(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】調合液の調合装置
(51)【国際特許分類】
B01F 35/221 20220101AFI20240711BHJP
B01F 35/212 20220101ALI20240711BHJP
B01F 35/214 20220101ALI20240711BHJP
B01F 35/60 20220101ALI20240711BHJP
B01F 35/71 20220101ALI20240711BHJP
B01F 35/75 20220101ALI20240711BHJP
B01F 35/88 20220101ALI20240711BHJP
【FI】
B01F35/221
B01F35/212
B01F35/214
B01F35/60
B01F35/71
B01F35/75
B01F35/88
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578886
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 GB2022051615
(87)【国際公開番号】W WO2022269273
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511282531
【氏名又は名称】トリステル ピーエルシー
【氏名又は名称原語表記】TRISTEL PLC
【住所又は居所原語表記】Unit 1b Lynx Business Park,Fordham Road,Snailwell,Newmarket,CB8 7NY Great Britain
(74)【代理人】
【識別番号】100079980
【氏名又は名称】飯田 伸行
(74)【代理人】
【識別番号】100167139
【氏名又は名称】飯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ターナー,ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】ディクソン,エラノア
(72)【発明者】
【氏名】モース,ジェイムス
(72)【発明者】
【氏名】ブランド,トーマス
【テーマコード(参考)】
4G037
【Fターム(参考)】
4G037AA02
4G037AA06
4G037AA11
4G037BA05
4G037BB06
4G037BB23
4G037EA10
(57)【要約】
本発明は第1試薬を含む第1部分および第2試薬を含む第2部分を有する二部構成システムを使用して調合液を調合する装置に関する。第1試薬および第2試薬は混合時に反応し、調合液の活性成分を生成し、そして調合液は希釈剤を有する。本装置は所定量の第1部分、所定量の第2部分および所定量の希釈剤を受け取る一次室(104)、第1部分および第2部分を一次室に投入する試薬投入口(106)、希釈剤供給部に接続し、希釈剤を一次室に投入できる希釈剤投入口(108)、調合液を一次室から放出する放出口(118)、および希釈剤投入口の希釈剤供給部への接続時に所定容量の希釈剤を一次室に所定の時間投入する流れ制御装置(112)を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1試薬を含有する第1部分および第2試薬を含有する第2部分を有する2部構成システムを使用して調合液を調合する調合装置であって、前記第1試薬および前記第2試薬が混合時に反応して調合液の活性成分を生成し、およびこの調合液が希釈剤を有し、
前記調合装置は、
前記第1部分の所定量、前記第2部分の所定量および前記希釈剤の所定量を受け取るための一次室と、
前記第1部分および前記第2部分を前記一次室に投入する試薬投入口と、
希釈剤供給部に接続でき、前記希釈剤を前記一次室に投入する希釈剤投入口と、
前記一次室から前記調合液を排液する排液口と、
前記希釈剤投入口が希釈剤供給部に接続される所定時間において前記一次室に所定容量の希釈剤を投入する構成の流れ制御装置と、を有する
ことを特徴とする調合装置。
【請求項2】
前記流れ制御装置は希釈剤を所定の投入レートで前記一次室に流入させる構成であって、前記希釈剤供給部の制限されないレートが前記所定の投入レートより大きいことを条件とする流れ制限装置、を有する請求項1に記載の調合装置。
【請求項3】
前記の所定の投入レートが2.5~10リットル/分である請求項2に記載の調合装置。
【請求項4】
前記第1部分および前記第2部分それぞれを収める第1キャビティおよび第2キャビティを有するカプセルを受け取る受け取り領域、および前記カプセルから前記試薬投入口に前記第1部分および前記第2部分を分配できるアクチュエータを有する請求項1~3のいずれか一項に記載の調合装置。
【請求項5】
前記試薬投入口が前記第1部分および前記第2部分を受け取る反応室を有し、この反応室が前記第1部分および前記第2部分から生成した試薬混合物を前記一次室に送り出す出口を有する請求項4に記載の調合装置。
【請求項6】
前記出口が前記試薬混合物を制御された流量で前記一次室に放出する制限オリフィスを有する請求項5に記載の調合装置。
【請求項7】
前記流れ制御装置は、前記一次室への希釈剤の流入を停止及び開始するように作動する充填弁を有する請求項1~6のいずれか一項に記載の調合装置。
【請求項8】
前記充填弁が手動弁である請求項7に記載の調合装置。
【請求項9】
前記一次室への前記第1部分および前記第2部分の送り出しに対応する試薬送り出し信号を受信し、且つ該送り出し信号に応答し前記充填弁を作動させる構成の制御モジュールを有する請求項7に記載の調合装置。
【請求項10】
前記所定量の希釈剤の前記一次室への投入後使用者に準備表示を供し、前記調合液の使用準備が整ったことを示すように前記制御モジュールが構成される請求項9に記載の調合装置。
【請求項11】
前記所定量の希釈剤の前記一次室への投入後所定の滞留時間待機してから、前記準備表示を供するように前記制御モジュールが構成される請求項10に記載の調合装置。
【請求項12】
前記第1部分および前記第2部分を前記一次室に送り出す前にスタート入力信号を受信し、且つ、このスタート入力信号に応答して前記充填弁を作動させ、一回目分の希釈剤を前記一次室に送り出すように前記制御モジュールが構成され、
前記試薬送り出し信号に応答して生じる前記充填弁の作動によって、二回目分の希釈剤を前記一次室に送り出し、これら一回目分および二回目分の合計容量が希釈剤の前記所定量に等しい請求項9~11のいずれか一項に記載の調合装置。
【請求項13】
前記制御モジュールは、前記一回目分の希釈剤の送り出し後、使用者に起動表示を供し、前記第1部分および前記第2部分を前記一次室に添加できることを示すように構成される請求項12に記載の調合装置。
【請求項14】
前記試薬送り出し信号に応答して前記充填弁が作動し、前記所定容量の希釈剤を前記一次室に投入する請求項9~11のいずれか一項に記載の調合装置。
【請求項15】
使用者により操作可能な使用者入力デバイスを有し、使用者インターフェースによって前記試薬送り出し信号を前記制御モジュールに送る請求項9~14のいずれか一項に記載の調合装置。
【請求項16】
前記使用者入力デバイスは使用者により操作可能であり、前記使用者インターフェースによって前記スタート入力信号を前記制御モジュールに送る請求項12または請求項13に従属する際の請求項15に記載の調合装置。
【請求項17】
前記第1部分および前記第2部分の前記一次室への送り出しに対応する事象を検出し、この事象の検出時に前記試薬送り出し信号を前記制御モジュールに発信する送り出しセンサーを有する請求項9~14のいずれか一項に記載の調合装置。
【請求項18】
前記送り出しセンサーが前記アクチュエータの動作を検出し、この動作の検出時に前記試薬送り出し信号を前記制御モジュールに発信するように構成される、請求項4~6のいずれか一項に従属する際の請求項17に記載の調合装置。
【請求項19】
希釈剤投入流れセンサーを有し、前記制御モジュールがこの投入流れセンサーから投入流れ信号を受信し、この投入流れ信号に基づいて希釈剤投入レートを決定する請求項9~18のいずれか一項に記載の調合装置。
【請求項20】
前記制御モジュールが前記投入レートに基づいて前記充填弁の開放時間を調節するように構成される請求項19に記載の調合装置。
【請求項21】
前記投入レートが所定範囲外にある場合に、前記制御モジュールが使用者に故障表示を供する請求項19または請求項20に記載の調合装置。
【請求項22】
前記一次室内に液体が存在することを検出する故障センサーを有し、前記充填弁の作動前に前記一次室内に液体が存在することが検出された場合に、前記制御モジュールがこの故障センサーから故障信号を受信し、使用者に故障表示を供する請求項9~21のいずれか一項に記載の調合装置。
【請求項23】
前記故障センサーは、前記一次室の前記希釈剤投入口において液体の背圧を検出する背圧センサーを有する請求項22に記載の調合装置。
【請求項24】
前記第1部分および/または前記第2部分を含む包装体のデータキャリヤから前記第1部分および/または前記第2部分の特性に関するデータを読み取るデータ読み取り装置を有し、前記制御モジュールは、前記充填弁の作動前に、
前記データ読み取り装置から前記データを受信し、
一つかそれ以上の所定基準に照らして前記データを確認し、そして
このデータが一つかそれ以上の所定基準を満足していない場合に、使用者にエラー表示を供する請求項9~23のいずれか一項に記載の調合装置。
【請求項25】
前記一次室を空処理し、前記制御モジュールによって作動可能なドレン弁を有するドレン口を有する請求項9~24のいずれか一項に記載の調合装置。
【請求項26】
前記制御モジュールは、前記調合液の所定の保存期間が切れた後に、前記ドレン弁を作動して前記一次室の空処理を行うように構成された請求項25に記載の調合装置。
【請求項27】
前記排液口に流れる前記調合液の流れを検出する排液口流れセンサーを有し、前記制御モジュールが、前記調合液の前記排液口からの放出時にこの排液口流れセンサーの出力から、排液口流れ容量を決定し、この排液口流れ容量を記録するように構成される請求項9~26のいずれか一項に記載の調合装置。
【請求項28】
前記制御モジュールによって作動され、排液口流れを制御する排液口弁を有する請求項9~27のいずれか一項に記載の調合装置。
【請求項29】
前記制御モジュールは、前記排液口弁を作動して、前記調合液の調合時に前記排液口における流れを制御するように構成される請求項28に記載の調合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は混合時に第1試薬および第2試薬が反応し、調合液の活性成分を生成し、そして希釈剤を添加し、この調合液を使用に好適な濃度に調整する2部構成の消毒剤システム(two-part disinfectant systems)などの調合液を調合する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
活性成分を含む多くの調合液の場合、時間経過とともに分解し、製品の保存期間が短くなる。これが特に該当するのが、二酸化塩素などの消毒剤や殺菌剤である。この場合、二種類の試薬を混合することによって活性成分を必要に応じてその場で生成する。実例は国際公開第2005/11756号に開示がある。二酸化塩素は例えば亜塩素酸塩と酸とを混合することによって生成することができる。
【0003】
使用時点でこの種の調合液を調合する場合、この調合液が好ましい活性成分濃度を確保することが大切である。例えば、消毒組成物の場合、活性成分濃度があまりにも低いと、消毒活性が失効する可能性があり、活性成分濃度があまりにも高いと、使用時に調合液が不快になるか、危険を引き起こす可能性が出てくる。従って、試薬が正確な量で添加されたことを、正確な量の希釈剤が使用されたことを、十分な時間をかけて反応が生じたことを確認するために、使用者は所定の指示に従う必要がある。使用者にはいくつかのステップを特定順で踏み、一回かそれ以上の待機時間を設けることが要求される。このため、このような組成物の調合は時間がかかる上に、集中力が要求され、潜在的にヒューマンエラーにつながる可能性がある。
【0004】
一般的には水を使用できる好ましい量の希釈剤とともに混合できる二部構成システムの二つの部分を予め包装した量で用意することは公知である。一つの実例では、二つの部分を好ましい量で包装した別々の小さな袋体を用意する。使用者は適正量の水を容器に加え、二つの袋体の内容物を加え、所定の時間待機し、反応が生じるのを待つ。次に、さらに所定量の水を加え、調合液の濃度を効力発揮濃度にした後、使用する別な容器に調合液を移す、あるいは注ぐ。このようなシステムでは、使用者は指示に注意深く従って、生成した調合液を使用する前に十分な時間が経過したことを確認する必要がある。特に、試薬の添加前に容器に希釈剤全量を加えることは望ましくない。というのは、反応速度が現実的でない程遅くなり、希釈剤を別々な二段階で加える必要があるからである。但し、これは生成した溶液が均質であることを確認するためには役立つ。
【0005】
国際公開第2017/060677号に開示されている別な実例では、二つかそれ以上の密封した分配室を有する分配カプセルを使用する。各分配室は異なる物質を有し、これを一次室に分配する。キャップをカプセルにねじ込むか、あるいは押し込むと、分配室壁部が徐々に潰れ、分配室間の内部シールが破断するため、分配室の内容物の予備混合が進み、濃縮した試薬混合物が生成する。キャップのねじ込み時または押し込み時に壁部がさらに潰れると、外部シールが破断し、混合物が一次室に排出する。この予備混合によって活性剤の生成が加速する。所定量の希釈剤を有する一次室内で反応が進むため、この一次室の活性剤の濃度が十分な濃度になる。
【0006】
これら構成の場合、消毒液の調合が正確な量の濃縮試薬を使用することによって比較的に迅速に実施でき、使用者が濃縮試薬や濃縮試薬混合物に暴露されることがない点において有利であるが、生成した消毒液が有効な活性剤濃度をもつことを確認するためには、使用者は依然として一連の所定処理ステップおよび時期に留意する必要がある。また、正確な量の希釈剤が一次室に存在し、生成した調合液が正確な濃度をもつことも重要である。
【0007】
国際公開2014/032832号には、混合タンクに第1および第2の試薬リザーバーを有する装置が開示されている。この混合タンクには主水注入口を設ける。試薬および水の混合タンクへの流れは試薬および水のタンクへの流入を同時に行う弁システムによって制御する。弁システムは混合タンクの内容物が所定容量に達した時点で水の流入を遮断し、同時に混合タンクの送り出し口を開き、内容物を別な容器に排出するフロートスイッチを有する。この装置の場合、混合タンクの充填速度、従って希釈された試薬の反応速度は主水圧に依存して変動するため、結果にバラツキが生じる。さらに、この装置は比較的複雑な弁システムを必要とするため、コストが高くなる上に保守も必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開2017/060677号
【特許文献2】国際公開2014/032832号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この背景を考慮すると、使用者の関与が少なく、および/またはヒューマンエラーのリスクが小さい調合液の調合方法および調調合装置を提供できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の態様については独立請求項に記載し、そして好適な特徴については従属請求項に記載する。
【0011】
本発明の好適な実施態様は、第1試薬を有する第1部分と第2試薬を有する第2部分を有する2部構成のシステムを使用して調合液を調製する装置を提供するもので、第1試薬および第2試薬が混合時に反応して、調合液の活性成分を生成し、そしてこの調合液が希釈剤を有する。本発明装置は所定量の第1部分、所定量の第2部分および所定量の希釈剤を受け取る一次室、第1部分および第2部分を一次室に送り込む試薬投入口、希釈剤供給部に接続し、希釈剤を一次室に送り込むことを可能にする希釈剤投入口、一次室から調合液を排液する排液口、および希釈剤インレットが希釈剤供給部に接続した際に所定量の希釈剤を一次室に所定の時間送り込む流れ制御装置を有する。
【0012】
この構成では、希釈剤の充填時間のみを監視することによって正確な量の希釈剤を一次室に添加できる。このようにすると、使用者は充填工程を連続的に監視する必要がなく、また希釈剤の容量測定も必要ないため、調合工程を簡略でき、エラーも少なくなる。さらに、所定容量の希釈剤を送り込む所定の時間を選択し、例えば、試薬の早すぎる希釈を避けることによって第1試薬と第2試薬との反応を最適化できる。
【0013】
流れ制御装置については、希釈剤の送り込みが所定の流入レート(速度、量)よりも高く制限のないレートで実施できる限り、所定の流入レートで希釈剤を一次室に送り込むことができる構成の流れ制御装置で構成することができる。所定の流入量は2.5~10リットル/分であることが好ましい。一つの実施例では、一次室は少なくとも10Lの容量をもち、所定の流量は4.9リットル/分であり、そして第1部分および第2部分の合計容量は200mLである。本実施例では、調合液の最終容量10Lを生成するために必要な合計充填時間は2分である。
【0014】
第1部分および第2部分については、好適な量の第1部分および第2部分のそれぞれを含有する小さな袋体(sachet)など包装体の形で供給することができる。この包装体は使用者が手によって開くことができ、試薬投入口に各部分を送り込むことができる。あるいは、装置は第1部分および第2部分を一次室に加える工程を自動化、あるいは補助できる特徴を備えることも可能である。
【0015】
例えば、本装置は第1部分および第2部分それぞれを保持する第1キャビティおよび第2キャビティを有するカプセルを受け取る受け取り領域を有していればよく、また第1部分および第2部分をカプセルから試薬投入口に分配できるアクチュエータを有することができる。例えば、アクチュエータとしては本装置の閉じることができる蓋の一部で構成することができる。
【0016】
一つの実施態様では、試薬投入口は第1部分および第2部分を受け取る反応室を有し、この反応室は第1部分および第2部分から生成した試薬混合物を一次室に送り出す排液口(outlet)を有する。この排液口については、試薬混合物を一次室に制御された流量で放出する制限オリフィス、および/または反応室からの試薬混合物の放出を制御する弁を有することができる。希釈前に試薬を反応室内に留めることによって、反応が迅速に進行し、調合時間全体が短縮する。
【0017】
流れ制御装置については、希釈剤の一次室への流れを停止かつ開始する充填弁を有するのが好ましい。この充填弁は手動であってもよく、この場合操作指示書に記載されているように、使用者が弁を所定時間操作すればよい。あるいは、充填弁を機械操作することも可能である。例えば、ソレノイド制御式弁を充填弁として使用することができる。
【0018】
本装置は第1部分および第2部分の一次室への投入に対応する試薬投入信号を受信し、この試薬投入信号に応答して充填弁を操作する構成の制御モジュールを備えることができる。この制御モジュールは所定量の希釈剤の一次室への流入後に使用者に準備が整ったことを示し、調合準備が完了したことを通知する。この準備完了通知は一つかそれ以上の表示灯、表示スクリーンおよび/またはラウドスピーカなどの表示デバイスによる音声指示および/または視覚的指示で行えばよい。
【0019】
制御モジュールについては、所定量の希釈剤の一次室への流入後所定の待機時間待機してから、準備完了通知を行うため、反応発生のための時間を十分確保できるように構成すればよい。同様に、試薬投入信号の受信後、所定の反応時間待機してから、所定量の希釈剤を一次室へ送り込み、希釈前に試薬を反応させるように制御モジュールを構成することも可能である。
【0020】
一部の実施態様では、第1部分および第2部分の添加前および添加後の2回に分けて、所定量の希釈剤を一次室に加える。即ち、制御モジュールによって第1部分および第2部分の一次室への投入前にスタート入力信号を受信し、そしてこのスタート入力信号に応答して充填弁を操作し、一次室に希釈剤の1回目の投入分を投入する。試薬投入信号に応答して充填弁を操作し、一次室に希釈剤の2回目の投入分を投入する。1回目の投入分および2回目の投入分の合計容量は前記の希釈剤の所定量に等しい。制御モジュールについては、1回目の投入後に使用者に充填準備完了を伝え、第1部分および第2部分を一次室に加えることを指示するように構成することができる。
【0021】
別な実施態様では、所定量の希釈剤を1回の投入で一次室に加える。この場合、試薬投入信号に応答して充填弁を操作し、一次室に所定量の希釈剤を加える。制御モジュールについては、使用者に充填準備完了を伝え、希釈剤の投入前、投入後または投入中に一次室に第1部分および第2部分を投入できることを示す。
【発明の効果】
【0022】
本発明装置には、使用者が操作して、使用者インターフェースによって試薬投入信号を制御モジュールに与える使用者入力デバイスを組み込むことができる。スタート入力信号を受信できるようにこの制御モジュールを構成にした場合にも、使用者が使用者入力デバイスを操作して、スタート入力信号を制御モジュールに与えることができる。使用者インターフェースとしては、例えば、使用者が操作するボタンやスイッチを使用することができ、あるいは指示デバイスとしても作用するタッチスクリーンを使用することができる。
【0023】
本発明装置の場合、直接的な使用者入力を行わなくても試薬投入信号を発信することができる。例えば、装置には第1部分および第2部分の一次室への投入に関連する事象を検出し、この事象の検出時に制御モジュールに試薬投入信号を発信する構成の投入センサーを設けることができる。装置がカプセルを受け取る領域およびカプセルから第1部分および第2部分を投入するアクチュエータを備える場合には、この投入センサーがアクチュエータの作動を検出し、この作動の検出時に制御モジュールに試薬投入信号を発信するように構成することができる。
【0024】
本発明装置の場合、一次室内に液体が存在していることを検出する故障センサーを有していてもよい。この故障センサーから故障信号を受信し、充填弁を操作する前に一次室内に液体が存在していることが検出された場合に、使用者に故障が発生したことを伝えるように制御モジュールを構成することができる。例えばこの故障センサーとしては、希釈剤投入口における一次室内の液体の背圧を検出する背圧センサーを使用することができる。
【0025】
本発明装置の場合、第1部分および/または第2部分を含有するパッケージのデータキャリヤからデータを読み取るRFIDリーダーなどのデータ読み取り装置を備えることができる。このデータは第1部分および/または第2部分の特性、例えば化学タイプ、バッチ数、使用期限、保存期間などに関係していればよい。制御モジュールがデータ読み取り装置からデータを受け取り、一つかそれ以上の所定基準に対してデータを検証し、このデータが一つかそれ以上の基準から外れている場合に、充填弁を操作する前に使用者にエラーが発生したことを伝えるように構成することができる。
【0026】
本発明装置の場合、一次室を空にする(空処理)排液口を備えることができる。この排液口は制御モジュールによって動作可能な排液弁を有するため、一次室の内容物を自動的に空処理し、排液を実施することができる。例えば、調合液の所定保存期間が切れた後は、排液弁を操作し、一次室を空処理できるように制御モジュールを構成することができる。
【0027】
排液口を通る調合液の流れを検出するために排液口流れセンサーを設けることができる。この排液口流れセンサーの出力から、調合液の排液口からの排液時に排液流量を求め、この排液流量を記録できるように制御モジュールを構成することができる。記録された流量データを使用して、ストック制御、監査、使用分析などを行うことができる。
【0028】
排液口は排液弁を有し、この弁を制御モジュールによって操作し、この排液口を通る流れを制御することができる。このように構成すると、必要な時に、制御モジュールによって排液口を通る流れを制限できる。例えば、制御モジュールによって、排液弁を操作し、調合液の調合時に排液口に流れる流れを阻止することができる。
【0029】
本発明の各態様および実施態様の好適な特徴および/または適宜採用する特徴などは他の態様および実施態様においても単独で、あるいは適宜組み合わせて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
以下例示のみを目的として、同じ参照符号が同じ要素または部材を示す添付図面を参照して本発明の実施態様を説明する。
【0031】
【
図1】本発明の第1実施態様に係る装置を示す概略図である。
【
図2】
図1の装置の操作方法における一連の工程を示す図である。
【
図3】本発明の第2実施態様に係る装置を示す概略図である。
【
図4】
図3の装置の操作方法における一連の工程を示す図である。
【
図5-10】
図3の装置の操作方法における一連の工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1に本発明の第1実施態様に係る装置100を示す。この装置100は一次室104を取り囲むタンク102を備える。試薬投入口106をタンク102の上部に設け、試薬を一次室104に加える。
【0033】
希釈剤投入口108を設け、水などの希釈剤液体を一次室104に投入する。希釈剤投入口108は希釈剤を連続的に供給できる希釈剤供給部(矢印110で示す)に接続できる。例えば、希釈剤供給部110としては主給水ライン(mains water supply line)を使用することができる。希釈剤供給部110から希釈剤投入口108を介して一次室104に至る希釈剤の流れは流れ制御装置112によって制御する。流れ制御装置112は充填弁114および流れ制限装置116を有する。この実施態様では、充填弁114を使用者が(ハンドルを回すか、あるいはソレノイド制御などによって)操作し、希釈剤の流れを開始するか停止できる。流れ制限装置116によって一次室104に流入する希釈剤の流量を制限する。
【0034】
本発明装置100はさらに調合液の調合が完了した後に、一次室104内の内容物を放出する放出口(排液口)118を有する。放出口118の流れは使用者が操作する放出弁120によって制御する。
【0035】
本発明装置100の目的は第1試薬を有する第1部分および第2試薬を有する第2部分を有する2部構成システムを使用して、調合液を調合することにある。第1試薬および第2試薬を混合すると調合液の活性成分が生成する。この際、希釈剤は活性成分を有効な適正濃度まで希釈する。第1部分および第2部分の少なくとも一つ、好ましくは両者が液体形態で存在する。
【0036】
本システムに使用する試薬は、混合時に例えば二酸化塩素や過酢酸などの消毒剤組成物を生成する試薬である。好適な試薬は当業者にとって公知である。例えば二酸化塩素を生成する試薬は亜塩素酸塩/酸、塩素酸塩/過酸化物/酸、亜塩素酸塩/次塩素酸塩/好適な緩衝液などである。第1部分および第2部分の混合時に活性剤を迅速に生成できる限り、試薬は濃縮形態であってもよい。
【0037】
図1の装置100の場合、充填弁114の開放時に既知の所定流量の希釈剤が一次室104に流入するように流れ制限装置116を選択するのが有利である。但し、これは希釈剤供給部110が流れ制限装置116によって許容されている以上の流量で希釈剤を供給できる限りという条件においてである。このため、一次室104に目的量の希釈剤を充填するプロセスが簡単になる。既知量の希釈剤が所定の時間流れるためである。このように構成すると、充填弁114を開き、所定時間経過してから、充填弁を閉じることによって使用者が希釈剤充填工程を実施できる。この場合、使用者が液体容量の物理的な測定を定期的に行う必要もなく、また充填時間中に装置を連続的に監視する必要もない。
【0038】
流れ制限装置116は好適なサイズに絞られたオリフィスを使用して液体流れを制限できるが、他の好適なタイプの流れ制限装置116も使用可能である。
【0039】
一つの実施例では、希釈剤供給部110は主給水管であり、一次室の公称容量は10Lであり、そして2部構成システムの第1部分および第2部分はそれぞれ100mlの量で小さな袋体に詰めておく。この場合、流れ制限装置116によって流量を最大で4.9リットル/分に制限しておくのが好ましい。これは主給水管からの通常の流量以下である(例えば英国では、一般に制限のない主給水流量は10~15リットル/分である)。従って、通常使用の場合、流れ制限装置116があるため、一次室104に流入する流量は4.9リットル/分になると考えられる。
【0040】
次に
図2を参照して説明する。装置100を使用して、以下に記載するように消毒剤組成物を調合できる。
【0041】
まず工程201において、使用者が充填弁114を開くと、給水ライン110から流れ制限装置116が設定する流量で希釈液投入口108を介して一次室104に水が流入する。工程202で、使用者が所定時間待機し、この所定時間が経過したなら、工程203で使用者が充填弁114を閉じる。このようにして、第1または第1回分の希釈剤を一次室104に投入する。希釈剤の第1回分の容量は工程202における流れ制限装置116の流量と所定時間との積である。例えば流量が4.9リットル/分で所定時間が1分の場合、第1回分の投入量は4.9Lになる。
【0042】
次に、工程204において一次室104に試薬を加える。この場合、使用者が所定量の第1部分および第2部分を含有する小さな袋体を開き、試薬投入口106を介して内容物を一次室104に注入する。工程205で、使用者が所定の反応時間待機する。注意書きに記載されている反応時間は反応速度および第1部分および第2部分の濃度に依存する。工程205では待機時間が必要ないことが理解できるはずである。
【0043】
試薬を加え、反応時間が必要な場合にはこの時間が経過した後に、第2回分の希釈剤を一次室104に加える。このように、工程206で使用者が希釈剤充填弁114を開き、工程207で所定時間待機し、工程208で希釈剤充填弁114を閉める。前と同様に、この第2回分の容量は工程207における流れ制限装置116の流量と所定時間との積であり、例えば流量が4.9リットル/分で所定時間が1分の場合、第2回分の投入量は4.9Lになる。
【0044】
従って、工程201~208では、合計で9.8Lの希釈剤が加わり、これに100mLの第1部分および100mLの第2部分が加わり、工程208の最後では一次室104における調合液の量は合計で10Lになる。次に工程209に移り、使用者が排液弁120を操作することによって排液口118を介して目的容量の調合液を分配/排液する。
【0045】
なお、装置100はその最も簡単な形態では、100%機械式であり、充填弁114および排液弁120は手動式である。使用者は外部時計を使用して、注意書きに従って所定時間を設定することができる。但し、変形例では、装置100は適正な時間間隔で予めプログラミングすることができるタイマーを内蔵することができ、また使用者に適正な時期に必要な措置を取ることを促すことも可能である。また、充填弁114をソレノイド作動式にでき、タイマーで制御できるため、使用者がタイマーのスタート制御を行うことによって目的の時間充填弁114を開けておくことが可能になる。
【0046】
図3に本発明の第2実施態様に係る装置100aを示す。この装置は第1実施態様と同様であるため(異なる点のみを以下に説明することにする)。本第2実施態様では、充填弁114は制御モジュール130によって操作する。この制御モジュール130は使用者インターフェース132に接続し、使用者コマンドを制御モジュール130に与え、そしてインジケーターデバイス134にこれを与えて、使用者に指示を伝える。インジケーターデバイス134は一つかそれ以上のライト、表示スクリーン、音声出力を単独で使用してもよく、あるいはこれらを併用してもよく、例えばタッチスクリーンなどの使用者インターフェース132に実装または一体化することができる。制御モジュール130としてはマイクロプロセッサーモジュールが好ましいが、他の手段を介して制御モジュール130を操作することも可能である。制御モジュール130については、目的の組成物を正確に調合するために工程の適正な順番および所定の充填時間および待機時間を予めプログラミングしておく。
【0047】
図4を参照して説明を続けると、
図3の装置100aを使用して調合液を調合するために、工程301において、使用者はまず装置100aが無傷であるか、そして排液弁120が閉じているかをチェックしてから、使用者インターフェース132の“スタート”ボタンを押す。すると、スタート入力信号が制御モジュール130へ伝わる。スタート入力信号を受信すると、工程302において制御モジュール130によって充填弁114が所定の第1充填時間開き、次に再び閉じる。これによって、一次室104に第1回分の正確な容量の希釈剤が充填される。この第1回分の容量は流れ制限装置116の流量および第1回の充填時間の長さによって決まる。
【0048】
次に、工程303において、制御モジュール130によってインジケーターデバイス134が音声による、および/または視覚による“試薬充填準備完了”を使用者に伝え、上記のように、使用者に試薬投入口106を介して試薬を一次室104に加えることを促す。工程304において、促された使用者が試薬を上記のように加える。
次に、工程305において、使用者が使用者インターフェース132の“確認”ボタンを押す。これによって、試薬投入信号を制御モジュール130が受信する。試薬投入信号の受信後、工程306において制御モジュール130によって充填弁114が所定の第2充填時間開き、次に再び閉じ、一次室104に第2回分の正確な量の希釈剤を充填する。必要な場合には、制御モジュール130は所定の反応時間が試薬投入信号の受信後に経過してから、充填弁114が工程306で開くように待機することも可能である。最後に、工程307において、制御モジュール130によって“調合準備完了”をインジケーターデバイス134により使用者に伝える。
【0049】
なお、使用者インターフェース132および制御モジュール130については、工程301においてプロセスの開始を起動し、かつ工程305において試薬が加えられたことを確認するために一つの操作ボタンを押すことができるように構成することができる。
【0050】
図1~
図4の実施態様の場合、流れ制御装置116を使用して、所定容量の希釈剤を一次室に確実に所定時間投入する。なお、これは希釈剤供給部110の制限のない流量が流れ制限装置116の流量を上回ることが条件である。タンク102については、タンク全体またはタンクの一部を透明材料で形成し、それぞれ第1回分投与および第2回分投与後に考えられる液面に対応する液面表示を示すなどによって一次室104内の液面を視覚的にチェックできるように設計することができる。あるいは、またはこれに加えて、液面ゲージおよび/または電子的な液面センサーを設けることも可能である。これらによって、使用者は流れ制限装置116の流量未満まで低下した希釈剤供給部110の流量を原因とする、あるいは部材故障やその他の誤差を原因とする正確ではない充填を確認できる。
【0051】
図5に本発明の第3実施態様に係る装置100bを示す。この第3実施態様は第2実施態様と同様であるため(異なる点についてのみ説明することにする)。この第3実施態様では、流れ制限装置116は使用を省略し、流れ制御装置112を充填弁114のみで構成する。この充填弁は制御モジュール130によって操作し、一次室102への希釈剤の流れを止めかつ開始する。
【0052】
本装置100bは希釈剤投入口流れセンサーを有する。本実施例は、このセンサーは投入口圧力センサー136であり、このセンサーは充填弁114の開放時に充填弁114と希釈剤投入口108との間に流入する希釈剤の圧力を検出する。制御モジュール130が投入口圧力センサー136から投入口圧力信号を受信し、この投入口圧力信号に基づいて希釈剤投入口流量を決定できる。次に、制御モジュール130が投入口流量に基づいて充填弁114の開放回数を決定し、この回数を動的に調節するため、目的量の希釈剤を一次室104に投入できる。また、制御モジュール130は、投入口圧力が所定範囲から外れた場合に、インジケーターデバイス134を介して使用者に誤作動が発生したことを伝えるようにも構成する。一つの実施例では、所定の圧力範囲は2.5~10リットル/分の許容可能な流量範囲に対応する。但し、一次室104のサイズおよび化学的なタイプに応じてこの範囲外の流量にも対応可能である。
【0053】
本実施態様では、装置100bも希釈剤投入口108と充填弁114との間の背圧を検出する背圧センサー138を有する。背圧センサー138は一次室104内の液体の存在を検出できる故障センサーであり、制御モジュール130に故障信号を発信する。制御モジュール130は、充填弁114の操作前に一次室104内に液体が存在することが検出された場合に、インジケーターデバイス134を介して故障が発生したことを使用者に伝える。即ち、一次室104が調合プロセスの開始前に空処理されていないことを伝える。
【0054】
図5の装置100を使用して調合液の調合方法は全体として
図3の装置100aの場合と同様である。但し、第1充填時および第2充填時、制御モジュール130は投入口圧力センサー136を使用して水流を監視し、充填時間の終了を算出して、適正量の希釈剤が加えられた後に充填弁114を閉じる。さらに、第1充填時および第2充填時に、制御モジュール130によって投入口圧力センサー136および背圧センサー138を監視し、上記のように、範囲外の投入量や予期しない背圧がある場合にこれを示す信号を発信する。
【0055】
投入口圧力センサー136および背圧センサー138としては単独のセンサーユニットを使用することができ、あるいは複数の異なるセンサーを使用することができる。投入口圧力センサーの代わりに、任意の好適な形式の流量センサーを使用しても、(タービンセンサーなどによって)直接、あるいは(圧力センサーなどによって)間接的に測定できる投入流量を確認することができる。同様に、背圧センサー138の代わりに、一次室104内の液体を検出できる任意の好適な形式の故障センサーを使用することもできる。例示すると、抵抗ベースの液体センサーやフロートスイッチベースのセンサーを挙げることができる。故障センサーは一次室104の底部に、あるいは底部付近に設けることができる。
【0056】
図6に本発明の第4実施態様に係る装置100cを示す。この装置は第3実施態様と同様である(異なる点のみを説明する)。
【0057】
本実施態様では、本明細書に全体を援用する国際公開第2017/060677号に例示されているように、タンク102はそれぞれ第1部分および第2部分を有する第1キャビティ144aおよび第2キャビティ144bを備えたカプセル142を受け取る受け取り領域140を有する。これらキャビティ144a、144bの壁部は崩壊可能であり、底端部を箔シール146でシール加工する。各キャビティは箔シール146に向かって下向きに延在するバーストピン148を有する。
【0058】
本装置100cもピストン150の形を取るアクチュエータを有する。このピストンがカプセル142から試薬投入口106に第1部分および第2部分を投入する。ピストン150は蓋152に取り付ける。この蓋を引き上げると、受け取り領域140にアクセスでき、カプセル142が挿入され、閉められ、ピストン150がキャビティ144a、144bを形成する壁部に圧力を加えるため、壁部が崩れ始める。この結果キャビティ144a、144b内の圧力が強くなり、箔シール146が最初にキャビティ144a、144bを分離する分割部材から離れ始めるが、カプセル142の周辺部には付着したままである。このため、第1部分および第2部分がカプセル内に留まった状態で、ある程度混合し、反応が生じる。引き続き、ピストン150をカプセル142にさらに押し込むと、バーストピン148が箔シール146に接触し、箔シール146が破裂するか、あるいは周辺の少なくとも一部から離れるため、第1部分と第2部分の混合物が試薬投入口106を介して一次室104に流入する。蓋152がヒンジ(図示省略)でタンク102に接続するため、蓋152がタンク102に取り付けられた状態で開閉でき、有利である。
【0059】
本装置100cにはピストン150の動作を検出し、かつ制御モジュール130に試薬投入信号を伝える試薬投入センサー154を設ける。本実施例では、試薬投入センサー154はマイクロスイッチの形を取り、蓋が閉じる際に始動する構成である。このように構成すると、制御モジュール130は、蓋152が閉じた時点を決定でき、カプセル142の液体放出を引き起こす。蓋152の開放時には、試薬投入センサー154がリセット状態に戻るため、制御モジュール130が新規なカプセル142の挿入時点を決定できる。
【0060】
本実施態様では、試薬が一次室104に投入された後に、必要量の希釈剤を一次室104に一度に投入する。従って、調合剤を調合するためには、使用者は排液弁120が閉じていることを最初に確認してから、カプセル142を受け取り領域140に装填する。次に、使用者が蓋152を閉じ、バースト機構を始動し、ピストン150をカプセル142に押し込み、上記のように、内容物を一次室104に投入する。この動作によって試薬投入センサー154が試薬投入信号を制御モジュール130に伝え、充填弁114を開き、希釈剤充填を開始する。前記実施態様と同様に、制御モジュール130が投入流量を監視し、必要量の希釈剤が加えられた後に充填弁114を閉じる。
【0061】
なお、別な形式の試薬投入センサー154を使用することも可能である。例えば、光学センサーを使用して、カプセル142からの液体流量を検出することも可能である。また、一つかそれ以上のセンサーを使用して故障を検出してもよく、あるいは操作開始時に制御モジュール130を始動してもよい。例えば、マイクロスイッチや近接検出器を使用すると、受け取り領域140内のカプセル142の存在を検出できる。
【0062】
図7に本発明の第5実施態様に係る装置100dを示す。この装置は第4実施態様と同様ではあるが、カプセル142が受け取り領域140内の所定位置にある際に、カプセル142に設けたRFIDタグ162を有するデータキャリヤからのデータを読み取るRFIDデータ読み取り装置160を追加使用する。
【0063】
タグ162に暗号化したデータ162がカプセル142内の試薬の特性に関する情報を提供する。例えば、データは(試薬の組成および濃度などの)化学種、バッチ数、(混合前の試薬の考えられる保存期間に基づく)カプセルの有効期限、および調合時間および調合日に基づいて調合液の有効期限を求めるために使用できる生成した調合液の保存期間などを含む。
【0064】
制御モジュール130については、データ読み取り装置160からデータを受け取り、一つかそれ以上の所定基準に照らしてデータを確認するように構成する。これら一つかそれ以上の所定基準をデータが満たしていない場合には、制御モジュール130がインジケーターデバイス134を介して使用者にエラーが発生したことを伝える。
【0065】
使用時、カプセル142を受け取り領域140に装填した際に、タグ162のデータを読み取り、制御モジュール130は(本実施態様ではディスプレーを有する)インジケーターデバイス134を使用してカプセル142の日時およびカプセルの化学的データを確認する。希釈剤を添加し、調合液の使用準備が整った後は、制御モジュール130によってインジケータ-デバイス134に化学種およびロット番号とともに調合液の残りの保存期間を示すカウントダウンを表示し、記録および確認を行う。カプセル142の有効期限が切れている場合には制御モジュール130が、エラーが発生したことを示す。
【0066】
タグ162のデータには、正確な調合液に必要な滞留時間および希釈剤充填時間を詳しく書き込むことも可能である。これら細部を制御モジュール130が使用し、調合シーケンスの各種工程において適正な待機時間および充填容量を設定することができる。このように構成すると、装置100dの場合、異なる化学種に自動的に即応でき、例えば同じ装置で洗浄溶液、消毒溶液やすすぎ溶液を調合することができる。
【0067】
制御モジュール130の場合、受信データを使用して、前のプロセスに使用した化学種とは異なる化学種を充填したカプセル142が装填されていることを検出し、そして適正な場合には、使用者に一次室104の水洗を促し支援することも可能である。
【0068】
RFIDはカプセル142から装置100dにデータを伝達するためには便利であるが、バーコードやマトリックスコードなどの異なるマシン読み取り式データフォーマットも好適に使用することができる。また、データ読み取り装置をこのように使用することはカプセル142を使用する実施態様に制限されない。さらに、小さな袋体やボトルなどの試薬包装体に好適なデータキャリヤを設けることも同じく可能であり、データ読み取り装置を装置100dの使いやすい位置に設けて、使用前にデータを包装体から読み取ることも同様に可能である。
【0069】
制御モジュール130も実施されたサイクルの回数を計数することができ、使用者に一次室104の水洗および/またはスケール除去操作を促すことができる。
【0070】
図8に本発明の第6実施態様に係る装置100eを示す。この実施態様は
図6を参照して上記した第4実施態様と同様である。
【0071】
第6実施態様では、タンク102に排液口164を設けて、一次室104の内容物を排液する。排液口164は必要に応じて主排液管または排液容器に接続できる。排液口164の流れは制御モジュール130が操作する排液弁166によって制御する。
【0072】
制御モジュール130については、調合液の保存期間が切れる時点で、排液弁166が自動的に開き、液体が残留している場合にはこれを一次室104から排液するように構成する。このように構成すると、使用者が効果の点で古すぎる調合液を不用意に使用する可能性がなくなる。
【0073】
さらに、本実施態様では、排液弁120も制御モジュール130によって操作する。このため、制御モジュール130によって充填弁114が開く前に排液弁120を確実に閉じることができ、液のこぼれ出しやあふれ出しの恐れを確実に抑制でき、また調合液を準備する前の充填時および滞留時に排液弁120を確実に閉じておくことができる。
【0074】
使用者は制御モジュール130に排液弁120を開く指示を出す好適なボタンまたは他の制御手段を使用して調合液を排液してもよく、あるいは排液弁120を手動で切り替えることによって排液してもよい。排液口118の流量が一定な場合には、排液口120が流れセンサーとして動作する。従って、制御モジュール130が排液弁120の開放時間を設定でき、所定量の調合液を排液できるか、あるいは開放時間を使用者が制御する場合には排液弁120を開いている時間を測定でき、あるいは排液弁120を手動で切り替える場合には排液する調合液の量を決定し、記録できる。この機能を得るためには、専用の流れセンサーまたは流れ制御装置(図示省略)も使用することができる。これらによって得られたデータを分析し、具体的な環境における洗浄や消毒、(新規なカプセルや他の試薬包装体の順番の自動的な設定などの)ストック管理や(洗浄実施中の変化を使用する調合液の液量変化によって検出できるなどの)監査目的に必要な調合液の容量を設定できる。
【0075】
図9に本発明の第7実施態様に係る装置100fを示す。この実施態様は
図6を参照して上記した第4実施態様と同様である(相違点のみを以下に記載する)。本実施態様では、試薬投入口106が受け取り領域140の下に反応室170を有するため、カプセル142からの第1部分および第2部分の放出時に、これらを反応室170が受け取る。反応室170は制限オリフィス172の形を取る排液口を有し、これを介して反応室170の調合液が制御された流量で一次室104に流入できる。この構成では、一次室104内で希釈される前に、試薬が反応室170内で混合し、かつ反応する。即ち、濃縮試薬の反応時間が短縮するため、調合時間が短縮し、希釈剤投入を同時に実施でき、反応時間に否定的な影響を与えることはない。
【0076】
図10に本発明の第8実施態様に係る装置100gを示す。この実施態様は
図9に示す第7実施態様の変形例である。この場合、反応室170の排液口を流れる流れは制御モジュール130が操作する排液弁174によって制御する。この構成では、反応室170内の濃縮試薬の滞留時間は制御モジュール130によって正確に制御できるため、異なる化学種に応じて調合時間を最適化できる。
なお、異なる実施態様において上述した特徴などは図示以外の形で併用することができる。例えば、
図9および
図10の反応室構成は本発明の任意の他の実施態様でも使用できる。
図6~
図10に示すカプセル構成は
図1および
図3の構成においても同様に使用でき、逆に言えば、小さな袋体、ボトルまたは包装体を使用する場合には
図6~
図10のカプセル構成は使用しなくてもよい。より広く言えば、各実施態様に示した各種特徴などは場合に応じて任意の組み合わせで使用できる。
【0077】
さらに別な変形例も可能である。例えば、制御モジュールによって制御可能な可変流量を有する流れ制限装置付き希釈剤投入口を設けることができ、場合に応じて高速または低速充填操作を可能にし、および/または希釈源供給圧力の相違を補償することを可能にできる。制御モジュールの制御を受ける自動化システムの場合、カプセルやその他の試薬包装体の調合液を適正な時期に自動的に投入できる。また、各試薬を個別リザーバーにより多量に格納でき、制御モジュールの制御の下、投入弁を使用して、必要な時に、各試薬のアリコートを一次室や反応室に投入できる。本装置を使用して、活性成分を試薬投入口に直接加えてから、一次室内で希釈を行う一部構成システムからなる調合液を調合することも本発明の範囲にある。
【0078】
本明細書に明記されていないさらに別な変形例なども、請求項に記載した本発明の範囲から逸脱せずに実施可能である。
【符号の説明】
【0079】
100 装置、希釈剤供給部
100a~100g 装置
102 タンク、一次室
104 一次室
106 試薬投入口
108 希釈剤投入口
110 矢印、希釈剤供給部、給水ライン
112 流れ制御装置
114 充填弁、希釈剤充填弁
116 流れ制限装置
118 放出口(排液口)
120 放出弁、排液弁、排液口
130 制御モジュール
132 インターフェース、使用者インターフェース
134 インジケーターデバイス
136 投入口圧力センサー
138 背圧センサー
140 受け取り領域
142 カプセル
144a 第1キャビティ
144b 第2キャビティ
146 箔シール
148 バーストピン
150 ピストン
152 蓋
154 試薬投入センサー
160 読み取り装置、データ読み取り装置
162 RFIDタグ、データ
162 タグ
164 排液口
166 排液弁
170 反応室
172 制限オリフィス
174 排液弁
201~209 工程
301~307 工程
【国際調査報告】