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特表2024-526518基板の前面上のコーティング領域をコーティングする方法及び熱蒸発システム用の装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】基板の前面上のコーティング領域をコーティングする方法及び熱蒸発システム用の装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
C23C14/24 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568198
(86)(22)【出願日】2021-07-28
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 EP2021071186
(87)【国際公開番号】W WO2023006197
(87)【国際公開日】2023-02-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512247223
【氏名又は名称】マツクス-プランク-ゲゼルシヤフト ツール フエルデルング デル ヴイツセンシヤフテン エー フアウ
【氏名又は名称原語表記】MAX-PLANCK-GESELLSCHAFT ZUR FOeRDERUNG DER WISSENSCHAFTEN E.V.
【住所又は居所原語表記】Hofgartenstrasse 8,80539 Muenchen, Bundesrepublik Deutschland
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ウルフギャング
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA24
4K029AA25
4K029BA43
4K029CA02
4K029DB20
4K029JA01
4K029JA06
4K029JA10
4K029KA01
(57)【要約】
本発明は、電磁放射(80)によってソース(30)から熱的に蒸発及び/又は昇華されたソース材料(40)で基板(50)の前面(56)上のコーティング領域(58)をコーティングする方法に関する。また、本発明は、ソース(30)から電磁放射(80)によって熱的に蒸発及び/又は昇華されたソース材料(40)で基板(50)の前面(56)上のコーティング領域(58)をコーティングする熱蒸発システム(200)用の装置(100)に関する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁放射(80)によってソース(30)から熱的に蒸発及び/又は昇華されたソース材料(40)で基板(50)の前面(56)上のコーティング領域(58)をコーティングする方法であって、
前記ソース(30)は、前記ソース材料(40)からなる1つ以上のソース部(38)を備え、
前記基板(50)及び前記ソース(30)は、反応雰囲気(14)を含有する反応チャンバ(10)内に配置され、
前記電磁放射(80)は、1つ以上の入射放射ビーム(82)として提供されると共に、前記1つ以上の入射放射ビーム(82)と前記ソース(30)の前記表面(36)に対する垂線(32)とが0°より大きく90°より小さい入射角(84)をなし、それによって放射平面(110)を形成するように、前記反応チャンバ(10)のチャンバ窓(12)を通して前記反応チャンバ(10)内に結合され、
a)前記電磁放射(80)に対して透過性の又は少なくとも本質的に透過性の基板材料(52)を用いて前記基板(50)を提供するステップと、
b)前記反応チャンバ(10)内で前記チャンバ窓(12)と前記ソース(30)との間に前記基板(50)を配置するステップであって、前記基板(50)の前記前面(56)が前記ソース(30)に面し、前記基板(50)の後面(54)が前記チャンバ窓(12)に面するステップと、
c)前記コーティングプロセス中に前記基板(50)を通して前記1つ以上の入射放射ビーム(82)で前記ソース(30)を照明するステップと、
を特徴とする、方法。
【請求項2】
レーザ光、特に10nm~100μmの波長を有する、好適には前記赤外域で選択される波長を有する、とりわけ1μmの波長を有するレーザ光が、電磁放射(80)として使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上の入射放射ビーム(82)と前記基板(50)との中間交差エリア(94)が前記1つ以上の入射放射ビーム(82)と前記ソース(30)の前記表面(36)との交差エリア(92)よりも大きくなるように、前記1つ以上の入射放射ビーム(82)が前記ソース(30)に向かって集束されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記集束された1つ以上の入射放射ビーム(82)の焦点(88)又は焦点体積(88)が前記ソース(30)の前記表面(36)に配置されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記コーティング領域(58)が、少なくとも平均して、前記放射平面(110)に垂直な平面内に配置されることを特徴とする、請求項1から4のうち一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも前記基板(50)の前記コーティング領域(58)、特に前記基板(50)全体が、平面状であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ以上の入射放射ビーム(82)と前記ソース(30)に対する前記表面(36)垂線(32)とが、20°~70°の入射角(84)、好適には35°~55°の入射角(84)をなすことを特徴とする、請求項1から6のうち一項に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ以上の入射放射ビーム(82)は、前記1つ以上のソース部(38)の前記表面(36)で反射されて、1つ以上の反射放射ビーム(86)として、特に前記基板(50)の前記前面(56)に戻り、前記1つ以上の反射放射ビーム(86)は前記放射平面(110)内に含まれることを特徴とする、請求項1から7のうち一項に記載の方法。
【請求項9】
前記基板(50)は、前記放射平面(110)に垂直な傾斜軸(76)を中心として、0°よりも大きい傾斜角(74)で前記ソース(30)に対して傾斜され、
前記傾斜角(74)は、前記コーティング領域(58)の前記中心(62)の垂線(60)と、前記ソース(30)の前記表面(36)の前記中心(34)と前記コーティング領域(58)の前記中心(62)とを結ぶ線と、の間になされ、
前記なされる傾斜角(74)は、前記1つ以上の入射放射ビーム(82)と前記基板(50)との中間交差エリア(94)と前記ソース(30)との距離が、前記1つ以上の反射放射ビーム(86)と前記基板(50)との中間交差エリア(96)と前記ソース(30)との距離よりも大きくなるように選択される
ことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記基板(50)は、前記放射平面(110)に垂直な傾斜軸(76)を中心として、0°よりも大きい傾斜角(74)で前記ソース(30)に対して傾斜され、
前記傾斜角(74)は、前記コーティング領域(58)の前記中心(62)の垂線(60)と、前記ソース(30)の前記表面(36)の前記中心(34)と前記コーティング領域(58)の前記中心(62)とを結ぶ線と、の間になされ、
前記なされる傾斜角(74)は、前記1つ以上の入射放射ビーム(82)と前記基板(50)との中間交差エリア(94)と前記ソース(30)との距離が、前記1つ以上の反射放射ビーム(86)と前記基板(50)との中間交差エリア(96)と前記ソース(30)との距離よりも小さくなるように選択される
ことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記基板(50)の前記傾斜角(74)が、前記基板(50)の前記前面(56)における前記1つ以上の反射放射ビーム(86)のエネルギ密度を調節するために選択されることを特徴とする、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記基板(50)が、前記放射平面(110)に垂直な傾斜軸(76)を中心として、0°よりも大きい傾斜角(74)で前記ソース(30)に対して傾斜され、
前記傾斜角(74)が、前記コーティング領域(58)の前記中心(62)の垂線(60)と、前記ソース(30)の前記表面(36)の前記中心(34)と前記コーティング領域(58)の前記中心(62)とを結ぶ線と、の間になされ、
前記なされる傾斜角(74)が、前記1つ以上の反射放射ビーム(86)が前記基板(50)の前記前面(56)を外れるように選択される
ことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ以上の反射放射ビーム(86)がアブソーバ要素(24)に衝突し、前記アブソーバ要素(24)によって吸収されるように、前記1つ以上のソース部(38)の前記表面(36)と前記基板(50)の前記前面(56)との間に前記アブソーバ要素(24)が配置されることを特徴とする、請求項8又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記基板(50)は、前記コーティングプロセス中に前記基板(50)を再配置するために前記基板(50)の前記前面(56)上の前記コーティング領域(58)の前記位置に対して移動され、
前記ソース(30)と前記コーティング領域(58)との間の距離は、一定に又は少なくとも本質的に一定に保たれる
ことを特徴とする、請求項1から13のうち一項に記載の方法。
【請求項15】
前記基板(50)が、以下の手法
・線形
・円形
・螺旋状
・蛇行
のうち少なくとも1つで移動されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記基板(50)が、少なくとも平均して、前記基板(50)と前記放射平面(110)との交線に沿って移動されることを特徴とする、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記基板(50)は、2つ以上の基板セグメント(70)に細分され、
前記2つの基板セグメント(70)は、連続的に配置され、特に基板コネクタ(72)によって接続され、前記コーティングプロセス中に一緒に移動される
ことを特徴とする、請求項14から16のうち一項に記載の方法。
【請求項18】
ステップc)において、前記基板コネクタ(72)が隣接する前記基板セグメント(70)の前記基板材料(52)よりも前記電磁放射(80)に関して低透過性である場合、前記1つ以上の入射放射ビーム(82)の強度が、前記1つ以上の入射放射ビーム(82)の一部による前記基板コネクタ(72)の照明中に、増加されることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ステップc)において、前記基板コネクタ(72)が隣接する前記基板セグメント(70)の前記基板材料(52)よりも前記電磁放射(80)に関して高透過性である場合、前記1つ以上の入射放射ビーム(82)の強度が、前記1つ以上の入射放射ビーム(82)の一部による前記基板コネクタ(72)の照明中に、低減されることを特徴とする、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記基板コネクタ(72)が隣接する前記基板セグメント(70)の前記基板材料(52)よりも前記電磁放射(80)に関して低透過性である場合、前記基板(50)の前記移動の前記速さが、前記1つ以上の入射放射ビーム(82)の一部による前記基板コネクタ(72)の照明中に、低減されることを特徴とする、請求項17から19のうち一項に記載の方法。
【請求項21】
前記基板コネクタ(72)が隣接する前記基板セグメント(70)の前記基板材料(52)よりも前記電磁放射(80)に関して高透過性である場合、前記基板(50)の前記移動の前記速さが、前記1つ以上の入射放射ビーム(82)の一部による前記基板コネクタ(72)の照明中に、増加されることを特徴とする、請求項17から20のうち一項に記載の方法。
【請求項22】
前記基板(50)が、一定の速さで移動されることを特徴とする、請求項14から19のうち一項に記載の方法。
【請求項23】
前記基板(50)が、前記反応チャンバ(10)内で支持要素(26)、特に円筒形ローラ(26)によって支持された可撓性箔(66)として提供され、
特に、前記箔(66)は、前記コーティングプロセス中に供給ロール(202)から製品ロール(204)に移動され、
前記供給ロール(202)及び/又は製品ロール(204)は、好適には前記反応チャンバ(10)の外側に配置される
ことを特徴とする、請求項1から22のうち一項に記載の方法。
【請求項24】
前記ソース(30)が、2つ以上の、特に分離したソース部(38)を備え、
前記ソース部(38)の各々は、前記ソース材料(40)からなる
ことを特徴とする、請求項1から23のうち一項に記載の方法。
【請求項25】
前記ソース部(38)のうち2つ以上の前記ソース材料(40)は、異なることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ソース部(38)のうち1つ以上が、ソース形状(42)のうち前記放射平面(110)に垂直な延在部分が前記ソース形状(42)のうち前記放射平面(110)に平行な延在部分よりも大きくなるように前記ソース形状(42)を備えることを特徴とする、請求項1から25のうち一項に記載の方法。
【請求項27】
前記1つ以上の入射放射ビーム(82)が、ビーム形状(90)のうち前記放射平面(110)に垂直な延在部分が前記ビーム形状(90)のうち前記放射平面(110)に平行な延在部分よりも大きくなるように前記ビーム形状(90)を備えることを特徴とする、請求項1から26のうち一項に記載の方法。
【請求項28】
前記1つ以上の入射放射ビーム(82)が、ビーム形状(90)のうち前記放射平面(110)に垂直な延在部分が前記ビーム形状(90)のうち前記放射平面(110)に平行な延在部分よりも小さくなるように前記ビーム形状(90)を備えることを特徴とする、請求項1から27のうち一項に記載の方法。
【請求項29】
前記電磁放射(80)は、2つ以上の入射放射ビーム(82)として提供され、
前記2つ以上の入射放射ビーム(82)の各々が、前記コーティングプロセス中に前記基板(50)を通して前記ソース(30)を照明する
ことを特徴とする、請求項1から28のうち一項に記載の方法。
【請求項30】
ソース(30)から電磁放射(80)によって熱的に蒸発及び/又は昇華されたソース材料(40)で基板(50)の前面(56)上のコーティング領域(58)をコーティングする熱蒸発システム(200)用の装置(100)であって、
前記ソース材料(40)からなる1つ以上のソース部(38)を備える前記ソース(30)を配置するためのソースアレンジメント(16)と、
前記基板(50)を配置するための基板アレンジメント(18)と、を備え、
前記ソースアレンジメント(16)及び前記基板アレンジメント(18)は、反応雰囲気(14)を充填可能な前記装置(100)の反応チャンバ(10)内に配置され、
前記反応チャンバ(10)は、1つ以上の入射放射ビーム(82)と前記ソース(30)の前記表面(36)に対する垂線(32)とが0°より大きく90°より小さい入射角(84)をなし、それによって放射平面(110)を形成するように、前記1つ以上の入射放射ビーム(82)として提供される前記電磁放射(80)を前記反応チャンバ(10)内に結合するためのチャンバ窓(12)を更に備え、
前記基板アレンジメント(18)が、前記チャンバ窓(12)と前記ソース(30)との間に前記基板(50)を配置するための基板ホルダ(20)を備える
ことを特徴とする、装置。
【請求項31】
前記装置(100)は、請求項1から29のうち一項の方法を実行するように構成されることを特徴とする、請求項30に記載の装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁放射によってソースから熱的に蒸発及び/又は昇華されたソース材料で基板の前面上のコーティング領域をコーティングする方法に関し、ソースはソース材料からなる1つ以上のソース部を備え、基板及びソースは反応雰囲気を含有する反応チャンバ内に配置され、電磁放射は、1つ以上の入射放射ビームとして提供されると共に、その1つ以上の入射放射ビームとソースの表面に対する垂線とが0°より大きく90°より小さい入射角をなし、それによって放射平面を形成するように、反応チャンバのチャンバ窓を通して反応チャンバ内に結合される。また、本発明は、ソースから電磁放射によって熱的に蒸発及び/又は昇華されたソース材料で基板の前面上のコーティング領域をコーティングする装置に関し、この装置は、ソース材料からなる1つ以上のソース部を備えるソースを配置するためのソースアレンジメントと、基板を配置するための基板アレンジメントと、を備え、ソースアレンジメント及び基板アレンジメントは反応雰囲気を充填可能な装置の反応チャンバ内に配置され、反応チャンバは、1つ以上の入射放射ビームとソースの表面に対する垂線とが0°より大きく90°より小さい入射角をなし、それによって放射平面を形成するように、1つ以上の入射放射ビームとして提供される電磁放射を反応チャンバ内に結合するためのチャンバ窓を更に備える。
【背景技術】
【0002】
図1には、技術水準による簡略化された熱蒸発システム200が図示されている。システム200は、ソース材料40を提供するソース30に電磁放射80を衝突させることによってソース材料40を昇華及び/又は蒸発させることに基づいている。特に、熱レーザ蒸発システム200では、基板50上のコーティング領域58をコーティングするべくソース材料40を蒸発及び/又は昇華させるために、レーザ光80が使用される。ソース30及び基板50は装置100の反応チャンバ10内に配置され、反応チャンバ10は更に反応雰囲気14を充填されてもよい。
【0003】
このようなシステム200においては、レーザ光80、又は一般にソース材料40を蒸発及び/又は昇華させるのに適した任意の電磁放射80が、反応チャンバ10のチャンバ窓12を通して反応チャンバ10内に結合される。とりわけ、技術水準によるシステム200では、チャンバ窓12とソース30との間の直接見通し線が、入射放射ビーム82によるソース材料40の蒸発及び/又は昇華のために設計されている。
【0004】
しかしながら、図1において蒸発及び/又は昇華したソース材料40の流れを標示する矢印によって表されるように、ソース材料40は、基板50のコーティング領域58だけでなく、チャンバ窓12上にも堆積される。換言すれば、チャンバ窓12は蒸発及び/又は昇華フラックスに曝され、チャンバ窓12の被覆がもたらされる。加えて、特に、基板の大きなコーティング領域58上への堆積を必要とするときには、チャンバ窓12と基板50との間に空間的競争が存在する。レーザビーム80がソース30に対してほとんどかすめる角度で衝突しなければならず、ソース表面36が完全な水平形状から逸脱して不安定な動作がもたらされるか、あるいは基板50がソース30から遠くに移動しなければならず、ソース表面36において非常に高い局所磁束密度が必要となるか、のいずれかである。そのため、材料利用の観点で理想的な、ソース30に近接した大きな基板50という組み合わせは、達成するのが困難である。
【0005】
上記に鑑みて、本発明の目的は、上述の技術水準の欠点を有さない、基板の前面上のコーティング領域をコーティングする改善された方法と、基板の前面上のコーティング領域をコーティングするための改善された装置と、を提供することである。具体的には、本発明の目的は、ソース上への電磁放射のほとんどかすめるような衝突の必要なしに、蒸発及び/又は昇華したソース材料からチャンバ窓を保護することと同時に、ソース表面と基板上のコーティング領域との間の距離を最小化及び/又は最適化することを可能にする、基板の前面上のコーティング領域をコーティングする改善された方法と、基板の前面上のコーティング領域をコーティングする改善された装置と、を提供することである。
【発明の概要】
【0006】
この目的は、それぞれの独立特許請求項によって満足される。具体的には、この目的は、請求項1に記載された基板の前面上のコーティング領域をコーティングする方法と、請求項30に記載された基板の前面上のコーティング領域をコーティングするための装置と、によって満足される。従属請求項は本発明の好適な実施形態を説明する。本発明の第1の態様によるコーティング領域をコーティングする方法に関して説明される詳細及び利点は、技術的な意味の場合、本発明の第2の態様によるコーティング領域をコーティングするための装置も参照し、その逆も同様である。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、この目的は、電磁放射によってソースから熱的に蒸発及び/又は昇華されたソース材料で基板の前面上のコーティング領域をコーティングする方法によって満足され、ソースはソース材料からなる1つ以上のソース部を備え、基板及びソースは反応雰囲気を含有する反応チャンバ内に配置され、電磁放射は、1つ以上の入射放射ビームとして提供されると共に、1つ以上の入射放射ビームとソースの表面に対する垂線とが0°より大きく90°より小さい入射角をなし、それによって放射平面を形成するように、反応チャンバのチャンバ窓を通して反応チャンバ内に結合される。本発明による方法は、
a)電磁放射に対して透過性の又は少なくとも本質的に透過性の基板材料を用いて基板を提供するステップと、
b)反応チャンバ内でチャンバ窓とソースとの間に基板を配置するステップであって、基板の前面がソースに面し、基板の後面がチャンバ窓に面するステップと、
c)コーティングプロセス中に基板を通して1つ以上の入射放射ビームでソースを照明するステップと、
を備える。
【0008】
本発明による方法は、好適には、基板のコーティング領域をコーティングするためのシステムにおいて及びそのシステムを用いてそれぞれ実行されることが意図される。堆積されるべきソース材料は、ソースの1つ以上のソース部を形成するソース材料に衝突する電磁放射によって蒸発及び/又は昇華される。1つ以上のソース部の各々は単一のソース材料からなる。もっとも、ソース内に2つ以上のソース部が存在する場合には、異なるソース部のソース材料は、同一であっても異なっていてもよい。
【0009】
ソースとコーティング領域を担持する基板とは、反応雰囲気を含有する反応チャンバ内に配置される。好適には、ソースと基板上のコーティング領域との間の距離は、達成されるべきコーティングに合わせて最適化される。本発明による反応雰囲気は、10-4hPa~10-12hPaの真空、純粋な理想的条件については10-8hPa~10-12hPaであってもよく、あるいは、10-8hPaからそれぞれ最大で1hPaの周囲圧力を有する、例えば分子状酸素、オゾン、分子状水素、もしくは分子状窒素などの1つ以上の反応ガスを備えるか又はそれらからなっていてもよい。後者の場合、反応ガスは、好適には、コーティングの組成に従って選択され得る。酸素の変体であるO及びOは、好適には、インラインのグロー放電オゾン発生器によって生成されるように、およそ9:1の比で提供され得る。また、反応ガスは、少なくともイオン化され得、特にプラズマイオン化によってイオン化され得る。
【0010】
電磁放射は、1つ以上の入射放射ビームとして提供され、チャンバ窓を通して反応チャンバ内に結合される。電磁放射は、表面上に衝突し、ソースの表面に対する垂線と共に、0°より大きく90°より小さい入射角をなす。したがって、0°に近い非常に小さな入射角はソース表面上にほとんど垂直に衝突する入射放射ビームを表し、90°に近い非常に大きな入射角はソース表面に対してかすめ角の入射放射ビームを表す。
【0011】
本発明の第1の態様による方法の第1のステップa)によれば、基板は、電磁放射に対して透過性の又は少なくとも本質的に透過性の基板材料を用いて提供される。本発明の意味において透過性又は少なくとも実質的に透過性とは、具体的には、透過される電磁放射が10%未満、好適には1%未満の減衰を経ることを意味する。換言すれば、電磁放射は、深刻な減衰を伴わずに基板を通して照射することができる。このために、基板材料は、使用される電磁放射に関して、特に使用される電磁放射の波長に関して、適宜選択される。
【0012】
電磁放射に対して透過性の又は少なくとも本質的に透過性の基板を提供することは、本発明の第1の態様による方法の続くステップb)において、反応チャンバ内でチャンバ窓とソースとの間に基板を配置することを可能にする。したがって、本発明の第1の態様による方法のステップc)におけるコーティングプロセス中に、電磁放射は、チャンバ窓を通って反応チャンバに進入し、基板に衝突すると共に基板を通して照射し、その後で初めてターゲット上に衝突してターゲットを照明する。
【0013】
換言すれば、ソース表面は、電磁放射に関して透過性の又は少なくとも本質的に透過性の基板材料ではマスキングされない。したがって、チャンバ窓及び基板の両者の位置は、それぞれ、チャンバ窓とソースの表面との間の直接の遮られない見通し線の必要性という制約なしに選択することができる。
【0014】
衝突する電磁放射によって蒸発及び/又は昇華されたソース材料の蒸発及び/又は昇華フラックスは、ソースの表面から、特に例えば余弦分布に従う平坦な表面から、遠ざかるように進む。したがって、ステップb)において、基板は、コーティング領域の所望のコーティングを可能にするために、コーティング領域を担持する基板の前面がソースに面するように、反応チャンバ内に配置される。
【0015】
しかしながら、図1に関して既に上述したように、蒸発及び/又は昇華したソース材料は、所望のコーティング領域に向かって進むだけではない。それにもかかわらず、蒸発及び/又は昇華したソース材料は、一般に直線に沿って進む。ステップb)において、ステップc)で電磁放射がソースの照明プロセス中に基板を通して、したがってチャンバ窓とソースとの間の直接見通し線で照射するように、基板を配置することによって、蒸発及び/又は昇華したソース材料は、基板上に堆積される。特に、蒸発及び/又は昇華したソース材料のチャンバ窓への堆積が、阻止又は少なくとも大幅に低減され得る。蒸発及び/又は昇華したソース材料のチャンバ窓への堆積は蒸発システム全体の耐用寿命に重大な影響を有するので、耐用寿命は大幅に延長され得る。好適には、蒸発及び/又は昇華したソース材料によるコーティングに起因するチャンバ窓の交換が完全に回避され得る。
【0016】
好適には、本発明の第1の態様による方法は、レーザ光、特に10nm~100μmの波長を有する、好適には赤外域で選択される波長を有する、とりわけ1μmの波長を有するレーザ光が、電磁放射として使用されることを特徴とし得る。レーザ光は、コヒーレントであり、広範囲の波長及び強度にわたって提供され得るという利点を備える。蒸発及び/又は昇華されるべき各特定のソース材料に対して、適切なレーザ光が選択され得る。レーザ光は、パルスで、又はより好適には連続的に提供され得る。それによって、特に特定のソース材料のプラズマ閾値未満での非常に均質な蒸発及び/又は昇華が提供され得る。
【0017】
加えて、本発明の第1の態様による方法は、1つ以上の入射放射ビームと基板との中間交差エリア(median intersection area)が1つ以上の入射放射ビームとソースの表面との交差エリアよりも大きくなるように、1つ以上の入射放射ビームがソースに向かって集束されることを備え得る。換言すれば、ソースの表面に衝突する電磁放射の空間エネルギ密度は、基板における及び基板内でのそれぞれの空間エネルギ密度よりも大きい。たとえ基板が電磁放射に対して本質的に透過性であっても、放射ビームのエネルギのごく一部が基板によって吸収されることがある。空間エネルギ密度を低減することによって、吸収された電磁放射によって基板を害するリスクを更に低下させることができる。同時に、1つ以上の入射放射ビームとソースの表面との小さい交差エリアを提供することは、この位置における高いエネルギ密度と、ひいてはソース材料の蒸発及び/又は昇華とを保証する。
【0018】
特に、本発明の第1の態様による方法は、集束された1つ以上の入射放射ビームの焦点又は焦点体積がソースの表面に配置されることによって改善され得る。したがって、衝突する電磁放射の前述の空間エネルギ密度は、ターゲットの表面で最大化される。その結果、ソース材料の蒸発及び/又は昇華プロセスが改善される。本発明の範囲においては、焦点体積とは、電磁放射の伝搬に沿った単位長さ当たりの最小体積であり、焦点とは、点状の焦点体積の特別且つ理想的な場合である。
【0019】
さらに、本発明の第1の態様による方法は、コーティング領域が、少なくとも平均して、放射平面に垂直な平面内に配置されることを特徴とし得る。上述のように、放射平面は、入射放射ビームとソースの表面に対する垂線とを含むものとして定義される。換言すれば、放射平面に対して垂直なコーティング領域は、ソースの表面に関して、コーティング領域が放射平面に対称な平面内に配置されることを保証する。したがって、蒸発及び/又は昇華したソース材料は、放射平面の両側のコーティング領域に同じ空間分布及び角度分布で到達している。それによって、蒸発及び/又は昇華したソース材料のコーティング領域上への均一な堆積が、達成又は少なくとも改善され得る。
【0020】
更なる改善において、本発明の第1の態様による方法は、少なくとも基板のコーティング領域、特に基板全体が、平面状であることを備え得る。換言すれば、コーティング領域は、放射平面に対して垂直な上述の平面内に完全に含まれる。それによって、蒸発及び/又は昇華したソース材料のコーティング領域上への堆積を計画することがより容易になり得る。加えて、基板全体のコーティング領域の他の部分によるコーティング領域の一部のシャドーイングが阻止され得る。さらに、後述するように、平面状のコーティング領域又は平面基板を用いることで、基板を移動させることがより容易に提供され得る。
【0021】
また、本発明の第1の態様による方法は、1つ以上の入射放射ビームとソースに対する表面垂線とが、20°~70°の入射角、好適には35°~55°の入射角をなすことを特徴とし得る。入射角が低いほど、ソース表面が完全な水平形状から逸脱したときの不安定な動作の危険性が低くなる。入射角が高いほど、コーティング領域におけるコーティングの乱れをもたらすおそれのある入射放射ビームと基板との交差エリアとコーティング領域との重なりの確率が低くなる。20°~70°の入射角、好適には35°~55°の入射角が、これら2つの制約の間の良好な妥協点を提供する。
【0022】
加えて、本発明の第1の態様による方法は、1つ以上の入射放射ビームが、1つ以上のソース部の表面で反射されて、1つ以上の反射放射ビームとして、特に基板の前面に戻ることを備え、1つ以上の反射放射ビームは放射平面内に含まれる。換言すれば、入射電磁放射は、反応チャンバ内に結合され、基板を通して照射し、ソース材料の蒸発及び/又は昇華のためにソースの表面に衝突し、これに伴いソースの表面で反射されて、基板上に、特に基板の前面上に戻る。好適には、いくつかの実施形態については、反射放射ビームは、蒸発及び/又は昇華したソース材料によって少なくとも部分的にコーティングされた位置で基板の前面に衝突し得る。これは、例えば、反射放射ビームが少なくとも部分的にコーティング領域で基板に当たるように基板を配置することによって、しかし好適には、後述するように、コーティングプロセス中にソースに対して基板を移動させることによって、提供され得る。
【0023】
電磁放射はソース材料を蒸発及び/又は昇華させるために特に選択されるので、ソース材料は、ほとんどの場合、透過性の又は少なくとも本質的に透過性の基板よりも著しく良好に電磁放射を吸収する。したがって、基板の前面上のコーティングは反射放射ビームによって再加熱され、それによりアニーリングプロセスが実施され得る。これによって、コーティングの全体的な品質が向上され得る。
【0024】
本発明の第1の態様による方法の改良された一実施形態においては、基板は、放射平面に垂直な傾斜軸を中心として、0°よりも大きい傾斜角でソースに対して傾斜され、傾斜角は、コーティング領域の中心の垂線と、ソースの表面の中心とコーティング領域の中心とを結ぶ線と、の間になされ、なされる傾斜角は、1つ以上の入射放射ビームと基板との中間交差エリアとソースとの距離が、1つ以上の反射放射ビームと基板との中間交差エリアとソースとの距離よりも大きくなるように選択される。
【0025】
前述のように、入射放射ビームはソースの表面に向かって集束される。それによって、反射放射ビームも、その焦点又は焦点体積をそれぞれソースの表面に備え、その伝搬に沿ってソースの表面から遠ざかるように基板の前面に向かって広がる。
【0026】
したがって、ソースの表面上での電磁放射の反射は、第一近似として、入射放射ビームの焦点位置合わせを反射放射ビームにおいて維持するので、この実施形態では、入射放射ビームと基板との中間交差エリアは、反射放射ビームと基板との中間交差エリアよりも大きい。上述したように、より大きな交差エリアはそれぞれの放射ビームのより小さなエネルギ密度をもたらし、その逆も同様である。それによって、衝突する放射ビーム及び反射放射ビームのエネルギ密度は、それぞれ、実際のコーティングの要件に従って容易に調節されることができる。上述の実施形態では、反射ビームと基板との交差エリアにおけるエネルギ密度は、基板の傾斜によって増加される。これは、例えば、アニーリングプロセスを実施することが好ましいがソース表面と反射放射ビームと基板との交差エリアとの間の距離を減少させることによって達成可能な反射放射ビームの特定のエネルギ密度が必要である場合に、有利であり得る。
【0027】
代替的な一実施形態によれば、本発明の第1の態様による方法は、基板が、放射平面に垂直な傾斜軸を中心として、0°よりも大きい傾斜角でソースに対して傾斜され、傾斜角が、コーティング領域の中心の垂線と、ソースの表面の中心とコーティング領域の中心とを結ぶ線と、の間になされ、なされる傾斜角が、1つ以上の入射放射ビームと基板との中間交差エリアとソースとの距離が、1つ以上の反射放射ビームと基板との中間交差エリアとソースとの距離よりも小さくなるように選択されることによって、改良され得る。
【0028】
この代替的な実施形態では、基板の傾斜は、上述の実施形態とは逆に提供される。もっとも、上記の実施形態に関して説明した全ての詳細及び利点は依然として有効であり、ただし、逆方向の基板の傾斜が考慮される。
【0029】
特に、この実施形態においては、入射放射ビームと基板との中間交差エリアは、反射放射ビームと基板との中間交差エリアよりも小さい。ここでも、より小さな交差エリアはそれぞれの放射ビームのより高いエネルギ密度をもたらし、その逆も同様である。それによって、衝突する放射ビーム及び反射放射ビームのエネルギ密度は、それぞれ、実際のコーティングの要件に従って容易に調節されることができる。この実施形態では、反射ビームと基板との交差エリアにおけるエネルギ密度は、基板の傾斜によって減少する。これは、例えば、反射ビームのエネルギ密度が高すぎる場合、例えば基板の前面上のコーティング領域上に堆積されたソース材料の蒸発プロセス及び/又は昇華プロセスを再び引き起こすほど高い場合に、有利であり得る。それによって、基板の前面上に堆積されたソース材料に衝突する反射放射ビームの悪影響が回避され得る。しかしながら、傾斜角は、アニーリングプロセスが依然として実施され得るように選択され得る。
【0030】
好適には、本発明の第1の態様による方法は、基板の傾斜角が、基板の前面における1つ以上の反射放射ビームのエネルギ密度を調節するために選択されることによって、更に改良され得る。上述のように、基板の前面における反射放射ビームのエネルギ密度は、放射ビームの焦点特性に、特に、ソースの反射表面と、反射放射ビームと基板との交差エリアと、の距離に依存する。したがって、傾斜角を能動的に調節することによって、後者の値は容易に変更されることができる。これは、一方では、放射ビームの所与の焦点特性に基づくエネルギ密度の一般的な調節を可能にし、他方では、特に閉ループ制御による焦点特性の変化に基づいてエネルギ密度を能動的に制御することも可能にする。
【0031】
上述のように、基板の前面への入射放射ビームの戻り反射は、本発明の第1の態様による方法によって提供され得るコーティングプロセスのいくつかにとって有利である。しかしながら、逆もあり得る。すなわち、反射放射ビームは、基板のうち既にコーティングされたエリアのコーティングを害するであろう。
【0032】
この場合について、本発明の第1の態様による方法は、基板が、放射平面に垂直な傾斜軸を中心として、0°よりも大きい傾斜角でソースに対して傾斜され、傾斜角が、コーティング領域の中心の垂線と、ソースの表面の中心とコーティング領域の中心とを結ぶ線と、の間になされ、なされる傾斜角が、1つ以上の反射放射ビームが基板の前面を外れるように選択されることによって、改良され得る。基板のこうした配置を用いて、特に、適宜選択された基板の傾斜角によって、反射放射ビームの前面への衝突が阻止され得る。それによって、反射放射ビームにより引き起こされる基板のコーティングに対する損傷効果が回避され得る。
【0033】
追加的又は代替的には、本発明の第1の態様による方法は、1つ以上の反射放射ビームがアブソーバ要素に衝突し、アブソーバ要素によって吸収されるように、1つ以上のソース部の表面と基板の前面との間にアブソーバ要素が配置されることによっても改良され得る。
【0034】
いくつかの実施形態においては、空間的制約及び/又は基板自体の特徴が、反射放射ビームから遠ざかる基板の前述の傾斜を阻止する。こうした場合には、反射放射ビームの経路内に適当に位置決めされたアブソーバ要素が、反射放射ビームを吸収するため、ひいては反射放射ビームによって引き起こされる基板のコーティングへの損傷効果を防止するために、使用され得る。もっとも、アブソーバ要素は、基板の前述の傾斜に加えて使用されることもできる。
【0035】
本発明の第1の態様による方法の特に好適な一実施形態によれば、基板は、コーティングプロセス中に基板を再配置するために基板の前面上のコーティング領域の位置に対して移動され、ソースとコーティング領域との間の距離は、一定に又は少なくとも本質的に一定に保たれる。換言すれば、この実施形態では、基板の前面上の広いエリアの連続的なコーティングが提供され得る。ソースとコーティング領域との間の距離を一定に又は少なくとも本質的に一定に保つことによって、静止状態又は少なくとも本質的に静止状態での連続的なコーティングが提供され得る。代替的又は追加的には、結果として、コーティングの均質性が改善され得る。
【0036】
基板の前面の既にコーティングされた領域に衝突する反射放射ビームを備える上述の実施形態と組み合わせて、これらの既にコーティングされたエリアも移動される。それによって、上述のアニーリングプロセスは、新しい未アニーリング領域において連続的に実施され得る。
【0037】
また、本発明の第1の態様による方法は、基板が以下の手法のうち少なくとも1つで移動されることによって改良され得る。
・線形
・円形
・螺旋状
・蛇行
このリストは閉じたものではなく、基板を移動させる他の手法も可能である。基板を移動させる最も適切な手法を選択することによって、多種多様な可能なコーティングパターンが提供され得る。
【0038】
加えて、本発明の第1の態様による方法は、基板が、少なくとも平均して、基板と放射平面との交線に沿って移動されることを備え得る。特に、平面基板の場合、基板は、少なくとも平均して、交線に沿って線形に移動する。反射放射ビームを備える上述の実施形態、及び特に、そのような反射放射ビームによって提供される有利な効果、例えば基板上の既にコーティングされたエリアにおいてアニーリングプロセスを実施することは、それによってより容易に実装されることができる。
【0039】
本発明の第1の態様による方法の別の一実施形態においては、基板は2つ以上の基板セグメントに細分され、その2つの基板セグメントは連続的に配置され、特に基板コネクタによって接続され、コーティングプロセス中に一緒に移動される。これにより、2つ以上の別々の基板セグメント上のコーティング領域が、単一のコーティングセッションで、好適には間に反応チャンバを開く必要なしに、続いてコーティングされ得る。それによって、本発明の第1の態様による方法の運転容量が増加され得る。
【0040】
2つ以上の基板セグメントは、反応チャンバ内で利用可能に保持され得る。追加的又は代替的には、反応チャンバのチャンバ壁には適当なエアロックも配置され得、例えば、意図されたコーティングのために2つ以上の基板セグメントを続いて供給するべく、別々にポンピング可能なロードロックチャンバ及び/又は差動ポンピングを提供する。
【0041】
また、本発明の第1の態様による方法は、ステップc)において、基板コネクタが隣接する基板セグメントの基板材料よりも電磁放射に関して低透過性である場合、1つ以上の入射放射ビームの強度が、1つ以上の入射放射ビームの一部による基板コネクタの照明中に、増加されることを備え得る。上述のように、入射放射ビームは、基板を通して照射するときに、1つ以上の入射放射ビームと基板との交差エリアによって説明される特定のサイズを備える。本発明の第1の態様による方法の適用のほとんどにおいて、この交差エリアは、基板コネクタのサイズよりも大きくなるであろう。よって、基板コネクタが基板セグメントよりも低透過性である場合、ソースに衝突する入射放射ビームは、基板コネクタによって部分的にシャドーイングされる。本発明による方法のステップc)において1つ以上の入射放射ビームの強度を増加させることによって、このシャドーイング効果は相殺され得る。それによって、ソース材料の円滑で、連続的で、且つ均一な蒸発及び/又は昇華が提供され得る。
【0042】
代替的又は追加的には、本発明の第1の態様による方法は、ステップc)において、基板コネクタが隣接する基板セグメントの基板材料よりも電磁放射に関して高透過性である場合、1つ以上の入射放射ビームの強度が、1つ以上の入射放射ビームの一部による基板コネクタの照明中に、低減されることを備え得る。前段落に記載された実施形態とは対照的に、基板コネクタは、今度は、隣接する基板セグメントの透過性よりも高い、入射放射ビームに対する透過性を備える。よって、ソースに衝突する入射放射ビームは、入射放射ビームと基板との交差エリアが基板コネクタを含むとき、部分的に増強される。1つ以上の入射放射ビームの強度を低減させることによって、この増強効果は相殺され得る。それによって、ソース材料の円滑で、連続的で、且つ均一な蒸発及び/又は昇華が提供され得る。
【0043】
また、本発明の第1の態様による方法は、基板コネクタが隣接する基板セグメントの基板材料よりも電磁放射に関して低透過性である場合、基板の移動の速さが、1つ以上の入射放射ビームの一部による基板コネクタの照明中に、低減されることを備え得る。1つ以上の入射放射ビームの強度を増加させることに代えて又は加えて、基板、すなわち基板コネクタによって連続的に接続された2つ以上の基板セグメントの移動の速さを低減させることによっても、基板コネクタの前述のシャドーイング効果は相殺され得る。それによって、ソース材料の円滑で、連続的で、且つ均一な蒸発及び/又は昇華が提供され得る。
【0044】
代替的又は追加的には、本発明の第1の態様による方法は、基板コネクタが隣接する基板セグメントの基板材料よりも電磁放射に関して高透過性である場合、基板の移動の速さが、1つ以上の入射放射ビームの一部による基板コネクタの照明中に、増加されることを備え得る。先の段落において説明された実施形態とは逆の場合、すなわち基板材料よりも高い透過性を有する基板コネクタの場合には、特に、やはり1つ以上の入射放射ビームの強度を低減させることに変えて又は加えて、基板、すなわち基板コネクタによって連続的に接続された2つ以上の基板セグメントの移動の速さを増加させることで、基板の材料よりも電磁放射に対して高透過性の基板コネクタによって引き起こされる増強効果を相殺することができる。それによって、ソース材料の円滑で、連続的で、且つ均一な蒸発及び/又は昇華が提供され得る。
【0045】
更なる代替的な一実施形態によれば、本発明の第1の態様による方法は、基板が一定の速さで移動されることを備え得る。基板を一定の速さで移動させることは、機械的に単純であり、容易に提供され得る。これによって、本発明の第1の態様による方法を実行する装置の複雑性が低減され得る。
【0046】
加えて、本発明の第1の態様による方法は、基板が反応チャンバ内で支持要素、特に円筒形ローラによって支持された可撓性箔として提供されることを備えていてもよく、箔はコーティングプロセス中に供給ロールから製品ロールに移動され、供給ロール及び/又は製品ロールは好適には反応チャンバの外側に配置される。反応チャンバの外側にロールのうち少なくとも1つを有する実施形態については、好適には、反応チャンバのチャンバ壁に、適当なエアロックが提供される。
【0047】
換言すれば、基板として提供される可撓性箔は、供給ロールから巻き出され、コーティング領域を通過して移動され、次いで製品ロール上に再び巻き取られる。反応チャンバ内の支持要素が、可撓性箔が軌道上に留まることを確実にし、特に、支持要素は、箔に張力をかけるための1つ以上のデバイスも備え得る。コーティング領域においては、可撓性箔は、実際のコーティングプロセスの要件に従って、真っ直ぐに提供及び/又は屈曲して提供され得る。また、例えば、積極的に冷却された支持要素又は箔の近傍に配置された指定の冷却要素による箔の冷却が可能であり、冷却要素は、好適には、箔に平行に配置された冷却表面を備える。
【0048】
要約すると、本発明による方法において基板として使用される可撓性箔は、特に移動方向に沿って、基板の寸法を有意に増加することを可能にする。供給ロールと製品ロールとが反応チャンバの外側に配置される本発明によって提供されるコーティングプロセスの実施形態においては、尽きた供給ロールや完全に充填された製品ロールの交換さえ可能である。基板供給に関してのみ、無限のコーティングプロセスが提供され得る。
【0049】
また、本発明の第1の態様による方法は、ソースが2つ以上の、特に分離したソース部を備えることを特徴とし得、ソース部の各々はソース材料からなる。上述したように、蒸発及び/又は昇華の空間特性は、特に平坦な表面を有するソースについては、主に余弦分布に従う。2つ以上のソース部を備え、そのソース部の各々が1つ以上の入射放射ビームにより照明されることによって、2つ以上の個々のソース部の蒸発及び/又は昇華したソース材料は結合することができ、したがって、基板の前面上のコーティング領域上へのソース材料の堆積はより均一になり得、その堆積は加速され得、及び/又はコーティング領域のサイズは拡大され得、及び/又はコーティング領域の形状は変更され得る。特に、堆積膜の厚さのばらつきをもたらす堆積フラックスの空間的均質性が最小化され得る。
【0050】
本発明の第1の態様による方法の更なる一実施形態によれば、ソース部のうち2つ以上のソース材料は異なる。
【0051】
加えて、本発明の第1の態様による方法は、ソース部のうち1つ以上が、ソース形状のうち放射平面に垂直な延在部分がソース形状のうち放射平面に平行な延在部分よりも大きくなるようにソース形状を備えることも備え得る。換言すれば、ソース部が入射放射ビームによって照明される、特に完全に照明されるので、ソースセグメントの蒸発及び/又は昇華されたソース材料の空間分布も、放射平面に平行よりも放射平面に垂直に、より大きな範囲を備える。それによって、2つ以上のソースセグメントを備えるソースに関して上述した蒸発及び/又は昇華したソース材料の空間分布の形状の変更の利点は、単一のソースセグメントにより提供され得る。したがって、特にコーティングプロセス中に移動される基板について、放射平面に垂直な、よって自動的に基板の移動方向に垂直なコーティング領域のより大きな範囲及び改善された厚さ均一性が提供され得る。好適には、これは、基板上の堆積層の空間的均一性の増加につながる。
【0052】
また、本発明の第1の態様による方法は、1つ以上の入射放射ビームが、ビーム形状のうち放射平面に垂直な延在部分がビーム形状のうち放射平面に平行な延在部分よりも大きくなるようにビーム形状を備えることを特徴とし得る。特に、放射平面に垂直に拡大されたソース形状を有する、適宜配置された2つ以上のソース部及び/又は単一のソース部を備えるソースと組み合わせると、入射放射ビームによるソース全体の照明がより容易に提供され得る。特に、1つ以上の入射放射ビームは、コーティング領域の幅全体にわたる堆積のためにソース材料を蒸発及び/又は昇華させることができるように、放射平面に垂直な延在部分を有するビームを備えていてもよい。好適には、これは、基板上の堆積層の空間的均一性の増加につながる。
【0053】
追加的又は代替的には、本発明の第1の態様による方法は、1つ以上の入射放射ビームが、ビーム形状のうち放射平面に垂直な延在部分がビーム形状のうち放射平面に平行な延在部分よりも小さくなるようにビーム形状を備えることを備え得る。換言すれば、先行する段落において説明された実施形態とは対照的に、コーティング領域の可能な幅のうち小さな一部のみが、放射平面に垂直な延在部分が小さいビーム形状を備える1つ以上の入射放射ビームの交差エリアによってカバーされる。例えば太陽電池セルなど多くの適用において、最終的なデバイスは、接触ストライプなどの非活性エリアを有する。上述のビーム形状を有する入射放射ビームを、及びそれによって反射放射ビームも提供することによって、交差エリアを、コーティング領域上に堆積された機能膜によって使用されないこれらの領域に局在化することが可能である。
【0054】
本発明の第1の態様による方法の別の一実施形態によれば、電磁放射は2つ以上の入射放射ビームとして提供され、その2つ以上の入射放射ビームの各々がコーティングプロセス中に基板を通してソースを照明する。特に、これは、ソースにおいて2つ以上の焦点又は焦点体積上に同時に集束された電磁放射を提供することを可能にし、各焦点又は焦点体積は、2つ以上の入射放射ビームのうちの1つによって構成される。単一のソース部では、その単一のソース部の表面のより大きなエリアがソース材料の蒸発及び/又は昇華のために使用され得、細長い形状を有するソース部にとって特に有利である。加えて、2つ以上のソース部を備えるソースでは、2つ以上のソース部の各々に対して、2つ以上の入射放射ビームのうちの1つ以上が割り当てられ得る。特に、2つ以上のソース部が異なるソース材料を備える場合には、特定のソース部に割り当てられる入射放射ビームは、例えば波長及び/又は強度に関して、それぞれのソース材料に対して適応的に選択されることができる。
【0055】
本発明の第2の態様によれば、目的は、ソースから電磁放射によって熱的に蒸発及び/又は昇華されたソース材料で基板の前面上のコーティング領域をコーティングする熱蒸発システム用の装置によって満足され得、この装置は、ソース材料からなる1つ以上のソース部を備えるソースを配置するためのソースアレンジメントと、基板を配置するための基板アレンジメントと、を備え、ソースアレンジメント及び基板アレンジメントは反応雰囲気を充填可能な装置の反応チャンバ内に配置され、反応チャンバは、1つ以上の入射放射ビームとソースの表面に対する垂線とが0°より大きく90°より小さい入射角をなし、それによって放射平面を形成するように、1つ以上の入射放射ビームとして提供される電磁放射を反応チャンバ内に結合するためのチャンバ窓を更に備える。本発明の第2の態様による装置は、基板アレンジメントがチャンバ窓とソースとの間に基板を配置するための基板ホルダを備えることを特徴とする。
【0056】
本発明の第2の態様による装置は、基板のコーティング領域をコーティングするための熱蒸発システムの一部としての使用を意図されている。堆積されるべきソース材料は、ソースの1つ以上のソース部を形成するソース材料に衝突する電磁放射によって熱的に蒸発及び/又は昇華される。熱蒸発システムの他の部分は、例えば、1つ以上の入射放射ビームを提供するための放射ソース、並びに真空ポンプ及び/又は反応ガスの供給システムなど反応雰囲気を提供するための手段であり得る。
【0057】
前述の手段によって、ソース及び基板は、反応雰囲気を充填可能な反応チャンバ内に配置され得る。反応雰囲気は、10-4hPa~10-12hPaの真空、純粋な理想的条件については10-8hPa~10-12hPaであってもよく、あるいは、10-8hPaからそれぞれ最大で1hPaの周囲圧力を有する、例えば分子状酸素、オゾン、分子状水素、もしくは分子状窒素などの1つ以上の反応ガスを備えるか又はそれらからなっていてもよい。後者の場合、反応ガスは、好適には、コーティングの組成に従って選択され得る。酸素の変体であるO及びOは、好適には、インラインのグロー放電オゾン発生器によって生成されるように、およそ9:1の比で提供され得る。また、反応ガスは、少なくともイオン化され得、特にプラズマイオン化によってイオン化され得る。
【0058】
ソースとコーティング領域を担持する基板とをそれぞれ配置するために、本発明の第2の態様による装置は、適当な手段、すなわち基板アレンジメントとソースアレンジメントとをそれぞれ備える。好適には、ソースと基板上のコーティング領域との間の距離は、達成されるべきコーティングに合わせて最適化される。
【0059】
電磁放射は、1つ以上の入射放射ビームとして、特にレーザビームとして、放射ソースによって提供される。1つ以上の入射放射ビームを反応チャンバ内に結合するために、反応チャンバは1つ以上のチャンバ窓を備える。
【0060】
入射放射ビームは、ソースの表面上に衝突し、ソースの表面に対する垂線と共に、0°より大きく90°より小さい入射角をなす。したがって、0°に近い非常に小さな入射角はソース上にほとんど垂直に衝突する入射放射ビームを表し、90°に近い非常に大きな入射角はソースに対してかすめ角の入射放射ビームを表す。
【0061】
本発明によれば、基板アレンジメントの基板ホルダは、チャンバ窓とソースとの間に、したがって1つ以上の入射放射ビームの経路内に、基板を配置する。好適には、基板によるソースのマスキングを回避するために、透過性基板が使用される。
【0062】
基板をチャンバ窓とソースとの間の直接見通し線内に配置することによって、チャンバ窓に向かう方向で進む蒸発及び/又は昇華したソース材料は、基板上に堆積される。それによって、蒸発及び/又は昇華したソース材料のチャンバ窓への堆積が、阻止又は少なくとも大幅に低減され得る。蒸発及び/又は昇華したソース材料のチャンバ窓への堆積は蒸発システム全体の耐用寿命に重大な影響を有するので、耐用寿命は大幅に延長され得る。好適には、蒸発及び/又は昇華したソース材料によるコーティングに起因するチャンバ窓の交換が完全に阻止され得る。
【0063】
好適には、本発明の第2の態様による装置は、装置が本発明の第1の態様による方法を実行するように構成されることを備え得る。したがって、本発明の第2の態様による装置は、本発明の第1の態様による方法に関して上述した全ての利点を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
本発明は、実施形態によって及び図面を参照して、以下に詳細に説明される。図面には次のものが示される。
【0065】
図1】技術水準による熱蒸発システムである。
図2】本発明による熱蒸発システムである。
図3】本発明によるコーティングプロセスの第1の実施形態の斜視図である。
図4図3のコーティングプロセスの実施形態の側面図である。
図5】本発明によるコーティングプロセスの第2の実施形態の側面図である。
図6】本発明によるコーティングプロセスの第3の実施形態の斜視図である。
図7】本発明によるコーティングプロセスの第4の実施形態の斜視図である。
図8】本発明によるコーティングプロセスの第5の実施形態の斜視図である。
図9】本発明によるコーティングプロセスの第6の実施形態の斜視図である。
図10】本発明によるコーティングプロセスの第7の実施形態の斜視図である。
図11】本発明によるコーティングプロセスの第8及び第9の実施形態の側面図である。
図12】本発明による熱蒸発システムの別の一実施形態である。
図13】本発明において定義される放射平面である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
図2には、本発明による簡略化された熱蒸発システム200が示されている。図1に図示される技術水準のシステム200と同様に、本発明によるシステム200も、ソース材料40を提供するソース30に電磁放射80を衝突させることによってソース材料40を昇華及び/又は蒸発させることに基づいている。しかしながら、以下に説明するように、本発明によるシステム200は、技術水準のシステム200とのいくつかの相違点を備えており、特に、好適には、本発明による方法を実行するために使用され得るように構築されている。
【0067】
図2に図示される熱蒸発システム200は、装置100と、電磁放射ソース102と、反応雰囲気14を提供するための図示しない手段と、を備える。ソース30を備えるソースアレンジメント16及び基板50を備える基板アレンジメント18が装置100の反応チャンバ10内に配置され、加えて、反応チャンバは反応雰囲気14を充填される。
【0068】
反応雰囲気14は、10-4hPa~10-12hPaの真空、純粋な理想的条件については10-8hPa~10-12hPaであってもよく、あるいは、10-8hPaから好適には最大で1hPaの周囲圧力を有する、例えば分子状酸素、オゾン、分子状水素、もしくは分子状窒素などの1つ以上の反応ガスを備えるか又はそれらからなっていてもよい。後者の場合、反応ガスは、好適には、コーティングの組成に従って選択され得る。酸素の変体であるO及びOは、好適には、インラインのグロー放電オゾン発生器によって生成されるように、およそ9:1の比で提供され得る。また、反応ガスは、少なくともイオン化され得、特にプラズマイオン化によってイオン化され得る。
【0069】
例えば、基板50上に金属の酸化物を堆積させるためには、酸素及び/又はオゾンが反応雰囲気14のための反応ガスとして選択され得、それぞれの金属はコーティングプロセス中に蒸発及び/又は昇華されるソース材料40として提供され得る。それぞれの酸化物は、蒸発及び/又は昇華した金属と、反応雰囲気14によって提供される酸素原子と、の反応によって形成される。
【0070】
電磁放射ソース102によって提供される電磁放射80、好適にはレーザ光80、特に10nm~100μmの波長、好ましくは赤外範囲で選択された波長、特に1μmの波長を有するレーザ光80は、チャンバ窓12を通して反応チャンバ10内に結合され、基板50の前面56上のコーティング領域58(図3から図12を参照)をコーティングすべくソース材料40を蒸発及び/又は昇華させるための入射放射ビーム82として使用される。電磁放射80は、好適には、図2に図示されるように、入射放射ビーム82の焦点体積88がソース30の表面36に又はその近くに配置されるように、ソース30に向かって集束される。
【0071】
加えて、入射放射ビーム82とソース30の表面36の垂線32とは、20°~70°の入射角84、好適には35°~55°の入射角84(図4,5,11を参照)をなす。さらに、垂線32及び入射放射ビーム82は、放射平面110を形成及び定義する。特に、図2は、熱蒸発システム200を側面図で示し、断面は放射平面110によって形成されている。放射平面110の定義の説明的表現が図13に図示されている。
【0072】
本発明にとって不可欠なことには、方法及び装置100のいずれについても、基板50が、本発明による方法のステップb)において、チャンバ窓12とソース40との間に配置される。換言すれば、基板50は、チャンバ窓12とソース40との間の直接見通し線内に配置される。ソース40をマスキングすることを防止するため、基板材料52は、本発明による方法のステップa)において、電磁放射80に対して透過性であるように又は少なくとも本質的に透過性であるように提供される。したがって、コーティングプロセス中、電磁放射80は、ソース30の表面36に衝突する前に基板50を通して照射し、ひいては本発明によるステップc)において、ソース30を照明する。その結果、図2に矢印40として図示される蒸発及び/又は昇華したソース材料40は、基板50の前面56上に堆積され、チャンバ窓12に到達することができない。蒸発及び/又は昇華したソース材料40のチャンバ窓12への堆積は蒸発システム200全体の耐用寿命に重大な影響を有するので、耐用寿命は大幅に延長され得る。好適には、蒸発及び/又は昇華したソース材料40によるコーティングに起因するチャンバ窓12の交換が完全に阻止され得る。
【0073】
図2に図示される実施形態においては、基板50は、連続的に配置されると共に基板コネクタ72によって接続された4つの基板セグメント70を備えている。各基板セグメント70は、したがって基板50全体は、平面状である。このため、コーティング領域58も平面状であり、放射平面110に垂直な平面内に配置されることができる。
【0074】
また、基板50全体は、基板ホルダ20のアクチュエータ22によって、移動方向64に沿って移動される。基板コネクタ72は、基板セグメント70と比較して、衝突する電磁放射80に対してより高透過性又は低透過性であり得るので、それぞれの基板コネクタ72が電磁放射80によって照明されるとき、移動方向64に沿った基板50の移動の速さは、適宜減少又は増加され得る。それによって、ソース30内への電磁放射80のエネルギ堆積、及びひいてはソース材料40の蒸発及び/又は昇華速度が、経時的に一定に保たれ得る。代替的には、電磁放射80の強度は、ソース材料40の蒸発及び/又は昇華速度を経時的に一定に保つために、一次的に増加又は減少されてもよい。
【0075】
代替的には、特に、例えば可撓性箔66(図12を参照)のような単一の基板セグメント70からなる基板50の場合、移動方向64に沿った基板50の移動の一定の速さも可能である。さらに、異なる移動パターン、例えば線形、円形、螺旋状、又は蛇行移動パターンも可能である。好適には、基板50は、少なくとも平均して、基板50と放射平面110との交線に沿って移動する(図13を参照)。
【0076】
以下では、コーティングプロセスのいくつかの例が図3から図12に図示される。これらのコーティングプロセスの全てが、図2に例示される、本発明による装置100と、それぞれの熱蒸発システム200と、において行われる。以下の図3から図10では、それぞれのコーティングプロセスについて必須の要素のみが示されるが、示されていなくても、装置100の他の全ての必要な要素は依然として存在している。
【0077】
図3及び4は、本発明による方法及び/又は装置によって可能になるコーティングプロセスの第1の例を示し、図3においては斜視図で、図4においては側面図でそれぞれ図示されている。したがって、以下では、図3及び図4の両方をそれぞれ一緒に説明する。
【0078】
図3,4には、本発明によって可能になるコーティングプロセスのための基本的な構成要素が図示されている。入射放射ビーム82が、ソース材料40を備えるソース30を照明する。入射放射ビーム82とソース30の表面36の中心34の垂線32とは、前述の入射角84をなす。ソース30の表面36の中心34は、入射放射ビーム82とソース30の表面36との交差エリア92の中心として理解されるべきである。
【0079】
本発明にとって不可欠なことには、コーティング領域58を提供する基板50が、入射放射ビーム82が基板50の後面54に衝突し、その後、基板50を通して照射するように配置される。このために、基板50の基板材料52は、入射放射ビーム82に対して透過性又は少なくとも本質的に透過性である。基板50のこの位置決めは、いくつかの利点を提供する。図3,4に図示される実施形態においては、基板は、放射平面110に対して垂直であるように、及び更には、コーティング領域58の中心の垂線60が、ソース30の表面36の中心34とコーティング領域58の中心62とを結ぶ線に対して平行、特に同一であるように、配置される。
【0080】
まず、基板50自体が透過性又は少なくとも本質的に透過性であるため、ソース30、基板50、及び/又は入射放射ビーム82の空間的配置に関する制約が回避され得るか、又は少なくとも大幅に低減される。
【0081】
そして、蒸発及び/又は昇華したソース材料40が基板50上、主として所望のように基板50の前面56上のコーティング領域58上に堆積される。もっとも、蒸発及び/又は昇華したソース材料40は、入射放射ビーム82の見通し線に沿ってチャンバ窓12(図2を参照)に向かっても移動する。このソース材料40も基板50上に堆積し、したがってチャンバ窓12上へのソース材料40の堆積が阻止され得る。これは、熱蒸発システム200(図2を参照)全体の耐用寿命の大幅な延長をもたらす。
【0082】
加えて、入射放射ビーム82はソース30に向かって集束される。好適には、図3,4に図示されるように、入射放射ビーム82とソース30との交差エリア92は、入射放射ビーム82の焦点もしくは焦点体積88によって又は焦点もしくは焦点体積88の付近に形成される。この結果、入射放射ビーム82と基板50との中間交差エリア94が交差エリア92よりもはるかに大きなエリアをカバーし、したがって、入射放射ビーム50による基板50内へのエネルギ堆積が更に低減され得る。
【0083】
また、入射放射ビーム82は、ソース30の表面36で反射されて反射放射ビーム86になり得る。反射放射ビーム86は、定義上、放射平面110内に含まれ、交差エリア96において基板50と再び交差する。特に、基板50が移動方向64に沿って移動される、図3,4に示されるような実施形態では、基板50は、交差エリア96の領域において少なくともソース材料40によって既にコーティングされる。したがって及び加えて、ほとんどの場合、コーティング領域58内の堆積材料は基板材料52よりも低透過性であるという事実によって、反射放射ビーム86によって基板50上に堆積されるエネルギ及び既に堆積されたソース材料40が、アニーリングプロセスを実施し得る。
【0084】
以下の図5から図12は、図3及び4に示された基本的なコーティングプロセスの変形を図示する。したがって、以下の実施形態に関しては、とりわけ、図3,4に示されるコーティングプロセスとの相違点が説明される。変更されていない要素に関しては、図3及び4の先行する説明が参照される。
【0085】
図5は、本発明によって可能になるコーティングプロセスの第2の実施形態を示す。この実施形態は、図3及び4に図示される実施形態と大部分が同じである又は少なくとも類似しているが、基板が傾斜軸76を中心として傾斜角74だけ傾斜されているという主な相違点を備える。傾斜角74は、コーティング領域58の中心62の垂線60と、ソース30の表面36の中心34とコーティング領域58の中心62とを結ぶ線と、の間になされる。
【0086】
図5において明確に視認できるように、基板50を傾斜させることによって、入射放射ビーム82及び反射放射ビーム86の交差エリア94,96のサイズはそれぞれ変更され得、その一方で同時に、コーティング領域58のサイズは多かれ少なかれ一定に保たれる。
【0087】
図5に示される実施形態において、反射放射ビーム86と基板50との交差エリア96は拡大され、したがって、反射放射ビーム86によって引き起こされる基板50内へのエネルギ堆積及び特に交差エリア96に配置された基板50の前面56上のコーティングが低減される。これは、例えば、アニーリングプロセスを弱めるため又は完全に防止するために適用され得る。代替的な実施形態においては、基板50の逆方向の傾斜も可能であり、その結果、交差エリア96におけるそれぞれのエネルギ堆積の増加がもたらされる。
【0088】
図6及び7はコーティングプロセスの実施形態を示しており、これらの図においては、入射放射ビーム82が、ビーム形状90のうち放射平面110に垂直な延在部分がビーム形状90のうち放射平面110に平行な延在部分よりも大きくなるようにビーム形状90を備える。図示される2つの実施形態はソース30のソース形状42が異なり、図6ではソース形状42は多かれ少なかれ円形であり、図7ではソース形状42も放射平面110に対して垂直に拡大されている。
【0089】
両実施形態においては、入射放射ビーム82はソース20に向かって、したがって図6ではソース表面36の上又は近くの焦点88において、図7ではソース表面36の上又は近くの細長で線形状の焦点体積88において、集束される。よって、両実施形態においては、完全なソース30の、集束された高出力密度の照明が提供され得る。
【0090】
図6の実施形態では、ビーム形状90は、基板50との交差エリア94,96が、同じ断面積を有する円形ビーム形状90によって生じるそれぞれの交差エリア94,96と比較して、放射平面に対して垂直な、より大きな幅をカバーすることを必然的に伴う。したがって、特に反射放射ビーム86の交差エリア96によるコーティングエリア58のカバレッジが改善され得る。
【0091】
前述の利点に加えて、図7に図示されるように同様に放射平面110に対して垂直に拡大されたソース形状42を有するソース30と組み合わせると、入射放射ビーム82によるソース30全体の照明が、前述した放射平面110に垂直なビーム形状90の拡大された延在部分によって保証され得る。したがって、入射放射ビーム82は、コーティング領域58の幅全体にわたる堆積のために、ソース30からソース材料40を蒸発及び/又は昇華させることができる。
【0092】
追加的又は代替的には、図8に示される別の可能な一実施形態において、入射放射ビーム82は、ビーム形状90のうち放射平面110に垂直な延在部分がビーム形状90のうち放射平面110に平行な延在部分よりも小さくなるようにビーム形状90を備える。換言すれば、コーティング領域58の可能な幅のうち小さな一部のみが、入射放射ビーム82及び反射放射ビーム86の交差エリア94,96によってそれぞれカバーされる。例えば太陽電池セルなど多くの適用において、最終的なデバイスは、接触ストライプなどの非活性エリアを有する。前述のビーム形状90を有する入射放射ビーム82を、及びそれによって反射放射ビーム86も提供することによって、交差エリア94,96を、コーティング領域58上に堆積される機能膜によって使用されないこれらの領域に局在化させることが可能である。
【0093】
図9は、本発明によって提供されるコーティングプロセスの更なる一実施形態を示す。上述の実施形態との相違点として、2つの別々の入射放射ビーム82が使用され、その両方が同じソース30上に集束される。これによって、入射放射ビーム82及び反射放射ビーム86の両方の交差エリア94,96のエネルギ密度がそれぞれ低減され得る。例えば基板50内へのエネルギ堆積及び/又はコーティング領域58上に堆積された材料を拡散させるための大きな交差エリア94,96の必要性は、反応チャンバ10内の利用可能な立体角に対する制限と衝突する可能性がある。2つ以上の入射放射ビーム82の使用は、この競合する境界条件に対する解決策を提供することができる。
【0094】
両入射放射ビーム82は独自の放射平面110(図9では明示的に参照されない)を定義する。明確に視認できるように、このジオメトリにおける各放射平面110は、放射平面110内の方向を中心として、搬送方向64に対して及び一般に基板50の細長い形状に対して回転される。この回転角度の値が十分に高く、及び/又はそれぞれの入射放射ビーム82の入射角84(図13を参照)が十分に低いと、反射放射ビーム86の交差エリア96は基板50のエリアの外側に移動され、反射放射ビーム86が基板を外れること及び/又は基板50によってではなく基板50の隣の別個の固定アブソーバ要素24(図示しない)によって吸収されることが可能になり、反射放射ビーム86の、基板50の前面56との、及びそれによってコーティング領域58に堆積されたソース材料40との相互作用が、回避又は強力に低減される。
【0095】
図7に図示されるような線状のソース形状42を備えるソース30を用いて提供可能なものと同様の結果は、図10に示されるように、各々がソース材料40からなる2つ以上の特に分離したソース部38を備えるソース30を用いて提供され得る。図10では、ソース部38の各々が、別々の入射放射ビーム82によって照明されている。もっとも、両ソース部38をカバーする拡大された又は分割された範囲を有する単一の入射放射ビーム82も可能である。このような別々の入射放射ビーム82は、ミラー、ビームスプリッタ、又は同様の光学デバイスによっていくつかの入射放射ビーム82に分割された単一の電磁放射ソース102(図2を参照)に由来することもできる。
【0096】
2つの個々のソース部38の蒸発及び/又は昇華したソース材料40は、コーティング領域58のコーティングのために結合する。したがって、もし両ソース部38が同じソース材料40を備えるのであれば、基板50の前面56上のコーティング領域58上へのソース材料40の堆積は加速され得、及び/又はコーティング領域58のサイズは拡大され得、及び/又はコーティング領域58の形状は変更され得る。特に、とりわけ基板前面56に沿った移動方向64に対して直角の方向における堆積膜厚の均一性が改善され得る。
【0097】
代替的には、ソース部38のソース材料40は異なっていてもよい。上述のように、ソース部38の蒸発及び/又は昇華したソース材料40は、コーティングプロセス中に結合し、共にコーティング領域58上に堆積される。したがって、異なるソース材料40を提供することによって、それらの異なる材料40は共に基板50の前面56上のコーティング領域58上に堆積される。それによって、適用可能であれば反応雰囲気14の反応ガスの原子も備える、異なるソース材料40を備える又はそれらからなる合金及び/もしくは化合物の堆積が提供され得る。
【0098】
特に、1つ以上の蒸発及び/又は昇華した異なるソース材料40の反応は、電磁放射80に関する透過性に関して反応生成物の変化をもたらし得る。好適には、この変化は透過性の増加であり、その結果、基板50上に堆積された反応生成物は、それぞれのソース材料40よりも電磁放射80に対して高透過性になる。このようにして、堆積膜による基板50を透過した電磁放射80の吸収は低減され得、それによって、基板50及び堆積膜を透過した電磁放射80に対して基板50の十分な透過性の領域が連続的に利用可能になるように基板50を移動させる必要性が低減又は回避さえされる。
【0099】
図3から図10に関して上述したように、入射放射ビーム82は、ソース30の表面36で反射されて、基板50の前面56上に戻る反射放射ビーム86になり得る。しかしながら、本発明によって提供されるコーティングプロセスの実施形態のいくつかにおいては、前面56の既にコーティングされた部分への反射放射ビーム86の衝突は逆効果であろう。しかし、図11は、前面56上への電磁放射80の戻り反射を防止するために本発明によって提供される「A」及び「B」で標示された2つの可能な解決策を図示している。図11の上半分に示される解決策「A」は、放射平面110に垂直な傾斜軸76を中心として0°より大きい傾斜角74で、電磁放射80の反射放射ビーム86から遠ざかるようにソース30に対して基板50を傾斜させることに基づく。ここでも、傾斜角74は、コーティング領域76の中心62の垂線60と、ソース30の表面36の中心34とコーティング領域76の中心62とを結ぶ線との間になされる。特に、なされる傾斜角74は、1つ以上の反射放射ビーム86が基板50の前面56を外れるように選択される。基板50のこの配置によって、反射放射ビーム86の前面56への衝突が阻止され得る。それによって、反射放射ビーム86によって引き起こされる基板50のコーティングに対する損傷効果が回避され得る。
【0100】
図11の下半分に解決策「B」として図示されるように、適当に位置決めされたアブソーバ要素24も、基板50の前面56上に衝突する前に反射放射ビーム86を吸収するために使用することができる。このアブソーバ要素24は、反射放射ビーム86の経路内に位置決めされ、したがって反射放射ビーム86を吸収する。それによって、反射放射ビーム86によって引き起こされる基板50のコーティングに対する損傷効果が防止され得る。
【0101】
先の段落において説明された解決策は、特に、空間的制約及び/又は基板50自体の特徴が反射放射ビーム86から遠ざかる基板50の前述の傾斜を阻止する、本発明による方法の実施形態に好適である。もっとも、アブソーバ要素24は、基板50の前述の傾斜に加えて使用されることもできる。
【0102】
図12は、本発明による蒸発システム200の別の可能な一実施形態を図示する。これは図2に示された実施形態といくつかの特徴を共有しており、その対応する上記の説明がここで参照される。具体的には、図12のシステム200も、装置100と、電磁放射ソース102と、反応雰囲気14を充填された反応チャンバ10と、を備える。ソース30を備えるソースアレンジメント16は、追加的に反応雰囲気14を充填された装置100の反応チャンバ10内に配置されている。
【0103】
ここでも、電磁放射ソース102によって提供される電磁放射80、好適にはレーザ光80は、チャンバ窓12を通して反応チャンバ10内に結合され、基板50の前面56上のコーティング領域58をコーティングするべくソース材料40を蒸発及び/又は昇華させるための入射放射ビーム82として使用される。電磁放射80は、ソース30に向かって集束される。
【0104】
主な相違点として、図12のシステム200では、基板50は可撓性箔66として提供される。箔66は、供給ロール202によって提供され、基板ホルダ20のアクチュエータ22によって反応チャンバ10を通って移動され、その途中でコーティング領域58においてコーティングされ、その後、製品ロール204に巻き取られる。可撓性箔66を基板50として提供することは、特に移動方向64に沿って、基板50の寸法を有意に増大させることを可能にする。
【0105】
反応チャンバ10内の、好適には図示されるように円筒形のローラである支持要素26が、箔66を支持し案内する。図示される実施形態においては、供給ロール202は反応チャンバ10の外側に配置され、製品ロール204は反応チャンバ10の内側に配置される。他の実施形態においては、この配置スキームは切り替えられてもよく、又は両ロール202,204が反応チャンバ10の内側又は外側にそれぞれ配置されてもよい。図12に図示されるような、反応チャンバ10の外側にロール202,204のうち少なくとも1つを有する実施形態については、反応チャンバ10のチャンバ壁に、適当なエアロック29が提供される。
【0106】
図示されるように、可撓性箔66は、コーティング領域58においては真っ直ぐに提供され得る。代替的には、コーティング領域58における箔66の屈曲された配置も可能である。また、例えば、能動的に冷却された支持要素26,28、又は、好適には箔66に平行な冷却表面を備える、箔66の近傍に配置された指定冷却要素28によって、箔66の冷却も提供され得る。
【0107】
図示された実施形態においては、基板50、すなわち箔66は、コーティング領域58を離れた直後に支持要素26の周りを移動する。したがって、箔66は、反射放射ビーム86に当たらないように、反射放射ビーム86から遠ざかるように屈曲される。これは、平面基板50の適当な傾斜によって提供される図11の実施形態「A」に関して説明されたのと同じ効果をもたらす。
【0108】
また、追加のアブソーバ要素24も、図12に示されるシステム200の実施形態の一部である。それによって、前面56上に戻る反射放射ビーム82の衝突の防止を更に確実にすることができる。
【0109】
図13は、図2から図12の先行する説明において参照された放射平面110の定義を概略的に示す。入射放射ビーム82とソース30の表面36の垂線32とは、入射角84をなす。したがって、この垂線32と入射放射ビーム82とは、平面、特に放射平面110を張る。図13では、放射平面110と投影平面とは同一である。
【符号の説明】
【0110】
10 反応チャンバ
12 チャンバ窓
14 反応雰囲気
16 ソースアレンジメント
18 基板アレンジメント
20 基板ホルダ
22 アクチュエータ
24 アブソーバ要素
26 支持要素
28 冷却要素
29 エアロック
30 ソース
32 垂線(ソース)
34 中心(ソース)
36 表面
38 ソース部
40 ソース材料
42 ソース形状
50 基板
52 基板材料
54 後面
56 前面
58 コーティング領域
60 垂線(コーティング領域)
62 中心(コーティング領域)
64 移動方向
66 箔
70 基板セグメント
72 基板コネクタ
74 傾斜角
76 傾斜軸
80 電磁放射
82 入射放射ビーム
84 入斜角
86 反射放射ビーム
88 焦点/焦点体積
90 ビーム形状
92 交差エリア(入射放射ビームとソース)
94 交差エリア(入射放射ビームと基板)
96 交差エリア(反射放射ビームと基板)
100 装置
102 電磁放射ソース
110 放射平面
200 システム
202 供給ロール
204 製品ロール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
【国際調査報告】