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特表2024-526644シリル末端ポリマーを含む新規架橋性組成物および対応する自己接着性物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】シリル末端ポリマーを含む新規架橋性組成物および対応する自己接着性物品
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/10 20060101AFI20240711BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20240711BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240711BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240711BHJP
   C09J 183/04 20060101ALI20240711BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C09J201/10
C09J11/08
C09J11/04
C09J11/06
C09J183/04
C09J175/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500239
(86)(22)【出願日】2022-07-06
(85)【翻訳文提出日】2024-03-01
(86)【国際出願番号】 FR2022051353
(87)【国際公開番号】W WO2023281215
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】2107428
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501305888
【氏名又は名称】ボスティク エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マメリ, ファディル
(72)【発明者】
【氏名】ラルーシュ, ラウセーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ボルダ, ジャン-マリー
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040BA192
4J040BA202
4J040DF002
4J040DN032
4J040EF051
4J040EF281
4J040EK031
4J040GA31
4J040HA306
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA14
4J040KA26
4J040KA42
4J040LA06
4J040MA02
4J040MA04
4J040MA05
4J040MA10
4J040MB02
4J040NA02
4J040NA06
4J040NA12
4J040NA15
4J040NA21
4J040PA30
(57)【要約】
1)
- 加水分解性アルコキシシラン基を含む少なくとも1種のポリマー(A);
- 少なくとも1種の粘着付与樹脂(B);
- 好ましくは疎水性である、少なくとも1種の焼成シリカ(C);
- 少なくとも1種の架橋触媒(D);および
- シルセスキオキサン樹脂(E)
を含む、架橋性接着性組成物。
2)架橋状態の前記接着性組成物からなる自己接着性層でコーティングされた支持体層を含む、自己接着性物品。
3)15℃~200℃の範囲の温度で加熱することにより前記組成物を架橋することを含む、前記物品の製造方法、およびそれを使用する接着接合方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 加水分解性アルコキシシラン基を含む少なくとも1種のポリマー(A);
- 少なくとも1種の粘着付与樹脂(B);
- 少なくとも1種の焼成シリカ(C);
- 少なくとも1種の架橋触媒(D);および
- シルセスキオキサン樹脂(E)
を含むことを特徴とする、架橋性接着性組成物。
【請求項2】
ポリマー(A)が、少なくとも1種、好ましくは少なくとも2種の式(I):
-Si(R(OR3-p (I)
[式中、
- Rは、1~4個の炭素原子を含む直鎖状または分枝状のアルキルラジカルを表し、いくつかのRラジカルが存在する場合、これらのラジカルは同一であるか、または異なる可能性があり;
- Rは、1~4個の炭素原子を含む直鎖状または分枝状のアルキルラジカルを表し、いくつかのRラジカルが存在する場合、これらのラジカルは同一であるか、または異なる可能性があり、2つのOR基が1つの同じ環に関与し得る可能性があり;
- pは、0、1、または2に等しい、好ましくは0または1に等しい整数である]の加水分解性基を含むことを特徴とする、請求項1に記載の接着性組成物。
【請求項3】
ポリマー(A)が、式(II)、(III)、または(IV):
[式中、
- Pは、1個または複数のヘテロ原子、例えば酸素、窒素、硫黄、またはケイ素を任意選択で含み、好ましくは100g/mol~48600g/mol、より特定すると300g/mol~18600g/mol、またはさらには500g/mol~12600g/molの範囲の数平均モル質量を示す、飽和または不飽和の直鎖状または分枝状のポリマーラジカルを表し、
- Rは、芳香族または脂肪族の直鎖状、分枝状または環状であり得る、5~15個の炭素原子を含む2価の炭化水素ラジカルを表し、
- Rは、1~6個の炭素原子、好ましくは1~3個の炭素原子を含む、直鎖状または分枝状の2価のアルキレンラジカルを表し、
- Xは、-NH-、-NR-または-S-から選択される2価のラジカルを表し、
- Rは、1~20個の炭素原子を含み、1個または複数のヘテロ原子も含み得る、直鎖状または分枝状のアルキルラジカルを表し、
- fは、1~6の範囲、好ましくは2~5の範囲、好ましくは2~4の範囲、より好ましくは2~3の範囲の整数である]のうちの1つに相当することを特徴とする、請求項2に記載の接着性組成物。
【請求項4】
ポリマー(A)が、式(II’)、(III’)、または(IV’):
[式中、
- Rは、1個または複数のヘテロ原子、例えば酸素、窒素、硫黄、またはケイ素を任意選択で含み、好ましくは100g/mol~48600g/mol、より特定すると300g/mol~18600g/mol、またはさらには500g/mol~12600g/molの範囲の数平均モル質量を示す、飽和または不飽和の直鎖状または分枝状の2価の炭化水素ラジカルを表し、
- nは0以上の整数である]のうちの1つに相当することを特徴とする、請求項3に記載の接着性組成物。
【請求項5】
粘着付与樹脂(B)が、
- (i)フリーデル-クラフツ触媒の存在下でのテルペン炭化水素とフェノールとの重合によって得られる樹脂;
- (ii)α-メチルスチレンの重合を含む方法によって得られる樹脂であって、前記方法がフェノールとの反応を含むことも可能である、樹脂;
- (iii)天然由来のロジンまたは変性ロジン(例えば、マツのガムから抽出されたロジン、樹木の根から抽出されたウッドロジン、および水素化、二量体化、重合、またはモノアルコールもしくはポリオール、例えばグリセロールもしくはペンタエリスリトールでエステル化されたそれらの誘導体);
- (iv)石油画分から生じる約5、9、または10個の炭素原子を有する不飽和脂肪族炭化水素の混合物の水素化、重合、または共重合(芳香族炭化水素との)によって得られる樹脂;
- (v)テルペン樹脂(フリーデル-クラフツ触媒の存在下でのテルペン炭化水素、例えばモノテルペン(またはピネン)の重合から一般に生じる);
- (vi)天然テルペンをベースとする共重合体(例えば、スチレン/テルペン、α-メチルスチレン/テルペン、およびビニルトルエン/テルペン);あるいは
- (vii)100℃で100Pa.s未満の粘度を有するアクリル樹脂
から選択されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の接着性組成物。
【請求項6】
焼成シリカ(C)が疎水性であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の接着性組成物。
【請求項7】
疎水性焼成シリカ(C)が、焼成シリカをポリジメチルシロキサンで処理することによって得られることを特徴とする、請求項6に記載の接着性組成物。
【請求項8】
焼成シリカ(C)が、少なくとも10m/g、好ましくは50~400m/gの範囲のBET比表面積を有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の接着性組成物。
【請求項9】
シルセスキオキサン樹脂(E)が、以下の一般式(V):
[式中、R’~R’の各々は、互いに独立して、
- 水素原子、
- 直鎖状または分枝状のC~Cアルコキシラジカル、1~30個の炭素原子を含む直鎖状または分枝状のアルキルラジカル、2~30個の炭素原子を含むアルケニルラジカル、6~30個の炭素原子を含む芳香族ラジカル、3~30個の炭素原子を含むアリルラジカル、3~30個の炭素原子を含む環状脂肪族ラジカル、および1~30個の炭素原子を含むアシルラジカルからなる群から選択されるラジカル、ならびに
- -OSiR’R’10基であって、R’およびR’10が各々、互いに独立して、水素原子、または直鎖状もしくは分枝状のC~Cアルキル、直鎖状もしくは分枝状のC~Cアルコキシ、C~Cアルケニル、フェニル、C~Cアリルラジカル、環状C~C脂肪族ラジカル、およびC~Cアシルラジカルからなる群から選択されるラジカルを表す、-OSiR’R’10基;
から選択される基を表し、ただし、
- R’~R’ラジカルのうちの少なくとも1つのラジカルがC~Cアルコキシラジアルであり;
- R’~R’ラジカルのうちの少なくとも1つのラジカルがフェニルラジカルである]に相当することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の接着性組成物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の接着性組成物であって、
- 3重量%~90重量%の少なくとも1種のポリマー(A);
- 8重量%~80重量%の少なくとも1種の粘着付与樹脂(B);
- 1重量%~10重量%の焼成シリカ(C);
- 0.01重量%~10重量%の架橋触媒(D);および
- 0.1重量%~20重量%のシルセスキオキサン樹脂(E)
を含み、これらの重量百分率は、前記組成物の総重量を基準にして示されていることを特徴とする、接着性組成物。
【請求項11】
自己接着性層でコーティングされた支持体層を含む自己接着性物品において、前記自己接着性層が、架橋状態の請求項1から10のいずれか一項に記載の接着性組成物からなることを特徴とする、自己接着性物品。
【請求項12】
請求項11に記載の自己接着性物品の製造方法において、
- (a)運搬面にコーティングすることにより、前記組成物を適用すること;
- (b)15℃~200℃の範囲の温度で加熱することにより、前記組成物を架橋すること;および次いで
- (c)架橋接着性組成物の層を、支持体層上または非粘着性保護フィルム上に積層するかまたは移動させること
を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項13】
架橋する工程b)が15℃~45℃の範囲の温度、好ましくは常温、とりわけ18℃~25℃、特に23℃で行われることを特徴とする、請求項12に記載の自己接着性物品の製造方法。
【請求項14】
請求項11に記載の自己接着性物品を使用する接着接合方法において、以下の工程:
a)非粘着性保護層が存在する場合、そのような層を除去すること;
b)製品の表面に自己接着性物品を適用すること;および
c)前記物品に圧力をかけること
を含むことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、少なくとも1種の加水分解性アルコキシシラン基を含むポリマーをベースとする新規架橋性接着性組成物である。本発明は、自己接着性物品、特に、架橋状態の前記組成物からなる自己接着性層でコーティングされた支持体層を含む自己接着性支持体にも関する。最後に、本発明は、前記物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
感圧接着剤(PSA)は、それでコーティングされた支持体層に、常温での即時粘着性を付与する物質である。しばしば「タック」という用語で示されるこの即時粘着性により、前記自己接着性支持体は、穏やかかつ短時間の圧力の影響下で、全ての種類の基材に瞬時に接着することが可能になる。
【0003】
通常、剥離試験によって評価されるその接着性により、前記自己接着性支持体はその後、接着性シールによって前記基材に堅固に取り付けられる。
【0004】
PSAは、自己接着性物品、例えば、永久的または一時的な接着接合作業中であるかを問わず、情報(例えば、バーコード、名称、または価格)を提示する目的で、および/または装飾目的で物品に付けられる自己接着性ラベルの製造に広く使用されている。
【0005】
PSAは、多様な用途の自己接着性テープの製造においても使用されている。例えば、日常生活で広く使用されている透明接着テープ以外に、段ボール包装の形成および組立て;建設業における塗装作業のための表面の保護;建物または建築物の建設における様々な要素、例えばパネル、レンガ、突起物の取付けおよび保持;特に輸送業における、平らな、または特定の断面を有する金属、プラスチック、またはガラス部品、例えば電気ケーブル、プラスチックフィルム、窓ガラス、金属板、銘刻文字、ロゴ、座席の部品、ダッシュボード、プラスチックまたは布地の壁、流体の循環用の導管またはパイプの取付けおよび保持;建築分野における、適合されたカーペットの両面接着テープによる接着接合を挙げることができる。
【0006】
自己接着性物品(例えば、自己接着性ラベルおよび/またはテープ)の製造の目的で、PSAは一般に、以下に「単位面積当たりの重量」という用語で示される量(一般にg/mで示される)の割合で、大きなサイズの支持体層(適切な場合、印刷可能なもの)の表面全体に、連続コーティングプロセスによって適用する。支持体層は、例えば紙、または1つもしくは複数の層を有するポリマー材料からなるフィルムである。支持体層を覆う自己接着性組成物の層は、それ自体を、例えばシリコーンフィルムからなる非粘着性の保護層(しばしば剥離ライナーとして公知である)で覆うことができる。得られる多層システムは一般に、最大で幅2mおよび直径1mの大型リールの形態で巻き取ることによって包装し、これを保管および輸送することができる。
【0007】
これらの多層システムは次に、支持体層の印刷可能な面に所望の情報および/または装飾要素を印刷し、その後、所望の形状およびサイズに切断することを含む変形プロセスによって、最終ユーザーが適用することができる自己接着性着ラベルに変換することができる。非粘着性の保護層は、接着性層を変性することなく容易に除去され得、接着性層は支持体層に付いたままである。その非粘着性の保護層から分離した後、ラベルは、手作業で、または自動包装ラインのラベル貼り機を用いて、コーティングする物品に適用する。
【0008】
これらの多層システムは、必要であれば、その最終的な用途、例えばエレクトロニクス産業において、産業での用途であるか一般大衆用であるかを問わず、多様なサイズおよび多様な形状の部品の組立てに有用な特定の形状の切断または予備切断を伴って、所定の幅および長さのロールとして切断および包装することによって、自己接着性テープに変換することもできる。
【0009】
PSAは、その高い常温タックにより、自己接着性ラベルおよび/またはテープを、コーティングされる基材(または物品)に(例えば、ラベルに関してはボトルに、あるいはテープに関しては形成される包装ボードに)迅速に保持するまたは取り付けることを可能にし、高い工業生産率の達成に好適である。
【0010】
ラベルおよび/またはテープの基材への接着性が、取付けをもたらす接着シールが広い範囲内で変化し得る温度に曝される(したがって、ラベルおよび/またはテープでコーティングされた物品と同様に)場合にも維持されることが望ましい、PSAの用途の分野が存在する。例としては、エンジンの近くに位置する動力車(または他の車両)のある特定の部品、または包装中に高温の液体を受け取るように設計された包装材料、あるいは製造ラインからの出発時に高温でラベリングされる物品(例えば、タイヤ)上にラベルを配置することを挙げることができる。また、例えば飛行機または他の車両の内装トリムの場合のように、良好な耐熱性が必要である部品の組立てに自己接着性テープを使用することも挙げることができる。
【0011】
この分野の用途によく使用されるPSAは、非常に大きい数平均分子量(Mn)のアクリレート型のポリマー(または共重合体)を含む。後者は、水性エマルジョンまたは有機溶液の形態で提供される。しかしながら、このようなPSAを支持体層上にコーティングすることは、エマルジョンを乾燥する追加の工程か、または有機溶媒の蒸発に関連する工業的な健康および安全性の問題を考慮した特定のプラントのいずれかを提供する必要があるという事実により、工業的なレベルでは困難である。いずれの場合も、アクリル樹脂の不快な臭いに関連する欠点も考慮しなければならない。
【0012】
特許US6486229には、粘着付与樹脂、光重合開始剤、およびマルチブロック放射状スチレン-ブタジエン共重合体を含むUV架橋性ホットメルト接着性組成物が記載されており、そのブタジエンブロックは高含有量のペンダントビニル基を有する。この組成物は、非架橋状態で支持体層にコーティングし、次に紫外線照射に曝露することにより架橋する。こうして得られた自己接着性支持体は、高温での良好な粘着が必要とされるテープおよびラベルの用途に特に好適である。国際出願WO2004/011559には、アクリル共重合体、光重合開始剤、および多官能性(メタ)アクリレートを含む、コーティングすることができるアクリル組成物が記載されている。この組成物は、紫外線照射に曝露することにより架橋して、高性能PSAを生成することもできる。
【0013】
しかしながら、紫外線照射によりPSAを得るこれらの技術は、UVランプに関連する工業的な健康の問題およびこれらのランプの短い寿命に伴うコストから生じる欠点を示す。さらに、PSAの単位面積当たりの重量が高い、例えば単位面積当たりの重量が150g/mを超える自己接着性支持体の場合、架橋性接着性層の厚さ全体にわたってUV照射を透過させることが困難であるため、広い温度範囲、特に高温での接着性の維持を確保することが困難である。最後に、UV照射への曝露により架橋することの別の欠点は、組成物がUV照射にそれ以上曝露されなくなるとすぐに架橋が停止し;したがって、架橋反応は、コーティングされた支持体層が製造ラインから出た後、例えば保管中に継続することができず終了することである。
【0014】
特にBostik S.A.の3件の特許出願:WO09/106699、EP2336208、およびWO2020/128200により、加熱によって架橋可能なアルコキシシラン末端を有するポリウレタン(またはポリエーテル)をベースとする接着性組成物が既に公知である。これらの接着性組成物は、溶媒および水を有利に含まない。それらを支持体上にコーティングし、50℃~150℃の温度に加熱すると、水分の存在下で化学的架橋反応も行われた後に、接着性(または剥離)およびタックの必要とされる特性を示す自己接着性支持体が生成することになる。この架橋反応により、シロキサン結合を含む三次元ポリマーネットワーク構造を有し、自己接着性支持体の基材への取付けをもたらす接着シールが形成されることになる。したがって、前記自己接着性支持体は、自己接着性ラベルおよび/またはテープの製造に使用され得る。
【0015】
Bostik SAの特許出願WO12/090151には、アルコキシシラン末端を有するポリウレタン(またはポリエーテル)をベースとする接着性組成物を架橋する方法が記載されており、この方法は、温度が50℃~200℃であり、相対湿度が好ましくは約50%の値で制御される、温度湿度制御チャンバー内でCaroll型のガイド手段を用いる。
【0016】
Bostik SAの特許出願FR3013993には、反応性プレポリマー、特にアルコキシシラン末端を有するプレポリマーを含む接着性組成物を適用する方法が記載されており、前記方法は、適用ノズルを用いて50℃~200℃の間の温度で支持体に前記組成物を高温適用する上流で、誘導ケーブルに電気を供給することにより前記組成物をラインで加熱することを含む。
【0017】
本発明の目的は、アルコキシシラン末端を有するポリマーをベースとする架橋性接着性組成物を架橋することにより、自己接着性物品、特に自己接着性支持体の製造プロセスを簡易にすることである。
【0018】
本発明の別の目的は、アルコキシシラン末端を有するポリマーをベースとする架橋性接着性組成物を提供することであり、これにより、自己接着性物品、特に自己接着性支持体を、より低い温度、特に50℃未満の温度、さらには常温で架橋することによって製造することが可能になる。
【0019】
本発明の別の目的は、アルコキシシラン末端を有するポリマーをベースとする架橋性接着性組成物を提供することであり、これにより、自己接着性物品、特に自己接着性支持体を、相対湿度を制御または調節することなく架橋することによって製造することが可能になる。
【0020】
本発明の別の目的は、常温および/または周囲湿度で、短縮された時間で架橋する架橋性接着性組成物を提供することである。
【0021】
本発明の別の目的は、支持体にコーティングし、次いで架橋した後に、接着性およびタックの好適な特性を有する感圧接着剤をもたらす架橋性接着性組成物を提供することである。
【0022】
本発明の別の目的は、こうして得られた自己接着性支持体の基材への取付けをもたらす接着シールが、PSAの単位面積当たりの重量が高い場合を含め、広い温度範囲にわたって必要とされる粘着を維持することである。
【0023】
本発明の別の目的は、接着シールが改良された機械的強度を示すことである。
【0024】
これらの目的は、以下に記載する接着性組成物および自己接着性支持体によって、完全または部分的に達成され得ることが現在見出されている。
【発明を実施するための形態】
【0025】
架橋性接着性組成物:
したがって、第1に、本発明の主題は架橋性接着性組成物であって、
- 加水分解性アルコキシシラン基を含む少なくとも1種のポリマー(A);
- 少なくとも1種の粘着付与樹脂(B);
- 少なくとも1種の焼成シリカ(C);および
- 少なくとも1種の架橋触媒(D)
を含むことを特徴とする、架橋性接着性組成物である。
【0026】
現在、前記架橋性組成物は、常温および周囲湿度で、かなり短縮された架橋時間をもたらすことが見出されている。したがって、前記架橋性組成物は、その支持体層へのコーティングとその架橋の後、より低い温度で加熱する工程を使用し、かつ高い相対湿度を必要としないプロセスの最後に、または加熱する工程および/もしくは湿度を制御する工程を必要としないプロセスの最後に、自己接着性支持体を有利にもたらすことができる。
【0027】
さらに、前記自己接着性支持体は、基材、例えばステンレス鋼上での接着性(または剥離)の適合特性も示し、これにより、前記基材に堅固に取り付けることが可能となる。前記支持体の基材への取付けをもたらす接着シールは、125℃の一定温度でのせん断試験における改良された耐性により、全く驚くべきことにはるかに良好な温度粘着を保持する。
【0028】
最後に、架橋状態の架橋性接着性組成物からなる自己接着性層は、破断応力の測定によって定量化される、より大きな機械的強度を有利に有する。
【0029】
ポリマー(A):
本発明の意味において、「加水分解性アルコキシシラン基を含むポリマー(A)」という用語は、少なくとも1種、好ましくは少なくとも2種の式(I):
-Si(R(OR3-p (I)
[式中、
- Rは、1~4個の炭素原子を含む直鎖状または分枝状のアルキルラジカルを表し、いくつかのRラジカルが存在する場合、これらのラジカルは同一であるか、または異なる可能性があり;
- Rは、1~4個の炭素原子を含む直鎖状または分枝状のアルキルラジカルを表し、いくつかのRラジカルが存在する場合、これらのラジカルは同一であるか、または異なる可能性があり、2つのOR基が1つの同じ環に関与し得る可能性があり;
- pは、0、1、または2に等しい、好ましくは0または1に等しい整数である]の加水分解性基を含むポリマーを意味すると理解される。
【0030】
加水分解性アルコキシシラン基は、好ましくは前記ポリマーの末端に位置する。しかしながら、鎖の中間の位置は除外されない。ポリマー(A)は、接着性組成物の適用前に架橋されない。接着性組成物は、その架橋が可能となる条件下で適用される。
【0031】
したがって、ポリマー(A)は、多少粘性のある液体の形態で一般に提供されるシリル変性ポリマーである。好ましくは、ポリマー(A)は、特に23℃において、10~200Pa.sの範囲、好ましくは20~175Pa.sの範囲の粘度を示し、前記粘度は、例えば、23℃および相対湿度50%においてBrookfield型の方法に従って測定される(S28針)。
【0032】
ポリマー(A)は、好ましくは2種の式(I)の基を含むが、3~6種の式(I)の基を含むこともできる。
【0033】
好ましくは、ポリマー(A)は、500~50000g/molの範囲、より好ましくは700~20000g/molの範囲の数平均分子量(Mn)を示す。ポリマーの数平均分子量(Mn)は、当業者に周知の方法、例えばNMRおよびポリスチレン型の標準物質を用いたサイズ排除クロマトグラフィーによって計算または測定され得る。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、ポリマー(A)は、式(II)、(III)、または(IV):
[式中、
- R、R、およびpは、上記の式(I)中と同じ意味を有し、
- Pは、1個または複数のヘテロ原子、例えば酸素、窒素、硫黄、またはケイ素を任意選択で含み、好ましくは100g/mol~48600g/mol、より特定すると300g/mol~18600g/mol、またはさらには500g/mol~12600g/molの範囲の数平均分子量(Mn)を示す、飽和または不飽和の直鎖状または分枝状のポリマーラジカルを表し、
- Rは、芳香族または脂肪族の直鎖状、分枝状、または環状であり得る、5~15個の炭素原子を含む2価の炭化水素ラジカルを表し、
- Rは、1~6個の炭素原子、好ましくは1~3個の炭素原子を含む、直鎖状または分枝状の2価のアルキレンラジカルを表し、
- Xは、-NH-、-NR-、または-S-から選択される2価の基を表し、
- Rは、1~20個の炭素原子を含み、1個または複数のヘテロ原子も含み得る、直鎖状または分枝状のアルキルラジカルを表し、
- fは、1~6の範囲、好ましくは2~5の範囲、好ましくは2~4の範囲の整数であり、より好ましくは2~3の範囲の整数である]のうちの1つに相当する。
【0035】
好ましくは、上の式(II)、(III)、および/または(IV)において、Pは、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリレート、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、ポリオレフィンポリウレタン、ポリアクリレートポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、およびブロックポリエーテル/ポリエステルポリウレタンから非限定的に選択されるポリマーラジカルを表す。
【0036】
例えば、文献EP2468783には、Pがポリウレタン/ポリエステル/ポリエーテルブロックを有するポリマーラジカルを表す式(II)のシリル変性ポリマーが記載されている。
【0037】
一実施形態によれば、シリル変性ポリマーは、シリル変性ポリウレタン、シリル変性ポリエーテル、およびそれらの混合物から選択される。
【0038】
特定の実施形態によれば、シリル変性ポリマー(A)は、式(II’)、(III’)、または(IV’):
[式中、
- R、R、R、R、X、R、およびpは、上記の式(II)、(III)、および(IV)中と同じ意味を有し、
- Rは、1個または複数のヘテロ原子、例えば酸素、窒素、硫黄、またはケイ素を任意選択で含み、好ましくは100g/mol~48600g/mol、より特定すると300g/mol~18600g/mol、またはさらには500g/mol~12600g/molの範囲の数平均分子量(Mn)を示す、飽和または不飽和の直鎖状または分枝状の2価の炭化水素ラジカルを表し、
- nは0以上の整数である]のうちの1つに相当する。
【0039】
上で規定された式(II’)、(III’)、または(IV’)のシリル変性ポリマーにおいて、Rラジカルが1個または複数のヘテロ原子を含む場合、前記ヘテロ原子は鎖末端に存在しない。換言すると、シリル変性ポリマーの隣接する酸素原子に結合した2価のR基ラジカルの自由原子価は、それぞれ炭素原子から生じる。したがって、Rラジカルの主鎖は、2つの末端の各々において炭素原子で終端し、そして前記炭素原子が自由原子価を示す。
【0040】
一実施形態によれば、シリル変性ポリマー(A)は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリシロキサンポリオール、およびポリオレフィンポリオール、ならびにそれらの混合物から選択されるポリオールから得られ、より好ましくは、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリアクリレートジオール、ポリシロキサンジオール、ポリオレフィンジオール、およびそれらの混合物から選択されるジオールから得られる。上記の式(II’)、(III’)、および(IV’)のポリマーの場合、そのようなジオールは、式HO-R-OHで表され得、式中、Rは式(II’)、(III’)、または(IV’)中と同じ意味を有する。
【0041】
例えば、式(II’)、(III’)、および(IV’)に存在することができるR型のラジカルのうち、以下の2価のラジカルを挙げることができ、下のその式は、2つの自由原子価を示す:
- ポリプロピレングリコールの誘導体:
- ポリエステルジオールの誘導体:
- ポリブタジエンジオールの誘導体:
- ポリアクリレートジオールの誘導体:
- ポリシロキサンジオールの誘導体:
【0042】
上の式において、ラジカルおよび添え字の意味は以下の通りである:
- qは、Rラジカルの数平均分子量が100g/mol~48600g/mol、好ましくは300g/mol~18600g/mol、より好ましくは500g/mol~12600g/molの範囲となるような整数を表し、
- rおよびsは、Rラジカルの数平均分子量(Mn)が100g/mol~48600g/mol、好ましくは300g/mol~18600g/mol、より好ましくは500g/mol~12600g/molの範囲となるような、ゼロまたはゼロではない整数を表し、r+sの合計はゼロ以外であると理解され、
- Qは、好ましくは1~18個の炭素原子、より好ましくは1~8個の炭素原子を示す、飽和または不飽和の直鎖状または分枝状の脂肪族または芳香族の2価のアルキレンラジカルを表し、
- Qは、好ましくは2~36個の炭素原子、より好ましくは1~8個の炭素原子を示す直鎖状または分枝状の2価のアルキレンラジカルを表し、
- Q、Q、Q、Q、Q、およびQは、互いに独立して、水素原子、または好ましくは、1~12個の炭素原子、好ましくは2~12個の炭素原子、より好ましくは2~8個の炭素原子を示すアルキル、アルケニルもしくは芳香族ラジカルを表す。
【0043】
本発明による組成物の一実施形態によれば、シリル変性ポリマー(A)は、式(II’)、(III’)、および(IV’)に現れるRラジカルが、ポリエーテルラジカル、好ましくはポリ(オキシアルキレン)ラジカルを表し、より好ましくはさらに、上に示された式に相当するポリプロピレングリコールから誘導されるラジカルを表すようなものである。
【0044】
一実施形態によれば、Rは、以下の2価のラジカルのうちの1つから選択され、下のその式は2つの自由原子価を示す:
a)イソホロンジイソシアネート(IPDI)から誘導される2価のラジカル:
b)ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)から誘導される2価のラジカル
c)トルエンジイソシアネート(TDI)から誘導される2価のラジカル
d)ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の4,4’および2,4’異性体から誘導される2価のラジカル
e)ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)から誘導される2価のラジカル
-(CH
f)m-キシリレンジイソシアネート(m-XDI)から誘導される2価のラジカル。
【0045】
式(II)または(II’)のポリマーは、文献EP2336208およびWO2009/106699に記載された方法に従って得られ得る。当業者であれば、異なる種類のポリオールを使用する場合に、これらの2つの文献に記載された製造方法をどのように適応させるかを知っているであろう。式(II)に相当するポリマーのうち、
- Geniosil(登録商標)STP-E10(Wackerから入手可能):ジメトキシ型の2つの基(I)を含み、数平均分子量8889g/molを示し、Rはメチル基を表す、ポリエーテル(nは0に等しく、pは1に等しく、RおよびRはメチル基を表す);
- Geniosil(登録商標)STP-E30(Wackerから入手可能):数平均分子量14493g/molを有し、ジメトキシ(メチル)シリルメチルカルバメートからなる2つの末端基を有するポリプロピレングリコールであり、すなわち式(II’)において、nは0に等しく;pは1に等しく;RおよびRはメチル基を表し、Rはメチル基を表す;
- Desmoseal(登録商標)S XP 2636(Bayerから入手可能):トリメトキシ型の2つの基(I)を含み、数平均分子量15038g/molを示し、Rはn-プロピレン基を表す、ポリウレタン(nは0以外であり、pは0に等しく、Rはメチル基を表す)
を挙げることができる。
【0046】
式(III)または(III’)のポリマーは、例えば文献1829928に記載された方法に従って、ポリエーテルジアリルエーテルのヒドロシリル化によって得られる。式(III)に相当するポリマーのうち、
- ジメトキシ型の2つの基(I)を含み、14000~16000g/molの範囲の数平均分子量を有する、ポリエーテル(pは1に等しく、RおよびRはメチル基を表す)に相当する、ポリマーMS SAX(登録商標)350(カネカから入手可能);
- ジメトキシ型の2つの基(I)を含み、16000~18000g/molの数平均分子量を示し、Rはエチル基を表す、ポリエーテル(pは1に等しく、RおよびRはメチル基を表す)に相当する、ポリマーMS SAX(登録商標)260(カネカから入手可能);
- ジメトキシ型の2つの基(I)を含み、約22000g/molの範囲の数平均分子量を有する、ポリエーテル(pは1に等しく、Rはメチル基を表す)に相当する、ポリマーMS S303H(カネカから入手可能)
を挙げることができる。
【0047】
式(IV)または(IV’)のポリマーは、例えば、ポリオールを1種または複数のジイソシアネートと反応させ、その後アミノシランまたはメルカプトシランと反応させることによって得ることができる。式(IV)または(IV’)のポリマーを調製するための方法は、文献EP2583988に記載されている。当業者であれば、異なる種類のポリオールを使用する場合に、この文献に記載された製造方法をどのように適応させるかを知っているであろう。式(IV)または(IV’)に相当するポリマーのうち、
- Spur+(登録商標)1050MM(Momentiveから入手可能):トリメトキシ型の2つの基(I)を含み、数平均分子量16393g/molを示し、Rはn-プロピル基を表す、ポリウレタン(nは0以外であり、pは0に等しく、Rはメチル基を表す);
- Spur+(登録商標)Y-19116(Momentiveから入手可能):トリメトキシ型の2つの基(I)を含み、15000~17000g/molの範囲の数平均分子量を示し、Rはn-プロピル基を表す、ポリウレタン(nは0以外であり、Rはメチル基を表す)を挙げることができる。
【0048】
本発明の好ましい実施形態によれば、接着性組成物は、式(II)および/もしくは(II’)の少なくとも1種のシリル変性ポリマー(A)、または式(III)および/もしくは(III’)の少なくとも1種のシリル変性ポリマーを含む。
【0049】
本発明の非常に特に好ましい実施態様によれば、ポリマー(A)は、式(II’)のシリル変性ポリマーであり、式中、nは0に等しく、Rはポリエーテル、好ましくはポリ(オキシアルキレン)ジオール、より特定するとさらにはポリプロピレングリコールから誘導される2価のラジカルである。
【0050】
粘着付与樹脂(B):
本発明による架橋性接着性組成物は、少なくとも1種の粘着付与樹脂(B)も含む。
【0051】
前記樹脂は、シリル変性ポリマー(A)と相容性のある任意の樹脂であり得る。
【0052】
「相容性のある粘着付与樹脂」という用語は、ポリマー(A)と50%/50%の割合(特に、重量による)で混合したときに、実質的に均一な混合物を与える粘着付与樹脂を示すと理解される。
【0053】
樹脂(B)は、
- (i)フリーデル-クラフツ触媒の存在下でのテルペン炭化水素およびフェノールの重合によって得られる樹脂;
- (ii)α-メチルスチレンの重合を含む方法によって得られる樹脂であって、前記方法がフェノールとの反応を含むことも可能である、樹脂;
- (iii)天然由来のロジンまたは変性ロジン(例えば、マツのガムから抽出されたロジン、樹木の根から抽出されたウッドロジン、および水素化、二量体化、重合、またはモノアルコールもしくはポリオール、例えばグリセロールもしくはペンタエリスリトールでエステル化されたそれらの誘導体);
- (iv)石油画分から生じる約5、9、または10個の炭素原子を有する不飽和脂肪族炭化水素の混合物の水素化、重合、または共重合(芳香族炭化水素との)によって得られる樹脂;
- (v)テルペン樹脂(フリーデル-クラフツ触媒の存在下でのテルペン炭化水素、例えばモノテルペン(またはピネン)の重合から一般に生じる);
- (vi)天然テルペンをベースとする共重合体(例えば、スチレン/テルペン、α-メチルスチレン/テルペン、およびビニルトルエン/テルペン);あるいは
- (vii)100℃で100Pa.s未満の粘度を有するアクリル樹脂;
およびさらにはこれらの樹脂の混合物から有利に選択される。
【0054】
このような樹脂は市販されており、上で規定された種類(i)、(ii)、(iii)、および(iv)の樹脂うち、以下の製品を挙げることができる。
- 種類(i)の樹脂:約870Daの数平均分子量(Mn)を有する、DRTから入手可能なDertophene(登録商標)1510;約630Daに等しい数平均分子量(Mn)を有する、同社から入手可能なDertophene(登録商標)H150;約1200Daの数平均分子量(Mn)を有する、Arizona Chemicalから入手可能なSylvarez(登録商標)TP 95;
- 種類(ii)の樹脂:フェノールの作用なしでα-メチルスチレンを重合することによって得られる、900Daの数平均分子量(Mn)を有する、Cray Valleyから入手可能なCleartack(登録商標)W100;約1740Daの数平均分子量(Mn)を有し、その生成の方法はフェノールの添加も含む、これもArizona Chemicalから入手可能なSylvarez(登録商標)510;
- 種類(iii)の樹脂:ロジンとペンタエリスリトールのエステルであり、Arizona Chemicalから入手可能であり、約1700Daの数平均分子量(Mn)を有する、Sylvalite(登録商標)RE 100;
- 種類(iv)の樹脂:約550g/molの数平均分子量(Mn)を有する、Eastmanから入手可能なPicco(登録商標)AR100。
【0055】
好ましい代替の形態によれば、樹脂(B)として、種類(i)または(iv)の樹脂から選択される樹脂が使用される。
【0056】
焼成シリカ(C):
焼成シリカ(「ヒュームドシリカ」とも呼ばれる)は、非常に低い見掛け密度を有し、非常に高い比表面積を有する、非常に微細なシリカ粒子(ナノメートルのオーダーのもの)の形態で提供される。焼成シリカは、水素および酸素の存在下で、ケイ素化合物、例えば四塩化ケイ素(それ自体はケイ素と塩素から調製される)を熱分解することによって得られ得る。
【0057】
焼成シリカは、その構成粒子の表面のシラノール(Si-OH)基の存在により、最初は親水性である。このシラノール基を様々な反応物、一般にシリコーン油、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)と反応させることにより、焼成シリカを疎水性にすることができる。
【0058】
好ましくは、焼成シリカ(C)は、疎水性焼成シリカである。
【0059】
一実施形態によれば、疎水性焼成シリカ(C)は、焼成シリカをポリジメチルシロキサンで処理することによって得られる。
【0060】
一実施形態によれば、焼成シリカ(C)は、少なくとも10m/g、好ましくは50~400m/g、より好ましくはさらに80~290m/gの範囲のBET比表面積を有する。BET比表面積は、例えば2010年9月のISO9277規格に従って、Brunauer、Emmett、およびTeller(BET)の方法に基づく吸着等温線を決定することにより、当業者に周知の方法で測定される。
【0061】
別の実施形態によれば、焼成シリカ(C)は、例えばローラー圧縮機から、または特許EP0280851に記載される方法から、圧縮処理によって得られる。見掛け密度は、1983年8月のISO 787/11規格に従って測定される、タンピングされた見掛け密度の測定によって定量化され、これは概して50~200g/lにわたる範囲内にある。
【0062】
このような焼成シリカ、特に疎水性焼成シリカは、例えばEvonikのAerosil(登録商標)系の製品など、市販されている。
【0063】
疎水性焼成シリカ(C)の例として、Aerosil(登録商標)R202を特に挙げることができ、そのBET比表面積は100±20m/gであり、タンピングされた見掛け密度は約60g/lであり、これはポリジメチルシロキサンで処理することにより疎水性にされている。Aerosil(登録商標)R202の構成粒子は、サイズが約16nmである。
【0064】
架橋触媒(D):
本発明による組成物に使用することができる架橋触媒(D)は、当業者に公知のシラノール縮合用の任意の触媒であり得る。そのような触媒の例として、チタンの有機誘導体、例えばチタンアセチルアセトネート(DuPontからTyzor(登録商標)AA75の名称で市販されている)、アルミニウム、例えばアルミニウムキレート(King IndustriesからK-KAT(登録商標)5218の名称で市販されている)、またはアミン、例えば1,8-ジアゾビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンすなわちDBUを挙げることができる。
【0065】
シルセスキオキサン樹脂(E):
成分(A)、(B)、(C)、および(D)以外に、本発明による架橋性接着性組成物は、シルセスキオキサン樹脂(E)を任意選択で含むこともできる。
【0066】
本発明の好ましい代替態様によれば、本発明による架橋性接着性組成物は、少なくとも1種のこのようなシルセスキオキサン樹脂を含む。
【0067】
シルセスキオキサン樹脂は、Si-O-Si結合を有する多面体構造またはポリマー構造をとることができる有機ケイ素化合物である。これらは一般に、以下の一般式:
[RSiO3/2
を有し、式中、同一または異なる性質のRは有機ラジカルを表し、tは、6から12まで変化し得る整数であり、tは、好ましくは6、8、10、または12に等しい。
【0068】
一実施形態によれば、シルセスキオキサン(E)は、多面体構造を有する(すなわち、「多面体オリゴマーシルセスキオキサン(Polyhedral Oligomeric Silsesquioxane)」のPOSS)。
【0069】
好ましくは、シルセスキオキサン樹脂(E)は、以下の一般式(V):
[式中、R’~R’の各々は、互いに独立して、
- 水素原子、
- 直鎖状または分枝状のC~Cアルコキシラジカル、1~30個の炭素原子を含む直鎖状または分枝状のアルキルラジカル、2~30個の炭素原子を含むアルケニルラジカル、6~30個の炭素原子を含む芳香族ラジカル、3~30個の炭素原子を含むアリル基、3~30個の炭素原子を含む環状脂肪族ラジカル、および1~30個の炭素原子を含むアシルラジカルからなる群から選択されるラジカル、ならびに
- R’およびR’10が各々、互いに独立して、水素原子、または直鎖状もしくは分枝状のC~Cアルキル、直鎖状もしくは分枝状のC~Cアルコキシ、C~Cアルケニル、フェニル、C~Cアリルラジカル、環状C~C脂肪族ラジカル、およびC~Cアシルラジカルからなる群から選択されるラジカルを表す、-OSiR’R’10
から選択される基を表し、ただし、
- R’~R’ラジカルのうちの少なくとも1つのラジカルはC~Cアルコキシラジカルであり;
- R’~R’ラジカルのうちの少なくとも1つのラジカルはフェニルラジカルである]に相当する。
【0070】
特に、シルセスキオキサン(E)は、ジメチルメトキシフェニルシロキサン(CAS番号=68957-04-0)である。
【0071】
シルセスキオキサンは、特に特許出願WO2008/107331に記載されている公知の化合物である。一部は市販もされており、例えばDowからDow Corning(登録商標)3074およびDow Corning(登録商標)3037(CAS番号=68957-04-0)の名称で販売されている製品である。
【0072】
他の添加剤:
本発明による架橋性接着性組成物は、吸湿剤、可塑剤、抗酸化剤、顔料、染料、接着促進剤、UV安定剤、難燃性添加剤、およびさらには充填剤、例えばカーボネートベースの充填剤、例えば炭酸カルシウムタイプの充填剤からなる群から選択される1種または複数の添加剤を含むことができる。
【0073】
吸湿剤(または乾燥剤)は、例えば、500g/モル未満の分子量を有する非ポリマー性の加水分解性アルコキシシラン誘導体から、好ましくはトリメトキシシラン誘導体およびトリエトキシシラン誘導体から選択され得る。このような薬剤は、典型的には、組成物が使用される前の保管および輸送中の組成物の貯蔵寿命を延長することができる。例えば、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(例えば、MomentiveからSilquest(登録商標)A-174の商品名で入手可能)、メタクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン(例えば、WackerからGeniosil(登録商標)XL33の名称で入手可能)、ビニルトリメトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、またはフェニルトリメトキシシランを挙げることができる。
【0074】
吸湿剤は、それが存在する場合、本発明による組成物の総重量に対して、例えば0.1重量%~3重量%または1重量%~2重量%を表すことができる。
【0075】
本発明による組成物は、可塑剤も含むことができる。
【0076】
使用することができる可塑剤の例として、接着剤の分野で一般に使用される任意の可塑剤、例えば、フタレート、ベンゾエート、トリメチロールプロパンエステル、トリメチロールエタンエステル、トリメチロールメタンエステル、グリセロールエステル、ペンタエリスリトールエステル、ナフテン鉱油、アジペート、シクロヘキサンジカルボキシレート、流動パラフィン、天然油(任意選択でエポキシ化されたもの)、ポリプロピレン、ポリブチレン、水素化ポリイソプレン、およびそれらの混合物を使用してもよい。
【0077】
フタレートのうち、例えば、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジイソドデシル、フタル酸ジベンジル、またはフタル酸ブチルベンジルを挙げることができる。
【0078】
ベンゾエートのうち、例えば、ネオペンチルグリコールジベンゾエート(例えば、LanxessからUniplex(登録商標)512の名称で入手可能)、ジプロピレングリコールジベンゾエート(例えば、EastmanからBenzoflex(登録商標)9-88SGの名称で入手可能)、ジエチレングリコールジベンゾエートとジプロピレングリコールジベンゾエートの混合物(例えばKalama ChemicalからK-Flex(登録商標)850 Sの名称で入手可能)、またはさらにはジエチレングリコールジベンゾエートと、ジプロピレングリコールジベンゾエートと、トリエチレングリコールジベンゾエートとの混合物(例えばEastmanからBenzoflex(登録商標)2088の名称で入手可能)を挙げることができる。
【0079】
ペンタエリスリトールエステルのうち、例えば、ペンタエリスリチルテトラバレレート(例えば、PerstorpからPevalen(商標)の名称で入手可能)を挙げることができる。
【0080】
シクロヘキサンジカルボキシレートのうち、例えば、ジイソノニル1,2-シクロヘキサンジカルボキシレート(例えば、BASF社からHexamoll Dinch(登録商標)の名称で入手可能)および1,4-ビス(2-エチルヘキシル)1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート(例えばConnect ChemicalsからDEHCHの名称で入手可能)を挙げることができる。
【0081】
本発明による組成物中の可塑剤の総含有量は、前記組成物の総重量に対して、0重量%~30重量%、好ましくは1重量%~30重量%、実際にさらには、例えば1重量%~15重量%の範囲とすることができる。
【0082】
本発明による組成物は、抗酸化剤(UV安定剤という用語でも示される)も含むことができる。
【0083】
抗酸化剤は、熱または光の作用により形成されやすい酸素との反応により生じる劣化から組成物を保護するために導入することができる化合物である。これらの化合物は、フリーラジカルを捕捉する一次抗酸化剤を含むことができる。一次抗酸化剤は、単独で、または他の二次抗酸化剤もしくはUV安定剤と組み合わせて使用され得る。
【0084】
例えば、BASFにより販売されているIrganox(登録商標)1010、Irganox(登録商標)B561、Irganox(登録商標)245、Irganox(登録商標)1076、またはIrgafos(登録商標)168を挙げることができる。
【0085】
本発明による組成物の総重量を基準にして、0.1重量%~3重量%、好ましくは1重量%~3重量%の範囲の抗酸化剤の量が、一般に使用される。
【0086】
一実施形態によれば、本発明による架橋性接着性組成物は、
- 3重量%~90重量%、好ましくは5重量%~80重量%、優先的には10重量%~70重量%、特に20重量%~60重量%、有利には36重量%~56重量%の、加水分解性アルコキシシラン基を含む少なくとも1種のポリマー(A)、
- 8重量%~80重量%、特に15重量%~80重量%、好ましくは20重量%~70重量%、優先的には25重量%~70重量%、とりわけ30重量%~60重量%、有利には40重量%~60重量%の少なくとも1種の粘着付与樹脂(B)、
- 1重量%~10重量%、好ましくは2重量%~8重量%、有利には2重量%~6重量%の焼成シリカ(C)、および
- 0.01重量%~10重量%、好ましくは0.01重量%~5重量%、優先的には0.05重量%~4重量%、有利には0.1重量%~3重量%、特に0.5重量%~2重量%の架橋触媒(D)
を含み、これらの重量百分率は、前記組成物の総重量を基準にして示されている。
【0087】
本発明の好ましい代替態様によれば、架橋性接着性組成物がシルセスキオキサン樹脂(E)を追加的に含む場合、後者の量は、前記組成物の総重量を基準にして、0.1重量%から20重量%、好ましくは1重量%から20重量%、優先的には2重量%から15重量%、有利には3重量%から12重量%で変化し得る。
【0088】
本発明による架橋性接着性組成物は、
- 空気を排除して、好ましくは不活性雰囲気下で、ポリマー(A)、粘着付与樹脂(B)、および適切な場合には他の任意選択の添加剤を混合して、部分(PA)を形成する工程;次いで
- 架橋触媒(D)と、存在する場合にはシルセスキオキサン樹脂(E)とを混合して、部品(PB)を形成する工程;次いで
- 50℃~180℃、好ましくは100℃~150℃の温度で、均質混合物(PC)が得られるまで、部分(PA)中に焼成シリカ(C)を組み込む工程;ならびに最後に
- (PC)を(PB)と混合する工程を含む方法によって調製され得る。
【0089】
自己接着性物品:
本発明の別の主題は、自己接着性層でコーティングされた支持体層を含む自己接着性物品において、前記自己接着性層が、架橋状態の本発明による接着性組成物からなることを特徴とする、自己接着性物品である。
【0090】
本発明の意味において、「自己接着性物品」という用語は、追加の糊または接着剤を使用することなく、手または装置のアイテムを用いた圧力の作用のみによって、表面に接着により結合され得る任意の物品を含む。
【0091】
自己接着性物品は、感圧自己接着性物品である。
【0092】
自己接着性層でコーティングされた支持体層は、「自己接着性支持体」という用語でも示される。
【0093】
これらの物品は、特に、型、ロゴ、画像、または情報を一緒にする、維持する、取り付ける、組み立てる、または単純に固定する、露出させるために、接着により結合する表面に適用する目的を有する。これらの物品は多くの分野、例えば医療分野、衣類、包装、動力車(例えば、ロゴの取付け、レタリング、内装防音、内装トリム、車室内の結合)、または建築(例えば、遮音および断熱、窓の組立て)で使用することができる。これらは、その最終用途に応じて、例えばテープの形態、例えば工業的使用のためのテープ、自作作業用もしくは作業場での固定用のテープ、片面もしくは両面テープ、またはラベル、包帯、手当用品、パッチ、もしくはグラフィックフィルムの形態で作り上げることができる。
【0094】
一実施形態によれば、自己接着性物品は、自己接着性多層システム、特に、片面または両面とすることができる自己接着性ラベルまたはテープである。
【0095】
支持体層に使用することができる材料は、例えば、任意の種類の剛性または可撓性の支持体とすることができる。例えば、発泡体、フェルト、不織布支持体、プラスチック、膜、紙、または1つもしくは複数の層を有するポリマー材料のフィルム、特に非粘着性の保護紙もしくはプラスチックフィルムのタイプの支持体を挙げることができる。
【0096】
支持体層は、例えば、ポリオレフィン、例えば高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、および直鎖状超低密度ポリエチレンを含む、ポリエチレン;ポリプロピレンおよびポリブチレン;ポリスチレン;天然または合成ゴム;ビニル共重合体、例えば可塑化されていてもいなくてもよいポリ塩化ビニル、およびポリ(酢酸ビニル);オレフィン共重合体、例えばエチレン/メタクリレート共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、およびエチレン/プロピレン共重合体;アクリルポリマーおよび共重合体;ポリウレタン;ポリエーテル;ポリエステル;ならびにこれらの混合物から選択される材料で作製される。好ましくは、支持体層は、アクリルポリマー、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)(配向、無配向、もしくは二軸配向であってもよい)、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、または紙をベースとする。
【0097】
一実施形態によれば、本発明による接着性組成物から得られる自己接着性物品は、接着性層でコーティングされた永久的支持体層を含む。好ましくは、接着性層は、好ましくはシリコーン処理された非粘着性の保護紙またはプラスチックフィルムで追加的にコーティングされる。
【0098】
別の実施形態によれば、本発明による接着性組成物から得られる自己接着性物品は、好ましくはシリコーン処理された第1の非粘着性保護紙またはプラスチックフィルムからなる非永久的支持体層を含み、前記層は接着性層でコーティングされ、接着性層はそれ自体、第2の非粘着性保護紙またはプラスチックフィルムでコーティングすることもできる。この実施形態は、接着接合による窓の組立てに特に好適であり、より詳細には、二重または三重ガラスからなる剛性パネルを窓のフレームと組み立てるのに特に好適である。この実施形態によれば、前記非永久的支持体層は、窓を組み立てる目的で自己接着性物品を使用するときに使用者により除去されて、その機械的特性、特に破断強度が本発明に従って特に改良された架橋接着性層のみが露出されることが意図されている。
【0099】
非粘着性保護フィルムの代替として、接着性層でコーティングされていない永久的支持体層の裏面が、非粘着性表面、例えばシリコーン処理保護層を有することができる。
【0100】
別の実施形態によれば、永久的支持体層は、その面の両方に、同一であっても異なっていてもよい接着性組成物でコーティングされ、2つの接着性組成物のうちの少なくとも一方は本発明によるものであり、有利には「両面」テープの製造をもたらす。
【0101】
好ましくは、支持体層は、10マイクロメートル~50mmの範囲、より好ましくは10マイクロメートル~20mmの範囲、好ましくは20マイクロメートル~10mmの範囲、より好ましくは20マイクロメートル~1mmの範囲の厚さを示す。
【0102】
ある特定の特殊な場合において、支持体層にコーティングする工程中の接着性層の付着を向上させるために、支持体層に表面処理を行う必要がある。
【0103】
したがって、本発明による自己接着性物品は、2つの基材を接着により結合することができる。自己接着性物品を適用することが意図される基材(「接着により結合される基材」で示される)は、可撓性であっても剛性であってもよい。特に、基材は、上記の支持体層と同じ可撓性の特性を示して、例えば上記のようなリールの形態で巻き取って包装することができる。
【0104】
代替的に、接着により結合される基材は剛性のものとすることができる。この場合、基材は、例えば上記のようなリールの形態で巻き取って包装することができない。接着により結合される基材は、例えば、コンクリート、紙、ポリオレフィンタイプの基材、ガラス、セラミック、および金属、特にアルミニウムから選択することができる。
【0105】
架橋状態の本発明による接着性組成物からなり、本発明による自己接着性物品において支持体層を覆う自己接着性層は、好ましくは10μm~5000μmの範囲の非常に多様な厚さを有することができる。
【0106】
10μm~100μm、好ましくは20μm~50μmの範囲の厚さは、自己接着性ラベルの場合に特により好ましいのに対し、はるかにより幅広い間隔の3μm~5000μmの範囲の厚さは、自己接着性テープで見られ得る。
【0107】
一実施形態によれば、自己接着性物品は、非粘着性保護層(剥離ライナー)を追加的に含む。
【0108】
一実施形態によれば、前記非粘着性層は、接着性組成物の架橋後に、接着剤層に付ける。
【0109】
支持体層は、その2つの面のうち接着性層でコーティングされていない面において、非粘着性保護層、例えばシリコーンフィルムで覆われ得る。このようにして、自己接着性物品は、シリコーン処理された面への接着性層の接着がないことにより、それ自体に巻き取り、その後全く問題なくほどくことができる。
【0110】
自己接着性物品の製造方法:
本発明の別の主題は、上で規定された自己接着性物品の製造方法において、
- (a)運搬面にコーティングすることにより、前記組成物を適用すること;
- (b)15℃~200℃の範囲の温度で加熱することにより、前記組成物を架橋すること;および次いで
- (c)架橋接着性組成物の層を、支持体層上または非粘着性保護フィルム上に積層するまたは移動させること
を含むことを特徴とする、製造方法である。
【0111】
「運搬面」は、本発明の意味において、非粘着性層で覆われたベルトコンベア、または非粘着性保護フィルム(剥離ライナー)、または支持体層のいずれかを意味すると理解されるべきである。
【0112】
運搬面が非粘着性保護フィルムである場合、本発明による自己接着性物品の製造方法は、架橋接着性層を支持体層上に移動させる工程(c)を含むことができる。
【0113】
運搬面が支持体層または非粘着性保護フィルムである場合、本発明による自己接着性物品の製造方法は、接着性層を非粘着性保護フィルム上に積層する工程(c)も含むことができる。
【0114】
本発明の好ましい代替形態によれば、上述の方法の工程(c)は、適切であれば、支持体層が構成される材料の分解温度または軟化点未満の温度に架橋接着性層を冷却した後に、架橋接着性層を可撓性支持体層(プラスチックフィルムとすることができる)上に移動させることからなる。
【0115】
一実施形態によれば、本発明による自己接着性物品の製造方法は、本発明による接着性組成物の第2の層を支持体層上にコーティングする工程(d)と、その後の、15℃~200℃、好ましくは15℃~45℃、好ましくは常温、とりわけ18℃~25℃の範囲、特に23℃の温度に加熱することにより、工程(d)においてコーティングされた接着性組成物を架橋する工程(e)とを追加的に含む。この実施形態によれば、両面自己接着性物品が得られる。
【0116】
コーティングする工程(a)は、公知のコーティングデバイス、例えばリップノズルまたはカーテンタイプのノズルにより、あるいはローラーを用いて行うことができる。これは、3g/m~5000g/m、特に10g/m~5000g/mの範囲とすることができる、接着性組成物の単位面積当たりの重量を用いる。
【0117】
自己接着性ラベルの製造に必要な接着性組成物の単位面積当たりの重量は、10g/m~100g/m、好ましくは20g/m~50g/mの範囲とすることができる。自己接着性テープの製造に必要なものは、1面当たり3g/mから5000g/m、好ましくは15g/mから250g/mにわたるはるかにより広い範囲内で変化することができる。
【0118】
架橋する工程(b)は、本発明の好ましい代替形態によれば、15℃~45℃の範囲の温度、好ましくは常温、とりわけ18℃~25℃、特に23℃で行われる。
【0119】
一実施形態によれば、コーティングされた接着性組成物は、さらに、架橋する工程(b)の間に、その水分レベルによって特徴付けられる湿潤雰囲気中、特に、水分子が気体1m当たり10~200g存在する気体環境中での処理に追加的に供される。
【0120】
好ましくは、湿潤雰囲気は、分子の2%~100%が水分子であり、好ましくは分子の3%~50%、より好ましくは3%~10%が水分子である雰囲気である。
【0121】
水分含有率は、単位体積当たりの水の百分率で表され、これは水分子の数を単位体積中の分子の総数で割ったものに相当する。この度合いは線形の性質であるため、水分含有率は、例えばPID(Proportional-Integral-Derivative)型のモニターを使用することにより、容易に測定およびモニタリングされる。重量百分率は、分子の総数に対する水分子の数の百分率を0.622倍することにより計算され得る。様々な環境における水分含有率に関する一般的な情報は、W.Wagnerらによる「International Steam Tables - Properties of Water and Steam based on the Industrial Formulation IAPWS-IF97」に記載されている。
【0122】
架橋する工程(b)は、本発明のさらに別の好ましい代替形態によれば、湿度を制御せずに、非常に特定すると周囲雰囲気の湿度、特に空気1m当たり20~60gの水、好ましくは40~60g/mの絶対湿度で行う。
【0123】
この架橋する工程(b)は、特に、接着性組成物の加水分解性アルコキシシラン末端基を有するポリマー鎖の間に、大気の水分の作用下で、三次元ポリマーネットワークの形成をもたらすシロキサン型の結合を生成する効果を有する。こうして架橋した接着性組成物は、特に、感圧接着剤であり、これは、感圧接着剤でコーティングされた支持体層に望ましい接着性および望ましいタックを与える。
【0124】
好ましくは、コーティングは、支持体層または非粘着性保護層上に均一に行うが、コーティングは、最終的な自己接着性物品の所望の形状に適合させることもできる。
【0125】
一実施形態によれば、接着性組成物でのコーティングは、支持体層の2つの面の少なくとも一部分上に行う。支持体層の2つの面をコーティングする場合、接着性組成物は、2つの面で同一であっても異なってもよく、単位面積当たりの重量は、2つの面で同一であっても異なってもよい。
【0126】
本発明の一実施形態によれば、自己接着性物品は、支持体層の1面の少なくとも一部分または2つの面の少なくとも一部分において接着性層を含み、前記接着性層は、任意選択で、非粘着性保護層でコーティングされている。一実施形態によれば、自己接着性物品は、2つの接着性層の各々において2つの非粘着性保護層を含む。この場合、2つの保護層は、同一のもしくは異なる材料で作製することができ、および/または同一のもしくは異なる厚さを有することができる。
【0127】
最後に、本発明の主題は、上で規定された自己接着性物品を使用する接着接合方法において、以下の工程:
a)非粘着性保護層が存在する場合、そのような層を除去すること;
b)製品の表面に自己接着性物品を適用すること;および
c)前記物品に圧力をかけること
を含むことを特徴とする、方法である。
【0128】
工程b)において、自己接着性物品は、物品の自己接着性部分(自己接着性層によって形成される)が製品の表面に面するように適用する。
【0129】
自己接着性物品が両面物品である実施形態によれば、接着接合方法は、製品の第2の表面を、製品の第1の表面に接着により結合した物品に適用するか、または製品の第1の表面に接着により結合した物品を、製品の第2の表面に適用するかのいずれかの工程を追加的に含む。
【0130】
以下の実施例は、単に本発明の説明として提示するものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈するべきではない。
【実施例
【0131】
例A(WO2020/128200による比較例):
Geniosil(登録商標)STP-E30をベースとする熱架橋性接着性組成物
A1.組成物の調製
表1に示される組成物は、まず粘着付与樹脂Picco(登録商標)AR100を減圧下でガラス反応器に導入し、約160℃に加熱することにより調製する。次に、樹脂が完全に溶融したら、Geniosil(登録商標)STP-E30を添加する。
【0132】
混合物を減圧下で15分間撹拌し、次に70℃に冷却する。触媒(K-KAT(登録商標)5218)およびシルセスキオキサンDow Corning(登録商標)3074を次いで導入する。混合物を減圧下で撹拌しながらさらに10分間維持する。
【0133】
A2.常温での架橋時間の測定:
例Aの組成物を、NF T46-002規格に規定されるH2型の試験片に対応する型に充填するように適用し、その厚さは4mmであり、その中央部は、長さ25mmにわたって4×2mmの長方形断面を示す。
【0134】
前記型を常温(約23℃)で放置し、組成物の挙動を観察する。完全な架橋に必要な時間は24時間である。
【0135】
A3.引張試験による破断応力および破断点伸びの測定:
測定の原理は、デバイスの可動ジョーが100mm/分に等しい一定速度で移動する引張試験デバイスで、架橋接着性組成物からなる上で規定したH2型の試験片を引張り、試験片が破断する瞬間にかけられた応力(MPa単位)およびさらに試験片の伸び(%単位)を記録することにある。
【0136】
得られた測定結果を表1に示す。
【0137】
A4.60g/mに等しい単位面積当たりの重量の割合で架橋組成物でコーティングされたPET支持体層の調製:
厚さ50μm、寸法20cm×40cmのポリエチレンテレフタレート(PET)の長方形シートを支持体層として使用する。
【0138】
A1の箇所で得られた組成物を100℃に近い温度に予熱し、カートリッジに導入し、そこからビーズを押し出し、これをシートの幅に平行にシートの縁部近くに堆積させる。
【0139】
その後、このビーズに含まれる組成物をシートの表面全体に広げ、実質的に一定の厚さの均一な層を得る。これを行うためにフィルムスプレッダー(フィルムアプリケーターとしても公知である)を使用し、シートの縁部から反対側の縁部まで動かす。60g/mの単位面積当たりの重量に相当する組成物の層をこうして堆積させ、これはおおよそ60μmのオーダーの厚さを表す。
【0140】
こうしてコーティングしたPETシートを次に、組成物の架橋のため、120℃のオーブン内で湿潤雰囲気(相対湿度4%)下に5分間置き、次いで長方形であり同じ寸法のシリコーンフィルムのシートからなる非粘着性保護層上に積層する。
【0141】
得られた3重層を、以下に記載する試験に供する。
【0142】
A4.1 常温での剥離:
接着性は、FINAT Technical Handbook、第6版、2001年に公表されているFINAT No.1法に記載されている通り、ステンレス板上での180°剥離試験により評価する。FINATは、自己接着性ラベル製造業者および加工業者の国際連盟である。この試験の原理は以下の通りである。
【0143】
長方形のストリップ(2.54cm×15cm)の形態の試験片を、上で得られた3重層から切り出す。
【0144】
この試験片を常温で、周囲雰囲気(約23℃および湿度50%)下で7時間保管する。次に、非粘着性保護層の対応する部分を除去した後、ステンレス鋼板からなる基材に、その長さの2/3にわたって付ける。
【0145】
得られた組立体を常温(約23℃)で20分間放置する。次にこれを引張試験デバイスに入れ、このデバイスは、自由なままである長方形のストリップの端部から開始して、角度180°で毎分300mmの分離速度でストリップの剥離または取外しを行うことができる。機器は、これらの条件下でのストリップの取外しに必要とされる力を測定する。
【0146】
対応する結果をN/2.54cm単位で表し、表1に示す。
【0147】
A4.2 50℃で7日間保管後の剥離:
前述の試験を繰り返すが、ただし、試験片を長方形ストリップの形態で切り出した後、後者を温度50℃で、湿度50%の雰囲気中で7日間保管し、その後、ステンレス鋼板に取り付ける。
【0148】
対応する結果をN/2.54cm単位で表し、表1に示す。
【0149】
A4.3 瞬間接着性(ループ試験としても公知である):
即時粘着性すなわちタックは、FINAT No.9法に記載されている瞬間接着性「ループ」試験によって評価され、この原理は以下の通りである。
【0150】
長方形のストリップ(25mm×175mm)の形態の試験片を、上で得られた架橋組成物でコーティングされたPET支持体層から切り出す。
【0151】
非粘着性保護層の全てを除去した後、このストリップの両端部をループを形成するように接合し、その接着性層を外側に向ける。接合された両端を、往復オプションで垂直軸に沿って300mm/分の変位速度を与えることができる引張試験デバイスの可動ジョーに置く。垂直位置に置かれたループの下部をまず、一辺の長さが約25mmの正方形の領域にわたって、25mm×30mmの水平ガラスシートと接触させる。この接触が起こると、ジョーの変位方向が逆になる。タックは、ループがシートから完全に外れるのに必要な力の最大値である。
【0152】
結果をN/(2.54cm)単位で表し、表1に示す。
【0153】
A4.4 125℃でのせん断強度時間:
上で得られたPET支持体層の高温での接着性の維持を、125℃での静的せん断に対する接着シールの抵抗時間を決定する試験によって評価する。この試験について、FINAT No.8法を参照する。原理は以下の通りである。
【0154】
長方形のストリップ(25mm×75mm)の形態の試験片を、上で得られた3重層から切り出し、常温(23℃、湿度50%)で24時間保管する。
【0155】
非粘着性保護層の全てを除去した後、接着ストリップの端部に位置する一辺の長さが25mmの正方形部分をガラス板に付ける。
【0156】
こうして得られた試験板を、適当な支持体により、125℃のオーブン中に実質的に垂直に導入し、長さ50mmのストリップの接着により結合していない部分は、板の下に配置する。熱平衡後、ストリップの自由なままである部分を1kgの錘に接続し、デバイス全体を試験期間中常に125℃のオーブン内に保持する。
【0157】
この錘の影響下で、ストリップの板への付着をもたらす接着シールは、せん断応力に供される。この応力をより効果的にモニタリングするために、試験板を垂直に対して2°の角度をなすように実際に置く。
【0158】
終了時に、この応力の影響下で接着シールが破損した後、ストリップが板から外れる時間を記録する。
【0159】
時間単位で表された結果を表1に示す。
【0160】
A4.5 試験片を50℃で7日間保管した後の125℃でのせん断強度時間:
前述の試験を繰り返すが、ただし、試験片を長方形ストリップの形態で切り出した後、後者を温度50℃で、湿度50%の雰囲気中で7日間保管し、その後、ガラス板に取り付ける。
【0161】
時間単位で表された結果を表1に示す。
【0162】
例Bおよび例C:Geniosil(登録商標)STP-E30をベースとする比較接着性組成物
A1の箇所で示した例Aの組成物の調製を繰り返すが、ただし、
- 例Bでは:シルセスキオキサンを導入せず、
- 例Cでは:シルセスキオキサンを導入せず、触媒を添加して次に10分間撹拌した後、Aerosil(登録商標)R202を導入し、再び約10分間撹拌を行う。
【0163】
A2、A3、およびA4の箇所に示す、常温での架橋時間の測定、ならびにさらに125℃での引張試験およびせん断強度の試験を繰り返す。表1に示す結果が得られる。
【0164】
本発明による実施例1および実施例2:Geniosil(登録商標)STP-E30をベースとする常温で架橋可能な接着性組成物
A1の箇所に示す例Aの組成物の調製を繰り返すが、ただし、触媒およびシルセスキオキサンを添加して次に10分間撹拌した後、Aerosil(登録商標)R202を導入し、再び約10分間撹拌を行う。
【0165】
A2およびA3の箇所に示す、常温での架橋時間の測定および引張試験を繰り返す。表1に示す結果が得られる。実施例2では、例Bと比較して、常温での架橋時間がかなり減少する(2分の1未満)ことが観察される。加えて、実施例2では、例Bと比較して、破断応力が著しく増加することが観察される。実際、シルセスキオキサン樹脂(E)または焼成シリカ(C)を別々に添加すると、破断応力が減少する(例Aおよび例C)。したがって、シルセスキオキサン樹脂(E)と焼成シリカ(C)の組合せの添加で観察される破断応力の増加は、このように全く予想外であり、これらの成分の間の相乗効果を示す。
【0166】
A4の箇所に示す自己接着性PET支持体層の調製も繰り返すが、ただし、コーティングされたPETシートを、架橋のために常温(約23℃)で7時間放置し、その後、非粘着性保護層上に積層する。得られた3重層を、その後、A4.1~A4.5の箇所に記載した試験に供し、表1に示す結果が得られる。
【0167】
実施例1および実施例2では、例Aの結果と実質的に同一である剥離結果(常温で、または50℃で7日間保管後)が観察される。
【0168】
これらの2つの実施例で得られた瞬間接着性(すなわちタック)の値は、例Aの値より低いが、自己接着性支持体に完全に好適である。
【0169】
最後に、結果は、シルセスキオキサン樹脂(E)(例A)の添加が125℃におけるせん断強度の改良(例Bとの比較)をもたらすのに対し、焼成シリカ(C)(例C)の添加は125℃におけるせん断強度に事実上影響を及ぼさないことを示している。一方、実施例1および実施例2の自己接着性PET層で測定された125℃におけるせん断強度の値は、例A、例Bおよび例Cの値よりもはるかに優れた温度粘着を示す。したがって、シルセスキオキサン樹脂(E)と焼成シリカ(C)の組合せの添加により、驚くべきことに、125℃におけるせん断強度を改良することが可能となり、これらの成分は相乗的に作用する。加えて、実施例1および実施例2の自己接着性PET層は、50℃で7日間保管した後でも、125℃におけるせん断強度のこれらの特性を保持する。
【国際調査報告】