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特表2024-526481高価値低炭素化学生成物の合成プロセス
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  • 特表-高価値低炭素化学生成物の合成プロセス 図1
  • 特表-高価値低炭素化学生成物の合成プロセス 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】高価値低炭素化学生成物の合成プロセス
(51)【国際特許分類】
   C10G 2/00 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
C10G2/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528377
(86)(22)【出願日】2023-02-06
(85)【翻訳文提出日】2023-08-25
(86)【国際出願番号】 US2023000004
(87)【国際公開番号】W WO2023204876
(87)【国際公開日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】17/803,277
(32)【優先日】2022-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523171032
【氏名又は名称】グレイロック テクノロジー,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】GREYROCK TECHNOLOGY,LLC
【住所又は居所原語表記】2020 L Street,Suite 120,Sacramento,CA 95811-4260(US)
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】シューツル,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】シューツル,デニス
(72)【発明者】
【氏名】ハンベリー,オライオン
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA01
4H129BA12
4H129BB07
4H129BC37
4H129BC45
4H129NA24
4H129NA26
(57)【要約】
【要約】
本発明は、低炭素合成ガスから高価値化学物質生成物を合成するための改善された方法について説明する。一態様では、化学物質を生成するための方法を提供する。このプロセスは以下を含む:水素及び一酸化炭素を含む供給原料を、液体燃料生成反応器へと供給し、前記液体燃料生成反応器が触媒を含み、それによって生成物を生成するステップであって、該生成物が液相と固相とを含み、前記液相がC-C23炭化水素と、酸素化炭化水素とを含み、前記固相がC24-C45脂肪族炭化水素を含み、前記液相が該生成物の51~99体積%である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学物質を生成するための方法であって、該方法が、
水素及び一酸化炭素を含む供給原料を、液体燃料生成反応器へと供給し、前記液体燃料生成反応器が触媒を含み、それによって生成物を生成するステップであって、該生成物が液相と固相とを含み、前記液相がC-C23炭化水素と、酸素化炭化水素とを含み、前記固相がC24-C45脂肪族炭化水素を含み、前記液相が該生成物の51~99体積%である、ステップを含む、方法。
【請求項2】
前記液体燃料生成反応器が、375~450°F、150~450psi及び空間速度750~10,000にて運転される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液体燃料生成反応器へと供給される一酸化炭素に対する水素の体積/体積比率が、0.5~2.5の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記液相が前記生成物の95~99体積%を含み、前記固相が前記生成物の5~1%を含み、前記液体燃料生成反応器が400~420°F、300~350psi及び空間速度1,500~3,000にて運転される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記液相が、45~85体積%のC-C23脂肪族炭化水素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記液相が、2~40体積%のC-C16ノルマル1-アルケンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記液相が、1~8体積%のC-C16ノルマル1-ヒドロキシアルカンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記固相が、95~99体積%のノルマルアルカンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記液相中のC-C16ノルマル1-アルケンの濃度が、液体燃料生成反応器へと供給される一酸化炭素に対する水素の比率に依存し、該比率が減少すると、C-C16ノルマル1-アルケンの量が増加する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記固相中のC24-C45ノルマル脂肪族炭化水素の濃度が、前記液体燃料生成反応器へと供給される一酸化炭素に対する水素の比率に依存し、該比率が減少すると、C24-C45ノルマル脂肪族炭化水素の量が増加する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記液体生成物が3つの画分へと蒸留され、該3つの画分が、C-C炭化水素及び酸素化炭化水素を含むナフサ画分と、C-C23炭化水素及び酸素化炭化水素を含むディーゼル燃料画分と、C24-C45炭化水素を含む固相画分とである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記C-C23脂肪族炭化水素が、蒸留又は吸着剤のいずれかを使用して複数の画分へと分離される、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記C-C16ノルマル1-アルケンが、蒸留又は吸着剤のいずれかを使用して複数の画分へと分離される、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記C-C16ノルマル1-ヒドロキシアルカンが、蒸留又は吸着剤のいずれかを使用して複数の画分へと分離される、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
前記ナフサ画分、前記ディーゼル燃料画分及び前記固相画分のそれぞれが、95~99%の純度を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記画分のそれぞれが、95%~99%の純度を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記画分のそれぞれが、95%~99%の純度を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記画分のそれぞれが、95%~99%の純度を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記液相中のC-C16ノルマルアルケンが、触媒的水和によってノルマル1-ヒドロキシアルカンへと変換される、請求項5に記載の方法。
【請求項20】
前記液相中のノルマル1-ヒドロキシアルカンが、触媒的脱水によってノルマル1-アルケンへと変換される、請求項6に記載の方法。
【請求項21】
前記液相中のC-C16ノルマル1-アルケンが、触媒的オリゴマー化によって合成潤滑剤へと変換される、請求項5に記載の方法。
【請求項22】
前記合成潤滑剤の粘度が、前記触媒的オリゴマー化の運転条件に依存する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記1-ヒドロキシアルカンが、未変換の液相から分離される、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記ノルマル1-アルケンが、未変換の液相から分離される、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記液体燃料生成反応器へと供給される前記水素が、再生可能電力を使用して水を電気分解することによって生成される、請求項3に記載の方法。
【請求項26】
前記液体燃料生成反応器へと供給される前記水素及び前記一酸化炭素が、水素及び二酸化炭素の触媒変換から生成され、前記水素が、再生可能電力を使用して水を電気分解することによって生成される、請求項3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低炭素合成ガスから高価値化学物質生成物を合成するための改善された方法について説明する。該方法の最初のステップは、先進的触媒を用いた液体燃料生成(LFP)触媒的反応器内での合成ガスの触媒的反応を含み、この反応では、最少濃度のワックス(C24+炭化水素)と、最大濃度のノルマル1-アルケンにより、主としてC-C23液体生成物を生成する。このLFP C-C23液体生成物(「液体生成物」)と、LFP C24+固体生成物は、高価値の化学生成物を生成するよう、さらに処理される。再生可能原料又は低炭素原料が使用される場合、これらの化学生成物は、高価値かつ環境に優しい(green)合成化学物質であるという追加の利点を有する。追加の処理としては、以下を含む多くの処理ステップのうちの少なくとも1つが含まれる:1)蒸留及び/又は固体吸着剤を用いて、C-C23液体生成物から特定の高価値ノルマルパラフィン、ノルマル1-オレフィン及びノルマル1-ヒドロキシアルカンを分離するステップ;2)C-C23液体生成物を触媒的オリゴマー化反応器内で処理してノルマル1-オレフィンを潤滑剤へと変換すると共に、この潤滑剤を変換されていないC-C23液体生成物から分離するステップ;3)ノルマル1-オレフィンをノルマル1-ヒドロキシアルカンへと変換するステップ;4)触媒的水素化処理を用いて、C-C23液体生成物をジェット燃料へと変換した後、この水素化処理された生成物を蒸留してジェット燃料、ディーゼル燃料及びナフサを得るステップ。加えて、液体生成物及び固体生成物の両方を後処理することによって、溶剤、n-パラフィン、α-オレフィン、潤滑剤、エチレン及びプロピレン、ポリエチレン及びポリプロピレン、高性能ワックス(例えば、スキーワックス)、包装、塗料、コーティング、化粧品、フレーバー及びフレグランス、染料、プラスチック樹脂生成物、消費者向け生成物、並びに、他の高価値化学物質を含む、様々な高価値生成物が提供され得る。
【背景技術】
【0002】
とCOとの混合物は、合成ガス(synthesis gas)又は合成ガス(シンガス、syngas)と称される。合成ガスは、様々な供給源から作製され得る。石炭は、ガス化によって合成ガスを生成し得、天然ガスは、自己熱改質システム又は部分酸化システムにおける水蒸気又は酸素による改質によって合成ガスを生成し得、木質バイオマス、農業残渣又は他の有機物等のバイオマスや、都市廃棄物は、ガス化によって合成ガスを生成し得る。熱分解システムは、バイオマスから合成ガスと熱分解油等の他の生成物とを生成するために使用され得る。水素は、水の電気分解から生成され得、一酸化炭素は、二酸化炭素及び水素から逆水性ガスシフト(RWGS)反応によって生成され得る。RWGS反応は、CO水素化とも称される。
【0003】
合成ガスは、幅広い化学生成物を生成するための原料として使用され得る。そのような化学生成物には、液体燃料、ヒドロキシアルカン(アルコール)、酢酸、ジメチルエーテル、オレフィン、及び、他の多くの化学生成物が含まれる。合成ガスを遠方の製油所や化学処理工場へと輸送することは現実的ではないため、合成ガスは、生成現場にて直接生成されて燃料及び/又は化学薬品へと変換される必要がある。
【0004】
一酸化炭素の触媒的水素化は、軽質ガス、液体及びワックスを生成し、それらはメタンから重質炭化水素(C100以上)にまで、加えて酸素化炭化水素にまで及ぶが、この触媒的水素化は、典型的には、フィッシャー反応器原料(又はF-T)合成と呼ばれる。従来の低温(<250℃)F-Tプロセスは、触媒変換プロセスから、主として高分子量F-Tワックス(C24-C100)を生成する。これらのF-Tワックスは、典型的には、炭素含有生成物全体の約65体積%を占める。残りの35体積%は、C-C23液体炭化水素により構成されている。これらのF-T液体炭化水素には、ノルマルアルカンと、少量のノルマルアルケン、ノルマルヒドロキシアルカン(アルコール)及び分枝アルカンとが含まれる。C-C12の範囲の炭化水素は、典型的にはナフサと称される。
【0005】
F-Tワックスは、水素化分解され、かつ/又は、さらに処理されて、ディーゼル、ナフサ及び他の生成物が生成される。この水素化分解処理中には軽質炭化水素もまた生成されるため、実用可能な生成物を生成するには、さらなる改良が必要になることがある(Ail et al, 2016)。
【0006】
F-T液体画分の価値を、より高価値の生成物へと改良する試みが行われてきている。例えば、UOPのCat Polyプロセスは、南アフリカにおけるサソール社のF-T工場にて、軽質オレフィン(アルケン)をオリゴマー化してディーゼルにするために使用されている。Cat Polyプロセスでは、固体リン酸(SPA)触媒を使用して、軽質オレフィンをディーゼル燃料へと変換する。しかしながら、このオリゴマー生成物は高度に分岐しているためセタン指数が低く、全体的なディーゼル燃料仕様を満たすには、よりセタン指数の高いディーゼルとブレンドする必要がある(de Klerk, 2008)。加えて、F-T液体画分中のオレフィン濃度が低いため、このアプローチを採用することに経済的な意味はない。
【0007】
Greyrockは、触媒の運転条件に応じて、約95体積%のC-C23液体炭化水素と最大5体積%のC24-C45炭化水素(ワックス)とにより構成される炭化水素生成物を主として生成する、革新的な触媒を開発した(Schuetzle et al;米国特許2013,2015,2017,2018,2019、カナダ国特許2017,2018)。この液体炭化水素画分は、主としてノルマル脂肪族炭化水素、ノルマル1-アルケン及びノルマル1-ヒドロキシアルカンにより構成されている。
【0008】
表1は、H/CO合成ガス比率と、ナフサ、ディーゼル及びワックス画分の濃度との関係をまとめたものである。ナフサ画分は、C-C炭化水素と、C炭化水素の50%との合計(体積%)として定義される。ディーゼル画分は、C炭化水素の50%と、C10-C23炭化水素の合計(体積%)として定義される。LFP固体生成物は、C24-C45の範囲のノルマル脂肪族炭化水素(アルカン)により構成されている。表1に示すように、合成ガスH/CO比率が2.00/1.00から0.55/1.00にまで減少しても、ナフサ画分の量は変化していない。しかしながら、H/CO比率が低下すると、ディーゼル画分がわずかに減少すると共にワックス画分が増加している。
【0009】
【表1】
【0010】
表2は、H/CO比率と、直接生成されたLFP液体生成物におけるノルマルアルカン、分岐アルカン(イソアルカン)、ノルマル1-アルケン及びノルマル1-ヒドロキシアルカンの分布との関係をまとめたものである(触媒運転条件:T:415°F,P:315psi,SV:1,750)。0.55といった低いH/CO比率では、C-C16ノルマル1-アルケンは、4.5体積%から34.8体積%へと増加する。しかしながら、C-C12ノルマルヒドロキシアルカン(2.8~4.3体積%)、又は、イソアルカン(5.8~8.2体積%)の量には、さほど大きな変化はない。
【0011】
【表2】
【0012】
典型的なF-Tプロセスでは、主としてC+生成物全体の約65体積%及び約35体積%を構成する固体画分(C24-C100)及び液体画分(C-C23)が生成されるため(Gruber et al, 2019、Fedou et al, 2020))、この少量の液体画分をより価値の高い生成物へと変換する経済的インセンティブはなかった。結果として、これらの液体をより高価値の生成物へと変換することに関連する先行技術は、ほとんど存在していない。
【0013】
表3は、この改善されたLFPプロセスによって触媒変換合成ガスから生成される化学成分の量を、一般的なF-Tプロセスと比較したものである。F-Tプロセスでは、ノルマル1-アルケン及びノルマル1-ヒドロキシ-アルカンが、それぞれ平均約3.0体積%及び約1.0体積%の低濃度で生成される。したがって、液体画分から、特定のノルマル1-アルケン及びノルマル1-ヒドロキシアルカンを分離することは、経済的ではない。
【0014】
表3は、この改善されたLFPプロセスを使用した合成ガスの変換より生成された化学成分を比較したものである。このプロセスは、約0.55といった低い合成ガスH/CO比率を使用して運転されており、これによって、ノルマル1-アルケンの生成が、液体画分及び固体画分の合計の約35体積%にまで大幅に増加した。この改善されたLFPプロセスでの固体画分は、約8.0体積%のノルマルアルカン(ワックス)しか生成していないが、このワックスは、典型的なF-Tワックスよりも経済的価値が高くなる。
【0015】
F-Tプロセスはノルマルアルカンを約30体積%で生成するため、この少量画分をより高価値の生成物へと改良するプロセスの開発に関する技術は、ほとんど又は全く報告されていない。代わりに、液体と固体とを組み合わせた生成物を改良する、いくつかのプロセスが説明されている。
【0016】
Farshid et al (2009)は、合成ガスのF-T触媒変換により得られた生成物を、凝縮(液体)画分及び重質(固体)画分へと分離した。彼らは、複数の触媒床を用いて固体画分を水素化分解処理し、それによって炭素鎖の長さを短縮した。その後、この水素化分解で得られた生成物を、液体画分と組み合わせた。この組み合わせられた画分を、従来の石油精製プロセスを用いて処理し、それによって燃料及び中間画分を生成した。
【0017】
Tanaka et al (2015)は、組み合わせられた液体画分及び固体画分を蒸留して、中間留分及びワックス画分を得たことを説明している。その後、中間留分を蒸留して、第2中間留分及び軽質留分画分を得た。F-T中間留分に含まれているノルマル1-アルケン及びノルマル1-ヒドロキシアルカンは低濃度であるため(表3)、彼らはノルマルアルカンからこれらの種を分離する試みを行わなかった。
【0018】
対照的に、この改善されたLFPプロセスでは、主として(F-Tプロセスの約35体積%と比較して)高い割合(90体積%より多い)の液体炭化水素が生成されるため、重質画分(ワックスなど)の処理は必要ない。加えて、この改善されたLFPプロセスの運転条件は、(F-Tプロセスの約3体積%と比較して)多量(約32体積%以上)のノルマル1-アルケンを生成するように容易に調整され得る(表3)。
【0019】
【表3】
【発明の概要】
【0020】
本発明は、新規な触媒を用いて、触媒的液体燃料生成(LFP)反応器内において合成ガスを液体燃料に直接変換する方法であって、該触媒が、H/CO:2.1、温度:415°F、圧力:315psi、及び、時間当たりの空間速度:1,750の条件下にて運転される際に、75体積%以上、80体積%以上、90体積%、より好ましくは95%以上のC-C23炭化水素と、25体積%以下、20体積%以下、10体積%以下、より好ましくは5体積%以下の、C24より重質である僅かな割合の炭化水素とを含む混合物を、主として生成する方法に関する。
【0021】
このLFP生成物は、ディーゼル燃料及びナフサよりもはるかに高い経済価値を有する化学生成物を生成するために処理される。この処理には、以下を含む多くの追加ステップのうちの少なくとも1つが含まれる:1)蒸留によって、LFP生成物から特定のノルマルパラフィン(又はn-アルカン)を分離するステップ;2)蒸留によって、LFP生成物から特定のノルマル1-アルケン(又は1-アルケン)を分離するステップ;3)蒸留によって、LFP生成物からノルマル1-ヒドロキシアルカンを分離するステップ;4)LFP生成物中のオレフィンをノルマルヒドロキシアルカンへと触媒的水和するステップ;(5)LFP生成物中のオレフィンを潤滑剤へと触媒的オリゴマー化するステップ。本発明のいくつかの実施形態は、これら5つの処理ステップの組み合わせを含む。このLFP生成物を単純に蒸留すると、LFPナフサ生成物及びLFPディーゼル生成物を得ることができる。
【0022】
表4は、LFPナフサ及びLFPディーゼルの商業的価値を、本文書中に説明されるように生成され得る、いくつかの特定の化学薬品生成物と比較してまとめたものである。これらの商業的価値は変更される可能性があり、RIN、LCFS又はその他の環境クレジット候補を含む低炭素クレジットのような規制上のインセンティブは含まれない。
【0023】
LFPナフサ及びLFPディーゼルは、West Texas Intermediate(WTI)原油価格に示されるように、原油と同様の商品価値を有している。表4はまた、本文書中に説明されるようにLFP生成物から生成され得る、他の可能な生成物の商品価値についても示している。表4の第2列は、WTI原油の価値に対する様々な生成物の価格の比率を示している。ここから理解されるように、この表中に列挙された他の全生成物の現在の商業価値は、LFP生成物、LFPナフサ及びLFPディーゼルの最大約280倍である。
【0024】
【表4】
【0025】
ノルマルパラフィンの分離の実施形態では、未分画のLFP生成物は、C-C23n-パラフィンの混合物を含む(表1)。n-パラフィンは、工業用溶媒としての経済的価値を有する。例えば、n-ヘプタンは、ヘキサン、ベンゼン又はトルエンよりも環境的に安全な溶媒である。LFP反応器は、LFPナフサ中の1-アルケン及びアルコールを減らし、n-パラフィンの生成を増加させるように運転されてもよい。このことは、表2に示すように、LFP反応器中の一酸化炭素に対する水素を増加させることによって行われ得る。ヘキサンの沸点が65℃である一方で、ヘプタンの沸点は98℃であるため、このLFP生成物は、沸点の差を使用して様々なn-パラフィンを分離する単一の蒸留塔又は一連の蒸留塔内でさらに処理され得る。他の成分の沸点もまた、ヘプタンとは異なる。ヘプタンの沸点は94℃であり、オクタンの沸点は126℃である。このようにして、LFP液体生成物から、工業グレードのn-ヘプタンを生成物として生成することができる。n-ヘプタンの純度は、少なくとも95体積%となり、より好ましくは98体積%を超え、さらにより好ましくは99体積%より優れる。全てのn-パラフィン生成物の卸売価格は、未分画のLFP液体生成物を超えていることに注目されたい。
【0026】
ノルマル1-アルケンの分離の実施形態では、表2にまとめられているように、LPF液体生成物は、1-アルケンの混合物により構成される。LFP反応器は、n-パラフィンを減らし、1-アルケンの生成を約34体積%以上にまで増加させるように運転されてもよい。このことは、LFP反応器合成ガス原料中の一酸化炭素に対する水素の比率を減少させることによって行われ得るが、温度、圧力、及び、流量/ガスの時間空間速度によっても影響を受け得る。
【0027】
ノルマル1-ヒドロキシアルカンの分離の実施形態では、LPF液体生成物は、C-C16ノルマル1-ヒドロキシアルカンの混合物により構成される。合成ガスのH/CO比率を減少させると、その濃度は2.8体積%から4.3体積%へと増加するが、その量は依然としてかなり低い(表2)。しかしながら、表3に示すように、ノルマル1-ヒドロキシアルカンの商業的価値は、非常に魅力的である。
【0028】
いくつかのノルマル1-ヒドロキシアルカンは、典型的にはノルマル1-アルケンよりも高い商業的価値を有しているため、ノルマル1-アルケンは、触媒的水和によってノルマル1-ヒドロキシアルカンへと変換され得る。この変換のための触媒として、ゼオライト基材に含浸されたモリブデン及びタングステンのヘテロポリ酸が使用される。この反応は、約300psi及び約550°Fにて、高い選択性をもって進行する。
【0029】
別の実施形態では、ノルマル1-アルケンは、合成潤滑油へと変換される。このことは、未分画のLFP生成物に含まれるノルマル1-アルケンを、触媒的オリゴマー化を用いて、様々な種類の合成潤滑油へと変換することにより実行される。オリゴマー化プロセスの運転条件を変更することにより、様々な粘度の潤滑油が生成される。潤滑油は、蒸留によって未変換燃料から容易に分離される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、LFP処理ワックスのノルマル炭化水素分布を示す。
図2図2は、LFP液体生成物中のノルマルアルカン(パラフィン)、ノルマル1-アルケン及びノルマル1-ヒドロキシアルカンの分布を示す。パラフィンは3つのグループの中で最も長い系統であり、ノルマル1-アルケンは中間の長さの系統であり、1-ヒドロキシアルカンは最も短い系統である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、新規な触媒を用いて、触媒的液体燃料生成(LFP)反応器内において合成ガスを液体燃料に直接変換する方法であって、C-C23炭化水素(本文書では、LFP生成物と称する)の混合物を主として生成するが、該混合物が伴うC24より大きい分子量の炭化水素は約10体積%未満であり、好ましくは約5体積%未満である、方法に関する。生成物の選択性は、工場の運転条件及び市場における取引機会に基づいて適合され得る。
【0032】
一実施形態では、合成ガスは、ガス化によるバイオマス又は他の再生可能資源の変換に由来する低炭素合成ガス、又は、捕集された二酸化炭素を変換するプロセス又はバイオガスを合成ガスへと変換するプロセス若しくは任意の他の低炭素材料を合成ガスへと変換するプロセスに由来する低炭素合成ガスである。この実施形態では、合成ガスは、触媒的RWGS反応を用いて生成され、それによって、二酸化炭素及び水素を一酸化炭素及び水へと変換する。水素は、水の電気分解を含む様々な供給源から生成され得る。冷却によって水を除去した後の、目的となる乾燥した合成ガス(synthesis gas)(すなわち、合成ガス(syngas))は、COと、未変換のH及びCOとにより構成される。
【0033】
本発明の一実施形態には、液体燃料生成(LFP)反応器システムが含まれる。これは、炭化水素合成ステップとしても知られている。LFP反応器は、主としてCO及びHを、液体燃料及び/又は化学薬品として使用可能なC-C23炭化水素へと変換する。
【0034】
LFP反応器は、多管式固定床反応器システムである。各LFP反応器管の直径は、13mm~26mmであり得る。反応器管の長さは、通常6メートルより長く、より好ましくは10メートルより長い。LFP反応器は通常、垂直方向に配置されており、LFP反応器原料がLFP反応器の上部から導入される。しかしながら、状況によっては、反応器が水平方向に配置されることも可能であり、高さに制限がある状況では、反応器が斜めに設置されることが有利なこともある。LFP反応器管の長さの大部分は、LFP触媒で満たされている。このLFP触媒は、LFP反応器管内への及び該管を通過するLFP反応器原料の散布を支援すると共に熱プロファイルを制御するために、シリカやアルミナなどの希釈剤とブレンドされてもよい。LFP反応器内にて生じる化学反応により、長さ5~23炭素の液体炭化水素生成物(C-C23炭化水素)及び水を含むLFP生成物ガスが生成される。LFP反応器原料中の一酸化炭素の2%未満が、LFP反応器内において二酸化炭素へと変換される。LFP反応器原料中の一酸化炭素のうち、C24より大きい炭素数の炭化水素へと変換されるのは僅かな量しかないこともまた重要である。
【0035】
しかしながら、本発明の一実施形態で用いられるLFP触媒は、約65体積%のC24-C100炭化水素を生成する典型的なフィッシャートロプシュ(F-T)プロセスと比較して、C-C23炭化水素を主として生成し、これに伴うC24+炭化水素は最小濃度となる(25体積%未満、10体積%未満、好ましくは約5体積%未満)。典型的なF-Tプロセスでは、ワックスがC100を超え得ることも少なくない。LFP触媒は、アルミナ、シリカ、チタニア、活性炭、カーボンナノチューブ、ゼオライト、若しくは、十分なサイズ、形状、細孔径、表面積、破砕強度、有効ペレット半径を有する他の担体材料、又は、それらの混合物の群から選択される金属酸化物担体上に担持される。この触媒は、様々な形状の様々なローブ付き(lobed)担体を有することができ、該ローブ付き担体は、3つ、4つ又は5つのローブ(lobe)を有しており、そのうち2つ以上のローブが他の2つの短いローブよりも長く、長いローブの両方が左右対称となっている。担体の中点又は各ローブの中点からの距離は、有効ペレット半径と称され、C-C23炭化水素に対する所望の選択性を達成するための重要なパラメータである。LFP触媒促進剤には、セリウム、ルテニウム、ランタン、白金、レニウム、金、銀、ニッケル又はロジウムのうちの1つが含まれていてもよい。これらのプロモーターは、個別に使用することも、相互に組み合わせて使用することもできる。LFP触媒促進剤は、触媒全体の1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、さらにより好ましくは0.1重量%未満である。
【0036】
LFP触媒担体は、8ナノメートル(nm)を超える細孔直径、60マイクロメートル(μm)未満の平均有効ペレット半径、3lbs./mmを超える圧壊強度、及び、150m/gを超えるBET表面積を備えている。金属を含浸させた後の触媒は、約4%の金属分散度を有する。
【0037】
LFP固定床反応器は、C-C23炭化水素及び酸素化炭化水素の収量を最大化するように運転される。一実施形態におけるLFP反応器は、11.4~32.0bar(150~450psig)、より典型的には、300~350psiの範囲の圧力で運転される。この反応器は、177℃(350°F)~238℃(460°F)の温度範囲で運転され、より典型的には、約210℃(410°F)で運転される。この触媒反応は発熱反応であるため、熱交換器内に反応器管の束を配置し、この熱交換器内にてLFP反応器管の外側に水を存在させることによって、反応器の温度がLFP反応器管の内部において維持される。蒸気圧力は反応器のシェル側にて制御され、温度はLFPの反応温度よりも低い温度になるため、熱はLFP反応器管からより低温の蒸気へと流れる。蒸気温度は、蒸気(通常、飽和蒸気である)の圧力を維持することによって維持される。
【0038】
別の実施形態では、LFP反応器は、下流のオリゴマー化反応器において使用するためのノルマル1-アルケン生成物を最大化するモードにて運転される。LFP反応器は、典型的には1.7~2.2のH/CO比率(体積/体積)及び210℃(410°F)付近の温度にて運転されるが、前述の通り表2にまとめたように、H/CO比率を減少させると、LFP生成物のノルマル1-オレフィンの割合は増加し得る。より低いH/CO比率にて運転すると、ノルマル1-アルケンの濃度が大幅に増加するが、C24+炭化水素(ワックス)もまた約4体積%から8体積%にまで増加する(表2)。後の節において詳細に説明するが、図1に示すように、このC24+炭化水素は、主としてC24-C40のノルマル脂肪族炭化水素からなる軽質の結晶性ワックスである。
【0039】
この軽質の結晶性ワックスは、従来のF-Tプロセスで生成される重質の非結晶性ワックスとは大きく異なる。このような軽質の結晶性ワックスは、典型的にはスキー、車、家具のワックス及び他の生成物として用いられるため、高い価値がある。
【0040】
LFP反応器の運転では、温度を潜在的に210℃(410°F)~221℃(430°F)の間でわずかに上昇させることと、H/CO比率を0.50/1.00(表2)にまで下げることとのバランスを取ることによって、下流のオリゴマー化反応器で使用可能な最大限のノルマル1-オレフィン原料が作製される。
【0041】
LFP反応器のCO変換は、パス毎につき40~60体積%COに維持される。COは、追加の変換のために再利用することも、下流における追加のLFP反応器へと送ることもできる。COに対する炭素の選択性は、変換されたCOの4%未満、より好ましくは1%未満にまで最小化される。C-C24炭化水素に対する炭素の選択性は、60~85%である。LFP生成物には、目的となるC-C24液体脂肪族炭化水素及び酸素化炭化水素と共に、未反応の一酸化炭素、水素、少量のC-C気相炭化水素及び少量のC24+炭化水素とが含まれる。
【0042】
目的となるC-C23液体炭化水素を含むLFP反応器生成物は、分離システムにおいてさらに処理され得る。この分離システムは、蒸留を含み得る。目的となるC-C23生成物は、ガソリンブレンドストック、ディーゼル燃料、ジェット燃料に使用することも、石油又は天然ガス由来の化学物質を代替可能な低炭素化学物質として使用することもできる。一実施形態では、LFP生成物は一連の分留塔へと送られ、この一連の分留塔は、38~54℃(100~130°F)の間で調整可能な引火点を有する高セタン価ディーゼル燃料と、安定化ナフサ(潜在的にはガソリンブレンドストック又は化学原料)とを作製するために使用される。これらの塔の基本的な設備には、以下が含まれる:
【0043】
ワックスストリップ塔-このユニットは、蒸気を使用して、ワックス状のC24+材料から燃料範囲成分を回収する。塔頂燃料範囲成分及び蒸気は主分留塔へと送られ、ストリップされたワックスは高温貯蔵器へと送られる。ワックスストリップ塔は、凝縮器又は再沸器のない塔で、約170℃(340°F)にて、塔頂蒸気が主分留塔へと入るのに十分な圧力である40psigで運転される。
【0044】
主分留塔-この塔は、原燃料をナフサ成分とディーゼル範囲成分とに分割し、それによってディーゼル引火点を制御する。この塔には、高圧(HP)蒸気加熱再沸器と、ワックスストリップ塔の供給原料から吸着している水及び蒸気を除去するための3相分離機能を有する外部凝縮器とが含まれる。
【0045】
ナフサ安定化塔(任意)-このプロセスは、リード蒸気圧(RVP)を規格の8psiaに制御する。この安定化塔には、低圧(LP)蒸気再沸器と、統合されたノックバック水冷凝縮器が含まれる。
【0046】
ディーゼル低温流/灯油真空塔(任意)-このプロセスは、寒冷地での販売のためにディーゼル流動点を調整するため、及び/又は、灯油画分を生成するために使用される。この原料は、300℃(570°F)まで加熱される。この塔は20段であり、塔頂凝縮器の圧力は6psiaである。この灯油画分は、ジェット燃料成分として使用され得る。所定の条件下において、この灯油画分は、ジェット燃料としての使用のためのASTM仕様(ASTM D7566)を満たし得る。
【0047】
本発明の一実施形態では、LFP液体生成物の灯油画分は、ジェット燃料として使用するためのASTM D7566規格の全てを満たさず、ジェット燃料としての使用仕様に適合させるためには、LFP液体生成物、又は、LFP灯油若しくはLFP軽ディーゼルのようなLFP液体生成物の画分を、軽く(light)水素異性化する必要があることがある。LFP液体生成物又は生成物の画分は加圧されて、水素を含む流と混合される。水素は、水の電気分解、天然ガスの改質、廃棄物若しくはバイオマスのガス化、又は、低炭素水素を生成するための他の方法によって生成され得る。
【0048】
水素とLPF液体生成物の少なくとも一部とを含む混合流は加熱されて、水素異性化反応器へと供給される。水素異性化反応器は、100psigを超える高圧で運転されるが、この圧力は、通常2,000psig未満である。水素異性化反応器は、250℃~400℃の温度で運転される。水素化異性化反応器からの生成物は、高温分離器に入る前に冷却されて、高温分離器及び低温分離器において気体と液体とが分離される。
【0049】
高温分離器及び低温分離器からの炭化水素生成物は分画区域へと送られ、この分画区域において、ライトエンドと炭化水素生成物とが分離される。この分留システムには、ワックスストリップ塔及び主分留塔、並びに、ナフサ安定化塔及び灯油真空塔が含まれていてもよい。この分留塔は、灯油流がASTM D7566の規格を満たすように運転される。
【0050】
本発明の一実施形態では、LFP液体生成物の経済的価値は、以下を含む手段のうち少なくとも1つによって増加する:1)LFP液体生成物から流を分離することによって、その分離された流が、少なくとも70体積%、少なくとも80体積%、より好ましくは少なくとも95体積%の個別のn-パラフィン(例えば、n-ヘプタン)を含む;2)LFP液体生成物から流を分離することによって、その分離された流が、少なくとも70体積%、少なくとも80体積%、より好ましくは少なくとも95体積%の特定のノルマルα-アルケンを含む;3)LFP液体生成物から流を分離することによって、その分離された流が、少なくとも70体積%、少なくとも80体積%、より好ましくは少なくとも95体積%の特定のノルマルヒドロキシアルカン含む;4)LFP液体生成物をオリゴマー化反応器においてさらに処理することによって、液体生成物中のオレフィンの少なくとも一部が、少なくとも粘度指数80、より好ましくは少なくとも粘度指数95の潤滑剤又は他の炭化水素生成物へと変換される。
【0051】
本発明の一実施形態では、LFP反応器は、LFP液体生成物中のノルマル1-アルケン及びノルマル1-ヒドロキシアルカンを減らし、n-パラフィンの生成を増加させるように運転されてもよい。このことは、LFP反応器原料中の一酸化炭素に対する水素を増加させることによって行われ得る。このLFP液体生成物は、沸点の差を使用して様々なn-パラフィンを分離する1つの蒸留塔又は2つの蒸留塔内でさらに処理され得る。例として、ヘキサンの沸点が65℃である一方で、ヘプタンの沸点は98℃である。LFP液体生成物中における使用可能な他の材料の沸点もまた、ヘプタン又は他の所望の生成物とは異なる。ヘプタンの沸点は94℃であり、オクタンの沸点は126℃である。このようにして、LFP液体生成物から、工業グレードのn-ヘプタンを生成物として生成することができる。n-ヘプタンの純度は、好ましくは95体積%を超え、より好ましくは98体積%であり、さらにより好ましくは99体積%より大きい。他のn-パラフィン生成物(例えば、n-ヘキサン、n-オクタン、n-ノナン、n-ペンタン、n-デカン)もまた、同様の方法により同様の好ましい純度で生成され得る。
【0052】
本発明の一実施形態では、LPF液体生成物は、ノルマル1-アルケンの混合物を含有する。LFP反応器は、n-パラフィンを減らし、1-アルケンの生成を増加させるように運転されてもよい。このことは、LFP反応器原料中の一酸化炭素に対する水素の比率を減少させることによって行われ得る(表2)。LFP液体生成物の経済的価値は、LFP液体生成物から流を分離することによって増加し、その分離された流は、好ましくは95体積%の特定のノルマル1-アルケン、より好ましくは98体積%の特定の1-アルケン、さらにより好ましくは99体積%の特定のノルマル1-アルケンを含む。この分離は、様々なLPF液体生成物成分の通常の沸点の差に基づく蒸留によって達成される。この方法にて、様々なC-C16ノルマル1-アルケンが分離され得る。
【0053】
本発明の一実施形態では、LFP液体生成物は、オリゴマー化反応器内で触媒的変換される。オリゴマー化反応器は、散水床(trickle bed)として運転される固定床管状触媒的反応器システムである。通常、この反応器は縦向きである。触媒床全体にわたって液体原料を均等に分布させることを支援するために、アルミナボールやスタティックミキサー等の不活性材料を、この反応器の入口に使用してもよい。LFP液体生成物中のノルマル1-アルケンは、オリゴマー化反応器内でオリゴマー化されて、より長鎖の炭化水素となる。LFP液体生成物中のノルマルヒドロキシアルカンの少なくとも一部は、オリゴマー化反応器内でも変換される。オリゴマー化反応器は、高分子量炭化水素の混合物を生成する。続いて、オリゴマー化生成物は、分離装置内において、複数の生成物へと分離される。本発明では、LFP液体生成物中のオレフィンはオリゴマー化されて、343~510℃(650~950°F)の沸点を有する潤滑剤となる。
【0054】
本発明で使用され得る多くの可能なオリゴマー化触媒が存在する。本発明の一実施形態では、該触媒は、シリカ基板上に含浸されたクロムである。該触媒は0.5~5.0重量%のクロムを有しており、総触媒重量の一部としての好ましいクロム担持量は、約1.0重量%である。シリカ担体は、孔の大きいシリカゲルにより構成される。該触媒は、空気中800℃で16時間焼成される。該触媒は、オリゴマー化反応器内での使用の前に様々な方法で還元することができ、該触媒は、COを用いて300℃で1.5時間還元され得る。該触媒は、合成ガスを用いて還元されてもよい。他の可能な触媒には、チーグラー・ナッタ触媒又はメタロセン触媒、並びに、ZSM-5及び他のシリカ-アルミナ材料が含まれる。
【0055】
オリゴマー化反応は、発熱反応である。この反応器の運転温度は、120~160℃である。反応温度が高くなると潤滑基油の粘度が低下するため、この高い反応温度は、潤滑剤の粘度を制御する手段として使用され得る。大気圧と同程度の低い圧力もまた使用され得るが、運転圧力としては、18.2~24.5bar(250~350psig)が好ましい。
【0056】
LFP液体生成物中の約70%を超える、80%を超える、より好ましくは90%を超えるオレフィンが、1回のパスで潤滑剤へと変換される。LFP液体生成物中のヒドロキシアルカンの一部もまた、潤滑剤へと変換される。
【0057】
オリゴマー化されたLPF液体生成物は、僅かな量のオレフィン又は酸素化物しか有さなくなり、いくつかの実施形態では、主としてパラフィンにより構成されることとなる。そのため、オリゴマー化された生成物を分離して特定のノルマルパラフィンを得ることは、ノルマル1-アルケンとノルマルヒドロキシアルカンとが共溶出する可能性が低いため、未処理のLPF液体生成物中のノルマルパラフィンを分離するよりもはるかに容易である。
【0058】
一実施形態では、オリゴマー化されたLFP生成物は、改質ユニット内でさらに処理される。改質ユニットは、オリゴマー化されたLFP液体生成物を合成ガスへと変換する。改質ユニットは、蒸気を使用して、オリゴマー化されたLFP液体生成物を合成ガスへと変換する。この合成ガスは、LFP反応器原料の一部として使用され得る。
【0059】
このLFP触媒を使用して、合成ガスを約2.0のH/CO、約410°Fの温度、約325psiの圧力で変換した場合、LFP液体生成物は、主として直鎖パラフィンにより構成される(表2)。いくつかの実施形態では、オリゴマー化反応によって、いくつかの分岐を有・BR>キるオリゴマー化した生成物が得られることになる。これにより、ディーゼル画分の低温流動特性が改善されることになる。
【0060】
オリゴマー化された生成物の別の画分は、潤滑剤により構成される。潤滑剤は、通常343℃(650°F)以上の沸点を有する炭化水素の混合物により構成される。これらの潤滑剤は、粘度指数(VI)の高いポリα-オレフィン(PAO)と性質が似ている。粘度指数は、潤滑剤の動粘性率の温度依存性の尺度であり、一般にASTM D2270にて定義された方法により測定される。VIが高いほど、粘度の温度依存性が低くなり、潤滑剤の機能が優れたものとなる。潤滑剤のVIは、少なくとも95であるべきである。動粘性率は、ASTM D445の方法を使用する粘度計によって測定され得る。これらの潤滑剤の100℃動粘性率は、少なくとも毎秒3.0mmであるべきである。
【0061】
特定の動粘度を持つ画分を取得するために、潤滑剤の蒸留による追加の分離が所望されることがある。例えば、95の粘度指数及び毎秒4.5mmの100℃動粘性率を有する潤滑剤は、蒸留塔内において、軽質潤滑剤と重質潤滑剤との2つの画分に分離され得る。軽質潤滑剤は、343~427℃(650~800°F)の沸点範囲を有する一方で、重質潤滑剤は、427~593℃(800~1100°F)の沸点範囲を有する。軽質潤滑剤は、毎秒約3mmの100℃動粘性率及び95のVIを有する。重質潤滑剤は、約7mm/秒の100℃動粘性率を有する。
【実施例
【0062】
この文書中に説明されるいくつかの実施形態の詳細を提供する、いくつかの例示的な実施例が以下に含まれる。
【0063】
実施例1-LFP液体生成物の蒸留
以下の触媒運転条件を使用して、H/CO比率1.08の合成ガスから、約900ガロンのLFP液体生成物を生成した:T:415°F、P:315psi、SV:1,750。このLFP液体生成物から、2段階の高効率蒸留プロセスを用いて、ノルマルアルカン、ノルマル1-アルケン及びノルマル1-ヒドロキシアルカンを分離した。第1の蒸留プロセスでは、35フィートのGoodloe Style 779スタイル垂直ステンレス鋼パッキングが充填された、12インチの蒸留塔を使用した。この第1の蒸留システムは、700ガロンのLFP液体生成物から、約20の細画分を生成するために使用した。次に、これらの各画分を、第2の35フィートの高効率蒸留システムを使用して、個別の成分へと分離した。この2段階の分離プロセスの結果を、表5にまとめた。分離されたノルマルアルカン、ノルマル1-アルケン及びノルマル1-ヒドロキシアルカンは、液体生成物全体の71.5、17.4及び4.8体積%に相当する。図2は、このプロセスから分離された生成物の図式的概要を提供する。
【0064】
【表5】
【0065】
実施例2-ワックス画分の組成及び商業利用
LFP変換プロセスにより得られた合成ワックス生成物は、主としてC18-C45の範囲にあるノルマル脂肪族炭化水素により構成されている(表6)。このワックスには、環状化合物、芳香族化合物及び硫黄化合物がほぼ包含されておらず(<1ppm)、オレフィンの濃度は非常に低い(<25ppm)。
【0066】
このワックスは、拡大しなくとも結晶が視認可能なマクロ結晶構造を有している。このワックスは、石油由来のパラフィンの融点範囲と同様の115~145°Fの範囲で融解する(表6)。しかしながら、石油由来のパラフィンは、分岐炭化水素(イソアルカン)、環状化合物及び芳香族化合物を含んでおり、それらは典型的には25重量%を超える。これに対し、このLFPワックスには、分岐(イソ)パラフィンが2体積%未満しか包含されておらず、環状化合物及び芳香族化合物は包含されていない。ここで、イソアルカンはノルマルアルカンよりも酸化しやすいため、このLFPワックスは、酸化安定性もまた改善されている。
【0067】
サソール社及びシェル社のワックスは、C18-C100炭化水素で構成されており、未処理のワックスの融点は115~230°Fである。したがって、サソール社のワックスとシェル社のワックスは、市場に出す前に、軽質、中質及び重質の画分へと分画する必要がある。
【0068】
【表6】
【0069】
このLFPプロセス合成ワックスは、以下の用途において理想的な素材として期待されている。
1.ひび割れを防ぐゴム添加剤として。
2.スキー及びスノーボードのワックスがけ用に。
3.塗装された家具、キャビネット及び壁の保護及びマット仕上げ用に。
4.金属鋳物の離型剤として。
5.鋼及び鉄表面の酸化防止用に。
6.革の防水用に。
【0070】
米国特許文献
7,507,326 B1 03/2009 Farshid et al
8,394,862 B1 03/2013 Schuetzle et al
8,974,660 B1 03/2015 Tanaka et al
9,611,145 B1 04/2017 Schuetzle et al
9,631,147 B1 04/2017 Schuetzle et al
9,896,626 B1 02/2018 Schuetzle et al
10,478,806 B1 11/2019 Schuetzle et al
【0071】
外国特許文献
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CA 2,904,242 12/2017 Schuetzle et al
CA 2,948,235 08/2018 Schuetzle et al
【0072】
他の出版物
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De Klerk, A.: Fischer-Tropsch Refining, University of Pretoria, South Africa (2008)
Fedou at al: Conversion of syngas to diesel, Axens, www.axens.net (2020)
Gruber, H. et al: Fischer-Tropsch products from biomass-derived syngas and renewable hydrogen, Biomass Conversion and Biorefinery (2019)
Li, W., Wang, H., Jiang, X., Zhu, J., Liu, Z., Guo, X., Song, C.: A short review of recent advances in CO2 hydrogenation to hydrocarbons over heterogeneous catalysts, RSC Adv., 8, 7651 (2018)
Schuetzle, D., Tamblyn, G., Caldwell, M., Schuetzle, R.: Solar reforming of carbon dioxide to produce diesel fuel. DOE report #DE-FE0002558 (2010)
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図1
図2
【国際調査報告】