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特表2024-526441二次電池及びその製造方法、電池モジュール、電池パックと電力消費装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-18
(54)【発明の名称】二次電池及びその製造方法、電池モジュール、電池パックと電力消費装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20240710BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240710BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20240710BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240710BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240710BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/052
H01M10/0566
H01M4/13
H01M4/139
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501216
(86)(22)【出願日】2022-05-13
(85)【翻訳文提出日】2024-01-10
(86)【国際出願番号】 CN2022092737
(87)【国際公開番号】W WO2023216240
(87)【国際公開日】2023-11-16
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100159329
【弁理士】
【氏名又は名称】三縄 隆
(72)【発明者】
【氏名】▲嚴▼ 青▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】董 ▲曉▼斌
(72)【発明者】
【氏名】王 家政
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ03
5H029AJ04
5H029AJ05
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ02
5H029BJ06
5H029BJ14
5H029CJ22
5H029HJ00
5H029HJ04
5H029HJ12
5H029HJ19
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA10
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050DA03
5H050FA05
5H050GA22
5H050HA00
5H050HA04
5H050HA12
5H050HA19
(57)【要約】
本出願は、二次電池(5)を提供し、正極極板と負極極板とを含み、正極極板は、正極集電体と正極集電体の二つの表面における正極膜層とを含み、負極極板は、負極集電体と負極集電体の二つの表面における負極膜層とを含み、負極膜層は、正極膜層に対向して設置される反応領域と正極膜層に対向して設置されない非反応領域とを含み、ここで、非反応領域には、リチウム補給層とバリア層とが設置されている。本出願は、さらに二次電池(5)の製造方法、電池モジュール(4)、電池パック(1)と電力消費装置に提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池であって、正極極板と負極極板とを含み、前記正極極板は、正極集電体と前記正極集電体の二つの表面における正極膜層とを含み、前記負極極板は、負極集電体と前記負極集電体の二つの表面における負極膜層とを含み、前記負極膜層は、前記正極膜層に対向して設置される反応領域と前記正極膜層に対向して設置されない非反応領域とを含み、ここで、前記非反応領域には、リチウム補給層とバリア層とが設置されている、二次電池。
【請求項2】
前記リチウム補給層は、前記非反応領域の前記反応領域に近い端に設置され、前記バリア層は、前記リチウム補給層から、前記反応領域から離れて設置される、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記リチウム補給層の前記反応領域に近い側と前記反応領域との距離は、2mm~5mmである、請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記リチウム補給層は、活性リチウムを提供可能な物質を含み、選択的に金属リチウム箔、リチウム粉、及びリチウム合金のうちの一つ又は複数を含み、さらに選択的に金属リチウム箔、リチウム粉、シリコンリチウム合金、アルミニウムリチウム合金、マグネシウムリチウム合金、及びスズリチウム合金のうちの一つ又は複数を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記リチウム補給層におけるリチウムの理論容量CLiは、20%C≦CLi≦120%C、選択的に90%C≦CLi≦120%Cを満たし、ここで、Cは、前記リチウム補給層に対応する前記負極膜層の容量である、請求項1から4のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記バリア層は、電解液に浸潤されることができないフィルム又はコーティングから選択され、前記フィルムは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル繊維、及びポリ塩化ビニルのうちの一つ又は複数を含み、選択的にキャストポリプロピレン、一軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル繊維、及びポリ塩化ビニルのうちの一つ又は複数を含み、さらに選択的にポリエチレンを含み、前記コーティングは、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル及び上記物質のコポリマーのうちの一つ又は複数を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記バリア層の厚さは、6μm~40μmであり、選択的に10μm~20μmである、請求項1から6のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項8】
前記フィルムは、接着性を有し、接着力は、20N/mよりも大きい、請求項6又は7に記載の二次電池。
【請求項9】
前記負極極板上には、前記リチウム補給層の前記反応領域から離れる側に、前記負極極板の幅方向に沿って間隔領域を設置するとともに、前記バリア層は、間隔領域から、前記反応領域から離れて設置される、請求項1から8のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項10】
前記間隔領域の幅は、5mm~50mmであり、選択的に10mm~15mmである、請求項9に記載の二次電池。
【請求項11】
前記間隔領域の深さは、前記負極膜層の厚さに等しい、請求項9又は10に記載の二次電池。
【請求項12】
二次電池の製造方法であって、
正極極板を製造するステップ(1)と、
負極極板を製造するステップ(2)と、
セパレータを製造するステップ(3)と、
電解液を製造するステップ(4)と、
二次電池を製造するステップ(5)とを含み、
ここで、ステップ(2)は、前記負極極板上にリチウム補給層とバリア層とを設置するステップを含み、
前記二次電池は、正極極板と負極極板とを含み、前記正極極板は、正極集電体と前記正極集電体の二つの表面における正極膜層とを含み、前記負極極板は、負極集電体と前記負極集電体の二つの表面における負極膜層とを含み、前記負極膜層は、前記正極膜層に対向して設置される反応領域と前記正極膜層に対向して設置されない非反応領域とを含み、前記非反応領域には、リチウム補給層とバリア層とが設置されている、方法。
【請求項13】
前記バリア層は、塗覆又は貼り付けプロセスによって設置され、選択的に、前記バリア層は、貼り付けプロセスによって設置される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から11のいずれか1項に記載の二次電池又は請求項12又は13に記載の方法によって製造された二次電池を含む、電池モジュール。
【請求項15】
請求項14に記載の電池モジュールを含む、電池パック。
【請求項16】
請求項1から11のいずれか1項に記載の二次電池又は請求項12又は13に記載の方法によって製造された二次電池、請求項14に記載の電池モジュール又は請求項15に記載の電池パックから選択される少なくとも一つを含む、電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、リチウム電池技術分野に関し、特に二次電池及びその製造方法、電池モジュール、電池パックと電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池の応用範囲がますます広くなるにつれて、リチウムイオン電池は、水力、火力、風力と太陽光発電所などのエネルギー貯蔵電源システム、及び電動工具、電動自転車、電動バイク、電気自動車、軍事装備、航空宇宙などの複数の分野で広く応用されている。リチウムイオン電池が大きな発展を遂げたため、そのエネルギー密度、サイクル性能と安全性能などについてもより高い要求が出されている。
【0003】
電池の充電開始後、正極極板のリチウムイオンが負極極板の反応領域に優先的に吸蔵されることによって、反応領域の電位が低下し、非反応領域との電圧差を形成し、反応領域のリチウムイオンは、遅い速度で非反応領域に拡散して吸蔵されるが、非反応領域に吸蔵されたリチウムイオンは、放電中に正極極板に戻りにくくなり、正極極板の不可逆的なリチウム損失が生じ、電池コアの初回効率、サイクル性能及び保存性能を悪化させる。そのため、従来のリチウムイオン電池は、初回効率、サイクル性能及び保存性能などの面で改良が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願は、上記課題に鑑みて行われたものであり、その目的は、改善された初回効率、サイクル性能及び保存性能を有する二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本出願は、二次電池及びその製造方法、電池モジュール、電池パックと電力消費装置を提供する。
【0006】
本出願の第一の態様は、二次電池を提供し、この二次電池は、正極極板と負極極板とを含み、前記正極極板は、正極集電体と前記正極集電体の二つの表面における正極膜層とを含み、前記負極極板は、負極集電体と前記負極集電体の二つの表面における負極膜層とを含み、前記負極膜層は、前記正極膜層に対向して設置される反応領域と前記正極膜層に対向して設置されない非反応領域とを含み、ここで、前記非反応領域には、リチウム補給層とバリア層とが設置されている。
【0007】
本出願は、負極極板の非反応領域にリチウム補給層とバリア層とを設置することにより、リチウム補給層は、反応領域のリチウムイオンが非反応領域に拡散して吸蔵されるのを効果的に阻止するとともに、電池コアの放電中に、リチウム補給層のリチウムは、遅い速度で反応領域に拡散するが、バリア層は、リチウム補給層外の非反応領域を完全に隔離し、電解液は、それを浸潤することができず、反応領域とリチウム補給層のリチウムが非反応領域に拡散する経路を完全に遮断することによって、リチウム源の損失を低減させ、さらに二次電池の初回効率、サイクル性能及び保存性能を改善する。
【0008】
いずれかの実施形態では、前記リチウム補給層は、前記非反応領域の前記反応領域に近い端に設置され、前記バリア層は、前記リチウム補給層から、前記反応領域から離れて設置される。それによって、生産能力に影響を与えることなく、リチウム補給効率を改善することができる。
【0009】
いずれかの実施形態では、前記リチウム補給層の前記反応領域に近い側と前記反応領域との距離は、2mm~5mmである。リチウム補給層の反応領域に近い側と反応領域との距離が所定の範囲内にある場合、二次電池の初回効率とサイクル性能をさらに改善することができる。
【0010】
いずれかの実施形態では、前記リチウム補給層は、活性リチウムを提供可能な物質を含み、選択的に金属リチウム箔、リチウム粉、及びリチウム合金のうちの一つ又は複数を含み、さらに選択的に金属リチウム箔、リチウム粉、シリコンリチウム合金、アルミニウムリチウム合金、マグネシウムリチウム合金、及びスズリチウム合金のうちの一つ又は複数を含む。
【0011】
いずれかの実施形態では、前記リチウム補給層におけるリチウムの理論容量CLiは、20%C≦CLi≦120%C、選択的に90%C≦CLi≦120%Cを満たし、ここで、Cは、前記リチウム補給層に対応する前記負極膜層の容量である。リチウム補給層におけるリチウムの理論容量CLiが所定の条件を満たす場合、二次電池の安全性能に影響を与えることなく、二次電池の初回効率、サイクル性能と保存性能を改善することができる。
【0012】
いずれかの実施形態では、前記バリア層は、電解液に浸潤されることができないフィルム又はコーティングから選択され、前記フィルムは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル繊維、及びポリ塩化ビニルのうちの一つ又は複数を含み、選択的にキャストポリプロピレン、一軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル繊維、及びポリ塩化ビニルのうちの一つ又は複数を含み、さらに選択的にポリエチレンを含み、前記コーティングは、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル及び上記物質のコポリマーのうちの一つ又は複数を含む。
【0013】
いずれかの実施形態では、前記バリア層の厚さは、6μm~40μmであり、選択的に10μm~20μmである。バリア層の厚さが所定の範囲内にある場合、極板に大きな変形がなく、電池コアと完全に互換性があることを保証することができる。
【0014】
いずれかの実施形態では、前記フィルムは、接着性を有し、接着力は、20N/mよりも大きい。フィルムの接着力が所定の範囲内にある場合、フィルムを非反応領域の表面に効果的に貼り付けることができる。
【0015】
いずれかの実施形態では、前記負極極板上には、前記リチウム補給層の前記反応領域から離れる側に、前記負極極板の幅方向に沿って間隔領域を設置するとともに、前記バリア層は、間隔領域から、前記反応領域から離れて設置される。負極極板上で、リチウム補給層の反応領域から離れる側に間隔領域を設置する場合、二次電池の初回効率、サイクル性能と保存性能をさらに改善することができる。
【0016】
いずれかの実施形態では、前記間隔領域の幅は、5mm~50mmであり、選択的に10mm~15mmである。間隔領域の幅が所定の範囲内にある場合、バリア層の設置をより良く支援し、極板の加工に影響を与えることなく電解液をより効果的に隔離することができる。
【0017】
いずれかの実施形態では、前記間隔領域の深さは、前記負極膜層の厚さに等しい。間隔領域の深さが負極膜層の厚さに等しい場合、電解液が底部の負極膜層に沿って非反応領域へ浸潤することを阻止することによって、リチウムイオンの非反応領域への拡散を阻止し、さらに二次電池の初回効率、サイクル性能と保存性能を改善する。
【0018】
本出願の第二の態様は、二次電池の製造方法をさらに提供し、この製造方法は、
正極極板を製造するステップ(1)と、
負極極板を製造するステップ(2)と、
セパレータを製造するステップ(3)と、
電解液を製造するステップ(4)と、
二次電池を製造するステップ(5)とを含み、
ここで、ステップ(2)は、前記負極極板上にリチウム補給層とバリア層とを設置するステップを含み、
前記二次電池は、正極極板と負極極板とを含み、前記正極極板は、正極集電体と前記正極集電体の二つの表面における正極膜層とを含み、前記負極極板は、負極集電体と前記負極集電体の二つの表面における負極膜層とを含み、前記負極膜層は、前記正極膜層に対向して設置される反応領域と前記正極膜層に対向して設置されない非反応領域とを含み、前記非反応領域には、リチウム補給層とバリア層とが設置されている。
【0019】
いずれかの実施形態では、前記バリア層は、塗覆又は貼り付けプロセスによって設置され、選択的に、前記バリア層は、貼り付けプロセスによって設置される。
【0020】
本出願の第三の態様は、電池モジュールを提供し、この電池モジュールは、本出願の第一の態様の二次電池又は本出願の第二の態様の方法によって製造された二次電池を含む。
【0021】
本出願の第四の態様は、電池パックを提供し、この電池パックは、本出願の第三の態様の電池モジュールを含む。
【0022】
本出願の第五の態様は、電力消費装置を提供し、この電力消費装置は、本出願の第一の態様の二次電池又は本出願の第二の態様の方法によって製造された二次電池、本出願の第三の態様の電池モジュール又は本出願の第四の態様の電池パックから選択される少なくとも一つを含む。
【0023】
本出願の電池モジュール、電池パックと電力消費装置は、本出願の二次電池を含むため、少なくとも前記二次電池と同じ優位性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本出願の一実施形態の二次電池の捲回型電池コアの構造概略図である。
図2】本出願の一実施形態の二次電池の積層型電池コアの構造概略図である。
図3図1に示す本出願の一実施形態の二次電池の捲回型電池コアの負極極板の展開概略図である。
図4】本出願の一実施形態の二次電池の電池コアの構造原理図である。
図5】本出願の一実施形態の二次電池の概略図である。
図6図5に示す本出願の一実施形態の二次電池の分解図である。
図7】本出願の一実施形態の電池モジュールの概略図である。
図8】本出願の一実施形態の電池パックの概略図である。
図9図8に示す本出願の一実施形態の電池パックの分解図である。
図10】本出願の一実施形態の二次電池を電源として用いる電力消費装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を適当に参照しながら、本出願の二次電池及びその製造方法、電池モジュール、電池パックと電力消費装置を具体的に開示した実施形態を詳細に説明する。しかしながら、必要のない詳細な説明を省略する場合がある。例えば、周知の事項に対する詳細な説明、実際に同じである構造に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に長くなることを回避し、当業者に容易に理解させるためである。なお、図面及び以下の説明は、当業者に本出願を十分に理解させるために提供するものであり、特許請求の範囲に記載されたテーマを限定するものではない。
【0026】
本出願に開示された「範囲」は、下限と上限の形式で限定され、与えられた範囲は、一つの下限と一つの上限を選定することで限定されるものであり、選定された下限と上限は、特定の範囲の境界を限定する。このように限定される範囲は、端値を含むか又は含まないものであってもよく、且つ任意の組み合わせが可能であり、即ち任意の下限は、任意の上限と組み合わせて、一つの範囲を形成することができる。例えば、特定のパラメータに対して60~120と80~110の範囲がリストアップされている場合、60~110と80~120の範囲も想定できると理解される。なお、最小範囲値1と2がリストアップされており、最大範囲値3、4と5がリストアップされている場合、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4と2~5という範囲がすべて想定できる。本出願では、特に断りのない限り、「a~b」という数値範囲は、a~bの任意の実数の組み合わせの短縮表現を表し、ここで、aとbはいずれも実数である。例えば、数値範囲「0~5」は、本明細書においてすでに「0~5」の間のすべての実数をリストアップしたことを表し、「0~5」は、これらの数値の組み合わせの短縮表現だけである。また、あるパラメータが≧2の整数であると表現すると、このパラメータが例えば整数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などであることを開示していることに相当する。
【0027】
特に説明しない場合、本出願のすべての実施形態及び選択的な実施形態は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成することができる。
【0028】
特に説明しない場合、本出願のすべての技術的特徴及び選択的な技術的特徴は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成することができる。
【0029】
特に説明しない場合、本出願のすべてのステップは、順番に行われてもよく、ランダムに行われてもよく、好ましくは、順番に行われる。例えば、前記方法がステップ(a)と(b)とを含むことは、前記方法が、順番に行われるステップ(a)と(b)とを含んでもよく、順番に行われるステップ(b)と(a)とを含んでもよいことを表す。例えば、言及された前記方法は、ステップ(c)を含んでもよく、ステップ(c)が任意の順序で前記方法に追加されてもよいことを表し、例えば前記方法は、ステップ(a)、(b)及び(c)を含んでもよく、ステップ(a)、(c)及び(b)を含んでもよく、ステップ(c)、(a)及び(b)などを含んでもよい。
【0030】
特に説明しない場合、本出願に言及された「含む」と「包含」は、開放型を表し、閉鎖型であってもよい。例えば、前記「含む」と「包含」は、リストアップされていない他の成分をさらに含むか又は包含してもよく、リストアップされている成分のみを含むか又は包含してもよいことを表してもよい。
【0031】
特に説明しない場合、本出願では、用語である「又は」は包括的である。例を挙げると、「A又はB」というフレーズは、「A、B、又はAとBとの両方」を表す。より具体的には、Aが真であり(又は存在し)且つBが偽である(又は存在しない)条件と、Aが偽である(又は存在しない)が、Bが真である(又は存在する)条件と、AとBがいずれも真である(又は存在する)条件とのいずれも「A又はB」を満たしている。
【0032】
捲回型又は積層型電池コアにおいて、負極極板が正極極板を完全に覆うことを満たす必要があるため、負極極板は、正極極板に対向して設置される反応領域と正極極板に対向して設置されない非反応領域とを含む。電池の充電開始後、正極極板のリチウムイオンが負極極板の反応領域に優先的に吸蔵され、負極極板の反応領域の電位が低下し、非反応領域との電圧差を形成し、電圧差の駆動により、反応領域のリチウムイオンは、遅い速度で非反応領域に拡散して吸蔵されるが、非反応領域に吸蔵されるリチウムイオンは、放電中に正極極板に戻りにくくなり、正極極板の不可逆的なリチウム損失が生じ、最終的に電池コアの初回効率、サイクル性能と保存性能を悪化させる。
【0033】
本出願は、負極極板の非反応領域にリチウム補給層を設置することにより、二次電池の初回効率、サイクル性能と保存性能を改善することができ、負極極板の非反応領域にバリア層を設置することにより、電解液の浸透を防止し、リチウム補給層と反応領域がリチウムイオンの非反応領域に拡散する経路を遮断し、リチウム補給効率を高めることができ、さらに二次電池の初回効率、サイクル性能及び保存性能を改善する。
【0034】
[二次電池]
本出願の一つの実施形態では、本出願は、二次電池を提案し、この二次電池は、正極極板と負極極板とを含み、正極極板は、正極集電体と正極集電体の二つの表面における正極膜層とを含み、負極極板は、負極集電体と負極集電体の二つの表面における負極膜層とを含み、負極膜層は、正極膜層に対向して設置される反応領域と正極膜層に対向して設置されない非反応領域とを含み、ここで、非反応領域には、リチウム補給層とバリア層とが設置されている。
【0035】
メカニズムはまだ明確ではないが、本出願人の意外な発見によると、本出願は、負極極板の非反応領域にリチウム補給層とバリア層とを設置することにより、リチウム補給層は、反応領域のリチウムイオンが非反応領域に拡散して吸蔵されるのを効果的に阻止するとともに、電池コアの放電中に、リチウム補給層のリチウムイオンは、遅い速度で反応領域に拡散するが、バリア層は、リチウム補給層外の非反応領域を完全に隔離し、電解液は、それを浸潤することができず、反応領域とリチウム補給層のリチウムイオンが非反応領域に拡散する経路を完全に遮断することによって、リチウム源の損失を低減させ、さらに二次電池の初回効率、サイクル性能及び保存性能を改善する。
【0036】
本出願の実施例では、二次電池は、セパレータをさらに含む。正極極板、負極極板とセパレータは、捲回又は積層のプロセスを用いて電池コアを製作する。
【0037】
負極極板の二つの表面をそれぞれA面とB面と表記し、捲回型電池コアにおいて、図1に示すように、負極極板が正極極板を完全に覆わなければならないことを満たす必要があるため、中央領域に1サイクル又は1サイクル以上空巻きして非反応領域を形成し、本出願ではA面の空巻き非反応領域として定義する。同様に負極極板が正極極板を完全に覆わなければならないことを満たすために、終端領域の負極極板の外側には、1サイクル又は1サイクル以上の非反応領域があり、本出願ではB面の終端非反応領域として定義する。
【0038】
図2に示すように、積層型電池コアにおいて、負極極板の最外層は、非反応領域である。
【0039】
図3は、図1に示す捲回型電池コアにおける負極極板の展開概略図である。図1図3に示すように、A面の空巻き非反応領域とB面の終端非反応領域にはリチウム補給層とバリア層とをそれぞれ設置する。
【0040】
積層プロセスの電池コアの中心には非反応領域がなく、電池コアの最外層にのみ非反応領域があるが、捲回プロセスの電池コアの中心と尾部にはいずれも非反応領域があり、非反応領域のサイトが多いほどリチウム補給層の割り当てに有利であるため、選択的に電池コアは、捲回型電池コアである。
【0041】
図4は、本出願の一実施形態の二次電池の構造原理図である。図4に示すように、本出願は、注液前にリチウム源を非反応領域の負極膜層表面に置いてリチウム補給層を形成し、リチウムの水素に対する標準電極電位が-3.05Vであり、リチウム非吸蔵負極活物質、例えば黒鉛又はケイ素炭素材料の水素に対する標準電極電位が0V程度であるため、リチウムは、負極活物質、例えば黒鉛又はケイ素炭素材料に対して、3V程度の電圧差があり、電池コア注液後にリチウム源と負極膜層が密着した状態であるため、電気回路を形成し、直接短絡した状態(この状態では、リチウム源は負極であり、負極膜層は正極である)に相当し、その電圧差の作用により、リチウム源におけるリチウムは、電子を失って自由に移動するリチウムイオンに変わって負極膜層に吸蔵され、例えばLiC(x≧6)又は/及びLiSi(x>0、y>0)などを形成し、この時に元のリチウム源、LiC又は/及びLiSiを組み合わせて新たな安定したリチウム補給層を形成している。リチウム補給層の電位が低下するため、反応領域のリチウムイオンが非反応領域に拡散して吸蔵されるのを効果的に阻止できるとともに、リチウム補給層は、常に比較的低い電位にあり、電池コアの放電中に、負極極板の反応領域の電位が徐々に上昇すると、反応領域の電位は、非反応領域よりはるかに高くなり、リチウム補給層のリチウムは、この電位差に駆動されて遅い速度で反応領域に拡散し、それによって二次電池の初回効率、サイクル性能及び保存性能を改善する。
【0042】
リチウム補給層のリチウムイオンは、電圧差の作用で反応領域に拡散するだけでなく、電圧差の作用でリチウム補給層外の非反応領域に吸蔵され、本出願は、非反応領域にバリア層を設置することにより、リチウム補給層外の非反応領域を完全に隔離し、電解液は、それを浸潤することができず、リチウム補給層と反応領域のリチウムイオンが非反応領域に拡散する経路を完全に遮断し、それによってリチウム源の損失を低減させ、さらに二次電池の初回効率、サイクル性能及び保存性能を改善する。
【0043】
いくつかの実施形態では、リチウム補給層は、非反応領域の反応領域に近い端に設置され、バリア層は、リチウム補給層エッジから、反応領域から離れて設置される。リチウム補給層が反応領域から離れて設置され、非反応領域の中央領域に位置する場合、リチウムイオンの相対拡散経路が長くなり、リチウム補給効率を低減させるとともに、バリア層の設置に不便で生産能力に影響を与える。
【0044】
いくつかの実施形態では、リチウム補給層の反応領域に近い側と反応領域との距離は、2mm~5mmである。正負極板が捲回中にわずかに位置ずれして一部のリチウム補給層が反応領域に入って深刻な安全リスクを招くことを防止するように、リチウム補給層は、反応領域と一定の距離を維持しなければならず、且つリチウム補給層のリチウムは、注液後に周りに拡散し、反応領域までの距離が近すぎるとリチウム補給層に近い反応領域のリチウム過吸蔵がリチウム析出を誘発し、電池短絡のリスクを引き起こす可能性があり、2mm以上の距離を維持することで上記のリスクを回避できるとともに、距離もあまり遠くできず、遠すぎるとリチウム源を多く消費し、リチウム補給効果を低減させるので、5mm以内の効果が最も良い。
【0045】
いくつかの実施形態では、リチウム補給層は、活性リチウムを提供可能な物質を含み、選択的に金属リチウム箔、リチウム粉、及びリチウム合金のうちの一つ又は複数を含み、さらに選択的に金属リチウム箔、リチウム粉、シリコンリチウム合金、アルミニウムリチウム合金、マグネシウムリチウム合金、及びスズリチウム合金のうちの一つ又は複数を含む。
【0046】
リチウム合金のグラム容量は、比較的低く、リチウム放出後に金属不純物が形成され、金属リチウム単体はグラム容量が高く、反応後に不純物が発生しない。金属リチウムにおけるリチウム箔の加工性能がリチウム粉よりも優れるため、選択的にリチウム補給層は、金属リチウム箔を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、リチウム補給層におけるリチウムの理論容量CLiは、20%C≦CLi≦120%C、選択的に90%C≦CLi≦120%Cを満たし、ここで、Cは、リチウム補給層に対応する負極膜層の容量である。
【0048】
リチウム補給層の容量とリチウム補給層下方に対応する負極膜層の容量との比は、リチウム補給効果及び電池コアの安全性に影響を与える。CLi<20%Cの場合、VLi>V(VLiは、リチウム補給層の電位であり、Vは、負極極板のリチウム吸蔵プラトー電圧である)、即ちリチウム補給層の電位は、負極極板のリチウム吸蔵プラトー電圧よりも高く、リチウム補給層のリチウムがリチウム吸蔵領域に吸蔵されることができないとともに、リチウム吸蔵領域のリチウムがリチウム補給層に拡散することを阻止することができない。CLi>120%Cの場合、VLi<V且つ
【数1】
であり、この時にリチウム補給層の電位は、負極極板のリチウム吸蔵プラトー電圧よりも小さく、リチウムイオンは、相対的に最も速い速度でリチウム吸蔵領域に移行し、CLiがCよりもはるかに大きいため、大量のリチウムが負極膜層に吸蔵されることができず、最後にその表面に堆積することを招き、VLiが長時間にわたって0V付近にあることになり、この時にリチウム補給層のリチウムは、比較的長い時間内に最も速い速度でリチウム吸蔵領域にリチウムイオンを移行し、単位時間内にリチウムの移行容量が負極極板の容量減衰よりもはるかに大きい場合、負極反応領域の局所的なリチウム析出につながる。負極極板がSEI膜を生成する時に6%~10%のリチウムを消費する必要があるとともに、単位面積内で負極極板の全体容量が正極極板の容量の1.05~1.15倍であるため、CLi≦120%Cでは、負極極板の反応領域リチウム析出につながらない。そのため、リチウム補給層におけるリチウムの容量が20%C≦CLi≦120%Cを満たしている場合、電池コアにリチウムを安全に補給できるとともに、二次電池の初回効率、サイクル性能と保存性能を改善する。選択的に、90%C≦CLi≦120%Cである。
【0049】
捲回型電池コアにおいて、リチウム補給層は、電池コアのA面の空巻き非反応領域及び/又はB面の終端非反応領域に設置されてもよく、CLi=C+Cであり、Cは、電池コアのA面の空巻き非反応領域に設置されたリチウム補給層におけるリチウムの理論容量であり、Cは、電池コアのB面の終端非反応領域に設置されたリチウム補給層におけるリチウムの理論容量である。0%CLi≦C≦100%CLi、0%CLi≦C≦100%CLiであり、且つCとCが同時にゼロでない場合、二次電池の初回効率、サイクル性能と保存性能をさらに改善することができる。電池コアの中心に電解液を保持する能力が比較的強く、更にリチウム源におけるリチウムイオンの拡散に有利であるため、選択的にC>Cである。
【0050】
単位面積当たりのリチウム補給層重量=(負極膜層の塗布重量×負極活物質の重量比×負極活物質のグラム容量)×(CLi/C)/リチウム補給層におけるリチウムの理論容量である。例えば、リチウム補給層は、リチウム箔を用い、負極膜層の塗布重量は、9.4mg/cmであり、負極活物質は、人造黒鉛であり、負極活物質の負極膜層に占める重量比は、96%であり、CLi=100%Cとすると、単位面積当たりのリチウム箔重量=(9.4×96%×360)×100%/3860=0.84mg/cmであり、ここで、人造黒鉛のグラム容量は、360mAh/gであり、リチウム金属の理論容量は、3860mAh/gである。圧延機器を利用して異なる単位面積当たりのリチウム補給層重量を得られる。
【0051】
いくつかの実施形態では、バリア層は、電解液に浸潤されることができないフィルム又はコーティングから選択され、フィルムは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル繊維、及びポリ塩化ビニルのうちの一つ又は複数を含み、選択的にキャストポリプロピレン、一軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル繊維、及びポリ塩化ビニルのうちの一つ又は複数を含み、さらに選択的にポリエチレンを含み、コーティングは、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル及び上記物質のコポリマーのうちの一つ又は複数を含む。
【0052】
ポリエチレン(PE)フィルムは、無臭、無毒、-90℃~100℃で安定し、酸アルカリに対する耐性、有機溶媒に対する耐性、吸水性が小さく、電気絶縁性能に優れるなどの利点を有するため、フィルムは、選択的にPEフィルムを含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、ポリエステル繊維は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートを含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、バリア層の厚さは、6μm~40μmであり、選択的に10μm~20μmである。
【0055】
本出願の実施例では、バリア層の厚さを制御する必要がある。バリア層が薄すぎると破損しやすく、厚すぎると極板に大きな変形が発生する。バリア層の厚さが所定の範囲内にある場合、極板に大きな変形がなく、電池コアと完全に互換性があることを保証することができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、フィルムは、接着性を有し、接着力は、20N/mよりも大きく、選択的に200N/mよりも大きく、さらに選択的に400N/mよりも大きい。
【0057】
本出願の実施例では、フィルムは、一定の接着性を有し、接着力が小さすぎるとフィルムと負極極板上の負極膜層とを密着させることができず、引き裂きしやすく、フィルムの接着力が20N/mよりも大きいと、非反応領域の表面に効果的に貼り付けることができ、選択的にフィルム接着力は、負極膜層における粒子と粒子との間の凝集力よりも大きい。電解液を遮断することができれば、片面接着性又は両面接着性のフィルムでも本出願を満たすことができ、両面接着性のフィルムが片面接着性のフィルムに比べて厚さが増加し、極板の変形が大きくなるため、フィルムは、選択的に片面接着性のフィルムである。
【0058】
いくつかの実施形態では、負極極板上には、リチウム補給層の反応領域から離れた側に、負極極板の幅方向に沿って間隔領域を設置するとともに、バリア層は、間隔領域から、反応領域から離れて設置される。より具体的には、バリア層は、間隔領域の底部表面、間隔領域の非反応領域に近い側面及び反応領域から離れた非反応領域に設置される。
【0059】
負極極板上には、リチウム補給層の反応領域から離れた側に間隔領域を設置することにより、注液後の電解液の非反応領域への浸潤を阻止することができ、それによってリチウム補給層と反応領域のリチウムイオンの非反応領域への拡散を阻止し、さらに二次電池の初回効率、サイクル性能と保存性能を改善する。
【0060】
いくつかの実施形態では、間隔領域の幅は、5mm~50mmであり、選択的に10mm~15mmである。
【0061】
間隔領域の幅が広すぎると極板の加工性能に影響を与え、特に冷間プレス段階で極板の圧密が不均一になる。幅が狭すぎると後期の非反応領域のテーピングプロセスに影響を与え、テーピングが密着せず、電解液が底部から浸透してしまう。間隔領域の幅が所定の範囲内にある場合、バリア層の設置をより良く支援し、極板の加工に影響を与えることなく電解液をより効果的に隔離することができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、間隔領域の深さは、負極膜層の厚さに等しい。
【0063】
間隔領域の深さが負極膜層の厚さよりも小さく、即ち間隔領域の底部に負極膜層がある場合、注液後に電解液が底部の負極膜層に沿って非反応領域に浸潤し、リチウム補給層と反応領域のリチウムイオンの非反応領域への拡散を阻止することができない。そのため、間隔領域の深さは、負極膜層の厚さに等しく、即ち間隔領域の底部は、負極極板の集電体である。
【0064】
本出願の一つの実施形態では、二次電池の製造方法を提供し、この製造方法は、
正極極板を製造するステップ(1)と、
負極極板を製造するステップ(2)と、
セパレータを製造するステップ(3)と、
電解液を製造するステップ(4)と、
二次電池を製造するステップ(5)とを含み、
ここで、ステップ(2)は、負極極板上にリチウム補給層とバリア層とを設置するステップを含み、
二次電池は、正極極板と負極極板とを含み、正極極板は、正極集電体と正極集電体の二つの表面における正極膜層とを含み、負極極板は、負極集電体と負極集電体の二つの表面における負極膜層とを含み、負極膜層は、正極膜層に対向して設置される反応領域と正極膜層に対向して設置されない非反応領域とを含み、非反応領域には、リチウム補給層とバリア層とが設置されている。
【0065】
いくつかの実施形態では、バリア層は、塗覆又は貼り付けプロセスによって設置され、選択的に、バリア層は、貼り付けプロセスによって設置される。
【0066】
電解液の浸潤を防止するバリア層は、非常に重要であり、塗布又は貼り付けの二つのプロセスを用いて設置することができる。塗布プロセスは、機器の攪拌、塗布、焼成などの工程を必要とし、フローが貼り付けプロセスに比べて比較的複雑であるため、選択的に、バリア層は、貼り付けプロセスによって設置される。
【0067】
リチウム補給層は、貼り付け、ロールプレス、塗布などのプロセスによって設置されてもよい。
【0068】
いくつかの実施形態では、前記方法は、負極極板上には、リチウム補給層の反応領域から離れた側に、負極極板の幅方向に沿って間隔領域を設置することをさらに含み、間隔領域は、溶媒洗浄、研磨又は間欠塗布の方式によって設置される。
【0069】
また、以下では、適切な図面を参照しながら、本出願の二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置を説明する。
【0070】
一般的には、二次電池は、正極極板、負極極板、電解質とセパレータを含む。電池の充放電中においては、活性イオンは、正極極板と負極極板との間で往復して吸蔵及び離脱する。電解質は、正極極板と負極極板との間でイオンを伝導する作用を果たす。セパレータは、正極極板と負極極板との間に設置され、主に正負極短絡を防止する作用を果たすとともに、イオンを通過させることができる。
【0071】
[正極極板]
正極極板は、正極集電体及び正極集電体の少なくとも一つの表面に設置される正極膜層に設置され、前記正極膜層は、正極活物質を含む。
【0072】
例として、正極集電体は、それ自体の厚さ方向において対向する二つの表面を有し、正極膜層は、正極集電体の対向する二つの表面のうちのいずれか一方又は両方に設置される。
【0073】
いくつかの実施形態では、前記正極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用することができる。例えば、金属箔シートとして、アルミニウム箔を採用することができる。複合集電体は、高分子材料ベース層と高分子材料ベース層の少なくとも一つの表面上に形成される金属層を含んでもよい。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)上に形成することで形成されてもよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、正極活物質は、当分野において公知の電池用の正極活物質を採用することができる。例として、正極活物質は、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩、リチウム遷移金属酸化物及びそれぞれの改質化合物のうちの少なくとも一つの材料を含んでもよい。本出願は、これらの材料に限らず、他の電池正極活物質として使用できる従来の材料を使用することもできる。これらの正極活物質は、単独で一つのみを使用してもよく、二つ以上を組み合わせて使用してもよい。ここで、リチウム遷移金属酸化物の例は、リチウムコバルト酸化物(例えばLiCoO)、リチウムニッケル酸化物(例えばLiNiO)、リチウムマンガン酸化物(例えばLiMnO、LiMn)、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/3(NCM333と略称されてもよい)、LiNi0.5Co0.2Mn0.3(NCM523と略称されてもよい)、LiNi0.5Co0.25Mn0.25(NCM211と略称されてもよい)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2(NCM622と略称されてもよい)、LiNi0.8Co0.1Mn0.1(NCM811と略称されてもよい))、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えばLiNi0.85Co0.15Al0.05)及びその改質化合物などのうちの少なくとも一つを含んでもよいが、それらに限らない。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例は、リン酸鉄リチウム(例えばLiFePO(LFPと略称されてもよい))、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガンリチウム(例えばLiMnPO)、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素との複合材料のうちの少なくとも一つを含んでもよいが、それらに限らない。
【0075】
いくつかの実施形態では、正極膜層は、さらに選択的に接着剤を含む。例として、前記接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びフッ素含有アクリレート樹脂のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、正極膜層は、さらに選択的に導電剤を含む。例として、前記導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、以下の方式で正極極板を製造することができる。上記正極極板を製造するための成分、例えば正極活物質、導電剤、接着剤といずれかの他の成分を溶媒(例えばN-メチルピロリドン)に分散させて、正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体上に塗覆し、乾燥、冷間プレスなどの工程を経た後、正極極板が得られる。
【0078】
[負極極板]
負極極板は、負極集電体及び負極集電体の少なくとも一つの表面上に設置される負極膜層を含み、前記負極膜層は、負極活物質を含む。
【0079】
例として、負極集電体は、その自体の厚さ方向において対向する二つの表面を有し、負極膜層は、負極集電体の対向する二つの表面のうちのいずれか一方又は両方上に設置される。
【0080】
いくつかの実施形態では、前記負極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用することができる。例えば、金属箔シートとして、銅箔を採用することができる。複合集電体は、高分子材料ベース層と高分子材料基材の少なくとも一つの表面上に形成される金属層を含んでもよい。複合集電体は、金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)上に形成することで形成されてもよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、負極活物質は、当分野において公知の電池用の負極活物質を採用することができる。例として、負極活物質は、人造黒鉛、天然黒鉛、軟炭、硬炭、シリコン系材料、スズ系材料とチタン酸リチウムなどのうちの少なくとも一つの材料を含んでもよい。前記シリコン系材料は、シリコン単体、シリコン酸化物、シリコン炭素複合体、シリコン窒素複合体及びシリコン合金のうちの少なくとも一つから選ばれてもよい。前記スズ系材料は、スズ単体、スズ酸化物及びスズ合金のうちの少なくとも一つから選ばれてもよい。本出願は、これらの材料に限らず、他の電池負極活物質として使用できる従来の材料を使用することもできる。これらの負極活物質は、単独で一つのみを使用してもよく、二つ以上を組み合わせて使用してもよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、負極膜層は、さらに選択的に接着剤を含む。前記接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの少なくとも一つから選ばれてもよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、負極膜層は、さらに選択的に導電剤を含む。導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの少なくとも一つから選ばれてもよい。
【0084】
いくつかの実施形態では、負極膜層は、さらに選択的に他の助剤、例えば増粘剤(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na))などを含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、以下の方式で負極極板を製造することができる。上記負極極板を製造するための成分、例えば負極活物質、導電剤、接着剤といずれかの他の成分を溶媒(例えば脱イオン水)に分散させて、負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極集電体上に塗覆し、乾燥、冷間プレスなどの工程を経てた後、負極極板が得られる。
【0086】
[電解質]
電解質は、正極極板と負極極板との間でイオンを伝導する作用を果たす。本出願は、電解質の種類に対して具体的に限定せず、需要に応じて選択することができる。例えば、電解質は、液体、ゲル状又は全固体であってもよい。
【0087】
いくつかの実施形態では、前記電解質として、電解液を採用する。前記電解液は、電解質塩と溶媒とを含む。
【0088】
いくつかの実施の形態では、電解質塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム及びテトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウムのうちの少なくとも一つから選ばれてもよい。
【0089】
いくつかの実施形態では、溶媒は、炭酸エチレン(エチレンカーボネート)、炭酸プロピレン(プロピレンカーボネート)、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、1,4-ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン及びジエチルスルホンのうちの少なくとも一つから選ばれてもよい。
【0090】
いくつかの実施形態では、前記電解液は、さらに選択的に添加剤を含む。例えば、添加剤は、負極膜形成添加剤、正極膜形成添加剤を含んでもよく、さらに電池のいくつかの性能を改善できる添加剤、例えば電池の過充電性能を改善する添加剤、電池高温又は低温性能を改善する添加剤などを含んでもよい。
【0091】
[セパレータ]
いくつかの実施形態では、二次電池には、セパレータをさらに含む。本出願は、セパレータの種類に対して特に限定せず、任意の公知の良好な化学安定性と機械安定性を持つ多孔質構造セパレータを選択することができる。
【0092】
いくつかの実施形態では、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンのうちの少なくとも一つから選ばれてもよい。セパレータは、単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよく、特に制限しない。セパレータが多層複合フィルムである時、各層の材料は、同じであってもよく、又は異なってもよく、特に制限しない。
【0093】
いくつかの実施形態では、正極極板、負極極板とセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリ(電池コア)に製造することができる。
【0094】
いくつかの実施形態では、二次電池は、外装体を含んでもよい。この外装体は、上記電極アセンブリ及び電解質をパッケージングするために用いられてもよい。
【0095】
いくつかの実施形態では、二次電池の外装体は、硬質ケース、例えば硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、鋼製ケースなどであってもよい。二次電池の外装体は、パウチ、例えば袋状パウチであってもよい。パウチの材質は、プラスチックであってもよく、プラスチックとして、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート及びポリブチレンサクシネートなどが挙げられる。
【0096】
本出願は、二次電池の形状に対して特に限定せず、それは、円筒型、四角形又は他の任意の形状であってもよい。例えば、図5は、一例としての四角形構造の二次電池5である。
【0097】
いくつかの実施形態では、図6を参照すると、外装体は、ケース51とカバープレート53とを含んでもよい。ここで、ケース51は、底板と底板に接続された側板とを含んでもよく、底板と側板とは、囲んで収容キャビティを形成する。ケース51は、収容キャビティに連通する開口を有し、カバープレート53は、前記収容キャビティを密閉するように、前記開口に蓋設可能である。正極極板、負極極板とセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスを経て電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、前記収容キャビティ内にパッケージングされる。電解液は、電極アセンブリ52に浸潤される。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は、一つ又は複数であってもよく、当業者は、具体的な実際の需要に応じて選択することができる。
【0098】
いくつかの実施形態では、二次電池は、電池モジュールとして組み立てられてもよく、電池モジュールに含まれる二次電池の数は、一つ又は複数であってもよく、具体的な数は、当業者が電池モジュールの応用と容量に応じて選択することができる。
【0099】
図7は、一例としての電池モジュール4である。図7を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長手方向に沿って順に並べ設置されてもよい。無論、他の任意の方式で配列されてもよい。さらに締結具を介してこれらの複数の二次電池5を固定してもよい。
【0100】
選択的に、電池モジュール4は、収容空間を有するハウジングをさらに含んでもよく、複数の二次電池5は、この収容空間に収容される。
【0101】
いくつかの実施形態では、上記電池モジュールは、電池パックとして組み立てられてもよく、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、一つ又は複数であってもよく、具体的な数は、当業者が電池パックの応用と容量に応じて選択することができる。
【0102】
図8図9は、一例としての電池パック1である。図8図9を参照すると、電池パック1には、電池ボックスと、電池ボックスに設置される複数の電池モジュール4とが含まれてもよい。電池ボックスは、上部筐体2と下部筐体3とを含み、上部筐体2は、下部筐体3に蓋設可能であり、電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成する。複数の電池モジュール4は、任意の方式で電池ボックスに配列されてもよい。
【0103】
また、本出願は、電力消費装置をさらに提供し、前記電力消費装置は、本出願による二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少なくとも一つを含む。前記二次電池、電池モジュール、又は電池パックは、前記電力消費装置の電源として用いられてもよく、前記電力消費装置のエネルギー貯蔵ユニットとして用いられてもよい。前記電力消費装置は、移動体機器(例えば携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクータ、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどを含んでもよいが、これらに限らない。
【0104】
前記電力消費装置として、その使用需要に応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0105】
図10は、一例としての電力消費装置である。この電力消費装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。この電力消費装置の二次電池の高パワーと高エネルギー密度に対する需要を満たすために、電池パック又は電池モジュールを採用することができる。
【0106】
別の例の装置として、携帯電話、タブレットパソコン、ノートパソコンなどであってもよい。この装置は、一般的に薄型化が要求され、二次電池を電源として採用することができる。
【0107】
実施例
以下、本出願の実施例を説明する。以下に記述される実施例は、例示的なものであり、本出願を解釈するためにのみ用いられ、本出願に対する制限として理解されるべきではない。実施例に具体的な技術又は条件が明記されていない場合、当分野内の文献に記述された技術又は条件に従って又は製品明細書に従って行う。使用した試剤又は機器は、生産メーカが明記されていない場合、いずれも市販で入手可能な通常製品である。
【0108】
実施例1
(1)正極極板の製造
正極活物質であるリン酸鉄リチウム、導電剤であるアセチレンブラック、接着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を質量比96:2:2で混合し、溶媒N-メチルピロリドン(NMP)を加え、真空ミキサーの作用により系が均一になるまで攪拌し、正極スラリーを得、厚さ12μmの正極集電体アルミニウム箔の二つの表面に正極スラリーを均一に塗覆し、115℃で15分乾燥し、冷間プレスして片側厚さ84μmの正極膜層を得、スリットして長さ605mm、膜幅88mmの正極極板を得、塗布重量は、20mg/cmであり、圧密密度は、2.4g/cmである。
【0109】
(2)負極極板の製造
負極活物質である人造黒鉛、導電剤であるアセチレンブラック、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、接着剤であるSBRを質量比96.4:1:1.2:1.4で混合し、溶媒脱イオン水を加え、真空ミキサーの作用により系が均一になるまで攪拌し、負極スラリーを得、厚さ8μmの負極集電体銅箔の二つの表面に負極スラリーを均一に塗覆し、115℃で15分乾燥し、冷間プレスして片側厚さ61μmの負極膜層を得、スリットして長さ735mm、膜幅93mmの負極極板を得、負極極板の塗布重量は、9.4mg/cmであり、圧密密度は、1.55g/cmである。負極極板の空巻き非反応領域と終端非反応領域に同一仕様のリチウム箔を貼り付け、ここで、リチウム箔におけるリチウムの理論容量CLiと下方の対応する負極膜層の容量Cは、CLi=100%Cを満たし、リチウム箔の反応領域に近い側と反応領域との距離は、3mmであり、リチウム補給層から、反応領域から離れて片面接着性のポリエチレンフィルムをバリア層として貼り付け、ポリエチレンフィルムの接着力は、470N/mであり、厚さは、20μmである。
【0110】
(3)電解液の製造
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を体積比1:1:1で混合して有機溶媒を得、十分に乾燥したリチウム塩LiPFを上記有機溶媒に溶解し、リチウム塩の濃度は、1mol/Lであり、均一に混合して電解液を得た。
【0111】
(4)セパレータの製造
厚さ12μmのポリエチレン膜をセパレータとして選択した。
【0112】
(5)二次電池の製造
上記正極極板、セパレータ、負極極板を順番に積層し、セパレータが正、負極極板の間に位置して隔離の役割を果たすようにし、そして捲回してベア電池コアを得、ベア電池コアを外装体に置き、乾燥して按4.2g/Ahの注液係数で電解液を注入し、真空パッケージング、静置、化成、整形などの工程を経て、容量3Ah程度の二次電池を得た。
【0113】
実施例2
二次電池の製造は、全体的に実施例1を参照し、相違点は、負極極板の製造において、負極極板の空巻き非反応領域と終端非反応領域にリチウムアルミニウム合金を貼り付け、そのリチウム放出グラム容量が1980mAh/gであることである。
【0114】
実施例3~6
二次電池の製造は、全体的に実施例1を参照し、相違点は、負極極板の製造において、リチウム箔の反応領域に近い側と反応領域との距離がそれぞれ0mm、2mm、5mmと6mmであることである。
【0115】
実施例7~11
二次電池の製造は、全体的に実施例1を参照し、相違点は、負極極板の製造において、負極極板の空巻き非反応領域と終端非反応領域に同一仕様のリチウム箔を貼り付け、ここで、リチウム箔におけるリチウムの理論容量CLiと下方の対応する負極膜層の容量CがそれぞれCLi=10%C、CLi=20%C、CLi=90%C、CLi=120%CとCLi=130%Cを満たすことである。
【0116】
実施例12~13
二次電池の製造は、全体的に実施例1を参照し、相違点は、ポリエチレンフィルムの厚さがそれぞれ6μmと40μmであることである。
【0117】
実施例14~15
二次電池の製造は、全体的に実施例1を参照し、相違点は、負極極板の製造において、片面接着性のポリエチレンフィルムをそれぞれ片面接着性のポリエチレンテレフタレートフィルムとポリ塩化ビニルフィルムに置き換えることである。
【0118】
実施例16
二次電池の製造は、全体的に実施例1を参照し、相違点は、負極極板の非反応領域にポリテトラフルオロエチレンをバリア層として塗覆し、その厚さが20μmであることである。
【0119】
実施例17
二次電池の製造は、全体的に実施例1を参照し、相違点は、負極極板の非反応領域にポリメタクリル酸メチルをバリア層として塗覆し、その厚さが20μmであることである。
【0120】
実施例18
二次電池の製造は、全体的に実施例1を参照し、相違点は、負極極板の製造において、負極極板上には、リチウム補給層の反応領域から離れた側に、負極極板の幅方向に沿って間隔領域を設置し、間隔領域が研磨の方式で負極膜層を除去して形成され、その幅が15mmであり、深さが負極膜層の厚さに等しく、即ち61μmであるとともに、バリア層が間隔領域から、反応領域から離れて設置されることである。
【0121】
実施例19~20
二次電池の製造は、全体的に実施例18を参照し、相違点は、間隔領域の幅がそれぞれ5mmと50mmであることである。
【0122】
実施例21
二次電池の製造は、全体的に実施例18を参照し、相違点は、間隔領域の深さが20μmであり、即ち間隔領域の負極膜層が完全に除去されていないことである。
【0123】
比較例1
二次電池の製造は、全体的に実施例1を参照し、相違点は、負極極板の製造において、非反応領域にバリア層を設置しないことである。
【0124】
比較例2
二次電池の製造は、全体的に実施例1を参照し、相違点は、負極極板の製造において、非反応領域にリチウム補給層を設置せず、バリア層が非反応領域全体に設置されることである。
【0125】
比較例3
二次電池の製造は、全体的に実施例1を参照し、相違点は、負極極板の製造において、非反応領域にリチウム補給層とバリア層とを設置しないことである。
【0126】
二次電池性能テスト
1.45℃で0.02Cの倍率で10h充電して測定した容量をC0とし、そして25℃で0.33Cの倍率で3.65Vまで充電し、3.65Vで0.05Cまで定電圧化して測定した容量をC1とし、最後に0.33Cで2.5Vまで放電して測定した容量をD0とし、D0/(C0+C1)×100%は、二次電池の初回のクーロン効率(初回効率)である。
【0127】
2.二次電池の保存性能
45℃で、二次電池を100%SOC(充電状態)で保存し、最初の60日は、15日ごとにデータを収集し、60日後は30日ごとに容量が80%に減衰するまでデータを収集し、保存日数を記録した。
【0128】
3.二次電池のサイクル性能:
45℃で、二次電池を1Cの倍率で3.65Vまで充電し、3.65Vで0.05Cまで定電圧化し、1Cの倍率で2.5Vまで放電し、二次電池の容量が初期容量の80%に減衰するまで、以上のステップを繰り返して満充放電サイクルテストを行い、サイクル数を記録した。
【0129】
上記プロセスに従って上記実施例と比較例で得られた二次電池をそれぞれテストし、具体的な数値は、表1を参照されたい。
【0130】
【表1】
【0131】
【表2】
【0132】
【表3】
【0133】
【表4】
【0134】
【表5】
【0135】
【表6】
【0136】
表1から分かるように、上記のすべての実施例の二次電池の容量保持率が80%である時のサイクル数は、いずれも比較例の二次電池よりも高い。
【0137】
実施例1と比較例1~比較例3を比較すると、負極極板の非反応領域にリチウム補給層とバリア層とを設置することにより、二次電池の初回効率、保存性能とサイクル性能を明らかに改善することができる。
【0138】
実施例1と実施例3~実施例6を総合的に比較すると、リチウム補給層の反応領域に近い側と反応領域との距離が2mm~5mmである場合、二次電池の初回効率、容量が80%である時の保存日数と容量保持率が80%である時のサイクル数をさらに改善することができる。リチウム補給層の反応領域に近い側と反応領域との距離が0mmである時に、二次電池の初回効率が良好であるが、リチウム補給層の反応領域に近い側が反応領域のエッジに完全に接近していると、反応領域は、リチウム析出が発生する可能性があり、それによって電池コアの安全性に影響を与えるため、リチウム補給層の反応領域に近い側は、0mmよりも大きい。
【0139】
実施例1と実施例7~実施例11を総合的に比較すると、リチウム補給層におけるリチウムの理論容量CLiとリチウム補給層に対応する負極膜層の容量Cが20%C≦CLi≦120%Cを満たす場合、二次電池の初回効率、保存性能とサイクル性能をさらに改善することができる。CLi=130%Cの場合、二次電池の初回効率、保存性能とサイクル性能がいずれも良好であるが、CLi>120%Cであれば、負極反応領域の局所的なリチウム析出が生じる可能性があるため、CLi≦120%Cを満たす必要がある。
【0140】
実施例1と実施例18~実施例21を総合的に比較すると、負極極板上には、リチウム補給層の反応領域から離れる側に間隔領域を設置する場合、二次電池の初回効率、保存性能とサイクル性能をさらに改善することができる。
【0141】
実施例18と実施例21を総合的に比較すると、間隔領域の深さが負極膜層の厚さに等しい場合、二次電池の初回効率、保存性能とサイクル性能をさらに改善することができる。
【0142】
説明すべきこととして、本出願は、上記実施形態に限らない。上記実施形態は、例示であり、本出願の技術案の範囲内に技術的思想と実質的に同じ構成を有し、同じ作用効果を奏する実施形態は、いずれも本出願の技術範囲内に含まれる。なお、本出願の趣旨を逸脱しない範囲内で、実施形態に対して当業者が想到できる様々な変形を加え、実施形態における一部の構成要素を組み合わせて構成された他の方式も、本出願の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0143】
1電池パック
2上部筐体
3下部筐体
4電池モジュール
5二次電池
51ケース
52電極アセンブリ
53トップカバーアセンブリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-01-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池であって、正極極板と負極極板とを含み、前記正極極板は、正極集電体と前記正極集電体の二つの表面における正極膜層とを含み、前記負極極板は、負極集電体と前記負極集電体の二つの表面における負極膜層とを含み、前記負極膜層は、前記正極膜層に対向して設置される反応領域と前記正極膜層に対向して設置されない非反応領域とを含み、ここで、前記非反応領域には、リチウム補給層とバリア層とが設置されている、二次電池。
【請求項2】
前記リチウム補給層は、前記非反応領域の前記反応領域に近い端に設置され、前記バリア層は、前記リチウム補給層から、前記反応領域から離れて設置される、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記リチウム補給層の前記反応領域に近い側と前記反応領域との距離は、2mm~5mmである、請求項1に記載の二次電池。
【請求項4】
前記リチウム補給層は、活性リチウムを提供可能な物質を含む、請求項1に記載の二次電池。
【請求項5】
前記リチウム補給層におけるリチウムの理論容量CLiは、20%C≦CLi≦120%C 満たし、ここで、Cは、前記リチウム補給層に対応する前記負極膜層の容量である、請求項1に記載の二次電池。
【請求項6】
前記バリア層は、電解液に浸潤されることができないフィルム又はコーティングから選択され、前記フィルムは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル繊維、及びポリ塩化ビニルのうちの一つ又は複数を含み、前記コーティングは、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル及び上記物質のコポリマーのうちの一つ又は複数を含む、請求項1に記載の二次電池。
【請求項7】
前記バリア層の厚さは、6μm~40μmである、請求項1に記載の二次電池。
【請求項8】
前記フィルムは、接着性を有し、接着力は、20N/mよりも大きい、請求項6に記載の二次電池。
【請求項9】
前記負極極板上には、前記リチウム補給層の前記反応領域から離れる側に、前記負極極板の幅方向に沿って間隔領域を設置するとともに、前記バリア層は、間隔領域から、前記反応領域から離れて設置される、請求項1に記載の二次電池。
【請求項10】
前記間隔領域の幅は、5mm~50mmである、請求項9に記載の二次電池。
【請求項11】
前記間隔領域の深さは、前記負極膜層の厚さに等しい、請求項9に記載の二次電池。
【請求項12】
二次電池の製造方法であって、
正極極板を製造するステップ(1)と、
負極極板を製造するステップ(2)と、
セパレータを製造するステップ(3)と、
電解液を製造するステップ(4)と、
二次電池を製造するステップ(5)とを含み、
ここで、ステップ(2)は、前記負極極板上にリチウム補給層とバリア層とを設置するステップを含み、
前記二次電池は、正極極板と負極極板とを含み、前記正極極板は、正極集電体と前記正極集電体の二つの表面における正極膜層とを含み、前記負極極板は、負極集電体と前記負極集電体の二つの表面における負極膜層とを含み、前記負極膜層は、前記正極膜層に対向して設置される反応領域と前記正極膜層に対向して設置されない非反応領域とを含み、前記非反応領域には、リチウム補給層とバリア層とが設置されている、方法。
【請求項13】
前記バリア層は、塗覆又は貼り付けプロセスによって設置される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の二次電池を含む、電池モジュール。
【請求項15】
請求項14に記載の電池モジュールを含む、電池パック。
【請求項16】
請求項1から11のいずれか1項に記載の二次電池、請求項14に記載の電池モジュール又は請求項15に記載の電池パックから選択される少なくとも一つを含む、電力消費装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0097
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0097】
いくつかの実施の形態では、図6を参照すると、外装体は、ケース51とトップカバーアセンブリ53とを含んでもよい。ここで、ケース51は、底板と底板に接続された側板とを含んでもよく、底板と側板とは、囲んで収容キャビティを形成する。ケース51は、収容キャビティに連通する開口を有し、トップカバーアセンブリ53は、前記収容キャビティを密閉するように、前記開口に蓋設可能である。正極極板、負極極板とセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスを経て電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、前記収容キャビティ内にパッケージングされる。電解液は、電極アセンブリ52に浸潤される。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は、一つ又は複数であってもよく、当業者は、具体的な実際の需要に応じて選択することができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0109
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0109】
(2)負極極板の製造
負極活物質である人造黒鉛、導電剤であるアセチレンブラック、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、接着剤であるSBRを質量比96.4:1:1.2:1.4で混合し、溶媒脱イオン水を加え、真空ミキサーの作用により系が均一になるまで攪拌し、負極スラリーを得、厚さ8μmの負極集電体銅箔の二つの表面に負極スラリーを均一に塗覆し、115℃で15min乾燥し、冷間プレスして片側厚さ61μmの負極膜層を得、スリットして長さ735mm、膜幅93mmの負極極板を得、負極極板の塗布重量は、9.4mg/cmであり、圧密密度は、1.55g/cmである。負極極板の空巻き非反応領域と終端非反応領域に同一仕様のリチウム箔を貼り付け、ここで、リチウム箔におけるリチウムの理論容量CLiと下方の対応する負極膜層の容量Cは、CLi=100%Cを満たし、リチウム箔の反応領域に近い側と反応領域との距離は、3mmであり、リチウム補給層から、反応領域から離れて片面接着性のポリエチレンフィルムをバリア層として貼り付け、ポリエチレンフィルムの接着力は、470N/mであり、厚さは、20μmである。


【国際調査報告】