(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】炭素排出量が低減される、亜鉛湿式製錬工程の副産物を処理する方法
(51)【国際特許分類】
C22B 19/20 20060101AFI20240711BHJP
C22B 3/04 20060101ALI20240711BHJP
C22B 19/30 20060101ALI20240711BHJP
C22B 3/20 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C22B19/20 101
C22B3/04
C22B19/30
C22B3/20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544044
(86)(22)【出願日】2023-05-15
(85)【翻訳文提出日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 KR2023006543
(87)【国際公開番号】W WO2023243874
(87)【国際公開日】2023-12-21
(31)【優先権主張番号】10-2022-0159206
(32)【優先日】2022-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519197594
【氏名又は名称】高麗亞鉛株式会社
【氏名又は名称原語表記】KOREA ZINC CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ホン シク
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヒョン
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA01
4K001AA10
4K001AA20
4K001AA30
4K001BA24
4K001DB03
4K001DB14
4K001DB16
(57)【要約】
本発明の一実施例による亜鉛湿式製錬工程の副産物を処理する方法は、亜鉛湿式製錬工程における仕上げ浸出工程で生成された鉛/銀含有副産物をオートクレーブで加圧浸出し、浸出残渣に含まれる亜鉛及び鉄の含量がそれぞれ1重量%未満になるようにする加圧浸出工程を含んでいる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛湿式製錬工程における仕上げ浸出工程で生成された鉛/銀含有副産物をオートクレーブで加圧浸出し、浸出残渣に含まれる亜鉛及び鉄の含量がそれぞれ1重量%未満になるようにする加圧浸出工程を含む、亜鉛湿式製錬工程の副産物を処理する方法。
【請求項2】
前記加圧浸出工程において亜鉛電解尾液で前記鉛/銀含有副産物を加圧浸出する、請求項1に記載の亜鉛湿式製錬工程の副産物を処理する方法。
【請求項3】
前記加圧浸出工程は、浸出液中の鉄の濃度が10~12g/Lに維持されるように行われる、請求項1に記載の亜鉛湿式製錬工程の副産物を処理する方法。
【請求項4】
前記浸出液中の鉄の濃度が10~12g/Lに維持されるように、鉛/銀含有副産物の鉄含量に応じて投入される亜鉛電解尾液の量を調節する、請求項3に記載の亜鉛湿式製錬工程の副産物を処理する方法。
【請求項5】
亜鉛湿式製錬工程における仕上げ浸出工程で生成された鉛/銀含有副産物をオートクレーブで加圧浸出し、浸出残渣に含まれる亜鉛及び鉄の含量がそれぞれ1重量%未満になるようにする加圧浸出工程と、
前記加圧浸出工程の浸出液と浸出残渣を固液分離する分離工程と、
前記浸出残渣を溶融製錬炉で処理する溶融処理工程と、を含む、亜鉛湿式製錬工程の副産物を処理する方法。
【請求項6】
前記分離工程でろ過された浸出液を、亜鉛湿式製錬工程における精製工程に送液する、請求項5に記載の亜鉛湿式製錬工程の副産物を処理する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は亜鉛湿式製錬工程において発生する副産物を処理する方法に関するもためある。
【背景技術】
【0002】
亜鉛精鉱から亜鉛を抽出する工法には乾式製錬工法と湿式製錬工法がある。このうち湿式製錬工法とは、亜鉛精鉱の焙焼工程、浸出工程及び浄液工程を経た後、最終的に電解工程を経て高純度亜鉛として抽出する工法を称する。
【0003】
図1は、従来の亜鉛の湿式製錬の部分工程のフローチャートを示す。
【0004】
図1を参照すると、焙焼工程を経た亜鉛焼鉱を浸出する酸浸出工程(S10)、酸浸出工程(S10)で発生するケーキをさらに強い酸で浸出する強酸浸出工程(S20)、そして強酸浸出工程(S20)で発生するケーキを最終浸出する仕上げ浸出工程(S30)を経て、鉛/銀含有副産物が発生する。鉛/銀含有副産物は鉛(Pb)と銀(Ag)を含む副産物であり得、上述したように亜鉛湿式製錬工程における浸出工程において生成され得る。
【0005】
このような亜鉛の湿式製錬において発生した鉛/銀含有副産物は、亜鉛(Zn)を5%、鉄(Fe)を10%程度と、かなり多くの量を含有するため、乾式処理工程のうち溶融製錬炉(smelter)における溶融処理よりは揮発製錬炉(fumer)を用いた揮発処理に適した原料である。これは、鉛/銀含有副産物の中の亜鉛フェライト(ZnO・Fe2O3)成分は溶融製錬炉で処理するとき、容易に溶融せず操業不安定を引き起こすためである。これにより、従来は、発生した鉛/銀含有副産物を、揮発製錬炉を用いて金属を揮発させて回収する揮発処理工程(S40)で処理した。
【0006】
ところが、揮発製錬炉を用いる揮発処理は亜鉛(Zn)と鉄(Fe)の含量が高い鉛/銀含有副産物の処理が可能であるが、通常は溶融製錬炉を通じた溶融処理と対比して原料当たりの炭素排出量が5倍以上高いという短所があり、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)等の有価金属の回収率が溶融製錬炉を用いた溶融処理と対比してかなり低いという問題点がある。具体的には、下記の表1に記載されているように、1トンの鉛/銀含有副産物を揮発製錬炉で処理する場合は、約1.38トンのCO
2が発生するのに対し、溶融製錬炉で処理する場合は、CO
2の発生量を約0.26トンに減少させることができる。
【表1】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、亜鉛湿式製錬工程で発生する副産物である鉛/銀含有副産物を処理する方法において、有価金属の回収率が高く、かつ、炭素排出量が低い処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の亜鉛湿式製錬工程の副産物を処理する方法は、亜鉛湿式製錬工程の仕上げ浸出工程で生成された鉛/銀含有副産物をオートクレーブで加圧浸出し、浸出残渣に含まれる亜鉛及び鉄の含量がそれぞれ1重量%未満になるようにする加圧浸出工程を含むことができる。
【0009】
本発明の一実施例によれば、前記加圧浸出工程において亜鉛電解尾液で前記鉛/銀含有副産物を加圧浸出することができる。
【0010】
本発明の一実施例によれば、前記加圧浸出工程は、浸出液中の鉄の濃度が10~12g/Lに維持されるように行うことができる。
【0011】
本発明の一実施例によれば、前記浸出液中の鉄の濃度が10~12g/Lに維持されるように、鉛/銀含有副産物の鉄含量に応じて、投入される亜鉛電解尾液の量を調節することができる。
【0012】
本発明の一実施例による亜鉛湿式製錬工程の副産物を処理する方法は、亜鉛湿式製錬工程の仕上げ浸出工程で生成された鉛/銀含有副産物をオートクレーブで加圧浸出し、浸出残渣に含まれる亜鉛及び鉄の含量がそれぞれ1重量%未満になるようにする加圧浸出工程と、前記加圧浸出工程の浸出液と浸出残渣を固液分離する分離工程と、前記浸出残渣を溶融製錬炉で処理する溶融処理工程とを含むことができる。
【0013】
本発明の一実施例によれば、前記分離工程でろ過された浸出液を亜鉛湿式製錬工程における精製工程に送液することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、亜鉛湿式製錬工程で発生した副産物である鉛/銀含有副産物を加圧浸出して鉛/銀含有副産物の量を減少させることができる。具体的には、加圧浸出を通じて発生する浸出残渣の比は投入された副産物の約56~63%であり得、これにより、亜鉛湿式製錬工程で発生した副産物に対する処理費を減少させることができる。
【0015】
また、本発明によれば、加圧浸出後の浸出残渣に含まれる亜鉛と鉄の含量を溶融製錬炉で処理可能な水準である1wt%以下にそれぞれ減少させることができる。これにより、加圧浸出後の浸出残渣を溶融製錬炉を用いて溶融処理することによって、有価金属の回収率を高められ、炭素排出量を下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】従来の亜鉛の湿式製錬の部分工程フローチャートである。
【
図2】本発明による鉛/銀含有副産物を処理する方法の工程フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図2は本発明による鉛/銀含有副産物を処理する方法の工程フローチャートである。
【0018】
図2を参照すると、本発明による鉛/銀含有副産物を処理する方法は、加圧浸出工程(S100)、分離工程(S200)、および溶融処理工程(S300)を含むことができる。
【0019】
本発明による鉛/銀含有副産物を処理する方法の原料になる鉛/銀含有副産物は、亜鉛湿式製錬工程において発生する副産物であり得る。例えば、
図1の仕上げ浸出(S30)で副産物として発生する鉛/銀含有副産物であってもよい。
【0020】
[加圧浸出工程(S100)]
加圧浸出工程(S100)では、オートクレーブを用いて鉛/銀含有副産物に対して常圧より高い圧力で加圧浸出工程を行うことができる。具体的には、加圧浸出工程(S100)ではオートクレーブを用いて130℃以上の温度及び3.7bar以上の圧力下において、鉛/銀含有副産物中の亜鉛と鉄に対する浸出を行うことができる。
【0021】
加圧浸出工程(S100)は1~2時間行われ得る。実験データと共に後述するように、加圧浸出工程(S100)が長くなる場合、浸出された鉄が再沈殿される場合があるため、温度及び圧力によって、望ましい反応時間が変わり得る。例えば、加圧浸出工程(S100)は130℃以上150℃未満の温度、及び3.7~4.0barの圧力下では1~1.5時間行われ得、150℃以上の温度及び3.7~4.0barの圧力下では1~2時間行われ得る。
【0022】
一実施例によれば、加圧浸出工程(S100)で浸出に用いられる溶液は亜鉛湿式製錬工程における電解工程後に得られる亜鉛電解尾液(zinc spent leachate)であり得る。例えば、前記亜鉛電解尾液の主な成分は硫酸(H2SO4)であり、硫酸の濃度は約160~180g/Lであり得る。これとは異なり、他の実施例によれば、加圧浸出工程(S100)で浸出に用いられる溶液は約160~180g/L濃度の硫酸であり得る。浸出と関連した反応式は下記の式1の通りである。
【0023】
ZnFe2O4+4H2SO4→ZnSO4+Fe2(SO4)3+4H2O…(式1)
【0024】
加圧浸出工程(S100)後の浸出残渣の比(即ち、原料として投入された鉛/銀含有副産物に対する加圧浸出工程後の浸出残渣の比)は約56~63%であり得る。浸出残渣に含まれる亜鉛(Zn)及び鉄(Fe)の含量は約1wt%以下である。実験データと共に後述するように、鉛/銀含有副産物のうち、ジャロサイト(jarosite)と亜鉛フェライト(zinc ferrite)が浸出され、浸出残渣の量及びそれに含まれる亜鉛と鉄の含量が低くなったものと判断される。
【0025】
このように、本発明によれば、加圧浸出工程(S100)を通じて鉛/銀含有副産物の量を減らすことができるため、以後これに対して行われる処理の費用を下げることができる。
【0026】
また、本発明によれば、浸出残渣に含まれる亜鉛と鉄の含量を溶融製錬炉で処理可能な水準である1wt%以下に減少させることができる。これにより、加圧浸出後の浸出残渣を溶融製錬炉を用いて溶融処理することによって、有価金属の回収率を高められ、炭素排出量を下げることができる。
【0027】
加圧浸出工程(S100)における浸出液には鉛/銀含有副産物から浸出された亜鉛(Zn)及び鉄(Fe)が含まれている。浸出液に含まれる鉄の濃度は約10~12g/Lであり得、この条件下でジャロサイト(jarosite)の生成が抑制されて浸出残渣に含まれる鉄の含量を1wt%以下に下げることができる。
【0028】
[分離工程(S200)]
加圧浸出工程(S100)後、浸出液と浸出残渣を固液分離する分離工程(S200)を行うことができる。
【0029】
ろ過された浸出液は、別途の亜鉛湿式製錬工程における精製工程(S210)に送液され得、浸出残渣は溶融処理工程(S300)に移送され得る。
【0030】
[溶融処理工程(S300)]
分離工程(S200)で発生した浸出残渣に対して溶融処理工程(S300)を行うことができる。溶融処理工程(S300)では、溶融製錬炉を用いて浸出残渣から亜鉛(Zn)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)のような有価金属を回収することができる。
【0031】
一実施例において、浸出残渣をフラックス及び還元剤と共に溶融製錬炉に装入した後、これを融点以上の温度で溶融及び製錬することによって、亜鉛、銅、金、銀のような有価金属を不純物から分離することができる。
【0032】
以下では、実験例を通して本発明を具体的に説明する。
【0033】
[実験例]
[実施例1~4及び比較例1、2]
本実験例に用いられた鉛/銀含有副産物の主成分は鉛と鉄である。鉛は主に硫酸鉛(PbSO4)の形態で存在し、全体で8.9%の鉄のうち約1.0%はジャロサイト形態、残りの約7.9%の鉄は亜鉛フェライトの形態で存在する。
【0034】
本実験例に用いられた鉛/銀含有副産物の成分の含量組成を表2に記載する。
【表2】
【0035】
オートクレーブに前記鉛/銀含有副産物を装入し、130~150℃の温度及び3.7~4.0barの圧力下で1.5~2.0時間、亜鉛電解尾液で鉛/銀含有副産物を加圧浸出した。その結果を表3に示す。
【表3】
【0036】
表3から確認できるように、実施例1~4において、浸出残渣中の鉄、亜鉛の品位を1wt%未満まで下げることができ、また、投入された鉛/銀含有副産物対比浸出残渣の比は56~63%であった。また、加圧浸出時、反応時間が1.5時間から2.0時間に増加するに伴い、溶解した鉄が再沈殿される傾向が現れた。
【0037】
一方、前記実施例3(150℃で1.5時間浸出)の浸出残渣及び鉛/銀含有副産物原材料のXRD測定結果を表4に示す。
【表4】
【0038】
表4を参照すると、鉛/銀含有副産物原材料に比べ、浸出残渣におけるジャロサイト及び亜鉛フェライトのXRDのピークが大きく減少したことが確認できる。したがって、浸出残渣の減少原因は鉛/銀含有副産物原材料のうちジャロサイトと亜鉛フェライトが加圧浸出工程中に溶解したためであると判断される。
【0039】
[実施例5及び比較例3~5]
本実験例においては、加圧浸出工程で固体密度の調節を通じて浸出液中の鉄濃度を変化させ、浸出残渣中の鉄と亜鉛の濃度を測定した。本実験例において、加圧浸出工程は150℃の温度及び3.7~4.0barの圧力下で1.5時間行われ、鉛/銀含有副産物原材料に含まれる鉄の含量は約13wt%であった。
【表5】
【0040】
表5を参照すると、加圧浸出時の浸出液中の鉄濃度が10~12g/Lの場合は、ジャロサイトが形成されないため、残渣中の鉄の品位を1wt%未満に維持できるものと判断される。したがって、溶融製錬炉で溶融処理するための浸出残渣を生成するためには、加圧浸出時の浸出液中の鉄濃度を10~12g/Lに維持しなければならないと判断される。
【0041】
これと関連し、鉛/銀含有副産物原材料中の鉄含量が高い場合、浸出液中の鉄濃度が高くなり得るため、鉄含量に応じて固体密度の調節が必要である。例えば、鉛/銀含有副産物原材料の鉄含量が高い場合、加圧浸出のために投入される亜鉛電解尾液の量を増やし、鉛/銀含有副産物原材料の鉄含量が低い場合、加圧浸出のために投入される亜鉛電解尾液の量を減らし、浸出液の鉄濃度を10~12g/Lに維持しなければならない。
【0042】
[比較例6~9]
本実験例では、固体密度を異にして反応温度95℃で12時間、亜鉛電解尾液で鉛/銀含有副産物を常圧(1bar)浸出した結果を表5に示す。
【表6】
【0043】
表6から確認できるように、常圧浸出だけでは浸出残渣中の鉄と亜鉛の品位を1wt%以下まで除去することが困難であるため、溶融製錬炉で浸出残渣を処理する条件を満たせない。
【0044】
このように、本発明によれば、鉛/銀含有副産物をオートクレーブで加圧浸出しながら、工程温度、工程時間、浸出ろ液中の鉄濃度を調節することによって、浸出残渣中の鉄と亜鉛の含量を1wt%未満に減少させることができ、それにより、溶融製錬炉で処理可能な浸出残渣を得ることができる。これにより、有価金属の回収率を高めることができ(Zn83%→85%、Cu70→95%、Ag95%→99.8%、Au85%→98.5%)、炭素排出量も低減することができる。
【0045】
また、本発明によれば、オートクレーブを用いる加圧浸出を通じて後続処理しなければならない副産物を減少させることができ、これにより副産物の処理費を減少させることができる。
【0046】
以上、添付した図面を参照して本発明の実施例を説明したが、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者は、本発明がその技術的思想もしくは必須の特徴を変更せずとも他の具体的な形態で実施され得るということを理解できるはずである。
【0047】
したがって、以上で記述した各実施例は、全ての面において例示的なもためあり、限定的ではないものと理解されるべきである。本発明の範囲は、前記詳細な説明よりは特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲そしてその均等概念から導き出される全ての変更または変更された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【国際調査報告】