(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】ワイパーインサート及びそれを有する工具
(51)【国際特許分類】
B23B 27/14 20060101AFI20240711BHJP
B23B 27/20 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
B23B27/14 C
B23B27/14 B
B23B27/20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501879
(86)(22)【出願日】2022-11-03
(85)【翻訳文提出日】2023-01-12
(86)【国際出願番号】 CN2022129506
(87)【国際公開番号】W WO2023240901
(87)【国際公開日】2023-12-21
(31)【優先権主張番号】202210682265.9
(32)【優先日】2022-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202221504761.7
(32)【優先日】2022-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517041545
【氏名又は名称】ペキン ワールディア ダイアモンド ツールズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ゾンチャオ
(72)【発明者】
【氏名】ハン シュオ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ジエングァン
(72)【発明者】
【氏名】ホァン ジンバオ
(72)【発明者】
【氏名】タン ホンイェン
(72)【発明者】
【氏名】ワン イェンイェン
【テーマコード(参考)】
3C046
【Fターム(参考)】
3C046CC01
3C046FF33
3C046FF35
3C046HH00
(57)【要約】
本
発明は、ワイパーインサート及びそれを有する工具を提供し、ワイパーインサートは、ワークを切削加工するための切削部を有する工具本体を含み、切削部は、複数のワイパーを含み、隣接するワイパー同士は、遷移面によって接続され、複数のワイパーの副切込み角は、異なるように設定される。本願の技術的構成によれば、従来技術における異なるアーバにワイパーインサートが取り付けられるときに仕上げ効果を失うという問題を効果的に解決することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを切削加工するための切削部(20)を有する工具本体(10)を含み、
前記切削部(20)は、複数のワイパー(21)を含み、隣接する前記ワイパー(21)同士は、遷移面によって接続され、
複数の前記ワイパー(21)の副切込み角は、異なるように設定される、
ことを特徴とするワイパーインサート。
【請求項2】
複数の前記ワイパー(21)は、予め設定の異なる切込み角を有する複数のアーバに一対一に対応して設けられ、それにより、前記工具本体(10)が複数の前記アーバのうちのいずれかの前記アーバに接続されるときには、いずれも前記アーバに対応する前記ワイパー(21)が存在し、前記ワークに対して仕上げ作業を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載のワイパーインサート。
【請求項3】
前記ワイパーインサートの中央部には、取り付け孔(40)が設けられ、
前記ワイパーインサートは、前記取り付け孔(40)の径方向に沿う断面が多角形であり、
前記切削部(20)は、前記多角形の少なくとも1つの頂角に設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載のワイパーインサート。
【請求項4】
前記切削部(20)は、2つであり、2つの前記切削部(20)は、前記取り付け孔(40)に沿った中心軸線に対して180°を成して対称的に設けられる、
ことを特徴とする請求項3に記載のワイパーインサート。
【請求項5】
隣接する前記ワイパー(21)同士は、遷移円弧面(31)又は遷移平面によって接続され、
隣接する前記ワイパー(21)同士が遷移円弧面(31)によって接続される場合、前記遷移円弧面(31)は、前記ワイパー(21)に接し、前記遷移円弧面(31)の第1円弧直径は、R1(0.1mm≦R1≦2mm)である、
ことを特徴とする請求項1に記載のワイパーインサート。
【請求項6】
前記ワイパー(21)の形状は、円弧又は直線であり、
前記ワイパー(21)の形状が円弧である場合、各前記ワイパー(21)の第2円弧直径が同一に設定され、各前記ワイパー(21)の幅が同一に設定され、前記第2円弧直径は、R2(0.4mm≦R2≦10mm)であり、前記幅は、L1(0.05mm≦L1≦1mm)である、
ことを特徴とする請求項1に記載のワイパーインサート。
【請求項7】
複数の前記ワイパー(21)は、前記切削部(20)の周方向に沿って等間隔に設けられる、
ことを特徴とする請求項3に記載のワイパーインサート。
【請求項8】
前記ワイパーインサートは、合金、セラミック、多結晶立方晶窒化ホウ素、多結晶ダイヤモンドのうちの1つで製造される、
ことを特徴とする請求項1に記載のワイパーインサート。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のワイパーインサートを含む、
ことを特徴とする工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
「関連出願の相互参照」
本願は、2022年6月16日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が202210682265.9であり、発明の名称が「ワイパーインサート及びそれを有する工具」である中国特許出願、及び2022年6月16日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が202221504761.7であり、発明の名称が「ワイパーインサート及びそれを有する工具」である中国特許出願の優先権を主張し、その内容の全てが参照によって本願に組み込まれる。
【0002】
本考案は、工具設計技術分野に関し、具体的には、ワイパーインサート及びそれを有する工具に関する。
【背景技術】
【0003】
ワイパーは、切削工具の構造である。構造上、ワイパーは、主に刃先の耐衝撃能力を増加させ、加工品の表面粗さを低減させる役割を果たす。
【0004】
ワイパー工具は、工具の切れ刃口と加工面との貼り合わせ角度(すなわち、副切込み角、通常0~3°)を低減させることにより、加工面に対して押圧や仕上げを行い、加工面の加工品質を向上させる。従来技術の工具において、1枚のワイパー工具が特定のアーバに取り付けられ且つ加工中は特定の傾斜角を形成するときにのみ機能するように、1つの刃先に1つ又は2つの対称的なワイパーのみが存在する。同一型番のインサートは、いくつかの切込み角のアーバ及び右勝手・左勝手のアーバに対応することができ、ワイパー工具は、他のアーバに交換されると、工具のワイパーが失効される。ワイパーインサートは、外円、端面又は倣い加工などの異なる部位を同時に加工するときにも失効が発生することができる。
【0005】
従来技術における異なるアーバにワイパーインサートが取り付けられるときに仕上げ効果を失うという問題について、現在効果的な解決手段は提出されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本考案は、従来技術における異なるアーバにワイパーインサートが取り付けられるときに仕上げ効果を失うという問題を解決するために、ワイパーインサート及びそれを有する工具を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本考案の一態様に係るワイパーインサートは、ワークを切削加工するための切削部を有する工具本体を含み、切削部は、複数のワイパーを含み、隣接するワイパー同士は、遷移面によって接続され、複数のワイパーの副切込み角は、異なるように設定される。
【0008】
また、複数のワイパーは、予め設定の異なる切込み角を有する複数のアーバと一対一に対応して設けられ、それにより、工具本体が複数のアーバのうちのいずれかのアーバに接続されるときには、いずれもアーバに対応するワイパーが存在し、ワークに対して仕上げ作業を行う。
【0009】
また、ワイパーインサートの中央部には、取り付け孔が設けられ、ワイパーインサートは、取り付け孔の径方向に沿う断面が多角形であり、切削部は、前記多角形の少なくとも1つの頂角に設けられる。
【0010】
また、切削部は、2つであり、2つの切削部は、取り付け孔に沿った中心軸線に対して180°を成して対称的に設けられる。
【0011】
さらに、隣接するワイパー同士は、遷移円弧面又は遷移平面によって接続され、隣接するワイパー同士が遷移円弧面によって接続される場合、遷移円弧面は、ワイパーに接し、遷移円弧面の第1円弧の直径は、R1(0.1mm≦R1≦2mm)である。
【0012】
また、ワイパーの形状は、円弧又は直線であり、ワイパーの形状が円弧である場合、各ワイパーの第2円弧の直径が同一に設定され、各ワイパーの幅が同一に設定され、第2円弧の直径は、R2(0.4mm≦R2≦10mm)であり、幅は、L1(0.05mm≦L1≦1mm)である。
【0013】
また、複数のワイパーは、切削部の周方向に沿って等間隔に設けられる。
【0014】
また、ワイパーインサートは、合金、セラミック、多結晶立方晶窒化ホウ素、多結晶ダイヤモンドのうちの1つで製造される。
【0015】
本考案の別の態様に係る工具は、上記のワイパーインサートを含む。
【発明の効果】
【0016】
本考案の技術的構成によれば、工具本体は、複数のワイパーを有する切削部を含み、複数のワイパーの副切込み角は、異なるように設定され、副切込み角の異なるワイパーを複数設けることにより、ワイパーインサートは、異なる複数のアーバに取り付けられるとき又は異なる形状のワークを加工するときに、いずれも適切なワイパーがあるので、加工された表面に対して仕上げを行い、加工後のワークの表面粗さを改善することができる。本願の技術的構成によれば、従来技術における異なるアーバにワイパーインサートが取り付けられるときの仕上げ効果を失うという問題を効果的に解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本願の一部としての図面は、本考案に対する更なる理解を提供するために用いられ、本考案の例示的な実施例及びその説明は、本考案を解釈するために用いられ、本考案を不当に限定するものではない。
【
図1】本考案に係るワイパーインサートの第1実施例の構造概略図を示す。
【
図2】
図1におけるA箇所の拡大構造概略図を示す。
【
図3】本考案に係るワイパーインサートの第2実施例の構造概略図を示す。
【
図4】
図3におけるB箇所の拡大構造概略図を示す。
【
図5】本考案に係るワイパーインサートの第3実施例の構造概略図を示す。
【
図6】
図5におけるC箇所の拡大構造概略図を示す。
【
図7】本考案に係るワイパーインサートの第5実施例の構造概略図を示す。
【
図8】本考案に係るワイパーインサートの第6実施例の構造概略図を示す。
【
図9】本考案に係るワイパーインサートの第7実施例の構造概略図を示す。
【
図10】従来のワイパーインサートの構造概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
なお、矛盾しない限り、本願における実施例及び実施例における特徴は互いに組み合わせることができる。以下、図面及び実施例を組み合わせて本考案を詳細に説明する。
【0019】
本明細書で使用される用語は、考案を実施する形態のみを説明するためのものであり、本願に係る例示的な実施形態を限定することを意図するものではない。本明細書で使用されるように、単数形は、文脈において別途明確に指示しない限り、複数形を含むことが意図され、さらに、本明細書で用語の「包含」及び/又は「含む」が使用される場合は、特徴、ステップ、操作、デバイス、モジュール及び/又はそれらの組み合わせが存在することを示す。
【0020】
なお、本願の明細書、特許請求の範囲及び上記図面における用語の「第1」、「第2」などは、類似の対象を区別するためのものであり、特定の順序や前後順序を説明するためのものではない。そのように使用される用語は、本明細書に記載の本願の実施形態が、例えば、本明細書に図示又は記載されるもの以外の順序で実施され得るように、適切に変更され得る。さらに、用語の「含む」及び「有する」並びにそれらの任意の変形は、排他的でない包含をカバーすることを意図し、例えば、一連のステップや要素を含むプロセス、方法、システム、製品又は装置は、明確に列挙されたステップや要素に必ずしも限定されず、明確に列挙されていないか又はそのようなプロセス、方法、製品又は装置に固有の他のステップ又は要素を含んでもよい。
【0021】
以下、図面を参照しながら本願に係る例示的な実施形態について詳細に説明する。しかしながら、これらの例示的な実施形態は、多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載の実施形態のみに限定されない。これらの実施形態は、本願の開示を徹底的且つ完全にし、これらの例示的な実施形態の概念を当業者に十分に伝えるために提供される。図面において、明確にするために、層とエリアの厚さを拡大し、且つ同じ符号を用いて同じデバイスを表す可能性があり、そのため、それらに対する説明は省略する。
【0022】
表面粗さの計算式によれば、送り量の減少、刃先半径の増大は、いずれも表面粗さ値を小さくすることができるが、前者は生産効率を低下させ、後者は切削力を増大させる。副切込み角の角度を小さくすることにより送り量を小さくせず表面粗さの値を小さくすることを実現することができる。ワイパーインサートの設計構想は、標準的なインサートに許容される最大刃先半径公差内で、楕円形状に近似するように刃先の幾何学的形状を調整することである。実際には、工具が一回転当たりの送り値Fで加工すると、刃先の形状により波紋のような加工面が形成される。ワイパー(ワイパーの円弧直径は刃先の円弧直径より大きい)を増設した後、依然として送りFで加工するが、円弧が大きくなるので、加工表面粗さが小さくなる。
【0023】
これを基に、従来のワイパーインサートは、主切れ刃の片側のみにアーバに対応する1つのワイパーが設けられ、異なる切込み角に対応する他のアーバにワイパーインサートが取り付けられる場合、ワイパーインサートは、ワークの加工済み面と接触することができず、仕上げ効果を実現することができない。
【0024】
図1から
図9に示すように、本願の具体的な実施例は、ワイパーインサートを提供する。
【0025】
ワイパーインサートは、切削部20を有する工具本体10を含む。切削部20は、ワークを切削加工するために用いられる。切削部20は、複数のワイパー21を含む。隣接するワイパー21同士は、遷移面30によって接続される。複数のワイパー21の副切込み角は、異なるように設定される。
【0026】
本実施例の技術的構成によれば、工具本体は、複数のワイパー21を有する切削部を含み、複数のワイパー21の副切込み角は、異なるように設定され、副切込み角の異なるワイパー21を複数設けることにより、ワイパーインサートは、異なる複数のアーバに取り付けられるとき又は異なる形状のワークを加工するときに、いずれも適切なワイパー21があるので、加工された表面に対して仕上げを行い、加工後のワークの表面粗さを改善することができる。本願の技術的構成によれば、従来技術における異なるアーバにワイパーインサートが取り付けられるときの仕上げ効果を失うという問題を効果的に解決することができる。本実施例の技術的構成によれば、異なる切込み角の切削加工に適用可能であり、ワイパー21付きインサートの使用範囲を拡大し、ワイパーインサートの使用コストを低減する、新たな多段仕上げ工具を提供することができる。
【0027】
なお、工具の切込み角は、基準面内における主切れ刃と送り方向との角であり、副切込み角は、基準面内における副切れ刃と送り方向の逆方向との角である。工具の切込み角と副切込み角とは、対応関係を有し、切込み角+副切込み角+刃先角=180°である。工具の切込み角は、主に工具型番、アーバ及び加工位置に関連する。アーバは、一般に、切込み角によって区別される。ここで、送り方向が変化すると、工具の実際の切込み角・副切込み角も変化し、例えば、切込み角が93°のアーバが左に送られる場合、実際の切込み角が93°であり、副切込み角が32°であり、このアーバが上に送られる場合、実際の切込み角が122°になり、副切込み角が3°になる。
【0028】
そのため、異なるアーバに工具が取り付けられるとき又は異なる形状のワークを加工するときに、ワイパーの失効現象が発生しやすく、製品の表面粗さに影響を与え、どのようにこのような現象の発生を回避して製品の加工精度を向上させるかは、業界において早急に解決しなければならない技術的難題となっている。本願の技術的構成によれば、工具は、多段仕上げを実現することができ、ワイパーの効果を保証するとともに工具を交換する必要がなく、加工コストを大幅に節約し、また加工品質を向上させることができる。
【0029】
選択的な一実施例では、切削部20は、切れ刃をさらに含み、複数のワイパー21は、いずれも切れ刃の同一側に位置する。加工時、切れ刃は、ワークに対して取り代を切削し、ワイパー21は、切削後の表面を修整して、ワークの表面粗さを改善させる。
【0030】
選択的な一実施例では、工具本体10は、取り付け孔の径方向に沿う断面が平行四辺形であり、平行四辺形の長い対角線に対応しかつ上面に位置する頂角に切削ユニットが対称的に設置され、各切削ユニットは、頂角の長辺に形成された主切れ刃と、頂角の短辺に形成された副切れ刃と、を含み、ワイパー21は、主切れ刃と副切れ刃との間に設けられ、ワイパー21の副切込み角は、複数の使用されるアーバの切込み角に対応して設けられる。旋削インサートのワイパー21は、インサートが加工平面に接触する刃口を指し、旋削インサートのワイパー21は、インサートが加工面の外周面又は内周面に接触する刃口を指す。ワイパー21の作用は、副刃と類似し、ワイパーの傾斜角は、一般に0°~3°であり、長さは、刃物の移動量の2倍程度である。ワイパー21は、加工表面の粗さを低減させ、加工品質を向上させる作用を有する。
【0031】
さらに、複数のワイパー21は、予め設定の異なる切込み角を有する複数のアーバに一対一に対応して設けられ、それにより、工具本体10が複数のアーバのうちのいずれかのアーバに接続されるときには、いずれもアーバに対応するワイパー21が存在し、ワークに対して仕上げ作業を行うことができる。例えば、D型工具(55°の角)に一般に使用されるアーバは、主に93°、107.5°及び62.5°の3種類がある。
図5及び
図6に示すものは、上記3種類の角度のいずれにも適応可能なワイパーインサートである。工具本体10に接続されたアーバに対応する切込み角が62.5°である場合、
図7に示すように、複数のワイパー21のうちの第1ワイパーが作業位置にある。工具本体10に接続されたアーバに対応する切込み角が93°である場合、
図8に示すように、複数のワイパー21のうちの第2ワイパーが作業位置にある。工具本体10に接続されたアーバに対応する切込み角が107.5°である場合、
図9に示すように、複数のワイパー21のうちの第3ワイパーが作業位置にある。
図10に示すものは、従来のワイパーインサートであり、当該ワイパーインサートは、62.5°の切込み角のアーバに対応するワイパーインサートであり、対応するアーバにしか適用できない。
図10に示すワイパーインサートは、アーバ(107.5°の切込み角のアーバ)を交換すると、ワーク表面と接触する切削位置は遷移円弧面31であり、ワイパー21は、仕上げ効果を果たすことができない。本実施例の技術的構成によれば、ワイパー21は、異なる切込み角に対応する複数のアーバに取り付けられるときにも、適切なワイパー21が存在するので、ワークの被加工面50に対して仕上げを行う役割を果たすことができ、ワイパーインサートの実用性を向上させることができる。
【0032】
具体的には、ワイパーインサートの中央部に取り付け孔40が設けられる。ワイパーインサートは、取り付け孔40の径方向に沿う断面が多角形であり、多角形の少なくとも1つの頂角に切削部20が設けられる。取り付け孔40は、ワイパーインサートをアーバに固定するために用いられる。多角形は、四角形、五角形などの構造を含むが、これらに限定されず、切削部20は、実際の要求によって設計されてもよい。
【0033】
好ましくは、切削部20は、2つである。2つの切削部20は、取り付け孔40に沿った中心軸線に対して180°を成して対称的に設置される。
【0034】
さらに、隣接するワイパー21同士は、遷移円弧面31又は遷移平面によって接続される。隣接するワイパー21同士が遷移円弧面31によって接続される場合、遷移円弧面31は、ワイパー21に接し、遷移円弧面31の第1円弧の直径は、R1であり、ここで、0.1mm≦R1≦2mmである。
【0035】
さらに、ワイパー21の形状は、円弧又は直線である。ワイパー21の形状が円弧である場合、各ワイパー21の第2円弧の直径が同一に設定され、各ワイパー21の幅が同一に設定され、第2円弧の直径はR2であり、幅はL1であり、ここで、0.4mm≦R2≦10mm、0.05mm≦L1≦1mmである。選択的に、円弧は、工具の切込み角又は被加工ワークの形状によって確定される。第1円弧の直径は、第2円弧の直径より小さく設定される。選択的な一実施例では、切削部20の刃口は、n個のワイパーで構成され、nは2以上の任意の整数であり、ワイパーインサートは、アーバに取り付けられ、インサートの切削部位とワークの被加工部位との角度は、0°~3°の範囲である。
【0036】
選択的な一実施例では、切削部20の刃口は、複数の円弧形ワイパー21で構成され、全てのワイパー21は、第2円弧直径及び幅が同一であり、且つ均一に分布される。第2円弧の直径は、いずれも0.4~10mmであり、ワイパーの幅は、0.05~1mmである。ワイパー21の円弧とワイパー21の円弧との間は、遷移円弧によって接続され且つ相接し、遷移円弧の直径r=0.02mmである。選択的に、ワイパー21の円弧とワイパー21の円弧との間は、予め設定の関数関係を満たす曲面によって接続される。
【0037】
選択的な一実施例では、切削部20の刃口は、複数の円弧形ワイパー21で構成され、異なるワイパー21の円弧は、第2円弧直径及び幅が異なる。ワイパー21の角度は、インサートに対応するアーバの切込み角と加工ワークの加工位置とに基づいて設計され、インサートは、任意の切込み角のアーバに適用されることができる。
【0038】
選択的な一実施例では、切削部20の刃口は、複数の円弧形ワイパー21で構成され、異なるワイパー21の円弧は、第2円弧直径及び幅が異なる。選択的に、異なるワイパー21は、第2円弧直径及び幅のうちの少なくとも1つが同一に設定され、一部のワイパーの角度は、インサートに対応するアーバの切込み角に基づいて設計され、ワイパーインサートは、任意の切込み角のアーバに適用されることができる。残りのワイパー21は、既に確定されたワイパー21の間に均一に分布される。
【0039】
具体的には、ワイパーインサートは、対向して設けられた頂面及び下位置決め面を含む。ワイパー21は、頂面から下位置決め面までの方向に沿う刃幅が漸減的に設定される。
【0040】
任意選択的に、複数のワイパー21は、切削部20の周方向に沿って等間隔に設けらされる。このように設けられると、ワイパーインサートの使用範囲をさらに広め、ワークに対する仕上げ効果を高めることができる。
【0041】
ワイパーインサートが良好な機械的強度を有することを保証するために、ワイパーインサートは、合金、セラミック、多結晶立方晶窒化ホウ素、多結晶ダイヤモンドのうちの1つで製造される。
【0042】
本願の別の態様は、ワイパーインサートを含む工具であり、このワイパーインサートが上記実施例におけるワイパーインサートである工具を提供する。工具は、アーバを含み、アーバにワイパーインサートを取り付けるための段差が設置され、当該段差にネジ孔が設けられ、ワイパーインサートが段差に取り付けられると、ネジ孔はインサートの取り付け孔と同軸となり、ボルトによってインサートがバイトに固着される。
【0043】
選択的な一実施例では、工具本体10の頂面にチップブレーカが設けられ、チップブレーカは、ワイパー21に近接して設けられ、チップブレーカは、円弧状溝である。
【0044】
説明の便宜上、本明細書では、図面に示されるような1つのデバイスや特徴と他のデバイスや特徴との空間的位置関係を説明するために、「…の上」、「…の上方」、「…の上面」、「上方の」などの空間的相対名詞を使用することができる。空間的相対名詞は、図面に記載されたデバイスの方位に加えて、使用中又は動作中の異なる方位を含むことを意図することができる。例えば、図面におけるデバイスが倒置された場合、「他のデバイス又は構造の上方にある」又は「他のデバイス又は構造の上にある」と記載されたデバイスは、「他のデバイス又は構造の下方にある」又は「他のデバイス又は構造の下にある」と位置決めされる。したがって、例示的な用語「…の上方」は、「…の上方」及び「…の下方」の2つの方向を含んでもよい。当該デバイスは、他の異なる形態で位置決めされ(90度回転し又は他の方位にある)、且つここで使用される空間的相対説明について対応して解釈してもよい。
【0045】
なお、上記以外、本明細書で言及された「一実施例」、「別の実施例」、「実施例」などは、当該実施例に合わせて説明された具体的な特徴、構造又は特性が本願の概括的に説明した少なくとも1つの実施例に含まれることを指す。明細書の複数の箇所に現れる同じ表現は、必ずしも同一の実施例を指すものではない。さらに、いずれかの実施例を参照して1つの具体的な特徴、構造又は特性を説明するとき、他の実施例を参照してこのような特徴、構造又は特性を実現することも本考案の範囲内に属する。
【0046】
上記実施例において、各実施例に対する説明は、それぞれ重点を有し、ある実施例において詳細に説明されない部分は、他の実施例の関連説明を参照することができる。
【0047】
以上に記載の内容は、本考案の好ましい実施例に過ぎず、本考案を限定するものではなく、当業者であれば、本考案に対して様々な変更及び変化を行うことが可能である。本考案の精神及び原則内で、行われたいかなる修正、均等置換、改善などは、いずれも本考案の保護範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0048】
10 工具本体
20 切削部
21 ワイパー
30 遷移面
31 遷移円弧面
40 取り付け孔
50 被加工面
【手続補正書】
【提出日】2023-01-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
「関連出願の相互参照」
本願は、2022年6月16日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が202210682265.9であり、発明の名称が「ワイパーインサート及びそれを有する工具」である中国特許出願、及び2022年6月16日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が202221504761.7であり、発明の名称が「ワイパーインサート及びそれを有する工具」である中国特許出願の優先権を主張し、その内容の全てが参照によって本願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、工具設計技術分野に関し、具体的には、ワイパーインサート及びそれを有する工具に関する。
【背景技術】
【0003】
ワイパーは、切削工具の構造である。構造上、ワイパーは、主に刃先の耐衝撃能力を増加させ、加工品の表面粗さを低減させる役割を果たす。
【0004】
ワイパー工具は、工具の切れ刃口と加工面との貼り合わせ角度(すなわち、副切込み角、通常0~3°)を低減させることにより、加工面に対して押圧や仕上げを行い、加工面の加工品質を向上させる。従来技術の工具において、1枚のワイパー工具が特定のアーバに取り付けられ且つ加工中は特定の傾斜角を形成するときにのみ機能するように、1つの刃先に1つ又は2つの対称的なワイパーのみが存在する。同一型番のインサートは、いくつかの切込み角のアーバ及び右勝手・左勝手のアーバに対応することができ、ワイパー工具は、他のアーバに交換されると、工具のワイパーが失効される。ワイパーインサートは、外円、端面又は倣い加工などの異なる部位を同時に加工するときにも失効が発生することができる。
【0005】
従来技術における異なるアーバにワイパーインサートが取り付けられるときに仕上げ効果を失うという問題について、現在効果的な解決手段は提出されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術における異なるアーバにワイパーインサートが取り付けられるときに仕上げ効果を失うという問題を解決するために、ワイパーインサート及びそれを有する工具を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るワイパーインサートは、ワークを切削加工するための切削部を有する工具本体を含み、切削部は、複数のワイパーを含み、隣接するワイパー同士は、遷移面によって接続され、複数のワイパーの副切込み角は、異なるように設定される。
【0008】
また、複数のワイパーは、予め設定の異なる切込み角を有する複数のアーバと一対一に対応して設けられ、それにより、工具本体が複数のアーバのうちのいずれかのアーバに接続されるときには、いずれもアーバに対応するワイパーが存在し、ワークに対して仕上げ作業を行う。
【0009】
また、ワイパーインサートの中央部には、取り付け孔が設けられ、ワイパーインサートは、取り付け孔の径方向に沿う断面が多角形であり、切削部は、前記多角形の少なくとも1つの頂角に設けられる。
【0010】
また、切削部は、2つであり、2つの切削部は、取り付け孔に沿った中心軸線に対して180°を成して対称的に設けられる。
【0011】
さらに、隣接するワイパー同士は、遷移円弧面又は遷移平面によって接続され、隣接するワイパー同士が遷移円弧面によって接続される場合、遷移円弧面は、ワイパーに接し、遷移円弧面の第1円弧の直径は、R1(0.1mm≦R1≦2mm)である。
【0012】
また、ワイパーの形状は、円弧又は直線であり、ワイパーの形状が円弧である場合、各ワイパーの第2円弧の直径が同一に設定され、各ワイパーの幅が同一に設定され、第2円弧の直径は、R2(0.4mm≦R2≦10mm)であり、幅は、L1(0.05mm≦L1≦1mm)である。
【0013】
また、複数のワイパーは、切削部の周方向に沿って等間隔に設けられる。
【0014】
また、ワイパーインサートは、合金、セラミック、多結晶立方晶窒化ホウ素、多結晶ダイヤモンドのうちの1つで製造される。
【0015】
本発明の別の態様に係る工具は、上記のワイパーインサートを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明の技術的構成によれば、工具本体は、複数のワイパーを有する切削部を含み、複数のワイパーの副切込み角は、異なるように設定され、副切込み角の異なるワイパーを複数設けることにより、ワイパーインサートは、異なる複数のアーバに取り付けられるとき又は異なる形状のワークを加工するときに、いずれも適切なワイパーがあるので、加工された表面に対して仕上げを行い、加工後のワークの表面粗さを改善することができる。本願の技術的構成によれば、従来技術における異なるアーバにワイパーインサートが取り付けられるときの仕上げ効果を失うという問題を効果的に解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本願の一部としての図面は、本
発明に対する更なる理解を提供するために用いられ、本
発明の例示的な実施例及びその説明は、本
発明を解釈するために用いられ、本
発明を不当に限定するものではない。
【
図1】本
発明に係るワイパーインサートの第1実施例の構造概略図を示す。
【
図2】
図1におけるA箇所の拡大構造概略図を示す。
【
図3】本
発明に係るワイパーインサートの第2実施例の構造概略図を示す。
【
図4】
図3におけるB箇所の拡大構造概略図を示す。
【
図5】本
発明に係るワイパーインサートの第3実施例の構造概略図を示す。
【
図6】
図5におけるC箇所の拡大構造概略図を示す。
【
図7】本
発明に係るワイパーインサートの第5実施例の構造概略図を示す。
【
図8】本
発明に係るワイパーインサートの第6実施例の構造概略図を示す。
【
図9】本
発明に係るワイパーインサートの第7実施例の構造概略図を示す。
【
図10】従来のワイパーインサートの構造概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
なお、矛盾しない限り、本願における実施例及び実施例における特徴は互いに組み合わせることができる。以下、図面及び実施例を組み合わせて本発明を詳細に説明する。
【0019】
本明細書で使用される用語は、発明を実施する形態のみを説明するためのものであり、本願に係る例示的な実施形態を限定することを意図するものではない。本明細書で使用されるように、単数形は、文脈において別途明確に指示しない限り、複数形を含むことが意図され、さらに、本明細書で用語の「包含」及び/又は「含む」が使用される場合は、特徴、ステップ、操作、デバイス、モジュール及び/又はそれらの組み合わせが存在することを示す。
【0020】
なお、本願の明細書、特許請求の範囲及び上記図面における用語の「第1」、「第2」などは、類似の対象を区別するためのものであり、特定の順序や前後順序を説明するためのものではない。そのように使用される用語は、本明細書に記載の本願の実施形態が、例えば、本明細書に図示又は記載されるもの以外の順序で実施され得るように、適切に変更され得る。さらに、用語の「含む」及び「有する」並びにそれらの任意の変形は、排他的でない包含をカバーすることを意図し、例えば、一連のステップや要素を含むプロセス、方法、システム、製品又は装置は、明確に列挙されたステップや要素に必ずしも限定されず、明確に列挙されていないか又はそのようなプロセス、方法、製品又は装置に固有の他のステップ又は要素を含んでもよい。
【0021】
以下、図面を参照しながら本願に係る例示的な実施形態について詳細に説明する。しかしながら、これらの例示的な実施形態は、多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載の実施形態のみに限定されない。これらの実施形態は、本願の開示を徹底的且つ完全にし、これらの例示的な実施形態の概念を当業者に十分に伝えるために提供される。図面において、明確にするために、層とエリアの厚さを拡大し、且つ同じ符号を用いて同じデバイスを表す可能性があり、そのため、それらに対する説明は省略する。
【0022】
表面粗さの計算式によれば、送り量の減少、刃先半径の増大は、いずれも表面粗さ値を小さくすることができるが、前者は生産効率を低下させ、後者は切削力を増大させる。副切込み角の角度を小さくすることにより送り量を小さくせず表面粗さの値を小さくすることを実現することができる。ワイパーインサートの設計構想は、標準的なインサートに許容される最大刃先半径公差内で、楕円形状に近似するように刃先の幾何学的形状を調整することである。実際には、工具が一回転当たりの送り値Fで加工すると、刃先の形状により波紋のような加工面が形成される。ワイパー(ワイパーの円弧直径は刃先の円弧直径より大きい)を増設した後、依然として送りFで加工するが、円弧が大きくなるので、加工表面粗さが小さくなる。
【0023】
これを基に、従来のワイパーインサートは、主切れ刃の片側のみにアーバに対応する1つのワイパーが設けられ、異なる切込み角に対応する他のアーバにワイパーインサートが取り付けられる場合、ワイパーインサートは、ワークの加工済み面と接触することができず、仕上げ効果を実現することができない。
【0024】
図1から
図9に示すように、本願の具体的な実施例は、ワイパーインサートを提供する。
【0025】
ワイパーインサートは、切削部20を有する工具本体10を含む。切削部20は、ワークを切削加工するために用いられる。切削部20は、複数のワイパー21を含む。隣接するワイパー21同士は、遷移面30によって接続される。複数のワイパー21の副切込み角は、異なるように設定される。
【0026】
本実施例の技術的構成によれば、工具本体は、複数のワイパー21を有する切削部を含み、複数のワイパー21の副切込み角は、異なるように設定され、副切込み角の異なるワイパー21を複数設けることにより、ワイパーインサートは、異なる複数のアーバに取り付けられるとき又は異なる形状のワークを加工するときに、いずれも適切なワイパー21があるので、加工された表面に対して仕上げを行い、加工後のワークの表面粗さを改善することができる。本願の技術的構成によれば、従来技術における異なるアーバにワイパーインサートが取り付けられるときの仕上げ効果を失うという問題を効果的に解決することができる。本実施例の技術的構成によれば、異なる切込み角の切削加工に適用可能であり、ワイパー21付きインサートの使用範囲を拡大し、ワイパーインサートの使用コストを低減する、新たな多段仕上げ工具を提供することができる。
【0027】
なお、工具の切込み角は、基準面内における主切れ刃と送り方向との角であり、副切込み角は、基準面内における副切れ刃と送り方向の逆方向との角である。工具の切込み角と副切込み角とは、対応関係を有し、切込み角+副切込み角+刃先角=180°である。工具の切込み角は、主に工具型番、アーバ及び加工位置に関連する。アーバは、一般に、切込み角によって区別される。ここで、送り方向が変化すると、工具の実際の切込み角・副切込み角も変化し、例えば、切込み角が93°のアーバが左に送られる場合、実際の切込み角が93°であり、副切込み角が32°であり、このアーバが上に送られる場合、実際の切込み角が122°になり、副切込み角が3°になる。
【0028】
そのため、異なるアーバに工具が取り付けられるとき又は異なる形状のワークを加工するときに、ワイパーの失効現象が発生しやすく、製品の表面粗さに影響を与え、どのようにこのような現象の発生を回避して製品の加工精度を向上させるかは、業界において早急に解決しなければならない技術的難題となっている。本願の技術的構成によれば、工具は、多段仕上げを実現することができ、ワイパーの効果を保証するとともに工具を交換する必要がなく、加工コストを大幅に節約し、また加工品質を向上させることができる。
【0029】
選択的な一実施例では、切削部20は、切れ刃をさらに含み、複数のワイパー21は、いずれも切れ刃の同一側に位置する。加工時、切れ刃は、ワークに対して取り代を切削し、ワイパー21は、切削後の表面を修整して、ワークの表面粗さを改善させる。
【0030】
選択的な一実施例では、工具本体10は、取り付け孔の径方向に沿う断面が平行四辺形であり、平行四辺形の長い対角線に対応しかつ上面に位置する頂角に切削ユニットが対称的に設置され、各切削ユニットは、頂角の長辺に形成された主切れ刃と、頂角の短辺に形成された副切れ刃と、を含み、ワイパー21は、主切れ刃と副切れ刃との間に設けられ、ワイパー21の副切込み角は、複数の使用されるアーバの切込み角に対応して設けられる。旋削インサートのワイパー21は、インサートが加工平面に接触する刃口を指し、旋削インサートのワイパー21は、インサートが加工面の外周面又は内周面に接触する刃口を指す。ワイパー21の作用は、副刃と類似し、ワイパーの傾斜角は、一般に0°~3°であり、長さは、刃物の移動量の2倍程度である。ワイパー21は、加工表面の粗さを低減させ、加工品質を向上させる作用を有する。
【0031】
さらに、複数のワイパー21は、予め設定の異なる切込み角を有する複数のアーバに一対一に対応して設けられ、それにより、工具本体10が複数のアーバのうちのいずれかのアーバに接続されるときには、いずれもアーバに対応するワイパー21が存在し、ワークに対して仕上げ作業を行うことができる。例えば、D型工具(55°の角)に一般に使用されるアーバは、主に93°、107.5°及び62.5°の3種類がある。
図5及び
図6に示すものは、上記3種類の角度のいずれにも適応可能なワイパーインサートである。工具本体10に接続されたアーバに対応する切込み角が62.5°である場合、
図7に示すように、複数のワイパー21のうちの第1ワイパーが作業位置にある。工具本体10に接続されたアーバに対応する切込み角が93°である場合、
図8に示すように、複数のワイパー21のうちの第2ワイパーが作業位置にある。工具本体10に接続されたアーバに対応する切込み角が107.5°である場合、
図9に示すように、複数のワイパー21のうちの第3ワイパーが作業位置にある。
図10に示すものは、従来のワイパーインサートであり、当該ワイパーインサートは、62.5°の切込み角のアーバに対応するワイパーインサートであり、対応するアーバにしか適用できない。
図10に示すワイパーインサートは、アーバ(107.5°の切込み角のアーバ)を交換すると、ワーク表面と接触する切削位置は遷移円弧面31であり、ワイパー21は、仕上げ効果を果たすことができない。本実施例の技術的構成によれば、ワイパー21は、異なる切込み角に対応する複数のアーバに取り付けられるときにも、適切なワイパー21が存在するので、ワークの被加工面50に対して仕上げを行う役割を果たすことができ、ワイパーインサートの実用性を向上させることができる。
【0032】
具体的には、ワイパーインサートの中央部に取り付け孔40が設けられる。ワイパーインサートは、取り付け孔40の径方向に沿う断面が多角形であり、多角形の少なくとも1つの頂角に切削部20が設けられる。取り付け孔40は、ワイパーインサートをアーバに固定するために用いられる。多角形は、四角形、五角形などの構造を含むが、これらに限定されず、切削部20は、実際の要求によって設計されてもよい。
【0033】
好ましくは、切削部20は、2つである。2つの切削部20は、取り付け孔40に沿った中心軸線に対して180°を成して対称的に設置される。
【0034】
さらに、隣接するワイパー21同士は、遷移円弧面31又は遷移平面によって接続される。隣接するワイパー21同士が遷移円弧面31によって接続される場合、遷移円弧面31は、ワイパー21に接し、遷移円弧面31の第1円弧の直径は、R1であり、ここで、0.1mm≦R1≦2mmである。
【0035】
さらに、ワイパー21の形状は、円弧又は直線である。ワイパー21の形状が円弧である場合、各ワイパー21の第2円弧の直径が同一に設定され、各ワイパー21の幅が同一に設定され、第2円弧の直径はR2であり、幅はL1であり、ここで、0.4mm≦R2≦10mm、0.05mm≦L1≦1mmである。選択的に、円弧は、工具の切込み角又は被加工ワークの形状によって確定される。第1円弧の直径は、第2円弧の直径より小さく設定される。選択的な一実施例では、切削部20の刃口は、n個のワイパーで構成され、nは2以上の任意の整数であり、ワイパーインサートは、アーバに取り付けられ、インサートの切削部位とワークの被加工部位との角度は、0°~3°の範囲である。
【0036】
選択的な一実施例では、切削部20の刃口は、複数の円弧形ワイパー21で構成され、全てのワイパー21は、第2円弧直径及び幅が同一であり、且つ均一に分布される。第2円弧の直径は、いずれも0.4~10mmであり、ワイパーの幅は、0.05~1mmである。ワイパー21の円弧とワイパー21の円弧との間は、遷移円弧によって接続され且つ相接し、遷移円弧の直径r=0.02mmである。選択的に、ワイパー21の円弧とワイパー21の円弧との間は、予め設定の関数関係を満たす曲面によって接続される。
【0037】
選択的な一実施例では、切削部20の刃口は、複数の円弧形ワイパー21で構成され、異なるワイパー21の円弧は、第2円弧直径及び幅が異なる。ワイパー21の角度は、インサートに対応するアーバの切込み角と加工ワークの加工位置とに基づいて設計され、インサートは、任意の切込み角のアーバに適用されることができる。
【0038】
選択的な一実施例では、切削部20の刃口は、複数の円弧形ワイパー21で構成され、異なるワイパー21の円弧は、第2円弧直径及び幅が異なる。選択的に、異なるワイパー21は、第2円弧直径及び幅のうちの少なくとも1つが同一に設定され、一部のワイパーの角度は、インサートに対応するアーバの切込み角に基づいて設計され、ワイパーインサートは、任意の切込み角のアーバに適用されることができる。残りのワイパー21は、既に確定されたワイパー21の間に均一に分布される。
【0039】
具体的には、ワイパーインサートは、対向して設けられた頂面及び下位置決め面を含む。ワイパー21は、頂面から下位置決め面までの方向に沿う刃幅が漸減的に設定される。
【0040】
任意選択的に、複数のワイパー21は、切削部20の周方向に沿って等間隔に設けらされる。このように設けられると、ワイパーインサートの使用範囲をさらに広め、ワークに対する仕上げ効果を高めることができる。
【0041】
ワイパーインサートが良好な機械的強度を有することを保証するために、ワイパーインサートは、合金、セラミック、多結晶立方晶窒化ホウ素、多結晶ダイヤモンドのうちの1つで製造される。
【0042】
本願の別の態様は、ワイパーインサートを含む工具であり、このワイパーインサートが上記実施例におけるワイパーインサートである工具を提供する。工具は、アーバを含み、アーバにワイパーインサートを取り付けるための段差が設置され、当該段差にネジ孔が設けられ、ワイパーインサートが段差に取り付けられると、ネジ孔はインサートの取り付け孔と同軸となり、ボルトによってインサートがバイトに固着される。
【0043】
選択的な一実施例では、工具本体10の頂面にチップブレーカが設けられ、チップブレーカは、ワイパー21に近接して設けられ、チップブレーカは、円弧状溝である。
【0044】
説明の便宜上、本明細書では、図面に示されるような1つのデバイスや特徴と他のデバイスや特徴との空間的位置関係を説明するために、「…の上」、「…の上方」、「…の上面」、「上方の」などの空間的相対名詞を使用することができる。空間的相対名詞は、図面に記載されたデバイスの方位に加えて、使用中又は動作中の異なる方位を含むことを意図することができる。例えば、図面におけるデバイスが倒置された場合、「他のデバイス又は構造の上方にある」又は「他のデバイス又は構造の上にある」と記載されたデバイスは、「他のデバイス又は構造の下方にある」又は「他のデバイス又は構造の下にある」と位置決めされる。したがって、例示的な用語「…の上方」は、「…の上方」及び「…の下方」の2つの方向を含んでもよい。当該デバイスは、他の異なる形態で位置決めされ(90度回転し又は他の方位にある)、且つここで使用される空間的相対説明について対応して解釈してもよい。
【0045】
なお、上記以外、本明細書で言及された「一実施例」、「別の実施例」、「実施例」などは、当該実施例に合わせて説明された具体的な特徴、構造又は特性が本願の概括的に説明した少なくとも1つの実施例に含まれることを指す。明細書の複数の箇所に現れる同じ表現は、必ずしも同一の実施例を指すものではない。さらに、いずれかの実施例を参照して1つの具体的な特徴、構造又は特性を説明するとき、他の実施例を参照してこのような特徴、構造又は特性を実現することも本発明の範囲内に属する。
【0046】
上記実施例において、各実施例に対する説明は、それぞれ重点を有し、ある実施例において詳細に説明されない部分は、他の実施例の関連説明を参照することができる。
【0047】
以上に記載の内容は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、当業者であれば、本発明に対して様々な変更及び変化を行うことが可能である。本発明の精神及び原則内で、行われたいかなる修正、均等置換、改善などは、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0048】
10 工具本体
20 切削部
21 ワイパー
30 遷移面
31 遷移円弧面
40 取り付け孔
50 被加工面
【国際調査報告】