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特表2024-526426カテコールアミンベースの膜、その調製のためのプロセスおよびその用途
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  • 特表-カテコールアミンベースの膜、その調製のためのプロセスおよびその用途 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-18
(54)【発明の名称】カテコールアミンベースの膜、その調製のためのプロセスおよびその用途
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/00 20060101AFI20240710BHJP
   A61L 24/04 20060101ALI20240710BHJP
   A61L 24/00 20060101ALI20240710BHJP
   A61L 31/06 20060101ALI20240710BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20240710BHJP
   A61L 31/16 20060101ALI20240710BHJP
   A61B 90/90 20160101ALI20240710BHJP
【FI】
C08G73/00
A61L24/04 200
A61L24/00 260
A61L31/06
A61L31/14 500
A61L31/16
A61B90/90
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576175
(86)(22)【出願日】2022-06-09
(85)【翻訳文提出日】2024-02-05
(86)【国際出願番号】 EP2022065757
(87)【国際公開番号】W WO2022258780
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】21382516.9
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523463801
【氏名又は名称】ファンダシオ インスティトゥト カンタラ デ ナノシエンシア アイ ナノテクノロジア(アイシーエヌ2)
(71)【出願人】
【識別番号】521231341
【氏名又は名称】コンセホ スペリオール デ インベスティガシオネス シエンティフィカス(シーエスアイシー)
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】スアレス ガルシア,サルビオ
(72)【発明者】
【氏名】サイズ ポセウ,ハビエル
(72)【発明者】
【氏名】ルイス モリーナ,ダニエル
【テーマコード(参考)】
4C081
4J043
【Fターム(参考)】
4C081AC03
4C081AC04
4C081BA12
4C081BA15
4C081BA16
4C081BB08
4C081CA151
4C081CC07
4C081CE01
4C081CE02
4C081DA02
4C081DB07
4C081EA05
4C081EA11
4J043QB15
4J043QB45
4J043RA08
4J043SA06
4J043SB01
4J043TA03
4J043TB01
4J043UA122
4J043UB011
4J043XA12
4J043XB03
4J043ZA60
4J043ZB11
4J043ZB60
(57)【要約】
本発明は、自立型カテコールアミンベースの膜を調製するためのプロセスであって、a)カテコール誘導体を、以下からなる群から選択されるアミン:式(II)の既知の脂肪族アミン炭化水素;および式(IIbis)の芳香族アミンによって、カテコールおよびアミンがいずれも、6.5~10のpHで、適切な撹拌下で、可溶である液体媒体中で、いかなる支持体も存在しない状態で、空気/液体界面にカテコールアミン膜を創出するステップと;b)ステップ(a)から得られた膜を空気/液体界面から単離するステップとを含む。
得られた自立型カテコールアミンベースの膜は、堅牢であり、取り扱いおよび操作が容易で、可撓性が高く、破損することなくあらゆる種類の表面に適応可能であり、接着性がある。さらに、本発明のフリースタンディング膜は、ヤヌスの特徴を示し、水接触面に予想外のナノパターン化を有し、これにより、本発明の膜に、より粗さの大きい表面がもたらされ、細胞接着を促進させるある程度の価値を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自立型カテコールアミンベースの膜を調製するためのプロセスであって、
a)カテコール誘導体を、以下からなる群から選択されるアミン:
a.1)式(II)の既知の脂肪族アミン炭化水素
A-B-A’(II)
(式中、
AおよびA’は、同じであるかまたは異なり、-NRR’を表し、
Bは、(C~C20)アルキレン;-OH、ハロゲン、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR、および-NRR’からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C20)アルキレン;(C~C20)アルケニレン;-OH、ハロゲン、-NO、シアノ、O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR、および-NRR’からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C20)アルケニレン;(C~C20)アルキニレン;-OH、ハロゲン、-NO、シアノ、O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR、および-NRR’からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C20)アルキニレン;既知の3員~20員のヘテロアルキレン;および-OH、ハロゲン、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR、および-NRR’からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された既知の3~20員ヘテロアルキレン;既知の3~20員のヘテロアルケニレン;および-OH、ハロゲン、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR10、および-NR11R’11からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された既知の3~20員ヘテロアルケニレンを表し;
Aは、Bビラジカル炭化水素骨格の一部を形成する第1の原子環員に結合し;
A’は、Bビラジカル炭化水素骨格の一部を形成する最後の原子環員に結合し;
ここで、「第1」および「最後の」原子環員は、Bビラジカル炭化水素骨格を左から右へ、またはその逆に読んで識別され;
、R’、R、R’、R、R’、R、R’、R、R’、R11、およびR’11は、同じであるかまたは異なり、-H;(C~C10)アルキル;(C~C10)ハロアルキル;(C~C10)アルケニル;(C~C10)アルキニル;-OH、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR12、および-NR13R’13からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C10)アルキルからなる群から選択され;
、R、R、R、R10およびR12は、-H;(C~C10)アルキル;(C~C10)ハロアルキル;(C~C10)アルケニル;(C~C10)アルキニル;-OH、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR14、および-NR15R’15からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C10)アルキルからなる群から独立して選択され;
13、R’13、R14、R15およびR’15は、同じであるかまたは異なり、-H;(C~C10)アルキル;(C~C10)ハロアルキル;(C~C10)アルケニル;および(C~C10)アルキニルからなる群から選択され;
「既知の3~20員ヘテロアルキレン」は、C(R、CR、-N-、-NR’-、S-、および-O-からなる群から選択される3~20の環員からなる既知の飽和鎖を意味し、但し(a)環員のうちの少なくとも1つは、-N-、-NR-、-S-、または-O-であり;(b)ヘテロアルキレンの骨格を形成する最初と最後の環員は、炭素原子であり;
「既知の3~20員ヘテロアルケニレン」は、C(R、-CR-、-N-、-NR’-、S-、および-O-からなる群から選択される3員~20員からなる既知の不飽和鎖を意味し、但し(a)環員のうちの少なくとも1つは、-N-、-NR-、-S-、または-O-であり;(b)ヘテロアルキレンの骨格を形成する最初と最後の環員は、炭素原子であり;(c)1つ以上の二重結合を含み;
は、-H;-OH;(C~C10)アルキル;(C~C10)アルケニル;(C~C10)アルキニル;(C~C10)ハロアルキル;O-(C~C10)アルキル;-O-(C~C10)アルケニル;-O-(C~C10)アルキニル;ニトロ、-NRx1x2;-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR16、および-NR17R’17からなる群から選択される1つ以上の置換基により置換された(C~C10)アルキル;ならびにハロゲンからなる群から独立して選択され;
X1、Rx、R16、R17、R’17、およびR’は、-H、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル、(C~C10)アルキニル、および(C~C10)ハロアルキルからなる群から独立して選択される);
a.2)式(IIbis)の芳香族アミン:
【化1】
(式中、Wは、
-NRR’または
S-S-Lを表し;式中、()は、WラジカルのS原子が芳香環の一部を形成する炭素原子に結合していることを示し;
Lは、-OH、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR28、および-NR28R’28からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C10)アルキル(但し、置換基の少なくとも1つは、-NR28R’28である);-OH、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR28、および-NR28R’28からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C1~C10)ハロアルキル(但し、置換基の少なくとも1つは、-NR28R’28である);-OH、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR28、および-NR28R’28からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C10)アルケニル(但し、置換基の少なくとも1つは、-NR28R’28である);-OH、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR28、および-NR28R’28からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C10)アルキニル(但し、置換基の少なくとも1つは、-NR28R’28である);および-CR-、-N-、-O-、-NR’、-S-からなる群から選択される5員または6員を有する既知の芳香環からなる群から選択され;
、R’、RおよびR’は、同じであるかまたは異なり、H、(C~C10)アルキル;(C~C10)ハロアルキル;(C~C10)アルケニル;(C~C10)アルキニル;-OH、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR29、および-NR30R’30からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C10)アルキル;ならびに-CR-、-N-、-NR’、-O-、および-S-からなる群から選択される5員または6員を有する既知の芳香環からなる群から選択され;
の少なくとも1つは、-NR31R’31であり、他のR(複数可)は、H、-NR31R’31、(C~C10)アルキル;(C~C10)ハロアルキル;(C~C10)アルケニル;(C~C10)アルキニル;および-OH、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、C(O)OR32、および-NR33R’33からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C10)アルキルからなる群から選択され;
およびR’は、H、(C~C10)アルキル;(C~C10)ハロアルキル;(C~C10)アルケニル;(C~C10)アルキニル;-OH、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR34、および-NR35R’35からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C10)アルキルからなる群から独立して選択され;
28、R’28、R29、R30、R’30、R31、R’31、R32、R33、R’33、R34、R35、およびR’35は、-H;(C~C10)アルキル;(C~C10)ハロアルキル;(C~C10)アルケニル;および(C~C10)アルキニルからなる群から独立して選択される);
で架橋して、いかなる支持体も存在しない状態で、空気/液体界面にカテコールアミン膜を創出し、架橋反応が、カテコールおよびアミンがいずれも、6.5~10のpHで、撹拌下、特に適切な撹拌下で可溶である液体媒体中で行われるステップ;ならびに
b)ステップ(a)から得られた膜を空気/液体界面から単離するステップ
を含むプロセス。
【請求項2】
前記アミンが、式(II)のアミンである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
AおよびA’が、同じであり、-NHR’、特に-Hを表す、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
Bが、(C~C15)アルキレン;請求項1に定義されたように置換された(C~C15)アルキレン、または、請求項1に定義された既知の3員~15員のヘテロアルキレンを表す、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記アミンが、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、シスタミン、トリス-(3-アミノプロピル)アミン、トリス-(2-アミノプロピル)アミン、および4,4’,4’’-トリアミノトリフェニルアミンからなる群から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記カテコール誘導体が、式(III):
【化2】
(式中、
18、R19、R’18およびR’19は、同じであるかまたは異なり、
-H;
-OH;
-NR20R’20
ハロゲン
(C~C10)アルキル;
(C~C10)アルケニル;
-OH、ハロゲン、ニトロ、シアノ、(C~C10)アルキル、(C~C10)ハロアルキル、-NR21R’21、-C(O)OR22、および-O-(C~C10)アルキルからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C10)アルキル;
-OH、ハロゲン、ニトロ、シアノ、(C~C10)アルキル、(C~C10)ハロアルキル、-NR23R’23、-C(O)OR24、および-O-(C~C10)アルキルからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C10)アルケニル;
環のそれぞれ1つは:(a)-C(R2,-、-CR-、-N-、-NR’、-S-、および-O-からなる群から選択される5員または6員からなり;(b)飽和、部分不飽和、または芳香族であり;(c)孤立している、部分的に孤立している、または融合されている、1つまたは2つの環からなる既知の環系
からなる群から選択され;
のそれぞれ1つは、-H、-OH、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル、(C~C10)アルキニル、(C~C10)ハロアルキル、-O-(C~C10)アルキル、ニトロ、-NR2525、およびハロゲンからなる群から独立して選択され;
R’yは、-H、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル、(C~C10)アルキニル、および(C~C10)ハロアルキルからなる群から選択され、
20、R’20、R21、R’21、R23、R’23、R25、およびR’25は、同じであるかまたは異なり、H;(C~C10)アルキル;(C~C10)ハロアルキル;(C~C10)アルケニル;(C~C10)アルキニル;-OH、ハロゲン、ニトロ、シアノ、(C~C10)アルキル、(C~C10)ハロアルキル、-NR26R’26、-C(O)OR27、および-O-(C~C10)アルキルからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C10)アルキルからなる群から選択され;
22およびR24は、H、(C~C10)アルキル、(C~C10)ハロアルキル、(C~C10)アルケニル;および(C~C10)アルキニルからなる群から独立して選択され;
26、R’26およびR27は、同じであるかまたは異なり、-H;(C~C10)アルキル;(C~C10)ハロアルキル;(C~C10)アルケニル;および(C~C10)アルキニルからなる群から選択される)
のものである、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記カテコール誘導体が、ピロカテコール、ドーパミン、ピロガロール、カフェイン酸、4-メチルカテコール、およびカテキンからなる群から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記pHが、6.5~8、または7~7.5である、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
式(II)の前記既知の脂肪族アミン炭化水素が、前記カテコール誘導体に対して過剰なモル比である、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセスによって得られる自立型カテコールアミンベースの膜。
【請求項11】
治療用分子および検出標識から選択される1つ以上の目的の分子をさらに含む、請求項10に記載の自立型カテコールアミンベースの膜。
【請求項12】
請求項10に記載のカテコールアミンベースの膜の接着剤としての使用。
【請求項13】
治療標識または検出標識などの目的の分子のビヒクルとしての、請求項10に記載のカテコールアミンベースの膜の使用。
【請求項14】
目的の分子が、治療に使用するための治療用分子である、請求項11に記載の自立型カテコールアミンベースの膜、またはあるいは、目的の分子が、診断に使用するための検出標識である、請求項11に記載の自立型カテコールアミンベースの膜。
【請求項15】
請求項10~11のいずれか一項に定義された膜で部分的または完全にコーティングされた物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年6月10日に出願された欧州特許出願第21382516.9号の利益を主張する。
技術分野
【0002】
本発明は、カテコールアミンベースの膜の分野に関する。特に、本発明は、自立型カテコールアミン膜、それを調製するためのプロセス、およびその使用を提供する。
【背景技術】
【0003】
カテコール誘導体は、天然、動物、植物系に広く分布しており、それらはすべて、式(I)の芳香族コアを共有することを特徴とする:
【化1】
【0004】
カテコール誘導体の有名な例の1つは、3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)である。DOPAは、空気に曝露されたときに、酸化する傾向がある。形成されたo-キノンは、様々な経路で様々な求核剤とさらに反応して、架橋を形成し得る。周知の求核剤は、マイケル付加またはシッフ塩基反応のいずれかによって、o-キノンと反応して、付加物を形成し得るアミンである。
【0005】
カテコール誘導体とアミンとの反応は、海洋生物による接着タンパク質の架橋、昆虫による細胞骨格の形成、およびメラニンの生合成など、天然の生物学的プロセスにおいて非常に重要である。天然の生物の中で生じるこのカテコール-アミンの化学は、新しい材料の発見に対する関心の高まりにより、材料科学において多くの注目を集めている。
【0006】
したがって、いくつかの研究グループが、カテコール誘導体とアミンとの反応時に、ゲルまたは耐水性フィルムを形成する水溶性ポリマーを開発した。多くの刊行物において、カテコールアミンベースのコーティングの調製が報告されている。例えば、Iacomino M.ら(Iacomino M.et al.,2017)は、カフェイン酸およびジアミン架橋剤を含む溶液をpH9で浸漬コーティングすることによる基材のコーティングを報告している。コーティング基材は、細胞成長の促進において効率的であった。Suarez-Garcia S.ら(Suarez-Garcia S.et al.,2017)は、カテコールとジアミンとの共重合によって得られる薄膜による基材表面(ガラス、金、シリカなど)の官能基化も報告している。
【0007】
しかし、これらのコーティング基材は、それ自体の基材によって付与される剛性により、その使用が制限される。また、カテコールアミンコーティングは、基材に強く接着しており、このため、基材を損傷させることなく基材から剥離することはできない。これは、コーティングが、必要な剥離力に耐えられるほど頑強ではないためである。
【0008】
これらのコーティングによって示される制限により、近年では、明確な構造機能および適応機能を有する自己保持型ポリマーフィルムが注目を集めている。フリースタンディングポリマーフィルムを調製するために、交互積層法(LbL)、ラングミュア・ブロジェット堆積法、スピンコーティングおよびキャスティングなどの様々な方法が開発されている。
【0009】
したがって、現時点では簡便で効率的な合成方法が存在しないため、ポリマーフィルムの研究は、依然として完全に限定的である。例えば、自己支持型ポリマーフィルムは、表面開始重合反応によって架橋された自己組織化単層膜から調製することができ、非常に薄い特性、ならびに優れた化学的安定性および感受性を有する。しかし、この方法では、架橋のために電子線を使用する必要があり、厳しい条件が、この方法の広い用途に影響を与え得る。この条件を緩和するために、気液界面の構築または非対称修飾を行い、気水界面にポリドーパミンフィルムを形成する方法も検討された。しかし、このフィルム材料は、調製プロセス中にクラックを生成しやすく、フィルムの安定性が不良であることが見出された。他の研究グループは、支持材料としてポリエチレンイミン(PEI)を使用する合成を研究している。例えば、Ponzio Fら(Ponzio F.et al.,2016)は、ドーパミンをベースとした膜に頑健性を付与するために、PEIの使用を開示した。この反応条件は、塩基性pHを必要とし、生物学的環境下においては、PEIの存在により毒性の副生成物が提供されることから、これらの膜の使用が制限される。
【0010】
上記を考慮すると、適応性があり堅牢かつ安全なカテコールアミンベースの膜ならびにそれらを調製するプロセスを提供する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、非常に有利な機械的特徴を有するが、それらを治療および診断応用において特に有用にする分解性、接着性および細胞増殖のプロファイルも備えたフリースタンディングカテコールアミンベースの膜を得るための新しいプロセスを開発した。
【0012】
以下に示すように、本発明のプロセスは、鎖の各末端に末端アミンを有する炭化水素鎖である脂肪族アミンまたは芳香族アミンのいずれかのアミンの架橋剤としての特定の選択、ならびにpHおよび撹拌の厳密な反応条件に基づく。注目すべきことに、pH反応条件は非常に穏やかであるため、生物学的分子によるin situでの官能基化が可能であり、塩基性条件下で働く従来技術のプロセスと比較したときに若干有利である。
【0013】
したがって、第1の態様では、本発明は、カテコールアミンベースの膜を調製するためのプロセスを提供し、本プロセスは、以下のステップを含む:
a)カテコール誘導体を、以下からなる群から選択されるアミン:
a.1)式(II)の既知の脂肪族アミン
A-B-A’(II)
(式中、
AおよびA’は、同じであるかまたは異なり、-NRR’を表し、
Bは、以下を表す:(C~C20)アルキレン;-OH、ハロゲン、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR、および-NRR’からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C20)アルキレン;(C~C20)アルケニレン;-OH、ハロゲン、-NO、シアノ、O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR、および-NRR’からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C20)アルケニレン;(C~C20)アルキニレン;-OH、ハロゲン、-NO、シアノ、O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR、および-NRR’からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C20)アルキニレン;既知の3員~20員のヘテロアルキレン;ならびに-OH、ハロゲン、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR、および-NRR’からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された既知の3~20員ヘテロアルキレン;既知の3~20員のヘテロアルケニレン;および-OH、ハロゲン、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR10、および-NR11R’11からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された既知の3~20員ヘテロアルケニレン;
Aは、Bビラジカル炭化水素骨格の一部を形成する第1の原子環員に結合し;
A’は、Bビラジカル炭化水素骨格の一部を形成する最後の原子環員に結合し;
「第1」および「最後の」原子環員は、Bビラジカル炭化水素骨格を左から右へ、またはその逆に読んで識別される;
、R’、R、R’、R、R’、R、R’、R、R’、R11、およびR’11は、同じであるかまたは異なり、-H;(C~C10)アルキル;(C~C10)ハロアルキル;(C~C10)アルケニル;(C~C10)アルキニル;-OH、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR12、および-NR13R’13からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C10)アルキルからなる群から選択され;
、R、R、R、R10およびR12は、-H;(C~C10)アルキル;(C~C10)ハロアルキル;(C~C10)アルケニル;(C~C10)アルキニル;-OH、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR14、および-NR15R’15からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C10)アルキルからなる群から独立して選択され;
13、R’13、R14、R15およびR’15は、同じであるかまたは異なり、-H;(C~C10)アルキル;(C~C10)ハロアルキル;(C~C10)アルケニル;および(C~C10)アルキニルからなる群から選択される;
「既知の3~20員ヘテロアルキレン」は、C(R、CR、-N-、-NR’-、S-、および-O-からなる群から選択される3~20員からなる既知の飽和鎖を意味し、但し、(a)環員のうちの少なくとも1つは、-N-、-NR-、-S-、または-O-であり;(b)ヘテロアルキレンの骨格を形成する最初と最後の環員は、炭素原子である;
「既知の3~20員ヘテロアルケニレン」は、C(R、-CR-、-N-、-NR’-、S-、および-O-からなる群から選択される3員~20員からなる既知の不飽和鎖を意味し、但し、(a)環員のうちの少なくとも1つは、-N-、-NR-、-S-、または-O-であり;(b)ヘテロアルキレンの骨格を形成する最初と最後の環員は、炭素原子であり;(c)1つ以上の二重結合を含む;
は、-H;-OH;(C~C10)アルキル;(C~C10)アルケニル;(C~C10)アルキニル;(C~C10)ハロアルキル;O-(C~C10)アルキル;-O-(C~C10)アルケニル;-O-(C~C10)アルキニル;ニトロ、-NRx1x2;-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR16、および-NR17R’17からなる群から選択される1つ以上の置換基により置換された(C~C10)アルキル;ならびにハロゲンからなる群から独立して選択され;ならびに
X1、Rx、R16、R17、R’17、およびR’は、-H、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル、(C~C10)アルキニル、および(C~C10)ハロアルキルからなる群から独立して選択される);ならびに
a.2)式(IIbis)の芳香族アミン:
【化2】
(式中、Wは、
-NRR’または
S-S-Lを表し;式中、()は、WラジカルのS原子が芳香環の一部を形成する炭素原子に結合していることを示し;ならびに
Lは、-OH、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR28、および-NR28R’28からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C10)アルキル(但し、置換基の少なくとも1つは、-NR28R’28である);-OH、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR28、および-NR28R’28からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C1~C10)ハロアルキル(但し、置換基の少なくとも1つは、-NR28R’28である);-OH、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR28、および-NR28R’28からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C10)アルケニル(但し、置換基の少なくとも1つは、-NR28R’28である);-OH、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR28、および-NR28R’28からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C10)アルキニル(但し、置換基の少なくとも1つは、-NR28R’28である);ならびに既知の5員または6員の芳香環(環員のそれぞれ1つが、-CR-、-N-、-O-、-NR’、-S-からなる群から選択される)からなる群から選択され;
、R’、RおよびR’は、同じであるかまたは異なり、H、(C~C10)アルキル;(C~C10)ハロアルキル;(C~C10)アルケニル;(C~C10)アルキニル;-OH、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR29、および-NR30R’30からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C10)アルキル;および環員のそれぞれ1つが、-CR-、-N-、-NR’、-O-、および-S-からなる群から選択される既知の5員または6員の芳香環からなる群から選択され;
の少なくとも1つは、-NR31R’31であり、他のR(複数可)は、H、-NR31R’31、(C~C10)アルキル;(C~C10)ハロアルキル;(C~C10)アルケニル;(C~C10)アルキニル;および-OH、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、C(O)OR32、および-NR33R’33からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C10)アルキルからなる群から選択され;
およびR’は、H、(C~C10)アルキル;(C~C10)ハロアルキル;(C~C10)アルケニル;(C~C10)アルキニル;-OH、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR34、および-NR35R’35からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C10)アルキルからなる群から独立して選択され;
28、R’28、R29、R30、R’30、R31、R’31、R32、R33、R’33、R34、R35、およびR’35は、-H;(C~C10)アルキル;(C~C10)ハロアルキル;(C~C10)アルケニル;および(C~C10)アルキニルからなる群から独立して選択される);
で架橋して、いかなる支持体も存在しない状態で、空気/液体界面にカテコールアミン膜を創出し、架橋反応が、カテコールおよびアミンがいずれも、6.5~10、特に6.5~8のpHで、撹拌下、特に適切な撹拌下で可溶である液体媒体中で行われるステップと;
b)ステップ(a)から得られた膜を空気/液体界面から単離するステップ。
【0014】
本発明のプロセスを通じて、膜の形成は液体-空気界面で起こり、基材(例えば、ガラス、金属)またはin situで支持体を提供するポリマー(例えば、ポリエチレンイミン、PEI)の使用が回避されることは、言及に値する。
【0015】
撹拌は、反応媒体中でのOの連続的な流入に寄与し、これはカテコール誘導体の酸化も決定する。また、界面においてアミノベースのリガンドと架橋する酸化カテコール部分の拡散も可能にする。
【0016】
式(II)の炭化水素鎖の各端に末端アミンを有する脂肪族アミンについて、炭化水素鎖の一端にのみ末端アミンを有する脂肪族モノアミン(ヘキシルアミンなど)について比較試験を行った場合、本発明の特定の反応条件下で作用することにより、空気/水界面から隔離することができない脆弱な膜を提供したことが以下に示される。
【0017】
本発明のプロセスのさらなる利点は、安価で環境に優しく、水性媒体中で2種類の出発物質を含むのみでよく、有害な溶媒の使用を回避できることである。
【0018】
有利なことに、本発明者らはまた、式(IIbis)の芳香族アミンがカテコール誘導体と反応するときに自立型膜を提供できることも見出した。
【0019】
本発明のプロセスは、得られる特徴の精巧な制御を可能にする。制御することができる特徴の1つは、膜の最終的な厚さである。この制御は、濃度および反応時間を介して、容易に実現できる。出発試薬の濃度が増加し、反応時間が長くなると共に、より厚い膜が形成される。この制御により、以下に示すとおり、走査型電子顕微鏡(SEM)および原子間力顕微鏡(AFM)により測定した場合に、50nm~3μmの範囲の厚さの膜を製造することが可能である。薄い膜と比較して、厚い膜は取り扱いが容易であることであることも言及に値する。それにもかかわらず、すべての場合において、その特徴付けおよび使用のために(官能基化を介して)浮遊膜を単離することが可能であった。
【0020】
本発明のプロセスの特定の特徴により、空気/液体界面で、カテコールアミンベースの膜を得ることが可能になる。したがって、本発明のプロセスによって得ることができる膜は、フリースタンディング膜(いわゆる自己支持型膜または自立型膜とも呼ばれる)であり、これは重合のために支持体を必要としないことを意味する。
【0021】
それのみでなく、本発明のプロセスから得られる膜は、いくつかの有利な特性を示す。以下に示すように、本発明のプロセスから得られる膜は、堅牢であり、取り扱いおよび操作が容易で、可撓性が高く、破損することなくあらゆる種類の表面に適応可能である。実際、膜を、鋭利な工具(例えば、メスまたはハサミなど)を使用して、様々な形態(例えば、正方形、長方形)に容易に切断することができ、または所望の形態を有する既製の型で産生することができる。これに対し、炭化水素鎖の一端のみに末端アミンを有する脂肪族モノアミンから得られる膜は支持体がないと非常に脆弱であり、発明者らの労力にもかかわらず、正規の膜は得られなかった。
【0022】
さらに、本発明のフリースタンディング膜は、ヤヌス特性を示す。これらは、面に応じて異なる粗さのみでなく、非対称の化学的性質も呈した。特に、本発明者らは、液体媒体(実施例では水)と接触する面は、カテコールアミンナノ粒子(本発明のプロセス中に産生される)に基づいてナノパターン化が創出されることにより、より高い粗さを呈する一方で、空気接触面は、滑らかであることを発見した。驚くべきことに、本発明者らは、本発明の膜が形成され、超純水を使用して洗浄すると、膜の液体接触面のナノパターン化が不変のままであること、すなわち、ナノ粒子が表面に埋め込まれたままであることを見出した。液体接触面におけるこの予想外のナノパターン化により、本発明の膜に、より粗さの大きい表面がもたらされる。このナノパターン化は、合成されたPEIの比較膜および基材では観察されず、SEMによって観察されるように、両面が類似のトポグラフィーを有していたことは、言及に値する。これらの比較例では、両面とも類似の表面を呈し、それらの間にいかなる異なる特徴もなかった。
【0023】
このような形態的非対称特性は、本発明の膜に付加価値を与える。これは、液体接触(実施例では水接触)面が、PEIによるまたは基材を使用する比較可能な合成膜において観察されるより滑らかな表面(ここでは、細胞の接着が非常に少なく、その増殖により密度が低くなった)と比較して、より良好な細胞接着を促進するためである。基材の場合、膜は、両面上で類似の特徴を示し、この基材により、両面上において約3.5nmの粗さを有し、これにより、その後表面に埋め込まれることができないナノ粒子の形成が回避され、ナノパターン化を形成する。
【0024】
さらに、PEIを使用して得られた従来技術の自己支持型膜は、毒性の副生成物を産生するため、動物と接触させて使用することはできない。有利なことに、本発明の膜は安全であり、動物またはヒトと接触させて使用するのに好適である。以下に示すとおり、膜がPEIを含む場合とは対照的に、分解しても、細胞は本発明の膜上に接着し、そこで成長することができる(以下の実施例を参照)。
【0025】
まとめると、本発明の膜は、従来技術で報告されているカテコールアミンベースの膜に関して改善された特徴を示す。
【0026】
上記を考慮して、第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様のプロセスによって得ることができる自立型カテコールアミンベースの膜を提供する。
【0027】
以下に示すとおり、本発明の膜の特定の特性により、それらは細胞の接着および分化を支持するのに特に効率的であり、これはその生来の再生能力を示すものである。
【0028】
これは、本発明の膜によって示される粗さおよびヤヌス特性によるところが大きく、さらに、粗さおよびヤヌス特性により、本発明の膜に、治療プロファイルまたは可視化手段のいずれかを有する目的の分子によって容易に官能基化される能力が付与される。
【0029】
以下に示すように、細胞の接着は粗表面で有利であり、これにより、細胞の増殖および成長が向上する。この特性は、損傷領域において新しい組織を成長させるためのプラットフォームとして使用できるため、膜を組織再生に応用する場合に特に興味深いものである。
【0030】
したがって、第3の態様では、本発明は、治療に使用するための1つ以上の治療用分子をさらに含む、本発明の第2の態様で定義されたカテコールアミンベースの膜、またはあるいは、診断に使用するための1つ以上の検出標識をさらに含む本発明の第2の態様で定義されたカテコールアミンベースの膜を提供する。
【0031】
本発明の第4の態様は、再生組織に使用するための、細胞、成長因子、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の目的の分子をさらに含む、本発明の第2の態様で定義されたカテコールアミンベースの膜に関する。
【0032】
第5の態様では、本発明は、本発明の第2の態様で定義されたカテコールアミンベースの膜の接着剤(例えばパッチの形態)としての使用を提供する。
【0033】
第6の態様では、本発明は、目的の分子のビヒクルとしての、本発明の第2の態様で定義されたカテコールアミンベースの膜の使用を提供する。
【0034】
最後の態様では、本発明は、本発明の第2の態様の自立型膜で部分的または全体的にコーティングされた医療デバイスおよび/または電子部品(例えば、電極またはセンサー)などの物品を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】異なる膜のSEM画像に対応する。画像では、水接触面(eおよびh)と空気接触面(dおよびg)の間で異なるトポグラフィーを観察することが可能である。さらに、膜の可撓性は、クラックまたは裂け目がないことによって確証される。a)高い可撓性を有する丸まっている膜(1-7)、b)高い可撓性を有する丸まっている膜(3-7)、c)空気接触面を有する丸まっている膜(2-7)、d)膜の水接触面(2-7)、e)膜の水接触面(3-7)、f)空気接触面が露出している状態で膜(5-7)によって示される可撓性、g)膜の空気接触面(1-11)、およびh)膜の水接触面(1-11)。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本出願で本明細書において使用されるすべての用語は、別段の記載がない限り、当技術分野で知られている通常の意味で理解されるものとする。本出願で使用される特定の用語の他のより具体的な定義は、以下に示すとおりであり、別段の明示的に定められた定義がより広い定義を提供しない限り、明細書および特許請求の範囲全体に均一に適用されることが意図されている。
【0037】
本発明の目的上、与えられた範囲にはいずれも、その範囲の下限および上限の両方の端点を含む。
【0038】
第1の態様では、本発明は、カテコールアミンベースの膜を調製するためのプロセスを提供する。
【0039】
本発明の文脈において、「カテコールアミンベースの膜」および「カテコールアミンベースのフィルム」という用語は、同じ意味を有し、互換的に使用することができ、アミン化合物で架橋されたカテコール誘導体で作られた材料を指す。本発明に関して、カテコール誘導体は、式(I)の部分を含む任意の化合物であり、アミンは、式(II)の脂肪族アミンまたは式(IIbis)の芳香族アミンである。架橋は、赤外(FT-IR)または紫外可視分光法などの任意の好適な日常的な技術によって確認され得る。以下に示すとおり、発明者らは、カテコール誘導体とアミン系リガンドとの間の共有結合による結合の形成を検出することにより、式(II)または(IIbis)のアミンとカテコール誘導体との架橋が成功していることを確認した。この共有結合相互作用は、末端アミノ基と反応するカテコールの官能基に依存する。通常、カテコール誘導体とアミノベースの分子との重合は、FT-IR分光法を使用して確認することができる。例えば、3600~3000cm-1の範囲に出現する、ヒドロキシル基に関連する強度バンドの減少は、共重合のシグナルである。さらに、架橋を形成するカテコール環上にアミノベースのリガンドが組み込まれていることは、1800~1650cm-1の範囲の新しいバンドの出現を通して確認することができる。最後に、アミノ系リガンド中に存在する脂肪族炭素の組み込みは、3000~2500cm-1の範囲の特定のバンドを検出することによって追跡することができる。
【0040】
本発明によれば、カテコール誘導体は、式(I)の部分を含む任意のものであり得る。すなわち、本発明の文脈におけるカテコール誘導体は、2つの近傍のヒドロキシル基を示す6員芳香環(o-ベンゼンジオール)を含むかまたはそれからなる任意の化合物である。この式(I)のカテコール骨格は、それらを模倣する薬物(MDMAなど)、ホルモン/神経伝達物質、茶の中に見出されるカテキンなど、様々な天然物中に存在する。多くのピロカテキン誘導体が治療応用において示唆されている。さらに、いくつかの企業(特に、Sigma-Aldrich、Alfa Aesar、Fisher Scientificなど)から市販されている多くのカテコール誘導体が存在する。例示的な非限定的例は、ピロカテコール(CAS RN 120-80-9)、ピロガロール(CAS RN 87-66-1)、4-メチルカテコール(CAS RN 452-86-8)、カフェイン酸(CAS RN 331-39-5、501-16-6、71693-97-5)、ドーパミン(CAS RN 51-61-6、62-31-7)、ケルセチン(CAS RN 117-39-5、6151-25-3、849061-97-8)、ヘキサヒドロキシトリフェニレン(CAS RN 4877-80-9)、カテキン(CAS RN 7295-85-4,154-23-4、18829-70-4、225937-10-0)、没食子酸(CAS RN 149-91-7,5995-86-8)、タンニン酸(CAS RN 1401-55-4)、および没食子酸エピガロカテキン(CAS RN 989-51-5)である。
【0041】
本発明の文脈において、用語「アルキル」(または「B」ビラジカルと呼ばれる場合は「アルキレン」)は、特許請求の範囲および詳細な説明に示される数の炭素原子を含む飽和直鎖または分枝鎖炭化水素鎖を指す。アルキル基の例としては、これらに限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノナニル、デカニルなどが挙げられる。
【0042】
本発明の文脈において、用語「アルケニル」(または「B」ビラジカルと呼ばれる場合は「アルケニレン」)は、特許請求の範囲および詳細な説明に示される数の炭素原子を含み、1つ以上の二重結合を含む飽和直鎖または分枝鎖炭化水素鎖を指す。アルケニル基の例としては、これらに限定されないが、エテニル、プロペニル、ブテニル、1-メチル-2-ブテン-1-イルなどが挙げられる。
【0043】
本発明の文脈において、用語「アルキニル」(または「B」ビラジカルと呼ばれる場合は「アルキニレン」)は、特許請求の範囲および詳細な説明に示される数の炭素原子、および1つ以上の三重結合を含む飽和直鎖または分枝鎖炭化水素鎖を指す。アルキル基の例としては、これらに限定されないが、エチニル、1-プロピニル、2-ブチニル、1,3-ブタジニル、4-ペンチニル、および1-ヘキシニルなどが挙げられる。
【0044】
「既知のヘテロアルキレン」および「既知のヘテロアルケニレン」という用語は、当技術分野で公知のヘテロアルキレンおよびヘテロアルケニレンを指し、化学的に不可能なそれらのヘテロ系を除外することを意図する。
【0045】
本発明の文脈において、「既知の3~20員ヘテロアルキレン」という用語は、「炭素およびヘテロ原子(すなわち、炭素原子以外の原子、例えば、N、OまたはSなど)から選択される3~20個の原子を含み、但し、不飽和鎖を形成する最初と最後の原子が炭素原子(AおよびA’が結合している)である任意の既知の飽和鎖を指す。例えば、環員原子は、-C(R-、-CR-、-N-、-NR’-、-S-、および-O-からなる群から選択され、但し、環員のうちの少なくとも1つは、-N-、-NR-、-S-、または-O-である。ヘテロアルキレン鎖は、直鎖状でも分枝状でもよい。Rは、-H;-OH;(C~C10)アルキル;(C~C10)アルケニル;(C~C10)アルキニル;(C~C10)ハロアルキル;O-(C~C10)アルキル;-O-(C~C10)アルケニル;-O-(C~C10)アルキニル;ニトロ、-NRx1x2;-OH、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR16、および-NR17R’17からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C10)アルキル;ならびにハロゲンからなる群から独立して選択される。RX、Rx、R16、R17、R’17、およびR’は、-H、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル、(C~C10)アルキニル、および(C~C10)ハロアルキルからなる群から独立して選択される。
【0046】
本発明の文脈において、「既知の3員~20員の「ヘテロアルケニレン」という用語は、1つ以上の二重結合を含み、炭素およびヘテロ原子(すなわち、炭素原子以外の原子、例えば、N、OまたはSなど)から選択される3~20個の環員原子から構成され、但し、鎖を形成する少なくとも最初と最後の原子が炭素原子(AおよびA’が結合している)である、任意の既知の不飽和鎖を指す。例えば、環員原子は、-C(R-、-CR-、-N-、-NR’-、-S-、および-O-からなる群から選択され、但し、環員のうちの少なくとも1つは、-N-、-NR’-、-S-、または-O-である。ヘテロアルキレン鎖は、直鎖状でも分枝状でもよい。Rは、-H;-OH;(C~C10)アルキル;(C~C10)アルケニル;(C~C10)アルキニル;(C~C10)ハロアルキル;O-(C~C10)アルキル;-O-(C~C10)アルケニル;-O-(C~C10)アルキニル;ニトロ、-NRx1x2;-OH、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR16、および-NR17R’17からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C10)アルキル;ならびにハロゲンからなる群から独立して選択される。RX、Rx、R16、R17、R’17、およびR’は、-H、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル、(C~C10)アルキニル、および(C~C10)ハロアルキルからなる群から独立して選択される。
【0047】
本発明の文脈において、「ハロアルキル」という用語は、特許請求の範囲および詳細な説明に示される数の炭素原子を含む飽和直鎖または分枝炭化水素鎖を指し、ここで、炭素原子のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つのハロゲンで置換されている。
【0048】
アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキレン、アルケニレン、およびアルキニレンの炭素数を「C」(炭素原子の記号)と炭素数を示すサブインデックス形式の数字とで表す。したがって、「C」は、アルキルが1つの炭素原子を有することを意味し;例えば「(C~C20)」の形態で範囲に言及する場合、それは、炭化水素が1~20個の炭素原子を有することを意味する。
【0049】
「既知の環系」という用語は、当技術分野で公知の環系を指し、従って、化学的に不可能な環系を除外することを意図する。
【0050】
本発明によれば、「孤立」環によって形成される環系は、環系が2つ、3つまたは4つの環によって形成され、前記環が、一方の環の原子から他方の環の原子への結合を介して結合していることを意味する。「孤立した」という用語はまた、環系が環を1つのみ有する実施形態も包含する。1つの環からなる既知の環系の非限定的な例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、フェニル、ビフェニルイル、およびシクロヘプテニルから誘導されるものがある。
【0051】
本発明によれば、「縮合環」という表現は、完全に縮合した環、部分的に縮合した環、またはスピロ縮合した環を包含する。
【0052】
本発明によれば、環系が「完全に縮合」している場合、環系が2つ、3つまたは4つの環によって形成され、その中で、2つ以上の原子が隣接する2つの環に共通であることを意味する。例示的な非限定的な例は、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、1-ナフチル、2-ナフチル、アントリル、またはフェナントリルである。
【0053】
本発明によれば、環系が「部分的に縮合」している場合、それは、環系が3つまたは4つの環によって形成され、この環のうちの少なくとも2つが完全に縮合し(すなわち、2つ以上の原子が隣接する2つの環に共通している)、残りの環(複数可)が、1つの環の原子から、縮合環のうちの1つの原子への結合を介して結合していることを意味する。
【0054】
本発明によれば、環系が「スピロ縮合」している場合、それは、環系が共通の原子を共有する少なくとも2つの環を含むことを意味する。最も単純なスピロ化合物は、二環式(2つのみの環を有する)であるか、またはより大きい環系の一部として二環式部分を有し、いずれの場合も、2つの環が、定義されている1つの共通原子を介して接続されている。スピロ化合物は、完全炭素環式(すべて炭素)または複素環式(環の骨格の一部を形成する1つ以上の非炭素原子を有する)であり得る。
【0055】
本発明の文脈において、用語「ハロ」および「ハロゲン」は互換的に使用され、クロロ、フルオロ、ブロモおよびヨードからなる群から選択されるハロゲン基を指す。
【0056】
一実施形態では、カテコール誘導体は、式(III):
【化3】
(式中、
18、R19、R’18およびR’19は、同じであるかまたは異なり:
-H;
-OH;
-NR20R’20
ハロゲン
(C~C10)アルキル;
(C~C10)アルケニル;
-OH、ハロゲン、ニトロ、シアノ、(C~C10)アルキル、(C~C10)ハロアルキル、-NR21R’21、-C(O)OR22、および-O-(C~C10)アルキルからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C10)アルキル;
-OH、ハロゲン、ニトロ、シアノ、(C~C10)アルキル、(C~C10)ハロアルキル、-NR23R’23、-C(O)OR24、および-O-(C~C10)アルキルからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C10)アルケニル;
環のそれぞれ1つが、(a)-C(R2,-、-CR-、-N-、-NR’、-S-、および-O-からなる群から選択される5員または6員からなり;(b)飽和、部分不飽和、または芳香族であり;(c)孤立している、部分的に孤立している、または融合されている、1つまたは2つの環からなる既知の環系;
からなる群から選択され、
のそれぞれ1つは、-H、-OH、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル、(C~C10)アルキニル、(C~C10)ハロアルキル、-O-(C~C10)アルキル、ニトロ、-NR2525、およびハロゲンからなる群から独立して選択され;
R’yは、-H、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル、(C~C10)アルキニル、および(C~C10)ハロアルキルからなる群から選択され;
20、R’20、R21、R’21、R23、R’23、R25、およびR’25は、同じであるかまたは異なり、H;(C~C10)アルキル;(C~C10)ハロアルキル;(C~C10)アルケニル;(C~C10)アルキニル;-OH、ハロゲン、ニトロ、シアノ、(C~C10)アルキル、(C~C10)ハロアルキル、-NR26R’26、-C(O)OR27、および-O-(C~C10)アルキルからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C10)アルキルからなる群から選択され;
22およびR24は、H、(C~C10)アルキル、(C~C10)ハロアルキル、(C~C10)アルケニル;および(C~C10)アルキニルからなる群から独立して選択され;
26、R’26およびR27は、同じであるかまたは異なり、-H;(C~C10)アルキル;(C~C10)ハロアルキル;(C~C10)アルケニル;および(C~C10)アルキニルからなる群から選択される)
のものである。
【0057】
別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、式(III)のカテコール誘導体は、R18およびR19が同じであるかまたは異なり、-H;-OH;(C~C10)アルキル;上で定義したように置換された(C~C10)アルキル;および上で定義したように置換された(C~C10)アルケニルからなる群から選択されるものである。代替の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、式(III)のカテコール誘導体は、R18およびR19のうちの1つが、環のそれぞれ1つが、(a)-C(Ry)2,-、-CR-、-N-、-NR’-、-S-、および-O-からなる群から選択される5~6員からなり、(b)飽和、部分不飽和、または芳香族であり、(c)孤立している、部分的に孤立している、または融合されている、2つの環からなる既知の環系であり、式中、RおよびR’は、上記で定義したとおりであるものである。代替の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、式(III)のカテコール誘導体は、R18およびR19のうちの1つが、環のそれぞれ1つが、(a)-C(R2,-、-CR-、-N-、-NR’-、-S-、および-O-からなる群から選択される6員からなり、(b)飽和、部分不飽和、または芳香族であり、(c)融合されている、2つの環からなる既知の環系であり、式中、RおよびR’は、上記で定義したとおりであるものである。代替の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、式(III)のカテコール誘導体は、R18およびR19のうちの1つが、環のそれぞれ1つが、(a)-C(R2,-、-CR-、-N-、-NR’-、-S-、および-O-からなる群から選択される6員からなり、但し環のうちの少なくとも1つが、ヘテロ原子(-N-、-NR’、-S-、および-O-)を含み、(b)飽和、部分不飽和、または芳香族であり、(c)融合されている、2つの環からなる既知の環系であり、式中、RおよびR’は、上記で定義したとおりであるものである。代替の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、式(III)のカテコール誘導体は、R18およびR19のうちの1つが、環のそれぞれ1つが、(a)-C(R2,-、-CR-、-N-、-NR’-、-S-、および-O-からなる群から選択される6員からなり、但し環のうちの少なくとも1つが、-O-ヘテロ原子を含み、(b)飽和、部分不飽和、または芳香族であり、(c)融合されている、2つの環からなる既知の環系であり、式中、RおよびR’は、上記で定義したとおりであるものである。代替の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、式(III)のカテコール誘導体は、R18およびR19のうちの1つが、環のそれぞれ1つが、(a)-C(R2,-、-CR-、-O-からなる群から選択される6員からなり、但し環のうちの少なくとも1つが、-O-ヘテロ原子を含み、(b)飽和、部分不飽和、または芳香族であり、(c)融合されている、2つの環からなる既知の環系であり、式中、RおよびR’は、上記で定義したとおりであるものである。代替の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、式(III)のカテコール誘導体は、R18およびR19のうちの1つが、環のうちのそれぞれ1つが、(a)-C(R2,-、-CR-、-O-からなる群から選択される6員からなり、但し環のうちの1つのみが、-O-ヘテロ原子を含み、(b)飽和、部分不飽和、または芳香族であり、(c)融合されている、2つの環からなる既知の環系であり、式中、RおよびR’は、上記で定義したとおりであるものである。
【0058】
一実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、式(III)のカテコールは、R18またはR19の一方が-Hであり、他方が上記実施形態のいずれかで定義されたものである。
【0059】
一実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、式(III)のカテコール誘導体は、R’18およびR’19が-Hであり、R18およびR19が上記の実施形態のいずれかで定義されたものである。
【0060】
一実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、カテコール誘導体は、ピロカテコール、ドーパミン、ピロガロール、カフェイン酸、4-メチルカテコール、およびカテキンからなる群から選択される。
【0061】
別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(II)の既知の脂肪族アミンである。
【0062】
別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(II)の既知の脂肪族アミンであり、式中、AおよびA’は、同じである。別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(II)の既知の脂肪族アミンであり、式中、AおよびA’は、同じであるかまたは異なり、NHR’を表す。別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(II)の既知の脂肪族アミンであり、式中、AおよびA’は、同じであり、NHR’を表す。別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(II)の既知の脂肪族アミンであり、式中、AおよびA’のうちの少なくとも1つは、-NHを表す。別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(II)の既知の脂肪族アミンであり、式中、AおよびA’は、同じであり、-NHを表す。
【0063】
別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(II)の既知の脂肪族アミンであり、式中、Bは、(C~C20)アルキレン;上で定義したように置換された(C~C20)アルキレン;または既知の3~20員のヘテロアルキレンを表す。
【0064】
別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(II)の既知の脂肪族アミンである(式中、Bは、(C~C20)アルキレン;上で定義したように置換された(C~C20)アルキレン;または既知の3~20員のヘテロアルキレンを表し、AおよびA’は、同じである(-NHなど))。
【0065】
別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(II)の既知の脂肪族アミンであり、式中、Bは、(C~C15)アルキレン;上で定義したように置換された(C~C15)アルキレン;または既知の3員~15員のヘテロアルキレンを表す。
【0066】
別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(II)の既知の脂肪族アミンであり、式中、Bは、(C~C15)アルキレン;上で定義したように置換された(C~C15)アルキレン;または既知の3員~15員のヘテロアルキレンを表し、AおよびA’は、同じである(-NHなど)。
【0067】
一実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(II)の既知の脂肪族アミンであり、式中、Bは、(C~C15)アルキレン、(C~C15)アルキレン、(C~C15)アルキレンまたは(C~C15)アルキレンを表す。
【0068】
一実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(II)の既知の脂肪族アミンであり、式中、Bは、(C~C15)アルキレン、(C~C15)アルキレン、(C~C15)アルキレンまたは(C~C15)アルキレンを表し、AおよびA’は、同じである(-NHなど))。
【0069】
別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(II)の既知の脂肪族アミンであり、式中、Bは、既知の3員~15員のヘテロアルキレンを表し、特に既知の3員~10員のヘテロアルキレン、または既知の4員~8員のヘテロアルキレンを表す。別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(II)の既知の脂肪族アミンであり、式中、Bは、既知の3員~15員のヘテロアルキレンを表し、特に3員~10員のヘテロアルキレンを表し;AおよびA’は、同じである(-NHなど)。別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(II)の既知の脂肪族アミンであり、式中、Bは、既知の3員~15員のヘテロアルキレンを表し、特に3員~10員のヘテロアルキレンを表し、環員は、上で定義したように、炭素、S、およびN原子から選択される。別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(II)の既知の脂肪族アミンであり、式中、Bは、既知の3員~15員のヘテロアルキレンを表し、特に3員~10員のヘテロアルキレンを表し、環員のそれぞれ1つは、C(R、CR、-NR’-、および-S-からなる群から選択され、式中、RおよびR’は、上で定義したとおりである。
【0070】
別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(II)の既知の脂肪族アミンであり、式中、Bは、既知の3員~15員のヘテロアルキレンを表し、特に既知の3員~10員のヘテロアルキレンを表し、環員は、上で定義したように、炭素、S、およびN原子から選択され;ならびにAおよびA’は、同じ、例えば-NHである。
【0071】
別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(II)の既知の脂肪族アミンであり、式中、Bは、既知の3員~15員のヘテロアルキレンを表し、特に既知の3員~10員のヘテロアルキレンを表し、環員のうちの2つは、上で定義したとおり、S原子であり、その他は、炭素原子である。別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(II)の既知の脂肪族アミンであり、式中、Bは、既知の3員~15員のヘテロアルキレンを表し、特に既知の3員~10員のヘテロアルキレンを表し、環員のうちの2つは、上で定義したとおり、S原子であり、その他は、炭素原子であり;ならびにAおよびA’は、同じ、例えば-NHである。別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(II)の既知の脂肪族アミンであり、式中、Bは、既知の4員~15員のヘテロアルキレンを表し、特に既知の4員~10員のヘテロアルキレンを表し、環員は、上で定義したように、炭素およびS原子である。別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(II)の既知の脂肪族アミンであり、式中、Bは、既知の4員~15員のヘテロアルキレンを表し、特に既知の4員~10員のヘテロアルキレンを表し、環員は、上で定義したように、炭素および-NR’-原子である。別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(II)の既知の脂肪族アミンであり、式中、Bは、既知の4員~15員のヘテロアルキレンを表し、特に既知の4員~10員のヘテロアルキレンを表し、環員は、上で定義したように、炭素およびS原子であり;ならびにAおよびA’は、同じ、例えば-NHである。別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(II)の既知の脂肪族アミンであり、式中、Bは、既知の4員~15員のヘテロアルキレンを表し、特に既知の4員~10員のヘテロアルキレンを表し、環員は、上で定義したように、炭素および-NR’原子であり;ならびにAおよびA’は、同じ、例えば-NHである。別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(II)の既知の脂肪族アミンであり、式中、Bは、既知の4員~15員のヘテロアルキレンを表し、特に既知の4員~10員のヘテロアルキレンを表し、環員のうちの2つは、上で定義したとおり、S原子であり、残りの環員は、炭素原子である。別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(II)の既知の脂肪族アミンであり、式中、Bは、既知の4員~15員のヘテロアルキレンを表し、特に既知の4員~10員のヘテロアルキレンを表し、環員のうちの1つは、上で定義したとおり、-NR’原子であり、残りの環員は、炭素原子である。別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(II)の既知の脂肪族アミンであり、式中、Bは、既知の4員~15員のヘテロアルキレンを表し、特に既知の4員~10員のヘテロアルキレンを表し、環員のうちの2つは、上で定義したとおり、S原子であり、残りの環員は、炭素原子であり;ならびにAおよびA’は、同じ、例えば-NHである。ヘテロアルキレンが2つのS原子を含むヘテロアルキレンであるこれらの実施形態では、ヘテロアルキレンは、「アルキレンジスルフィド」とも称され得る。例示的な非限定的な例は、とりわけ、シスタミン、4-アミノフェニルジスルフィドおよびビスアミノポリエチレングリコールジスルフィドである。
【0072】
別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(II)の既知の脂肪族アミンであり、式中、Bは、既知の4員~15員のヘテロアルキレンを表し、特に既知の4員~10員のヘテロアルキレンを表し、環員のうちの1つは、上で定義したとおり、-NR’-であり、残りの環員は、炭素原子であり;ならびにAおよびA’は、同じ、例えば-NHである。
【0073】
別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(II)の既知の脂肪族アミンであり、式中、Bは、既知の4員~15員のヘテロアルキレンを表し、特に既知の4員~10員のヘテロアルキレンを表し、環員のそれぞれ1つは、C(R、CR、-NR’-、および-S-からなる群から選択され、式中、RおよびR’は、上で定義したとおりである。
【0074】
別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(II)の既知の脂肪族アミンであり、式中、Bは、既知の3員~15員のヘテロアルキレンを表し、特に既知の3員~10員のヘテロアルキレンを表し;
(a)環員の1つまたは2つは、-S-原子であり、他の環員は、C(RおよびCRから選択される炭素原子であり、またはあるいは、
(b)環員の1つまたは2つは、-NR’-であり、他の環員は、C(RおよびCRからなる群から選択される炭素原子であり、式中、Rxは、上で定義したとおりである;
(c)環員の1つは、-S-原子であり、他の環員は、C(RおよびCRからなる群から選択される炭素原子である;またはあるいは、
(d)環員の1つは、-NR’-であり、他の環員は、C(RおよびCRからなる群から選択される炭素原子である;
(c)環員の2つは、-S-原子であり、他の環員は、C(RおよびCRからなる群から選択される炭素原子である;またはあるいは、
(f)環員の2つは、-NR’-であり、他の環員は、C(RおよびCRからなる群から選択される炭素原子である;
式中、RおよびR’は、上で定義したとおりである。
【0075】
一実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、式(II)の既知の脂肪族アミンは、式(II1)のアミン、式(II2)のアミノ、および式(II3)のアミンからなる群から選択され:
【化4】
式中、aは、1~20の整数であり;b、d、およびeは、独立して1~10の整数であり、より具体的には、b、d、およびeは、同じであり;fおよびgは、独立して1~10の整数であり、より具体的にはfおよびgは、同じである。
【0076】
一実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、式(II)の既知の脂肪族アミンは、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、シスタミン、トリス-(3-アミノプロピル)アミン、およびトリス-(2-アミノプロピル)アミンからなる群から選択され、より具体的にはヘキサメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、オクタメチレンジアミンおよびシスタミンから選択される。
【0077】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(IIbis)の芳香族アミンである。本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(IIbis1)の芳香族アミンである:
【化5】
式中、R、R’およびWは、上で定義したとおりである。
【0078】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、少なくとも2つのアミノ基を含む式(IIbis)または式(IIbis1)の芳香族アミンである。
【0079】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(IIbis)または式(IIbis1)の芳香族アミンであり、Wは、-NRR’を表す。
【0080】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(IIbis)または式(IIbis1)の芳香族アミンであり、Wは、-NRR’を表し、R、R’、RおよびR’は、同じである。本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(IIbis)または式(IIbis1)の芳香族アミンであり、Wは、-NRR’を表し、R、R’、RおよびR’は、同じであり、-Hを表す。
【0081】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(IIbis)または式(IIbis1)の芳香族アミンであり、Wは、-NRR’を表し、RおよびR’は、同じであり、-Hを表し、RtおよびR’tは、同じであり、上で定義したとおりである。
【0082】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(IIbis)または式(IIbis1)の芳香族アミンであり、Wは、-NRR’を表し、RおよびR’は、同じであり、水素以外である。
【0083】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(IIbis)または式(IIbis1)の芳香族アミンであり、Wは、-NRR’を表し、RおよびR’は、水素であり;RおよびR’は、同じであり、水素以外である。
【0084】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(IIbis)または式(IIbis1)の芳香族アミンであり、Wは、-NRR’を表し、RおよびR’は、同じであり、-Hを表し、RおよびR’は、本発明の第1の態様において上で定義した芳香環を表す。本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(IIbis)または式(IIbis1)の芳香族アミンであり、Wは、-NRR’を表し、RおよびR’は、同じであり、-Hを表し、RおよびR’のそれぞれ1つは、本発明の第1の態様において上で定義した6員を有する芳香環を表す。
【0085】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(IIbis)または式(IIbis1)の芳香族アミンであり、Wは、-NRR’を表し、RおよびR’のそれぞれ1つは、上で定義した芳香環を表す。
【0086】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(IIbis)または式(IIbis1)の芳香族アミンであり、Wは、-NRR’を表し、RおよびR’のそれぞれ1つは、上で定義した6員を有する芳香環を表す。
【0087】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(IIbis)または式(IIbis1)の芳香族アミンであり、Wは、-NRR’を表し、RおよびR’のそれぞれ1つは、上で定義した6員を有する芳香環を表し、すべての環員は、-CR-であり、式中、Rは、上で定義したとおりである。
【0088】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(IIbis)または式(IIbis1)の芳香族アミンであり、Wは、-NRR’を表し、RおよびR’は、同じであり、かつ6員を有する芳香環を表し、すべての環員は、-CR-環員であり、式中、Rは、上で定義したとおりである。
【0089】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(IIbis)または式(IIbis1)の芳香族アミンであり、Wは、-NRR’を表し、RおよびR’は、同じであり、-Hを表し、RおよびR’のそれぞれ1つは、6員を有する芳香環を表し、すべての環員は、-CR-であり、式中、Rは、上で定義したとおりである。本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(IIbis)または式(IIbis1)の芳香族アミンであり、Wは、-NRR’を表し、RおよびR’は、同じであり、-Hを表し、RおよびR’は、同じであり、6員を有する芳香環を表し、すべての環員は、-CR-環員であり、式中、Rは、上で定義したとおりである。
【0090】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(IIbis)または(IIbis1)のうちの1つであり、W=NRR’であり、ならびにR、R’、RおよびR’のうちの1つ以上は、次式(IV)を有する:
【化6】
(式中、nは、1または2、特に1であり、その他(複数可)は、-Hである)。
【0091】
あるいは、本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(IIbis)または式(IIbis1)の芳香族アミンであり、Wは、S-S-Lを表す。本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(IIbis)または式(IIbis1)の芳香族アミンであり、Wは、S-S-Lを表し、RおよびR’は、同じである。本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(IIbis)または式(IIbis1)の芳香族アミンであり、Wは、S-S-Lを表し、RおよびR’は、同じであり、-Hを表す。本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(IIbis)または式(IIbis1)の芳香族アミンであり、Wは、S-S-Lを表し、RおよびR’は、同じであり、Lは、上で定義した芳香環を表す。本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(IIbis)または式(IIbis1)の芳香族アミンであり、Wは、S-S-Lを表し、RおよびR’は、同じであり、-Hを表し、Lは、上で定義した芳香環を表す。本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(IIbis)または式(IIbis1)の芳香族アミンであり、Wは、S-S-Lを表し、RおよびR’は、同じであり、Lは、上で定義したとおり、6員を有する芳香環を表す。本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(IIbis)または式(IIbis1)の芳香族アミンであり、Wは、S-S-Lを表し、RおよびR’は、同じであり、-Hを表し、Lは、上で定義したとおり、6員を有する芳香環を表す。本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(IIbis)または式(IIbis1)の芳香族アミンであり、Wは、S-S-Lを表し、RおよびR’は、同じであり、Lは、上で定義したとおり、6員を有する芳香環を表し、同じであるかまたは異なり、-CR-によって表される。本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(IIbis)または式(IIbis1)の芳香族アミンであり、Wは、S-S-Lを表し、RおよびR’は、同じであり、-Hを表し、Lは、上で定義したとおり、6員を有する芳香環を表し、同じであるかまたは異なり、特に同じであり、-CR-によって表される。
【0092】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(IIbis)または式(IIbis1)の芳香族アミンであり、Lは、上で定義した芳香環を表す。
【0093】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(IIbis)または式(IIbis1)の芳香族アミンであり、Lは、上で定義したとおり、6員を有する芳香環を表す。
【0094】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(IIbis)または式(IIbis1)の芳香族アミンであり、Wは、S-S-Lを表し、RおよびR’は、同じであり、Lは、上で定義したとおり、6員を有する芳香環を表し、同じであるかまたは異なり、-CRv-によって表される。
【0095】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、式(IIbis)または式(IIbis1)の芳香族アミンであり、Lは、次式(IV)を有する:
【化7】
式中、nは、1または2であり、芳香環を形成する炭素原子のうちの1つは、-S-原子に結合している。本発明の第1の態様の別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、式(IIbis)のアミンは、式(V)、(VI)または(VII)のうちの1つである:
【化8】
【0096】
一実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、アミンは、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、シスタミン、トリス-(3-アミノプロピル)アミン、トリス-(2-アミノプロピル)アミン、および4,4’,4’’-トリアミノトリフェニルアミンからなる群から選択される。
【0097】
カテコール誘導体およびアミン溶液は、別々に調製し、その後一緒に混合することができる。あるいは、カテコール誘導体およびアミンのうちの一方を溶液の形態で調製し、他方を供給者から直接入手して添加することもできる。
【0098】
溶液(複数可)を調製するための適切な溶媒系は、カテコールおよびアミンの極性の性質に依存し、これは当業者の一般知識の一部である。カテコールおよびアミンは両方とも、同じ溶媒系中に溶解させて、架橋反応を行わせる必要がある。一実施形態では、カテコールおよびアミンは、水性溶液の形態で調製される。「水性溶液」という用語は、水のみからなる溶液のみでなく、水と他の極性溶媒、例えば水+アルコールまたは水系緩衝液と組み合わせたものも包含する。水性溶液は、化合物を水と単に混合することによって得られる。いずれの場合も、カテコールとアミンとを混合する場合、このステップは、撹拌下で行われる(空気/液体界面におけるフィルムの形成を適切に促進するため)。
【0099】
一実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、溶液のpHは6.5~8、または7~7.5である。別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、pHは、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.8、7.9、8、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8.、8.9、9、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9または10である。意図したpH値を提供するために反応媒体に添加できる、周知の市販の緩衝液が存在する。例示的な非限定的例は、とりわけ、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、炭酸塩-重炭酸塩およびクエン酸塩である。緩衝液は、カテコール誘導体およびアミンの添加に関して、任意の順序で反応媒体に添加することができる。
【0100】
一実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、液体媒体は、水性ベースの緩衝液、より具体的には、窒素原子またはアミノ基が存在しない水性ベースの緩衝液、さらにより具体的には、リン酸緩衝液、炭酸緩衝液、およびクエン酸緩衝液からなる群から選択される水性ベースの緩衝液を含む。
【0101】
別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、液体媒体は、水である。
【0102】
pHの調整後、撹拌も調整する。撹拌は、架橋の全ステップ中に実施され得る。この実施形態では、当業者であれば理解できるように、撹拌速度は、膜の適切な形成を妨げる乱流を生じてはならない。速度が適切かどうかは、当業者であれば容易に確認することができる:反応媒体中に乱流が観察されない場合、これは速度が適切であることを示している。当業者が、調整時に液体媒体中での乱流の始まりを観察した場合、これは速度が適切でなく、乱流が消失するまで速度を低下させる必要があることを示している。全架橋ステップの際に使用される適切な撹拌手段は、磁気(または機械)手段であり、空気/液体界面の乱流を回避するために可能な限り最低速度を使用し、全手順中、均質であり、撹拌手順に含まれる磁石または機械部品の不規則な動きを回避する。当業者は、反応器の容積、液体媒体、および撹拌手段に応じて、適切な撹拌速度を日常的に決定することができる。例えば、容積が約20mLである以下に提供される実施例の場合、本発明者らは、磁気攪拌子を使用して、500rpm未満の適切な撹拌を確立した。一実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、撹拌速度は、450rpmに等しいかもしくはそれ未満、400rpmに等しいかもしくはそれ未満、または350rpmに等しいかもしくはそれ未満である。
【0103】
あるいは、架橋反応の一部の間に、撹拌を行うこともできる。この実施形態では、撹拌速度は、撹拌がいったん停止すると、反応媒体が一定期間放置され、例えば、アミノベースのリガンドと架橋結合する酸化カテコール部分が界面に拡散して整列し、膜を形成する任意の速度であり得る。この代替的実施形態では、例えば、カテコール部分の酸化により視覚的な色の変化が検出されるときに、撹拌を停止することができる。その後、アミノベースのリガンドとの共重合反応が完了するまで放置し、空気/液体界面に浮遊膜を形成して終了する。
【0104】
一実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、撹拌は、架橋の全ステップ中、あるいは架橋反応の一部中に行われる。
【0105】
一実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、撹拌は、架橋の全ステップ中、乱流が生じないように行われ、特に撹拌速度は、450rpmに等しいかもしくはそれ未満、400rpmに等しいかもしくはそれ未満、または350rpmに等しいかもしくはそれ未満である。
【0106】
別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、撹拌は、空気/液体界面の乱流を回避し、全手順を通して均質であり、撹拌手順に含まれる磁石または機械部品の不規則な動きを回避するために可能な限り最低速度を使用して行われ、より具体的には、撹拌速度は、450rpmに等しいかもしくはそれ未満、400rpmに等しいかもしくはそれ未満、または350rpmに等しいかもしくはそれ未満である。
【0107】
別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、撹拌は、架橋反応の一部の間のみ行われ、特に撹拌は、着色の変化が観察され、その後停止するまで、乱流が生じないように行われ、さらに具体的には、撹拌は、10分~2時間の間行われ、その後停止される。別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、式(II)または(IIbis)のアミンは、カテコール誘導体に対して過剰であるモル比、特に式(II)のアミン化合物対カテコール誘導体のモル比は、1.1:1~3:1、特に1.2:1~2:1で構成される。
【0108】
別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、架橋ステップは、10~60℃の温度で行われる。特に、10~50℃、12~40℃、または15~38℃の温度である。
【0109】
別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、架橋ステップは、少なくとも24時間実施される。一実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、ステップ(a)は、7~7.5のpH値および300rpmに等しいかもしくはそれ未満の撹拌で行われる。別の実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、ステップ(a)は、7~7.5のpH値、300rpm以下の撹拌で行われ、および式(II)のアミン化合物対カテコール誘導体のモル比は、1.1:1~3:1、特に1.2:1~2:1で構成される。
【0110】
当業者は、反応時間または試薬の濃度などの日常的なパラメータを調整することができ、これは膜の最終厚を調整するのに役立つ。
【0111】
架橋ステップが完了し、いかなる支持体も存在しない状態で空気/水または空気/液体界面にカテコールアミン膜が創出されると、これを媒体から単離する。これは、例えばピンセットを使用して、手動で(実験室規模で)、または例えば、リング形状の工具を使用して、機械的に(工業規模で)実施され得る。
【0112】
第2の態様では、本発明は、第1の態様または上記の特定の実施形態のいずれかにおいて、上で定義した本発明のプロセスによって得られるカテコールアミンベースの膜を提供する。
【0113】
したがって、プロセスに関連して上で提供したすべての実施形態は、本発明のこの第2の態様の実施形態でもある。
【0114】
「得ることができる」および「得られた」という用語は、同じ意味を有し、互換的に使用される。いずれの場合も、「得ることができる」」という表現には、「得られた」という用語を包含する。
【0115】
本発明の膜によって示される化学的非対称性は、すでに上で説明したように、異なる官能基化の選択肢およびプラットフォームとしてのより高い多用途性を提供するもたらす。膜の各面に異なる化学基を有することにより、その活性に応じて特定の分子を固定することができる。例えば、より粗い、水接触面を、成長因子で官能基化することができ、一方、空気接触面(粗さが低い)を、再生プロセス中の感染を回避するために、抗菌部分で官能基化することができる。この理由により、膜の各面において露出している化学基が異なるため、これらの膜の多用途性により、面に応じて異なる化学的性質の(生体)分子による官能基化が可能になる。
【0116】
したがって、一実施形態では、本発明のカテコールアミン系フィルムは、治療用分子(例えば、ペプチド、タンパク質、または抗体、例えば、とりわけ、抗菌部分(例えば、セトリミドまたは銀ナノ粒子)、もしくは成長因子(例えば、FGF-2またはTGFβ3))またはとりわけ、検出標識(例えば、カルセイン、金属ナノ粒子または抗体などのナノ粒子)など、1つ以上の目的の分子を含む。
【0117】
一実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、カテコールアミンベースの膜は、治療用分子、細胞、成長因子、検出標識(蛍光活性部分、ナノ粒子または抗体)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の目的の分子をさらに含む。
【0118】
本発明はまた、1つ以上の目的の分子を含む本発明のカテコールアミンベースの膜を調製するためのプロセスであって:
(i.1)本発明の第1の態様またはこの態様のいずれかの実施形態で定義されたプロセスのステップ(a)を実施するステップ、
(i.2)反応媒体に目的の分子を添加するステップ;および
(i.3)本発明の第1の態様のプロセスのステップ(b)を実施するステップを含むか、
またはあるいは、
(ii.1)本発明の第2の態様のカテコールアミンベースの膜を目的の分子と共にインキュベートするステップを含む
プロセスも提供する。
【0119】
ステップ(i.2)は、供給者から入手した目的の分子を反応媒体に直接添加するか、または水性懸濁液の形態(製造業者の指示に従う)かのいずれかで行われる。本発明のプロセスで使用される穏やかな条件は、膜が形成された独自の反応媒体中での膜の官能基化を有利に可能にし、有利にはプロセスを単純化し、時間およびコストを削減する。膜は、空気/水または空気/液体界面に形成されるため、添加ステップは、反応媒体に溶液を注ぐことによって実施され得るか、膜が反応媒体の表面全体を覆っている場合には、膜を介して分子の溶液を反応媒体に注入することによって実施され得る。後者は、膜の完全性に負の影響を及ぼさず、これは本発明の膜の堅牢性および改善された機械的特性のさらなる指標である。
【0120】
ステップ(ii.1)の場合、膜は、すでに界面から孤立している。したがって、膜は、目的の分子を含む溶液を含む媒体に組み込まれてよく(また、媒体と接触する面は官能基化されている)、またはあるいは、膜を媒体に組み込んで、この分子を含む溶液を溶液に注入する。官能基化面を事前に選択し、目的の分子を含む液相(水相)と接触する所望の面を備えた膜を堆積させることができる。膜は、固定点として使用することができる官能基が表面に露出している。
【0121】
目的の分子による膜表面の官能基化は、共有結合による結合、吸着、または静電相互作用によって起こり得る。共有結合による結合の場合、目的の分子の化学的性質に応じて、求核攻撃または求電子攻撃を介して、官能基化が行われ得る。例えば、塩化アシル(例えば、塩化ステアロイル)の存在は、アミノ末端基の存在下で求電子剤として作用し得る。一方で、アミノ基(例えば、ヘキサデカミン)またはチオール基(例えば、1,8-オクタンジチオール)は、カテコール誘導体の環に共有結合により結合している求核性分子として作用し得る。さらに、目的の分子の骨格中にカルボン酸が存在することを利用して、膜の表面に露出した末端アミノ基とアミド結合(ペプチド様結合)を形成することができる。最後に、目的の分子が膜の骨格中に捕捉されることにより、分子の物理的吸着が誘導され得る。本発明の一実施形態では、目的の分子は、本発明の第2の態様の膜表面に共有結合により結合している。
【0122】
一実施形態では、任意により上記または下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、本発明のカテコールアミンベースの膜は、治療用分子および検出標識(蛍光活性部分、ナノ粒子または抗体)からなる群から選択される1つ以上の目的の分子をさらに含む。より具体的には、目的の分子は、特にアミド結合によって膜に共有結合により結合している。
【0123】
共有結合による結合は、本発明の膜の遊離アミノ基と目的の分子の遊離カルボキシル基との間に結合したアミドを生成することなどの、任意の日常的なプロトコルによって達成することができる。この場合、カップリング反応は、(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノ)プロピルカルボジイミド、塩酸塩(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を使用して実施され得る。一般的な手順として、形成された膜を、上記の範囲内の緩衝液を含むより大きい直径のペトリ皿に導入することができる。次に、EDCを水相に注入する。30分などの適切な時間の後、活性(生体)分子(例えば、抗菌部分、蛍光色素、成長因子など)をNHS剤と共に水相に注入する。反応物を、共有結合による結合を確実に形成するのに十分な時間、例えば60分間、500rpm未満でゆっくり撹拌する。次に、官能基化された膜を、ペトリ皿から抽出して洗浄することができる。官能基化を、膜の両面において、独立して制御および誘導することができ、これにより、膜の化学的なヤヌス挙動を向上させる。末端チオール、アミン、または塩化アシルなどの異なる官能基を有する他のカテコール誘導体も、カテコール誘導体の膜または環での露出した官能基上の求核攻撃または求電子攻撃を通して官能基化することができる。手順は、前述のものと類似である。pHまたは溶媒などの一部のパラメータは、目的の分子と膜との間の反応を活性化するために、日常的に調整または選択することができる。
【0124】
同様に上で説明し、以下で詳細に考察するように、本発明の膜の特定のヤヌス特徴により、両面による効率的な官能基化が可能となり、これは先行技術においてすでに報告されている膜に関してさらに特有の特性である。
【0125】
本発明の膜自体は、先行技術の膜と比較した場合、改善された細胞接着を示す。このことは、接着剤としての有用性を裏付ける。
【0126】
それだけでなく、特定のヤヌス分布により、本発明の膜は、異なる種類の分子で官能基化も可能であり、このことは、治療用または診断用分子のビヒクルとしての有用性を裏付ける。
【0127】
上記に加えて、および材料の特定の性質により、本発明の膜は、接着剤として、またはそのような接着性により、カテコールアミン膜を必要とする任意の物品(例えば、医療デバイス、電子支持体、センサー)をコーティングするために使用することもできる。本発明の膜は、他の基材またはデバイスの一部として使用することができ、最終製品に向上した性質を付与できる。例えば、人工補綴物を、生体適合性を高めるため、および副作用または生体拒絶反応を軽減するために、膜全体的にまたは部分的に覆うことができる。さらに、本発明の膜の使用を通して、センサーまたは電子的支持体を、生体組織またはデバイスに接着することができる。センサーまたは電子的支持体は、1つのプラットフォーム内の膜の一部としてであり得るか、またはハイブリッド複合体を形成することができ、その場合、センサーまたは電子的支持体は、接着パッチとして適用される膜の助けを借りて所望の領域に接着する。
【0128】
説明および特許請求の範囲全体において、「含む(comprise)」という語およびその語の変形形態は、他の技術的特徴、添加剤、構成成分、またはステップを排除することを意図するものではない。さらに、「含む(comprise)」という用語は、「からなる(consisting of)」場合を包含する。本発明の追加の目的、利点および特徴は、詳細な説明を検討することによって当業者には明らかになるか、または本発明の実践によって習得され得る。以下の実施例は、例示として提供されるものであり、本発明を限定することを意図するものではない。さらに、本発明は、本明細書に記載される特定の好ましい実施形態のあらゆる可能な組み合わせを含む。
【0129】
実施例
1.材料
カテコール系化合物(ピロカテコール(1)、カフェイン酸(2)、ドーパミン(3)、4-メチルカテコール(4)、ピロガロール(5)、およびカテキン(6))ならびに式(II)のアミン化合物)(ヘキサメチレンジアミン(7)、オクタメチレンジアミン(8)、ドデカメチレンジアミン(9)、シスタミン(10)、トリス-(3-アミノプロピル)アミン(11)、トリス-(2-アミノプロピル)アミン(12)および4,4’,4’’-トリアミノトリフェニルアミン(13))、ならびに比較用ヘキシルアミンおよびポリエチレンイミン(PEI)は、Sigma-Aldrich(Merck,Madrid,Spain)から購入し、さらに精製することなく使用した。特に指定のない限り、すべての実験では、Milli-Q濾過システム(Millipore,Burlington,MA,USA)のタイプ1超純水を使用した。いくつかの実験では、異なる水ベースの緩衝液を使用した:リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4、Sigma-Aldrich)および水性炭酸緩衝液(pH9.1)を調製し、1.89gのNaHCOおよび265mgのNaCOを250mLのMilli-Q水に溶解した。
【0130】
2.方法
2.1物理化学的特徴付け
フーリエ変換赤外(FT-IR)分光法。FT-IRスペクトルを、室温検出器および中赤外源(4000~400cm-1)を備えたTensor27FTIR分光計(Bruker Optik,GmbH,Berlin,Germany)を使用して記録した。
【0131】
A)ダイヤモンド減衰全反射率(ATR,modelMKIIGoldenGate,Specac)のウィンドウ反射上に固体サンプルを堆積することによる試薬の特徴付け。この方法を使用して、試薬のIRの特徴付けを行った。
【0132】
B)膜の特徴付け。窒素冷却テルル化水銀カドミウム(MCT)検出器(InfraRedAssociates,Inc.,Stuart,FL,USA)を備えたHyperion2000FTIR顕微鏡(BrukerOptik,GmbH,Ettlingen,Germany)を反射モードで使用し、15倍の反射対物レンズ、基準として金ミラーを用いて、解像度4cm-1で1分間スキャンした。分析のために、サンプルを、金の表面に堆積させた。
【0133】
得られたすべてのデータは、Opusバージョン7.2.139.1294(Bruker)ソフトウェアを使用して処理した。FT-IR分析用に金コーティングされたガラス基材を提供した。
【0134】
X線光電子分光法(XPS)。測定を、Phoibos150分析装置(SPECS EAS10P GmbH,Berlin,Germany)を用いて、超高真空条件(基準圧力10-10mbar、残留圧力約10-7mbar)で実施した。単色のAl Kα線をX線源として使用した(1486.6eVおよび300W)。電子エネルギー分析装置を、50eVの通過エネルギーで操作した。半球型分析装置を、サンプル表面に対して垂直に配置した。データを、滞留時間0.5秒で、eVごとに収集した。電荷を補償するために、20eV未満のエネルギーのエレクトロンフラッドガンを使用した。サンプルを、シリコン基材上に堆積させた。すべてのデータを、CasaXPSバージョン2.3.17PR1.1(Casa Software LTD,Teignmouth,UK)およびOriginProバージョン8.0988(OriginLab Corporation,Northampton,MA,USA)ソフトウェアで処理した。
【0135】
走査型電子顕微鏡(SEM)。画像を、走査型電子顕微鏡(SEM)(FEI Quanta650FEG,Thermo Fisher Scientific,Eindhoven,The Netherlands)を二次電子モードで使用することによって、ビーム電圧20kV、チャンバー圧力10-5Paで得た。作動距離を10mmに設定し、最終画像について様々な倍率を試験した。サンプルを、アルミニウムのスタブ上にフリースタンディング膜を堆積させることによって調製した。分析を行う前に、スパッタコータ(LeicaEMACE600)を使用して、表面に薄いプラチナコーティング(5nm)を堆積させることにより、サンプルを金属化した。アルミニウムタップ付き支持体(ピンスタブ)を提供した。
【0136】
原子間力顕微鏡(AFM)。様々なサンプルの表面トポグラフィーイメージングは、ビーム形状のシリコンカンチレバー(Nanosensors,公称力定数:5Nm-1、先端半径:約7nm)を使用して、タッピングモードで、Agilent5500AFM/SPM顕微鏡(Keysight Technologies,Santa Clara,CA,USA)において、PicoScan5バージョン1.20(Keysight Technologies)ソフトウェアと組み合わせて、大気中で実施した。外部X-Y位置決めシステム(閉ループ、12NPXY100E、(nPoint,USA))を使用した。画像処理は、オープンソースソフトウェア:WSxMバージョン3.1(Nanotec Electronica,Madrid,Spain)およびGwyddionバージョン2.46(CMI,Brno,Czech Republic)を使用して行った。
【0137】
接触角(CA)。静的接触角測定を、EasyDrop接触角計(KRUSS GmbH,Hamburg,Germany)を使用して、15μLの水滴を用いて行った。各膜を、表面全体の平均を得るために3つの異なる点で測定した。測定は、液滴の堆積の約1分後に行った。
【0138】
光学顕微鏡および蛍光顕微鏡(OM)。画像を、Zeiss Axio Observer Z1m(Carl Zeiss AG,Jena,Germany)を使用して、透過モードで得た。膜を、ガラス基材上に接着させた。光学画像を、明視野で撮影し、蛍光画像を、異なる蛍光プローブDAPIとAlexa488との間で交換することによって得た。
【0139】
紫外可視分光法。紫外可視分光法(UV-vis)は、Cary4000UV-vis分光計(Agilent Technologies,Santa Clara,CA,USA)を使用し、波長範囲200~800nmおよび光路長1cmの石英キュベット(QS10mm)を使用して実施した。ベースラインを、純粋な溶媒のブランクサンプルを用いて補正した。すべての測定を、大気条件下で行った。
【0140】
2.2生物学的特徴付け
a)細胞培養。膜の試験のために、様々な細胞株を使用した:ヒト子宮頸がん細胞HeLa(ATCC(登録商標)CCL-2)、線維芽細胞株NIH/3T3(ATCC(登録商標)CRL-1658)、脂肪由来間葉系ASC細胞(ATCC(登録商標)PCS-500-011)は、LGC Standards S.L.U.(Barcelona,Spain)から購入した。基礎培地(DMEM、Glutamax、およびグルコース)にはすべて、10%ウシ胎児血清、100μL/mLペニシリン、および100μg/mLストレプトマイシン(LifeTechnologies,ThermoFisherScientific,Waltham,MA,USA)を補充した。すべての細胞培養物を、5~10%CO雰囲気下で、37℃の加湿インキュベーター内で維持した。
【0141】
b)膜の分解。マウス血漿中の膜の安定性を、3ヶ月にわたって様々な時間間隔で測定した。この目的のために、膜をマウス血漿(BioIVT,Hicksville,NY,USA)と共にpH7.4、37℃でインキュベートした。次に、サンプルをSectra/Por(登録商標)透析チューブ(Spectrum,New Brunswick,NJ,USA)に入れ、1~3kDaの分子量カットオフ(MWCO)、pH7.4で、20mLの1xPBSに対して透析した。3つのアリコートを事前に定義した時点(5分、10分、1時間まで残り10分ごと、10時間まで30分ごと、12時間、16時間、20時間、1日、2日、3日、5日、7日、および3ヶ月完了後は毎週)に採取し、紫外可視分光法によって測定した。測定は、カテコール部分に関連するシグナルに相当する250~450nmの範囲のバンドの検出に焦点をあてた。前述の領域でのバンドの出現ならびにその成長は、膜の進行性分解に関連し得る。透析バッグの外側から得た液体抽出物を、膜の分解から生じる潜在的な副生成物の細胞毒性を決定するために、異なる細胞株(HeLaおよびNIH/3T3)を使用して、in vitroで試験した。
【0142】
c)In vitro細胞生存率試験。細胞を48ウェルプレートに15000細胞/ウェルの密度で添加し、24時間接着させた。次いで、0.8mmのディスクに切断した異なる種類の膜を4連でウェルに添加し、プレートをインキュベーターに戻した。細胞呼吸に関するMTTおよびPrestoBlue(商標)アッセイを、24時間および72時間のインキュベーション後に実施した。
【0143】
(i)MTTアッセイでは、20μLの5mg/mLチアゾイルブルーテトラゾリウムブロミド(MTT、Sigma-Aldrich)溶液を各ウェルに添加し、2時間インキュベートした。細胞を乱すことなく上清を吸引し、150μLのジメチルスルホキシド(DMSO)を各ウェルに添加して、代謝活性細胞中のMTTの代謝からのホルマザン塩を溶解した。完全に溶解後、BioTek MXプレートリーダー(BioTek Instruments Inc.,Winooski,VT,USA)を使用して、540nmで吸光度を読み取った。細胞生存率のパーセンテージを、各ウェルの吸光度をビヒクル(1xPBS)のみで処理した対照ウェルの対応する値で割ることによって計算した。少なくとも4つの独立した実験を異なる日に実施した。
【0144】
(ii)PrestoBlue(商標)アッセイでは、最終濃度15μMになるまで10μLのレサズリンを培地に添加し、Victor3プレートリーダー(PerkinElmer,Waltham,MA,USA)を用いて、励起波長531nmおよび蛍光波長572nmで蛍光を読み取った。MTTアッセイと同様に、少なくとも4つの独立した実験を実施し、ビヒクル処理細胞に対して細胞生存率を計算した。
【0145】
d)接着、増殖および細胞分化。表面膜上の細胞の接着を、前述のすべての細胞株について試験した。滅菌生検パンチを使用して、膜を0.8mmのディスクに切断し、PBSを含む48ウェルプレートに入れた。次に、PBSを除去し、膜がウェルの底を覆うようにした。50μlの培地に加えた細胞(25000細胞/膜)を膜に播種した。その後、膜を30分間インキュベートし、この時間の後、ウェルに350μlの培地を入れた。細胞を含む膜を異なる時間:1日、3日、7日、14日、30日インキュベートした。
【0146】
各時点の後に、膜をPBSで少なくとも5回洗浄して、非接着細胞を除去した。各細胞型および膜の接着、増殖および細胞分化を評価するために、異なる基準を確立した。接着に関しては、非接着細胞を除去するために膜をPBS中で少なくとも5回洗浄した。さらに、画像解析ソフトウェア(ImageJ)を使用して表面の細胞を計数し、異なる2つの面に異なる時点で接着した細胞を計数し、細胞の密度を決定した。増殖を、一般的なin vitro細胞培養で起こる細胞ネットワークの形成および特定の方向への優先的成長を光学顕微鏡および/または電子顕微鏡で分析することによって評価した。最後に、ASC細胞の細胞分化を評価し、光学顕微鏡および/または電子顕微鏡を使用した様々な形態および細胞構造の観察を通じて、様々な細胞型の形成を特定した。ASC細胞株による細胞分化の実験では、培地を増殖因子(TGFβ3およびBMP6)で濃縮した。蛍光顕微鏡および電子顕微鏡による観察のために、細胞をホルムアルデヒドで1時間処理し、その後PBSで3回洗浄した。細胞を含む膜を、PBSと共に冷蔵庫に保管した。蛍光イメージングの場合、細胞を、製造業者が示す仕様に従って、Live/Deadキットテスト(Thermo Fisher Scientific)で事前に染色した。具体的には、SEM分析の場合、PBSを除去し、次いで、漸増濃度のEtOH溶液(30%、50%、70%、80%、96%および100%)によって洗浄した。次に、細胞をヘキサメチルジシラザンで3回洗浄し、室温で一晩乾燥させた。最後に、細胞を含む膜を画像取得のためにSEMスタブに取り付けた。
【0147】
e)In vivoアッセイ
動物実験は、地域および州の法律に従って、地域の倫理委員会によって承認された。このアッセイのために、Sprague Dawleyラット(雄12匹、雌12匹)を購入した(Envigo,Indianapolis,IN,USA)。第一に、膜のin vivo接着性を試験した。これを行うために、膜を膝関節に配置し、余分な血液および他の体液をガーゼで乾燥させた。本発明の膜は接着させたままとした。次いで、創傷を縫合し、ラットを安楽死させた3日後および7日後に移植された膜を検査した。別の実験では、ラットに関節損傷を誘導させて軟骨を除去し、膜を骨に直接接着させて、in vivoでの接着を確認した。これらの実験は、官能基化膜および非官能基化膜、ならびに膜上の細胞(ASC細胞株)が有る場合およびない場合に実施した(n=5)。一方で、炎症、血腫、または紅斑の可能性を観察するために、膜を皮下および筋肉に埋め込むことによって忍容性試験を実施した。これらの試験を、4日間および8日間実施し、皮膚の状態を肉眼で確認し(刺激または発赤の観察)、安楽死後、周囲組織への何らかの損傷効果を観察した。すべての試験を、比較を目的として、本発明の膜とPEIベースの膜の異なる製剤に対して実施した。
【0148】
3.本発明の膜の合成
対応するカテコール誘導体およびアミン誘導体を反応容器内に固体として入れ、アミン誘導体は、アミンのモル比(1:1.5)過剰であった。その後、PBSの添加を行い、溶液のpHを7.4に調整した。反応容器を直径2mmの穴を有するパラフィルム(登録商標)で覆い、酸素の導入を可能にした。フリースタンディング浮遊膜の形成を、300rpmの磁気撹拌下、室温で行った。重合反応は、カテコール誘導体の酸化およびアミン系リガンドとの反応を通して液体と空気の界面で起こり、物理的基材または他の二次分子によるin situでの基材の形成は必要なかった。24時間後、フリースタンディング浮遊膜を単離する準備ができた。以下のin vitroおよびin vivo試験で使用した膜は、無菌状態(空気汚染物質を回避する)を保証するために、生物学的安全キャビネット(Biosafety Class II Cabinet Telstar BioVanguard)内で合成した。
【0149】
膜の合成後、無水エタノールで一晩処理した。
【0150】
表1は、試薬およびIRの特性をまとめる。
【0151】
【表1】
【0152】
4.比較目的のための膜の合成
比較目的の膜も、上記のプロトコルに従って合成したが、試薬および/または反応条件のうちの1つを以下の表2に示すものに変更した。
【0153】
【表2】
【0154】
5.膜の官能基化
(生体)分子を、(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノ)プロピルカルボジイミド、塩酸塩(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を使用したカップリング反応を介して固定した。このカップリング反応により、膜に露出したアミノ基と、官能基化された(生体)分子のカルボキシル基との間に、アミド結合が形成される。一般的な手順として、形成された膜を、磁気撹拌(500rpm)下で、膜と比較して、PBSを含む直径の大きいペトリ皿に入れた。次いで、EDCの水性溶液(5mM)を水相に注入した。30分後、活性(生体)分子をNHS剤と共に水相に注入した。抗菌部分(バニリン酸)または蛍光色素(カルセイン)を水(10mM)に溶解し、その後NHS(10mM)と混合した。反応物を60分間ゆっくり撹拌した。次に、官能基化した膜をペトリ皿から単離し、蒸留水のフラックスで少なくとも5回洗浄し、真空乾燥させた。このアプローチにより、表面に露出したアミノ基が豊富な膜組成により、高収率(官能基化分子に応じて約55~60%)で様々な官能基化が可能になった。官能基化は、膜の両面で、独立して制御および誘導することができ、これにより、膜の化学的なヤヌス挙動を向上させる。最初に膜のペーシングを行った(paced)。
【0155】
このアプローチによる様々な官能基化が行い、代表的な例として、2つの特定の症例を以下に示す。
【0156】
6.結果および考察
6.1.膜の機械的特性
本発明の膜を、一般的なピンセットを使用することにより、容易に単離し、適切に取り扱い、保管のために他の容器に移した。得られた膜は、膜の一端を180度曲げて、膜の他端に接触させても破損することなく、高い可撓性を呈した。これを、湿潤膜および乾燥膜の両方において実施したが、クラックまたは裂け目は、SEMでは観察されなかった。この曲げ動作を、手動で、少なくとも50サイクル行い、膜の可撓性を確証した。さらに、ねじり動作を行って膜の可撓性の限界を確認したところ、優れた堅牢性が示された。
【0157】
最初に、FT-IRおよびXPSを用いたいくつかの測定を通して、膜がカテコールアミンベースの膜であることを確認した。カテコール誘導体およびアミン系リガンドの化学的性質に応じて、異なる周波数範囲のFT-IRスペクトルを評価した。最初に、カテコール(3500~3000cm-1)およびアミン(1700~1500cm-1)基が存在することが、架橋ポリマーの形成の最初の指標であった。その後、カテコールまたはアミン系分子の種類に応じて、特定の範囲内において特定のバンドが特定された。例えば、アミド結合に対応するバンドは、1650~1500cm-1の範囲および1290~1200cm-1、特に、1-7(1500~1260cm-1)、1-8(1499~1268cm-1)、1-9(1519~1261cm-1)、1-10(1508~1260cm-1)、1-11(1547~1281cm-1)、1-12(1511~1263cm-1)、2-7(1546~1270cm-1)、2-8(1515~1260cm-1)、2-9(1635~1210cm-1)、2-10(1595~1261cm-1)、2-11(1529cm-1)、2-12(1538~1204cm-1)、3-7(1511~1231cm-1)、3-8(1231cm-1)、3-9(1252cm-1)、3-10(1564~1251cm-1)、3-11(1209cm-1)、3-12(1509~1236cm-1)、4-7(1567~1251cm-1)、4-8(1246cm-1)、4-9(1597~1250cm-1)、4-10(1583~1247cm-1)、4-11(1267cm-1)、4-12(1527~1223cm-1)、5-7(1219cm-1)、5-8(1530~1276cm-1)、5-9(1230cm-1)、5-10(1583~1201cm-1)、5-11(1261cm-1)、5-12(1509~1233cm-1)、6-7(1576~1240cm-1)、6-8(1521~1277cm-1)、6-9(1284cm-1)、6-10(1654~1255cm-1)、6-11(1209cm-1)および6-12(1587~1210cm-1)の間で出現し、イミンは、1700~1600cm-1の範囲、特に1-7(1700cm-1)、1-9(1623cm-1)、1-11(1611cm-1)、2-7(1701cm-1)、2-8(1628cm-1)、2-9(1635cm-1)、3-7(1638cm-1)、3-9(1678cm-1)、3-11(1661cm-1)、3-12(1611cm-1)、4-7(1652cm-1)、4-8(1624cm-1)、4-12(1627cm-1)、5-7(1654cm-1)、5-9(1672cm-1)、6-7(1703cm-1)、6-8(1705cm-1)、6-9(1653cm-1)および6-12(1643cm-1)で出現し、ならびに脂肪族炭素の組み込みは、3000~2500cm-1の範囲、とりわけ、特に、1-7(2850cm-1)、1-8(2810cm-1)、1-9(2842cm-1)、1-11(2632cm-1)、1-12(2853cm-1)、2-7(2761cm-1)、2-8(2747cm-1)、2-9(2623cm-1)、2-11(2617cm-1)、2-12(2821cm-1)、3-7(2777cm-1)、3-8(2781cm-1)、3-9(2671cm-1)、3-11(2861cm-1)、3-12(2817cm-1)、4-7(2891cm-1)、4-8(2761cm-1)、4-9(2817cm-1)、4-11(2732cm-1)、4-12(2801cm-1)、5-7(2791cm-1)、5-8(2745cm-1)、5-9(2891cm-1)、5-11(2893cm-1)、5-12(2781cm-1)、6-7(2893cm-1)、6-8(2871cm-1)、6-9(2872cm-1)、6-11(2878cm-1)および6-12(2873cm-1)であった。芳香族部分(例えば、1-13)を有するアミノベースのリガンドを使用して合成された膜の場合、コポリマー構造への環の取り込みは、2765cm-1での特定のバンドの出現を通して検出された。さらに、カテコール-リガンドと芳香族系リガンドから露出したアミノ基との間の結合は、1500および1327cm-1に2つの新しいバンドが出現することによって確認された。最後に、1175および1120cm-1のバンドのシフトは、芳香族末端アミノ基との新しい結合形成によるものであった。得られた架橋構造へのカテコール部分およびアミノ部分の組み込みは、それぞれ3500~3000cm-1および1700~1500cm-1の範囲のバンドによって確認されたことは、言及に値する。
【0158】
その後、XPSにより、分子の化学環境が変更されていることが確認され、カテコール分子とアミノ誘導体分子と間の共重合による特異的結合の形成が確認された。この理由により、C、N、Oシグナルに高分解能測定が行い、CNOHのパーセンテージを決定し、このように膜の最終組成を示した。本発明のすべての膜において、共存するキノン/ヒドロキシル基の量が、空気接触面で優勢であるアミノ末端基と比較して、水接触面で多かったことは、言及に値する。接触面に応じて官能基の露出がこのように異なることは、官能基化時において、興味深く、これにより、特定の分子を固定するために、それぞれの面を選択することができる。
【0159】
本発明の膜とは対照的に:
-PEIベースの膜は、高いpH(約11)を必要とし;これは、操作し、曲げたときに、割れ目が形成されたことにより、可撓性が非常に低く、得られた膜の滑らかで明るい外観によりプラスチック様外観を示した。さらに、トポグラフィックAFM測定により、両面において粗さが低いことが強調された。これは、表面への膜の適応性が低いことを示す;
-膜コーティング基材:基材上での合成は成功したが、基材に対する接着が高く、形成された膜が脆い性質であるため、基材からの剥離は非常に困難であった。小さい断片のみ表面から出すことができ、このため、さらなる生体応用が妨げられた。この理由により、基材上で行われる膜の操作および取り扱いは、本発明の膜と比較してより困難であり、効率も低い;
-炭化水素鎖の一端にのみ末端アミンを有する脂肪族モノアミンを使用した場合には、試みを行ったにもかかわらず、膜は得られなかった。
【0160】
6.2.形態学的特徴付け(光学顕微鏡、SEM、AFM)
本発明のフリースタンディング膜は、形態学的にヤヌスの特徴を示した。SEMによりそのトポグラフィーを調べたときに、フィルムの両面が異なることが判明した。水と接触している表面には、同じカテコールアミン材料のナノ粒子が埋め込まれていた。これらのナノ粒子は、副生成物として形成され、沈殿物として水接触面に埋め込まれて見出された。沈殿したNPを遠心分離し、FT-IRによる特徴付けのために単離し、そのカテコール-アミン組成を確証した。さらに、膜の形成を経時的に追跡し、様々な時点で界面からアリコートを採取し、SEMにより観察した。SEM画像は、NPが埋め込まれるプロセスを示した。反対に、空気に露出した面は、埋め込まれたNPを示さず、滑らかで損傷のない状態であった。SEMで得られた画像(図1)の分析により、異なる表面パターン化を有する膜の形成が強調された。次の節で説明するように、このパターン化は、膜の生体組織のみでなく、細胞への最終的な接着にも影響を及ぼす。
【0161】
本発明の膜が形成され、超純水を使用して洗浄すると、膜の水接触面のナノパターン化が不変のままであること、すなわち、ナノ粒子が表面に埋め込まれたままであることもまた、注目すべきことであった。水接触面でのこの予想外のナノパターン化により、膜により粗さの大きい表面がもたらされ、これは、細胞の接着にとって都合がよい(以下にさらに示す)。
【0162】
このナノパターン化は、合成されたPEIの比較用膜および基材では観察されず、SEMによって観察されるように、両面が類似のトポグラフィーを有していたことは、言及に値する。これらの比較例では、両面は類似の表面を呈し、それらの間にいかなる異なる特徴もなかった。
【0163】
特に、PEIベースの膜は、PEIが形成された構造内でPEIが完全に分離され、面に応じて2つの異なるドメインおよび異なる多孔性を形成するため、化学的なヤヌス特性を示した。しかしながら、ナノパターン化は、検出されなかった。PEI膜によって示されるプラスチック様形態(滑らかな剛性面)により、PEIベースの膜の粗さは、SEM画像を分析した場合に、両面で非常に低く、類似の特性を示した。この粗さが少ないことおよびナノパターン化がないことにより、次の節で考察するように、膜への細胞の接着が困難になる。
【0164】
基材から得られた膜については、この比較用膜では、基材を使用することにより、界面(本発明の膜)での浮遊膜の形成が回避されるため、ならびにその極性により水相および空気相での分子の秩序が起こり得ないことから、膜の両面が非常に類似しており、そのためヤヌス特性を示さなかった。
【0165】
フリースタンディング膜の表面を詳細に調査するために、SEMおよびAFMによるさらなる試験を実施した。最初に、本発明の膜の厚さの分析にSEMを使用した(表3)。反応時間の延長により、膜の厚さが増加したことは、言及に値する。この効果の1つの説明は、時間の経過により、重合材料の量が増加したことによるものである。次に、空気接触面および水接触面の両方のトポグラフィー特性を測定することにより、一部の膜の粗さを決定するためにAFMを実施した(表4)。
【0166】
さらに、AFMトポグラフィープロファイルを評価して、SEMによって得られた厚さ測定値を確認した。
【0167】
定性的観察として、SEM画像は、膜の接触面に応じて、異なる粗さを示した。特に、水接触面は、予想外に高い粗さを示した。この理由から、AFMを、水接触面で実施した。本発明の膜は、ナノ粒子が埋め込まれており、表面の粗さが最も高いことを示した。高さ約275nmの様々な域の規則的なプロファイルを使用して、いくつかの領域を調査した。形態に関しては、膜に埋め込まれたナノ粒子は、SEM観察結果と相関した。空気接触面の場合、表面の粗さは10nm未満であり、より滑らかな表面であることが判明した。最後に、プロファイルの高さは、膜に応じて200~600nmの範囲であり、SEMによって推定された厚さの範囲内で一致する。
【0168】
最後に、以下の表4に示すように、異なる膜の両面の粗さを測定した。
【0169】
【表3】
10mMのアミンベースのリガンド濃度における、異なる反応時間での本発明の膜の厚さの値。
【0170】
【表4】
【0171】
興味深いことに、水と接触する面は、ナノ粒子が埋め込まれているため、より大きい粗さを呈したが、空気接触面は、より滑らかである。この特性により、膜に付加価値が付与され、PEIとの比較用合成膜で観察されたように、水接触面は、(細胞の接着が非常に少なく、細胞の増殖により密度が低くなる)滑らかな表面と比較して、細胞の良好な接着を促進する(以下を参照されたい)。さらに、基材を使用して合成された膜は、両面に類似の特徴を示し、両面の粗さは約3.5nmであった。これは、膜が、表面に埋め込まれることができないナノ粒子の形成を回避する基材に接触して合成され、ナノパターン化を形成するという事実による。
【0172】
まとめると、形態学的結果により、本発明の膜が形態学的観点からヤヌス特性を有することが明示された。これらの表面技術(SEMおよびAFM)により、面に応じて異なるトポグラフィーを示すのみでなく、粗さも評価した。また、各膜種について、SEMおよびAFMにより膜厚を測定した。すべての場合において、類似の結果が得られ、これにより、カテコールアミンベースの膜の形成に対する本発明のアプローチの再現性および普遍性が実証された。
【0173】
最後に、光学顕微鏡を使用して、膜の特徴付けを行った。これは、観察された光と膜の表面との相互作用によって行われ、表面の厚さに応じて異なる色の反射で表現された。この現象により、膜厚の差および表面上のナノパターン化が両方とも確認された。
【0174】
上記は、それぞれの場合のFT-IR、XPS、および接触角を測定することによって確認された。この特徴付けを、本発明の膜および比較用膜のすべてに対して行った。すべての場合において、類似の結果が得られた。
【0175】
FT-IR分光法の結果は、膜に存在する種の情報が得られ、化学組成を確認するために材料全体を読み取った。
【0176】
スペクトルを分析し、以下の特徴を共有した。3500~3000cm-1の範囲の広域バンドは、ヒドロキシル(-OH)の伸縮振動に対応し、アミン(-NH)基は、1700~1500cm-1の範囲にあり、それらのピークは、それぞれカテコール誘導体およびアミンベースの化合物のスペクトルにおいて認識され得る。3000~2500cm-1の範囲のピークは、脂肪族炭素(C~H)の非対称および対称伸縮振動に関連している。1700cm-1のピークは、キノン(C=O)の存在に対応した。1500~1400cm-1の範囲のシグナルは、カテコール誘導体のカテコール/キノン環からのC=C-HおよびC=C振動に割り当てることができる。1200~1450cm-1の範囲のピークは、アルキルまたは芳香環に結合する第二級アミンに属する。
【0177】
したがって、膜の化学組成は、試薬の官能基と一致する。行ったすべての組み合わせにおいて、FT-IRスペクトルは、類似の結果を示し、アミノ基およびカテコール基の特定のバンドが存在していた。さらに、特定の各カテコール誘導体に対して、分子の官能基に応じた他の代表的なシグナルを割り当てることができる。これらの結果はまた、確立された方法論に従ってカテコールベースの分子とアミノベースの分子との間の共重合が成功したことも確認した。
【0178】
最後に、接触角装置を使用して、膜の濡れ性を試験した。測定を行う前に、膜を170℃のオーブンに2時間入れて完全に乾燥させ、すべての水分子を除去するために真空下で保管した。この乾燥プロセスの後に、すべての水分が失われたことを示す最低重量に達するまで膜の重量を測定した。これらの測定により、膜の疎水性/親水性特徴を決定した。他の特徴付け技術で観察されたように、濡れ性は、測定する面に応じて異なった。水接触面は、接触角が約25度でより高い親水性挙動を有するが、空気接触面は、接触角が約40度でより高く、これは、疎水性が高いことを示す。それにもかかわらず、膜は全体として、中間の親水性/疎水性の挙動を示す。この表面特性を、膜上に存在する露出した官能基を使用して、疎水性部分または親水性部分を固定することによって変化させることができる。濡れ性を用いて、適用される最終組織に応じて、膜の接着を調整することができる。例えば、水接触面において膜が高親水性を有する(より多くの細胞が成長できる)ことは、損傷した組織に膜を直接接着させるために都合がよいが、空気接触面でより高い疎水性を有することは、周囲領域において、他の組織との望ましくない接着を回避する。
【0179】
6.3.官能基化
6.3.1.抗菌分子による官能基化
生体材料を医療に応用する必要がある場合の主な問題の1つは、感染リスクであり、これは特に再生プロセスにおいて関連しつつある。この理由により、膜に抗菌性部分を組み込むことは、副作用なく、損傷した組織の再生プロセスを向上させることができる。
【0180】
したがって、本発明者らは、上述の手順に従って、EDC/NHSカップリング反応を通して、周知の抗菌活性を有するバニリン酸で膜を官能基化した。試験を、概念実証として6つの異なる膜(1-7、1-8、2-7、2-8、3-9、3-10)で行った。
【0181】
共有結合による接着を確認するために、様々な手段で膜の特徴付けを行った。FT-IRスペクトルにより、遊離アミノ基およびバニリン酸のカルボン酸を通してのアミド結合形成に割り当てられている1665cm-1のバンドの出現が確認された。さらに、バニリン酸に由来する特定のピークは、官能基化膜に対応するスペクトルに組み込まれていた。
【0182】
追加のXPS測定は、非官能基化膜と官能基化膜とを比較したときに、C1およびO1に対応するスペクトルの有意な変化を示した。これらの結果は、抗菌部分が膜に組み込まれていることを確証した。あらゆる未反応物質を除去するために、官能基化膜を強力に洗浄したことは、言及に値した。
【0183】
最後に、非官能基化膜および官能基化膜の表面で、接触角測定を行った(表5)。これらの結果は、膜が官能基化されると、接触角値が増加することを強調した。これらの測定値は、表面膜が修飾されていることを間接的に示す。
【0184】
【表5】
【0185】
6.3.2.蛍光部分による官能基化
膜に付加価値を与えるもう1つの興味深い官能基化は、使用されるバイオイメージング技術によるモニタリングおよび可視化に有用である蛍光分子による官能基化である。したがって、膜(1-7、1-8、2-7、2-8、3-9、3-10)を、蛍光色素(カルセイン)により官能基化した。色素の膜への固定を、上記の手順に従って、EDC/NHSカップリング反応によって達成した。官能基化合成後、蛍光顕微鏡を使用して、膜の特徴付けを行った。
【0186】
膜は、蛍光色素による官能基化に成功したことが見出された。カップリング反応を通しての固定は安定であり、蛍光顕微鏡によって蛍光シグナルの損失が観察されなかったため、乾燥膜および浸漬膜の両方において、数週間経過後も依然として変化していなかった。これらの試験は、官能基化膜を水中に維持し、少なくとも4週間の様々な時点で蛍光を測定することによって実施した。さらに、完全に乾燥させて、真空下で保管した膜の蛍光も、同じ期間内にチェックした。堅牢な官能基化および蛍光活性の保持を、a)蛍光顕微鏡法により蛍光を測定すること、およびb)透析実験による色素送達後の蛍光を測定することによって確証した。この最後の場合、膜を透析チューブバッグ(細孔径4~6kDaのSpectrum(登録商標))に入れ、磁気撹拌(500rpm)下、室温で分解試験を実施した。異なる時点で異なるアリコートを透析バッグの外側から取り出し、蛍光光度計で測定した。蛍光スペクトルは、色素に関連する発光バンド(カルセイン、λemission=521nm)がないため、3ヶ月後に顕著な色素の放出はなく、官能基化膜が水中で安定であることを示した。
【0187】
本発明の官能基化されたままの膜は、約450msの時間の露光で非常に高い蛍光を示し、これは、シグナルを飽和させることなく、画像を取得するには十分であったことは、言及に値する。さらに、抗菌部分の場合と同様に、FT-IRスペクトル測定により、蛍光色素による膜の官能基化が確証され、カルセイン試薬に対応する典型的なバンド(1750、1630、1445、および1280cm-1)が出現した。さらに、接触角測定では、膜の官能基化後に、水接触角が約30°増大することが示され、これにより、表面の改質が成功したことが示された。
【0188】
6.4.生物学的特徴付け
6.4.1.分解
本発明のすべての膜の分解性を、透析実験を使用して、生理学的媒体(PBS、pH7.4、37℃)中で試験した。様々な時点で、透析バッグの外側からアリコートを採取し、UV-visで測定して、カテコール基に対応するバンド(カテコール誘導体に応じて、250~450nmの範囲)が出現するかを検出した。
【0189】
このモニタリングを4ヶ月の間行ったが、驚くべきことに、カテコールからのシグナルは測定されなかった。これは、本発明の膜が堅牢であり、著しく分解しないことを意味する。この安定性は、すべての再生プロセスに関して膜を有するようにするために、組織再生にそれらを応用するために必須である。膜は、組織の再生を促進するのに十分な時間その構造を保持する。
【0190】
透析実験から得られた抽出物(アリコート)も、異なる細胞株でin vitroにおいて試験したことである。これらの結果から、分解プロセス中に膜から細胞毒性の副生産物が放出されないことが実証された。
【0191】
本発明の膜とは対照的に、従来技術のPEIベースの膜は、本発明の膜と比較したときに、著しく早く分解し、透析実験では2週間後に微量のPEIを検出した。このPEIの送達は、膜の堅牢性に影響を及ぼすものであった。これのみでなく、PEIは、生物学的環境における毒性も報告されており、異なる細胞株において、非常に細胞傷害性である。この毒性により、PEIベースの膜の組織再生および他の生体応用への応用が妨げられた。
【0192】
6.4.2.細胞生存率
本発明のすべての膜は、官能基化および非官能基化の両方について、上記の実験の節で言及したすべての細胞株においてin vitroで試験した。結果は、14日を超える長期間であっても、毒性のない優れた生体適合性を示した。細胞は、成長、増殖、および分化することが可能であった(後者は、ASC細胞の場合を使用)。上述のとおり、4ヶ月間の分解性アッセイから得られた抽出物も、様々な細胞株中で試験した。試験を、72時間行ったが、毒性の生成物はいずれも送達されないことが示された。
【0193】
細胞は、膜が完全に覆われるまで成長し、増殖し、膜によって誘導される細胞死の兆候がいずれもないことは、言及に値する。
【0194】
さらに、PEIベースの膜の試験を行った。結果は、本発明の膜と比較して、より高い細胞傷害性を示した。24時間後、本発明のすべての膜は、試験したすべての細胞株において90%を超える細胞生存率を示した。しかし、PEIベースの膜は、毒性の増加を示し、細胞生存率は、約65%であった。この高い毒性は、PEIベースの膜の急速な分解に関連しており、周知の細胞傷害作用を有するPEIの放出を誘導する。これが、PEIベースの膜を生物学的用途に使用できない主な理由の1つである。
【0195】
6.4.3.細胞の接着および増殖
異なる細胞株を細胞培養プレートの底に置いた膜上に播種し、異なる時点で細胞培養培地と共に21日間インキュベートした。膜を、その特徴付けのために、様々な時点で抽出し、洗浄した。
【0196】
本発明の膜の場合、細胞は、膜表面(両面)に完全に接着し、ナノパターン化された面である水と接触する面で、優先的に成長することが見出された。この優先的な成長は、空気接触面と比較して、水接触面の細胞密度が高いことにより観察された(45%の増加)。光学顕微鏡および電子顕微鏡により様々な画像を撮影した。細胞は、一般的な細胞培養プレートで観察されるのと同じメカニズムを通して膜に接着し、その天然の細胞形態学および好ましい配向での増殖を示した。細胞を蛍光部分で標識し、蛍光顕微鏡を使用して細胞を観察し、またSEMで観察するために細胞を固定した。膜を洗浄して、非接着細胞を除去した。
【0197】
最後に、PEIベースの膜は、非常に低い細胞接着性および非常に低い細胞密度を示した。本発明の膜と比較すると、PEIベースの膜上の細胞密度は、約70%減少した。これは、PEIの毒性の性質と併せて、このポリイミンで作られた膜の表面特徴に関連しており、材料と細胞と間の相互作用を妨げ得る。
【0198】
6.4.4.Ex vivo接着
膜の接着を、ex vivo組織(ブタの軟骨および皮膚)でも試験した。この組織は、the Veterinary Faculty of the Autonomous University of Barcelonaが、他の目的で使用するために安楽死させた動物から直接採取したものである。この目的は、様々な種類の生体組織および湿潤条件における膜の接着を確証することであった。このために、本発明の異なる膜(1-7、1-8、1-9、1-10、1-11、1-12、2-7、2-8、2-9、2-10、2-7、2-8、2-9、2-10、2-11、2-12、3-7、3-8、3-9、3-10、4-7、4-8)を、様々なサイズに切断して、組織に接着させる。試験は、非官能基化膜と官能基化膜、および細胞を含む膜と細胞を含まない膜によって実施した。ガーゼを使用して、接着した膜が動くことなくその領域に留まり、この膜に影響を与えることなくその領域を洗浄することができた。極端な条件下での接着を試験するために、膜が接着している生体組織を数ヶ月間、水に浸漬させ、膜が組織から剥離することなく、依然として組織に接着していることが観察された。
【0199】
6.4.5.In vivo
In vivoアッセイは、雌性および雄性Dawley Spragueラットを用いて実施した。異なる組成の7つの膜(1-7、1-12、2-7、3-7、3-11、5-1および5-11)を、ASC細胞の存在下および非存在下で試験した(上記参照)。
【0200】
膜を、軟骨、骨、筋肉に配置し、拒絶のシグナルもなく、組織への優れた接着を示した。また、炎症、紅斑、および浮腫は、観察されなかった。これらの予備的な結果は、優れたin vivo忍容性および生体適合性を実証した。
【0201】
比較目的のために、PEIベースの膜の試験を行ったところ、粗さが非常に低く、膜と組織と間の相互作用が欠如しているために、生体組織への接着が非常に低いことが示された。。さらに、これは可撓性に欠けるため、膜を正確に適用することが困難となり、膜が生体組織を適切に覆うことができない結果となった。組織への接着力が低いこと、および剛性により、試験を継続することは不可能で、中止しなければならなかった。
【0202】
引用リスト
非特許文献:
Iacomino M. et al., “Multifunctional Thin Films and Coatings from Caffeic Acid and a Cross-Linking Diamine”, 2017, Langmuir, 33, 9, 2096-2102 (doi:10.1021/acs.langmuir.6b04079);
Ponzio F. et al., “Polydopamine deposition at fluid interfaces”, 2016, Society of Chemical Industry, pages 1-7 (doi 10.1002/pi.5124);and
Suarez-Garcia S. et al., “Copolymerization of a Catechol and a Diamine as a Versatile Polydopamine-Like Platform for Surface Functionalization:The Case of a Hydrophobic Coating”, 2017, Biomimetics, 2(4), 22 (doi:10.3390/biomimetics2040022);

【0203】
条項
完全性の理由から、本発明の様々な態様を以下の番号付き条項に記載する:
条項1。カテコールアミンベースの膜を調製するためのプロセスであって、以下のステップ:
a)カテコール誘導体を、以下からなる群から選択されるアミン:
a.1)式(II)の既知の脂肪族アミン炭化水素
A-B-A’(II)
(式中、
AおよびA’は、同じであるかまたは異なり、-NRR’を表し、
Bは、(C~C20)アルキレン;-OH、ハロゲン、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR、および-NRR’からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C20)アルキレン;(C~C20)アルケニレン;-OH、ハロゲン、-NO、シアノ、O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR、および-NRR’からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C20)アルケニレン;(C~C20)アルキニレン;-OH、ハロゲン、-NO、シアノ、O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR、および-NRR’からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C20)アルキニレン;既知の3員~20員のヘテロアルキレン;および-OH、ハロゲン、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR、および-NRR’からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された既知の3~20員ヘテロアルキレン;既知の3~20員のヘテロアルケニレン;および-OH、ハロゲン、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR10、および-NR11R’11からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された既知の3~20員ヘテロアルケニレンを表し;
Aは、Bビラジカル炭化水素骨格の一部を形成する第1の原子環員に結合し;
A’は、Bビラジカル炭化水素骨格の一部を形成する最後の原子環員に結合し;
「第1」および「最後の」原子環員は、Bビラジカル炭化水素骨格を左から右へ、またはその逆に読んで識別され;
、R’、R、R’、R、R’、R、R’、R、R’、R11、およびR’11は、同じであるかまたは異なり、-H;(C~C10)アルキル;(C~C10)ハロアルキル;(C~C10)アルケニル;(C~C10)アルキニル;ならびに-OH、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR12、および-NR13R’13からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C10)アルキルからなる群から選択され;
、R、R、R、R10およびR12は、-H;(C~C10)アルキル;(C~C10)ハロアルキル;(C~C10)アルケニル;(C~C10)アルキニル;ならびに-OH、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR14、および-NR15R’15からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C10)アルキルからなる群から独立して選択され;
13、R’13、R14、R15およびR’15は、同じであるかまたは異なり、-H;(C~C10)アルキル;(C~C10)ハロアルキル;(C~C10)アルケニル;および(C~C10)アルキニルからなる群から選択され;
「既知の3~20員ヘテロアルキレン」は、C(R、CR、-N-、-NR’-、S-、および-O-からなる群から選択される3~20員からなる既知の飽和鎖を意味し、但し(a)環員の少なくとも1つは、-N-、-NR’-、-S-、または-O-であり;(b)ヘテロアルキレンの骨格を形成する最初と最後の環員は、炭素原子であり;
「既知の3~20員ヘテロアルケニレン」は、C(R、-CR-、-N-、-NR’-、S-、および-O-からなる群から選択される3員~20員からなる既知の不飽和鎖を意味し、但し(a)環員の少なくとも1つは、-N-、-NR’-、-S-、または-O-であり;(b)ヘテロアルキレンの骨格を形成する最初と最後の環員は、炭素原子であり;(c)1つ以上の二重結合を含み;
は、-H;-OH;(C~C10)アルキル;(C~C10)アルケニル;(C~C10)アルキニル;(C~C10)ハロアルキル;O-(C~C10)アルキル;-O-(C~C10)アルケニル;-O-(C~C10)アルキニル;ニトロ、-NRx1x2;-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR16、および-NR17R’17からなる群から選択される1つ以上の置換基により置換された(C~C10)アルキル;ならびにハロゲンからなる群から独立して選択され;
X1、Rx、R16、R17、R’17、およびR’は、-H、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル、(C~C10)アルキニル、および(C~C10)ハロアルキルからなる群から独立して選択される);ならびに
a.2)式(IIbis)の芳香族アミン:
【化9】
(式中、Wは、
-NRR’またはS-S-Lを表し;式中、()は、WラジカルのS原子が芳香環の一部を形成する炭素原子に結合していることを示す;
Lは、-OH、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR28、および-NR28R’28からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C10)アルキル(但し、置換基の少なくとも1つは、-NR28R’28である);-OH、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR28、および-NR28R’28からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C1~C10)ハロアルキル(但し、置換基の少なくとも1つは、-NR28R’28である);-OH、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR28、および-NR28R’28からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C10)アルケニル(但し、置換基の少なくとも1つは、-NR28R’28である);-OH、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR28、および-NR28R’28からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C10)アルキニル(但し、置換基の少なくとも1つは、-NR28R’28である);ならびにおよび-CR-、-N-、-O-、-NR’、-S-からなる群から選択される5員または6員を有する既知の芳香環からなる群から選択され;
、R’、RおよびR’は、同じであるかまたは異なり、H、(C~C10)アルキル;(C~C10)ハロアルキル;(C~C10)アルケニル;(C~C10)アルキニル;-OH、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR29、および-NR30R’30からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C10)アルキル;ならびに-CR-、-N-、-NR’、-O-、および-S-からなる群から選択される5員または6員を有する既知の芳香環からなる群から選択され;
の少なくとも1つは、-NR31R’31であり、他のR(複数可)は、H、-NR31R’31、(C~C10)アルキル;(C~C10)ハロアルキル;(C~C10)アルケニル;(C~C10)アルキニル;ならびに-OH、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、C(O)OR32、および-NR33R’33からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C10)アルキルからなる群から選択され;
およびR’は、H、(C~C10)アルキル;(C~C10)ハロアルキル;(C~C10)アルケニル;(C~C10)アルキニル;-OH、-NO、シアノ、-O-(C~C10)アルキル、-C(O)OR34、および-NR35R’35からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C10)アルキルからなる群から独立して選択され;
28、R’28、R29、R30、R’30、R31、R’31、R32、R33、R’33、R34、R35、およびR’35は、-H;(C~C10)アルキル;(C~C10)ハロアルキル;(C~C10)アルケニル;および(C~C10)アルキニルからなる群から独立して選択される)
によって架橋して、いかなる支持体も存在しない状態で、空気/液体界面にカテコールアミン膜を創出するステップであって、架橋反応が、カテコールおよびアミンがいずれも、撹拌下、特に適切な撹拌下で、可溶であり、pHが、6.5~10、特に6.5~8である液体媒体中で行われるステップ;ならびに
b)ステップ(a)から得られた膜を空気/液体界面から単離するステップ
を含むプロセス。
【0204】
条項2。アミンが、式(II)のアミンである、条項1に記載のプロセス。
【0205】
条項3。AおよびA’が、同じであるかまたは異なり、NHR’を表す、先行条項のいずれかに記載のプロセス。
【0206】
条項4。式(II)の既知の脂肪族アミンが、AおよびA’が同じであるものである、先行条項のいずれか一項に記載のプロセス。
【0207】
条項5。AおよびA’が、同じであり、NHR’を表す、先行条項のいずれかに記載のプロセス。
【0208】
条項6。AおよびA’の少なくとも1つが、-NHを表す、先行条項のいずれかに記載のプロセス。
【0209】
条項7。AおよびA’が、同じであり、NHR’を表し、特に、-NHを表す、先行条項のいずれかに記載のプロセス。
【0210】
条項8。Bが、(C~C20)アルキレン;条項1に定義されたように置換された(C~C20)アルキレン、または、条項1に定義された既知の3~20員ヘテロアルキレンを表す、先行条項のいずれかに記載のプロセス。
【0211】
条項9。Bが、(C~C15)アルキレン;条項1に定義されたように置換された(C~C15)アルキレン、または、条項1に定義された既知の3員~15員のヘテロアルキレンを表す、先行条項のいずれかに記載のプロセス。
【0212】
条項10。Bが、(C~C15)アルキレン、(C~C15)アルキレン、(C~C15)アルキレンまたは(C~C15)アルキレンを表す、先行条項のいずれかに記載のプロセス。
【0213】
条項11。Bが、既知の3員~15員のヘテロアルキレンを表し、特に既知の3員~10員のヘテロアルキレンまたは既知の4員~8員のヘテロアルキレンを表す、先行条項のいずれかに記載のプロセス。
【0214】
条項12。Bが、既知の3員~15員のヘテロアルキレンを表し、特に3員~10員のヘテロアルキレンを表し、環員のそれぞれ1つが、C(R、CR、-NR’-、および-S-からなる群から選択され、式中、RおよびR’が、条項1に定義されたとおりである、先行条項のいずれかに記載のプロセス。
【0215】
条項13。Bが、既知の4員~15員のヘテロアルキレンを表し、特に既知の4員~10員のヘテロアルキレンを表し、環員のそれぞれ1つが、C(R、CR、-NR’-、および-S-からなる群から選択され、式中、RおよびR’は、条項1に定義されたとおりである、先行条項のいずれかに記載のプロセス。
【0216】
条項14。Bが、既知の3員~15員のヘテロアルキレンを表し、特に既知の3員~10員のヘテロアルキレンを表し、
(a)環員のうちの1つまたは2つは、-S-原子であり、他の環員は、C(RおよびCRから選択される炭素原子であり、またはあるいは、
(b)環員の1つまたは2つは、-NR’-であり、他の環員は、C(RおよびCRからなる群から選択される炭素原子であり、式中、Rxは、条項1に定義されたとおりであり;
(c)環員のうちの1つは、-S-原子であり、他の環員は、C(RおよびCRからなる群から選択される炭素原子である;またはあるいは、
(d)環員のうちの1つは、-NR’-であり、他の環員は、C(RおよびCRからなる群から選択される炭素原子であり;
(c)環員のうちの2つは、-S-原子であり、他の環員は、C(RおよびCRからなる群から選択される炭素原子であり;またはあるいは、
(f)環員のうちの2つは、-NR’-であり、他の環員は、C(RおよびCRからなる群から選択される炭素原子であり;
式中、RおよびR’は、条項1に定義されたとおりである、
先行条項のいずれかに記載のプロセス。
【0217】
条項15。式(II)の既知の脂肪族アミンが、式(II1)のアミン、式(II2)のアミノ、および式(II3)のアミン:
【化10】
(式中、、aは、1~20の整数である;b、d、およびeは、独立して1~10の整数であり、より具体的には、b、d、およびeは、同じであり;fおよびgは、独立して1~10の整数であり、より具体的にはfおよびgは、同じであり;より具体的には、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、シスタミン、トリス-(3-アミノプロピル)アミン、およびトリス-(2-アミノプロピル)アミンからなる群から選択される)
からなる群から選択される、先行条項のいずれか一項に記載のプロセス。
【0218】
条項16。アミンが、式(IIbis)の芳香族アミンである、条項1に記載のプロセス。
【0219】
条項17。アミンが、式(IIbis1)の芳香族アミンである、先行条項に記載のプロセス:
【化11】
(式中、Rm、R’m、およびWは、条項1に定義されたとおりである)。
【0220】
条項18。アミンが、式(IIbis)または式(IIbis1)の芳香族アミンであり、Wが、-NRR’を表す、条項1、16~17のいずれかに記載のプロセス。
【0221】
条項19。アミンが、式(IIbis)または式(IIbis1)の芳香族アミンであり、Wが、-NRR’を表し、Rm、R’m、RtおよびR’tが、同じである、条項1、16~18のいずれかに記載のプロセス。
【0222】
条項20。Rm、R’m、RおよびR’が、同じであり、-Hを表す、条項19に記載のプロセス。
【0223】
条項21。RtおよびR’が、同じであり、水素以外である、先行条項のいずれかに記載のプロセス。
【0224】
条項22。RおよびR’が、水素であり、RおよびR’は、同じであり、水素以外である、先行条項のいずれかに記載のプロセス。
【0225】
条項23。RおよびR’のそれぞれ1つが、条項1に定義された芳香環を表す、先行条項のいずれかに記載のプロセス。
【0226】
条項24。RおよびR’のそれぞれ1つが、条項1に定義された6員を有する芳香環を表す、先行条項のいずれかに記載のプロセス。
【0227】
条項25。RおよびR’のそれぞれ1つが、6員を有する芳香環を表し、すべての環員が-CR-であり、Rが、条項1に定義されたとおりである、先行条項のいずれかに記載のプロセス。
【0228】
条項26。RおよびR’が、同じであり、6員を有する芳香環を表し、すべての環員が-CR-環員であり、Rが、条項1に定義されたとおりである、先行条項のいずれかに記載のプロセス。
【0229】
条項27。アミンが、式(IIbis)または(IIbis1)の1つであり、W=NRR’であり、R、R’、RおよびR’のうちの1つ以上は、次式(IV)を有する、先行条項のいずれかに記載のプロセス:
【化12】
(式中、nは、1または2、特に1であり、その他(複数可)は、-Hである)。
【0230】
条項28。先行条項に記載のプロセスであって、ここで、式(IIbis)のアミンは、式(V)または(VI)の1つである:
【化13】
条項29。アミンが、式(IIbis)または式(IIbis1)の芳香族アミンであり、Wが、S-S-Lを表す、先行条項のいずれかに記載のプロセス。
【0231】
条項30。アミンが、式(IIbis)または式(IIbis1)の芳香族アミンであり、Wが、S-S-Lを表し、RおよびR’は、同じである、先行条項のいずれかに記載のプロセス。
【0232】
条項31。アミンが、式(IIbis)または式(IIbis1)の芳香族アミンであり、Wが、S-S-Lを表し、RおよびR’は、-Hを表す、先行条項のいずれかに記載のプロセス。
【0233】
条項32。アミンが、式(IIbis)または式(IIbis1)の芳香族アミンであり、Lが、条項1に定義された芳香環を表す、先行条項のいずれかに記載のプロセス。
【0234】
条項33。Lが、条項1に定義された6員を有する芳香環を表す、先行条項のいずれかに記載のプロセス。
【0235】
条項34。Lが、条項1に定義された6員を有する芳香環を表し、同じであるかまたは異なり、-CR-によって表される、先行条項のいずれかに記載のプロセス。
【0236】
条項35。Lが、次式(IV)を有する、先行条項のいずれかに記載のプロセス:
【化14】
(式中、nは、1または2であり、芳香環を形成する炭素原子のうちの1つは、-S-原子に結合している)。
【0237】

条項36。式(IIbis)のアミンが、式(VII)のアミンに対応する、先行条項のいずれかに記載のプロセス:
【化15】
【0238】
条項37。アミンが、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、シスタミン、トリス-(3-アミノプロピル)アミン、トリス-(2-アミノプロピル)アミン、および4,4’,4’’-トリアミノトリフェニルアミンからなる群から選択される、先行条項のいずれかに記載のプロセス。
【0239】
条項38。前記カテコール誘導体が、式(III)の誘導体である:先行条項のいずれか一項に記載のプロセス。
【化16】
(式中、
18、R19、R’18およびR’19は、同じであるかまたは異なり、
-H;
-OH;
-NR20R’20
ハロゲン
(C~C10)アルキル;
(C~C10)アルケニル;
-OH、ハロゲン、ニトロ、シアノ、(C~C10)アルキル、(C~C10)ハロアルキル、-NR21R’21、-C(O)OR22、および-O-(C~C10)アルキルからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C10)アルキル;
-OH、ハロゲン、ニトロ、シアノ、(C~C10)アルキル、(C~C10)ハロアルキル、-NR23R’23、-C(O)OR24、および-O-(C~C10)アルキルからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C10)アルケニル;
環のそれぞれ1つが、:(a)-C(R2,-、-CR-、-N-、-NR’、-S-、および-O-からなる群から選択される5員または6員からなり;(b)飽和、部分不飽和、または芳香族であり;(c)孤立している、部分的に孤立している、または融合されている、1つまたは2つの環からなる既知の環系
からなる群から選択され;
のそれぞれ1つは、-H、-OH、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル、(C~C10)アルキニル、(C~C10)ハロアルキル、-O-(C~C10)アルキル、ニトロ、-NR2525、およびハロゲンからなる群から独立して選択され;
R’yは、-H、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル、(C~C10)アルキニル、および(C~C10)ハロアルキルからなる群から選択され、
20、R’20、R21、R’21、R23、R’23、R25、およびR’25は、同じであるかまたは異なり、H;(C~C10)アルキル;(C~C10)ハロアルキル;(C~C10)アルケニル;(C~C10)アルキニル;-OH、ハロゲン、ニトロ、シアノ、(C~C10)アルキル、(C~C10)ハロアルキル、-NR26R’26、-C(O)OR27、および-O-(C~C10)アルキルからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された(C~C10)アルキルからなる群から選択され;
22およびR24は、H、(C~C10)アルキル、(C~C10)ハロアルキル、(C~C10)アルケニル;および(C~C10)アルキニルからなる群から独立して選択され;
26、R’26およびR27は、同じであるかまたは異なり、-H;(C~C10)アルキル;(C~C10)ハロアルキル;(C~C10)アルケニル;および(C~C10)アルキニルからなる群から選択される、先行条項のいずれか一項に記載のプロセス。
【0240】
条項39。カテコール誘導体が、式(III)の誘導体であり、
-R18およびR19は、同じであるかまたは異なり、-H;-OH;(C~C10)アルキル;条項38に定義されたように置換された(C~C10)アルキル;および条項38に記載のとおり置換された(C~C10)アルケニルからなる群から選択される、またはあるいは、
-R18およびR19の1つは、2つの環からなる既知の環系であり、環のそれぞれ1つは、(a)-C(R2,-、-CR-、-N-、-NR’、-S-、および-O-からなる群から選択される5員または6員からなり、(b)飽和、部分不飽和、または芳香族であり;(c)孤立している、部分的に孤立している、または融合されており;式中、RおよびR’は、条項38に定義されたとおりであり;またはあるいは、
-R18およびR19の1つは、2つの環からなる既知の環系であり、環のそれぞれ1つは、(a)-C(R2,-、-CR-、-N-、-NR’-、-S-、および-O-からなる群から選択される6員からなり、(b)飽和、部分不飽和、または芳香族であり;(c)縮合されている;式中、RおよびR’は、条項38に定義されたとおりであり;またはあるいは、
-R18およびR19の1つは、2つの環からなる既知の環系であり、環のそれぞれ1つは、(a)-C(R2,-、-CR-、-N-、-NR’-、-S-、および-O-からなる群から選択される6員からなり、但し環の少なくとも1つは、ヘテロ原子(-N-、-NR’、-S-、および-O-)を含み;(b)飽和、部分不飽和、または芳香族であり;(c)縮合されており;式中、RおよびR’は、条項38に定義されたとおりであり;またはあるいは、
-R18およびR19の1つは、2つの環からなる既知の環系であり、環のそれぞれ1つは、(a)-C(R2,-、-CR-、-N-、-NR’-、-S-、および-O-からなる群から選択される6員からなり、但し環の少なくとも1つは、-O-ヘテロ原子を含み;(b)飽和、部分不飽和、または芳香族であり;(c)縮合されている;式中、RおよびR’は、条項38に定義されたとおりであり;またはあるいは、
-R18およびR19の1つは、2つの環からなる既知の環系であり、環のそれぞれ1つは、(a)-C(Ry)2,-、-CR-、-O-、からなる群から選択される6員からなり、但し環の少なくとも1つは、-O-ヘテロ原子を含み;(b)飽和、部分不飽和、または芳香族であり;(c)縮合されている;式中、RおよびR’は、条項38に定義されたとおりであり;またはあるいは、
-R18およびR19の1つは、2つの環からなる既知の環系であり、環のそれぞれ1つは、(a)-C(Ry)2,-、-CR-、-O-、からなる群から選択される6員からなり、但し環の1つのみは、-O-ヘテロ原子を含み;(b)飽和、部分不飽和、または芳香族であり;(c)縮合されている;RおよびR’は、条項38に定義されたとおりである、
先行条項のいずれか一項に記載のプロセス。
【0241】
条項40。カテコール誘導体が、式(III)の1つであり、式中、R18またはR19の一方が-Hであり、他方が、上記条項のいずれか、特に条項38または39に定義されたとおりである、先行条項のいずれかに記載のプロセス。
【0242】
条項41。式(III)のカテコール誘導体が、R’18およびR’19が-Hであるものであり、R18およびR19が、条項38、39、または40のいずれかに定義されたとおりである、先行条項のいずれかに記載のプロセス。
【0243】
条項42。カテコール誘導体が、ピロカテコール、カフェイン酸、ドーパミン、4-メチルカテコール、ピロガロール、およびカテキンからなる群から選択される、先行条項のいずれかに記載のプロセス。
【0244】
条項43。pHが、6.5~8もしくは7~7.5である、または、pHは、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、および10からなる群から選択される、先行条項のいずれか一項に記載のプロセス。
【0245】
条項44。
a)撹拌が、架橋の全ステップ中、あるいは架橋反応の一部中に行われる、またはあるいは、
b)撹拌が、架橋の全ステップ中、乱流を生じないように行われ、特に撹拌速度は、450rpmに等しいかもしくはそれ未満、400rpmに等しいかもしくはそれ未満、または350rpmに等しいかもしくはそれ未満である、またはあるいは
c)撹拌が、空気/液体界面の乱流を回避し、全手順を通して均質であり、撹拌手順に含まれる磁石または機械部品の不規則な動きを回避するために可能な限り最低速度を使用して行われ、より具体的には、撹拌速度は、450rpmに等しいかもしくはそれ未満、400rpmに等しいかもしくはそれ未満、または350rpmに等しいかもしくはそれ未満である、またはあるいは、
d)撹拌が、架橋反応の一部の間のみ行われ、特に撹拌が、着色の変化が観察され、その後停止するまで、乱流を提供しないように行われ、さらにより具体的には、撹拌が、10分~2時間の間行われ、その後停止される、またはあるいは、
e)撹拌速度が、400rpmに等しいかもしくはそれ未満、または350rpmに等しいかもしくはそれ未満である、
先行条項のいずれか一項に記載のプロセス。
【0246】
条項45。式(II)または(IIbis)のアミンが、カテコール誘導体に対して過剰のモル比である、先行条項のいずれか一項に記載のプロセス。
【0247】
条項46。架橋ステップが、10~60℃の温度で行われる、先行条項のいずれか一項に記載のプロセス。
【0248】
条項47。架橋ステップが、少なくとも24時間実施される、先行条項のいずれか一項に記載のプロセス。
【0249】
条項48。液体媒体が、水性ベースの緩衝液、より具体的には、窒素原子またはアミノ基が存在しない水性ベースの緩衝液、さらにより具体的には、リン酸緩衝液、炭酸緩衝液、およびクエン酸緩衝液からなる群から選択される水性ベースの緩衝液を含む、先行条項のいずれか一項に記載のプロセス。
【0250】
条項49。液体媒体が水である、先行条項のいずれか一項に記載のプロセス。
【0251】
条項50。先行条項のいずれか一項に定義されたプロセスによって得ることができる自立型カテコールアミンベースの膜。
【0252】
条項51。治療用分子、細胞、成長因子、検出標識(蛍光活性部分、ナノ粒子または抗体)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の目的の分子をさらに含む、先行条項に記載のカテコールアミンベースの膜。
【0253】
条項52。目的の分子が、特にアミド結合によって膜に共有結合により結合している、条項51に記載のカテコールアミンベースの膜。
【0254】
条項53。
(i.1)条項1に定義されたプロセスのステップ(a)を実施するステップ、
(i.2)反応媒体に目的の分子を添加するステップ;および
(i.3)条項1に定義されたプロセスのステップ(b)を実施するステップ
を含むか、
またはあるいは
(ii.1)条項50に定義されたカテコールアミンベースの膜を目的の分子と共にインキュベートするステップを含む、
条項51または52に定義されたカテコールアミンベースの膜を調製するプロセス。
【0255】
条項54。条項50に記載のカテコールアミンベースの膜の接着剤としての使用。
【0256】
条項55。治療用分子または標識分子などの目的の分子のビヒクルとしての、条項50に記載のカテコールアミンベースの膜の使用。
【0257】
条項56。目的の分子が、治療に使用するための治療用分子である、条項51もしくは52のいずれかに定義されたカテコールアミンベースの膜であるか、またはあるいは、目的の分子が、診断に使用するための検出標識である、条項47もしくは48のいずれかに定義された自立型カテコールアミンベースの膜。
【0258】
条項57。目的の分子が、組織の再生に使用するための、細胞、成長因子、またはそれらの組み合わせである、条項51または52のいずれかに定義されたカテコールアミンベースの膜。
【0259】
条項58。条項50~52のいずれか一項に定義された膜で部分的または完全にコーティングされた物品。

図1
【国際調査報告】