(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】環状ペプチドを含む放出制御型の局所注射用組成物とその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/13 20060101AFI20240709BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240709BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20240709BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240709BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
A61K38/13
A61K47/34
A61K9/16
A61K9/10
A61P17/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520829
(86)(22)【出願日】2022-04-07
(85)【翻訳文提出日】2023-12-13
(86)【国際出願番号】 KR2022095079
(87)【国際公開番号】W WO2022265481
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0076648
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0008307
(32)【優先日】2022-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523469526
【氏名又は名称】オリエントバイオ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ORIENTBIO INC.
【住所又は居所原語表記】322, Galmachi-ro, Jungwon-gu, Seongnam-si, Gyeonggi-do 13201, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】キム,サンニョン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ジェジン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA22
4C076AA31
4C076BB16
4C076CC18
4C076DD38D
4C076EE06
4C076EE24A
4C076EE26A
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4C076EE32F
4C076EE36A
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4C076EE41A
4C076EE43A
4C076EE48A
4C076FF02
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4C076FF16
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4C076GG26
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA09
4C084BA18
4C084BA24
4C084CA05
4C084CA59
4C084DA11
4C084MA05
4C084MA23
4C084MA41
4C084MA66
4C084NA06
4C084NA12
4C084ZA921
4C084ZA922
(57)【要約】
本発明は、シクロスポリン3位誘導体と生分解性高分子とを含む粒子、それを含む放出制御型の局所注射用組成物と、その脱毛予防および発毛促進用途に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)で表されるシクロスポリン3位誘導体及び生分解性高分子を含む放出制御型粒子:
前記Cは、-N(R
1)-CH(R
2)-C(=O)-で表されるアミノ酸、
前記R
1は、水素またはメチル基、
前記R
2は、X-R’またはR’であり、前記Xは酸素(O)または硫黄(S)、R’は水素またはC1~C6の直鎖または分岐鎖のアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基;あるいはアリール基であり、
前記アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基の各炭素は、アミノ、ヒドロキシ、ハロゲン、ハロアルキル、エステル、アルコキシ、シアノ、ナイトロ、アルキルアミノおよびジアルキルアミノからなる群より選択される1ないし3個の置換基によって置換または非置換される。
【請求項2】
前記Xは硫黄(S)である、請求項1に記載の放出制御型粒子。
【請求項3】
前記シクロスポリン3位誘導体は、
[2-メチルチオ-サルコシン
3]シクロスポリンA;
[2-ジメチルアミノ-エチルチオ-サルコシン
3]シクロスポリンA;
[2-(4-メチルベンゼンチオ)サルコシン
3]シクロスポリンA;
[N-メチル-アミノ酪酸
3]シクロスポリンA;
[N-メチル-ノルバリン
3]シクロスポリンA;
[2-(メチルアミノ)-ヘキサ-4-イノイル
3]シクロスポリンA;
[2-(メチルアミノ)-ペント-4-イノイル
3]シクロスポリンA;
[N-メチル-O-プロフェニル-セリン
3]シクロスポリンA;
[N-メチル-セリン
3]シクロスポリンA;または、
[N-メチル-アラニン
3]シクロスポリンAである、
請求項1に記載の放出制御型粒子。
【請求項4】
前記シクロスポリン3位誘導体は、
[2-メチルチオ-サルコシン
3]シクロスポリンAである、
請求項1に記載の放出制御型粒子。
【請求項5】
前記生分解性高分子は、天然高分子または合成高分子である、
請求項1に記載の放出制御型粒子。
【請求項6】
前記天然高分子は、カルボキシメチルセルロース(carboxymethylcellulose)、アルギン(algin)、アルギン酸(alginic acid)、アルギネート(alginate)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、ポリペプチド、タンパク質、ゼラチン、コラーゲン(collagen)、アルブミン(albumin)、デキストラン(dextran)、デンプン(starch)、カゼイン、キチン誘導体、キトサン(chitosan)および小腸粘膜下組織からなる群より選択された1つ以上である、
請求項5に記載の放出制御型粒子。
【請求項7】
前記合成高分子は、ポリエチレン(Polyethylene、PEA)、ポリエチレングリコール(Polyethyleneglycol、PEG)、ポリカプロラクトン(Polycaprolactone、PCL)、ポリアルキルカーボネート(Polyalkylcarbonate)、ポリアミノ酸(Polyamino acid)、ポリヒドロキシ酪酸(Polyhydroxybutyric acid)、ポリオルトエステル(Polyorthoester)、ポリ酸無水物(Polyanhydride)、プルロニック(Poly(ethylene oxide)poly(propylene oxide)poly(ethylene oxide)、Pluronic)、ポリ乳酸(Polylactide、PLA)、ポリグリコール酸(Polyglycolide、PGA)、ポリブチレンサクシネート(Polybutylene succinate、PBS)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバレレート(Poly(3-hydroxybutyrate-co-3-hydroxyvalerate、PHBV)、ポリブチレンテレフタレート(Polybutylene terephthalate、PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(Polytrimethylene terephthalate、PTT)、ポリエチレンナフタレン(polyethylene naphthalate、PEN)、ポリ乳酸-co-グリコール酸(poly(D,L-lactic-co-glycolic acid)、PLGA)、(ポリ乳酸-co-グリコール酸)-グルコース(Polylactide-co-glycolide-glucose、PLGA-glucose)およびメトキシポリエチレングリコール-(ポリカプロラクトン-co-ポリ乳酸)(MPEG-(PCL-co-PLLA)からなる群より選択された1つ以上である,
請求項5に記載の放出制御型粒子。
【請求項8】
前記生分解性高分子は、ポリ乳酸-co-グリコール酸(poly(lactic-co-glycolic acid)、PLGA);またはこれを疎水性ブロックとする二重または三重ブロック共重合体である、
請求項1に記載の放出制御型粒子。
【請求項9】
前記ポリ乳酸-co-グリコール酸(poly(lactic-co-glycolic acid)、PLGA)は、ラクチドとグリコール酸のモノマーのモル比が90:10~40:60である、
請求項8に記載の放出制御型粒子。
【請求項10】
前記ポリ乳酸-co-グリコール酸の末端基(end group)は、エステル(中性電荷)またはカルボン酸(負電荷)である、
請求項8に記載の放出制御型粒子。
【請求項11】
前記ポリ乳酸-co-グリコール酸は、分子量が4,000~240,000Daである、
請求項8に記載の放出制御型粒子。
【請求項12】
前記ポリ乳酸-co-グリコール酸は、ポリL-リジン(Poly lysine)が導入されたカチオン性グラフト共重合体である、
請求項8に記載の放出制御型粒子。
【請求項13】
前記シクロスポリン3位誘導体と生分解性高分子の重量比は、5:95~90:10である、
請求項1に記載の放出制御型粒子。
【請求項14】
前記粒子の平均直径が0.01~300μmである、
請求項1に記載の放出制御型粒子。
【請求項15】
前記粒子の平均ゼータ電位は+2mV以上、または-2mV以下である,
請求項1に記載の放出制御型粒子。
【請求項16】
前記粒子は、シクロスポリン3位誘導体を5~40%(w/w)含む,
請求項1に記載の放出制御型粒子。
【請求項17】
請求項1に記載の放出制御型粒子を含む脱毛予防または発毛促進用組成物。
【請求項18】
前記脱毛は、男性型脱毛(androganetic alopecia、AGA)、女性型脱毛(female-pattern hair loss)、自己免疫疾患の円形脱毛(alopecia areata)、休止期脱毛(telogen effluvium)および瘢痕性脱毛症(cicatricial alopecia)からなる群より選択された一つである、
請求項17に記載の脱毛予防または発毛促進用組成物。
【請求項19】
前記組成物は、皮膚病変内(Intralesional)、頭皮の皮内(intradermal)、または頭皮の皮下脂肪層(subcutaneous)への局所投与用である、
請求項17に記載の脱毛予防または発毛促進用組成物。
【請求項20】
前記組成物は、局所注射製剤、デポ注射(depot injection)、または皮膚移植剤(implant)の剤形である、
請求項17に記載の脱毛予防または発毛促進用組成物。
【請求項21】
前記組成物は、注射用水、等張化剤および懸濁化剤からなる群より選択された1つ以上をさらに含む、
請求項17に記載の脱毛予防または発毛促進用組成物。
【請求項22】
前記注射用水は、食塩水、滅菌水、リンガー液、緩衝食塩水、アルブミン注射溶液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール及びエタノールからなる群より選択された1つ以上である、
請求項21に記載の脱毛予防または発毛促進用組成物。
【請求項23】
前記等張化剤(isotonicity agent)は、D-マンニトール(D-Mannitol)、マルチトール(Maltitol)、ソルビトール(Sorbitol)、ラクチトール(Lactitol)、キシリトール(Xylitol)及び塩化ナトリウム(Sodium chloride)からなる群より選択された1つ以上である、
請求項21に記載の脱毛予防または発毛促進用組成物。
【請求項24】
前記懸濁化剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Soduim Carboxymethylcellulose)、ポリソルベート80(Polysorbate 80)、デンプン(starch)、デンプン誘導体、多価アルコール、キトサン(chitosan)、キトサン誘導体、セルロース(cellu)、コラーゲン(collagen)、ゼラチン(gelatin)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid、HA)、アルギン酸(alginic acid)、アルギン(algin)、ペクチン(pectin)、カラギーナン(carrageenan)、コンドロイチン(chondroitin)、コンドロイチン硫酸(chondroitin sulfate)、デキストラン(dextran)、デキストラン硫酸(dextran sulfate)、ポリリジン(polylysine)、タイチン(titin)、フィブリン(fibrin)、アガロース(agares)、フルラン(fluran)およびキサンタンガム(xanthan gum)からなる群より選択された一つ以上である、
請求項21に記載の脱毛予防または発毛促進用組成物。
【請求項25】
下記のステップを含む、シクロスポリン3位誘導体を担持した放出制御型粒子の製造方法:
a)シクロスポリン3位誘導体および生分解性高分子を溶媒に溶解して薬物-高分子分散相を製造するステップ;
b)前記分散相を界面活性剤を含む連続相(continuous phase)と混合してエマルジョンを製造するステップ;と、
c)調製した前記エマルジョンに焼入媒(quenching medium)を混合と撹拌して前記分散相の溶媒を除去し、シクロスポリン3位誘導体を担持した粒子を生成するステップ。
【請求項26】
前記生分解性高分子は、ポリ乳酸-co-グリコール酸(poly(lactic-co-glycolic acid)、PLGA);あるいは、これを疎水性ブロックとする二重または三重ブロック共重合体である、
請求項25に記載のシクロスポリン3位誘導体を担持した放出制御型粒子の製造方法。
【請求項27】
前記分散相の溶媒は、ジクロロメタン(Dichloromethane)、クロロホルム(Chloroform)、アセトニトリル(Acetonitrile)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(Dimethylformaldehyde)、酢酸エチル(Ethylacetate、EA)、酢酸ブチル、ギ酸エチル(Ethyl formate)、酢酸イソプロピル(Isopropylacetate)、ギ酸イソプロピル(Isopropyl formate)、ジエチルエーテル(Diethyl ether)およびグリコフロール(Glycofurol)からなる群より選択された1つ以上である、
請求項25に記載のシクロスポリン3位誘導体を担持した放出制御型粒子の製造方法。
【請求項28】
前記分散相の溶媒は、共溶媒としてメタノール、エタノール、アセトン、イソプロパノール、ジエチルエーテル、クロロホルム、酢酸エチル、DMSO及びアセトニトリルからなる群より選択された1つ以上をさらに含む、
請求項25に記載のシクロスポリン3位誘導体を担持した放出制御型粒子の製造方法。
【請求項29】
前記a)ステップの分散相は、放出制御剤をさらに含む、
請求項25に記載のシクロスポリン3位誘導体を担持した放出制御型粒子の製造方法。
【請求項30】
前記放出制御剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリル モノオレイン(glycerylmonooleate)、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリビニルアルコール、ポロキサマー、ポリエチレングリコール、パルミトステアリン酸グリセリル(glyceryl palmitostearate)、安息香酸ベンジル(benzyl benzoate)、オレイン酸エチル(ethyl oleate)、α‐シクロデキストリン、β‐シクロデキストリン、γ‐シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルβ‐シクロデキストリン、tween 80、span 20、PEG 400、Mrij 52、Brij 58、poloxamer P124 およびSLSからなる群より選択された1つ以上の親水性放出制御剤である、
請求項29に記載のシクロスポリン3位誘導体を担持した放出制御型粒子の製造方法。
【請求項31】
前記放出制御剤は、綿実油、レシチン、ヒマシ油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、ゴマ油、大豆油およびピーナッツ油からなる群より選択された1つ以上の親油性放出制御剤である、
請求項29に記載のシクロスポリン3位誘導体を担持した放出制御型粒子の製造方法。
【請求項32】
前記連続相の界面活性剤は、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、レシチン、ゼラチン、キトサン、オイドラギット(Eudragit)、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポロキサマー、スパン(span)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、Cremophor、Myrj52、Brij58、cyclodexterins、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、エステルアミン、直鎖状ジアミンおよび脂肪族アミンからなる群より選択された1つ以上である、
請求項25に記載のシクロスポリン3位誘導体を担持した放出制御型粒子の製造方法。
【請求項33】
前記連続相の界面活性剤はポリビニルアルコールである、
請求項25に記載のシクロスポリン3位誘導体を担持した放出制御型粒子の製造方法。
【請求項34】
連続相の界面活性剤は、スパン(span)、ラブラゾール(labrasol)、レオドール(rheodol)MO-60、グリセリルモノオレイン(glycerylmonooleate)およびトリアセチン(triacetin)からなる群より選択された1つ以上である、
請求項25に記載のシクロスポリン3位誘導体を担持した放出制御型粒子の製造方法。
【請求項35】
前記連続相の界面活性剤は、連続相内に0.1~20%(w/v)で含まれる、
請求項25に記載のシクロスポリン3位誘導体を担持した放出制御型粒子の製造方法。
【請求項36】
前記b)ステップの分散相と連続相の混合比は、1:5~1:50の体積比である、
請求項25に記載のシクロスポリン3位誘導体を担持した放出制御型粒子の製造方法。
【請求項37】
前記焼入媒は、水、メタノール、エタノール、プロパノール、酢酸エチル、PVA(ポリビニルアルコール)、またはこれらの組み合わせである、
請求項25に記載のシクロスポリン3位誘導体を担持した放出制御型粒子の製造方法。
【請求項38】
前記焼入媒は、エマルジョンの1~100倍を混合する、
請求項25に記載のシクロスポリン3位誘導体を担持した放出制御型粒子の製造方法。
【請求項39】
前記c)ステップは、機械的撹拌、高圧乳化、フルイドベッド、静的モーター、超音波、メンブレン、ノズル噴射、ドリッピング(dripping)から選択された乳化方法によって行われる、
請求項25に記載のシクロスポリン3位誘導体を担持した放出制御型粒子の製造方法。
【請求項40】
前記c)ステップの後、
d)得られた前記シクロスポリン3位誘導体担持粒子を分離するステップをさらに含む、
請求項25に記載のシクロスポリン3位誘導体を担持した放出制御型粒子の製造方法。
【請求項41】
前記d)ステップの後、
e)分離された粒子を真空乾燥または凍結乾燥するステップをさらに含む、
請求項40に記載のシクロスポリン3位誘導体を担持した放出制御型粒子の製造方法。
【請求項42】
前記真空乾燥は30~40℃の温度で行われ、前記凍結乾燥は-30~-40℃で行われる、
請求項41に記載のシクロスポリン3位誘導体を担持した放出制御型粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状ペプチドを含む放出制御型の局所注射用組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人体の毛髪は成長期(anagen)、退行期(catagen)、休止期(telogen)を経て成長、脱落する。脱毛症とは、成長期の毛髪が減少し、退行期または休止期の毛髪が増加して脱落する毛髪の数が異常に多くなることを意味する。脱毛の原因は男性ホルモン作用過剰、血液循環不良、皮脂分泌過剰、細菌感染、遺伝的要因、老化、ストレスなどが知られている。特に男性型脱毛症(androgenetic alopecia、AGA)は遺伝的要因とアンドロゲンによって引き起こされる脱毛である。
【0003】
免疫抑制剤であるシクロスポリンA(Cyclosporine A、CsA)は、毛髪成長期を誘導し、退行期を阻害する効果がミノキシジルおよびフィナステリドより高いことが示されたが、全身に作用した時には高血圧、頭痛、免疫低下などの副作用がある。
【0004】
シクロスポリンAの欠点を克服するために、シクロスポリンAを高分子ベースの放出制御薬物送達システムに適用して局所投与する方法が研究された。高分子ベースの放出制御薬物送達システムは、薬物の放出速度を制御し、全身作用による薬物の毒性を減らし、治療効率を大幅に高めることができる。しかし、従来の高分子ベースの薬物送達システムにシクロスポリンAを搭載すると、イニシアルバースト(initial burst)が起こり、持続的で安定した放出が困難である。イニシアルバースト現象は、薬物のかなりの量が非常に短時間、例えば数時間または1~2日以内に放出することを意味する。
【0005】
したがって、局所投与したシクロスポリンAファミリーの薬物が長期にわたって安定に放出することにより、全身副作用および投与回数を減らすことができ、脱毛の程度および種類に応じて薬物の放出速度が調節される製剤が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、シクロスポリン3位誘導体と生分解性高分子とを含む、放出制御型の局所注射用組成物と、それを用いた脱毛予防および発毛促進方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様は、シクロスポリン3位誘導体および生分解性高分子を含む放出制御型粒子を提供する。
【0008】
シクロスポリンA(C62H111N11O12)は、11個のアミノ酸が環構造を成している。そのうちの7つのアミノ酸はN-メチル化され、その外の4つのアミノ酸はN-メチル化されていない。N-メチル化されていない窒素原子に結合した水素は分子内のカルボニル基と水素結合し、これにより水分子との相互作用が困難であるため、シクロスポリンAは水にほとんど溶解しない難溶性薬物である。シクロスポリンAは分子量が非常に大きく(1,202,63Da)、疎水性が強く、水溶解度(7.3μg/ml、37℃)が低いため、経口投与時の生体利用率が30%以下で吸収率が非常に低い問題点がある。
【0009】
シクロスポリンAは、下記構造式1で表す。
前記式中、MeBmtはN-メチル-(4R)-4-[(E)-2-ブテンイル]-4-メチル-L-トレオニン(N-methyl-(4R)-4-[(E)-2-butenyl]-4-methyl-L-threonine)、AbuはL-アミノ酪酸(L-aminobutyric acid)、Sarはサルコシン(Sarcosine)、MeLeuはN-メチル-L-ロイシン(N-methyl-L-leucine)、ValはL-バリン(L-valine)、AlaはL-アラニン(L-alanine)、DAlaはD-アラニン(DAlanine)、MeValはN-メチル-L-バリン(N-methyl-L-Valine)である。
【0010】
前記シクロスポリンAのアミノ酸の形態は特に言及しない限り、L-配向(L-configuration)であり、アミノ酸残基番号は構造式1で示すように、MeBmtを1番とし、時計回りの順に最後のMeVal(N-メチル-L-バリン(N-methyl-L-Valine))を番号11とした。シクロスポリンAおよびその誘導体の命名法は、Helv.Chim.Acta、1987;70を参照する。
【0011】
前記シクロスポリン3位誘導体は、3位残基のサルコシンが他の残基で置換された誘導体を意味する。例えば、シクロスポリンAの3位残基であるサルコシンが[2-メチルチオ-サルコシン3]で置換された場合、[2-メチルチオ-サルコシン3]シクロスポリンA([2-methylthio-Sar3]Cyclosporine A)と命名する。本明細書において、[D-2-メチルチオ-サルコシン3]シクロスポリンA([D-2-methylthio-Sar3]Cyclosporine A)はOND-1と呼び、化学式はC63H113N11O12S、MWは1248.70である。
【0012】
前記シクロスポリン3位誘導体は、下記化学式1で表される。
【0013】
前記Cは、-N(R1)-CH(R2)-C(=O)-で表されるアミノ酸である。
【0014】
前記R1は、水素またはメチル基であり得る。
【0015】
前記R2は、水素;またはC1~C6の直鎖または分岐鎖のアルキル基(alkyl)、アルケニル基(alkenyl)、アルキニル基(alkynyl);あるいは、アリール基(aryl)であり得る。前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びアリール基の各炭素は、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、ハロアルキル、エステル、アルコキシ、シアノ、ナイトロ、アルキルアミノ、及びジアルキルアミノからなる群より選択された1つないし3つの置換基で置換または非置換される。前記アリール基はフェニル基であり得る。
【0016】
前記R2はX-R’であってもよく、Xは酸素(O)または硫黄(S)であってもよく、R’は水素またはC1~C6の直鎖または分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基であり得る。前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基において各炭素は、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、ハロアルキル、エステル、アルコキシ、シアノ、ナイトロ、アルキルアミノおよびジアルキルアミノからなる群より選択された1つないし3つの置換基で置換または非置換される。
【0017】
前記Xは硫黄であってもよく、R’はメチル基であるか、またはアミノ、ヒドロキシ、ハロ、ハロアルキル、エステル、アルコキシ、シアノ、ナイトロ、アルキルアミノおよびジアルキルアミノからなる群より選択された1つないし3つの置換基で置換されたメチル基であり得る。
【0018】
前記Cは、Dアミノ酸またはLアミノ酸である。
【0019】
前記シクロスポリン3位誘導体は、[2-メチルチオ-サルコシン3]シクロスポリンA([2-(4-methylbenzenethio)Sar3]Cyclosporine A);[2-ジメチルアミノ-エチルチオ-サルコシン3]シクロスポリンA;[N-メチル-アミノ酪酸3]シクロスポリンA;[N-メチル-ノルバリン3]シクロスポリンA;[2-(メチルアミノ)-ヘキサ-4-イノイル3]シクロスポリンA;[2-(メチルアミノ)-ペント-4-イノイル3]シクロスポリンA;[N-メチル-O-プロフェニル-セリン3]シクロスポリンA;[N-メチル-セリン3]シクロスポリンA;[メチルアラニン3]シクロスポリンA;[N-メチル-D-ノルバリン3]シクロスポリンA、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0020】
前記シクロスポリン3位誘導体は非晶形(amorphous)であり得る。薬物の物理的状態は結晶形、非結晶形、またはその複合形態で存在し、製剤の薬物放出速度に影響を及ぼす重要な性質の一つである。後述する実験例において、シクロスポリン3位誘導体は非結晶形であり、高分子との相互作用が優秀であることを確認した。
【0021】
「放出制御型粒子」という用語は、シクロスポリン3位誘導体と生分解性高分子の比率、製造条件、生分解性高分子の物性などを調節し、粒子内の薬物の放出量または放出時間が調節される粒子を意味する。前記放出制御型粒子は、シクロスポリン3位誘導体薬物と生分解性高分子との相互作用により、イニシアルバーストのない優れた持続放出が達成される。前記相互作用は、ファンデルワールス力または水素結合などの分子間力であり得、これはフーリエ変換赤外分光法(FT-IR)または示差走査熱量計(DSC)によって確認することができる。後述する実験例において、前記粒子はシクロスポリン3位誘導体とPLGAが結合してアミド1バンドである1622cm-1ピーク(アミドC=O)とPLGAのエステル結合の1746cm-1ピーク(エステルC=O)のシフトが起こり、シクロスポリン3位誘導体の固有の融点またはガラス転移温度が変化した。しかし、シクロスポリン3位誘導体と高分子を単に物理的に混合した混合物はこのような変化がなかった。これは、放出制御型粒子内のシクロスポリン3位誘導体の薬物と高分子がファンデルワールス力または水素結合などの分子間力によって強く結合したことを意味する。
【0022】
前記生分解性高分子は、合成高分子または天然高分子である。
【0023】
前記合成高分子は、ポリエチレン(Polyethylene、PEA)、ポリエチレングリコール(Polyethyleneglycol、PEG)、ポリカプロラクトン(Polycaprolactone、PCL)、ポリアルキルカーボネート(Polyalkylcarbonate)、ポリアミノ酸(Polyamino acid)、ポリヒドロキシ酪酸(Polyhydroxybutyric acid)、ポリオルトエステル(Polyorthoester)、ポリ酸無水物(Polyanhydride)、プルロニック(Poly(ethylene oxide)poly(propylene oxide)poly(ethylene oxide)、Pluronic)、ポリ乳酸(Polylactide、PLA)、ポリグリコール酸(Polyglycolide、PGA)、ポリブチレンサクシネート(Polybutylene succinate、PBS)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバレレート(Poly(3-hydroxybutyrate-co-3-hydroxyvalerate、PHBV)、ポリブチレンテレフタレート(Polybutylene terephthalate、PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(Polytrimethylene terephthalate、PTT)、ポリエチレンナフタレン(polyethylene naphthalate、PEN)、ポリ乳酸-co-グリコール酸(poly(D,L-lactic-co-glycolic acid、PLGA))、(ポリ乳酸-co-グリコール酸)-グルコース(Polylactide-co-glycolide-glucose、PLGA-glucose)およびメトキシポリエチレングリコール-(ポリカプロラクトン-co-ポリ乳酸)(MPEG-(PCL-co-PLA)からなる群より選択された1つ以上であり得る。
【0024】
前記合成高分子は、ポリ乳酸-co-グリコール酸(polylactic-co-glycolic acid、PLGA);または、これを疎水性ブロックとする二重または三重ブロック共重合体であり得る。ポリ乳酸-co-グリコール酸(PLGA)は、体内で正常代謝過程であるクエン酸回路(citric acid cycle)によって人体無害な水と二酸化炭素に分解する優れた生体適合性を有している。
【0025】
前記生分解性高分子は、脱毛疾患治療剤が封入された球状粒子を形成し得る。
【0026】
前記生分解性高分子の種類および組成を変えると、体内での分解速度が変化し薬物放出速度を制御することができる。例えば、ポリ乳酸-co-グリコール酸(PLGA)は、ポリ乳酸(PLA)とポリグリコール酸(PGA)の成分比によって人体内での分解速度が変化するので、成分比を調節して薬物放出速度を制御することができる。グリコール酸は乳酸より疎水性が低いため、PLGA共重合体のグリコール酸の比が増加すると高分子の加水分解速度が増加し、薬物放出速度が速くなる。
【0027】
前記ポリ乳酸-co-グリコール酸(PLGA)は、乳酸モノマー(LA)とグリコール酸モノマー(GA)のモル比が90:10~40:60または85:15~50:50であり、例えば、50:50、65:35、75:25、または85:15であるが、これらに限定されない。
【0028】
前記生分解性高分子は、特定のLA:GAモル比を有する単一のポリ乳酸-co-グリコール酸(PLGA)であっても良く、それぞれ異なるLA:GAモル比を有するポリ乳酸-co-グリコール酸(PLGA)の混合物であっても良い。
【0029】
前記生分解性高分子は、LA:GAのモル比が50:50のPLGAとLA:GAのモル比が75:25のPLGAとの混合;LA:GAのモル比が50:50のPLGAとLA:GAのモル比が85:15のPLGAの混合;LA:GAのモル比が75:25のPLGAとLA:GAのモル比が85:15のPLGAの混合;あるいは、LA:GAのモル比が50:50のPLGA、LA:GAのモル比が75:25のPLGA、およびLA:GAのモル比が85:15のPLGAの混合であり得る。
【0030】
前記ポリ乳酸-co-グリコール酸(PLGA)は、末端基(end group)がエステルまたはカルボン酸であり得る。
【0031】
前記ポリ乳酸-co-グリコール酸(PLGA)は、分子量が4,000Da~240,000Da、4,000Da~75,000Da、4,000Da~15,000Da、7,000Da~17,000Da、または50,000Da~75,000Daであり得る。
【0032】
前記粒子の薬物放出速度は、生分解性高分子の分子量に応じて変わり得る。低分子量のPLGAは多孔質粒子を形成し、高分子分解速度、薬物放出速度が速い。高分子量のPLGAは高密度粒子を形成し、S字型の遅い放出プロファイルを有し得る。薬物の製造に使用されるPLGAの分子量および濃度を高めると、薬物の高い封入率、大きな粒径および遅い薬物放出速度を達成することができる。前記末端基および分子量に加えて、結晶度およびガラス転移温度(Tg)などの他の物理的特性も分解速度に間接的に影響を与える。
【0033】
前記PLGAは、鏡像異性体(poly(D-lactic-co-glycolic acid、またはpoly(L-lactic-co-glycolic acid)のいずれか、またはラセミ(poly(D,L-lactic-co-glycolic acid))であり得る。
【0034】
前記PLGAは、ラクチドとグリコリドのモル比、末端基、分子量に応じて様々なPLGAを用いることができる。前記PLGAは、例えば、PCAS社のExpansorb製品群の10P001(50:50);10P002(75:25);10P003(75:25);10P007(90:10);10P008(85:15);10P009(85:15E);10P010(65:35E);10P016(50:50E);10P017(50:50);10P019(50:50E);10P020(85:15);10P022(50:50);10P023(90:10);10P024(50:50);10P025(90:10)、Aldrich Evonik Rohm Pharma GmbH社のResomer製品群のRG502(50:50);RG502H(50:50);RG503(50:50);RG503H(50:50);RG504(50:50);RG504H(50:50);RG505(50:50);RG653H(65:35);RG752H(75:25);RG756S(75:25)、Purac Biomaterials社のPurasorb製品群のPDLG7502(75:25);PDLG7502A(75:25);PDLG7507(75:25);PDLG5002(50:50);PDLG5002A(50:50);PDLG5004(50:50);PDLG5004A(50:50);PDLG5010(50:50)、Wako Pure Chemical Industries社のPLGA-7505(75:25);PLGA-7510(75:25);PLGA-7515(75:25);PLGA-7520(75:25);PLGA-5005(50:50);PLGA-5010(50:50);PLGA-5015(50:50)があるが、特に限定されない。
【0035】
前記ポリ乳酸-co-グリコール酸(PLGA)は、ポリリシン(Poly L-Lysine、PLL)が導入されたカチオン性グラフトコ共重合体であり得る。PLGAにPLLが導入またはグラフトされると、カチオン性が増加して細胞膜への付着性が増加し、これは本発明が属する技術分野の当業者によく知られている。
【0036】
前記天然高分子は、カルボキシメチルセルロース(carboxymethylcellulose、CMC)、アルギン(algin)、アルギン酸(alginic acid)、アルギネート(alginate)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、ポリペプチド、タンパク質、ゼラチン、コラーゲン(collagen)、アルブミン(albumin)、デキストラン(dextran)、デンプン(starch)、カゼイン、キチン誘導体、キトサン(chitosan)および小腸粘膜下組織(small intestinal submucosa、SIS)からなる群より選択された1つ以上であり得る。
【0037】
前記シクロスポリン3位誘導体と生分解性高分子の重量比は、5:95~90:10、10:90~90:10、20:80~80:20、または20:80~70:30であってよく、一実施形態において、10:90~60:40または20:80~60:40であるが、これらに限定されない。前記重量比において、イニシアルバースト(initial burst)現象が抑制され、薬物が1週間から4週間以上の期間にわたって安定して放出され、副作用が減少する。
【0038】
本発明における「粒子」は、ナノサイズまたはマイクロサイズの粒子を意味する。本明細書における粒子は、マイクロスフェア(microsphere)、ナノスフェア(nanosphere)、ナノ粒子(nanoparticle)、マイクロ粒子(microparticle)と互いに交換可能に使用される。前記粒子の平均直径は、0.01~300μm、0.1~200μm、0.1~100μm、または0.1~60μmであり得る。
【0039】
前記粒子の平均ゼータ電位(Zeta potential)は、正または負の値である。一実施形態によれば、前記粒子の平均ゼータ電位(Zeta potential)は、±2mV以上、±10mV以上、または±30mV以上であり得る。前記粒子の平均ゼータ電位は、+2mV以上-2mV以下、+10mV以上-10mV以下、または+30mV以上-30mV以下であり得る。「ゼータ電位」(Zeta potential)とは、粒子周辺の電気二重層の厚さを間接的に計算した値であり、粒子間で反発力や引力に基づく正電荷密度差に由来する電気力学的な電位差をいい、電気二重層が厚いほど粒子間に静電気的斥力が発生し、互いに凝集しなくなる。前記粒子の平均ゼータ電位が前記範囲であると、粒子間の凝集が抑制されて分散液の安定性が確保される。
【0040】
前記粒子の表面は滑らかな球状であり得る。粒子の表面が滑らかであることは、表面に細孔がないか非常に少ないことを意味する。粒子の表面が滑らかであれば、細孔による薬物拡散およびイニシアルバーストを抑制され、生分解性高分子の分解によってのみ薬物放出が行われる。したがって、粒子表面が滑らかであることは、放出制御剤として適切な形態学的特性を有することを意味する。後述する実験例によれば、本発明で製造したPLGA放出制御型組成物に含まれた粒子は表面が滑らかな球状であるため、イニシアルバーストが抑制され放出制御が優秀である。
【0041】
前記粒子には、シクロスポリン3位誘導体が5~60%(w/w)、または15~40%(w/w)含まれ得る。前記シクロスポリン3位誘導体の含量において、薬物のイニシアルバーストが抑制され、意図した期間中に安定した放出が可能である。
【0042】
他の実施形態は、前記放出制御型粒子を含む脱毛防止または発毛促進用組成物を提供する。
【0043】
前記組成物は、局所投与用の注射製剤であり得る。
【0044】
前記組成物は、脱毛治療または予防用組成物であり得る。
【0045】
前記組成物は、局所投与時にシクロスポリン3位誘導体が1週間以上持続的に放出され、例えば、1週間~4週間、2週間~4週間、または3週間~4週間持続的に放出される。
【0046】
脱毛が起こった部位に薬物を局所投与して十分な薬効を示すためには、薬物が全身に拡散しないことが重要である。後述する実験例によれば、本発明の組成物は局所投与時の皮膚残存量が高かったため、脱毛予防または発毛促進効果に優れる。
【0047】
前記脱毛は、男性型脱毛(androgenetic alopecia、AGA)、女性型脱毛(female-pattern hair loss)、円形脱毛(alopecia areata)、休止期脱毛(telogen effluvium)および瘢痕性脱毛症(cicatricial alopecia)からなる群より選択されたいずれかであり得る。
【0048】
「予防」という用語は、本発明による組成物の投与によって疾患または異常症状が抑制または遅延される全ての行為を意味する。
【0049】
前記組成物は、局所皮膚病変内(Intralesional)に注射で投与することができる。具体的に、発毛を促進しようとする頭皮の皮内(Intradermal)またはメソセラピー(mesotherapy)で注射したり、あるいは毛包の近くの皮下脂肪層(subcutaneous)に注射することができる。前記投与は、毛包の近くに真皮投与または皮下投与することであり得る。
【0050】
前記組成物はメソセラピー投与用であり得る。「メソセラピー(mesotherapy)」は、目標部位に直接薬物を注入する注射療法であり、皮膚の中間層(皮膚真皮層)に微細な注射器で少量の薬物を注入することで効果を高め、持続期間を増やしながらも副作用を最小化する注射治療を意味する。
【0051】
前記組成物は、注射用水、等張化剤(isotonic agent)および懸濁化剤(suspending agent)からなる群より選択された1つ以上をさらに含み得る。一実施形態によれば、本発明における局所注射用の放出制御型組成物は、シクロスポリン3位誘導体を含むPLGA粒子が均一に懸濁された懸濁液である。前記懸濁液は、前記組成物と注射用水、等張化剤および懸濁化剤とからなる群より選択された1つ以上を混合して調製することができる。
【0052】
前記注射用水は、例えば、食塩水、滅菌水、リンガー液、緩衝食塩水、アルブミン注射用溶液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロールおよびエタノールからなる群より選択された1つ以上であるが、これらに限定されない。
【0053】
前記等張化剤(isotonic agent)は、例えば、D-マンニトール(D-Mannitol)、マルチトール(Maltitol)、ソルビトール(Sorbitol)、ラクチトール(Lactitol)、キシリトール(Xylitol)及び塩化ナトリウム(Sodium chloride)からなる群より選択された1つ以上であるが、これらに限定されない。
【0054】
前記懸濁化剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Soduim Carboxymethylcellulose)、ポリソルベート80(Polysorbate 80)、デンプン(starch)、デンプン誘導体、多価アルコール類、キトサン(chitosan)、キトサン誘導体、セルロース(cellulose)、コラーゲン(collagen)、ゼラチン(gelatin)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid、HA)、アルギン酸(alginic acid)、アルギン(algin)、ペクチン(pectin)、カラギーナン(carrageenan)、コンドロイチン(chondroitin)、コンドロイチン硫酸(chondroitin sulfate)、デキストラン(dextran)、デキストラン硫酸(dextran sulfate)、ポリリジン(polylysine)、タイチン(titin)、フィブリン(fibrin)、アガロース(agares)、フルラン(fluran)およびキサンタンガム(xanthan gum)からなる群より選択された1つ以上であるが、これらに限定されない。
【0055】
前記組成物は、局所注射剤型、デポ注射(Depot Injection)、または皮膚移植(implant)用として製剤化されたものであり得る。
【0056】
他の実施形態は、下記のステップを含むシクロスポリン3位誘導体を担持した放出制御型粒子の製造方法を提供する。
【0057】
a)シクロスポリン3位誘導体および生分解性高分子を溶媒に溶解して薬物-高分子分散相を製造するステップ;
【0058】
b)前記分散相を界面活性剤(乳化剤)を含む連続相(continuous phase)と混合してエマルジョンを製造するステップ;と
【0059】
c)調製した前記エマルジョンに焼入媒(quenching medium)を混合と撹拌して前記分散相の溶媒を除去し、シクロスポリン3位誘導体を担持した粒子を生成するステップ。
【0060】
前記製造方法において、シクロスポリン3位誘導体および生分解性高分子に関する内容は前記と同様である。
【0061】
前記a)ステップの溶媒は分散媒(dispersion medium)であり得る。前記分散媒は、生分解性高分子を溶解できるものであれば特に限定されない。一実施形態によれば、分散相の溶媒は低沸点の有機溶媒を使用することができ、沸点は25~85℃、25~70℃、25~60℃、または25~50℃であり得る。有機溶媒の沸点が前記範囲である場合、粒子生成後に分散相の溶媒の蒸発および粒子乾燥において有利である。
【0062】
前記分散媒は、例えば、ジクロロメタン(Dichloromethane)、クロロホルム(Chloroform)、アセトニトリル(Acetonitrile、ACN)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(Dimethylformaldehyde)、酢酸エチル(Ethylacetate、EA)、酢酸ブチル(Butyl acetate)、ギ酸エチル(Ethyl formate)、酢酸イソプロピル(Isopropylacetate)、ギ酸イソプロピル(Isopropyl formate)、ジエチルエーテル(Diethyl ether)およびグリコフロール(Glycofurol)からなる群より選択された1つ以上であるが、これらに限定されない。
【0063】
前記a)ステップにおいて、前記溶媒は共溶媒をさらに含み得る。前記共溶媒は、薬物放出のパラメータおよび封入率を改善することができる。エタノールを共溶媒として使用する場合、エタノール濃度は疎水性薬物の放出プロファイルに影響を及ぼし得る。例えば、エタノール濃度が増加するにつれて界面張力(Interfacial tension、IFT)が減少し、薬物がPLGA粒子の中心部から浸出して微細粒子の表面で結晶化することが示された。前記共溶媒は生分解性高分子を溶解することができ、前記分散媒と混合が可能であり、薬物の溶解度が低く、沸点が分散媒より低いものを選択することができる。例えば、共溶媒は、メタノール、エタノール、アセトン、イソプロパノール、ジエチルエーテル、クロロホルム、酢酸エチル、DMSOおよびアセトニトリルからなる群より選択された1つ以上であるが、これらに限定されない。
【0064】
前記製造方法において、a)ステップの分散相は、放出制御剤をさらに含むことができる。前記放出制御剤は、微粒子が水溶液に接触して膨潤するのを防止し、微粒子が膨潤して粒子が崩壊した後でも薬物の放出を遅らせる役割を果たすことができる。前記放出制御剤は親水性放出制御剤であってもよく、例えば、レチノイン酸、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、モノオレイン(glycerylmonooleate)、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリビニルアルコール、ポロキサマー、ポリエチレングリコール、パルミトステアリン酸グリセリル(glyceryl palmitostearate)、安息香酸ベンジル(benzyl benzoate)、オレイン酸エチル(ethyl oleate)、α‐シクロデキストリン、β‐シクロデキストリン、γ‐シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルβ‐シクロデキストリン、tween80、span20、PEG400、Mrij52、Brij58、poloxamer P1からなる群より選択された1つ以上であり得る。
【0065】
前記放出制御剤は植物油であり得る。例えば、レシチン、ヒマシ油(castor oil)、MCT油(Medium Chin Triglyceride oil)、トウモロコシ油(corn oil)、綿実油(cotton seed oil)、ゴマ油(sesame oil)、大豆油(soya oil)、シナモン油(cinnamon oil)、アーモンド油(almond oil)、落花生油(arachis oil)、亜麻仁油(linseed oil)、オリーブ油(olive oil)、カラウェー油(caraway oil)、ロスマリン油(rosemary oil)、ペパーミント油(peppermint oil)、ヒマワリ油(sunflower oil)、ユーカリ油(eucalyptus oil)、ラベンダー油(lavender oil)、ヤシ油(coconut oil)、オレンジ油(orange oil)、アニス油(anise oil)、チョウジ油、濃縮ボリジ油(concentrated borage oil)、セフォール860(SEFOL 860)、ミグリオール(Miglyol)、エーティエムオス300(ATMOS 300)、ジーエムオルフィック80(GMOrphic 80)、DL-a-酢酸トコフェロール(DL-a-Tocopheryl acetate)、ラブラフィル(Labrafil)、インビトール(Imwitor)742、マイバセット(Myvacet)、ミバプレックス(Myvaplex)、ミベロール(Myverol)、ジェネロール(Generol)、ミリトール(Myritol)、キャプテックス(Captex)、キャップムル(Capmul)、ネオビー(Neobee)M5、マゾール(Mazol)1400、マイシン(Maisine)35-1、クロセンシャルGLO E50(Crossential GLO E50;concentrated borage oil ethyl ester)、ニコールEOO(Nikkol EOO;ethyl olive oleate)、オレイン酸エチル(ethyl oleate)、オレイン酸、またはリノール酸、リノール酸エチル(Ethyl linoleate)、パルミチン酸イソプロピル(Isopropyl palmitate)、ミリスチン酸イソプロピル(Isopropylmyristate)、オレイン酸ポリグリセリル(polyglyceryl oleate)、パルミトステアリン酸ポリグリセリル(glyceryl palmitostearate)、オレイン酸ジグリセリル(diglyceryl monooleate)、オレイン酸テトラグリセリル(tetraglyceryl monooleate)、ヘキサグリン(Hexaglyn)、デカグリン(Decaglyn)があるが、これらに限定されない。
【0066】
前記放出制御剤は動物性油およびその誘導体であり得る。例えば、スクアレン(squalene)、水素化スクアレン(hydrogenated squalene)、オメガ-3脂肪酸(EFAs;Omega-3 essential fatty acids)、エイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid)、ドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid)と、エチルエステル化形態の油でクロダ社(Croda Co.)のインクロメガ(Incromega)があるが、これらに限定されない。
【0067】
前記連続相の界面活性剤(または乳化剤)は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤からなる群より選択された1つ以上であり得る。
【0068】
前記界面活性剤は、例えば、高分子界面活性剤として、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(Methyl cellulose)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ゼラチン、キトサン、オイドラギット(Eudragit)、ポリビニルアルコール(PVA);親水性の低分子界面活性剤として、レシチン(lecithin)、Tween(polyoxyethylene sorbitan fatty acid ester)、ポロキサマー(poloxamer)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、Cremophor、cyclodexterins、ラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulfate、SLS)、ステアリン酸ナトリウム(sodium stearate)、エステルアミン、エチレンジアミン(Ethylene diamine)、Myrj52、Brij58、脂肪族アミン(fatty amine);親油性低分子界面活性剤として、スパン(span)、ラブラゾール(labrasol)、レオドール(rheodol)MO-60、モノオレイン(glycerylmonooleate)およびトリアセチン(triacetin)からなる群より選択される1つ以上であり得る。一実施形態によればポリビニルアルコールであるが、これらに限定されない。
【0069】
前記界面活性剤は、連続相中に0.1~20%(w/v)、0.1~10%(w/v)、または1~3%(w/v)で含まれて、生分解性高分子溶液の安定したエマルジョン形成を助ける範囲で適切に調整することができる。
【0070】
前記b)ステップの分散相と連続相は、1:5~1:50の体積比、または1:10~1:25の体積比で混合され得る。前記分散相と連続相の体積比が前記範囲である場合、均質化した後にO/Wエマルジョン中の微小液滴間の間隔が適切であり、均一なサイズの微粒子形成に有利である。
【0071】
前記c)ステップは、エマルジョンを大量の焼入媒と混合および撹拌することによって、分散媒および共溶媒が連続相へ拡散および蒸発され、一次的に高分子硬化が誘導され、薬物粒子が粒子内に封入される。すなわち、前記O/Wエマルジョン中に分散した微小液滴中の分散相溶媒(分散媒(有機溶媒)または共溶媒)が連続相に急激に拡散および抽出されながら、生分解性高分子が急速に固化して薬物担持粒子が形成される。
【0072】
前記焼入媒は、水、メタノール、エタノール、プロパノール、酢酸エチル、PVA(ポリビニルアルコール)、またはそれらの組み合わせであり得る。焼入媒は、連続相と同一成分の溶液であり得る。
【0073】
前記エマルジョンと混合する焼入媒の量は、例えば、エマルジョンまたは連続相の1~100倍、2~100倍、3~100倍、4~100倍、5~100倍、6~100倍、7~100倍、8~100倍、9~100倍、10~100倍、20~100倍、30~100倍、1~50倍、2~50倍、3~50倍、4~50倍、5~50倍、6~50倍、7~50倍、8~50倍、9~50倍、10~50倍、20~50倍、30~50倍、1~20倍、2~20倍、3~20倍、4~20倍、5~20倍、6~20倍、7~20倍、8~20倍、9~20倍、10~20倍であるが、これらに限定されない。
【0074】
前記c)ステップは、溶媒抽出法、溶媒蒸発法、噴霧乾燥法などがあり、製造方法によって粒子のサイズ、薬物放出特性、薬物の封入率などの薬物送達用組成物の特性に影響を及ぼすので、必要に応じて適切な製造方法を選択する。例えば、前記c)ステップは、溶媒蒸発法、相分離法、自己修復カプセル化法と、機械的工程:膜乳化法、噴霧乾燥法、超臨界流体法、マイクロ流体法で実施することができる。前記c)ステップは、機械的撹拌、高圧乳化、フルイドベッド、静的モーター、超音波、メンブレン、ノズル噴射またはドリッピングなどの乳化方法で実施することができる。前記c)ステップでは、微小滴が互いに凝集しないように磁力式撹拌機で強く撹拌して実施することができる。
【0075】
前記c)ステップは4~12時間実施することができるが、粒子凝集の抑制と薬物の適切な封入ができるように、実施時間を調整することができる。
【0076】
一実施形態において、前記製造方法は、c)ステップの後に、d)生成された前記シクロスポリン3位誘導体を担持した粒子を分離するステップをさらに備え得る。一実施形態において、前記d)ステップは、c)ステップで生成された薬物担持粒子を遠心分離することである。
【0077】
前記製造方法は、d)ステップの後に、e)分離された前記粒子を真空乾燥または凍結乾燥するステップをさらに備え得る。
【0078】
前記e)ステップは、常温下で真空乾燥または-40℃下で凍結乾燥することにより、粒子中に残留した分散媒(有機溶媒)または共溶媒を除去して二次的な高分子硬化を誘導することができる。前記乾燥工程によって薬物担持粒子の構造が堅固になり、薬物が完全に封入される。
【0079】
前記真空乾燥は、例えば30~40℃の温度で行われ、凍結乾燥は-30~-40℃で行われ得る。
【0080】
前記e)ステップは、例えば24~48時間実施することができる。
【0081】
本発明の製造方法は、前記e)ステップの後、f)さらに真空乾燥または凍結乾燥するステップをさらに備え得る。
【0082】
前記f)ステップにより、粒子に残留した溶媒を完全に除去し、粒子の構造がより堅固になり、薬物を完全に封入することができる。
【0083】
前記f)ステップにおける追加の真空乾燥または凍結乾燥条件は、e)ステップと同じ方法で実施することができる。
【0084】
前記真空乾燥温度が30℃未満の温度条件で行われる場合には残留溶媒が完全に除去されない恐れがあるが、一方、真空乾燥温度が40℃を超えると、生分解性高分子のガラス転移温度(Tg)を超え、乾燥過程中に粒子の構造が変形して薬物放出制御効果が低下する恐れがある。
【0085】
前記凍結乾燥工程は、真空条件下で行われ得る。
【0086】
前記f)ステップは12~24時間行われるが、これに限定されない。
【0087】
前記追加の乾燥時間が12時間未満の温度条件で行われると、残留溶媒が完全に除去されない恐れがあるが、一方、乾燥時間が24時間を超えると生産性低下の恐れがある。
【発明の効果】
【0088】
本発明の放出制御型粒子を含む脱毛予防または発毛促進用組成物は、脱毛進行部位にメソセラピー(Mesotherapy)などの方法で局所投与し、経皮浸透が困難なシクロスポリン3位誘導体を十分に供給することができ、局所投与時に全身血中で薬物が急激に増加しないため、全身の副作用を最小限に抑えることができる。
【0089】
本発明の脱毛予防または発毛促進用組成物は、局所投与した脱毛部位に薬物濃度を長期間にわたって一定に維持することができるため、患者の順応性および利便性に優れる。
【0090】
本発明の放出制御型粒子は、PLGAの分子量などの生分解程度、放出制御剤、溶媒、高分子、界面活性剤、薬物含量、乳化工程における撹拌速度、高速乳化圧力、超音波の照射時間、連続相/分相相の比率と、乾燥法を変更して薬物放出速度を調節することができ、脱毛疾患の種類及び程度に応じて適切な放出速度を有する粒子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【
図1】実施例1-A(#125)のSEM画像を示す。
【
図2】実施例1-B(#126)のSEM画像を示す。
【
図3】実施例1-C(#127)のSEM画像を示す。
【
図4】実施例2-A(#109)のSEM画像を示す。
【
図5】実施例2-B(#110)のSEM画像を示す。
【
図6】実施例2-C(#111)のSEM画像を示す。
【
図7】実施例4-1-A(#122)のSEM画像を示す。
【
図8】実施例4-1-B(#108)のSEM画像を示す。
【
図9】実施例4-1-C(#73)のSEM画像を示す。
【
図10】実施例4-1-D(#73-1)のSEM画像を示す。
【
図11】実施例31-B~31-DのSEM画像を示す図である。
【
図12-13】実施例39-B、40-B、41-B、42-BのSEM画像を示す。
【
図14-16】実施例1-A~1-Cの粒度分析結果を示す。
【
図17-19】実施例31-B~31-Dの粒度分析結果を示す。
【
図20-26】薬物放出パターンの実験結果を示す。
【
図39】本発明の組成物を注射投与した時に、発毛効果があるか否かを確認した結果を示す。
【
図40】本発明の組成物を局所注射投与(Intradermal(Intralesional)injection)時、全身血に薬物が消失したか否かを確認した結果を示す。
【
図41】本発明の組成物を局所注射投与(Intradermal(Intralesional)インジェクション)した時において、皮膚残存量を確認した結果を示す。
【
図42】構成比率が互いに異なるPLGA高分子を用いた3種の薬物製剤を皮膚投与した後、経時的な薬物残存量(%)を比較して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0092】
以下、本発明を実施例により詳しく説明する。しかし、これらの実施例は本発明を例示的に説明するためであり、本発明の範囲はこれらの実施例によって限定されない。さらに、本明細書で特に定義の用語は、本発明が属する技術分野で通常使用される意味を有すると理解すべきである。
【0093】
<製造例:シクロスポリン3位誘導体の製造>
シクロスポリンA(Cyclosporine A)をアルキル化する一般的方法は以下の通りである。まず、窒素下でテトラヒドロフラン(THF)にジイソプロピルアミン((i-Pr)2NH)を加え、78℃で核酸に溶解したブチルリチウム(BuLi)を加えた後、30分間撹拌する。得られたLDA溶液にテトラヒドロフラン(THF)に溶かしたシクロスポリンA(Cyclosporine A)を加え、1時間撹拌した後、求電子体(electrophile)を加える。
【0094】
製造例1.[N-メチル-D-アミノ酪酸3]シクロスポリンA([N-methyl-D-Abu3]Cyclosporine A)の合成)
一般的な方法を用いて、10当量のLDA溶液にテトラヒドロフラン(THF)(50ml)に溶解したシクロスポリンA(Cyclosporine A)(1.0g)を78℃で加えた。反応混合物を78℃で2時間撹拌した後、ヨウ化エチル(ethyliodide)(0.4ml)を加えた。室温にした後、さらに24時間撹拌し、20mlの水を加えた後、濃縮した。残渣にエーテル(Et2O)を加えた後、水、飽和塩化ナトリウム水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウム(MgSO4)で乾燥した後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル100g、ジクロロメタン:メチルアルコール=96:4)で精製した後、HPLCで精製して標題化合物(0.1g)を得た。
【0095】
製造例2.[N-メチル-D-ノルバリン3]シクロスポリンA([N-methyl-D-norval3]Cyclosporine A)の合成
一般的な方法を用いて、10当量のLDA溶液にテトラヒドロフラン(THF)(50ml)に溶解したシクロスポリンA(Cyclosporine A)(1.0g)を78℃で加えた。反応混合物を78℃で2時間撹拌した後、沃化プロピル(propyliodide)(0.41ml)を加えた。室温にした後、さらに24時間撹拌し、20mlの水を加えた後、濃縮した。残渣にエーテル(Et2O)を加えた後、水、飽和塩化ナトリウム水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウム(MgSO4)で乾燥後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル100g、ジクロロメタン:メチルアルコール=96:4)で精製した後、HPLCで精製して標題化合物(0.12g)を得た。
【0096】
製造例3.[D-2-(メチルアミノ)ヘキサ-4-イノイル3]シクロスポリンA([D-2-(Methylamino)hexa-4-ynoyl3]Cyclosporine A)の合成
一般的な方法を用いて、10当量のLDA溶液にテトラヒドロフラン(THF)(50ml)に溶解したシクロスポリンA(Cyclosporine A)(1.0g)を78℃で加えた。反応混合物を78℃で2時間撹拌した後、1-ブロモ-2-ブチン(1-bromo-2-butyne)(0.73ml)を加えた。室温にした後、さらに24時間撹拌し、20mlの水を加えた後、濃縮した。残渣にエーテル(Et2O)を加えた後、水、飽和塩化ナトリウム水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウム(MgSO4)で乾燥後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル100g、ジクロロメタン:メチルアルコール=96:4)で精製した後、HPLCで精製して標題化合物(0.13g)を得た。
【0097】
製造例4.[D-2-(メチルアミノ)ペント-4-イノイル3]シクロスポリンA([D-2-(Methylamino)pent-4-ynoyl3]Cyclosporine A)の合成
一般的な方法を用いて、テトラヒドロフラン(THF)(200ml)、ジイソプロピルアミン((i-Pr)2NH)(3.2ml)、ブチルリチウム(BuLi)(8ml)、テトラヒドロフラン(THF)(50ml)に溶解したシクロスポリンA(Cyclosporine A)(3.76g)、臭化プロパルギル(propargyl bromide)(3.57g)を使用した。室温にした後さらに2時間撹拌し、40mlの水を加えた後、濃縮した。残渣にエーテル(Et2O)を加えた後、水、飽和塩化ナトリウム水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウム(MgSO4)で乾燥後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル100g、ジクロロメタン:メチルアルコール=96:4)で精製した後、HPLCで精製して標題化合物を得た。
【0098】
製造例5.[D-2-メチルチオ-サルコシン3]シクロスポリンA([D-2-methylthio-Sar3]Cyclosporine A)の合成
一般的な方法を用いて、テトラヒドロフラン(THF)(100ml)、ジイソプロピルアミン((i-Pr)2NH)(1.6ml)、ブチルリチウム(BuLi)(4.0ml)、テトラヒドロフラン(THF)(30ml)に溶解したシクロスポリンA(Cyclosporine A)(1.0g)、ジメチルジスルフィド(Me2S2)(1.5ml)を使用した。0℃で14時間撹拌した後、20mlの水を加えた後、濃縮した。残渣にエーテルを加えた後、水、飽和塩化ナトリウム水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウム(MgSO4)で乾燥後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル100g、ジクロロメタン:メチルアルコール=50:1~96:4)で精製した後、HPLCで精製して標題化合物(OND-1)を得た。
【0099】
製造例6.[D-2-(4-メチルベンゼンチオ)サルコシン3]シクロスポリンA([D-2-(4-methylbenzenethio)Sar3]Cyclosporine A)の合成。
製造例5と同様に、この場合、求電子体としてdi(tol-4-yl)disulfideを利用し、標題化合物を得た。
【0100】
製造例7.[D-2-ジメチルアミノ-エチルチオ-サルコシン3]シクロスポリンA([D-2-Dimethylamino-ethylthio-Sar3]Cyclosporine A)の合成
製造例5と同様に、この場合、求電子体としてBis(2-ジメチルアミノエチル)ジスルフィド(Bis(2-dimethylaminoethyl)disulfide)を利用し、標題化合物を得た。
【0101】
製造例8.[N-メチル-D-セリン3]シクロスポリンA([N-methyl-D-Ser3]Cyclosporine A)の合成
一般的な方法を用いて、10当量のLDA溶液にテトラヒドロフラン(THF)(50ml)に溶解したシクロスポリンA(Cyclosporine A)(1.0g)を78℃で加えた。反応混合物を78℃で2時間撹拌した後、パラホルムアルデヒド(paraformaldehyde)(2.0g)を加えた。室温にした後、さらに24時間撹拌し、20mlの水を加えた後、濃縮した。残渣にエーテル(Et2O)を加えた後、水、飽和塩化ナトリウム水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウム(MgSO4)で乾燥後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル100g、ジクロロメタン:メチルアルコール=96:4)で精製した後、HPLCで精製して標題化合物(0.3g)を得た。
【0102】
製造例9.[N-メチル-O-プロフェニル-D-セリン3]シクロスポリンA(N-methyl-O-Propenyl-D-Ser3)Cyclosporine A)の合成
一般的な方法を用いて、[D-メチルセリン3]-シクロスポリンA(0.62g、0.5mmol)、塩化テトラブチルアンモニウム(tetrabutylammonium chloride)(0.11g、0.5mmol)、および臭化アリル(allyl bromide)(0.24g、mmol)をジクロロメタン(50ml)に溶かした後、30%水酸化ナトリウム(NaOH)(1.5ml)と共に2時間撹拌し、50mlのジクロロメタンを加えた後、水、飽和塩化ナトリウム水で順次洗浄、無水硫酸ナトリウム(MgSO4)で乾燥後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル100g、ジクロロメタン:メチルアルコール=97:3)で精製した後、HPLCで精製して標題化合物(0.4g)を得た。
【0103】
製造例10.[N-メチル-D-アラニン3]シクロスポリンA([N-methyl-D-Ala3]Cyclosporine A)の合成
一般的な方法を用いて、テトラヒドロフラン(THF)(120ml)、ジイソプロピルアミン((i-Pr)2NH)(1.74ml)、ブチルリチウム(BuLi)(4.6ml)テトラヒドロフラン(THF)(30ml)に溶解したシクロスポリンA(Cyclosporine A)(2.0g)、ヨウ化メチル(MeI)(0.51ml)を使用した。1時間撹拌しながら室温にした後、10mlの水を加えた後、濃縮した。残渣にエーテルを加えた後、水、飽和塩化ナトリウム水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウム(MgSO4)で乾燥後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル100g、ジクロロメタン:メチルアルコール=50:1~96:4)で精製した後、HPLCで精製して標題化合物(0.26g)を得た。
【実施例1】
【0104】
各種LA:GAモル比のPLGA系の徐放性粒子を製造(真空乾燥方式)
【0105】
以下の方法により実施例1-A~1-CのPLGA放出制御型粒子を製造した。製造工程で用いた各成分及び条件を下表1に示す。
【0106】
工程1.OND-1(40mg)およびPLGA(160mg)をDCM(dichloromethane)(2ml)に溶解させて分散相を調製した。(OND-1は製造例5参照)
【0107】
工程2.製造した前記分散相を連続相である1%PVA水溶液(500mgPVA、50mlD.W)に添加し、ホモゲナイザー(homogenizer)を用いて乳化してエマルジョンを調製した。
【0108】
工程3.製造した前記エマルジョンを焼入媒(Quenching medium)である1%PVA水溶液(2500mgPVA、250ml D.W)に入れて安定化した後、磁力撹拌機(magnetic stirrer)で最低4時間から24時間撹拌しながらDCMを蒸発させてPLGA粒子を形成した。
【0109】
工程4.PLGA粒子が形成された溶液を遠心分離(13,000rpm、10分、4℃条件)してPLGA粒子を沈殿させた後、上層液に存在するPVAを除去した。
【0110】
工程5.PLGA粒子沈殿物を蒸留水(D.W)10mlに再懸濁(resuspension)し、遠心分離(13,000rpm、10分、4℃)する過程を4回繰り返した。
【0111】
工程6.洗浄を完了した後、沈殿物を真空乾燥して得られたPLGA粒子を保存した。
【表1】
【0112】
1)[D-2-メチルチオ-サルコシン3]シクロスポリンA([D-2-methylthio-Sar3]Cyclosporine A)
【0113】
2)括弧内の数字は順に、LA:GAモル比、末端基及び分子量を表す。例えば、「(PLGA 50:50、acid、7000-17000)」は、LA:GAのモル比が50:50、末端基がカルボン酸、分子量が7000-17000であるPLGAを表す(以下同一)。
【実施例2】
【0114】
各種LA:GAモル比のPLGA系の徐放性粒子を製造(凍結乾燥方式)
【0115】
前記実施例1で工程6の乾燥方式を凍結乾燥方式(1%マンニトール水溶液に分散後、凍結乾燥)に変えたことを除き、その外は同じ方法で実施例2-A~2-CのPLGA放出制御型の粒子を調製した。製造過程で用いた各成分及び条件を下記表2に示す。
【表2】
【実施例3】
【0116】
末端基と分子量が異なるLA:GAモル比50:50PLGA系の徐放性粒子を製造
【0117】
実施例1の分散相で末端基または分子量が異なるLA:GAモル比50:50PLGAを用いたことを除いて、その外は実施例1と同じ方法で実施例3-A~3-Cの放出制御型粒子を製造した。製造過程で用いた各成分及び条件を下記表3に示す。
【表3】
【実施例4】
【0118】
末端基と分子量が異なるLA:GAモル比75:25PLGA系の徐放性粒子を製造
【0119】
実施例1の分散相で末端基または分子量が異なるLA:GAモル比75:25PLGAを用いたことを除いて、その外は実施例1と同じ方法で実施例4-A~4-Cの放出制御型粒子を製造した。製造過程で用いた各成分及び条件を下記表4に示す。
【表4】
【0120】
[実施例4-1]
乳化条件が異なるPLGA系の徐放性粒子を製造
【0121】
実施例1-Bまたは実施例2-Bで乳化条件を変えたことを除いて、その外は同じ方法で実施例4-1-A~4-1-Dの放出制御型粒子を製造した。製造過程で用いた各成分及び条件を下記表5に示す。
【表5】
【実施例5】
【0122】
分子量が異なるLA:GAモル比85:15PLGA系の徐放性粒子を製造
【0123】
実施例1の分散相でPLGAを変えたことを除いて、その外は実施例1と同じ方法で実施例5-Aの放出制御型粒子を調製した。製造過程で用いた各成分及び条件を下記表6に示す。
【表6】
【実施例6】
【0124】
水に対する界面張力(Interfacial tension、IFT)値の異なる溶媒を分散相の溶媒で用いてPLGA系の徐放性粒子を調製
【0125】
前記実施例1-Bで分散相の溶媒を水に対する界面張力(IFT)値が異なる溶媒に変えたことを除いて、その外は同じ方法で実施例6-A~6-JのPLGA放出制御型粒子を調製した。製造過程で用いた各成分及び条件を下記表7と表8に示す。以下の表7および表8で使用される用語は以下の通りである。(DCM=dichloromethane;EA=Ethyl acetate;DMSO=dimethyl sulfoxide;ACN=acetonitrile)
【表7】
【表8】
【実施例7】
【0126】
水に対する界面張力(IFT)値の異なる溶媒を用いてPLGA系の徐放性粒子を調製
【0127】
前記実施例1-Aで分散相の溶媒を水に対する界面張力(IFT)値が異なる溶媒に変えたことを除いて、その外は同じ方法で実施例7-A~7-JのPLGA放出制御型粒子を調製した。製造過程で用いた各成分及び条件を下記表9と表10に示す。
【表9】
【表10】
【実施例8】
【0128】
水に対する界面張力(IFT)値の異なる溶媒を用いてPLGA系の徐放性粒子を調製
【0129】
前記実施例1-Cで分散相の溶媒を水に対する界面張力(IFT)値が異なる溶媒に変えたことを除いて、その外は同じ方法で実施例8-A~8-JのPLGA放出制御型粒子を調製した。製造過程で用いた各成分及び条件を下記表11と表12に示す。
【表11】
【表12】
【実施例9】
【0130】
分散相の溶媒に共溶媒を混合してPLGA系の徐放性粒子を製造
【0131】
前記実施例1-Bにおける分散相溶媒としてDCM、クロロホルム、酢酸エチル(Ethylacetate、EA)、ギ酸エチル(Ethyl formate)、DMSO、ACN、酢酸ブチル(Butyl acetate)、ギ酸イソプロピル(Isopropyl formate)、またはグリコフロール(Glycofurol)、共溶媒としてメタノール、エタノール、アセトン、イソプロパノール、ジエチルエーテル、クロロホルム、酢酸エチル(Ethylacetate、EA)、DMSO、またはCANを混合したことを除いて、その外は同じ方法で実施例9-A~9-IのPLGA放出制御粒子を調製した。製造過程で用いた各成分及び条件を下記表13及び表14に示す。
【表13】
【表14】
【実施例10】
【0132】
天然高分子系の徐放性粒子を製造
【0133】
前記実施例1でPLGAの代わりに天然高分子を用いたことを除いて、その外は実施例1と同じ方法で実施例10-A~10-IのPLGA放出制御型粒子を製造した。製造過程で使用した各成分および条件を下記表15に示す。CMCはcarboxymethylcelluloseである。
【表15】
【実施例11】
【0134】
合成生分解性高分子(Aliphatic Homopolymer)系の徐放性粒子を製造
【0135】
前記実施例1でPLGAの代わりに合成生分解性高分子(Aliphatic Homopolymer)を用いたことを除いて、その外は同じ方法で実施例11-A~11-IのPLGA放出制御型粒子を製造した。製造過程で用いた各成分及び条件を下記表16に示す。PCLはpoly-ε-caprolactone;PLAはpoly(lactic acid);PGAはpolyglycolic acid;PHAはpolyhydroxyalkanoate;PHBはpolyhydroxybutyrate;PEGはpolyethyleneglycolである。
【表16】
【実施例12】
【0136】
合成生分解性高分子(Aliphatic copolymer)系の徐放性粒子を調製
【0137】
前記実施例1でPLGAの代わりに合成生分解性高分子(Aliphatic Homopolymer)を用いたことを除いて、その外は同じ方法で実施例12-A~12-IのPLGA放出制御型粒子を製造した。製造過程で用いた各成分及び条件を下記表17に示す。表17で使用される用語は以下の通りである。PEA=polyethylene adipate;PBS=polybutylene succinate;PHBV=poly(3-hydroxybutyrate-co-3-hydroxyvalerate);PET=polyethylene terephthalate;PLGA=polylactide-co-glycolide;PLGA-glucose=polylactide-co-glycolide-glucose;MPEG-(PCL-co-PLA)=methoxy polyethylene glycol-(polycaprolactone-co-polylactide);mPEG-b-PLGA=Poly(ethylene glycol) methyl ether-block-poly(lactide-co-glycolide);PLGA-b-PEG-b-PLGA=Poly(lactide-co-glycolide)-block-poly(ethylene glycol)-block-poly(lactide-co-glycolide).
【表17】
【実施例13】
【0138】
合成生分解性高分子(semi-aromatic or aromatic copolymer)系の徐放性粒子を製造
【0139】
前記実施例1で合成生分解性高分子(semi-aromatic or aromatic copolymer)を用いたことを除いて、その外は同じ方法で実施例13-A~13-DのPLGA放出制御型粒子を製造した。製造過程で用いた各成分および条件を下記表18に示す。表18で使用される用語は以下の通りである。PBT=polybutylene terephthalate;PTT=polytrimethylene terephthalate;PEN=polyethylene naphthalate.
【表18】
【実施例14】
【0140】
連続相の界面活性剤を変えてPLGA系の徐放性粒子を製造
【0141】
前記実施例1-Bで連続相に1%(w/v)のPVA、PVP、HPMC、PEG、Eudragit、Chitosan、Methyl celluloseまたはGelatin水溶液(各界面活性剤500mgとD.W 50ml)に変えたことを除いて、その外は同じ方法で実施例14-A~14-HのPLGA放出制御型粒子を調製した。製造過程で用いた各成分及び条件を下記表19と表20に示す。
【表19】
【表20】
【実施例15】
【0142】
連続相の界面活性剤を変えてPLGA系の徐放性粒子を製造
【0143】
前記実施例1-Aで連続相を1%(w/v)のPVA、PVP、HPMC、PEG、Eudragit、Chitosan、Methyl celluloseまたはGelatin水溶液(各界面活性剤500mgとD.W 50ml)に変えたことを除いて、その外は同じ方法で実施例15-A~15-HのPLGA放出制御型粒子を調製した。製造過程で用いた各成分及び条件を下記表21に示す。
【表21】
【実施例16】
【0144】
連続相の界面活性剤を変えてPLGA系の徐放性粒子を製造
【0145】
前記実施例1-Cで連続相を1%(w/v)のPVA、PVP、HPMC、PEG、Eudragit、Chitosan、Methyl celluloseまたはGelatin水溶液(各界面活性剤500mgとD.W 50ml)に変えたことを除いて、同じ方法で実施例16-A~16-HのPLGA放出制御型粒子を調製した。製造過程で用いた各成分および条件を下記表22に示す。
【表22】
【実施例17】
【0146】
連続相で親水性低分子量の界面活性剤(乳化剤または乳化安定剤)を用いてPLGA系の徐放性粒子を製造
【0147】
前記実施例1-Bの工程2で連続相の界面活性剤を1%(w/v)のレシチン、ポロキサマー(poloxamer)、tween、cremophor、SLS、ステアリン酸ナトリウム(Sodium stearate)、エチレンジアミン(Ethylene diamine)、Mrij52、Brij58またはシクロデキストリン水溶液(各親水性低分子量の界面活性剤500mgとD.W 50ml)を変えたことを除いて、その外は同じ方法で実施例17-A~17-JのPLGA放出制御型粒子を製造した。製造過程で用いた各成分および条件を下記表23および表24に示す。表23において、SLSはラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulfate)である。
【表23】
【表24】
【実施例18】
【0148】
連続相に親水性低分子量界面活性剤(乳化剤または乳化安定剤)を用いてPLGA系の徐放性粒子を製造
【0149】
前記実施例1-Aの工程2で連続相の界面活性剤を1%(w/v)のレシチン、ポリキサマー、ツイン(tween)、クレモフォール(cremophor)、SLS、ステアリン酸ナトリウム(Sodium stearate)、エチレンジアミン(Ethylene diamine)、Mrij52、Brij58、またはシクロデキストリン水溶液(各親水性低分子量の界面活性剤500mgとD.W 50ml)に変えたことを除いて、その外は同じ方法で実施例18-A~18-JのPLGA放出制御型粒子を製造した。製造過程で用いた各成分及び条件を下記表25に示す。
【表25】
【実施例19】
【0150】
連続相に親水性低分子量の界面活性剤(乳化剤または乳化安定剤)を用いてPLGA系の徐放性粒子を製造
【0151】
前記実施例1-Cの工程2で連続相の界面活性剤を1%(w/v)のレシチン、ポリキサマー、ツイン(tween)、クレモフォール(cremophor)、SLS、ステアリン酸ナトリウム(Sodium stearate)、エチレンジアミン(Ethylene diamine)、Mrij52、Brij58、またはシクロデキストリン水溶液(各親水性低分子量の界面活性剤500mgとD.W 50ml)に変えたことを除いて、その外は同じ方法で実施例19-A~19-JのPLGA放出制御型製剤を製造した。製造過程で用いた各成分及び条件を下記表26に示す。
【表26】
【実施例20】
【0152】
連続相で親油性低分子量の界面活性剤(乳化剤または乳化安定剤)を用いてPLGA系の徐放性製剤を製造
【0153】
前記実施例1-Bの工程2で連続相の界面活性剤を1%スパン(span)、ラブラゾール(labrasol)、レオドール(rheodol)MO-60、モノオレイン(glycerol monooleate)、またはトリアセチン(triacetin)水溶液(各親油性低分子量の界面活性剤500mgとD.W 50ml)に変えたことを除いて、その外は同じ方法で実施例20-A~20-EのPLGA放出制御型製剤を調製した。製造過程で用いた各成分及び条件を下記表27に示す。
【表27】
【実施例21】
【0154】
連続相で親油性低分子量の界面活性剤(乳化剤または乳化安定剤)を用いてPLGA系の徐放性粒子を製造
【0155】
前記実施例1-Aの工程2で連続相の界面活性剤を1%スパン(span)、ラブラゾール、レオドール(rheodol)MO-60、モノオレイン(glycerol monooleate)、またはトリアセチン(triacetin)水溶液(各親油性低分子量の界面活性剤500mgとD.W 50ml)に変えたことを除いて、その外は同じ方法で実施例21-A~21-EのPLGA放出制御型粒子を調製した。製造過程で用いた各成分及び条件を下記表28に示す。
【表28】
【実施例22】
【0156】
連続相で親油性低分子量の界面活性剤(乳化剤または乳化安定剤)を用いてPLGA系の徐放性粒子を製造
【0157】
前記実施例1-Cの工程2で連続相の界面活性剤を1%スパン(span)、ラブラゾール、レオドール(rheodol)MO-60、モノオレイン(glycerol monooleate)、またはトリアセチン(triacetin)水溶液(各親油性低分子量の界面活性剤500mgとD.W 50ml)に変えたことを除いて、その外は同じ方法で実施例22-A~22-EのPLGA放出制御型粒子を調製した。製造過程で用いた各成分及び条件を下記表29に示す。
【表29】
【実施例23】
【0158】
分散相に調節剤(添加剤、低分子量の界面活性剤)を添加してPLGA系の徐放性粒子を製造
【0159】
前記実施例1-Bの工程2で分散相に調節剤(添加剤)として100mgのtween80、span20、PEG400、Mrij52、Brij58、poloxamer P124またはSLSをさらに添加したことを除いて、その外は同じ方法で実施例23-A~23-GのPLGA放出制御型製剤を調製した。製造過程で使用した各成分および条件を下記表30および表31に示す。
【表30】
【表31】
【実施例24】
【0160】
分散相に調節剤(添加剤、低分子量界面活性剤)を添加してPLGA系の徐放性粒子を製造
【0161】
前記実施例1-Aの工程2で分散相に調節剤として100mgのtween80、span20、PEG400、Mrij52、Brij58、poloxamer P124またはSLSをさらに添加したことを除いて、その外は同じ方法で実施例24-A~24-GのPLGA放出制御型粒子を調製した。製造過程で使用した各成分および条件を下記表32および表33に示す。
【表32】
【表33】
【実施例25】
【0162】
分散相に調節剤(添加剤、低分子量界面活性剤)を添加してPLGA系の徐放性粒子を製造
【0163】
前記実施例1~Cの工程2で分散相に調節剤として100mgのtween80、span20、PEG400、Mrij52、Brij58、poloxamer P124またはSLSをさらに添加したことを除いて、その外は同じ方法で実施例25-A~25-GのPLGA放出制御型粒子を調製した。製造過程で使用した各成分および条件を下記表34および表35に示す。
【表34】
【表35】
【実施例26】
【0164】
高分子に対する薬物含量を変えてPLGA系の徐放性粒子を調製
【0165】
前記実施例1-Bで薬物と高分子の含量を変えたことを除いて、その外は同じ方法で実施例26-A~26-FのPLGA放出制御型粒子を製造した。製造過程で用いた各成分及び条件を下記表36に示す。
【表36】
【実施例27】
【0166】
高分子に対する薬物含量を変えてPLGA系の徐放性粒子を調製
【0167】
前記実施例1-Aで薬物と高分子の含量を変えたことを除いて、その外は同じ方法で実施例27-A~27-FのPLGA放出制御型粒子を製造した。製造過程で使用した各成分および条件を下記表37に示す。
【表37】
【実施例28】
【0168】
高分子に対する薬物含量を変えてPLGA系の徐放性粒子を調製
【0169】
前記実施例1-Cで薬物と高分子の含量を変えたことを除いて、その外は同じ方法で実施例28-A~28-FのPLGA放出制御型粒子を製造した。製造過程で用いた各成分及び条件を下記表38に示す。
【表38】
【実施例29】
【0170】
分散相/連続相の比率を変えてPLGA系の徐放性粒子を製造
【0171】
前記実施例1-Bで連続相の含量を変えたことを除いて、その外は同じ方法で実施例29-A~29-FのPLGA放出制御型粒子を製造した。製造過程で用いた各成分及び条件を下記表39に示す。
【表39】
【実施例30】
【0172】
分散相/連続相の比率を変えてPLGA系の徐放性粒子を製造
【0173】
前記実施例1-Aで連続相の含量を変えたことを除いて、その外は同じ方法で実施例30-A~30-FのPLGA放出制御型製剤を製造した。製造過程で用いた各成分及び条件を下記表40に示す。
【表40】
【実施例31】
【0174】
乳化方法を変えてPLGA系の徐放性粒子を製造
【0175】
前記実施例1-Cの工程2でホモゲナイザーの条件を変えたことを除いて、その外は同じ方法で実施例31-A~31-DのPLGA放出制御型粒子を製造した。製造過程で用いた各成分及び条件を下記表41に示す。
【表41】
【実施例32】
【0176】
超音波照射方法を利用してPLGA系の徐放性粒子を製造
【0177】
前記実施例1-Bの工程2でホモゲナイザーの代わりに超音波処理器で乳化したことを除いて、その外は同じ方法で実施例32-A~32-BのPLGA放出制御型粒子を製造した。製造過程で使用した各成分および条件を下記表32に示す。
【表42】
【実施例33】
【0178】
真空乾燥条件を変えてPLGA系の徐放性粒子を製造
【0179】
前記実施例1-Bで真空乾燥条件を変えたことを除いて、実施例1と同じ方法で実施例33-A~33-Dの放出制御型粒子を製造した。製造過程で用いた各成分及び条件を下記表43に示す。
【表43】
【実施例34】
【0180】
真空乾燥条件を変えてPLGA系の徐放性粒子を製造
【0181】
前記実施例1-Aで真空乾燥条件を変えたことを除いて、その外は同じ方法で実施例34-A~34-Dの放出制御型粒子を製造した。製造過程で使用した各成分および条件を下記表44に示す。
【表44】
【実施例35】
【0182】
真空乾燥条件を変えてPLGA系の徐放性粒子を製造
【0183】
前記実施例1-Cで真空乾燥条件を変えたことを除いて、その外は同じ方法で実施例35-A~35-Dの放出制御型粒子を製造した。製造過程で使用した各成分および条件を下記表45に示す。
【表45】
【実施例36】
【0184】
乳化および凍結乾燥条件を変えてPLGA系の徐放性粒子を製造
【0185】
前記実施例2-Bでホモゲナイザーまたは凍結乾燥条件を変えたことを除いて、その外は同じ方法で実施例36-A~36-Dの放出制御型粒子を製造した。製造過程で用いた各成分及び条件を下記表46に示す。
【表46】
【実施例37】
【0186】
乳化および凍結乾燥条件を変えてPLGA系の徐放性粒子を製造
【0187】
前記実施例2-Aでホモゲナイザーまたは凍結乾燥条件を変えたことを除いて、その外は同じ方法で実施例37-A~37-Dの放出制御型粒子を製造した。製造過程で使用した各成分および条件を下記表47に示す。
【表47】
【実施例38】
【0188】
乳化および凍結乾燥条件を変えてPLGA系の徐放性粒子を製造
【0189】
前記実施例2-Cでホモゲナイザーまたは凍結乾燥条件を変えたことを除いて、その外は同じ方法で実施例38-A~38-Dの放出制御型粒子を製造した。製造過程で使用した各成分および条件を下記表48に示す。
【表48】
【実施例39】
【0190】
[D-2-(4-メチルベンゼンチオ)サルコシン3]シクロスポリンAを含有したPLGA系の徐放性粒子を製造
【0191】
前記実施例1で薬物をOND-1から[D-2-(4-メチルベンゼンチオ)サルコシン
3]に変えたことを除いて、その外は同じ方法で実施例39-A~39-Cの放出制御型粒子を調製した。製造過程で使用した各成分および条件を下記表49に示す。
【表49】
【実施例40】
【0192】
[N-メチル-アミノ酪酸3]シクロスポリンAを含有したPLGA系の徐放性粒子を製造
【0193】
前記実施例1で薬物をOND-1から[N-メチル-アミノ酪酸
3]([N-methyl-Abu
3]Cyclosporine A)に変えたことを除いて、その外は同じ方法で実施例40-A~40-Cの放出制御型粒子を調製した。製造過程で用いた各成分及び条件を下記表50に示す。
【表50】
【実施例41】
【0194】
[N-メチル-ノルバリン3]シクロスポリンAを含有したPLGA系の徐放性粒子を製造
【0195】
前記実施例1で薬物をOND-1から[N-メチル-ノルバリン
3]シクロスポリンA([N-methyl-Nva
3]Cyclosporine A)に変えたことを除いて、その外は同じ方法で実施例41-A~41-Cの放出制御型粒子を調製した。製造過程で用いた各成分及び条件を下記表51に示す。
【表51】
【実施例42】
【0196】
[D-メチルアラニン3]シクロスポリンAを含有したPLGA系の徐放性粒子を製造
【0197】
前記実施例1において薬物をOND-1から[D-メチルアラニン
3]シクロスポリンA([D-MeAla
3]Cyclosporine A)に変えたことを除いて、その外は同じ方法で実施例42-A~42-Cの放出制御型粒子を調製した。製造過程で用いた各成分及び条件を下記表52に示す。
【表52】
【0198】
実験例1.PLGA粒子の大きさ、形態と表面状態を評価
本実験例では、実施例で作製したPLGA粒子の大きさ、形態(morphology)と表面状態を、SEM画像で分析して徐放性に有利な形態学的特徴を有しているかを確認した。各実施例で作製したPLGA粒子を蒸留水に分散させた後、遠心分離して沈殿したPLGA粒子のみを再び真空乾燥してSEM像を観察した。
【0199】
図1~
図3は、真空乾燥条件で製造した実施例1-A~1-CのSEM画像を示す。
【0200】
図1によれば、実施例1-Aは約5~30μmの比較的に均一な粒度分布を示し、表面が滑らかな球状の形状を呈している。
【0201】
図2によれば、実施例1-Bは約20~40μmの比較的に均一な粒度分布を示し、表面が滑らかな球状の形状を呈している。
【0202】
図3によれば、実施例1-Cは約10~30μmの比較的に均一な粒度分布を示し、表面が滑らかな球状の形状を呈している。
【0203】
図4~
図6は、凍結乾燥条件で製造した実施例2-A~2-CのSEM画像を示す。
【0204】
図4によれば、実施例2-Aは約5~10μmの比較的に均一な粒度分布を示し、表面が滑らかな球状の形状を呈している。
【0205】
図5によれば、実施例2-Bは、約2~20μmの多分散性の粒度分布を示し、表面が滑らかな球状の形状を呈している。
【0206】
図6によれば、実施例2-Cは、約5~60μmの多分散性の粒度分布を示し、表面が滑らかな球状の形状を呈している。
【0207】
図7~
図10は、実施例4-1-A~4-1-DのSEM画像を示す。
【0208】
図7によれば、実施例4-1-Aは約3~8μmの比較的に均一な粒度分布を示し、表面が滑らかな球状の形状を呈している。
【0209】
図8によれば、実施例4-1-Bは、約0.2~2μmの多分散性の粒度分布を示し、球状の形状を呈している。
【0210】
図9によれば、実施例4-1-Cは約5~25μmの粒度分布を示し、球状の形状を呈している。また、In-vitro releaseで1ヶ月経過後、3~10μmの粒度分布を示し、球状の形状を呈している。
【0211】
図10によれば、実施例4-1-D(#73-1)は約2~8μmの比較的に均一な粒度分布を示し、表面が滑らかな球状の形状を呈している。また、インビトロ放出(In-vitro release)して1ヶ月経過後、表面が溶けて内部がくぼみ状になっている。
【0212】
図11によれば、実施例31-B~31-Dは、乳化条件を変えたにもかかわらず、表面が滑らかな球状の形状を呈していることを確認することができる。
【0213】
図12及び13によれば、互いに異なるシクロスポリン3位誘導体を用いた実施例39-B、40-B、41-B、42-Bは、表面が滑らかな球状の形状を呈していることが確認できる。
【0214】
前記
図1~
図13によれば、シクロスポリン3位誘導体含有のPLGA粒子は滑らかな表面形状を有し、外部気孔によるイニシアルバースト現象がなく、薬物の安定した徐放性放出が可能な形態学的特徴を示すことが分かる。
【0215】
実験例2.PLGA放出制御型の製剤の粒度分析
試料をランダム位置でSEM画像を撮影し、画像分析プログラムで粒子の大きさを分析して粒子サイズ分布を確認した。測定する粒子の個数は少なくとも300個以上であり、粒子の大きさは直径で測定した。
【0216】
2.1.真空乾燥したLA:GA比率によるPLGA放出制御型の製剤の粒度分析
【0217】
図14~
図16は、実施例1-A~1-Cの粒度分析結果を示す。
【0218】
実施例1-A(#125)、実施例1-B(#126)および実施例1-C(#127)の各々の平均粒度は、16.8μm、15.4μm、9.44μmであった。
【0219】
2.2.乳化速度による真空乾燥したPLGA放出制御型の製剤の粒度分析
【0220】
図17~
図19は、実施例31-B~31-Dの粒度分析結果を示す。
【0221】
実施例31-B(#120)、31-C(#121)、31-D(#122)の平均粒度は20.9μm、0.74μm、0.61μmであり、ホモゲナイザーの撹拌速度が5000、10000、15000rpmに増加するほど平均粒度が減少する傾向を示した。特に、撹拌速度が5000rpmから10000rpmに増加したとき、平均粒度が急激に減少したことがわかる。例えば、20μm程度の大きさの粒子を製造する時に好ましいホモゲナイザー撹拌速度は5000rpmであり、1μm以下の粒子を製造する時に好ましいホモゲナイザー撹拌速度は10000rpm以上であることがわかる。
【0222】
実験例3.PLGA放出制御型製剤の薬物封入率と収率の測定
薬物含量(Drug-loading capacity)は、封入した薬物の量を回収したミクロスフェアの量で割った値である。封入率(encapsulation efficiency)は、投入した薬物の量に対する封入した薬物の量として表すことができる。封入した薬物量は、HPLC分析(HPLC pump&column oven method)によって測定した。HPLC条件と分析法は次の通りである。
【表53】
【0223】
[分析方法]
PLGAミクロスフェア1mgを75%ACN1mlに溶解し、30秒間ボルテックス(vortex)した後、3分間超音波処理(sonication)する。その後、上清液を0.22μmシリンジフィルターでろ過処理した後、HPLC分析する。薬物の含量、封入率および収率(yield of microsphere)は、計算式1ないし3のように表すことができる。
【0224】
[計算式1]
薬物含量(Drug loading capacity)(%) = 封入した薬物の量(Weight of drug determined in microsphere)(mg)÷回収したミクロスフェアの量(weight of microsphere)(mg)×100
【0225】
[計算式2]
封入率(%) = 封入した薬物の量(Weight of drug determined in microsphere)(mg)÷投入した薬物の量(weight of the feeding drug)(mg)×100
【0226】
[計算式3]
収率(yield of microsphere)(%) = 回収したミクロスフェアの量(weight of microspheres)(mg)÷(投入した薬物+高分子の量(weight of the feeding drug+polymer))(mg)×100
【0227】
OND-1含有のPLGA放出制御型粒子の封入率と収率は、下記表54の通りである。
【表54】
【0228】
また、様々な3位誘導体で置換されたシクロスポリンA誘導体含有のPLGA放出制御型粒子に対する薬物の含量、封入率及び収率を測定した実験結果を下記表55、表56に示す。
【表55】
【表56】
【0229】
実験例4.PLGA放出制御型製剤のゼータ電位(zeta-potential)を測定
ゼータ電位を測定して粒子間凝集の有無を分析した。ゼータ電位値が±30mV以上の場合、斥力が発生して凝集しないが、±10mV以下では凝集することができる。したがって、ゼータ電位値が-30mV以下、+30mV以上であれば安定な分散液とみなすことができる。
【0230】
本実験では、zetasizer(モデル名:Nano ZS 90、Malvern;Dispersant:D.W.;Temperature:25℃、Equilibration time:120sec)を用いて真空乾燥したPLGA徐放性製剤である実施例1、実施例3、実施例4、実施例5、実施例14、実施例17、実施例20の表面電荷を測定した。zetasizerの測定条件は以下の通りであり、3か所を置測定して平均値を次の表に示した。
【表57】
【表58】
【0231】
前記表から確認できるように、実施例1と実施例4はいずれも-30mV以下のゼータ電位値を示しているので、分散性に優れていることがわかる。
【0232】
実験例5.インビトロ(in-vitro)放出試験
(1)実験方法
薬物放出の遅延効果は、PLGAが分解される時間に依存する。インビトロ(In vitro)薬物放出試験で一般的に使用されるPBS with tween80 0.2%(pH7.4)を放出媒体(release medium)として使用すると、少なくとも2週間から最大4週間まで薬物が放出されない。これはインビボ(in-vivo)放出の結果とは異なる。
【0233】
したがって、ラット血漿(Rat plasma)を放出媒体(release medium)として使用し、インビボ(in-vivo)条件と類似なインビボ放出試験を行い、最適なIV-IVC(In vitro-in vivo correlation)を算出した。ラット血漿は、ラットから得られた血液をヘパリンでコーティングしたチューブに分注した後、遠心分離機を用いて3000rpmで10分間遠心分離した上清液を使用した。得られたラット血漿2mlに各実施例で調製した粒子をOND-1基準として50μg/mlの濃度で添加した後、37℃のインキュベーター中で90rpmで振とうしながら保存した。その後、時間ごとにサンプリングし、HPLCで分析して薬物放出量を測定した。HPLC条件は前記表52の通りである。HPLC分析方法は以下の通りである。
【0234】
[HPLC分析方法]
サンプリングするバイアルを30秒間ボルテックスした後、ビアルから100μlを分注し、13,000rpmで30分間遠心分離する。その後、層分離した上清液90μlを分注し、ACN 270μl(サンプルA)を加える。残ったPelletに360μlの75%ACN(サンプルB)を加える。サンプルAおよびBを3分間超音波処理(sonication)した後、13,000rpmで30分間遠心分離する。そして、層分離したサンプルAおよびBの上清液300μlを分注し、0.22μmシリンジフィルターでろ過処理した後、HPLC分析する。薬物放出パターンの実験結果を
図20~27に示す。
【0235】
前記結果は、本発明のPLGA放出制御剤が徐放性を示すことを実証する。さらに、実験結果に基づき、必要に応じて適切な薬物放出パターンを示す薬物を製造することができる。例えば、重度の脱毛患者のためには、最初には薬物放出が高くなるように製作し、脱毛が軽度かまたは予防の必要な患者には薬物が徐々に放出されるように製作し、女性の場合には異なる放出パターンを示すように薬物を製作する。
【0236】
各実験の具体的な結果および内容は以下の通りである。
【0237】
5.1.PLGAのLA:GA比による薬物放出パターンの比較
実施例1-A~1-CのOND-1薬物放出パターンを
図20に示した。
図20によれば、PLGAのLA:GAが50:50、75:25、85:15順に薬物放出速度が速く、7日目にそれぞれ38%、17%、0%が放出され、14日目にそれぞれ53%、32%、9%が放出された。実施例1-A、1-B、1-Cはすべてイニシアルバースト現象は見られず、徐放性製剤として優れた薬物放出パターンを示した。
【0238】
また、薬物放出7日目の粒子のSEM画像を確認し、
図21に示した。
図21によれば、薬物が38%放出された実施例1-Aは、球状の形状がほぼなくなり、粒子が凝集した形態を示した。薬物が17%放出された実施例1-Bは、球状の形状は維持しているが、表面が粗くなり、穴(hole)が多く観察された。一方、薬物が0%放出された実施例1-Cでは、表面が滑らかな球状の粒子が観察された。前記(In-vitro release)の結果と形態学的観察の結果は互いに一致する。
【0239】
従来の文献によれば、シクロスポリンA(CsA)を含有するPLGAミクロスフェア剤形のインビトロ薬物放出のプロファイルは、初期の急激な薬物放出のバースト後にゆっくり放出される二相性(Biphasic)の薬物放出を示すことが知られている。例えば、論文(J. Nanotechnology 2014, Article ID 683153)では、約70%~92%の薬物が24時間以内に放出されると記載しており、他の論文(J. of Con Release 151 (2011) 286-294)では24時間内に75~90%が放出されると記載しているなど、多数の論文でシクロスポリンA含有PLGAマイクロスフェアのイニシアルバースト現象を指摘している。
【0240】
イニシアルバースト放出後で徐々に放出されるパターンである二相性法放出(Biphasic Biphasic release)の原因には、凍結乾燥で形成されたナノ粒子の内部構造、製造過程中に粒子表面で残っているCsA、凍結乾燥工程でCsAの結晶構造が非晶質構造に変形することによる急激な溶解度の増加、CsAとPLGAが非結晶性の固体分散体(amorphous Solid dispersion)を形成することによる急激な溶解度の増加などがあるが、明確に解明されていない。本発明者らは、二相性法放出(Biphasic Biphasic release)の最も重要な原因がCsAとPLGAとの間の弱い結合力および比較的高い親水性であると判断した。
【0241】
CsAの水に対する溶解度は27μg/ml、分配係数(logP)は2.92である(ismailos et al. 1991, czogalla et al. 2009)一方、CsAの誘導体であるOND-1は水に対する溶解度が10μg/mlで、分配係数(logP)が3.84である。すなわち、OND-1はCsAより疎水性であり、分配係数が高く、ミクロスフェアからの体内薬物放出が遅延して、持続放出および放出速度の調節が可能な利点がある。したがって、OND-1に比べて低い分配係数を有するCsAを含むPLGAミクロスフェアは、イニシアルバースト現象が現れるのに対し、より疎水性分子であるOND-1を含むPLGAミクロスフェアは、イニシアルバーストがなく、薬物の持続的放出が可能である。
【0242】
結論として、本発明のOND-1含有のPLGAミクロスフェアは、従来のCsA含有のPLGAミクロスフェアとは異なり、製剤の体内安定性が高く、放出制御が優秀であり、生体内でイニシアルバーストがないため、生体内での薬物放出制御に優れた製剤であることがわかる。
【0243】
他にも後述する実験例7のFT-IR結果によれば、OND-1はCsAと異なりOND-1のアミドIピークがシフトし、OND-1とPLGAとの間に強い相互関係(interaction)を示した。実験例8によれば、OND-1はCsAより疎水性が高いためPLGAと強く結合し、OND-1ミクロスフェアのTgがPLGAによりなくなって安定した形態を示した。したがって、OND-1含有のPLGAミクロスフェアの安定した薬物放出パターンは、CsAとその3位誘導体との化学的性質の違いによるものであり得る。
【0244】
5.2.PLGA(LA:GA=50:50)の末端基、分子量による薬物放出パターンの比較
実施例1-Aと3-A~3-Cの薬物放出パターンを
図22に示す。
図22によれば、実施例1-A、3-A、3-C、3-B、すなわち、acid-7K、acid-38K、ester-38K、ester-7Kの順で薬物放出速度が速い。8日目にそれぞれ37%、32%、21%、12%が放出され、14日目に54%、45%、29%、19%が放出された。全ての実施例において、イニシアルバースト現象がなく、優れた徐放性放出パターンを示した。
【0245】
5.3.PLGA(LA:GA=75:25)の末端基、分子量による薬物放出パターンの比較
実施例1-Bと4-A~4-Cの薬物放出パターンを
図23に示した。
図23によれば、実施例1-B、4-B、4-A、4-C、すなわち、acid-4K、ester-4K、acid-38K、ester-38Kの順に薬物放出速度が速く、8日目にそれぞれ17%、11%、0%、0%が放出され、14日目にそれぞれ33%、17%、9%、4%放出された。全ての実施例において、イニシアルバースト現象がなく、徐放性製剤として優れた薬物放出パターンを示した。
【0246】
5.4.PLGA(LA:GA=85:15)の末端基、分子量による薬物放出パターンの比較
実施例1-Cと5-Aの薬物放出パターンを
図24に示した。
図24によれば、実施例1-C、5-A、すなわち、ester-50K、ester-190Kの順に薬物放出速度が速く、14日目にそれぞれ9%、1%放出された。実施例1-C、5-Aはいずれもイニシアルバースト現象がなく、徐放性製剤として優れた薬物放出パターンを示した。
【0247】
5.5.薬物含量による薬物放出パターンの確認
実施例26-A~26-Cの薬物放出パターンを
図25に示した。
図25によれば、実施例26-C、26-B、26-A、すなわちOND-1含量60%、40%、20%の順に薬物放出速度が速く、14日目にそれぞれ36%、24%、15%放出された。全ての実施例において、イニシアルバースト現象がなく、徐放性製剤として優れた薬物放出パターンを示した。
【0248】
5.6.調節剤による薬物放出パターンの確認
実施例23-A~23-Fの薬物放出パターンを
図26に示した。
図26によれば、実施例23-B、C、F、E、A、D、すなわち、調節剤でspan20、poloxamer P124、Mrij52、Brij58、tween80、PEG400の順に96%、53%、48%、39%、34%、12%が放出された。全ての実施例において、イニシアルバースト現象がなく、徐放性製剤として優れた薬物放出パターンを示した。
【0249】
5.7.3位置誘導体を含有した薬物の放出パターン
図27によれば、シクロスポリン3位誘導体である[D-2-(4-methylbenzenethio)Sar
3]Cyclosporine A、[N-methyl-D-Abu
3]Cyclosporine A、[N-methyl-D-Nva
3]Cyclosporine Aと[D-MeAla
3]Cyclosporine Aは、OND-1と同様に、イニシアルバーストがなく、徐放性製剤として優れた薬物パターンを示した。
【0250】
実験例6.OND-1とCsAの結晶性の差:XRDおよびDSC実験の結果
薬物の結晶性(Crystallinity)は、結晶形(crystalline)、非結晶性(amorphous)、またはその複合形態で存在することができる。結晶性は薬物放出の速度に影響を与える重要な物理化学的特性の1つである。
【0251】
6.1.XRD(X-ray diffraction)による結晶性の確認
本実験で用いたXRD測定条件と結晶化方法は、以下の通りである。測定結果を
図28と
図29に示す。
【0252】
[測定条件]
-X-ray diffractometer、モデル名:MiniFlex、Rigaku、Tokyo、Japan/-X-ray generator:graphite monochromatized Cu Kα radiation(λ=1.5418Å/-2θrange:from 10° to 30° with a step size of 0.02°/-Scanning rate:1.0°/min
【0253】
[結晶化方法]
-Evaporation crystallization:CsAまたはOND-1 20mgをACN 5mlに溶解し、室温でACNを24時間以上徐々に蒸発させて結晶を得る。
【0254】
-Drowning-out crystallization:CsAまたはOND-1 20mgを溶かしたACN 5mlをD.W.50mlに投入して結晶が生成した後、濾過して結晶を得た。
【0255】
図28によれば、シクロスポリンAは製造条件に関係なく、結晶形XRDパターンを示した。シクロスポリンAの原粉末(raw powder)のXRD測定結果を見ると、結晶形特有の強いピークが現れ、シクロスポリンAの原粉末(raw powder)は結晶形であることが確認できる。
【0256】
しかし、
図29によれば、シクロスポリン3位誘導体であるOND-1は、製造条件に関係なく、常に非結晶形のXRDパターンを示した。結晶形を誘導するためにEvaporationまたはDrowning-outで再結晶化した場合にも、非結晶形を示した。この差は、シクロスポリン3位誘導体であるOND-1が、シクロスポリンAと全く異なる放出特性を示し得ることを示唆する。
【0257】
6.2.DSC(Differential scanning calorimetry)による結晶性の確認
示差走査熱量測定法(DSC)により薬物の融点、ガラス転移温度、及び再結晶の有無を確認し、シクロスポリンAとOND-1の結晶性の差を確認した。DSC測定の条件は以下の通りである。DSC測定の結果を
図30と31に示す。
【0258】
[測定条件]
DSCモデル名:DSC Q2000、TA instruments/Purging gas:N2 Gas(flow:70 ml/min)/Heating rate:5℃/isothermal temperature:10℃/min)/cycle number:1(from 20℃ to 200℃)
【0259】
図30によれば、シクロスポリンAの原粉末(raw powder)は、一次昇温曲線において、約112℃でTm(melting temperature)が現れ、これはシクロスポリンAが結晶形であることを示す。
【0260】
一方、
図31によれば、OND-1の原粉末(raw powder)は、一次昇温曲線および二次昇温曲線において結晶性シクロスポリンAのTm(112℃)が消え、約125℃でTg(glass-transition temperature)またはサーモトロピック液晶(thermotropic liquid crystal)の形成による相転移(phase transition)が現れ、非結晶形であることが確認された。
【0261】
実験例7.PLGA放出制御型製剤の粒子内の薬物と高分子の相互作用を評価(FT-IR)
薬物放出の制御が可能である安定な粒子は、保存中に相分離および再結晶化を起こさず、イニシアルバーストを抑制しなければならない。このためには、薬物とPLGAとの間の密接な相互作用が必要である。薬物とPLGAとの相互作用を研究するために、シクロスポリンA分子内の4つのアミド基の吸収領域であるアミドI領域とPLGAエステル波長帯領域についてFT-IR分光分析を行った。
【0262】
特に、シクロスポリンAアミドI領域(1600-1700cm-1)は分子内に4つのアミド結合の構造変化を示す領域であり、シクロスポリンAの二次構造が周辺の溶媒や高分子と結合によってどのように変化するかを知らせる重要な指標である。例えば、結晶化したシクロスポリンAは、4つのアミド基が分子内水素結合(intramolecular hydrogen bond)の形成に関与するが、シクロスポリンAが極性溶媒または高分子と接触すると、アミド基は内部の水素結合の代わりに外部溶媒または高分子と水素結合する。したがって、結晶化したシクロスポリンAは分子内水素結合の特徴である1624cm-1でピークを示すが、極性溶媒や高分子結合すると分子間水素結合の特徴である1630cm-1でピークシフトを示す。OND-1に対して、溶媒の極性によるアミドIバンドのシフトを確認した結果、CsAのように溶媒の極性が増加するにつれてピークが1622cm-1から1634cm-1に移動することがわかった。
【0263】
これらのFT-IRピークのシフトに基づいて、CsAおよびOND-1とPLGAネットワーク間の化学的相互作用を評価するために、アミドI領域とPLGAエステル領域の分光吸収ピークのシフトを化学的相互作用の証拠として利用することができる。(Quimica Nova 35.4(2012):723-727、Current Drug Delivery、2006、3、343-349、The AAPS Journal 2007; 9(2))。
【0264】
本実験では、PLGA粒子内で起こるシクロスポリン3位誘導体とPLGA高分子との間の相互作用を評価するために、実施例26の製剤をFT-IR(Fourier-transform infrared spectroscopy)を用いて分析した。また、OND-1とPLGAを2:8、3:7、4:6、5:5、8:2の重量比で物理的に混合した群(Physical Mixing、PM)を比較群とした。FT-IRの測定条件は、以下の通りである。測定結果を
図32~
図35に示す。
【0265】
[FT-IR測定条件]
FT-IR モデル名:Nicolet is 5、Thermo Fisher/Range:800~3000cm-1/Interval:4cm-1/Crystal type:Diamond(pH 1~12)
【0266】
図32及び
図33によれば、OND-1は、アミドIバンドピーク(アミドC=O)が1622cm
-1で、PLGAのエステル結合ピーク(エステルC=O)が1746cm
-1で表れた。
【0267】
図34によれば、OND-1とPLGAを2:8、3:7、4:6、5:5、8:2の重量比(OND-1:PLGA)で物理的に混合した比較群はOND-1のアミド1バンドピークがピークシフトなしで1622cm
-1で現れ、2つの物質間の相互結合が起こらないことが示された。
【0268】
しかしながら、
図35によれば、本発明のナノ粒子は、OND-1のアミドIバンドである1622cm
-1ピークから1633~1634cm
-1への有意なシフトが示された。特に、OND-1:PLGAの重量比が2:8(実施例26-A)、3:7(実施例26-B)のナノ粒子では、OND-1のアミドIバンドピークが強くシフトしたため、OND-1とPLGA間の相互結合が強いことが示された。また、OND-1:PLGAの重量比が4:6、5:5、8:2の粒子でも一定な傾向のピークシフトが確認された。OND-1の重量比が増加するにつれて、PLGAに結合したOND-1が減少し、ピークシフトが減少した。
【0269】
従来知られている研究によれば、シクロスポリン(CsA)を含むPLGAミクロスフェア製剤のFT-IRスペクトルでは、アミドI領域のシフトは観察されなかった。これは、CsAとPLGAとの間に化学的相互作用がないか弱いからであると考えられる(Quimica Nova 35.4 (2012): 723-727, Current Drug Delivery, 2006, 3, 343-349, Materials Research, Vol. 11, No. 2, 207-211, 2008, International Journal of Pharmaceutics 389 (2010) 186-194)。したがって、CsAを含むPLGAミクロスフェアのイニシアルバーストおよび低い製剤安定性は、CsAとPLGAとの間の化学的相互作用が低いためであると考えられる。
【0270】
シクロスポリン3位誘導体とPLGAが粒子を形成すると、分子内アミド群がPLGAと強い結合をするということは、従来の研究結果から予測できなかった。これは、OND-1がシクロスポリンA誘導体であるが、3位にメチルチオ基が付加して性質が変化したためである可能性がある。本発明の実験例によれば、ほとんど結晶形であるCsAと異なり、OND-1は様々な条件の結晶化工程にもかかわらず非結晶形を示したので、OND-1含有のPLGAナノ粒子は既存のCsA系のPLGAナノ粒子とは全然異なる性質を示すことができる。
【0271】
結論として、OND-1を含むPLGAミクロスフェアは、CsAを含むPLGAミクロスフェアとは異なり、OND-1のアミドIピークがシフトすることによって、両方の間に強い相互関係(interaction)が存在することが確認された。この実験結果は、本発明の薬物調節型製剤が安定性が高く、生体内でイニシアルバーストなく、放出制御に優れた製剤であることを裏付ける。
【0272】
実験例8.PLGA放出制御型製剤の粒子内の薬物と高分子の安定性を評価(DSC)
薬物担持粒子の保存中における相分離または再結晶化を防ぐためには、薬物と高分子担体との間の分子間相互作用が必要である。本実験では示差走査熱量測定法(DSC)により薬物の融点、またはガラス転移温度と再結晶の有無を確認した。DSC測定条件は前記実施例6-2の方法と同じである。測定結果を
図36~
図38に示す。
【0273】
図36によれば、OND-1のガラス転移温度(Glass transition temperature、Tg)またはサーモトロピック液晶(thermotropic liquid crystal)の形成による相転移(phase transition)が125℃で観察され、PLGAのTgは51℃で観察された。
【0274】
図37~
図38は、実施例26-Aのナノ粒子粒子の結果を示す。
図37によれば、OND-1のTg(またはサーモトロピック液晶の形成による相転移)が125℃であるのに比べて、NP20%ではOND-1のTgは現れなかった。また、
図38によれば、NP50%および80%でTg値がOND-1のTg値より低くなった。これは、OND-1とPLGAとの相互作用によって、粒子内で昇温によるOND-1分子の相変化や分子流動性がなくなった可能性と、PLGAによりOND-1が安定的に非結晶形(amorphous)の状態を維持した可能性が考えられる。
【0275】
実験例9.シクロスポリン3位誘導体のインビトロ皮膚浸透実験
経皮吸収拡散試験(Franz Diffusion Cell)により、シクロスポリン3位誘導体の局所皮膚塗布による皮膚浸透の有無を確認した。
【0276】
具体的に、豚の皮膚をとかして皮下脂肪(subcutaneous fatty)を皮膚(dermis)部位から除去し、直径3cmの円盤状に切った。皮膚角質層(stratum corneum)を上部のドナーチャンバー(donor chamber)に、真皮層を下部の収容チャンバー(receptor chamber)に向けて、皮膚透過装置(Franz diffusion、5ml receptor容積、拡散面積0.785cm2)に装着した。200μgのOND-1を含有したオリーブ油0.2mlをドナーチャンバーに投入し、37℃、600rpmでインキュベートした。時間ごとに、水溶液(Tween80 0.2%含有PBS、pH 7.4)を500μlずつサンプリングし、同量の溶液を補充した。
【0277】
サンプリングした溶液中のシクロスポリン3位誘導体をHPLCで定量分析し、5回繰り返し実験の平均値を計算してシクロスポリン3位誘導体の透過量を決定し、下記表58に示した。
【0278】
24時間使用した皮膚を皮膚透過装置から分離し、エタノールで数回洗浄し、乾燥して、テープストリッピング(tape-stripping、スコッチテープ10回)して表面に残った薬物を完全に除去した。回収した皮膚試料をコレゲナーゼタイプI(Gibco)溶液で37℃、24時間インキュベートして溶解した。その後、MTBE(methyl tert-butyl ether)を用いた液相-液相抽出法を利用し試料を得て、シクロスポリン3位誘導体をHPLCで定量分析し、薬物の皮膚内沈積量(deposition)を算出した。
【0279】
前記液相-液相抽出法の具体的な方法は以下の通りである。各皮膚溶解試料を200~400μl分注し、1.2mlのMTBEを添加した。10分間高速振盪した後、遠心分離(13,000rpm、3分)して有機溶媒層(1ml)を分離、窒素気流下で10分間乾燥した。再組成溶媒(75%アセトニトリル)に溶解し、シリンジフィルターで濾過して分析対象試料を得た。
【0280】
[HPLC分析条件]
分析システム:Agilent 1100 series、CSA 4000/分析カラム:Kromasil 100-5-C18、4.6×150を70℃条件/移動相:移動相Aは水、移動相Bはアセトニトリル(acetonitrile)/移動相の流速量:ml/分/サンプル注入量:20μl
【表59】
【0281】
前記表59で示すように、シクロスポリン3位誘導体の皮膚透過(transdermal、systemic absorption)は極めて微量であることを確認した。また、シクロスポリン3位誘導体の皮膚内沈積量は約0.3~1.1μg/cm2であった。実験結果によれば、シクロスポリン3位誘導体の発毛効果のためには、局所薬物伝達(Intralesional Mesotherapy)などによる薬物送達が必要であることが示された。
【0282】
実験例10.局所薬物伝達(intralesional mesotherapy)による発毛効果の確認
【0283】
10-1.局所注射投与による発毛効果の確認
シクロスポリン3位誘導体を注射による局所投与した時に、毛包成長促進と発毛効果を示すか否かを確認した。
【0284】
具体的に、生後42~49日齢のマウス(C57BL/6、female)の背部の毛を除去し、各マウスの重量を測定して体重が均等に分散するように分けた。実施例1-Bの粒子を含むデポ(depot)溶液を、局所薬物伝達(intralesional mesotherapy)(0.25mm(31G)×8mmインスリンシリンジ)で局所投与し、発毛効果を確認した。
【0285】
図39によれば、局所投与部位は毛包形成と発毛現象が強く表れたが、周辺部位は毛包形成を示さなかった。したがって、シクロスポリン3位誘導体を局所投与すると強い発毛効果を示すことが確認された。
【0286】
10-2.局所注射投与した薬物の血中濃度の確認
本実験では、前記実験例10-1で局所投与したシクロスポリンの発毛効果が全身作用によることであるか、局所的な作用によることであるかを確認した。
【0287】
具体的に、MTBE(methyl tert-butyl ether)を用いた液相-液相抽出法とLC/MS分析により血液中に存在する薬物の濃度を測定した。発毛部位皮膚および非投与部分の皮膚試料の用意とMTBEを用いた液相-液相抽出法は、前記実施例9と同様である。前記LC/MS分析条件は以下の通りである。HPLCの分析システムはAgilent 1100 series、CSA 4000を使用し、カラムはUnison UK-C8(3μm)、2.0×50を70℃条件、移動相Aは水とギ酸(100:0.1、v/v)、移動相Bはメタノールおよびギ酸(100:0.1、v/v)であった。最初に移動相Bを20%に3分まで増加させた後、平衡化状態になった後、移動相の流速量は0.4ml/分であり、試料注入量は3μlであった。また、重量分析計はApplied Bioscienceの4000 Q TRAP Mass Spectrometerシステムを使用した。
【0288】
LC/MS分析による投与部位と非投与部位の薬物残存量を下記表60に示す。
【表60】
【0289】
前記表60によれば、局所投与部位の皮膚内ではOND-1が多く検出されたのに対し、周辺の皮膚と全身血内ではOND-1がほとんど検出されなかった。したがって、シクロスポリン3位誘導体の発毛効果は全身性ではなく局所的に作用したことによる結果であり、シクロスポリン3位誘導体を脱毛部位に局所投与して発毛効果を得ることができることが確認された。
【0290】
実験例11.PLGAデポ(Depot)を局所注射投与(Intradermal (Intralesional) injection)した時、全身血への薬物消失を確認
局所投与した薬物が全身血へ容易に消失すると、全身毒性や低効果などの恐れがある。本実験では、本発明のPLGAデポ(Depot)製剤を局所注射投与した時に全身血への拡散による薬物の消失の程度を確認した。
【0291】
4~5週齢のラット(Sprague Dawley、female)を用意し、薬物投与前に背部の毛を除去し、実験動物の体重を測定して個体の体重が均等に分散するように分けた。一日の適応期間の後、実施例1-BのOND-1含有の薬物製剤(#126)と対照群として、OND-1溶液(PG:EtOH:DW(=6:2:2))を脱毛した背部の6箇所に注射で経皮投与(ID)した。投与した注射液は約50μlであり、0.25mm(31G)×8mmのインスリンシリンジを使用した。
【0292】
薬物を投与した後、定められた時間ごと(薬物投与した後、1、3、6、9、12、15、18、21、24、28、32、36、40、44、48、54、72、78、144、168、192時間)で実験動物の鎖骨下静脈から約300~400μlの血液を採取した。採取した血液試料をMTBE(methyl tert-butyl ether)を用いた液相-液相抽出法で処理し、LC/MS分析で血中の薬物濃度を測定した。(MTBE液相-液相抽出法とLC/MS分析法は、前記実験例10参照)
【0293】
前記実験結果を表61および
図40に示す。
【表61】
【0294】
前記表61および
図40によれば、本発明の薬物が封入されたPLGA粒子製剤を投与した実験動物群は、一般溶液製剤の投与群に比べて低い全身露出程度を示した。AUC(Area under curve)値を算出して定量的に比較した結果、一般溶液投与群の薬物血中濃度はPLGA粒子製剤投与群に対して約8倍高いことが確認された。
【0295】
本実験結果は、シクロスポリン3位誘導体含有のPLGA粒子が皮膚に局所投与されると、一般注射溶液の製剤で起こり得る血中薬物の増加による全身副作用を抑えると共に、脱毛部位内の薬物濃度(therapeutic window)を緩やかで長期間(long-lasting)にわたって維持し、脱毛および発毛効果を持続的に維持することを示す。実験の過程で実験動物の状態を比較した結果、全ての処理群で特異的な臨床症状は見られなかった。
【0296】
実験例12.PLGA Depotの局所注射投与(Intradermal (Intralesional) injection)時の皮膚残存量確認
局所投与した薬物が優れた効果を示すためには、薬物は局所投与部位に一定期間残留しなければならない。本実験では、皮膚に局所投与した薬物の経時的残量を確認した。
【0297】
4~5週齢のラット(Sprague Dawley、female)を用意し、背部の毛を除去した。実験動物の体重を測定して個体の体重が均等に分散するように分けて、一日の適応期間を置いた。毛を除去した背部に実施例1-B粒子を含む注射製剤を経皮注射(ID)した。(0.25mm(31G)×8mmのインスリンシリンジ使用)
【0298】
観察を終了した後、実験動物の背中から皮膚試料を採取し、MTBE(methyl tert-butyl ether)を用いた液相-液相抽出法とHPLCを実施し、残留薬物を定量分析した。(具体的な方法は実験例9参照)
【0299】
前記HPLC分析の結果を
図41に示す。
図41によれば、PLGAデポ(Depot)は、一般溶液に比べてAUCが4倍以上高く、皮膚残存量が著しく高く持続されることを確認した。これは、シクロスポリン3位誘導体がPLGA粒子の形態で局所皮膚部位に送達されると、単純な注射溶液製剤で起こり得る急激な全身血中薬物の増加とこれによる全身副作用を最小限に抑えるとともに、脱毛部位内の薬物濃度(therapeutic window)を緩やかに長期間(long-lasting)維持し、脱毛および発毛効果を持続的に維持することを示す。
【0300】
実験例13.PLGAのLA:GA比による皮膚内の残存薬物の評価
4~5週齢のラット(Sprague Dawley、female)を用意し、背部の毛を除去し、実験動物の体重を測定して個体の体重が均等に分散するように分けた。一日の適応期間の後、互いに異なるLA:GA比を有するOND-1含有のPLGA粒子である実施例1-A(#125)、1-B(#126)、1-C(#127)を毛が除去された背部の下端から、左:実施例1-A、中央:実施例1-B、右:実施例1-Cの形態で定められた時間間隔(終了時点から1、4、8、10、15、16、17日前に投与、全投与回数7回)で経皮内注射(ID、(注射液:食塩水約50μl))した(0.25mm(31G)×8mmのインスリンシリンジ)。
【0301】
観察を終了した後、実験動物の背板から同様の大きさに皮膚試料を採取し、MTBEを用いた液相-液相抽出法でHPLCで薬物定量分析を行った。(実験例9参照)
【0302】
前記実験結果を
図42に示す。
図42によれば、LA:GA比が異なる3種の製剤は経時的に投与部位の薬物消失速度で差が現れた。
【0303】
また、これを数値的に確認するため、経時的な薬物残存曲線のAUC(Area under curve)値をグラフで示し、LA:GA比が異なる3種の製剤のAUC値は互いに統計的有意性を示した(t-test、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。
【0304】
以上の結果によれば、シクロスポリン3位誘導体薬物が封入されたPLGA粒子は、PLGA高分子の種類(PLA:PGA=50:50、75:25、85:15)に応じて投与部位の薬物消失程度で有意な差を示すことがわかった。これは、PLGA高分子の種類を変更し必要に応じて薬物放出速度が制御された徐放性製剤の製造が可能であることを意味する。実験の過程で実験動物の状態を比較した結果、全ての処理群で特異的な臨床症状は見られなかった。
【国際調査報告】