(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-18
(54)【発明の名称】振動計のゼロ検証基準の決定
(51)【国際特許分類】
G01F 1/84 20060101AFI20240710BHJP
G01N 9/00 20060101ALI20240710BHJP
G01H 3/00 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
G01F1/84
G01N9/00 Z
G01H3/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574501
(86)(22)【出願日】2021-06-02
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 US2021035364
(87)【国際公開番号】W WO2022256000
(87)【国際公開日】2022-12-08
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500205770
【氏名又は名称】マイクロ モーション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バトラー, マーク アラン
(72)【発明者】
【氏名】パタン, アンドリュー ティモシー
【テーマコード(参考)】
2F035
2G064
【Fターム(参考)】
2F035JA02
2G064AB01
2G064AB11
2G064BA12
2G064BA14
2G064CC54
2G064CC61
(57)【要約】
振動計(5)のゼロ検証のためのゼロ検証基準を決定するためのメータ電子機器(20)が提供される。このメータ電子機器(20)は、流体を含むセンサアセンブリ(10)に通信可能に接続されたインターフェース(401)と、前記インターフェース(401)に通信可能に接続された処理システム(402)とを備える。前記処理システム(402)は、流体の特性を決定し、前記流体の特性に基づいて前記センサアセンブリ(10)のゼロ検証基準値を決定するように構成されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動計(5)のゼロ検証のためのゼロ検証基準を決定するためのメータ電子機器(20)であって、
流体を含むセンサアセンブリ(10)に通信可能に接続されたインターフェース(401)と、
前記インターフェース(401)に通信可能に接続された処理システム(402)であって、流体の特性を決定し、前記流体の特性に基づいて前記センサアセンブリ(10)のゼロ検証基準値を決定するように構成されている処理システム(402)と、
を備える、メータ電子機器。
【請求項2】
前記流体の特性を決定するように構成された前記処理システム(402)が、前記流体が流れない状態で前記センサアセンブリ内に収容されている間に前記流体の特性を測定するように構成された前記処理システム(402)を含む、請求項1に記載のメータ電子機器(20)。
【請求項3】
前記流体の特性が、流体の密度および相のうちの一つである、請求項1に記載のメータ電子機器(20)。
【請求項4】
前記ゼロ検証基準値を決定するように構成された前記処理システム(402)が、第2のゼロ検証基準値に係数を乗算することによって第1のゼロ検証基準値を決定するように構成された前記処理システム(402)を備える、請求項1に記載のメータ電子機器(20)。
【請求項5】
前記係数が、前記流体の第1の期待流量に関連する第1の許容範囲と、前記流体の第2の期待流量に関連する第2の許容範囲とに基づいて決定される比である、請求項4に記載のメータ電子機器(20)。
【請求項6】
前記ゼロ検証基準値が、基準ゼロ流量値のバイアス指標信頼性閾値及びゼロ安定性値のうちの少なくとも一つである、請求項1に記載のメータ電子機器(20)。
【請求項7】
振動計のゼロ検証のためのゼロ検証基準を決定する方法であって、
センサアセンブリ内に流体を収容するステップと、
前記流体の特性を決定するステップと、
前記流体の特性に基づいて、前記センサアセンブリのゼロ検証基準値を決定するステップと
を含む、方法。
【請求項8】
前記流体の特性が、前記流体が流れない状態で前記センサアセンブリ内に収容されている間に測定された特性である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記流体の特性が、流体の密度および相のうちの一つである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ゼロ検証基準値が、第2のゼロ検証基準値に係数を乗算することによって設定された第1のゼロ検証基準値である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記係数が、前記流体の第1の期待流量に関連する第1の許容範囲と、前記流体の第2の期待流量に関連する第2の許容範囲とに基づいて決定される比である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ゼロ検証基準値が、基準ゼロ流量値のバイアス指標信頼性閾値及びゼロ安定性値のうちの少なくとも一つである、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
ゼロ検証を行うためのゼロ検証基準を決定することが可能な振動計(5)であって、
流体を含むセンサアセンブリ(10)と、
前記センサアセンブリ(10)に通信可能に接続されたメータ電子機器(20)であって、請求項1から6のいずれか一項に記載の前記メータ電子機器(20)と、
を備える振動計(5)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下に説明する実施形態は、振動計の動作を検証することに関し、より詳細には、振動計のゼロ検証のためのゼロ検証基準を決定することに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、コリオリ質量流量計、液体密度計、気体密度計、液体粘度計、気体/液体比重計、気体/液体相対密度計、および気体分子量計などの振動計は、一般に知られており、流体の特性を測定するために使用される。一般に、振動計は、センサアセンブリとメータ電子機器とを備える。センサアセンブリ内の材料は、流動している場合もあり、静止している場合もある。振動計は、センサアセンブリ内の材料の質量流量、密度、またはその他の特性を測定するために使用することができる。
【0003】
材料のこのような流体特性を測定するために、振動計は、基準ゼロ流量値を使用する必要がある場合がある。基準ゼロ流量値は、測定された特性のゼロ流量値と等価であってもよい。実際の非ゼロ特性は、基準ゼロ流量値からのスケーリングされたまたはスケーリングされていない差として定量化できる。理解できるように、実際の非ゼロ特性の正確な測定は、正確な基準ゼロ流量値に依存する可能性がある。正確な基準ゼロ流量値は、ゼロ較正で決定できる。基準ゼロ流量値の精度は、ゼロ検証で検証されうる。ゼロ較正およびゼロ検証は、任意の測定値が、ゼロ流量値(例えば、ゼロ流量)を有する特性を反映すると正しく仮定できるように、振動計を流体的に隔離することによって実行することができる。
【0004】
図1は、振動計5のゼロ検証及びゼロ校正を行うことができるシステム1を示す。
図1に示されるように、システム1は、メータ入口ブロック弁2aとメータ出口ブロック弁2bとを備えている。メータ入口出口ブロック弁2a、2bは、流体の流れを遮断するように構成されている。したがって、振動計5を通る流体の流量は、ゼロになりうる。また、バイパス入口管3aと、バイパスブロック弁3bと、バイパス出口管3cとを備える流体バイパスループ3も示されている。バイパス入口管3a、バイパスブロック弁3b、及びバイパス出口管3cは、バイパスブロック弁3bが開いている場合に流体が振動計5をバイパスできるように構成されている。振動計5から上流にはブローダウン弁ポート4a及びサーモウェルポート4bが存在している。
【0005】
ゼロ検証およびゼロ校正の間、メータ入口及び出口ブロック弁2a、2bは閉じられ、これにより振動計5を通る流体の流れが遮断される。これは、振動計5のゼロ流量状態と呼ばれることがある。ゼロ検証及びゼロ較正の間、振動計5は、流体のゼロ流量に関連する値となりうる、一つまたは複数のゼロ流量値を測定することができる。コリオリ計では、ゼロ流量値は、振動計5がゼロ流量状態にあるときのセンサ信号間の時間遅延または位相差である場合がある。
【0006】
振動計5は、振動計5を通る流体の流量を計算するために基準ゼロ流量値を用いることができる。ゼロ校正中に、振動計5は、基準値を計算するために使用できる一つまたは複数のゼロ流量値を決定することができる。ゼロ検証中に、振動計5は、一つまたは複数のゼロ流量値を基準と比較して、基準ゼロ流量値を使用して流体の流量を計算できるかどうかを判断することができる。基準ゼロ流量値が許容できない場合は、ゼロ校正を実行することができる。
【0007】
予め決定された基準ゼロ流量値を一つまたは複数のゼロ流量値と比較して、基準ゼロ流量値が流体の流量を計算するために使用できるかどうかを決定することができる。このような比較では、ゼロ較正が実行されるべきかを決定するために、ゼロ検証基準を採用することができる。しかしながら、ゼロ検証基準は、特定のプロセスには適さない場合がある。加えて、様々なプロセスが一つの場所で使用される可能性があり、流量測定において様々な程度の精度が必要となる場合がある。従って、振動計のゼロ検証のためのゼロ検証基準を決定する必要性がある。
【発明の概要】
【0008】
振動計のゼロ検証のためのゼロ検証基準を決定するためのメータ電子機器が、提供される。一実施形態によれば、メータ電子機器は、流体を含むセンサアセンブリに通信可能に接続されたインターフェースと、前記インターフェースに通信可能に接続された処理システムとを備える。処理システムは、流体の特性を決定し、流体の特性に基づいてセンサアセンブリのゼロ検証基準値を決定するように構成される。
【0009】
振動計のゼロ検証のためのゼロ検証基準を決定する方法が提供される。一実施形態によれば、本方法は、センサアセンブリ内に流体を収容するステップと、流体の特性を決定するステップと、流体の特性に基づいてセンサアセンブリに対するゼロ検証基準値を決定するステップとを含む。
【0010】
ゼロ検証を行うためのゼロ検証基準を決定することが可能な振動計が提供される。一実施形態によれば、振動計は、流体を含むセンサアセンブリと、センサアセンブリに通信可能に接続された計測器電子とを備える。
【0011】
[態様]
一態様によれば、振動計のゼロ検証のためのゼロ検証基準を決定するためのメータ電子機器であって、前記メータ電子機器は、流体を含むセンサアセンブリに通信可能に接続されたインターフェースと、前記インターフェースに通信可能に接続された処理システムとを備える。処理システムは、流体の特性を決定し、流体の特性に基づいてセンサアセンブリのゼロ検証基準値を決定するように構成される。
【0012】
好ましくは、前記流体の特性を決定するように構成された前記処理システムは、前記流体が流れない状態で前記センサアセンブリ内に収容されている間に、前記流体の特性を測定するように構成された前記処理システムを含む。
【0013】
好ましくは、流体の特性は、流体の密度及び相のうちの一つである。
【0014】
好ましくは、ゼロ検証基準値を決定するように構成された処理システムは、第2のゼロ検証基準値に係数を乗算することによって第1のゼロ検証基準値を決定するように構成された処理システムを備える。
【0015】
好ましくは、前記係数は、流体の第1の期待流量に関連する第1の許容範囲と、流体の第2の期待流量に関連する第2の許容範囲とに基づいて決定される比である。
【0016】
好ましくは、ゼロ検証基準値は、基準ゼロ流量値のバイアス指標信頼性閾値及びゼロ安定性値のうちの少なくとも一つである。
【0017】
一態様によれば、振動計のゼロ検証のためのゼロ検証基準を決定する方法は、センサアセンブリ内に流体を収容するステップと、流体の特性を決定するステップと、流体の特性に基づいてセンサアセンブリのゼロ検証基準値を決定するステップとを含む。
【0018】
好ましくは、前記流体の特性は、前記流体が流れない状態で前記センサアセンブリ内に収容されている間に測定された特性である。
【0019】
好ましくは、前記流体の特性は、流体の密度及び相のうちの一つである。
【0020】
好ましくは、前記ゼロ検証基準値は、第2のゼロ検証基準値に係数を乗算することによって決定された第1のゼロ検証基準値である。
【0021】
好ましくは、前記係数は、流体の第1の期待流量に関連する第1の許容範囲と、流体の第2の期待流量に関連する第2の許容範囲とに基づいて決定される比である。
【0022】
好ましくは、ゼロ検証基準値は、基準ゼロ流量値のバイアス指標信頼性閾値及びゼロ安定性値のうちの少なくとも一つである。
【0023】
一態様によれば、ゼロ検証を行うためのゼロ検証基準を決定することが可能な振動計であって、前記振動計は、流体を含むセンサアセンブリと、前記センサアセンブリに通信可能に接続されたメータ電子機器とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0024】
すべての図面において、同じ参照番号は同じ要素を表す。図面は必ずしも縮尺通りではないことを理解されたい。
【
図1】
図1は、振動計5のゼロ検証とゼロ校正の実行が可能なシステム1を示す。
【
図2】
図2は、振動計5のゼロ検証のためのゼロ検証基準を決定するように構成された振動計5を示す。
【
図3】
図3は、振動計5のゼロ検証のためのゼロ検証基準を決定するように構成されたメータ電子機器20のブロック図を含む、振動計5のブロック図を示す。
【
図4】
図4は、振動計5のゼロ検証のためのゼロ検証基準を決定するためのメータ電子機器20を示す。
【
図5】
図5は、流量測定値に関する許容範囲についてのAGA11標準を示すグラフ500を示す。
【
図6】
図6は、振動計5のゼロ検証を示すゼロ検証グラフ600を示す。
【
図7】
図7は、振動計のゼロ検証のためのゼロ検証基準を決定する方法700を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1-
図7及び以下の説明は、振動計のゼロ検証のためのゼロ検証基準を決定する実施形態の最良の形態をどのように作製し、使用するかを当業者に教示するための具体例を示す。本発明の原理を教示する目的で、いくつかの従来の態様が単純化又は省略されている。当業者は、本明細書の範囲内に入るこれらの実施形態からの変形を理解するであろう。当業者であれば、以下に説明する特徴を様々な方法で組み合わせて、振動計のゼロ検証のためのゼロ検証基準を決定する複数の変形例を形成することができることを理解するであろう。その結果、以下に説明する実施形態は、以下に説明する具体例に限定されるものではなく、特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定される。
【0026】
図2は、振動計5のゼロ検証のためのゼロ検証基準を決定するように構成された振動計5を示す。
図2に示すように、振動計5は、センサアセンブリ10及びメータ電子機器20を備える。センサアセンブリ10は、プロセス材料の質量流量及び密度に応答する。メータ電子機器20は、リード線100を介してセンサアセンブリ10に接続され、ポート26を通して密度、質量流量、及び温度情報、ならびに他の情報を提供する。
【0027】
センサアセンブリ10は、一対のマニホールド150及び150’、フランジネック110及び110’を有するフランジ103及び103’、一対の平行な導管130及び130’、ドライバ180、測温抵抗体(RTD)190、並びに一対のピックオフセンサ170l及び170rを含む。導管130及び130’は、2つの本質的に直線の入口脚部131、131’及び出口脚部134、134’を有し、これらは導管取り付けブロック120及び120’で互いに向かって収束する。導管130、130’は、それらの長さに沿った2つの対称位置で屈曲し、その長さ全体にわたって本質的に平行である。ブレースバー140及び140’は、各導管130、130’がその周りで振動する軸W及びW’を規定する働きをする。導管130、130’の脚部131、131’及び134、134’は、導管取り付けブロック120及び120’に固定して取り付けられ、これらのブロックは、次に、マニホールド150及び150’に固定して取り付けられる。これは、センサアセンブリ10を通る連続した閉じた材料経路を提供する。
【0028】
孔102及び102’を有するフランジ103及び103’が、入口端104及び出口端104’を介して、測定されるプロセス材料を運ぶプロセスライン(図示せず)に接続されると、材料は、フランジ103内のオリフィス101を通ってメータの入口端104に入り、マニホールド150を通って面121を有する導管取り付けブロック120に導かれる。マニホールド150内では、材料は分割され、導管130、130’を通って送られる。プロセス材料は、導管130、130’から出ると、面121’及びマニホールド150’を有するブロック120’内で単一の流れに再結合され、その後、孔102’を有するフランジ103’によってプロセスライン(図示せず)に接続された出口端104’に送られる。
【0029】
導管130、130’は、曲げ軸W-W及びW’-W’についてそれぞれ実質的に同じ質量分布、慣性モーメント及びヤング率を有するように選択され、導管取り付けブロック120、120’に適切に取り付けられる。これらの曲げ軸はブレースバー140、140’を通る。導管のヤング率は温度とともに変化し、この変化は流量及び密度の計算に影響を及ぼすため、RTD190が導管130’に取り付けられ、導管130’の温度を連続的に測定する。導管130’の温度、したがってRTD190の両端にそこを流れる所定の電流に対して現れる電圧は、導管130’を通過する材料の温度によって決まる。RTD190の両端に現れる温度依存性電圧は、導管温度の変化による導管130、130’の弾性係数の変化を補償するために、メータ電子機器20によって周知の方法で使用される。RTD190は、リード195によってメータ電子機器20に接続される。
【0030】
導管130、130’の両方は、ドライバ180によって、それぞれの曲げ軸W及びW’の周りで反対方向に、かついわゆる振動計の第1の位相外れモードで駆動される。このドライバ180は、導管130’に取り付けられた磁石、及び導管130に取り付けられ両方の導管130、130’を振動させるための交流電流が流れる対向コイルなどの、多くの周知の構成のいずれか一つを備えることができる。適切な駆動信号185が、メータ電子機器20によってリードを介してドライバ180に印加される。
【0031】
メータ電子機器20は、リード線195上のRTD温度信号と、左右のセンサ信号165l、165rをそれぞれ搬送するリード線100上に現れるセンサ信号165とを受信する。メータ電子機器20は、ドライバ180へのリード線に現れる駆動信号185を生成し、導管130、130’を振動させる。メータ電子機器20は、左右のセンサ信号165l、165r、及びRTD信号195を処理して、センサアセンブリ10を通過する材料の質量流量及び密度を計算する。この情報は、他の情報と共に、信号として経路26を通してメータ電子機器20によって適用される。メータ電子回路20のより詳細な議論は以下の通りである。
【0032】
図3は、振動計5のゼロ検証のためのゼロ検証基準を決定するように構成されたメータ電子機器20のブロック図を含む、振動計5のブロック図を示す。
図3に示されるように、メータ電子機器20は、センサアセンブリ10に通信可能に接続される。
図2を参照して前述したように、センサアセンブリ10は、左右のピックオフセンサ170l、170r、ドライバ180、及び温度センサ190を含み、これらは、通信チャネル112を通してリード100のセットを介してメータ電子器機20に通信可能に接続される。
【0033】
メータ電子機器20は、リード線100を介して駆動信号185を供給する。より具体的には、メータ電子機器20は、センサアセンブリ10内のドライバ180に駆動信号185を供給する。さらに、左センサ信号165lと右センサ信号165rとを含むセンサ信号165は、センサアセンブリ10によって供給される。より具体的には、図示の実施形態では、センサ信号165は、センサアセンブリ10内の左右のピックオフセンサ170l、170rによって供給される。理解できるように、センサ信号165はそれぞれ、通信チャネル112を通してメータ電子機器20に供給される。
【0034】
メータ電子機器20は、一つまたは複数の信号プロセッサ220及び一つまたは複数のメモリ230に通信可能に接続された、プロセッサ210を含む。プロセッサ210はまた、ユーザインターフェース30に通信可能に接続されている。プロセッサ210は、ポート26を介し通信ポートを通してホストと通信可能に接続され、電力ポート250を通して電力を受け取る。プロセッサ210はマイクロプロセッサであってもよく、任意の適切なプロセッサが使用されてもよい。例えば、プロセッサ210は、マルチコアプロセッサ、シリアル通信ポート、周辺インターフェース(例えば、シリアル周辺インターフェース)、オンチップメモリ、I/Oポートなどのサブプロセッサで構成することができる。これら及び他の実施形態では、プロセッサ210は、デジタル化された信号など、受信及び処理された信号に対して動作を実行するように構成される。
【0035】
プロセッサ210は、一つまたは複数の信号プロセッサ220からデジタル化センサ信号を受信することができる。プロセッサ210はまた、位相差、センサアセンブリ10内の流体の特性などの情報を提供するように構成される。プロセッサ210は、通信ポートを通してホストに情報を提供することができる。また、プロセッサ210は、一つ以上のメモリ230と通信して、一つ以上のメモリ230に情報を受信及び/または格納するように構成することができる。例えば、プロセッサ210は、一つ又は複数のメモリ230から、較正係数及び/又はセンサアセンブリゼロ(例えば、ゼロ流量の場合での位相差)を受け取ることができる。較正係数及び/またはセンサアセンブリゼロの各々は、それぞれ振動計5及び/またはセンサアセンブリ10に関連付けることができる。プロセッサ210は、一つ又は複数の信号プロセッサ220から受信したデジタル化センサ信号を処理するために、較正係数を使用することができる。
【0036】
一つまたは複数の信号プロセッサ220は、エンコーダ/デコーダ(CODEC)222及びアナログ-デジタル変換器(ADC)226から構成されるとして示されている。一つまたは複数の信号プロセッサ220は、アナログ信号を調整し、調整されたアナログ信号をデジタル化し、及び/またはデジタル化された信号を提供することができる。CODEC222は、左右のピックオフセンサ170l、170rからセンサ信号165を受信するように構成される。CODEC222はまた、駆動信号185をドライバ180に提供するように構成される。代替の実施形態では、より多くの又はより少ない信号プロセッサが使用されてもよい。
【0037】
図示されるように、センサ信号165は、信号コンディショナー240を介してCODEC222に供給される。信号コンディショナー240は単一のブロックとして示されているが、信号コンディショナー240が、二つ以上のオペアンプ、ローパスフィルタなどのフィルタ、電圧電流増幅器などの信号調整コンポーネントから構成されてもよい。例えば、センサ信号165を第1増幅器によって増幅することができ、駆動信号185を電圧電流増幅器によって増幅することができる。増幅により、センサ信号165の大きさがCODEC222のフルスケール範囲に近いことを保証することができる。
【0038】
図示の実施形態では、一つ又は複数のメモリ230は、読み出し専用メモリ(ROM)232、ランダムアクセスメモリ(RAM)234、強誘電体ランダムアクセスメモリ(FRAM(登録商標))236からなる。しかしながら、代替の実施形態では、一つまたは複数のメモリ230は、より多いまたはより少ないメモリから構成されてもよい。加えて、または代替として、一つまたは複数のメモリ230は、異なるタイプのメモリ(たとえば、揮発性、不揮発性など)から構成されてもよい。例えば、例えば、消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)等の別のタイプの不揮発性メモリを、FRAM(登録商標)236の代わりに使用することができる。一つまたは複数のメモリ230は、駆動信号またはセンサ信号、質量流量または密度測定値などのプロセスデータを記憶するように構成された記憶装置となりうる。
【0039】
質量流量測定値は、次の方程式に従って生成することができる。
【数1】
ここで、
【数2】
は測定質量流量であり、
FCFは流量校正係数であり、
Δtは、測定時間遅延であり、
Δt
0は、ゼロ流量時間遅延である。
【0040】
測定時間遅延Δtは、振動計5を通る質量流量に関連するコリオリ効果による時間遅延など、ピックオフセンサ信号間に存在する時間遅延を含む操作的に導出された(すなわち、測定された)時間遅延値で構成される。測定時間遅延Δtは、振動計5を流れるときの流動物質の質量流量の直接的な計測値である。ゼロ流量時間遅延Δt0は、ゼロ流量での時間遅延で構成される。ゼロ流量時間遅延Δt0は、出荷時に決定されて振動計5にプログラムされるゼロ流量値である。ゼロ流量時間遅延Δt0は、ゼロ流量値の一例である。ゼロ流量条件で決定される位相差、時間差等の他のゼロ流量値を使用することもできる。流量条件が変化しても、ゼロ流量時間遅延Δt0が変化しない場合がある。振動計5を流れる物質の質量流量値は、測定時間遅延Δtと基準ゼロ流量値Δt0との差分に流量校正係数FCFを乗じて求められる。流量校正係数FCFは、振動計の物理的剛性に比例する。
【0041】
密度に関しては、各導管130、130’が振動する共振周波数は、材料を有する導管130、130’の総質量で割った導管130、130’のバネ定数の平方根の関数であり得る。材料を有する導管130、130’の総質量は、導管130、130’の質量に導管130、130’内の材料の質量を加えたものとすることができる。導管130、130’内の材料の質量は、材料の密度に正比例する。したがって、材料の密度は、材料を含む導管130、130’が振動する周期の二乗に、導管130、130’のばね定数を乗じたものに比例する。したがって、導管130、130’が振動する周期を決定し、その結果を適切にスケーリングすることによって、導管130、130’に収容される材料の密度の正確な測定値を得ることができる。メータ電子機器20は、センサ信号165及び/または駆動信号185を使用して、周期または共振周波数を決定することができる。導管130、130’は、複数の振動モードで振動することができる。
【0042】
[校正]
振動計5は、振動計5が無流量状態またはゼロ流量状態にある間、工場出荷時のゼロ流量値で較正することができる。ユーザは、随時、追加でオプションとして、押しボタンゼロ流量値を得るために押しボタン較正を実行することができる。これに加えて又はこれに代えて、振動計は、自動ゼロ流量値を得るために自動的に較正を実行することができる。流体の流量を測定するために使用されるゼロ流量値は、工場ゼロ流量値、押しボタンゼロ流量値、自動ゼロ流量値、または任意の他の適切なゼロ流量値であってもよい。
【0043】
測定値、保存された値/定数、ユーザ設定、保存されたテーブルなどは、振動計5のゼロ較正中に使用することができる。較正では、振動計5の流量計条件をモニターし、それらの条件を補償することができる。この条件は、ユーザ入力条件、測定条件、推定条件などを含むことができるが、これらに限定されない。条件には、温度、流体密度、流量、計器の仕様、粘度、レイノルズ数、校正後の補正などを含むことができる。加えて、例えば限定されないが、流量較正係数(FCF)などの異なる定数が、動作条件またはユーザの好みに基づいて適用されてもよい。
【0044】
初期ゼロ流量値は、振動計5の初期工場設定の一部として実施される較正において、決定することができる。これは、振動計5を無流量又はゼロ流量状態に置いて、左右のセンサ信号165l、165r間の時間遅延、位相差等を決定することを必要とする場合がある。決定された値は、初期ゼロ流量値として一つ以上のメモリ230に記憶され、基準ゼロ流量値として使用される。例えば、上に論じた式[1]に対して、基準ゼロ流量値はΔt
0項とすることができ、これは左右のセンサ信号165l、165r間の、無流量またはゼロ流量時間遅延とすることができる。基準ゼロ流量値が決定されると、流量較正係数(FCF)を確立することができ、これは、上式[1]から分かるように、測定された時間遅延Δt
measuredと質量流量
【数3】
との間の関係を指示する直線の勾配となりうる。FCFは、一つまたは複数のメモリ230に記憶することができる。
【0045】
[ゼロ検証]
ゼロ検証は、新しいゼロ流量値を基準ゼロ流量値と比較することを含みうる。任意の適切な基準ゼロ流量値が使用され得るが、例えば、新しいゼロ流量値は、工場で決定されたゼロ流量値(例えば、工場ゼロ流量値)と比較することができる。新しいゼロ流量値は、例えば、
図1を参照して上述したように、振動計5がプロセスラインに設置されているが流体的に隔離されている間に行われた複数のゼロ流量値の測定値を平均化することによって決定することができる。
【0046】
新しいゼロ流量値を基準ゼロ流量値と比較することは、複数のゼロ流量値測定値を基準ゼロ流量値と比較することを含んでいてもよい。複数のゼロ流量値測定値が基準ゼロ流量値の許容範囲(例えば、「所定の境界」、「ゼロ安定性値」等)内にない場合、基準ゼロ流量値はもはや有効ではなく、新しいゼロ流量値が基準ゼロ流量値として記憶されうる。新しいゼロ流量値が基準ゼロ流量値の許容範囲内にある場合、基準ゼロ流量値は有効である可能性があり、新しいゼロ流量値が基準ゼロ流量値として記憶されてもよく、または記憶されなくてもよい。
【0047】
しかしながら、基準ゼロ流量値の許容範囲は、工場条件での振動計5の較正に基づいている場合があり、これは、全てのプロセスに適したものではない場合がある。また、設置後、振動計5は、工場条件とは異なるより特殊な取り付け、動作、及び/またはプロセス条件の影響を受ける可能性がある。例えば、取り付け条件は、導管130、130’の実際のゼロ流量時間遅延に比較的小さなシフト(例えば、基準ゼロ流量値の許容範囲内)を生じさせる可能性がある。さらに、振動計5が使用されるプロセスは、基準ゼロ値のより厳格な許容範囲を必要とする、質量流量測定許容範囲を有する場合がある。
【0048】
したがって、ゼロ流量値の測定値が基準ゼロ流量値の許容範囲内にある場合でも、基準ゼロ流量値はプロセスに対して無効となる可能性がある。例えば、基準ゼロ流量値のバイアス指標が、基準ゼロ流量値が流量測定値を流量測定の許容範囲外にさせる測定バイアスを生じさせることを示す場合、基準ゼロ流量値は無効である可能性がる。基準ゼロ流量値のバイアス指標のこの判断及び評価は、複数のゼロ流量値測定値が基準ゼロ流量値の許容範囲内にあるかどうかを判断することに加えて又はこれに代えて、実行されてもよい。
【0049】
基準ゼロ流量値のバイアス指標は、基準ゼロ流量値が測定バイアスを引き起こすことを証明できる任意の指標でありうる。例えば、バイアス指標は、ゼロ流量値の測定値に関連する中心傾向値と分散値とから構成されてもよい。中心傾向値は、ゼロ流量値測定値の平均であってもよく、分散値は、新しいゼロ流量値測定値の標準偏差であってもよい。別の例では、バイアス指標は、新しいゼロ流量値測定値と基準ゼロ流量値との間の差の、新しいゼロ流量値測定値の総数に対する正または負の値の比(たとえば、符号比)であってもよい。しかし、基準ゼロ流量値が測定バイアスを引き起こすことを確実に示すことができる、任意の適切なバイアス指標を使用することができる。
【0050】
ゼロ検証は、例えば、特定のプロセス、流体の種類などに応じて、上記及び他のゼロ検証基準を含むことができる。例えば、上述したように、振動計5は液体または気体を測定することができる。液体についてのゼロ検証基準は、気体についてのゼロ検証基準とは異なる可能性がある。ゼロ検証基準は、例えば、基準ゼロ流量値の許容範囲、閾値などが異なる可能性がある。従って、メータ電子器機20は、ゼロ検証基準を選択するように構成することができる。
【0051】
図4は、振動計5のゼロ検証のためのゼロ検証基準を決定するためのメータ電子機器20を示している。
図4に示すように、メータ電子機器20は、インターフェース401と処理システム402とを含む。メータ電子機器20は、例えばセンサアセンブリ10のようなセンサアセンブリから振動応答を受信する。メータ電子機器20は、センサアセンブリ10を通って流れる流動材料の流動特性を得るために、振動応答を処理する。メータ電子機器20はまた、流動材料の流動特性が正確に測定されることを保証するために、チェック、検証、較正ルーチンなどを実行することができる。
【0052】
インターフェース401は、
図2及び
図3に示されたピックオフセンサ170l、170rのうちの一つから、センサ信号165を受信することができる。インターフェース401は、フォーマット、増幅、バッファリングなどの任意の方法など、あらゆる必要または所望の信号調整を実行することができる。あるいは、信号調整の一部又は全部が、処理システム402で実行されてもよい。加えて、インターフェース401は、メータ電子機器20と外部デバイスとの間の通信を可能にすることができる。インターフェース401では、電子通信、光学通信、または無線通信の任意の方式が可能である。インターフェース401は、振動応答に基づいて情報を提供することができる。インターフェース401は、
図3に示すCODEC222のようなデジタイザと結合することができ、センサ信号はアナログセンサ信号を含む。デジタイザは、アナログセンサ信号をサンプリングしてデジタル化し、デジタル化されたセンサ信号を生成する。
【0053】
処理システム402は、メータ電子機器20の動作を実行し、センサアセンブリ10からの流量測定値を処理する。処理システム402は、一つまたは複数の処理ルーチンを実行し、それによって流量測定値を処理して一つまたは複数の流量特性を生成する。処理システム402は、インターフェース401に通信可能に接続され、インターフェース401から情報を受信するように構成される。
【0054】
処理システム402は、汎用コンピュータ、マイクロ処理システム、論理回路、または他の何らかの汎用もしくはカスタマイズされた処理デバイスを備えることができる。加えてまたは代替として、処理システム402は、複数の処理デバイス間で分散されていてもよい。処理システム402はまた、記憶システム404など、あらゆる形式の統合型のまたは独立型の電子記憶媒体を含むこともできる。
【0055】
記憶システム404は、振動計パラメータ及びデータ、ソフトウェアルーチン、定数値、及び可変値を記憶することができる。一実施形態では、記憶システム404は、振動計5の操作ルーチン410、ゼロ較正ルーチン420、及びゼロ検証ルーチン430など、処理システム402によって実行されるルーチンを含む。記憶システムはまた、平均、標準偏差、信頼区間などの統計値を記憶することができる。
【0056】
操作ルーチン410は、インターフェース401によって受信されたセンサ信号に基づいて、質量流量値412及び密度値414を決定することができる。質量流量値412は、周波数に依存しない質量流量値、直接測定された質量流量値などであってもよい。例えば上述のように、質量流量は、周波数または密度などの周波数依存値を含まない方程式を使用して、決定されてもよい。質量流量値412は、左ピックオフセンサ信号と右ピックオフセンサ信号との間の時間遅延等のセンサ信号から決定することができる。密度値414はまた、例えば、左右のピックオフセンサ信号の一方又は両方から周波数を決定することによって、センサ信号から決定することができる。
【0057】
ゼロ較正ルーチン420は、上述のゼロ検証を実行し、初期または工場ゼロを基準ゼロ流量値422として記憶することができる。上述のように、基準ゼロ流量値422は、質量流量値412を計算するために使用することができる。ゼロ較正ルーチン420はまた、ゼロ安定性値を基準ゼロ安定性値424として決定し、記憶することができる。これに加えて又はこれに代えて、基準ゼロ流量値422及び基準ゼロ安定性値424は、振動計5の初期較正を実施する工場の較正プラットフォームのような外部装置に記憶され実行される較正ルーチンによって、決定されてもよい。
【0058】
ゼロ検証ルーチン430は、例えば、基準ゼロ安定性値424を使用することによって、基準ゼロ流量値422が許容可能であることを検証することができる。例えば、ゼロ検証ルーチン430は、振動計5の無流量又はゼロ流量条件下でのゼロ流量値を測定し、測定されたゼロ流量値をゼロ流量値測定値432として記憶することができる。ゼロ検証ルーチン430は、ゼロ流量値測定値432が基準ゼロ安定性値424内にあるかどうかを判定することができる。
【0059】
これに加えてまたは代替として、ゼロ検証ルーチン430は、基準ゼロ流量値422のバイアス指標値434を決定することができる。バイアス指標値434は、基準ゼロ流量値422が質量流量値412に測定バイアスを生じさる可能性があることを示すことができる。上述のように、基準ゼロ流量値422のバイアス指標値434は、ゼロ流量値測定値432に関連する中心傾向値と分散値とから構成することができる。例えば、中心傾向値は、ゼロ流量値測定値432と基準ゼロ流量値422との間の複数の差分値の平均であってもよく、分散値は、その平均に関する複数の差分値の標準偏差であってもよい。
【0060】
ゼロ検証ルーチン430は、ゼロ検証基準を選択することもできる。例えば、ゼロ検証ルーチン430は、センサアセンブリ10によって含まれる流体の特性に基づいて、ゼロ検証基準を選択することができる。ゼロ検証基準は、基準ゼロ安定性値424及び/または他の値から構成することができる。例えば、
図4に示すように、第1のゼロ検証基準440は、第1のバイアス指標信頼性閾値442を含んでもよい。従って、ゼロ検証ルーチン430は、ゼロ流量値測定値432が基準ゼロ安定性値424内にあるか否かを判定し、バイアス指標値434が第1のバイアス指標信頼性閾値442内にあるか否かを判定することができる。第1のバイアス指標信頼性閾値442は、例えば、75%の符号比、ゼロ、又は上述のように帰無仮説が使用される場合にはゼロ付近の不感帯などとすることができる。
【0061】
ゼロ検証ルーチン430はまた、例えば、第2のゼロ安定性値452及び第2のバイアス指標信頼性閾値454からなる第2のゼロ検証基準450を選択することもできる。第2のゼロ安定性値452は、基準ゼロ安定性値424と同じでなくてもよい。例えば、第2のゼロ安定性値452は、基準ゼロ安定性値424未満であってもよい。従って、第2ゼロ安定性値452は、振動計5が基準ゼロ安定性値424よりも小さいゼロ安定性値を必要とするプロセスで使用される場合に、使用することができる。
【0062】
例えば、液体の非管理移送の場合、ゼロ検証ルーチン430は、ゼロ流量値測定値432が基準ゼロ安定性値424内にあるかどうかを判定することができる。液体の管理移送のために、ゼロ検証ルーチン430は、ゼロ流量値測定値432が基準ゼロ安定性値424内にあり、バイアス指標値434が第1のバイアス指標信頼性閾値442内にあるか否かを判断することができる。気体の管理移送のために、ゼロ検証ルーチン430は、ゼロ流量値測定値432が第2のゼロ安定性値452内にあり、バイアス指標値434が第1のバイアス指標信頼性閾値442内にあるか否かを判断することができる。これらは単なる例であり、基準ゼロ流量値の許容範囲または許容範囲の任意の適切な組み合わせを、流体の任意の適切な特性に対して使用することができる。
【0063】
第1及び/または第2のバイアス指標信頼性閾値442、454は、ユーザ設定可能であってもよい。例えば、ユーザは、特定のアプリケーションのための所望のゼロ検証基準を達成するために、不感帯をゼロ付近に設定することができる。したがって、以下でより詳細に説明される、バイアス指標値434の分散値として記憶される信頼区間値は、製造業者によって構成することができ、ユーザは、分散値又はより具体的には、この例では、信頼区間と比較される、第1及び/または第2のバイアス指標信頼性閾値442、454を構成することができる。例として、製造業者は、一つのアプリケーションについてゼロ(すなわち、不感帯なし)と比較することができる2シグマ信頼区間値を設定することができ、一方、より厳しいアプリケーションについては、ユーザは、2シグマ信頼区間値と比較したときに、ゼロと比較した3シグマ信頼区間値と同等である不感帯値を設定することができる。
【0064】
符号比を参照して、ユーザは、バイアス指標信頼性閾値として符号比値を設定することができる。符号比値は、バイアス指標が十分に信頼できるかどうかを決定するために、信頼区間を不感帯と比較するよりも少ないコンピューティングリソースを必要とする可能性がある。符号比はまた、信頼区間に対応し得る。例えば、75%の符号比値は、約1シグマまたは68%の信頼水準に対応し得る。これらの値及び他の値は、バイアス指標値434と比較される第1及び/または第2のバイアス指標信頼性閾値442、454として、ユーザによって設定及び記憶することができる。
【0065】
処理システム402はまた、第1または第2のゼロ検証基準440、450を決定することもできる。たとえば、処理システム402は、基準ゼロ安定性値424から第2のゼロ安定性値452を計算することができる。特定の一例では、第2のゼロ安定性値452は、基準ゼロ安定性値424に、たとえば0.5を乗じて、基準ゼロ安定性値424を第2のゼロ安定性値452にスケーリングすることによって計算することができる。加えて又は代替的に、第1及び/又は第2のバイアス指標信頼性閾値442、454を、同様に計算することができる。
【0066】
第1または第2のゼロ検証基準440、450をスケーリングするために使用される比は、流体の特性に基づき得る。例えば、この比は、流体の期待流量が低いか高いか、流体が気体か液体か、流体の密度が密度閾値より大きいか小さいかなどに関連する誤差帯域の比であってもよい。一つの具体例では、比は、流体の期待される高流量に関連する誤差帯域を、流体の期待される低流量に関連する誤差帯域で割ることによって、決定されてもよい。この例は、
図5を参照して以下に説明される。
【0067】
図5は、流量測定値に関する許容範囲についてのAGA11規格を示すグラフ500を示す。
図5に示されるように、グラフ500は、測定流量軸510と、パーセント誤差軸520とを含む。測定流量軸510は、キログラム毎分(kg/分)などの任意の適切な単位であってもよい。測定流量軸510は、ゼロから最大流量Qmaxまでの範囲である。パーセント誤差軸520は、-1.60から1.60の範囲であるが、任意の適切な範囲及び/または単位を使用することができる。
【0068】
グラフ500は、コリオリ計の例示的な誤差-流量の関係を示す誤差プロット530も含む。誤差プロット530は、それぞれの対応する流量について、測定値が範囲内に入ると予想される範囲を示す、関連する再現性バーを有する。理解できるように、誤差プロット530は、流量が増加するにつれて減少し、測定安定性が著しく改善される。また理解できるように、測定流量が減少するにつれて、再現性バー及び誤差が大きくなる。再現性バー及び誤差が大きくなるのは、流量測定値に対する非線形効果の寄与の増加によるものである可能性がある。より小さい増加を伴うもの、または例えば基準ゼロ流量値により誤差が主に線形であるものなど、他の誤差プロットが使用されてもよい。
【0069】
グラフ500は、低流量誤差限界帯域540aと通常流量誤差限界帯域540bとを有する誤差限界帯域540をさらに含む。低流量誤差限界帯域540aと通常流量誤差限界帯域540bとは、ゼロ誤差率軸に関して対称である。低流量誤差限界帯域540aは、最小流量Qminと閾値流量Qtとの間の流量範囲に対応する。通常流量誤差限界帯域540bは、閾値流量Qtと最大流量Qmaxとの間の流量に対するものである。理解できるように、低流量誤限界帯域540aは、通常流量誤限界帯域540bよりも大きな誤差限界値を有する。
【0070】
AGA11規格を満たすために、上述した振動計5などのコリオリ流量計は、誤差限界帯域540内に収まる誤差率を持つことができる。しかしながら、低流量誤差限界帯域540aの誤差限界値は通常流量誤差限界帯域540bよりも大きいため、多くのユーザは、閾値流量Qt未満の流量でコリオリメータを動作させないことを選択する。その結果、このようなコリオリ流量計の動作または有効ターンダウン比は、最小流量Qminではなく閾値流量Qtによって定義される。誤差プロット530は、基準ゼロ流量値に関連する測定バイアスなどの様々な理由により、ゼロでない誤差率を有する場合がある。例えば、上述の式[1]において、ゼロ流量時間遅延Δt
0は、コリオリ流量計にとっての不正確なゼロ流量値である可能性がある。そのため、測定された質量流量
【数4】
は、基準ゼロ流量値によって引き起こされる測定バイアスを含んでいる可能性がある。
【0071】
図5を参照すると、誤差プロット530は、誤差プロット530によって表される誤差率を低減することによって改善することができる。例えば、誤差プロット530は、基準ゼロ流量値422によって生じる測定バイアスを減少させることによって、ゼロ誤差軸に向けてより近くにシフトさせることができる。加えて、FCFを決定する較正などの他のルーチンが、低流量における誤差プロット530に対する非線形の寄与を補償してもよい。したがって、誤差プロット530をシフトし平坦化することによって、誤差プロット530は、最小流量Qminまでの通常流量誤差限界帯域540b内に収まる可能性がある。その結果、閾値流量Qtと最小流量Qminとの間の流量に対して、より狭い誤差限界帯域が使用することができる。
【0072】
基準ゼロ流量値に関連する測定バイアスは、ゼロ校正を実行することによって除去することができる。ゼロ校正は、
図1を参照して、振動計5を分離し、ゼロ流量値校正を実行することによって、現場で実行することができる。より具体的には、振動計5は、振動計5を通る流量がゼロとなるように流体的に分離することができ、したがって、測定されたゼロ流量値は、ゼロ流量を表すと仮定することができる。
【0073】
測定されたゼロ流量値と基準ゼロ流量値との間の差は、不正確な基準ゼロ流量値によって引き起こされる測定バイアスに比例し得る。この測定バイアスを補償するために、新しい測定ゼロ流量値を、メータ電子機器20に記憶されている基準ゼロ流量値に置き換えることができる。しかしながら、理解できるように、測定されたゼロ流量値は、完全に正確ではない可能性がある。以下では、測定されたゼロ流量値が信頼できるゼロ流量値であり、したがってセンサアセンブリ10のゼロ流量値の正確な測定値であると判定する方法について説明する。
【0074】
図6は、振動計5のゼロ検証を表すゼロ検証グラフ600を示す。
図6に示されるように、ゼロ検証グラフ600は、サンプル軸610及びゼロ流量値軸620を含む。サンプル軸610は単位はないが、時間領域にあるものとして示されている。したがって、サンプル軸610の各目盛りは、サンプル時間を表す。ゼロ流量値軸620は、時間単位である時間遅延Δt
0項によって表されるように示されるが、位相差などの任意の適切なゼロ流量値が使用されてもよい。ゼロ流量値軸620の単位は、ナノ秒であってもよいが、位相または角度関連の単位などの任意の適切な単位が使用されてもよい。
【0075】
ゼロ検証グラフ600はまた、基準ゼロ流量値630と、対応するゼロ安定性値640とを示す。ゼロ安定性値640は、基準ゼロ流量値630についての許容範囲帯として示されている。ゼロ安定性値640は、第1のゼロ検証基準となりうる検証基準を表す。換言すれば、測定されたゼロ流量値が全て、ゼロ安定性値640を表す範囲内にある場合、振動計5は、第1のゼロ検証基準に関連する第1のアプリケーションにとって良好であると考えることができる。第1のゼロ検証基準は、非管理移送における液体測定に関連付けられてもよい。
【0076】
ゼロ検証グラフ600はまた、円形ドットによって表されるゼロ流量値測定値650を含む。ゼロ流量値測定値650は、上の
図1を参照して上述したように行われたゼロ流量値測定値を表しうる。理解できるように、ゼロ流量値測定値650は、一貫して基準ゼロ流量値630よりも大きい。したがって、ゼロ流量値測定値650は、基準ゼロ流量値630が、上式[1]に従って行われる流量測定において、測定バイアスを引き起こしている可能性があることを示す。ゼロ流量値測定値650から決定される、以下でより詳細に説明する平均650a及び信頼区間650bも示されている。
【0077】
バイアス指標は、基準ゼロ流量値630とゼロ流量値測定値650との間の差が、基準ゼロ流量値630が不正確であることに起因することを証明することができる。基準ゼロ流量値630のためのバイアス指標は、基準ゼロ流量値630によって引き起こされる流量測定値における測定バイアスを低減または除去することができる、任意の値または新たなゼロ流量値を示す値から構成することができる。以下の説明では、基準ゼロ流量値630のバイアス指標の例を示す。
【0078】
符号比は、値の総数に対する、正または負の値もしくは符号の数の比である。符号比は、カウントされた符号が正である場合には正の符号比と呼ばれ、カウントされた符号が負である場合には負の符号比と呼ばれることがある。
図6に示されるように、複数あるゼロ流量値測定値650と基準ゼロ流量値630との間の差は、全て正の値である。したがって、複数の差の正の符号比は100%である。負の符号比は0%である。どちらかの符号比がバイアス指標信頼性閾値よりも大きい場合、ゼロ流量値測定値650から決定される平均値を新しい基準ゼロ流量値として使用して、基準ゼロ流量値630が不正確であることによって生じる測定バイアスを低減または除去することができる。これに加えて又はこれに代えて、新しい基準ゼロ流量値は、ゼロ較正を行うことによって決定することができる。
【0079】
一例として、符号比に対するバイアス指標信頼性閾値は、75%との所定の値であってもよい。ゼロ流量値測定値650は全て、基準ゼロ流量値630よりも大きい。したがって、上述のように、複数あるゼロ流量値測定値650と基準ゼロ流量値630との間の差の符号比は、正100%である。これは75%よりも大きく、従って、ゼロ流量値測定値650から算出された平均値650aを基準ゼロ流量値として使用して、基準ゼロ流量値630によって引き起こされる測定バイアスを低減または除去することができる。
【0080】
結果の確率を計算する統計的方法を使用して、振動計におけるバイアス指標を計算することができる。例えば、P統計及びT統計を用いて、所与のデータセットについて帰無仮説が満たされるかどうかをテストすることができる。帰無仮説を棄却することは、振動計に条件が存在するかどうかを決定しているのではなく、条件が欠如していることは偽であることである。ゼロ検証の場合、帰無仮説は、「現在のゼロ流量値は基準ゼロ流量値と同じである」と定義できる。この帰無仮説が反証された場合、現在のゼロ流量値は基準ゼロ流量値と同じではなく、したがって、基準ゼロ流量値は、流量測定において測定バイアスの原因になると仮定することができる。
【0081】
例示として、t検定では、以下の式を用いてt値を計算することができる。
【数5】
ここで、
μ
0は何らかの指定値、
【数6】
はサンプル平均、
sはサンプル標準偏差、
nはサンプルサイズである。
ゼロ検証の文脈では、μ
0は、上述の式[1]を参照して説明したゼロ流量時間遅延Δt
0などの基準ゼロ流量値である。ゼロ流量値測定値を用いて、基準ゼロ流量値との対比のためのサンプル平均
【数7】
及びサンプル標準偏差sを算出することができる。ゼロ流量値測定の回数が、サンプルサイズnである。t検定はまた、典型的には自由度を含み、これは、上記の式[2]の場合、n-1として定義される。
【0082】
上述のように、t検定は帰無仮説を検定するために使用することができ、ゼロ検定の場合には、サンプル平均
【数8】
が基準ゼロ流量値に等しいかどうかとして定義することができる。帰無仮説を検定するために、t値の既知の分布を使用してP値を計算することができる。帰無仮説を検定するために、P値を有意水準αと比較する。有意水準αは、典型的には、例えば、0.01、0.05、または0.10などの小さな値に設定される。P値が有意水準α以下であれば、帰無仮説は対立仮説に対して棄却される。帰無仮説は、「現在のゼロ検証結果は、ベースラインゼロ検証結果と同じ平均値を有する」と定義されているため、対立仮説は、現在のゼロ検証が同じ平均を有さず、従って計器に変化が生じているということとなる。
【0083】
しかしながら、P値は、限られたコンピューティングリソースで計算することが困難な場合がある。例えば、P値は、オペレーティングシステム及び統計ソフトウェアを有するコンピュータワークステーション上で計算することができるが、組み込みシステムでは容易に計算することができない場合がある。上述したメータ電子機器20は、限られた計算資源を有する組み込みシステムである場合がある。
【0084】
この目的のために、メータ電子機器20の限られたコンピューティングリソースで利用できる信頼区間を、P値の代わりに使用することができる。結果として、信頼区間は、メータ電子機器20上の組み込みコードを使用して計算することができる。例えば、メータ電子機器20は、二つのレジスタに記憶された現在のゼロ流量値及びゼロ標準偏差値を有することができる。理解されるように、上述のt値は、有意水準α及び自由度を使用することによって、現在のゼロ流量値を使用して計算することができる。一例として、有意水準αは、99%信頼水準である0.01に設定することができる。ゼロ検証試験の数は、10に設定することができる。したがって、自由度は9に決まる。両側スチューデントt値は、スチューデントt値関数を用いて、有意水準αと自由度から次のように算出することができる。
【数9】
【0085】
測定されたゼロ流量値の標準偏差を決定することができる。標準誤差も計算することができ、これは以下のように定義される。
【数10】
信頼区間の範囲は、上記で求めた標準誤差及びt値を用いて、以下のように計算することができる。
【数11】
最後に、信頼区間は、ゼロ流量値平均及び信頼区間範囲を使用して計算することができ、これは以下に示される。
【数12】
【0086】
上記の例では、99%の信頼水準を使用して信頼区間を計算し、これをバイアス指標信頼性閾値と比較することができる。例えば、信頼区間は、信頼区間が0.0を含むかどうかを判断することによって、帰無仮説を検定するために使用することができる。信頼区間が0.0を含む場合、帰無仮説は棄却されず、ゼロ検証は、基準ゼロ流量値が測定バイアスを引き起こさないことを示す。信頼区間が0.0を含まない場合、帰無仮説は棄却され、ゼロ検証故障が送られ、ゼロ流量値測定値の平均650は、新しい基準ゼロ流量値として保存され、新しい較正が実行される等が可能となる。したがって、信頼区間を使用して、所望の信頼水準で帰無仮説を検定することができる。
【0087】
信頼区間に加えて、ゼロ付近にバイアス不感帯を定義することもできる。t検定におけるこのバイアス不感帯はゼロ付近の値であり、小さな変動を伴う小さなバイアスは、さもなければ信頼区間チェックで仮定を棄却させるのであるが、この仮定を棄却しない。したがって、このバイアス不感帯は、基準ゼロ流量値における誤ったバイアス指標の数を減らす値に設定することができる。
【0088】
ゼロと比較される信頼区間の例では、バイアス不感帯はゼロ付近の範囲であり、ゼロが信頼区間内にないがバイアス不感帯の一部が信頼区間内にある場合、帰無仮説は棄却されない。数学的には、この試験は平均ゼロ流量値がバイアス不感帯より小さいかどうかとして表すことができる。あるいは、上記の用語を使用すると、
【数13】
を満たす場合、帰無仮説は棄却されない。
ここでdb
biasはバイアス不感帯である。
【0089】
バイアス不感帯は単独で、または他の不感帯と組み合わせて実装することができる。例えば、バイアス不感帯は、変動不感帯と組み合わせて実装することができる。一例として変動不感帯はdb
variation =db
bias/t
student,99,8から決定でき、ここでは、db
variationは変動不感帯である。変動不感帯をゼロ流量値標準偏差と比較して、帰無仮説を棄却すべきかどうかを決定することができる。一実施形態では、バイアス不感帯は上述のように比較することができ、変動不感帯は以下のようにゼロ流量値標準偏差と比較することができる。
【数14】
を満たす場合、帰無仮説は棄却されない。
前述の検定は、帰無仮説が信頼区間チェックによって棄却された後に利用することができる。代替として、
【数15】
を満たす場合、ゼロ流量値平均
【数16】
はゼロに設定され、ゼロ流量値変動は変動不感帯に等しくなる。
【0090】
基準ゼロ流量値630が、基準ゼロ流量値630によって引き起こされる測定バイアスを低減または排除することができるゼロ流量値によって置き換えられうることを、バイアス指標が示す場合に、基準ゼロ流量値630は、更新、置き換えなどが行われる場合がある。従って、メータ電子器機20は、例えば、ゼロ流量値測定値650の平均値を保存し、ゼロ較正ルーチンを開始して新しいゼロ流量値等を決定することによって、基準ゼロ流量値630を更新または置換するように構成することができる。ゼロ較正ルーチンは、追加の品質制御ステップ/特徴を含むことができるので、新しい基準ゼロ流量値を取得するゼロ較正ルーチンは、ゼロ流量値測定値650よりも有利である可能性がある。さらに、FCFの再計算など、追加の較正ステップを実行することもできる。
【0091】
低流量での非線形寄与を低減または除去する他のルーチンとともに、測定バイアスを低減または除去することによって、
図5に示される誤差プロット530から改善された誤差プロットは、最小流量Qminまでの流量で、通常流量誤差限界帯域540b内、またはさらにより厳しい誤差限界帯域内に収まる可能性がある。したがって、通常流量誤差限界帯域540bに関連するゼロ検証基準が、閾値流量Qt未満の流量を有するアプリケーションに使用できる。理解できるように、これは、振動計5の有効ターンダウン比を改善する(すなわち、最大流量Qmaxと最小流量Qminとの比まで増加させる)ことができる。
【0092】
より低い性能要求を有する特定のアプリケーションは、より緩いゼロ検証基準に関連付けることができる。より低い性能要求を有するアプリケーションの例は、液体の非管理移送が挙げられる。より高い性能要件を有するアプリケーションまたはプロセスには、例えば上述の緩いゼロ検証基準において使用されるゼロ安定性値よりも小さいゼロ安定性値を含むゼロ検証基準が、関連付けられている可能性がある。高性能アプリケーションの例は、消費時点での天然ガスの管理移送などの気体の管理移送が挙げられる。
【0093】
より厳格なゼロ検証基準はまた、基準ゼロ流量値のバイアス指標に対するバイアス指標信頼性閾値を含みうる。例えば、ゼロ流量値測定値650に関連する中心傾向値及び分散値を決定し、基準ゼロ流量値と比較することができる。一例では、ゼロ流量値測定値650に関連する中心傾向値は、複数のゼロ流量値測定値650と基準ゼロ流量値との間の差の平均であってもよい。ゼロ流量値測定値650に関連する分散値は、例えば、複数のゼロ流量値測定値650と基準ゼロ流量値との間の差の平均650aに関する信頼区間650bであってもよい。上で説明したように、信頼区間650bは、信頼水準(たとえば、99%、95%など)を使用して決定することができる。信頼区間650bは、上述の帰無仮説t検定においてゼロまたはゼロ付近の不感帯でありうるバイアス指標信頼性閾値と、比較することができる。
【0094】
ゼロ検証基準は、流体の特性に基づいてメータ電子機器20によって決定することができる。例えば、ゼロ検証基準スケールは、流体が気体であるか液体であるかに基づいて決定することができる。例えば、ゼロ安定性値640が液体の非管理移送に関係している場合、気体の管理移送のためのより厳格なゼロ検証基準は、ゼロ安定性値640を、例えば0.5のゼロ検証基準スケールでスケーリングすることによって計算することができるが、任意の適切な値を使用してもよい。流体の他の特性、例えば、測定された密度などを使用して、ゼロ検証基準スケールを決定することができる。
【0095】
より具体的には、振動計5に収容される流体の密度を測定し、密度値閾値と比較することができる。測定された密度が密度値閾値未満である場合、第1のゼロ検証基準を選択することができる。測定された密度が密度値閾値よりも大きい場合、第2のゼロ検証基準を選択することができる。第1のゼロ検証基準は、より高い性能のアプリケーションに適しており、第2のゼロ検証基準は、より低い性能のアプリケーションに適している可能性がある。密度値閾値は、ユーザによって、セレクト、入力、選択等されてもよい。より多くの密度値閾値を使用することができる。例えば、追加のゼロ検証基準値にそれぞれ関連する密度値範囲を定義する、二つ以上の密度値閾値があってもよい。したがって、二つ以上のゼロ検証基準が選択される場合がある。
【0096】
ゼロ検証閾値基準の一つは、メモリに格納されるか、または別のゼロ検証基準からスケーリングされうる。例えば、
図5を参照すると、誤差限界帯域540は、流体の流量に基づいて異なる値を有する。より具体的には、低流量誤差限界帯域540aは、通常流量誤差限界帯域540bの約2倍の値を有する。理解できるように、低流量誤差率限界540aに関連するゼロ検証基準は、特定の用途に応じて多かれ少なかれ厳しくなる可能性があり、ゼロ検証基準の値は、低流量誤差限界帯域540aと通常流量誤差限界帯域540bとの比に比例していてもよい。
【0097】
従って、
図6に示すゼロ安定性値640は、振動計5がより高い又はより低い性能のアプリケーションで採用されているかに応じて、(例えば、ゼロ検証基準スケールを乗じて)スケールすることができる。例えば、
図6に示すゼロ安定性値640が低流量誤差限界帯域540aに関連付けられる場合、ゼロ安定性値640にメータ電子回路20で0.5を乗じて、基準ゼロ流量値630についてのより小さなゼロ安定性値を決定することができる。一例として、これは、Qt流量をより低い流量値まで改善するために、通常流量誤差限界帯域540b内でより低い流量まで正確な測定を達成し、従って、アプリケーションでの測定器の使用可能流量範囲を拡大することを目的として行われる可能性がある。
図5から分かるように、ゼロ検証スケールは、流体の期待流量に依存する可能性がある。
【0098】
上述のように、ゼロ検証基準は、基準ゼロ流量値630のような基準ゼロ流量値のバイアス指標信頼性閾値から構成されるか又はこれを含むことができる。バイアス指標は、バイアス指標信頼性閾値と比較することができる。バイアス指標は、例えば、ゼロ流量値測定値650に関連する中心傾向値及び分散値を使用して決定することができる。
図6に示すように、中心傾向値は平均650aであり、分散値は信頼区間650bである。
【0099】
追加または代替として、適切なゼロ検証基準は、振動計5内の流体の特性に基づいて選択することができる。例えば、ゼロ検証基準は、アプリケーションが気体の管理移送であるかどうかの決定に基づいて選択することができる。この例における選択基準は、測定された密度が気体密度閾値未満であるかどうかを判断すること、及び振動計5が管理移送において使用されるべきかどうかを判断することでありうる。これらが両方とも真である場合、より厳格なゼロ検証基準が選択される可能性がある。
【0100】
理解できるように、ゼロ検証基準の選択は、自動化することができる。より具体的には、ユーザは、振動計5が管理移送に使用されていることを示す値を、メータ電子機器20に記憶させるだけでよい。結果として、メータ電子機器20は、振動計5が管理移送用の液体を測定しており、そのため基準ゼロ流量値のバイアス指標を決定することなくゼロ検証の間、基準ゼロ流量値に関するより小さなゼロ安定性値を採用することを、決定するように構成することができる。
【0101】
図7は、振動計のゼロ検証のためのゼロ検証基準を決定する方法700を示している。
図7に示されるように、方法700は、ステップ710において流体の特性を決定する。流体は、上述のセンサアセンブリ10などのセンサアセンブリに含まれてもよいが、任意の適切なセンサアセンブリが使用されてもよい。方法700は、ステップ720で、流体の特性に基づいて、センサアセンブリについてのゼロ検証基準値を決定することができる。流体の特性は、流体がセンサアセンブリ内に流れない状態で収容されている間に測定された流体の特性であってもよい。例えば、流体の特性は、流体の密度及び相のうちの一つであってもよい。
【0102】
ゼロ検証基準値は、第2のゼロ検証基準値に係数を乗算することによって決定される第1のゼロ検証基準値であってもよい。たとえば、
図5を参照して上記で説明した比を、第2のゼロ検証基準と乗算して第1のゼロ検証基準を決定することができる。この例示的な比は、流体の第1の期待流量に関連する第1の許容範囲及び流体の第2の期待流量に関連する第2の許容範囲に基づいて決定することができる。
【0103】
ゼロ検証基準値は、基準ゼロ流量値のバイアス指標信頼性閾値及びゼロ安定性値のうちの一つであり得る。例えば、ゼロ検証を行うためにバイアス指標が使用される場合、バイアス指標信頼性閾値は、基準ゼロ流量値が、流量測定値に影響を及ぼしうるバイアスを含む可能性があるかどうかを判断するために使用することができる。これに加えて又はこれに代えて、ゼロ安定性値は、測定されたゼロ流量値がゼロ安定性値内にあるか否かを決定するために使用することができる。
【0104】
したがって、上述した振動計5などの振動計は、ゼロ流量値を用いて流体の流量を測定するように構成することができる。振動計は、流体を測定するように構成された、例えば上述のセンサアセンブリ10などのセンサアセンブリと、センサアセンブリ10に通信可能に接続されたメータ電子機器20とを含むことができる。メータ電子機器20は、流体の特性を決定し、流体の特性に基づいて、センサアセンブリのゼロ検証基準値を決定するように構成することができる。
【0105】
上述した振動計5、メータ電子機器20、及び方法700は、上述した振動計5などの振動計のゼロ検証のためのゼロ検証基準を決定することができる。例えば、振動計は、流体を測定するように構成されたセンサアセンブリを含むことができる。上述のように、流体は、気体または液体であってもよく、流量測定許容範囲など、異なる許容範囲を有し得る種々のプロセスで使用することができる。異なる測定許容範囲は、流体の特性から決定できる場合がある。従って、振動計は、センサアセンブリに通信可能に接続されたメータ電子機器を含むこともできる。メータ電子機器20は、流体の特性を決定し、流体の特性に基づいて、センサアセンブリのゼロ検証基準値を決定するように構成することができる。
【0106】
ゼロ検証基準値は、流体の特性に基づいて決定されるため、ゼロ検証基準値は、所与のプロセスまたはアプリケーションにより適している可能性がある。例えば、ゼロ検証基準値は、密度値閾値未満の密度値を有しうる気体の、管理移送に関連付けることができる。したがって、気体の管理移送に関連するゼロ検証基準値は、気体の管理移送の流量測定に関する測定許容範囲に適している可能性がある。
【0107】
一例では、ゼロ検証基準値は、別のゼロ検証基準値にゼロ検証基準スケールを乗算することによって決定することができ、この第2のゼロ検証基準値は、流量測定についてのより緩い許容誤差に関連付けられる。ゼロ検証基準スケールを使用することは、たとえば、様々なプロセスまたはアプリケーションのための異なるゼロ検証基準値を記憶することよりも効率的であり、必要なコンピューティングリソースをより少なくすることができる。したがって、流量測定についてのより緩い許容誤差に適したゼロ検証基準値は、測定流量についてのより厳格な許容誤差に適した他のゼロ検証基準値を計算するために使用される、ベースゼロ検証基準値であってもよい。
【0108】
上記の実施形態の詳細な説明は、本説明の範囲内にあると本発明者らによって企図されるすべての実施形態の網羅的な説明ではない。実際、当業者であれば、上記の実施形態の特定の要素を様々に組み合わせたり削除したりしてさらなる実施形態を作成することができ、そのようなさらなる実施形態は、本説明の範囲及び教示に含まれることを認識するであろう。また、当業者には、本説明の範囲および教示の範囲内で、上述の実施形態を全部または部分的に組み合わせて、追加の実施形態を作成できることも明らかであろう。
【0109】
したがって、特定の実施形態が例示の目的で本明細書に記載されているが、当業者であれば認識するように、本記載の範囲内で様々な同等の修正が可能である。本明細書で提供される教示は、上記および添付の図面に示される実施形態だけでなく、他の振動計、振動計のゼロ検証のためのゼロ検証基準を決定するためのメータ電子機器の方法にも適用することができる。したがって、上述の実施形態の範囲は、特許請求の範囲によって決定されるべきである。
【国際調査報告】