(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-18
(54)【発明の名称】二次電池用正極極板及び二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20240710BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20240710BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240710BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240710BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20240710BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240710BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/66 A
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/131
H01M4/139
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501215
(86)(22)【出願日】2022-05-23
(85)【翻訳文提出日】2024-01-10
(86)【国際出願番号】 CN2022094487
(87)【国際公開番号】W WO2023225797
(87)【国際公開日】2023-11-30
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100159329
【氏名又は名称】三縄 隆
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 李力
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲シュアン▼
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼ 信
(72)【発明者】
【氏名】宋 佩▲東▼
(72)【発明者】
【氏名】云 ▲亮▼
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ ▲興▼布
(72)【発明者】
【氏名】董 苗苗
【テーマコード(参考)】
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
5H017DD05
5H017EE01
5H017EE04
5H017EE05
5H017EE06
5H017EE07
5H017HH03
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA29
5H050CB02
5H050CB05
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB29
5H050DA02
5H050FA18
5H050GA22
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA06
5H050HA07
(57)【要約】
本出願は、二次電池用正極極板及びその製造方法、及びこの二次電池用正極極板を使用した二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置を提供する。この二次電池用正極極板(10)は、集電体(11)と正極活物質層(13)とを有するとともに、上記集電体(11)と上記正極活物質層(13)との間に多孔質炭素材料を含む多孔質層(12)をさらに有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池用正極極板であって、
集電体と正極活物質層とを有し、前記集電体と前記正極活物質層との間に多孔質炭素材料を含む多孔質層をさらに有することを特徴とする二次電池用正極極板。
【請求項2】
前記多孔質炭素材料は、ハードカーボン、バイオマス炭、活性炭、炭素繊維、およびカーボンエアロゲルから選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用正極極板。
【請求項3】
前記二次電池用正極極板は、集電体、多孔質層、及び正極活物質層からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の二次電池用正極極板。
【請求項4】
前記正極活物質層は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物を含み、
前記多孔質炭素材料は、ハードカーボン、活性炭又はカーボンエアロゲルであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の二次電池用正極極板。
【請求項5】
前記多孔質炭素材料は、ミクロ孔、メソ孔、及びマクロ孔を含み、前記ミクロ孔の孔径は2nm以下であり、前記メソ孔の孔径は2nmを超え且つ50nm未満であり、前記マクロ孔の孔径は50nm以上であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の二次電池用正極極板。
【請求項6】
前記多孔質炭素材料において、ミクロ孔、メソ孔、及びマクロ孔の総孔体積が0.02cm
3/g以上であり、総孔体積に対するミクロ孔とメソ孔の合計孔体積の比率が5%~85%の間であることを特徴とする請求項5に記載の二次電池用正極極板。
【請求項7】
前記多孔質炭素材料のDv50は、1~100μmであり、選択的に1~20μmであることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の二次電池用正極極板。
【請求項8】
前記正極極板は、二酸化炭素雰囲気での比表面積と窒素雰囲気での比表面積との比が2以上であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の二次電池用正極極板。
【請求項9】
前記正極極板は、二酸化炭素雰囲気での比表面積が2m
2/g以上であり、窒素雰囲気での比表面積が1m
2/g以下であることを特徴とする請求項8に記載の二次電池用正極極板。
【請求項10】
前記正極活物質層の厚さを100厚さ部とすると、前記多孔質層の厚さは、1~50厚さ部であり、選択的に3~30厚さ部であることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の二次電池用正極極板。
【請求項11】
前記正極極板の前記正極活物質層側の表面に孔路が存在し、
前記孔路の孔径の最大円周直径分布は1~50μmであり、
選択的に、孔深さをHとし、孔と孔との間の距離をLとし、正極極板の厚さをTとすると、下記式(1)と(2)の関係を満たすことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の二次電池用正極極板。
H/T≧1/10 … (1)
L/T≦10 … (2)
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の二次電池用正極極板の製造方法であって、
正極集電体の少なくとも一方側の表面に多孔質炭素材料を含む多孔質層を形成する工程と、
形成された多孔質層に正極スラリーを塗布し、正極活物質層を形成する工程とを含むことを特徴とする二次電池用正極極板の製造方法。
【請求項13】
多孔質炭素材料、導電剤であるアセチレンブラック、接着剤であるポリフッ化ビニリデンと溶媒であるN-メチルピロリドンを含むスラリーによって前記多孔質層を形成することを特徴とする請求項12に記載の二次電池用正極極板の製造方法。
【請求項14】
二次電池であって、
請求項1~11のいずれか1項に記載の正極極板、又は請求項12又は13に記載の製造方法によって製造された正極極板を含むことを特徴とする二次電池。
【請求項15】
電池モジュールであって、
請求項14に記載の二次電池を含むことを特徴とする電池モジュール。
【請求項16】
電池パックであって、
請求項15に記載の電池モジュールを含むことを特徴とする電池パック。
【請求項17】
電力消費装置であって、
請求項14に記載の二次電池、請求項15に記載の電池モジュール又は請求項16に記載の電池パックから選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、電池分野に関し、特に二次電池用正極極板及びその製造方法、及びこの二次電池用正極極板を使用した二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池の応用範囲が広くなるにつれて、二次電池は水力、火力、風力と太陽光発電所などのエネルギー貯蔵電源システム、及び電動工具、電動自転車、電動バイク、電気自動車、軍事装備、航空宇宙などの複数の分野で広く応用されている。二次電池は、大きく発展したが、当分野ではセルのエネルギー密度をさらに向上させるとともに、放電容量維持率を改善するというニーズが依然として存在する。
【0003】
セルのエネルギー密度を向上させるために、従来の技術では極板の塗布重量を増加させる手段が一般的に採用されている。しかしながら、極板の塗布重量が増加すると、二次電池における電解液の液相輸送の悪化やイオンの輸送経路が長くなるため、電気化学的性能が悪化し、放電容量維持率が低下する。そのため、従来の正極極板の構造はまだ改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願は、上記課題に鑑みてなされたものであり、放電容量維持率の高い二次電池用正極極板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を実現するために、本出願の第一の態様は、二次電池用正極極板を提供し、この二次電池用正極極板は、集電体と正極活物質層とを有し、上記集電体と上記正極活物質層との間に多孔質炭素材料を含む多孔質層をさらに有する。集電体と正極活物質層との間に多孔質炭素材料を含む多孔質層を設置することにより、多孔質炭素材料に吸着された空気を溶媒と置換させ、吸着された空気は離脱後に極板の表面にオーバーフローして均一な貫通孔を形成し、優れた極板の内部と表面の造孔効果を得て、それによって電解液が電極で極板の外部から内部へ絶えず導通浸透することが促進され、イオンの高速移動に適しており、さらに放電容量維持率を向上させることができる。
【0006】
いくつかの実施の形態では、上記多孔質炭素材料は、ハードカーボン、バイオマス炭、活性炭、炭素繊維とカーボンエアロゲルから選択される少なくとも一つである。これらの物質は、高い比表面積と豊富な多孔質孔路を有し、極板の作製における効率的な気液置換を確保し、それによって上記技術的効果を得ることができる。
【0007】
いくつかの実施の形態では、上記二次電池用正極極板は、集電体、多孔質層と正極活物質層からなる。他のいずれの実施の形態では、上記正極活物質層は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物を含み、上記多孔質炭素材料は、ハードカーボン、活性炭又はカーボンエアロゲルである。集電体、多孔質層と正極活物質層からなる二次電池用正極極板は、極板の厚さが厚くなりすぎず、電解液が極板の内部に適切に入ることができ、イオンが反応に適切に関与することができる。そして、正極活物質であるリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、多孔質炭素材料であるハードカーボン、活性炭又はカーボンエアロゲルを使用することにより、放電容量維持率の向上をより確実に実現することができる。
【0008】
いくつかの実施の形態では、上記多孔質炭素材料は、ミクロ孔、メソ孔とマクロ孔を含み、ここで、上記ミクロ孔の孔径は2nm以下であり、上記メソ孔の孔径は2nmを超え且つ50nm未満であり、上記マクロ孔の孔径は50nm以上である。ミクロ孔、メソ孔とマクロ孔を含む多孔質炭素材料を使用することにより、優れた造孔効果を確保し、電解液の電極での極板の外部から内部への拡散を促進し、さらに放電容量維持率を向上させることができる。
【0009】
いくつかの実施の形態では、上記多孔質炭素材料において、ミクロ孔、メソ孔とマクロ孔の総孔体積が0.02cm3/g以上であり、総孔体積に対するミクロ孔とメソ孔の合計孔体積の比率が5%~85%の間である。本出願では、ミクロ孔とメソ孔の合計孔体積の比率は、極板における多孔質炭素のミクロ孔とメソ孔の豊富さを反映し、この比率が上記範囲内にあることにより、多孔質層に吸着された空気が離脱後に極板の表面に均一な貫通孔を形成するのに有利であり、それによって電解液が極板の外部から内部へ浸透することを促進し、さらに放電容量維持率を向上させることができる。
【0010】
いくつかの実施の形態では、上記多孔質炭素材料のDv50は、1~100μmであり、選択的に1~20μmである。多孔質炭素にこのようなDv50を持たせることにより、極板の表面に形成された貫通孔をより均一にすることができる。
【0011】
いくつかの実施の形態では、上記正極極板は、二酸化炭素雰囲気での比表面積と窒素雰囲気での比表面積との比が2以上である。他のいずれの実施の形態では、上記正極極板は、二酸化炭素雰囲気での比表面積が2m2/g以上であり、窒素雰囲気での比表面積が1m2/g以下である。本出願では、比表面積は、極板における多孔質炭素のミクロ孔、メソ孔とマクロ孔の豊富さを表現することができ、以上のような比表面積比を有することにより、放電容量維持率をさらに向上させることができる。
【0012】
いくつかの実施の形態では、上記正極活物質層の厚さを100厚さ部とすると、上記多孔質層の厚さは、1~50厚さ部であり、好ましくは3~30厚さ部である。このように多孔質層の厚さと上記正極活物質層の厚さの比例関係を限定することにより、優れた極板の表面の造孔効果を得て、放電容量維持率のさらなる向上が促進される。
【0013】
いくつかの実施の形態では、上記正極極板の上記正極活物質層側の表面に孔路が存在し、上記孔路の孔径の最大円周直径分布は1~50μmであり、選択的に、孔深さをHとし、孔と孔との間の距離をLとし、正極極板の厚さをTとすると、下記式(1)と(2)の関係を満たす。
【0014】
H/T≧1/10 … (1)
L/T≦10 … (2)
【0015】
孔径、孔深さと孔ピッチが以上の条件を満たすため、電解液の液相拡散が最適化され、さらに放電容量維持率をさらに向上させる。
【0016】
本出願の第二の態様は、第一の態様の二次電極用正極極板の製造方法をさらに提供し、この二次電極用正極極板の製造方法は、正極集電体の少なくとも一方側の表面に多孔質炭素材料を含む多孔質層を形成する工程と、形成された多孔質層に正極スラリーを塗布し、正極活物質層を形成する工程とを含む。正極集電体の少なくとも一方側の表面に多孔質炭素材料を含む多孔質層を形成し、形成された多孔質層に正極活物質層を形成することにより、放電容量維持率の高い二次電池を製造することができる。
【0017】
いくつかの実施の形態では、多孔質炭素材料、導電剤であるアセチレンブラック、接着剤であるポリフッ化ビニリデンと溶媒であるN-メチルピロリドンを含むスラリーによって多孔質層を形成する。スラリーによって多孔質層を効率的に形成することができる。
【0018】
本出願の第三の態様は、二次電池をさらに提供し、この二次電池は、本出願の第一の態様の正極極板又は第二の態様の製造方法によって製造された正極極板を含む。本出願によって、高い放電容量維持率を有する二次電池を提供することができる。
【0019】
本出願の第四の態様は、電池モジュールをさらに提供し、この電池モジュールは、本出願の第三の態様の二次電池を含む。電池モジュールは、上記二次電池を含むため、この二次電池のすべての有益な効果を有する。
【0020】
本出願の第五の態様は、電池パックをさらに提供し、この電池パックは、本出願の第四の態様の電池モジュールを含む。電池パックは、上記二次電池を含むため、この二次電池のすべての有益な効果を有する。
【0021】
本出願の第六の態様は、電力消費装置をさらに提供し、この電力消費装置は、本出願の第三の態様の二次電池、第四の態様の電池モジュール又は第五の態様の電池パックを含む。電力消費装置は、上記二次電池を含むため、この二次電池のすべての有益な効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本出願の一実施の形態に係る二次電池用正極極板の厚さで切断される断面概略図である。
【
図2】本出願の一実施の形態に係る二次電池の概略図である。
【
図3】
図2に示す本出願の一実施の形態に係る二次電池の分解図である。
【
図4】本出願の一実施の形態に係る電池モジュールの概略図である。
【
図5】本出願の一実施の形態に係る電池パックの概略図である。
【
図6】
図5に示す本出願の一実施の形態に係る電池パックの分解図である。
【
図7】本出願の一実施の形態に係る二次電池を電源として用いる電力消費装置の概略図である。
【
図8】実施例1における正極極板の表面のCCD写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を適当に参照しながら、本出願の二次電池用正極極板及びその製造方法、及びこの二次電池用正極極板を使用した二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。しかしながら、必要のない詳細な説明を省略する場合がある。例えば、周知の事項に対する詳細な説明、実際に同じである構造に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に長くなることを回避し、当業者に容易に理解させるためである。なお、図面及び以下の説明は、当業者に本出願を十分に理解させるために提供するものであり、特許請求の範囲に記載されたテーマを限定するものではない。
【0024】
本出願に開示された「範囲」は、下限と上限の形式で限定され、与えられた範囲は、一つの下限と一つの上限を選定することで限定されるものであり、選定された下限と上限は、特定の範囲の境界を限定した。このように限定される範囲は、端値を含むか又は含まないものであってもよく、且つ任意の組み合わせが可能であり、即ち任意の下限は、任意の上限と組み合わせて、一つの範囲を形成することができる。例えば、特定のパラメータに対して60~120と80~110の範囲がリストアップされている場合、60~110と80~120の範囲も想定できると理解される。なお、最小範囲値として1と2がリストアップされており、最大範囲値として3、4及び5がリストアップされている場合、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4と2~5というような範囲がすべて想定できる。本出願では、特に断りのない限り、数値範囲「a~b」は、aからbの間のいずれかの実数の組み合わせの短縮表現を表し、ここで、aとbはいずれも実数である。例えば、数値範囲「0~5」は、本明細書においてすでに「0~5」の間のすべての実数をリストアップしたことを表し、「0~5」は、これらの数値の組み合わせの短縮表現だけである。また、あるパラメータが≧2の整数であると表現すると、このパラメータが例えば整数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などであることを開示していることに相当する。
【0025】
特に説明しない場合、本出願のすべての実施の形態及び選択的な実施の形態は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成することができる。
【0026】
特に説明しない場合、本出願のすべての技術的特徴及び選択的な技術的特徴は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成することができる。
【0027】
特に説明しない場合、本出願のすべてのステップは、順番に行われてもよく、ランダムに行われてもよく、好ましくは、順番に行われる。例えば、前記方法がステップ(a)と(b)とを含むことは、前記方法が、順番に行われるステップ(a)と(b)とを含んでもよく、順番に行われるステップ(b)と(a)とを含んでもよいことを表す。例えば、以上に言及された前記方法がステップ(c)をさらに含んでもよいことは、ステップ(c)が任意の順序で前記方法に追加されてもよいことを表し、例えば前記方法は、ステップ(a)、(b)及び(c)を含んでもよく、ステップ(a)、(c)及び(b)を含んでもよく、ステップ(c)、(a)及び(b)などを含んでもよい。
【0028】
特に説明しない場合、本出願に言及された「含む」と「包含」は、開放型を表し、閉鎖型であってもよい。例えば、前記「含む」と「包含」は、リストアップされていない他の成分をさらに含むか又は包含してもよく、リストアップされている成分のみを含むか又は包含してもよいことを表してもよい。
【0029】
特に説明しない場合、本出願では、用語である「又は」は包括的である。例を挙げると、「A又はB」というフレーズは、「A、B、又はAとBとの両方」を表す。より具体的には、Aが真であり(又は存在し)且つBが偽である(又は存在しない)条件と、Aが偽である(又は存在しない)が、Bが真である(又は存在する)条件と、AとBがいずれも真である(又は存在する)条件とのいずれも「A又はB」を満たしている。
【0030】
本出願の一つの実施の形態では、二次電池用正極極板を提供し、この二次電池用正極極板は、集電体と正極活物質層とを有し、上記集電体と上記正極活物質層との間に多孔質炭素材料を含む多孔質層をさらに有する。
【0031】
従来の技術において、セルのエネルギー密度を向上させるために、一般的には極板の塗布重量を増加させる。しかしながら、極板の塗布重量が増加すると、二次電池における電解液の液相輸送の悪化やイオンの輸送経路が長くなるため、電気化学的性能が悪化し、放電容量維持率が劣化する。
【0032】
本出願の発明者は、例えばハードカーボン、活性炭、カーボンエアロゲルなどの多孔質炭素材料が非常に高い比表面積(約10~1000m2/g)を有し、大量の空気、特にCO2などの小分子のガスを吸着することができることを発見した。集電体と正極活物質層との間に多孔質炭素材料を含む多孔質層を設置し、多孔質炭素材料に吸着された空気が溶媒と置換され、吸着された空気は離脱後に極板の表面にオーバーフローして均一な貫通孔を形成し、それによって電解液が電極で極板の外部から内部へ絶えず導通浸透することが促進され、イオンの高速移動に適しており、さらに二次電池の放電容量維持率を向上させることができる。
【0033】
いくつかの実施の形態では、上記多孔質炭素材料は、ハードカーボン、バイオマス炭、活性炭、炭素繊維とカーボンエアロゲルから選択される少なくとも一つである。
【0034】
これらの物質は高い比表面積と豊富な多孔質孔路を有し、それらを多孔質炭素材料として用いることにより、極板の作製における効率的な気液置換を確保し、それによって二次電池の放電容量維持率を向上させるという技術的効果を確実に得ることができる。
【0035】
いくつかの実施の形態では、上記二次電池用正極極板は、集電体、多孔質層と正極活物質層からなる。集電体/多孔質層/正極活物質層という積層構造で二次電池用正極極板を構成し、極板の厚さが厚くなりすぎず、電解液が極板の内部に適切に入ることができ、イオンが反応に適切に関与することができる。
【0036】
他の実施の形態では、上記正極活物質層は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物を含み、上記多孔質炭素材料は、ハードカーボン、活性炭又はカーボンエアロゲルである。正極活物質であるリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、多孔質炭素材料であるハードカーボン、活性炭又はカーボンエアロゲルを使用することにより、放電容量維持率の向上をより確実に実現することができる。
【0037】
いくつかの実施の形態では、上記多孔質炭素材料は、ミクロ孔、メソ孔とマクロ孔を含み、ここで、上記ミクロ孔の孔径は2nm以下であり、上記メソ孔の孔径は2nmを超え且つ50nm未満であり、上記マクロ孔の孔径は50nm以上である。
【0038】
また、いくつかの実施の形態では、上記多孔質炭素材料において、ミクロ孔、メソ孔とマクロ孔の総孔体積が0.02cm3/g以上であり、総孔体積に対するミクロ孔とメソ孔の合計孔体積の比率が5%~85%の間であり、より好ましくは50%~85%の間である。
【0039】
このような多孔質炭素材料は、豊富なミクロ孔、メソ孔を有し、孔に大量の空気、特にCO2などの小分子のガスを吸着することができる。そのため、多孔質炭素材料に吸着された空気が溶媒と置換され、吸着された空気は離脱後に極板の表面にオーバーフローして必要な貫通孔を形成し、それによって造孔効果を実現し、電解液が電極で極板の外部から内部へ絶えず導通浸透するようにし、二次電池の放電容量維持率を向上させることができる。
【0040】
本出願では、孔体積は、全自動ガス吸着分析器を使用して測定することができる。
【0041】
いくつかの実施の形態では、上記多孔質炭素材料のDv50は、1~100μmであり、好ましくは1~20μmであり、より好ましくは1~5μmである。
【0042】
多孔質炭素にこのようなDv50を持たせることにより、極板の表面に形成された貫通孔をより均一にすることができる。
【0043】
本出願では、Dv50とは、体積分布において50%に対応する粒度サイズを指す。一例として、Dv50は、GB/T 19077-2016粒度分布レーザー回折法を参照し、英国マルバーン計器有限会社のMastersizer 2000E型レーザー粒度分析器などのレーザー粒度分析器を採用して容易に測定することができる。
【0044】
いくつかの実施の形態では、上記正極極板は、二酸化炭素雰囲気での比表面積と窒素雰囲気での比表面積との比が2以上である。従来の技術において、比表面積は、一般的に窒素雰囲気での吸脱着を利用して特徴付けられるが、窒素の吸脱着を利用して多孔質炭素のミクロ孔、メソ孔を特徴付けにくいため、本出願では、二酸化炭素雰囲気での比表面積と窒素雰囲気での比表面積、及び両方の比を利用して多孔質炭素材料の比表面積の違いを特徴付けることができる。二酸化炭素雰囲気での比表面積と窒素雰囲気での比表面積との比が2以上の場合、総孔体積に対するミクロ孔、メソ孔の合計孔体積の比率は50%以上である。
【0045】
いくつかの実施の形態では、上記正極極板は、二酸化炭素雰囲気での比表面積が2m2/g以上であり、窒素雰囲気での比表面積が1m2/g以下である。
【0046】
以上のような比表面積を有するため、多孔質層に吸着された空気が離脱後に極板の表面に均一な貫通孔を形成するのに有利であり、それによって電解液が極板の外部から内部へ浸透することを促進し、さらに放電容量維持率をさらに向上させることができる。
【0047】
本出願では、比表面積は、全自動ガス吸着分析器を使用して材料の窒素/二酸化炭素などの等温吸脱着曲線を測定した後に、多点Brunauer-Emmett-Teller法によって計算したものであり、孔体積の比率は、BJH法を利用してこの材料の二酸化炭素吸脱着曲線を計算したものである。
【0048】
いくつかの実施の形態では、上記正極活物質層の厚さを100厚さ部とすると、上記多孔質層の厚さは、1~50厚さ部であり、好ましくは3~30厚さ部である。多孔質層の厚さが厚すぎても薄すぎても、いずれも二次電池の放電容量維持率を向上させる技術的効果が得られない。
【0049】
いくつかの実施の形態では、上記正極極板の上記正極活物質層側の表面に孔路が存在し、上記孔路の孔径の最大円周直径分布は1~50μmであり、選択的に、孔深さをHとし、孔と孔との間の距離をLとし、正極極板の厚さをTとすると、下記式(1)と(2)の関係を満たす。
【0050】
H/T≧1/10 … (1)
L/T≦10 … (2)
【0051】
孔径、孔深さと孔ピッチは、電解液の液相拡散に影響を与える重要な影響因子であり、孔径、孔深さと孔ピッチを上記のように規定することにより、電解液の液相拡散を促進し、さらに放電容量維持率をさらに向上させることができる。
【0052】
本出願では、孔径、孔深さと孔ピッチは、光学電子顕微鏡又は電子走査型電子顕微鏡を使用して極板の表面と極板の断面を撮影することにより求められる。具体的には、極板の表面テストにおいて、極板の表面を撮影して、活物質層表面の孔路の分布状況及び孔路の孔径を観察することができる。極板の断面テストにおいて、極板を活物質層方向に垂直にスライスし、切断面を撮影し、活物質層における孔路の深さを観察した。
【0053】
本出願の二次電極正極極板の製造方法は、正極集電体の少なくとも一方側の表面に多孔質炭素材料を含む多孔質層を形成する工程と、形成された多孔質層に正極スラリーを塗布し、正極活物質層を形成する工程とを含む。
【0054】
いくつかの実施の形態では、上記多孔質層を形成する工程において、多孔質炭素材料、導電剤であるアセチレンブラック、接着剤であるポリフッ化ビニリデンと溶媒であるN-メチルピロリドンを含むスラリーによって多孔質層を形成する。
【0055】
従来の技術において、スラリーは、一般的にはドライブレンド、溶剤入りウェットブレンド、及び負圧脱泡後に塗布に使用される。多孔質炭素材料を正極活物質層を形成するためのスラリーに混合すると、負圧脱泡をキャンセルしない限り、極板の表面の造孔は実現できないが、負圧脱泡をキャンセルすると塗布における塗布キャビティの流動安定性に影響を与える。
【0056】
一方、本出願では、まず、例えば塗布、具体的にはマイクログラビア印刷工程による塗布を利用し、集電体に多孔質層を形成し、次に、必要に応じて空気に静置(例えば12時間)したり、又はCO2などの小分子ガスにガスを急速に吸着したりして、ガスが溶媒と置換され、それによって造孔を実現した。その後、造孔が完了した多孔質層に正極スラリーを塗布し、正極活物質層を形成した。そのため、本出願の製造方法は、負圧脱泡を実施する必要がなく、この方法によって製造された二次電池用正極極板を使用した二次電池は、優れた放電容量維持率を備えている。
【0057】
以上、多孔質層を塗布によって形成する例を示したが、多孔質層の形成方法は、塗布法に制限されるものではなく、例えば多孔質炭素材料がカーボンエアロゲルの場合、多孔質層は、CVD(化学気相成長)法などによって形成されてもよい。
【0058】
本出願の二次電池は、本出願の正極極板又は本出願の製造方法に基づいて製造された正極極板を含む。本出願の電池モジュールは、本出願の二次電池を含む。本出願の電池パックは、本出願の電池モジュールを含む。本出願の電力消費装置は、本出願の二次電池、本出願の電池モジュール又は本出願の電池パックを含む。
【0059】
また、以下、図面を適切に参照して本出願の二次電池用正極極板、電池モジュール、電池パックと電力消費装置について説明する。
【0060】
[正極極板]
いくつかの実施の形態では、正極極板は、集電体と正極活物質層とを有し、上記集電体と上記正極活物質層との間に多孔質炭素材料を含む多孔質層をさらに有する。例えば、
図1の概略図に示すように、正極極板10は、集電体11、多孔質層12と正極活物質層13を有する。
【0061】
集電体11は、自体の厚さ方向に対向する二つの表面を有し、
図1において、集電体11の二つの表面に多孔質層12と正極活物質層13がそれぞれ形成される場合を例示したが、多孔質層12と正極活物質層13は、集電体11の一つの表面のみに形成されていてもよい。
【0062】
いくつかの実施の形態では、上記集電体11は、金属箔シート又は複合集電体を採用してもよい。例えば、金属箔シートとして、アルミニウム箔を採用してもよい。複合集電体は、高分子材料ベース層と高分子材料ベース層の少なくとも一つの表面上に形成される金属層を含んでもよい。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)に形成することにより形成することができる。
【0063】
いくつかの実施の形態では、集電体11の厚さは、例えば5~20μmである。
【0064】
いくつかの実施の形態では、多孔質層12は、ハードカーボン、バイオマス炭、活性炭、炭素繊維とカーボンエアロゲルから選択される少なくとも一つの多孔質炭素材料を含む。
【0065】
いくつかの実施の形態では、上記多孔質炭素材料のDv50は、1~100μmであり、好ましくは1~20μmであり、より好ましくは1~5μmである。
【0066】
いくつかの実施の形態では、上記多孔質炭素材料は、孔径が2nm以下のミクロ孔、孔径が2nmを超え且つ50nm未満のメソ孔と孔径が50nm以上のマクロ孔を含む。そして、いくつかの実施の形態では、上記多孔質炭素材料において、ミクロ孔、メソ孔とマクロ孔の総孔体積は0.02cm3/g以上であり、総孔体積に対するミクロ孔とメソ孔の合計孔体積の比率が5%~85%の間であり、より好ましくは50%~85%の間である。
【0067】
いくつかの実施の形態では、多孔質層12は、さらに選択的に接着剤を含む。例として、上記接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びフッ素含有アクリレート樹脂のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0068】
いくつかの実施の形態では、多孔質層12は、さらに選択的に導電剤を含む。例として、上記導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0069】
いくつかの実施の形態では、正極活物質層13は、正極活物質を含み、正極活物質は、当分野において公知の電池用の正極活物質を採用することができる。例として、正極活物質は、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩、リチウム遷移金属酸化物及びそれぞれの改質化合物のうちの少なくとも一つの材料を含んでもよい。本出願は、これらの材料に限らず、他の電池の正極活物質として使用できる従来の材料を使用することができる。これらの正極活物質は、単独で一つのみを使用してもよく、二つ以上を組み合わせて使用してもよい。ここで、リチウム遷移金属酸化物の例は、リチウムコバルト酸化物(例えばLiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(例えばLiNiO2)、リチウムマンガン酸化物(例えばLiMnO2、LiMn2O4)、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(NCM333と略称してもよい)、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2(NCM523と略称してもよい)、LiNi0.5Co0.25Mn0.25O2(NCM211と略称してもよい)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2(NCM622と略称してもよい)、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2(NCM811と略称してもよい))、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えばLiNi0.85Co0.15Al0.05O2)及びその改質化合物などのうちの少なくとも一つを含んでもよいが、それらに限らない。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例は、リン酸鉄リチウム(例えばLiFePO4(LFPと略称してもよい))、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガンリチウム(例えばLiMnPO4)、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素との複合材料のうちの少なくとも一つを含んでもよいが、それらに限らない。
【0070】
いくつかの実施の形態では、正極活物質層13は、さらに選択的に接着剤を含む。例として、上記接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びフッ素含有アクリレート樹脂のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0071】
いくつかの実施の形態では、正極活物質層13は、さらに選択的に導電剤を含む。例として、上記導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0072】
いくつかの実施の形態では、以下の方式によって正極極板を製造することができ、多孔質層を製造するための成分、例えば多孔質炭素材料、導電剤、接着剤と任意の他の成分を溶媒(例えばN-メチルピロリドン)に分散させ、多孔質層形成用スラリーが得られ、多孔質層形成用スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥などの工程を経て、多孔質層を形成し、多孔質層が製造された正極を二酸化炭素雰囲気で6h静置し、多孔質炭素に二酸化炭素を吸着させる。正極活物質層を製造するための成分、例えば正極活物質、導電剤、接着剤と任意の他の成分を溶媒(例えばN-メチルピロリドン)に分散させ、正極スラリーが得られ、正極スラリーを多孔質層に塗布し、乾燥、冷間プレスなどの工程を経て、正極極板が得られる。乾燥工程では、多孔質層における吸着ガスが脱着してオーバーフローし、活物質層を貫通し、それによって正極活物質層の孔路構造が形成される。
【0073】
いくつかの実施の形態では、上記方法によって製造された正極極板は、以下の(1)~(3)の少なくともいずれか一つの特徴を備えている。
【0074】
(1)正極極板は、二酸化炭素雰囲気での比表面積と窒素雰囲気での比表面積との比が2以上である。
【0075】
(2)正極極板は、二酸化炭素雰囲気での比表面積が2m2/g以上であり、窒素雰囲気での比表面積が1m2/g以下である。
【0076】
(3)正極極板の正極活物質層側の表面に孔路が存在し、この孔路の孔径の最大円周直径分布は1~50μmであり、
孔深さをHとし、孔と孔との間の距離をLとし、正極極板の厚さをTとすると、下記式(1)と(2)の関係を満たす。
【0077】
H/T≧1/10 … (1)、
L/T≦10 … (2)。
【0078】
[負極極板]
負極極板は、負極集電体及び負極集電体の少なくとも一つの表面上に設置される負極活物質層を含む。
【0079】
一例として、負極集電体は、自体の厚さ方向に対向する二つの表面を有し、負極活物質層は、負極集電体の対向する二つの表面のうちのいずれか一方又は両方に設置される。
【0080】
いくつかの実施の形態では、上記負極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用してもよい。例えば、金属箔シートとして、銅箔を採用してもよい。複合集電体は、高分子材料ベース層と高分子材料基材の少なくとも一つの表面に形成される金属層を含んでもよい。複合集電体は、金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)に形成することにより形成することができる。
【0081】
いくつかの実施の形態では、負極活物質層は、当分野において公知の電池用負極活物質を採用してもよい。
【0082】
一例として、負極活物質は、炭素材料、金属又は非金属の化合物及び上記化合物の被覆物と上記化合物のドーパントなどの材料のうちの少なくとも一つを含んでもよい。上記炭素材料は、黒鉛、ハードカーボンとソフトカーボンから選択される少なくとも一つを含み、上記金属又は非金属の化合物は、ケイ素、セレン、硫黄、リン、スズ、チタン又はバナジウムの酸化物、硫化物、セレン化物及びフッ化物から選択される少なくとも一つを含み、上記化合物の被覆物は、黒鉛、ソフトカーボン又はハードカーボンを使用して上記金属又は非金属の化合物を被覆して得られた被覆物を含み、上記化合物のドーパントは、Mg、Ni、Co、Mnから選択される少なくとも一つの元素を使用して上記金属又は非金属の化合物をドーピングして得られたドーパントを含む。いくつかの実施の形態では、上記金属又は非金属の化合物は、SiO2、SiO、SnO2、TiO2、SiS2とTiS2から選択される少なくとも一つを含む。しかし、本出願は、これらの材料に制限されず、電池の負極活物質として用いることができる他の従来の材料を使用してもよい。これらの負極活物質は、単独で一つのみを使用してもよく、二つ以上を組み合わせて使用してもよい。
【0083】
いくつかの実施の形態では、負極活物質層は、さらに選択的に接着剤を含む。上記接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの少なくとも一つから選ばれてもよい。
【0084】
いくつかの実施の形態では、負極活物質層は、さらに選択的に導電剤を含む。導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの少なくとも一つから選ばれてもよい。
【0085】
いくつかの実施の形態では、負極活物質層は、他の助剤、例えば増粘剤(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na))をさらに選択的に含んでもよい。
【0086】
いくつかの実施の形態では、負極活物質層を製造する時に分散剤を使用してもよい。分散剤は、分散の均一性と塗布性を向上させるために使用され、電池分野でよく使われる分散剤、例えばポリマー分散剤であってもよい。ポリマー分散剤としては、ポリビニルアルコール、水酸基以外の官能基、例えばアセチル基、スルホ基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基を有する改質ポリビニルアルコール、各種塩で改質したもの、その他のアニオン又はカチオンで改質したもの、アルデヒド類でアセタール改質したポリビニルアルコール系樹脂、又は各種(メタ)アクリル系ポリマー、エチレン性不飽和炭化水素に由来するポリマー、各種セルロース系樹脂、又はこれらの共重合体を使用してもよいが、これらに制限されない。ポリマー分散剤は、単独で一つのみを使用してもよく、二つ以上を組み合わせて使用してもよい。
【0087】
いくつかの実施の形態では、以下の方式によって負極極板を製造することができ、負極極板の製造のための上記成分、例えば負極活物質、導電剤、接着剤と任意の他の成分を溶媒(例えば脱イオン水)に分散させ、負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレスなどの工程を経て、負極極板が得られる。
【0088】
[電解質]
電解質は、正極極板と負極極板との間でイオンを伝導する作用を果たす。本出願は、電解質の種類に対して具体的に限定せず、需要に応じて選択することができる。例えば、電解質は、液体、ゲル状又は全固体であってもよい。
【0089】
いくつかの実施の形態では、上記電解質として、電解液を採用する。上記電解液は、電解質塩と溶媒とを含む。
【0090】
いくつかの実施の形態では、電解質塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム及びテトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウムのうちの少なくとも一つから選ばれてもよい。
【0091】
いくつかの実施の形態では、溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、1,4-ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン及びジエチルスルホンのうちの少なくとも一つから選ばれてもよい。
【0092】
いくつかの実施の形態では、上記電解液は、さらに選択的に添加剤を含む。例えば、添加剤は、負極膜形成添加剤、正極膜形成添加剤を含んでもよく、さらに、電池のいくつかの性能を改善できる添加剤、例えば電池の過充電性能を改善する添加剤、電池高温又は低温性能を改善する添加剤などを含んでもよい。
【0093】
[セパレータ]
本出願では、リチウムイオン二次電池は、セパレータをさらに含み、本出願は、セパレータの種類を特に制限せず、化学的安定性と機械的安定性に優れた公知の多孔質構造セパレータを任意に選んで用いることができる。
【0094】
いくつかの実施の形態では、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンから選択される少なくとも一つであってもよい。セパレータは、単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよく、特に制限されない。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は、同一であっても異なっていてもよく、特に制限されない。
【0095】
[二次電池]
いくつかの実施の形態では、正極極板、負極極板とセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリに製造されることができる。
【0096】
いくつかの実施の形態では、リチウムイオン二次電池は、外装体を含んでもよい。この外装体は、上記電極アセンブリ及び電解質をパッケージングするために用いられてもよい。
【0097】
いくつかの実施の形態では、リチウムイオン二次電池の外装体は、硬質ケース、例えば硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、鋼製ケースなどであってもよい。リチウムイオン二次電池の外装体は、パウチ、例えば袋状パウチであってもよい。パウチの材質は、プラスチックであってもよく、プラスチックとして、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート及びポリブチレンサクシネートなどが挙げられる。
【0098】
本出願は、リチウムイオン二次電池の形状に対して特に限定せず、円筒型、四角形又は他の任意の形状であってもよい。例えば、
図2は、一例としての四角形構造のリチウムイオン二次電池5である。
【0099】
いくつかの実施の形態では、
図3を参照すると、外装体は、ケース51とカバープレート53とを含んでもよい。ここで、ケース51は、底板と底板に接続された側板とを含んでもよく、底板と側板が囲んで収容キャビティを形成する。ケース51は、収容キャビティに連通する開口を有し、カバープレート53は、前記収容キャビティを密閉するように、上記開口に覆設することができる。正極極板、負極極板とセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、上記収容キャビティ内にパッケージングされる。電解液は、電極アセンブリ52に浸潤される。リチウムイオン二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は、一つ又は複数であってもよく、当業者であれば、具体的な実際のニーズに基づいて選択することができる。
【0100】
いくつかの実施の形態では、リチウムイオン二次電池を電池モジュールに組み立てることができ、電池モジュールに含まれるリチウムイオン二次電池の数は、一つ又は複数であってもよく、具体的な数は、当業者が電池モジュールの応用と容量に基づいて選択することができる。
【0101】
図4は、一例としての電池モジュール4である。
図4を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長手方向に順に並べて設置されてもよい。無論、他の任意の方式で配列することもできる。さらに、この複数の二次電池5を締結具によって固定することができる。
【0102】
選択的に、電池モジュール4は、収容空間を有するハウジングをさらに含んでもよく、複数の二次電池5は、この収容空間に収容される。
【0103】
いくつかの実施の形態では、上記電池モジュールを電池パックに組み立てることもでき、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、一つ又は複数であってもよく、具体的な数は、当業者が電池パックの応用と容量に基づいて選択することができる。
【0104】
図5と
図6は、一例としての電池パック1である。
図5と
図6を参照すると、電池パック1に電池ボックスと電池ボックスに設置されている複数の電池モジュール4が含まれてもよい。電池ボックスに上部筐体2と下部筐体3が含まれ、上部筐体2は、下部筐体3に覆設され、電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成することができる。複数の電池モジュール4は、任意の方式で電池ボックスに配列することができる。
【0105】
また、本出願は、電力消費装置をさらに提供し、前記電力消費装置は、本出願によるリチウムイオン二次電池を含む。上記リチウムイオン二次電池は、上記電力消費装置の電源として使用されてもよく、上記電力消費装置のエネルギー貯蔵ユニットとして使用されてもよい。上記電力消費装置は、モバイル機器(例えば携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクータ、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどを含んでもよいが、これらに制限されない。
【0106】
上記電力消費装置として、その使用ニーズに基づいてリチウムイオン二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0107】
図7は、一例としての電力消費装置である。この電力消費装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。この電力消費装置のリチウムイオン二次電池に対する高出力と高エネルギー密度のニーズを満たすために、電池パック又は電池モジュールを用いることができる。
【0108】
別の例の装置としては、携帯電話、タブレットパソコン、ノートパソコンなどであってもよい。この装置は、通常薄型化が要求され、電源としてリチウムイオン二次電池を用いることができる。
【0109】
実施例
以下、本出願の実施例について説明する。以下に記述された実施例は、例示的なものであり、本出願の説明のためにのみ使用され、本出願を制限するものと理解すべきではない。実施例に具体的な技術や条件が明記されていない場合、当分野内の文献に記述されている技術や条件に従って、又は製品の説明書に従って行う。使用する試薬又は機器にメーカーが明記されていないものは、いずれも市販で購入できる通常の製品である。
【0110】
以下の実施例と比較例で使用される多孔質炭素は、以下の通りである。
【0111】
<ハードカーボン1>
ミクロ孔、メソ孔とマクロ孔の総孔体積:0.04cm3/g
総孔体積に対するミクロ孔とメソ孔の合計孔体積の比率:52%
Dv50:4.6μm
<ハードカーボン2>
ミクロ孔、メソ孔とマクロ孔の総孔体積:0.01cm3/g
総孔体積に対するミクロ孔とメソ孔の合計孔体積の比率:3%
Dv50:8.2μm
<ハードカーボン3>
ミクロ孔、メソ孔とマクロ孔の総孔体積:0.046cm3/g
総孔体積に対するミクロ孔とメソ孔の合計孔体積の比率:58%
Dv50:136μm
<活性炭1>
ミクロ孔、メソ孔とマクロ孔の総孔体積:0.035cm3/g
総孔体積に対するミクロ孔とメソ孔の合計孔体積の比率:42%
Dv50:7.8μm
<カーボンエアロゲル1>
ミクロ孔、メソ孔とマクロ孔の総孔体積:0.062cm3/g
総孔体積に対するミクロ孔とメソ孔の合計孔体積の比率:73%
Dv50:3.8μm
実施例1:
<二次電池用正極極板の製造>
ハードカーボン1、導電剤であるアセチレンブラック、接着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を質量比60:20:20で混合し、溶媒であるNメチル―ピロリドン(NMP)を加え、攪拌してスラリーが得られた後に、マイクログラビア印刷工程を利用して正極集電体であるアルミニウム箔(厚さ:15μm)に均一に塗布し、室温で空気中に12時間静置し、多孔質層が塗布された極板が得られた。
【0112】
正極活物質であるLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、導電剤であるアセチレンブラック、接着剤であるPVDFを質量比96:2:2で混合し、溶媒であるNMPを加え、正極スラリーが得られた。得られた正極スラリーを多孔質層の表面に均一に塗布し、得られた正極活物質層を乾燥させた後に、冷間プレス、スリットすることにより、正極極板が得られた。
【0113】
<二次電池の負極極板の製造>
負極活物質である黒鉛、導電剤であるSuper-P、増粘剤であるカルボキシメチルセルロース(CMC)、接着剤であるスチレンブタジエンゴム(SBR)を質量比96.5:1.0:1.0:1.5で溶媒である脱イオン水に加え、均一に混合して負極スラリーを製造した。負極スラリーを負極集電体である銅箔に塗布して85℃で乾燥させた後に、カッティングエッジ、切断、スリットを行い、110℃の真空条件で4時間乾燥させ、タブを溶接し、二次電池の負極極板を製造した。
【0114】
<二次電池の電解液の製造>
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)とジエチルカーボネート(DEC)を1:1:1の質量比で混合し、混合溶媒が得られた。六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を上記混合溶媒に溶解させ、濃度が1Mの電解液を製造した。
【0115】
<二次電池の製造>
上記正極極板、ポリエチレンセパレータ、上記負極極板を順に積層してベアセルが得られ、ベアセルを外装体のケースに配置し、乾燥後、上記電解液を注入し、真空パッケージング、静置、化成、整形などの工程を経て、リチウムイオン電池が得られた。
【0116】
得られた二次電池について、二酸化炭素雰囲気での比表面積、窒素雰囲気での比表面積、正極極板の正極活物質層側の表面に存在する孔路の孔径、孔深さと孔ピッチ、及び電池2Cの放電容量維持率を以下のように測定し、測定された結果を表1に示す。得られた正極極板の表面CCDの写真を撮影し、
図8に示す。
【0117】
<二酸化炭素、窒素雰囲気での比表面積の測定>
極板の比表面積は、全自動ガス吸着分析器を使用して材料の窒素/二酸化炭素などの等温吸脱着曲線を測定した後に、多点Brunauer-Emmett-Teller法によって計算したものである。
【0118】
<正極極板の正極活物質層側の表面に存在する孔路の孔径、孔深さと孔ピッチの測定>
孔径、孔深さと孔ピッチは、光学電子顕微鏡又は電子走査型電子顕微鏡を使用して極板の表面と極板の断面を撮影することにより求められる。具体的には、極板の表面テストにおいて、極板の表面を撮影して、活物質層表面の孔路の分布状況及び孔路の孔径を観察する。極板の断面テストにおいて、極板を活物質層方向に垂直にスライスし、切断面を撮影し、活物質層における孔路の深さを観察した。
【0119】
<電池2Cの放電容量維持率>
室温で、リチウムイオン電池を1/3Cレートで上限電圧まで充電した後に、それぞれ0.33Cと2Cで下限電圧まで放電し、0.33Cレートの放電容量を公称容量基準グループとし、リチウムイオン電池が2Cレートで放電する容量維持率を計算した。
【0120】
<正極極板の表面のCCD写真>
実施例1の正極極板の表面の写真を
図8に示す。
図8から分かるように、極板の表面に豊富な孔路が存在し、電解液が電極で極板の外部から内部へ絶えず導通浸透することが促進されるのに有利であり、イオンの高速移動に適しており、さらに放電容量維持率を向上させることができる。
【0121】
実施例2:
二次電池の正極極板の製造:表1に示すように多孔質層と正極活物質層との厚さの比を変えたこと以外は、実施例1と同様にして、二次電池用正極極板を製造した。
【0122】
二次電池の負極極板の製造:実施例1と同様にして、二次電池の負極極板を製造した。
【0123】
二次電池の電解液の製造:実施例1と同様にして、電解液を製造した。
【0124】
二次電池の製造:実施例1と同様にして、二次電池の製造を完了した。
【0125】
実施例3:
二次電池の正極極板の製造:表1に示すように多孔質層と正極活物質層との厚さの比を変えたこと以外は、実施例1と同様にして、二次電池用正極極板を製造した。
【0126】
二次電池の負極極板の製造:実施例1と同様にして、二次電池の負極極板を製造した。
【0127】
二次電池の電解液の製造:実施例1と同様にして、電解液を製造した。
【0128】
二次電池の製造:実施例1と同様にして、二次電池の製造を完了した。
【0129】
実施例4:
二次電池の正極極板の製造:ハードカーボン1の代わりにハードカーボン2を使用したこと以外、実施例1と同様にして、二次電池用正極極板を製造した。
【0130】
二次電池の負極極板の製造:実施例1と同様にして、二次電池の負極極板を製造した。
【0131】
二次電池の電解液の製造:実施例1と同様にして、電解液を製造した。
【0132】
二次電池の製造:実施例1と同様にして、二次電池の製造を完了した。
【0133】
実施例5:
二次電池の正極極板の製造:ハードカーボン1の代わりにハードカーボン3を使用したこと以外、実施例1と同様にして、二次電池用正極極板を製造した。
【0134】
二次電池の負極極板の製造:実施例1と同様にして、二次電池の負極極板を製造した。
【0135】
二次電池の電解液の製造:実施例1と同様にして、電解液を製造した。
【0136】
二次電池の製造:実施例1と同様にして、二次電池の製造を完了した。
【0137】
実施例6:
二次電池の正極極板の製造:表1に示すように多孔質層と正極活物質層との厚さの比を変えたこと以外は、実施例1と同様にして、二次電池用正極極板を製造した。
【0138】
二次電池の負極極板の製造:実施例1と同様にして、二次電池の負極極板を製造した。
【0139】
二次電池の電解液の製造:実施例1と同様にして、電解液を製造した。
【0140】
二次電池の製造:実施例1と同様にして、二次電池の製造を完了した。
【0141】
実施例7:
二次電池の正極極板の製造:ハードカーボン1の代わりに活性炭1を使用したこと以外、実施例1と同様にして、二次電池用正極極板を製造した。
【0142】
二次電池の負極極板の製造:実施例1と同様にして、二次電池の負極極板を製造した。
【0143】
二次電池の電解液の製造:実施例1と同様にして、電解液を製造した。
【0144】
二次電池の製造:実施例1と同様にして、二次電池の製造を完了した。
【0145】
実施例8:
二次電池の正極極板の製造:ハードカーボン1の代わりにカーボンエアロゲル1を使用したこと以外、実施例1と同様にして、二次電池用正極極板を製造した。
【0146】
二次電池の負極極板の製造:実施例1と同様にして、二次電池の負極極板を製造した。
【0147】
二次電池の電解液の製造:実施例1と同様にして、電解液を製造した。
【0148】
二次電池の製造:実施例1と同様にして、二次電池の製造を完了した。
【0149】
比較例1:
正極活物質であるLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、導電剤であるアセチレンブラック、接着剤であるPVDFを質量比96:2:2で混合し、溶媒であるNMPを加え、正極スラリーが得られた。得られた正極スラリーを正極集電体であるアルミニウム箔(厚さ:15μm)に均一に塗布し、正極活物質層が得られ、乾燥後、冷間プレス、スリットすることにより、正極極板が得られた。
【0150】
二次電池の負極極板の製造:実施例1と同様にして、二次電池の負極極板を製造した。
【0151】
二次電池の電解液の製造:実施例1と同様にして、電解液を製造した。
【0152】
二次電池の製造:実施例1と同様にして、二次電池の製造を完了した。
【0153】
比較例2:
正極活物質であるLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、導電剤であるアセチレンブラック、接着剤であるPVDFとハードカーボン1を質量比90:2:2:6で混合し、溶媒であるNMPを加え、正極複合スラリーが得られた。得られた正極複合スラリーを正極集電体であるアルミニウム箔(厚さ:15μm)に均一に塗布し、正極活物質層が得られ、乾燥後、冷間プレス、スリットすることにより、正極極板が得られた。
【0154】
二次電池の負極極板の製造:実施例1と同様にして、二次電池の負極極板を製造した。
【0155】
二次電池の電解液の製造:実施例1と同様にして、電解液を製造した。
【0156】
二次電池の製造:実施例1と同様にして、二次電池の製造を完了した。
【0157】
上記実施例1~8、比較例1~2の二次電池の構成と性能のパラメータを以下の表1に示す。
【0158】
【0159】
上記結果から、実施例1~8において、正極極板が集電体と正極活物質層との間に多孔質層を有するため、正極極板は、二酸化炭素雰囲気での比表面積と窒素雰囲気での比表面積との比がいずれも2以上であり、電池2Cの放電容量維持率が高いことが分かる。特に多孔質炭素材料の総孔体積、ミクロ孔とメソ孔の比率、Dv50及び多孔質層と活物質層との厚さの比が特定の範囲内である実施例1、2、3、7、8は、電池2Cの放電容量維持率が特に高かった。
【0160】
これに対して、比較例1における正極極板は多孔質炭素材料を含まず、比較例2における正極極板は多孔質炭素材料を含んでいるが、多孔質炭素材料が単独で多孔質層を形成するのではなく、正極活物質と混合して正極複合材料層に含んでおり、電池2Cの放電容量維持率が実施例よりも低かった。
【0161】
説明すべきこととして、本出願は、上記実施の形態に限らない。上記実施の形態は、例示であり、本出願の技術案の範囲内に技術的思想と実質的に同じ構成を有し、同じ作用効果を奏する実施の形態は、いずれも本出願の技術範囲内に含まれる。なお、本出願の趣旨を逸脱しない範囲内で、実施の形態に対して当業者が想到できる様々な変形を加え、実施の形態における一部の構成要素を組み合わせて構成された他の方式も、本出願の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0162】
1:電池パック、2:上部筐体、3:下部筐体、4:電池モジュール、5:二次電池、10:正極極板、11:集電体、12:多孔質層、13:正極活物質層、51:ケース、52:電極アセンブリ、53:トップカバーアセンブリ
【手続補正書】
【提出日】2024-01-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池用正極極板であって、
集電体と正極活物質層とを有し、前記集電体と前記正極活物質層との間に多孔質炭素材料を含む多孔質層をさらに有することを特徴とする二次電池用正極極板。
【請求項2】
前記多孔質炭素材料は、ハードカーボン、バイオマス炭、活性炭、炭素繊維、およびカーボンエアロゲルから選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用正極極板。
【請求項3】
前記二次電池用正極極板は、集電体、多孔質層、及び正極活物質層からなることを特徴とする請求項
1に記載の二次電池用正極極板。
【請求項4】
前記正極活物質層は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物を含み、
前記多孔質炭素材料は、ハードカーボン、活性炭又はカーボンエアロゲルであることを特徴とする請求項
1に記載の二次電池用正極極板。
【請求項5】
前記多孔質炭素材料は、ミクロ孔、メソ孔、及びマクロ孔を含み、前記ミクロ孔の孔径は2nm以下であり、前記メソ孔の孔径は2nmを超え且つ50nm未満であり、前記マクロ孔の孔径は50nm以上であることを特徴とする請求項
1に記載の二次電池用正極極板。
【請求項6】
前記多孔質炭素材料において、ミクロ孔、メソ孔、及びマクロ孔の総孔体積が0.02cm
3/g以上であり、総孔体積に対するミクロ孔とメソ孔の合計孔体積の比率が5%~85%の間であることを特徴とする請求項5に記載の二次電池用正極極板。
【請求項7】
前記多孔質炭素材料のDv50は、1~100μmで
あることを特徴とする請求項
1に記載の二次電池用正極極板。
【請求項8】
前記正極極板は、二酸化炭素雰囲気での比表面積と窒素雰囲気での比表面積との比が2以上であることを特徴とする請求項
1に記載の二次電池用正極極板。
【請求項9】
前記正極極板は、二酸化炭素雰囲気での比表面積が2m
2/g以上であり、窒素雰囲気での比表面積が1m
2/g以下であることを特徴とする請求項8に記載の二次電池用正極極板。
【請求項10】
前記正極活物質層の厚さを100厚さ部とすると、前記多孔質層の厚さは、1~50厚さ部で
あることを特徴とする請求項
1に記載の二次電池用正極極板。
【請求項11】
前記正極極板の前記正極活物質層側の表面に孔路が存在し、
前記孔路の孔径の最大円周直径分布は1~50μmであり、
孔深さをHとし、孔と孔との間の距離をLとし、正極極板の厚さをTとすると、下記式(1)と(2)の関係を満たすことを特徴とする請求項
1に記載の二次電池用正極極板。
H/T≧1/10 … (1)
L/T≦10 … (2)
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の二次電池用正極極板の製造方法であって、
正極集電体の少なくとも一方側の表面に多孔質炭素材料を含む多孔質層を形成する工程と、
形成された多孔質層に正極スラリーを塗布し、正極活物質層を形成する工程とを含むことを特徴とする二次電池用正極極板の製造方法。
【請求項13】
多孔質炭素材料、導電剤であるアセチレンブラック、接着剤であるポリフッ化ビニリデンと溶媒であるN-メチルピロリドンを含むスラリーによって前記多孔質層を形成することを特徴とする請求項12に記載の二次電池用正極極板の製造方法。
【請求項14】
二次電池であって、
請求項
1に記載の正極極
板を含むことを特徴とする二次電池。
【請求項15】
電池モジュールであって、
請求項14に記載の二次電池を含むことを特徴とする電池モジュール。
【請求項16】
電池パックであって、
請求項15に記載の電池モジュールを含むことを特徴とする電池パック。
【請求項17】
電力消費装置であって、
請求項14に記載の二次電池、請求項15に記載の電池モジュール又は請求項16に記載の電池パックから選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする電力消費装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
本出願の第二の態様は、第一の態様の二次電池用正極極板の製造方法をさらに提供し、この二次電極用正極極板の製造方法は、正極集電体の少なくとも一方側の表面に多孔質炭素材料を含む多孔質層を形成する工程と、形成された多孔質層に正極スラリーを塗布し、正極活物質層を形成する工程とを含む。正極集電体の少なくとも一方側の表面に多孔質炭素材料を含む多孔質層を形成し、形成された多孔質層に正極活物質層を形成することにより、放電容量維持率の高い二次電池を製造することができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0053
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0053】
本出願の二次電池用正極極板の製造方法は、正極集電体の少なくとも一方側の表面に多孔質炭素材料を含む多孔質層を形成する工程と、形成された多孔質層に正極スラリーを塗布し、正極活物質層を形成する工程とを含む。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0099
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0099】
いくつかの実施の形態では、
図3を参照すると、外装体は、ケース51と
トップカバーアセンブリ53とを含んでもよい。ここで、ケース51は、底板と底板に接続された側板とを含んでもよく、底板と側板が囲んで収容キャビティを形成する。ケース51は、収容キャビティに連通する開口を有し、
トップカバーアセンブリ53は、前記収容キャビティを密閉するように、上記開口に覆設することができる。正極極板、負極極板とセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、上記収容キャビティ内にパッケージングされる。電解液は、電極アセンブリ52に浸潤される。リチウムイオン二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は、一つ又は複数であってもよく、当業者であれば、具体的な実際のニーズに基づいて選択することができる。
【国際調査報告】