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特表2024-526579溢出を検出する物品、システム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】溢出を検出する物品、システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/168 20060101AFI20240711BHJP
   G01N 27/02 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
A61M5/168 512
G01N27/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579083
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 IB2022055901
(87)【国際公開番号】W WO2022269568
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】63/214,875
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(71)【出願人】
【識別番号】524062087
【氏名又は名称】ソルベンタム インテレクチュアル プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】マイヤーズ,ダウン ヴィー.
(72)【発明者】
【氏名】ケネディー,スティーブン エム.
(72)【発明者】
【氏名】ダイ,ミンファ
【テーマコード(参考)】
2G060
4C066
【Fターム(参考)】
2G060AA15
2G060AF03
2G060AF06
2G060AG03
2G060FA01
2G060HC13
2G060HC14
2G060HC15
2G060KA05
4C066AA07
4C066BB01
4C066CC01
4C066CC03
4C066DD02
4C066FF04
4C066QQ55
4C066QQ82
(57)【要約】
本開示は、組織中への溢出を検出するための物品を提供する。本物品は、第1の主表面と、反対側の第2の主表面と、第1の側部と、反対側の第2の側部とを有する本体を含む。本物品は、本体の第1の主表面上に配置された第1の電極を更に含む。第1の電極は、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素を含む。本物品は、本体の第1の主表面上に配置された第2の電極を更に含む。第2の電極は、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素を含む。第1の電極は、第2の電極に電気接続されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織中への溢出を検出するための物品であって、
第1の主表面、反対側の第2の主表面、第1の側部、及び反対側の第2の側部、を含む本体と、
前記本体の前記第1の主表面上に配置され、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素を備える、第1の電極と、
前記本体の前記第1の主表面上に配置され、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素を備える、第2の電極と、を備え、
前記第1の電極は、前記第2の電極に電気接続されている、物品。
【請求項2】
前記物品を前記組織に取り外し可能に取り付けるための手段を更に備える、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記第1の電極及び前記第2の電極のうちの少なくとも1つの、前記少なくとも1つの皮膚貫通微細要素は、角質層を完全に貫通し、表皮を部分的に貫通するように構成されている、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記第1の電極及び前記第2の電極の各々の前記少なくとも1つの皮膚貫通微細要素は導電性である、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記第1の電極及び前記第2の電極のうちの少なくとも1つの、前記少なくとも1つの皮膚貫通微細要素は、2つ以上の皮膚貫通微細要素を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記第1の電極及び前記第2の電極のうちの少なくとも1つの、前記少なくとも1つの皮膚貫通微細要素は、約175マイクロメートル~約1500マイクロメートルの範囲の少なくとも1つの寸法を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記第1の電極及び前記第2の電極のうちの少なくとも1つの、前記少なくとも1つの皮膚貫通微細要素は、尖端を更に備える、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記尖端は、第1の主表面から約50マイクロメートル~約1000マイクロメートルにわたって延びている、請求項7に記載の物品。
【請求項9】
複数の前記第1の電極を更に備える、請求項1に記載の物品。
【請求項10】
複数の前記第2の電極を更に備える、請求項1に記載の物品。
【請求項11】
前記本体の前記第1の主表面は、前記本体の前記第1の側部と前記第2の側部との間に注射部位が配置されるように、前記注射部位上に置かれるように構成されている、請求項1に記載の物品。
【請求項12】
前記第1の電極及び前記第2の電極のうちの少なくとも1つの、前記少なくとも1つの皮膚貫通微細要素は、前記組織と、前記第1の電極及び前記第2の電極の各々との間に、安定した電気的インターフェースを提供する、請求項1に記載の物品。
【請求項13】
前記第1の電極及び前記第2の電極のうちの少なくとも1つの、前記少なくとも1つの皮膚貫通微細要素は、銀被覆微粒子及び塩化銀被覆微粒子のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項14】
前記本体は、ポリマーフィルムを更に含む、請求項1に記載の物品。
【請求項15】
前記本体は、前記本体の前記第1の主表面の少なくとも一部分上に配置された接着剤層を更に含む、請求項1に記載の物品。
【請求項16】
前記接着剤層は、前記本体を皮膚に取り外し可能に取り付けるように構成されている、請求項15に記載の物品。
【請求項17】
前記本体の前記第2の主表面上に配置された固定デバイスを更に備え、前記固定デバイスは、静脈内カテーテルに取り外し可能に結合するように構成されている、請求項1に記載の物品。
【請求項18】
組織への溢出を検出するためのシステムであって、
第1の主表面、反対側の第2の主表面、第1の側部、及び反対側の第2の側部、を含む本体と、
前記本体の前記第1の主表面上に配置され、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素を備える、第1の電極と、
前記本体の前記第1の主表面上に配置され、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素を備える、第2の電極と、を備える物品であって、
前記第1の電極は、前記第2の電極に電気接続されている、物品と、
前記第1の電極及び前記第2の電極に電気接続されたコントローラであって、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に入力信号を供給し、
前記入力信号に応答する、前記第1の電極と前記第2の電極との間の出力信号を決定し、
前記出力信号及び前記入力信号に基づいて少なくとも1つの電気パラメータを決定し、
前記少なくとも1つの電気パラメータの変化に基づいて前記組織中への流体の溢出を検出するように構成されている、コントローラと、を備えるシステム。
【請求項19】
前記コントローラは、前記少なくとも1つの電気パラメータの前記変化に基づいて、前記流体の溢出体積及び溢出期間のうちの少なくとも1つを決定するように更に構成されている、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記少なくとも1つの電気パラメータは、インピーダンス大きさ、インピーダンス位相角、キャパシタンス、抵抗、及びリアクタンスのうちの1つ以上を含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
前記入力信号は、約0ヘルツ~約1ギガヘルツの周波数範囲を有する、請求項18に記載のシステム。
【請求項22】
約1メガヘルツの周波数を有する前記入力信号に対して、前記第1の電極及び前記第2の電極は、前記少なくとも1つの電気パラメータのパーセント変化を前記流体の前記溢出体積に相関させるデータセットを提供し、前記データセットへの最良の線形フィットが、前記流体の1ミリリットル当たり少なくとも約5%の勾配を有する、請求項19に記載のシステム。
【請求項23】
前記勾配は、前記流体の1ミリリットル当たり約6%~前記流体の1ミリリットル当たり約9%である、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記最良の線形フィットは、少なくとも約0.8の決定係数を有する、請求項22に記載のシステム。
【請求項25】
前記コントローラは、前記流体の溢出を示すタイムスタンプをメモリに記憶するように更に構成されている、請求項18に記載のシステム。
【請求項26】
前記コントローラは、前記物品に結合されている、請求項18に記載のシステム。
【請求項27】
前記コントローラは、前記物品から間隔を空けている、請求項18に記載のシステム。
【請求項28】
前記流体の溢出を検出すると、前記コントローラは、
アラートを生成すること、及び
前記流体の注入を自動的に停止させるための停止信号を注入システムに提供すること、のうちの少なくとも1つを実施するように更に構成されている、請求項18に記載のシステム。
【請求項29】
溢出を検出するための方法であって、前記方法は、
本体と、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素を備え前記本体の第1の主表面上に配置された第1の電極と、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素を備え前記本体の前記第1の主表面上に配置された第2の電極と、を備える物品を提供することであって、前記第2の電極は前記第1の電極から間隔を空けている、ことと、
前記本体の前記第1の主表面を注射部位上に配置することであって、前記注射部位は、前記第1の電極と前記第2の電極との間に置かれている、ことと、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に入力信号を供給することと、
前記入力信号に応答する、前記第1の電極と前記第2の電極との間の出力信号を決定することと、
前記出力信号及び前記入力信号に基づいて少なくとも1つの電気パラメータを決定することと、
前記少なくとも1つの電気パラメータの変化に基づいて組織中への溢出を決定することと、を含む方法。
【請求項30】
前記少なくとも1つの電気パラメータの前記変化に基づいて、流体の溢出体積及び溢出期間のうちの少なくとも1つを決定することを更に含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記入力信号は、約0ヘルツ~約1ギガヘルツの周波数範囲を有する、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
約1メガヘルツの周波数を有する前記入力信号に対して、前記少なくとも1つの電気パラメータのパーセント変化を前記流体の前記溢出体積に相関させるデータセットを決定することを更に含み、前記データセットへの最良の線形フィットが、前記流体の1ミリリットル当たり少なくとも約5%の勾配を有する、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記勾配は、前記流体の1ミリリットル当たり約6%~前記流体の1ミリリットル当たり約9%である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記最良の線形フィットは、少なくとも約0.8の決定係数を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記少なくとも1つの電気パラメータは、インピーダンス大きさ、インピーダンス位相角、キャパシタンス、抵抗、及びリアクタンスのうちの1つ以上を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
約1キロヘルツ~約10キロヘルツの範囲の前記入力信号の周波数について、前記インピーダンス大きさを決定することを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
約400キロヘルツ~約1メガヘルツの範囲の前記入力信号の周波数について、前記インピーダンス大きさを決定することを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
約20キロヘルツ~約50キロヘルツの範囲の前記入力信号の周波数について、前記インピーダンス位相角を決定することを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
約200キロヘルツ~約1メガヘルツの範囲の前記入力信号の周波数について、前記インピーダンス位相角を決定することを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
約1メガヘルツの前記入力信号の周波数に対する前記リアクタンスを決定することを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
溢出を検出した時点でアラートを生成することを更に含む、請求項29に記載の方法。
【請求項42】
前記本体の第2の主表面上に固定デバイスを提供することと、
静脈内カテーテルを前記固定デバイスに取り外し可能に結合することと、
を更に含む、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全般的には、溢出を検出する物品、システム及び方法に関し、具体的には、インピーダンス監視に基づいて溢出を検出する物品、システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溢出又は浸潤は、造影剤又は治療剤などの流体が、静脈自体ではなく静脈を取り囲む組織中に偶発的に浸出又は漏出することである。溢出は、例えば、脆弱な血管構造の断裂若しくは解離、弁疾患、不適切な針の穿刺、及び/又は患者の動きによって引き起こされ得る。
【発明の概要】
【0003】
一態様では、本開示は、組織中への溢出を検出するための物品を提供する。本物品は、本体を含む。本体は、第1の主表面と、反対側の第2の主表面と、第1の側部と、反対側の第2の側部とを含む。本物品は、本体の第1の主表面上に配置された第1の電極を更に含む。第1の電極は、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素を含む。本物品は、本体の第1の主表面上に配置された第2の電極を更に含む。第2の電極は、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素を含む。第1の電極は、第2の電極に電気接続されている。
【0004】
別の態様では、本開示は、組織中への溢出を検出するためのシステムを提供する。システムは、物品及びコントローラを含む。本物品は、本体を含む。本体は、第1の主表面と、反対側の第2の主表面と、第1の側部と、反対側の第2の側部とを含む。本物品は、本体の第1の主表面上に配置された第1の電極を更に含む。第1の電極は、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素を含む。本物品は、本体の第1の主表面上に配置された第2の電極を更に含む。第2の電極は、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素を含む。第1の電極は、第2の電極に電気接続されている。コントローラは、第1の電極及び第2の電極に電気接続されている。コントローラは、第1の電極と第2の電極との間に入力信号を供給するように構成されている。コントローラは、入力信号に応答する、第1の電極と第2の電極との間の出力信号を決定するように更に構成されている。コントローラは、出力信号及び入力信号に基づいて、少なくとも1つの電気パラメータを決定するように更に構成されている。コントローラは、少なくとも1つの電気パラメータの変化に基づいて、組織中への流体の溢出を検出するように更に構成されている。
【0005】
更に別の態様では、本開示は、溢出を検出する方法を提供する。本方法は、本体と、本体の第1の主表面上に配置された少なくとも1つの皮膚貫通微細要素を含む第1の電極と、本体の第1の主表面上に配置された少なくとも1つの皮膚貫通微細要素を含む第2の電極とを含む物品を提供することを含む。第2の電極は、第1の電極から間隔を空けている。本方法は、本体の第1の主表面を注射部位上に置くことを更に含む。注射部位は、第1の電極と第2の電極との間に配置されている。本方法は、第1の電極と第2の電極との間に入力信号を供給することを更に含む。本方法は、入力信号に応答する、第1の電極と第2の電極との間の出力信号を決定することを更に含む。本方法は、出力信号及び入力信号に基づいて少なくとも1つの電気パラメータを決定することを更に含む。本方法は、少なくとも1つの電気パラメータの変化に基づいて組織中への溢出を決定することを更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
以下の図と共に以下の「発明を実施するための形態」を検討することで、本明細書に開示する例示的実施形態を、より完全に理解することができる。図は、必ずしも縮尺通りに描かれているとは限らない。図面で使用されている同様の数字は同様の構成要素を示す。しかしながら、所与の図内で構成要素を示すための番号の使用は、同じ番号で示されている別の図内の構成要素を限定することを意図していないことが理解されよう。
図1A】従来のセンサパッチの概略底面図を表す。
図1B図1Aの従来のセンサパッチを使用して決定された、流体の溢出体積に対するインピーダンス大きさのパーセント変化を示すグラフを表す。
図2】本開示の一実施形態による、組織中への溢出を検出するための物品の側面断面図を表す。
図3A】本開示の別の実施形態による、組織中への溢出を検出するための物品の概略上面図を表す。
図3B図3Aの物品の概略側面断面図を表す。
図4】本開示の別の実施形態による、組織への溢出を検出するための物品の概略上面図を表す。
図5A】本開示の一実施形態による、組織中への溢出を検出するためのシステムの概略底面斜視図を表す。
図5B】本開示の別の実施形態による、組織内への溢出を検出するためのシステムの概略ブロック図を表す。
図5C】本開示の一実施形態による、時間に対する流体の溢出体積の変動を示すグラフを表す。
図6A】本開示の一実施形態による、流体の溢出体積に対する電気パラメータのパーセント変化を示すグラフを表す。
図6B】本開示の一実施形態による、流体の溢出体積に対する別の電気パラメータのパーセント変化を示すグラフを表す。
図6C】本開示の一実施形態による、流体の溢出体積に対する別の電気パラメータのパーセント変化を示すグラフを表す。
図7】本開示の一実施形態による、溢出を検出するための方法の様々なステップを示すフローチャートを表す。
図8A】一対の湿式電極についての、周波数に対するインピーダンス大きさの変動を示すグラフを表す。
図8B】一対の湿式電極についての、周波数に対するインピーダンス大きさのパーセント変化の変動を示すグラフを表す。
図8C】一対の湿式電極について、周波数に対するインピーダンス大きさの測定値のp値の変動を示すグラフを表す。
図9A】一対の湿式電極についての、周波数に対するインピーダンス位相角の変動を示すグラフを表す。
図9B】一対の湿式電極についての、周波数に対するインピーダンス位相角の変動を示すグラフを表す。
図9C】一対の湿式電極についての、周波数に対するインピーダンス位相角のパーセント変化の変動を示すグラフを表す。
図9D】一対の湿式電極についての、周波数に対するインピーダンス位相角の測定値のp値の変動を示すグラフを表す。
図10】一対の湿式電極について、流体の体積に対するインピーダンス大きさの平均パーセント変化の変動を示すグラフを表す。
図11A】一対の乾式電極についての、周波数に対するインピーダンス大きさの変動を示すグラフを表す。
図11B】一対の乾式電極についての、周波数に対するインピーダンス大きさの変動を示すグラフを表す。
図11C】一対の乾式電極についての、周波数に対するインピーダンス大きさのパーセント変化の変動を示すグラフを表す。
図11D】一対の乾式電極についての、周波数に対するインピーダンス大きさの測定値のp値の変動を示すグラフを表す。
図12A】一対の乾式電極についての、周波数に対するインピーダンス位相角の変動を示すグラフを表す。
図12B】一対の乾式電極についての、周波数に対するインピーダンス位相角の変動を示すグラフを表す。
図12C】一対の乾式電極についての、周波数に対するインピーダンス位相角のパーセント変化の変動を示すグラフを表す。
図12D】一対の乾式電極についての、周波数に対するインピーダンス位相角の測定値のp値の変動を示すグラフを表す。
図13】一対の乾式電極についての、流体の体積に対するインピーダンス大きさの平均パーセント変化の変動を示すグラフを表す。
図14】一対の乾式電極についての、流体の体積に対するリアクタンスの平均パーセント変化の変動を示すグラフを表す。
図15】一対の乾式電極について、流体の体積に対するキャパシタンスの平均パーセント変化の変動を示すグラフを表す。
図16】一対の湿式電極及び一対の乾式電極を使用して測定された電気特性のパーセント変化を比較するグラフを表す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の説明では、説明の一部を構成し、様々な実施形態が実例として示される、添付の図面が参照される。本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他の実施形態が想定され、実施され得ることを理解されたい。したがって、以下の発明を実施するための形態は、限定的な意味では解釈されない。
【0008】
本明細書で用いる場合、「A及びBのうちの少なくとも1つ」は、「Aのみ、Bのみ、又はA及びBの両方」を意味すると理解されるべきである。
【0009】
静脈内療法は、薬剤及び栄養素などの流体を静脈内に(すなわち、血管内に直接)送達するために、患者に対して実施され得る。静脈内療法は、静脈内カテーテルを使用して実施され得る。静脈内カテーテルは、物品(例えば、固定フィルム、包帯、テープ等)によって患者の注射部位に支持され得る又は貼り付けられ得る。
【0010】
場合によっては、静脈内カテーテルは、特に、脆弱な血管構造を有する患者(例えば、幼児及び高齢者)に対して、医師によって慎重かつ連続的に投与される必要があり得る。静脈外送達又は注射部位における組織中への流体の漏出が、初期挿入中の静脈内カテーテルの誤配置に起因して生じる場合がある。組織内への流体の静脈外送達は、静脈内療法中の静脈内カテーテルの移動に起因して生じる場合もある。流体の静脈外送達が、静脈炎、空気塞栓、血液量過多、感染等の様々な合併症をもたらす場合がある。
【0011】
したがって、医師は、注射部位の評価を定期的に実施する必要がある場合がある。評価の例は、注射部位の柔らかさ、暖かさ、乾燥状態、膨張などを検出して溢出を検出することを含んでもよい。換言すれば、注射部位の評価は、観察に基づいてもよく、主観的であってもよい、手動検査技術を含むことができる。したがって、評価は、溢出を検出するためには正確かつ高信頼性でない場合がある。場合によっては、評価は、有意な体積の流体が組織中に溢出した後にのみ溢出を判定することができる。
【0012】
更に、特定の場合には評価を頻繁に実施しなければならない場合があるので、評価は医師にとって負担となる場合がある。
【0013】
例えば、医師は、健康で意識のある患者の場合、4時間毎に注射部位の評価を実施することが必要な場合がある。別の例では、医師は、重病患者、失語症患者、不全失語症患者、構音障害患者、及び高リスク注射部位を有する患者の場合、1~2時間毎に注射部位の評価を実施することが必要な場合がある。別の例では、医師は、新生児患者及び小児患者の場合、1時間毎に注射部位の評価を実施することが必要な場合がある。更に別の例では、医師は、発疱剤及び血管収縮剤の投与について、5~10分毎に注射部位の評価を実施することが必要な場合がある。したがって、注射部位の評価は、多くの時間を要する場合があり、医師の作業負荷を増加させる場合がある。
【0014】
重篤な溢出が迅速に検出されない場合、疼痛、組織損傷、更には患者の死をもたらす場合がある。したがって、静脈内療法の過程において溢出の監視は不可欠であり得る。更に、溢出が検出された時点で、注射部位における組織損傷を評価し、流体の溢出体積に基づいて患者に適切な治療を提供するために、流体の溢出体積の定量化が必要な場合がある。
【0015】
ここで図面を参照すると、図1Aは、組織中への溢出を検出するための従来のセンサパッチ100の概略底面図を示す。従来のセンサパッチ100は、主表面104を含む本体102を含む。従来のセンサパッチ100は、主表面104上に配置された第1の湿式電極112を更に含む。従来のセンサパッチ100は、主表面104上に配置され第1の湿式電極112から間隔を空けた第2の湿式電極114を更に含む。従来のセンサパッチ100は、第1の湿式電極112及び第2の湿式電極114が皮膚に接触し、流体(例えば、薬剤)が投与されることになる静脈に隣接するように、患者の皮膚上に置くことができる。
【0016】
注射部位の近位にある患者の皮膚は、従来のセンサパッチ100の使用中に、皮膚上に好適なヒドロゲルを塗布することによって水和される必要があり得る。ヒドロゲルは、第1の湿式電極112及び第2の湿式電極114の各々を静脈の近位にある組織に電気的に結合することができる。本明細書で使用する場合、「組織」という用語は、静脈内療法中に流体が投与され得る静脈を取り囲む又は静脈の近傍にある体内組織を指す。
【0017】
所定の周波数を有する入力信号(例えば、交流電流)が、第1の湿式電極112と第2の湿式電極114との間に供給されてもよい。入力信号に応答して、第1の湿式電極112と第2の湿式電極114との間の出力信号を決定することができる。注射部位におけるインピーダンス大きさが、入力信号及び出力信号に基づいて決定され得る。
【0018】
静脈中に流体を投与する前に、注射部位におけるベースラインインピーダンス大きさが、入力信号及び出力信号に基づいて決定されてもよい。ベースラインインピーダンス大きさは、組織中への流体の溢出前の注射部位におけるインピーダンス大きさであってもよい。
【0019】
その後、流体が静脈中に投与されてもよい。場合によっては、溢出が生じる場合があり、流体が組織中に溢出する場合がある。組織中への流体の溢出は、注射部位におけるインピーダンス大きさをベースラインインピーダンス大きさから変化させる。従来のセンサパッチ100は、注射部位におけるインピーダンス大きさがベースラインインピーダンス大きさから変化したことに基づいて、流体が組織中に溢出したことを検出するために使用することができる。
【0020】
組織中への小体積の流体の溢出に起因して引き起こされる注射部位におけるインピーダンス大きさの変化に対する従来のセンサパッチ100の感度を決定するために実験を行った。実験では、入力信号は約100キロヘルツの周波数を有していた。
【0021】
実験を、4つの注射部位で実施した。4つの注射部位の各注射部位におけるベースラインインピーダンス大きさを決定した。続いて、溢出をシミュレートするために、2ミリリットル(mL)の流体を4つの注射部位の組織中に意図的に注射した。4つの注射部位におけるインピーダンス大きさの変化を、組織中に注射された流体の1mL毎に観察した。更に、対応するベースラインインピーダンス大きさからのインピーダンス大きさのパーセント変化を、流体の注射に起因するインピーダンス大きさの変化に基づいて決定した。
【0022】
図1Bは、流体の溢出体積に対するインピーダンス大きさのパーセント変化を示すグラフ150を表す。インピーダンス大きさのパーセント変化が横軸(Y軸)に沿って示され、流体の溢出体積が縦軸(X軸)に沿って示されている。
【0023】
図1A及び図1Bを参照すると、約100キロヘルツの周波数を有する入力信号に対して、第1の湿式電極112及び第2の湿式電極114は、インピーダンス大きさのパーセント変化を流体の溢出体積に相関させる(図1Bでは正方形で示す)データセットをもたらした。
【0024】
データセットに対する最良の線形フィットを線152で示す。線152で示すように、最良の線形フィットは、流体の1ミリリットル当たり約2.7%の勾配を有した。更に、線152で示すように、最良の線形フィットは、約0.75の決定係数を有した。
【0025】
最良の線形フィットは、小さい勾配(すなわち、約2.7%)及び低い決定係数(すなわち、約0.75)を有することが確認された。したがって、従来のセンサパッチ100は、組織中への小体積の流体の溢出に起因して引き起こされる、4つの注射部位におけるインピーダンス大きさの変化に対して、低い感度を有することが結論付けられた。
【0026】
従来のセンサパッチ100は、組織中への小体積の流体の溢出を確実に検出するためには使用されない場合がある。更に、従来のセンサパッチ100は、インピーダンス大きさの変化に対する感度が低いことに起因して、組織中への流体の溢出体積を定量化するのに好適ではない場合がある。
【0027】
従来のセンサパッチ100は、追加の欠点を有する場合がある。例えば、従来のセンサパッチ100の使用前に、皮膚の準備(すなわち、剃毛し、研磨剤で皮膚を擦ること)が必要な場合がある。更に、注射部位の近位にある患者の皮膚は、第1及び第2の湿式電極112、114の各々を組織に電気的に結合するために、好適なヒドロゲルによって水和される必要がある場合がある。したがって、従来のセンサパッチ100を使用して決定されるインピーダンス大きさは、組織の水和レベルに依存する場合がある。
【0028】
組織の水和は時間を要する場合があるので、従来のセンサパッチ100を使用して決定される初期の組織インピーダンス測定値が、組織が給湿されるにつれてドリフトする場合がある。更に、組織の水和レベルも時間の経過と共に変動する場合があるので、組織インピーダンス測定値は時間の経過と共にドリフトする場合がある。組織インピーダンス測定値のドリフトは、溢出を検出するためのアルゴリズムを複雑にする場合がある。組織インピーダンス測定値のドリフトはまた、組織インピーダンス測定値に不整合を導入する場合があり、したがって、従来のセンサパッチ100を使用すると、溢出の信頼できない検出をもたらす場合がある。
【0029】
更に、湿式電極(例えば、第1及び第2の湿式電極112、114)は、時間の経過と共に乾燥する場合がある。したがって、第1及び第2の湿式電極112、114は、ヒドロゲルによって提供される水和時間に至るまで、組織に電気的に結合されている場合がある。場合によっては、水和時間は、静脈内療法の過程よりも短い場合がある。
【0030】
更に、皮膚の角質層は、注射部位におけるインピーダンス大きさの小さな変化を覆い隠すかも知れない強いインピーダンスを呈する場合がある。したがって、従来のセンサパッチ100を使用して、注射部位におけるインピーダンス大きさの小さな変化を検出することができない場合がある。
【0031】
したがって、従来のセンサパッチ100は、注射部位におけるインピーダンス大きさの小さな変化に対して敏感でない場合がある。結果として、従来のセンサパッチ100は、組織中への小体積の流体の溢出を確実に検出するためには使用されない場合がある。更に、従来のセンサパッチ100は、組織中への流体の溢出体積を定量化するためには使用されない場合がある。
【0032】
本開示は、組織中への溢出を検出するための物品を提供する。本物品は、本体を含む。少年は、第1の主表面と、反対側の第2の主表面と、第1の側部と、反対側の第2の側部とを含む。本物品は、本体の第1の主表面上に配置された第1の電極を更に含む。第1の電極は、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素を含む。本物品は、本体の第1の主表面上に配置された第2の電極を更に含む。第2の電極は、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素を含む。第1の電極は、第2の電極に電気接続されている。
【0033】
本開示の物品は、組織中への小体積の流体の溢出を検出及び定量化するために使用できる。具体的には、第1及び第2の電極の皮膚貫通微細要素は、組織中への流体の溢出に起因して引き起こされる、注射部位におけるインピーダンスの小さな変化に対して、改善された感度をもたらすことができる。したがって、物品は、溢出のより迅速な検出及び組織中への流体の溢出体積の定量化を可能にすることができる。
【0034】
皮膚貫通微細要素は、角質層を貫通し、飛び越えることができる。したがって、従来のセンサパッチ100と比較して、物品の使用前の皮膚の準備(すなわち、剃毛し、研磨剤で皮膚を擦ること)の必要性が殆どない又は全くない場合がある。更に、皮膚の角質層は強いインピーダンスを呈するので、角質層を飛び越えることにより、溢出に起因して引き起こされる注射部位におけるインピーダンスの小さな変化に対して、改善された感度をもたらすことができる。
【0035】
皮膚貫通微細要素は、組織との安定した電気的インターフェースを更に提供することができる。第1及び第2の電極の各々と組織との間の電気的インターフェースは、組織の水和レベルに依存しない場合がある。したがって、本開示の物品を使用して、従来のセンサパッチ100と比較して、より長い時間幅にわたって溢出を検出することができる。
【0036】
場合によっては、本開示の物品を使用して、溢出を検出した時点で、医師に通知するためのアラート又はアラームを生成することができる。更に、本物品は、溢出に関する情報を監視システムなどの他のシステムと通信することができる。したがって、本物品は、医師が注射部位における組織損傷を評価し、患者に適切な治療を提供することを可能にすることができる。本物品を使用して、溢出を連続的に監視し、溢出を正確に検出することもできる。本物品はまた、医師が注射部位の評価を定期的に実施する必要がない場合があるので、医師の作業負荷を低減させることができる。
【0037】
図2は、本開示の一実施形態による、組織中への溢出を検出するための物品200の側面断面図を表す。本物品200は、少なくとも1つの電気パラメータ(例えば、インピーダンス大きさ、インピーダンス位相角、キャパシタンスなど)を監視することにより、組織中への溢出を検出するために使用できる。
【0038】
物品200は、本体202を含む。本体202は、第1の主表面204と、反対側の第2の主表面206と、第1の側部208と、反対側の第2の側部210とを含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、本体202はポリマーフィルムを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーフィルムとして、セルロースアセテートブチレート;セルロースアセテートプロピオネート;セルローストリアセテート;ポリメチルメタクリレートなどのポリ(メタ)アクリレート;ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートなどのポリエステル;ナフタレンジカルボン酸系のコポリマー又はブレンド;ポリエーテルスルホン;ポリウレタン;ポリカーボネート;ポリビニルクロライド;シンジオタクチックポリスチレン;環状オレフィンコポリマー;並びにキャスト及び二軸配向ポリプロピレンなどのポリエチレン及びポリプロピレンを含むポリオレフィン、などの1つ以上のポリマーを挙げることができる。いくつかの実施形態では、ポリマーフィルムは、単層、又はポリエチレンでコーティングされたポリエチレンテレフタレートなどの多層を含んでもよい。
【0040】
物品200は、第1の電極212及び第2の電極214を更に含む。第1の電極212は、第2の電極214に電気接続されている。
【0041】
第1の電極212は、本体202の第1の主表面204上に配置されている。図2に図示する実施形態では、第1の電極212は、本体202の第1の側部208の近位にある第1の主表面204上に配置されている。第1の電極212は、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素213を含む。第1の電極212の少なくとも1つの皮膚貫通微細要素213は、患者の皮膚を少なくとも部分的に貫通するように構成されたマイクロニードル又は同様の小さい尖った構造を含んでもよい。
【0042】
第2の電極214は、本体202の第1の主表面204上に配置されている。図2に図示する実施形態では、第2の電極214は、本体202の第2の側部210の近位にある第1の主表面204上に配置されている。換言すれば、図2に図示する実施形態では、第2の電極214は、第1の電極212から間隔を空けている。第2の電極214は、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素215を含む。第2の電極214の少なくとも1つの皮膚貫通微細要素215は、皮膚を貫通するように構成されたマイクロニードル又は同様の小さい尖った構造を含んでもよい。第1の電極212及び第2の電極214は、互換的に「乾式電極」と称することができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、第1の電極212及び第2の電極214の各々の少なくとも1つの皮膚貫通微細要素は導電性である。図2に図示する実施形態では、第1の電極212の少なくとも1つの皮膚貫通微細要素213は導電性である。更に、図2に図示する実施形態では、第2の電極214の少なくとも1つの皮膚貫通微細要素215は導電性である。
【0044】
いくつかの実施形態では、第1の電極212及び第2の電極214のうちの少なくとも1つの、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素は、銀被覆微粒子及び塩化銀被覆微粒子のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、第1の電極212の、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素213は、銀被覆微粒子又は塩化銀被覆微粒子であってもよい。更に、いくつかの実施形態では、第2の電極214の、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素215は、銀被覆微粒子又は塩化銀被覆微粒子であってもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、第1の電極212の、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素213は、銀被覆微粒子であってもよく、第2の電極214の、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素215は、塩化銀被覆微粒子であってもよい。銀及び塩化銀は、以下の可逆反応が起こることを可能にすることができ、したがって、少なくとも1つの電気パラメータを検出することを可能にすることができる。
【化1】
【0046】
いくつかの実施形態では、第1の電極212及び第2の電極214のうちの少なくとも1つの、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素は、尖端を更に含む。図2に図示する実施形態では、第1の電極212の、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素213は、尖端220を含む。更に、図2に図示する実施形態では、第2の電極214の、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素215は、尖端230を更に含む。少なくとも1つの皮膚貫通微細要素213の尖端220及び少なくとも1つの皮膚貫通微細要素215の尖端230は、皮膚の貫通を容易にし得る。
【0047】
図2に図示する実施形態では、第1の電極212の、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素213は、第1の主表面204と尖端220との間の距離Dを定める。いくつかの実施形態では、尖端220は、第1の主表面204から約50マイクロメートル~約1000マイクロメートルにわたって延びている。換言すれば、いくつかの実施形態では、距離Dは、約50マイクロメートル~約1000マイクロメートルである。いくつかの実施形態では、第2の電極214の少なくとも1つの皮膚貫通微細要素215の尖端230は、第1の主表面204から約50マイクロメートル~約1000マイクロメートルにわたって延びている。換言すれば、いくつかの実施形態では、第2の電極214の少なくとも1つの皮膚貫通微細要素215の尖端230は、第1の電極212の少なくとも1つの皮膚貫通微細要素213と同様の距離Dを定めることができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、第1の電極212及び第2の電極214のうちの少なくとも1つの、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素は、約175マイクロメートル~約1500マイクロメートルの範囲の少なくとも1つの寸法を有する。換言すれば、いくつかの実施形態では、第1の電極212及び第2の電極214のうちの少なくとも1つの、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素は、約175マイクロメートル~約1500マイクロメートルの範囲の長さ、幅、及び高さのうちの少なくとも1つを有する。図2に図示する実施形態では、第2の電極214の少なくとも1つの皮膚貫通微細要素215は、高さHを有する。更に、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素215の高さHは、約175マイクロメートル~約1500マイクロメートルである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素215の高さHは、約400マイクロメートルである。
【0049】
結果として、いくつかの実施形態では、第1の電極212及び第2の電極214のうちの少なくとも1つの、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素は、角質層を完全に貫通し、表皮を部分的に貫通するように構成されている。図2に図示する実施形態では、第1の電極212の少なくとも1つの皮膚貫通微細要素213及び第2の電極214の少なくとも1つの皮膚貫通微細要素215の各々は、角質層を完全に貫通し、表皮を部分的に貫通するように構成されている。場合によっては、角質層を完全に貫通し、表皮を部分的に貫通することにより、少なくとも1つの電気パラメータの変化の検出を改善させることができる。
【0050】
更に、いくつかの実施形態では、第1の電極212及び第2の電極214のうちの少なくとも1つの、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素は、組織と、第1の電極212及び第2の電極214の各々との間に、安定した電気的インターフェースを提供する。図2に図示する実施形態では、第1の電極212の少なくとも1つの皮膚貫通微細要素213及び第2の電極214の少なくとも1つの皮膚貫通微細要素215は、組織と、対応する第1及び第2の電極212、214との間に、安定した電気的インターフェースを提供する。
【0051】
安定した電気的インターフェースは、皮膚上へのヒドロゲルの塗布なしで、第1の電極212及び第2の電極214によって提供されてもよい。したがって、皮膚上へのヒドロゲルの塗布を必要とし得る電極(すなわち、湿式電極)とは対照的に、安定した電気的インターフェースは経時的に劣化しない場合がある。したがって、組織と、第1の電極212及び第2の電極214の各々との間の安定した電気的インターフェースにより、物品200を使用する静脈内療法の過程を通して、少なくとも1つの電気的特性の正確な値を確実に一貫して決定することを可能にできる。
【0052】
いくつかの実施形態では、本体202は、本体202の第1の主表面204の少なくとも一部分上に配置された接着剤層250を更に含む。いくつかの実施形態では、接着剤層250は、第1の主表面204の少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、接着剤層250の厚さTは、約150マイクロメートル~約200マイクロメートルの範囲にあってもよい。いくつかの他の実施形態では、接着剤層250の厚さTは、約200マイクロメートル~約1200マイクロメートルの範囲にあってもよい。いくつかの実施形態では、接着剤層250の厚さTは、不均一であってもよく、約150マイクロメートル~約1200マイクロメートルの間で変動してもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、接着剤層250は、本体202を皮膚に取り外し可能に取り付けるように構成されている。接着剤層250は、任意の医学的に許容できる接着剤を含んでもよい。接着剤層250は、例えば、アクリル接着剤、ゴム接着剤、高強度シリコーン接着剤、ポリウレタン接着剤などを含んでもよい。いくつかの実施形態では、接着剤層250は、感圧性接着剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、接着剤層250は、皮膚上での微生物活動を低減させるための抗菌剤を更に含んでもよい。
【0054】
図3A及び図3Bは、それぞれ、本開示の別の実施形態による、物品300の概略的な上面図及び側面断面図を示す。物品300は、図2の物品200と同様であり、同様の要素は同様の番号によって示される。しかしながら、物品300は、物品200と比較して、第1の電極212及び第2の電極214の異なる構成を有する。物品300のいくつかの要素は、例示を目的として、図3A及び図3Bには示されていない。
【0055】
図3A及び図3Bに図示する実施形態では、本体202は、略矩形形状を有する。しかしながら、本体202は、所望の用途属性に基づいて、湾曲、三角形、多角形、円形、楕円形等の任意の好適な形状を有してもよい。
【0056】
図3A及び図3Bでは、物品300は、患者の皮膚350上に置かれている。具体的には、図3A及び図3Bでは、物品300は、(図3A及び図3Bで円で示される)注射部位360において皮膚350上に置かれている。注射部位360は、流体(例えば、薬剤)が投与され得る静脈355の近位に又は真上にあってもよい。組織354が静脈355を取り囲んでいる。場合によっては、溢出が生じる場合があり、流体が静脈355から組織354中に溢出する場合がある。
【0057】
いくつかの実施形態では、第1の電極212及び第2の電極214のうちの少なくとも1つの、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素は、2つ以上の皮膚貫通微細要素を含む。換言すれば、いくつかの実施形態では、第1の電極212の少なくとも1つの皮膚貫通微細要素213は、皮膚350を少なくとも部分的に貫通する複数のマイクロニードル又は同様の小さい尖った構造を含んでもよい。更に、いくつかの実施形態では、第2の電極214の少なくとも1つの皮膚貫通微細要素215は、皮膚350を少なくとも部分的に貫通する複数のマイクロニードル又は同様の小さい尖った構造を含んでもよい。
【0058】
具体的には、図3A及び図3Bに図示する実施形態では、第1の電極212の少なくとも1つの皮膚貫通微細要素213は、2つ以上の皮膚貫通微細要素213を含む。更に、図3A及び図3Bに図示する実施形態では、第2の電極214の少なくとも1つの皮膚貫通微細要素215は、2つ以上の皮膚貫通微細要素215を含む。
【0059】
第1の電極212の2つ以上の皮膚貫通微細要素213及び第2の電極214の2つ以上の皮膚貫通微細要素215は、第1の電極212及び第2の電極214と組織354との電気的結合を改善させることができる。更に、第1の電極212の2つ以上の皮膚貫通微細要素213及び第2の電極214の2つ以上の皮膚貫通微細要素215は、組織354と第1の電極212及び第2の電極214の各々との間に安定した電気的インターフェースを提供することを容易にすることができる。
【0060】
上で論じたように、図3A及び図3Bでは、物品300は、注射部位360において皮膚350上に置かれている。具体的には、いくつかの実施形態では、本体202の第1の主表面204は、注射部位360が本体202の第1の側部208と第2の側部210との間に配置されるように、注射部位360上に置かれるように構成されている。更に、図3A及び図3Bに図示する実施形態では、本体202の第1の主表面204は、注射部位360が第1の電極212と第2の電極214との間に配置されるように、注射部位360上に置かれるように構成されている。したがって、図3A及び図3Bに図示する実施形態では、第1の電極212及び第2の電極214は、静脈355に隣接する。
【0061】
図3Bに示すように、皮膚350は、角質層351及び表皮352を含む。いくつかの実施形態では、第1の電極212及び第2の電極214のうちの少なくとも1つの、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素は、角質層351を完全に貫通し、表皮352を部分的に貫通するように構成されている。
【0062】
図3A及び図3Bに図示する実施形態では、第1の電極212の213の2つ以上の皮膚貫通微細要素は、角質層351を完全に貫通し、表皮352を部分的に貫通するように構成されている。更に、図3A及び図3Bに図示する実施形態では、第2の電極214の215の2つ以上の皮膚貫通微細要素は、角質層351を完全に貫通し、表皮352を部分的に貫通するように構成されている。場合によっては、角質層351を完全に貫通し、表皮352を部分的に貫通することにより、少なくとも1つの電気パラメータの変化に対する感度を改善させることができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、物品300は、物品300を組織354に取り外し可能に取り付けるための手段を更に含む。図3Bに図示する実施形態では、接着剤層250は、本体202を皮膚350に取り外し可能に取り付けるように構成されている。したがって、接着剤層250は、物品300を組織354に取り外し可能に取り付けることができる。換言すれば、いくつかの実施形態では、この手段は、物品300を組織354に取り外し可能に取り付けるための接着剤層250を含んでもよい。物品300を組織354に取り外し可能に取り付けるための手段は、VELCRO(登録商標)等のフックアンドループ材料、支持ベルト、支持ストラップ、接着テープ、包帯、医療用ドレープ、ガーゼロール、及び外科用テープを更に含んでもよいが、これらに限定されない。
【0064】
図3Bに示すように、静脈内カテーテル370のカニューレ372が、カニューレ372が静脈355に入るまで皮膚350を通して挿入されてもよい。静脈内カテーテル370を使用して、カニューレ372を通して静脈355中に流体を投与することができる。
【0065】
上述したように、場合によっては、流体が静脈355から組織354中に溢出する場合がある。流体が組織354中に溢出すると、注射部位360における少なくとも1つの電気パラメータが変化する。少なくとも1つの電気パラメータの変化は、物品300を使用して決定することができ、したがって溢出を検出するために使用することができる。
【0066】
図3Aに示すように、いくつかの実施形態では、物品300は、第1の電極212に電気接続された第1のリード線312と、第2の電極214に電気接続された第2のリード線314とを更に含む。第1及び第2のリード線312、314は、第1の電極212と第2の電極214との間の電気信号を供給し決定するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、第1及び第2のリード線312、314は電線を含んでもよい。電線は、銅、アルミニウム、銀などの任意の好適な導体を含んでもよい。いくつかの他の実施形態では、第1及び第2のリード線312、314は、本体202上に3D印刷、スクリーン印刷、蒸着、又は転写されることができる、銀インクなどの導電性インクを含んでもよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、コントローラ(図3A及び図3Bには図示せず)は、第1のリード線312によって第1の電極212に、第2のリード線314によって第2の電極214に電気接続されてもよい。コントローラは、第1の電極212に電気信号を供給し、第2の電極214から電気信号を受信するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、コントローラは、物品300の本体202の外部に配置されてもよい。いくつかの他の実施形態では、コントローラは本体202上に配置されてもよい。
【0068】
コントローラは、第1の電極に供給され第2の電極から受信される電気信号に基づいて、溢出時の少なくとも1つの電気パラメータの変化を決定してもよい。更に、コントローラは、少なくとも1つの電気パラメータの変化に基づいて溢出を検出してもよい。
【0069】
図4は、本開示の別の実施形態による、物品400の概略上面図を示す。物品400は、図3A及び図3Bの物品300と同様であり、同様の要素は同様の番号によって示される。しかしながら、物品400は、物品300と比較して、第1の電極212及び第2の電極214の異なる構成を有する。更に、物品400は、物品300と比較して追加の要素を含む。物品400のいくつかの要素は、例示を目的として、図4には示されていない。
【0070】
図4では、物品400は、(図4で円で示される)注射部位460において皮膚440上に置かれている。
【0071】
図4に図示する実施形態では、物品400は、複数の第1の電極212を含む。図4に図示する実施形態では、物品400は、複数の第2の電極214を更に含む。具体的には、図4に図示する実施形態では、複数の第1の電極212及び複数の第2の電極214は、電極アレイを形成する。電極アレイは、物品400を使用して、注射部位460の近位における溢出の空間的範囲を決定するために使用することができる。更に、電極アレイは、物品400を使用する異常値の決定を低減させ、したがって溢出の偽陽性検出を低減させることができる。
【0072】
図4に図示する実施形態では、物品400は、本体202の第2の主表面206上に配置された固定デバイス450を更に含む。いくつかの実施形態では、固定デバイス450は、接着剤によって第2の主表面206に接着されてもよい。いくつかの実施形態では、固定デバイス450は、物品400の本体202に一体化されていてもよい。
【0073】
いくつかの実施形態では、固定デバイス450は、静脈内カテーテル470に取り外し可能に結合するように構成されている。図4に図示する実施形態では、固定デバイス450は、静脈内カテーテル470に取り外し可能に結合するための、静脈内カテーテル470に対応する寸法を有する。しかしながら、固定デバイス450の寸法は、静脈内カテーテル470の異なるタイプに基づいて変動してもよい。更に、固定デバイス450は、静脈内カテーテル470を固定するための保持機構(図示せず)を含んでもよい。
【0074】
したがって、固定デバイス450は、静脈内カテーテル470を注射部位460において支持及び固定し、使用中の静脈内カテーテル470の動きを低減させることができる。具体的には、固定デバイス450は、使用中の静脈内カテーテル470のカニューレ472の動きを低減させることができる。場合によっては、固定デバイス450は、使用中の静脈内カテーテル470の移動に起因する溢出の発生を低減させることができる。
【0075】
図5Aは、本開示の一実施形態による、組織中への溢出を検出するためのシステム500の概略底面斜視図を表す。
【0076】
図5Aに図示する実施形態では、システム500は、物品520を含む。物品520は、図3A及び図3Bの物品300と同様であり、同様の要素は同様の数字で示される。しかしながら、物品520の本体202は、物品300と比較して異なる形状を有する。物品520のいくつかの要素は、例示を目的として、図5Aには示されていない。物品520は、本体202の第1の主表面204上に配置された第1の電極212と、本体202の第1の主表面204上に配置された第2の電極214とを含む。
【0077】
システム500は、第1の電極212及び第2の電極214に電気接続されたコントローラ502を更に含む。図5Aに図示する実施形態では、コントローラ502は、第1のリード線312によって第1の電極212に、第2のリード線314によって第2の電極214に電気接続されている。
【0078】
図5Aに示すように、いくつかの実施形態では、コントローラ502は物品520に結合されている。具体的には、いくつかの実施形態では、コントローラ502は、物品520の本体202に結合されている。図5Aに図示する実施形態では、コントローラ502は、本体202の第1の主表面204に結合されている。しかしながら、いくつかの実施形態では、コントローラ502は、本体202の第2の主表面206に結合されてもよい。いくつかの他の実施形態では、コントローラ502は、物品520から間隔を空けている。換言すれば、いくつかの他の実施形態では、コントローラ502は、物品520の外部に配置された外部コントローラであってもよい。
【0079】
図5Bは、本開示の一実施形態による、システム550の概略ブロック図を表す。システム550は、図5Aのシステム500と同様であり、同様の要素は同様の数字で示される。しかしながら、システム550は、システム500と比較して追加の要素を有する。
【0080】
図5Bを参照すると、コントローラ502は、第1の電極212と第2の電極214との間に入力信号504(例えば、交流電圧、直流電圧など)を供給するように構成されている。いくつかの実施形態では、入力信号504は、約0ヘルツ~約1ギガヘルツの範囲の周波数を有する。いくつかの実施形態では、入力信号504は、約1メガヘルツの周波数を有する。いくつかの実施形態では、コントローラ502は、(図5Aに示す)第1及び第2のリード線312、314を介して、第1の電極212と第2の電極214との間に入力信号504を供給するように構成されてもよい。
【0081】
コントローラ502は、入力信号504に応答する、第1の電極212と第2の電極214との間の出力信号506(例えば、交流電流、直流電流など)を決定するように更に構成されている。いくつかの実施形態では、コントローラ502は、(図5Aに示す)第1及び第2のリード線312、314を介して、第1の電極212と第2の電極214との間の出力信号506を決定するように構成されてもよい。
【0082】
コントローラ502は、出力信号506及び入力信号504に基づいて、少なくとも1つの電気パラメータを決定するように更に構成されている。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの電気パラメータは、インピーダンス大きさ、インピーダンス位相角、キャパシタンス、抵抗、及びリアクタンスのうちの1つ以上を含む。場合によっては、少なくとも1つの電気パラメータは、組織(例えば、図3Bに示す組織354)に関するものであってもよい。
【0083】
コントローラ502は、少なくとも1つの電気パラメータの変化に基づいて、組織中への流体の溢出を検出するように更に構成されている。例えば、場合によっては、流体は、イオン流体(すなわち、導電性流体)であってもよく、これは、溢出時に注射部位におけるインピーダンス大きさを低減させる場合がある。このような場合、コントローラ502は、注射部位におけるインピーダンス大きさの低減に基づいて溢出を検出することができる。いくつかの他の場合では、流体は、非イオン流体(すなわち、非導電性流体)であってもよく、これは、溢出時に注射部位におけるインピーダンス大きさを増加させる場合がある。このような場合、コントローラ502は、注射部位におけるインピーダンス大きさの増加に基づいて溢出を検出することができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、コントローラ502は、少なくとも1つの電気パラメータの変化に基づいて、流体の溢出体積及び溢出期間のうちの少なくとも1つを決定するように更に構成されている。コントローラ502は、少なくとも1つの電気パラメータの変化に基づいて溢出を検出し、流体の溢出体積を決定し、溢出期間を決定するための好適なアルゴリズムを利用してもよい。
【0085】
図5Bに図示する実施形態では、システム550は、コントローラ502に通信可能に結合されたメモリ508を更に含む。
【0086】
コントローラ502は、本明細書で説明する機能を実施するように構成された1つ以上のプロセッサを含んでもよい。コントローラ502は、1つ以上のプロセッサに加えて、例えば、1つ以上のプロセッサ、及び/又はプロセッサコア、及び/又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、及び/又は特定用途向け集積回路(ASIC)を処理及び/又は制御するための集積回路を含んでもよい。コントローラ502は、メモリ508にアクセスする(例えば、書き込み及び/又は読み取りする)ように構成されてもよく、このメモリは、任意の種類の揮発性メモリ及び/又は不揮発性メモリ、例えば、キャッシュメモリ、及び/又はバッファメモリ、及び/又はランダムアクセスメモリ(RAM)、及び/又は読み取り専用メモリ(ROM)、及び/又は光メモリ、及び/又は消去可能プログラム可能読み取り専用メモリ(EPROM)を含んでもよい。メモリ508は、本明細書で説明される機能を1つ以上のプロセッサに実施させることができる、コントローラ502により実行可能な様々なアルゴリズム及びコードを、記憶するように構成されてもよい。
【0087】
いくつかの実施形態では、コントローラ502は、流体の溢出を示すタイムスタンプ509をメモリ508に記憶するように更に構成されている。タイムスタンプ509は、組織中への流体の溢出の検出時間に関連する情報を含んでもよい。
【0088】
いくつかの実施形態では、流体の溢出を検出した時点で、コントローラ502は、アラートを生成すること、及び流体の注入を自動的に停止するための停止信号518を注入システム517に提供すること、のうちの少なくとも1つを実施するように更に構成されている。アラートは、例えば、音声アラート、視覚アラートなどを含んでもよい。いくつかの実施形態では、物品520は、コントローラ502によって生成された視覚アラートを視覚的に提供するための発光ダイオード(LED)(図示せず)を更に含んでもよい。一実施例では、LEDは、溢出を検出する前に緑色光を発し、溢出を検出した時点で赤色光を点滅させるように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、物品520は、コントローラ502によって生成された音声アラートを聴覚的に提供するためのスピーカ(図示せず)を更に含んでもよい。一実施例では、スピーカは、溢出を検出した時点でビープ音を出すように構成されてもよい。
【0089】
流体の溢出を検出した時点でコントローラ502によって生成されたアラートは、医師に溢出について通知することができる。したがって、医師は、静脈内療法を適時に停止し、長期にわたる溢出に起因して生じ得る潜在的な合併症を低減させることができる。
【0090】
図5Bに図示する実施形態では、システム550は、コントローラ502に通信可能に結合された通信モジュール510を更に含む。通信モジュール510は、コントローラ502と様々な他のシステムとの間の有線及び/又は無線通信を可能にすることができる。通信モジュール510は、コントローラ502と他のシステムとの間の通信のための任意の好適な通信プロトコル及び技術を使用してもよい。例えば、通信モジュール510は、Transmission Control Protocol/Internet Protocol(TCP/IP)、Bluetooth(登録商標)、WiFi、WiMax、セルラー技術、例えばLong Term Evolution(LTE)、Near-Field Communication(NFC)、及び/又はRF-IDプロトコルに関連付けられたFar-Field Circuitryを利用してもよい。
【0091】
図5Bに図示する実施形態では、システム550は、1つ以上の監視デバイス515を更に含む。更に、図5Bに図示する実施形態では、コントローラ502は、通信モジュール510を介して1つ以上の監視デバイス515に情報を送信するように構成されている。場合によっては、コントローラ502は、通信モジュール510を介して1つ以上の監視デバイス515から情報を受信してもよい。1つ以上の監視デバイスの例は、スマートフォン、タブレット、コンピュータ、ワイヤレスヘッドセットなどを含むことができる。いくつかの実施形態では、コントローラ502は、通信モジュール510を介して1つ以上の監視デバイス515に情報を連続的に通信するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の監視デバイス515は、ユーザインターフェースを介してコントローラ502から受信された情報を表すように構成されてもよい。
【0092】
図5Bに図示する実施形態では、システム550は、注入システム517を更に含む。注入システム517は、患者に流体を静脈内投与するように構成されてもよい。更に、図5Bに図示する実施形態では、コントローラ502は、通信モジュール510を介して注入システム517に情報及び信号を送信するように構成されている。
【0093】
図5Cは、本開示の一実施形態による、(図5Bに示す)1つ以上の監視デバイス515によって表示される情報を表す。図5Cに示すように、いくつかの実施形態では、1つ以上の監視デバイス515は、(図5Bに示す)コントローラ502から受信した情報を処理し、ディスプレイ上のグラフ590として図式的に表すように構成されている。そのような実施形態では、1つ以上の監視デバイス515は、コントローラ502から受信した情報を、時間軸に沿ったデータチャネルとして、陰極線オシロスコープ(CRO)、陰極線管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)などに連続的に表示することができる。
【0094】
グラフ590は、流体の溢出体積の変動を時間に対して示す。流体の溢出体積が横軸(Y軸)に沿って示され、時間が縦軸(X軸)に沿って示されている。
【0095】
図5B及び図5Cを参照すると、グラフ590は、コントローラ502から受信され1つ以上の監視デバイス515によってリアルタイムで表示される情報に対応する曲線592を含む。
【0096】
第1の時間t1において、1つ以上の監視デバイス515は、コントローラ502から情報を受信し始め、コントローラ502から受信した情報に対応する曲線592を表示する。
【0097】
第2の時間t2において、コントローラ502は、溢出を検出する。上で論じたように、いくつかの実施形態では、コントローラ502は、流体の溢出を示すタイムスタンプ509をメモリ508に記憶するように構成されている。この場合、タイムスタンプ509は、第2の時間t2を示すことができる。場合によっては、1つ以上の監視デバイス515は、溢出を検出した時点で(すなわち、第2の時間t2において)、コントローラ502によって生成されたアラートを受信し、医師に通知するためのアラームを生成するように構成されてもよい。アラームは、音声アラーム、視覚アラーム等を含んでもよい。
【0098】
第3の時間t3において、医師は、溢出のアラートを受けた後、静脈内療法を停止してもよい。上で論じたように、いくつかの実施形態では、流体の溢出を検出した時点で、コントローラ502は、流体の注入を自動的に停止するための停止信号518を注入システム517に提供するように更に構成されている。医師は、曲線592に基づいて、流体の溢出体積を特定することができる。図5Cに示すように、医師は、溢出体積が第3の時間t3において約体積V1であることを特定することができる。したがって、医師は、注射部位における組織損傷を評価し、体積V1に基づいて患者に適切な治療を提供することができる。
【0099】
更に、医師は、曲線592に基づいて、溢出期間を特定することができる。この場合、溢出期間は、第3の時間t3と第2の時間t2との間の期間(すなわち、t3-t2)である。
【0100】
図6A図6Cは、流体の溢出体積に対する少なくとも1つの電気パラメータのパーセント変化を示すグラフ610、620、630を表す。少なくとも1つの電気パラメータのパーセント変化が横軸(Y軸)に沿って示され、ミリリットル単位の流体の溢出体積が縦軸(X軸)に沿って示されている。
【0101】
図5B及び図6Aを参照すると、いくつかの実施形態では、約1メガヘルツの周波数を有する入力信号504に対して、第1の電極212及び第2の電極214は、少なくとも1つの電気パラメータのパーセント変化を流体の溢出体積に相関させるデータセット(図6Aでは正方形で示す)を提供する。
【0102】
グラフ610において、少なくとも1つの電気パラメータは、インピーダンス大きさである。具体的には、いくつかの実施形態では、約1メガヘルツの周波数を有する入力信号504に対して、第1の電極212及び第2の電極214は、インピーダンス大きさのパーセント変化を流体の溢出体積に相関させるデータセットを提供する。
【0103】
更に、グラフ610では、データセットに対する最良の線形フィットを線612で示す。いくつかの実施形態では、データセットに対する最良の線形フィットは、流体の単位体積当たり少なくとも約5%の勾配を有する。具体的には、データセットに対する最良の線形フィットは、流体の1ミリリットル当たり少なくとも約5%の勾配を有する。
【0104】
線612で示すように、データセットに対する最良の線形フィットは、流体の1ミリリットル当たり約6.2%の勾配を有する。更に、いくつかの実施形態では、最良の線形フィットは、少なくとも約0.8の決定係数を有する。いくつかの実施形態では、最良の線形フィットは、約0.9の決定係数を有する。線612で示すように、最良の線形フィットは、約0.91の決定係数を有する。
【0105】
図5B及び図6Bを参照すると、いくつかの実施形態では、約1メガヘルツの周波数を有する入力信号504に対して、第1の電極212及び第2の電極214は、少なくとも1つの電気パラメータのパーセント変化を流体の溢出体積に相関させるデータセット(図6Bでは正方形で示す)を提供する。
【0106】
グラフ620では、少なくとも1つの電気パラメータはリアクタンスである。具体的には、いくつかの実施形態では、約1メガヘルツの周波数を有する入力信号504に対して、第1の電極212及び第2の電極214は、リアクタンスのパーセント変化を流体の溢出体積に相関させるデータセットを提供する。
【0107】
更に、グラフ620では、データセットに対する最良の線形フィットを線622で示す。いくつかの実施形態では、データセットに対する最良の線形フィットは、流体の1ミリリットル当たり少なくとも約5%の勾配を有する。いくつかの実施形態では、勾配は、流体の1ミリリットル当たり約6%~流体の1ミリリットル当たり約9%である。線622で示すように、データセットに対する最良の線形フィットは、流体の1ミリリットル当たり約7.5%の勾配を有する。更に、いくつかの実施形態では、最良の線形フィットは、少なくとも約0.8の決定係数を有する。線622で示すように、最良の線形フィットは、約0.86の決定係数を有する。
【0108】
図5B及び図6Cを参照すると、いくつかの実施形態では、第1の電極212及び第2の電極214は、少なくとも1つの電気パラメータのパーセント変化を流体の溢出体積に相関させるデータセット(図6Cでは正方形で示す)を提供する。
【0109】
グラフ630では、少なくとも1つの電気パラメータはキャパシタンスである。具体的には、いくつかの実施形態では、第1の電極212及び第2の電極214は、キャパシタンスのパーセント変化を流体の溢出体積に相関させるデータセットを提供する。
【0110】
更に、グラフ630では、データセットに対する最良の線形フィットを線632で示す。線632で示すように、データセットに対する最良の線形フィットは、流体の1ミリリットル当たり約9%の勾配を有する。更に、線632で示すように、最良の線形フィットは、約0.81の決定係数を有する。
【0111】
第1及び第2の電極212、214は、(図1Aに示す)従来のセンサパッチ100と比較して、より大きい大きさの勾配(流体の1ミリリットル当たり約5%を上回る)及びより大きい決定係数(0.8を上回る)を提供する。したがって、第1及び第2の電極212、214を含む物品200、300、400、520(図2図5Aに示す)は、少なくとも1つの電気パラメータの変化に対する改善された感度を提供することができる。したがって、物品200、300、400、520は、溢出の検出を改善させることができる。更に、少なくとも1つの電気パラメータの変化に対する改善された感度は、物品200、300、400、520及びシステム500、550が、組織中に溢出した小体積の流体に起因する少なくとも1つの電気パラメータの小さな変化を確実に検出することを可能できる。
【0112】
図7は、本開示の一実施形態による、溢出を検出するための方法700を示す。方法700は、本開示のシステム500、550(それぞれ、図5A及び図5Bに示す)によって実施され得る。具体的には、いくつかの実施形態では、方法700に含まれるステップは、非一時的コンピュータ可読媒体、例えば(図5Bに示す)メモリ508に記憶された命令に基づいて、処理リソース、例えば(図5Bに示す)コントローラ502によって実行されてもよい。方法700について、図1図6Cを参照して説明する。方法700は、以下のステップを含む。
【0113】
ステップ710において、本方法700は、本体と、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素を含み本体の第1の主表面上に配置された第1の電極と、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素を含み本体の第1の主表面上に配置された第2の電極と、を含む物品を提供することを含む。第2の電極は、第1の電極から間隔を空けている。
【0114】
図2を参照すると、例えば、ステップ710において、本方法700は、本体202と、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素213を含み本体202の第1の主表面204上に配置された第1の電極212と、少なくとも1つの皮膚貫通微細要素215を含み本体202の第1の主表面204上に配置された第2の電極214と、を含む物品200を提供することを含んでもよい。第2の電極214は、第1の電極212から間隔を空けている。
【0115】
ステップ720において、方法700は、本体の第1の主表面を注射部位上に置くことを更に含む。注射部位は、第1の電極と第2の電極との間に配置されている。
【0116】
図3A及び図3Bを参照すると、例えば、ステップ720において、方法700は、本体202の第1の主表面204を注射部位360上に置くことを更に含んでもよい。注射部位360は、第1の電極212と第2の電極214との間に配置されている。
【0117】
ステップ730において、方法700は、第1の電極と第2の電極との間に入力信号を供給することを更に含む。図5Bを参照すると、例えば、ステップ730において、方法700は、第1の電極212及び第2の電極214との間に入力信号504を供給することを更に含んでもよい。いくつかの実施形態では、入力信号504は、約0ヘルツ~約1ギガヘルツの範囲の周波数を有する。
【0118】
ステップ740において、方法700は、入力信号に応答する、第1の電極と第2の電極との間の出力信号を決定することを更に含む。例えば、ステップ740において、方法700は、入力信号504に応答する、第1の電極212と第2の電極214との間の出力信号506を決定することを更に含んでもよい。
【0119】
ステップ750において、方法700は、出力信号及び入力信号に基づいて少なくとも1つの電気パラメータを決定することを更に含む。例えば、ステップ750において、方法700は、出力信号506及び入力信号504に基づいて少なくとも1つの電気パラメータを決定することを更に含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの電気パラメータは、インピーダンス大きさ、インピーダンス位相角、キャパシタンス、抵抗、及びリアクタンスのうちの1つ以上を含む。一例では、入力信号504(例えば、電圧正弦波の|v(t)|)及び出力信号506(例えば、電流正弦波の|i(t)|)の振幅を使用して、インピーダンス大きさ(Z=|v|/|i|)を計算することができる。別の例では、入力信号504(例えば、電圧正弦波の|v(t)|)と出力信号506(例えば、電流正弦波の|i(t)|)との間の位相差を使用して、インピーダンス位相角(φ=angle(v)-angle(i))を計算することができる。インピーダンス大きさ(|Z|)及びインピーダンス位相角(φ)がいったん決定されると、リアクタンス(X)及び抵抗(R)を、式Z=R+jXから計算することができ、式中、jは虚数であり、Zはインピーダンス大きさ(|Z|)及びインピーダンス位相角(φ)を含む複素数である。
【0120】
いくつかの実施形態では、方法700は、約1キロヘルツ~約10キロヘルツの範囲の入力信号504の周波数について、インピーダンス大きさを決定することを更に含む。いくつかの実施形態では、方法700は、約400キロヘルツ~約1メガヘルツの範囲の入力信号504の周波数について、インピーダンス大きさを決定することを更に含む。いくつかの実施形態では、方法700は、約1メガヘルツの入力信号504の周波数について、インピーダンス大きさを決定することを更に含んでもよい。
【0121】
いくつかの実施形態では、方法700は、約20キロヘルツ~約50キロヘルツの範囲の入力信号504の周波数について、インピーダンス位相角を決定することを更に含む。いくつかの実施形態では、方法700は、約200キロヘルツ~約1メガヘルツの範囲の入力信号504の周波数について、インピーダンス位相角を決定することを更に含む。いくつかの実施形態では、方法700は、約30キロヘルツの入力信号504の周波数について、インピーダンス位相角を決定することを更に含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、方法700は、約1メガヘルツの入力信号504の周波数について、リアクタンスを決定することを更に含む。
【0123】
ステップ760において、方法700は、少なくとも1つの電気パラメータの変化に基づいて組織中への溢出を決定することを更に含む。図3A及び図3Bを参照すると、例えば、ステップ760において、方法700は、少なくとも1つの電気パラメータの変化に基づいて組織354中への溢出を決定することを更に含んでもよい。
【0124】
いくつかの実施形態では、方法700は、溢出を検出した時点でアラートを生成することを更に含む。図5Bを参照すると、例えば、アラートは、コントローラ502によって生成されてもよい。
【0125】
いくつかの実施形態では、本方法700は、本体の第2の主表面上に固定デバイスを設けることを更に含む。いくつかの実施形態では、方法700は、静脈内カテーテルを固定デバイスに取り外し可能に結合させることを更に含む。図4を参照すると、例えば、方法700は、本体202の第2の主表面206上に固定デバイス450を設けることを更に含んでもよい。方法700は、静脈内カテーテル470を固定デバイス450に取り外し可能に結合させることを更に含んでもよい。
【0126】
いくつかの実施形態では、方法700は、少なくとも1つの電気パラメータの変化に基づいて、流体の溢出体積及び溢出期間のうちの少なくとも1つを決定することを更に含む。
【0127】
図5B及び図6Aを参照すると、いくつかの実施形態では、方法700は、約1メガヘルツの周波数を有する入力信号504に対して、少なくとも1つの電気パラメータのパーセント変化を流体の溢出体積に相関させるデータセット(図6Aでは正方形で示す)を決定することを更に含む。いくつかの実施形態では、データセットに対する最良の線形フィット(図6Aの線612によって示される)は、流体の1ミリリットル当たり少なくとも約5%の勾配を有する。いくつかの実施形態では、勾配は、流体の1ミリリットル当たり約6%~流体の1ミリリットル当たり約9%である。いくつかの実施形態では、最良の線形フィットは、少なくとも約0.8の決定係数を有する。
【0128】
実験結果
溢出を決定する際の電極の性能を決定するために、ブタで実験を実施した。具体的には、ブタの大腿静脈領域の4つの注射部位に対して実験を行った。
【0129】
第1の実験では、4つの注射部位のそれぞれに1対の湿式電極を置いて、湿式電極のそれぞれの対が4つの注射部位の対応する注射部位において大腿静脈に隣接するようにした。一対のRed Dot 2360電極(3M社から入手可能)を、第1の実験における一対の湿式電極として使用した。カテーテルをIV部位に挿入し、注射されたときに生理食塩水が静脈外に入り溢出を模倣するように位置合わせした。
【0130】
生理食塩水の注射に先立って、2つの湿式電極の間に入力信号(定振幅正弦波電圧)を励起した。入力信号の周波数を、約100ヘルツから約1メガヘルツまで変化させた。更に、出力信号(すなわち、得られた、2つの湿式電極を通る正弦波電流)を決定した。入力信号及び出力信号に基づいて、インピーダンス大きさ及びインピーダンス位相角を各注射部位において記録した。生理食塩水の注射前に各注射部位において記録されたインピーダンス大きさ及びインピーダンス位相角は、それぞれ、ベースラインインピーダンス大きさ及びベースラインインピーダンス位相角と称することができる。
【0131】
続いて、2ミリリットルの生理食塩水を、各注射部位における対応する組織中に静脈外注射した。ベースラインインピーダンス大きさからのインピーダンス大きさのシフト、及びベースラインインピーダンス位相角からのインピーダンス位相角のシフトを観察した。
【0132】
生理食塩水注射に起因する4つの注射部位における平均インピーダンス大きさのシフトが最大であり統計的に最も異なる(すなわち、ベースラインインピーダンス大きさから最も区別可能である)、入力信号の特定の周波数を特定した。4つの注射部位における平均インピーダンス大きさのシフトは、約10キロヘルツ~約100キロヘルツの範囲の入力信号の周波数において最大であることが判定された。
【0133】
図8Aは、湿式電極を使用して測定した周波数に対するインピーダンス大きさの変動を示すグラフ810を表す。具体的には、グラフ810は、約10キロヘルツ~約100キロヘルツの範囲の入力信号の周波数に対する、4つの注射部位における平均インピーダンス大きさの変動を示す。
【0134】
グラフ810は、生理食塩水が注射されなかったときの4つの注射部位における平均インピーダンス大きさに対応する第1の曲線812を含む。グラフ810は、2ミリリットルの生理食塩水が注射された後の4つの注射部位における平均インピーダンス大きさに対応する第2の曲線814を更に含む。第1の曲線812と第2の曲線814との間の平均インピーダンス大きさのパーセントシフトを決定した。
【0135】
図8Bは、周波数に対するインピーダンス大きさのパーセントシフトの変動を示すグラフ820を表す。グラフ820は、(図8Aに示す)第1の曲線812と第2の曲線814との間の平均インピーダンス大きさのパーセントシフトに対応する曲線822を含む。曲線822で示すように、第1の曲線812と第2の曲線814との間のパーセントシフトが、約100キロヘルツの周波数を有する入力信号に対して約5.3%であることが判定された。
【0136】
図8Cは、周波数に対するp値の変動を示すグラフ830を表す。グラフ830は、(図8Aに示す)第1の曲線812と第2の曲線814との間の統計的差異の程度を表すp値に対応する曲線832を含む。p値は、インピーダンス大きさのシフトが最も顕著かつ統計的に有意なところで最小化される場合がある。曲線832で示すように、p値は、約100キロヘルツの周波数を有する入力信号に対して約0.05未満であることが決定された。
【0137】
したがって、約100キロヘルツの周波数を有する入力信号は、統計的に有意なインピーダンス大きさのシフトを提供し、これを監視して溢出を検出することができる。
【0138】
更に、生理食塩水注射に起因する平均インピーダンス位相角のシフトが最大であり統計的に最も異なる(すなわち、ベースラインインピーダンス位相角から最も区別可能である)、入力信号の特定の周波数を特定した。4つの注射部位における平均インピーダンス位相角のシフトは、約100ヘルツ~約1キロヘルツの範囲の入力信号の周波数及び約40キロヘルツ~約70キロヘルツの範囲の入力信号の周波数において最大であることが判定された。
【0139】
図9A及び図9Bは、それぞれ、周波数に対するインピーダンス位相角の変動を示すグラフ910A、910Bを示す。具体的には、グラフ910Aは、約100ヘルツ~約1キロヘルツの範囲の入力信号の周波数に対する、4つの注射部位における平均インピーダンス位相角の変動を示す。更に、グラフ920Bは、約40キロヘルツ~約70キロヘルツの範囲の入力信号の周波数に対する、4つの注射部位における平均インピーダンス位相角の変動を示す。
【0140】
グラフ910A、910Bは、生理食塩水が注射されなかったときの4つの注射部位における平均インピーダンス位相角に対応する第1の曲線912を含む。グラフ910A、910Bは、2ミリリットルの生理食塩水が注射された後の4つの注射部位における平均インピーダンス位相角に対応する第2の曲線914を更に含む。第1の曲線912と第2の曲線914との間の平均インピーダンス位相角のパーセントシフトを決定した。
【0141】
図9Cは、周波数に対するインピーダンス位相角のパーセントシフトの変動を示すグラフ920を表す。グラフ920は、(図9A及び図9Bに示す)第1の曲線912と第2の曲線914との間の平均インピーダンス位相角のパーセントシフトに対応する曲線922を含む。曲線922で示すように、約200ヘルツの周波数を有する入力信号に対して、第1の曲線912と第2の曲線914との間の第1のパーセントシフトが約-2.7%であり、約40キロヘルツの周波数を有する入力信号に対して、第1の曲線912と第2の曲線914との間の第2のパーセントシフトが約-2.2%であることが判定された。
【0142】
図9Dは、周波数に対するp値の変動を示すグラフ930を表す。グラフ930は、(図9A及び図9Bに示す)第1の曲線912と第2の曲線914との間の統計的差異の程度を表すp値に対応する曲線932を含む。p値は、インピーダンス位相角シフトが最も顕著かつ統計的に有意なところで最小化される場合がある。曲線932で示されるように、p値は0.05未満であり、入力信号は約200ヘルツ及び約40キロヘルツの周波数を有することが判定された。
【0143】
2ミリリットルの生理食塩水に起因する平均インピーダンス位相角の最大パーセントシフトが、平均インピーダンス大きさの最大パーセントシフト未満である(-2.7%を5.3%と比較して)ことが確認された。したがって、湿式電極は、4つの注射部位におけるインピーダンス位相角のシフトが、インピーダンス大きさのシフトと比較して、より低い感度を有すると結論付けられた。
【0144】
第2の実験では、2ミリリットルの生理食塩水を1ミリリットルずつ、各注射部位における組織中に静脈外注射した。第2の実験では、一対のRed Dot 2360電極を一対の湿式電極として使用した。第2の実験では、入力信号の周波数を100キロヘルツに設定した(統計的に最も有意なインピーダンス大きさのシフトが得られたため)。各注射部位におけるインピーダンス大きさを、1ミリリットルの生理食塩水を注射した後、及び2ミリリットルの生理食塩水を注射した後に記録した。更に、各注射部位におけるインピーダンス大きさの、ベースラインインピーダンス大きさからのシフトに基づいて、パーセントシフトを計算した。各注射部位において記録されたインピーダンス大きさ、及び計算されたパーセントシフトを、以下の表1に示す。
【0145】
【表1】
【0146】
表1を参照すると、4つ全ての注射部位にわたって、より多くの生理食塩水が一様に静脈外注射されるにつれて、100キロヘルツでのインピーダンス大きさの値が単調に減少した。2mLの生理食塩水の注射により生じる、100キロヘルツでのインピーダンス大きさの、バスラインインピーダンス大きさからのシフトは、最小で1.23%(部位1、2mL)、最大で8.55%(部位3、2mL)であった。次いで、注射された生理食塩水の体積に対する、4つの注射部位におけるインピーダンス大きさの平均パーセントシフトを計算した。
【0147】
図10は、注射された生理食塩水の体積に対する、4つの注射部位におけるインピーダンス大きさの平均パーセントシフトの変動を示すグラフ1000を表す。
【0148】
グラフ1000は、表1から導出した、注射された生理食塩水の体積に対する、4つの注射部位のインピーダンス大きさの平均パーセントシフトを示す曲線1002を含む。曲線1002で示すように、1ミリリットルの生理食塩水が注射されたときの4つの注射部位のインピーダンス大きさの平均パーセントシフトは約3%であった。更に、曲線1002で示すように、2ミリリットルの生理食塩水が注射されたときの4つの注射部位のインピーダンス大きさの平均パーセントシフトは約5.2%であった。
【0149】
4つの注射部位におけるインピーダンス大きさの平均パーセントシフトは小さいことが確認された。したがって、湿式電極を使用して、1ミリリットルの生理食塩水と2ミリリットルの生理食塩水とを確実に区別することができないと結論付けられた。
【0150】
第3の実験では、4つの注射部位のそれぞれに1対の乾式電極を置いて、乾式電極のそれぞれの対が4つの注射部位の対応する注射部位において大腿静脈に隣接するようにした。本開示の第1及び第2の電極212、214を、第3の実験における一対の乾式電極として使用した。
【0151】
生理食塩水の注射に先立ち、乾式電極間に入力信号(定振幅電圧正弦波)を供給した。入力信号の周波数を、約100ヘルツから約1メガヘルツまで変化させた。更に、出力信号(すなわち、一対の乾式電極を通って流れる正弦波電流)を決定した。入力信号及び出力信号に基づいて、インピーダンス大きさ及びインピーダンス位相角を各注射部位において記録した。生理食塩水の注射前の各注射部位におけるインピーダンス大きさ及びインピーダンス位相角は、それぞれ、ベースラインインピーダンス大きさ及びベースラインインピーダンス位相角と称することができる。
【0152】
続いて、2ミリリットルの生理食塩水を、各注射部位における対応する組織中に静脈外注射した。ベースラインインピーダンス大きさからのインピーダンス大きさのシフト、及びベースラインインピーダンス位相角からのインピーダンス位相角のシフトを観察した。
【0153】
生理食塩水の注射に起因する平均インピーダンス大きさのシフトが最大であり統計的に最も異なる(すなわち、ベースラインインピーダンス大きさから最も区別可能である)、入力信号の特定の周波数を特定した。4つの注射部位における平均インピーダンス大きさのシフトは、約1キロヘルツ~約10キロヘルツの範囲の入力信号の周波数及び約400キロヘルツ~約1メガヘルツの範囲の入力信号の周波数において最大であることが判定された。
【0154】
図11A及び図11Bは、乾式電極を使用して測定された、周波数に対するインピーダンス大きさの変動を示すグラフ1110A、1110Bを表す。具体的には、グラフ1110Aは、約1キロヘルツ~約10キロヘルツの範囲の入力信号の周波数に対する4つの注射部位における平均インピーダンス大きさの変動を示し、グラフ1110Bは、約400キロヘルツ~約1メガヘルツの範囲の入力信号の周波数に対する4つの注射部位における平均インピーダンス大きさを示す。
【0155】
グラフ1110A、1110Bは、生理食塩水が注射されなかったときの4つの注射部位において記録された平均インピーダンス大きさに対応する第1の曲線1112を含む。グラフ1110A、1110Bは、2ミリリットルの生理食塩水が注射された後の4つの注射部位における平均インピーダンス大きさに対応する第2の曲線1114を更に含む。第1の曲線1112と第2の曲線1114との間の平均インピーダンス大きさのパーセントシフトを決定した。
【0156】
図11Cは、周波数に対するインピーダンス大きさのパーセントシフトの変動を示すグラフ1120を表す。グラフ1120は、(図11A及び図11Bに示す)第1の曲線1112と第2の曲線1114との間の平均インピーダンス大きさのパーセントシフトに対応する曲線1122を含む。曲線1122で示すように、約3キロヘルツの周波数を有する入力信号に対して、第1の曲線1112と第2の曲線1114との間の第1のパーセントシフトが約20.9%であり、約10キロヘルツの周波数を有する入力信号に対して、第1の曲線1112と第2の曲線1114との間の第2のパーセントシフトが約23.5%であり、第1の曲線1112と第2の曲線1114との間の第3のパーセントシフトが1メガヘルツにおいて約13.6%であることが判定された。
【0157】
図11Dは、周波数に対するp値の変動を示すグラフ1130を表す。グラフ1130は、(図11A及び図11Bに示す)第1の曲線1112と第2の曲線1114との間の統計的差異の程度を表すp値に対応する曲線1132を含む。p値は、インピーダンス大きさのシフトが最も顕著かつ統計的に有意なところで最小化される場合がある。曲線1132で示すように、p値は、約3キロヘルツ及び約1メガヘルツの周波数を有する入力信号について0.05未満であることが判定された。
【0158】
したがって、約1メガヘルツの周波数を有する入力信号は、4つの注射部位において統計的に有意なインピーダンス大きさのシフトをもたらし、これを監視して、溢出を検出し、生理食塩水の溢出体積を決定することができる。
【0159】
更に、4つの注射部位における生理食塩水の注射に起因する平均インピーダンス位相角のシフトが最大であり統計的に最も異なる(すなわち、ベースラインインピーダンス位相角から最も区別可能である)、入力信号の特定の周波数を特定した。4つの注射部位における平均インピーダンス位相角のシフトは、約20キロヘルツ~約50キロヘルツの範囲の入力信号の周波数及び約200キロヘルツ~約1メガヘルツの範囲の入力信号の周波数において最大であることが判定された。
【0160】
図12A及び図12Bは、乾式電極を使用して測定された、周波数に対するインピーダンス位相角の変動を示すグラフ1210A、1210Bを表す。具体的には、グラフ1210Aは、約20キロヘルツ~約50キロヘルツの範囲の入力信号の周波数に対する4つの注射部位における平均位相角を示し、グラフ1210Bは、約200キロヘルツ~約1メガヘルツの範囲の入力信号の周波数に対する4つの注射部位における平均インピーダンス位相角を示す。
【0161】
グラフ1210A、1210Bは、生理食塩水が注射されなかったときの4つの注射部位において記録された平均インピーダンス大きさに対応する第1の曲線1212を含む。グラフ1210A、1210Bは、2ミリリットルの生理食塩水が注射された後の4つの注射部位における平均インピーダンス大きさに対応する第2の曲線1214を更に含む。第1の曲線1212と第2の曲線1214との間の平均インピーダンス位相角のパーセントシフトを決定した。
【0162】
図12Cは、周波数に対するインピーダンス位相角のパーセントシフトの変動を示すグラフ1220を表す。グラフ1220は、(図12A及び図12Bに示す)第1の曲線1212と第2の曲線1214との間の平均インピーダンス位相角のパーセントシフトに対応する曲線1222を含む。曲線1222で示すように、約30キロヘルツの周波数を有する入力信号に対して、第1の曲線1212と第2の曲線1214との間の第1のパーセントシフトが約2.5%であり、約1メガヘルツの周波数を有する入力信号に対して、第1の曲線1212と第2の曲線1214との間の第2のパーセントシフトが約6.4%であることが判定された。
【0163】
図12Dは、周波数に対するp値の変動を示すグラフ1230を表す。グラフ1230は、(図12A及び図12Bに示す)第1の曲線1212と第2の曲線1214との間の統計的差異の程度を表すp値に対応する曲線1232を含む。p値は、インピーダンス位相角シフトが最も顕著かつ統計的に有意なところで最小化される場合がある。曲線1232で示すように、p値は、約30キロヘルツの周波数を有する入力信号に対して約0.05未満であることが判定された。
【0164】
したがって、約30キロヘルツの周波数を有する入力信号は、統計的に有意なインピーダンス位相角のシフトをもたらし、乾式電極を使用してこれを監視して、溢出を検出し、生理食塩水の溢出体積を決定することができる。
【0165】
第4の実験では、2ミリリットルの生理食塩水を1ミリリットルずつ、各注射部位における組織中に静脈外注射した。本開示の第1及び第2の電極212、214を、第4の実験における一対の乾式電極として使用した。第4の実験では、入力信号の周波数を1メガヘルツに設定した(統計的に最も有意なインピーダンス大きさのシフトが得られたため)。各注射部位におけるインピーダンス大きさを、1ミリリットルの生理食塩水を注射した後、及び2ミリリットルの生理食塩水を注射した後に記録した。更に、各注射部位におけるインピーダンス大きさの、ベースラインインピーダンス大きさからのシフトに基づいて、パーセントシフトを計算した。各注射部位において記録されたインピーダンス大きさ及び計算されたパーセントシフトを以下の表2に示す。
【0166】
【表2】
【0167】
表2を参照すると、4つ全ての注射部位にわたって、より多くの生理食塩水が一様に静脈外注射されるにつれて、1メガヘルツでのインピーダンス大きさの値が単調に減少した。インピーダンス大きさにおけるこれら変化は、ベースラインインピーダンス大きさ(部位3、2mL)からの実質的なシフト(約20%)を表す。次いで、注射された生理食塩水の体積に対する、4つの注射部位におけるインピーダンス大きさの平均パーセントシフトを計算した。
【0168】
図13は、体積に対するインピーダンス大きさのパーセントシフトの変動を示すグラフ1300を表す。
【0169】
グラフ1300は、上記で提供された表2から導出した、注射された生理食塩水の体積に対する、インピーダンス大きさの平均パーセントシフトを示す曲線1302を含む。曲線1302で示すように、1ミリリットルの生理食塩水が注射されたときの4つの注射部位のインピーダンス大きさの平均パーセントシフトは約4.5%であった。更に、曲線1302で示すように、2ミリリットルの生理食塩水が注射されたときの4つの注射部位のインピーダンス大きさの平均パーセントシフトは約13.4%であった。
【0170】
とりわけ、これらシフトは互いに統計的に極めて区別可能であり、1mLの注射から生じるシフトが、p=0.0016をもたらし、追加の1mLの注射から生じるシフト(すなわち、静脈外注射が1mLの場合と2mLの場合との差)が、p=0.011をもたらした。異なる体積の静脈外注射間の一様な単調性及び強い統計的区別可能性のこの組み合わせは、監視中に浸潤体積を定量化するための有望な方法を提供し、これは臨床上の有益な測定基準となり得る。
【0171】
4つの注射部位におけるインピーダンス大きさの平均パーセントシフトは湿式電極よりも遙かに高いことが確認された。したがって、乾式電極を使用して、1ミリリットルの生理食塩水と2ミリリットルの生理食塩水とを確実に区別することができると結論付けられた。
【0172】
表2から明らかなように、各注射部位におけるインピーダンス大きさのシフトは、約1メガヘルツの入力信号の周波数において、静脈外注射された生理食塩水の量の増加と共に単調に増加した。インピーダンス位相角も注射体積の増加と共に単調に増加することが更に確認された。したがって、複素インピーダンス(すなわち、インピーダンスの実数(抵抗)成分及び虚数(リアクタンス)成分の両方)を検査することにより、溢出時に特に強く統計的に有意なシフトをもたらすことができると仮定した。
【0173】
第5の実験では、乾式電極を使用して、4つの注射部位における抵抗及びリアクタンスが決定された。本開示の第1及び第2の電極212、214を、第5の実験における一対の乾式電極として使用した。第5の実験では、入力信号の周波数を1メガヘルツに設定した。各注射部位における抵抗及びリアクタンスを、1ミリリットルの生理食塩水を注射した後、及び2ミリリットルの生理食塩水を注射した後に記録した。更に、各注射部位におけるリアクタンスのシフトに基づいて、パーセントシフトを計算した。各注射部位において記録された抵抗及びリアクタンス、並びに計算されたパーセントシフトを以下の表3に提供する。
【0174】
【表3】
【0175】
表3を参照すると、1メガヘルツにおいて、リアクタンス値は、4つの注射部位について、電気リアクタンスのより小さい負の値に向かって一様に移動した。4つの注射部位におけるリアクタンスのシフトは強く(5%~26%)、静脈外生理食塩水注射の量の増加と共に単調に増加した。
【0176】
図14は、体積に対するリアクタンスのパーセントシフトの変動を示すグラフ1400を表す。
【0177】
グラフ1400は、上記で提供された表3から導出した、注射された生理食塩水の体積に対する、リアクタンスの平均パーセントシフトを示す曲線1402を含む。曲線1402で示すように、1ミリリットルの生理食塩水が注射されたときの4つの注射部位のリアクタンスの平均パーセントシフトは約5.2%であった。更に、曲線1402で示すように、2ミリリットルの生理食塩水が注射されたときの4つの注射部位のインピーダンス大きさの平均パーセントシフトは約16.2%であった。
【0178】
4つの注射部位における組織のリアクタンスのシフトは、統計的に互いに区別可能であり、以下のp値を有した:
●生理食塩水なし対1mL生理食塩水:p=0.00087;
●生理食塩水なし対2mL生理食塩水:p=0.0095;及び
●1mL生理食塩水対2mL生理食塩水:p=0.024。
【0179】
したがって、乾式電極を使用した、1メガヘルツでの注射部位におけるリアクタンスの測定は、溢出を高い感度で検出することができ、時間に対して、組織中に溢出した流体の体積を定量化するために使用することができると結論付けられた。乾式電極を使用する場合、小体積の生理食塩水が静脈外注射されたとき、1メガヘルツで測定された4つの注射部位におけるリアクタンスが、強力な、統計的に有意な、単調に増加するシフトをもたらした。
【0180】
負の位相角(図12A及び図12Bのグラフ1210A及び1210Bをそれぞれ参照)、及び負のリアクタンス値(表3を参照)は、4つの注射部位が電気的な容量特性を呈することを示している。異なる生理食塩水体積の注射に起因するリアクタンス値の負のシフトが、以下の式によって与えられるようにキャパシタンスのシフトに直接対応した。
【数1】
【0181】
ここで、CIVは注射部位におけるキャパシタンスであり、XIVは注射部位におけるリアクタンスであり、fは入力信号の周波数である。
【0182】
第6の実験では、キャパシタンスを4つの注射部位において計算した。本開示の第1及び第2の電極212、214を、第6の実験における一対の乾式電極として使用した。4つの注射部位について、上で提供された関係を使用して、生理食塩水が静脈外注射されない場合、1mLの生理食塩水、及び2mLの生理食塩水が静脈外注射された場合に、4つの注射部位におけるキャパシタンスを計算した。更に、各注射部位におけるキャパシタンスのシフトに基づいてパーセントシフトを計算した。計算されたキャパシタンス及び4つの注射部位において計算されたパーセントシフトを以下の表4に示す。
【0183】
【表4】
【0184】
表4を参照すると、キャパシタンスは、4つの注射部位の全てにわたって一様に単調増加し、ベースラインからのパーセンテージ値が比較的強いシフトを表し、最大で36%の値に達した(表4の部位2)。
【0185】
図15は、体積に対するキャパシタンスのパーセントシフトの変動を示すグラフ1500を表す。
【0186】
グラフ1500は、上記で提供された表4から導出した、注射された生理食塩水の体積に対する、4つの注射部位におけるキャパシタンスの平均パーセントシフトを示す曲線1502を含む。曲線1502で示すように、1ミリリットルの生理食塩水が注射されたときの4つの注射部位のキャパシタンスの平均パーセントシフトは約5.5%であった。更に、曲線1302で示すように、2ミリリットルの生理食塩水が注射されたときの4つの注射部位のインピーダンス大きさの平均パーセントシフトは約20%であった。
【0187】
1mLの静脈外生理食塩水の存在は、「生理食塩水なし」条件から顕著に区別可能であり、0.0009のp値を有した。更に、静脈外注射の1mLと2mLとが、0.035のp値を有して区別可能であった。したがって、乾式電極を使用した、注射部位におけるキャパシタンスの測定は、溢出を高い感度で検出することができ、時間に対して、組織中に溢出した流体の体積を定量化するために使用することができると結論付けられた。乾式電極を使用する場合、小体積の生理食塩水が静脈外注射されたとき、4つの注射部位におけるキャパシタンスが、強力な、統計的に有意な、単調に増加するシフトをもたらした。
【0188】
図16は、一対の湿式電極及び一対の乾式電極を使用して測定された電気特性のパーセント変化を示すグラフ1600を表す。
【0189】
グラフ1600によって示されるように、湿式電極は、インピーダンス大きさにおいて控え目なシフトをもたらした。更に、図9Cのグラフ920によって示されるように、湿式電極は、インピーダンス位相角において弱いシフトをもたらした。湿式電極によってもたらされる感度の欠如は、皮膚の最上層(すなわち、角質層)によって提示される大きなインピーダンスがインピーダンス測定を支配することに起因すると考えられた。これは、4つの注射部位におけるインピーダンスの小さな変化を検出することを困難にした。
【0190】
加えて、乾式電極が、インピーダンス大きさ及び位相角の両方において大きなシフトを検出するので、これは、複素インピーダンス(すなわち、リアクタンス及びキャパシタンス)に関連する4つの注射部位の電気的特性を測定する場合に、更に大きなシフトを観察することを可能にした。小体積の静脈外生理食塩水注射から生じる、電気的リアクタンス及びキャパシタンスに関するシフトが、インピーダンス大きさに関連するシフトよりも顕著であることが観察された。乾式電極を使用して測定されたリアクタンス及びキャパシタンスにおけるこれらシフトは、湿式電極を使用して測定されたインピーダンス大きさよりも遙かに顕著であった。
【0191】
感度の向上に加えて、1mL注射と2mL注射とを区別する能力も、乾式電極を使用した場合に向上した。したがって、乾式電極を使用して注射部位の電気的特性を監視することは、浸潤検出に対する感度及び浸潤を追跡する能力を向上させた。したがって、乾式電極の使用は、静脈外注射された生理食塩水の検出に対する感度を高めた。
【0192】
別段の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される特徴サイズ、量及び物理的特性を表す全ての数は、用語「約」によって修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、特に反対の指示がない限り、上記明細書及び添付の特許請求の範囲に記載されている数値パラメータは、本明細書で開示される教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に応じて変動し得る近似値である。
【0193】
特定の実施形態が本明細書において図示及び説明されているが、図示及び記載されている特定の実施形態は、本開示の範囲を逸脱することなく、様々な代替的実施態様及び/又は等価の実施態様によって置き換えられ得ることが、当業者には理解されよう。本出願は、本明細書で論じられた特定の実施形態のいずれの適応例又は変形例も包含することが意図されている。したがって、本開示は、特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定されることが意図されている。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
図12C
図12D
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】