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特表2024-526378レーザーレーダーの測距方法、レーザーレーダー及びコンピュータ可読記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-17
(54)【発明の名称】レーザーレーダーの測距方法、レーザーレーダー及びコンピュータ可読記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/89 20200101AFI20240709BHJP
   G01S 17/931 20200101ALI20240709BHJP
【FI】
G01S17/89
G01S17/931
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525757
(86)(22)【出願日】2022-03-17
(85)【翻訳文提出日】2024-01-15
(86)【国際出願番号】 CN2022081307
(87)【国際公開番号】W WO2023284319
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】202110806513.1
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519434972
【氏名又は名称】上海禾賽科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Hesai Technology Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.2 Building,No.468 XinLai Road,Jiading District,Shanghai,China
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲許▼ ▲帥▼▲騎▼
(72)【発明者】
【氏名】章 洪燕
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 晋
(72)【発明者】
【氏名】向 少▲卿▼
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AC02
5J084AD01
5J084BA03
5J084BA35
5J084BA36
5J084BA40
5J084BA48
5J084CA32
5J084CA65
5J084EA01
5J084EA22
(57)【要約】
本開示は、レーザーレーダーの測距方法、レーザーレーダー及びコンピュータ可読記憶媒体を提供し、測距方法(10)は、三次元環境に対するマルチフレームの探知データを取得するステップS101と、少なくとも最初のkフレームの探知データの一部に基づいて、k+1回目の探知時の三次元環境内の障害物の位置を予測するステップS102であって、kが整数であり、k≧1であるステップS102と、k+1回目の探知を行う時に、予測された障害物の位置情報を基に障害物上の少なくとも1点に対して、探知ウィンドウの範囲を調整するステップS103と、調整された探知ウィンドウ内でのエコー情報のみに基づいて、前記少なくとも1点の測距情報を計算するステップS104と、を含む。これによって、探知結果のフィードバックに基づいて探知ウィンドウの範囲を調整し、障害物のある距離範囲内でのみ探知を行うことになり、それにより記憶スペースを節約し、計算需要を削減し、又は電力消費を節約する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元環境に対するマルチフレームの探知データを取得するステップS101と、
少なくとも最初のkフレームの探知データの一部に基づいて、k+1回目の探知時の前記三次元環境内の障害物の位置を予測するステップS102であって、kが整数であり、k≧1であるステップS102と、
k+1回目の探知を行う時に、予測された前記障害物の位置情報を基に前記障害物上の少なくとも1点に対して、探知ウィンドウの範囲を調整するステップS103と、
調整された探知ウィンドウ内でのエコー情報のみに基づいて、前記少なくとも1点の測距情報を計算するステップS104と、を含む、レーザーレーダーの測距方法。
【請求項2】
前記探知データは、レーザーレーダーとの相対方位及び/又は距離を含み、前記ステップS101は、初期探知ウィンドウの範囲に基づいて三次元環境に対するkフレームの探知データを取得するステップであって、前記初期探知ウィンドウの範囲が、前記レーザーレーダーの予め設定された最大探知距離に関連しているステップを含む、請求項1に記載の測距方法。
【請求項3】
前記ステップS102は、
前記障害物のタイプを識別するステップと、
前記障害物のタイプ及び前記最初のkフレームの探知データに基づいて、前記障害物の速度を計算するステップと、
前記障害物の速度に基づいて、k+1回目の探知時の前記障害物の位置を予測するステップと、を含む、請求項1に記載の測距方法。
【請求項4】
前記ステップS102は、目標識別技術を組み合わせ、前記探知データにおける複数の点の相互関係に基づいて、前記障害物のサイズ及び/又は運動パラメータを決定するステップをさらに含む、請求項3に記載の測距方法。
【請求項5】
前記k>1であり、前記ステップS102は、
前記障害物の最初のk回の探知における相対位置の変化及び隣接する探知間の時間間隔に基づいて、k+1回目の探知時の前記障害物の位置を予測するステップを含む、請求項1に記載の測距方法。
【請求項6】
前記ステップS103は、
予測された前記障害物の位置情報を基に前記障害物上の任意の1点に対して、対応する予測飛行時間を取得するステップと、
対応する探知ウィンドウの中心位置を予測飛行時間に調整し、対応する探知ウィンドウの範囲を[予測飛行時間-時間ウィンドウ,予測飛行時間+時間ウィンドウ]に調整するステップであって、前記時間ウィンドウが、予め設定された値であるか、又は前記障害物のサイズ及び/又は速度に関連しているステップと、を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の測距方法。
【請求項7】
前記時間ウィンドウは、前記障害物のサイズ及び/又は速度が増加するにつれて大きくなる、請求項6に記載の測距方法。
【請求項8】
前記レーザーレーダーは、受信ユニットを備え、前記受信ユニットは、光電探知器、時間デジタル変換器及びメモリを備え、前記光電探知器は、エコーを受信して電気信号に変換するために用いられ、前記時間デジタル変換器は、前記電気信号を受信して前記エコーの飛行時間を出力できるように構成され、前記メモリは、前記エコーの飛行時間を記憶することができ、前記ステップS104は、
前記k+1回目の探知において、前記調整された探知ウィンドウの範囲内で前記レーザーレーダーの光電探知器をオンにし、前記調整された探知ウィンドウの範囲外で前記光電探知器をオフにするステップ、又は
前記k+1回目の探知において、前記光電探知器及び前記時間デジタル変換器を常にオンのままにし、前記メモリが、前記調整された探知ウィンドウの範囲内で前記時間デジタル変換器により出力された前記エコーの飛行時間のみを記憶するステップ、又は
前記k+1回目の探知において、前記光電探知器を常にオンのままにし、前記調整された探知ウィンドウの範囲内でのみ前記時間デジタル変換器をオンにするステップをさらに含む、請求項7に記載の測距方法。
【請求項9】
k+1回目の探知を行う時に、前記調整された探知ウィンドウの範囲内で障害物が探知されなかった場合、k+2回目の探知ウィンドウの範囲を初期探知ウィンドウの範囲に調整するステップS105をさらに含む、
請求項1に記載の測距方法。
【請求項10】
三次元環境を探知するために探知レーザービームを放射できるように構成される放射ユニットと、
複数の光電探知器を備え、障害物からのエコーを受信して電気信号に変換できるように構成される光電探知ユニットと、
前記光電探知ユニットに結合されることで、前記電気信号を受信し、前記電気信号に基づいて前記障害物の測距情報を計算する信号処理ユニットと、
前記光電探知ユニット及び前記信号処理ユニットに結合され、且つ
三次元環境に対するマルチフレームの探知データを取得する動作と、
少なくとも最初のkフレームの探知データの一部に基づいて、k+1回目の探知時の前記三次元環境内の障害物の位置を予測する動作であって、kが整数であり、k≧1である動作と、
k+1回目の探知を行う時に、予測された前記障害物の位置情報を基に前記障害物上の少なくとも1点に対して、探知ウィンドウの範囲を調整する動作と、を実行できるように構成されるコントローラと、を備え、
前記信号処理ユニットは、k+1回目の探知を行う時に、調整された探知ウィンドウの範囲内でのエコー情報のみに基づいて、前記障害物上の前記少なくとも1点の測距情報を計算するように構成される、レーザーレーダー。
【請求項11】
前記探知データは、レーザーレーダーとの相対方位及び/又は距離を含み、三次元環境に対するマルチフレームの探知データを取得する前記動作は、初期探知ウィンドウの範囲に基づいて三次元環境に対するkフレームの探知データを取得するステップであって、前記初期探知ウィンドウの範囲が、前記レーザーレーダーの予め設定された最大探知距離に関連しているステップを含む、請求項10に記載のレーザーレーダー。
【請求項12】
前記コントローラは、
前記障害物のタイプを識別する方式と、
前記障害物のタイプ及び最初のkフレームの探知データに基づいて、前記障害物の速度を計算する方式と、
前記障害物の速度に基づいて、k+1回目の探知時の前記障害物の位置を予測する方式とによって、
k+1回目の探知時の前記障害物の位置を予測するように構成される、請求項11に記載のレーザーレーダー。
【請求項13】
前記コントローラは、目標識別技術を組み合わせ、前記探知データにおける複数の点の相互関係に基づいて、前記障害物のサイズ及び/又は運動パラメータを決定する、請求項12に記載のレーザーレーダー。
【請求項14】
前記k>1であり、前記コントローラは、
前記障害物の最初のk回の探知における相対位置の変化及び隣接する探知間の時間間隔に基づいて、k+1回目の探知時の前記障害物の位置を予測する方式によって、k+1回目の探知時の前記障害物の距離を予測するように構成される、請求項10に記載のレーザーレーダー。
【請求項15】
前記コントローラは、
予測された前記障害物の位置情報を基に前記障害物上の任意の1点に対して、対応する予測飛行時間を取得する方式と、
対応する探知ウィンドウの中心位置を予測飛行時間に調整する方式と、
対応する探知ウィンドウの範囲を[予測飛行時間-時間ウィンドウ,予測飛行時間+時間ウィンドウ]に調整する方式であって、前記時間ウィンドウが、予め設定された値であるか、又は前記障害物のサイズ及び/又は速度に関連している方式とによって、
k+1回目の探知時の探知ウィンドウの範囲及び位置を調整する、請求項10~14のいずれか1項に記載のレーザーレーダー。
【請求項16】
前記時間ウィンドウは、目標物のサイズ及び/又は速度が増加するにつれて大きくなる、請求項15に記載のレーザーレーダー。
【請求項17】
前記レーザーレーダーは、時間デジタル変換器及びメモリをさらに備え、前記時間デジタル変換器は、前記電気信号を受信して前記エコーの飛行時間を出力できるように構成され、前記メモリは、前記エコーの飛行時間を記憶することができ、
前記k+1回目の探知において、前記調整された探知ウィンドウの範囲内で前記レーザーレーダーの光電探知器をオンにし、前記調整された探知ウィンドウの範囲外で前記光電探知器をオフにし、又は
前記k+1回目の探知において、前記光電探知器及び前記時間デジタル変換器を常にオンのままにし、前記メモリが、前記調整された探知ウィンドウの範囲内で前記時間デジタル変換器により出力された前記エコーの飛行時間のみを記憶し、又は
前記k+1回目の探知において、前記光電探知器を常にオンのままにし、前記調整された探知ウィンドウの範囲内でのみ前記時間デジタル変換器をオンにする、請求項16に記載のレーザーレーダー。
【請求項18】
前記コントローラは、k+1回目の探知を行う時に、前記調整された探知ウィンドウの範囲内で障害物が探知されなかった場合、k+2回目の探知ウィンドウの範囲を初期探知ウィンドウの範囲に調整するように構成される、請求項10に記載のレーザーレーダー。
【請求項19】
記憶されているコンピュータ実行可能命令を備え、前記実行可能命令がプロセッサによって実行されると、請求項1~9のいずれか1項に記載の測距方法を実施する、コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光電探知の分野に関し、特にレーザーレーダーの測距方法、レーザーレーダー及びコンピュータ可読記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザーレーダーは一般に放射ユニット、光電探知ユニット及び信号処理ユニットを備え、放射ユニットは、レーザーレーダー周囲の三次元環境に探知レーザービームを放射するために用いられ、探知レーザービームは、三次元環境内の目標物上で乱反射して、エコーの一部がレーザーレーダーに戻り、光電探知ユニットにより受信されて電気信号に変換され、信号処理ユニットは、前記光電探知ユニットに結合されることで、前記電気信号を受信し、前記電気信号に基づいてエコーの飛行時間を計算し、前記障害物の距離や方位等の測距情報を計算する。
【0003】
通常、放射ユニットが探知レーザービームを放射する際に、対応する光電探知ユニット及び/又は信号処理ユニットは、エコーを受信するために、予め設定された探知ウィンドウの範囲内で常にオンのままであり、該探知ウィンドウは一般に、前記レーザーレーダーの予め設定された最大探知距離によって決定されるものである。このようにして、光電探知ユニット及び信号処理ユニットが目標物からのエコーを受信して処理できることを確保することができる一方、該探知ウィンドウ内で、光電探知ユニット及び信号処理ユニットが周囲環境からの大量のノイズ光信号又は背景光信号も受信して処理することになり、それによりレーザーレーダーが受信したエコー信号は信号対雑音比が低く、多くの電力を費やし、そのため距離計算の精度及び速度が低下してしまう。
【0004】
背景技術という部分の内容は、単に開示者に知られている技術に過ぎず、必ずしも当分野の従来技術を代表するものではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
従来技術の少なくとも1つの欠陥に鑑みて、本発明は、探知データのフィードバックに基づいて探知ウィンドウの範囲を調整し、障害物のある距離範囲内でのみ探知を行い、それにより記憶スペースを節約し、計算需要を削減し、又は消費電力を節約する、レーザーレーダーの測距方法を考案する。
【0006】
本発明は、
三次元環境に対するマルチフレームの探知データを取得するステップS101と、
少なくとも最初のkフレームの探知データの一部に基づいて、k+1回目の探知時の前記三次元環境内の障害物の位置を予測するステップS102であって、kが整数であり、k≧1であるステップS102と、
k+1回目の探知を行う時に、予測された前記障害物の位置情報を基に前記障害物上の少なくとも1点に対して、探知ウィンドウの範囲を調整するステップS103と、
調整された探知ウィンドウ内でのエコー情報のみに基づいて、前記少なくとも1点の測距情報を計算するステップS104と、を含む、レーザーレーダーの測距方法を考案する。
【0007】
本発明の一態様によれば、前記探知データは、レーザーレーダーとの相対方位及び/又は距離を含み、前記ステップS101は、初期探知ウィンドウの範囲に基づいて三次元環境に対するkフレームの探知データを取得するステップであって、前記初期探知ウィンドウの範囲が、前記レーザーレーダーの予め設定された最大探知距離に関連しているステップを含む。
【0008】
本発明の一態様によれば、前記ステップS102は、
前記障害物のタイプを識別するステップと、
前記障害物のタイプ及び前記最初のkフレームの探知データに基づいて、前記障害物の速度を計算するステップと、
前記障害物の速度に基づいて、k+1回目の探知時の前記障害物の位置を予測するステップと、を含む。
【0009】
本発明の一態様によれば、前記ステップS102は、目標識別技術を組み合わせ、前記探知データにおける複数の点の相互関係に基づいて、前記障害物のサイズ及び/又は運動パラメータを決定するステップをさらに含む。
【0010】
本発明の一態様によれば、前記k>1であり、前記ステップS102は、
前記障害物の最初のk回の探知における相対位置の変化及び隣接する探知間の時間間隔に基づいて、k+1回目の探知時の前記障害物の位置を予測するステップを含む。
【0011】
本発明の一態様によれば、前記ステップS103は、
予測された前記障害物の位置情報を基に前記障害物上の任意の1点に対して、対応する予測飛行時間を取得するステップと、
対応する探知ウィンドウの中心位置を予測飛行時間に調整し、対応する探知ウィンドウの範囲を[予測飛行時間-時間ウィンドウ,予測飛行時間+時間ウィンドウ]に調整するステップであって、前記時間ウィンドウが、予め設定された値であるか、又は前記障害物のサイズ及び/又は速度に関連しているステップと、を含む。
【0012】
本発明の一態様によれば、前記時間ウィンドウは、前記障害物のサイズ及び/又は速度が増加するにつれて大きくなる。
【0013】
本発明の一態様によれば、前記レーザーレーダーは、受信ユニットを備え、前記受信ユニットは、光電探知器、時間デジタル変換器及びメモリを備え、前記光電探知器は、エコーを受信して電気信号に変換するために用いられ、前記時間デジタル変換器は、前記電気信号を受信して前記エコーの飛行時間を出力できるように構成され、前記メモリは、前記エコーの飛行時間を記憶することができ、前記ステップS104は、
本発明の一態様によれば、前記調整された探知ウィンドウの範囲内で前記レーザーレーダーの光電探知器をオンにし、前記調整された探知ウィンドウの範囲外で前記光電探知器をオフにするステップ、又は
本発明の一態様によれば、前記光電探知器及び前記時間デジタル変換器を常にオンのままにし、前記メモリが、前記調整された探知ウィンドウの範囲内で前記時間デジタル変換器により出力された前記エコーの飛行時間のみを記憶するステップ、又は
前記k+1回目の探知において、前記光電探知器を常にオンのままにし、前記調整された探知ウィンドウの範囲内でのみ前記時間デジタル変換器をオンにするステップをさらに含む。
【0014】
本発明の一態様によれば、
k+1回目の探知を行う時に、前記調整された探知ウィンドウの範囲内で障害物が探知されなかった場合、k+2回目の探知ウィンドウの範囲を前記初期探知ウィンドウの範囲に調整するステップS105をさらに含む。
【0015】
本発明は、
三次元環境を探知するために探知レーザービームを放射できるように構成される放射ユニットと、
複数の光電探知器を備え、障害物からのエコーを受信して電気信号に変換できるように構成される光電探知ユニットと、
前記光電探知ユニットに結合されることで、前記電気信号を受信し、前記電気信号に基づいて前記障害物の測距情報を計算する信号処理ユニットと、
前記光電探知ユニット及び前記信号処理ユニットに結合され、且つ
三次元環境に対するマルチフレームの探知データを取得する動作と、
少なくとも最初のkフレームの探知データの一部に基づいて、k+1回目の探知時の前記三次元環境内の障害物の位置を予測する動作であって、kが整数であり、k≧1である動作と、
k+1回目の探知を行う時に、予測された前記障害物の位置情報を基に前記障害物上の少なくとも1点に対して、探知ウィンドウの範囲を調整する動作と、を実行できるように構成されるコントローラと、を備え、
前記信号処理ユニットは、k+1回目の探知を行う時に、調整された探知ウィンドウの範囲内でのエコー情報のみに基づいて、前記障害物上の前記少なくとも1点の測距情報を計算するように構成される、レーザーレーダーをさらに考案する。
【0016】
本発明の一態様によれば、前記探知データは、レーザーレーダーとの相対方位及び/又は距離を含み、三次元環境に対するマルチフレームの探知データを取得する前記動作は、初期探知ウィンドウの範囲に基づいて三次元環境に対するkフレームの探知データを取得するステップであって、前記初期探知ウィンドウの範囲が、前記レーザーレーダーの予め設定された最大探知距離に関連しているステップを含む。
【0017】
本発明の一態様によれば、前記コントローラは、
前記障害物のタイプを識別する方式と、
前記障害物のタイプ及び最初のkフレームの探知データに基づいて、前記障害物の速度を計算する方式と、
前記障害物の速度に基づいて、k+1回目の探知時の前記障害物の位置を予測する方式とによって、
k+1回目の探知時の前記障害物の位置を予測するように構成される。
【0018】
本発明の一態様によれば、前記コントローラは、目標識別技術を組み合わせ、前記探知データにおける複数の点の相互関係に基づいて、前記障害物のサイズ及び/又は運動パラメータを決定する。
【0019】
本発明の一態様によれば、前記k>1であり、前記コントローラは、
前記障害物の最初のk回の探知における相対位置の変化及び隣接する探知間の時間間隔に基づいて、k+1回目の探知時の前記障害物の位置を予測する方式によって、k+1回目の探知時の前記障害物の距離を予測するように構成される。
【0020】
本発明の一態様によれば、前記コントローラは、
予測された前記障害物の位置情報を基に前記障害物上の任意の1点に対して、対応する予測飛行時間を取得する方式と、
対応する探知ウィンドウの中心位置を予測飛行時間に調整する方式と、
対応する探知ウィンドウの範囲を[予測飛行時間-時間ウィンドウ,予測飛行時間+時間ウィンドウ]に調整する方式であって、前記時間ウィンドウが、予め設定された値であるか、又は前記障害物のサイズ及び/又は速度に関連している方式とによって、
k+1回目の探知時の探知ウィンドウの範囲及び位置を調整する。
【0021】
本発明の一態様によれば、前記時間ウィンドウは、前記目標物のサイズ及び/又は速度が増加するにつれて大きくなる。
【0022】
本発明の一態様によれば、前記レーザーレーダーは、時間デジタル変換器及びメモリをさらに備え、前記時間デジタル変換器は、前記電気信号を受信して前記エコーの飛行時間を出力できるように構成され、前記メモリは、前記エコーの飛行時間を記憶することができ、
前記k+1回目の探知において、前記調整された探知ウィンドウの範囲内で前記レーザーレーダーの光電探知器をオンにし、前記調整された探知ウィンドウの範囲外で前記光電探知器をオフにし、又は
前記k+1回目の探知において、前記光電探知器及び前記時間デジタル変換器を常にオンのままにし、前記メモリが、前記調整された探知ウィンドウの範囲内で前記時間デジタル変換器により出力された前記エコーの飛行時間のみを記憶し、又は
前記k+1回目の探知において、前記光電探知器を常にオンのままにし、前記調整された探知ウィンドウの範囲内でのみ前記時間デジタル変換器をオンにする。
【0023】
本発明の一態様によれば、前記コントローラは、k+1回目の探知を行う時に、前記調整された探知ウィンドウの範囲内で障害物が探知されなかった場合、k+2回目の探知ウィンドウの範囲を前記初期探知ウィンドウの範囲に調整するように構成される。
【0024】
本発明は、記憶されているコンピュータ実行可能命令を備え、前記実行可能命令がプロセッサによって実行されると、請求項1~9のいずれか1項に記載の測距方法を実施する、コンピュータ可読記憶媒体をさらに考案する。
【0025】
本発明が提案する解決手段によって、測距の探知結果のフィードバックに基づいて探知ウィンドウの範囲を調整し、障害物のある距離範囲内でのみ探知を行うことになり、計算需要を削減し、記憶スペース及び電力消費を節約することができ、さらに信号対雑音比を高める効果をもたらす可能性がある。
【0026】
本開示の一部を構成する図面は、本開示を更に理解させるためのものであり、本開示の例示的な実施例及びその説明は、本開示を不当に限定するものではなく、本開示を解釈するためのものである。図面の説明を次に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施例に係る方法のフローチャートを示す。
図2】本発明の一実施例に係る光電探知ユニットのモジュール図を示す。
図3a】本発明の一実施例に係る1回目の探知のシーン図を示す。
図3b】本発明の一実施例に係る2回目の探知のシーン図を示す。
図3c】本発明の一実施例に係る3回目の探知のシーン図を示す。
図3d】本発明の一実施例に係る4回目の探知のシーン図を示す。
図4】本発明の一実施例に係る探知シーンの平面図を示す。
図5】レーザーレーダーの複数回の探知走査中の単一光子アバランシェダイオードのトリガの模式図を示す。
図6】レーザーレーダーの複数回の探知走査を重畳した後に形成されたヒストグラムを示す。
図7a】本発明の一実施例に係るレーザーレーダーの合計400回の探知視野及びヒストグラムを示す。
図7b】本発明の一実施例に係るレーザーレーダーの最初の300回の探知視野及びヒストグラムを示す。
図7c】本発明の一実施例に係るレーザーレーダーの後の100回の探知視野及びヒストグラムを示す。
図8】本発明の一実施例に係るデータ処理方法の模式図を示す。
図9】従来技術によるデータ記憶方法の模式図を示す。
図10】本発明の好ましい一実施例に係る記憶方式の模式図を示す。
図11】本発明の好ましい一実施例に係る記憶方式の模式図を示す。
図12】本発明の一実施例に係る記憶効果の模式図を示す。
図13】本発明の一実施例に係るレーザーレーダーのモジュール図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下において、いくつかの例示的な実施例のみを簡単に説明する。当業者であれば認識できるように、本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、説明された実施例を様々な異なる方法で修正することができる。従って、図面及び説明は、限定的なものではなく、本質的に例示的なものであると考えられる。
【0029】
本発明の記述では、理解すべきところとして、用語の「中心」、「縦方向」、「横方向」、「長さ」、「幅」、「厚さ」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「鉛直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」、「時計回り」、「逆時計回り」等で示す方位又は位置関係は、図面に示す方位又は位置関係に基づくものであり、本発明を容易に説明し記述を簡略化するためのものに過ぎず、記載される装置又は素子は必ず特定の方位を有したり、特定の方位で構成、操作されたりすることを明示又は暗示するものではないので、本発明を限定するものと理解してはならない。なお、用語の「第1」、「第2」は、説明のためのものに過ぎず、相対的重要性を明示又は暗示したり、説明される技術特徴の数量を暗示したりするものと理解してはならない。従って、「第1」、「第2」と限定される特徴は1つ又は複数の前記特徴を明示的又は暗示的に含むことができる。本発明の説明では、明確且つ具体的に限定しない限り、「複数」は2つ又は2つ以上を意味する。
【0030】
本発明の説明では、説明すべきところとして、別に明確に規定、制限しない限り、用語の「取り付ける」、「連結する」、「接続する」を広義的に理解すべきであり、例えば、固定的に接続してもよく、取り外し可能に接続してもよく、又は、一体的に接続してもよく、機械的に接続してもよく、電気的に接続してもよく、又は相互に通信してもよく、直接接続してもよく、更に中間媒介を介して間接的に接続してもよく、2つの素子の内部を連通させてもよく、又は2つの素子の相互作用の関係であってもよい。当業者であれば、具体的な状況に応じて本発明での上記用語の具体的な意味を理解することができる。
【0031】
本発明において、別に明確に規定、限定しない限り、第1特徴が第2特徴の「上」又は「下」にあるというのは、第1と第2特徴が直接接触する場合を含んでもよいし、第1と第2特徴が直接接触せず、それらの間の別の特徴を介して接触する場合を含んでもよい。また、第1特徴が第2特徴の「上」、「上方」及び「上面」にあるというのは、第1特徴が第2特徴の真上及び斜め上方にある場合を含むか、又は単に第1特徴の水平高さが第2特徴より高いことを意味する。第1特徴が第2特徴の「下」、「下方」及び「下面」にあるというのは、第1特徴が第2特徴の真上及び斜め上方にある場合を含み、又は単に第1特徴の水平高さが第2特徴より小さいことを意味する。
【0032】
以下の開示は、本発明の異なる構造を実現するために、多くの異なる実施形態又は例を提供する。本発明の開示を簡略化するために、以下の記載では、特定の例の部材及び設定について説明する。当然ながら、これらは単なる例であり、本発明を限定することを目的とするものではない。また、本発明は、種々の例において参照数字及び/又は参照アルファベット文字を重複することがあるが、このような重複は、簡略化及び明確化を目的とし、それ自身は、論じている種々の実施形態及び/又は設定間の関係を示さない。また、本発明は、様々な特定のプロセス及び材料の例を提供するが、当業者であれば、他のプロセスの応用及び/又は他の材料の使用に想到できる。
【0033】
本発明は、探知データのフィードバックに基づいて探知ウィンドウの範囲を調整し、障害物のある距離範囲内でのみ探知を行うことにより、記憶スペースを節約し、計算需要を削減し、又は電力消費を節約し、及び信号対雑音比を高めるレーザーレーダーの測距方法を考案する。
【0034】
通常、レーザーレーダーの放射ユニットが探知レーザービームを放射する場合、対応する光電探知ユニット及び/又は後続の信号処理ユニットは、エコーを受信するために、予め設定された探知ウィンドウの範囲内で常にオンになり、該探知ウィンドウは一般に、前記レーザーレーダーの予め設定された最大探知距離によって決定されるものである。このようにして、光電探知ユニット及び信号処理ユニットが目標物からのエコーを受信して処理できることを確保することができる一方、該探知ウィンドウ内で、光電探知ユニット及び信号処理ユニットが周囲環境からの大量のノイズ光信号又は背景光信号も受信して処理することになり、それによりレーザーレーダーが受信したエコー信号は信号対雑音比が低く、多大なエネルギーを費やし、そのため距離計算の精度及び速度が低下する。
【0035】
本発明は、最初の1フレーム又はマルチフレームの探知データに少なくとも部分的に基づいて、k+1回目の探知時の障害物の位置を予測し、k+1回目の探知を行う時に、予測された位置情報に基づいて探知ウィンドウの位置を調整し、調整された探知ウィンドウ内のエコー情報のみに基づいて、距離計算を行うことができる、改良された解決手段を提供する。
【0036】
以下において、図面を参照しながら本発明の好ましい実施例を説明し、ここで説明される好ましい実施例は本発明を説明、解釈するためのものに過ぎず、本発明を限定する意図がないことを理解すべきである。
【0037】
図1は、本発明の一実施例によるレーザーレーダーの測距方法10を示しており、以下において、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0038】
ステップS101では、レーザーレーダーは、視野全体を走査し、三次元環境に対するマルチフレームの探知データを取得する。
【0039】
機械式レーザーレーダーの場合、その回転軸を中心に10Hz又は20Hzの周波数で回転することができ、1回りするたびに、各探知チャネル(例えば1つのレーザー機器及び1つの探知器を含む)は、一定の角度分解能(例えば0.1度又は0.2度)でレーザー放射及びエコー受信を行い、探知器が有効なエコー(例えばエコーの振幅が閾値を超える)を受信した場合、例えば目標物の距離及び/又はレーザーレーダーに対する方位等の該有効なエコーの情報に基づいて探知データを計算し、それによりある点を生成する。機械式レーザーレーダーが1回り回転して形成された点の集合は、1フレームの点群を構成する。固体レーザーレーダー又は半固体レーザーレーダーの場合、同様に、全ての探知チャネルが探知を完了した後に形成された点群集合も1フレームの点群を構成する。
【0040】
ステップS101では、レーザーレーダーは、視野を走査することによってマルチフレームの探知データを取得し、後続のステップでの使用に供することができる。前記探知データには、例えば、探知された目標物とレーザーレーダーとの相対方位及び/又は距離及び反射率が含まれてもよい。
【0041】
ステップS102では、少なくとも最初のkフレームの探知データの一部に基づいて、k+1回目の探知時の前記三次元環境内の障害物の位置を予測することができる。ここで、kが整数であり、k≧1である。
【0042】
ステップS102では、最初の数フレーム(例えば最初の3フレーム)で探知された点群情報に基づいて、次のフレーム(例えば第4フレーム)での障害物の大体の変化を予測する。例えば、本発明の一実施例によれば、最初のkフレームの点群に基づいて三次元環境内の障害物をそれぞれ識別し、その後、同一の障害物の、最初のkフレームの点群における位置変化に基づいて、レーザーレーダーがk+1回目の検知を行う時に該障害物の位置及び方位を予測することができる。
【0043】
ステップS103では、k+1回目の探知を行う時に、予測された前記障害物の位置情報を基に前記障害物上の少なくとも1点に対して、それに対応する探知ウィンドウの範囲を調整する。
【0044】
ステップS103では、レーザーレーダーがk+1回目の探知を行う時に、ステップS102で予測された障害物の位置に基づいて、障害物上の少なくとも1点又は全ての点又は特定の視野(FOV)範囲内の点に対して、これらの選定点を探知する時の探知ウィンドウの範囲を調整し、例えば、探知ウィンドウを縮小してもよい。探知ウィンドウの範囲を調整する具体的な方法は後文で詳細に説明する。
【0045】
レーザーレーダーは予め設定された探知視野全体を走査した後、1フレームの完全な点群情報を取得でき、ここで、1回の探知(複数回の走査sweepを含んでもよい)で1フレームの点群情報を取得することができ、これらの点群情報は、後のステップでの予測に使用される。使用されるフレーム数が多いほど、点群情報が豊富になり、予測された結果が現実に近づくが、より多くの計算量及び消費電力をもたらすことがあり、実際のニーズに応じて計算のリアルタイム性、計算量及び消費電力のバランスを取ることができることが理解可能である。
【0046】
ステップS104では、調整された探知ウィンドウ内でのエコー情報のみに基づいて、前記少なくとも1点の測距情報を計算する。
【0047】
ステップS103では、障害物上の少なくとも1点に対して探知ウィンドウの範囲を調整し、ステップS104では、調整された探知ウィンドウ内のエコーのみに基づいて測距情報を計算し、それにより計算量を減少し、又はレーザーレーダーの消費電力を節約し、及び信号対雑音比を高めることができる。具体的な実現方式は後文で詳細に説明する。
【0048】
以下において、図2及び図3a~3dを参照しながら本発明の好ましい一実施例による測距方法を詳細に説明する。
【0049】
図2は本発明の好ましい一実施例による光電探知ユニットの模式図を示しており、ここで、単一光子アバランシェダイオード(Single Photon Avalanche Diode,SPAD)を光電探知器として使用する。図2に示すように、光電探知ユニット22は、複数の探知ユニット221を備え、図2に221-1、221-2…221-nとして示され、各探知ユニット221は、例えば、レーザーレーダーの放射ユニットの1つ又は複数のレーザー機器に対応し、或いは、レーダーにより探知された点群のうちの1点に対応する。光電探知ユニット22は、複数の時間デジタル変換器222(222-1、222-2…222-nとして図示される)及びメモリ223(223-1、223-2…223-nとして図示される)をさらに備える。図2の実施例では、各探知ユニット221は、複数(例えば図示される9つ又は4つ)の光電探知器2211を備え、単一光子アバランシェダイオードSPADを例にし、各探知ユニット221の単一光子アバランシェダイオードの出力端は、時間デジタル変換器222に接続(直接接続とは限らず、出力を増幅し又はフィルタリング処理した後の信号である可能性がある)され、各探知ユニット221の探知ウィンドウの範囲は独立して調整可能であり、つまり、各探知ユニット221をオン状態(エコーを受信できる状態)又はオフ状態(エコーを受信できない状態)に独立して制御することができる。エコーが探知ユニット221-1、221-2…221-nに入射した後、単一光子アバランシェダイオードSPADをトリガし、電気信号を生成する。各探知ユニット221は時間デジタル変換器(TDC)222に結合され、時間デジタル変換器222は、エコーの到着時間を決定し、又はエコーの飛行時間を計算し、結果をメモリ223に記憶することができる。
【0050】
図2の実施例において、単一光子アバランシェダイオードSPADを例にして説明したが、本発明はこれに限定されず、アバランシェフォトダイオードAPD、シリコン光電子増倍管SiPM等を含むが、これらに限定されない他のタイプの光電探知器2211を使用してもよいことは当業者であれば容易に理解する。また、図2の実施例において、各探知ユニット221はそれぞれ、対応する時間デジタル変換器222及びメモリ223を有し、前記時間デジタル変換器222及びメモリ223を多重化してもよく、つまり、1つの時間デジタル変換器222及び1つのメモリ223は、複数の探知ユニット221に対応し、これらはいずれも本発明の保護範囲に含まれる。
【0051】
ステップS102では、レーザーレーダーにより取得された点群を基にして、前記障害物のタイプを識別し、前記障害物の速度を計算することができる。例えば、点群内の各点の位置関係を踏まえ、AI識別等の技術を組み合わせ、点群内の複数の点の相互関係に基づいて、目標識別等の方式によって、これらの点が同一の障害物に属していることを確認し、さらに障害物のタイプを識別して確認し、障害物のサイズを計算することができる。例えば、複数の点の反射率を踏まえ、これらの点が同一の障害物に属しているか否かについての判断を助けることができる。例えば、隣接する点の間の反射率は一般に、比較的近いため、隣接する点の反射率の差又は変化幅が閾値を超える場合、隣接する点が同一の障害物又は目標物に属していないと判断できる。
【0052】
また、障害物のタイプ、該障害物のマルチフレームの点群における相対位置の変化、及び各フレームの点群の間の時間間隔に基づいて、障害物の速度又は他の運動パラメータを計算して取得することができる。次に、障害物の速度及び最初のkフレームの探知データに基づいて、レーザーレーダーがk+1回目の探知(第k+1フレームの点群を取得するための探知)を行う時の該障害物の位置を予測する。さらに、障害物が増えたり減ったり、距離が近くなったり遠くなったりするという可能な変化に基づいて、次のフレームで予測された障害物上の探知パラメータを調整することができる。また、障害物のタイプは探知の需要の判断を助けることができ、例えば、木のような自動運転が注目するキーポイントではない静的物体の場合、対応する点の探知ウィンドウをより小さくすることができる。歩行者又は高速移動車両のような高度に注目すべき動的物体の場合、対応する点に対してより大きな探知ウィンドウを保留して、よりよい且つより精確な探知を確保することができる。
【0053】
前記ステップS102は、レーザーレーダー内部のコントローラ又は信号処理ユニットによって実現されてもよく、レーザーレーダー外部のデータプロセッサによって実行されてもよい。外部データプロセッサによって実行される利点は、外部データプロセッサは一般に、計算能力がより高く、計算速度がより速いことである。レーザーレーダーが自動運転車に応用される場合、外部データプロセッサは、電子制御ユニット(Electronic Control Unit,ECU)であってもよい。
【0054】
本発明の好ましい一実施例によれば、ステップS101では、初期探知ウィンドウの範囲に基づいて三次元環境に対するマルチフレーム(k≧1)の探知データを取得し、前記初期探知ウィンドウの範囲は、例えば、レーザーレーダーの最大探知距離範囲に関連している。必要な最大探知距離がDmaxであり、対応する飛行時間がwin_Dmaxであり、必要な最小探知距離がDminであり、対応する飛行時間がwin_Dminである場合、初期探知ウィンドウの範囲は、[win_Dmin,win_Dmax]となり、ここで、win_Dmin≧0であり、win_Dmaxは、レーザーレーダーが実際に探知できる最大探知距離に対応する飛行時間以下としてもよい。
【0055】
例えば、光電探知器が最大で30mの距離を測定できることを必要とし、つまり、必要な最大探知距離Dmax=30mである場合、式win_Dmax=2Dmax/c(cが光速である)に応じて、対応する飛行時間win_Dmaxが200nsであると算出することができ、システムがwin_Dminを0に予め設定した場合、初期探知ウィンドウの範囲は[0,200ns]である。
【0056】
図3a~3dはステップS103で探知ウィンドウの範囲を調整するプロセスを示す。図3aに示すように、レーザーレーダーLiDARは、例えば、車両の先端部分に取り付けられ、車両前方の目標物を探知するために用いられる。1回目の探知時に、エコーの飛行時間はTof_detected0である。図3bに示すように、2回目の探知時に、エコーの飛行時間はTof_detected1であり、ここで、Tof_detected1はTof_detected0より小さく、レーザーレーダーが目標物に近づいていることを示す。図3cに示すように、3回目の探知時に、エコーの飛行時間はTof_detected2であり、ここで、Tof_detected2はTof_detected1より小さく、レーザーレーダーがさらに目標物に近づいていることを示す。
【0057】
初めの3回の探知データに基づいて、4回目の探知時のエコーの飛行時間がTof_predictedであると予測することができる。例えば、初めの3回の探知データに基づいて、前記目標物の車両(レーザーレーダー)に対する運動速度及び方向を算出し、次に4回目の探知と3回目の探知との間の時間間隔に基づいて、4回目の探知時の目標物の位置(少なくとも距離及び方位を含む)を予測し、続いて該位置に対応する飛行時間Tof_predictedを計算することができる。ステップS103では、対応する探知ウィンドウの中心位置をTof_predictedに調整し、対応する探知ウィンドウの範囲を[Tof_predicted-△T,Tof_predicted+△T]に調整し、ここで、前記△Tは時間ウィンドウであり、予め設定された値であってもよいし、前記障害物のサイズ及び/又は速度に関連してもよい。
【0058】
異なる状況によって△Tの値を設定することができる。本発明の好ましい一実施例によれば、経験又はシミュレーション結果に基づいて、△Tを固定値に予め設定してもよい。本発明の他の好ましい実施例によれば、障害物の予測状況に応じて△Tを決定し、例えば、障害物の移動速度が遅く(速度が閾値より小さい)、急速に変化しない場合、小さい探知ウィンドウを使用することができ、△Tを小さく設定することができる。障害物の移動速度が速いと予測される場合、大きい探知ウィンドウを与えるべきであり、△Tを大きく設定することができる。障害物予測の不確実性が高く、つまり、障害物の移動速度が速いか遅いかを正確に決定できない場合、大きい探知ウィンドウを与えるべきである。本発明の別の好ましい実施例によれば、△Tの値は、障害物のサイズに関連してもよく、障害物のサイズが大きい場合、△Tも大きく設定することができ、障害物のサイズが小さい場合、△Tを小さく設定することができる。これにより、前記△Tは、前記障害物のサイズ及び/又は速度の増加につれて大きくなる。△Tの設定は他の要素を参照することもでき、△Tの値は、該障害物(少なくとも1つの探知点)を次のフレームにおいて予測されたウィンドウ内、最も好ましくはウィンドウの比較的中央の位置に出現させることができ、且つ探知ウィンドウ全体がそれほど大きくなければよく、これらの設定方式の選択は、いずれも本発明の保護範囲に含まれる。
【0059】
本発明によれば、ステップS104では、調整された探知ウィンドウ内でのエコー情報のみに基づいて測距情報を計算し、これは様々な方式によって実現することができ、以下において、図2を参照しながら詳細に説明する。
【0060】
本発明の一実施例によれば、k+1回目の探知において、調整された探知ウィンドウの範囲内で光電探知器をオンにし、調整された探知ウィンドウの範囲外で光電探知器をオフにする。即ち、光電探知器は、探知ウィンドウの範囲外でオフにされ、今回の探知が終了するまで探知を行わず、次回の探知を行う時に、予測された探知結果に基づいて探知ウィンドウの範囲を調整し続け、また、探知ウィンドウの範囲に応じて対応する光電探知器をオン又はオフにする。図2を参照し、探知ユニット221-1に対応するレーザー機器が探知レーザービームを放射する時(この時点を探知ウィンドウの開始時点としてもよいし、一定の時間だけ早めてもよい)、調整された探知ウィンドウの範囲内でのみ探知ユニット221-1内の光電探知器(単一光子アバランシェダイオードSPAD)をオンにし、それにより探知ユニット221-1は、調整された探知ウィンドウの範囲内でのみエコーを受信して電気信号に変換し、該電気信号は、時間デジタル変換器TDCによって受信され、エコーの受信時間又は飛行時間が計算される。本実施例によれば、レーザーレーダーの消費電力を低減させることができる。
【0061】
本発明の他の実施例によれば、k+1回目の探知において、光電探知器及び時間デジタル変換器を常にオンに維持し、メモリは、調整された探知ウィンドウの範囲内で前記時間デジタル変換器により出力された探知データのみを記憶する。従って、本実施例において、光電探知器は、常時オンにし、常時探知を行ってもよく、時間デジタル変換器も常時オンにするが、メモリは、障害物に関する探知データのみを記憶する。図2を参照し、探知ユニット221-1に対応するレーザー機器が探知レーザービームを放射する時、初期探知ウィンドウの範囲内で、探知ユニット221-1内の光電探知器(単一光子アバランシェダイオードSPAD)を常にオン状態に維持し、受信された光信号を電気信号に変換して、時間デジタル変換器によって処理するが、メモリには、調整された探知ウィンドウの範囲内で前記時間デジタル変換器により出力されたデータのみが記憶される。本実施例によれば、メモリは、障害物に関する探知データのみを記憶し、調整された探知ウィンドウの範囲を超えるデータ、即ち、予測飛行時間から大きく逸脱した探知データについては、記憶も処理もせず、それによりデータが減少し、記憶要求が低下し、さらに計算需要が削減され、同時に光電探知器を頻繁にオン・オフにする必要もなく、制御の複雑さが低下した。
【0062】
本発明の別の実施例によれば、k+1回目の探知において、光電探知器を常にオンに維持し、調整された探知ウィンドウの範囲内でのみ時間デジタル変換器をオンにする。即ち、光電探知器は、常時オンにし、常時探知を行ってもよく、時間デジタル変換器は、調整された探知ウィンドウの範囲内でのみオンにする。図2を参照し、探知ユニット221-1に対応するレーザー機器が探知レーザービームを放射する時、初期探知ウィンドウの範囲内で、探知ユニット221-1内の光電探知器(単一光子アバランシェダイオードSPAD)を常にオン状態に維持し、受信された光信号を電気信号に変換したが、時間デジタル変換器TDCは、調整された探知ウィンドウの範囲内でのみオンにする。本実施例によれば、時間デジタル変換器をオフにすることでレーザーレーダーの消費電力を低減することができる。
【0063】
上記3つの実施例において、それぞれ、調整された探知ウィンドウの範囲内で光電探知器をオンにすることと、メモリが調整された探知ウィンドウの範囲内での前記時間デジタル変換器による出力のみを記憶することと、調整された探知ウィンドウの範囲内で時間デジタル変換器TDCをオンにすることとによって、調整された探知ウィンドウ内のエコー情報のみを取得して、後続の測距情報の計算に使用されることは実現される。
【0064】
ステップS103でのk+1回目の予測結果が正確であれば、k+1回目の実際の探知時に、依然として前記障害物を追跡して、その上にある探知点に対して測距情報を計算することができる。しかし、他の理由により、k+1回目の探知中に有効な目標物が探知されなかった場合(即ち、有効なエコーが受信されなかった場合)、つまり、調整された探知ウィンドウの範囲内で障害物が探知されなかった場合、k+2回目の探知ウィンドウの範囲を前記初期探知ウィンドウの範囲に復元し、k+2回目の探知時に、レーザーレーダーがエコー情報を見逃さないようにする。一方、k+1回目の探知中に有効な目標物が探知された場合(即ち、有効なエコーが受信された場合)、ステップS102、S103及びS104を繰り返して、k+2回目の探知時の探知ウィンドウの範囲を調整して探知を行うことができる。
【0065】
上記ステップによって、初めのk回の探知データに基づいてk+1回目の探知データを予測し、次にk+1回目の探知時の探知ウィンドウの範囲を調整し、探知ウィンドウの範囲内のエコーを処理し、測距情報を計算する。引き続き、初めの数フレーム(例えば初めの2フレーム、即ちk回目及びk+1回目)の探知データに基づいてk+2回目の探知時の探知データを予測し続け、次に、k+2回目の探知時の探知ウィンドウの範囲を調整し、探知ウィンドウの範囲内のエコーを処理し、測距情報を計算し、測定が完了するまでステップS102-S104を繰り返すことができる。
【0066】
好ましくは、エリアアレイ型トランシーバシステムの場合、距離の変化を予測する作業は、目標追跡メカニズムを実現可能なモジュールと組み合わせて予測できる、より強い計算能力を有する外部ホストコンピュータによって処理することができ、それにより環境シーン全体にわたって探知ウィンドウをよりインテリジェントに選択して、消費電力をより効果的に低減させる。
【0067】
図4は本発明の一実施例に係るシーンの平面図であり、C1、C2及びC3は乗用車であり、C4は大型トラックであり、前進の途中で、C4はC1のレーザーレーダーの探知視野内に入る。まず、レーザーレーダーは、三次元環境に対するマルチフレームの探知データ(例えば3フレーム又はより多くのフレーム、図4に2フレームを模式的に示す)を取得し、初めの3フレームの探知データに基づいて第4フレームの時のC4の位置を予測する。ここで、初めの3フレームの探知データに基づいて、C1とC4の相対速度、C4の距離及び反射率を取得することができる。第4フレームの時のC4の距離(又は位置)を予測する際に、C4を全体として予測することができ、そのため初めの3フレームの点群においてC4に属する点を識別することができる。本発明の好ましい一実施例によれば、隣接する点の反射率の差又は距離の差に基づいて判断することができる。1フレームにおいて、同一の物体に属する隣接する点の反射率は一般に近い(差が閾値より小さい)はずであり、隣接する点の反射率が急変すると、この2つの点が同一の物体に属していないと推定することができる。又は、点群内の隣接する点の間の距離に基づいて判断することもでき、2つの隣接する点が同一の物体に属する場合、この2つの隣接する点の間の距離は比較的近く(距離が閾値より小さい)、隣接する点の距離が急変すると、この2つの点が同一の物体に属していないと推定することができる。また、隣接する点の反射率及び距離を組み合わせて、二者が同一の物体に属するか否かを判断することもできる。
【0068】
このようにして、C4の輪郭及び視野内の方位(例えば、点群における各点の三次元座標)を大まかに決定し、さらにC4とC1の相対速度に基づいて第4フレームの時の視野内のC4の方位を予測することができる。レーザーレーダーによる探知のフレームレート速度及びC1とC4の相対速度の関係は、予測方位の偏差値に影響を与える。第4フレームの時、C4に対応する少なくとも1点に基づいて、探知ウィンドウの範囲を調整し、障害物のある距離範囲内でのみ探知を行い、それにより記憶スペースを節約し、計算需要を削減し、又は消費電力を節約し、及び信号対雑音比を高める。
【0069】
単一光子アバランシェダイオード(Single Photon Avalanche Diode,SPAD)は、ガイガーモード状態で動作し、単一光子探知を行うことができるアバランシェフォトダイオード(Avalanche Photo Diode,APD)である。光子探知の具体的なプロセスは、アバランシェフォトダイオードに一定の逆方向バイアスVbiasを印加し、エネルギーを運んでいる光子をP-N結合に入射させることにより、エネルギーを共有結合上の電子に伝達して、電子を共有結合から離して、光生成キャリアとも呼ばれる電子-正孔対を形成することである。逆方向バイアスVbiasが十分に大きいならば、空乏層の光生成キャリアは、十分に高い運動エネルギーを得ることができ、さらに結晶格子に衝突すると、共有結合を破断してより多くの電子-正孔対を生成することができ、このプロセスは衝突電離とも呼ばれる。新たなキャリアはまた、絶えずに新たな衝突電離を生成して、連鎖反応を形成し、キャリアのアバランシェ倍増効果を引き起こし、さらに検出可能な大きさの、mAレベルのようなパルス電流を得て、それにより単一光子の探知を実現する。光子探知効率(Photon Detection Efficiency,PDE)はSPADの重要なパラメータであり、光子がSPADに入った後にアバランシェを励起して検出される平均確率を特徴づけ、下記式1で表され得る。
PDE= εgeo*QE*εtrigger (式1)
式中、εgeoは幾何学的充填因子を特徴づけ、QEは量子効率、即ち電子-正孔対を生成する確率を特徴づけ、εtriggerは電子-正孔対がアバランシェをさらに励起する確率を特徴づける。
【0070】
同時に、PDEは、SPADが単一光子信号を探知する能力も表しており、探知された光子の数/入射した総光子数と表すことができる。
【0071】
信号対雑音比を高めるために、SPADsアレイを用いた測距装置の場合、通常、時間相関単一光子計数法(Time Correlated Single Photon Counting,TCSPC)を使用して測距を行い、光子時間情報を測定する基本的な考え方は、光子をランダムなイベントと見なして、光子を複数の周期にわたって繰り返して測定した後に統計することである。換言すれば、複数回の走査(sweep)を用いることができ、複数回の走査で得られた光子数ヒストグラムを今回の飛行時間測定の精確な飛行時間を計算するために使用し、それにより目標物の距離を計算し、さらに点群内の1点を取得する。
【0072】
レーザーレーダーの探知プロセスにおいて、単一光子アバランシェダイオードSPAD(s)で構成される探知器アレイを例にすれば、SPADがガイガーモードで動作し、単一光子によってバランシェ効果がトリガされ得るため、周囲光ノイズに影響されやすく、一方、SPAD(s)はレーザーレーダーのよく使用される探知光波長域に対する光子探知効率PDEが低く、単回の探知によって得られる信号強度が比較的に弱い。図5に示すように、任意の1点に対して、1回の探知走査プロセスにおいて、探知時間ウィンドウ内で発生したトリガはわずか数回だけである可能性があり(図5では2回のトリガである)、且つ目標物に反射されたエコー信号によってトリガされたか、周囲光ノイズによってトリガされたかを区別することができない。レーザーレーダーの遠距離探知性能及信号対雑音比を高めるために、図5に示すように、レーザーレーダーは、同一の視野範囲内の任意の1つの目標点に対する1回の探知(又は測定)中、複数回の重複の探知走査(sweepの重複回数は400~500回に達することができ、あるいはより多くの回数又はより少ない回数であってもよい)を行うことができ、複数回の探知走査(sweep)を行った結果が累積されてヒストグラムが得られ、該ヒストグラムに対してさらなる計算及び処理を行うことにより、距離を測定し、さらにレーザーレーダー点群上の1点の距離及反射率情報を得る。
【0073】
毎回の探知走査には、レーザーレーダーのコントローラは、放射時刻t1に放射側の光源から探知のための光パルスを放射して該放射時刻t1を記録するようにトリガして制御し、該光パルスが外界の障害物にぶつかると、障害物に反射されてレーザーレーダーに戻され、受信側の光電探知器によって時刻t2に受信される。光電探知器がSPAD(s)アレイである場合、SPADは周囲光によりアバランシェがトリガされる可能性もある。SPADに光子が受信されると、アバランシェ電気信号を生成して、時間デジタル変換器TDCに伝送し、TDCからSPADトリガの時間信号及び同一の時刻t2にトリガされるSPADの数量信号を出力し(これは1つの画素に複数のSPADsが含まれる場合に存在する状況であり、1つの画素には1つのSPADのみある場合、該数量信号が存在せず、トリガされた状態とトリガされていない状態という2つ状態のみがある)、後続のメモリはSPADのトリガ時間t2から放射時刻t1を差し引いたタイムスタンプtimestamp(図5及び図6の横軸で示される時間情報に関連している)及び該タイムスタンプtimestampでのトリガ数量(以下、cntと略称する)信号を記憶する。
【0074】
探知走査ごとに得られたトリガ数量cntをタイムスタンプtimestampに応じて、対応するメモリ位置に記憶し、あるタイムスタンプtimestampの対応する位置に新たなトリガ数量cntが到着すると、元々記憶された値と新たなトリガ数量cntを累積して該位置に更新し、複数回の探知走査を重畳した後にメモリ内に保存されたデータは図6に示すようにヒストグラムを構成し、ヒストグラムは複数回の探知走査の統計で示される、時間軸上の異なるタイムスタンプtimestampに対応するトリガ数量cntの総和を反映し、このようにヒストグラムを使用して重心を計算する等の操作でエコーパルスに対応する飛行時間を得てから、測距結果を得る。
【0075】
従って、上記実施例によれば、レーザーレーダーによる1つの視野範囲内での各点に対する1回の距離又は反射率情報の測定において、レーザーレーダーは実際に、複数回の探知走査(複数回の放射-受信のサイクル)を実行し、走査の数は数十回から数百回までであってもよく、ある期間にわたって1つの視野範囲内での任意の点に対して複数回の走査を行い、複数回の走査において探知器が同じ時間情報で受信した強度情報の曲線を重畳して前記強度情報-時間情報曲線とする。例えば、図5に示すように、1回目、2回目、…、i回目の走査において、1回の走査ではごく限られた数のエコー又は光子しか受信しないが、i回の走査の探知結果を重畳した後、図6に示すように、該視野範囲の1回の飛行時間測定の光子数ヒストグラムが得られ、ここで、横座標のスケールは時間情報であり、時間軸上のスケールの幅は通常、レーザーレーダーにおける時間デジタル変換器の解像度、即ちレーザーレーダーの探知時間の解像度に等しい。
【0076】
本発明の文脈では、「測定」(又は「探知」)と「探知走査」(又は「走査」)とが区別される。具体的には、1回の「測定」は、レーザーレーダーの1つの探知周期内(即ち、1フレームの点群を生成する周期内)に、ある視野範囲に対して飛行時間測定を行い、それにより1フレームの点群図中の1つ又は複数(1列又は複数列或いは1ブロック)の「点」を生成することに対応し、全ての視野範囲での測定が完了した後に1フレームの完全な点群が得られ、一方、「探知走査」とは、1回の測定プロセスにおいて、1つの探知チャネルでのレーザー機器が1回の放射を完了し、探知器が対応する受信を完了するプロセスを指す。1回の「測定」は、1回の「探知走査」を含んでもよく、同一の目標点に対する複数回、例えば数百回の「探知走査」を含んでもよい。
【0077】
好ましくは、信号対雑音比をさらに高めるために、任意の1点に対する1回の「測定」(m回の探知走査=x+yを含む)プロセスでは、最初のx回に全視野のレーザー機器をオンにし、後のy回に障害物のある視野内のレーザー機器のみをオンにすることができる。図7に示すように、図7aは総計m回(例えば400回)の探知を示し、図7bは最初のx回(例えば300回)の探知において、全視野のレーザー機器をオンにしたが、グリーンドットに対応する視野範囲にのみ障害物があることを示し、図7cは後のy回(例えば100回)の探知において、グリーンドットのレーザー機器のみをオンにすればよいことを示す。
【0078】
また、同様に、各フレームの点群内の1点に対する探知は、複数回の重複の探知走査を行うことができ、該1点に対する探知に関しては、障害物データのみを細かく記憶し、原信号の波形を保ちながら原信号を圧縮し、低い記憶スペースを使用して精度のより高い測距能力を得ることができる。図8を参照し、初めの300回は初期探知ウィンドウ内で行われ、第1グループの探知データが得られ、次に、障害物のある探知ウィンドウの範囲内で後の100回の探知走査が行われ、第2グループの探知データが得られる。第1グループの探知データを大まかに記憶し、第2グループの探知データを細かく記憶する。
【0079】
探知走査を複数回重複して取得された探知データに対して使用されるデータ処理方法及び記憶方法は、具体的に次のように説明する。
【0080】
図2に示す光電探知ユニットの探知モジュール22を参照し、1回の探知走査の場合、レーザーレーダーのコントローラは、SPADに高圧を供給することにより一部(1行又は1列或いは任意の関心のある形状)の探知ユニット221をストローブし、その後、発光できることを放射側のレーザー機器に通知するように同期信号を送信し、放射側のレーザー機器は、時刻ta(aはa回目の探知走査を表す)に探知するための光パルスを放射し、該光パルスは、外界の障害物にぶつかると、障害物に反射されてレーザーレーダーに戻され、受信側の光電探知器により受信され得る。光電探知器がSPAD(S)アレイである場合、SPADに光子が受信されると、アバランシェ電気信号を生成して、TDCに伝送し、TDCからSPADトリガの時間信号t1及び同一時刻にトリガされるSPADの数量信号cnt1a(ここで、1aはa回目の探知走査の1回目のトリガを表す)を出力し、減算プログラムによりt1-tのトリガ時刻timestamp1a(以下、tp1aと略称する)を計算し、tp1a及び該トリガ時刻のトリガ数量cnt1a信号をメモリに伝送して記憶する。1つの探知ユニット221には複数のSPADが含まれ、且つSPADはデッドタイムの後に再び探知することができるため、1回の探知走査において、別の時刻にまたSPADトリガが発生する可能性があり、メモリは、該回のトリガのtp2a及びcnt2a(2aはa回目の探知走査の2回目のトリガを表す)を記憶する。1回の探知走査での複数のトリガは、いずれも時間情報に応じて記憶する必要がある。
【0081】
次の探知走査bにおいて、レーザーレーダーのコントローラは、予め設定されたプログラムに従って、放射側がtb時刻に探知光パルスを放射するように制御するために信号を再び送信する。SPADに光子が受信されると、アバランシェ電気信号をTDCに伝送し、TDCからSPADトリガの時間信号t1及び同一時刻にトリガされるSPADの数量信号cnt1b(b回目の探知の1回目のトリガ)を出力し、後続のメモリは、SPADトリガ時間t1-tのトリガ時刻timestamp1b(以下、tp1bと略称する)及び該トリガ時刻のトリガ数量cnt1b信号を記憶する。1つの探知ユニット221には複数のSPADが含まれ、SPADはデッドタイムの後に再び探知することができるため、1回の探知走査において、別の時刻にまたSPADトリガが発生する可能性があり、メモリは、該回のトリガのtp2b及びcnt2bを記憶する。
【0082】
数百回の探知走査では、毎回の探知走査によって得られたトリガ数量cntをトリガ時刻timestampに応じて、対応するメモリ位置に記憶し、同一のトリガ時刻timestampの対応する位置に新たなトリガ数量cntが到着すると、元々記憶された値と新たなトリガ数量cntを累積して該位置に更新し、n回の探知走査を重畳した後に図6に示すようにメモリ内には1つのヒストグラムが保存され、ヒストグラムは時間軸上の異なるトリガ時刻timestampに対応するトリガ数量cntの総和を反映し、このようにヒストグラムを使用して重心又は立ち上がり時間を計算する等の操作でエコーに対応する時間情報を得て、距離を計算するための飛行時間とし、点群上の1点を生成する。
【0083】
図9のデータ記憶方法において、横座標は時間tであり、横座標のスケール間隔はTDCの時間解像度であり、各時間スケールは1つの記憶位置R(レジスタ)に対応する。例えば、ある探知走査aでは、時間スケール0でSPADトリガが発生し、放射時間及びTDC伝送のトリガ時間に基づいてトリガ時刻tp(トリガ時間-今回の放射時間)及びトリガ数量情報cnt1aを計算して取得し、cnt1aをtp時刻に対応する記憶位置R1に記憶する。時間スケール4でSPADトリガが発生した場合、時間情報tp及びcnt5aを取得し、cnt5aをtpに対応する記憶位置R5に記憶する。他の探知走査bにおいても、時間スケール4でSPADトリガが発生し、時間情報tp及びcnt5bを取得し、cnt5bも記憶位置R5に対応し、この場合、cnt5aを読み出し、続いてcnt5bとcnt5aとの加算値をR5に更新する。aはa回目の探知走査を表し、bはb回目の探知走査であり、数字は対応する時間スケール及び対応する記憶位置を表す。記憶位置Rは時間スケールに一対一に対応し、メモリにはトリガ数量cntのみが記憶され、データ処理回路はデータを読み出す時に、記憶位置に応じると、トリガ数量cntに対応する時間を知ることができる。
【0084】
図6及び図9を参照して分かるように、1つのヒストグラムは複数回の探知走査(400~500回)によるデータが累積されて得られたものであり、数百回の探知走査の結果を1つのヒストグラムとして重畳し、点群内の1点を取得するプロセスにおいて、ある時間スケールに対応する記憶位置には、該時刻でトリガが発生する全てのトリガ数量cntを累積した和が記憶されている。1回の探知走査において各時間スケールにもSPADトリガが発生することはないが、図5に示すように、1つのヒストグラムデータは複数回の探知結果を重畳したものであり、各時間スケールにもある探知走査プロセスでSPADトリガが発生し、対応するデータがメモリに受信される可能性がある。したがって、1つのTDCに対して、各時間スケールは1つの対応する記憶位置を必要とし、複数回の探知走査によって取得された全てのトリガ数量cntはいずれも時刻に対応する記憶位置内に記憶され、tpの時間間隔、即ちTDCの解像度はpsオーダーに達し、非常に大きなスペースのあるレジスタが必要となる。
【0085】
このような記憶及び測距方法を使用すると、トリガ時刻timestampの精度単位はpsオーダーであるため、長いtof探知が必要な場合、1つの完全なヒストグラムを記憶するには膨大なメモリと膨大な記憶スペースを消費する必要がある。特に遠距離探知能力を向上させるためには、探知の時間及び探知走査の重複回数を増加する必要があり、記憶スペースに対する要求も増えている。
【0086】
本出願の一実施例によれば、「重み付け累積」というデータ記憶方法を使用して、測距精度を維持したまま、原信号を圧縮し、ヒストグラムを記憶するために必要な記憶スペースを大幅に減少させる。目標物の大まかな範囲を確定した後、開窓測定によって目標物の観測を維持した上でヒストグラムを生成するために必要な計算量を低減させることができ、それによりシステム消費電力を低減させる。
【0087】
図10において、横座標は飛行時間であり、横座標の時間スケールの間隔は、例えば、TDCの時間解像度のようなレーザーレーダーの時間解像度であり、ピコ秒psのオーダーに達することができる。図10に示すように、レーザーレーダーの時間解像度を基礎として第1時間スケールを設定し、図10におけるA及びA+1に示すように、隣接する2つの第1時間スケールの間は、16つのレーザーレーダーの時間解像度の間隔を挟む。時刻xで光子が探知される(例えば、図4に示す受信ユニット22における1つの探知ユニット221内の1つ又は複数のSPADがトリガされる)場合、前記時刻xの重みに応じて探知された強度値を記憶する。時刻xは、該時刻とその左側に隣接する第1時間スケールAとの時間間隔がx倍である時間解像度を表す。
【0088】
当業者であれば、レーザーレーダーの時間解像度が小さく、第1時間スケールの間隔が大きいため、レーザーレーダー時間解像度に対応する時間スケールは「細かいスケール」とも呼ばれてもよく、第1の時間スケールは「粗いスケール」とも呼ばれてもよいことは容易に理解される。
【0089】
図10に示すように、前記時刻xの重みは第1重み及び第2重みを含み、第1重みは、前記時刻xとそのうち1つの隣接する第1時間スケールとの間の時間間隔に関連し、第2重みは、前記時刻xと他の隣接する第1時間スケールとの間の時間間隔に関連している。第1重み及び第2重みが決定された後、第1時間精度で、それぞれ前記第1重み及び第2重みに応じて前記強度情報を記憶する。
【0090】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記第1重みは、前記時刻xとその左側の隣接する第1時間スケールAとの間の時間間隔に関連し、第1重みは例えば(16-x)であり、前記第2重みは、前記時刻xとその右側の隣接する第1時間スケールA+1との間の時間間隔に関連し、第2重みは例えばxである。そのため、時刻xをその隣接する2つの粗いスケール(A,A+1)での重みで代わりに示し、ここで、xの粗いスケールAでの重みは(16-x)であり、粗いスケールA+1での重みはx(xは該時刻からAまでの距離を特徴づける)であり、それらは該時刻xの細かいスケールに等価する。換言すれば、xを重みとし、細かいスケールでのデータを隣接する2つの粗いスケールに対応するアドレスに記憶することで、スケールx自体を記憶するのではなく、スケールxの数値を示す。このプロセスは等式で次のように示される。
【数1】
【0091】
式2において、等号の左側は、粗いスケールに応じた記憶、粗いスケールの開始値と終了値に重みを付けた和であり、等号の右側は、トリガ時刻の具体的な値である。粗いスケール+重みという記憶方法によってトリガ時刻の具体的な値を特徴づけることができる。
【0092】
同様に、トリガして得られた信号にはトリガ時刻を加えてトリガの数又は強度等の情報を示すトリガ数量cntが含まれる場合、粗いスケールAでの新しい強度情報はcnt*(16-x)であり、粗いスケールA+1での新しい強度情報はcnt*xであり、複数回の走査においてそれぞれ累積すればよい。図11を参照しながら詳細に説明する。細かいスケールは、時間デジタル変換器TDCの時間解像度を表す。あるトリガ時刻timestampについて、その粗いスケールの開始値はAであり、その細かいスケールは、その粗いスケール内の対応する0~15の細いスケールのxスケールにある。
【0093】
図11を参照し、各粗いスケールに1つのレジスタが割り当てられ、横座標の粗いスケールの間隔はTDC解像度の16倍であり、各粗いスケールは1つのレジスタに対応する。ある探知走査aのプロセスにおいて、時間スケール0でSPADトリガが発生し、時間情報tp(対応するx1a=0)及びトリガ数量情報cnt1aを取得し、それぞれ、粗いスケールAに対応するレジスタAにcnt1a*(16-x1a)を記憶し、粗いスケールA+1に対応するレジスタA+1にcnt1a*x1aを記憶する。別の時間スケール5では、時間情報tp(対応するx6a=5)及びトリガ数量情報cnt6aを取得し、粗いスケールAに対応するレジスタA内に記憶されるデータを読み出し、cnt6a*(16-x6a)を加えた後にレジスタAに記憶する。粗いスケールA+1に対応するレジスタA+1内のデータを読み出し、cnt6a*x6aを加えた後にレジスタA+1に再び記憶する。1つの粗いスケール時間(細かいスケール0~15)内で、全てのトリガ数量情報cntに重みを付け、元のデータと加算した後に、記憶位置A及びA+1に対応するレジスタ内に記憶する。次の粗いスケール時間内のトリガ数量情報cntに重みを付けた後に、粗いスケールA+1及びA+2に対応するレジスタに記憶し、例えば時刻2’でSPADトリガが発生し、時間情報tp’及びcnt3a’を取得すると、粗いスケールA+1に対応するレジスタA+1内に記憶されるデータにcnt3a’*(16-x3a’)を加え、粗いスケールA+2に対応するレジスタA+2内にcnt3a’*x3a’を記憶する。
【0094】
次の探知走査bのプロセスにおいて、受信された信号tp及びcnt2bは、それぞれ粗いスケールA及びA+1でcnt2b*(16-x2b)及びcnt2b*x2bという重みが割り当てられ、それぞれ元の記憶データと加算した後、粗いスケールA及びA+1に対応するレジスタに記憶する。1つのヒストグラムは複数回の走査のデータが累積されて取得され、複数回の走査において、時刻0~15で対応してトリガされる全てのトリガ数量cntはいずれも粗いスケールA及びA+1に対応するレジスタに記憶されている。
【0095】
粗いスケールと細かいスケールとの比較関係は図12に示すように、各細かいスケールにおいても1つのレジスタによってデータを記憶する必要がある解決手段に対して、本発明の実施例は、重み付け累積記憶の方法を使用し、図12における0~n+1の粗いスケールにおいて対応してレジスタを設定するだけで、必要なレジスタの数は元の1/16まで減少し、各レジスタによる記憶のビット幅が増大し、占有する空間が大きくなるが、割り当てる必要のある記憶位置が大幅に減少するため、重み付け累積のデータ記憶方法によって総記憶スペースを元の1/10の範囲まで減少させることができる。
【0096】
図10図11の実施例において、隣接する第1時間スケール(粗いスケール)の時間間隔はレーダー探知データ時間解像度(細かいスケール)の16倍であり、即ち、16を重みとして用いてデータを圧縮する。当業者であれば、本発明はこれに限定されるものではなく、ここでの重みは任意の大きな正の整数であってもよいことが容易に理解され、2mであることが好ましく、mは正の整数であり、それによりFPGA又はASICにおいて実現しやすい。
【0097】
上記実施例において、前記第1重みは(16-x)であり、前記第2重みはxであるが、本発明はこれらに限定されるものではなく、前記第1重みはxであり、前記第2重みは(16-x)であってもよく、又は、前記第1重みは1-(x/n)であり、前記第2予め設定された重みはx/nであってもよく、第1重みは前記時刻xとそのうち1つの隣接する第1時間スケールとの間の時間間隔に関連し、第2重みは前記時刻xと他の隣接する第1時間スケールとの間の時間間隔に関連すればよい。
【0098】
図9図11に示す記憶方法は上記データ処理方法における第1グループの探知データ及び第2グループの探知データの記憶に応用することができる。
【0099】
本発明の好ましい一実施例によれば、第1グループの探知データ及び第2グループの探知データは第1記憶方式又は第2記憶方式によって記憶される。具体的には、第1記憶方式は、第1時間精度(即ち、図10における粗いスケールに対応する精度)で時間情報の重みに従って記憶することを含み、第1時間精度はレーザーレーダーの時間解像度の倍数、例えばm倍として選択することができ、且つmは1より大きい整数である。一定の範囲内で、mの値が小さいほど、探知結果の精度が高くなり、必要な計算量及び記憶スペースも大きくなる。第2記憶方式は、レーザーレーダーの時間解像度に応じて記憶することを含む(即ち、図12における細かいスケール)。レーザーレーダーの時間解像度、即ちTDCの時間解像度は、TDCが動作する時に識別できる最小の時間間隔である。換言すれば、測定すべきの期間を時間間隔が小さい基準信号で示し、基準信号の時間間隔は測定精度であり、その値が小さいほど、TDCの時間解像度が高くなる。
【0100】
第1記憶方式では第1時間精度で記憶し、第2記憶方式では第2時間精度で記憶し、第1時間精度が第2時間精度よりも低いため、第1記憶方式は第2記憶方式に比べてより少ない記憶スペースを使用する。
【0101】
本発明の好ましい一実施例によれば、第1グループの探知データは第1記憶方式によって記憶され、第2グループの探知データは第2記憶方式によって記憶される。第1記憶方式は第2記憶方式に比べてより少ない記憶スペースを使用するため、第1グループの探知データのデータ量がより少なく、計算量がより少なく、第1グループの探知データに基づいて得られた目標物の位置も概略的である。
【0102】
本発明の好ましい一実施例によれば、第1記憶方式は重みも関係し、前記重みは第1重み及び第2重みを含み、第1重みは時間情報とそのうち1つの隣接する第1時間スケールとの間の時間間隔に関連し、第2重みは時間情報と他の隣接する第1時間スケールとの間の時間間隔に関連している。
【0103】
本発明はレーザーレーダー20をさらに提供し、図13に示すように、放射ユニット21、光電探知ユニット22、信号処理ユニット23及びコントローラ24を備える。ここで、放射ユニット21は、三次元環境を探知するために探知レーザービームを放射できるように構成される。光電探知ユニット22の構成は、例えば図4に示すように、複数の光電探知器2211を備え、障害物からのエコーを受信して電気信号に変換できるように構成される。前記信号処理ユニット23は、前記電気信号を受信するように前記光電探知ユニット22に結合され、前記電気信号に基づいて前記障害物の測距情報を計算する。前記コントローラ24は、前記光電探知ユニット22及び前記信号処理ユニット23に結合され、且つ、
三次元環境に対するマルチフレームの探知データを取得する動作と、
少なくとも最初のkフレームの探知データの一部に基づいて、k+1回目の探知時の前記三次元環境内の障害物の位置を予測する動作であって、kが整数であり、k≧1である動作と、
k+1回目の探知を行う時に、予測された前記障害物の位置情報を基に前記障害物上の少なくとも1点に対して、探知ウィンドウの範囲を調整する動作と、を実行できるように構成され、また
前記信号処理ユニット23は、k+1回目の探知を行う時に、調整された探知ウィンドウの範囲内でのエコー情報のみに基づいて、前記障害物上の前記少なくとも1点の測距情報を計算するように構成される。
【0104】
本発明の好ましい一実施例によれば、ここで、前記探知データは、レーザーレーダー20との相対方位及び/又は距離を含み、三次元環境に対するマルチフレームの探知データを取得する前記動作は、初期探知ウィンドウの範囲に基づいて三次元環境に対するkフレームの探知データを取得するステップを含み、ここで、前記初期探知ウィンドウの範囲が、前記レーザーレーダーの予め設定された最大探知距離に関連している。
【0105】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記コントローラ24は、
前記障害物のタイプを識別する方式と、
前記障害物のタイプ及び最初のkフレームの探知データに基づいて、前記障害物の速度を計算する方式と、
前記障害物の速度に基づいて、k+1回目の探知時の前記障害物の位置を予測する方式とによって、k+1回目の探知時の前記障害物の位置を予測するように構成される。
【0106】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記コントローラ24は、目標識別技術を組み合わせ、前記探知データにおける複数の点の相互関係に基づいて、前記障害物のサイズ及び/又は運動パラメータを決定する。
【0107】
本発明の好ましい一実施例によれば、ここで、前記k>1であり、前記コントローラ24は、
前記障害物の最初のk回の探知における相対位置の変化及び隣接する探知間の時間間隔に基づいて、k+1回目の探知時の前記障害物の位置を予測する方式によって、k+1回目の探知時の前記障害物の距離を予測するように構成される。
【0108】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記コントローラ24は、
予測された前記障害物の位置情報を基に前記障害物上の任意の1点に対して、対応する予測飛行時間を取得する方式と、
対応する探知ウィンドウの中心位置を予測飛行時間に調整する方式と、
対応する探知ウィンドウの範囲を[予測飛行時間-時間ウィンドウ,予測飛行時間+時間ウィンドウ]に調整する方式であって、前記時間ウィンドウが、予め設定された値であるか、又は前記障害物のサイズ及び/又は速度に関連している方式とによって、k+1回目の探知時の探知ウィンドウの範囲及び位置を調整する。
【0109】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記時間ウィンドウは、前記目標物のサイズ及び/又は速度が増加するにつれて大きくなる。
【0110】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記レーザーレーダーは、時間デジタル変換器222及びメモリ223をさらに備え、前記時間デジタル変換器は、前記電気信号を受信して前記エコーの飛行時間を出力できるように構成され、前記メモリは、前記エコーの飛行時間を記憶することができ、
ここで、前記k+1回目の探知において、調整された探知ウィンドウの範囲内で光電探知器2211をオンにし、調整された探知ウィンドウの範囲外で光電探知器2211をオフにする。即ち、光電探知器2211は、探知ウィンドウの範囲外でオフにされ、今回の探知が終了するまで探知を行わず、次回の探知を行う時に、予測された探知結果に基づいて探知ウィンドウの範囲を調整し続け、また、探知ウィンドウの範囲に応じて対応する光電探知器2211をオン又はオフにする。図4を参照し、探知ユニット221-1に対応するレーザー機器が探知レーザービームを放射する時、調整された探知ウィンドウの範囲内でのみ光電探知器をオンにし、それにより探知ユニット221-1内の光電探知器2211(単一光子アバランシェダイオードSPAD)は、調整された探知ウィンドウの範囲内でのみエコーを受信して電気信号に変換し、該電気信号は、時間デジタル変換器222によって受信され、エコーの受信時間又は飛行時間が計算される。本実施例によれば、理論的にはレーザーレーダーの消費電力を低減させることができる。
【0111】
前記k+1回目の探知において、光電探知器2211及び時間デジタル変換器222を常にオンに維持し、前記メモリ223は、調整された探知ウィンドウの範囲内で前記時間デジタル変換器222により出力された探知データ、即ち探知レーザービームの、前記障害物によるエコーの飛行時間のみを記憶する。即ち、光電探知器2211は、常時オンにし、常時探知を行ってもよく、時間デジタル変換器222も常時オンにするが、メモリ223は、障害物に関する探知データのみを記憶する。図4を参照し、探知ユニット221に対応するレーザー機器が探知レーザービームを放射する時、初期探知ウィンドウの範囲内で、探知ユニット221内の光電探知器2211(単一光子アバランシェダイオードSPAD)を常にオン状態に維持し、受信された光信号を電気信号に変換して、時間デジタル変換器222によって処理するが、メモリ223には調整された探知ウィンドウの範囲内で前記時間デジタル変換器222により出力されたデータのみが記憶される。本実施例によれば、メモリ223は、障害物に関する探知データのみを記憶し、調整された探知ウィンドウの範囲を超えるデータ、即ち、予測飛行時間から大きく逸脱した探知データについては、記憶も処理もせず、それによりデータが減少し、記憶面積が低減し、さらに計算需要が削減され、同時に光電探知器2211を頻繁にオン・オフにする必要もなく、制御の複雑性が低下した。
【0112】
本発明の他の実施例によれば、k+1回目の探知において、光電探知器2211を常にオンに維持し、前記調整された探知ウィンドウの範囲内でのみ時間デジタル変換器222をオンにする。即ち、光電探知器2211は、常時オンにし、常時探知を行ってもよく、時間デジタル変換器222は、調整された探知ウィンドウの範囲内でのみオンにする。図4を参照し、探知ユニット221に対応するレーザー機器が探知レーザービームを放射する時、初期探知ウィンドウの範囲内で、探知ユニット221内の光電探知器2211(単一光子アバランシェダイオードSPAD)を常にオン状態に維持し、受信された光信号を電気信号に変換したが、時間デジタル変換器222は、調整された探知ウィンドウの範囲内でのみオンにする。本実施例によれば、時間デジタル変換器222をオフにすることでレーザーレーダーの消費電力を低減させることができる。
【0113】
上記3つの実施例において、それぞれ、調整された探知ウィンドウの範囲内で光電探知器2211をオンにすることと、メモリ223が調整された探知ウィンドウの範囲内での前記時間デジタル変換器222により出力された前記エコーの飛行時間のみを記憶することと、調整された探知ウィンドウの範囲内で時間デジタル変換器222をオンにすることとによって、調整された探知ウィンドウ内のエコー情報のみを取得して、後続の測距情報の計算に使用されることは実現される。
【0114】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記コントローラ24は、k+1回目の探知を行う時に、前記調整された探知ウィンドウの範囲内で障害物が探知されなかった場合、k+2回目の探知ウィンドウの範囲を前記初期探知ウィンドウの範囲に調整するように構成される。
【0115】
探知ウィンドウの範囲を調整して後続の処理に移行する探知データを制限することで、不必要な計算量を減少することができ、又は探知ウィンドウの範囲外で光電探知器2211又は時間デジタル変換器222の一部をオフにすることで、レーザーレーダー20の消費電力を低減させることができる。
【0116】
本発明はコンピュータ可読記憶媒体をさらに提供し、該コンピュータ可読記憶媒体はその上に記憶されているコンピュータ実行可能命令を備え、前記実行可能命令がプロセッサによって実行されると、前記のような測距方法を実施する。
【0117】
最後に、説明すべきは、以上の記載は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定するためのものではなく、前記実施例を参照しながら本発明を詳細に説明したが、当業者であれば、上述した各実施例に記載の技術的手段に対する修正、又はその一部の技術的特徴に対する同等な取替が可能である。本発明の趣旨と原則内に行った任意の修正、同等な取替、改良等は、全て本発明の保護範囲に含まれるものとする点である。
【符号の説明】
【0118】
20 レーザーレーダー
21 放射ユニット
22 光電探知ユニット
23 信号処理ユニット
24 コントローラ
221-1、221-2…221-n 探知ユニット
222-1、222-2…222-n 時間デジタル変換器
223-1、223-2…223-n メモリ
2211 光電探知器
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図4
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】