(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】再循環を含む水素の生成
(51)【国際特許分類】
C25B 1/042 20210101AFI20240711BHJP
C25B 9/23 20210101ALI20240711BHJP
C25B 11/067 20210101ALI20240711BHJP
C25B 11/073 20210101ALI20240711BHJP
C25B 11/077 20210101ALI20240711BHJP
C25B 13/04 20210101ALI20240711BHJP
C25B 13/07 20210101ALI20240711BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240711BHJP
C01B 3/02 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C25B1/042
C25B9/23
C25B11/067
C25B11/073
C25B11/077
C25B13/04 301
C25B13/07
C25B9/00 A
C25B9/00 Z
C01B3/02 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578835
(86)(22)【出願日】2022-06-27
(85)【翻訳文提出日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 US2022035162
(87)【国際公開番号】W WO2023278347
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522162325
【氏名又は名称】ユティリティ・グローバル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Utility Global, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ドーソン,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ファランドス,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ドーソン,ジン
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4K011AA20
4K011AA22
4K011AA24
4K011AA29
4K011AA49
4K011AA50
4K011DA01
4K011DA11
4K021AA01
4K021AB25
4K021BA02
4K021BA08
4K021CA09
4K021CA10
4K021CA12
4K021DB36
4K021DB53
4K021DC03
4K021DC11
(57)【要約】
本明細書で考察されるのは、水素を生成する方法であって、燃料を含む第1の流れを、混合伝導性膜を有する電気化学(EC)反応器に導入することと、水を含む第2の流れを反応器に導入することと、第2の流れの中の水を還元して水素を生成することと、生成された水素の少なくとも一部分を第1の流れに再循環させることと、を含み、膜が、電子伝導相及びイオン伝導相を含み、第1の流れ及び第2の流れが、反応器内で互いに接触しない、方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を生成する方法であって、
a.燃料を含む第1の流れを、混合伝導性膜を有する電気化学(EC)反応器に導入することと、
b.水を含む第2の流れを前記反応器に導入することと、
c.前記第2の流れの中の前記水を還元して、水素を生成することと、
d.生成された前記水素の少なくとも一部分を前記第1の流れに再循環させることと、を含み、
前記膜が、電子伝導相及びイオン伝導相を含み、
前記第1の流れ及び前記第2の流れが、前記反応器内で互いに接触しない、方法。
【請求項2】
水から水素への前記還元が電気化学的に起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の流れの中の水が、蒸気である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の流れ及び前記第2の流れが、前記膜によって分離される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の流れが、水素を含み、任意選択で、前記第1の流れが、水、二酸化炭素、不活性ガス、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記燃料が、炭化水素、一酸化炭素、水素、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の流れが、炭化水素及び再循環された水素から本質的になる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記EC反応器が、前記第1の流れ側のアノードと、前記第2の流れ側のカソードと、を備え、前記アノード及び前記カソードが、前記膜によって分離され、それぞれ前記膜と接触する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記アノード及び前記カソードが、前記膜によって分離され、両方とも還元環境に曝露される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記アノード又は前記カソードが、Ni又はNiOと、YSZ、8YSZ、CoCGO、CGO、SDC、SSZ、LSGM、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される材料と、を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記アノードが、ドープされたセリア又はドープされていないセリアと、Cu、CuO、Cu
2O、Ag、Ag
2O、Au、Au
2O、Au
2O
3、Pt、Pd、Ru、Rh、Ir、LaCaCr、LaSrCrFe、YSZ、CGO、SDC、SSZ、LSGM、ステンレス鋼、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される材料と、を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記アノードが、ランタンクロマイトと、ドープされたセリア、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ランタンストロンチウムガレートマグネサイト(LSGM)、スカンジア安定化ジルコニア(SSZ)、Sc及びCeがドープされたジルコニア、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される材料と、を含み、任意選択で、前記ランタンクロマイトが、ドープされていないランタンクロマイト、ストロンチウムがドープされたランタンクロマイト、鉄がドープされたランタンクロマイト、ストロンチウム及び鉄がドープされたランタンクロマイト、ランタンカルシウムクロマイト、又はそれらの組み合わせを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
アノード排気ガスの少なくとも一部分が、水から蒸気を生成するために使用される、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
アノード排気ガスの少なくとも一部分が、炭素捕捉ユニットに送られる、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記生成された水素の少なくとも一部分を前記第2の流れに再循環させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記電子伝導相が、ドープされたランタンクロマイト若しくは電子伝導性金属又はそれらの組み合わせを含み、前記イオン伝導相が、ガドリニウム又はサマリウムがドープされたセリア、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ランタンストロンチウムガレートマグネサイト(LSGM)、スカンジア安定化ジルコニア(SSZ)、Sc及びCeがドープされたジルコニア、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記膜が、CoCGO又はLST(ランタンがドープされたチタン酸ストロンチウム)安定化ジルコニアを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記安定化ジルコニアが、YSZ又はSSZ又はSCZ(スカンジア-セリア安定化ジルコニア)を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記反応器が、相互接続を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記反応器が、電気を発生させず、動作するために電気を必要としない、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、水素生成に関する。より具体的には、本発明は、電気化学的水素生成方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
石油及び化学工業では、大量の水素が必要である。例えば、大量の水素は、化石燃料の改良、及びアンモニア又はメタノール又は塩酸の生成で使用される。石油化学プラントは、水素化分解、水素化脱硫、水素化脱アルキルのために水素を必要とする。不飽和脂肪及び油の飽和レベルを高めるための水素添加プロセスにも水素が必要である。水素は、金属鉱石の還元剤でもある。水素は、水の電気分解、蒸気改質、実験室規模の金属酸プロセス、熱化学的方法、又は嫌気性腐食から生成され得る。多くの国が水素経済を目指している。
【0003】
水素を生成するための新しい技術プラットフォームを開発する必要性と関心が高まっていることは明らかである。本開示は、効率的な電気化学経路を使用する水素生成について論じる。電気化学反応器及びそのような反応を行う方法についても論じる。
【発明の概要】
【0004】
本明細書で考察されるのは、水素を生成する方法であって、燃料を含む第1の流れを、混合伝導性膜を有する電気化学(EC)反応器に導入することと、水を含む第2の流れを反応器に導入することと、第2の流れの中の水を還元して、水素を生成することと、生成された水素の少なくとも一部分を第1の流れに再循環することと、を含み、膜が、電子伝導相及びイオン伝導相を含み、第1の流れ及び第2の流れが、反応器内で互いに接触しない、方法である。
【0005】
一実施形態では、水から水素への還元は、電気化学的に起こる。一実施形態では、第2の流れの中の水は、蒸気である。一実施形態では、第1の流れ及び第2の流れは、膜によって分離される。一実施形態では、第2の流れは、水素を含む。一実施形態では、第1の流れは、水、二酸化炭素、不活性ガス、又はそれらの組み合わせを含む。一実施形態では、燃料は、炭化水素、一酸化炭素、水素、又はそれらの組み合わせを含む。一実施形態では、第1の流れは、炭化水素及び再循環された水素から本質的になる。
【0006】
一実施形態では、EC反応器は、第1の流れ側のアノードと、第2の流れ側のカソードと、を備え、アノード及びカソードは、膜によって分離され、それぞれ膜と接触する。一実施形態では、アノード及びカソードは、膜によって分離され、両方とも還元環境に曝露される。一実施形態では、アノード又はカソードは、Ni又はNiOと、YSZ、8YSZ、CoCGO、CGO、SDC、SSZ、LSGM、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される材料と、を含む。一実施形態では、アノードは、ドープされたセリア又はドープされていないセリアと、Cu、CuO、Cu2O、Ag、Ag2O、Au、Au2O、Au2O3、Pt、Pd、Ru、Rh、Ir、LaCaCr、LaSrCrFe、YSZ、CGO、SDC、SSZ、LSGM、ステンレス鋼、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される材料と、を含む。
【0007】
一実施形態では、アノードは、ランタンクロマイトと、ドープされたセリア、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ランタンストロンチウムガレートマグネサイト(LSGM)、スカンジア安定化ジルコニア(SSZ)、Sc及びCeがドープされたジルコニア、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される材料と、を含む。一実施形態では、ランタンクロマイトは、ドープされていないランタンクロマイト、ストロンチウムがドープされたランタンクロマイト、鉄がドープされたランタンクロマイト、ストロンチウム及び鉄がドープされたランタンクロマイト、ランタンカルシウムクロマイト、又はそれらの組み合わせを含む。
【0008】
一実施形態では、アノード排気ガスの少なくとも一部分は、水から蒸気を生成するために使用される。一実施形態では、アノード排気ガスの少なくとも一部分は、炭素捕捉ユニットに送られる。一実施形態では、方法は、生成された水素の少なくとも一部分を第2の流れに再循環させることを含む。
【0009】
一実施形態では、電子伝導相は、ドープされたランタンクロマイト若しくは電子伝導性金属又はそれらの組み合わせを含み、イオン伝導相は、ガドリニウム又はサマリウムがドープされたセリア、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ランタンストロンチウムガレートマグネサイト(LSGM)、スカンジア安定化ジルコニア(SSZ)、Sc及びCeがドープされたジルコニア、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む。
【0010】
一実施形態では、膜は、CoCGO又はLST(ランタンがドープされたチタン酸ストロンチウム)安定化ジルコニアを含む。一実施形態では、安定化ジルコニアは、YSZ又はSSZ又はSCZ(スカンジア-セリア安定化ジルコニア)を含む。一実施形態では、反応器は、相互接続を含まない。一実施形態では、反応器は電気を発生せず、動作するために電気を必要としない。
【0011】
更なる態様及び実施形態は、以下の図面、詳細な説明、及び特許請求の範囲において提供される。別途指定されない限り、本明細書に記載の特徴は組み合わせ可能であり、そのような全ての組み合わせは本開示の範囲内である。
【0012】
以下の図面は、本明細書に記載される特定の実施形態を説明するために提供される。図面は単に例示であり、特許請求される発明の範囲を限定することを意図するものではなく、特許請求される発明の全ての潜在的な特徴又は実施形態を示すことを意図するものではない。図面は、必ずしも正確な縮尺で描かれているわけではなく、いくつかの例では、図面の特定の要素が、説明の目的のために図面の他の要素に対して拡大される場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の一実施形態による、電気化学(EC)反応器又は電気化学ガス生成器を例解する。
【
図2A】本開示の一実施形態による、管状電気化学反応器を例解する。
【
図2B】本開示の一実施形態による、管状電気化学反応器の断面図を例解する。
【
図3】本開示の一実施形態による、本明細書で論じられる統合された水素生成システムを例解する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
概要
本明細書における開示は、電気化学水素生成方法及びシステムについて記載する。本開示の方法及びシステムは、電気化学改質又は電気化学水性ガスシフト(WGS)反応を介して水素を生成する。かかる改質又はWGS反応に必要な酸素/酸化物は、水の還元に由来し、膜にわたって供給される。
【0015】
本明細書に別段の定めがない限り、以下の用語及び語句は、以下に示される意味を有する。本開示は、本明細書で明示的に定義されていない他の用語及び語句を使用する場合がある。そのような他の用語及び語句は、当業者にとって、それらが本開示の文脈内で有するであろう意味を有するものとする。場合によっては、用語又は語句は、単数形又は複数形で定義される場合がある。そのような例では、反対に明示的に示されない限り、単数形のいかなる用語も、その複数の対応物を含む場合があり、逆もまた同様であることが理解される。
【0016】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明示的に別様に示さない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「置換基」への言及は、単一の置換基、並びに2つ以上の置換基などを包含する。本明細書で使用される場合、「例えば(for example)」、「例えば(for instance)」、「など(such as)」、又は「含む(including)」は、より一般的な主題を更に明確にする例を導入することを意味する。特に明示的に示されない限り、そのような例は、本開示に示される実施形態を理解するための補助としてのみ提供され、いかなる方法でも限定することを意図するものではない。また、これらの語句は、開示された実施形態に対するいかなる種類の優先性を示すものではない。
【0017】
本明細書で使用される場合、組成物と材料は、別途指定されない限り、互換的に使用される。各組成物/材料は、複数の要素、相、及び成分を有し得る。本明細書で使用される場合、加熱は、組成物又は材料にエネルギーを積極的に加えることを指す。
【0018】
本明細書で使用される場合、YSZは、イットリア安定化ジルコニアを指し、SDCは、サマリアがドープされたセリアを指し、SSZは、スカンジア安定化ジルコニアを指し、LSGMは、ランタンストロンチウムガレートマグネサイトを指す。
【0019】
本開示では、H2の実質的な量が存在しないとは、水素の体積含有率が5%以下、又は3%以下、又は2%以下、又は1%以下、又は0.5%以下、又は0.1%以下、又は0.05%以下であることを意味する。
【0020】
本明細書で使用される場合、CGOは、ガドリニアがドープされたセリア、ガドリニウムがドープされた酸化セリウム、酸化セリウム(IV)、ガドリニウムがドープされた、GDC、又はGCOとしても代替的に知られる、ガドリニウムがドープされたセリアを指す(式Gd:CeO2)。特に指定されていない限り、CGOとGDCとは互換的に使用される。本開示におけるシンガス(すなわち、合成ガス)は、主に水素、一酸化炭素、及び二酸化炭素からなる混合物を指す。
【0021】
混合伝導性膜は、電子とイオンの両方を輸送することができる。イオン伝導性は、酸素イオン(又は酸化物イオン)、プロトン、ハロゲン化物アニオン、カルコゲン化物アニオンなどのイオン種を含む。様々な実施形態では、本開示の混合伝導性膜は、電子伝導相及びイオン伝導相を含む。
【0022】
本開示では、管状部の軸方向断面は、円形であることが示されており、これは例解的なものであり、限定的なものではない。管状部の軸方向断面は、当業者に知られているような任意の適切な形状であり、例えば、正方形、丸みを帯びた角を有する正方形、長方形、丸みを帯びた角を有する長方形、三角形、六角形、五角形、楕円形、不規則な形状などである。
【0023】
本明細書で使用される場合、セリアは、酸化セリウム(ceric oxide)、二酸化セリウム(ceric dioxide)、又は二酸化セリウム(cerium dioxide)としても知られる酸化セリウム(cerium oxide)を指し、希土類金属セリウムの酸化物である。ドープされたセリアは、サマリアがドープされたセリア(SDC)、又はガドリニウムがドープされたセリア(GDC又はCGO)などの他の元素でドープされたセリアを指す。本明細書で使用される場合、クロマイトは、クロム酸化物の全ての酸化状態を含むクロム酸化物を指す。
【0024】
本明細書で使用される場合、不浸透性である層又は物質は、それが流体の流れに対して不浸透性であることを指す。例えば、不浸透性層又は物質は、1マイクロダルシ未満、又は1ナノダルシ未満の浸透性を有する。
【0025】
本開示では、焼結は、材料を液化の程度まで溶融することなく、熱又は圧力、又はそれらの組み合わせによって材料の固体塊を形成するプロセスを指す。例えば、材料粒子は、加熱されることによって固体又は多孔質の塊に凝集され、材料粒子内の原子は、粒子の境界を越えて拡散し、粒子が一緒に融合し、1つの固体片を形成する。
【0026】
電気化学は、測定可能で定量的な現象としての電位と、識別可能な化学的変化との間の関係に関連する物理化学の分野であり、電位は、特定の化学的変化の結果か、又はその逆になるかのいずれかである。これらの反応は、イオン伝導性及び電子絶縁性の膜(又は溶液中のイオン種)によって分離された、電子伝導相(典型的には、必ずしもそうではないが、外部電気回路)を介して電極間を移動する電子を伴う。化学反応が、電解のように電位差によって影響を受ける場合、又はバッテリ又は燃料電池のように化学反応から電位が生じれば、それは電気化学反応と呼ばれる。化学反応とは異なり、電気化学反応では、電子(及び必然的に得られるイオン)は、分子間で直接移送されるのではなく、前述の電子伝導回路及びイオン伝導回路を介してそれぞれ移送される。この現象は、電気化学反応と化学反応とを区別するものである。
【0027】
電気化学水性ガスシフト(WGS)反応器及び使用方法に関し、電極及び膜などの反応器の様々な構成要素を、構成要素の構成材料とともに記載する。以下の記載は、本明細書に開示される本発明の様々な態様及び実施形態について詳述している。特定の実施形態は、本発明の範囲を定義することを意図したものではない。むしろ、実施形態は、特許請求される発明の範囲内に含まれる様々な組成物及び方法の非限定的な例を提供するものである。この説明は、当業者の観点から読まれるべきである。したがって、当業者に周知の情報は必ずしも含まれない。
【0028】
電気化学反応器
従来の実施とは違い、イオン伝導性膜を備える電気化学反応器が見出されており、この反応器は、水性ガスシフト反応を電気化学的に行うことができ、電気化学水性ガスシフト反応は、膜を通したイオンの交換を伴い、順水性ガスシフト反応、若しくは逆水性ガスシフト反応、又はそれらの両方を含む。これは、化学水性ガスシフト反応が反応物質の直接の結合を伴うため、化学経路を介した水性ガスシフト反応とは異なる。
【0029】
一実施形態では、反応器は、金属相及びセラミック相を含む多孔質電極を備え、金属相は、電子伝導性であり、セラミック相は、イオン伝導性である。様々な実施形態では、電極は、それらに取り付けられた集電体を有さない。様々な実施形態では、反応器は、いかなる集電体も含有しない。明らかに、そのような反応器は、いかなる電解装置又は燃料電池とも根本的に異なる。
【0030】
一実施形態では、反応器内の電極のうちの1つは、電気化学的に酸化反応を行いながら還元環境に曝露されるように構成されたアノードである。様々な実施形態では、電極は、Ni又はNiOと、YSZ、8YSZ、CoCGO、CGO、SDC、SSZ、LSGM、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される材料と、を含む。
【0031】
反応器内で起こる電気化学水性ガスシフト反応は、電気化学半電池反応を含み、半電池反応は、以下のとおりである。
【化1】
【0032】
様々な実施形態では、半電池反応は、三相境界で起こり、三相境界は、電子伝導相及びイオン伝導相と細孔との交差部である。更に、反応器はまた、化学水性ガスシフト反応を行うことができる。
【0033】
様々な実施形態では、イオン伝導性膜は、プロトン又は酸化物イオンを伝導する。様々な実施形態では、イオン伝導性膜は、固体酸化物を含む。様々な実施形態では、イオン伝導性膜は、流体の流れに対して不浸透性である。様々な実施形態では、イオン伝導性膜はまた、電子も伝導し、反応器は、相互接続を含まない。
【0034】
一実施形態では、膜は、ドープされたランタンクロマイト又は電子伝導性金属又はそれらの組み合わせを含有する電子伝導相を含み、膜は、ガドリニウムがドープされたセリア(CGO)、サマリウムがドープされたセリア(SDC)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ランタンストロンチウムガレートマグネサイト(LSGM)、スカンジア安定化ジルコニア(SSZ)、Sc及びCeがドープされたジルコニア、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含有するイオン伝導相を含む。一実施形態では、ドープされたランタンクロマイトは、ストロンチウムがドープされたランタンクロマイト、鉄がドープされたランタンクロマイト、ストロンチウム及び鉄がドープされたランタンクロマイト、ランタンカルシウムクロマイト、又はそれらの組み合わせを含み、伝導性金属は、Ni、Cu、Ag、Au、Pt、Rh、Co、Ru、又はそれらの組み合わせを含む。
【0035】
一実施形態では、膜は、ガドリニウム又はサマリウムがドープされたセリアを含む。一実施形態では、膜は、ガドリニウム又はサマリウムがドープされたセリアからなる。一実施形態では、膜は、コバルトCGO(CoCGO)を含む。一実施形態では、膜は、CoCGOから本質的になる。一実施形態では、膜は、CoCGOからなる。一実施形態では、膜は、LST(ランタンがドープされたチタン酸ストロンチウム)-YSZ又はLST-SSZ又はLST-SCZ(スカンジア-セリア安定化ジルコニア)を含む。一実施形態では、膜は、LST-YSZ又はLST-SSZ又はLST-SCZから本質的になる。一実施形態では、膜は、LST-YSZ又はLST-SSZ又はLST-SCZからなる。本開示では、LST-YSZは、LST及びYSZの複合体を指す。様々な実施形態では、LST相及びYSZ相は、互いに浸透する。本開示では、LST-SSZは、LST及びSSZの複合体を指す。様々な実施形態では、LST相及びSSZ相は、互いに浸透する。本開示では、LST-SCZは、LST及びSCZの複合体を指す。様々な実施形態では、LST相及びSCZ相は、互いに浸透する。YSZ、SSZ、及びSCZは、安定化ジルコニアの一種である。
【0036】
本明細書で考察されるのはまた、二機能層と混合伝導性膜とを含む反応器であり、二機能層と混合伝導性膜とは、互いに接触しており、二機能層は、逆水性ガスシフト(RWGS)反応を触媒し、電気化学反応においてアノードとして機能する。一実施形態では、アノードとしての二機能層は、還元環境に曝露され、二機能層で起こる電気化学反応は、酸化である。一実施形態では、集電体は、二機能層に取り付けられていない。一実施形態では、二機能層は、Ni又はNiOと、YSZ、8YSZ、CoCGO、CGO、SDC、SSZ、LSGM、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される材料と、を含む。
【0037】
一実施形態では、膜は、ドープされたランタンクロマイト又は電子伝導性金属又はそれらの組み合わせを含有する電子伝導相を含み、膜は、ガドリニウムがドープされたセリア(CGO)、サマリウムがドープされたセリア(SDC)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ランタンストロンチウムガレートマグネサイト(LSGM)、スカンジア安定化ジルコニア(SSZ)、Sc及びCeがドープされたジルコニア、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含有するイオン伝導相を含む。一実施形態では、ドープされたランタンクロマイトは、ストロンチウムがドープされたランタンクロマイト、鉄がドープされたランタンクロマイト、ストロンチウム及び鉄がドープされたランタンクロマイト、ランタンカルシウムクロマイト、又はそれらの組み合わせを含み、伝導性金属は、Ni、Cu、Ag、Au、Pt、Rh、Co、Ru、又はそれらの組み合わせを含む。
【0038】
このような反応器は、様々な用途を有する。一実施形態では、反応器は、二酸化炭素の水素化により一酸化炭素を生成するために利用される。別の実施形態では、反応器は、H2をCOに変換するか、又はCOをH2に変換することによって、シンガス組成物(すなわち、H2/CO比)を調節するために使用される。以下の論術では、水素の生成を例として挙げるが、反応器の用途は水素の生成のみに限定されない。
【0039】
図1は、本開示の一実施形態による、電気化学反応器又は電気化学(EC)ガス生成器100を示す。ECガス生成器装置100は、第1の電極101、膜103第2の電極102を備える。第1の電極101(アノード又は二官能性層とも称される)は、燃料104を受けるように構成されている。流れ104は、酸素を含まない。第2の電極102は、105で示されるように、水(例えば、蒸気)を受けるように構成されている。
【0040】
一実施形態では、装置100は、CO、すなわち一酸化炭素(104)を受け、第1の電極(101)においてCO/CO2(106)を発生させるように構成されており、装置100はまた、水又は蒸気(105)を受け、第2の電極(102)において水素(107)を発生させるように構成されている。場合によっては、第2の電極は、蒸気と水素の混合物とを受ける。水は、反対側の電極においてCOを酸化するために必要な酸化物イオン(膜を通って輸送される)を提供するため、このシナリオでは水が酸化剤とみなされる。このように、第1の電極101は、還元環境で酸化反応を行っている。様々な実施形態では、103は、酸化物イオン伝導性膜を表す。一実施形態では、第1の電極101及び第2の電極102は、Ni-YSZ又はNiO-YSZを含む。一実施形態では、酸化物イオン伝導性膜103はまた、電子を伝導する。これらの場合、H2、CO、シンガス、又はそれらの組み合わせを含有するガスは、供給流104として適切である。様々な実施形態では、電極101及び102は、Ni又はNiOと、YSZ、8YSZ、CoCGO、CGO、SDC、SSZ、LSGM、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される材料と、を含む。代替的に、炭化水素を含むガスは、膜103/電極101と接触する前に改質される。改質器は、蒸気改質、乾式改質、又はそれらの組み合わせを行うように構成されている。改質されたガスは、供給流104として好適である。
【0041】
一実施形態では、装置100は、第2の電極102から水素107を、かつ第1の電極101からシンガス106を同時に生成するように構成されている。一実施形態では、104は、装置100に入るメタン及び水、又はメタン及び二酸化炭素を表す。別の実施形態では、104は、メタンを表す。他の実施形態では、103は、酸化物イオン伝導性膜を表す。矢印104は、炭化水素及び水、又は炭化水素及び二酸化炭素の流入を表す。矢印105は、水又は水及び水素の流入を表す。
【0042】
いくつかの実施形態では、電極101は、Cu-CGOを含むか、又は任意選択でCuO若しくはCu2O若しくはそれらの組み合わせを更に含み、電極102は、Ni-YSZ又はNiO-YSZを含む。場合によっては、電極101は、ドープされたセリア又はドープされていないセリアと、Cu、CuO、Cu2O、Ag、Ag2O、Au、Au2O、Au2O3、Pt、Pd、Ru、Rh、Ir、LaCaCr、LaSrCrFe、YSZ、CGO、SDC、SSZ、LSGM、ステンレス鋼、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される材料と、を含み、電極102は、Ni又はNiOと、YSZ、8YSZ、CoCGO、CGO、SDC、SSZ、LSGM、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される材料と、を含む。
【0043】
場合によっては、電極101は、ランタンクロマイトと、ドープされたセリア、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ランタンストロンチウムガレートマグネサイト(LSGM)、スカンジア安定化ジルコニア(SSZ)、Sc及びCeがドープされたジルコニア、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される材料と、を含み、電極102は、Ni又はNiOと、YSZ、8YSZ、CoCGO、CGO、SDC、SSZ、LSGM、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される材料と、を含む。様々な実施形態では、ランタンクロマイトは、ドープされていないランタンクロマイト、ストロンチウムがドープされたランタンクロマイト、鉄がドープされたランタンクロマイト、ストロンチウム及び鉄がドープされたランタンクロマイト、ランタンカルシウムクロマイト、又はそれらの組み合わせを含む。
【0044】
矢印104は、水がほとんどない、二酸化炭素がない、及び酸素がない炭化水素の流入を表し、105は、水又は水及び水素の流入を表す。水は、反対側の電極において炭化水素/燃料を酸化するために必要な酸化物イオン(膜を通って輸送される)を提供するため、このシナリオでは水が酸化剤とみなされる。これらの場合、炭化水素を含有するガスは、供給流104として適切であり、ガスの改質は必要ではない。これらの場合、電気化学的改質は反応器によって可能にされ、メタンを改質するために必要な酸素は、水の還元に由来し、膜にわたって供給される。半電池反応は電気化学的であり、以下のとおりである。
【化2】
【0045】
本開示では、酸素がないことは、第1の電極101において酸素が存在しないこと、又は少なくとも、反応を妨げるのに十分な酸素がないことを意味する。また、本開示では、水は、意図された原料が水であることのみを意味し、水中の微量元素又は固有の成分を排除しない。例えば、塩又はイオンを包含する水は、水のみの範囲内であるとみなされる。水のみは、100%純粋な水を必要としないが、この実施形態を含む。実施形態では、第2の電極102から生成された水素は純粋な水素であり、これは、第2の電極から生成された気相で、水素が主要成分であることを意味する。場合によっては、水素含有量は99.5%以上である。場合によっては、水素含有量は99.9%以上である。場合によっては、第2の電極から生成される水素は、水の電解から生成されるものと同じ純度である。
【0046】
一実施形態では、第1の電極101は、メタン、又はメタン及び水、又はメタン及び二酸化炭素を受けるように構成されている。一実施形態では、燃料は、1~12、1~10、又は1~8の範囲の炭素数を有する炭化水素を含む。最も好ましくは、燃料は、主にメタンであるメタン又は天然ガスである。一実施形態では、装置は電気を発生させず、燃料電池ではない。
【0047】
様々な実施形態では、装置は、集電体を含まない。一実施形態では、装置は、相互接続を含まない。電気を必要とせず、そのような装置は電気分解器ではない。これは、本開示のEC反応器の主な利点である。膜103は、電子を伝導するように構成され、したがって、混合伝導性、すなわち、電子伝導性とイオン伝導性との両方である。一実施形態では、膜103は、酸化物イオン及び電子を伝導する。一実施形態では、電極101、102及び膜103は、管状である(例えば、
図2A及び
図2Bを参照)。一実施形態では、電極101、102及び膜103は、平面である。これらの実施形態では、アノード及びカソードでの電気化学反応は、反応器に電位/電気を加える必要がなく、自発的である。
【0048】
一実施形態では、電気化学反応器(又はECガス生成器)は、第1の電極、第2の電極、及び電極間の膜を備える装置であり、第1の電極及び第2の電極は、装置の使用中に白金族金属を含有しない金属相を含み、膜は酸化物イオン伝導性である。一実施形態では、第1の電極は、燃料を受けるように構成されている。一実施形態では、前述の燃料は、炭化水素若しくは水素若しくは一酸化炭素若しくはアンモニア、又はそれらの組み合わせを含む。一実施形態では、第2の電極は、水及び水素を受けるように構成されており、水を水素に還元するように構成されている。様々な実施形態では、そのような還元は、電気化学的に起こる。
【0049】
一実施形態では、膜は、ドープされたランタンクロマイト又は電子伝導性金属又はそれらの組み合わせを含有する電子伝導相を含み、膜は、ガドリニウムがドープされたセリア(CGO)、サマリウムがドープされたセリア(SDC)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ランタンストロンチウムガレートマグネサイト(LSGM)、スカンジア安定化ジルコニア(SSZ)、Sc及びCeがドープされたジルコニア、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含有するイオン伝導相を含む。一実施形態では、ドープされたランタンクロマイトは、ストロンチウムがドープされたランタンクロマイト、鉄がドープされたランタンクロマイト、ストロンチウム及び鉄がドープされたランタンクロマイト、ランタンカルシウムクロマイト、又はそれらの組み合わせを含み、伝導性金属は、Ni、Cu、Ag、Au、Pt、Rh、Co、Ru、又はそれらの組み合わせを含む。
【0050】
図2Aは、本開示の一実施形態による、管状電気化学(EC)反応器又はECガス生成器200を(正確な縮尺ではない)示す。管状生成器200は、それぞれ、内側管状構造体202、外側管状構造体204、及び内側管状構造体202と外側管状構造体204との間に配置された膜206を含む。管状生成器200は、流体通路のための空隙空間208を更に含む。
図2Bは、本開示の一実施形態による、管状生成器200の断面図(正確な縮尺ではない)を示す。管状生成器200は、第1の内側管状構造体202、第2の外側管状構造体204、及び内側管状構造体202と外側管状構造体204との間の膜206を含む。管状生成器200は、流体通路のための空隙空間208を更に含む。
【0051】
一実施形態では、電極及び膜は管状であり、第1の電極は最も外側にあり、第2の電極は最も内側にあり、第2の電極は水及び水素を受けるように構成されている。一実施形態では、電極及び膜は管状であり、第1の電極は最も内側にあり、第2の電極は最も外側にあり、第2の電極は水及び水素を受けるように構成されている。一実施形態では、電極及び膜は、管状である。
【0052】
一実施形態では、反応器は、化学逆水性ガスシフト(RWGS)反応を促進する触媒を含む。一実施形態では、触媒は、高温RWGS触媒である。一実施形態では、触媒は、反応器内のアノードの一部である。一実施形態では、触媒は、アノードの外側にあるように構成される。例えば、そのような触媒としてのNi-Al
2O
3ペレットは、
図2A及び
図2Bに示されるように、管を取り囲む反応器内に配置される。一実施形態では、触媒は、Ni、Cu、Fe、Pt族金属、又はそれらの組み合わせを含む。一実施形態では、触媒は、Pt、Cu、Rh、Ru、Fe、Ni、又はそれらの組み合わせを含む。
【0053】
水素生成システム及び方法
図3に例解するように、統合された水素生成システム300が示されている。システム300は、電気化学(EC)反応器又はガス生成器320及び脱水器330を含む。供給流321は、EC反応器のアノードに送られ、供給流は、燃料を含む。燃料は、炭化水素、CO、H
2、又はそれらの組み合わせであり得る。322は、EC反応器のカソードに送られる蒸気又は蒸気及び水素を表す。アノード及びカソードは、EC反応器320内の気密膜(
図3には図示せず)によって分離される。このように、アノード側のガスは、カソード側のガスと接触しない。
【0054】
膜は、混合伝導性である。例えば、膜は、酸化物イオン及び電子の両方を伝導する。ガス生成器/EC反応器320は、水及びCO2並びに未反応の供給成分を含む第1の生成物流323を(アノードにおいて)発生させる。ガス生成器/EC反応器320は、H2及びH2Oを含む第2の生成物流324を(カソードにおいて)発生させる。2つの生成物流は、互いに接触しない。それらはまた、膜によって分離される。
【0055】
場合によっては、第2の生成物流324は、水素から水を分離するために脱水器に送られる。水素は、流れ325として収集され、その一部分(流れ326)は、アノードのための供給流321に再循環される。再循環された水素流は、供給流321が主に炭化水素を含む場合に特に有利である。これらのシナリオでは、炭化水素は還元環境でアノード側で直接酸化され、水素はカソード側の水から生成される。CO2の実質的な量の水は、供給流321に存在しない。
【0056】
供給流321は、EC反応器320内で起こる反応に適するように高温(600℃超又は700℃超又は800℃超)に加熱されるため、再循環/添加された水素は、別様に炭化水素熱分解から起こるであろうコーキングを低減する。これらの場合、EC反応器のアノードは、ドープされたセリア又はドープされていないセリアと、Cu、CuO、Cu2O、Ag、Ag2O、Au、Au2O、Au2O3、Pt、Pd、Ru、Rh、Ir、LaCaCr、LaSrCrFe、YSZ、CGO、SDC、SSZ、LSGM、ステンレス鋼、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される材料と、を含み、カソードは、Ni又はNiOと、YSZ、8YSZ、CoCGO、CGO、SDC、SSZ、LSGM、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される材料とを含む。
【0057】
場合によっては、反応器のアノードは、ランタンクロマイトと、ドープされたセリア、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ランタンストロンチウムガレートマグネサイト(LSGM)、スカンジア安定化ジルコニア(SSZ)、Sc及びCeがドープされたジルコニア、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される材料と、を含み、カソードは、Ni又はNiOと、YSZ、8YSZ、CoCGO、CGO、SDC、SSZ、LSGM、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される材料と、を含む。様々な場合では、ランタンクロマイトは、ドープされていないランタンクロマイト、ストロンチウムがドープされたランタンクロマイト、鉄がドープされたランタンクロマイト、ストロンチウム及び鉄がドープされたランタンクロマイト、ランタンカルシウムクロマイト、又はそれらの組み合わせを含む。
【0058】
一実施形態では、EC反応器に入る蒸気は、600℃以上、又は700℃以上、又は800℃以上、又は850℃以上、又は900℃以上、又は950℃以上、又は1000℃以上、又は1100℃以上の温度を有する。一実施形態では、電気化学反応器に入る蒸気は、10psi以下、又は5psi以下、又は3psi以下の圧力を有する。
【0059】
したがって、水素は、蒸気及び燃料を電気化学(EC)反応器内に導入することであって、燃料及び蒸気がEC反応器内で互いに接触しない、導入することを含む方法によって生成される。EC反応器は、イオン伝導性膜を備え、反応器は、水性ガスシフト反応を電気化学的に行うことができ、電気化学水性ガスシフト反応は、膜を通したイオンの交換を伴い、順水性ガスシフト反応、若しくは逆水性ガスシフト反応、又はそれらの両方を含む。更に、膜は、燃料を蒸気から分離する。様々な実施形態では、燃料側と蒸気側との間の圧力差は、2psi以下、又は1.5psi以下、又は1psi以下である。
【0060】
様々な実施形態では、EC反応器は、還元環境で燃料を酸化させ、CO及びCO2を含む第1の生成物流を発生させ、EC反応器は、蒸気を水素に電気化学的に還元し、H2及びH2Oを含む第2の生成物流を発生させる。様々な実施形態では、膜は、第1の生成物流及び第2の生成物流を分離する。様々な実施形態では、第1の生成物流の少なくとも一部は、水から蒸気を生成するために利用される。様々な実施形態では、第1の生成物流の少なくとも一部分は、炭素捕捉ユニットに送られ、CO2を隔離する。様々な実施形態では、第2の生成物流の少なくとも一部は、再循環されてEC反応器に入る。一実施形態では、水を凝縮させ、第2の生成物流から分離し、水素を抽出する。抽出された水素は、本明細書で先に論じたように、様々な用途で使用される。加えて、抽出された水素は、金属鉱石を還元するために使用される。例えば、水素は、高炉又は直接還元プロセスで使用される。場合によっては、抽出された水素は、カソード側のEC反応器に再循環される。
【0061】
本明細書に開示される方法は、第1の電極、第2の電極、及び電極間の膜を備える装置を提供することと、第1の電極に第1の流れを導入することと、第2の電極に第2の流れを導入することと、第2の電極から水素を抽出することと、を含み、第1の電極及び第2の電極は、装置の使用中に白金族金属を含有しない金属相を含む。一実施形態では、膜は、酸化物イオン伝導性である。
【0062】
一実施形態では、装置は、500℃以上、又は600℃以上、又は700℃以上、又は750℃以上、又は800℃以上、又は850℃以上、又は900℃以上、又は950℃以上、又は1000℃以上の温度で動作される。様々な実施形態では、第1の電極と第2の電極との間の圧力差は、2psi以下、又は1.5psi以下、又は1psi以下である。一実施形態では、第1の流れは、10psi以下、又は5psi以下、又は3psi以下の圧力で装置に入る。一実施形態では、第2の流れは、10psi以下、又は5psi以下、又は3psi以下の圧力で装置に入る。
【0063】
一実施形態では、第1の流れは、燃料を含む。一実施形態では、前述の燃料は、炭化水素若しくは水素若しくは一酸化炭素若しくはアンモニア、又はそれらの組み合わせを含む。一実施形態では、第1の流れが、第1の電極内に直接導入されるか、若しくは第2の流れが、第2の電極内に直接導入されるか、又はそれらの両方である。一実施形態では、方法は、第1の電極の上流に改質器又は触媒部分酸化(CPOX)反応器を提供することを含み、第1の流れは、第1の電極に導入される前に、改質器又はCPOX反応器を通過し、第1の電極は、Ni又はNiOを含む。一実施形態では、改質器は、蒸気改質器又は自己熱改質器である。
【0064】
一実施形態では、第2の流れは、水及び水素からなる。一実施形態では、前述の第1の流れは、一酸化炭素を含み、有意な量の水素、炭化水素、又は水を含まない。そのような場合、上流の改質器は必要ではない。本開示では、有意な量の水素又は炭化水素又は水が存在しないとは、水素又は炭化水素又は水の体積含有量が、5%以下、又は3%以下、又は2%以下、又は1%以下、又は0.5%以下、又は0.1%以下、又は0.05%以下であることを意味する。一実施形態では、第1の流れは、シンガス(CO及びH2)を含む。一実施形態では、第1の流れは、アルゴン又は窒素のような不活性ガスを含む。一実施形態では、第2の流れは、水及び水素からなる。
【0065】
一実施形態では、この方法は、抽出された水素を、フィッシャー-トロプシュ(FT)反応、乾式改質反応、ニッケルによって触媒されるサバティエ反応、ボッシュ反応、逆水性ガスシフト反応、電気を生成するための電気化学反応、アンモニアの生成、肥料の生成、水素貯蔵のための電気化学コンプレッサ、エネルギー供給水素ビヒクル又は水素化反応、又はそれらの組み合わせのうちの1つで使用することを含む。
【0066】
本明細書では、水素を生成する方法であって、電気化学反応器を提供することと、燃料を含む第1の流れを装置に導入することと、水を含む第2の流れを装置に導入することと、第2の流れの中の水を水素に還元することと、装置から水素を抽出することと、を含み、第1の流れ及び第2の流れは、装置内で互いに接触しない、方法が開示される。様々な実施形態では、水から水素への還元は、電気化学的に起こる。一実施形態では、第1の流れは、水素と接触しない。一実施形態では、第1の流れ及び第2の流れは、装置内の膜によって分離される。
【0067】
一実施形態では、燃料は、炭化水素若しくは水素若しくは一酸化炭素若しくはアンモニア、又はそれらの組み合わせを含む。一実施形態では、第2の流れは、水素を含む。一実施形態では、第1の流れは、燃料を含む。一実施形態では、燃料は、一酸化炭素からなる。一実施形態では、第1の流れは、一酸化炭素及び二酸化炭素からなる。一実施形態では、第2の流れは、水及び水素からなる。一実施形態では、第2の流れは、蒸気及び水素からなる。
【0068】
本開示は、本発明の異なる特徴、構造、又は機能を実装するための例示的な実施形態を説明することを理解されたい。構成要素、配置、及び構成の例示的な実施形態は、本開示を簡略化するために説明されるが、これらの例示的な実施形態は、単に例として提供され、本発明の範囲を限定することを意図しない。本明細書に提示される実施形態は、特に指定されない限り、組み合わされてもよい。そのような組み合わせは、本開示の範囲から逸脱するものではない。
【0069】
更に、特定の用語は、特定の構成要素又はステップを指すために、説明及び特許請求の範囲全体にわたって使用される。当業者であれば理解するように、様々なエンティティは、異なる名前で同じ構成要素又はプロセスステップを参照する場合があり、したがって、本明細書に記載される要素の命名規則は、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。更に、本明細書で使用される用語及び命名規則は、名前は異なるが機能は異ならない構成要素、特徴、及び/又はステップを区別することを意図するものではない。
【0070】
本開示は、様々な修正及び代替形態の影響を受けやすいが、その特定の実施形態は、図面及び説明において例として示されている。しかしながら、図面及び詳細な説明は、開示される特定の形態に本開示を限定することを意図するものではなく、逆に、本開示の趣旨及び範囲内にある全ての修正、等価物、及び代替物を網羅することを意図することを理解されたい。
【国際調査報告】