(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-18
(54)【発明の名称】ポリイミド-アルミニウム複合箔の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 9/00 20060101AFI20240710BHJP
H01G 9/045 20060101ALI20240710BHJP
H01G 9/055 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
H01G9/00 290D
H01G9/00 290A
H01G9/045
H01G9/055
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580917
(86)(22)【出願日】2023-02-10
(85)【翻訳文提出日】2023-12-28
(86)【国際出願番号】 CN2023075321
(87)【国際公開番号】W WO2023236572
(87)【国際公開日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】202210644066.9
(32)【優先日】2022-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518446097
【氏名又は名称】南通海星電子股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Nantong Haixing Electronics Limited Liability Company
【住所又は居所原語表記】No.518, South Tongyang Road, Pingchao Town, Tongzhou District, Nantong City, Jiangsu 226300 China
(71)【出願人】
【識別番号】518446101
【氏名又は名称】南通海一電子有限公司
【氏名又は名称原語表記】Nantong Haiyi Electronics Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.519, South Tongyang Road, Pingchao Town, Tongzhou District, Nantong City Jiangsu 226300 China
(71)【出願人】
【識別番号】518446112
【氏名又は名称】四川中雅科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Si Chuan Zhongya Technology Company.
【住所又は居所原語表記】Industrial Park Yaan, Sichuan 625000 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】王建中
(72)【発明者】
【氏名】朱偉晨
(72)【発明者】
【氏名】濮▲ウィ▼
(72)【発明者】
【氏名】程恒洋
(72)【発明者】
【氏名】何桂麗
(72)【発明者】
【氏名】▲イェン▼康平
(72)【発明者】
【氏名】王貴欣
(57)【要約】
本発明は、ポリイミド-アルミニウム複合箔の製造方法を開示している。アルミニウム箔熱処理ステップ、アルミニウム箔冷却ステップ、腐食箔製造ステップ、孔拡げ箔製造ステップ、ポリイミド複合層製造ステップ、表面洗浄および乾燥処理を含む。ポリイミド複合層製造ステップに使用する前処理液は、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、N,N-ジメチルアセトアミドおよび安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウムを混合してなるものであり、使用する後処理液は、硫酸、塩酸、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、N,N-ジメチルアセトアミドおよび安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウムを混合してなるものである。これによって、成形後のポリイミド複合層は、腐食箔の外表面に安定して付着することができ、電極箔の曲げ強度が向上されることができる。また、腐食孔内部に充填されるポリイミド複合層は、アルミニウム残留コアとしっかりと一体化になり、成形後の電極箔が比較的に高い誘電率および面積比容量を有するのに有利である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド-アルミニウム複合箔の製造方法であって、
純度99.9%以上のアルミニウム箔をオーブンに入れ、温度480~520℃、時間3~5minの熱処理を行う熱処理ステップS1と、
ステップS1で処理されたアルミニウム箔を空気中に置いて自然冷却する、冷却ステップS2と、
ステップS2で処理されたアルミニウム箔を腐食酸の液体に浸漬し、表面に腐食孔を形成する、腐食箔製造ステップS3と、
ステップS3で得られた腐食箔を孔拡げ溶液に浸漬し、腐食孔を孔拡張し、処理された腐食孔の細孔径が0.1μm以上である、孔拡げ箔製造ステップS4と、
以下のサブステップを含む、ポリイミド複合層製造ステップS5であって、
ステップS4で得られた孔拡げ箔を前処理槽に浸漬し、使用する前処理液は、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル0.5~1mol/L、N,N-ジメチルアセトアミド0.5~1mol/Lおよび安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウム0.5~1mol/Lを混合してなる前処理液であり、温度が150~180℃に制御され、浸漬時間が30~60Sに制御され、複合箔を形成する、ステップS51と、
ステップS51で得られた複合箔を前処理槽から取り出し、ポリイミド複合層が固化成形するまで空気中に置く、ステップS52とを含む、ポリイミド複合層製造ステップS5と、
ステップS5で得られた複合箔を後処理槽に浸漬し、使用する後処理液は、硫酸0.3~0.5mol/L、塩酸1~1.5mol/L、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル0.3~0.6mol/L、N,N-ジメチルアセトアミド0.25~0.6mol/Lおよび安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウム0.2~0.3mol/Lを混合してなる後処理液であり、温度が68~75℃に制御され、時間が3~5minに制御され、その後、複合箔を後処理槽から取り出し、空気中に10~15minを置く、ステップS6と、
ステップS6で処理された複合箔を純水に浸漬して、2min以上洗浄する、ステップS7と、
ステップS7で処理された複合箔を乾燥させて、ポリイミド-アルミニウム複合箔を得る、ステップS8とを含む、ことを特徴とするポリイミド-アルミニウム複合箔の製造方法。
【請求項2】
ステップS51では、前処理液を高周波数振動状態または高周波数擾乱状態に維持する、ことを特徴とする請求項1に記載のポリイミド-アルミニウム複合箔の製造方法。
【請求項3】
前処理槽の底部および周囲の側壁に、複数の高周波数振動器が均一に配置され、振動周波数が50~150Hzに制御される、ことを特徴とする請求項2に記載のポリイミド-アルミニウム複合箔の製造方法。
【請求項4】
ステップS6の実行時に、後処理液に電流を流し、電流密度が0.03~0.08A/cm
2に制御される、ことを特徴とする請求項1に記載のポリイミド-アルミニウム複合箔の製造方法。
【請求項5】
ステップS3では、使用する腐食酸の液体は、塩酸11.03mo/L:硫酸7.5mol/L=2:1の混合溶液であり、温度が50~70℃に制御される、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載のポリイミド-アルミニウム複合箔の製造方法。
【請求項6】
ステップS4では、使用する孔拡げ溶液は、硫酸0.5~1mol/Lと塩酸1.5~2mol/Lとの混合溶液であり、温度が68~75℃に制御され、時間が3~5minに制御される、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載のポリイミド-アルミニウム複合箔の製造方法。
【請求項7】
ステップS4では、使用する孔拡げ溶液は、硫酸0.5~1mol/Lと塩酸1.5~2mol/Lとの混合溶液であり、温度が68~75℃に制御され、1~2A/cm
2電流密度で孔拡張を実行し、時間が1~1.5minに制御される、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載のポリイミド-アルミニウム複合箔の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極箔製造技術に属し、特に、ポリイミド-アルミニウム複合箔の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国の電力制限と省エネ政策の推進により、工業生産における節電は急務となっている。低消費電力特性により、化学腐食に基づいた化学機械の製造プロセスが業界で継続的に開発されている。例えば、中国特許CN113502476Bには、固体アルミニウム電解電容器用の電極箔の製造方法を開示している。具体的に、アルミニウム箔を塩酸溶液に浸漬するステップと、酸性溶液に浸漬し、高周波数パルス電流を印加して予備電解を行うステップと、第1回電解腐食および第2回電解腐食を順次に実行するステップと、第1回電解腐食と第2回電解腐食とを少なくとも3回繰り返すステップと、純水で洗浄するステップと、化学洗浄液で洗浄するステップと、純水でさらに洗浄するステップと、高温熱処理、冷却するステップとを含む。この製造方法は、省電力と製造された電極箔の面積比容量が高いという利点があるが、製造された電極箔には、多数の腐食孔が残存しており、構造強度が低下し、特に、定格荷重での曲げ回数が品質検査基準を満たしていなく、且つ製造期間が長く、間接的に生産コストと製造コストが増加するという問題がある。また、腐食箔製造後、熱処理ステップを行い、表面の酸化を避けるために、真空環境や不活性ガス環境に置く必要があり、熱処理コストが大幅に増加する。したがって、上記の問題を解決する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の従来技術の問題点および欠点を考慮して、本発明の設計者は、関連情報を収集し、多くの側面を評価および検討し、さらに、この業界で長年の研究開発経験を持つ技術者によって実験と修正を続けることで、最終に、ポリイミド-アルミニウム複合箔の製造方法を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した問題を解決するために、ポリイミド-アルミニウム複合箔の製造方法であって、純度99.9%以上のアルミニウム箔をオーブンに入れ、温度480~520℃、時間3~5minの熱処理を行う熱処理ステップS1と、ステップS1で処理されたアルミニウム箔を空気中に置いて自然冷却する、冷却ステップS2と、ステップS2で処理されたアルミニウム箔を腐食酸の液体に浸漬し、表面に腐食孔を形成する、腐食箔製造ステップS3と、ステップS3で得られた腐食箔を孔拡げ溶液に浸漬し、腐食孔を孔拡張し、処理された腐食孔の細孔径が0.1μm以上である、孔拡げ箔製造ステップS4と、以下のサブステップを含む、ポリイミド複合層製造ステップS5であって、ステップS4で得られた孔拡げ箔を前処理槽に浸漬し、使用する前処理液は、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル0.5~1mol/L、N,N-ジメチルアセトアミド0.5~1mol/Lおよび安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウム0.5~1mol/Lを混合してなる前処理液であり、温度が150~180℃に制御され、浸漬時間が30~60Sに制御され、複合箔を形成する、ステップS51と、ステップS51で得られた複合箔を前処理槽から取り出し、ポリイミド複合層が固化成形するまで空気中に置く、ステップS52とを含む、ポリイミド複合層製造ステップS5と、ステップS5で得られた複合箔を後処理槽に浸漬し、使用する後処理液は、硫酸0.3~0.5mol/L、塩酸1~1.5mol/L、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル0.3~0.6mol/L、N,N-ジメチルアセトアミド0.25~0.6mol/Lおよび安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウム0.2~0.3mol/Lを混合してなる後処理液であり、温度が68~75℃に制御され、時間が3~5minに制御され、その後、複合箔を後処理槽から取り出し、空気中に10~15minを置く、ステップS6と、ステップS6で処理された複合箔を純水に浸漬して、2min以上洗浄する、ステップS7と、ステップS7で処理された複合箔を乾燥させて、ポリイミド-アルミニウム複合箔を得る、ステップS8とを含む、ポリイミド-アルミニウム複合箔の製造方法を提供している。
【0005】
本発明で開示される技術的解決策のさらなる改良として、ステップS51では、前処理液を高周波数振動状態または高周波数擾乱状態に維持する。
【0006】
本発明で開示される技術的解決策のさらなる改良として、前処理槽の底部および周囲の側壁に、複数の高周波数振動器が均一に配置され、振動周波数が50~150Hzに制御される。
【0007】
本発明で開示される技術的解決策のさらなる改良として、ステップS6の実行時に、後処理液に電流を流し、電流密度が0.03~0.08A/cm2に制御される。
【0008】
本発明で開示される技術的解決策のさらなる改良として、ステップS3では、使用する腐食酸の液体は、塩酸11.03mo/L:硫酸7.5mol/L=2:1の混合溶液であり、温度が50~70℃に制御される。
【0009】
本発明で開示される技術的解決策のさらなる改良として、ステップS4では、使用する孔拡げ溶液は、硫酸0.5~1mol/Lと塩酸1.5~2mol/Lとの混合溶液であり、温度が68~75℃に制御され、時間が3~5minに制御される。
【0010】
本発明で開示される技術的解決策のさらなる改良として、ステップS4では、使用する孔拡げ溶液は、硫酸0.5~1mol/Lと塩酸1.5~2mol/Lとの混合溶液であり、温度が68~75℃に制御され、1~2A/cm2電流密度で孔拡張を実行し、時間が1~1.5minに制御される。
【発明の効果】
【0011】
実際の産業応用では、ポリイミド-アルミニウム複合箔の製造プロセスは、少なくとも次の有益な効果を達成している。
【0012】
1)電気化学腐食過程では、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル0.5~1mol/L、N,N-ジメチルアセトアミド0.5~1mol/Lおよび安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウムがアルミニウム箔表面に重合/複合してポリイミド複合層を形成しやすく、ポリイミド複合層も腐食箔の外表面に安定して付着することができ、電極箔の曲げ強度の向上に役立ち(すなわち、定格負荷でより多く曲げ回数を実現できる)。
【0013】
2)ポリイミド複合層製造ステップでは、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル0.5~1mol/L、N,N-ジメチルアセトアミド0.5~1mol/Lおよび安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウムが腐食孔内部に侵入し、固化成形後、アルミニウム残留コアとしっかりと一体化になり、周知技術によれば、ポリイミド複合層自体は、103Hzでの誘電率が4.0であり、誘電損失はわずか0.004~0.007という高絶縁性を持ち、形成された電極箔が比較的に高い誘電率および面積比容量を有するのに有利である。
【0014】
3)ポリイミド複合層製造ステップでは、使用する後処理液は、硫酸、塩酸、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、N,N-ジメチルアセトアミドおよび安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウムを混合してなるものであり、前処理液中の4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、N,N-ジメチルアセトアミドおよび安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウムと比較して、含有量が大幅に低減しており、アルミニウム箔表面に付着しているポリイミド複合層の欠陥を修復することができ、ポリイミド複合層の全体的な連続性を確保し、製造された電極箔の表面品質が良好であることを実現できる。
【0015】
4)ポリイミド複合層は室温で冷却固化して成形できるため、化成プロセスが不要となり(従来の製造方法では、まず、アルミニウム箔を腐食し、その後、化成プロセスを行う)、電極箔の製造コストを大幅に削減でき、製造時間・周期を短縮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の理解を深めるために、以下の実施形態を参照して本発明をさらに詳細に説明する。なお、これらの実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の保護範囲を限定するものではない。また、本発明の詳細な説明において説明されていない内容は特に断りのない限り汎用方法であることを理解されたい。
【0017】
比較例(中国特許CN113502476Bの明細書の段落23~32より抜粋)
純度99.98%、厚さ120μmの軟質アルミニウムを温度70℃の0.1%塩酸溶液に2min浸漬処理し、前処理後のアルミニウム箔を0.5%のリン酸溶液に浸漬し、温度40℃において高周波数パルス電流で30s予備電解する。
【0018】
予備電解されたアルミニウム箔を混合水溶液に浸漬して、第1回電解腐食を行い、周波数40Hzの正弦波交流電流を印加し、反応温度は40℃であり、反応時間が2minである。その後、中処理混合水溶液に浸漬して化学腐食を行い、ここで、反応温度は60℃であり、反応時間が25sである。そして、混合水溶液に浸漬して第2回電解腐食を行い、周波数90Hzの方形波交流電流を印加し、ここで、反応温度は20℃であり、反応時間が2minである。
【0019】
上述した第1回電解腐食のステップと第1回電解腐食のステップとをそれぞれ3回繰り返す。
【0020】
腐食箔を純水に浸漬して流れ水で2min洗浄する。
【0021】
腐食箔を化学洗浄液に浸漬して後処理の洗浄を行い、ここで、後処理洗浄液の温度は60℃であり、反応時間が4minである。
【0022】
30℃純水において洗浄する処理を行い、ここで、洗浄する時間が8minである。
【0023】
アルミニウム箔をオーブンに入れ、520℃で熱処理を行い、熱処理過程は、不活性ガス保護雰囲気または真空中で行い、40s処理後、製品を得る。
【0024】
具体的な実験結果によって、腐食したアルミニウム箔の耐電圧性能はわずか530Vであり、面積比容量は119.88、CV性能が564.8μF・V・cm-2であり、限界曲げ回数は33回、且つ温水中(水和プロセス)の電圧立ち上がり時間が16minである。ここでの温水中の電圧立ち上がり時間とは、通常室温での耐腐食性能を測るために時間がかかることに対し、室温の環境の代わりに、高温(例えば、標準気圧での95±1℃の水中)の条件下で、皮膜が形成(腐食による皮膜が形成する)することで、抵抗値が変化し、このような抵抗値が変化する化成箔に規定電流を流し、化成箔への印加電圧が耐電圧(皮膜耐電圧)の90%の値に上昇するまでの時間である。
【0025】
(実施例一)
ポリイミド-アルミニウム複合箔の製造方法は、以下のステップを含む。
【0026】
S1、熱処理ステップ:純度99.9%以上のアルミニウム箔をオーブンに入れ、温度480~520℃、時間3~5minに制御して熱処理を行う。
【0027】
S2、冷却ステップ:ステップS1で処理したアルミニウム箔を空気中に置いて自然冷却する。
【0028】
S3、腐食箔製造ステップ:ステップS2で処理したアルミニウム箔を腐食酸の液体(腐食液)に浸漬し、表面に腐食孔を形成する。使用される腐食酸の液体は、塩酸11.03mo/L:硫酸7.5mol/L=2:1混合溶液であり、温度は50~70℃に制御する。
【0029】
S4、孔拡げ箔製造ステップ:ステップS3で得られた腐食箔を孔拡げ溶液に浸漬し、腐食孔を拡張させる。処理後の腐食孔の細孔径が0.1μm以上である。使用されている孔拡げ溶液は、硫酸0.5~1 mol/Lと塩酸1.5~2mol/Lとの混合溶液であり、温度は68~75℃に制御し、時間が3~5minに制御する。
【0030】
S5、ポリイミド複合層製造ステップは、以下のサブステップを含む。
【0031】
S51、ステップS4で得られた孔拡げ箔を前処理槽に浸漬し、使用される前処理液は、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル0.5~1mol/L、N,N-ジメチルアセトアミド0.5~1mol/L、および安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウム0.5~1mol/Lを混合してなるものであり、温度は150~180℃に制御され、浸漬時間は30~60Sに制御され、複合箔を形成する。
【0032】
S52、ステップS51で得られた複合箔を前処理槽から取り出し、ポリイミド複合層が固化して形成されるまで空気中に置く。
【0033】
S6、ステップS5で得られた複合箔を後処理槽に浸漬し、使用される後処理液は、硫酸0.3~0.5mol/L、塩酸1~1.5mol/L、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル0.3~0.6mol/L、N,N-ジメチルアセトアミド0.25~0.6mol/L、および安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウム0.2~0.3mol/Lを混合してなるものんであり、温度は68~75℃に制御され、時間は3~5minに制御される。その後、複合箔を後処理槽から取り出し、空気中に10~15min放置する。
【0034】
S7、ステップS6で処理した複合箔を純水に浸漬してすすぎ、洗浄する時間は2min以下である。
【0035】
S8、ステップS7で処理した複合箔を乾燥させて、ポリイミド-アルミニウム複合箔を得る。
【0036】
実験を実施し、得られた具体的な実験結果による実証の結果、比較例と比較して、腐食したアルミニウム箔の耐電圧性能は538Vに向上し、面積比容量は121.05に向上し、CV性能は572.5μF・V・cm-2に向上し、限界曲げ回数が45回に増加し、且つ温水中の電圧立ち上がり時間が8minに短縮された。
【0037】
その原因は次の点と考えられる。
【0038】
(1)電気化学腐食プロセス中に、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル0.5~1mol/L、N,N-ジメチルアセトアミド0.5~1mol/Lおよび安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウムが、アルミニウム箔表面のその場で重合/複合してポリイミド複合層を形成し、且つポリイミド複合層は、腐食箔の外表面に安定して付着することができるので、電気箔の曲げ強度の向上に役立つことができる(すなわち、定格負荷での曲げ強度が強い)。
【0039】
2)ポリイミド複合層製造ステップでは、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル0.5~1mol/L、N,N-ジメチルアセトアミド0.5~1mol/Lおよび安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウムは、腐食孔内部に侵入する可能性があり、後過程の固化と成形後、アルミニウム残留コアとしっかりと一体化することができ、周知技術によれば、ポリイミド複合層自体は、103Hzでの誘電率が4.0であり、誘電損失はわずか0.004~0.007という高絶縁性を持ち、形成された電極箔が比較的に高い誘電率および面積比容量を有するのに有利である。
【0040】
3)ポリイミド複合層製造ステップでは、使用する後処理液は、硫酸、塩酸、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、N,N-ジメチルアセトアミドおよび安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウムを混合してなるものである。前処理液中の4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、N,N-ジメチルアセトアミドおよび安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウムと比較して、含有量が大幅に低減しており、アルミニウム箔表面に付着しているポリイミド複合層の欠陥を修復することができ、ポリイミド複合層の全体的な連続性を確保し、製造された電極箔の表面品質が良好であることを実現できる。
【0041】
なお、注意しなければならないのは、従来の電極箔の製造方法では、まず、アルミニウム箔を腐食して形成し、その後に熱処理過程を行う。実施例一では、ポリイミド複合層製造ステップにおいて、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル0.5~1mol/L、N,N-ジメチルアセトアミド0.5~1mol/Lおよび安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウムの混合液がアルミニウム箔表面に均一に付着して安定な成形を実現し、また、高温の影響によるポリイミド複合層の変質を避けるため、腐食過程の前に、アルミニウム箔熱処理過程が行われる。
実施例二
ポリイミド-アルミニウム複合箔の製造方法は、以下のステップを含む。
【0042】
S1、熱処理ステップ:純度99.9%以上のアルミニウム箔をオーブンに入れ、熱処理を行う。温度が480~520℃に制御され、時間が3~5minに制御される。
【0043】
S2、冷却ステップ:ステップS1で処理されたアルミニウム箔を空気中に置いて自然冷却する。
【0044】
S3、腐食箔製造ステップ:ステップS2で処理されたアルミニウム箔を腐食酸の液体に浸漬し、表面に腐食孔を形成する。使用する腐食酸の液体は、塩酸11.03mo/L:硫酸7.5mol/L=2:1の混合溶液であり、温度が50~70℃に制御される。
【0045】
S4、孔拡げ箔製造ステップ:ステップS3で得られた腐食箔を孔拡げ溶液に浸漬して、腐食孔を孔拡張する。処理された腐食孔は、細孔径が0.1μm以上である。使用する孔拡げ溶液は、硫酸0.5~1mol/Lと塩酸1.5~2mol/Lとの混合溶液であり、温度が68~75℃に制御され、時間が3~5minに制御される。
【0046】
S5、ポリイミド複合層製造ステップは、以下のサブステップを含む。
【0047】
S51、ステップS4で得られた孔拡げ箔を前処理槽に浸漬する。使用する前処理液は、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル0.5~1mol/L、N,N-ジメチルアセトアミド0.5~1mol/Lおよび安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウム0.5~1mol/Lを混合してなるものである。温度が150~180℃に制御され、浸漬時間が30~60Sに制御され、複合箔を形成する。前処理槽の底部および周囲の側壁に複数の高周波数発振器が均等に配置されており、周波数が50~150Hzに制御され、前処理液は常に高周波振動状態に維持される。
【0048】
S52、ステップS51で得られた複合箔を前処理槽から取り出し、ポリイミド複合層が固化して形成されるまで空気中に置く。
【0049】
S6、ステップS5で得られた複合箔を後処理槽に浸漬する。使用する後処理液は、硫酸0.3~0.5mol/L、塩酸1~1.5mol/L、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル0.3~0.6mol/L、N,N-ジメチルアセトアミド0.25~0.6mol/Lおよび安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウム0.2~0.3mol/Lを混合してなるものんである。温度が68~75℃に制御され、時間が3~5minに制御される。その後、複合箔を後処理槽から取り出し、空気中に10~15min放置する。
【0050】
S7、ステップS6で得られた複合箔を純水に浸漬して洗浄し、洗浄の時間が2min以上である。
【0051】
S8、ステップS7で得られた複合箔を乾燥させて、ポリイミド-アルミニウム複合箔を得る。
【0052】
実験データおよび実験結果により、腐食アルミニウム箔の耐電圧性能が539.8Vであり、面積比容量が123.07であり、CV性能が578.5μF・V・cm-2であり、限界曲げ回数が48であり、温水中の電圧立ち上がり時間が7.5minである。
【0053】
実施例一の実験データと比較すると、腐食アルミニウム箔の限界曲げ回数、温水中の電圧立ち上がり時間はいずれも大きく改善されていないが、耐電圧性能、面積比容量およびCV性能は大幅に改善されており、その理由は、ポリイミド複合層製造ステップでは、常に高周波数振動力が前処理槽に加えられており、ポリイミド複合層製造ステップにおいて、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル0.5~1mol/L、N,N-ジメチルアセトアミド0.5~1mol/Lおよび安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウムが腐食孔に侵入するのに有利であり、側壁の完全な浸透、すなわち、成形後のポリイミド複合層がアルミニウム残留コアを完全に覆うことができることを意味し、これも電気的な性能パラメータの改善に有益である。
実施例三
ポリイミド-アルミニウム複合箔の製造方法は、以下のステップを含む。
【0054】
S1、熱処理ステップ:純度99.9%以上のアルミニウム箔をオーブンに入れ、熱処理を行う。(温度が480~520℃に制御され、時間が3~5minに制御される)
S2、冷却ステップ:ステップS1で処理されたアルミニウム箔を空気中に置いて自然冷却する。
【0055】
S3、腐食箔製造ステップ:ステップS2で処理されたアルミニウム箔を腐食酸の液体に浸漬して、表面に腐食孔を形成する。使用する腐食酸の液体は、塩酸11.03mo/L:硫酸7.5mol/L=2:1の混合溶液であり、温度が50~70℃に制御される。
【0056】
S4、孔拡げ箔製造ステップ:ステップS3で得られた腐食箔を孔拡げ溶液に浸漬して、腐食孔を孔拡張する。処理後の腐食孔は、細孔径が0.1μm以上である。使用する孔拡げ溶液は、硫酸0.5~1mol/Lと塩酸1.5~2mol/Lとの混合溶液であり、温度が68~75℃に制御され、時間が3~5minに制御される。
【0057】
S5、ポリイミド複合層製造ステップは、以下のサブステップを含む。
【0058】
S51、ステップS4で得られた孔拡げ箔を前処理槽に浸漬する。前処理液は、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル0.5~1mol/L、N,N-ジメチルアセトアミド0.5~1mol/Lおよび安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウム0.5~1mol/Lを混合してなるものんである。温度が150~180℃に制御され、且つ浸漬時間が30~60Sに制御され、複合箔を製造する。前処理槽の底部および周囲の側壁に複数の高周波数発振器が均等に配置されており、周波数が50~150Hzに制御され、前処理液は常に高周波振動状態に維持される。
【0059】
S52、ステップS51で得られた複合箔を前処理槽から取り出し、ポリイミド複合層が固化して形成されるまで空気中に置く。
【0060】
S6、ステップS5で得られた複合箔を後処理槽に浸漬する。使用する後処理液は、硫酸0.3~0.5mol/L、塩酸1~1.5mol/L、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル0.3~0.6mol/L、N,N-ジメチルアセトアミド0.25~0.6mol/Lおよび安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウム0.2~0.3mol/Lを混合してなるものである。温度が68~75℃に制御され、時間が3~5minに制御される。処理工程中は、後処理液に常に電流を流し、電流密度を0.03~0.08A/cm2に制御し、その後、複合箔を後処理槽から取り出し、空気中に10~15min放置する。
【0061】
S7、ステップS6で処理された複合箔を純水で洗浄し、洗浄の時間が2min以上である。
【0062】
S8、ステップS7で処理された複合箔を乾燥させて、ポリイミド-アルミニウム複合箔を得る。
【0063】
実験データおよび実験結果により、腐食アルミニウム箔の耐電圧性能が539.6Vであり、面積比容量が122.05であり、CV性能が579.3μF・V・cm-2であり、限界曲げ回数が54であり、温水中の電圧立ち上がり時間が6minである。
【0064】
実施例二の実験データと比較すると、腐食アルミニウム箔耐電圧性能、面積比容量、およびCV性能はいずれも大きく改善されていないが、限界曲げ回数は大幅に改善されており、温水中の電圧立ち上がり時間を大幅に短縮したことが分かった。その理由は、ポリイミド複合層製造ステップでは、後処理液は常に微電流状態に維持されるため、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル0.5~1mol/L、N,N-ジメチルアセトアミド0.5~1mol/Lおよび安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウムイオンは極性であり、ポリイミド複合層の欠陥領域または亀裂の位置発見、修復(ポリイミド複合層の欠陥領域または亀裂は、非欠陥領域よりも大きな電位差を持っている)に有益である。これによって、成形後のポリイミド複合層が良好な表面品質を有することを確保し、アルミニウム箔を完全に包み込むことができ、且つ成形されたポリイミド複合層の各領域の厚さの値は一貫していることを実現することができる。
【0065】
最後に、一般的な知識によれば、ポリイミド複合層は室温で冷却硬化および成形を行うことができる。これによって、化成のプロセス(従来の方法では、最初に、アルミニウム箔に対して腐食プロセスを実行し、その後、腐食プロセスが行われる。)を経る過程が減り、電極箔の製造コストを大幅に削減し、製造時間・周期を短縮することができる。
【0066】
開示された実施形態に関する説明により、当業者は本発明を製造または使用することができる。これらの実施形態に対する様々な修正は当業者には容易であり、本明細書で定義される一般原理は、本発明の精神または範囲から逸脱することなく他の実施形態で実施することができる。したがって、本発明は、発明の詳細に示される実施形態に限定されるものではなく、その原理および特徴と一致する最も広い範囲も含まれている。
【国際調査報告】