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特表2024-526605超安定ゼオライト及び遷移アルミナを有するFCC触媒及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】超安定ゼオライト及び遷移アルミナを有するFCC触媒及びその使用
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/06 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
B01J29/06 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580398
(86)(22)【出願日】2022-06-29
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 US2022035528
(87)【国際公開番号】W WO2023278581
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】63/217,050
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594066006
【氏名又は名称】アルベマール コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アイヤンペルマル,エスワラモーティ
(72)【発明者】
【氏名】フォスター,エドワード・リー
(72)【発明者】
【氏名】ルドヴィグ,マリア・マーガレット
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA09
4G169BA01A
4G169BA02B
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BA10B
4G169BA44A
4G169BB04A
4G169BC41B
4G169CC07
4G169ZA05A
4G169ZC01
4G169ZC08
4G169ZE04
4G169ZF03A
4G169ZF03B
4G169ZF05B
4G169ZF07A
4G169ZF07B
(57)【要約】
触媒の調製工程及びカイまたはガンマ、もしくはギブサイトアルミナの使用を備える触媒。したがって、一つの実施形態では、本発明は、ピリジン吸着FT-IRにおいて吸着温度を200から400℃に上昇させた場合の全ルイス酸度保持率が少なくとも15%超であり、アンモニアTPD測定において脱着温度を300から400℃に上昇させた場合の全酸度保持率が少なくとも35%超である超安定化Yゼオライト(USYゼオライト)と、少なくとも2つの異なる種類のアルミナであって、そのうち少なくとも一つのアルミナが分散性結合アルミナゾルであり、他のアルミナが約37.6(311)、45.8(400)及び67(440)の2θにXRDピークを有する遷移アルミナ相のもの(本明細書ではガンマアルミナと称する)であるか、または2θ値が37、43及び67°の特性XRDピークを有する準安定相を含むアルミナ(本明細書ではカイアルミナと称する)、あるいは非解膠性ギブサイトアルミナが、2θ値が18、20.3及び38°の特性XRDピークを有する(本明細書ではギブサイトアルミナと称する)、少なくとも2つの異なる種類のアルミナとを含むFCC触媒組成物を提供する。さらに、カイまたはガンマまたはギブサイトアルミナの総量は、0重量%超から約20~30重量%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピリジン吸着FT-IRにおいて吸着温度を200から400℃に上昇させた場合の全ルイス酸度保持率が少なくとも15%超であり、アンモニアTPD測定において脱着温度を300から400℃に上昇させた場合の全酸度保持率が少なくとも35%超であるUSY/RE-USYゼオライトと、少なくとも2つの異なる種類のアルミナであって、そのうち少なくとも一つのアルミナが分散性結合アルミナゾルであり、第2のアルミナが約37.6(311)、45.8(400)及び67(440)の2θにXRDピークを有する遷移アルミナ相であるもの、及び/または2θ値が37、43及び67°の特性XRDピークを有する準安定相を含むアルミナ、もしくは2θが値18、20.3及び38°の特性XRDピークを有する非解膠性ギブサイトアルミナである、前記少なくとも2つの異なる種類のアルミナとを含む、FCC触媒組成物。
【請求項2】
前記分散性結合アルミナが、約15~約35重量%の量の準結晶性ベーマイトであり、約20~約60重量%の1種以上のゼオライト、約0~約35重量%の微結晶性ベーマイト、0重量%超~約25重量%のシリカ、及び残部の粘土をさらに含む、請求項1に記載のFCC触媒組成物。
【請求項3】
少なくとも1種のアルミナが分散性結合アルミナゾルであり、少なくとも1種のアルミナが約37.6(311)、45.8(400)及び67(440)の2θにXRDピークを有する遷移アルミナ相のものである、少なくとも2つの異なる種類のアルミナを含む、請求項1に記載のFCC触媒組成物。
【請求項4】
少なくとも1種のアルミナが分散性結合アルミナゾルであり、少なくとも1種のアルミナが、2θ値が37、43及び67°の特性XRDピークを有する準安定カイ相のアルミナである、少なくとも2つの異なる種類のアルミナを含む、請求項1に記載のFCC触媒組成物。
【請求項5】
前記遷移アルミナ相がガンマアルミナまたはギブサイトである、請求項1に記載のFCC触媒。
【請求項6】
前記遷移アルミナが約20nm未満の結晶子サイズを有する、請求項3に記載のFCC触媒。
【請求項7】
前記遷移アルミナが約10nm未満の結晶子サイズを有する、請求項4に記載のFCC触媒。
【請求項8】
前記遷移アルミナが、前記分散性結合アルミナゾルのアルミナを熱処理することによって調製される、請求項1に記載のFCC触媒。
【請求項9】
前記遷移アルミナが、準結晶ベーマイトを熱処理することによって調製される、請求項1に記載のFCC触媒。
【請求項10】
カイ相アルミナの量が0重量%超~約10重量%である、請求項3に記載のFCC触媒。
【請求項11】
遷移アルミナの量が0重量%超から約30重量%である、請求項1に記載のFCC触媒。
【請求項12】
全アルミナ量が約35重量%超である、請求項1~3のいずれかに記載のFCC触媒。
【請求項13】
供給原料からより多くの液体成分を製造するための工程であって、
a)請求項1または2に記載のFCC触媒組成物を提供し、
b)前記FCC触媒組成物を、約400~約650℃の範囲の1つまたは複数の温度で、約0.5~約12秒の範囲の滞留時間で、供給原料と接触させる、
ステップを含む、前記工程。
【請求項14】
前記供給原料が炭化水素供給原料である、請求項14に記載の工程。
【請求項15】
前記供給原料が、炭化水素及び植物油(大豆油、キャノーラ油、トウモロコシ油、パーム油、ナタネ油など)、バイオマスまたはプラスチックの任意の熱処理によって得られる廃油、タロー油または熱分解油、及びそれらの任意の組み合わせである、請求項14に記載の工程。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、触媒組成物、及び炭化水素、例えば、供給原料の処理から得られるような炭化水素を含む供給物をクラッキングまたは転化する工程における当該触媒組成物の使用であって、当該工程が底部転化率の増加及びコークス選択率の増加を示し、その結果、コークスの製造が少なくなるような、当該触媒組成物及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
不均一系触媒の設計と製造における一般的な課題は、活性サイトの有効性及び/または接近のしやすさと、触媒粒子に十分な物理的強度、すなわち耐消耗性を与えるという点における固定化マトリックスの有効性との間に、良い妥協点を見出すことである。
【0003】
耐摩耗性触媒の調製は、いくつかの先行技術文献に開示されている。US4,086,187は、(i)ナトリウム含有量が5重量%未満であるフォージャサイト型ゼオライト、(ii)カオリン、(iii)ペプチド化擬ベーマイト、及び(iv)ポリケイ酸アンモニウムを混合することによって調製された水性スラリーを噴霧乾燥することによる、耐摩耗性触媒の調製工程を開示している。US4,206,085に記載の耐摩耗性触媒は、2種類の酸性化擬ベーマイト、ゼオライト、アルミナ、粘土、及びポリケイ酸アンモニウムまたはシリカゾルのいずれかを混合することによって調製されたスラリーを噴霧乾燥することによって調製される。
【0004】
GB1315553は、ゼオライト、粘土及びアルミナバインダーを含む耐摩耗性の炭化水素転化触媒の調製を開示している。その触媒は、まずゼオライトと粘土を乾式混合し、次いでアルミナゾルを添加することによって調製される。その後、得られた混合物を塑性的な稠度になるまで混合するが、それには約20分の混合時間を要する。成形された粒子を形成するために、塑性稠度はペレット化または押し出し成形されるか、または水と混合され、その後噴霧乾燥される。この英国特許明細書に開示されているアルミナゾルは、水酸化アルミニウムと三塩化アルミニウムを4.5~7.0のモル比で含む(アルミニウムクロロヒドロールとも呼ばれる)。
【0005】
US4,458,023は同様の調製方法に関するもので、噴霧乾燥した粒子の焼成が続く。アルミニウムクロロヒドロール成分は、焼成中にアルミナバインダーに転化する。WO96/09890は、耐摩耗性流動接触分解触媒の調製工程を開示している。この工程では、硫酸アルミニウム/シリカゾル、粘土スラリー、ゼオライトスラリー、及びアルミナスラリーを混合し、次いで噴霧乾燥する。この際、酸またはアルカリに安定な界面活性剤が、シリカゾル、粘土スラリー、ゼオライトスラリー、アルミナスラリー、及び/または噴霧乾燥スラリーに添加される。CN1247885もまた、噴霧乾燥分解触媒の調製に関する。この調製法では、アルミナゾル、擬ベーマイト、モレキュラーシーブ、粘土、及び無機酸を含むスラリーを使用する。この工程では、アルミナゾルは粘土と無機酸を添加する前にスラリーに添加され、モレキュラーシーブスラリーは無機酸を添加した後に添加される。一つの実施形態によれば、始めにアルミニウムゾルが擬ベーマイトと混合され、続いて無機酸が添加される。酸性化後、モレキュラーシーブが添加され、続いてカオリンが添加される。
【0006】
WO02/098563は、高い耐摩耗性と高い接近のしやすさを併せ持つFCC触媒の調製工程を開示している。この触媒は、ゼオライト、粘土、及びベーマイトをスラリー化し、そのスラリーを成形装置に供給し、混合物を成形して粒子を形成することによって調製され、成形ステップの直前に混合物が不安定化されることを特徴とする。この不安定
化は、例えば、温度上昇、pH上昇、pH低下、またはゲル誘導剤、例えば、塩、リン酸塩、硫酸塩、及び(部分的に)ゲル化したシリカなどの添加によって達成される。不安定化の前に、スラリー中に存在するペプチド化可能な化合物はすべて、十分にペプチド化されていなければならない。
【0007】
WO06/067154は、FCC触媒、その調製及びその使用について記載している。それは、高い耐摩耗性と高い接近のしやすさを併せ持つFCC触媒の調製工程を開示している。この触媒は、粘土、ゼオライト、ナトリウムを含まないシリカ源、準結晶性ベーマイト、及び微結晶性ベーマイトをスラリー化し、ただし、このスラリーは解膠された準結晶性ベーマイトを含まないものとし、b)そのスラリーに一価の酸を添加し、c)そのスラリーのpHを3を超える値に調整し、そしてd)そのスラリーを成形して粒子を形成することによって調製される。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、供給炭化水素よりも低分子量の転化生成炭化水素化合物、例えば高ガソリン留分を含む生成物を製造するために、特定の触媒組成物上で炭化水素または炭化水素ブレンド供給物を分解するための工程において採用されることを意図したFCC触媒に関する。本発明の独特の特徴は、他のアルミナに加えて、ガンマアルミナ及び/またはカイ相もしくはギブサイト相アルミナを含むアルミナ、及び/またはそれらの組み合わせを使用することである。
【0009】
したがって、一つの実施形態では、ピリジン吸着FT-IRにおいて吸着温度を200から400℃に上昇させた場合の全ルイス酸度保持率が少なくとも15%超であり、アンモニア温度プログラム脱着(TPD)測定において脱着温度を300から400℃に上昇させた場合の全酸度保持率が少なくとも35%超である超安定化Yゼオライト(USYゼオライト)と、少なくとも2つの異なる種類のアルミナであって、そのうち少なくとも一つのアルミナが分散性結合アルミナゾルであり、他のアルミナが約37.6(311)、45.8(400)及び67(440)の2θにXRDピークを有する遷移アルミナ相のもの(本明細書ではガンマアルミナと称する)であるか、または2θ値が37、43及び67°の特性XRDピークを有する準安定相を含むアルミナ(本明細書ではカイ相を有するアルミナと称する)、もしくは非解膠性ギブサイトアルミナが、2θ値が18、20.3及び38°の特性XRDピークを有する(本明細書ではギブサイトアルミナと称する)、少なくとも2つの異なる種類のアルミナとを含む、FCC触媒組成物を提供した。さらに、カイ相またはガンマ相、もしくはギブサイト相であるアルミナの総量は、0重量%超から約30重量%である。
【0010】
得られた触媒は、当該技術分野で知られている触媒よりも改善された利点を示す。例えば、改良された触媒は底部転化率の向上を示す。
【0011】
さらなる実施形態では、石油留分原料を分解するための工程が提供され、当該工程は以下のステップを含む:
a)ピリジン吸着FT-IRにおいて吸着温度を200から400℃に上昇させたときの全ルイス酸度保持率が少なくとも15%超であり、アンモニアTPD測定において脱着温度を300から400℃に上昇させたときの全酸度保持率が少なくとも35%超であるUSYゼオライトと、少なくとも2つの異なる種類のアルミナであって、そのうち少なくとも一つのアルミナが分散性結合アルミナゾルであり、他のアルミナが約37.6(311)、45.8(400)及び67(440)の2θにXRDピークを有する遷移アルミナ相のもの、または2θ値が37、43及び67°の特性XRDピークを有する準安定相を含むアルミナであるか、もしくは非解膠性ギブサイトアルミナが、2θ値が18、20.3及び38°の特性XRDピークを有する、少なくとも2つの異なる種類のアルミナとを
含むFCC触媒組成物を提供する;
b)FCC触媒を、当該石油留分原料、または0重量%超の植物油(大豆、カノーラ、トウモロコシ、パーム、ナタネなど)、廃油、獣脂、及び/またはバイオマスもしくはプラスチックの任意の熱処理によって得られる熱分解油、及びこれらの組み合わせのブレンドと、400~650℃の範囲の温度で、0.5~12秒の範囲の滞留時間で接触させる。
【0012】
本発明のこれら及びさらに他の実施形態、利点及び特徴は、添付の特許請求の範囲を含む以下の詳細な説明からさらに明らかになるであろう。
【発明の詳細な説明】
【0013】
特に断りのない限り、本明細書で使用される重量%(1~10重量%)は、特定の物質または特定の物質の形態が構成要素または成分である製品の総乾燥基準重量に基づく、当該特定の形態の物質の乾燥基準重量%である。さらに、本明細書において何らかの態様で好ましいとされるステップまたは成分もしくは要素について記述する場合、それらは本開示の最初の日付の時点で好ましいものであり、そのような好ましい態様(複数可)は、当然、当該技術分野における所定の状況または将来の発展に応じて変化し得ることを理解すべきである。
【0014】
一般的な手順
典型的には、改良された触媒を製造する工程の第一ステップは、粘土源と、シリカと、ガンマアルミナを含む1つ以上のアルミナ(ベーマイト)源とを混合することである。粘土、ゼオライト、準結晶ベーマイト(QCB)、微結晶ベーマイト(MCB)、ガンマアルミナ、カイアルミナ、ギブサイトアルミナ、及びシリカ、ならびに希土類成分などの任意の他の成分は、乾燥固体として水に添加することによってスラリー化することができる。あるいは、個々の材料を含むスラリーを適宜混合してスラリーを形成する。材料の一部をスラリーとして、他を乾燥固体として添加することも可能である。任意で他の成分、例えばアルミニウムクロロヒドロール、硝酸アルミニウム、Al、Al(OH)、アニオン性粘土(例えばヒドロタルサイト)、スメクタイト、セピオライト、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、カルシウムケイ酸塩、マグネシウムケイ酸塩、チタン酸マグネシウム、混合金属酸化物、層状ヒドロキシ塩、追加のゼオライト、酸化マグネシウム、塩基または塩、及び/またはアルカリ土類金属(例えばMg、Ca、Ba)、IIIA族遷移金属、IVA族遷移金属(例えばTi、Zr)、VA族遷移金属(例えばV、Nb)、VIA族遷移金属(例えばCr、Mo、W)、VIIA族遷移金属(例えばMn)、VIIIA族遷移金属(例えばFe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Pt)、IB族遷移金属(例えばCu)、IIB族遷移金属(例えばZn)、ランタニド(例えばLa、Ce)、またはそれらの混合物を含む化合物のような金属添加剤を添加してよい。これらの化合物の添加順序は問わない。また、これらの化合物をすべて同時に配合することも可能である。
【0015】
「ベーマイト」という用語は、当業界では、酸化アルミニウム-水酸化アルミニウム[AlO(OH)]に近いX線回折(XRD)パターンを示すアルミナ水和物を記載するために使用されている。さらに、ベーマイトという用語は、一般に、異なる量の水和水を含み、異なる表面積、細孔容積、比密度を有し、熱処理によって異なる熱特性を示す広範囲のアルミナ水和物を記載するために使用される。しかし、それらのXRDパターンは、特徴的なベーマイト[AlO(OH)]ピークを示すものの、通常、その幅が異なり、位置がずれることもある。XRDピークの鋭さとその位置は、結晶化度、結晶サイズ、及び欠陥の量を示すために使用されてきた。
【0016】
大別すると、ベーマイトアルミナには準結晶ベーマイト(QCB)と微結晶ベーマイト(MCB)の2つのカテゴリーがある。当技術水準では、準結晶ベーマイトは擬ベーマイ
トやゲル状ベーマイトとも呼ばれている。通常、これらのQCBはMCBよりも表面積が大きく、細孔や細孔容積が大きく、比密度が低い。それらは水や酸に容易に分散し、結晶サイズはMCBより小さく、水和水分子の数が多い。QCBの水和の程度は、幅広い値を持つことができ、例えば、Al1モル当たり約1.4モルから約2モルまでの水が、八面体層間に通常規則正しく、あるいはその他の方法で挿入される。市販されている代表的なQCBには、Pural(登録商標)、Catapal(登録商標)及びVersal(登録商標)製品群などがある。
【0017】
微結晶ベーマイトは、高い結晶化度、比較的大きな結晶サイズ、非常に小さい表面積、高い密度によってQCBと区別される。QCBとは対照的に、MCBはより大きなピーク強度と非常に狭い半値幅を持つXRDパターンを示す。これは、挿入された水分子の数が比較的少なく、結晶サイズが大きく、バルク材料の結晶化度が高く、結晶の欠陥が少ないためである。典型的には、挿入される水分子の数は、Al1モルあたり約1から約1.4の範囲で変化し得る。市販されている代表的なMCBは、CondeaのP-200(登録商標)である。
【0018】
MCBとQCBは粉末X線反射によって特徴付けられる。ICDDにはベーマイトの項目があり、(020)、(021)及び(041)面に対応する反射が存在することになることを確認している。銅放射線では、そのような反射は14、28及び38°の2θに現れることになる。反射の正確な位置は、結晶性の程度と介在する水の量に依存する。介在する水の量が増えると、(020)反射はより低い値に移動し、それはより大きなd間隔に対応する。とはいえ、上記の位置に近い線は、1種類以上のベーマイト相の存在を示すことになる。本明細書では、(020)反射の半値全幅(FWHH)が1.5°2θ以上のものを準結晶ベーマイトと定義する。(020)反射の半値全幅(FWHH)が1.5°2θより小さいものは微結晶ベーマイトと見なされる。スラリーは、最終触媒を基準として、好ましくは約1~約50重量%、より好ましくは約15~約35重量%の非ペプチド化QCBを含む。スラリーはまた、最終触媒を基準として約1~約50重量%、より好ましくは約0~約35重量%のMCBを含む。
【0019】
本出願の独特の態様は、FCC触媒と第3のアルミナ源との組み合わせである。本発明の第三のアルミナは、ガンマ相を含む非解膠性アルミナ、またはカイ相を含む非解膠性アルミナ、もしくは非解膠性ギブサイト相アルミナ及び/またはそれらの組み合わせである。本発明は、ガンマ相またはカイ相またはギブサイト相アルミナを含む非解膠性アルミナを約1~約30重量%含有する。
【0020】
ガンマアルミナは、アルミナの遷移相と理解されている。ベーマイトまたは擬ベーマイトは、熱処理を施すことによってガンマアルミナに転化され得る。典型的には、ベーマイトまたは擬ベーマイトは、500~800℃(好ましくは約600℃~800℃)で約1~4時間処理される。ガンマアルミナ相は、約37.6(311)、45.8(400)及び67(440)の2θのXRDピークによって示される。本発明の目的のためには、結晶子サイズの小さいガンマアルミナを利用することが好ましい。具体的には、約20nm未満の結晶子サイズのガンマアルミナを利用することが好ましい。約10nm未満の結晶子サイズのガンマアルミナを利用することがより好ましい。さらに、ガンマアルミナは非結合性であるため、粒径の小さいガンマアルミナを利用することが好ましい。粒径の小さい(<5.0ミクロン)ことが、ガンマアルミナの利点を生かしながら、触媒の物理的特性への影響を最小限に抑えることを保証する。ガンマアルミナの総量は、最終触媒を基準として0重量%超から約30重量%である。
【0021】
カイ相はアルミナの準安定相で、非解膠性である。それは、37、43及び67°の2θ値の特徴的なXRDピークを有する。それは、ギブサイトアルミナを中程度の温度(3
00~700℃)範囲で熱処理することで得られる。カイ相は、アルミナ含有カイ相成分としてスラリーに導入される。そして、典型的には、カイ相含有アルミナ成分は、約1~25%のカイ相アルミナを含む。
【0022】
ギブサイトは、水酸化アルミニウムの鉱物形態のひとつであり、岩石ボーキサイトを構成する3つの主要相のひとつであるという点で、アルミニウムの重要な鉱石である。基本構造は、連結した八面体の積層シートを形成している。各八面体は6つの水酸化物基と結合したアルミニウムイオンで構成され、各水酸化物基は2つのアルミニウム八面体によって共有される。非解膠性ギブサイトアルミナは、2θ値が18、20.3及び38°の特徴的なXRDピークを持つ。ギブサイトアルミナの総量は、最終触媒を基準として0重量%超から約30重量%である。
【0023】
添加されるシリカの総量は0重量%超から約25重量%である。シリカ源は、典型的には低ナトリウムシリカ源、酸性またはアンモニア安定化シリカであり、初期スラリーに添加される。そのようなシリカ源の例としては、珪酸カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸リチウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、珪酸アンモニウム、珪酸バリウム、珪酸ストロンチウム、珪酸亜鉛、珪酸リン、及び珪酸バリウムが挙げられるが、これらに限定されない。適切な有機ケイ酸塩の例は、シリコーン(ポリメチルフェニルシロキサン及びポリジメチルシロキサンなどのポリオルガノシロキサン)及びSi-O-C-O-Si構造を含む他の化合物、ならびにそれらの前駆体、例えばメチルクロロシラン、ジメチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン及びそれらの混合物である。好ましい低ナトリウムシリカ源は、ナトリウム安定化塩基性コロイダルシリカまたは酸もしくはアンモニア安定化コロイダルシリカである。
【0024】
また、粘土はナトリウム含量が少ないか、ナトリウムを含まないことが好ましい。好適な粘土としては、カオリン、ベントナイト、サポナイト、セピオライト、アタパルジャイト、ラポナイト、ハロイサイト、ヘクトライト、イングリッシュクレー、ハイドロタルサイトのようなアニオン性粘土、及びメタカオリンのような加熱処理または化学処理された粘土が挙げられる。スラリーは、好ましくは約5~約70重量%、より好ましくは約10~約60重量%、最も好ましくは約10~約50重量%の粘土を含む。
【0025】
次のステップでは、一価の酸を懸濁液に加え、消化を起こさせる。有機及び無機の一価酸の両方、またはそれらの混合物を使用することができる。適切な一価の酸の例は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、メチルスルホン酸硝酸、及び塩酸である。酸は、7より低いpH、より好ましくは1~4のpHを得るのに十分な量でスラリーに添加される。
【0026】
一種以上のゼオライトが任意の時点で添加されるが、好ましくは一価の酸の添加後である。本発明による工程で使用されるゼオライトは、好ましくは、低いナトリウム含有量(1.5重量%未満のNaO)を有するか、またはナトリウムを含まない。ステップa)のスラリー中に存在するのに適したゼオライトとしては、HY、USY、脱アルミY、RE-Y及びRE-USYを含むY-ゼオライト、ゼオライトベータ、ZSM-5、リン活性化ZSM-5、イオン交換ZSM-5、MCM-22、及びMCM-36、金属交換ゼオライト、ITQ、SAPO、ALPO、ならびにこれらの混合物などのゼオライトが挙げられる。スラリーは、好ましくは、最終触媒を基準として20~60重量%の1種以上のゼオライトを含む。
【0027】
さらに、任意に、希土類成分が、酸化物形態基準で約0.1~約10重量%の量で、塩または溶液の形で混合物に添加される。適切な希土類元素の例としては、ランタン、イットリウム及びセリウムが挙げられるが、これらに限定されない。希土類は、典型的には、水酸化物、塩化物、酸化物、硝酸塩、硫酸塩、オキシ塩化物、酢酸塩、または炭酸塩とし
て添加される。好ましくは、硝酸ランタン及び/または硝酸イットリウムは、塩または溶液の形で、酸化物形態基準で約0.1~約10重量%の量で添加される。希土類成分は、上述したアルミナの解膠(または消化)の前または後に添加することができる。
【0028】
本発明のもう一つの独特な態様は、超安定化Yゼオライトの存在である。特に、USYゼオライトは、ピリジン吸着FT-IRにおいて吸着温度を200から400℃に上昇させたときの全ルイス酸度保持率が少なくとも15%超であり、アンモニアTPD測定において脱着温度を300から400℃に上昇させたときの全酸度保持率が少なくとも35%超である。USYは、非USYゼオライトと比較して、メソ孔性が改善/向上しており、制御された酸性度と酸点密度を有するという特徴がある。USYにおけるメソ孔性の増加は、ゼオライト細孔内へのより重質な炭化水素分子の拡散性を改善し、ゼオライト構造内の酸点との相互作用を強化する。また、USYの制御された酸点密度は、これらのより重い分子を選択的に分解するのに役立ち、その結果、細孔内のコークス析出が少なくなり、FCC触媒の微小孔性非USYゼオライトに比べてゼオライトの安定性が向上する。Yゼオライトのメソ孔性を高め、酸性度を変更する方法は様々である。Yゼオライトにメソ孔を形成させるより古典的な方法は、高温での水蒸気焼成であり、格子からAlを除去して空孔を形成させ(脱アルミ)、ケイ素種が空孔に移動することでゼオライト骨格が安定し、メソ孔が形成される。ケイ素の移動は骨格のSiO2/Al2O3比を増加させ、その結果、非USYゼオライトと比較して酸点密度が減少する。メソ孔の生成と酸点密度の減少の程度は、水蒸気焼成/脱アルミの程度によって制御できる。
【0029】
上記のスラリーは、次に高剪断ミキサーに通され、そこでpHを上昇させることにより不安定化される。スラリーのpHはその後3超、より好ましくは3.5超、さらに好ましくは4超の値に調整される。スラリーのpHは7より高くないのが好ましいが、これはpHがより高いスラリーは取り扱いが困難な場合があるからである。pHは、塩基(例えば、NaOHまたはNHOH)をスラリーに添加することによって調節することができる。pH調節から成形ステップd)までの時間は、好ましくは30分以下、より好ましくは5分未満、最も好ましくは3分未満である。このステップでは、スラリーの固形分含量は、好ましくは約10~約45重量%、より好ましくは約15~約40重量%、最も好ましくは約20~約35重量%である。
【0030】
次いで、このスラリーを成形する。適切な成形方法としては、噴霧乾燥、パルス乾燥、ペレット化、押出成形(任意に混練と組み合わせる)、ビーズ化、または触媒及び吸収剤の分野で使用される他の慣用的な成形方法、もしくはそれらの組み合わせが挙げられる。好ましい成形方法は、噴霧乾燥である。触媒を噴霧乾燥により成形する場合、噴霧乾燥機の入口温度は好ましくは300~600℃の範囲であり、出口温度は好ましくは105~200℃の範囲である。
【0031】
結果として得られる触媒
そうして得られた触媒は、極めて良好な耐摩耗性及び接近のしやすさを有する。従って、本発明はまた、本発明による工程によって得られる触媒に関する。その触媒は、一般に、ピリジン吸着FT-IRにおいて吸着温度を200から400℃に上昇させたときの全ルイス酸度保持率が少なくとも15%超であり、アンモニアTPD測定において脱着温度を300から400℃に上昇させたときの全酸度保持率が少なくとも35%超であるUSYゼオライトと、少なくとも2つの異なる種類のアルミナであって、そのうち少なくとも一つのアルミナが分散性結合アルミナゾルであり、他のアルミナが約37.6(311)、45.8(400)及び67(440)の2θにXRDピークを有する遷移アルミナ相のもの、及び/または2θ値が37、43及び67°の特性XRDピークを有する準安定相を含むアルミナであるか、あるいはギブサイトアルミナが、2θ値が18、20.3及び38°の特性XRDピークを有する、少なくとも2つの異なる種類のアルミナとを含むF
CC触媒組成物である。さらに、結果として得られる触媒は、約20~約60重量%の1種以上のゼオライト、約15~約35重量%の分散性結合アルミナとしての準結晶性ベーマイト、約0~約35重量%の微結晶性ベーマイト、0重量%超~約25重量%のシリカ、任意に希土類成分、及び残部の粘土を含んでよい。
【0032】
これらの触媒は、FCC触媒またはFCC添加剤として、水素化分解触媒、アルキル化触媒、改質触媒、ガス-液体転化触媒、石炭転化触媒、水素製造触媒、及び自動車触媒に使用することができる。従って、本発明はまた、流動接触分解、水素化分解、アルキル化、改質、ガス-液体転化、石炭転化、及び水素製造における触媒または添加剤、及び自動車触媒としての、本発明の工程によって得られるこれらの触媒の使用に関する。
【0033】
本発明の工程は、特に流動接触分解(FCC)に適用できる。FCC工程では、その詳細は一般に知られているが、触媒は、一般に、90重量%超の約5~約300ミクロンの範囲の直径を有する粒子を含む微粒子として存在する。反応器部では、炭化水素供給原料がガス化され、反応ゾーンを通って上方に導かれ、微粒子触媒が炭化水素供給原料流に巻き込まれて流動化する。再生器から供給される高温の触媒は、炭化水素供給と反応し、炭化水素供給は気化し、触媒によって分解される。典型的には、反応器内の温度は400~650℃であり、圧力は減圧、大気圧下、または超大気圧下であってよいが、通常はおよそ大気圧~約5気圧である。触媒工程は固定床、移動床、流動床のいずれでもよく、炭化水素の流れは触媒の流れと並流でも向流でもよい。本発明の工程は、TCC(熱接触分解)またはDCC(深接触分解)にも適している。さらに、炭化水素供給原料は、0重量%超の植物油(大豆、カノーラ、トウモロコシ、パーム、ナタネなど)、廃油、獣脂、及び/またはバイオマスもしくはプラスチックの任意の熱処理によって得られる熱分解油、及びこれらの組み合わせのブレンドを含んでよい。
【実施例
【0034】
ラボ試験に先立ち、触媒は精製装置内の触媒をシミュレーションするために失活されなければならず、それは、典型的には、水蒸気によって行われる。これらのサンプルは、水蒸気存在下における分解、ストリッピング、再生工程を備えるNi/Vを用いた循環失活、もしくは高温での100%水蒸気による失活によって失活された。これらは、FCC触媒の失活方法として工業的に認められたものである。失活工程は当該技術分野で知られており、触媒活性に必要である。商業的なFCC環境では、失活は触媒導入の直後に行われ、別工程として実施する必要はない。
【0035】
接近のしやすさの測定:
以下の実施例に従って調製した触媒の接近のしやすさは、トルエンで希釈した50mlの真空ガスオイルを入れた攪拌容器に触媒1gを添加して測定した。この溶液を容器と分光光度計の間で循環させ、その過程でVGO濃度を連続的に測定した。
【0036】
アンモニアの温度プログラム脱着(NH3-TPD):どんな触媒材料の全酸性度や酸点の強度も、アンモニアをプローブ分子とする温度プログラム脱着法で測定することができる。脱着したアンモニアの量が全酸性度を示し、脱着温度が酸点の強さを示す。本手順は、酸度測定のASTM D4824法に非常に近い。ASTM D4824が容積法であるのに対し、本手順は重量法に基づく温度プログラム脱着法である。本方法では、温度上昇中に脱着するアンモニアの量を測定することにより、試料の表面と細孔内の酸性度を決定する。実験は熱重量分析装置(Mettler Toledo TGA)を用いて行われる。試料は空気中600℃で少なくとも1時間予備焼成される。約50mg~100mgの試料を、TGA装置内で窒素中、600℃で約30分間加熱して再処理し、温度を100℃まで下げる。続いて、窒素気流を伴ったアンモニア流を30~60分間試料上に導き、酸点に吸着させる。その後、物理的に吸着されたアンモニア分子は、100℃の窒
素中で30~60分間、フラッシュステップによって除去された。実際の温度プログラム脱着はその後に行われる。600℃まで昇温し、脱着中の重量変化をモニターする。脱着したアンモニアの量は重量変化として記録される。酸点の量は、脱着中の重量変化を用いて、乾燥試料1g当たりの脱着されたアンモニアの量(ミリモル)として表される。
【0037】
ピリジン吸着のFTIR分光法(ピリジンFT-IR):全酸度及び酸点の種類(ルイスまたはブロンステッド)は、ピリジンをプローブ分子として用いたFTIR分光法により定量することができる。測定は、高温透過セル(Specac)を備えたFTIR装置(Thermo Fisher)によって行われる。ゼオライト粉末試料を自己支持型ウェハー(約15~30mg、直径13mm)にプレスし、ウェハーを空気中600℃で約1時間焼成した。その後、試料ウェハーをIRセルに移し、窒素中で500℃~600℃、約15分間再処理した。温度を200℃まで下げた後、ピリジンを窒素流と供にIRセルに1時間通し、その後同温度で約60分間真空処理する。その後、200℃での脱着のスペクトルが、400~3800cm-1の領域で、2cm-1のスペクトル分解能で記録される。このスペクトルは、より良いベースラインを得るために、通常約100℃で測定される。より高い温度での脱着では、IRセル温度を設定温度まで上昇させ、窒素流下でIRセルをその温度に1時間保持する。その温度での脱着のスペクトルは、セルを100℃まで冷却した後に記録される。ルイス酸点とブレンステッド酸点の特徴的な吸収バンド(それぞれ1450cm-1と1545cm-1)が積分される。ルイス酸点とブレンステッド酸点の定量化のために、1450cm-1と1545cm-1の吸収バンドの積分には、見かけの積分吸収係数2.22(ルイス酸点用)と1.67(ブレンステッド酸点用)が採用される。
【0038】
前節で説明したように、USYと通常のYゼオライトのブレンステッド酸度とルイス酸度をピリジン吸着FT-IR分光法で測定した。そのプロファイルを下図に示す。1545cm-1のピークはブレンステッド酸点を示し、1455cm-1のピークはルイス酸点を示す。各ピーク下の面積が酸点の量とみなされる。UCSが異なる通常のRE-YとRE-USYは、どちらも同様のFT-IRプロファイルを示したが、全酸度は大きく異なる。
【表1】
【0039】
ブレンステッド酸点とルイス酸点の両方を200℃と400℃で定量した。それらの値を下表に示す。すべてのUSYゼオライトは、通常のRE-Yゼオライトと比較して、脱離温度を200から400℃に上げると、ルイス酸点の保持率が高くなることは注目に値する。USYゼオライトは、脱着温度を200から400℃に上昇させた場合、ルイス酸点の保持率が15%超であるのに対し、通常のYゼオライトは、ルイス酸点の保持率が15%未満である。USYゼオライトは、ケイ素が挿入されている可能性があるため、骨格SiO2/Al2O3比が高く、より強いルイス酸点が形成される。このような強いルイス酸点は、炭化水素分解反応、特により重い分子の分解に好影響を与える可能性がある。
【表2】
【0040】
同様に、これらのゼオライトの酸性度プロファイルを、前節で説明したように、アンモニアをプローブ分子として用いた温度プログラム脱着法によって測定した。一般に、300℃以下の脱着は弱酸点及び中酸点から脱着したアンモニアとみなされ、300℃を超える脱着は強酸点から脱着したアンモニアとみなされる。
【表3】
【0041】
下記の表に示す低温領域と高温領域の両方におけるUSYゼオライトと非USYゼオラ
イトの酸性度データは、USYゼオライトは300℃と比較して400℃で少なくとも40%の保持率を有することを示している。非USYゼオライトの酸度保持率は低く、USYゼオライトの強酸部位が炭化水素クラッキング反応に何らかの影響を及ぼし得ることを示している。
【表4】
【0042】
実施例1
以下の実施例1では、RE-Yゼオライト(非USY)のみを含めて調製されたFCC触媒を参照触媒として、UCSが24.52ÅのUSYと2つの異なる水準の遷移相(ガンマ)アルミナを含めて調製された触媒との比較を記述している。この比較では、総RE2O3を含む他の活性成分はすべて等しくした。これらの触媒を、工業的に実用化されている循環失活法によりNiとVで失活させ、残油フィードオイルを用いたACEでその性能を評価した。下表に示すように、RE-Yゼオライトのみを含んで調製された参照触媒と比較して、USYとガンマアルミナを含んで調製された触媒は、底部の高品質化の改善を示した。
【表5】
【0043】
実施例2
以下の実施例2では、UCSが24.57ÅのUSYと約7%のカイ相を含むアルミナを、RE-Yゼオライトのみを含めて調製された参照触媒と比較した。前述の実施例と同様に、これらの触媒は失活され、残油フィードオイルを用いたACEでテストされた。ここでも、USYとカイ相を含むアルミナを含む触媒は、参照触媒と比較して底部クラッキングの改善を示した。
【表6】
【0044】
実施例3
下記の実施例では、UCSが24.57ÅのRE-USYと遷移アルミナ(ガンマ相)を含めて調製された触媒を、RE-Yを含めて調製された触媒と比較した。ここでも、USYとガンマアルミナを使用した触媒の性能上の利点が、特に底部の高品質化能力において明確に示されている。
【表7】
【国際調査報告】