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特表2024-526427建物ファサード用の光技術的なモジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-18
(54)【発明の名称】建物ファサード用の光技術的なモジュール
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20240710BHJP
   H01L 31/0445 20140101ALI20240710BHJP
   H01L 31/055 20140101ALI20240710BHJP
   H02S 30/00 20140101ALI20240710BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20240710BHJP
   E04C 2/54 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
E04F13/08 Z
H01L31/04 530
H01L31/04 622
H02S30/00
E04B1/76 100A
E04B1/76 100D
E04C2/54 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576205
(86)(22)【出願日】2022-05-12
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 EP2022062940
(87)【国際公開番号】W WO2022258301
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】21178674.4
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523464163
【氏名又は名称】ナノスケール・グラステク・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【弁理士】
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】ヒルマー・ハルトムート
(72)【発明者】
【氏名】シー・グイリン
【テーマコード(参考)】
2E001
2E110
2E162
5F251
【Fターム(参考)】
2E001DD12
2E001DD17
2E001FA04
2E001GA12
2E001GA23
2E110AA03
2E110AA04
2E110AA37
2E110AB04
2E110AB22
2E110BA03
2E110GA32Z
2E110GA33W
2E110GA33X
2E162CB00
5F251AA07
5F251BA15
5F251GA05
5F251JA14
5F251JA23
(57)【要約】
本発明の対象は、建物ファサード用、特にグレージング用の光技術的なモジュール(100)であって、モジュール(100)は、予定されている建物ファサードへの配置に関して、正面(10a)、背面(10b)、上面(10c)及び下面(10d)を備え、モジュール(100)は、少なくとも、正面のベースプレート(2)及び背面のベースプレート(3)であって、ベースプレート(2,3)は、光透過性に形成されており、ベースプレート(2,3)間には、中間室が形成されている、ベースプレート(2,3)と、中間室内に収容された複数のマイクロシート素子(1)であって、各マイクロシート素子(1)は、光技術的な前面(11a)及び/又は光技術的な後面(11b)を有する光不透過性のシートセクション(11)を有し、各マイクロシート素子(1)は、周辺側の取り付けセクション(12)によりヒンジ状に正面のベースプレート(2)又は背面のベースプレート(3)上に、各シートセクション(11)が、光不透過性の閉鎖された姿勢を起点として水平の揺動軸線回りに上面(10c)又は下面(10d)に向かって少なくとも1つの光透過性の開放された姿勢へ揺動可能であるように配置されている、マイクロシート素子(1)と、を備える、建物ファサード用、特にグレージング用の光技術的なモジュール(100)である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物ファサード用、特にグレージング用の光技術的なモジュール(100)であって、
前記モジュール(100)は、予定されている前記建物ファサードへの配置に関して、正面(10a)、背面(10b)、上面(10c)及び下面(10d)を備え、
前記モジュール(100)は、少なくとも、
正面のベースプレート(2)及び背面のベースプレート(3)であって、前記ベースプレート(2,3)は、光透過性に形成されており、前記ベースプレート(2,3)間には、中間室が形成されている、ベースプレート(2,3)と、
前記中間室内に収容された複数のマイクロシート素子(1)であって、各マイクロシート素子(1)は、光技術的な前面(11a)及び/又は光技術的な後面(11b)を有する光不透過性のシートセクション(11)を有し、各マイクロシート素子(1)は、周辺側の取り付けセクション(12)によりヒンジ状に前記正面のベースプレート(2)又は前記背面のベースプレート(3)上に、各シートセクション(11)が、光不透過性の閉鎖された姿勢を起点として水平の揺動軸線回りに前記上面(10c)又は前記下面(10d)に向かって少なくとも1つの光透過性の開放された姿勢へ揺動可能であるように配置されている、マイクロシート素子(1)と、
を備える、
建物ファサード用、特にグレージング用の光技術的なモジュール(100)。
【請求項2】
前記シートセクション(11)の前記前面(11a)及び/又は前記後面(11b)は、可視光及び/又は近赤外線のためのミラー作用を有し、前記前面(11a)及び/又は前記後面(11b)は、特に金属からなるミラー層(4)として形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のモジュール(100)。
【請求項3】
前記シートセクション(11)の前記前面(11a)及び/又は前記後面(11b)は、可視光のための散乱作用を有し、前記前面(11a)及び/又は前記後面(11b)は、特に合目的的な表面粗さ(5)を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のモジュール(100)。
【請求項4】
前記シートセクション(11)の前記前面(11a)及び/又は前記後面(11b)は、可視光及び/又は近赤外線のための吸収作用を有し、前記前面(11a)及び/又は前記後面(11b)は、特に光起電力効果を示す層系(6)を有し、前記モジュール(100)は、特に光起電力効果を用いたエネルギ獲得のために形成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のモジュール(100)。
【請求項5】
前記シートセクション(11)の前記前面(11a)及び/又は前記後面(11b)は、特定用途用の色印象を発生させるために、特に、誘電性のコーティング又は着色顔料により、形成されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のモジュール(100)。
【請求項6】
前記マイクロシート素子(1)は、それぞれ1つの層構造を有し、前記層構造は、少なくとも1つの圧縮応力が作用する層(1a)と、引っ張り応力が作用する層(1b)と、を有し、各マイクロシート素子(1)の前記シートセクション(11)に沿って、圧縮応力が作用する補償層(1c)が、前記引っ張り応力が作用する層(1b)上に配置されており、各マイクロシート素子(1)は、
大域的に応力フリーに形成されており、2つの略面平行な表面を有するシートセクション(11)と、
リジッドに前記ベースプレート(2,3)のうちの一方のベースプレート上に配置されている周辺側の前記取り付けセクション(12)と、
前記シートセクション(11)と前記取り付けセクション(12)との間に位置し、内部応力が誘導される湾曲を有し、これにより、前記マイクロシート素子(1)の開放された姿勢が形成されているヒンジセクション(13)と、
に区分されているようになっている、
ことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のモジュール(100)。
【請求項7】
前記閉鎖された姿勢と、少なくとも1つの前記開放された姿勢との間での前記シートセクション(11)の前記揺動は、静電式の作用原理により作動可能であり、このために、前記正面のベースプレート(2)及び/又は前記背面のベースプレート(3)は、電気伝導性の層を有し、前記シートセクション(11)は、それぞれ1つの電極を有し、又は形成し、前記電極と、対応する前記ベースプレート(2,3)との間での電圧信号の印加により、個々のマイクロシート素子(1)及び/又は複数のマイクロシート素子(1)の群が作動可能であるようになっていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のモジュール(100)。
【請求項8】
各マイクロシート素子(1)は、少なくとも1つの電気伝導性の層を有し、これにより、電極層(7)が形成されており、対応する前記ベースプレート(2,3)は、層構造を有し、前記層構造は、特に光透過性の電気伝導性の基層(21,31)と、特に光透過性の電気絶縁性の絶縁層(22,32)と、を有し、各マイクロシート素子(1)の前記取り付けセクション(12)は、前記絶縁層(22,32)上に配置されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のモジュール(100)。
【請求項9】
各マイクロシート素子(1)の前記取り付けセクション(12)は、誘電性の遮蔽層(63)を有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のモジュール(100)。
【請求項10】
前記シートセクション(11)の前記前面(11a)及び/又は前記後面(11b)は、光起電力効果を示す層系(6)を前記電極層(7)上に有し、特に有機の半導体又は無機の半導体(61,62)に基づくpn接合を有することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のモジュール(100)。
【請求項11】
前記マイクロシート素子(1)は、10マイクロメートル~2ミリメートルのエッジ長さを有する長方形の輪郭を有し、かつ/又は平行な行と平行な列とからなる規則的なマトリクス形態で配置されており、前記マイクロシート素子(1)の全体は、前記閉鎖された状態において、特に前記ベースプレート(2,3)の略完全な面被覆を形成することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のモジュール(100)。
【請求項12】
前記モジュール(100)は、アドレス指定ネットワークであって、個別のマイクロシート素子(1)又は複数のマイクロシート素子(1)の群と、コンピュータ制御されるアドレス指定及び前記マイクロシート素子(1)の作動並びに/又は光起電力効果により生成される電圧の取り出しのための周辺側のモジュールインタフェースとの間の電気的な接続を形成する電気的な線路からなるアドレス指定ネットワークを備えることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のモジュール(100)。
【請求項13】
建物ファサード、特にグレージングを構成するためのシステム(200)であって、少なくとも、
請求項1から12のいずれか一項に記載の複数の光技術的なモジュール(100)と、
前記モジュール(100)に電気的に接続される、前記モジュール(100)の前記マイクロシート素子(1)の作動用の少なくとも1つの制御装置と、
を備え、
前記モジュール(100)の前記配置に関して、前記モジュール(100)の前記背面(10b)を建物内部に向かって配向し、かつ前記モジュール(1)の前記上面(10c)を上に来るように配向する、
建物ファサード、特にグレージングを構成するためのシステム(200)。
【請求項14】
前記マイクロシート素子(1)の前記配置、揺動方向並びに/又は前記シートセクション(11)の前記前面(11a)及び前記後面(11b)の光技術的な作用に関する前記モジュール(100)の設定が、前記建物ファサードの光技術的な要求に適合されていることを特徴とする、請求項13に記載のシステム(200)。
【請求項15】
前記モジュール(100)は、個別にそれぞれ異なる設定を有し、前記モジュール(100)は、前記建物ファサードのそれぞれ対応するセクションの前記光技術的な要求に適合されていることを特徴とする、請求項13又は14に記載のシステム(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物ファサード用、特にグレージング用の光技術的なモジュール、及び建物ファサードを構成するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロシャッタ又はマイクロミラーの形態の多数の作動可能なマイクロ素子から構築されているシャッタアレイ及びミラーアレイは、いわゆる微小光電気機械システム(MOEMS:光MEMS)に属し、多数の種々異なる用途において、例えば投影表示、光情報処理、顕微鏡法、リソグラフィ、レーザ構造化の分野における例えばプロジェクタ素子、ルータ、シャッタ又はアパーチャとして、又は建物のグレージング内における太陽光を導く素子として、高解像度の光変調又は光偏向のために使用される。
【0003】
アレイを築くマイクロ素子は、数平方マイクロメートル~平方ミリメートルのサイズレンジの微細化された光学素子であり、光学素子の姿勢、ひいては光技術的な作用は、能動的又は受動的な駆動制御により作動可能である。マイクロ素子は、この場合、選択的に、純粋に光不透過性のマイクロシャッタとして形成されているか、又はマイクロミラーとして、反射する表面を有している。アレイを製造するためには、典型的な薄膜法、特に、析出プロセス、リソグラフィステップ及びエッチングステップ並びに犠牲層技術を用いた薄膜法が適用される。
【0004】
MOEMSに基づくマイクロミラーを備える光技術的なモジュールは、建物ファサードにおける能動的な光偏向のための従来技術において公知である。例えば特許文献1は、ファサードに組み込む目的のためのマイクロミラーアッセンブリの形態のアレイを開示しており、このマイクロミラーアッセンブリでは、マイクロミラー素子が、規則的な面状のマトリクス配置で存在し、個々に又は群でアドレス指定ネットワークを介して中央の制御装置により駆動制御される。これにより、高い場所分解能を有する能動的な太陽光偏向の可能性が提供され、この可能性は、ファサードの背後に位置する部屋内の、ニーズに適合され、かつパーソナライズされた照明状況を可能にする。このようなマイクロミラーアレイの製造、機能及び使用原理についての詳細な記述は、非特許文献1を参照されたい。
【0005】
さらに、非特許文献2は、建物グレージング内での昼光ガイドのためのMOEMSマイクロミラーアレイを開示している。このMOEMSマイクロミラーアレイに基づくモジュールは、予定されている建物ファサードへのこのモジュールの配置に関して、正面、背面、上面及び下面を備え、モジュールの背面は、建物内部に向かって配向され、モジュールの上面は、上に来るように配向されているべきである。モジュールは、さらに正面のベースプレートと、背面のベースプレートと、を備え、ベースプレートは、それぞれ光透過性に形成されており、ベースプレート間の中間室内には、マイクロミラーが収容されている。マイクロミラーは、この場合、各マイクロミラーが、光不透過性の閉鎖された姿勢を起点として水平の揺動軸線回りにモジュールの下面に向かって少なくとも1つの光透過性の開放された姿勢へ揺動可能であるように、ヒンジ状に正面のベースプレートの内面に配置されている。閉鎖された姿勢において、マイクロミラーは、略面平行に正面のベースプレートに当接し、進入した太陽光を建物ファサードの外界へ反射して戻す。多数のマイクロミラーがその閉鎖された姿勢に移行されると、そのことから建物ファサードの大面積のミラー化が生じ、このことは、例えば隣接する道路交通又は隣接建物に対して支障を及ぼすような特徴的な光反射に至る恐れがある。加えて、典型的には、ミラー素子の後面も、金属光沢を示すように形成されており、その結果、ミラー素子の閉鎖された姿勢では、グレージングの背後に存在する空間に向けたミラー作用も生じる。グレージングの大面積の内面ミラー化は、しかし、該当する空間内にいる人により、不都合なことに居心地が悪く感じられてしまう可能性がある。
【0006】
従来技術における光偏向用の光技術的なモジュールの、建物ファサードへの着装は、加えて、今日、グレージングを含めた建物ファサードへのソーラモジュールの大面積の統合により多重的に実施される、光起電力効果を用いたエネルギ獲得のための建物ファサードの面の利用と競合してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第10358967号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Hillmer et al., Jpn. J. Appl. Phys. 57, 08PA07(2018)
【非特許文献2】Hillmer et al., Journal of Optical Microsystems 1, 014502(2021)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それゆえ本発明の課題は、従来技術の前述の欠点を克服し、特に、インディビジュアライズされ、かつニーズに適合された、建物ファサードを構成するためのシステムを構築するのに好適な、建物ファサード用の光技術的なモジュールを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、請求項1に記載の光技術的なモジュールと、この光技術的なモジュールに基づく、請求項12に記載の建物ファサードを構成するためのシステムとにより解決される。本発明の有利な発展形は、従属請求項に記載されている。
【0011】
本発明は、光技術的なモジュールが、予定されている建物ファサードへの配置に関して、正面、背面、上面及び下面を備え、モジュールが、少なくとも、
正面のベースプレート及び背面のベースプレートであって、ベースプレートは、光透過性に形成されており、ベースプレート間には、中間室が形成されている、ベースプレートと、
中間室内に収容された複数のマイクロシート素子であって、各マイクロシート素子は、光技術的な前面及び/又は光技術的な後面を有する光不透過性のシートセクションを有し、各マイクロシート素子は、周辺側の取り付けセクションによりヒンジ状に正面のベースプレート又は背面のベースプレート上に、各シートセクションが、光不透過性の閉鎖された姿勢を起点として水平の揺動軸線回りに上面又は下面に向かって少なくとも1つの光透過性の開放された姿勢へ揺動可能であるように配置されている、マイクロシート素子と、
を備える、
という技術的思想を包含している。
【0012】
本発明の核心にある思想は、前面の他に、マイクロシート素子のシートセクションの後面も、特定用途用の光技術的な機能を有し、かつ正面又は背面のベースプレートへのマイクロシート素子の配置が、シートセクションの選択可能な揺動方向との組み合わせにおいて、モジュールに向かって進入する太陽光の光偏向作用に関する様々な特性を可能にすることにより、本発明に係る光モジュールの光技術的な作用に関する極めて多様な構成可能性を提供することにある。前面とは、ここでは、シートセクションの閉鎖された姿勢において、モジュールの正面に向かって曝露されている面を指す。モジュールを建物グレージング上に規定通りに配置したとき、シートセクションの閉鎖された姿勢において、これにより前面は、建物の外側から可視であり、かつ背面は、該当する建物空間の内側から可視である。1つのモジュールの複数のマイクロシート素子の設定及び配置は、この場合、好ましくは統一的である。一般に、このモジュール内で、これに関する変更があってもよい。
【0013】
シートセクションは、好ましくは、統一的に長方形の輪郭及び大きさを有している。原理的には、互いに面平行に方向付けられたベースプレートの略完全な面被覆を実現することが可能な、より複雑な輪郭又は大きさ比が好適な場合もある。マイクロシート素子は、層構造を有し、層構造は、少なくとも1つの光不透過性の層を有している。すべてのシートセクションの、これらがベースプレートに対して略面平行に方向付けられている閉鎖された姿勢で、モジュールは、これにより光不透過性であり、例えば、而して太陽光は、割り当てられた窓を通して建物内部に入射し得ない。光不透過性の層の他に、マイクロシート素子は、典型的には、別の光学的な特性を有する別の層を、特にシートセクションの光技術的な前面及び背面を形成すべく、有している。
【0014】
例えばシートセクションの前面及び/又は後面は、可視光及び/又は近赤外線(NIR)のためのミラー作用を有し、前面及び/又は後面は、特に金属からなるミラー層として形成されている。ミラー化された前面又は後面の光技術的な機能は、第1に、進入する太陽光の、建物内部への、すなわち、該当するモジュールの背後に配置される空間内への光偏向にある。正面又は背面のベースプレートへのマイクロシート素子の配置次第で、かつシートセクションの揺動方向に応じて、このために、シートセクションの前面又は後面が用いられる。従来技術(上記非特許文献2)におけるモジュールの場合、マイクロシート素子は、正面のベースプレートに配置されており、閉鎖された姿勢において、シートセクションのミラー化された前面は、モジュールの正面に向かって曝露されており、これにより、建物ファサードで実際に使用した場合、強い光反射により周囲の交通に対して望ましくない妨害がなされてしまうことがある。このことは、本発明により、シートセクションの背面が、所望のミラー作用を有し、かつ揺動が、閉鎖された姿勢を起点としてモジュールの下面に向かって実施されることにより回避され得る。閉鎖された姿勢において交通に面した前面は、このような一実施の形態では、建物内部への太陽光の光偏向に関与することはなく、したがって、ミラー作用を有している必要はなく、その結果、交通の望ましくない眩惑は、起こらない。特に、つまり、選択的にシートセクションの前面又は後面にミラー作用を設け、シートセクションのその都度他方の面に、ミラー作用とは異なる光技術的な機能を割り当てることは、合目的的である。
【0015】
例えばシートセクションの前面及び/又は後面は、可視光のための散乱作用を有し、前面及び/又は後面は、特に合目的的な表面粗さを有している。合目的的な散乱作用は、当たった光が、指向性反射されるのではなく、拡散反射されるときに生じ、その結果、マイクロシート素子の特徴的なミラー作用は、起こらない。マイクロシート素子のこのような光技術的な作用は、特に、強い太陽入射時、シートセクションが、閉鎖された姿勢へ移行されているが、外部から観察して、例えば周囲の道路交通を眩惑しかねないミラー作用が生じてはならないときに、所望されていることがある。建物内部にいる人にとっても、暗くされたグレージングのマットな見た目は、典型的には、大面積のミラー作用よりも快適である。
【0016】
別の一実施の形態において、シートセクションの前面及び/又は後面は、可視光及び/又は近赤外線のための吸収作用を有し、前面及び/又は後面は、特に光起電力効果を示す層系を有し、モジュールは、特に光起電力効果を用いたエネルギ獲得のために形成されている。好ましくは、吸収性の、光起電力効果を示す層系は、シートセクションの、シートセクションの閉鎖された姿勢において外側に向かって、すなわち、進入する太陽光に向かって曝露されている前面に配置されている。これにより、例えば、マイクロシート素子の閉鎖により空間から遠ざけられることが望ましい昼時の強烈な太陽入射は、効果的に光起電力効果を用いたエネルギ獲得のために利用され得る。これにより、本発明に係るモジュールは、例えば内室照明のためのシートセクションの背面の反射する光偏向作用と、前面の光起電性の機能との組み合わせを可能にすると同時に、道路交通を妨げかねない反射の回避を可能にし、その結果、ここでは、従来技術による建物ファサードを構成するためのシステムにおけるこれに関する対立は、克服され得る。
【0017】
別の一実施の形態において、シートセクションの前面及び/又は後面は、特定用途用の色印象を発生させるために、特に誘電性のコーティングにより形成されている。モジュールは、本実施の形態では、建物ファサードのデザイン上の素子として用いられてもよく、すなわち、光技術的な作用は、観察者のためにある特定の色印象を発生させることにある。例えば色特性に関して様々に形成される多数のモジュールにより、色パターンも発生させることができる。色パターンは、加えて、個々のマイクロシート素子の作動可能性に基づき、動的にも発生され得る。シートセクションのそれぞれの面は、例えば誘電性の一重又は多重のコーティングに基づく干渉ミラーとして形成されていてもよい。代替的には、好適な着色顔料又はナノ粒子が、コーティングにより被着されていてもよい。色印象は、白色の太陽スペクトルの一部の干渉又は吸収により生じる。
【0018】
特にマイクロシート素子は、それぞれ1つの層構造を有し、層構造は、少なくとも1つの圧縮応力が作用する層と、引っ張り応力が作用する層とを有し、各マイクロシート素子のシートセクションに沿って、圧縮応力が作用する補償層が、引っ張り応力が作用する層上に配置されており、各マイクロシート素子は、
大域的に応力フリーに形成されており、2つの略面平行な表面を有するシートセクションと、
リジッドに上記ベースプレートのうちの一方のベースプレート上に配置されている周辺側の取り付けセクションと、
シートセクションと取り付けセクションとの間に位置し、内部応力が誘導される湾曲を有し、これにより、マイクロシート素子の開放された姿勢が形成されているヒンジセクションと、
に区分されているようになっている。
【0019】
この場合、マイクロシート素子は、外部の作動がないとき、最大で開放された姿勢にあり、最大で開放された姿勢は、ベースプレート上に形状結合式に固定される取り付けセクションと、応力補償されたシートセクションとの間のヒンジセクションの湾曲による、存在する内部応力に基づいて成立する。例えばヒンジセクションは、それぞれのマイクロシート素子の輪郭の最も長い辺の長さの100分の1~3分の1である曲率半径を有している。
【0020】
さらなる利点を伴い、閉鎖された姿勢と、少なくとも1つの開放された姿勢との間でのシートセクションの揺動は、静電式の作用原理により作動可能であり、このために、正面のベースプレート及び/又は背面のベースプレートは、電気伝導性の層を有し、シートセクションは、それぞれ1つの電極を有し、又は形成し、電極と、対応するベースプレートとの間での電圧信号の印加により、個々のマイクロシート素子及び/又は複数のマイクロシート素子の群が作動可能であるようになっている。
【0021】
特に各マイクロシート素子は、少なくとも1つの電気伝導性の層を有し、これにより、電極層が形成されており、対応するベースプレートは、層構造を有し、層構造は、光透過性の電気伝導性の基層と、光透過性の電気絶縁性の絶縁層と、を有し、各マイクロシート素子の取り付けセクションは、絶縁層上に配置されている。
【0022】
例えばシートセクションは、最大で開放された姿勢において、ベースプレートに対して略直交するように方向付けられている。このような垂直姿勢において、最大の光透過が提供されており、この姿勢は、マイクロシート素子に電圧の印加による静電力がかかっていないときに取られ、その結果、ヒンジセクションは、純粋にその機械的な内部応力に応じて巻くように起立されている。
【0023】
シートセクションの最大で開放された姿勢と、閉鎖された姿勢との間で、好ましくは、透過度に関して相応のグレー値を表すさらなる中間姿勢が取られてもよい。シートセクションの最大で開放された姿勢を起点として、ベースプレートと電極との間での連続的に上昇する電圧の印加により、マイクロシート素子の無段階の閉鎖が、それ以上はマイクロシート素子が完全に閉鎖する限界電圧に至るまで、実施され得る。ベースプレートに対するシートセクションの、特定用途用に調整可能な開放角度のこの多様性は、特にミラー化されたシートセクションによる狙いを定めた光偏向のために利用可能である。
【0024】
作動電圧がかかっているときは、マイクロシート素子の後面からも、前面からも、電界線が、伝導性の基層に向かって延びている。シートセクションがヒンジセクションの弾性的な復元力に抗して誤った側に倒れてしまうことを防止すべく、各マイクロシート素子の取り付けセクションは、有利な一実施の形態では、誘電性の遮蔽層を有している。この遮蔽層の目的は、シートセクションの作動可能な揺動範囲を、90°を超える角度範囲、例えば120°に拡大することに寄与することにある。最大で開放された姿勢は、かかっている電圧がない状態において取られ、かつヒンジセクションの湾曲の程度により決定される。シートセクションが、最大で開放された姿勢において90°を超えて、シートセクションが面平行にベースプレートに当接している閉鎖された姿勢に対して揺動されているとき、作動電圧が印加されると、ベースプレートの基層と、シートセクションとの間で、静電式の引き付けが生じ、この引き付けは、マイクロシート素子をさらに開方向に揺動させる方向に向けられており、ひいては、意図した作動論理とは反対方向に作用してしまう。電界強さ、ひいては寄生引力の減少に寄与するために、誘電性の遮蔽層が、取り付けセクション内で、基層と、基層の上方において揺動されるシートセクションとの間に配置される。さらに光起電力効果を示す層系を有する実施例では、電位の関係は、n型及びp型ドープした層の合目的的な配向により、シートセクションの相応の面における電界強さがさらに弱められるように選択されてもよい。シートセクションの揺動範囲の、これらの対策により実現可能な拡大は、特に、前面及び後面の光技術的な機能の包括的な利用を可能にする。
【0025】
例えばシートセクションの前面及び/又は後面は、光起電力効果を示す層系を電極層上に有し、特に有機又は無機の半導体に基づくpn接合を有している。例えばCuInGaSe、CdTe、CdSe、GaAs又はCdInGaSe等の化合物半導体が、好適な素材であり、薄膜析出プロセスにより析出され得る。光起電力効果を示す層系は、好ましくは、シートセクションの前面に配置されており、すなわち、閉鎖された姿勢において太陽光に面している。原理的には、しかし、同じく後面が、光起電力効果を用いたエネルギ獲得のために形成されていて、間接的な太陽光又は割り当てられた空間内で使用される人工光を吸収してもよい。
【0026】
好ましくは、マイクロシート素子は、10マイクロメートル~2mmのエッジ長さを有する長方形の輪郭を有し、かつ/又は平行な行と平行な列とからなる規則的なマトリクス形態で配置されており、マイクロシート素子の全体は、閉鎖された状態において、特にベースプレートの略完全な面被覆を形成する。
【0027】
有利な実施の形態において、本発明に係るモジュールは、アドレス指定ネットワークであって、個別のマイクロシート素子又は複数のマイクロシート素子の群の電極層及び/又は光起電力効果を示す層と、コンピュータ制御されるアドレス指定及びマイクロシート素子の作動並びに/又は光起電力効果による生成される電圧の取り出しのための周辺側のモジュールインタフェースとの間の電気的な接続を形成するプレーナ形の線路からなるアドレス指定ネットワークを備えている。モジュールインタフェースを含めたこの種のアドレス指定ネットワークは、遠隔に置かれた、個々のマイクロシート素子の駆動制御用の制御装置の使用を可能にし、特に、建物ファサードを構成するためのシステム内への多数の本発明に係るモジュールの統合を、システム全体のために1つの単独の中央の制御装置の使用の下、可能にする。代替的には、複数の分散型の制御装置の使用も、例えば、装備された建物の階層が、それぞれ異なる世帯により占有されており、各世帯が、それぞれ個別のシステム制御を所望するとき、有意義であり得る。
【0028】
さらに本発明は、建物ファサード、特にグレージングを構成するためのシステムであって、少なくとも、前述の実施の形態のいずれか1つの形態による複数の本発明に係る光技術的なモジュールと、モジュールに電気的に接続される、モジュールのマイクロシート素子の作動用の少なくとも1つの制御装置と、を備え、モジュールの配置に関して、モジュールの背面を建物内部に向かって配向し、かつモジュールの上面を上に来るように配向する、建物ファサード、特にグレージングを構成するためのシステムに関する。モジュールの正面は、この場合、直接的又は間接的な太陽入射に曝露されており、かつ背面は、グレージングへの取着時、グレージングの背後に存在する空間に面している。念のため付言すると、位置に関して「上に来る」と記載した場合、地球の重力場に関しており、すなわち、モジュールの上面は、予定されている建物ファサードへの配置において、地表に対して、それぞれの下面が有しているよりも大きな間隔を有している。
【0029】
特に、マイクロシート素子の配置、揺動方向並びに/又はシートセクションの前面及び後面の光技術的な作用に関する、本発明に係るシステムのモジュールの設定が、建物ファサードの光技術的な要求、建物立地、及び方位に関する建物ファサードの方向付けに適合されている。例えばモジュールは、個別にそれぞれ異なる設定を有し、モジュールは、建物ファサードのそれぞれ対応するセクションの光技術的な要求に適合されている。例えば、建物ファサードの特定のセクションのために、マイクロシート素子の閉鎖された姿勢での、モジュールの外方に方向付けられたミラー作用を、例えば、周囲の交通の眩惑を回避すべく、抑制することを提供することが可能である。又は建物ファサードへの光起電活性のモジュールの装備は、南向き、東向き及び西向きの曝露を有するファサードセクションに限定される。
【0030】
可視の太陽光の偏向及び光起電性の利用の他に、本発明に係るシステムは、近赤外線スペクトル及び中間赤外線スペクトルからの放射を操作するためにも形成されており、これにより合目的的に建物の熱マネジメントのために使用され得る。例えば閉鎖されたモジュールは、夜間又は冬期に、建物内部からの熱放射の保持に、特にミラー作用により寄与し得る。
【0031】
本発明を改良するさらなる構成について、以下に本発明の好ましい実施例の説明とともに図面を基に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1a】本発明に係る光技術的なモジュールの実施例の概略横断面図である。
図1b】本発明に係る光技術的なモジュールの実施例の概略横断面図である。
図1c】本発明に係る光技術的なモジュールの実施例の概略横断面図である。
図1d】本発明に係る光技術的なモジュールの実施例の概略横断面図である。
図2a】光起電力効果を示す層系を有する実施例の概略横断面図である。
図2b】光起電力効果を示す層系を有する実施例の概略横断面図である。
図2c】光起電力効果を示す層系を有する実施例の概略横断面図である。
図2d】光起電力効果を示す層系を有する実施例の概略横断面図である。
図3】光起電力効果を示す層系を有する一実施例の概略横断面部分図である。
図4】静電式の作動をデモンストレーションする概略横断面部分図である。
図5】マイクロシート素子の内部応力をデモンストレーションする概略横断面部分図である。
図6】光技術的なモジュールからなる本発明に係るシステムを有する例示的な建物ファサードの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1a~1dは、本発明に係る光技術的なモジュール100の4つのそれぞれ異なる実施例の概略横断面図を示しており、モジュール100は、それぞれ、正面のベースプレート2と、背面のベースプレート3と、を備え、かつベースプレート2,3間の中間室内に収容された複数のマイクロシート素子1を備えている。予定されている建物ファサードへの、特にグレージングのための配置に関して、モジュール100は、正面10a及び背面10bと、上面10c及び下面10dと、を備えている。モジュール100は、上面10cが、上に来るように配置され、かつ背面10bが、建物内部に向かって配向されているように、建物ファサードに配置されることが予定されている。正面のベースプレート2は、かつ典型的には、背面のベースプレート3も、この場合、光透過性に形成されている。
【0034】
マイクロシート素子1は、それぞれ、プレーナ形のシートセクション11と、それぞれのベースプレート2,3上に配置される取り付けセクション12と、シートセクション11と取り付けセクション12との間に位置するヒンジセクション13と、を有している。シートセクションは、部分開放された姿勢で示してある。揺動範囲は、破線の円弧により示してあり、例示的に、閉鎖された姿勢を起点として約120°である。この閉鎖された姿勢において、シートセクション11は、対応するベースプレート2,3に面平行に当接している。揺動運動は、水平の揺動軸線回りに実施され、揺動軸線は、ここでは図平面に対して垂直である。代替的には、揺動範囲は、例えば約90°に制限されていてもよく、その結果、作動手段の電圧フリーの状態では、垂直にベースプレート2,3に当たる光に対し、最大の透過度が提供されている。
【0035】
マイクロシート素子1の作動、すなわち、シートセクション11の揺動は、電気伝導性の電極層7と、それぞれの電気伝導性の基層21,31との間で電圧を印加することで実施される。基層21,31は、透明の担体20,30上に配置されており、マイクロシート素子1から絶縁層22,32により電気的に遮断されている。
【0036】
シートセクション11は、それぞれ、可視光及び近赤外線(NIR)用のミラー作用を有するミラー層4、特に金属のミラー層4を有し、反対側には、可視光用の散乱作用を有する特定用途用の表面粗さ5を有している。太陽の位置及びシートセクション11の姿勢次第で、ミラー層4により、建物空間内への合目的的な光偏向を実施することができる。NIR放射のための高い反射率は、加えて熱調節に寄与し、例えばファサード窓を通して放射される室熱は、好適に姿勢調節されたミラー層4により建物内に反射され得る。
【0037】
図示した4つの実施例は、正面のベースプレート2又は背面のベースプレート3へのマイクロシート素子1の配置と、光不透過性の閉鎖された姿勢を起点として、それぞれのモジュール100の上面10c又は下面10dに向かって揺動可能であるシートセクション11のそれぞれの揺動方向と、に関して相違している。
【0038】
図1aにおいて、マイクロシート素子1は、背面のベースプレート3上に配置されており、それぞれのシートセクション11が面平行に背面のベースプレート3に当接している光不透過性の閉鎖された姿勢を起点として、シートセクション11は、下面10dに向かって揺動可能である。シートセクション11の光技術的な前面11aは、表面粗さ5を有し、かつ光技術的な後面11bは、それぞれミラー層4として形成されており、ミラー層4は、可視光及びNIRのためのミラー作用を有している。シートセクション11の閉鎖された姿勢において、正面のベースプレート2を通して入射された太陽光は、前面11aにより散乱され、その結果、正面のベースプレート2側の観察者にとって、鏡面反射による眩惑作用は生じない。シートセクション11の開放された姿勢において、進入した太陽光は、背面11bにおいて鏡面反射され、背面のベースプレート3を通して、その背後に位置する建物空間内に入射され、これにより、所望の光偏向作用が達成可能である。
【0039】
図1bの実施例において、マイクロシート素子1は、同じく背面のベースプレート3上に配置されているが、ここでは、閉鎖された姿勢を起点として、シートセクション11の揺動は、上面10cに向かって実施される。シートセクション11の、閉鎖された姿勢において正面のベースプレート2に向かって配向される前面11aは、ミラー層4により形成されており、かつ後面11bは、表面粗さ5を有している。
【0040】
図1c及び1dの実施例において、マイクロシート素子1は、それぞれモジュール100の正面のベースプレート2に配置されており、シートセクション11の揺動方向は、シートセクション11がそれぞれ面平行に正面のベースプレート2に当接している閉鎖された姿勢を起点として、図1cの場合は、上面10cに向かって、そして図1dの場合は、下面10dに向かって配向されている。図1cの実施例において、シートセクション11の前面11aは、表面粗さ5を有し、かつ後面11bは、ミラー層4として形成されている。図1dの実施例において、この関係は反対となっている。
【0041】
正面又は背面のベースプレート2,3へのマイクロシート素子1の配置と、シートセクション11の前面11a及び後面11bに対する特定用途用の光技術的な機能の割り当てと組み合わされた、シートセクション11の揺動配向と、に関する、モジュールの本発明による設定可能性は、モジュール100を有して構成される建物ファサードの割り当てられたセクションの、その都度具体的に存在する要求に関して、モジュール100の高度の適応性及び個別性を提供する。
【0042】
図1a~1dに示したモジュール100は、さらに、色作用を達成するために、特に、シートセクション11の、散乱作用を有する面において色作用を達成するために、好適である。このために、該当する表面に着色顔料又はナノ粒子が混合され、かつ/又は誘電性の干渉フィルタがコーティングされてもよい。
【0043】
図2a~2dは、本発明に係る光技術的なモジュール100の4つの別の実施例の概略横断面図を示しており、モジュール100のマイクロシート素子1は、それぞれ、ミラー層4と、反対側に位置する光起電力効果を示す層系6とからなる組み合わせを有している。ベースプレート2,3へのマイクロシート素子1の配置と、シートセクション11の揺動配向とに関して、図1a~1dの前述の実施例と同様の関係が成立する。
【0044】
光起電力効果を示す層系6は、可視光、UV放射及び一部のNIRのための吸収作用を有し、モジュール100は、これにより光起電力効果を用いたエネルギ獲得のために形成されている。光起電力効果を示す層系6は、例示的に2つの化合物半導体層61,62、特に無機のII-VI-化合物半導体、III-V-化合物半導体又はIII-IV-V-化合物半導体を有し、これらの化合物半導体層61,62間には、pn接合が存在している。
【0045】
効果的な、光起電力効果を用いたエネルギ獲得のためには、特に図2a及び2cの実施例が好適であり、これらの実施例では、光起電力効果を示す層系6は、それぞれ、シートセクション11の前面11aであって、シートセクション11の閉鎖された姿勢で、正面のベースプレート2に向かって、ひいては入射される太陽光に向かって曝露されている前面11aに配置されている。光起電力効果を示す層系6をシートセクション11の後面11bに、図2b及び2dの実施例におけるように配置した場合、モジュール100は、実質的に、地面から散乱された間接的な太陽光と、対応する建物空間から背面のベースプレート3を通して入射された人工光とのためのエネルギコンバータとして機能する。
【0046】
図3は、光起電力効果を示す層系6を備える本発明に係るモジュール100の一実施例の要部概略横断面部分図を示している。図示のマイクロシート素子1は、層構造を有し、層構造は、前面11aに設けられた化合物半導体層61,62を有する光起電力効果を示す層系6と、金属伝導性の電極層7と、シートセクション11に沿って後面11bに適用されたミラー層4と、を有している。
【0047】
マイクロシート素子1は、背面のベースプレート3上に配置されており、背面のベースプレート3は、光透過性の電気伝導性の基層31と、光透過性の電気絶縁性の絶縁層32と、を有している。光起電力効果を示す層系6のpn接合において形成される電圧Upvは、マイクロシート素子1の取り付けセクション12において電極層7と上面の電極64との間で取り出され得る。
【0048】
電極層7は、特にヒンジセクション13において、加えて、マイクロシート素子1を静電式に作動させるための電極として機能し、このために、電極層7と基層31との間で、電圧Uaktが印加可能である。シートセクション11において、表面電荷が、後面11bを形成するミラー層4上と、前面11aを形成する半導体層61上とに誘導され得る。
【0049】
図3に示した状態で、シートセクション11は、閉鎖された姿勢から90°を超えて振れた、大きく開放された姿勢を取っている。この状態では、作動電圧Uactを印加すると、顕著な引力が前面11aと基層31との間に生じ、この引力は、ヒンジセクション13における電極層7と基層31との間の引力に対抗するように作用する。前面11aと基層31との間の引力は、これにより、閉鎖された姿勢へのシートセクション11の揺動に対抗するように作用し、意図した作動の妨げとなってしまう。前面11aと基層31との間の電界を弱めるために、取り付けセクション12は、誘電性の遮蔽層63を有し、遮蔽層63は、高い誘電率を有する絶縁性の素材から形成されている。
【0050】
すべての実施例のモジュール100は、好ましくは、ここでは図示しないアドレス指定ネットワークであって、個別のマイクロシート素子1又は複数のマイクロシート素子1の群と、コンピュータ制御されるアドレス指定及びマイクロシート素子1の作動並びに/又は光起電力効果により生成される電圧Upvの取り出しのための周辺側のモジュールインタフェースとの間の電気的な接続を形成する電気的な線路からなるアドレス指定ネットワークを備えている。電気的な線路は、例えば金属の薄膜としてそれぞれのベースプレート上に被着されているか、又はベースプレート内に内蔵されており、特に、電気伝導性の基層21,31は、微細構造化されていてもよく、すなわち、互いに独立的に電気的に切り替え可能なセクションに区分されていてもよい。
【0051】
好ましくは、図示の実施例のマイクロシート素子1は、平行な行と平行な列とからなる規則的なマトリクス形態で配置されており、マイクロシート素子1の全体は、シートセクション11の閉鎖された状態において、特にベースプレート2,3の略完全な面被覆を形成する。このためにマイクロシート素子1は、好ましくは、長方形の輪郭を有し、長方形の輪郭のエッジは、10マイクロメートル~2ミリメートルの長さを有している。
【0052】
図4は、静電式の作動をデモンストレーションする本発明に係るモジュール100の概略横断面部分図を示している。この図示は、単独のマイクロシート素子1を含んでおり、このマイクロシート素子1は、背面のベースプレート3と、正面のベースプレート2との間の中間室内に収容され、正面のベースプレート2上に配置されている。予定されている建物ファサードへの配置に関して、モジュール100は、正面10aと背面10bとを備えている。
【0053】
マイクロシート素子1は、電極を形成し、この目的のために電気伝導性の電極層を有している。シートセクション11の前面11a及び後面11bの具体的な光技術的な機能は、ここでは見やすくするために図示していない。正面のベースプレート2は、光透過性の担体20と、光透過性及び電気伝導性の基層21と、光透過性及び電気絶縁性の絶縁層22と、を有している。マイクロシート素子1は、マイクロシート素子1の取り付けセクション12でもって絶縁層22上に配置されており、マイクロシート素子1のヒンジセクション13の湾曲を介して、シートセクション11の揺動運動が行われる。図4に示した状態では、マイクロシート素子1と基層21との間に作動電圧Uactが印加されており、その結果、基層21とマイクロシート素子1との間の静電式の引き付けは、シートセクション11を、図示の水平の、すなわち閉鎖された姿勢へと、閉鎖させるに至らしめる。破線で示してあるのは、シートセクション11の2つの開放された姿勢、すなわち、ベースプレート2,3に対して略直交するように配向された、垂直な光進入時のモジュール100の最大の透過に相当する姿勢と、半分開放された、約45°の角度がシートセクション11とベースプレート2,3との間に存在している中間姿勢とである。最大で開放された姿勢は、マイクロシート素子1と基層21とが同じ電位にあるときに取られ、部分開放された中間姿勢では、閉鎖された姿勢と比べて低い作動電圧Uactがかかっている。印加される作動電圧Uactを好適に変更することで、したがって、シートセクション11がベースプレート2,3に対して様々な角度を有する多数の部分開放された中間姿勢が調整され得る。
【0054】
図5は、マイクロシート素子1の内部応力をデモンストレーションする本発明に係るモジュールの概略横断面部分図を示している。見やすくするという目的のために、マイクロシート素子1の光技術的な機能は、またしても図示していない。マイクロシート素子1は、ベースプレート2上に配置される圧縮応力が作用する層1aと、引っ張り応力が作用する層1bと、を有している。これらの内部応力の作用は、ヒンジセクション13に沿った、ここでは例示的に約90°の巻き角での、マイクロシート素子1の図示の湾曲内に生じる。取り付けセクション12に沿って、この湾曲は、ベースプレート2に対する形状結合式の結合により防止され、かつシートセクション11に沿っては、圧縮応力が作用する補償層1cが、シートセクション11内の大域的な、すなわち実効的な内部応力が消滅し、そこではこれにより湾曲が生じないようにしている。図示の層1a,1b及び1cは、例えばその全体でマイクロシート素子1の電極層を形成してもよく、マイクロシート素子1の光技術的な機能は、電極層の両側に適用された無応力の層又は層系により生起される。
【0055】
特に気相析出法(PVD、CVD)を使用した場合、通常、すべての層に応力が生じ、すなわち、例えば光起電力効果を示す層系、カラー層又は散乱作用を有するマットな層にも応力が生じる。この場合、合目的的に、層序全体が、プレーナ形のシートセクション11内の機械的な応力を補償するために設計される。
【0056】
シートセクション11内の大域的な応力補償のために、原理的には、既に2つの異なる層があれば十分である。マイクロシート素子の機能性及び寸法に関する構成自由度に関して、しかし、2つより多くの層を使用することが有利である。図1a~1d及び2a~2dの実施例において、マイクロシート素子1は、3つあるいは4つの層から形成されており、意図した光技術的な又は微小機械的な機能性次第では、さらに多くの数の層が、合目的的である又は必要である場合もある。
【0057】
図6は、光技術的なモジュール100からなる本発明に係るシステム200を有する建物ファサードの概略図を示している。モジュール100は、建物ファサードをここでは例示的に完全に外被しており、モジュール100の背面10bは、建物内部に向かって配向されており、すなわち、正面10aは、外部に曝露されており、モジュール100の上面10cは、上に来るように配向されている。面10a~10dの配向は、代表して2つのモジュール100に示してある。それぞれのマイクロシート素子の配置並びに揺動方向及び対応するシートセクションの前面及び後面の光技術的な作用に関するモジュール100の設定は、建物ファサードのそれぞれのセクションの光技術的な要求に適合されている。モジュール100の、図示のために使用する様々な塗り潰し模様は、それぞれのモジュール設定を示してはいるが、具体的な作動状況、すなわち、マイクロシート素子のシートセクションの姿勢を示すものではない。本実施例に合致した方位は、概略的な方位記号を基に示してある。
【0058】
南ファサードには、最も強烈な太陽入射が支配しているので、ここでは、光起電力効果を用いたエネルギ獲得用のモジュール100の能力が、特に効果的に利用され得る。加えて、システム200を構成するにあたり、南ファサードが、隣接する道路に面して方向付けられており、その結果、モジュール100に由来するミラー作用による交通の眩惑又は上方若しくは側方から車両内に進入する「閃光」は、回避されなければならない点に留意すべきである。
【0059】
南ファサードの上側の階層に取着されるモジュール100.1は、マイクロシート素子のシートセクションの前面に光起電力効果を示す層系を備え、かつ後面は、ミラー作用を有している。例えばモジュール100.1は、マイクロシート素子が、背面のベースプレート上に配置されており、かつシートセクションの揺動が、閉鎖された姿勢を起点として下面10dに向かって実施される図2aの実施例に相当する。光起電力効果を示す層系は、光を吸収するように作用するので、通行人、特に道路交通にとって、ミラー作用による眩惑は生じない。モジュール100.1のシートセクションは、例示的に部分開放された姿勢で存在し、その結果、当たった太陽光の光偏向は、ファサードの背後に存在する空間内へ実施される。
【0060】
特に一般的に、マイクロシート素子の作動、すなわち、シートセクションの姿勢は、一日の流れの中で、典型的には継続的に、太陽の位置及び利用者のニーズに適合される。例えば昼時には、完全に閉鎖された又は部分的に閉鎖された姿勢が取られていてもよく、これにより、内室は、完全に又はほとんど陰にされ、同時にシートセクションの光起電活性の前面の効率的な太陽曝露が存在している。このとき、完全に閉鎖された姿勢は、典型的には、光起電力効果を用いたエネルギ獲得に関する最適条件には相当しない。それというのも、モジュールの正面に対する太陽光線の進入角度は、90°から著しく外れている可能性があるからである。しかし、進入する太陽光線とともに90°の角度を形成するシートセクションの部分開放された姿勢も同じく、必ずしも最適というわけではない。それというのも、この場合は、隣り合うマイクロシート素子が相互に遮蔽し合う可能性があるからである。むしろ、最大の光起電力効果の効率の最適条件は、前述の姿勢間にあり、マイクロシート素子の作動は、制御装置により、好ましくは、利用可能な太陽光が一日の流れの中で常に最適に利用されるように開ループ制御及び/又は閉ループ制御され得る。
【0061】
モジュール100.2は、マイクロシート素子のシートセクションの前面に光起電力効果を示す層系を備え、かつ後面は、散乱作用を有している。例えばマイクロシート素子は、正面のベースプレート上に配置されており、かつ閉鎖された姿勢を起点としたシートセクションの揺動は、モジュール100.2の下面10dに向かって実施される。シートセクションの閉鎖された姿勢で、後面の散乱作用は、対応する空間内の観察者にとって、マットな視覚的な印象を引き起こし、すなわち、モジュール100.1の場合とは異なり、ここでは、特定の空間、特に、公に利用される領域では不適当と感じられかねない大面積のミラー作用は存在しない。代替的には、内方に向けられたミラー作用が、例えばレストランの鏡の間のように、所望されていることがあり、これにより、拡大された部屋の印象と、より良好な照明とが達成可能である。
【0062】
東ファサードに取着されるモジュール100.3は、マイクロシート素子のシートセクションの前面にミラー作用を有し、かつ後面に散乱作用を有している。例えばモジュール100.3は、マイクロシート素子が、正面のベースプレート上に配置されており、かつシートセクションの揺動が、閉鎖された姿勢を起点として下面10dに向かって実施される図1dの実施例に相当する。東は低い太陽の位置でしかないことに基づき、シートセクションの閉鎖された姿勢でのミラー作用は、光反射による交通の悪影響には至り得ない。モジュール100.3は、建物内部から観察してミラー化を閉鎖された状態で形成することなく、建物内部への狙い定めた光偏向を発生させる。
【0063】
建物ファサードの最も下側の階層内に取着されるモジュール100.4及び100.5は、マイクロシート素子のシートセクションの前面により特定用途用の色印象を発生させ、かつ後面は、ミラー作用を有している。前面に由来する色印象は、例えば誘電性のコーティング又は着色顔料に基づく。このように色に作用するモジュール100.4及び100.5は、特にデザイン機能を担っている。例えば建物ファサードの各フロントには、それぞれ異なる色印象又は色パターン、特にレタリング又はロゴが発生可能であってもよい。
【0064】
西ファサードは、一部セクションに、同じく光起電力効果を用いたエネルギ獲得用のモジュール100.2であって、すなわち、光起電力効果を示す層系を前面に備え、かつマイクロシート素子のシートセクションのマットな後面を備えるモジュール100.2を装備している。寝ている人がいる右上に示す空間の場合、すべてのモジュール100.2並びに北ファサードのモジュール100.3及び100.6のシートセクションは、閉鎖された姿勢にもたらされ、その結果、部屋は、暗くされた状態にある。
【0065】
北ファサードは、間接的な太陽光により照射され、太陽光は、特に雲又は地表により(例えば雪によっても)拡散され散乱される。この間接的な光のためにも、特定用途用の光偏向及び/又は光起電性の利用は、有意義であり得る。ここでは例示的に、光偏向のみが、図1dの実施例に相当するモジュール100.3と、モジュール100.6とにより予定されている。モジュール100.6は、前面にも後面にもミラー作用を有するシートセクションを有するマイクロシート素子を備えている。外部から進入する光のための光偏向作用の他に、モジュール100.6により、閉鎖された姿勢において、これにより、必要な場合、大判のミラーが、利用者のために形成され得る。特にモジュール100.6は、この目的のために個別に、すなわち、残余のモジュールとは独立的に作動可能に形成されていてもよい。
【0066】
本発明に係るシステム200の主な用途は、エネルギ節約と、建物内の熱マネジメントとに関する。建物ファサードを本発明に係る光技術的なモジュール100を有して構成することで、夏期には、部屋の温度上昇を著しく減じることが可能である一方、冬期には、貴重な太陽エネルギをできる限り多く、熱放射を含め、捉えることが可能である。
【0067】
本発明は、発明の実施に関し、前述の好ましい実施例に限定されるものではない。むしろ、根本的に異種の実施時にも、説明した解決手段を使用する多数の変化態様が可能である。特許請求の範囲、明細書若しくは図面から看取可能なすべての特徴及び/又は利点は、構造的な詳細若しくは空間的な配置を含め、それ自体でも、種々異なる組み合わせでも、本発明にとって本質的であり得る。
【符号の説明】
【0068】
100 光技術的なモジュール
200 建物ファサードを構成するためのシステム
10a 正面
10b 背面
10c 上面
10d 下面
1 マイクロシート素子
1a 圧縮応力が作用する層
1b 引っ張り応力が作用する層
1c 補償層
11 シートセクション
11a 前面
11b 後面
12 取り付けセクション
13 ヒンジセクション
2 正面のベースプレート
3 背面のベースプレート
20,30 担体
21,31 基層
22,32 絶縁層
4 ミラー層
5 表面粗さ
6 光起電力効果を示す層系
61,62 化合物半導体
63 遮蔽層
64 電極
7 電極層
pv 光起電力効果による電圧
act 作動電圧
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図2c
図2d
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-01-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物ファサード用、特にグレージング用の光技術的なモジュール(100)であって、
前記モジュール(100)は、予定されている前記建物ファサードへの配置に関して、正面(10a)、背面(10b)、上面(10c)及び下面(10d)を備え、
前記モジュール(100)は、少なくとも、
正面のベースプレート(2)及び背面のベースプレート(3)であって、前記ベースプレート(2,3)は、光透過性に形成されており、前記ベースプレート(2,3)間には、中間室が形成されている、ベースプレート(2,3)と、
前記中間室内に収容された複数のマイクロシート素子(1)であって、各マイクロシート素子(1)は、光技術的な前面(11a)及び/又は光技術的な後面(11b)を有する光不透過性のシートセクション(11)を有し、各マイクロシート素子(1)は、周辺側の取り付けセクション(12)によりヒンジ状に前記正面のベースプレート(2)又は前記背面のベースプレート(3)上に、各シートセクション(11)が、光不透過性の閉鎖された姿勢を起点として水平の揺動軸線回りに前記上面(10c)又は前記下面(10d)に向かって少なくとも1つの光透過性の開放された姿勢へ揺動可能であるように配置されている、マイクロシート素子(1)と、
を備える、
建物ファサード用、特にグレージング用の光技術的なモジュール(100)。
【請求項2】
前記シートセクション(11)の前記前面(11a)及び/又は前記後面(11b)は、可視光及び/又は近赤外線のためのミラー作用を有し、前記前面(11a)及び/又は前記後面(11b)は、特に金属からなるミラー層(4)として形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のモジュール(100)。
【請求項3】
前記シートセクション(11)の前記前面(11a)及び/又は前記後面(11b)は、可視光のための散乱作用を有し、前記前面(11a)及び/又は前記後面(11b)は、特に合目的的な表面粗さ(5)を有することを特徴とする、請求項1に記載のモジュール(100)。
【請求項4】
前記シートセクション(11)の前記前面(11a)又は前記後面(11b)は、可視光のための散乱作用を有し、前記前面(11a)又は前記後面(11b)は、特に合目的的な表面粗さ(5)を有することを特徴とする、請求項2に記載のモジュール(100)。
【請求項5】
前記シートセクション(11)の前記前面(11a)及び/又は前記後面(11b)は、可視光及び/又は近赤外線のための吸収作用を有し、前記前面(11a)及び/又は前記後面(11b)は、特に光起電力効果を示す層系(6)を有し、前記モジュール(100)は、特に光起電力効果を用いたエネルギ獲得のために形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のモジュール(100)。
【請求項6】
前記シートセクション(11)の前記前面(11a)又は前記後面(11b)は、可視光及び/又は近赤外線のための吸収作用を有し、前記前面(11a)又は前記後面(11b)は、特に光起電力効果を示す層系(6)を有し、前記モジュール(100)は、特に光起電力効果を用いたエネルギ獲得のために形成されていることを特徴とする、請求項2に記載のモジュール(100)。
【請求項7】
前記シートセクション(11)の前記前面(11a)及び/又は前記後面(11b)は、特定用途用の色印象を発生させるために、特に、誘電性のコーティング又は着色顔料により、形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のモジュール(100)。
【請求項8】
前記シートセクション(11)の前記前面(11a)又は前記後面(11b)は、特定用途用の色印象を発生させるために、特に、誘電性のコーティング又は着色顔料により、形成されていることを特徴とする、請求項2に記載のモジュール(100)。
【請求項9】
前記マイクロシート素子(1)は、それぞれ1つの層構造を有し、前記層構造は、少なくとも1つの圧縮応力が作用する層(1a)と、引っ張り応力が作用する層(1b)と、を有し、各マイクロシート素子(1)の前記シートセクション(11)に沿って、圧縮応力が作用する補償層(1c)が、前記引っ張り応力が作用する層(1b)上に配置されており、各マイクロシート素子(1)は、
大域的に応力フリーに形成されており、2つの略面平行な表面を有するシートセクション(11)と、
リジッドに前記ベースプレート(2,3)のうちの一方のベースプレート上に配置されている周辺側の前記取り付けセクション(12)と、
前記シートセクション(11)と前記取り付けセクション(12)との間に位置し、内部応力が誘導される湾曲を有し、これにより、前記マイクロシート素子(1)の開放された姿勢が形成されているヒンジセクション(13)と、
に区分されているようになっている、
ことを特徴とする、請求項1に記載のモジュール(100)。
【請求項10】
前記閉鎖された姿勢と、少なくとも1つの前記開放された姿勢との間での前記シートセクション(11)の前記揺動は、静電式の作用原理により作動可能であり、このために、前記正面のベースプレート(2)及び/又は前記背面のベースプレート(3)は、電気伝導性の層を有し、前記シートセクション(11)は、それぞれ1つの電極を有し、又は形成し、前記電極と、対応する前記ベースプレート(2,3)との間での電圧信号の印加により、個々のマイクロシート素子(1)及び/又は複数のマイクロシート素子(1)の群が作動可能であるようになっていることを特徴とする、請求項1に記載のモジュール(100)。
【請求項11】
各マイクロシート素子(1)は、少なくとも1つの電気伝導性の層を有し、これにより、電極層(7)が形成されており、対応する前記ベースプレート(2,3)は、層構造を有し、前記層構造は、特に光透過性の電気伝導性の基層(21,31)と、特に光透過性の電気絶縁性の絶縁層(22,32)と、を有し、各マイクロシート素子(1)の前記取り付けセクション(12)は、前記絶縁層(22,32)上に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のモジュール(100)。
【請求項12】
各マイクロシート素子(1)の前記取り付けセクション(12)は、誘電性の遮蔽層(63)を有することを特徴とする、請求項1に記載のモジュール(100)。
【請求項13】
前記シートセクション(11)の前記前面(11a)及び/又は前記後面(11b)は、光起電力効果を示す層系(6)を前記電極層(7)上に有し、特に有機の半導体又は無機の半導体(61,62)に基づくpn接合を有することを特徴とする、請求項11に記載のモジュール(100)。
【請求項14】
前記マイクロシート素子(1)は、10マイクロメートル~2ミリメートルのエッジ長さを有する長方形の輪郭を有し、かつ/又は平行な行と平行な列とからなる規則的なマトリクス形態で配置されており、前記マイクロシート素子(1)の全体は、前記閉鎖された状態において、特に前記ベースプレート(2,3)の略完全な面被覆を形成することを特徴とする、請求項1に記載のモジュール(100)。
【請求項15】
前記モジュール(100)は、アドレス指定ネットワークであって、個別のマイクロシート素子(1)又は複数のマイクロシート素子(1)の群と、コンピュータ制御されるアドレス指定及び前記マイクロシート素子(1)の作動並びに/又は光起電力効果により生成される電圧の取り出しのための周辺側のモジュールインタフェースとの間の電気的な接続を形成する電気的な線路からなるアドレス指定ネットワークを備えることを特徴とする、請求項1に記載のモジュール(100)。
【請求項16】
建物ファサード、特にグレージングを構成するためのシステム(200)であって、少なくとも、
請求項1から15のいずれか一項に記載の複数の光技術的なモジュール(100)と、
前記モジュール(100)に電気的に接続される、前記モジュール(100)の前記マイクロシート素子(1)の作動用の少なくとも1つの制御装置と、
を備え、
前記モジュール(100)の前記配置に関して、前記モジュール(100)の前記背面(10b)を建物内部に向かって配向し、かつ前記モジュール(1)の前記上面(10c)を上に来るように配向する、
建物ファサード、特にグレージングを構成するためのシステム(200)。
【請求項17】
前記マイクロシート素子(1)の前記配置、揺動方向並びに/又は前記シートセクション(11)の前記前面(11a)及び前記後面(11b)の光技術的な作用に関する前記モジュール(100)の設定が、前記建物ファサードの光技術的な要求に適合されていることを特徴とする、請求項16に記載のシステム(200)。
【請求項18】
前記モジュール(100)は、個別にそれぞれ異なる設定を有し、前記モジュール(100)は、前記建物ファサードのそれぞれ対応するセクションの前記光技術的な要求に適合されていることを特徴とする、請求項16に記載のシステム(200)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0067
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0067】
本発明は、発明の実施に関し、前述の好ましい実施例に限定されるものではない。むしろ、根本的に異種の実施時にも、説明した解決手段を使用する多数の変化態様が可能である。特許請求の範囲、明細書若しくは図面から看取可能なすべての特徴及び/又は利点は、構造的な詳細若しくは空間的な配置を含め、それ自体でも、種々異なる組み合わせでも
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下を含む。
1.
建物ファサード用、特にグレージング用の光技術的なモジュール(100)であって、
前記モジュール(100)は、予定されている前記建物ファサードへの配置に関して、正面(10a)、背面(10b)、上面(10c)及び下面(10d)を備え、
前記モジュール(100)は、少なくとも、
正面のベースプレート(2)及び背面のベースプレート(3)であって、前記ベースプレート(2,3)は、光透過性に形成されており、前記ベースプレート(2,3)間には、中間室が形成されている、ベースプレート(2,3)と、
前記中間室内に収容された複数のマイクロシート素子(1)であって、各マイクロシート素子(1)は、光技術的な前面(11a)及び/又は光技術的な後面(11b)を有する光不透過性のシートセクション(11)を有し、各マイクロシート素子(1)は、周辺側の取り付けセクション(12)によりヒンジ状に前記正面のベースプレート(2)又は前記背面のベースプレート(3)上に、各シートセクション(11)が、光不透過性の閉鎖された姿勢を起点として水平の揺動軸線回りに前記上面(10c)又は前記下面(10d)に向かって少なくとも1つの光透過性の開放された姿勢へ揺動可能であるように配置されている、マイクロシート素子(1)と、
を備える、
建物ファサード用、特にグレージング用の光技術的なモジュール(100)。
2.
前記シートセクション(11)の前記前面(11a)及び/又は前記後面(11b)は、可視光及び/又は近赤外線のためのミラー作用を有し、前記前面(11a)及び/又は前記後面(11b)は、特に金属からなるミラー層(4)として形成されていることを特徴とする、上記1のモジュール(100)。
3.
前記シートセクション(11)の前記前面(11a)及び/又は前記後面(11b)は、可視光のための散乱作用を有し、前記前面(11a)及び/又は前記後面(11b)は、特に合目的的な表面粗さ(5)を有することを特徴とする、上記1又は2のモジュール(100)。
4.
前記シートセクション(11)の前記前面(11a)及び/又は前記後面(11b)は、可視光及び/又は近赤外線のための吸収作用を有し、前記前面(11a)及び/又は前記後面(11b)は、特に光起電力効果を示す層系(6)を有し、前記モジュール(100)は、特に光起電力効果を用いたエネルギ獲得のために形成されていることを特徴とする、上記1から3のいずれか一つのモジュール(100)。
5.
前記シートセクション(11)の前記前面(11a)及び/又は前記後面(11b)は、特定用途用の色印象を発生させるために、特に、誘電性のコーティング又は着色顔料により、形成されていることを特徴とする、上記1から4のいずれか一つのモジュール(100)。
6.
前記マイクロシート素子(1)は、それぞれ1つの層構造を有し、前記層構造は、少なくとも1つの圧縮応力が作用する層(1a)と、引っ張り応力が作用する層(1b)と、を有し、各マイクロシート素子(1)の前記シートセクション(11)に沿って、圧縮応力が作用する補償層(1c)が、前記引っ張り応力が作用する層(1b)上に配置されており、各マイクロシート素子(1)は、
大域的に応力フリーに形成されており、2つの略面平行な表面を有するシートセクション(11)と、
リジッドに前記ベースプレート(2,3)のうちの一方のベースプレート上に配置されている周辺側の前記取り付けセクション(12)と、
前記シートセクション(11)と前記取り付けセクション(12)との間に位置し、内部応力が誘導される湾曲を有し、これにより、前記マイクロシート素子(1)の開放された姿勢が形成されているヒンジセクション(13)と、
に区分されているようになっている、
ことを特徴とする、上記1から5のいずれか一つのモジュール(100)。
7.
前記閉鎖された姿勢と、少なくとも1つの前記開放された姿勢との間での前記シートセクション(11)の前記揺動は、静電式の作用原理により作動可能であり、このために、前記正面のベースプレート(2)及び/又は前記背面のベースプレート(3)は、電気伝導性の層を有し、前記シートセクション(11)は、それぞれ1つの電極を有し、又は形成し、前記電極と、対応する前記ベースプレート(2,3)との間での電圧信号の印加により、個々のマイクロシート素子(1)及び/又は複数のマイクロシート素子(1)の群が作動可能であるようになっていることを特徴とする、上記1から6のいずれか一つのモジュール(100)。
8.
各マイクロシート素子(1)は、少なくとも1つの電気伝導性の層を有し、これにより、電極層(7)が形成されており、対応する前記ベースプレート(2,3)は、層構造を有し、前記層構造は、特に光透過性の電気伝導性の基層(21,31)と、特に光透過性の電気絶縁性の絶縁層(22,32)と、を有し、各マイクロシート素子(1)の前記取り付けセクション(12)は、前記絶縁層(22,32)上に配置されていることを特徴とする、上記1から7のいずれか一つのモジュール(100)。
9.
各マイクロシート素子(1)の前記取り付けセクション(12)は、誘電性の遮蔽層(63)を有することを特徴とする、上記1から8のいずれか一つのモジュール(100)。
10.
前記シートセクション(11)の前記前面(11a)及び/又は前記後面(11b)は、光起電力効果を示す層系(6)を前記電極層(7)上に有し、特に有機の半導体又は無機の半導体(61,62)に基づくpn接合を有することを特徴とする、上記1から9のいずれか一つのモジュール(100)。
11.
前記マイクロシート素子(1)は、10マイクロメートル~2ミリメートルのエッジ長さを有する長方形の輪郭を有し、かつ/又は平行な行と平行な列とからなる規則的なマトリクス形態で配置されており、前記マイクロシート素子(1)の全体は、前記閉鎖された状態において、特に前記ベースプレート(2,3)の略完全な面被覆を形成することを特徴とする、上記1から10のいずれか一つのモジュール(100)。
12.
前記モジュール(100)は、アドレス指定ネットワークであって、個別のマイクロシート素子(1)又は複数のマイクロシート素子(1)の群と、コンピュータ制御されるアドレス指定及び前記マイクロシート素子(1)の作動並びに/又は光起電力効果により生成される電圧の取り出しのための周辺側のモジュールインタフェースとの間の電気的な接続を形成する電気的な線路からなるアドレス指定ネットワークを備えることを特徴とする、上記1から11のいずれか一つのモジュール(100)。
13.
建物ファサード、特にグレージングを構成するためのシステム(200)であって、少なくとも、
上記1から12のいずれか一つの複数の光技術的なモジュール(100)と、
前記モジュール(100)に電気的に接続される、前記モジュール(100)の前記マイクロシート素子(1)の作動用の少なくとも1つの制御装置と、
を備え、
前記モジュール(100)の前記配置に関して、前記モジュール(100)の前記背面(10b)を建物内部に向かって配向し、かつ前記モジュール(1)の前記上面(10c)を上に来るように配向する、
建物ファサード、特にグレージングを構成するためのシステム(200)。
14.
前記マイクロシート素子(1)の前記配置、揺動方向並びに/又は前記シートセクション(11)の前記前面(11a)及び前記後面(11b)の光技術的な作用に関する前記モジュール(100)の設定が、前記建物ファサードの光技術的な要求に適合されていることを特徴とする、上記13のシステム(200)。
15.
前記モジュール(100)は、個別にそれぞれ異なる設定を有し、前記モジュール(100)は、前記建物ファサードのそれぞれ対応するセクションの前記光技術的な要求に適合されていることを特徴とする、上記13又は14のシステム(200)。
【国際調査報告】