IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニーの特許一覧

特表2024-526607微粒子フィルタの改良又はそれに関する改良
<>
  • 特表-微粒子フィルタの改良又はそれに関する改良 図1
  • 特表-微粒子フィルタの改良又はそれに関する改良 図2
  • 特表-微粒子フィルタの改良又はそれに関する改良 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】微粒子フィルタの改良又はそれに関する改良
(51)【国際特許分類】
   B28B 11/06 20060101AFI20240711BHJP
   B01D 46/00 20220101ALI20240711BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240711BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20240711BHJP
   B28B 1/00 20060101ALI20240711BHJP
   B01J 27/224 20060101ALI20240711BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20240711BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
B28B11/06
B01D46/00 302
B01D53/94 241
B01D53/94 222
B01D39/20 Z
B28B1/00 F
B01J27/224 A
F01N3/022 B
F01N3/24 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580439
(86)(22)【出願日】2022-08-03
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 GB2022052038
(87)【国際公開番号】W WO2023021265
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】63/260,466
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】アルルラージ、ケネシャリンガム
(72)【発明者】
【氏名】ベルハム、ピーター
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラー、ガイ
(72)【発明者】
【氏名】シフィー、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】コール、キーラン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】コリガン、クリス
(72)【発明者】
【氏名】マーヴェル、デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】モロー、フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ターナー、ジョン
【テーマコード(参考)】
3G091
3G190
4D019
4D058
4D148
4G055
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA17
3G091AA18
3G091AB02
3G091AB03
3G091AB05
3G091AB06
3G091AB13
3G091GA06
3G091GB05X
3G091GB06W
3G091GB07X
3G091GB17X
3G190AA12
3G190AA13
3G190BA01
3G190CA03
3G190CA13
3G190CB23
3G190CB24
3G190CB25
3G190CB26
4D019AA01
4D019BA01
4D019BA06
4D019BA07
4D019BC07
4D019BD01
4D019CA01
4D019CB02
4D019CB03
4D019CB04
4D019CB06
4D019CB09
4D058JA38
4D058JB02
4D058JB28
4D058MA44
4D058SA08
4D058TA06
4D148AA06
4D148AA08
4D148AA14
4D148AB01
4D148AB02
4D148AB08
4D148AB09
4D148BA02X
4D148BA03X
4D148BA05X
4D148BA06X
4D148BA09Y
4D148BA10Y
4D148BA30Y
4D148BA31Y
4D148BA33Y
4D148BA36Y
4D148BA39Y
4D148BB02
4D148DA03
4D148DA20
4G055AA08
4G055AB03
4G055AC10
4G055BA33
4G055BA35
4G169AA03
4G169BA15B
4G169BB15B
4G169BC09B
4G169BD05B
4G169CA03
4G169CA08
4G169CA09
4G169CA13
4G169DA06
4G169EA19
4G169EA25
4G169EE09
4G169FA02
4G169FB24
(57)【要約】
本開示は、排気ガスの処理のためのコーティングされたモノリス物品を形成する方法に関する。本方法は、多孔質モノリス物品をコーティング装置内に保持するステップであって、多孔質モノリス物品は、排気ガスの通過のための複数のチャネルを含み、各チャネルはガス接触表面を有する、保持するステップと、該チャネルのうちの少なくともいくつかのガス接触表面上に乾燥粉末としてセメント質粒子を堆積させるステップと、コーティングされたモノリス物品を提供するために、多孔質モノリス物品内でその場でセメント質粒子を液体又は気体試薬と反応させるステップと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスの処理のためのコーティングされたモノリス物品を形成する方法であって、
コーティング装置内に多孔質モノリス物品を保持するステップであって、前記多孔質モノリス物品は、排気ガスの通過のための複数のチャネルを含み、各チャネルはガス接触表面を有する、保持するステップと、
前記チャネルのうちの少なくともいくつかの前記ガス接触表面上に乾燥粉末としてセメント質粒子を堆積させるステップと、
前記コーティングされたモノリス物品を提供するために、前記多孔質モノリス物品内でその場で前記セメント質粒子を液体又は気体試薬と反応させるステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記モノリス物品は、モノリスフィルタ、任意選択的にウォールフローフィルタ、及び/又は触媒物品、任意選択的に触媒ウォールフローフィルタである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記セメント質粒子は無機粒子である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記セメント質粒子は、シリカート、アルミナート、若しくはアルミノシリカートを含むか、又はそれらからなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記セメント質粒子が水硬性セメント質粒子を含むか、又はそれからなり、前記セメント質粒子を前記液体又は気体試薬と反応させる前記ステップは、前記水硬性セメント質粒子を水和することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記水硬性セメント質粒子は、ケイ酸カルシウム、アルミン酸カルシウム、アルミノケイ酸カルシウム及び/若しくはアルミノフェライトカルシウムを含むか、又はそれらからなる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記液体又は気体試薬は、水分子を含むか、又は水分子からなる、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記水硬性セメント質粒子を水和する前記ステップは、前記チャネルに液相中の水分子を浸透させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記液相中の前記水分子はエアロゾル化されたミストを含み、前記チャネルに前記水分子を浸透させることは、任意選択的に、前記多孔質モノリス物品内に前記エアロゾル化されたミストを噴霧すること、及び/又は前記多孔質モノリス物品を通して前記エアロゾル化されたミストを引き込むことを含み、任意選択的に、前記エアロゾル化されたミストを前記噴霧すること及び/又は引き込むことは、前記コーティング装置を使用して実施される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記水硬性セメント質粒子を水和する前記ステップは、任意選択的に加湿チャンバ内で、気相中の水分子に前記チャネルを曝露することを含む、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記気相中の前記水分子は、加湿ガス、任意選択的に加湿空気を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記加湿ガスは、任意選択的に外部ポンプ及び/又は真空を使用して、前記多孔質モノリス物品を通して能動的に吹き込まれ、かつ/又は引き込まれる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記加湿ガスは、前記多孔質モノリス物品内に拡散及び/又は対流される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記加湿ガスは、60%、又は65%、又は70%、又は75%、又は80%、又は85%、又は90%、又は95%以上の相対湿度(RH)を有する、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記水硬性セメント質粒子を水和する前記ステップは、任意選択的に水熱オーブン内での水熱処理を含む、請求項5~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記水熱処理は、前記多孔質モノリス物品を40℃以上、又は60℃以上、又は80℃以上、又は100℃以上の周囲温度に供することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記水熱処理は、前記多孔質モノリス物品を80℃、又は100℃、又は120℃、又は150℃以下の周囲温度に供することを含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記水熱処理は、前記多孔質モノリス物品を2~24時間、任意選択的に4~12時間、任意選択的に6~8時間、前記加湿ガスに曝露することを含む、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記セメント質粒子はジオポリマー前駆体粒子を含むか、又はそれからなり、前記セメント質粒子を前記液体又は気体試薬と反応させる前記ステップは、前記ジオポリマー前駆体粒子を化学的に反応させることを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ジオポリマー前駆体粒子は、アルミノシリカート、ポゾラン、焼成粘土、メタカオリン、フライアッシュ、高炉スラグ、若しくはシリカフュームを含むか、又はそれらからなる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記液体又は気体反応物は、アルカリ、任意選択的にアルカリポリシリカート、任意選択的にケイ酸ナトリウム若しくはケイ酸カリウムを含むか、又はそれらからなる、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記セメント質粒子は、1~3g/cm、任意選択的に1.5~2.5g/cm、任意選択的に約2g/cmのタップ密度を有する、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記セメント質粒子は、5~60ミクロンのd50(体積による)を有する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記セメント質粒子を前記液体又は気体試薬と反応させる前記ステップは、前記モノリス物品が排気ガスの処理のためのデバイスに設置される前に実施される、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記チャネルのうちの少なくともいくつかの前記ガス接触表面上に乾燥粉末として前記セメント質粒子を堆積させる前記ステップは、前記多孔質モノリス物品の入口面の中に乾燥微粒子エアロゾルとして前記セメント質粒子を噴霧することを含み、任意選択的に、噴霧前の前記セメント質粒子はリザーバ内に乾燥微粒子として保持される、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記チャネルのうちの少なくともいくつかの前記ガス接触表面上に乾燥粉末として前記セメント質粒子を堆積させる前記ステップは、前記多孔質モノリス物品の出口面に真空を適用することによって、前記多孔質モノリス物品の入口面の中に、かつ前記チャネルに沿って、乾燥微粒子エアロゾルとして前記セメント質粒子を引き込むことを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記セメント質粒子は、3~10g/l、任意選択的に4.5~9g/l、任意選択的に4.5g/l、又は6g/l、又は9g/lの充填レベルで堆積される、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記コーティングされたモノリス物品は、排気ガスの処理のためのデバイスへのその設置前に未焼成のままである、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
請求項1~28のいずれか一項に記載の方法によって取得可能な、コーティングされたモノリス物品。
【請求項30】
排気ガスの処理のためのコーティングされたモノリス物品であって、排気ガスの通過のための複数のチャネルを含み、各チャネルはガス接触表面を有し、前記チャネルのうちの少なくともいくつかの前記ガス接触表面は、セメント系コーティングによって少なくとも部分的にコーティングされている、コーティングされたモノリス物品。
【請求項31】
前記セメント系コーティングは、水和ケイ酸カルシウム、水和アルミン酸カルシウム、水和アルミノケイ酸カルシウム及び/若しくは水和アルミノフェライトカルシウムを含むか、又はそれらからなる、請求項30に記載のコーティングされたモノリス。
【請求項32】
前記セメント系コーティングは、ジオポリマーを含むか、又はジオポリマーからなる、請求項30又は31に記載のコーティングされたモノリス。
【請求項33】
触媒された煤フィルタ(CSF)、選択的触媒還元フィルタ(SCRF)、リーンNOxトラップフィルタ(LNTF)、及びガソリン微粒子フィルタ(GPF)のうちの1つ以上である、請求項29~32のいずれか一項に記載のコーティングされたモノリス物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排気ガスの処理のためのコーティングされたモノリス物品を形成する方法及びコーティングされたモノリス物品に関する。例えば、本開示は、乾燥粉末としてモノリス物品のガス接触表面上にセメント質粒子を堆積させること、及び、コーティングされたモノリス物品を提供するために、モノリス物品内でその場でセメント質粒子を液体又は気体試薬と反応させることに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃エンジンからの、特に自動車用途のディーゼル及びガソリンエンジンからの、一般に煤と呼ばれる微粒子物質(particulate matter、PM)の排出に関する懸念事項が存在している。主な懸念事項は、潜在的な健康影響に関連し、具体的にはナノメートル範囲のサイズを有する非常に小さな粒子に関連するものである。
【0003】
ディーゼル微粒子フィルタ(diesel particulate filter、DPF)及びガソリン微粒子フィルタ(gasoline particulate filter、GPF)は、焼結金属、セラミック、又は金属繊維などを含む様々な材料を使用して製造されてきたが、実際の大量生産における最も一般的な種類は、本体の長さに沿って延びる多くの小さなチャネルのモノリシックアレイの形態で製作された多孔質セラミック材料から作製されるウォールフローの類である。交代チャネルは一方の端部で塞がれているため、排気ガスは多孔質セラミックチャネル壁を通るように押しやられ、多孔質セラミックチャネル壁は微粒子の大部分が通過することを阻止するため、濾過されたガスのみが環境に進入する。商業生産におけるセラミックウォールフローフィルタには、コーディエライトから作製されたもの、様々な形態の炭化ケイ素及びチタン酸アルミニウムが含まれる。車両上の実用的なフィルタの実際の形状及び寸法、並びにチャネル壁の厚さ及びその多孔度などの特性は、関係する用途に依存する。ガスが通過するセラミックウォールフローフィルタのフィルタチャネル壁内の細孔の平均寸法は、典型的には、5~50μmの範囲内にあり、通常は約20μmである。著しく対照的なことに、最新の乗用車の高速ディーゼルエンジンからのほとんどのディーゼル微粒子物質のサイズは非常に小さく、例えば10~200nmである。
【0004】
いくつかのPMは、フィルタ壁内の細孔構造内に保持され得るが、これは、いくつかの用途において、細孔がPMのネットワークによって架橋されるまで徐々に構築され得、このPMネットワークは次いで、フィルタチャネルの内壁上に微粒子のケーキを容易に形成させることになる。微粒子ケーキは、優れたフィルタ媒体であり、その存在により、非常に高い濾過効率が得られる。いくつかの用途では、煤は、堆積されるときにフィルタ上で連続的に燃焼され、これにより、微粒子ケーキがフィルタ上に蓄積されることが防止される。
【0005】
いくつかのフィルタ、例えば軽量ディーゼル微粒子フィルタでは、エンジン性能に有害であり、また燃費効率を低下させ得る過剰な背圧の増大を防止するために、トラップされたPMをフィルタから除去することが定期的に必要となる。ディーゼル用途では、保持されたPMは、プロセス中に空気中で燃焼させることによってフィルタから除去され、このプロセスの間、利用可能な空気の量、及び保持されたPMに点火するために必要な高温を達成するために使用される過剰燃料の量は、非常に注意深く制御される。通常は再生と呼ばれるこのプロセスの終わりに向けて、フィルタ内の最後に残留する微粒子の除去は、濾過効率を顕著に低下させ、多くの小さな粒子を環境へとバースト放出することにつながり得る。したがって、フィルタは、それらが最初に使用されるときに、それに続く各再生イベントの後に、また各再生プロセスの後半の部分の間に、低い濾過効率を有し得る。
【0006】
したがって、例えば、最初に使用されるときのフィルタの初期寿命の間、並びに/又は再生の間及びその直後、並びに/又はフィルタに煤が堆積したときにも、濾過効率を常に改善及び/又は維持することが望ましい。
【0007】
国際特許出願公開第2021/028691(A1)号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)には、最初に使用されるときのフィルタの初期寿命の間、及び/又は再生中とその直後、及び/又はフィルタに煤が堆積しているときの、改善された濾過効率を有するフィルタが、ある処理方法によって獲得され得ることが記載されており、該処理方法は、
a)リザーバに乾燥粉末を収容するステップと、
b)フィルタホルダ内にフィルタを配置するステップであって、フィルタは、入口面及び出口面を有する多孔質基材を備え、入口面と出口面とは、多孔質構造によって隔てられている、配置するステップと、
c)フィルタの出口面に減圧を適用することにより、フィルタの多孔質構造を通る一次ガス流を確立するステップと、
d)乾燥粉末をリザーバからフィルタの入口面の上流に配置された噴霧デバイスに移送するステップと、
e)乾燥粉末が一次ガス流に同伴され、フィルタの入口面を通過して多孔質構造に接触するように、噴霧デバイスを使用して、フィルタの入口面に向けて乾燥粉末を噴霧するステップと、を含む。
【0008】
国際特許出願公開第2021/028691(A1)号には、乾燥粉末が、ヒュームドアルミナ、ヒュームドシリカ、ヒュームドチタニア、シリカエアロゲル、アルミナエアロゲル、カーボンエアロゲル、チタニアエアロゲル、ジルコニアエアロゲル又はセリアエアロゲルのうちの1つ以上をどのように含み得るかが記載されている。特に、0.05g/Lのタップ密度及び5.97μmのd50を有するヒュームド酸化アルミニウムでコーティングされたフィルタの例が記載されている。フィルタは、乾燥粉末でコーティングした後に焼成されることが好ましい。
【0009】
この処理方法は、改善された濾過効率特性を有するフィルタを製造することが見出されているが、そのようなフィルタの処理を更に改善すること、特に、処理されたフィルタの耐久性を改善することが依然として望まれている。特に、乾燥形態でモノリス物品のガス接触表面上に堆積される粉末の耐水性及び接着性を改善することが望ましい。
【発明の概要】
【0010】
これから本開示の態様及び実施形態について説明する。本開示の一態様又は実施形態の1つ以上の特徴は、直近の文脈がそうでいないことを教示しない限り、本開示の任意の他の態様又は実施形態の1つ以上の特徴と組み合わされ得ることを当業者は認識するであろう。特に、好ましい又は有利であると示された任意の特徴は、好ましい又は有利であると示された任意の他の特徴又は複数の特徴と組み合わせることができる。
【0011】
第1の態様において、本開示は、排気ガスの処理のためのコーティングされたモノリス物品を形成する方法であって、
コーティング装置内に多孔質モノリス物品を保持するステップであって、多孔質モノリス物品は、排気ガスの通過のための複数のチャネルを含み、各チャネルはガス接触表面を有する、保持するステップと、
チャネルのうちの少なくともいくつかのガス接触表面上に乾燥粉末としてセメント質粒子を堆積させるステップと、
コーティングされたモノリス物品を提供するために、多孔質モノリス物品内でその場でセメント質粒子を液体又は気体試薬と反応させるステップと、を含む、方法を提供する。
【0012】
有利なことに、本出願人が発見したところによれば、セメント質粒子は、モノリス物品のガス接触表面上に乾燥形態で堆積され、その後にその場で反応させられて、使用中の水への曝露に対して高い耐性を示す、強く接着されたセメント系コーティングが提供され得る。
【0013】
本方法は、多孔質モノリス物品を提供することを含み、該多孔質モノリス物品は、排気ガスの通過のための複数のチャネルを含み、各チャネルはガス接触表面を有する。多孔質モノリス物品は、当該技術分野で周知である。多孔質モノリス物品は、基材、好ましくはハニカム基材、好ましくはセラミックハニカム基材と呼ばれることもある。そのような基材は、排気ガスの通過に好適な複数のチャネルを含む。チャネルは、平行であり、入口端部(又は第1の端部)から出口端部(又は第2の端部)まで延び、すなわち、チャネルは、物品を通って軸方向に延びる。典型的には、チャネルは正方形の断面を有するが、任意の既知のモノリス設計が採用され得る。
【0014】
多孔質モノリス物品/基材は、例えば、焼結金属、セラミック又は金属繊維などから形成されてもよい。例えば、物品は、コーディエライト、様々な形態の炭化ケイ素又はチタン酸アルミニウムから形成されてもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、モノリス物品はモノリスフィルタである。モノリスフィルタは、ウォールフローフィルタ(ウォールフローモノリス物品としても知られ得る)であることが特に好ましい。ウォールフローフィルタは周知であり、典型的には、隣接するチャネルは、モノリス物品の各端部で交互に塞がれ、そのため、使用時に、排気ガスは、入口チャネル(すなわち、排気ガスを受け取るためにモノリス物品の入口端部で開いているチャネル)に沿って通過し、チャネル壁を通過して隣接する出口チャネル(すなわち、モノリス物品の出口端部で開いているチャネル)に入るように強制される。
【0016】
チャネル壁は、必要とされる多孔性をモノリス物品に提供する微細孔の分布を有し、チャネル壁、例えばフィルタ壁における細孔の平均寸法は、典型的には5~50μmの範囲にある。各チャネルはガス接触表面を有する。すなわち、各チャネルは、使用時に例えば排気ガスと接触するのに好適な表面を有する。該表面は、チャネル壁表面及び/又はその中に含有される細孔によって提供されてもよい。
【0017】
別の特に好ましい実施形態では、多孔質モノリス物品は触媒物品(すなわち触媒物品)である。触媒多孔質モノリス物品は周知であり、酸化、NOx捕捉、又は選択的触媒還元活性などの触媒機能を示す。多孔質モノリス物品は、1つ以上のウォッシュコート、好ましくは触媒ウォッシュコートを含んでもよい。ウォッシュコートは、物品の多孔質構造をコーティングし、浸透する組成物である。次いで、当該1つ以上のウォッシュコートを含む物品は、好ましくは、次いで、本明細書に記載されるようにチャネル上にセメント質粒子を堆積させる前に焼成される。したがって、触媒物品は、例えば、三元触媒(three way catalyst、TWC)、NOx吸収剤、酸化触媒、選択的還元触媒(selective reduction catalyst、SCR)、炭化水素トラップ及びリーンNOx触媒から選択され得る。触媒物品は、1つ以上の白金族金属、特に白金、パラジウム、及びロジウムからなる群から選択されるものを含有し得る。
【0018】
特に好ましい実施形態では、多孔質モノリス物品は、触媒ウォールフローフィルタである。結果として、物品は、例えば、触媒された煤フィルタ(catalysed soot filter、CSF)、選択的触媒還元フィルタ(selective catalytic reduction filter、SCRF)、リーンNOxトラップフィルタ(lean NOx trap filter、LNTF)、ガソリン微粒子フィルタ(GPF)、アンモニアスリップ触媒フィルタ(ammonia slip catalyst filter、ASCF)、又はそれらの2つ以上の組み合わせ(例えば、選択的触媒還元(SCR)触媒とアンモニアスリップ触媒(ammonia slip catalyst、ASC)とを含むフィルタ)であり得る。
【0019】
フィルタの形状及び寸法、例えば、チャネル壁厚及びその多孔性などの特性は、フィルタの意図される用途に応じて異なり得る。フィルタは、内燃エンジンによって放出された排気ガスを濾過するために内燃エンジンとともに使用するように構成され得る。内燃エンジンは、ガソリン火花点火エンジンであり得る。しかしながら、フィルタは、ディーゼル又はガソリンエンジンの形態の内燃エンジンとともに使用するように構成された場合、特定の用途を見出す。
【0020】
いくつかの実施形態では、セメント質粒子は無機粒子である。好ましくは、セメント質粒子は、シリカート、アルミナート、又はアルミノシリカートを含むか、又はそれらからなる。セメント質粒子は、単一化合物又は化合物の混合物からなってもよい。
【0021】
いくつかの好ましい実施形態では、セメント質粒子は水硬性セメント質粒子を含むか、又はそれからなり、セメント質粒子を液体又は気体試薬と反応させるステップは、水硬性セメント質粒子を水和することを含む。
【0022】
いくつかの特に好ましい実施形態では、水硬性セメント質粒子は、ケイ酸カルシウム、アルミン酸カルシウム、アルミノケイ酸カルシウム及び/若しくはアルミノフェライトカルシウムを含むか、又はそれらからなる。
【0023】
特に好ましい実施形態では、液体又は気体試薬は、水分子を含むか、又は水分子からなる。
【0024】
いくつかの実施形態では、水硬性セメント質粒子を水和するステップは、液相中の水分子をチャネルに浸透させることを含む。例えば、液相中の水分子はエアロゾル化されたミストを含んでもよく、チャネルに水分子を浸透させることは、エアロゾル化されたミストを多孔質モノリス物品内に噴霧すること、及び/又はエアロゾル化されたミストを多孔質モノリス物品を通して引き込むことを含んでもよい。エアロゾル化されたミストを噴霧すること及び/又は引き込むことは、コーティング装置を使用して実施され得る。
【0025】
しかしながら、好ましい実施形態では、水硬性セメント質粒子を水和するステップは、例えば加湿チャンバ内で、気相中の水分子にチャネルを曝露することを含む。
【0026】
特に好ましい実施形態では、気相中の水分子は、加湿ガス、例えば加湿空気を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、加湿ガスは、例えば外部ポンプ及び/又は真空を使用して、多孔質モノリス物品を通して能動的に吹き込まれ、かつ/又は引き込まれる。
【0028】
しかしながら、好ましい実施形態では、加湿ガスは、多孔質モノリス物品内に拡散及び/又は対流される。
【0029】
いくつかの実施形態では、加湿ガスは、60%、又は65%、又は70%、又は75%、又は80%、又は85%、又は90%、又は95%以上の相対湿度(RH)を有する。
【0030】
好ましい実施形態では、水硬性セメント質粒子を水和するステップは、例えば水熱オーブン内での水熱処理を含む。
【0031】
水熱処理は、多孔質モノリス物品を40℃以上、又は60℃以上、又は80℃以上、又は100℃以上の周囲温度に供することを含んでもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、水熱処理は、多孔質モノリス物品を80℃、又は100℃、又は120℃、又は150℃以下の周囲温度に供することを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、水熱処理は、多孔質モノリス物品を2~24時間、任意選択的に4~12時間、任意選択的に6~8時間加湿ガスに曝露することを含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、セメント質粒子は、ジオポリマー前駆体粒子を含むか、又はジオポリマー前駆体粒子からなり、セメント質粒子を液体又は気体試薬と反応させるステップは、ジオポリマー前駆体粒子を化学的に反応させるステップを含む。
【0035】
いくつかの好ましい実施形態では、ジオポリマー前駆体粒子は、アルミノシリカート、ポゾラン、焼成粘土、メタカオリン、フライアッシュ、高炉スラグ、若しくはシリカフュームを含むか、又はそれらからなる。
【0036】
いくつかの実施形態では、液体又は気体反応物は、アルカリ、好ましくはアルカリポリシリカート、より好ましくはケイ酸ナトリウム若しくはケイ酸カリウムを含むか、又はそれらからなる。
【0037】
いくつかの実施形態では、セメント質粒子は、1~3g/cm、任意選択的に1.5~2.5g/cm、任意選択的に約2g/cmのタップ密度を有する。
【0038】
いくつかの好ましい実施形態では、セメント質粒子は、5~60ミクロンのd50(体積による)を有する。
【0039】
セメント質粒子を液体又は気体試薬と反応させるステップは、モノリス物品が排気ガスの処理のためのデバイスに設置される前に実施される。例えば、反応させるステップは、モノリス物品が排気システムなどのデバイスに設置される前に、処理装置内で実施され得る。処理装置は、例えば、本明細書に記載されるコーティング装置、又は別個の水噴霧若しくは水霧化装置、又は水熱オーブンであってもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、チャネルのうちの少なくともいくつかのガス接触表面上に乾燥粉末としてセメント質粒子を堆積させるステップは、多孔質モノリス物品の入口面の中に乾燥微粒子エアロゾルとしてセメント質粒子を噴霧するステップを含む。いくつかの好ましい実施形態では、噴霧前のセメント質粒子は、リザーバ内に乾燥微粒子として保持される。
【0041】
したがって、本方法は、好ましくは、ガス接触表面上に、乾燥微粒子エアロゾルとしてセメント質粒子を噴霧することを含み得る。本方法は、モノリス物品上の複数のチャネルのガス接触表面上に、ガス中に(すなわちエアロゾルとして)懸濁された乾燥粉末(すなわち乾燥セメント質粒子)を噴霧することを含んでもよい。モノリス物品上に乾燥粉末を噴霧するための好適な方法及び装置は、例えば、国際公開第2011/151711(A1)号パンフレット、国際公開第2021028691(A1)号パンフレット及び国際公開第2021/028692(A1)号パンフレット(これらの全ての内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0042】
特に好ましい実施形態では、チャネルのうちの少なくともいくつかのガス接触表面上に乾燥粉末としてセメント質粒子を堆積させるステップは、多孔質モノリス物品の出口面に真空を適用することによって、多孔質モノリス物品の入口面の中に、かつチャネルに沿って、乾燥微粒子エアロゾルとしてセメント質粒子を引き込むことを含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、セメント質粒子は、1.5~15g/l、任意選択的に3~10g/l、任意選択的に4.5~9g/l、任意選択的に4.5g/l、又は6g/l、又は9g/lの充填レベルで堆積される。
【0044】
コーティングされたモノリス物品は、排気ガスの処理のためのデバイスへのその設置前に未焼成のままであることが特に好ましい。
【0045】
本開示の方法の1つの主要な利点は、モノリス物品が、乾燥粒子の堆積後に、粒子をガス接触表面に付着させるために、焼成などの高温処理を必要としないことである。その代わりに、セメント質粒子はその場で化学的に反応させられてセメント系コーティングを形成する。本明細書で使用される場合、「高温処理」は、フィルタの焼成に典型的な温度、例えば典型的には400℃又は500℃を超える温度で実施されるプロセスを指し、150℃以下の高温で実施されるプロセスと対比されるべきである。
【0046】
焼成ステップではなく化学反応ステップを使用することにより、コーティングされたモノリス物品の製造に必要なエネルギーが低減される。加えて、本方法は、モノリス物品中に存在する任意の触媒粒子に対する高温の潜在的に有害な影響を回避し、触媒粒子がモノリス物品チャネルにより効果的に保持され、付着されることを可能にする。
【0047】
第2の態様において、本開示は、上述の第1の態様の方法によって取得可能なコーティングされたモノリス物品を提供する。
【0048】
第3の態様では、本開示は、排気ガスの処理のためのコーティングされたモノリス物品を提供し、該モノリス物品は、排気ガスの通過のための複数のチャネルを含み、各チャネルはガス接触表面を有し、チャネルのうちの少なくともいくつかのガス接触表面は、セメント系コーティングによって少なくとも部分的にコーティングされている。
【0049】
特に好ましい実施形態では、セメント系コーティングは、水和ケイ酸カルシウム、水和アルミン酸カルシウム、水和アルミノケイ酸カルシウム及び/若しくは水和アルミノフェライトカルシウムを含むか、又はそれらからなる。
【0050】
いくつかの実施形態では、セメント系コーティングは、ジオポリマーを含むか、又はジオポリマーからなる。
【0051】
好ましい実施形態では、コーティングされたモノリス物品は、触媒された煤フィルタ(CSF)、選択的触媒還元フィルタ(SCRF)、リーンNOxトラップフィルタ(LNTF)、及びガソリン微粒子フィルタ(GPF)のうちの1つ以上である。
【0052】
本明細書において、「乾燥粉末」という用語は、液体中に懸濁又は溶解されない微粒子組成物を指す。このことは、全ての水分子が完全に存在しないことを必ずしも意味するものではない。乾燥粉末は、好ましくは易流動性である。
【0053】
本明細書では、「タップ密度」という用語は、欧州薬局方7.0のセクション2.9.35の方法1に従って、1250回のタップで測定された粉末のタップ密度を指す。
【0054】
本明細書では、「g/l」という用語(グラム/リットル)は、所与の基材の質量をモノリス物品の体積で割ったものを指す。
【0055】
本明細書では、乾燥粉末の量を指す場合の「充填」及び「質量充填」という用語は、モノリス物品に添加された乾燥粉末の質量を指すものであり、モノリス物品への乾燥粉末の添加前及び添加後にモノリス物品を秤量することによって測定され得るものである。
【0056】
本明細書では、「d50(体積による)」という用語は、Malvern PanalyticsLtd,(Malvern,UK)から入手可能なAero s分散ユニット付きのMalvern Mastersizer(登録商標)3000によって測定されたd50(体積による)測定値を指す。分散条件:空気圧=2barg、供給速度=65%、ホッパー間隙=1.2mm。Malvern Mastersizer(登録商標)3000 User Manualに提供される指示に従って、屈折率及び吸収パラメータを設定する。
【0057】
本明細書では、「真空発生器」という用語は、減圧を生成するように機能する装置又は装置の組み合わせを指す。好適な装置の非限定的な例としては、ベンチュリ原理に基づいて動作する真空発生器、真空ポンプ、例えば、回転翼及び液封真空ポンプ、並びに渦流ブロワが挙げられる。
【0058】
本明細書では、「圧力センサ」という用語は、絶対圧力及び/又は相対圧力を測定するように機能する装置又は装置の組み合わせを指す。好適な装置の非限定的な例としては、ダイヤフラム式圧力変換器であり得る圧力変換器が挙げられる。例えば、WIKA Alexander Wiegand SE&Co.KG(Klingenberg,Germany)から入手可能なWika(登録商標)P30圧力発信器が使用され得る。
【0059】
本明細書では、「コントローラ」という用語は、ハードウェア及び/又はソフトウェアを含み得る機能を指す。コントローラは、制御ユニットを備えてもよいか、又は専用若しくは共有のコンピューティングリソース上で稼働するコンピュータプログラムであってもよい。コントローラは、単一のユニットを備えてもよいか、又は動作可能に接続された複数のサブユニットから構成され得る。コントローラは、1つの処理リソース上に配置されてもよいか、又は空間的に分離された処理リソースにわたって分散され得る。コントローラは、マイクロコントローラ、1つ以上のプロセッサ(1つ以上のマイクロプロセッサなど)、メモリ、構成可能なロジック、ファームウェアなどを含み得る。
【0060】
本明細書において、範囲及び量は、「約」特定の値又は範囲として表現され得る。「約」はまた、正確な量を含む。例えば、「約2μm」は、「約2μm」を意味するとともに、「2μm」をも意味する。一般に、「約」という用語は、実験誤差内であると予想される量を含む。「約」という用語は、提供される値の5%未満~5%超以内である値を含み得る。例えば、「約2μm」は、「1.9μm~2.1μm」を意味する。
【0061】
本明細書において、乾燥粉末が「からなる」という表現は、当業者によって認識されるように通常遭遇するような不可避の不純物を除いて、特定の成分のみから本質的になる乾燥粉末を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
ここで、添付の図を参照して、単に例として本開示について説明する。
【0063】
図1】本開示による、乾燥粉末でモノリス物品をコーティングするための装置の概略図である。
図2図1の装置を使用してモノリス物品をコーティングするための方法を組み込んだ、本開示によるコーティングされたモノリス物品を製造するための方法を示すフロー図である。
図3図2のステップS29の更なる詳細を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本開示によれば、排気ガスの処理のためのコーティングされたモノリス物品を形成するための方法が提供される。本方法は、多孔質モノリス物品の少なくともいくつかのチャネルの1つ以上のガス接触表面上に乾燥粉末としてセメント質粒子を堆積させるステップと、次いで、コーティングされたモノリス物品を生産するために、多孔質モノリス物品内でその場でセメント質粒子を液体又は気体試薬と反応させるステップと、を含む。
【0065】
ガス接触表面上にセメント質粒子を堆積させるステップは、コーティング装置内に保持された多孔質モノリス物品を用いて実施される。様々なコーティング装置を使用して、セメント質粒子を堆積させることができる。以下の説明では、コーティング装置1の1つの好ましい実施形態について、図1を参照して例として説明する。
【0066】
図1は、コーティング装置1(以下、単に「装置1」と呼ぶ)の概略図を示す。
【0067】
装置1は、乾燥粉末の形態のセメント質粒子4を収容するためのリザーバ3を備えることができる。モノリス物品2を保持するためのホルダ5が設けられてもよい。モノリス物品2の出口面に減圧を適用することにより、使用中にモノリス物品2の多孔質構造を通る一次ガス流を確立するための真空発生器6が設けられてもよい。リザーバ3から噴霧デバイス7にセメント質粒子4を輸送するための輸送デバイス8が設けられてもよい。噴霧デバイス7は、輸送デバイス8からセメント質粒子4を受け取り、モノリス物品2の入口面に向けてセメント質粒子4を噴霧するために設けられてもよい。コントローラ9が設けられ、装置1の動作を制御するように構成されてもよい。
【0068】
リザーバ3は、乾燥粉末入口11からセメント質粒子4を受け取ることができる。乾燥粉末入口11は、セメント質粒子4の上流バルク供給の出力部であり得る。例えば、乾燥粉末入口11は、セメント質粒子4の更なるリザーバの上流に接続された導管であり得る。乾燥粉末入口11は、リザーバ3の蓋又は開口部を通じた、リザーバ3の手動、半自動又は自動再充填を表し得る。
【0069】
リザーバ3は、1つ以上のホッパーを備え得る。リザーバ3は、1つのホッパーを備え得る。図1の図示された例では、リザーバ3は、第1のホッパー12と第2のホッパー13とを備える。第2のホッパー13は、第1のホッパー12から出力されたセメント質粒子4を受け取るために、第1のホッパー12の下流にあってもよい。1つ以上のホッパーが、別個のハウジング内に設けられてもよい。代替的に、1つ以上のホッパーが、単一のハウジング内に設けられてもよい。1つ以上のホッパーは、単一の容器の1つ以上のチャンバを備え得る。
【0070】
リザーバ3は、注入デバイス15を備え得る。注入デバイス15は、セメント質粒子4を、重量、体積、粒子数、時間のうちの1つ以上によって注入し得る。注入デバイス15は、リザーバ3の出口に、又はその近くに配置され得る。注入デバイス15は、リザーバ3の1つ以上のホッパーの出口に、又はその近くに配置され得る。注入デバイスは、第1のホッパー12の出口に、又はその近くに配置され得る。
【0071】
注入デバイス15は、リザーバ3からセメント質粒子4を重量測定的に供給され得る。
【0072】
注入デバイス15は、ロスインウェイトフィーダーであり得る。好適な注入デバイスの非限定的な例としては、コピリオンが挙げられる。Coperion GmbH(Stuttgart,Germany)から入手可能なCoperio(登録商標)K-Tron Type K2-ML-T35 Gravimetric二軸スクリューフィーダー、及びAll-Fill International Ltd,(Sandy,UK)から入手可能なAll-Fill(登録商標)Series S1 Micro-Fillが挙げられる。
【0073】
輸送デバイス8は、セメント質粒子4をリザーバ3から噴霧デバイス7に輸送する。輸送デバイス8は、少なくとも途中まで噴霧デバイス7に向けてセメント質粒子4を重量測定的に供給してもよい。
【0074】
輸送デバイス8は、1つ以上の構成要素を備え得る。輸送デバイス8は、1つ以上の導管、例えば、通路、パイプ、ホースなどを備え得る。
【0075】
リザーバ3が2つ以上のホッパーを備える場合、輸送デバイス8は、ホッパー間でセメント質粒子4を輸送し得る。輸送デバイス8は、ホッパー間でセメント質粒子4を重量測定的に供給し得る。輸送デバイス8は、第1のホッパー12と第2のホッパー13との間に延びる第1の導管14を備え得る。第1の導管14は、第1のハウジングから第2のハウジングに延び得る。代替的に、第1の導管14は、単一の容器の第1のチャンバから第2のチャンバに延び得る。セメント質粒子4は、第1の導管14に沿って重量測定的に供給され得る。輸送デバイス8は、第2のホッパー13から噴霧デバイス7に延びる第2の導管16を備え得る。
【0076】
噴霧デバイス7は、輸送デバイス8からセメント質粒子4を受け取り、モノリス物品2の入口面に向けてセメント質粒子4を噴霧するために設けられている。噴霧デバイス7は、モノリス物品2の入口面に向けてセメント質粒子4を噴霧するために使用され得る二次ガス流を発生させるための二次ガス流発生器を備え得る。
【0077】
噴霧デバイス7は、モノリス物品2の入口面に向けてセメント質粒子4を吐出するための1つ以上の出口を更に備え得る。噴霧デバイスの1つ以上の出口は、1~10mmのアパーチャサイズを備え得る。1つ以上の出口は、1つ以上のノズル内に設けられてもよい。1つ以上のノズルの各々は、1つ以上の噴霧出口を備え得る。図1の図示された例では、複数の噴霧出口を備える単一のノズル25が設けられている。
【0078】
二次ガス流発生器は、圧縮ガス発生器を備え得る。図1の図示された例では、二次ガス流発生器は、圧縮器22を備え得る圧縮空気発生器を備える。圧縮器22は、空気入口21から空気を受け取り、供給ライン23を介して噴霧デバイス7の1つ以上の出口に圧縮空気を供給し得る。戻りライン24が設けられてもよい。動作に必要な弁及び制御部が、当業者に知られているように提供され得る。
【0079】
輸送デバイス8と噴霧デバイス7との間に相互接続が設けられてもよく、これにおいてセメント質粒子4が輸送デバイス8から噴霧デバイス7へと輸送され得る。相互接続は、噴霧デバイス7の1つ以上の出口に、又はその近くに設けられ得る。一例では、相互接続は、ノズル25に設けられ得る。代替的に、相互接続は、リザーバ3に、又はその近くに、例えば、リザーバ3の第2のホッパー13に、又はその近くに設けられ得る。一例では、相互接続は、供給ライン23と第2の導管16との間の流体接続である。例えば、噴霧デバイス7の二次ガス流は、セメント質粒子4を流動化して第2の導管16の少なくとも一部分に沿った乾燥粉末の形態のセメント質粒子4の輸送を支援するために、第2のホッパー13の出口において、又はその近くで第2の導管16と流体接続される。例えば、噴霧デバイス7の二次ガス流は、第2の導管16からセメント質粒子4を同伴し得る。例えば、噴霧デバイス7の二次ガス流は、セメント質粒子4を二次ガス流の中へと引き込むように、第2の導管に吸引力を生成し得る。
【0080】
一例では、噴霧デバイス7は、圧縮空気ガンを備える。好適な圧縮エアガンの非限定的な例が、STAR Professional重力供給噴霧ガン1.4mm、部品番号STA 2591100Cである。
【0081】
ホルダ5は、セメント質粒子4の堆積中にモノリス物品2を静止位置に維持するように機能することができる。ホルダ5は、モノリス物品2の上方端部及び/又は下方端部を把持し得る。ホルダ5は、モノリス物品2の上方端部及び下方端部をそれぞれ支持する膨張式上方シールブラダ31(上方膨張式カラーとも呼ばれる)及び/又は膨張式下方シールブラダ30(下方膨張式カラーとも呼ばれる)を備え得る。膨張式上方シールブラダ31及び膨張式下方シールブラダ30は、モノリス物品2の外部表面と接触及び/又は係合し得る。各々が、モノリス物品2の周囲に液密シール又は気密シールを形成し得る。膨張式上方シールブラダ31及び膨張式下方シールブラダ30は、1つ以上のハウジングによって支持され得る(例えば、1つ以上のハウジングの内壁によって支持され得る)。
【0082】
装置1は、モノリス物品2がモノリス物品の入口面を最上方にする垂直配向にてホルダ5内に配置されるように構成され得る。噴霧デバイス7の少なくとも一部分は、入口面の上方に垂直に配置され得る。噴霧デバイス7の噴霧方向は、モノリス物品2の長手方向軸線と同軸をなし得る。モノリス物品2の噴霧方向と長手方向軸線とは一致してもよい。
【0083】
装置1は、噴霧デバイス7とモノリス物品2の入口面との間に配置された流導管10を更に備え得る。流導管10は、モノリス物品2の入口面に向けて一次ガス流を制約及びチャネリングするように機能し得る。流導管10は、一次ガス流を整列させるように機能し得、それにより、一次ガス流がモノリス物品2の入口面に接触するときの一次ガス流の流動方向は、入口面に対して垂直になる。
【0084】
流導管10は、噴霧デバイス7とモノリス物品2の入口面との間に無妨害の流路を提供するために、空であってもよい。代替的に、流導管10は、噴霧デバイス7とモノリス物品2の入口面との間に挿入された流量調整器を備えてもよく、流量調整器は、セメント質粒子4の分散を促進するように作用する。例えば、流量調整器は、静的ミキサー、メッシュ、ふるい、バッフル、及びオリフィスプレートのうちの1つ以上を含み得る。
【0085】
流導管10は、チューブを含み得る。流導管10は、モノリス物品2の入口面の断面形状と一致する断面形状を備え得る。流導管10は、モノリス物品2の入口面のサイズと一致するサイズを備え得る。
【0086】
噴霧デバイス7は、流導管10の中へと延び得る。噴霧デバイス7の1つ以上の出口は、流導管10内に配置され得る。例えば、ノズル25は、流導管10の上部領域内に配置され得る。ノズル25は、モノリス物品2の長手方向軸線と一致させて配置され得る。
【0087】
モノリス物品2の入口面は、噴霧デバイスから、例えば噴霧デバイス7のノズル25から、10~80cm、好ましくは15~20cmに配置され得る。追加的に又は代替的に、噴霧デバイスは、例えば、噴霧デバイス7のノズル25から、モノリス物品の入口面の直径の最大4倍であるモノリス物品2の入口面からの距離を置いて配置され得る。
【0088】
モノリス物品2の出口面に減圧を適用することにより、使用中にモノリス物品2の多孔質構造を通る一次ガス流を確立するための真空発生器6が設けられている。真空発生器6は、モノリス物品2の出口面と係合する漏斗を画定し得る真空コーン40を備え得る。膨張式下方シールブラダ30は、モノリス物品2の出口面と真空コーン40との間にシールを形成し得る。真空発生器6は、導管43によってフローコーンに接続された真空ポンプ42を備え得る。真空ポンプ42は、一次ガス流の体積流量を制御するように制御され得る。
【0089】
真空発生器6は、体積流量センサを備えてもよい。体積流量センサは、導管43に沿って配置された圧力センサ45と組み合わせたオリフィスプレート44であり得る。真空発生器6は、取り入れ口47まで延びるバイパス導管46を備え得る。
【0090】
装置1は、モノリス物品2の背圧を監視するための圧力センサ41を更に備え得る。単一の圧力センサ41が使用されてもよい。単一の圧力センサ41は、真空発生器6内に、好ましくは、真空発生器のホルダ又は他のハウジング、例えば真空コーン40内に配置され得る。
【0091】
コントローラ9は、少なくとも真空発生器6及び噴霧デバイス7の動作を制御する。図1では、コントローラ9と装置1の残部との間の動作接続は、明確にするために省略されている。しかしながら、当業者には、任意の好適な手段の必要な接続が提供され得ることが認識されよう。そのような接続は、有線であっても無線であってもよい。
【0092】
コントローラ9は、真空発生器6によって生成された一次ガス流を制御することとは独立して、輸送デバイス8によって、リザーバ3から噴霧デバイス7へのセメント質粒子4の移送を制御するように構成され得る。例えば、コントローラ9は、注入デバイス15の動作を制御し得る。
【0093】
コントローラ9は、一次ガス流を制御することとは独立して、モノリス物品2の入口面に向けたセメント質粒子4の噴霧を制御するように構成され得る。本明細書における「独立して」という用語の使用は、コントローラ9が、セメント質粒子4の噴霧及び一次ガス流の変数の各々を、個別にかつ他の変数のステータスに関係なく制御する能力を指す。例えば、コントローラ9は、セメント質粒子4を同時に噴霧することなく、一次ガス流を確立し得る。例えば、コントローラ9は、一次ガス流の体積流量を変更することなく、セメント質粒子4の噴霧速度を増加又は減少させ得る。例えば、コントローラ9は、セメント質粒子4の噴霧速度を変更することなく、一次ガス流の体積流量を増加又は減少させ得る。例えば、コントローラ9は、真空ポンプ42の動作を制御することとは独立して、噴霧デバイス7の動作を制御し得る。
【0094】
コントローラ9は、セメント質粒子4が噴霧デバイス7に移送され、モノリス物品2の入口面に向けて噴霧される前に、真空発生器6を動作させて一次ガス流を確立するように構成され得る。
【0095】
コントローラ9は、二次ガス流発生器、例えば圧縮機22を、真空発生器6とは独立して制御するように構成され得る。コントローラ9は、真空発生器6を操作して一次ガス流を多孔質構造を通る連続的なガス流として維持するように、また、一次ガス流の期間のうちの一部に対してのみ、二次ガス流発生器、例えば圧縮機22を操作するように構成され得る。
【0096】
コントローラ9は、モノリス物品2の入口面に向けて噴霧されるセメント質粒子4の速度又は質量流量を制御するために、輸送デバイス8及び/又は噴霧デバイス7を制御することとは独立して、真空発生器6を制御して、モノリス物品2の出口面に適用される減圧のレベルを制御するように構成され得る。
【0097】
コントローラ9は、例えば、圧力センサ41によって検出されるように、モノリス物品2の所定の背圧が達せられたときに、モノリス物品2の入口面に向けたセメント質粒子4の噴霧を停止するように構成され得る。所定の背圧は、絶対背圧であってもよく、又は代替的に相対背圧であってもよい。
【0098】
代替的に、コントローラ9は、所定の総噴霧時間が達せられたときに、モノリス物品2の入口面に向けたセメント質粒子4の噴霧を停止するように構成され得る。
【0099】
装置1は、無機粒子を含むか、又は無機粒子からなるセメント質粒子4でモノリス物品2をコーティングするために使用することができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、セメント質粒子4は、シリカート、アルミナート、若しくはアルミノシリカートを含むか、又はそれらからなる。いくつかの特に好ましい実施形態では、セメント質粒子4は、ケイ酸カルシウム、アルミン酸カルシウム、アルミノケイ酸カルシウム及び/若しくはアルミノフェライトカルシウムを含むか、又はそれらからなる。
【0101】
いくつかの実施形態では、セメント質粒子4は、ジオポリマー前駆体粒子を含むか、又はジオポリマー前駆体粒子からなる。いくつかの特に好ましい実施形態では、ジオポリマー前駆体粒子は、アルミノシリカート、ポゾラン、焼成粘土、メタカオリン、フライアッシュ、高炉スラグ、若しくはシリカフュームを含むか、又はそれらからなる。
【0102】
セメント質粒子4は、単一の化合物又は化合物の混合物からなってもよい。例えば、セメント質粒子4は、ケイ酸カルシウム、アルミン酸カルシウム、アルミノケイ酸カルシウム、アルミノフェライトカルシウム及びジオポリマー前駆体粒子のうちの2つ以上の混合物を含んでもよい。別の例において、セメント質粒子4は、ケイ酸カルシウム、アルミン酸カルシウム、アルミノケイ酸カルシウム及びアルミノフェライトカルシウムのうちのいずれかの2つ以上の形態の混合物を含んでもよく、例えば、混合物は、アライト、ビーライト及びウォラストナイトのうちの2つ以上を含んでもよい。
【0103】
いくつかの実施形態では、セメント質粒子4は、1~3g/cm、任意選択的に1.5~2.5g/cm、任意選択的に約2g/cmのタップ密度を有し得る。
【0104】
いくつかの実施形態では、セメント質粒子4は、5~60ミクロンのd50(体積による)を有する。
【0105】
ここで、本開示によるモノリス物品2を処理する方法の例が、図2を参照して説明されるが、図2は、装置1の使用を取り入れたモノリス物品2を製造する方法を説明するフロー図を示す。単に例として、本方法は、触媒コーティングを備えられたモノリス物品2を参照して説明される。
【0106】
ステップS21において、触媒スラリーが、当該技術分野で既知の方法によって調製される。
【0107】
ステップS22において、ウォッシュコートが、当該技術分野で既知の方法によって触媒スラリーから調製される。ウォッシュコートは、例えば、炭化水素トラップ、三元触媒(TWC)、NOx吸収剤、酸化触媒、選択的触媒還元(SCR)触媒、リーンNOx触媒、及びそれらの任意の2つ以上の組み合わせであり得る。
【0108】
ステップS23において、ウォッシュコートは、当該技術分野で既知の方法によって、裸のモノリス物品2に注入及び適用される。例えば、ウォッシュコートは、モノリス物品2の第1の面(例えば、上面)に適用されてもよく、モノリス物品2の反対側の第2の面(例えば、下面)は、モノリス物品2の多孔質構造を通るウォッシュコートの移動を達成するために少なくとも部分的な真空に供され得る。モノリス物品2は、1回の注入でコーティングすることができ、ここでは、ウォッシュコートが、モノリス物品2を単一の向きのままにして、単一のステップでモノリス物品2に適用され得る。代替的に、モノリス物品2は2回の注入でコーティングされてもよい。例えば、1回目の注入では、モノリス物品2は、第1の面を最上方にし、第2の面を最下方にした第1の向きをなし得る。コーティングは第1の面に適用されてもよく、モノリス物品2の長さの一部分をコーティングする。その後、モノリス物品2は、第2の面が最上方になるように反転され得る。次に、モノリス物品2のうちの1回目の注入でコーティングされなかった部分をコーティングするために、コーティングが第2の面に適用され得る。有利にも、2回注入プロセスは、モノリス物品2の各端部に異なるコーティングを適用することを可能する。
【0109】
ステップS24において、モノリス物品2は乾燥され得る。
【0110】
ステップS25において、モノリス物品2は、当該技術分野で既知の方法によって焼成され得る。
【0111】
任意選択のステップS26において、処理前のモノリス物品2の背圧が測定され得る。
【0112】
任意選択のステップS27において、モノリス物品2は更なる処理を待機するためにストックに置かれ得る。その後、ステップS28において、モノリス物品2はストックから取り出され、更なる処理のために送られ得る。代替的に、モノリス物品2は、直ちに、すなわち、ステップS26からステップS29に直接進むことによって、更に処理されてもよい。
【0113】
ステップS29において、モノリス物品2は、図3を参照して以下で更に詳細に説明されるように、乾燥粉末としてモノリス物品2の少なくともいくつかのチャネルの1つ以上のガス接触表面上にセメント質粒子4を堆積させるように処理される。
【0114】
ステップS30において、セメント質粒子4は、以下で更に詳細に説明されるように、コーティングされたモノリス物品を生成するために、モノリス物品2内でその場で液体又は気体試薬と反応させられる。
【0115】
任意のステップS31において、処理及び反応ステップ後のモノリス物品2の背圧が測定されてもよい。
【0116】
ステップS32において、完成したモノリス物品2が、顧客への発送のために用意されてもよい。
【0117】
有益なことに、本開示の処理方法は、ステップ29又は30の後にモノリス物品2に対して実施される焼成などの高温処理を必要としない。その代わりに、セメント質粒子4はその場で化学的に反応させられてセメント系コーティングを形成する。
【0118】
図3は、セメント質粒子4の堆積を含む図2のプロセスステップS29を示すフロー図を示す。
【0119】
ステップS29-1において、モノリス物品2はホルダ5に充填され得る。モノリス物品2は、処理の間、静止位置に保持され得る。モノリス物品2は、ホルダ5によりモノリス物品2の上端部及び/又は下方端部を把持され得る。膨張式上方シールブラダ31及び膨張式下方シールブラダ30は、モノリス物品2の外部表面と接触及び/又は係合するように膨張され得る。モノリス物品2は、モノリス物品2の入口面を最上方にして垂直配向に保持され得る。ホルダ5の操作、例えば、膨張式上方シールブラダ31及び膨張式下方シールブラダ30の膨張は、コントローラ9によって制御され得る。
【0120】
ステップS29-2において、真空発生器6がコントローラ9によって作動されて、モノリス物品2を通る一次ガス流が確立され得る。好ましくは、一次ガス流は、セメント質粒子4が噴霧デバイス7に移送され、モノリス物品2の入口面に向けて噴霧される前に確立される。真空発生器6によって発生された減圧のレベルは、リザーバ3から噴霧デバイス7へのセメント質粒子4の移送の速度又は質量流量とは独立して、コントローラ9によって制御され得る。一次ガス流は、10m/時間~5,000m/時間、好ましくは400m/時間~2,000m/時間、好ましくは600m/時間~1000m/時間の体積流量を有し得る。
【0121】
ステップS29-3において、モノリス物品2の背圧は、一次ガス流は確立されているが、二次ガス流は確立される前である間に測定され得る。背圧は、圧力センサ41の使用によって測定され得る。ステップS29-3における背圧測定は、ステップS26の背圧測定に加えたものであっても、又はそれに代わるものであってもよい。代替的に、ステップS26の背圧測定は、ステップS29-3の背圧測定に代わって用いられてもよい。ステップS26の背圧測定及び/又はステップS29-3の背圧測定は、処理前のモノリス物品2の第1の背圧の尺度としてコントローラ9によって使用され得る。
【0122】
ステップS29-4において、セメント質粒子4は、噴霧デバイス7によって乾燥粉末としてモノリス物品2の入口面に噴霧される。セメント質粒子4の噴霧中、セメント質粒子4は輸送デバイス8によって乾燥粉末として噴霧デバイス7に供給され得る。
【0123】
モノリス物品2の入口面に向けたセメント質粒子4の噴霧は、好ましくは、一次ガス流を確立及び制御することとは独立して、コントローラ9によって制御可能である。
【0124】
ステップS29-4の間、例えば、一次ガス流とは別の、圧縮機22によって供給される二次ガス流が、セメント質粒子4をリザーバ3から噴霧デバイス7に移送するために使用され得る。好ましくは、二次ガス流は、一次ガス流とは独立してコントローラ9によって制御可能である。例えば、コントローラ9は、真空ポンプ42の動作を制御することとは独立して、噴霧デバイス7の圧縮器22及び/又は弁及び/又はノズル25の動作を制御し得る。セメント質粒子4は、二次ガス流を使用することによって、モノリス物品2の入口面に向けて噴霧され得る。二次ガス流は、圧縮ガス、好ましくは空気の流れを含み得る。
【0125】
ステップS29-4の間、一次ガス流は、好ましくは連続流として維持される。ステップS29-4の間、二次ガス流は、単一のバースト又は複数の断続的バーストとして適用され得る。
【0126】
ステップS29-5において、モノリス物品2の背圧が監視され得る。背圧は、圧力センサ41の使用によって監視され得る。コントローラ9は、所定の背圧が達せられたときに、モノリス物品2の入口面に向けたセメント質粒子4の噴霧を停止するように構成され得る。所定の背圧がまだ達せられていない場合、コントローラ9は、ステップS29-4に戻り、セメント質粒子4の噴霧を継続するように構成される。このフィードバックは、連続的であってよく、セメント質粒子4の噴霧におけるいかなる一時停止も伴う必要はなく、すなわち、コントローラ9は、セメント質粒子4の噴霧が進行中であるときにモノリス物品2の背圧を連続的に監視し得る。
【0127】
所定の背圧は、絶対背圧であり得る。絶対背圧は、600m/時間の流量で20~180mbarであり得る。
【0128】
代替的に、所定の背圧は、相対背圧であり得る。例えば、ステップS26及び/又はステップS29-3で測定された処理前のモノリス物品2の第1の背圧に対する背圧が使用され得る。背圧は、第1の背圧のパーセンテージとして測定され得る。セメント質粒子4の噴霧が停止されるときの所定の背圧は、第1の背圧の105%~200%、好ましくは125%~150%であり得る。
【0129】
追加的に又は代替的に、モノリス物品2の入口面に向けたセメント質粒子4の噴霧は、所定の総噴霧時間が達せられたときに停止され得る。所定の総噴霧時間は、1~60秒、好ましくは1~20秒、好ましくは約10秒であり得る。
【0130】
コントローラ9は、所定の総噴霧時間又はモノリス物品2の所定の背圧が最初に達せられるか、又は目標質量のセメント質粒子4がモノリス物品の入口面に向けて噴霧されたかのいずれかのときに、モノリス物品2の入口面に向けたセメント質粒子4の噴霧を停止するように構成され得る。
【0131】
ステップS29-6において、セメント質粒子4の噴霧が停止される。例えば、これは、コントローラ9が輸送デバイス8によるセメント質粒子4の移送を停止することによって、かつ/又は、噴霧デバイス7の二次ガス流を停止することによって達成され得る。好ましくは、ステップS29-6において、モノリス物品2の多孔質構造を通る一次ガス流は、セメント質粒子4の噴霧の停止後のある時間期間にわたって維持される。コントローラ9は、セメント質粒子4の噴霧の停止後のある時間期間にわたって真空発生器6を動作させるように構成され得る。
【0132】
任意選択的に、ステップS29-6において、モノリス物品2の入口面に向けて送達されるセメント質粒子4の量が測定されてもよい。コントローラ9は、例えば、注入デバイス15からの信号出力から、例えば、ロスインウェイトフィーダーからの出力から、送達されたセメント質粒子4の量を決定するように構成されてもよい。
【0133】
本方法は、セメント質粒子4の10~40g/l、好ましくは15~30g/l、好ましくは約20g/lのフィルタの最大充填量を送達するように構成されてもよい。
【0134】
ステップS29-7において、モノリス物品2を通る一次ガス流が停止される。これは、コントローラ9が真空発生器6を停止すること、すなわち真空ポンプ42を停止することによって達成され得る。代替的に、これは、コントローラが真空発生器6の弁を操作して、取り入れ口47を通じて空気を引き込むようにバイパス導管46を通じた吸引を方向転換させることによって達成され得る。これは、連続するモノリス物品2の処理間で真空ポンプ42を停止する必要性を回避し得ることになり、このことがより速いサイクル時間をもたらし得る。
【0135】
ステップS29-8において、モノリス物品2は、セメント質粒子4を反応させるステップが同じ装置1、すなわちコーティング装置1上で実施される実施形態では、ステップS30の準備のためにホルダ5内に保持されてもよい。代替的に、ステップS29-8において、モノリス物品2は、セメント質粒子4を反応させるステップが、以下で論じられるような別個の、任意選択による専用の処理装置上で実施される実施形態では、ホルダ5から取り外されてもよい。取り外しステップは、例えば、膨張式上方シールブラダ31及び膨張式下方シールブラダ30を収縮させることを含んでもよい。次いで、モノリス物品2が除去され得る。
【0136】
上述したように、ステップS30において、セメント質粒子4は、モノリス物品2内でその場で液体又は気体試薬と反応させられる。
【0137】
いくつかの実施形態では、セメント質粒子4は、水硬性セメント質粒子4を水和して反応させられる水硬性セメント質粒子4を含むか、又はそれからなっていてもよい。そのような実施形態では、液体又は気体試薬は、水分子を含むか、又は水分子からなる。水分子は、気体又は液体状態の水の形態をなしてもよい。
【0138】
いくつかの実施形態では、モノリス物品2のチャネルには、液相中の水分子が浸透する。例えば、液体の水がモノリス物品2に注がれてもよいか、又はモノリス物品2が水浴に浸漬されてもよい。
【0139】
より好ましい実施形態では、液相中の水分子は、モノリス物品2内に噴霧され得る水のエアロゾル化ミストを含むか、又はそれからなってもよい。追加的に又は代替的に、水のエアロゾル化されたミストは、例えば、モノリス物品2の出口面に適用される真空の使用によって、チャネルに沿ってかつ/又はモノリス物品2を通って能動的に引き込まれてもよい。エアロゾル化されたミストの使用は、セメント質粒子4のセメンティングの前にセメント質粒子4のコーティングを乱す傾向が少ないので、注入又は浸漬塗布と比較して有益であることが見出されている。これは、セメント系コーティングの改善された完全性及びセメント系コーティングによるガス接触表面の改善された被覆率をもたらすのに役立つ。
【0140】
水のエアロゾル化されたミストを噴霧すること及び/又は引き込むことは、セメント質粒子4を堆積させるために使用されるコーティング装置1を使用して、又は別個の装置を使用することによって実施されてもよい。いくつかの好ましい実施形態では、モノリス物品2は、セメント質粒子4の堆積の完了後にホルダ5内に保持され、エアロゾル化されたミストは、ノズル25に隣接して配置された水ノズルから噴霧される。代替的に、ステップS29とステップS30との間で、乾燥粉末用ノズル25と水用ノズルとが手動、半自動又は自動で交換されてもよい。
【0141】
特に好ましい実施形態では、セメント質粒子4を水和するステップは、例えば加湿チャンバ内で、気相中の水分子にモノリス物品2のチャネルを曝露することを含む。気相中の水分子は、加湿ガス、例えば加湿空気を含むか、又はそれからなってもよい。
【0142】
加湿ガスは、例えば、外部ポンプ及び/又は真空を使用して、モノリス物品2を通して能動的に吹き込まれ、かつ/又は引き込まれてもよく、モノリス物品2の1つ以上の面に適用されてもよい。代替的に、加湿ガスは、モノリス物品2内に拡散及び/又は対流されてもよい。
【0143】
気相の水、特に加湿空気の形態の水の使用は、セメント質粒子4のセメンティングの前にセメント質粒子4のコーティングの妨害を最小限に抑えるのに特に有益であることが分かっている。これは、セメント系コーティングの改善された完全性及びセメント系コーティングによるガス接触表面の改善された被覆率をもたらすのに役立つ。
【0144】
加湿ガスは、60%、又は65%、又は70%、又は75%、又は80%、又は85%、又は90%、又は95%以上の相対湿度(RH)を有し得る。
【0145】
特に好ましい実施形態では、セメント質粒子4を水和することは、水熱処理、例えば、モノリス物品を水熱オーブン内に配置することを含む。例えば、水熱処理は、モノリス物品(堆積されたセメント質粒子4を有する)を40℃以上、又は60℃以上、又は80℃以上、又は100℃以上の周囲温度に供することを含み得る。追加的に又は代替的に、水熱処理は、モノリス物品2を80℃、又は100℃、又は120℃、又は150℃以下の周囲温度に供することを含んでもよい。
【0146】
水熱処理は、モノリス物品2を加湿ガスに2~24時間、好ましくは4~12時間、より好ましくは6~8時間曝露することを含んでもよい。
【0147】
いくつかの実施形態では、セメント質粒子4は、ジオポリマー前駆体粒子を含み得るか、又はジオポリマー前駆体粒子からなり得る。液体又は気体試薬とそのようなセメント質粒子4を反応させるステップは、ジオポリマー前駆体粒子を化学的に反応させることを含んでもよい。
【0148】
使用される液体又は気体反応物は、アルカリ、任意選択的にアルカリポリシリカート、任意選択的にケイ酸ナトリウム若しくはケイ酸カリウムを含むか、又はそれらからなってもよい。反応物は、上述の適用モード、例えば、注入、浸漬、エアロゾル化ミスト、又はガスを使用して、液体又は気体の形態で提供されてもよい。
【実施例
【0149】
比較例A
炭化ケイ素ウォールフローフィルタ基材(NGK Insulator,LTDから入手したMSC-2SR-HAC 165.0×140.5mm 300/6、3L型)に、本明細書に記載の方法及び装置を使用して、Aeroxide(登録商標)Alu130(ヒュームドアルミナ)を充填した。流導管の直径は、フィルタの入口面と同じであった。300m/時間の空気の一次ガス流を、下流の渦流ブロワを使用してフィルタに通した。フィルタの下に配置されたWika(登録商標)P30圧力伝送器によって背圧を監視した。粉末を、STAR Professional重力供給噴霧ガン1.4mm、部品番号STA2591100Cを使用して、一次ガス流に分散させた。STAR Professional重力供給噴霧ガンをフィルタの入口面から100mmに装着した。背圧パラメータを使用して、耐火性粉末の噴霧の停止点を決定した。焼成前の粉末充填量は1.5g/Lであった。充填が完了した後、フィルタを500℃で1時間にわたって焼成した。
【0150】
実施例B
実施例Bは、ケイ酸カルシウム粉末(d50=6μm、密度=2800g/L)を使用したことを除いて、比較例Aと同じ方法で調製される。フィルタに3g/Lの粉末を充填した。粉末充填後、フィルタを焼成しなかった。次いで、こうして調製したフィルタを、80℃、95%のHO湿度で空気中で6時間にわたって水和した。
【0151】
実施例C
実施例Cは、フィルタに6g/Lの粉末を充填したことを除いて、実施例Bと同じ様式で調製される。
【0152】
実施例D
実施例Cは、フィルタに9g/Lの粉末を充填したことを除いて、実施例Bと同じ様式で調製される。
【0153】
実施例E
実施例Eは、ケイ酸カルシウムの混合物を使用したことを除いて、実施例Bと同じ方法で調製される。ケイ酸カルシウム混合物は、ケイ酸一カルシウム種、ケイ酸二カルシウム種及びケイ酸三カルシウム種からなり、カルシウムはCaOの形態で10~22%で豊富であり、SiOは約78%以上で豊富であった。混合物の粒径分布は、4μm~53μmの粒径範囲を有する三峰性であった。フィルタに8g/Lの粉末混合物を充填した。次いで、こうして調製したフィルタを、80℃、95%のHO湿度で空気中で6時間にわたって水和した。
【0154】
濾過効率
Cambridge,UKのCambustion Ltd.から入手可能なCambustion(登録商標)Diesel Particulate Filter Testing Systemを使用して、以下の試験条件でフィルタ試料を試験した。
a)安定化-250kg/時間の質量流量、50℃、5分
b)ウォームアップ-250kg/時間の質量流量、240℃、5分
c)秤量-フィルタをリグから取り外し、秤量する
d)ウォームアップ-フィルタをリグに戻す;250kg/時間の質量流量、240℃、5分
e)充填段階-250kg/時間の質量流量、240℃、充填速度:2g/Lの煤充填量に達するまで2g/時間;
f)秤量-フィルタをリグから取り外し、秤量する。
【0155】
試験中に使用される燃料は、Carcal RF-06-08 B5である。
【0156】
試験中、粒子カウンタは、フィルタの下流で連続的に試料採取する。フィルタのバッチが試験される直前及び試験された直後に、「上流」試験をリグ上で実行して、粒子カウンタがリグからの生の煤生成を試料採取することを可能にする。上流試験は、20分間の長さであり、上記の充填段階と同じ条件を使用する。2つの上流試験(フィルタ試験前及びフィルタ試験後)の平均をフィルタ試験の充填段階からのデータと比較することにより、濾過効率が得られる。
【0157】
濾過効率データを試験開始から50秒後に収集した。
【0158】
表1は、ウォールフローフィルタ基材(NGK Insulator,LTDから入手したMSC-2SR-HAC 165.0X140.5mm 300/6、3L型、粉末充填なし)、比較例A、実施例B、実施例C、及び実施例Dの濾過効率を比較したものである。
【0159】
【表1】
【0160】
ガス摩擦試験
425L/分の流量で動作する高圧空気ノズルを使用して、フィルタの面から0.5インチの距離で、フィルタの面全体にわたって移動するようにジグザグパターンで6.7mm/秒でフィルタの面表面全体にわたって移動させて、比較例A及び実施例Eを用いてガス摩擦試験が実施された。フィルタの入口面と出口面の両方から摩擦処理を実施した。摩擦処理の前後に115℃のオーブンで30分間乾燥させた後に、試料を秤量した。このようにして得られたサンプルの濾過効率を測定し、表2に示した。
【0161】
耐水性試験
実施例Eからの試料を、約6Lの脱イオン水の容器中に約10秒間完全に沈めた後、水から取り出し、一部を振盪して過剰な水を除去し、115℃のオーブン中で約45分間乾燥させた。得られた試料の濾過効率を測定し、表2に示した。
【0162】
実施例Eの別の試料を、約6Lの脱イオン水の容器中に約10秒間完全に沈めた後、水から取り出し、一部を振盪して過剰な水を除去し、115℃のオーブン中で約45分間乾燥させた。同じ処理を更に2回繰り返した。得られた試料の濾過効率を測定し、表2に示した。
【0163】
【表2】
【0164】
実施例F-1~F-8
実施例F-1~F-8は、試料を粉末混合物で充填した後に表3に記載の様々な条件で水和したことを除いて、実施例Eと同じ方法で調製した。表3は、ガス摩擦後の試料の質量損失も示す。
【0165】
【表3】
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-12-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスの処理のためのコーティングされたモノリス物品を形成する方法であって、
コーティング装置内に多孔質モノリス物品を保持するステップであって、前記多孔質モノリス物品は、排気ガスの通過のための複数のチャネルを含み、各チャネルはガス接触表面を有する、保持するステップと、
前記チャネルのうちの少なくともいくつかの前記ガス接触表面上に乾燥粉末としてセメント質粒子を堆積させるステップと、
前記コーティングされたモノリス物品を提供するために、前記多孔質モノリス物品内でその場で前記セメント質粒子を液体又は気体試薬と反応させるステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記モノリス物品は、モノリスフィルタ、任意選択的にウォールフローフィルタ、及び/又は触媒物品、任意選択的に触媒ウォールフローフィルタである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記セメント質粒子は無機粒子である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記セメント質粒子は、シリカート、アルミナート、若しくはアルミノシリカートを含むか、又はそれらからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記セメント質粒子が水硬性セメント質粒子を含むか、又はそれからなり、前記セメント質粒子を前記液体又は気体試薬と反応させる前記ステップは、前記水硬性セメント質粒子を水和することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記水硬性セメント質粒子は、ケイ酸カルシウム、アルミン酸カルシウム、アルミノケイ酸カルシウム及び/若しくはアルミノフェライトカルシウムを含むか、又はそれらからなる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記液体又は気体試薬は、水分子を含むか、又は水分子からなる、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記水硬性セメント質粒子を水和する前記ステップは、前記チャネルに液相中の水分子を浸透させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記液相中の前記水分子はエアロゾル化されたミストを含み、前記チャネルに前記水分子を浸透させることは、任意選択的に、前記多孔質モノリス物品内に前記エアロゾル化されたミストを噴霧すること、及び/又は前記多孔質モノリス物品を通して前記エアロゾル化されたミストを引き込むことを含み、任意選択的に、前記エアロゾル化されたミストを前記噴霧すること及び/又は引き込むことは、前記コーティング装置を使用して実施される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記水硬性セメント質粒子を水和する前記ステップは、任意選択的に加湿チャンバ内で、気相中の水分子に前記チャネルを曝露することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記気相中の前記水分子は、加湿ガス、任意選択的に加湿空気を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記加湿ガスは、任意選択的に外部ポンプ及び/又は真空を使用して、前記多孔質モノリス物品を通して能動的に吹き込まれ、かつ/又は引き込まれる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記加湿ガスは、前記多孔質モノリス物品内に拡散及び/又は対流される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記加湿ガスは、60%、又は65%、又は70%、又は75%、又は80%、又は85%、又は90%、又は95%以上の相対湿度(RH)を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記水硬性セメント質粒子を水和する前記ステップは、任意選択的に水熱オーブン内での水熱処理を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項16】
前記水熱処理は、前記多孔質モノリス物品を40℃以上、又は60℃以上、又は80℃以上、又は100℃以上の周囲温度に供することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記水熱処理は、前記多孔質モノリス物品を80℃、又は100℃、又は120℃、又は150℃以下の周囲温度に供することを含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記水熱処理は、前記多孔質モノリス物品を2~24時間、任意選択的に4~12時間、任意選択的に6~8時間、前記加湿ガスに曝露することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記セメント質粒子はジオポリマー前駆体粒子を含むか、又はそれからなり、前記セメント質粒子を前記液体又は気体試薬と反応させる前記ステップは、前記ジオポリマー前駆体粒子を化学的に反応させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記ジオポリマー前駆体粒子は、アルミノシリカート、ポゾラン、焼成粘土、メタカオリン、フライアッシュ、高炉スラグ、若しくはシリカフュームを含むか、又はそれらからなる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記液体又は気体反応物は、アルカリ、任意選択的にアルカリポリシリカート、任意選択的にケイ酸ナトリウム若しくはケイ酸カリウムを含むか、又はそれらからなる、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記セメント質粒子は、1~3g/cm、任意選択的に1.5~2.5g/cm、任意選択的に約2g/cmのタップ密度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記セメント質粒子は、5~60ミクロンのd50(体積による)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記セメント質粒子を前記液体又は気体試薬と反応させる前記ステップは、前記モノリス物品が排気ガスの処理のためのデバイスに設置される前に実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記チャネルのうちの少なくともいくつかの前記ガス接触表面上に乾燥粉末として前記セメント質粒子を堆積させる前記ステップは、前記多孔質モノリス物品の入口面の中に乾燥微粒子エアロゾルとして前記セメント質粒子を噴霧することを含み、任意選択的に、噴霧前の前記セメント質粒子はリザーバ内に乾燥微粒子として保持される、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記チャネルのうちの少なくともいくつかの前記ガス接触表面上に乾燥粉末として前記セメント質粒子を堆積させる前記ステップは、前記多孔質モノリス物品の出口面に真空を適用することによって、前記多孔質モノリス物品の入口面の中に、かつ前記チャネルに沿って、乾燥微粒子エアロゾルとして前記セメント質粒子を引き込むことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記セメント質粒子は、3~10g/l、任意選択的に4.5~9g/l、任意選択的に4.5g/l、又は6g/l、又は9g/lの充填レベルで堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記コーティングされたモノリス物品は、排気ガスの処理のためのデバイスへのその設置前に未焼成のままである、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
請求項1に記載の方法によって取得可能な、コーティングされたモノリス物品。
【請求項30】
排気ガスの処理のためのコーティングされたモノリス物品であって、排気ガスの通過のための複数のチャネルを含み、各チャネルはガス接触表面を有し、前記チャネルのうちの少なくともいくつかの前記ガス接触表面は、セメント系コーティングによって少なくとも部分的にコーティングされている、コーティングされたモノリス物品。
【請求項31】
前記セメント系コーティングは、水和ケイ酸カルシウム、水和アルミン酸カルシウム、水和アルミノケイ酸カルシウム及び/若しくは水和アルミノフェライトカルシウムを含むか、又はそれらからなる、請求項30に記載のコーティングされたモノリス。
【請求項32】
前記セメント系コーティングは、ジオポリマーを含むか、又はジオポリマーからなる、請求項30又は31に記載のコーティングされたモノリス。
【請求項33】
触媒された煤フィルタ(CSF)、選択的触媒還元フィルタ(SCRF)、リーンNOxトラップフィルタ(LNTF)、及びガソリン微粒子フィルタ(GPF)のうちの1つ以上である、請求項29に記載のコーティングされたモノリス物品。
【国際調査報告】