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特表2024-526534生物由来カチオン性高電荷密度ポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】生物由来カチオン性高電荷密度ポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/04 20060101AFI20240711BHJP
   C09K 8/08 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C08G73/04 ZAB
C09K8/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574536
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2022069132
(87)【国際公開番号】W WO2023281076
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】2107502
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510338248
【氏名又は名称】エスエヌエフ・グループ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】セドリック・ファヴェロ
(72)【発明者】
【氏名】ジョハン・キーファー
【テーマコード(参考)】
4J043
【Fターム(参考)】
4J043PA02
4J043PB07
4J043PB08
4J043PB12
4J043PC066
4J043QA17
4J043QC03
4J043QC17
4J043RA08
4J043RA09
4J043SA05
4J043SB01
4J043TA38
4J043TB01
4J043ZA41
4J043ZB31
4J043ZB41
(57)【要約】
本発明は、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であるエピハロヒドリンと、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である、式(R1)2N(CH2CH2NH)n(CH2CH2N(R2)2)mの少なくとも1種の化合物の反応によって得られる生物由来カチオン性ポリマーであって、R1及びR2が、互いに独立して水素原子H又は1~8個の炭素原子を含むアルキル鎖であり、n=0~3、m=0又は1であり、n=m=0である場合、水素原子HがN(R1)2基の窒素原子Nに共有結合する、生物由来カチオン性ポリマーに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であるエピハロヒドリンと、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である少なくとも1種の式(I)化合物の反応によって得られる生物由来カチオン性ポリマー:
【化1】
(式中:
R1及びR2は、互いに独立して水素原子H又は1~8個の炭素原子を含むアルキル鎖であり、
n=0~3であり、m=0又は1であり、n=m=0の場合、水素原子HはNR1R1基の窒素原子Nに共有結合する)。
【請求項2】
エピハロヒドリンが、前記エピハロヒドリン中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%の生物由来炭素含有量を有し、生物由来炭素含有量が規格ASTM D6866-21方法Bに従って測定されることを特徴とする、請求項1に記載の生物由来カチオン性ポリマー。
【請求項3】
式(I)化合物が、式(I)化合物中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%の生物由来炭素含有量を有し、生物由来炭素含有量が規格ASTM D6866-21方法Bに従って測定されることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の生物由来カチオン性ポリマー。
【請求項4】
生物由来カチオン性ポリマーが、前記ポリマー中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%の生物由来炭素含有量を有し、生物由来炭素含有量が規格ASTM D6866-21方法Bに従って測定されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の生物由来カチオン性ポリマー。
【請求項5】
エピハロヒドリンがエピクロロヒドリンであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の生物由来カチオン性ポリマー。
【請求項6】
式(I)化合物が、ジメチルアミン、又はエチレンアミン、又はこれらの成分の少なくとも2種の混合物であり、エチレンアミンが、優先的にはエチレンジアミン又はテトラエチレンペンタミンであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の生物由来カチオン性ポリマー。
【請求項7】
生物由来カチオン性ポリマーを調製するために、少なくとも2種の互いに異なる式(I)化合物が使用され、前記2種の式(I)化合物がジメチルアミン及びエチレンジアミンであることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の生物由来カチオン性ポリマー。
【請求項8】
ジメチルアミンとエチレンジアミンの総量に対して表されるジメチルアミンのモルパーセンテージが90%~99.9%、好ましくは90%~99.5%の範囲であり、エチレンジアミンのモルパーセンテージが0.1%より大きく、優先的には0.5%~10%であることを特徴とする、請求項7に記載の生物由来カチオン性ポリマー。
【請求項9】
ポリアミンであることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の生物由来カチオン性ポリマー。
【請求項10】
エピハロヒドリンが全体的に再生可能かつ非化石であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の生物由来カチオン性ポリマー。
【請求項11】
式(I)化合物が全体的に再生可能かつ非化石であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の生物由来カチオン性ポリマー。
【請求項12】
エピハロヒドリン及び式(I)化合物が、部分的に隔離されているか又は全体的に隔離されていることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の生物由来カチオン性ポリマー。
【請求項13】
エピハロヒドリン及び式(I)化合物が、少なくとも部分的に、又は全体的にリサイクル法から誘導されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の生物由来カチオン性ポリマー。
【請求項14】
4~7meq/gの電荷密度を有することを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の生物由来カチオン性ポリマー。
【請求項15】
エピハロヒドリンと式(I)化合物が5~95℃の範囲の温度で反応する第1の工程であって、この反応の生成物が式(I)化合物付加物-エピハロヒドリンである、第1の工程、続いて前記付加物を5~95℃の範囲の温度で重合して生物由来カチオン性ポリマーを形成する第2の工程を含む2つの工程を含む方法によって得られることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の生物由来カチオン性ポリマー。
【請求項16】
直鎖状又は分枝状であることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の生物由来カチオン性ポリマー。
【請求項17】
生物由来カチオン性ポリマーが、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であるエピハロヒドリン、及び少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であるジメチルアミンと少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であるエチレンジアミンの少なくとも1種の混合物から得られる生物由来ポリアミンであり、ジメチルアミンとエチレンジアミンの総量に対して表されるモルパーセンテージが、
- 少なくとも90%、優先的には少なくとも94%、より優先的には95%~99.9%、更により優先的には97%~99%のジメチルアミン、及び
- 10%以下、優先的には6%以下、より優先的には0.1%~5%、更により優先的には1%~3%のエチレンジアミン
であることを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の生物由来カチオン性ポリマー。
【請求項18】
以下の工程:
- 少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である少なくとも1種の材料をリサイクルし、エピハロヒドリン及び式(I)化合物を得る工程、
- 第1の工程で、5~95℃の範囲の温度でエピハロヒドリンと式(I)化合物を反応させる工程であって、この反応の生成物が式(I)化合物付加物-エピハロヒドリンである工程、
- 5~95℃の範囲の温度で得られた前記付加物を重合して生物由来カチオン性ポリマーを得る工程
を含む方法によって得られることを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載の生物由来カチオン性ポリマー。
【請求項19】
少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であるエピハロヒドリンと、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である少なくとも1種の式(I)化合物の反応によって生物由来カチオン性ポリマーを得るための方法
【化2】
(式中:
R1及びR2は、互いに独立して水素原子H又は1~8個の炭素原子を含むアルキル鎖であり、
n=0~3であり、m=0又は1であり、n=m=0の場合、水素原子HがNR1R1基の窒素原子Nに共有結合する)。
【請求項20】
炭化水素の回収、井戸の掘削及びセメンチング、炭化水素井戸の刺激、水の処理、発酵スラリーの処理、スラッジの処理、製紙、建設、木材加工、水硬性組成物処理、鉱業、化粧品の調合、洗剤の調合、繊維製造、電池構成要素製造、地熱エネルギー、生理用ナプキン製造、又は農業から選択される分野における請求項1から18のいずれか一項に記載のポリマーの使用。
【請求項21】
凝集剤、凝固剤、結合剤、固定剤、粘度低減剤、増粘剤、吸収剤、摩擦低減剤、除水剤、排水剤、電荷保持剤、脱水剤、コンディショニング剤、安定化剤、膜形成剤、サイズ調整剤、超可塑化剤、クレイ抑制剤又は分散剤としての、請求項1から18のいずれか一項に記載のポリマーの使用。
【請求項22】
建設目的のための水硬性組成物中のクレイを不活性化する方法であって、前記方法が、水硬性組成物又はその構成成分の1種に少なくとも1種のクレイ不活性化剤を添加する工程を含み、クレイ不活性化剤が請求項1から18のいずれか一項に記載のポリマーであることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物由来カチオン性高電荷密度ポリマーに関する。本発明によるポリマーは、生物由来エピハロヒドリン及び少なくとも1種の他の生物由来化合物から得られる。本発明はまた、生物由来カチオン性高電荷密度ポリマーを製造するための方法、及び様々な技術分野におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性カチオン性高電荷密度ポリマーは当業者に公知であり、様々な方法によって得ることができる。一例は、アルキレンアミン、又は第一級若しくは第二級モノアミン等の二官能性アミノ化合物と、ジ-エポキシド、エピハロヒドリン又はジハロゲン化合物から選択される二官能性化合物の重縮合反応である。
【0003】
カチオン性高電荷密度の基準を満たすために、可能な限り低分子量のモノマー体を優先的に使用することが文献US3,738,945及びUS3,725,312から知られており、アンモニア又はモノ若しくはジアルキル化アミンが好ましい実体である。しかし、アンモニア又はモノアルキル化アミンを使用すると、たとえ粘度が200cps未満であっても、構造化された高度に分岐状のポリマーが得られ、そのカチオン電荷は立体的にほとんどアクセスできないため、これらの分岐構造は工業的にほとんど興味を持たれない。
【0004】
したがって、より低分子量又は低分岐の線状ポリマーを得るために、当業者はジアルキル化アミンを優先的に使用しており、好ましいものはジメチルアミンである。重縮合反応には、エピハロヒドリン、好ましくはエピクロロヒドリンが一般にジエポキシドよりも好ましく、これはこれらがより低分子量であり、したがってより高いカチオン電荷密度を有するカチオン性ポリマーを可能にするためである。
【0005】
ジクロロエタン等のジハロゲン化化合物の使用も公知であり、カチオン性高電荷密度ポリマーの調製に関して文献US 4 057 580に記載されている。しかし、得られるポリマーは非常に分岐しており、ジクロロエタンは化石系エチレンの塩素化から誘導される。
【0006】
当業者は、第四級アンモニウム官能基を含む少なくとも1種のエチレン性モノマーのラジカル重合反応も認識しており、エチレン性モノマーは、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(APTAC)、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(MAPTAC)、ジメチルアミノエチルアクリレート(ADAME)又はジメチルアミノエチルメタクリレート(MADAME)から選択される可能性があり、これらの化合物はすべてハロゲン化アルキル誘導体又はジアルキル硫酸塩で四級化されている。しかし、得られるポリマーのカチオン電荷密度は制限されている。
【0007】
当業者に公知の高カチオン電荷密度の水溶性カチオン性ポリマーを調製するための別の方法は、ジアリルジアルキルアンモニウムハライド等の少なくとも1種のアリルモノマーのラジカル重合反応である。アリルモノマーの中でも、ジアリルジメチルアンモニウムハライドは、最も高い電荷密度を有するポリマーを得ることを可能にし、市場で最も入手しやすいアリルモノマーは、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)である。
【0008】
しかし、特にDADMACホモポリマーは、6.2meq/gに制限されるカチオン電荷密度によって特徴付けられる。ジアリルジメチルアンモニウムクロリドは、ジメチルアミンと塩化アリルの反応によって得られる。塩化アリルは、プロピレンの塩素化から誘導される。
【0009】
プロピレンは化石系オレフィンであり、現在はそれ自体が原油精製から誘導されるナフサの水蒸気分解によって生成される。より最近では、シェールガス生産の出現に伴い、プロピレンを生成するための様々なプロパン脱水素法が記載されている。
【0010】
化石系プロピレンは様々な不純物を含み、それらは残存するか、又は塩化アリル、ひいてはジアリルジメチルアンモニウムクロリドを生成するための方法で転換される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】US3,738,945
【特許文献2】US3,725,312
【特許文献3】US4 057 580
【特許文献4】US6,352,952
【特許文献5】FR2979821
【特許文献6】WO2016020622
【特許文献7】WO2014/111598
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Roessler, N.、Valenta, R. J.及びvan Cauter, S.、「Time-resolved Liquid Scintillation Counting」、Liquid Scintillation Counting and Organic Scintillators、Ross, H.、Noakes, J. E.及びSpaulding, J. D.編、Lewis Publishers、Chelsea、MI、1991、501~511頁
【非特許文献2】Allison, C. E.、Francy, R. J.及びMeijer, H. A. J.、「Reference and Intercomparison Materials for Stable Isotopes of Light Elements」、International Atomic Energy Agency、Vienna、Austria、IAEATECHDOC- 825、1995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決を提案する課題は、新規の生物由来カチオン性高電荷密度ポリマー、及び前記ポリマーを得るための改善された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
全く驚くべきことに、本出願人は、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であるエピハロヒドリン、及び少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である少なくとも1種の式(I)化合物を使用することにより、生物由来カチオン性高電荷密度ポリマーを得ることができることを観察した。前記ポリマーを得るための方法も改善される。
【0015】
【化1】
【0016】
(式中:
R1及びR2は、互いに独立して水素原子H又は1~8個の炭素原子を含むアルキル鎖、好ましくは直鎖アルキル鎖であり、
n=0~3であり、m=0又は1である)。
【0017】
n=m=0の場合、水素原子Hは、NR1R1基の窒素原子Nに共有結合する。
【0018】
本発明全体において、エピハロヒドリンは、優先的にはエピクロロヒドリンである。
【0019】
本発明全体において、式(I)化合物は、優先的にはジアルキルアミン、より優先的にはジメチルアミン又はエチレンアミン、より優先的にはエチレンジアミン、又は少なくとも2種の式(I)化合物の化合物混合物、優先的にはジメチルアミンとエチレンジアミンの混合物を含む。
【0020】
生物由来カチオン性高電荷密度ポリマーは、優先的にはポリアミンを含む。
【0021】
任意の特定の理論によって束縛されることを求めることなく、本出願人は、化石系エピハロヒドリンと再生可能かつ非化石系エピハロヒドリンとの間、及び/又は少なくとも化石系式(I)化合物と少なくとも再生可能かつ非化石系式(I)化合物との間の不純物の性質の違いが、これらの予想外の技術的効果の原因である可能性を提起する。
【0022】
本発明の第1の目的は、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であるエピハロヒドリンと、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である少なくとも1種の式(I)化合物の反応によって得られる生物由来カチオン性ポリマーである。言い換えれば、
- 少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であるエピハロヒドリンと、
- 少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である少なくとも1種の式(I)化合物
の間の反応により、生物由来カチオン性ポリマーが得られる。
【0023】
本発明によるポリマーは以下のように調製され、ここでエピクロロヒドリン及びジメチルアミンは、本発明の範囲を限定することなく、ポリマーを例示するために使用される。
【0024】
【化2】
【0025】
本発明のさらなる目的は、本発明によるポリマーを様々な技術分野で使用することである。
【0026】
本発明により、新たな技術革新に固有の環境目標を達成することが可能である。再生可能な非化石原料の使用は、方法を実質的に最適化することができる。また、予想外に改善された性能を発揮するポリマーを得ることができる。
【0027】
本出願人は、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であるエピハロヒドリンと、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である式(I)の化合物の反応によって得られるカチオン性ポリマーは、化石起源のポリマーよりも残留不純物の量が少ないことを観察した。また、本出願人は、不純物の量は、生物由来化合物の量に比例して減少することを観察した。
【0028】
本出願人はまた、同じ重合条件下で、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であるエピハロヒドリン、及び少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である式(I)の化合物から得られるカチオン性ポリマーは、化石起源のカチオン性ポリマーよりも高い平均分子量を有することを観察した。
【0029】
本出願人はまた、同じ重合条件下で、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であるエピハロヒドリン、及び少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である式(I)の化合物から得られるカチオン性ポリマーは、化石起源のカチオン性ポリマーよりも優れた凝固剤であることを観察した。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の文脈では、「再生可能かつ非化石」という用語は、バイオマス又は合成ガス(シンガス)から誘導された、すなわち、1又は複数の天然及び非化石原料に対して行われる1又は複数の化学転換から生じる化学化合物の起源を指定するために使用される。「生物由来」又は「生物資源」という用語は、化学化合物の再生可能かつ非化石起源を特徴付けるために使用することもできる。化合物の再生可能かつ非化石起源は、ポリマー解重合又は熱分解油処理からの材料等の、バイオマス材料リサイクルプロセスで過去に1回又は複数回リサイクルされた、循環経済から生じる再生可能かつ非化石原料を含む。
【0031】
本発明によれば、化合物の「少なくとも部分的に再生可能かつ非化石」の品質は、前記化合物の全炭素質量に対して、好ましくは5wt%~100wt%の生物由来炭素含有量を意味する。
【0032】
本発明の文脈では、ASTM D6866-21規格の方法Bは、化学化合物の生物由来の性質を特徴付け、前記化合物の生物由来炭素含有量を決定するために使用される。値は、前記化合物中の全炭素質量に対する生物由来炭素の質量パーセンテージ(wt%)として表される。
【0033】
ASTM D6866-21規格は、放射性炭素分析による固体、液体及び気体試料の生物由来炭素含有量を実験的に測定する方法を教示する試験方法である。
【0034】
この規格は、主に加速器質量分析(AMS)技術を使用する。この技術は、試料中に存在する放射性核種を自然に測定するために使用され、ここで原子がイオン化され、高エネルギーまで加速された後、分離されファラデーカップ内で個々に計数される。この高エネルギー分離は、同重体干渉を除去するのに非常に効果的であるため、AMSは炭素12に対する炭素14の存在量(14C/12C)を1.10-15の精度まで正確に測定することができる。
【0035】
ASTM D6866-21規格の方法Bは、AMS及びIRMS(同位体比質量分析法)を使用する。この試験方法により、近代炭素系炭素原子を化石系炭素原子と直接区別することができる。製品の炭素14対炭素12又は炭素14対炭素13の含有量の測定は、NISTの標準参照物質(SRM)4990C(シュウ酸)等の、放射性炭素年代測定コミュニティによって受け入れられている現代炭素系参照物質に対して決定される。
【0036】
試料調製法は規格に記載されており、一般的に使用される手順であるため、特別な解説は必要ない。
【0037】
結果の分析、解釈及び報告は以下に記載される。炭素12に対する炭素14の含有量、又は炭素13に対する炭素14の含有量の同位体比は、AMSを使用して測定される。炭素12に対する炭素14の含有量、又は炭素13に対する炭素14の含有量の同位体比は、NIST SRM 4990C現代参照標準物質によって追跡可能な標準物質に対して決定される。「現代炭素比(fraction of modern)」(fM)は、現代標準物質に対する試験製品中の炭素14の量を表す。これは、最も多くの場合、fMに相当するパーセンテージである現代炭素パーセント(pMC)と称される(例えば、fM1=100pMC)。
【0038】
放射性炭素分析から得られたすべてのpMC値は、所与の安定同位体を使用して同位体分別の補正を行わなければならない。補正は、可能な場合、AMSを使用して直接決定された炭素13に対する炭素14の値を使用して行われるべきである。これが不可能な場合は、IRMS、CRDS(キャビティリングダウン分光法)、又は1000分のプラスマイナス0.3以内までの精度を提供できる他の同等の技術によって測定されたデルタ13C(δ13C)を使用して補正を行うべきである。
【0039】
「ゼロpMC」は、材料中にバックグラウンドシグナルを超える測定可能な14Cが全く存在しないことを表し、したがって化石(例えば石油系)炭素源を示す。値100pMCは、完全に「現代の」炭素源であることを示す。0~100のpMC値は、「現代」源に対する化石源から誘導される炭素の割合を示す。
【0040】
pMCは、大気圏核実験計画によって生じる大気中への14C注入の影響が、持続的ではあるが減少しているため、100%より高くなる可能性がある。pMC値を大気補正係数(REF)によって調整し、試料の実際の生物由来含有量を得る必要がある。
【0041】
補正係数は、試験時の大気中の過剰14C放射能に基づいている。オランダの農村地域(Lutjewad、Groningen)における空気中のCO2測定に基づき、2015年のREF値は102pMCと決定された。2004年のこの規格の最初のバージョン(ASTM D6866-04)は、値107.5pMCを参照していたが、その後のバージョンASTM D6866-10(2010)は、値105pMCを参照していた。これらのデータ点は、1年当たり0.5pMCの低下を表す。その結果、毎年1月2日に、以下のTable 1(表1)の値が2019年までREF値として使用され、毎年0.5pMCという同様の減少を反映している。2020年及び2021年のREF値(pMC)は、2019年までのオランダ(Lutjewad、Groningen)での継続的な測定に基づき、100.0と決定された。炭素同位体比データの報告に関する参考文献を、14C及び13Cについてそれぞれ以下に示す Roessler, N.、Valenta, R. J.及びvan Cauter, S.、「Time-resolved Liquid Scintillation Counting」、Liquid Scintillation Counting and Organic Scintillators、Ross, H.、Noakes, J. E.及びSpaulding, J. D.編、Lewis Publishers、Chelsea、MI、1991、501~511頁. Allison, C. E.、Francy, R. J.及びMeijer, H. A. J.、「Reference and Intercomparison Materials for Stable Isotopes of Light Elements」、International Atomic Energy Agency、Vienna、Austria、IAEATECHDOC- 825、1995。
【0042】
生物由来炭素含有量のパーセンテージは、pMCをREFで除し、結果に100を乗じることによって算出される。例えば、[102(pMC)/102(REF)]×100=100%生物由来炭素である。結果は、前記化合物中の全炭素質量に対する生物由来炭素の質量パーセンテージ(wt%)で示される。
【0043】
【表1】
【0044】
本発明の文脈では、「隔離された」という用語は、バリューチェーン(例えば、製品製造方法)において特徴的かつ他の材料の流れから区別可能な材料の流れを意味し、したがって材料の同じ起源、又は同じ規格若しくは規範によるその製造が、このバリューチェーンを通して追跡され保証され得るような、同等の性質を有する材料の集合に属するとみなされる。
【0045】
例えば、これは、化学者が、納入されたエピハロヒドリンの100%生物由来起源を保証する単一の供給業者から100%生物由来エピハロヒドリンを独占的に購入し、前記化学者がこの100%生物由来エピハロヒドリンを他の潜在的なエピハロヒドリン源とは別に処理して化学化合物を生成する場合であってもよい。生成された化学化合物が、前記100%生物由来エピハロヒドリンのみから作製される場合、その化学化合物は100%生物由来である。
【0046】
本発明の文脈では、「隔離されていない」という用語は、「隔離された」という用語とは対照的に、バリューチェーンにおける他の材料の流れと区別できない材料の流れを意味すると理解される。
【0047】
この隔離という概念をより良く理解するために、循環経済及び方法におけるその実用的な応用、特に化学転換についてのいくつかの基本を思い起こすことが有用である。
【0048】
フランス環境エネルギー管理庁(ADEME)によれば、循環経済は、製品(商品及びサービス)のライフサイクルのすべての段階において、資源の利用効率を高め、環境への影響を低減しながら、個人のウェルビーイングを発展させようとする貿易及び生産の経済システムと定義できる。言い換えれば、資源によって生み出される価値を最適化することにより、廃棄物を最小限に抑える効率及び持続可能性に特化した経済システムである。循環経済は、現在のより直線的な「取って、作って、捨てる」アプローチから脱却するために、様々な保全及びリサイクルの実施に大きく依存している。
【0049】
ある物質を別の物質に転換する科学である化学の分野では、これは、製品を作製するために既に使用された材料を再利用することにつながる。理論的には、すべての化学物質は他の化学物質から単離し、したがって別々にリサイクルすることができる。現実は、特に工業においてはより複雑であり、単離された場合であっても、化合物を別の供給源から発生した同じ化合物と区別できないことが多く、したがってリサイクル材料のトレーサビリティを複雑にしている。
【0050】
このため、このような工業の現実を考慮した様々なトレーサビリティモデルが開発され、これにより化学工業の使用者は、事実を完全に把握した上で材料の流れを管理することができ、最終顧客は、対象物又は商品の生産に使用された材料の起源を簡単な方法で理解し、把握することができる。
【0051】
これらのモデルは、バリューチェーン全体の透明性及び信頼を構築するために開発された。最終的に、これによりエンドユーザー又は顧客は、対象物又は商品中の所望の成分(例えば、生物由来の性質)の割合を把握することにより、自ら方法のあらゆる側面を制御する能力を持つことなく、より持続可能な解決策を選択することができる。
【0052】
そのようなモデルの1つが、先に定義した「隔離」である。このモデルが適用される公知の例としては、材料の流れを別々に追跡することが可能なガラス及び一部の金属がある。
【0053】
しかし、化学物質は複雑な組合せで使用されることが多く、特に法外なコスト及び非常に複雑な流れの管理のために、別個のサイクルを実施することは困難であることが非常に多く、したがって「隔離」モデルは常に適用可能ではない。
【0054】
その結果、材料の流れを区別することが不可能な場合、他のモデルが適用され、これらのモデルは、「隔離されていない」という用語の下でまとめてグループ化され、例えば、流れを物理的に分離することなく、他の流れに対する特定の流れの割合を考慮することを伴う。一例は、物質収支方式である。
【0055】
物質収支方式は、監査可能な会計帳簿に基づき、最終製品におけるそのカテゴリーの含有量の比例的かつ適切な配分を保証するために、生産システムにおける全体に対するカテゴリー(例えば「リサイクルされた」)の割合を正確に追跡することを含む。
【0056】
例えば、これは、化学者が、納入されたエピハロヒドリンにおいて、エピハロヒドリンの50%が生物由来起源を有し、事実上50%が生物由来起源のものではないことを物質収支方式又は質量収支方式に従って保証している供給業者から50%の生物由来エピハロヒドリンを購入し、前記化学者が、この50%生物由来エピハロヒドリンと0%生物由来エピハロヒドリンの別の流れを使用し、2つの流れが生産プロセス中のある時点で、例えば混合によって識別できなくなる場合であってもよい。生成された化学化合物が50%生物由来の50wt%の保証されたエピハロヒドリン、及び0%生物由来の50wt%エピハロヒドリンから作製される場合、化学化合物は25%生物由来である。
【0057】
例えば、記載された「生物由来」の数値を保証し、新製品を生産する際にリサイクルされた原料の使用を奨励するために、材料の流れを確実に管理するための一連の世界的に共有され標準化された規則(ISCC+、ISO 14020)が開発された。
【0058】
本発明の文脈では、「リサイクルされた」という用語は、廃棄物とみなされる材料をリサイクルするための方法から誘導される、すなわち、一般的に廃棄物とみなされる少なくとも1つの材料に対して、少なくとも1つのリサイクル方法を使用して行われる1又は複数の転換から得られる化学化合物の起源を意味すると理解される。
【0059】
「水溶性ポリマー」という用語は、25℃で水中20g.L-1の濃度で撹拌することによって溶解させたときに透明な水溶液をもたらすポリマーを意味すると理解される。
【0060】
本発明によるポリマー
本発明は、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であるエピハロヒドリンと、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である少なくとも1種の式(I)化合物との反応によって得られる生物由来カチオン性ポリマーに関する
【0061】
【化3】
【0062】
(式中:
R1及びR2は、互いに独立して水素原子H又は1~8個の炭素原子を含むアルキル鎖であり、
n=0~3であり、m=0又は1である)。
【0063】
n=0、m=0の場合、式(I)化合物はアミンNR1R1Hである。
【0064】
好ましくは、R1=CH3、n=0、m=0である。この特定の場合、水素Hが窒素Nに共有結合し、これはジメチルアミンに相当する。
【0065】
優先的には、R1、R2=H、n=0、m=1である。この場合はエチレンジアミンに相当する。
【0066】
或いは、R1、R2=H、n=1、2又は3、m=1である。これらの異なる場合は、それぞれジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンに相当する。
【0067】
本発明によれば、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であるエピハロヒドリンは、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である式(I)化合物と反応し、生物由来カチオン性ポリマーを形成する。
【0068】
本発明の一実施形態によれば、生物由来カチオン性ポリマーは、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であるエピハロヒドリン、及び少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である式(I)化合物からなる。これは、エピハロヒドリン及び式(I)化合物が、ポリマーを形成する反応に関与する唯一のモノマーであることを意味する。
【0069】
本発明全体において、式(I)化合物は、優先的にはジアルキルアミン、より優先的にはジメチルアミン、又はエチレンアミン、より優先的にはエチレンジアミン又はテトラエチレンペンタミン、又は少なくともそれらの化合物の混合物を含む。優先順位は、ジメチルアミン、ジメチルアミンとエチレンジアミンの混合物、次いでテトラエチレンペンタミンである。
【0070】
ジメチルアミンとエチレンジアミンの混合物が使用される場合、ジメチルアミンとエチレンジアミンの総量に対して表されるジメチルアミンのモルパーセンテージは、好ましくは90%~99.9%、好ましくは90%~99.5%、より優先的には97%~99%であり、エチレンジアミンのモルパーセンテージは、好ましくは0.1%より大きく、優先的には0.5%~10%、より優先的には1%~3%である。
【0071】
本発明全体において、エピハロヒドリンは、優先的にはエピクロロヒドリンを含む。
【0072】
本発明全体において、生物由来カチオン性ポリマーは、優先的にはポリアミンである。
【0073】
好ましくは、本発明の生物由来カチオン性ポリマーはアミド基を含まない。
【0074】
本明細書において、「XとYとの間」及び「X~Y」という表現は、終端X及びYを含む。
【0075】
本発明全体において、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であることが規定されている、又は生物由来炭素含有量が規定されている化合物の生物由来炭素含有量は、前記化合物中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%、好ましくは10wt%~100wt%、好ましくは15wt%~100wt%、好ましくは20wt%~100wt%、好ましくは25wt%~100wt%、好ましくは30wt%~100wt%、好ましくは35wt%~100wt%、好ましくは40wt%~100wt%、好ましくは45wt%~100wt%、好ましくは50wt%~100wt%、好ましくは55wt%~100wt%、好ましくは60wt%~100wt%、好ましくは65wt%~100wt%、好ましくは70wt%~100wt%、好ましくは75wt%~100wt%、好ましくは80wt%~100wt%、好ましくは85wt%~100wt%、好ましくは90wt%~100wt%、好ましくは95wt%~100wt%、好ましくは97wt%~100wt%、好ましくは99wt%~100wt%の範囲であり、生物由来炭素含有量は、ASTM D6866-21方法Bに従って測定される。
【0076】
本発明及び以下に記載される様々な実施形態において、エピハロヒドリンは、優先的には前記エピハロヒドリン中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%の範囲の生物由来炭素含有量を有し、生物由来炭素含有量はASTM D6866-21方法Bに従って測定される。
【0077】
本発明及び以下に記載される様々な実施形態において、式(I)化合物は、優先的には前記化合物中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%の範囲の生物由来炭素含有量を有し、生物由来炭素含有量はASTM D6866-21方法Bに従って測定される。
【0078】
本発明及び以下に記載される様々な実施形態において、生物由来カチオン性ポリマーは、前記ポリマー中の全炭素質量に対して5wt%~100wt%の範囲の生物由来炭素含有量を有し、生物由来炭素含有量はASTM D6866-21方法Bに従って測定される。
【0079】
本発明及び以下に記載される様々な実施形態において、エピハロヒドリンは、優先的には全体的に再生可能かつ非化石である。
【0080】
本発明及び以下に記載される様々な実施形態において、式(I)化合物は、優先的には全体的に再生可能かつ非化石である。
【0081】
本発明による生物由来カチオン性ポリマーは、優先的には全体的に再生可能かつ非化石である。
【0082】
エピハロヒドリン及び/又は式(I)化合物は、隔離されていなくてもよく、部分的に隔離されていてもよく、又は全体的に隔離されていてもよい。
【0083】
エピハロヒドリン及び/又は式(I)化合物が全体的に再生可能かつ非化石である場合、以下のいずれかであり得る:
a)全体的にリサイクルされており、
a)1)若しくは全体的に隔離されているか、
a)2)若しくは部分的に隔離されているか、
a)3)若しくは隔離されていないか、
b)又は部分的にリサイクル起源のものであり、
b)1)若しくは全体的に隔離されているか、
b)2)若しくは部分的に隔離されているか、
b)3)若しくは隔離されていないか、
c)又は全体的に非リサイクル起源のものであり、
c)1)若しくは全体的に隔離されているか、
c)2)若しくは部分的に隔離されているか、
c)3)若しくは隔離されていない。
【0084】
これらの様々な実施形態では、エピハロヒドリン及び/又は式(I)化合物が部分的に隔離されている場合、「隔離された」部分と「隔離されていない」部分との間の質量比は、好ましくは99:1~10:90、好ましくは99:1~30:70、より好ましくは99:1~50:50である。
【0085】
これらの様々な実施形態の中で、3つのa)実施形態、3つのb)実施形態、及び実施形態c)1)が好ましい。これらの実施形態の中で、実施形態a)1)、a)2)、b)1)、b)2)及びc)1)が更により好ましい。最も好ましい2つの実施形態は、a)1)及びb)1)である。
【0086】
工業的な現実は、生物由来の、全体的にリサイクル及び/若しくは隔離された、又は高度にリサイクル及び隔離された、エピハロヒドリン及び/又は式(I)化合物の工業的な量を得ることが常に可能ではないようなものである。したがって、上記の選好は、現時点では実施がより困難である場合がある。実用的な観点からは、実施形態a)3)、b)3)及びc)が、現在より容易かつより大規模に実施されている。循環経済に向けて技術が急速に進化しており、既に適用可能な好ましい態様が、すぐに極めて大規模に適用可能になることは確実である。
【0087】
エピハロヒドリン及び/又は式(I)化合物が部分的に再生可能かつ非化石である場合、再生可能な部分(生物由来)と非生物由来部分が区別される。明らかに、これらの部分のそれぞれは、本明細書で上述したのと同じ実施形態a)、b)及びc)に従ってもよい。
【0088】
部分的に生物由来のエピハロヒドリン及び/又は式(I)化合物の生物由来部分に関しては、化合物が全体的に生物由来である場合と同じ選好が適用される。
【0089】
しかし、部分的に生物由来の化合物の非生物由来部分に関しては、循環経済アプローチのために、可能な限り大きなリサイクル成分を有することが更により好ましい。したがって、この場合、実施形態a)1)、a)2)、b)1)、b)2)、特にa)1)及びb)1)が好ましい。
【0090】
本発明及び以下に記載される様々な実施形態において、バイオエピハロヒドリンは、金属水酸化物、典型的には水酸化ナトリウムを用いた1,3ジクロロプロパノールのケン化から得られる。第1の変形例では、1,3-ジクロロプロパノールは、グリセロールの塩化水素処理によって得られ、後者はバイオマスから得られる。第2の変形例では、1,3-ジクロロプロパノールは塩化アリルの塩素化によって得られ、後者は生物由来プロピレンの塩素化によって得られる。
【0091】
本発明及び以下に記載される様々な実施形態において、式(I)化合物、より具体的には生物由来ジアルキルアミンは、対応するバイオアルコール及びアンモニアから得られる。例えば、生物由来ジメチルアミンは、生物由来メタノール及びアンモニアから得られる。R1=CH3、n=0及びm=0である第1の変形例では、式(I)の生物由来生成物、具体的にはジメチルアミンは、バイオメタノールとアンモニアとの間の反応によって得られる。R1、R2=H、n=0及びm=1である第2の変形例では、式(I)の生物由来生成物、すなわちエチレンジアミンは、エチレンと生物由来二塩化アンモニウムとの間の反応によって得られる。二塩化エチレンは、バイオエチレンの塩素化によって得られる。
【0092】
エピハロヒドリン及び/又は式(I)化合物を得るための別の方法は、二酸化炭素(CO2)の水素化及び/又は電解還元からの化合物に基づいており、前記CO2は、例えばメタノール又は別のアルコール等の中間化合物に変換される。CO2は、例えば、従来のリサイクル方法又はCO2捕捉技術から誘導されてもよい。
【0093】
本発明によるポリマーは、優先的にはエピハロヒドリンと式(I)化合物が5~95℃、優先的には30~80℃の範囲の温度で反応する第1の工程であって、この反応の生成物が、[式(I)化合物-エピハロヒドリン]と記載されてもよい式(I)化合物-エピハロヒドリンの付加物である、第1の工程、続いて前記付加物を5~95℃、優先的には30~80℃の範囲の温度で重合してカチオン性生物由来ポリマーを得る第2の工程を含む、2つの工程を含む方法によって得られる。
【0094】
エピクロロヒドリン及びジメチルアミンに適用される以下の図は、方法の第1の工程を示す。(a)と記載される付加物[式(I)化合物-エピハロヒドリン]は、実際には平衡状態にある2つの分子に相当する(エピクロロヒドリン及びジメチルアミンは、本発明の範囲を限定することなく、ポリマーを説明するために使用される)。
【0095】
【化4】
【0096】
次に、付加物(a)[式(I)化合物-エピハロヒドリン]を重合し、以下に示されるカチオン性ポリマー(b)を得るが、これは優先的にはポリアミンである。
【0097】
【化5】
【0098】
したがって、好ましい実施形態において、本発明は、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であるエピハロヒドリン、優先的には少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であるエピクロロヒドリン、及び少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である少なくとも1種のジメチルアミン混合物、及び少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であるエチレンジアミンから得られる生物由来ポリアミンであって、ジメチルアミンとエチレンジアミンポリアミンの総量に対して表されるモルパーセンテージが、
- 少なくとも90%、優先的には少なくとも94%、より優先的には95%~99.9%、更により優先的には97%~99%のジメチルアミン、及び
- 10%以下、優先的には6%以下、より優先的には0.1%~5%、更により優先的には1%~3%のエチレンジアミン
である、生物由来ポリアミンに関する。
【0099】
本発明によるポリマーのカチオン密度は、優先的には4~7meq/g、より優先的には6~7meq/gの範囲である。
【0100】
本発明によるカチオン性ポリマーは、好ましくは水溶性である。
【0101】
本発明によるカチオン性ポリマーは、有利には直鎖状又は分枝状である。分岐状の場合、カチオン性ポリマーは、優先的にはわずかに分岐状であり、より具体的には、その分岐レベルは、ポリマーが25℃で1リットル当たり10gより高い濃度の水溶液に可溶性であるようなものである。
【0102】
本発明によれば、ポリマーの調製に噴霧乾燥、ドラム乾燥、マイクロ波乾燥等の放射線乾燥、又は流動床乾燥等の乾燥工程が含まれる場合、ポリマーは、液体、ゲル又は固体形態であってもよい。
【0103】
本発明によれば、水溶性ポリマーは、優先的には1000~500万g/mol、優先的には50,000~200万g/molの範囲の分子量を有する。ポリマーは分散剤であってもよく、この場合、その分子量は好ましくは1000~50,000g/molである。ポリマーは、より高い分子量、典型的には500万~3000万g/molを有してもよい。分子量は質量平均分子量として理解される。本発明によるポリマーはまた、水中でその質量の10~500倍を吸収することができる超吸収剤であってもよい。
【0104】
分子量は、有利には(コ)ポリマーの固有粘度によって決定される。固有粘度は、当業者に公知の方法によって測定することができ、濃度(x軸)に対して還元粘度値(y軸)をプロットし、曲線をゼロ濃度に外挿することを伴うグラフ法により、異なる(コ)ポリマー濃度の還元粘度値から計算することができる。固有粘度値をy軸に、又は最小二乗法を使用してプロットする。次いで、分子量を、Mark-Houwinkの式を使用して決定することができる:
[η]=K Mα
[η]は、溶液粘度測定法によって決定される(コ)ポリマーの固有粘度を表す。
Kは実験定数を表す。
Mは(コ)ポリマーの分子量を表す。
αはMark-Houwink係数を表す。
K及びαは、特定の(コ)ポリマー-溶媒系に依存する。
【0105】
特定の実施形態では、本発明によるポリマーは、半合成、したがって半天然ポリマーであってもよい。この実施形態では、ポリマーは、本発明による少なくとも1種のモノマーと、少なくとも1種の天然化合物との全体的又は部分的なグラフト化による共重合によって合成されてもよく、前記天然化合物は、好ましくはデンプン及びその誘導体、多糖類及びその誘導体、繊維、植物性ガム、動物性ガム又は藻類ガム、並びにそれらの変性型から選択される。例えば、植物性ガムとして、グアーガム、アラビアガム、ローカストビーンガム、トラガカントガム、グアニジニウムガム、シアニンガム、タラガム、カシアガム、キサンタンガム、ガティガム、カラヤガム、ジェランガム、クラスタマメ(cyamopsis tetragonoloba)ガム、大豆ガム、又はベータ-グルカン又はダンマーを挙げることができる。天然化合物はまた、ゼラチン、カゼイン又はキトサンであってもよい。例えば、藻類ガムとして、アルギン酸ナトリウム若しくはその酸、寒天又はカラギーナンを挙げることができる。
【0106】
重合は一般に、これは限定的ではないが、共重合又はグラフト化によって行われる。当業者は、半天然ポリマーの分野で確立された知識を参照することができる。
【0107】
本発明はまた、本発明による少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種の天然ポリマーを含む組成物であって、前記天然ポリマーが、好ましくは前述の天然ポリマーから選択される組成物に関する。合成ポリマーと天然ポリマーとの間の質量比は、一般に90:10~10:90である。組成物は、液体、逆エマルジョン又は粉末形態であってもよい。
【0108】
特定の実施形態において、エピハロヒドリン及び/又は式(I)化合物は、少なくとも部分的に、又は全体的にリサイクル法から誘導される。
【0109】
この特定の実施形態では、エピハロヒドリン及び/又は式(I)化合物は、ポリマーの解重合から、又は使用済みプラスチック廃棄物の高温嫌気性燃焼から生じる熱分解油から製造することにより、リサイクル法を使用して得られる。
【0110】
したがって、廃棄物とみなされる材料は、リサイクルされたエピハロヒドリン及び/又は式(I)化合物を生成するための供給源として使用することができ、これらはひいては本発明のモノマーを製造するための原料として使用することができる。
【0111】
この特定の実施形態では、本発明によるポリマーは、以下の工程:
- 少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である少なくとも1種の材料をリサイクルし、エピハロヒドリン及び式(I)化合物を得る工程、
- 第1の工程で、5~95℃、優先的には30~80℃の範囲の温度でエピハロヒドリンと式(I)化合物を反応させる工程であって、この反応の生成物が式(I)化合物付加物-エピハロヒドリンである工程、
- 得られた前記付加物を5~95℃、優先的には30~80℃の範囲の温度で重合して生物由来カチオン性ポリマーを得る工程
を含む方法によって得られる。
【0112】
リサイクル率は、全材料に対するリサイクル材料の質量比である。
【0113】
この特定の実施形態では、リサイクルから得られた部分は、好ましくは全体的に「隔離されている」、すなわち、別々のパイプラインから得られ、別々の態様で処理される。代替的な実施形態では、部分は部分的に「隔離されて」おり、部分的に「隔離されていない」。この場合、「隔離された」部分と「隔離されていない」部分との間の質量比は、好ましくは99:1~10:90、好ましくは99:1~30:70、より好ましくは99:1~50:50である。
【0114】
本発明による方法
本発明は、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であるエピハロヒドリンと、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である少なくとも1種の式(I)化合物の反応により、生物由来カチオン性ポリマーを得るための方法に関する。
【0115】
式(I)化合物は、優先的にはジアルキルアミン、より優先的にはジメチルアミン、又はエチレンアミン、より優先的にはエチレンジアミン若しくはテトラエチレンペンタミン、又は少なくともそれらの化合物の混合物である。優先順位は、ジメチルアミン、ジメチルアミンとエチレンジアミンの混合物、次いでテトラエチレンペンタミンである。
【0116】
ジメチルアミンとエチレンジアミンの混合物が使用される場合、ジメチルアミンとエチレンジアミンの総量に対して表されるモルパーセンテージは、ジメチルアミンが好ましくは90%より大きく、優先的には94%より大きく、優先的には95%~99.9%、より優先的には97%~99%の範囲であり、エチレンジアミンのモルパーセンテージが好ましくは0.1%より大きく、優先的には0.5%~10%、より優先的には1%~3%である。
【0117】
本発明全体において、生物由来カチオン性ポリマーは、優先的にはポリアミンである。
【0118】
「ポリマー」セクションに記載された実施形態及び選好が、この「方法」セクションに適用される。
【0119】
本発明によるポリマーの使用
本発明はまた、炭化水素(油及び/又はガス)の回収、井戸の掘削及びセメンチング、炭化水素井戸(油及び/又はガス)の刺激、例えば水圧破砕、適合、分流、開放、閉鎖又は半閉鎖回路における水の処理、発酵スラリーの処理、スラッジの処理、製紙、建設、木材加工、水硬性組成物処理(コンクリート、セメント、モルタル及び骨材)、鉱業、化粧品の調合、洗剤の調合、繊維製造、電池構成要素製造、地熱エネルギー、生理用ナプキン製造、又は農業における本発明によるポリマーの使用に関する。
【0120】
本発明はまた、凝集剤、凝固剤、結合剤、固定剤、粘度低減剤、増粘剤、吸収剤、摩擦低減剤、除水剤、排水剤、電荷保持剤、脱水剤、コンディショニング剤、安定化剤、膜形成剤、サイズ調整剤、超可塑化剤、クレイ抑制剤又は分散剤としての本発明によるポリマーの使用に関する。
【0121】
本発明によるポリマーを使用する方法
本発明はまた、本発明のポリマーを使用して塗布性能を改善する、以下に記載される様々な方法に関する。
【0122】
本発明は、より詳細には、本発明のポリマーを用いて水硬性組成物を処理するための方法に関する。
【0123】
したがって、本発明は、建設を目的とした水硬性組成物中のクレイを不活性化するための方法に関する。前記方法は、水硬性組成物又はその構成成分の1種に少なくとも1種のクレイ不活性化剤を添加する工程を含み、このクレイ不活性化剤は、本発明によるポリマーである。
【0124】
クレイは水を吸収する可能性があり、建材の性能を低下させる。本発明のポリマーをクレイ抑制剤として使用すると、特にひび割れの原因となり、したがって建築物を弱体化させ得るクレイの膨潤を回避することができる。
【0125】
このクレイ不活性化方法では、ポリマーは好ましくはポリアミンである。水硬性組成物は、コンクリート、セメント、モルタル又は骨材であってもよい。ポリマーは、骨材の質量に対して2~200ppmの不活性化剤の投与量で、水硬性組成物又はその構成成分の1種に添加される。
【0126】
クレイを不活性化するこの方法において、クレイは、2:1膨潤性クレイ(スメクタイト等)、又は1:1膨潤性クレイ(カオリン等)、又は2:1:1膨潤性クレイ(クロライト等)を含むがこれらに限定されない。クレイという用語は、一般にラメラ構造を有するフィロ珪酸塩を含むマグネシウム及び/又はアルミニウム珪酸塩を指す。しかし、本発明において、クレイという用語は、非晶質クレイ等のそのような構造を有さないクレイも含む。
【0127】
このクレイ不活性化方法において、クレイは、文献US6,352,952に記載されるポリオキシアルキレン超可塑化剤(エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド含有化合物)を吸収するクレイのみに限定されず、建築材料の特性に影響を与えるすべてのクレイも含む。特定のリストに限定されることなく、これらは、モンモリロナイト、イライト、カオリナイト又は白雲母等の一般に砂中に存在するクレイを含む。
【0128】
本発明はまた、以下の工程:
a.水又はブラインを用いて本発明によるポリマーから注入流体を調製する工程、
b.注入流体を地下層に注入する工程、
c.注入流体で地下層を掃攻する工程、
d.油及び/又はガスの水性混合物を回収する工程
を含む、地下層を掃攻することによって油又はガスの回収を強化するための方法に関する。
【0129】
本発明はまた、以下の工程:
a.水又はブラインを用いて、かつ少なくとも1種のプロパントを用いて、本発明によるポリマーから注入流体を調製する工程、
b.前記流体を地下貯留層に注入し、その少なくとも一部を破砕して油及び/又はガスを回収する工程
を含む、地下油及び/又はガス貯留層の水圧破砕のための方法に関する。
【0130】
上述の強化された油回収及び水圧破砕法では、ポリマーは、好ましくは高分子量ポリマー(800万ダルトンより大きい)である。ポリマーは、好ましくは直鎖状である。ポリマーは、好ましくは粉末、逆エマルジョン、部分的に脱水された逆エマルジョンの形態、又は「透明な」、すなわち水性若しくは油性流体中の固体ポリマー粒子の分散液の形態である。粉末形態は、好ましくは逆エマルジョンのゲル又は噴霧乾燥によって得られる。粉末形態はまた、本発明によるポリマーの逆エマルジョン、及び本発明によるポリマーの固体粒子を含む組成物を含む。
【0131】
本発明はまた、以下の工程:
a.水又はブラインを用いて本発明によるポリマーから注入流体を調製する工程、
b.注入流体を地下層に注入する工程、
c.注入流体で地下層を部分的又は全体的に塞ぐ工程であって、前記塞ぐ工程が一時的又は永久的である工程
を含む、地下層を刺激する方法に関する。
【0132】
本発明はまた、以下の工程:
a.水又はブラインを用いて本発明によるポリマーから注入流体を調製する工程、
b.井戸を掘削又はセメンチングする少なくとも1つの工程において、ドリルヘッドを介して前記掘削及び/又はセメンチング流体を地下層に注入する工程
を含む、地下層に井戸を掘削及び/又はセメンチングする方法に関する。
【0133】
井戸の掘削及びセメンチングは、地下層に井戸を作り出すための2つの連続した工程である。第1の工程は、掘削流体による掘削であり、一方で第2の工程は、セメンチング流体による井戸のセメンチングである。本発明はまた、掘削流体とセメンチング流体との間に注入される中間流体(「スペーサー流体」)を注入する方法であって、前記中間流体が本発明による少なくとも1種のポリマーを含む、方法に関する。この中間流体は、セメンチング流体と掘削流体との間の混入を防止する。
【0134】
井戸の掘削及びセメンチングの際、本発明によるポリマーは、セメント組成物がその中に、又はそれ通して圧送される浸透性地層又はゾーンへのセメント組成物からの流体損失を低減するために、井戸セメント組成物中の流体損失添加剤として使用することができる。一次セメンチングにおいて、浸透性地層又は地下ゾーンへの流体、すなわち水の損失は、セメント組成物の早期ゲル化につながる可能性があるため、浸透性地層又はゾーンとそこにセメンチングされたドリルストリングとの間の環状空間を橋渡しすることにより、セメント組成物が環の全長に沿って配置されるのを防ぐ。
【0135】
本発明はまた、紙、厚紙等のシートを製造するための方法であって、シートが形成される前に、繊維の懸濁液に、1つ又は複数の注入点で、本発明による少なくとも1種のポリマーを添加することを含む工程が実施される、方法に関する。ポリマーは、乾燥強度又は保持特性又は湿潤強度を提供することができる。ポリマーはまた、紙の地合、排水及び除水能力を向上させることができる。
【0136】
方法は、包装紙及び厚紙、塗工紙、衛生紙及び家庭紙、あらゆる種類の紙、厚紙等の製造に成功裏に使用することができる。
【0137】
保持特性は、紙パルプの懸濁物質(繊維、微粉、填料(炭酸カルシウム、酸化チタン)...)を形成布に、したがって最終シートを構成する繊維状マット中に保持する能力を意味すると理解される。保持剤の作用様式は、これらの懸濁物質を水中で凝集させることに基づく。実際、形成されたフロックは、形成シート上により容易に保持される。
【0138】
填料の保持は、填料(セルロースと親和性の低い小さな鉱物種)を特異的に保持することを含む。填料の保持の大幅な改善は、填料をシートに保持し、その坪量を増加させることにより、白水の透明化をもたらす。これにより、製造コストを削減するために、繊維(紙、厚紙等の組成物中の最も高価な種)の一部を填料(より低コスト)で置き換えることもできる。
【0139】
除水(又は排水)特性に関して、この特性は、特にシートの製造中に、シートが可能な限り早く乾燥するように最大量の水を排出又は排水する繊維状マットの能力である。
【0140】
これらの2つの特性(保持及び排水)は複雑に関連しており、一方は他方に依存しているため、問題は、保持と排水との間の最適な妥協点を見出すことである。一般に、当業者は保持及び排水剤に言及するが、これはこの薬剤が、これら2つの特性を改善するのに使用される同じ種類の製品であるためである。
【0141】
繊維状懸濁液は、水及びセルロース繊維からなる濃厚パルプ又は希釈パルプを意味すると理解される。乾物濃度が1%より高い、或いは3%より高い濃厚ストックは、ファンポンプの上流に配置される。乾物濃度が一般に1%未満の希薄ストックは、ファンポンプの下流に配置される。
【0142】
ポリマーは、濃厚ストック又は希薄ストックに添加されてもよい。ポリマーは、ファンポンプ又はヘッドボックスの位置で添加されてもよい。好ましくは、ポリマーはヘッドボックスの前に添加される。
【0143】
本発明による紙、厚紙等を作製するための方法において、本発明によるポリマーは、単独で又は二次保持剤と組み合わせて使用されてもよい。好ましくは、有機ポリマー及び/又は無機微粒子から選択される二次保持剤が繊維懸濁液に添加される。
【0144】
繊維状懸濁液に添加されるこの二次保持剤は、有利には広義のアニオン性ポリマーから選択されるため、これらは(限定するものではないが)、直鎖状、分岐状、架橋状、疎水性、会合性及び/又は無機微粒子(例えばベントナイト、コロイド状シリカ)であってもよい。
【0145】
本発明はまた、採鉱又はオイルサンド作業から生じる水中の固体粒子の懸濁液を処理するための方法であって、前記懸濁液を本発明による少なくとも1種のポリマーと接触させる工程を含む方法に関する。このような方法は、一般に、粒子が沈降し得る円錐底部を有する、直径数メートルの管部の形態の滞留ゾーンである濃縮器で行うことができる。具体的な実施形態によれば、水性懸濁液はパイプによって濃縮器に輸送され、前記パイプにポリマーが添加される。
【0146】
別の実施形態によれば、ポリマーは、処理すべき懸濁液を既に含んでいる濃縮器に添加される。典型的な鉱物処理作業では、懸濁液はしばしば濃縮器で濃縮される。この結果、濃縮器の底部からより高密度のスラッジが流出し、濃縮器の上部から、処理された懸濁液から放出された水性流体(リカーと呼ばれる)がオーバーフローによって流出する。一般に、ポリマーの添加はスラッジの濃度を高め、リカーの透明度を高める。
【0147】
別の実施形態によれば、ポリマーは、前記懸濁液を堆積領域へ輸送する間に粒子状懸濁液に添加される。好ましくは、ポリマーは、前記懸濁液を堆積ゾーンに搬送するパイプ中に添加される。処理された懸濁液が除水及び固化の準備のために散布されるのは、この堆積領域上である。堆積領域は、土壌の非密閉領域等の開放領域、又は水盤、セル等の閉鎖領域のいずれかであってもよい。
【0148】
懸濁液の輸送中のこのような処理の例は、本発明によるポリマーで処理された懸濁液を、除水及び固化の準備のために土壌上に散布し、次いで固化した第1の層の上に、処理された懸濁液の第2の層を散布することである。別の例は、本発明によるポリマーで処理した懸濁液を、処理した懸濁液が堆積領域で以前に排出された懸濁液の上に連続的に落下するような態様で連続的に散布することであり、その結果、そこから水が抽出される処理物質の塊が形成される。
【0149】
別の実施形態によれば、水溶性ポリマーが懸濁液に添加され、遠心分離、プレス又は濾過等の機械的処理が実施される。
【0150】
水溶性ポリマーは、懸濁液処理の異なる段階、すなわち、例えば、懸濁液を濃縮器に運ぶパイプ中、及び沈殿領域又は機械的処理デバイスのいずれかに搬送される、濃縮器から出るスラッジ中に同時に添加することができる。
【0151】
本発明はまた、都市用水又は工業用水を処理するための方法であって、本発明による少なくとも1種のポリマーを、処理される前記水に導入する工程を含む、方法に関する。効果的な水処理には、水から溶解化合物、並びに分散及び懸濁固形物を除去することが必要である。一般に、この処理は、凝固剤及び凝集剤等の化学薬品によって強化される。これらは通常、浮遊及び沈降等の分離装置の前で水流に添加される。
【0152】
本発明によるポリマーは、都市廃水又は工業廃水中の懸濁粒子を凝固又は凝集させるために有利に使用できる。一般に、これらは、ミョウバン等の無機凝固剤と組み合わせて使用される。
【0153】
これらはまた、この廃水処理から生成されるスラッジの処理に有利に使用できる。下水スラッジ(都市用であれ工業用であれ)は、廃液から処理プラントによって生成される主な廃棄物である。一般に、スラッジ処理には除水が含まれる。この除水は、遠心分離、フィルタープレス、ベルトプレス、電気除水、スラッジ乾燥葦床、天日乾燥によって行うことができる。これは、スラッジの水分濃度を下げるために使用される。
【0154】
この都市又は工業用水処理プロセスにおいて、本発明によるポリマーは、好ましくは直鎖状又は分岐状である。ポリマーは、好ましくは粉末、逆エマルジョン又は部分的に脱水された逆エマルジョンの形態である。粉末形態は、好ましくは逆エマルジョンからのゲル又は噴霧乾燥によって得られる。
【0155】
本発明はまた、本発明による少なくとも1種のポリマーを含む、化粧用、皮膚科学又は医薬組成物のための添加剤に関する。本発明はまた、増粘(剤)、コンディショニング(剤)、安定化(剤)、乳化(剤)、固定(剤)又は膜形成剤としての前記組成物の製造における本発明によるポリマーの使用に関する。本発明は、同様に、本発明による少なくとも1種のポリマーを含む化粧用、皮膚科学又は医薬組成物に関する。
【0156】
特に、そのような組成物の製造及びそのような組成物の他の成分の記載に関する、L'OREALを代理する出願FR2979821を参照することができる。前記組成物は、ミルク、ローション、ゲル、クリーム、ゲルクリーム、石鹸、バブルバス、バーム、シャンプー又はコンディショナーの形態であってもよい。皮膚、頭皮、睫毛、眉毛、爪、毛髪及び/又は粘膜等のケラチン物質の美容又は皮膚科学的処置法のための前記組成物の使用もまた、本発明の不可欠な部分である。このような使用は、ケラチン物質への組成物の塗布、場合によってはそれに続く水によるすすぎを含む。
【0157】
本発明はまた、洗剤組成物用の添加剤であって、前記添加剤が本発明による少なくとも1種のポリマーを含む、添加剤に関する。本発明はまた、増粘(剤)、コンディショニング(剤)、安定化(剤)、乳化(剤)、固定(剤)又は膜形成剤としての前記組成物の製造における本発明によるポリマーの使用に関する。本発明は、同様に、本発明による少なくとも1種のポリマーを含む、家庭用又は工業用の洗剤組成物に関する。特に、そのような組成物の製造及びそのような組成物の他の成分の記載については、本出願人の出願WO2016020622を参照することができる。
【0158】
「家庭用又は工業用の洗剤組成物」は、様々な表面、特に織物繊維、食器、床、窓、木材、金属等の任意の種類の硬質表面、又は複合材表面を洗浄するための組成物を意味すると理解される。このような組成物には、例えば、衣類を手動で又は洗濯機で洗うための洗剤、食器を手動洗浄するための、又は食器洗浄機用製品、台所要素、トイレ、家具、床、窓等の住宅内装を洗うための洗剤製品、及び普遍的な用途のための他の洗浄製品が含まれる。
【0159】
化粧用、皮膚科学、医薬又は洗剤組成物の添加剤、例えば増粘剤として使用されるポリマーは、好ましくは架橋されている。ポリマーは、好ましくは粉末、逆エマルジョン又は部分的に脱水された逆エマルジョンの形態である。粉末形態は、好ましくは逆エマルジョンからの噴霧乾燥によって得られる。
【0160】
本発明は、同様に、本発明による少なくとも1種のポリマーを含む、捺染に使用される顔料組成物用のための増粘剤に関する。本発明はまた、本発明による少なくとも1種のポリマーを含む織物繊維サイズ調整剤に関する。
【0161】
本発明はまた、本発明によるモノマーから超吸収剤を製造するための方法であって、超吸収剤が本発明による少なくとも1種のモノマーから得られ、前記超吸収剤が、農業用途において水を吸収し保持するため、又は生理用ナプキンにおいて水性液体を吸収するために使用される、方法に関する。例えば、超吸収剤は本発明によるポリマーである。
【0162】
本発明はまた、本発明によるポリマーが、例えば超吸収剤として使用される、生理用ナプキンを製造するための方法に関する。
【0163】
本発明はまた、電池バインダーとしての本発明によるポリマーの使用に関する。本発明はまた、本発明によるポリマー、電極材料及び溶媒を含む電池バインダー組成物に関する。本発明はまた、本発明による少なくとも1種のポリマーを含むゲルを作製し、これを前記電池に充填する工程を含む、電池を製造するための方法に関する。医療デバイス、電気自動車、航空機、並びに最も重要なことに、ノートパソコン、携帯電話及びカメラ等の消費者製品を含む様々な製品に使用されるリチウムイオン電池を挙げることができる。
【0164】
一般に、リチウムイオン電池(LIB)は、負極、正極、及びリチウム塩を含む有機溶媒等の電解質材料を含む。より具体的には、負極及び正極(総称して「電極」)は、電極活物質(負極又は正極)をバインダー及び溶媒と混合してペースト又はスラッジを形成し、これをアルミニウム又は銅等の集電体上に塗布して乾燥させ、集電体上に膜を形成することによって形成される。その後、負極及び正極を積層して巻いた後、電解質材料を含む加圧ケースに収納し、これらすべてを合わせてリチウムイオン電池を形成する。
【0165】
リチウム電池では、バインダーは、機械的性能と電気化学的性能の両方においていくつかの重要な役割を果たす。第一に、バインダーは、製造プロセス中に溶媒に他の成分を分散させるのを助け(増粘剤の役割を果たすものもある)、それにより均一な分布を可能にする。第二に、バインダーは、活性成分、導電性添加剤、及び集電体を含む様々な構成要素を一緒に保持し、これらの部品のすべてが接触を保つことを確実にする。化学的又は物理的な相互作用により、バインダーはこれらの別個の構成要素を接続させ、それらを一緒に保持し、電子又はイオン伝導性に重大な影響を与えることなく、電極の機械的完全性を確保する。第三に、バインダーは、多くの場合電極と電解液との間の界面として機能する。この役割において、バインダーは、電極を腐食から保護するか、又は電解液を枯渇から保護する一方で、この界面を横切るイオンの移動を促進することができる。
【0166】
別の重要な点は、バインダーが割れない又は欠陥を生じないように、ある程度の柔軟性を有さなければならないことである。脆弱性は、電池の製造又は組立ての際に問題を引き起こす可能性がある。
【0167】
電極において(かつバッテリー全体において)バインダーが果たすすべての役割を考慮すると、バインダーの選択は、良好なバッテリーの性能を確保する上で非常に重要である。
【0168】
本発明はまた、本発明によるポリマーが、例えば超吸収剤として使用される生理用ナプキンを製造するための方法に関する。
【0169】
前述のように、循環経済は、資源によって生み出される価値を最適化することによって廃棄物を最小限に抑える、効率及び持続可能性に特化した経済システムである。これは、現在のより直線的な「取って、作って、捨てる」アプローチから脱却するために、様々な保全及びリサイクルの実践に大きく依存する。
【0170】
そのため、材料のリサイクルが主要かつ増大する関心事となっていることから、リサイクルプロセスは急速に発展し、新規化合物又は物体の生産に使用できる材料の生産を可能にしている。材料のリサイクルは、材料の起源に依存せず、リサイクルできる限り技術的進歩とみなされる。リサイクルされる材料の起源は、再生可能又は非化石である場合があるが、化石である場合もある。
【0171】
具体的な目的を以下に記載する。
【0172】
第1の目的は、エピハロヒドリンと式(I)化合物の反応によって得られるカチオン性ポリマーであって、前記化合物が少なくとも部分的に、前記エピハロヒドリン及び/又は前記式(I)化合物が部分的に、好ましくは全体的に再生可能かつ非化石材料、又は化石材料のリサイクル方法から誘導されるカチオン性ポリマーに関する。
【0173】
優先的には、エピハロヒドリン及び/又は前記式(I)化合物は、全体的に「隔離されている」、すなわち別個の経路に由来し、別個に処理される。代替的な実施形態では、これらは部分的に「隔離されて」おり、部分的に「隔離されていない」。この場合、エピハロヒドリン及び前記式(I)化合物の「隔離された」部分と「隔離されていない」部分との間の質量比は、優先的には99:1~25:75、好ましくは99:1~50:50の範囲である。代替的な実施形態では、これらは全体的に「隔離されていない」。
【0174】
第2の目的は、油及び/又はガスの回収、井戸の掘削及びセメンチング、油及びガス井の刺激(例えば水圧破砕、適合、分流)、開放、閉鎖又は半閉鎖回路における水の処理、発酵スラリーの処理、スラッジの処理、製紙、建設、木材加工、水硬性組成物処理(コンクリート、セメント、モルタル及び骨材)、鉱業、化粧品の調合、洗剤の調合、繊維製造、電池構成要素製造、地熱エネルギー、生理用ナプキン製造、又は農業における、エピハロヒドリンと式(I)化合物の反応により得られるカチオン性ポリマーの使用であって、前記エピハロヒドリン及び/又は前記式(I)化合物が、部分的に、優先的には全体的に再生可能かつ非化石材料、又は化石材料のリサイクル方法から誘導される、使用に関する。
【0175】
第3の目的は、凝集剤、凝固剤、結合剤、固定剤、粘度低減剤、増粘剤、吸収剤、摩擦低減剤、除水剤、排水剤、電荷保持剤、脱水剤、コンディショニング剤、安定化剤、膜形成剤、サイズ調整剤、超可塑化剤、クレイ抑制剤又は分散剤としての、エピハロヒドリンと式(I)化合物の反応によって得られるカチオン性ポリマーの使用であって、前記エピハロヒドリン及び/又は前記式(I)化合物が、部分的に、優先的には全体的に再生可能かつ非化石材料、又は化石材料のリサイクル方法から誘導される、使用に関する。
【実施例
【0176】
以下の試験では、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であるエピハロヒドリン、及び少なくとも部分的に再生可能かつ非化石である式(I)の化合物を含む、高電荷密度の生物由来カチオン性ポリマーが本発明に従って合成される。
【0177】
【化6】
【0178】
以下の実施例では、式(I)の化合物はジメチルアミン(以下DMAと略記する)であり、エピハロヒドリンはエピクロロヒドリン(以下EPIと略記する)である。
【0179】
純度試験の説明
生物由来カチオン性ポリマーの純度を、以下の条件に従ってガスクロマトグラフィーによって決定する:
- SPB5キャピラリーカラム;長さ30メートル、直径0.25mm、固定相の厚さ1μm
- インジェクター温度:250℃
- オーブン:40℃で5分間、続いて90℃まで5℃/分の勾配
- 水素炎イオン化検出器
- 検出器温度:250℃
- キャリアガス(ヘリウム)13ml/分
- ガス検出:H2で30mL/分、空気で400mL/分
- 注入量:2μl
- 分析時間:15分
【0180】
以下の実施例では、高電荷密度の生物由来カチオン性ポリマーはポリアミンである。ポリアミンの純度を決定するために、質量で1:1混合物中でジクロロメタンによる予備処理を行う。その後、上澄みの有機相をガスクロマトグラフィー装置に注入する。
【0181】
ポリアミンの純度は、生成物中に存在する残留EPI及び残留1,3-ジクロロ-2-プロパノール(以下DCPと略記する)の量によって示される。
【0182】
PPEの保持時間は4分であり、DCPは11分48秒である。
【0183】
外部EPI及びDCP標準物質を使用し、様々な不純物ピークの面積を測定することにより、ポリアミンの純度を計算することができる。
【0184】
a.本発明による生物由来カチオン性ポリマーの合成
I/本発明による生物由来ポリアミンの合成
ポリマーのそれぞれについて、PPE及び/又はDMAの起源は、100%化石起源、又は半化石起源、又は100%再生可能かつ非化石起源のいずれかである。
【0185】
再生可能かつ非化石起源のジメチルアミン(DMA)は、二酸化炭素(CO2)の発酵又はリサイクルによってバイオマスから生成される生物由来メタノールから得られる。代替的に、DMAのアミノ画分はまた、グリーンアンモニアから誘導されてもよい。
【0186】
再生可能かつ非化石起源のエピクロロヒドリン(EPI)は、塩素化プロセスの前に生物由来プロピレン前駆体を形成するための、紙パルプ工業からの残渣(以下「トール油」)の処理から得られる。或いは、再生可能かつ非化石起源のエピクロロヒドリン(EPI)は、特許WO 2014/111598に記載される植物油の処理から得ることができるか、又はバイオマスからのグリセロールから得ることができる。
【0187】
重合プロセスは、以下に記載される条件下で行われる。EPI及びDMAの起源は、所望の割合で調整される(Table 2(表2)参照)。
【0188】
脱塩水115g及びDMA172gを、撹拌ジャケットを備えた1LのParr型加圧反応器に添加する。
【0189】
反応媒体は、反応器のジャケットに供給する加熱装置を使用して、温度50℃に達するまで加熱する。
【0190】
その後、EPI311gを、80℃で90分間反応器に添加する。
【0191】
その後、20gの量の追加のPPEを反応器に添加する。添加終了後、反応媒体を80℃で30分間維持する。反応媒体の粘度が固定するのを止めるために、水中33%濃塩酸25gを添加する。その後、反応器を大気圧に到達するまで脱気し、周囲温度まで冷却する。
【0192】
DMA及びEPIの起源、並びにそれらの14Cパーセンテージを調整することにより、上述の純度試験に従って試験セットを実施する。14Cレベルは、ASTM D6866-21方法B規格に従って測定する。値は、前記化合物中の炭素の総質量に対する生物由来炭素の質量パーセンテージとして表される。したがって、14Cの質量パーセンテージは、EPI又はAMDの起源を示す。値ゼロは、材料中に測定可能な14Cが全く存在しないことを表し、したがって化石炭素源であることを示す。逆に、値100は、全体的に再生可能かつ非化石起源の炭素源であることを示す。
【0193】
EPI及び残留DCPの量を把握するために、ポリアミンを分析する。量が多いほど重合が困難になり、最終用途の性能に影響を与える。
【0194】
【表2】
【0195】
本出願人は、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であるエピクロロヒドリンと、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であるジメチルアミンの反応によって得られるカチオン性ポリマーは、化石起源のポリマーよりも残留不純物の量が少ないことを観察した。
【0196】
不純物の量は、生物由来化合物の量に比例して減少する。
【0197】
II/本発明によるポリマーの平均分子量の測定
ポリマーの平均分子量は、ポリマーの固有粘度を測定することによって決定される。
【0198】
固有粘度は、当業者に公知の方法によって測定することができ、濃度(x軸)に対して還元粘度値(y軸)を記し、曲線をゼロ濃度に外挿することからなるグラフ法により、異なるポリマー濃度の還元粘度値から計算することができる。固有粘度値を縦軸に、又は最小二乗法を使用してプロットする。
【0199】
次いで、分子量を、Mark-Houwinkの式によって決定することができる:
[η]=K Mα
ここで:
- [η]は、溶液粘度測定法によって決定されるポリマーの固有粘度を表し、
- Kは実験定数を表し、
- Mはポリマーの分子量を表し、
- αはMark-Houwink係数を表し、
- K及びαは、特定のポリマー-溶媒系に依存する。
【0200】
【表3】
【0201】
本出願人は、同じ重合条件下で、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であるエピクロロヒドリン、及び少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であるジメチルアミンから得られるカチオン性ポリマーは、化石起源のカチオン性ポリマーよりも高い平均分子量を有することを観察した。
【0202】
したがって、本発明による生物由来化合物を使用すると、より高分子量のポリマーを得ることができる。
【0203】
b.本発明によるポリマーの使用
III/ジャー試験
ポリマーP1~P7及びCE1を水に溶解し、溶液の総質量に対してポリマーの濃度が0.1質量%(w/w)である水溶液を得る。溶液は、ポリマーが完全に溶解するまで(透明で均一な溶液)、200rpmで機械的に撹拌する。
【0204】
1g/Lのカオリン、1g/Lの塩化カルシウム、及び10g/Lの粉砕鉱石(石炭)を含む水性廃液に対して一連の凝固試験を実施する。
【0205】
試験は、以下のプロトコールに従い、手動ジャー試験で実施する:
- 管に廃液を充填する、
- 異なる投与量のポリマー水溶液を注入する、
- ジャー試験を5回繰り返し、廃液の懸濁液にポリマー水溶液を組み込む。
【0206】
Table 4(表4)に示される結果は、廃液の量に関する使用したポリマーの投与量に応じた上澄みの濁度の要約である。
【0207】
【表4】
【0208】
本出願人は、投与量が何であれ、ポリマーP1~P7はポリマーCE1よりも濁度が低いことを観察した。
【0209】
同じ重合条件下で、少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であるエピクロロヒドリン、及び少なくとも部分的に再生可能かつ非化石であるジメチルアミンから得られるカチオン性ポリマーは、化石起源のカチオン性ポリマーよりも優れた凝固剤である。
【国際調査報告】