(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】エアロゾル発生デバイス及びエアロゾル発生システム
(51)【国際特許分類】
A24F 40/465 20200101AFI20240711BHJP
A24F 40/20 20200101ALI20240711BHJP
H05B 6/10 20060101ALI20240711BHJP
H05B 6/44 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
A24F40/465
A24F40/20
H05B6/10 371
H05B6/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572946
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(85)【翻訳文提出日】2023-12-28
(86)【国際出願番号】 EP2022068580
(87)【国際公開番号】W WO2023001544
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516004949
【氏名又は名称】ジェイティー インターナショナル エスエイ
【住所又は居所原語表記】8,rue Kazem Radjavi,1202 Geneva,SWITZERLAND
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア ガルシア, エドゥアルド ホセ
【テーマコード(参考)】
3K059
4B162
【Fターム(参考)】
3K059AA08
3K059AB23
3K059AD12
4B162AA03
4B162AA22
4B162AB12
4B162AC22
(57)【要約】
エアロゾル発生デバイス(10)は、コントローラ(24)と、エアロゾル発生基材(102)を加熱して、吸入されるエアロゾルを発生させるように構成された誘導加熱装置(46)とを含む。誘導加熱装置(46)は、少なくとも複数の第1のコイルストランド(62)及び複数の第2のコイルストランド(64)を含む誘導コイル(48)を含み、及びコントローラ(24)は、誘導加熱装置(46)を制御して、複数の第1のコイルストランド(62)に交流電流を供給して、第1の周波数を有する第1の電磁場を発生させ、且つ複数の第2のコイルストランド(64)に交流電流を供給して、第1の周波数と異なる第2の周波数を有する第2の電磁場を発生させるように構成される。エアロゾル発生デバイス(10)と、エアロゾル発生基材(102)とを含むエアロゾル発生システム1も記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生デバイス(10)であって、
コントローラ(24)と、
エアロゾル発生基材(102)を加熱して、吸入されるエアロゾルを発生させるように構成された誘導加熱装置(46)であって、少なくとも複数の第1のコイルストランド(62)及び複数の第2のコイルストランド(64)を含む誘導コイル(48)を含む誘導加熱装置(46)と、を含み、
前記コントローラ(24)は、前記誘導加熱装置(46)を制御して、前記複数の第1のコイルストランド(62)に交流電流を供給して、第1の周波数を有する第1の電磁場を発生させ、且つ前記複数の第2のコイルストランド(64)に交流電流を供給して、前記第1の周波数と異なる第2の周波数を有する第2の電磁場を発生させるように構成される、エアロゾル発生デバイス(10)。
【請求項2】
前記誘導コイル(48)は、前記複数の第1のコイルストランド(62)が配置される第1のコイル部分(58)と、前記複数の第2のコイルストランド(64)が配置される第2のコイル部分(60)とを含む、請求項1に記載のエアロゾル発生デバイス。
【請求項3】
前記誘導コイル(48)は、断面コイル外被(56)を画定する周縁部(54)を含み、且つ前記第1及び第2のコイル部分(58、60)は、前記断面コイル外被(56)内に配置される、請求項2に記載のエアロゾル発生デバイス。
【請求項4】
前記第1及び第2のコイル部分(58、60)は、互いに電気的に絶縁される、請求項2又は3に記載のエアロゾル発生デバイス。
【請求項5】
前記複数の第1のコイルストランド(62)は、第1の断面を有し、及び前記複数の第2のコイルストランド(64)は、前記第1の断面と異なる第2の断面を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のエアロゾル発生デバイス。
【請求項6】
前記複数の第1のコイルストランド(62)と、前記複数の第2のコイルストランド(64)とは、断面形状及び断面積の1つ又は複数において互いに異なる、請求項5に記載のエアロゾル発生デバイス。
【請求項7】
前記コントローラ(24)は、前記複数の第1のコイルストランド(62)及び前記複数の第2のコイルストランド(64)に前記交流電流を順次供給して、前記第1及び第2の電磁場を順次発生させるように構成される、請求項1~6のいずれか一項に記載のエアロゾル発生デバイス。
【請求項8】
前記コントローラ(24)は、第1の期間にわたり、前記複数の第1のコイルストランド(62)に前記交流電流を供給して、前記第1の期間にわたって前記第1の電磁場を発生させ、且つその後、前記第1の期間に続く第2の期間にわたり、前記複数の第2のコイルストランド(64)に前記交流電流を供給して、前記第2の期間にわたって前記第2の電磁場を発生させるように構成される、請求項1~7のいずれか一項に記載のエアロゾル発生デバイス。
【請求項9】
エアロゾル発生基材(102)の少なくとも一部を受け入れるための加熱ゾーン(19)を画定する加熱チャンバ(18)を含み、及び前記誘導コイル(48)は、前記加熱ゾーン(19)内に前記第1及び第2の電磁場を発生させるために、前記加熱チャンバ(18)に隣接して配置される、請求項1~8のいずれか一項に記載のエアロゾル発生デバイス。
【請求項10】
前記第1の電磁場は、第1の共振周波数を有する第1の誘導加熱可能なサセプタ(40)を加熱するように適合され、及び前記第2の電磁場は、前記第1の共振周波数と異なる第2の共振周波数を有する第2の誘導加熱可能なサセプタ(42)を加熱するように適合される、請求項1~9のいずれか一項に記載のエアロゾル発生デバイス。
【請求項11】
前記第1の誘導加熱可能なサセプタ(40)と、前記第2の誘導加熱可能なサセプタ(42)とを含む、請求項10に記載のエアロゾル発生デバイス。
【請求項12】
前記第1及び第2の誘導加熱可能なサセプタ(40、42)は、前記加熱ゾーン(19)内で前記加熱チャンバ(18)の周囲に配置されて、前記加熱ゾーン(19)内の第1の領域(41)及び前記加熱ゾーン(19)内の第2の領域(43)をそれぞれ画定し、及び前記誘導コイル(48)は、前記加熱チャンバ(18)の周囲に螺旋状に延びる、請求項9~11のいずれか一項に記載のエアロゾル発生デバイス。
【請求項13】
エアロゾル発生システム(1)であって、
エアロゾル発生基材(102)と、
前記エアロゾル発生基材(102)を加熱して、吸入されるエアロゾルを発生させるための、請求項1~12のいずれか一項に記載のエアロゾル発生デバイス(10)と、
を含むエアロゾル発生システム(1)。
【請求項14】
請求項13に記載のエアロゾル発生システム(1)を使用する方法であって、
前記エアロゾル発生基材(102)の少なくとも一部を前記エアロゾル発生デバイス(10)の加熱チャンバ(18)内に配置することと、
前記コントローラ(24)により、前記誘導加熱装置(46)を作動させて、第1の期間にわたり、前記複数の第1のコイルストランド(62)に交流電流を供給して前記第1の期間にわたって前記第1の電磁場を発生させて、前記エアロゾル発生基材(102)の第1の部分を加熱することと、
前記コントローラ(24)により、前記誘導加熱装置(46)を作動させて、前記第1の期間に続く第2の期間にわたり、前記複数の第2のコイルストランド(64)に交流電流を供給して前記第2の期間にわたって前記第2の電磁場を発生させて、前記エアロゾル発生基材(102)の第2の部分を加熱することと、
を含む方法。
【請求項15】
前記加熱チャンバ(18)は、加熱ゾーン(19)を画定し、
前記コントローラ(24)により、前記誘導加熱装置(46)を作動させて、前記複数の第1のコイルストランド(62)に前記交流電流を供給する前記ステップは、前記発生した第1の電磁場に、前記エアロゾル発生基材(102)の前記第1の部分が配置される前記加熱ゾーン(19)の第1の領域(41)を画定する第1の誘導加熱可能なサセプタ(40)を加熱させ、及び
前記コントローラ(24)により、前記誘導加熱装置(46)を作動させて、前記複数の第2のコイルストランド(64)に前記交流電流を供給する前記ステップは、前記発生した第2の電磁場に、前記エアロゾル発生基材(102)の前記第2の部分が配置される前記加熱ゾーン(19)の第2の領域(43)を画定する第2の誘導加熱可能なサセプタ(42)を加熱させる、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、エアロゾル発生デバイスに関し、より詳細には、エアロゾル発生基材を加熱して、ユーザによる吸入のためのエアロゾルを発生させるためのエアロゾル発生デバイスに関する。本開示の実施形態は、エアロゾル発生デバイスと、エアロゾル発生基材とを含むエアロゾル発生システム及び吸入されるエアロゾルを発生させるためにエアロゾル発生システムを使用する方法にも関する。本開示は、特に、携帯型(手持ち式)エアロゾル発生デバイスに適用可能である。そのようなデバイスは、エアロゾル発生基材、例えばタバコ又は他の好適な材料を、燃焼させるのではなく、伝導、対流及び/又は放射によって加熱して、ユーザによる吸入のためのエアロゾルを発生させる。本開示は、特に、誘導加熱式エアロゾル発生デバイス及び/又はシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、(エアロゾル発生デバイス、又は蒸気発生デバイス、又は個人用気化器としても知られる)リスク低減デバイス又はリスク修正デバイスの人気及び使用は、従来のタバコ製品の使用に代わるものとして急速に成長している。エアロゾル発生物質を加熱又は加温して、ユーザによる吸入のためのエアロゾルを発生させる様々なデバイス及びシステムが入手可能である。
【0003】
一般に入手可能なリスク低減デバイス又はリスク修正デバイスは、基材加熱式エアロゾル発生デバイス、すなわちいわゆる非燃焼加熱式デバイスである。このタイプのデバイスは、エアロゾル発生基材を典型的には150℃~300℃の範囲の温度に加熱することにより、エアロゾル又は蒸気を発生させる。エアロゾル発生基材を燃やすか又は燃焼させることなく、エアロゾル発生基材をこの範囲内の温度に加熱することにより、蒸気を発生させ、蒸気は、通常、冷却及び凝縮して、デバイスのユーザが吸入するエアロゾルを形成する。
【0004】
現在利用可能なエアロゾル発生デバイスは、いくつかの異なる手法の1つを用いて、エアロゾル発生基材に熱を与えることができる。そのような手法の1つは、誘導加熱システムを採用するエアロゾル発生デバイスを提供することである。このようなデバイスでは、エアロゾル発生基材を加熱するために、デバイス内に誘導コイルが設けられ、誘導加熱可能なサセプタが設けられる。ユーザがデバイスを作動させると、電気エネルギーが誘導コイルに供給され、次いでこれにより交流電磁場が発生する。サセプタは、この電磁場と結合して熱を発生させ、この熱は、例えば、伝導、放射及び対流の1つ又は複数により、エアロゾル発生基材に伝達され、エアロゾル発生基材が加熱されるにつれてエアロゾルが発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、使用期間(喫煙セッションとしても知られる)を通して、ユーザが吸入するために許容可能な特性を備えたエアロゾルが確実に発生するように、エアロゾル発生基材内の熱分布を制御することが望ましい。本開示の実施形態の目的は、エアロゾル発生基材内の熱分布の制御をより正確にすることにより、発生したエアロゾルの特性が最適化される、改善されたユーザ体験を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様によれば、エアロゾル発生デバイスであって、
コントローラと、
エアロゾル発生基材を加熱して、吸入されるエアロゾルを発生させるように構成された誘導加熱装置であって、少なくとも複数の第1のコイルストランド及び複数の第2のコイルストランドを含む誘導コイルを含む誘導加熱装置と、を含み、
コントローラは、誘導加熱装置を制御して、複数の第1のコイルストランドに交流電流を供給して、第1の周波数を有する第1の電磁場を発生させ、且つ複数の第2のコイルストランドに交流電流を供給して、第1の周波数と異なる第2の周波数を有する第2の電磁場を発生させるように構成される、エアロゾル発生デバイスが提供される。
【0007】
エアロゾル発生デバイスは、エアロゾル発生基材を燃やすことなく、エアロゾル発生基材を加熱して、エアロゾル発生基材の少なくとも1つの成分を揮発させることにより、加熱された蒸気を発生させ、蒸気は、冷却され、凝縮して、エアロゾル発生デバイスのユーザが吸入するためのエアロゾルを形成するように構成される。エアロゾル発生デバイスは、通常、手持ち式の携帯型デバイスである。
【0008】
一般論として、蒸気は、臨界温度よりも低い温度で気相である物質であり、これは、温度を低下させずに圧力を高めることにより、蒸気を液体に凝縮させ得ることを意味する一方、エアロゾルは、空気又は別のガス中に微細な固体粒子又は液滴が浮遊しているものである。しかしながら、本明細書では、「エアロゾル」及び「蒸気」という用語は、特に、ユーザが吸入するために発生させる吸入可能媒体の形態に関して同義で使用され得ることに留意されたい。
【0009】
互いに異なる第1及び第2の周波数を有する第1及び第2の電磁場を発生させることにより、本開示は、例えば、第1の電磁場が第1の誘導加熱可能なサセプタの優先的な加熱を引き起こすことができ、及び第2の電磁場が第2の誘導加熱可能なサセプタの優先的な加熱を引き起こすことができるため、エアロゾル発生基材内の熱分布を慎重に制御することを可能にする。したがって、エアロゾル発生基材の選択的(又は「ゾーン分割的」)加熱を達成することができる。第1の電磁場を発生させるための複数の第1のコイルストランドと、第2の電磁場を発生させるための複数の第2のコイルストランドとを含む単一の誘導コイルの使用は、第1及び第2の電磁場を発生させるための効果的な解決策を提供し、エアロゾル発生デバイスがコンパクトな設計を有することを保証する。
【0010】
ここで、任意選択の機能について説明する。これらは、単独で又は本開示の任意の態様と任意に組み合わせて適用可能である。
【0011】
誘導コイルは、複数の第1のコイルストランドが配置され得る第1のコイル部分と、複数の第2のコイルストランドが配置され得る第2のコイル部分とを含み得る。誘導コイルは、断面コイル外被を画定する周縁部を含み得、且つ第1及び第2のコイル部分は、断面コイル外被内に配置され得る。第1及び第2のコイル部分を設けることにより、複数の第1のコイルストランドと、複数の第2のコイルストランドとは、断面コイル外被内で確実に互いに分離される。
【0012】
誘導コイルは、第1及び第2のコイル部分の両方を取り囲み、コイル周縁部を画定することができる外側絶縁体を含むことができる。
【0013】
誘導コイルは、第1の端部と第2の端部とを有し、第1のコイルストランドと第2のコイルストランドとの両方は、第1の端部から第2の端部まで延びることができる。
【0014】
第1及び第2のコイル部分は、互いに電気的に絶縁され得る。これにより、第1のコイル部分の複数の第1のコイルストランドと、第2のコイル部分の複数の第2のコイルストランドとの間に電気的接触が存在しないことが保証される。
【0015】
複数の第1のコイルストランドは、第1の断面を有し、及び複数の第2のコイルストランドは、第1の断面と異なり得る第2の断面を有することができる。異なる第1及び第2の断面は、異なる第1及び第2の周波数を有する第1及び第2の電磁場の発生を容易にする。例えば、複数の第1のコイルストランドと、複数の第2のコイルストランドとは、断面形状及び断面積の1つ又は複数において互いに異なり得る。
【0016】
第1のコイルストランドに供給される交流電流は、第1の交流電流を含み、及び第2のコイルストランドに供給される交流電流は、第2の交流電流を含むことができる。第1の交流電流は、第2の交流電流と異なり得る。第1のコイルストランドは、第2のコイルストランドと(例えば、断面、直径及び材料において)同じであり得る。代わりに、第1のコイルストランドは、第2のコイルストランドと(例えば、上記で論じたように断面、直径及び/又は材料において)異なり得る。
【0017】
コントローラは、複数の第1のコイルストランド及び複数の第2のコイルストランドに交流電流を順次供給して、第1の電磁場及び第2の電磁場を順次発生させるように構成され得る。したがって、第1及び第2の電磁場は、同時に発生するのではなく、異なる時点で発生する。これにより、エアロゾル発生基材の異なる領域又は部分を連続的に加熱することができ、エアロゾル発生基材内での熱分布の制御、特に選択的(又は「ゾーン分割的」)加熱が都合よく可能となる。
【0018】
コントローラは、第1の期間にわたり、複数の第1のコイルストランドに(第1の)交流電流を供給して、第1の期間わたって第1の電磁場を発生させ、且つその後、第1の期間に続く第2の期間にわたり、複数の第2のコイルストランドに(第2の)交流電流を供給して、第2の期間わたって第2の電磁場を発生させるように構成され得る。第1の電磁場は、第1の期間中に第1の誘導加熱可能なサセプタの優先的な加熱を引き起こすことができ、及び第2の電磁場は、第2の期間中に第2の誘導加熱可能なサセプタの優先的な加熱を引き起こすことができる。したがって、第1の誘導加熱可能なサセプタは、第1の期間中に第2の誘導加熱可能なサセプタよりも高い温度に加熱され得る一方、第2の誘導加熱可能なサセプタは、第2の期間中に第1の誘導加熱可能なサセプタよりも高い温度に加熱され得る。また、これにより、エアロゾル発生基材内の制御された熱分布が提供され、特に選択的(又は「ゾーン分割的」)加熱が提供される。
【0019】
エアロゾル発生デバイスは、エアロゾル発生基材の少なくとも一部を受け入れるための加熱ゾーンを画定し得る加熱チャンバを含むことができる。誘導コイルは、加熱ゾーン内に第1及び第2の電磁場を発生させるために、加熱チャンバに隣接して配置され得る。したがって、エアロゾル発生基材は、加熱チャンバによって画定される加熱ゾーンに配置されたときに効率的に加熱することができる。
【0020】
第1の電磁場は、第1の共振周波数を有する第1の誘導加熱可能なサセプタを加熱するように適合され得、及び第2の電磁場は、第1の共振周波数と異なる第2の共振周波数を有する第2の誘導加熱可能なサセプタを加熱するように適合され得る。したがって、第1の電磁場は、第1の誘導加熱可能なサセプタの優先的な加熱を引き起こし、及び第2の電磁場は、第2の誘導加熱可能なサセプタの優先的な加熱を引き起こす。異なる共振周波数を使用することにより、エアロゾル発生基材の選択的(又は「ゾーン分割的」)加熱を達成することができる。
【0021】
異なる共振周波数を使用することにより、複数の第1のコイルストランドが、第1の誘導加熱可能なサセプタの第1の共振周波数と実質的に等しい第1の周波数を有する第1の電磁場を発生させ、且つ複数の第2のコイルストランドが、第2の誘導加熱可能なサセプタの第2の共振周波数と実質的に等しい第2の周波数を有する第2の電磁場を発生させるように誘導加熱装置を制御することにより、エアロゾル発生基材の選択的(又は「ゾーン分割的」)加熱を実行することが可能になる。特定のサセプタ(第1又は第2のサセプタ)の共振周波数(第1又は第2の共振周波数)と実質的に等しい周波数(第1又は第2の周波数)を有する電磁場(第1又は第2の電磁場)を発生させることで、そのサセプタに熱量を発生させる。これは、他のサセプタの1つ又は複数のサセプタ(すなわち発生された電磁場の周波数に実質的に等しくない共振周波数を有するサセプタ)に、特定のサセプタによって発生された熱量よりも通常小さく、ゼロ又は実質的にゼロであり得る熱量も発生させ得る。したがって、特定のサセプタの任意の選択的加熱は、他のサセプタが全く加熱されないことを意味すると解釈されるべきではなく、特定のサセプタの選択的加熱は、通常、特定のサセプタに隣接するエアロゾル発生基材からのエアロゾルの放出に主に関与することのみを意味する。「優先的な加熱」という用語は、本明細書全体を通してこのタイプの加熱を定義するために使用される。
【0022】
エアロゾル発生デバイスは、第1の誘導加熱可能なサセプタと、第2の誘導加熱可能なサセプタとを含む。第1及び第2の誘導加熱可能なサセプタは、エアロゾル発生基材の迅速且つ制御された加熱を提供する一方、同時にエネルギー効率を最大化する。エアロゾル発生物品の一部としてエアロゾル発生基材を設けるのではなく、エアロゾル発生デバイスの一部として第1及び第2の誘導加熱可能なサセプタを設けることにより、エアロゾル発生物品の構造及び製造を簡素化することができる。
【0023】
第1及び第2の誘導加熱可能なサセプタは、加熱ゾーン内で加熱チャンバの周囲に配置されて、加熱ゾーン内の第1の領域及び加熱ゾーン内の第2の領域をそれぞれ画定することができる。誘導コイルは、加熱チャンバの周囲に螺旋状に延び得る。したがって、エアロゾル発生基材の選択的(又は「ゾーン分割的」)加熱は、第1及び第2の領域で達成され得る。例えば、エアロゾル発生基材の第1の部分は、第1の領域に配置され、第1の誘導加熱可能なサセプタによって第1の領域内で加熱され得、エアロゾル発生基材の第2の部分は、第2の領域に配置され、第2の誘導加熱可能なサセプタによって第2の領域内で加熱され得る。加熱チャンバの周囲に螺旋状に延びる誘導コイルを設けることにより、対応する第1及び第2の電磁場による第1及び第2の誘導加熱可能サセプタの信頼性の高い加熱が保証され得る。
【0024】
誘導コイルは、リッツ線又はリッツケーブルを含み得る。しかしながら、他の材料も使用できることを理解されたい。
【0025】
誘導コイルは、使用時、約20mT~約2.0T(最高密度点)の磁束密度を有する変動電磁場を伴って動作するように配置され得る。
【0026】
加熱チャンバは、実質的に管状であり得、第1及び第2の誘導加熱可能サセプタは、実質的に管状の加熱チャンバの周縁部の周りに離隔して配置され得る。加熱チャンバは、実質的に円筒形であり得、第1及び第2の誘導加熱可能サセプタは、実質的に円筒形の加熱チャンバの周りで円周方向に離間され得る。したがって、加熱チャンバは、実質的に円筒形のエアロゾル発生基材を受け入れるように構成され得、多くの場合、エアロゾル発生物品の形態のエアロゾル発生基材は、円筒形の形状に包装され、販売されるため、この円筒形のエアロゾル発生基材は、有利であり得る。
【0027】
加熱チャンバは、長手方向を画定する長手方向軸を有し得る。第1及び第2の誘導加熱可能サセプタのそれぞれは、加熱チャンバの長手方向に細長くてもよい。第1及び第2の誘導加熱可能サセプタのそれぞれは、長さ及び幅を有し得、一実施形態では、長さは、幅の少なくとも5倍であり得る。細長い第1及び第2の誘導加熱可能サセプタは、第1及び第2の電磁場の存在下で効率的に加熱され、且つその細長い形状により、エアロゾル発生基材が長さ方向に沿って迅速に均一に加熱されることが確実になる。それにより、エアロゾル発生デバイスのエネルギー効率が最大化される。
【0028】
加熱チャンバは、実質的に非導電性且つ非透磁性の材料を含み得る。例えば、加熱チャンバは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの耐熱性プラスチック材料を含み得る。エアロゾル発生デバイスの動作中、加熱チャンバ自体は、誘導加熱装置によって加熱されず、第1及び第2の誘導加熱可能サセプタへのエネルギー入力が最大化されるようにする。これは、したがって、デバイスのエネルギー効率の最大化を確実にさせる。デバイスは、触れても冷たいままでもあるため、ユーザの快適性の最大化が確実となる。
【0029】
第1及び第2の誘導加熱可能サセプタは、金属を含み得る。金属は、典型的には、ステンレス鋼及び炭素鋼からなる群から選択される。しかしながら、第1及び第2の誘導加熱可能サセプタは、アルミニウム、鉄、ニッケル、ステンレス鋼、炭素鋼及びそれらの合金、例えばニッケルクロム又はニッケル銅の1つ又は複数を含むが、これらに限定されない任意の好適な材料を含むことができる。サセプタの付近に第1又は第2の電磁場を印加すると、渦電流及び磁気ヒステリシス損失により、電磁気から熱へのエネルギー変換がもたらされることに起因して、対応する第1又は第2の誘導加熱可能サセプタは、熱を発生させる。
【0030】
エアロゾル発生デバイスは、電源を含み得、コントローラは、制御回路を含み得る。電源及び制御回路は、高い周波数で動作するように構成され得る。電源及び制御回路は、約80kHz~1MHz、場合により約150kHz~250kHz、場合により約200kHzの周波数で動作するように構成され得る。電源及び制御回路は、使用される誘導加熱可能サセプタのタイプに応じて、例えばMHz範囲などのより高い周波数で動作するように構成され得る。電源及び制御回路は、複数の周波数(例えば、少なくとも2つの周波数)で動作するように構成され得る。
【0031】
本開示の第2の態様によれば、エアロゾル発生システムであって、
エアロゾル発生基材と、
エアロゾル発生基材を加熱して、吸入されるエアロゾルを発生させるための、上記で定義されたエアロゾル発生デバイスと、
を含むエアロゾル発生システムが提供される。
【0032】
エアロゾル発生基材は、任意のタイプの固体又は半固体の材料を含み得る。エアロゾル発生固体の例示的なタイプとしては、例えば、粉末、顆粒、ペレット、シュレッド、ストランド、粒子、ゲル、条片、ルーズリーフ、カットフィラー、多孔質材料、発泡材料又はシートが挙げられる。エアロゾル発生基材は、植物由来の材料を含み得、特にタバコを含み得る。エアロゾル発生基材は、有利には、再構成タバコを含み得、例えばタバコと、セルロース繊維、タバコ茎繊維及び無機充填剤(CaCO3等)の任意の1つ又は複数とを含む再構成タバコを含み得る。
【0033】
したがって、エアロゾル発生デバイスは、「加熱式タバコデバイス」、「加熱非燃焼式タバコデバイス」、「タバコ製品気化用デバイス」などと呼ばれることがあり、これらの効果を実現するのに好適なデバイスとして解釈される。本明細書に開示する特徴は、任意のエアロゾル発生基材を気化させるように設計されたデバイスに等しく適用可能である。
【0034】
エアロゾル発生基材は、エアロゾル発生物品の一部を形成し得、紙製ラッパーで囲まれ得る。
【0035】
エアロゾル発生物品は、実質的にスティックの形状に形成され得、好適な形態で配置されたエアロゾル発生基材を有する管状領域を有する紙巻きタバコに概ね類似し得る。エアロゾル発生物品は、エアロゾル発生物品の近位端部に、例えばセルロースアセテート繊維を含むフィルタセグメントを含み得る。フィルタセグメントは、マウスピースフィルタを構成し得、エアロゾル発生基材と同軸に整列し得る。一部の設計には、1つ又は複数の蒸気収集領域、冷却領域及び他の構造も含まれ得る。例えば、エアロゾル発生物品は、フィルタセグメントの上流に少なくとも1つの管状セグメントを含み得る。管状セグメントは、蒸気冷却領域として機能し得る。蒸気冷却領域は、有利には、エアロゾル発生基材を加熱することによって発生させた加熱された蒸気が冷却され、凝縮して、例えばフィルタセグメントを通して、ユーザが吸入するのに適した特性を有するエアロゾルを形成することを可能にし得る。
【0036】
エアロゾル発生基材は、エアロゾル形成剤を含み得る。エアロゾル形成剤の例としては、グリセリン又はプロピレングリコールなどの多価アルコール及びその混合物が挙げられる。典型的には、エアロゾル発生基材は、乾燥重量ベースで約5%~約50%のエアロゾル形成剤含有量を含み得る。いくつかの実施形態では、エアロゾル発生基材は、乾燥重量ベースで約10%~約20%、場合により乾燥重量ベースで約15%のエアロゾル形成剤含有量を含み得る。
【0037】
第1又は第2の誘導加熱可能サセプタによって加熱されると、エアロゾル発生基材は、揮発性化合物を放出し得る。揮発性化合物は、ニコチン又はタバコ香味料などの香味化合物を含み得る。
【0038】
本開示の第3の態様によれば、上記で定義されたエアロゾル発生システムを使用する方法であって、
エアロゾル発生基材の少なくとも一部をエアロゾル発生デバイスの加熱チャンバ内に配置することと、
コントローラによって誘導加熱装置を作動させて、第1の期間にわたり、複数の第1のコイルストランドに交流電流を供給して第1の期間にわたって第1の電磁場を発生させて、エアロゾル発生基材の第1の部分を加熱することと、
コントローラによって誘導加熱装置を作動させて、第1の期間に続く第2の期間にわたり、複数の第2のコイルストランドに交流電流を供給して第2の期間にわたって第2の電磁場を発生させて、エアロゾル発生基材の第2の部分を加熱することと、
を含む方法が提供される。
【0039】
第1の電磁場は、第1の期間中に第1の誘導加熱可能なサセプタの優先的な加熱を引き起こすことができ、及び第2の電磁場は、第2の期間中に第2の誘導加熱可能なサセプタの優先的な加熱を引き起こすことができる。したがって、第1の誘導加熱可能なサセプタは、第1の期間中に第2の誘導加熱可能なサセプタよりも高い温度に加熱され得る一方、第2の誘導加熱可能なサセプタは、第2の期間中に第1の誘導加熱可能なサセプタよりも高い温度に加熱され得る。上記で述べたように、これにより、エアロゾル発生基材内の制御された熱分布が提供され、特に選択的(又は「ゾーン分割的」)加熱が提供される。
【0040】
この方法の一実施形態では、加熱チャンバは、加熱ゾーンを画定することができる。
【0041】
コントローラによって誘導加熱装置を作動させて、複数の第1のコイルストランドに交流電流を供給するステップは、発生した第1の電磁場に、エアロゾル発生基材の第1の部分が配置される加熱ゾーンの第1の領域を画定する第1の誘導加熱可能なサセプタを加熱させることができる。コントローラによって誘導加熱装置を作動させて、複数の第2のコイルストランドに交流電流を供給するステップは、発生した第2の電磁場に、エアロゾル発生基材第2の部分が配置される加熱ゾーンの第2の領域を画定する第2の誘導加熱可能なサセプタを加熱させることができる。
【0042】
したがって、この方法は、第1及び第2の領域におけるエアロゾル発生基材の選択的(又は「ゾーン分割的」)加熱を提供する。特に、第1の領域に位置するエアロゾル発生基材の第1の部分は、第1の誘導加熱可能なサセプタによって加熱され、及び第2の領域に位置するエアロゾル発生基材の第2の部分は、第2の誘導加熱可能なサセプタによって加熱される。上述のように、エアロゾル発生基材の第1の部分及び第2の部分の加熱は、典型的には、連続的である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】エアロゾル発生デバイスと、エアロゾル発生デバイスの加熱チャンバ内に配置されようとしているエアロゾル発生物品とを含むエアロゾル発生システムの概略断面図である。
【
図2】エアロゾル発生物品がエアロゾル発生デバイスの加熱チャンバ内に配置された状態を示す、
図1のエアロゾル発生システムの概略断面図である。
【
図3】加熱チャンバの内面に取り付けられた第1及び第2の誘導加熱可能サセプタを示す、
図1及び
図2のエアロゾル発生デバイスの加熱チャンバの詳細概略斜視図である。
【
図4】加熱チャンバの周縁部の周りに離隔して配置された第1及び第2の誘導加熱可能サセプタを示す、
図3に示される加熱チャンバの端部からの概略断面図である。
【
図5】誘導コイルの断面コイル外被内の第1及び第2のコイル部分を示す、エアロゾル発生デバイスの誘導コイルの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
ここで、本開示の実施形態について、単なる例として添付の図面を参照して説明する。
【0045】
まず、
図1及び
図2を参照すると、エアロゾル発生システム1の例が概略的に示されている。エアロゾル発生システム1は、エアロゾル発生デバイス10と、デバイス10と共に使用されるエアロゾル発生物品100とを含む。エアロゾル発生デバイス10は、エアロゾル発生デバイス10の様々な構成要素を収容する本体12を含む。本体12は、本明細書に提示される様々な実施形態に記載された構成要素に適合し、且つユーザが助けを借りず片手で快適に保持するようなサイズの、任意の形状を有し得る。
【0046】
図1及び
図2の底部側に示すエアロゾル発生デバイス10の第1の端部14は、便宜上、エアロゾル発生デバイス10の遠位側、底部、基部又は下端部として説明される。
図1及び
図2の頂部側に示すエアロゾル発生デバイス10の第2の端部16は、エアロゾル発生デバイス10の近位側、頂部又は上端部として説明される。使用中、ユーザは、典型的には、エアロゾル発生デバイス10を、第1の端部14を下向きに及び/又はユーザの口に対して遠位位置にし、且つ第2の端部16を上向きに及び/又はユーザの口に対して近接位置にして方向付ける。
【0047】
エアロゾル発生デバイス10は、本体12内に配置された加熱チャンバ18を含む。加熱チャンバ18は、エアロゾル発生物品100を受け入れるための、実質的に円筒形の断面を有するキャビティ20の形態の内部容積内の加熱ゾーン19を画定する。加熱チャンバ18は、長手方向を画成する長手方向軸を有し、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の耐熱性プラスチック材料から形成される。エアロゾル発生デバイス10は、電源22(例えば、充電式であり得る1つ又は複数のバッテリ)及びコントローラ24を更に含む。
【0048】
加熱チャンバ18は、エアロゾル発生デバイス10の第2の端部16に向かって開放されている。換言すると、加熱チャンバ18は、エアロゾル発生デバイス10の第2の端部16に向かって開放されている第1の端部26を有する。加熱チャンバ18は、典型的には、本体12の内面から間隔を空けて保持され、これは、本体12への熱伝達を最小限に抑えるためである。
【0049】
エアロゾル発生デバイス10は、任意選択で、加熱チャンバ18の開いた第1の端部26を覆って加熱チャンバ18へのアクセスを防止する閉位置(
図1を参照)と、加熱チャンバ18の開いた第1の端部26を露出させて加熱チャンバ18へのアクセスを提供する開位置(
図2を参照)との間で横方向に移動可能なスライドカバー28を含むことができる。いくつかの実施形態では、スライドカバー28を閉位置に付勢することができる。
【0050】
加熱チャンバ18、具体的にはキャビティ20は、対応する形状の略円筒状又は棒状のエアロゾル発生物品100を受け入れるように構成される。通常、エアロゾル発生物品100は、予め包装されたエアロゾル発生基材102を含む。エアロゾル発生物品100は、例えば、エアロゾル発生基材102としてタバコを含み得る使い捨て且つ交換可能な物品(「消耗品」としても公知)である。エアロゾル発生物品100は、近位端部104(又は口側端部)及び遠位端部106を有する。エアロゾル発生物品100は、エアロゾル発生基材102の下流側に配置されたマウスピースセグメント108を更に含む。エアロゾル発生基材102及びマウスピースセグメント108は、ラッパー110(例えば、紙製ラッパー)内に同軸整列で配置されて構成要素を所定位置に保持し、棒状のエアロゾル発生物品100を形成する。
【0051】
マウスピースセグメント108は、下流方向に、換言すればエアロゾル発生物品100の遠位端部106から近位(口側)端部104に向けて順次且つ同軸整列で配置された以下の構成要素(詳細には図示せず)、すなわち冷却セグメント、中心孔セグメント及びフィルタセグメントの1つ又は複数を含むことができる。冷却セグメントは、典型的には、ラッパー110の厚さよりも大きい厚さを有する中空紙管を含む。中心孔セグメントは、セルロースアセテート繊維及び可塑剤を含有する硬化された混合物を含み得、マウスピースセグメント108の強度を増加させるように機能する。フィルタセグメントは、典型的には、セルロースアセテート繊維を含み、マウスピースフィルタとして機能する。加熱された蒸気がエアロゾル発生基材102からエアロゾル発生物品100の近位(口側)端部104に向かって流れると、蒸気は、冷却セグメント及び中心孔セグメントを通過するときに冷却され、凝縮して、フィルタセグメントを通して、ユーザが吸入するのに好適な特性を有するエアロゾルを形成する。
【0052】
図3及び
図4を更に参照すると、加熱チャンバ18は、加熱チャンバ18の第2の端部34に位置する基部32と、開放されている第1の端部26との間を延びる側壁(又はチャンバ壁)30を有する。側壁30と基部32とを互いに接続し、単一部品として一体に形成することができる。図示の実施形態では、側壁30は、管状、より具体的には円筒状である。別の実施形態では、側壁30は、他の適切な形状であり得、例えば断面が楕円形又は多角形の管状であり得る。更に別の実施形態では、側壁30は、テーパ状であり得る。
【0053】
図示の実施形態では、加熱チャンバ18の基部32は、閉じており、例えば密閉されるか又は気密である。すなわち、加熱チャンバ18は、カップ状である。これにより、開放した第1の端部26から引き込まれた空気が第2の端部34から流出することを基部32により防止し、代わりにエアロゾル発生基材102を通して案内されることを確実にすることができる。これにより、ユーザがエアロゾル発生物品100を加熱チャンバ18内に意図した距離まで挿入し、それ以上挿入しないことを確実にすることもできる。
【0054】
加熱チャンバ18の側壁30は、内面36及び外面38を有する。エアロゾル発生デバイス10は、加熱ゾーン19内の側壁30の内面36に取り付けられた第1及び第2の誘導加熱可能なサセプタ40、42を含む。図示の例では、第1及び第2の誘導加熱可能なサセプタ40、42のそれぞれは、180°未満の角度で外接し、したがって、第1及び第2の誘導加熱可能なサセプタ40、42は、合わせて側壁30の内面36の実質的に全周囲に円周方向に延びる。第1の誘導加熱可能なサセプタ40は、加熱ゾーン19内で加熱するための第1の領域41を画定し、第2の誘導加熱可能なサセプタ42は、加熱ゾーン19内で加熱するための第2の領域43を画定する。
【0055】
第1及び第2の誘導加熱可能サセプタ40、42は、加熱チャンバ18の長手方向に伸長している。第1及び第2の誘導加熱可能サセプタ40、42のそれぞれは、長さ及び幅を有し、典型的には、長さは幅の少なくとも5倍である。第1及び第2の誘導加熱可能サセプタ40、42が
図3及び
図4に示す寸法形状に限定されず、他の寸法形状も完全に本開示の適用範囲内にあることが当業者に理解されるであろう。
【0056】
第1及び第2の誘導加熱可能なサセプタ40、42はそれぞれ、エアロゾル発生基材102と接触する内面40a、42aを有する。第1及び第2の誘導加熱可能サセプタ40、42は、エアロゾル発生基材102、より具体的にはエアロゾル発生物品100のラッパー110と摩擦係合を形成することができ、
図2に最もよく示されるように、エアロゾル発生基材102の圧縮を引き起こすことができる。エアロゾル発生基材102の圧縮は、例えば、エアロゾル発生基材102内の空隙を排除することにより、エアロゾル発生基材102を通る熱伝導を改善する。
【0057】
エアロゾル発生デバイス10は、エアロゾル発生基材102を加熱するための誘導加熱装置46を含む。誘導加熱装置46は、実質的に螺旋状の誘導コイル48を含む。誘導コイル48は、実質的に円筒形の加熱チャンバ18の周囲に螺旋状に延びる。誘導コイル48は、電源22及びコントローラ24によって通電され得る。コントローラ24は、電子部品の中でもとりわけ、電源22からの直流を誘導コイル48のための交流高周波電流に変換するよう配置されるインバータを含む。
【0058】
加熱チャンバ18の側壁30は、外面38に形成されたコイル支持構造50を含む。図示された例では、コイル支持構造50は、外面38の周囲に螺旋状に延びるコイル支持溝52を含む。誘導コイル48は、コイル支持溝52内に配置され、したがって第1及び第2の誘導加熱可能サセプタ40、42に対して確実に且つ最適に配置される。
【0059】
ここで、
図5を参照すると、誘導コイル48は、断面で見てコイル周縁部54を含み、コイル周縁部54は、断面コイル外被56を画定する。外側絶縁体(図示せず)がコイル周縁部54を囲み得る。断面コイル外被56内には、第1のコイル部分58と、第1のコイル部分58から電気的に絶縁された第2のコイル部分60がある。第1のコイル部分58は、複数の第1のコイルストランド62を含み、第2のコイル部分60は、複数の第2のコイルストランド64を含む。図示の例では、第1のコイルストランド62は、第1の断面積を有し、第2のコイルストランド64は、第1の断面積よりも大きい第2の断面積を有する。しかしながら、この構成は、必須ではなく、第1のコイルストランド62が第1の断面を有し、第2のコイルストランド64が、第1の断面と異なる第2の断面を有していれば十分であり得る。ここで、「断面」という用語には、断面積及び断面形状の1つ又は複数が含まれ得る。第1及び第2のコイル部分58、60は、
図5に示すように半円形である必要はなく、第1及び第2のコイル部分58、60の同心構成などの他の構成も可能であることにも留意されたい。
【0060】
エアロゾル発生デバイス10を使用するために、ユーザは、スライドカバー28(存在する場合)を、
図1に示す閉位置から、
図2に示す開位置まで移動させる。次いで、ユーザは、開放した第1の端部26を通してエアロゾル発生物品100を加熱チャンバ18に挿入し、その結果、エアロゾル発生基材102がキャビティ20によって画定される加熱ゾーン19内に受け入れられると共に、マウスピースセグメント108の少なくとも一部が、開放した第1の端部26から突出してユーザの唇による係合を可能にする状態で、エアロゾル発生物品100の近位端部104が、加熱チャンバ18の開放した第1の端部26に位置決めされる。
【0061】
ユーザがエアロゾル発生デバイス10を作動させると、誘導加熱装置46は電源22及びコントローラ24によって通電される。より具体的には、本開示によれば、コントローラ24は、誘導加熱装置46、より具体的には電源22及び制御回路を制御して、第1のコイル部分58の複数の第1のコイルストランド62に交流電流を供給して、第1の周波数を有する第1の電磁場を発生させ、且つ第2のコイル部分60の複数の第2のコイルストランド64に交流電流を供給して、第2の周波数を有する第2の電磁場を発生させるように構成される。
【0062】
第1及び第2の誘導加熱可能なサセプタ40、42は、異なる共振周波数を有する。第1の周波数を有する第1の電磁場は、(第1の誘導加熱可能なサセプタ40内で発生する渦電流及び/又は磁気ヒステリシス損失によって)第1の誘導加熱可能なサセプタ40の優先的な加熱を引き起こし、したがって、第1の誘導加熱可能なサセプタ40から伝達される熱によって加熱ゾーン19の第1の領域41に配置されるエアロゾル発生基材102の第1の部分の優先的な加熱を引き起こす。第2の周波数を有する第2の電磁場は、(第2の誘導加熱可能なサセプタ42内で発生する渦電流及び/又は磁気ヒステリシス損失によって)第2の誘導加熱可能なサセプタ42の優先的な加熱を引き起こし、したがって、第2の誘導加熱可能なサセプタ42から伝達される熱によって加熱ゾーン19の第2の領域43に配置されるエアロゾル発生基材102の第2の部分の優先的な加熱を引き起こす。したがって、エアロゾル発生基材102の第1及び第2の部分の選択的(又は「ゾーン分割的」)加熱は、加熱ゾーン19内の第1及び第2の領域41、43において達成される。エアロゾル発生基材102が第1又は第2の誘導加熱可能なサセプタ40、42によって加熱されると、その結果燃やすか又は燃焼させることなくエアロゾル発生基材102が加熱され、それにより蒸気が発生する。発生した蒸気は、冷めて凝縮して、エアロゾル発生デバイス10のユーザがマウスピースセグメント108(より具体的にはフィルタセグメント)を通して吸入できるエアロゾルになる。
【0063】
コントローラ24は、典型的には、第1の期間にわたり、第1のコイル部分58内の複数の第1のコイルストランド62に交流電流を供給して、第1の期間にわたって第1の電磁場(第1の周波数を有する)を発生させるように構成される。その後、コントローラ24は、典型的には、第2の期間にわたり、第2のコイル部分60内の複数の第2のコイルストランド64に交流電流を供給して、第2の期間にわたって第2の電磁場(第2の周波数を有する)を発生させるように構成される。したがって、複数の第1のコイルストランド62及び複数の第2のコイルストランド64への交流電流の供給は、同時ではなく逐次的に行われるため、第1及び第2の電磁場(それらの対応する第1及び第2の周波数を有する)の発生も連続的である。したがって、第1の期間中、第1の誘導加熱可能なサセプタ40は第1の電磁場によって優先的に加熱され、第2の期間中、第2の誘導加熱可能なサセプタ42は第2の電磁場によって優先的に加熱される。これにより、それぞれ加熱ゾーン19内の第1及び第2の領域41、43に位置するエアロゾル発生基材102の第1及び第2の部分の、連続的な、したがって選択的(又は「ゾーン分割的」)加熱が提供される。
【0064】
エアロゾル発生基材102の気化は、周囲環境からの空気が、例えば、加熱チャンバ18の開放されている第1の端部26を通って加わることによって促進され、この空気は、第1及び第2の誘導加熱可能なサセプタ40、42の長手方向縁部間に円周方向の間隙があるエアロゾル発生物品100のラッパー110と側壁30の内面36との間を流れる際に加熱される。より具体的には、ユーザがフィルタセグメントを吸引すると、
図2の矢印Aで示すように、空気は、開いた第1の端部26を通して加熱チャンバ18内に引き込まれる。加熱チャンバ18に入った空気は、開いた第1の端部26から閉じた第2の端部34に向かってラッパー110と側壁30の内面36との間を流れる。上述のように、第1及び第2の誘導加熱可能なサセプタ40、42の内面40a、42aは、エアロゾル発生物品100の外面と接触することができ、典型的には少なくともエアロゾル発生基材102の少なくともある程度の圧縮を引き起こすことができる。その結果、加熱チャンバ18を円周方向に一周する空隙はなくなる。代わりに、第1及び第2の誘導加熱可能なサセプタ40、42の長手方向縁部間において、円周方向の領域(2つのギャップ領域)に空気流路66があり、この空気流路に沿って、加熱チャンバ18の開放されている第1の端部26から閉鎖される第2の端部34に向かって空気が流れる。いくつかの例では、3つ以上の誘導加熱可能なサセプタ40、42を使用することができ、したがって、対応する数の空気流路66が、円周方向に隣接する誘導加熱可能なサセプタの長手方向縁部間のギャップ領域によって形成され得る。この空気は、加熱チャンバ18の閉鎖されている第2の端部34に達すると、約180°曲がって、エアロゾル発生物品100の遠位端部106に入る。次いで、空気は、
図2の矢印Bによって示されるように、発生した蒸気と共に、遠位端部106から近位(口側)端部104に向けてエアロゾル発生物品100を通し引き込まれる。
【0065】
これまでの段落で例示的実施形態について説明してきたが、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、それらの実施形態に対する様々な修正形態がなされ得ることを理解されたい。したがって、請求項の広さ及び範囲は、上述の例示的実施形態に限定されるべきではない。
【0066】
本明細書において別途記載のない限り又は文脈に明らかに矛盾しない限り、上述の特徴の、そのあらゆる可能な変形形態でのいかなる組み合わせも本開示によって包含される。
【0067】
本発明は、第1のコイルストランドの断面積が第2のコイルストランドと異なる例を参照して説明された。しかしながら、必要に応じて、第1のコイルストランドは、別の点で第2のコイルストランドと異なり得ることが理解されるであろう。例えば、異なる第1及び第2の電磁場を発生させるために、第1のコイルストランドは、(異なる断面積と同様に又はその代わりに)異なる断面形状を有することができ、且つ/又は第2のコイルストランドと異なる材料から形成することができる。第1のコイルストランドは、第2のコイルストランドと同じであり得(すなわち同じ断面及び材料を有する)、代わりに、第1のコイルストランドは、第2のコイルストランドと異なる交流電流でコントローラによって通電されて、異なる第1及び第2の電磁場を発生させ得ることも更に理解されるであろう。これらの場合のいずれでも、コイル部分が実質的に独立して通電可能であることを保証するために、上述のように第1のコイルストランドは第2のコイルストランドから電気的に絶縁される(例えば絶縁体によって分離される)。
【0068】
文脈上明らかに他の意味に解すべき場合を除き、本明細書及び特許請求項の全体を通して、「含む」、「含んでいる」などの語は、排他的又は網羅的な意味ではなく、包含的な意味、すなわち「含むが、限定されない」という意味で解釈されるべきである。
【国際調査報告】