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特表2024-526533生物由来N-ビニルホルムアミドを得るための方法
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  • 特表-生物由来N-ビニルホルムアミドを得るための方法 図1
  • 特表-生物由来N-ビニルホルムアミドを得るための方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】生物由来N-ビニルホルムアミドを得るための方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 231/14 20060101AFI20240711BHJP
   C09K 8/24 20060101ALI20240711BHJP
   C07C 233/03 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240711BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240711BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20240711BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20240711BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20240711BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20240711BHJP
   C08F 26/02 20060101ALI20240711BHJP
   D21H 21/10 20060101ALI20240711BHJP
   D21H 17/45 20060101ALI20240711BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALN20240711BHJP
【FI】
C07C231/14
C09K8/24
C07C233/03 CSP
A61K47/32
A61K8/81
A61Q19/00
A61Q19/10
A61Q5/12
A61Q5/02
A61Q1/00
C08F26/02
D21H21/10
D21H17/45
C12Q1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574475
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2022069153
(87)【国際公開番号】W WO2023281086
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】2107497
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510338248
【氏名又は名称】エスエヌエフ・グループ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】セドリック・ファヴェロ
(72)【発明者】
【氏名】ジョハン・キーファー
【テーマコード(参考)】
4B063
4C076
4C083
4H006
4J100
4L055
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ05
4B063QQ61
4B063QR41
4B063QR74
4B063QS36
4C076EE13G
4C076FF17
4C083AD071
4C083AD072
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC11
4C083CC23
4C083CC33
4C083CC38
4C083DD41
4H006AA01
4H006AA02
4H006AC53
4J100AN04P
4J100BA13P
4J100CA01
4J100DA72
4J100FA03
4J100FA19
4J100FA28
4J100FA30
4J100JA67
4L055AC09
4L055AG35
4L055AG57
4L055AG71
4L055AG72
4L055AH18
4L055EA29
4L055FA10
4L055FA30
(57)【要約】
本発明は、2つのうちの一方、好ましくは両方が少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であるアセトアルデヒドとホルムアミドとの間の反応を含む、N-ビニルホルムアミドを得るための方法に関する。本発明は更に、生物由来N-ビニルホルムアミドモノマー、少なくとも前記モノマーを組み込んだ生物由来ポリマー、及び様々な技術分野における前記ポリマーの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのうちの一方、好ましくは両方が少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であるアセトアルデヒドとホルムアミドとの間の反応を含む、N-ビニルホルムアミドを得るための方法。
【請求項2】
アセトアルデヒドが、前記アセトアルデヒド中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%の生物由来炭素含有量を有し、生物由来炭素含有量が規格ASTM D6866-21方法Bに従って測定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ホルムアミドが、前記ホルムアミド中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%の生物由来炭素含有量を有し、生物由来炭素含有量が規格ASTM D6866-21方法Bに従って測定されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
N-ビニルホルムアミドが、前記N-ビニルホルムアミド中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%の生物由来炭素含有量を有し、生物由来炭素含有量が規格ASTM D6866-21方法Bに従って測定されることを特徴とする、請求項1又は3に記載の方法。
【請求項5】
方法が、アルコキシプロセスによりN-ビニルホルムアミドを得るための方法であり、メタノールが保護剤として使用され、前記方法が、好ましくは200℃~600℃の温度及び大気圧又は部分真空下でのN-メトキシエチルホルムアミドの加熱分解を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
アセトアルデヒド及び/又はホルムアミド、優先的には両方が部分的又は全体的に隔離されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
アセトアルデヒド及び/又はホルムアミド、優先的には両方が部分的又は全体的にリサイクルされていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記モノマー中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%の範囲の生物由来炭素含有量を有する生物由来N-ビニルホルムアミドであって、生物由来炭素含有量がASTM D6866-21方法Bに従って測定される、生物由来N-ビニルホルムアミド。
【請求項9】
アセトアルデヒドとホルムアミドとの間の反応により得られる生物由来N-ビニルホルムアミドであって、前記アセトアルデヒド及び/又は前記ホルムアミドが、それぞれ前記アセトアルデヒド及び/又は前記ホルムアミド中の炭素の総質量を基準として5wt%~100wt%の生物由来炭素含有量を有し、生物由来炭素含有量がASTM D6866-21方法Bに従って測定される、生物由来N-ビニルホルムアミド。
【請求項10】
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法に従って得られる少なくとも1種のN-ビニルホルムアミドモノマー、又は請求項8若しくは9に記載の少なくとも1種のN-ビニルホルムアミドモノマーの重合によって得られるポリマー。
【請求項11】
水溶性又は水膨潤性であることを特徴とする、請求項10に記載のポリマー。
【請求項12】
- 請求項1から7のいずれか一項に記載の方法又は請求項8若しくは9に記載の方法によって得られる少なくとも第1のモノマー、並びに
- 第1のモノマーとは異なる少なくとも第2のモノマーであって、前記第2のモノマーが、非イオン性モノマー、アニオン性モノマー、カチオン性モノマー、双性イオン性モノマー、疎水性部分を含むモノマー、及びそれらの混合物から選択されている第2のモノマー
を有するコポリマーであることを特徴とする、請求項10又は11に記載のポリマー。
【請求項13】
- 少なくとも5mol%、好ましくは少なくとも10mol%、優先的には20mol%~99mol%、より優先的には30mol%~90mol%の第1のモノマーであって、前記第1のモノマーが、前記N-ビニルホルムアミド中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%の生物由来炭素含有量を有し、生物由来炭素含有量が規格ASTM D6866-21方法Bに従って測定される、第1のモノマー、及び
- 少なくとも1%、優先的には5%~95%、より優先的には10%~80%のエチレン性不飽和を含む少なくとも1種の第2のモノマーであって、前記第2のモノマーが第1のモノマーとは異なり、前記第2のモノマー中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%の生物由来炭素含有量を含み、生物由来炭素含有量が規格ASTM D6866-21方法Bに従って測定される、第2のモノマー
を含むことを特徴とする、請求項10から12のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項14】
第2のモノマーが、アクリルアミド、(メタ)アクリル酸及び/又はその塩、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(ATBS)及び/又はその塩、N-ビニルピロリドン(NVP)、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びその四級化型、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド(DADMAC)、又は式CH2=CHCO-NR1R2を有する置換アクリルアミドであって、R1及びR2が互いに独立して直鎖状又は分岐状炭素鎖CnH2n+1であり、nが1~10の範囲である置換アクリルアミドから選択されることを特徴とする、請求項4に記載のポリマー。
【請求項15】
前記ポリマー中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%の範囲の生物由来炭素含有量を含み、生物由来炭素含有量がASTM D6866-21方法Bに従って測定される、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項16】
請求項1から6のいずれか一項に記載のポリマーを酸又は塩基性加水分解によって部分的又は全体的に加水分解し、少なくとも1種のN-ビニルホルムアミドモノマー単位をN-ビニルアミンに変換することによって得られるポリマー。
【請求項17】
ポリマーを合成するための、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法によって得られる少なくとも1種のモノマー、又は請求項8から9のいずれか一項に記載の1種のモノマーの使用。
【請求項18】
炭化水素の回収、井戸の掘削及びセメンチング、炭化水素井戸の刺激、水の処理、発酵スラリーの処理、スラッジの処理、製紙、建設、木材加工、水硬性組成物処理、鉱業、化粧品の調合、洗剤の調合、繊維製造、電池構成要素製造、地熱エネルギー、生理用ナプキン製造、又は農業から選択される分野における請求項10から16のいずれか一項に記載のポリマーの使用。
【請求項19】
凝集剤、凝固剤、結合剤、固定剤、粘度低減剤、増粘剤、吸収剤、摩擦低減剤、除水剤、排水剤、電荷保持剤、脱水剤、コンディショニング剤、安定化剤、膜形成剤、サイズ調整剤、超可塑化剤、クレイ抑制剤又は分散剤としての、請求項10から16のいずれか一項に記載のポリマーの使用。
【請求項20】
以下の工程:
a.請求項10から16のいずれか一項に記載のポリマーから、水又はブラインを用いて注入流体を調製する工程、
b.注入流体を地下層に注入する工程、
c.注入流体で地下層を掃攻する工程、
d.油及び/又はガスの水性混合物を回収する工程
を含む、地下層を掃攻することによって油及び/又はガスの回収を強化するための方法。
【請求項21】
以下の工程:
a.請求項10から16のいずれか一項に記載のポリマーから、水又はブラインを用いて、かつ少なくとも1種のプロパントを用いて注入流体を調製する工程、
b.前記流体を地下貯留層に注入し、その少なくとも一部を破砕して油及び/又はガスを回収する工程
を含む、地下油及び/又はガス貯留層の水圧破砕のための方法。
【請求項22】
以下の工程:
a.請求項10から16のいずれか一項に記載のポリマーから、水又はブラインを用いて流体を調製する工程、
b.井戸を掘削又はセメンチングする少なくとも1つの工程において、前記掘削及び/又はセメンチング流体をドリルヘッドを介して地下層に注入する工程
を含む、地下層中の井戸を掘削及び/又はセメンチングするための方法。
【請求項23】
紙、厚紙等のシートを作製するための方法であって、前記シートを形成する前に、少なくとも1種のポリマーが請求項10から16のいずれか一項に記載の1つ又は複数の注入点で繊維懸濁液に添加される、方法。
【請求項24】
都市用水及び工業用水を処理するための方法であって、請求項10から16のいずれか一項に記載の少なくとも1種のポリマーを、前記都市用水又は工業用水に添加する工程を含む、方法。
【請求項25】
請求項10から16のいずれか一項に記載の少なくとも1種のポリマーを含む、化粧用、皮膚科学、医薬又は洗剤組成物のための増粘剤。
【請求項26】
請求項10から16のいずれか一項に記載の少なくとも1種のポリマーを含む、捺染に使用される顔料組成物のための増粘剤。
【請求項27】
採鉱又はオイルサンド作業から生じる水中の固体粒子の懸濁液を処理するための方法であって、前記懸濁液を、請求項10から16のいずれか一項に記載の少なくとも1種のポリマーと接触させる工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのうちの一方、好ましくは両方が少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であるアセトアルデヒドとホルムアミドとの間の反応を含む、生物由来N-ビニルホルムアミドを得るための方法に関する。本発明は、生物由来N-ビニルホルムアミドモノマー、及び本発明による少なくとも1種の生物由来N-ビニルホルムアミドモノマーから得られる生物由来ポリマーに関する。最後に、本発明は、様々な技術分野における本発明の生物由来ポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
N-ビニルホルムアミド等のエチレン性不飽和モノマーは、水溶性ポリマーの製造に広く使用されている。
【0003】
N-ビニルホルムアミド(NVF)は、以下の反応図によって得られる。
【0004】
【化1】
【0005】
使用されるHX保護剤によっていくつかの変形が存在する。NVFは一般に、保護剤がアルコール、より好ましくはメタノールである、いわゆる「アルコキシ」プロセスによって合成される。合成は、アセトアルデヒド及びホルムアミドから得られるヒドロキシエチルホルムアミドから開始する2工程で行われる。ヒドロキシエチルホルムアミドを、メタノール及び触媒との反応によってメトキシエチルホルムアミドに変換する。次いでメトキシエチルホルムアミドを高温で熱分解し、N-ビニルホルムアミドを得る。
【0006】
アセトアルデヒドは、ワッカー法に記載されるように、エチレンの酸化から得られる原料である。エチレンは化石系オレフィンであり、現在はそれ自体が原油精製から誘導されるナフサの水蒸気分解によって生成される。より最近では、シェールガス生成の出現に伴い、エチレンを生成するために様々なエタン脱水素法が記載されている。
【0007】
化石系エチレンは様々な不純物を含み、それらは残存するか、又はワッカー法によって転換される。更に、ワッカー法では酸素が存在するため、アセトアルデヒドが酢酸に酸化する傾向がある。
【0008】
ホルムアミドは、ギ酸とアンモニアの反応から得られる。ギ酸は化石系であり、文献US 3,056,833に記載されるように、エタンと酸素との間の反応から得られる。
【0009】
文献US 4,567,300には、アセトアルデヒド及びホルムアミドの存在下でのヒドロキシエチルホルムアミドの形成が記載されている。化石系アセトアルデヒドの酸性の存在を打ち消すために、塩基、この場合は炭酸カリウムを添加して、反応物の良好な変換を可能にし、良質のヒドロキシエチルホルムアミドを得ることが記載されている。
【0010】
N-ビニルホルムアミドを得るための他の変形、例えばいわゆる「青酸」プロセスが、特に文献US 3,822,306に記載されている。この場合、保護剤は、アセトアルデヒドと反応する青酸である。収率は75%に制限され、非常に有毒な化合物である青酸を含む。また、例えば文献US 4,906,777に記載される「ビスエチレンホルムアミド」として公知の別の変法に従ってN-ビニルホルムアミドを得ることもできる。
【0011】
いずれの場合も、N-ビニルホルムアミドの3つの炭素は、アセトアルデヒド及びホルムアミドから誘導される。
【0012】
N-ビニルホルムアミドの品質低下につながる不純物の割合が高い原料の使用に対抗するために、N-ビニルホルムアミドを精製するための戦略が記載されている。
【0013】
文献US 4,818,505には、前工程からの未反応ホルムアミドとN-ビニルホルムアミドを分離するために、超高真空(0.5mbar又は1bar=105Pa)下で操作されるカラムでの分別蒸留法が記載されている。分離される混合物は、高温に加熱されなければならない。N-ビニルホルムアミドは、本質的に反応性モノマーであるため、分離される混合物の一部が重合し、それにより収率が低下し、破壊しなければならないポリマーが生成され、生産装置の生産性が低下する(洗浄のための蒸留塔の停止によって誘発される)。
【0014】
文献WO 2018/108608 A1は、(a)9.49~98mol%の式[CH2-CR1((C=O)-NR2-A-SO2-O-Q+)]の単位であって、式(1)のこれらの単位の少なくとも10wt.%が28wt.%~100wt.%の生物由来炭素含有量を含む単位、(b)0.01mol%~5mol%の架橋又は分岐単位、(c)0.01mol%~88.52mol%の繰り返し中性構造単位、(d)1.98mol%~20mol%の繰り返しアニオン性構造単位を含むポリマーを開示している。文献WO 2018/108608 A1は、生物由来N-ビニルホルムアミドを含むポリマーを教示していない。
【0015】
文献US2018/057445は、N-ビニルカルボン酸アミド、例えばN-ビニルホルムアミド及びその中間体を生成するための方法に関する。文献は、生物由来化合物の使用について記載していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】US 3,056,833
【特許文献2】US 4,567,300
【特許文献3】US 3,822,306
【特許文献4】US 4,906,777
【特許文献5】US 4,818,505
【特許文献6】WO 2018/108608 A1
【特許文献7】US2018/057445
【特許文献8】FR2979821
【特許文献9】WO2016020622
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Roessler, N.、Valenta, R. J.及びvan Cauter, S.、「Time-resolved Liquid Scintillation Counting」、Liquid Scintillation Counting and Organic Scintillators、Ross, H.、Noakes, J. E.及びSpaulding, J. D.編、Lewis Publishers、Chelsea、MI、1991、501~511頁
【非特許文献2】Allison, C. E.、Francy, R. J.及びMeijer, H. A. J.、「Reference and Intercomparison Materials for Stable Isotopes of Light Elements」、International Atomic Energy Agency、Vienna、Austria、IAEATECHDOC- 825、1995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明が解決を提案する課題は、生物由来N-ビニルホルムアミドモノマーから得られる新規の改善されたポリマーを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
驚くべきことに、本出願人は、N-ビニルホルムアミドを得るための方法において、2つのうちの一方、好ましくは両方が少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であり、好ましくは全体的に再生可能であるアセトアルデヒド及びホルムアミドを使用すると、得られるモノマーの品質を実質的に改善し、それによりその重合及び得られるポリマーの適用性能を改善することができることを観察した。
【0020】
本出願人は、方法が「アルコキシ」プロセスによってN-ビニルホルムアミドを得るための方法である場合、特に、保護剤として使用されるアルコールがメタノール又はイソプロパノール、好ましくはメタノールである場合に、特にこの改善を観察した。
【0021】
特定の理論に束縛されることを求めることなく、本出願人は、化石系アセトアルデヒドと再生可能かつ非化石系アセトアルデヒドとの間、及び/又は化石系ホルムアミドと再生可能かつ非化石系ホルムアミドとの間の不純物の性質の違いが、これらの予想外の技術的効果の原因である可能性を提起する。
【0022】
「A及び/又はB」は、本発明A若しくはB、又はA及びBに従うことを意味すると理解される。
【0023】
本発明は、まず、2つのうちの一方、好ましくは両方が少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であるアセトアルデヒドとホルムアミドとの間の反応を含む、N-ビニルホルムアミドを得るための方法に関する。
【0024】
本発明は更に、前記N-ビニルホルムアミド中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%の範囲の生物由来炭素含有量を有するN-ビニルホルムアミドであって、生物由来炭素含有量がASTM D6866-21方法Bに従って測定される、N-ビニルホルムアミドに関する。
【0025】
本発明はまた、本発明の方法に従い、又は記載されたように得られた少なくとも1種のN-ビニルホルムアミドモノマーの重合によって得られるポリマー、及び様々な技術分野における前記ポリマーの使用に関する。
【0026】
本発明により、新たな技術革新に固有の環境目標を達成することができる。本発明の場合、再生可能原料、この場合はアセトアルデヒド及び/又はホルムアミドの使用は、変換プロセス及び得られるモノマーの品質を大幅に最適化するのに役立つ。
【0027】
本出願人は、化石ホルムアミドと比較して、ホルムアミドの生物由来の性質が、N-ビニルホルムアミドへのより良好な変換を可能にし、より少ない不純物を発生することを観察した。
【0028】
本出願人はまた、化石化合物と比較して、アセトアルデヒドが少なくとも部分的に再生可能かつ非化石起源である場合、ホルムアミドの変換パーセンテージが大きくなることを観察した。
【0029】
本出願人はまた、化石化合物と比較して、部分的又は全体的に再生可能かつ非化石起源のホルムアミド、及び部分的又は全体的に再生可能かつ非化石起源のアセトアルデヒドを使用することにより、N-ビニルホルムアミドを得るための方法が改善されることを観察した。
【0030】
本出願人はまた、部分的又は全体的に生物由来のモノマーから得られる本発明によるポリマーは、化石モノマーから得られるポリマーよりも容易に生分解可能であることを観察した。
【0031】
本出願人はまた、より優れた排水性能に加え、本発明によるポリマーは、化石モノマーから得られるポリマーのものと少なくとも同等又はそれよりも更に優れた乾燥強度性能を示すことを観察した。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の文脈では、「再生可能かつ非化石」という用語は、バイオマス又は合成ガス(シンガス)から誘導された、すなわち、1又は複数の天然及び非化石原料に対して行われる1又は複数の化学転換から生じる化学化合物の起源を指定するために使用される。「生物由来」又は「生物資源」という用語は、化学化合物の再生可能かつ非化石起源を特徴付けるために使用することもできる。化合物の再生可能かつ非化石起源は、ポリマー解重合又は熱分解油処理からの材料等の、バイオマス材料リサイクルプロセスで過去に1回又は複数回リサイクルされた、循環経済から生じる再生可能かつ非化石原料を含む。
【0033】
本発明によれば、化合物の「少なくとも部分的に再生可能かつ非化石」の品質は、前記化合物の全炭素質量に対して、好ましくは5wt%~100wt%の生物由来炭素含有量を意味する。
【0034】
本発明の文脈では、ASTM D6866-21規格の方法Bは、化学化合物の生物由来の性質を特徴付け、前記化合物の生物由来炭素含有量を決定するために使用される。値は、前記化合物中の全炭素質量に対する生物由来炭素の質量パーセンテージ(wt%)として表される。
【0035】
ASTM D6866-21規格は、放射性炭素分析による固体、液体及び気体試料の生物由来炭素含有量を実験的に測定する方法を教示する試験方法である。
【0036】
この規格は、主に加速器質量分析(AMS)技術を使用する。この技術は、試料中に存在する放射性核種を自然に測定するために使用され、ここで原子がイオン化され、高エネルギーまで加速された後、分離されファラデーカップ内で個々に計数される。この高エネルギー分離は、同重体干渉を除去するのに非常に効果的であるため、AMSは炭素12に対する炭素14の存在量(14C/12C)を1.10-15の精度まで正確に測定することができる。
【0037】
ASTM D6866-21規格の方法Bは、AMS及びIRMS(同位体比質量分析法)を使用する。この試験方法により、近代炭素系炭素原子を化石系炭素原子と直接区別することができる。製品の炭素14対炭素12又は炭素14対炭素13の含有量の測定は、NISTの標準参照物質(SRM)4990C(シュウ酸)等の、放射性炭素年代測定コミュニティによって受け入れられている現代炭素系参照物質に対して決定される。
【0038】
試料調製法は規格に記載されており、一般的に使用される手順であるため、特別な解説は必要ない。
【0039】
結果の分析、解釈及び報告は以下に記載される。炭素12に対する炭素14の含有量、又は炭素13に対する炭素14の含有量の同位体比は、AMSを使用して測定される。炭素12に対する炭素14の含有量、又は炭素13に対する炭素14の含有量の同位体比は、NIST SRM 4990C現代参照標準物質によって追跡可能な標準物質に対して決定される。「現代炭素比(fraction of modern)」(fM)は、現代標準物質に対する試験製品中の炭素14の量を表す。これは、最も多くの場合、fMに相当するパーセンテージである現代炭素パーセント(pMC)と称される(例えば、fM1=100pMC)。
【0040】
放射性炭素分析から得られたすべてのpMC値は、所与の安定同位体を使用して同位体分別の補正を行わなければならない。補正は、可能な場合、AMSを使用して直接決定された炭素13に対する炭素14の値を使用して行われるべきである。これが不可能な場合は、IRMS、CRDS(キャビティリングダウン分光法)、又は1000分のプラスマイナス0.3以内までの精度を提供できる他の同等の技術によって測定されたデルタ13C(δ13C)を使用して補正を行うべきである。
【0041】
「ゼロpMC」は、材料中にバックグラウンドシグナルを超える測定可能な14Cが全く存在しないことを表し、したがって化石(例えば石油系)炭素源を示す。値100pMCは、完全に「現代の」炭素源であることを示す。0~100のpMC値は、「現代」源に対する化石源から誘導される炭素の割合を示す。
【0042】
pMCは、大気圏核実験計画によって生じる大気中への14C注入の影響が、持続的ではあるが減少しているため、100%より高くなる可能性がある。pMC値を大気補正係数(REF)によって調整し、試料の実際の生物由来含有量を得る必要がある。
【0043】
補正係数は、試験時の大気中の過剰14C放射能に基づいている。オランダの農村地域(Lutjewad、Groningen)における空気中のCO2測定に基づき、2015年のREF値は102pMCと決定された。2004年のこの規格の最初のバージョン(ASTM D6866-04)は、値107.5pMCを参照していたが、その後のバージョンASTM D6866-10(2010)は、値105pMCを参照していた。これらのデータ点は、1年当たり0.5pMCの低下を表す。その結果、毎年1月2日に、以下のTable 1(表1)の値が2019年までREF値として使用され、毎年0.5pMCという同様の減少を反映している。2020年及び2021年のREF値(pMC)は、2019年までのオランダ(Lutjewad、Groningen)での継続的な測定に基づき、100.0と決定された。炭素同位体比データの報告に関する参考文献を、14C及び13Cについてそれぞれ以下に示す Roessler, N.、Valenta, R. J.及びvan Cauter, S.、「Time-resolved Liquid Scintillation Counting」、Liquid Scintillation Counting and Organic Scintillators、Ross, H.、Noakes, J. E.及びSpaulding, J. D.編、Lewis Publishers、Chelsea、MI、1991、501~511頁. Allison, C. E.、Francy, R. J.及びMeijer, H. A. J.、「Reference and Intercomparison Materials for Stable Isotopes of Light Elements」、International Atomic Energy Agency、Vienna、Austria、IAEATECHDOC- 825、1995。
【0044】
生物由来炭素含有量のパーセンテージは、pMCをREFで除し、結果に100を乗じることによって算出される。例えば、[102(pMC)/102(REF)]×100=100%生物由来炭素である。結果は、前記化合物中の全炭素質量に対する生物由来炭素の質量パーセンテージ(wt%)で示される。
【0045】
【表1】
【0046】
本発明の文脈では、「隔離された」という用語は、バリューチェーン(例えば、製品製造方法)において特徴的かつ他の材料の流れから区別可能な材料の流れを意味し、したがって材料の同じ起源、又は同じ規格若しくは規範によるその製造が、このバリューチェーンを通して追跡され保証され得るような、同等の性質を有する材料の集合に属するとみなされる。
【0047】
例えば、これは、化学者が、納入されたアセトアルデヒドの100%生物由来起源を保証する単一の供給業者から100%生物由来アセトアルデヒドを独占的に購入し、前記化学者がこの100%生物由来アセトアルデヒドを他の潜在的なアセトアルデヒド源とは別に処理して化学化合物を生成する場合であってもよい。生成された化学化合物が、前記100%生物由来アセトアルデヒドのみから作製される場合、その化学化合物は100%生物由来である。
【0048】
本発明の文脈では、「隔離されていない」という用語は、「隔離された」という用語とは対照的に、バリューチェーンにおける他の材料の流れと区別できない材料の流れを意味すると理解される。
【0049】
この隔離という概念をより良く理解するために、循環経済及び方法におけるその実用的な応用、特に化学転換についてのいくつかの基本を思い起こすことが有用である。
【0050】
フランス環境エネルギー管理庁(ADEME)によれば、循環経済は、製品(商品及びサービス)のライフサイクルのすべての段階において、資源の利用効率を高め、環境への影響を低減しながら、個人のウェルビーイングを発展させようとする貿易及び生産の経済システムと定義できる。言い換えれば、資源によって生み出される価値を最適化することにより、廃棄物を最小限に抑える効率及び持続可能性に特化した経済システムである。循環経済は、現在のより直線的な「取って、作って、捨てる」アプローチから脱却するために、様々な保全及びリサイクルの実施に大きく依存している。
【0051】
ある物質を別の物質に転換する科学である化学の分野では、これは、製品を作製するために既に使用された材料を再利用することにつながる。理論的には、すべての化学物質は他の化学物質から単離し、したがって別々にリサイクルすることができる。現実は、特に工業においてはより複雑であり、単離された場合であっても、化合物を別の供給源から発生した同じ化合物と区別できないことが多く、したがってリサイクル材料のトレーサビリティを複雑にしている。
【0052】
このため、このような工業の現実を考慮した様々なトレーサビリティモデルが開発され、これにより化学工業の使用者は、事実を完全に把握した上で材料の流れを管理することができ、最終顧客は、対象物又は商品の生産に使用された材料の起源を簡単な方法で理解し、把握することができる。
【0053】
これらのモデルは、バリューチェーン全体の透明性及び信頼を構築するために開発された。最終的に、これによりエンドユーザー又は顧客は、対象物又は商品中の所望の成分(例えば、生物由来の性質)の割合を把握することにより、自ら方法のあらゆる側面を制御する能力を持つことなく、より持続可能な解決策を選択することができる。
【0054】
そのようなモデルの1つが、先に定義した「隔離」である。このモデルが適用される公知の例としては、材料の流れを別々に追跡することが可能なガラス及び一部の金属がある。
【0055】
しかし、化学物質は複雑な組合せで使用されることが多く、特に法外なコスト及び非常に複雑な流れの管理のために、別個のサイクルを実施することは困難であることが非常に多く、したがって「隔離」モデルは常に適用可能ではない。
【0056】
その結果、材料の流れを区別することが不可能な場合、他のモデルが適用され、これらのモデルは、「隔離されていない」という用語の下でまとめてグループ化され、例えば、流れを物理的に分離することなく、他の流れに対する特定の流れの割合を考慮することを伴う。一例は、物質収支方式である。
【0057】
物質収支方式は、監査可能な会計帳簿に基づき、最終製品におけるそのカテゴリーの含有量の比例的かつ適切な配分を保証するために、生産システムにおける全体に対するカテゴリー(例えば「リサイクルされた」)の割合を正確に追跡することを含む。
【0058】
例えば、これは、化学者が、納入されたアセトアルデヒドにおいて、アセトアルデヒドの50%が生物由来起源を有し、事実上50%が生物由来起源のものではないことを物質収支方式又は質量収支方式に従って保証している供給業者から50%の生物由来アセトアルデヒドを購入し、前記化学者が、この50%生物由来アセトアルデヒドと0%生物由来アセトアルデヒドの別の流れを使用し、2つの流れが生産プロセス中のある時点で、例えば混合によって識別できなくなる場合であってもよい。生成された化学化合物が50%生物由来の50wt%の保証されたアセトアルデヒド、及び0%生物由来の50wt%アセトアルデヒドから作製される場合、化学化合物は25%生物由来である。
【0059】
例えば、記載された「生物由来」の数値を保証し、新製品を生産する際にリサイクルされた原料の使用を奨励するために、材料の流れを確実に管理するための一連の世界的に共有され標準化された規則(ISCC+、ISO 14020)が開発された。
【0060】
本発明の文脈では、「リサイクルされた」という用語は、廃棄物とみなされる材料をリサイクルするための方法から誘導される、すなわち、一般的に廃棄物とみなされる少なくとも1つの材料に対して、少なくとも1つのリサイクル方法を使用して行われる1又は複数の転換から得られる化学化合物の起源を意味すると理解される。
【0061】
「水溶性ポリマー」という用語は、25℃で水中20g.L-1の濃度で撹拌することによって溶解させたときに透明な水溶液をもたらすポリマーを意味すると理解される。
【0062】
本発明による方法
したがって、本発明は、2つのうちの一方、好ましくは両方が少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であるアセトアルデヒドとホルムアミドとの間の反応を含む、N-ビニルホルムアミドを得るための方法に関する。
【0063】
より具体的かつ優先的には、N-ビニルホルムアミドを得るために使用され、N-ビニルホルムアミド分子中に見出される炭素原子を含む化合物は、部分的又は全体的に再生可能かつ非化石である。これらの化合物は、アセトアルデヒド及びホルムアミドである。
【0064】
アセトアルデヒドは、好ましくは前記アセトアルデヒド中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%の範囲の生物由来炭素含有量を有し、生物由来炭素含有量は、ASTM D6866-21方法Bに従って測定される。
【0065】
ホルムアミドは、好ましくは前記ホルムアミド中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%の範囲の生物由来炭素含有量を有し、生物由来炭素含有量は、ASTM D6866-21方法Bに従って測定される。
【0066】
本発明全体において、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であることが規定されている、又は生物由来炭素含有量が規定されている化合物の生物由来炭素含有量は、前記化合物中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%、好ましくは10wt%~100wt%、好ましくは15wt%~100wt%、好ましくは20wt%~100wt%、好ましくは25wt%~100wt%、好ましくは30wt%~100wt%、好ましくは35wt%~100wt%、好ましくは40wt%~100wt%、好ましくは45wt%~100wt%、好ましくは50wt%~100wt%、好ましくは55wt%~100wt%、好ましくは60wt%~100wt%、好ましくは65wt%~100wt%、好ましくは70wt%~100wt%、好ましくは75wt%~100wt%、好ましくは80wt%~100wt%、好ましくは85wt%~100wt%、好ましくは90wt%~100wt%、好ましくは95wt%~100wt%、好ましくは97wt%~100wt%、好ましくは99wt%~100wt%の範囲であり、生物由来炭素含有量は、ASTM D6866-21方法Bに従って測定される。
【0067】
優先的には、アセトアルデヒドは、前記アセトアルデヒド中の全炭素質量に対して50wt%~100wt%、好ましくは100wt%の範囲の生物由来炭素含有量を有し、生物由来炭素含有量は、ASTM D6866-21方法Bに従って測定される。
【0068】
優先的には、ホルムアミドは、前記ホルムアミド中の全炭素質量に対して100wt%の生物由来炭素含有量を有し、生物由来炭素含有量は、ASTM D6866-21方法Bに従って測定される。
【0069】
好ましくは、アセトアルデヒドは全体的に再生可能かつ非化石である。好ましくは、ホルムアミドは全体的に再生可能かつ非化石である。好ましくは、アセトアルデヒド及びホルムアミドは、全体的に再生可能かつ非化石である。
【0070】
アセトアルデヒド及び/又はホルムアミド、好ましくは両方は、隔離されていなくてもよく、部分的に隔離されていてもよく、又は完全に隔離されていてもよい。
【0071】
アセトアルデヒド及び/又はホルムアミドが全体的に再生可能かつ非化石である場合、以下のいずれかであり得る:
a)全体的にリサイクル起源のものであり、
a)1)若しくは全体的に隔離されているか、
a)2)若しくは部分的に隔離されているか、
a)3)若しくは隔離されていないか、
b)又は部分的にリサイクル起源のものであり、
b)1)若しくは全体的に隔離されているか、
b)2)若しくは部分的に隔離されているか、
b)3)若しくは隔離されていないか、
c)又は全体的に非リサイクル起源のものであり、
c)1)若しくは全体的に隔離されているか、
c)2)若しくは部分的に隔離されているか、
c)3)若しくは隔離されていない。
【0072】
これらの様々な実施形態では、アセトアルデヒド及び/又はホルムアミドが部分的に隔離されている場合、「隔離された」部分と「隔離されていない」部分との間の質量比は、好ましくは99:1~10:90、好ましくは99:1~30:70、より好ましくは99:1~50:50である。
【0073】
これらの様々な実施形態の中で、3つのa)実施形態、3つのb)実施形態、及び実施形態c)1)が好ましい。これらの実施形態の中で、実施形態a)1)、a)2)、b)1)、b)2)及びc)1)が更により好ましい。最も好ましい2つの実施形態は、a)1)及びb)1)である。
【0074】
好ましくは、アセトアルデヒド及び/又はホルムアミド、好ましくは両方は、部分的に隔離されているか又は全体的に隔離されている。
【0075】
好ましくは、アセトアルデヒド及び/又はホルムアミド、好ましくは両方は、部分的に隔離されているか又は全体的にリサイクルされている。
【0076】
工業的な現実は、生物由来の、全体的にリサイクル及び/若しくは隔離された、又は高度にリサイクル及び隔離された、アセトアルデヒド及び/又はホルムアミドの工業的な量を得ることが常に可能ではないようなものである。したがって、上記の選好は、現時点では実施がより困難である場合がある。実用的な観点からは、実施形態a)3)、b)3)及びc)が、現在より容易かつより大規模に実施されている。循環経済に向けて技術が急速に進化しており、既に適用可能な好ましい態様が、すぐに極めて大規模に適用可能になることは確実である。
【0077】
アセトアルデヒド及び/又はホルムアミドが部分的に再生可能かつ非化石である場合、再生可能部分(生物由来)と非生物由来部分とが区別される。明らかに、それぞれは本明細書で上述された同じ実施形態a)、b)及びc)に従ってもよい。
【0078】
部分的に生物由来のアセトアルデヒド及び/又はホルムアミドの生物由来部分に関しては、化合物が完全に生物由来である場合と同じ選好が適用される。
【0079】
しかし、部分的に生物由来の化合物の非生物由来部分に関しては、循環経済アプローチのために、可能な限り大きなリサイクル成分を有することが更により好ましい。したがって、この場合、実施形態a)1)、a)2)、b)1)、b)2)、特にa)1)及びb)1)が好ましい。
【0080】
アセトアルデヒドは、好ましくは少なくとも部分的に、好ましくは全体的にバイオマスから誘導されるエタノール、又は少なくとも部分的に、好ましくは全体的にバイオマスから誘導されるエチレンのいずれかから得られる。
【0081】
ホルムアミドは、好ましくは少なくとも部分的に、好ましくは全体的にバイオマスから誘導されるギ酸、又は少なくとも部分的に、好ましくは全体的にバイオマスから誘導されるギ酸エチル、又は少なくとも部分的に、好ましくは全体的に再生可能かつ非化石源とみなされるCO2のリサイクルから誘導される一酸化炭素のいずれかから得られる。
【0082】
N-ビニルホルムアミドを形成するためのアセトアルデヒドとホルムアミドとの間の反応に関して、当業者は、既に確立された知識を参照することができる。優先的には、N-ビニルホルムアミドを得るための方法は、特に保護剤として使用されるアルコールがメタノールである場合、「アルコキシ」プロセスによるものである。
【0083】
第1の工程では、アセトアルデヒドを溶媒及び塩基の存在下でホルムアミドと接触させる。優先的には、反応溶媒はトルエンであり、塩基は炭酸水素カリウムである。合成反応器に、トルエンとアセトアルデヒドの混合物を充填する。
【0084】
更に、炭酸水素カリウムをホルムアミドと混合し、この混合物をトルエンとアセトアルデヒドの混合物に連続的に添加する。この添加順序が好ましい。代替的な実施形態では、ホルムアミドと炭酸カリウムの混合物をトルエンとアセトアルデヒドの混合物に順次添加する。反応時間は、一般に0.5時間~10時間、好ましくは1~7時間である。
【0085】
アセトアルデヒドとホルムアミドとの間のモル比は、一般に5:1~1:5、好ましくは2:1~1:2の範囲である。反応温度は、一般に0℃~40℃、好ましくは15℃~30℃の範囲である。
【0086】
こうして形成されたヒドロキシエチルホルムアミドは、反応媒体中で結晶化及び沈殿する。結晶化を制御するために、トルエンとアセトアルデヒドの混合物にヒドロキシエチルホルムアミド結晶を播種し、その後ホルムアミドと炭酸水素カリウムの混合物を添加することが好ましい。
【0087】
この第1の工程の最後に、ヒドロキシエチルホルムアミド結晶は、濾過工程によって溶媒から分離される。非限定的な様態では、濾過装置は、Nutscheフィルター、フィルタープレス、垂直若しくは水平遠心分離機、真空若しくは圧力下の回転フィルター、又は反応器がヒドロキシエチルホルムアミド結晶を保持するために適切なメッシュを有するグリッドをドレインに備える場合には、単純に反応器内のフィルターであり得る。
【0088】
第2の工程では、ヒドロキシエチルホルムアミド結晶にメタノールを添加する。メタノールは、この工程で溶媒と試薬の両方の役割を果たす。メタノールとヒドロキシエチルホルムアミドとの間のモル比は、一般に20:1~1:2、好ましくは5:1~1:1である。
【0089】
エーテル化反応は、酸源、好ましくはブレンステッド酸によって触媒される。任意の有機又は無機酸源が好適であり得るが、優先的には硫酸が選択される。
【0090】
硫酸は、第1の工程で使用された残留炭酸水素カリウムを中和する役割と、反応触媒としての役割の両方を果たす。
【0091】
反応温度は、一般に5~80℃、より優先的には10~40℃である。ヒドロキシエチルホルムアミドとメタノールとの間の反応時間は、0.5時間~10時間、より好ましくは1~8時間である。反応生成物は、液体形態のメトキシエチルホルムアミドである。
【0092】
メトキシエチルホルムアミドは、その後、過剰のメタノール及びトルエンを除去するために精製される。優先的には、この精製は少なくとも1つの真空蒸留カラムによって行われる。
【0093】
第3の最終工程では、こうして得られたメトキシエチルホルムアミドを気相中で加熱分解反応に供する。まず、メトキシエチルホルムアミドを加熱して気化させる。次に、メトキシエチルホルムアミドの蒸気を熱分解器の管に導入して加熱分解に供する。管を、一般に200~600℃、好ましくは250℃~550℃の温度に加熱する。
【0094】
一実施形態によれば、方法は、アルコキシプロセスによってN-ビニルホルムアミドを得るための方法であり、メタノールは保護剤として使用され、前記方法は、好ましくは200℃~600℃の温度及び大気圧又は部分真空下でのN-メトキシエチルホルムアミドの加熱分解を含む。
【0095】
熱分解器は、大気圧又は部分真空下、優先的には部分真空下、より優先的には100mbar未満の絶対圧で操作されてもよい。
【0096】
こうして形成されたN-ビニルホルムアミドガスは、一般にコンデンサー、又は予冷された液体N-ビニルホルムアミドが供給されるガススクラバーのいずれかによって冷却される。こうして得られた液体は、N-ビニルホルムアミドとメタノールの混合物である。任意選択の追加工程は、流下膜式蒸発器、フラッシュ蒸発器、回転蒸発器又は蒸留塔等におけるメタノールの蒸発である。
【0097】
本発明によるモノマー
本発明は更に、N-ビニルホルムアミド中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%の範囲の生物由来炭素含有量を有する生物由来N-ビニルホルムアミドであって、生物由来炭素含有量がASTM D6866-21方法Bに従って測定される、生物由来N-ビニルホルムアミドに関する。「方法」セクションで展開された同じ実施形態及び選好が、モノマーの説明のこのセクションに適用される。
【0098】
本発明はまた、アセトアルデヒドとホルムアミドとの間の反応によって得られる生物由来N-ビニルホルムアミドに関し、前記アセトアルデヒド及び/又は前記ホルムアミド、優先的には両方は、それぞれ前記アセトアルデヒド及び/又は前記ホルムアミド中の全炭素質量を基準として5wt%~100wt%の生物由来炭素含有量を有し、生物由来炭素含有量は、ASTM D6866-21方法Bに従って測定される。
【0099】
好ましくは、アセトアルデヒドは全体的に再生可能かつ非化石である。好ましくは、ホルムアミドは全体的に再生可能かつ非化石である。好ましくは、アセトアルデヒド及びホルムアミドは、全体的に再生可能かつ非化石である。
【0100】
本発明全体において、「生物由来N-ビニルホルムアミド」は、少なくとも部分的に、好ましくは全体的にバイオマスから誘導される、すなわち天然の、非化石起源とは対照的な起源を有する1又は複数の原料に対して行われる1又は複数の化学転換の結果であるN-ビニルホルムアミドを意味すると理解される。生物由来N-ビニルホルムアミドは、生物由来又は生物資源N-ビニルホルムアミドとも称されてもよい。
【0101】
アセトアルデヒド及び/又はホルムアミド、好ましくは両方は隔離されていなくてもよく、部分的に隔離されていてもよく、又は完全に隔離されていてもよい。「方法」セクションで展開された選好が、モノマーについて記載するこのセクションに適用される。
【0102】
特定の実施形態では、アセトアルデヒド及び/又はホルムアミド、好ましくは両方は、部分的又は全体的にリサイクルされていてもよい。「方法」セクションで展開された選好が、モノマーについて記載するこのセクションに適用される。
【0103】
この特定の実施形態において、本発明によるモノマーは、以下の工程:
- 少なくとも1種の再生可能かつ非化石原料をリサイクルしてアセトアルデヒド及び/又はホルムアミドを得る工程、
- アセトアルデヒド及び/又はホルムアミドを反応させてN-ビニルホルムアミドモノマーを得る工程
を含む方法によって得られる。
【0104】
本発明によるポリマー
本発明は、本発明による方法によって得られる少なくとも1種のN-ビニルホルムアミドモノマーの重合によって得られるポリマーに関する。本発明はまた、前述の少なくとも1種のN-ビニルホルムアミドモノマーの重合によって得られるポリマーに関する。「方法」セクションで展開された同じ実施形態及び選好が、このセクションに適用される。
【0105】
本発明によるポリマーは、好ましくは水溶性又は水膨潤性である。ポリマーはまた、超吸収剤であってもよい。
【0106】
本発明によるポリマーは、本発明による方法によって得られる少なくとも1種のN-ビニルホルムアミドモノマーを有するホモポリマー、又は前述のN-ビニルホルムアミドモノマーの少なくとも1種を有しかつ少なくとも1種の異なる追加のモノマーを有するコポリマーであってもよく、追加のモノマーは、有利には少なくとも1種の非イオン性モノマー、及び/又は少なくとも1種のアニオン性モノマー、及び/又は少なくとも1種のカチオン性モノマー、及び/又は少なくとも1種の双性イオン性モノマー、及び/又は疎水性基を含む少なくとも1種のモノマーから選択される。
【0107】
したがって、コポリマーは、第1のモノマー(本発明によるN-ビニルホルムアミド)とは異なる少なくとも第2のモノマーを含んでもよく、この第2のモノマーは、非イオン性モノマー、アニオン性モノマー、カチオン性モノマー、双性イオン性モノマー、疎水性基を含むモノマー、及びそれらの混合物から選択される。
【0108】
非イオン性モノマーは、好ましくはアクリルアミド、メタクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-ビニルホルムアミド(NVF)、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルピリジン及びN-ビニルピロリドン(NVP)、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルスクシンイミド、アクリロイルモルホリン(ACMO)、アクリロイルクロリド、グリシジルメタクリレート、グリセリルメタクリレート及びジアセトンアクリルアミドから選択される。
【0109】
アニオン性モノマーは、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、アクリルアミドウンデカン酸、3-アクリルアミド3-メチルブタン酸、無水マレイン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(ATBS)、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、2-スルホエチルメタクリレート、スルホプロピルメタクリレート、スルホプロピルアクリレート、アリルホスホン酸、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンジスルホン酸、及びこれらのモノマーの水溶性塩、例えばそれらのアルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニウム塩から選択される。アニオン性モノマーは、好ましくはアクリル酸(及び/若しくはその塩)、並びに/又はATBS(及び/若しくはその塩)である。
【0110】
カチオン性モノマーは、好ましくは四級化ジメチルアミノエチルアクリレート(ADAME)、四級化ジメチルアミノエチルメタクリレート(MADAME)、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド(DADMAC)、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(APTAC)、及びメタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(MAPTAC)から選択される。
【0111】
双性イオン性モノマーは、ビニル型単位、特にアクリルアミド、アクリル酸、アリル酸又はマレイン酸の誘導体であってもよく、このモノマーは、アミン又はアンモニウム官能基(有利には第四級)及びカルボン酸(若しくはカルボキシレート)、スルホン酸(若しくはスルホネート)又はリン酸(若しくはホスフェート)型の酸官能基を有する。
【0112】
疎水性を有するモノマーも、ポリマーの調製に使用することができる。好ましくは、これらはアルキル、アリールアルキル、プロポキシル化、エトキシル化又はエトキシル化及びプロポキシル化鎖を有する(メタ)アクリル酸のエステル、アルキル、アリールアルキル、プロポキシル化、エトキシル化、エトキシル化及びプロポキシル化鎖、又はジアルキルを有する(メタ)アクリルアミドの誘導体、アルキルアリールスルホネート、又はプロポキシル化、エトキシル化、又はエトキシル化及びプロポキシル化アルキル、アリールアルキル鎖を有する(メタ)アクリルアミドの一又は二置換アミドの誘導体、プロポキシル化、エトキシル化、エトキシル化及びプロポキシル化アルキル、アリールアルキル、又はジアルキル鎖を有する(メタ)アクリルアミドの誘導体、アルキルアリールスルホネートからなる群から選択される。
【0113】
これらのモノマーのそれぞれはまた、生物由来であってもよい。
【0114】
本発明によれば、ポリマーは直鎖状、分岐状、星状、櫛状、樹枝状又はブロック構造を有してもよい。これらの構造は、開始剤、移動剤、RAFT(可逆的付加-開裂連鎖移動)、NMP(ニトロキシド媒介重合)又はATRP(原子移動ラジカル重合)と称される制御ラジカル重合等の重合技術、構造モノマーの組込み、濃度を選択することによって得ることができる。
【0115】
本発明によれば、ポリマーは、有利には直鎖状及び構造化されている。構造化ポリマーは、このポリマーが水に溶解される場合、非常に実質的な低勾配粘度をもたらす顕著な絡み合い状態を得るために側鎖を有する非直鎖状ポリマーを指す。本発明のポリマーはまた、架橋されてもよい。
【0116】
更に、本発明によるポリマーは、以下によって構造化されてもよい:
- 例えばビニル官能基、特にアリル、アクリル及びエポキシ官能基等のポリエチレン性不飽和モノマー(少なくとも2つの不飽和官能基を有する)を含む群から選択されてもよく、例えばメチレンビスアクリルアミド(MBA)、トリアリルアミン、若しくはテトラアリルアンモニウムクロリド、若しくは1,2ジヒドロキシエチレンビス-(N-アクリルアミド)を挙げることができる少なくとも1種の構造化剤、並びに/又は
- マクロ開始剤、例えばポリペルオキシド、ポリアゾイド、及びポリ移動剤、例えばポリマー性(コ)ポリマー及びポリオール、並びに/又は
- 官能化多糖類。
【0117】
モノマー混合物中の分岐/架橋剤の量は、有利にはモノマー含有量(質量)に対して4wt%未満、より有利には1%未満、更により有利には0.5%未満である。特定の実施形態によれば、分岐/架橋剤の量は、モノマー含有量に対して少なくとも0.00001wt%に等しくてもよい。
【0118】
特定の実施形態では、本発明によるポリマーは、半合成、したがって半天然ポリマーであってもよい。この実施形態では、ポリマーは、本発明による少なくとも1種のモノマーと、少なくとも1種の天然化合物との全体的又は部分的なグラフト化による共重合によって合成されてもよく、前記天然化合物は、好ましくはデンプン及びその誘導体、多糖類及びその誘導体、繊維、植物性ガム、動物性ガム又は藻類ガム、並びにそれらの変性型から選択される。例えば、植物性ガムとして、グアーガム、アラビアガム、ローカストビーンガム、トラガカントガム、グアニジニウムガム、シアニンガム、タラガム、カシアガム、キサンタンガム、ガティガム、カラヤガム、ジェランガム、クラスタマメ(cyamopsis tetragonoloba)ガム、大豆ガム、又はベータ-グルカン又はダンマーを挙げることができる。天然化合物はまた、ゼラチン、カゼイン又はキトサンであってもよい。例えば、藻類ガムとして、アルギン酸ナトリウム若しくはその酸、寒天又はカラギーナンを挙げることができる。
【0119】
重合は一般に、これは限定的ではないが、共重合又はグラフト化によって行われる。当業者は、半天然ポリマーの分野における現在の一般的な知識を参照することができる。
【0120】
本発明はまた、本発明による少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の天然ポリマーを含む組成物であって、前記天然ポリマーが、好ましくは前述の天然ポリマーから選択される組成物に関する。合成ポリマーと天然ポリマーとの間の質量比は、一般に90:10~10:90である。組成物は、液体、逆エマルジョン又は粉末形態であってもよい。
【0121】
一般に、ポリマーは、特定の重合法を開発する必要はない。実際、ポリマーは、当業者に周知のすべての重合技術に従って得ることができる。特に、重合技術は、溶液重合、ゲル重合、沈殿重合、エマルジョン重合(水性又は逆)、懸濁重合、反応性押出重合、水中水重合、又はミセル重合であってもよい。
【0122】
重合は、一般に、好ましくは逆エマルジョン重合又はゲル重合によるフリーラジカル重合である。フリーラジカル重合には、UV、アゾ、レドックス若しくは熱開始剤を使用したフリーラジカル重合、及び制御ラジカル重合(CRP)技術、又はマトリックス重合技術が含まれる。
【0123】
本発明によるポリマーは、重合によって得られた後に修飾することができる。これは、ポリマーの後修飾として公知である。すべての公知の後修飾を、本発明によるポリマーに適用することができ、本発明は前記後修飾後に得られるポリマーにも関する。以下に展開される可能な後修飾の中で、後加水分解、マンニッヒ反応による後修飾、ホフマン反応による後修飾、及びグリオキサール化反応による後修飾を挙げることができる。
【0124】
本発明によるポリマーは、本発明による方法によって得られた少なくとも1種のモノマー、又は「モノマー」セクションで前述した少なくとも1種のモノマーの重合によって得られたポリマーに対して後加水分解反応を行うことによって得ることができる。後加水分解の前に、ポリマーは、例えばアクリルアミド又はメタクリルアミドモノマー単位を含む。ポリマーはまた、N-ビニルホルムアミドのモノマー単位を更に含んでもよい。より具体的には、後加水分解は、有利には非イオン性モノマー単位の加水分解可能な官能基、より有利にはアミド又はエステル官能基と加水分解剤との反応を含む。この加水分解剤は、酵素、イオン交換樹脂、アルカリ金属、又は好適な酸化合物であってもよい。好ましくは、加水分解剤はブレンステッド塩基である。ポリマーがアミド及び/又はエステルモノマー単位を含む場合、後加水分解反応はカルボキシレート基を生成する。ポリマーがビニルホルムアミドモノマー単位を含む場合、後加水分解反応はアミン基を生成する。
【0125】
本発明によるポリマーは、本発明による方法によって得られた少なくとも1種のモノマー、又は「モノマー」セクションで前述した少なくとも1種のモノマーの重合によって得られたポリマーに対してマンニッヒ反応を行うことによって得ることができる。より具体的には、マンニッヒ反応の前に、ポリマーは、有利にはアクリルアミド及び/又はメタクリルアミドモノマー単位を含む。マンニッヒ反応は、ジアルキルアミン及びホルムアルデヒド前駆体の存在下で水溶液中で行われる。より有利には、ジアルキルアミンはジメチルアミンであり、ホルムアルデヒド前駆体はホルムアルデヒドそれ自体である。この反応後、ポリマーは第三級アミンを含む。
【0126】
本発明によるポリマーは、本発明による方法によって得られた少なくとも1種のモノマー、又は「モノマー」セクションで前述した少なくとも1種のモノマーの重合によって得られたポリマーに対してホフマン反応を行うことによって得ることができる。ホフマン反応の前に、ポリマーは、有利にはアクリルアミド及び/又はメタクリルアミドモノマー単位を含む。いわゆるホフマン分解反応は、アルカリ土類及び/又はアルカリ水酸化物並びにアルカリ土類及び/又はアルカリ次亜ハロゲン化物の存在下で、水溶液中で行われる。
【0127】
19世紀末にホフマンによって発見されたこの反応は、アミド官能基を炭素原子が1つ少ない第一級アミン官能基に変換するために使用される。詳細な反応機構を以下に示す。
【0128】
ブレンステッド塩基(例えばソーダ)の存在下では、アミドからプロトンが抽出される。
【0129】
【化2】
【0130】
形成されたアミデートイオンは、次いで次亜塩素酸塩(例えば:平衡状態にあるNaClO: 2NaOH + Cl2⇔NaClO + NaCl + H2O)の活性塩素(Cl2)と反応してN-クロラミドを生成する。ブレンステッド塩基(例えば、NaOH)は、クロラミドからプロトンを抽出してアニオンを形成する。アニオンは塩化物イオンを失い、イソシアネート転位を受けるニトレンを形成する。
【0131】
【化3】
【0132】
水酸化物イオンとイソシアネートとの間の反応により、カルバメートが形成される。
【0133】
【化4】
【0134】
カルバメートからの脱炭酸(CO2の除去)後、第一級アミンが得られる。
【0135】
【化5】
【0136】
アミド基を含む(コ)ポリマーのアミド官能基の全部又は一部をアミン官能基に変換するために、2つの主な因子が関与する(モル比で表される)。これらは以下の通りである:
- アルファ=(アルカリ及び/又はアルカリ土類次亜ハロゲン化物/アミド基)並びに
- ベータ=(アルカリ及び/又はアルカリ土類水酸化物/アルカリ及び/又はアルカリ土類次亜ハロゲン化物)。
【0137】
本発明によるポリマーはまた、本発明による方法によって得られた少なくとも1種のモノマー、又は「モノマー」セクションで前述した少なくとも1種のモノマーの重合によって得られたポリマーに対してグリオキサール化反応を行うことによって得ることができ、前記ポリマーは、グリオキサール化反応により、有利にはアクリルアミド又はメタクリルアミドの少なくとも1種のモノマー単位を含む。より具体的には、グリオキサール化反応は、ポリマー上の少なくとも1つのアルデヒドの反応を含み、それにより前記ポリマーを官能化することができる。有利には、アルデヒドは、グリオキサール、グルタルアルデヒド、フランジアルデヒド、2-ヒドロキシアジポアルデヒド、スクシンアルデヒド、デンプンジアルデヒド、2.2-ジメトキシエタナール、ジエポキシ化合物、及びそれらの組合せを含む群から選択され得る。好ましくは、アルデヒド化合物はグリオキサールである。
【0138】
本発明によれば、ポリマーの調製に噴霧乾燥、ドラム乾燥、マイクロ波乾燥等の放射線乾燥、又は流動床乾燥等の乾燥工程が含まれる場合、ポリマーは、液体、ゲル又は固体形態であってもよい。
【0139】
本発明によれば、水溶性ポリマーは、好ましくは1000~4000万g/molの分子量を有する。ポリマーは分散剤であってもよく、この場合、その分子量は好ましくは1000~50,000g/molである。ポリマーは、より高い分子量、典型的には100万~3000万g/molを有してもよい。分子量は質量平均分子量として理解される。本発明によるポリマーはまた、水中でその質量の10~500倍を吸収することができる超吸収剤であってもよい。
【0140】
分子量は、有利には(コ)ポリマーの固有粘度によって決定される。固有粘度は、当業者に公知の方法によって測定することができ、濃度(x軸)に対して還元粘度値(y軸)をプロットし、曲線をゼロ濃度に外挿することを伴うグラフ法により、異なる(コ)ポリマー濃度の還元粘度値から計算することができる。固有粘度値をy軸に、又は最小二乗法を使用してプロットする。次いで、分子量を、Mark-Houwinkの式を使用して決定することができる:
[η]=K Mα
[η]は、溶液粘度測定法によって決定される(コ)ポリマーの固有粘度を表す。
Kは実験定数を表す。
Mは(コ)ポリマーの分子量を表す。
αはMark-Houwink係数を表す。
K及びαは、特定の(コ)ポリマー-溶媒系に依存する。
【0141】
本発明のポリマーを得るために本発明によるモノマーと組み合わされるコモノマーは、好ましくは少なくとも部分的に、より好ましくは全体的に再生可能かつ非化石である。
【0142】
したがって、好ましい実施形態では、本発明は以下を含むポリマーに関する:
- 少なくとも5mol%、好ましくは少なくとも10mol%、好ましくは20mol%~99mol%、より好ましくは30mol%~90mol%の第1のモノマーであって、前記モノマーが本発明によるモノマーである第1のモノマー、及び
- 少なくとも1mol%、好ましくは5mol%~90mol%、より好ましくは10mol%~80mol%のエチレン性不飽和を含む少なくとも1種の第2のモノマーであって、前記第2のモノマーが第1のモノマーとは異なり、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である第2のモノマー。
【0143】
したがって、好ましい実施形態では、本発明は以下を含むポリマーに関する:
- 少なくとも5mol%、好ましくは少なくとも10mol%、好ましくは20mol%~99mol%、より好ましくは30mol%~90mol%の第1のモノマーであって、前記モノマーが本発明によるモノマーである第1のモノマー、及び
- 少なくとも1mol%、好ましくは5mol%~90mol%、より好ましくは10mol%~80mol%のエチレン性不飽和を含む少なくとも1種の第2のモノマーであって、前記第2のモノマーが第1のモノマーとは異なり、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である第2のモノマー、
- 少なくとも1mol%、好ましくは5mol%~90mol%、より好ましくは10mol%~80mol%のエチレン性不飽和を含む少なくとも1種の第3のモノマーであって、前記第3のモノマーが第1のモノマー及び第2のモノマーとは異なり、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である第3のモノマー。
【0144】
本発明によるポリマーは、4種以上の異なるモノマーを含んでもよい。
【0145】
好ましい実施形態では、第2のモノマー及び可能性のある他のモノマーは、関連モノマー中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%、好ましくは10wt%~100wt%の範囲の生物由来炭素含有量を有し、生物由来炭素含有量は、ASTM D6866-21方法Bに従って測定される。
【0146】
本発明による好ましい実施形態では、第2のモノマー及び任意の他のモノマーは、アクリルアミド、(メタ)アクリル酸及び/又はその塩、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(ATBS)及び/又はその塩、N-ビニルピロリドン(NVP)ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びその四級化型、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド(DADMAC)、式CH2=CHCO-NR1R2を有する置換アクリルアミドであって、R1及びR2が互いに独立して直鎖状又は分岐状炭素鎖CnH2n+1であり、nが1~10の範囲である置換アクリルアミドから選択される。
【0147】
本発明全体において、ポリマーのモノマー(架橋剤を除く)のモルパーセンテージは100%に等しいことが理解される。
【0148】
本発明はまた、本発明による方法に従って得られた少なくとも1種のN-ビニルホルムアミドモノマー、又は前述の少なくとも1種のN-ビニルホルムアミドモノマーの重合によって得られたポリマーに関し、前記ポリマーを、次いで酸又は塩基性加水分解によって部分的又は全体的に加水分解して、少なくとも1種のN-ビニルホルムアミドモノマー単位をN-ビニルアミンに変換する。
【0149】
この実施形態において、加水分解前のポリマーは、優先的には少なくとも80mol%のN-ビニルホルムアミドモノマー単位を含むポリマーである。優先的には、ポリマーは、N-ビニルホルムアミドホモポリマーである。加水分解率は、20~100%、好ましくは25~90%、更により好ましくは30~80%の範囲であってもよく、この比率は、加水分解前のポリマー中に存在するN-ビニルホルムアミドモノマー単位の総数に対する、ビニルアミンモノマー単位に変換されたN-ビニルホルムアミドモノマー単位のパーセンテージを表す。
【0150】
この実施形態では、加水分解は、優先的にはN-ビニルホルムアミドホモポリマーに対して行われる。加水分解後に得られるポリマーは、ビニルホルムアミド/ビニルアミンコポリマー又はビニルアミンホモポリマーである。前記ポリマー(又はホモポリマー)のビニルアミン単位のモルパーセンテージは、優先的には20~100%、好ましくは25~90%、更により好ましくは30~80%の範囲である。
【0151】
好ましくは、本発明によるポリマーは、前記ポリマー中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%の範囲の生物由来炭素含有量を含み、生物由来炭素含有量は、ASTM D6866-21方法Bに従って測定される。
【0152】
本発明はまた、ポリマーを合成するための、本発明による又は前述の方法に従って得られる少なくとも1種のN-ビニルホルムアミドモノマーの使用に関する。
【0153】
本発明によるポリマーの使用
本発明はまた、炭化水素(油及び/又はガス)の回収、井戸の掘削及びセメンチング、炭化水素井戸(油及び/又はガス)の刺激、例えば水圧破砕、適合、分流、開放、閉鎖又は半閉鎖回路における水の処理、発酵スラリーの処理、スラッジの処理、製紙、建設、木材加工、水硬性組成物処理(コンクリート、セメント、モルタル及び骨材)、鉱業、化粧品の調合、洗剤の調合、繊維製造、電池構成要素製造、地熱エネルギー、生理用ナプキン製造、又は農業における本発明によるポリマーの使用に関する。
【0154】
本発明はまた、凝集剤、凝固剤、結合剤、固定剤、粘度低減剤、増粘剤、吸収剤、摩擦低減剤、除水剤、排水剤、電荷保持剤、脱水剤、コンディショニング剤、安定化剤、膜形成剤、サイズ調整剤、超可塑化剤、クレイ抑制剤又は分散剤としての本発明によるポリマーの使用に関する。
【0155】
本発明によるポリマーを使用する方法
本発明はまた、本発明のポリマーを使用して塗布性能を改善する、以下に記載される様々な方法に関する。
【0156】
本発明はまた、以下の工程:
a.水又はブラインを用いて本発明によるポリマーから注入流体を調製する工程、
b.注入流体を地下層に注入する工程、
c.注入流体で地下層を掃攻する工程、
d.油及び/又はガスの水性混合物を回収する工程
を含む、地下層を掃攻することによって油又はガスの回収を強化するための方法に関する。
【0157】
本発明はまた、以下の工程:
a.水又はブラインを用いて、かつ少なくとも1種のプロパントを用いて、本発明によるポリマーから注入流体を調製する工程、
b.前記流体を地下貯留層に注入し、その少なくとも一部を破砕して油及び/又はガスを回収する工程
を含む、地下油及び/又はガス貯留層の水圧破砕のための方法に関する。
【0158】
上述の方法において、ポリマーは、好ましくは高分子量ポリマー(800万ダルトンより大きい)である。ポリマーは、好ましくは直鎖状である。ポリマーは、好ましくは粉末、逆エマルジョン、部分的に脱水された逆エマルジョンの形態、又は「透明な」、すなわち水性若しくは油性流体中の固体ポリマー粒子の分散液の形態である。粉末形態は、好ましくは逆エマルジョンのゲル又は噴霧乾燥によって得られる。粉末形態はまた、本発明によるポリマーの逆エマルジョン、及び本発明によるポリマーの固体粒子を含む組成物を含む。
【0159】
本発明はまた、以下の工程:
a.水又はブラインを用いて本発明によるポリマーから注入流体を調製する工程、
b.注入流体を地下層に注入する工程、
c.注入流体で地下層を部分的又は全体的に塞ぐ工程であって、前記塞ぐ工程が一時的又は永久的である工程
を含む、地下層を刺激する方法に関する。
【0160】
本発明はまた、以下の工程:
a.水又はブラインを用いて本発明によるポリマーから注入流体を調製する工程、
b.井戸を掘削又はセメンチングする少なくとも1つの工程において、ドリルヘッドを介して前記掘削及び/又はセメンチング流体を地下層に注入する工程
を含む、地下層に井戸を掘削及び/又はセメンチングする方法に関する。
【0161】
井戸の掘削及びセメンチングは、地下層に井戸を作り出すための2つの連続した工程である。第1の工程は、掘削流体による掘削であり、一方で第2の工程は、セメンチング流体による井戸のセメンチングである。本発明はまた、掘削流体とセメンチング流体との間に注入される中間流体(「スペーサー流体」)を注入する方法であって、前記中間流体が本発明による少なくとも1種のポリマーを含む、方法に関する。この中間流体は、セメンチング流体と掘削流体との間の混入を防止する。
【0162】
井戸の掘削及びセメンチングの際、本発明によるポリマーは、セメント組成物がその中に、又はそれ通して圧送される浸透性地層又はゾーンへのセメント組成物からの流体損失を低減するために、井戸セメント組成物中の流体損失添加剤として使用することができる。一次セメンチングにおいて、浸透性地層又は地下ゾーンへの流体、すなわち水の損失は、セメント組成物の早期ゲル化につながる可能性があるため、浸透性地層又はゾーンとそこにセメンチングされたドリルストリングとの間の環状空間を橋渡しすることにより、セメント組成物が環の全長に沿って配置されるのを防ぐ。
【0163】
本発明はまた、建設目的の水硬性組成物中のクレイを不活性化する方法であって、前記方法が、水硬性組成物又はその構成成分の1種に、少なくとも1種のクレイ不活性化剤を添加する工程を含み、クレイ不活性化剤が、本発明によるポリマーであることを特徴とする、方法に関する。
【0164】
クレイは水を吸収する可能性があり、建材の性能を低下させる。本発明のポリマーをクレイ抑制剤として使用すると、特にひび割れの原因となり、したがって建築物を弱体化させ得るクレイの膨潤を回避することができる。
【0165】
水硬性組成物は、コンクリート、セメント、モルタル又は骨材であってもよい。ポリマーは、水硬性組成物又はその構成成分の1つに、有利には骨材の質量に対して2~200ppmの不活性化剤の投与量で添加される。
【0166】
クレイを不活性化するこの方法において、クレイは、2:1膨潤性クレイ(スメクタイト等)、又は1:1膨潤性クレイ(カオリン等)、又は2:1:1膨潤性クレイ(クロライト等)を含むがこれらに限定されない。「クレイ」という用語は、一般に、ラメラ構造を有するフィロ珪酸塩を含むマグネシウム及び/又はアルミニウム珪酸塩を指す。しかし、本発明において、用語「クレイ」は、非晶質クレイ等のそのような構造を有さないクレイも含む。
【0167】
本発明はまた、紙、厚紙等のシートを製造するための方法であって、シートが形成される前に、繊維の懸濁液に、1つ又は複数の注入点で、本発明による少なくとも1種のポリマーを添加することを含む工程が実施される、方法に関する。ポリマーは、乾燥強度又は保持特性又は湿潤強度を提供することができる。ポリマーはまた、紙の地合、排水及び除水能力を向上させることができる。
【0168】
方法は、包装紙及び厚紙、塗工紙、衛生紙及び家庭紙、あらゆる種類の紙、厚紙等の製造に成功裏に使用することができる。
【0169】
「ポリマー」セクションに記載された後修飾ポリマー、特にホフマン反応又はグリオキサール化反応による後修飾ポリマーは、紙、厚紙等を製造するための方法において特に有利である。
【0170】
保持特性は、紙パルプの懸濁物質(繊維、微粉、填料(炭酸カルシウム、酸化チタン)...)を形成布に、したがって最終シートを構成する繊維状マット中に保持する能力を意味すると理解される。保持剤の作用様式は、これらの懸濁物質を水中で凝集させることに基づく。実際、形成されたフロックは、形成シート上により容易に保持される。
【0171】
填料の保持は、填料(セルロースと親和性の低い小さな鉱物種)を特異的に保持することを含む。填料の保持の大幅な改善は、填料をシートに保持し、その坪量を増加させることにより、白水の透明化をもたらす。これにより、製造コストを削減するために、繊維(紙、厚紙等の組成物中の最も高価な種)の一部を填料(より低コスト)で置き換えることもできる。
【0172】
除水(又は排水)特性に関して、この特性は、特にシートの製造中に、シートが可能な限り早く乾燥するように最大量の水を排出又は排水する繊維状マットの能力である。
【0173】
これらの2つの特性(保持及び排水)は複雑に関連しており、一方は他方に依存しているため、問題は、保持と排水との間の最適な妥協点を見出すことである。一般に、当業者は保持及び排水剤に言及するが、これはこの薬剤が、これら2つの特性を改善するのに使用される同じ種類の製品であるためである。
【0174】
繊維状懸濁液は、水及びセルロース繊維からなる濃厚パルプ又は希釈パルプを意味すると理解される。乾物濃度が1%より高い、或いは3%より高い濃厚ストックは、ファンポンプの上流に配置される。乾物濃度が一般に1%未満の希薄ストックは、ファンポンプの下流に配置される。
【0175】
ポリマーは、濃厚ストック又は希薄ストックに添加されてもよい。ポリマーは、ファンポンプ又はヘッドボックスの位置で添加されてもよい。好ましくは、ポリマーはヘッドボックスの前に添加される。
【0176】
本発明による紙、厚紙等を作製するための方法において、本発明によるポリマーは、単独で又は二次保持剤と組み合わせて使用されてもよい。好ましくは、有機ポリマー及び/又は無機微粒子から選択される二次保持剤が繊維懸濁液に添加される。
【0177】
繊維状懸濁液に添加されるこの二次保持剤は、有利には広義のアニオン性ポリマーから選択されるため、これらは(限定するものではないが)、直鎖状、分岐状、架橋状、疎水性、会合性及び/又は無機微粒子(例えばベントナイト、コロイド状シリカ)であってもよい。
【0178】
本発明はまた、採鉱又はオイルサンド作業から生じる水中の固体粒子の懸濁液を処理するための方法であって、前記懸濁液を本発明による少なくとも1種のポリマーと接触させる工程を含む方法に関する。このような方法は、一般に、粒子が沈降し得る円錐底部を有する、直径数メートルの管部の形態の滞留ゾーンである濃縮器で行うことができる。具体的な実施形態によれば、水性懸濁液はパイプによって濃縮器に輸送され、前記パイプにポリマーが添加される。
【0179】
別の実施形態によれば、ポリマーは、処理すべき懸濁液を既に含んでいる濃縮器に添加される。典型的な鉱物処理作業では、懸濁液はしばしば濃縮器で濃縮される。この結果、濃縮器の底部からより高密度のスラッジが流出し、濃縮器の上部から、処理された懸濁液から放出された水性流体(リカーと呼ばれる)がオーバーフローによって流出する。一般に、ポリマーの添加はスラッジの濃度を高め、リカーの透明度を高める。
【0180】
別の実施形態によれば、ポリマーは、前記懸濁液を堆積領域へ輸送する間に粒子状懸濁液に添加される。好ましくは、ポリマーは、前記懸濁液を堆積ゾーンに搬送するパイプ中に添加される。処理された懸濁液が除水及び固化の準備のために散布されるのは、この堆積領域上である。堆積領域は、土壌の非密閉領域等の開放領域、又は水盤、セル等の閉鎖領域のいずれかであってもよい。
【0181】
懸濁液の輸送中のこのような処理の例は、本発明によるポリマーで処理された懸濁液を、除水及び固化の準備のために土壌上に散布し、次いで固化した第1の層の上に、処理された懸濁液の第2の層を散布することである。別の例は、本発明によるポリマーで処理した懸濁液を、処理した懸濁液が堆積領域で以前に排出された懸濁液の上に連続的に落下するような態様で連続的に散布することであり、その結果、そこから水が抽出される処理物質の塊が形成される。
【0182】
別の実施形態によれば、水溶性ポリマーが懸濁液に添加され、遠心分離、プレス又は濾過等の機械的処理が実施される。
【0183】
水溶性ポリマーは、懸濁液処理の異なる段階、すなわち、例えば、懸濁液を濃縮器に運ぶパイプ中、及び沈殿領域又は機械的処理デバイスのいずれかに搬送される、濃縮器から出るスラッジ中に同時に添加することができる。
【0184】
本発明はまた、都市用水又は工業用水を処理するための方法であって、本発明による少なくとも1種のポリマーを、処理される前記水に導入する工程を含む、方法に関する。効果的な水処理には、水から溶解化合物、並びに分散及び懸濁固形物を除去することが必要である。一般に、この処理は、凝固剤及び凝集剤等の化学薬品によって強化される。これらは通常、浮遊及び沈降等の分離装置の前で水流に添加される。
【0185】
本発明によるポリマーは、都市廃水又は工業廃水中の懸濁粒子を凝固又は凝集させるために有利に使用できる。一般に、これらは、ミョウバン等の無機凝固剤と組み合わせて使用される。
【0186】
これらはまた、この廃水処理から生成されるスラッジの処理に有利に使用できる。下水スラッジ(都市用であれ工業用であれ)は、廃液から処理プラントによって生成される主な廃棄物である。一般に、スラッジ処理には除水が含まれる。この除水は、遠心分離、フィルタープレス、ベルトプレス、電気除水、スラッジ乾燥葦床、天日乾燥によって行うことができる。これは、スラッジの水分濃度を下げるために使用される。
【0187】
この都市又は工業用水処理プロセスにおいて、本発明によるポリマーは、好ましくは直鎖状又は分岐状である。ポリマーは、好ましくは粉末、逆エマルジョン又は部分的に脱水された逆エマルジョンの形態である。粉末形態は、好ましくは逆エマルジョンからのゲル又は噴霧乾燥によって得られる。
【0188】
本発明はまた、本発明による少なくとも1種のポリマーを含む、化粧用、皮膚科学又は医薬組成物のための添加剤に関する。本発明はまた、増粘(剤)、コンディショニング(剤)、安定化(剤)、乳化(剤)、固定(剤)又は膜形成剤としての前記組成物の製造における本発明によるポリマーの使用に関する。本発明は、同様に、本発明による少なくとも1種のポリマーを含む化粧用、皮膚科学又は医薬組成物に関する。
【0189】
特に、そのような組成物の製造及びそのような組成物の他の成分の記載に関する、L'OREALを代理する出願FR2979821を参照することができる。前記組成物は、ミルク、ローション、ゲル、クリーム、ゲルクリーム、石鹸、バブルバス、バーム、シャンプー又はコンディショナーの形態であってもよい。皮膚、頭皮、睫毛、眉毛、爪、毛髪及び/又は粘膜等のケラチン物質の美容又は皮膚科学的処置法のための前記組成物の使用もまた、本発明の不可欠な部分である。このような使用は、ケラチン物質への組成物の塗布、場合によってはそれに続く水によるすすぎを含む。
【0190】
本発明はまた、洗剤組成物用の添加剤であって、前記添加剤が本発明による少なくとも1種のポリマーを含む、添加剤に関する。本発明はまた、増粘(剤)、コンディショニング(剤)、安定化(剤)、乳化(剤)、固定(剤)又は膜形成剤としての前記組成物の製造における本発明によるポリマーの使用に関する。本発明は、同様に、本発明による少なくとも1種のポリマーを含む、家庭用又は工業用の洗剤組成物に関する。特に、そのような組成物の製造及びそのような組成物の他の成分の記載については、本出願人の出願WO2016020622を参照することができる。
【0191】
「家庭用又は工業用の洗剤組成物」は、様々な表面、特に織物繊維、食器、床、窓、木材、金属等の任意の種類の硬質表面、又は複合材表面を洗浄するための組成物を意味すると理解される。このような組成物には、例えば、衣類を手動で又は洗濯機で洗うための洗剤、食器を手動洗浄するための、又は食器洗浄機用製品、台所要素、トイレ、家具、床、窓等の住宅内装を洗うための洗剤製品、及び普遍的な用途のための他の洗浄製品が含まれる。
【0192】
化粧用、皮膚科学、医薬又は洗剤組成物の添加剤、例えば増粘剤として使用されるポリマーは、好ましくは架橋されている。ポリマーは、好ましくは粉末、逆エマルジョン又は部分的に脱水された逆エマルジョンの形態である。粉末形態は、好ましくは逆エマルジョンからの噴霧乾燥によって得られる。
【0193】
本発明は、同様に、本発明による少なくとも1種のポリマーを含む、捺染に使用される顔料組成物用のための増粘剤に関する。本発明はまた、本発明による少なくとも1種のポリマーを含む織物繊維サイズ調整剤に関する。
【0194】
本発明はまた、本発明によるモノマーから超吸収剤を製造するための方法であって、超吸収剤が本発明による少なくとも1種のモノマーから得られ、前記超吸収剤が、農業用途において水を吸収し保持するため、又は生理用ナプキンにおいて水性液体を吸収するために使用される、方法に関する。例えば、超吸収剤は本発明によるポリマーである。
【0195】
本発明はまた、本発明によるポリマーが、例えば超吸収剤として使用される、生理用ナプキンを製造するための方法に関する。
【0196】
本発明はまた、電池バインダーとしての本発明によるポリマーの使用に関する。本発明はまた、本発明によるポリマー、電極材料及び溶媒を含む電池バインダー組成物に関する。本発明はまた、本発明による少なくとも1種のポリマーを含むゲルを作製し、これを前記電池に充填する工程を含む、電池を製造するための方法に関する。医療デバイス、電気自動車、航空機、並びに最も重要なことに、ノートパソコン、携帯電話及びカメラ等の消費者製品を含む様々な製品に使用されるリチウムイオン電池を挙げることができる。
【0197】
一般に、リチウムイオン電池(LIB)は、負極、正極、及びリチウム塩を含む有機溶媒等の電解質材料を含む。より具体的には、負極及び正極(総称して「電極」)は、電極活物質(負極又は正極)をバインダー及び溶媒と混合してペースト又はスラッジを形成し、これをアルミニウム又は銅等の集電体上に塗布して乾燥させ、集電体上に膜を形成することによって形成される。その後、負極及び正極を積層して巻いた後、電解質材料を含む加圧ケースに収納し、これらすべてを合わせてリチウムイオン電池を形成する。
【0198】
リチウム電池では、バインダーは、機械的性能と電気化学的性能の両方においていくつかの重要な役割を果たす。第一に、バインダーは、製造プロセス中に溶媒に他の成分を分散させるのを助け(増粘剤の役割を果たすものもある)、それにより均一な分布を可能にする。第二に、バインダーは、活性成分、導電性添加剤、及び集電体を含む様々な構成要素を一緒に保持し、これらの部品のすべてが接触を保つことを確実にする。化学的又は物理的な相互作用により、バインダーはこれらの別個の構成要素を接続させ、それらを一緒に保持し、電子又はイオン伝導性に重大な影響を与えることなく、電極の機械的完全性を確保する。第三に、バインダーは、多くの場合電極と電解液との間の界面として機能する。この役割において、バインダーは、電極を腐食から保護するか、又は電解液を枯渇から保護する一方で、この界面を横切るイオンの移動を促進することができる。
【0199】
別の重要な点は、バインダーが割れない又は欠陥を生じないように、ある程度の柔軟性を有さなければならないことである。脆弱性は、電池の製造又は組立ての際に問題を引き起こす可能性がある。
【0200】
電極において(かつバッテリー全体において)バインダーが果たすすべての役割を考慮すると、バインダーの選択は、良好なバッテリーの性能を確保する上で非常に重要である。
【0201】
本発明はまた、本発明によるポリマーが、例えば超吸収剤として使用される生理用ナプキンを製造するための方法に関する。
【0202】
前述のように、循環経済は、資源によって生み出される価値を最適化することによって廃棄物を最小限に抑える、効率及び持続可能性に特化した経済システムである。これは、現在のより直線的な「取って、作って、捨てる」アプローチから脱却するために、様々な保全及びリサイクルの実践に大きく依存する。
【0203】
そのため、材料のリサイクルが主要かつ増大する関心事となっていることから、リサイクルプロセスは急速に発展し、新規化合物又は物体の生産に使用できる材料の生産を可能にしている。材料のリサイクルは、材料の起源に依存せず、リサイクルできる限り技術的進歩とみなされる。リサイクルされる材料の起源は、再生可能かつ非化石である場合があるが、化石である場合もある。
【0204】
具体的な目的を以下に記載する。
【0205】
N-ビニルホルムアミドを得るための方法は、2つのうちの一方、優先的には両方が、少なくとも部分的に、優先的には全体的に、再生可能かつ非化石材料のリサイクルプロセス又は化石材料から誘導されるアセトアルデヒドとホルムアミドとの間の反応を含む。
【0206】
優先的には、アセトアルデヒド及び/又はホルムアミド、優先的には両方は、全体的に「隔離されている」、すなわち別個のパイプラインからのものであり、別個に処理される。代替的な実施形態では、アセトアルデヒド及び/又はホルムアミドは部分的に「隔離され」、部分的に「隔離されていない」。この場合、「隔離された」部分と「隔離されていない」部分との間の質量比は、優先的には99:1~25:75、好ましくは99:1~50:50である。代替的な実施形態では、アセトアルデヒド及び/又はホルムアミドは全体的に「隔離されていない」。
【0207】
N-ビニルホルムアミドは、アセトアルデヒドとホルムアミドとの間の反応によって得ることができ、前記アセトアルデヒド及び/又は前記ホルムアミド、優先的には両方は、少なくとも部分的に、優先的には全体的に、再生可能かつ非化石材料のリサイクルプロセス、又は化石材料から誘導される。
【0208】
直前に記載された少なくとも1種のN-ビニルホルムアミドモノマーの重合により得られるポリマー。
【0209】
直前に記載された少なくとも1種のN-ビニルホルムアミドモノマーの重合によって得られるポリマーの、油及び/又はガスの回収、井戸の掘削及びセメンチング、油及び/又はガス井の刺激(例えば水圧破砕、適合、分流)、開放、閉鎖又は半閉鎖回路における水の処理、発酵スラリーの処理、スラッジの処理、製紙、建設、木材加工、水硬性組成物処理(コンクリート、セメント、モルタル及び骨材)、鉱業、化粧品の調合、洗剤の調合、繊維製造、電池構成要素製造、地熱エネルギー、又は農業における使用。
【0210】
直前に記載された少なくとも1種のN-ビニルホルムアミドモノマーの重合によって得られるポリマーの、凝集剤、凝固剤、結合剤、固定剤、粘度低減剤、増粘剤、吸収剤、摩擦低減剤、除水剤、排水剤、電荷保持剤、脱水剤、コンディショニング剤、安定化剤、膜形成剤、サイズ調整剤、超可塑化剤、クレイ抑制剤又は分散剤としての使用。
【0211】
以下の工程:
- 少なくとも1種の再生可能かつ非化石又は化石原料をリサイクルしてアセトアルデヒド及び/又はホルムアミドを得る工程、
- 前記アセトアルデヒドと前記ホルムアミドを反応させてN-ビニルホルムアミドを得る工程、
- 前記N-ビニルホルムアミドを、任意選択で別のエチレン性不飽和モノマーと重合させる工程
を含む方法に従って得られるポリマー。
【図面の簡単な説明】
【0212】
図1】アセトアルデヒド及びホルムアミドからのNVF形成を示す図である。
図2】1kg/mt及び1.5kg/mtでの真空排水性能を示す図である。
【実施例
【0213】
以下の実施例は、2つのうちの一方、好ましくは両方が少なくとも部分的に再生可能かつ非化石起源であるアセトアルデヒド(以下ACHと略記する)とホルムアミド(以下FAMと略記する)との間の反応を含む、本発明による生物由来N-ビニルホルムアミド(以下NVFと略記する)の合成に関する(図1を参照されたい)。これらはまた、本発明による少なくとも1種の生物由来N-ビニルホルムアミドモノマーから得られる生物由来ポリマーの合成及び使用に関する。
【0214】
以下の実施例は、本発明の利点を最もよく説明するのに役立つ。
【0215】
純度試験の説明。
NVFの合成は2つの工程で行われ、まずアセトアルデヒド及びホルムアミドからヒドロキシエチルホルムアミドを得る。次に、ヒドロキシエチルホルムアミドをメタノール及び触媒との反応によりメトキシエチルホルムアミド(以下MEFと略記する)に転換する。メトキシエチルホルムアミドを高温で熱分解してN-ビニルホルムアミドを得る。
【0216】
NVFの純度は、以下の分析条件(表2)に従い、高速液体クロマトグラフィーによって決定する。
【0217】
【表2】
【0218】
これらの条件を使用し、様々な不純物ピークの面積を測定することにより、NVFの純度を計算することができる。
【0219】
標準物質の検量線を用いてホルムアミド及びメトキシエチルホルムアミドの定量を行う。
【0220】
ホルムアミドの保持時間は1.43分であり、メトキシエチルホルムアミドの保持時間は4.5分である。
【0221】
I.部分的に生物由来のNVFの合成
【0222】
(実施例1)
部分的に再生可能かつ非化石起源のFAM及び化石起源のACHを用いたNVFの合成
ホルムアミドの起源及びその14Cパーセンテージを変えることによって一連の試験を行った:化石起源のFAMであるCE1、及び部分的に再生可能かつ非化石起源のFAMであるInv1~Inv7(Table 3(表3))。
【0223】
14Cのレベルを、ASTM D6866-21規格の方法Bに従って測定する。この規格は、化学化合物の生物由来炭素レベルを決定することにより、前記化合物の生物由来の性質を特徴付けることを可能にする。
【0224】
「ゼロ」14Cwt%は、材料中に測定可能な14Cが全く存在しないことを表し、したがって化石炭素源であることを示す。
【0225】
表3に示されるように、非化石起源のホルムアミドは、前駆体であるギ酸(バイオメタノールによる)若しくはギ酸エチル(バイオエタンによる)を形成するために、紙パルプ工業の残渣(「トール油」)の処理、又は農業廃棄物、又は都市廃棄物の処理、バイオマス、又は二酸化炭素の発酵若しくはリサイクル等の様々な供給源から得られるか、或いはホルムアミドのアミノ部分をグリーンアンモニアから誘導することができる。
【0226】
各試験について以下の通り手順を行った:800gのトルエンを、ジャケット、撹拌機及びコンデンサーを備えた2000mLの反応器に添加する。
【0227】
反応器を窒素で脱気し、その中に存在する空気を追い出す。
【0228】
反応器は、235gのアセトアルデヒドをその中に導入することができるように、温度20℃に維持する。
【0229】
流し込み漏斗に、1.33gの炭酸水素カリウムを含む200gのホルムアミドを投入する。
【0230】
反応媒体を20℃に維持しながら、滴下漏斗の内容物の20%を30分間かけて反応器にフィードし、ヒドロキシエチルホルムアミド結晶0.5gを結晶化シードとして反応媒体に添加する。30分の待機時間の後、滴下漏斗に含まれる残りの量のホルムアミド及び炭酸水素カリウムを3時間かけて反応媒体に添加する。蒸発によるアセトアルデヒドの損失を防ぐために、温度を反応中20℃に維持する。
【0231】
得られたヒドロキシエチルホルムアミドは、トルエンに懸濁した白色固体であり、これをブフナー濾過によって分離する。得られた固体を再び反応器に導入し、メタノール430g及び水中98%濃硫酸3.5gを添加する。混合物を温度25℃で2時間加熱する。この反応の最後に、硫酸によって誘発された媒体の酸性を中和するために、20%水酸化ナトリウムを添加する。硫酸塩を濾過によって分離する。
【0232】
得られた液体は、メトキシエチルホルムアミド、トルエン、メタノール及び副生成物から構成される。反応器のコンデンサーを、Propack型パッキンを充填した高さ20cmのガラスカラムと取り換える。全体を10mbar(1bar=0.1MPa)の真空下に置き、反応器を60℃に加熱する。軽質生成物画分を廃棄し、純粋なメトキシエチルホルムアミドに相当する画分のみを保持する。
【0233】
熱分解器は、直径10mm、長さ20cmの管を備え、外部電気抵抗によって加熱される。メトキシエチルホルムアミドを、気相が熱分解器の入口に接続されたジャケット付き反応器に投入する。5℃のグリコール水コンデンサーを熱分解器の出口に接続する。全体を90mbarの真空下に置き、熱分解器を温度430℃に加熱する。ジャケット付き反応器を温度150℃に加熱し、メトキシエチルホルムアミドを気化させる。
【0234】
熱分解ガスをコンデンサーによって冷却し、ガラスフラスコに収集する。得られた液体を減圧下で回転蒸発器によって蒸留し、メタノールを除去する。フラスコに残ったN-ビニルホルムアミドを秤量し、出発ホルムアミドに対する反応の収率を決定し、液体クロマトグラフィーによって分析して、ホルムアミド及びメトキシエチルホルムアミドの不純物の含有量を決定する。
【0235】
【表3】
【0236】
本出願人は、ホルムアミドの生物由来の性質がより良好な変換を可能にし、より少ない不純物を発生することを観察した。
【0237】
(実施例2)
化石系FAM及び部分的に再生可能かつ非化石のACHを用いたNVFの合成。
ACHの起源及びその14Cパーセンテージを調整することにより、前述のプロトコールに従って一連の試験を行った:ACHが化石起源であるCE2、及びACHが部分的に再生可能かつ非化石起源であるInv8~Inv14(Table 4(表4))。
【0238】
非化石起源のアセトアルデヒドは、バイオエタノール若しくはバイオエタン前駆体を形成するための紙パルプ工業からの残渣(「トール油」)の処理又は農業廃棄物、又は都市廃棄物の処理、バイオマス、二酸化炭素の発酵若しくはリサイクルから得られる。
【0239】
様々なACHの14Cの割合は、規格ASTM D6866-21方法Bに従い、前述のように測定される。
【0240】
【表4】
【0241】
本出願人は、ACHが少なくとも部分的に再生可能かつ非化石起源である場合、FAMの変換パーセンテージがより高いことを観察した。
【0242】
(実施例3)
本発明に従って使用されるNVFの合成
FAM及びACH(実施例1及び2を参照)の起源及びそれらの14Cパーセンテージを調整することにより、前述のプロトコールに従って一連の試験を行った:比較モノマーCE3及び本発明によるモノマーM1~M7(Table 5(表5))。
【0243】
【表5】
【0244】
本出願人は、本発明に従い、部分的又は全体的に再生可能かつ非化石起源のFAM、及び部分的又は全体的に再生可能かつ非化石起源のACHを使用すると、NVFを得るためのプロセスを最適化できることを観察している。
【0245】
II.本発明による生物由来ポリマーの合成及び使用:
【0246】
(実施例4)
本発明によるポリマーP1~P4及び比較ポリマーCE4の合成及び生分解性(Table 6(表6))
350gの脱イオン水を、コンデンサー及び撹拌機を備えた1000mLのジャケット付き反応器に添加する。
【0247】
水に希釈した75%リン酸又は水に希釈した20%水酸化ナトリウムを添加することにより、pHを6.5に調整する。
【0248】
こうして得られた溶液を80℃に加熱し、窒素で30分間バブリングを行い、微量の溶存酸素をすべて除去する。
【0249】
その後、反応器に以下を添加する:
・先の実施例の1つに従って得られたN-ビニルホルムアミド120gを120分間連続的に添加する。
・同時に、水7gに溶解した2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩0.54gも180分間連続的に添加する。
【0250】
上記の試薬を添加した後、反応媒体を80℃で60分間維持する。その後、粘稠液体を得る。
【0251】
濃度40%の重亜硫酸ナトリウム20g、その後25%水酸化ナトリウム295gを反応媒体に添加する(水中wt%)。
【0252】
このようにして、ポリマーの加水分解を80℃で300分間行う。
【0253】
得られた生成物を30℃に冷却し、水中22%濃塩酸130gを添加して過剰の水酸化ナトリウムを中和する。
【0254】
得られたポリマーの生分解性(28日後)をOECD 302B規格に従って評価する(Table 6(表6))。
【0255】
【表6】
【0256】
部分的又は全体的に生物由来のモノマーから得られる本発明によるポリマーP1~P4は、化石モノマーから得られるポリマーCE4よりも容易に生分解可能である。
【0257】
(実施例5)
抄紙プロセスにおける添加剤としての本発明によるポリマーの使用。
保持剤は、紙の保持効率を高めるために、紙の形成前にセルロース繊維パルプに添加されるポリマーである。
【0258】
使用されるパルプの種類:リサイクル繊維パルプ
1wt%の最終水性濃度を得るように乾燥パルプを離解することにより、湿式パルプを得る。湿式パルプは、100%リサイクル厚紙繊維から作製されたpH中性パルプである。
【0259】
A/排水性能の評価(DDA)
DDA(「動的排水分析器」)により、真空下の繊維状懸濁液の排水に要する時間(秒単位)を自動的に決定することができる。ポリマーを、1000rpm(毎分回転数)でDDAのシリンダー中の湿潤パルプ(1.0wt%のパルプ0.6リットル)に添加する:
T=0s:パルプを撹拌する
T=20s:ポリマーを添加する
T=30s:撹拌を停止し、200mbarの真空下で70秒間排水する。
【0260】
キャンバス下の圧力を時間の関数として記録する。水がすべて繊維状マットから排出されると、空気はマットを通過し、時間の関数としてキャンバス下の圧力を表す曲線に勾配の切れ目が現れる。秒単位で表される、この勾配の切れ目で記録された時間が排水時間に相当する。時間が短いほど、真空排水が良好である。得られた結果を図2に示す(1kg/mt及び1.5kg/mtでの真空排水性能)。
【0261】
本発明によるポリマーP1~P4は、化石起源のCE4ポリマーのものよりも顕著に優れた真空排水性能を得ることを可能にする。
【0262】
B/DSR適用時の性能(乾燥強度)、90g.m-2の坪量
用紙を自動ダイナミックフォームで作製する。まず、90グラムのバージンクラフト繊維を2リットルの熱水で30分間離解することによって紙パルプを調製する。その後、得られたパルプを総体積9リットルに希釈する。稠度を正確に測定したら、このパルプの必要量を取り除き、最終的に質量90g/m2のシートを得る。
【0263】
その後、パルプをダイナミックシートフォーマーのバットに導入し、繊維状懸濁液を均質化するために、機械的撹拌機で適度に撹拌する。
【0264】
手動モードでは、パルプをノズルの高さまで汲み上げて回路をプライミングする。吸取紙及び形成布をダイナミックシートフォーマーのボウル内に配置した後、1000m/分でボウルの回転を開始し、水壁を構築する。様々な乾燥強度剤を、各ポリマーに対して30~45秒の接触時間で撹拌された繊維状懸濁液に導入する。ノズルを22往復させ、パルプを水壁に投射することにより、シートが生成される(自動モード)。排水され、自動シーケンスが完了したら、繊維ネットワークが形成された形成布をダイナミックフォーマーのボウルから取り出し、テーブルの上に配置する。濡れた繊維マット側に乾燥吸取紙を敷き、ローラーで一回プレスする。全体をひっくり返し、キャンバスを繊維状マットから慎重に離す。2枚目の乾燥吸取紙を置き、シート(2枚の吸取紙の間)を4barを送達するプレス機で一回プレスした後、気密乾燥機で117℃で9分間乾燥させる。その後、2枚の吸取紙を取り除き、湿度及び温度を制御した部屋(相対湿度50%及び23℃)で一晩保管する。この手順によって得られたすべてのシートの湿潤及び乾燥強度特性を、以下のように評価する。
【0265】
破裂(破裂指数)は、TAPPI T403 om-02規格に従い、Messmer Buchel M 405破裂試験機で測定する。結果はkPaで表される。kPa.m2/gで表される破裂指数は、この値を試験したシートの坪量で除すことによって決定される。結果は、ブランクに対する改善パーセントとして表される(Table 7(表7))。
【0266】
乾燥引張強度は、TAPPI T494 om-01に従い、Testometric AX引張デバイスを用いて機械方向で測定する。測定値はkmで表され、ブランクに対する改善パーセンテージとして表される(Table 7(表7))。
【0267】
【表7】
【0268】
本出願人は、本発明によるポリマーP1~P4が、より優れた排水性能に加え、比較ポリマーCE4のものと少なくとも同等か、或いはそれより優れた乾燥強度性能を示すことを観察している。
図1
図2
【国際調査報告】