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▶ アクト セラピューティクス リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】中枢神経系の処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 41/00 20200101AFI20240711BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240711BHJP
   A61K 47/30 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
A61K41/00
A61P25/00
A61K47/04
A61K47/06
A61K47/24
A61K47/42
A61K47/30
A61K9/08
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023560817
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(85)【翻訳文提出日】2023-11-29
(86)【国際出願番号】 EP2022058410
(87)【国際公開番号】W WO2022207704
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】2104590.1
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PLURONIC
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】522467183
【氏名又は名称】アクト セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】スヴェイン・クヴォーレ
(72)【発明者】
【氏名】ペル・クリスティアン・ソンタム
(72)【発明者】
【氏名】スピロス・コトポウリス
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ヨン・ヒーレイ
(72)【発明者】
【氏名】メリナ・ムーレンプフォルト
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC01
4C076CC27
4C076DD21
4C076DD35
4C076DD63
4C076EE01
4C076EE41
4C076FF12
4C076FF70
4C076GG50
4C084AA11
4C084MA16
4C084NA20
4C084ZA021
4C084ZA022
(57)【要約】
本発明は、中枢神経系(CNS)への治療剤の超音波媒介送達に関する。したがって、本発明は、処置のための脳及び脊髄への治療剤の送達に使用するためのクラスター組成物及び医薬組成物を提供する。本発明は更に、CNSの疾患、障害及び損傷の医学的処置を可能にするための治療剤の通過のために血液脳関門の透過性を増加させる組成物及び方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の中枢神経系(CNS)の疾患、障害又は損傷を処置する方法において使用するための微小気泡/微小液滴クラスター組成物を含む医薬組成物であって、前記使用は、超音波照射の少なくとも1つの工程が、前記CNSに向かって非侵襲的に、前記CNSに向かって侵襲的に、又は前記CNSの外の心臓若しくは脊髄若しくは頸動脈に向かって行われる音響クラスター療法(ACT)処置を含み、
(i)前記医薬組成物を前記対象に投与する工程であって、少なくとも1つの治療剤が、前記クラスター組成物とは別個に、事前に及び/又は同時に及び/又は事後に投与される、工程と、
(ii)任意選択で、超音波イメージングを使用して前記医薬組成物のクラスターをイメージングして、前記対象内の処置のための前記CNS内の関心領域を特定する工程と、
(iii)工程(i)からの前記クラスター組成物の前記微小液滴の拡散性成分の位相シフトを、第1の周波数及び第1のメカニカルインデックスでの超音波照射によって活性化する工程であって、
a)非侵襲的照射の場合、これは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱の外に配置された少なくとも1つのトランスデューサから、これを通した照射のために行われ、
b)侵襲的照射の場合、これは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱内の、少なくとも1つの外科的に埋め込まれたトランスデューサから行われ、
c)心臓又は脊髄又は頸動脈に向かって行われる照射の場合、これは、前記CNSの外の心臓又は脊髄又は頸動脈で行われる、工程と、
(iv)工程(i)で投与された前記少なくとも1つの治療剤の、前記CNS内の前記関心領域での溢出を容易にする第2の周波数及び第2のメカニカルインデックスで、超音波による更なる照射を行う工程であって、
a)非侵襲的照射の場合、これは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱の外に配置された少なくとも1つのトランスデューサから、これを通した照射のために行われ、
b)侵襲的照射の場合、これは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱内の、少なくとも1つの外科的に埋め込まれたトランスデューサから行われ、
c)工程(iii)においてc)に従って活性化する場合、この工程における更なる照射は、工程(iv)a)又は工程(iv)b)に従って非侵襲的又は侵襲的のいずれかで行われる、工程と、
を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記工程(iii)が、0.2~3MHzの範囲の第1の周波数と0.1~0.4の第1のMIを使用して前記CNSに向かって非侵襲的に行われる、請求項1に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記工程(iv)が、0.2~0.4MHzの範囲の第2の周波数と0.025~0.15の第2のMIを使用して、又は0.4~0.6MHzの範囲の周波数と0.1~0.3のMIを使用して、前記CNSに向かって非侵襲的に行われる、請求項1又は2に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記超音波照射が、頭蓋外半球型集束USアレイ、頭蓋外集束単一エレメントUSトランスデューサ、又は鼻若しくは眼のトランスデューサのいずれかによって非侵襲的に行われる、請求項2又は3に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記超音波照射が、前記工程(iii)において、1~10MHzの第1の周波数と0.1~0.4の第1のMIを使用して、前記CNSに向かって侵襲的に行われる、請求項1に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
工程(iv)が、0.2~0.4MHzの範囲の第2の周波数と0.025~0.15の第2のMIを使用して、又は0.4~0.6MHzの範囲の第2の周波数と0.1~0.3の第2のMIを使用して、前記CNSに向かって侵襲的に行われる、請求項5に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記超音波照射が、前記頭蓋骨又は脊柱を通して1つ以上の外科的に埋め込まれたUSトランスデューサによって行われる、請求項5又は6に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
工程(iii)における前記超音波照射が、前記CNSの外の心臓又は脊髄又は頸動脈に向かって1~10MHzの第1の周波数と0.1~0.4の第1のMIを使用して行われ、工程iv)の前記超音波照射が、前記CNSに向かって、0.2~0.4MHzの範囲の第2の周波数と0.025~0.15の第2のMIを使用して、又は0.4~0.6MHzの範囲の第2の周波数と0.1~0.3の第2のMIとを使用して非侵襲的又は侵襲的のいずれかで行われる、請求項1に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
工程(iii)の前記照射が、工程(i)の直後に開始され、工程(iv)の前記照射が直後に続く、請求項1~8のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記ACT処置の前記工程(i)~(iv)が1~4回繰り返される、請求項1~9のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
多剤処置の一部として用いられる、請求項1~10のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
工程(iii)の前記照射が30~120秒間続き、続いて工程(iv)の前記照射が3~10分間続く、請求項1~11のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
1~5種の治療剤が、一定の期間にわたって同時に又は連続して投与され、少なくとも1回の、例えば1~5回のACT処置が、同じ期間中に行われる、請求項1~12のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
同じ広帯域又は二周波数のUSトランスデューサが、工程(iii)の活性化照射及び工程(iv)の増強照射の両方で使用される、請求項1~13のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記クラスターが、3~10μmの範囲、好ましくは4~9μmの範囲の平均直径を有する、請求項1~14のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項16】
サイズ範囲1~10μmのクラスターのクラスター濃度が、少なくとも2500万個/mlである、請求項1~15のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1又は15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記微小気泡/微小液滴クラスターの前記微小気泡のガスが、六フッ化硫黄又はC3~6ペルフルオロカーボン又はその混合物を含む、請求項1~14のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1、15又は16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記微小気泡/微小液滴クラスターの前記微小液滴の油相が、部分的又は完全にハロゲン化された炭化水素又はその混合物を含む、請求項1~14のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1又は15~17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記微小気泡の前記ガスが、六フッ化硫黄、ペルフルオロプロパン、ペルフルオロブタン、ペルフルオロペンタン及びペルフルオロヘキサン又はそれらの混合物の群から選択され、前記微小気泡が、リン脂質、タンパク質及びポリマーの群から選択される第1の安定剤によって安定化され、
前記微小液滴の前記油相が、例えば、リン脂質、ポリマー、及びタンパク質を含む、界面活性剤の群から選択される第2の安定剤で安定化された、ペルフルオロカーボン、例えば、ペルフルオロシクロアルカンの群から選択される拡散性成分を含む、請求項1又は15~18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記治療剤が、化学療法剤、免疫療法剤、免疫腫瘍学的製剤、免疫調節薬、抗B細胞薬、抗炎症薬、抗菌薬、抗血管新生薬、抗うつ剤、抗けいれん剤、カンナビノイド薬、腫瘍壊死因子-α(TNF)阻害剤、ドーパミン前駆体、カテコール-o-メチルトランスフェラーゼ阻害剤、ドーパミンアゴニスト、モノアミンオキシダーゼB阻害剤、マンタジン、抗コリン作動剤、抗凝固剤、抗血小板薬、組織プラスミノゲン活性化剤(tPA)及びコリンエステラーゼ阻害剤の薬物種の群から選択される、請求項1~14のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び15~19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記治療剤が、ビヒクルで製剤化されており、例えば、リポソーム、ミセル、コンジュゲート、ナノ粒子、コア架橋ポリマーミセル(CCPM)、若しくはマイクロスフェアの形態で含まれているか、又は遺伝子、抗菌ペプチド、幹細胞及びアプタマーの群から選択される、請求項1~14のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び15~20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記治療剤、又は前記治療剤の製剤化された形態が、500ダルトンを超える分子量を有する、請求項1~14のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び15~21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記使用が、CNSがん、脳卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症(MS)、外傷性脳損傷、自己免疫性脳疾患(AIBD)又は筋萎縮性側索硬化症(ALS)のいずれかの処置のためである、請求項1~14のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び15~22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記クラスター組成物が、前記微小気泡/微小液滴クラスター組成物を調製する第1の成分の微小気泡と第2の成分の微小液滴とを組み合わせてから3時間の時間枠内に投与される、請求項1~14のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び15~22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
対象のCNSの疾患、障害又は損傷を処置する方法であって、前記方法は、超音波照射の少なくとも1つの工程が、前記CNSに向かって非侵襲的に、前記CNSに向かって侵襲的に、又は前記CNSの外の心臓若しくは脊髄若しくは頸動脈に向かって行われる音響クラスター療法(ACT)処置を含み、前記方法が、
(i)微小気泡/微小液滴クラスター組成物を含む医薬組成物を前記対象に投与する工程であって、少なくとも1つの治療剤が、前記クラスター組成物とは別個に、事前に及び/又は同時に及び/又は事後に投与される、工程と、
(ii)任意選択で、超音波イメージングを使用して前記医薬組成物のクラスターをイメージングして、前記対象内の処置のための前記CNS内の関心領域を特定する工程と、
(iii)工程(i)からの前記クラスター組成物の前記微小液滴の拡散性成分の位相シフトを、第1の周波数及び第1のメカニカルインデックスでの超音波照射によって活性化する工程であって、
a)非侵襲的照射の場合、これは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱の外に配置された少なくとも1つのトランスデューサから、これを通した照射のために行われ、
b)侵襲的照射の場合、これは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱内の、少なくとも1つの外科的に埋め込まれたトランスデューサから行われ、
c)心臓又は脊髄又は頸動脈に向かって行われる照射の場合、これは、前記CNSの外の心臓又は脊髄又は頸動脈で行われる、工程と、
(iv)工程(i)で投与された前記少なくとも1つの治療剤の、前記CNS内の前記関心領域での溢出を容易にする第2の周波数及び第2のメカニカルインデックスで超音波による更なる照射を行う工程であって、
a)非侵襲的照射の場合、これは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱の外に配置された少なくとも1つのトランスデューサから、これを通した照射のために行われ、
b)侵襲的照射の場合、これは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱内の、少なくとも1つの外科的に埋め込まれたトランスデューサから行われ、
c)工程(iii)においてc)に従って活性化する場合、この工程における更なる照射は、工程(iv)a)又は工程(iv)b)に従って非侵襲的又は侵襲的のいずれかで行われる、工程と、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、中枢神経系(CNS)への治療剤の超音波(US)媒介送達に関する。したがって、本発明は、処置のための脳及び脊髄への治療剤の送達に使用するためのクラスター組成物及び医薬組成物を提供する。本発明は更に、CNSの疾患、障害及び損傷の医学的処置を可能にするための治療剤の浸透のために血液脳関門の透過性を増加させる組成物及び方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
血管は、体全体に酸素及び必須栄養素を送達するための重要なインフラストラクチャを提供する。「血液脳関門」(BBB)という用語は、中枢神経系(CNS、脳及び脊髄)を血管形成する血管の独自の特徴を説明するために使用される。BBBは、単一の物理的実体ではなく、むしろ、血管透過性を制限する内皮細胞によって保有される一連の生理学的特性の複合的機能である。BBBは、循環血中の溶質が、ニューロンが存在する中枢神経系の細胞外液に非選択的に横断するのを防ぐ、高選択的な半透過性の内皮細胞の境界である。血液脳関門は、毛細血管壁の内皮細胞、毛細血管を覆う星細胞末端足、及び毛細血管基底膜に埋め込まれた周細胞によって形成される。このシステムは、受動拡散によるいくつかの選択された小分子の浸透、並びに神経機能に重要な様々な栄養素、イオン、有機アニオン、グルコース、水、及びアミノ酸の選択的かつ能動的な輸送を可能にする。血液脳関門は、脳脊髄液中への病原体の浸透、血液中の溶質及び大きな又は親水性分子の拡散を制限する一方で、小さい疎水性分子及び小さい極性分子の拡散を可能にする。血液脳関門はまた、シグナル伝達分子、抗体、及び免疫細胞等の末梢免疫因子のCNSへの浸透を制限し、したがって末梢免疫事象による損傷から脳を防護する。
【0003】
BBBは、脳への薬物送達における大きな障害であり、分子の浸透にサイズ的及び化学的な制限を課している。現在、BBBに浸透するための標準化された方法は存在しない。BBBは、脳の恒常性を維持し、不要な物質や有害な物質から脳を保護する。残念なことに、BBBは、物質の能動的な輸送が可能でない限り、98%超の小さな薬物及び全ての大きな治療分子が脳に入ることも阻止する。小分子薬物が薬理学的に有意な量でBBBを横断するためには、分子は、小さいサイズ及び高い脂質溶解度の両方を有しなければならない。したがって、無傷のBBBの存在は、抗がん剤及び抗ウイルス剤を含むほとんどの治療剤の分布、並びにこの生物学的障壁のために臨床実施に転換されない新規の治療アプローチを制限する。このため、多くの疾患、神経障害及び身体的損傷は処置できないままである。BBBを克服するための様々な戦略、例えば、直接頭蓋内注入、対流促進送達、利尿剤及び生体模倣薬が検討されてきた。これらのアプローチは、特異性の欠如、安全性の懸念、及び脳組織に十分な量の化合物を送達させる適切な濃度の達成失敗によって制限されている。血液脳関門を一時的に迂回する安全で有効な手段は、大きな分子、例えば抗体や成長因子を脳病理に直接送達させるために役立つ可能性がある。
【0004】
集束超音波(focused ultrasound)(FUS)と微小気泡(microbubble)との組合せが、2001年の導入以来、様々な前臨床環境でBBBの透過性を高めるために研究されてきた。簡単に述べると、投与された微小気泡を含む血管コンパートメントの超音波照射は、傍細胞的にかつ経細胞的に、内皮バリアの透過性を増加させる様々な生体力学的効果をもたらす。透過性の増加は、標的組織における薬物分子の溢出(extravasation)、分布及び取込みの増強をもたらす。このアプローチは現在、臨床試験で評価されている(ClinicalTrials.gov識別記号NCT02343991、NCT02253212、及びNCT03626896)。BBB破壊(BBBD)のためにFUSを使用するほとんどの研究が、市販の超音波造影剤の微小気泡、例えば、Definity(登録商標)、Sonovue(登録商標)又はOptison(登録商標)を使用しており、これらは全て、主に診断目的で設計及び最適化されている。処置戦略を改善するために、特注の微小気泡への薬物の組込みも調べられている。この概念には明らかにメリットがあるが、限界もある。微小気泡は、生体力学的効果を最大化するために内皮壁に接近する必要がある。しかしながら、通常の造影微小気泡は小さく(1~3μm)、血管壁までのそれらの平均距離は、多くの場合、有意義な生体力学的効果を誘導するには大きすぎる。更に、ほとんどの微小気泡の循環寿命は、典型的に2~3分程度であり、したがって曝露時間を制限する。微小気泡及び超音波(US)媒介送達機構は、in vivoで明確に実証されている[Chen, K-Tingら、「Theranostic Strategy of Focused Ultrasound Induced Blood-Brain Barrier Opening for CNS Disease Treatment」、Frontiers in Pharmacology、V10、2019年]。しかしながら、通常の造影微小気泡を使用するときに高出力USの適用が典型的に必要となることは、アプローチの安全性の問題を生じる生物学的作用を誘導する。更には、微小気泡内破が含まれるかなり激しい慣性キャビテーション機構、特に微小出血、及び不可逆的な血管損傷が観察される。これらのプロセスは、血管閉鎖、すなわち血管の崩壊(一時的又は永続的)につながる可能性もあり、潜在的に重大な臨床的安全性の帰結並びに薬物の非取込みを伴って血流灌流を事実上停止する。従来の微小気泡は、BBBの開口及び脳への薬物送達のための有望性を示しているが、これらの微小気泡は、治療のためではなく、画像診断のために開発されている。治療に向けて設計された微小気泡製剤が、最適な処置レジメンを可能にするために、おそらく必要とされている。
【0005】
国際公開第2015/047103号では、微小気泡/微小液滴(microdroplet)クラスター組成物を治療剤と共に投与し、標的病理に超音波照射することが、治療剤のみを単独で使用する場合と比較して、治療効果の増加をもたらし得るという超音波媒介標的送達の概念が提案されている。この概念は、音響クラスター療法(ACTソノポレーション又はACT)と呼ばれ、その後、一連の前臨床原理証明及び概念実証研究で検討されている。例えば、Aslundら、(2017)「Efficient enhancement of blood-brain barrier permeability using Acoustic Cluster Therapy(ACT)」、Theranostics 2017年;7:23は、ACT後にBBB透過性が増加し、分子モデル薬物の蓄積が増加することを示す、健常ラットを対象とした小規模パイロット研究の結果を提供している。この研究において、Aslundの超音波手法は、単一の周波数(1MHz)で、2つの異なるメカニカルインデックス(MI;活性化段階では0.28、その後の増強段階では0.09)で、USを適用することを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2015/047103号
【特許文献2】国際公開第99/53963号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Chen, K-Tingら、「Theranostic Strategy of Focused Ultrasound Induced Blood-Brain Barrier Opening for CNS Disease Treatment」、Frontiers in Pharmacology、V10、2019年
【非特許文献2】Aslundら、(2017)「Efficient enhancement of blood-brain barrier permeability using Acoustic Cluster Therapy(ACT)」、Theranostics 2017年;7:23
【非特許文献3】American Institute of Ultrasound in Medicine.、「Acoustic Output Measurement Standard for Diagnostic Ultrasound Equipment」、第1版、第2版、Laurel, MD: American Institute of Ultrasound in Medicine; 1998年、2003年
【非特許文献4】Beccaria, K.ら、「Blood-brain barrier disruption with low-intensity pulsed ultrasound for the treatment of paediatric brain tumours: a review and perspectives」、Neurosurg Focus、2020年1月1日;48(1)
【非特許文献5】Postema and Schmitz、「Ultrasonic bubbles in medicine: influence of the shell」、Ultrason Sonochem、2007年.14(4):438~44頁
【非特許文献6】Andersenら、「A Harmonic Dual-Frequency Transducer for Acoustic Cluster Therapy」、Ultrasound Med Biol、2019年9月;45(9):2381~2390頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そのように、脳への治療剤の送達、及びCNS疾患、障害又は損傷を有する対象の処置のための新しい代替の組成物及び方法が必要とされている。本発明者は、脳疾患及び障害を処置するためのACTの可能性を更に調査し、CNS疾患及び障害の送達及び処置のためのクラスター組成物の詳細な使用法を特定した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の簡単な概要
本発明は、中枢神経系(CNS)への治療剤の超音波媒介送達のための組成物及び方法、並びにCNSの疾患、障害及び損傷の処置に関する。本発明者は、音響クラスター療法(ACT(登録商標))を使用して、BBBの透過性を増加させ、治療剤をCNSに安全に通過させることができることを発見した。国際公開第2015/047103号に提示されているACTは、微小気泡/微小液滴クラスター組成物が治療剤と共に投与され、標的病理の超音波照射が、治療剤のみを単独で使用する場合と比較して治療効果の増加をもたらし得る、という超音波媒介標的送達の概念である。CNSに向けた利用可能な処置方法とは対照的に、本発明の組成物及び方法は、BBBの透過性を安全かつ一過性に増加させ、BBBを横断する薬物の送達を増加させ、治療有効性を改善し得ることを示した。微小気泡及び超音波(US)を使用して最適な治療結果を達成するためには、周波数及びパワー(メカニカルインデックス、MIとして記述される)に関して、US場を正確に制御する必要がある。しかしながら、CNSの制御されたUS照射は、骨構造によって著しく妨げられるため、本発明は、USデバイスを設定してUS標的化及び線量測定による必要な制御を可能にするためのいくつかの選択肢を開示し、詳細に説明する。更に、本方法の超音波照射の周波数を慎重に選択する特定の使用が、ACTの可能性を十分に利用して、共投与される治療剤のBBB透過の増加をもたらすことが確認された。更に、本発明者は、ACT技術と臨床的に関連する薬物担体とを組み合わせて、本発明の組成物及び方法の使用により、大きな治療剤も、BBBの横断が可能であるため、CNS治療に使用可能であることを証明した。BBBの透過性を増加させ、BBBを横断する臨床的に関連する薬物担体の送達を改善するACTの可能性が本明細書に示される。
【0010】
したがって、本発明は、対象のCNS疾患、障害又は損傷の処置に使用するための微小気泡/微小液滴クラスター組成物を提供する。同様に、本発明は、対象に微小気泡/微小液滴クラスター組成物を投与することを含む、CNS疾患、障害又は損傷の処置のための方法を提供する。本開示は、2つの成分、微小気泡/微小液滴のクラスター組成物であって、第1の成分としての微小気泡が、第2の成分としての微小液滴に、クラスター状に物理的に結合している微小気泡/微小液滴クラスター組成物が、BBB透過性を増加させる方法に使用することができ、BBBを横断する治療剤の送達の向上をもたらし、治療剤の治療有効性を改善させることができることを実証する。
【0011】
一態様では、本発明は、対象の中枢神経系(CNS)の疾患、障害又は損傷を処置する方法において使用するための微小気泡/微小液滴クラスター組成物を含む医薬組成物であって、使用は、超音波照射の少なくとも1つの工程が、CNSに向かって非侵襲的に、CNSに向かって侵襲的に、又はCNSの外の心臓若しくは脊髄若しくは頸動脈に向かって行われる音響クラスター療法(ACT)処置を含み、
(i)医薬組成物を対象に投与する工程であって、少なくとも1つの治療剤が、クラスター組成物とは別個に、事前に及び/又は同時に及び/又は事後に投与される、工程と、
(ii)任意選択で、超音波イメージングを使用して医薬組成物のクラスターをイメージングして、前記対象内の処置のためのCNS内の関心領域を特定する工程と、
(iii)工程(i)からのクラスター組成物の微小液滴の拡散性成分の位相シフトを、第1の周波数及び第1のメカニカルインデックスでの超音波照射によって活性化する工程であって、
a)非侵襲的照射の場合、これは、対象の脳頭蓋骨又は脊柱の外に配置された少なくとも1つのトランスデューサから、これを通した照射のために行われ、
b)侵襲的照射の場合、これは、対象の脳頭蓋骨又は脊柱内の、少なくとも1つの外科的に埋め込まれたトランスデューサから行われ、
c)心臓又は脊髄又は頸動脈に向かって行われる照射の場合、これは、CNSの外の心臓又は脊髄又は頸動脈で行われる、工程と、
(iv)工程(i)で投与された少なくとも1つの治療剤の、CNS内の関心領域での溢出を容易にする第2の周波数及び第2のメカニカルインデックスで、超音波による更なる照射を行う工程であって、
a)非侵襲的照射の場合、これは、対象の脳頭蓋骨又は脊柱の外に配置された少なくとも1つのトランスデューサから、これを通した照射のために行われ、
b)侵襲的照射の場合、これは、対象の脳頭蓋骨又は脊柱内の、少なくとも1つの外科的に埋め込まれたトランスデューサから行われ、
c)工程(iii)においてc)に従って活性化する場合、この工程における更なる照射は、工程(iv)a)又は工程(iv)b)に従って非侵襲的又は侵襲的のいずれかで行われる、工程と、
を含む、医薬組成物を提供する。
【0012】
同様に、本発明は、対象のCNS疾患、障害又は損傷を処置する方法であって、方法は、超音波照射の少なくとも1つの工程が、CNSに向かって非侵襲的に、CNSに向かって侵襲的に、又はCNSの外の心臓若しくは脊髄若しくは頸動脈に向かって行われる音響クラスター療法(ACT)処置を含み、方法が、
(i)微小気泡/微小液滴クラスター組成物を含む医薬組成物を対象に投与する工程であって、少なくとも1つの治療剤が、クラスター組成物とは別個に、事前に及び/又は同時に及び/又は事後に投与される、工程と、
(ii)任意選択で、超音波イメージングを使用して医薬組成物のクラスターをイメージングして、前記対象内の処置のためのCNS内の関心領域を特定する工程と、
(iii)工程(i)からのクラスター組成物の微小液滴の拡散性成分の位相シフトを、第1の周波数及び第1のメカニカルインデックスでの超音波照射によって活性化する工程であって、
a)非侵襲的照射の場合、これは、対象の脳頭蓋骨又は脊柱の外に配置された少なくとも1つのトランスデューサから、これを通した照射のために行われ、
b)侵襲的照射の場合、これは、対象の脳頭蓋骨又は脊柱内の、少なくとも1つの外科的に埋め込まれたトランスデューサから行われ、
c)心臓又は脊髄又は頸動脈に向かって行われる照射の場合、これは、CNSの外の心臓又は脊髄又は頸動脈で行われる、工程と、
(iv)工程(i)で投与された少なくとも1つの治療剤の、CNS内の関心領域での溢出を容易にする第2の周波数及び第2のメカニカルインデックスで、超音波による更なる照射を行う工程であって、
a)非侵襲的照射の場合、これは、対象の脳頭蓋骨又は脊柱の外に配置された少なくとも1つのトランスデューサから、これを通した照射のために行われ、
b)侵襲的照射の場合、これは、対象の脳頭蓋骨又は脊柱内の、少なくとも1つの外科的に埋め込まれたトランスデューサから行われ、
c)工程(iii)においてc)に従って活性化する場合、この工程における更なる照射は、工程(iv)a)又は工程(iv)b)に従って非侵襲的又は侵襲的のいずれかで行われる、工程と、
を含む、方法を提供する。
図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、CNSのACT処置に関連する活性化照射及び増強照射のための様々な超音波デバイス及び設定を視覚化したものを提供する。例示されるトランスデューサは、イメージングのためにも使用され得る。パネルA:活性化照射及び増強照射の両方のための、頭蓋外半球型(非侵襲的)集束超音波アレイ(例えば、ExAblate(登録商標)及びNaviFUS(登録商標))、B:活性化照射及び増強照射の両方のための頭蓋外(非侵襲的)単一エレメント集束デバイス、C:心臓又は頸動脈又は脊髄動脈に向かって外部トランスデューサによって行われる活性化照射と、増強照射のための頭蓋外半球型集束超音波アレイとの組合せ、D:心臓又は頸動脈若しくは脊髄動脈に向かって外部トランスデューサによって行われる活性化照射と、増強照射のための頭蓋外単一エレメント集束デバイスとの組合せ、E:埋込型(侵襲的)非集束シングルエミッタUSデバイス(例えば、SonoCloud(登録商標)-1)、及びF:埋込型非集束9エミッタUSデバイス(例えば、SonoCloud(登録商標)-9)。番号1:複数の超音波トランスデューサを備えたヘルメット、2:超音波場の最適な結合のための水又はゲル、3:照射予定の標的/関心領域、4:単一のエレメント又はアレイ超音波トランスデューサ、5:クラスター組成物の、例えば頸動脈における活性化のための単一のエレメント又はアレイ超音波トランスデューサ、6:脳への頸動脈、7:単一のエレメント又はアレイ超音波トランスデューサ。
図2図2は、クラスターサイズ対in vivo生成物の有効性を視覚化したものであり、Y軸は、USイメージングからのグレースケール増強(すなわち、活性化後に堆積した気泡の量)についての計算された相関係数を示し、X軸は、μmでのクラスター直径を示す。
図3図3は、クラスター組成物の超音波活性化後の大きな気泡の集団の減衰スペクトルを示す。Y軸は、減衰をdB/cm単位で示す。X軸は、周波数をMHz単位で示す。
図4A図4Aは、入射US場の様々な周波数及びメカニカルインデックス(MI)の低周波数増強照射場に対する活性化気泡の応答のモデリングからの結果を示す。静止時の気泡直径は20μmであり、入射場は、各パネルに記載されている周波数及びMIを含む8サイクルで構成された。Y軸は、活性化気泡の直径をμm単位で示す。X軸は、時間をμ秒単位で示す。
図4B図4Bは、様々なメカニカルインデックス(MI)を用いた0.25MHzの低周波増強照射場での活性化気泡の応答のモデリングからの結果を示す。静止時の気泡直径は20μmであり、入射場は、各パネルに記載されている周波数及びMIを含む8サイクルで構成された。Y軸は、活性化気泡の直径をμm単位で示す。X軸は、時間をμ秒単位で示す。
図5図5は、0.500MHzと0、0.1、0.2、0.3及び0.4(下部パネル)のメカニカルインデックス(MI)での増強工程照射場を用いたACT処置の際の、蛍光色素(エバンスブルー)の腫瘍特異的取込みの結果を示す。Y軸は、mgエバンスブルー/mg腫瘍組織単位での腫瘍特異的取込みを示す。X軸は、メカニカルインデックスを示す。4つの上部パネルは、調べた様々なMIでの入射US場に対する活性化気泡の応答のモデリングの結果を示す。Y軸は、活性化気泡の直径をμm単位で示す。X軸は、時間をμ秒単位で示す。
図6図6は、マウスにおける前立腺がんの処置のためのnab-パクリタキセル(nab-PTX)±ACTの治療有効性に関する結果を示す。Y軸は、処置された全ての動物に対する全生存を%単位で示す。X軸は、試験開始後の時間を日数単位で示す。群:生理食塩水対照(灰色の点線);nab-PTX単独; nab-PTX + 増強場0.5MHz(MI0.2)を用いたACT(黒色の点線);及びnab-PTX + 増強場0.9MHz(MI 0.2)を用いたACT(灰色の実線)。
図7図7は、マウスにおける乳がんの処置のためのnab-パクリタキセル±ACTの治療有効性の結果を示す。Y軸は、正規化された腫瘍直径を示す。X軸は、試験開始後の時間を日数単位で示す。群:生理食塩水対照(黒、中抜き四角形);nab-PTX単独(黒、中抜き円);nab-PTX + 増強場MI0.1(0.5MHz)を用いたACT(灰色、中塗り円);及びnab-PTX + 増強場MI0.2(0.5MHz)を用いたACT(黒色、中塗り円)。
図8図8は、超音波活性化及び増強を含むACTソノポレーション手順の適用のための、実施例4の試験で使用した装置の設定の略図を示す。数字は、以下を示す:1- アンプ、2- シグナル発生器、3- 周波数のスイッチボックス(0.5MHzと2.7MHzとの間)、4- 二周波数トランスデューサ、5- 水を充填した円錐体、6- 水を充填したバッグ、7- 超音波ゲル、8- 伏せた姿勢のマウス、9- イヤーバー、10- 音響吸収パッド。
図9図9は、実施例4:血液脳関門を横断するナノ粒子のACT誘導送達の試験からの結果の箱ひげ図を示す。上部パネル:脳組織へのコア架橋ポリマーミセル(CCPM)の取込みの近赤外線蛍光(NIRF)イメージングからの代表的な写真。ACT処置の1時間後及び24時間後の対照脳及びACT処置脳。左下パネル:Y軸は、NIRFによって測定された取込みを、ACT処置1時間後及び24時間後における対照群及びACT群の脳組織1グラムあたりの注射用量のパーセントとして示す。黒色の中塗り円は、個々の観察結果を表す。線及びアスタリスクは、t検定から得られた群間の統計的有意性(***p<0.001)を示す。右下パネル:Y軸は、共焦点顕微鏡によって測定された取込みを、ACT処置1時間後の対照群及びACT群についてのCCPMを含有する脳面積のパーセントとして示す。黒色の中塗り円は、個々の観察結果を表す。線及びアスタリスクは、マン=ホイットニーの順位和検定から得られた群間の統計的有意性(*p<0.05)を示す。
図10図10は、実施例4:ラット腸間膜動脈における活性化気泡の生体内顕微鏡(intravital microscopy)検査からの結果を示す。それぞれ、(a)注射前、(b)血流を遮断する微小血管内注射の17秒後、(c)1分9秒後、(d)5分9秒後、(e)8分19秒後、(f)8分45秒後、及び(g)8分56秒後の腸間膜内の活性化位相シフト気泡(黒い矢印によって示される)の動画フレーム。活性化位相シフト気泡(矢印で示す)は、8分56秒後に完全に消失する前に、断続的な滞留及び移動によって微小血管内で徐々に縮小及び前進する。図10(h)は、10μmの分量単位を有するスケールバーを示す。
図11図11は、実施例5:心臓におけるクラスター活性化後の脳内の活性化された大きな気泡の堆積についての実験設定の概略図を示す。1:クラスター組成物のi.v.注射、2:心臓における活性化のためのトランスデューサ、3:活性化された大きな気泡を脳に輸送するための頸動脈、及び4:活性化された気泡の堆積を検出するためのイメージングトランスデューサ。
図12図12は、実施例5:2匹の動物(点線及び実線)についての心臓におけるクラスター活性化後の脳内の活性化された大きな気泡の堆積からの結果を示す。Y軸は、脳内のコントラスト増強(dB)を示す。X軸は、心臓における活性化後の分を示す。
図13図13は、がんの処置のための、標準治療併用免疫療法+化学療法レジメン、つまり、ペムブロリズマブ、続いてパクリタキセル及びシスプラチンを含む併用レジメンを用いた処置の間に実施される、可能性のあるACT処置のグラフを示す。パネルA:ACT手順は、a.クラスター組成物の注入、b.例えば60秒の超音波照射を伴う、活性化工程、及びc.:例えば5分の超音波照射を伴う、増強工程、を含む。パネルB:Y軸は、投与された治療剤の血漿濃度を、ピークのパーセント単位で示し、X軸は、時間を分単位で示す。この例では、3つの薬物を全て含め、関心領域全体の処置を示すために、3回のACT手順を約160分、200分、及び240分で実行している。
図14図14は、ACT(登録商標)気泡観察の4つの(A~D)例について、予想されるACT(登録商標)気泡が(i)無し及び(ii)有りでの、ACT処置の間に取得された血管系の動画のスナップショットを示す。スケールバーは、50μmを表す。
図15図15は、連続した(A)第1及び(B)第2のACT(登録商標)処置の間の動物の血管直径の縮小及び拡大として見られる、一過性の血管変動の動画からのスナップショットを示す。パネルごとに、画像(i)及び(ii)は、2つのスナップショットを表し、(iii)グラフは、対応する動画における関心のある血管の直径を経時的に示す。2本の垂直の破線は、スナップショットが撮影された時点を示す。スケールバーは、50μmを表す。
図16図16は、超音波曝露の間に成長する突出(outpouching)の動画フレームを提示し、(A~H)突出のそれぞれの最大サイズが決定された動画フレームを示している。点線の円は、関心のある突出を示す。スケールバーは、50μmを表す。
図17図17は、異なる深度でのACT誘導効果を比較及び評価するために、ACT(登録商標)誘導構造の最大投影画像を、Zスタックとして示す。(i)前Zスタックでは、楕円形構造は観察されなかった。(ii)ACT(登録商標)処置後Zスタックでは、楕円形構造が出現し、血管内の蛍光強度の増加も生じた。(iii)ACT(登録商標)処置の約6分後に、楕円形構造は消失した。スケールバーは、25μmを表す。
図18図18は、(A)処置前及び(B)処置後に撮影された突出の前後のZスタック最大投影画像を示す。スケールバーは、50μmを表す。短い線は、ACT(登録商標)処置の前後に直径が測定される血管を示す。矢印は、突出の残存構造を示す。アスタリスクは、前XYZスタックでは観察されたが、後XYZスタックでは観察されなかった血管を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の詳細な説明
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語、表記法、及び他の科学用語又は用語法は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味を有することが意図される。一部の場合、一般的に理解される意味を有する用語が、明確にするために及び/又は参照を容易にするために本明細書で定義されているが、そのような定義を本明細書に含めることは、当技術分野で一般的に理解されるものとの実質的な違いを表すとは必ずしも解釈されるべきでない。
【0015】
定義:
本明細書で使用される場合、音響クラスター療法(ACT)は、以下で更に定義されるが、少なくとも1つの治療剤と組み合わせた、クラスター組成物(以下の定義を参照)の投与と、その後の超音波の関心標的領域への適用と、を含む。
【0016】
本明細書で使用される場合、CNSは、脳及び脊髄のいずれかを指す。
【0017】
本明細書で使用される場合、「対象」とは、処置又は治療のために選択された任意のヒト又は非ヒト動物個体を意味し、CNSの疾患、障害又は損傷を有すると診断された患者、特にヒト患者を包含し、これらに限定される場合もある。
【0018】
本明細書で使用される語句「治療有効量」は、任意の処置に適用可能な合理的な利益/リスク比で、対象において所望の治療効果を生み出すために有効な治療剤の量を意味する。
【0019】
「微小気泡」又は「通常の造影微小気泡」という用語は、本書において、0.2~10ミクロンの範囲の直径を有する微小気泡、典型的には2~3μmの平均直径を有する微小気泡を記述するために使用される。「通常の造影微小気泡」には、市販の製剤、例えば、Sonazoid(商標)(GE Healthcare社)、Optison(商標)(GE Healthcare社)、Sonovue(商標)(Bracco Spa.社)、Definity(商標)(Lantheus Medical Imagin社)、Micromarker(商標)(VisualSonics Inc.社)及びPolyson L(商標)(Miltenyi Biotec GmbH社)が含まれる。
【0020】
HEPS/PFB微小気泡という用語は、本書において、水、例えば2mlの水を使用して、(実施例1に提供されるように)第1の成分を再構成することによって形成される微小気泡を記述するために使用される。
【0021】
用語「位相シフト気泡」、「大きな位相シフト気泡」、「大きな活性化気泡」及び「活性化気泡」は、本書において、超音波(US)がクラスター組成物の活性化を誘導した後に形成される大きな(>10μm)気泡を記述するために使用される。
【0022】
用語「微小液滴」は、本書において、0.2~10ミクロンの範囲の直径を有するエマルジョン微小液滴を記述するために使用される。
【0023】
「照射(Insonation)」又は「US照射」は、超音波への曝露又は超音波を用いた処置を記述するために使用される用語である。
【0024】
用語「通常の医用イメージング超音波」は、医用イメージングを意図したシェルフUSスキャナ及びプローブからの超音波、すなわち、1~10MHzの周波数と、1.9未満、好ましくは0.7未満、より好ましくは0.4未満のMIでの超音波を記述するために使用される。
【0025】
用語「堆積物トレーサー」は、本書において、活性化位相シフト気泡に関連して、組織における位相シフト気泡の局所的な堆積が、活性化気泡堆積時に組織の微小循環を流動する血液の量を反映することを、微小循環における大きな気泡の一時的な力学的捕捉が示している、という意味で使用される。したがって、捕捉された「堆積した」位相シフト気泡の数は、堆積時の組織灌流に直線的に依存する。
【0026】
「位相シフト(プロセス)」という用語は、本書において、物質の液体状態から気体状態への位相転移を記述するために使用される。具体的には、US照射に際してクラスター組成物の微小液滴の油成分の状態が液体から気体へ変化する転移(プロセス)である。
【0027】
本書において、用語「治療送達/治療剤」及び「薬物送達/薬物」はいずれも、薬物分子、ナノ粒子、及びナノ粒子送達系/ナノ担体、並びに少なくとも1つの治療活性剤を含むリポソーム送達系の送達を含むと理解される。用語はまた、幹細胞送達も含む。
【0028】
用語「第1の成分」(又は第1成分、又はC1)は、本書において、分散ガス(微小気泡)成分を記述するために使用される。用語「第2の成分」(又は第2成分、又はC2)は、本書において、拡散性成分を含む分散油相(微小液滴)成分を記述するために使用される。
【0029】
用語「クラスター組成物」は、本書において、第1の(微小気泡)成分及び第2の(微小液滴)成分の組合せ、例えば混合から生じる組成物を記述するために使用される。したがって、本明細書で更に記載する特徴を有するクラスター組成物は、対象に投与するための、及び、音響クラスター療法で使用するための用意ができている製剤化組成物を指す。
【0030】
用語「拡散性成分」は、本書において、第1の成分の微小気泡にin vivoで拡散することができ、そのサイズを一過性に増加させる第2の成分の油相の化学成分を記述するために使用される。
【0031】
本書で使用される用語「医薬組成物」は、その通常の意味を有し、特に哺乳動物への投与に適した形態にある。組成物は、好ましくは、2つの別個の組成物、つまりクラスター組成物(a)及び治療剤(b)を含み、それらはいずれも哺乳動物への、例えば、非経口注射、腹腔内注射又は筋肉内注射を介した、同じ又は異なる投与経路による投与に好適である。語句「哺乳動物への投与に好適な形態」は、滅菌され、発熱原を含まず、過度の毒性又は有害作用を生じる化合物が無く、生体適合性pH(約pH4.0~10.5)で製剤化されている組成物を意味する。そのような組成物は、生物学的流体(例えば、血液)との接触時に沈殿が生じず、生物学的に適合する賦形剤のみを含有し、好ましくは等張性であるように製剤化されている。
【0032】
用語「ソノメトリー(システム)」は、本書において、音響技術を使用して、活性化された位相シフト気泡を動的にサイズ決定及び計数するためのin vitro測定システムを指す。
【0033】
用語「反応性」は、本書において、第1の成分の微小気泡と第2の成分の微小液滴が、混合時に微小気泡/微小液滴クラスターを形成する能力を記述するために使用される。コールター計数は、C1及びC2における微小気泡及び微小液滴の濃度及びサイズ分布の定量化、並びにクラスター組成物(医薬品、DP)中の粒子の特性決定に適している。クラスター組成物の反応性(R)は、以下のように定義される;
R = (CC1 + CC2 - CDP)・100/(CC1 + CC2)
式中、CC1、CC2及びCDPは、それぞれC1、C2及びDPで観察される数濃度である。したがって、反応性は、DPのクラスター形態に含まれるC1及びC2の個々の微小気泡及び微小液滴の数の尺度である。反応性はまた、これらのクラスターの大きさ(すなわち、単一のクラスターを構成する個々の微小気泡及び微小液滴の数)とも相関する。C1、C2、DPのコールター解析から、反応性を簡単に計算することができる。
【0034】
本書における用語「微小気泡/微小液滴クラスター」又は「クラスター」は、単一の粒子の凝集した実体において、静電引力によって永続的に一緒に保持された微小気泡及び微小液滴の群を指す。本書における用語「クラスタリング」は、第1の成分の微小気泡と第2の成分の微小液滴がクラスターを形成するプロセスを指す。
【0035】
医用超音波では、音響パワーは通常、「メカニカルインデックス」(MI)によって記述される。このパラメータは、MHz(Fc)単位での超音波場の中心周波数の平方根で割られた超音波場でのピーク負圧(PNP)として定義される[American Institute of Ultrasound in Medicine.、「Acoustic Output Measurement Standard for Diagnostic Ultrasound Equipment」、第1版、第2版、Laurel, MD: American Institute of Ultrasound in Medicine; 1998年、2003年]。
【0036】
【数1】
【0037】
医用USイメージング中の定型的な要件は、1.9未満のMIを使用することである。微小気泡造影剤を使用したUSイメージング中は、有害な生物学的効果、例えば微小出血や不可逆的な血管損傷を避けるために、0.7未満のMIが推奨され、0.4未満のMIを使用することが「ベストプラクティス(best practise)」とされる。本書においてMIを参照するとき、MIは、in situ MI、つまり、標的とする関心領域に適用されるMIを反映することを理解されたい。
【0038】
用語「活性化」又は「活性化工程」、本方法の工程(iii)は、本書におけるACT手順の文脈において、超音波(US)照射による微小気泡/微小液滴クラスターの位相シフトの誘導、すなわち、大きな活性化気泡の生成を指す。
【0039】
周波数という用語は、1秒あたりの(超音波)サイクルの数(Hz)として定義される。本明細書で使用される場合、この用語は、適用された音場の中心周波数を示す。
【0040】
用語「増強」又は「増強工程」、本方法の工程(iv)は、本書におけるACT手順の文脈において、US照射による、大きな活性化気泡の体積振動及びそれに伴う生体力学的効果の誘導を指す。用語「共振周波数」又は「微小気泡共振周波数」は、本書で使用される場合、無限マトリックスドメイン内の単一気泡の音響共振周波数を記述することを意味する(表面張力及び粘性減衰の影響は無視する)。共振周波数は、次のように与えられる:
【数2】
式中、aは気泡の半径であり、γは多向性係数であり、pAは周囲圧力であり、ρはマトリックスの密度である。
【0041】
本発明の詳細:
このように、本発明は、CNSの疾患、障害又は損傷を処置する方法において使用するためのクラスター組成物を提供する。本発明は、ACT技術を使用して、微小気泡/微小液滴クラスターを含む投与医薬組成物からin vivoで大きな位相シフト気泡を生成し、これにより、別個に、事前に及び/又は同時に及び/又は事後に投与された治療剤の送達及び取込みが促進される。治療剤の治療効果は、微小血管系の生体力学的機構に起因して、以下で更に説明されているように、薬剤単独の投与と比較して大幅に増加する。本発明の使用のための組成物及び方法は、別個に共投与された治療剤の治療効果を増強し、本発明の組成物を使用しない処置と比較して、改善された治療転帰を提供する。国際公開第2015/047103号は、BBBを開口させるためにACTを使用する可能性を簡潔に指摘しているが、そのような手順がどのように行われるべきかについては開示していない。Aslundによって報告された、ラットにおける単純な前臨床設定を使用した小規模パイロット研究では、ACTの適用が、小さなMRI造影剤及び蛍光イメージング剤の取込みを増加させ得ることが示されている。しかしながら、Aslundは、大きな活性化気泡の共振周波数を標的として、より低い周波数を適用することの重要性を理解及び開示していない。またAslundは、ACT概念が、より大きな薬物構築物、例えばナノ粒子薬物の送達にもたらし得る特別な利益を開示していない。最後に、Aslundは、ヒトの処置に適用可能な照射手順を開示していない。本開示は、ヒトの臨床に関連する状況において、CNSにおけるUS標的化及び線量測定による必要な制御を可能にするためにUSデバイスを構成するためのいくつかの選択肢を詳細に開示する。更に、2つの異なる周波数での超音波照射工程を含むACT技術の特定の使用が、別個に投与される治療剤のBBB透過性の増加を可能にすることを実証する。最後に、本発明は、大きな構築治療剤、例えばナノ薬物の送達に適用可能である。
【0042】
一態様では、本発明は、対象の中枢神経系(CNS)の疾患、障害又は損傷を処置する方法において使用するための微小気泡/微小液滴クラスター組成物を含む医薬組成物であって、使用は、超音波照射の少なくとも1つの工程が、CNSに向かって非侵襲的に、CNSに向かって侵襲的に、又はCNSの外の心臓若しくは脊髄若しくは頸動脈に向かって行われる音響クラスター療法(ACT)処置を含み、
(i)医薬組成物を対象に投与する工程であって、少なくとも1つの治療剤が、クラスター組成物とは別個に、事前に及び/又は同時に及び/又は事後に投与される、工程と、
(ii)任意選択で、超音波イメージングを使用して医薬組成物のクラスターをイメージングして、前記対象内の処置のためのCNS内の関心領域を特定する工程と、
(iii)工程(i)からのクラスター組成物の微小液滴の拡散性成分の位相シフトを、第1の周波数及び第1のメカニカルインデックスでの超音波照射によって活性化する工程であって、
a)非侵襲的照射の場合、これは、対象の脳頭蓋骨又は脊柱の外に配置された少なくとも1つのトランスデューサから、これを通した照射のために行われ、
b)侵襲的照射の場合、これは、対象の脳頭蓋骨又は脊柱内の、少なくとも1つの外科的に埋め込まれたトランスデューサから行われ、
c)心臓又は脊髄又は頸動脈に向かって行われる照射の場合、これは、CNSの外の心臓又は脊髄又は頸動脈で行われる、工程と、
(iv)工程(i)で投与された少なくとも1つの治療剤の、CNS内の関心領域での溢出を容易にする第2の周波数及び第2のメカニカルインデックスで、超音波による更なる照射を行う工程であって、
a)非侵襲的照射の場合、これは、対象の脳頭蓋骨又は脊柱の外に配置された少なくとも1つのトランスデューサから、これを通した照射のために行われ、
b)侵襲的照射の場合、これは、対象の脳頭蓋骨又は脊柱内の、少なくとも1つの外科的に埋め込まれたトランスデューサから行われ、
c)工程(iii)においてc)に従って活性化する場合、この工程における更なる照射は、工程(iv)a)又は工程(iv)b)に従って非侵襲的又は侵襲的のいずれかで行われる、工程と、
を含む、医薬組成物を提供する。
【0043】
本書において、活性化又は活性化工程という用語は、上記の工程(iii)を説明するために使用され、増強又は増強工程という用語は、上記の工程(iv)を説明するために使用される。
【0044】
本発明で使用される音響クラスター療法(ACT)は、超音波を適用することによって活性化される微小気泡/微小液滴クラスターを利用して、例えば、血管系に局所的な開口部又は開窓を作ることによって、血管透過性の一時的な増加をもたらし、それによって薬物が血管系をよりよく透過することを可能にすることによって、溢出を促進する生体力学的効果を生み出す、超音波媒介標的薬物送達プラットフォームである。本発明は、部分的には、前臨床試験からの知見に基づくものであり、試験において、本出願人は、実施例3に更に記載されているように、コア架橋ポリマーミセル(CCPM)の形態で細胞傷害性物質を封入するナノ粒子が、血液脳関門(BBB)を横断する送達におけるACTの能力を調査した。本出願人は、ACT概念が、大型の構築治療剤、例えばCCPM等の取込みを改善するための生物学的障壁を克服するための有効な方法であることを見出した。これは、CNSの処置に特に有益であり、BBBの内皮細胞の高選択的で半透過性の境界を一時的に迂回させ、より大きな分子又は構築物を脳内の、例えば病理学的部位に直接送達することを補助する、安全かつ効果的な手段を提供するものであることが見出された。BBBは、体内で最も緊密な血管障壁を示し、約4~500ダルトンを超える治療剤に対して閉鎖されている。実施例3は、ナノ粒子のような大きな構築物の脳組織への送達、取込みを可能にする本発明の組成物及び方法の能力を実証する。実施例3では、健常なマウスの脳における65nmの大きなCCPMの蓄積を、近赤外線蛍光(NIRF)イメージングを使用して調べた。脳切片におけるCCPMの微小分布を共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)によってイメージングし、CLSM画像で半定量的分析を行った。図9に示すように、ACTは、かなり低い音圧を使用してBBBの透過性を明らかに増加させ、これにより、大きなCCPMの改善された蓄積、溢出、及び脳実質への浸透をもたらした。要するに、実施例3は、以下のことを実証する:
・本明細書の組成物及び方法(ACT(登録商標))が、コントラスト増強磁気共鳴イメージングによって示されるBBBの透過性を安全かつ一時的に増加させたこと、
・近赤外線蛍光イメージングによる、CCPMの改善された脳蓄積、
・蛍光標識された血管及びモデル薬物の共焦点顕微鏡による、増強された溢出(平均サイズ80863μm2の雲、面積サイズを有する雲パターンの溢出)及びコア架橋ポリマーミセル+巨大分子CW800-PEGの浸透
・組織学的評価では、組織損傷又は急性炎症反応の証拠は示されなかった
【0045】
この試験は、BBBを横断する薬物及びナノ粒子の一時的かつ安全な送達を改善するためのACTの大きな可能性を実証する。BBBを横断するCCPM及び他の治療剤の、ACTによる成功した送達は、いくつかの脳障害、例えば、世界の高齢者においてより頻繁に生じると予想されるアルツハイマー病、パーキンソン病、及び脳のがん等を処置するための有望な戦略であり得る。したがって、本発明の組成物及び方法は、薬物を脳に直接送達することを可能にするBBBの安全な開口を可能にし、疾患修飾治療の浸透のための道を開く。
【0046】
異なるがんモデルにおけるいくつかの前臨床試験が、化学療法剤をACTと組み合わせた場合の改善された治療有効性を実証している。これらの試験は、腫瘍の血管透過性を高め、それによって固形腫瘍への薬物送達を改善するACTの大きな可能性を実証している。しかしながら、BBBの透過性を増加させ、脳への薬物送達を改善するACT概念の可能性は、大部分が未探索のままである。健常ラットでの、最初の概念実証研究(Aslundら2017)は、ACT後のBBB透過性の増加が、造影剤の増加した蓄積をもたらすことを示した。しかしながら、本明細書における実施例2で実証されるように、増強工程中の入射US場の周波数及びMIに対するACT手順の敏感さを評価すると、Aslundのこれらの実験は、最適ではないことが今や判明した超音波周波数を用いて実施されており、ACTの可能性を完全に利用していない。第2に、ACTと、より臨床的に関連する薬物担体とを組み合わせることは、脳の疾患、障害又は損傷を処置するためにACTの可能性を研究するための大きな関心となるであろう。したがって、実施例3として本明細書に提示される試験の主な目的は、BBBの透過性を増加させ、BBBを横断する治療剤、例えば臨床的に関連する薬物担体等の送達を改善するための、ACT、クラスター組成物、及びこれらの使用の可能性を示すことであった。実施例3に示されるように、ACTと、薬物ナノ担体としてのコア架橋ポリマーミセル(CCPM)とを組み合わせることは、BBBを横断する薬物の送達を改善することができ、より大きな治療用分子及び薬物構築物(例えば、リポソーム製剤、ナノ担体及び治療用ウイルス)が、本発明の組成物及び方法を使用して脳に入ることができることを実証する。この試験では、特注の二周波数超音波トランスデューサを使用して、ACTを用いたBBB透過性を効率的かつ安全に増加させた。
【0047】
照射の方法:
実施例2では、ACT手順が、増強工程中の入射US場の周波数及びMIに対して敏感であることが実証される。このことから、入射US場を用いた相対的に正確な制御が、最適な治療効果を可能にし、有害作用、例えば永続的な血管損傷及び/又は出血等を回避するために必要であることが明らかになるであろう。
【0048】
しかしながら、骨の構造は、USにとって重大で周波数依存的な障壁を表す。例えば、マウスの頭蓋骨のような薄い骨構造の場合でも、頭蓋骨を通過すると、1MHzの周波数で、入射USパワーの20%が失われる。2.7MHzの周波数では、40%以上が失われる。これに加えて、頭蓋骨の厚さは、年齢、性別、民族グループによって異なり、全てがCNS内のUS線量測定による正確な制御を非常に困難にしている。
【0049】
本方法は、脳若しくは脊髄、又は心臓若しくは脊髄若しくは頸動脈への超音波照射の工程、つまり、上記の工程iii)及びiv)を含む。頭蓋骨が脳を保護しているため、これは簡単なことではない。脳に向かって超音波を投与するには、基本的に2つの方法があり、1つの方法は非侵襲的なものであり、他の方法は、頭蓋骨内又は頭蓋骨を通って外科的に埋め込まれた超音波トランスデューサからのもの(本明細書では侵襲的照射と呼ばれる)である。脳内の処置領域の位置は、患者のCT/MRI画像からの処置前計画ソフトウェアを使用して決定し得る。超音波を投与するための非侵襲的な方法の一例は、例えば、Beccaria, K.ら、「Blood-brain barrier disruption with low-intensity pulsed ultrasound for the treatment of paediatric brain tumours: a review and perspectives」、Neurosurg Focus、2020年1月1日;48(1)に開示されているような、頭蓋外半球型集束USアレイ(図1A)を使用する集束超音波による。このデバイス構成は、切開手術を必要とせず、アレイに組み立てられた複数の小型トランスデューサを備えたヘルメットを使用して処置領域を細かく空間制御し、脳内の音場を正確に制御することができる。接続が妨害されないことを可能にするために、トランスデューサと頭部との間には水又は超音波ゲル層があり、処置前に頭部の毛を剃る必要がある。使用される代替的な非侵襲的デバイス構成は、頭蓋外集束単一エレメントUSトランスデューサである(図1B)。なお更なる代替は、鼻及び眼のトランスデューサである。鼻腔超音波トランスデューサを使用してもよく、嗅覚経路を介して薬物を投与することも可能である。したがって、集束超音波増強送達を、例えば、嗅覚経路によって薬物を脳に直接投与することによって達成することができ、静脈内送達単独と比較して標的部位でより均質な分布を可能にする。眼トランスデューサは、レンズ又は埋込チップとして眼に装着することができる。或いは、トランスデューサは、眼球の骨軌道(空洞)に配置されてもよい。ある特定の実施形態では、トランスデューサを配置するために眼球を除去してもよい。
【0050】
本方法の一実施形態では、超音波照射の両方の工程、つまり、工程iii)における活性化及び工程iv)の更なる照射(増強)の両方が、CNSに向かって非侵襲的に行われる。一実施形態では、超音波照射は、頭蓋外半球型集束USアレイ、頭蓋外集束単一エレメントUSトランスデューサ、又は鼻トランスデューサのいずれかによって行われる。
【0051】
US場のいわゆる侵襲的投与は、図1E(単一のトランスデューサ)及び図1F(複数のトランスデューサ)に視覚化されるように、1つ以上のUSトランスデューサが対象の頭蓋骨又は脊柱を通して外科的に埋め込まれていることを必要とする。対象の頭蓋骨又は脊柱内の、少なくとも1つの外科的に埋め込まれたトランスデューサは、本発明の方法より前に埋め込まれているため、本方法の「侵襲的照射」は、それ自体が外科手術を表すものではない。これらの構成は、骨構造を通したUS減衰変動の問題を迂回し、線量測定による制御を簡素化するが、侵襲的な解決策を示すものである。一実施形態では、トランスデューサは、脳に埋め込まれた超音波チップ、例えば自己制御、生分解性圧電ナノファイバチップの形態である。本方法の一実施形態では、超音波照射の両方の工程、すなわち工程iii)における活性化及び工程iv)の更なる照射(増強)の両方が、CNSに向かって侵襲的に行われる。一実施形態では、超音波照射は、頭蓋骨又は脊柱内又はそれを通って配置された1つ以上のUSトランスデューサによって実行される。
【0052】
ACTは、堆積物トレーサーを表し、活性化された気泡は、組織の血液灌流に相関する量で、活性化部位の最も近い毛細血管床下流に一過性に堆積する。実施例4に示されるように、技術のこの属性は、CNSの外の栄養血管、例えば頸動脈又は脊髄動脈で活性化することによって、活性化工程のUS線量測定の問題を迂回するために利用され得る。そのような手順は、US活性化場を用いた正確な制御を可能にし、関係する動脈から血液供給を得るCNSの毛細血管床全体に活性化気泡を堆積させる。これらの手順は、図1C及び図1Dに視覚化されている。活性化工程がこの手順に従って実行される場合、増強工程は、上記の非侵襲的手順又は侵襲的手順のいずれかに従って行われる。したがって、本方法の一実施形態では、超音波照射の第1の工程、すなわち、工程iii)における活性化は、CNSの外の心臓又は脊髄又は頸動脈で行われ、工程iv)の更なる照射(増強)は、非侵襲的又は侵襲的のいずれかで行われ、したがって、工程iv)は、頭蓋外半球型集束USアレイ、頭蓋外集束単一エレメントUSトランスデューサ、又は頭蓋骨若しくは脊柱内の若しくはそれを通した1つ以上の外科的に埋め込まれたUSトランスデューサのいずれかによって行われる。一実施形態では、活性化がCNSの外の心臓に向かって又は脊髄動脈若しくは頸動脈で行われるとき、増強工程は、好ましくは非侵襲的に行われる。
【0053】
US場の属性:
したがって、投与された微小液滴-微小気泡クラスターは、異なる周波数、つまり、1つは活性化工程(本方法の工程iii)のための比較的高い周波数、1つは増強工程(本方法の工程iv)のための比較的低い周波数、の超音波照射を含む局所照射法によって引き起こされる。クラスターが超音波で照射(活性化)されると、振動する気泡は、付着した微小液滴の即時気化(位相シフト)を開始する。得られた拡大気泡は、in vivoで毛細血管サイズの血管内に形成されることが示され、次いで、低周波超音波(工程iv)によって更に刺激されて、溢出を促進し、照射された組織内の薬物透過を増加させる生体力学的効果を誘導する(増強)。Aslundによって開示されたものとは対照的に、本出願人は、処置方法が、1つの活性化工程及び1つの増強工程を含む2つの照射工程を含むべきであり、異なる超音波周波数がこれらの照射工程で使用されるべきであることを確認した。一実施形態では、活性化工程及び増強工程で使用される周波数は同じである。活性化工程の間、クラスターの微小気泡は振動し、エネルギーを微小液滴に伝達して、液滴蒸発及び血管壁への見込まれる最初の生体力学的効果を誘導し、微小血管系に一過性に留まるように設計された大きなACT気泡を形成する。したがって、クラスターは、例えば臨床超音波イメージングシステムからの投与後に、イメージング制御下で、外部超音波エネルギーの適用によって、大きな気泡を生成するように活性化され、増強工程の間に、低い周波数での更なる照射により、生体力学的効果、溢出、及び薬物浸透の増加が誘導される。
【0054】
処置方法の工程が、以下で更に説明されており、実施例2において、本出願人は、第2の照射工程(増強工程)中に適用される超音波場の属性と、適用される手順の機能に対するその影響を調査した。驚くべきことに、本出願人は、概念の機能が、これらのパラメータに非常に敏感であることを見出した。これらの調査に基づいて、本出願人は、本方法の工程(iv)について、0.4~0.6MHzの第2の周波数の範囲で、0.1を超えるが0.3未満に保たれた第2のMIを適用した超音波を用いて照射することが好ましいことを見出した。代替的に、CNSに向けた適用について、より低い周波数は、骨構造を通じたより低い減衰をもたらし、in situ US場(すなわち、関心領域におけるUS場)とのよりよい制御を可能にするので、好ましい第2の周波数範囲は、0.2~0.4MHzであり、適用される第2のMIは、0.025~0.15である。増強工程中に、開示されたものよりも低い周波数及び/又は高いMIを使用する場合、本出願人は、驚くべきことに、誘導される活性化気泡振動が強すぎて、有効性の著しい損失及び血管損傷をもたらすことを見出した。一方、より高い周波数及び/又はより低いMIでは、誘導される気泡振動が小さすぎるため、十分な生体力学的効果が欠如し、したがって、治療有効性が著しく低下する。これらの好ましい範囲は、照射が侵襲的アプローチ又は非侵襲的アプローチのいずれを使用して適用されるかに関わらないことを理解されたい。心臓又は脊髄又は頸動脈への照射について、このアプローチは増強照射には適用されず、活性化照射にのみ適用される。
【0055】
本方法の活性化工程である工程iii)の場合、状況はより単純であり、微小気泡成分の共振周波数が典型的に2~5MHzの範囲内であり、クラスターは、通常の医用イメージング範囲の1~10MHzの周波数と、0.1超のMIとによって容易に活性化される。しかしながら、微小気泡成分の慣性キャビテーション機構を回避するために、増強工程中のMIは0.4未満に保たれるべきである。クラスターは、周波数の規則的なイメージングスペクトルにわたって活性化されるが、骨を通じた減衰は、周波数が急激に増加する関数であるため、スペクトルの下端に向かう周波数が、非侵襲的活性化照射のために好ましい。更に、同じ理由で、CNSの非侵襲的US照射のための多くの市販のデバイスが0.2MHzまで下げた周波数を適用するので、そのような周波数は、本発明の好ましい範囲に含まれる。
【0056】
非侵襲的活性化照射の場合、本発明の好ましい実施形態は、0.2~3MHzの周波数と0.1~0.4のin situ MIで活性化工程を実行することである。
【0057】
侵襲的活性化照射又はCNSの外での活性化について、本発明の好ましい実施形態は、1~10MHzの周波数及び0.1~0.4のin situ MIで活性化工程を実行することである。
【0058】
したがって、本方法は、以下の工程を含む。
【0059】
投与、工程i): 本明細書において、「投与経路」の箇所で更に記載されているように、クラスター組成物は、前記哺乳動物対象に、非経口的に、好ましくは静脈内に投与され、治療剤は、クラスター組成物とは別個に、別個の組成物として、事前に及び/又は同時に及び/又は事後に投与される。用語「事前投与」はまた、外科的に埋め込まれた薬物デポー、例えば、超音波処置が薬物の放出を誘導する場合、を包含する。
【0060】
イメージング、工程ii): クラスターは、低MI、すなわち、約0.1のクラスター活性化閾値未満では活性化されないため、標準的な医用超音波造影剤イメージングを、例えばクラスターの活性化なしで腫瘍微小血管病理を特定するために、実行することが可能である。したがって、一実施形態では、本方法は、低MI造影剤イメージングモード(MI<0.1)を使用して、微小気泡成分、すなわち分散ガスを、クラスターの活性化なしにイメージングし、処置のための病理学的位置を特定する工程(工程ii)を含む。そのように、クラスターが低MI(活性化閾値未満)で活性化されないため、標準的な医用超音波造影剤イメージングが、活性化工程の前に、例えば、腫瘍微小血管病理を特定するために、実行され得る。
【0061】
活性化、工程iii): クラスターの微小気泡成分の音響共鳴は、診断周波数範囲(1~10MHz)内にある。侵襲的活性化照射又はCNSの外の活性化照射の場合、クラスター組成物が対象に投与されたとき、クラスターの活性化は、例えば、従来の医用超音波で使用される標準的な診断超音波イメージングパルス(1~10MHz)を用いて、低~中範囲のメカニカルインデックス、すなわち、0.4未満、好ましくは0.3未満であるが0.1超、好ましくは0.15超のMIで容易になし得る。非侵襲的活性化照射の場合、好ましい周波数範囲は0.2~3MHzであり、MIは0.4未満であり、好ましくは0.3未満であるが0.1超、好ましくは0.15超である。
【0062】
一実施形態では、活性化、すなわち最初のUS照射は、クラスター組成物の各投与の直後、例えば20秒以内に開始し、好ましくは、例えば60~120秒続く。これは、照射が非侵襲的に適用されるか、侵襲的に適用されるか、又は心臓、脊髄動脈若しくは頸動脈に適用されるかに関わらず適用される。
【0063】
イメージングパルスを使用した医用超音波イメージング制御下での活性化は、超音波場にかけられている組織領域内のクラスターの空間的に標的化された活性化を可能にする。活性化後、生成された大きな位相シフト気泡は、そのサイズのために標的病態の微小血管系に一時的に捕捉される。得られた大きな位相シフト気泡は、気化されるエマルジョン微小液滴の体積の約1000倍である(直径2μmの油微小液滴から、直径20μmの気泡)。これらの大きな位相シフト気泡の散乱断面は、活性化前のクラスターに含まれるミクロンサイズの微小気泡の散乱断面よりも数桁大きい。その結果、大きな位相シフト気泡は、大量の後方散乱信号を生成し、診断イメージングシステムを用いた基本イメージングモードで容易にイメージングされる。また、大きな位相シフト気泡の共振周波数は、活性化前のクラスターに含まれる微小気泡の共振周波数よりも一桁低い(約0.2~0.8MHz)。
【0064】
活性化された気泡は、サイズが大きいため、一時的に微小血管系に留まり、クラスターを活性化させるための超音波エネルギーを空間的に局所的に適用することによって、関心のある組織又は臓器、例えば脳又は脊髄に空間的に局所的に配置され得る。したがって、クラスター組成物の投与後、クラスターは、CNS及び標的部位に向かって超音波エネルギーを適用することによって、CNS内で、CNSで、又はCNSの近くで活性化される。或いは、クラスターは、CNSの外の栄養動脈、例えば脊髄動脈又は頸動脈において活性化され、活性化部位の下流の最も近いCNS毛細血管床で活性化気泡を堆積させ得る。
【0065】
実施例5に示すように、活性化後、典型的には直径20μmの大きな気泡が形成され、より大きな微小毛細血管内に一過性に保持される。図12に示されるように、活性化位相シフト気泡は、典型的には5~10分後に完全に消失する前に、徐々に収縮し、断続的に滞留及び移動して、毛細血管3内で更に下方に前進する。このプロセスは、心臓又は栄養血管で活性化するときでさえ、断続的な滞留及び移動により、気泡直径未満の全てのサイズの毛細血管が確実に生体力学的効果を受け、単一又は複数の気泡が毛細血管床の複数の場所で透過性の向上をもたらすことを含意する。
【0066】
増強、工程iv): この工程は、好ましくは、活性化工程よりも低い周波数を使用し、ACT気泡の制御された体積振動を誘導し、それによって毛細血管壁に生体力学的な力を及ぼし、局所的に薬物送達を増強する。活性化及び堆積後の低周波超音波のこの更なる適用は、生物学的障壁を効果的に克服することによって、送達メカニズムの増強を促進し、空間的な標的組織への薬物送達の効率を高める。これらのメカニズムは、ソノポレーションのプロセス、すなわち、血管コンパートメント内の微小気泡の照射及びそれに伴う体積振動が血液脳関門の透過性を増加させるプロセスを含み得る。言い換えれば、方法工程は、内皮壁の透過性を増加させ、したがって、共投与された治療剤の溢出、分布及び細胞取込みを増強する。他のメカニズム、例えば、治療効果を高めるための細胞シグナル伝達の生成、薬物透過を高める間質構造の力学的分解、トランスサイトーシスを可能にする細胞内接合部の開放、免疫調節、輸送体の流入/流出調節、及び受容体の上方調節等も誘導され得る。本発明の使用のための組成物及び方法について、低周波超音波の適用による大きな活性化気泡のこの更なる照射が、治療剤の取込みを更に高めることが理解されるであろう。そのように、大きな活性化気泡の共振周波数に近い低周波超音波の適用を使用して、力学的及び/又は熱的な生体効果メカニズムを生じさせ、CNSにおける血管系の透過性及び/又はソノポレーション及び/又は病理組織のエンドサイトーシスを増加させ、したがって、治療剤の標的組織への、例えば血管周囲空間及びリンパ系脳(リンパドレナージ)における送達及び保持を増加させ得ることが見出された。
【0067】
より大きな位相シフトの気泡の共振周波数に対応する音場の適用は、医療診断範囲のMIで比較的大きな放射振動を生じさせる。しかしながら、実施例2に示されるように、有効性及び有害作用に関しての手順の実効性は、適用されるUS場の周波数及びMIに非常に敏感である。したがって、0.1~0.3の範囲のMIと組み合わせた0.4~0.6MHzの範囲の低周波数超音波が、投与された薬物の取込みを増強し、したがって溢出を促進する生体効果メカニズムを生成するのに好ましい。或いは、0.025~0.15の範囲のMIと組み合わせた、0.2~0.4MHzの範囲の低周波数超音波が好ましい。in vivoでの活性化後、活性化気泡の体積加重平均直径は約20μmであることが見出された。血液では、このサイズの遊離微小気泡の共振周波数は約0.33MHzと計算されている。しかしながら、血管壁の減衰効果により、そのような気泡の共振周波数は、微小血管に捕捉されたときにやや高いことが予想される。実施例2によって示されるように、低周波数増強工程の最も好ましい周波数範囲は、0.1~0.3のMIと組み合わせて0.4~0.6MHzであるか、或いは0.225~0.15のMIと組み合わせて0.2~0.4の周波数である。活性化気泡の共振効果の利用は、他の技術で可能であるよりも低い音響強度及び低い周波数で、これらの生体効果の開始をよりよく制御することを可能にする。大きな位相シフト気泡がイメージング制御下で活性化され、組織微小血管系に堆積する(組織内の大きな活性化気泡の空間的標的化を可能にする)という事実は、その長時間の滞留時間と相まって、薬物送達機構のより効率的で制御された実施を可能にする。
【0068】
したがって、一実施形態では、この方法は、0.4~0.6MHzの範囲の第2の周波数と0.1~0.3の第2のMIとの組合せ、又は0.2~0.4の範囲の第2の周波数と0.225~0.15の第2のMIとの組合せでの超音波で更に照射する増強工程(工程iv)を含む。これらの範囲は、非侵襲的及び侵襲的照射アプローチの両方に適用される。
【0069】
驚くべきことに、活性化気泡を照射して、例えば、実施例で使用されるように、0.4~0.6MHzの範囲、例えば500Hzの超音波を適用することによって、増強された取込みを誘導する場合、より大きな治療上の利益が見出された。この周波数範囲について、この増強工程のためのMIは、好ましくは0.4未満であり、より好ましくは0.3未満で、0.1超、好ましくは0.2超である。0.4~0.6MHzの周波数では、増強工程中に適用されるMIが0.1未満である場合、生成される生体力学的効果が不十分であり、したがって、治療上の利益が大幅に低下することが予想される。これは実施例2に示されており、0.9MHzを使用する照射は、0.5MHzの照射と比較して、有効性の著しい損失を伴う小さすぎる放射振動をもたらす。一方、MIが0.3よりも大きい場合、生体力学的効果が過剰となり、実施例2に示されるように、出血、血管の損傷及び/又は閉鎖を伴い、溢出及び有効性の損失を伴い得る。同様の考慮は、0.2~0.4MHzの周波数範囲にも適用される。MIは、治療上の利益を生み出すのに十分な生体力学的効果を引き起こすと同時に、潜在的な有害作用や安全性の問題を回避するために、0.025~0.15に維持すべきである。ACT気泡は、そのより大きなサイズに起因して、血管内のより大きな領域を覆い、内皮とより密接に接触し、長期間滞在する。これらの属性のために、従来使用された微小気泡とは対照的に、ACT気泡は、毛細血管壁に対してより大規模な生体力学的作用を与え、BBBを横断する薬物送達の増加をもたらす。
【0070】
低周波数超音波による照射(工程iv)は、活性化工程(工程iii)の後に、典型的には、3~10分間、例えば約5分間続く。非侵襲的及び侵襲的照射アプローチの両方について、工程(iv)の直後に工程(iii)を開始することが好ましい。心臓及び脊髄又は頸動脈への照射は、活性化工程にのみ適用され得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、活性化照射は、1~10MHzの範囲の第1の周波数と0.1~0.4の第1のMIを使用してCNSに向かって侵襲的に実行され、増強照射は、0.2~0.4MHzの範囲の第2の周波数と0.25~0.15の第2のMIを使用して、又は0.4~0.6MHzの範囲の第2の周波数と0.1~0.3の第2のMIを使用してCNSに向かって侵襲的に実行される。
【0072】
いくつかの実施形態では、活性化照射は、0.2~3MHz、例えば0.2~3.4MHzの範囲の第1の周波数と0.1~0.4の第1のMIを使用してCNSに向かって非侵襲的に実行され、増強照射は、0.2~0.4MHzの範囲の第2の周波数と0.025~0.15の第2のMIを使用して、又は0.4~0.6MHzの範囲の第2の周波数と0.1~0.3の第2のMIを使用してCNSに向かって非侵襲的に実行される。
【0073】
いくつかの実施形態では、活性化照射は、1~10MHzの範囲の第1の周波数と0.1~0.4の第1のMIを使用して心臓又は脊髄又は頸動脈に向かって非侵襲的に実行され、増強照射は、0.2~0.4MHzの範囲の第2の周波数と0.025~0.15の第2のMIを使用して、又は0.4~0.6MHzの範囲の第2の周波数と0.1~0.3の第2のMIを使用してCNSに向かって非侵襲的に又は侵襲的に実行される。
【0074】
いくつかの実施形態では、本方法は、行われる必要のある任意の侵襲的工程を要しない。したがって、一実施形態では、本発明は、対象の中枢神経系(CNS)の疾患、障害又は損傷を処置する方法において使用するための微小気泡/微小液滴クラスター組成物を含む医薬組成物であって、使用は、超音波照射の少なくとも1つの工程が、CNSに向かって非侵襲的に、又はCNSの外の心臓若しくは脊髄若しくは頸動脈に向かって行われる音響クラスター療法(ACT)処置を含み、
(i)医薬組成物を対象に投与する工程であって、少なくとも1つの治療剤が、クラスター組成物とは別個に、事前に及び/又は同時に及び/又は事後に投与される、工程と、
(ii)任意選択で、超音波イメージングを使用して医薬組成物のクラスターをイメージングして、前記対象内の処置のためのCNS内の関心領域を特定する工程と、
(iii)工程(i)からのクラスター組成物の微小液滴の拡散性成分の位相シフトを、第1の周波数及び第1のメカニカルインデックスでの超音波照射によって活性化する工程であって、これが、
a)対象の脳頭蓋骨又は脊柱の外に配置された少なくとも1つのトランスデューサから、これを通した照射のために行われるか、又は
c)CNSの外の心臓若しくは脊髄若しくは頸動脈で行われる、工程と、
(iv)工程(i)で投与された少なくとも1つの治療剤の、CNS内の関心領域での溢出を容易にする第2の周波数及び第2のメカニカルインデックスで、超音波による更なる照射を行う工程であって、これが、対象の脳頭蓋骨又は脊柱の外に配置された少なくとも1つのトランスデューサから、これを通した照射のために行われる、工程と、を含む、医薬組成物を提供する。
【0075】
したがって、この手順では、工程iv)の更なる照射(増強)は、活性化工程iii)の照射アプローチに関わらず、非侵襲的に行われる。
【0076】
CNSの疾患、障害及び損傷:
本発明のクラスター組成物及び方法は、血液脳関門の透過性を増加させて、医薬品の安全な通過を可能にし、中枢神経系(CNS)の疾患、障害又は損傷の医学的処置を可能にすることができる。例えば、本発明のクラスター組成物及び方法は、神経疾患若しくは障害、又は脳若しくは脊髄内の腫瘍、又は例えば、自己免疫疾患、脳動脈瘤、若しくは薬物中毒の処置に使用され得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、神経疾患は、例えば、髄膜炎、脳炎、又はウイルス、細菌、原虫、真菌若しくは蠕虫からの感染症である。神経障害は、例えば、本態性振戦、双極性障害、てんかん、発作、外傷、パーキンソン病、多発性硬化症、認知症、統合失調症、アルツハイマー病、うつ病、単神経障害、多発性神経障害、慢性疼痛、ミオパシーである。
【0078】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物又は方法を使用して処置される損傷は、CNSへの物理的損傷、例えば脳腫瘍、又は脳血管アクシデント、例えば血栓症、塞栓症、出血、及び血管炎のいずれかである。
【0079】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物又は方法を使用して処置される疾患又は障害は、CNSがん、脳卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症(MS)又は筋萎縮性側索硬化症(ALS)のいずれかである。米国において脳卒中は死亡の主な原因である。米国では400万人以上の男女がアルツハイマー病に罹患しており、100万人がパーキンソン病に罹患しており、35万人が多発性硬化症(MS)に罹患しており、2万人が筋萎縮性側索硬化症(ALS)に罹患している(2020)。世界中で、これらの4つの疾患は2,000万人を超える患者を占めている。したがって、これらの疾患を処置するための新しい方法が必要である。
【0080】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物又は方法を使用して処置される疾患は、以下の群から選択されるCNSがんである:聴神経腫;腺腫;未分化星細胞腫;星細胞腫;脳幹神経膠腫;脳脊髄液(CSF)漏出;軟骨腫;軟骨肉腫;脊索腫;円蓋部髄膜腫;頭蓋咽頭腫;脳瘤;上衣腫;鼻腔神経芽細胞腫;線維性星状細胞腫;線維性骨異形成症;巨細胞腫;生殖細胞腫瘍;神経膠腫、例えば、星状細胞腫、脳幹神経膠腫、上衣腫、多形性神経膠芽腫、混合神経膠腫、乏突起神経膠腫、視神経膠腫;血管周囲細胞腫;若年性毛様細胞性星細胞腫;髄膜腫、例えば、円蓋部髄膜腫、頭蓋底髄膜腫;転移性脳腫瘍、例えば、乳がん、結腸がん、腎がん、肺がん及び黒色腫(皮膚がん)の転移;鼻咽腔血管線維腫;神経線維腫;神経線維腫症、例えば、神経線維腫症1(NF1)、神経線維腫症2(NF2)、神経鞘腫症;嗅神経芽腫(嗅神経芽細胞腫);乏突起神経膠腫;視神経神経膠腫;骨腫;副鼻腔がん;小児脳腫瘍;錐体尖部病変;下垂体腫瘍、例えば、頭蓋咽頭腫、下垂体腺腫、ラトケ嚢胞;横紋筋肉腫、神経鞘腫、神経鞘腫症、頭蓋底髄膜腫、前庭神経鞘腫。
【0081】
ある特定の実施形態において、処置される対象は、小児である。小児は頭蓋骨が薄く、特にCNSのUS照射に影響を受けやすい。本発明の組成物及び方法によって処置され得る小児のCNSがんとしては、限定されないが、以下のがんの種類が挙げられる;星細胞腫、例えば、未分化星細胞腫、原線維性星細胞腫、多形性膠芽腫、若年性毛様細胞性星細胞腫;脳幹神経膠腫;脈絡叢腫瘍;頭蓋咽頭腫;胚芽異形成性神経上皮腫瘍;上衣腫;小児の神経膠腫、例えば、未分化星細胞腫、脳幹神経膠腫、原線維性星細胞腫、多形性神経膠芽腫、若年性毛球性星細胞腫、視神経神経膠腫;髄芽腫;視神経神経膠腫;脊髄腫瘍。星細胞腫は、神経膠腫として位置づけられる場合がある。
【0082】
いくつかの実施形態では、処置される疾患は、自己免疫性疾患、例えば、自己免疫性脳炎、中枢神経系血管炎、神経サルコイドーシス、NMOスペクトラム疾患、抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白抗体関連疾患、NMDAR脳炎、他の稀な神経学的自己免疫疾患である。
【0083】
本発明の組成物及び方法は、薬物を脳に直接送達することを可能にするBBBの安全な開口を可能にし、疾患修飾治療への道を開く。BBBは、循環から脳への重要な栄養素の流入及び廃棄物の除去を制御し、病理学的因子の流入を防止する。BBBの完全性は、CNSの恒常性に不可欠であり、毛細血管内皮及びBBBの損傷は、様々な神経障害及び疾患の病理発生の原因となり得る。より大きな薬物分子は、現水準の技術によってはBBBを横断することができず、そのために、役立つ可能性のある薬物が患者集団を助けることが妨げられている。しかしながら、本発明の組成物及び方法では、BBBを開口させ、関連する病理に治療剤を送達することができ、また大きすぎてACT技術なしではBBBを横断することができない薬剤を、疾患又は障害を処置するために送達させ得る。
【0084】
治療剤:
対象に送達される「薬物」とも呼ばれる治療剤は、CNSの疾患、障害又は損傷の処置に効果を有し得る薬剤である。そのような疾患及び障害を処置することはBBBのためにこれまで困難であったため、他の適応症、例えば、脳のがん以外の他のがん形態のために設計又は承認された薬剤も、同様に有用であり得る。治療剤は、クラスター組成物とは別個の組成物として投与される。特許請求される発明において有用な治療剤の種類及び具体的な薬剤の例としては、本明細書に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
したがって、治療剤の送達及び投与のための本発明のクラスター組成物及び方法は、治療剤の通過のために血液脳関門の透過性を増加させ、CNSの疾患、障害及び損傷の医学的処置を可能にする。本発明の方法を使用して、より大きな薬物構築物が、BBBを横断し、脳及び脊髄に入ることができる。BBBは、体内で最も緊密な血管障壁を示す。損傷が無ければ、約4~500ダルトンより大きな治療剤に対して完全に閉鎖されている。実施例3は、ナノ粒子のような大型構築物の脳組織への取込みを可能にするACTの能力を実証し、BBBを横断する大型分子及び他の薬物構築物の局所送達のための本発明の組成物及び方法の有用性を実証する。したがって、一実施形態では、本発明の方法は、処置に使用するための広範な種類及びサイズの治療剤の送達を可能にする。一実施形態では、治療剤、又は治療剤の製剤形態、又は治療剤の生物学的に活性な形態(例えば、タンパク質結合形態)は、500ダルトン超、好ましくは15,000ダルトン超、より好ましくは50,000ダルトン超、最も好ましくは100,000ダルトン超の分子量を有する。
【0086】
したがって、一実施形態では、治療剤は、ビヒクルで製剤化され、例えば、治療剤用のビヒクルとしてのリポソーム、コンジュゲート、ナノ粒子又はマイクロスフェア、例えば、ナノ薬物担体の形態に含まれている。更なる実施形態では、治療剤は、遺伝子(遺伝子送達)、抗菌ペプチド、幹細胞及びアプタマーの群から選択される。いくつかの実施形態では、治療剤は、幹細胞、例えば神経幹細胞(NSC)又は間葉系幹細胞(MSC)の形態であり、これらは、薬物又はRNAを脳に送達するために使用し得る。いくつかの実施形態では、治療剤は、ナノ薬物等のより大きな薬物構築物の一部分、例えば、リポソーム若しくは粒子製剤中又はモノクローナル抗体としての一部分である。近年、コア架橋高分子ミセル(CCPM)が、様々な薬物候補の治療性能を改善するための有望な薬物ナノ担体として現れている。CCPMは、高度に調整可能なポリマー及び生分解性薬物リンカーで構成され、関心のある治療剤と組み合わせることができ、広範な適用可能範囲を生じさせる。しかしながら、他のほとんどの薬物ナノ担体と同様に、BBBがほとんどの物質のアクセスを妨げるため、BBBを介した送達は困難である。本発明の組成物及び方法を、CCPM等のビヒクルで製剤化された治療剤と組み合わせることは、BBBを横断する薬物送達を改善させ、これらの薬物ナノ担体の新しい範囲の治療用途を生じさせる。実施例3によって実証されるように、本発明のATC概念は、より大きな薬物分子又は構築物との組合せ、つまり、治療剤が、より大きな薬物分子又は構築物、例えばリポソーム製剤又は薬物ナノ担体である方法において特に有用であり得る。
【0087】
本発明による組成物又は方法において使用され得る治療剤は、当業者にとって公知であり、処置する疾患又は障害に関連する任意の作用機序を有し得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、治療剤は、化学療法剤、免疫療法剤、免疫腫瘍学的製剤、免疫調節薬、抗B細胞薬、抗炎症薬、抗微生物薬、抗血管新生薬、抗うつ薬、抗けいれん薬、カンナビノイド薬、腫瘍壊死因子-α(TNF)阻害剤、ドーパミン前駆体、カテコール-o-メチルトランスフェラーゼ阻害剤、ドーパミンアゴニスト、モノアミンオキシダーゼB阻害剤、マンタジン、抗コリン作動剤、抗凝固剤、抗血小板薬、組織プラスミノゲン活性化剤(tPA)、及びコリンエステラーゼ阻害剤の薬物種の群から選択される。
【0089】
いくつかの実施形態では、治療剤は、パーキンソン病の処置のための薬物、例えば、カルビドパ-レボドパ(様々な形態)、カルビドパ-レボドパ-エンタカポン(経腸懸濁液)、レボドパ吸入粉末、エンタカポン、トルカポン、オピカポン、カルビドパ/レボドパエンタカポン、プラミペキソール、プラミペキソール(持続放出)、ロピニロール、アポモルフィン(注射剤)、アポモルフィン舌下フィルム、オチゴチン(経皮パッチ)、セレギリン、ラサギリン、サフィナミド、アマンタジン、イストラデフィリン、トリヘキシフェニジル及びベンズトロピンを含む非限定的なリストから選択される薬物である。
【0090】
いくつかの実施形態では、治療剤は、ALSの処置のための薬物であり、例えば、Radicava、Rilutek、Tiglutik、及びNuedextaの非限定的なリストから選択される薬物である。
【0091】
FDAは、(MRIで観察される)再発の数を減少させ、障害の進行を遅らせ、新たな疾患活性を制限するための臨床試験を通じて見出された、MSのための疾患修飾療法を承認した。いくつかの実施形態では、治療剤は、MSの処置のための薬物、例えば、注射医薬品Avonex(登録商標)(インターフェロンβ-1a)、Betaseron(登録商標)(インターフェロンβ-1b)、Copaxone(登録商標)(グラチラマー酢酸塩)、Extavia(登録商標)(インターフェロンβ-1b)、グラチラマー酢酸塩注射剤(グラチラマー酢酸塩-Copaxone 20mg及び40mg用量のジェネリック等価物)、Glatopa(登録商標)(グラチラマー酢酸塩-Copaxone 20mg及び40mg用量のジェネリック等価物)、Kesimpta(登録商標)(オファツムマブ)、Plegridy(登録商標)(ペグインターフェロンβ-1a)、Rebif(登録商標)(インターフェロンβ-1a)及び経口薬Aubagio(登録商標)(テリフルノミド)、Bafiertam(商標)(フマル酸モノメチル)、フマル酸ジメチル(フマル酸ジメチル-Tecfideraのジェネリック等価物)、Gilenya(登録商標)(フィンゴリモド)、Mavenclad(登録商標)(クラドリビン)、Mayzent(登録商標)(シポニモド)、Tecfidera(登録商標)(フマル酸ジメチル)、Vumerity(登録商標)(フマル酸ジロキシメル)、Zeposia(登録商標)(オザニモド)、及び注入医薬品Lemtrada(登録商標)(アレムツズマブ)、Novantrone(登録商標)(ミトキサントロン)、Ocrevus(登録商標)(オクレリズマブ)及びTysabri(登録商標)(ナタリズマブ)の非限定的列挙から選択される薬物である。
【0092】
現行の医薬は、アルツハイマー病を治すことも進行を止めることもできないが、症状、例えば、記憶喪失や混乱を、限られた期間、軽減するのに役立ち得る。いくつかの実施形態では、治療剤は、アルツハイマー病の処置のための薬物、例えば、コリンエステラーゼ阻害剤、例えば、ドネペジル(Aricept)、ガランタミン(Razadyne)、リバスティグミン(Exelon)、及びメマンチン(Namenda(登録商標))の非限定的列挙から選択される薬物である。
【0093】
いくつかの実施形態では、治療剤は、以下の治療剤の種類及び特定の薬剤の例の非限定的列挙から選択される、がんの処置のための薬物である:

アルキル化剤
ナイトロジェンマスタード類:塩酸メクロレタミン(Mustargen)
ニトロソウレア類:カルムスチン(BiCNU)、ストレプトゾシン(Zanosar)、ロムスチン(CeeNU) テトラジン類:ダカルバジン(DITC-Dome)、テモゾロミド(Temodar)
アジリジン類:チオテパ(Thioplex)、マイトマイシン(Mutamycin)、アジリジニルベンゾキノン(AZQ)
シスプラチン類:シスプラチン(Platinol)、カルボプラチン(Paraplatin)、オキサリプラチン(Eloxatin)

代謝拮抗薬
抗葉酸剤:メトトレキサート(Otrexup、Rasuvo、Trexall)、ペメトレキセド(Altima)
フルオロピリミジン類:フルオロウラシル(Adrucil)、カペシタビン(Xeloda)
デオキシヌクレオチド類似体:シタラビン(Cytosar-U)、デシタビン(Dacogen)、アザシチジン(Vidaza)、ゲムシタビン(Gemzar)、フルダラビン(Fludara)、ネララビン(Arranon)、ペントスタチン(Nipent)
チオプリン類:チオグアニン(Tabloid)、メルカプトプリン(Purinethol、Purixan)

抗微小管剤
ビンカアルカロイド類:ビノレルビン(Navelbine)、ビニクリスチン(Oncovin、Vincasar Pfs)、ビンデシン(Eldisine)、ビンフルニン(Javlor)
タキサン類:パクリタキセル又はnab-パクリタキセル(Onxol、Abraxane)、カバジタキセル(Jevtana)、ドセタキセル(Docetaxel、Docefrez)
ポドフィロトキシン;エトポシド(Eposin、Etoposide)、テニポシド(Vumon)

トポイソメラーゼ阻害剤
トポイソメラーゼI:イリノテカン(Onivyde)、トポテカン(Act Topotecan、Hycamtin)
トポイソメラーゼII:ドキソルビシン(Adriamycin、Caelyx)、ミトキサントロン(Novantrone)、テニポシド(Vumon)、ノボビオシン(Novobiocin Sodium)、メルバロン、アクラルビシン

細胞傷害性抗生物質
アントラサイクリン類:ドキソルビシン(Adriamycin、Caelyx)、ダウノルビシン(Cerubidine、DaunoXome)、エピルビシン(Ellence)、イダルビシン(Idamycin)、ブレオマイシン(Blenoxane)、マイトマイシン(Mitosol、Mutamycin)

免疫療法
CAR-T細胞療法:シプロイセル-T(Provenge)、チサゲンレクロイセル(Kymriah)、アキシカブタジン シロルーセル(Yescarta)
抗体療法:アレムツズマブ(Campath CD52)、アテゾリズマブ(Tecentriq PD-L1)、イピリムマブ(Yervoy CTLA4)、ペムブロリズマブ(Keytruda PD-1)、デュルバルマブ(Imfinizi lgG1k)
腫瘍溶解性ウイルス:タリモジン ラヘルパレプベク(OncoVEX GM-CSF/T-vecIMLYGIC)Ad2/5 dl1520(Onyx-015)、GLV-1h68(GL-ONC1)、CV706
がんワクチン:オンコファージ、シプロイセル-T(Provenge)
ミクログリア及び/又はiNKT細胞ベース治療

サイトカイン療法
インターフェロン:IFNα(Infergen)、IFNβ(Actimmune)
インターロイキン:市販品無し、臨床試験中

抗菌化合物

RNA療法

細胞ベース治療;
幹細胞、線維芽細胞
【0094】
一実施形態では、治療剤は、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗微小管剤、トポイソメラーゼ阻害剤、細胞傷害性抗生物質、免疫療法剤及びサイトカイン療法剤の群から選択される。
【0095】
BBBによる制限された取込みのためにCNSの処置に通常使用されてない治療剤が、本発明の範囲内にあることは明らかであるはずである。特定の薬物を指す場合、参照は、同じ活性成分を含み、対応する作用様式を有する任意の薬物、例えばジェネリック薬物を含むことを意図している。
【0096】
多くの場合、治療レジメンは、併用療法、例えば、1つ以上の化学療法剤が免疫療法剤と併用して投与される療法を含む。本発明内の好ましい選択肢は、そのような併用レジメンを適用することである。そのような薬物の組合せの1つは、PCVと呼ばれる薬物の組合せである。併用される薬物は、プロカルバジン塩酸塩、ロムスチン(CCNU)、及び硫酸ビンクリスチンである。
【0097】
対象に投与される治療剤の実際の投与量は、身体的及び生理学的要因、例えば、体重、病態の重症度、処置される疾患の種類、以前又は同時に行われた治療的介入、患者の特発性疾患、及び投与経路によって決定され得る。投与を担当する医者は、いずれにせよ、組成物中の活性成分の濃度及び適切な用量を、個々の対象のために決定するであろう。一実施形態では、治療剤の投与量は、本発明の方法を使用しない場合の通常の投与量よりも少ない。好ましくは、20%超少なく、より好ましくは40%超少なく、更により好ましくは60%超少ない。
【0098】
クラスター組成物:
本発明の方法では、治療剤の別個の投与に加えて、予め混合されたクラスター組成物が対象に投与される。投与されたクラスターは、超音波によって活性化することができる。クラスターの組成物は、微小気泡(第1の成分)及び微小液滴(第2の成分)の事前混合物であり、静電力によって一緒に保持された分散液中の小さな微小気泡-微小液滴クラスターをもたらす。微小液滴は、典型的には、50℃未満の沸点、及び低い血液溶解性を有する油成分を含む。クラスター組成物、すなわち、第1の成分及び第2の成分の組合せは、ガス微小気泡及び油微小液滴のクラスターを含み、つまり、安定な微小気泡/微小液滴クラスターの形態の個々の微小気泡及び微小液滴の懸濁液又は分散液である。前記クラスターの定量的検出及び特性決定のための分析方法は、実施例1に記載されている。本書において、用語「クラスター」は、単一の粒子、凝集した実体において、静電引力によって永続的に一緒に保持された微小気泡及び微小液滴の群を指す。クラスター組成物中のクラスターの含有量及びサイズは、in vitroで第1の成分及び第2の成分を組み合わせた後、ある程度の時間(例えば、>1時間)にわたって本質的に安定であり、つまり、クラスターは、自発的に崩壊しないか、より大きな凝集体を形成しないか、又は自発的に活性化(位相シフト)せず、継続的な攪拌中であっても、希釈後のある程度の時間にわたって本質的に安定である。したがって、希釈及び/又は攪拌を必要とする様々な分析技術を用いて、クラスター組成物中のクラスターを検出し、特性決定することが可能である。更に、クラスター組成物の安定性は、必要な臨床手順(例えば、再構成、用量の取出し、及び投与)を行うことを可能にする。第1及び第2の成分、並びにクラスター組成物は、適正製造基準(GMP)に従って調製される。
【0099】
したがって、一実施形態では、クラスター組成物は、水性生体適合性媒体中のクラスターの懸濁液を含み、前記クラスターは、1~10μmの範囲の平均直径、及び0.9未満の円形度を有し、
(i)ガス微小気泡と、前記微小気泡を安定させるための第1の安定剤とを含む第1の成分と、
(ii)油相を含む微小液滴と、前記微小液滴を安定させるための第2の安定剤とを含む第2の成分であって、油が、そのサイズを少なくとも一時的に増加させるように前記ガス微小気泡に拡散することができる拡散性成分を含む、第2の成分とを含み、
前記第1の成分及び第2の成分の微小気泡及び微小液滴は、反対の表面電荷を有し、静電相互作用引力を介して前記クラスターを形成している。
【0100】
2つの成分を(in vitroで)組み合わせた後、例えば、凍結乾燥させた微小気泡成分をエマルジョンの形態の微小液滴成分と再構成することによって、本発明による調製されたクラスター組成物は、その意図された使用に適した使用中の安定性を示し、投与のための適切な時間枠、例えば成分を組み合わせてから1時間超、又は好ましくは3時間以上にかけて安定した特性を示す。クラスター組成物は、この時間枠内に対象に投与されるべきである。
【0101】
クラスター組成物中の各クラスターは、少なくとも1つの微小気泡及び1つの微小液滴、典型的には2~20個の個々の微小気泡/微小液滴を含み、クラスターは典型的には1~10μmの範囲の平均直径を有し、血管系内を自由に流動することができる。それらは更に、円形度パラメータによって特徴付けられ、個々の微小気泡及び微小液滴から分離される。二次元形態(例えば、微小気泡、微小液滴、又は微小気泡/微小液滴クラスターの投影)の円形度は、その形態と同じ面積を有する円の周囲を、その形態の実際の周囲で割った比率である。したがって、完璧な円(すなわち、球形の微小気泡又は微小液滴の二次元投影)は、理論的な円形度の値が1であり、他の任意の幾何学的形状(例えば、クラスターの投影)は、円形度が1未満である。本発明の前記クラスターは、0.9未満の円形度を有する。円形度パラメータの定義は、国際公開第2015/047103号において更に示されている。
【0102】
本発明によれば、図2に示すように、平均サイズが1~10μm、特に3~10μmの範囲であり、円形度が0.9未満で定義されるクラスターを含む組成物が特に有用であると考えられる。一実施形態では、平均クラスター直径は、3~10μm、好ましくは4~9μm、より好ましくは5~7μmの範囲である。このサイズ範囲のクラスターは、活性化前に血管系内で自由に流動し、US照射によって容易に活性化され、微小血管系、例えばCNSに血管形成する血管等に一時的に堆積及び滞留するのに十分な大きさの活性化気泡を生成する。クラスター内の微小気泡は、診断周波数範囲(1~10MHz)の、すなわち活性化時の超音波エネルギーの、効率的なエネルギー伝達を可能にし、低MIでのエマルジョン微小液滴の気化(位相シフト)、及び気化した液体の微小気泡への拡散、及び/又は蒸気気泡と微小気泡との間の融合を可能にする。次いで、活性化された気泡は、マトリックスガス(例えば、血液ガス)の内方拡散から更に拡大して、10μmを超えるが、40μm未満、典型的には20μm未満の体積加重中位径に達する。
【0103】
これらのクラスターの形成、つまり、微小気泡の第1の成分及び微小気泡の第2の成分からのクラスター組成物を投与前に調製することは、効率的な位相シフト事象の前提条件であり、それらの数及びサイズ特性は、組成物の有効性、つまり、in vivoでの大きな活性化(つまり、位相シフト)気泡の形成能力に強く関連し、in vivoでのその意図された機能性の前提条件であることが見出された。数及びサイズ特性は、様々な製剤パラメータ、例えば、限定するものではないが、第1の成分の微小気泡と第2の成分の微小液滴との間の引力の強さ(例えば、微小気泡と微小液滴との間の表面電荷の差):微小気泡と微小液滴のサイズ分布:微小気泡と微小液滴との間の比率:及び水性マトリックスの組成(例えば、pH、緩衝液濃度、イオン強度)を通じて制御することができる。クラスター組成物が調製され、投与される場合、形成されるクラスターの平均円相当径は、好ましくは3μmより大きく、より好ましくは5~7μmの間であるが、10μm未満である。
【0104】
組み合わせた調製物(クラスター組成物)中の3~10μmのクラスターの濃度は、好ましくは1000万個/mL超、より好ましくは2000万個/mL超であるべきである。実施例1に示されるように、本発明による使用のためのクラスター組成物は、第1の成分及び第2の成分の混合の0~3時間後に測定して5.8~6.2μmの平均直径で40~4400万個/mLのクラスター濃度を有した。一実施形態では、投与のための組成物は、直径が5~10μmのクラスターを少なくとも300万個/ml含むべきである。別の実施形態では、サイズ範囲1~10μmのクラスターのクラスター濃度は、少なくとも約1000万個/mLである。
【0105】
直接的な作用機序、すなわち、生じた力学的及び/又は熱的生体効果は、治療剤の送達を増加させ、分布を増強するが、これらの生体力学的効果の性質は、クラスター組成物の化学的属性、すなわち、クラスターの化学組成及び特性の結果の直接的な結果であることを理解されたい。例えば、水性マトリックス中の気泡の寿命は、マトリックス中のガスの溶解度及び拡散係数に反比例し、ガスの密度に比例する。したがって、低い溶解度及び拡散性を有する重いガスから作られた気泡は、高い溶解度及び拡散性を有する軽いガスから作られた気泡よりも大きくなり、寿命が長い。一例として、5μmのペルフルオロブタンの気泡は、5μmの空気の気泡よりも、水中で500倍長く持続する。したがって、微小液滴成分の化学組成は、in vivoで活性化された気泡の寿命、したがって、誘導され得る生体力学的力のレベル、及びACT手順で達成され得る治療効果レベルを支配する。このことから、ペルフルオロ油は、第2の成分の微小液滴での使用に特に有用であり、なぜならそのようなものからのガスは、水溶性及び拡散性が非常に低く、密度が高いためである。
【0106】
本発明の組成物及び方法を、自由に流動する通常の造影微小気泡(例えば、Sonazoid)を使用する方法と比較すると、本発明の投与クラスターからin vivoで生成された大きな位相シフト微小気泡は、血管の一区域に捕捉され、活性化された気泡表面は、内皮と緊密に接触している。加えて、活性化気泡の体積は、典型的には、通常の微小気泡の1000倍である。両方の気泡タイプの共振に近い周波数で照射された等しいメカニカルインデックス(MI)では、振動中の絶対体積変位(すなわち、奏する生体力学的な力)が、位相シフト気泡では、通常の造影気泡よりも3桁大きいことが示された。したがって、位相シフト気泡の照射は、通常の造影微小気泡の照射中よりも著しく大きな効果サイズ及び浸透深度を有する、全く異なるレベルの生体力学的効果を生み出す。自由に流動する通常の造影微小気泡で観察される生体効果は、キャビテーション機構に依存している可能性が高く、微小出血や不可逆的な血管損傷等の安全性上の懸念が伴う。しかしながら、クラスターからのより大きな位相シフト気泡は、キャビテーション機構を回避しながら、血管系から標的組織への薬物の取込みを高めるのに十分な力学的力を引き起こし、より柔軟な方法(より低いMI)で振動することができる。大きな位相シフト気泡の捕捉は、堆積物トレーサーとしても機能する。これは更に、活性化されたクラスターの数の定量及び組織の灌流を可能にし、組織血管系の造影剤イメージングを可能にし、処置される病理の空間的範囲を特定する。
【0107】
投与されたクラスターの化学組成、及びクラスターの活性化中に起こるプロセスは、クラスターの効果にとって重要である。例えば、封入された油滴の化学的性質は、US照射に際して堆積する活性化気泡の量、並びにin vivoでのその寿命に影響を与える。油の物理化学的属性、例えば、蒸気圧、沸点、水溶性等は全て、堆積する活性化気泡の量と堆積が存続する時間と相関している。C4~C6ホモログのペルフルオロ炭化水素鎖では、水溶性及び蒸気圧が低下し、沸点が上昇するにつれて、活性化気泡の量及びその寿命が、鎖の長さと共に増加する。更に、活性化されたクラスターの大きな気泡が、血管系の細胞に力学的に作用し、潜在的に生化学的シグナルを生成し、治療剤の取込みの増加をもたらすことに留意されたい。
【0108】
クラスター組成物は、制御された方法でクラスタリング及び位相シフトするように設計される。標的病理において、超音波に、例えば、標準的な医用イメージング周波数及び強度で曝露すると、投与されたクラスター組成物の微小気泡は、音響エネルギーを、付着している油微小液滴に移し、油は、液体から気体への相転移(気化)を受けるように、蒸発の種として機能するか又は微小気泡と合流し得る。得られた気泡は、油の気化による最初の急速な膨張、続いて血液ガスの内方拡散によるより遅い膨張を受け、微小循環(メタ細動脈及び毛細血管ネットワーク)を約1分以上、好ましくは2~3分以上、最も好ましくは3~6分以上、一時的に遮断する。本発明の方法において、又は使用のための医薬組成物において、治療剤が、対象に更に投与され、例えば、クラスター組成物と共投与されるか、又は事前投与されるか、又は事後投与される。クラスターは、外部超音波エネルギーを適用することによって大きな気泡を生成するように活性化され、これらは、CNS(例えば、脳内)の微小血管系で捕捉される。捕捉後の低周波超音波(工程iv)の更なる適用は、脳の標的組織への治療剤の溢出を促進する。したがって、BBBの効果的な回避における既存技術の主な制限及び血管透過性を制限するその機能は、CNSへの治療剤のアクセシビリティが著しく増加することが見出されたように、本発明の技術によって克服することができる。したがって、大きな活性化気泡は、照射された組織の微小血管系に一時的に留まり、低パワー、低周波数の超音波を更に適用することによって、CNS標的組織への薬物取込みを促進する。活性化された位相シフト気泡は、典型的な微小気泡の約10倍の直径であり、以下をもたらす:
- 標的化された(すなわち、照射された)病理の微小血管系における活性化気泡の一過性の堆積/捕捉;
- 活性化気泡と内皮との間の密接な接触;
- 通常の造影微小気泡と比較して、慣性キャビテーション機構が回避され、桁違いに大きい、活性化後の超音波処置(増強工程)中の生体力学的効果。
【0109】
クラスター組成物の第1の成分(微小気泡):
第1の成分は、ガス微小気泡と、微小気泡を安定させるための第1の安定剤とを含む。微小気泡は、市販されており、前臨床用途への使用が承認されている従来の超音波造影剤、例えば、Sonazoid、Optison、Definity又はSonovue、又は前臨床適用のために使用されている同様の薬剤、例えばMicromarker及びPolyson Lと同様であり得る。任意の生体適合性ガスが、ガス分散体中に存在していてもよい。本明細書で使用される用語「ガス」は、通常の人体温度の37℃で、少なくとも部分的に、例えば、実質的に又は完全にガス状(蒸気を含む)形態の任意の物質(混合物を含む)を含む。したがって、ガスは、例えば、以下を含み得る:空気;窒素;酸素;二酸化炭素:水素:不活性ガス、例えば、ヘリウム、アルゴン、キセノン又はクリプトン;フッ化硫黄、例えば、六フッ化硫黄、十フッ化二硫黄又は五フッ化トリフルオロメチル硫黄;六フッ化セレン;任意にハロゲン化されたシラン、例えばメチルシラン又はジメチルシラン;低分子量炭化水素(例えば、最大7個の炭素原子を含むもの)、例えば、アルカン、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン若しくはペンタン、シクロアルカン、例えば、シクロプロパン、シクロブタン若しくはシクロペンタン、アルケン、例えば、エチレン、プロペン、プロパジエン若しくはブテン、又はアルキン、例えば、アセチレン若しくはプロピン;エーテル、例えば、ジメチルエーテル;ケトン;エステル;ハロゲン化低分子量炭化水素(例えば、最大7個の炭素原子を含むもの);又は前述のいずれかの混合物。好ましくは、ガスはハロゲン化ガスであり、より好ましくはペルフルオロ化ガスである。有利には、ハロゲン化ガス中のハロゲン原子の少なくともいくつかは、フッ素原子である。したがって、生体適合性ハロゲン化炭化水素ガスは、例えば、ブロモクロロジフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ブロモトリフルオロメタン、クロロトリフルオロメタン、クロロペンタフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン、クロロトリフルオロエチレン、フルオロエチレン、エチルフルオリド、1,1-ジフルオロエタン、及びペルフルオロカーボンから選択され得る。代表的なペルフルオロカーボンとしては、ペルフルオロアルカン、例えば、ペルフルオロメタン、ペルフルオロエタン、ペルフルオロプロパン、ペルフルオロブタン(例えば、ペルフルオロ-n-ブタン、任意選択でペルフルオロ-イソ-ブタン等の他の異性体との混合物)、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロヘキサン又はペルフルオロヘプタン;ペルフルオロアルケン;ペルフルオロアルキン;及びペルフルオロシクロアルカンが挙げられる。
【0110】
ペルフルオロ化ガス、例えば、六フッ化硫黄、並びにペルフルオロカーボン、例えば、ペルフルオロプロパン、ペルフルオロブタン、ペルフルオロペンタン及びペルフルオロヘキサンの使用が、そのようなガスを含む微小気泡の血流における認識された高い安定性を考慮すると、特に有利である。一実施形態では、第1の成分のガスは、フッ化硫黄及びハロゲン化低分子量炭化水素(例えば、最大7個の炭素原子を含むもの)の群から選択される。血流中に非常に安定した微小気泡を形成させる物理化学的特性を有する他のガスも同様に有用であり得る。最も好ましくは、分散ガスは、六フッ化硫黄、ペルフルオロプロパン、ペルフルオロブタン、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロヘキサン(すなわち、C3~6ペルフルオロカーボン)又はその混合物のいずれかを含む。更により好ましくは、分散ガスは、六フッ化硫黄、ペルフルオロプロパン、又はペルフルオロブタン、又はその混合物を含む。更により好ましくは、分散ガスはペルフルオロブタンである。
【0111】
分散ガスは、任意の都合のよい形態であってよく、例えば、ガス含有成分として、任意の適切なガス含有超音波造影剤製剤、例えば、Sonazoid、Optison、Sonovue若しくはDefinity、又は前臨床薬剤、例えばMicromarker若しくはPolySon Lを使用してもよい。第1の成分はまた、微小気泡分散体を安定させるために、本書において「第1の安定剤」と呼ばれる材料も含む。そのような製剤の代表的な例としては、第1の安定剤、例えば耐合体性表面膜(例えば、ゼラチン)によって安定化された(例えば、少なくとも部分的に封入された)ガスの微小気泡、膜生成タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン等のアルブミン)、ポリマー材料(例えば、合成生分解性ポリマー、弾性界面合成ポリマー膜、微粒子生分解性ポリアルデヒド、ポリアミノ酸-多環式イミドの微粒子N-ジカルボン酸誘導体)、非重合及び非重合性壁形成材料、又は界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー界面活性剤、例えばPluronic、ポリマー界面活性剤、又はフィルム形成界面活性剤、例えばリン脂質)が挙げられる。好ましくは、分散ガスは、リン脂質、タンパク質又はポリマー安定化ガス微小気泡の形態である。したがって、一実施形態では、第1の安定剤は、リン脂質、タンパク質及びポリマーの群から選択される。特に有用な第1の安定剤は、リン脂質の群、特に、正味の全体的な負電荷を有する分子、例えば天然に存在する(例えば、大豆又は卵黄由来)、半合成(例えば、部分的又は完全に水素化)及び合成のホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸及び/又はカルジオリピンを含む群から選択される。或いは、安定化のために適用されるリン脂質は、全体的に中性電荷を保有し、負の界面活性剤、例えば脂肪酸が添加されてもよく、例えば、パルミチン酸添加ホスファチジルコリン、又は異なる電荷のリン脂質の混合物、例えば、ホスファチジルエタノールアミン及び/又はホスファチジルコリン及び/又はホスファチジン酸であってもよい。第1の安定剤について、すなわち第1の成分の微小気泡を安定化する安定剤について、様々な実施例が国際公開第2015/047103号の実施例5、及び表9及び表10で示されており、異なる賦形剤を有する様々な微小気泡製剤が試験されている。結果は、本発明で使用されるACT概念が、安定化膜の組成に関しても、多種多様な微小気泡製剤に適用可能であることを実証する。
【0112】
分散ガス成分の微小気泡のサイズは、妨害されずに肺系を通過することを容易にするために、微小気泡/微小液滴クラスター中であっても、好ましくは7μm未満、より好ましくは5μm未満、最も好ましくは3μm未満であるべきである。
【0113】
クラスター組成物の第2の成分(微小液滴):
第2の成分は、油相を含む微小液滴と、前記微小液滴を安定化するための第2の安定剤とを含み、油は拡散性成分を含む。この拡散性成分は、第1の成分のガス微小気泡中に、少なくとも一時的にそのサイズを増加させるように拡散することができる。第2の成分について、「拡散性成分」は、好適には、ガス/蒸気、揮発性液体、揮発性固体、又は例えば投与時に、ガス生成可能なその前駆体であり、主な要件は、成分が、分散ガス中へのガス又は蒸気分子の内方拡散を促進することができるようにin vivoで十分なガス又は蒸気圧(例えば、少なくとも50torr、好ましくは100torr超)を有するか、又は生成することができることである。「拡散性成分」は、好ましくは、適切な水性媒体中の微小液滴のエマルジョン(すなわち、安定化した懸濁液)として製剤化されるが、これは、そのような系では、拡散性成分の水相中の蒸気圧が、非常に希釈されたエマルジョンであっても、純粋な成分材料の水相中の蒸気圧と実質的に等しくなるためである。
【0114】
そのような微小液滴中の拡散性成分は、水相が適切な不凍材料を含有する場合、例えば-10℃と低い場合がある処理温度及び保管温度では、有利には液体であり、一方、体温では、気体であるか又は実質的な蒸気圧を示す。適切な化合物は、例えば、乳化性低沸点液体から選択されてもよい。乳化性拡散性成分の具体例としては、脂肪族エーテル、例えばジエチルエーテル;多環式油又はアルコール、例えばメントール、樟脳又はユーカリプトール、複素環式化合物、例えばフラン又はジオキサン;飽和又は不飽和、及び直鎖状又は分枝状であり得る脂肪族炭化水素;脂環式炭化水素、例えば、シクロブタン、シクロブテン、メチルシクロプロパン又はシクロペンタン;並びに、ハロゲン化低分子量炭化水素、例えば最大7個の炭素原子を含有するハロゲン化低分子量炭化水素が挙げられる。代表的なハロゲン化炭化水素としては、ジクロロメタン、臭化メチル、1,2-ジクロロエチレン、1,1-ジクロロエタン、1-ブロモエチレン、1-クロロエチレン、臭化エチル、塩化エチル、1-クロロプロペン、3-クロロプロペン、1-クロロプロパン、2-クロロプロパン、及び塩化t-ブチルが挙げられる。有利には、ハロゲン原子の少なくとも一部がフッ素原子であり、例えば、ジクロロフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエタン、1,2-ジクロロ-1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン、2-ブロモ-2-クロロ-1,1,1-トリフルオロエタン、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル、1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル、部分的にフッ素化されたアルカン(例えば、1H,1H,3H-ペンタフルオロプロパン等のペンタフルオロプロパン、ヘキサフルオロブタン、ノナフルオロブタン、例えば、2H-ノナフルオロ-t-ブタン、及びデカフルオロペンタン、例えば、2H,3H-デカフルオロペンタン、部分的にフッ素化されたアルケン(例えば、ヘプタフルオロペンテン、例えば、1H,1H,2H-ヘプタフルオロペンタ-1-エン、及びノナフルオロヘキセン、例えば、1H,1H,2H-ノナフルオロヘキサ-1-エン)、フッ素化エーテル(例えば、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルメチルエーテル又は2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル)であり、好ましくはペルフルオロカーボンである。ペルフルオロカーボンとしては、ペルフルオロアルカン、例えば、ペルフルオロブタン、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロヘキサン(例えば、ペルフルオロ-2-メチルペンタン)、ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロオクタン、ペルフルオロノナン及びペルフルオロデカン;ペルフルオロシクロアルカン、例えば、ペルフルオロシクロブタン、ペルフルオロジメチルシクロブタン、ペルフルオロシクロペンタン及びペルフルオロメチルシクロペンタン;ペルフルオロアルケン、例えばペルフルオロブテン(例えば、ペルフルオロブタ-2-エン又はペルフルオロブタ-1,3-ジエン)、ペルフルオロペンテン(例えば、ペルフルオロペンタ-1-エン)及びペルフルオロヘキセン(例えば、ペルフルオロ-2-メチルペンタ-2-エン又はペルフルオロ-4-メチルペンタ-2-エン);ペルフルオロシクロアルケン、例えばペルフルオロシクロペンテン又はペルフルオロシクロペンタジエン、並びにペルフルオロ化アルコール、例えばペルフルオロ-t-ブタノールが挙げられる。したがって、第2の成分の油(拡散性成分)は、脂肪族エーテル、複素環式化合物、脂肪族炭化水素、ハロゲン化低分子量炭化水素及びペルフルオロカーボンの群から選択され得る。一実施形態では、第2の成分の油相は、ペルフルオロカーボンを含む。
【0115】
本発明において特に有用なのは、1・10-4M未満、より好ましくは1・10-5M未満の水溶性を有する拡散性成分である。しかしながら、拡散性成分の混合物及び/又は共溶媒を使用する場合、混合物の実質的な画分は、より高い水溶性を有する化合物を含有し得ることに留意されたい。水溶性に基づいて、好適な油(拡散性成分)の例は、ペルフルオロジメチルシクロブタン、ペルフルオロメチルシロペンタン、2-(トリフルオロメチル)ペルフルオロペンタン及びペルフルオロヘキサンである。2つ以上の拡散性成分の混合物が、必要に応じて、本発明に従って用いられてもよいことが理解されよう。本明細書における「拡散性成分」への言及は、そのような混合物を含むと解釈されるべきである。
【0116】
第2の成分はまた、微小液滴分散体を安定させるために、本書で「第2の安定剤」と呼ばれる材料を含む。第2の安定剤は、ガス分散体を安定化するために使用される任意の材料、例えば、リン脂質、ポリマー又はタンパク質等の界面活性剤と同じでもよく、異なってもよい。任意のそのような材料の性質は、分散気相の成長速度等の要因に著しく影響を及ぼし得る。一般に、広範囲の界面活性剤が安定剤として有用であり得る。有用な界面活性剤(安定剤)の代表的な例としては、脂肪酸(例えば、直鎖飽和又は不飽和脂肪酸、例えば、10~20個の炭素原子を含有するもの)及びその炭水化物及びトリグリセリドエステル、リン脂質(例えば、レシチン)、フッ素含有リン脂質、タンパク質(例えば、アルブミン、例えばヒト血清アルブミン等)、ポリエチレングリコール、及びポリマー、例えばブロックコポリマー界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、例えばPluronics、伸長ポリマー、例えばアシルオキシアシルポリエチレングリコール、例えば、ポリエチレングリコールメチルエーテル16-ヘキサデカノイルオキシ-ヘキサデカノエート、例えば、ポリエチレングリコール部分が2300、5000又は10000の分子量を有するもの、及びフッ素含有界面活性剤(例えば、Zonil及びFluoradの商品名で市販されているもの)が挙げられる。特に有用な界面活性剤としては、リン脂質、特に全体的に中性電荷を有する分子を含むリン脂質、例えば、ジステアロイル-sn-グリセロール-ホスホコリン(DSPC)が挙げられる。第2の成分について、様々な異なる安定剤が、微小液滴を安定させるために使用され得る。更に、適切な表面電荷を容易にするために、広範囲のイオン性、好ましくはカチオン性物質を使用し得る。
【0117】
第1の成分の微小気泡と第2の成分のエマルジョン微小液滴との間のクラスタリングを達成するための静電相互引力を容易にするために、これらは反対の表面電荷であるべきであることが理解されるであろう。したがって、第1の成分の微小気泡が負に荷電されている場合、第2の成分の微小液滴は正に荷電されるべきであり、その逆もまた同様である。好ましい実施形態では、第1の成分の微小気泡の表面電荷は負であり、第2の成分の微小液滴の表面電荷は正である。油の微小液滴について適切な表面電荷を容易にするために、カチオン性界面活性剤を安定化構造に添加してもよい。広範囲のカチオン性物質、例えば、塩基性窒素原子を有する少なくともある程度疎水性及び/又は実質的に水不溶性の化合物、例えば、第一級、第二級又は第三級アミン及びアルカロイドを使用してもよい。特に有用なカチオン性界面活性剤は、ステアリルアミンである。一実施形態では、第2の安定剤は、カチオン性界面活性剤を添加した中性リン脂質、例えばステアリルアミンを有するDSPC膜である。
【0118】
一実施形態では、第1の安定剤及び第2の安定剤は、それぞれ独立して、リン脂質、タンパク質、ポリマー、ポリエチレングリコール、脂肪酸、正に荷電した界面活性剤、又は負に荷電した界面活性剤、又はその混合物を含む。特に、第1の安定剤は、リン脂質、タンパク質、又は負電荷を有するポリマーを含み、第2の安定剤は、リン脂質、タンパク質、又はポリマー、及び正に荷電した界面活性剤を含む。
【0119】
一実施形態では、第1の成分は、六フッ化硫黄、ペルフルオロプロパン、ペルフルオロブタン、ペルフルオロペンタン及びペルフルオロヘキサン又はそれらの混合物の群から選択される分散ガスを含み、リン脂質、タンパク質及びポリマーの群から選択される第1の安定剤によって安定化されている。第2の成分は、例えば、リン脂質、ポリマー、及びタンパク質を含む、界面活性剤の群から選択される第2の安定剤で安定化された、ペルフルオロカーボン、例えば、ペルフルオロシクロアルカンの群から選択される拡散性成分を含む。より具体的には、安定剤のいずれかは、リン脂質から選択される。
【0120】
第1の成分及び第2の成分は、クラスター組成物を調製するために、及び適切な時間枠内で使用するために、意図された使用の直前に組み合わされる。また、第1の成分及び第2の成分の混合は、成分の形態に応じて様々な方法、例えば、2つの流体成分を混合すること、乾燥粉末形態の1つの成分を流体形態の1つの成分で再構成すること、2つの乾燥形態の成分を混合した後、流体(例えば、注射用水又は緩衝液)と再構成することで達成できることが理解されるであろう。したがって、本発明の一実施形態では、本方法は、投与工程(工程i)の前に、微小気泡/微小液滴クラスター組成物を調製する工程を含む。好ましい実施形態では、微小気泡/微小液滴クラスター組成物は、乾燥粉末形態の第1の成分(微小気泡)を、流体形態の第2の成分(微小液滴)で再構成することによって調製される。より具体的には、第1の成分を含む第1のバイアルは、滅菌された使い捨てシリンジ及び針を使用して、第2のバイアルから取り出された第2の成分で再構成される。注射器の内容物は、第1のバイアルのストッパーを通して添加され、得られたクラスター組成物は、例えば、手動混合によって均質化される。
【0121】
また他の成分が、混合時にクラスターを形成する微小気泡及び微小液滴の能力、例えば、限定されないが、微小気泡/微小液滴の表面電荷のレベル、2つの成分中の微小気泡/微小液滴の濃度、微小気泡/微小液滴のサイズ、液体マトリックス中のイオンの組成及び濃度、pH、賦形剤(例えば、緩衝成分又は張力成分)の組成及び濃度等に影響を及ぼし得ることが理解されるであろう(国際公開第2015/047103号、実施例1を参照されたい)。そのような成分及び組成物の特徴はまた、生成されたクラスターのサイズ及び安定性(in vitro及びin vivoの両方)に影響を及ぼす可能性があり、生物学的属性(例えば、有効性及び安全性プロファイル)に影響を及ぼす重要な要因であり得る。また、クラスター組成物中の全ての微小気泡/微小液滴がクラスター形態で存在し得るわけではなく、微小気泡及び/又は微小液滴の実質的な部分が、微小気泡/微小液滴クラスターの集団と一緒に、遊離(非クラスター)形態で存在し得ることも理解される。加えて、2つの成分が混合される方法は、これらの態様、例えば、限定されないが、均質化中に加えられるせん断応力(例えば、穏やかな手動均質化又は強力な機械的均質化)及び均質化のための時間範囲に影響を及ぼし得る。クラスター組成物は、クラスターの特性が実質的に変化しない時間枠内、例えば2つの成分の組合せから5時間以内、例えば3時間以内に対象に投与されるべきである。本出願人の使用安定性試験では、クラスターが少なくとも3時間、安定した特性を示すことが示されている。実施例1を参照。
【0122】
投与経路:
クラスター組成物は、前記哺乳動物対象に非経口的に、好ましくは静脈内に投与される。投与経路はまた、動脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、腫瘍内投与、又は皮下投与から選択されてもよい。対象への投与のために、治療剤は、クラスター組成物とは別個に、別個の組成物として、事前に及び/又は同時に及び/又は事後に投与される。治療剤は、それぞれ承認された製品概要に従って投与される。典型的には、経路は、限定するものではないが、静脈内投与、腹腔内投与、腫瘍内投与、鼻投与及び筋肉内投与を含む群から選択される。一実施形態では、治療剤は、脳内に外科的に埋め込まれた薬物デポーから投与される。したがって、2つの組成物、つまりクラスター組成物(a)と治療剤組成物(b)は、同じ投与経路を介して投与されてもよく、又は異なる投与経路を介して投与されてもよい。
【0123】
処置スケジュール:
本発明の使用のための組成物、処置方法、及び/又は薬物の送達のための方法は、例えば、多剤処置(multi-drug treatment)レジメンの一部として用いられ得ることが理解されるであろう。一実施形態では、本発明による使用のための医薬組成物は、2つ以上の治療剤の使用を含む。
【0124】
更に、一実施形態では、数回のACT処置を、例えば、図13に例示されるように、治療剤を投与する期間中に行うことができる。一実施形態では、処置方法は、1~5回、例えば2~4回のACT処置を含む。「ACT処置」又は「ACT手順」は、少なくともクラスター組成物の投与、通常の医用イメージングUS照射によるクラスターの活性化、及びその後の増強された取込みを誘導するための低周波数US照射を含む。
【0125】
図13は、がんの処置のための、標準治療併用免疫療法+化学療法レジメン;ペムブロリズマブ、続いてパクリタキセル及びシスプラチンを含む併用レジメンによる処置中に行う可能性のあるACT処置のグラフを提供する。パネルA:ACT手順は、a.:クラスター組成物の注射、b.:例えば60秒の、超音波照射を伴う活性化工程、及びc.:例えば5分の、超音波照射を伴う増強工程を含む。パネルB:y軸は、投与された治療剤の血漿濃度をピークのパーセントで示し、x軸は、時間を分単位で示す。この例では、3つの薬物を全て含めて関心領域全体の処置を示すために、3つのACT手順を約160分、200分、及び240分で行っている。
【0126】
本発明者は、単一の治療剤が投与される場合でも、ACT手順を複数回繰り返すことが有益であることを見出した。本発明者は、ACTの活性化中にUSイメージングを使用して、腫瘍におけるACT気泡の堆積の注目し得る効果を観察した。注射から注射までの堆積パターンにおける強いばらつきが同じ動物において観察され、堆積ACT気泡の密度は、腫瘍の様々なセグメント間で異なり、このパターンは、注射間で変化した。完全には解明されていないが、これらの効果は、様々な腫瘍セグメントの灌流の時間的変動に起因すると仮定される。これらの観察に基づいて、できるだけ多くの腫瘍体積に到達するために、本発明者は、ACT手順を、数回連続して適用すること、例えば、続けて3回適用することが有用であることを見出した。これは、図13において視覚化されたレジメンについて上述したように臨床使用中に数回のACT手順を適用する利点も指摘する。
【0127】
したがって、一実施形態では、1種を超える治療剤、例えば、1~5種の治療剤が、特定の時間スパン、例えば最大3時間にわたって同時に又は連続して投与され、一方で、少なくとも1回、例えば1~5回のACT処置が、同じ期間中に実施される。
【0128】
一実施形態では、以下のACT手順が提供される:
クラスター組成物の投与、例えば静脈内投与、続いて、通常の医用イメージングUSによる標的領域の局所US照射(活性化)、その後、薬物の溢出、分布及び取込みを誘導するための低周波数US照射が続き、これらの工程は、2~5回連続して、例えば3回連続して実施される。したがって、ACT処置の工程(i)~(iv)を1~4回繰り返す。これは、治療剤の投与と併せて行われる。活性化、つまり最初のUS照射は、クラスター組成物の各投与の直後、例えば1分以内に開始され、例えば30~120秒間、持続する。低周波超音波による照射は、活性化工程に続き、典型的には、3~10分間、例えば約5分間、持続する。好ましくは、工程(iii)の直後に工程(iv)を開始する。二周波数トランスデューサは、処置において、照射手段に関係なく、活性化工程及び増強工程の両方のために有益に使用され得る。そのような使用により、工程(iii)の活性化照射から工程(iv)の増強照射への切り替えを遅滞なく行うことができる。活性化直後に増強場を適用することは、得られる治療上の利益にとって重要であり得る。この点で、活性化及び増強照射の両方を、広帯域又は二周波数USトランスデューサを使用して適用することが有益であろう。すなわち、示された好ましい範囲に必要とされる全ての周波数にわたって十分なUS圧力(すなわち、MI)を送達可能なトランスデューサを使用すべきである。例えば、1~10MHz及び0.1~1MHzの両方で最大0.4のMIを送達することが可能なトランスデューサを使用すべきである。
【0129】
別の実施形態では、本方法は、多剤併用レジメンを含む。したがって、処置レジメン中に数種の治療剤を使用することができ、数回のACT手順を適用することができる。好ましい実施形態では、ACT手順は、活性治療分子が投与後の血液中で最大濃度又は最大濃度に近い濃度を示すときに実行される。したがって、ACT処置のタイミングは、治療剤の薬物動態に依存して変化し得る。
【0130】
治療剤は、クラスター組成物とは別個に、事前に及び/又は同時に及び/又は事後に投与される。好ましい実施形態では、治療剤は、少なくとも1つのクラスター組成物の1つの投与後に投与される。驚くべきことに、ACT処置、すなわち、クラスターの投与及び照射を治療剤の投与前に行うことは、治療剤の投与後(すなわち、治療剤が血流中にあるとき)にACT処置が開始されたかのように、同様の効果サイズを示すことが見出された。この知見は、ACTによって誘導される生体力学的効果、すなわち、血管障壁の透過性の増加が、US手順が終了した後もしばらく持続することを示す。ACT処置が治療的投与及び処置を開始する前に実行されてもよいため、このことは臨床実践において有益であり得る。したがって、一実施形態では、クラスター組成物が投与され、in vivoでUS照射された後に、治療剤が投与される。別の実施形態では、クラスター組成物は、治療剤の投与の直前又は直後のいずれかに投与される。
【0131】
本発明はまた、対象のCNSへ少なくとも1つの治療剤を局所送達する方法において使用するための微小気泡/微小液滴クラスター組成物であって、方法は、超音波照射の少なくとも1つの工程が、CNSに向かって非侵襲的に、CNSに向かって侵襲的に、又はCNSの外の心臓若しくは脊髄若しくは頸動脈に向かって行われる音響クラスター療法(ACT)処置を含み、方法が、
(i)微小気泡/微小液滴クラスター組成物を対象に投与する工程であって、少なくとも1つの治療剤が、クラスター組成物とは別個に、事前に及び/又は同時に及び/又は事後に投与される、工程と、
(ii)任意選択で、超音波イメージングを使用して医薬組成物のクラスターをイメージングして、前記対象内の処置のためのCNS内の関心領域を特定する工程と、
(iii)工程(i)からのクラスター組成物の微小液滴の拡散性成分の位相シフトを、第1の周波数及び第1のメカニカルインデックスでの超音波照射によって活性化する工程であって、
a)非侵襲的照射の場合、これは、対象の脳頭蓋骨又は脊柱の外に配置された少なくとも1つのトランスデューサから、これを通した照射のために行われ、
b)侵襲的照射の場合、これは、対象の脳頭蓋骨又は脊柱内の、少なくとも1つの外科的に埋め込まれたトランスデューサから行われ、
c)心臓又は脊髄又は頸動脈に向かって行われる照射の場合、これは、CNSの外の心臓又は脊髄又は頸動脈で行われる、工程と、
(iv)工程(i)で投与された少なくとも1つの治療剤の、CNS内の関心領域での溢出を容易にする第2の周波数及び第2のメカニカルインデックスで、超音波による更なる照射を行う工程であって、
a)非侵襲的照射の場合、これは、対象の脳頭蓋骨又は脊柱の外に配置された少なくとも1つのトランスデューサから、これを通した照射のために行われ、
b)侵襲的照射の場合、これは、対象の脳頭蓋骨又は脊柱内の、少なくとも1つの外科的に埋め込まれたトランスデューサから行われ、
c)工程(iii)においてc)に従って活性化する場合、この工程における更なる照射は、工程(iv)a)又は工程(iv)b)に従って非侵襲的又は侵襲的のいずれかで行われる、工程と、
を含む、微小気泡/微小液滴クラスター組成物を提供する。
本発明はまた、対象の血液脳関門の透過性を、例えば治療剤のために、増加させる方法において使用するための微小気泡/微小液滴クラスター組成物であって、方法は、超音波照射の少なくとも1つの工程が、CNSに向かって非侵襲的に、CNSに向かって侵襲的に、又はCNSの外の心臓若しくは脊髄若しくは頸動脈に向かって行われる音響クラスター療法(ACT)処置を含み、方法が、
(i)微小気泡/微小液滴クラスター組成物を対象に投与する工程と、
(ii)任意選択で、超音波イメージングを使用して医薬組成物のクラスターをイメージングして、前記対象内の処置のためのCNS内の関心領域を特定する工程と、
(iii)工程(i)からのクラスター組成物の微小液滴の拡散性成分の位相シフトを、第1の周波数及び第1のメカニカルインデックスでの超音波照射によって活性化する工程であって、
a)非侵襲的照射の場合、これは、対象の脳頭蓋骨又は脊柱の外に配置された少なくとも1つのトランスデューサから、これを通した照射のために行われ、
b)侵襲的照射の場合、これは、対象の脳頭蓋骨又は脊柱内の、少なくとも1つの外科的に埋め込まれたトランスデューサから行われ、
c)心臓又は脊髄又は頸動脈に向かって行われる照射の場合、これは、CNSの外の心臓又は脊髄又は頸動脈で行われる、工程と、
(iv)工程(i)で投与された少なくとも1つの治療剤の、CNS内の関心領域での溢出を容易にする第2の周波数及び第2のメカニカルインデックスで、超音波による更なる照射を行う工程であって、
a)非侵襲的照射の場合、これは、対象の脳頭蓋骨又は脊柱の外に配置された少なくとも1つのトランスデューサから、これを通した照射のために行われ、
b)侵襲的照射の場合、これは、対象の脳頭蓋骨又は脊柱内の、少なくとも1つの外科的に埋め込まれたトランスデューサから行われ、
c)工程(iii)においてc)に従って活性化する場合、この工程における更なる照射は、工程(iv)a)又は工程(iv)b)に従って非侵襲的又は侵襲的のいずれかで行われる、工程と、
を含む、微小気泡/微小液滴クラスター組成物を提供する。
【0132】
したがって、いくつかの実施形態では、治療剤を含まないクラスター組成物のみが対象に投与される。これは、後に治療剤を投与するための、対象の準備のためであり得る。そのような実施形態では、クラスター組成物の投与は、投与が処置ではなく、処置の準備、例えば治療剤による処置の準備であり、CNSの標的位置へのその安全な通過を可能にするためのものである。
【0133】
本発明は、示される実施形態及び実施例に限定されない。本開示の様々な実施形態が本明細書に記載されているが、そのような実施形態が例としてのみ提供されることは当業者にとって明らかであろう。本明細書に記載の実施形態に対するいくつかの修正及び変更、並びに変形及び置換は、本開示から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。本明細書に記載される実施形態の様々な代替物を、本開示を実施する際に用いることができることを理解されたい。
【0134】
1つの態様について開示された全ての実施形態が、他の態様について等しく十分に適用されることを理解されたい。したがって、例えば、治療に使用するための組成物について開示される特徴は、局所送達の方法、及びBBBの透過性を増加させる方法、及び処置方法にも適用される。
【0135】
本開示の各実施形態は、任意選択で、本明細書に記載される他の実施形態のいずれか1つ又は複数と組み合わせることができることを理解されたい。
【0136】
本明細書に開示される各成分、化合物、又はパラメータが、単独で、又は本明細書に開示される他のそれぞれの若しくは全ての成分、化合物、若しくはパラメータのうちの1つ以上との組合せでの使用のために開示されていると解釈されるべきであることを理解されたい。更に、本明細書に開示される各成分、化合物、又はパラメータの各量/値又は量/値の範囲が、本明細書に開示される任意の他の成分、化合物、又はパラメータについて開示される各量/値又は量/値の範囲との組合せとしても開示されていると解釈されるべきであり、したがって、本明細書に開示される2つ以上の成分、化合物、又はパラメータについて開示される各量/値又は量/値の範囲の任意の組合せも、本説明の目的のために互いに組み合わせて開示されていることも理解されたい。本明細書に記載される任意の及び全ての特徴、並びにそのような特徴の組合せは、特徴が相互に矛盾しないことを条件に、本発明の範囲内に含まれる。
【0137】
本明細書に開示される各範囲の各下限は、同じ成分、化合物、又はパラメータについて、本明細書に開示される各範囲の各上限と組み合わせて開示されるとして解釈されるべきであることを理解されたい。したがって、2つの範囲の開示は、各範囲の各下限を各範囲の各上限と組み合わせることによって導出される4つの範囲の開示として解釈されるべきである。3つの範囲の開示は、各範囲の各下限を各範囲の各上限と組み合わせること等によって導出される9つの範囲の開示として解釈されるべきである。更に、本明細書又は実施例に開示される成分、化合物、又はパラメータの特定の量/値は、範囲の下限又は上限のいずれかの開示として解釈されるべきであり、したがって、本出願の他の場所に開示された同じ成分、化合物、又はパラメータの任意の他の下限又は上限、又は範囲又は特定の量/値と組み合わせて、その成分、化合物、又はパラメータの範囲を形成することができる。
【実施例
【0138】
(実施例1)
クラスター調製、分析ツール、及び基本的特性
C1とC2を組み合わせた際に形成される、すなわちDP中に存在する微小気泡/微小液滴クラスターは、組成物の重要な品質属性、すなわち、薬物の送達のためのその機能性にとって重要である。したがって、形成されるクラスターを濃度及びサイズに関して特性決定及び制御するための分析方法論は、本発明を評価するため並びに医学的品質管理(QC)のために不可欠なツールである。この目的に適用できる3つの異なる分析ツール、つまり、コールター計数、フロー粒子画像分析(FPIA)、顕微鏡/画像分析を特定した。
【0139】
クラスター組成物中のクラスターの特性評価に適用されるこれらの技術に加えて、in vitroでのクラスターの活性化、すなわち超音波照射時の大きな活性化された気泡の生成を検討するための分析方法論が開発されている。この方法論「ソノメトリー」は、国際公開第2015/047103号のE1-6に詳細に記載されている。ソノメトリー分析からの一次レポートの応答は、減衰スペクトル、並びに活性化された気泡の数と体積及びそのサイズ分布であり、両方とも活性化後の時間に対するものである。活性化応答はまた、国際公開第2015/047103号のE1-5に詳述されるように、顕微鏡/画像分析によって探索されてもよい。
【0140】
成分及び組成物:
含まれる実施例で調査した組成物中の第1の成分(C1)は、水素化卵ホスファチジルセリンナトリウム(HEPS-Na)膜によって安定化され、凍結乾燥スクロースに埋め込まれたペルフルオロブタン(PFB)微小気泡から構成された。HEPS-Naは、微小気泡の負の表面電荷を確保する負に帯電した頭部基を保有する。C1の各バイアルは、約16μL又は2・109個の微小気泡を含み、平均直径は約2.0μmである。凍結乾燥製剤は、室温環境の保存で長い貯蔵寿命、特に3年を示す。
【0141】
この実施例で調査した組成物中の第2の成分(C2)は、正の表面電荷を提供するために添加された3%mol/molのステアリルアミン(SA)を伴う1,2-ジステアロイル-sn-グリセロール-3-ホスホコリン(DSPC)膜によって安定化されたペルフルオロメチル-シクロペンタン(pFMCP)微小液滴から構成された。C2における微小液滴を、5mMのTris緩衝液中に分散させた。この試験で調査したC2の標準製剤は、1mlあたり約4μL又は0.8・109個の微小液滴を含有し、平均直径は約1.8μmである。第2の成分は、冷蔵保存で長い貯蔵寿命、特に18カ月以上を示す。
【0142】
いくつかの場合では、クラスター特性に対する効果を解明するために、様々な製剤変数、例えば、SA含有量、微小液滴サイズ、微小液滴濃度、TRIS濃度、及びpHを、制御した様式で変化させた。そのような試料を使用した場合、これらの態様は本書で説明している。
【0143】
クラスター組成物(DP)は、C1のバイアルを2mLのC2で再構成し、続いて30秒間、手動で均質化することによって無菌的に調製した。2mlを、滅菌された使い捨てシリンジ及び針を使用して、C2のバイアルから取り出した。シリンジの内容物を、C1のバイアルのストッパーを通して添加し、得られたDPを均質化して、投与用組成物を調製した。
【0144】
国際公開第2015/047103号に示されるように、第1の成分及び第2の成分、すなわち、微小気泡製剤及び微小液滴製剤は、変化させることができる。例えば、国際公開第2015/047103号の表9及び表10に示されるように、本発明による処置に有用であると予想される、好適な特性を有するクラスターを調製するために、第1の成分のガス及び安定化膜の両方を変化させることができる。
【0145】
分析中のクラスター組成物におけるクラスターの安定性:
DP内のクラスターは、微小気泡と微小液滴との間の静電引力によって形成され、一緒に保持される。この引力は有限であり、クラスターは、力学的応力や熱(ブラウン)運動等の様々な経路/影響によって、形成後に分解する可能性がある。精密かつ正確な特性決定のためには、分析中にクラスターが安定していることが重要である。この安定性は、上記の全ての方法論で調べた。安定性を評価するために、単一のDP試料で5分を超えるタイムスパンにわたる3~5回の分析を繰り返した。濃度及びサイズのいずれにおいても、これらの繰り返しにわたって有意な変化は観察されず、微小気泡、微小液滴及びクラスターが、記載された分析条件、すなわち、PBS又は水中で希釈後、連続的な均質化(攪拌)下において5分間以上安定であることを証明した。
【0146】
製剤の態様:
DP内のクラスター含有量及びサイズを制御し、最適な特性を標的とするために、いくつかの異なる製剤態様が探索されてもよい。クラスター含有量及びサイズ分布を操作するために使用することができるパラメータとしては、限定されないが、微小気泡と微小液滴との間の表面電荷の差、例えばSA%、C2の微小液滴のサイズ、pH、C2中のTRIS濃度、並びに微小気泡及び微小液滴の濃度が挙げられる。加えて、成分の化学分解、例えば、高温での長期保存中の化学分解は、DPの調製中に、クラスターを形成するC1及びC2の能力に影響を及ぼし得る。
【0147】
国際公開第2015/047103号において報告されているように、30種の異なる組成物のin vitro特性決定から、系の性質及び特徴を解明するいくつかの重要な相関関係を抽出することができる。本発明者は、形成されたクラスターのサイズが、系の反応性にも強く関連していることを見出した。比較的低レベルの反応性(例えば、<20%)では、小さいクラスター(すなわち、1~5μm)及び中サイズのクラスター(すなわち、5~10μm)のみが形成される。反応性の増加に伴い、より大きなクラスターが形成され始める。R>約20%で、10~20μmのクラスターが形成され始め、R>約50%で、20~40μmのクラスターが形成され始める。より大きなクラスターが形成されると、小サイズ及び中サイズのクラスターが犠牲になる。本発明者は、クラスター濃度1~5μm及び5~10μmについて、含有量vs.反応性の明確な最適条件を見出した。本発明者は、より大きなクラスター(すなわち、10umを超える、又は20umを超える)の形成が、組成物の有効性に対して有害であり、したがって、クラスタリングの潜在力はバランスを取る必要があることを見出した。
【0148】
本出願人の実験、及び国際公開第2015/047103号の表5及び表6に示される結果に基づくと、クラスター組成物の有効性(グレースケール単位(GS)での線形増強)は、クラスターの平均サイズ及びクラスターの濃度(100万個/ml)と相関する。グレースケール増強は、in vivoでのクラスター組成物の投与及び活性化後にUSイメージングによって観察される明るさ(コントラスト)の増加であり、イメージングされた組織における活性化気泡の量の尺度である。報告されている結果は、左心室でのクラスター組成物のi.v.投与及び活性化に際してのイヌ心筋からの超音波シグナルの線形増強(グレースケール単位)に対する様々なサイズクラスのクラスターの寄与の多変量主成分分析(PCA)からのものである。国際公開第2015/047103号の実施例2を参照されたい。PCAは、その表5及び表6に詳述される30個の試料のデータに対して行った。結果は、中小サイズのクラスター(<10μm)がクラスター組成物の有効性に有意に寄与するのに対し、より大きなクラスター(>10μm)は有意に寄与しないことを実証する。これらの結果及び結論は、本発明にも適用される。PCA分析の結果を以下のTable 1(表1)に示す。図2は、Table 1(表1)のデータに基づく、クラスターサイズ対生成物の有効性の視覚化を示し、平均直径が3~10μmの範囲であるクラスターが最適な有効性を有することを実証する。したがって、図2には、生成物の有効性vs.クラスター直径が示されている。Y軸は、左心室でのクラスター注射及び活性化後のイヌ心筋のUSイメージングからのグレースケール増強に対する相関係数を示し、堆積した活性化気泡の量を反映する。X軸は、クラスター直径をμm単位で示す。灰色の箱は、評価された異なるクラスターサイズ:1~5μm、5~10μm、10~20μm及び20~40μmのビンを表す。実線は、有効性vs.クラスター直径の連続関数を表す。エラーバーは標準誤差である。図2は、国際公開第2015/047103号の図12(左側)の代替的な視覚化である。観察され得るように、平均クラスター直径は、3~10μm、好ましくは4~9μm、より好ましくは5~7μmの範囲であるべきである。
【0149】
【表1】
【0150】
実施例1に従って調製したクラスター組成物のクラスター濃度及び平均直径を分析し、数時間にわたって、約4000~4400万個/mlのクラスター濃度を有し、約5.8~6.2μmのクラスター平均直径を有することを見出した。結果を以下のTable 2(表2)に示す。結果は、国際公開第2015/047103号の表6の結果と一致する。Table 2(表2)のデータは、調製されたクラスター組成物が許容され得る安定性を有し、クラスターの最適なサイズ及び濃度を達成し得ることを示す。
【0151】
【表2】
【0152】
本発明の概念を適用すること、つまり、投与前にC1及びC2からクラスター組成物を調製し、微小気泡/微小液滴クラスターを形成することによって、国際公開第99/53963号によって教示されている2つの成分の同時注射とは対照的に、10倍を超える有効性の増加を可能にする。第1の成分と第2の成分の組合せに際して微小気泡/微小液滴を形成し、この予め形成されたクラスターを投与することは、in vivoでのその意図された機能性の前提条件である。クラスター組成物は、クラスターの特性が実質的に変化しない時間枠内、例えば、2つの成分を組み合わせてから3時間以内に対象に投与されるべきである。
【0153】
(実施例2)
増強工程の周波数及びメカニカルインデックス
先に述べたように、大きなACT気泡の活性化後の更なるUS照射の適用、すなわち増強工程は、血管コンパートメントから標的組織間質への薬物の溢出の増加をもたらす。
しかしながら、周波数及びMIに関して、この増強場の属性は、処置の有効性に強く影響する可能性がある。ある特定の最小限レベルの生体力学的効果が、透過性の増加を誘導するためには必要であるが、強すぎる場合には、慣性キャビテーション機構が誘導され、血管損傷及び有効性低下が生じる可能性がある。
【0154】
気泡振動のレベルは、いくつかのパラメータ、最も重要にはUS周波数及び圧力に依存し、後者はメカニカルインデックス(MI)によって定義される。誘導される気泡振動の性質及びACT手順の有効性に対する周波数及びMIの影響を検討するために、5つの試験を実施した:
【0155】
・ 活性化気泡の集団の減衰スペクトルを測定した。
増強工程中に誘導された、静止直径20μmの典型的活性化気泡の放射振動を、修正Rayleigh-Plessetモデル[Postema and Schmitz、「Ultrasonic bubbles in medicine: influence of the shell」、Ultrason Sonochem、2007年.14(4):438~44頁]を使用して、一連の周波数とMIについてモデル化した。
【0156】
・ 薬物模倣発色団(エバンスブルー)の組織取込みを、0.5MHzの増強工程US周波数を有するMIの関数として調査した。この試験では、気泡振動を、修正Rayleigh-Plessetモデルを使用してモデル化した。
【0157】
・ マウスにおいて、nab-パクリタキセル±ACTを用いて前立腺がんを処置する治療有効性を、0.2の増強MIで0.5MHz及び0.9MHzの両方で調査した。
【0158】
・ マウスにおいて、nab-パクリタキセル±ACTを用いて乳がんを処置する治療有効性を、0.5MHzの増強周波数で0.1及び0.2のMIで調査した。
【0159】
方法:
この試験で調査したクラスター組成物は、実施例1に詳述した通りであった。活性化気泡の集団の減衰スペクトルを、国際公開第2015/047103号のE1-6に詳述されるように、ソノメトリーによって測定した。
【0160】
周波数及びMIの関数としての気泡振動のモデリングは、MATLAB 2020b(MathWorks社、Natick, MA, USA)における偏微分修正Rayley-Plesset方程式を解くことによって行った。具体的には、直径20μmの気泡を、無視可能なシェル剛性及びC4F10ガス特性を使用して血液中でモデル化した。線形超音波パルスを、3サイクルの開始及び終了ガウスランプを有する正弦波を使用して模倣した。
【0161】
US増強場のMI分散の効果を調べるために、マウスの皮下前立腺がんモデル(PC3)において、エバンスブルー(EB、蛍光色素)の腫瘍特異的取込みを調べた。0、0.1、0.2、0.3、及び0.4の増強照射MIを有する5つの群を調査した(1群あたりN=3匹)。EBの静脈内注射の直後に、単回用量のクラスター組成物(2mL/kg、(i.v.))を与え、続いて、腫瘍体積に集束させた45秒の活性化US(2.25MHz、MI0.4)及び5分間の増強US(0.5MH、可変MI)を与えた。処置の30分後、腫瘍を切除し、EBの量を620nmの分光光度法によって測定した。
【0162】
マウスにおけるヒト前立腺がんの処置について、nab-パクリタキセル(Abraxane(登録商標)、ABR)±2mLのクラスター分散液/kgを用いたACTの治療効果を、皮下前立腺がんモデル(PC3)において調査した。ABR(12mg/kg、i.v.)を毎週、4週間にわたって投与し、毎回直後に3回、連続してACT手順を行った。1群あたりN=9~12匹。加えて、生理食塩水対照群(N=4)にも行った。活性化USは、2.5MHz、MI=0.4で45秒の照射で構成し、増強USは、0.5又は0.9MHz、両方とも0.2のMIで5分の照射で構成した。エンドポイントは全生存期間であった。腫瘍が最大体積1000mm3に達したとき、動物を選別して処分した。
【0163】
マウスにおけるヒト乳がんの処置について、nab-パクリタキセル(Abraxane(登録商標)、ABR)±2mLのクラスター分散液/kgを用いたACTの治療効果を、皮下乳がんモデル(Ca-MDA-MB231)で調べた。ABR(12mg/kg、i.v.)を、4週間にわたって毎週投与し、毎回直後に3回、連続して、0.1又は0.2のMIでACT手順を行った。加えて、薬物単独の群も調べた。1群あたりN=9~12匹。活性化USは、8MHz、MI=0.33で45秒の照射で構成し、増強USは、0.5MHz、0.1又は0.2のMIで5分の照射で構成した。エンドポイントは、キャリパーで測定された腫瘍体積(毎日)であり、測定された腫瘍体積は処置1日目の腫瘍体積によって正規化した。腫瘍が最大体積1000mm3に達したときに、動物を選別して処分した。
【0164】
結果:
活性化気泡の減衰スペクトル
活性化ACT気泡の典型的な集団の減衰スペクトルを測定し、結果を図3において視覚化した。注目され得るように、共振周波数は約0.3MHzと決定された。本質的に、減衰スペクトルは、気泡集団と入射US場との間の連動を説明する。共振周波数で又は共振周波数の近くで、気泡は、減衰において最も効果があり、したがって、入射USエネルギーの体積振動及び生体力学的効果への変換において最も効果的である。したがって、スペクトルは、約0.15MHzから0.6MHzの範囲外の周波数に対して気泡の応答が非常に限定的であることを実証する。しかしながら、これは、気泡が実質的に無限のマトリックスに分散されている場合であり、気泡が微小血管に滞留されている場合ではない。この場合、血管壁との接触が、血管の直径及び弾性に応じて、気泡応答を抑制し、減衰スペクトルを上方にシフトさせる。そのような減衰効果の正確なモデリングを提供することは困難であるが、経験に基づくと、約0.5MHzへの共振周波数のシフトが合理的な推定値である。したがって、生体力学的効果の最適な生成を確実にするACT気泡間の最適な結合は、約0.4~0.6MHzの間で生じることが予想される。そして、これは、本発明の下での増強工程のための好ましい周波数範囲を表す。
【0165】
周波数とMIの関数としての気泡振動のモデリング
300、400、600、及び900kHzの0.1、0.20.3及び0.4のMIでの気泡振動のモデリングを図4Aに視覚化している。強い振動は、増加した生体力学的効果の誘導の証拠である。しかしながら、鋭い鋸歯状の応答は、非線形及び/又は慣性キャビテーション挙動の開始を示す。注目され得るように、900kHzでは、全てのMIについて、放射振動は小さい。上記の減衰スペクトルからの予測に従って、有意な治療上の利益を生み出すために必要な、必要な生体力学的効果を誘導するには限定されすぎている可能性が高い。一方、300kHzでは、低MIであっても、放射振動が非常に強くかつ非線形であり、ある程度の慣性キャビテーションを引き起こし、血管損傷を引き起こす可能性が高い。しかしながら、400kHz~600kHzの周波数については、放射振動は、治療効果を誘導するのに十分な生体力学的作用を誘導し、同時に、過度の非線形挙動及び血管損傷を回避するという要件を満たしていると思われる。
【0166】
CNSへの治療剤のUS媒介送達に関する特定の問題は、適用されるUS場が、骨(例えば、頭蓋骨)を通過する必要があり、この構造は、入射音に対して顕著で周波数依存性の障壁となることである。例えば、マウスの頭蓋骨を通してUSを通過させるときの減衰は、0.5MHzでは約20%であるが、2.7MHzでは40%と高い。頭蓋骨はUSに対して著しい障壁となるため、低周波数域の使用が、CNS適用のために最適であり、CNS照射のためのほとんどの市販のUS装置にとって共通である。0.250MHzで0.025、0.05及び0.1のMIでの気泡振動のモデリングを図4Bにおいて視覚化している。注目され得るように、放射振動は、この低周波数であっても、より低いMIと組み合わせた場合であっても、所望の範囲内で制御することができ、つまり、最適な生体力学的効果のために十分な振動を誘導するが、依然として、過度の慣性キャビテーション及びCNS組織への損傷を回避し得る。
【0167】
MIの関数としてのエバンスブルーの組織取込み及び気泡振動
結果を、図5において視覚化している。注目され得るように、組織取込みは、US無し(MI=0)からMI=0.1に増加し、MI=0.2で更に増加するが、その後、MI=0.3で再び低下し、M=0.4で更に低下する。同時に、埋め込まれた気泡振動パネルから、最大放射振動は、MI=0.1で約3μmから、MI=0.2で約6μm、MI=0.3で約10μm、及びMI=0.4で20μm超に増加する。重要なことに、その後、組織取込みの減少の開始(MI=0.2からMI=0.3)が、慣性キャビテーションが生じ始める著しい非線形挙動の開始と同時に起こる。
【0168】
前立腺がんの処置のためのnab-パクリタキセル±ACTの治療効果 - 増強工程中のUS周波数の効果
全生存期間vs.時間を示す結果を図6に視覚化している。注目され得るように、ACT(0.5MHz群)では、100%の動物が試験終了まで生存し、動物の80%が安定した完全な寛解(つまり、がんの無い)状態であった。ACT(0.9MHz)群もまた、薬物単独と比較して治療上の利益を示したが、その効果はACT(0.5MHz)より著しく劣る。0.9MHzでは、ほとんどの腫瘍が再増殖し始め、試験終了時に安定した完全な寛解状態にある動物はわずか25%であり、生存は57%であった。これらの結果は、最適な治療効果を誘導するために、特定の最小の放射振動が必要であることを示している。
【0169】
この試験のパイロット調査として、より高いMIが適用できるかどうかを評価するために、0.40のMIも、0.9MHzで試験した。しかしながら、このMIでは、表在性出血の明確な証拠が観察された。
【0170】
乳がんの処置のためのnab-パクリタキセル±ACTの治療効果 - 増強工程中のMIの効果
腫瘍増殖率vs.時間を示す結果を図7に視覚化している。注目され得るように、ACT(MI 0.1)群では、腫瘍増殖率のわずかだが有意ではない低下が観察され、31日目の腫瘍増殖阻害は、薬物単独と比較して、たったの8%である。しかしながら、ACT(MI 0.2)群では、腫瘍増殖率の強力かつ有意な低下が観察され、31日目の腫瘍増殖阻害は薬物単独と比較して52%である。繰り返しになるが、これらの結果は、治療上の利益を誘導するために、特定の最小の放射振動が必要であることを実証している。
【0171】
結論:
これらの4つの例で生じた結果に基づいて、ACT概念の機能性は、増強工程中に適用される周波数及びMIの変動に非常に敏感であることが実証される。これらの試験に基づいて、好ましい周波数範囲は、0.1~0.3で適用されるMIと組み合わせた0.4~0.6MHzと結論づけられる。CNS適用の場合、0.225~0.15のMIと組み合わせた0.2~0.4MHzの周波数もまた、好ましい実施形態を表す。驚くべきことに、増強工程中により低い周波数及びより高いMIを適用すると、誘導される活性化気泡振動が強すぎて、有効性の著しい喪失及び血管損傷をもたらすことが実証された。一方、より高い周波数及びより低いMIでは、誘導される気泡振動が小さすぎるため、十分な生体力学的効果が欠如し、したがって、治療有効性の著しい喪失をもたらす。
【0172】
(実施例3)
血液脳関門(BBB)を横断するナノ薬物の送達
本実施例は、BBBを横切って大きなナノ構築物を送達するACTの能力を、本発明によるUS場を適用して調べる。
【0173】
材料及び方法:
調査したACTクラスター組成物は、実施例1に詳述した通りであった。
調査したナノ粒子は、Cristal Therapeutics(Maastricht社、オランダ)のコア架橋ポリマーミセル(CCPM)であった。これらのCCPMは、直径70nmであり、イメージング目的のためにローダミンB Cy7で標識され、製剤は、44mg/mlのポリマー及び40nmol/mlのCy7を含んだ。
【0174】
健常マウス脳におけるCCPMの溢出を、近赤外線蛍光(NIRF)イメージングを使用して測定し、脳切片におけるCCPMの微小分布を共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)によってイメージングした。
【0175】
6~8週齢で購入した13匹の雌アルビノBL6マウス(Janvier labs社、フランス)を、特定の病原体を含まない条件下で、個別に換気されたケージに5匹ずつの群で収容した。ケージは、ハウジング、休息材料、及びかじり木が豊富にあり、12時間の昼夜サイクルで制御された環境(20~23℃、50~60%の湿度)に保たれた。動物は、食料と滅菌水に自由にアクセスできた。全ての実験手順は、ノルウェー食品安全機関(Norwegian Food Safety Authority)によって承認された。
【0176】
超音波の設定のイラストを図8に示す。特注の二周波数トランスデューサ(中心周波数0.5MHz及び2.7MHz)[Andersenら、「A Harmonic Dual-Frequency Transducer for Acoustic Cluster Therapy」、Ultrasound Med Biol、2019年9月;45(9):2381~2390頁]を、脱気した水を充填した特注円錐体の頂点に取り付けた。トランスデューサは、42mmの直径を有し、0.5MHz及び2.7MHzのビームプロファイルの-3dB幅は、トランスデューサ表面から220mmの距離で16及び6mmであった。シグナルを、シグナル生成器(33500B、Agilent Technologies社、USA)で生成し、50dBのRF増幅器(2100L、E&I社、USA)で増幅した。増幅器はスイッチボックスに接続されており、スイッチボックスは、活性化から増強へUS場を切り替えることができる。円錐体の底部を光学的及び音響的に透過性のプラスチック箔(Jula Norge AS社、ノルウェー)で覆い、バッグを形成した。動物を、音響吸収材(Aptflex F28、Precision Acoustics社、UK)の上に伏せた姿勢で配置し、音響吸収材、動物の頭部、及び音響的透過性ホイルの間を連結するために超音波ゲルを用いた。
【0177】
使用したACT手順は、活性化工程と増強工程とで構成した。マウス頭蓋骨を通じた減衰は、0.5MHz及び2.7MHzの周波数について、それぞれ約21±17%及び42±21%であると測定された。これらの数値は、in situ音圧/MIを計算するために使用した。以下の超音波パラメータを各工程に使用した。
・ 活性化:中心周波数2.7MHz、メカニカルインデックス(MI)に対応する平均in situ音圧0.18、8サイクルのパルス長、パルス繰り返し周波数1kHz、及び照射時間60秒、
・ 増強:中心周波数0.5MHz、MIに対応する平均in situ音圧0.15、4サイクルのパルス長、パルス繰り返し周波数1kHz、及び照射時間300秒。
【0178】
ACTの1ラウンドは、2mL/kgのクラスター組成物のボーラス静脈内注射と、その後の360秒の照射で構成した。各動物は、3ラウンドのACTを受け、結果として、合計75μlのACT製剤及び18分間の超音波を受けた。CCPMは、1回目のACT手順の直前に静脈内注射した。
【0179】
動物を、医用空気中2%イソフルラン(78%)及び酸素(20%)(Baxter社、USA)を使用して麻酔し、その後、その外側尾静脈にカニューレを挿入した。体毛を、毛髪トリマー及び脱毛クリーム(Veet社、カナダ)を用いて除去した。ACT手順中に、動物を、医用空気中1.5~2%のイソフルランを使用して麻酔した。呼吸速度は、感圧プローブ(SA instruments社、USA)を使用してモニタリングし、体温は外部加熱で維持した。各動物は、CCPMの注射の直後に3ラウンドのACTを受けた。対照動物は、ACTを受けた動物と同じ方法で処理したが、クラスター組成物の代わりに50μlの生理食塩水注射を3回、6分間隔で与えた。
【0180】
ACT処置終了後1及び24時間の2つの時点で調査を行った。これらの時点で、動物をペントバルビタール(200μl)の腹腔内注射によって安楽死させ、呼吸が停止するまで麻酔下で維持した。その後、動物を30mLのPBSで経心臓的に灌流し、その後、脳を切除し、NIRFイメージング装置でイメージングした。群は、対照/1時間がN=3、対照/24時間がN=3、ACT/1時間がN=5、及びACT/24時間がN=2であった。
【0181】
切除した脳をNIRFイメージング装置(Pearl Impulse Imager、LI-COR Biosciences Ltd.社、USA)に入れて、脳内のCCPM(登録商標)の蓄積を評価した。脳を785nmで刺激し、820nmで蛍光発光を検出した。画像をImageJ(ImageJ 1.51j、USA)で分析した。関心領域(ROI)を、脳を囲んで描き、脳の総蛍光強度を取得し、脳の湿質量に対して正規化した。標準曲線を使用して、総蛍光強度を、脳組織のグラムあたりの注射用量に対する割合(% ID/g)に変換した。結果を、時点及び処置群ごとにプロットした。
【0182】
共焦点顕微鏡法のために、切除された脳を、Optimum Cutting Temperature Tissue Tek(Sakura社、オランダ)を用いてコルク片の上に横方向に取り付けてから、試料を液体窒素にゆっくりと浸した。凍った脳のうち、上から最初の500μmを取り除いた後、5×10μmの厚い切片と5×25μmの厚い切片を横方向に切断した。これを、脳全体で800μmごとに繰り返した。
【0183】
結果:
透過性の増加がCCPMの溢出を促進するかどうかを検討するために、切除された脳をNIRFイメージング装置でイメージングした。ナノ粒子を注射した対照及び動物の代表的なNIRF画像を図9(上部パネル)に示す。注目され得るように、ACTを受けた脳には、対照脳に反して、明確な蓄積が観察され得る。
【0184】
NIRF画像の定量分析は、ACTと対照動物との間での蓄積の統計的に有意な増加(% ID/g)を、両方の時点で明らかにした(図9、左下パネル)。対照と比較して、ACTでは、メディアン% ID/gが、ACTから1時間後に0.9% ID/gから2.6% ID/gに増加し、24時間後に0.8% ID/gから2.2% ID/gに増加した。それぞれ、% ID/g単位で2.9倍及び2.8倍の増加が観察された。
【0185】
ACT処置後の脳組織におけるCCPMの蓄積の増加を検証し、血管に対するCCPMの位置を検討するために、脳切片をCLSMによってイメージングした。ACT処置された脳のタイルスキャンは、対照動物の脳では観察されなかったいくつかの蛍光の「雲」を示した。ACTから24時間後、ACT処置した脳のタイルスキャンは、1時間処置群と同様の雲パターンを示した。対照及びACT処置動物の両方の閾値タイルスキャンから、CCPMを表すピクセルの数を抽出し、半球の輪郭を描くために使用されるROIのサイズによって正規化した。図9(右下パネル)から分かるように、ACT処置後1時間の切片において、対照脳に反して、明確で統計的に有意な4.7倍の増加が観察され得る。
【0186】
対照脳及びACT処置脳の両方における様々な位置の高倍率CLSM画像を取得して、血管に対するCCPMの位置を調べた。ACT処置脳では、CCPMは明らかに溢出していたが、対照脳では、CCPMは主に血管内か又は血管染色からわずかに変位して観察された。
【0187】
結論:
本発明の2段階の照射アプローチを適用すると、ACTは、調査した70nmのCCPM化合物のような大きなナノ粒子構築物のBBBの透過性を明らかに増加させた。ACTは、CCPMの脳実質への蓄積、溢出、及び浸透の改善をもたらした。この試験は、BBBを横断する薬物及びナノ粒子の一時的かつ安全な送達を改善するためのACTの大きな可能性を実証する。間接的に、それはまた、体の任意の血管障壁を横断して大きな薬物分子又は構築物を送達させるためのACTの能力を実証する。
【0188】
(実施例4)
生体内顕微鏡検査
ACT概念の前提条件は、大きな活性化気泡が関心領域の微小血管系に堆積し、それらが内皮壁と比較的緊密に接触していることである。in vivoでの活性化後に生成される大きな気泡の特徴を更に解明し、実証するために、ラットの腸間膜の顕微鏡検査を介して微小循環内の個々の活性化位相シフト気泡を直接観察する試験を行った。
【0189】
方法:
調査したACTクラスター組成物は、実施例1に詳述した通りであった。
雄Wistarラットを試験に使用した。全身麻酔は、i.v.及びi.m.ペントバルビタールナトリウムで投与及び維持した。ラットに挿管し、試験製剤の投与のために尾静脈又は頸動脈静脈にカニューレを挿入した。超音波を適用して、腸間膜内のクラスターを活性化した。腹部を垂直正中線切開によって開き、その後、ラットを、カバーガラスの円窓を組み込んだプラスチックプレート上に側臥位で配置し、露出させた腸間膜をカバーガラス窓上に配置した。広げた腸間膜を37℃でKrebs-Ringer緩衝液を用いて灌流した。超音波を、露出させた腸間膜に、顕微鏡の対物レンズの下で直接適用した。超音波曝露には、中心周波数が7.5MHzのリニアプローブ(7.5L40)を備えた超音波スキャナ(Elegra; Siemens社、Seattle, WA)を使用した。ソナーゲルを、超音波トランスデューサと胸壁又は腸間膜との間に塗布した。画像を、その後のレビューのために、S-VHS又はDVテープに記録した。
【0190】
結果:
2匹の動物で超音波活性化は試験されず、6回の注射を行った後、腸間膜微小循環において大きなACT気泡は観察されなかった。
【0191】
3匹の動物に超音波活性化を適用した。全ての注射後に、大きな活性化気泡が観察された。活性化位相シフト気泡の成長段階が、リアルタイムで観察することができた。活性化気泡の核が、微小血管の血流閉塞と共に数秒以内に成長した。典型的には5~10分の期間にわたって、活性化気泡は徐々に縮小し、微小血管内で断続的に前進した。全ての活性化位相シフト気泡は、赤血球よりも大きく、微小血管に留まり、一過性に血流を遮断した。全ての活性化気泡は非球状であり、微小血管の一区域を背にして形成されて楕円形の形状に見えた。
【0192】
図10は、(左上)注射前、(右上)血流を遮断する微小血管での注射後17秒(第2の列、左)1分9秒、(第2の列、右)5分9秒、(第3の列、左)8分19秒、(第3の列、右)8分45秒、及び(下、左)8分56秒の、腸間膜内の活性化位相シフト気泡(黒い矢印によって示される)の動画フレームをそれぞれ示す。活性化位相シフト気泡(矢印で示す)は、8分56秒後に完全に消失する前に、断続的な滞留及び移動によって微小血管内で徐々に縮小及び前進する。図10(下、右)は、気泡のサイズを示すための、10μmの分量単位を有するスケールバーを示す。
【0193】
結論:
この実施例に示されるように、活性化後、典型的に20μmの大きな気泡が形成され、より大きな微小毛細血管内に一過性に保持される。図10に示されるように、活性化位相シフト気泡は、典型的には5~10分後に完全に消失する前に、徐々に収縮し、断続的に滞留及び移動して、毛細血管3内で更に下方に前進する。このプロセスは、心臓又はCNSへの栄養血管での活性化の場合でさえ、断続的な滞留及び移動により、確実に、気泡直径未満の全てのサイズの毛細血管が実際に生体力学的効果を受け、単一の気泡が毛細血管床のいくつかの場所で透過性の増強をもたらすことを含意する。
【0194】
(実施例5)
心臓での活性化後のCNSにおける活性化気泡の堆積
CNSの外での活性化後に脳内に大きなACT気泡を堆積させることの実現可能性を実証するために、心臓で活性化を行ったイヌの試験を行った。活性化気泡の堆積は、脳の超音波イメージングによって測定した。
【0195】
材料及び方法:
調査したACTクラスター組成物は、実施例1に詳述した通りであった。
【0196】
超音波設定の概略図を図11に視覚化している。簡単に述べると、この手順は、以下の工程で構成した:1kgあたり50μLのクラスター組成物のi.v.注射、次いで、P4-2フェーズドアレイトランスデューサを備えたATL HDI-5000スキャナを使用した、3MHzの中心周波数と1のMIでの、60秒間の心臓の即時活性化照射。その後、4MHzの中心周波数及び0.1のMIを有するP5-3トランスデューサを使用して、スキャナを脳のイメージングに切り替え、潜在的な局所的気泡活性が無いことを確かめた。同じ理由で、超音波の放射を、スキャナディスプレイをフリーズさせる画像取得エピソードの間に中断させ、各4番目のサイクルでトリガーを伴う心拍ゲート付きイメージングを使用して、全体的な超音波曝露を最小限に抑えた。脳組織の単一画像を、各注射の前、及び注射の2、4、6、8、10、及び12分後に取得した。脳イメージングは、ベースラインで強力な反射要素を含まない脳組織のより大きな近位領域に向けた。dBで表される画像からのエコー強度の計算は、特注のMathLabソフトウェアによって行った。
【0197】
この手順を2匹の雑種イヌで繰り返した。麻酔をペントバルビタール(12~25mg/kg i.v.)及びフェンタニル(1.5~2.5μg/kg)で誘導し、気管内チューブを挿入した。動物を手術台に移し、容積制御された機械室空気換気装置(New England mod. 101 Large Animal Ventilator)を装着した。動物は、注射器注入ポンプ(IVACモデルP2000)により制御されたフェンタニル(20μg/kg h)及び点滴ラインによるペントバルビタール(10mg/kg h)の連続i.v.注入によって、全身麻酔の状態に維持する。麻酔の深さは、生理学的記録(心拍数、血圧)及び動物の全体観察(筋肉活動の兆候、呼吸努力、反射)によって監視する。
【0198】
結果:
脳におけるコントラスト増強(dB)の結果を以下のTable 3(表3)に記載し、図12において視覚化している。注目され得るように、エコー信号の強い増加が、第1のイメージング時点(2分)で観察された。造影シグナルは、実施例4で観察された気泡動態と同様に、8分以内にベースライン値へ戻る指数関数に近い減衰を示した。
【0199】
【表3】
【0200】
結論:
この結果は、心臓での活性化後の脳における大きな活性化気泡の堆積を明確に実証している。
【0201】
(実施例6)
健常マウス脳における音響クラスター療法(ACT(登録商標))誘導血管効果のリアルタイム生体内イメージング
生体内顕微鏡検査を使用したリアルタイム観察が、微小気泡媒介BBB透過に関連した即時応答を調査するための強力なアプローチとして現れている(Caskeyら、2007; Chenら、2011 ; Helfieldら、2016; Raymondら、2007)。ACT(登録商標)が誘導するBBB透過性の増強についての理解を深めるために、多光子生体内顕微鏡検査を使用してACT(登録商標)に対するリアルタイム血管応答を調べた。この目的のために、対物レンズを中心としたリングトランスデューサと並べた頭蓋窓をマウスの頭蓋骨に取り付けた。フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識デキストランを注射して、血管を明示し、溢出を視覚化した。脳切片の組織学的評価を行い、ACT(登録商標)誘導性の組織損傷を評価した。更に、脳を、単一エレメント二周波数トランスデューサを使用してACT(登録商標)で処置し、凍結した脳切片を染色し、共焦点顕微鏡によってイメージングして、灌流及び免疫応答の変化を評価した。この試験は、in vivoでのACT(登録商標)誘導増強BBB透過性の背後にあるメカニズムに関する新しい知識を明らかにし、これは、ACT(登録商標)の安全かつ効率的な臨床への転換のための処置の最適化を考慮すれば重要である。
【0202】
活性化ACT(登録商標)気泡が、一過性及び局所的な蛍光強度の増加、その後の突出の形態での溢出を誘導する血流を変化させることが観察された。観察結果は、ACT(登録商標)が脳内の血管に実質的な損傷を引き起こすことなく毛細血管の広がりを誘導することを示している。
【0203】
材料及び方法
調査したACTクラスター組成物は、実施例1に詳述した通りであった。より具体的には、クラスター分散液を以下のように調製した:負に荷電され、非晶質スクロース構造に埋め込まれた水素化卵ホスファチジルセリン(H-EPS)の単分子リン脂質膜によって安定化されたペルフルオロブタン(PFB)(16μl/バイアル)の微小気泡の凍結乾燥懸濁液を、全体的な表面正電荷を作りだす3%(mol/mol)ステアリルアミンを含有する単分子ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)リン脂質膜で安定化したペルフルオロメチルシクロペンタン(PFMCP)(6.8mg/mL)の微小液滴エマルジョンで再構成し、5mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)緩衝液中に分散させ、2mLの分散液を形成した。再構成されたACT(登録商標)製剤は、6×107クラスター/mlで構成され、中位径は5μmであった。
【0204】
動物は、個々の処置応答に応じて、1~3回のACT(登録商標)処置を10~15分の処置間隔で受けた。1つの処置は、50μlのACT(登録商標)クラスターのボーラス注射、その後の60秒の活性化超音波及び300秒の増強超音波から構成した。活性化曝露及び増強曝露に使用した超音波設定をTable 4(表4)に示す。
【0205】
【表4】
【0206】
蛍光トレーサー
脳血管系を視覚化するために、第1のACT(登録商標)処置の前に、50μlの2MDaのFITC-デキストラン(生理食塩水中100mg/ml; Sigma-Aldrich社、ドイツ)を静脈内投与した。30μlの再ブーストを次のACT(登録商標)処置の前に毎回与えた。
【0207】
リングトランスデューサと超音波プロファイル
頭蓋骨に直接取り付けるためにガラスカバースリップ(φ13mm、厚さ#1、Thermo Fisher Scientific社、USA)に接着させた特注の単一エレメントのリング状圧電超音波トランスデューサ(外径10mm、厚さ1.4mm、高さ1.2mm)(Yddalら、2016)を、ACT(登録商標)処置に使用した。トランスデューサアセンブリ治具は、ガラスカバースリップとリングトランスデューサの位置合わせを容易にするために3Dプリントした。トランスデューサを、信号発生器(33500B、Agilent Technologies社、USA)で駆動し、信号を、50dB出力増幅器(2100L、E&I社、USA)で増幅した。
【0208】
超音波プロファイルは、個々のリングトランスデューサ(n=3)を、抜き出したマウス頭蓋骨に取り付け、それらを水タンクに配置することによって特性評価した。プリアンプ(AG-2010)に接続し、電動3Dステージ(Onda社、AIMS III)に取り付けたハイドロフォン(Onda社、HGL-0200)を、トランスデューサの中心から約1~2mmの距離に配置した。ハイドロフォンによって測定された音響信号をオシロスコープ(PicoScope, 5244A)に送信し、PC(Soniq Software)で後処理した(Table 4(表4))。活性化超音波及び増強超音波の焦点サイズを、超音波ビームプロファイルから抽出した。約1~2mmの距離で、活性化超音波(0.84MHz)及び増強超音波(0.5MHz)の焦点直径は共にφ1~2mmであった。
【0209】
多光子顕微鏡
20×水浸対物レンズ(XLUMPLFLN 20XW、Olympus社;開口数(NA)=1;作動距離2mm)を有する多光子顕微鏡(in vivo SliceScope、Scientifica社、UK)を、リアルタイムイメージングのために使用した。パルス式MaiTai DeepSee(Spectra-Physics社、Mountain View CA、USA)レーザーを790nmの励起波長で使用した。レーザー出力は11%に設定し、これはLabMax-TOP Laser Power/Energy Meter(Coherent, Inc.社)による測定で20mWの出力に相当した。GaAsp検出器の前に525/50バンドパスフィルターを使用して、FITCデキストランを検出した。画像(512×512ピクセル)を、400×400×1μmの視野を有する31フレーム/秒(fps)で、共振走査モードで取得した。ACT(登録商標)処置中に、XYTスキャンを取得して、ACT(登録商標)の誘導効果をリアルタイムで評価した。ACT(登録商標)処置の前後に、XYZスタック(イメージング深度=100~400μm、Dz=1μm、平均12)を取得して3Dにおける誘導効果を評価した。
【0210】
動物
フランスのJanvier Labs社から得た雌アルビノBL6マウス(6~8週齢、約20g、n=20)を、5匹の群で、特定の病原体を含まない条件下、制御された環境(20~23℃、50~60%の湿度)にて、12時間の昼夜サイクルで収容した。ケージは、個別に換気され、ハウジング、休息材料、及びかじり木が豊富にあり、食料と滅菌水へ自由にアクセスできた。全ての動物の処置は、ノルウェー食品安全機関により承認を受け、確立されたガイドラインに従った。
【0211】
実験手順-頭蓋窓とリングトランスデューサの配置
動画を含む実験手順は、Poonら、2021(投稿済)に詳細に記載されている。簡潔に述べると、実験の前に、動物を、N2O(0.4L/分)及びO2(0.2L/分)中の2~3%イソフルラン(Baxter社、USA)を使用して、誘導チャンバ内で麻酔した。動物の生存を確保するために、麻酔キャリアガスを使用した。その後、動物を定位フレーム(Kopf Instruments社、USA)に配置し、全身循環に容易にアクセスできるように尾静脈にカニューレを挿入した。手順の間、動物の生理を継続的に監視し、外部加熱を使用して37℃の体温を維持した。頭蓋切開術の前に、トリマーと脱毛クリーム(Veet社、カナダ)を使用して頭の上部から毛を取り除き、全身(ブプレノルフィン(0.05~0.1mg/kg s.c.)、メロキシカム(2~3mg/kg s.c.)及び局所(ブピバカイン(1mg/kg s.c.)の鎮痛剤を投与した。立体顕微鏡(10-25×、Nikon社、日本)を使用し、頭皮を除去し、ハンドドリルを使用して頭頂骨に3~4mmの円形の穴を開け、これをガラスカバースリップ(05mm、厚さ#1、Thermo Fisher Scientific社、USA)で覆い、superglue(Loctite #1363589、Henkel社、ドイツ)で頭蓋骨に取り付けた。1%(w/v)アガロースの数滴を頭蓋窓の上部に塗布し、カバースリップに取り付けたリングトランスデューサを上部の中央に配置し、周囲の頭蓋骨に接着させた。その後、動物を配置した定位フレームを顕微鏡ステージに移し、顕微鏡の対物レンズと並べた。
【0212】
ACT(登録商標)処置及び多光子イメージング
実験手順のタイムラインは次の通りであった。動物に50μLの2MDa FITCデキストラン(t=-10分)を注入し、視野をXYZ(前Zスタック、t=0、-1、-3分)スキャンのために選択して、超音波曝露前に血管系を評価した。その後、ACT(登録商標)処置中のXYTイメージングのためにXY平面を選択した。体積50μlのACT(登録商標)クラスターを静脈内注射し(t=0)、超音波処理を開始した。イメージングは、超音波処理の間中及び処置後最大2分間継続した。次いで、後XYZ(後Z-スタック)スキャンを取得した(t=6、8、10分)。対照動物は、超音波を適用せずに50μLのACT(登録商標)を注射するか又はACT(登録商標)クラスターを注射せずに超音波を開始するかのいずれかで、同じ方法で取扱った。動物を頸部脱臼によって安楽死させ、脳を抜き出し、組織学のために調製した。
【0213】
画像解析
取得した画像及び動画を、Fiji(ImageJ 1.51i、USA)及びMATLAB(Mathworks社、USA)を使用して分析した。Fijiでフレーム平均化(n=2~4)を実施することで、取得した動画の信号対ノイズ比を向上させた。
【0214】
赤血球及びACT(登録商標)気泡の体積測定
取得した全ての動画を、ACT(登録商標)気泡の存在について、視覚的に評価した。ACT(登録商標)気泡を、FITC-デキストラン蛍光に囲まれた主に楕円形を有する非蛍光空隙(黒色)として可視化した。観察した後、決定されたACT(登録商標)気泡のサイズを、数個の連続したフレーム(n=2~7)にわたって、Fijiの測定ツールを使用して測定した。赤血球(RBC)のサイズは、Fijiで取得したプロファイルプロットと、特注のMATLABスクリプトによる更なる分析に基づいて計算した。ACT(登録商標)気泡及びRBCの両方の体積は、次の式で計算した:(π/4)×(幅)2×長さ。
【0215】
突出のサイズ決定、並びに対応する溢出の面積及び時間
血管壁に現れた突出の長さと幅の両方を、FIJIの測定ツール「freehand straight line」で決定した。測定には、溢出前の動画の最後のフレームを使用した。溢出が依然として視覚的に観察された最後のフレームで、対応する溢出領域のサイズをフリーハンド選択ツールで決定した。溢出時間は、溢出の発生から停止までの時間として定義した。
【0216】
血管の直径の決定
Fijiでは、線(約100μmの長さ)を、目的の血管に垂直に引いた。動画の各フレームについて、この線の強度プロファイルプロットを取得した。これらのプロファイルプロットは、特注のスクリプトを使用してMATLABで処理し、各強度プロファイルプロットのFWHMを決定した。
【0217】
血管内の蛍光強度の測定
ACT(登録商標)気泡の存在が血管内FITC-デキストラン蛍光強度を変化させたかどうかを評価するために、3つの円形ROIを、ACT(登録商標)気泡が通過している間に血管内に配置し、蛍光強度をFijiで決定した。ROIの1つは一時的に固着したACT(登録商標)気泡の位置に配置し、他の2つのROIは、そのROIのすぐ後ろと前に配置した。3つのROI全てで、動画フレームあたりの平均強度を決定し、プロットした。
【0218】
リアルタイムイメージングから取得した動画
合計20匹の動物を使用して、リアルタイムの生体内顕微鏡検査実験を行った。成功した実験(n=6~7匹)から約200本の動画をACT(登録商標)処置の間に取得し、50~60本の動画により、ACT(登録商標)処置前後のZスタックを表す。この試験で提示された結果は、30~40本の動画に基づくものであるが、その理由は、全てのACT(登録商標)処置が、視野において測定可能な効果をもたらしたわけではないためである。
【0219】
組織学
組織学的評価のために、リアルタイムイメージング実験から切除された脳を、頭蓋窓を含む半球及び対側半球を含むように事前に切断した。脳組織を4%ホルマリンに固定し、パラフィン中に埋め込んだ。脳を、横方向に100μmごとに、表面から脳内へ2mmまでで、連続的に切片化した。4μmの厚い切片をヘマトキシリン、エリスロシン及びサフラン(HES)で染色した。HES切片のタイルスキャンを、LSM 800(Zeiss社)及び20×/0.8 Plan-Apochromat空気対物レンズを用いた明視野イメージングを使用して取得した。試験に盲目であった上級神経病理学者が、頭蓋窓配置又はACT(登録商標)処置によって誘導される組織損傷について脳切片を評価した。
【0220】
免疫組織化学
免疫組織化学分析のために、凍結した脳切片を次の一次抗体で染色した:血管変化を評価するための内皮マーカーとしての抗CD31、タイトジャンクション複合体に対する抗クローディン5、マクロファージに対するマーカーとしての抗F4/80、ミクログリア特異的マーカーとしての抗TMEM119、及び潜在的な免疫応答を評価するための、好中球に対する抗Ly6G。
【0221】
脳切片を、脳全体を二周波数トランスデューサ(Andersenら、2019)で処置してACT(登録商標)処置の1時間後又は24時間後に切除する別個の研究(Olsmanら、2021)から得た。これらの脳切片を更に分析する理由は、より大きなACT(登録商標)曝露面積(6mm(0.5MHz)及び16mm(2.7MHz)の-3dBビーム幅)並びに2つの時点であった。更に、頭蓋切開術が脳に及ぼした影響を、これらの切片を分析することによって除外することができた。動物の安楽死の前に、FITC標識リコペルシコン・エスカレンタム(Lycopersion essculentum)(トマト)レクチン(FITC-レクチン)(Vector Laboratories社、USA)を静脈内注射し、その時点で機能的血管を染色した。
【0222】
簡潔に述べると、1~2脳深度レベルの10μm又は25μmの厚い切片を室温(RT)で解凍し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)中で再水和した。切片をアセトン/メタノール(VA/)中で-20℃で90秒間固定した。非特異的染色を、透過化のために0.2% Triton X-100を補足したPBS中の0.2%ウシ血清アルブミン(BSA)を使用して、室温で1時間ブロッキングした。次いで、切片を、一次抗体(抗CD31、抗クローディン5、抗F4/80、抗TMEM119、抗Ly6G)を使用して、0.3% Triton X-100を補足したPBS中の1% BSAを含むブロッキング緩衝液中で、室温で1時間インキュベートした。その後、切片をPBS中で3×5分間洗浄した。
【0223】
次の二次抗体を使用した:Alexa Fluor 647-コンジュゲート(AF-647)並びにCy3コンジュゲート。二次抗体を、1% BSA及び0.3% Triton X-100を含有するブロッキング緩衝液中で希釈し、切片を抗体と共に暗室中、室温で1時間インキュベートした。その後、切片をPBSで3×5分間洗浄し、適用される染色に応じて4',6-ジアミジン-2-フェニルインドール(DAPI)核染色有り又は無しでVectashield Vibrance(Vecter Laboratories社、USA)を用いてマウントし、カバーガラスで覆った。
【0224】
脳切片の共焦点レーザー走査顕微鏡検査と画像分析
タイルスキャン
免疫組織化学的に標識された脳切片を、Zeiss社のLSM 800でイメージングした。抗CD31染色脳(FITC-レクチン及びローダミンB標識ポリマーミセルも含む)のタイルスキャンを、20×/10.8 plan Apochromat空気対物レンズ(16ビット、1024×1024ピクセル、ピクセルサイズ312nm、ラインごとの平均2、連続したタイル間で10%重複、光学スライス厚10μm)を使用して取得した。抗F4/80及びDAPI染色切片のタイルスキャンは、20×/10.50 Plan-Neofluar空気対物レンズ(8ビット、1024×1024、ピクセルサイズ312nm、ラインあたりの平均2、10%重複、光学スライス厚さ6μm)を使用して取得した。蛍光の漏れ込みを最小限に抑えるために、異なるチャネルの画像を連続的にキャプチャした。蛍光体は、FITC-レクチン、AF-647、ローダミンB、DAPIであった。FITC+血管の面積割合をCD31+血管の面積割合で割ることによって、灌流した血管の割合をタイルスキャンから計算した。
【0225】
高倍率イメージング
セクション内の関心領域は、20×/10.8 plan Apochromat空気対物レンズ又は40×/1.2 C-Apochromat水対物レンズを使用して画像化した(両方の対物レンズについて:16ビット、1024×1024ピクセル、0.156~0.312μm/ピクセル、ライン平均4、光学スライス厚1.9μm)。各蛍光体を異なるチャネルでキャプチャし、イメージングを順次行った。
【0226】
温度測定
多光子イメージングが温度上昇を引き起こし、ACT(登録商標)クラスターを活性化する可能性があるかどうかを評価するために、50μLのACT(登録商標)クラスター分散液を顕微鏡用スライドガラス(SS XX)上に堆積させた。温度上昇は、光ファイバーニードルハイドロフォン(Precision Acoustics社)の内蔵温度測定機能を使用しながら、790nmの波長で近赤外線レーザー(Chamelein Vision-S IRパルスレーザー、Olympus社、日本)を用いてイメージングして測定した。レーザー出力を、LabMax-TOPレーザー出力/エネルギーメーターを使用して異なる出力レベルで測定した(Coherent, Inc.社)。XYTスキャンを、Leica社のTCS SP(10x/0.40 HC PL Apo CS空気対物レンズ)で収集した。多光子レーザーによって誘導される温度上昇がACT(登録商標)気泡活性化に影響を及ぼす可能性があるかどうかを評価するために(直径が20μmを超える気泡は「活性化された」と見なした)、15μLのACT(登録商標)分散液を顕微鏡用スライドガラスに沈着させた。白色光レーザーを使用して明視野透過光イメージングを行った。790nmの励起レーザーの効果を、3つの異なる電力レベル(20mW、40mW、及び60mW)で評価した。固定出力での反復XY走査を、2.4μs/ピクセル速度で合計10分間行い、透過光画像(512×512ピクセル、8ビット、2.27μmピクセルサイズ)を2分ごとにキャプチャした。
【0227】
統計
取得したデータセットの統計解析は、GraphPad Prism(v8.0、USA)を使用して行った。使用される統計検定の種類は、対応する図の説明文に示す。0.05未満のp値は、統計的有意性を示す。
【0228】
結果
脳毛細血管内の活性化ACT(登録商標)気泡
ACT(登録商標)処置中、予想されるACT(登録商標)気泡は、蛍光血管系において、矢印でマークした暗い球体又は楕円体として現れた。図14は、予想されるACT(登録商標)気泡を有する取得された動画のスナップショットを示し、ACT(登録商標)気泡観察の4つの例(A~D)例を示す。推察ACT(登録商標)気泡が無し(i)及び有り(ii)の取得ビデオのスナップショット。スケールバーは50μmを表す。64枚の観察から、予想されるACT(登録商標)気泡の平均体積は965±1485μm3であり、観察されたACT(登録商標)気泡の最小値及び最大値は、それぞれ185μm3及び9622μm3であった。赤血球(n=5949)は、平均サイズが144±57μm3であり、予想されるACT(登録商標)気泡の平均体積(p<O.0001)とは有意に異なっていた。
【0229】
超音波処理に応答する一過性の血管変動
ACT(登録商標)処置中に、視野内の血管直径の変動が観察された。1匹の動物の2つの連続した処置において、2つの血管が超音波に応答した(図15、2つの動画からのスナップショット、2つの処置)。第1の処置(図15A)中、右上の血管(「b」線)は、超音波がオンになったほぼその瞬間から変形し始めた。血管の直径は、85%減少(60μmから10μmへ)した後、再び40μmに増加した。別の血管(「c」線)は、約13μmの初期直径を有し、数回のパルス様式で直径が約5μm変化した(40%減少)。視野内の他の2つの血管(「a」線及び「d」線)の直径も同様に測定したが、超音波曝露中に直径は変化しなかった。第2の処置中(図15B)、4つの血管は、第1の処置中と同様の挙動を示した。パネルAにおいて、グラフ(図15Aiii)の「a」線は、動画間のコントラストの違いのために、パネルBの対応する「a」線と比較してノイズが多い。加えて、パネルAに対応する動画の冒頭にいくつかの運動アーチファクトが観察された。4つの測定された血管の第1及び第2の処置中の直径は、図15のパネルiiiに見出すことができる。この観察結果は、ACT(登録商標)に直接起因するものではあり得ず、なぜなら視野内の作用を受けた血管に滞留したACT(登録商標)気泡は観察されなかったためである。
【0230】
血管内の蛍光強度
ACT(登録商標)気泡が、血管を通過している間又は血管内に一時的に滞留している間又は塞がれている間に、FITC-デキストランの蓄積を引き起こすかどうかを試験するために、蛍光強度を、ACT(登録商標)気泡が観察された血管内の様々な位置で測定した。ACT(登録商標)気泡が血管系に出現し、一時的に血管内に滞留した場合、特定の位置での蛍光強度の低下が観察された。封鎖は、滞留したACT(登録商標)気泡の上流/下流に位置するROIにおける蛍光強度の一時的な増加/減少をもたらした。一例では、ACT(登録商標)気泡はより長い時間滞留したようであり、蛍光強度の変化が長引いた。別の例では、状況が異なり、いくつかのACT(登録商標)気泡が同じ血管を流動して滞留し、その結果、強度の低下及び増加によって特徴付けられる蛍光強度の変動がもたらされた。
【0231】
ACT(登録商標)処置中の溢出
図16に円で示されるように、超音波曝露中に、8つの突出の成長が観察された。得られた画像及び動画は、小さな嚢状の突出として現れる突出がACT(登録商標)中にどのように発達するかを示す。最終的に、突出が拡張し、FITC-デキストランの溢出が起こった。他の部位では明確な溢出は認められなかった。図16Hに示される突出は、図16Cに示される突出の拡張に起因するものである。同様に、図16Fに示される突出は、図16Eに示される突出に起因するものである。突出の最大サイズを決定した。以下のTable 5(表5)にそのサイズを示す。拡張前の突出のサイズは大きく異なり、最小サイズは43μm2であり、最大サイズは100倍大きい5950μm2であった。観察された最大浸透深度は、10μmから200μmの間で変化した。8つの突出のうち7つは、イメージング中に拡張した。対応する溢出の領域及び時間を決定した(Table 5(表5)を参照)。破裂前の動脈瘤の大きさと溢出領域との間に関係が見出された。溢出時間は、溢出領域とは無関係であった。
【0232】
【表5】
【0233】
ACT(登録商標)処置後の血管観察
ACT(登録商標)の基礎となるメカニズムに関する情報のほとんどは、ACT(登録商標)処置中のマウス脳のリアルタイムイメージングによって得られた。ACT(登録商標)処置の前後に、Zスタックを取得して、リアルタイムイメージング中に記録されていない異なる深さでのACT(登録商標)誘導効果を比較及び評価した。ACT(登録商標)処置前に、前Zスタックの血管系は正常に見えた(図17-i)が、後Zスタックでは約75及び50μmの長さ及び直径を有する大きな楕円形構造が見出された(図17-ii)。約6分後、構造は消失し、血管内の蛍光強度が不均一となった(図17-iii)。更に、視野外の血管系を、処置後のACT(登録商標)誘導効果について評価した。2つの後Zスタックは、リアルタイムイメージング中の突出の形成時に観察された蛍光強度パターンに類似する。しかしながら、前Zスタックの欠落により、構造はACT(登録商標)に直接起因するものではあり得ない。
【0234】
ACT(登録商標)後-突出の漏出後も血管は機能している
ACT(登録商標)中のリアルタイムイメージングに加えて、前及び後のZスタックを記録した。Zスタックの最大投影画像は、図18A及び図18Bに示されており、投影画像Aは処置前に撮影されたものであり、Bは処置後に撮影されたものである。スケールバーは50μmを表す。線は、ACT(登録商標)処置の前後に直径が測定される血管を示す。ACT(登録商標)処置の前後の直径の差を下記のTable 6(表6)に示す。矢印は、動脈瘤の残存を示す。アスタリスクは、前XYZスタックでは観察されたが、後XYZスタックでは観察されなかった血管を示す。後者は、前後のXYZスタックのわずかなずれ、互いに対する血管の動き、動物の動き、又は時間記録中に機能していなかった血管の動きのいずれかに起因する。したがって、画像は、突出の拡張が生じた血管が、流動するFITC-デキストランを依然として含有しており、血管が依然として機能していることを示す。更に、いくつかの血管は、それらの初期サイズに対してわずかに拡大している(1.2~2.1μm)ことが観察される。XY方向とZ方向の両方で小さなミスアライメントがあり、前Zスタックで明確に観察できるいくつかの血管は、後Zスタックではそれほど明確ではない。これは、お互いに対する血管の動き、ACT(登録商標)中の動物の動き、又は超音波をオンにしたときに焦点が変更されたことに起因する可能性が最も高い。加えて、浸潤したFITC-デキストランの高い局所濃度は、光の浸透の深さを減少させる。更に、一部の血管は、ACT(登録商標)からの急速又は長期の影響を有する可能性がある。
【0235】
【表6】
【0236】
ACT(登録商標)処置後の脳灌流
血管機能を更に評価するために、血管を内皮マーカーCD31で免疫蛍光標識し、対照及びACT(登録商標)処置動物におけるFITC-レクチン標識機能血管系と比較した。CD31染色に対するレクチン染色の有意差は、処置の1時間及び24時間の時点で未処置の脳と比較して検出されず、脳内の灌流に全身的変化がなかったことを示す。
【0237】
脳切片の抗クローディン5染色は、溢出した高分子ミセルを有しない領域において、内皮細胞ライニング全体に沿って線形染色パターンを示した。血管は、ACT(登録商標)処置された脳の血管構造に沿って斑点のみを伴い、主に溢出した高分子ミセルを有する領域の近傍で観察された不連続染色パターンを稀に示したが、このパターンは対照脳でも見られた。視覚評価は、対照脳におけるクローディン5の分布に、全脳にわたって、ACT(登録商標)処置された脳と比較して差を示さなかった。
【0238】
高分子ミセルが溢出した局所領域の抗CD31染色血管及び抗クローディン5染色血管の高解像度画像は、一部の場合に、ACT(登録商標)処置動物におけるレクチン染色の喪失を示し、レクチン注射時間中に機能していない血管を示した。ACT(登録商標)気泡活性の影響を受けた血管から高分子ミセルが溢出したと仮定して、クローディン-5及びレクチン染色の同時検出により、灌流されていない血管も識別することができた。
【0239】
ACT(登録商標)処置後の組織学的評価
抜き出された脳の5つの異なる深度レベルからの4μm HES染色切片の顕微鏡検査では、非及び頭蓋窓含有半球に血管損傷の兆候は見られなかった。1匹の動物で、頭蓋窓の領域に少量の液胞が検出された。ACT(登録商標)処置動物のHES切片は、対照動物と比較して、急性病変、損傷、又は破壊された血管を示さなかった。更に、多形核白血球又は他の白血球の増加はなく、超音波処理領域に流体の検出可能な会合はなかった。
【0240】
ACT(登録商標)処置後の脳内の免疫細胞の存在
ACT(登録商標)処置後の免疫細胞の存在を評価するために、脳切片をF4/80+(マクロファージ、ミクログリア)及びLy6G+(多形核好中球)細胞について染色し、CLSMによってイメージングした。ACT(登録商標)処置切片及び対照切片のタイルスキャンにおいて、F4/80+細胞は、血管周囲空間、実質組織、及び脳室において検出された。Ly6G+細胞の大部分は、血管内又は血管周囲空間にクラスターとして観察されたが、一部は、毛細血管壁上に単一細胞又は断片化された細胞構造として見られた。2つの深度レベル(脳表面から2.1mm及び2.9mm)からの切片の半定量化は、処置後1時間(20.5%、p=ns)及び24時間(33.3%、p=ns)のACT(登録商標)処置動物の%脳領域におけるF4/80+細胞を表す画素の量において、対照動物と比較したわずかな増加を示した。Ly6G+細胞の数は、適切な定量を行うには少なすぎた。
【0241】
高倍率画像は、いくつかのF4/80+細胞が、脳内の異なる区画、例えば、動脈及び静脈だけでなく、動脈及び静脈の血管周囲空間等に位置していたことを示した。これらの細胞は、血管関連ミクログリア又は血管周囲マクロファージのいずれかを表す。脳実質組織中に存在するF4/80+細胞は、血管周囲細胞と形態的に区別された。これらの細胞は、分枝型形態を示し、ミクログリアマーカー(TMEM119)と陽性共染色され、それらを脳に存在する実質的ミクログリアとして分類した。いくつかの二重標識細胞は、活性化状態にあり得ることを示すアメーバ様形態を有していた。免疫蛍光は、ACT(登録商標)処置後に免疫細胞の重篤な浸潤がないという組織学的所見を実証した。
【0242】
実施例6の試験からの知見の概要:
・ 大きなACT(登録商標)気泡は、血管内のFITCデキストラン蛍光強度の一過性かつ局所的な増加を誘導した。
・ 溢出が、血管壁内のACT(登録商標)誘導突出から生じた。
・ 突出は大きさが様々であり、脳実質におけるFITCデキストランの不均一な分布パターンを示した(実施例5の試験で観察された雲パターンに匹敵する)。
・ ACT(登録商標)後の血管機能を評価する免疫組織化学分析は、全体的な脳灌流に変化を示さなかった。
・ リアルタイム観察及び組織学では、出血は見られなかった。観察された血管は機能を維持したままであった。急性炎症反応は検出されなかった。
・ ACT(登録商標)は、より広い領域に薬物を溢出させることができ、9945μm2の領域が観察された。
・ ACT(登録商標)は、本発明者の知る限り、出血を許容する大きな孔や接合部を開かず、孔のサイズは6μm未満である。出血の兆候はない。
・ 開いた頭蓋骨の例
・ 2つの周波数を適用するリングトランスデューサ
o 活性化:2.7MHz、PNP 0.21 MPa、60秒
o 増強:0.5MHz、PNP 0.1MPa、300秒
【0243】
ACT(登録商標)処置のin vivo応答は、頭蓋窓を通して脳内の血管系のリアルタイムイメージングを使用して評価した。更に、血管の変化、考えられる組織損傷、及びACT(登録商標)に対する免疫応答を、ex vivoで組織学的に評価した。ACT(登録商標)は、血管内に共注射されたFITC-デキストランの蛍光強度の増加、血管直径の拡大、及びその後の溢出をもたらしたが、血管系に深刻な損傷又は明確な炎症反応を引き起こすことはなかった。溢出は、ACT(登録商標)誘導突出から生じた。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図10-4】
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図16D
図16E
図16F
図16G
図16H
図17
図18A
図18B
【手続補正書】
【提出日】2023-04-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の中枢神経系(CNS)の疾患、障害又は損傷を処置する方法における使用ための微小気泡-微小液滴クラスター組成物及び少なくとも1つの治療剤を含む医薬組成物であって、前記使用は、超音波照射の少なくとも1つの工程が、前記CNSに向かって非侵襲的に、前記CNSに向かって侵襲的に、又は前記CNSの外の心臓若しくは脊髄若しくは頸動脈に向かって行われる音響クラスター療法(ACT)処置を含み、
(i)前記医薬組成物を前記対象に投与する工程であって、前記少なくとも1つの治療剤が、前記クラスター組成物とは別個に、事前に及び/又は同時に及び/又は事後に投与される、工程と、
(ii)任意選択で、超音波イメージングを使用して前記医薬組成物のクラスターをイメージングして、前記対象内の処置のための前記CNS内の関心領域を特定する工程と、
(iii)工程(i)からの前記クラスター組成物の前記微小液滴の拡散性成分の位相シフトを、第1の周波数及び第1のメカニカルインデックスでの超音波照射によって活性化する工程であって、
a)前記非侵襲的照射についてはこれは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱の外に配置された少なくとも1つのトランスデューサから、これを通した照射のために行われ、
b)前記侵襲的照射についてはこれは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱内の、少なくとも1つの外科的に埋め込まれたトランスデューサから行われ、
c)心臓又は脊髄又は頸動脈に向か照射についてはこれは、前記CNSの外の心臓又は脊髄又は頸動脈で行われる、工程と、
(iv)工程(i)で投与された前記少なくとも1つの治療剤の、前記CNS内の前記関心領域での溢出を容易にする、前記第1の周波数よりも低い第2の周波数及び第2のメカニカルインデックスで、超音波による更なる照射を行う工程であって、
a)前記非侵襲的照射についてはこれは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱の外に配置された少なくとも1つのトランスデューサから、これを通した照射のために行われ、
b)前記侵襲的照射についてはこれは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱内の、少なくとも1つの外科的に埋め込まれたトランスデューサから行われ、
c)工程(iii)においてc)に従って活性化する場合、この工程における更なる照射は、工程(iv)a)又は工程(iv)b)に従って非侵襲的又は侵襲的行われる、工程と、
を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記工程(iii)が、0.2~3MHzの範囲の第1の周波数及び0.1~0.4の第1のMIを使用して前記CNSに向かって非侵襲的に行われる、請求項1に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記工程(iv)が、0.2~0.4MHzの範囲の第2の周波数及び0.025~0.15の第2のMIを使用して、又は0.4~0.6MHzの範囲の周波数及び0.1~0.3のMIを使用して、前記CNSに向かって非侵襲的に行われる、請求項1又は2に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記超音波照射が、頭蓋外半球型集束USアレイ、頭蓋外集束単一エレメントUSトランスデューサ、又は鼻若しくは眼のトランスデューサのいずれかによって非侵襲的に行われる、請求項2又は3に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記超音波照射が、前記工程(iii)において、1~10MHzの第1の周波数及び0.1~0.4の第1のMIを使用して、前記CNSに向かって侵襲的に行われる、請求項1に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
工程(iv)が、0.2~0.4MHzの範囲の第2の周波数及び0.025~0.15の第2のMIを使用して、又は0.4~0.6MHzの範囲の第2の周波数及び0.1~0.3の第2のMIを使用して、前記CNSに向かって侵襲的に行われる、請求項5に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記超音波照射が、1つ以上の外科的に埋め込まれたUSトランスデューサによって、前記頭蓋骨又は脊柱を通して行われる、請求項5又は6に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
工程(iii)における前記超音波照射が、1~10MHzの第1の周波数及び0.1~0.4の第1のMIを使用して前記CNSの外の心臓又は脊髄又は頸動脈に向かって行われ、工程iv)の前記超音波照射が、0.2~0.4MHzの範囲の第2の周波数及び0.025~0.15の第2のMIを使用して、又は0.4~0.6MHzの範囲の第2の周波数及び0.1~0.3の第2のMIとを使用して前記CNSに向かって非侵襲的又は侵襲的行われる、請求項1に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
工程(iii)の前記照射が、工程(i)の直後に開始され、工程(iv)の前記照射が直後に続く、請求項1~8のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記ACT処置の前記工程(i)~(iv)が1~4回繰り返される、請求項1~9のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
多剤処置の一部として用いられる、請求項1~10のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
工程(iii)の前記照射が30~120秒間続き、続いて工程(iv)の前記照射が3~10分間続く、請求項1~11のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
1~5種の治療剤が、一定の期間にわたって同時に又は連続して投与され、少なくとも1回の、例えば1~5回のACT処置が、同じ期間中に行われる、請求項1~12のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
同じ広帯域又は二周波数のUSトランスデューサが、工程(iii)の活性化照射及び工程(iv)の増強照射の両方で使用される、請求項1~13のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記クラスターが、3~10μmの範囲、好ましくは4~9μmの範囲の平均直径を有する、請求項1~14のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項16】
サイズ範囲1~10μmのクラスターのクラスター濃度が、少なくとも2500万個/mlである、請求項1~15のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1又は15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記微小気泡-微小液滴クラスターの前記微小気泡のガスが、六フッ化硫黄又はC3~6ペルフルオロカーボン又はその混合物を含む、請求項1~14のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1、15又は16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記微小気泡-微小液滴クラスターの前記微小液滴の油相が、部分的又は完全にハロゲン化された炭化水素又はその混合物を含む、請求項1~14のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1又は15~17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記微小気泡の前記ガスが、六フッ化硫黄、ペルフルオロプロパン、ペルフルオロブタン、ペルフルオロペンタン及びペルフルオロヘキサン又はそれらの混合物の群から選択され、前記微小気泡が、リン脂質、タンパク質及びポリマーの群から選択される第1の安定剤によって安定化され、
前記微小液滴の前記油相が、例えばリン脂質、ポリマー及びタンパク質を含む界面活性剤の群から選択される第2の安定剤で安定化された、ペルフルオロカーボン、例えばペルフルオロシクロアルカンの群から選択される拡散性成分を含む、請求項1~14のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1又は15~18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記治療剤が、化学療法剤、免疫療法剤、免疫腫瘍学的製剤、免疫調節薬、抗B細胞薬、抗炎症薬、抗菌薬、抗血管新生薬、抗うつ剤、抗けいれん剤、カンナビノイド薬、腫瘍壊死因子-α(TNF)阻害剤、ドーパミン前駆体、カテコール-o-メチルトランスフェラーゼ阻害剤、ドーパミンアゴニスト、モノアミンオキシダーゼB阻害剤、マンタジン、抗コリン作動剤、抗凝固剤、抗血小板薬、組織プラスミノゲン活性化剤(tPA)及びコリンエステラーゼ阻害剤の薬物種の群から選択される、請求項1~14のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び15~19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記治療剤が、ビヒクルで製剤化されており、例えば、リポソーム、ミセル、コンジュゲート、ナノ粒子、コア架橋ポリマーミセル(CCPM)、若しくはマイクロスフェアの形態で含まれているか、又は遺伝子、抗菌ペプチド、幹細胞及びアプタマーの群から選択される、請求項1~14のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び15~20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記治療剤、又は前記治療剤の製剤化された形態が、500ダルトンを超える分子量を有する、請求項1~14のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び15~21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記使用が、CNSがん、脳卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症(MS)、外傷性脳損傷、自己免疫性脳疾患(AIBD)又は筋萎縮性側索硬化症(ALS)のいずれかの処置のためのものである、請求項1~14のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び15~22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記クラスター組成物が、前記微小気泡-微小液滴クラスター組成物を調製する第2の成分の微小液滴と第1の成分の微小気泡とを組み合わせてから3時間の時間枠内に投与される、請求項1~14のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び15~22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
対象のCNSの疾患、障害又は損傷を処置する方法であって、前記方法は、超音波照射の少なくとも1つの工程が、前記CNSに向かって非侵襲的に、前記CNSに向かって侵襲的に、又は前記CNSの外の心臓若しくは脊髄若しくは頸動脈に向かって行われる音響クラスター療法(ACT)処置を含み、前記方法が、
(i)微小気泡-微小液滴クラスター組成物を含む医薬組成物を前記対象に投与する工程であって、少なくとも1つの治療剤が、前記クラスター組成物とは別個に、事前に及び/又は同時に及び/又は事後に投与される、工程と、
(ii)任意選択で、超音波イメージングを使用して前記医薬組成物のクラスターをイメージングして、前記対象内の処置のための前記CNS内の関心領域を特定する工程と、
(iii)工程(i)からの前記クラスター組成物の前記微小液滴の拡散性成分の位相シフトを、第1の周波数及び第1のメカニカルインデックスでの超音波照射によって活性化する工程であって、
a)前記非侵襲的照射についてはこれは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱の外に配置された少なくとも1つのトランスデューサから、これを通した照射のために行われ、
b)前記侵襲的照射についてはこれは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱内の、少なくとも1つの外科的に埋め込まれたトランスデューサから行われ、
c)心臓又は脊髄又は頸動脈に向か照射についてはこれは、前記CNSの外の心臓又は脊髄又は頸動脈で行われる、工程と、
(iv)工程(i)で投与された前記少なくとも1つの治療剤の、前記CNS内の前記関心領域での溢出を容易にする、前記第1の周波数よりも低い第2の周波数及び第2のメカニカルインデックスで超音波による更なる照射を行う工程であって、
a)前記非侵襲的照射についてはこれは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱の外に配置された少なくとも1つのトランスデューサから、これを通した照射のために行われ、
b)前記侵襲的照射についてはこれは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱内の、少なくとも1つの外科的に埋め込まれたトランスデューサから行われ、
c)工程(iii)においてc)に従って活性化する場合、この程における更なる照射は、工程(iv)a)又は工程(iv)b)に従って非侵襲的又は侵襲的行われる、工程と、
を含む、方法。
【請求項26】
対象のCNSへ少なくとも1つの治療剤を局所送達する方法であって、前記方法は、超音波照射の少なくとも1つの工程が、前記CNSに向かって非侵襲的に、前記CNSに向かって侵襲的に、又は前記CNSの外の心臓若しくは脊髄若しくは頸動脈に向かって行われる音響クラスター療法(ACT)処置を含み、前記方法が、
(i)微小気泡-微小液滴クラスター組成物を前記対象に投与する工程であって、前記少なくとも1つの治療剤が、前記クラスター組成物とは別個に、事前に及び/又は同時に及び/又は事後に投与される、工程と、
(ii)任意選択で、超音波イメージングを使用して前記クラスター組成物のクラスターをイメージングして、前記対象内の処置のための前記CNS内の関心領域を特定する工程と、
(iii)工程(i)からの前記クラスター組成物の前記微小液滴の拡散性成分の位相シフトを、第1の周波数及び第1のメカニカルインデックスでの超音波照射によって活性化する工程であって、
a)前記非侵襲的照射については、これは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱の外に配置された少なくとも1つのトランスデューサから、これを通した照射のために行われ、
b)前記侵襲的照射については、これは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱内の、少なくとも1つの外科的に埋め込まれたトランスデューサから行われ、
c)心臓又は脊髄又は頸動脈に向かう照射については、これは、前記CNSの外の心臓又は脊髄又は頸動脈で行われる、工程と、
(iv)第1の周波数より低い第2の周波数及び工程(i)で投与された前記少なくとも1つの治療剤の、前記CNS内の前記関心領域での溢出を容易にする第2のメカニカルインデックスで超音波による更なる照射を行う工程であって、
a)前記非侵襲的照射については、これは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱の外に配置された少なくとも1つのトランスデューサから、これを通した照射のために行われ、
b)前記侵襲的照射については、これは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱内の、少なくとも1つの外科的に埋め込まれたトランスデューサから行われ、
c)工程(iii)においてc)に従って活性化する場合、この工程における更なる照射は、工程(iv)a)又は工程(iv)b)に従って非侵襲的に又は侵襲的に行われる、工程と、
を含む、方法。
【請求項27】
治療剤のために対象の血液脳関門の透過性を増加させる方法であって、前記方法は、超音波照射の少なくとも1つの工程が、前記CNSに向かって非侵襲的に、前記CNSに向かって侵襲的に、又は前記CNSの外の心臓若しくは脊髄若しくは頸動脈に向かって行われる音響クラスター療法(ACT)処置を含み、前記方法が、
(i)微小気泡-微小液滴クラスター組成物を前記対象に投与する工程と、
(ii)任意選択で、超音波イメージングを使用して医薬組成物のクラスターをイメージングして、前記対象内の処置のために前記CNS内の関心領域を特定する工程と、
(iii)工程(i)からの前記クラスター組成物の前記微小液滴の拡散性成分の位相シフトを、第1の周波数及び第1のメカニカルインデックスでの超音波照射によって活性化する工程であって、
a)前記非侵襲的照射については、これは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱の外に配置された少なくとも1つのトランスデューサから、これを通した照射のために行われ、
b)前記侵襲的照射については、これは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱内の、少なくとも1つの外科的に埋め込まれたトランスデューサから行われ、
c)心臓又は脊髄又は頸動脈に向かう照射については、これは、前記CNSの外の心臓又は脊髄又は頸動脈で行われる、工程と、
(iv)第1の周波数より低い第2の周波数及び前記CNS内の前記関心領域での溢出を容易にする第2のメカニカルインデックスで超音波による更なる照射を行う工程であって、
a)前記非侵襲的照射については、これは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱の外に配置された少なくとも1つのトランスデューサから、これを通した照射のために行われ、
b)前記侵襲的照射については、これは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱内の、少なくとも1つの外科的に埋め込まれたトランスデューサから行われ、
c)工程(iii)においてc)に従って活性化する場合、この工程における更なる照射は、工程(iv)a)又は工程(iv)b)に従って非侵襲的に又は侵襲的に行われる、工程と、
を含む、方法。
【請求項28】
工程(i)において、少なくとも1つの治療剤が、前記クラスター組成物とは別個に、事前に及び/又は同時に及び/又は事後に投与される、請求項27に記載の対象の血液脳関門の透過性を増加させる方法。
【請求項29】
対象の血液脳関門の透過性を増加させる方法における微小気泡-微小液滴クラスター組成物の使用であって、前記方法は、超音波照射の少なくとも1つの工程が、前記CNSに向かって非侵襲的に、前記CNSに向かって侵襲的に、又は前記CNSの外の心臓若しくは脊髄若しくは頸動脈に向かって行われる音響クラスター療法(ACT)処置を含み、前記方法が、
(i)微小気泡-微小液滴クラスター組成物を前記対象に投与する工程と、
(ii)任意選択で、超音波イメージングを使用して医薬組成物のクラスターをイメージングして、前記対象内の処置のために前記CNS内の関心領域を特定する工程と、
(iii)工程(i)からの前記クラスター組成物の前記微小液滴の拡散性成分の位相シフトを、第1の周波数及び第1のメカニカルインデックスでの超音波照射によって活性化する工程であって、
a)前記非侵襲的照射については、これは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱の外に配置された少なくとも1つのトランスデューサから、これを通した照射のために行われ、
b)前記侵襲的照射については、これは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱内の、少なくとも1つの外科的に埋め込まれたトランスデューサから行われ、
c)心臓又は脊髄又は頸動脈に向かう照射については、これは、前記CNSの外の心臓又は脊髄又は頸動脈で行われる、工程と、
(iv)第1の周波数より低い第2の周波数及び前記CNS内の前記関心領域での溢出を容易にする第2のメカニカルインデックスで超音波による更なる照射を行う工程であって、
a)前記非侵襲的照射については、これは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱の外に配置された少なくとも1つのトランスデューサから、これを通した照射のために行われ、
b)前記侵襲的照射については、これは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱内の、少なくとも1つの外科的に埋め込まれたトランスデューサから行われ、
c)工程(iii)においてc)に従って活性化する場合、この工程における更なる照射は、工程(iv)a)又は工程(iv)b)に従って非侵襲的に又は侵襲的に行われる、工程と、
を含む、使用。
【請求項30】
工程(i)において、少なくとも1つの治療剤が、前記クラスター組成物とは別個に、事前に及び/又は同時に及び/又は事後に投与される、請求項29に記載の対象の血液脳関門の透過性を増加させる方法における微小気泡-微小液滴クラスター組成物の使用。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の中枢神経系(CNS)の疾患、障害又は損傷を処置する方法における使用のための微小気泡-微小液滴クラスター組成物及び少なくとも1つの治療剤を含む医薬組成物であって、前記使用は、超音波照射の少なくとも1つの工程が、前記CNSに向かって非侵襲的に、前記CNSに向かって侵襲的に、又は前記CNSの外の心臓若しくは脊髄若しくは頸動脈に向かって行われる音響クラスター療法(ACT)処置を含み、
(i)前記医薬組成物を前記対象に投与する工程であって、前記少なくとも1つの治療剤が、前記クラスター組成物とは別個に、事前に及び/又は同時に及び/又は事後に投与される、工程、
(ii)任意選択で、超音波イメージングを使用して前記医薬組成物のクラスターをイメージングして、前記対象内の処置のための前記CNS内の関心領域を特定する工程、
(iii)工程(i)からの前記クラスター組成物の前記微小液滴の拡散性成分の位相シフトを、第1の周波数及び第1のメカニカルインデックスでの超音波照射によって活性化する工程であって、
a)前記非侵襲的照射については、これは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱の外に配置された少なくとも1つのトランスデューサから、これを通した照射のために行われ、
b)前記侵襲的照射については、これは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱内の、少なくとも1つの外科的に埋め込まれたトランスデューサから行われ、
c)心臓又は脊髄若しくは頸動脈に向かう照射については、これは、前記CNSの外の心臓又は脊髄若しくは頸動脈で行われる、工程、
(iv)工程(i)で投与された前記少なくとも1つの治療剤の、前記CNS内の前記関心領域での溢出を容易にする、前記第1の周波数よりも低い第2の周波数及び第2のメカニカルインデックスで、超音波による更なる照射を行う工程であって、
a)前記非侵襲的照射については、これは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱の外に配置された少なくとも1つのトランスデューサから、これを通した照射のために行われ、
b)前記侵襲的照射については、これは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱内の、少なくとも1つの外科的に埋め込まれたトランスデューサから行われ、
c)工程(iii)においてc)に従って活性化する場合、この工程における更なる照射は、工程(iv)a)又は工程(iv)b)に従って非侵襲的に又は侵襲的に行われる、工
を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記工程(iii)が、0.2~3MHzの範囲の第1の周波数及び0.1~0.4の第1のMIを使用して前記CNSに向かって非侵襲的に行われる、請求項1に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記工程(iv)が、0.2~0.4MHzの範囲の第2の周波数及び0.025~0.15の第2のMIを使用して、又は0.4~0.6MHzの範囲の周波数及び0.1~0.3のMIを使用して、前記CNSに向かって非侵襲的に行われる、請求項1又は2に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記超音波照射が、頭蓋外半球型集束USアレイ、頭蓋外集束単一エレメントUSトランスデューサ、又は鼻若しくは眼のトランスデューサのいずれかによって非侵襲的に行われる、請求項2又は3に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記超音波照射が、前記工程(iii)において、1~10MHzの第1の周波数及び0.1~0.4の第1のMIを使用して、前記CNSに向かって侵襲的に行われる、請求項1に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
工程(iv)が、0.2~0.4MHzの範囲の第2の周波数及び0.025~0.15の第2のMIを使用して、又は0.4~0.6MHzの範囲の第2の周波数及び0.1~0.3の第2のMIを使用して、前記CNSに向かって侵襲的に行われる、請求項5に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記超音波照射が、1つ以上の外科的に埋め込まれたUSトランスデューサによって、前記頭蓋骨又は脊柱を通して行われる、請求項5又は6に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
工程(iii)における前記超音波照射が、1~10MHzの第1の周波数及び0.1~0.4の第1のMIを使用して前記CNSの外の心臓又は脊髄若しくは頸動脈に向かって行われ、工程iv)の前記超音波照射が、0.2~0.4MHzの範囲の第2の周波数及び0.025~0.15の第2のMIを使用して、又は0.4~0.6MHzの範囲の第2の周波数及び0.1~0.3の第2のMIを使用して前記CNSに向かって非侵襲的に又は侵襲的に行われる、請求項1に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
工程(iii)の前記照射が、工程(i)の直後に開始され、工程(iv)の前記照射が直後に続く、請求項1~8のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記ACT処置の前記工程(i)~(iv)が1~4回繰り返される、請求項1~9のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
多剤処置の一部として用いられる、請求項1~10のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
工程(iii)の前記照射が30~120秒間続き、続いて工程(iv)の前記照射が3~10分間続く、請求項1~11のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
1~5種の治療剤が、一定の期間にわたって同時に又は連続して投与され、少なくとも1回の、例えば1~5回のACT処置が、同じ期間中に行われる、請求項1~12のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
同じ広帯域又は二周波数のUSトランスデューサが、工程(iii)の活性化照射及び工程(iv)の増強照射の両方で使用される、請求項1~13のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記クラスターが、3~10μmの範囲、好ましくは4~9μmの範囲の平均直径を有する、請求項1~14のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項16】
サイズ範囲1~10μmのクラスターのクラスター濃度が、少なくとも2500万個/mlである、請求項1~15のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1又は15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記微小気泡-微小液滴クラスターの前記微小気泡のガスが、六フッ化硫黄又はC3~6ペルフルオロカーボン又はその混合物を含む、請求項1~14のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1、15又は16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記微小気泡-微小液滴クラスターの前記微小液滴の油相が、部分的又は完全にハロゲン化された炭化水素又はその混合物を含む、請求項1~14のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1又は15~17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記微小気泡の前記ガスが、六フッ化硫黄、ペルフルオロプロパン、ペルフルオロブタン、ペルフルオロペンタン及びペルフルオロヘキサン又はそれらの混合物の群から選択され、前記微小気泡が、リン脂質、タンパク質及びポリマーの群から選択される第1の安定剤によって安定化され、
前記微小液滴の前記油相が、例えばリン脂質、ポリマー及びタンパク質を含む界面活性剤の群から選択される第2の安定剤で安定化された、ペルフルオロカーボン、例えばペルフルオロシクロアルカンの群から選択される拡散性成分を含む、請求項1~14のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1又は15~18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記治療剤が、化学療法剤、免疫療法剤、免疫腫瘍学的製剤、免疫調節薬、抗B細胞薬、抗炎症薬、抗菌薬、抗血管新生薬、抗うつ剤、抗けいれん剤、カンナビノイド薬、腫瘍壊死因子-α(TNF)阻害剤、ドーパミン前駆体、カテコール-o-メチルトランスフェラーゼ阻害剤、ドーパミンアゴニスト、モノアミンオキシダーゼB阻害剤、マンタジン、抗コリン作動剤、抗凝固剤、抗血小板薬、組織プラスミノゲン活性化剤(tPA)及びコリンエステラーゼ阻害剤の薬物種の群から選択される、請求項1~14のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び15~19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記治療剤が、ビヒクルで製剤化されており、例えば、リポソーム、ミセル、コンジュゲート、ナノ粒子、コア架橋ポリマーミセル(CCPM)、若しくはマイクロスフェアの形態で含まれているか、又は遺伝子、抗菌ペプチド、幹細胞及びアプタマーの群から選択される、請求項1~14のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び15~20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記治療剤、又は前記治療剤の製剤化された形態が、500ダルトンを超える分子量を有する、請求項1~14のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び15~21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記使用が、CNSがん、脳卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症(MS)、外傷性脳損傷、自己免疫性脳疾患(AIBD)又は筋萎縮性側索硬化症(ALS)のいずれかの処置のためのものである、請求項1~14のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び15~22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記クラスター組成物が、前記微小気泡-微小液滴クラスター組成物を調製する第2の成分の微小液滴と第1の成分の微小気泡とを組み合わせてから3時間の時間枠内に投与される、請求項1~14のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び15~22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
微小気泡-微小液滴クラスター組成物及び少なくとも1つの治療剤を含む、対象のCNSへ前記治療剤を局所送達する方法における使用のための医薬組成物であって、前記方法は、超音波照射の少なくとも1つの工程が、前記CNSに向かって非侵襲的に、前記CNSに向かって侵襲的に、又は前記CNSの外の心臓若しくは脊髄若しくは頸動脈に向かって行われる音響クラスター療法(ACT)処置を含み、前記方法が、
(i)前記医薬組成物を前記対象に投与する工程であって、前記少なくとも1つの治療剤が、前記クラスター組成物とは別個に、事前に及び/又は同時に及び/又は事後に投与される、工程、
(ii)任意選択で、超音波イメージングを使用して前記医薬組成物のクラスターをイメージングして、前記対象内の処置のための前記CNS内の関心領域を特定する工程、
(iii)工程(i)からの前記クラスター組成物の前記微小液滴の拡散性成分の位相シフトを、第1の周波数及び第1のメカニカルインデックスでの超音波照射によって活性化する工程であって、
a)前記非侵襲的照射については、これは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱の外に配置された少なくとも1つのトランスデューサから、これを通した照射のために行われ、
b)前記侵襲的照射については、これは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱内の、少なくとも1つの外科的に埋め込まれたトランスデューサから行われ、
c)心臓又は脊髄若しくは頸動脈に向かう照射については、これは、前記CNSの外の心臓又は脊髄若しくは頸動脈で行われる、工程、
(iv)前記第1の周波数より低い第2の周波数及び工程(i)で投与された前記少なくとも1つの治療剤の、前記CNS内の前記関心領域での溢出を容易にする第2のメカニカルインデックスで超音波による更なる照射を行う工程であって、
a)前記非侵襲的照射については、これは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱の外に配置された少なくとも1つのトランスデューサから、これを通した照射のために行われ、
b)前記侵襲的照射については、これは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱内の、少なくとも1つの外科的に埋め込まれたトランスデューサから行われ、
c)工程(iii)においてc)に従って活性化する場合、この工程における更なる照射は、工程(iv)a)又は工程(iv)b)に従って非侵襲的に又は侵襲的に行われる、工
を含む、医薬組成物
【請求項26】
微小気泡-微小液滴クラスター組成物及び少なくとも1つの治療剤を含む、前記治療剤のために対象の血液脳関門の透過性を増加させる方法における使用のための医薬組成物であって、前記方法は、超音波照射の少なくとも1つの工程が、前記CNSに向かって非侵襲的に、前記CNSに向かって侵襲的に、又は前記CNSの外の心臓若しくは脊髄若しくは頸動脈に向かって行われる音響クラスター療法(ACT)処置を含み、前記方法が、
(i)前記医薬組成物を前記対象に投与する工程、
(ii)任意選択で、超音波イメージングを使用して前記医薬組成物のクラスターをイメージングして、前記対象内の処置のために前記CNS内の関心領域を特定する工程、
(iii)工程(i)からの前記クラスター組成物の前記微小液滴の拡散性成分の位相シフトを、第1の周波数及び第1のメカニカルインデックスでの超音波照射によって活性化する工程であって、
a)前記非侵襲的照射については、これは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱の外に配置された少なくとも1つのトランスデューサから、これを通した照射のために行われ、
b)前記侵襲的照射については、これは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱内の、少なくとも1つの外科的に埋め込まれたトランスデューサから行われ、
c)心臓又は脊髄若しくは頸動脈に向かう照射については、これは、前記CNSの外の心臓又は脊髄若しくは頸動脈で行われる、工程、
(iv)前記第1の周波数より低い第2の周波数及び前記CNS内の前記関心領域での溢出を容易にする第2のメカニカルインデックスで超音波による更なる照射を行う工程であって、
a)前記非侵襲的照射については、これは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱の外に配置された少なくとも1つのトランスデューサから、これを通した照射のために行われ、
b)前記侵襲的照射については、これは、前記対象の脳頭蓋骨又は脊柱内の、少なくとも1つの外科的に埋め込まれたトランスデューサから行われ、
c)工程(iii)においてc)に従って活性化する場合、この工程における更なる照射は、工程(iv)a)又は工程(iv)b)に従って非侵襲的に又は侵襲的に行われる、工
を含む、医薬組成物
【請求項27】
工程(i)において、少なくとも1つの治療剤が、前記クラスター組成物とは別個に、事前に及び/又は同時に及び/又は事後に投与される、請求項26に記載の対象の血液脳関門の透過性を増加させる方法における使用のための医薬組成物
【国際調査報告】