(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】高速フリーホイールダイオードを集積したトレンチ型SiC-MOSFET及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/12 20060101AFI20240711BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20240711BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240711BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
H01L29/78 652T
H01L29/78 657D
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 658A
H01L27/06 102A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571653
(86)(22)【出願日】2023-04-13
(85)【翻訳文提出日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 CN2023087960
(87)【国際公開番号】W WO2024001422
(87)【国際公開日】2024-01-04
(31)【優先権主張番号】202210755222.9
(32)【優先日】2022-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523197788
【氏名又は名称】成都蓉▲し▼半導体有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】顧 航
(72)【発明者】
【氏名】高 巍
(72)【発明者】
【氏名】戴 茂州
【テーマコード(参考)】
5F048
【Fターム(参考)】
5F048AC10
5F048BA01
5F048BA14
5F048BB05
5F048BB19
5F048BC03
5F048BC12
5F048BD07
5F048BF02
5F048BF06
5F048BF07
(57)【要約】
【課題】高速フリーホイールダイオードを集積したトレンチ型SiC-MOSFET及びその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明は、高速フリーホイールダイオードを集積したトレンチ型SiC-MOSFET及びその製造方法に関するものであり、パワー半導体装置の技術分野に属する。本発明のMOSFETは、トレンチ構造であり、トレンチ底部のコーナー部の電界集中問題を解決するため、MOSFETの近傍にトレンチ型のゲート制御ダイオードを追加し、且つトレンチ底部にも均しくP型埋め込み層を追加することで、相互の電界強度を弱める。なお、ゲート制御ダイオードは、デバイスの元のボディダイオードと並列に接続されているため、ボディダイオードの導通電圧降下を大幅に低下して、逆フリーホイール動作モードでの損失が減少する。また、ゲート制御ダイオードのユニポーラデバイスには、少数キャリア蓄積効果が存在せず、ボディダイオードの逆回復電流を完全に排除できることで、動的損失が低減する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高速フリーホイールダイオードを集積したトレンチ型SiC-MOSFETであって、裏面オーミックコンタクト合金(1)と、N型にドーピングされた炭化ケイ素基板(2)と、N型にドーピングされたSiCエピタキシャル層(3)と、第1のP型にドーピングされた埋め込み層(41)と、第2のP型にドーピングされた埋め込み層(42)と、第3のP型にドーピングされた埋め込み層(43)と、第1のゲート酸化層(51)と、第2のゲート酸化層(52)と、第1のポリシリコン(61)と、第2のポリシリコン(62)と、第1のP型にドーピングされたウェル領域(71)と、第2のP型にドーピングされたウェル領域(72)と、第3のP型にドーピングされたウェル領域(73)と、第1のN型にドーピングされたソース領域(81)と、第2のN型にドーピングされたソース領域(82)と、P型にドーピングされたソース領域(9)と、層間誘電体(10)と、表面オーミックコンタクト合金(11)とを備え、
x軸とy軸によって形成される平面上では、前記N型にドーピングされた炭化ケイ素基板(2)は、前記裏面オーミックコンタクト合金(1)の上に位置し、前記N型にドーピングされたSiCエピタキシャル層(3)は、前記N型にドーピングされた炭化ケイ素基板(2)の上に位置し、前記第2のP型にドーピングされた埋め込み層(42)は、前記N型にドーピングされたSiCエピタキシャル層(3)の右上に位置し、前記第3のP型にドーピングされた埋め込み層(43)は、前記N型にドーピングされたSiCエピタキシャル層(3)の左上に位置し、前記第1のゲート酸化層(51)は、前記第2のP型にドーピングされた埋め込み層(42)の上に位置し、前記第2のゲート酸化層(52)は、前記第3のP型にドーピングされた埋め込み層(43)の上に位置し、前記第1のポリシリコン(61)は、前記第1のゲート酸化層(51)の右上に位置し、前記第2のポリシリコン(62)は、前記第2のゲート酸化層(52)の左上に位置し、前記第1のN型にドーピングされたソース領域(81)は、前記第1のゲート酸化層(51)の左上に位置し、前記P型にドーピングされたソース領域(9)は、前記第1のN型にドーピングされたソース領域(81)の左側に位置し、前記第2のN型にドーピングされたソース領域(82)は、前記P型にドーピングされたソース領域(9)の左側に位置し、且つ第2のゲート酸化層(52)の右側に接続され、前記第1のP型にドーピングされたウェル領域(71)は、前記第1のN型にドーピングされたソース領域(81)の下に位置し、且つ前記第1のゲート酸化層(51)の左側にあり、前記第2のP型にドーピングされたウェル領域(72)は、前記第1のN型にドーピングされたソース領域(81)、P型にドーピングされたソース領域(9)及び第2のN型にドーピングされたソース領域(82)の下に位置し、且つ前記第1のN型にドーピングされたソース領域71の左側にあり、前記第3のP型にドーピングされたウェル領域(73)は、前記第2のN型にドーピングされたソース領域(82)の下に位置し、且つ前記第2のP型にドーピングされたウェル領域(72)の左側にあり、前記層間誘電体(10)は、前記第1のN型にドーピングされたソース領域(81)、第1のゲート酸化層(51)、第1のポリシリコン(61)の上に位置し、前記表面オーミックコンタクト合金(11)は、前記層間誘電体(10)、第1のN型にドーピングされたソース領域(81)、P型にドーピングされたソース領域(9)、第2のN型にドーピングされたソース領域(82)、第2のゲート酸化層(52)、第2のポリシリコン(62)の上に位置し、
y軸とz軸によって形成される平面上では、前記N型にドーピングされた炭化ケイ素基板(2)は、前記裏面オーミックコンタクト合金(1)の上に位置し、前記N型にドーピングされたSiCエピタキシャル層(3)は、前記N型にドーピングされた炭化ケイ素基板(2)の上に位置し、前記第1のP型にドーピングされた埋め込み層(41)は、前記N型にドーピングされたSiCエピタキシャル層(3)内部の右上に位置し、前記第2のP型にドーピングされた埋め込み層(42)は、前記N型にドーピングされたSiCエピタキシャル層(3)内部の左上に位置し、前記第1のゲート酸化層(51)は、位記第1のP型にドーピングされた埋め込み層(41)、N型にドーピングされたSiCエピタキシャル層(3)、第2のP型にドーピングされた埋め込み層(42)の上に位置し、前記第1のポリシリコン(61)、前記第1のゲート酸化層(51)の上に位置し、前記層間誘電体(10)は、前記第1のポリシリコン(61)の上に位置し、前記表面オーミックコンタクト合金(11)は、前記層間誘電体(10)の上に位置する
ことを特徴とする、高速フリーホイールダイオードを集積したトレンチ型SiC-MOSFET。
【請求項2】
前記N型にドーピングされたSiCエピタキシャル層(3)のドーピング濃度範囲は、1E15cm
-3~1E17cm
-3であることを特徴とする、請求項1に記載の高速フリーホイールダイオードを集積したトレンチ型SiC-MOSFET。
【請求項3】
前記第1のP型にドーピングされたウェル領域(71)は、Alイオン注入時の横方向散乱によって形成され、濃度はX軸の負の方向に沿って徐々に減少し、第1のP型にドーピングされたウェル領域(71)の前記第1のゲート酸化層(51)に近い箇所の濃度範囲は1E14cm
-3~1E16cm
-3であることを特徴とする、請求項1に記載の高速フリーホイールダイオードを集積したトレンチ型SiC-MOSFET。
【請求項4】
前記第3のP型にドーピングされたウェル領域(73)は、Alイオン注入時の横方向散乱によって形成され、濃度はX軸の正の方向に沿って徐々に減少し、第3のP型にドーピングされたウェル領域(73)の前記第2のゲート酸化層(52)に近い箇所の濃度範囲は0~1E15cm
-3であることを特徴とする、請求項1に記載の高速フリーホイールダイオードを集積したトレンチ型SiC-MOSFET。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の高速フリーホイールダイオードを集積したトレンチ型SiC-MOSFETの製造方法であって、
N型炭化ケイ素エピタキシャルウェーハ上に酸化物層を堆積し、フォトリソグラフィ後、イオン注入のPウェルイオン注入マスク層(101)を形成し、次に300K~1000Kの温度でAlイオン注入を実施して第2のP型にドーピングされたウェル領域(72)を形成し、同時に炭化珪素へのAlイオン注入により横方向散乱が生じるため、前記第2のP型にドーピングされたウェル領域(72)の左右両側に横方向濃度勾配を有するP型ドーピング散乱領域(それぞれが第1のP型にドーピングされたウェル領域(71)及び第3のP型にドーピングされたウェル領域(73))が同時に形成され、注入が完了した後、マスク層を除去し、表面洗浄を完了させる工程1と、
酸化物層を堆積し、フォトリソグラフィ後にイオン注入されたN型ソース領域イオン注入マスク層(102)を形成し、次に300K~1000Kの温度でPイオン注入を実施して第1のN型にドーピングされたソース領域(81)及び第2のN型にドーピングされたソース領域(82)を形成し、注入が完了した後、マスク層を除去し、表面洗浄を完了させる工程2と、
酸化物層を堆積し、フォトリソグラフィ後にイオン注入されたP型ソース領域イオン注入マスク層(103)を形成し、次に300K~1000Kの温度でAlイオン注入を実施してP型にドーピングされたソース領域(9)を形成し、注入が完了した後、マスク層を除去し、表面洗浄を完了させる工程3と、
酸化物層を堆積し、フォトリソグラフィ後にトレンチエッチングバリア層(104)を形成し、次にN型にドーピングされたSiCエピタキシャル層(3)で反応性イオンエッチングを実行してトレンチを形成する工程4と、
300K~1000Kの高温でAlイオン注入を実施して、トレンチ底部に第2のP型にドーピングされた埋め込み層(42)及び第3のP型にドーピングされた埋め込み層(43)を形成し、注入が完了した後、トレンチエッチングバリア層(104)を除去する工程5と、
カーボンキャップを覆い、1600℃以上の高温でアニールし、注入された不純物を活性化し、熱酸化して第1のゲート酸化層(51)及び第2のゲート酸化層(52)を形成し、次にポリシリコンを堆積した後にエッチングして第1のポリシリコン(61)及び第2のポリシリコン(62)を形成する工程6と、
酸化物層を堆積した後にフォトリソグラフィして層間誘電体(10)を形成する工程7と、
Ni合金を堆積した後にアニールして金属シリサイドを形成し、次に表面にAlを堆積してソース金属を形成し、デバイスの裏面をスパッタしてNi合金を形成した後にアニールして裏面オーミックコンタクト合金(1)を形成する工程8と、
を含むことを特徴とする、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワー半導体装置の技術分野に関し、特に、高速フリーホイールダイオードを集積したトレンチ型SiC-MOSFET及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイドバンドギャップ半導体材料であるSiCは、高電圧パワーエレクトロニクスデバイスの作製に最適な材料であり、Si材料と比較しても高い破壊電界強度(4×106V/cm)と高いキャリア飽和ドリフト速度(2×107cm/s)、高い熱伝導率、優れた熱安定性などの利点を備えているため、高出力、高電圧、高温、及び耐放射線性の電子機器での使用に特に適している。
【0003】
SiC VDMOSは、SiCパワーデバイスの中でもよく使われるデバイスで、バイポーラデバイスと比べて電荷蓄積効果がないため、より良好な周波数特性及びより低いスイッチング損失を有する。かつSiC材料のバンドギャップが広いため、SiC VDMOSの動作温度は300℃にも達すことができる。
【0004】
ただし、プレーナ型SiC VDMOSには2つの問題があり。1つ目は、JFET領域の密度が比較的大きいため、ミラー容量が大きくなり、デバイスの動的損失が増加することである。2つ目は、寄生SiCボディダイオードの導通電圧降下が高すぎ、逆回復電流が大きいバイポーラデバイスであること。また炭化ケイ素BPD欠陥で引き起こすバイポーラ劣化現象により該ボディダイオードの導通電圧降下は時間の経過とともに増加し続けるため、SiC VDMOSのボディダイオードをフリーホイールダイオードとして直接使用することはできない。
【0005】
この2つの問題を解決するため、本発明は、高速フリーホイールダイオードを集積したトレンチ型SiC-MOSFETを提案する。本発明のMOSFETは、トレンチ構造で、トレンチMOSFETのポリシリコン底部ゲート酸化層が比較的厚く、本設計内においてトレンチの底部にP型にドーピングされた埋め込み層が追加されることで、プレーナ型VDMOSと比較して、ミラー容量を大幅に低減でき、スイッチング損失も低減できる。トレンチ底部のコーナー部の電界集中問題を解決するため、MOSFETの近傍にトレンチ型のゲート制御ダイオードを追加し、且つトレンチ底部にも均しくP型埋め込み層を追加することで、相互の電界強度を弱める。なお、ゲート制御ダイオードは、デバイスの元のボディダイオードと並列に接続されているため、ボディダイオードの導通電圧降下を大幅に低下して、逆フリーホイール動作モードでの損失が減少する。また、ゲート制御ダイオードのユニポーラデバイスには、少数キャリア蓄積効果が存在せず、ボディダイオードの逆回復電流を完全に排除できることで、動的損失が低減する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術に存在する問題に着目し、炭化ケイ素パワー半導体の高周波スイッチングの使用ニーズについて、高速フリーホイールダイオードを集積したトレンチ型SiC-MOSFET及びその製造方法を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術的課題を解決するため、本発明は、次のような技術的手段を採用する。
【0008】
高速フリーホイールダイオードを集積したトレンチ型SiC-MOSFETであって、裏面オーミックコンタクト合金1と、N型にドーピングされた炭化ケイ素基板2と、N型にドーピングされたSiCエピタキシャル層3と、第1のP型にドーピングされた埋め込み層41と、第2のP型にドーピングされた埋め込み層42と、第3のP型にドーピングされた埋め込み層43と、第1のゲート酸化層51と、第2のゲート酸化層52と、第1のポリシリコン61と、第2のポリシリコン62と、第1のP型にドーピングされたウェル領域71と、第2のP型にドーピングされたウェル領域72と、第3のP型にドーピングされたウェル領域73と、第1のN型にドーピングされたソース領域81と、第2のN型にドーピングされたソース領域82と、P型にドーピングされたソース領域9と、層間誘電体10と、表面オーミックコンタクト合金11とを備え、
x軸とy軸によって形成される平面上では、前記N型にドーピングされた炭化ケイ素基板2は、前記裏面オーミックコンタクト合金1の上に位置し、前記N型にドーピングされたSiCエピタキシャル層3は、前記N型にドーピングされた炭化ケイ素基板2の上に位置し、前記第2のP型にドーピングされた埋め込み層42は、前記N型にドーピングされたSiCエピタキシャル層3の右上に位置し、前記第3のP型にドーピングされた埋め込み層43は、前記N型にドーピングされたSiCエピタキシャル層3の左上に位置し、前記第1のゲート酸化層51は、前記第2のP型にドーピングされた埋め込み層42の上に位置し、前記第2のゲート酸化層52は、前記第3のP型にドーピングされた埋め込み層43の上に位置し、前記第1のポリシリコン61は、前記第1のゲート酸化層51の右上に位置し、前記第2のポリシリコン62は、前記第2のゲート酸化層52の左上に位置し、前記第1のN型にドーピングされたソース領域81は、前記第1のゲート酸化層51の左上に位置し、前記P型にドーピングされたソース領域9は、前記第1のN型にドーピングされたソース領域81の左側に位置し、前記第2のN型にドーピングされたソース領域82は、前記P型にドーピングされたソース領域9の左側に位置し、且つ第2のゲート酸化層52の右側に接続され、前記第1のP型にドーピングされたウェル領域71は、前記第1のN型にドーピングされたソース領域81の下に位置し、且つ前記第1のゲート酸化層51の左側にあり、前記第2のP型にドーピングされたウェル領域72は、前記第1のN型にドーピングされたソース領域81、P型にドーピングされたソース領域9及び第2のN型にドーピングされたソース領域82の下に位置し、且つ前記第1のN型にドーピングされたソース領域71の左側にあり、前記第3のP型にドーピングされたウェル領域73は、前記第2のN型にドーピングされたソース領域82の下に位置し、且つ前記第2のP型にドーピングされたウェル領域72の左側にあり、前記層間誘電体10は、前記第1のN型にドーピングされたソース領域81、第1のゲート酸化層51、第1のポリシリコン61の上に位置し、前記表面オーミックコンタクト合金11は、前記層間誘電体10、第1のN型にドーピングされたソース領域81、P型にドーピングされたソース領域9、第2のN型にドーピングされたソース領域82、第2のゲート酸化層52、第2のポリシリコン62の上に位置し、
y軸とz軸によって形成される平面上では、前記N型にドーピングされた炭化ケイ素基板2は、前記裏面オーミックコンタクト合金1の上に位置し、前記N型にドーピングされたSiCエピタキシャル層3は、前記N型にドーピングされた炭化ケイ素基板2の上に位置し、前記第1のP型にドーピングされた埋め込み層41は、前記N型にドーピングされたSiCエピタキシャル層3内部の右上に位置し、前記第2のP型にドーピングされた埋め込み層42は、前記N型にドーピングされたSiCエピタキシャル層3内部の左上に位置し、前記第1のゲート酸化層51は、位記第1のP型にドーピングされた埋め込み層41、N型にドーピングされたSiCエピタキシャル層3、第2のP型にドーピングされた埋め込み層42の上に位置し、前記第1のポリシリコン61、前記第1のゲート酸化層51の上に位置し、前記層間誘電体10は、前記第1のポリシリコン61の上に位置し、前記第表面オーミックコンタクト合金11は、前記層間誘電体10の上に位置する。
【0009】
好ましい形態として、前記N型にドーピングされたSiCエピタキシャル層3のドーピング濃度範囲は、1E15cm-3~1E17cm-3であり、
好ましい形態として、前記第1のP型にドーピングされたウェル領域71は、Alイオン注入時の横方向散乱によって形成され、濃度はX軸の負の方向に沿って徐々に減少し、第1のP型にドーピングされたウェル領域71の前記第1のゲート酸化層51に近い箇所の濃度範囲は1E14cm-3~1E16cm-3である。
【0010】
好ましい形態として、前記第3のP型にドーピングされたウェル領域73は、Alイオン注入時の横方向散乱によって形成され、濃度はX軸の正の方向に沿って徐々に減少し、第3のP型にドーピングされたウェル領域73の前記第2のゲート酸化層52に近い箇所の濃度範囲は0~1E15cm-3である。
【0011】
高速フリーホイールダイオードを集積したトレンチ型SiC-MOSFETの製造方法であって、
N型炭化ケイ素エピタキシャルウェーハ上に酸化物層を堆積し、フォトリソグラフィ後、イオン注入のPウェルイオン注入マスク層101を形成し、次に300K~1000Kの温度でAlイオン注入を実施して第2のP型にドーピングされたウェル領域72を形成し、同時に炭化珪素へのAlイオン注入により横方向散乱が生じるため、前記第2のP型にドーピングされたウェル領域72の左右両側に横方向濃度勾配を有するP型ドーピング散乱領域(それぞれが第1のP型にドーピングされたウェル領域71及び第3のP型にドーピングされたウェル領域73)が同時に形成され、注入が完了した後、マスク層を除去し、表面洗浄を完了させる工程1と、
酸化物層を堆積し、フォトリソグラフィ後にイオン注入されたN型ソース領域イオン注入マスク層102を形成し、次に300K~1000Kの温度でPイオン注入を実施して第1のN型にドーピングされたソース領域81及び第2のN型にドーピングされたソース領域82を形成し、注入が完了した後、マスク層を除去し、表面洗浄を完了させる工程2と、
酸化物層を堆積し、フォトリソグラフィ後にイオン注入されたP型ソース領域イオン注入マスク層103を形成し、次に300K~1000Kの温度でAlイオン注入を実施してP型にドーピングされたソース領域9を形成し、注入が完了した後、マスク層を除去し、表面洗浄を完了させる工程3と、
酸化物層を堆積し、フォトリソグラフィ後にトレンチエッチングバリア層104を形成し、次にN型にドーピングされたSiCエピタキシャル層3で反応性イオンエッチングを実行してトレンチを形成する工程4と、
300K~1000Kの高温でAlイオン注入を実施して、トレンチ底部に第2のP型にドーピングされた埋め込み層42及び第3のP型にドーピングされた埋め込み層43を形成し、注入が完了した後、トレンチエッチングバリア層104を除去する工程5と、
カーボンキャップを覆い、1600℃以上の高温でアニールし、注入された不純物を活性化し、熱酸化して第1のゲート酸化層51及び第2のゲート酸化層52を形成し、次にポリシリコンを堆積した後にエッチングして第1のポリシリコン61及び第2のポリシリコン62を形成する工程6と、
酸化物層を堆積した後にフォトリソグラフィして層間誘電体10を形成する工程7と、
Ni合金を堆積した後にアニールして金属シリサイドを形成し、次に表面にAlを堆積してソース金属を形成し、デバイスの裏面をスパッタしてNi合金を形成した後にアニールして裏面オーミックコンタクト合金1を形成する工程8と、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
従来技術と比較して、本発明の有利な効果としては、
本発明は、トレンチ+P型埋め込み層の構造を採用することで、デバイスのミラー容量が大幅に減少されるため、スイッチング損失が低減される。また、P型埋め込み層の追加によりトレンチ底部及びコーナー部の電界集中が弱まり、デバイスの長期信頼性が向上し、
本発明は、トレンチ構造を有するゲート制御ダイオードをモノリシックに集積し、そのトレンチが追加の製造プロセスを必要せずにMOSFETのトレンチと同時に形成される。該ゲート制御ダイオードは、MOSFETダイオード接続方法に基づく整流器であり、従来のMOSFETのボディダイオードに比較すると、該整流器は導通電圧降下、ユニポーラ導通(逆回復電流なし、バイポーラ劣化なし)の利点を有し、この整流器はMOSFETのフリーホイールダイオードとして使用することができ、動的損失を大幅に低減する。なお、ゲート制御ダイオードの追加によりMOSFETのトレンチ底部及びコーナー部の電界強度も弱まることで、デバイスの長期信頼性が向上し、
本発明は、Alイオン注入時の散乱効果を利用して、MOSFET及びゲート制御ダイオードのチャネルを形成することで、P型ウェル領域の総電荷量を確保しながら、デバイスのチャネル領域のドーピング濃度を低減することができる。MOSFETの場合、トレンチとP型にドーピングされたウェル領域の相対位置を制御してチャネル領域のドーピング濃度を制御することで、しきい値電圧を正確に制御できる。ゲート制御ダイオードの場合、トレンチとP型にドーピングされたウェル領域の相対位置を制御してチャネル領域のドーピング濃度を制御することで、ゲート制御ダイオードの導通電圧降下を調整できる。
【0013】
ハーフブリッジ又はフルブリッジなどの応用では、SiC MOSFETは通常、フリーホイーリングのため、逆並列SiCショットキーダイオードを必要とする。本発明を採用すると、追加のフリーホイーリングダイオードの並列接続を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の高速フリーホイールダイオードを集積したトレンチ型SiC-MOSFETの概略構成図である。
【
図2】本発明の実施例2に係る工程1におけるP型にドーピングされたウェル領域へのイオン注入を示す概略図である。
【
図3】本発明の実施例2に係る工程2におけるN型にドーピングされたソース領域へのイオン注入を示す概略図である。
【
図4】本発明の実施例2に係る工程3におけるP型にドーピングされたソース領域へのイオン注入を示す概略図である。
【
図5】本発明の実施例2に係る工程4におけるトレンチエッチングを示す概略図である。
【
図6】本発明の実施例2に係る工程5におけるP型にドーピングされた埋め込み層へのイオン注入を示す概略図である。
【
図7】本発明の実施例2に係る工程6におけるゲート酸化層の形成及びポリシリコン充填・エッチングを示す概略図である。
【
図8】本発明の実施例2に係る工程7におけるフォトリソグラフィによる層間誘電体の形成を示す概略図である。
【
図9】本発明の実施例2に係る工程8における表面オーミックコンタクト合金と裏面金属の形成を示す概略図である。
【
図10】本発明の実施例1に係る順方向導通時の高速フリーホイールダイオードを集積したトレンチ型SiC-MOSFETの概略等価回路図である。
【
図11】本発明の実施例1に係る逆フリーホイール時の高速フリーホイールダイオードを集積したトレンチ型SiC-MOSFETの概略等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の原理及び特徴を説明するが、挙げる実施例は本発明を解釈することだけに使われており、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0016】
図1に示すように、本実施例は、裏面オーミックコンタクト合金1と、N型にドーピングされた炭化ケイ素基板2と、N型にドーピングされたSiCエピタキシャル層3と、第1のP型にドーピングされた埋め込み層41と、第2のP型にドーピングされた埋め込み層42と、第3のP型にドーピングされた埋め込み層43と、第1のゲート酸化層51と、第2のゲート酸化層52と、第1のポリシリコン61と、第2のポリシリコン62と、第1のP型にドーピングされたウェル領域71と、第2のP型にドーピングされたウェル領域72と、第3のP型にドーピングされたウェル領域73と、第1のN型にドーピングされたソース領域81と、第2のN型にドーピングされたソース領域82と、P型にドーピングされたソース領域9と、層間誘電体10と、表面オーミックコンタクト合金11とを備えた高速フリーホイールダイオードを集積したトレンチ型SiC-MOSFETを提供し、
x軸とy軸によって形成される平面上では、前記N型にドーピングされた炭化ケイ素基板2は、前記裏面オーミックコンタクト合金1の上に位置し、前記N型にドーピングされたSiCエピタキシャル層3は、前記N型にドーピングされた炭化ケイ素基板2の上に位置し、前記第2のP型にドーピングされた埋め込み層42は、前記N型にドーピングされたSiCエピタキシャル層3の右上に位置し、前記第3のP型にドーピングされた埋め込み層43は、前記N型にドーピングされたSiCエピタキシャル層3の左上に位置し、前記第1のゲート酸化層51は、前記第2のP型にドーピングされた埋め込み層42の上に位置し、前記第2のゲート酸化層52は、前記第3のP型にドーピングされた埋め込み層43の上に位置し、前記第1のポリシリコン61は、前記第1のゲート酸化層51の右上に位置し、前記第2のポリシリコン62は、前記第2のゲート酸化層52の左上に位置し、前記第1のN型にドーピングされたソース領域81は、前記第1のゲート酸化層51の左上に位置し、前記P型にドーピングされたソース領域9は、前記第1のN型にドーピングされたソース領域81の左側に位置し、前記第2のN型にドーピングされたソース領域82は、前記P型にドーピングされたソース領域9の左側に位置し、且つ第2のゲート酸化層52の右側に接続され、前記第1のP型にドーピングされたウェル領域71は、前記第1のN型にドーピングされたソース領域81の下に位置し、且つ前記第1のゲート酸化層51の左側にあり、前記第2のP型にドーピングされたウェル領域72は、前記第1のN型にドーピングされたソース領域81、P型にドーピングされたソース領域9及び第2のN型にドーピングされたソース領域82の下に位置し、且つ前記第1のN型にドーピングされたソース領域71の左側にあり、前記第3のP型にドーピングされたウェル領域73は、前記第2のN型にドーピングされたソース領域82の下に位置し、且つ前記第2のP型にドーピングされたウェル領域72の左側にあり、前記層間誘電体10は、前記第1のN型にドーピングされたソース領域81、第1のゲート酸化層51、第1のポリシリコン61の上に位置し、前記表面オーミックコンタクト合金11は、前記層間誘電体10、第1のN型にドーピングされたソース領域81、P型にドーピングされたソース領域9、第2のN型にドーピングされたソース領域82、第2のゲート酸化層52、第2のポリシリコン62の上に位置し、
y軸とz軸によって形成される平面上では、前記N型にドーピングされた炭化ケイ素基板2は、前記裏面オーミックコンタクト合金1の上に位置し、前記N型にドーピングされたSiCエピタキシャル層3は、前記N型にドーピングされた炭化ケイ素基板2の上に位置し、前記第1のP型にドーピングされた埋め込み層41は、前記N型にドーピングされたSiCエピタキシャル層3内部の右上に位置し、前記第2のP型にドーピングされた埋め込み層42は、前記N型にドーピングされたSiCエピタキシャル層3内部の左上に位置し、前記第1のゲート酸化層51は、位記第1のP型にドーピングされた埋め込み層41、N型にドーピングされたSiCエピタキシャル層3、第2のP型にドーピングされた埋め込み層42の上に位置し、前記第1のポリシリコン61、前記第1のゲート酸化層51の上に位置し、前記層間誘電体10は、前記第1のポリシリコン61の上に位置し、前記第表面オーミックコンタクト合金11は、前記層間誘電体10の上に位置する。
【0017】
前記N型にドーピングされたSiCエピタキシャル層3のドーピング濃度範囲は、1E15cm-3~1E17cm-3であり、
前記第1のP型にドーピングされたウェル領域71は、Alイオン注入時の横方向散乱によって形成され、濃度はX軸の負の方向に沿って徐々に減少し、第1のP型にドーピングされたウェル領域71の前記第1のゲート酸化層51に近い箇所の濃度範囲は1E14cm-3~1E16cm-3であった。
【0018】
前記第3のP型にドーピングされたウェル領域73は、Alイオン注入時の横方向散乱によって形成され、濃度はX軸の正の方向に沿って徐々に減少し、第3のP型にドーピングされたウェル領域73の前記第2のゲート酸化層52に近い箇所の濃度範囲は0~1E15cm-3であった。
【0019】
本発明的高速フリーホイールダイオードを集積したトレンチ型SiC-MOSFETは、デバイスが正常に動作している時、右側のMOSFET領域のゲートに順バイアス電圧が印加され、チャネルが開き、電界の作用により電子がソースからドレインに流れ、
図10に示すようにドレインからソースへの電流電流I
dsが形成され、
図10は本発明の実施例1に係る順方向導通時の高速フリーホイールダイオードを集積したトレンチ型SiC-MOSFETの概略等価回路図である。デバイスがオフになり、第3の象限動作状態に入った時、ソースからドレインへの正の電位差によりダイオード領域を導通させ、
図11に示すように、ソースからドレインへの電流I
sdが形成され、
図11は本発明の実施例1に係る逆フリーホイール時の高速フリーホイールダイオードを集積したトレンチ型SiC-MOSFETの概略等価回路図である。
【実施例2】
【0020】
図2~
図9に示すように、本実施例は、以下の工程を含む高速フリーホイールダイオードを集積したトレンチ型SiC-MOSFETの製造方法を提供する。
【0021】
工程1:N型炭化ケイ素エピタキシャルウェーハ上に酸化物層を堆積し、フォトリソグラフィ後、イオン注入のPウェルイオン注入マスク層101を形成し、次に300K~1000Kの温度でAlイオン注入を実施して第2のP型にドーピングされたウェル領域72を形成し、同時に炭化珪素へのAlイオン注入により横方向散乱が生じるため、前記第2のP型にドーピングされたウェル領域72の左右両側に横方向濃度勾配を有するP型ドーピング散乱領域(それぞれが第1のP型にドーピングされたウェル領域71及び第3のP型にドーピングされたウェル領域73)が同時に形成され、
図2に示すような構造を得た。注入が完了した後、マスク層を除去し、表面洗浄を完了させ、
工程2:酸化物層を堆積し、フォトリソグラフィ後にイオン注入されたN型ソース領域イオン注入マスク層102を形成し、次に300K~1000Kの温度でPイオン注入を実施して第1のN型にドーピングされたソース領域81及び第2のN型にドーピングされたソース領域82を形成し、
図3に示すような構造を得た。注入が完了した後、マスク層を除去し、表面洗浄を完了させ、
工程3:酸化物層を堆積し、フォトリソグラフィ後にイオン注入されたP型ソース領域イオン注入マスク層103を形成し、次に300K~1000Kの温度でAlイオン注入を実施してP型にドーピングされたソース領域9を形成し、
図4に示すような構造を得た。注入が完了した後、マスク層を除去し、表面洗浄を完了させ、
工程4:酸化物層を堆積し、フォトリソグラフィ後にトレンチエッチングバリア層104を形成し、次にN型にドーピングされたSiCエピタキシャル層3で反応性イオンエッチングを実行してトレンチを形成し、
図5に示すような構造を得、
工程5:300K~1000Kの高温でAlイオン注入を実施して、トレンチ底部に第2のP型にドーピングされた埋め込み層42及び第3のP型にドーピングされた埋め込み層43を形成し、
図2に示すような構造を得た。注入が完了した後、トレンチエッチングバリア層104を除去し、
工程6:カーボンキャップを覆い、1600℃以上の高温でアニールし、注入された不純物を活性化し、熱酸化して第1のゲート酸化層51及び第2のゲート酸化層52を形成し、次にポリシリコンを堆積した後にエッチングして第1のポリシリコン61及び第2のポリシリコン62を形成し、
図7に示すような構造を得、
工程7:酸化物層を堆積した後にフォトリソグラフィして層間誘電体10を形成し、
図8に示すような構造を得、
工程8:Ni合金を堆積した後にアニールして金属シリサイドを形成し、次に表面にAlを堆積してソース金属を形成し、デバイスの裏面をスパッタしてNi合金を形成した後にアニールして裏面オーミックコンタクト合金1を形成する。
図9に示すような構造を得た。
【符号の説明】
【0022】
10 層間誘電体
101 Pウェルイオン注入マスク層
102 N型ソース領域イオン注入マスク層
103 P型ソース領域イオン注入マスク層
104 トレンチエッチングバリア層
1 裏面オーミックコンタクト合金
11 表面オーミックコンタクト合金
2 N型にドーピングされた炭化ケイ素基板
3 N型にドーピングされたSiCエピタキシャル層
41 第1のP型にドーピングされた埋め込み層
42 第2のP型にドーピングされた埋め込み層
43 第3のP型にドーピングされた埋め込み層
51 第1のゲート酸化層
52 第2のゲート酸化層
61 第1のポリシリコン
62 第2のポリシリコン
71 第1のP型にドーピングされたウェル領域
72 第2のP型にドーピングされたウェル領域
73 第3のP型にドーピングされたウェル領域
81 第1のN型にドーピングされたソース領域
82 第2のN型にドーピングされたソース領域
9 P型にドーピングされたソース領域
【国際調査報告】