(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】マカウバパルプ由来の食物繊維フラクションから製造された成形体またはコーティング材および該フラクションの製造方法
(51)【国際特許分類】
B27N 3/04 20060101AFI20240711BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240711BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20240711BHJP
【FI】
B27N3/04 A
A23L5/00 B
A23L19/00 A
A23L5/00 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580993
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 EP2022067709
(87)【国際公開番号】W WO2023275039
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】102021116923.2
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591037214
【氏名又は名称】フラウンホッファー-ゲゼルシャフト ツァ フェルダールング デァ アンゲヴァンテン フォアシュンク エー.ファオ
(71)【出願人】
【識別番号】522323465
【氏名又は名称】インスティトゥート デ テクノロジア デ アリメントス (アイティエーエル)
(71)【出願人】
【識別番号】524001994
【氏名又は名称】インスティトゥート アグロノミコ カンピーナス アイエーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】トレド エ シルヴァ セルジオ エンリケ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥアー ガブリエーレ
(72)【発明者】
【氏名】アイズナー ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ミッターマイヤー ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】ムレイニー イサベル
(72)【発明者】
【氏名】アパレシーダ フェラーリ ロゼリ
(72)【発明者】
【氏名】マーティンズ モレイラ アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】バッタリア ダ シルヴァ リディアネ
(72)【発明者】
【氏名】コロンボ カルロス
【テーマコード(参考)】
2B260
4B016
4B035
【Fターム(参考)】
2B260AA20
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2B260BA11
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(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つのバイオポリマーを含むかまたは少なくとも1つのバイオポリマーから形成されている成形体またはコーティング材に関する。該バイオポリマーは、マカウバ果実の果肉から製造された食物繊維調製物であり、該食物繊維調製物は、30重量%超、好ましくは35重量%超の食物繊維含有量を有し、かつ8重量%未満の脂肪含有量を有する。該バイオポリマーは、石油系ポリマーの本格的な代替品として適しており、生分解性も示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのバイオポリマーを含むかまたは少なくとも1つのバイオポリマーから形成されている成形体またはコーティング材において、前記バイオポリマーは、マカウバ果実の果肉から製造された食物繊維調製物であり、前記食物繊維調製物は、
- AOAC Internationalの方法991.43に準拠して求められた30重量%超、好ましくは35重量%超の食物繊維含有量を有し、かつ
- 8重量%未満の脂肪含有量を有する
ことを特徴とする、成形体またはコーティング材。
【請求項2】
前記成形体が、射出成形、押出成形、カレンダー成形、回転成形、発泡成形、注型またはブロー成形によって形成された成形体である、請求項1記載の成形体またはコーティング材。
【請求項3】
前記食物繊維調製物が、40重量%未満、より良好には30重量%未満、有利には20重量%未満、好ましくは15重量%未満、特に好ましくは10重量%未満のアルコール・水可溶性物質の割合を有する、請求項1または2記載の成形体またはコーティング材。
【請求項4】
前記食物繊維調製物が、5重量%未満、有利には2重量%未満、特に有利には1重量%未満の脂肪含有量を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の成形体またはコーティング材。
【請求項5】
前記食物繊維調製物が、合計で61重量%未満、有利には55重量%未満、特に有利には50重量%未満のアルコール・水可溶性物質および脂肪の割合を有する、請求項1または2記載の成形体またはコーティング材。
【請求項6】
前記食物繊維調製物が、40重量%超、好ましくは50重量%超、特に有利には60重量%超または70重量%超の食物繊維含有量を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の成形体またはコーティング材。
【請求項7】
前記食物繊維調製物が、80重量%超、好ましくは90重量%超の食物繊維含有量を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の成形体またはコーティング材。
【請求項8】
前記食物繊維調製物が、50重量%超、より良好には60重量%超、より良好には70重量%超、有利には80重量%超、特に有利には90重量%超の水溶性食物繊維の食物繊維含有量を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の成形体またはコーティング材。
【請求項9】
前記成形体または前記コーティング材が、マカウバ果実の果肉由来の1つ以上のフラクションをさらに含み、前記フラクションはそれぞれ、50重量%超、より良好には60重量%超、より良好には70重量%超、有利には80重量%超、特に有利には90重量%超の非水溶性食物繊維の食物繊維含有量を有する、請求項1から5までおよび請求項8のいずれか1項記載の成形体またはコーティング材。
【請求項10】
前記食物繊維調製物が、乾物ベースで10重量%未満、より良好には5重量%未満、有利には2重量%未満の皮含有量を有する、請求項1から9までのいずれか1項記載の成形体またはコーティング材。
【請求項11】
前記成形体または前記コーティング材が、前記食物繊維調製物を主成分として含む、請求項1から10までのいずれか1項記載の成形体またはコーティング材。
【請求項12】
前記食物繊維調製物が、1~8000ppm、有利には10~100ppmの有機溶媒の重量割合を有する、請求項1から11までのいずれか1項記載の成形体またはコーティング材。
【請求項13】
前記成形体が箔として形成されている、請求項1から12までのいずれか1項記載の成形体またはコーティング材。
【請求項14】
前記箔が透明であり、有利には可塑剤を含まない、請求項13記載の成形体またはコーティング材。
【請求項15】
前記箔が、1つ以上の有機層および/または無機層を備えている、請求項13または14記載の成形体またはコーティング材。
【請求項16】
前記成形体または前記コーティング材が、食用包装物または食品コーティング材として形成されている、請求項1から15までのいずれか1項記載の成形体またはコーティング材。
【請求項17】
前記コーティング材が、紙または板紙を含む複合材料に層として施与されている、請求項1から12までのいずれか1項記載の成形体またはコーティング材。
【請求項18】
請求項1記載の成形体またはコーティング材用のバイオポリマーとしての食物繊維調製物の製造方法であって、少なくとも以下:
- 脂肪含有量が乾物ベースで3重量%~60重量%である、マカウバ果実由来の全脂または部分脱油パルプを提供するステップ;および
- 前記部分脱油パルプの前記脂肪含有量が比較的多い場合、前記パルプの前記脂肪含有量を、1つ以上の抽出法により8重量%未満の値に低下させるステップ
を有する、方法。
【請求項19】
前記パルプ中のアルコール・水可溶性物質の含有量を、乾式分別または1つ以上の抽出法により低下させて、アルコール・水可溶性物質および脂肪の割合を合計で61重量%未満、有利には55重量%未満、特に有利には50重量%未満にする、請求項18記載の方法。
【請求項20】
アルコール・水可溶性物質の含有量を、水性抽出およびその後の沈殿によって乾物ベースで40重量%未満、好ましくは35重量%未満の値に低下させることにより、乾燥後に水溶性食物繊維調製物を得るか、または乾燥させずに前記成形体もしくは前記コーティング材の製造にそのまま使用する、請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記アルコール・水可溶性物質の含有量を、1つ以上の抽出法または乾式分別によって乾物ベースで40重量%未満、好ましくは35重量%未満の値に低下させ、次いで、水性抽出、アルコールによる沈殿および乾燥を実施することにより水溶性食物繊維調製物を得るか、または水性抽出およびアルコールによる沈殿を実施することにより、乾燥させずに前記成形体もしくは前記コーティング材の製造にそのまま使用する、請求項18記載の方法。
【請求項22】
前記アルコール・水可溶性物質の含有量を、30重量%未満、有利には20重量%未満、好ましくは10重量%未満、特に好ましくは5重量%未満の値に低下させる、請求項20または21記載の方法。
【請求項23】
前記パルプ中のアルコール・水可溶性物質の含有量の低下を、1つ以上の固液抽出法により行う、請求項20から22までのいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
前記パルプの前記脂肪含有量を、5重量%未満、有利には2重量%未満、好ましくは1重量%未満の値に低下させる、請求項18および請求項20から23までのいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
ある割合の脂肪およびアルコール・水可溶性物質を、40~70℃、有利には50~65℃の温度で、重量比が94:6~80:20であるエタノールと水との1つ以上の混合物を用いて前記パルプから同時に分離する、請求項18から24までのいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
前記パルプ中の脂肪およびアルコール・水可溶性物質の割合のさらなる低下を、有利には40~90℃の温度で、水および/または重量比が90:10未満、より良好には80:20未満であるアルコールと水との1つ以上の混合物を利用することにより行う、請求項25記載の方法。
【請求項27】
アルコールとして、プロパノールまたはエタノールを使用する、請求項26記載の方法。
【請求項28】
皮含有量が乾物ベースで10%未満、より良好には5%未満、有利には2重量%未満であり、内果皮および核の含有量が乾物ベースで3%未満、より良好には2%未満、有利には1重量%未満である前記パルプを提供する、請求項18から27までのいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
前記水性抽出の際に残留する非水溶性成分の第2のフラクションを、非水溶性食物繊維調製物として提供する、請求項20から23までのいずれか1項記載の方法。
【請求項30】
前記水性抽出の際に残留する非水溶性成分の第2のフラクションを、0.05~0.1mol/LのNaOHもしくは炭酸ナトリウムと0.5mmolのEDTAもしくはCDTAとを含むNaOH-EDTA溶液または0.5%(m/v)のシュウ酸アンモニウム溶液を用いて、可溶性の第3のフラクションと不溶性の第4のフラクションとに分離し、前記第3のフラクションを、次いで乾燥またはアルコール沈殿に供する、請求項20から23までのいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
前記第4のフラクションを、濃アルカリ液によって、前記アルカリ液に可溶な第5のフラクションと、前記アルカリ液に不溶な第6のフラクションとに分離し、前記第5のフラクションを中和し、乾燥させるかまたはアルコール沈殿に供する、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記食物繊維調製物または1つ以上の前記フラクションを乾燥後に粉砕して、D
90体積基準粒度が1000μm未満、有利には500μm未満、特に好ましくは250μm未満または100μm未満である計量供給可能な粉末、粒状物またはミールにする、請求項18から31までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マカウバパルプ(果肉)の成分から製造された、バイオベースで十分にまたは完全に生分解性のポリマー材料を含む成形体またはコーティング材、および該バイオポリマーの製造方法に関する。
【0002】
背景技術
気候変動が激化し、化石原料の利用可能性が限られているため、植物由来の生分解性プラスチックの需要が増加している。特に、箔(Folien)、ブリスター、ボウル(トレイ)、スタンドアップパウチ、ボトルなどの用途を有する包装材料の分野だけでなく工業部品の分野でも、石油由来プラスチックの代替品を求める声が高まっている。しかし、特に例えば包装箔などの包装分野では、材料特性に対する要求が特に高い。多くの場合、可撓性、引張強さ、圧縮強さ、曲げ強さに加え、包装された物品を保護するための光、水蒸気および酸素のバリア性に高い要求が課され、またこれと同時に、食品に接触する材料の要件に適合することが求められる。このような高い工業的要求と、原料の生物由来やポリマーの生分解性との組み合わせは、先行技術による材料では満たされない。
【0003】
特に、セルロースやデンプンなどの炭水化物をベースとするバイオポリマーが知られている。セルロースから、特にビスコース、セロファン、セルロイドなどの素材が得られるが、その製造には大量の化学薬品、助剤(添加剤)、エネルギーを必要とするため、これらの素材は持続可能とは言えない。一方で、デンプンから製造されるポリマーは、脆性構造ゆえに、可撓性が求められる用途に使用するには大量の可塑剤を必要とする。しかし、このような可塑剤は、例えば食品のような敏感な充填材料に接触する用途には好ましくないことが多く、また、それぞれのバイオポリマーのバリア特性の変化にもつながる。
【0004】
さらに、ポリ乳酸(PLA)やポリヒドロキシ酪酸(PHB)のような、発酵生産されたバイオポリマーも知られている。どちらの天然由来ポリマーも、生分解性は良好ないし非常に良好であるが、使用時に非常に脆くなることがあり、可撓性が求められる用途には可塑剤などの添加剤を併用しなければならず、これもバリア特性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0005】
このことから、バイオポリマーは、複雑な添加剤や改良を加えない限り、ほとんどの用途において化石資源由来のプラスチックの代替品としては適さないか、またはほとんど適さないことがわかる。
【0006】
先行技術によれば、マカウバプルプのバイオポリマー用途への適合性に関する情報はほとんどない。Da Silvaら[1]は、部分脱油マカウバパルプから製造されたバイオベースフィルムについて報告している。この研究では、まずマカウバヤシの果実からパルプを調製し、色別に選別し、塩酸で滅菌し、油分が8.5重量%になるように脱油し、その際に得られたミールを水に分散させ、可塑剤としてのグリセリンおよびチョウジ油を加え、ペトリ皿に流し込んで乾燥させてフィルムを製造した。得られたフィルムは、黄色味を帯びて不透明であった。これらの特性は、多くの箔にとって望ましくない。可塑剤の割合が高く、強度が低いため、これらの箔は工業用途には適さなかった。
【0007】
先行技術を評価した結果、可撓性が求められる用途に適したバイオベースポリマーは今のところ存在せず、マカウバパルプ由来のフラクションを加工して、石油系ポリマーの本格的な代替品として適しており、生分解性も示すポリマー材料にすることはまだ不可能であることがわかった。さらに、先行技術によるバイオポリマーの大半は非常に脆いため、多くの用途で可塑剤が必要となる。
【0008】
本発明の課題
本発明の課題は、例えば包装箔や射出成形部品のような石油系プラスチックの代替品として使用することができ、先行技術の既存の欠点を回避するバイオポリマーを含む成形体またはコーティング材を提供することであった。さらに、該バイオポリマーの製造方法も提示されることが望ましい。
【0009】
発明の説明
この課題は、請求項1および18記載のマカウバパルプ由来の少なくとも1つの食物繊維調製物を含む成形体またはコーティング材、および該調製物の製造方法によって解決される。成形体またはコーティング材および方法の有利な実施形態は、従属請求項の主題であるか、または以下の説明および実施例から得ることができる。
【0010】
ここで、成形体は、例えば、箔、射出成形部品またはブロー中空体とすることができ、コーティング材は、例えば、ラッカー、フィルムまたは他の実施形態とすることができる。以下では、「バイオポリマー箔(フィルム)(Biopolymerfolie)」という表現は、コーティング材を含むすべての実現形態の代表として使用されるが、本発明による成形体は、基本的に任意の形状を有することができ、例えば射出成形、押出成形、カレンダー成形、回転成形、発泡成形、注型またはブロー成形などのすべての一次成形法に由来することができる。食物繊維調製物は、モノマテリアルとして、または材料混合物への添加剤として、あるいは他の材料へのコーティング材として使用することができる。
【0011】
有利には、食物繊維調製物は、成形体またはコーティング材の主成分を形成し、すなわち、成形体またはコーティング材中に50%を超える体積割合または重量割合で存在する。成形体またはコーティング材中の食物繊維調製物の重量割合は、特に好ましくは少なくとも75重量%である。
【0012】
バイオポリマー箔のマカウバパルプに由来するフラクションまたは食物繊維調製物のパーセンテージは、以下では専らマカウバフラクション中の対応する成分の割合を指し、水含有量を除き乾物ベースで与えられる。例えば充填剤、着色料、可塑剤、紫外線安定剤、潤滑剤など、バイオポリマー箔に含まれるその他の成分や添加剤は、パーセンテージには考慮されておらず、したがって、特に明示しない限り、パーセンテージは純粋にそれぞれのマカウバ原材料に関するものである。
【0013】
本発明において、マカウバ果実のパルプから植物油を採取する際に得られる残渣中の油含有量を最小限に抑え、かつ食物繊維含有量を増加させた場合、該残渣を特に有利にはバイオポリマー箔に加工または添加できることが判明した。ここで、油含有量を明らかに5重量%未満に低下させることに加え、抽出時にラフィネートとして残留する食物繊維からアルコール・水可溶性物質(AWS)を十分に分離した場合、バイオポリマー箔の使用特性およびバリア特性は最良の特性を示す。
【0014】
本特許出願において、食物繊維という概念は、CODEX Alimentariusによる、ヒトの小腸内の内因性酵素によって加水分解されない炭水化物ポリマーとしての広範な定義に基づいている。特に、本特許出願における食物繊維という用語は、主に植物細胞壁の多糖類(セルロース、ヘミセルロース、ガムおよびペクチンを含む)およびリグニンを指し、これらは、消化酵素による加水分解に耐性があり、濃度78%(v/v)以上のエタノール水溶液中で沈殿する。本特許出願において、食物繊維含有量は、消化酵素、特にα-アミラーゼ、プロテアーゼおよびアミログルコシダーゼによる試料の消化後の重量測定に基づき、ASSOCIATION OF OFFICIAL ANALYTICAL CHEMISTS(AOAC International)の公定法(AOAC Internationalの参照方法991.43)を用いて求められる。
【0015】
以下で、アルコール・水可溶性物質とは、エタノールの重量割合が80%であるエタノールと水との混合物に温度80℃で可溶であるすべての化合物であると理解される。果実中の他の可溶性化合物に加えて、これらは特に、単糖類、二糖類およびオリゴ糖類を含む植物自身の糖類である。
【0016】
マカウバ果実由来の複数のフラクションを組み合わせることも可能である。
【0017】
少なくとも1つの食物繊維調製物は、本発明によれば、該食物繊維調製物が、8重量%未満、より良好には5重量%未満、有利には2重量%未満、特に有利には1重量%未満の脂肪を含み、その食物繊維の割合が、30重量%超、より良好には35重量%超、なおもより良好には40重量%超、有利には50重量%超または60重量%超、特に有利には70重量%超、より良好には80重量%超、最良には90重量%超であることを特徴とする。食物繊維調製物の脂肪含有量が2重量%未満の場合、バイオポリマー箔は特に良好な色特性を有する。これは、透明または不透明で非常に淡色であり、70超、有利には80超、特に有利には90超の明度(L*値)を有する。
【0018】
食物繊維の70重量%を超える高い値は、脂肪含有量を抽出により8重量%未満、より良好には5重量%未満の値に低下させると同時に、アルコール・水可溶性物質の含有量を乾式分別および/または抽出により20重量%未満、より良好には15重量%未満、なおもより良好には10重量%未満の値に低下させた場合に達成可能である。
【0019】
いくつかの実施形態において、バイオポリマー箔の必要な強度を達成するためには、アルコール・水可溶性物質の含有量を大幅に低下させることが有利であり得る。本発明によれば、これは少なくとも、アルコール・水可溶性物質と油との合計が61重量%未満、有利には55重量%未満、特に有利には50重量%未満となるような程度の絶対重量%ポイントで行われる。これにより、例えば生分解性農業用箔として、または果物の外包装材としての単純な用途向けのバイオポリマー箔に十分な強度を付与するのに十分な安定した食物繊維マトリックスがバイオポリマー箔中に生じ得る程度まで食物繊維含有量が増加する。
【0020】
バイオポリマー箔の引張試験において、油含有量が8重量%未満、特に5重量%未満であると、油含有量が減少するにつれて強度が明らかに増加することが判明した。最も強度が高くなるのは、油含有量が1重量%未満の場合である。
【0021】
驚くべきことに、可塑剤を添加しなくても、マカウバパルプ由来の特に高濃度のいくつかの食物繊維フラクションから透明なバイオポリマー箔を製造することができ、このバイオポリマー箔は、非常に高い可撓性を示し、可逆的に成形可能であり、かつバリア性を有するため、これにより例えば食品用包装箔としての使用が可能となる。本発明による方法の使用により有利にはマカウバフラクションにおいて70重量%超の食物繊維割合を有する(箔を製造するために任意に添加される添加剤は、算出に含めない)マカウバパルプ由来の水溶性食物繊維フラクション(1)は、この目的に特に好適である。
【0022】
本発明によるマカウババイオポリマー箔の使用は、食品と直に接触する用途(包装材、食品コーティング材、および食品の鮮度を保つための被覆材)に特に有利となり得るものであり、なぜならば、マカウバ食物繊維は食品原材料として利用でき、したがって、認可手続きなしで食用包装材や食品コーティング材に利用できるためである。
【0023】
また、天然バイオポリマー箔を他の有機および/または無機層と組み合わせることで、可撓性が高いにもかかわらず、非常に優れたバリア特性を得ることが容易に可能であることも判明した。例えば、天然由来の材料(バイオポリマー)や、SiOxのような純粋な無機成分からなる材料をバリア層に使用すれば、化石資源由来の成分を含まず、かつ環境に負荷を与えない無機残留物を除いて完全に生分解可能な箔を提供することができる。これにより、化学修飾を行わず、単純な濃縮法のみにより、マカウバパルプの天然成分から可撓性で機能的、かつ完全に環境に負荷を与えないバイオポリマー箔を提供することが可能となり、これを広範な用途で石油系プラスチックの代替品として使用することができる。
【0024】
本発明によるバイオポリマー箔の有利な一実施形態では、水溶性で透明な食物繊維フラクションに加え、パルプは、水溶性でなく、バイオポリマー箔の可撓性を低下させかねない他の成分も含む。しかし驚くべきことに、使用特性を損なうことなく、バイオポリマー箔に非水溶性食物繊維(ペクチンを含む)を70%まで配合することが可能である。しかし、このように高濃度の不溶性成分を用いると、例えば可塑剤のようなさらなる添加剤の添加が必要となる場合がある。
【0025】
本発明によるバイオポリマー箔の有利な一実施形態では、より平滑な表面および均一なコーティングを達成するため、例えばさらなる(例えば無機)バリア層を施与(塗布)するために、紙または板紙を含む複合材料にバイオポリマー箔がコーティング材として施与される。紙および板紙のコーティング材では、マカウバフラクション重量と紙/板紙重量とからなる総重量に対して、食物繊維またはマカウバフラクションの割合が10重量%であれば、紙/板紙表面に非常に有利な平滑化効果をもたらすことができる。マカウバコーティング材の重量割合が比較的高く、20重量%超、より良好には30重量%超であれば、表面粗さがさらに低減される。
【0026】
いくつかの事例では、例えば、延伸性を高めるかまたは光フィルターを箔に組み込むために、バイオポリマー箔に、マカウバフラクションの他にさらなる添加剤を添加することが有用であり、またバイオポリマー箔の所定の要件を満たすために必要ともなり得る。これらは、有利には生物起源(由来)原料の群から選択される。可塑剤の場合、これらは例えばグリセリンのような天然化合物とすることができ、あるいは例えばポリフェノール、カロテノイド、クロロフィルなどの二次的な植物物質(植物二次物質)をUVまたは光のフィルターまたは安定剤として使用することもできる。バリアとしてのコーティング材料や充填剤には、SiOxのような無機成分に加えて、例えば不溶性繊維のような植物物質も好ましく使用される。これにより、バイオポリマー箔の環境に負荷を与えない有利な性質が維持される。
【0027】
バイオポリマー箔の成形には、様々な方法を用いることができる。有利には、マカウバパルプから得られるバイオポリマー箔の湿ったまたは乾燥させた成分を、使用前に水と混合するかまたは水に分散させる。水で抽出されたフラクションを(中間的に水を除去したり乾燥させたりすることなく)そのまま加工することも可能である。その後、フィルムの注型を行い、これを乾燥させる。また、水やその他の流動剤を加えることなく、あるいは加えてマカウバパルプ成分の混合物を押出機で混合し、金型で射出成形するかまたは箔に成形し、水が含まれている場合は蒸発または気化によって水を分離することも可能である。
【0028】
バイオポリマー箔用のマカウバフラクション:
既に述べたように、本発明によるバイオポリマー箔は、マカウバパルプ由来の少なくとも1つのフラクションを1つの成分として含むか、またはマカウバパルプ由来の少なくとも1つのフラクションのみからなる。このフラクションについて、後述する。
【0029】
本発明によるフラクションは、水に溶解または分散した状態で任意の割合で存在することができる。したがって、水含有量は、99.9重量%~0.1重量%で変動することができ、例えば、キャスティングフィルムとして使用するためには、水含有量は90重量%超となり;フラクションを安全に貯蔵するためには、10重量%未満の水含有量が選択される。
【0030】
マカウバフラクションは、乾物ベースで、8重量%未満、より良好には5重量%未満、有利には2重量%未満、特に有利には1重量%未満の脂肪含有量を有する。フラクション中の食物繊維の割合は、30重量%超、より良好には35重量%超、なおもより良好には40重量%超、有利には50重量%超または60重量%超、特に有利には70重量%超、より良好には80重量%超、最良には90重量%超である。
【0031】
フラクション中の食物繊維の70重量%を超える高い値は、脂肪含有量を抽出により8重量%未満、より良好には5重量%未満の値に低下させると同時に、アルコール・水可溶性物質の含有量を乾式分別および/または抽出により20重量%未満、より良好には15重量%未満、なおもより良好には10重量%未満の値に低下させた場合に達成可能である。そのような組成物を達成するための手順は、本発明による方法に記載されている。
【0032】
有利には、アルコール・水可溶性物質の含有量は、46重量%~53重量%未満である。実際の限界は、脂肪およびAWSの割合の合計から生じる。本発明によるマカウバフラクションは、合計で61重量%未満、有利には55重量%未満、特に有利には50重量%未満の脂肪およびAWSの割合で含まれる。本方法において容易に設定できるこの限界は、本発明によるバイオポリマー箔に十分な強度を付与するのに十分な食物繊維含有量をもたらす。
【0033】
有利には、使用されるマカウバフラクションは、乾物ベースで10重量%未満、より良好には5重量%未満、有利には2重量%未満の皮含有量を有する。
【0034】
バイオポリマー箔として施与する前に、例えば粉砕または均質化により、含まれるマカウバ粒子の粒度分布が特に微細な状態であれば、可撓性で引張強度の高いバイオポリマー箔を形成するためのマカウバフラクションの特性をさらに向上させることができる。マカウバフラクションは、存在する粒子のD90粒度が1mm未満(D90値:粒子の体積の90%が1mm未満である)、より良好には500μm未満、なおもより良好には250μm未満、有利には100μm未満、特に有利には50μm未満であれば、特に良好に加工および架橋することができる。水溶液中に存在するマカウバの水性フラクション分、例えば糖類やその他の可溶性成分は、この測定では検出されない。この粒度分布により、バイオポリマー箔中の固形分の不均一性を招くことなく、バイオポリマー箔の厚さを非常に薄くすることができる。
【0035】
本発明の特に有利な実施形態では、マカウバフラクションを、異なる加工特性を有する異なる組成物中に存在させることができる。マカウバフラクションの水溶性成分は、特に強固なフィルムを形成し得ることが判明した。したがって、これらを分離して製造することが有利である。これは、マカウバパルプから油およびAWSを分離した後、残渣を最大6つのフラクションに分離して、バイオポリマー箔を製造するための特に機能的なマカウバフラクションを得ることにより達成できる。これらは以下のとおりである:(1)水溶性フラクション(5~100℃の水に可溶)および非水溶性の残留フラクション(2)。フラクション(2)は、アルカリ性のキレート形成性抽出環境を用いて、第2の可溶性ペクチンフラクション(3)と不溶性フラクション(4)とに分離することができる。このために、0.05~0.1mol/LのNaOHまたは炭酸ナトリウムを使用して弱アルカリ性状態を確保し、0.5mmolのEDTAもしくはCDTAまたは0.5%(m/v)のシュウ酸アンモニウムを使用してキレート化活性を確保する。
【0036】
このフラクション(4)は、今度は濃水酸化カリウム溶液(1~4mol/L)を用い、任意に10~50mmolの水素化ホウ素ナトリウムを添加して、可溶性ヘミセルロースフラクション(5)とセルロースに富む不溶性残渣(6)とに分離することができる。
【0037】
これらのフラクションはすべて、バイオポリマー箔において非常に異なる特性を示す。例えば、フラクション(1)は、特に透明で水に非常に良好に可溶であり、ポリマー箔またはポリマー部品のベースマトリックスとして使用できるが、他のフラクションは、有利に異なるバリア特性または強度特性を有する充填剤として使用できる。
【0038】
フラクション(1)の組成は、調製に応じて有利には以下のとおりである:
- マカウバパルプ由来の水溶性食物繊維の割合は、50重量%超、より良好には60重量%超、より良好には70重量%超、有利には80重量%超、特に有利には90重量%超である;
- 脂肪含有量は、20重量%未満、好ましくは8重量%未満、特に好ましくは5重量%未満である;
- アルコール・水可溶性物質の割合は、20重量%未満、有利には15重量%未満、より良好には10重量%未満である。
【0039】
フラクション(2)~(6)の組成は、調製に応じて以下のように特徴付けることができる:
- マカウバパルプ由来の非水溶性食物繊維の割合は、50重量%超、より良好には60重量%超、より良好には70重量%超、有利には80重量%超、特に有利には90重量%超である。
【0040】
バイオポリマー箔用のマカウバフラクションの製造方法:
以下に、本発明によるマカウバフラクション(食物繊維調製物)の製造方法について説明する。本方法は、少なくとも以下のステップを有する:
- 脂肪含有量が乾物ベースで3重量%~60重量%である、マカウバ果実由来の全脂または部分脱油パルプを提供する。全脂パルプまたは部分脱油パルプの脂肪含有量は、植物種や収穫時期によって異なり得るものであり、また、前処理(例えば、予備圧搾、乾燥、フレーク化、機械的圧搾、他の従来の植物油採取法)によっても異なる。
【0041】
- パルプの脂肪含有量を、抽出法により、(乾物ベースで)8重量%未満、特に有利には5重量%未満、なおもより良好には2重量%未満、特に有利には1重量%未満の値に低下させる。
【0042】
- 任意に:乾式分別または抽出法により、マカウバフラクション中のアルコール・水可溶性物質の含有量を、アルコール・水可溶性物質と脂肪との合計が61重量%未満、有利には55重量%未満、特に有利には50重量%未満となる値に低下させる。乾式分別では、特に粉砕および選別装置を使用することができる。抽出には、固液抽出法が(例えば、混合反応器、パーコレーション、向流抽出などとしての実施形態で)用いられる。
【0043】
任意に、かつ有利には:
- 溶媒を用いて油含有量を低下させる。この場合、溶媒として、例えばヘキサン、エタノール、プロパノール、超臨界CO2、または他の亜臨界もしくは超臨界溶媒、および他の有機溶媒を使用する。
【0044】
- 40~70℃、有利には50~65℃の温度で、重量比が94:6~90:10であるエタノールと水との混合物を利用して、マカウバパルプから油および可溶性物質を同時に分離する。
【0045】
- 水、または重量比が90:10未満、より良好には80:20未満であるアルコールと水との混合物を利用することにより、油含有量をさらに低下させ、かつパルプ中のアルコール・水可溶性物質の含有量を低下させて、マカウバフラクションを得る。この場合、アルコールとして、有利にはプロパノールまたはエタノールを使用し、50~90℃、有利には50~70℃、特に有利には60℃の温度を使用することで、アルコール不溶性炭水化物の溶解が十分に回避される。
【0046】
- 以下のステップで、アルコール・水可溶性物質と水溶性食物繊維フラクションとを分別する:
・アルコールと水との混合物でパルプを抽出して、アルコール・水可溶性物質を水溶性食物繊維から分離し、糖類含有抽出物をラフィネートから任意に多段階で連続して分離し、次いで、ラフィネートを水で、有利には、30℃超、有利には40℃超の温度で抽出して水溶性食物繊維フラクションを得る、および/または
・すべての糖類および水溶性食物繊維を水で、有利には、30℃超、有利には40℃超の温度で抽出し、抽出物をラフィネートから分離し;次いで、抽出物を、限外ろ過によって、もしくはアルコール・水不溶性の炭水化物のアルコール沈殿によって、アルコールと水との混合物に良好に溶解するフラクションと、アルコールと水との混合物に良好に溶解しないフラクションとに分離する、または
・乾式分別により水溶性食物繊維を分別する。濃縮物を、任意に粉砕(カッティングミル、ボールミル、インパクトミルまたはジェットミル)して、D90体積基準粒度が2mm未満、有利には500μm未満、より良好には250μm未満、特に有利には100μm未満にするか、または粉砕せずにさらに加工する。次に、この材料を、1~10種類のふるいを用いて、ふるい目開き2mm~50μmでふるい分けする。気流選別は、重力向流、重力直交流、遠心分離向流および遠心分離直交流などの様々な気流選別法を用いて行うことができる。ここで、乾燥状態で存在する水溶性および非水溶性の繊維を、異なるフラクションに分離する。
【0047】
- 食物繊維の分別を、有利には、5重量%未満までの脱油および/または40℃での水性抽出によるアルコール・水可溶性物質の十分な減少の後に行い、これを以下により行う:
水性抽出物をラフィネートから分離し、有利には水溶性フラクション(1)を乾燥させ、0.05~0.1mol/LのNaOHもしくは炭酸ナトリウムと0.5mmolのEDTAもしくはCDTAとを含むNaOH-EDTA溶液または0.5%(m/v)のシュウ酸アンモニウム溶液を用いてラフィネート(フラクション2)を抽出し、可溶性フラクション(3)を不溶性ラフィネート(フラクション4)から分離して乾燥させ、最後に、濃アルカリ液(1~4mol/L)、例えば水酸化カリウム溶液で抽出し、抽出物(フラクション5)を不溶性残渣(フラクション6)から分離し、中和し、乾燥させる。
【0048】
これらの6つのフラクションの特性を、乾燥の場合には乾燥ステップの後に機械的にさらに向上させることができ、これは、カッティングミル、ビーターミル、ボールミルまたはインパクトミルを用いた粉砕をふるいおよびふるいインサートの使用と組み合わせて行うことで、マカウバフラクションの粒度分布が所定の範囲に調整される場合に該当する。
【0049】
マカウバフラクションを溶媒で処理した後、溶媒の割合を低下させなければならない。ここでは、25~120℃、好ましくは80℃超、有利には100℃超の温度、および1bar未満、有利には500mbar未満、特に有利には200mbar未満の圧力が用いられる。
【0050】
驚くべきことに、ヘキサンやアルコールのような溶媒をわずかな割合で依然として含有するマカウバフラクションは、無溶媒調製物と比較して、溶解性および他の機能特性の点で利点を示す。したがって、有利な一実施形態では、調製物は、1~8000ppm、有利には10~100ppmの範囲の有機溶媒を含む。
【0051】
以下に、全脂または部分脱油パルプの提供方法について説明する。マカウバ果実の成熟後に、これを有利には大きな力を加えずに果房から切り離し、これを最良には成熟度によって異なる時期に行う。油もパルプも、個々の果実を果房から別々に収穫するのが最も品質が良い。また、果房ごとヤシの木から切り取ることも可能である。この場合、有利には、外皮の損傷を防ぐために、例えば柔らかい箔または柔らかいネットや、落下を緩やかに減速させるための他のシステムを使用することにより、落下する果房を優しく受け止めることが望ましい。
【0052】
果実のさらなる機械的処理の前に、有利には、果実の表面を、表面温度が70℃超、有利には75℃超、特に有利には80℃超となるように少なくとも1分間(持続時間の定義:最高温度に達してから温度が65℃未満に低下するまで)、有利には10分間または20分間より長く、特に有利には30分間より長く熱処理することが望ましい。
【0053】
その後、有利には、外皮の水含有量を20重量%未満、有利には10重量%未満の値に低下させることにより、剥皮を効率的にし、かつ皮フラクション中のパルプの割合を低下させることが望ましい。ここで、公知のあらゆる形態の乾燥を用いることができる。油の所望の品質および目標乾燥速度に応じて、当業者は、屋外もしくは天日での乾燥、換気もしくは非換気室内での乾燥、または単純な循環式空気乾燥機、接触式乾燥機、対流式乾燥機から真空乾燥に至るまで、様々な乾燥方法から適切な方法を選択することができる。
【0054】
皮を乾燥させるだけでなく、果実全体の水含有量を20重量%未満、有利には15重量%未満、特に有利には10重量%未満の値まで低下させると、油の高い品質に特に有利であることが判明した。特に、10重量%未満の値まで十分に乾燥させた後、果実の保存期間が長くなり、油の品質が向上する。
【0055】
乾燥させ、場合により中間貯蔵を行った後、外果皮を先行技術による剥皮装置で剥皮する。この場合、パラメータの選択により、外果皮フラクションに残留するパルプが、皮フラクションの重量に対して20重量%未満、有利には10重量%未満、特に有利には5重量%未満となるように留意すべきである。1回の運転でこれが達成できない場合は、その後に、外果皮とパルプとの分離ステップを設けるべきである。
【0056】
剥皮の結果、さらに、剥皮後にパルプフラクションに皮が全くまたは少量しか含まれていないように留意すべきである。したがって、剥皮は、分離されたパルプが、最終的に乾物ベースで10%未満、より良好には5%未満、有利には2重量%未満の皮含有量を有するように実施されるべきである。植物原料の分別分野の当業者であれば、この分離作業に適切なユニットおよびプロセスパラメータを選択することができる。
【0057】
次のステップでは、パルプを、石果の核の硬い内皮である内果皮から分離する。これは、カッティングミルまたは当業者に公知の他のユニットを用いて行うことができる。有利には、このプロセスは、官能性の理由から、本発明による調製物のために、パルプ中の黒色内果皮由来の部分の割合が3重量%未満、有利には1重量%未満、特に有利には0.1重量%未満となるように構成されている。この際に得られたパルプを、本発明による方法に供給する。さらなる前処理は、部分的な脱油からなることができる。特に内果皮の部分をパルプから分離するため、その後に機械的または抽出により得られた油は、リグニンまたは他のフェノール系成分の割合が特に低く、油の味がより中性的になる。
【0058】
30重量%未満、より良好には20重量%未満、有利には15重量%未満、特に有利には10重量%未満の値まで乾燥させることによりパルプから水を分離した後、機械的脱油を、有利には連続運転式プレス、例えばスクリュプレス、押出機または他の機械的圧搾装置で行う。ここで、油含有量を、有利には30重量%未満、特に有利には20重量%未満または15重量%未満に低下させる。機械的脱油後の油含有量が15~25重量%である場合に、本発明による食物繊維調製物の特に有利な工業的機能特性が得られるが、これは、過度の摩擦による熱損傷が回避されるためである。
【0059】
以下に、製造された食物繊維調製物の定量的特性評価に使用される測定法について、簡単に説明する:
- 食物繊維含有量:
食物繊維含有量は、試料の酵素消化後の重量測定法(AOACの方法991.43)から得られた含有量として定義される[2]。
【0060】
- タンパク質含有量:
タンパク質含有量は、試料中の窒素を測定し、測定値に6.25の係数を乗じて算出される含有量として定義される。本特許出願では、タンパク質含有量は乾物(DM)ベースでのパーセンテージで表される。タンパク質含有量を測定するための参照方法は、デュマ燃焼法[3]およびケルダール消化法[4]である。
【0061】
- 色:
知覚可能な色は、CIE-L*a*b*比色定量によって定義される(DIN 6417参照)。ここで、L*軸は、明度を示し、黒色は値0、白色は値100であり、a*軸は、緑色または赤色成分を表し、b*軸は、青色または黄色成分を表す。試料の粒度は、100μm未満のD90値である必要がある。
【0062】
- 脂肪含有量:
脂肪含有量は、ソックスレー法[5](AOACの方法920.39)を用いて重量測定法で求められる。
【0063】
- 水含有量:
水含有量は、§64 LFGB法[6]にしたがって、105℃で恒量になるまで重量測定法で求められる。
【0064】
- AWS(アルコール・水可溶性物質):
アルコール・水可溶性物質の含有量は、重量測定法で以下のように求められる:試料(マカウバフラクション)を、80%(v/v)の水性エタノールに固液比1:10(m/v)で分散させる。この分散液を、穏やかに撹拌しながら沸点(約80℃)に60分間保つ。次いで、この混合物を遠心分離(3300g、20分、20℃)し、ろ過し、上清(液相)を貯留する。固形ペレットを、80%の水性エタノールで、透明な抽出物が得られるまで(少なくとも5回の抽出サイクル)上記と同様の条件で抽出する。抽出サイクル終了後、液体抽出物を合し、エタノールを蒸留し、水を105℃で一晩蒸発させる。乾燥後に残った固形物の量を秤量し、分析開始時に抽出に供した試料量に対する%で表す。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1】実施例1により得られたフィルムを示す図である。
【
図2】実施例2により得られたフィルムを示す図である。
【
図3】実施例3により得られたフィルムを示す図である。
【
図4】食物繊維調製物の製造の変形例を示す図である。
【
図5】食物繊維調製物の製造の変形例を示す図である。
【0066】
実施例
図4および
図5は、バイオポリマーとして使用される食物繊維調製物の製造の2つの変形例を例示しており、パルプを提供するステップもこれらの例に示されている。
【0067】
実施例1
水で抽出した水溶性フラクション(1)の皮膜形成特性を定性的に評価した。このために、水溶性フラクションの2.5%水溶液20gを、可塑剤を加えずにペトリ皿(直径9cm)に注いだ。この溶液を空気循環式オーブンにて25℃で一晩乾燥させた。得られたフィルムは、
図1から明らかであるように、ペトリ皿から容易に剥がすことができ、可逆的に成形可能であった。この水溶性フィルムは、優れた可撓性を示し、また可塑剤も架橋剤も使用していないため、引張試験では言及に値する伸びを伴わず特に高い強度を示した。
【0068】
実施例2
食物繊維調合物の皮膜形成特性を評価した。この調合物において、食物繊維含有量は40.5%、脂肪含有量は3%、AWS含有量は35%であった。このために、0.5%(m/v)のグリセリンと混合した食物繊維調合物の1.5%(m/v)水溶液30gをペトリ皿(直径9cm)に注いだ。この溶液を、空気循環式オーブンにて25℃で一晩乾燥させた。得られたフィルムは、
図2から明らかであるように、ペトリ皿から容易に取り出すことができ、可逆的に成形することができた。この水溶性箔は、優れた可撓性を示し、引張試験では言及に値する伸びを伴わず特に高い強度を示したが、箔の透明性は、実施例1で示したものよりも劣っていた。
【0069】
実施例3
食物繊維調合物の皮膜形成特性を評価した。この調合物において、食物繊維含有量は80.5%、脂肪含有量は0.5%未満、AWS含有量は10%であった。このために、0.5%(m/v)のグリセリンと混合した食物繊維調合物の1.5%(m/v)水溶液30gをペトリ皿(直径9cm)に注いだ。この溶液を、空気循環式オーブンにて25℃で一晩乾燥させた。得られたフィルムは、ペトリ皿から容易に取り出すことができ、可逆的に成形することができた(
図3参照)。この水溶性箔は、優れた可撓性を示し、引張試験では言及に値する伸びを伴わず特に高い強度を示したが、箔の透明性は、実施例1で示したものよりも劣っていた。
【0070】
実施例4
水で抽出された水溶性フラクション(1)の皮膜形成特性を、押出成形により評価した。この目的のために、水溶性フラクション(1)55%を20%の水および25%のグリセリンと混合し、平衡化のために一晩静置した。二軸スクリュ押出機で、押出機の導入部、計量供給部、圧縮部およびダイ部の温度を45℃、120℃、120℃、120℃にして箔を押し出した。この箔を50rpmのスクリュ回転数で押し出し、シート状に加工した。箔を幅100mmのベルトダイで成形し、次いで箔引取装置に通した。得られた箔は、厚さ0.5mm、良好な機械的耐性および満足できる酸素バリア特性を有していた。
【0071】
実施例5
食物繊維調合物の熱可塑性特性を、生分解性バイオプラスチックの製造について評価した。この食物繊維調合物において、食物繊維含有量は70.5%、脂肪含有量は0.5%未満、AWS含有量は20%であった。この複合材料を、食物繊維調合物70%、グリセリン18%および水12%で調合した。この食物繊維調合物を、グリセリンと高速(2500rpm)で5分間混合した。次に水を加え、さらに5分間混合した。この混合物を、単軸スクリュ押出機を用いて押し出し、食物繊維ペレット(粒状物)を得た。このペレットを、相対湿度65%で5日間平衡状態に保った。円筒形の試験片を、型締力(クランプ力)50トンで射出成形機にて成形した。射出成形は、スクリュバレル温度120℃、金型温度15℃、射出圧力1500barで行った。保持圧力は1000bar、保持時間は30秒であった。得られた円筒状試料は、良好な機械的特性を示した。
【0072】
実施例6
水溶性フラクション(1)をポリ乳酸(PLA)と組み合わせて、複合箔を製造した。この目的のために、PLAをまず10%のポリエチレングリコールで可塑化した(A部)。同時に、65%の水溶性フラクション(1)を25%のグリセリンおよび10%の水と混合した(B部)。次いで、これら2つの成分を2台の単軸スクリュ押出機で共押出しし、A-B-Aタイプの箔を形成した。最終的な複合箔は、30%のA部と70%のB部とから構成されていた。この複合箔は、1.6mmの厚さを有しており、良好な機械的耐性および50%超の伸びを示した。
【0073】
実施例7
水溶性フラクション(1)を、紙のコーティングに使用した。このために、水溶性フラクション(1)の5%溶液を、脱塩水(50℃)中で一定に撹拌(500rpm)しながら製造した。完全に溶解させた後、溶液を室温まで冷却した。紙基材は、100%の一次繊維(広葉樹と針葉樹との混合物)からなり、坪量70g/m2、厚さ95μm、シート密度0.75g/cm3であった。コーティングを実験室用ドローダウンコータにより行い、目標コーティング材重量は5g/m2(片面塗布(施与))とした。紙基材にコーティング材液を2層施与した。コータの速度は5m/minであり、1層目および2層目の湿潤膜厚は50μmであった。コーティングされた紙試料を、150℃の熱風で60秒間乾燥させた。水溶性フラクション(1)によるコーティング材は、耐グリース性を向上させ、水蒸気透過性を低下させ、揮発性化合物の透過を減少させた。したがって、コーティング材への水溶性フラクション(1)の使用は、板紙のバリア特性の向上に寄与した。
【0074】
出典:
1. Silva AO, Cortez-Verga WR, Prentice C, Fonseca GG. Development and characterization of biopolymer films based on bocaiuva (Acrocomia aculeata) flour. International Journal of Biological Macromolecules. 2020; 155: 1157-1168.
2. AOAC International. (2000). Method 991.43 Total dietary fiber. Enzymatic-gravimetric method. In Official methods of analysis of the association of official analytical chemists (edition 17th). Gaitherburg, MD, USA: Association of Official Analytical Chemists.
3. AOAC International. Method 968.06 Protein (crude) in animal feed. Dumas Method. In Official Methods of Analysis of the Association of Official Analytical Chemists, edition 15th; Association of Official Analytical Chemists: Arlington, VA, USA, 1990.
4. AOAC International. Method 979.09 Protein in grains. Official methods of analysis, 16th ed. Washington DC, USA: Association of Official Analytical Chemists, 1995. 109 p.
5. AOAC International. Method 920.39 Fat (crude) or Ether Extract. In Official Methods of Analysis of the Association of Official Analytical Chemists, edition 15th; Association of Official Analytical Chemists: Arlington, VA, USA, 1990.
6. German Food Act. (1980). Methods L.01.00-60, L. 16.01-2, L. 17.00-1, L. 17.00-3, 1980. In BVL Bundesamt fuer Verbraucherschutz und Lebensmittelsicherheit. Berlin, Germany: Beuth Verlag GmbH. Amtliche Sammlung von Untersuchungsverfahren nach A§ 64 LFGB, A§ 35 Vorlaeufiges Tabakgesetz, A§ 28b GenTG-I-Lebensmittel-Band I (L) Verfahren zur Probenahme und Untersuchung von Lebensmitteln.
【国際調査報告】