IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司の特許一覧

特表2024-526506正極活物質、二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置
<>
  • 特表-正極活物質、二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置 図1
  • 特表-正極活物質、二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置 図2
  • 特表-正極活物質、二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置 図3
  • 特表-正極活物質、二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置 図4
  • 特表-正極活物質、二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置 図5
  • 特表-正極活物質、二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】正極活物質、二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20240711BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240711BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552308
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(85)【翻訳文提出日】2023-08-29
(86)【国際出願番号】 CN2022101030
(87)【国際公開番号】W WO2023245597
(87)【国際公開日】2023-12-28
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林澤慧
(72)【発明者】
【氏名】倪歓
(72)【発明者】
【氏名】劉宏宇
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA10
5H050AA15
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA29
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB29
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA08
(57)【要約】
本出願は、正極活物質に関し、それは、組成式が、Lix1Nia1Cob1Mnc12-y1y1 Iである活物質Aと、組成式が、Lix2Nia2Cob2Mnc22-y2y2 IIである活物質Bと、組成式が、Lix3Nia3Cob3Mnc32-y3y3 IIIである活物質Cとを含み、式I、IIとIIIでは、各下付き文字は、明細書において定義されているとおりであり、ここで前記活物質Aの平均粒径Dv50は、前記活物質Bの平均粒径Dv50よりも大きく、且つ前記活物質Cの平均粒径Dv50よりも大きい。本出願の正極活物質の圧密密度が大きく、それによって該当する電池は、高いエネルギー密度と安全性を有すると同時に、良好な高温サイクル性能と高温保存性能を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質であって、
組成式が以下のとおりである活物質Aであって、
Lix1Nia1Cob1Mnc12-y1y1
式Iにおいて、0.95≦x1≦1.3、0.7≦a1≦0.99、0.01≦b1≦0.15、0.01≦c1≦0.3、a1+b1+c1=1、0≦y1≦0.1であり、ここでQがS、N、F、Cl、Br及びIから選択される一つ又は複数である前記活物質Aと、
組成式が以下のとおりである活物質Bであって、
Lix2Nia2Cob2Mnc22-y2y2 II
式IIにおいて、0.95≦x2≦1.3、0.7≦a2≦0.99、0.01≦b2≦0.15、0.01≦c2≦0.3、a2+b2+c2=1、0≦y2≦0.1であり、ここでQがS、N、F、Cl、Br及びIから選択される一つ又は複数である前記活物質Bと、
組成式が以下のとおりである活物質Cであって、
Lix3Nia3Cob3Mnc32-y3y3 III
式IIIにおいて、0.95≦x3≦1.3、0.3≦a3<0.7、0.01≦b3≦0.15、0.01≦c3≦0.5、a3+b3+c3=1、0≦y3≦0.1であり、ここでQがS、N、F、Cl、Br及びIから選択される一つ又は複数である前記活物質Cと、を含み、
ここで前記活物質Aの平均粒径Dv50は、前記活物質Bの平均粒径Dv50よりも大きく、且つ前記活物質Cの平均粒径Dv50よりも大きい、正極活物質。
【請求項2】
前記活物質Aは、平均粒径Dv50が7~15μmであり、任意選択的に8~14μmであり、Dv90が15~25μmであり、任意選択的に18~22μmであり、前記活物質Bは、平均粒径Dv50が1~8μmであり、任意選択的に2~5μmであり、Dv90が3~10μmであり、任意選択的に5~8μmであり、前記活物質Cは、平均粒径が1~7μmであり、任意選択的に2~5μmであり、Dv90が5~10μmであり、任意選択的に5~8μmである、ことを特徴とする請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記活物質Aと、前記活物質Bと、前記活物質Cとの含有量比は、1:0.5~8:0.1~10であり、任意選択的に1:0.8~6:0.2~8であり、さらに任意選択的に1:1.5~6:3~8である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記活物質Aと前記活物質Bとの含有量の和は、前記活物質Cの含有量に等しく、それぞれの含有量は、いずれも前記正極活物質の総重量に基づいて計算されるものである、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項5】
前記正極活物質の比表面積は、0.3~1.8m/gであり、圧密密度は、3.0~3.6g/cmである、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項6】
前記活物質A及び/又は前記活物質B及び/又は前記活物質Cは、M元素を含み、ここでMは、Zr、Sr、B、Ti、Mg、Sn及びAlのうちの一つ又は複数から選択される、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項7】
前記活物質A、前記活物質B、前記活物質Cにそれぞれ対応する化学式において、x1:x2:x3は、1:(0.73~1.37):(0.73~1.37)であり、a1:a2:a3は、1:(0.71~1.42):(0.31~1)である、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項8】
前記活物質Aは、多結晶材料であり、前記活物質BとCは、擬単結晶又は単結晶材料である、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の正極活物質を含む、ことを特徴とする二次電池。
【請求項10】
請求項9に記載の二次電池を含む、ことを特徴とする電池モジュール。
【請求項11】
請求項10に記載の電池モジュールを含む、ことを特徴とする電池パック。
【請求項12】
請求項9に記載の二次電池、請求項10に記載の電池モジュール、又は請求項11に記載の電池パックから選択される少なくとも一つを含む、ことを特徴とする電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、リチウム電池の技術分野に関し、特に正極活物質、二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池の応用範囲がますます広くなるにつれて、リチウムイオン電池は、水力、火力、風力と太陽光発電所などのエネルギー貯蔵電源システム、及び電動工具、電動自転車、電動バイク、電気自動車、軍事装備、航空宇宙などの複数の分野に広く応用されている。リチウムイオン電池が飛躍的な発展を遂げたため、そのエネルギー密度、サイクル性能と安全性能などに対する要求も高くなってきている。また、正極活物質の選択肢が限られているため、高ニッケル正極活物質は、高いエネルギー密度の要求を満たす最も望ましい選択肢とみなされている。
【0003】
しかし、ニッケル含有量の向上に伴い、その構造安定性は、ますます低くなる。被覆又はドープなどの手段によって材料のレート性能とサイクル性能などを改善することは、現在、有効な手段である。しかしながら、従来の方法では、いずれもリチウムイオン電池の性能をある程度損なうことがあり、例えば、リチウムイオン電池のグラム容量が低減し、サイクル性能が低くなるなどである。そのため、従来の被覆又はドープされた正極材料は、まだ改良の余地がある。
【発明の概要】
【0004】
本出願は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、その該当する極板の圧密密度が大きく、該当する電池に高いエネルギー密度と安全性を備えさせると同時に、良好な高温サイクル性能と高温保存性能を備えさせる正極活物質を提供することである。
【0005】
上記目的を達成するために、本出願の第1の態様によれば、正極活物質を提供し、この正極活物質は、
組成式が以下のとおりである活物質Aであって、
Lix1Nia1Cob1Mnc12-y1y1
式Iにおいて、0.95≦x1≦1.3、0.7≦a1≦0.99、0.01≦b1≦0.15、0.01≦c1≦0.3、a1+b1+c1=1、0≦y1≦0.1であり、ここでQがS、N、F、Cl、Br及びIから選択される一つ又は複数である活物質Aと、
組成式が以下のとおりである活物質Bであって、
Lix2Nia2Cob2Mnc22-y2y2 II
式IIにおいて、0.95≦x2≦1.3、0.7≦a2≦0.99、0.01≦b2≦0.15、0.01≦c2≦0.3、a2+b2+c2=1、0≦y2≦0.1であり、ここでQがS、N、F、Cl、Br及びIから選択される一つ又は複数である活物質Bと、
組成式が以下のとおりである活物質Cであって、
Lix3Nia3Cob3Mnc32-y3y3 III
式IIIにおいて、0.95≦x3≦1.3、0.3≦a3<0.7、0.01≦b3≦0.15、0.01≦c3≦0.5、a3+b3+c3=1、0≦y3≦0.1であり、ここでQがS、N、F、Cl、Br及びIから選択される一つ又は複数である活物質Cと、を含み、
ここで前記活物質Aの平均粒径Dv50は、前記活物質Bの平均粒径Dv50よりも大きく、且つ前記活物質Cの平均粒径Dv50よりも大きい。
【0006】
これにより、本出願の正極活物質は、平均粒径とニッケル含有量が異なる活物質Aと、Bと、Cとを含むことで、該当する極板の圧密密度を大きくし、これによって該当する電池は、高いエネルギー密度と安全性を有すると同時に、良好な高温サイクル性能と高温保存性能を有する。
【0007】
任意の実施形態では、活物質Aは、平均粒径Dv50が7~15μmであり、任意選択的に8~14μmであり、Dv90が15~25μmであり、任意選択的に18~22μmであり、活物質Bは、平均粒径Dv50が1~8μmであり、任意選択的に2~5μmであり、Dv90が3~10μmであり、任意選択的に5~8μmであり、活物質Cは、平均粒径が1~7μmであり、任意選択的に2~5μmであり、Dv90が5~10μmであり、任意選択的に5~8μmである。これにより、各活物質の平均粒径をさらに限定することで、前記正極活物質を含む正極板の圧密密度をさらに向上させ、それによって該当する電池は、高いエネルギー密度と安全性を有すると同時に、良好な高温サイクル性能と高温保存性能を有する。
【0008】
任意の実施形態では、前記活物質Aと、前記活物質Bと、前記活物質Cとの含有量比は、1:0.5~8:0.1~10であり、任意選択的に1:0.8~6:0.2~8であり、さらに任意選択的に1:1.5~6:3~8である。これにより、特定比率の各活物質によって、前記正極活物質を含む正極板の圧密密度をさらに大きくし、これによって該当する電池は、高いエネルギー密度と安全性を有すると同時に、良好な高温サイクル性能と高温保存性能を有する。
【0009】
任意の実施形態では、前記活物質Aと前記活物質Bとの含有量の和は、前記活物質Cの含有量に等しく、それぞれの含有量は、いずれも前記正極活物質の総重量に基づいて計算されるものである。これにより、特定含有量の各活物質によって、前記正極活物質を含む正極板の圧密密度をさらに大きくし、これによって該当する電池は、高いエネルギー密度と安全性を有すると同時に、良好な高温サイクル性能と高温保存性能を有する。
【0010】
任意の実施形態では、前記正極活物質の比表面積は、0.3~1.8m/gであり、圧密密度は、3.0~3.6g/cmである。これにより、特定比表面積と圧密密度を有する正極活物質によって、該当する電池は、高いエネルギー密度と安全性を有すると同時に、良好な高温サイクル性能と高温保存性能を有する。
【0011】
任意の実施形態では、前記活物質A及び/又は前記活物質B及び/又は前記活物質Cは、M元素を含み、ここでMは、Zr、Sr、B、Ti、Mg、Sn及びAlのうちの一つ又は複数から選択される。これにより、前記各活物質に対して上記処理を行うことによって、材料表面の相構造を安定化させ、充放電中の副反応を抑制することができ、さらに該当する電池に高いエネルギー密度と安全性を備えさせると同時に、良好な高温サイクル性能と高温保存性能を備えさせる。
【0012】
任意の実施形態では、前記活物質A、前記活物質B、前記活物質Cにそれぞれ対応する化学式において、x1:x2:x3は、1:(0.73~1.37):(0.73~1.37)であり、a1:a2:a3は、1:(0.71~1.42):(0.31~1)である。これにより、各活物質におけるリチウムとニッケルとの比率を限定することによって、さらに該当する電池に高いエネルギー密度と安全性を備えさせると同時に、良好な高温サイクル性能と高温保存性能を備えさせる。
【0013】
任意の実施形態では、活物質Aは、多結晶材料であり、活物質BとCは、擬単結晶又は単結晶材料である。これにより、各活物質の結晶タイプを限定することによって、さらに該当する電池に高いエネルギー密度と安全性を備えさせると同時に、良好な高温サイクル性能と高温保存性能を備えさせる。
【0014】
本出願の第2の態様によれば、本出願の第1の態様の正極活物質を含むことを特徴とする二次電池をさらに提供する。
【0015】
これにより、得られた電池は、高いエネルギー密度と安全性を有すると同時に、良好な高温サイクル性能と高温保存性能を有する。
【0016】
本出願の第3の態様によれば、本出願の第2の態様の二次電池を含む電池モジュールを提供する。
【0017】
本出願の第4の態様によれば、本出願の第3の態様の電池モジュールを含む電池パックを提供する。
【0018】
本出願の第5の態様によれば、本出願の第2の態様の二次電池、本出願の第3の態様の電池モジュール、又は本出願の第4の態様の電池パックから選択される少なくとも一つを含む電力消費装置を提供する。
【0019】
本出願の正極活物質は、平均粒径とニッケル含有量が異なる活物質Aと、Bと、Cとを含むことで、前記正極活物質を含む正極板の圧密密度を大きくし、さらに該当する電池に高いエネルギー密度と安全性を備えさせると同時に、良好な高温サイクル性能と高温保存性能を備えさせる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本出願の一実施形態の二次電池の概略図である。
図2図1に示す本出願の一実施形態の二次電池の分解図である。
図3】本出願の一実施形態の電池モジュールの概略図である。
図4】本出願の一実施形態の電池パックの概略図である。
図5図4に示す本出願の一実施形態の電池パックの分解図である。
図6】本出願の一実施形態の二次電池が電源として用いられる電力消費装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、図面を適当に参照しながら、本出願の正極活物質及びその製造方法、正極板、二次電池、電池モジュール、電池パックと電気装置を具体的に開示した実施形態について詳細に説明する。しかしながら、必要のない詳細な説明を省略する場合がある。例えば、周知の事項に対する詳細な説明、実際に同じである構造に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に長くなることを回避し、当業者に容易に理解させるためである。なお、図面及び以下の説明は、当業者に本出願を十分に理解させるために提供するものであり、特許請求の範囲に記載されたテーマを限定するものではない。
【0022】
本出願に開示された「範囲」は、下限と上限の形式で限定され、与えられた範囲は、一つの下限と一つの上限を選定することで限定されるものであり、選定された下限と上限は、特定の範囲の境界を限定した。このように限定される範囲は、端値を含むか又は含まないものであってもよく、且つ任意の組み合わせが可能であり、即ち任意の下限は、任意の上限と組み合わせて、一つの範囲を形成することができる。例えば、特定のパラメータに対して60~120と80~110の範囲がリストアップされている場合、60~110と80~120の範囲も想定できると理解される。なお、最小範囲値として1と2がリストアップされており、最大範囲値として3、4及び5がリストアップされている場合、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4と2~5という範囲がすべて想定できる。本出願では、特に断りのない限り、「a-b」という数値範囲は、a~bの任意の実数の組み合わせの短縮表現を表し、ここで、aとbはいずれも実数である。例えば、数値範囲「0-5」は、本明細書においてすでに「0-5」の間のすべての実数をリストアップしたことを表し、「0-5」は、これらの数値の組み合わせの短縮表現だけである。また、あるパラメータが≧2の整数であると表現すると、このパラメータが例えば整数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などであることを開示していることに相当する。
【0023】
特に説明しない場合、本出願のすべての実施形態及び選択的な実施形態は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成することができる。
【0024】
特に説明しない場合、本出願のすべての技術的特徴及び選択的な技術的特徴は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成することができる。
【0025】
特に説明しない場合、本出願のすべてのステップは、順番に行われてもよく、ランダムに行われてもよく、好ましくは、順番に行われる。例えば、前記方法がステップ(a)と(b)とを含むことは、前記方法が、順番に行われるステップ(a)と(b)とを含んでもよく、順番に行われるステップ(b)と(a)とを含んでもよいことを表す。例えば、以上で言及した前記方法がステップ(c)をさらに含んでもよいことは、ステップ(c)が任意の順序で前記方法に追加されてもよいことを表し、例えば前記方法は、ステップ(a)、(b)及び(c)を含んでもよく、ステップ(a)、(c)及び(b)を含んでもよく、ステップ(c)、(a)及び(b)などを含んでもよい。
【0026】
特に説明しない場合、本出願で言及した「含む」と「包含」は、開放型を表し、閉鎖型であってもよい。例えば、前記「含む」と「包含」は、リストアップされていない他の成分をさらに含み又は包含してもよく、リストアップされている成分のみを含み又は包含してもよいことを表してもよい。
【0027】
特に説明しない場合、本出願では、用語である「又は」は、包括的である。例を挙げると、「A又はB」というフレーズは、「A、B、又はAとBとの両方」を表す。より具体的には、Aが真であり(又は存在し)且つBが偽である(又は存在しない)条件と、Aが偽である(又は存在しない)が、Bが真である(又は存在する)条件と、AとBがいずれも真である(又は存在する)条件とのいずれも「A又はB」を満たしている。
【0028】
現在、一般的な高ニッケル正極活物質は、主に二次粒子の凝集、多結晶の形式で構成される。前記高ニッケル正極活物質について、Ni含有量の増加に伴い、材料のグラム容量もそれにつれて高くなるが、高ニッケル多結晶二次粒子材料には、1)堆積密度が低く、製造された極板の圧密密度が低く、電池の比エネルギーがさらに低減し、2)粒子が非常に破砕しやすく、材料の比表面積が増加し、さらに電池の副反応が多くなり、電池のガス発生が深刻であるなどの問題が存在する。出願人の研究によると、本出願の第1の態様の正極活物質は、平均粒径とニッケル含有量が異なる活物質Aと、Bと、Cとを含むことで、前記正極活物質を含む正極板の圧密密度を大きくし、従来技術による高ニッケル正極活物質の冷間プレス及びサイクルプロセスにおいて粒子が結晶粒界に沿って破砕し、比表面積が増加し、電子/イオンの輸送通路が破壊され、電解液により腐食するなどの性能劣化の問題を効果的に解決し、これによって該当する電池は、高いエネルギー密度と安全性を有すると同時に、良好な高温サイクル性能と高温保存性能を有する。
【0029】
正極活物質
本出願の一実施形態では、本出願は、
正極活物質を提供し、この正極活物質は、
組成式が以下のとおりである活物質Aであって、
Lix1Nia1Cob1Mnc12-y1y1
式Iにおいて、0.95≦x1≦1.3、0.7≦a1≦0.99、0.01≦b1≦0.15、0.01≦c1≦0.3、a1+b1+c1=1、0≦y1≦0.1であり、ここでQがS、N、F、Cl、Br及びIから選択される一つ又は複数である活物質Aと、
組成式が以下のとおりである活物質Bであって、
Lix2Nia2Cob2Mnc22-y2y2 II
式IIにおいて、0.95≦x2≦1.3、0.7≦a2≦0.99、0.01≦b2≦0.15、0.01≦c2≦0.3、a2+b2+c2=1、0≦y2≦0.1であり、ここでQがS、N、F、Cl、Br及びIから選択される一つ又は複数である活物質Bと、
組成式が以下のとおりである活物質Cであって、
Lix3Nia3Cob3Mnc32-y3y3 III
式IIIにおいて、0.95≦x3≦1.3、0.3≦a3<0.7、0.01≦b3≦0.15、0.01≦c3≦0.5、a3+b3+c3=1、0≦y3≦0.1であり、ここでQがS、N、F、Cl、Br及びIから選択される一つ又は複数である活物質Cとを含み、
ここで前記活物質Aの平均粒径Dv50は、前記活物質Bの平均粒径Dv50よりも大きく、且つ前記活物質Cの平均粒径Dv50よりも大きい。
【0030】
本出願人の研究によると、本出願の正極活物質は、平均粒径とニッケル含有量が異なる活物質Aと、Bと、Cとを含むことで、前記正極活物質を含む正極板の圧密密度を大きくするとともに、従来技術による高ニッケル正極活物質の冷間プレス及びサイクルプロセスにおいて粒子が結晶粒界に沿って破砕し、比表面積が増加し、電子/イオンの輸送通路が破壊され、電解液により腐食するなどの性能劣化の問題をと同時に効果的に解決し、これによって該当する電池は、高いエネルギー密度と安全性を有すると同時に、良好な高温サイクル性能と高温保存性能を有する。
【0031】
いくつかの実施形態では、活物質Aは、平均粒径Dv50が7~15μmであり、任意選択的に8~14μmであり、Dv90が15~25μmであり、任意選択的に18~22μmであり、活物質Bは、平均粒径Dv50が1~8μmであり、任意選択的に2~5μmであり、Dv90が3~10μmであり、任意選択的に5~8μmであり、活物質Cは、平均粒径が1~7μmであり、任意選択的に2~5μmであり、Dv90が5~10μmであり、任意選択的に5~8μmである。これにより、各活物質の平均粒径をさらに限定することによって、正極活物質の圧密密度をさらに向上させ、それによって該当する電池は、高いエネルギー密度と安全性を有すると同時に、良好な高温サイクル性能と高温保存性能を有する。
【0032】
いくつかの実施形態では、前記活物質AのDv10は、1~4μmであり、好ましくは2~3μmであり、Dv99は、20~30μmであり、好ましくは24~28μmである。
【0033】
前記活物質BのDv10は、1~3μmであり、好ましくは1~2μmであり、Dv99は、4~12μmであり、好ましくは6~10μmである。
【0034】
前記活物質CのDv10は、1~3μmであり、好ましくは1.5~2.5μmであり、Dv99は、6~15μmであり、好ましくは7~13μmである。
【0035】
前記Dv10は、試料の体積累計分布百分率が10%に達した時に対応する粒径であり、Dv50は、試料の体積累計分布百分率が50%に達した時に対応する粒径であり、平均粒径とも呼ばれ、Dv90は、試料の体積累計分布百分率が90%に達した時に対応する粒径であり、Dv99は、試料の体積累計分布百分率が99%に達した時に対応する粒径である。
【0036】
一好ましい実施形態では、前記活物質Aの平均粒径Dv50は、11.5~12.5μmであり、活物質Bの平均粒径Dv50は、3.8~4.2μmであり、活物質Cの平均粒径Dv50は、3.8~4.2μmである。
【0037】
上記正極活物質の粒径サイズは、当分野の公知の意味であり、それは、レーザー粒度分析計を採用して正極活物質の体積粒径及びその分布を測定し、例えば英国のマルバーンインスツルメンツ社のMastersizer 3000型レーザー粒度分析計を採用する。
【0038】
いくつかの実施形態では、前記活物質Aと、前記活物質Bと、前記活物質Cとの含有量比は、1:0.5~8:0.1~10であり、任意選択的に1:0.8~6:0.2~8であり、さらに任意選択的に1:1.5~6:3~8であり、最も好ましくは1:1.5~4:2.5~5である。これにより、特定比率の各活物質によって、前記正極活物質を含む正極板の圧密密度をさらに大きくし、これによって該当する電池は、高いエネルギー密度と安全性を有すると同時に、良好な高温サイクル性能と高温保存性能を有する。前記含有量は、いずれも前記正極活物質の総重量に基づいて計算されるものである。
【0039】
いくつかの実施形態では、前記活物質Aと前記活物質Bとの含有量の和は、前記活物質Cの含有量に等しく、それぞれの含有量は、いずれも前記正極活物質の総重量に基づいて計算されるものである。これにより、特定含有量の各活物質によって、前記正極活物質を含む正極板の圧密密度をさらに大きくし、これによって該当する電池は、高いエネルギー密度と安全性を有すると同時に、良好な高温サイクル性能と高温保存性能を有する。
【0040】
いくつかの実施形態では、前記正極活物質の総重量に基づき、前記活物質Aの含有量は、2重量%~98重量%であり、好ましくは10重量%~90重量%であり、より好ましくは30重量%~70重量%であり、さらに好ましくは20重量%~60重量%である。前記正極活物質の総重量に基づき、前記活物質Bの含有量は、2重量%~98重量%であり、好ましくは10重量%~80重量%であり、より好ましくは15重量%~60重量%であり、さらに好ましくは20重量%~40重量%である。前記正極活物質の総重量に基づき、前記活物質Cの含有量は、2重量%~98重量%であり、好ましくは10重量%~80重量%であり、より好ましくは10重量%~70重量%であり、さらに好ましくは10重量%~50重量%である。
【0041】
いくつかの実施形態では、前記正極活物質の比表面積は、0.3~1.8m/gであり、任意選択的に0.3~0.8m/g、0.6~0.8m/g、0.8~1.0m/g、1.0~1.8m/gである。これにより、特定比表面積と圧密密度を有する正極活物質によって、該当する電池は、高いエネルギー密度と安全性を有すると同時に、良好な高温サイクル性能と高温保存性能を有する。
【0042】
いくつかの実施形態では、前記活物質A及び/又は前記活物質B及び/又は前記活物質Cは、M元素を含み、ここでMは、Zr、Sr、B、Ti、Mg、Sn及びAlのうちの一つ又は複数から選択され、好ましくはTi又はAlである。これにより、前記各活物質に対して上記処理を行うことによって、材料表面の相構造を安定化させ、充放電中の副反応を抑制することができ、さらに該当する電池に高いエネルギー密度と安全性を備えさせると同時に、良好な高温サイクル性能と高温保存性能を備えさせる。
【0043】
いくつかの実施形態では、前記活物質A及び/又は前記活物質B及び/又は前記活物質Cは、M元素を被覆し、ここでMは、上述したとおりである。前記被覆は、当業者に知られている方法を利用して行い、例えば乾式被覆又は液相被覆法である。
【0044】
いくつかの実施形態では、前記活物質A、前記活物質B、前記活物質Cにそれぞれ対応する化学式において、x1:x2:x3は、1:(0.73~1.37):(0.73~1.37)、任意選択的に1:(0.9~1.1):(0.9~1.1)であり、a1:a2:a3は、1:(0.71~1.42):(0.31~1)、任意選択的に1:(0.95~1.11):(0.55~0.75)である。これにより、各活物質におけるリチウムとニッケルとの比率を限定することによって、さらに該当する電池に高いエネルギー密度と安全性を備えさせると同時に、良好な高温サイクル性能と高温保存性能を備えさせる。
【0045】
いくつかの実施形態では、活物質Aは、多結晶材料であり、活物質BとCは、擬単結晶又は単結晶材料である。これにより、各活物質の結晶タイプを限定することによって、さらに該当する電池に高いエネルギー密度と安全性を備えさせると同時に、良好な高温サイクル性能と高温保存性能を備えさせる。
【0046】
本出願では、前記用語「擬単結晶」は、平均粒径Dv50が1μmを超えるとともに少量の凝集が存在する一次粒子を指す。前記用語「単結晶」は、平均粒径Dv50が1μmを超え、且つ顕著な凝集がない一次粒子を指し、少ない結晶粒界を有する。前記用語「多結晶」は、一次粒子からなる二次粒子を指す。前記「一次粒子」は、一般的にはミクロンレベルで分散する単一粒子の形式であり、「二次粒子」は、一般的には多くの粒子(100~500ナノメートル)が凝集して球状を形成し、非常に多い結晶粒界を有するものである。単結晶正極活物質は、一次粒子であり、表面積が小さく、機械的強度が大きく、圧密密度が大きく、破砕されにくい。多結晶と単結晶のニッケル含有活物質の比率を適切に調整することで、電池のエネルギー密度を保証できるだけでなく、電池が優れた高温性能を有することを保証することもできる。
【0047】
本出願の第2の態様は、本出願の第1の態様の正極活物質を含むことを特徴とする二次電池をさらに提供する。
【0048】
これにより、得られた電池は、高いエネルギー密度と安全性を有すると同時に、良好な高温サイクル性能と高温保存性能を有する。
【0049】
以下では、図面を適当に参照しながら、本出願の二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置を説明する。
【0050】
本出願の一実施形態では、二次電池を提供する。
【0051】
一般的には、二次電池は、正極板と、負極板と、電解質と、セパレータとを含む。電池の充放電中において、活性イオンは、正極板と負極板との間で往復して吸蔵し離脱する。電解質は、正極板と負極板との間でイオンを伝導する作用を果たす。セパレータは、正極板と負極板との間に設置され、主に正負極の短絡を防止する役割を果たすとともに、イオンを通過させることができる。
【0052】
[正極板]
正極板は、正極集電体と、正極集電体の少なくとも一つの表面に設置される正極膜層とを含み、前記正極膜層は、本出願の第1の態様の正極活物質を含む。
【0053】
例として、正極集電体は、それ自体の厚さ方向において対向する二つの表面を有し、正極膜層は、正極集電体の対向する二つの表面のいずれか一方又は両方上に設置される。
【0054】
いくつかの実施形態では、前記正極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用してもよい。例えば、金属箔シートとして、アルミニウム箔を採用してもよい。複合集電体は、高分子材料基層と、高分子材料基層の少なくとも一つの表面上に形成された金属層とを含んでもよい。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)上に形成することによって形成されてもよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、正極活物質は、当分野でよく知られている電池用の正極活物質をさらに含んでもよい。例として、正極活物質は、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩、リチウム遷移金属酸化物及びそれぞれの改質化合物のうちの少なくとも一つの材料を含んでもよい。しかし、本出願は、これらの材料に限定されず、さらに電池の正極活物質として使用可能な他の従来の材料を使用してもよい。これらの正極活物質は、単独で一つのみを使用してもよく、二つ以上を組み合わせて使用してもよい。ここで、リチウム遷移金属酸化物の例は、リチウムコバルト酸化物(例えば、LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(例えば、LiNiO)、リチウムマンガン酸化物(例えば、LiMnO、LiMn)、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(例えば、LiNi1/3 Co1/3Mn1/3(NCM333と略されてもよい)、LiNi0.5Co0.2Mn0.3(NCM523と略されてもよい)、LiNi0.5Co0.25Mn0.25(NCM211と略されてもよい)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2(NCM622と略されてもよい)、LiNi0.8Co0.1Mn0.1(NCM811と略されてもよい)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えば、LiNi0.85Co0.15Al0.05)及びその改質化合物などのうちの少なくとも一つを含んでもよいが、それらに限られない。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例は、リン酸鉄リチウム(例えば、LiFePO(LFPと略されてもよい))、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガンリチウム(例えば、LiMnPO)、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素との複合材料のうちの少なくとも一つを含んでもよいが、それらに限られない。正極膜層の総重量に基づき、前記正極活物質の正極膜層における重量比は、80~100重量%である。
【0056】
いくつかの実施形態では、正極膜層は、任意選択的に接着剤をさらに含む。例として、前記接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びフッ素含有アクリレート樹脂のうちの少なくとも一つを含んでもよい。正極膜層の総重量に基づき、前記接着剤の正極膜層における重量比は、0~20重量%である。
【0057】
いくつかの実施形態では、正極膜層は、任意選択的に導電剤をさらに含む。例として、前記導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、及びカーボンナノファイバーのうちの少なくとも一つを含んでもよい。正極膜層の総重量に基づき、前記導電剤の正極膜層における重量比は、0~20重量%である。
【0058】
いくつかの実施形態では、以下の方式によって正極板を製造してもよい。正極板を製造するための上記成分、例えば正極活物質、導電剤、接着剤と任意の他の成分を溶媒(例えばN-メチルピロリドン)中に分散させて、正極スラリーを形成し、ここで前記正極スラリーの固形分含有量が40~80wt%であり、室温下での粘度を5000~25000mPa・sに調整し、正極スラリーを正極集電体の表面に塗覆し、乾燥後に冷間圧延機による冷間プレスを経て正極板を形成し、正極粉末塗布の単位面密度は、150~350mg/mであり、正極板の圧密密度は、3.0~3.6g/cmであり、任意選択的に3.3~3.5g/cmである。前記圧密密度の計算式は、
圧密密度=塗布面密度/(押圧後の極板厚さ-集電体厚さ)である。
【0059】
[負極板]
負極板は、負極集電体と、負極集電体の少なくとも一つの表面上に設置される負極膜層とを含み、前記負極膜層は、負極活物質を含む。
【0060】
例として、負極集電体は、それ自体の厚さ方向において対向する二つの表面を有し、負極膜層は、負極集電体の対向する二つの表面のいずれか一方又は両方上に設置される。
【0061】
いくつかの実施形態では、前記負極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用してもよい。例えば、金属箔シートとして、銅箔を採用してもよい。複合集電体は、高分子材料基層と、高分子材料基材の少なくとも一つの表面上に形成された金属層とを含んでもよい。複合集電体は、金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)上に形成することによって形成されてもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、負極活物質は、当分野でよく知られている電池用の負極活物質を採用してもよい。例として、負極活物質は、人造黒鉛、天然黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、シリコーン系材料、スズ系材料及びチタン酸リチウムなどの材料のうちの少なくとも一つを含んでもよい。前記シリコーン系材料は、シリコーン単体、シリコーン酸化物、シリコーン炭素複合体、シリコーン窒素複合体及びシリコーン合金のうちの少なくとも一つから選択されてもよい。前記スズ系材料は、スズ単体、スズ酸化物及びスズ合金のうちの少なくとも一つから選択されてもよい。しかし、本出願は、これらの材料に限定されず、さらに電池の負極活物質として使用可能な他の従来の材料を使用してもよい。これらの負極活物質は、単独で一つのみを使用してもよく、二つ以上を組み合わせて使用してもよい。負極膜層の総重量に基づき、前記負極活物質の負極膜層における重量比は、70~100重量%である。
【0063】
いくつかの実施形態では、負極膜層は、任意選択的に接着剤をさらに含む。前記接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの少なくとも一つから選択されてもよい。負極膜層の総重量に基づき、前記接着剤の負極膜層における重量比は、0~30重量%である。
【0064】
いくつかの実施形態では、負極膜層は、任意選択的に導電剤をさらに含む。導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、及びカーボンナノファイバーのうちの少なくとも一つから選択されてもよい。負極膜層の総重量に基づき、前記導電剤の負極膜層における重量比は、0~20重量%である。
【0065】
いくつかの実施形態では、負極膜層は、任意選択的に他の助剤、例えば増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na))などをさらに含む。負極膜層の総重量に基づき、前記他の助剤の負極膜層における重量比は、0~15重量%である。
【0066】
いくつかの実施形態では、以下の方式によって負極板を製造してもよい。負極板を製造するための上記成分、例えば負極活物質、導電剤、接着剤と任意の他の成分を溶媒(例えば脱イオン水)中に分散させて、負極スラリーを形成し、ここで前記負極スラリーの固形分含有量が30~70wt%であり、室温下での粘度を2000~10000mPa・sに調整し、得られた負極スラリーを負極集電体に塗覆し、乾燥工程を経て、冷間プレス例えばロールにかけて、負極板を得る。負極粉末塗布の単位面密度は、75~220mg/mであり、負極板の圧密密度は、1.2~2.0g/mである。
【0067】
[電解質]
電解質は、正極板と負極板との間でイオンを伝導する作用を果たす。本出願は、電解質の種類を具体的に制限せず、需要に応じて選択することができる。例えば、電解質は、液体、ゲル状又は全固体であってもよい。
【0068】
いくつかの実施形態では、前記電解質は、電解液を採用する。前記電解液は、電解質塩と溶媒とを含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、電解質塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiTFS)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム(LiDFOP)及びテトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム(LiTFOP)のうちの一つ又は複数から選択されてもよい。前記電解質塩の濃度は、一般的には0.5~5mol/Lである。
【0070】
いくつかの実施形態では、溶媒は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)及びエチルメチルスルホン(EMS)とジエチルスルホン(ESE)のうちの一つ又は複数から選択されてもよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、前記電解液は、任意選択的に添加剤をさらに含む。例えば添加剤は、負極膜形成添加剤と、正極膜形成添加剤とを含んでもよく、電池のいくつかの性能を改善できる添加剤、例えば電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温又は低温性能を改善する添加剤などをさらに含んでもよい。
【0072】
[セパレータ]
いくつかの実施形態では、二次電池には、セパレータがさらに含まれる。本出願は、セパレータの種類に対して特に限定せず、良好な化学的安定性と機械的安定性を有する任意公知の多孔質構造のセパレータを選択してもよい。
【0073】
いくつかの実施形態では、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリビニリデンフルオライドのうちの少なくとも一つから選択されてもよい。セパレータは、単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよく、特に制限はない。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は、同じであってもよく、異なってもよく、特に制限はない。
【0074】
いくつかの実施形態では、前記セパレータの厚さは、6~40μmであり、任意選択的に12~20μmである。
【0075】
いくつかの実施形態では、正極板と負極板とセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリを製造してもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、二次電池は、外装体を含んでもよい。この外装体は、上記電極アセンブリ及び電解質のパッケージングに用いられてもよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、二次電池の外装体は、硬質ケース、例えば硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、鋼製ケースなどであってもよい。二次電池の外装体は、パウチ、例えば袋状パウチであってもよい。パウチの材質は、プラスチックであってもよく、プラスチックとして、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート及びポリブチレンサクシネートなどであってもよい。
【0078】
本出願は、二次電池の形状に対して特に限定せず、それは、円筒型、四角形又は他の任意の形状であってもよい。例えば、図1は、一例としての四角形構造の二次電池5である。
【0079】
いくつかの実施形態では、図2を参照すると、外装体は、ケース51とカバープレート53とを含んでもよい。ここで、ケース51は、底板と、底板上に接続された側板とを含んでもよく、底板と側板とで取り囲んで収容キャビティを形成する。ケース51は、収容キャビティに連通する開口を有し、カバープレート53は、前記開口をカバーして設けられることによって前記収容キャビティを閉鎖することができる。正極板と負極板とセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、前記収容キャビティ内にパッケージングされる。電解液は、電極アセンブリ52に浸潤する。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は、一つ又は複数であってもよく、当業者は、実際の具体的な需要に応じて選択することができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、二次電池は、電池モジュールに組み立てられてもよく、電池モジュールに含まれる二次電池の数は、一つ又は複数であってもよく、具体的な数は、当業者が電池モジュールの応用と容量に基づいて選択することができる。
【0081】
図3は、一例としての電池モジュール4である。図3を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長手方向に沿って順に並べて設置されてもよい。無論、任意の他の方式に従って配置されてもよい。さらに、該複数の二次電池5を締め具で固定してもよい。
【0082】
任意選択的に、電池モジュール4は、収容空間を有するハウジングをさらに含んでもよく、複数の二次電池5は、該収容空間に収容される。
【0083】
いくつかの実施形態では、上記電池モジュールは、さらに電池パックに組み立てられてもよく、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、一つ又は複数であってもよく、具体的な数は、当業者が電池パックの応用と容量に基づいて選択することができる。
【0084】
図4図5は、一例としての電池パック1である。図4図5を参照すると、電池パック1には、電池ボックスと、電池ボックスに設置された複数の電池モジュール4とが含まれてもよい。電池ボックスは、上部筐体2と下部筐体3とを含み、上部筐体2は、下部筐体3をカバーして設けられて、電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成することができる。複数の電池モジュール4は、任意の方式に従って電池ボックスの中に配置されてもよい。
【0085】
また、本出願は、電力消費装置をさらに提供し、前記電力消費装置は、本出願による二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少なくとも一つを含む。前記二次電池、電池モジュール、又は電池パックは、前記電力消費装置の電源として用いられてもよく、前記電力消費装置のエネルギー貯蔵ユニットとして用いられてもよい。前記電力消費装置は、モバイル機器(例えば、携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクータ、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどを含んでもよいが、それらに限定されない。
【0086】
前記電力消費装置として、その使用上の需要に応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0087】
図6は、一例としての電力消費装置である。該電力消費装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。該電力消費装置の、二次電池の高パワーと高いエネルギー密度に対する需要を満たすために、電池パック又は電池モジュールを採用することができる。
【0088】
別の例としての装置は、携帯電話、タブレットコンピュータ、ノートパソコンなどであってもよい。該装置は、一般的には軽量化が求められており、二次電池を電源として採用することができる。
【0089】
実施例
本出願が解決しようとする技術的課題、技術案及び有益な効果をより明確にするために、以下、実施例及び図面を結び付けながら本出願をさらに詳細に説明する。明らかなように、記述された実施例は、本出願の一部の実施例に過ぎず、すべての実施例ではない。以下の少なくとも一つの例示的な実施例についての記載は、本質的に説明するためのものに過ぎず、決して本出願及びその応用に対する如何なる限定ではない。本出願の実施例に基づいて、当業者が創造的な労力を払わない前提で得られるすべての他の実施例は、いずれも本出願の保護範囲に属する。
【0090】
実施例において具体的な技術又は条件が明記されていない場合、当技術分野の文献に記述されている技術若しくは条件、又は製品取扱説明書に従って行う。使用する試薬又は計器について、製造メーカーが明記されていないものは、いずれも市販で購入できる一般的な製品である。
【0091】
一、製造実施例
正極活物質の製造
製造実施例1
(1)正極活物質前駆体の製造:連続撹拌槽型反応器の容器において、硫酸ニッケルと、硫酸マンガンと、硫酸コバルトとを、Ni:Co:Mn=8:1:1のモル比(各元素に基づき)で脱イオン水に加えて、総モル濃度が2mol/Lの遷移金属塩溶液を調製し、沈殿剤としての4mol/Lの水酸化ナトリウムと、錯化剤としての0.4mol/Lのアンモニア水とを加え、pH11.3で24時間共沈反応させることにより大粒子リチウム多結晶三元系正極材料Aの前駆体Ni0.8Co0.1Mn0.1(OH)を製造した。硫酸ニッケルと、硫酸マンガンと、硫酸コバルトとを、Ni:Co:Mn=8:1:1のモル比で脱イオン水に加えて、総モル濃度が2mol/Lの遷移金属塩溶液を調製し、沈殿剤としての4mol/Lの水酸化ナトリウムと、錯化剤としての0.4mol/Lのアンモニア水とを加え、pH11.4で24時間共沈反応させることにより小粒子単結晶三元系正極活物質Bの前駆体Ni0.8Co0.1Mn0.1(OH)を製造した。硫酸ニッケルと、硫酸マンガンと、硫酸コバルトとを、Ni:Co:Mn=55:12:33のモル比で脱イオン水に加えて、総モル濃度が2mol/Lの遷移金属塩溶液を調製し、沈殿剤としての4mol/Lの水酸化ナトリウムと、錯化剤としての0.4mol/Lのアンモニア水とを加え、pH11.4で24時間共沈反応させることにより小粒子単結晶三元系正極活物質Cの前駆体Ni0.55Co0.12Mn0.33(OH)を製造した。
【0092】
(2)正極活物質Aの製造方法:上記正極活物質Aの前駆体Ni0.8Co0.1Mn0.1(OH)と、Li含有化合物のLiOH・HOとを、1:1.05のモル比で高速混合機に入れて材料混合を行い、そしてキルンに入れて800℃で5時間焼結し、室温まで冷却してからジェットミルに投入し、5時間機械粉砕して正極活物質AのLi(Ni0.8Co0.1Mn0.1)Oが得られた。上記正極活物質Aと、活物質Aに基づく0.3wt%のAlとを高速混合機に入れて材料混合を行い、そしてキルンに入れて500℃で5h焼結し、正極活物質Aの被覆層が形成され、表面修飾された正極活物質Aが得られた。
【0093】
(3)正極活物質Bの製造方法:上記正極活物質Bの前駆体Ni0.8Co0.1Mn0.1(OH)と、Li含有化合物のLiOH・HOとを、1:1.05のモル比で高速混合機に入れて材料混合を行い、そしてキルンに入れて850℃で5h焼結し、室温まで冷却してからジェットミルにより5時間機械粉砕して正極活物質BのLi(Ni0.8Co0.1Mn0.1)Oが得られた。上記正極活物質Bと、0.2wt%の被覆元素Al含有の化合物Alとをプラウローラ/高速混合機に入れて材料混合を行い、そしてキルンに入れて500℃で5h焼結し、正極活物質Bの被覆層が形成され、表面修飾された正極活物質Bが得られた。
【0094】
(4)正極活物質Cの製造方法:上記正極活物質Cの前駆体Ni0.55Co0.12Mn0.33(OH)と、Li含有化合物の炭酸リチウムとを、1:1.1のモル比で高速混合機に入れて材料混合を行い、そしてキルンに入れて700℃で5h焼結し、室温まで冷却してからジェットミルにより5時間機械粉砕して正極活物質CのLi(Ni0.55Co0.12Mn0.33)Oが得られた。上記正極活物質Cと、0.2wt%の、質量比が1:1である酸化アルミニウムAl及び酸化チタンTiOの混合物とを高速混合機に入れて材料混合を行い、そしてキルンに入れて500℃で5h焼結し、正極活物質Cの被覆層が形成され、表面修飾された正極活物質Cが得られた。
【0095】
(5)上記正極活物質Aと、正極活物質Bと、正極活物質Cとを、質量比7:2:1の比率で高速混合機に入れて均一に混合して、本発明の正極活物質が得られ、その各パラメータをまとめて表1に示す。
【0096】
実施例2~19の正極活物質と比較例1~8の正極活物質は、実施例1の正極活物質の製造方法と似ている。しかし、各活物質の種類、組成、粒径と結晶タイプを変更した。異なる完成品のパラメータは、表1に示すとおりである。
【0097】
表1 各実施例と比較例の正極活物質の関連パラメータ
【0098】
【表1】
【0099】
二、応用実施例
実施例1
1)正極板の製造
製造実施例1の正極活物質と、導電カーボンブラックSPと、接着剤PVDFとを98:1:1の重量比で溶媒NMP中に分散させて均一に混合し、正極スラリーが得られ、正極スラリーを正極集電体のアルミニウム箔に均一に塗布し、乾燥、冷間プレスを経て、正極板が得られ、その単位面積の塗覆量は、0.27g/1540.25mmであり、その圧密密度は、表1にまとめられている。
【0100】
2)負極板の製造
負極活物質の黒鉛と、増粘剤のカルボキシメチルセルロースナトリウムと、接着剤のスチレンブタジエンゴムと、導電剤のアセチレンブラックとを97:1:1:1の質量比で混合し、脱イオン水を加え、真空撹拌機の作用下で負極スラリーが得られ、負極スラリーを銅箔に均一に塗覆し、銅箔を室温で干してから120℃の乾燥箱に移して1h乾燥し、そして冷間プレス、スリット加工を経て負極板が得られ、その単位面積の塗覆量は、0.17g/1540.25mmである。
【0101】
3)セパレータ
厚さ12μmのポリプロピレン製セパレータを用いた。
【0102】
4)電解液の製造
有機溶媒は、エチレンカーボネート(EC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを含有する混合液であり、ここで、ECと、EMCと、DECとの体積比は、20:20:60である。含水量<10ppmのアルゴンガス雰囲気のグローブボックスにおいて、十分に乾燥したリチウム塩LiPF6を有機溶媒中に溶解させ、均一に混合して、電解液が得られた。ここで、リチウム塩の濃度は、1mol/Lである。
【0103】
5)電池の製造
正極板と、セパレータと、負極板とを順に積層し、隔離作用を果たすようにセパレータを正負極板の間に位置させ、方形のベアセルに捲回してから、アルミニウムプラスチックフィルムに装入し、そして80℃でベーキングして水分を除去した後に、該当する非水電解液を注入してシールし、静置、熱間冷間プレス、化成、クランプ、容量選別などの工程を経て、完成品の電池が得られた。
【0104】
実施例2~19の二次電池と比較例1~8の二次電池は、実施例1の二次電池の製造方法と似ている。しかし、対応する製造実施例の正極活物質を使用した。
【0105】
三、電池の性能テスト
1.高温サイクル性能テスト
電池を60℃の乾燥箱に入れて、2h静置し、60℃の電池温度を維持してから充放電テストを行った。1Cの電流で3.65Vまで定電流充電し、引き続いて定電圧で充電し、充電電流が0.05C未満になってからオフし、5min休止し、1Cの電流で2.8Vまで定電流放電し、5min休止した。以上を電池の一つの充放電サイクルとして、電池容量が初期値の80%に減衰するまで繰り返し、サイクル回数を記録した。
【0106】
2.高温ガス発生テスト
電池の高温ガス発生テスト方法として、電池を1Cで4.35Vまで満充電した後に、70℃の恒温箱に入れて30日静置した。排水法によって電池の初期体積と30日静置後の体積を測定し、電池の体積膨張率が得られた。電池の体積膨張率(%)=(30日静置後の体積/初期体積-1)×100%である。
【0107】
3.電池のグラム容量テスト
電池の容量テストとして、リチウムイオン電池を25℃の恒温環境下で2h静置し、そして2.8V~4.35Vで、1/3Cに従って4.35Vまで充電し、そして4.35Vで電流≦0.05mAになるまで定電圧充電し、5min静置し、そして1Cに従って2.8Vまで放電し、該電池の容量Cを記録した。
【0108】
前記グラム容量=前記電池の容量C(mAh)/正極活物質の質量(g)である。
【0109】
4.高温保存性能テスト
25℃で、電池を0.33Cのレートで4.35Vまで定電流充電し、さらに電流が0.05C以下になるまで定電圧充電し、さらに0.33Cレートで2.8Vまで定電流放電し、テストして電池の初期放電容量が得られた。25℃で、電池を0.33Cのレートで4.35Vまで定電流充電し、さらに電流が0.05C以下になるまで定電圧充電し、それから満充電状態の電池を60℃の乾燥箱に入れて60日保存した。60日高温保存した後の電池を取り出して、25℃まで自然降温させ、0.33Cレートで2.8Vまで定電流放電し、それから0.33Cのレートで4.35Vまで定電流充電し、さらに電流が0.05C以下になるまで定電圧充電し、さらに0.33Cレートで2.8Vまで定電流放電し、テストして電池の60日高温保存後の放電容量が得られた。
【0110】
電池の60日高温保存後の容量維持率(%)=60日高温保存後の放電容量/初期放電容量×100%である。
【0111】
四、各実施例、比較例のテスト結果
上記方法に従って各実施例と比較例の電池をそれぞれ製造し、各性能パラメータを測定した。結果は、下表2に示すとおりである。
【0112】
表2 各比較例と実施例の電池の関連性能
【0113】
【表2】
【0114】
上記実施例と比較例から分かるように、多結晶高ニッケル大粒子の割合が大きいとき、混合正極材料を含む電池のグラム容量が顕著に向上するが、その粒子が高温条件下で分裂し、リチウムニッケルミキシングが深刻であるなどの問題が存在するため、その高温性能の低下を引き起こし、ガス発生などの副反応が深刻であることにより体積膨張率が高くなり、ニッケル含有量が高いほど、その特徴がより顕著となる。正極活物質が単結晶低ニッケルの活物質C(比較例3)のみを含むとき、電池内の副反応が少なく、高温サイクルと高温保存性能が高いが、高いエネルギー密度という需要を満たすことができず、一定比率の単結晶高ニッケルの活物質B(比較例6)を混合しても、そのエネルギー密度は、依然として低い。
【0115】
A、BとCを合理的に調整して混合することによって、混合三元系正極材料は、高ニッケル活物質の冷間プレス及びサイクルプロセスにおいて粒子が結晶粒界に沿って破砕し、比表面積が増加し、電子/イオンの輸送通路が破壊され、電解液により腐食するなどの問題を効果的に解決することができ、高温保存中におけるガス発生などの副反応を減らし、混合正極が高容量を保証したうえで優れた高温性能を備えるようにする。
【0116】
説明すべきこととして、本出願は、上記実施形態に限らない。上記実施形態は、例示であり、本出願の技術案の範囲内に技術的思想と実質的に同じ構成を有し、同じ作用効果を奏する実施形態は、いずれも本出願の技術範囲内に含まれる。なお、本出願の趣旨から逸脱しない範囲内で、実施形態に対して当業者が想到できる様々な変形を加え、実施形態における一部の構成要素を組み合わせて構成された他の形態も、本出願の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0117】
1電池パック
2上部筐体
3下部筐体
4電池モジュール
5二次電池
51ケース
52電極アセンブリ
53トップカバーアセンブリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-08-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質であって、
組成式が以下のとおりである活物質Aであって、
Lix1Nia1Cob1Mnc12-y1y1
式Iにおいて、0.95≦x1≦1.3、0.7≦a1≦0.99、0.01≦b1≦0.15、0.01≦c1≦0.3、a1+b1+c1=1、0≦y1≦0.1であり、ここでQがS、N、F、Cl、Br及びIから選択される一つ又は複数である前記活物質Aと、
組成式が以下のとおりである活物質Bであって、
Lix2Nia2Cob2Mnc22-y2y2 II
式IIにおいて、0.95≦x2≦1.3、0.7≦a2≦0.99、0.01≦b2≦0.15、0.01≦c2≦0.3、a2+b2+c2=1、0≦y2≦0.1であり、ここでQがS、N、F、Cl、Br及びIから選択される一つ又は複数である前記活物質Bと、
組成式が以下のとおりである活物質Cであって、
Lix3Nia3Cob3Mnc32-y3y3 III
式IIIにおいて、0.95≦x3≦1.3、0.3≦a3<0.7、0.01≦b3≦0.15、0.01≦c3≦0.5、a3+b3+c3=1、0≦y3≦0.1であり、ここでQがS、N、F、Cl、Br及びIから選択される一つ又は複数である前記活物質Cと、を含み、
ここで前記活物質Aの平均粒径Dv50は、前記活物質Bの平均粒径Dv50よりも大きく、且つ前記活物質Cの平均粒径Dv50よりも大きい、正極活物質。
【請求項2】
前記活物質Aは、平均粒径Dv50が7~15μmであり、任意選択的に8~14μmであり、Dv90が15~25μmであり、任意選択的に18~22μmであり、前記活物質Bは、平均粒径Dv50が1~8μmであり、任意選択的に2~5μmであり、Dv90が3~10μmであり、任意選択的に5~8μmであり、前記活物質Cは、平均粒径Dv50が1~7μmであり、任意選択的に2~5μmであり、Dv90が5~10μmであり、任意選択的に5~8μmである、ことを特徴とする請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記活物質Aと、前記活物質Bと、前記活物質Cとの含有量比は、1:0.5~8:0.1~10であり、任意選択的に1:0.8~6:0.2~8であり、さらに任意選択的に1:1.5~6:3~8である、ことを特徴とする請求項1に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記活物質Aと前記活物質Bとの含有量の和は、前記活物質Cの含有量に等しく、それぞれの含有量は、いずれも前記正極活物質の総重量に基づいて計算されるものである、ことを特徴とする請求項1に記載の正極活物質。
【請求項5】
前記正極活物質の比表面積は、0.3~1.8m/gであり、圧密密度は、3.0~3.6g/cmである、ことを特徴とする請求項1に記載の正極活物質。
【請求項6】
前記活物質A及び/又は前記活物質B及び/又は前記活物質Cは、M元素を含み、ここでMは、Zr、Sr、B、Ti、Mg、Sn及びAlのうちの一つ又は複数から選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の正極活物質。
【請求項7】
前記活物質A、前記活物質B、前記活物質Cにそれぞれ対応する化学式において、x1:x2:x3は、1:(0.73~1.37):(0.73~1.37)であり、a1:a2:a3は、1:(0.71~1.42):(0.31~1)である、ことを特徴とする請求項1に記載の正極活物質。
【請求項8】
前記活物質Aは、多結晶材料であり、前記活物質BとCは、擬単結晶又は単結晶材料である、ことを特徴とする請求項1に記載の正極活物質。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の正極活物質を含む、ことを特徴とする二次電池。
【請求項10】
請求項9に記載の二次電池を含む、ことを特徴とする電池モジュール。
【請求項11】
請求項10に記載の電池モジュールを含む、ことを特徴とする電池パック。
【請求項12】
請求項9に記載の二次電池、請求項10に記載の電池モジュール、又は請求項11に記載の電池パックから選択される少なくとも一つを含む、ことを特徴とする電力消費装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
任意の実施形態では、活物質Aは、平均粒径Dv50が7~15μmであり、任意選択的に8~14μmであり、Dv90が15~25μmであり、任意選択的に18~22μmであり、活物質Bは、平均粒径Dv50が1~8μmであり、任意選択的に2~5μmであり、Dv90が3~10μmであり、任意選択的に5~8μmであり、活物質Cは、平均粒径Dv50が1~7μmであり、任意選択的に2~5μmであり、Dv90が5~10μmであり、任意選択的に5~8μmである。これにより、各活物質の平均粒径をさらに限定することで、前記正極活物質を含む正極板の圧密密度をさらに向上させ、それによって該当する電池は、高いエネルギー密度と安全性を有すると同時に、良好な高温サイクル性能と高温保存性能を有する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
いくつかの実施形態では、活物質Aは、平均粒径Dv50が7~15μmであり、任意選択的に8~14μmであり、Dv90が15~25μmであり、任意選択的に18~22μmであり、活物質Bは、平均粒径Dv50が1~8μmであり、任意選択的に2~5μmであり、Dv90が3~10μmであり、任意選択的に5~8μmであり、活物質Cは、平均粒径Dv50が1~7μmであり、任意選択的に2~5μmであり、Dv90が5~10μmであり、任意選択的に5~8μmである。これにより、各活物質の平均粒径をさらに限定することによって、正極活物質の圧密密度をさらに向上させ、それによって該当する電池は、高いエネルギー密度と安全性を有すると同時に、良好な高温サイクル性能と高温保存性能を有する。
【国際調査報告】