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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】ガドリニウム錯体溶液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 257/02 20060101AFI20240711BHJP
   A61K 49/10 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 31/395 20060101ALI20240711BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C07D257/02
A61K49/10
A61K31/395
A61B5/055 383
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577690
(86)(22)【出願日】2022-07-26
(85)【翻訳文提出日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 EP2022070902
(87)【国際公開番号】W WO2023006722
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】21187887.1
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504448162
【氏名又は名称】ブラッコ・イメージング・ソシエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】BRACCO IMAGING S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】バニン,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】バラーレ,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ボイ,ヴァレリア
(72)【発明者】
【氏名】ガッツェット,ソニア
(72)【発明者】
【氏名】ブオンサンティ,フェデリカ
【テーマコード(参考)】
4C085
4C086
4C096
【Fターム(参考)】
4C085HH07
4C085JJ02
4C085KA09
4C085KB12
4C085KB56
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA04
4C086BC58
4C086HA28
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA06
4C086NA07
4C086ZC78
4C096AA11
4C096FC14
(57)【要約】
本発明は、[μ-[1-[ビス[2-(ヒドロキシ-κO)-3-[4,7,10-トリス[(カルボキシ-κO)メチル]-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル-κN,κN,κN,κN10]プロピル]アミノ]-1-デオキシ-D-グルシトレート(6-)]]ジガドリニウム錯体のような、二量体ガドリニウム錯体の溶液の製造方法に関し、画像診断および磁気共鳴画像法(MRI)における造影剤の分野で有用であり、遊離ガドリニウム金属イオンを沈殿剤によって沈殿させる工程を含む。本発明はさらに、前記溶液から二量体ガドリニウム錯体を単離する方法、およびそのような方法によって得ることができる、溶液および単離された二量体ガドリニウム錯体に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

(式中、Rは、少なくとも2個のヒドロキシル基を含むC~C12ヒドロキシアルキルである)
で示されるガドリニウム錯体の溶液の製造方法であって、
i)式Ia
【化2】

(式中、Rは、上に定義された通りである)
で示される二量体リガンドの溶液を提供する工程、
ii)前工程の溶液にモル過剰のガドリニウム金属イオンを添加して、工程i)で提供された二量体リガンドを錯体化し、それによって式Iのガドリニウム錯体を含む中間体溶液を得る工程、
iii)前工程の中間体溶液に、遊離ガドリニウム金属イオンをガドリニウム塩として沈殿させるために、リン酸イオン(PO43-)、リン酸一水素イオン(HPO 2-)、リン酸二水素イオン(HPO )、オルトリン酸(HPO)、シュウ酸イオン(C 2-)、シュウ酸水素イオン(HC )、およびシュウ酸(H)からなる群から少なくとも選択される沈殿剤を添加し、それによって、遊離ガドリニウム金属イオンをガドリニウム塩として沈殿させ、前記式Iのガドリニウム錯体の溶液を得る工程
を含み、
該沈殿剤が、中間体溶液中のガドリニウム金属イオンの1モルに対して、1.1~5モルの量で添加される、製造方法。
【請求項2】
式IおよびIaのRが、好ましくは式
【化3】

で示されるペンチル-テトラオールおよび式
【化4】

で示されるヘキシル-ペンタオールから選択されるC~Cポリオールである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
ガドリニウム錯体が、以下の式
【化5】

を有する錯体化合物1であり、
二量体リガンドが、以下の式:
【化6】

を有するリガンド化合物1aである、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
沈殿剤が、リン酸イオン(PO 3-)、シュウ酸イオン(C 2-)およびリン酸一水素イオン(HPO 2-)からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
沈殿剤が、該沈殿剤を含む沈殿塩を添加することによって中間体溶液に添加され、該沈殿塩が、好ましくは、リン酸ナトリウム(NaPO)、リン酸カリウム(KPO)、リン酸水素ナトリウム(NaHPO)、リン酸水素カリウム(KHPO)、リン酸二水素ナトリウム(NaHPO)、リン酸二水素カリウム(KHPO)、シュウ酸ナトリウム(Na)、シュウ酸カリウム(K)、シュウ酸水素ナトリウム(NaHC)、およびシュウ酸水素カリウム(KHC )からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
沈殿剤が、中間体溶液中のガドリニウム金属イオンの1モルに対して、1.2~3モルの量で添加される、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
沈殿剤が、中間体溶液中のガドリニウム金属イオンの1モルに対して、1.4~2.5モルの量で添加される、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
沈殿剤が、中間体溶液中のガドリニウム金属イオンの1モルに対して、1.4~1.6モルの量で添加される、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
工程iii)による沈殿剤の添加中および/または添加後に、pHが、4.5以上の値に調整および/または維持される、請求項1~8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
工程iii)による沈殿剤の添加中および/または添加後に、pHが、4.7以上の値に調整および/または維持される、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
工程iii)による沈殿剤の添加中および/または添加後に、pHが、4.9以上の値に調整および/または維持される、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
工程iii)による沈殿剤の添加中および/または添加後に、pHが、5.5以上の値に調整および/または維持される、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
工程iii)による沈殿剤の添加中および/または添加後に、pHが、10.0以下の値に調整および/または維持される、請求項1~12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
工程iii)による沈殿剤の添加中および/または添加後に、pHが、9.0以下の値に調整および/または維持される、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
工程iii)による沈殿剤の添加中および/または添加後に、pHが、8.5以下の値に調整および/または維持される、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
工程iii)による沈殿剤の添加中および/または添加後に、pHが、7.5以下の値に調整および/または維持される、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
工程iii)による沈殿剤の添加中および/または添加後に、pHが、6.5以下の値に調整および/または維持される、請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
工程i)で提供された二量体リガンドの溶液が、以下の工程:
a)式Ib
【化7】

(式中、Rは、少なくとも2個のヒドロキシル基を含むC~C12ヒドロキシアルキルであり、
nおよびmは1であり;
はC~Cアルキルであり、好ましくはCアルキルであり、より好ましくはt-ブチルである)
で示される保護された二量体リガンドの溶液、好ましくは水溶液を提供する工程;
b)前工程の溶液に酸、好ましくは1価の負電荷を有する対イオンを含む無機酸を添加して、そのpHを低下させる工程;
c)工程b)中および/または工程b)後に、反応混合物の温度を、40℃より高く、好ましくは40℃より高く60℃まで、より好ましくは45~55℃の範囲内の温度に加熱および/または維持して、保護された二量体リガンドを脱保護し、それによって二量体リガンドを含む溶液を得る工程;および
d)場合により、工程c)で得られた二量体リガンドを含む溶液に塩基を添加して、二量体リガンドのカルボキシル基をプロトン化する工程
により得られる、
請求項1~17のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項19】
工程iii)後の遊離ガドリニウム金属イオンの残留量をさらに低減するために、工程iii)後に少なくとも1回のさらなる精製工程をさらに含み、好ましくは、該さらなる精製工程が、ガドリニウム錯体の溶液を吸着性樹脂にロードすることを含み、それによって残留した遊離ガドリニウム金属イオンが溶液から除去される、請求項1~18のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項20】
工程iii)を実行した後、少なくとも1回の任意でのさらなる精製工程を実行する前の、ガドリニウム錯体の溶液中の遊離ガドリニウム金属イオンの量が、ガドリニウム錯体の量に対して350ppm未満、および/またはガドリニウム錯体の溶液中のモノ-ガドリニウム化錯体の量が、ガドリニウム錯体の量に対して550ppmより低い、請求項1~19のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項21】
式I
【化8】

(式中、Rは、少なくとも2個のヒドロキシル基を含むC~C12ヒドロキシアルキルである)
で示されるガドリニウム錯体の溶液であって、
遊離ガドリニウム金属イオンの含有量が、ガドリニウム錯体の量に対して350ppm未満、好ましくは150ppm未満、より好ましくは100ppm未満、さらにより好ましくは80ppm未満の量であり、モノ-ガドリニウム化錯体の含有量が、ガドリニウム錯体の量に対して550ppm未満、好ましくは400ppm未満の量である、ガドリニウム錯体の溶液。
【請求項22】
請求項1~20のいずれか一項に記載の製造方法により得ることができる、請求項21に記載のガドリニウム錯体の溶液。
【請求項23】
式I
【化9】

(式中、Rは、少なくとも2個のヒドロキシル基を含むC~C12ヒドロキシアルキルである)
で示される単離されたガドリニウム錯体の製造方法であって、
請求項1~20のいずれか一項に記載のガドリニウム錯体の溶液の製造プロセスと、さらなる工程iv):
iv)前記ガドリニウム錯体の溶液からガドリニウム錯体を単離する工程と
を含む、製造方法。
【請求項24】
請求項23に記載の製造方法により得ることができる、式I
【化10】

(式中、Rは、少なくとも2個のヒドロキシル基を含むC~C12ヒドロキシアルキルである)
で示される単離されたガドリニウム錯体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高いロバスト性により特徴付けられ、大規模製造に好適な、[μ-[1-[ビス[2-(ヒドロキシ-κO)-3-[4,7,10-トリス[(カルボキシ-κO)メチル]-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカ-1-イル-κN,κN,κN,κN10]プロピル]アミノ]-1-デオキシ-D-グルシトレート(6-)]]ジガドリニウム錯体などの二量体ガドリニウム錯体の溶液の製造方法に関する。本発明は、さらに、前記溶液から二量体ガドリニウム錯体を単離する方法に関する。二量体ガドリニウム錯体は、画像診断および磁気共鳴画像法(MRI)における造影剤の分野で有用である。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴画像法(MRI)は、増え続ける症状に対する臨床診断においてますます使用されている周知の画像診断技術である。
【0003】
ガドリニウム[Gd(III)]錯体は、その長い緩和時間に起因して、MRIにおける造影剤として一般に使用されている。しかしながら、ガドリニウム金属イオン[Gd(HO)3+は、低投与量(10~20マイクロモル/kg)であっても、生体には極めて有毒である。
【0004】
したがって、潜在的に価値のあるMRI造影剤とされるためには、Gd(III)錯体は、有毒な金属イオンの放出を防ぐために、高い熱力学的(場合によっては動態学的)安定性を示さなければならない。その上、Gd(III)錯体を製造するプロセスは、錯体化の工程後に反応混合物中に存在する有毒な金属イオンを効果的かつ効率的に除去できると有利である。
【0005】
WO 2017/098044は、MRIにおける造影剤として有用な二量体常磁性錯体を開示している。これらの二量体錯体、詳細には二量体Gd(III)錯体は、日々の診断実施で現在使用されている非特定的な造影剤と比較して、増加した緩和性を示す。したがって、そのような二量体Gd(III)錯体は、現在使用されている造影剤によって必要とされる投与量より低い投与量で、インビボ(in vivo)画像診断に使用される可能性がある。
【0006】
WO 2017/098044は、そこに開示された二量体常磁性錯体の製造プロセスをさらに開示している。そのようなプロセスは、Gd(III)の塩または酸化物などの好適なGd(III)誘導体の化学量論的添加を用いて、リガンドを水中で錯体化する工程を含む。錯体を含む溶液を、次に濾過し、減圧下で蒸発させる。次に、粗生成物は、Amberchrome CG161Mなどの吸着性樹脂で精製され、生成物を含む画分を、最終的にプールし、蒸発させる。
【0007】
WO 2017/098044に開示されたプロセスの錯体化工程および精製工程の後に得られた溶液は、かなりの量のモノ-ガドリニウム化錯体を含有し得る。
【0008】
モノ-ガドリニウム化錯体は、WO 2017/098044に開示された二量体リガンドが、ガドリニウムイオンを2個ではなく1個のみをキレート化しているGd(III)錯体である。これらのモノ-ガドリニウム化錯体は、WO 2017/098044に開示されたジ-ガドリニウム化Gd(III)錯体の好ましい緩和時間測定の特性を示さない。したがって、これらのモノ-ガドリニウム化錯体を、錯体化工程から得られた溶液から除去する(またはその量を実質的に低減する)ことが有利である。しかしながら、反応混合物からのモノ-ガドリニウム化錯体の除去方法は、モノ-ガドリニウム化錯体の完全な除去が達成するのが困難であるという点で、完全に満足できるものではない(これは、すなわち、モノ-ガドリニウム化錯体が、ジ-ガドリニウム化錯体と非常に類似した物理的特徴を有するという事実に起因する)。この理由のため、錯体化工程の間または工程後に、モノ-ガドリニウム化錯体の生成を可能な限り実質的に回避する、WO 2017/098044に開示されたジ-ガドリニウム化Gd(III)錯体の製造方法を提供することが有利である。
【0009】
さらに、WO 2017/098044に開示された錯体化工程の再現性は、錯体化工程の反応物の正確な秤量およびその表題物の正確な決定に依存する。少なくともこの理由のために、WO 2017/098044で開示されたプロセスのロバスト性は改善され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、WO 2017/098044に開示されたGd(III)錯体の、上述の問題を克服する製造方法、具体的には、モノ-ガドリニウム化錯体の生成を可能な限り制限することが可能でありながら、再現可能であり、ロバスト性があり、そのため、WO 2017/098044で開示された二量体常磁性錯体の大規模製造に特に有利な方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様では、本発明は、式I
【化1】

(式中、Rは、少なくとも2個のヒドロキシル基を含むC~C12ヒドロキシアルキルであり、好ましくはRは、C~Cポリオールである)
で示されるガドリニウム錯体の溶液の製造方法であって、
i)式Ia
【化2】

(式中、Rは、上に定義された通りである)
で示される二量体リガンドの溶液を提供する工程、
ii)前工程の溶液にモル過剰のガドリニウム金属イオンを添加して、工程i)で提供された二量体リガンドを錯体化し、それによって式Iのガドリニウム錯体を含む中間体溶液を得る工程、および
iii)前工程の中間体溶液に沈殿剤を添加して、遊離ガドリニウム金属イオンをガドリニウム塩として沈殿させ、それによって前記式Iのガドリニウム錯体の溶液を得る工程
を含み、該沈殿剤は、リン酸イオン(PO43-)、リン酸一水素イオン(HPO 2-)、リン酸二水素イオン(HPO )、オルトリン酸(HPO)、シュウ酸イオン(C 2-)、シュウ酸水素イオン(HC )、およびシュウ酸(H)からなる群から選択される、製造方法を提供する。
【0012】
好ましい態様では、本発明は、以下のガドリニウム錯体(化合物1)
【化3】

の溶液の製造方法であって、
i)以下の二量体リガンド(化合物1a)
【化4】

の溶液を提供する工程、
ii)前工程の溶液にモル過剰のガドリニウム金属イオンを添加して、工程i)で提供された二量体リガンドを錯体化し、それによって式Iのガドリニウム錯体を含む中間体溶液を得る工程、および
iii)前工程の中間体溶液に沈殿剤を添加して、遊離ガドリニウム金属イオンをガドリニウム塩として沈殿させ、それによって前記式Iのガドリニウム錯体の溶液を得る工程
を含み、該沈殿剤は、リン酸イオン(PO 3-)、リン酸一水素イオン(HPO 2-)、リン酸二水素イオン(HPO )、オルトリン酸(HPO)、シュウ酸イオン(C 2-)、シュウ酸水素イオン(HC )、およびシュウ酸(H)からなる群から選択される、製造方法を提供する。
【0013】
第2の態様では、本発明は、その実施形態のいずれかによるガドリニウム錯体の溶液の製造方法によって得られる、式I
【化5】

(式中、Rは上に定義された通りである)
で示されるガドリニウム錯体の溶液を提供する。
【0014】
第3の態様では、本発明は、式I
【化6】

(式中、Rは、上に定義された通りである)
で示される単離されたガドリニウム錯体の製造方法であって、
その実施形態のいずれかにおいて本明細書に開示されるガドリニウム錯体の溶液の製造工程と、さらなる後続工程iv):
iv)前記工程iii)から得られた精製溶液から、ガドリニウム錯体を単離する工程と
を含む、製造方法を提供する。
【0015】
さらなる態様では、本発明は、その実施形態のいずれかによる単離されたガドリニウム錯体の製造方法によって得られる、式I
【化7】

(式中、Rは、上に定義された通りである)
で示される単離されたガドリニウム錯体を提供する。
【0016】
これらの態様およびさらなる態様は、その実施形態と共に、以下の項で、より詳細に開示される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で使用される場合、別途規定されていない限り、用語「モノ-ガドリニウム化錯体」は、式Iの二量体錯体、または化合物1と同じ構造を有する錯体を指すが、ガドリニウム金属イオンを2個ではなく1個のみをキレート化している。例えば、モノ-ガドリニウム化錯体は、一般式Ic
【化8】

(式中、Rは、式Iに関して上に定義された通りである)
で示される化合物である。
【0018】
本明細書で使用される場合、別途規定されていない限り、用語「沈殿剤」は、本発明の製造方法による中間体溶液に添加された場合、少なくとも工程iii)の条件で、工程iii)において添加される、アニオンであるかまたはアニオンを生じる薬剤を指す。そのようなアニオンは、遊離ガドリニウム金属イオンとのイオン結合(複数可)を通して、本明細書で定義されるガドリニウム塩を生じることができる。沈殿剤は、リン酸イオン(PO 3-)、リン酸一水素イオン(HPO 2-)、リン酸二水素イオン(HPO )、オルトリン酸(HPO)、シュウ酸イオン(C 2-)、シュウ酸水素イオン(HC )、およびシュウ酸(H)からなる群から選択される。
【0019】
本明細書で使用される場合、別途規定されていない限り、用語「ガドリニウム塩」は、本明細書で定義される沈殿剤の添加後に生じる塩を指す。ガドリニウム塩は、カチオンとしてのGd3+、および沈殿剤であるかまたは沈殿剤によって生じる対イオンとしてのアニオンを含む。少なくとも、本発明の製造方法の工程iii)の条件において、また好ましくは工程iii)の下流工程の条件においても、ガドリニウム塩は、固体および濾過できる物理的形態で反応混合物中に存在する。ガドリニウム塩の例は、リン酸ガドリニウムおよびシュウ酸ガドリニウムである。
【0020】
本明細書で使用される場合、別途規定されていない限り、用語「遊離ガドリニウム金属イオン」は、溶液中に存在し、二量体リガンドによってキレート化されていない、[Gd(HO)3+などのガドリニウムイオンを指す。
【0021】
本明細書で使用される場合、別途規定されていない限り、用語「中間体溶液」は、錯体化工程(工程ii))の後であるが、精製工程(工程iii))の前に得られる、式Iのガドリニウム錯体を含む溶液を指す。
【0022】
本明細書では、別途規定されていない限り、「アルキル」という表現は、任意の直鎖または分岐の炭化水素をその意味するところに含む。例えば、「C~Cアルキル」は、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソ-ペンチル、tert-ペンチル、n-ヘキシルなどの1~6個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖をその意味するところに含む。本明細書において、別途規定されていない限り、用語「tBu」は、Cアルキルtert-ブチル(または1,1-ジメチルエチル)を指す。
【0023】
用語「ヒドロキシアルキル」(または本明細書で互換的に使用される「ポリオール」)は、1つまたは複数の水素原子がヒドロキシル基によって置き換えられた、対応する直鎖または分岐の炭化水素鎖のいずれかをその意味するところに含む。
【0024】
例えば、別途規定されていない限り、「C~C12ポリオール」(または「C~C12ポリヒドロキシアルキル」)という表現は、2個以上、例えば2~11個の水素原子がヒドロキシル基によって置き換えられた、対応するC~C12直鎖または分岐の炭化水素鎖のいずれかをその意味するところに含む。これらの中では、C~C10ポリオールが好ましく、C~Cポリオールが特に好ましい。C~Cポリオールの例は、それぞれ、Cアルキル鎖上に2、3、4および5個のヒドロキシル基を含む、ペンチル-ジオール、ペンチル-トリオール、ペンチル-テトラオールおよびペンチル-ペンタオールなどのペンチル-ポリオール(またはポリヒドロキシペンチル);Cアルキル鎖上に2~6個のヒドロキシル基を類似して含む、ヘキシル-ポリオール(またはポリヒドロキシヘキシル);ならびにCアルキル鎖上に2~7個のヒドロキシル基を含むヘプチル-ポリオール(またはポリヒドロキシヘプチル)を含む。
【0025】
本明細書において、用語「保護基」は、それが結合する基の機能を保持するのに適した、保護基を表す。特に、保護基は、アミノ、ヒドロキシルまたはカルボキシル官能基を保持するために使用され得る。したがって、適切なカルボキシル保護基としては、例えば、tert-ブチルもしくはベンジルエステルのようなベンジル、アルキル、またはそのような官能基の保護に一般に使用される他の置換基が挙げられ、それらは全て当業者に周知である[一般的参照として、T.W.GreenおよびP.G.M.Wuts;Protective Groups in Organic Synthesis, Wiley, N.Y. 1999, third edition]。
【0026】
さらに、用語「部分」または「残基」は、本明細書では、直接または任意の好適なリンカーを介して、分子の残りの部分に結合または複合体化された所与の分子の残基部分と定義されるように意図される。
【0027】
例えば式Iの化合物および化合物1のような、本明細書に開示される化合物は、1つまたは複数の不斉炭素原子、あるいはキラル炭素原子とも称される炭素原子を有することができ、したがって、ジアステレオマーおよび光学異性体を生じる場合がある。別途規定されていない限り、本発明は、全てのそのような可能なジアステレオマー、同様にそのラセミ混合物、その実質的に純粋な分離されたエナンチオマー、全ての可能な幾何異性体、および薬学的に許容されるその塩をさらに含む。
【0028】
本発明はさらに、含まれる酸性基のそれぞれ(例えばR上)が脱プロトン化されていてもよい、式Iの錯体、または化合物1の溶液の製造方法に関する。そのような場合、式Iaの二量体リガンド、または化合物1aに含まれる酸性基は、例えば脱プロトン化されたそれぞれの形態であってもよい。
【0029】
本発明はさらに、含まれる塩基性基のそれぞれ(例えば第三級アミン)がプロトン化されていてもよい、式Iの錯体、または化合物1の溶液の製造方法に関する。そのような場合、式Iaの二量体リガンド、または化合物1aに含まれる塩基性基は、例えばプロトン化されたそれぞれの形態であってもよい。
【0030】
本発明は、式I
【化9】

(式中、Rは、少なくとも2個のヒドロキシル基を含むC~C12ヒドロキシアルキルである)で示されるガドリニウム錯体の溶液の製造方法であって;
i)式Ia
【化10】

(式中、Rは上に定義された通りである)
で示される二量体リガンドの溶液を提供する工程;
ii)前工程の溶液にモル過剰のガドリニウム金属イオンを添加して、工程i)で提供された二量体リガンドを錯体化し、それによって式Iのガドリニウム錯体を含む中間体溶液を得る工程、および
iii)前工程の溶液に少なくとも沈殿剤を添加して、遊離ガドリニウム金属イオンをガドリニウム塩として沈殿させ、それによって式Iのガドリニウム錯体の溶液を得る工程
を含み、
該沈殿剤が、リン酸イオン(PO43-)、リン酸一水素イオン(HPO 2-)、リン酸二水素イオン(HPO )、オルトリン酸(HPO)、シュウ酸イオン(C 2-)、シュウ酸水素イオン(HC )、およびシュウ酸(H)からなる群から選択される、
製造方法に関する。
【0031】
本発明の製造方法はロバスト性があり、したがって先行技術のプロセスの問題を克服する。実際、モル過剰のガドリニウム金属イオンの添加に起因して、錯体化工程の反応物の正確な秤量および表題物の決定という負担は大幅に低減される。本発明の製造方法は、ロバスト性があり、再現可能かつ効率的であるため、大規模での製造においてより容易に実施され得る。その上、モル過剰のガドリニウム金属イオンを添加することによって、最終生成物中のモノ-ガドリニウム化錯体の存在は、化学量論的な量の添加と比較して、著しく低下される。
【0032】
モル過剰のガドリニウム金属イオンを添加することで、化学量論的な量、または化学量論的な量より少ない量のガドリニウム金属イオンの添加と比較して、錯体化後に、より多量の遊離ガドリニウム金属イオンが生じる;しかしながら、この多量の遊離ガドリニウム金属イオンは、本発明の工程iii)を実行することによって、すなわち本明細書に開示されるように沈殿剤を用いて、遊離ガドリニウム金属イオンを沈殿させることによって、効果的かつ効率的に除去されることが見出された。したがって、工程ii)と工程iii)を組み合わせることで、ロバスト性があり、大規模な製造に好適な方法によって、モノ-ガドリニウム化錯体と遊離ガドリニウム金属イオンがいずれも低量である、式Iの錯体を含む溶液が得られるという点において、本発明の特に効果的な方法が提供される。
【0033】
出願人はまた、式Iの錯体の溶液を製造し遊離ガドリニウムイオンを除去するために、本発明によらない方法で遊離ガドリニウム金属イオンを沈殿させると、高量で、したがって好適ではない量の遊離ガドリニウム金属イオンおよび/またはモノ-ガドリニウム化錯体を含有する溶液が得られることも見出した。具体的には、比較例によって以下の実験の項でも実証されるように、ガドリニウムイオンを沈殿させるための先行技術で公知の方法は、好適な量の遊離ガドリニウム金属イオンおよび/またはモノ-ガドリニウム化錯体を含む式Iのガドリニウム錯体の溶液を得るためには好適ではない場合がある。例えば、遊離ガドリニウム金属イオンを含む溶液のpHが十分に高いpHに上げられた場合に、遊離ガドリニウム金属イオンがGd(OH)として沈殿することは、例えば"Preparation, Purification, and Characterization of Lanthanide Complexes for Use as Contrast Agents for Magnetic Resonance Imaging", Averill et al., Journal of Visualized Experimentsによって公知である。しかしながら、比較例によって以下の実験の項でも実証されるように、塩基性化による遊離ガドリニウム金属イオンのこの沈殿方法を、式Iのガドリニウム錯体の溶液に使用した場合、水酸化ガドリニウムが沈殿しないため、効果的ではない。したがって、この塩基性化法によって、目的とするガドリニウム錯体、すなわち式Iの溶液中の遊離ガドリニウム金属イオンの量は減少しない。
【0034】
出願人は、驚いたことに、遊離ガドリニウム金属イオンをガドリニウム塩として沈殿させるために、リン酸イオン(PO 3-)、リン酸一水素イオン(HPO 2-)、リン酸二水素イオン(HPO )、オルトリン酸(HPO)、シュウ酸イオン(C 2-)、シュウ酸水素イオン(HC )、およびシュウ酸(H)からなる群から選択される沈殿剤を、好ましくは以下に開示される量で添加することによって、特に、pHが、沈殿工程の間および/または工程後に、以下に開示される範囲に調整および/または維持される場合、高量のモノ-ガドリニウム化錯体を生成することなく、高量の遊離ガドリニウム金属イオンを効果的に除去することが可能であることを見出した。
【0035】
本発明の製造方法は、遊離ガドリニウム金属イオンの一部、具体的にはその実質的な部分を沈殿させることができる。実際、以下の実験の項に示されるように、沈殿工程iii)は、錯体化工程ii)後に存在する遊離ガドリニウム金属イオンの実質的な部分を沈殿させることを可能にし、それによって、遊離ガドリニウム金属イオンの含有量は、およそ数万ppmからたった100ppmさらには数十ppm程度にまで低減される(ガドリニウム錯体の量に対して)。したがって、本発明の製造方法は、遊離ガドリニウム金属イオンの含有量が低い、本明細書に開示されるガドリニウム錯体を含む溶液の製造であって、具体的には、そのような溶液中の遊離ガドリニウム金属イオンの量が、沈殿工程iii)後、および工程iii)後の任意でのさらなる精製工程(複数可)前に、ガドリニウム錯体の量に対して、350ppm未満、好ましくは150ppm未満、より好ましくは100ppm未満、さらにより好ましくは80ppm未満であり得る、製造方法を提供する。本発明によれば、遊離ガドリニウム金属イオンの高いppm値(例えば4000ppm以上のppm値)は、キシレノールオレンジの存在下でEDTAを用いる従来の錯滴定によって決定され、一方、遊離ガドリニウム金属イオンのより低いppm値(例えば4000ppmより低いppm値)は、好ましくは、以下の実験の項に提示されるHPLC手順1を実行することによって決定される。
【0036】
さらに、本発明の製造方法は、本明細書に開示されるガドリニウム錯体を含む溶液の製造方法であって、そのような溶液中のモノ-ガドリニウム化錯体の量が低く、すなわちガドリニウム錯体の量に対して、550ppmより低く、好ましくはモノ-ガドリニウム化錯体を定量化するために使用される分析方法の定量下限(LoQ)より低く、すなわち400ppm未満である、製造方法を提供する。モノ-ガドリニウム化錯体のこれらのppm値、同様に本発明におけるモノ-ガドリニウム化錯体の全てのppm値は、以下の実験の項に提示されるHPLC手順2を実行することによって決定される。本発明の製造方法の最終溶液中のそのような低量のモノ-ガドリニウム化錯体、すなわちガドリニウム錯体の量に対して、550ppm未満、好ましくは400ppm未満のモノ-ガドリニウム化錯体は、最終の単離された錯体の緩和性に、有意の影響を及ぼすこともなく、または悪影響を及ぼすことさえない。
【0037】
有利には、本発明の製造方法の工程iii)は、本明細書に開示されるガドリニウム錯体の溶液の製造を提供し、そのような溶液中の、遊離ガドリニウム金属イオンの量は、ガドリニウム錯体の量に対して、150ppm未満、好ましくは125ppm未満、より好ましくは80ppm未満、さらにより好ましくは50ppm未満であり、モノ-ガドリニウム化錯体の量は、ガドリニウム錯体の量に対して、400ppm未満である。
【0038】
式IおよびIaの好ましい化合物は、Rが、C~C12アルキル鎖上に2~11個、好ましくは3~10個のヒドロキシル基を有するC~C12ポリヒドロキシアルキル(またはC~C12ポリオール)である化合物を含む。好ましくは、Rは、例えば、Cアルキル鎖上に少なくとも2個、好ましくは2~4個のヒドロキシル基を含むペンチル-ポリオール(またはポリヒドロキシペンチル);Cアルキル鎖上に少なくとも2個、好ましくは2~5個のヒドロキシル基を含むヘキシル-ポリオール;またはCアルキル鎖上に少なくとも2個、好ましくは3~6個のヒドロキシル基を含むヘプチル-ポリオールから選択される、C~Cポリオールの残基である。
【0039】
好ましい一実施形態では、本発明の製造方法は、式Iのガドリニウム錯体の溶液を製造するためのものであり、式IおよびIaのRは、好ましくは、式
【化11】

で示されるペンチル-テトラオールおよび式
【化12】

で示されるヘキシル-ペンタオールから選択されるC~Cポリオールであり、その実施形態のいずれかにより本明細書に開示される工程i)、ii)およびiii)を含む。
【0040】
特に好ましい実施形態では、本発明の製造方法は、以下のガドリニウム錯体(化合物1)
【化13】

の溶液を製造するためのものであり、その実施形態のいずれかにより本明細書に開示される工程i)、ii)およびiii)を含む。化合物1は、WO 2017/098044で示されるとおり高い緩和性を示し、特に好ましい。
【0041】
本発明の製造方法が、ガドリニウム錯体化合物1の溶液の製造方法である場合、工程i)で提供される二量体リガンドは、対応する二量体リガンド化合物1a
【化14】

である。
【0042】
本発明の製造方法の工程i)、すなわち式Iaの二量体リガンド、または化合物1aの溶液を提供する工程は、例えば、WO 2017/098044に開示された、錯体化されていない式Iaの二量体リガンド、または化合物1aの溶液を調製する公知のプロセスを実行することによって実施される。好ましくは、二量体リガンドは、本明細書に開示される脱保護方法により、対応する保護された二量体リガンドを脱保護することによって提供される。
【0043】
工程i)で提供される溶液、ならびに本発明の製造方法で製造される、ガドリニウム錯体の中間体溶液および最終溶液は、好ましくは水溶液である。
【0044】
本発明の製造方法の工程ii)は、前の工程の溶液にモル過剰のガドリニウム金属イオンを添加して、工程i)で提供された二量体リガンドを錯体化することによって実施され、式Iのガドリニウム錯体、または化合物1を含む中間体溶液を得る。したがって、本発明の製造方法の工程ii)は、式Iaの二量体リガンド、または本明細書に開示される任意の他の二量体リガンドの、ガドリニウムとの錯体化を提供する。
【0045】
工程i)で提供された二量体リガンドは、2つのキレート化部分を有し、1つの二量体リガンドは、2個のガドリニウム金属イオンをキレート化することができるので、用語「モル過剰」は、本発明の製造方法の工程ii)に言及する場合、二量体配位のモル量の2倍より多いガドリニウム金属イオンのモル量を指す。したがって、用語「モル過剰」は、本発明の製造方法の工程ii)に言及する場合、1モルの二量体リガンドに対して、2モルを超えるガドリニウム金属イオンを指す。例えば、工程i)で提供された二量体リガンドの1モルに対して、2.05モル以上、好ましくは2.05~2.50モル、より好ましくは2.20モルまで、さらにより好ましくは2.12モルまでのガドリニウム金属イオンが、溶液に添加される。
【0046】
本発明の製造方法の工程ii)によれば、ガドリニウム金属イオンは、例えば、可溶性ガドリニウム塩などのガドリニウム誘導体を、溶液に添加することによって添加される。好適なガドリニウム誘導体は、例えば、Gdなどの酸化物、またはGdClなどの可溶性ガドリニウム塩であり得る。
【0047】
工程ii)は、好ましくは、溶液を、20~50℃、より好ましくは30~45℃、さらにより好ましくは37~43℃の範囲内の温度に維持しながら実施される。工程ii)によりガドリニウム金属イオンを添加した後、反応混合物は、好ましくは、後続の工程を実行する前に、例えば上に記載した温度範囲で、1~5時間、より好ましくは2~4時間の間、維持される。
【0048】
工程ii)のガドリニウム金属イオンの添加中および/または添加後、例えば上に記載した時間および/または温度にて、pHを好ましくは5.0~7.0、より好ましくは5.0~6.0の範囲に調整および/または維持される。このpH調整および/または維持は、例えば、好適な塩基、例えば水酸化ナトリウムを、工程ii)の溶液に添加することによって行うことができる。
【0049】
好ましい実施形態によれば、工程ii)の後、場合により工程iii)の前に、本発明の製造方法は、ガドリニウム錯体の(中間体)溶液を、好ましくはナノ濾過を介して脱塩するさらなる工程を含む。この脱塩(例えばナノ濾過)工程は、錯体化工程で生成した塩、例えば可溶性ガドリニウム塩の添加後に生じた塩、ならびに任意での脱保護方法(実施した場合)で生じた塩を除去することを可能にする。脱塩工程は、遊離ガドリニウム金属イオンも、モノ-ガドリニウム化錯体も除去することはなく、沈殿剤を除去するために溶液を処理する後続の任意による工程を改善するために、塩を除去することは有用である。
【0050】
脱塩工程は、溶液の伝導率値が、5.0mS/cm以下、好ましくは1mS/cm以下、さらにより好ましくは0.8mS/cm以下となるまで実行され得る。
【0051】
本発明の製造方法の工程iii)は、iii)前の工程の中間体溶液に沈殿剤を添加して、遊離ガドリニウム金属イオンを沈殿させる。実際、遊離ガドリニウム金属イオンは、ガドリニウム塩として沈殿し、遊離ガドリニウム金属錯体の量が、例えば上に記載したppm量のような低量である、式Iのガドリニウム錯体の溶液が得られる。遊離ガドリニウム金属イオンを沈殿させてモノ-ガドリニウム化錯体の生成を回避するために、沈殿剤は、リン酸イオン(PO 3-)、リン酸一水素イオン(HPO 2-)、リン酸二水素イオン(HPO )、オルトリン酸(HPO)、シュウ酸イオン(C 2-)、シュウ酸水素イオン(HC )、およびシュウ酸(H)からなる群から選択される少なくとも1つでなければならない。好ましくは、沈殿剤は、リン酸イオン(PO 3-)、シュウ酸イオン(C 2-)、およびリン酸一水素イオン(HPO 2-)からなる群から選択される少なくとも1つのアニオンであり、より好ましくはリン酸一水素イオン(HPO 2-)である。
【0052】
沈殿工程(工程iii))は、前の錯体化工程(工程ii))で反応しなかった過剰の遊離ガドリニウム金属イオンを、遊離ガドリニウム金属イオンの沈殿によって、溶液から除去する。
【0053】
沈殿剤は、例えば、沈殿剤を含む溶液を中間体溶液と混合することによって、または例えば沈殿剤が沈殿塩に含まれている場合、沈殿剤を中間体溶液に直接添加することによって添加され得る。
【0054】
本明細書で使用される場合、別途規定されていない限り、用語「沈殿塩」は、アニオンとしての沈殿剤および任意の好適な対カチオンを含む、工程iii)で添加される塩を指す。沈殿塩は、少なくとも中間体溶液中で、かつ工程iii)の条件内で可溶性であり、中間体溶液に溶解し沈殿剤を放出することができる。例えば、好ましい沈殿塩は、沈殿剤のリン酸一水素イオン(HPO 2-)をアニオンとして、ナトリウムを対カチオンとして含むNaHPOである。
【0055】
沈殿剤が、沈殿剤を含む沈殿塩の添加によって工程iii)で添加される場合、沈殿塩の好適な対カチオンは、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、および有機カチオンから選択されるカチオンを含む。例えば、沈殿塩の対カチオンは、ナトリウムおよびカリウムから選択され;ナトリウムが特に好ましい。沈殿塩は、好ましくは、リン酸ナトリウム(NaPO)、リン酸カリウム(KPO)、リン酸水素ナトリウム(NaHPO)、リン酸水素カリウム(KHPO)、リン酸二水素ナトリウム(NaHPO)、リン酸二水素カリウム(KHPO)、シュウ酸ナトリウム(Na)、シュウ酸カリウム(K)、シュウ酸水素ナトリウム(NaHC)、およびシュウ酸水素カリウム(KHC )からなる群から選択される。
【0056】
本発明の製造方法の工程iii)によれば、沈殿剤は、好ましくは中間体溶液中の遊離ガドリニウム金属イオンに対して、少なくとも化学量論的な量で添加される。有利なことに、沈殿剤は、中間体溶液中のガドリニウム金属イオンの1モルに対して、少なくとも1.1モルの量で、好ましくは1.1~5モル、より好ましくは1.2~3モル、さらにより好ましくは1.4~2.5モル、最も好ましくは1.4~1.6モルの量で添加される。また比較例によって実験の項において実証されたように、これらの好ましい量の沈殿剤を添加することで、任意での濾過工程後および任意でのさらなる精製工程前に、低量の遊離ガドリニウム金属イオン(すなわち上で規定されたものより低量の遊離ガドリニウム金属イオン)と、低量のモノ-ガドリニウム化錯体(すなわち550ppmより低量の、好ましくはモノ-ガドリニウム化錯体(ガドリニウム錯体の量に対して<400ppm)の量を決定するために使用される方法のLoQより低量の錯体)の両方を含有する溶液が得られる。反対に、沈殿剤が、工程iii)において上記の好ましい量に対してより多量に添加される場合、得られた溶液は、多量のモノ-ガドリニウム化錯体(すなわち600ppmより多量)を含有する場合がある。
【0057】
本発明の製造方法の工程iii)が、上で規定された好ましい量の沈殿剤を添加することによって実行される場合、本発明の製造方法は、好ましくは、沈殿剤を添加する前に、中間体溶液中の遊離ガドリニウム金属イオンの量を決定するさらなる工程を含み、それによって、上で規定された好ましい量で沈殿剤が添加され得る。この決定工程は、遊離ガドリニウム金属イオンの量を決定するための公知の方法により、例えば本明細書に開示される方法により実行され得る。
【0058】
工程iii)は、好ましくは、溶液の温度を15~40℃、より好ましくは20~30℃の範囲内に維持することによって実行される。工程iii)によって沈殿剤を添加した後、反応混合物は、好ましくは、任意での後続の工程を実行する前に、例えば上に記載した温度範囲で、1~4時間、好ましくは1.5~3時間、より好ましくは2時間の間、維持される。
【0059】
好ましい実施形態では、工程iii)による沈殿剤の添加中および/または添加後に、pHは、4.5以上、好ましくは4.7以上、より好ましくは4.9以上、さらにより好ましくは5.5以上の値に、例えば上の段落に記載した時間および/または温度で、調整および/または維持される。好ましくは、このpHは、少なくとも、沈殿したガドリニウム塩がガドリニウム錯体の溶液から濾別されるまで維持される。また比較例によって以下の実験の項において実証されたように、出願人は、驚いたことに、pHをこれらの値に調整および/または維持しつつ、遊離ガドリニウム金属イオンを沈殿させることにより、任意での濾過工程後および任意でのさらなる精製工程前に、低量のモノ-ガドリニウム化錯体を含有する溶液(例えばガドリニウム錯体に対して、550ppmより低量、好ましくは400ppmより低量のモノ-ガドリニウム化錯体を含有する溶液)が得られることを見出した。
【0060】
さらなる好ましい実施形態によれば、工程iii)による沈殿剤の添加中および/または添加後に、pHは、上に示した値より高く、かつ10.0以下、好ましくは9.0以下、より好ましくは8.5以下、さらにより好ましくは7.5以下、最も好ましくは6.5以下になるように、例えば上に記載した時間および/または温度で、調整および/または維持され得る。好ましくは、このpHは、少なくとも、沈殿したガドリニウム塩がガドリニウム錯体の溶液から濾別されるまで維持される。出願人は、驚いたことに、これらのpH値未満で操作することによって、沈殿工程後および任意でのさらなる精製工程前の溶液中の遊離ガドリニウム金属イオンの量が、低下することを見出した。
【0061】
より好ましい実施形態によれば、工程iii)による沈殿剤の添加中および/または添加後に、pHは、4.5~9.0、より好ましくは4.7~8.5、さらにより好ましくは4.9~7.3、最も好ましくは6~6.5または5.5~6.5の範囲に、例えば上に記載した時間および/または温度で、調整および/または維持され得る。好ましくは、このpHは、少なくとも、沈殿したガドリニウム塩がガドリニウム錯体の溶液から濾別されるまで維持される。出願人は、驚いたことに、上に示した範囲内にpHを調整および/または維持することにより、任意での沈殿工程後および任意でのさらなる精製工程前に、特に低い含有量の遊離ガドリニウム金属イオンおよびモノ-ガドリニウム化錯体を有する溶液(例えば、pHがそのようなpHに調整および/または維持されない同じプロセスと比較して低い含有量を有する溶液)を得ることが可能となることを見出した。
【0062】
pH調整は、例えばHClのような好適な酸、または例えばNaOHのような好適な塩基を溶液に添加することによって行うことができる。この調整は、沈殿剤の添加によって起きる可能性があるpH変化を相殺するのに特に有用である。沈殿剤の添加により、得られた溶液のpHが、上に開示された好ましい範囲から外れるようなpHの変化が起こらない場合(例えば、沈殿剤のpKaが上記の好ましい値内であるため、および/または沈殿剤が低量で添加されることによって、得られた溶液のpHが、上に開示された好ましい範囲から外れないため)には、pH調整は必要とされないことは明らかである。
【0063】
好ましくは、上に開示された好ましい値によるpHは、少なくとも、沈殿したガドリニウム塩がガドリニウム錯体の溶液から濾別されるまで維持される。
【0064】
さらに好ましい実施形態では、工程iii)の後に、本発明の製造方法は、得られたガドリニウム錯体の溶液を濾過し、ガドリニウム塩を溶液から除去する工程をさらに含み、それによってガドリニウム塩はそのような溶液から分離される。この濾過工程は、当技術分野で公知の濾過方法により、例えば医薬用メンブレンフィルターを使用することによって実行され得る。
【0065】
さらに好ましい実施形態では、本発明の製造方法は、工程iii)の後に得られた式Iのガドリニウム錯体の溶液を処理して、遊離ガドリニウム金属イオンと反応してガドリニウム塩を形成しなかった沈殿剤(存在する場合)を除去するためのさらなる工程を含む。この処理工程は、遊離ガドリニウム金属イオンも、モノ-ガドリニウム化錯体も除去しない。
【0066】
この処理工程は、例えば、ガドリニウム錯体の溶液を、イオン交換樹脂に、好ましくは1~3BV/時の流速でロードすることによって実行され得る。代替的に、または錯体をイオン交換樹脂にロードするとともに、処理工程は、(A)ガドリニウム錯体の溶液に、ガドリニウム金属イオンGd3+とは異なる沈殿カチオンを添加し、沈殿剤であるかまたは沈殿剤によって生じるアニオンを沈殿させ、それによって、少なくともそのようなアニオンを沈殿カチオンと共に塩として沈殿させることと、(B)上に開示されたものなどの濾過工程によって、このように形成された塩を除去することとによって実行され得る。有利なことに、ガドリニウム塩と、沈殿剤および沈殿カチオンによって形成された塩の両方を除去するために、1回のみの濾過工程が実行され得る。
【0067】
本明細書で使用される場合、別途規定されていない限り、用語「沈殿カチオン」は、式Iのガドリニウム錯体の溶液の任意での処理工程中に添加される、ガドリニウム金属イオンGd3+とは異なるカチオンを指す。沈殿カチオンは、少なくとも、沈殿カチオンの添加中に反応混合物の条件において、沈殿剤であるかまたは沈殿剤によって生じるアニオンと共に、固体の物理的形態である塩を生成することができる。
【0068】
沈殿カチオンの添加は、例えば式Iのガドリニウム錯体の溶液に、沈殿カチオンをそのカチオンとして含有する可溶性塩を添加することによって、および/または沈殿カチオンを含む溶液を、式Iのガドリニウム錯体の溶液と混合することによって実行され得る。
【0069】
沈殿カチオンは、沈殿カチオンと、沈殿剤であるかまたは沈殿剤によって生じるアニオンとの間のイオン結合によって形成される塩に基づいて、当業者により好適に選択され得る。実際、好適な沈殿カチオンは、沈殿カチオンとそのようなアニオンによって形成される塩が、少なくとも沈殿カチオンの添加中に反応混合物の条件において沈殿する限り使用でき、それによって少なくとも一部の沈殿した塩は、例えば濾過によって除去される。例えば、沈殿カチオンCa2+は、上に開示された任意での処理工程により、ガドリニウム錯体の溶液に添加され:溶液のpHが約9に到達する場合、そのようなアニオンと沈殿カチオンCa2+によって形成された塩は沈殿し、例えば濾過によって後に除去される。この例では、沈殿カチオンCa2+は、式Iのガドリニウム錯体の溶液に、可溶性塩として、または好ましくは例えばCa(OH)のような水酸化物として添加され、それは溶液に添加されると溶解し、したがって沈殿カチオンCa2+を放出する。
【0070】
一実施形態では、本発明のガドリニウム錯体の溶液を提供する方法は、工程iii)の後、好ましくは沈殿剤を除去するための処理工程(実行される場合)の後に、少なくとも1回のさらなる精製工程を含む。このさらなる精製工程は、遊離ガドリニウム金属イオンの含有量が可能な限り低い、ガドリニウム錯体の溶液を提供するために、工程iii)の沈殿後に存在する遊離ガドリニウム金属イオンの残留量をさらに低減するのに有用である。具体的には、本発明の製造方法のこの実施形態によれば、大部分の遊離ガドリニウム金属イオンが、沈殿工程iii)(ここで遊離ガドリニウム金属イオンの量は、ガドリニウム錯体に対して、数千ppmから数百、またはさらには数十ppmまで低減される)によって除去され、より少量の遊離ガドリニウム金属イオンが、少なくとも1つのさらなる精製工程によって除去される。
【0071】
例えば、このさらなる精製工程は、ガドリニウム錯体の溶液を、吸着性樹脂(例えばAmberlite XAD1600)などの好適な樹脂にロードすることを含み、それにより残留した遊離ガドリニウム金属イオンが溶液から除去される。好ましくは、溶液を樹脂にロードする前に、溶液は、ガドリニウム錯体の量が、15~30%w/w、より好ましくは20~25%w/wの範囲内になるまで濃縮される(例えば真空下で水性溶媒を蒸留することによって)。
【0072】
さらなる実施形態では、工程iii)の後に、および場合により少なくとも1回のさらなる精製工程の後に、本発明のガドリニウム錯体の溶液を提供する方法は、ガドリニウム錯体の溶液を炭素で処理する工程を含む。この工程は、エンドトキシンの除去を可能にし、溶液の脱色を促す。
【0073】
別の態様では、本発明は、本明細書に開示される溶液を製造する方法の任意の実施形態により得ることができる、式Iのガドリニウム錯体(式中、Rは上で定義された通りである)、または化合物1の溶液に関する。好ましくは、本明細書に開示される本発明の製造方法の任意の実施形態により得ることができる本発明の溶液中、遊離ガドリニウム金属イオンの量は、ガドリニウム錯体の量に対して、350ppm未満、好ましくは150ppm未満、より好ましくは100ppm未満、さらにより好ましくは80ppm未満であり、および/またはモノ-ガドリニウム化錯体の量は、ガドリニウム錯体の量に対して、550ppm未満、好ましくは400ppm未満である。遊離ガドリニウム金属イオンおよび/またはモノ-ガドリニウム化錯体の含有量が上に記載した量である、式Iのガドリニウム錯体(式中、Rは上で定義された通りである)、または化合物1の溶液はまた、本発明のさらなる態様である。
【0074】
さらなる態様では、本発明は、式I
【化15】

(式中、Rは上で定義された通りである)
で示される単離されたガドリニウム錯体、または化合物1の製造方法であって、その実施形態のいずれかによって本明細書に開示されるガドリニウム錯体の溶液を製造するプロセスと、さらなる工程iv):
iv)ガドリニウム錯体を単離する工程と
を含む。
【0075】
本発明の単離されたガドリニウム錯体の製造方法は、大規模製造に好適な、ロバスト性がありかつ効率的な方法によって、本明細書に開示される単離されたガドリニウム錯体を得ることを可能にする。
【0076】
単離工程(工程iv))は、前記工程iii)で得られた溶液の溶媒から錯体を分離することを可能にする当業者に公知の任意の好適な単離方法によって実行され得る。
【0077】
例えば、単離工程(工程iv))は、例えばWO 2017/098044に開示されているように、式Iのガドリニウム錯体(または化合物1)の溶液を、場合により真空下で、乾燥させることによって実行される。そのようにして得られた粗製の錯体は、次にさらに乾燥され(例えばオーブン内で)、それによってガドリニウム錯体は粉末固体として得られる。
【0078】
さらなる態様では、本発明は、式I
【化16】

(式中、Rは上で定義された通りである)
で示される単離されたガドリニウム錯体、または化合物1であり、本明細書に開示される単離されたガドリニウム錯体を製造する方法の任意の実施形態により得ることができる。
【0079】
さらなる態様では、本発明は、式Ib
【化17】

(式中、Rは、少なくとも2個のヒドロキシル基を含むC~C12ヒドロキシアルキルであり、好ましくはRは、
例えば式
【化18】

のペンチル-テトラオールおよび式
【化19】

のヘキシル-ペンタオール
から選択されるC~Cポリオールであり;
nは1または2であり、好ましくはnは1であり;
mは1、2、3、4、5または6であり、好ましくはmは1であり;
はC~Cアルキル、好ましくはCアルキルであり、より好ましくはt-ブチルである)
で示される保護された二量体リガンドを脱保護して、
式Id
【化20】

(式中、R、n、およびmは、式Ibに関して上に定義された通りである)
で示される対応する二量体リガンドの溶液を得る方法であり、
以下の工程:
a)保護された二量体リガンドの溶液、好ましくは水溶液を提供する工程;
b)前工程の溶液に酸、好ましくは無機酸を添加して、そのpHを低下させる工程;
c)工程b)中および/または工程b)後に、反応混合物の温度を、40℃より高く、好ましくは40℃より高く60℃まで、より好ましくは45~55℃の範囲内の温度に加熱および/または維持して、保護された二量体リガンドを脱保護し、それによって二量体リガンドを含む溶液を得る工程;および
d)場合により、工程c)で得られた二量体リガンドを含む溶液に例えばNaOHなどの塩基を添加することによって、二量体リガンドを中和し、それによって二量体リガンドのカルボキシル基をプロトン化する工程
を含む。
【0080】
脱保護の方法の好ましい実施形態によれば、式IbおよびIdにおいて、nおよびmは、独立して1または2であり、より好ましくはnとmは両方とも1であり;この後者のより好ましい場合は、式Idが上に記載した式Iaに対応する。
【0081】
脱保護方法のさらに好ましい実施形態によれば、保護された二量体リガンドは、化合物1b
【化21】

であり、得られる溶液は、対応する二量体リガンドが化合物1a
【化22】

である。
【0082】
実験の項に示されるように、この脱保護方法、具体的には工程c)は、非常に短い時間(具体的には、24時間未満、例えば8~20時間、好ましくは12~18時間、より好ましくは16時間の反応時間)で脱保護が可能であるため、非常に有利である。
【0083】
さらに、この脱保護方法、具体的には工程c)は、工程b)中に低量の酸を使用することによって、保護された二量体リガンドが脱保護される。実際、保護された二量体リガンドの1モルに対して、10~45モル、好ましくは10~35モル、より好ましくは15~25モルの量の酸(例えば上記のものなど、好ましくはHCl)が、この脱保護方法で使用され得る。これは、試薬の節約、同様に脱保護方法中の塩の生成を低減するという利点がある。例えば、HClが工程b)で酸として使用される場合、低量のHClを使用することで、後で二量体リガンドを中和するために、任意での工程d)でNaOHが使用される場合に形成されるNaCl塩の量が低減し;工程b)で他の酸を使用する場合も同様である。
【0084】
好ましくは、工程c)で添加される酸は、HSO、HPO、HCl、HBrなどの無機酸である。HCl、HBrなどの、1価の負電荷を有する対イオンを含む無機酸は、特に、脱保護方法を本明細書で詳述されるガドリニウム錯体の溶液の製造方法の上流で使用する場合、これらは遊離ガドリニウム金属イオンと相互作用する傾向がなく、精製プロセス中に(例えばナノ濾過によって)より容易に除去されるため、特に好ましい。
【0085】
この脱保護方法の多くの利点から、本明細書に記載されるガドリニウム錯体の溶液を製造する方法の二量体リガンドの溶液は、特に式IbおよびIdのmとnの両方が1である場合か、または保護された二量体リガンドが化合物1bである場合、好ましくは、その実施形態のいずれかにより本明細書に開示される脱保護方法を実行することによって提供される。
【0086】
脱保護方法の一実施形態によれば、HClが酸として使用される場合、HClは、34%w/wの塩酸水溶液として、工程b)の溶液に添加される。
【0087】
脱保護方法の好ましい実施形態によれば、工程a)の溶液中の保護された二量体リガンドの初濃度は、5%~20%(w/w)の範囲、好ましくは12%~18%(w/w)の範囲である。
【0088】
脱保護方法の好ましい実施形態によれば、任意での工程d)(二量体リガンドの中和)は、反応混合物のpHを、4~7、好ましくは5~6、より好ましくは5.3~5.7、さらにより好ましくは5.5までの値に調整することによって実行され得る。これは、好ましくは、上述のpHに到達するように、好適な量の塩基、NaOHなどを添加することによって行われる。
【0089】
脱保護方法の工程c)の後、すなわちC~Cアルキル基R(または化合物1bが保護された二量体リガンドである場合、CアルキルtBu)を加水分解した後、対応する脱保護された二量体リガンドおよびRの(またはtBuの)対応するアルコールを含む溶液が得られる。したがって、さらに好ましい実施形態によれば、工程c)の後、好ましくは任意での工程d)の後に(実行された場合)、tBuOH(RがtBuである場合)などのRの対応するアルコールは、脱保護された二量体リガンドを含む溶液から、好ましくはそのような溶液を蒸留することによって除去される。好ましい実施形態によれば、二量体リガンドを含む溶液は、二量体リガンドの最終濃度が、8%~12%(w/w)、より好ましくは9%~11%(w/w)の範囲、さらにより好ましくは10%(w/w)になるまで蒸留される。
【0090】
実験セクション
以下の実施例は、本発明をさらに説明するものであり、本発明の範囲の限定を意味するものではない。
【実施例
【0091】
実施例1-二量体リガンドの脱保護
水中の保護された二量体リガンド化合物1b(186.08g、0.141mol)
【化23】

の混合物(1501.56g、濃度12.4%(w/w))に、温度を30℃に維持しながら、34%w/wの塩酸水溶液(435.65g、4.06mol、化合物1bに対して30当量mol)を添加する。添加の終了時に、混合物を50℃に加熱し、撹拌下で16時間保持する。完全に脱保護した後、30%w/wの水酸化ナトリウム水溶液をpH5.6まで添加し、化合物1aを得る。副生物として形成したt-ブタノールを、蒸留によって除去する。化合物1aを含有する溶液を、約10%(w/w)の最終濃度まで、50℃にて真空下で蒸留により濃縮する。
【0092】
実施例2-二量体ガドリニウム錯体の溶液の調製
実施例1で得られた二量体リガンド1-[ビス[2-ヒドロキシ-3-[4,7,10-トリス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカ-1-イル]プロピル]アミノ]-1-デオキシ-D-グルシトール(化合物1a)
【化24】

の溶液を第1の反応器に入れ、40℃に加熱する。塩化ガドリニウム溶液(化合物1aの1モルに対して2.1モル)を、温度を37~43℃の範囲に維持しながら添加する。添加の終了時に、10%w/wの水酸化ナトリウム水溶液を添加し、pHを5.5に調整する。混合物を40℃で3時間維持する。
ガドリニウム錯体[μ-[1-[ビス[2-(ヒドロキシ-κO)-3-[4,7,10-トリス[(カルボキシ-κO)メチル]-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカ-1-イル-κN,κN,κN,κN10]プロピル]アミノ]-1-デオキシ-D-グルシトレート(6-)]]ジガドリニウム(化合物1)
【化25】

を含む中間体溶液をこのようにして得、モノ-ガドリニウム化錯体(モノGd)および遊離ガドリニウム金属イオン(遊離Gd)の量を測定する。
次に、実施例1および錯体化工程で生成した塩をナノ濾過によって除去し;ダイアフィルトレーションを、伝導率値が1.0mS/cmより低くなるまで実施する。この脱塩工程は、遊離ガドリニウム金属イオンも、モノ-ガドリニウム化錯体も除去することはない。ナノ濾過の終了時に、混合物を10~12%w/wまで濃縮し、遊離ガドリニウム金属イオン(遊離Gd)に対して1.5mol/molのNaHPOを溶液に添加する。NaHPOの添加後、溶液のpHを各試験について測定し、以下の表Iに示す(「pH開始時」の列);白色沈殿の形成が観察される。次にpHを、表Iの「pH終了時」の列に示した値に調整する。混合物を、撹拌下で2時間保持する。最後に、懸濁液を濾過し、モノ-ガドリニウム化錯体(モノGd)および遊離ガドリニウム金属イオン(遊離Gd)の量を測定する。これらの量、ならびに錯体化後に得られた量を、以下の表Iに示す。
【表1】

表Iに示された結果に基づき、上に示した試験1~11の全てに関して、遊離Gdの量の顕著な減少があることを観察することができる。試験1~5および7~11の全ての溶液は、定量化できない量のモノ-Gd、すなわち400ppm未満の量のモノ-Gdを含有し;試験6は、pH4.54において、LoQより高い量のモノGd、すなわち化合物1に対して538ppmの量が存在する。表Iはまた、pHを4.9~8.3の範囲内に維持しながら、LoQより少ない量のモノGdおよび低量の遊離Gdが得られることを示す。
【0093】
実施例3-残留ホスフェートの除去
実施例2で得られた試験1~9の溶液を、1~3BV/時の流速でイオン交換樹脂(Diaion PA308、予め活性化)にロードする。溶液から大部分の残留ホスフェートがこのように除去される。
【0094】
実施例4-残留ホスフェートの除去
実施例2で得られた試験1~9の溶液に、Ca(OH)(NaHPOに対して1mol/mol)を添加し、pHを約9まで上昇させる。こうして、沈殿アニオンを含む(ガドリニウムは含まない)不溶性白色沈殿物の形成が観察される。混合物を、撹拌下で2時間保持する。次に、懸濁液を濾過し、ケーキを水で洗浄し、このようにして大部分の残留ホスフェートの除去を達成する。
【0095】
実施例5-二量体ガドリニウム錯体のさらなる精製および単離
実施例3の溶液を、第2の反応器に入れ、希HClの添加によって、各溶液のpHを5.7~6.3に調整し、ガドリニウム錯体の分析結果が約20~25%w/wとなるまで、水を45~55℃にて真空下で蒸留する。濃縮された溶液を、0.5BV/時の流速で、予め活性化したAmberlite XAD1600(樹脂の量:生成物の30mL/g)にロードする。水およびイソプロパノールと水の混合物を用いて、精製を実施する。
高純度を有する画分(HPLC-FLD/UVでの評価)を、別の反応器に入れる。予じめ濃縮した後、炭素を用いた処理を実施する。炭素を除去するために懸濁液を濾過し、溶液を45~55℃において真空下で25%w/wの濃度まで濃縮する。
ガドリニウム錯体化合物1
【化26】

を含有する溶液を真空下で乾燥することにより、最終的にガドリニウム錯体化合物1を単離する。
【0096】
実施例6-シュウ酸二ナトリウムを用いる遊離ガドリニウムイオンの沈殿(比較例)
比較のための沈殿工程として、シュウ酸ナトリウムなどの沈殿剤を過剰量で使用する実験例を実施し、今回はシュウ酸二ナトリウムの添加した後、pHを調整する。
実施例1の反応条件で錯体化することによって得られた、遊離ガドリニウムを含有する化合物1の20%w/w溶液に対し、モノ-ガドリニウム化錯体(モノGd)および遊離ガドリニウム金属イオン(遊離Gd)の量を測定し、下の表IVに示す。次に、過剰量のシュウ酸二ナトリウムを添加する(遊離Gdの1molに対して10mol)。
シュウ酸塩の添加後、pHは5.91から8.45まで上昇し、白色固体の形成が即座に観察される。次に、1NのHClを用いて、pHを約6まで低下させ、そのまま維持する。シュウ酸ナトリウムの添加の終了時に、混合物を5℃に冷却し、この温度で2時間維持する。
懸濁液を濾過した後、モノ-ガドリニウム化錯体および遊離ガドリニウム金属イオンの含有量を測定し、表IVに示す。
【表2】

上の表IVに示された結果によれば、シュウ酸塩を用いた遊離ガドリニウム金属イオンの沈殿は、LoQより高い量のモノ-ガドリニウム化錯体を含む溶液を提供する。上述のように、モノ-ガドリニウム化錯体は、(ジ-ガドリニウム化)Gd(III)錯体、例えば錯体化合物1の好ましい特性を示さない。したがって、過剰量のシュウ酸塩などの、過剰量の沈殿剤を用いた遊離ガドリニウム金属イオンの沈殿は、LoQを超える、すなわち400ppm超の量のモノ-ガドリニウム化錯体を含有する溶液を提供する。
【0097】
実施例7-リン酸三カリウムを用いる遊離ガドリニウムイオンの沈殿
実施例2の反応条件で錯体化することによって得られた、遊離ガドリニウムを含有する化合物1の10%w/w溶液に対し、モノ-ガドリニウム化錯体(モノGd)および遊離ガドリニウム金属イオン(遊離Gd)の含有量を測定する。次に、溶液にKPOを添加する(遊離Gdのモルに対して1.5mol)。
リン酸塩の添加後、pHは5.42から9.00まで上昇し、白色固体の形成が即座に観察される。混合物を、撹拌下で室温において2時間、pH9.00で維持し、次に、固体を濾過して溶液を得る。遊離ガドリニウム金属イオン(遊離Gd)およびモノ-ガドリニウム化錯体(モノGd)の含有量を測定し、以下の表Vに示す。
【表3】

表Vに示された結果に基づき、沈殿剤としてホスフェートを用いた沈殿によって、遊離Gdの量の顕著な減少を観察することができる。さらに、溶液中のモノ-Gdの含有量は、定量化できない量(すなわち400ppm未満)である。さらに、表Vは、pH9.0で、遊離Gdを低量に、モノGdをLoQより少ない量にすることが可能であることを示す。
【0098】
実施例8-酒石酸水素カリウムを用いる遊離ガドリニウムイオンの沈殿(比較例)
実施例2の反応条件で錯体化することによって得られた、遊離ガドリニウムを含有する化合物1の10%w/w溶液に、酒石酸水素カリウムを添加し(遊離Gdの1molに対して2mol)、わずかな懸濁が観察される。
酒石酸水素塩の添加後、pHは、5.42から4.21まで低下する。混合物を、撹拌下で室温において2時間維持し、次に、固体を濾過して溶液を得る。遊離ガドリニウム金属イオン(遊離Gd)およびモノ-ガドリニウム化錯体(モノGd)の含有量を測定し、以下の表VIに示す。
【表4】

上の表VIに示された結果によれば、酒石酸水素塩を用いた遊離ガドリニウム金属イオンの沈殿は、高量の遊離ガドリニウム金属イオンを含有する溶液をもたらし、これは満足できるものではない。そのような高量の遊離ガドリニウム金属イオンは、例えば少なくとも1回のさらなる精製工程によって、好適な医薬的量まで効率的かつ効果的に低減することができないためである。
【0099】
実施例9-クエン酸水素二ナトリウムを用いる遊離ガドリニウムイオンの沈殿(比較例)
実施例2の反応条件で錯体化することによって得られた、遊離ガドリニウムを含有する化合物1の10%w/w溶液に、クエン酸水素二ナトリウムを添加する(遊離Gdの1molに対して1.5mol)。
沈殿は観察されず、したがって試験を中止する。沈殿が観察されないため、化合物1の溶液中の遊離ガドリニウム金属イオンの量が高過ぎ満足できるものではないと考えられる。そのような高量の遊離ガドリニウム金属イオンは、例えば少なくとも1回のさらなる精製工程によって、好適な医薬的量まで効率的かつ効果的に低減することができないためである。
【0100】
実施例10-酢酸ナトリウムを用いる遊離ガドリニウムイオンの沈殿(比較例)
実施例2の反応条件で錯体化することによって得られた、遊離ガドリニウムを含有する化合物1の10%w/w溶液に、酢酸ナトリウムを添加する(遊離Gdの1molに対して4.5mol)。
沈殿は観察されず、したがって試験を中止する。沈殿が観察されないため、化合物1の溶液中の遊離ガドリニウム金属イオンの量が高過ぎ満足できるものではないと考えられる。そのような高量の遊離ガドリニウム金属イオンは、例えば少なくとも1回のさらなる精製工程によって、好適な医薬的量まで効率的かつ効果的に低減することができないためである。
【0101】
実施例11-塩基性化によるGd(OH)としての遊離ガドリニウムイオンの沈殿(比較例)
化合物1に対して7000ppmの遊離ガドリニウムを含有する化合物1の16%w/w溶液に、pH8.65まで、30%のNaOH溶液を添加する。
沈殿は観察されない。
上記の試験を、(i)種々の濃度の化合物1(具体的には、16~20%w/wの濃度の化合物1)および(ii)種々の量の遊離ガドリニウム金属イオン(具体的には、化合物1に対して230~25000ppmの遊離ガドリニウム金属イオン)を含有する数種の溶液を使用して繰り返した。
全ての場合に、沈殿は観察されない。したがって、ガドリニウムイオンは、塩基性条件でGd(OH)として沈殿することが知られているが、この塩基性化手順による沈殿は、化合物1の溶液のような本明細書で定義されるガドリニウム錯体の溶液に関して、遊離ガドリニウム金属イオンを好適に低減するために使用することはできない。
【0102】
実施例12-シュウ酸二ナトリウムを用いる遊離ガドリニウムイオンの沈殿
実施例2の反応条件で錯体化することによって得られた、遊離ガドリニウムを含有する化合物1の10%w/w溶液に対し、モノ-ガドリニウム化錯体(モノGd)および遊離ガドリニウム金属イオン(遊離Gd)の含有量を測定する。次に、溶液にシュウ酸二ナトリウムを添加する(遊離Gdに対して2.25mol/mol)。
シュウ酸塩の添加後、pHは5.56から7.78まで上昇し、白色固体の形成が即座に観察される。次に、1NのHClを用いて、pHを6.43まで低下させる。混合の終了時に、室温で2時間維持する。
懸濁液を濾過した後、モノ-ガドリニウム化錯体および遊離ガドリニウム金属イオンの含有量を測定する。モノ-ガドリニウム化錯体(モノGd)および遊離ガドリニウム金属イオン(遊離Gd)の含有量を、以下の表VIIに示す。
【表5】

表VIIは、上記の試験(特に、沈殿剤としてシュウ酸塩を好適な量で含む試験)を実施することで、遊離Gdの含有量が非常に低くモノGdの含有量がLoQより低い溶液が得られることを明確に示している。
【0103】
HPLC手順1-遊離ガドリニウム金属イオン(遊離-Gd)の量の決定
ガドリニウム錯体(例えば化合物1)の量に対する、遊離ガドリニウム金属イオンの量を、FLD(蛍光検出器)検出を備える逆相HPLC(高速液体クロマトグラフィー)によって決定する。移動相においてEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を用い、試料中に存在する遊離Gd(III)をGd(EDTA)錯体に形成させる。
クロマトグラフィー条件
機器 溶媒デリバリー系、5℃における冷却オートサンプラー、カラム恒温装置、脱ガス装置および蛍光検出器または同等のものを装備したAgilent 1100液体クロマトグラフ
カラム YMC-PACK ODS-AQ、250×4.6mm、5μmの粒度(YMC、cod.AQ12S05-2546WT)
温度:40℃
移動相:A:CHCOONH(1.5g/L)、EDTA(0.55g/L)
B:メタノール
流速:1mL/分
検出(FLD):波長励起=275nm
波長発光=314nm
実行時間:25分
取得時間:6分
注入容量:20μL
参照ピーク:Gd(EDTA)
溶離:勾配 時間(分) %B
0 0
5 0
10 50
15 50
16 0
25 0
【0104】
溶液調製
移動相
1000mLのメスフラスコに、1.5gの酢酸アンモニウムを正確に量り取り、精製水で溶解し、0.70gのエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩無水物を添加し、次に精製水で定容まで希釈する。
希釈溶液
1000mLのメスフラスコに、3gの酢酸アンモニウムを正確に量り取り、精製水で溶解し、1.4gのエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩無水物を添加し、次に精製水で定容まで希釈する。
ブランク溶液
0.5mLの精製水をバイアルに移し、0.5mLの希釈溶液を添加する。よく混合し、クロマトグラフィー(chromatographyc)システムに直接注入する。
参照溶液
50mLのメスフラスコに、0.32gの酢酸ガドリニウム水和物(無水基準で表示され、使用前に水含有量を決定する)を量り取り(weight)、移動相で定容まで希釈する。ガドリニウムの濃度は3mg/mLである。
0.1mLのこの溶液を100mLのメスフラスコに移し、移動相で定容まで希釈する。ガドリニウムの濃度は0.003mg/mLである。
LOQ溶液
1mLの参照溶液を5mLのメスフラスコに移し、移動相で定容まで希釈する。ガドリニウムの濃度は0.0006mg/mLである。
試験溶液
10mLのメスフラスコに、600mgの被検試料を正確に量り取り(無水基準で表示)、精製水で定容まで希釈する。式Iの二量体ガドリニウム錯体(例えば化合物1)の濃度は、約60mg/mLである。
0.5mLのこの溶液をバイアルに移し、0.5mLの希釈溶液を添加する。試料をよく混合する。希釈したら、試料を即座に冷却オートサンプラー(5~8℃)に入れ、希釈から5分内に試料を注入する。式Iの二量体ガドリニウム錯体(例えば化合物1)の最終濃度は、約30mg/mLである。
【0105】
分析シーケンス
ブランク n=1
LOQ溶液 n=1
参照溶液 n=6
試験溶液 n=6
参照溶液 n=1
【0106】
システム適合性試験
本製造方法を適用の際、毎回、システム適合性試験(SST)を実施する。
- クロマトグラフィーシステムを平衡化した後、ブランク溶液を1回注入し、干渉ピークが存在しないことを検証する。
- LOQ溶液を1回注入する
Gd(EDTA)ピークがS/N≧10を有する場合、分析シーケンスの結果は有益である。
- 第1の参照溶液を6回注入し、以下のGd(EDTA)ピークに関する要件が満足されているかどうか検証する:
- 百分率で表示されたGd(EDTA)の面積再現性
相対標準偏差(RSD%、n=6)≦10%
- 百分率で表示されたGd(EDTA)ピークの保持時間再現性
相対標準偏差(RSD%、n=6)≦2%
- Gd(EDTA)ピークに関する対称因子、T、
式1により算出 0.7~2.0
T=w0.05/2f 式1
式中:
0.05=ピーク高さの20分の1における幅(分)
f=ピーク高さの20分の1における、ピーク最大値から下ろした垂線と、ピーク立ち上がり端との間の距離(分)
【0107】
計算
式2によって、百分率含有量、遊離Gd%を算出する:
【数1】

=試験溶液中の遊離Gdのピーク面積
std=SST参照溶液注入(n=6)におけるGd(EDTA)平均面積
RS=参照溶液中のGdのmg
w=試験溶液を調製するための化合物1試料の重量(mg)
K=酢酸ガドリニウム水和物中のHO含有量の%
=試料中のHO含有量の%
2.126=酢酸ガドリニウムとガドリニウムとの間の補正係数
遊離Gdに関する定量限界は0.002%(w/w)である。
LOQ限界より低い値は、<LOQまたはn.q.(定量不可能)と表示されなければならない。
上述のように算出された百分率は、そのような百分率×10,000のように乗算することによって、式Iの錯体(例えば化合物1)に対する、遊離ガドリニウムのppmに変換することができる。
【0108】
HPLC手順2-モノ-ガドリニウム化錯体(モノ-Gd)の量の決定
式Iの二量体錯体(例えば化合物1)中の、のモノ-Gd不純物の含有量を、逆相HPLC法によって、いずれかのFLD検出器を使用することによって、同じクロマトグラフィーにおいて定量化する。
規定された不純物モノ-Gd(具体的には、1個のみのガドリニウム金属イオンを有する化合物1aのモノ-Gd錯体)の定量化を、ナトリウム塩としての参照試料モノ-Gdを使用することによって、FLD検出によって行う。モノ-Gdナトリウム塩(参照試料)は、化学量論的な量より少ないガドリニウムイオンを用いて二量体リガンド化合物1aを錯体化し、モノ-Gdを得て、NaOHで中性pHに調整し、次に残留物まで濃縮することによって単離して得ることができる。
クロマトグラフィー条件
機器:溶媒デリバリー系、オートサンプラー、カラム恒温装置、脱ガス装置、UVダイオードアレイ検出器および蛍光検出器 2475 Watersまたは同等のものを装備したHPLC Agilent 1100
カラム:Xselect(登録商標)HSS T3、3.5μm、150×3.0mm(Waters、Part No.186004781)
温度:40℃
移動相:溶媒A:移動相A(水中の40mMのリン酸カリウム-0.02mMのEDTA、pH6.2)
溶媒B:移動相B(溶媒A/アセトニトリル、60/40v/v)
流速:0.35mL/分
検出(FLD):波長励起(λex)=275nm
波長発光(λem)=314nm
検出(UV):波長=210nm/Bw:8nm;Ref.波長=480nm/Bw:80nm
実行時間分析:50分
取得時間:32分
注入容量:10μL
溶離(Eluition):勾配 時間(分) %B
0 0
4 0
20 15
25 15
30 100
40 100
43 0
50 0
【0109】
溶液調製
移動相A
2000mLのメスフラスコに:
- 8.56gのリン酸二水素カリウム
- 3.97gのリン酸水素二カリウム三水和物
- 0.015gのTitriplex(登録商標)III(EDTA二ナトリウム塩)
を正確に量り取り、次に精製水で定容まで希釈する。0.22μmの膜フィルタを通して濾過する。
移動相B
1000mLのメスフラスコに、600mLの移動相Aを移し、アセトニトリルで定容まで希釈する。よく混合する。
CaCl の溶液
50mLのメスフラスコに、165mgのCaCl(無水基準で表示)を正確に量り取り、精製水で定容まで希釈する。
濃度は約3.3mg/mLである。
モノ-Gdの保存溶液
50mLのメスフラスコに、25mgのモノ-Gdナトリウム塩(無水基準および純度で表示)を正確に量り取り、精製水で定容まで希釈する。
モノ-Gdの濃度は約0.5mg/mLである。
モノ-Gdの重量=モノ-Gdナトリウム塩の重量×1140.31/1162.29
モノ-Gdの参照溶液
5mLのメスフラスコに、0.45mLのモノ-Gdの保存溶液を正確に移す。1mLのCaCl溶液を添加し、精製水で定容まで希釈する。標準の濃度は0.045mg/mLである。
モノ-GdのLoQ溶液
5mLのメスフラスコに、0.1mLのモノ-Gdの保存溶液を正確に移す。1mLのCaCl溶液を添加し、精製水で定容まで希釈する。モノ-Gdの濃度は約0.01mg/mLである。
ブランク溶液
0.8mLの水溶液をバイアルに移し、0.2mLのCaCl溶液を添加する。よく混合する。
試験溶液
5mLのメスフラスコに、125mgの被検試料(無水基準で表示)を正確に量り取る。1mLのCaCl溶液を添加し、精製水で定容まで希釈する。化合物1の濃度は約25mg/mLである。
【0110】
分析シーケンス
ブランク n=1
LoQ溶液 n=1
参照溶液 n=6
試験溶液 n=6
参照溶液 n=1
【0111】
計算
モノ-Gdの百分率含有量を、FLD取得によって、式3により算出する。
【数2】

式中:
:試験溶液におけるピーク面積(存在する場合、モノ-Gd-1/2/3/4ピークの面積合計)
:参照溶液注入(平均値n=6)におけるピーク面積(モノ-Gd-1/2/3/4ピークの面積合計)
:試験溶液中の試料の重量(mg)
:参照溶液を調製するために取り出したモノ-Gd保存溶液の容積(mL)
:保存溶液を調製するために使用されたモノ-Gdナトリウム塩の重量(mg)
KF:モノ-Gdナトリウム塩中のHO含有量の%
KF化合物1:化合物5中のHO含有量の%
a:モノ-Gdナトリウム塩の%分析結果
f:分子量に関する補正係数:0.98
モノ-Gd(4つのピークの合計)に関する定量限界は0.04%(w/w)である。
LOQ限界より低い値は、<LOQまたはn.q.(定量不可能)と表示されなければならない。
上述のように算出された百分率は、そのような百分率×10,000のように乗算することによって、式Iの錯体に対する、例えば化合物1に対するモノ-ガドリニウム化錯体のppmに変換することができる。
【国際調査報告】