(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】骨折回復及び骨の再生速度向上用散剤、丸剤、または液剤状の生薬材組成物及びそれを利用した散剤、丸剤、または液剤状の生薬製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/232 20060101AFI20240711BHJP
A61K 35/32 20150101ALI20240711BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20240711BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240711BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240711BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20240711BHJP
A61K 36/21 20060101ALI20240711BHJP
A61K 36/234 20060101ALI20240711BHJP
A61K 36/481 20060101ALI20240711BHJP
A61K 36/8988 20060101ALI20240711BHJP
A61K 36/899 20060101ALI20240711BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240711BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
A61K36/232
A61K35/32
A61P19/08
A61P43/00 121
A61K9/08
A61K36/185
A61K36/21
A61K36/234
A61K36/481
A61K36/8988
A61K36/899
A61K9/20
A61K9/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580500
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(85)【翻訳文提出日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 KR2022006073
(87)【国際公開番号】W WO2023003138
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】10-2021-0096593
(32)【優先日】2021-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523487117
【氏名又は名称】チョイ, ヨン ジン
【氏名又は名称原語表記】CHOI, Young Jin
【住所又は居所原語表記】(Jamsil-dong, Treeium) 1101-ho, 315-dong, Jamsil-ro62, Songpa-gu Seoul 05555 (KR)
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【氏名又は名称】小西 富雅
(72)【発明者】
【氏名】チョイ, ヨン ジン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C087
4C088
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA30
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC09
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB46
4C087CA03
4C087MA02
4C087MA16
4C087MA35
4C087MA43
4C087NA14
4C087ZA96
4C087ZC75
4C088AB12
4C088AB40
4C088AB41
4C088AB59
4C088AB89
4C088AD14
4C088MA08
4C088MA16
4C088MA35
4C088MA43
4C088NA14
4C088ZA96
4C088ZC75
(57)【要約】
本発明は骨折回復及び骨の再生速度向上用散剤、丸剤、または液剤状の生薬材組成物及びそれを利用した散剤、丸剤、または液剤状の生薬製剤に関し、より詳しくは、骨折回復及び骨の再生速度を向上させ得る薬材と消化吸収力を上げられる薬材を混合することで、骨折回復及び骨の再生効果を促進し得る骨折回復及び骨の再生速度向上用散剤、丸剤、または液剤状の生薬材組成物及びそれを利用した散剤、丸剤、または液剤状の生薬製剤に関する。本発明の骨折回復及び骨の再生速度向上用散剤、丸剤、または液剤状の生薬材組成物は、トウキ20重量部、セッコク16重量部、オオバキセワタ12重量部、鹿角10重量部、ハマゼリ8重量部、キバナオウギ8重量部、イノコズチ4重量部、及びシンキク4重量部で組成されることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トウキ20重量部、セッコク16重量部、オオバキセワタ12重量部、鹿角10重量部、ハマゼリ8重量部、キバナオウギ8重量部、及びイノコズチ4重量部で組成されることを特徴とする骨折回復及び骨の再生速度向上用散剤、丸剤、または液剤状の生薬材組成物。
【請求項2】
トウキ20重量部、セッコク16重量部、オオバキセワタ12重量部、鹿角10重量部、ハマゼリ8重量部、キバナオウギ8重量部、イノコズチ4重量部、及びシンキク2重量部で組成されることを特徴とする骨折回復及び骨の再生速度向上用散剤、丸剤、または液剤状の生薬材組成物。
【請求項3】
トウキ10重量部、セッコク8重量部、オオバキセワタ6重量部、鹿角5重量部、ハマゼリ4重量部、キバナオウギ4重量部、イノコズチ2重量部、及びシンキク4重量部で組成されることを特徴とする骨折回復及び骨の再生速度向上用散剤、丸剤、または液剤状の生薬材組成物。
【請求項4】
トウキ20重量部、セッコク16重量部、オオバキセワタ12重量部、鹿角10重量部、ハマゼリ8重量部、キバナオウギ8重量部、イノコズチ4重量部、及びシンキク4重量部で組成されることを特徴とする骨折回復及び骨の再生速度向上用散剤、丸剤、または液剤状の生薬材組成物。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のうちから選択されるいずれか一項に記載の生薬材組成物を有効成分として含有し、散剤、丸剤、液剤のうちいずれか一つの形態に製造されることを特徴とする骨折回復及び骨の再生速度向上用散剤、丸剤、または液剤状の生薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は骨折回復及び骨の再生速度向上用散剤、丸剤、または液剤状の生薬材組成物及びそれを利用した散剤、丸剤、または液剤状の生薬製剤に関し、より詳しくは、骨折回復及び骨の再生速度を向上させ得る薬材と消化吸収力を上げられる薬材を混合することで、骨折回復及び骨の再生効果を促進し得る骨折回復及び骨の再生速度向上用散剤、丸剤、または液剤状の生薬材組成物及びそれを利用した散剤、丸剤、または液剤状の生薬製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
骨折とは身体の一部のうち骨が破壊される現象である。このような骨折は様々な物理学的及び生物学的要因によって影響を受け、骨折の周囲に新たな組織が生成されて分離された2つの骨が結合されたら治癒され得る。
【0003】
現在、骨折の治癒を促進する多様な方法が提示されてきたが、一例としては静脈の流れを遅くする方法、交感神経を刺激する方法、電気刺激を与える方法、ホルモンを投与する方法、または特定化合物、例えば、ビタミンD、ビタミンD誘導体、キンシドニン、BMPなどを与える方法などが挙げられる。
しかし、現在まで満足できる骨折の治癒方法や骨折治療剤の開発は行われていないのが実情である。
【0004】
一方、一般に物理的な外力によって骨折された骨の治療方法は、外科的な手術をした後、副木や石膏包帯などで固定して自然治癒させることであるが、このような治療方法の場合は骨折の回復期間が長くなるという問題点があった。
【0005】
そこで、前記のような問題点を解決するために、本出願人は特許文献1にトウキ18乃至23重量%、ハマゼリ18乃至23重量%、キバナオウギ7.5乃至9.5重量%、ニンジン7.5乃至9.5重量%、クコ7.5乃至9.5重量%、ヤマツルニンジン7.5乃至9.5重量%、ネナシカズラの種子3.5乃至4.5重量%、オオバキセワタ3.5乃至4.5重量%、セッコク3.5乃至4.5重量%、ホコツシ3.5乃至4.5重量%、合歡皮3.5乃至4.5重量%、及び鹿茸3.5乃至4.5重量%を含む骨折回復を促進する生薬材組成物を公開している。
しかし、前記生薬材組成物は骨折回復を促進する効果はあるが、骨折治癒に効果があると知られている薬材のみからなっており、消化不良、消化障害などが発生するというの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国国内登録特許公報 第10-0731160号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記のような問題点を解決するために、骨折と骨の再生に効果があると知られている特定薬材と消化力を上げられる薬材を混合することで消化吸収力が向上され、服用の際に薬材成分が体中に素早く吸収されながら骨折部位の回復を促進し得る骨折回復及び骨の再生速度向上用散剤、丸剤、または液剤状の生薬材組成物及びそれを利用した散剤、丸剤、または液剤状の生薬製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の骨折回復及び骨の再生速度向上用散剤、丸剤、または液剤状の生薬材組成物は、トウキ20重量部、セッコク16重量部、オオバキセワタ12重量部、鹿角10重量部、ハマゼリ8重量部、キバナオウギ8重量部、及びイノコズチ4重量部で組成されることを特徴とする。
【0009】
本発明の骨折回復及び骨の再生速度向上用散剤、丸剤、または液剤状の生薬材組成物は、トウキ20重量部、セッコク16重量部、オオバキセワタ12重量部、鹿角10重量部、ハマゼリ8重量部、キバナオウギ8重量部、イノコズチ4重量部、及びシンキク2重量部で組成されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の骨折回復及び骨の再生速度向上用散剤、丸剤、または液剤状の生薬材組成物は、トウキ10重量部、セッコク8重量部、オオバキセワタ6重量部、鹿角5重量部、ハマゼリ4重量部、キバナオウギ4重量部、イノコズチ2重要部、及びシンキク4重量部で組成されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の骨折回復及び骨の再生速度向上用散剤、丸剤、または液剤状の生薬材組成物は、トウキ20重量部、セッコク16重量部、オオバキセワタ12重量部、鹿角10重量部、ハマゼリ8重量部、キバナオウギ8重要部、イノコズチ4重量部、及びシンキク4重量部で組成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は骨折と骨の再生に効果があるトウキ、セッコク、オオバキセワタ、鹿角、ハマゼリ、キバナオウギ、イノコズチに消化力を上げられるシンキクが混合されて消化吸収力が上がることで、骨折治療が必要な患者が服用する際、薬材成分が体中に素早く吸収されながら骨折部位の回復を促進して骨折回復期間を大きく短縮することができ、散剤、丸剤、または液剤状に製造されて使用者が容易に服用し得るように便宜性を有する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の接骨湯を投与していない対照群(Control)と接骨湯投与群(比較例1及び実施例1乃至4)の手術後の骨の間隔の変化を示すグラフである。
【
図2】骨折手術後に本接骨湯を投与して骨の再生速度を計算するためのエックス線撮影の例示写真である。
【
図3】骨折手術後のControl群と接骨湯投与群の接骨湯投与前後のエックス線写真である。
【
図4】骨折手術後のControl群と接骨湯投与群の接骨湯投与前後のエックス線写真である。
【
図5】骨折手術後のControl群と接骨湯投与群の接骨湯投与前後のエックス線写真である。
【
図6】骨折手術後のControl群と接骨湯投与群の接骨湯投与前後のエックス線写真である。
【
図7】骨折手術後のControl群と接骨湯投与群の接骨湯投与前後のエックス線写真である。
【
図8】骨折手術後のControl群と接骨湯投与群の接骨湯投与前後のエックス線写真である。
【
図9】Control群と接骨湯投与群の骨折周囲の代表的な組織学的写真である。
【
図10】Control群と接骨湯投与群の骨折周囲の代表的な組織学的写真である。
【
図11】Control群と接骨湯投与群の骨折周囲の代表的な組織学的写真である。
【
図12】Control群と接骨湯投与群の骨折周囲の代表的な組織学的写真である。
【
図13】Control群と接骨湯投与群の骨折周囲の代表的な組織学的写真である。
【
図14】Control群と接骨湯投与群の骨折周囲の代表的な組織学的写真である。
【
図15】Control群と接骨湯投与群の骨折線に形成された仮骨の長さを示すグラフである。
【
図16】実施例4による接骨湯Eと比較例1による接骨湯Aの効果を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の骨折回復及び骨の再生速度向上用散剤、丸剤、または液剤状の生薬材組成物は、トウキ20重量部、セッコク16重量部、オオバキセワタ12重量部、鹿角10重量部、ハマゼリ8重量部、キバナオウギ8重量部、及びイノコズチ4重量部で組成されることを特徴とする。
【0015】
本発明の骨折回復及び骨の再生速度向上用散剤、丸剤、または液剤状の生薬材組成物は、トウキ20重量部、セッコク16重量部、オオバキセワタ12重量部、鹿角10重量部、ハマゼリ8重量部、キバナオウギ8重量部、イノコズチ4重量部、及びシンキク2重量部で組成されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の骨折回復及び骨の再生速度向上用散剤、丸剤、または液剤状の生薬材組成物は、トウキ10重量部、セッコク8重量部、オオバキセワタ6重量部、鹿角5重量部、ハマゼリ4重量部、キバナオウギ4重量部、イノコズチ2重要部、及びシンキク4重量部で組成されることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の骨折回復及び骨の再生速度向上用散剤、丸剤、または液剤状の生薬材組成物は、トウキ20重量部、セッコク16重量部、オオバキセワタ12重量部、鹿角10重量部、ハマゼリ8重量部、キバナオウギ8重要部、イノコズチ4重量部、及びシンキク4重量部で組成されることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の骨折回復及び骨の再生速度向上用散剤、丸剤、または液剤状の生薬材組成物を有効成分と含有し、散剤、丸剤、または液剤のうちいずれか一つの形態に製造される生薬製剤であることを特徴とする。
以下、本発明の好ましい実施例を詳細に説明すると次のようである。
【0019】
本発明の骨折の回復と骨の再生速度を向上させられる前記トウキは、補血、活血止痛、潤腸の効能を有し、心肝血虚、月経不調、生理痛、閉経、産後腹痛、打撲損傷、癰疽瘡瘍、便秘などの症状に使用される。トウキの骨細胞増殖能力はすでに報告されている(Clinica Chimica Acta 324(2002) 89-97, Effect of Angelica sinensis on the proliferation of human bone cells)。
【0020】
このような効能を有するトウキは、秋に根を採取して得られた乾燥されたものを使用するが、その含量は全体の生薬材組成物のうち15乃至30重量%であることが好ましい。もし全体の生薬材組成物のうちトウキの含量が過度に多ければむくみと下痢の問題が発生する恐れがある。
【0021】
前記セッコクはラン科の常緑多年草であって、高さ20cm程度で、岩の表面や古木にくっついて生きるものであり、根茎から太い根が多く生え、多数個の茎が出てまっすぐに育ち、古いものは茎に葉がなく、節だけがある。葉は2~3年生で食い違って生え、長さ4~7cm、幅1cm程度である。
【0022】
セッコクは養胃生津、滋陰除熱、明目強腰の効能があり、熱病による口渇、胃陰虚、陰虚発熱、腰膝軟弱などの症状を治療し、足の少陰腎経に帰経するため、腎臓を補し骨を丈夫にする。
【0023】
前記セッコクはその含量が過度になると発熱の問題が生じる恐れがあり、全体の生薬材組成物のうち15乃至20重量%であることが好ましい。
【0024】
前記オオバキセワタはマツムシソウ科に属する多年草であるゾクダン(Dipsacus asperoides C.Y.Cheng et T.M.Ai)の根のことをいうが、オオバキセワタは古くから人々に使用されてきた食品及び漢方薬の一種であって、最近では成長ホルモンの分泌と成長促進に関するオオバキセワタ成分の有用性が明らかになってその需要が次第に拡大されており、併せてその安全性と効能に関する研究が活発に行われている傾向である。
【0025】
オオバキセワタは補肝腎、安胎止漏、続筋骨の効果があり、肝腎虚腰脚痛、胎漏、筋傷骨折などの症状を治療する。
【0026】
現在知られているオオバキセワタの薬理作用としては抗糖尿効果、筋肉関節疼痛の緩和作用、抗補体効果、体力低下による咳嗽喘息と下痢の治療作用などが報告されており、多方面からオオバキセワタ抽出物の新しい効能に関する持続的な研究が行われている。
【0027】
本発明ではゾクダン(Dipsacus asperoides C.Y.Cheng et T.M.Ai)の根を収穫し乾燥して根元とひげ根を除去して得られたものを使用するが、その含量は全体の生薬材組成物のうち10乃至15重量%であることが好ましい。もしその含量が過度であれば発熱する問題が生じる恐れがある。
【0028】
前記鹿角はシカ科(Cervidae)に属するニホンジカ(Cervus nippon Temminck)、アカシカ(Cervus elaphus Linne)、またはワピチ(Cervus canadensis Erxleben)の骨質化された角を切って乾燥したものである。鹿角の効能は腎臓の元気を補し、陽気を引き立て、タンパク質と核酸の合成を促進して骨の成長を促進し、発育促進、造血、強心作用をする薬理を有し、免疫機能と肝障害に対する影響、骨粗鬆症に効果があると知られている。
【0029】
前記鹿角はその含量が過度であれば下痢を引き起こすという問題があり、全体の生薬材組成物のうち10乃至15重量%であることが好ましい。
【0030】
前記ハマゼリは双子葉植物離弁花群散形花目セリ科の多年草であって、中国が原産の植物である。活血行気、去風止痛の効能があり、月経不調、経閉生理痛、難産産後腹痛、四肢麻木、打撲損傷、頭痛などの症状を治療する。
【0031】
このような効能を有するハマゼリは、9月~11月に採取して根の小さい枝を除去してから乾燥状態のものを使用するが、その含量は全体の生薬材組成物のうち5乃至10重量%であることが好ましい。もし全体の接骨湯組成物のうちハマゼリの含量が過度に多ければ発熱問題が発生する恐れがある。ハマゼリは骨折に直接な効果は発揮しないが、活血行気する作用で炎症を治療する効果を奏でて、骨折回復を更に促進すると判断される。
【0032】
前記キバナオウギは皮膚の機能を保護し、汗を防ぎ、傷口を直し、免疫機能に役に立つ薬材である。
【0033】
キバナオウギは補気升陽、益気固表、托瘡生肌、利水退腫の効能があり、脾気虚弱、気不摂血、中気下陥、脾肺気虚、気血双虧、体虚多汗、癰疽、気虚水腫などの症状を治療する。
【0034】
汗の量を調節し、利尿作用をして糖尿病の治療剤として使用されるなど、肥満の人に良い薬材である。全身から汗が出てめまいがして脱力することは気力がなく衰弱しているという証拠であるが、このような症状以外には倦怠、無気力症候群にも効果がある。キバナオウギは汗が出ないようにし、皮膚を丈夫にし、膿を出し、むくみを鎮め、傷口を直す効果がよい。また、慢性疲労を取り、不眠症、虚弱体質の改善に効果的である。アルカロイド、アミノ酸、アスパラギン酸などが入っている。味は甘くて性質は若干温かい。脾経、肺経、三焦経、腎経に作用する。キバナオウギは気を補し、強壮作用と強心作用をする。
【0035】
皮膚血管の拡張するため血液循環に役に立ち、毛細血管の抵抗力を上げる。キバナオウギは秋または春に2年~5年生の根を採取し皮をむいて乾燥して使用するが、本発明ではこのような効能が知られているキバナオウギを添加することで、骨折回復において気を補する効果によって人体がより早く骨折を回復し得るように効果を与えるためのものである。
【0036】
前記キバナオウギは春と秋に採取して根を乾燥し、ひげ根と根元部分を除去した状態のものを使用するが、その含量が過度に多ければ消化不良や発熱の問題があって、全体の生薬材組成物のうち5乃至10重量%であることが好ましい。
【0037】
前記イノコズチは植物の茎にある節の形状が牛の膝に似ているとして牛膝とも称される。イノコズチは牛膝の根に当たる薬材であって、有効成分としてはサポニンと多量のカルシウムを含有しており、形が膝に似ているように膝の疾患(関節炎、関節リュウマチ、打撲による炎症)を治療するのに著しい効果が認められており、また、腰と脚が重くて痛みを感じ、時には筋肉痙攣がある際に多く活用されている。また、高血圧に頭痛、めまい、目眩みなどの症状がある際に血圧を下げながら脳血管の痙攣を弛緩したり、民間では若葉を惣菜として食べ、根は神経痛に使用することもある。
【0038】
前記イノコズチはその含量が過度に多ければ下痢を引き起こす恐れがあり、全体の生薬材組成物のうち2乃至5重量%であることが好ましい。
【0039】
前記シンキク(Massa Medicata Fermentata)は神麹、六神麹、薬麹ともいい、漢方医学では小麦粉、襖、ソウジの汁、野蓼の汁、菁蒿の汁、杏仁泥、赤小豆などを混ぜて麹のようにし、発酵して作った薬材を意味する。前記シンキクは主に脾臓と胃腸に作用して消火器の機能を丈夫にし消化を助ける作用と共に胃腸を楽にする作用を有し、食もたれの際、胸が苦しいか嘔吐と下痢をする際、産後のお血による腹痛などに効果を奏でると知られている。
【0040】
前記シンキクは前記のような効能によって接骨湯の消化力を増進する役割をすることで、接骨湯を服用する際に吸収力が向上されて生薬材の効果が素早く得られるようにするが、シンキクはその含量が微々たるものであればシンキクの効能を得ることが難しく、含量が過度であれば眠気症状を誘発する恐れがあるため、全体の生薬材組成物のうち2乃至5重量%程度が好ましい。
【実施例】
【0041】
比較例1(接骨湯A:従来の本出願人の特許文献1)
トウキ20g、ハマゼリ8g、ニンジン8g、クコ8g、ヤマツルニンジン8g、オオバキセワタ4g、セッコク4g、ホコツシ4g、ネナシカズラの種子4g、合歡皮4g、鹿茸1gを1貼にし、10貼分量を水6000mlに入れて薬湯器で95~100℃で2~4時間煎じた後、薬材をこして最終1800mlの接骨湯を得た。
【0042】
実施例1(接骨湯B:Base)
トウキ20g、セッコク16g、オオバキセワタ12g、鹿角8g、ハマゼリ8g、キバナオウギ8g、イノコズチ4gを1貼にし、10貼分量を水6000mlに入れて薬湯器で95~100℃で2~4時間煎じて、薬材をこして最終1200mlの接骨湯を得た。
【0043】
実施例2(接骨湯C:接骨湯B+シンキク2g)
前記実施例2にシンキク2gを加えて同じ方法で最終1200mlの接骨湯を得た。
【0044】
実施例3(接骨湯D:1/2接骨湯B+シンキク4g)
トウキ10g、セッコク8g、オオバキセワタ6g、鹿角5g、ハマゼリ4g、キバナオウギ4g、イノコズチ2g、シンキク4gを1貼にし、10貼分量を水6000mlに入れて薬湯器で95~100℃で2~4時間煎じて、薬材をこして最終1200mlの接骨湯を得た。
【0045】
実施例4(接骨湯E:接骨湯B+シンキク4g)
トウキ20g、セッコク16g、オオバキセワタ12g、鹿角10g、ハマゼリ8g、キバナオウギ8g、イノコズチ4g、シンキク4gを1貼にし、10貼分量を水6000mlに入れて薬湯器で95~100℃で2~4時間煎じて、薬材をこして最終1200mlの接骨湯を得た。
【0046】
前記実施例1乃至4のように、本発明の生薬材組成物は湯薬状の接骨湯に製造して液剤として服用するようにすることが好ましいが、これに限らず、散剤(粉)または丸剤としても服用可能に製造し得る。
【0047】
前記生薬材組成物を丸剤に製造するためには、生薬材組成物を湯薬状に製造した後、熱水収縮やエタノール抽出してから濃縮、乾燥過程などを経て丸状に成形して丸剤に製造し、散剤に製造するためには丸剤を粉に粉末化して製造する方法によって生薬材組成物を散剤や丸剤状に製造し得るが、本発明の生薬材組成物を接骨湯、散剤、丸剤状に製造する方法は本発明の核心技術ではないため詳しい製造方法は省略する。
【0048】
実験例1
前記比較例1及び実施例1乃至4のような方法で得られた接骨湯A、B、C、D、Eに対して骨折回復と骨の再生速度を向上させるのか否かを把握するために、以下のような条件で実験を実施した。
【0049】
1.実験方法
骨折した7週齢の雄SD Ratを対象に水と各接骨湯を投与した後、エックス線撮影を行って、試験物質の投与による骨折再生効能を調べることにした。
試験物質の投与と群別の投与回数及び容量は以下のようである。
Group Con:Vehicle control(water)
Group A:接骨湯A(10ml/kg p.o)
Group B:接骨湯B(10ml/kg p.o)
Group C:接骨湯C(10ml/kg p.o)
Group D:接骨湯D(10ml/kg p.o)
Group E:接骨湯E(10ml/kg p.o)
【0050】
2.測定
1)骨の再生速度の測定
各グループの実験動物に毎日水と接骨湯A、B、C、D、Eを経口投与し、骨の再生速度を確認するために毎週エックス線撮影を行って尺骨間の間隔を確認した。
2.)仮骨の形成速度の測定
4週間接骨湯A、B、C、D、Eを経口投与した後、尺骨の骨折線を中心に前後2mmを摘出してH&E染色を行った。オリンパス顕微鏡で染色された箇所を観察し、骨折線から再生された仮骨の長さを測定した。
【0051】
3.実験結果
1)接骨湯A、B、C、D、Eが骨の再生に及ぼす影響
骨折を誘発した後、毎日接骨湯A、B、C、D、Eを10ml/kg p.oで投与し、エックス線撮影を行って尺骨間の間隔を確認した結果は
図1及び
図3乃至
図8に示した通りである。
(骨の再生速度の計算法:
図2に示したように、手術直後の尺骨間の間隔(2.68mm)-3週後の尺骨間の間隔(1.06mm)=1.62mm 仮骨が形成されて骨が多く再生されるほど数値が高くなる。)
図1のように、実験において投与1週後までは群の間で差は見えなかったが、2種後から接骨湯E群はcontrol群に比べ有意味な差を示し始めており、3種後からは接骨湯A群、B群、C群、D群、E群はいずれもcontrol群に比べ有意味な差を示した。
【0052】
日付による実験結果を調べると、control群の骨再生は3・4週目に-15%の減少を示したが、接骨湯E群は2週目に4.7%、3週目に14.3%、4週目に23.6%の骨の再生率を示した。接骨湯C群は3週目に13.4%、4週目に20.5%、接骨湯A群は3週目に9.6%、4週目に16.3%、接骨湯D群は3週目に10.3%、4週目に14.7%、接骨湯B群は3週目に10.6%、4週目に12.3%の骨の再生率の増加を示した。
【0053】
2)接骨湯処置後のエックス線写真の結果
毎週エックス線撮影を行った代表写真は
図3乃至
図8のようであるが、写真を見ると接骨湯を投与した群がcontrol群より骨の再生が加速化されたことが分かる。
【0054】
3)骨折周囲の代表的な組織学的写真の結果及び骨折線で形成された仮骨の長さ
骨折周囲の代表的な組織学的写真は
図9乃至
図14のようであり、骨折線で形成された仮骨の長さは
図15に示したようであるが、写真とグラフを見るとcontrol群より骨折線から再生された骨(仮骨)がより多く形成されていることが分かる。
【0055】
4)接骨湯Eと比較例1である従来の接骨湯Aの効果の比較
実験結果、実施例4による接骨湯Eと比較例1による従来の接骨湯Aの効果を比べると、
図16に示したグラフのように接骨湯Eは骨折発生後2週から骨の回復が始まり、4週後には接骨湯Aに比べ57%の骨の回復効果が増加したことが分かる。
【0056】
4.結論
本実験は接骨湯A、B、C、D、Eが骨折の治癒と骨の再生にいかなる影響を及ぼすのかを確認するための実験であって、骨折した実験動物に各接骨湯を経口投与した後、エックス線撮影を行って、尺骨間の間隔を確認した。
【0057】
確認結果、骨折の間隔は投与1週後まで群の間で差が見えなかったが、2週後から接骨湯E群はcontrol群に比べ有意味な差を示しており、3週後から接骨湯A、B、C、D、Eはいずれも骨の再生速度が増加したことを確認した。
【0058】
特に4週目の骨の再生はcontrol群が-15%の減少を示したが、接骨湯E群は23.6%、接骨湯C群は20.5%、接骨湯A群は16.3%、接骨湯D群は15.7%、接骨湯B群は12.3%の骨の再生率の増加を示した。
【0059】
エックス線写真を観察した際、全体的に接骨湯A群、B群、C群、D群、E群はいずれもcontrol群に比べ骨の再生が速く行われたことが分かった。また、組織学的写真でも接骨湯A群、B群、C群、D群、E群はいずれもcontrol群に比べ、仮骨(骨の再生)がより多く形成されたことを確認した。
【0060】
特に接骨湯E群は接骨湯A群に比べても2週後から骨の回復が始まって4週後には接骨湯Aより57%の回復効果が増加したことを確認した。
【0061】
これはトウキ、セッコク、オオバキセワタ、鹿角、ハマゼリ、キバナオウギ以外に膝、関節炎の治療に効果があると知られているイノコズチと消化力を良くして接骨湯の薬材成分の吸収力を素早く上げるシンキクが骨折の回復と骨の再生速度を大きく向上させる役割をしていることを示す結果である。
【0062】
また、骨折を誘発してから最初の1週間は破骨細胞の活動で骨の間隔がより広がるようになるが、
図1の1weekの数値を見ると、接骨湯を投与した実験群は少なく悪くなるという結果が出た。これは接骨湯が破骨細胞の活性を抑制するためであり、それによって接骨湯を骨粗鬆症の治療と予防にも積極的に活用し得るという結果が分かる。
【0063】
前記ように本明細書と図面では本発明の好ましい実施例について掲示しており、たとえ特定用語が使用されているが、これは単に本発明の技術内容を容易に説明し発明の理解を助けるための一般的な意味で使用されたものであって、本発明の範囲を限定しようとするものではない。ここに掲示された実施例以外にも本発明の技術的思想に基づく他の変形例を実施し得るということは、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に自明である。
【国際調査報告】