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特表2024-526641エアロゾル発生装置に使用するための気化性材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】エアロゾル発生装置に使用するための気化性材料
(51)【国際特許分類】
   A24B 15/167 20200101AFI20240711BHJP
   A24B 15/32 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
A24B15/167
A24B15/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500198
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 EP2022070388
(87)【国際公開番号】W WO2023001904
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】21186682.7
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516004949
【氏名又は名称】ジェイティー インターナショナル エスエイ
【住所又は居所原語表記】8,rue Kazem Radjavi,1202 Geneva,SWITZERLAND
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】ペレ,オスワルド
【テーマコード(参考)】
4B043
【Fターム(参考)】
4B043BB22
4B043BC03
4B043BC19
4B043BC22
4B043BC26
(57)【要約】
エアロゾル発生装置(12)に使用するための気化性材料であって、前記気化性材料は、炭化水素、グリセリド、脂肪酸、アミノ酸及びそれらの混合物からなる群から選択される保持基材に結合されたフレーバー化合物からなるプロフレーバー分子を含み、フレーバー化合物は、気化性材料をエアロゾル発生装置(12)で使用する間、保持基材から放出可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生装置(12)に使用するための気化性材料であって、前記気化性材料は、炭化水素、エステル、脂肪酸、アミノ酸及びそれらの混合物からなる群から選択される保持基材に結合されたフレーバー化合物からなるプロフレーバー分子を含み、
前記フレーバー化合物は、唾液との接触に加えて、前記気化性材料を前記エアロゾル発生装置(12)で使用する間、前記保持基材から放出可能である、気化性材料。
【請求項2】
前記保持基材は炭化水素、好ましくは糖類、より好ましくは単糖類から選択され、有利にはグルコースである、請求項1に記載の気化性材料。
【請求項3】
前記フレーバー化合物及び前記保持基材はグリコシド結合を介して結合し、グリコシド構造、好ましくはグルコシド構造を形成する、請求項2に記載の気化性材料。
【請求項4】
前記フレーバー化合物は、脂肪族及び芳香族アルコール、カルボン酸、テルペン、アルデヒド、ケトン、亜硫酸化合物、ピラジン、エステル、並びにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の気化性材料。
【請求項5】
前記フレーバー化合物は、少なくとも唾液中に存在する成分との反応に加えて放出可能である、請求項1~4のいずれか一項に記載の気化性材料。
【請求項6】
前記フレーバー化合物は、好ましくは、唾液中に存在する、エステラーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、脂質酸化酵素、炭酸脱水酵素、リゾチーム及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの内因性酵素との反応に加えて、放出可能である、請求項5に記載の気化性材料。
【請求項7】
前記プロフレーバー分子又は前記放出されたフレーバー化合物は、前記気化性材料を前記エアロゾル発生装置(12)で使用する間に発生するエアロゾルによって運ばれる、請求項1~6のいずれか一項に記載の気化性材料。
【請求項8】
前記プロフレーバー分子は、特にプロピレングリコール、グリセリン及び水からなる群から選択される担体マトリックス中に組み込まれる、請求項1~7のいずれか一項に記載の気化性材料。
【請求項9】
前記プロフレーバー分子は固体基材、好ましくはタバコ基材に含浸される、請求項1~7のいずれか一項に記載の気化性材料。
【請求項10】
前記フレーバー化合物はタバコ中に存在するフレーバーからなる、及び/又はタバコ中に存在する少なくとも1つのフレーバーと調和するペアリング要素であり、及び/又はタバコ中に存在する少なくとも1つのフレーバーと対照的なペアリング要素である、請求項1~9のいずれか一項に記載の気化性材料。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の気化性材料を含む消耗品(14、114)。
【請求項12】
タバコをさらに含み、前記気化性材料は前記タバコとブレンドされる、請求項11に記載の消耗品。
【請求項13】
タバコをさらに含み、前記気化性材料及び前記タバコは、前記消耗品(114)の2つの異なる部分(120、126)に配置される、請求項11に記載の消耗品(114)。
【請求項14】
請求項11~13のいずれか一項に記載の消耗品(14、114)と共に動作するように構成された、又は請求項1~10のいずれか一項に記載の気化性材料を貯蔵するように構成された貯蔵区画を備えた、エアロゾル発生装置(12)。
【請求項15】
非燃焼加熱式装置である、請求項14に記載のエアロゾル発生装置(12)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル発生装置に使用するための気化性材料に関する。本発明はまた、本発明による気化性材料を含む消耗品に関する。本発明はさらに、本発明による消耗品と共に動作するように構成された、又は本発明による気化性材料を受容するように構成された貯蔵区画を備えた、エアロゾル発生装置、特に非燃焼加熱式エアロゾル発生装置に関する。
【0002】
本発明による気化性材料は、保持基材に共有結合したフレーバー化合物からなるプロフレーバー化合物を含む。フレーバー化合物は、気化性材料をエアロゾル発生装置と共に使用する間、保持基材から放出可能である。
【背景技術】
【0003】
(気化器又はエアロゾル発生装置としても知られる)リスク低減装置又はリスク修正装置の人気及び使用は、紙巻きタバコ、葉巻、シガリロ、及び巻きタバコ等の従来のタバコ製品の喫煙を辞めようと望む常習的喫煙者を支援するための補助として、ここ数年で急速に成長している。従来のタバコ製品においてタバコを燃焼させるのとは対照的に、気化性物質を加熱又は加温する様々な装置及びシステムが利用可能である。
【0004】
異なるタイプのエアロゾル発生装置が当該技術分野において既に知られている。一般に、かかる装置は、例えば液体又は固体を含むことができる気化性材料を貯蔵するための貯蔵部分を含む。加熱システムは、前記気化性材料を加熱してエアロゾルを発生させるよう配置された1つ又は複数の電気作動式抵抗加熱要素から形成される。エアロゾルは、装置の入口と出口との間に延在する流路内に放出される。出口は、エアロゾルが送達されるようにユーザが吸入するマウスピースとして配置され得る。
【0005】
いくつかのエアロゾル発生装置では、気化性材料は、消耗品とも呼ばれる着脱可能なカートリッジ、リフィル、スティック又はポッド内に貯蔵される。従って、気化性材料が消費される場合、カートリッジ又は消耗品を容易に取り外して交換することができる。
【0006】
いくつかのエアロゾル発生装置では、ユーザに送達され、気化性材料から発生する蒸気のフレーバーを強化又は変更することが可能である。例えば、気化性材料に添加されるフレーバー物質は、気化性材料に元々存在しないフレーバーを与えるか、又は気化性材料の成分のうちの少なくとも1つを強化することができる。
【0007】
しかしながら、通常、フレーバー物質は揮発性化合物であり、寿命は非常に限られている。特に、フレーバー物質の寿命は、気化材料又はカートリッジの消費期間と比較して短い。その結果、気化性材料のフレーバーの質及びフレーバーの強さは、時間の経過とともに、特に同じ用量又はカートリッジの消費中に減衰する。従って、時間の経過に伴う味の強さ及び質の変化は、ベイピング中ずっと一貫して一定のフレーバーを送達することを求めている消費者にとって満足のいくものではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的の1つは、上記の不都合を克服することである。特に、本発明の目的は、改善された長時間持続するフレーバー効果を有する気化性材料を提供することである。本発明の目的の1つはまた、同じベイピングセッションの間、及び異なる連続したベイピングセッションの間でさえも、一貫した一定のフレーバーの質及び強さを有する気化性材料を提供することである。
【0009】
この目的のために、本発明は、炭化水素、エステル、脂肪酸、アミノ酸及びそれらの混合物からなる群から選択される保持基材に結合されたフレーバー化合物からなるプロフレーバー分子を含む、エアロゾル発生装置に使用するための気化性材料に関し、フレーバー化合物は、この気化性材料をエアロゾル発生装置で使用する間、保持基材から放出可能である。
【0010】
特に、本発明は、炭化水素、エステル、脂肪酸、アミノ酸及びそれらの混合物からなる群から選択される保持基材に結合されたフレーバー化合物からなるプロフレーバー分子を含む、エアロゾル発生装置に使用するための気化性材料に関し、フレーバー化合物は、この気化性材料をエアロゾル発生装置で使用している間、唾液との接触に加えて、保持基材から放出可能である。
【0011】
これらの特徴のおかげで、プロフレーバー分子の形態で気化性材料中に存在するフレーバー化合物は、周囲温度で安定している。本発明によるプロフレーバー分子は、保持基材に結合していないフレーバー化合物よりも、周囲温度で改善された安定性を有する。特に、フレーバー化合物よりも揮発性の低い保持基材が気化性材料を安定化させるため、プロフレーバー分子は、少なくとも気化性材料の消費期間中、周囲温度で安定している。従って、基材に保持されたフレーバー化合物は、より長い寿命を有し、より長持ちするフレーバー効果が観察される。さらに、これらの特徴は、気化性材料が置かれる条件を制御することにより、フレーバー化合物の制御放出を可能にする。さらに、フレーバー化合物は、消費者が知覚するフレーバーに複雑さ又はニュアンスを提供することができ、それに応じて消費者体験を向上させることができる。
【0012】
いくつかの実施形態によれば、保持基材は炭化水素、好ましくは糖類、より好ましくは単糖類から選択され、有利にはグルコースである。
【0013】
いくつかの実施形態によれば、フレーバー化合物及び保持基材はグリコシド結合を介して結合し、グリコシド構造、好ましくはグルコシド構造を形成する。
【0014】
これらの特徴のおかげで、保持基材が放出されることで、ユーザの二次的な感覚認知の知覚につながる。フレーバー化合物に加えて、炭化水素保持基材は甘味の知覚をユーザに与える。
【0015】
いくつかの実施形態によれば、フレーバー化合物は、脂肪族及び芳香族アルコール、カルボン酸、テルペン、アルデヒド、ケトン、亜硫酸化合物、ピラジン、エステル、並びにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、フレーバー化合物は、加熱に加えて保持基材から放出可能である。
【0017】
好ましい実施形態によれば、フレーバー化合物は、唾液との接触に加えて、好ましくは少なくとも唾液中に存在する成分、特に唾液中に存在する少なくとも1つの内因性酵素との反応に加えて、保持基材から放出可能である。
【0018】
好ましくは、少なくとも1つの内因性酵素は、エステラーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、脂質酸化酵素、炭酸脱水酵素、リゾチーム及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0019】
これらの特徴のおかげで、フレーバー化合物の放出は、ユーザによるエアロゾルの吸入の直前、又はユーザによるエアロゾルの吸入と同時、又はユーザの口腔に到達したときにさえも行われる。特に、フレーバー化合物の放出は、エアロゾルの形成又はユーザによるエアロゾルの吸入によって開始される。このようにして、気化性材料のフレーバー効果を保持することが可能になる。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、プロフレーバー分子又は放出されたフレーバー化合物は、気化性材料をエアロゾル発生装置で使用する間に発生するエアロゾルによって運ばれる。
【0021】
一実施形態によれば、プロフレーバー分子は、特にプロピレングリコール、グリセリン及び水からなる群から選択される担体マトリックス中に組み込まれる。
【0022】
これらの特徴のおかげで、気化性材料は、液体エアロゾル発生物質を用いて動作するエアロゾル発生装置での使用に特に適合している。
【0023】
代替的実施形態によれば、プロフレーバー分子は固体基材、好ましくはタバコ基材に含浸される。
【0024】
この特徴のおかげで、気化性材料は、特に非燃焼加熱式エアロゾル発生装置での使用に適合している。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、フレーバー化合物はタバコ中に存在するフレーバーからなる、及び/又はタバコ中に存在する少なくとも1つのフレーバーと調和するペアリング要素である、及び/又はタバコ中に存在する少なくとも1つのフレーバーと対照的なペアリング要素である。
【0026】
これらの特徴のおかげで、タバコ中に自然に存在するフレーバーと異なるフレーバーペアリングを構築することが可能である。特に、フレーバー化合物の選択により、ユーザに異なる感覚認知を与えることが可能になる。
【0027】
本発明はまた、上記で定義され、以下により詳細に記述される気化性材料を含む消耗品にも関する。
【0028】
これらの特徴のおかげで、気化性材料は、着脱可能なカートリッジに貯蔵される。従って、気化性材料が消費される場合、カートリッジ又は消耗品をユーザが容易に取り外して交換することができる。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、消耗品はタバコをさらに含み、気化性材料はタバコとブレンドされる。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、消耗品はタバコをさらに含み、気化性材料及びタバコは、消耗品の2つの異なる部分に配置される。
【0031】
本発明はまた、上記で定義され、以下により詳細に記述される消耗品と共に動作するように構成された、又は上記で定義され、以下により詳細に記述される気化性材料を貯蔵するように構成された貯蔵区画を備えた、エアロゾル発生装置にも関する。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、エアロゾル発生装置は、非燃焼加熱式装置である。
【0033】
本発明及びその利点は、非限定的な例としてのみ挙げられ、添付の図面を参照して記述される以下の説明を読むことでよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明による気化性材料に含まれるプロフレーバー分子からのフレーバー化合物の第1の放出様式の概略図である。
図2】本発明による気化性材料がタバコとブレンドされた、本発明の第1の実施形態による消耗品の概略図である。
図3】本発明の第2の実施形態による消耗品の概略断面図であり、本発明による気化性材料及びタバコは、消耗品の2つの異なる部分に配置されている。
図4】本発明による非燃焼加熱式エアロゾル発生装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明について説明する前に、本発明は、以下の説明で記述される構造の詳細に限定されないことを理解されたい。本発明が、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実践又は実行され得ることは、本開示の利益を享受する当業者に明らかであろう。
【0036】
本明細書で使用する場合、「プロフレーバー分子」という用語は、保持基材と共有結合したフレーバー化合物からなる分子を指し、フレーバー化合物と保持物質との間に存在する共有結合は、例えばpHの変化、加熱、光、化学反応下等の外部刺激下で切断することができる。プロフレーバー分子は、プロフレーバー分子に含まれるフレーバー化合物とは異なる。特に、フレーバー化合物とは異なり、プロフレーバー分子はフレーバー特性を有していない。さらに、プロフレーバー分子は、保持基材が存在するため、フレーバー化合物よりも揮発性が低い。フレーバー化合物のフレーバー特性は、フレーバー化合物と保持基材との間の共有結合を切断することによってのみ回復することができる。本発明の文脈において、プロフレーバー分子は、プロフレーバー分子に含まれるフレーバー化合物の前駆体として作用し、フレーバー化合物の放出は、気化性材料がエアロゾル発生装置に使用されたときに起こる。
【0037】
本明細書で使用する場合、「エアロゾル発生装置」又は「装置」という用語は、以下でさらに詳細に説明するヒータ要素を用いて、ベイピングのためのエアロゾルを含む、ユーザにエアロゾルを送達するベイピング装置を含み得る。装置は、可搬であってもよい。「可搬」とは、ユーザが保持する場合に用いられる装置を指してもよい。装置は、例えば、可変の時間量にわたり、ヒータ要素を作動させることにより、(定量のエアロゾルとは対照的に)可変量のエアロゾルを発生するように適合され得、それは、トリガによって制御されてもよい。トリガは、ベイピングボタン及び/又は吸入センサ等、ユーザが作動させるものであってもよい。吸入センサは、吸入強度並びに吸入継続時間に対する感度が高いものであってもよく、(タバコ、葉巻、又はパイプ等のような従来の可燃性喫煙物品の喫煙効果を模倣するように)可変量の蒸気を提供することを可能にしてもよい。装置は、ヒータ及び/又は加熱されたエアロゾル発生物質(エアロゾル前駆体)の温度を特定の目標温度まで駆動し、その後、エアロゾルの効率的な発生を可能にする目標温度で温度を維持するための温度調節制御部を含んでもよい。
【0038】
本明細書で使用する場合、「エアロゾル」という用語は、固体粒子、液滴、気体の1つ又は複数としてエアロゾル形成基材の浮遊物を含み得る。前記浮遊物は、空気を含む気体の状態であり得る。本明細書のエアロゾルは、一般に、蒸気を指し得る/含み得る。エアロゾルは、エアロゾル形成基材の1つ又は複数の成分を含み得る。
【0039】
本明細書中で使用する場合、「気化性材料」、又は「前駆体」、又は「エアロゾル形成物質」、又は「物質」という用語は、エアロゾルを形成するように空気中で気化性の任意の材料を指定するために用いられる。気化は、一般に、400℃未満、好ましくは350℃までの温度等の気化性材料の沸点までの温度上昇によって得られる。気化性材料は、例えば、エアロゾル発生液、ゲル、ワックス、発泡体等、エアロゾル発生固体であって、ロッドの形態であり得、加工済タバコ材料、再構成タバコ(RTB)の圧着シート若しくは配向ストリップ又はこれらの任意の組み合わせを含むエアロゾル発生固体を含むか又はそれからなり得る。気化性材料は、アルカロイド、例えば、ニコチン、カフェイン又は他の有効成分のうちの1つ又は複数を含み得る。有効成分は、液体であり得るエアロゾル形成剤によって運ばれ得る。エアロゾル形成剤としては、トリエチレングリコール、1,3-ブタンジオール及びグリセリン等の多価アルコール、グリセロールモノ-、ジ-又はトリアセテート等の多価アルコールのエステル、並びにドデカン二酸ジメチル及びテトラデカン二酸ジメチル等のモノ-、ジ-又はポリカルボン酸の脂肪族エステルが挙げられ得る。好ましい実施例では、エアロゾル形成剤は、プロピレングリコール及び/又はグリセリンを含む。フレーバーが存在していてもよい。フレーバーは、エチルバニリン(バニラ)、メントール、酢酸イソアミル(バナナオイル)又は同様のものを含み得る。
【0040】
気化性材料
本発明は、第一に、保持基材に結合したフレーバー化合物からなるプロフレーバー分子を含む気化性材料に関する。
【0041】
本明細書で使用する場合、「結合した」という用語は、フレーバー化合物が保持基材に化学的又は物理的に結合していることを示すために使用される。フレーバー化合物及び保持基材は、例えば、共有結合、イオン結合、又はファンデワールス力、水素結合、及び双極子相互力等の静電結合によって結合することができる。
【0042】
好ましくは、フレーバー化合物は保持基材に共有結合している。
【0043】
有利には、保持基材は周囲温度で不揮発性である。
【0044】
「不揮発性」とは、標準大気圧101.3kPaで測定した初期沸点が250℃を超える化合物を指す。
【0045】
保持基材は、炭化水素、エステル、脂肪酸、アミノ酸及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0046】
炭化水素の例として、糖類、多糖類、デンプン及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0047】
本発明の文脈において、「糖類」という用語は、単糖類及び二糖類のいずれか、又はそれらの混合物を指すことができる。
【0048】
好ましい炭化水素は、単糖類、二糖類、三糖類及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0049】
エステルの例として、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド及びそれらの混合物等のグリセリドを挙げることができる。プロピレングリコールエステルのようなアルキレングリコールエステル、コレステロールエステルのような脂質エステル、コリンエステル、グリセリン酸エステル、カルボン酸コレステロールエステル、乳酸エステル及びそれらの混合物を挙げることもできる。
【0050】
脂肪酸とは、4~28個の炭素原子を含む飽和又は不飽和脂肪族鎖を有するカルボン酸を指す。
【0051】
脂肪酸の例として、モノ及び多価不飽和脂肪酸を挙げることができる。
【0052】
アミノ酸の例として、グルタミン酸、アスパラギン酸及びアスパルテームを挙げることができる。
【0053】
有利には、保持基材は、エステル及び炭化水素からなる群から選択され、好ましくは、エステル、糖類、多糖類及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくはエステル、単糖類、二糖類、三糖類及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0054】
より有利には、保持基材は、モノ、ジ、トリ-グリセリド、アルキレングリコールエステル、脂質エステル、コリンエステル、乳酸エステル、単糖類、二糖類、三糖類及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0055】
好ましい実施形態によれば、保持基材は炭化水素、より好ましくは糖類から選択される。
【0056】
適切な単糖類の例としては、グルコース、フルクトース、ガラクトース及びそれらの混合物が挙げられる。
【0057】
適切な二糖類の例としては、スクロース、ラクトース、マルトース及びそれらの混合物が挙げられる。
【0058】
さらに好ましい実施形態によれば、保持基材は単糖類から選択され、より好ましくは保持基材はグルコースである。
【0059】
タバコ産業及びベイピング産業で一般的に使用されているどのフレーバー化合物も、通常、本発明の文脈において使用することができる。
【0060】
好ましくは、フレーバー化合物は、脂肪族及び芳香族アルコール、カルボン酸、テルペン、アルデヒド、ケトン、亜硫酸化合物、ピラジン、エステル、並びにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0061】
カルボン酸の例として、例えば、バニリン酸(4-ヒドロキシ-3-メトキシ安息香酸とも呼ばれる)又はアスコルビン酸((5R)-[(1S)-1,2-ジヒドロキシエチル]-3,4-ジヒドロキシフラン-2(5H)-オンとも呼ばれる)を挙げることができる。クエン酸(2-ヒドロキシプロパン-1,2,3-トリカルボン酸)、リンゴ酸(2-ヒドロキシブタン二酸)、シュウ酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、乳酸を挙げることもできる。
【0062】
フレーバー化合物が脂肪族及び芳香族アルコールから選択される場合、好ましくは、フェノール、テルペノイドアルコール及びそれらの誘導体からなる群から選択される。
【0063】
フェノール及びその誘導体の例として、例えば、グアヤコール(2-メトキシフェノールとも呼ばれる)又はメタクレゾール(3-ヒドロキシトルエンとも呼ばれる)を挙げることができる。
【0064】
フレーバー化合物がテルペノイドアルコールから選択される場合、好ましくはモノテルペノイドアルコールから選択される。
【0065】
モノテルペノイドアルコールの例として、例えば、ゲラニオール((2E)-3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-オールとも呼ばれる)、ネロール((Z)-3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-オールとも呼ばれる)、クリトロネロール(3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-オールとも呼ばれる)、リナロール(3,7-ジメチルオクタ-1,6-ジエン-3-オールとも呼ばれる)又はテルピネオール(p-メンタ-1-エン-8-オール-2-(4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)プロパン-2-オールとも呼ばれる)、特にα-テルピネオールを挙げることができる。
【0066】
他のアルコールとして、シトロネロール、ゲラニオール、ファメソール、フェニルヘキサノール、ボルネオール、ポリサントール、(Z)-3-ヘキセノール、フェネチロール、ジメチルベンジルカルビノール、及びα-イオノール、β-イオノール、3-ヒドロキシ-β-イオノール及びそれらの誘導体等のヒドロキシル基を含むノルイソプレノイド化合物も挙げることができる。
【0067】
フレーバー化合物がアルデヒドから選択される場合、好ましくは、バニリン、ベンズアルデヒド及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0068】
フレーバー化合物がケトンから選択される場合、好ましくは、カルボン、メントン、4-ヒドロキシ-2,5-ジメチル-3(2H)-フラノン及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0069】
フレーバー化合物が亜硫酸化合物から選択される場合、好ましくは、3-メルカプトヘキサノール、3-メルカプトヘキサン-1-オール(3MH)、4-メチル-4-メルカプトペンタン-2-オン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0070】
フレーバー化合物がピラジンから選択される場合、好ましくは、2,3,5,6,-テトラメチルピラジン、アセチルピラジン及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0071】
フレーバー化合物がエステルから選択される場合、好ましくは、酢酸エチル、酪酸エチル及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0072】
フレーバー化合物は通常、特定の感覚効果、特に特定のフレーバー効果をユーザに与えるように選択される。
【0073】
第1の実施例によれば、フレーバー化合物はタバコ中に自然に存在するフレーバー化合物から選択される。従って、選択されたフレーバー化合物により、タバコ中に自然に存在する少なくとも1つのフレーバーのフレーバー強度を増幅することが可能になる。
【0074】
第2の実施例によれば、フレーバー化合物は、タバコ中に自然に存在する少なくとも1つのフレーバーと調和するペアリング要素である。選択されたフレーバー化合物は、通常、タバコ中に存在する少なくとも1つのフレーバーのニュアンスからなり、特定の味を教科することを可能にする。このような種類のペアリングは調和ペアリングと呼ばれ、元のフレーバープロファイル内の特定のトーン、すなわちトーステッド、ナッティ、フルーティ等を増幅することを意図している。
【0075】
第3の実施例によれば、フレーバー化合物は、タバコ中に自然に存在する少なくとも1つのフレーバーと対照的なペアリング要素である。選択されたフレーバー化合物は、ここではタバコ中に自然に存在するフレーバーとは異なる。このような種類のペアリングは対照的なペアリングと呼ばれ、フレーバー知覚に意外性及び予期せぬひねりを与えることを意図している。
【0076】
保持基材の選択は、ユーザの感覚認知にも影響を与える。フレーバー化合物の放出に関連した味/アロマ知覚が期待される他は、保持基材の選択によって二次的な感覚効果(味又は知覚)が期待できる。特定の味、例えば甘味は、例えば糖類から保持基材を選択することにより知覚され得る。口当たりの感覚、例えばコーティング感覚は、脂肪酸から保持基材を選択することによって知覚され得る。
【0077】
保持基材及びフレーバー化合物の具体的な組み合わせと、それに関連する感覚認知を下表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
好ましくは、保持基材は炭化水素から選択され、グリコシド結合を介してフレーバー化合物と結合している。
【0081】
「グリコシド結合」とは、炭化水素のヘミアセタール基又はヘミケタール基とフレーバー化合物のヒドロキシル基との間に形成される結合を指す。従って、「グリコシド結合」という用語は、フレーバー化合物が保持炭化水素基材の酸素原子に結合するO-グリコシド結合を指す。
【0082】
こうして、フレーバー化合物及び炭化水素基材からなるプロフレーバー分子はグリコシド構造を形成する。
【0083】
より好ましくは、保持基材はグルコースであり、グリコシド結合を介してフレーバー化合物と結合している。このようにして、プロフレーバー分子はグルコシド構造を形成する。
【0084】
好ましくは、本発明による気化性材料は、0.001質量%~30質量%、より好ましくは0.01質量%~20質量%、さらに好ましくは0.5質量%~15質量%のプロフレーバー分子を含む。
【0085】
本発明による気化性材料は、エアロゾル発生装置での使用に適合している。特に、エアロゾル発生装置と共に使用すると、気化性材料中に存在するプロフレーバー分子が分解してフレーバー化合物を放出する。
【0086】
フレーバー化合物の放出は、通常、フレーバー化合物と保持基材との間に存在する結合を切断することによって行われる。
【0087】
結合は例えば、pH、温度、光、水分の変化、又は化学反応若しくは酵素反応等の外部刺激下で切断され得る。
【0088】
フレーバー化合物の放出は、例えば、本発明の気化性材料を加熱することによって開始することができる。
【0089】
特に、気化性材料の加熱に加えて、気化性材料中に存在するプロフレーバー分子がエアロゾル発生装置内で分解する。放出されたフレーバー物質は、ユーザが吸入する前に、発生したエアロゾルによって運ばれる。
【0090】
好ましくは、プロフレーバー分子は400℃未満、好ましくは350℃までの温度で分解する。
【0091】
或いは、フレーバー化合物は、唾液との接触に加えて保持基材から放出可能である。
【0092】
この第2の放出様式によれば、プロフレーバー分子は、ユーザによって吸入されたエアロゾルによって運ばれ、唾液と接触すると、フレーバー化合物がプロフレーバー分子から放出される。言い換えれば、放出は、ユーザの唇又は/及びユーザの口内との接触時に行われる。
【0093】
好ましくは、プロフレーバー分子は、唾少なくとも液中に存在する成分、特に少なくとも唾液中に存在する1つの内因性酵素との反応に加えて、保持基材から放出可能である。
【0094】
より好ましくは、プロフレーバー分子は、アミラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの内因性酵素との反応に加えて、保持基材から放出可能である。
【0095】
唾液中に存在し、プロフレーバー分子の放出を開始し得る内因性酵素として、アミラーゼ、インベルターゼ、マルターゼ、炭酸脱水酵素、ウレアーゼオキシダーゼ、カタラーゼ、タンパク質分解酵素、リパーゼ、ホスファターゼ、リゾチーム、ヒアルロニダーゼ及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0096】
好ましい実施形態によれば、プロフレーバー分子は、エステラーゼ、アミラーゼ、特にα-アミラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、脂質酸化酵素、炭酸脱水酵素、リゾチーム及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの内因性酵素との反応に加えて、保持基材から放出可能である。
【0097】
好ましくは、前記少なくとも1つの内因性酵素は、エステラーゼ、α-アミラーゼ、リパーゼ、脂質酸化酵素、炭酸脱水酵素、リゾチーム及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0098】
より好ましくは、前記少なくとも1つの内因性酵素は、例えばカルボキシルエステラーゼ、コレステロールエステラーゼ又はコリンエステラーゼの等のエステラーゼ、唾液α-アミラーゼ、リパーゼ、炭酸脱水酵素及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0099】
この第2の放出様式は、図1に概略的に表されており、ユーザ10が、発生したエアロゾルを吸入するために本発明によるエアロゾル発生装置12を使用している。
【0100】
エアロゾル発生装置12は、本発明による消耗品14を備え、前記消耗品14は、本発明による気化性材料(図示せず)を含む。エアロゾル発生装置12及び消耗品の構造を、図2を参照して以下に説明する。
【0101】
消耗品14内の気化性材料は、消耗品14の出口16でエアロゾル18を発生させるように、エアロゾル発生装置12によって加熱される。エアロゾル18は、その後、ユーザ10によって吸入される。従って、エアロゾル18は、保持基材Sに共有結合したフレーバー化合物Fからなるプロフレーバー分子を含む。
【0102】
ユーザの唇及び/又は口内に接触すると、ユーザの唾液中に存在する酵素Eがプロフレーバー化合物F-Sと反応し、フレーバー化合物Fと保持基材Sとの間に存在する共有結合を切断する。従って、フレーバー化合物F及び保持基材Sは別個に放出される。
【0103】
特定の実施形態によれば、本発明による気化性材料は、固体基材に含浸される。
【0104】
「含浸」とは、プロフレーバー分子及び固体基材が密接にブレンドされていると理解すべきである。
【0105】
本発明によるプロフレーバー分子は、例えばタバコ基材に含浸させることができる。
【0106】
或いは、プロフレーバー分子は、消耗品のフィルタ又は消耗品の中空管に含浸させてもよい。
【0107】
好ましくは、プロフレーバー分子はタバコ基材に含浸され、混合タバコ/フレーバー気化性材料を形成する。
【0108】
より好ましくは、混合タバコ/プロフレーバー気化性材料は、上記で定義した少なくとも1つのプロフレーバー分子を含浸させた、加工済タバコ材料、再構成タバコ(RTB)の圧着シート又は配向ストリップ若しくは断片、或いはそれらの任意の組み合わせを含むロッドを含む、或いはこれらからなる。
【0109】
このような固体の混合タバコ/プロフレーバー気化性材料は、通常、非燃焼加熱式エアロゾル発生装置での使用に適合している。
【0110】
或いは、本発明によるプロフレーバー分子は、担体マトリックス、典型的には液体担体マトリックスに組み込むことができる。その場合、液体担体マトリックスは、好ましくは、プロピレングリコール、グリセリン及び水からなる群から選択される。
【0111】
唾液との接触に加えて放出可能なプロフレーバー分子を同定する方法
唾液との接触に加えて放出可能なプロフレーバー分子は、通常、官能試験法により容易に同定することができる。例えば、同じタバコ混合物から2つの消耗品が調製される。試験されるプロフレーバー分子は、2つの消耗品のうちの一方(サンプル品)のみに添加され、他方の消耗品は純粋なタバコ(基準物品)を組み込んでいる。プロフレーバー分子は特徴的なフレーバーを有し、加熱の効果では発生しないため、フレーバーは加熱によってではなく、唾液中の酵素の作用に加えて放出されることは明らかである。
【0112】
以下に官能試験の例を示す。
【0113】
官能試験1
本発明のフレーバーの検出は、2段階のアプローチに従う。
【0114】
段階1。訓練及び慣らし
訓練(評価の数ヶ月前)
自分自身を表現する能力、及びフレーバーに関連する属性を検出する鋭さを特徴とする、試験未経験の成人ベイパーの群が採用され、訓練され、高い再現性で官能評価を行う能力について定期的に試験された。
【0115】
慣らし
慣らしセッションでは、12~15人のパネルメンバーの群に、後にブラインド評価(段階2)で呈示されるすべてのフレーバーの方向性を網羅する厳選されたサンプルが呈示される。このセッションの間、モデレータが議論を誘導し、パネルメンバーの間で試験したベイピング製品の説明を促す。このセッションの終了までに、サンプルの集合からどの属性が知覚されたか、及び各属性の定義は何かについて意見を一致させねばならない。
【0116】
段階2
フレーバーの検出/認識又は最適化のための製品評価。
この段階は、標準的な手順(ISO 13301:2018):官能分析-方法論-3つの代替強制選択(3-AFC)手順によって臭気、風味、味覚の検出しきい値を測定するための一般的なガイダンスに従う感覚識別試験からなる。この手順では、組成が既知で管理されている基準サンプルの試験を含む。このような基準サンプルは、特徴的なフレーバー属性が既知である。特定のフレーバーノートを評価するために、各基準サンプルは、単一の特定の属性、すなわち、柑橘系の味、フローラルな味、ウッディな味を網羅しなければならない。これに加えて、基準サンプルは最小濃度しきい値検出を念頭に置いて配合されるべきである。言い換えれば、基準サンプルは、訓練されたベイパーが明確に知覚できるフレーバー濃度を有していなければならない。評価者は各製品をベイピングし、どの製品が調査中のフレーバーノートを含んでいるかを示すように求められる。
【0117】
この手順は2つの異なる方法で使用できる。
【0118】
認知試験
この試験の通常の設定では、評価者(パネルメンバー)は3つのサンプルを呈示される。サンプルのうちの1つを基準サンプルとし、その知覚可能な味/香りが感じられるかどうかを確認し、陽性対照のままとする。基準サンプルの代わりに、特定のプロフレーバー(PF)分子を含有する一連の他のサンプルをランダムな順序で呈示する。各サンプルは3桁のコードで識別され、同じ評価者が評価するどのサンプルでもコードは繰り返されない。評価者は、どのサンプルが調査中の特定のフレーバーノートを示すかを示し、それを選出するように求められる。フレーバーの検出又は認識のパーセンテージは、配合物中にPF分子を含むサンプルを識別した評価者の数を計算するだけで求めることができる。
【0119】
最適化試験
この試験は、配合物に含まれるPFの濃度を調整するように編成することもできる。PFが低濃度から高濃度までの種々の配合物を、調査中のフレーバーを評価者が検出できるまで評価者に呈示する。このように(低濃度から高濃度まで)サンプルを呈示することは、特定のフレーバーノートに対する評価者の飽きを避け、検出のための最小濃度(検出しきい値)を特定するために重要である。フレーバーが認識され始める濃度は、フレーバー検出のしきい値濃度として定義され、この濃度はPF分子によって異なり得る。
【0120】
官能検査2-CATA調査
CATA(check-all-that-apply)調査は、官能製品特性評価でますます一般的になっている。その原理は、評価者が1つ又は複数の製品(例えば、柑橘系、ウッディ等の特定のフレーバーであり得る)に当てはまると感じるか否かの属性又は記述子を含む質問票を各評価者が受け取るというものである。当てはまると感じる場合、評価者は、単にその属性に印を付け、そうでなければ何もする必要がない。属性と嗜好及び好みのスコアとを関連付けるために、異なる尺度の他の質問を追加してもよい。参加者が本調査の各製品に総合的な評点を付けるように求められた場合、さらなる分析及び嗜好モデリングが可能になる。Ares et al.(2014)は、再現性を向上させるために、CATAの質問の順序を評価者ごとにランダムにすることを推奨している。
【0121】
官能試験3-画像選別エクササイズ
試験未経験の消費者又は訓練されたパネルのいずれかが、3桁のコードを用いてコード化された一連のサンプルをブラインドで呈示される。これらのサンプルのいくつかは、問題のプロフレーバー分子を含有しており、特定のフレーバーを与える。尋ねることができる質問(例えば、そのフレーバーがどの程度好きかを1~9で評価し、ここで、1は「とても嫌い」、9は「とても好き」である)以外に、次の質問を含めることができる。
「今ベイピングしたスティックの味を最もよく表している写真を2枚選んでください」
プログラマ:認識されるフレーバーに従って画像セットを呈示する。
【0122】
その後、一連の画像がタブレットに表示されるか、又は紙で呈示してもよい。評価者は、数回吸った後、スティックにおいて自分が一致すると思う写真を選ぶ。フレーバーが認識されれば、特定の味(すなわち、柑橘系)を描写する所与の画像を選択する評価者の回答数は非常に多い。
【0123】
消耗品
本発明の第1の実施形態による消耗品14を図2に示す。
【0124】
本実施形態によれば、消耗品14は、長手方向軸Xに沿って配置された基材部分20及びフィルタ部分22から構成される。両部分20、22は、これらの部分を一緒に取り付ける独自の包装材料を用いて包装することができる。他の例では、部分20、22は、異なる包装材料によって包装され、任意の他の適切な手段によって一方を他方に固定することができる。包装材料又は各包装材料は、例えば、紙及び/又は不織布及び/又はアルミニウムを含んでもよい。包装材料又は各包装材料は、多孔性であっても、又は空気不透過性であってもよい。このように、包装材料又は各包装材料は、部分20、22を包む中空管24を形成する。消耗品14は、例えば円形の断面を画定する略管状形状を有することができる。別の実施例によれば、消耗品14は矩形の断面を画定する。
【0125】
基材部分20は、エアロゾル発生装置12の加熱チャンバによって加熱されることが意図された気化性材料を含有する。
【0126】
加えて、いくつかの例によれば、基材部分20は、気化性材料に組み込まれた1つ又はいくつかのサセプタを含み得る。サセプタは、磁場内に置かれたときに渦電流を発生させることができる導電体材料から形成され得る。渦電流により、サセプタは、エアロゾル形成物質を加熱してエアロゾルを発生させるのに適した熱を発生させる。磁場は、エアロゾル発生装置12の加熱システムに含まれるコイルによって発生させることができる。別の例によれば、基材部分20は、外部ヒータからの熱伝達によって加熱される。この場合、基材部分20の内部にサセプタは必要ない。
【0127】
いくつかの例では、基材部分20は、フィルタ部分22に隣接し、スペーサ又は冷却セグメントを形成するセグメントをさらに備え得る。
【0128】
フィルタ部分22は、例えばフィルタのように機能するコアから構成される。コアは、例えば、発泡体又は詰め込まれたストランド若しくは繊維であり得る。いくつかの例では、フィルタ部分22は、装置12の使用中にユーザの唇及び/又は口と接触することを意図したマウスピースを形成することができる。他のいくつかの例では、フィルタ部分22は、ユーザの唇及び/又は口と接触することを意図した別個のマウスピースに挿入することができる。他のいくつかの例によれば、消耗品14は、基材部分20のみを含み得る。
【0129】
好ましくは、本発明によるプロフレーバー分子は固体基材に含浸される。
【0130】
プロフレーバー分子は、通常、基材部分20に存在する固体気化性材料に含浸させることができる。従って、消耗品14は、固体で基材部分20に位置する唯一の気化性材料を含む。
【0131】
好ましくは、この場合、気化性材料は、上記で定義したプロフレーバー分子が含浸されたタバコ基材から作製された混合タバコ/フレーバー気化性材料からなる。
【0132】
或いは、本発明によるプロフレーバー分子は、フィルタ部分22内、又は中空導体24内、特に中空管24内に含浸させてもよい。その場合、消耗品14は、2つの異なる気化性材料、すなわち、基材部分20に位置する第1の気化性材料及び本発明による気化性材料からなる第2の気化性材料を含む。その場合、本発明による気化性材料は、フィルタ部分22又は中空導体24の一部を形成する。
【0133】
変形例によれば、本発明による気化性材料は液体であり、好ましくは、液体担体マトリックス中に組み込まれた上記で定義したプロフレーバー分子からなる。この場合、基材部分20に位置する気化性材料は、本発明による気化性材料からなる。このような気化性材料を含む消耗品14は、通常、気化性材料を貯蔵する貯蔵部分を備えたカートリッジからなっていてもよい。
【0134】
本発明の第2の実施形態による消耗品114を図3に示す。前の場合と同様に、消耗品114は、長手方向軸Xに沿って配置された基材部分120及びフィルタ部分122を備える。中空導体124は部分120、122を包んでいる。フィルタ部分122は、上で説明したフィルタ部分22と同様である。
【0135】
第1の実施形態の消耗品14とは異なり、第2の実施形態による気化性材料は、基材部分120又はフィルタ部分122又は中空導体124に配置されるのではなく、分離されたフレーバー部分126に配置される。
【0136】
好ましくは、フレーバー部分126は、基材部分120とフィルタ部分122との間に配置される。
【0137】
基材部分120は、通常、本発明の気化性材料とは異なる主な気化性材料を含む。好ましくは、本発明の気化性材料とは異なり、主な気化性材料はプロフレーバー化合物を含まない。
【0138】
好ましくは、主な気化性材料は固体である。
【0139】
より好ましくは、主な気化性材料はタバコ基材を含む。
【0140】
さらにより好ましくは、主な気化性材料は、加工済タバコ材料、再構成タバコ(RTB)の圧着シート又は配向ストリップ若しくはランダム配向断片、或いはそれらの任意の組み合わせを含むロッドを含む、或いはこれらからなる。
【0141】
フレーバー部分126に位置する本発明による気化性材料は、通常、液体又は固体であってもよい。例えば、本発明の気化性材料は、液体担体マトリックスに組み込まれたプロフレーバー分子からなる。或いは、本発明による気化性材料は、プロフレーバー分子を含浸させた固体基材からなる。
【0142】
この第2の実施形態によれば、エアロゾルは、最初に、基材部分120に存在する主な気化性材料から発生する。一旦発生すると、エアロゾルは、基材部分120からフィルタ部分122に向かって、軸Xに従って消耗品114の内で運ばれる。フレーバー部分126に到達すると、エアロゾルには、本発明の気化性材料に存在するプロフレーバー化合物、又はプロフレーバー化合物の分解から生じるフレーバー化合物が入り、その後、消耗品114の出口116に到達する。
【0143】
エアロゾル発生装置
本発明による消耗品と共に動作するように構成されたエアロゾル発生装置12の例を図4に示す。
【0144】
このエアロゾル発生装置12は、図2に示す第1の実施形態による消耗品14、又は図3に示す第2の実施形態による消耗品114を用いて同等に動作するように構成されている。
【0145】
好ましくは、エアロゾル発生装置12は、非燃焼加熱式装置である。
【0146】
図4の例では、エアロゾル発生装置12は、消耗品14、114の挿入に適した挿入口31を画定するハウジング30を備える。ハウジング30は、装置12の異なる機能を実行するよう設計される様々な要素を受け入れる装置12の内部空間を区切る。この内部空間は、例えば、装置12に電力を供給するためのバッテリ33と、装置12の動作を制御するための制御モジュール34と、消耗品14、114の少なくとも一部を受け入れ、且つ加熱するように構成された加熱チャンバ35とを受け入れることができる。
【0147】
加熱チャンバ35は、閉鎖端40と開放端41との間にチャンバ軸Yに沿って延び、消耗品14と実質的に同じ断面形状を有する。開放端41は、ハウジング30の挿入口31に開口している。図4に示すように、加熱チャンバ35は、消耗品14、114の基材部分20、120がチャンバ軸Yに沿って加熱チャンバの内部に延びるように、開放端41を通して消耗品14、114の基材部分20、120を受け入れるように適合されている。加えて、上述したように、加熱チャンバ35は、基材部分20、120の少なくとも一部を加熱するように適合されている。
【0148】
この目的のため、加熱チャンバ35は、加熱ブレードによって形成される加熱要素44を含む。このような加熱ブレードは、消耗品14、114の挿入中に消耗品14、114の基材部分20、120の内部に貫入するように構成される。加熱要素44の動作は、それ自体既知の制御方法を使用して制御モジュール34によって制御することができる。別の例によれば、加熱要素44は、加熱チャンバ35の周囲に配置されたコイルによって形成され、制御モジュール34によって制御される磁場をチャンバ35の内部に作り出すことができる。この場合、消耗品14、114の基材部分20、120は、上で説明した1つ又はいくつかのサセプタを含む。さらに別の例によれば、加熱チャンバ35は、加熱チャンバ35の少なくとも1つの壁に組み込まれた加熱抵抗によって形成された1つ又はいくつかの加熱要素44を含んでいても、又は加熱チャンバに貼り付けられ、基材部分20、120を加熱するように設計された薄膜ヒータである。加熱チャンバは、消耗品との接触圧力を高めるための細長い圧縮要素を備えていてもよい。このような加熱チャンバの例は、国際公開第2020/074602号明細書に記載されている。前の例のように、これらの加熱要素44の動作は、制御モジュール34によって制御される。
【0149】
他の例によると、エアロゾル発生装置12は、任意の他のタイプの消耗品、特に、液体形態の本発明による気化性材料を含む消耗品と共に動作するように適合させることができる。さらに別の例によれば、本発明によるエアロゾル発生装置12は、液体又は固体の形態で、上記で解説したような気化性材料を貯蔵するように構成された貯蔵区画を備えることができる。
【0150】
本発明は、以下の実施例によって説明されるが、限定を示唆するものではない。
【実施例
【0151】
特に断りのない限り、パーセンテージはタバコ組成物の総質量に対する質量で示される。
【0152】
1)カートリッジの調製
エアロゾル発生装置での使用に適した消耗品が調製された。
【0153】
各カートリッジは、タバコ組成物を含む基材部分とフィルタ部分とを備え、基材部分及びフィルタ部分は、独自の紙包装材料で包装されている。
【0154】
タバコミックスは、再構成タバコとタバコの葉(ラミナ)の混合物により調製される。種々のタバコ混合物が使用されており、以下の表2に詳述される。
【0155】
【表3】
【0156】
次にタバコ混合物を乾燥させ、最上層フレーバー(TDR)を噴霧して添加する。TDRの含有量は通常、タバコの総質量に対して1.0質量%~10質量%の範囲である。
【0157】
その後、プロフレーバー分子をタバコの総質量に対して0.001質量%~30質量%の範囲でタバコ混合物に添加する。
【0158】
フレーバーマイクロチップ(FMC)は、所望により、カートリッジに組み込む前に混合物に添加することができる。FMCの含有量は、存在する場合、通常、タバコの総質量に対して4.0質量%~8.5質量%の範囲である。
【0159】
各カートリッジの組成は、以下の表3及び4に詳述されている。
【0160】
2)爽やかな香り(通常は柑橘系)のタバコを含むカートリッジの例
表3は、通常柑橘系である爽やかな香りを持つタバコを組み込んだカートリッジの例を示している。
【0161】
【表4】
【0162】
3)フローラルで甘い香りのタバコを含むカートリッジの例
表4は、フローラルで甘い香りを持つタバコを組み込んだカートリッジの例を示している。
【0163】
【表5】
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】