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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】微生物の増殖を制御する方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/04 20060101AFI20240711BHJP
   B01D 61/14 20060101ALI20240711BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20240711BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20240711BHJP
   C02F 1/50 20230101ALI20240711BHJP
   C02F 1/76 20230101ALI20240711BHJP
【FI】
C12Q1/04
B01D61/14
B01D61/58
C02F1/44 H
C02F1/50 510A
C02F1/50 520J
C02F1/50 531M
C02F1/50 540B
C02F1/50 550L
C02F1/50 560E
C02F1/76 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023581005
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2024-02-27
(86)【国際出願番号】 EP2022068123
(87)【国際公開番号】W WO2023275280
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】21182926.2
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524002887
【氏名又は名称】レッド ブル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】クレメンス,ハンス
(72)【発明者】
【氏名】ヘルツォーク,ダニエル
【テーマコード(参考)】
4B063
4D006
4D050
【Fターム(参考)】
4B063QA06
4B063QA20
4B063QQ05
4B063QQ06
4B063QR50
4B063QS36
4B063QS40
4B063QX01
4D006GA07
4D006KA01
4D006KA51
4D006KA72
4D006KB30
4D006KD06
4D006MB11
4D006MC03
4D006MC62
4D006PA01
4D006PB07
4D006PB24
4D050AA08
4D050AB06
4D050BB04
4D050BD08
4D050CA09
(57)【要約】
本特許出願は、工業プラントから少なくとも部分的に循環するプロセス水における微生物の増殖を制御する方法であって、プロセス水において酸化還元電位400~800mVを設定するために、二酸化塩素含有水溶液をプロセス水中に導入するステップを含み、二酸化塩素含有水溶液が、4~7.5のpH値、および1よりも高い二酸化塩素の塩化物イオンに対する比を有し、プロセス水が、5~50℃の温度を有する、方法に関連する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工業プラントの、少なくとも部分的に循環するプロセス水における微生物の増殖を制御する方法であって、前記プロセス水において酸化還元電位400~800mVを設定するために、二酸化塩素を含有する水溶液を前記プロセス水中に導入するステップを含み、二酸化塩素を含有する前記水溶液が、4~7.5のpH値、および1よりも高い二酸化塩素の塩化物イオンに対する比を有し、前記プロセス水が、5~50℃の温度を有する、方法。
【請求項2】
二酸化塩素を含有する前記水溶液の導入の結果として、前記プロセス水の前記酸化還元電位が、400~700mVに、好ましくは400~650mVに、より好ましくは400~600mVに設定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
二酸化塩素を含有する前記水溶液の導入後、前記プロセス水の二酸化塩素濃度が、0.02~0.9ppm、好ましくは0.05~0.8ppm、より好ましくは0.05~0.5ppm、より好ましくは0.1~0.5ppmの範囲であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
二酸化塩素を含有する前記水溶液の二酸化塩素濃度が、1000~40000ppm、好ましくは2000~30000ppm、より好ましくは5000~20000ppmの範囲であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
二酸化塩素を含有する前記水溶液が、前記プロセス水中に断続的に導入されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記プロセス水の前記酸化還元電位が、500mV未満、好ましくは450mV未満、より好ましくは420mV未満である場合、二酸化塩素を含有する前記水溶液が、前記プロセス水中に導入されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも、前記プロセス水の前記酸化還元電位が、800mV、好ましくは700mV、より好ましくは650mVになるまで、二酸化塩素を含有する前記水溶液が、前記プロセス水中に導入されることを特徴とする、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
二酸化塩素を含有する前記水溶液が、前記プロセス水中に断続的に導入される場合、二酸化塩素を含有する前記水溶液が、前記プロセス水中に30分~5時間、好ましくは1~3時間で導入され、30分~5時間、好ましくは3~5時間中断されることを特徴とする、請求項5から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記プロセス水の前記酸化還元電位を600mVから800mVまでの間、好ましくは600mVから700mVまでの間、より好ましくは600mVから650mVまでの間に設定するために、二酸化塩素を含有する前記水溶液が、前記プロセス水中に30分~5時間、好ましくは1~3時間で導入されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
二酸化塩素を含有する前記水溶液の前記プロセス水中への導入の前および/または後で、前記プロセス水が、50℃未満、好ましくは45℃未満の温度を有することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記プロセス水が、好ましくはメンブレンフィルターを用いて、前記工業プラントの1つまたは複数の箇所でろ過されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記プロセス水が、集水槽にわたって導かれ、二酸化塩素を含有する前記水溶液の前記プロセス水中への導入が、好ましくは前記集水槽において起こることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
二酸化塩素を含有する前記水溶液が、過硫酸塩-亜塩素酸塩方法によって製造されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
二酸化塩素を含有する前記水溶液が、その製造後に前記プロセス水中に直接導入されることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業プラントにおける微生物の増殖を制御する分野に関連する。
【背景技術】
【0002】
微生物汚染の制御は、高品質かつ耐久性のある製品を製造することを可能にするために、ならびにそのプロセスが衛生的に実施されるプラントを清潔に、および操作可能に保つために、多くの工業プロセスにおいて重要である。この場合、製品の保存可能期間もまた主な役割を担うので、微生物増殖を制御することは、食品部門において特に最優先である。
【0003】
少なくとも部分的に水で操作される工業プラント(例えば、低温殺菌プラント、調理プラント)における、望ましくない、無制御の、微生物、特にバクテリアおよび菌類の増殖は、多様な方法で解決される、周知の問題である。この場合、化学的方法ならびに機械的方法および熱的方法が使用され、微生物増殖は、実際に多くの場合、化学的におよび/または熱的に制御される。
【0004】
用途の分野に応じて、微生物を制御する化学的方法の使用は極めて一般的であり、多くの場合、熱的手段を伴う。例えば、酸化塩素は、水溶液における微生物有機体の不活性化の改善のために使用される(米国特許第7922933B2号)。二酸化塩素はまた、熱交換器のパイプの生物膜を抑制するプロセスにおいて、酸化剤としても使用される(米国特許出願公開第2007/081573号)。ある種の化合物を含む水溶液の使用は、食品部門において、用いられる化合物の一部が、その毒性ゆえに限定的にのみ使用可能であるので、微生物に対する良好な有効性にもかかわらず、不利である。多くの化学化合物の別の欠点は、それらが水溶液の腐食を促進することである。これは、金属製部品、特に鋼製部品、またはステンレス鋼製部品を備える工業プラントが、ある種の抗菌化合物の使用ゆえに腐食増加にさらされ得ることを意味する。
【0005】
食品部門において、例えば、腐食性水溶液は、それが使用される工業プラントでだけでなく、食品で満たされ、腐食性溶液と接触する金属容器(例えば、低温殺菌プラントにおける金属キャップが備え付けられた缶または瓶)にも悪影響を及ぼす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、プロセス水の微生物の増殖を制御することを可能にする方法であって、プロセス水が、金属と比較して低い腐食速度を有するべきである、方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
意外なことに、プロセス水の微生物汚染は、二酸化塩素を含有する水溶液の形態の二酸化塩素を添加することによって、制御され得るか、または特に十分に減らすことができ、ただし、二酸化塩素を添加することによって、プロセス水の酸化還元電位が、400~800mVの値に調整されることが示された。とりわけ、画定された酸化還元電位(二酸化塩素を含有する水溶液で調整される)および画定されたpH値の、組み合わせた設定の結果として、プロセス水における望ましくない微生物の増殖に対して、かつプロセス水が置かれる工業プラントの表面での望ましくない生物膜形成に対して特に高い有効性が示される。この理由で、本発明に従って使用される、二酸化塩素を含有する水溶液は、4~7.5のpH値を有する。加えて、二酸化塩素を含有する溶液が導入されるプロセス水は、5~50℃の温度を有する。高すぎる、プロセス水の温度は、プロセス水から二酸化塩素を排出させ、プラントおよびプラントを操業する従業員の安全性を危険にさらす。加えて、温度が上昇すると、二酸化塩素の水中溶解度は減少し、それによって、プロセス水中に溶解した二酸化塩素濃度が低下する。
【0008】
さらに、二酸化塩素を含有する溶液中のpH値および二酸化塩素の塩化物イオンに対する(モル)比は、溶液、またはプロセス水の腐食性に有意な影響を及ぼすことが示された。そのpH値が二酸化塩素を含有する溶液の添加によって影響されるので、二酸化塩素を含有する溶液の4未満のpH値は、プロセス水のより高い腐食性をもたらす。さらに、二酸化塩素を含有する水溶液中の二酸化塩素の塩化物イオンに対する比が1よりも高い場合、プロセス水の腐食性は、有意に低減される。二酸化塩素を含有する水溶液中の二酸化塩素の塩化物イオンに対する比が、さらに1.5よりも高い、好ましくは2よりも高い、より好ましくは3よりも高い、より好ましくは5よりも高い、より好ましくは10よりも高い、より好ましくは100よりも高い場合、腐食性はさらに低減され得る。
【0009】
意外なことに、蒸留水で調整された二酸化塩素濃度1000ppmの、二酸化塩素を含有する水溶液は、室温で、鋼1.4301での腐食速度0.6mm/年未満、好ましくは0.55mm/年未満、より好ましくは0.5mm/年未満を表し、および/または蒸留水で調整された二酸化塩素濃度50ppmで、室温で、鋼1.4301での腐食速度0.25mm/年未満、好ましくは0.20mm/年未満を表すことが見出された。結果として、微生物への効果を損なうことなく、工業プラントの腐食を徹底的に低減することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明による方法は、バクテリアおよび菌類などの微生物の増殖を制御するために、または抑制するために使用され得る。二酸化塩素の酸化効果ゆえに、全体の細胞(全ての原核細胞および真核細胞)ならびに微生物の増殖が特に抑制される。本発明による方法を用いて、浮遊性微生物を制御することが可能であるだけでなく、方法は、工業プラントの表面の生物膜の形成を防ぐか、または減らす。
【0011】
二酸化塩素濃度1000ppmで、室温で、鋼1.4301での腐食速度0.6mm/年未満を有する、二酸化塩素を含有する水溶液を使用することによって、工業システムでのプロセス水の腐食速度は、抗菌効果を損なうことなく徹底的に低下する。本発明によれば、腐食速度は、規格ASTM G31-72に従って求められる。そうすることにおいて、二酸化塩素を含有する水溶液が製造され、それは、二酸化塩素1000ppm(1000mg/l)を含む。二酸化塩素を含有する、この試験溶液を製造するために、上記試験溶液が二酸化塩素1000ppmを表すまで、二酸化塩素は25℃の蒸留水中に導入される。鋼1.4301製のプレートを25℃の上記試験溶液に浸漬させ、120時間後のプレートの重量損失を腐食速度の計算に使用する。
【0012】
本発明による方法は、二酸化塩素を含有する水溶液をプロセス水中に混合する、または添加するステップを含む。本明細書において「プロセス水」は、工業プロセスを実行するために、工業プロセスにおいて使用され、プラント(工業プラント)の操作に役立つ水を含める。工業プロセスの過程で製造される最終製品、またはその中間製品および暫定製品は、工業プロセス中にプロセス水に直接接触しない。それゆえに、プロセス水は、例えば、プラントおよび機械を洗浄する(例えば、「定置洗浄」CIP)ために使用される水であってもよい。低温殺菌プラント、エネルギー貯蔵槽(例えば、熱需要のための加熱目的)、または冷却塔において使用される水もプロセス水として考えられ得る。
【0013】
二酸化塩素を含有する水溶液は、プロセス水の酸化還元電位を400mVから800mVまでの間に設定するのに十分な量で添加される。それゆえに、二酸化塩素を含有する水溶液の添加量は、一方で水溶液中に存在する二酸化塩素濃度で、他方で溶液のpH値で変わることがあり、かつそれらに応じて決まる。
【0014】
特に好ましくは、本発明による方法は、低温殺菌プラントにおける、瓶洗浄プラントにおける、瓶用の熱系プラントにおける、および/またはオートクレーブ処理(プロセス水が冷却液として使用される)における、プロセス水の微生物汚染を制御するために使用される。この関連において、低温殺菌プラントからのプロセス水の処理用の二酸化塩素を含有する水溶液の使用は、特に有利である。こうしたプラントに関して、本発明に従って処理されたプロセス水を用いた金属プラント部品は、未処理のプロセス水とは異なり、酸化剤があるにもかかわらず、いずれの腐食増加も示さないことが示された。加えて意外なことに、金属包装、とりわけアルミニウム包装(例えば、アルミニウム缶)は、特許請求の範囲に記載の、プロセス水の酸化還元電位範囲を得るための、二酸化塩素を含有する水溶液の添加ゆえの腐食のいずれの兆候も示さないことが示された。これは、金属包装が、本発明による方法で処理されたプロセス水と特に十分に接触し得ること(例えば、低温殺菌プロセスの過程で)を意味する。
【0015】
それゆえに、容器、好ましくはアルミニウム缶などのアルミニウム容器の洗浄、低温殺菌および/または消毒のために、本発明に従って処理されたプロセス水を使用することが特に好ましい。
【0016】
本発明による方法において、二酸化塩素を含有する水溶液は、プロセス水の酸化還元電位が400~800mVの範囲になるまで、プロセス水中に供給される。とりわけこの電位範囲において、工業プラント内の鋼などの金属の腐食を促進することなく、細胞の、特に微生物の増殖が制御され得るか、または特に十分に抑制され得ることが示された。
【0017】
本発明に従って使用される、二酸化塩素を含有する水溶液は、多様な方法で製造され得る。特に好ましいものは、その方法によって、1よりも高い二酸化塩素の塩化物イオンに対するモル比を有する、二酸化塩素を含有する水溶液が製造され得る方法である。本発明に従った好ましい方法は、さらに4~7.5のpH値を有する二酸化塩素を含有する水溶液を製造することが可能である。例えば、二酸化塩素は、酸化剤であるペルオキソ二硫酸塩または塩素ガスで、亜塩素酸塩を酸化することによって水溶液中に生成され得る。代替的な方法には、酸性溶液中の亜塩素酸ナトリウムの不均化反応による二酸化塩素の生成が挙げられる。別の代替的な方法は、濃硫酸による塩素酸カリウムの転化であるが、この方法において爆発の危険性が特に高い。塩素酸塩の形成が、ペルオキソ二硫酸塩(例えば、ペルオキソ二硫酸ナトリウム)を用いた亜塩素酸塩(例えば、亜塩素酸ナトリウム)の酸化による二酸化塩素の生成において最も低いので、この方法は、このように二酸化塩素が本発明による方法において直接生成される溶液を使用することができるとき特に好ましい。亜塩素酸ナトリウムおよび硫酸または別の(強)酸で調製され得る、二酸化塩素を含有する溶液の直接使用は、腐食性アニオンおよび腐食を促進する低いpH値を表すのであまり好ましくない。こうした場合、二酸化塩素は、複雑な蒸留法(例えば、真空を用いて)によって反応溶液から取り除かれる必要があり、4~7.5のpH値および少量の腐食促進性アニオンを有する水溶液に、理想的には、塩化物イオンを含まない水、または低濃度の塩化物イオン(150ppm未満、好ましくは100ppm未満)を含む水に導入する必要がある。したがって、本発明によれば、特に好ましいものは、1よりも高い二酸化塩素の塩化物イオンに対する比を有する、二酸化塩素を含有する水溶液の製造を可能にする方法の使用である。
【0018】
本発明の好ましい一実施形態によれば、プロセス水の酸化還元電位は、400~700mVに、好ましくは400~650mVに、より好ましくは400~600mVに設定される。
【0019】
本発明のさらに好ましい一実施形態によれば、プロセス水の二酸化塩素濃度は、0.02~0.9ppm、好ましくは0.05~0.8ppm、より好ましくは0.05~0.5ppm、より好ましくは0.1~0.5ppmの範囲である。
【0020】
好ましくは、プロセス水における二酸化塩素濃度0.02~0.9ppmを設定するために、二酸化塩素を含有する水溶液がプロセス水に添加される。この濃度範囲は、意外なことに、プロセス水の酸化還元電位を200~800mVの範囲に設定するのに十分であるので特に有利である。専門家の意見とは対照的に、こうした低い二酸化塩素濃度さえも、細胞、特に微生物の増殖を制御するのに、または抑制するのに十分である。加えて、こうした二酸化塩素濃度は、本質的に、金属プラント部品(例えば、鋼製、ステンレス鋼製)の腐食に悪影響を及ぼさないことが分かった。より高い二酸化塩素濃度では、腐食に関連した問題がプラント内で十分に生じる可能性がある。
【0021】
さらに、減らした二酸化塩素の使用は、それによって、二酸化塩素の有効性を全く限定することなく、使用される酸化剤の費用が削減され得るので経済的利点も有する。
【0022】
本発明の特に好ましい一実施形態によれば、二酸化塩素を含有する水溶液の二酸化塩素濃度は、1000~40000ppm、好ましくは2000~30000ppm、より好ましくは5000~20000ppmの範囲である。
【0023】
本発明の好ましい一実施形態によれば、二酸化塩素を含有する水溶液は、4.5~7.5、好ましくは5~7のpH値を有する。
【0024】
水溶液中の二酸化塩素を安定させるために、上記溶液のpH値を中性から酸性の範囲に設定すること、または安定させることが有利である。高いpH値は、すなわち、二酸化塩素の分解をもたらすことがあり、その過程で、例えば、爆発性塩素酸塩が形成され得る。
【0025】
本発明による方法は、細胞、特に微生物の増殖の優れた制御にもかかわらず、プロセス水の二酸化塩素濃度が低いので、プロセス水が、本質的に腐食特性を有しないか、または極めて低い腐食特性(例えば、鋼およびステンレス鋼などの金属に対して)を有するという利点を有する。二酸化塩素と混合されたプロセス水の腐食特性をさらに低減するために、二酸化塩素を含有する水溶液が、少量の腐食促進性アニオンのみ(例えば、塩化物イオンなど)を含むか、またはそれを含まない場合が有利である。それゆえに、二酸化塩素を含有する水溶液が、1よりも高い二酸化塩素の塩化物イオンに対するモル比を有するか、または可能な限り少ない腐食促進性アニオンを含むことが特に有利である。
【0026】
二酸化塩素を含有する水溶液において、腐食促進性アニオン、特に塩化物イオンおよび硫酸イオンの濃度を減らすために、それらのアニオンがとりわけごく僅か導入される、二酸化塩素または二酸化塩素を含有する水溶液を製造する方法が適用され得る。例えば、低濃度の腐食促進性アニオンが生じる、二酸化塩素を含有する水溶液を製造する方法が適用され得る。それゆえに、二酸化塩素は、特に好ましくは、亜塩素酸塩をペルオキソ二硫酸塩で酸化することによって水溶液中に生成される。
【0027】
本発明のさらに好ましい一実施形態によれば、二酸化塩素を含有する水溶液は、二酸化塩素濃度1000ppmで、室温(20~22℃)で、鋼1.4301での腐食速度0.6mm/年未満、好ましくは0.55mm/年未満、より好ましくは0.5mm/年未満を示す。
【0028】
二酸化塩素を含有する水溶液の腐食速度の決定は、ASTM規格G31-72に従って求められる。
【0029】
本発明の特に好ましい一実施形態によれば、二酸化塩素を含有する水溶液は、プロセス水中に断続的に導入される。
【0030】
プロセス水の酸化還元電位を所望の範囲に設定するために、二酸化塩素は、二酸化塩素を含有する水溶液を用いて、プロセス水中に、連続的に、または断続的に供給され得る。二酸化塩素が連続的に供給される場合、プロセス水の酸化還元電位は、二酸化塩素を含有する水溶液が計量供給される限り、相対的に一定のままである。他方で、供給が断続的である場合、二酸化塩素は、時間間隔でプロセス水中に供給され、それによって、経時的に低下するプロセス水の二酸化塩素濃度ゆえに、プロセス水の酸化還元電位もまた変動にさらされる。しかし、こうした変動は、好ましくは特許請求の範囲に記載の範囲内に留まる。
【0031】
本発明の好ましい一実施形態によれば、プロセス水の酸化還元電位が、500mV未満、好ましくは400mV未満、より好ましくは300mV未満、より好ましくは250mV未満である場合、二酸化塩素を含有する水溶液は、プロセス水中に計量供給される。
【0032】
二酸化塩素は、プロセス水中に断続的に供給される場合、好ましくは、プロセス水の酸化還元電位がある特定の値を下回る時点で添加される。この値は、好ましくは、細胞、特に微生物の増殖を制御するために、本発明に従って必要となる範囲内である。
【0033】
本発明の特に好ましい一実施形態によれば、少なくとも、プロセス水の酸化還元電位が、800mV、好ましくは700mV、より好ましくは650mVになるまで、二酸化塩素を含有する水溶液は、プロセス水中に計量供給される。
【0034】
二酸化塩素は、プロセス水中に断続的に供給される場合、プロセス水の酸化還元電位がある特定の値に到達するまで計量供給される。所定の閾値に到達すると、プロセス水中への二酸化塩素の計量供給は、中断される。
【0035】
本発明のさらに好ましい一実施形態によれば、二酸化塩素を含有する水溶液とプロセス水との断続的な混合の場合、二酸化塩素を含有する水溶液は、プロセス水中に30分~3時間で計量供給され、30分~3時間中断される。
【0036】
二酸化塩素は、所定の値に到達するまで、ある特定の時間長で計量供給され得る。
【0037】
本発明の好ましい一実施形態によれば、二酸化塩素を含有する水溶液が添加される、または存在する場合、プロセス水は、50℃未満、好ましくは45℃未満の温度を有する。
【0038】
水溶液からの、またはプロセス水からの二酸化塩素の任意の放出を減らすために、または防ぐために、二酸化塩素を含有する水溶液は、好ましくは、ある特定の最高温度でプロセス水中に供給される。二酸化塩素を含有する水溶液を50℃以下でプロセス水に添加することにより、本質的に、プロセス水からの二酸化塩素の放出がないことが示された。プロセス水が温度変動を受ける、工業プロセスおよび/またはプラント(例えば、低温殺菌プラント)において、プロセス水の温度が、依然として一定であるか、またはプロセス水が冷却段階にある時点で、二酸化塩素を含有する水溶液をプロセス水中に供給することが有利である。一方で、40℃未満の温度は、微生物の増殖を促進することがあり、他方で、二酸化塩素は、50℃未満の温度でより少なく排出される。
【0039】
本発明の特に好ましい一実施形態によれば、プロセス水は、二酸化塩素を含有する水溶液の添加の前および/または後で、4~8、好ましくは4.5~7.5、より好ましくは5~7、より好ましくは5.5~6.5のpH値を有する。
【0040】
プロセス水が酸性範囲のある特定のpH値を有する場合、プロセス水における二酸化塩素の酸化効果はとりわけ高いことが示された。プロセス水のpH値は、二酸化塩素を含有する水溶液の添加の前または少なくとも後のいずれかで、本発明に従った範囲内にある。
【0041】
本発明のさらに好ましい一実施形態によれば、プロセス水は、好ましくはメンブレンフィルターを用いて、工業プラントの1つまたは複数の箇所でろ過される。
【0042】
プロセス水は、工業プラントにおけるその使用中に、様々なサイズおよび様々な特徴の粒子で、かつ微生物で汚染される。粒子の数を減らすために、プロセス水は、本発明による方法においてろ過され得る。ろ過の過程で、微生物は、使用されるフィルターの孔径に応じて、プロセス水から取り除くことができる。特に好ましくは、メンブレンフィルターを使用して、プロセス水から粒子状汚染物質および微生物汚染物質を取り除く。
【0043】
メンブレンフィルターの孔径は、好ましくは10μm未満、より好ましくは5μm未満、より好ましくは2μm未満、より好ましくは1μm未満、より好ましくは0.8μm未満、より好ましくは0.5μm未満、より好ましくは0.2μm未満である。
【0044】
メンブレンフィルターは、とりわけ、ろ過されるプロセス水に基づいて選択される、多様な材料を含むことができる。一方で、膜材料は、メンブレンフィルターの膜の品質が損なわれないように、ろ過されるプロセス水の構成成分に耐性があること、他方で、プロセス水から取り除かれると想定される粒子および微生物が分離可能であることを実際に確認されるべきである。
【0045】
本発明に従って使用されるフィルターの膜は、セラミック材料および/またはポリマーを含むことができる。好ましいポリマーは、ポリスルホンおよびポリ塩化ビニル(PVC)を含む。
【0046】
プロセス水が、工業プラントにおいてどのように経由するかに応じて、かつ方法に応じて、プロセス水は、工業プラントの1つまたは複数の箇所でろ過され得る。そうすることにおいて、ろ過は、二酸化塩素を含有する水溶液のプロセス水中への添加の前または後のいずれかで行われ得る。
【0047】
本発明の好ましい一実施形態によれば、プロセス水は、集水槽にわたって導かれ、プロセス水と二酸化塩素を含有する水溶液との混合は、好ましくは集水槽において起こる。
【0048】
二酸化塩素を含有する水溶液は、様々な箇所で、かつ様々な方法で、プロセス水中に計量供給され得る。これは、二酸化塩素を含有する溶液が、工業プラントのパイプにおいて、または他の容器においてプロセス水に添加され得ることを意味する。特に好ましくは、二酸化塩素を含有する溶液は、好ましくは撹拌機を備え付けた集水槽において、プロセス水に添加される。結果として、プロセス水における二酸化塩素の均一な混合が確実なものになり得る。
【0049】
本発明の好ましい一実施形態によれば、二酸化塩素を含有する水溶液は、過硫酸塩-亜塩素酸塩方法によって製造される。
【0050】
二酸化塩素を製造するための過硫酸塩-亜塩素酸塩方法において、亜塩素酸イオンは、過硫酸イオンによって二酸化塩素に転化される。
2ClO +S 2-→2ClO+2SO 2-
【0051】
こうした方法は、発生期塩化物イオンの濃度が低く、ゆえに反応過程において、通常、二酸化塩素が塩化物イオンのモル量よりも高いモル量で製造される利点を有する。
【0052】
二酸化塩素を含有する水溶液の製造のための方法は、当業者に周知であり、関連の参考文献において見出され得る。例えば、好適な方法は、米国特許第6468479号および欧州特許第2654940号に記載される。
【0053】
本発明のさらに好ましい一実施形態によれば、二酸化塩素を含有する水溶液は、その製造後、プロセス水中に直接導入される。
【0054】
二酸化塩素が製造される反応溶液が、プロセス水中に直接導入され得ることが本発明の主な利点である。反応混合物から二酸化塩素を取り除き、その後二酸化塩素を水中に再び溶解させる必要がない。ガス状二酸化塩素は極めて爆発性であるので、これにより、方法全体をより経済的であるだけでなく、さらにより安全なものにする。
【0055】
過硫酸塩-亜塩素酸塩方法の反応溶液は、二酸化塩素を含有する水溶液としてプロセス水中に直接導入され得る。
【0056】
本発明の特に好ましい一実施形態によれば、二酸化塩素を含有する溶液は、少なくとも1種のさらなる酸化剤を含む。
【0057】
二酸化塩素に加えて、少なくとも1種のさらなる酸化剤がプロセス水に添加され得る。さらなる酸化剤を添加する利点は、使用される二酸化塩素の量を減らして所望の効果を得るようにできることである。他方で、少なくとも1種のさらなる酸化剤は、二酸化塩素を含有する溶液の製造において使用される酸化剤であってもよい。
【0058】
本発明の好ましい一実施形態によれば、少なくとも1種のさらなる酸化剤は、ペルオキソ二硫酸塩である。
【0059】
本発明のさらに好ましい一実施形態によれば、二酸化塩素を含有する溶液は、未反応ペルオキソ二硫酸塩を含む。
【実施例
【0060】
実施例1:二酸化塩素によるプロセス水の微生物的品質への影響
二酸化塩素によるプロセス水の微生物的品質への影響を調べるために、第1の低温殺菌プラントのプロセス水を、二酸化塩素を含有する本発明の水溶液と混合し、第2の低温殺菌プラントのプロセス水を殺生物剤と混合した。
【0061】
二酸化塩素を含有する本発明の水溶液(過硫酸塩-亜塩素酸塩方法を用いて調製された)は、プロセス水の酸化還元電位を400~800mVの範囲で保つような量で、第1の低温殺菌プラントのプロセス水中に断続的に計量供給された。プロセス水の酸化還元電位が400~450mVを下回る場合、二酸化塩素を含有する本発明の水溶液は、750mVから800mVまでの間の酸化還元電位に到達するまで計量供給された。
【0062】
その一方、ブロノポールは、プロセス水中のブロノポール濃度が0.3~3mg/mlであるような量で、時間制御に基づいて(3日毎)、第2の低温殺菌プラントのプロセス水に添加された。
【0063】
両方の低温殺菌プラントのプロセス水の微生物汚染は、4か月の期間にわたって計測され、プロセス水の微生物状態は、1週間に2回(月曜日および火曜日)調べられた。
【0064】
試料1mlにおける細菌数は、「プレートカウント寒天培地」(PCA)を用いて求められ、適切な量のプロセス水をPCAプレートに塗布した。1個のプレートは、1回で、37℃でインキュベートされ、1個のプレートは、1回で、28℃でインキュベートされた。細菌数の評価は、2日後と5日後にそれぞれ行った。
【0065】
【表1】
【0066】
同時に、二酸化塩素がプロセス水中に計量供給された低温殺菌プラントの酸化還元電位は、細菌数を求めるためのサンプリングの時点で測定された。
【0067】
【表2】
【0068】
試験期間内の5回の測定において、ブロノポールで処理されたプロセス水の酸化還元電位は、常に1000mVよりも高くなった。
【0069】
観測された細菌数は、プロセス水の酸化還元電位を400~800mVの範囲に保つのに十分な量の二酸化塩素の使用により、より少ない細菌数、すなわち、ブロノポールなどの従来の殺生物剤の使用がもたらされることを証明する。
【0070】
実施例2:二酸化塩素の存在下でのステンレス鋼の耐腐食性
二酸化塩素を含有する本発明の水溶液の存在下でのステンレス鋼の耐腐食性を調べるために、様々な方法で調製された二酸化塩素を含有する水溶液が調査された。二酸化塩素を含有する水溶液は、塩を溶解させるために、または酸を希釈するために超純水を使用した、ペルオキソ二硫酸塩-亜塩素酸塩方法、塩酸-亜塩素酸塩方法、および硫酸-亜塩素酸塩方法によって製造された。加えて、二酸化塩素を含有する水溶液は、二酸化塩素ガスを超純水中に導入することによって製造された。
【0071】
前述された方法を使用して調製された、二酸化塩素を含有する溶液における二酸化塩素の含有量は、DPD(ジプロピル-p-フェ二レンジアミン;パリンテスト)によって求められた。その後、1000ppmおよび50ppmの二酸化塩素の含有量を有する試験溶液は、二酸化塩素および蒸留水またはプロセス水を含有する上記溶液から調製された。
【0072】
大きさ9mm×39mmおよび厚さ1mmを有する試験片は、等級1.4301クロムニッケルステンレス鋼から製造された。全ての試験片は、直径およそ5mmを有する穴を有し、ゆえにガラスフックを使用して試験溶液中に浸すことができた。
【0073】
最後に、試験片を、調製された、二酸化塩素を含む試験溶液に完全に浸漬させ、還流冷却器を備えた三ツ口フラスコにおいて、20℃で120時間撹拌した。使用された試験溶液の二酸化塩素の含有量は、12~14時間毎に調べられ、必要に応じて、より詳細には、調製された試験溶液を添加することによって、二酸化塩素の元の初期濃度(1000ppmおよび50ppm)に調整された。
【0074】
試験実行および計算は、ASTM G-31-72(「金属の実験室浸漬腐食試験の標準的実施」(Standard practice for Laboratory Immersion Corrosion Testing ofmetals))の原理に従って行われた。
【0075】
二酸化塩素を含有する水溶液のpH値および試験溶液のpH値は、以下の表に説明される。
【0076】
【表3】
【0077】
結果
120時間後の試験片の質量損失は、以下の表に列挙される。
【0078】
【表4】
【0079】
1年当たりの損失は、求められたデータから計算され得る。mm/yで表される、1年当たりの鋼の損失は、以下の表において説明される。
【0080】
【表5】
【0081】
結果によれば、塩酸方法を使用して調製された、二酸化塩素を含有する水溶液の使用は、ステンレス鋼の腐食増加をもたらす。この観測は、対応する製造方法において生じる、水溶液中の塩化物イオンの増加した濃度および溶液の低いpH値のためである。塩化物イオンの濃度を減らし、ゆえにこうした二酸化塩素を含有する溶液の腐食性を低減するために、代替的な方法が、二酸化塩素イオンの生成に使用された。硫酸方法において、塩酸方法と比較して、さらにより少量の塩化物イオンが蓄積する。しかし、硫酸方法を使用して製造された、二酸化塩素を含有する水溶液はまた、腐食性の増加も示した。これは、対応する二酸化塩素を含有する水溶液の低いpH値のためである。意外なことに、腐食性に関する最良の結果は、過硫酸塩方法を使用して製造された、二酸化塩素を含有する水溶液で実現することができた。これらの結果は、濃度1000ppmで、腐食性が、二酸化塩素ガスを直接溶解させた試験溶液と同等であるゆえに意外である。
【0082】
加えて、意外なことに、二酸化塩素を含有する本発明による溶液と混合された蒸留水は、本質的に、同量の二酸化塩素を含有する溶液と混合された塩化物イオン80ppmを含むプロセス水と同じ腐食特性を有することが見出された。この結果は、プロセス水における塩化物イオンの存在ゆえに、塩化物イオンの絶対量が、蒸留水におけるものよりも高かったのでとりわけ意外である。これは、二酸化塩素を含有する本発明の水溶液における、二酸化塩素の塩化物イオンに対するモル比およびそのpH値が重要であることを示す。とりわけ、プロセス水のpH値は、二酸化塩素を含有する溶液によって容易に影響され得る。
【0083】
実施例3:二酸化塩素を含有する水溶液における二酸化塩素と塩化物イオンとのモル比のその腐食性への影響
二酸化塩素を含有する本発明の水溶液の腐食性は、溶液における二酸化塩素の塩化物イオンに対するモル比に応じて決まる。これを示すために、二酸化塩素の塩化物イオンに対するモル比が1よりも高い、二酸化塩素を含有する本発明の水溶液(実施例1に記載されたように調製された)は、溶液中の塩化物イオンの量を増やすために塩化ナトリウムと混合された。その後、耐腐食性試験は、実施例2に記載されたように、試験溶液において二酸化塩素1000ppmで実行された。そうすることにおいて、以下の結果が得られた。
【0084】
【表6】
【0085】
意外なことに、溶解した二酸化塩素と比較して過剰なモル濃度の塩化物イオンについて、腐食速度は、ステンレス鋼と比較して有意に増加することが示された。
【国際調査報告】