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▶ イーストマン ケミカル カンパニーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】閉じたC字形繊維の高密度集合
(51)【国際特許分類】
   D01F 2/30 20060101AFI20240711BHJP
   D01D 5/04 20060101ALI20240711BHJP
   D01D 5/24 20060101ALI20240711BHJP
   D01D 5/253 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
D01F2/30
D01D5/04
D01D5/24 Z
D01D5/253
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579546
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(85)【翻訳文提出日】2024-01-11
(86)【国際出願番号】 US2022034824
(87)【国際公開番号】W WO2022272013
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】63/202,792
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594055158
【氏名又は名称】イーストマン ケミカル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】グリフィン ジョーセフ フィードラー
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルド ネッド スコット
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド ジー.ボウマン
(72)【発明者】
【氏名】エリザベス ディー.ブリューワー
(72)【発明者】
【氏名】エドガー ノース ルディシル
(72)【発明者】
【氏名】ハロルド エル.ウェクスラー
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン アントニー ウィルソン
(72)【発明者】
【氏名】ケー ブーマ デマ
【テーマコード(参考)】
4L035
4L045
【Fターム(参考)】
4L035AA04
4L035BB02
4L035BB11
4L035BB55
4L035DD02
4L035DD03
4L035DD20
4L035FF01
4L035JJ05
4L045AA01
4L045BA03
(57)【要約】
ここで、閉じたC字形状のセルロースアセテートフィラメントの高い集合密度を確実に製造することができる。閉じたC字形フィラメントは、フィラメントのdpf、D字形オリフィスのシータ角、及びドープ温度に応じた特定の加工条件下で、実質的にD字形オリフィスを有する、紡糸口金から製造される。このプロセスは、トウバンドにおける閉じたC字形繊維の高い集合数を作製することができ、閉じたC字形繊維の高い集合密度を有する物品は提供されない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の近位端と、第2の近位端と、中空コアと、を有する断面構成を備える閉じたC字形フィラメントを作製するためのプロセスであって、前記プロセスは、
a.セルロースアセテート及び溶媒を含むセルロースアセテートドープを提供することと、
b.前記セルロースアセテートドープを、少なくとも1つのD字形オリフィスを有する少なくとも1つの紡糸口金を通して押出して、湿潤フィラメントを形成することと、
c.前記湿潤フィラメントから溶媒を除去するように適合された装置内で前記湿潤フィラメントを乾燥させて、前記閉じたC字形フィラメントを形成することと、
を含む、プロセスであって、
A.前記第1の近位端の少なくとも一部分は、
i.前記第2の近位端の少なくとも一部分に向かって配向されるか、又は
ii.前記第2の近位端の少なくとも一部分に接触しているか、
のいずれかであり、
B.前記第1の近位端及び前記第2の近位端は、
i.前記第1の近位端と前記第2の近位端との間の間隙によって画定され、横方向距離D1を有するチャネルを形成するか、又は
ii.前記第1の近位端の少なくとも一部分が前記第2の近位端の少なくとも一部分に接触することによって生じるチャネル又は通路を形成しないか、
のいずれかであり、
前記チャネルは、前記閉じたC字形フィラメントの外面から、フィラメント内面によって画定されおよび直径D2を有する前記中空コアに至り、D2/D1>1である、
プロセス。
【請求項2】
前記セルロースアセテートドープは、28重量%~35重量%の前記セルロースアセテートの濃度を有し、前記セルロースアセテートは2.2~2.8の平均置換度を有し、前記セルロースアセテートドープは、キャンドルフィルタ水温(CFWT)から測定して45℃~62℃未満の温度である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記D字形オリフィスは、円環状部分の内周内の空間として画定される円環状開口部分と、弦と、を備え、前記弦は、前記内周上の第1の点及び第2の点と交差し、θは、仮想中心から延び、前記第1の点及び前記第2の点と交差する2つの半径(R)及び(R)によって決定されおよび2つの半径(R)及び(R)の間の角度であり、前記仮想中心は、前記円環状部分に沿って描かれ、完全な円が描かれるまで続く仮想円の中心として定義され、前記θは90°~160°である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記第1の近位端と、前記第2の近位端の少なくとも一部分とは、1.0ラジアン未満の距離で離間され、接していない、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記閉じたC字形フィラメントの少なくとも一部分は、互いに接触している前記第1の近位端及び前記第2の近位端を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記閉じたC字形フィラメントの少なくとも30%は相互に対向している、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記中空コアは、個々の閉じたC字形フィラメントの断面積の少なくとも25%である断面積を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記中空コアは、2/1以下であるアスペクト比(幅/高さ)を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記第1の近位端及び前記第2の近位端は、少なくとも5%の量で互いに同一の範囲を有して配向される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記セルロースアセテートドープは、前記セルロースアセテートドープの総重量に基づいて、5重量%未満の艶消し剤、可塑剤、及び水を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記セルロースアセテートドープは、前記セルロースアセテートドープの総重量に基づいて、4.5重量%以下の可塑剤を含有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
前記閉じたC字形フィラメントの少なくとも一部分を0.9~1.6のドラフト比で延伸することを更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
固定されたθ角度で、前記D字形オリフィスを通して紡糸された閉じたC字形フィラメントのdpfは、ドラフト比の0.1単位の変化ごとに0.35~0.7単位の量で変化する、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
dpfは、所与のD字形オリフィスに対して+/-3の全整数内で調整され得る、請求項1から13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
セルロースアセテート繊維を含む物品であって、前記セルロースアセテート繊維の少なくとも50%は、
a.150個のセルロースアセテート繊維、又は
b.150個のC字形セルロースアセテート繊維
に基づいて、閉じたC字形繊維である、物品。
【請求項16】
前記セルロースアセテート繊維の少なくとも65%は、前記閉じたC字形繊維である、請求項15に記載の物品。
【請求項17】
前記セルロースアセテート繊維は、2.2~2.8の置換度(DS)を有するセルロースアセテートを含む、請求項15に記載の物品。
【請求項18】
前記閉じたC字形繊維は、第1の近位端及び第2の近位端を有し、前記第1の近位端及び前記第2の近位端は、
i.前記第1の近位端と前記第2の近位端との間の間隙によって画定され、横方向距離D1を有するチャネルを形成するか、又は
ii.前記第1の近位端の少なくとも一部分が前記第2の近位端の少なくとも一部分に接触することによって生じるチャネル又は通路を形成しない、
のいずれかであり、
前記チャネルは、前記閉じたC字形繊維の外面から、繊維内面によって画定されおよび直径D2を有する中空コアに至り、D2/D1>1である、請求項15に記載の物品。
【請求項19】
前記閉じたC字形繊維の少なくとも30%は相互に対向している、請求項15に記載の物品。
【請求項20】
前記第1の近位端及び前記第2の近位端は、少なくとも5%の量で互いに同一の範囲を有して配向される、請求項18に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断面が閉じたC字形の形状を有する合成フィラメント、このフィラメントを製造するためのプロセス、及びこのようなフィラメントで作られた物品に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な断面の合成フィラメントの製造のために、様々なプロセス及び装置が提供されてきた。概して、これらの製造された断面は、円形、小円鋸歯状、Y字形、又はマルチローブ構成のフィラメント形状、及びフィラメントが紡糸キャビネットから出るときにその通常の形状をとった後にフィラメントを物理的に変形させることによって生成される他の関連する変形を含む。溶液を合成フィラメントに乾式紡糸するための典型的な方法及び装置は、1935年5月7日にH.G.Stoneに付与された米国特許第2,000,047号及び米国特許第2,000,048号に開示されている。これらの特許は、加熱されたセルロースエステル紡糸溶液を、複数の分離された円形オリフィスを有する紡糸口金を通して、好適な乾燥温度に維持された蒸発雰囲気を収容する乾燥チャンバ内に押し込むことを含む、方法を記載している。このように制御された条件により、丸いフィラメントを一貫して形成することができる。
【0003】
中空フィラメントの作製は、紡糸口金設計の複雑さ及び製造される繊維の見込まれるフィラメント当たりのデニール(「dpf」)に対するプロセス条件のために得ることが困難である。本発明者らは、内面に対するフィラメント外面からの溶媒排出の差、紡糸口金を出る繊維の形状、延伸比、及び繊維のdpfに対するプロセス条件の変動性のために、乾式紡糸による紡糸プロセスを使用する場合、一貫した中空フィラメントを製造する方法がより複雑であることを発見した。
【0004】
シガレット又は電子シガレット又は液体蒸気発生装置などのエアロゾル化タバコ製品の濾過の分野では、タバコフィルタセグメント又はプラグに使用されるトウバンドは、適切な通気抵抗を有することが必要とされる。フィルタセグメントを準備する際に、フィルタセグメントが容易に押しつぶされず、フィルタを通して煙を吸引する能力を保持するように、濾過度、フィラメント密度、及び通気抵抗のバランスをとることが重要である。フィルタセグメント性能の測定は、フィルタの特定の用途に依存するが、典型的には、シガレット用のフィルタセグメントは、長さが80mm~140mm、円周が16mm~27mmの範囲であってもよい。例えば、100mmの長さ及び24.53mmの円周を有する典型的なフィルタセグメントは、Essentra PLC, Milton Keys, UKによってモデル番号FTS-300として市販されているカプセル化圧力低下試験機を使用して決定して、17.5立方センチメートル/秒(cc/秒)の空気流量で決定して、200mm~400mmの水の圧力低下を示し得る。
【0005】
上述の成形フィラメントを製造するために乾式紡糸技術を利用する1つの問題は、溶媒の乾燥状態に起因して、凹部及び凸部の数が均一である糸を形成することが困難であることである。したがって、断面が不均一であり、意図された形態からかなり逸脱している、トウなどの束でのフィラメントの包含は、ある程度の規則性を伴って起こる。
【0006】
中空セルロースアセテートフィラメントは、不織布及び織布製品の構築において非常に有用であり得る。不織布において、それらは、エアロゾル濾過、液体-液体分離、固体-液体分離、気体-液体分離、及び固体-気体分離のための濾過材料を構築するために使用され得る。フィラメントの少なくとも一部分を含むことができる製品の非限定的な例としては、外科用マスク、フェイスマスク、外科用ガウン及び医療用包装が挙げられる。丸い中空フィラメントは、他の断面と比較して、織物において柔らかい感触を提供し、不織布材料及び織布材料の両方においてより多くの流体保持能力及び流体移送能力を提供することができる。シガレット又は電子シガレットフィルタとしての使用において、フィラメントは、異なるフィラメント断面及び同様の媒体重量を有するフィラメントよりも高い濾過効率、フィルタにわたるより低い圧力低下、及びより良好なフィルタ性能を提供し得る、高い表面積及びより低い形状係数を有するより軽量の製品を提供することができる。
【0007】
米国特許第1,773,969号には、フィラメント形成溶液を、円形オリフィスを通して蒸発雰囲気中に押出する技術が開示されている。記載されているように、紡糸口金オリフィスを通って出るときに初期は断面が円形であるセルロース系材料の流れの外側層は、硬化又は固化し、それによって最初に、内部よりも強靭で流動性の低いスキンを形成することが示唆される。外面のこの初期硬化の後、フィラメントの内部は沈殿又は乾燥され、それによって外側層が更に硬化される間に収縮する。フィラメントの外側シェルは、内部よりも強靭であり、形状がより明確であるので、内部の体積の収縮は、外側フィルムを崩壊させ、非常に不規則な断面を呈するようにし、これは、様々なサイズ及び形状の多くの窪みの形状の形態である。
【0008】
米国特許第3,340,571号は、様々な紡糸口金押出オリフィス又は開口部を開示している。一形態では、’571特許は、円形セグメントの形状を有する紡糸口金を記載しており、その直線境界壁(円のそれぞれの直径によって構成される)には、開口部の湾曲壁に向かって延びる、中心に又は偏心して位置する突起が設けられている。’571特許は、配向に応じて「9」又は「6」のように見える断面を有する幾何学的形状、及び両端が概して互いに隣接して配置され、ごくわずかに接触していない、すなわちUのアームが実質的に等しい長さである、挟まれた馬蹄形又は「U」字形を開示している。更に、フィラメント断面は比較的均一な壁厚を有し、それらの長手方向中心線に対して対称である。フィラメントの大きな束又はトウは、紡糸されたフィラメントから直接形成され得るか、あるいはいくつかのより小さな束を組み合わせることによって形成され得、このような大きな束は、シガレットフィルタを形成するのに、又は切断によってステープル繊維を形成するのに特に有用である。しかしながら、本発明者らは、U字形オリフィスが、閉じたC字形フィラメントの大きな集合を一貫して確実には生成しないことを見出した。
【0009】
Moriらに付与された米国特許第5,707,737号は、非円形断面を有し、繭形、十字形又はX形、Y字形、C字形、又はI字形から選択される1~4個の断面対称軸を有するセルロースアセテートフィラメントを開示している。C字形状の形成において、’737特許は、紡糸のためのドープを作製するために、溶媒中のセルロースアセテート100重量部当たり5~40重量部のポリエチレングリコール(PEG)などの可塑剤を可溶化することを開示している。フィラメントは、扇形オリフィスを有する紡糸口金を使用して製造した。可塑剤の可塑化効果により硬い外側シェルの形成が減少するので、フィラメントを変形させることなくフィラメントの内部から溶媒を放出することができるので、フィラメント形状はオリフィス形状に基づいて予測可能である。しかしながら、少量の可塑剤を含むか又は可塑剤を含まない紡糸ドープを使用して、閉じたC字形フィラメントの高い集合を一貫して製造するための持続的な問題が残っている。
【0010】
Daicel Corporationの欧州特許第3821733号は、ノッチを有する全体的な扇形構成を有するノッチ付き紡糸口金から形成されたフィラメントを開示している。紡糸孔は、円形輪郭と、2つの半径r1を有する線分と、線分間の円弧Mとに対応する周囲形状を有する。円は、中心点01を有する。紡糸孔の鈍角は、180°~270°の値に設定される。しかしながら、本発明者らは、このようなくさび形紡糸口金孔が、閉じたC字形繊維の高い集合を確実には製造しないことを見出した。また、欧州特許第3821733号の図7及び図8には、D字形紡糸口金オリフィスが開示されており、このオリフィスから周囲の一部分が切り込まれて、フィラメントに円形の滑らかな先端窪みが形成されている。しかしながら、このタイプのフィラメント形状は、以下に説明するように、中空又は閉じたC字形フィラメントを提供するように構成されていない。
【0011】
したがって、比較的均一であり、閉じたC字断面輪郭を有する断面形状が実質的に同じである複数のフィラメントを含むフィラメント束が必要とされている。1平方センチメートル(cm)当たり90パーセントを超えるフィラメントが実質的に同じ閉じたC字断面構成を有する、比較的均一なフィラメントの束を製造することが望ましい。
【0012】
これは、そのような閉じたC字形断面フィラメントを、より単純な設計及びフィラメント形成におけるより高い一貫性を有する紡糸口金から製造することができるプロセスに対する更なる必要性である。
【0013】
また、商業的紡糸ライン上で経時的に閉じたC字形断面形態を有するフィラメントを一貫して製造する改善された方法も必要とされている。
【発明の概要】
【0014】
ここで、近位の第1の端部及び第2の端部並びに中空コアを有する断面構成を有する閉じたC字形フィラメントを作製するためのプロセスであって、このプロセスは、
a.セルロースアセテート及び溶媒を含むセルロースアセテートドープを提供することと、
b.ドープを、少なくとも1つのD字形オリフィスを有する少なくとも1つの紡糸口金を通して押出して、湿潤フィラメントを形成することと、
c.湿潤フィラメントから溶媒を除去するように適合された装置内で湿潤フィラメントを乾燥させて、閉じたC字形フィラメントを形成することと、
を含む、プロセスであって、
A.第1の近位端の少なくとも一部分は、
i.第2の近位端の少なくとも一部分に向かって配向されるか、又は
ii.第2の近位端の一部分に接触しているか、
のいずれかであり、
B.第1の近位端及び第2の近位端は、
i.第1の近位端と第2の近位端との間の間隙によって画定され横方向距離D1を有するチャネルを形成するか、又は
ii.第1の近位端の少なくとも一部分が第2の近位端の少なくとも一部分に接触することによって生じるチャネル又は通路を形成しない、
のいずれかであり、
前記チャネルは、フィラメントの外面から、フィラメント内面によって画定されおよび直径D2を有する中空コアに至り、D2/D1>1である、
プロセスが提供される。
【0015】
シータ(「θ」)角度を有する少なくとも1つのD字形オリフィスを有する紡糸口金を通して、セルロースアセテートドープを乾式紡糸して、dpfを有する閉じたC字形フィラメントを作製することを含む、閉じたC字形フィラメントを作製するためのプロセスであって、
a.θ角が少なくとも90°であり、
b.θ角の、フィラメントのdpfに対する比(θ/dpfの比)が33/1未満であり、
c.セルロースアセテートドープの温度が62℃以下であり、ただし、
i.θ/dpfの比が19/1以下であり、ドープ温度が62℃未満であり、
ii.θ/dpfの比が19/1より大きく、ドープ温度が60℃未満であり、
iii.フィラメントのdpfが6未満である場合、ドープ温度は60℃未満である、プロセスも提供される。
【0016】
セルロースアセテートフィラメントを含むトウバンドを製造するためにドープを連続的に乾燥紡糸することを含む、セルロースアセテートフィラメントを製造するためのプロセスであって、8時間にわたって製造されたフィラメントの少なくとも50%が閉じたC字形状を有する、プロセスも提供される。
【0017】
セルロースアセテート繊維を含む物品であって、セルロースアセテート繊維の少なくとも50%が、
d.150セルロースアセテート繊維、又は
e.150C字形セルロースアセテート繊維に基づいて、閉じたC字形繊維である、物品も更に提供される。
【0018】
好適な物品の例としては、束、トウバンド、糸(ヤーン:yarn)、織物、布地、及びフィルタが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、複数のオリフィス10を有する紡糸口金5の上面図であり、紡糸口金5の部分11の拡大図は、オリフィス10のうちの1つのD字形構成をより詳細に示す。
【0020】
図2図2は、図1のオリフィスを有する紡糸口金を通してセルロースアセテート溶液を乾式紡糸することによって調製されたセルロースアセテートフィラメントの断面図である。
【0021】
図2A図2Aは、閉じたC字形状を決定するためのメトリックを示すセルロースアセテートフィラメントの断面図である。
【0022】
図2B図2Bは、閉じたC字形フィラメントではないC字形セルロースアセテートフィラメントの断面図である。
【0023】
図2C図2Cは、セルロースアセテートフィラメントの断面図であり、近位端の部分的に同一の範囲(co-extensive:コエキステンシブ、同一の広がり)を有する配向を有する閉じたC字構成を示す。
【0024】
図2D図2Dは、セルロースアセテートフィラメントの単一の対向する態様の断面図であり、近位端のうちの1つの単一の対向する配向を示す。
【0025】
図2E図2Eは、第1及び第2の平面s1及びs2を示すセルロースアセテートフィラメントの別の態様の断面図であり、s2は近位端の同一の範囲を有する配向を示す。
【0026】
図2F図2Fは、セルロースアセテートフィラメントの別の態様の断面図であり、近位端の同一の範囲を有する配向を示す。
【0027】
図2G図2Gは、セルロースアセテートフィラメントの比較態様の断面図であり、近位端の同一の範囲を有する配向の欠如を示す。
【0028】
図2H図2Hは、近位端の同一の範囲を有する配向の欠如を示す、セルロースアセテートフィラメントの比較態様の断面図である。
【0029】
図2I図2Iは、セルロースアセテートフィラメントの別の態様の断面図であり、近位端の同一の範囲を有する配向を示す。
【0030】
図3図3は、実施例1で製造されたフィラメントの閉じたC字形断面の顕微鏡写真である。
【0031】
図4図4は、実施例2で製造されたフィラメントの閉じたC字形断面の顕微鏡写真である。
【0032】
図5図5は、比較例1で製造されたフィラメントの断面の顕微鏡写真である。
【0033】
図6図6は、比較例2で製造されたフィラメントの断面の顕微鏡写真である。
【0034】
図7図7は、実施例3で製造されたフィラメントの閉じたC字形断面の顕微鏡写真である。
【0035】
図8図8は、比較例3について製造されたアセテートフィラメントの断面の500倍の倍率で撮影された光学顕微鏡画像を示す。
【0036】
図9図9は、比較例4について製造されたアセテートフィラメントの断面の500倍の倍率で撮影された光学顕微鏡画像を示す。
【0037】
図10図10は、比較例5について製造されたアセテートフィラメントの断面の500倍の倍率で撮影された光学顕微鏡画像を示す。
【0038】
図11図11は、比較例6について製造されたアセテートフィラメントの断面の500倍の倍率で撮影された光学顕微鏡画像を示す。
【0039】
図12図12は、比較例7について製造されたアセテートフィラメントの断面の500倍の倍率で撮影された光学顕微鏡画像を示す。
【0040】
図13図13は、比較例8について製造されたアセテートフィラメントの断面の500倍の倍率で撮影された光学顕微鏡画像を示す。
【0041】
図14図14は、例4について製造された閉じたC字形アセテートフィラメントの断面の500倍の倍率で撮影された光学顕微鏡画像を示す。
【0042】
図15図15は、比較例9について製造されたアセテートフィラメントの断面の500倍の倍率で撮影された光学顕微鏡画像を示す。
【0043】
図16図16は、比較例10について製造されたアセテートフィラメントの断面の500倍の倍率で撮影された光学顕微鏡画像を示す。
【0044】
図17図17は、比較例11について製造されたアセテートフィラメントの断面の500倍の倍率で撮影された光学顕微鏡画像を示す。
【0045】
図18図18は、実施例5について製造された閉じたC字形アセテートフィラメントの断面の500倍の倍率で撮影された光学顕微鏡画像を示す。
【0046】
図19図19は、比較例12について製造されたアセテートフィラメントの断面の500倍の倍率で撮影された光学顕微鏡画像を示す。
【0047】
図20図20は、比較例13について製造されたアセテートフィラメントの断面の500倍の倍率で撮影された光学顕微鏡画像を示す。
【0048】
図21図21は、比較例14について製造されたアセテートフィラメントの断面の500倍の倍率で撮影された光学顕微鏡画像を示す。
【0049】
図22図22は、実施例6について製造された閉じたC字形アセテートフィラメントの断面の500倍の倍率で撮影された光学顕微鏡画像を示す。
【0050】
図23図23は、実施例7について製造された閉じたC字形アセテートフィラメントの断面の500倍の倍率で撮影された光学顕微鏡画像を示す。
【0051】
図24図24は、実施例8について製造された閉じたC字形アセテートフィラメントの断面の500倍の倍率で撮影された光学顕微鏡画像を示す。
【0052】
図25図25は、実施例9について製造された閉じたC字形アセテートフィラメントの断面の500倍の倍率で撮影された光学顕微鏡画像を示す。
【0053】
図26図26は、比較例15について製造されたアセテートフィラメントの断面の500倍の倍率で撮影された光学顕微鏡画像を示す。
【0054】
図27図27は、閉じたC字断面、Y断面、及びR断面を有するフィラメントから調製されたフィルタロッドについての、ミリグラムでのロッドトウ重量対ミリメートルの水での圧力低下のグラフである。
【0055】
図28図28は、実施例11について製造された閉じたC字形アセテートフィラメントの断面の500倍の倍率で撮影された光学顕微鏡画像を示す。
【0056】
図29図29は、実施例12について製造された閉じたC字形アセテートフィラメントの断面の500倍の倍率で撮影された光学顕微鏡画像を示す。
【0057】
図30図30は、比較例18について製造されたアセテートフィラメントの断面の500倍の倍率で撮影された光学顕微鏡画像を示す。
【0058】
図31図31は、比較例19について製造されたアセテートフィラメントの断面の500倍の倍率で撮影された光学顕微鏡画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下に添付図面を参照して、本発明の態様をより詳細に説明する。図面は、本発明の様々な態様を示すが、そのような図及び説明は、単なる例としてのものである。本発明の原理及び範囲を特に記載された態様に限定する意図はなく、その代わりに、以下の特許請求の範囲によって限定される。
【0060】
本明細書で使用される場合、「第1」、「第2」、「上部」又は「上側」、「底部」又は「下側」などの任意の関係用語は、本開示及び添付の図面を理解する際の明確さ及び便宜のために使用され、文脈が明確に別様に示す場合を除いて、任意の特定の選好、配向、又は順序を暗示するものでもなくそれに依存するものでもない。
【0061】
本明細書で使用される場合、所与のパラメータ、特性、又は条件に関して「約」及び「実質的に」という用語は、所与のパラメータ、特性、又は条件が、許容可能な測定及び/又は製造公差内などの小さい分散度で満たされ、概ね、指定された値の最大5%の変動性を含むことを意味する。例えば、「約1.0」という用語は、0.95~1.05の可変範囲を含む。
【0062】
本明細書中の物質の量に関する全ての数値又はパーセンテージは、明確に反対に定義されない限り、又は文脈から明らかでない限り、重量パーセンテージ(重量%)で与えられる。
【0063】
一連の数字における任意の数字は、その連続の前又は後の形容詞を含む。例えば、少なくとも1、2、3dpfは、少なくとも1dpf、又は少なくとも2dpf、又は少なくとも3dpfを含む。
【0064】
本明細書で使用するとき、閉じたC字形フィラメントは、以下で更に定義されるような閉じたC字形を有するセルロースアセテートフィラメントを意味する。
【0065】
「フィラメント」という用語は、本明細書で使用される場合、紡糸口金を通して押出されたドープから紡糸される薄い可撓性糸様物体を指す。「繊維」は、フィラメント又はステープルのいずれかであり得る。全体を通してフィラメントに言及しているが、ステープル繊維はフィラメントから切断され、物品はフィラメント若しくはステープル繊維のいずれか、又は両方を含有することができるので、物品中のフィラメントの全ての言及は、「繊維」又は「ステープル」と置き換えることもでき、「繊維」又は「ステープル」のサポート(support:根拠)を提供する。概して長手方向に整列された様式で押出され、最終的にフィラメント糸を形成するフィラメント、又はその得られるステープル繊維は、任意の好適なサイズであってもよい。例えば、各フィラメント(又はステープル)は、少なくとも0.5、0.8、1、1.5、2、2.5、3、4、又は5dpfのうちの少なくともいずれかのフィラメント当たりの線形デニール(9000mフィラメント長さのg単位の重量、dpf)を有し得る。加えて、又は代替的に、dpfは、200、100、75、50、35、30、25、20、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4.5、4、3.5、3、又は2.75dpfのいずれか以下である。好適なdpf範囲の例としては、0.8~30、又は1~25、又は1.5~20、又は1.5~15、又は1~4未満、又は4~30が挙げられる。
【0066】
一態様において、又は任意の言及された態様との組み合わせにおいて、フィラメント及びステープル繊維を含む繊維は、望ましくはモノフィラメントである。
【0067】
一態様において、又は任意の言及された態様との組み合わせにおいて、繊維は、可塑剤を除く繊維中の全てのポリマーの重量に基づいて、少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%、又は少なくとも97重量%、又は100重量%のセルロースアセテートポリマーを含む。一態様において、繊維は2成分繊維ではなく、2成分繊維を加工した結果ではない。
【0068】
個々のフィラメントのサイズは、特に限定されない。サイズは、有効直径に関して与えられ得、一形態では、フィラメント及びステープル繊維の有効直径は、例えば、0.1μm~1000μm、1μm~500μm、1μm~100μm、1μm~30μm、10μm~1000μm、10μm~500μm、10μm~100μm、又は10μm~30μmの範囲であり得る。
【0069】
一態様において、又は任意の言及された態様との組み合わせにおいて、セルロースエステルフィラメントは、実質的にC字形の断面構成を有する。図1を参照すると、フィラメントは、複数の紡糸孔又はオリフィス10を有する紡糸口金5を通してセルロースエステル溶液を押出することを伴う乾式紡糸プロセスを使用して調製される。各紡糸オリフィス10は、図1の拡大オリフィス11に示すように「D」字形状を有する。対照的に、くさび形オリフィスは、閉じたC字形フィラメントを生成することができるオリフィスに似た形状であるが、閉じたC字形繊維の高い集合密度又は集合を生成することもなく、閉じたC字形フィラメントを一貫して作製する確実なプロセスを可能にすることもない。
【0070】
図1を参照すると、D字形オリフィス10は、実質的に円環状開口部分15を含む。環状開口部分15は、円環状部分15及び弦20の内周の空間に画定される。弦20は、第1の点24及び第2の点28の2つの点で環状開口部分15と交差する。コード20の長さは「d」と特定され、オリフィス15の直径「D」よりも短い。コード長さ「d」は、コード20の、オリフィス15の仮想中心「C」に対する近接度によって定義される。中心「C」は、円環状部分15に沿って描かれ、完全な円が描かれるまで続く仮想円の中心である。仮想中心Cは、角度θに無関係に固定された仮想点である。説明を容易にするために、コード長さ「d」は角度θを規定し、これは、中心Cから延び、それぞれ第1の点24及び第2の点28と交差する等しい長さの2つの半径R及びRによって決定される。弦20は、紡糸ドープが流れる環状開口部分又はオリフィス15の形状を画定する紡糸口金10の構造要素である。コード20が中心Cに近ければ近いほど、すなわちコード20が長ければ長いほど、シータ角θは大きくなり、これにより、より顕著なD字形開口部15が得られる。
【0071】
したがって、弦20の長さは、角度θを指定することによって記述され得る。本発明によれば、驚くべきことに、角度θは90度より大きい必要があることが発見された。一態様において、又は任意の言及された態様の組み合わせにおいて、θ角度は、少なくとも100°、又は少なくとも105°、又は少なくとも110°、又は少なくとも115°、又は少なくとも120°、又は少なくとも125°、又は少なくとも130°であり、加えて又は代わりに、最大180°未満、又は最大175°、又は最大170°、又は最大165°、又は最大160°、又は最大155°、又は最大150°、又は最大145°である。例又は範囲としては、90°~180°未満、又は90°~175°、又は90°~170°、又は90°~165°、又は90°~160°、又は90°~155°、又は90°~150°、又は90°~145°、又は100°~180°未満、又は100°~175°、又は100°~170°、又は100°~165°、又は100°~160°、又は100°~155°、又は100°~150°、又は100°~145°、又は105°~180°未満、又は105°~175°、又は105°~170°、又は105°~165°、又は105°~160°、又は105°~155°、又は105°~150°、又は105°~145°、又は110°~180°未満、又は110°~175°、又は110°~170°、又は110°~165°、又は110°~160°、又は110°~155°、又は110°~150°、又は110°~145°、又は115°~180°未満、又は115°~175°、又は115°~170°、又は115°~165°、又は115°~160°、又は115°~155°、又は115°~150°、又は115°~145°、又は120°~180°未満、又は120°~175°、又は120°~170°、又は120°~165°、又は120°~160°、又は120°~155°、又は120°~150°、又は120°~145°が挙げられる。
【0072】
一態様において、又は任意の言及された態様の組み合わせにおいて、θ角度は、少なくとも100°、又は少なくとも105°、又は少なくとも110°、又は少なくとも115°、又は少なくとも120°、又は少なくとも125°、又は少なくとも130°であり、加えて又は代わりに、最大155°、又は最大153°、又は最大152°、又は最大151°、又は最大150°、又は最大149°、又は最大148°である。
【0073】
一態様において、又は任意の言及された態様の組み合わせにおいて、フィラメントは、D字形孔を通して紡糸することによって作製され、弦要素20の少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも98%が直線である、D字形孔を有する紡糸口金孔構成が提供される。弦要素20はまた、水平線内にあってもよく、任意選択で、各端部は、孔の内周を二等分する。いずれの場合も、直線は、各端から10%未満離れた端から端まで測定することができ、これは、図1の点24から10%離れた距離から開始して点28から10%離れた点までを意味する。したがって、測定された全距離は弦の80%である。別の態様において、直線は、各端から5%未満、又は2%未満、又は1%未満離れて端から端まで測定されるか、又は端から端までの直線である。一態様において、弦は、「V」字形ではなく、又は「U」字形ではなく、又は「C」字形ではなく、又は不規則な形状ではない。紡糸口金ダイヘッドは、言及した特徴のいずれかを有する少なくとも1 D字形状の孔を有することができ、又は紡糸口金ダイヘッド上の孔の少なくとも10%、又は少なくとも25%、又は少なくとも50%、又は少なくとも75%、又は少なくとも90%、又は100%がD字形状であることができる。
【0074】
D字形開口部15を有する紡糸口金10を形成する方法は特に限定されない。それは、構造インサート、ダイプレートの鋳造物の一部であってもよく、又は鋳造後にダイプレートに追加されてもよい。
【0075】
図2を参照すると、上述の紡糸口金オリフィスを通してセルロースアセテートドープ又は溶液を押出することによって調製される閉じたC字形の断面構成を有するフィラメント50の図が提供されている。本明細書で定義されるように、閉じたC字形状を示すフィラメント又は繊維は、第1の近位端65、第2の近位端70、及び中空コア60を有する「C」字の形状の断面を有する。全体を通して使用されるように、「閉じたC字」、「閉じたC字フィラメント」、及び「閉じたC字形断面」は、第1の近位端及び第2の近位端を有する「C」字の形状であり、以下の少なくとも1つの条件A(i)又はA(ii)及び少なくとも1つの条件B(i)又はB(ii)を満たす、フィラメントを意味する。
A.第1の近位端の少なくとも一部分は、
i.第2の近位端の少なくとも一部分に向かって配向されるか、又は
ii.第2の近位端の一部分に接触しているか、
のいずれかであり、
B.第1の近位端及び第2の近位端は、
i.「C」字形状の第1の近位端と第2の近位端との間の間隙又は分離によって画定されおよび横方向距離D1を有するチャネル(チャネルは、フィラメントの外面から中空コアに至り、中空コアがフィラメント内面によって画定されおよび直径D2を有し、D2/D1>1である。)を形成するか、又は
ii.第1の近位端の少なくとも一部分が、対向する第2の近位端の少なくとも一部分に接触することによって生じるチャネルを形成しない、
のいずれかである。
【0076】
図2に示されるように、フィラメント50は、第1の近位端65及び第2の近位端70を有する「C」字の形状であり、以下の少なくとも1つの条件A(i)又はA(ii)、及び少なくとも1つの条件B(i)又はB(ii)を満たす。
A.第1の近位端65の少なくとも一部分は、
i.第2の近位端70の少なくとも一部分に向かって配向されるか、又は
ii.第2の近位端70の一部分に接触し、図2に示すように、接触がないか、
のいずれかであり、
B.第1の近位端65及び第2の近位端70は、
i.「C」字形の第1の近位端65と第2の近位端70との間の間隙又は分離によって画定されおよび横方向距離D1を有するチャネル(チャネルは、フィラメント50の外面55aから中空コア60に至り、中空コア60がフィラメント内面55bによって画定されおよび直径D2を有し、D2/D1>1である。)を形成するか、又は
ii.第1の近位端65の少なくとも一部分が対向する第2の近位端70の少なくとも一部分に接触することによって生じるチャネル又は通路を形成せず、図示されるように、この場合の近位端は互いに接触しない、
のいずれかである。
【0077】
一態様において、又は前述の態様のいずれかとの組み合わせにおいて、チャネルは、最小チャネル直径D1よりも大きい直径D2を有する環に開口する。チャネルの距離D1は、「C」字形フィラメントの第1の近位端65と第2の近位端70との間の間隙によって画定されるチャネル内の最小距離と見なされ、直径D2は、中空コア60内の最大直径と見なされる。同じ単位におけるD2/D1の比は、1/1超、又は少なくとも1.1/1、又は少なくとも1.2/1、又は少なくとも1.3/1、又は少なくとも1.4/1、又は少なくとも1.5/1、又は少なくとも1.6/1、又は少なくとも1.7/1、又は少なくとも1.8/1、又は少なくとも1.9/1、又は少なくとも2/1、又は少なくとも2.1/1、又は少なくとも2.3/1、又は少なくとも2.5/1、又は少なくとも2.8/1、又は少なくとも3/1、又は少なくとも3.5/1、又は少なくとも4/1、又は少なくとも4.5/1、又は少なくとも5/1、又は少なくとも5.5/1、又は少なくとも6/1であり得る。
【0078】
図2A及び図2C図2Fを参照すると、C字断面形状の近位端の描写及び定義がより詳細に定義されている。図2Fに示すように、フィラメント50は、外弧を形成する外周55aと、内弧を形成する内周55bとを含み、中空コア60を外接させて形成してもよい。更に、図2A、2C、及び2Dに示されるように、C字形フィラメントは、平坦な先端x及びyをそれぞれ有する近位端65及び70を有する。フィラメント50が本明細書で定義されるような閉じたC字であるかどうかを決定する際に、近位端65及び70の配向が決定される。したがって、図2A図2C、及び図2Dに示されるように、端部65の配向は、近位端65の平面xから離れて、かつそれに垂直に延びる仮想線65a又は65bの方向である。同様に、図2A、2C、及び2Dに示されるように、端部70の配向は、近位端70の平面yから離れて、かつそれに垂直に延びる仮想線70a及び70bの方向である。線65a又は65bは、x平面に沿って、かつそれに対して垂直に、任意の場所に引くことができ、いくつかの線が、対向する近位端70の対向する平面yと交差し得ない場合であっても、x軸に沿って、かつそれに対して垂直な任意の線が、対向する近位端70の対向する平面yと交差する場合、フィラメントは、閉じたC字形である。同様に、線70a又は70bは、y平面に沿って、かつy平面に垂直に任意の場所に引くことができ、いくつかの線が近位端70の対向する平面xと交差し得ない場合であっても、y平面に沿って、かつy平面に垂直な任意の線が、対向する近位端70の対向する平面と交差する場合、フィラメントは閉じたC字形である。図示されるように、この構成は、近位端65の配向が、仮想配向線65bがそうでない場合であっても、近位端70の平面yと交差する仮想線65aによって示されるように、近位端70に向かっているので、閉じたC字形フィラメントである。同様に、この構成は、近位端70の配向が、仮想線70bがそうでない場合であっても、近位端65の平面xと交差する仮想配向線70aによって示されるように近位端65に向かっているので、閉じたC字形フィラメントである。これらの条件のうちのいずれか1つは、近位端が互いに向かって配向されるという要件を満たす。
【0079】
図2Cを参照すると、相互に対向する近位端を有する閉じたC字フィラメントの別の態様が示されている。第1の近位端65は、線70a及び65bがそれらのそれぞれの対向する平面に関係しない場合であっても、第2の近位端70の対向する平面yと交差する線65aの方向によって示されるように、第2の近位端70に向かって配向される。それに対応して、第2の近位端70は、近位端65の対向する平面xと交差する線70bの交点によって示されるように、第1の近位端65に向かって配向される。これらの条件のうちのいずれか1つは、近位端が互いに向かって配向されるという要件を満たす。それぞれ65a及び70bによって画定される領域の間の領域内の近位端65と70との間の任意の仮想線もまた、近位端65及び70の配向が相互に反対であり、相互に向かって配向されることを示すことを理解されたい。
【0080】
図2Dに示されるように、このタイプの閉じたC字形は、1つの近位端のみが対向する近位端に向かって配向されるため、すなわち、線70aによって示される近位端70の配向が近位端65の平面xと交差しないので、仮想線70aが平面yに沿って垂直にどこに引かれても、端部70の配向は平面xに沿った近位端65のいかなる部分とも交差しないので、「単一対向」C字形と見なされる。
【0081】
したがって、一方の近位端65又は70のみの一部分が他方の近位端の少なくとも一部分に向かって配向されている場合、これは、単一対向と見なされる。加えて、各近位端65及び70の少なくとも一部分が、他方の近位端の少なくとも一部分に向かって配向される場合、端部65及び70は、相互に対向していると見なされる。
【0082】
一態様において、又は上述の態様のいずれかとの組み合わせにおいて、閉じたC字形繊維の少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも65%、又は少なくとも70%、又は少なくとも75%は、相互に対向している。
【0083】
端部又は先端が丸みを帯びている場合、近位端は、内周上の点と外周上の点とを接続する仮想線であり、これらの点は、点が周囲に沿って移動するときに実質的な角度変化が見られないときに得られる。近位端の配向は、近位端の平面部分に垂直であるか、又は丸みを帯びた先端構成上の2つの言及された点を接続する仮想線に垂直な仮想線である。
【0084】
近位端が複数の平面を有する場合、選択された平面が近位端上の最長平面の長さの少なくとも50%であるという条件で、平面のいずれか1つを近位端と見なすことができる。例えば、図2Eを参照すると、近位端70は、同一平面上にない表面s1及びs2を有する。平面s1は、s2の長さの少なくとも50%ではない長さを有し、したがって、平面s2のみが、配向を決定するための平面として適格である。しかしながら、表面s1の長さがs2の長さの少なくとも50%である場合、近位端70の配向及び近位端65の配向のための目標平面を決定するために、いずれかの表面を選択することができる。s1長さがs2長さの50%未満である場合、s2表面のみが、近位端70の配向及び平面65の配向のための目標平面を決定するための基礎として適格である。図示されるように、表面s2の平面は、近位端65と交差し、したがって、近位端70は、近位端70に向かって配向される。平面s1は、平面s2の長さの50%未満であるので、近位端70の配向を決定するための候補として適格ではない。しかしながら、これが平面s2の長さの少なくとも50%である場合、それにも関わらず、近位端70の配向を決定するために平面s2を選択することができるので、近位端70は、近位端65に向かって配向される。
【0085】
図2Iを参照すると、図示されるフィラメントは、閉じた「C」字形を有すると考えられる。これは、近位端65のx平面が近位端70のy軸に沿って近位端70の一部分に接触しているからである。
【0086】
逆に、図2B、2G、及び2Hは、本発明の閉じたC字形フィラメントであると考えられない内部コア60を有するフィラメント50を示す。図2Bでは、近位端65の平面xに垂直かつそれに沿った仮想線は、配向線65a又は65bのいずれであっても、その平面yに沿って近位端70と交差することができず、近位端70は、その平面xに沿って近位端65と交差しない仮想配向線70a及び70bによって示されるように、近位端65に向かって配向されないため、近位端65の配向は、近位端70に向かっていない。
【0087】
図2Gを参照すると、閉じた「C」字形を有すると考えられない内部コア60を有するフィラメント50が示されている。近位端65及び70のいずれも、平面x又は平面yのいずれかに垂直な任意の線が、対向する平面と交差しないことが示されるように、互いに向かって配向されないためである。
【0088】
別の場合では、図2Hは、平面x又は平面yのいずれかに垂直な任意の線が、対向する平面と交差しないことが示されるように、近位端65も70も互いに向かって配向されないため、閉じた「C」字形を有すると見なされない内側コア60を有するフィラメント50を示す。
【0089】
再び図2Aを参照すると、フィラメント50のコア60は中空であり、フィラメント50に中空断面を提供する。本明細書で使用する「コア」は、真円や円周が完全に閉じたものに限定されない。例えば、中空コアは、楕円形又は不規則な若しくは歪んだ形状であってもよく、近位端65及び70は、接していても接触していてもよく、又は円周の一部が開いている弓形ループが提供されるように遠位であってもよい。第1の近位端65及び第2の端70は、1.0ラジアン未満、又は0.8ラジアン未満、又は0.5ラジアン未満、又は0.3ラジアン未満、又は0.1ラジアン未満の距離だけ離間されてもよく、依然として閉じたC字構成として特徴付けられ、各場合において、接しないか、又は少なくとも0.01ラジアン、又は少なくとも0.05ラジアンだけ離間されてもよい。
【0090】
フィラメントは、近位端65及び70が接している閉じたC字構成を有することができる。近位端65及び70は、接していてもよいが、接着又は融合されていなくてもよい。あるいは、閉じたC字構成は、近位端65及び70が上述のように接していないものであり得る。一態様において、又は任意の他の言及された態様との組み合わせにおいて、中空コア60は、その最大寸法において、近位端65と70との間の最大距離よりも大きい直径を有する。中空コア60は、その最小寸法において、中空コアの近位端65と70との間の最大距離よりも大きい直径を有することさえできる。
【0091】
有利には、中空コアの面積は、フィラメントの総断面積に対して大きい。例えば、中空コア60は、フィラメント50の断面積の少なくとも20%である断面積を有することができる。断面形状は、中空コア60上及び外周55上の近位端65と70との間の間隙にクロージャを引き、フィラメント及び中空コア60の断面を決定することによって計算することができる。中空コア60は、フィラメント50の断面積の少なくとも25%、又は少なくとも30%、又は少なくとも35%、又は少なくとも40%、又は少なくとも45%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも65%、又は少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、及び最大90%、又は最大80%、又は最大70%、又は最大60%である断面積を有することができる。
【0092】
一態様において、又は任意の言及された態様との組み合わせにおいて、中空コアは、2/1以下、又は1.9/1以下、又は1.8/1以下、又は1.7/1以下、又は1.6/1以下、又は1.5/1以下、又は1.4/1以下、又は1.3/1以下、又は1.2/1以下であり、少なくとも0.5/1、又は少なくとも0.6/1、又は少なくとも0.7/1、又は少なくとも0.8/1、又は少なくとも0.9/1、又は少なくとも1/1であるアスペクト比(幅/高さ)を有することができる。幅は、C字形フィラメントの近位端の間のチャネルの平面D1(チャネル平面)に実質的に垂直である中空コア部分60の最長直径であり、高さは、チャネル平面と実質的に一致しており、内周55bへの中空コアへの最初の入口で始まる距離の最長部分である。
【0093】
概念を説明するために図2Fを参照することができる。外周55a及び内側中空コア又は環60を有するC字形フィラメント50は、中空コア60の最長幅又は直径である「w」と、線1によって示されるように、近位端65と70との間の中空コア60へのチャネル入口の第1の平面と交差する高さを表す線「h」とによって表すことができるアスペクト比を有する。線2も中空コア60への入口平面を表すが、それは入口の第2の平面であり、最も長い高さは線1の平面で始まる。線wの長さの、線hの長さに対する比は、フィラメント50における中空コア60のアスペクト比である。
【0094】
一態様において、又は任意の上述の態様との組み合わせにおいて、内周55bの距離の少なくとも70%は、完成した内周の距離に基づいて連続している。完成した内周は、一方の近位端の内周の端部を起点として、対向する近位端の内周の端部まで延びる、両近位端を結ぶ仮想直線を引いた内周55bである。チャネルを形成する近位端に沿った周囲は、内周の一部ではない。内周55bの距離の少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%は、完成した内周の距離に基づいて連続している。
【0095】
一態様において、又はいずれかの言及された態様との組み合わせにおいて、150個の繊維当たり少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも65%、又は少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%の閉じたC字形セルロースアセテート繊維が相互に対向している高い集合密度が提供される。
【0096】
一態様において、又は任意の言及された態様との組み合わせにおいて、フィラメントの近位端65及び70は、少なくとも5%、又は少なくとも10%、又は少なくとも15%、又は少なくとも20%、又は少なくとも25%、又は少なくとも30%、又は少なくとも35%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%の量で互いに同一の範囲を有して配向される。パーセンテージは、以下の式によって求めることができる:
【数1】
式中、%Oは、同一の範囲を有する配向のパーセントであり、
は重なる面積であり、
は、Aによって定義される全面積に、重なりAを定義する境界に隣接する辺を有する4つの三角形の面積を加えたものである。
【0097】
重なる長方形は、上述のように先端の配向を平行に連続させ、近位端の配向に対して直角である仮想線を引くことによって決定される。全ての線が交差する最大領域の全面積がAである。この概念を説明するために、図2Aを参照することができ、参照仮想描線70a、70b、65a、及び65bは上述した通りである。x及びyとして描かれた仮想線は、それらのそれぞれの近位端の方向配向に対して直角であるか、又は垂直である。参照文字A、B、C、及びDは、同一の範囲を有する領域F上の境界に隣接する辺を有する4つの三角形である。Aは、結合領域F+A+B+C+Dである。
【0098】
一態様において、又は任意の言及された態様の組み合わせにおいて、フィラメントは、1つの中空コアのみを含有する。
【0099】
一態様において、又は任意の言及された態様の組み合わせにおいて、フィラメントは、連続的な外周を有するフィラメントが周りにある中空コアを形成する。一態様において、又は任意の言及された態様の組み合わせにおいて、フィラメントは、連続的な外周を有するフィラメントが周りにある中空コアを形成し、各近位端の少なくとも一部分は他方と接触する。これは、近位端間に0ラジアンの間隙を有する完全に閉じたC字形フィラメントの一例である。例えば、40個のフィラメントカウント当たり少なくとも0.5%、又は少なくとも1%、又は少なくとも2%、又は少なくとも3%、及び/又は最大10%のフィラメントは、近位端が互いに接している連続的な外周を有することができる。
【0100】
ここで、閉じたC字フィラメントの高い集合密度を一貫して製造する方法も提供される。アセテートフィラメントの製造において、セルロースアセテート及び溶媒を含有する紡糸ドープを予め調製し、それを当業者に公知の条件下で乾式紡糸する。紡糸溶液の温度を上昇させ、加熱したキャンドルフィルタに通すことによって維持する。キャンドルフィルタの温度は、その内部チャネルに熱水を通すことによって維持される。紡糸溶液の実際の温度はキャンドルフィルタ水温よりも数度低いが、キャンドルフィルタ水温は、紡糸ドープ溶液温度を提供するための良好な代用として役立つ。本発明者らは、キャンドルフィルタ水温が、40℃~62℃以内、又は40℃~62℃未満、又は45℃~60℃の温度に維持されるべきであることを見出した。キャンドルフィルタ水温が40℃よりもはるかに低い場合、紡糸溶液中の溶媒が完全に蒸発せず、フィラメント破損が観察される。いかなる理論にも束縛されるものではないが、フィラメント破損は、複数の単一フィラメントが互いに近接しているか又は密接に付着しており、糸の破損を引き起こす紡糸工程に起因し得ると考えられる。温度が62℃よりもはるかに高いと、溶媒の蒸発速度が速くなり、断面の輪郭が均一でなくなり、所望のC字形断面構成が得られなくなる。したがって、紡糸口金から排出される紡糸溶液の温度は、62℃未満、又は61℃未満、又は40℃~60℃、又は60℃以下、又は60℃未満、又は40℃~58℃、又は40℃~56℃、又は45℃~56℃、又は50℃~62℃、又は45℃~60℃、又は50℃~60℃(両端含む)とすることができる。望ましくは、キャンドルフィルタ水温は、所与のプロセス条件下で、アセトンなどの紡糸溶液に使用される溶媒の沸点を上回らない。これらの範囲の各々は、端点を含み、また、端点が除外されるような、これらの値の間の範囲のサポート(根拠)も提供される(例えば、より大きい及び/又はより小さい)。
【0101】
本発明者らは、温度が62℃よりもはるかに高い場合、溶媒蒸発速度が速く、断面の輪郭がもはや均一ではなく、したがって所望のC字形断面形態が典型的には得られないことを発見した。述べたキャンドルフィルタ水温範囲内で、選択される特定の温度は、ダイ孔を通して紡糸されるフィラメントのdpfによって影響を受ける。フィラメントのdpfが減少するにつれて、キャンドルフィルタ水温もまた、過剰な溶媒が時期尚早に蒸発しないことを確実にするために低下させるべきである。一方、より高いdpfを有するフィラメントを紡糸するためには、キャンドルフィルタ水温を上昇させるべきである。紡糸口金では、溶媒ドープを、複数の孔を通して押出して、連続セルロースアセテートフィラメントを形成することができる。フィラメントは、一緒に集められて、数百又は数千の個々のフィラメントの束を形成してもよい。これらの束又はバンドの各々は、少なくとも100、150、200、250、300、350、若しくは400個、及び/又は1000、900、850、800、750、若しくは700個以下のフィラメントを含み得る。紡糸口金は、所望のサイズ及び形状を有するフィラメント及び束を製造するのに適した任意の速度で操作することができる。
【0102】
紡糸ドープ組成物は、好適な量のセルロースアセテート及び溶媒を含有する。本明細書で使用される用語「セルロースアセテートトウ」、「アセテートトウ」、又は「アセテートトウバンド」は、セルロースアセテートフィラメントから構成される連続した捲縮フィラメントバンドを指す。本明細書で使用される「セルロースアセテート」という用語は、セルロースグルコース単位のヒドロキシル基中の水素が、アセチル化反応によってアセチル基によって置換されている、セルロースの酢酸エステルを指す。セルロースアセテートは、2.2~3未満の範囲の置換度を有することができる。本明細書で使用するとき、用語「置換度」又は「DS」は、セルロースポリマーのアンヒドログルコース環当たりのアシル置換基の平均数を指し、最大置換度は3.0である。いくつかの態様において、好適なセルロースアセテートは、グルコース単位当たり3個未満のアセチル基の置換度、好ましくは平均2.2~2.8の範囲、又は2.4~2.7の範囲の置換度を有し得る。場合によっては、セルロースアセテートの少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99パーセントは、2.2、又は2.25を超えるDSを有する。場合によっては、セルロースアセテートの少なくとも90パーセントは、2.2、2.25、2.3、又は2.35を超えるDSを有することができる。典型的には、アセチル基は、総アシル置換基の少なくとも1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、若しくは60パーセント、及び/又は99、95、90、85、80、75、若しくは70パーセント以下を構成することができる。
【0103】
紡糸ドープ組成物中のセルロースアセテートの量は、ドープ溶液の総重量に基づいて、22重量%~32重量%、又は22重量%超~32重量%、又は24重量%超~32重量%、又は26重量%~30重量%、及び28重量%~30重量%であり得る。ドープ組成物中に存在する溶媒の量は、ドープ溶液の総重量に基づいて、65重量%~78重量%、望ましくは68重量%~71重量%である。紡糸溶液中のセルロースアセテートの固有粘度は、1.35~1.60、又は1.45~1.58であり得る。
【0104】
紡糸溶液の固形分(すなわち、添加された固形分)は、概ね22~32重量%である。より高い固形分では、回収される必要がある溶媒の量はより少ないが、32重量%をはるかに超えると、紡糸溶液粘度は、小さい紡糸口金孔を通して良好に押出するには高すぎる場合がある。22重量%以下の固形分では、紡糸口金を通るドープ溶液の流量を制御することが困難であり、過剰の溶媒をフィラメントから蒸発させる必要があり、一貫したフィラメントの閉じたC字形状を制御することが困難であり、アセトン回収量が高い。加えて、低固形分を含有する紡糸溶液は、フィラメントに紡糸されるとき、フィラメントを紡糸口金の金属面の外面に付着させる傾向があり、したがって、フィラメントを束又はトウバンドに引き込むことが困難である。
【0105】
紡糸ドープ溶液はまた、少量のTiOなどの艶消し剤、少量の水、及び少量の可塑剤を含有してもよい。本発明によるドープ溶液は、概して、添加された少量の二酸化チタン及び少量の水を有する。総紡糸溶液中のTiOの量は、概ね、1重量%未満、又は0.5重量%以下、又は0.3重量%以下であるか、又はTiOを添加しない。得られるフィルタの白色度を高めるために、少量のTiOを添加することができる。過剰に多量のTiOは、微細な紡糸口金孔を塞ぐ場合がある。
【0106】
存在する場合、艶消し剤、可塑剤、及び水の量は、各々5重量%以下、又は累積的に5重量%以下であり得る。一態様において、水、艶消し剤、セルロースアセテート、及び可塑剤を除いて、紡糸ドープ溶液の残りはアセトンなどの溶媒である。一態様において、又は上述の態様のいずれかと組み合わせて、アセトンの量は、水以外の全ての溶媒の重量に基づいて、少なくとも60重量%、又は少なくとも70重量%、又は少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%、又は少なくとも98重量%、又は100重量%である。アセトンとは異なる蒸発速度プロファイルを有する他の溶媒は、言及されたプロセス条件下でフィラメントの形状に影響を及ぼし、したがって、それらの量は最小限にされるべきである。
【0107】
一態様において、又は上述の態様のいずれかと組み合わせて、紡糸ドープ溶液は、ドープ中のセルロースアセテート及び可塑剤の総重量に基づいて、又は紡糸ドープ溶液の重量に基づいて、又は繊維中のセルロースアセテート及び可塑剤の総重量に基づいて、又は繊維の重量に基づいて、4.5重量%以下、又は4重量%以下、又は3重量%以下、又は2重量%以下、又は1重量%以下、又は0.5重量%以下の可塑剤を含有するか、又は可塑剤が溶液に添加されないか、又は可塑剤が溶液中に存在しない。可塑剤が使用される場合、可塑剤は、ポリマーとは対照的な化合物であり得、400g/モル以下、又は300g/モル以下、又は250g/モル以下の分子量を有し得る。フィラメントはまた、紡糸口金から出る際に、同じパーセンテージの可塑剤を含有してもよく、又は可塑剤を含まなくてもよく、閉じたC字形フィラメントを作製するための任意のプロセスは、ドープ溶液に可塑剤を添加せずに乾式紡糸することを含むことができ、又は添加される場合、記載された限度内である。
【0108】
本発明の紡糸溶液中に存在する水の量は、ドープ溶液又はフィラメントの重量に基づいて、概ね5重量%未満、又は3重量%以下、又は1~2重量%以下である。3重量%をはるかに超える水の量は、得られるフィラメントの乾燥時間を遅くする傾向があり、一方、約1重量%をはるかに下回る水の量は、アセトンが蒸留によって水からリサイクルされ、周囲空気が湿っているので、得ることが困難である。
【0109】
本発明者らはまた、ドラフト比が、閉じたC字形フィラメントを一貫して形成する能力に影響を及ぼすことを発見した。「ドラフト比」は、ゴデットロールによるフィラメント巻き取り速度の、紡糸口金からのフィラメント押出速度に対する比である。乾式紡糸プロセスにおけるドラフト比は、少なくとも0.9、又は少なくとも0.95、又は少なくとも1、又は少なくとも1.01、又は少なくとも1.05、又は少なくとも1.1、又は少なくとも1.2、及び追加的又は代替的に、最大1.6、又は最大1.5、又は最大1.4、又は最大1.3、又は最大1.2、又は最大1.15であり得る。好適な範囲としては、0.9~1.6、又は0.95~1.5、又は1.0~1.4、又は1.05~1.4、又は1.08~1.6、又は1.08~1.4、又は1.08~1.3、又は1.08~1.2、又は1.08~1.15、又は1.05~1.6、又は1.1~1.6、又は1.2~1.6、又は1.3~1.6、又は1.4~1.6の範囲のドラフト比が挙げられる。
【0110】
本発明者らはまた、所与の紡糸口金孔直径及びシータ角において、ドラフト比が減少するにつれてフィラメントのdpfを増加させることができ、又は逆に、ドラフト比が増加するにつれてフィラメントのdpfを減少させることができ、驚くべきことに、閉じたC字形断面を有するフィラメントが首尾よく得られることを発見した。したがって、一態様において、又は任意の言及された態様との組み合わせにおいて、固定されたシータ角でD字形状の紡糸口金孔を通して紡糸された閉じたC字形フィラメントのdpfが、ドラフト比の増加と共に減少するか、又はドラフト比の減少と共に増加するかのいずれかである、プロセスが提供される。一態様において、又は任意の言及された態様との組み合わせにおいて、一定のシータ角でD字形状の紡糸口金孔を通して紡糸される閉じたC字形フィラメントのdpfが、ドラフト比の0.1単位の変化ごとに0.35~0.7単位の量で変化する、プロセスが提供される。任意選択的に、dpfは、所与のD字形孔に対して+/-3の全整数内で調整することができる。これは、製造業者が、dpfの変更ごとに異なる紡糸口金孔サイズを有するダイを変更する必要なく、所与のD字形状孔サイズでdpf範囲のウィンドウを作成する一方で、閉じたC字形フィラメントを成功裏に一貫して作製し続ける有意な利点を提供する。
【0111】
一態様において、又は任意の言及された態様との組み合わせにおいて、少なくとも5、又は少なくとも6、又は少なくとも7のdpfを有し、各々の場合において、1.4以下、又は1.3以下、又は1.2以下、又は1.15以下、又は1.1以下、又は1.05以下、又は1.0以下のドラフト比を有する、閉じたC字形フィラメント、及び閉じたC字形フィラメントを作製するためのプロセスが提供される。一態様において、又は上述の態様のいずれかとの組み合わせにおいて、5未満、又は4以下、又は3.5以下、又は3以下、又は2.5以下、又は2以下、又は1.8以下、又は1.5以下、又は1.3以下、又は1.1以下、又は1以下のdpfを有し、各々の場合において、1.4超、又は少なくとも1.45、又は少なくとも1.5、又は少なくとも1.55のドラフト比で製造される、フィラメント、及びフィラメントを製造するプロセスが提供される。
【0112】
本発明者らはまた、dpfの、D字形孔のシータ角に対する比が、閉じたC字形断面フィラメント形状の集合密度値に影響を及ぼし、更に、キャンドルフィルタドープ温度も影響を及ぼすが、これらの要因のいずれも単独では高密度の閉じたC字形繊維を得ることの主因にならないことを発見した。更にこれらの要因のいくつかの組み合わせは、閉じたC字形繊維の高い集合密度を得ることの主因にならない。例えば、閉じたC字形繊維の高い集合密度及び低い集合密度は、同じキャンドルフィルタドープ温度で得ることができ、又は閉じたC字形繊維の高い集合密度及び低い密度は、同じキャンドルフィルタドープ温度及び同じdpfで得ることができ、又は閉じたC字形繊維の高い集合密度及び低い集合密度は、同じdpf及び同じシータ角で得ることができる。本発明者らはここで、高い集合密度で一貫した信頼性のある閉じたC字形状の繊維を得ることができること、換言すれば、フィラメント又はステープル繊維の高い集合密度(本明細書で言及される任意の量で、150個のC字形状のフィラメントあたり50%以上)が提供され、シータθ角を有するD字形状の孔を通してセルロースアセテートドープを紡糸して、dpfを有する閉じたC字形状のフィラメントを作製することによって、閉じたC字形フィラメント及びステープルを作製するためのプロセスであって、
a)θ角が少なくとも90°であるか、又は任意選択的に、以下で言及される最小θ角のいずれかであり、
b)θ角の、紡糸フィラメントのdpfに対する比が33/1未満であり、
c)セルロースアセテートドープの温度が62℃以下であり、ただし、
a.θ/dpfの比が、19/1以下(例えば、18/1以下、又は17/1以下、又は16/1以下等)である場合、ドープ温度は62℃未満であり、
b.θ/dpfの比が19/1より大きい(例えば、19:5/1、20/1、27/1など)場合、ドープ温度は60℃未満であり、
c.フィラメントのdpfが6未満、又は5以下、又は4.5以下、又は4以下である場合、ドープ温度は60℃未満である、プロセスが提供されることを見出した。
【0113】
θ/dpfの比は、少なくとも9/1、又は少なくとも10/1、又は少なくとも11/1、又は少なくとも12/1、又は少なくとも13/1、又は少なくとも15/1、又は少なくとも16/1、又は少なくとも17/1、又は少なくとも18/1、又は少なくとも19/1、又は少なくとも19.5/1、又は少なくとも20/1、又は少なくとも21/1、又は少なくとも22/1、又は少なくとも23/1、又は少なくとも24/1であり得、加えて又は代わりに、33/1未満、又は32/1以下、又は31/1以下、又は30/1以下、又は29/1以下、又は28/1以下、又は24/1以下、又は22/1以下、又は21/1以下、又は20/1以下、又は19.5/1以下、又は19/1以下、又は18.5/1以下、又は18/1以下であり得る。θ/dpfの範囲の例としては、13/1~33/1未満、又は13/1~32/1、又は15/1~19/1、又は16/1~18.5/1、又は13/1~18/1、又は15/1~18/1、又は19/1超~32/1、又は19.5/1~33/1未満、又は20/1~32/1、又は21/1~32/1、又は20/1~28/1が挙げられる。いずれの場合も、セルロースアセテートドープ温度は、62℃以下、又は62℃未満、又は61℃以下、又は60℃以下、又は60℃未満、又は59℃以下、又は58℃以下、又は56℃以下であり、任意選択的に、少なくとも40℃、又は少なくとも45℃、又は少なくとも48℃、又は少なくとも50℃、又は少なくとも53℃である。
【0114】
上述したように、θ角は少なくとも90°であり、好適には100°~180°未満、又は100°~170°、又は100°~160°、又は100°~148°、又は105°~148°、又は120°~148°、又は130°~148°である。
【0115】
全ての場合において、θ角の、紡糸フィラメントのdpfに対する比(θ/dpfの比)は33/1未満であるが、32/1以下、又は30/1以下、又は28/1以下であってもよい。
【0116】
一態様において、又は前述の態様のいずれかと組み合わせて、シータ角は、繊維のdpfの増加と共に増加する。例えば、10より大きいdpfでは、θ角は150°を超えることができ、6~10のdpfでは、θ角は120°~150°であることができ、6未満又は5未満のdpfでは、θ角は120°未満かつ少なくとも90°であることができる。
【0117】
ドープ温度が60℃未満である場合もあるが、セルロースアセテートドープ温度は62℃以下であり、本発明者らは、シータ角及びdpfのドープ温度への依存性も発見した。θ/dpfの比が19/1以下である場合、ドープ温度は62℃未満である。本発明者らは、より高いドープ温度、例えば65℃、70℃などでは、様々なθ/dpfにわたってであっても、閉じたC字形繊維の高い集合密度を生成できないことを見出した。しかしながら、本発明者らはまた、θ/dpfの比が19/1超(例えば、19:5/1、20/1、27/1など)である場合、ドープ温度は、閉じたC字形繊維の高い集合密度を効果的に生成するために60℃未満のままである必要があることを発見した。本発明者らは更に、ドープ温度が60℃未満の温度に設定される場合の別の例は、θ/dpfの比に無関係に、フィラメントのdpfが6未満、又は5.5以下、又は5以下、又は4.5以下である場合であることを見出した。望ましくは、θ/dpfの比が19/1超であるか、又はdpfが6未満である場合のドープ温度は45℃~58℃、又は50℃~58℃、又は52℃~56℃の範囲内であり、並びに45℃~61℃、又は48℃~61℃、又は50℃~60℃、又は50℃~58℃、又は50℃~56℃の温度もまた、それらが全て62℃未満であるため、θ/dpfの比が19/1未満である場合、好適な範囲である。
【0118】
フィラメントの巻き取り速度は、望ましくは、揮発性物質の高い蓄積を回避するために、少なくとも200m/分、又は少なくとも250m/分、又は少なくとも300m/分であるが、この速度は、蒸気を迅速に除去するために好適な装置が設置されている場合、低下させることができる。好適な巻き取り速度は、200~900m/分、又は250~900m/分、又は300~900m/分、又は350~900メートル/分、又は400~900m/分、又は200~700m/分、又は250~700m/分、300~700m/分の範囲であり得る。これらの速度は、少なくとも8時間、又は少なくとも24時間、又は少なくとも1週間、又は少なくとも1ヶ月にわたる連続ベースである。
【0119】
フィラメントは紡糸口金を出て、乾燥キャビネットに入る。乾燥キャビネットは、上部及び底部を有する。上部は第1の空気温度及び第1の空気流を有し、底部は第2の空気温度及び第2の空気流を有する。一態様において、上部空気温度と底部空気温度とは異なる。別の態様において、上部空気流と底部空気流とは異なる。溶媒湿潤フィラメントは、上部で装置に入り、上部及び底部から乾燥空気温度及び流速に供される。次いで、乾燥フィラメントを乾燥キャビネットの底部から取り出し、更なる加工のために収集する。
【0120】
上部空気流は、少なくとも10立方フィート/分(cfm)、又は少なくとも40cfm、又は少なくとも60cfm、又は少なくとも90cfm、又は少なくとも100cfm、又は少なくとも105cfmとすることができる。範囲の例としては、10~125cfm、又は90~125cfm、又は100~125cfm、又は105~120cfmが挙げられる。上部空気温度は、少なくとも55℃、又は少なくとも60℃、又は少なくとも65℃、又は少なくとも70℃、又は少なくとも80℃、又は80℃超、又は少なくとも82℃、又は少なくとも85℃であってよく、加えて又は代わりに、最大120℃、又は最大115℃、又は最大110℃、又は最大100℃、又は最大95℃、又は最大93℃であってもよい。好適な範囲の例としては、55℃~120℃、又は55℃~115℃、又は55℃~110℃、又は55℃~105℃、又は55℃~100℃、又は60℃~120℃、又は60℃~115℃、又は60℃~110℃、又は60℃~105℃、又は60℃~100℃、又は80℃~120℃、又は80℃~115℃、又は80℃~110℃、又は80℃~105℃、又は80℃~100℃、又は85℃~120℃、又は85℃~115℃、又は85℃~110℃、又は85℃~100℃、又は85℃~95℃、又は82℃~100℃未満、又は85℃~95℃、又は88℃超~95℃、又は90℃~95℃、又は65℃~95℃未満、又は65℃~93℃が挙げられる。
【0121】
底部空気流は、少なくとも10立方フィート/分(cfm)、又は少なくとも40cfm、又は少なくとも60cfm、又は少なくとも90cfm、又は少なくとも100cfm、又は少なくとも105cfmからとすることができる。範囲の例としては、10~125cfm、又は90~125cfm、又は100~125cfm、又は105~120cfm、又は12~120cfm、又は25~115cfmが挙げられる。底部空気温度は、少なくとも75℃、又は少なくとも78℃、又は少なくとも80℃、又は少なくとも85℃であり、加えて又は代替的に、最大120℃、又は最大115℃、又は最大110℃、又は最大105℃、又は最大100℃、又は最大95℃である。好適な底部空気温度範囲の例は、75℃~120℃、又は75℃~115℃、又は75℃~110℃、又は75℃~105℃、又は75℃~100℃、又は75℃~95℃、又は78℃~120℃、又は78℃~115℃、又は78℃~110℃、又は78℃~105℃、又は78℃~100℃、又は78℃~95℃、又は80℃~120℃、又は80℃~115℃、又は80℃~110℃、又は80℃~105℃、又は80℃~100℃、又は80℃~95℃、又は85℃~120℃、又は85℃~115℃、又は85℃~110℃、又は85℃~105℃、又は85℃~100℃、又は85℃~95℃である。
【0122】
底部空気流は、上部空気流よりも少なくとも1cfm低く、又は上部空気流よりも少なくとも1.5cfm低く、又は少なくとも2cfm低く、又は少なくとも5cfm低く、又は少なくとも10cfm低く、又は少なくとも15cfm低く、又は少なくとも20cfm低く、又は少なくとも25cfm低く、上部空気流よりも最大約60cfm、又は最大55cfm低くすることができる。底部空気流の好適な範囲としては、上部空気流よりも1~60cfm、又は1~55cfm、又は5~55cfm、又は10~55cfm、又は20~55cfm低いものが挙げられる。
【0123】
底部空気温度は、上部空気温度よりも少なくとも1℃低く、又は上部空気温度よりも少なくとも2℃低く、又は少なくとも3℃低く、又は少なくとも5℃低く、又は少なくとも7℃低く、及び上部空気温度よりも最大20℃低く、又は上部空気温度よりも最大15℃低く、又は最大10℃低く、又は最大8℃低くてもよい。底部空気温度の好適な範囲としては、上部空気温度よりも1~20℃、又は1~15℃、又は1~10℃、又は3~7℃低いものが挙げられる。
【0124】
キャビネットを出て乾燥機に入る前のフィラメント中の溶媒レベルは、4~18重量%、又は6~10重量%の溶媒(例えば、アセトン)であり得る。
【0125】
フィラメント加工は、パターン化された波状形状が個々のフィラメントの少なくとも一部分、又は実質的に全てに付与される捲縮ゾーンにフィラメントを通過させること、並びにフィラメントをステープル繊維に加工することを含む。捲縮ゾーンは、フィラメント糸を機械的に捲縮するための少なくとも1つの捲縮装置を含む。機械的捲縮機の例としては、複数のローラを使用して摩擦を発生させる「スタッフィングボックス」又は「スタッファボックス」捲縮機が挙げられ、これは、フィラメントをねじり、ボックス内に捲縮を形成させる。他のタイプの捲縮機を使用してもよい。フィラメント糸に捲縮を付与するのに好適な装置の例は、例えば、米国特許第9,179,709号、米国特許第2346258号、米国特許第3353239号、米国特許第3571870号、米国特許第3813740号、米国特許第4004330号、米国特許第4095318号、米国特許第5025538号、米国特許第7,152,288号、及び米国特許第7,585,442号に記載されている。場合によっては、捲縮工程は、少なくとも50、75、100、125、150、175、200、225、若しくは250メートル/分(m/分)、及び/又は750、600、550、500、475、450、425、400、375、350、325、若しくは300m/分以下の速度で行われてもよい。
【0126】
捲縮は、フィラメント及びそれから作製されるステープル繊維が、ASTM D3937に従って測定して、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、若しくは14、及び/又は30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、10、9、8、7、若しくは6捲縮/インチ(CPI)以下の捲縮頻度を有するように行うことができる。使用される特定のCPIは用途に依存し、いくつかの用途では、非捲縮及び他の軽度又は頻繁な捲縮を必要とする。フィラメントの捲縮振幅は様々であってもよく、例えば、少なくとも0.85、0.90、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、1.00、1.01、1.02、1.03、1.04、又は1.05mmであってもよい。
【0127】
捲縮後、フィラメント糸又はトウバンドは、フィラメント糸の水分及び/又は溶媒含有量を低減するために、乾燥ゾーンにおいて更に乾燥されてもよい。場合によっては、乾燥ゾーンで行われる乾燥は、フィラメント糸の最終含水量を、フィラメント糸の総重量に基づいて少なくとも3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、若しくは7重量%、及び/又は9、8.5、8、7.5、7、若しくは6.5重量%以下に低減するのに十分であってもよい。
【0128】
フィラメントは、その各々が、フィラメントが撚られていないか、又は絡み合ったままであるようにそれらの長さに沿って互いに隣接して配置された複数のフィラメントである束又はトウバンドに形成することができ、又はフィラメントが撚られているか又は絡み合っているようにそれらの長さに沿って互いに隣接して配置された複数のフィラメントであり得る糸に形成することができる。フィラメントバンドは、フィラメントの効果的な捲縮を可能にするために形成されることが多く、最終用途に応じて、ステープル繊維に切断するか、又は連続バンドとして加工することができる。本明細書で使用するとき、用語「ステープル繊維」は、典型的には150mm未満、又は120mm未満、又は最大100mm、又は最大80mm、又は最大65mm、又は最大60mm、又は最大55mmである個別長さを有するフィラメント糸又はトウバンドから切断されたフィラメントを指す。いくつかの態様において、ステープル繊維は、少なくとも1、1.5、2、3、4、5、6、8、10、12、15、17、20、22、25、27、30、32、又は35mm、及び最大130mm、又は最大120mm、又は最大100mm、又は最大80mm、又は最大65mmの長さに切断されてもよい。繊維を過度に損傷することなくフィラメントを所望の長さに切断することができる任意の好適なタイプの切断装置を使用することができる。切断装置の例としては、回転カッター、裁断機、牽切装置、往復刃、及びこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。切断されると、ステープル繊維は、その後の輸送、貯蔵、及び/又は使用のために梱包されるか、又は別の方法で袋詰めされるか、又は包装され得る。ステープル繊維の切断長さは、ASTM D-5103に従って測定することができる。
【0129】
フィラメントバンド及び糸は、最初にステープルに変換されて糸を形成しない限り、典型的には布地物品に織られるか又は編まれる。フィラメントは、糸の形態であってもよい。本明細書で使用するとき、用語「糸」は、長さに沿って互いに隣接して配置され、多くの場合、フィラメントの凝集性及び性能を改善するために撚り合わされるか又は絡み合わされ、典型的には実質的に丸い断面を形成する複数のフィラメントを指す。糸は、最終用途に応じて、連続ストランドとして加工するか、又はより短い長さに切断することができる。複数のフィラメント及び束は、捲縮された又は捲縮されていないトウバンドなどのフィラメント糸に組み立てられ得る。本明細書で使用するとき、「フィラメント糸」又は「トウ糸」は、複数の連続した撚られていない個々のフィラメントから形成された糸を指す。フィラメント糸は、任意の好適なサイズであってもよく、いくつかの態様において、少なくとも20,000、25,000、30,000、35,000、40,000、45,000、50,000、75,000、100,000、150,000、200,000、250,000、300,000、350,000、400,000、450,000、又は500,000の総デニールを有してもよい。あるいは、又は更に、フィラメント糸の総デニールは、5,000,000、4,500,000、4,000,000、3,500,00、3,000,000、2,500,000、2,000,000、1,500,000、1,000,000、900,000、800,000、700,000、600,00、500,000、400,000、350,000、300,000、250,000、200,000、150,000、100,000、95,000、90,000、85,000、80,000、75,000、又は70,000以下であり得る。一態様において、又は任意の言及された態様の組み合わせにおいて、フィラメント糸は、少なくとも50,000、55,000、60,000、65,000、70,000、75,000、80,000、85,000、90,000、95,000、100,000、150,000、200,000、250,000、300,000、350,000、400,000、450,000、又は500,000の総デニールを有し得る。
【0130】
本発明の別の形態において、複数のフィラメントを集めて束を形成し、次にこれを集めて、本発明による5~500,000個の個々のフィラメントを有するトウバンドなどのバンドを形成する。あるいは、バンドは10~50,000、10~40,000、10~30,000、10~20,000、10~10,000、10~1,000、100~50,000、100~40,000、100~30,000、100~20,000、100~10,000、100~1000、200~50,000、200~40,000、200~30,000、200~20,000、200~10,000、200~1000、1000~50,000、1000~40,000、1000~30,000、1000~20,000、1000~10,000、5000~50,000、5000~40,000、5000~30,000、5000~20,000、5000~10,000、10,000~50,000、10,000~40,000、10,000~30,000、又は10,000~20,000個の本発明のフィラメントを有し得る。特定の態様において、フィルタトウ重量、すなわち、フィラメントのみの重量は、1.7mg/mm超、又は2.0mg/mm超、又は2.2~2.5mg/mmである。
【0131】
本発明の別の形態は、上述のフィラメントの少なくとも一部分を組み込んだ製造物品である。物品は、標準的なフィラメント、糸、及び/又はフィラメントバンドから製造されたユニットであり、意図される用途の機能的要件を満たすのに必要な他の構成要素及び添加剤を含む。非限定的な例としては、布地、織物製品、不織布、吸収性製品、予備湿潤シート、衣料品、断熱材、外科用フェイスマスク及びガウンなどの医療用途、並びに包帯、医療包装、有機及び無機流体及びエアロゾル化材料用のフィルタ(自動車用、水処理用、家庭用及び農業用途の殺虫剤及び除草剤などの噴霧及び気化液体など)、フィルタロッド、可燃性及び非燃焼加熱用途の両方のためのシガレットフィルタ、電子チップ、気化装置、並びに液体貯蔵リザーバ中のフィルタ、スレッド及び糸が挙げられる。
【0132】
吸収性シートの非限定的な例としては、寝具カバー、バスタオル、ペーパータオル及び拭き取り用品、ハンカチ、ナプキン、並びに流出物収容チューブが挙げられる。個人衛生吸収性物品の非限定的な例としては、生理用ナプキン、タンポン、包帯、及び失禁収容物品が挙げられる。生理用ナプキン及び包帯に関して、物品は、着用者又は着用者の衣類に近接して物品を接着するために、少なくとも1つの表面上に除去可能な接着剤を更に含んでもよい。
【0133】
事前湿潤シートは、香料、洗浄剤、消毒剤、皮膚保湿剤、乳化剤、及び防腐剤からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を更に含んでもよい。
【0134】
フィルタ媒体の非限定的な例としては、アセテートトウバンド、喫煙装置フィルタプラグ、マウスピース以外に配置された喫煙装置フィルタ要素又は糸若しくはフィラメント束、液体気化装置フィルタ、浄水フィルタ、自動車フィルタ、空気清浄化フィルタ、手術用フェイスマスク及びガウン、並びに血液浄化フィルタが挙げられる。閉じたC字形フィラメントは、喫煙装置で発生するような熱い蒸気又は気体を冷却することができる。閉じたC字形フィラメントはまた、自動車用フィルタ、空気清浄化フィルタ、外科用フェイスマスク及びガウン、並びに血液浄化フィルタに望ましいものなど、空気微粒子に対する物理的バリア特性を提供しながら、フィラメントを通る迅速な気体及び蒸気及び液体の移動を可能にすることができる。
【0135】
フィラメントがフィルタ媒体として利用される場合、説明を容易にするために、フィルタプラグ又はセグメントを利用する喫煙物品について説明する。「喫煙物品」という用語は、シガレット、シガー、シガリロ、及び非燃焼加熱、電子タバコなどの非燃焼製品のようなあらゆる種類の喫煙製品に関する。これらの喫煙物品では、使用される喫煙可能材料の種類、例えば、タバコ、タバコ派生物、膨張タバコ、再生タバコ、タバコ代用品、不燃性製品など、並びにそれらの混合物は、特に限定されない。これらの喫煙物品にはフィルタが設けられている。そのような用途では、繊維トウプラグは、フィルタ材料の各端部が露出したままであるように、プラグラップで包まれてもよい。プラグラップは様々であってもよく、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Martinの米国特許第4,174,719号を参照されたい。典型的には、プラグラップは多孔性又は非多孔性の紙材料から選択される。好適なプラグラップ材料は市販されている。1100 CORESTA単位~26000 CORESTA単位の範囲である例示的なプラグラップ紙は、Schweitzer-Maudit InternationalからPorowrap 17-M1、33-M1、45-M1、70-M9、95-M9、150-M4、150-M9、240M9S、260-M4及び260-M4Tとして、並びにMiquel-y-Costasから22HP90及び22HP150として入手可能である。非多孔性プラグラップ材料は、典型的には、40 CORESTA単位未満、多くの場合20 CORESTA単位未満の多孔率を示す。例示的な非多孔質プラグラップ紙は、Olsany Facility(OP Paprina)(Czech Republic)からPW646として、Wattenspapier(Austria)からFY/33060として、Miquel-y-Costas(Spain)から646として、並びにSchweitzer-Mauduit InternationalからMR650及び180として入手可能である。プラグラップ紙は、特に混合繊維束に面する表面上に、フィルム形成材料の層でコーティングすることができる。このようなコーティングは、好適なポリマーフィルム形成剤(例えば、エチルセルロース、炭酸カルシウムと混合されたエチルセルロース、ニトロセルロース、炭酸カルシウムと混合されたニトロセルロース、又はシガレット製造に一般的に使用されるタイプのいわゆるリップリリースコーティング組成物)を使用して提供することができる。あるいは、プラスチックフィルム(例えば、ポリプロピレンフィルム)をプラグラップ材料として使用することができる。例えば、Treofan Germany GmbH&Co.KGからZNA-20及びZNA-25として入手可能な非多孔性ポリプロピレン材料をプラグラップ材料として使用することができる。様々な態様において、プラグラップは、フィルタ要素の生分解性が改善されるように、迅速に崩壊する材料であり得る。
【0136】
必要に応じて、「包まれていない」フィルタセグメントを製造することもできる。このようなセグメントは、本明細書に全般的に記載されるタイプの技術を使用して製造される。しかしながら、フィルタ材料の長手方向に延びる周囲を取り囲むプラグラップを使用するのではなく、例えば、成形された混合繊維束に蒸気を適用することによって、いくらか剛性のロッドが提供される。包まれていないフィルタロッドを商業的に製造するための技術は、Essentra PLC,Milton Keys,UKによって所有されている。
【0137】
フィルタ調製プロセスと組み合わせて使用されるシガレット製造操作は、従来の自動化されたシガレットロッド製造機を使用して行われ得る。例示的なシガレットロッド製造機は、Molins PLC又はHauni-Werke Korber&Co.KGから市販されているタイプのものである。例えば、MkX(Molins PLCから市販されている)又はPROTOS(Hauni-Werke Korber&Co.KGから市販されている)として知られているタイプのシガレットロッド製造機を使用することができる。
【0138】
閉じたC字形フィラメントを利用するフィルタは、特に限定されていない、喫煙物品用のフィルタに通常使用される添加剤である1つ以上の微粒子添加剤を含有することができる。添加剤は、粉末状(粒径50~150μm)であっても、粒状(粒径150~1000μm)であってもよい。好適な微粒子添加剤の例としては、風味剤又は吸着剤、例えば、メントール溶液、活性炭/木炭、ゼオライト、イオン交換樹脂、セピオライトのようなケイ酸マグネシウム、シリカゲル、アルミナ、モレキュラーシーブ、炭素質ポリマー樹脂及び珪藻土、又はこれらの組み合わせが挙げられる。また、湿潤剤などの他の添加剤を使用することもできる。特定の形態によれば、微粒子添加剤は、木炭/活性炭を含むか、又は木炭/活性炭である。
【0139】
製造物品の調製において、物品は、天然及び合成フィラメントを含んでもよい。望ましくは、物品は、用途に応じて、合成フィラメントの重量に基づいて、5重量%超、又は少なくとも10重量%、又は少なくとも15重量%、又は少なくとも20重量%、又は少なくとも25重量%、又は少なくとも30重量%、更に50重量%超、又は75重量%超、又は少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%の閉じたC字形セルロースアセテートフィラメントを含む。製造物品の調製において、物品は、天然及び合成フィラメントの重量に基づいて、5重量%超、又は少なくとも10重量%、又は少なくとも15重量%、又は少なくとも20重量%、又は少なくとも25重量%、又は少なくとも30重量%、又は用途に応じて、更に50重量%超、又は75重量%超、又は少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%の閉じたC字形状セルロースフィラメントを含んでもよい。
【0140】
一態様において、又は任意の言及された態様の組み合わせにおいて、上述の製造物品のいずれかは、閉じたC字形フィラメントの形状、配向、及び寸法に関する態様を含む、上述の特性のいずれかを有するフィラメントを有することができる。
【0141】
このプロセスは、閉じたC字形フィラメントの高い集合密度を一貫して製造することを可能にする。したがって、ここで、8時間にわたって、又は24時間にわたって、又は48時間にわたって、又は1週間にわたって、又は1ヶ月にわたって製造されたセルロースアセテートモノフィラメントの少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%が閉じたC字形を有する、セルロースアセテートモノフィラメントを作製するための連続乾式紡糸プロセスも提供される。閉じたC字形フィラメントは、全体を通して言及される追加の属性又は特徴のいずれかを有することができる。フィラメント、束、トウバンド又は糸を製造するプロセスでは、連続する各時間からの製造によって表される連続する各サンプルで、8時間にわたって各時間に少なくとも150個のフィラメント(トウバンドから、束から、又はボビンからのいずれであっても)のランダムサンプルを採取し、光学顕微鏡で、倍率500倍でそれらを観察することによって、閉じたC字形の一貫性パーセンテージを決定することができ、観察用の繊維サンプル断面は、以下の方法のいずれか1つで調製され、観察される:
【0142】
方法A:手でしっかりと撚られていないフィラメントの小さなかせ(機械的に圧縮されておらず、断面を500倍で見たときにフィラメント断面間にいくらかの間隙が存在することとなるものである)を、繊維表面上の任意の油性物質又は潤滑剤を除去するのに適した溶媒中に浸漬し、その後、放置して乾燥させる。次いで、乾燥させたかせをエポキシ又は不揮発性ワックスでコーティングする。次いで、コーティングされたかせをミクロトームで切片にして、繊維の断面を露出させる。次に、切片をスライド上に置き、顕微鏡に挿入して顕微鏡写真を作成する。
【0143】
方法B:手でしっかりと撚られていないフィラメントのかせ(機械的に圧縮されておらず、断面を500倍で見たときにフィラメント断面間にいくらかの間隙が存在することとなるものである)を、スライドホルダの1mm×2mmの孔に通して挿入して固定し、その後、繊維束を切断してスライドホルダの第1の表面と面一にし、ホルダをひっくり返し、ストランドを第2の表面と面一に切断し、ホルダとおよそ同じ厚さの短い繊維束を残し、各端部で切断して断面をさらけ出す。次いで、スライドを光学顕微鏡ステージ上に挿入して、顕微鏡写真を作成する。
【0144】
ステープル繊維を評価する場合には、方法Bを使用すべきであり、ステープル繊維の束をホルダに固定して両側で切断する。
【0145】
方法A又はBのいずれかの下でのサンプル、及び全ての他のサンプルを、光学顕微鏡写真上で500倍の視野下で見る。150個のフィラメントを検査するために、2つのスクリーンショットを撮影する必要があり得る。
【0146】
このプロセスは、8時間にわたる各連続した1時間ごとのサンプルにおける閉じたC字形断面の目標パーセンテージ(最低50%)が満たされる場合、閉じたC字形フィラメントを一貫して製造すると見なされる。
【0147】
布地、織物、織布又は織物、不織ウェブ又は布地又は織物、及びフィルタなどの上述の物品のいずれかもまた提供され、これには、フィラメント、束、トウバンド、ベール、ステープル繊維、スライバ、ボビン、ロービング、糸、及び物品を製造するために使用される任意のフィラメント又はステープル繊維も挙げられ、それらのいずれか1つは、セルロースアセテートの150繊維当たり少なくとも50%の、閉じたC字形繊維の最小集合密度を有し、任意選択で上述の追加の特性のいずれか1つ以上を有する。製造におけるフィラメント、束、トウバンド及び糸以外の物品に関して、物品中の全ての繊維を観察及び測定することは実際的ではなく、したがって、150個のセルロースアセテート繊維当たりの閉じたC字形繊維の最小集合密度は、これらの物品からセルロースアセテート繊維の2つのランダムサンプルを得て、各サンプルが少なくとも150個のセルロースアセテート繊維(フィラメント又はステープルのいずれであっても)を含み、500倍の倍率下で閉じたC字形繊維の数を数え、各サンプルから閉じたC字形繊維のパーセンテージを得て、2つのサンプルから閉じたC字形繊維の数を加え、合計300繊維で割るか、又は単に各サンプルからのパーセンテージの平均をとることによって測定することができる。物品が、布地又は衣料品などからの混合繊維を含有する場合、閉じたC字形繊維の最小集合密度を得るために分母に数えられる繊維は、セルロースアセテート繊維のみである。これは、サンプルがセルロースアセテートC字形繊維でどれだけまばらに存在するかに応じて、サンプルの異なる領域にわたる複数の顕微鏡写真を必要とする場合があり、C字形を有する150個のセルロースアセテート繊維のカウントが得られたときに、サンプルについて完了する。物品が布地の2つ以上の異なる層又はセグメントを有する場合、2つのサンプルは各層又はセグメントから採取されるべきである。この態様において、パーセンテージは、全ての繊維タイプの代わりにセルロースアセテート繊維に対して測定される。物品が混合ポリマータイプの繊維(例えば、ポリエステル及びセルロースアセテート)を含有する場合、閉じたC字形繊維の最小集合密度を得るために分母に数えられる繊維は、セルロースアセテート繊維のみである。サンプルのいずれもC字形繊維を有していない場合、物品はC字形繊維を含有しないと見なされる。布地、織物、織布又は織物、不織ウェブ又は布地又は織物、及びフィルタなどの上述の物品のいずれかもまた提供され、これには、フィラメント、束、トウバンド、ベール、ステープル繊維、スライバ、ボビン、ロービング、糸、及び物品を製造するために使用される任意のフィラメント又はステープル繊維も挙げられ、それらのいずれか1つは、上記と同じサンプリング方法を使用して、C字形セルロースアセテートの150繊維当たり少なくとも50%の、閉じたC字形繊維の最小集合密度を有し、任意選択で上述の追加の特性のいずれか1つ以上を有する。この態様において、全てのセルロースアセテート繊維の代わりにC字形を有するセルロースアセテート繊維に対してパーセンテージを測定する。物品が混合ポリマータイプの繊維(例えば、ポリエステル及びセルロースアセテート)を含有する場合、又はC字形状であるいくつかのセルロースアセテート繊維と、円形、小円鋸歯状、Y字形、若しくは異なる形状であるいくつかのセルロースアセテート繊維とを有する場合、閉じたC字形状繊維の最小集合密度を得るために分母に数えられる繊維は、C字形状セルロースアセテート繊維のみである。
【0148】
一態様において、又は任意の上述の態様の組み合わせにおいて、パーセンテージが全てのセルロースアセテート繊維に対して取られるか、又はC字形状繊維に対して取られるかに関わらず、いずれの場合においても150個の繊維当たり(又は150個のセルロースアセテート繊維若しくは150個のC字形状セルロースアセテート繊維当たり)、少なくとも55%、又は少なくとも60%、又は少なくとも65%、又は少なくとも68%、又は少なくとも70%、又は少なくとも72%、又は少なくとも74%、又は少なくとも75%、又は少なくとも77%、又は少なくとも80%、又は少なくとも82%、又は少なくとも85%、又は少なくとも87%、又は少なくとも90%、又は少なくとも92%、又は少なくとも95%、又は少なくとも97%の、閉じたC字形繊維の最小集合密度を有し、任意選択で上記の追加の特性のいずれか1つ以上を有する、束及びトウバンド及び糸並びに物品を製造するために使用される任意の繊維も含む、上記の物品のいずれかが提供される。C字形繊維の集合に対して、全てのC字形繊維が閉じたC字形であるとは限らない。C字形繊維は、閉じたC字形繊維と同じ紡糸口金オリフィスから紡糸された繊維であっても、上で定義したような「閉じた」ものでなくてもよい。
【0149】
これらの集合密度値の各々は、フィラメントを作製するプロセス、上述の繊維の特性(例えば、dpf、長さ、単一対向、相互対向、D2/D1比、アスペクト比、プロセス条件、D字形紡糸口金、シータ角など)のいずれか、並びに閉じたC字形繊維を含有する物品、と関連付けることができる。
【0150】
これらの場合のいずれにおいても、繊維は捲縮されていなくてもよく、更には捲縮されていてもよく、上述の閉じたC字形状の密度値のいずれかを有してもよい。
【0151】
閉じたC字形繊維の密度値は、緩いフィラメント又はステープル繊維、又は物品を製造するために使用されるフィラメント若しくはステープル上、又はトウバンド上であり得ることが言及されたが、言及された密度値はまた、物品から引き出されたフィラメント又はステープル繊維から得られ得る。あるいは、記載された集合密度値は、物品中に存在するフィラメント又はステープル繊維を含むこともできる。このようなフィラメント又はステープル繊維は、カーディングされ、延伸され、紡糸され、切断され、圧縮され、巻かれ、結合され、乾式又は湿式堆積されたものなどであってもよい。それらの形態は限定されない。
【0152】
一態様において、又は任意の言及された態様の組み合わせにおいて、喫煙装置フィルタ、又はシガレットフィルタ、又はフィルタプラグ、又は喫煙装置に含まれるフィルタ要素であって、
1.フィルタ断面における繊維の少なくとも50%が、閉じたC字形フィラメントから構成されるか、又は
2.フィルタ断面におけるセルロースアセテート繊維の少なくとも50%が、閉じたC字形フィラメントから構成されるか、又は
3.フィルタ断面におけるC字形繊維の少なくとも50%が、閉じたC字形フィラメントから構成されるか、のいずれかである、喫煙装置フィルタ、又はシガレットフィルタ、又はフィルタプラグ、又は喫煙装置に含まれるフィルタ要素が提供される。
【0153】
態様#3において、測定は、C字形状を有するフィラメントのみに基づいており、他の形状は、閉じたC字形状フィラメントのパーセンテージの決定に加算されない。例えば、Y字形フィラメントによって囲まれたC字形のコアを有するフィルタプラグでは、コアのみからランダムサンプルを採取して、閉じたC字形をいくつ有するかを決定する。
【0154】
一態様において、又は任意の言及された態様との組み合わせにおいて、フィルタは、同じdpfにおいて、単位重量当たり、Y字形フィラメントを有する同じフィルタよりも低い圧力低下を有する。したがって、閉じたC字形フィラメントは、中空コアを有している場合であっても、単位重量当たりの圧力低下が低くなるという利点を有する。
【0155】
フィラメントは更に、フィラメントの最終用途によって決定されるような二次処理に供されてもよい。このような二次処理としては、フィラメント加工、並びに光分解剤、生分解剤、分解促進剤、及び種々のタイプの他の添加剤の添加が挙げられる。
【0156】
光分解剤としては、コーティングされた又はコーティングされていないアナターゼ型又はルチル型二酸化チタンを含む顔料が挙げられ、これらは単独で存在してもよく、又は例えば、様々な種類の金属などの増強成分の1つ以上と組み合わせて存在してもよい。光分解剤の他の例としては、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、ベンゾフェノン及びその誘導体、アセトフェノン及びその誘導体、キノン、チオキサントン、フタロシアニン及び他の光増感剤、エチレン-一酸化炭素コポリマー、芳香族ケトン-金属塩増感剤、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0157】
生分解剤及び/又は分解促進剤としては、リンの酸素酸の塩、リンの酸素酸のエステル又はその塩、炭酸又はその塩、リンの酸素酸、硫黄の酸素酸、窒素の酸素酸、これらの酸素酸の部分エステル又は水素塩、炭酸及びその水素塩、スルホン酸、カルボン酸、1分子当たり2~6個の炭素原子を有するオキソ酸、1分子当たり2~6個の炭素原子を有する飽和ジカルボン酸からなる群から選択される有機酸、及びオキソ酸又は飽和ジカルボン酸と1~4個の炭素原子を有するアルコールとの低級アルキルエステルが挙げられる。生分解剤はまた、例えば、リパーゼ、セルラーゼ、エステラーゼ、及びこれらの組み合わせなどの酵素を含んでもよい。他の種類の生分解剤及び分解剤としては、リン酸セルロース、リン酸デンプン、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、水酸化リン酸カルシウム、グリコール酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、無水コハク酸、グルタル酸、酢酸、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0158】
フィラメント及びそれから製造されるステープル繊維は、フィラメントに特定の特性又は特徴を付与するために、捲縮後に加えられるトップコート仕上げ剤を含んでもよい。このようなトップコート仕上げ剤材料としては、リン酸塩、硫酸塩、アンモニウム塩、及びこれらの組み合わせが挙げられる。少量の他の成分、例えば、界面活性剤、帯電防止剤、湿潤剤、酸化防止剤、殺生物剤、防食剤、pH調整剤、乳化剤、及びこれらの組み合わせも、仕上げ剤の安定性及び/又は加工性を高めるために存在してもよい。フィラメントに仕上げ剤を適用する任意の好適な方法が使用されてもよく、これには例えば、噴霧、ウィック適用、浸漬、又は圧搾、リック、若しくはキスローラの使用を挙げることができる。
【0159】
トップコート仕上げ剤は、例えば、捲縮機の後、カッターの前、又はカッターの後を含む、フィラメントの形成中の1つ以上の時点で添加されてもよい。
【0160】
一態様において、又は任意の言及された態様との組み合わせにおいて、閉じたC字形フィラメントを作製するためのプロセスであって、このプロセスは、a)セルロースアセテートドープを提供する工程と、b)ドープを、少なくとも1つのD字形オリフィスを有する少なくとも1つの紡糸口金を通して押出して、湿潤フィラメントを形成する工程と、c)湿潤フィラメントから揮発性物質を除去するように適合された装置内で湿潤フィラメントを乾燥させて、閉じたC字形フィラメントを形成する工程と、を含む、プロセスも提供される。
【0161】
D字形紡糸口金を製造する際に、実質的に円形のオリフィスを有する紡糸口金は、オリフィス上の2つの円周方向点と交差するコードによって閉鎖又は遮断される部分又はセグメントを有し、中心から円周上の2つの交点まで延びる2つの半径RとRとの間の角度によって定義される角度θを形成する。角度θは、望ましくは、90°より大きい、又は上記の値のいずれかである。
【0162】
乾燥工程は、湿潤フィラメントが装置に入る上部と、フィラメントが除去される底部とを有する乾燥装置で行われ、乾燥装置は、35立方フィート/分(cfm)~135cfmの上部空気流を有し、45℃~85℃、又は50℃~80℃、又は65℃~75℃の上部空気温度を有し、任意選択で35cfm~135cfm、又は上部空気流より少なくとも5cfm低い底部空気流も有し、55℃~120℃、又は65℃~115℃、又は70℃~100℃、又は上部空気温度より少なくとも2℃低い底部空気温度を有する。
【0163】
一態様において、又は前述の態様のいずれかとの組み合わせにおいて、フィラメント当たりのデニールが1~30である閉じたC字形フィラメントの一貫した、又は高い集合密度を得るための乾式紡糸プロセスが、以下によって提供される:
1.ドープ溶液を40℃~62℃の温度に維持されたフィルタを通過させて、加熱ドープ溶液を得る。
2.加熱されたドープ溶液を、D字形紡糸口金を通して押出して、フィラメントを製造する。
3.35cfm~135cfmの空気流を伴う温度で、かつ45℃~100℃未満の温度でフィラメントを乾燥させる。
4.フィラメントを40メートル/分~700メートル/分のドラフト比で延伸する。
【0164】
一態様において、又は前述の態様のいずれかとの組み合わせにおいて、フィラメント当たりのデニールが1~30である閉じたC字形フィラメントの一貫した、又は高い集合密度を得るための乾式紡糸プロセスが、以下によって提供される:
1.ドープ溶液を、40℃~62℃、又は45℃~60℃の温度に維持されたフィルタに通して、加熱されたドープ溶液を得る。
2.加熱されたドープ溶液を、D字形紡糸口金を通して押出して、フィラメントを製造する。
3.上部空気流、上部空気温度、底部空気流、及び底部空気温度でフィラメントを乾燥させ、底部空気流が上部空気流よりも少なくとも1cfm低く、底部空気温度が上部空気温度よりも少なくとも1℃低い。
4.少なくとも1.05のドラフト比で、任意選択的に200メートル/分~900メートル/分の巻き取り速度でフィラメントを延伸する。
【0165】
一態様において、又は上述の態様のいずれかとの組み合わせにおいて、1~30のデニールを有する一貫した閉じたC字形フィラメントを得るための乾式紡糸プロセスが、以下によって提供される:
1.ドープ溶液を、40℃~62℃、又は45℃~60℃の温度に維持されたフィルタに通して、加熱されたドープ溶液を得る。
2.加熱されたドープ溶液を、D字形紡糸口金を通して押出して、フィラメントを製造する。
3.100~125cfmの上部空気流、85℃超~100℃の上部空気温度、上部空気流よりも少なくとも1cfm低い底部空気流でフィラメントを乾燥させ、下部空気流が上部空気流よりも少なくとも1cfm低く、下部空気温度が上部空気温度よりも少なくとも1℃低い。
4.少なくとも1.01、又は少なくとも1.05、又は少なくとも1.1、又は少なくとも1.2のドラフト比で、任意選択で400メートル/分~900メートル/分の巻き取り速度で、フィラメントを延伸する。
上記のプロセス態様の各々において、シータ角は、上記で表された範囲のいずれかであり得る。
【0166】
実験
以下の実施例からフィラメントを調製する際に、フィラメントをエーテル溶媒で洗浄して紡糸仕上げ剤を除去した。次いで、フィラメントをフレームにわたって延伸し、一緒にエポキシ接着して、カプセル化されたフィラメントの剛性ロッドを形成した。25グラムのElectron Microscopy Sciences(登録商標)Epo-Fix低粘度樹脂を3gの硬化剤と共に混合した。この混合物に、0.5mLの染料混合物(14gのORCO.RTM.Orcocil Red B染料、エタノール760mL中)を添加した。混合物を均質になるまでゆっくりと撹拌した。1.5mLのマイクロ遠心分離管をエポキシ混合物で3/4容量まで満たした。フィルタロッドから厚さ10mmの試験片を切り取り、エポキシの上に置いた。フィルタにエポキシを吸収させ、チューブをトレイに入れ、制御された実験室環境に最大12時間放置して、エポキシ混合物を硬化させ、フィルタロッド試験片を埋め込んだ。プライヤでチューブの底部を傾けることによって、試験片をチューブから取り出した。
【0167】
エポキシ化フィラメントをフィラメント軸に対して垂直に切断して、3ミクロンの厚さを有するサンプルを形成した。サンプルをカバープレート付きの顕微鏡スライド上に縦に置き、観察し、写真撮影した。試験片の画像分析は、以下の技術によって行った:試験片をOlympusMZ-130x85電動顕微鏡ステージ上に置いた。5倍又は10倍のいずれかの倍率設定を有効にした。BX61 STREAM Motionシステムソフトウェアを開いた。ソフトウェアの「Process Manager」の「Define MIA scanning area with stage」機能を使用して、試験片の左上隅及び右下隅を識別した。ソフトウェアによって示されるように各フレームに焦点を合わせ、画像収集プロセスを実行し、データを保存した。ソフトウェアを使用して、フィルタロッド断面全体の単一のステッチ画像を生成することができる。
【0168】
計算(試験方法ECCF-A-FE-G-MIC-2-1):
比表面積:
比表面積は以下の式を用いて計算される:
比表面積=周囲長/(面積×密度)
式中、周囲長はミクロン単位であり、面積は平方ミクロン単位であり、密度はグラム/立方センチメートル単位である。
【0169】
外接半径:
外接半径は、以下の式を用いて計算される:
外接半径=(幅+(長さ/2))/(2×幅)-1、長方形の場合、最長フェレは長さであり、幅は最長フェレに垂直である。「フェレ」は、物体の特定の方向における尺度を指す。
【0170】
形状係数:
形状係数は以下の式によって計算される:
形状係数=周囲長/(等価円周)=周囲長/(4×π×面積)
式中、周囲長はミクロン単位であり、面積は平方ミクロン単位である。等価円周は、測定されたフィラメント断面積を有する円の円周である。
【0171】
デニール:
デニールは、ASTM D1577-01に従ってFAVIMAT振動計手順を使用して測定された9000メートル当たりのグラム単位での長さに対するフィラメントの重量の尺度である。
【0172】
実施例1及び2
実質的に閉じたC字断面構成を有するフィラメントを調製した。2.5~28.5重量%の平均置換度を有するセルロースアセテートを含有する均質なセルロースアセテート紡糸ドープ溶液を調製した。水-0.5%、二酸化チタン(TiO-0.4%、残りは溶媒としてのアセトンである。ドープを以下の条件下で乾式紡糸した:
【0173】
【表1】
【0174】
この作業で評価された1つのパラメータは、押出ドープ温度であった。実際のドープ温度は、紡糸口金の直前の最終濾過を通って流れる際にドープを温める水の温度を監視することによって推定することができる。この温度は、キャンドルフィルタ水温(CFWT)と呼ばれ、押出されたドープは、この温度に温められると理解される。
【0175】
紡糸口金孔セグメント角度は、円周交差を有するコードの端部である、直線から外れてコード化された円の一部として定義され、角度「θ」は円の中心から各円周方向交点まで外向きに測定される。これは図1により詳細に示されている。本明細書で使用される場合、「紡糸口金孔セグメント角度」という用語は、シータ(「θ」)角と互換的に使用されてもよく、そのパラメータ及び特性は上述されている。得られたフィラメントは、6.7デニール/フィラメント(dpf)を有していた。図3は、実施例1で製造されたアセテートフィラメントの断面の500倍の倍率で撮影された方法A光学顕微鏡画像を示し、図4は、実施例2で製造されたアセテートフィラメントの断面の500倍の倍率で撮影された方法A光学顕微鏡画像を示す。図4の乱れたフィラメント断面形状のいくつかから見てとれるように、60℃でのシータの、dpfに対する増加(21/1の比のθ/dpf)は、閉じたC字形繊維の密度に影響を及ぼし始める。実施例2のドープ温度は60℃で、19/1を超えるθ/dpf比で許容可能であり、温度を低下させるか、又は温度範囲の上限におけるθ/dpfを低下させることによって、更に閉じたC字形密度の改善を行うことができる。
【0176】
比較例1及び2
異なるセグメント角度を有する紡糸口金を使用して、フィラメントを作製した。実施例1の均質なセルロースアセテート紡糸ドープ溶液を、表2に示す条件下で乾式紡糸した。得られたフィラメントのdpfは全て6.7であった。ドープを以下の表2に示す条件下で乾式紡糸した。
【表2】
【0177】
図5及び6は、それぞれ比較例C1及びC2について製造されたアセテートフィラメントの断面の500倍の倍率で撮影された光学顕微鏡画像を示す。これらの画像から、紡糸口金孔セグメント角度がフィラメント断面形成に影響を与えることが明らかである。
【0178】
実施例3
実質的に閉じたC字断面構成を有するフィラメントを調製した。2.5の平均置換度を有する28.5重量%のセルロースアセテート、0.5%の水を含有し、紡糸溶液の残りが溶媒としてのアセトンである均質なセルロースアセテート紡糸ドープ溶液を調製した。ドープを以下の条件下で乾式紡糸した:
【表3】
【0179】
図7は、実施例3で製造されたアセテートフィラメントの閉じたC字断面形状の高集合密度の、500倍の倍率で撮影された方法Bによる光学顕微鏡画像を示す。
【0180】
比較例C3及びC4
実施例3の均質なセルロースアセテート紡糸ドープ溶液を使用し、表4に示す条件下で紡糸乾燥した。
【0181】
【表4】
【0182】
図8は、比較例C3について製造されたアセテートフィラメントの断面の500倍の倍率で撮影された方法Bによる光学顕微鏡画像を示す。
【0183】
図9は、比較例C4について製造されたアセテートフィラメントの断面の500倍の倍率で撮影された方法Bによる光学顕微鏡画像を示す。
【0184】
比較例C3及びC4の画像は、低いドープ温度及び55℃の実施例3と同じ温度であっても、これらのフィラメントのいずれも、実施例3の実質的に閉じた中空構成を示さなかったことを実証する。更に、比較例C3及び実施例1は両方とも、同じ紡糸口金孔セグメント角度を利用したが、異なるdpf値及びドープ温度では、それぞれの画像に示されるように異なるフィラメント断面形状を生じた。
【0185】
比較例C5~C7
実施例3の紡糸口金を使用して、押出されたドープの温度を紡糸パラメータとして評価した。実施例3の均質なセルロースアセテート紡糸ドープ溶液からフィラメントサンプルを作製し、60、65、70、及び75Cのドープ温度及び表5に示すパラメータで乾燥紡糸した。
【表5】
【0186】
図10~13は、それぞれ比較例C5~C8について製造されたアセテートフィラメントの断面の、500倍の倍率で撮影された方法Bによる光学顕微鏡画像を示す。実施例3及びC5~C7から見てとれるように、より低いdpf値は、実質的に閉じた中空構成を示すフィラメント断面を作製するために60℃未満のドープ温度を必要とする。
【0187】
実施例4
実質的に閉じたC字断面構成を有するフィラメントを調製した。実施例3の均質なセルロースアセテート紡糸ドープ溶液からフィラメントサンプルを作製し、表6に示す加工条件で乾式紡糸した。
【0188】
【表6】
図14は、実施例4で製造されたアセテートフィラメントの閉じたC字断面形状の高集合密度集合の、500倍の倍率で撮影された方法Bによる光学顕微鏡画像を示す。
【0189】
比較例C9~C11
実施例4の紡糸口金を使用して、押出されたドープの温度を紡糸パラメータとして評価した。実施例4の均質なセルロースアセテート紡糸ドープ溶液からフィラメントサンプルを作製し、60、65、及び70℃のドープ温度並びに表7に示すパラメータで乾式紡糸した。
【表7】
【0190】
図15~17は、それぞれ比較例C9~C11について製造されたアセテートフィラメントの断面の、500倍の倍率で撮影された方法Bによる光学顕微鏡画像を示す。実施例4及び比較例C9~C11からのフィラメントを比較すると、dpfが6未満、例えば4である場合、60℃以上のドープ温度は、フィラメントの少なくとも50パーセントが閉じたC字断面構成を有する製品をもたらさない。図15は満足のいくものではないが、60℃のドープ温度は、65℃又は70℃よりもこの温度でより多くの閉じたC字形フィラメントが作製されたため、この温度が転換点であることが分かる。
【0191】
実施例5
実質的に閉じたC字断面構成を有するフィラメントを調製した。実施例3の均質なセルロースアセテート紡糸ドープ溶液からフィラメントサンプルを作製し、表8に示す加工条件で乾式紡糸した。
【表8】
【0192】
図18は、実施例5で製造されたアセテートフィラメントの断面の、500倍の倍率で撮影された方法Bによる光学顕微鏡画像を示す。見てとれるように、フィラメントの少なくとも90%は閉じたC字構成を有する。
【0193】
比較例C12~C14
実施例4の紡糸口金を使用して、押出されたドープの温度を紡糸パラメータとして評価した。実施例4の均質なセルロースアセテート紡糸ドープ溶液からフィラメントサンプルを作製し、60、65、及び70°Cのドープ温度並びに表9に示すパラメータで乾式紡糸した。
【表9】
【0194】
図19~21は、それぞれ比較例C12~C14について製造されたアセテートフィラメントの断面の、500倍の倍率で撮影された光学顕微鏡画像を示す。比較例C12~C14と実施例5との比較から、より低いdpfフィラメントについて60℃以上のより高いドープ温度が、実質的に閉じたC字形構成を示さない多数の断面を生成することが明らかである。
【0195】
実施例6~9
実施例3の均質なセルロースアセテート紡糸ドープ溶液から実施例1の紡糸口金を使用してフィラメントサンプルを作製した。紡糸口金孔セグメント角度は、実施例1でのものと同じであった。加工条件は以下の表10に示す通りであった。
【0196】
【表10】
【0197】
図22~25は、それぞれ、実施例6~9で製造されたアセテートフィラメントの断面の、500倍の倍率で撮影された方法Aを使用した光学顕微鏡画像を示す。実施例6の断面形状の品質は、許容可能であるが、限界であり、ドープ温度が40℃に近づくにつれて悪化し始める。より高いドープ温度、実施例1の最大60℃で改善が見られる。
【0198】
比較例C15
実施例3の均質なセルロースアセテート紡糸ドープ溶液から実施例1の紡糸口金を使用してフィラメントサンプルを作製した。紡糸口金孔セグメント角度は、比較例C15については実施例1でのものと同じであった。加工条件は以下の表10に示す通りであった。比較例C15では、ドープ温度を変化させ、加えて、上部空気温度は実施例1でのものより低く、底部空気温度は実施例1でのものより高かった。加工条件を表11に示す。
【0199】
【表11】
【0200】
図26は、比較例C15で製造されたアセテートフィラメントの断面の、500倍の倍率で撮影された方法Aによる光学顕微鏡画像を示す。比較例C15と実施例1及び6~9との比較から、62℃のドープ温度では、許容できない閉じたC字形状の集合密度が生じることが明らかである。
【0201】
実施例10
実施例1からのフィラメントをトウバンドに加工し、次いでフィルタロッドに加工した。フィラメントを標準量の鉱油ベースのトウ潤滑剤で処理し、フィラメントを20捲縮/インチで捲縮して、合計28,000デニールのトウを作製した。標準AF2Eプラグメーカを使用して、トウをフィルタロッドに変換したところ、表12に示すフィルタロッド加工パラメータ及び特性を有した。
【表12】
【0202】
比較例C16及びC17
比較例16は、6.7 dpfの「Y」字断面フィラメントを利用して総デニール28,000のトウにし、次いで実施例10と同じ方法でフィルタロッドに変換したところ、実施例10に示したものと同じフィルタロッド加工パラメータ及び特性を有していた。
【0203】
比較例C17は、6.7dpfの規則的又は雲状断面フィラメントを利用して総デニール28,000のトウにし、次いで実施例10と同じ方法でフィルタロッドに変換したところ、実施例10に示したものと同じフィルタロッド加工パラメータ及び特性を有していた。
【0204】
実施例10並びに比較例C16及びC17のフィルタロッドを、フィルタロッドトウ重量に対する圧力低下に関する3点能力曲線によって示される濾過性能について評価した。結果を図27に示す。グラフにおいて、Y字形断面を有するフィラメントを含むフィルタロッドは三角形によって表される。規則的又は雲状形状は円又はドットによって表され、閉じたC字は四角によって表される。全てのフィラメントのdpfは6.7であった。このグラフでは、閉じたC字形断面を有するトウフィラメントが、規則的な(丸い)形状のフィラメント又はY字形状のフィラメントのいずれかよりも低い単位重量当たりの圧力低下を与えたことが明らかである。
【0205】
実施例11
実質的に閉じたC字断面構成を有するフィラメントを調製した。実施例3の均質なセルロースアセテート紡糸ドープ溶液からフィラメントサンプルを作製し、表13に示す加工条件で乾式紡糸した。
【0206】
【表13】
【0207】
図28は、方法Bを使用して実施例11で製造されたアセテートフィラメントの断面の、500倍の倍率で撮影された光学顕微鏡画像を示す。見てとれるように、フィラメントの少なくとも98%ではないとしても、少なくとも95%は、閉じたC字構成を有する。
【0208】
実施例12
実質的に閉じたC字断面構成を有するフィラメントを調製した。実施例3の均質なセルロースアセテート紡糸ドープ溶液からフィラメントサンプルを作製し、以下の表14に示す加工条件で乾式紡糸した。
【表14】
【0209】
図29は、方法Bを使用してこの実施例で製造されたアセテートフィラメントの断面の、500倍の倍率で撮影された光学顕微鏡画像を示す。図29に見てとれるように、フィラメントの少なくとも98%ではないとしても、少なくとも95%は、閉じたC字構成を有する。
【0210】
比較例C18及びC19
異なる紡糸口金孔セグメント角度(すなわち、154°及び160°)を使用したことを除いて、実施例12で利用したのと同じドープ、dpf、及び加工条件を使用して比較フィラメントを製造した。操作及び加工条件を以下の表15に示す。
【表15】
【0211】
図30及び31は、方法Bを使用した比較アセテートフィラメントの断面の500倍の倍率で撮影した光学顕微鏡画像を示す。図30及び図31に示すように、それぞれC18及びC19の比較フィラメントは、一貫して「開いたC」字形繊維のみを生成する。したがって、C18及びC19は、154°以上の紡糸口金孔セグメント角度(シータ角)が、本明細書で説明されるように、閉じたC字形フィラメントを一貫して生成し得ないことを実証する。
【0212】
本発明を詳細に説明してきて、当業者であれば、本明細書に開示及び説明した本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、本発明の様々な形態に変更を加えることができることを理解するであろう。したがって、本発明の範囲は、図示及び説明された特定の態様に限定されるものではなく、むしろ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその均等物によって決定されるものであることが意図されている。更に、本明細書に示される全ての特許、特許出願、刊行物、及び参考文献は、本発明の実施に関連する任意の開示について、その全体が参照により組み込まれる。
図1
図2
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
【国際調査報告】