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特表2024-526624金属箔を伴うキャリア箔、キャリア箔を用いたプリント配線板用積層体、及び積層体の製造方法
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  • 特表-金属箔を伴うキャリア箔、キャリア箔を用いたプリント配線板用積層体、及び積層体の製造方法 図1
  • 特表-金属箔を伴うキャリア箔、キャリア箔を用いたプリント配線板用積層体、及び積層体の製造方法 図2
  • 特表-金属箔を伴うキャリア箔、キャリア箔を用いたプリント配線板用積層体、及び積層体の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】金属箔を伴うキャリア箔、キャリア箔を用いたプリント配線板用積層体、及び積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/40 20060101AFI20240711BHJP
   C23C 28/02 20060101ALI20240711BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C23C18/40
C23C28/02
C23C28/00 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580927
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(85)【翻訳文提出日】2023-12-28
(86)【国際出願番号】 KR2022009044
(87)【国際公開番号】W WO2023277462
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】10-2021-0086969
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514122502
【氏名又は名称】ワイエムティー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ソン ウク
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ポ ムク
(72)【発明者】
【氏名】パク、ミョン ファン
【テーマコード(参考)】
4K022
4K044
【Fターム(参考)】
4K022AA02
4K022AA32
4K022BA08
4K022BA38
4K022CA03
4K022CA09
4K022CA29
4K022DA01
4K022DB06
4K022DB26
4K022DB28
4K022DB29
4K044AA06
4K044AB02
4K044BA02
4K044BA06
4K044BA12
4K044BB03
4K044BB04
4K044BB13
4K044BC05
4K044CA04
4K044CA12
4K044CA13
4K044CA15
4K044CA53
4K044CA62
4K044CA67
(57)【要約】
本発明は、キャリア箔付き金属箔、キャリア箔付き金属箔を用いて製造されるプリント配線板用積層体、及びプリント配線板用積層体の製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア箔と、
前記キャリア箔上に設けられ、チタン、銅、ニッケル、及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種を含む剥離層と、
前記剥離層上に設けられ、無電解めっきにより形成される金属層と、を備える、
キャリア箔付き金属箔。
【請求項2】
前記剥離層が1nm~100nmの厚さを有する、
請求項1に記載のキャリア箔付き金属箔。
【請求項3】
前記金属層が多孔質金属層である、
請求項1に記載のキャリア箔付き金属箔。
【請求項4】
前記金属層の多孔率が5%~40%である、
請求項3に記載のキャリア箔付き金属箔。
【請求項5】
キャリア箔と、
前記キャリア箔上に設けられ、チタン、銅、ニッケル、及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種を含む剥離層と、
前記剥離層上に設けられ、無電解めっきにより形成される金属層と、
前記金属層上に設けられる樹脂層と、を備える、
プリント配線板用積層体。
【請求項6】
前記剥離層と前記金属層との間に設けられる酸化物剥離層を更に含む、
請求項5に記載のプリント配線板用積層体。
【請求項7】
キャリア箔を用意する工程と、
前記キャリア箔上に、チタン、銅、ニッケル、及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種を含む剥離層を形成する工程と、
前記剥離層上に無電解めっきにより金属層を形成する工程と、
前記金属層上に樹脂基材を積層することによって樹脂層を形成する工程と、
前記樹脂層を前記金属層と結合するように押圧する工程と、を含む、
プリント配線板用積層体の製造方法。
【請求項8】
前記押圧する工程は、180℃~220℃において10MPa~40MPaで押圧することによって、前記剥離層と前記金属層との間に酸化物剥離層を形成する工程を更に含む、
請求項7に記載のプリント配線板用積層体の製造方法。
【請求項9】
請求項5又は請求項6に記載のプリント配線板用積層体の前記金属層上に回路配線が形成される金属回路層を備えるプリント回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、35U.S.C.§119(a)に基づき、2021年7月2日に出願された韓国特許出願第10-2021-0086969号の利益を主張し、その全内容が参照により本願に組み入れられる。
【0002】
本発明は、キャリア箔付き金属箔、キャリア箔付き金属箔を用いたプリント配線板用積層体、及びプリント配線板用積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
各種電子部品の高集積化に伴い、高密度な超微細配線パターンを有するプリント配線板が求められる。プリント配線板は、プリント配線板に含まれる金属箔上に高密度の超微細配線パターンを形成することにより製造され得る。
【0004】
しかしながら、プリント配線板に含まれる金属箔が厚いと、配線パターンを形成する際のエッチング時間が長くなり、したがって、形成された配線パターンの側壁の垂直性が崩れるため、断線を引き起こす問題がある。そのため、高密度な超微細配線パターンを有するプリント配線板の製造には、比較的薄い金属箔が主に用いられてきた。
【0005】
ここで、薄い金属箔は、機械的強度が弱いため、プリント配線板の製造中にシワや折れ曲がりが発生しやすく、この問題を補うために、金属箔の一方の面に剥離層を介してキャリア箔が付着されるキャリア箔付き金属箔が用いられる。具体的には、キャリア箔付き金属箔が樹脂基材と結合された後、キャリア箔と結合された剥離層をキャリア箔付き金属箔から剥離することにより、プリント配線板の基本構造が形成される。
【0006】
キャリア箔と結合される剥離層の剥離性を確保するために、大部分のキャリア箔付き金属箔は、樹脂基材に結合する前に所定の力が加えられる場合でも、キャリア箔が結合される剥離層をキャリア箔付き金属箔から剥離できるように製造される。
【0007】
しかしながら、そのように製造される場合には、キャリア箔付き金属箔の取り扱いが容易でなく、不良プリント配線板が製造されるという問題がある。すなわち、キャリア箔付き金属箔は、剥離が生じないように移動する際に注意が必要であるため、その取り扱いが容易ではない。また、キャリア箔付き金属箔と樹脂基材とを結合するプロセスにおいて、望ましくない剥離が生じ、したがって、金属箔が損傷し、それにより、不良プリント配線板が製造される。
【0008】
そのため、所望の時点で剥離できるように剥離性を向上させたキャリア箔付き金属箔の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国特許公開第2013-0082320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、所望の時点で剥離を行なうことができるように剥離性を制御したキャリア箔付き金属箔を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、キャリア箔付き金属箔構造を含むプリント配線板用積層体を提供することである。
【0012】
本発明の更に他の目的は、プリント配線板用積層体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様によれば、キャリア箔と、キャリア箔上に設けられ、チタン、銅、ニッケル、及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種を含む剥離層と、剥離層上に設けられ、無電解めっきにより形成される金属層とを含むキャリア箔付き金属箔が提供される。
【0014】
剥離層の厚さは、1nm~100nmであってもよい。
【0015】
金属層は、多孔質金属層であってもよい。
【0016】
金属層の多孔率は、5%~40%であってもよい。
【0017】
本発明の他の態様によれば、キャリア箔と、キャリア箔上に設けられ、チタン、銅、ニッケル、及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種を含む剥離層と、剥離層上に設けられ、無電解めっきにより形成される金属層と、金属層上に設けられる樹脂層とを含むプリント配線板用積層体が提供される。
【0018】
プリント配線板用積層体は、剥離層と金属層との間に設けられる酸化物剥離層を更に含んでいてもよい。
【0019】
本発明の更なる他の態様によれば、キャリア箔を用意する工程と、キャリア箔上に、チタン、銅、ニッケル、及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種を含む剥離層を形成する工程と、剥離層上に無電解めっきにより金属層を形成する工程と、金属層上に樹脂基材を積層することによって樹脂層を形成する工程とを含むプリント配線板用積層体の製造方法が提供される。
【0020】
本発明に係るプリント配線板用積層体の製造方法は、180℃~220℃において10MPa~40MPaで押圧することによって剥離層と金属層との間に酸化物剥離層を形成する工程を更に含んでもよい。
【0021】
本発明に係るキャリア箔付き金属箔において、キャリア箔が結合される剥離層は、樹脂基材との結合前にはキャリア箔付き金属箔から剥離されないが、樹脂基材との結合後には、キャリア箔が結合される剥離層がキャリア箔付き金属箔から剥離されるため、キャリア箔付き金属箔の取り扱いが容易となり、不良プリント配線板の製造が最小限に抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係るキャリア箔付き金属箔を示す概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係るプリント配線板用積層体を示す概略図である。
図3】本発明の他の実施形態に係るプリント配線板用積層体を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の明細書及び特許請求の範囲で使用される用語及び単語は、通常の意味又は辞書の意味に限定されると解釈されるべきではなく、発明者が自身の発明を可能な限り最良の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原理に基づき、本発明の技術的思想と一致する意味及び概念で解釈されるべきである。
【0024】
本発明は、所望の時点で剥離を行なうことができるように剥離性が制御されたキャリア箔付き金属箔、キャリア箔付き金属箔構造を含むプリント配線板用積層体、及びその製造方法に関する。具体的には、本発明に係るキャリア箔付き金属箔では、樹脂基材との結合前に剥離が生じるのではなく、樹脂基材との結合後に剥離が生じ、これについては図1に関連して以下で説明する。
【0025】
本発明に係るキャリア箔付き金属箔は、キャリア箔10と、剥離層20と、金属層30とを含む。
【0026】
本発明に係るキャリア箔付き金属箔に含まれるキャリア箔10は、キャリア箔付き金属箔を移動させたり使用したりする過程で金属層30が変形しないように、支持層として機能し得る。そのようなキャリア箔10は、銅又はアルミニウムなどの金属、或いはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、テフロン(登録商標)などの高分子から形成され得る。
【0027】
キャリア箔10の厚さは、10μm~50μm、具体的には15μm~40μmであってもよい。キャリア箔10の厚さが上記範囲内であれば、支持層として円滑に機能しつつキャリア箔付き金属箔が必要以上に厚くなることを防止できる。
【0028】
本発明に係るキャリア箔付き金属箔に含まれる剥離層20は、キャリア箔10上に設けられ、キャリア箔10を剥離できるようにする剥離層として機能し得る。剥離層20は、チタン(Ti)、銅、ニッケル、及びアルミニウムからなる群から選ばれる一種類又は複数種類の金属を含んでもよい。剥離層20が上記の一種類又は複数種類の金属を含む場合、金属層30との強固な結合が形成されるため、キャリア箔付き金属箔自体には剥離層20と金属層30との間で剥離は生じないが、樹脂基材と高い温度及び圧力で結合するプロセスを行なってプリント配線板用積層体を製造した後に、剥離層20と金属層30との間で剥離が生じ得る。特に、剥離層20がチタンから形成されてもよい。剥離層20がチタンから形成される場合、より望ましい時点で剥離層20をキャリア箔付き金属箔から剥離できる。
【0029】
剥離層20の厚さは、1nm~100nm、具体的には30nm~80nmであってもよい。剥離層20の厚さが上記範囲内であれば、剥離層は、金属層30と所要の結合力を発揮し、所望の時点で剥離することができる。
【0030】
本発明に係るキャリア箔付き金属箔に含まれる金属層30は、剥離層20上に設けられ、プリント配線板の製造プロセス中に配線パターンを形成するプロセスを介して回路層として機能し得る。金属層30は、銅及びニッケルからなる群から選択される少なくとも一種から形成されてもよい。
【0031】
無電解めっきにより金属層30が形成される場合には、これに起因して金属層30が多孔性を有し得る。すなわち、本発明に係る金属層30は、電解めっきではなく無電解めっきにより形成されるため、多孔質金属層であり得る。金属層30が多孔質金属層である場合、プリント配線板用積層体を製造するために、樹脂基材との結合プロセスが高温高圧下で行なわれた後に、剥離層20と金属層30との間の剥離が生じ得るが、これについては以下で詳細に説明する。
【0032】
ここで、金属層30が多孔質金属層であれば、その多孔率は5~40%、具体的には10~30%であってもよい。多孔率とは、金属層30の全体積中に孔が占める体積割合を意味し得る。金属層30の多孔率が上記範囲内であれば、所望の時点で剥離層20の剥離を制御することができ、その後も円滑に回路層として機能させることができる。
【0033】
また、回路層の役割と共に剥離性を考慮すると、金属層30の厚さは、0.5~5μm、具体的には1~3μmであってもよい。
【0034】
なお、図1に示されるように、金属層30の表面に複数の円錐状又は多角錐状の突起が形成されてもよい。突起は、無電解めっきにより金属層30を形成するプロセスにおいて、金属結晶が成長することにより形成され得る。この突起により、金属層30は、0.05μm~0.4μm、具体的には0.1μm~0.3μmの表面粗さRaを有し得る。このように、金属層30に複数の円錐状又は多角柱状の突起が形成される場合、プリント配線板用積層体の製造プロセス中に、金属層30が樹脂基材との高い結合強度を発揮することができる。
【0035】
本発明に係るキャリア箔付き金属箔では、チタン、銅、ニッケル、及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種の金属を含む剥離層20が金属層30との高い結合強度を示すため、所定の力が加えられる場合でも、キャリア箔付き金属箔自体において、剥離層20を介してキャリア箔10が剥がれることがなく、それにより、キャリア箔付き金属箔の取り扱いが容易である。
【0036】
また、本発明に係るキャリア箔付き金属箔が、無電解めっきにより形成された金属層30であることにより、プリント配線板用積層体の製造プロセス中に、高温高圧下で樹脂基材と積層されると、剥離層20と金属層30との間に酸化物剥離層が形成されるため、キャリア箔10を良好に剥離でき、これについては、後述するプリント配線板用積層体の説明においてより詳細に説明する。
【0037】
本発明は、上記のキャリア箔付き金属箔構造を含むプリント配線板用積層体を提供する。具体的には、図2を参照すると、本発明に係るプリント配線板用積層体は、キャリア箔10と、剥離層20と、金属層30と、樹脂層40とを含む。
【0038】
本発明に係るプリント配線板用積層体に含まれるキャリア箔10、剥離層20、及び金属層30の説明は、キャリア箔付き金属箔において説明したものと同じであるため、詳細な説明を省略する。すなわち、本発明に係るプリント配線板用積層体は、キャリア箔10、剥離層20、及び金属層30を含むキャリア箔付き金属箔に樹脂層40が設けられたものであってもよい。
【0039】
本発明に係るプリント配線板用積層体に含まれる樹脂層40は、前述した金属層30上に設けられ、絶縁層として機能し得る。樹脂層は、無機繊維又は有機繊維に樹脂を含浸させた構造を有する樹脂基材(例えば、プリプレグ)から形成されてもよい。樹脂は、ナフタレン系エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、リン系エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びポリイミド樹脂からなる群から選択される少なくとも一種であってよい。
【0040】
本発明に係るプリント配線板用積層体は、剥離層20と金属層30との間に設けられる酸化物剥離層50を更に含んでもよい。酸化物剥離層50は、剥離層20の一部(具体的には、金属層30と接触する剥離層20の表面)を酸化することにより形成され、この酸化物剥離層50により、金属層30中に剥離層20の成分が残存することを防止しつつ、キャリア箔10をスムーズに剥離することができる(すなわち、キャリア箔10及び剥離層20と結合された酸化物剥離層50の剥離)。
【0041】
酸化物剥離層50は、酸化チタン、酸化銅、酸化ニッケル、及び酸化アルミニウムからなる群から選択された少なくとも1つの金属酸化物から形成されてもよい。
【0042】
酸化物剥離層50は、プリント配線板用積層体の製造プロセス中に酸化物剥離層50を付加的に形成するプロセスを経るのではなく、樹脂基材と結合することによって樹脂層40を形成するプロセスにおいて自然に形成することができる。すなわち、本発明によれば、プリント配線板用積層体を製造する際に、人工的な酸化プロセスを経なくても自然に酸化物剥離層50を形成することができ、これについては、以下のプリント配線板用積層体の製造方法において詳述する。
【0043】
本発明は、前述のプリント配線板用積層体の製造方法を提供する。プリント配線板用積層体の製造方法は、具体的には、キャリア箔を用意する工程と、キャリア箔上に、チタン、銅、ニッケル、及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種を含む剥離層を形成する工程と、剥離層上に無電解めっきにより金属層を形成する工程と、金属層上に樹脂基材を積層することによって樹脂層を形成する工程とを含む。
【0044】
キャリア箔を用意する工程は、銅又はアルミニウムから形成される金属薄膜、或いはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、テフロン(登録商標)から形成される高分子薄膜を用意することにより行なわれてもよい。
【0045】
剥離層を形成する工程は、用意されたキャリア箔上に、チタン、銅、ニッケル、及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種を含む剥離層を形成することにより行なうことができる。剥離層の形成方法としては、スパッタリング等を挙げることができる。
【0046】
金属層の形成工程は、無電解めっきにより、形成された剥離層に対して行なわれてもよい。無電解めっきの場合、金属イオン源と窒素含有化合物とを含む無電解めっき溶液を用いてもよい。
【0047】
金属イオン源は、具体的には、硫酸銅、塩化銅、硝酸銅、水酸化銅及びスルファミン酸銅からなる群から選択される少なくとも一種であってよい。金属イオン源の濃度は、0.5~300g/L、具体的には100~200g/Lであってよい。
【0048】
窒素含有化合物は、金属イオン源により形成された金属シード層の表面に複数の突起を形成するように金属イオンを拡散させる。窒素含有化合物は、具体的には、プリン、アデニン、グアニン、ヒポキサンチン、キサンチン、ピリダジン、メチルピペリジン、1,2-ジ-(2-ピリジル)エチレン、1,2-ジ-(ピリジル)エチレン、2,2’-ジピリジルアミン、2,2’-ビピリジル、2,2’-ビピリミジン、6,6’-ジメチル-2,2’-ジピリジル、ジ-2-ピリルケトン、N,N,N’、N’-テトラエチレンジアミン、1,8-ナフチリジン、1,6-ナフチリジン、及びターピリジンからなる群から選択される少なくとも一種であってよい。窒素含有化合物の濃度は、0.01~10g/L、具体的には0.05~1g/Lであってよい。
【0049】
無電解めっき溶液は、キレート剤、pH調整剤及び還元剤からなる群から選択される少なくとも一種の添加剤を更に含んでもよい。
【0050】
キレート剤は、具体的には、酒石酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、マロン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、乳酸、コハク酸、酒石酸カリウムナトリウム、酒石酸二カリウム、ヒダントイン、1-メチルヒダントイン、1,3-ジメチルヒダントイン、5,5-ジメチルヒダントイン、ニトリロ酢酸、トリエタノールアミン、エチレンジアミン四酢酸、テトラソジウムエチレンジアミン四酢酸、N-ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸及びペンタヒドロキシプロピルジエチレントリアミンからなる群から選択される少なくとも一種であってよい。キレート剤の濃度は、0.5~600g/L、具体的には300~450g/Lであってよい。
【0051】
pH調整剤は、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウムからなる群から選択される少なくとも一種であってよい。pH調整剤は、無電解めっき溶液のpHが8以上、具体的には10~14、より具体的には11~13.5となるように無電解めっき溶液に含まれてもよい。
【0052】
還元剤は、具体的には、ホルムアルデヒド、次亜リン酸ナトリウム、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム、グリオキシル酸、水素化ホウ素及びジメチルアミンボランからなる群から選択される少なくとも一種であってよい。還元剤の濃度は、1~20g/L、具体的には5~20g/Lであってよい。
【0053】
無電解めっき溶液を用いる無電解めっきにより金属層を形成するためのめっき条件は、金属層の厚さに応じて適宜調整すればよい。具体的には、無電解めっき温度を20~60℃、具体的には30~40℃とし、無電解めっき時間を2~30分、具体的には5~20分としてもよい。
【0054】
そのような無電解めっき溶液を用いて無電解めっきを行なって金属層を形成することにより、本発明は、多孔質金属層を形成することができる。
【0055】
樹脂層を形成する工程は、形成された金属層上に樹脂基材を積層する工程を含んでもよい。樹脂基材としては、前述の無機繊維又は有機繊維に樹脂を含浸させた構造を有する樹脂基材を用いてもよい。
【0056】
なお、本発明に係るプリント配線板用積層体の製造方法は、剥離層と金属層との間に酸化物剥離層を形成する工程を更に含んでもよい。具体的には、キャリア箔と、剥離層と、金属層と、樹脂層とが積層される積層体を高温加圧下で押圧することにより、剥離層と金属層との間に酸化物剥離層を形成し得る。
【0057】
すなわち、金属層上に樹脂基材を積層した後、樹脂層と金属層とを結合するために、積層した樹脂基材は、高温高圧条件下で押圧プロセスを経るが、本発明では、押圧プロセス中に、自然に剥離層と金属層との間に酸化物剥離層が形成され得る。本発明では、金属層が多孔性を有することにより、高温高圧下での押圧プロセス中に金属層の孔を介して酸素が剥離層に移動し、それにより、剥離層が酸化される。
【0058】
高温高圧による押圧は、180℃~220℃(具体的には、190℃~210℃)において10MPa~40MPa(具体的には、15MPa~30MPa)で行なわれてもよい。
【0059】
このように、本発明は、プリント配線板用積層体の製造プロセス中に、キャリア箔付き金属箔それ自体又は樹脂基材が結合される積層体を人工的に酸化させるプロセスを経るのではなく、キャリア箔付き金属箔構造上に樹脂基材を積層するプロセスにおいて、多孔質金属層によって酸化物剥離層を自然に形成することを特徴としている。これにより、キャリア箔は、本発明に係るキャリア箔付き金属箔それ自体では剥離されず、酸化物剥離層によって、樹脂基材と結合されるプリント配線板用積層体では剥離され得る。したがって、本発明によれば、不良発生率を最小限に抑えて、信頼性に優れたプリント配線板用積層体を提供することができる。
【0060】
本発明は、上記プリント配線板用積層体を用いて製造されるプリント回路基板を提供する。具体的には、本発明に係るプリント回路基板は、金属回路層と樹脂層とを含み、金属回路層は、前述した金属層に由来するものであるが、これについては以下で説明する。
【0061】
本発明に係るプリント回路基板に含まれる金属回路層は、回路配線が形成される層である。そのような金属回路層は、前述した金属層上に回路配線を形成するプロセスを経て得られる。回路配線を形成する方法は、特に限定されず、サブトラクティブ法(a subtractive process)、アディティブ法(an additive process)、フルアディティブ法(a full additive process)、セミアディティブ法(a semi additive process)、又はモディファイドセミアディティブ法(a modified semi additive process)であってもよい。
【0062】
本発明に係るプリント回路基板に含まれる樹脂層は、金属回路層上に設けられた絶縁層である。そのような樹脂層は、一般的に知られている樹脂基材から形成されていてもよい。具体的には、樹脂層は、無機繊維又は有機繊維に公知の樹脂を含浸させた構造を有する樹脂基材(例えば、プリプレグ)から形成されてもよい。
【0063】
本発明に係るプリント回路基板は、樹脂基材を用いて製造されてもよく、樹脂基材を除いたコアレス方式で製造されてもよい。
【0064】
以下、実施例に関連して本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、以下の実施例は本発明を例示することを意図しており、当業者であれば分かるように、本発明の範囲内及び思想内で種々の変更及び修正が可能であり、本発明の範囲はこれらに限定されない。
【0065】
[実施例1]
厚さ18μmの銅箔から形成されるキャリア箔を硫酸に浸漬して酸洗した後に純水で洗浄した。次に、キャリア箔上にチタンをスパッタリングすることによって厚さ50nmの剥離層を形成した。その後、金属イオン源(CuSO・5HO)190~200g/L、窒素含有化合物(グアニン)0.01~0.1g/L、キレート剤(酒石酸カリウムナトリウム)405~420g/L、pH調整剤(NaOH)及び還元剤(28%ホルムアルデヒド)を含む無電解めっき溶液を用いて、34℃で20分間無電解めっきすることにより、厚さ2μmの金属層(多孔率20%)を形成した。
【0066】
[比較例1]
厚さ18μmの銅箔から形成されるキャリア箔を硫酸に浸漬して酸洗した後に純水で洗浄した。次に、キャリア箔上にチタンをスパッタリングすることによって厚さ50nmの剥離層を形成した。その後、硫酸銅200g/L、硫酸100g/L、塩化物イオン50ppm、キャリア10ml/L、光沢剤0.3ml/Lからなるめっき溶液で1ASDの電流密度を印加し、25℃で10分間の電解めっきを行ない、厚さ2μmの金属層を形成した。
【0067】
[実験例1]
実施例1及び比較例1で作製したキャリア箔付き金属箔の剥離強度(gf/cm)を、IPC-TM-650規格(幅10mm×長さ10cmの板状試験片を使用)に基づいて測定し、結果を以下の表1に示した。
【0068】
【表1】

表1を参照して、本発明に係る実施例1のキャリア箔付き金属箔では剥離が生じていないのに対して、比較例1のキャリア箔付き金属箔では剥離が生じていることが確認できた。
【0069】
[調製例1及び比較調製例1]
実施例1及び比較例1で作製したキャリア箔付き金属箔の上に、樹脂基材(Doosan Electronicsプリプレグ(DS-7409HG))を積層した後、210℃で100分間、30MPaの圧力でプレスすることにより、プリント配線板用積層体をそれぞれ作製した。
【0070】
[実験例2]
調製例1、2及び比較調製例1で作製したプリント配線板用積層体の剥離強度(gf/cm)を、IPC-TM-650規格(幅10mm×長さ10cmの板状試験片を使用)に基づいて測定し、結果を以下の表2に示した。
【0071】
【表2】

上記表2を参照して、本発明に係る実施例1のキャリア箔付き金属箔は、樹脂基材との結合後に、必要な剥離強度(5~10gf/cm)を示すことが確認できた。このことは、樹脂基材との結合プロセスにおいて、剥離層と金属層との間に酸化物剥離層が形成され、剥離が可能であることを裏付けているといえる。
【符号の説明】
【0072】
10 キャリア箔
20 剥離層
30 金属層
40 樹脂層
50 酸化物剥離層
図1
図2
図3
【国際調査報告】