(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】水性ブメタニド含有液体
(51)【国際特許分類】
A61K 31/196 20060101AFI20240709BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240709BHJP
A61P 7/10 20060101ALI20240709BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240709BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240709BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240709BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240709BHJP
【FI】
A61K31/196
A61K9/08
A61P7/10
A61K47/34
A61K47/10
A61K47/02
A61K47/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024502455
(86)(22)【出願日】2022-04-12
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 EP2022059741
(87)【国際公開番号】W WO2023285009
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524019346
【氏名又は名称】ドリペル ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ペリカーン,ヒューバート クレメンス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ドリエル,ビンセント ジャン ヘンドリック マイケル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA95
4C076BB21
4C076BB25
4C076CC17
4C076DD07
4C076DD51
4C076EE23
4C076FF61
4C076FF68
4C206AA01
4C206AA10
4C206JA14
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA37
4C206MA76
4C206MA79
4C206NA10
4C206ZA83
(57)【要約】
本発明は、ブメタニドの経粘膜投与に好適に使用することができる水性ブメタニド含有液体に関し、前記水性液体は:- 0.3~5wt.%のブメタニド;- 2~30wt.%のHLBが10を超える非イオン性界面活性剤;および- 65~94wt.%の水を含み;液体は、25℃で5~9の範囲内のpHを有しており、ブメタニドおよび非イオン性界面活性剤はそれぞれ、直径が50nm未満のコロイド状の粒子に溶解しているおよび/または含まれている。本発明の水性液体は、比較的高濃度のブメタニドを受け入れることができるという利点を提供する。優れた生物学的利用能は、水性ブメタニド含有液体の経粘膜投与で達成され得る。水性液体はさらに、このように投与される場合、刺激、例えば刺痛または掻痒を引き起こさないという非常に望ましい利点を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性ブメタニド含有液体であって:
・0.3~5wt.%のブメタニド;
・2~30wt.%のHLBが10を超える非イオン性界面活性剤;および
・65~94wt.%の水
を含み;
25℃で5~9の範囲内のpHを有しており、前記ブメタニドおよび前記非イオン性界面活性剤がそれぞれ、直径が50nm未満のコロイド状の粒子に溶解しているおよび/または含まれている、水性ブメタニド含有液体。
【請求項2】
前記非イオン性界面活性剤が、10~20の範囲内、好ましくは12~19の範囲内、より好ましくは14~18の範囲内のHLBを有する、請求項1に記載の水性ブメタニド含有液体。
【請求項3】
少なくとも4wt.%、好ましくは少なくとも5wt.%、最も好ましくは少なくとも6wt.%の前記非イオン性界面活性剤を含む、請求項1から2のいずれか一項に記載の水性ブメタニド含有液体。
【請求項4】
前記非イオン性界面活性剤が、脂肪酸のポリオキシエチレンソルビタンエステル、グリセロールポリエチレングリコールヒドロキシル脂肪酸、脂肪酸のポリエチレングリコールエステル、ポロキサマーおよびそれらの組み合わせから選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の水性ブメタニド含有液体。
【請求項5】
25℃で6~8の範囲内のpHを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の水性ブメタニド含有液体。
【請求項6】
ブメタニドのモル濃度の50~150%と等しい混合モル濃度でナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウムおよび/またはアルギニンを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の水性ブメタニド含有液体。
【請求項7】
0.5~4wt.%、好ましくは0.7~3wt.%より好ましくは、1.0~2.0wt.%のブメタニドを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の水性ブメタニド含有液体。
【請求項8】
前記ブメタニドが、前記水性液体に完全に溶解されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の水性ブメタニド含有液体。
【請求項9】
前記非イオン性界面活性剤が、前記水性液体に完全に溶解されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の水性ブメタニド含有液体。
【請求項10】
6~8の範囲内の緩衝pHを有する緩衝液を含む、請求項9に記載の水性ブメタニド含有液体。
【請求項11】
200mPa.秒以下、好ましくは100mPa.秒未満、より好ましくは2~60mPa.秒の20℃での粘度および16秒
-1のせん断速度を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の水性ブメタニド含有液体。
【請求項12】
噴霧装置であって、
・請求項1から11のいずれか一項で定義される通りの水性ブメタニド含有液体を保持する容器、
・前記容器と流体的に接続されたノズル、および
・作動時に前記ノズルを通って前記水性ブメタニド含有液体の流れを生成するように構成された定量ポンプ
を含む、噴霧装置。
【請求項13】
内科的処置で使用するための請求項1から11のいずれか一項で定義される通りの水性ブメタニド含有液体であって、前記処置が、前記水性ブメタニド含有液体の経粘膜投与を含む、水性ブメタニド含有液体。
【請求項14】
鼻腔内に投与される、請求項13に記載の使用のための水性ブメタニド含有液体。
【請求項15】
0.5~5mgの投与量でブメタニドを送達するために投与される、請求項13または14に記載の使用のための水性ブメタニド含有液体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、0.3~5wt.%のブメタニド;2~30wt.%のHLBが10を超える非イオン性界面活性剤;および65~94wt.%の水を含む水性液体に関し、前記液体は、25℃で5~9の範囲内のpHを有しており、ブメタニドおよび非イオン性界面活性剤は直径が50nm未満のコロイド状の粒子に溶解しているおよび/または含まれている。
【0002】
本発明はさらに、前記水性ブメタニド含有液体を保持する容器を含む噴霧装置、および液体の経粘膜投与を含む内科的処置における水性ブメタニド含有液体の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ブメタニドは、心不全、肝不全、または腎臓の問題などの状態により引き起こされる浮腫を処置するために使用される薬剤である。ブメタニドの投与により息切れや、腕、脚、および腹部の腫れなどの症状を軽減することができる。ブメタニドは、患者の尿の量を増やし、(余分な)水および塩を取り除く利尿剤である。ブメタニドは、経口で、または静脈もしくは筋肉への注射により摂取される。効果は一般的に、1時間以内に発現し、約6時間継続する。ブメタニドは、非常に低水溶性である(25℃で26mg/L)。ブメタニドは、pKa1が3.6でPka2が7.7の二塩基酸である。
【0004】
薬物の経粘膜投与は、患者の治療アドヒアランスを向上させ、例えば、静脈内投与および経口投与と比較して副作用を低減することにより、治療効果を改善する可能性がある。
【0005】
過去一世紀において、鼻腔内に投与された薬物の使用は、主に、例えば季節性鼻炎または気道の感染性疾患の局所症状を処置することに制限されていた。鼻腔送達が全身治療のための代替ルートとしてより注目されるようになったのは、20世紀の終わりになってからにすぎなかった。ヒトの鼻粘膜の表面は、約150cm2である。この組織は、粘膜表面の至近距離で血管により十分に供給される(血管および粘膜表面は、1つの粘膜細胞層によってのみ分離される)ので、初回通過代謝を回避しながら、速い吸収および薬物の高い全身血中濃度を可能にする。
【0006】
承認された経粘膜吸収用の鼻腔用製剤の数が増加しているにも関わらず、新規製剤の開発は、特に疎水性の薬物、すなわち非常に低水溶性の薬物に基づく製剤については、依然として困難である。これは、(i)水が好ましい溶媒であること、(ii)鼻腔内に投与することができる製剤の量が制限されること、および(iii)多くの医薬品添加物が刺激を引き起こすことが理由である。
【0007】
国際公開第2021/113775号は、経口利尿剤で効果がない浮腫に罹患している対象の処置のための、鼻腔内、舌下、および皮下のブメタニドの投与用の組成物を説明している。この実施例では、ブメタニド塩を含む組成物およびブメタニドを含む乳剤を説明している。実施例1は、水溶性に対する非イオン性界面活性剤(テトラデシル-ベータ-D-マルトシド)の影響が調査された実験を説明する。
【0008】
Nielsen,HanneW.ら(Solubilization and stability of bumetanide in vehicles for intranasal administration,a pilot study.Pharmaceutical development and technology 6.2(2001):145-149)は、急性の状況での鼻腔内投与に適した種々の極性の媒体中のブメタニドの溶解性を説明する。グリコフロールおよびポリエチレングリコール200における4℃での溶解性は、それぞれ167mg/mLおよび143mg/mLであり、リン酸塩緩衝液またはヤシ油の添加で指数関数的に低下した。
【0009】
Nielsen,H.W.ら(Intranasal administration of different liquid formulations of bumetanide to rabbits.International journal of pharmaceutics 204.1-2(2000):35-41)は、急性の状況における使用を意図している8つの製剤の鼻腔内投与後のウサギにおけるブメタニドの生物学的利用能を説明している。テストされた媒体は、リン酸塩緩衝液、pH7.4、グリコフロール75、ポリエチレングリコール200およびヤシ油の併用であった。
【発明の概要】
【0010】
本発明者らは、ブメタニドの経粘膜投与に適切に使用することができる水性ブメタニド含有液体を開発し、前記水性液体は:
・0.3~5wt.%のブメタニド;
・2~30wt.%のHLBが10を超える非イオン性界面活性剤;および
・65~94wt.%の水
を含み;
液体は、25℃で5~9の範囲内のpHを有しており、ブメタニドおよび非イオン性界面活性剤はそれぞれ、直径が50nm未満のコロイド状の粒子に溶解しているおよび/または含まれている。
【0011】
本発明の水性液体は、比較的高濃度のブメタニドを受け入れることができるという利点を提供する。例えば乳剤との比較において、水性液体は、幅広い温度範囲にわたって優れた貯蔵安定性を有する。さらに、液体は製造が容易であり、均一で正確な投薬を可能にする。水性液体はまた、刺激、例えば刺痛または掻痒を引き起こさずに経粘膜投与することができるという利便性も提供する。
【0012】
優れた生物学的利用能は、本発明の水性ブメタニド含有液体の経粘膜投与で達成することができる。本発明者らは理論に縛られることを望まないが、HLBが10を超える非イオン性界面活性剤が多量に存在することで、ブメタニド塩の溶解を助けるだけでなく、粘膜を介したブメタニドの取り込みも促進すると考えられる。
【0013】
ブメタニドの経粘膜投与は、過剰の流体のために胃腸の吸収障害を経験している患者にとって有利な解決策を提示する。このシナリオは、通常、高用量の経口利尿剤を必要とし、さらには腎臓および肝臓に対する負荷を高める。
【0014】
本発明はまた:
・本発明の水性ブメタニド含有液体を保持する容器、
・容器と流体的に接続されたノズル、および
・作動時にノズルを通って水性ブメタニド含有液体の流れを生成するように構成された定量ポンプ
を含む、噴霧装置も提供する。
【0015】
本発明の別の態様は、浮腫、高カリウム血症、てんかん発作、自閉症、高血圧症、腎機能不全、ネフローゼ症候群、肝硬変および/または心不全を予防または治療するための本発明の水性ブメタニド含有液体の投与に関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1の態様は、水性ブメタニド含有液体であって:
・0.3~5wt.%のブメタニド;
・2~30wt.%のHLBが10を超える非イオン性界面活性剤;および
・65~94wt.%の水
を含み、
液体が、25℃で5~9の範囲内のpHを有しており、ブメタニドおよび非イオン性界面活性剤がそれぞれ、直径が50nm未満のコロイド状の粒子に溶解しているおよび/または含まれている、
水性ブメタニド含有液体に関する。
【0017】
HLBという用語は、「親水性疎水性バランス」の略語である。界面活性剤の親水親油バランスは、界面活性剤が親水性であるか親油性であるかの度合いの尺度である。本明細書で言及されているHLBは、J.T.Davies(A quantitative kinetic theory of emulsion type.I.physical chemistry of the emulsifying agent,Gas/Liquid and Liquid/liquid interfaces,Proceedings of 2nd International Congress Surface Activity,Butterworths,London 1957)により説明される通りに決定される。
【0018】
コロイド状の粒子の直径は、動的光散乱法(ゼータサイザーナノZS、マルバーン・インスツルメンツ)により25℃で測定された散乱強度-加重平均直径、z平均として適切に決定することができる。
【0019】
本発明の水性ブメタニド含有液体は、好ましくは0.5~4wt.%、より好ましくは0.6~3wt.%、さらにより好ましくは、0.8~2.5wt.%、最も好ましくは1.0~2.0wt.%のブメタニドを含む。
【0020】
好ましい実施形態において、本発明の水性ブメタニド含有液体に含まれる非イオン性界面活性剤は、HLBが少なくとも12、より好ましくは少なくとも13、最も好ましくは少なくとも14である。
【0021】
イオン性界面活性剤のHLBは、好ましくは24を超えない、より好ましくは22を超えない、最も好ましくは20を超えない。
【0022】
非イオン性界面活性剤は、好ましくは、少なくとも4wt.%、より好ましくは少なくとも5wt.%、さらにより好ましくは少なくとも6wt.%、なおより好ましくは少なくとも7.5wt.%、最も好ましくは少なくとも9wt.%の濃度で水性ブメタニド含有液体に含まれる。
【0023】
好ましい実施形態において、非イオン性界面活性剤は、水性液体に30wt.%を超えない、より好ましくは25wt.%を超えない、最も好ましくは20wt.%を超えない濃度で存在する。
【0024】
好ましくは、非イオン性界面活性剤は、脂肪酸のポリオキシエチレンソルビタンエステル、グリセロールポリエチレングリコールヒドロキシル脂肪酸、脂肪酸のポリエチレングリコールエステル、ポロキサマーおよびそれらの混合物から選択される。より好ましくは、非イオン性界面活性剤は、脂肪酸のポリオキシエチレンソルビタンエステルから選択される。最も好ましくは、非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエートである。
【0025】
本発明による適切な非イオン性界面活性剤の市販の例には、Cremophor RH40、Cremophor EL、Tween 20、Tween 80およびプルロニックF127が含まれる。
【0026】
さらに好ましい実施形態において、水性液体は、少なくとも5wt.%、より好ましくは少なくとも7.5wt.%、最も好ましくは少なくとも9wt.%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエートを含む。
【0027】
本発明の水性ブメタニド含有液体は、好ましくは、25℃で6~8の範囲内、より好ましくは6.5~7.5の範囲内のpHを有する。
【0028】
水性ブメタニド含有液体は、好ましくは、6~8の範囲内の緩衝pHを有する緩衝液を含む。緩衝液は、好ましくは、リン酸塩緩衝液、酢酸アンモニウム緩衝液およびクエン酸緩衝液から選択される。
【0029】
好ましい実施形態によれば、水性ブメタニド含有液体は、ブメタニドのモル濃度の50%を超える、より好ましくは80%を超える混合モル濃度でアンモニウム、ナトリウム、カリウム、リチウムおよび/またはアルギニンを含む。
【0030】
好ましい実施形態によれば、水性ブメタニド含有液体は、ブメタニドのモル濃度の50%を超える、より好ましくは80%を超える混合モル濃度でナトリウム、カリウムおよび/またはアルギニンを含む。より好ましくは、液体は、ブメタニドのモル濃度の50%を超える、より好ましくは80%を超える混合モル濃度でナトリウムおよび/またはカリウムを含む。最も好ましくは、液体は、ブメタニドのモル濃度の50%を超える、より好ましくは80%を超えるモル濃度でナトリウムを含む。
【0031】
別の、特に好ましい実施形態によれば、水性ブメタニド含有液体は、ブメタニドのモル濃度の50%を超える、より好ましくは80%を超えるモル濃度でアンモニウムを含む。
【0032】
別の好ましい実施形態によれば、水性ブメタニド含有液体は、ブメタニドのモル濃度の30%、好ましくは20%、より好ましくは15%を超えない混合モル濃度でアルギニンおよび/またはカリウムを含む。
【0033】
一実施形態において、水性ブメタニド含有液体は、ブメタニドのモル濃度の50%を超えるモル濃度でナトリウムを含み、ブメタニドは、好ましくは、少なくとも0.6wt.%、より好ましくは少なくとも0.7wt.%、最も好ましくは少なくとも0.8wt.%の濃度で液体に含まれる。
【0034】
一実施形態において、水性ブメタニド含有液体は、ブメタニドのモル濃度の50%を超えるモル濃度でカリウムを含み、ブメタニドは、好ましくは、少なくとも2.2wt.%、より好ましくは少なくとも2.5wt.%、最も好ましくは少なくとも3wt.%の濃度で液体に含まれる。
【0035】
一実施形態において、水性ブメタニド含有液体は、ブメタニドのモル濃度の50%を超えるモル濃度でアルギニンを含み、ブメタニドは、好ましくは、少なくとも1.4wt.%、より好ましくは少なくとも1.5wt.%、最も好ましくは少なくとも1.8wt.%の濃度で液体に含まれる。
【0036】
一実施形態において、水性ブメタニド含有液体は、ブメタニドのモル濃度の50%を超えるモル濃度でアンモニウムを含み、ブメタニドは、好ましくは、少なくとも1.0wt.%、より好ましくは少なくとも1.8wt.%、最も好ましくは少なくとも2.2wt.%の濃度で液体に含まれる。
【0037】
本発明の水性ブメタニド含有液体は、共溶媒を適切に含む可能性がある。使用される可能性がある共溶媒の例には、エタノール、イソプロピルアルコール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリコフロールおよびそれらの組み合わせが含まれる。
【0038】
好ましくは、水と非イオン性界面活性剤との組み合わせは、水性ブメタニド含有液体の少なくとも80wt.%、より好ましくは少なくとも90wt.%、最も好ましくは少なくとも95wt.%を構成する。
【0039】
好ましくは、水性ブメタニド含有溶液は透明である。透明度は、使用者が、微生物増殖もブメタニドの沈澱も生じていないことを目視で確認することができる利点を提供する。
【0040】
好ましい実施形態によれば、ブメタニドは、本発明の水性液体に完全に溶解されている。
【0041】
好ましくは、非イオン性界面活性剤は、水性液体に完全に溶解されている。
【0042】
本発明の水性ブメタニド含有液体は、好ましくは、等張液である。
【0043】
好ましい実施形態によれば、水性ブメタニド含有液体は、カチオンおよび/またはアニオン界面活性剤を含まない。
【0044】
好ましくは、水性ブメタニド含有液体は、リン脂質を含まない。
【0045】
別の好ましい実施形態によれば、水性ブメタニド含有液体は、シクロデキストリンを含まない。
【0046】
好ましい実施形態において、水性ブメタニド含有液体は、ブルックフィールド粘度計モデルRVDVII+を用い、スピンドル3を使用して測定された20℃での粘度および16s-1のせん断速度が、200mPa.秒以下、好ましくは100mPa.秒未満、より好ましくは2~60mPa.秒である。
【0047】
水性ブメタニド含有液体の粘度は、適切な増粘剤を添加することにより上昇させることが可能である。適切に適用される可能性がある増粘剤の例には、アルギン酸、アルギン酸塩、HPMC、ペクチン、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、ゲラン、カラギーナン、キサンタンガム、寒天、植物ゴム質およびそれらの組み合わせが含まれる。典型的には、増粘剤は、0.1~5wt.%の濃度、より好ましくは0.15~3wt.%の濃度で組み込まれる。
【0048】
本発明の水性ブメタニド含有液体は、好ましくは、無菌組成物である。滅菌は、加熱滅菌、高圧滅菌および濾過滅菌などの当技術分野で既知の方法により達成される可能性がある。
【0049】
水性ブメタニド含有液体はさらに、有効量の防腐剤を含む可能性がある。適切な防腐剤は、例えばフェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウムおよびベンジルアルコール、EDTA、ソルビン酸カリウム、パラヒドロキシ安息香酸ならびにそれらの組み合わせである。
【0050】
水性ブメタニド含有液体は、抗酸化剤を含む可能性がある。適切な抗酸化剤は、例えばアスコルビン酸、カロテノイド、ビタミンAおよびトコフェロールである。
【0051】
本発明のさらに別の態様は、
・本明細書でこれより前に定義したような水性ブメタニド含有液体を保持する容器、
・容器と流体的に接続されたノズル、および
・作動時にノズルを通って水性ブメタニド含有液体の流れを生成するように構成された定量ポンプ
を含む、噴霧装置に関する。
【0052】
特定の種類の噴霧装置は、使用中、流入する空気がボトルを汚染することができないように給気口に精密濾過フィルタを有する。別の特定の種類の噴霧装置は、流入給気口がなく、また、各噴霧の最後で空気が装置に入ることができないように密封されている噴霧ノズルを有している。これは、装置の無酸素操作を可能にする。製品が無酸素で調製される場合、使用期間中、無酸素のままである。
【0053】
本発明の噴霧装置は、好ましくは、ノズルの作動で1回分の噴霧量を送達するように構成されている。前記ノズルの作動は、好ましくは、手動の作動である。前記噴霧量は、好ましくは、50~300μl、より好ましくは70~200μlの体積を有する。
【0054】
本発明の別の態様は、内科的処置における本明細書でこれより前に定義したような水性ブメタニド含有液体の使用に関し、前記処置は、好ましくは、液体の経粘膜投与を含む。
【0055】
経粘膜投与の例には、鼻腔内、口腔内および眼球内投与が含まれる。前述の処置の特定の好ましい実施形態において、水性ブメタニド含有液体は、鼻腔内に投与される。
【0056】
より好ましくは、前記水性ブメタニド含有液体は、浮腫、高カリウム血症、てんかん発作、自閉症、高血圧症、腎機能不全、ネフローゼ症候群、肝硬変および/または心不全の予防または処置において使用され、液体は経粘膜投与される。
【0057】
好ましい実施形態において、水性ブメタニド含有液体は、0.5~5mgの投与量、より好ましくは0.8~3mgの投与量、最も好ましくは1~2mgの投与量でブメタニドを送達するように経粘膜投与される。好ましくは、投与は、1~3回分の噴霧量を含み、前記噴霧量は、好ましくは50~300μlの体積を有する。
【0058】
好ましくは、水性ブメタニド含有液体は、ヒトの処置で使用される。
【0059】
本発明はさらに、以下の非限定例により例証される。
【0060】
実施例
実施例1
表1に示す処方に基づいて製剤を調製した:
【0061】
【0062】
製剤は、以下のように調製された。界面活性剤をビーカーに入れ、水および等モル量のNaOH(ブメタニドに対して)を添加し、続いてマグネチックスターラを使用して、透明で均質な溶液が形成されるまで混合する。これに、ブメタニド(酸の形態で)を添加する。NaOH(10%溶液)を使用してpHを7.0に調節する。このようにして、製剤1、2および3について清澄液を得た。
【0063】
しかし、製剤A中のブメタニドは、完全には溶解することができなかった。完全な溶解は、混合物を70℃まで加熱することによってのみ達成することができた。しかし、周囲温度まで冷却すると、製剤Aは沈澱を形成した。
【0064】
製剤1、2および3を、4℃で7日間保存した。この期間中、沈澱は観察されなかった。
【0065】
上述の製剤を、およそ100μlの投与量を送達する噴霧装置を使用してヒトボランティアに鼻腔内投与した。結果を表2に要約する。
【0066】
【0067】
実施例2
本発明による鼻腔内製剤の利尿作用を、ブメタニド1mg錠の利尿作用およびプラセボ錠(対照)の利尿作用と比較した。(浮腫がない)健康なボランティアで利尿作用をテストしたので、ボランティアに、同量の水性飲料を飲むことにより失われた尿を補充するように求めた。
【0068】
実施例1と同様の方法で鼻腔内製剤を調製した(緩衝液をpH調節前に添加した)。鼻腔内製剤の組成を表3に示す。
【0069】
【0070】
およそ100μlの投与量(ブメタニド1mg)を送達する噴霧装置により、鼻腔内製剤を投与した。2mgのブメタニドを投与するため、製剤の1回の投与量を各鼻孔に投与した。テストの結果を表4に要約する。
【0071】
【0072】
実施例3
表5に示す処方に基づいて、実施例2と同様にブメタニドナトリウムを含む鼻腔内製剤を調製した。
【0073】
【0074】
25℃および4℃の保管温度でのこれらの製剤の安定性をテストした。4つの製剤すべてがこれらの温度で完全に安定であった、すなわち沈澱が観察されなかったことが分かった。
【0075】
実施例4
表6に示す処方に基づいて、実施例2と同様に異なるブメタニド塩を含む鼻腔内製剤を調製した。
【0076】
【0077】
25℃および4℃の保管温度でのこれらの製剤の安定性をテストした。4つの製剤すべてがこれらの温度で完全に安定であった、すなわち沈澱が観察されなかったことが分かった。
【0078】
比較例A
表7に示す処方に基づいて、実施例2と同様に鼻腔内製剤を調製した。
【0079】
【0080】
25℃および4℃の保管温度でのこれらの製剤の安定性をテストした。結果を表8に要約する。
【0081】
【0082】
比較例B
表9に示す処方に基づいて、実施例2と同様に鼻腔内製剤を調製した。
【0083】
【0084】
25℃および4℃の保管温度でのこれらの製剤の安定性をテストした。結果を表10に要約する。
【0085】
【0086】
実施例5
表11に示す処方に基づいて、実施例2と同様に異なるブメタニド塩を含む鼻腔内製剤を調製した。
【0087】
【0088】
25℃および4℃の保管温度でのこれらの製剤の安定性をテストした。結果を表12に要約する。
【0089】
【0090】
実施例6
表13に示す処方に基づいて、実施例2と同様に異なるブメタニド塩を含む鼻腔内製剤を調製した。
【0091】
【0092】
25℃および4℃の保管温度でのこれらの製剤の安定性をテストした。結果を表14に要約する。
【0093】
【0094】
実施例7
表15に示す処方に基づいて、実施例2と同様の方法で異なるブメタニド塩を含む鼻腔内製剤を調製した。
【0095】
【0096】
25℃および4℃の保管温度でのこれらの製剤の安定性をテストした。結果を表16に要約する。
【0097】
【0098】
実施例8
表16に示す処方に基づいて、実施例2と同様の方法で異なる増粘剤を含む鼻腔内製剤を調製した。
【0099】
【0100】
25℃および4℃の保管温度でのこれらの製剤の安定性をテストした。結果を表17に要約する。
【0101】
【0102】
実施例9
表18に示す処方に基づいて、実施例2と同様の方法で異なる防腐剤を含む鼻腔内製剤を調製した。
【0103】
【0104】
微生物学的安定性に関するこれらの製剤の安定性を、一般的な病原体に対してテストした。3つの製剤はすべて、24時間以内にヴィリダンス型連鎖球菌(S. viridans)、ナイセリア・ムコーサ(Neisseria mucosa)、ジフテリア菌(C. diphteria)、表皮ブドウ球菌(S. epidermis)および黄色ブドウ球菌(S. aureus)の株を、1000から<10のコロニー形成単位(cfu)まで減少させた。
【0105】
鼻腔内投与に関するこれらの製剤の容認性をボランティアでテストした。結果を表19に要約する。
【0106】
【0107】
実施例10
本発明による鼻腔内製剤の利尿作用を、食後の状態(食事の後)、ブメタニド1mg錠の利尿作用およびプラセボ錠(対照)の利尿作用と比較した。(浮腫がない)健康なボランティアで利尿作用をテストした。ボランティアに、同量の水性飲料を飲むことにより失われた尿を補充するように求めた。
【0108】
表20に示す処方に基づいて、実施例2と同様の方法で鼻腔内製剤を調製した。
【0109】
【0110】
およそ50μlの投与量(ブメタニド1mg)を送達する噴霧装置により、鼻腔内製剤を投与した。テストの結果を表21に要約する。
【0111】
【国際調査報告】