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特表2024-526554生産水と海水の混合による硫酸バリウムと破砕流体の生産
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  • 特表-生産水と海水の混合による硫酸バリウムと破砕流体の生産 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】生産水と海水の混合による硫酸バリウムと破砕流体の生産
(51)【国際特許分類】
   E21B 43/20 20060101AFI20240711BHJP
   E21B 43/00 20060101ALI20240711BHJP
   B01D 9/02 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
E21B43/20
E21B43/00 A
B01D9/02 601C
B01D9/02 602E
B01D9/02 619A
B01D9/02 619Z
B01D9/02 606
B01D9/02 615Z
B01D9/02 615A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577370
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(85)【翻訳文提出日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 US2022072924
(87)【国際公開番号】W WO2022266616
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】17/347,053
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506018363
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルグナイミ、ファフド イブラヒム
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ヨン チョル
(72)【発明者】
【氏名】ヴィラジャインズ、レジス ディディエ アラン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、タオ
(72)【発明者】
【氏名】アブルハマイェル、ナハル エム.
(72)【発明者】
【氏名】アロタイビ、スルタン エス.
(57)【要約】
生産水と海水を組み合わせて、生産水中のバリウム及び海水中の硫酸塩からの硫酸バリウムを沈殿させ、沈殿物を分離して、ベース水及び沈殿物を得ることを含む、ベース水及び沈殿物を生成するシステム及び方法である。ベース水は、特定量未満の硫酸塩を有してもよく、水圧破砕流体用に利用されてもよい。沈殿物は、掘削のための重量剤となり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水圧破砕流体用のベース水を生成し、硫酸バリウムを生成する方法であって、
生産水を処理し、前記生産水から油分を除去するステップと、
前記生産水を処理し、前記生産水からカルシウムとマグネシウムを除去するステップと、
混合物を得るために、前記生産水を海水と組み合わせるステップと、
前記生産水中のバリウムと前記海水中の硫酸塩からの前記混合物中の硫酸バリウムを沈殿させるステップと、
特定の硫酸塩濃度未満の硫酸塩を備える水圧破砕流体用のベース水を得るために、前記混合物から沈殿した前記硫酸バリウムを分離するステップと、
掘削流体の重量剤として前記硫酸バリウムを得るために、分離された前記硫酸バリウムを回収するステップと、を備える、
方法。
【請求項2】
前記生産水は、地下層から生産された炭化水素から分離された水を含み、重量剤としての前記硫酸バリウムが、掘削グレードのバライトを備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
バリウムは、前記生産水に添加されず、バリウムは、前記海水に添加されず、バリウムは、前記混合物に添加されない、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
淡水は、前記混合物に添加されない、
請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ベース水中の硫酸塩濃度を前記特定の硫酸塩濃度未満に維持するために、前記混合物中の前記海水の体積パーセントを調整するステップを備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ベース水中の硫酸塩濃度を前記特定の硫酸塩濃度未満に維持しながら、沈殿した前記硫酸バリウムの量を増加させるために、前記混合物中の前記海水の体積パーセントを調整するステップを備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記生産水中の前記バリウムの量と相関する前記混合物中の前記海水の体積パーセントを指定するステップを備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
水圧破砕流体用のベース水を生成し、硫酸バリウムを生成する方法であって、
混合物を得るために、バリウムを含む生産水と海水とを組み合わせるステップであって、前記生産水は、地下層から炭化水素を生産する際に前記地下層から生産される水である、ステップと、
前記硫酸バリウムを含む沈殿物を得るために、前記生産水中のバリウムと前記海水中の硫酸塩からの前記混合物中の硫酸バリウムを沈殿させるステップと、
水圧破砕流体用のベース水を得るために、前記混合物から前記沈殿物を分離するステップであって、前記ベース水は、特定の最大濃度未満の硫酸塩を備える、ステップと、
掘削流体用の重量剤を得るために、分離された前記沈殿物を提供するステップと、を備える、
方法。
【請求項9】
前記ベース水中の硫酸塩濃度が前記特定の最大濃度未満となるように、前記混合物中の前記生産水に対する前記海水の体積比を指定するステップであって、前記沈殿物は、掘削グレードのバライトを含む、ステップを備える、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ベース水中の硫酸塩濃度を前記特定の濃度未満に維持しながら、前記硫酸バリウムの沈殿量を増加させるために、前記海水と前記生産水の体積比を調整するステップを備える、
請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記生産水中の前記バリウムの量と相関する、前記混合物中の前記生産水に対する前記海水の体積比を指定するステップを備える、
請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記生産水を脱油するステップを備え、前記生産水を前記海水と組み合わせるステップは、前記生産水を前記海水と混合するステップを含む、
請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記生産水を軟化させるステップを備える、
請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記ベース水を含む破砕流体で水圧破砕される地下層における地層流体中の陽イオンの濃度と相関する特定の最大濃度を指定するステップであって、前記陽イオンは、バリウム、カルシウム及びストロンチウムを含む、ステップを備える、
請求項8に記載の方法。
【請求項15】
水圧破砕流体用のベース水を生成し、硫酸バリウムを生成する方法であって、
混合物を得るために、バリウムを含む生産水と海水を組み合わせるステップであって、前記生産水は、地下層から生産された水を含む、ステップと、
前記バリウムと前記海水中の硫酸塩からの前記混合物中の硫酸バリウムを沈殿させるステップと、
水圧破砕流体用のベース水を得るために、前記混合物から沈殿した前記硫酸バリウムを分離するステップであって、前記ベース水は、硫酸塩濃度閾値未満の硫酸塩濃度を含む、ステップと、
掘削流体の重量剤として掘削グレードのバライトを得るために、分離された前記硫酸バリウムを提供するステップと、
前記生産水中のバリウム濃度に応じて、前記生産水と組み合わされる前記海水の量を指定するステップと、を備える、
方法。
【請求項16】
前記海水を前記生産水と組み合わせるステップの前に、前記海水を処理して前記海水から粒子を除去するステップを備える、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記海水の量を指定するステップは、前記生産水中のバリウム濃度に応じて、前記生産水と組み合わされる前記海水の量を調整するステップを備える、
請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記海水の量を指定するステップは、前記ベース水中の前記硫酸塩濃度を前記硫酸塩濃度閾値未満に維持するために、前記混合物中の前記生産水に対する前記海水の体積比を調整するステップ、又は、前記ベース水中の前記硫酸塩濃度を前記硫酸塩濃度閾値未満に維持するために、前記混合物中の前記海水の体積パーセントを調整するステップ、を備える、
請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記ベース水を含む前記破砕流体で水圧破砕される地下層における地層流体中の陽イオンの濃度と相関する前記硫酸塩濃度閾値を特定するステップであって、前記イオンは、バリウム、カルシウム及びストロンチウムを含む、ステップを備える、
請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記生産水を脱油及び軟化させるステップを備え、前記生産水を前記海水と組み合わせるステップは、前記生産水を前記海水と混合するステップを含む、
請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年6月14日に出願された米国特許出願第17/347,053号の優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、生産水(produced water、随伴水)、海水及び破砕流体(fracturing fluid、フラクチャリング流体)に関する。
【背景技術】
【0003】
水圧破砕(Hydraulic fracturing)は、油井及びガス井からの生産を刺激するために、流体及び材料を使用して、地下層に亀裂を生成する。水圧破砕は、地下の岩石が破砕流体であり得る加圧流体によって破砕される、坑井刺激技術である。このプロセスは、天然ガス、石油、及びブライン(brine、塩水)がより自由に流れるような亀裂を深岩層に発生させるために、坑井内へ破砕流体を加圧注入することを含むことができる。破砕は、典型的には原油又は天然ガス等の生産流体が貯留層から生産され得る速度を高める経路を生成する。炭化水素の生産中に坑井内の圧力が低下すると、亀裂を維持するためにプロパント(proppant、支持材)を使用することがある。プロパントは、亀裂を開いた状態に保つため、地層閉鎖応力に抵抗することができる。水圧破砕は、かつて地質学者が生産することが不可能であると考えていた非従来型の地層からの原油及び天然ガスの回収を可能にする可能性がある。
【0004】
炭化水素の生産をさらに増加させる方法は、増進回収(Enhanced Oil Recovery、EOR)としても知られる、三次回収によるものである。EORは、貯留層又は地層から抽出することができる原油又は天然ガスの量を増加させる。EORは通常、従来の回収よりも現場での使用に費用がかかるが、坑井からの生産を増加させることができる。EOR又は三次回収は、他の方法では抽出することができない油田から原油を抽出することができる。EOR又は三次回収には、様々な技術がある。
【0005】
逆流(Flowback)水を回収する場合がある。この逆流水は、水圧破砕、EOR、及び他の用途の間に注入される水を含み得る。さらに、生産水は、典型的には生産中に坑口で受けられる炭化水素(例えば、原油及び/又は天然ガスを含む)中に存在し得る。生産水は、炭化水素と共に生成される塩分を含み水であり得る。生産水は、炭化水素から分離され、回収され得る。坑井の寿命にわたって、生産水は、一般に、逆流水よりも著しく多い量である。
【発明の概要】
【0006】
一態様は、水圧破砕流体用のベース水(base water、基水)を生成し、硫酸バリウムを生成する方法に関する。この方法は、生産水を処理して、生産水から油分を除去し、生産水からカルシウム及びマグネシウムを除去し、混合物を得るために生産水を海水と組み合わせることを含む。この方法は、生産水中のバリウム及び海水中の硫酸塩からの混合物中の硫酸バリウムを沈殿させ、混合物から沈殿した硫酸バリウムを分離して水圧破砕流体用のベース水を得るために、特定の濃度未満の硫酸塩を含むベース水を分離し、硫酸バリウムを掘削流体の重量剤として硫酸バリウムを得るために、分離された硫酸バリウムを回収することを含む。
【0007】
別の態様は、水圧破砕流体用のベース水を生成し、硫酸バリウムを生成する方法であって、混合物を得るために、バリウムを含む生産水を海水と組み合わせることを含み、生産水は、地下層から炭化水素を生産する際に地下層から生産される水である。この方法は、硫酸バリウムを含む沈殿物を得るために、生産水中のバリウムと海水中の硫酸塩からの混合物中の硫酸バリウムを沈殿させることを含む。この方法は、水圧破砕流体用のベース水を得るために、混合物から沈殿物を分離することを含み、このベース水は、特定された最大濃度未満の硫酸塩を含む。この方法は、掘削流体の重量剤として硫酸バリウムを得るために、分離された沈殿物を提供することを含む。
【0008】
さらに別の態様は、水圧破砕流体用のベース水を生成し、硫酸バリウムを生成する方法である。この方法は、混合物を得るために、バリウムを含む生産水を海水と組み合わせることを含み、生産水は、地下層から生産される水である。この方法は、バリウム及び海水中の硫酸塩からの混合物中の硫酸バリウムを沈殿させることと、水圧破砕流体用のベース水を得るために、沈殿した硫酸バリウムを混合物から分離することとを含み、このベース水は、硫酸塩濃度閾値未満である。この方法は、掘削流体の重量剤として掘削グレードのバライトを得るために、分離された硫酸バリウムを提供することを含む。この方法は、生産水中のバリウム濃度に応じて、生産水と組み合わされる海水の量を指定することを含む。
【0009】
1つ又は複数の実施形態の詳細が、添付の図面及び以下の説明に記載される。他の特徴及び利点は、明細書及び図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】温度に対するCaSOの水への溶解度をプロットしたものである。
【0011】
図2】温度に対するBaSOの水への溶解度をプロットしたものである。
【0012】
図3A】破砕流体ベースとして水を生成し、生成物としてBaSO(s)を生成する方法を示した図である
【0013】
図3B】破砕流体ベースとして水を生成し、生成物として固形のBaSO(s)を生成する生成システムを示した図である。
【0014】
図4】生産水(PW)と海水の混合物についての沈殿物の質量及び飽和比(SR)を、混合物中の海水の%を関数としてプロットしたものである。
図4A】生産水(PW)と海水の混合物についての沈殿物の質量及び飽和比(SR)を、混合物中の海水の%を関数としてプロットしたものである。
【0015】
図5】PWとナノ濾過海水との混合物についての沈殿物の質量及びSRを、混合物中の海水(ナノ濾過)の%の関数としてプロットしたものである。
【0016】
図6】PWの混合物についての沈殿物及びSRの質量を、混合物中の海水の%の関数としてプロットしたものである。
【0017】
図7】生成物であるベース水(水圧破砕流体用)を生成し、生成物である硫酸バリウムをも生成する方法のブロックフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
淡水資源の枯渇に関する懸念から、利用可能な海水を様々な油田用途に利用する技術を開発する必要性が生じている。例えば、水圧破砕は、1回の処理に数百万ガロンの水を必要とする可能性があり、代替の水源が求められている。海水を無処理で直接利用することに関連する主な問題の1つは、海水中に硫酸イオンが存在することである。硫酸イオンは、坑井に注入されると、地下層の岩石中に存在し、地下層のブライン中に存在する特定の陽イオンと反応して、硫酸カルシウム又は硫酸バリウム等のスケールを生成する可能性がある。この固形沈殿物は、地下層に有害な影響を及ぼし得る。また、坑井に(海水の注入によって)導入された硫酸塩は、有毒な硫化水素(HS)の生成をもたらし得る。
【0019】
本開示のいくつかの態様は、海水から硫酸塩を除去し、同時にバライト(barite、重晶石)(硫酸バリウム)を生成する技術を対象とする。(バリウムを有する)生産水を(炭化水素生成サイトを含む)海水と混合することによって、沈殿を介して海水から硫酸塩を除去し、沈殿した硫酸塩を除いた破砕流体ベースを得る。有利な点は、(例えば、掘削バライトとして使用される)硫酸バリウムと破砕流体ベースの両方が、同じ生産で同時に生産されるという相乗効果であろう。さらに、示されるように、硫酸バリウムの生産及び破砕流体ベースの生産は、炭化水素の生産現場で行われ得る。
【0020】
破砕流体のベース又は水ベースは、破砕流体の主成分であってよい。地下層の水圧破砕のためにベースを調整することを目的とする添加剤を、破砕流体を得るためにベースに添加することができる。破砕流体は、フラック流体又はフラッキング流体と呼ばれることもある。
【0021】
本技術は、生産水からのバリウム(Ba)を海水(例えば、アラビア湾の海水)と混合して、石油及び天然ガス産業における掘削のための掘削グレードのバライト(BaSO)と、破砕活動のための水(低硫酸塩)との両方を生成することができる。利用される生産水は、炭化水素を生産するときに地表に到達する、地下層に存在する会合性及び非会合性の水を指し得る。
【0022】
炭化水素含有ゾーン(例えば、世界における中東地域)の水圧破砕に海水を利用する場合、海水が石油及び天然ガス層の水圧破砕のために使用される前に、海水から硫酸塩が除去される。
【0023】
生産水(PW)(十分なバライトを有する場合)と海水との組合せは、固形(固体)沈殿物としてBaSO(s)を生成することができ、これはほとんど又は全ての種類の掘削液のための重量剤(weighting agent、加重剤)として一般に使用される。この固形沈殿物は、水から容易に分離し回収することができる。したがって、処理水はPWと海水との組合せから、除去された沈殿BaSO(s)を差し引いたものとすることができる。処理水は、バリウム及び硫酸塩を含まない状態に近づき、これにより、処理水は、炭化水素製造のための非従来型(頁岩(shale))の地層における密な石油及び天然ガス貯留層の水圧破砕のためのベース流体として適している。また、この処理水は、従来型の及び非従来型の貯留層における増進回収(EOR)のための注入流体であってもよい。
【0024】
生産水と海水との混合は、複数の調製(preparation)段階を含み得る。言い換えれば、両方の供給水流(PWと海水)を前処理することができる。PWは、油分及び粒子の除去のために処理されてよい。粒子除去は、PW中の総懸濁固形分(Total Suspended Solids、TSS)を低下させることができる。海水が一般に粒子を含まないように、海水を処理することも有益であり得る。PW流と海水流との混合は、硫酸塩沈殿物を生成させる熱力学的条件で行うことができる。次いで、硫酸塩沈殿物を混合水から分離することができる。ここでも、実施形態は、同じプロセスにおいて同時期に(例えば、同時に)価値のあるバライトと破砕品質の水の両方を生成することができる。
【0025】
この技術は、非従来型の石油及び天然ガス資源における破砕操作のために使用可能な海水及び地層水を回収するために、(PW中の)Baと(海水中の)硫酸塩との間の有益な混合比を指定(特定)することができる。実施形態はまた、水圧破砕作業中に利用される逆流水のin situ(インサイチュ)処理を使用してもよい。「in situ」処理は、坑井の地表での処理を意味することができ、逆流水が受け取られるとリアルタイムで実行することができる。(バリウムを有する)逆流水は、(必要に応じて)前処理され、海水と混合されて、破砕流体のためのベース水を与え得る。
【0026】
PWと海水との混合は、沈殿物の生成をもたらし得る。例えば、生産水中の陽イオンであるバリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)及びカルシウム(Ca)は、海水中の陰イオンである硫酸塩(SO)と反応して沈殿物を生成することができる。これらの沈殿反応は固形沈殿物を生成し、硫化バリウム(BaSO)、硫酸ストロンチウム(SrSO)、及び硫酸カルシウム(CaSO)を生成する。
BA2++SO 2-=BaSO(s)
Sr2++SO 2-=SrSO(s)
Ca2++SO 2-=CaSO(s)。
【0027】
PWと海水の混合による沈殿のためのこれらの3つの化学反応は、一般に、圧力及び温度に関して特殊な条件を必要としない。その代わりに、反応は、環境レンジ(ambient ranges)、穏やかな工業プロセス、又は地下貯留層条件に存在する圧力及び温度で起こり得る。これらの沈殿物及び関連するスケール生成の可能性及び深刻度を評価することができる。
【0028】
例えば、図1に示すように、CaSO(s)は、40℃未満の水温では生成されにくい。図1に示された実験結果は、CaSOが35℃未満の典型的な周囲温度(及び1気圧の周囲圧力)で、溶解形態(dissolved form)のままであることを裏付けている。
【0029】
図1は、水温(℃)に対する水中の百万分率(ppm)のCaSOの溶解度のグラフ100である。本明細書における「ppm」の使用は、一般に重量を意味する。2つの曲線102及び104が示されている。CaSOの溶解度は、温度の低下と共に増加する。曲線102は、カルシウム陽イオンの濃度が30,000ppmの水についてのものである。温度が40℃に下がると、曲線102はCaSOの30,000ppmの溶解度に近づき、温度が40℃まで下がると、CaSOが生成されないことを示している。曲線104は、カルシウム陽イオンの濃度が7,000ppmの水についてのものである。温度が40℃に低下すると、曲線104はCaSOの7,000ppmの溶解度に近づき、温度が40℃未満に低下するとCaSOが生成されないことを示す。カルシウム濃度は、原子吸光分析によって測定した。
【0030】
一方、BaSO(s)の沈殿物は、周囲温度(及び周囲圧力)で容易に生成される。これを説明するために、図2は、周囲圧力(1気圧)において様々な気温で測定されたBaSOの溶解度を示す。
【0031】
図2は、水温(℃)に対する水中のBaSOの溶解度(ppm)のグラフ200である。2つの曲線202及び204が示されている。BaSOの溶解度は、温度の低下と共に低下する。曲線202は、バリウム陽イオンの濃度が2,200ppmの水についてのものである。温度が40℃まで下がると、曲線302はBaSOの2,200ppmの溶解度を大きく下回る。曲線204は、カルシウム陽イオンの濃度が250ppmの水についてのものである。温度40℃まで下がると、曲線204はBaSOの250ppmの溶解度を大きく下回る。図2に示される実験データは、BaSO(s)が35℃未満の典型的な周囲温度で(及び1気圧の周囲圧力で)生成する(沈殿する)ことを指し示す。バリウム濃度は、原子吸光分析によって測定した。
【0032】
また、BaSO生成後に水中に硫酸塩がかなり残留していない限り、40℃以下ではSrSO(s)は生成しにくい。以下は、海水と生産物とを混合する際に起こり得る沈殿物の概要である。炭酸カルシウム[CaCO(s)]及び水酸化マグネシウム[Mg(OH)(s)]が、沈殿物の可能性のあるものとして、上記3種の沈殿物に加えて議論される。
【0033】
CaCO(s)が生成する可能性が高いが、重炭酸塩(CO)濃度によってその量が制限されることがある。混合物中のCOは、一般に海水由来のものである。海水中のCO濃度は、典型的には比較的低く、例えば150ppm未満である。実施態様では、海水とPWとの混合物が海水の30体積%(vol%)未満である場合、CaCO(s)の沈殿は、混合物中の1%未満のCaを除去することができる。
【0034】
Mg(OH)(s)は、一般にpHが10.3以上でない限り生成されない。そのため、Mg(OH)(s)の沈殿は起こりにくい。したがって、Mg(又はMgの大部分)は、典型的にはイオンの形態で溶解されたままであり得る。一般に、MgSOの沈殿は、ほとんど又は全く期待されない。すなわち、水中のMgイオン濃度はCaやBaに比べて低く、MgSOの溶解度もCaSOやBaSOよりはるかに大きい。これらの条件下では、MgSOは生成されない(又は生成されると予測される)。
【0035】
BaSO(s)は、典型的には沈殿物の中で最も高い濃度で生成され得る。BaSO(S)の生成(沈殿)の反応速度は、一般に周囲温度では速い。周囲温度よりも高い温度(例えば、100℃)では、BaSO(s)の生成がCaSO(s)の生成と比較して支配的であり得る。
【0036】
SrSO(s)は、一般に有意な濃度では生成されない。SrSOの溶解限界はBaSOよりはるかに高く、固形物の生成は閾値よりはるかに高い濃度で始まる。したがって、この場合も、混合物中に多くのSrSO(s)が生成される可能性は低い。
【0037】
CaSO(s)は生成される可能性があるが、BaSO(s)の生成量と比較するとはるかに少ない量である。CaSOの活性化エネルギーは、BaSOよりもはるかに高い。
【0038】
したがって、上記を考慮すると、BaSO(s)は一般に、最も支配的な形態の沈殿物である。CaCO(s)も生成され得るが、その量はBaSO(s)よりもはるかに少ない。他の沈殿物の生成は、混合物の温度と混合物中の海水とPWの配合比とを制御することによって制御(低減)することができる。
【0039】
したがって、混合物中の残留SOを制限することにより、この技術は掘削流体の重量剤として、米国石油協会(API)規格(例えば、API規格13A、第18版)に適合する、BaSO(s)中で高度に濃縮された固形沈殿物を生成しながら、水から完全にBaとSOを除去することができる。重み付け材料としても知られている重量剤は、掘削流体の密度を増加させるために利用される高比重かつ微細に分割された固体材料であってよい。重量剤としての生成物としてBaSO(s)を生成しながら、破砕流体ベースとして利用するために、BaとSOの濃度を有利に低減し、PWと海水との混合を、PW中のBa濃度及び海水中のSO濃度に応じて調整して実施することができる。
【0040】
表1は、サウジアラビア沖で採取されたアラビア湾海水の典型的なイオン組成を示している。濃度値は、ミリグラム/リットル(mg/L)で示されている。各溶質の濃度は、試料採取場所に応じて若干異なり得る。
【表1】
【0041】
表2は、本開示の実施例で実施され得る、油田PW(地層水)、(ナノ濾過されていない)海水、及びナノ濾過された海水のイオン組成物の例を示したものである。海水のナノ濾過の目的は、海水中から硫酸塩を除去し、破砕流体が坑井付近の地層水と混合するとき、重いスケールの沈殿なく破砕流体中への組み込みにより適した海水を作ることであり得る。表2の海水は、アラビア海水又はアラビア湾海水とも表示され得るサウジアラビアの海水である。ナノ濾過された海水は、ナノ濾過されたサウジアラビアの海水である。PW及び海水は、様々な体積濃度(例えば、PW70体積%及び海水30体積%)で混合され得る。混合物中のPW及び海水の特定の体積濃度の成分濃度及び濃度の適合性の望ましさを確認するために、計算を実施することができる。表2に示す組成物を、後述する本実験シミュレーションにおいて利用(試験)した。表2に記載のイオンとしては、上記のイオンに加えて、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、塩素(Cl)、及び重炭酸塩(HCO)が挙げられる。
【表2】
【0042】
地層水(生産水)は、海水と比較してCa及びBaが有意に高いが、地層水は、典型的にはCaCO(s)又はBaSO(s)を生成するのに充分な量の炭酸塩及び硫酸塩を単独で含有しない。他方、海水は、高濃度の炭酸塩及び硫酸塩を含有するが、海水だけでは典型的にはCaCO(s)又はBaSO(s)を生成するのに十分な量のCa及びBaを含有しない。PWは典型的には地層水であり、続いて(例えば、逆流水として)生成される地表から注入される水を含むことができる。しかし、PWは逆流水と区別できる。しかし、議論されるように、実施形態は、逆流水に適用可能である。
【0043】
実施形態において、例えば表2に示す組成を有するような地層水及び海水が混合されると、イオンが反応し始め、最初に起こる可能性の高い沈殿はCaCO(s)である。しかしながら、沈殿したCaCO(s)は、重炭酸塩(CO)が非常に低濃度であるため、少量である。これに続いて、典型的には望ましい沈殿であるBaSO(s)の生成が行われる。他の沈殿物、例えばCaSO(s)及びSrSO(s)もまた、それらのイオンに対して十分な高濃度が残っている場合には、発生する可能性が高い。残留硫酸塩濃度を制限することにより、生成される可能性のあるこれらCaSO(s)及びSrSO(s)の沈殿物を抑制することができる。残留硫酸塩の制限は、BaSO(s)の沈殿のために硫酸塩の大部分を利用することを意味し得る。
【0044】
図3Aは、破砕流体ベースとして水302を生成し、生成物としてBaSO(s)304を生成する方法300である。この方法300は、(バリウムを有する)PW306と(硫酸塩を有する)海水308とを組み合わせて(例えば、混合して)、2つの別々の生成物流として水302及びBaSO(s)304を得る。海水302の量は、例えば、混合物の30体積%未満であってよく、したがって、PW306の量は、例えば、混合物の少なくとも70体積%であってよい。PW306は、典型的には生成された地層水であり得るが、逆流水であってもよく、又は逆流水を含んでいてもよい。海水308とPW306との混合物から沈殿したBaSOを差し引いた(破砕流体用の)水302は、硫酸塩を有益に含まないように(例えば、硫酸塩が900ppm未満)に近づく。この方法は、比較的硫酸塩を含まないベース(注入)水302及び高いBaSO濃度の沈殿物(BaSO(s)304)を生成する。
【0045】
方法のブロック310において、PW306の脱油が実行されて、PW306から有機汚染物質(例えば、原油)が除去される。脱油において、PW306は、その有機汚染物質から分離される。これは、例えば、遠心分離(例えば、ハイドロサイクロン)、浮遊選考(例えば、誘導ガス浮遊又は溶解ガス浮遊)、濾過(例えば、ナットシェルフィルタ又はセラミック膜を介する)、又は吸着(例えば、活性炭フィルタ又はポリマー吸着剤を介する)を含む異なる技術によって行うことができる。PW306中の(したがって、水302中の)いくらかの残留有機物質が、初期腐食反応によって生成される過酸化物ラジカルと反応することによって、腐食から設備を保護するのに有益に寄与し得るので、PW306からの有機含有量の除去は完全である必要はない。いくつかの実施形態では、ブロック310が方法300の任意の動作であり、実行されないことがある。
【0046】
ブロック312において、脱油されたPW306は軟化に供される。いくつかの実施形態では、ブロック312は、方法300の任意選択の動作であり、実行されないことがある。水の軟化は、硬水中に見出されるカルシウム、マグネシウム、及び特定の他の金属陽イオンの除去であってよい。軟化312において、PW306の硬度は、炭酸ナトリウム(NaCO)又は水酸化ナトリウム(NaOH)を加えることによって制御される。軟化は、Ca及びMgを除去することを意味する。軟化は、本明細書に記載されるような洗浄又は沈殿であってよく、又はイオン交換を介してもよい。ここに記載されているような沈殿では、除去されたCa及びMgイオンが、参照番号313によって示されているように、水溶液中のCaCO及びMg(OH)を含むことができる。NaCOを加えると、CaCOが得られるが、一般にMgCOではない。Mg(OH)を生成することによってMgが沈殿し除去されるからである。NaOHを加えると、Mg(OH)が得られるが、一般にCa(OH)は得られない。Ca(OH)は溶解性が高く、ほとんど又は全く沈殿しないが、Mg(OH)は、通常、高いpHでも生成される。水の軟化のための技術は、例えば、記載された沈殿を介して、又はPW306を洗浄することによって、又はイオン交換樹脂を利用してPW306を処理することによって、軟化312が実施され得る。
【0047】
PW306(ひいては水302)が設備を著しく腐食することを回避するために、カルシウム及びマグネシウムの除去は、軟化312において部分的であり得る。残留するアルカリ陽イオンのCa及びMgは、金属壁に腐食保護層を形成するのに有益に寄与し得る。炭酸水素イオンと組み合わされたカルシウム及びマグネシウムイオンは、プロセス設備内の腐食速度を遅くすることができる。
【0048】
過酸化物ラジカルと有機材料及びアルカリ陽イオンのCa及びMgとの反応は、二価の鉄の酸化を遅らせることができる。したがって、PW306内に残っているいくらかのCa及びMgイオンの存在は、本技術を実施する設備における腐食速度を遅くするという有利な結果をもたらす可能性がある。
【0049】
ブロック314において、脱油され軟化されたPW306は、海水308の指定された体積百分率で、指定された動作条件の気温及び気圧で海水308と混合されて、BaSO(s)を生成する。海水308は、ナノ濾過されていない海水であってもナノ濾過された海水であってもよい。海水308は、PW306と混合する前に粒子を除去するために処理されてもよい。海水308は、例えば、混合物(混合水)の40体積%未満又は30体積%未満、例えば、10体積%~40体積%の範囲であってよい。BaSO(s)沈殿物を取り除いた後の混合水中の残留Ba濃度及び残留硫酸塩濃度を最小化又は低減するために、PW306と海水308との混合は、モル基準でBa約1.43に対して硫酸塩1であるBa及び硫酸塩の化学量論比の近傍又はそのもので特定され得る。生産水中のBa濃度及び海水中の硫酸塩に応じて、異なる配合比を使用することができる。実施形態は、バリウムを(地下層から生成される)PW306に依存し得る。したがって、実施態様は、バリウムを(例えば、塩化バリウムとして)混合物に添加することを回避することができる。
【0050】
(脱油及び軟化された)PW306と海水108との混合物は、混合物から沈殿したBaSO(s)固形物を分離するために、分離容器に送られ得る。例えば、混合物は、BaSO(s)固形物が重力によって分離するのに十分な滞留時間を許容されるデカンタ容器に送られてよい。典型的には、例えば20分~4時間の滞留時間が、水中に懸濁した沈殿物の良好な分離のために実施され得る。生成される沈殿物の結晶のサイズが小さいため、デカンタ又は重力分離器内の表面平均水速度(surface averaged water velocity)は、一般に毎秒5センチメートル(cm)を超えてはならない。デカンタ又は重力分離器内の表面平均水速度は、例えば、総水量流量をデカンタ内部の任意の直交する流路平面における流路表面積で割ったものであってよい。ppm
【0051】
例えば、一部の海洋用途や利用可能なスペースが制限される他の場所において、大型のデカンタ容器を設置することができない場合、混合水からBaSO(s)沈殿物を分離するための混合水の濾過を、重力分離の代替として利用することができる。フィルタのメッシュサイズは、例えば、0.5ミクロン(μm)未満、又は0.1μm~1μmの範囲とすることができる。
【0052】
分離容器、例えばデカンタ(重力分離容器)又はフィルタ容器から排出された水302は、破砕流体に利用することができる。破砕流体のための典型的な添加剤を水302に添加して、地下層の水圧破砕に採用可能な破砕流体を得ることができる。硫酸塩を多く含む海水308を利用して水302を得るが、この水302は硫酸塩が少ない。
【0053】
沈殿314に使用される設備(例えば、混合装置、デカンタ容器等)は、バルク(bulk)沈殿物の生成を促進しながら、スケーリングリスクを低減するように構成され得る。特に、設備は、非金属材料であってよく、又は内壁に耐スケーリング性のコーティングを有する可能性がある。実施形態は、二価の鉄の酸化を防止又は遅らせる腐食防止技術を実施することを含み得る。さらに、選択された化学物質の定期的な注入を含むスケール緩和戦略が適用され得る。
【0054】
ベース水302中の硫酸塩濃度は、一般に、ベース水302を組み込んだ破砕流体中の硫酸塩濃度となるが、これは破砕流体が主にベース水302を含むからである。許容可能な水302中の硫酸塩の指定された最大濃度は、水圧破砕に供される地下層の地層流体を伴う破砕流体の水化学(water chemistry)に依存し得る。地層水中のBA、Ca、Sr濃度が高いほど、破砕流体中の硫酸塩は低くなるはずである。破砕流体中のいくらかの硫酸塩は、スケール防止剤を破砕流体に加えて、坑井近傍領域等のスケールの可能性に対処することができるので、許容可能であり得る。水302中の規定の最大硫酸塩濃度は、例えば、1000ppm、900ppm、800ppm、700ppm、600ppm又は500ppmであり得る。参考として、海水をナノ濾過すると、海水中の硫酸塩濃度は例えば200ppmとなる。
【0055】
図3Bは、図3Aの方法300を実施することができる生成システム330である。生成システム300は、破砕流体ベースとして水分332を生成し、生成物として固形BaSO334も生成する。作動中、システム330は、脱油及び軟化したPW336を海水338と混合して、2つの別々の生成物流として水332及び沈殿したBaSO(s)334を得る。海水338は、かなりの量の硫酸塩を有するが、海水338を含む水332(破砕流体のために生成される)は、BaSO(s)の沈殿を介して硫酸塩を取り除くため、有益に硫酸塩フリーに近づく。水332中の硫酸塩濃度は、例えば、900ppm未満であってよい。
【0056】
生成システム300は、脱油システム340を含む。脱油システム340は、PW342を受け取り、脱油されたPW344を排出する。PW342は、地下層からの炭化水素の生産において、地下層から生産される水であってもよい。したがって、PW342は、地下層から生産される炭化水素から分離された水であってもよい。PW342は、Na、Cl、Ca、Mg、Ba及びSrを含むことができる。
【0057】
脱油システム340は、PW342の脱油を実行するための容器346を含むことができる。脱油において除去される有機汚染物質は、より一般的には遊離油及び非混和性炭化水素を含み得る。汚染物質は、溶解した有機物ならびに固体の形態を含むことができる。容器346は、PW342から有機汚染物質を除去する遠心分離機又はハイドロサイクロンであってよい。容器346は、PW342を脱油するために誘導ガス浮遊又は溶解ガス浮遊を行うために利用される浮遊選考容器であってもよい。容器346は、PW342を濾過してPW342を除去するためのフィルタ要素を有するフィルタ容器(ハウジング)であってもよい。フィルタ容器は、フィルタ要素としてナットシェル媒体を有するナットシェルフィルタ容器であってもよい。フィルタ容器は、フィルタ要素としてセラミック膜を有するフィルタハウジングである。セラミック膜は、無機材料から形成され、液体濾過のための膜操作に利用される。他のフィルタタイプも適用可能である。容器346は、例えば、PW342を濾過してPW342を脱油するための活性炭フィルタ又はポリマー吸着剤を有する吸着容器であってもよい。
【0058】
軟化システム(軟化器)348は、脱油されたPW344を受け取ることができる。軟化システム348は、PW344を軟化させるために、脱油されたPW344からカルシウム及びマグネシウム等のイオンを除去することができる。軟化の目的は、スケーリング(例えば、Ca、Mgミネラルの堆積)を低減することであり得る。軟化は、Ca及びMgを低減して、管、槽、膜、注入導管、坑井等におけるスケール生成[例えば、CaCO、Mg(OH)]を防止又は低減することができる。PWを含む破砕流体がダウンホール(downhole、坑内)内で非相溶性の水と混合されると、ダウンホール管の表面や地下層(貯水層)内の坑井付近の領域に、スケールが生成される可能性がある。
【0059】
軟化システム348は、脱油されたPW344から水の硬度に寄与するイオンを除去する容器350を含むことができる。容器350は、脱油されたPW344を洗浄して硬化イオンを除去するための洗浄容器であってよい。容器350は脱油されたPW344から硬化イオン(例えば、Mg及びCa)を除去するためのイオン交換樹脂を有するイオン交換容器であってもよい。軟化システム348は、脱油され軟化されたPW336を、海水338へ添加する(組み合わせる)ために排出することができる。
【0060】
混合システム352は、脱油され軟化されたPW336を受け取り、脱油され軟化されたPW336を、海水338と組み合わせて混合物354を得ることができる。混合物354のための海水338の量は、混合物354中の海水338の指定された体積パーセント、又は混合物354中のPW336に対する海水338の指定された体積比を与えるように制御され得る。いくつかの実施形態では、流量制御弁356は、混合物354に組み込まれる海水338の速度又は量を制御(例えば、維持、調整、変調等)することができる。実施形態では、PW336の流量及び海水338の流量がそれぞれPW336及び海水338を運ぶ導管に沿って配置されたそれぞれの流量計(図示せず)によって測定され得る。流量計によって測定される流量は、制御システム358に示されてよい。PW336の流量を制御するために、PW336を搬送する導管に沿って流量制御弁を配置することもできる。
【0061】
海水338とPW336との混合物354に取り込まれる海水338の量は、PW336中のバリウムイオン(Ba2+)濃度と、海水338中の硫酸イオン(SO 2-)濃度とに対応することができる。言い換えると、SO 2-とBa2+とのモル比は、水332中の残留硫酸塩(SO 2-)が低くなるように(例えば、特定の硫酸塩濃度閾値未満になるように)、BaSO沈殿の有益な量(例えば、化学量論比で、又はその付近で)を与えるように、指示することができる。
【0062】
PW336(又は342、344)をサンプリングし、バリウム濃度を実験室で測定することができる。測定されたバリウム濃度は、人間のオペレータによって、制御システム358のユーザインタフェースを介して制御システム358に入力されてもよい。いくつかの実施形態では、PW336(又は342、344)を搬送する導管に沿って配置されたオンライン機器分析器360(例えば、オンライン分光計)が、PW336(又は342、344)中のバリウム濃度をリアルタイムで測定する。機器送信機は、オンライン機器分析器360によって測定されたバリウム濃度を制御システム358に示すことができる。
【0063】
海水334をサンプリングし、実験室で硫酸塩濃度を測定することができる。測定された硫酸塩濃度は、人間のオペレータによって、制御システム358のユーザインタフェースを介して制御システム358に入力されてもよい。いくつかの実施形態では、海水338を搬送する導管に沿って配置されたオンライン機器分析器362(例えば、オンライン分光計、紫外線酸化機器、イオンクロマトグラフ機器等)が、海水338中の硫酸塩濃度をリアルタイムで測定する。機器送信機は、オンライン機器分析器362によって測定された硫酸塩濃度を制御システム358に示すことができる。
【0064】
生産水332をサンプリングし、実験室で硫酸塩濃度を測定することができる。測定された硫酸塩濃度は、人間のオペレータによって、制御システム358のユーザインタフェースを介して制御システム358に入力されてもよい。いくつかの実施形態では、水332を搬送する導管に沿って配置されたオンライン機器分析器364(例えば、分析器362と同じ又は類似のもの)が、水332中の硫酸塩濃度をリアルタイムで測定する。機器送信機は、オンライン機器分析器364によって測定された硫酸塩濃度を制御システム358に示すことができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、制御システム358は、PW336中で測定されたバリウム濃度、海水338中の硫酸塩濃度、及び生産水332中の硫酸塩濃度に応答して、PW336と組み合わされる海水338の量を(例えば、制御弁356を介して)調整することができる。制御システム358による調整は、自動であってよい。制御システム358による調整は、リアルタイムであってよい。制御システム358は、混合物354に組み込まれるPW346の量をも(又は代わりに)調整することができる。
【0066】
混合システム352は、海水338とPW336とを組み合わせるための容器366を有することができる。容器366は、例えば、海水338とPW336との混合を促進するための撹拌器又は混合器を備えた混合容器であってもよい。固形BaSO(s)334の沈殿は、容器366内で起こり得る。実施態様では、容器366が比較的大量の混合物354を保持することができ、例えば、大型の大気開放タンク又はプールであり、静的条件下での沈殿を可能にする。他の実施形態では、海水338及びPW336は、導管内にてインラインで組み合わされ得る。その場合、海水338とPW336との混合を促進するために、インラインスタティックミキサが導管内に含まれ得る。固形BaSO(s)334の沈殿は、導管内で起こり得る。PWは、海水を搬送する配管からPWを搬送する配管に海水を(例えば、パイプ・ティーを介して)加えることによって、配管内で海水と混合され得る。
【0067】
混合物354は、固形BaSO(s)334が混合物354から除去されて水332を得る分離システム368に供給されてもよい。固形BaSO(s)334の沈殿は、実施形態によっては、分離システム368内で起こり得る。
【0068】
分離システム366は、混合物354からBaSO(s)334を除去し、生成物としてBaSO(s)334を排出するための分離容器370を含むことができる。分離容器370はまた、生成物として(例えば、破砕流体のためのベース流体として利用される)水332を排出してもよい。水322中の硫酸塩濃度は、例えば、900ppm未満であってよい。固形BaSO(s)334の沈殿は、実施形態によっては、分離容器370内で起こり得る。
【0069】
分離容器370は、BaSO(s)固形物が重力によって分離するのに十分な滞留時間を許容されるデカンタ容器であってよい。典型的には、例えば、少なくとも20分(例えば、20分~4時間)の滞留時間を、混合物354中の沈殿物334を分離するために実施できる。特定の実施形態では、BaSO(s)沈殿物334として生成される沈殿物結晶のサイズが比較的小さいため、デカンタ又は重力分離器内部の表面平均水速度は、毎秒5cm未満又は毎秒10cm未満であり得る。他の実施形態では、分離容器が混合水354からBaSO(s)沈殿物を分離するためのフィルタ要素を有するフィルタ容器であってもよい。フィルタ要素のメッシュサイズは、例えば、0.5μm未満、又は0.1μm~1μmの範囲であってよい。
【0070】
混合システム352及び分離システム368において使用される設備(例えば、混合容器366、分離容器370等)は、バルク沈殿物の生成を促進しながら、スケーリングのリスクを低減するように構成され得る。特に、設備は非金属材料であってもよく、又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)(例えば、熱硬化Saekaphen(登録商標))、エポキシ、又はTeflon(登録商標)等のコーティングをその内壁に有していてもよい。実施形態は、腐食防止技術を実施することを含むことができる。さらに、選択された化学物質の定期的な注入を伴うスケール緩和戦略を実施することができる。
【0071】
制御システム358は、(流量を含む)流れの供給又は排出及び関連する制御弁、動作温度及び動作圧力の制御、並びに容器、ポンプ、フィルタ等の制御等、生成システム300の動作を促進又は指示することができる。制御システム358は、プロセッサ372と、システム300の計算及び直接動作を実行するためにプロセッサ372によって実行されるコード(例えば、論理、命令等)を記憶するメモリ374と、を含み得る。制御システム358は、1つ又は複数のコントローラであってもよく、又はそれを含んでもよい。プロセッサ(ハードウェアプロセッサ)372は、1つ又は複数のプロセッサであってもよく、各プロセッサは1つ又は複数のコアを有していてよい。(1乃至複数の)ハードウェアプロセッサは、マイクロプロセッサ、中央処理装置(CPU)、グラフィック処理装置(GPU)、コントローラカード、回路基板、又は他の回路を含むことができる。メモリ374は、揮発性メモリ(例えば、キャッシュ及びランダムアクセスメモリ)、不揮発性メモリ(例えば、ハードドライブ、ソリッドステートドライブ及びリードオンリーメモリ)、及びファームウェアを含み得る。制御システム358は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、コンピュータサーバ、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、分散コンピューティングシステム(DSC)、コントローラ、アクチュエータ、又は制御カードを含むことができる。マスタコントローラ及びスレーブコントローラを含むコントローラは、メモリ374に記憶され、プロセッサ372によって実行されるコードの構成要素であり得る。制御システム358は、現場に分散された制御モジュール及び装置を含むことができる。
【0072】
制御システム358は、天然ガス脱水システム300内の制御装置又は他の制御コンポーネントの設定点を指定するユーザ入力を受信することができる。制御システム358は、典型的には設定点及び他の目標又は制約を制御システム358に入力するためのユーザインタフェースを含む。いくつかの実施形態では、制御システム358は、制御装置の設定点を計算するか、さもなければ他の方法で特定することができる。制御システム358は計算を実行し、設定点の値を含む方向を提供するリモートコンピューティングシステムに通信可能に結合され得る。動作中、制御システム358は、PW336及び海水338の流れの動作を混合システム352に向けるように指示することを含む、システム300のプロセスを容易にすることができる。この場合も、制御システム358は、システム100内の制御コンポーネントの設定点を指定するユーザ入力又はコンピュータ入力を受信することができる。制御システム358は、制御装置の設定点を特定し、計算し、指定することができる。この特定は、センサ、メータ、計器、分析器及びトランスミッタ等からのフィードバック情報を含む、システム300の動作条件に少なくとも部分的に基づくことができる。
【0073】
いくつかの実施形態は、プロセス又は設備の監視及び制御を容易にする、活動の中心とすることができる制御室を含むことができる。制御室は、ヒューマンマシンインタフェース(HMI)を含むことができ、ヒューマンマシンインタフェース(HMI)は、例えば、制御システムのためのユーザインタフェースを提供するための専用のソフトウェアを実行するコンピュータである。HMIは、ベンダによって異なり、ユーザにリモートプロセスのグラフィカルバージョンを提示することができる。複数のHMIコンソール又はワークステーションが存在する場合があり、データへのアクセスの程度は様々である。制御システム358は、加えて又は代わりに、システム300内に分散されたローカル制御(例えば、分散コントローラ、ローカル制御パネル等)を採用することができる。
【0074】
図4図6は、米国テキサス州ヒューストンに本拠を置くライス大学ブライン化学コンソーシアム(BCC)から入手可能なScaleSoftPitzer(登録商標)(バージョン13.0)シミュレーションソフトウェアによって得られたシミュレーションデータを示すグラフである。ScaleSoftPitzer(登録商標)は、16種類の異なる鉱物(炭酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、フッ化カルシウム、及びケイ酸塩を含む)のスケール生成を予測するためのExcel(登録商標)ベースのソフトウェアプログラムである。このプログラムは、電解質のPitzer(ピッツァー)理論に基づいている。SR値の解釈に関するガイドライン値を表3に示す。沈殿は、スケーリングとの関連で望ましくないものとすることができる。沈殿は、スケーリングではないが、生成物として収集される所望の沈殿物を与えることができる。
【表3】
【0075】
図4図6は、1未満の値とすることができる飽和比の軸を含む。水は、不飽和、飽和、又は過飽和であり得る。用語「飽和」比は、これらの条件を包含する。「飽和」比という用語は、過飽和の値を包含することができる。
【0076】
図4は、139℃でのPWと海水との混合物の沈殿物の質量(mg/l)及び飽和比(SR)(無次元)のグラフ400であって、混合物中の海水の%(体積%)の関数として示されたものである。SRは、単位のない相対数である。PWは、表2のテストされた地層水である。海水は、表2の(ナノ濾過されていない)サウジアラビア海水である。したがって、図4は、表2の海水とPWとの混合物について、139℃での硫酸塩沈殿物の予測を提供する。図4は、硫酸塩沈殿のシミュレーションデータを示す。139℃の混合温度は、水圧破砕作業中の地下温度の一例に相当する。示されるように、シミュレーションデータは、混合水の過飽和比(SR)の値を提供するためにPitzer方程式を利用する業界標準のScaleSoftPitzer(登録商標)ソフトウェアを使用して得られた。過飽和度は沈殿の原動力となる。
【0077】
曲線402は、BaSO沈殿物の量である。曲線404は、CaSO沈殿物の量である。曲線406は、SrSO沈殿物の量である。曲線408は、BaSOのSRである。曲線410、412はそれぞれCaSO及びSrSOのSRであり、一般に、描かれたスケールで重なる。図4Aは、曲線410と曲線412との間の区別を示すためにグラフ400の下部を拡大したものである。図4は、海水と地層水との混合による、CaSO、BaSO、及びSrSOの比較的多量の沈殿の可能性を示す。沈殿後、溶解液中のSOイオンは、元の海水中のSOイオンよりもはるかに少なく、破砕流体として使用するのにより適したものとなる。
【0078】
図5は、表2のPW及びナノ濾過アラビア海水を139℃で混合した場合の硫酸塩沈殿のシミュレーションデータを示す。図5は、の、139℃でのPW及びナノ濾過海水の混合物についての沈殿物の質量(mg/l)とSRとを、混合物中の海水の%(体積%)(ナノ濾過)の関数として示したグラフ500である。曲線502は、BaSO沈殿物の量である。曲線504は、CaSO沈殿物の量である。曲線506は、SrSO沈殿物の量である。曲線508は、BaSOのSRである。曲線510、512はそれぞれCaSO及びSrSOのSRであり、一般に、描かれたスケールで重なる。図5は、ナノ濾過された海水(ナノ濾過された海水中の方が、図4の海水中よりもSOイオン濃度が低い)を用いた潜在的な沈殿を示す。ナノ濾過された海水(図4)の代わりに、元の海水(図4)を使用すると、より多くのBaSOを沈殿させることができる。海水を使用する場合、(ナノ濾過された海水と比較して)はるかに高いSRが沈殿の助けとなり得る。前述のように、SRは沈殿の原動力である。高いSRは、沈殿がより速いことを意味し得る。ナノ濾過された海水は、(海水と比較して)破砕流体ベース中の硫酸塩を低下させるのに役立ち得る。
【0079】
図4及び図5は、数体積%を超える海水又はナノ濾過された海水が地下層(石油及び/又は天然ガスを有する炭化水素貯留層)に注入されて、地下層を水圧破砕する場合に、かなりのBaSO沈殿及び重度のスケーリングが起こり得ることを示している。これらの理由から、海水は、水圧破砕作業に利用される前に、硫酸塩除去のために処理されるべきである。水圧破砕作業で使用するための従来の海水処理方法は、本質的に硫酸塩の除去のための膜濾過及び脱塩に基づく。
【0080】
図6は、周囲(大気)条件での沈殿物シミュレーションの結果を示す。表2の(ナノ濾過されていない)海水及びPWの混合物について、硫酸塩沈殿物の予測は、25℃及び絶対圧1バール(bara)でのものである。図6は、PW及び海水の混合物について、25℃、1baraでの沈殿物の質量(mg/l)及びSRを、混合物中の海水の%(体積%)の関数として示したグラフ600である。曲線602は、BaSO沈殿物の量である。曲線604は、CaSO沈殿物の量である。曲線606は、SrSO沈殿物の量である。曲線608は、BaSOのSRである。曲線610、612はそれぞれCaSO及びSrSOのSRであり、一般に、描かれたスケールで重なる。
【0081】
図6は、25℃、1baraで海水とPWを混合すると、著しいBaSO沈殿が起こることを示している。BaSO飽和比は、0~14,352であり得る。予測された地点でのBaSO沈殿の顕著な状態は、10体積%~90体積%の海水と、対応する90体積%~10体積%の高塩分PWとの混合であり、SRは5,101~14,352である。これは、910mg/L~3,741mg/LのBaSOの大量沈殿と結びついている。比較的高いBaSO(s)生成速度が、PWと海水が周囲条件下でこのような体積比率で混合されたときに生じる可能性がある。
【0082】
CaSOについて、海水と高塩分PWを25℃、1baraで混合すると、SRは0~2である。CaSO溶液は、わずかに過飽和である。CaSOのスケール生成の可能性はわずかである。
【0083】
SrSOについて、海水と高塩分PWを25℃、1baraで混合すると、SRは0~9である。SrSOのスケール沈殿は起こり得るが、一般に深刻なものではない。
【0084】
これらの結果は、本件の技術の実施形態によって掘削グレードのバライトがどのように容易に得られるかを説明する。BaSO(s)沈殿物の生成を制御するために、混合される海水とPWの体積比を調整することができる。
【0085】
一般に、圧力は、硫酸塩のSR又はスケール傾向に大きな影響を及ぼさない。これは表4に示されており、ここで、BaSO沈殿の予測される特徴パラメータは、表2の水組成物について、それぞれ1bara及び10baraで報告されている。表4のデータは、SRが1baraと10baraとでほとんど変化しないことを示す。BaSO(s)の沈殿速度は変化しない。
【表4】
【0086】
BaSO(s)沈殿物の生成を制御するために、海水とPWの体積比率、並びに混合温度を調節することができる。本技術は一般に、50bara未満の動作圧力で実施することができる。さらに、硫酸塩除去のための膜ベースの方法とは異なり、本明細書の実施形態は、圧力が経時的に1~10baraの間で変化し得る硫酸塩沈殿において、性能の損失なしにまとめる(integrate)ことができる。
【0087】
硫酸塩除去効率は、実施形態を微調整するために調整又は最適化するための変数である。表5は、表2に示される水組成の場合において、完全なBaSO沈殿後に、混合された海水及び生産水中に残存する硫酸塩の計算値を示す。
【表5】
【0088】
一例として上記で検討した特定の混合水(表2の水組成)を用いて本技術を微調整する例として、表5の結果の場合、10体積%~40体積%の海水と、対応する90体積%~60体積%の高塩分PWとの混合が、混合水中の硫酸塩濃度を500ppm未満に低下させることができることを確認する。したがって、この実施例で検討された給水では、10%~40%の範囲の(例えば、ナノ濾過されていない)海水とPWの体積比での動作は、水圧破砕用途のための高い品質のバライト並びに水の生成を増加させるために有益であり得る。生成され回収された沈殿物は、API規格13A(第18版)を満たすように微粉化されたBaSOであり、掘削流体システム(オイルベース又は水ベース)中の泥水密度を高めるために利用され得る。
【0089】
本技術はまた、水圧破砕現場で再利用するために、逆流水の処理に利用されてもよい。水圧破砕作業中、地層と接触した比較的多量の水が地表に逆流する。この逆流水は一般に、逆流水中の汚染物質に応じて、廃棄されるか、又は再利用のために処理される。逆流水中のBa濃度が有意である場合、ここでの実施形態は、逆流水を海水と混合して破砕流体を提供するために、したがって、逆流水が水圧破砕作業において再利用されるように、(例えば、坑井現場で)有利に利用され得る。
【0090】
この技術は、非従来型の石油・天然ガス生産作業における破砕流体として使用するための高品質な水を生成することができ、掘削用バライト(BaSO(s))を同時に生成することも可能とする。純粋な硫酸バリウムの比重は、4.50グラム/立方センチメートル(g/cm)であるが、API規格13A(第18版)を含むAPI規格に適合するように、採掘用のバライトは、約4.20g/cmの比重を有することが期待される。本明細書の技術の実施形態は、沈殿及び分離された硫酸バリウムについて、4.20g/cmの目標比重を有し得る。さらに、Caは一般に、軟化工程中に除去され、したがって、分離された沈殿物は、典型的には主にBaSO、例えば、少なくとも85質量%のBaSOである。この技術は、例えば、主に硫酸バリウムであり、4.20g/cmの比重を有する沈殿物を得るために、生産水の軟化と添加された海水の量を調整することができる。API規格13A(第18版)を満たす硫酸バリウムは、掘削グレードのバライトと表示することができる。API規格13A(第18版)を満たすバライトは、掘削グレードのバライトと表示することができる。
【0091】
実施形態は、水圧破砕作業のニーズを満たすために、様々な流量及び典型的な圧力で水圧破砕のための水を供給するための柔軟性を与え得る。膜ベースの技術(従来の海水処理)とは異なり、本実施形態によるプロセスは、破砕流体のためのベース水の生成流量をリアルタイムで調整することができ、設備の汚染又は損傷のリスクなしに、容易に待機状態にすることができる。従来技術と比較して、本方法の実施は、膜の洗浄や定期的なメンテナンスを必要としないため、海水から硫酸塩を除去するに際して費用効率が高い。
【0092】
本技術の実施形態は、海水及びPW中の不要なイオンの制御された沈殿及び分離を容易にすることができる。実施形態は、比較的高濃度のBaイオン及びCaイオンを含有する高塩分PWを利用して、海水中の硫酸塩を除去することができ、この場合、膜は実装又は必要とされない。本技術は、海水から硫酸塩を除去するための膜濾過の代替選択肢を提供することができる。本技術は、水圧破砕作業からの逆流水を処理して再利用するための解決策を提供することができる。特定の実施態様では、破砕流体のベースとして生成される水の含有量として、淡水を使用しない。さらに、実施形態は、地下層から坑井を通って炭化水素が生産される坑井現場を含む石油・天然ガス生産施設において、ベース水及び掘削グレードのBaSO(s)を局所的に生成するための費用効率の高い解決策を提供することができる。
【0093】
坑井現場は、破砕流体のために生成されたベース水を利用することができる。このプロセスは、水圧破砕の所定の用途に応じた水量を供給するために、リアルタイムで調整することができるという点で柔軟であり得る。利点は、炭化水素地層を水圧破砕するための水を、要求に応じて、または必要とされる流量及び圧力に近い、要求される、あるいは有益な流量及び圧力で生成できる柔軟性であり得る。水圧破砕のために生成されるベース水の流量は、水圧破砕作業のニーズに(それに応じて)リアルタイムで応えるように調整することができる。一般に、プロセス圧力は、時間と共に変化しても性能を著しく損なうことがない。実施形態では、プロセスが容易に停止され、水圧破砕作業の間に待機され、必要に応じて再開され得る。
【0094】
実施形態では、生成された掘削グレードのBaSO(s)を利用する掘削現場で局所的に実施されてもよい。実施形態において、生成されたBaSO(s)沈殿物は、混合水から容易に分離され、掘削作業に使用される。該方法は、掘削グレードのバライト(BaSO(s))を生成するのに適している。バライトは、硫酸バリウム(BaSO)から構成される鉱物である。掘削目的のためのバライトを規定するAPI規格13A(第18版)は、特定の鉱物について言及しているのではなく、その規格を満たす材料について言及している。しかし、実際には、これは通常、鉱物のバライトである。
【0095】
実施形態では、水混合比及びプロセスの他の動作が、(例えば、制御システム内の)プログラムされた制御アルゴリズム、及び指定された又は最適化された流量で水を混合するための一連の制御弁を利用して自動化され得る。実施形態は、高い総溶解固形分(Total Dissolved Solids、TDS)を有するPWを含むPWベースの破砕流体の開発のための海水の膜ナノ濾過と比較して、より費用効率が高く、柔軟性が高い。
【0096】
図7は、水圧破砕流体用のベース水を生成し、硫酸バリウムを生成する方法700である。PW及び海水からのベース水の生成は、ベース水のための淡水の使用を有益に削減又は排除することができる。さらに、本方法の相乗効果は、掘削流体の重量剤として掘削グレードのバライトであり得る固形の硫酸バリウム(第2の生成物流)を同時に生成することである。実施形態では、バリウムはPWに追加されない。実施形態では、淡水はPWに追加されない。
【0097】
工程702において、この方法は、PWを海水と組み合わせる前にPWを処理することを含む。PWは、地下層から生成された炭化水素から分離された水を含むことができる。PWの処理は、上述したように、PWの脱油を含むことができる。PWの処理は、これも上述したように、PWの軟化を含むことができる。軟化は、PWからカルシウム及びマグネシウムを除去するためにPWを処理することを含んでもよい。海水は、固形物を除去するための濾過又はナノ濾過といった処理を実行してもよい。しかしながら、海水のナノ濾過は、実施において有益に回避され得る。
【0098】
工程704において、該方法は、(例えば、処理済みの)PWを海水と組み合わせて(例えば、混合して)、混合物を得て、BaSO(s)の沈殿を可能にすることを含む。実施形態において、バリウムは、地下層から生成されるPW中のバリウム以外の混合物に添加されない。実施形態では、淡水は混合物に添加されない。PWと海水との混合は、混合容器内で行うことができる。ここでの詳解は、アラビア湾の海水について言及しているが、世界の他の地域からの海水も適用可能である。海水は、典型的には硫酸塩が含まれている。
【0099】
工程706において、該方法は、該混合物に含まれる生産水中のバリウム及び海水中の硫酸塩からのBaSOを沈殿させることを含む。沈殿により、BaSO(s)を有する沈殿物が得られる。沈殿は、混合容器中で発生し得る。
【0100】
工程708において、該方法は、該混合物から沈殿したBaSO(s)を分離して、水圧破砕流体用のベース水を得ることを含む。BaSO(s)沈殿物は、例えば、デカンタ容器(重力容器)又はフィルタ容器等の分離容器中で、混合物から分離することができる。
【0101】
工程710において、該方法は、該混合物から沈殿したBaSO(s)を分離することにより、ベース水を生成又は生産することを含む。この場合も、ベース水は、水圧破砕流体用のベース水であってよい。ベース水は、特定の最大濃度(閾値)(例えば、900ppm)未満の硫酸塩濃度を有する。
【0102】
工程712において、該方法は、該混合物から沈殿したBaSO(s)を分離することにより、BaSO(s)を生成することを含む。BaSO(s)は、掘削流体のための添加剤(例えば、重量剤)として利用され得る。該方法は、分離されたBaSO(s)を排出又は回収して、掘削流体の重量剤として掘削グレードのバライトを得ることを含むことができる。該方法は、掘削流体の重量剤としてBaSO(s)を得るために、分離された沈殿物を提供することを含んでもよい。
【0103】
工程714において、該方法は、PW中のバリウムの量と相関する(又はそれに応答する)混合物中の海水の量を指定する(又は調整する)こと、又はベース水中の硫酸塩濃度を硫酸塩濃度閾値未満に維持することを含む。混合物中の海水の量を指定(又は調整)することは、ベース水中の硫酸塩の濃度を特定された最大濃度未満に維持しながら、硫酸バリウムの沈殿量を増加させることであってよい。
【0104】
混合物中の海水の量を指定(又は調整)することは、混合物中の海水の体積パーセント、又は混合物中のPWに対する海水の体積比を指定(又は調整)することを含み得る。混合物中の海水の量は、(例えば、PW中のバリウム濃度及び海水中の硫酸塩濃度に基づいて)最初に指定され得る。次いで、海水の量は、例えば、PWのバリウム濃度又は海水の硫酸塩濃度の変化に応じて、又はベース水中の硫酸塩濃度が閾値を超えることに応じて、(例えば、リアルタイムで)調整され得る。
【0105】
上述のように、許容可能なベース水(ひいては破砕流体)中の硫酸塩の最大濃度は、水圧破砕に供される地下層の地層水を有する破砕流体の水化学に依存し得る。例えば、地層水中のBa、Ca及びSrの濃度が高いほど、破砕流体中の硫酸塩の濃度は低くなるはずである。したがって、本方法は、地下層の地層水中のBa、Ca及びSrの濃度に応答して、ベース水中の硫酸塩濃度を超えない最大(閾値)を、ベース水を組み込んだ破砕流体による水圧破砕に供される地下層の地層水中で特定することを含んでよい。言い換えれば、本方法は、地下層中の地層流体中のイオン(例えば、陽イオン)の濃度に(基づいて)相関するベース水中の硫酸塩濃度の最大濃度又は閾値を指定して、ベース水を組み込んだ破砕流体で水圧破砕することを含むことができ、イオンは、バリウム、カルシウム及びストロンチウムを含む。ベース水中の最大硫酸塩濃度は、破砕流体で水圧破砕され得る地下層中の地層流体中のバリウム、カルシウム及びストロンチウムのそれぞれの濃度に対して逆比例して特定され得る。
【0106】
最高品質の破砕流体ベース(低硫酸塩)を得るために、海水及び地層水(生産水又はPW)の回収は主な変数であり得、最大量の硫酸バリウムを生成することは副次的な変数であり得る。実施形態は、(1)最良品質の破砕流体を得るために海水及びPWを回収すること、及び、(2)海水とPWを混合して生成された沈殿物を、掘削等の他の用途に使用すること、を含む。
【0107】
残留硫酸塩濃度を制限することによって、一部の沈殿物(例えば、CaSO及びSrSO)の生成を有利に抑制することができる。PWと海水との比(例えば、少なくとも硫酸塩1に対してBa約1.43のモル比を与える)は、(海水からの)硫酸塩の大部分をBaSOとして沈殿させるのに十分な(PWからの)バリウムが存在するようにできる。しかしながら、BaSO及び他の硫酸塩の沈殿は、BaSO及び他の硫酸塩のSRに依存し、その結果、実施されるモル比は、SO1に対してBa1.43を超える(例えば、より大きい)場合がある。
【0108】
一実施形態は、水圧破砕流体用のベース水を生成し、硫酸バリウムを生成する方法である。この方法は、生産水を処理して、生産水から油分を除去することを含む。生産水は、地下層から生成された炭化水素から分離された水であり得る。この方法は、生産水を処理して、生産水からカルシウム及びマグネシウムを除去することを含む。この方法は、生産水を海水と混合して混合物を得ることと、生産水中のバリウム及び海水中の硫酸塩からの混合物中の硫酸バリウムを沈殿させることとを含む。実施形態では、バリウムは生産水に添加されず、バリウムは海水に添加されず、バリウムは混合物に添加されない。実施形態では、淡水は混合物に添加されない。この方法は、混合物から沈殿した硫酸バリウムを分離して、水圧破砕流体用のベース水を得ることを含み、このベース水は、特定の濃度未満の硫酸塩を有する。この方法は、分離された硫酸バリウムを採取して、掘削流体の重量剤として硫酸バリウムを得ることを含む。硫酸バリウムは、掘削グレードのバライトを提供し得る。この方法は、ベース水中の硫酸塩の濃度を特定の硫酸塩の濃度未満に維持するために、混合物中の海水の体積パーセントを調整することを含み得る。この方法は、混合物中の海水の体積パーセントを調整して、ベース水中の硫酸塩の濃度を指定濃度未満に維持しながら、硫酸バリウムの沈殿量を増加させることを含むことができる。本方法は、生産水中のバリウムの量と相関する混合物中の海水の体積パーセントを指定することを含むことができる。
【0109】
別の実施形態は、水圧破砕流体用のベース水を生成し、硫酸バリウムを生成する方法である。本方法は、バリウムを有する生産水を海水と組み合わせて混合物を得ることを含み、生産水は、地下層からの炭化水素の生産において地下層から生成される水である。生産水を海水と組み合わせることは、生産水を海水と混合することを含み得る。この方法は、生産水中のバリウム及び海水中の硫酸塩からの混合物中の硫酸バリウムを沈殿させて、硫酸バリウムを有する沈殿物を得ることを含む。この方法は、混合物から沈殿物を分離して、水圧破砕流体用のベース水を得ることを含み、このベース水は、指定された最大濃度未満の硫酸塩を有する。この方法は、掘削流体の重量剤を得るために、分離された沈殿物を提供することを含む。沈殿物は、掘削グレードのバライトであってもよく、又はそれを含んでいてもよい。本方法は、ベース水中の硫酸塩の濃度が指定された最大濃度未満となるように、混合物中の生産水と海水の体積比を特定することを含むことができる。本方法は、海水と生産水の体積比を調整して、ベース水中の硫酸塩の濃度を指定濃度未満に維持しつつ、硫酸バリウムの沈殿量を増加させることを含むことができる。本方法は、生産水中のバリウムの量と相関する、混合物中の生産水に対する海水の体積比を特定することを含むことができる。本方法は、生産水を脱油することを含むことができる。この方法は、生産水を軟化させることを含むことができる。本方法は、ベース水を含む破砕流体で水圧破砕される地下層中の地層流体中の陽イオンの濃度と相関する、特定の最大濃度を指定することを含むことができ、陽イオンは、少なくともバリウム、カルシウム及びストロンチウムを含む。
【0110】
さらに別の実施形態は、水圧破砕流体用のベース水を生成し、硫酸バリウムを生成する方法である。本方法は、例えば、バリウムを有する生産水を海水と混合して混合物を得ることを含み、生産水は、地下層から生成された水を含む。この方法は、バリウム及び海水中の硫酸塩からの混合物中の硫酸バリウムを沈殿させることを含む。この方法は、混合物から沈殿した硫酸バリウムを分離して、水圧破砕流体用のベース水を得ることを含み、このベース水は、硫酸塩濃度閾値未満である。この方法は、分離された硫酸バリウムを提供して、掘削流体の重量剤として掘削グレードのバライトを得ることを含む。この方法は、生産水中のバリウム濃度に応じて、生産水と組み合わされた海水の量を指定することを含む。海水の量を指定することは、生産水中のバリウム濃度に応じて、生産水と組み合わされた海水の量を調整することを含み得る。海水の量を指定することは、ベース水中の硫酸塩濃度を硫酸塩濃度閾値未満に維持するために、混合物中の生産水に対する海水の体積比を調整することを含んでもよく、又はベース水中の硫酸塩濃度を硫酸塩濃度閾値未満に維持するために、混合物中の海水の体積パーセントを調整することを含んでもよい。本方法は、ベース水を含む破砕流体で水圧破砕される地下層中の地層流体中の陽イオンの濃度と相関する硫酸塩濃度閾値を特定することを含むことができ、ここで、イオンは、バリウム、カルシウム及びストロンチウムを含む。本方法は、海水を生産水と混合する前に、海水を処理して海水から粒子を除去することを含むことができる。この方法は、生産水を脱油及び軟化させることを含むことができる
【0111】
いくつかの実施態様を説明してきた。とはいえ、本開示の技術思想及び範囲から逸脱せずに、種々の改変がなされてもよいということが理解されるであろう。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図4A
図5
図6
図7
【国際調査報告】