインおよびRspo4のFU2ドメイン、ならびに任意選択で配列番号7のRspo1のTSPドメインおよび配列番号8のRspo1のBRドメインを含むバリアントであり、好ましくは配列番号60のバリアント(実施例に開示されるバリアント#038に対応する)である。
【0068】
このようなキメラバリアントの別の例は、Rspo4のFU1ドメインおよびRspo1のFU2ドメイン、ならびに任意選択で配列番号7のRspo1のTSPドメインおよび配列番号8のRspo1のBRドメインを含むバリアントであり、好ましくは配列番号61または62のバリアント(実施例に開示されたバリアント#039またはバリアント#040に対応する)である。
【0069】
このようなキメラバリアントの別の例は、Rspo2のFU1ドメインおよびRspo4のFU2ドメイン、ならびに任意選択で配列番号7のRspo1のTSPドメインおよび配列番号8のRspo1のBRドメインを含むバリアントであり、好ましくは配列番号63のバリアント(実施例に開示されるバリアント#042に対応する)。
【0070】
上述のキメラタンパク質に加えて、Rspo1/ZNRF3結合親和性に重要である、またはZNRF3に対する結合親和性を増強させることが知られている位置において、Rspo2のFU1ドメインの1つ以上のアミノ酸残基をRspo1の対応する1つ以上のアミノ酸残基でさらに置換することによって、キメラタンパク質のZNRF3結合活性を最適化することも可能である。
【0071】
典型的には、本開示のバリアントは、配列番号25または配列番号26のキメラバリアントと比較してZNRF3に対する結合親和性を増強させるために、E49、V50、D68、D85の位置に1つ以上のアミノ酸置換を含むことを除いて、配列番号5と同じ配列を有するハイブリッドFU1ドメインを含む:好ましくは、本開示のバリアントは、配列番号25または配列番号26のキメラバリアントと比較してZNRF3に対する結合親和性を増強させるために、E49、V50、D68、D85の位置に1つ以上のアミノ酸置換を含むことを除いて配列番号5のハイブリッドRspo1のFU1ドメインである;好ましくは、本開示のバリアントは、次のアミノ酸置換:E49K、V50D、D68G、D85G(Rspo1のFU1ドメインの残基に対応する)のうち1つ以上を含み、さらに、FU2ドメインが、Rspo1、Rspo2、Rspo3、Rspo4、またはLGR4に対し少なくとも同一の結合親和性を維持するアミノ酸置換を有する、これらの機能的バリアントのFU2ドメインの中から選択され、好ましくは、前記FU2ドメインは、配列番号6のRspo1のFU2ドメインと100%同一である。
【0072】
具体的な実施形態において、本開示のバリアントは、位置E49、V50、D68、およびD85に1つ以上のアミノ酸置換、好ましくは次のアミノ酸置換:49K、50D、68G、85G(Rspo2のFU1ドメインの残基に対応する)を含むことを除いて、配列番号5(すなわち、Rspo1のFU1ドメイン)と同一の配列を有するハイブリッドFU1ドメインを含み、さらに、FU2ドメインが配列番号6のRspo1のFU2ドメインと100%同一である。例えば、本開示のバリアントは、配列番号27(実施例に開示されたバリアント#047に対応する)を含むか、または本質的に配列番号27からなる。
【0073】
具体的な実施形態において、上述の本開示のバリアントは、さらに、E45L、E49K、V50D、K55R、D68G、D85G、N88A、H108K、およびN109Dの中から選択される1つまたは複数のアミノ酸置換を有する、ハイブリッドRspo1のFU1およびRspo1のFU2ドメインを含む。例えば、本開示のバリアントは、配列番号28(E45L;E49K;V50D;K55R;D68G;D85G;N88A;H108K;およびN109D変異を有する、実施例に開示されたバリアント#051に対応する)を含むか、または本質的に配列番号28からなる。
【0074】
具体的な実施形態において、本開示のバリアントは、例えば、E49K、V50D、D68G、D85Gのような、ZNRF3に対する結合を増加させるための、位置E49、V50、D68およびD85での1つ以上のアミノ酸置換を有するRspo1のFU1ドメインまたはハイブリッドRspo1のFU1ドメインと組み合わせて、配列番号10、14もしくは18の、ヒトRspo2、Rspo3もしくはRspo4の対応するFU2ドメインを含む。
【0075】
F.O-グリコシル化を改善するためのBRドメインにおけるアミノ酸置換
本開示のバリアントは、配列番号41のRspo1と比較して、O-グリコシル化を調節、最適化または改善するために、BRドメインに1つ以上のアミノ酸置換をさらに含み得る。
【0076】
O-グリコシル化の改善に関連するアミノ酸残基としては、特に、Rspo1のアミノ酸残基T253、T258、S259が挙げられる。
【0077】
具体的な実施形態において、本開示の上記バリアントは、O-グリコシル化を改善するために、Rspo1の位置G252、T253、L257、T258、S259、A260、A263、または、Rspo2、Rspo3もしくはRspo4の対応する残基において、1つ以上のアミノ酸置換を含む。より具体的には、本開示の上記バリアントは、Rspo1の次のアミノ酸置換、G252T、T253E、L257S、T258E、S259E、A260T、もしくはA263T、S268E、またはRspo2、Rspo3もしくはRspo4の対応する残基のうち1つ以上を有するRspo1のBRドメインを含む。
【0078】
対照的に、バリアントがC末端ポリペプチドと融合する場合、O-グリコシル化部位を変異させることが有利であり得る。よって、具体的な実施形態において、本開示のバリアントは、融合タンパク質であり、次のアミノ酸置換:T253A、T258A、S259A、およびS268Aの1つ以上を含む。
【0079】
具体的な実施形態において、本開示のバリアントは、配列番号76~86のポリペプチドを含むか、または本質的に配列番号76~86のポリペプチドからなる。
【0080】
G.短縮された(truncated)R-スポンジン活性タンパク質
本発明者らは、驚くべきことに、Rspo1タンパク質の残基21~31および残基245~263の欠失は、Min6増殖アッセイにおいて、配列番号41の天然Rspo1タンパク質と比較して同様の活性をもたらすことを見出した。このタンパク質は、活性を有する、最も短い天然Rspo1タンパク質である。より具体的には、本開示のバリアントは、Rspo1のアミノ酸残基32~224を含むヒトRspo1断片に対応する配列番号94のタンパク質を含むか、またはそのタンパク質からなる(実施例に開示されたバリアント#116を参照)。
【0081】
H.糖尿病の処置に用いるRspo3
さらに、本発明者らは、インビボにおいて、天然タンパク質Rspo3が、少なくともRspo1と同様のレベルまで膵臓β細胞増殖を活性化することを決定した。従って、1つの態様において、本開示は、糖尿病(例えば、I型またはII型糖尿病)の処置に使用するため、および/または、インビトロもしくはインビボのいずれかにおいて膵臓β細胞の増殖を誘導するための、Rspo3ポリペプチド(例えば、配列番号3を含む)またはその機能的等価物に関する。
【0082】
本開示の好ましいバリアント
表1は、本開示の好ましいバリアント、それらのアミノ酸配列、および天然Rスポンジンタンパク質と比較した主な変更点を示している。
【0083】
【表1】
【0084】
保存的な改変および機能的等価物
天然R-スポンジン1タンパク質の同様の有利な特性を有する、これより前のセクションA~Fに記載されるようなバリアントの追加の機能的等価物、または天然ヒトR-スポンジン3タンパク質の同様の有利な特性を有する、これより前のセクションGに記載されるようなRspo3ポリペプチドの機能的等価物は、候補分子をスクリーニングし、そしてそのような候補分子が、Rspo1、Rspo3、または本明細書に開示されるような特定のバリアント(特に、上記の表1にて言及されるそれらの好ましいバリアント)のいずれかと比較した場合に、所望の機能的特性を維持しているかどうかを試験することによって、さらに同定され得る。
【0085】
特定の実施形態において、本バリアントの機能的等価物は、本明細書に開示される好ましいバリアントの1つと少なくとも同じ親和性でLGR4レセプターに結合する。
【0086】
特定の実施形態において、本明細書に開示されるような特定のバリアントの前記機能的等価物は、以下の活性の1つ以上を、配列番号41のRspo1タンパク質に対して少なくとも90%、100%またはそれ以上示す:
(i)例えばSPRアッセイによって決定される、LGR4レセプターへの結合親和性;
(ii)例えばインビトロのMin6β細胞増殖アッセイで決定される、機能的β細胞の増殖の誘導;
(iii)例えばインビボのβ細胞増殖アッセイで決定される、機能的β細胞の増殖の誘導。
【0087】
特定の実施形態において、本明細書に開示されるRspo3ポリペプチドの前記機能的等価物は、以下の活性の1つ以上を、配列番号3のRspo3タンパク質に対して少なくとも90%、100%またはそれ以上示す:
(i)例えばSPRまたはELISAアッセイによって決定される、LGR4レセプターへの結合親和性;
(ii)例えばSPRまたはELISAアッセイによって決定される、ZNRF3レセプターへの結合親和性;
(iii)例えばインビトロのMin6β細胞増殖アッセイで決定される、機能的β細胞の増殖の誘導;
(iv)例えばインビボのβ細胞増殖アッセイで測定される、機能的β細胞の増殖の誘導。
【0088】
活性を決定する際に使用するためのアッセイおよび条件のさらなる詳細を、下記の実験のパートに開示する。
【0089】
特定の実施形態において、特定のバリアントの前記機能的等価物は、上記の所望の活性を、表1に開示されるような対応する好ましいバリアントの1つに対して少なくとも90%、より好ましくは100%以上またはそれ以上示す。
【0090】
これより前のセクションで開示したようなバリアントの機能的等価物は、典型的には、非必須残基における対応するバリアントと比較して、アミノ酸置換、欠失または挿入によって得ることができる。特定の実施形態において、前記機能的等価物は、特に表1に記載のバリアントのうちの1つと比較して、天然または非天然アミノ酸によるアミノ酸置換のみによって、好ましくは天然アミノ酸による1、2、3、4、5、6、7、8、9または10アミノ酸置換のみによって、対応するバリアントとは異なる。
【0091】
他の実施形態において、前記機能的等価物は、配列番号22~28の少なくとも1つと95%の同一性を有するポリペプチドであり、当該ポリペプチドは配列番号22~28の少なくとも1つのFU1ドメインおよびFU2ドメインと100%同一である、FU1ドメインおよびFU2ドメインを含む。
【0092】
より具体的な実施形態において、前記機能的等価物のアミノ酸配列は、大部分が保存的アミノ酸置換によって、本明細書、特に表1に開示されるようなバリアントと異なっていてもよく;例えば、バリアントにおける置換の少なくとも10個(少なくとも9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個または1個、等)が保存的アミノ酸残基の置換である。
【0093】
本開示の文脈において、保存的な置換は、以下のように反映されるアミノ酸のクラス内の置換によって定義されてもよい:
脂肪族残基 I、L、V、およびM
シクロアルケニル関連残基 F、H、W、およびY
疎水性残基 A、C、F、G、H、I、L、M、R、T、V、W、およびY
負電荷を有する残基 DおよびE
極性残基 C、D、E、H、K、N、Q、R、S、およびT
正の電荷を有する残基 H、K、およびR
小さい残基 A、C、D、G、N、P、S、TおよびV
非常に小さい残基 A、G、S
ターンに関与する残基 A、C、D、E、G、H、K、N、Q、R、S、P、および形成T
フレキシブル残基 Q、T、K、S、G、P、D、E、およびR
より保存的な置換基は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リシン-アルギニン、アラニン-バリン、およびアスパラギン-グルタミンを含む。親水性/親水性特性および残基の重量/サイズに関する保存も、表1の親バリアントと比較して、バリアント変異ポリペプチドにおいて実質的に保持されていてもよい。
【0094】
具体的な実施形態において、バリアントの機能的等価物は、別の天然アミノ酸によって、好ましくは上記で定義した保存的アミノ酸置換によって置換された1、2または3アミノ酸残基を除いて、配列番号22~28のいずれか1つ(表1のバリアント)と同一であるポリペプチドを含む。
【0095】
さらに、当業者は、様々の種間またはRspoファミリーの異なるメンバー間で保存された残基が、適切な構造を維持するために重要であり得、したがって、当業者がそのようなアミノ酸位置の変異を抑制することができることに感謝するであろう。例えば、Rspo1、Rspo2、Rspo3およびRspo4の間の保存的な残基は、特に図1に示されており、本開示において特に指定されない限り、好ましくは変異させないことができる。
【0096】
または、多くの部位において、1つまたは2つ以上のアミノ酸位置は、種バリアント間で、および/またはRspoファミリーの他のメンバー(Rspo2、Rpo3およびRspo4、等)の間での保存的なバリエーションを示す。当業者はそのような保存的な置換のいくつかが、Rspo1の機能に悪影響を及ぼさず、したがって、そのような保存的なバリエーションを有する天然R-スポンジン1と比較して、変異していることを理解するのであろう。
【0097】
特定の実施形態において、本開示のバリアントは、天然R-スポンジンタンパク質と比較して、変異していない以下のアミノ酸残基を有するFU2ドメインを含んでいる:配列番号1のヒトRspo1におけるF106、H108、F110、N109、E116、L118、P127、A128、S133、A136、G138、S143。
【0098】
特定の実施形態において、本開示のバリアントは、以下の位置の1つ以上において、天然BRドメインと比較してアミノ酸変化を有さないBRドメインを含んでいる:配列番号1のヒトRspo1におけるT253、L257、T258、S259、A260もしくはA263、または配列番号2のヒトRspo2、配列番号3のヒトRspo3もしくは配列番号4のヒトRspo4における対応する残基、典型的には、前記BRドメインは、配列番号8、配列番号12、配列番号16、または配列番号20と100%同一である。
【0099】
本開示の融合タンパク質
R-スポンジン1ポリペプチド以外の種々のポリペプチドは、種々の目的のため(例えば、タンパク質のインビボでの半減期を増加させるため、タンパク質の同定、単離および/または精製を容易にするため、タンパク質の活性を増強させるため、およびタンパク質のオリゴマー化を促進するため、等)に、本開示のバリアントまたは上記のその機能的等価物(特に、表1のバリアント)と融合することができる。
【0100】
多くのポリペプチドは、それらがその一部である組換え融合タンパク質の同定および/または精製を容易にすることができる。例えば、ポリアルギニン、ポリヒスチジンが含まれる。ポリアルギニンを含むポリペプチドは、イオン交換クロマトグラフィーによる有効な精製を可能にする。例えば、特定の実施形態において、本開示のバリアント(より具体的には、表1に開示されるような好ましいバリアントのいずれか)は、ポリヒスチジンC末端タグ、および任意選択でペプチドリンカー、例えば配列番号90(GGGGSEPEAHHHHHH)のポリペプチドを含む。
【0101】
具体的な実施形態では、抗体のFc領域、任意選択でIgG抗体、または実質的に類似のタンパク質を含むポリペプチドを、直接、または任意選択でペプチドリンカーを介して、本開示のバリアント(典型的には、表1に開示されたバリアントの1つ)またはその機能的等価物に融合させ、それによって本開示のFc融合タンパク質を形成することができる。そのようなFc領域の例は、IgG4 Fc断片またはその誘導体であり、典型的には配列番号29のポリペプチドである。
【0102】
具体的な実施形態において、本開示はまた、Fc断片が(C末端またはN末端のいずれかにおいて、任意選択でペプチドリンカーまたはそのバリアントを介して)配列番号66のRspo1タンパク質に融合される(より具体的にはFc断片が配列番号29を含む)、Fc融合タンパク質に関する。
【0103】
別の具体的な実施形態において、本開示はまた、Fc断片が(C末端またはN末端のいずれかにおいて、任意選択でペプチドリンカーまたはそのバリアントを介して)配列番号24のRspo1タンパク質に融合される(より具体的にはFc断片が配列番号29を含む)、Fc融合タンパク質に関する。
【0104】
別の具体的な実施形態において、本開示はまた、Fc断片が(C末端またはN末端のいずれかにおいて、任意選択でペプチドリンカーまたはそのバリアントを介して)配列番号94のRspo1タンパク質に融合される(より具体的にはFc断片が配列番号29を含む)、Fc融合タンパク質に関する。
【0105】
融合タンパク質はまた、1つ以上のペプチドリンカーを含んでいてもよい。一般に、ペプチドリンカーは複数のポリペプチドを連結して多量体を形成するのに役立つアミノ酸のストレッチ(stretch)であり、タンパク質の連結部分の所望の機能に必要とされる柔軟性または剛性を提供する。典型的には、ペプチドリンカーは約1~30アミノ酸長である。ペプチドリンカーの例としては、-Gly-Gly-、GGGGS(配列番号46)、(GGGGS)n(nは1~8であり、典型的には3または4である)が挙げられるが、これらに限定されない。連結部分は例えば、Huston, J. S., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 85: 5879-83 (1988), Whitlow, M., et al., Protein Engineering 6: 989-95 (1993), Newton, D. L., et al., Biochemistry 35: 545-53 (1996)、ならびに米国特許第4,751,180号および第4,935,233号に記載されている。
【0106】
特定の実施形態では、Fc融合体は、本開示のバリアントまたはその機能的等価物のC末端においてペプチドリンカーを介して間接的に融合される。他の実施形態では、Fc融合体は、本開示のバリアントまたはそれらの機能的等価物のN末端においてペプチドリンカーを介して間接的に融合される。
【0107】
特定の実施形態において、本発明者らは、活性のあるFc融合タンパク質を生成するためにはリンカーの最適化が必要であることを示した。実際、本発明者は、リンカーの長さを拡大することにより、Fc融合タンパク質の生物学的活性が向上することを示した。
【0108】
Fc融合タンパク質のFc部分とR-スポンジン部分との間で使用され得る好ましいペプチドリンカーには、例えば(GGGGGGSGGGGSGGGGSA)(配列番号44)または(GGGGSGGGGSGGGGGG)(配列番号45)のリンカーが含まれる。
【0109】
特定の実施形態において、配列番号29のFcポリペプチドは、表1の好ましいバリアントのうちの1つのC末端において、ペプチドリンカーを介して直接または間接的に融合される。
【0110】
本発明者らは、驚くべきことに、本開示のバリアントのN末端においてペプチドリンカーを介して直接または間接的にFcポリペプチドを融合させると、Fc融合タンパク質の生産収率が増加することを示した。したがって、好ましい実施形態において、配列番号29のFcポリペプチドは、表1の好ましいバリアントのうちの1つ、好ましくは配列番号24、66、または94のバリアント、のN末端においてペプチドリンカーを介して直接または間接的に融合される。
【0111】
本開示はまた、Fc断片が(C末端またはN末端のいずれかにおいて、任意選択でペプチドリンカーを介して)配列番号1のRspo1タンパク質に融合される(より具体的にはFc断片が配列番号29を含む)Fc融合タンパク質に関する。具体的な実施形態において、本開示のバリアントは、配列番号42、配列番号43、配列番号92、配列番号93または配列番号95のFc融合タンパク質(それぞれ、バリアント#063、バリアント#064、バリアント#121、バリアント#155またはバリアント#150に対応する)である。
【0112】
本開示によって意図されるバリアントまたはその機能的等価物の別の改変は、得られる分子の半減期を増加させるために、少なくともバリアント、または血清タンパク質(ヒト血清アルブミンまたはその断片など)に対する等価物とのコンジュゲートまたはタンパク質融合物である。このようなアプローチは、例えば、Ballanceら(欧州特許第0322094号)に記載されている。
【0113】
別の可能性は、得られる分子の半減期を増加させるために、血清タンパク質に結合できるタンパク質(ヒト血清アルブミンに結合しているタンパク質(すなわち、抗HSA融合タンパク質))を含み、例えば、HSAまたはダルピン、ナノフィチン、フィノマー等の任意の他のドメインタイプ構造に結合するFabまたはナノボディに由来する抗HSA結合部分を含む、本開示の融合タンパク質である。このようなアプローチは、例えば、Journal of Controlled Release 301 (2019) 176-189; BioDrugs (2015) 29:215-239; J Pharmacol Exp Ther 370:703-714, September 2019; Biodrugs 2009; 23 (2): 93-109に記載されている。そのような融合タンパク質の例には、配列番号64、配列番号87または配列番号88のポリペプチドが含まれる。
【0114】
他の実施形態において、本開示の融合タンパク質は、Dennis et al 2002 (Journal of Biological Chemistry, 2002, Vol 277, No. 38, pp 35035-35043)において開示されているアルブミンに結合するペプチドのうちの1つ、特に配列番号91(DICLPRWGCLW)のコア配列を含むペプチドを含む。
【0115】
そのようなバリアントの例は、配列番号64のポリペプチド(バリアント#046)、または配列番号87のポリペプチド(バリアント#094)、または配列番号88のポリペプチド(バリアント#095)である。
【0116】
本開示の組換え融合タンパク質は、ロイシンジッパーまたは他の多量体化モチーフを含むポリペプチドを含み得る。既知のロイシンジッパー配列の中には、二量体化を促進する配列および三量体化を促進する配列がある。例えば、e.g. Landschulz et al. (1988), Science 240: 1759-64)を参照されたい。ロイシンジッパーは反復ヘプタドリピート(heptad repeat)を含み、多くの場合、4つまたは5つのロイシン残基が他のアミノ酸と共に散在する。ロイシンジッパーの使用および調製は、当該技術分野で周知である。
【0117】
本開示によって意図される、本明細書に開示されるバリアントまたは機能的等価物の別の改変は、ペグ化またはヘシル化またはPAS化等の関連技術である。
【0118】
より一般的には、バリアントまたはその機能的等価物は、O結合およびN結合オリゴ糖、デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、ポリシアル酸およびヒアルロン酸、ならびにホモアミノ酸ポリマー、エラスチン様ポリペプチド、XTENおよびPAS等の非構造化タンパク質ポリマーを含む、天然および半合成多糖類を含む生分解性増量剤とコンジュゲートしてもよい。
【0119】
例えば、本開示のバリアントまたはそれらの機能的等価物は、例えば、抗体の生物学的(例えば、血清)半減期を増加させるためにペグ化することができる。ペグ化するために、組換えタンパク質は、1つ以上のポリエチレングリコール(PEG)基が組換えタンパク質に結合する条件下で、PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体などのPEGと反応させる。ペグ化は、反応性PEG分子(またはアナログ反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応によって行うことができる。本明細書で使用される場合、用語「ポリエチレングリコール」は、モノ(C1~C10)アルコキシもしくはアリールオキシポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールマレイミド等の、他のタンパク質を誘導体化するために使用されている任意の形態のPEGを包含することが意図される。タンパク質をペグ化するための方法は当該技術分野で公知であり、本開示のタンパク質に適用することができる。例えば、Jevsevar et al 2010 Biotechnol J. 5(1): 113-28,またはTurecek et al 2016 J Pharm Sci 2016 105(2): 460-375を参照されたい。したがって、特定の実施形態において、本開示のRspo1タンパク質はペグ化されている。
【0120】
本開示によって意図されるバリアントまたはそれらの機能的等価物の別の改変は、PAS化である。例えば、Protein Engineering, Design & Selection vol. 26 no. 8 pp. 489-501, 2013を参照されたい。したがって、特定の実施形態において、本開示のRspo1タンパク質はPAS化されている。
【0121】
Xten技術は例えば、Nature Biotechnology volume 27 number 12 2009: 1186-1192に記載されており、レビューされている。
【0122】
[本開示のタンパク質をコードする核酸分子]
本開示のバリアントまたはそれらの機能的等価物をコードする核酸分子もまた、本明細書に開示される。
【0123】
下記の表10および表11の実施例は、本明細書に開示されるバリアントの特定のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列の具体例を提供する。
【0124】
ヌクレオチド配列の例は、表1に記載されている実施例のいずれか1つのアミノ酸配列をコードするもの、特に配列番号22~28、配列番号42~43、配列番号50~89、および配列番号92~95のいずれか1つをコードするものであり、核酸配列は表9から容易に誘導され、遺伝暗号を使用し、任意選択で宿主細胞種に依存するコドンの偏りを考慮に入れる。
【0125】
本開示はまた、哺乳動物細胞(例えば、哺乳動物のチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株、またはヒトHEK293細胞株)におけるタンパク質発現のために最適化されている後者の配列に由来する核酸分子に関する。
【0126】
核酸は、細胞全体、細胞溶解物中に存在してもよく、または部分的に精製されたもしくは実質的に純粋な形態の核酸であってもよい。核酸は、アルカリ/SDS処理、CsClバンディング、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動および当該技術分野で周知の他の技術を含む標準的な技術によって、他の細胞成分または他の汚染物質、例えば、他の細胞核酸またはタンパク質から精製される場合、「単離される」または「実質的に純粋になる」。本開示の核酸は例えば、DNAまたはRNAであり得、イントロン配列を含んでも含まなくてもよい。一実施形態において、核酸は、ファージディスプレイベクター等のベクター中に、または組換えプラスミドベクター中に存在してもよい。
【0127】
本開示の核酸は、標準的な分子生物学技術を使用して得ることができる。本開示のバリアントをコードするDNA断片が一度得られると、これらのDNA断片を、標準的な組換えDNA技術によってさらに操作することができる。これらの操作において、バリアントをコードするDNA断片は、別のDNA分子、または別のタンパク質をコードする断片(例えば、抗体定常領域(Fc領域)またはフレキシブルリンカー)に作動可能に連結してもよい。ヌクレオチド配列の例には、組換え融合タンパク質、特に、アミノ酸配列の配列番号1、またはFc領域のコード配列と作動可能に連結されるそれらのバリアント(例えば、配列番号42、配列番号43、または配列番号92~95)のいずれか1つのコード配列を含むFc融合タンパク質を含む。
【0128】
本文脈において使用される場合、用語「作動可能に連結される」は、2つのDNA断片が機能的な様式で、例えば、2つのDNA断片によってコードされるアミノ酸配列がインフレームのままであるように、またはタンパク質が所望のプロモーターの制御下で発現されるように連結されることを意味することが意図される。
【0129】
[本開示のバリアントまたは融合タンパク質を産生するトランスフェクトーマの作製]
本開示のバリアントもしくはそれらの機能的等価物、および/または関連タンパク質は、例えば、当該技術分野で周知である組換えDNA技術および遺伝子トランスフェクション方法の組合せを使用して、宿主細胞トランスフェクトーマにおいて産生させることができる。
【0130】
例えば、本開示のバリアントもしくは関連融合タンパク質、または対応するそれらの機能的等価物を発現させるために、部分的または全長組換えタンパク質をコードするDNAを、標準的な分子生物学または生化学技術(例えば、DNA化学合成、PCR増幅またはcDNAクローニング)によって得ることができ、遺伝子が転写および翻訳制御配列に作動可能に連結されるように、DNAを発現ベクターに挿入することができる。
【0131】
本文脈において、用語「作動可能に連結される」は、ベクター内の転写および翻訳制御配列が組換えタンパク質の転写および翻訳を調節するそれらの意図された機能に役立つように、抗体遺伝子をベクターにライゲーションされていることを意味することを意図している。発現ベクターおよび発現制御配列は、使用される発現宿主細胞と適合するように選択される。タンパク質をコードする遺伝子は、標準的な方法(例えば、抗体遺伝子断片およびベクター上の相補的制限部位のライゲーション、または制限部位が存在しない場合は平滑末端ライゲーション)によって発現ベクターに挿入される。
【0132】
組換え発現ベクターは、宿主細胞からの組換えタンパク質の分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることができる。シグナルペプチドが組換えタンパク質のアミノ末端にフレームで連結されるように、バリアントをコードする遺伝子をベクター中にクローン化することができる。シグナルペプチドはRspo1、Rspo2、Rspo3、もしくはRspo4の天然シグナルペプチドまたは異種シグナルペプチド(すなわち、非Rスポンジンタンパク質由来のシグナルペプチド)であり得る。
【0133】
バリアントをコードする遺伝子に加えて、本明細書に開示される組換え発現ベクターは、宿主細胞における組換えタンパク質の発現を制御する調節配列を保持する。用語「調節配列」は、遺伝子をコードするタンパク質の転写または翻訳を制御するプロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことを意図している。調節配列の選択を含む発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベル等の因子に依存し得ることが、当業者によって理解されるだろう。哺乳動物宿主細胞発現のための調節配列は、哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を導くウイルスエレメント、例えばサイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えばアデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))、およびポリオーマに由来するプロモーターおよび/またはエンハンサーを含む。あるいは、ユビキチンプロモーターまたはP-グロビンプロモーター等の非ウイルス調節配列を使用してもよい。さらに、SV40初期プロモーターおよびヒトT細胞白血病ウイルス1型の長い末端リピート由来の配列を含む、SRaプロモーター系等の異なる供給源由来の配列から構成される調節エレメントも存在する。
【0134】
バリアントをコードする遺伝子および調節配列に加えて、本開示の組換え発現ベクターは、宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)および選択可能なマーカー遺伝子等のさらなる配列を保持してもよい。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする(例えば、すべてAxelらによる米国特許第4,399,216号、第4,634,665号および第5,179,017号を参照されたい)。例えば、典型的には、選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞に、G418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサート等の薬物に対する耐性を付与する。選択可能なマーカー遺伝子には、(メトトレキサート選択/増幅を伴うdhfr-宿主細胞において使用するための)ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子、および(G418選択のための)neo遺伝子が含まれる。
【0135】
本開示のバリアントまたは関連融合タンパク質の発現について、組換えタンパク質をコードする発現ベクターを、標準的な技術によって宿主細胞にトランスフェクトする。用語「トランスフェクション」の種々の形態は、原核生物または真核生物宿主細胞への外因性DNAの導入のために一般的に使用される広範な技術(例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクション等)を包含することが意図される。理論的には、原核生物または真核生物宿主細胞のいずれかにおいて、本開示のタンパク質を発現させることが可能である。真核細胞(例えば、哺乳動物宿主細胞、酵母または糸状菌)におけるタンパク質の発現については、このような真核細胞、特に哺乳動物細胞が、原核細胞よりも、適切に折り畳まれて機能的な組換えタンパク質を会合させる(assemble)および分泌する可能性が高いため検討される。
【0136】
具体的な一実施形態において、本開示によるクローニングまたは発現ベクターは、好適なプロモーター配列に作動可能に連結された、表1に記載の(典型的には、配列番号22~28または配列番号50~89の)バリアントのコード配列、または融合タンパク質(典型的には、配列番号42、43、または92~95)のうちの1つを含む。
【0137】
本開示の組換えタンパク質を発現するための哺乳動物宿主細胞には、DHFR選択マーカー(Kaufman and Sharp, 1982に記載される)と共に使用される、dhfr-CHO細胞(Urlaub and Chasin, 1980に記載される)、CHOK1 dhfr+細胞株、NSO骨髄腫細胞、COS細胞、HEK293細胞およびSP2細胞を含む、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)が含まれる。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターを哺乳動物宿主細胞に導入するとき、宿主細胞において組換えタンパク質を発現させるのに十分な期間宿主細胞を培養し、そして任意選択で、宿主細胞が増殖する培養培地中にタンパク質を分泌させることによって組換えタンパク質が産生される。
【0138】
本開示のバリアントまたは関連融合タンパク質は、例えば、標準のタンパク質精製方法を使用して、分泌後に培養培地から回収および精製することができる。
【0139】
具体的な一実施形態において、本開示の宿主細胞は、好適なプロモーター配列にそれぞれ作動可能に連結される、配列番号22~28、配列番号42~43、配列番号50~89および配列番号92~95のいずれか1つを含むバリアントのうちの1つの発現に好適なコード配列を有する発現ベクターを用いてトランスフェクトされた宿主細胞である。
【0140】
次に、後者の宿主細胞を、本開示の組換えバリアントまたは関連融合タンパク質の発現および産生に好適な条件下においてさらに培養してもよい。
【0141】
[医薬組成物]
別の態様において、本開示は、本明細書中に開示されるバリアントもしくは関連融合タンパク質、または機能的等価物を含む組成物(例えば、医薬組成物)を提供する。このような組成物は上記のように、(例えば、2つ以上の異なる)組換えバリアントまたは関連融合タンパク質の1つまたは組合せを含んでいてもよい。
【0142】
例えば、上記医薬組成物は、薬学的に許容し得る担体と一緒に処方された、表1に記載の好適なバリアント(典型的には、配列番号22~28および配列番号50~89のいずれかのポリペプチドを含む)、もしくは融合タンパク質(例えば、配列番号42~43もしくは配列番号92~95)、またはそれらの機能的等価物のいずれか1つを含む、組換えタンパク質を含む。
【0143】
本明細書に開示される医薬組成物は、併用療法、すなわち他の薬剤と組合せて投与することもできる。例えば、併用療法は、少なくとも1つの抗炎症剤または別の抗糖尿病剤と組合せた、本開示のバリアント、例えば、配列番号22~28、配列番号42~43、配列番号50~89、および配列番号92~95のいずれか1つのポリペプチドを含む組換えタンパク質、またはそれらの機能的等価物を含んでいてもよい。併用療法に使用することができる治療薬の例は、本開示の組換えバリアントまたは関連融合タンパク質の用途のセクションにおいて以下にさらに詳細に記載される。
【0144】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容し得る担体」は、生理学的に適合性である任意のおよびすべての溶媒、分散媒、被覆剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等を含む。担体は、非経口、鼻腔内、静脈内、筋肉内、皮下または眼内投与(例えば、注射または注入による)に適しているべきである。
【0145】
一実施形態において、担体は皮下経路または静脈内注射に適しているべきである。投与経路に応じて、活性化合物、すなわち、本開示のバリアントは、化合物を不活性化し得る酸および他の天然条件の作用から化合物を保護するために、材料中において被覆されていてもよい。
【0146】
滅菌リン酸緩衝生理食塩水は、薬学的に許容し得る担体の一例である。他の好適な担体は当業者に周知である(Remington and Gennaro, 1995)。製剤は、1つ以上の賦形剤、保存剤、可溶化剤、緩衝剤、バイアル表面でのタンパク質損失を防ぐためのアルブミンをさらに含んでいてもよい。
【0147】
医薬組成物の形態、投与経路、用量およびレジメンは、処置される状態、疾患の重症度、患者の年齢、体重および性別等に当然依存する。
【0148】
本開示の医薬組成物は、経口、鼻腔内、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、非経口、局所、または直腸投与等のために製剤化することができる。有効成分としての本開示のバリアントは、単独で、または別の有効成分と組合せて、単位投与形態で、従来の医薬担体との混合物として、動物およびヒトに投与することができる。
【0149】
好適な単位投与形態には、錠剤、ゲルカプセル、粉末、顆粒および経口懸濁液または溶液等の経口経路形態、舌下および口腔投与形態、エアロゾル、インプラント、皮下、経皮、局所、腹腔内、筋肉内、静脈内、皮下、経皮、くも膜下および鼻腔内投与形態ならびに直腸投与形態が含まれる。
【0150】
好ましくは、医薬組成物は、注射することができる製剤に薬学的に許容し得るビヒクルを含む。これらは特に、等張、滅菌、生理食塩水溶液(リン酸一ナトリウムもしくはリン酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムもしくは塩化マグネシウム等、またはこれらの塩の混合物)、または乾燥、特に凍結乾燥組成物であってもよく、これらは場合に応じて、滅菌水または生理食塩水の添加で、注射溶液の構成を可能にする。
【0151】
投与のために使用される用量は、種々のパラメーターの作用として、特に使用される投与の様式、関連する病理、または代わりに所望の処置期間の作用として適合させることができる。
【0152】
医薬組成物を調製するために、治療有効量の本開示のバリアントを、薬学的に許容し得る担体または水性媒体中に溶解または分散させてもよい。
【0153】
注射使用に好適な医薬形態は、滅菌された水溶液または分散液;ゴマ油、ピーナッツ油または水性プロピレングリコールを含む製剤;および滅菌された注射溶液または分散液の即時調製のための滅菌された粉末または凍結乾燥物を含んでいてもよい。すべての場合において、この形態は、滅菌されていなければならず、そして注射し易さが存在する程度に流体でなければならない。それは、製造および保存の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌等の微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。
【0154】
遊離塩基または薬理学的に許容し得る塩としての活性化合物の溶液は、界面活性剤、例えばヒドロキシプロピルセルロース、と好適に混合される水で調製することができる。グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれら混合物中、ならびに油中において、分散液を調製することもできる。保存および使用の通常の条件下において、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐために保存料を含む。
【0155】
本開示のバリアントまたは関連融合タンパク質は、中性または塩形態の組成物に処方することができる。薬学的に許容し得る塩としては、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基で形成される)が挙げられ、これは無機酸(例えば、塩酸もしくはリン酸)、または有機酸(例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸等)で形成される。遊離カルボキシル基で形成される塩はまた、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄)、および有機塩基(例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカイン等)からも誘導することができる。
【0156】
担体はまた、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、それらの好適な混合物、ならびに植物油を含む溶媒または分散媒体であり得る。適切な流動性は例えば、レシチン等のコーティングの使用によって、分散液の場合には必要とされる粒子径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は種々の抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等)によってもたらされることができる。多くの場合、等張剤(例えば、糖または塩化ナトリウム)を含むことが好ましい。注射組成物の長期の吸収は、吸収を遅延させる剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン、の組成物における使用によってもたらされることができる。
【0157】
滅菌された注射溶液は、活性化合物、すなわちRspo1タンパク質、の必要量を適切な溶媒中に、必要に応じて上記に列挙した種々の他の成分と共に混合し、続いて濾過滅菌することによって調製される。一般的に、分散液は、基本的な分散媒および上記に列挙した成分からの必要とされる他の成分を含む滅菌ビヒクルへ種々の滅菌された有効成分を混合することにより調製される。滅菌された注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は真空乾燥および凍結乾燥技術であり、有効成分の粉末と予め滅菌濾過された溶液から任意のさらなる所望の成分との粉末が得られる。
【0158】
処方に際して、溶液は投与処方に適合した様式で、さらに治療的に有効である量で投与されるであろう。製剤は上記の種類の注射溶液等の種々の剤形で容易に投与されるが、薬物放出カプセル等も使用することができる。
【0159】
水溶液中での非経口投与のために、例えば、溶液は必要ならば好適に緩衝化されるべきであり、そして液体希釈剤は最初に、十分な生理食塩水またはグルコースで等張にされるべきである。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内投与に特に好適である。この関係で、使用できる滅菌水性媒体は本開示の観点から当業者に知られているのであろう。例えば、1用量を1mlの等張NaCl溶液に溶解し、1000mlの皮下溶解液に添加するか、または提案された注入部位に注入することができる(例えば、"Remington's Pharmaceutical Sciences" 15th Edition, pages 1035-1038 and 1570-1580を参照されたい)。処置される対象の状態に依存して、ある程度の用量のばらつきが必然的に生じ得る。いずれにしても、投与責任者が個々の対象に適した用量を決定する。
【0160】
本開示のバリアントもしくは関連融合タンパク質、またはそれらの機能的等価物は、約0.01mg~1000mg/kgまたは1mg~100mg/kgを含むように、治療混合物内に処方してもよい。複数回投与もまた可能である。
【0161】
組換えタンパク質の注入または皮下注射のための溶液に好適な製剤は当技術分野で記載されており、例えば、Advances in Protein Chemistry and Structural Biology Volume 112, 2018, Pages 1-59 Therapeutic Proteins and Peptides Chapter One - Rational Design of Liquid Formulations of Proteins: Mark C.Manning, Jun Liu, Tiansheng Li, Ryan E.Holcombにてレビューされている。
【0162】
[本開示のバリアントまたは関連タンパク質の使用および方法]
本開示のバリアントもしくは関連タンパク質、またはそれらの機能的等価物は、インビトロおよびインビボでの有用性を有する。例えば、これらの組換えタンパク質は種々の障害を処置または予防するために、例えば、インビトロ、エクスビボもしくはインビボで培養中の細胞に投与することができ、または、対象に(例えば、インビボで)投与することができる。
【0163】
本明細書で使用される場合、用語「処置する(treat)」、「処置する(treating)」または「処置(treatment)」は、(1)疾患を抑制すること;例えば、疾患、状態または障害の病状または総体的症状を経験または示している個体における疾患、状態または障害を抑制すること(すなわち、病状および/または総体的症状のさらなる進展を停止させること);および(2)疾患を改善すること;例えば、疾患の重症度を低下させる、または疾患の1つ以上の症状を軽減または緩和する等、疾患、状態または障害の病状または総体的症状を経験または示している個体における疾患、状態または障害を改善すること(すなわち、病状および/または総体的症状を逆転させること)のうちの1つ以上を示す。
【0164】
特に、糖尿病の処置に関して、より具体的には1型糖尿病に関して、用語「処置」は、膵臓β細胞の損失の抑制、ならびに/または膵臓β細胞(特に上記対象における機能的インスリンを分泌するβ細胞)の量の増加、ならびに/または、特に、疾患(例えば、1型糖尿病)により膵臓β細胞および/もしくはランゲルハンス島が損失している患者における血糖制御の改善を指してもよい。
【0165】
本開示のバリアントもしくは関連融合タンパク質、またはそれらの機能的等価物は、インビボでの膵臓β細胞の増殖を誘導し、機能的なインスリン分泌ランゲルハンス島を再構成することができ、それにより、糖尿病患者、または機能的なインスリン分泌β細胞を必要とする患者、または高血糖に関連する障害を有する患者、またはグルコース刺激インスリン分泌が欠損している患者の処置に使用してもよい。
【0166】
本明細書で使用される場合、用語「糖尿病」は一般に、インスリン不足またはその作用に対する抵抗性を生じる任意の状態または障害を示す。
【0167】
糖尿病の例には、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠性糖尿病、および成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)が含まれるが、これらに限定されない。
【0168】
したがって、本開示は、必要とする対象において、上記に開示される障害の1つを処置するための方法に関する。当該方法は、上記に開示される本開示のバリアントもしくは関連タンパク質、または機能的等価物(典型的には、配列番号22~28、配列番号42~43、配列番号50~89、および配列番号92~95のいずれかのポリペプチドを含む組換えタンパク質、またはそれらの機能的等価物)の治療有効量を上記対象に投与する工程を含む。
【0169】
特定の実施形態において、上記対象は、Rspo1遺伝子発現が低い患者の中から選択されている。
【0170】
上記に開示される使用するためのバリアントもしくは関連融合タンパク質、またはそれらの機能的等価物は、例えば上記の疾患の処置または予防のために、唯一の有効成分として投与してもよく、または、例えばサイトカイン、抗ウイルス剤、抗炎症剤、抗糖尿病剤または血糖降下剤、細胞療法製品(例えば、β細胞組成物)および免疫調節剤等の他の薬剤をアジュバントとしてもしくはそれらと組合せて、併用して投与してもよい。
【0171】
例えば、上記に開示される、使用のためのバリアントもしくは関連融合タンパク質、またはそれらの機能的等価物は、細胞療法、特にβ細胞療法と組合せて使用してもよい。
【0172】
本明細書で使用される場合、用語「細胞療法」は、少なくとも治療有効量の細胞組成物の、それを必要とする対象へのインビボ投与を含む療法をいう。患者に投与される細胞は、同種または自家であってもよい。用語「β細胞療法」は、細胞組成物が有効成分としてβ細胞、特にインスリン分泌β細胞を含む、細胞療法を示す。当該β細胞は、Rspo1タンパク質を使用して、以下に記載されるインビトロの方法で産生してもよい。
【0173】
特定の実施形態において、糖尿病患者、または機能的なインスリン分泌β細胞を必要とする患者、または高血糖に関連する障害を有する患者、またはグルコース刺激インスリン分泌不全の患者を処置するために使用するためのRspo1タンパク質、そのバリアントもしくは関連融合タンパク質、またはそれらの機能的等価物は、β細胞組成物(特に幹細胞由来β細胞組成物)と組み合わせて、該β細胞組成物の前、同時、または後に投与される。
【0174】
特定の実施形態では、前記β細胞は、生体ドナー、死体ドナーから単離される。
【0175】
別の特定の実施形態では、前記β細胞は幹細胞由来β細胞である。幹細胞由来β細胞とは、多能性幹細胞、特に誘導多能性幹細胞又はヒト胚性幹細胞の分化によって得られるインスリン分泌β細胞を指す。一実施形態において、幹細胞がヒト幹細胞である場合、当該ヒト幹細胞はヒト胚性幹細胞ではない。幹細胞由来のβ細胞は、膵臓β細胞を示す少なくとも1つのマーカー(例えばPDX-1またはNKX6.1)を示し、インスリンを発現し、内因性の成熟β細胞に特徴的なグルコース刺激インスリン分泌反応(GSIS)をインビトロまたはインビボで示す。
【0176】
本明細書において、「インスリン分泌β細胞」という用語は、インスリンを分泌する内分泌前駆細胞またはその前駆細胞から分化した細胞を指す。インスリン分泌β細胞には、膵臓β細胞、およびインスリンを発現する膵臓β様細胞が含まれる。
【0177】
本明細書において「多能性幹細胞」とは、(有糸分裂による)自己複製能と、3つの生殖細胞層(外胚葉、内胚葉、中胚葉)に由来する特殊な細胞型への分化能の両方を有する未分化細胞であり、身体のあらゆる組織の細胞を生み出す。特定の実施形態では、多能性幹細胞は誘導多能性幹細胞またはヒト胚性幹細胞である。
【0178】
本明細書において、「iPS細胞」および「誘導多能性幹細胞」という用語は、互換的に使用され、例えば、1つ以上の遺伝子の強制発現を誘導することによって、非多能性細胞、典型的には成人の体細胞から人為的に(例えば、誘導または完全な逆転によって)誘導された多能性幹細胞を指す。
【0179】
「ヒト胚性幹細胞」または「hESC」とは、本明細書では、胚盤胞期にあるヒト胚の内部細胞塊(ICM)由来のヒト幹細胞を指す。ヒト胚は受精後4~5日で胚盤胞期に達し、その時点で50~150個の細胞から構成されている。胚性幹細胞は多能性幹細胞である。本発明によれば、ヒト胚性幹細胞は、確立された細胞株から得てもよいし、当業者に公知の異なる技術によって胚から単離してもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるような方法および組成物に使用される幹細胞の供給源として、ヒト胚は破壊されなかった。
【0180】
幹細胞由来のβ細胞を作製する方法は当技術分野で周知であり、D′Amour, K. A. et al. (2006); Jiang, J. et al. (2007);およびKroon, E. et al. (2008), Rezania et al (2012, 2014), Felicia W. Pagliuca et al (2014)、ならびにPCT国際出願第PCT/US2014/041992号に記載されているプロトコルによって説明されるが、当該プロトコルに限定されるものではなく、関連部分は本開示に組み込まれる。多能性幹細胞をインスリン分泌β細胞に分化誘導するためのこれらのプロトコルには、インスリン分泌β細胞に分化誘導可能な膵臓前駆細胞又は内分泌前駆細胞などの前駆細胞に、幹細胞を分化誘導することが含まれる。
【0181】
細胞療法製品とは、処置目的で上記患者に投与される細胞組成物を示す。上記細胞療法製品は、治療有効用量の細胞、および任意選択で、追加の賦形剤、アジュバント、または他の薬学的に許容し得る担体を含む。
【0182】
好適な抗糖尿病剤または血糖降下剤には、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシンIIレセプター遮断剤、コレステロール低下薬、ビグアニド、メトホルミン、チアゾリジンジオン、血糖降下剤スルファミド、DPP-4阻害剤、α-グルコシダーゼ阻害剤、インスリンまたはその誘導体(短時間作用型、速効型または長時間作用型インスリンを含む)、GLP1アナログ、カルバモイルメチル安息香酸の誘導体;典型的にはインスリンレセプター、SLGT2阻害剤、GABR標的分子、およびIL2R標的分子が含まれてもよいが、これらに限定されない。
【0183】
上記によれば、本開示は、さらに別の態様を提供する:
本開示の治療有効量のバリアントもしくは関連融合タンパク質、またはそれらの機能的等価物と、少なくとも1つの第2の薬物物質とを同時投与(例えば、同時にまたは連続して投与)する工程を含み、当該第2の薬物物質は例えば上記の、サイトカイン、抗ウイルス剤、抗炎症剤、抗糖尿病剤、細胞療法製品(例えば、β細胞組成物)である、上記に定義される方法。
【0184】
上記に開示された障害のうちの1つを処置するための方法の特定の実施形態において、それを必要とする対象において、前記方法は、治療有効量のβ細胞組成物(特に本明細書に開示されるような幹細胞由来のβ細胞組成物)と組み合わせて、治療有効量のRspo1タンパク質、または本開示のバリアントもしくは関連融合タンパク質、または機能的等価物を、例えば、前記β細胞組成物の前、同時、または後に、前記対象に投与する工程を含む。
【0185】
特定の実施形態では、前記β細胞は、生体ドナーまたは死体ドナーから単離される。
【0186】
別の特定の実施形態では、前記β細胞は幹細胞由来β細胞である。幹細胞由来β細胞とは、幹細胞、特に誘導多能性幹細胞、ヒト胚性幹細胞または間葉系前駆細胞の分化によって得られるインスリン分泌β細胞を指す。一実施形態において、幹細胞がヒト幹細胞である場合、当該ヒト幹細胞はヒト胚性幹細胞ではない。
【0187】
β細胞またはランゲルハンス島を患者に移植する方法は、例えば、Shapiro, et al (2000) The New England Journal of Medicine. 343 (4): 230-238,およびShapiro et al (2017) Nature Reviews Vol 13 : 268-277に開示されている。
【0188】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のβ細胞は、分散細胞として、またはクラスターを形成された状態で前記患者に投与される。β細胞は、非限定的な例として肝臓、天然膵臓、腎被膜下腔、卵膜、腹膜、漿膜下腔、腸、胃、または皮下ポケットなど、被験体の適切な部位に移植することができる。
【0189】
具体的な実施形態において、前記β細胞組成物は、処置を必要とする対象に対して自己由来であり、好ましくは、処置を必要とする対象の体細胞から得られたiPSに由来する。
【0190】
具体的な実施形態において、そのような処置を必要とする前記対象は、糖尿病、好ましくは1型糖尿病に罹患している対象である。
【0191】
別の実施形態において、本開示のバリアントもしくは関連タンパク質、またはそれらの機能的等価物は、膵臓β細胞および/またはランゲルハンス島の増殖を誘導するために、インビトロの方法において使用することができる。
【0192】
したがって、一態様において、本開示はさらに、以下の工程を含む、β細胞をインビトロで産生するための方法を提供する:
(i)β細胞を提供する工程、
(ii)上記β細胞の増殖を誘導する条件下で、治療有効量の上記バリアントもしくは関連タンパク質、またはそれらの機能的等価物の存在下で上記β細胞を培養する工程。
【0193】
上記製造方法の具体的な実施形態において、上記β細胞は初代細胞であり、好ましくはβ細胞療法またはランゲルハンス島の移植を必要とする対象由来の初代細胞である。
【0194】
他の具体的な実施形態において、工程(i)で提供される上記β細胞は、上記iPS細胞をβ細胞に分化させた後に、iPS細胞から得られている。
【0195】
したがって、特定の実施形態において、本開示は、以下の工程を含む、誘導多能性幹細胞からβ細胞をインビトロで産生するための方法に関する:
(i)誘導多能性幹細胞(iPSC)を提供する工程、
(ii)上記iPSCをランゲルハンス島のβ細胞にインビトロで分化させる工程、および、
(iii)増殖条件下において上記分化させたβ細胞を培養する工程、
iPS細胞を分化するおよび/または、上記β細胞の増殖を誘導するために、工程(ii)および/または工程(iii)において十分な量の上記バリアントもしくは関連融合タンパク質、または機能的等価物を添加する。
【0196】
iPSCをランゲルハンス島のβ細胞に分化させるための方法は、例えば、Pagliuca, et al. Cell 159, 428-439 (2014) and Rezania et al. Nat Biotechnol. 2014 Nov;32(11):1121-33)等で、当技術分野において既に説明されており、関連部分は本開示に組み込まれる。
【0197】
上記開示はさらに、例えば、糖尿病、好ましくは1型糖尿病を処置するための対象において、上記方法によって得ることができるまたは得られた上記β細胞を含む組成物、および細胞療法製品としてのその使用をさらに含む。β細胞またはランゲルハンス島を患者に移植するための方法は、例えば、Shapiro, et al (2000) The New England Journal of Medicine. 343 (4): 230-238, and Shapiro et al (2017) Nature Reviews Vol 13: 268-277に開示されている。
【0198】
本明細書に開示される組成物(例えば、本開示のバリアントを含む)および使用説明書からなるキットもまた、本開示の範囲内である。キットは、少なくとも1つのさらなる試薬、または1つ以上のさらなる抗体もしくはタンパク質をさらに含むことができる。キットは、典型的にはキットの内容物の意図される使用を示すラベルを含む。用語「ラベル」は、キット上またはキットと共に供給される、または別にキットに付随する、任意の書面または記録された材料を含む。キットは上記で定義したように、患者がRspo処置に応答するグループに属するか否かを診断するためのツールをさらに含んでもよい。
【0199】
別の処置戦略は、ヒト対象の試料から単離されたβ細胞 β細胞を増殖させる薬剤としての、バリアントもしくは関連融合タンパク質、またはそれらの機能的等価物の使用に基づく。
【0200】
本開示は、以下の工程を含む、必要とする対象を処置するための方法に関する:
(a)対象から細胞を単離する工程、
(b)任意選択で、上記細胞を増殖および/またはリプログラミングして、誘導多能性幹細胞にする工程、
(c)上記iPS細胞をβ細胞 β細胞に分化させる工程、
(d)本開示のバリアントもしくは関連融合タンパク質、またはそれらの機能的等価物(例えば、配列番号22~28、配列番号42~43、配列番号50~89、および配列番号92~95のいずれかを含む組換えタンパク質、またはそれらの機能的等価物)の存在下で、任意選択で他の細胞と、上記β細胞 β細胞をインビトロで増殖させる工程、
(e)任意選択で、増殖したβ細胞 β細胞を回収し、および/または増殖したβ細胞を処方し、治療有効量の上記増殖させたβ細胞を対象に投与する工程。
【0201】
本開示はさらに、本開示の上記バリアントもしくは関連融合タンパク質、またはそれらの機能的等価物(例えば、配列番号22~28、配列番号42~43、配列番号50~89、および配列番号92~95のいずれか1つを含む組換えタンパク質、またはそれらの機能的等価物)の、β細胞をインビトロで増殖させる薬剤としての使用に関する。
【0202】
本開示はまた、ヒト、特に機能的β細胞を損失している対象、典型的には糖尿病に罹患している対象、におけるβ細胞の増殖を誘導するための薬剤としてインビボで使用するための、本開示のバリアントもしくは関連融合タンパク質、またはそれらの機能的等価物(配列番号22~28、配列番号42~43、配列番号50~89、および配列番号92~95のいずれか1つを含む組換えタンパク質、またはそれらの機能的等価物等)にも関する。
【0203】
したがって、本開示は、以下の工程を含む、糖尿病、例えば、1型糖尿病または機能的β細胞の損失を伴う別の障害、に罹患している対象の処置方法に関する:
(i)上記対象において、有効量の本開示のバリアントもしくは関連融合タンパク質、または機能的等価物(典型的には、配列番号22~28、配列番号42~43、配列番号92~95、および配列番号50~89のいずれか1つを含む組換えタンパク質、またはそれらの機能的等価物)を投与する工程、および、
(ii)上記対象において有効量のβ細胞組成物を投与する工程、
上記有効量の上記バリアントまたは関連融合タンパク質は、上記β細胞組成物の増殖を増加させる能力を有する。工程(i)および(ii)は同時にまたは連続して実施することができ、特に、工程(i)または工程(ii)のいずれかを最初に上記対象に投与する。
【0204】
十分に説明された本発明は以下の実施例によってさらに説明されるが、これらは例示に過ぎず、さらなる限定を意図するものではない。
【0205】
〔実施形態〕
E1. 以下のFU1ドメイン、FU2ドメイン、TSPドメインおよびBRドメインを含む、R-スポンジンタンパク質の組換えバリアントであって、
a. FU1は、配列番号5、9、13および17にそれぞれ示されるヒトRspo1、Rspo2、Rspo3またはRspo4のFU1ドメインのいずれかと少なくとも80%の同一性を有するドメインである、
b. FU2は、配列番号6、10、14、18にそれぞれ示されるヒトRspo1、Rspo2、Rspo3またはRspo4のFU2ドメインのいずれかと少なくとも80%の同一性を有するドメインである、
c. TSPは、配列番号7、11、15、19に示されるヒトRspo1、Rspo2、Rspo3、またはRspo4のTSPドメインのいずれかと少なくとも80%の同一性を有するドメインである、ならびに
d. BRは、配列番号8、12、16、20に示されるヒトRspo1、Rspo2、Rspo3、またはRspo4のBRドメインのいずれかと少なくとも80%の同一性を有するドメインである、
組換えバリアント。
【0206】
E2. E1に記載の組換えバリアントであって、各ドメインFU1、FU2、TSPおよびBRは、配列番号1のヒトRspo1ドメインのFU1、FU2、TSPおよびBRドメインとそれぞれ少なくとも80%の同一性を有する、組換えバリアント。
【0207】
E3. E1またはE2に記載の組換えバリアントであって、TSPドメインおよびBRドメインが、それぞれ対応するヒトRspo1のTSPドメインおよびBRドメインと100%の同一性を有し、FU1ドメインおよびFU2ドメインのアミノ酸配列が、対応するヒトRspo1のFU1およびFU2のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であり、差異はアミノ酸置換によるものである、組換えバリアント。
【0208】
E4. E1~E3のいずれか1つに記載の組換えバリアントであって、配列番号5のヒトRspo1のFU1ドメインおよび配列番号6のRspo1のFU2ドメインを対応させてそれぞれアライメントした場合に、FU1ドメインまたはFU2ドメインの各々において1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個を超えないアミノ酸置換を有する、組換えバリアント。
【0209】
E5. 請求項E1~E4のいずれか1つに記載の組換えバリアントであって、Rspo1の21~33の領域内、またはRspo2、Rspo3、もしくはRspo4における同等領域内の、最初の10~14個のN末端アミノ酸の欠失、典型的にはRspo1の残基21~31の欠失を含む、組換えバリアント。
【0210】
E6. E5に記載の組換えバリアントであって、配列番号24のタンパク質を含むか、または配列番号24のタンパク質からなる、組換えバリアント。
【0211】
E7. E1~E6のいずれか1つに記載の組換えバリアントであって、配列番号5のヒトRspo1のFU1ドメインにおけるR66のアミノ酸置換、または、ヒトRspo2、Rspo3、もしくはRspo4のFU1ドメイン配列における同等のアルギニン残基のアミノ酸置換を少なくとも含み、前記アミノ酸置換はZNRF3結合を減少または消失させる、組換えバリアント。
【0212】
E8. 請求項E7に記載の組換えバリアントであって、ZNRF3結合を減少または消失させる残基R66の単一アミノ酸置換、典型的にはR66Aを有する、配列番号5のRspo1のFU1ドメインを含む、組換えバリアント。
【0213】
E9. E7またはE8に記載の組換えバリアントであって、前記FU2、TSPおよびBRドメインが、Rspo1と95%、好ましくは100%同一であり、例えば、前記組換えバリアントは、配列番号23を含むか、または本質的に配列番号23からなる、組換えバリアント。
【0214】
E10. 請求項E1~E9のいずれか1つに記載の組換えバリアントであって、R-スポンジンの前記バリアントは、Rspo1/LGR4結合親和性インビトロアッセイにて測定し、配列番号41のヒトRspo1よりも高い親和性でLGR4に結合する、組換えバリアント。
【0215】
E11. E10に記載の組換えバリアントであって、配列番号41のキメラRspo1と比較してLGR4への結合親和性を増強させるために、Rspo1の位置H108、N109、E116、L118、P127、A128、S133、A136、G138、もしくはS143、またはRspo2、Rspo3もしくはRspo4の対応する残基において1つ以上のアミノ酸置換を含み、より具体的には、H108K、N109D、E116V、L118F、P127D、A128F、S133F、A136L、G138E、またはS143Vのうちの1つ以上のアミノ酸置換を含む、組換えバリアント。
【0216】
E12. E10に記載の組換えバリアントであって、Rspo1の位置E45、L46、E49、V50、N51、K55、S57、I62、L63、D68、P77、F84、D85、N88、またはI95、またはRspo2、Rspo3、またはRspo4の対応する残基において1つ以上のアミノ酸置換を含み、配列番号41のRspo1と比較して、ZNRF3への結合親和性を増強させる、組換えバリアント。
【0217】
E13. E1~E12のいずれか1つに記載の組換えバリアントであって、当該バリアントは、FU2ドメインとTSPドメインとの間にN-グリコシル化部位を含んでいない、組換えバリアント。
【0218】
E14. E13に記載の組換えバリアントであって、Rspo1の残基N137、またはRspo2、Rspo3、もしくはRspo4の相当する残基に変異を含み、この部位でのN-グリコシル化を抑制する、組換えバリアント。
【0219】
E15. E14に記載の組換えバリアントであって、配列番号22を含むか、または本質的に配列番号22からなる、組換えバリアント。
【0220】
E16. E1~E15のいずれかに記載の1つの組換えバリアントであって、前記FU1ドメインは、配列番号9のRspo2のFU1ドメインと100%同一であり、前記FU2は、Rspo1、Rspo3、Rspo4、またはこれらの機能的バリアントであって、LGR4に対する結合親和性を少なくとも同じに維持するアミノ酸置換を有するバリアントのFU2ドメインの中から選択される、組換えバリアント。
【0221】
E17. E16に記載の組換えバリアントであって、配列番号9のRspo2のFU1ドメインおよび配列番号6のRspo1のFU2ドメイン、ならびに任意選択で配列番号7のRspo1のTSPドメインおよび配列番号8のRspo1のBRドメインを含む、組換えバリアント。
【0222】
E18. E16に記載の組換えバリアントであって、配列番号25または配列番号26を含むか、または本質的に配列番号25または配列番号26からなる、組換えバリアント。
【0223】
E19. E1~E15のいずれか1つに記載の組換えバリアントであって、位置E49、V50、D68、およびD85に1つ以上のアミノ酸置換を含むことを除いて、配列番号9と同じ配列を有し、配列番号25のタンパク質と比較して、ZNRF3への結合親和性を増強させる、組換えバリアント。
【0224】
E20. E19に記載の組換えバリアントであって、位置E49、V50、D68、およびD85に1つ以上のアミノ酸置換を含むことを除いて、配列番号5のRspo1 FU1ドメインを含み、配列番号25のタンパク質と比較してZNRF3への結合親和性を増強させ、好ましくはアミノ酸置換E49K、V50D、D68G、およびD85Gを含み、さらに、前記FU2ドメインは、Rspo1、Rspo3、Rspo4のFU2ドメイン、またはこれらの機能的バリアントであって、ZNRF3に対する結合親和性を少なくとも同じに維持するアミノ酸置換を有するバリアントのFU2ドメインの中から選択される、組換えバリアント。
【0225】
E21. E19またはE20に記載の組換えバリアントであって、前記FU2ドメインが、配列番号6のRspo1 FU2ドメインと100%同一である、組換えバリアント。
【0226】
E22. E19またはE20に記載の組換えバリアントであって、E45L、E49K、V50D、K55R、D68G、D85G、N88A、およびH108K、N109Dの中から選択される1つ以上のアミノ酸置換を有するRspo1のFU1およびRspo1のFU2ドメインを含む、組換えバリアント。
【0227】
E23. E19~E22のいずれか1つに記載の組換えバリアントであって、配列番号27を含むか、または本質的に配列番号27からなる、組換えバリアント。
【0228】
E24. E19~E22のいずれか1つに記載の組換えバリアントであって、配列番号28を含むか、または本質的に配列番号28からなる、組換えバリアント。
【0229】
E25. E19~E22のいずれか1つに記載の組換えバリアントであって、配列番号10、14、または18の、ヒトRspo3またはRspo4の対応するFU2ドメインを、Rspo2のFU1ドメインまたはハイブリッドRspo1のFU1ドメイン(例えば、位置E49K、V50D、D68G、D85Gにて1つ以上のアミノ酸置換を含む)と組み合わせて含み、E49K、V50D、D68G、D85GなどのZNRF3への結合を増強させる、組換えバリアント。
【0230】
E26. E1に記載の組換えバリアントであって、配列番号22~28のいずか1つと比較して、10個を超えないアミノ酸置換を有する、配列番号22~28のいずれか1つのバリアントである、組換えバリアント。
【0231】
E27. E26に記載の組換えバリアントであって、配列番号22~28のうちの少なくとも1つに対して少なくとも95%の同一性を有し、前記FU1ドメインおよびFU2ドメインが、配列番号22~28のうちの少なくとも1つのFU1ドメインおよびFU2ドメインに対して100%同一である、組換えバリアント。
【0232】
E28. E26に記載の組換えバリアントであって、配列番号22~28の1つと同一のアミノ酸配列を含むが、1、2または3個のアミノ酸残基が、別の天然アミノ酸によって置換され、好ましくは保存的アミノ酸置換で置換されている、組換えバリアント。
【0233】
E29. E1~E28のいずれか1つに記載の組換えバリアントであって、前記FU2ドメインは、配列番号1のヒトRspo1におけるアミノ酸残基F106、H108、F110、N109、E116、L118、P127、A128、S133、A136、G138、S143、または配列番号2のヒトRspo2、配列番号3のヒトRspo3もしくは配列番号4のヒトRspo4における対応する残基を含む、組換えバリアント。
【0234】
E30. E1~E29のいずれか1つに記載の組換えバリアントであって、前記BRドメインは、アミノ酸残基T253、L257、T258、S259、A260またはA263のうちの少なくとも1つ以上のアミノを含み、典型的には、前記BRドメインは、配列番号8、12、16、20と100%同一である、組換えバリアント。
【0235】
E31. E1~E30のいずれか1つに記載の組換えバリアントであって、BRドメインにおいてアミノ酸置換を含むことによりO-グリコシル化を改善し、例えば、前記バリアントは、Rspo1の位置G252、T253、L257、T258、S259、A260、A263、またはRspo2、Rspo3もしくはRspo4における対応する残基において、1つ以上のアミノ酸置換を含み、例えば、前記バリアントは、アミノ酸置換G252T、L257S、A260TもしくはA263Tの1つ以上を有するRspo1のBRドメインを含む、組換えバリアント。
【0236】
E32. E1~E31のいずれか1つに記載の組換えバリアントであって、配列番号41のRspo1タンパク質と少なくとも同程度のレベルで以下の特性を1つ以上示す、組換えバリアント:
(i) Rspo1/LGR4結合親和性インビトロアッセイにて測定し、例えばSPRアッセイにより決定すると、参照の配列番号41のヒトRspo1と少なくとも同一の親和性でLGR4レセプターに結合する;
(ii) Rspo1/ZNRF3結合親和性インビトロアッセイで測定し、例えばSPRまたはELISAアッセイにて決定すると、参照の配列番号41のヒトRspo1と少なくとも同じ親和性でZNRF3レセプターに結合する;
(iii) 例えば以下の実施例に記載されるようにトップフラッシュアッセイにて決定すると、参照の配列番号41のヒトRspo1と少なくとも同程度のレベルまでwnt/βカテニン経路を活性化させる、
(iv) 例えばインビトロのMin6β細胞増殖アッセイにて決定すると、参照の配列番号41のヒトRspo1と少なくとも同程度のレベルまで機能的β細胞の増殖を誘導する;および/または
(v) 例えばインビボのβ細胞増殖アッセイにて決定すると、参照の配列番号41のヒトRspo1と少なくとも同程度のレベルまで機能的β細胞の増殖を誘導する。
【0237】
E33. E1~E32のいずれか1つに記載の組換えバリアントと、前記組換えバリアントに対して、直接、またはペプチドリンカーを介して間接的に融合したFc断片と、を含む、Fc融合タンパク質。
【0238】
E34. E33に記載のFc融合タンパク質であって、R-スポンジンタンパク質のN末端に直接、または間接的に融合したFc断片をさらに含む、Fc融合タンパク質。
【0239】
E35. E33に記載のFc融合タンパク質であって、R-スポンジンタンパク質のC末端に直接、または間接的に融合したFc断片をさらに含む、Fc融合タンパク質。
【0240】
E36. E33~35のいずれか1つに記載のFc融合タンパク質であって、前記ペプチドリンカーは、例えば、(GGGGGGSGGGGSGGGGSA)(配列番号44)または(GGGGSGGGGSGGGGGG)(配列番号45)のリンカーを含む、Fc融合タンパク質。
【0241】
E37. E33~E36のいずれか1つに記載のFc融合タンパク質であって、前記Fc断片は、配列番号29を含むか、または本質的に配列番号29からなる、Fc融合タンパク質。
【0242】
E38. E33~E37のいずれか1つに記載のFc融合タンパク質であって、配列番号42、43、または配列番号92、93、もしくは95からなる群から選択される配列を含むか、または本質的に配列番号42、43、または配列番号92、93、もしくは95からなる群から選択される配列からなる、Fc融合タンパク質。
【0243】
E39. E1~E38のいずれか1つに記載の組換えバリアントであって、それらを必要とする患者において、薬剤として、特に糖尿病、より好ましくはI型またはII型糖尿病を処置するための薬剤として使用するための、組換えバリアント。
【0244】
E40. E33~E39のいずれか1つに記載の融合タンパク質であって、それらを必要とする患者において、薬剤として、特に糖尿病、より好ましくはI型またはII型糖尿病を処置するための薬剤として使用するための、融合タンパク質。
【0245】
E41. 請求項E39に記載の使用のための組換えバリアントまたはE40に記載の使用のための融合タンパク質であって、前記組換えバリアントまたは融合タンパク質は、β細胞、好ましくは幹細胞由来のβ細胞と組み合わせて前記患者に投与される、組換えバリアントまたは融合タンパク質。
【0246】
E42. E1~E32のいずれか1つに記載の組換えバリアントをコードする核酸。
【0247】
E43. E42の核酸を含むベクター。
【0248】
E44. E42の核酸を含む、宿主細胞。
【0249】
E45. E1~E32のいずれかに記載の組換えバリアントの製造方法であって、(i)前記組換えバリアントの発現条件下でE44に記載の宿主細胞を培養する工程、(ii)前記組換えバリアントを回収する工程、(iii)任意選択で、前記組換えバリアントを精製する工程を含む、方法。
【0250】
E46. E33~E38のいずれか1つに記載の融合タンパク質をコードする核酸。
【0251】
E47. E46に記載の核酸を含むベクター。
【0252】
E48. E46に記載の核酸を含む、宿主細胞。
【0253】
E49. E33~E38のいずれかに記載の融合タンパク質の製造方法であって、(i)前記融合タンパク質の発現条件下でE44に記載の宿主細胞を培養する工程、(ii)前記組換えバリアントを回収する工程、(iii)任意選択で、前記組換えバリアントを精製する工程を含む、方法。
【0254】
〔図面の説明〕
図1〕異なるドメインFU1、FU2、TSPおよびBRの概略図とともに、Rspo1、Rspo2、Rspo3およびRspo4アミノ酸配列のアラインメントを提供する。
【0255】
図2〕PBS(対照は黒色)、または異なる用量の組換えhRspo1と共にインキュベートしたMin6細胞の定量。
【0256】
図3〕PBS(対照は左の黒いバー)、または異なる用量のバリアント#009(灰色)と共にインキュベートしたMin6細胞の定量。400nMにおける右のバーは、野生型hRspo1を用いたMin6の定量結果に対応する。
【0257】
図4〕PBS(対照は左の黒いバー)、または異なる用量のバリアント#008(灰色)と共にインキュベートしたMin6細胞の定量。400nMにおける右のバーは、野生型hRspo1を用いたMin6の定量結果に対応する。
【0258】
図5〕PBS(対照は左の黒いバー)、または異なる用量のバリアント#005(灰色)と共にインキュベートしたMin6細胞の定量。400nMにおける右のバーは、野生型hRspo1を用いたMin6の定量結果に対応する。
【0259】
図6〕PBS(対照は左の黒いバー)、または異なる用量のバリアント#034(灰色)と共にインキュベートしたMin6細胞の定量。400nMにおける右のバーは、野生型hRspo1を用いたMin6の定量結果に対応する。
【0260】
図7〕PBS(対照は左の黒いバー)、または異なる用量のバリアント#047(灰色)と共にインキュベートしたMin6細胞の定量。400nMにおける右のバーは、野生型hRspo1を用いたMin6の定量結果に対応する。
【0261】
図8〕PBS(対照は左の黒いバー)、または異なる用量のバリアント#051(灰色)と共にインキュベートしたMin6細胞の定量。400nMにおける右のバーは、野生型hRspo1を用いたMin6の定量結果に対応する。
【0262】
図9〕PBS(対照は左の黒いバー)、または異なる用量のバリアント#063(灰色)と共にインキュベートしたMin6細胞の定量。400nMにおける右のバーは、野生型hRspo1を用いたMin6の定量結果に対応する。
【0263】
図10〕PBS(対照は左の黒いバー)、または異なる用量のバリアント#064(灰色)と共にインキュベートしたMin6細胞の定量。400nMにおける右のバーは、野生型hRspo1を用いたMin6の定量結果に対応する。
【0264】
図11〕PBS(対照は左の黒いバー)、またはヒスチジンのタグを含む、異なる用量のバリアント#049(灰色)と共にインキュベートしたMin6細胞の定量。400nMにおける右のバーは、野生型hRspo1を用いたMin6の定量結果に対応する。
【0265】
図12〕PBS(対照は左の黒いバー)、または異なる用量のバリアント#054(灰色)と共にインキュベートしたMin6細胞の定量。400nMにおける右のバーは、野生型hRspo1を用いたMin6の定量結果に対応する。
【0266】
図13〕PBS(対照)、または200nMおよび400nMのタグ付けされていないバリアント#049と共に、24時間インキュベートしたMin6細胞の定量。
【0267】
図14〕PBS(対照)、または200nMおよび400nMのタグ付けされていないバリアント#049と共に、48時間インキュベートしたMin6細胞の定量。最初の24時間のインキュベーション後、新鮮なタンパク質を添加した。
【0268】
図15〕PBS(対照)、または200nMおよび400nMのタグ付けされていないバリアント#049と共に、72時間インキュベートしたMin6細胞の定量。最初の24時間のインキュベーション後に新鮮なタンパク質を添加し、48時間後にも再度、新鮮なタンパク質を添加した。
【0269】
図16〕PBS(対照は左の黒いバー)、または異なる用量のバリアント#056(灰色)と共にインキュベートしたMin6細胞の定量。400nMにおける右のバーは、野生型hRspo1を用いたMin6の定量結果に対応する。
【0270】
図17〕PBS(対照は左の黒いバー)、または異なる用量のバリアント#082(灰色)と共にインキュベートしたMin6細胞の定量。400nMにおける右のバーは、野生型hRspo1を用いたMin6の定量結果に対応する。
【0271】
図18〕PBS(対照は左の黒いバー)、または異なる用量のバリアント#0116(灰色)と共にインキュベートしたMin6細胞の定量。400nMにおける左のバーは、野生型hRspo1(#014)を用いたMin6の定量結果に対応する。
【0272】
図19〕バリアント#014(A)、#49(B)、#008(C)、#064(D)、#051(E)、#121(F)およびGLP1(1nM)を用いた、4日間の培養および72時間の処理後の129/Svマウスのランゲルハンス島におけるBrdU陽性β細胞の割合。
【0273】
図20〕バリアント#014(A、B)およびバリアント#064(C、D)の腹腔内注射によって、16週間毎日処置した雌のNODマウスの血糖追跡および糖尿病発生率。
【0274】
図21〕雌のNODマウスを、0.2mg/Kg、0.4mg/Kgおよび0.8mg/Kgのバリアント#049で毎日処置した場合の糖尿病発症率。
【0275】
図22〕0.2mg/Kg、0.4mg/Kgおよび0.8mg/Kgのバリアント#049で毎日処置されたNODマウスの血糖追跡。
【0276】
図23〕バリアント#014を5日間連続して腹腔内注射されたマウスの膵臓切片における、膵島面積(μm)で正規化したKi67/インスリン二重陽性細胞の定量化。
【0277】
図24〕バリアント#014を5日間連続して腹腔内注射されたマウスの膵臓切片における、膵島面積(μm)で正規化したBrdU/インスリン二重陽性細胞の定量化。
【0278】
図25〕STZ処置の15日前から毎日、バリアント#014の腹腔内注射で処置された、STZ誘導高血糖マウスの血糖追跡。
【0279】
図26〕STZ処置の15日前から毎日、バリアント#014の腹腔内注射で処置された、STZ誘導高血糖マウスの水分摂取量。
【0280】
図27〕STZ処置の15日前から毎日、バリアント#014の腹腔内注射で処置されたSTZ誘導高血糖マウスに対して実施された、腹腔内グルコース負荷試験。この試験は、バリアント#014の連日投与開始から74日後に実施した。
【0281】
図28〕STZ処置の7日後から毎日、バリアント#014の腹腔内注射で処置された、STZ誘導高血糖マウスの血糖追跡。
【0282】
図29〕STZ処置の7日後から毎日、バリアント#014の腹腔内注射で処置された、STZ誘導高血糖マウスの水分摂取量。
【0283】
図30〕STZ処置の7日後から毎日、バリアント#014の腹腔内注射で処置された、STZ誘導高血糖マウスに対して実施された、腹腔内グルコース負荷試験。この試験は、バリアント#014の連日投与開始から63日後に実施した。
【0284】
図31〕ヒト膵島を移植され、PBS、または0.4mg/Kgおよび0.8mg/Kgのバリアント#014のいずれかを毎日注射された動物の血液にて測定された空腹時ヒトc-ペプチド。
【0285】
図32〕PBS(対照)、または0.4mg/Kgおよび0.8mg/Kgのバリアント#014のいずれかで28日間処置された後に、ヒト膵島を移植されたマウスに対して実施した腹腔内グルコース負荷試験。
【0286】
図33〕PBS(対照)、または0.4mg/Kgおよび0.8mg/Kgのバリアント#014のいずれかで28日間処置された後に、ヒト膵島を移植されたマウスの基礎血中ヒトc-ペプチド濃度およびグルコース刺激された血中ヒトc-ペプチド濃度。
【0287】
図34〕PBS(対照)、または0.4mg/Kgおよび0.8mg/Kgのバリアント#014のいずれかで60日間処置された後に、ヒト膵島を移植された場合の総インスリン容量の定量化。
【0288】
図35〕雄の129/Svマウス(n=3/タイムポイント)において、#63-1、#63-2、および#64のFc融合タンパク質を0.8mg/kgでSC投与した後の168時間動態の比較は、参照の非Fcタンパク質#14との関連において半減期の延長を示している。比較のために、タンパク質#14の単回投与PKプロファイルが示されている(破線)。
【0289】
〔実施例〕
1.R-スポンジンタンパク質の特性解析のための機能試験
(ZNRF3結合アッセイ:ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)プロトコル)
ELISAは、リガンド結合分子(抗体、融合分子など)および検出抗体を使用して、液体試料中の可溶性タンパク質(リガンド)を検出および定量するためのプレートベースのアッセイ法である。
【0290】
手順:
ELISAモジュール(Nunc Maxisorp、Thermo Scientific)を抗原(100μl/ウェル、1μg/ml(pH7.4のPBS)、4℃で一晩)で処理する。抗原を捕捉した後、0.05%Tween 20(PBS-Tween)を含むpH7.4のPBSでプレートを4回洗浄し、2%BSA(Merck)を含むPBS-Tweenで60分間ブロックする。次に、1%BSAを含むPBS-Tweenで、4000ng/mlから始まるサンプルの連続2倍希釈(第2の層については使用された分子を参照)を行い、プレートに塗布(100μl/ウェル)し、室温にてシェーカー(300rpm)上で60分間インキュベートする。
【0291】
第3の層が必要な場合(LGR4-His結合):プレートをPBS-Tweenで4回洗浄した後、1%BSAを含むPBS-Tweenで希釈した抗体(第3の層に使用する抗体を参照)100μlを添加する。プレートを室温にてシェーカー(300rpm)上で30分間インキュベートする。
【0292】
次に、プレートをPBS-Tweenで4回洗浄した後、1%BSAを含むPBS-Tweenで希釈したペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgGポリクローナル抗体(Goat anti-mouse-IgG-HRP、1:10000、0.1μg/mL、LabAs Estonia)100μlを添加する。プレートを室温にてシェーカー(300rpm)上で30分間インキュベートする。
【0293】
プレートをPBS-Tweenで4回洗浄した後、100μlのTMB基質溶液VII(Biopanda Diagnostics)を加える。室温にてシェーカー(300rpm)上で10分間反応させ、0.5Mの硫酸50μlを加えて終了させる。
【0294】
吸光度は、ELISAプレートリーダー(Thermo Scientific)を用いて、450nmで測定する。
【0295】
使用抗原:
・RSPO-1(#120-38、Peprotech)
・RSPO-2(#3266-RS、R&D Biosystems)
・RSPO-3(#120-44、Peprotech)
・タンパク質#007、#008、#014、#059(Icosagen Cell Factoryで製造された)
・第2の層に使用した分子:
・LGR4-His(#LG4-H52H3、Acro)
・LGR4-Fc(#7750-GP、R&D Biosystems)
・ZNRF3-Fc(#7994-RF、R&D Biosystems)
・第3の層(LGR4-His結合用)に使用した抗体:
・マウスモノクローナル抗His抗体(1:2500、0.2μg/mL、GenScript、Cat.No.A00186)
(Wnt/β-カテニンシグナル伝達経路活性の測定のためのTOP-FLASH-ASSSAY)
Super-TOP-Flashルシフェラーゼレポーターアッセイは、コンディショニング培地中のWntタンパク質およびR-スポンジンタンパク質の両方の濃度および活性をモニターするために用いることができる。まず、Super-TOP-Flashレポーター発現HEK 293 STF細胞を調製し、無血清DMEMで96ウェルプレートにプレーティングする(1~2×10細胞/ウェル)。24時間後、血清無添加のレポーター細胞を、Wntタンパク質またはR-スポンジンタンパク質のいずれかを含む異なる量の培養液に暴露する。誘導の18~24時間後、ルシフェラーゼ活性を測定し、調整培地中に存在する成長因子の量を既知のタンパク質源(組換え標準hRSPO1)と比較する。この細胞ベースのレポーターアッセイは、WntリガンドとR-スポンジンリガンドの両方の活性を試験することができる。
【0296】
必要な試薬および細胞株:
a. HEK-293 STF細胞(ATCC)。
b. Icosagen Cell Factoryで生産されたR-スポンジンタンパク質、およびRSPO-1(#120-38、Peprotech)、RSPO-2(#3266-RS、R&D Biosystems)、RSPO-3(#120-44、Peprotech)
d. Steady-Glo(登録商標)Luciferase Assay System(Promega、cat#E2510)
e.完全な増殖培地:10%FCS(Gibco)を含むDMEM(Gibco)細胞培養培地+1×Pen/Strep
f.無血清増殖培地:DMEM(Gibco)培養培地+1×Pen/Strep
g.CELLSTAR(登録商標)96ウェルプレート:平底白色ポリスチレンウェル(Greiner)
Super-Top-Flashルシフェラーゼレポーターアッセイ用のHEK-293 STF細胞の調製:
0日目:2mlのトリプシン溶液を用いて、10cm培養プレートの底からHEK-293-STF細胞を剥離し、5分後に2mlの完全増殖培地を加える。200gで5分間スピンダウンし、細胞ペレットを無血清DMEMに懸濁する。細胞を数え、総容積が100ulの無血清培地のHEK-293-STFレポーター細胞(210細胞/ml)をCELLSTAR 96ウェルプレートに播種する。加湿した細胞培養インキュベーターにて、細胞を37℃で22~26時間培養する。
1日目:R-スポンジンタンパク質をDMEM培地に希釈し、段階稀釈になるように、培養したHEK-293 STF細胞に適用する(今回は、3倍希釈を用いた)。37℃で18~24時間、細胞を誘導物質と共に培養する。
2日目:50μlのSteady-Glo(登録商標)ルシフェラーゼアッセイ基質を培養ウェルに直接に添加し、少なくとも5分間待機した後、Glomax Explorer luminometer(Promega)を用いて生物発光シグナル強度を測定することにより、STFホタル活性を測定する。結果をPCにエクスポートして解析する。
【0297】
(Min6細胞増殖アッセイ)
マウスインスリノーマ(Min6)細胞を、4.5g/lのグルコース、12.5%のFCS(子牛胎児血清)、0.005%の炭酸水素ナトリウム、100U/mLのペニシリン、および100mg/mLのストレプトマイシンを添加したDMEMで培養し、加湿雰囲気(37℃;95%空気/5%CO2)にて維持する。低過剰(最大P30)Min6細胞を、80000細胞/mlの播種密度で12ウェルプレートにプレーティングする。接着細胞を、低FCS培地(5%)に異なる濃度で希釈した標的分子とともに24時間インキュベートする。より長時間のインキュベーションには、24時間ごとに新鮮なタンパク質を培地に加えた。細胞は最終的に剥離され、Thoma Chamberを用いて手動で定量される。
【0298】
400nMでRspo1と比較して全体的に強い増殖誘導能を示す場合、または同程度の濃度のhRspo1と比較して有意な増殖増加を可能にする濃度が低い場合、バリアントは天然hRspo1よりも有効であると考えられる。
【0299】
(Wnt/βカテニンアッセイ)
Min6細胞は、これより前の段落で述べたように培養する。低継代細胞を6ウェルプレートに250000細胞/mlの播種密度でプレーティングする。接着した細胞を、低FCS培地(5%)中で、異なる用量のhRspo1アナログを用いて、複数のタイムポイントで処理する。その後、細胞を剥離し、PBSに再懸濁する。全タンパク質含量を超音波処理で単離し、製造業者の指示に従ってELISAアッセイによってβ-カテニン濃度を評価する。BCA含量は、各タンパク質サンプルの正規化に使用される。
【0300】
(インビボ増殖アッセイ)
インビボ増殖試験は、2ヶ月齢の野生型129SVマウスを用いて行う。最低3日間の馴化期間の後、数日間連続して、異なる濃度の目的のバリアントを毎日、動物の腹腔内または皮下に注射する。150μlの滅菌PBSを毎日注射したマウスを対照とした。最後に、マウスは最後の注射の30分後に頸椎脱臼により犠牲にされる。膵臓を採取し、Antigenfix(pH7.2~7.4のパラホルムアルデヒド溶液;Microm Microtech France)で固定し、冷えたPBSで洗浄し、0.86%生理食塩水で1時間インキュベートする。エタノール希釈度を一連に大きくすることにより(50%、70%、80%、90%、および100%)脱水した後、膵臓をイソプロパノールおよびトルエンで処理し、パラフィンに包埋する。パラフィンブロックを6μmスライドに切り出し、インスリン、PC1/3、Ki67、BrdUに対する抗体を用いて免疫蛍光によって分析する。
【0301】
バリアントは、より多くの増殖性β細胞、β細胞量のより大きな増加、より優れたグルコースハンドリングを誘導する場合、または作用の開始/必要とされる濃度が天然hRspo1よりも低い場合、オリジナルのhRspo1よりも活性が高いとみなされる。
【0302】
明らかに、このようなアプローチは、特にストレプトゾトシン処置マウス、NOD動物またはRip-B7動物を含む、異なる糖尿病マウスモデルにおいても使用することができる(King, Br J Pharmacol. 2012 Jun; 166(3): 877-894およびKarges et al., Diabetes 2002 Nov; 51(11): 3237-3244)。
【0303】
〔結果〕
A.組換えバリアントの生産
以下の表2に、以下のプロトコルに従って生産された組換えRspoタンパク質のリストを示す。
【0304】
【表2】
【0305】
上記の組換えタンパク質はすべて、CHOまたはHEK293ベースのQMCF細胞株を含む、Icosagenが開発したQMCF技術(US7,790,446、US8,377,653も参照されたい)を用いて発現させた。
【0306】
表2に記載されたタンパク質の大部分は、それらのC末端、BRドメインの後ろに、精製を容易にするための短いリンカーおよびC-Hisタグを含むが、以下は例外である:
・#014(天然hRspo1)、
・#46、C末端が短いリンカーで官能化されており、アルブミンと高い親和性を持つ配列となっている、
・Fc共役タンパク質。
【0307】
当業者であれば、精製のために代わりのリンカーおよび/またはタグを用いるか、あるいはそのようなリンカーおよびタグを用いずに、同様の組換えタンパク質を生産することができるであろう。
【0308】
B.TOP Flashアッセイにおけるβ-カテニン経路刺激の決定
産生されたバリアントはすべて、β-カテニン経路を刺激する能力について試験され、天然hRspo1と比較された。
【0309】
以下の表3は、生産されたバリアントのいくつかの結果を示す:
【0310】
【表3】
【0311】
C.インビトロMin6増殖アッセイを用いたMin増殖活性の測定
各バリアントの増殖活性は、マウスインスリノーマ(Min6)細胞株を用いてインビトロで評価した。組換えhRspo1は、400nMをピークとする釣鐘型の用量反応曲線を示し、Min6の増殖を刺激した(図2)。
【0312】
天然hRspo1と同様に、バリアント#009はMin6細胞に対して釣鐘型の用量反応性分裂促進効果を示し、400nMでピークを示した(図3)。しかしながら、この用量では、Min6の増殖率はオリジナルのhRspo1と比較して有意に高かった(図3)。
【0313】
Min6細胞の数は、試験したすべての濃度でバリアント#008とのインキュベーションにより有意に増加した(図4)。興味深いことに、この数は、hRspo1で処理したMin6細胞と比較した場合、200nMおよび1μMの用量でも有意に高かった(図4)。
【0314】
バリアント#005は、標準hRspo1と同じ釣鐘型の用量反応曲線を示し、400nMで増殖反応のピークを示した(図5)。それにもかかわらず、バリアント#005と共にインキュベートしたMin6細胞は、天然hRspo1でインキュベートした細胞よりも数が有意に少なかった(図5)。
【0315】
興味深いことに、バリアント#034は、試験したすべての濃度でMin6細胞の増殖を有意に刺激したが、400nMの野生型hRspo1と比較して有意差はなかった(図6)。
【0316】
バリアント#047の増殖用量反応曲線は、200nMで作用が見られ始め、1μMでピークを示す釣鐘型であった(図7)。この後者の濃度において、Min6細胞の有糸分裂率は、400nMでオリジナルのhRspo1とインキュベートした細胞と比較して有意に増大することが見出された(図7)。
【0317】
重要なことに、バリアント#051を用いてMin6細胞を刺激すると、バリアント#047で処理したときに観察されたものと同様の形状の用量反応曲線が生じた(図8)。しかしながら、バリアント#051は、400nMの天然hRspo1と比較して、より早く(100nM)において作用が見られ始め、400nMおよび1μMの両方で有意に強い増殖を誘導した(図8)。
【0318】
興味深いことに、Fc結合hRspo1バリアント(#063)は、400nMの濃度でインキュベートした場合、オリジナルタンパク質と同程度の効率を示すことがわかった(図9)。しかしながら、この増殖効果は釣鐘型の用量反応曲線には従わず、むしろ高用量において安定を保持した(図9)。
【0319】
逆に、N末端Fc結合バリアント#064は、400nMではMin6細胞に対して有意な増殖効果を示さず、このタンパク質は1μM以上で希釈した場合にのみ有効になった(図10)。
【0320】
タグHisを含むバリアント#049およびバリアント#056の有糸分裂効果は、同じ釣鐘型の用量反応曲線を生じさせ、天然組換えhRspo1と同じ有効性を示した(図11~12)。
【0321】
タグ付けされていないバリアント#049の有効性は、Min6細胞でも試験された。Min6細胞数は、400nMのバリアント#049と24時間インキュベートした後に有意に増加した(図13)。重要なことに、この増加は、同じタンパク質を48時間または72時間インキュベートした場合により強く、より顕著であることが示された(図14および15)。
【0322】
同様に、バリアント#054は、400nMの用量まで次第に有効的になることが観察され、この効率は濃度が高くなるにつれて徐々に低下した(図16)。しかしながら、このアナログは、その用量反応曲線のピークにおいて、Min6の増殖を刺激することにおいて、オリジナルのhRspo1よりも有意に強力であることが見出された(図16)。
【0323】
意外なことに、バリアント#082は、試験したすべての濃度でMin6細胞の増殖を強く刺激し、低用量でもhRspo1より有意に強力な有糸分裂活性を示した(図17)。
【0324】
バリアント#116は、400nMに活性のピークを持つ釣鐘型になるようにMin6細胞数を増加させる(図18)。
【0325】
天然ヒトRspo3は、インビボでβ細胞増殖を誘導する能力についても試験された。そして、野生型マウスをヒトRspo3に短期間(5~30分)曝露すると、インビボでβ細胞増殖も誘導されることが追加分析で示された。
【0326】
D.ZNRF3結合の決定
我々は、バリアント#009、バリアント#047およびバリアント#051を作製し、上述のZNRF3-Fcレセプター結合アッセイを用いて、オリジナルの天然Rspo1と比較してZNRF3への結合を改善する能力について試験した。
【0327】
バリアント#009は対照のRspo1(変異なし)と同様の挙動を示すが、バリアント#047およびバリアント#051は対照のRspo1と比較してZNRF3に対して優れた結合親和性を示す。
【0328】
2.単離膵島におけるβ細胞増殖
2.1 方法
2.1.1 動物
雄の129S2/SvPasCrlマウスは、Charles River Laboratories(69210 Saint-Germain Nuelles、France)から入手し:10~12週齢のマウスを60匹使用した。すべての動物実験は、欧州動物飼育ガイドライン(2010/63/UE)に従い、公認プロジェクトN2796の一環として実施された。動物は実験開始の1週間前から環境に順応させ、温度管理(22±2℃)された場所で、12時間の明暗サイクル(午前7時に点灯)で飼育した。すべてのマウスに、SAFE(Scientific Animal Food and Engineering-Route de Saint Bris-89290AUGY-France)の通常の成長食A04を食べさせ、自由に飲ませた。敷料(滅菌おがくず)は1日おきに交換した。マウスは1ケージ6匹の群に分けた。ケージの大きさは42.5×26.6×15.5cmであった。全身徴候を観察し、異常徴候のない動物のみを研究に組み入れた。
【0329】
マウスをペントバルビタールの腹腔内注射で麻酔し、膵島をさらに単離するために膵臓をコラゲナーゼで灌流した。RPMI1640にて一晩安定化させた後、膵島を分離し、化合物および参考物質で72時間処理し、さらに細胞増殖評価に進めた。
【0330】
2.1.2 膵島の分離と処理
129/Svマウスの膵島は、膵臓のコラゲナーゼ消化によって単離し、ハンクス平衡塩溶液(HBSS)で洗浄した後、Histopaque 1077およびHBSSを用いて密度勾配で精製した。膵島を30個の密度でペトリ皿にハンドピックして分注し、10mMのへぺス、2mMのグルタミン、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、およびSVF 10%を添加したRPMI1640に入れ、37℃で90%空気/5%CO2の加湿雰囲気で培養した。一晩安定化させた後、培地を除去し、試験化合物または参考物質のいずれも含まない新鮮な培地(対照)、または試験化合物または参考物質を含む新鮮な培地を添加した。24時間後および48時間後に培地および処理を更新した。処理の最後24時間では、BrdU(10μM)を培地に添加した。
【0331】
以下の表4に記載するように、膵島を8群に分け、各群につきペトリ皿の数を6とした:
【0332】
【表4】
【0333】
2.1.3 増殖測定のための分離された膵島の調製
処理の72時間後、各条件で30個の膵島をペトリ皿から集め、1.5mlのエッペンドルフチューブに移した。次いで、膵島をDPBSで3回遠心洗浄した(1000rpm、30秒、4℃)後、Trypsin-EDTA 0.25%で消化させた。RPMI1640を加えて反応を停止させ、消化された膵島をサイトスライド上で細胞分注した。
【0334】
その後、膵島をパラホルムアルデヒド3.7%で30分間固定し、BSA5%中0.2%のTriton X100で透過処理し、pH6のクエン酸緩衝液を用いて100℃で20分間抗原検索を行った。抗体の非特異的結合を防ぐため、免疫染色の前にPBS-5%BSAでブロッキング工程を実施した。
【0335】
2.1.4 β細胞増殖の決定
細胞増殖は、ヤギ抗ラットIgG Alexa Fluor 647(ThermoFisher Scientific、整理番号:A-21247)とカップリングされたラット抗BrdU抗体(Abcam、Ref.ab6326)、およびヤギ抗マウスIgG DyLight(登録商標)488抗体(Diagomix-整理番号:GtxMu-003-D488NHSX)とカップリングされたマウス抗インスリン抗体(Sigma、整理番号:I2018)を用いた二重免疫染色の後のセクションにおける、BrdU陽性細胞の測定によって推定された。細胞核は、ProLong(商標)Gold Antifade Mountant with DAPI(Life Technologies-整理番号:P36935)を用いて染色した。BrdU免疫染色で染色された細胞の数は、スライドをスキャンし、NDP viewまたはcase viewerイメージングソフトウェアを用いてスライドスキャンおよび解析した後に決定した。解析は1バッチあたり5~6サンプルについて行った。
【0336】
2.2 結果
この研究は、6つのバリアント(#008、#014、#049、#051、#064および#121)への72時間暴露が、129/Svマウスのランゲルハンス島におけるβ細胞増殖に及ぼす影響を評価することを目的としている。#008、#014、#051、#064タンパク質は、3種類の濃度(0.2μM、1μMおよび3μM)で試験し、#049および#121は5種類の濃度(0.1μM、0.2μM、0.4μM、1μM、ならびに2μM(#049)もしくは3μM(#121))で試験した。細胞増殖は、BrdU陽性細胞数を細胞総数で割って算出し、%で表した(図19)。結果は平均値±SEMで表した。観察数は各処理につき5~6であった。複合効果を解析するために、分散が有意に異なる場合は、Anovaに続いてDunnettの検定、またはKruskal-Wallisに続いてDunnの検定を用いて統計解析を行った(GraphPad PRISM(登録商標)8)。p値<0.05を有意とみなした。
【0337】
3. 雌のNODマウスにおける血糖値の推移とβ細胞量
3.1 方法
3.1.1 動物
雌のNOD/Mrk Tacマウスは、Taconic Biosciences(4623 Ejby、Lille Skensved、Denmark)から提供され:55匹のマウスは、CNRS-Universite de Paris-UMR 7592動物施設に移送された時点で6~8週齢であった。動物実験はすべて、欧州動物管理ガイドライン(2010/63/UE)に従い、公認プロジェクト#20173および#31876の一部として実施された。動物は、実験の1週間前から環境に順応させ、温度管理(22±2℃)された場所で、12時間の明暗サイクル(午前7時に点灯)で飼育した。すべてのマウスに、ALTROMIN(Altromin Spezialfutter GmbH & Co.KG- Im Seelenkamp 20- D-32791 Lage - Germany)のNIH-31M飼料を食べさせ、飲み物は自由に飲ませた。敷料(滅菌おがくず)は1日おきに交換した。マウスは1ケージにつき5匹の群に分けた。ケージの大きさは37.3×23.4×14.0cmであった。全身徴候を観察し、異常徴候のない動物のみを研究に組み入れた。
【0338】
3.1.2 研究デザイン
試験の16週間の間、タンパク質は、以下の表5に記載されているように、バリアント#014では1日1回、バリアント#064では週1回、朝に、スポンサーから提供された用量、10ml/kgの投与量で、腹腔内経路によりマウスに投与された:
【0339】
【表5】
【0340】
薬液は、以下のように調製した:
- #064:pH7.4のPBS1X中1mg/mlのタンパク質の適切な量を、pH7.4のPBS1Xで希釈し、240μg/ml溶液(2400μg/kg/10ml)を得た。
【0341】
- #014:pH7.4のPBS1X中1mg/mlのタンパク質の適切な量を、pH7.4のPBS1Xで希釈し、80μg/ml溶液(800μg/kg/10ml)を得た。
【0342】
この溶液をさらに、pH7.4のPBS1Xで1:2に希釈し、40μg/ml溶液(400μg/kg/10ml)を得た。調製する量は、注射する動物の数に合わせて調整した。
【0343】
1週目から18週目までの間、すべての動物にビヒクルまたは化合物を腹腔内経路で1日1回朝に投与した(#64は週1回)。血糖値は、尾静脈で採血後、アキュチェックリーダー(Accu-Check reader)を用いて第16週まで週1回モニターした。
【0344】
10週齢の雌のNODマウスに、0.2mg/Kg、0.4mg/Kgおよび0.8mg/Kgの濃度のタグ付けされていないバリアント#049を、13週間毎日腹腔内注射した。マウスの血糖値および体重を毎週モニターした。血中グルコースレベルが250mg/dlを超えたマウスを糖尿病とみなした。
【0345】
分析手法
グルコース濃度は、Horiba Medicalの市販キット(整理番号:A11A01667)を用いて決定する。手順は二相酵素反応に基づいている:
【0346】
【数1】
【0347】
反応は、第二相で生成されるNADHによって生じる吸収を測定することにより、速度論的にモニターされる。測定された吸光度の変化からサンプルのグルコース含量を算出することができる。
【0348】
インスリン濃度は、Alpcoから市販されているキット(整理番号:80-INSMSU-E01/E10)を用いて決定する。ALPCO Mouse Ultrasensitive Insulin ELISAは、サンドイッチタイプの免疫アッセイである。96ウェルマイクロプレートは、インスリンに特異的なモノクローナル抗体でコートされている。標準品、対照、および試料は、結合体と共にマイクロプレートウェルに添加される。マイクロプレートは、700~900rpmにてマイクロプレートシェーカーでインキュベートされる。最初のインキュベーションが完了した後に、ウェルを洗浄バッファーで洗浄し、ブロットして乾燥させる。TMB基質を添加し、700~900rpmにてマイクロプレートシェーカーで2回目のインキュベーションを行う。2回目のインキュベーションが完了した後に、停止溶液(Stop Solution)を加え、分光光度計で450nmにて光学密度(OD)を測定する。発色した色の濃さは、試料中のインスリン量に直接、正比例する。測定範囲は、0.025~6.9ng/mLである。
【0349】
3.2 結果
本研究は、#014タンパク質を2種類の用量(400および800μg/kg)、および#64タンパク質を1種類の用量(2400μg/kg)の腹腔内経路での18週間の処置が、雌のNODマウス(4群:ビヒクル(n=15)、2種類の濃度での#014タンパク質(n=13)、1種類の濃度での#64タンパク質(n=14)で、10週齢から18週間、化合物を投与されている)の血糖値の推移、糖尿病表現型およびβ細胞量に及ぼす影響を評価することを目的としている。
【0350】
図20の結果は、個々の観察数(n)とともに平均±SEMで表した。統計解析は、処置群をSTZ対照群と比較するために、Anovaに続いてDunnettのt検定を用いて行った。Bartlett検定(GraphPad PRISM(登録商標8)により算出された群間の分散が有意に異なる場合は、Kruskal-Wallis検定に続いてDunn検定を使用した。p値0.05を有意とみなした。
【0351】
糖尿病の状態において、β細胞喪失に対抗するバリアント#049の能力を評価するために、本発明者らは1型糖尿病モデルとしてNODマウスを使用した。興味深いことに、バリアント#049の毎日の腹腔内投与は、糖尿病発症を用量依存的に減少させた(図21)。重要なことに、0.8mg/Kgの濃度でバリアント#049で処置されたげっ歯類は、対照と比較して基礎血糖について無視できる増加を示したことである(図22)。
【0352】
4.インビボ試験
4.1 方法
4.1.1 インビボ中期増殖アッセイ
インビボ増殖試験は、2ヶ月齢の野生型の雄の129SVマウスを用いて行う。最低3日間の馴化期間の後、動物に0.4mg/Kgの#014および0.8mg/kgの#014を5日間連続で毎日腹腔内注射する。150ulの滅菌PBSを毎日注射したマウスを対照として用いた。さらに、チミジンアナログであるブロモデオキシウリジン(BrdU)を1mg/mlの濃度で飲料水に希釈し、すべてのマウスに犠牲になる72時間前から与えた。最後に、マウスは最後の注射の30分後に頸椎脱臼により犠牲にされる。膵臓を採取し、Antigenfix(pH7.2~7.4のパラホルムアルデヒド溶液;Microm Microtech France)で固定し、冷えたPBSで洗浄し、0.86%生理食塩水で1時間インキュベートする。エタノール希釈度を一連に大きくすることにより(50%、70%、80%、90%、および100%)脱水させた後、膵臓をイソプロパノールおよびトルエンで処理して、パラフィンに包埋する。パラフィンブロックを6μmのスライドに切り出し、インスリン、Ki67、およびBrdUに対する抗体を用いて免疫蛍光法で分析する。
【0353】
4.4.2 ストレプトゾトシン誘発マウスの高血糖モデルに対するインビトロ有効性試験
これらの試験は、成体2ヶ月齢の野生型の雄の129SVマウスに対して実施される。高血糖を誘導するために、129SV雄マウスに、DNAおよび染色体損傷による細胞毒性作用を示すグルコサミン-ニトロソウレア化合物であるストレプトゾトシン(STZ)を腹腔内注射する。簡単に説明すると、STZを0.1Mクエン酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)に溶解し、5時間の飢餓状態の後、50mg/Kgの用量で3日間連続投与した。高血糖の発現は、ONETOUCHグルコメーター(Life Scan, Inc.CA)を用いて血中グルコースレベルをモニタリングすることによって評価した。飲水量は週1回手動で測定した。耐糖能の評価のためには、腹腔内グルコース負荷試験(ip-GTT)を行った。これらの試験では、マウスを5時間絶食させ、D-(+)-グルコースを2g/kg体重で腹腔内注射した。血中グルコースレベルは、ONETOUCHグルコメーターを用いて注射後の指示されたタイムポイントで測定した。PBSまたはバリアント#014(配列番号41)を、STZ処置の15日前またはSTZ処置の7日後のいずれかから、0.8mg/Kgの用量で腹腔内注射により毎日投与した。
【0354】
4.4.3 移植ヒト膵島に対するインビボ有効性試験
この実験のために、12匹のRag2N12免疫不全マウスにヒト膵島を移植した(500膵島相当/マウス)。ガス麻酔(イソフルラン)後、腰椎開腹手術を行い、左腎臓にアクセスした。膵島ペレット(500膵島相当)をカテーテルを通して各動物の腎臓の被膜下腔に注入した。移植後、出血および細胞漏出を避けるために被膜を焼灼した。筋層および皮膚層の両方を縫合した。周術期の痛みを和らげるためにモルヒネ(ブプレノルフィン-0.05mg/kg)を皮下投与した。各マウスはSOPF動物施設の無菌ケージで飼育した。2週間の回復後、マウスを、PBS、または0.4mg/Kgおよび0.8mg/Kgの用量のバリアント#14で60日間毎日処置した。2週間ごとに、6時間の飢餓後の血中c-ペプチド濃度を測定した。28日間のバリアント#014投与後、グルコースハンドリングをip-GTTで評価した。最後に、BrdUを1mg/mlの濃度で飲料水に希釈し、動物に犠牲になる1週間前から与えた。実験終了時に、マウスを犠牲にし、膵島移植片を単離し、固定し、インスリンおよびBrdUに対する抗体を用いて免疫蛍光法で分析した。
【0355】
4.2 結果
4.2.1 インビボhRspo1増殖活性の評価
成体マウスβ細胞新生を誘導するhRspo1の能力を評価するために、本発明者らはバリアント#014を5日間連続して腹腔内投与した。重要なことに、インスリンと内因性の核増殖マーカーKi67とを共発現する細胞の増加が、試験したすべての用量でバリアント#014で処置したマウスの膵臓サンプルで観察された(図23)。特に、0.8mg/Kgのバリアント#014で処置した動物から単離した組織では、6倍の有意な増加が評価された。従って、バリアント#014の投与は、膵臓β細胞内のBrdU蓄積を増強することが示された(図24)。さらにまた、BrdU/インスリン共発現細胞は、0.8mg/Kgのバリアント#014を注射したマウスの膵臓切片において有意に豊富であった。
【0356】
4.2.2 STZ誘導高血糖マウスモデルにおける血糖コントロールに対するバリアント#014の影響
本研究は、複数の低用量ストレプトゾトシン(STZ)により誘導された高血糖マウスモデルにおいて、#014タンパク質(0.8mg/kg)を用いた慢性処置が血糖コントロールに及ぼす影響を評価することを目的とした。高血糖は、STZ(50mg/Kg)を3日間連続にわたって3回投与して誘導した。STZ処置の15日前またはSTZ処置の7日後のいずれかより、バリアント#014またはビヒクルを腹腔内注射によって毎日投与した。
【0357】
両方の実験環境において、STZはすべての動物において高血糖を有効的に誘導した。しかしながら、バリアント#014を注射したマウスの血中グルコースレベルは、2ヶ月の実験期間全体を通して、ビヒクルを注射した対照と比較して、着実に低いままであった(図25および28)。重要なことに、この差は、STZを介した高血糖の発症前に、バリアント#014を接種した場合に、より顕著かつ有意であった。従って、24時間の水摂取量は、バリアント#014で処置したマウスで一貫して減少し、hRspo1の慢性投与が高血糖に伴う多飲症を緩和することが示された(図26および29)。
【0358】
2ヶ月間の血糖モニタリングの後、ip-GTTにより、#14タンパク質でIP処置したマウスでは、両方の実験において、対照と比較して耐糖能が有意に改善されたことが明らかになった(図27および30)。これらのデータは、バリアント#014が慢性高血糖マウスモデルにおいて血糖コントロールを改善できることを示している。
【0359】
4.2.3 移植されたヒト膵島に対するバリアント#014の影響
ヒトβ細胞に対するバリアント#014の増殖活性を試験するために、腎臓被膜下にヒト膵島を移植した免疫不全マウスに、この分子を毎日注射した。興味深いことに、0.4mg/Kgおよび0.8mg/Kgのバリアント#014をマウスに投与すると、PBSを注射した対照と比較して、空腹時の血中ヒトペプチドレベルが徐々に上昇した(図31)。注目すべきことに、この上昇は、バリアント#014の両方の用量で処置したマウスで45日目に有意になり、0.4mg/Kgを注射した実験動物群では60日目でも有意なままであった(図31)。さらに、ip-GTTで評価した28日目の耐糖能は、対照と比較してバリアント#014処置動物で改善されることが示された(図32)。従って、血漿ヒトc-ペプチドは飢餓時だけでなく、グルコースボーラスによる刺激の15分後にも有意に増大することがわかった(図33)。
【0360】
最後に、膵臓組織分析のために、マウスに飲料水中のBrdUを1週間与え、60日目に犠牲にした。これらの研究により、バリアント#014を注射したネズミの膵臓切片では、対照と比較して、BrdU免疫標識β細胞およびβ細胞量が強く有意に増加したことが明らかになった(図34)。まとめると、これらのデータは、バリアント#014の慢性投与がヒトβ細胞の増殖および過形成を有効的に刺激することを示唆する。
【0361】
5. 薬物動態学
5.1 方法
Fc融合バリアント#63-1、#63-2および#64の薬物動態プロファイルを、129/Svマウスに0.8mg/kgで単回皮下注射して調べた。
【0362】
以下の表6に示すように、タンパク質を10ml/kgの投与量で、皮下経路(SC、背中に沿った皮膚)によりマウスに投与した:
【0363】
【表6】
【0364】
投与から1時間、3時間、6時間、24時間、48時間、72時間、96時間および168時間後に、上表に詳述されるように、血液サンプル(1動物につき、3つのタイムポイントでの採血+終末採血1回)を採取し、生物分析試験用に血漿を分離した。
【0365】
血漿中のタンパク質#63-1、#63-2および#64の濃度を、市販のHuman R-Spondin 1 DuoSet ELISAキット(R&D Systems)に基づき、最適化された生物分析法を用いて定量した。
【0366】
PK Solver add-in for Excelを用いてPKデータを評価したExcelにおいて、濃度対時間のプロットが作成された(Zhang Y, t al. Comput Methods Programs Biomed. 2010 Sep;99(3):306-14)。
【0367】
5.2 結果
Fc融合バリアント#64、#63-1および#63-2の薬物動態プロファイルを図35および表7に示す。プロファイルは、比較のために以前の試験(試験番号:DX001-PHA-21-017)で作製された参照タンパク質#14の単回投与プロファイルと重ね合わせた。
【0368】
【表7】
【0369】
129/Svマウスに800μg/kgで皮下投与した後、3種類のタンパク質の168h-動態を比較したところ、C最大は投与後1時間から3時間の間(T最大)に到達した。この時点以降、3種類のタンパク質の血漿中濃度は、研究の最後のタイムポイント(168時間)まで徐々に低下した。タンパク質#14はSC注射から24時間後まで定量可能であったが、3種類のFc融合タンパク質はすべて投与から168時間後も血漿中で検出可能であり、Fc部分によって半減期が約6.5時間(#14の推定値)から30時間以上まで延長されたことが実証された(図35)。
【0370】
6. 2種類のRspo1-Fc融合タンパク質の生産
#063(hRspo1 21~263-リンカー-Fc)バリアントおよび#064(Fc-リンカー-hRspo1-21~263)バリアントをCHOEBNALT-85-E9細胞で一過性に発現させた。生産した2種類のタンパク質の量を決定した。バリアント#064の生産収量は、バリアント#063よりも高い(11.25mg対4.5mg)。したがって、本開示のバリアントのN末端でのFcポリペプチドの融合は、Fc融合タンパク質の生産収量を増加させることを可能にする。
【0371】
7. Fc融合タンパク質のリンカーの最適化
本発明者らは、活性型Fc融合タンパク質を生成するにはリンカーの最適化が必要であることを示した。実際、リンカーを含まない市販のFc融合タンパク質(Fc-hRspo1;Creative Biomart 053H)は、TopFlashアッセイにおいて活性を示さなかった。以前に試験したバリアント#064または#063とは異なり、Fc-hRspo1タンパク質(Creative Biomart 053H)は膵臓β細胞増殖を刺激しないようである。
【0372】
〔本発明の実施に有用な配列〕
【0373】
【表8】
【0374】
【表9】
【0375】
【表10】
【0376】
【表11】
【図面の簡単な説明】
【0377】
図1】異なるドメインFU1、FU2、TSPおよびBRの概略図とともに、Rspo1、Rspo2、Rspo3およびRspo4アミノ酸配列のアラインメントを提供する。
図2】PBS(対照は黒色)、または異なる用量の組換えhRspo1と共にインキュベートしたMin6細胞の定量。
図3】PBS(対照は左の黒いバー)、または異なる用量のバリアント#009(灰色)と共にインキュベートしたMin6細胞の定量。400nMにおける右のバーは、野生型hRspo1を用いたMin6の定量結果に対応する。
図4】PBS(対照は左の黒いバー)、または異なる用量のバリアント#008(灰色)と共にインキュベートしたMin6細胞の定量。400nMにおける右のバーは、野生型hRspo1を用いたMin6の定量結果に対応する。
図5】PBS(対照は左の黒いバー)、または異なる用量のバリアント#005(灰色)と共にインキュベートしたMin6細胞の定量。400nMにおける右のバーは、野生型hRspo1を用いたMin6の定量結果に対応する。
図6】PBS(対照は左の黒いバー)、または異なる用量のバリアント#034(灰色)と共にインキュベートしたMin6細胞の定量。400nMにおける右のバーは、野生型hRspo1を用いたMin6の定量結果に対応する。
図7】PBS(対照は左の黒いバー)、または異なる用量のバリアント#047(灰色)と共にインキュベートしたMin6細胞の定量。400nMにおける右のバーは、野生型hRspo1を用いたMin6の定量結果に対応する。
図8】PBS(対照は左の黒いバー)、または異なる用量のバリアント#051(灰色)と共にインキュベートしたMin6細胞の定量。400nMにおける右のバーは、野生型hRspo1を用いたMin6の定量結果に対応する。
図9】PBS(対照は左の黒いバー)、または異なる用量のバリアント#063(灰色)と共にインキュベートしたMin6細胞の定量。400nMにおける右のバーは、野生型hRspo1を用いたMin6の定量結果に対応する。
図10】PBS(対照は左の黒いバー)、または異なる用量のバリアント#064(灰色)と共にインキュベートしたMin6細胞の定量。400nMにおける右のバーは、野生型hRspo1を用いたMin6の定量結果に対応する。
図11】PBS(対照は左の黒いバー)、またはヒスチジンのタグを含む、異なる用量のバリアント#049(灰色)と共にインキュベートしたMin6細胞の定量。400nMにおける右のバーは、野生型hRspo1を用いたMin6の定量結果に対応する。
図12】PBS(対照は左の黒いバー)、または異なる用量のバリアント#054(灰色)と共にインキュベートしたMin6細胞の定量。400nMにおける右のバーは、野生型hRspo1を用いたMin6の定量結果に対応する。
図13】PBS(対照)、または200nMおよび400nMのタグ付けされていないバリアント#049と共に、24時間インキュベートしたMin6細胞の定量。
図14】PBS(対照)、または200nMおよび400nMのタグ付けされていないバリアント#049と共に、48時間インキュベートしたMin6細胞の定量。最初の24時間のインキュベーション後、新鮮なタンパク質を添加した。
図15】PBS(対照)、または200nMおよび400nMのタグ付けされていないバリアント#049と共に、72時間インキュベートしたMin6細胞の定量。最初の24時間のインキュベーション後に新鮮なタンパク質を添加し、48時間後にも再度、新鮮なタンパク質を添加した。
図16】PBS(対照は左の黒いバー)、または異なる用量のバリアント#056(灰色)と共にインキュベートしたMin6細胞の定量。400nMにおける右のバーは、野生型hRspo1を用いたMin6の定量結果に対応する。
図17】PBS(対照は左の黒いバー)、または異なる用量のバリアント#082(灰色)と共にインキュベートしたMin6細胞の定量。400nMにおける右のバーは、野生型hRspo1を用いたMin6の定量結果に対応する。
図18】PBS(対照は左の黒いバー)、または異なる用量のバリアント#0116(灰色)と共にインキュベートしたMin6細胞の定量。400nMにおける左のバーは、野生型hRspo1(#014)を用いたMin6の定量結果に対応する。
図19】バリアント#014(A)、#49(B)、#008(C)、#064(D)、#051(E)、#121(F)およびGLP1(1nM)を用いた、4日間の培養および72時間の処理後の129/Svマウスのランゲルハンス島におけるBrdU陽性β細胞の割合。
図20】バリアント#014(A、B)およびバリアント#064(C、D)の腹腔内注射によって、16週間毎日処置した雌のNODマウスの血糖追跡および糖尿病発生率。
図21】雌のNODマウスを、0.2mg/Kg、0.4mg/Kgおよび0.8mg/Kgのバリアント#049で毎日処置した場合の糖尿病発症率。
図22】0.2mg/Kg、0.4mg/Kgおよび0.8mg/Kgのバリアント#049で毎日処置されたNODマウスの血糖追跡。
図23】バリアント#014を5日間連続して腹腔内注射されたマウスの膵臓切片における、膵島面積(μm)で正規化したKi67/インスリン二重陽性細胞の定量化。
図24】バリアント#014を5日間連続して腹腔内注射されたマウスの膵臓切片における、膵島面積(μm)で正規化したBrdU/インスリン二重陽性細胞の定量化。
図25】STZ処置の15日前から毎日、バリアント#014の腹腔内注射で処置された、STZ誘導高血糖マウスの血糖追跡。
図26】STZ処置の15日前から毎日、バリアント#014の腹腔内注射で処置された、STZ誘導高血糖マウスの水分摂取量。
図27】STZ処置の15日前から毎日、バリアント#014の腹腔内注射で処置されたSTZ誘導高血糖マウスに対して実施された、腹腔内グルコース負荷試験。この試験は、バリアント#014の連日投与開始から74日後に実施した。
図28】STZ処置の7日後から毎日、バリアント#014の腹腔内注射で処置された、STZ誘導高血糖マウスの血糖追跡。
図29】STZ処置の7日後から毎日、バリアント#014の腹腔内注射で処置された、STZ誘導高血糖マウスの水分摂取量。
図30】STZ処置の7日後から毎日、バリアント#014の腹腔内注射で処置された、STZ誘導高血糖マウスに対して実施された、腹腔内グルコース負荷試験。この試験は、バリアント#014の連日投与開始から63日後に実施した。
図31】ヒト膵島を移植され、PBS、または0.4mg/Kgおよび0.8mg/Kgのバリアント#014のいずれかを毎日注射された動物の血液にて測定された空腹時ヒトc-ペプチド。
図32】PBS(対照)、または0.4mg/Kgおよび0.8mg/Kgのバリアント#014のいずれかで28日間処置された後に、ヒト膵島を移植されたマウスに対して実施した腹腔内グルコース負荷試験。
図33】PBS(対照)、または0.4mg/Kgおよび0.8mg/Kgのバリアント#014のいずれかで28日間処置された後に、ヒト膵島を移植されたマウスの基礎血中ヒトc-ペプチド濃度およびグルコース刺激された血中ヒトc-ペプチド濃度。
図34】PBS(対照)、または0.4mg/Kgおよび0.8mg/Kgのバリアント#014のいずれかで60日間処置された後に、ヒト膵島を移植された場合の総インスリン容量の定量化。
図35】雄の129/Svマウス(n=3/タイムポイント)において、#63-1、#63-2、および#64のFc融合タンパク質を0.8mg/kgでSC投与した後の168時間動態の比較は、参照の非Fcタンパク質#14との関連において半減期の延長を示している。比較のために、タンパク質#14の単回投与PKプロファイルが示されている(破線)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14
図15
図16
図17
図18
図19(1-4)】
図19(2-4)】
図19(3-4)】
図19(4-4)】
図20(1-2)】
図20(2-2)】
図21
図22
図23
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図25
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図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
【配列表】
2024526356000001.xml
【国際調査報告】