(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】均一磁場発生のための超伝導磁石システム
(51)【国際特許分類】
G01N 24/00 20060101AFI20240711BHJP
H01F 6/06 20060101ALI20240711BHJP
H01F 5/00 20060101ALI20240711BHJP
H01F 7/20 20060101ALI20240711BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20240711BHJP
G01R 33/3875 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
G01N24/00 610J
H01F6/06 110
H01F5/00 C
H01F7/20 C
A61B5/055 331
A61B5/055 332
G01R33/3875
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580786
(86)(22)【出願日】2022-06-01
(85)【翻訳文提出日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 GB2022051396
(87)【国際公開番号】W WO2023275505
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507329985
【氏名又は名称】オックスフォード インストルメンツ ナノテクノロジー ツールス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーニー アンドリュー
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AD08
4C096CA02
4C096CA22
(57)【要約】
磁気共鳴(NMR)、特にNMR分光法の分野で役立つ、均一磁場をターゲット領域に発生させるための磁石システムが提供される。磁石システムは、超伝導体材料から形成された第1のソレノイドと、補償コイルの1又は2以上のペアのセットとを有する第1の磁石と備え、各ペアは、第1のソレノイドと同軸に配置され、補償コイルのセットの間のボア内に環状容積を画定するように、幾何学的中心点に関して軸方向にオフセットして対称に配置される。セットの補償コイルの第1のペアは、第1のソレノイドと電気的に直列に接続されている。シムシステムは、環状容積内に配置され、1又は2以上の超伝導シムコイルを備える。ターゲット領域の磁場は百万分の10ppm未満の均一性を有し、ターゲット領域は中心点を中心とする直径1cmの球状容積である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲット領域に均一磁場を発生させるための磁石システムであって、
ボア及び中心軸を規定するように巻かれた超伝導材料から形成された第1のソレノイドを有する第1の磁石であって、前記第1のソレノイドの幾何学的中心が、前記中心軸上の幾何学的中心点を規定する、第1の磁石と、
補償コイルの1又は2以上のペアのセットであって、前記補償コイルの各ペアが、前記補償コイルのセットの間の前記ボア内に環状容積を画定するように、前記中心軸上に同軸に配置され、且つ前記幾何学的中心点に関して軸方向にオフセットして対称に配置されており、前記セットの前記補償コイルの第1のペアは、前記第1のソレノイドと電気的に直列に接続されている、補償コイルの1又は2以上のペアのセットと、
前記環状容積内に配置され、1又は2以上の超伝導シムコイルを備えるシムシステムであって、前記シムシステムが使用時に前記ターゲット領域内の磁場をシミングするように動作可能である、シムシステムと、
を備え、
前記シムシステムは、使用時に前記ターゲット領域の磁場が10ppm未満の均一性を有するように配置され、前記ターゲット領域は、前記中心点を中心とする直径1cmの球状容積である、磁石システム。
【請求項2】
前記補償コイルの第1のペアは、前記第1のソレノイドの半径方向位置よりも小さい半径方向位置に配置されている、請求項1に記載の磁石システム。
【請求項3】
前記第1のソレノイド及び前記補償コイルの第1のペアは、低温超伝導材料、好ましくはニオブスズから形成されている、請求項1又は2に記載の磁石システム。
【請求項4】
第2の磁石をさらに備え、前記第1の磁石及び前記第2の磁石の前記ソレノイドが、前記中心軸上で共通の幾何学的中心点を有するように、前記第2の磁石は、超伝導体材料から形成された1又は2以上のソレノイドを有し、且つ前記第1の磁石と同軸に配置されており、
前記第2の磁石は、前記環状容積が前記第1の磁石と前記第2の磁石との間に配置されるように、前記ボア内に配置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の磁石システム。
【請求項5】
前記セットの前記補償コイルの第2のペアは、前記第2の磁石と電気的に直列に接続されている、請求項4に記載の磁石システム。
【請求項6】
前記補償コイルの第2のペアは、前記第2の磁石の半径方向位置よりも大きい半径方向位置に配置されている、請求項5に記載の磁石システム。
【請求項7】
前記補償コイルの第1のペア及び第2のペアのうちの一方は、前記環状容積の対向する軸方向端部を規定するように、前記補償コイルの第1のペア及び第2のペアのうちの他方に半径方向に隣接している、請求項2に従属する場合の請求項6に記載の磁石システム。
【請求項8】
前記補償コイルの第2のペアは、高温超伝導材料、好ましくはBSCCOから形成されている、請求項5~7のいずれか1項に記載の磁石システム。
【請求項9】
前記補償コイルの第2のペアの前記補償コイルの各々は、パンケーキコイルとして配置されている、請求項8に記載の磁石システム。
【請求項10】
前記第2の磁石は、高温超伝導材料、好ましくはBSCCOから形成されている、請求項4~9のいずれか1項に記載の磁石システム。
【請求項11】
前記第1の磁石及び前記第2の磁石は、使用時に前記第1の磁石及び前記第2の磁石を共通の温度まで冷却するように構成された極低温容器内に収容されている、請求項4~10のいずれか1項に記載の磁石システム。
【請求項12】
前記第1の磁石は、前記ボアの外側で前記中心軸の周りに巻かれた超伝導材料から形成された複数のソレノイドを備え、前記ソレノイドの各々は、それぞれの半径方向位置に配置されている、請求項1~11のいずれか1項に記載の磁石システム。
【請求項13】
前記第1の磁石の前記ソレノイドの各々は、低温超伝導材料から形成されている、請求項12に記載の磁石システム。
【請求項14】
前記第1の磁石の最外側の前記ソレノイドは、ニオブチタンから形成されている、請求項12又は13に記載の磁石システム。
【請求項15】
前記シムシステムは、前記補償コイルの1又は2以上のペアのセットとは異なる電気回路に接続されている、請求項1~14のいずれか1項に記載の磁石システム。
【請求項16】
前記シムシステムは、低温超伝導材料、好ましくはニオブスズから形成されている、請求項1~15のいずれか1項に記載の磁石システム。
【請求項17】
前記シムシステムは、前記中心軸に垂直な方向に前記中心点を通って延びる平面上に中心がある、請求項1~16のいずれか1項に記載の磁石システム。
【請求項18】
前記第1の磁石、前記補償コイルの1又は2以上のセット、及び前記シムシステムは、前記平面が対称面を形成するように配置されている、請求項17に記載の磁石システム。
【請求項19】
前記補償コイルの各々は、前記環状容積の端部を形成する軸方向内端と、前記軸方向内端とは反対側の軸方向外端とを有する、請求項1~18のいずれか1項に記載の磁石システム。
【請求項20】
前記補償コイルの各々は、前記第1の磁石の内側で、前記補償コイルの前記軸方向外端に設けられた支持部材に取り付けられている、請求項19に記載の磁石システム。
【請求項21】
電流が前記補償コイルの軸方向外端から前記補償コイルの各々に流入及び流出する、請求項19又は20に記載の磁石システム。
【請求項22】
前記補償コイルのペアの各々に関して、前記ペアの第1の補償コイルは、前記環状容積内で前記ペアの第2の補償コイルに電気的に接続されていない又は物理的に取り付けられていない、請求項19~21のいずれか1項に記載の磁石システム。
【請求項23】
20テスラを超える、好ましくは25テスラを超える磁場を前記ターゲット領域に発生させるように配置されている、請求項1~22のいずれか1項に記載の磁石システム。
【請求項24】
請求項1~23のいずれか1項に記載の磁石システムを備えるNMR分光計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高均一磁場を発生するための磁石システムに関する。従って、本発明は、磁気共鳴(NMR)、特にNMR分光法の分野において有用である。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴画像法などの様々なNMRモダリティにおいて、特にNMR分光法において、高均一磁場を得ることが望ましい。NMR分光法では、試料の分子構造などの化学情報を測定することができる。NMR測定プロセスは、ターゲット領域を含むワーキングボリューム内に高強度で均一な磁場を引き起こす。試料はターゲット領域に置かれ、RF照射を受けて特定の原子核のスピンが歳差運動する。RF照射を取り除くと、スピンは静止状態に戻り、その歳差運動周波数を監視して構造情報などの指示を与えることができる。化学構造の正確な測定を得るためには、ターゲット領域内に高均一磁場が必要である。ターゲット領域内の均一性は、一般的に、球状ターゲット領域内の磁場のz成分(主磁場方向である)の、その領域の中心における磁場に対する変化を考慮することによって測定される。ターゲット領域内の均一性が10ppm未満の磁場は、ターゲット領域内のどの位置でもBz成分が10ppm未満しか変化しない(すなわち、ターゲット領域内の最大磁場とターゲット領域内の最小磁場の差は、その領域の原点における磁場値の10ppm未満である)。均一性は正の値又は負の値で規定することができるが、関連するのは絶対値である。
【0003】
NMR装置の磁石システムは、通常、使用時に極低温(100ケルビン以下)に保持された超伝導磁石を備える。超伝導磁石は、典型的には、試料を位置決めするためのターゲット領域が配置される中心軸を有するボアを規定するソレノイドとして形成される。無限に長いソレノイドは、ターゲット領域に完全に均一な磁場を発生させるが、そのようなソレノイドは実際には製造できないため、ターゲット領域での磁場均一性を向上させるために、ソレノイドからの終端効果を補正するための補償コイルが中心軸に巻かれる場合がある。補償コイル(本技術分野では「ギャレットコイル」とも呼ばれることがある)は磁石と直列に配線され、ソレノイド又はパンケーキコイルの形態をとる場合がある。補償コイルは、ソレノイドからの終端効果を含め、磁石の設計に起因する磁場不均一性を補正するために配置される。アクティブシムであるシムコイルは、通常、より低いレベルの磁場補正を可能にし、NMR装置の実際の構造又はバックグラウンド効果に起因する不均一性を補正するために作動させることができる。
【0004】
通常、室温(RT)シム及び/又はパッシブシムは、外部からアクセス可能なボア内に脱着可能な構成で使用されてきた。超伝導シムは、RTシムよりもはるかに高い電流を流すことができるため、より強い磁場を発生させるのに適している。しかしながら、従来では、超伝導シムは、超伝導磁石の外側に取り付けられており、その理由は、超伝導磁石の内側の領域は、ターゲット領域の磁場強度及び均一性に寄与する第2の超伝導磁石又はRT構成要素などの他の構成要素のために確保されているからである。また、ターゲット領域への試料の出し入れのために、磁石のボア内に空のワーキングボリュームを確保する必要がある。しかしながら、主磁石の外側に設けられたシミング解決策は、磁場の均一性に対する電流密度の空間的変動の影響が距離に応じて強くスケール変動するため、ターゲット領域の磁場に対する効果は比較的限定的である。
【0005】
内側補償コイルは通常、超伝導磁石の外側に配置される。しかしながら、オックスフォード・インストゥルメンツ社の4.2K 800/63磁石は例外である。
図1は、この従来技術の磁石組立体による円筒形コイルセットを通る断面の半分を示す概略図である。断面は、磁石のボアに沿って延びる中心軸20’に沿っている。組立体は明瞭にするために中心軸20’の片側についてのみ示されているが、コイルは、中心軸20’の反対側に対称的に配置されていることを理解されたい。組立体は、各々がニオブスズ(Nb
3Sn)から形成された第1のソレノイド2’、第2のソレノイド4’及び第3のソレノイド5’を備える超伝導磁石10’を有し、第1のソレノイド2’は最も内側のソレノイドであり、第2のソレノイド4’は、第1のソレノイド2’と第3のソレノイド5’との間に配置されている。磁石10’は、各々がニオブチタン(NbTi)から形成された第4のソレノイド6’、第5のソレノイド7’及び第6のソレノイド8’をさらに備える。磁石10’の各ソレノイド2’-8’は、中心軸20’の周りに同軸に巻かれている。Nb
3Snは一般にNbTiよりも高価であるが、磁束密度30Tまで超伝導を維持するのに対し、NbTiはおよそ15Tが限界である。従って、Nb
3Snセクションは通常、高磁場の磁石のボアに近い半径方向に配置され、NbTiは超伝導を維持できる中心から離れた場所に使用される。800/63磁石は、超伝導磁石内に補償コイルが配置されているという点で比較的珍しい。詳細には、ソレノイドと同様の軸方向空間を占める環状フォーマー3’が、第1のソレノイド2’と第2のソレノイド4’との間に配置され、磁石10’に電気的に直列に接続された2つのペアの補償コイルを支持している。第1のペアの補償コイルは、第1のコイル3a’及び第2のコイル3b’から形成され、第2のペアの補償コイルは、第3のコイル3c’及び第4のコイル3d’から形成される。補償コイル3a’-3d’は、中心軸20’の周りに同軸に巻かれ、中心軸20’に沿って「X」で示された幾何学的中心点に対して軸方向にオフセットして対称に配置されている。第1のペア3a’、3b’を形成するコイルは、第2のペア3c’、3d’を形成するコイルよりも大きく、中心点から軸方向に変位している。
【0006】
ターゲット領域において高均一磁場を得るための新たな配置、詳細には組立体のサイズ及び/又は電力消費の低減につながり得る配置を提供することが望ましい。本発明は、これらの問題を解決することを目的としている。
【発明の概要】
【0007】
本発明の第1の態様は、ターゲット領域に均一磁場を発生させるための磁石システムであり、磁石システムは、
ボア及び中心軸を規定するように巻かれた超伝導材料から形成された第1のソレノイドを有する第1の磁石であって、第1のソレノイドの幾何学的中心が、中心軸上の中心点を規定する、第1の磁石と、
補償コイルの1又は2以上のペアのセットであって、補償コイルの各ペアは、中心軸上に同軸に配置され、補償コイルのセットの間のボア内に環状容積を画定するように、幾何学的中心点に関して軸方向にオフセットして対称に配置されており、セットの補償コイルの第1のペアは、第1のソレノイドと電気的に直列に接続されている、補償コイルの1又は2以上のペアのセットと、
環状容積内に配置され、1又は2以上の超伝導シムコイルを備えるシムシステムであって、シムシステムが使用時にターゲット領域内の磁場をシミングするように動作可能である、シムシステムと、
を備え、
シムシステムは、使用時にターゲット領域の磁場が100万分の10(10ppm)未満の均一性を有するように配置され、ターゲット領域は、中心点を中心とする直径1cmの球状容積である。
【0008】
磁石システムは、ターゲット領域で高レベルの磁場均一性を達成するために、補償コイルと第1の磁石の内側に配置されたシムシステムとの組み合わせを使用する。シムシステムは、従来ソレノイド又は補償コイルが占めていた磁石の中央環状領域(軸方向及び半径方向の両方)内に配置されている。1又は2以上の超伝導シムコイルは、従来技術のシステムで一般的な場合よりも中心軸に近い位置に配置されているため、シムシステムによって生成される磁場はターゲット領域でより強くなる。従って、ターゲット領域での不均一性を補正するために、より強い調整可能なシミング解決策を適用することができる。さらにシムコイルは、第1の磁石の外側の周りに設けることができる。しかしながら、中央に配置されたシムシステムを含むことにより、さもなければ第1の磁石の外側の周りに配置される場合がある大型シムコイルを省略することができるため、組立体の全体的なサイズ及び消費電力の削減が容易になる。これは、10ppm未満の均一性を有する1cm dsvのターゲット領域に磁場を生成する磁石システムに特に関連する。
【0009】
図1によって示される従来技術のシステムを参照すると、本出願人は、ターゲット領域における磁場を均一化する際の第3及び第4の補償コイル3c’、3d’の効果は、他の場所で行うことができる磁石システムに対する多くの様々な可能性がある調整によって再現することができることに気付いている。さらに、これらの補償コイルは、ターゲット領域での均一性をより良く改善するために超伝導シムシステムを提供することができる貴重な軸方向空間を占有する。
【0010】
本発明の第1の態様に戻ると、セット内の補償コイルの第1のペアは、第1のソレノイドと電気的に直列に接続されている。従って、第1のペアは、第1の磁石の設計に起因するターゲット領域における磁場不均一性を補正するために設けられている。補償コイルの第1のペアは、典型的には、第1のソレノイドよりも小さい中心軸からの半径方向位置に配置されている。第1のソレノイド及び補償コイルの第1のペアは、好ましくは低温超伝導材料、さらにニオブスズから形成されている。ニオブスズは、高磁束密度でも超伝導状態を維持できるので特に好ましい。従って、補償コイルは、磁石システムの高磁場領域で使用することができる。
【0011】
磁石システムは、好ましくは、超伝導材料から形成された1又は2以上のソレノイドを有し、第1の磁石と同軸に配置された第2の磁石をさらに含み、第1及び第2の磁石のソレノイドは中心軸上で共通の幾何学的中心点を有するようになっており、第2の磁石は、環状容積が第1の磁石と第2の磁石との間に位置決めされるようにボア内に配置されている。従って、シムシステムは、第1の磁石と第2の磁石との間に半径方向に配置することができる。第2の磁石システムを設けることにより、ターゲット領域における磁場強度及び/又は均一性を調整するために、異なる材料又は電流を選択することが可能になる。
【0012】
補償コイルの1又は2以上のペアのセットの補償コイルの第2のペアは、典型的には、第2の磁石と電気的に直列に接続されている。従って、この補償コイルの第2のペアは、第2の磁石の設計から生じる不均一性を補正することができる。また、補償コイルの第2のペアは、好ましくは、第2の磁石の半径方向位置よりも大きい半径方向位置に配置されている。しかしながら、典型的には、補償コイルの第2のペアは、補償コイルの第1のペアよりも小さい半径方向位置に配置されている。例えば、補償コイルの第2のペアの補償コイルの各々は、中心軸に垂直な平面に沿って配置され、第2の磁石と補償コイルの第1のペアからの対応する補償コイルを通って延びることができ、補償コイルの第2のペアは、第2の磁石と補償コイルの第1のペアからの対応するコイルとの間に配置される。しかしながら、より一般的には、補償コイルの第1のペア及び第2のペアのうちの一方は、環状容積の対向する軸方向端部を規定するように、補償コイルの第1のペア及び第2のペアのうちの他方に半径方向に隣接していることが好ましい。この配置により、ターゲット領域において望ましいレベルの高い磁場均一性が得られる。
【0013】
磁石システムは、高温超伝導体(HTS)及び低温超伝導体(LTS)材料の組み合わせを使用する磁石に特に適している。補償コイルの第2のペア及び/又は第2の磁石は、好ましくは、酸化ビスマス・ストロンチウム・カルシウム銅(BSCCO、例えばBSCCO 2212又はBSCCO 2223)又は希土類バリウム銅酸化物REBCOなどのHTS材料から形成される。HTS材料はLTS材料に比べて高い臨界磁場を持つため、第2の磁石にHTS材料を組み込むことで、ターゲット領域に高い磁場を発生させることができる。なぜなら、現在の技術で、例えば約23.5T以上の磁場強度を発生できる使用可能な磁石システムを提供するためには、HTS材料が必要だからである。しかながら、これはLTS材料よりも桁違いに高価であるため、磁石システムは一般的にハイブリッド型となり、最初の15Tから20Tは、LTS巻線によって供給される。用語「HTS材料」は、30T、さらには40Tを超えても(及び一般的には例えば8ケルビン、20ケルビン、77ケルビン、90ケルビンなどの約4.2ケルビンを超える温度で)名目上使用可能な超伝導特性を示す超伝導材料を意味することを意図している。用語「LTS材料」は、工学的臨界電流密度100アンペア/平方ミリメートル(A/mm2)において、4.2ケルビンで約22Tまでの最大磁場強度を有する超伝導材料を意味する。これにはNbTi及びNb3Snなどの材料が含まれる。LTS材料は、4.2ケルビン未満で動作させることである程度の性能向上が可能である。しかしながら、これは最大電界強度の限界を約2から2.5Tだけ引き上げるだけである。Nb3Snの工学的臨界電流密度は、磁場強度が約20Tを超えると急激に低下するため、この材料は20Tを超えると効率が低下し、4.2Kで約23.5Tを超えると事実上使用できなくなる。
【0014】
HTS材料はLTS材料よりも高い温度で超伝導を維持するが、通常、第1の磁石及び第2の磁石を共通の使用温度で保持するのが最も好都合である。従って、第1の磁石及び第2の磁石は、使用時に第1の磁石及び第2の磁石を共通の温度に冷却するように構成されたデュワー(Dewar)などの同じ極低温容器内に収容することが好ましい。一般に、極低温容器は液体ヘリウムで満たされ、使用時に第1の磁石及び第2の磁石を約4ケルビンに冷却する。しかしながら、代わりに、第1の磁石及び/又は第2の磁石を冷却するためにパルスチューブ冷凍機のような無冷媒冷凍機を使用することもできる。
【0015】
好ましくは、第1の磁石は、中心軸の周りでボアの外側に巻かれた超伝導材料から形成された複数のソレノイドを備え、ソレノイドの各々は、それぞれの半径方向位置に配置されている。第1の磁石のソレノイドの各々は、好ましくはLTS材料から形成されている。第1の磁石の最外側のソレノイドは、好ましくはニオブチタンから形成されている。ニオブチタンは、ニオブスズ及びHTS材料よりも脆弱ではなく非常に安価であるため、中心軸から半径方向に離れた磁石システムの低磁場領域において望ましい。
【0016】
補償コイルの第2のペアの各補償コイルは、好ましくはパンケーキコイルで構成される。パンケーキコイルは本技術分野で公知であり、導体が原点の周りに外向きに、共通の平面に沿って螺旋状に巻かれる。この場合、原点は磁石システムの中心軸に沿って位置決めされ、平面は中心軸に垂直である。2つのパンケーキコイルを磁石の軸方向に重ねて「ダブルパンケーキ」を形成することができる。これは、コイルが導体で巻かれ、その導体が第1のパンケーキコイルの外側から第2のパンケーキコイルの最も内側の位置まで螺旋状に入り、そこから導体が半径方向外向きに巻かれる場合に見られ、第2のパンケーキは第1のパンケーキと同軸に配置されている。さらなるパンケーキコイルが同じスタックに巻かれる場合、各コイルは、それが続いているパンケーキコイルに関して螺旋の端がどこにあるかによって、半径方向最内側の位置又は半径方向最外側位置のいずれかで、同じ方法で隣接するコイルに接続される。補償コイルの第2のペアの補償コイルの各々を1又は2以上のパンケーキコイルとして配置する(例えば、パンケーキスタックを形成する)ことにより、例えば、層巻きソレノイドを有する超伝導テープ導体を使用して補償ソレノイドを製造する方法を提供することが分かっている。このことは、環状容積が第1の磁石と第2の磁石との間に位置決めされるようにボア内に配置された第2の磁石を有する配置に特に関連し、第2の磁石は層巻きHTS材料から形成され、補償コイルの第2のペアもHTS材料から形成されている。
【0017】
シムシステムは、好ましくは、1又は2以上のソレノイドのセット及び補償コイルのペアとは異なる電気回路に接続されている。さらに好ましくは、シムシステムは、LTS材料、好ましくはニオブスズから形成されている。また、シムシステムは、中心軸に垂直な方向に中心点を通って延びる平面上に中心を置くこともできる。典型的には、第1の磁石、補償コイルの1又は2以上のセット、及びシムシステム(及び設けられている場合は第2の磁石)は、平面が対称面を形成するように配置されている。この配置により、高い均一性のターゲット領域の磁場が生成される。
【0018】
環状容積を通って、例えば補償コイルの各ペアの間に延びる電気回路又は支持部材が存在しないことを保証することが特に望ましい。例えば、補償コイルがNb3Sn又はHTSのような脆弱な物質から形成されている場合、適切な支持のない環状領域内の補償コイルの間に延びる何らかの電気回路は、破損する又は性能が低下する可能性がある。また、環状容積内に何らかのそのようなケーブル又は支持材が存在すると、環状容積内に配置されるシムシステムの機能を阻害する可能性がある。磁石システムは、典型的には、補償コイルの各々が、環状容積の端部を形成する軸方向内端と、軸方向内端とは反対側の軸方向外端とを有するように配置される。補償コイルの各々は、好ましくは、第1の磁石の内部で補償コイルの軸方向外端に設けられた支持部材に取り付けられている。このように補償コイルの端部取付けにより、環状領域内にケーブル又は支持体を通す必要がなくなる。また、磁石システムは、好ましくは、電流が補償コイルの軸方向外端から補償コイルの各々に流入及び流出するように配置されている。従って、補償コイルのペアの各々に関して、ペアの第1の補償コイルは、環状容積内でペアの第2の補償コイルに電気的に接続されていないこと又は物理的に取り付けられていないことが好ましい。
【0019】
本明細書に記載される磁石システムは、特に高磁場において好適であり、好ましくは20テスラを超える、より好ましくは25テスラを超える磁場をターゲット領域に発生させるように配置されている。通常、MRIシステムはより大きな試料を使用するので、一般に、これらのシステムではより大きなターゲット領域にわたって均一性を達成することがより適切である。その結果として、1cm dsvのターゲット領域にわたって極めて高い均一性を有することは、一般にMRIシステムには関係がない。従って、磁石システムは、NMR分光法での使用に特に適しており、好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは1ppm以下のターゲット領域での均一性をもたらす。従って、本発明の第2の態様は、第1の態様による磁石システムを備えるNMR分光計である。NMR分光計は、NMR分光計の動作中に磁石システムを100ケルビン未満、好ましくは10ケルビン未満に冷却するように構成された極低温冷却システムをさらに備えることができる。また、磁石システムは、フーリエ変換質量分析、FTMS(フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴、FT-ICRとも呼ばれる)などの他の用途での使用にも適している。
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】従来技術の磁石システムの一部の概略断面図である。
【
図2】第1の実施形態による磁石システムの一部の概略断面図である。
【
図3】第1の実施形態の一部を形成する端部に取り付けられた補償コイルの概略図である。
【
図4】第2の実施形態による磁石システムの一部の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図2は、第1の実施形態による磁石システムを通る断面の半分を示す概略図である。断面は中心軸20に沿っており、
図2には明瞭化のためにシステムの片側のみが示されているが、図示されている装置は、中心軸20の反対側に対称的に配置されていることを理解されたい。磁石10は、各々がNb
3Snから形成された第1のソレノイド1及び第2のソレノイド2を備える。磁石10は、各々がNbTiから形成された第3のソレノイド3及び第4のソレノイド4をさらに備える。磁石10の各ソレノイドは、中心軸20の周りに同軸に巻かれている。第1のソレノイド1は、中心軸20に最も近い位置に配置された組立体の最も内側のソレノイドであり、残りの各ソレノイドは、中心軸20からそれぞれの半径方向位置に配置されている。第2のソレノイド2は、第1のソレノイド1と第3のソレノイド3との間に配置され、第3のソレノイド3は、第2のソレノイド2と第4のソレノイド4との間に配置されている。中心軸20は、使用時に内部で試料を移動させることができ、磁石10の幾何学的中心を定義する中心点「X」に配置される磁石システムのボアを規定する。中心点を中心とする直径1cmの球状容積の形のターゲット領域が存在し、ターゲット領域内でシステムは、その領域内で中心点においてBz磁場値の100万分の10未満だけ変化する、中心軸20に沿って配向された磁場(Bz)を生成するように構成されている。ソレノイド1-4は、中心点を中心とする中心軸20に関して対称に配置されており、第3及び第4のソレノイド3、4は、第1及び第2のソレノイド1、2よりも軸方向の長さが長い。
【0023】
Nb3Sn補償コイル5、6のペアは、中心軸20と同軸上に配置され、第1、第2、第3及び第4のソレノイド1-4に電気的に直列に接続されている。補償コイル5、6のペアは、中心点に対して軸方向にオフセットして対称に配置され、第1のソレノイド1よりも小さい半径方向位置に環状容積を画定する。補償コイル5、6は、超伝導磁石の外側を取り囲むように配置されるいくつかの従来技術の補償コイルと比較して、部分的にはその比較的中心的な半径方向位置に起因して、磁場の不均一性をキャンセルするのに特に効果的である。環状容積は、第1及び第2の補償コイル5、6の対向する軸方向内端の間に延びる。1又は2以上のシムコイルを備える超伝導シムコイル組立体15(本明細書では「シムシステム」とも呼ぶ)は、ターゲット領域の磁場をシミングするために環状容積内に配置され、このシムコイルは特に幾何学的中心「X」に近接して配置されている。
【0024】
さらに
図1を参照して上述した従来技術の磁石システムとは対照的に、第1及び第2の補償コイル5、6は、補償コイル5、6の間で軸方向に延びるフォーマーによって支持されていない。補償コイル5、6のペアの間の環状容積には、補償コイル5、6のペアのための何らかのそのような支持体又は補償コイル5、6を接続する電気回路が存在しないことが特に望ましい。なぜなら、そのような配線は補償コイルと同じ超伝導材料から形成する必要があるからである。反応状態のNb
3Snは脆弱であるため、Nb
3Snワイヤに過度歪みをかけずに管理できる電磁応力には大きな制限がある。このような配線が2つの補償コイル5、6の間に延びる場合、局所的に上手く支持されない応力につながる可能性があり、何らかの接合部は、製造上脆弱であり、劣化しやすいことになる。これらの問題は、環状容積が占める高磁場軸方向位置で悪化する。従って、補償コイル5、6の各々は、それらの軸方向外端から端部取付けされることが特に望ましい。このような端部取付けの例は、第1の補償コイル5に関して
図3によって示されており、この
図3では、明瞭にするために
図2からの特定の特徴が省略されている。第1の補償コイル5の軸方向外端は、磁石システムの軸方向一端から第1の補償コイル5を支持するために、第1のソレノイド1の軸方向外側に延びる支持体7に結合されている。図示されていないが、同様の構造が、反対側の軸方向端部から他方の補償コイル6を支持するために設けられている。一般的に、コイル5及び6は、クエンチの場合に非対称な保護で発生する軸方向の力などの問題を回避するために、保護回路内でユニットとして電気的に接続される(第1の磁石10の外側に位置する接続部によって)。コイル支持構造体は、エンドプレートに別々に、及び/又は、バー又は中央フランジと一緒にボルトで固定することができる。このような追加の構造体は、中央領域にいくらかの空間を必要とするが、さもなければこの中央領域を横切って延在する脆弱なケーブルを支持するのに必要な空間よりは小さいであろう。
【0025】
Nb3Snから形成された電気配線8は、第1の補償コイル5の内外に電流を流すために、第1の補償コイル5の軸方向外端に形成された接合部に接続されている。従って、各補償コイル5、6は、磁石の各端部から軸方向に取り付けられた別個のブロックとして構成されている。コイルはソレノイドとして巻かれており、補償コイル5、6ごとに別々に終端処理されて接合されている。2つの補償コイル5、6の間に直接配線が延在するのを避けることで、支持されていないリード線の延在を避けることができ、超伝導シム組立体15がより多くの空間を利用できる。これにより、ターゲット領域における何らかの磁場不均一性をより良好に補正することができる。補償コイル5、6は、環状容積を通って延びるケーブルによってではないが、典型的に、依然として互いに電気的に接続されたままである。
【0026】
図4は、高磁場NMR分光計の一部を構成する、第2の実施形態による磁石システムを通る断面の半分を示す概略図である。図示されていないが、
図4によって示される配置全体は、液体ヘリウムによって約4ケルビンに冷却される極低温容器内に収容される。磁場均一性にさらに寄与する追加的なシムコイル又は分光計の通常の動作のための追加的なシムコイルなどの他の特徴は、図示されていないが設けることができる。第1の磁石110は、第1の実施形態の第1の磁石10と同じ構成を有するように設けられる。第2の磁石111が追加的に設けられており、これは、HTS材料、この場合はBSCCO2212から形成された内側ソレノイド107を備える。第2の磁石111は、随意的に2以上のHTSソレノイドを備えることができ、典型的には、残りの磁石よりも小さな軸方向長さに沿って巻かれている(ここでの場合)。第1の磁石110のソレノイド101-104は第1の電気回路に接続され、第2の磁石111を形成する内側ソレノイド107は第2の電気回路に接続されており、電流は、各磁石110、111に関して独立して調整できるようになっている。
【0027】
第1の磁石110の第1のソレノイド101と第2の磁石111の内側ソレノイド107との間には、シムコイル組立体115を含むシムシステムが半径方向に配置されている。第2の実施形態では、シムコイル組立体115はNb3Snから形成されているが、代わりにHTS材料から形成することもできる。シムシステムは、組立体の幾何学的中心点「X」を通って延びる中心軸120に垂直な平面に沿って中心が定められ、これは組立体の対称面を形成する。内側ソレノイド107は、中心軸120に最も近い位置に配置された磁石組立体の最も内側のソレノイドであり、残りの各ソレノイドは、第1の実施形態に関連して説明したように、中心軸120からそれぞれの半径方向位置に配置されている。
【0028】
補償コイル105、106、108、109の2つのペアのセットは、シムコイル組立体115の軸方向両側に配置されている。補償コイル105、106の第1のペアは、第1の実施形態に見られるように、Nb3Snから形成され、第1の磁石101と電気的に直列に接続される。しかし、補償コイル108、109の第2のペアは、BSCCO2212から形成され、第2の磁石111と電気的に直列に接続されている。補償コイル105、106の第1のペアは、第1の磁石110から生じる磁場不均一性を補正する。部分的に、HTS材料は高価であるため(及び、層巻線では、巻線自体の中に構成される接合部の必要性を回避しながら、より長い長さの材料が利用可能であるため)、HTSソレノイドコイルは、比較的短く、さらにまた高電流密度で動作する傾向がある。従って、補償されない場合、HTSソレノイドコイルは、大きさに対して比較的大きな不均一を発生する。従って、補償コイル108、109の第2のセットは、第2の磁石111から生じる磁場不均一性を補正する。補償コイルの第1のペア及び第2のペアの各々は、第1の実施形態に関連して説明したように、端部に取り付けられており、1又は2以上のパンケーキコイル又はソレノイドコイルのいずれかの形態をとることができる。典型的には、補償コイル105、106の第1のペアの各コイルは、ソレノイドとして巻かれる。しかしながら、特に内側ソレノイド107が層巻きHTSテープ材(例えば、BSCCO 2223)から形成されている場合には、補償コイル108、109の第2のペアの各コイルは、例えばスタック状に、1又は2以上のパンケーキコイルとして巻かれることが望ましい。このように、層巻きソレノイド設計は、パンケーキコイルのスタックのみから構成されるソレノイドの場合よりも、導入される不均一性をより良好に制御しながら、ターゲット領域においてゼロ次磁場の大部分を生成する。補償コイルとしてのパンケーキコイルは、層巻きソレノイドよりもゼロ次中心磁場への寄与ははるかに小さいが、高次不均一性をキャンセルするために、ほぼ同量の高次磁場項(符号は逆)を作り出す。
【0029】
第2の実施形態にHTS材料を組み込むことで、中心点に位置するターゲット領域に高い磁場強度を発生させることができる。これにより、結果として25テスラを超える磁場強度をターゲット領域で得ることができることが予想される。特にHTS材料を使用する実施形態では、内側補償コイルを中央シムシステムとともに使用することで、ターゲット領域における磁場均一性が改善されるという利点がある。さらに、これは、第1の磁石の外側の周りに大きなシム組立体を必要とすることなく達成され、それによって配置効率が向上する。
【0030】
従って、本明細書で提案する磁石システム、特に補償コイル及び超伝導磁石に対するシムシステムの配置は、より強力な調整可能なシミング解決策の使用を可能にすることを理解されたい。これは、高分解能で信頼性の高いNMR生成データを生成するための、ターゲット領域における高均一磁場の生成を助ける。
【符号の説明】
【0031】
1 第1のソレノイド
2 第2のソレノイド
3 第3のソレノイド
4 第4のソレノイド
5 第1の補償コイル
6 第2の補償コイル
10 磁石
15 超伝導シムコイル組立体
20 中心軸
【手続補正書】
【提出日】2024-02-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲット領域に均一磁場を発生させるための磁石システムであって、
ボア及び中心軸を規定するように巻かれた超伝導材料から形成された第1のソレノイドを有する第1の磁石であって、前記第1のソレノイドの幾何学的中心が、前記中心軸上の幾何学的中心点を規定する、第1の磁石と、
補償コイルの1又は2以上のペアのセットであって、前記補償コイルの各ペアが、前記補償コイルのセットの間の前記ボア内に環状容積を画定するように、前記中心軸上に同軸に配置され、且つ前記幾何学的中心点に関して軸方向にオフセットして対称に配置されており、前記セットの前記補償コイルの第1のペアは、前記第1のソレノイドと電気的に直列に接続されている、補償コイルの1又は2以上のペアのセットと、
前記環状容積内に配置され、1又は2以上の超伝導シムコイルを備えるシムシステムであって、前記シムシステムが使用時に前記ターゲット領域内の磁場をシミングするように動作可能であ
り、前記シムシステムが前記補償コイルの1又は2以上のペアのセットとは異なる電気回路に接続されている、シムシステムと、
を備え、
前記シムシステムは、使用時に前記ターゲット領域の磁場が10ppm未満の均一性を有するように配置され、前記ターゲット領域は、前記中心点を中心とする直径1cmの球状容積である、磁石システム。
【請求項2】
前記補償コイルの第1のペアは、前記第1のソレノイドの半径方向位置よりも小さい半径方向位置に配置されている、請求項1に記載の磁石システム。
【請求項3】
前記第1のソレノイド及び前記補償コイルの第1のペアは、低温超伝導材料、好ましくはニオブスズから形成されている、請求項1又は2に記載の磁石システム。
【請求項4】
第2の磁石をさらに備え、前記第1の磁石及び前記第2の磁石の前記ソレノイドが、前記中心軸上で共通の幾何学的中心点を有するように、前記第2の磁石は、超伝導体材料から形成された1又は2以上のソレノイドを有し、且つ前記第1の磁石と同軸に配置されており、
前記第2の磁石は、前記環状容積が前記第1の磁石と前記第2の磁石との間に配置されるように、前記ボア内に配置されている、請求項
1に記載の磁石システム。
【請求項5】
前記セットの前記補償コイルの第2のペアは、前記第2の磁石と電気的に直列に接続されている、請求項4に記載の磁石システム。
【請求項6】
前記補償コイルの第2のペアは、前記第2の磁石の半径方向位置よりも大きい半径方向位置に配置されている、請求項5に記載の磁石システム。
【請求項7】
前記補償コイルの第1のペア及び第2のペアのうちの一方は、前記環状容積の対向する軸方向端部を規定するように、前記補償コイルの第1のペア及び第2のペアのうちの他方に半径方向に隣接している、請求項
2又は6に記載の磁石システム。
【請求項8】
前記補償コイルの第2のペアは、高温超伝導材料、好ましくはBSCCOから形成されている、請求項
5又は6に記載の磁石システム。
【請求項9】
前記補償コイルの第2のペアの前記補償コイルの各々は、パンケーキコイルとして配置されている、請求項8に記載の磁石システム。
【請求項10】
前記第2の磁石は、高温超伝導材料、好ましくはBSCCOから形成されている、請求項4~
6のいずれか1項に記載の磁石システム。
【請求項11】
前記第1の磁石及び前記第2の磁石は、使用時に前記第1の磁石及び前記第2の磁石を共通の温度まで冷却するように構成された極低温容器内に収容されている、請求項4~
6のいずれか1項に記載の磁石システム。
【請求項12】
前記第1の磁石は、前記ボアの外側で前記中心軸の周りに巻かれた超伝導材料から形成された複数のソレノイドを備え、前記ソレノイドの各々は、それぞれの半径方向位置に配置されている、請求項
1に記載の磁石システム。
【請求項13】
前記第1の磁石の前記ソレノイドの各々は、低温超伝導材料から形成されている、請求項12に記載の磁石システム。
【請求項14】
前記第1の磁石の最外側の前記ソレノイドは、ニオブチタンから形成されている、請求項12又は13に記載の磁石システム。
【請求項15】
前記シムシステムは、低温超伝導材料、好ましくはニオブスズから形成されている、請求項
1に記載の磁石システム。
【請求項16】
前記シムシステムは、前記中心軸に垂直な方向に前記中心点を通って延びる平面上に中心がある、請求項
1又は15に記載の磁石システム。
【請求項17】
前記第1の磁石、前記補償コイルの1又は2以上のセット、及び前記シムシステムは、前記平面が対称面を形成するように配置されている、請求項
16に記載の磁石システム。
【請求項18】
前記補償コイルの各々は、前記環状容積の端部を形成する軸方向内端と、前記軸方向内端とは反対側の軸方向外端とを有する、請求項
1に記載の磁石システム。
【請求項19】
前記補償コイルの各々は、前記第1の磁石の内側で、前記補償コイルの前記軸方向外端に設けられた支持部材に取り付けられている、請求項
18に記載の磁石システム。
【請求項20】
電流が前記補償コイルの軸方向外端から前記補償コイルの各々に流入及び流出する、請求項
18又は
19に記載の磁石システム。
【請求項21】
前記補償コイルのペアの各々に関して、前記ペアの第1の補償コイルは、前記環状容積内で前記ペアの第2の補償コイルに電気的に接続されていない又は物理的に取り付けられていない、請求項
18又は19に記載の磁石システム。
【請求項22】
20テスラを超える、好ましくは25テスラを超える磁場を前記ターゲット領域に発生させるように配置されている、請求項
1に記載の磁石システム。
【請求項23】
請求項
1に記載の磁石システムを備えるNMR分光計。
【国際調査報告】