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特表2024-526610原動機付き車両用の駆動バッテリ及びこのような駆動バッテリを有する原動機付き車両
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  • 特表-原動機付き車両用の駆動バッテリ及びこのような駆動バッテリを有する原動機付き車両 図1-2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】原動機付き車両用の駆動バッテリ及びこのような駆動バッテリを有する原動機付き車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20240711BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20240711BHJP
   B62D 21/15 20060101ALI20240711BHJP
   H01M 50/35 20210101ALI20240711BHJP
   H01M 50/367 20210101ALI20240711BHJP
   H01M 50/293 20210101ALI20240711BHJP
   H01M 50/289 20210101ALI20240711BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20240711BHJP
   H01M 50/213 20210101ALI20240711BHJP
   H01M 50/242 20210101ALI20240711BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B62D25/20 N
B62D21/15 B
H01M50/35 201
H01M50/367
H01M50/293
H01M50/289 101
H01M50/249
H01M50/213
H01M50/242
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580459
(86)(22)【出願日】2021-09-02
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 EP2021074260
(87)【国際公開番号】W WO2023001395
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】102021119194.7
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【弁理士】
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】ハルシュ・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】レシュ・ペーター
(72)【発明者】
【氏名】パチャイダー・ユリアン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】メックル・ダーニエール
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ・シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】フラハウト・ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ラインフェルト・アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】アサニン・サヴォ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンクラー・パウル
(72)【発明者】
【氏名】リッテライザー・モーリッツ
(72)【発明者】
【氏名】スライマン・ハーダー
(72)【発明者】
【氏名】ミッターマイアー・マルティン
【テーマコード(参考)】
3D203
3D235
5H012
5H040
【Fターム(参考)】
3D203AA01
3D203AA31
3D203AA33
3D203BB03
3D203BB06
3D203BB19
3D203CA42
3D203CA84
3D203DA02
3D203DB05
3D235AA01
3D235BB04
3D235BB36
3D235BB43
3D235BB45
3D235CC15
3D235CC32
3D235DD35
3D235EE63
3D235FF05
3D235FF12
3D235HH44
5H012AA01
5H012BB08
5H012CC09
5H012CC10
5H040AA37
5H040AS07
5H040AT01
5H040AY05
5H040AY10
5H040CC05
5H040CC13
5H040CC28
5H040JJ03
5H040LL06
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】衝突時にバッテリセルをより良好に保護する駆動バッテリ及びこのような駆動バッテリを有する原動機付き車両を提供する。
【解決手段】カバー壁部及び底壁部を備えた駆動バッテリハウジングを有する、原動機付き車両用の駆動バッテリであって、底壁部が、少なくとも部分的に原動機付き車両のアンダーフロアを形成しており、駆動バッテリハウジングには、特に垂直かつ互いに隣り合って配置された複数のバッテリセルを有するバッテリセル層と、支持層とが配置されており、各バッテリセルには、支持層へ向いた側において、少なくとも1つの抜気開口部が形成されており、支持層における抜気空間が、各抜気開口部に対向している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバー壁部(35)及び底壁部(33)を備えた駆動バッテリハウジング(3)を有する、原動機付き車両用の駆動バッテリ(1)であって、底壁部(33)が、少なくとも部分的に原動機付き車両のアンダーフロアを形成しており、駆動バッテリハウジング(3)には、特に垂直かつ互いに隣り合って配置された複数のバッテリセルを有するバッテリセル層(5)と、支持層(7)とが配置されており、各バッテリセル(51)には、支持層(7)へ向いた側において、少なくとも1つの抜気開口部(52)が形成されており、支持層(7)におけるそれぞれ1つの抜気空間(71)が、各抜気開口部(52)に対向していることを特徴とする駆動バッテリ。
【請求項2】
支持層(7)が更に底壁部(33)及びバッテリセル層(5)に接着されており、特にバッテリセル層(5)がカバー壁部(35)に接着されていることを特徴とする請求項1に記載の駆動バッテリ(1)。
【請求項3】
各抜気開口部(52)にはちょうど1つの抜気空間(71)が割り当てられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の駆動バッテリ。
【請求項4】
各抜気空間(71)が、支持層(7)における止まり穴又は貫通孔によって形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の駆動バッテリ。
【請求項5】
抜気空間(71)の直径が、バッテリセル(51)の直径よりも小さいことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の駆動バッテリ。
【請求項6】
各抜気空間(71)が、特に抜気通路(75)を介して、少なくとも、隣り合う別の抜気空間に流れ技術的に結合されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の駆動バッテリ。
【請求項7】
抜気空間(71)が、特に対応する抜気通路(75)を介して、少なくとも、隣り合う2つの抜気空間(71)と流れ技術的に結合されており、特に、抜気空間(71)が、特に抜気通路(75)を介して、少なくとも、隣り合う4つの抜気空間と流れ技術的に結合されていることを特徴とする請求項6に記載の駆動バッテリ。
【請求項8】
流れ技術的な結合部、特に1つあるいは複数の抜気通路(71)が、支持層(7)における少なくとも1つの溝で形成されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の駆動バッテリ。
【請求項9】
流れ技術的な結合部、特に1つあるいは複数の抜気通路が、支持層(7)の、バッテリセル層(5)へ向いた側に形成されていること、又は流れ技術的な結合部、特に1つあるいは複数の抜気通路(72)が、支持層(7)の、底壁部(33)へ向いた側に形成されていることを特徴とする請求項6~8のいずれか1項に記載の駆動バッテリ。
【請求項10】
支持層が、構造発泡材料、特に膨張性ポリプロピレン又はポリウレタンフォームで形成されていることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の駆動バッテリ。
【請求項11】
支持層(7)が、合成樹脂射出成型部材又は押出合成樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の駆動バッテリ。
【請求項12】
支持層(7)が、少なくとも高さ方向において一部材で形成されており、別々に形成された一部材から成る複数の支持層要素(7.1,7.2,7.3)が、特にバッテリセル層(5)の全面にわたって互いに隣接するように配置されていることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の駆動バッテリ。
【請求項13】
支持層(7)が、構造的に有効に形成されているとともに、駆動バッテリ(1)の剛性及び強度を高めるものであることを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の駆動バッテリ。
【請求項14】
支持層(7)が、底壁部(33)の衝突時に対して、変形によって衝突エネルギーを低減するように形成されていること、及び/又は支持層(7)が、底壁部(33)の衝突時に対して、バッテリセル層への衝突負荷を広範囲に分散するように形成されていることを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の駆動バッテリ。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の駆動バッテリを有する原動機付き車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動バッテリハウジングを有する、原動機付き車両用の駆動バッテリに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気駆動部を有する原動機付き車両は、通常、バッテリセルを有する複数のバッテリモジュール、電気部品/電子部品及び冷却装置が取り付けられた駆動バッテリハウジングを備えた駆動バッテリを有している。他方、駆動バッテリハウジングは、車両車体におけるフロアアセンブリの下方に配置されている。公知の駆動バッテリハウジングは、例えばアルミニウムから成るとともに、側方のビーム、カバー及び床部を備えている。側方のビームは、例えば押出成形物又は鋳造部材として構成されている。場合によっては、ある程度の剛性及び衝突抵抗性を駆動バッテリに与えるために、更に別の長手ビーム及びクロスビームがバッテリハウジングに設けられている。
【0003】
特許文献1に示されているように、公知の駆動バッテリハウジングは、長手ビームと、当該長手ビーム間で延びる複数のクロスビームとを有している。また、駆動バッテリハウジングは上側の壁部及び下側の壁部を有しており、当該上側の壁部及び下側の壁部は、それぞれ少なくとも外側のビーム構造部、すなわち外側の長手ビーム及び外側のクロスビームと結合されている。長手ビーム及びクロスビームは押出成形物で形成されている。駆動バッテリハウジングは、車体床部(フロア)の下方に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102017223407号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、駆動バッテリあるいはこのような駆動バッテリを有する原動機付き車両を得ることであり、駆動バッテリは、原動機付き車両のアンダーフロアを形成し、平坦な構造において、バッテリセルの抜気を可能とするとともに底部衝突時にバッテリセルをより良好に保護する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
当該課題は、請求項1あるいは請求項15の特徴を有する駆動バッテリあるいはこのような駆動バッテリを有する原動機付き車両によって解決される。本発明の有利な形態は、各従属請求項に挙げられている。
【0007】
本発明によれば、原動機付き車両用の駆動バッテリは、カバー壁部及び底壁部を備えた駆動バッテリハウジングを有している。底壁部は、少なくとも部分的に原動機付き車両のアンダーフロアを形成している。駆動バッテリハウジングには、垂直かつ互いに隣り合って配置された複数のバッテリセルを有するバッテリセル層と、抜気層、スペーサ層、衝突保護層又は変形層とも呼ぶことができる支持層とが配置されている。各バッテリセルには、支持層へ向いた側において、少なくとも1つの抜気開口部が形成されており、抜気空間、すなわち所定の気体体積を収容可能な凹部が、支持層において各抜気開口部に対向している。
【0008】
一方では、支持層は、原動機付き車両のフロア自由度を決定的に特定する底壁部の下側との所定の間隔を形成し、その結果、底部衝突時にバッテリセル層が保護される。換言すれば、ボラードの乗り越え又はこれに類するような場合には、すなわち、下方からの衝突時には、十分な変形空間が提供されている。他方では、支持層は、抜気開口部によって、抜気する故障したバッテリセルの漏出する気体を導くことが可能な体積を提供する。バッテリセルの抜気開口部は、下方へ向けられており、駆動バッテリの取付状態においてカバー壁部ひいては車室の方向には向けられていない。これにより、気体を車室からより良好に排出することが可能である。
【0009】
有利には、支持層は、特に最も下の接着層を用いて底壁部に接着されているとともに、特に最も上の接着層を用いてバッテリセル層に特に広範囲で、すなわち本質的にそれぞれ隣接する全表面にわたって接着されている。さらに、バッテリセル層は、特に最も上の接着層を用いてカバー壁部に特に広範囲に接着されることが可能である。
【0010】
バッテリセル層は、特に上側の接着層を用いて底壁部に接着されているとともに、特に下側の接着層を用いて支持層に特に広範囲で、すなわちその全表面にわたって接着されている。また、支持層は、特に別の接着層を用いて底壁部に接着されている。これにより、駆動バッテリは全体的にサンドイッチ状に構成されており、底部層(フロア層)及びカバー層は最も外側の層を形成し、バッテリセル層及び支持層は内側の層を形成している。
【0011】
これにより、高さ方向、すなわち車両座標系におけるZ方向において非常にコンパクトかつ構造空間を削減した駆動バッテリが得られる。バッテリセルは、駆動バッテリの全高に比して比較的高く構成されることが可能であり、これにより、駆動バッテリの貯蔵容量(蓄電容量)が高められる。カバー壁部、バッテリセル層、支持層及び底壁部の互いのサンドイッチ状の接着により、駆動バッテリは、全体的に大きなねじり強度及び曲げ強度を有しており、その結果、駆動バッテリ内に更なる支持構造が不要である。駆動バッテリの全ての層は、駆動バッテリの強度及び剛性に貢献する。駆動バッテリは、カバー壁部が上方に形成され、底壁部が下方に形成されるように、原動機付き車両へ取り付けるように形成されている。これにより、底壁部は、取付状態において、好ましくは原動機付き車両のアンダーフロアを形成する。支持層の接着によって、当該支持層は、その変形性にもかかわらず、駆動バッテリの強度及び剛性に貢献する。
【0012】
有利には、各抜気開口部にはちょうど1つの抜気空間が割り当てられている。しかし、スペーサ層は、複数の抜気開口部あるいは全列の抜気開口部に割り当てられた抜気空間を有することが可能である。
【0013】
各抜気空間は支持層における止まり穴又は貫通孔によって形成されることができ、止まり穴の開放された側は、抜気開口部に対向する。
【0014】
これにより、支持層は、抜気空間をもって容易に形成可能である。
【0015】
抜気空間の直径は、好ましくはバッテリセルの直径よりも小さい。
【0016】
特に有利には、各抜気空間は、特に抜気通路を介して、少なくとも、別の隣り合う抜気空間と流れ技術的に結合されることが可能である。
【0017】
これにより、個々のバッテリセルから気体が流出するときに、複数の抜気空間の体積を気体の収容のために用いることが可能である。
【0018】
このとき、抜気空間が、特に対応する抜気通路を介して、少なくとも、2つの隣り合う抜気空間、例えば3つ、4つ、5つ又は6つの隣り合う抜気空間と流れ技術的に結合されていれば、更に有利である。好ましくは、抜気空間は、特に抜気通路を介して、隣り合う4つの抜気空間と流れ技術的に結合されている。
【0019】
流れ技術的な結合部、特に1つあるいは複数の抜気通路は、支持層における少なくとも1つの溝によって、あるいは複数の溝によって、形成されることが可能である。
【0020】
これにより、流れ技術的な結合部を、支持層において容易に形成可能である。
【0021】
好ましくは、流れ技術的な結合部、特に1つあるいは複数の抜気通路は、支持層の、バッテリセル層に向いた側に形成されている。
【0022】
これに代えて、又はこれに加えて、流れ技術的な結合部、特に1つあるいは複数の抜気通路は、支持層の、底壁部に向いた側に形成されることが可能である。これにより、バッテリセル層に向いた側では、バッテリセル層において、支持層のできる限り大きな支持面を提供することが可能である。また、これにより、高温の気体は、バッテリセル層から有利に搬送される。
【0023】
好ましい一発展形態によれば、支持層は、構造発泡材料、特に膨張性のポリプロピレン又はポリウレタンフォームで形成されることが可能である。
【0024】
このような構造発泡材料は軽量であり、支持層はこれにより容易に形成されることができ、構造発泡材料は、良好な変形特性及びエネルギー吸収特性を有している。また、構造発泡材料により、バッテリセル層のための広範囲の支持面を設けることが可能である。
【0025】
構造発泡材料は、好ましくは独立気泡状に形成されている。
【0026】
好ましくは、構造発泡材料は、好ましくはバッテリセル層の構造と一致する車両高さ方向において厚壁状の構造を備えている。
【0027】
構造発泡材料に代えて、支持層を合成樹脂射出成型部材で形成することが可能である。同様に、支持層は、合成樹脂押出によって、すなわち、合成樹脂押出部材として形成されることも可能である。
【0028】
合成樹脂射出成型部材は、大きな個数において安価に製造されることが可能である。このことは、合成樹脂押出部材についても当てはまる。
【0029】
このとき、好ましくは、合成樹脂射出成型部材又は合成樹脂押出部材は、好ましくはバッテリセル層の構造と一致する車両高さ方向において薄壁状の構造を備えることが可能である。
【0030】
好ましくは、薄壁状の構造はカップ状に形成されており、カップ形状の開放された側は、特に抜気開口部へ向けられている。
【0031】
これに代えて、薄壁状の構造は波状に形成されることができ、それぞれ1つの波の谷部は、特に一直線に位置する複数の抜気開口部へ向けられている。
【0032】
好ましくは、バッテリセル層は複数のバッテリセルで形成されており、各バッテリセルは、バッテリセルハウジングジャケットと、バッテリセルハウジング底部(床部)と、セルコイルが収容されたバッテリセルハウジングカバーとを有するバッテリセルハウジングで構成されている。抜気弁とも呼ばれ得る抜気開口部は、好ましくはバッテリセルハウジング底部に形成されている。このとき、バッテリセルハウジング底部及びバッテリセルハウジングカバーは、好ましくは隣り合う層、すなわちカバー壁部及び支持層に接着されている。バッテリセルハウジングは、好ましくは薄壁状であるとともに、金属、例えばアルミニウム又は鋼で形成されている。隣り合うバッテリセルハウジングは、互いにジャケット面において接着されることが可能である。バッテリセルは、いわゆる円形セル、すなわち円筒形状であるか、又はいわゆるプリズム状のセル、すなわち本質的に直方体状であってよい。
【0033】
これに代えて、バッテリセル層は、複数の垂直なチャンバを有する多室構造を備えることもでき、当該チャンバ内には、それぞれ1つ又は複数のセルコイルが収容されている。多室構造は、例えば押出成形によって製造されることが可能である。個々のチャンバは、正方形状又は他の四角形状の断面、例えばハニカム状に類似した断面を有することが可能である。
【0034】
一発展形態によれば、支持層は、少なくとも高さ方向において一部材で形成されることが可能である。別々に形成された一部材の複数の支持層要素は、バッテリセル層の全面にわたって、互いに隣接して配置されることが可能である。高さ方向において一部材とは、支持層自体が上下に配置された複数の層で構成されていないことを意味する。
【0035】
支持層は、構造上有効に形成されることができ、駆動バッテリの強度及び剛性を高めることが可能である。
【0036】
好ましくは、支持層は、底壁部の衝突時に変形によって衝突エネルギーを低減するように形成されている。
【0037】
これにより、バッテリセル層は、衝突エネルギーから保護されることが可能である。
【0038】
これに代えて、又はこれに加えて、支持層は、底壁部の衝突時にバッテリセル層へ衝突負荷を広範囲に分散させるように形成されることが可能である。
【0039】
衝突負荷の分散によって、個々のバッテリセルへ作用する負荷が低減される。
【0040】
カバー壁部及び底壁部は、好ましくはフランジ結合部を介して互いに結合されている。このとき、例えばフランジ結合部における適当なシールによって、流体密な駆動バッテリハウジングを形成することが可能である。このために、カバー壁部及び/又は底壁部は、槽状に形成されることができるか、あるいは、槽の構成部材であり得る。
【0041】
カバー壁部及び/又は底壁部は、アルミニウムあるいはアルミニウム合金又は鋼で構成されることが可能である。しかし、カバー壁部及び/又は底壁部は、繊維強化された合成樹脂、例えば炭素繊維強化プラスチックで構成されることも可能である。
【0042】
本発明の別の態様は、上述のような駆動バッテリを有する原動機付き車両、特に自動車(乗用車)又は商用車(トラック)に関するものである。
【0043】
原動機付き車両は、電気駆動部を有している。原動機付き車両の車体は、例えば、左側の長手ビーム及び右側の長手ビームを有するフロアアセンブリを備えている。このような車体長手ビームは、サイドスカート又は外側下方の長手ビームとも呼ばれる。駆動バッテリは、好ましくはフロアアセンブリに下方から取り付けられている。駆動バッテリは、少なくとも部分的に原動機付き車両のアンダーフロアを形成している。また、取り付けられた駆動バッテリは、少なくとも部分的にフロアアセンブリの床部、すなわち車室の床部を形成することが可能である。有利には、駆動バッテリは、本質的にフロアアセンブリの全幅にわたって、すなわち本質的に左側の長手ビームと右側の長手ビームの間の構造空間全体にわたって延在している。また、駆動バッテリハウジングは、ある範囲において、あるいは原動機付き車両のフロントアクスルとリヤアクスルの間のできる限り大きな範囲にわたって延在することが可能である。有利には、駆動エネルギーハウジングは、前方の(車室の)前壁あるいは前方の前壁の下方から左側のホイールハウス及び右側のホイールハウスの前方の端部まで延在している。また、駆動バッテリハウジングは、原動機付き車両の第2のシート列の下方まで延在することが可能である。換言すれば、駆動バッテリハウジングは、少なくとも前方の車体ピラー(Aピラー)と後方の車体ピラー(特にCピラー)の間の範囲で延在することが可能である。
【0044】
本発明の上述した発展形態は、可能かつ有意義である限り、互いに任意に組み合わせることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明の一実施例による駆動バッテリの概略的な断面図である。
図2】本発明の実施例による駆動バッテリの支持層を下方から見た概略的な斜視図である。
図3】本発明の実施例による駆動バッテリの支持層を上方から見た概略的な斜視図である。
図4】本発明の別の一実施例による駆動バッテリの支持層を下方から見た概略的な斜視図である。
図5】本発明の一実施例による、車体における駆動バッテリの取付前の車体及び駆動バッテリを有する原動機付き車両の概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1図5を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0047】
図1には、本発明の一実施例による駆動バッテリ1の概略的な断面図が示されている。駆動バッテリ1は、自動車の車体100に取り付けるように形成されている。駆動バッテリ1は、自動車の電気駆動モータを駆動するいわゆる高電圧貯蔵部である。駆動バッテリ1は、複数の層でサンドイッチ状に構成されている。駆動バッテリ1は、上から始めて、駆動バッテリハウジング3の一部としてのカバー壁部35を有している。カバー壁部35は、最も上の接着剤層を介してバッテリセル層5の上側に平坦に結合されている。また、バッテリセル層5の下側は、上側の接着剤層を介して支持層7に平坦に結合されている。他方で、支持層7は、その下側において、下側の接着剤層13を介して駆動バッテリハウジング3の底壁部33に結合されている。駆動バッテリハウジング3の縁部では、カバー壁部35及び底壁部33が、図1には図示されていないフランジ結合部39を介して互いに結合されている。
【0048】
バッテリセル層5は、複数のバッテリセル51で構成されている。そして、各バッテリセル51はアルミニウム又は鋼から成るバッテリセルハウジングで構成されており、当該バッテリセルハウジングには、セルコイルが収容されている。バッテリセル51は、円筒形状を有するいわゆる円形セルである。バッテリセル51は、バッテリセル層5において直立して、すなわち垂直に配置されているため、バッテリセルは、そのジャケット面において互いに隣接している。バッテリセル51の上側の端面側は、それぞれ接着剤層9と、したがってカバー壁部35とに結合されている。バッテリセル51の下側の端面側は、それぞれ接着剤層11と、したがって支持層7とに結合されている。
【0049】
接着剤層9には、更には図示されていないバッテリセル接触システムが埋入されており、当該バッテリセル接触システムは、バッテリセル51の極を互いに適切に結合する。接着剤は、バッテリセル接触システムの導電路を包囲している。バッテリセル51の両極は、バッテリセル51の上側の端面側に配置されている。
【0050】
バッテリセル51の下側の端面側には、抜気開口部52が形成されている。バッテリセル51の抜気開口部を補足するように凹部あるいは抜気空間71が支持層7に形成されている。バッテリセル51から漏出する気体が支持層7の抜気通路75を介して排出されることができるように、抜気空間71は、抜気通路75を介して適切に結合されている。分かるように、抜気通路75は、支持層7の、底壁部33に割り当てられた側において形成されている。各抜気空間71の間には幅広の壁部73が配置されている。壁部73には、バッテリセル51が接触している。特に、壁部73は、バッテリセル51の縁部に補足するように形成されているため、壁部73は、バッテリセル51において所望のように支持されることが可能である。
【0051】
支持層7は、発泡ポリウレタンで構成されているとともに、変形可能である。原動機付き車両に組み込まれた駆動バッテリ1の底部衝突時には、場合によっては、底壁部33が支持層7と共に変形し、これにより、バッテリセル層5の保護するために、衝突エネルギーを変形によって吸収することが可能である。
【0052】
図2には、支持層7が下からの斜視図で示されている。抜気空間71は、支持層7における貫通孔として形成されている。斜視図において良好に更に分かるように、抜気通路75は、支持層7の下側における溝である。(支持層の縁部における不図示の抜気空間を除いて)各抜気空間71は、4つの抜気通路75を介して、隣り合う6つの抜気空間71のうち4つと結合されている。抜気空間71を全ての抜気通路75と結合することも可能であり、本実施例において図示されている態様では、気体流を所定の方向へ(図2では上から下へ)導くことも可能である。
【0053】
図3には、支持層7が上からの斜視図で示されている。したがって、バッテリセル層5を支持する支持層7の上側が見て取れる。特に、支持層7の上側が、均等にバッテリセル51に対応して配置された貫通孔(抜気空間71)を有する平坦な面を形成し、これにより、バッテリセル層5のバッテリセルのための広範な支持面を形成することが分かる。また、本質的に駆動バッテリ1の形状に従い(図5に示されているように)長方形状の支持層7の2つの縁部も図示されている。支持層7は複数の支持層要素7.1,7.2,7.3で構成されており、当該支持層は、別々に形成されているとともに、互いに隣接して配置されている。各支持層要素7.1,7.2,7.3は、発泡材料により一部材で形成されている。
【0054】
バッテリセル51から気体が流出する場合には、通常は非常に高温の気体は、割り当てられた抜気空間71を介して隣り合う抜気空間などへ更に導かれることが可能である。
【0055】
下方から衝突時、例えばボラードの乗り越え時には、支持層7は、これによりバッテリセルにネガティブに影響することなく、変形によって衝突エネルギーを十分に低減することが可能な変形層を形成する。また、場合によっては局所的に限定される衝突負荷は、駆動バッテリのサンドイッチ状の構造及びバッテリセル層5における支持層7の広範囲での支持によって大きな面にわたって分散され、その結果、個々のバッテリセル51に作用する負荷が有利に低減される。衝突負荷は、多くのバッテリセル51に分散される。
【0056】
図4には、支持層7’の別の一実施例が下からの斜視図で示されている。当該別の実施例による支持層7’は、合成樹脂射出成形を用いて形成されている。支持層7’は基礎プレート76’を有しており、当該基礎プレートには、ここでも本発明による流れ技術的な結合部としての抜気開口部75’を備えた薄壁カップ部72’が形成されている。カップ部72’の底部は、駆動バッテリ1の底壁部33に隣接しているとともに、底壁部に接着されている。カップ部72’の開放側は、基礎プレート76’と統合して形成されている。したがって、基礎プレート76’は、図3における実施例の図示と類似のように、上から見て、複数の止まり穴(抜気空間71)を有している。
【0057】
別の実施例による支持層7’の作用及び機能は、上述の実施例と同様である。
【0058】
図5には、車体100における駆動バッテリ1の取付前の状態が示されている。車体100は、図1では完全には図示されておらず、本質的に車体100のフロアアセンブリ(プラットフォーム)105のみが図示されている。車体100あるいはフロアアセンブリ105は、左側のサイドスカート107及び右側のサイドスカート108、すなわち長手ビームを有している。駆動バッテリ1は、駆動バッテリ1のリヤ範囲において載置された追加ハウジング37を除いて全長にわたって本質的に同一の高さを有する上述したような駆動バッテリハウジング3を有している。駆動バッテリハウジング3には、バッテリセル層5が収容されている。追加ハウジング37には、例えば駆動バッテリ1の電気部品/電子部品が収容されている。駆動バッテリ1は、フロアアセンブリ105において、ネジ結合(部)及び場合によっては更に接着結合(部)を用いて下方から取り付けられる。
【0059】
取り付けられた駆動エネルギー貯蔵部ハウジング3は、少なくとも部分的にフロアアセンブリ105の床部(フロア)、すなわち車室の床部(フロア)を形成しているとともに、左側のサイドスカート107と右側のサイドスカート108の間でフロアアセンブリ105の全幅にわたって、前方のホイールハウスの範囲における前方の端面壁から後方のホイールハウスの範囲における、第2のシート列を形成する不図示の後部座席の下方まで延在している。また、駆動エネルギー貯蔵部ハウジング3は、自動車のアンダーフロアを形成している。
【0060】
駆動バッテリ1と、層の互いの接着とのサンドイッチ状の構造によって、駆動バッテリ1は、大きな曲げ強度及びねじり強度を有している。これにより、取り付けられた駆動バッテリ1は、フロアアセンブリ105と相応に協働することができるため、原動機付き車両は、全体としてより大きな曲げ強度及びねじり強度を有する。換言すれば、駆動バッテリ1は、上述の構造により、特に良好に車体構造機能を担うことが可能である。
【0061】
駆動バッテリハウジング3は、全体として、フロアアセンブリ105の対応する構成部材にシールするように接触しているため、駆動バッテリハウジング3及びフロアアセンブリ105は、原動機付き車両の車室109の流体密な床部(フロア)を共に形成している。
【0062】
フロアアセンブリ105は、車体の従来のフロアアセンブリと比べてフロアパネルを有しておらず、したがって、隣り合うクロスビーム/クロスビーム構造部の間の自由空間を有している。当該自由空間は、駆動バッテリハウジング3によって閉鎖されている。
図1-2】
図3
図4
図5
【国際調査報告】