IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エイチツープロ リミテッドの特許一覧

特表2024-526374イオンシャント電流除去のためのデバイスおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】イオンシャント電流除去のためのデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/70 20210101AFI20240709BHJP
   C25B 15/02 20210101ALI20240709BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240709BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20240709BHJP
【FI】
C25B9/70
C25B15/02
C25B9/00 A
C25B1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521384
(86)(22)【出願日】2022-06-20
(85)【翻訳文提出日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 IL2022050657
(87)【国際公開番号】W WO2022269602
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】63/202,688
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523478665
【氏名又は名称】エイチツープロ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ロム イダン
(72)【発明者】
【氏名】モシュコビッチ モルデチャイ
(72)【発明者】
【氏名】ドタン ヘン
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC03
4K021CA06
4K021DC01
4K021DC03
(57)【要約】
本発明は、2つ以上の電気化学セルと、セル間を流れる電解質溶液の流路に配置されたシャント電流抑制デバイスとして動作可能なバイポーラコネクタとを備えるバイポーラシステムを提供する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が直列電気接続を介して(直列接続で)別の電気化学セルに接続された2つ以上の電気化学セルと、前記セル間を流れる電解質溶液の流路に配置されたシャント電流抑制デバイスとして動作可能なバイポーラコネクタ(BPC)とを備えるバイポーラシステムであって、前記BPCは、前記電解質溶液の途切れのない流れを可能にし、前記BPCをイオンシャント電流が横切ることを防止または低減または軽減または最小化するように構成され、前記システムには、バイポーラプレートまたはバイポーラセパレータがない、バイポーラシステム。
【請求項2】
2つ以上の電気化学セルのスタック配置を備えるシステムであって、前記配置内の各セルは、前記スタック内のセル間の電解質溶液の指向性の流れを可能にするように構成され動作可能であり、イオン電流リークを防止するバイポーラコネクタ(BPC)を介して、前記配置内の別のセルに直列に接続され、前記システムは、バイポーラプレートまたはバイポーラセパレータがないバイポーラ配置である、システム。
【請求項3】
1または複数のバイポーラスタックを備えるシステムであって、各スタックは、各々が電極アセンブリおよび電解質溶液を備える2つ以上の電気化学セルを備え、各スタック内の前記セルは、直列に配置され、前記セル間の前記溶液の流路を画定するセル間導管を介して流体的に関連付けられており、前記導管は、前記電解質溶液の流れを維持しながら電流リークを低減または防止するように構成され動作可能なバイポーラコネクタ(BPC)を備え、前記システムはバイポーラ配置で提供され、前記スタックの各々にはバイポーラプレートまたはバイポーラセパレータがない、システム。
【請求項4】
複数のスタックに配置された複数の電気化学セルであって、各セルが前記スタック内の別のセルに直列に接続された複数の電気化学セルと、
電解質溶液を共有電解質として前記セル/スタックに供給するための手段と、
電解質流路として構成された電解質導管であって、前記電解質溶液の流れを維持しながら電流リークを低減または防止するように構成され動作可能なバイポーラコネクタ(BPC)が設けられた電解質導管と
を備える電気化学システムであって、
前記システムはバイポーラ配置で提供され、前記スタックの各々にはバイポーラプレートまたはバイポーラセパレータがない、電気化学システム。
【請求項5】
前記2つ以上の電気化学セルは、バイポーラ接続でスタックされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記システム内への、および前記システム内での前記電解質溶液の循環を可能にする1または複数のマニホールドが設けられた、請求項1~5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
電気化学式熱活性型化学セル(E-TAC)電解装置である、請求項1~6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
動作パターンに従って前記2つ以上のスタックを動作させるように構成された制御ユニットを備える、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
2つ以上のE-TACセルの少なくとも1つのスタックであって、前記セルの各々は、電解質溶液を保持するために構成され、各々がカソード電極およびアノード電極を有する少なくとも1つの電極アセンブリを備え、前記カソードは、印加された電気バイアスに応答して前記電解質溶液中の水の還元に影響を及ぼすことにより、水素ガスおよび水酸化物イオンを生成するように構成され、前記アノードは、水酸化物イオンの存在下で可逆的に酸化を経、前記バイアスがない状態では還元を経て、酸素ガスを生成することが可能である、少なくとも1つのスタック
を備え、
前記少なくとも1つのスタック内の前記2つ以上のセルの各々は、隣接するセル間の前記電解質溶液の指向性の流れを可能にするように構成され動作可能であり、イオン電流リークを防止するバイポーラコネクタ(BPC)を介して、前記スタック内の前記2つ以上のセルの別のセルに直列に接続され、前記システムは、バイポーラプレートまたはバイポーラセパレータがないバイポーラ配置である、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記BPCは、前記電解質経路を画定する連続導管であり、前記導管は、前記経路における機械抵抗を最小限に抑えるように選択された溶接部または接合部を備える、請求項1~10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記BPCは、前記電解質経路を画定する連続導管であり、前記導管は、移動間隙または抵抗性電解質接続部を備える、請求項1~10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記移動間隙は、隔離用の固体、液体、またはガスである、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記移動間隙は、ガス気泡または複数のガス気泡である、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記BPCは、固体回転障壁である、請求項1~10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記BPCは、前記電解質経路を画定する連続導管であり、前記導管は、ループとして配置される、請求項1~10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
前記ループは螺旋ループである、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記BPCは、抵抗性電解質接続部である、請求項1~10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項18】
前記BPCは、プレートを貫通するボア孔を有する多孔質プレートを備え、前記プレートは、前記ボア孔を通って流れるように前記多孔質プレートの上面に前記電解質溶液を受け取るように構成される、請求項1~10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項19】
電気化学システムにおけるイオンシャント電流を最小限に抑えるための方法であって、
各々が直列に接続された複数のセルを備える複数のスタックを有するシステムを提供することであって、前記システムは、前記複数のセルによって共有される電解質溶液を備え、任意の2つのセル間の溶液流路には、バイポーラコネクタ(BPC)が設けられることと、
前記BPCがないシステムに比べて少なくとも部分的にシャント電流を低減するために、前記BPCが設けられた前記経路に電解質溶液を流すことと
を備える方法。
【請求項20】
電気化学システムにおけるイオンシャント電流を最小限に抑えるための方法であって、前記システムは、各々が直列に接続された複数のセルを備える複数のスタックを有し、前記システムは、前記複数のセルによって共有される電解質溶液を備え、任意の2つのセル間の溶液流路には、バイポーラコネクタ(BPC)が設けられており、前記方法は、前記システムにおけるイオンシャント電流を少なくとも部分的に低減するために、前記BPCが設けられた前記経路に電解質溶液を流すことを備える、方法。
【請求項21】
電気化学システムにおけるイオンシャント電流を最小限に抑えるための方法であって、
直列に接続された複数の電気化学セルと、溶液流路を画定する導管を通って前記複数のセル間を流れる電解質溶液とを有するシステムを提供することと、
前記電解質溶液がバイポーラコネクタ(BPC)を通って流れるように、前記溶液流路に沿って前記BPCを組み立て、それによって前記システムにおけるイオンシャント電流を少なくとも部分的に低減することと
を備える方法。
【請求項22】
前記システムはE-TACである、請求項19~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記システムは複数のスタックを備え、各スタックは2つ以上の電気化学セルを備える、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、電気化学システムにおけるイオンシャント電流除去のためのデバイスおよび方法を考える。
【背景技術】
【0002】
バイポーラ電気化学セルの接続方法は、一般的に、マルチセルスタッキングおよび接続のために電気化学産業(バッテリ、スーパーキャパシタ、燃料電池、電解装置)で用いられている。これは、直列抵抗による電力損失を低減するために開発された。この方法は、電極セット間の電解質接続を回避または最小化しながら、1つの電極セットのアノードが隣の電極セットのカソードに接続されることを必要とする。電気化学式熱活性型化学セル(E-TAC)電解装置[1、2]において、単一スタック(またはロール)のアノードおよびカソードは、単一のコンパートメント内に収容され、電解質は、隣接するスタック間を流れる。したがって、バイポーラコネクタ(BPC)は、隣接するスタック間の電気イオン絶縁を提供する必要があり、同時に、リアクタを通る電解質および生成ガスの通路を提供する必要がある。
【0003】
電気化学セルスタックの2つの構成が知られている。
【0004】
モノポーラセルスタッキング(図1に示す)-正極がまとめて接続され、負極が個別に接続されるように、セルは並列に接続される。この接続は、セルの筐体への配線によって個別のセル間であってよく、または、同じ電解質環境を共有する同じセル溶液に接続および浸漬された電極間であってもよい。そのようなモノポーラ構成において、システム電流は、電流の合計であり、システム電圧は、個々のセルの各々の電圧と同じである。したがって、抵抗効果により、電流の増加に伴って電極が発熱し得る。機械的な観点によると、電解装置アセンブリにおいて、これが最も単純なセル構成であり、スタック内の全てのセルは、短絡することなく同じ電解環境に浸漬される。
【0005】
バイポーラセルスタッキング(図2に示す)-そのような構成において、セルは直列に接続され、各正極は、隣接するセルの負極に接続される。この接続は、セル筐体または同じセル筐体に接続および浸漬された電極への配線によって個別のセルから成り得るが、モノポーラ構成とは対照的に、短絡を回避するために個々のセル間で電解質の電気的分離(イオン切断)が必要である。隣接するセルの正極および負極は、通常、電極間の共通電流コレクタであるバイポーラプレートによって接続され、セル間の物理的障壁および必要な電子伝導性をもたらす。システム電圧は、セル電圧の合計である。システム電流は、個々のセルの各々の電流である。したがって、印加電流に伴う抵抗による発熱は、最小限である。しかし、そのようなシステムの課題は、特に、電解質が流れ、全てのセルに共通のリザーバを有するフローベースのシステムにおいて、起こり得る「ソフト短絡」およびリーク電流を克服することである。
出版物
[1]国際特許出願第PCT/IL2015/051120
[2]国際特許出願第PCT/IL2019/050314
[3]US2019/218678
[4]US4,277,317
[5]US3,666,561
[6]US3,634,139
[7]US3,522,098
[8]US3,537,904
[9]US2018/342751
[10]US2019/252709
[11]US2014/060666
[12]CN106207240
[13]WO2016/128038
[14]US2014/272512
[15]US2012/308856
[16]US4,377,445
[17]WO2007/131250
[18]JP62108465
[19]JP59127378
[20]US2014/287335
【発明の概要】
【0006】
たとえば電解装置、燃料電池、およびフロー電池などのフローベースのシステムは、隣り合うセルの陰極と陽極との間に配置されたバイポーラプレートを用いる。バイポーラプレートは、セル間に物理的障壁を生成しながら共通の電流コレクタとして機能する。障壁は、隣接する電極に同じ電解環境が直接かつ密接に接している場合に発生する電流リークの原因であるイオン伝導度を有することにより、「ソフトな」短絡を回避する。バイポーラスタックにおけるこの電流リークのメカニズムは、図3に示される。
【0007】
電極ペア(図3ではEP1、EP2)間の電位勾配により、リーク電流(lleak)は、一方の電極セットEP1のアノードと、他方の電極セットEP2のカソードとの間に流れる。これは、高い過電位を有するファラデー電流である。その値は、同じ電極セット内の電極間に流れる反応電流lreact1、lreact2よりも高くなり得る。リーク電流lleakにより、電解プロセス中に大きな電力損失が生じる。電流リークを低減するために、電解質の接続を可能にしながら、隣接する電極ペア間にイオン電気絶縁を実施する必要があるが、従来のバイポーラプレートは、2つのセル間に物理的分離が生じることにより、これができない。
【0008】
典型的な電気化学式熱活性型化学セル(E-TAC)電解装置において、単一スタック(またはロール)のアノードおよびカソードは、単一のコンパートメント内に収容され、電解質は、隣接するスタック間を流れる。したがって、そのような電解装置内に配置されたバイポーラコネクタ(BPC)は、隣接するスタック間(電解/電気化学セル/セル―スタック)に電気イオン絶縁を提供する必要があり、また、電解質および生成ガスがリアクタを通過することを可能にする必要がある。E-TACシステムは、反応物質がセルに供給され、反応生成物が除去される限り、機能し続けるように構成される。これにより、実質的に安定した不変のシステムが維持される。液体電解質の導電性および電界電位勾配により、イオンシャント電流は、導電性液体電解質の経路を移動することによって個々のセル間およびセルスタック間を流れ得る。イオンシャント電流の存在により、各スタックの蓄電および放電容量が低減され、システム全体のエネルギ効率も低下させ得る。
【0009】
図4に示す先行技術のシステムにおいて、バイポーラプレート(装置#1)は、隣接する電気化学セルのアノードとカソードとの間の電気伝導性を可能にしながら、電解質が流れることを回避し、セル間のイオン伝導性を防止するために、電気化学セル間に導電性の物理的障壁を形成する。シャント電流障壁(装置#2)は、隣接する電気化学セル間の電解質の流れを可能にし、かつイオン伝導性および電気伝導性を防止する非導電性流路を形成することにより、電気化学セル間のシャント電流を相殺する。
【0010】
当技術分野のシステムおよび方法論とは異なり、図5に示すように、本明細書に開示される技術の発明者は、リーク電流を完全に回避または最小化するという点でセル活動を維持しながら、任意の2つの電気化学セル間または任意の2つの電気化学セルスタック間に配置された、バイポーラプレートではないバイポーラコネクタ(BPC)を電解質が途切れずに流れることが可能であるように構成されたシステムを開発した。また、このシステムは、隣接する電気化学セルのアノードとカソードとの間の電気伝導性を可能にすることにより、電子伝導性を確保する。この従来と異なるアプローチは、電解質が流れることを防止する目的でセル間に物理的障壁を形成するための従来のバイポーラプレートの使用を否定するものである。本発明のシステムにおいて、そのような物理的障壁は存在せず、電解質溶液の流路は開いたままである。
【0011】
したがって、第1の態様において、本発明は、各々が直列電気接続を介して(直列接続で)別の電気化学セルに接続された2つ以上の電気化学セルと、セル間を流れる電解質溶液の流路に配置された(シャント電流抑制デバイスとして動作可能な)バイポーラコネクタ、BPCとを備えるバイポーラシステムを提供し、上記BPCは(2つ以上の電気化学セルの各2つの間に配置され)、電解質溶液の途切れのない流れを可能にし、上記デバイスをイオンシャント電流が横切ることを防止または低減または軽減または最小化するように構成され、上記システムには、バイポーラプレートまたはバイポーラセパレータがない。
【0012】
本発明はさらに、2つ以上の電気化学セルのスタック配置を備えるシステムを提供し、上記配置内の各セルは、スタック内のセル間の電解質溶液の(流路に沿った)指向性の流れを可能にするように構成され動作可能であり、イオン電流リークを防止する(シャント電流抑制デバイスとして動作可能な)BPCを介して、配置内の別のセルに直列に接続され、このシステムは、バイポーラプレートまたはバイポーラセパレータがないバイポーラ配置である。
【0013】
さらに、1または複数のバイポーラスタックを備えるシステムが提供され、各スタックは、各々が電極アセンブリおよび電解質溶液を備える2つ以上の電気化学セルを備え、各スタック内のセルは、直列に配置され、(隣接する)セル間の電解質溶液の流路を画定するセル間導管を介して流体的に関連付けられており、導管は、電解質溶液の流れを維持しながら電流リークを低減または防止するように構成され動作可能な(シャント電流抑制デバイスとして動作可能な)BPCを備え(または設けられ)、このシステムは、バイポーラ配置で提供され、スタックの各々にはバイポーラプレートまたはバイポーラセパレータがない。
【0014】
また、
複数のスタックに配置された複数の電気化学セル、たとえばE-TACセルであって、各セルがスタック内の別のセルに直列に接続された複数の電気化学セルと、
電解質溶液を共有電解質としてスタック/セルに供給するための手段と、
電解質流路として構成された電解質導管であって、電解質溶液の(途切れのない)流れを維持しながら電流リークを低減または防止するように構成され動作可能なBPCが設けられた電解質導管とを備える電気化学システムも提供され、このシステムは、バイポーラ配置で提供され、スタックの各々にはバイポーラプレートまたはバイポーラセパレータがない。
【0015】
本発明はさらに、システム、たとえばE-TACシステムにおけるシャント電流を最小限に抑えるために構成され動作可能な電気化学システムを提供し、このシステムは、複数のスタックを備え、各スタックは、直列に接続された複数の電気化学セルを備え、上記システムは、複数のセルによって共有される電解質溶液を備え、溶液流路にはBPC(シャント電流抑制デバイス)が設けられ、BPCがないシステムに比べてイオンシャント電流を低減(最小化または解消)するために電解質が経路およびBPCを通って流れることを可能にする。
【0016】
本明細書に開示されるように、電解質は、電解質貯蔵タンクからパイプを通って(プロセスによる必要に応じてポンプおよび加熱/冷却デバイスを有する、または有さない)スタックに流れ、スタック内のセルの各々およびバイポーラコネクタを通って、スタック出口に流れる。その後、電解質溶液は、システムの構成に応じて、電解質タンクまたはガス/液体セパレータに戻される。
【0017】
本発明のシステムにおいて、電解質または水溶液は、セルおよびスタックを通って循環し、図5に示すように、電解質経路内に存在し、任意の2つのセル間および任意選択的に任意の2つのスタック間に提供され得る任意の1または複数のシャント電流抑制デバイス、すなわちBPCを通って循環する。典型的には、電解質溶液は、所与のスタック内のセル間およびスタック間で共有される。したがって、本発明のシステムは、電解質溶液のシステムへの循環およびシステム内での循環を可能にする1または複数のマニホールドが設けられてもよい。この循環は、さらに、BPCまたはシャント電流抑制デバイスが設けられたチャネルまたは導管または他の構成要素の存在によって可能にされる。
【0018】
バイポーラプレートまたはセパレータがない本発明のシステムは、バイポーラ接続されたスタック配置である。そのような配置において、いくつかの単一の電気化学セルが、電気化学セルの「スタック」を形成するように直列に組み立てられ得る。その後、いくつかのスタックがさらに組み立てられ得る。個々の電気化学セルについて説明するように、スタックは、電気化学充電および放電中、イオン輸送膜および電流コレクタに垂直な軸に沿って電子をセルスタックに流れさせる正および負の電流コレクタも有して配置される。
【0019】
いくつかの実施形態において、システムまたはシステム内のスタックの各々またはシステムのスタック内の各電気化学セルは、電気化学式熱活性型化学セル(E-TAC)電解装置[1、2]である。本明細書に記載するように、E-TACにおいて、単一スタックのアノードおよびカソードは、単一のコンパートメント内に収容され、電解質は、隣接するスタック間を流れる。したがって、バイポーラコネクタ(BPC)は、一方では、隣接するスタック間に電気イオン性絶縁を提供し、他方では、リアクタを通る電解質および生成ガスの通路を提供する。
【0020】
別の態様によると、本発明は、水素ガスおよび/または酸素ガスを生成するためのシステムを提供し、このシステムは、2つ以上の電気化学式熱活性型化学セル(「E-TACセル」)の少なくとも1つのスタックを備え、2つ以上のセルの各々は、電解質溶液を保持するために構成され、カソード電極およびアノード電極を有する電極アセンブリを備え、2つ以上のセルは、電気バイアスの存在下で水素ガスを生成し、バイアスがない状態では酸素ガスを生成するように構成され、
上記少なくとも1つのスタック内の2つ以上のセルの各々は、セル間の電解質溶液の指向性の流れを可能にするように構成され動作可能であり、イオン電流リークを防止するBPC、すなわちイオン電流遮断器またはシャント電流抑制デバイスを介して、スタック内の2つ以上のセルの別のセルに直列に接続され、このシステムは、バイポーラプレートまたはバイポーラセパレータがないバイポーラ配置である。
【0021】
いくつかの実施形態において、システムは、動作パターンに従って2つ以上のセルまたはスタックを動作させるように構成された制御ユニットを備える。
【0022】
本発明のシステム、たとえばE-TACシステムは、複数のセル、たとえば複数のセルまたは少なくとも2つのセルまたは2つ以上のそのようなセルを含み、その各々は、少なくとも1つの電極アセンブリを備え、水溶液/電解質溶液を保持するために構成されたコンパートメント/容器の形態である。本発明のシステムにおけるセルの数は、特に、意図された動作、動作パターンなどに基づいて変わり得る。各セルは、セルへの電気バイアスの印加(バイアスオン)中、水素ガスが生成され、印加バイアスがない状態(バイアスオフ)では、酸素ガスの自発的な発生が起こり得るように、二重機能を有するように構成される。
【0023】
本明細書で詳述するように、2つ以上のセルの各々は、アノードおよびカソードを含む電極アセンブリを備えることにより、水素ガスおよび酸素ガスの両方を生成するために構成された単一の独立ユニットとして機能し得る。留意すべき点として、2つ以上のセルの各々は、電極および電解質を備えるハーフセルではない。
【0024】
電極アセンブリは、任意選択的に水を還元することによって、バイアスが存在する場合に水素ガスを生成し、さらに水酸化物イオンの生成をもたらすカソードを備える。水素ガスの生成は、塩基性pH、酸性pH、または中性pH条件下であってよい。したがって、水媒体は、酸性、中性、または塩基性であってよく、水道水、海水、炭酸塩/重炭酸塩緩衝液または溶液、電解質の豊富な水などから選択され得る。いくつかの実施形態において、カソードは、水素ガス、および任意選択的に水酸化物イオンを生成するために水分子の還元に影響を及ぼすように構成される。いくつかの他の実施形態において、カソードは、水素ガスを生成するために水溶液中の水素イオンを還元する。カソードは、当技術分野で用いられる金属および電極材料から選択された材料で作られ得る。電極材料は、たとえば、ニッケル、ラネーニッケル、銅、グラファイト、白金、パラジウム、ロジウム、コバルト、MoS2、およびそれらの化合物から選択され得る。いくつかの実施形態において、電極材料は、カドミウム(Cd)ではなく、またはカドミウムを備えない。いくつかの実施形態において、カソードは、ラネーニッケル、銅、グラファイト、または白金で構成される。
【0025】
アノードは、カソードと同じ電極材料を備えてよく、またはそれらで構成されてよいが、本発明によると、アノードの材料は、少なくとも1つの酸化還元サイクル(反応)、すなわち酸化、還元を可能にする必要がある。言い換えると、本発明に係るアノードは、本明細書で説明される条件下で、酸素ガスを生成するために、印加バイアスの存在下で酸化ステップ(アノード充電)を可逆的に経て、バイアスが存在しない状態では、その後の還元ステップ(アノード再生)を経ることができる。任意選択的に、さらなる酸化還元サイクルがこれに続く。「可逆的に」または「可逆性」という用語は、電極に関して用いられる場合、電極がシステムの極性を反転させることなく還元/酸化を化学的に経る能力を指す。バイアスのオン/オフの切換えは、当技術分野で知られるような極性の反転とはみなされない。したがって、アノードの可逆性は、電極材料に固有であると言える。
【0026】
酸化還元反応は、プロトン交換を含む必要があるため、本明細書でさらに開示されるように、アノード材料は、水素可逆電極(RHE)に対して1.23Vより大きく1.8Vより小さい酸化還元電位を可能にする必要がある。バイアス電圧は、以下に示すように、25℃で測定される。
【0027】
したがって、いくつかの実施形態によると、システムは、
2つ以上のE-TACセルの少なくとも1つのスタックであって、セルの各々は、電解質溶液を保持するために構成され、各々がカソード電極およびアノード電極を有する少なくとも1つの電極アセンブリを備え、カソードは、印加された電気バイアスに応答して電解質溶液中の水の還元に影響を及ぼすことにより、水素ガスおよび水酸化物イオンを生成するように構成され、アノードは、水酸化物イオンの存在下で可逆的に酸化を経、バイアスがない状態では還元を経て、酸素ガスを生成することが可能である、少なくとも1つのスタックを備え、
上記少なくとも1つのスタック内の2つ以上のセルの各々は、隣接するセル間の電解質溶液の指向性の流れを可能にするように構成され動作可能であり、イオン電流リークを防止するBPC、すなわちイオン電流遮断器またはシャント電流抑制デバイスを介して、スタック内の2つ以上のセルの別のセルに直列に接続され、このシステムは、バイポーラプレートまたはバイポーラセパレータがないバイポーラ配置である。
【0028】
本発明はさらに、電気化学システム、たとえばE-TACシステムにおけるイオンシャント電流を最小限に抑えるための方法を提供し、システムは、各々が直列に接続された複数のセルを備える複数のスタックを有し、上記システムは、複数のセルによって共有される電解質溶液を備え、溶液流路にはBPCが設けられており、この方法は、BPCがないシステムに比べて少なくとも部分的にシャント電流を低減するために、BPCが設けられた経路に電解質溶液を流すことを備える。
【0029】
また、電気化学システムにおけるイオンシャント電流を最小限に抑えるための方法も提供され、この方法は、
各々が直列に接続された複数の電気化学セルを備える複数のスタックを有するシステムを提供することであって、上記システムは、複数のセルによって共有される電解質溶液を備え、任意の2つのセル間の溶液流路には、バイポーラコネクタ(BPC)が設けられることと、
BPCがないシステムに比べて少なくとも部分的にシャント電流を低減するために、BPCが設けられた経路に電解質溶液を流すことと
を備える。
【0030】
本発明はさらに、電気化学システムにおけるイオンシャント電流を最小限に抑えるための方法を提供し、システムは、各々が直列に接続された複数の電気化学セルを備える複数のスタックを有し、上記システムは、複数のセルによって共有される電解質溶液を備え、任意の2つのセル間の溶液流路には、バイポーラコネクタ(BPC)が設けられており、この方法は、システムにおけるイオンシャント電流を少なくとも部分的に低減するために、BPCが設けられた経路に電解質溶液を流すことを備える。
【0031】
電気化学システムにおけるイオンシャント電流を最小限に抑えるための方法が提供され、この方法は、
直列に接続された複数の電気化学セルと、溶液流路を画定する導管を通って複数のセル間を流れる電解質溶液とを有するシステムを提供することと、
電解質溶液がBPCを通って流れるように、任意の2つのセル間に設けられた溶液流路に沿ってバイポーラコネクタ(BPC)を組み立て、それによってシステムにおけるイオンシャント電流を少なくとも部分的に低減することと
を備える。
【0032】
本明細書で説明されるように、イオン電流は、スタックのセル間電位勾配によって生成および駆動される。スタック内の各セルが共通の電解質を共有し、抵抗率の低い経路が存在する場合、シャント電流が発生する。「シャント電流」とは、電流が、抵抗率の低い経路を選択して末端セルに到達する状況を指す。本明細書に開示されるように、スタック間に電解質の通路を提供しながら電気イオン性絶縁を実現するために発明者によって開発されたアプローチは、電解質溶液の流路に、シャント電流抑制デバイスまたはイオン電気絶縁体である機械的または物理的なバイポーラコネクタ(BPC)を配置することを含み、BPCの構造または動作は、経路内の電解質溶液の途切れのない流れを可能にし、さらに、イオンシャント電流(電流リーク)を防止または低減する。
【0033】
バイポーラコネクタ(BPC)は、当技術分野で知られるようなバイポーラプレートやバイポーラセパレータではない。本明細書に開示され、図4および図5に示すように、バイポーラプレートまたはバイポーラセパレータとは異なり、本発明に係るBPCは、セル/スタックを通る実質的に途切れのない電解質の流れを可能にしながら、電子伝導性も可能にする。よって、BPCは、連続的な電解質の流れにもかかわらずイオン絶縁を提供するような構造である。
【0034】
BPCは、1または複数が電解質流路に沿って設けられ、任意の2つの電気化学セルを分離する。またBPCは、電気化学セルのスタック間を分離するためにも利用され得る。いくつかの実施形態において、BPCは、電解質溶液の流路に沿った位置で、スタック内の任意の2つの電気化学セル間に設けられる。いくつかの実施形態において、BPCは、電解質溶液の流路に沿った位置で、任意の2つのスタック間に設けられる。いくつかの実施形態において、BPCは、電気化学セル間またはスタック間の電解質溶液の流路に沿った位置で、スタック内の任意の2つの電気化学セル間および/または任意の2つのスタック間に設けられる。
【0035】
一般的に言えば、BPCは、電解質経路を画定する連続的な導管であってよく、イオンシャント電流を抑制または低減する形態(たとえば長さ、直径または断面、構造、形状、機械的部材の包含など)で設けられ得る。シャント電流の抑制またはイオン電気絶縁は、様々なBPC構成によって実現され得る。いくつかの実装において、電解質溶液にガス気泡を挿入することにより、電解質の経路が低減または分断される(図7Aおよび図10に例示)。追加または代替として、電解質経路は、経路に沿った電解質の電気抵抗が増加するように長くされ、断面が縮小され得る(図7B図8)。
【0036】
シャント電流の抑制またはイオン電気絶縁は、電解質経路に沿って、幾何学的な構造または部材を有するBPCを導入することによって実現されてもよい。
【0037】
電流リークは、プレートを貫通するボア孔を有する多孔質プレートを利用することによって防止されてもよく、プレートは、電解質溶液がボア孔を通って流れるように多孔質プレートの上面に電解質溶液を受け取るように構成される(図9A~Bおよび図10)。充電ステップ中またはガス生成中、たとえば水素ガス生成中に形成されるガス気泡は、ボア孔を通って流れ、バイポーラコネクタによって分離された2つのエリア間に電解質分離/間隙を生成することにより、イオン経路を遮断する。
【0038】
BPCにおける圧力降下を最小限に抑えるために、電解質流路における機械抵抗は低減されるべきである。これを実現するために、デバイスは、電解質流路における機械抵抗を最小限に抑えるように設計された溶接部、接合部、または構造変形を含んでよい。
【0039】
いくつかの実施形態において、本明細書でさらに開示されるように、シャント電流は、たとえば流路の長さの増加によってBPCを試験すること、経路をループパターンに配置すること、移動間隙を導入すること、または抵抗性電解質接続部を導入することによって、電解質経路における電気抵抗を増加させることによって低減される。
【0040】
いくつかの実施形態において、BPCは、移動間隙(物理的切断)および/または電解質経路に導入される高抵抗電解質接続の形態であってよい。電解質中の移動間隙は、隔離用の固体、液体、またはガスによって実現され得る。図6および図7は、隔離固体(図6)または隔離ガスまたは液体ポケット(図7A)を用いた移動間隙アプローチを利用する2つの典型的な実装を示す。
【0041】
図6は、BPCが固体回転障壁の形態であるアプローチを示す。このアプローチでは、回転障壁は、障壁の下部(第1のセル/スタック)が障壁の上部(追加のセル/スタック)から常にイオン的かつ物理的に分離されるように、流れの「中」と「外」との間を分離する。
【0042】
同様に、図7Aは、上部電解質と下部電解質との間の接続を断つ分離ガスまたは液体のポケットの形態であるBPCを通る電解質の流れを示す。そのようなガスポケットは、たとえば、図7Bに示すような螺旋チャネル内で二相流(ガスおよび液体)を移動させることによって形成され得る。螺旋流は、(遠心力および密度差による)液体とガストの分離、および上部電解質と下部電解質との間の接続を断つガスポケットの形成をもたらす。
【0043】
本発明のシステムに実装されるBPCは、ループとして形成された電解質経路であってよい。このループは、図7Bに示すような螺旋ループであってよく、または、たとえば楕円形、直線状の端部または丸みを帯びた端部を有する長方形、または他の任意の形状などの他の形状をとるように構成されてもよい。高抵抗電解質BPCまたは接続は、電解質経路内にチャネルを形成することによって実現され得る。そのような設計の単純な例が図8として示される。いくつかの実施形態において、チャネルは細長く、それによって、式
【数1】
に従ってBPC抵抗を効果的に増加させる。
【0044】
いくつかの実施形態において、BPCは、抵抗性電解質接続部である。電解装置において、電解質は、電解質よりも大幅に抵抗率が高いガス気泡を含む。これらのガス気泡は、電解質の有効抵抗を高め、BPC性能を向上させる。抵抗性電解質接続に基づく実用的なBPC設計が図9Aに示され、BPCの側面図(左)および正面図(右)が示される。
【0045】
図9Bに示すBPCには、円錐形の入口および出口を有するいくつかのチャネル(チャネル寸法が図の隣に示される)が設けられる。チャネルの幾何学的寸法は、BPC圧力降下、イオン電気抵抗を決定し、金属タブの幾何学的寸法は、電気抵抗を決定する。
1)圧力降下(Δp)は、チャネルの直径(dch)、チャネルの長さ(lch)、チャネルの数(Nch)、およびBPCを通る電解質の流量に依存し、
2)イオン電気抵抗(Rion)は、チャネルの直径(dch)、チャネルの長さ(lch)、チャネルの数(Nch)、およびガス流量と液体電解質流量との比に依存し、
3)電気抵抗(Relc)は、タブの長さ(l)、幅(w)、および厚さ(t)に依存する。
【0046】
これらの値は、チャネルの幾何学的寸法、チャネルの数、二相流(電解質+ガス水素)のパラメータ、および電解質の電気パラメータで表され得る。
【数2】
【数3】
【数4】
式中、
λはチャネルの摩擦係数、
ρは電解質の密度、
elは電解質の速度、
σelは電解質の導電率、
ρは導体抵抗、
【数5】
は、ガスの質量流束と電解質の質量流束との比、
【数6】
は、二相流(KOH/H)中の非導電性ガス(H)の存在によって生じる追加のチャネル抵抗の質量流束への依存度を表す非線形関数である。
【0047】
そのような設計において、デバイス抵抗(Rion)の増加および圧力降下(Δp)の減少が望まれる。しかし、式(1)および(2)からわかるように、チャネルのオーム抵抗の増加は常に圧力降下の増加を伴う。式(2)における第2項は、(抵抗のオーム成分
【数7】
および圧力降下とは対照的に)チャネルの幾何学的寸法に依存しない。したがって、比
【数8】
を大きくすることによって抵抗の大幅な増加を実現することが可能である。
【0048】
組み合わせた設計が、本明細書に開示されるE-TACシステム内のデバイスとして利用されてもよい。電解質経路内の移動間隙(物理的切断)と、BPC内の高抵抗電解質接続との両方を組み合わせた典型的な設計が図10に示される。図10に示すガスアキュムレータ設計において、ガスを空隙に蓄積させ、ガスポケットを形成させる空隙を含む複雑なチャネル構造が実装される。これらのガスポケットは、電解質間隙を生成しながらチャネル内を移動し続ける。
【0049】
BPCタイプとは無関係に、BPCは流体電解質経路に沿って配置される必要がある。BPCは、導管の長さを増大させ、シャント電流を低減するために、経路に沿ったどの位置に配置されてもよいことを理解すべきである。
【0050】
本明細書に開示される主題事項をより良く理解するため、および実際にどのように実行され得るかを例示するために、以下、添付図面を参照して、単に非限定的な例として実施形態が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】現状の技術に係るモノポーラ構成を示す。
図2】現状の技術に係るバイポーラ構成を示す。
図3】隣接するセル間の電流リークを示す。
図4】現状の技術に係るバイポーラ動作概念を示す。
図5】本発明に係るバイポーラコネクタ(BPC)動作概念を示す。
図6】回転固体障壁の形式である移動間隙設計の例を提供する。
図7A-B】隔離ポケットによる移動間隙設計(図7A)およびループ設計(図7B)の例を提供する。
図8】抵抗性電解質接続設計の例を提供する。
図9A-B】移動間隙および抵抗接続部の両方を組み合わせたBPC設計の側面図および正面図を示す。図9Aは、デバイス全体およびデバイスのロールへの電気接続部(側面および正面)を示し、図9Bは、チャネル構造を示す。
図10】本発明のいくつかの実施形態に係るガスアキュムレータBPCを示す。
図11】本発明のいくつかの実施形態に係るバイポーラロールアセンブリ構成の構造を提供する。
図12】1.5~3.5VのLSV試験中に測定されたE-TACリアクタのIV曲線を示す。
図13】モノポーラ(セル1-MP)およびバイポーラ(セル1-BP)の2つの構成でE-TAC実演システムにおける電圧測定を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
各々が電気化学セル(電気化学セル1および2)を画定する2つのロールが、図11に示すように、E-TACリアクタに組み立てられた。2つのセルの間には、たとえば図10に示すようなBPCが設けられた。リアクタは、5M KOH電解質を有するE-TAC実演システムにおいて試験された。電気化学測定は、10A、4VのIviumポテンショスタットチャネルを用いて行われた。
例1
【0053】
第1の実験において、図12に示す、バイポーラ電極動作のためのオンセット電位を特徴付けるために直線走査ボルタンメトリ(LSV)が用いられた。
【0054】
示されるように、2.7V未満では、電位が直列接続された2つのロールには低すぎた。この電圧では、測定された低電流は、第1のロールのアノードと第2のロールのカソードとの間の小さなリーク電流であった。しかし、電圧が2.7Vより高くなると、電流は大幅に増加した。この電圧では、各ロールが動作するために十分な電圧(>1.35V)が存在し、測定された電流は主に、上述したように、2つのロールを接続するBPCを通って流れる電流によるものであった。これにより、BPCは、リーク電流を大幅に低減するという目標を果たすことが可能であることが示された。
例2
【0055】
同じ実験設備が、E-TACサイクル全体での動作を調査するために用いられた。この実験において、同じ2つのロールが、モノポーラ構成およびバイポーラ構成の2つの異なる構成で用いられた。両方の構成において、各ロールを流れる電流は5Aであると予想され、したがって同じ水素生産量が予想された。図13は、2つの構成において測定されたリアクタ電圧を示す。表1は、各構成における平均電圧および消費電力を示す。
【表1】
【0056】
表1により、2つのロール間にBPCを追加することでバイポーラ構成が形成され、電圧を2倍にしながら電流を(2分の1に)低減することが明示される。この構成は、モノポーラ構成に比べて消費電力を低減する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7Aand7B
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】