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特表2024-526368最適且つスケーラブルな直交位相時空間変調のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】最適且つスケーラブルな直交位相時空間変調のための方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 1/06 20060101AFI20240709BHJP
   H04L 27/20 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H04L1/06
H04L27/20 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503936
(86)(22)【出願日】2022-07-25
(85)【翻訳文提出日】2024-01-22
(86)【国際出願番号】 EP2022070798
(87)【国際公開番号】W WO2023002062
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】102021207915.6
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522388073
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ テクロノジーズ ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive Technologies GmbH
【住所又は居所原語表記】Vahrenwalder Str. 9, 30165 Hannover, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ダビド ゴンザレス ゴンザレス
(72)【発明者】
【氏名】オスバルド ゴンサ
(72)【発明者】
【氏名】飯盛 寛貴
(72)【発明者】
【氏名】ジュゼッペ タデウ フレイタス デ アブレウ
(72)【発明者】
【氏名】ヘヨン ソック ロウ
(57)【要約】
多次元無線システムのためのスケーラブルな時空間直交位相空間変調のコンピュータ実施方法であって、同相空間コンスタレーション内の同相空間コンスタレーションシンボルと直交位相空間コンスタレーション内の直交位相空間コンスタレーションシンボルとをそれぞれ表すように複数の送信アンテナを構成し、複数の送信アンテナによって表される同相空間コンスタレーションシンボル及び直交位相空間コンスタレーションシンボルにソースデータをマッピングし、方法が、送信アンテナアクティブ化の等しい多重度を有する集合を構築し、これにより、最大可能送信ダイバーシティが確保され、必要な複雑度が低減され、このことをより多数のアンテナのために実現可能とする、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信アンテナを構成する、最適且つスケーラブルな直交位相時空間変調(OS-QSM)コンピュータ実施方法において、
同相空間コンスタレーション内の同相空間コンスタレーションシンボルと直交位相空間コンスタレーション内の直交位相空間コンスタレーションシンボルとをそれぞれ表すように複数の送信アンテナを構成し、
前記複数の送信アンテナによって表される前記同相空間コンスタレーションシンボル及び前記直交位相空間コンスタレーションシンボルにソースデータをマッピングし、
前記方法が、結果として得られる直交位相空間変調に最大可能符号化利得をもたらす最適且つスケーラブルな直交位相空間変調方式(OS-QSM)を適用することを特徴とする、方法。
【請求項2】
範囲制限及び硬閾値法によるボックス化を介した反復縮小閾値アルゴリズム(ISTA)に対する修正が行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ボックス化ハードを介した反復縮小閾値アルゴリズム(ISTA)と、アンテナ位置インデックス及びシンボル推定値の貪欲選択と、対応するアンテナ変調ビット及びシンボル変調ビットのそれらの独立した復号とを行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
貪欲検出と並行して行われるプロセスが、所与の有限のインデックスベクトルの集合からのインデックスベクトルの有効な推定値が出力として生成されることを確保するため、及び確認された値を用いて干渉除去を適用するために、
- 前記貪欲選択からどのインデックスが取得されたかを追跡し続けながら、すべての繰り返しの前に、現在復号されているインデックスから最終確認が計算され得るか否かをチェックし、
- 前記最終確認ができない場合、先行する貪欲選択による干渉を取り除き、次の繰り返しを行う、
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ゴールデン符号の一般化と、複数のユーザのオーバーラップにおいて大規模マルチユーザ干渉を発生させることなく、スパース性の高い受信信号での、空間変調と組み合わせた動作計算がなされることとを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ユーザ当たりの信号をよりスパースにしてもなお、有効なマルチユーザ干渉を増加させることなく、更に多くのユーザをオーバーラップさせることができることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
プロセッサと、揮発性及び/又は不揮発性メモリと、通信チャネルにおいて信号を受信するように適合された少なくとも1つのインターフェースとを有する通信システムの受信機(R)であって、前記不揮発性メモリが、マイクロプロセッサによる実行時に請求項1~6の1つ以上の方法を実施するように前記受信機を構成するコンピュータプログラム命令を記憶する、受信機(R)。
【請求項8】
コンピュータ上での実行時に前記コンピュータに請求項1~6のいずれか一項に記載の方法を実行させるコンピュータ実行可能命令を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項9】
請求項8のコンピュータプログラム製品を記憶及び/又は送信する、コンピュータ可読媒体。
【請求項10】
車両に受信機(R)を有する通信システムを備える車両ユニットであって、前記システムが、請求項1~6の1つ以上に記載の方法を実行するように適合される、車両ユニット。
【請求項11】
請求項10に記載の1つ以上の車両ユニットを有する車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過負荷チャネルにおけるデジタル通信の復号の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
先進の空間変調(spatial modulation、SM)方式では、アクティベーションパターンを決定する分散行列を介して、シンボルスロット当たり送信アンテナの一部のみがアクティブにされる。この選択は、同時にアクティブにされる分散行列のインデックスに対応する整数値を保持する、いわゆるインデックスベクトルによって決定される。集合インデックスベクトルの構築は、従来技術(state-of-the-art、SotA)までは、単純に組み合わせ順で行われてきたが、このことは、送信アンテナの不平等な割り当てにつながり、ひいては送信ダイバーシティの劣化につながる。
【0003】
空間変調(SM)技法は、MIMOシステムのための周知の技法であり、この技法に、本発明は、シンボル選択(コンスタレーション次元)を介する従来の情報ビットに加えて、送信アンテナ選択(空間次元)を介して追加の情報ビットを送信する新規な方法を導入する。1つのアンテナしか選択できず、そのためアンテナ総数が2のべき乗に制限されていた従来のSMから、一般化SMは、利用可能な送信アンテナから複数のアンテナの組み合わせを選択することにより、任意のアンテナ総数を許容するように発展された。
【0004】
そして、時空間符号(space-time code、STC)の概念をSM-MIMOと組み合わせることにより、送信ダイバーシティがSMに導入されて、符号設計の中で複数のシンボル期間を許容することにより時間次元が追加されている。重要な研究としては、Sugiuraらによる線形分散(linear dispersion、LD)符号に基づく時空間シフトキーイング(space-time shift keying、STSK)方式、並びにSTBC-SM及びSTBC-CSMなどの時空間ブロック符号化(space-time block coding、STBC)ベースの方式が挙げられる。
【0005】
並行して、送信ダイバーシティを向上させるための対照的な技法が、直交位相空間変調(quadrature spatial modulation、QSM)方式を用いることにより導入され、QSMでは、送信信号の実数成分及び複素数成分のそれぞれに従来のSMのアイデアが別々に適用される。
【0006】
このアイデアは、ダイバーシティ実現直交位相空間変調(diversity-achieving quadrature spatial modulation、DA-QSM)における送信ダイバーシティを増大することによって補われる。最後に、ごく最近では、STBC-SMのアイデアをDA-QSMに組み込んだ拡張ダイバーシティ実現直交位相空間変調(Enhanced Diversity-Achieving Quadrature Spatial Modulation、EDA-QSM)があり、先行するすべてのものよりもパフォーマンスが優れていることが示されている。
【0007】
SotAのEDA-QSM方式には以下の制限がある。
・符号化利得が最適ではない
・最大許容シンボル期間が2つに制限される
・送信アンテナが偶数に制限される
・スペクトル効率が最適ではない
【0008】
この手法を用いることによって、マッシブMIMOシステムに関連する膨大な定常ソースが効率的に利用され得るが、同様に多数の無線周波数(radiofrequency、RF)チェーンコンポーネントを必要とする欠点を伴う。このRFチェーンの効率的な利用により、SM方式は、ミリ波(mmWave)帯域を広く利用し続けるBeyond 5G(B5G)、並びにテラヘルツ通信及び可視光通信(visible light communication、VLC)も組み込むことが予期される第6世代(6G)ネットワーク[6]など、将来の無線システムにとって魅力的なものとなる。
【0009】
しかしながら、初期のSM方式の主な欠点は、1送信ごとに1つのアンテナしか選択されないため、実現可能なSEが著しく制限されることである。この制限を回避するため、後に一般化空間変調(generalized spatial modulation、GSM)方式が開発され、GSM方式では、送信のたびに複数のアンテナが選択され、SEの大幅な向上につながる。しかし、GSM方式を含む初期のSM方法の別の欠点は、例えば、送信ダイバーシティの利用によってBERを低減するために見合う努力がなく、SEを高めることに焦点を合わせていたことである。この制限が、SMを時空間符号化(space-time coding、STC)と組み合わせるアイデアの動機付けとなった。その例には、線形分散(LD)符号化に基づく時空間シフトキーイング(STSK)方式、時空間ブロック符号化(space-time block coding、STBC)を組み込んだ方法、及び巡回構造を用いた空間変調(spatial modulation with cyclic structure、CSM)がある。
【0010】
この知識に基づいて、SM送信機設計を更に最適化することに向けて進められ、SMコンセプトが、専用の時空間分散行列を介して、変調信号の実数成分と虚数成分とのそれぞれに独立に適用される直交位相空間変調(QSM)手法の発見につながった。このアイデアは、Alamouti符号の組み込みによるダイバーシティ実現直交位相空間変調(DA-QSM)方式、及び[24]のブロックごとの球内復号可能性を有するフルダイバーシティ・フルレート(full-diversity full-rate、FDFR)符号を使用して分散行列が構築される、より最近の拡張ダイバーシティ実現直交位相空間変調(EDA-QSM)方法を含む、次第に改善された分散行列設計を用いることによる一連のQSM技法で更に発展した。上述のすべての方式の中でも、EDA-QSMが、BER及びSEのパフォーマンスの両方で、現在知られている最も優れているQSM方式である。
【0011】
これらの利点にもかかわらず、EDA-QSM方式、そして結果として、先行するQSM方式は、依然として2つの主な欠点を有する。1つ目は、今までのところ提案されているQSM方式で使用された分散行列が、2×2のSTBCに基づくものであり、その結果、本方法によって実現されるダイバーシティ及び符号化利得の両方が制限されるということである。この1つ目の制限に関して、nに比例しないサイズTのSTBCに基づくQSM設計は、SEの意味で基本的に最適ではないことを、本明細書において実際に示す。2つ目の欠点は、現在のQSM検出方式が、網羅的最尤(ML)検出器、又はせいぜい球内検出器のいずれかに基づくことである。ここで注目すべきは、これまでの主張に反して、実際には、球内復号は、同時に復号されるシンボル期間の数に応じて依然として指数関数的に増大する平均複雑度を有するということである。この結果は、いくつかの発見によって裏付けられており、球内検出器の期待される複雑度の3次閉形式表現が導出されており、また、格子基底縮小は球内検出器の複雑度分布のテール指数を改善しないことが示されている。この2つ目の制限に関して、本出願では、実際、ML及び球内検出(sphere detection、SD)ベースのQSM受信機の複雑度は両方とも、これらの技法が基本的にQSMシステムに関連してスケーラブルではないように、Pを指数として、n及びTに対して幾何級数的であることを示す。換言すれば、現在のQSM方式には、スケーラブルな送信機及び受信機の設計が存在しないという、深刻且つ二重のスケーラビリティの課題が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題に動機付けられ、本出願では、送信側では、任意のブロックサイズにスケーラブルである、すなわち、n、T、及びPに制限がなく、且つ受信側では、多項式時間で復号可能である、すなわち、中程度のPで、大きなn及びTに対して実用的である、新しいQSMソリューションを提案する。その上、提案されるQSM方式は、SE、ダイバーシティ、及び符号化利得を最適化するあらゆる可能性を有することが分かる。このために、まず、QSM分散行列の設計に最適なFDFRゴールデンSTBC符号を導入する。ゴールデン符号は、最適である、すなわちガウスコンスタレーションに対して最も高い符号化利得を有するFDFRであることが知られている高速復号可能STBCであり、任意のブロックサイズに対して一般に構築可能であることが示された。結果として得られる最適化されたスケーラブルQSM(OS-QSM)方式は、この特徴を有する、今のところ初めて提案される方法である。
【0013】
新しいOS-QSMの設計は、この方式で採用される分散行列のインデックスを選択する新しいアルゴリズムにより更に強化され、これにより、すべての送信アンテナが複数のブロックの送信にわたって同じ頻度且つ同じ尤度で利用されるため、すべての時空間リソースの最適な多様な利用が確保される。最後に、スケーラブルな送信機設計に実現可能な復号可能性をも確保するために、スパース復元方法に基づく新しい貪欲ボックス化反復縮小閾値アルゴリズム(GB-ISTA)QSM検出器が提案される。
【0014】
提案される復号方式は、そのスパース信号処理手法のおかげで、ブロック対角高速復号可能性を必要とする先行する球内検出方法とは異なり、コア符号設計にいかなる制限も必要としない。しかし、加えて、また最も重要なことには、新しい提案されるGB-ISTA QSM受信機の主な利点は、ML及び状態符号語をブロックごとにマッチさせた球内復号(SCMB-SD)とは異なり、大きなコードブック空間の探索を必要としないことである。実際、提案される受信機の複雑度次数は、Tで3次、Pで2次であり、nでのみ1次であることが示されている。
【0015】
概して、本明細書の提案は、以下のように要約することができる。・スペクトル効率-最適性:QSMがSE最適性を実現するために必要な最適な符号化されたシンボルの数Pの閉形式表現が与えられ、これが、STBCのレート最適条件と組み合わされ、SE最適QSM方式の設計におけるSTBCサイズTの体系的スケーラビリティの重要性が強調される。・最適なダイバーシティ及び符号化利得:新しいゴールデン符号ベースの直交位相空間変調(GQSM)送信方式が、整数シンボルコンスタレーションよりも最適な符号化利得を実現することが知られている、2×2のゴールデン符号に基づく分散行列の設計を介して得られる。・送信機のスケーラビリティ:新しいGQSMの設計は、2×2ゴールデン符号をT×TのFDFR STBC変形に拡張することにより一般化され、任意のn、T、及びPに適用可能なOS-QSM方式が得られる。
・リソース利用の最適性:方法1では、分散行列インデックスの最適な集合を選択する新しいメカニズムが提供され、これにより、最適なダイバーシティ利得に必要であるように、すべてのQ個の時空間リソースが時間にわたって均等に利用されることが確保される。
・受信機におけるスケーラビリティ:GSM方式のための新しい低複雑度貪欲反復縮小閾値アルゴリズム(ISTA)ベースの復調アルゴリズムが提案され、これは、その線形複雑度に起因してより大規模で実現可能であるだけではなく、他のSTBC-QSM方式にも適用可能である。
・受信機の複雑度:Pを指数としてT及びnに対して幾何級数的であるML受信機及びSD受信機とは対照的に、提案される受信機の新しい複雑度表現が導出され、Tに対して3次、Pに対して2次、nに対して1次であることが示されている。
【0016】
Beyond 5G(B5G)及び第6世代(6G)の将来の無線通信システムでは、主に予期されることの1つは、多入力多出力(MIMO)構成において、送信アンテナ及び受信アンテナの数が要件をサポートするために大幅に増加することである。
【0017】
既存のソリューションの主な問題又は課題は、システムが関連する大規模MIMOへと拡大されるときに生じ、これにより、木探索アルゴリズムの性質上、SCMB-SD方式を実用的でなくし得る。
【0018】
換言すれば、アンテナの数が増えると、すなわち、より大規模なMIMOシステムでは、空間変調は問題となる/実行不可能になる。
【0019】
提案される(貪欲ISTA復号)方法は、高次MIMOシステムのための(ゴールデン)拡張ダイバーシティ実現直交位相空間変調(EDAQSM)信号を手頃な複雑度で復号するように設計される。
【0020】
このように、空間変調は、アンテナ数が増加した場合、すなわち、より大規模なMIMOシステムの場合には、実際には実現不可能である。したがって、その利益が実際にすべて達成できるとは限らない。提案される方法は、必要とされる複雑度を大幅に低減し、より多数のアンテナ(16x16のシステム)で実際に空間変調を実現可能にする。
【0021】
本発明は、先進のコネクティビティ技術の成長分野の方向であるmmWベースの通信に大きな影響を与える。
【0022】
1)多重アクセス送信機の設計:特に、ここで導入されるゴールデン符号の一般化のおかげで、空間変調と組み合わせて、スパース性の高い受信信号を用いて動作させることが可能である。これにより、大きなマルチユーザ干渉を引き起こすことなく、複数のユーザのオーバーラップが可能になる。
【0023】
2)多次元変調:現在、設計は空間及び時間「のみ」におけるものであるが、周波数領域も含むように拡張することが意図されている。その結果は、周波数、空間、及び時間における「テンソルベースの」変調となる。我々がこれまでに開発したのと同様のアーキテクチャでは、余剰次元は、ユーザごとの信号をよりスパースにするだけの傾向があるはずであり、ここでも、事実上のマルチユーザ干渉を増加させることなく、更に多くのユーザをオーバーラップさせることができる。
【0024】
3)符号化により接続を確立する(送信機側の態様)。符号化は、このプロジェクトに関連して、我々がこれまで十分に焦点を当ててこなかった態様である。主に貢献がなされてきたのは、過負荷システムにおける検出のパフォーマンス及びロバスト性(実用上の問題に対するもの)についてであった。この研究によって、検出及び復号に同時に対処することが可能になる(同時最適化)。
【0025】
以上のものは、より簡単に言えば、より大容量で、帯域単位当たりにより多くのユーザを有する通信システムを可能にして、超高密度通信シナリオを可能にする。
【0026】
本発明のこれら及び他の目的、特徴、及び利点は、図面及び詳細な説明を考慮すれば、より明確になるはずである。
【0027】
この問題は、SotAである拡張ダイバーシティ実現直交位相空間変調(EDA-QSM)に至るいかなる以前の空間変調方式でも対処されておらず、これまで解決策は見つかっていない。
【0028】
上述の問題に対処し、SotA方式(EDA-QSM)の制限を取り除くために、最適且つスケーラブルな直交位相空間変調方式(OS-QSM)が提案される。具体的には、設計は、QSM信号生成フローチャートの強調されたセクションを考慮する。
【0029】
OS-QSMは、フルダイバーシティ・フルレート(FDFR)ゴールデンSTC及びその一般化であるFDFR完全STCを活用し、最大T=6まで最適な符号化利得を実現する。EDA-QSMで利用されているSezginer-Sari-Biglier(SSB)STBCの代わりにこれらのSTCを使用し、必要なパワー調整及び拡張を適用して、QSMの最終的な分散行列を構築する。
【0030】
具体的には、図1のQSM信号生成フローチャート/ブロック図の点線で強調された部分が、上記の問題の解決策を表している。
【0031】
OS-QSMは、これまでのSM方式の代わりに、任意のシステム及び状況に同様に使用することができる。アンテナの数と比べてほんの一部のRFチェーンしかサポートすることができないシステムは、SMの性質上、特に恩恵を受けるはずである。セルラネットワーク及びV2X通信は、より良い効率及びデータレート(eMBB)で実行することができる。
【0032】
複素行列及び複素ベクトルが太字の大文字及び小文字で示され、それらの要素が添字付きの標準の小文字で示され、それぞれ、X、x、及びxのように示される。複素数xの実数部分及び虚数部分はそれぞれx及びxで示され、今後の便宜上、複素数ベクトルX=[x,x,・・・,xについて、関連する分解されたベクトル
【数1】
及び対応する直交位相表現
【数2】
を定義する。直交位相演算子
【数3】
もまた、m×nの複素行列Xに適用され、これにより、対応する2m×2nの行列
【数4】
が得られる。すると、複素共役作用素、転置作用素、エルミート作用素、トレース作用素、ベクトル化作用素、及び対角化作用素は、それぞれ、(・)、(・)、(・)、tr(・)、vec(・)、及びdiag(・)で示され、n×nの単位元、並びにm×nのサイズのすべての要素がゼロの行列、及びすべての要素が1の行列がそれぞれ、I、Om×n、及び1m×nで示される。p≧0に対するpノルムは、
【数5】
と示され、
|・|
は、要素ごとに(ベクトルでは)絶対値作用素を、又は(集合では)濃度をそれぞれ示し、実数、複素数、及び整数の集合はそれぞれ、
【数6】
と示される。期待値は、
【数7】
と示され、最も近い2のべき乗への切り捨ては、
【数8】
と表され、左端2値ベクトルを対応する10進数の整数に変換する演算は、[・](10)と示される。二項係数は
【数9】
で示され、クロネッカー積は
【数10】
と示される。スカラーvの集合Xへの射影は、P(v)と示され、平均μ及び分散σの複素ガウス分布は、~CN(μ,σ)と示される。
【0033】
これまでの技術水準の空間変調(SM)方式はすべて、ほとんどの空間変調(SM)におけるようにMLを使用したり、EDA-QSMの技術水準のSM方式におけるように修正された木探索アルゴリズムを使用したりしてSM信号を復号しており、スパース検出又は貪欲手法への目立った試みはない。
【0034】
木探索アルゴリズムは、SMの高度に組み合わせ的な性質と、結果としての探索空間サイズとに起因して、極めて非現実的である。更に、SMは、単純な低複雑度復号が不可能であるように、復号される信号の構造に様々な制限を課す。
【0035】
従来技術に関連する問題は、この問題に対するスパース検出ソリューションが存在しないことである。他の手法を用いるソリューションは、法外な複雑度を特徴とする。
【0036】
Beyond 5G(B5G)及び第6世代(6G)の無線通信におけるマッシブ多入力多出力(MIMO)システムは、多数の送信アンテナ及び受信アンテナの組み込みが予期されている。
【0037】
空間変調(SM)及び直交位相空間変調(QSM)などのSMの変形の利用は、マッシブMIMOシステムのための有望な候補の1つである。しかしながら、システムサイズが大きくなるにつれて、SotAが最尤(ML)復号アルゴリズム又はMLベースの木探索アルゴリズムを使用するため、SM方式の古典的な復号の複雑度は実現不可能になる(すなわち、複雑度が手に負えなくなる)。
【0038】
本方法は、図5に示すように、送信アンテナのアクティブ化の多重度が等しい集合を構築し、これにより、最大可能送信ダイバーシティが確保される。これまでのSotAでは、等しい多重度がなかったため、利用可能なアンテナの数から非最適な送信ダイバーシティが利用され、つまり、すべてのアンテナが同じ量だけ使用されたため、これは当てはまらなかった)。
【0039】
空間変調方式はすべて既にインデックスベクトル選択を利用している(又はそのように再定式化され得る)ため、既存の空間変調方式は、すべて恩恵を受ける。この方式は、セルラネットワーク及びV2X通信において、データレートを向上させ、効率を高めるために(eMBB)使用することができる。
【0040】
本発明のこれら及び他の目的、特徴、及び利点は、図面及び詳細な説明を考慮すれば、より明確になるはずである。
【0041】
提案される復号器は、既存のMLアルゴリズム及び木探索アルゴリズムに比べて、著しく低い複雑度を有する。復号器は送信アンテナの数に対して2次複雑度を有する。
【0042】
更に、提案される復号器はまた、送信方式にブロック対角性又は直交性などの設計上の制約を必要とせず、空間変調方式に固有のスパース性だけが要求されるため、送信機開発の自由度も大きくなる。換言すれば、提案される復号器は、多くの異なる符号化構造に対応することができる(柔軟性)。
【0043】
復号器は、ML手法が実行不可能なほどアンテナ数が多いと予想される任意のMIMOシステムで使用することができる。
【0044】
この方式は、セルラネットワーク及びV2X通信において、効率を高めるために(eMBB)使用することができる。
【0045】
本発明のこれら及び他の目的、特徴、及び利点は、図面及び詳細な説明を考慮すれば、より明確になるはずである。
【0046】
複数の送信アンテナを構成する、最適且つスケーラブルな直交位相時空間変調(OS-QSM)方法の一実施形態であって、同相空間コンスタレーション内の同相空間コンスタレーションシンボルと直交位相空間コンスタレーション内の直交位相空間コンスタレーションシンボルとをそれぞれ表すように複数の送信アンテナを構成し、複数の送信アンテナによって表される同相空間コンスタレーションシンボル及び直交位相空間コンスタレーションシンボルにソースデータをマッピングし、本方法が、結果として得られる直交位相空間変調に最大可能符号化利得をもたらす最適且つスケーラブルな直交位相空間変調方式(OS-QSM)を適用する、方法の一実施形態。
【0047】
コンピュータ実施復号方法の別の実施形態は、範囲制限及び硬閾値法によるボックス化を介した反復縮小閾値アルゴリズム(ISTA)に対する修正を特徴とする。
【0048】
コンピュータ実施復号方法の別の実施形態は、ボックス化ハードを介した反復縮小閾値アルゴリズム(ISTA)と、アンテナ位置インデックス及びシンボル推定値の貪欲選択と、対応するアンテナ変調ビット及びシンボル変調ビットのそれらの独立した復号とを行うことを特徴とする。
【0049】
コンピュータ実施復号方法の別の実施形態は、貪欲選択と並行して行われるプロセスが、所与の有限のインデックスベクトルの集合からのインデックスベクトルの有効な推定値が出力として生成されることを確保するため、及び確認された値を用いて干渉除去を適用するために、
・貪欲選択からどのインデックスが取得されたかを追跡し続けながら、すべての繰り返しの前に、現在復号されているインデックスから最終確認が計算され得るか否かをチェックし、
・最終確認ができない場合、先行する貪欲選択による干渉を取り除き、次の繰り返しを行うことを特徴とする。
【0050】
別の実施形態は、ゴールデン符号の一般化と、複数のユーザのオーバーラップにおいて大規模マルチユーザ干渉を発生させることなく、スパース性の高い受信信号での、空間変調と組み合わせた動作計算がなされることとを特徴とする。
【0051】
別の実施形態は、ユーザ当たりの信号をよりスパースにしてもなお、有効なマルチユーザ干渉を増加させることなく、更に多くのユーザをオーバーラップさせることができることを特徴とする。
【0052】
別の実施形態は、プロセッサと、揮発性及び/又は不揮発性メモリと、通信チャネルにおいて信号を受信するように適合された少なくとも1つのインターフェースとを有する通信システムの受信機(R)であって、不揮発性メモリが、マイクロプロセッサによる実行時に上記の1つ以上の実施形態の復号方法を実施するように受信機を構成するコンピュータプログラム命令を記憶する、受信機(R)を特徴とする。
【0053】
別の実施形態は、コンピュータ上での実行時にコンピュータに上記の1つ以上の実施形態の復号方法を実行させるコンピュータ実行可能命令を含む、コンピュータプログラム製品を特徴とする。
【0054】
別の実施形態は、上記のコンピュータプログラム製品を記憶及び/又は送信するコンピュータ可読媒体を特徴とする。
【0055】
別の実施形態は、車両に受信機(R)を有する通信システムを備える車両ユニットであって、システムが、上記の1つ以上の実施形態の復号方法を実行するように適合される、車両ユニットを特徴とする。
【0056】
別の実施形態は、上記の1つ以上の車両ユニットを有する車両を特徴とする。
【0057】
本出願におけるすべての態様を、モバイルデバイス、基地局、及び無線システムのコンポーネントに組み込むことができる。説明されるすべてのコンポーネントを車両に組み込むことができる。
【0058】
図面の簡単な説明
本発明の本質をより十分に理解するためには、添付の図面と併せて読まれるべき以下の詳細な説明を参照されたい。
【0059】
直交位相空間変調(QSM)方式が検討され、この方式は、設計された分散パターンにしたがって、n個の送信から大量送信の動的選択からの比較的少数のP個のM値変調シンボルすべてを送信することと組み合わせながら、多数のビットを運ぶことができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】QSM送信方式の一般的な構造を示す概略図である。
図2】n=8及びM=4の所与のシステムにおける、T=2、4、及び8の場合のOS-QSM方式のスペクトル効率である。
図3】送信シンボル数とエポック数との間の最適比率P/Tに対するT及びMの影響である。
図4】異なるサイズのT及びMにおける、nの関数としての部分ピークスペクトル効率の挙動である。
図5】P=3及びQ=8のQSMシステムにおいて、各インデックスベクトルkに関連する時空間リソース使用量を表す二部グラフである。k、k37、及びk54の特定の例を明示的に示す。
図6】ISTA閾値関数Λ(s;τ)と、式(29)によるBH-ISTA閾値関数Π(s;τ)との比較である。
図7図7は、反復回数ηの関数としての、それぞれ式(28)及び式(30)によるu^Π (η)及びu^Λ (η)の収束である。図7aは、様々な閾値によるスパース性収束である。図7bは、最適な閾値によるMSE収束である。
図8】提案されるQSM復調のためのGB-ISTA受信機の構成を示す概略図である。
図9図9は、QSM受信機の複雑度に与えるスケーラブルなパラメータの影響である。図9aは、nの関数としての固定P、様々なTである。図9bは、nの関数としての固定T、様々なPである。図9cは、Pの関数としての固定n、様々なTである。
図10】SE固定のGB-ISTA検出OS-QSM方式のBERパフォーマンスに対するスケーラビリティの影響である。
図11】GB-ISTA検出OS-QSM方式のBERパフォーマンスに対するPをスケーリングした影響である。
図12】これまでの空間変調方式の比較である。
図13】ML復号によるゴールデンEDA-QSM及びオリジナルEDA-QSMの比較である。
図14】理論ABEPによるゴールデンEDA-QSM対オリジナルEDA-QSMの比較である。
図15】EDA-QSMのスペクトル効率に対するnの影響である。
図16】EDA-QSMのスペクトル効率に対するPのnの影響である。
図17】GISTA実現可能領域におけるEDA-QSMのスペクトル効率に対する影響である。
図18】GISTA復号によるGISTAの平均繰り返し回数である。
図19】ML復号器とGISTA復号器との間の復号複雑度の図である。
図20】GISTA復号器とフルML復号器とのパフォーマンス比較(n 4)である。
図21】GISTA復号のパフォーマンス比較である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下は、5Gの要件及びユースケースに対応することを目的とした無線通信ネットワークの多くの態様に関する概念、システム/ネットワークアーキテクチャ、及び詳細設計の詳細な説明である。「要件」、「必要性」という用語、又は類似の言葉は、特定の実施形態の有利な設計という意味でのシステムの望ましい特徴又は機能を説明するものであり、すべての実施形態に必須又は不可欠な要素を示すものではないと理解されたい。そのため、以下では、各要件及び各機能は、必須、重要、必要と記載されたり、同様の言葉で記載されたりしているが、任意選択であると理解されたい。
【0062】
以下の議論では、無線デバイス、無線アクセスネットワーク、及びコアネットワークを含むこの無線通信ネットワークを「NX」と呼ぶ。本明細書では、「NX」という用語は、便宜上、単なるラベルとして使用されることを理解されたい。本明細書で詳述する特徴の一部又は全部を含む無線デバイス、無線ネットワーク機器、ネットワークノード、及びネットワークの実装形態は、当然のことながら、様々な名称のいずれかで呼ばれ得る。例えば、将来の5Gの仕様開発では、「New Radio」、又は「NR」、又は「NR多重モード」という用語が使用されることがあり、NXに関連してここで説明される特徴の一部又は全部が、NRのこれらの仕様に直接適用可能であり得ることが理解されよう。同様に、本明細書で説明される様々な技術及び特徴は、「5G」無線通信ネットワークを対象としているが、本明細書で詳述する特徴の一部又は全部を含む無線デバイス、無線ネットワーク機器、ネットワークノード、及びネットワークの特定の実装形態は、「5G」という用語で呼ばれることも呼ばれないこともある。本発明は、NXのすべての個々の態様に関連するだけではなく、NXとの相互作用及びインターワーキングにおけるLTEなどの他の技術における発展にも関連する。更に、このような個々の態様及びこのような個々の発展は、本発明の分離可能な実施形態を構成する。
【0063】
図1は、QSM送信方式の一般的な構造を示す概略図を示している。
【0064】
A.システムモデル
個の送信アンテナを備えた送信機が、SMを採用するn個の受信アンテナを備えた受信機と情報を交換するポイントツーポイント(P2P)MIMO通信システムを考える。チャネルが一定であると仮定されるT個の連続するタイムスロットに対応する受信信号は、次のようにコンパクトに書くことができる。
【数11】
【0065】
上式で、
【数12】
は、各アンテナ及びタイムスロットにおいて受信される信号を集めた行列であり、
【数13】
は、要素hij~CN(0,1)を有するフラットフェージングチャネル行列であり、
【数14】
は、時空間送信信号であり、
【数15】
は、Vi,j~CN(0、N)の要素を有する加法性白色ガウス雑音(additive white Gaussian noise、AWGN)行列であり、ここでNはノイズ分散である。
【0066】
以下では、準静的レイリーフェージングチャネル行列Hは受信機では既知であるが送信機では既知でないと仮定する。また、行列成分当たりのチャネルパワーはユニタリであるため、基本的信号対雑音比(SNR)は次式で与えられることに留意されたい。
【数16】
次に、関連するQSMの文献によれば、また図1に示すように、送信信号行列Xは、P個のデジタル変調された信号の形態と、次式に示すように、異なるアンテナ及び時間インスタンスへのそのような送信の割り当ての形態との両方でビット列bの情報を運ぶように構築される。
【数17】
上式で、
【数18】
、但し、p={1,・・・,P}は、濃度|S|=Mの複素コンスタレーションSから選択された送信シンボルであり、
【数19】
は、分散行列であり、集合
【数20】
に属し、但し、
【数21】
である。
【数22】
は、それぞれ、インデックスベクトルのk及びkのp番目の要素であり、これらの要素はインデックスベクトルの最適化された集合
【数23】
から選択され、但し
【数24】
である。
【0067】
式(2)に関して、また再び図1を参照すると、明らかなのは、QSM方式では、ビット列bは、長さ
【数25】
の系列b(Sから取られたシンボルs={s1,・・・,s}に符号化される情報に対応する)と、共に長さ
【数26】
の共役系列b及びb(Kからの分散行列インデックスベクトルk及びkによる時空間リソースの選択において符号化される情報に対応する)とに細分化されるということである。
【0068】
以上から、特定のQSM方式の設計は、本質的に、集合A及びBにおけるQ個の分散行列A及びBのそれぞれの構築において採用される方法と、各送信において使用される分散行列の選択肢を知らせるインデックスベクトルk及びkを含む集合Kの選択とになると言える。
【0069】
従来技術(SotA)のQSM方式が、式(2)で記述される一般的なフレームワークにどのように変換され得るかを例示するために、まずQSM方式を考える。この場合では、分散行列(すなわち、T=1、Q=n)を分散ベクトルに変換し、これは次式で与えられる。
=e及びB=je (3)
上式で、eはIのq番目の列であり、インデックスベクトルk及びkのインデックスの選択については、特定の設計基準は与えられない。
【0070】
次に、DA-QSM方式では、送信ダイバーシティを利用するために、2列分散行列(すなわち、T=2、Q=n)が採用される。特に、この方式では、
【数27】
、但し、
【数28】
であり、ここで、Mはn×nの巡回下位シフト行列であり、Mは、Iの最下行を最上行に巡回的にシフトすることによって、例えば、
【数29】
のように得られ、その(q-1)乗を所与の行列に左から乗じると、後者の最下(q-1)行が最上行にシフトすることになる。
【0071】
上記から、DA-QSM方式は、ダイバーシティを増やすことによって、すなわち、送信インスタンスをT=1からT=2に拡張することによって、本質的にQSM方式よりも改善されることが分かる。しかしながら、DA-QSM方法の分散行列は、依然としてQSM方式と同じように実数であり、追加の多重化機能は集約されず、符号化利得は最適化されないことを示唆している。
【0072】
対照的に、EDA-QSM方法は、両方の態様において後者よりも改善している。特に、この方式では、分散行列は、次式のように、より精巧に設計される。
【数30】
上式で、eはIのl番目の列であり、但し、
【数31】
、インデックスi∈{1,・・・,4}及びl∈{1,・・・,L}であり、コア行列C及びDは、次式のように記述されるSezginer-Sari-Biglieri(SSB)STBCに基づく。
【数32】
但し、
【数33】
、ここで、
【数34】
【0073】
上記の簡潔な説明を通じて、DA-QSM方法とEDA-QSM方法との間の基本的な違いは、EDA-QSMの分散行列が複素数値であり、多重化及び符号化利得を得るために実次元と虚数次元との間の直交性がより良好に利用されることであることが容易に理解できる。
【0074】
しかしながら、上述の方式、そして実際に、我々の知る限りでは、これまでに提案されたすべての既存のSotAのQSM方法について、2つの公正な批判を行うことができる。それは、a)この方式は、任意のT>2に対して、空間及び時間にわたって同時に体系的に拡大しないこと、及びb)実現される符号化利得が最適ではないことである。これらの2つの制限を緩和することが、次のセクションで述べる我々の第1の貢献の目的である。
【0075】
最適化されたスケーラブルな直交位相空間変調送信機の設計
A.QSM方式のスペクトル効率最適性
式(2)のように、各QSM送信シンボルXの送信によって運ばれるビット数、及びこのような送信がT個の連続的なチャネルの使用を必要とするという事実を踏まえると、任意のQSM方式のSEζは次式で与えられる。
【数35】
ここで、
【数36】
であり、P及びTは基本的なQSM設計パラメータと見なされ、M及びnはシステム制約と見なされることを強調しておく。
【0076】
図2は、n=8及びM=4の所与のシステムにおける、T=2、4、及び8の場合のOS-QSM方式のスペクトル効率を示している。
【0077】
式(8)に二項係数
【数37】
が存在することは、SE関数ζ(P,T;M,nT)は、固定されたPでは、Tに対して単調に下降し、固定されたTでは、P及びP/T比に対して凹であることが示唆される。このことは、図2に提示されるプロットによく示されており、このプロットから、n=8及びM=4のシステムでは、達成可能な最高のSE(ζで示される)は、T=2、4、及び8の場合に、それぞれP=11、21、及び42で達成されることが分かる。
【0078】
上記の議論に動機付けられ、我々は、n及びMが与えられたときにSEを最大化する最適な比率P/Tの解析表現を求める。これは、次に、n→∞の大規模システムにおいて、T<nTと設定した場合に発生する相対的なSE低減を決定するために使用され得る。そのために、二項係数の上界及び下界を考える。すなわち、
【数38】
上式で、将来の便宜のために、上界関数β(P;Q)を黙示的に定義している。
【0079】
式(9)を式(8)に用いることにより、次式のように境界を得ることができる。
【数39】
【0080】
後者の式をPに関して微分することにより、次式が得られる。
【数40】
上式で、2行目において、P∈Nという制約を緩和し、より一般的にP=εQと表現し、正の量ε≦1を導入している。
【0081】
式(11)の表現をゼロと等しいとすると、Q=Tn個の時空間リソースを有し、M値コンスタレーションを採用するQSMシステムのSEを最大化する最適なシンボル数Pを決定する次の解析的黙示的表現が得られる。
【数41】
ここで、表現の右辺の量は、実際には送信シンボル数Pを求めるものであることを強調しておく。
【0082】
しかし、望ましいPもまた可能な限り大きいことを思い出すと、式(12)は次のことを意味する。
【数42】
これは今度は、最適なεが
【数43】
であること、すなわち、2次多項式
(M-1)ε-2Mε+M
の解であることを意味し、これにより、最終的に、単純に次式が得られる。
【数44】
上式で、黙示的に定義された最適な勾配
【数45】
を導入している。
【0083】
式(14)に提示されるエレガントな結果は、任意のQSM方式に対しても一般的であることを強調しておく。この結果から、QSM方式のSEを最大化する最適比率P/Tは、送信アンテナの数nに対して線形であることが分かる。換言すれば、任意の所与のM及びnについて、SEに最適なQSMは、図3に示すシミュレーション結果によって示され確認されたように、P/Tがnに対して線形に対応するようなものであるはずである。
【0084】
つまり、図3は、送信シンボル数とエポック数との間の最適比率P/Tに対するT及びMの影響を示している。
【0085】
QSM分散行列は、一般に、T×Tの正方符号化行列で特徴付けられるSTBCを根拠として構築されることも留意されたい。そのため、QSMがSE最適であるためにPがnに応じて拡大しなければならない場合、基礎となるSTBC自体がSE最適性を維持するためには、符号のサイズTも応じて拡大しなければならない。換言すれば、式(14)もまた、SE最適化を実現するためには、M値シンボルを運ぶQSM方式が、送信アンテナnの数に比例して拡大するサイズの基礎となるフルレートSTBCを採用しなければならないことを示唆している。
【0086】
T=nに設定することは、スケーラブルな提案ではないことに留意されたい。それは、このことが、送信機に同数のRFチェーンを備えることにより、法外に高価になり得ることを示唆するためであるというだけではなく、完全に密な信号となり、その結果、法外に複雑なML受信機も必要となるからである。この観測が、図4に示す比較の動機付けとなり、図4は、異なるサイズのSTBCを採用するQSM方式によって得られた、nの関数として、また異なるMについて、Pで発生する最大実現可能スペクトル効率ζの部分を示している。Tが十分に大きく、しかし依然としてnより著しく小さいQSM方式も、nが十分に大きい限り、漸近的に略最適なSEを達成していることが分かる。
【0087】
図4は、異なるサイズのT及びMにおける、nの関数としての部分ピークスペクトル効率の挙動を示している。
【0088】
これらの結果を踏まえて、次のセクションでは、任意のサイズの最適なSTBCに基づいてQSM分散行列をどのように構築するかの説明と、送信の際にインデックスベクトルの選択に使用される関連するインデックスベクトルの集合を得るための新しい体系的なメカニズムとの両方を含む、新しいQSM送信機設計を導入する。説明を明確にするために、まず2×2の場合の単純な例を取り上げて、最適なダイバーシティ利得のための分散インデックス集合の構築を導入する。一般化されたTへの方式の拡張が、その後に続く。
【0089】
B.ゴールデン(2×2)分散行列及び最適なインデックス集合
提案される分散行列の構築を説明する前に、一般性を失うことなく、また既存の方法との比較を容易にするために、式(2)による送信信号行列Xは、アクティブな各送信アンテナについて単位平均送信パワー制約を満たして、コンスタレーション下の
【数46】
が単位平均パワーシンボルを有するという仮定を課す。次に、4つのシンボル{s1,s2,s3,s4}を行列にコンパクトに符号化する2×2のゴールデン符号について考える。
【数47】
上式で、θ及び
【数48】
は、それぞれ相補的ゴールデン数
【数49】
を示し、α=1+j(1-θ)及び
【数50】
は、ガウス整数コンスタレーション集合の最適化された係数である。
【0090】
後者のゴールデン符号に基づくQSM分散行列の構築は、Sを補助行列C及びDに分解した結果として得られ、これらは、それぞれ、符号化された各i番目のシンボルの実部分s 及び虚数部分s を次のように変調するために使用される。
【数51】
上式で、
【数52】
【0091】
【数53】
であり、所与の行列Xに巡回下位シフト行列Mを右から乗じると、Xが列方向に左に巡回的にシフトされることに留意されたい。上記の補助行列があることにより、ゴールデン分散行列は、クロネッカー積演算を用いて同様のストラテジ戦略にしたがって構築され、すなわち、
【数54】
【0092】
式(18)のスケーリング係数については、分母の1/sqrt(5)は式(15)及び(16)と同様にゴールデン符号の係数を引き継ぎ、分子のsqrt(2)は、送信パワー制約
【数55】
を満たすことを確保するために必要なパワースケーリングの結果である。更に詳しく説明すると、式(2)及び(18)から、
【数56】
は、分散行列がすべてのq∈{1,・・・,Q}について
【数57】
を満たす必要があることを示唆し、式(17)のような補助行列C及びDの構築から、C及びDに対するT=2のパワースケーリング、すなわち、C及びDに対するsqrt(2)の振幅スケーリングであるように、
【数58】
が必要であることが明らかである。
【0093】
ゴールデン符号は、EDA-QSM方式で採用されているSSB符号よりも優れたパフォーマンスを発揮することが知られているが、後者と非常によく似た構造を有し、シミュレートされた比較を通じて後で実証されるように、上記の分散行列の構築におけるSSB符号の利用は、それ自体で簡単に説明したものよりもQSM方式のパフォーマンスを改善するようになる。
【0094】
しかしながら、STBCを採用してQSM方式のパフォーマンスを向上させるため、つまり、
【数59】
におけるインデックスベクトルの選択を最適化するための、どの分散行列が符号化された各シンボルの実部分及び虚数部分に割り当てられるかを決定する別のメカニズムがある。これは、各インデックスベクトルkが、式(17)及び(18)によれば、空間的に符号化されたビットの所与の集合の送信においてQSM方式によって利用される時空間リソースの異なるサブセットに関連付けられるためである。この問題を説明するために、所与の対(P、Q)に関するすべての
【数60】
の別個のインデックスベクトルのすべての集合K*を定義し、P=3及びQ=2n=8の場合について表Iにまとめられた対応する例を考える。
【0095】
【数61】
の送信における各分散行列が、式(17)及び(18)のように、所与の2対のアンテナ及びタイムスロットを使用し、簡潔にするために、以下、1つのアンテナと1つのタイムスロットとの各対を単に時空間リソースrqと呼び、また、将来の便宜のために、それぞれR及びRで示される、すべての利用可能及び利用される時空間リソースの集合を定義することに留意されたい。次に、リソース及び分散行列のインデックスがそれぞれ矩形のノード及び円形のノードで表される場合、問題のケース(すなわち、P=3及びQ=8)について図5に示すような二部グラフを構築することができ、ここで、円形ノード及び矩形ノードを接続するエッジが、対応するリソースが所与の分散行列によって使用されていることを示す。
【0096】
図5は、P=3及びQ=8のQSMシステムにおいて、各インデックスベクトルknに関連する時空間リソース使用量を表す二部グラフである。k、k37、及びk54の特定の例を明示的に示す。
【0097】
グラフで示すように、Kからの所与のインデックス集合kを集合Kに含めることは、特定のリソースの使用(場合によっては多重度)に関連付けられ、対応するインデックスを囲む囲いによってインターセプトされたグラフのエッジによって特定される。したがって、インデックス集合kがリソースの集合rの利用を意味することを示すために表記k⇒rを使用し、集合kにおけるリソースrqの多重度を示すためにμkn(rq)を使用する。
【0098】
例えば、リソースr1={2×(1,1),(1,2),(2,1),2×(2,2)}の使用は、Kにk=[1,2,3]を有する結果として生じ、μk1(1,1)=μk1(2,2)=2として、k⇒rと簡潔に書くことができる。同様に、μr37(3,2)=μr37(4,1)=2として、k37=[3,4,5]⇒r37={(1,1),(1,2),(2,1),(2,2),(3,1),(4,2)}、及びk54=[5,6,8]⇒r54={(3,1),2×(3,2),2×(4,1),(4,2)}と書くことができる。
【0099】
上記すべてから明らかなように、時空間リソースの冗長性及び不均等な使用を回避するために、QSM方式のパフォーマンスを最適化するには、分散行列のインデックスの集合K(対応するリソース集合Rを含む)が次の条件を満たす必要がある。
a)集合におけるいかなる2つのインデックスベクトルk及びkも等しくなり得ない(すなわち、k≠k、∀n≠m)
b)各インデックスベクトルにおけるいかなる2つの要素も等しくなり得ない(すなわち、[k≠[k]j、∀k且つi≠j)
c)すべての利用可能なリソースの利用が確保されなければならない(すなわち、μK(r)>0 ∀r∈R)
d)すべてのリソースが毎回使用される(すなわち、μK(r)=・・・μK(r))
e)符号語の符号化を可能にするために、集合の濃度が2のべき乗でなければならない(すなわち、
【数62】
【0100】
例として、表Iにおいて、インデックスベクトルK={k,k,k,k,・・・,k,k10,k11,k19,・・・,k23,k26,k27,k28,k35,・・・,k38,k41,k42,k47,k48,k50,・・・,k56}の集合を強調表示する。読み手は、このKの選択により、関連する集合Rにおけるすべてのリソースが多重度24を有することを検証することができる。対照的に、表Iの最初の32個のインデックスベクトル、つまりK={k,・・・,k32}の単純な切り捨ては、不均一な使用パターンをもたらし、そこでは、μ(1,1)=μ(2,2)=32、μ(1,2)=μ(2,1)=28、μ(3,1)=μ(4,2)=19、及びμ(3,2)=μ(4,1)=17であり、アンテナ1及び2がアンテナ3及び4よりもはるかに頻繁に使用されることになるため、明らかに最適ではない。上で説明し図示した最適な集合Kを選択する問題は、頂点被覆問題として知られる組み合わせグラフ理論の古典的な問題に関連する。しかしながら、この文脈では、この問題には次のような更なる困難がある。つまり、a)問題のグラフは2つのグループに分かれており、b)等しい多重度のカバレッジが必要であり、c)ノードは一度に3つのサブセットで選択されなければならない。
【0101】
【表1】
【0102】
方法1 最適なインデックスベクトルの集合Kの貪欲構築
【0103】
【表2】
【0104】
これらの特殊性により、我々の知る限り、問題自体は独自のものであり、頂点被覆アルゴリズムの既知のバリエーションでは解決することができない。幸いなことに、関連する二部グラフの高度に対称的な構造を利用して、目下の選択問題を解決する効率的な方法を設計することができる。そのため、表記を少し乱用して、集合Kにおける分散行列インデックスqの多重度をμ(q)として定義する(分散行列インデックスは単一の数であるのに対し、時空間リソースは対であるため、リソースの多重度の定義に曖昧さはないことに留意されたい)。次に、図5から分かるように、グラフの対称性により、μ(1)=・・・=μ(Q)である解Kは、時空間リソース{(1,1),(1,2),(2,1),(2,2),(3,1),(4,2)}のそれぞれが同じ多重度を持つ解Rを意味する。そのため、方法1で説明したように、インデックスの貪欲選択によって問題を効率的に解くことができる。
【0105】
C.最適な一般化設計(T×T)
P、T、及びnに一般的な上記の貪欲最適インデックスベクトル選択アルゴリズムにより、QSMの任意のTへの一般化を妨げる最後の制限要因は、任意のサイズのSTBCに基づいた分散行列の構築である。この障害は、完全FDFR STBCに基づくQSM分散行列の設計を考慮することにより解消される。
【0106】
T×TのFDFR STBCは、アンテナ当たりの送信される平均エネルギーが1に正規化され、エネルギー効率整形制約が適用され、符号化利得(別称、非消失行列式)のSE保存下界が最大化されるようにT個のシンボルを符号化する。最終的に、所与のT∈Nについて、設計は次のように書くことができる。
【数63】
上式で、s=[s1+(t-1),s2+(t-1),・・・,stTであり、ここで、t={1,・・・,T}は、それぞれT個の異なる送信シンボルを運ぶベクトルであり、Rは、T×Tの最適格子生成行列]であり、JT,nは、単位行列の最後のn個の対角要素を基本複素数jにより置き換えることによって構築されたT×Tの行列であり、Nは、T×Tの巡回上位シフト行列である(JT,nは式(17)で使用されるJ2,1を一般化することに留意されたい。次に、Mとは逆に、Nは、Iの最上列を最下列に巡回的にシフトすることによって得られる。いくつかの例は、
【数64】
であり、これを所与の行列Xに右から乗じると、Xが列方向に右にシフトされる。
【0107】
完全FDFR STBCは2×2のゴールデン符号を完全に一般化していることに留意されたい。それを確認するには、T=2の場合且つ対応する格子生成行列
【数65】
を式(19)から次式が得られるように考慮するだけで十分である。
【数66】
【0108】
その結果、QSMの設計で完全FDFR STBCを採用するためには、対称性により、対応する補助分散行列C及びDに関して式(19)のコアコード構造を分解するだけで十分であるということになる。すなわち、
【数67】
上式で、一般化インデックスi∈{1,・・・,T}はt∈{1,・・・,T}及びw∈{1,・・・,T}に対して体系的に構築され、eはIのt番目の列である。
【0109】
これに続いて、分散行列A及びBの完全な集合が構築され得る。すなわち、
【数68】
ここでも、式(21)のように、q∈{1,・・・,Q}、i∈{1,・・・,T2}であり、eはIのl番目の列であるが、l∈{1,・・・・,L}、但し、
【数69】
及び分散行列の累乗を調整するために特定のSTBCに応じて決定される一般化されたスケーリング係数γ、但し、
【数70】
【0110】
次に、サブセクションIII-Bで説明した方法を直接一般化して、最適なインデックスベクトルの集合Kの構築に注目する。実際、式(21)を調べることで分かるように、各補助行列C及びDは、RのT個の非ゼロ要素のみを含む対角行列の巡回回転から得られるT×Tのスパース行列である。
【0111】
方法2 QSM信号生成
【0112】
【表3】
【0113】
そのため、式(22)から得られる関連する分散行列はすべて、利用されるT個の時空間リソースに対応する、T個の非ゼロ成分のみを有するスパース行列である。換言すれば、サブセクションIII-BのゴールデンQSM方式では、各分散行列インデックスqが2つのリソースに関連付けられているが、ここで説明する完全STBCベースの構築では、各インデックスqがT個のリソースに関連付けられて、図5に示す対応する二部グラフは、T・nインデックス(円形)ノードとT・nリソース(矩形)ノードとを備えた同様のグラフに拡張されているだけであり、各リソースノードはT個のインデックスノードに接続され、逆も同様である。結果として、方法1が一般的なTに適用されるという事実によって証明されるように、先に説明した貪欲ストラテジは引き続き有効である。次に、方法2における提案されるスケーラブルなQSM方式の構造をまとめる。
【0114】
IV.提案される受信機の設計
A.QSM受信機のスパース定式化
上記で導入した方法1及び2は一緒に、OS-QSMの送信機の設計が可能であり、扱いやすいことを実証する。しかしながら、実現可能性がなければ真のスケーラビリティはなく、タスクを完了するには、提案されるOS-QSMの設計が適度な複雑度で効果的に復号可能であることを示す必要もある。
【0115】
課題を状況の中で捉えるには、所与のP、M、T、及びnに対して、Q=T・nTの場合、ML受信機は、
【数71】
のシンボル及び選択された時空間リソースの組み合わせを、
【数72】
のシーケンスを検出するために調べる必要がある。つまり、T=2、P=2、及びM=4という最小限の設定であっても、n=8の送信アンテナを有するシステムでは、対応するlog(16.777.216)=24ビットを復号するために、受信機が
【数73】
の組み合わせを調べる必要がある。換言すれば、ML復号は、QSMシステム、特にマッシブMIMOシステムの状況では極めて非現実的である。
【0116】
この課題は、サブセクションIII-BのOS-QSM方式に当てはまるだけでなく、現在のSotAのQSM方法にも当てはまることを強調しておく。なぜなら、上記の例はT=2の場合であり、これは現在のSotAのQSM方法で使用されるコアコードのサイズであるからである。更に、木探索アルゴリズムの性質上、大規模システムでは依然として過度の計算の複雑度が必要となるため、SD受信機の利用も大規模なケースでは実行不可能であることを強調しておく。最後に、高速復号可能性及びブロック対角性などの便利な特性は、任意のサイズのSTBCの最適性の犠牲なしには保持できないことが知られているため、QSM方式のスケーラブルな検出器はそのような特徴に依存することができないことに留意されたい。
【0117】
上記を踏まえて、木探索にもSTBCの特定の特性にも依存せず、実行不可能な組み合わせ因子
【数74】
から完全に独立した、新しいQSM方式のための検出方法を導入する。
【0118】
加えて、符号化構造に関する事前情報が与えられているため、提案される復号器は任意のQSM信号を検出することができる。
【0119】
我々の手法の核となるアイデアは、受信機で既知であると仮定される、チャネル全体(すなわち、利用可能なすべての時空間リソース)にわたるQSM信号のスパース表現を最大限に活用することである。次いで、提案される復号方法は、反復縮小閾値アルゴリズム(ISTA)を活用して、シンボル及び分散インデックスの推定値を貪欲に抽出し、その結果、ML及びSDベースの方法と比較して複雑度が大幅に軽減される。そのために、まず式(1)及び(2)を組み合わせて、次式で表されるQSM受信信号のベクトル化された形式を考える。
【数75】
上式で、ブロック対角チャネル行列Φ及びベクトル化ノイズvを黙示的に定義し、A及びBの分散行列もそれぞれ、
【数76】
にベクトル化され、
【数77】
に連結され、
【数78】
(それぞれ、
【数79】
)は、
【数80】
(それぞれ、
【数81】
)で表されるそれのインデックスk∈K(それぞれ、k∈K)の要素を除き、いたるところでゼロに設定される。
【0120】
式(23)は、結合され実数及び虚数の分離された情報及びノイズベクトル
【数82】
並びにa及びbの分解されたバージョン、すなわち、
【数83】
を定義することによって更に簡単にすることができ、これは、次に、単一の分散行列
【数84】
、すなわち
【数85】
に組み合わされ、式(23)のベクトル化システムモデルは次のように書き直すことができる。
【数86】
上式で、
【数87】
は、直交位相動作ブロック対角チャネル行列Φであり、将来の便宜上、黙示的に、Φは有効チャネル行列
【数88】
と同様にラベルをつけ直している。
【0121】
例を挙げて式(27)を詳しく説明するために、P=3、T=2、及びn=4のシステムを考え、特定のビット系列b=[b,b,b]に対して、選択されたインデックスベクトルはk=k10=[1,3,7]及びk=k47=[4,5,7]で与えられると仮定する。そうすると、対応する組み合わされた情報ベクトルは次のようになる。
【数89】
uが、成分
【数90】
において、bサブシーケンスに対応するPlogMビットを運ぶが、サブシーケンスb及びbに対応する残りの2logNビットは、
【数91】
の値に関わらず、uにおける非ゼロ要素の位置によってのみ符号化され、このことは、bの検出がb及びbの検出とは別になされ得ることを示唆していることに留意されたい。
【0122】
原則として、後者の特徴は、EDA-QSM方式のためにブロック分離性が設計に利用された仕方と同様に、上で提案したOS-QSM方式のSD受信機の設計に利用され得る。当然のことながら、この手法の問題は、分離されたシンボルベクトル
【数92】
の2P個の要素をuの2Q個の要素の中に配置する組み合わせが法外に多いことである。この課題を回避するために、代わりに、サブセクションIII-Aで実証されている事実を活用することを試みる。つまり、a)式(12)のように、SEを最大化するシンボルの最適な数Pは、総時空間リソースQ=T・nの一部である、且つb)図4に示すように、n>>1の大規模システムでは、SEの最適性を漸近的に達成するには、著しく小さいブロックサイズTで十分である。これらの事実は、まとめると、uのスパース性が大規模なSE最適QSM方式でますます顕著になり、スパース復元アルゴリズムが有利になることを意味する。また、式(27)を調べると、行列Φ及びΦは、それぞれ、スパース及び離散考慮受信機に関する最近の進歩が活用され得るような、圧縮センシング(CS)モデルに典型的なセンシング行列及び辞書行列として解釈することができることも明らかである。
【0123】
受信側での複雑度の制御につながるスケーラビリティへの焦点を考慮すると、OS-QSMの復調に適用される2つの適切な候補となる方法は、一般化近似メッセージパッシング(GAMP)アルゴリズム、及び反復縮小閾値アルゴリズム(ISTA)であり、これらは両方とも信号ベクトルuのサイズ2Tnに関して2次複雑度を有する。しかしながら、GAMPアルゴリズムは、測定行列の特定の構造と受信信号の独立性に強く依存していることは周知であるが、これは、QSMの場合、一般に分散行列においてSTBCの利用の直接の結果として仮定することができない。必要な条件が得られない場合、GAMP受信機のパフォーマンスは、高いSNRでのエラーフロアを特徴として劣悪となる。
【0124】
したがって、この事実に動機付けられて、後述のように、QSMシステムのための低複雑度復調器の設計においてISTAベースの手法に従うことが選択される。特に、閾値関数とインデックスベクトル推定プロセス、特にQSM検出との両方に対する修正を組み込んでいる専用のISTAのバリエーションに基づく、QSM信号を検出する方法が導入される。
【0125】
B.貪欲ボックス化ISTAベースのQSM復号器
標準ISTA反復を考えると、
【数93】
上式で、
【数94】
は、η回目の繰り返しにおけるuの推定値であり、α=maxeig(GG)は縮小ステップサイズ(実際の要件は、α>maxeig(GG)であるが、十分な最小ステップサイズを仮定する)であり、λは閾値係数であり、Λ(s;τ)はソフト閾値関数である。式(28)におけるこのような標準ISTA反復に対する第1の意味のある修正は、実数値で射影されたコンスタレーション
【数95】
におけるシンボルが有限であるという事実を考慮することであり、解にスパース性を適用するために使用される原点付近にある下限τに加えて、上限max(S)を閾値関数に導入し得るようにする。換言すれば、目下の場合では、ISTAの標準ソフト閾値関数Λ(s;τ)をハード閾値関数で置き換えて、図6に示し、次のように定義される「ボックス化」ハード閾値関数Π(s;τ)をもたらす。
【数96】
【0126】
図6は、ISTA閾値関数Λ(s;τ)と、BH-ISTA閾値関数Π(s;τ)(29)との比較である。
【0127】
この修正を組み込むことにより、次のように記述されるボックス化ハードISTA(BH-ISTA)受信機が得られる。
【数97】
【0128】
式(30)を繰り返し評価する計算コストは、項
【数98】
、ひいては、図7に示すように、繰り返しηとともに減少する
【数99】
の非ゼロ成分(すなわち、lノルム)の数の二次関数によって支配されることに留意されたい。
【0129】
図7は、反復回数ηの関数としての、それぞれ式(28)及び式(30)による
【数100】
の収束を示している。
【0130】
図7(a)は、様々な閾値によるスパース性収束である。
【0131】
図7(b)は、最適な閾値によるMSE収束である。
【0132】
特に、図7(a)は、閾値パラメータτの様々な値に対するηの関数としての
【数101】
の収束の比較を、式(28)及び(30)の両方から、すなわち、それぞれ従来型ISTA及びBH-ISTAによって得られた
【数102】
により示しており、これは以降、便宜上次のように示される。
【数103】
【0133】
実際、ボックス化及びハード閾値処理の結果として、
【数104】
であることが分かり、式(28)の評価に関連する予想される複雑度の次数は、(30)の評価よりも低くなる。これは、下限及び上限(O(4P)及びO(4Q))によって上下両方に制限され得る。
【0134】
更なる詳細についてはセクションV-Aで示す。次に、図7(b)は、提案されるBH-ISTA手法で得られた平均二乗誤差(MSE)が、従来のISTAで得られたものよりも優れていることを示しており、これは、QSM信号の復調のためにここで提案されているボックス化ハード閾値修正の有効性を示している。しかしながら、分散行列のインデックス{k,k}∈Kの選択に関連付けられたビットをどのように効率的に検出できるかということへの対処が残る。そのために、ISTAベースのスパース検出器に別の追加事項が導入される。つまり、復元された各シンボルに対する貪欲ハード検出手順と、式(30)の同時更新と共に行われる。これは次のように説明することができる。
【0135】
式(30)で記述されるBH-ISTA反復の複数回の実行が行われることを考える。m回目の実行の前にy、G、及びuに修正が加えられ、これは式(30)を次のように書き換えることで表され得る。
【数105】
上式で、最初の実行(m=1)では、y=y、G=G、及び
【数106】
を設定する。
【0136】
ηを後者の推定器のm回目の実行の最後の繰り返しとし、その対応する結果を
【数107】
で表す。最後に、
【数108】

【数109】
の成分とし、最大振幅の位置を
【数110】
で示す。但し、
【数111】
と書くこともでき、上式でh[x]は一般的なベクトルxの1番目の要素を示す。式(32)にまとめられる貪欲手順では、ビットシーケンスbに関する2つの別個の情報、すなわち、変調されたシンボル
【数112】
のうちの1つの軟推定値
【数113】
と、選択されるインデックス集合{k,k}∈Kに含まれるインデックスのうちの1つの硬推定値
【数114】
とが取得されることを強調しておく。このような情報を取得した上で、式(31)で記述されるBH-ISTA反復の次の実行に必要な修正された量を生成するために次のステップが実行される。
【0137】
まず、ハード検出バージョンの
【数115】
が、S上への射影により取得される、すなわち、
【数116】
【0138】
次に、残りの量が以下のように更新される。
【数117】
上式で、I2Qはサイズ2Qの単位行列であり、
【数118】
は、それの
【数119】
列におけるものである。スパースベクトルuの直交位相分解構造に起因して、すべての奇数インデックス推定値q^mは変調されたシンボルの実数部分に対応するのに対し、偶数の
【数120】
は虚数部分に対応することに留意されたい。したがって、式(31)~(35)が繰り返し評価されると、得られたインデックス推定値
【数121】
は分割され、それに応じてサブシーケンス
【数122】
(mod(x,2)はxに対するモジュロ2演算を示す)に集められることが分かる。
【0139】
検出プロセスにエラーがなかった場合、正確にm=2P回の実行の後、シーケンス
【数123】
は、{k,k}に、特に
【数124】
を介して完全にマッピングされ得、それにより手順は停止する。
【0140】
しかしながら、より一般的には、濃度Pであっても、
【数125】
のいずれか又は両方に不正なインデックスが含まれるように、エラーは発生し得る。このような場合、手順は両方のサブシーケンスが分散行列インデックスベクトル集合Kに含まれる第1のP-組のインデックスを含むまで継続され、その時点で、更新の式の修正が必要になり、これについては以下のように説明することができる。
【0141】
(q)が集合Kへのシーケンスqの射影を示し、qがKからの系列を含むか否かに応じて、シーケンスk∈K又は空集合φのいずれかが射影によって返されるものとする。複数の有効なk∈Kが、(要素値自体ではなく)qのより低いインデックスが優先される状態で、実行可能な要素における要素の組み合わせに存在する場合、貪欲選択の概念は一貫している。すると、式(34)は次のように拡張することができる。
【数126】
【0142】
分かりやすく言えば、式(37)は、BH-ISTA検出器のm回目の実行後、次の実行の推定ベクトル
【数127】
の初期状態が次のいずれかであることを確立する。
a)
【数128】
のどちらもKに射影できない場合、最新の推定値シンボルを削除することによって更新される。これは、取得されたインデックスの数がk若しくはkの有効な推定値を決定するのに不十分(P未満)である場合、又はインデックスの数は十分(P以上)であるが、どのk∈Kに対する有効なインデックスの組み合わせも含まない場合に発生する、或いは
b)
【数129】
の硬判定が
【数130】
のKへの射影から確認された場合、q∈{1,3,・・・,2Q-3,2Q-1}のすべての奇数成分をヌルにすることによって更新される。これは、復調手順全体で1回だけ発生する。又は
【数131】
の硬判定が
【数132】
のKへの射影から確認された場合、すべての偶数成分q∈{2,4,・・・,2Q-2,2Q}をヌルにすることによって更新される。これも復調手順全体で1回だけ発生する。或いは、
c)
【数133】
の硬判定が
【数134】
のKへの射影から確認された場合、偶数成分q∈{2,4,・・・,2Q-2,2Q}のすべての成分をヌルにすることによって更新される。
【0143】
明らかに、上記以外の唯一の代替策は、
【数135】
の両方が取得され、その結果、シンボル推定値
【数136】
の集合全体も取得された場合であり、この場合、手順は終了する。
【0144】
上記と同様に、ym及びGmの更新も、
【数137】
に対する硬判定の影響を考慮するために硬判定されたインデックス及びシンボルの影響を除去し、確認されたインデックスに対応するチャネルを無効にするように修正されなければならず、それぞれ次式のようになる。
【数138】
【0145】
図8は、提案されるQSM復調のためのGB-ISTA受信機の構成を示す概略図である。
【0146】
式(31)~(33)及び(35)~(39)で説明される手順は、先に導入したGB-ISTA検出器の貪欲な(すなわち、シンボルごと、及びインデックス集合ごと)修正を意味する。これは、QSM復調のための貪欲ボックス化反復縮小閾値アルゴリズムと呼ばれる。
【0147】
プロセスの最後において、選択された分散行列インデックスベクトルの推定値
【数139】
と、変調シンボルの硬判定推定値
【数140】
とが得られ、そこから、対応する符号化ビットb=[b,b,b]は、球内検出又は網羅的最尤探索の複雑度の一部で取得することができることに留意されたい。提案されるGB-ISTA QSM受信機を示す図が図8に示され、方法3の擬似コードの形態でまとめられている。図8は、提案されるQSM復調のためのGB-ISTA受信機の構成を示す概略図である。
【0148】
方法3 QSM方式のための貪欲ボックス化(ハード)ISTA受信機
【0149】
【表4】
【0150】
方法4a 貪欲ISTA復号器
【0151】
【表5】
【0152】
方法4b 分散インデックス決定器:index_est(・)
【0153】
【表6】
【0154】
以下の表では、n×nの一般化EDA-QSMのスペクトル効率ηを示す。
【0155】
【表7】
【0156】
所与のnに対して同じスパース性を維持しながら、n及びPが同じ係数で増加するとき対を比較する。
(4,n,1),n=2,η=4,s=1/8
(4,n,2),n=4,η=4,s=1/8
【0157】
この効果をPの大幅に増加させて比較すると、際立つ新規な結果が観測される。
(4,n,2),n=2,η=6,s=1/4
(4,n,4),n=4,η=7,s=1/4
【0158】
時間における同じ「平均スパース性」において、スペクトル効率はnと共に増加し、nが大きくなるほど増加した。
(16,n,2),n=2,η=10,s=1/16
(16,n,4),n=4,η=11.5,s=1/16
【0159】
V.複雑度及びパフォーマンスの分析
このセクションでは、提案されるOS-QSMのパフォーマンスをコンピュータシミュレーションによって分析する。システムのスケーラビリティに重点を置くため、示されるシミュレーション結果はすべて、比較的多数の送信アンテナ(すなわち、n≧6)及び増加する送信スロット数(すなわち、T≧2)に関するものであり、デジタル変調された送信シンボルの数P及び対応するコンスタレーションの濃度Mが、各シミュレートされた実験の主要な発見を強調するためにケースバイケースで調整される。我々の知る限り、既存の受信機の計算が法外に複雑であることに起因して、このようなパラメータを使用したQSM方式のシミュレーション結果はこれまで文献に登場していない。
【0160】
A.複雑度:GB-ISTA対ML及びSCMB-SD受信機
後者に関する留意点を踏まえて、特に従来のML及びSCMB-SD手法、並びにセクションIVで説明されている提案されるGB-ISTAアルゴリズムの複雑度次数を導出することにより、スケーリングされたQSMシステムの復号複雑度を評価することから始める。
任意の所与のn、T、及びPについて、ブルートフォースML復号器は、P個のデジタルで変調されたシンボルs∈Sの実部分及び虚数部分を送信するために、{k,k}∈Kにしたがって独立して選択されるすべての可能な
【数141】
アンテナ起動パターンの中からの探索と、可能なアクティブパターンごとの濃度MのコンスタレーションSから選択されたすべての可能なP-組のシンボルの別の探索とを必要とする。理想的且つ簡単
【数142】
にするために、各探索が単
【数143】
精度浮動小数点演算(フロップ)を消費すると仮定すると、ML探索仮定だけで、
【数144】
によって下界を定められた複雑度次数が
【数145】
logMビットを検出するために得られるが、これでは、中程度に小さなP及びMでもすぐに実行不可能になる。例えば、n=6、T=3、P=3、及びM=4の比較的小規模なシステムで各送信信号の24ビットを検出するには、16.777.216の組み合わせを探索する必要がある。他のパラメータは変更せずに、送信アンテナの数を2倍のn=12にすると、ML探索空間の複雑度は既に10の組み合わせに急増し、1送信当たり30ビットに緩やかに増加するが、n=6を維持し、送信シンボルの数を2倍のP=6に送信するには、わずか40ビットを検出するために1012を超える組み合わせを探索する必要がある。各ML探索を実行するために必要な最も重要な演算を考慮すると、QSM方式の各ビットを復号するためのML受信機の複雑度の次数は次のようになり、ここで下界は高次項のみを保持し係数を無視することによって得られる。
【数146】
【0161】
QSMシステムのMLベースの検出の実際的な実現不可能性は、送信シンボルの数Pがすべての理論的にスケーラブルな量n、T、及びMの複雑度次数の指数であるという事実を明らかにするため、式(40)によって明らかに強調される。次に、この課題はSD手法では十分に軽減できないことを示す。そのために、もう一度理想的且つ簡単のために、式(40)の係数MPを無視できるように、SDが探索半径を単一のシンボルに縮小し得ることを考える。換言すれば、SDベースのQSM受信機に関連する複雑度の次数は、最善でも、次のように低減され得ることが分かる。
【数147】
【0162】
後者から、スケーラブルなQSM方式に関連して、SDの唯一の利点は、デジタルコンスタレーション濃度Mのスケーリングを可能にすることであるが、これは、対応するBERに悪影響を与えるだけではなく、システムのSEを増加させる重要な因子でもないことであると結論付けることができる。これは、QSM方式によって運ばれるビットの総数は
【数148】
であり、中程度に大きいn、T、及びPであっても、
【数149】
のようになるからである。まとめると、受信機の観点から見ると、球内検出は、スペクトル効率の高いスケーラブルなQSMの実現手段としては特に有用ではないと結論付けることができる。
【0163】
最後に、提案されるGB-ISTAの計算の複雑度に対処する。まず、式(31)~(36)から、GB-ISTA受信機が、探索からではなく、スパース復元プロセスから空間符号化ビットb及びb、すなわち、u^の非ゼロ要素の値及び場所を直接取得することが分かる。このような組み合わせ探索を除いた結果、方法3のステップの次の複雑度分析で示されるように、スケーラブルなパラメータn、T、及びPのGB-ISTAへの影響は大幅に小さくなる。
【0164】
1)方法3は、式(27)で与えられる有効行列Gを入力として受け取る。その構築には、スパースブロック対角行列
【数150】
の積を評価する必要があり、これは行ごとに2nの非ゼロ成分を含み、列ごとにT個の非ゼロ成分を有する行列
【数151】
に対しては、通常(スケーリングされたQSM方式では)T<<2nTであるため、コストは2T(2Tn)(2Tn)=8Tフロップスになる。
【0165】
2)次に、GB-ISTA受信機は評価式(31)を複数回実行する。第1のステップは
【数152】
を計算することである。方法3の1行目にしたがってαを計算するコストは、大規模システムの場合、最大固有値GGはGの構造及びエネルギーのみに依存する定数に略確実に収束するという議論の下で無視される。
【0166】
その演算を実現するのにかかるコストは、(2Tn)(2Tn)+(2Tn)+(2Tn)(2Tn)+(2Tn)フロップスであるが、しかし、図7(a)に示すように、u^(η)のスパース性はすぐに実際の値2Pに減少するため、そのステップの複雑度は、8PTn+4Tn=4Tn(2P+1)により正確に推定される。次に、ボックス化ハード閾値関数Πに必要な2Tnフロップスを含み、η回の繰り返しが必要であることを考慮すると、式(31)の各評価実行に関連する総コストは、η(4Tn(2P+1)+(2Tn)フロップスであると推定することができる。
【0167】
3)式(31)の収束後、受信機はスパース推定ベクトル
【数153】
を取得し、このベクトルから、最大値探索[44]によって無視できるコストでソフトシンボル推定値
【数154】
が抽出され、それとともに、式(32)で表されるように、
【数155】

【数156】
における位置によって与えられる、推定インデックス
【数157】
も取得される。目下のこれらの量により、式(33)によりハードシンボル推定値
【数158】
を取得するために最大√Mフロップスが消費される。
【0168】
4)式(37)から(39)によって表される要素、干渉、及び列の除去のコストが無視できることを考慮すると、受信機の次に重要なコストは、取得されたインデックスの検証である。特に、少なくともP回の実行後、位置インデックス
【数159】
が、式(36)によりインデックスサブシーケンス
【数160】
のいずれか又は両方を構築し、対応する推定インデックスベクトル
【数161】
にマッピングするのに十分な数検出されたとき、上記の推定値は最適なインデックスベクトルの集合Kに対して検証される必要がある。このような演算のコストがオーダーO(1)であると仮定すると、このステップは、Pフロップスの追加コストでGB-ISTA検出器の全体的な複雑度に寄与する。
【0169】
5)最後に、アルゴリズム3の11行目で説明されているように、GB-ISTAは、インデックスベクトル
【数162】
の推定値の対と、実部分及び虚数部分の挿入を必要とするデジタル変調されたシンボルベクトル推定値
【数163】
との両方を、Pflopsの推定コストで出力する。
【0170】
上記から、GB-ISTAの総複雑度次数は次のように推定することができる。
【数164】
【0171】
式(40)及び(42)の表現を1送信ごとに検出されるビット数で割ることによって得られる、ML及び提案されるGB-ISTA復号器のビット当たりの複雑度次数
【数165】
を、様々な設定についてスケーラブルなパラメータn、T及びPに関して図9で比較する。
【0172】
図9は、QSM受信機の複雑度に与えるスケーラブルパラメータの影響を示している。
【0173】
図9(a)は、nの関数としての固定P、様々なTを示している。
【0174】
図9(b)は、nの関数としての固定T、様々なPを示している。
【0175】
図9(c)は、Pの関数としての固定n、様々なTを示している。
【0176】
B.提案されるOS-QSM方式のBERパフォーマンス
上に示したように、ML検出よりもGB-ISTAによって得られる複雑度が大幅に低減されることを利用して、GB-ISTAを介して復号された、提案されるOS-QSM方式のBERパフォーマンスの評価を行う。一般に、我々のシミュレートされた実験は、提案されるOS-QSMが比較的多数の送信アンテナで実現可能であり、比較的少ない送信ごとの時空間リソースを使用しながら、かなり高いスペクトル効率で非常に低いE/Nで、非常に低いBERを達成できることを更に実証することを目的としている。
【0177】
図10は、SE固定のGB-ISTA検出OS-QSM方式のBERパフォーマンスに対するスケーラビリティの影響である。
【0178】
そのために、図10に示す第1のセットの結果は、P/T比を一定に保ち、すべての曲線が同じスペクトル効率を有するシステムに対応するようにMを調整して、n、T、及びPの様々な値について提案される方法のBERパフォーマンスを比較する。T=2の曲線は、示されている結果には、サブセクションIII-Bで説明されている機能強化、つまり、a)ブロックごとの球内復号可能なFDFR-STBCとは対照的に、最適なゴールデン符号、及びb)方法1で与えられる、インデックスベクトル集合Kの最適な構築の利用による改善が実際に組み込まれているが、SotAのEDA-QSM方式に対応する参照として見なすことができることに留意されたい。
【0179】
図10の結果から2つの重要な事実を把握することができる。1つ目は、スケーリングによって達成されるBERの大幅な改善は、受信アンテナの数がかなり多い(n=12)にもかかわらず起こるということである。このことは、利得が、ダイバーシティの増加に起因するだけでなく(受信ダイバーシティが既に大きいため)、OS-QSMの設計で採用された最適なFDFR-STBCの利用から得られる符号化利得に起因することを示している。そして2つ目は、示されている結果は、通常のコンピュータ(つまり、特に強力なマシンを要さなかった)を使用して、且つML又はSDベースの受信機でシミュレートするのが事実上不可能な設定で、かなり低いBERに至るまで実際にシミュレートされたものであるということである。後者の点は、n=12のシステムの曲線を含む図10の右側の結果によって強化され、提案されるGB-ISTA受信機の真の実現可能性を更に強調するのに役立つ。
【0180】
しかしながら、図10の結果に関して提起される可能性のある1つの批判は、式(14)に示すように、ここで採用されたPの値が、対応するT及びnにとって最適なものではないということである。図10で使用されたパラメータ化は、同等の条件下での直接比較を可能にするために、すべてのシステムが同じSEを有するようなものであり、これもまた、すべての曲線がSNRではなくE/Nに対してプロットされている理由でもあるということをもう一度明確にしておきたい。
【0181】
図11は、GB-ISTA検出OS-QSM方式のBERパフォーマンスに対するPをスケーリングした影響を示している。
【0182】
いずれにせよ、提案されるOS-QSMの設計と対応するGB-ISTA受信機とが、低BERと組み合わされて実現可能で最適化されたスペクトル効率を実際に達成する能力についての疑問を払拭するために、Pを式(14)で与えられる最適値まで変化させて得られた追加の結果を図11に示す。式8で与えられる達成可能なSEの表現における切り捨て演算に起因して、式(14)で与えられる値に隣接するPの値、つまりP*も最適である(それらはまったく同じSEをもたらすため)ことに留意されたい。例えば、図10の場合と同様に、n=6、T=2、及びM=4の場合、式(14)によりP=8が得られるが、値P={7,8,9}はすべて式(8)においてζ=16となる。同様に、図11の場合と同様に、P={10,11,12,13}はすべて、n=6、T=3、及びM=4の場合に最大のSEであるζ=17をもたらす。
【0183】
これらを注意した上で、図11で得られた結果に目を向けると、Pをアップスケーリングすると、BERの非常に穏やかな劣化のみが観測されることが分かり、実際には、図11に示すように、Tが大きくなるほど小さくなる。これは、システムのスペクトル効率を略2倍にするために支払う、小さくて公正な代償である。我々は、SEの最適化に向けて比率P/Tをアップスケーリングするときに観測されるわずかなBERの劣化は、n、T、又はこれらの両方をアップスケーリングした結果として、ベクトル化された受信信号のスパース性の対応する低減の結果であり、これは、より高いダイバーシティ及び符号化利得を有するシステムではそれほど重要ではない傾向があることを解明した。この傾向は実際に図11で観察可能であり、T=2をT=3に増加するとBER曲線間のギャップが狭くなる。
【0184】
図12は、これまでの空間変調方式の比較である。
【0185】
更に、提案される復号器はまた、送信方式にブロック対角性又は直交性などの設計上の制約を必要とせず、空間変調方式に固有のスパース性だけが要求されるため、送信機開発の自由度も大きくなる。換言すれば、提案される復号器は、多くの異なる符号化構造に対応することができる(柔軟性)。
【0186】
復号器は、ML手法が実行不可能なほどアンテナ数が多いと予想される任意のMIMOシステムで使用することができる。この方式は、セルラネットワーク及びV2X通信において、効率を高めるために(eMBB)使用することができる。
【0187】
図13は、ML復号によるゴールデンEDA-QSM及びオリジナルEDA-QSMの比較を示しており、ゴールデンEDA-QSM対オリジナルEDA-QSMの比較を示している。
【0188】
図14は、理論ABEPによるゴールデンEDA-QSM対オリジナルEDA-QSMの比較を示している。
【0189】
図15は、EDA-QSMのスペクトル効率に対するnの影響の比較を示している。
【0190】
図16は、EDA-QSMのスペクトル効率に対するPのnの影響を示している。
【0191】
図17は、GISTA実現可能領域におけるEDA-QSMのスペクトル効率に対する影響を示している。
【0192】
図18は、GISTA復号によるGISTAの平均繰り返し回数を示している。
【0193】
図19は、ML復号器とGISTA復号器との間の復号複雑度を示している。
【0194】
図20は、GISTA復号器とフルML復号器とのパフォーマンス比較(n 4)を示している。
【0195】
図21は、GISTA復号のパフォーマンス比較を示している。
【0196】
本出願では、QSM方式の新しい送信機及び受信機の設計であって、送信アンテナのnの数、送信インスタンスの数T、及び符号化されたM値シンボルの数Pに関するスケーラビリティと、SE、ダイバーシティ、及び符号化利得に関するそのパフォーマンス最適化とに焦点を当てた設計が提案される。この貢献は、SEの最適性を達成するために、QSM方式がn、T、及びPを拡大する必要があるが、SotAの方法では不可能であるという実証された事実によって動機付けられている。送信側においては、新しく提案されるOS-QSM方式は、その分散行列がFDFR STBCに基づいて設計されている点、及び分散行列のインデックス選択が、与えられた新しい貪欲アルゴリズムを介して実行される点で、SotAの代替策とは異なり、このことにより、送信機の時空間リソースのすべてが複数の送信にわたって均等に利用されることが確保される。次に、受信機においては、提案される技術は、QSMシグナリングのスパース構造への依拠のおかげで、既存のML又はSDベースの手法の組み合わせの性質を排除し、実現可能性の観点からシステムのスケーリングを更に可能にする新しいISTAベースの受信機に貢献する。実際、複雑度分析が提供されており、その結果、Pを指数としてT及びnTに幾何級数的複雑度を有し、スケーリングされたシナリオでは実行不可能になるML及びSD検出器とは対照的に、提案されるGB-ISTA受信機はT上で3次、P上で2次、n上でのみ1次である複雑度次数を享受していることが示される。関連文献でこれまでに示されたことのない規模の構成に対するシミュレーション結果は、提案されるOS-QSM方式及びGB-ISTA受信機の高いパフォーマンス及び実現可能性の両方を裏付けている。
図1
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図21
【手続補正書】
【提出日】2024-01-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信アンテナを構成する、最適且つスケーラブルな直交位相時空間変調(OS-QSM)コンピュータ実施方法において、
同相空間コンスタレーション内の同相空間コンスタレーションシンボルと直交位相空間コンスタレーション内の直交位相空間コンスタレーションシンボルとをそれぞれ表すように複数の送信アンテナを構成し、
前記複数の送信アンテナによって表される前記同相空間コンスタレーションシンボル及び前記直交位相空間コンスタレーションシンボルにソースデータをマッピングし、
前記方法が、結果として得られる直交位相空間変調に最大可能符号化利得をもたらす最適且つスケーラブルな直交位相空間変調方式(OS-QSM)を適用することを特徴とする、方法。
【請求項2】
範囲制限及び硬閾値法によるボックス化を介した反復縮小閾値アルゴリズム(ISTA)に対する修正が行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ボックス化ハードを介した反復縮小閾値アルゴリズム(ISTA)と、アンテナ位置インデックス及びシンボル推定値の貪欲選択と、対応するアンテナ変調ビット及びシンボル変調ビットのそれらの独立した復号とを行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
貪欲検出と並行して行われるプロセスが、所与の有限のインデックスベクトルの集合からのインデックスベクトルの有効な推定値が出力として生成されることを確保するため、及び確認された値を用いて干渉除去を適用するために、
- 前記貪欲選択からどのインデックスが取得されたかを追跡し続けながら、すべての繰り返しの前に、現在復号されているインデックスから最終確認が計算され得るか否かをチェックし、
- 前記最終確認ができない場合、先行する貪欲選択による干渉を取り除き、次の繰り返しを行う、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ゴールデン符号の一般化と、複数のユーザのオーバーラップにおいて大規模マルチユーザ干渉を発生させることなく、スパース性の高い受信信号での、空間変調と組み合わせた動作計算がなされることとを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ユーザ当たりの信号をよりスパースにしてもなお、有効なマルチユーザ干渉を増加させることなく、更に多くのユーザをオーバーラップさせることができることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
プロセッサと、揮発性及び/又は不揮発性メモリと、通信チャネルにおいて信号を受信するように適合された少なくとも1つのインターフェースとを有する通信システムの受信機(R)であって、前記不揮発性メモリが、マイクロプロセッサによる実行時に請求項1~6のいずれか一項に記載の方法を実施するように前記受信機を構成するコンピュータプログラム命令を記憶する、受信機(R)。
【請求項8】
コンピュータ上での実行時に前記コンピュータに請求項1~6のいずれか一項に記載の方法を実行させるコンピュータ実行可能命令を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項9】
請求項8のコンピュータプログラム製品を記憶及び/又は送信する、コンピュータ可読媒体。
【請求項10】
車両に受信機(R)を有する通信システムを備える車両ユニットであって、前記システムが、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法を実行するように適合される、車両ユニット。
【請求項11】
請求項10に記載の1つ以上の車両ユニットを有する車両。
【国際調査報告】